○
中西珠子君 ただいま議題となりました
国際開発協力基本法案につきまして、公明党・国民
会議を代表し、その提案理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
世界に類を見ない平和憲法を持つ
我が国は、宇宙船地球号のどのメンバーとも平和的共存共栄を図らねばなりません。特に開発途上国の
経済的、社会的
発展への自助努力を
支援し、殊に、貧困や飢餓に悩む開発途上国の草の根の人々の生活の安定や福祉の増進に資するような
援助や
協力を行い、社会正義に基づいた恒久的な世界平和の達成のため、積極的に
貢献することは
我が国の国際的責務であります。
しかし、これまでの
我が国の
政府開発
援助(ODA)は貿易の伸長等、自国の
経済的利益を図ることを目的としたものが多く、被
援助国の支配層と
日本の企業のみを潤しているとの批判が後を絶ちません。これからの
我が国のODAは、開発途上国の最
貧困層が人間としての基本的ニーズ(BHN)を満たし、人としての尊厳を保ち、開発の成果を基本的人権として享受できるようなものにしていかなければなりません。
このようなODAの重要性にもかかわらず、
我が国においてはこれに関する基本的な法律がなく、またこれに携わる官庁も、外務、大蔵、通産、
経済企画庁等多省庁にわたり、施策の一体化を図るための体制整備が必要である等の問題が
指摘されてきました。さらに現在の国会における予算等の審査ではODAの
内容が十分に明らかにされず、
援助をめぐる疑惑等が生ずることのないよう国会が
事前にこれに関与すべきであるとの根強い
意見があります。
このような
状況から、今般ODA基本法たる本法案を提出し、ODAに関する基本原則を定めるとともに、ODAに関する
計画は国会による承認を要することとし、またODAのための一元的組織として国際開発
協力庁及び国際開発
協力事業団を設置しようとするものであります。
以下、本法案の
内容を申し上げます。
第一に、基本原則等に盛られた
考え方について申し上げます。
ODAは開発途上国の
経済的、社会的
発展への自助努力を
支援することを旨とし、主権の相互尊重、平等、内政不干渉の原則に従うべきは当然ですが、軍事的用途に充てられたり、国際紛争を助長するような、いわゆる戦略
援助は行ってはならないことを明らかにいたします。
経済インフラストラクチャーの建設に偏っていた
我が国のODAが開発途上国の
環境破壊や住民の生活基盤の喪失をもたらした例も少なくありません。このような結果とならないよう、十分な配慮が必要であります。
援助案件が被
援助国の草の根の人々の生活の安定と福祉の増進につながり、被
援助国の
経済的、社会的
発展に真に役立つか否かを見きわめるため
事前調査を強化徹底する必要があります。
また、当該国に
援助を行っている外国の
政府や民間組織や
国際機関と協議、
協力し、これらの行っている
援助と
我が国のODAとの重複を避け、相互補完的、効率的、効果的なものとするよう努める必要があります。
OECDのDAC(開発
援助委員会)の最新の統計によれば、
日本のODAはDAC加盟国中、ODAの質を表わす贈与比率においても、グラントエレメントにおいても、ともに最下位であり、
技術協力の割合もDAC加盟国平均の半分以下であります。六十二年一月に行われたDACの対日審査においても、ODAの質の向上と、量的増加、すなわち対GNP比の引き上げを要請されたところであります。量的増大については、
政府は最近、
日本の膨大な貿易黒字に対する国際的批判を和らげる目的もあって、第四次ODA倍増
計画を発表いたしましたが、ODAの資金は国民から徴収された税金、その他の貴重な財源で賄われるものであり、納税者である国民に対し資金の使途等を明らかにし、ODAに関する情報を公開すべきであります。また、国民の
理解を深めるため開発教育の振興など適切な措置をとるべきであります。
第二に、国際開発
協力計画について申し上げます。
政府はODAは開発途上国の要請に基づいて行われるものだからと要請主義を振りかざして、ODAの総合的
計画を国会に提出することなく、ODA予算の増大を年々図っておりますが、国民の税金等で賄われるODAの総合的
計画を国民の前に明らかにすべきであります。それゆえ、本法案におきましては、
政府に対し、国別、
分野別、
協力形態別の
計画、並びに、
国際機関への出資等の
計画をその見込み額等
関係参考資料を添えて、提出することを義務づけております。なお、
協力案件で二年度以上にわたり実施が予定されているものについては、その
内容や実施の期間を明らかにするものとしております。また、
政府は国会の承認を受けた
計画に基づかない
援助を行ってはならず、ただし、災害にかかわる
援助や緊急を要するものはその例外としております。さらに、
政府の国会に対する
報告を義務づけるとともに国会の国政
調査権を十分に行使できるようODAに関する必要資料を
政府は速やかに国会に提出するよう努めるものといたしております。
第三に、国際開発
協力庁及び国際開発
協力事業団の設置について申し上げます。
ODAの量的増大のみならず、質的改善を図り、適正かつ、効率的、効果的な推進を図り責任の所在を明確化するため
援助行政の一元化をすることとしております。このため、
総理府の外局として
国務大臣を長とする国際開発
協力庁を置き、開発
協力の総合的企画、立案、実施等に関する行政を行わしめ、それが管轄する実施
機関として、国際
協力事業団と海外
経済協力基金を統合した国際開発
協力事業団を置くものとすることにしております。
現在ODA予算は十六省庁にまたがり、総合調整が十分に行われておらず、特に
借款はいわゆる四省庁体制で行われており、責任の所在が明確でありません。
援助行政の一元化が必要なゆえんであります。
さらに、開発
協力に係る
調査、研究、
評価、案件の実施、管理などに従事する人材の養成並びに開発途上
地域に派遣する者の訓練を行う特別の
機関として、国際開発
協力庁に開発
協力技術センターを置くものとし、現在の国際
協力事業団の国際
協力総合研修所の拡大強化を図っております。
なお、開発途上
地域に派遣する者の生活の安定に資するため、職業の安定に関し必要な施策を講じることを
政府に義務づけております。
また、開発
協力が開発途上国の草の根の民衆を潤すことができるよう民間の非営利団体(NGO)や地方公共団体等を活用し、必要な補助を与え、欧米先進国で広く行われているコファイナンスシステムの確立を目指しております。
以上が本法案の概要でありますが、六十一年十二月の
国連総会で採択された開発の権利に関する宣言にも明らかなように、開発
援助という
言葉を好まない開発途上国の心情を考慮に入れて、本法案においては
政府開発
援助という表現を避けて、国際開発
協力という用語を使用しております。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
ありがとうございました。