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1989-10-17 第116回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月十七日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 小里 貞利君 理事 越智 伊平君    理事 佐藤 信二君 理事 谷川 和穗君    理事 中島源太郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君       井上 喜一君    稲村 利幸君       上村千一郎君    小渕 恵三君       尾身 幸次君    大坪健一郎君       大野  明君    奥田 敬和君       倉成  正君    小坂徳三郎君       古賀  誠君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    左藤  恵君       佐藤 静雄君    佐藤 文生君       杉浦 正健君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    田中 龍夫君       高鳥  修君    谷垣 禎一君       玉沢徳一郎君    野田  毅君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    渡辺 秀央君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       新村 勝雄君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    日笠 勝之君       冬柴 鉄三君    古川 雅司君       川端 達夫君    楢崎弥之助君       安藤  巖君    石井 郁子君       岡崎万寿秀君    佐藤 祐弘君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 後藤 正夫君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 石橋 一弥君         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         農林水産大臣  鹿野 道彦君         通商産業大臣  松永  光君         運 輸 大 臣 江藤 隆美君         郵 政 大 臣 大石 千八君         労 働 大 臣 福島 譲二君         建 設 大 臣 原田昇左右君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     渡部 恒三君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      阿部 文男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      斎藤栄三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 志賀  節君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 石井  一君  出席政府委員         内閣官房長官 藤本 孝雄君         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       藤田 公郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         人事院事務総局         任用局長    森園 幸男君         警察庁刑事局保         安部長     森廣 英一君         警察庁警備局長 城内 康光君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁長官官房         審議官     新野  博君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       加美山利弘君         総務庁人事局長 勝又 博明君         総務庁統計局長 井出  満君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      栗林  世君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁土地局長 藤原 良一君         国土庁大都市圏         整備局長    三木 克彦君         法務省刑事局長 根來 泰周君         公安調査庁次長 古賀 宏之君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  谷口 米生君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       松田 篤之君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         国税庁次長   岡本 吉司君         文部大臣官房総         務審議官    佐藤 次郎君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      坂元 弘直君         文部省高等教育         局私学部長   野崎  弘君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         食糧庁長官   浜口 義曠君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       山本 貞一君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省産業         政策局長    棚橋 祐治君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         資源エネルギー         庁公益事業部長 牧野  力君         運輸大臣官房審         議官         兼内閣審議官  井上徹太郎君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         郵政省貯金局長 成川 富彦君         郵政省通信政策         局長      中村 泰三君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省職業能力         開発局長    甘粕 啓介君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房総         務審議官    芦尾 長司君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十月十七日  辞任         補欠選任   大坪健一郎君     古賀  誠君   奥田 敬和君     谷垣 禎一君   玉沢徳一郎君     尾身 幸次君   野田  毅君     佐藤 静雄君   細田 吉藏君     井上 喜一君   村山 達雄君     杉浦 正健君   水谷  弘君     古川 雅司君   児玉 健次君     佐藤 祐弘君   柴田 睦夫君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     細田 吉藏君   尾身 幸次君     玉沢徳一郎君   古賀  誠君     大坪健一郎君   佐藤 静雄君     野田  毅君   杉浦 正健君     村山 達雄君   谷垣 禎一君     奥田 敬和君   古川 雅司君     水谷  弘君   佐藤 祐弘君     石井 郁子君     ───────────── 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  3. 尾身幸次

    尾身委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、総理及び関係大臣質問をさせていただきます。  まずもって、この予算委員会審議におきまして、自民党質問に対しまして公正な割り当て時間をいただき、私どもにも質問の機会を与えていただきましたことに対しまして感謝し、国会の運営は本来かくあるべきものであると高く評価するものであります。  先日の参議院選挙で、自民党は戦後初めての大敗を喫しました。原因はいろいろあるわけでございますが、その一つは、今回の税制改正の中の特に消費税について国民皆様理解賛同が得られなかったということも大きな原因一つでございまして、私どもは、襟を正してこの結果を厳粛に受けとめ、そして公約どおり消費税についての見直しを思い切って行い、再出発すべきものと考えている次第でございます。  しかしながら、国民皆様賛同が得られなかったのは、一つには、税制改革必要性とその内容につきまして国民皆様に十分理解していただくためのPR不足という要因もあったと思うわけでございます。そしてまた、このPR不足の大きな原因は、昨年の税制国会におきまして、税制問題特別委員会を設置しながら、社会党を初めとする野党審議ボイコットによりまして国民皆様の目の前でほとんど実質的な審議をさせていただけなかったことにも大いにその原因があると思うわけであります。  私が調査したところによりますと、税制改革関連法案質疑は、野党審議ボイコットによりまして、法案が提出された昨年の七月二十九日から衆議院で可決された十一月十六日までの三カ月半の間に約十七時間しか審議が行われていないのであります。野党皆様にもいろいろ言い分があると思いますが、言い分議会審議の過程で堂々と主張すべきでございまして、このような議会制民主主義の根幹に反するようなことが我が国の二十一世紀の将来を決める税制改革問題について行われたことは、まことに遺憾であります。  そこできょうは、改めまして、自民党による今回の税制改革内容と、対する野党税制改正考え方につき、政府のお考え伺いたいと思います。  まず第一に、野党は、今回の消費税導入中曽根内閣公約違反及びその延長であって、撤回すべきだと主張しておりますが、この問題について総理の御見解を承りたいと思います。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 税制の御議論の前に、導入時の経緯あるいはまた今度の消費税提案するに至ったその経緯、それを述べるという御質問でございますけれども、私は、中曽根内閣当時のとおっしゃいますと、あの売上税をめぐる一連の動きの中で、これは率直に申し上げて導入に関して大変残念なことがあったことは私も率直に思いますけれども、そのために、議会で御同意が得られず、与野党の合意も得られず、議長裁定の結果、話し合いがつかないときは廃案ということであの売上税廃案になったわけでありますし、昨日もいろいろ御議論ございましたが、そのことについては、これは議長裁定ということで与野党皆さん従っていただいたと私は理解をいたします。同時に、あのときの議長裁定でも、廃案になっても、今後の高齢化社会に対応する等、税制改革問題は将来の我が国財政需要考えるときに最重要課題一つであることは言うをまたないので、直間比率見直しなど今後できるだけ早期にこれを実現するよう各党協調し、最大の努力を払うことという議長裁定の趣旨を踏まえて、売上税反省に立ち、いろいろなことを勘案して、長い目で見た消費税必要性を思い、これを御提案しておるわけであります。  したがいまして、将来必ず極めて速度も遠く訪れる高齢化社会にどう対応していくのか、資産と所得消費の間にバランスのとれた税負担をどう考えるのか、あるいは負担が直接税に偏っておったがために中堅サラリーマン負担が非常に強く重くなってきておることをどう理解し、どう解消していくのか、そして、世の中を支えるすべての人々が社会共通の費用をどうやって公平に、そして広く薄く負担をしていただくか、いろいろなことを考え提案をしておる税制改革一つ消費税のお願いもあるわけでありますから、どうかこのことは高い次元に立って御理解をいただきます ように、国民皆さんの御理解と、この制度税制改革全体の中でお認めをいただいていくように、ただ、そのためには、御指摘のように去る通常参議院選挙の結果等も我々は厳しく受けとめて、見直すべきと思う点、世論に極めて大きな批判や不満があったのはどこだったんだろうか、謙虚にこの声にも耳を傾けて、そして見直すべきところは見直してやっていかなきゃならぬと申し上げ続けてきておるところでございます。
  5. 尾身幸次

    尾身委員 次に、租税社会保障負担率についてお伺いをいたします。  我が国は、二十一世紀に向かって、好むと好まざるとにかかわらず高齢化社会に突入すると予想されております。昭和六十年、すなわち一九八五年には五・九人で一人のお年寄りを支えていたものが、二〇〇〇年には三・七人で一人、二〇一〇年には二・八人で一人、高齢化がピークに達すると予想される二〇二〇年には二・三人で一人を支えなければならなくなると予想されているわけでございます。  現在の我が国社会保障負担租税負担を合計した国民負担率は三九%であります。他方世界各国租税社会保障負担率は、民間保険制度などが進んだアメリカでは三六%でございまして、これを別にいたしますと、イギリスの五四%、西ドイツ五二%、フランス六二%、そして社会保障が進んでいると言われるスウェーデンは何と七三%になっているわけであります。つまり、国民一人一人の平均で見て、例えば所得百万円に対して我が国は三十九万円であるのに対して、スウェーデンは七十三万円を税金や社会保険料年金等で払わなければならぬという高負担の国になっているわけであります。我が国の場合も、私は、高齢化社会に向かって、この税・社会保障負担率を好むと好まざるとにかかわらず上げざるを得ない、少なくとも現在の三九%を四〇%台の半ばまで上げざるを得ないのではないか、そうでないとすさまじい福祉切り捨てをやらざるを得ないことになると考えているわけでございますが、この点につきまして、政府のお考えをお伺いしたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 基本的には、私は、受益と負担バランス考えながら、そのときの情勢のもとにおいて国民的な選択が行われるべき課題であると考えておりますけれども、今後、やはり高齢化社会の進展などに伴いまして国民負担率は長期的にはある程度上昇することは御指摘のとおりであろうと思います。ただ、臨時行政調査会などの答申の中におきましても、その上昇は現在のヨーロッパ水準等をできるだけ下回るようにという御指摘をいただいているわけでありまして、そうした考え方をとり続けるべく今後とも最大限の努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  7. 尾身幸次

    尾身委員 私は、今大蔵大臣のお答えのとおり、高齢化社会の到来に対応して、長期的には税・社会保障負担率を引き上げざるを得ないと思っておりますけれども、その際、我が国においては所得税法人税相続税などの直接税の比率が八割程度と非常に高く、ヨーロッパ諸国の五割前後に比較して相当に高くなっているわけでございます。他方、旧物品税などの間接税比率は二割程度になっておりまして低いために、痛税感が強い、そしてまた、税収の安定性が得られない、そういうことで、直間比率の是正をし、そして国民全体が広く薄く負担を分かち合うということによって高齢化社会に対応した安定的財源を確保することが先般の税制改正一つの目的であったと思いますけれども、これにつきまして大蔵大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員指摘のように、税体系の中で負担給与所得を初めとする個人の稼得所得に非常に偏っている一方で、その裏腹に特定の嗜好品とか奢侈品を中心とした個別消費税制度とも言うべき消費課税のウエートは著しく落ちておった状況の中で、今回の税制改革は行われたわけであります。  このねらいというものは、もう御承知のとおり、不公平感あるいは重税感が高まっておりましたその国民税制改正に対する御要望にこたえると同時に、まさに委員指摘のように、より公平に互い互いを支え合う仕組みを導入するという考え方からとられたものでありまして、結果的にはほぼ七対三と言いたいのですが、ちょうど直接税七二・一、間接税二七・九というところまで平成元年度の直間比率を戻しておるわけでございます。むしろ、将来に向けては委員の御指摘のような方向を我々も考えていかなければなりますまい。
  9. 尾身幸次

    尾身委員 次に、野党税制改正に対する考え方につきまして、総理のお考えをお伺いをしたいと思います。  野党皆さんは、参議院選挙自民党消費税見直しを公約し、廃止を公約した野党に負けた、したがって、国民の意思は廃止だからすぐに廃止をしろと主張しているわけであります。しかし、野党はこの廃止ばかりを強く言っておりまして、廃止した後の二十一世紀に向かった税制改正基本的方向については、今結論が出せない、とりあえず二年間は暫定税制でいくと主張しているわけであります。  私はこれは全くおかしいと思うわけであります。税制改正議論国会で始まったのは、昭和五十三年の大平内閣一般消費税のときであります。これは既に十年前のことでございまして、この間野党消費税に反対してきたのであれば、一一十一世紀高齢化社会に向かって、また、経済国際化やあるいは社会多様化に対応してあるべき税制のビジョンというものは、野党としてもこの十年間にまとめて持っていてしかるべきであります。これがないからといって、一時的にせよ、いろいろと矛盾の多い、また問題の多い各種の個別間接税を復活したり、筋の通らない増税を実現しようというのは全く無責任である、私はそう思うわけであります。  野党は、とりあえず消費税廃止すると言いまして、いわば国民を「消費税廃止丸」という船に乗せようとしているわけでありますけれども、この「消費税廃止丸」は二年後にどの港に着くかわからない、羅針盤もないからどちらの方向に行くかもわからない、浮くか沈むかわからずに波のまにまに漂う寄せ木細工の船であります。見直した後の消費税を定着させたいという自民党の船は、二十一世紀高齢化社会における福祉国家実現を目指したもので、名前をつければ「二十一世紀福祉丸」とも言うべきものであります。私は、どうしても国民皆様に二十一世紀高齢化社会に安心して暮らせる夢と希望の持てる「二十一世紀福祉丸」の方に乗っていただかなければならないと考えているわけでありますが、総理のこれに対する御所見をお伺いしたいと思います。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 野党がおっしゃるその消費税廃止ということに対しましては、私たちは恒久的な税制としての現在の消費税を定着するように見直していきたいという努力を一生懸命やっておって、野党皆さんはまだ法案を具体的な代替財源についてはお出しになっておりませんので、それを拝見してから申し上げるのが筋かとも思いますけれども、去る九月二十六日に発表された御提案がありますが、あれを見る限りでは、やはり過去にいろいろ指摘された問題点の多い個別間接税への戻りとか、あるいはまた第四条あたりのところで示されております「直接税を主とし、間接税を従とすることを堅持し、」となってまいりますと、直接税を主として直接税に偏っておった、そのために中堅サラリーマン税負担が多くなり過ぎたという反省に立って考えております私たち考え方とはちょっと違うな。しかも、直接税と間接税のことを今のままで押していきますと、二十一世紀になったときの医療とか年金とか、ああいった高齢化時代にさらに率でいきますと今のサラリーマン税率は倍になるという試算等も出ておるわけでありますから、こういった点なんかを考えると、いかがなものかな。公平という考え方中堅サラリーマン税負担に対する配慮ということなどなど考えますと、さきに申し上げた間接税 のことなんかをも含めていかがかなという気が私はいたしますが、いずれにしても、具体的な案が出てまいりましたら、それを見せていただいてからまた意見を申し上げさせていただこうと思っております。
  11. 尾身幸次

    尾身委員 次に、野党代替財源案について、内容にやや立ち入って御質問をさせていただきます。  最初に、有価証券譲渡益に対する課税の強化についてであります。  有価証券譲渡益に対する課税につきましては、先般の税制改正の大きな柱でございましたキャピタルゲイン課税一つとして取り上げられ、原則非課税からすべて課税にしたところでございます。  源泉分離課税につきましては、税率取引高の一%としておりますけれども、これにつきましては、株価上昇率を年約二〇%程度相当高く見積もって、取引コストを二%、平均回転数を三回程度と見て決めた五%の平均利益率相当に高いものでありまして、これを七%に上げるということは、株価が今後年率で三〇%近く上昇するという現実に起こりそうもないことを前提として収益を計算して、いわば税を取る側の論理で一方的に水増しをしたものでございまして、到底公平妥当なものとは言いがたいと私は思うわけであります。  また、有価証券取引税につきましても、キャピタルゲイン原則非課税時代にその代替として課した税の名残としてあったものでございまして、これをさらに引き上げることは全くむちゃくちゃな非合理なやり方と言わざるを得ないわけでございまして、これにつきまして政府のお考えをお伺いしたいと思います。
  12. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 従来、有価証券の譲渡益というものにつきましては非課税でありましたものが、税の公平を期す観点から原則課税になりましたその経緯は、委員がよく御承知のとおりであります。そして、その中において設定をされました合理的な水準と私ども考えるものによって、この税率等は決定をいたしております。  私自身、自分が株の取引をいたしませんので、その取引実態については存じませんけれども、この料率を決めましたその原則というものは、実際の株式の取引から出てきたその状況を踏まえて決められたものと承知をいたしております。でありますから、仮に源泉分離課税による税負担の水準というものを考えるとすれば、制度の定着状況を見きわめながらも、今後の取引実態というものを踏まえてこれが必要があれば検討されるべきものであると思いますし、単に税源対策という視点から引き上げを云々されるのは必ずしも妥当なものではないという感じは私は持っております。  また、株式などの売却益に対する所得税課税のあり方というものにつきましては、先般来本委員会におきましてもいろいろ御論議のあります納税者番号制度導入とかさまざまな問題に絡む部分でありまして、いずれにしても、税源対策という視点から御論議をいただくには不向きではなかろうか、そのように考えております。
  13. 尾身幸次

    尾身委員 次に、野党案によりますと、現行法で予定されている法人税の引き下げをやめ、さらに各種の引当金を圧縮して増税をするということになっております。  先般の税制改正前の我が国法人税の実効税率は五一・六%でございまして、西ドイツの五三%を例外といたしまして、アメリカ四〇%、イギリス三五%、フランス四〇%など世界主要国に比較して高過ぎるために、今般の税制改正経済国際化に対応して引き下げようとしたものであります。これを仮にそのままにしておきますと、企業が安い法人税の国へ逃避して産業の空洞化が起こったり、あるいは経済の活力が失われ、失業者が出たり経済発展が阻害されたりするおそれがあるわけでございます。また、企業の活力を生かして経済の発展を実現するためにも、この法人税を国際水準に近づけて、企業が国際社会でイコールフッティングで競争できるようにしなければならぬと考えるわけであります。  そもそもこの野党案の裏側には、私企業は大企業も中小企業もどんなにいじめてもいい、外国並みに扱う必要もないというような、いわば企業は悪であるという社会主義的な間違った考え方があるように思うわけでありますが、これにつきまして政府のお考えをお伺いしたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員が御承知のように、法人税につきましては、昭和四十年代以降、所得税減税財源その他で財政需要に充てますために、逐次税率の引き上げが行われてまいりました。しかし、主要先進国におきましては、逆に一九八〇年代に入りましてから、民間経済の活性化、税制の簡素化という視点から法人税率の引き下げが行われてきたわけであります。ですから、委員が御指摘になりましたとおり、結果的に我が国の法人課税負担水準というものは国際水準から見て相当程度高いものになりました。しかし、主要な企業活動というものは、正常な企業活動というものは我が国経済発展の原動力であります。これに、引き続いて高率の課税を行ってまいりました場合には、企業の税逃れというものが出てくる、助長するというおそれもありますし、また、企業行動をゆがめるということだけではなく、中長期的には企業の海外逃避などが起こりまして、国内の雇用にも悪影響を及ぼす影響、こうした問題点考えなければなりません。こうしたことから先般の税制改革において法人税の基本税率の引き下げに踏み切ったわけでありまして、私は、この法人税率の引き下げは将来の国民生活に必ずやよき結果をもたらすものと信じております。
  15. 尾身幸次

    尾身委員 次に問題なのは、旧物品税やその他の個別間接税の復活であります。  旧物品税は、自動車や家庭電気製品に対するものだけで収入の四分の三を占めております。これらは一昔前はぜいたく品でございましたが、現在は生活必需品になっております。これらに対する課税を復活させることは、税率を多少変更するしないにかかわらず時代おくれの不公平税制の復活であると言わざるを得ません。広く薄く課税する消費税廃止して旧物品税を復活させることは、ちょっと考えてみただけでも幾つかの不合理な点や矛盾があるわけでございます。  例えばダイヤモンドや毛皮は高率で課税するというふうにしておりますが、結婚を目指して将来を約束した若いカップルがこつこつとお金をためて買う三十万円程度のエンゲージリングには課税をし、百貨店の高級ファッション売り場で大金持ちしか買えないような三十万円のスーツやあるいは五十万や百万もする高級和服には課税をしないという矛盾をどうするか。  さらに、生活保護を受けている人が唯一の楽しみとして自宅で見るテレビや生活の基本的用具である洗濯機には課税をされ、大金持ちが、高いところで言えば三千万か五千万円くらいすると思いますが、三千万から五千万円もするゴルフ場の会員権を買った場合には課税されないという、そういう不公平をどう考えるのか。  また、これに関連して、航空運賃だけに課税をしようとする通行税についても復活をしようという考えでありますが、今や飛行機は庶民の足になっております。したがって、この税の復活は、北海道や九州の人が東京に来るときに、お金持ちは税金を払って飛行機に乗ってよい、貧乏人は税金のかからぬ汽車で来いと言うことに等しいものであります。  私は、このような新たな不公平や矛盾を生み出すことになる旧物品税などの個別間接税の復活には絶対に賛成できませんが、政府考え方をお伺いしたいと思います。
  16. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今の御質問伺いながら、運輸大臣当時、野党皆さんからちょうだいをした御質問を思い出しておりました。なぜ航空運賃の通行税を廃止しないのか。私は何回か委員会でおしかりを受けたわけであります。それを考えてみましても、当時の御主張と時代は変わったのかなという印象は持たざるを得ません。  また、個別間接税につきましては、委員が御指 摘になりましたような問題点ばかりではなく、国際社会の中におきましても、特定の物品をねらい撃ちする日本の物品税制度というものは輸入障壁として非常に強い批判を浴びてきた経緯があることは御承知のとおりでありまして、私どもは対外経済摩擦を解消しなければならない現下の情勢において、こうした視点からも個別物品税というものについては非常に問題視をいたしております。
  17. 尾身幸次

    尾身委員 野党は、消費税廃止代替財源といたしまして、一兆三千億程度の自然増収を見込んでいるわけでありますが、今までどのくらい自然増収があってまたどのくらいの自然減収があったか、大蔵省にお伺いをしたいと思います。また、ここ二年自然増収が続いているわけでございますが、その原因についても伺わしていただきたい。これを見れば、自然増収を財源として見込むことがいかに危険であるかということがわかると私は思うわけであります。  これに関連をいたしまして、現在の国家財政は百六十兆円余りの借金を抱え、平成元年度の予算で見ましても、約六十兆円の歳出のうち全歳出の実に六分の一の約十一兆円が国債費の一部としてこの借金の利息の支払いだけに充てられている現状であります。そしてまた、このほかにも旧国鉄債務が清算事業団に二十七兆円あり、これにも毎年一兆五千億の利子がかかっているというような、そういう財政の現状を見るときに、仮に予想外の自然増収があれば、当然、債務の償還に充てるというのが責任ある政党の考え方になるべきではないかと思うわけでありますが、これにつきまして政府のお考えをお伺いしたいと思います。
  18. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 自然増収、自然減収の数字でございますが、昭和五十年度以降金額の比較的大きな年度についてだけ申し上げますと、当初見込みに比べまして実績の方がふえた場合プラス、それから当初見込みより実績の方が少なかった場合マイナスということで申し上げます。  昭和五十年度はマイナスの三兆五千八百七十三億円でございました。五十四年度、プラスの二兆二千四百二十五億円でございました。五十六年度はマイナスでございまして三兆三千三百十九億円。五十七年度、マイナスで六兆一千百二十九億円。それから六十二年度でございますが、プラスで五兆六千三十九億円。六十三年度、プラスで五兆七千三百六十五億円でございます。五十年度以降十四年間、毎年度のプラス、マイナスを合計してみますと、打ち消し合いまして十四年間合計で二兆三百二十億円のプラスということになっております。  それからもう一つ、その最近の自然増収の原因でございますけれども、御承知のようにまず実体の生産活動が大変好調でございましたけれども、それに加えまして六十一年度以降、株、土地、円の高いということ、それから原油、金利の価格が安かったという、いわゆる三高二安と申しておりますけれども、そういう一時的な性格を有する要因が非常に寄与していたのではないかというように思っております。  例えば法人税について見ますと、円高と原油安によります差益の発生、それから金利が低下いたしまして利子負担が軽減されたこと、それから株高及び株式取引の活発化に伴いまして有価証券の売却益が大変増大しておりますが、そのようなことが関係いたしております。申告所得税で申しますと、地価上昇を反映いたしまして活発な土地取引がございました。それにより譲渡所得の増大が非常に大きく関係いたしております。それから、御承知の有価証券取引税でございますけれども、株式取引の活発化と株高によりまして大きく増収をしている、そういう要因があろうかと思います。これらは一時的な要因ではないかと私ども考えております。
  19. 尾身幸次

    尾身委員 この点に関連をいたしまして、私は、かつて社会党や共産党が推薦をした昭和四十二年の美濃部都政を思い出すわけであります。美濃部都政の時代の十二年間の在職中に、東京都は職員の数を十九万九千人から二十一万九千人に約二万人強増員し、また、管理職も二千人から三千人程度に約千人強増員させるというような放漫財政を実施したと言われております。そしてまた、都立公園の無料化とか公共料金の不合理な抑制などの人気取り政策を行った結果、昭和四十二年度に就任されたときに三十二億円にすぎなかった東京都財政の赤字は、美濃部都政の最終年度の昭和五十三年には千億円にも上り、首都財政の大破綻をもたらしたものであります。  私は、こういう人を推薦した社会党や共産党はどう責任をとるつもりか伺いたいと思っているわけでありますが、野党代替財源案の中に一兆三千億もの自然増収が含まれているという現状を見ると、こんな甘い人気取り政策で我が国の財政を美濃部東京都政の大破綻の二の舞にするのではないかと大きな不安と危惧を抱いているわけでございます。これにつきまして、自治大臣及び総理の御見解を伺いたいと思います。
  20. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 お答えいたします。  ただいま尾身委員からお話がありましたように、美濃部都知事が就任して後、赤字財政基調が続き、おっしゃられたように大きな赤字を残して都民に大変なツケを残してしまったことは厳粛なる事実でございます。  また、後にこれに引き続いた鈴木都知事がマイタウン東京の夢を実現しながらなおかつこの赤字の解消に努め、財政を健全化しておる厳粛なる事実を考えると、経済情勢の変化等がいろいろあったとはいえ、残念ながら行財政改革という国民が最も求めておる政策に逆行して、一時の人気取りで後々大きな負担国民に、都民に残してしまったという結果を考えると、我々政治に携わる者に大きな教訓を与えておることは間違いない事実であると考えます。
  21. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 東京都に大きな赤字が出てきた、それに対して、鈴木都政になってからいろいろと施策を行ってその赤字は二、三年で解消されたと私も聞いておりますし、その理由は今自治大臣が詳しく申し上げたとおりだと思います。
  22. 尾身幸次

    尾身委員 次に、観点を変えまして、現在の消費税導入がスムーズに行われているか否かについて質問さしていただきます。  転嫁がスムーズに行われているか、あるいは便乗値上げ等がなかったか、消費税導入の過程で大きなトラブルがあったかどうかを通産大臣にお伺いをさしていただきまして、さらにその後で、ことし四月に消費税導入されてから物価動向等で不自然な動きが感じられなかった否か、経済企画庁長官にお伺いをさしていただきます。
  23. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  消費税導入されてから、通産省では転嫁状況あるいは価格の動向等について状況把握にずっと努めているところでありますけれども、そうした状況把握の結果としては、消費税はおおむね順調に実施されつつあるというふうに見ておるところであります。  なお、転嫁状況につきましては、百四十七品目につきまして毎月月末の時点で転嫁状況調査しているわけでありますが、おおむね転嫁しておるとする事業者が、四月末の時点では八〇・五%でございましたが、七月末の時点では八二・五%となっておるわけでありまして、これまた転嫁も順調に行われておるというふうに見ておるところであります。  なお、後で詳しくは経企庁長官から話があると思いますが、価格動向につきましても全体として落ちついた動きとなっておりまして、物品税廃止した分につきましても、これまた価格に適正に反映されておるというふうに見ておるところでございます。
  24. 高原須美子

    ○高原国務大臣 経済企画庁といたしましては、消費税導入に際しまして物価モニターなどを通じた価格動向の調査とか監視体制を強化いたしまして、それとあわせまして物価ダイヤルなどの相談窓口も拡充いたしまして、便乗値上げの防止、監視、対応に努めてまいりました。その結果を見ますと、便乗値上げ的な動きは特定業種に限定され、しかも、その一部の事業者に限られております。さらに、その品目の価格上昇率も落ちついて きておりまして、物価水準全体に大きな影響は与えておりません。  また、今通産大臣からもお話がありましたように、物品税廃止等による租税負担の軽減分はほぼ適正に価格に反映されてきております。  そこで、経済企画庁では消費税導入により消費者物価がどれぐらい上がるか推計しておりましたが、それがほぼ平成元年度には一・二%ということで計算しておりました。この物価上昇は、御承知のようにインフレによる物価上昇と違いますので、一回限りのものでございます。その結果どうであったのかといいますと、消費税導入後の物価動向を見てまいりますと、この一・一一%の範囲内におさまっておりまして、ほぼ試算どおりということができると思います。しかも、この物価上昇は四月中にほぼあらわれまして、五月にも引き続き少しあらわれましたが、六月にほぼ出尽くしたと見ております。したがいまして、その後の物価は基調としては非常に安定的な動きが続いております。
  25. 尾身幸次

