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和田教美君 私は、今回の
調査では
団長の総括的
質問を補足する意味で、主として
軍縮問題、ニュー
デタントの実情、こういうふうな問題を中心に
質問をしてまいりました。その
立場から二、三私の感想を述べたいと思います。
まず第一に、
東西ヨーロッパにおいては新しい
緊張緩和、ニュー
デタント、こういう時代が私の予想を超えるスピードで進行しているという感じを受けました。
第二番目に、
ソ連の
ゴルバチョフ最高会議議長の
兵力五十万人の一方的
削減表明を含めまして、
ソ連が提起しております幾つかの
軍縮提案は、単なる政治的駆け引ではなく、本気であり、また本音でもある、こういう
印象を受けました。
第三番目には、ヨーロッパにおける
軍縮交渉は、特に欧州
通常戦力交渉、これが相当進展をしておりまして、来年にも何らかの合意が得られるという
見通しを述べる人が多かったわけでございます。それに比べますと米ソ
戦略兵器削減交渉の方は、
ソ連国防省のククレフ
参謀総長臨時職務代行が言っておりましたように、例えばSLCMの問題など幾つかの基本問題でまだ対立が解けていないということで、これはまだいろいろ問題が残っているなという
印象でございました。それとともに、
ソ連が
軍縮・
軍備管理の問題にこのように熱意を示す背景には、日常生活物資の不足などに見られる深刻な
経済状態がある。いわば背に腹はかえられずに過大な
軍事負担を軽減する道を選択しているというふうな
印象を受けました。
我々は、今も
斎藤さんからお話しございましたように、
モスクワのロシアホテルに泊まったんですけれ
ども、部屋には石けんがない、洗面器の栓はどこもない、朝、食堂でミネラルウオーターを注文すると、それは昼の食事以後でなければ出さないことになっているというふうなことで、全く驚きの連続でございました。また、
ゴルバチョフに近いビリュコワ副
首相、女性の方ですけれ
ども、これが七月にロンドンで日常生活物資の大々的な買い出しをやった。ところが、そういう緊急輸入の生活物資が、輸送がネックになって、それが港で滞っているというので、ルイシコフ
首相がかんかんになって怒っているとか、そんな話をいろいろ聞いたわけでございます。
ペレストロイカで
軍事生産を抑制して
消費物資の増産を図るという方針は打ち出されておるわけですけれ
ども、そうした新しい
経済構造への転換の過程における混乱、
生産の停滞というのが今
ソ連が直面している問題だというふうに感じた次第であります。
もう一つ感じましたことは、いずれにしましてもペレストロイカ、これは
成功するまでにはかなり長期にわたる期間が必要だと思いますけれ
ども、グラスノスチ、公開性といいますか、この方は急速に広がって、それに伴う
市民の
経済的不満やあるいは民主化を求める声などが一斉に噴き出てきた。この間のアンバランスといいますか、不調和というものがかなり目立つということでございました。
私にとっては久しぶりの訪ソだったわけですけれ
ども、かつては政治問題について
市民はほとんど
発言を渋ったわけでございますけれ
ども、今度行って聞いてみますとどんどん
発言をする。そして、各新聞もいろんなことをいろんな
立場から書いているというふうなことでございまして、そういう面では確かに
ソ連は変わった、変わりつつあるという
印象を受けました。
ソ連が今直面している
経済的困難の理由として、肥大化した官僚機構、それから機構
改革に対する官僚の抵抗というふうなものが言われておりますけれ
ども、また古めかしい
生産総量第一主義というふうなものがかなり問題ではないかという
印象を受けました。画一的な総量第一主義によって、きめの細かい日常生活物資、そういうものの
生産がどうしてもおくれがちになるということ。それからまた、全体に経営学的に言えばメンテナンスの問題が
ソ連では非常に忘れられておるのではないか。それが今のいろんな問題になってあらわれておるのではないかという感じがいたしました。
そこで、このような
ソ連のペレストロイカの
現状に対しまして西側としてどう対応しているかという問題ですけれ
ども、その点で非常に私が参考になると思いましたのは
西ドイツの態度でございました。シュヴェッツアー外務担当国務大臣、この方も女性ですけれ
ども、この外務担当大臣との
会談、あるいは
連邦議会の国防
委員の三党代表との
懇談などをやったわけですけれ
ども、そこにあらわれた、
西ドイツの積極的でしかも現実的な態度というものは、
日本政府にとってもこれから見習うべき非常に参考になる態度ではないかという
印象を受けたわけでございます。
それはどういうことかといいますと、
団長報告にもありましたとおり、
ゴルバチョフ路線の成否というふうな問題についてはこの三党の間で必ずしも判断が一致しているわけではございません。しかし、総じて言えば
FDPを基盤とするゲンシャー外務大臣、この判断がリードしているのではないか。つまり
FDPの
考え方は、その代表
委員が言っておりましたように、
ゴルバチョフを助けてペレストロイカを
成功させることが西側の利益につながる、そして
軍縮の問題についてもそうした
外交姿勢の中で
ソ連に最大限の譲歩を引き出す、こういうのが
西ドイツの
外交の基本姿勢であるというふうに私には受け取れたわけでございまして、これは
日本の
外務省がこれからいろいろ対
ソ連外交をやっていくについても参考になる一つの態度ではないかというふうに思いました。
それからもう一つ、
スウェーデンで国際平和
研究所、SIPRIを訪ねたわけでございますけれ
ども、そのときにSIPRI側から、
研究プロジェクトについて
日本からもぜひ
援助をしてほしいという強い要請がございました。これは
団長報告にもあるとおりでございます。私は、
日本政府からの直接
援助というのはちょっと無理かもしれませんけれ
ども、何らかの
協力方法があるかどうか、今後
会長あるいは
団長、さらに我々の間で少し話し合ったらいいのではないかというふうに思っております。
それとともに感じましたことは、
日本にもSIPRIだとかあるいは英国の国際戦略
研究所のような権威のある平和、
安全保障に関する
研究所、これが一つぐらいあってもいいのではないかという
印象を強く持ちました。我が国の
現状は、例えばイギリスの国際戦略
研究所が
日本の
防衛費についてデータを出すと、
日本の
軍事費は
世界第二位だなんてデータが出ると、途端に
防衛庁が別のことを言う、あちこちでいろんなことが出てくるということで、これではとにかく基礎的なデータについてさえ認識の一致がないわけでございまして、そういう意味で純
中立的な権威のある
研究機関をつくるということが、すなわち各
政党の
安全保障政策についても共通の場を広げさせる一つの助けになるのではないかという感じを持ったわけでございます。
ただ、
日本の
現状では、
政府の直属機関ということにすることはなるべく避けて、できれば国会の付設機関というふうな形でそういう
研究機関を
考えたらどうか。我々公明党はかねがねそういうことを主張しておりますけれ
ども、いずれにしましても、
政府から補助金をもらうにしても、それと運営とは絶対に切り離す、そして
中立性をあくまで保っていくということが必要だろう、そういう
印象を持ってまいったわけでございます。
以上でございます。