    尾身委員 次に、見直しの問題に移りますが、私ども自民党政府も、参議院選挙の際の見直しの公約を踏まえまして、目下、関係各方面からの意見を聞きつつ見直しの作業を鋭意進めているところでございます。私自身も自民党税制調査会の幹事としてその作業の一端を担っているものでありますが、その際私は、私ども反省点の一つは、国民皆様の理屈を超えた生活感覚に対する感じ方が鈍かったのではないかという点でございます。この意味で生活の基礎になる、毎日買い物をする生鮮食料品からまで税金を取るのかという感覚、あるいは値札を見て千円だと思ってお金を出したら三十円さらに追加で取られたり、また細かいジャラ銭がふえて嫌だなという感覚、こういうことについては十分見直しの際に考慮に入れていく必要があると考えているわけでございますが、この点につきまして政府のお考えをお伺いをしたいと思います。
  26. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員御自身、党税制調査会の中で重要なポジションをお占めをいただいておるわけでありますが、私どもは、消費税見直しにつきましては、国民から御指摘を受けました項目についてはそれをすべて見直しの素材として御検討いただくということを政府税制調査会にもお願いをしてまいりました。  その中には、非課税品目の拡大を求める御意見も当然あるわけであり、委員の御指摘のような御意見を述べておられる方もございます。そしてまた、外税、内税という表示の問題につきましては、これは税法そのものの問題ではございませんけれども、むしろ内税を求められる方もありますが、外税について便乗値上げ防止の効果を評価され、外税を主張される御意見があることも御承知のとおりであります。  私どもは、政府税調、党税調の御意見をちょうだいをし、作業に入る立場でありますけれども、最終の判断をいたす立場でありますけれども、少なくとも表示の問題につきましては、消費者がその求める商品を自分の手元に受け取る時点において、一体幾ら支払えばいいのかということがわかるようにというお声は標準の声でありまして、そうした中からいきますと、総額表示といった考え方もあり得るのではないかということを従来から申し上げてまいりました。  いずれにいたしましても、私どもは、こうした見直しを求めておられる声に対してはすべてそれを俎上にのせながら、結果として採用できなかった御意見についてはなぜ採用ができなかったかということも国民にお知らせする責任があるものと心得ております。
  27. 尾身幸次

    尾身委員 消費税に対する批判の一つは、税金も納められないような社会的弱者に対して負担を強いる弱い者いじめではないかということでございました。したがって、ここで一つ政府にお願いをしておきます。  私の友人である民生委員をしている人からでございますけれども、老齢福祉年金受給者に支給された一万円につきまして、私にこういうことを言いました。尾身さん、生活保護を受けている人に消費税用の特別対策費の一万円を持っていったら、私に年間三十三万円で生活しろというのか、私は年間三十三万円では食べていけないんだということを言われた、だからこの額を少し上げてください。そういう話を私は聞いたわけであります。消費税が弱い者いじめであるという批判もございます。このような点につきまして、見直しの中で財政面での社会的弱者に対する対策も、特に来年度の予算で、一時的なものではなく額も引き上げて十分に実施していただきたいとお願いをする次第でございまして、大蔵大臣のこれに対するお考えをお伺いさせていただきます。
  28. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは恐縮でありますが、そのお友達の民生委員の方に事実をお伝えをいただきたい、こう思うのであります。  本年度の生活扶助基準の改定は、消費税の物価への影響を十分に織り込み、その上に生活向上分も勘案してその水準を決定をいたしております。決してその一万円を逆算をされ、年間三十三万円で過ごせ、そのようなことを申し上げておるのではございません。平成元年予算の作成の際、その意味では消費税導入に伴う影響というものは、生活扶助基準を初め所要の部分につきましては算定の基礎に入れ、それにプラスした改定を行っておるという事実をどうぞ御了知をお願いをいたします。
  29. 尾身幸次

    尾身委員 先ほどの話のように、自民党消費税見直しを約束しているわけであります。野党の主張によりますと、ことし四月に導入された消費税を来年の四月に廃止をして、そしてまた同時に、ことし四月に廃止されたばかりの物品税やその他の税を一年たった来年の四月に復活をする。そして、それからまた二年たって新しい改革案による新税に移るということになるわけであります。  税制は国の経済的、社会的活動の枠組みでありまして、企業や個々人はその枠組みを前提として計画を立て、行動し、経済活動を行っているものであります。既に今回の税制改正に対応をする企業のコストも犠牲も相当額に上るわけであります。したがって、税制のような社会経済の枠組みはそう安易にくるくると変えるべきものではない、社会の混乱を巻き起こすことは避けるべきだと思うわけでありますが、経済の現場を預かっている通産大臣に、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  30. 松永光

    ○松永国務大臣 尾身先生にお答えいたします。  先生御指摘のとおり、税制の基本的な枠組みが変わりますというと、企業は販売方式、経理方式等あらゆる面で新たな対応をしていかなきゃならぬわけであります。今回の消費税導入に当たりましても、企業は経理方式の変更、レジスターの買いかえ、伝票、値札の変更、そうしたことのほかに社員教育まで対応しなきゃならぬということで、さまざまな対応をし、いろんな負担を強いられたということは事実であります。したがいまして、さらなる変更がまたありますというとそういう対応を強いられる、こうなってくるわけでありますから、このような変更が頻繁に行われるということは、それだけ企業に対して人的にも資金的にも大きな負担をもたらすことになるということを見落としてはならないというふうに思っているわけであります。
  31. 尾身幸次

    尾身委員 野党税制再改革基本法案を見ますと、税の公正と公平、所得、資産、消費に対するバランスのとれた課税等々、自民党が掲げている基本方向と少しも変わらないようなことを言っておりまして、具体的方向づけが少しもわからないのでありますけれども一つだけやや明確に考え方が出ているものがあります。それは納税者番号制の導入による総合課税という方向づけであります。  私は、この点は今後の税制方向づけの中で極めて重要な問題を含んでいると思うわけでございます。確かに、税を取る側の論理からいえば、人間が生まれてすぐ背番号をつけられて、銀行に貯金をしても、あるいは不動産を買っても、給料の 振り込みがあっても、あるいは遺産相続があっても、カードで買い物をしても、すべてコンピューターにインプットされるというシステムができてしまえば、これは税を取る側としてはこんなに楽なことはない。しかし、この情報化の時代に、それでは個々人のプライバシーが完全に税務署に握られてしまうことになる。そして、プライバシーの保護が完璧であるという保証がない以上、それがいつ外に漏れるかもわからない。このような背番号制導入によって統制的管理社会を実現するというのは、自由主義という基本理念に反し、むしろ社会主義の考え方に近いものになるのではないかと私は思うわけでございます。こういう取る側の論理に立つ野党考え方に、私は大いに不安感を持っております。  そしてまた、では背番号をつけたら完全かといいますと、実はそうではなくて、大金持ちには別の逃げ道があります。それは例えば外国に預金をしたり、そういう外国に資産を隠したりできると思われるからであります。国民の一部に脱税する不心得者がいることは事実であるにいたしましても、大部分の国民は善良でまじめな納税者であります。この人たちの立場を考えると、野党四党案は非常な危険思想である、私はそういう意味で反対せざるを得ないわけでございますが、この背番号制について総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 背番号制といいますと、すべての人が、すべての国民がすべてプライバシーを出してよろしいという合意があるのかどうか、国民の御協力も得なければなりませんし、同時にまた、今の制度の中にそれが入ってくることによるいろいろな煩わしさというものに対する合意もなければいけないと思います。そういったことに対しては、この間も答弁で申し上げましたけれども、原則的にそういった問題がクリアされ、国民的な合意が出てこない限り私は十分に研究をしていかなきゃならぬ問題だと考えております。
  33. 尾身幸次

    尾身委員 同じ問題でございますが、大蔵大臣にも御意見ございましたらひとつ。
  34. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 政府税制調査会の答申にも、「国民の合意形成の状況を見守りつつ、更に検討していくことが適当」と書かれております。そして、その前提には、制度の前提となります番号をどうするかなどについての幅広い視点からの検討の必要性、またプライバシー問題、制度導入に伴い国民が受忍しなければならない煩わしさや費用についての国民理解と合意の必要性といったことがございましょう。  なお、これ自身につきまして、その番号制というものは関係省庁の実務者レベルからの研究会で技術的、専門的な検討を進めております。  ただ、この際一つ訂正をさせていただきたいのが、先般本委員会で、私は、かつて行政管理庁がこの番号制度を検討いたしました時期をたしか四十年代の前半、四十二、三年と申し上げたようでありますが、四十七、八年ごろに行政管理庁の当時の内部における議論として背番号制というものが真剣に検討された時期がございました。たまたま私は党の方でこれに関与する立場にありましたが、政府部内におきましても一体その番号を何の番号でとるのかというところから始まり、結局プライバシー保護との観点からどうしても成案を得るに至らず、断念をした経緯があったことを思い起こしております。
  35. 尾身幸次

    尾身委員 私は、野党の暫定財源案につきましては、今までいろいろお伺いしましたように、いわば無責任で場当たり的で全くお粗末なものであるというふうに思うわけであります。しかも、一番問題なのは、自民党政府の出す見直し案は、これから出すわけでありますけれども、既に施行されている税制改正全般とともに、二十一世紀高齢化社会の到来あるいは経済国際化社会多様化等、社会のニーズにこたえる基本的な枠組みとなっているわけでありますが、これに対しまして野党は、二年後の税制を基本的にどの方向に持っていくつもりなのかさっぱりわからないところにあるわけであります。  私は、野党の諸君が本当にまじめに国の将来を考えるのであれば、今直ちに二十一世紀に向かって代替案を出すべきであると思いますし、もし代替案を出せないでいるのであれば、今後二年間は現行税制のままにして、二年後に野党の代替案が出てきたときに、自民党考え方野党考え方を比べて、そこで改めて国民皆様の意見を謙虚に聞くべきではないかと思うわけであります。しかし、今の主張を野党皆さんが変えないのであれば、来るべき衆議院の選挙は、消費税見直しかあるいは消費税廃止かということが問われるものではなくて、今回のこれからやります見直しを含めた税制改正によって、二十一世紀の福祉社会への展望が開ける「二十一世紀福祉丸」という船に国民が乗るか、あるいは無責任な行き先不明な内容不明な船に国民が乗るかという国民の選択をお願いする選挙になると思うわけでございます。この点につきまして、総理のお考えをお伺いをしたいと思います。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、やはり恒久税制税制として今現に行われておるもの、それについて御理解をいただきたいという私どもの願い、それは、消費税廃止しろとおっしゃる廃止法案については、これは廃止はできません。それはなぜかというと、消費税だけで議論したのではなくて、さきにも申しましたように、いろいろの大前提の中の税制改革の一環としてやったわけでありますから、これは定着するように御理解をいただきたい。ただ、いろいろな御批判等がありますので、御批判には耳を傾け、我々がいいと思ってやったことも、その過程において消費者の声、あるいはお台所を預かってくださる方々の感触、そういったようなものを全部聞いておるわけでありますから、聞きながら改めるべき点は思い切って見直していきます。見直し案をこちらが出してやっていこうというのは、今の制度を定着させていきたい、それは減税とかあるいは不公平の是正とか、将来の高齢化社会に対する負担とか、いろいろな問題がございましたから、国民皆さんにもこれは御理解を願いたいといって御提案したものでございます。  ですから、選挙の結果、我々はいろいろな御批判があることも何回も申し上げておるように承知しておりますので、それを定着するためにはどこをどうしなければならぬかということで見直し案の作業をしておるのであります。ですから、廃止なさる後の案は、先ほども言ったように財源案が出てまいりましたら、私も申し上げたように、今のいろいろゆがみやひずみがあるところへ間接税が戻るとか、あるいは総合課税になれば背番号の問題があるとか、あるいは中堅サラリーマンの将来の税の負担率が上がっていくのをやはり直接税が中心で間接税はそれの補完でという表現で押していきますと直接税が重過ぎるというこの現実をどうしていくんだろうかなどいろいろ議論がございますので、案をしっかりお出しいただくとともに、また二年間の間に協議会をつくって御議論いただくということでありますが、そういった問題も恐らくその方針で御議論なさるだろうと思いますが、いずれにしても政府の方は今出しております現実の税の中でどうするかという、恒久税制としての大きな責任があるわけでありますから、それに対する見直し作業を今一生懸命進めていくというところであります。
  37. 尾身幸次

    尾身委員 現在、参議院で野党が多数を占めている現実がある以上、今度の衆議院の総選挙は、二十一世紀に向かって自由主義、民主主義が日本の政治を担い続けるか、あるいは社会主義が日本の将来を支配するかの選択を国民皆様に決めていただく選挙になります。しかしながら、現在の消費税論争の動きを見ていると、見直しを含めた自民党税制改正案について国民の支持が得られるか、あるいは消費税廃止という一見甘い言葉に国民が動かされるかによってその帰趨が決まるかもしれないという実情にあります。  新税は悪税なりという言葉があります。一つの新しい税を独立にそれだけとれば、払う方から見ればない方がいいに決まっているわけでありま す。しかし、国民皆様の本当の将来の幸せのために、高齢化社会の福祉のために必要であれば、苦い薬でも飲んでいただかなければならないというのが責任政党としての自由民主党の考え方であります。口当たりのよい甘い砂糖ばかりを食べていれば、健康体の人でも糖尿病にかかって死んでしまうのであります。自民党は、党利党略という点だけから考えればたとえ不利益になるようなことでございましても、責任政党として国民の本当の幸せのために必要なことは勇気を持って推進してまいります。  かつてアメリカのケネディ大統領が一九六一年一月の就任演説において、国が皆様に何をしてあげられるかではなく、皆様が国のために何をしてくださるかを考えてほしいと述べました。今や我々日本国民すべてが英知を絞って、二十一世紀高齢化社会の到来に備えることが必要であります。苦しいけれども、政治の王道を堂々と歩もうとする自由民主党に国民皆様の御理解と御支持が必ずいただけることを確信をしていることを申し上げまして、これに対する総理の感想と決意をお伺いいたして、私の質問を終わらしていただきます。
  38. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 税制改革の中の一環として消費税のお願いを国民皆様にしておるということは私もかねがね申し上げてきましたけれども皆さんの御理解と御努力で将来の高齢化社会を安心して支えていくことができるようなそんな明るい社会、そして豊かな暮らしというものをきちっと守っていくために御理解をお願いする努力を続けていこうと思っております。
  39. 尾身幸次

    尾身委員 以上で質問を終わります。
  40. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて尾身君の質疑は終了いたしました。  次に、谷垣禎一君。
  41. 谷垣禎一

    谷垣委員 谷垣禎一でございます。今まで私ども与党は余り発言をしないということでやってまいりましたけれども、今回、委員長並びに理事の先生方の御英断によりまして、与党も大いに審議をしよう、また与党にも大いに発言をさせようじゃないかということにしていただきまして、大変ありがたく思っております。お許しをいただきまして、総理並びに関係大臣に御質問をさせていただきたいと存じます。  まず最初に伺いたいことは、戦後の日本の政治が目標としてまいりましたことは、これは何よりも豊かな社会をつくりたいということで国民挙げて努力をしてまいりまして、その結果、この目標はほぼほぼ達成することができたと言ってよろしいと私は思っております。しかし、この目標が達成できますと、やはり次の課題が起こってくるわけでございまして、一つには、国民一人一人が本当に豊かさを実感できるような社会が実現できているかどうかということが問題となってまいりましたし、また、それと同時に、豊かな社会というその目標の次の目標をどこに据えて、日本はどっちに向かって政治や経済のかじ取りをしていけばよいかという問題が今起こっているのではないかと思います。  先般の総理の所信表明演説を伺いまして、総理が「公正で、心豊かな社会」ということを掲げられて前進をされる、そういう演説を伺いまして、私はまことに我が意を得た思いをしたわけでございます。本当に国民一人一人が豊かさを実感できるかどうかという問題でございますけれども、しばらく前まではサラリーマン重税感というようなものが豊かさを実感する大きな壁になっておりまして、先般の消費税導入に伴います税制改革というものがこのサラリーマン重税感の払拭にこれからだんだん大きな効果が出てくるのではないか。これは今回の臨時国会の大きなテーマでございますから、なお引き続き御議論をいただかなければならないわけでございますけれども、私は大きな前進であったと思っております。  しかし、そういたしますと、この次の問題はやはり土地の問題というのがあるのではなかろうか。大変な土地の価格の高騰によりまして、土地を持っている者と持っていない者との格差というものが開いてくる。都会のサラリーマンは、長時間電車で通勤をしながら何か自分たちが搾取をされているような感じも持っている。しかしその反面、それでは過疎の地帯に出かけていって、農業をしておられる方々がどう考えておられるかというと、豊かな社会のいいところはどうも東京を中心とする大都会に集中していて、自分たちは後継者もないのではないか、こういう不安を抱いているわけでございまして、ここをやはり是正していくことが豊かさを実感する上で極めて大事なのではないかと私は思います。  そういうときに、総理が「公正で、心豊かな社会」ということで前へ進まれようとされている。この点で、総理の御認識とこれからの「公正で、心豊かな社会」をつくろうという御決意をまず最初に伺わせていただきたいと存じます。
  42. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 公正な、そして心豊かな社会というのは、今谷垣委員おっしゃったように、戦後日本が国民的なゴールとして、豊かになりたい、そしてヨーロッパ、アメリカの先進工業国が到達しておるようなああいった生活にまで到達したい、追いつきたいという大きな希望を持って努力をしてきた。しかし、物の豊かさとか教字を結果だけで眺めますと、日本は確かに世界一の債権国になったとか、また、ある報道によればGNP一人当たりも世界で一、二を争うような高いところへ今まさに追いつきつつあるとか、いろいろなことを言われますけれども、そういった話を聞くにつけても、世の中は数字だけでは片づくものではない。それから、豊かになった、豊かになったといっても、物やお金の豊かさだけでは満足できるものではない。要するに生活の質を高めるといいますか、もっと具体的に言えば、人間一人一人の生きがいというものが実感としてわかるような、そんなことにならなければいけないではないかという疑問が私には前からあったわけです。  そして、数字だけ見ますと、確かに日本の場合は円高現象によって一人当たりのGNPも上がったと言われながら、同じころやはりほかの世界の機関の発表を読むと、例の購買力指数というものの調査を見ましても、物価とそれから賃金の関係からいって一ドル百九十円ぐらいが妥当であろうとか、あるいはある調査によると二百円ぐらいであろうとか、いろいろな数字が出てきます。物価に差があることも出てきます。労働時間に差があることも出てきます。そうしますと、本当に豊かさを実感できる心豊かな社会というものは、社会的な公正、そして諸外国とのそういったいろいろな違いをもっともっと政策努力によって埋めて、努力をして質を高めていかなきゃならぬというところになってくるわけであります。  そういう大きな願いを込めて考えてみますと、政策的には、今谷垣委員指摘のように、例えば土地が働く人々のマイホームの夢を打ち砕いておるのではないか、土地政策に対していろいろと手を打っていかなければならぬだろう、これも御指摘のとおりだと思いますし、同時にまた、一連のいろいろな心が寂しくなるような事件を見ますと、一体人間の心を育てるというのはどういうことなんだろうかという深刻な問題も出てまいります。  私は、そういったことを描きながら、これからの世の中は「公正で、心豊かな社会」をつくっていかなければならぬということを私の決意として申し上げましたし、今後の政策努力も具体的に一つ一つそういったことに役立つような政治を行っていくべきである、こう考えて申し上げた次第であります。
  43. 谷垣禎一

    谷垣委員 今総理から「公正で、心豊かな社会」の決意を伺ったわけでございます。これから行政機能の分散問題あるいは地域における情報通信基盤の整備の問題について伺っていきたいと存じますが、その後に伺おうと思っておりましたのですけれども、ちょっとその前に繰り上げて大蔵大臣にひとつ御質問を申し上げたいと思います。  それは、今総理がおっしゃった公正な社会を実現していくために、やはり予算編成の方針というものが私は極めて大事な役割を果たすであろうと 思うのです。土地の問題あるいは過疎過密の問題を解消していきます場合には、特に公共事業をどういうふうに運用していくかということが私は極めて大事な意味を持つのではないかと思うのです。もちろん財政改革というのは極めて緊急な、重大な国民課題ではございますけれども、シーリングのもとでいろいろ予算編成に御苦労されていることはもう十分承知をいたしておりますが、今総理がおっしゃったような課題を力を入れて解決していくためには、やはり弾力的と申しますか、機動的な公共事業に関する予算編成の方針というものが必要ではないかと私は考えるわけでございます。  公共事業の項目というのは、私も昔のことはよく存じませんけれども昭和三十年代から余り変化してないのではないかという感じがするわけでございます。四全総におきましては、従来の道路網あるいは空港というものが国土政策として今まで重視されたことはもちろんでございますけれども、それと同時に、情報通信というような、今、国際化高齢化、情報化と三つが三点セットのように言われるわけでありますけれども、情報通信のようなものが国土政策の重要課題として位置づけられている、そういう時期には、公共事業に関する予算編成の方針も十分弾力的に行っていただく必要がありはしないか、そういうふうに私は思うわけでございますが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと存じます。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 たまたま今委員、情報通信という視点から公共事業について御意見を述べられたわけでありますが、御質問をいただきながら、今ふと思い出したことがございます。  実は、臨時行政調査会の作業の進捗のさなかにおきまして三公社の民営化というものが進められ、その中で、当時、電電公社についても分割案を検討しろという指示が当時の党の責任者としての私におりたことがございました。ところが、結果として私にはどうしてもバランスのとれた分割案ができませんでした。それは何かといいますと、この東京を中心とした一円の地域にいかに多くの情報通信が集積し、国土の中のバランスを失した状況になっておるかということであります。そして、その東京を中心とした地域における情報通信というものを分散させない限りにおいて、実はバランスのとれた分割案というものは成立しないというのがその当時の私の結論でありました。  そうしたことから考えてまいりますと、四全総を進めていきます中で、あるいは道路、鉄道、航空、港湾、それぞれの役割を考えながら、同時に、それがバランスをとって多極分散を果たしていくために情報通信というものも同様の措置が必要であるという委員の御認識については、私も異論はございません。しかし、限られた財源の中でそれを効果的かつ重点的に投資をしていくということになりますと、当然それぞれにめり張りのつく場所と、ある意味ではマイナスを我慢していただかなければならない部分も当然生ずるわけであります。しかし、これらの施策は実はそれぞれの地域にとっては死活の問題につながるようなものもあるわけでありまして、これをバランスをとりながら配分をしていくということを前提に考えてまいります限り、私は、現在の概算要求についてのいわゆる基準というもの、そしてそれをベースに置きながら関係省庁と十分御相談をしつつ予算配分をしていく現行の方式というものは、最善ではないのかもしれませんけれども、それにかわるものが、それ以上の欠点を持たない案がないという意味では、現状においてはベストではなかろうか、そんな感じを持っております。しかし、運用の上でなお十分工夫をしていく必要があることは決して否定はいたしません。
  45. 谷垣禎一

    谷垣委員 大蔵大臣から、今の概算要求基準というのはこれ以上ベターなものはなかなか見つからぬという御認識でございまして、大蔵大臣のお立場としてはそれは当然だろうと思いますが、産業構造変化等にらみ合わせて弾力的な運用を御検討いただきたいとお願いをしておきます。  私、大蔵大臣にお伺いしたいことは以上でございますので、御用がございますようですので、どうぞ御退席いただきますように。  今大蔵大臣の方からも、情報通信の東京一極集中というような御認識が示されました。これも後ほど伺わしていただきたいと存じておりますが、その前に国土庁長官にお伺いをいたしたいと存じます。  東京のこの大変な地価高騰の原因一つは、これは申すまでもなく東京へ人口があるいは諸機能が、今大蔵大臣電気通信ということを言われましたけれども、過度に集中をしているということにあろうかと思います。それで、東京一極集中是正のためには都市産業機能の分散というものを進めていかなければならないわけでございますが、政府としてもその一環として、国の行政機関等の移転を推進されて、先般国土庁でお取りまとめをいただいたわけでございます。大変お取りまとめに当たって御苦労されたこともよく承知をいたしておりますけれども、率直に申しますと、今度の移転先というのは大変東京に偏っているという感じはこれはもうぬぐえないと思うのです。こういう感じで果たして国家機関の移転の効果というものが上がっていくのだろうか。この点、お取りまとめに当たられた、御苦労された長官はどのように御認識か、またさらに、今後具体化に向けてどのようなお取り組みをされるお考えか、お伺いしたいと存じます。
  46. 石井一

    石井国務大臣 私が就任いたしまして最初に取り組んだ作業でございます。率直に申しまして、これは大変困難な作業であったと申し上げても過言ではございません。恐らく総理府、もちろん国土庁、大蔵省、そして総理官邸、この一年間どれだけの激しい激論をされ、また難しい作業をされたかということが想像できるわけでございますが、何はともあれ七十九機関、二万人近くに及ぶ公務員あるいはそれに準ずる方々に対しましてこれらの決定をしたわけでございまして、ようやくそのスタートラインに立ったと申し上げてもいいのではないかと思うわけでございます。  そこで、委員の御指摘の点でございますが、確かにその中で本当の意味で地方へ出たのは四機関であったということになりますと、あとの七十五機関は東京周辺に移ろうとしておる。現実に、神奈川県というのが二十八機関でございます。その次に多いのが埼玉県の二十一機関、それから東京都区部外に出るのが十六機関、こういうふうな状況でございますから、この点はマスコミ等でも確かに厳しい批判を受けたところでございますが、実際に中身をよく検討いたしてみますと、東京圏の一点集中というところからやはり多核多圏域への分散、こういうことがひとつ実現しておるのではないかなと思うのであります。要するに、東京都区部外というのは、情報の問題等々では乏しいものがございましても一点集中という面からはかなりの効果を上げ得るというそういうふうな意味もございます。その地方におきましては、やはりそれなりの地方振興に対する期待、温かくこれらの機関を迎えようというふうな地域感情というものも示されておるというふうなことを考えましたときには、一挙に完成することはできない。しかし、まず徐々にこのことを広げていくことによりまして、今後さらに関係各省庁の協力というふうなものを求める中に本当の意味での目的をひとつ達成していくということが非常に重要な意味ではないか。百点満点とは言えないけれども、第一歩としてはそれなりの評価をひとつしていただいてもいい努力が各省庁の中にあったのではないか、そのように印象を私は持っております。
  47. 谷垣禎一

    谷垣委員 長官、お取りまとめに当たられた長官の御苦労はよくわかるわけでございますが、今後とも御努力をお願いしたいと存じます。  それからもう一つ、国の行政機関だけではなしにやはり民間部門の分散を進めていく必要、これも極めて大きいと思うのですね。国土庁としてはこの点についてはどういうお考えか、伺いたいと存じます。
  48. 石井一

    石井国務大臣 その点もまことに重要な御指摘 だと思います。政府機関がそこまで無理をして率先垂範、そういう姿勢を示したということは、これは必ず民間のサイドに対しましてもそれなりの影響があると思います。  私、いろいろと調べてまいりましたら、ここ最近郊外部へ本社を移転した企業リストというのがございます。一々申し上げませんけれども、家電の製品でありますとか、自動車産業、鉄道、電子機器、あるいは繊維、一般機械、工作機等々非常に著名な企業が、もちろんただこういう趣旨を踏まえて移転されたとばかり言えないと思います、別の経済的な要因でありますとかそのほかいろいろの事情もあったかとは思いますけれども、このような形で、東京は情報はあるけれどもまたコストが高過ぎる、また、そこにそれを存在せしめるそれだけの意義が少ない、そのように判断をされております民間の企業というものも続々とこういうふうに出ておりますので、今後政府といたしましてはそういう方針でこれを進めていきたいと思っております。また国土庁前長官におかれましても、経団連、日本商工会議所等に対しまして適切なこれらに関します指示をいたしておりますし、私も予算委員会が終わりましたら継続してこれらの問題について取り組んでいきたい、そのように考えております。
  49. 谷垣禎一

    谷垣委員 今国土庁長官から、民間部門の分散についてお考えを言っていただいたわけでございますが、これと関連して、先ほど大蔵大臣の御指摘の中にもありましたけれども、東京一極集中の問題においては情報の一極集中の問題というのが極めて重要な意味を占めるのではないかと思います。  現在、ちょっと私の手元にあります数字を申し上げますと、上場企業本社数は東京に五五・七%ある。ところが、情報供給量は、これは一九八二年でちょっと古い数字でございますが、東京で八七%情報供給している。それからデータベースに至っては、これは一九八七年の数字ですが九三%である。それから、情報サービス業の売り上げ、これも一九八七年の数字でございますが六五%である。だから、この情報産業といいますか、情報機能の面での東京集中というのは、一般の東京集中よりもさらに過度に進んでいると言ってもよいかと思います。  それで、さらに経済構造が高度化してくる、情報化が進んでくるということになりますと、ますますこの傾向は進んでくるのではないか。したがって、多極分散型国土の形成あるいは地域経済の活性化という問題に対しては、これに対してどのような取り組みをしていくかということが基本的に大事ではないかと思うのです。この点について郵政大臣からお考え伺いたいと存じます。
  50. 大石千八

    ○大石国務大臣 御指摘のとおり、また、大蔵大臣初め国土庁長官いろいろお話しになりましたとおり、東京一極集中の問題は、我が国の現在の置かれている立場から考えまして、多極分散型、均衡ある国土の発展ということに向けてこれは政府を挙げて努力をしていかなければならない問題だというふうに認識をしておりまして、郵政省におきましても、この情報機能の分散ということによって地方においても便利な情報が受けられる、そういう中から産業も活性化していく、そういう社会づくりを目指して努力をしているところでございます。  今後の情報通信行政の遂行に当たって、特にそういった面で地方の情報受発信機能の向上と情報機能の地方分散を大きな柱として進めてまいりたいと思っておりますが、現在もテレトピア構想、民活法施設の整備事業等の推進によりまして地域の情報化を推進しているところでありますが、さらに、今後郵政省といたしましても、地方中枢・中核都市において高速光ファイバー網等のハードの問題、地域データベース等のソフト、それに地域情報化に役立つ人材の三つの高度な情報通信基盤の整備を一体として先行的に整備していくテレコムタウン構想、これも今計画をしておりまして、平成二年度の予算でもぜひこれを実現したい、このように考えているところでございまして、これらの構想の推進によって情報機能の地方分散が促され、多極分散型国土の形成に大きな効果を上げるために、こういった事業にも推進を図っているところでございます。
  51. 谷垣禎一

    谷垣委員 今郵政大臣からテレトピアや民活法施設、あるいは新しい年度に向かって光ファイバーを張りめぐらすテレコムタウン構想といった具体的な取り組みについてお話があったわけでございますが、今の郵政大臣の御認識にも示されておりますように、東京一極集中というものを解決していくためには、地方に情報関連産業を興していくということが、決め手というとちょっと言い過ぎかもしれませんが、極めて重要ではないかと私は思うのです。地方に高度な情報通信基盤を先行的に整備していく必要がございましょうし、また、そういう施策をとり得るような仕組みを考えていくということが大事ではないか、この点で私は思い切った政策というものが必要ではないかと思うのです。なかなか郵政大臣そこまでおっしゃりにくいかもしれませんが、私は先ほど大蔵大臣にもちょっと御質問申し上げましたけれども、やはりこの情報通信基盤を整備するために、これを公共事業として位置づけて推し進めていくというような考え方を今大胆に打ち出すべきではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。郵政大臣お願いいたします。
  52. 大石千八

    ○大石国務大臣 御指摘のように公共事業、社会資本の整備というふうに考えてもいいと思いますが、そういった点ではやはり目に見えるハードな部門、道路とか橋とか、こういったことが当然公共事業として頭に浮かぶわけでありまして、そういった点の整備が促進されることは地方の活性化という意味で非常に必要に思います。例えば高速光ファイバー等は地下にありますので、直接目に触れることはありませんが、しかし、道路やそういうようなもののように通信という網の目の普及はすぐ外から見えるものではございませんけれども、しかし、社会資本の整備というような観点から考えれば、同じようにやはり公共事業というような意味合いが非常に多いというふうに思っておりますので、そういった観点から公共事業的な問題の一つであるというふうに考えて整備が進められれば郵政省としても大変力強いというふうには考えているところであります。
  53. 谷垣禎一

    谷垣委員 ぜひそういう方向での政策展開をお願いしたいと思います。  それで、先ほど大蔵大臣からも、電電公社の民営化に関連して情報通信の東京一極集中が一番の問題であるという御認識が示されました。私もそのとおりだと思うのです。それで、先般電気通信審議会の中間報告が出されまして、「電気通信産業の在り方」あるいはNTTの経営形態等の問題がその中で触れられているわけでございますけれども、これからまたさらに議論を詰められまして最終答申ということになると思いますが、その中でさらに私は議論を深めていただきたい点は、その最終答申で、多極分散型国土形成のために一体どういうふうに電気通信産業を持っていくべきか、あるいはNTTの経営形態もどのようにあるべきか、この議論を私はさらに詰めていただきたい、こう思っております。郵政大臣の御見解をお伺いしたいと存じます。
  54. 大石千八

    ○大石国務大臣 先ごろ電気通信審議会の中間答申が出されまして、郵政省といたしましてもさらに再諮問をして、できるならばことしじゅうにでも最終答申を出していただきたいということで、なお審議をお願いしているところでございますが、当然郵政省といたしましてもそういった電気通信審議会の結論を十分に重用して、また、世間の皆様方の御意見も承りながら、そういう面で多極分散型国土形成という国家的な課題を進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。  中間答申におきましては、「NTTの在り方」について、地域振興、国土計画への寄与という観点からもその果たすべき役割は大きなものがあるとして、具体的には「多極分散型国土を形成する上で、電気通信が果たす役割は大きい。」「特に、 法的独占時代に築かれた全国的ネットワーク及び高度な情報通信基盤の整備に寄与し得る技術的蓄積を有するNTTが、果たす役割は大きなものがある。」このように指摘しているところでございまして、郵政省としても遠距離料金を初めとする料金全般の低廉化を一層促進する等、この中間答申の趣旨を踏まえ、地域振興、多極分散型の国土形成に電気通信、特にNTTが果たす役割を十分認識して、今後の電気通信産業のあり方について適切に対処してまいりたいと考えているところであります。
  55. 谷垣禎一

    谷垣委員 それでは次に移りまして、対外援助のあり方についてお伺いをいたしたいと存じます。  我が国のODA、たしか約九十一億ドルということになっていると思いますが、米国に次ぐ世界第二位となりまして、援助大国としての我が国の役割、責務というものも、国内だけではなく世界から注目されてまいりました。ODAは我が国の国際的貢献の重要な柱でございますし、外交政策の見地からも極めて大切な役割を果たすに至っておりますが、私は、開発途上国が我が国に寄せる強い期待に可能な限りこたえていく必要があるというふうに考えております。  日本の援助については、贈与比率が低いとかあるいはインフラ整備、道路とか通信とか発電所などインフラ整備案件に偏り過ぎている等の批判も一部にあるわけでございますけれども、私は、そういう批判の中には正しいものもあれば誤解に基づくものもあるのではないかというふうに思っております。  例えば、インフラ整備が国の経済成長発展のために基本的に重要なことは、今行政機能分散とかあるいは情報通信基盤の整備も御質問申し上げたばかりでございますけれども我が国の過去の発展を振り返ればもう明らかに重要でございますし、これからも基本的に重要な意味を持っていると思いますので、我が国自身の経験に基づきましても、開発途上国の経済発展の基礎となるインフラ整備を支援していくことは相変わらずやはりいつまでも大事なことではないかと思うのです。  一方、借款を出しても返済もできない、より恵まれない国々が世界に多数あるのもこれまた事実でございますから、そのような国々に対してはやはり借款よりも贈与ということを考えて対応しなければならないと思います。そのためには無償援助を拡充して、そして贈与の比率を高めていくべきでございまして、政府としては可能な限り改善の努力を払っていただかなければならないのではないかと思います。  以上申し上げた上で、私は、日本のODAが、さらに援助の原点である貧しい人々、最も援助を必要としている人々、ベーシック・ヒューマン・ニーズと申しますか、そういう方向に直接に草の根レベルで支援の手が届くようなやり方がもっと工夫されてもよいのではないかというふうに思います。  この点に関連して二点御質問申し上げたいと思いますが、まず第一は、民間援助団体、いわゆるNGOの活動でございます。  総理も、所信表明の中で青年海外協力隊のボランティア精神、青年の理想というようなことを指摘されているわけでございますけれども、私は、NGOによるボランティア精神に立つ協力活動というのは、青年協力隊の活動と同様に途上国の草の根レベルできめの細かい援助として大きな役割を果たしておりますし、国民参加の援助を推進する上でも極めて意義があると考えております。しかし、他の援助国に比べますと、我が国の場合NGOは歴史も浅い、資金調達にも困難が多いと聞いております。ヨーロッパ諸国の場合には、キリスト教などの宗教的理由に基づきまして、まずNGOの活動があってその上にODAの活動が乗ってくるというような歴史的な経緯があったように聞いておりますが、我が国は必ずしもそういう方向になっていないということであろうと思います。  OECDの資料によりますと、国民一人当たりの民間援助の実績というのは我が国の場合〇・八ドルで一ドルにも満たない。それに対して、西ドイツの場合は十・五ドル、アメリカの場合は六・七ドル、こういうところに比較しても極めて少額にとどまっているのが実情ではないかと思います。しかし、我が国のNGOの中には、東南アジアやアフリカで文字どおり草の根レベルで日本人の真心を伝える活動に従事しているものも幾つかございますし、例えば仏教系の団体等が仏教国へ行って一生懸命やっておられるというようなことも聞いております。私は、政府レベルでのODAとともに、こうした民間援助活動、NGOの活動がもっと大きく行われないと、日本の援助全体としてバランスを欠くことになるのではないかと思いますが、NGOは政府とまた理念が異なりますので、その自主性も尊重していかなければならないと思います。その上で政府は、欧米諸国がやっているように、もう少しNGO支援に力を入れるべきであるというふうに思うわけでございます。その点で、このNGOの事業補助金が今年度から新設された点は、私極めて有意義な施策であったというふうに評価しておりますが、この日本の善意が伝わるような援助を一層充実させていくために、NGO支援を強化して国民参加の途上国協力がもっと進むべきである、こういうふうに私は思いますが、外務大臣の御見解を承りたいと存じます。
  56. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいま委員から御指摘がございましたNGOに関するものでございますけれども、これは御指摘のように草の根の運動で、直接相手に肌で感じるような援助が行える、また緊急で臨機応変な協力もできる、そしてコストの面からも比較的少ないコストで効果が上げられる、これらのNGOの方々の御協力とODAとが密接に関連性を持ってやっていけばこの大きな目的も達成しやすいということでございますが、先生御指摘のように、ODAの対GNP比率が日本は〇・三二でございますが、OECD各国は〇・三六という統計が今度は出ておりまして、私ども日本といたしましては、国際的な目的値である〇・七に向かって一層努力を続けなければならないと考えております。
  57. 谷垣禎一

    谷垣委員 今のNGO、大臣からお答えいただいたわけでありますが、我が国の援助が貧しい層、より援助を必要とする層にもっと伝わるようにしていくという観点から、もう一つ国際機関を通じる我が国の協力ぶりについて御質問をしたいと思います。  国際機関もいろいろございますので、例をユニセフにとりまして御質問申し上げたいと思うのですが、国連児童基金でございますね。この分野では途上国の児童福祉、乳幼児の生命維持とか栄養改善とか母子衛生等について極めて重要な活動を行っております。  それで、日本も戦後食糧難に直面しておりますときに、昭和二十四年から昭和三十七年まで、ユニセフから脱脂粉乳の提供を受けまして、私どももその脱脂粉乳を飲みながら大きくなった世代でございまして、今やこの予算委員会を拝見しましてもかなりユニセフの脱脂粉乳を飲んで育った世代がメンバーとしてもう参加をしている、こういう時代になってきております。それで、我が国経済大国、援助大国となった今日、ユニセフを通じまして、食糧難等に悩む途上国の児童の救済とか、あるいは婦女子の保健衛生向上などに大いに貢献すべきではないかというふうに私は思うのです。  たしか私の記憶に間違いがなければ、ユニセフの提供するワクチンを受けるために、レバノンの戦争のときには、戦争を一時中断をして、休戦をして、ユニセフからワクチンを受け入れたということがあったと存じます。このように内戦を中断してもワクチンを受け入れようということは、現地のニーズというものが極めて高いということを私は意味しているのだろうと思います。  それで、このユニセフへの拠出というのは、一九五〇年代から日本はその拠出を開始いたしまして、その後、一九七八年、八一年、八五年、三度にわたってODAの倍増を決めましたために、政 府も随分努力をしていただいて、ユニセフへの協力も随分前進をしてきたと思いますが、まだまだ十分な状況になってはいないと私は思います。  ちょっと私、今具体的な数字が手元にございませんので、外務省国連局長、いらっしゃいましたら今どのぐらい日本が拠出をしているのか、あるいは国際社会の中で日本の拠出順位がどのぐらいになっているのか、具体的な数字をお聞かせいただきたいと存じます。
  58. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 ただいま御指摘のように、我が国は一九五二年からユニセフに対する拠出を開始いたしまして、現在、最近の数字では一九八八年に千九百四十三万ドルの拠出を行っております。この数字は、各主要な拠出国の中では、米国、スウェーデン、イタリア、ノルウェー、フィンランドに次いで六番目でございます。アメリカが五千四百万ドル、スウェーデンが四千万ドル、イタリアが三千四百万ドル、ノルウェーが三千百万ドル、フィンランドが二千三百万ドル、それで日本が千九百四十三万ドル。  以上でございます。
  59. 谷垣禎一

    谷垣委員 今千九百四十三万ドルで六番目だという数字を示していただきましたけれども、やはり諸外国に比較して、今の日本の国際的な力量から見て十分であるとは言えないと思うのです。インフラ整備への協力とかあるいはマクロ経済支援のための協力も大事ではありますけれども、こういうベーシック・ヒューマン・ニーズと申しますか、援助の原点に立ち返ったような行動もさらに推進をしていく必要があるのではないか。  今ユニセフを例にとって申し上げたわけでありますけれども、こういった例えばユニセフへの支援強化などもまだまだ政府として工夫をなさる余地があるのではないかと存じます。外務大臣に御見解をお伺いしたいと存じます。
  60. 中山太郎

    ○中山国務大臣 極めて重要な問題でございまして、今なお開発途上国の貧しい人たちの中では年間千四百万人ぐらいの子供たちが死んでおります。そういう意味で、これからもこのユニセフを通じた日本からの協力を増大していくように努力をいたしたいと考えております。
  61. 谷垣禎一

    谷垣委員 今の点とあわせて、今度、人的な面もちょっと伺いたいと思うのですが、例えば、WHOなどはドクター中嶋が事務局長になられまして大変な活躍をしておられるわけですね。やはりユニセフその他の国際機関、もっと日本人が活動すべきではないかと思います。もちろん、そういう幹部職員というだけじゃなしに、実際草の根で働く方はこれはもっともっと輩出していただかなければいけませんけれども、やはり全体的な目でもってやっていただくような方、日本人がもっと出るべきではないか。これはやはり政府の、外務省の戦略的な考え方、戦略的というとちょっと言葉が強過ぎるかもしれませんけれども、そういう人材をしっかりと日本としても政府としても送り込んでいこうという視点がなければなかなか実現できないのだろうと思うんですね。その点、ぜひ外務省に御努力をお願いしたいと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  62. 中山太郎

    ○中山国務大臣 実は私も同じような考えを持っておりまして、先般国連へ参りましたときも、国連の日本の事務次長がおりますが、その人に対して日本の拠出金の比率と、それから日本人職員の数はどうなっておるかということを確認いたしました。  現在の拠出金は一一・三八%の比率であります。それでこの比率からいきまして、私ども日本国として望ましい数は、職員の方でございますけれども、百七十一人ぐらいではないか。しかし実在は九十人でございます。いろいろと理由があるということもわかりました。それはいわゆる組織としていろんな事務をやっていく場合に、各国の人たちが働いている、そういうことで二カ国語ぐらいを自由に使うような人でなければなかなか国連職員の幹部にはなれない、そういう問題。あるいはまた、いろんな会議の議事録をすぐに二カ国語ぐらいでつくり上げるという能力を持った人が極めて少ない。それから国連職員をやめた後のポストというものが一体どうなるのか。ここいら、いろいろと問題点があることも私確認をいたしておりますので、そういう意味で人的な問題を解決するために、職員にふさわしい教育をつけた日本人をこれからつくり上げていかなければならない、このように考えております。  国連へ参りましても、やはりその問題が私の頭の中に非常に大きく刺さった問題でございました。  以上でございます。
  63. 谷垣禎一

    谷垣委員 外務大臣今御指摘のように、確かにこれは大変難しい問題はたくさんあろうと思いますが、そういう大きな視点から御努力をさらにお願いしたいと思っております。  それからこれに関連して、今の人的な問題ではございませんけれども、やはり国際的なボランティア活動をもう少し日本全体としてやるべきではないかという観点から、郵政省が国際ボランティア貯金構想というのをこのたび出しておられる。たしか普通貯金の利息の二割程度をこういう国際的なボランティア活動をやっている団体に出していただいたらどうかという構想であろうと思いますが、これは一つ一つとりますと多分極めて少額なんだろうと思うのですけれども、今のようなことを全体として考えますと、極めて重要な施策ではないかという感じがいたします。郵政大臣、ぜひこれは積極的に取り組んでいただきたいと存じます。
  64. 大石千八

    ○大石国務大臣 我が国の国際的役割ということを考えましたときに、御指摘のこの国際ボランティア貯金の実現というのは極めて重要な意味を持つものであると郵政省としても認識をしておりまして、来年度予算に要求しているところでございまして、ぜひこれを認めていただいて、一般の貯金の限度額の別枠とし、貯金の利子の一部を国際ボランティア基金として積み立てる、そしてこれを積極的に援助に活用するという極めてすばらしい制度といいますか、国際社会に貢献できるボランティア貯金でございますので、ぜひこれは来年度に実施できるように、大蔵大臣は今いらっしゃいませんけれども大蔵大臣を初めとして関係機関に御協力をいただきまして、これが実現のために郵政省としても全力を挙げて頑張ってまいりたいと思っている次第でございます。
  65. 谷垣禎一

    谷垣委員 それから、これは援助とかそういう話とは若干違うんですが、こういう国際的な交流に当たりまして、政府と並んで民間の果たす役割というのも極めて大きいと思うのです。特にこれだけ日本の企業活動が国際的に大きく展開されているときには、民間活動というものを非常に重視しなければいけないと思うのです。国際文化交流等に当たりましても、民間企業等から海外における文化活動に対して寄附が行われる、これは歓迎すべきことではないかと思うのです。国際交流基金の特定寄附金制度というものがあるわけでございますが、これは一層活用を図る必要があるのではないかと思うのですが、この点について外務大臣、いかがでございましょうか。
  66. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この問題も極めて大切な問題でございまして、御指摘のとおりこの特定寄附金の枠を使って昨年は五十億円寄附が行われております。今後とも民間の企業にも御協力をいただきながら、この運動を推進すべきであるというふうに考えております。
  67. 谷垣禎一

    谷垣委員 今の点と並びまして、今の文化活動については、そういう制度がきちっとできているわけでございますけれども、もう一つ重要なのは、海外に進出した企業がやはりその土地土地で、進出先でよき企業市民としてその中に溶け込んでいくことが私は極めて大事ではないかと思うのです。そういうときに文化活動だけではなく、例えば慈善活動みたいなのもやりたいという声をいろいろな企業の中から私も伺ったことがございます。例えば、工場をつくった、その地元に車いすを送りたいというような考えを持っているところがあるわけですね。私は、これは極めて日本の企業活動が円滑に進むという意味だけではなく、日本人全体が世界の中で受け入れられていくために は極めて重視すべきことではないかと思うのですが、この点について、税制上の対策を含む適当な措置を検討しなければならないのじゃないか。私もこの間から事務当局のお話も伺っておりますけれども、どうもそこのところの解釈の詰めというのがいま一つ明確になっていないような感じを受けております。この点で、外務大臣の御見解を承りたいと存じます。
  68. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃられますとおり、現在我が方におきまして、外郭団体を通じて免税の寄附が行われるよう措置をとっております。海外広報協会、日本国際交流センター等ございますが、今おっしゃられたような慈善活動の問題、これにつきましては、まだこれらの団体で免税措置がとられているところまで至っておりません。  この件につきましては、この十月にアメリカにおきまして、現地日本人商工会議所等と関係団体と共同で開催している広報文化官民会議、これはアメリカ六カ所で行いましたけれども、異口同音にその必要性指摘されました。そして政府、在外公館においても支援してください、こういう声が来ております。我々といたしましては、在外公館を通じてできる限りの支援を行っていくとともに、今おっしゃられましたように、実態を見きわめつつ税制上の取り扱いについても検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  69. 谷垣禎一

    谷垣委員 大蔵大臣はお帰りになりましたけれども、今の点について大蔵省事務当局、どうでしょうか。
  70. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 特定公益増進法人というのは、寄附の受け手になる方の法人でございまして、ただいまの委員のお話を承っておりますと、その慈善活動の対象となる法人が海外の法人でございますのか、あるいは特定公益増進法人のようなものを、そういう活動をする法人をつくって、そこに一遍寄附をしてそして慈善の活動をするのか、ちょっとはっきりしなかった点があるのでございますけれども、もし後者のお話であるといたしますと、今後の実態を見ながら考えてまいりたいというように存じております。
  71. 谷垣禎一

    谷垣委員 例はいろいろな場合があると思いますけれども、やはり今後の企業活動で現地にいろいろそういうことをやりたいという、そのことを痛切に感じている企業はたくさんあると思うのです。ひとつその点はぜひ前向きに御検討をいただきたいと存じます。  最後に、もう時間がなくなりましたが、今度の国会消費税と並んで大きな課題となっております年金法改正問題について若干触れさせていただきたいと存じます。  先日、同僚の古賀委員の御質問に関連しまして、戸井田厚生大臣が世代間扶養ということを非常に強調しておられまして、私も大変感銘を受けたわけでございます。私もいろいろな方から年金どうだという御質問を受けるわけでございますけれども、そのときの考え方というのは、どちらかというと自分が拠出した額に対してどれだけ返ってくるかという観点からの、損か得かという観点からの御関心が今強いのじゃないかと私は思うのです。しかし、公的年金制度の基本的考え方からいくとどうなんだろうか。そもそも公的年金制度というのは、出発点においてはそういうことで出発したのかもしれないわけでございますけれども高齢化社会が進んでくると、戸井田厚生大臣が大変強調されましたように、世代間扶養ということをやはりもう少し強調する必要があるのじゃないか。社会連帯の精神というものをもう少し前面に押し出す必要があるのではないか。社会保障というのも一種の社会思想と申しますか、そういう思想運動の面がなければうまく私は根づかないという感じがするわけでございます。この点につきまして、もう一度厚生大臣のお考え伺いたいと存じます。
  72. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今委員指摘の、世代間扶養の問題について触れられましたが、これは国民的な合意を得なければとても維持していけないのだということを先般申し上げました。  重ねての御質問でございますが、年金の給付を決めたりあるいは負担を決めたり、そして同時に支給開始年齢を決めたり、こういったことはすべてそれらが一体になって、その根っこにある世代間扶養という哲学がないというと理解がなかなかできないだろうと思います。  今度の場合でも、給付の改善をいたしております。この給付の改善につきましては、御承知のとおり、一方にまた御負担を願わなければいけない、こういうようなことになっておりますが、同時に、支給開始年齢の問題も六十五歳問題が提言されております。もともとこの六十五歳というのは、昭和六十年の改定のときにもう法律の上できちっと決まっておるのです。しかし、移行する上にはどうしても雇用の問題等関係しておりますし、そういうことになってくるというと、やはり当分の間これをおいておこう、六十歳でいこう、そしてさらに時期を見て雇用等の関係あるいは負担の関係等を勘案をして六十五歳に移行しようということになっておるわけでありますが、そのときに、今回の場合には、一遍に移行じゃなくて平成二十二年までかけて六十五歳に移行しよう、こういうことであります。  やはり今言いましたように、六十五歳という開始年齢の場合には、負担というだけではなくして、同時に雇用という問題と切り離せないわけであります。同時に、この雇用問題と切り離せないということは、その年金受給者になる人たちの世代がどういう考えを持っているかということも非常に大事だと思いますね。そして、五十歳の後半あるいは年金受給者に近くなってきた世代の人たち考え方を聞いてみるというと、大体四%くらいが六十歳でリタイアして悠々自適というか老後の生活をやっていきたいなと考えている人もおりますけれども、ほとんどの人が老後の生きがいの中に、働くことである、職場を得ることである、働くことによって生きがいを感ずるんだ、死ぬまで働いていこうというような極端な人が中にはいるわけでありますから、そういう意味で、年金を受給するその世代の人たちが職場を得たいという希望があることも事実であります。そういうことから考えてくると、今委員指摘のとおりに、単に財政といいますか、負担と給付の関係だけではなく、そういう世代の人たち考え方も同時に重要な考えとして取り入れていかなければいけません。  それから、世代間の合意がなぜ必要なんだということになると、今言ったように、たくさんの国民一人一人に関係する問題がありますし、今までは家族という小さな単位の中で話し合いをしておったものが、やはり日本の国民全体でこの生き方というものを模索していこうという意味で、そして世代間の扶養ということが将来安定した年金を保障するという意味で非常に重要な役割を持っているということで、私はまさにこの世代間合意というものを小さいときからの教育の面でもする必要があるのじゃないか、そこらあたりがヨーロッパの人たちと日本の人たちの間に、考え方のまだ相違があるような気がいたしております。  やはり、今総理が言われたように、本当に日本人が、今までは食うだけで一生懸命働いてきたのだけれども、これから年をとってからも豊かな生活を保障していこうと思えば、小さな単位ではなく国民全体の合意というものが必要である、こういうふうに思います。
  73. 谷垣禎一

    谷垣委員 今厚生大臣からいろいろお考えの披瀝がございまして、この点についてはもっと突っ込んで議論をさせていただきたいのですが、時間が参りましたので、最後に一つだけ、六十五歳支給開始の問題でございます。  平成二十二年からやろう、こういうことでございますが、これは野党皆様方、大変強い反対にあるわけでございます。しかし私は、この問題は、今厚生大臣がおっしゃいましたように、財政的なことがあるから六十五歳なんだというような発想をすべきではなくて、これだけ高齢化社会になってきた、長寿社会になってきた、人生八十年代になってきた。そうすると、やはりもう少し働いていたい、社会参加をしていたい、こういう気持ち を前提にして、そういう社会の中では六十五歳までは社会参加はちゃんとできるんだ、それだけの社会環境も整えるんだ、そういう中で六十五歳支給開始なんだというふうに発想を逆転というか前向きに考えていきませんと、高齢化社会というのはまことに暗いものに描かれてしまうと思うのです。  私は、今回のこの年金改正というのは、単に厚生大臣の厚生行政だけの問題ではなく、労働行政も含め、あるいは全部の産業構造も含めて、そういう新しい人生八十年時代の生き方をつくるまず第一歩なんだという考え方で臨むべきではないかと思うのです。  これについては、本当は関係大臣お一人お一人伺いたいのですが、もう時間がございませんので、最後に総理にその点についての御認識を伺いまして、私の質問を終わらせていただきたいと存じます。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘いただいたように、それぞれの省庁の担当をしております縦割りの分野一つとらえただけでは横の連絡がうまくいかない。もっと、今までのような状況じゃなくて、新しい変化も出てきておる。こういう高齢化社会というのがまさに今まで、教科書にも参考書にもなかったような問題が次々来るわけですから、政府全体挙げて、力を合わせて対応していかなきゃならぬということは谷垣委員指摘のとおりだと承りました。
  75. 谷垣禎一

    谷垣委員 ありがとうございました。
  76. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて谷垣君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  77. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上普方君。
  78. 井上普方

    井上(普)委員 先般来、当予算委員会において自民党予算委員の方々がたくさん質問されまして、傾聴に値する御意見もある。しかしながら、何といいますか、むちゃくちゃな議論をされる方もある。一つ例を挙げますと、参議院というのは、ともかく二院制というのはおかしいぞ、こういう御意見から発足しまして、参議院そのものの不要論まで展開される方がある。まことに嘆かわしい次第だと私は思います。こういう議論が選挙当時に言われたことはないと私は思うんだけれども、そういう意見まで堂々とここで公表せられ、官報に載る時代になった。ああ世の中変わったもんだな、こういう感じがいたすのであります。  私どもは、参議院の意義につきましては、これは戦後から私も政治生活を三十八年やっています。参議院の意義について、参議院というのは一院の行き過ぎというものをチェックする機関である、これで日本の政治のバランスをとっていくんだ、これが参議院がある意義であったと私は思っております。ただその間において、私は残念ながら、個人的意見を由さしていただきますならば、比例代表制を参議院にとったことということは間違っておると今でも思っております。参議院というものは政党化すべき問題じゃない、あくまでも良識の府として一院の行き過ぎをチェックする機関、これが参議院の存在意義だと私は今でもそのように考えておるのであります。  しかし、それはともかくといたしまして、一院の行き過ぎた政治行動に対して、政策に対してチェックしておる姿が現在の参議院の姿ではないかと思います。国民皆さん方ほとんどが反対しておるこの消費税というもの、これを強行した自民党政権に対して、衆議院においてはいかにも過半数をとっておる、けれども参議院においてこれをチェックする、まことに参議院の機能を十分に果たした結果が今日の参議院の姿ではないか、先日の参議院選挙の姿ではないかと私は思うのであります。  そこで、これから海部内閣はいかなる政治姿勢をとっていくのか。あなた方自民党は、参議院においては過半数がとれない少数党になっておるのであります。先日浜田議員がこの点について少し触れられましたが、一体どういう手法をもってこれから政治をとっていこうとされるのか、お伺いいたしたいと思うのであります。といいますのは、盛んに海部総理も小選区制の問題も言われる、消費税見直しの問題についても言われておる。しかしながら、それらは参議院において少なくとも通らない、過半数を制していないのだから。これからどういう手法をもってあなたはやられようとするのか、その点をひとつお伺いいたしたいと思うのです。
  79. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、数だけを見ますと参議院では自由民主党が過半数ないということは、これはそのとおりでございます。ところが、今もおっしゃいましたように、政治というのは国民皆さん全体のためにあるわけでありますし、それから、自由民主党の出すもの全部そのままいつもすべての方が反対で通らないというようなことを冒頭に決めておかかりになることをどうぞおやめいただいて、そして、それに合意できる点と合意できない点とがあるとするなれば、合意できる点はどこで合意できない点はどこかということも十分各党間で御議論願ったら、あるいは第三の考えが出てくるという可能性だって存在するわけでありますし、また私も、選挙制度とか選挙法については個人的にいろいろな意見、考えを持っております。そして、現在のところは政府としては政府税制調査会にお願いをしておるわけですから、その御答申をいただいて初めて重ね絵のように出していって、いろいろまた考えを進めていくのですけれども井上委員にも井上委員としての、今具体的にお触れになったような現在の制度に対する御批判等もあるとするなれば、そこはなぜ御批判で、なぜ御不満で、どこをどう変えることができたらいいのかというような議論もまた国会の場でこそきちっとしていただき、そういうような立場で衆議院と参議院との間でも御議論願っていくならば、やはり国民のために何かいくところがあるのじゃないか。だから、数の結果だけを初めから見たらもう全部いけなくなるので、話し合いをしながら努力をしていかなきゃならぬと考えておるところなんです。
  80. 井上普方

    井上(普)委員 今のあなたのおっしゃるのは、これから話し合いの政治である、あるいはまた、理屈の通ったところは通っていかす政治である、こう私は承る。今まででございましたならば、衆議院においては三百議席をとり、参議院においては過半数を握っておったがために、数でともかく押し切っていくという政治姿勢が今までとられてきたと私は思う。数は力なりという考え方ですべてこられたのが今までの自民党の姿ではなかったか。私は今までの自民党政治というものをそう考えておるのであります。  そこで、あなたは今、話し合いの政治、あるいは理屈の通った政治ということをおっしゃられる。まことに結構な話だと私は思います。しかしながら、今の姿、今の海部内閣の姿勢というものは果たしてそうだろうか。私は大きな疑問を持たざるを得ないのです。そんなことないというお話があるから、一つ例を挙げましょう。  先般、前の通常国会で出されました年金法の改正です。年金法の改正には四つのともかく重要なものが含まれている。一つは何を申しましても六十五歳以上の支給開始年齢の問題、続いては保険料率の問題、続いては国鉄の救済の問題、あるいはまた年金の支給額の改定の問題、こういう問題が四つある。先般もうちの村山富市君がこの問題を質問いたしました。ところが、この問題についてはあなたの方はともかく明確なお答えがない。少なくとも野党全体、すなわち参議院における過半数の勢力というのは、六十五歳以上の年齢制限につきましてはこれはおかしいじゃないか、こういうことを実は選挙のときにも申しております。ところが、自民党の中におきましても、先般も支給の物価スライドとそれから支給の改定につ きましては、これはひとつこの十月から四月にさかのぼってやろうじゃないか、こういう意見が参議院選挙の最中に出てきたと私は記憶している。ところが、この問題について話し合おうとする姿勢は全然ないじゃありませんか。例えて言うならば、年金をもらっておる方々は消費税の三%で非常にお困りになっておる方々だ。この人たちに対して早くともかく物価スライドなりあるいは五年ごとの年金の支給率の改定についてひとつ考えようじゃないかというのは、自民党皆さん方も選挙のときに公約される。我々もそれをやらなければいかぬというならば、切り離して、反対するところ、問題があるところは問題のあるところで置いておいてするのが、これが海部さん、あなたの話し合いの政治であり、誠意を持ってお話しする姿ではないかと思うのですが、いかがですか。
  81. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 前回御質問があったときにもお答えをいたしたわけでありますが、例えば給付の改善だけ、その分だけを通して、そして負担の面が後になってしまうということになるというと、年金財政そのものが赤字になってしまう、穴があいてしまう、こういう考え方に立っておるわけでありますが、それは先ほど委員から御質問があったように、政府に対して御質問があったので、政府といたしましては御承知のとおり今提案をしているわけでありますから、恐らく海部総理が言われたのは、やはり政党間の話し合いのことだろう、そういうふうにお答えしたのだと思います。そういう意味からすれば、政府提案をしている以上は、国会でどういうふうに処理をされるかということに対する政府の気持ちは政府の気持ちで申し上げたのが私ども今まで申し上げていることであります。
  82. 井上普方

    井上(普)委員 自民党は、これは十月より再計算に基づく年金の額の引き上げを四月にさかのぼって実施するということをお約束になっておられます。だから、少なくとも合意できるものは、これは保険料率の値上げにつきましても話がついておるのです。話ができるはずなんです。こういうようなことをお話し合いになることが、海部さん、あなたが先ほど言われたあなたの今後進もうとする政治じゃございませんか。いかがにお考えになりますか。
  83. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほどは、参議院の数が半分割ったから、どんな法案を通しても参議院でだめになったらどうするんだという角度のお尋ねみたいに思いましたけれども、私は衆議院は衆議院、参議院は参議院でそれぞれ与野党間で論議を尽くしてお話をいただくことが、そして適切な結論をお出しいただくことが一番いいことだと思っておりますと、こういう話し合いの姿勢を申し上げたわけでございます。
  84. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると海部さん、あなたのお考え方は、参議院においてはひとつ話し合いをする、衆議院においては数だけで押し切る、こういう考え方ですか。
  85. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そうではございません。やはり国会というものは、衆議院でも参議院でもそれはお話し合いをしていただかなきゃならぬということでありますから、そういうふうに私も素直に申し上げておりますから、衆議院だけは別だなんていうことは一言も思っておりませんので、どうぞそのようにお受け取りください。よくお話し合いをしていただきたいということを私は心からお願いをしておる次第でございます。
  86. 井上普方

    井上(普)委員 それであるならば、少なくともこの年金受給者が消費税で困っておる現在、物価スライドあるいはまた年金の改定、五年ごとに行われているものです。これについての改定の問題は六十五歳以上の問題と切り離して各政党間でお話し合いする姿勢というものが私は望ましいと思うのですが、あなたの今のお考え方からすればそういうお考え方になりませんか。これは一例なんですよ。どうです。
  87. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは行政府の立場で申し上げますと、立法府のお話し合いによって適切な結論を得ていただくように期待をしておる、こういうことでございますので、いろいろな中でどこをどうするかこうするかという具体的なことは、どうぞ各党各会派の間でお話し合いを賜りたい、こう思います。
  88. 井上普方

    井上(普)委員 あなたは、政党内閣でございますので、自民党の総裁でもあるのです。そういうような姿勢でいくならば、当然今の衆議院の国会審議におきましてもそういう姿勢を示して、少なくともこの年金問題は前向きにひとつお話し合いをしていただくことを強く要求いたしておきたいと存ずるのであります。  続いて、海部さんの政治に対する姿勢についてお伺いしたい。  あなたは総裁に選ばれたとき、あるいは内閣総理大臣に指名になったときに、内閣記者会で会見をいたしております。その際にどういうことをおっしゃっておるかと申しますと、消費税についてはこれは大幅な——八月五日の会見におきましてはこういうことを言っております。消費税の改正については、「同時によりよい方法があるならば、」という前提条件がついています。「見直しは大胆に行うつもりです。」こう言われた。それからその次には、「当然使い道のほとんどは福祉目的になります。福祉目的税を含めて税制全体の中で考えていかなければならないと思います。」というのが八月五日の会見のあなたの言明であります。  それから八月九日においては、これは新総裁の会見ですが、これでは、「福祉目的に全部使うことにするのがいい、と明確にしておきます」。いいですか、消費税は「福祉目的に全部使うことにするのがいい、と明確にしておきます」こう会見で申されておるのであります。続いて、「福祉目的に縛られるのでなく、一般財源としたい、という意見がある。しかし、財源のすべては福祉目的に使うという方向で検討、努力をお願いしたい。」というのが、これが八月九日のあなたの会見であります。一貫いたしておるのであります。ところがどうでしょう。昨今の御答弁はどうなったか。  また、総理大臣になられてからあなたの演説というものは、これは九月の十三日に茨城県の選挙の応援に行かれてあなたはこういうことを言われた。「どこをどうしたらいいのか、消費者の立場に立ち、国民理解と納得が得られる大きな青写真と方向を示し、思い切った改革を十一月ごろまでにやることを約束いたします」と大見えを切っておられる。大見えを切っておるというのは新聞のこれなんです。評論で私が言うのじゃない。これが九月の十三日。  九月の三十日、同じく茨城県におきましては「思い切った見直しを必ずやる」こうあなたは消費税については言われておるのであります。  しかし昨今のお話では、いいですか、思い切って消費税見直しをやるんだと、こういうように言葉を変えられているのです。これはこの解説を、そこにおられる官房長官は新聞記者会見でえらい弁護されたようですけれども、日本語というのはそう変わるものじゃない。こういうことをあなたは言われているんだが、今までの、先日の山口書記長の質問に対してあんまり正直に言い過ぎたなんということをおっしゃっておりましたけれども、あなたは総裁になり、またそのときの会見の模様、言明、あるいは茨城県における言明、あなたはこれと現在とはどう違うのですか、お答えを願いたいと思います。
  89. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ペテンだとかごまかしだとかそういう角度ではございません。私はこの消費税というものが提案されたときに、税制改革の中の一環として消費税も入っておるわけでありますから、ですから我々としてはいいものだと思って提案をし、いいものだと思って考え、いろいろ不公平是正をしたり、サラリーマン皆さんの減税を先行させたり、いろいろゆがみやひずみを直したりしていって、いいものだと思ったのですけれども、しかし、国民皆さんのいろいろな立場の御意見や御批判がありますから、そういったものは謙虚に受けとめて思い切って見直しをしていくというのが私の基本にある考えであることは間違 いありません。そして、そのために政府税制調査会でもお願いをしておりますし、いろいろ街頭演説なんかへ行ったときも、いろいろそれはその考えを申し上げました。そして思い切って見直さなきゃならぬ。それは定着をするために、御理解をいただくためにやっていこうということでありますから、そういった意味で言っておるわけでありまして、ごまかしでも何でもありません。  だから、「思い切って」と言ったこともあれば「思い切った」と言ったこともあるでしょう、それは。ですから、この間、街頭演説その他のところでいろいろ言ったことを全部言われましたけれども、私の方は、見直しを、見直すべき点は思い切って見直しますというのが私の基本でありますから、思い切ってやってまいります。
  90. 井上普方

    井上(普)委員 これは、あなたは「思い切った見直し」をやるということを再三にわたって言われているのです。思い切って見直すという、見直すことを思い切ってやるというのでありましたならば、これはあなたの言うとおりでございましょう。しかしながらあなたは、大衆の前では「思い切った見直し」ですから、見直しが思い切ってやられるわけだ。いいですか、「思い切った」は「見直し」に係るんですよ。そういうことならば大幅な改革ということに相なる。あなたは、弁舌の雄として弁論部で有名な方だ。「思い切った」と「思い切って」とは違うということは御存じだろうと私は思う。それくらいの言葉遣いはこれはわかっておっしゃっておるんだろうと思う。  この茨城県の選挙においても、「思い切った見直し」をやるということを再三にわたって言われておる。あなたは、そうすると、思い切って見直しを、改革をやりたくないんだけれども、ここでひとつ思い切って見直しをやるんですというお話に今切りかえておられるけれども、あなた、「思い切った見直し」ということは「見直し」にひっかかるのであって、思い切ったものになる。すなわち、大幅あるいは大胆な見直しということに相なるのであります。あなたは言葉を非常に大事にする総理だ。その「思い切った見直し」というものは、言葉は、食言じゃありませんか、今までの。そうするならば、これは茨城において二回言われておるのですから、茨城県民に対しては公約違反になる。この点はどうです。
  91. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろとお話を聞きながら、私は見直しの問題について触れてきておりますけれども、いろいろ言葉じりをとらえて、ああ言ったから変わった、こうおっしゃいますが、私は、最初に自分が総裁選挙に立候補しましたときの私のこの公報にも、今読んでみましたら、「税制改革全体の中で、消費税を思い切って見直します。」とこう言っておりますし、それから、政府税制調査会二十九回総会に出まして、「私は、こうした国民の声を謙虚に受け止め、改革すべき点は思い切って見直していきたいと様々な場で申し上げてまいりました。」と申し上げておりますし、また、所信表明演説というのは本会議場の演説でありましたけれども、「見直すべき点は思い切って見直してまいります。」とこう言っておりまして、私のこういった公式のといいますか記録にきちっと残っておるものは、先生のお手元に残っておるものは大胆とかいろいろなことになっております。けれども、私が一番申し上げたいことは、思い切ってこれは見直すんだということでありまして、どこをどう見直すかということにつきましては、これはいろいろ御意見、御議論がありますし、世論調査の結果なんかを見ておってもありますけれども、慎重にその実施状況を見ながら、あるいは政府税調や各省が、聞いておってもらういろいろな声に耳を傾けて、最後のときにはきちっと思い切って見直しますから、どこをどう見直すかという内容までは今言えませんけれども、それは努力しておる作業中でありますから、少なくとも御理解と御納得をいただくように思い切って見直しをいたします。それは申し上げておきます。
  92. 井上普方

    井上(普)委員 この「た」と「て」の違いを官房長官はわざわざ言いわけをしている。わざわざ言いわけをしている、官房長官は。それほどまでに重大な問題なんだ、これは。「思い切った見直し」をするということを、これは九月の三十日にも、また九月の十三日にもおっしゃっておられるのであります。大衆の前あるいはテレビの前ではそういうことをおっしゃる。国民を、これを何と申しますか惑わすような言動をなさっておきながら、いざとなったら「た」を「て」に変えるというのは私は納得できないのであります。(発言する者あり)惑わしておるではないですか。「思い切った見直し」というのであれば、大胆な見直しということに、言葉をかえればそういうことにもなる。これはわかりますな。  思い切って見直すというのは、それはあなたのおっしゃる「て」でありましたならば、そうなっていくかもしれません。見直しということを、やりたくないんだけれども、思い切ってやるんや、こういうお話になれば、それは私もわかります。しかし、「思い切った見直し」ということを再三にわたって言われておるのです。あなたは食言じゃございませんか、これは。  まさに私は、あなたのお話、弁舌さわやかにおっしゃるけれども、そこらあたりを意識して言われておるのじゃないかと思いますので、まあこれは海部総理の今後の政治姿勢にも関係しますので、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  93. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 「た」と「て」と大変な違いだと、こういうことでありますが、私が今振り返って見てみると、私の出したものが「思い切って」になっておるのに、今、思い切ったでございますと言うと、また前に書いて出したものや立候補のときの所信や政府税調で話したときのあれと違うということに相なります。私は、そうじゃなくて、最初にも申し上げたように、これはよかれと思って出したものでありますが、しかし、世論のいろいろの声に……
  94. 井上普方

    井上(普)委員 いやいや、わかったわかった。それは言いわけだ。
  95. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 言いわけじゃありません。世論に耳を傾けて、謙虚に思い切ってこれは見直さなければいかぬということが私の根底にあるものですから、そのことをいろんなところで書いたり言ったりしましたが、これは中身は、定着させるために必要な議論を一生懸命今やってもらっておるわけでありますから、どの程度我々が受けとめて、見直すべき点はどれだということをきちっと見て見直し作業を進めておるわけですから、これはお見守りをいただきたいと思います。
  96. 井上普方

    井上(普)委員 あなたは、八月の十二日、すなわち総理大臣の記者会見で、八月の十二日ですよ、このときにもこういうことを言われておるのです。「臨時国会で、政治改革と消費税の抜本的見直しをやり、成果をあげたい。」とおっしゃっておられるのです。抜本的見直しをやりたいとまでおっしゃられておるのです、八月十二日には。テレビの前でおっしゃっているのですよ。国民にはそれを印象づけているのです。これは国民を欺瞞したものと言わざるを得ないのですよ。ビデオ、ありますよ。ビデオをごらんになってごらんなさい。私もビデオを見てきたんだ。だから言っているのですよ。  あなたは、こういうように、九月の十三日あるいは三十日、これは茨城県で、参議院の補欠選挙で、やはり「思い切った見直し」をやるんだということを言われているのですよ。あなたは、なんですか、会議録をとられるようなところでは「思い切って見直し」をすると言われ、会議録がとられぬようなところでは「思い切った見直し」をやるんだということを言われているのですか。私はそうではないと思う、あなたは。
  97. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そこまで細かいことを考えて使い分けするようなことは決してしておりませんし、この間そういうやりとりがありましたから、山口書記長のときに、正直言うと、私はいろいろ言いますから、あるいはそういうときに言い間違いがあったかもしれぬけれどもというようなことを言いました。しかし、今先生おっしゃった八月の、私が記者会見したのは十一日でございますけれども、十一日の記者会見のこの中身のことにつ いて申し上げますと、私の方もこれは速記をきちっと起こしてどう言ったか念のために調べてみたのですが、そこのところは、「当面のテーマとなるのは自民党のサイドから出ている政治改革を中心とした法案の成立、野党からくる消費税廃止を目的とする法案に対する考え方の違いを議論する、そういう国会になっていくのではないかと思っておりますが、まだしばらく日にちがありますのではっきりと見通しは立ちませんが、そういう考えです。」こう答えておることに私の方は調べました。けれども、いずれにしても、てにをはの一つ一つの問題よりも、私は見直すべき点は思い切って見直していく、それは、いいと思って出したものも謙虚に耳を傾けて見直すべき点は思い切って見直します、こう言っておるのですから、どこを見直すかということ、それについての評価などは、私どもも一生懸命今努力しておるところでありますので、どうぞお見守りをいただきたいと思います。
  98. 井上普方

    井上(普)委員 海部総理は弁論の雄だということを昔から聞いておるし、少なくとも言葉を十分に吟味せられてああいうような言葉を言われたんじゃないかと思います。この点につきましてあなたのお考え方というのはよくわかりました。  続いて次の問題に移ります。  特に政治改革、いわゆる政治改革についてお伺いいたしたいと思います。  この自民党の出しておられる政治改革大綱を見まして、うんなるほどなと私も納得するところもあります。しかしながら、これは一足飛びにどうしてここまで行ったのかいなというようなところもございます。そこで、特に私の党の考え方とおたくの党の考え方と違う点は、これはたくさんあります。しかし、問題になります同じ点は、政治に金がかかり過ぎるということです。そしてまた、政治資金の入りと出というものを明確にしなきゃならぬ、これまたこれは同じ土俵に入れると思います。しかしながら、今度出されておるこの政治資金規正法改正案を見ますというと、これは私は入りも出もともかく明確になる前のままだ、それは百万円を六十万円に下げただけにすぎぬじゃないか、このように考えますが、どうでございます。
  99. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはいろいろな政治不信を脱却していかなければならぬという次元に立って、党で、党内でさまざまな議論がございましたが、その中から、今御指摘のように政治資金の入りと出の方について透明度を高めていく、一層進歩させていくとかいうことのために議論をした、その考え方が示されておるのが政治改革の大綱だと思います。そして、その第一歩として、去る国会に政治資金規正法の改正案と、出の方の寄附禁止を書いた公職選挙法の改正案と、この二つが既に提案されておるということでございます。そして、それは私は、現在から議論をして、そういった目標に向かって一歩前進したものであった、このように受けとめさせていただいておりますので、これも各党でよく御議論をいただいて、適切な結果が得られますように御期待をさせていただきます。
  100. 井上普方

    井上(普)委員 確かに金の要り過ぎることについては、私はこれは直さなければいかぬと思います。  先般、自民党の一年生の諸君十人がユートピア研究会なるもので政治資金の収支について報告されました。私はこれを見て、それはこれまで発表せられた諸君の勇気に対して私は敬意を表する。しかしながら、一年間で一億二千万、公費の政治資金千八百万、これを除いても一年間に一億円も使っている、この姿は、これは国民皆さん方から見ても、尋常じゃない、こういうお考え方を持つのは当然の話だと思うのです。これは直さなきゃならない。その手段、方法は、あなた、今度の改正案に出ていますか。
  101. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今度の国会に出ております法案には、それは私が第一歩としてと申し上げましたように、あの二法案だけですべてそこまで解決できるとはこれは考えておりませんが、党の考えましたお手元にある政治改革の大綱は、中長期の目標としてその根本にさかのぼっている。お金が要るということ、それをどのようにして解決していくかということについていろいろな案が書かれておると思います。今、出の方を禁止するということも確かに一つのお金のかからない政治に向かっての第一歩だと思いますから、前回の国会に出してある公職選挙法の改正が成立してあのような行為がなくなるということは、それだけ日常の政治活動にお金がかからなくなることになる、私はそれは思います。けれども、もっと突き詰めていくと、個人が一億ものお金をかけなければ政治活動ができない、どこでむだを省いていくか、どこで節約することができるお金があるかということは、これは個人としてもいろいろ考えていかなきゃならぬでしょうけれども、それが公の立場である程度政治をやるにはどうしても必要なお金もあるんだということに立脚して、アメリカでも、ドイツでも、その他いろいろな国で公費による政治資金の負担ということも現に行われておるということ等もありますから、そういったこと等も考えながら、いろいろと政策を重ねていかなきゃならぬと思っておりますから、根本的な解決のためには末長い努力が必要だと思います。御協力をお願いいたします。
  102. 井上普方

    井上(普)委員 海部さん、総理、あなた、この中身を見てごらんなさい。これは政治活動とは言いながら、地盤培養のための運動じゃありませんか。これが政治活動とは私は思いたくない。個人に帰着する問題ばかりじゃありませんか、これは。地盤培養のために、秘書を地元に置いて、二十数人置いたり、冠婚葬祭に金を使ったりしておるのがこの姿、報告じゃありませんか。私は、これはなかなか正直に言われて、その勇気に対しては敬意を表するのです。しかしながら、この政治活動というものはほとんどが地盤培養のための資金じゃありませんか。政策研究費というものはほとんどありませんよ、これは。ここに国民皆さん方が不信を抱き、政治に対する不信が出てくるんだと私は思うのですが、いかがでございます。
  103. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の点については、私も同じような考えをいたします。それは、どうしても今の選挙の制度そのままでいきますと、選挙区のいろいろなところでいろいろな活動をしなきゃならぬ。それは、自民党の若手の議員の皆さんがそこに発表されたものは、みんな自分たちでいろいろなところに拠点をつくって作業をしなきゃならぬ。それは、選挙区の培養だとおっしゃれば、得票を続いてもらうために選挙民との間のいろいろな関係であります。私は、それは今申し上げたように公職選挙法の寄附行為の禁止によって一歩は前進するだろうと思っておりますし、また個々の議員の方でそういったことにお金がかからないようにしていかなければならぬということもありましょうけれども、しかし、もうちょっと突っ込んで考えると、個々の議員がそれを考えなくても支部なりいろいろな党の機関なりでそういったことが公の仕事として肩がわりできるような制度に変わっていくなれば——全部自分でやらなければならぬというところにその発表した若手議員の苦しみがあろう、こう思います。
  104. 井上普方

    井上(普)委員 私は、自民党の政治改革大綱というのを読ませていただいた。いいことが書いてあると思うところもたくさんあります。これは特に「改革の方向」ということでいろいろ書いてございますが、「改革の方向」は、「なかでも、政治と金の問題は政治不信の最大の元凶である。これまでわれわれは、政治倫理は第一義的には、個人の自覚によるべきであるとの信念から、自らをきびしく律する姿勢の徹底をはかってきたが、多額の政治資金の調達をしいられる政治のしくみ、とくに選挙制度のまえには自己規制だけでは十分でないことを痛感した。」と書いてある。もはや政治家の個人の自己規制ではできないんだということを、おたくのこの政治改革大綱はもう認めておるのです。とするならば、続いては、法的規制というのは当然あってしかるべきでないでしょうか。  そこで、入りです。入りについてもこれまた明確にする必要がある。もちろん政治資金で自分の屋敷を買うたり家を建てたりするようなことは、これは厳に慎まなければいかぬのはわかり切っている。しかし、この入りについても明確にする必要がある。これはやろうと思ったらできるのです。  自治省にけさ私、申してありましたが、中曽根康弘さん、それから竹下登さん、それから海部俊樹さん、このお三人の方の政治資金を集める指定団体の数はどれくらいございますか。ひとつお伺いいたしたいのです。
  105. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 御通告をいただいておりましたので調べてまいりましたが、中曽根康弘衆議院議員の場合は、指定団体が自治大臣に届けられましたもの、六団体でございます。それから竹下登衆議院議員につきましては、同じく自治大臣に届けられましたもの、一団体でございます。それから海部総理でございますが、海部総理の指定団体は一団体でございます。
  106. 井上普方

    井上(普)委員 私はここに官報を持っているんだよ。ここに官報を持っている。これを見ますと、指定団体と自治省の選管に届けられる団体は、中曽根さんは三十一もお持ちになっている。いいですか。それで、リクルートから献金というのは、百二十万しか載ってないんです、私がこれを調べてみますと。中曽根さんがリクルートからどれだけお金をもらったか、一々私が申すまでもない。この金は三十一の政治団体に全部ばらまいているのです。だから百二十万円しか表には浮かび上がってこないのです。ここでこの問題を六十万円にして下げましても、これは百万円から六十万円にするのだから、この団体をあと三分の一だけ余計にすればやはり同じ結果になってきます。  政治資金規正法という法律は、これはもう公明にどこから金をもらったか明確にするということ、公正にするというのが法の趣旨なんです。竹下前総理は、それは出す方が自分の名前を出したくないということで実は分散するんだというお話がこの予算委員会であったことを私は記憶いたしております。それは法の精神に反しておるのです。法の精神には反したけれどもそういう抜け穴があること、これは事実なんです。だから、六十万円でなくて、いただいた金を個人献金なりに限るべきだとかあるいはまた企業献金に限るべきだとかいう党派の意見の違いはさておきまして、これはどこから幾らいただいたんだ、そして何に使ったんだということだけは明確にする必要があると私は思うのです。どこかからいただいた金をとにかく相手側が出すのは嫌がるからこれは出さなくて分散するんだというような考え方は、これは抜け穴を通る道だと私は思うから、これを防ぐ方法をお考えになる必要があると思うのですが、どうでございます。
  107. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのことにつきましても、党の改革本部でいろいろと御議論がありました。そして、公私混同を避けること、透明度を高めること、いろいろな角度から、提案した法律のようなことになりました。そして、それぞれの政治団体がだれに属しておるのかということをきちっと明らかにすべきであるということにもなったと思います。私は、ですから、それは現在よりも一歩前進をしたものとしてこれはまず御議論をいただきたい。それから、より高めていくにはどうしたらいいかということについては、これはどうぞ国会の場でいろいろと御議論をいただき、適切な結論が得られることを期待しております。
  108. 井上普方

    井上(普)委員 今度の政治資金規正法があなたは一歩前進とおっしゃいますが、私は半歩ぐらいの前進じゃないかと思う。このリクルートという大きな教訓、これを最大限に利用して政治の浄化を図るのこそ我々に課せられた使命ではございませんか。今のこの政治資金規正法の改正案を見まして、一体どうなっているんだ、リクルートの反省なんというのはこれっぽっちもないじゃないかというのが私の偽らざる気持ちでありますし、国民皆さん方もそう思うでございましょう。政治団体を三十一も持って金をともかく百万円で全部ばらまいておけば、三十一あれば、これは三千万円は表へ出さなくてもいいんですよ。これが六十万円になりましたら、千八百万円は出さなくていいんです。そういうようなことになっているんです、中曽根さんの場合は。竹下さんの場合はもっと多いですよ。こういうような姿勢を直すのが今私どもに迫られた緊急の課題じゃありませんか。どういうようにお考えになります。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 既に先国会に出ております政治資金の改正法案内容については、先生から、それは不満であるという今お言葉ですが、私どもの方は、最初申し上げておるように、それは一歩前進で、それですべてだとは決して言いませんけれども、政治資金の中で公私の混同を避けていく、できるだけ透明度を高めていく、そういったことに向かって努力をしていこうという一歩前進でありますから、あれはあれとして御議論をいただき、その中でいろいろと各党各会派の御論議を賜って適切な結論が出るようにしていただくことを心から御期待しております。
  110. 井上普方

    井上(普)委員 私は、海部内閣が政治の浄化、あるいは政治改革と口では申されますけれども、この程度の改革しか考えてないということを見まして、大きな失望を感じざるを得ないのです。国民皆さん方も恐らくそういうお気持ちになるだろうと思います。  私は、この問題につきましては、後々も質問し、政府皆さん方にお話し合いをこれから続けていくつもりであります。  さて、いろいろと申し上げたいことがたくさんあるのでありますが、きょう谷垣さんの傾聴に値するお話を、自民党の議員ですけれども私は聞きました。いい質問だと私は思っています。その中で一つ、厚生大臣が将来の世代間扶養の考え方、これを推し進めていかなければならないという考え方、これは私も納得できます。しかしながら、それじゃ一体何をやらなければいかぬか。  これは私の持論でありますから、ひとつお聞き願いたいのであります。  これは我々の世代以上でございましたならば、実は苦労しながらでも大体家は持っています。ところが、これから扶養せられる側に我々はなるのです。これは家賃を払わなくていいんです。ところが、働いておる諸君は、勤労の若い諸君は家賃が非常に高くて苦しんでおる。建設省から、実は家賃の実態について見ましたら、非常に安いことになっているけれども、年間収入の一八%、月に直しますと月収の大体二八、九%は家賃に取られておるというのが実情であります。そうなってくると、その上に社会保険も出さなければいかぬあるいは何も出さなければいかぬ、年金も出さなければいかぬ、医療の負担金も出さなければいかぬあるいはまた税金も払わなければいかぬということになってくると、収入の、月収の四四、五%ぐらいまではその場で取られてしまう、家賃を含めますと取られてしまうということになる。  そこで、そうなったならば、あの年金生活をやっておる連中は、自分は家を持っておるじゃないか、この家賃支出はないじゃないかということになってこないとも限らない。ここに世代間の扶養というよりはむしろ世代間の戦争が起こってくる可能性が私はあると思います。世代間の扶養をやるということが社会保障一つの大きな柱、目標とすべきだけれども、世代間の戦争が起こってこないか、こういう気がいたすのであります。特に東京圏におきまして、若い勤労者の諸君が家を持ちたい、持つということはほとんど考えられない時代になってきている。だから、私は二十年前から言っておったのでございますけれども、公的賃貸住宅を拡充すべきである、そしてまた、応能家賃という考え方導入すべきである、収入に応じた何%、すなわち一〇%か一五%の応能家賃を家賃として決めていく必要がある、こういうことを再三私は主張いたしたのでありますけれども自民党は、昭和四十七年からこの公的賃貸住宅を建てることに重点を置くことをやめまして、持ち家政策に変わったのです。持ち家政策に変わるというと、皆さんも御存じのとおり土地の値上がりをしてきます。住宅地の値上がりが起こってまいって、ますますそれが庶民の手から離れていくような結果になったと思うのであります。若い諸君に応能家賃の制度を入れて公的賃貸住宅を大量に建ててやっていくことが私は今やらなければならない世代の仕事ではないかと思うのでございますが、海部総理はどういうお考えをお持ちでございますか。
  111. 原田昇左右

    原田国務大臣 井上委員指摘のように、公共住宅については賃貸を中心にやれというお話でございますが、大都市のように非常に地価の上がった中心部においては、必然的に賃貸に重点が移るというように我々も理解をいたしております。しかしながら、同時に持ち家も持ちたいという若い人の要望もあるわけでございますので、長期のローンを住宅金融公庫等を通じて供給するとか、あるいは住宅取得減税というような税制の面の手当てもやりましてバックアップをしてさしあげるということも大事でございまして、近郊に大量に住宅あるいは宅地を供給するという政策も同時に進行させていかなければならないと思うわけであります。したがって、持ち家と賃貸との適当なバランスというものを考えながらやっていこう、こういうように考えておる次第でございます。
  112. 井上普方

    井上(普)委員 昭和四十六年ないし七年から、建設省は公共賃貸住宅の建設戸数というのをうんと減らしてまいったのであります。そして、持ち家政策に切りかえたのであります。それが当時の、そのほかにもニクソン・ショックもございまして過剰流動性もございましたでしょう、あるいはまた列島改造もありましたでしょう、地価の異常なる高騰を来したのであります。  こういうことを考えますならば、私はこの前の国会でも申しましたが、政府一つの政策をやると、いつも土地の値上がりを来してきておるのであります。高度成長政策といえば直ちに工業地帯の地価が上がってきた。それから続いて商業地になり、住宅地はそのときは一番後だった。今度は昭和四十二年に都市計画法をつくった。そうすると市街化区域はぐうっと上がって、市街化調整区域との間にこんなに段差がついた。それから続いては、先ほど申した持ち家政策に切りかえたら住宅地はぼんと上がった。またこの間の中曽根内閣の、何ですか、国際都市なんとかいう政策を打ち出したら東京の中心地がぐんと上がった。それが、金が余って、また今地方に波及しておるのであります。  もちろん地価上昇の一番大きな原因はどこかといいますと、銀行が一番悪いと私は思っている。銀行がともかくぼんぼん金を貸すからこういうように地価が上がってくるんだと私は思いますけれども、しかし、政策を一つ行ったならば必ず地価というものは変動を来す、ここに思いをいたさなければ私は政策の実効というものは成り立たないと思うのであります。  先ほど来も厚生大臣が世代間扶養ということをお考えになった、結構なことだ。しかし今、公租公課以外に、あるいは社会保障以外に、負担金以外に、一番大きい負担を持っているのは勤労者の諸君は何だといえば、これは月収の二七、八%、平均の二七、八%ないし三〇%に近い家賃じゃございませんか。だから、このことに着目して、若い勤労者に対しての快適な公共賃貸住宅を応能家賃で渡す政策をとるべきだと思うのでございますが、関係大臣いかにお考えになりますかお伺いをいたしたいと思うのです。
  113. 原田昇左右

    原田国務大臣 まずお答えする前に、先ほど御指摘の建設省が賃貸から持ち家重視に切りかえたから土地が上がったんだ、こういうお話でございますが、いささかこれは私どもの見解と違いますので、また政府委員に必要とあらば数字を申し上げさせていただきます。  要するに、我々は需要に応じて必要な住宅を供給するという政策でやってきておりまして、若干賃貸の比率が一時的に下がったのは、そういう需要であったのでそういうような五カ年計画にいたした、こういうように御理解いただけばありがたいと思います。  それから次に、今御質問のいわゆる応能家賃制度をとったらどうだ。つまり家賃が所得の一定率より多い場合は補助しろ、こういうことでございますか、応能家賃というのは。それとは違いますか。(井上(普)委員「違います。」と呼ぶ)違いますか。そうすると、いわゆる応能家賃という点で若干委員理解が違うようでございますので、応能家賃についてちょっと委員のお考えをお伺いしたいのでございますが、私どもは、一応公共賃貸住宅の家賃につきましては適正な負担の限度内ということで、応募者の所得分位に応じまして限度内にあることをおおむね基準にして定めておる次第でございます。
  114. 石井一

    石井国務大臣 時間が来ておるようでございますから多くを申し上げません。また、私の担当は土地でございまして、直接住宅ではございません。しかしながら、今、委員の意見を聞いておりまして、私は今ここで土地政策を転換する、また住宅政策を転換する大変重要な最後の時期だ、こういう感じさえいたします。  大都市の中で土地を供給するということを考えました場合に、どれだけ未利用地なりあるいは工場跡地等が残っておるか、あるいはまた、どれだけの高度利用が行われておらないかというふうなことを考えましたら、今土地つきの家を与えるよりも、やはり応能というようなことをも考えた意味での職住接近の住宅というものを建設するということが土地問題にも関連をしてくる、私はそういうふうに考えまして、今後建設省とも十分ひとつこの点について協議をさしていただきたいと思います。
  115. 井上普方

    井上(普)委員 私は、もう時間が来ましたのでこの程度にさしていただきますが、私が言うのは、公共賃貸住宅に対して応能家賃を取れということなんです。そしてそれは若い勤労者に与えよということを申しておるのであります。今の住宅公団の賃貸住宅を見ますというと、これは高過ぎるんです。もうこれは第四分位、第五分位の人でなければ入れぬようになっている。それよりも若い諸君がともかく苦しんでおる現状を見るならばこれを考えろ、そうでなければ将来世代間戦争が起こりますよ、世代間扶養だということじゃなく戦争が起こりますよ、これを準備するのが我々今やらなければならない政治家の務めではないか、こういうことを申しておるのであります。  以上、質問を終わります。
  116. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、浜田幸一君。
  117. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 質問に入る前に、本日このように質疑の機会をお与えいただきました委員長を初め各委員皆様方に心から感謝を申し上げます。  さて、去る十三日、日本社会党の書記長であります山口鶴男君は、いわゆるパチンコ疑惑についての見解を公式に発表されました。それによれば、「「社会党パチンコ疑惑」なるものは存在せず、週刊文春による虚構であることを明らかにしておきたい。」と言っております。  私は、本件を調査するにつけて本件の根の深さに実は驚いております。そして本件が単なる政治献金問題にすりかえられようとしていることに重大な危惧を感じているのであります。  パチンコ業界からの政治献金については、政治資金規正法にのっとって処理されている限り何ら問題はないことを私は主張しておきます。ただ、政治家として責められるのは、献金をもらって国会議員の職務権限を利用して国政の場で国民から公正を疑われるような行為をすることであり、それは徹底的にただされなければならないことだと考えております。  以下、事実関係に基づいて反証していきたいと考えております。  まず第一の問題として、パチンコ業界の実態についてお伺いをいたします。  パチンコ業界は、大衆娯楽としてパチンコファン人口は約三千万人を数え、総合数三百万台、全国パチンコ店総数一万五千二百軒に及び、年間総売り上げが二十兆円を上回っております。このよ うに専門家は分析しております。レジャー関係の単一産業としては世界最大の巨大産業と言われているのであります。しかも、他の産業と比較してみてこれほど民族意識にこだわらなければならない業界もないと私は考えます。  特にこの問題の質疑に入る前にお許しをいただいておかなければならない問題は、私は、これに関連する、この企業に関連する国家の何が悪い、かにが悪い、これが悪い、どれが悪いと言うものではありません。よりよいものをつくり上げていただくために、日本国として理解をし、協力をしてもらわなければならないから物をただそうとしているわけでありまするので、その点、委員長も御了解を賜りたいと思います。
  118. 中尾栄一

    中尾委員長 了解いたします。
  119. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 まず北朝鮮系、韓国系、台湾系、日本系と四つに色分けをされていると聞いているのでありますが、その具体的な実態の内容についてお伺いをいたしたいと思います。  警察庁にお伺いをいたしますが、この実態はどのようになっているかお答えをいただきたいと思います。
  120. 森廣英一

    森廣政府委員 今申されましたような、いろいろな国籍別にどのぐらいの方がいるかという調査はいたしたことはございませんが、御指摘のような民族の方がたくさんいらっしゃることは事実でございます。実態でございます。
  121. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 たくさんということは、分類をしても分類し切れないということでございますか、それとも、約で結構でございますが、例えば日本人の経営者がどの程度で、韓国人の方々がどの程度で、北朝鮮の方々がどの程度で、台湾の方々がどの程度、その程度はお教えいただけますか。
  122. 森廣英一

    森廣政府委員 今仰せのような民族の方がそれぞれどれぐらいいるかということが報道されている事実は知っておりますけれども、警察独自の調査でそういうものを自信を持って裏づけするものがございませんので、警察庁からどのぐらいいるかということは言えないということでございます。
  123. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 実際問題として、再度お伺いをさせていただきたいと思いますが、そのウエートは七〇対三〇か六〇対四〇か、やはり四つの国の人たちがやっているわけですけれども、それを全体的に支配しているというよりも、その中の主なものを支配しているものは何ですか。それを教えてくれますか。
  124. 森廣英一

    森廣政府委員 おおむねでございますが、北朝鮮系、韓国系、日本系、それぞれまあ三割ぐらいではないか、あとその他が一割ぐらいではないかというふうに巷間言われております。
  125. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 ありがとうございました。  なかなか苦しい答弁で申しわけありませんが、大体三、三、三、一と割り切れるようになっていますね。笑いながら聞いているわけでありますけれども、実際問題としてこの数字はやはり間違っているのじゃないですか。一番多いのは北朝鮮系ではないのですか。お答えだけしてください。
  126. 森廣英一

    森廣政府委員 概略今言われたようなことが巷間言われておりまして、それは大きな違いはないだろうと思いますが、先ほど申し上げましたように正確な調査などをしたわけでございませんので、間違いであるとか正しいという裏づけまでちょっと申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  127. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは、余り同じ質問をして苦しめては気の毒ですから次の質問に入らせていただきますが、パチンコ業界は常に脱税のワーストの上位に入っているということですけれども、というのはどういうことかというと、とにかく日本の国の企業の中で一番脱税を的確にしているのはパチンコ業界である、こう言われておりますが、その点いかがでしょうか。
  128. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 最近の我々の調査の結果から見ましたパチンコ業界の状況について一言申し上げさせていただきますと、例えば法人税関係で申し上げますと、昭和六十三年度におきまして六百八十四件の調査を実施したところでございますけれども、その結果、百五十九億の申告漏れの把握をしております。  その中で不正申告のあった一件当たりをとってみますと、その不正の金額といいますのは一件当たりで三千八百七十四万円ということで、他の業種に比べますと非常に多額な不正脱漏所得になっております。ちなみに、その同年度の次の業種を見ますと二千八百七十万でございますので、一件当たりで見ますと約一千万円程度の差があるわけでございます。それから六十二年度、今のは六十三年度でございますが、六十二年度の調査実績で見ましても、パチンコ業界が不正一件当たり三千四百十二万円、その一年前の六十一年度を見ますと三千百二十六万円と、いずれも六十三年度と同様に多額の不正が把握されているわけでございます。今のは法人税でございます。  それから、所得税につきましても、例えば六十三年度におきまして百七十四件調査しておりますけれども、その結果約六十六億円の申告漏れの所得を把握しているわけでございます。これも、一件当たりの漏れ所得で見てみますと三千七百八十一万円ということになっておりまして、これは他の業種に比べますと多額の漏れになっております。ちなみに、次の業種を見てみますと一件当たり千六百十二万円ということでございますので、倍以上の漏れになっているわけでございます。ちなみに、この三千七百八十一万円、これを六十二年度で見てみますと三千三百七十三万円、その一年前の六十一年度では二千百七万円と、まあ六十三年度に比べまして、やはり他の業種に比べますと多額の漏れが出ているということでございます。  なお、我々の調査の中で、特に強制調査の査察をやってございます。その査察の対象になりましたのが、例えば六十一年から六十三年の三カ年で見てみますと六十二件、これは検察庁の方に告発させていただいております。これは一件当たりで見ますと二億八千万の所得の漏れになっております。この漏れ額につきましては、企業規模とかとの関連もございますけれども、またすべてのパチンコの業者の方が漏らしているわけでもございませんのも御案内のとおりでございますけれども、まあ調査結果から見ますと、平均的には、現実的にはこういう姿になっている、こういうことでございます。
  129. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 これは誤解があるといけませんので次の質疑の前に明確にしておきたいことは、パチンコ業界の中にもまじめな方と不まじめな方があるということも私は承知の上で質問をしていることでございますので、記憶にとどめておいていただきたいと思います。  次に移らしていただきますが、これは健全な娯楽産業として発展を願っている国民大衆にとっては非常に不愉快なことだと思いますね。  ここで私は、参考に一人の人物についてお聞きをしておきたいと思います。ぜひ的確にお答えをいただきたいと思います。  その方のお名前は、日本の名前で柳勲さんといいます。これは最初でございますから敬称を使わせていただきます。朝鮮名を姜勲さんといいます。ここから先は敬称を省略して質問いたします。この人は全遊連を牛耳っている大物と聞いていますが、本当ですか。お教えいただきたいと思います。
  130. 森廣英一

    森廣政府委員 お尋ねの柳勲氏は、今年の八月二十七日まで全国遊技業協同組合連合会の副理事長、また同組合の親睦団体である全遊連関東地区協議会の会長の要職にあった方でございます。
  131. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 というと、人の社会でよく言う北朝鮮関係のドンと思って間違いありませんか。
  132. 城内康光

    ○城内政府委員 お答えします。  ドンというのはスペイン語だそうでございまして正確にはわからないのでございますが、ただいま御質問の人物は栃木県の朝鮮人商工会の会長をしております。朝鮮人商工会は朝鮮総連に加盟している団体と承知しております。
  133. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 私も使いつけない言葉で質問をして大変失礼いたしました。どこの国の言葉か知らないのですけれども、本当に申しわけないと 思っております。この点は、委員長、的確に記録に残しておいていただきたいと思います。  そこからお伺いをいたすわけでありますが、なぜ私がドンという言葉を使ったかということでございます。私の調査によれば、彼はあなたの言われるとおり小山市の名士であり、彼の経営する会社は次のとおりだと言われております。株式会社プラザ・ヒカリ、売り上げ十五億六千八百五十万円、昭和六十年—六十三年五月、納税額四十八万円。有限会社銀星会館、売り上げ七千四百四十六万円、納税額ゼロ。ヒカリ観光、昭和六十一年七月—昭和六十二年六月、売り上げ二十億四千七百万円、納税額ゼロ。常識的に言ってこのような申告状況はおかしいのではないかと思いまして、それでも生きていられるのですから、よほどドンではないかと思ってドンという言葉を使わせていただいたのでございますが、特定権力者であることは間違いありませんか。これは国税当局にお答えをいただきたいと思います。
  134. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 税務の面からお答え申し上げますのは限られているわけでございまして、特に今先生御指摘の売上額あるいは税額、御発言ございましたけれども、我々、常に個々の業者につきまして所得が幾らであるとか納税額が幾らであるとかいうことも、こういった席では発言を差し控えさせていただいておりますので、どうぞ御容赦いただきたいと思っております。
  135. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 答えられない質問をいたしまして大変申しわけありませんでした。ただ問題は、やはり事実は事実としてだれかが確認をしなければならないと思って実はお伺いをしたわけですけれども、人権を守るために発表してはならないものは発表してはならないわけですね。しかし、発表してはならないそのものの裏側で、それを徴収するための努力がどのように行われていたか、お答えをください。
  136. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 パチンコ業に対します税務調査でございますけれども、その結果は先ほど申し上げましたようなことで、非常に多額の漏れがございます。したがいまして、我々といたしましても、こういった調査結果等も踏まえまして、パチンコ業につきましては、他の漏れの多い業種も同様でございますけれども課税上有効な資料を収集するのに努力いたしまして、また、申告書等とも突合、検討いたしまして、課税上問題があるというふうに認められる場合には調査を行うなどして、課税の適正化に努めてきたところでございます。  以上でございます。
  137. 中尾栄一

    中尾委員長 ちょっとそのまま待っていて。
  138. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 いやいや、これはやはり行ったり来たりするのも頭の体操ですから。  今お伺いしてみますと、普通ならば、これは国民の方々にも御理解をいただかなければいけませんので、聞かせていただいてよろしいでしょうか。例えば、大体そのぐらいのパチンコの営業をやっているとどの程度の税金を払うのが常識のものなのか、その点お教えいただけますか。例えば、ほかの人たちは払っているわけですからね。ですから、普通それだけの営業をしていると大体この程度のものは払っているのだということをお教えいただければありがたいと思います。
  139. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 正確な数字をちょっと持ち合わせておりませんけれども、ただ、こういった業種につきましては、やはり個々の業者によります差というのも大きいのではなかろうかという気がいたしております。それぞれの事情があって所得が違ってくる、税額が違ってくるということもございますので、ちょっと一概に申し上げることはできないというふうに考えております。ただ、平均的な数字につきましては、今ちょっと所得率等持ち合わせがございませんので、御勘弁いただきたいと思っております。
  140. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 額に汗を流してまじめに働く人の所得についてはこれは人権擁護のために絶対に表に出してはいけないということは、この予算委員会の常識論にもなっていまして、なかなか質問もそういう点ではしっこくはしないのですけれども、この方の場合は私は特殊だと思うんですね。ですから、特殊なものは発表してもいいんじゃないですか。その点どうでしょうか。それもやはりできなければできないとお答えしてくだされば、それ以上質問いたしませんから、どうぞ。
  141. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 我々は所得税法なり法人税法等でいろいろ義務が課されておりまして、個々人の申告とか調査状況につきましては、特殊な方であろうとも申し上げることができないということになっておりますので、御寛容いただきたいと思っております。
  142. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは法律を守る者として、これ以上は質問をしないことにいたします。  ただ、今のような考え方、私たちのいつも使っている言葉、特に教養と知性のない我々の生活の中では、物すごくなまちょろいという言葉が使われるのです。そういうことであり過ぎますと、どうしても脱税天国という言葉がそこに出てきてしまうんです。脱税天国という言葉がもし使われるようなことであるとすると、現在行われている税の問題から初め日本国の国家財政、あらゆる問題について、正しい日本国に生存する者の負担すべきものを負担して、それが税となり、みんなで責任を果たす、そういうことにはなっていかないような気がするんですね。ですから、これ以上は申し上げませんが、一つお願いがあるんです。厳重にこの問題については御注意をしながら税関係の取り扱いをしていただくようにお願いをいたしておきます。
  143. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 今後とも、パチンコ業のような課税上問題の多い業種、問題の多い者を含んでいる業種につきましては、我々限られた稼働力の中でございますけれども、今のような御指摘を十分念頭に置きまして重点的に調査対象に選定するなど、課税の充実、適正化に努めてまいりたい、こう思っております。
  144. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 どうも担当者に質問すると弱い者いじめしているみたいでいけませんので、あなたに質問するのはこれで終わりますが、一国の財政の最高責任者である大蔵大臣にお伺いをいたします。  今後、このような問題に対して大臣としてはどのような御決意で臨まれるのか、その決意表明をお願いします。
  145. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私もこの御質問を受けるに当たりまして、「不正申告一件当たりの不正脱漏所得金額の大きい十業種の推移(法人税関係)」また「一件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位十五業種の推移(所得税関係)」、一一つの数字を事務方から取り寄せました。昭和六十一年度、六十二年度、六十三事務年度、いずれを通じましてもパチンコ業というのがそれぞれのトップであります。今御指摘になられた個別のケースについて私には内容はわかりませんけれども、挙げられた数字を聞いておりましても、私も問題だなと思います。今後一層しっかりと税務当局を督励して、不正をなくす努力をさせていきたいと思います。
  146. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 私はここで数字を理解しているとか、そういうことで知ったかぶりをして物を言うようなことであるといけませんので、後ほど、こちらに書類がとってございますけれども、実際問題としてその脱税額全体が一兆三千億あるいは一兆五千億、二兆円とも言われているわけでありますので、そういう脱税という問題についてのその対応の姿勢というものはより厳しくしていただくように、私は本問題についてお願いをいたしておきたいと思います。御意見はいかがでしょうか。
  147. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御指摘のとおり、全力を尽くすように部下を督励いたします。
  148. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 次に、朝鮮総連の実態について、そしてまた朝鮮総連対パチンコ業界のかかわりについてお伺いをいたしたいと思います。  朝鮮民主主義人民共和国、ここからは北朝鮮系と呼ばしていただきますが、この国家の経営者たちが業界において巨大勢力であることは理解していただけたと思います。そこで、北朝鮮系のパチンコ業者と在日朝鮮人連合会、朝鮮総連との関係はどのようなことになっているのか、警察庁にお 伺いをいたします。
  149. 城内康光

    ○城内政府委員 お答えいたします。  先ほどもお答えいたしましたように、朝鮮人商工会は朝鮮総連の加盟団体でございます。そして、パチンコなどをやっておる朝鮮系の商工人はその商工会に所属しておる、こういう関係になっております。
  150. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 もう一回、同じことで結構ですからお願いします。
  151. 城内康光

    ○城内政府委員 北朝鮮系のパチンコ業者は、先ほどの柳勲氏の例にありますように、それぞれの商工会へ所属しておるわけでございます。その商工会というのは朝鮮総連の傘下団体でございます。したがいまして、大きな意味で朝鮮総連の傘下にある、こういうふうに理解してよろしいと思います。
  152. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 公安調査庁の代表の方いらっしゃいましたら、この問題について御意見をいただきたい。
  153. 古賀宏之

    古賀政府委員 朝総連の下には多数の傘下団体がございますが、その中の有力な団体の一つが商工連というふうに理解すればいいと思います。
  154. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 警察庁にお伺いをいたしますが、今御説明をいただいたこと、これは私どもは一般的に解釈する場合にどういうふうに解釈したらいいのか、具体的に御説明いただけますか、何か私が聞いていてちょっと意味がわからないのですけれども。どちらの方に聞いたらいいでしょうか。朝鮮総連の下に商工連がある。その下には何があるのですか。
  155. 城内康光

    ○城内政府委員 お答えいたします。  柳勲氏の場合について申し上げますと、この人物は栃木県の朝鮮人商工会の会長になっておるわけであります。その商工会というのは、それぞれの県にあります。この場合でしたら栃木県の朝鮮総連の県本部に属しておるわけでございます。
  156. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは公安調査庁にその問題を同じくお伺いしたいのですが、その前に、朝鮮総連とはどういう団体だというふうに理解したらいいのでしょうか。その点ひとつ御説明をお願いいたします。
  157. 古賀宏之

    古賀政府委員 お答えいたします。  北朝鮮を支持する在日朝鮮人が、朝鮮の主権と領土を侵害し、内政に干渉する一切の外来侵略者を撤去させ、朝鮮の平和的統一、独立のために献身するとともに、在日朝鮮人の権益を擁護することを目的として昭和三十年五月結成した団体でございます。
  158. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 警察庁にお伺いしますが、今の問題、同じように御解釈でございますか。
  159. 城内康光

    ○城内政府委員 私どもも同じように理解しております。
  160. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 そうすると、この団体は危険な団体ですか、それとも安全な団体ですか、どちらですか。公安調査庁、お答えください。
  161. 古賀宏之

    古賀政府委員 日本の公安の維持にとって無視できない団体だと考えて、監視を続けております。
  162. 城内康光

    ○城内政府委員 お答えします。  朝鮮総連という外国人団体は、その綱領などから見まして北朝鮮と極めて密接な関係にある団体であるというふうに承知しておりまして、他方、その北朝鮮がビルマのラングーン事件とかあるいは大韓航空機爆破事件などを敢行したことは周知のとおりでございます。警察としては、治安維持の責務を果たす意味から、この団体につきまして重大な関心を持っておるということでございます。
  163. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 そうすると、わかりやすく言うと、非常に危険な団体というふうに理解をすればよろしいでしょうか、公安調査庁。
  164. 中尾栄一

    中尾委員長 公安調査古賀次長、はっきり答えなさい。
  165. 古賀宏之

    古賀政府委員 仰せのとおりと私ども考えております。
  166. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 よくわかりました。私どももこれからよく注意して見守っていくことにいたします。  社会党の山口書記長は、さきのパチンコ疑惑の見解で、我が党は朝鮮総連とは友好関係にあるが、党として政治資金規正法に触れている献金は一切なく、所属議員についても、法に触れる政治資金の寄附を受けることが許されないのは当然のことであると言っている。朝鮮総連が我が国の治安当局にとって有害団体であるにもかかわらず、社会党は総連と友好関係をもうたい、連帯を強調し、去る九月二十日の朝鮮総連十五全体大会に土井委員長は来賓として出席し、祝辞で総連の活動をたたえている。九月二十五日付朝鮮時報。もしこれが事実だとすれば、担当当局としてはどのようにお考えになりますか。
  167. 古賀宏之

    古賀政府委員 朝鮮総連と社会党との関係でございますが、私どもは朝鮮総連は監視しておりますけれども、日本社会党については詳しい情報をつかんでおりません。ただし、御質問の中にありましたように、日本社会党と朝鮮総連はお互いに、それぞれの大きな大会あるいは記念すべき大会等には交互に委員長なり総連のトップを招請して、お互いに祝辞を述べるなどしてかなり交流しているということは承知しております。
  168. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 ありがとうございました。これで朝鮮総連と社会党との友好関係は非常に明らかになりました。これは、ただし日本国家にとって非常に危険なことだと思います。  その第一の理由について、私の私見を申し上げておきます。それはなぜかというと、危険である団体と日本の第二の政治を代表する政党が非常に友好関係を持つことは、その背景に何があるかという問題であります。これはやはり政府の担当に質問するのではなく、社会党対自民党の間で激論を闘わさなければならないことであると私は思っておりますので、時期が来たらまたそうさせていただきたいと思いますが、本日のところは、私の私見だけを申し上げておきます。  そこで、パチンコ業界の問題にもう一回戻させていただきます。  昨年、プリペイドカードの導入をめぐっていろいろな動きがありました。政治的圧力があったとも聞いています。在日朝鮮商工会から反対陳情が政府並びに警察庁長官あてにあったと聞いています。本当かどうか、ひとつ御指導いただきたいと思います。
  169. 森廣英一

    森廣政府委員 お答え申し上げます。  今年の四月二十四日に、御指摘のような陳情がございまして「要請書」というものをいただいておりますけれども、その要旨でございますが、パチンコに関することの要旨だけかいつまんで申し上げますと、「在日朝鮮商工人が多数従事している遊技業界に対する風俗営業法等による規制ならびに法運用における民族差別、さらには警察当局の介入による「全国共通プリペイドカード」の導入等の動きについてはとうてい黙視することができません。」とした上で、「日本当局は、行政の中立性を守り、〈風俗営業取締法〉の差別的運用と、遊技業界の分裂、「共通プリペイドカード」の導入に関する介入を即時中止すること。」という旨の申し入れを受けております。
  170. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 その場合に、政党の件についてついでにお伺いしておきたいのですけれども、例えばこれを紹介された政党は公明党ですか。お答えください。
  171. 森廣英一

    森廣政府委員 そうではございません。
  172. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それではもう一点お伺いしますが、民社党ですか。
  173. 森廣英一

    森廣政府委員 そうではございません。
  174. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 そうすると、それでは私の所属している自民党ですか。
  175. 森廣英一

    森廣政府委員 そうではございません。
  176. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは、どなたとどなたが案内をされていったのか、教えてください。
  177. 森廣英一

    森廣政府委員 社会党の議員の秘書の方がお連れになってまいっておられます。
  178. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 そうすると、案内をされた場合は、国会議員は一人もいなかったのですか。
  179. 森廣英一

    森廣政府委員 国会議員の方はおいでになっておりません。
  180. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 社会党の社会新報に、平沢安保課長が六回も社会党山口書記長に呼ばれているがということが書かれていますが、本当ですか。
  181. 森廣英一

    森廣政府委員 平沢と申しますのは保安課長でございますが、数次にわたって社会党の議員さん方にいろいろ呼ばれて説明をしたりなんかしております。
  182. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 その内容について一、二点聞かしていただきたいと思いますが、特に、山口書記長を初めその代表があなた方に発言をされた内容はどういう内容ですか。
  183. 森廣英一

    森廣政府委員 プリペイドカード問題に対していろいろ御質問やら御意見やらを伺っておりますけれども、そういったやりとりの中身につきましては、相手方の了承がない段階では、一方的にこちらから申し上げるのは御遠慮させていただきたいと思います。
  184. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それではもう一点お伺いしますが、この問題について政治圧力をかけた、政党として一番政治的な圧力をかけたところはどこですか。もう一回聞かしてください。
  185. 森廣英一

    森廣政府委員 圧力という表現は別といたしまして、一番そういう説明を求められたような政党は社会党でございました。
  186. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 私は、次の答弁を求めたいと思います。聞いていますと、非常に答えづらいことばかり聞いているようで、私自身が何か申しわけないと思っておりますが、これも天下万民のためでありますので、お許しをいただきたいと思います。  献金の事実についてお伺いします。  朝鮮総連から献金があったとすればゆゆしい問題でありますが、既に週刊文春では、小山一平議員、稲村稔夫議員について総連からの献金を記事にしています。また、串原氏については朝鮮総連からの献金を受けた事実も届け済みであります。この点はどうでしょうか。
  187. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 マスコミ報道におきましていろいろな報道は拝見いたしましたけれども、具体的にはこの政治団体というふうに特定をしていただきますならば直ちに調べたいと思いますが、全般的に調べておるということはやっておりませんものですから、特定をいただきましたらその団体について早速調べさせていただきたいと思います。
  188. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 ちょっと聞きそびれて申しわけないのでありますが、もう一回同じ答弁をお願いします。
  189. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 マスコミの報道におきましていろいろな事実が指摘されておることは私どもも承知しておるのでございますが、具体的にどの政治団体あるいはどの政治家が献金を受けたかどうかということは、特定いたしましてこの政治団体について調べよということを言われますれば直ちに調べますが、一般的にすべての政治団体を調べるということはやっておりませんということを申し上げたわけでございます。
  190. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは、具体的に質問させていただきますが、朝鮮総連からこの方々が政治資金を受け取った事実はありますか。
  191. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 その件につきましては若干時間をおかしいただきたいと思うのでございますが、今までのところそういう全般的な調べ方は自治省としてはしていないということでございますものですから、この政治家あるいはこの政治団体について収支報告書がどうなっておるかということを御指摘いただきましたら、直ちにこれから調べたいと思います。
  192. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 その問題は後ほどにいたしまして、また、串原氏については朝鮮総連からの献金を受けた事実も届け済みであるということになっておりますが、その点はもう確認をする必要はありませんね。どうですか。
  193. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 恐縮でございますが、先ほども申し上げましたようにこの人物についてどうかということをあらかじめ御通知いただければ調べてまいるのでございますが、その手続を踏んでおりませんものですから。ただ、新聞報道等においていろいろ名前が報じられておるということは私どもも承知をいたしております。
  194. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 これに続いて、これについて山口書記長は小山氏の件は勘違いであり、稲村氏の件はすぐ返したと逃げています。週刊文春の取材記者がうそを書いたのか、小山氏らがうそを言っているのか、真実は一つしかありません。  私は、ここで委員長にお願いをいたしたいと思います。  ぜひこれはお聞きいただきたいと思いますが、小山一平氏と週刊文春の取材記者の証人喚問を要求します。
  195. 中尾栄一

    中尾委員長 理事会に諮りまして対処するようにしたいと思います。
  196. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 お言葉を返して大変恐縮でございますが、委員長がそこまでおっしゃっていただいたのでございますのでそのお言葉を信じて下がるしかありませんが、でき得ますならば、できるだけ早く御決断を賜るようにお願いをいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  197. 中尾栄一

    中尾委員長 十分に腹にしまっておきます。
  198. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 きょうはこの場所で御協議いただくわけには委員長まいりませんか。
  199. 中尾栄一

    中尾委員長 今ここで理事会をというわけにはいきませんが、私の腹にとどめておきます。
  200. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 委員長がそこまでおっしゃっておられるのですから、これ以上私が申し上げることはできませんが、リクルート関係についてこのような問題が起こったときには、委員長の周りにすべてが駆け寄ってその真実性をただそうとしたのに、なぜ本問題については各党がそういう情熱をとろうとしないのか、私は非常に納得がいかないのでありますが、その点いかがでしょうか。
  201. 中尾栄一

    中尾委員長 各理事の諸君もそのような行動をとるようにお願いいたします。  私の判断も含めて申します。  この委員会が終わりまして直ちに理事の招集をいたします。そこでお諮りいたします。私もそのときに腹のうちも申し上げます。
  202. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 貴重な時間、質問の時間を与えていただいたことを感謝します。  私は、委員長にお願いしたいことが一つだけございます。  人の前で真実を追求する場合に、必ず主張した者に対して危害が加えられます。私もこれだけのことを申し上げまする以上、私自身の将来の問題についても決意をし、国家を愛し社会を愛し、その上で物を申し上げているわけであります。このことに御理解をいただきまして、ただいまお願い申し上げました件につきましては、どうか的確なる御処理を賜りまするよう御要請申し上げます。そして、感謝をしながら質問を終わります。ありがとうございました。
  203. 中尾栄一

    中尾委員長 委員長として答弁させていただきます。  国家民族を考えながら申し上げておる浜田幸一君のその問題点あるいは対処し得る問題点等を含めましては、責任を持って委員長として、また内閣の方にも申し入れ、また所属する政党にも申し入れ、他の政党にも申し入れ、国会全体としてその点は把握するつもりでございます。
  204. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 大変申しわけありませんでした。実は、一番最後にもう一点だけお許しをいただきます。  それは、法務省の代表にお伺いしたいのでございますが、本問題はやはり我が国にとって大変な問題だと思いますが、法務省の刑事局長、いかがお考えでございますか。もしできましたら御回答いただきたいと思います。
  205. 根來泰周

    根來政府委員 いろいろ御意見をちょうだいいたしましたが、一般論を申し上げて非常に恐縮でございますけれども、私どもの立場といたしまして、こういう情報とかいわゆる疑惑と称されるものがすぐその捜査権の発動の前提になります犯罪の嫌疑ということに結びつかないわけでございまして、その間のひとつのブリッジといたしまして十分の吟味、慎重な吟味ということが必要でございます。検察庁が今いろいろ御提示あった問題に つきましてどのような重さを持って受けとめ方をしているか、あるいは将来どのような対応をするかという具体的なことについて申し上げる余裕はございませんけれども、いずれにせよ、先ほど申しました慎重な吟味を含めまして適切に対応するものと考えております。
  206. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 貴重な時間、ありがとうございました。心から感謝を申し上げます。
  207. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて浜田君の質疑は終了いたしました。  次に、左藤恵君。
  208. 左藤恵

    左藤委員 自民党質問といたしまして、私は、皆さん方が余り触れておられない教育の問題に関しまして、総理並びに関係の大臣にお伺いをいたしたいと思います。  この間、サッチャー英国首相が来られまして、総理も何か対談をされたようでございますが、そのときにサッチャーさんが、私はよい教育を受けたから首相になれたんだ、こういうようなことをおっしゃったということが伝えられております。そしてまた、いろいろ英国の教育の改革についても非常に熱意のあるお話をしておられたということを伺っておりますが、私は、いろいろと問題がある中で、人づくりほど大切なものはない、このように思います。  そこで、既に教育の改革につきまして臨教審で幾つかの答申が出ておりまして、そして、その答申の内容を具体的に実施できるような法改正が何点か既に行われておりますが、まだ答申の提言を具体化できていないものも少なくありません。  第十四期の中央教育審議会で、例えば生涯学習の基盤整備とか、それから後期中等教育の多様化、弾力化、こういった問題の調査審議が進められていると伺いますが、いつそういう施策が進められることができるか、見通しは立ってないわけであります。  特に高校教育におきまして、生徒数がことしまでが急増期でございまして、そして明年度から一転して急減期に入ります。そういったときに、今まで高校全入というようなことで増設に次ぐ増設をしてきた高等学校の教育というものをこれからどういうふうに持っていくのか、いつまでも審議会での結論を待っておっていいのかというふうに考えるわけであります。教育の機会均等の名のもとに、落ちこぼれさえなくせばいいというような悪平等教育といいますか、そういうものからは今こそ脱皮しなきゃいかぬ、こういうときが来ておると私は思います。  最近、私立の学校よりも公立の高校で、一年で退学する生徒が非常にふえておるということは、東京でも大阪でもそういった事態があるように伺っております。全国的な問題であると思います。こうしたことは、退学した者が例えば暴走族の予備軍になるとかいうようなことで、もっとこういうことに対して真剣に我々は考えていかなきゃならないんじゃないか、こう思います。  偏差値だけで生徒の力を判断するという悪弊があって、これが大学の入試にも影響して、共通一次テスト至上主義といいますか、そういうようなことにもなったのじゃないか、このように思います。最近これも、新テストという形で見直されてはおりますけれども、問題は、私は今までの教育というものが、何か学校側とかあるいは教師の側というところからだけ物事を見まして、そして生徒の側といいますか、そういうものからは問題が考えられていないのじゃないか、そういう今までの文部行政のスタンスじゃなかったか、このように思います。  中教審や大学審議会の委員でも、経済界とか評論家の方なんかは入っておられるようですが、生徒の例えば保護者の代表とかいうのが一体入っているのでしょうか、あるいはまた塾の先生の意見なんか、そういったものも私は聞くべきではないかな、このように思います。  そこで、総理は文部大臣をもう二度もお務めになりました。また、党の文教制度調査会長でもありますので、そういったことについて、文部行政についての非常に深い御理解をされておると思いますが、今私が申し上げたことについての御所感とか、あるいはこれからどういう方向へ進めていったらいいかということについての御意見を伺いたいと思います。
  209. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 臨時教育審議会で示されましたいろいろな答申の中には、御指摘のように既にスタートをしたものもございます。例えば、今お触れになった新テストなどもその一つであります。  また、後期中等教育と高等教育との接点をひとつ試験をなしということで考えて、高等工業専門学校のような姿で発足した学校形態とかあるいは専修学校の専門課程というような制度とか、いろいろ今の公立高等学校が背負っております、今御指摘になったように学校から去っていかなきゃならぬ、能力いろいろあるわけですから、それを個々の能力、個性を大事にして能力を伸ばしていくような、そんな教育機関があったらいいということでどんどんふやしてきたいろいろな選択の幅、こういったものは定着させていかなきゃならぬと思っております。要は、形式的平等主義で一律に処していこうというのはもう済んだ話であって、これからは一人一人の資質や個性や能力が伸ばせるような教育にしていかなきゃならない。これに大きなポイントがあることはそのとおりでございます。  また、最初にお触れになったサッチャー首相との教育対談のことでございますけれども、お聞きになっておわかりのように、英国ではこのごろようやく、地方の学校とか地方の町村単位で教育のカリキュラムが今までまちまちだったのを国が基準を一定に示して、英国人ならばどこで生まれてどこで教育を受けても必要にして十分な一定限度の目安の教育は受けることができるようにしていこう。要するに、言葉を変えて言うと、基礎、基本の見直し、充実ということを力を入れてやっておるという指摘でありました。  我が国ではそのことは済んでおりますけれども、義務教育を終わった以後の高等教育の段階でどのように伸ばしていくのか、あるいは高等教育でも最終段階の大学院レベルでの学術研究の峰をどうやって伸ばしていくのか、こういうところに実は問題点があるのだということを率直に申し上げましたわけでして、今後とも、それぞれの国には国の歴史や文化や伝統がありますから、どの国の教育がこうだから我が国もそうしようというのじゃなくて、日本は日本独自のいろいろな環境や条件の中から一人一人の児童生徒の持っておるもの、それをうんと伸ばしていくということ、ここに重点を置かなきゃならぬと基本的に考えております。
  210. 左藤恵

    左藤委員 ありがとうございました。  今お話しのように、例えば高等専門学校から大学へ入る道というものをどんどん開いていく、あるいは短期大学を二年終えてから、そして今度は大学の方のまあ三年なら三年に編入するとかそういうふうな問題、あるいはまたもう一つ、大学の相互間でもう少し、単位を取った場合にある大学で取った単位がほかの大学で有効になるような、そういう転学といいますか、そういうようなことをやっていく、そしてその自分の個性を伸ばしていく上のそうした便益というものをもっと考えないと、今大学の先生はよその大学のことを評価しないといいますか、非常に殻に閉じこもって、そういったものについて非常に反対のようなかた苦しい意見を持っている人が非常に多いと思いますけれども、もっとアメリカのような、またヨーロッパでもそういった学期ごとに単位を取って動くことができるようなシステムというものもあるわけですから、もう少しそういうようなものについて幅広いことをこれから考えていかなければならないのじゃないかな、このように思いますので、こういった点について御努力いただくと同時に、文部大臣に御意見がありましたら伺いたいと思います。
  211. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  御指摘のとおり、いろんな意味で生徒、そしてまた社会の要請がそれぞれ多様化をしてまいって いるものであります。そこで、まず高校関係のことでありますけれども、高校教育の中におきましても思い切った多様化、弾力化を図ること、そして生徒がみずからの個性を十分に伸ばすように、そしてまた楽しい充実した学校生活が送られるようにせねばならないなと、こう考えているわけであります。そこで、本年四月に発足いたしました第十四期中央教育審議会におきましても、その具体的な方策について審議をいただいているところであります。  文部省といたしましても、既に学習指導要領の改訂、単位制高校の制度の創設あるいは高校入学者選抜制度の改善等種々の施策を講じてきたところでありますけれども、今後とも高校教育の一層の多様化、弾力化を推進してニーズにこたえていきたいと、こう考えております。
  212. 左藤恵

    左藤委員 高校への進学率というものが非常に日本は高いわけでありますけれども、数だけの問題じゃなくて、内容の問題につきまして十分充実したものにしていかなきゃならないと思いますので、この点についてのこれからも一層の御努力をお願いをいたしたいと、このように思います。  それから次に、私学助成についてお伺いいたしたいと思います。  私学で学ぶ者が、大学にあっては平成元年度二百二万のうちで百四十八万、七三%に及んでおります。短大ではもう四十六万人中四十二万、九一%と、大変な数字の私学で学ぶ者があるわけでありまして、そういったことで実は昭和五十年に私学の助成法という法律が成立いたしております。それ以前の昭和四十五年から若干私学助成というものが始まりましたけれども、本格的に助成といいますか、それが法的根拠を得て実施されましたときには、それは昭和五十年でありますが、私学の経常的経費の二分の一まで助成するということを目標として出発したわけです。このときの補助額、補助金の金額は一千億円であったわけでありますが、当時二〇・六%の補助率ということであったと思います。それが平成元年度では、補助金の金額こそ二千四百八十九億円と約二・五倍になっておりますけれども、補助率は一六・〇%というふうに大幅に下がってきております。学生の急増期に入った現在におきまして、学生数の増加に伴って当然教職員もふやさなければなりません。そういうことで教職員の数もふえておるわけでありますけれども、当初目的とした半額助成からは遠ざかる一方であるというふうな実情であると思うわけであります。  そこで、今ちょっと総理いらっしゃいませんけれども、人づくりが国づくりの根幹であるという見地から見てこれをどういう方向に持っていったらいいか、お考え伺いたいと思います。  特に、大蔵省で文教予算という形で編成をされる段階におきまして、ここ数年非常に財政難だということでシーリングの枠をかけて、こういった助成のもとにつきましても補助金の切り込みが行われておりますので、パーセンテージはどんどん下がる一方だと思います。私学助成がどんどんしりすぼみになっていくということであるわけでありますけれども、そしてまた、現在、この間、中堅所得といいますか、そういうところに対し皆さん所得税の減税ということを考えて実行されたわけではありますけれども、この中堅所得のところが、高校へ行く、大学へ進学するということになってきておる現在から見まして、非常に教育費の負担が大きいわけであります。私立大学におきまして、今、入学金とそして授業料、その他の施設費ということで最初の年度に納めなければならない金額の平均が百三万円と伺っております。百万円を超えている実態だと思います。そういったこともありますので、私学助成ということに対しまして大蔵大臣のお考え、また、総理のお考えがあれば総理のお考え伺いたいと思います。
  213. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 小学校を除きまして、幼稚園、中学、高等学校、大学と私学で育ち続けてきました私としては、今委員が御指摘になりましたそのお気持ちがわからないでは決してありません。しかし、同時に私は、その私学助成について、補助率の問題以前に、私学関係者がかって我々を育てていただいた当時と同じ自負心をお持ちであるかどうかを問いかけたい気持ちがいたします。  近来、マスコミをにぎわせます事件の中に、遺憾ながら私学の名前の登場した事件が幾つもございました。非常に残念であります。私は、少なくとも自分の母校を誇り、その学校に学んだことを今日も誇りにいたしておりますが、今日の私学の経営者の方々が、果たしてその学窓を育つ学生に対して、今三十年近くたちましてなお私が誇りにしておるようなそれぞれの母校への誇りを植えつけて自分はすべての生徒を卒業させておると言い切れる学校がどれぐらいあるのだろうと、私は折があったら問いかけたい気持ちがいたします。  我が国の、殊に後期中等教育、また高等教育の中に占める私学のウエートが高いことはよく存じております。そしてそれに対しては、例えば私大等の大型の研究装置に対する補助制度の創設とか、国は適時適切に新しい取り組みを私学助成の中には取り入れてまいりました。経常費補助だけが私学の助成ではないと私は思います。それだけに、これから先も、私は、私学から出てくる御要望、文部省を通じて大蔵省に届きますものの中で将来にわたって私学の有為な人材を育てていくために役立つ予算については、大蔵省としても全力を挙げて対応をさせますが、願わくは、その投資がむだにならないような私学人の自覚を心からお願いを申し上げたいと思います。
  214. 左藤恵

    左藤委員 今お話しの点、当然私学の方の経営の側にも十分配慮していかなければならない、当然教育者としての責任というものはある、私はこのように思いますが、今お話しのような予算の問題につきましても、その配分、またその編成につきまして一層の工夫をしていただきたい、このように思います。  それから、幼稚園児の保護者に対しまして就園奨励費というのがわずかでありますけれどもあって、そして補助金の改善も行われてまいりました。これにつきましても、園児が減少しておりますので一人頭の補助がわずかにふえておるという状態になってはおりますけれども、今、少産時代といいますか、子供を産まない、一人っ子が非常に多いわけでありますが、そうしたことで過保護になっておるということもあるわけでありますけれども、最近の栄養の非常にいいこととか、あるいはまたテレビの影響とかいうこともありまして、早くから幼稚園に子供の方も行きたがる、また親の方も行かせたがるというような、そういう意味からいうと、今三歳児保育社会といいますか、そういうものが当たり前の時代になってきたような感じがするわけでありますが、この三歳児に就園奨励費を出すというようなお考えがあるのかどうか、これはちょっと文部大臣にお伺いしたいと思います。
  215. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  幼児問題に入る前でありますが、委員指摘のとおり、確かに私立学校振興助成法が制定された昭和五十年には二〇・六%であった。一番よくなったときが二九・五%。六十三年は一六%まで減っていることは事実であります。  そこで、今大蔵大臣から御答弁をありがたくちょうだいをいたしたわけでありますが、私の立場では、やはり私学の姿勢も正すべきはきちっと正して、そしてその前提に立って、私の立場といたしますと、何よりもまず総額をふやしていく努力が必要であるな、こう考えております。  幼児教育、三歳児の問題でありますが、基本的に申し上げますと、これはそれこそでき得るだけ年齢の低いときから教えることが教育の一番基本であろう、こう私は考えております。ただ、その実施の問題、何から始めるかということにつきましては、まだ議論が煮詰まっておりません。私学関係の幼児教育の皆さん方からはでき得る限り早くという要望があります。私ども文部省といたしましても、この要望に沿うべく、いつからやっていったらいいか具体的な検討に今入っておりますので、御了解をいただきたいと思います。
  216. 左藤恵

    左藤委員 今この予算委員会でも大変問題に なっております消費税見直しのことに関連しまして、教育の面でも、消費税をどうするかということにつきましてのいろんな論議があると思います。  御承知のとおり、学校の授業料それから入学試験の検定料、これに関しましては消費税の三%はかかりませんが、入学金とか施設費、これには三%がかかることになっております。売上税の問題のときには、教育費全体が、その社会的な重要性ということでありましょう、五%はかけないということになっておりましたが、消費税の立案のときに、私も当然全部こういったものは非課税になるのじゃないかと思っておりましたが、この点につきまして、入学金、施設料というものと授業料というものとがどうして区別されたのか、この辺について事務当局で何か御意見があれば伺いたい、こう思います。
  217. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 消費税の検討に当たりまして、売上税についての経緯もございましたものですから、例外は極力なくすという原則のもとにその制度の仕組みを考えてまいりました。しかしながら、医療、教育、福祉の一部につきましては、それらが専ら最終消費者向けに提供されるサービスでございまして、これを非課税といたしましても経済活動に対して税の累積を招くというような悪影響を及ぼすおそれが小さいということ、それから諸外国の類似税制におきましておおむね共通して非課税とされている、そのようなことを考慮いたしまして、特別の政策的配慮ということでこれを非課税といたしました。  そのうち、お尋ねの教育の対価の問題でございますけれども、これも極力例外を少なくするという基本的な考えに立ちまして、教育サービスの対価として最も基本的なものである授業料に限り非課税とするということにいたしました。また、国、地方公共団体などの行います各種の試験手数料を非課税といたしましたので、それとのバランスで入学検定料を非課税といたしました。そのように、非課税の対象を極力絞るという考え方から、授業料それから入学検定料だけにしたわけでございます。
  218. 左藤恵

    左藤委員 非課税項目の見直しというような問題があるわけでありますが、私は、経営の立場から見まして、私学で経常費、運営費、いろんなものに充てられる、そういうことの総合的な経理というもので学園は運営されているのじゃないか、こう思います。そういう意味におきまして、入学金というものもその学校の財源としては大きなもので、一つの入学をすることに対する保証金みたいな形で、そしてそれが学園の経営にすべて充てられるものであろう、こう思いますので、そういう意味で授業料とその間の区別というものがないのじゃないかなというような感じがいたします。こういった点について、今見直しの論議のときにぜひ入学金や施設費は非課税としていただくようなことを検討していただきたい、このように私は思うわけであります。  教育に関します問題だけでもまだまだいろいろお尋ねしたいこともあるわけでありますけれども、関連質問杉浦さんにあとの時間をお譲りすることにいたしまして、本日は、この辺でとどめたいと思います。ありがとうございました。
  219. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、杉浦正健君から関連質疑の申し出があります。左藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。杉浦正健君。
  220. 杉浦正健

    杉浦委員 お許しをいただきまして、左藤先輩に関連して若干質問させていただきたいと存じます。  質問に入ります前に、海部総理大臣に対しまして、同郷愛知県の後輩といたしまして御就任を心からお祝い申し上げる次第でございます。  憲政史上、愛知県からはお二人目の総理でございます。県民ひとしく慶賀をいたしておるところであります。内外ともに情勢厳しい折でございますが、日本丸の船長として御奮闘あらんことを県民皆願っておるところでございます。切にお願いする次第でございます。  ODAを中心にしてお伺いをさせていただきます。  ODAにつきましては、近年、諸外国からの要請もあり、一大事業として発展してまいっておることは御高承のとおりでございます。予算面で見ますと、平成元年度一般会計予算におきましては七千五百五十七億円、財投等を含めますと約一兆四千億円の金額という大変な予算規模に成長いたしております。また、我が国の援助がその国の援助の中でトップを占める、トップドナーとしての国数は、一昨年、六十二年度でありますが、二十九カ国の多きに達しておりまして、開発途上国の経済にとっても非常に大きな影響を持つ事業に成長いたしておるわけであります。私は、学生時代からその後青春時代を留学生とか技術研修生の受け入れ事業に従事した者といたしまして、いわばODAのはしりの事業を若いころやっておった一人として、うたた感慨でございます。  我が国のODA事業は、諸外国と比べますと非常に立ちおくれておると言わざるを得ないと思います。ヨーロッパなどは植民地経営の経験がございますから、長い歴史と経験を持ち、ノーハウもあり、人材も豊富であります。我が国は、ついこの間までは被援助国であったわけでありまして、漏れ聞くところによりますと、まだ世銀借款は一部返済金が残っておるというふうに聞くところでもあります。そういう意味ではまさに援助小国だと言ってもよろしいかと思うわけであります。したがいまして、いろいろな点に問題がたくさんあるわけであります。関係者は国内でも多数おりますし、海外に出ていっております青年協力隊であるとかあるいは派遣技術者等々、約三千名であると言われておりますが、皆さんの御努力相当の成果を上げてはおるわけでありますけれども、しかし、いろいろな問題点がないわけではない、こう言われておるわけでございます。  いろいろと御質問したい点があるわけでございますが、このODA、巨大な事業に成長しつつあり、また国際的な要請もあって、今後とも力を入れなければならない。総理の施政方針演説でも拡充強化するとおっしゃっておられるわけでございますが、その計画的、効率的な実施という点に絞って若干お伺いをさせていただく次第でございます。  まず、このODAの実施につきまして私が一番問題だと思いますのは、いわゆる四省庁体制ということがいわれておるわけであります。実施官庁は十六省庁に及びます。その全体のコントロールタワーと申しますか、総合的な計画、実施調整についての司令塔がどうもないのではないか。各省庁ばらばらに対応されておるというところではないかと思いますし、また、識者も多くの方が指摘しておるところでございます。  そこでお伺いするわけでございますが、現在、内閣に対外経済協力閣僚会議というものが置かれております。昨年末再発足いたしたわけでございますが、漏れ聞くところによりますと、今まで三回ほど会議が開かれたようでございますが、いずれも意見交換の場という程度と承っておるところであります。私は、この対外経済協力閣僚会議を強化して、我が国の対外経済協力の重要事項についての意思決定機関という点くらいにまで強化、充実する必要があるのではないかというふうに考えておる一人でございますが、総理の御所見を伺いたいと存じます。全体会議と、それから会社でいえば常務役員会のような形で四省庁に官房長官ぐらいが加わられた常務閣僚会議というようなふうに運営を考えられるとか、考えられると思うのでございますが、いかがでございましょうか、御見解をお伺いしたいと思います。
  221. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 まず、ODA一般についてお答えをさせていただきますが、御指摘のとおり、ODAが極めて重要な我が国の政策であるということはそのとおりでございます。現に、日本の国際協力推進構想の大きな柱の一つがこのODAの拡充であります。皆さんの御理解と御協力を得ながらODAはどんどん進んできておるわけでありまして、今御指摘のように、八八年度日本は九十一億ドルという実績を残しましたが、今後さらに これを進めて第四次の中期目標をきちっと実施をする。これは、一九八八年から九二年の五年間で実績五百億ドル以上と目標を置きまして、毎年平均して百億ドル以上というのが目標でございますから、百億ドルを今年、平成二年度にきちっと計上して、これを実施いたしますと、日本は名実ともにODAの援助額では世界一、二を争う、計算方法によっては一番と肩を並べるか、追い抜くかというところまで絶対金額ではいくわけでございます。ただ、率直に申し上げて、日本の経済規模も非常に大きくなってきておりますから、対GNPということで計算をいたしますとまだ〇・三二、これが百億ドルきちっと実施いたしまして〇・三五になるのかというようなところでございますが、でき得る限りこれは努力を続けて目標を達成していかなきゃならぬと思っておるところであります。  なお、国際協力の基本に関しまして対外経済協力閣僚会議のことについてお触れになりましたが、これは今御指摘になったように、担当しております官房長官の方から詳しく御説明申し上げます。
  222. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 申し上げるまでもなく、内閣の意思決定機関、また最終的な総合調整機関は閣議でございます。閣僚会議は、そこに至る調整の過程におきまして、関係閣僚による協議、調整の場といたしまして開催されるものでございまして、重要な役割を果たしていると考えております。対外経済協力関係閣僚会議につきましても、この趣旨を踏まえまして、経済協力の基本政策についての意見交換等を通じまして経済協力に関係する行政機関相互の緊密な連絡を確保いたしまして、その効果的、また総合的な推進を図ることを目的といたしまして開催することとしたものでございます。  この閣僚会議は、設置以来、おっしゃいましたとおり三回開催されておりますが、その中で、我が国経済協力の基本政策につきまして示唆に富んだ活発な意見交換が行われておりまして、今後ともこの閣僚会議の所期の目的が達成されますようにできるだけ機動的に運営していきたいと考えております。
  223. 杉浦正健

    杉浦委員 その問題に関係しまして、現在、閣僚会議の事務局は外政審議室が担当いたしておるわけでございますが、専任の対外経済協力室というようなものを設置される必要があるのではなかろうか。そう言っては失礼でございますが、片手間に外政審議室が担当するのではなくて、きちっとODAの問題を専任に担当する機関を設置した方がいいのではないかと考えておるものでございますが、御所見はいかがでございますか。
  224. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 対外経済協力関係の閣僚会議につきましては、関係省庁の御協力をいただきながら内閣外政審議室が庶務を担当いたしておりまして、事務局としての役割を果たしているというわけでございますが、これは設立以来既に三回開催されまして活発な意見交換を行っておりますことは先ほど申し上げたとおりでございます。内閣の外政審議室は、経済協力関係十省庁の審議官の出向を得るという体制のもとで事務局としての機能を十分果たしているというふうに考えております。
  225. 杉浦正健

    杉浦委員 お言葉を返すようですが、私は不十分であると考えておりますので、ひとつ前向きに御検討賜りたい。意見として申し上げさせていただきます。  関連して、企画庁長官にできればお答え願いたいと思いますが、企画庁の設置法に「国際経済協力に関する基本的な政策及び計画の企画立案及び総合調整に関すること。」ということが明記されておるわけでございますが、そのお立場から、以上、閣僚会議と事務局設置の件について御所見があれば伺いたいと存じます。
  226. 高原須美子

    ○高原国務大臣 現在の経済協力にかかわる実施体制につきましては、今官房長官がお答えになったように、やはり今の形で全体として順調に機能していると思っております。御指摘のように、経済企画庁は「国際経済協力に関する基本的な政策及び計画の企画立案及び総合調整」を担当しております。この対外経済協力に関する総合調整というのは極めて重要な役割だと思っております。  そこで、経済企画庁といたしましては、これからも経済協力の円滑な推進を図っていきますために、外政審議室及び関係省庁と連携しながら一層努力してまいるつもりでございます。
  227. 杉浦正健

    杉浦委員 次に、ODAの中期目標に関連してお伺いしたいと存じますが、私は、この現在のODAの実施状況、将来を考えますと、例えば防衛庁におきまして、中期防衛計画というのが策定されて長期的な見地で取り組まれておるわけでありますが、それに匹敵するような形でODAにつきましても計画的に実施されるべきではないかと考えておる一人でございます。このたび発表されました総務庁の行政監察結果に基づく勧告、九月にございましたが、それにおきましてもODAにつきまして、「計画的かつ効果的・効率的に実施する観点から、」四省庁は協議を行い、「被援助国との十分な対話に基づく中長期的な国別援助方針の策定整備を推進することにより、政府全体としての整合性のとれた方針の明定に資すること。」という勧告を行っておるところでございますが、私は、今後このODAの実施につきましては、中期目標という、今先ほど総理がお触れになりましたが、それをさらに進めまして、国別あるいは分野別にもっと詳細に長期的な計画を組んで取り組むべきではなかろうか。  例えば、OECDではGNPの〇・七というのを当面のODAの目標にしておるわけでありますが、中にはもう達成した国もあるわけであります。我が国がどういう道筋でいつごろ達成するのか、どういう分野でどういうふうにやるのかということは極めて重要なことだと思うわけでございますが、この点につきまして、外務大臣の御答弁をお願いいたします。
  228. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生お尋ねのODAの中期目標と申しますか、一九八八年から一九九二年までの間に約五百億ドルの海外の援助を行う、こういうふうな一応の考え方を内外に示しております。
  229. 杉浦正健

    杉浦委員 被援助国との対話を強化し、プロジェクトの策定についてもいろいろと今後は工夫していかなければならないと思うわけであります。今までODAの実施状況は、原則として要請主義ということに相なっておりまして、つまり先方から要請があったものを受けて検討する、これは実に賢明なやり方でありますけれども、しかし、今後はさらに進んで、要請主義にとどまらずに、オファー主義と申しますか、こちらからむしろこういうことでいかがでしょうかということを相手側に提案をし、対話をして実施するということが必要な場面が出てくるのではなかろうかと考えておる一人でございます。  例えて申しますと、国際環境問題、地球環境保護の問題はこれからますます大きな問題になってまいりますけれども、こういった問題は要請主義の枠からはなかなか出てこないであろうと思います。こういった問題につきましては、むしろ積極的に我が国から提案をする。例を挙げますと、中国の山はほとんどはげ山でありますが、あれを植林をする、地球環境の保全のために一酸化炭素、二酸化炭素を酸素に還元をする、こういう事業は、植林、緑化を考えなければ成り立たないわけでございますが、そういった問題などは要請主義では絶対に出てこない問題であろうかと思うわけでございます。  予算につきましても、今までの単年度主義に縛られたやり方では、政権がかわった場合に保証があるかというような問題もあり、相手国も不安を感じている面も若干感ずるわけでございます。例えばプロジェクト予算方式と申しますか、後年度負担考えた、防衛計画のように少し多年次にまたがるような予算が細めるとか、そういうような方式も検討していかがかと思うわけでございますが、これは外務大臣並びに大蔵大臣の御見解をお伺いしたいと存じます。
  230. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在までのODAの我が国の対応ぶりにつきましては、それなりの成果もありま したが、幾らかの批判を受ける点もあったことを私どもはよく認識をいたしております。これからのODAの進め方につきましては、できれば二国間の共同の評価システムとか、あるいは共同のプロジェクトを組むとか、そういうふうな一つの新しい方向をこれから日本も考えることが必要なのではないかというふうに私は考えておりますし、これから年度をわたる問題につきましては、後ほど大蔵大臣からもお考えがあろうかと考えておりますが、先ほどお話のございましたように、中国の工業化が進んだ場合の公害問題、これは我が国にも及ぶ問題でございますから、それらの点につきましても、これからは十分先方と協議をしながら進めていくべきものと考えております。
  231. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私はやはり要請主義という基本原則は崩すべきではないと思っております。なぜなら、相手国の主権に係る部分を必然的に含む可能性がありますだけに、日本側から例えばこのプロジェクト、あのプロジェクトという押しつけをすることが必ずしも相手に好意を持って受け取られるときばかりではございません。それだけに、要請主義という原則はきちんと我々はやはり今後も維持すべきだと思いますが、むしろ相手国の要請以前の段階において、例えば優良案件の発掘でありますとか、あるいは情報提供等を我が国が積極的に相手国に行うことによって結果的に要請のリストにそのプロジェクトを加えていくといった方向もこれは考えていいことでありましょう。  また、プロジェクト予算というものにつきましては、既にある程度工夫をしながら動いておるわけでありまして、海外経済協力基金が基金法に従いまして、個々のプロジェクトにつきましては多年度にわたる資金の支出を必要とする貸し付けも行い得るようになっておるわけであります。  また、無償資金協力などにつきましても、必要に応じて国庫債務負担行為を利用するなどということで適切な対応の努力は払えるわけでありまして、むしろ私どもは要請主義とかオファー主義とかいう言葉以前の問題として、いかにして相手国が喜んで日本に協力を求め得る環境をつくり出すか、そうした視点から考えていくべきではなかろうかと思っております。
  232. 杉浦正健

    杉浦委員 もとより要請主義を基本としながらの要請でございますので、ひとつ柔軟に相手国のニーズにこたえるようにお進め願えるよう、御配慮を賜りたいと存じます。  四番目に、人の問題についてお伺いいたしますが、我が国のODA事業で最もおくれておる一つは、ODAに従事する人の数が足りないということであります。いわばODAのプロの数でございますが、近年飛躍的に増加しつつはありますけれどもヨーロッパ、アメリカに比べますとはるかに見劣りがいたすわけであります。事業は人なりと申しますが、我が国の将来のODA事業の拡充にとって、ODAの事業をライフワークとする質の高いプロをいかに多く養成するかということが大きな課題だと言って差し支えないと存じます。  そこでお伺いいたしますが、外務省に国際開発大学(仮称)を新設するという構想がおありだと承っておるわけでありますが、この進捗状況はいかがなものか、お伺いしたいと存じます。  また、これは文部省にお伺いいたしますが、これはまだ出ておりませんけれども、国公立大学に例えば経済協力学科を設置するとかいうことはいかがなものでございましょうか。お伺いしたいと存じます。
  233. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生御指摘の援助のプロを養成する必要性ということに関しましては、私どもも全く同じ認識でございまして、外務省といたしましては、先ほど来話題になっております、この増大してまいりますODAの効率的、効果的実施のためには、まさにそのような援助のプロの養成が重要であると認識しております。  先生御指摘の国際開発大学構想につきましては、四年近く前になりますが、八五年の十二月に外務省内につくられましたODA実施効率化研究会が当時の安倍外務大臣に提出いたしました報告書の中で提案されたことに端を発しておりまして、これは大学院レベルで援助関係の人材の養成を目指すというものでございます。それ以後、外務省におきまして、このような高等教育研究機関におきます人材養成のあり方につきまして鋭意検討を進めてきているところでございます。このような大学を新規に直ちに設立することの適否につきましては、日本の大学におきます援助関係教育研究の状況を見てさらに検討していきたいと考えておりますが、外務省としては、このような検討結果を踏まえまして、先生御指摘のように、まさに国際的に通用する援助のプロを養成する具体的な施策の推進に向けてさらに努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  234. 杉浦正健

    杉浦委員 これは各官庁にお伺いしたいところでありますが、全部にお答えいただくと時間がございませんので、総務庁にお答え願いたいと思いますけれども、各役所で、今十六省庁で実施しておるわけでございますが、各省庁のODAを担当される方々が人事異動がありますとどんどんかわられまして、継続性を持ってその省庁のODAの実施についてはフォローする体制ができていないのではないか、いささか欠けるところがあるのではないかという感じがいたすわけでございます。各官庁で経済協力を担当するキャリア、ノンキャリア含めてでございますが、ひとつ人材の養成と申しましょうか、時には海外へ駐在させるとか、あるいはJICAの事務所へ出張させるとか、そういうことも含めまして、各官庁の担当プロの養成の人事方針というものを確立していただきたいと思うわけでございますが、御見解を伺いたいと存じます。
  235. 水野清

    ○水野国務大臣 お答えをいたします。  ODAの専門家の養成ということについては御指摘のとおりでありまして、各省庁でこれまでもやってまいりました。しかし、援助の内容ということになりますと、これは各省庁がそのノーハウを持っているわけでございまして、第一義的には各省庁でこれまでやっていたことで、私はそれをさらに進める必要は、今、人事管理の面でおっしゃいましたが、若干はあると思いますが、基本的には国家公務員でありますから、その場所だけにとどめるということがなかなか難しい面もありまして、なお検討する必要があると思います。  ただし、第二義的に、今おっしゃいましたように総合性であるとかあるいは計画的にやる、こういったようなことを考えますと、今後各省庁の間で連絡をして勉強させてみたい、かように思っております。
  236. 杉浦正健

    杉浦委員 その点ひとつよろしくお願いをいたします。  それからJICA、OECF、海外経済協力基金等々、政府の影響力の強い実施機関、重要な役割を負っている実施機関が多数あるわけでございますが、そういう機関を拝見しておりますと、官庁の出向者が幅をきかしておりまして、プロパーがちょっと逼塞しておるというようなところが見えるわけでございます。私の思い過ごしであれば結構でありますけれども、このプロパーの採用、学卒を採用して幹部にまで育て上げるというローテーション人事がどうも確立していないのじゃないかという感じを受けるわけでございます。官庁からの出向を抑制するということとあわせまして、この点について適切な対策が必要であると私は考えておりますが、これは外務大臣の御見解を承りたいと存じます。
  237. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘の点が非常に重要な問題だと思います。私どもは日本の国際的な責任を果たすためにODAの予算をふやしていく、そういう中で予算金額の伸びとそれから専門のプロパーの員数、これがアンバランスになっておりまして、やはりこれから充実したODAを実施していこうと思えば、必要なプロパーの養成というものが不可欠の条件であろうと考えております。
  238. 杉浦正健

    杉浦委員 以上、人的側面についていろいろ申し上げましたが、民間にかなり人材がいるわけであります。私は、官の足らざるところは民間の方から人材を登用して、なかなか民間は離したがりませんけれども、補充してやっていくというのも 一方法かと思いますので、その点、あわせて御検討賜れればと存じます。  時間がございませんので、最後に一つだけお尋ねして質問を終わりたいと存じますが、ODAの事業は国民の血税によって行われる、多額の血税によってなされる事業になるわけであります。これからも国民に対して理解を求める、国民に事業に参加してもらうということが必要になってまいると思うわけでございますが、その際、一番大事なことは、やはり教育の場でODAの実情を教え、本当に一生懸命みんな、例えば経済協力隊なんか行ってやっておりますから、そういう実情を幼いころから教え、そのODAの必要性理解させる教育が大事ではなかろうかと思うわけでございます。例えばカナダなどでは副読本をつくって義務教育期間中に教えておる。教科書を見せてもらったことがありますが、大変立派なものであります。そういったような義務教育の面でODAを重視するということが必要だと思いますが、文部大臣の御見解を伺いたいと思います。  関連いたしまして、時間がございませんので、やはり教育に関してでありますが、国際化時代を迎えるに当たりまして、日米の経済摩擦とか文化摩擦とかいろいろ言われているわけでありますが、やはり基本的には、私は民族と民族、人と人とがお互い理解し合うということが一番大事だろうというふうに思うわけであります。  教育の分野におきまして、特に我が国は長い間島国でございましたから異民族との接触の機会も少のうございますし、語学も不得手であります。そういった意味で、私は、持論でございますけれども、現在、中学、高校で、中曽根内閣時代に発足いたしました青年英語教師招致事業というのがあります。今年度千八百人、アメリカ、イギリス等の国々から青年を迎えて全国に配置しているわけでありますが、この教師を中高で、中学校一万一千校、高校五千五百校ございますが、各校一名は最低置くということが必要ではなかろうかと考えておるわけでございます。ざっと概算で計算いたしますと予算は五百億足らずであります。全体の予算からして、将来の日本を考えますとやる価値のある事業だと思いますが、文部大臣の御見解を伺いたいと存じます。  つけ加えまして、この事業に現在招致しております青年は欧米中心であります。私は、アジアから、アジア地域に英語を母国語にしている国がございますので、そこの国々から優秀な青年を日本の教壇に立たせる。これは、若干日本人の中にはアジアをべっ視した風潮がございますので、向こうの国にとっても大変重要な意義を持つことだと私は考えておる一人でございますが、そういうお考えはないかどうか。  実は、フィリピンに一昨年参りました際に大使館とお話しいたしたのですが、例えばフィリピンでございますと、ソフィア大学という大学がありまして、あそこでは一番優秀な私立大学だそうでありますが、そこの優秀な青年が失職をしておる、職につけない人が多い。優秀な青年は幾らでも送れると大使館の方は言っておられたわけでありますが、例えばそういうことを今後検討していただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか、文部大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  239. 石橋一弥

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。  今のお答えの前に、国公立大学にODAの経済協力科を設置してはどうかということ、それから、国際開発大学を外務省がやっているが知っているかということ、先ほど質問に答弁いたしてありませんでした。外務省が国際開発大学の設置の構想を持っておりますことは十分承知をいたしております。この件につきましては、この充実に意を用いていく所存であります。  それから次に、国公立大学に経済協力科を設置してはどうかということでありますが、経済協力事業に関する教育、研究の内容経済学等の社会科学、あるいは工学、農学など広範な学問分野にわたるものであります。例えば国際経済、地域経済、国際関係論あるいは経済開発論、低開発経済、地域開発論などの授業科目を開設しておりますが、まだ一体的にこのような学科の設置の点までには至っておりません。  それから、学校教育において対外経済協力の重要さを認識させることをやっているのかという御質問でありますが、この点につきましては、例えば小中高校を通じまして社会科を中心に、発達段階に応じて現在実施をいたしております。例えば、小学校六年生あるいは中学の公民的分野あるいは高校の政治経済分野、この各教科書でそれぞれ取り上げて認識を深めるような教育を行っているところであります。ますますこの重要性が高まってくると思いますので、さらに十分の意を用いていきたい、こう考えております。  それから、国際化時代に対応するために中高全部に英語指導助手等を設置をしたらいかがか、そしてさらに東南アジア各国からもいかがかということでありますが、二万何千人という数になります。委員指摘のとおり、大変な予算額であります。現在はいわゆる語学指導等を行う外国青年招致事業として千八百九十四人を招致して従事をさせているところでありますが、順次この事業については拡充を図りたい、こう考えておりますが、なかなかもって適任者の確保、それから受け入れ態勢の整備、なかなか順調に進まない面もありますので、計画的に対処してまいりたいと考えております。  さらに、この事業そのものにつきましては、いわゆるネーティブスピーカーから直接語学指導を受けることによって外国語教育の充実を図ることが目的であります。したがって、今の委員のお話、考えさせられる点がありますけれども、現時点におきましては、アジア地域の青年の招致につきましては、当面はまだ予定をいたしておりません。  以上です。
  240. 杉浦正健

    杉浦委員 以上で質問を終わりますが、私は、遠くはクラーク博士とかあるいはラフカディオ・ハーンとか、近くはライシャワー博士のような例を念頭に置いて申し上げておるわけであります。お互い理解がやはり国と国との間では一番大切でありますので、大いに御推進願いたいと心から希望を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  241. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて左藤君、杉浦君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤静雄君。
  242. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 私は、総理に、政治改革の考え方、基本的姿勢というものをまず最初にお聞きしたいと思っているのです。  このたびの政治改革は、御承知のとおり、リクルート事件から端を発しまして、金の出入りの問題、また金のかからない政治制度、選挙のあり方、そういうものが中心になって今まで論じられてきました。また、そういうことを目標に政治改革を進めよう、そういう方向に進んでいるわけであります。しかし、私は、改革という言葉はあくまで改革です。過去のいろんな制度、過去のいろんなシステム、そういうものを基本にしながら変えていく、これが改革でありますから、どうしてもやはり過去のいろんな問題は残る、それが前進をする、少しでも前進をする、そういうことに私はなってしまうと思っているのです。  今、時代は非常に大きく変わってきました。昔の国会議員は、自分の選挙区に年に何回かしか帰れないような状態でした。それから、交通機関も余り発展をしてなかった。また、選挙区の方々も、そんなにも頻繁に帰ってくることを望んでもいなかった時代でもあります。しかし、今の時代というのは、非常に選挙民と政治家というものが密接した関係にある。また、非常に密接な関係にありながら、いろんな国民の意見も聞いてくる、また我々がやろうとしていることをみんなに知ってもらう、そういう努力が非常に大事な時代になってきました。  そこで、非常に昔と違ってきているにもかかわらず、いろんな政治制度そのものが昔のまま置かれているんじゃないだろうか。その昔のままに置かれている制度のまま改革をしていってもなか なか根本的な改革につながらないのではないだろうか、私はその辺を非常に危惧をしているのであります。  そしてまた、私たちの生活そのものも非常に昔の方々の生活とは変わってきましたね、国会議員の生活が。そしてまた、昔は非常に名誉職的な存在でした。しかし、今は非常に専業化されて、職業政治家としての形をとらなくちゃならない。ですから、昔とは全く政治形態が違い、政治家の生活も違い、そうしているにもかかわらず、制度そのものが昔のままある。ですから、いろんな改革をしてもなかなか前へ進まない。  例えば、総理も言っておられますけれども、将来は小選挙区制に移ろうじゃないかと言っている。そうすると、国民の側から見ると、そう言うのは、何か改革をする方から逃げを打っているのではないだろうかというふうにも映る。ですから、私は、政治改革という言葉じゃなくして、今までの政治制度というものを根本から変えていく、一一十一世紀に向かう新しい政治制度、選挙制度というものを改めてつくり直す、そういう観点から今度のこの問題に取り組まなくちゃならぬと思っているのです。ですから、ひとつ総理考えとしまして、まず今度の政治改革というのは根本的に、私はそう思っておりますけれども、一体どういう観点から取り組もうとしているのか、まずお聞きしたいと思っております。
  243. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘をいただきましたように、政治の改革というものは、やはり思い切って変えていかなければいけない。自由民主党の中でも、リクルート事件の反省に立って、厳しい全党員参加の政治改革推進本部が改革大綱をつくりましたけれども、この中にもいろいろなことが書いてありますが、要は、政治のお金とそれから選挙と、そのことだけについて今法律は出してありますけれども、あれはまだ入り口である、それだけですべてが解決するとは受けとめておりません。  そして、なぜお金がかかるようになったのかというようなことを真剣に省みると、日常の選挙活動とかあるいは選挙のときのいろいろな個人に負担を求められるお金が多過ぎる。じゃ、それをなくするにはどうするか。深いところまで掘り下げて考えたときに、諸外国のやっておりますような、公的な活動に対しては公的な国費の補助がある制度というものもあるではないか。しかしそれでもまだ、それは国費をもらおうというだけのことで、もうちょっと突っ込んだ根本的な解決の問題もあるではないか。いろいろこの改革案に書いてありますけれども、結局、選挙制度というものを抜本的に改革をして、私は、政策論争本位の選挙戦が行われるようになるのが理想だとよく言うのですけれども、選挙のときに政策本位の選挙になるとともに、お金のかからない選挙もあわせて実現をしていかなければならぬ、こう思うわけです。そのためには、選挙制度をもう一回根本にさかのぼって考えてみる。  今の中選挙区制という制度は、先進工業国で余りやっておる制度じゃございません。むしろ、世界の中ではちょっと希有な例になってきました。同じ選挙区で複数の人が同じ政党から出て争うということになりますと、政策本位の選挙というところからやや逸脱するような状況がきょうまで間々見受けられたのではないか、そういった反省がいっぱいあって、選挙制度の根本的な見直しをやろうというのがこの自由民主党の政治改革大綱だと私は受けとめております。  したがいまして、政府としては、これは今選挙制度審議会に選挙区制の問題や政治資金の問題等、抜本的な見直しの御論議をお願いしておるところでありますから、来年三月前に答申をいただきたいと私も行ってお願いをしてまいりましたので、予断と憶測でもってどうのこうの言うことは、今行政府としては差し控えさしていただきますけれども、御議論の中で議員の言われたように、選挙制度というものを根本的に一回変える、改革じゃなくてつくり直してみるぐらいの決意で取り組まなければいかぬとおっしゃいますが、まさにそのとおりでございまして、そのことにつきましても、これは政党間の問題になってまいりますから、よくその辺のところは御議論をいただき、その理想に近づくように御尽力をいただきたいと思っております。
  244. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 私は、今回のこういう問題で政治家と金という問題をいろいろ勉強してみたのです。特に先進国の政治家と金という制度がどうなっているのか、いろいろと比較検討してみました。アメリカもイギリスもフランスも西ドイツも、いろいろ見てみましたけれども、その中で気がついた共通していることは、政治家と金という問題が明確に三つに分類されているということです。それは一つには我々の生活費、これがまず一つです。一一つ目には政治活動費、いわゆる政治家が事務所を持ち、選挙民にいろいろなことを伝えたり、それから秘書を持ち、いろいろな活動をする、いわゆるそういう政治活動費。それともう一つは選挙にかかわる費用、また選挙以前の選挙の準備のための費用、例えば日本の後援会の制度というのは、私たちは後援会を持っているわけでありますけれども、後援会の制度というのは選挙の準備の制度考えればいいんだと思います。アメリカでいえば、キャンペーンを張っていくというか、そういうことだと思いますけれども、この三つにはっきりと分類されております。そして特にアメリカなどは、その生活費というものは非常にはっきりと、国会議員が自分の体面を保ちながら生活をしていく、それは歳費とその他の収入などではっきりとしているのですね。  ところが、日本の今の状態を見てみると、この三つの分類というものがされていない。非常にあいまいになってしまっている。特に政治活動費といわゆる選挙にかかわるもの、後援会にかかわるもの、非常にそれが一緒くたになってしまっている。そこに公私の混同が起きてくる。非常に外国では公私の混同が起きないような仕組みができ上がっているわけです。ところが、日本はそういう公私の混同が起きるようなままになってしまっている。そこに私は大きな問題があるように思うのです。  そこで、まず第一に議員の生活費ですけれども、イギリスの場合は、日本はすぐ英国が民主主義の母国だからイギリスのまねをしたらどうかということがよく話に出るのでありますけれども、イギリスの上院議員というのは歳費はないようですね。名誉職でありますから歳費はない。下院議員も大体日本の三分の一ぐらいです。というのは、職業を認めているからです。何かほかの職業をする。そのかわり国会は、その人の職業を認めているわけですから、国会を夜開く、夕方から開く、そういう状態です。我が国の場合には歳費でもって我々の生活を補わなければならない。できるだけほかの兼職を認めない。大臣になったらみんなほかの兼職はやめるわけでありますけれども、一応議長に対して、歳費の五〇%ですか、以上を超えた場合は議長に報告するという義務は負っておりますけれども、どうも議員が生活をする生活費というものをもっと明確にしないとだめだと思うのです。  アメリカでは歳費と副収入ということをはっきり分けています。そしてその副収入というのは、下院の場合には歳費の三〇%以内、上院の場合には歳費の四〇%以内は認める。そのほか講演などをした場合の謝礼は一回につき二千ドル以内だったら何回してもいい。そのかわり、それは自分の生活をその中でやりなさい。家を建てるのもそうでしょう。車を買うのもそうでしょう。そういうことが非常に明確に日本の場合はなっていない。そこにいろいろな公私混同が起きて、政治資金を自分の生活に使ったりといういろいろな問題が起きたりするわけです。  ですから、もっとその辺の、議員の生活をする、ましてや我々は選挙区での生活と東京での生活がある。私なんか選挙区が北海道一区、札幌を中心とした地域でありますから、自分の本当の生まれたところというのはもっと田舎ですから、田舎の家がある。札幌でも住まなければならない。東京でも住む。生活が三つもある。非常に費用もかか る。ですから、そういうようなところをもっと議員の生活というものをはっきりと収入のシステムをつくってやる。まずそれが大事なことじゃないかと私は思うのですけれども総理考えはどうでしょうか。
  245. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろ政治活動、日ごろの政治広報活動、それから議員の個人としての生活、いろいろな問題があろうと思いますが、イギリスのいろいろな例は、イギリスの文化とかイギリスの国民感情とか社会によって支えられ、つくられてきたものだと思って今御意見を傾聴いたしました。また、日本の場合も、この政治改革の中でやっていかなければならぬものは、おっしゃるように政治家の政治とお金の関係をどう公私をきちっとするのか、透明性をどうするのか、あるいは議員の資産公開によって公私の区別をよりきちっとしたものに法律で決めていくのか、いろいろなことが党の改革大綱にも出てきております。私は、こういったことは党の御主張として国会の中でも大いに御議論を闘わせていただきたい。その佐藤委員の持っていらっしゃる、描かれる目標に向かって一歩でも近づいていきますように、御努力を心から期待をしておる次第でございます。
  246. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 国会議員としての活動はそれぞれの国において随分形が違いますが、一番大きな日本とほかの先進国の国会議員の資金という問題の違いは、我が国はほとんど献金で賄っているということです。ほかの議会制民主主義を採用している先進国で、議員が議員活動費をほとんど献金で賄っている国はありません。小選挙区制を採用している国はほとんど国家が負担をしている。アメリカなんかは相当広い地域でありますから、相当な金もかかる。それもみんな国家が負担をしている。また、ヨーロッパなんかを見てみますと、党が負担をする、そして党に対してまた国家が負担をしていく。そして公人としての議員の活動費というのを支えているわけですね。ところが、日本はほとんど公費の負担というのが通常の譲員活動にない。ですから、ほとんど政治献金というものに頼らなければならぬ。そこにいろいろな間違いが起きてくるわけですね。今回のこうした政治改革をやろうという問題も、その辺を何とかならないかということがどうしても中心になっております。  そこで、ほかの国の状態を見てみますと、秘書だとか交通費だとか郵便料だとか通信費なんというのはほとんど国が持っておるわけでありますけれども、日本の場合には、秘書が二人、それに電話代、交通費の一部、汽車で通っている人たちはそれはみんな持ちますけれども、我々北海道なんというのは本当に一部しか持ってもらえませんけれども、ほとんどの政治活動にかかわる部分が自分で持たなければならない、献金の中からしなければならない。そこを、そういう制度を改めないと、いつまでたってもこういう問題が続いていってしまう、私はそう思うのです。  なぜ日本ではなかなかそういうものが前へ進まなかったか、これはやはり与党と野党の違いなんということも随分言われてきておるのですね。与党の場合にはこれだけ必要だけれども野党の場合は余り必要ないじゃないか。与党の場合には秘書もたくさん必要だし、陳情もたくさんあるし、政治活動もたくさんある、政策をつくることもたくさんある。しかし野党の場合には余りそういうことが必要でないのじゃないのか。こんな違いがあったりして、国会議員全体としてこういうものを取り扱うというのがなかなか前へ進まなかった。これも諸外国に比べて日本がおくれてしまった原因だと思っているのです。そして献金に頼っていた。ですから、こういうリクルート事件なんかが起きてしまう。過去にも何回もこういうことが起きていました。そして、こういう制度を続けていく以上は、これからも私はこういう問題がたくさん起きてくると思うのです。  こういう改善について、総理はどうでしょうか、考えを聞かせてください。
  247. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 まず第一には、一人一人の政治家自身がむだなお金を政治行動に使わないように、あるいは高い政治倫理をみずからしっかりと心に秘めて公正な政治行動を行うということが第一の大前提でありますけれども、それだけではどうにもならないような状況に入ってきておる。そのときに、必要にして十分なとは言えないでしょうけれども、節度ある費用が、いろいろなところから出ておる諸外国の例なんかを参考に引いて、日本の場合にも公の政治活動が公費によって保障されるような制度、仕組みを考えるべきだ。この御指摘は党の改革大綱にもきちっと自民党、お示しになっておるわけでありまして、このことの御議論はさらに一層続けていただきたいと思いますが、そのことだけに頼らないで、もっと進んで考えますと、今の選挙区制度の持っておる欠陥もあるのではないだろうか。  中選挙区制というものから我々が考えていくときに、同じ政党の所属議員が複数で、政策努力以外のことにどうしても足を踏み入れがちになる、それがまた余計な出費につながるということも往々にして耳にしてきた話でございます。今度の公職選挙法の寄附禁止によって、そういったことは自粛、そして自粛だけでは効き目がないときは罰則をつけてでも禁止していくという法律の姿かたちになってきたわけですけれども、やはり選挙区の姿そのものの中に、今まで反省して出てきたような、お金が必要以上にかかっていくという現実をなくしていく努力もあわせてしなきゃならぬわけでありますから、お金のかからない選挙、政策論争で争うことのできるような選挙のあり方、こういった選挙制度の根本までさかのぼっていろいろ改革をすべきいいときだと私も思います。  政府としましても、これらのことの重要性を踏まえて、選挙制度審議会に抜本的な御検討をお願いしております。来年三月までには答申をいただくようにこの間もお願いをしてまいりましたけれども、いろいろな角度からの御意見を集め、特に政党間でいろいろと御議論願うことも大切な問題だと思いますので、国会におけるそういった問題の真剣な御討議と適切な結論を心から期待させていただいております。政府もできるだけの御協力と努力をさせていただきます。
  248. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 今総理も、金のかからない選挙というお話がありましたけれども、先ほど申し上げました三つ目の分類の選挙のあり方ですね。金のかからない選挙といっても、どうしてもある程度の資金は必要ですね、選挙をやるためには。それを調達をしなくちゃならない。  先ほど申し上げましたとおり、我が国では自分ですべてを調達をしなくちゃならぬ。公費負担制度はあります。ありますけれども、それはほんのわずかな部分です。ほとんど自分で調達をしなくちゃならぬ。ここにも一つ大きな問題があるわけですね。ほかの国々では、小選挙区制を採用しているような国では全部党が持つ。ほとんど個人が持たない制度になっています。アメリカなんかは、自分が集めるのじゃなくして、PACという資金を集める団体がある。そこが集めて、そしてそれぞれの議員に渡していく。ですから、自分ではそういう集める努力をしなくてもいい。ですから、直接自分が金というものに対して集める努力をしてないようです。努力というか、しなくてもいいことになっているのですね。ですから、選挙のあり方、総理も今、小選挙区制の方向に行かなくちゃだめだというお話がありましたけれども、そういう方向に行って、政党本位の選挙をする、政党本位の選挙をすることによってむだな金を使わなくなる、そういうことには当然なりますから、ぜひともそういう方向に行かなくちゃならぬと思っております。  最後に、総理、その小選挙区制に移行する前に、国会決議に沿って議員定数の見直しをするという、記者会見で一回お話をしたことを報道されたのを私見たことがあります。定数是正は当然多くの二人区の解消、六人区の解消という問題につながるものであります、私は六名区でありますけれども。そうしますと、選挙区の線引きを変えるという形になりますね。そうしますと、一番困る問題は、選挙民が一番困るのです。今二名区の解消、六名区の解消でもって線引きを変えていく。そして数年たって小選挙区が導入されて、また線引きが変わっていく。一番困るのは選挙民です。ですから、私はやはり、国会決議という問題はもちろんあります。国会決議は尊重しなくちゃなりません。しかし、国民の迷惑というか、選挙民のこともよく考えながらこれは対応しなくちゃならぬと私は思っているのです。小選挙区を早くするのならば、一遍にそっちの方向に行ってしまう、そして小選挙区の線引きをしていく、私は、かえってその方がいいような気がするのです。そういうことを考えながら、今度の選挙制度の改正というものを考えるべきだと思うのですけれども総理のお考えをお聞かせ願いたいと思っています。
  249. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その角度の問題につきましては、私は、まず第一に国会決議というものがあって、国会決議を尊重して二人区、六人区を直す努力をするということは、各党皆さんでお決めになった基本でありますから、政府といたしましては、それは重いものだとまず受けとめております。  それから、選挙制度審議会にお願いをしておりますのは、政策本位の選挙ができるように、そしていろいろと抜本的な改革も考えてお願いしたいということを言っておるわけでありますから、予断と憶測でもって私が今、こうだああだということを断定的に申し上げることは、これは差し控えさせていただきますけれども、いずれにしましても、そういった問題を全部頭の中に入れて、そして選挙制度の抜本的改革はしなければならぬものだ、それをしないと今の改革、入り口に到達しておる少しだけの改革だけでは、これは根本的な改革にならないんだということから議論を深めていきたいと思いますが、これは最初に申し上げたように、事は国会に関する問題であり、各政党の皆さん方の十分なお話し合いによって適切な結論が得られますように、政府としてもこれには御協力をし、努力をしていきたいと思っております。
  250. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 終わります。
  251. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、井上喜一君から関連質疑の申し出があります。佐藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井上喜一君。
  252. 井上喜一

    井上(喜)委員 私は、参議院の選挙に関連をいたしましたことを中心に御質問をいたしたいと思うのでございます。  まず最初は、農政不信についてでございます。  参議院選の結果を見ておりますと、私まだ十分分析したわけじゃございませんけれども、いわゆる農村部におきまして我が与党が惨敗をしているような感じがいたすわけでございます。私は、農村部といいましても、それがすべて農政関係が原因だとは思わないわけでございまして、もろもろの原因がありましょうけれども、農政不信ということもその敗因の一つだというふうに考えますし、また、新聞等におきましてもそのように取り上げているように思うわけでございます。農家あるいは農村に住んでおります人たちは、私は、言ってみれば日本社会の安定勢力じゃないかというふうに考えるわけでございまして、今でも多くの方が自由民主党を支持をしていただいていると思うのでございますが、過般の選挙におきましては、残念ながらある程度の方が野党の方に投票されるという、こういう結果を招いたわけでございます。政権政党であり続けるためには、私は、何としてもこの農業、農家なりあるいは農村地域に住みます人たちの支持を引き続き得ていかなくちゃいけない、そんな感じがするわけでございまして、そういうような立場から質問をいたすものでございます。  この農政不信、さまざまあろうと思うのでありますけれども、この農政不信のよって来ります原因、あるいは農政不信そのものに対しましてどういうように受けとめておられるのか、これは農林大臣と海部総理にそれぞれお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  253. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 農政不信という問題につきましては、私どもも厳粛に受けとめておるところであります。米を初めとするところの農産物の価格の引き下げが行われた、またオレンジ自由化の政策的な決定も下された、いわゆる短い間に急激な変化が起きてしまった、将来どうなるのだろうかな、そういうふうな不安な気持ちを駆り立てることになってしまっている。また同時に、農業に対する農業外からの批判もあって、農業者が切り捨てられたのではないか、こんなような受けとめをされたのではないか。  このようなことから、私どもは手順を尽くしたつもりであっても手順が尽くされなかったんだ、このような認識の上に立ちまして、私自身みずから農業者の方々から直接生の声を、どんな考え方でおるのか、どういう気持ちでおられるのか話し合いをして、そして酌み取っていくことがまず大事なことだな、このようなことで行動をいたしておるところでございます。
  254. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は所信表明のときに、戦後の食糧不足の時代から土を耕し続けて国民のために頑張られた農家の皆さんの行為に対する感謝の気持ちで農業というものを見なければならぬということを最初に申し上げました。それは、いろんな経過はございましたけれども、例えばお米の自給力一つ、だんだんだんだんと変化がある。それは国民全体の食生活の変化というものによって変わってくる面もございました。  それで、私は、昔たしか一年一人が百五十キロぐらいの消費量のあったお米が、このごろ七十二キロになり、それもまた下向きになっておるという話を聞きますときに、ああ、みんながお米をもっと食べてくださったら、むだとは言いませんが、食管会計の方のお金もほかの方へ回すことができるだろうし、農家の皆さんも希望が持てるようになるだろうと思って、学校給食の米飯、現場へ行って食べてみたり、あるいはもし朝茶わんに二杯ずつ余計に御飯を食べてもらえるようになれば、生米五十グラムという計算でやったって、一億二千万倍の三百六十五掛けますと、茶わんに二杯でざっと二百万トンという粗っぽい計算が出てきますが、まさか国民皆さんの食生活をそこまでどうのこうのと言うわけにもいきませんでしょうし、非常に移動する嗜好の変化の中で、どのようにして農家の需給と生産とを、長期見通しを立てて、希望を持っていただくようにしたらいいか。これは農林省で今その問題について作業中だといいますから、これについてもきちっとしたものを打ち立てて、希望を持ってもらえるようにしなければならない。  また、農家で後継者が少ないというお話も聞きます。なぜ少ないのだろうかといろいろ調べてみますと、やはり私どもが初めて国会に出してもらったころは農業基本法という法律が世に出たときであって、都市と農村との格差の是正、都市と農村との所得の格差が随分あるのはやっぱりこれを埋めなきゃならぬというようなことが先輩方によって熱っぽく議論されておる雰囲気を私は思い起こすのです。けれども、きょう今日、所得は、第二種兼業農家まで含めるとだんだん近づいてきたということになっておるのですけれども、やっぱり農業専門では後継者もままならない。そうすると、若い後継者に魅力のある農村をつくらなきゃならぬ。ということになりますと、生活環境の整備という問題もやっぱり一つはあるでしょうし、同時に、農村に文化をというテーマも出てまいりましょう。いろいろなことを政策努力を重ね合わせながら、そしてまた別に、農家というのは、農業というのはこういう役割も果たしてもらっておるのですよということを、例えば教育の場とかあるいは農業白書とかいろんなものでわかりやすく国民皆さんにお知らせするようにするとかいうようなあらゆる施策、あらゆる努力を糾合して、農村にまた夢や希望や若い方が魅力を持ってもらうような、そして政治も大切にその農村を見詰めながらいろいろな政策をしておるのですという努力を重ねていくことが大切だ、このように考えております。
  255. 井上喜一

    井上(喜)委員 今、総理と農林大臣の方からそれぞれお答えをいただいたのでありますけれども、確かに農業問題はいるんな問題がありまして、 当面の問題に対応しなくちゃいけないという、そういうこともよくわかるのでありますけれども、しかし、農業のような性格の産業につきましては、何といってもある程度長期の見通しというものが要ると思うのでございます。そういう見通しなしに急激に現実が変わってまいりますと、何とはなしに不安になってくる、あるいは不信感ができてくる、こういったことじゃないかと思うのでありまして、私はこの農政の信頼回復の一つとして、第一歩としてはやはり長期の見通しをつくっていくべきじゃないかと思うのであります。  中身に何を盛るかということでありますけれども、もちろん土地利用、土地がどの程度必要なのかとか、あるいは作目別の需要と供給関係がどうなるのか、国内の生産はどうなり輸入はどういうぐあいになっていくんだろうか、こういうことでありますとか、あるいは地域別の経営形態なりあるいは経営規模のような、そういうようなものも入ってくるのじゃないかと思いますし、またさらに、それらを誘導していくといいますか、そういう目標に向かいましての誘導の手段といたしましてはおおむねこういった政策手段を使うんだというようなこと、そういうことを盛り込んだ長期見通しというのが必要になってきているのじゃないかと思うのでありまして、今いろいろと検討されているように伺っておりますけれども、大体どういう中身のものをつくるような検討がなされているのか、その辺のところをお聞きをいたしたいと思います。
  256. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 今、井上先生がおっしゃるとおり、やはり将来の見通しというふうなものを持った中で農業を営んでいただくということが大事なことでありまして、そのような意味から、そういう長期見通しを検討していく上においてもやはり課題があると思うのであります。  国民生活の食糧消費の実態というのも多岐多様になっておるところでありますから、そういう需要に合った生産体制をつくっていくということも大事なことでありますし、今先生お触れになられましたとおりに、いかにして生産性の向上を図っていくかというふうなこととか、あるいはどうやって担い手を育成していくかとか、あるいは、今日までもいろいろ議論がございましたけれども、労働力の高齢化、そういうふうな問題に関しまして、いわゆる後継者対策の問題も含めて、そういうふうな方々の農地をどう担い手に結びつけていくか、構造政策の改善の問題も含んでのことでございますけれども。そして今日、なかなか、平場はいろいろなことをやっていけるけれども、中山間地域というところが多様な政策を講ずることが難しいのだ、いわゆる中山間の地域の農村なり山村、そういうところにそのそれぞれの地域地域の資源を生かしながらどうやって活性化を図っていくか、そんなようなところを課題考えながら、二〇〇〇年を目標年次としての需要なり生産なり、そういう長期見通しを打ち立てていきたい、こんな考え方でおるところでございます。
  257. 井上喜一

    井上(喜)委員 米につきましては、もう既に本会議の方でも議論になりましたし、あるいはこの委員会の方でも取り上げられると思うのでございますけれども、念のために確認をしておきたいのでありますけれども、米については自給という基本政策で進んでいくのだ、そのように了解をいたしているわけでございますが、それでよろしいわけでございますか。
  258. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 おっしゃるとおり、国会でも決議をしていただいておるわけでありますから、その趣旨を体し国内産で自給する、この基本的な方針を貫いてまいりたい、こう思っておるところであります。
  259. 井上喜一

    井上(喜)委員 農家の農政不信に関連することといたしまして、農業あるいは農産物の対外調整の問題があろうと思うのでございます。  今、ガットのウルグアイ・ラウンドにおきまして、問題の分野につきまして精力的な新しいルールづくりが行われていることは御承知のとおりでございまして、その中で農業というのも大変重要な分野として交渉が進められているわけでございます。交渉の期限も一九九〇年でありますので来年に迫っているわけでございますけれども、今までどういうような議論がされてきて、大体どの辺まで来ているのか、それから大体いつごろをめどに取りまとめが行われるのか、そういう事務的なことにつきましてまずお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  260. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業交渉につきましては、先生御承知のとおりに、いわゆるウエーバー等例外的に認められておるようなものも、いわゆる農業貿易に関してすべて総合的にひっくるめて議論をしながら、新しい農産物のルールづくり、貿易秩序を策定していくことが非常に大事なことだ、こういうふうな認識でおるわけでございます。  そのような中で、今申されたとおりに、ウルグアイ・ラウンドは来年末までに交渉が完了するわけでございまして、今年四月にウルグアイ・ラウンド全体を調整する貿易交渉委員会が開催されまして、今後の交渉の枠組み等の合意が成立をいたしたわけであります。いよいよ本格的な交渉が開始されるということになりました。これに基づきまして本年の末までに各国がそれぞれの交渉分野について具体的な提案をする、こういうふうなことになっておるわけであります。  私どもといたしましては、今申し上げましたとおりに、この四月の中間合意に基づきまして、いわゆる食糧安全保障というものを含むところの貿易政策以外の要因も議論の対象となる、このようなことが盛り込まれたわけでございますので、これを踏まえまして、食糧安全保障あるいは国土の保全なりあるいは環境の、自然の保全なりといった農業が果たしておるところの大変重要な役割を主張をしながら交渉に臨んでいきたい、こういうふうな考え方でおるわけであります。  それで、九月の農業交渉グループ会合におきまして食糧安全保障等に関する我が国の基本的な考え方を提示をいたしました。そして年内にはさらに詳細な提案を提出すべく今検討を進めておるところであります。今後とも参加各国の理解を得ることができるように全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  261. 井上喜一

    井上(喜)委員 ウルグアイ・ラウンドで検討されておりますのは、単に農産物の貿易ルールということだけではなしに、各国の農業政策の調整が行われているというふうに承知をいたしておるわけでございます。つまり、各国の農業政策の大きな枠組みが決められる、そういうような可能性もあるんじゃないかと私は思うのでございまして、非常にこれは重要なラウンドだというふうに考えております。  先ほども米につきまして御答弁をいただきましたように、米については自給をしていくんだ、こういうお考えでありますけれども、当然のこととして、ウルグアイ・ラウンドの農業交渉におきましてはそういったことが貫徹されていくんだろう、こういうように期待をし、またそのようなお言葉ではなかったかというふうに思うのでありますけれども、なかなか交渉事項でありまして、いろいろな問題があろうとは思うのでありますけれども、交渉の見通し等について、もう少し大臣、突っ込んだ所信といいますか、そういうものをお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  262. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 九月の交渉グループ会合に提示をさせていただいた考え方につきましては、各国が持ち帰っていろいろ検討する、さらに今年末に私どもから詳細に基本的な考え方を提示するというふうなことの予定をいたしておるわけでありまして、もちろん今先生申されたとおりに、私どもといたしましては不退転の決意であらゆる努力をしてまいりたい、こういう気持ちを持っておりますということを申させていただきたいと思います。
  263. 井上喜一

    井上(喜)委員 外務大臣に確認をいたしたいのでありますけれども、おわかりのとおりの状況なんでありますけれども、ともかく各国それぞれ別の提案をしておりまして、関税の撤廃でありますとか、補助金の全廃でありますとか、価格支持制 度の全廃等々提案している国もありまして、なかなかこの最終の決着までに大変なことだろうと思うのでありますけれども、ぜひ外務大臣におかれましても、今農林大臣が御答弁になりましたような方向での御努力をお願いいたしたいと思うのでありますけれども、外務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  264. 中山太郎

    ○中山国務大臣 農産物自由化の問題につきましては、極めて我が国の食糧安全保障の点から見ましても重要な問題でございます。その点を含みまして、農林水産省と十分協議の上、全力を尽くして交渉に当たりたい、このように考えております。
  265. 井上喜一

    井上(喜)委員 次に、私は、土地改良事業の負担金、土地改良事業といいましても特に国営土地改良事業の負担金について御質問をいたしたいと思うのであります。  昭和四十年前後から始まりまして今日まで続いております事業といいますのは、共通いたしまして大変事業期間が長くなっている、あるいは事業費が大変増高しているというような特徴があると思うのでございます。個々の事業によりまして無論若干の違いはあろうと思うのでありますけれども、大体共通した原因があろうと思うのでありますけれども、まず、その事業費が極端に膨らんできている、あるいは事業期間が予想以上に延びてきているということについての理由を事務当局の方からお聞きをいたしたいと思うのでございます。
  266. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 土地改良事業の事業費単価の増高の要因につきましては、事業ごと、地域ごとにいろいろ事情が異なるわけでございますけれども、一般的に申し上げまして、オイルショック等の社会経済情勢の変化によりまして労務費、資材費が高騰したというようなこと、それからまたダムとか頭首工の安全性の要請等に伴いまして整備水準が向上したというようなことがあるわけでございます。そのほか、事業によりましては、用地交渉の難航とかまた水利調整の難航とか、そういう形で事業が長期化して金利がかさんだというようなところもあるわけでございます。
  267. 井上喜一

    井上(喜)委員 実は国営土地改良事業、私の選挙区の方にも二つ大きな事業がございます。加古川西部地区というのと東播用水地区というこの二つでございまして、いずれも私が先ほど申し上げましたようなことに該当する国営事業でございます。非常に典型的なものだと思うのでありまして、その一つの加古川西部地区を例として私申し上げたいと思うのでありますけれども、当初の計画といいますのは工期は四十二年から四十八年ということであったのでありますけれども、四十二年から五十九年に変わり、今は四十二年から平成二年度、つまり来年度完成をする、こういうような状況に変わってきているわけでございます。また、事業費につきましても、当初五十四億円、約五十五億円でありますけれども、これはもちろん四十一年の単価でありますが、五十五億円弱の事業費が順次変わりまして、最終的には、六十二年の単価でありますが三百九十四億円、こういうぐあいになるだろう、こんな予想でございまして、これはもう何倍になりますか、五十五億が大体三百九十四億になるわけでありますので、非常に大きな事業費の増高だと思うのであります。  これだけ期間をかけておりますので状況の変化がございまして、例えば受益面積につきましても、当初四千八百五十ヘクタールありました受益面積が漸次減りまして、現在では三千八百四十九ヘクタールぐらいになるだろう、こんな予想でございます。約千ヘクタールぐらい減るだろう、こんな状況でございます。  こういうことになりましたのも、今構造改善局長から御答弁がありましたように、これは石油ショックというようなこと、あるいは農地転用等が増加していった、そんなようなことが影響していると思うのでありますが、さらに、この間米の生産調整が漸次強化をされてきているわけでございます。稲作転換対策とかあるいは水田利用再編対策等々名称は変わりましたけれども、いずれもこれは米の生産調整でございまして、現在七十七万ヘクタールもの減反が行われている、こんな状況になってまいっておりますし、また米価を見ましても、今から二十年前は大体六十キログラム八千円ぐらいなんですね。今大体一万七千円程度だと思うのですが、十年前ですと今よりも若干価格が高いわけであります。  そういう状況で米の需給状況なり価格の状況が大きく変化をしてきた、こういう中で農家が負担金を払わないといけないわけでございますけれども、今従来の国なり県の補助金がありまして、その残余を地元が負担をする、こういうことでいきますと、十アール当たりの地元の負担額が、これは平成二年度の段階でありますけれども、約三十万円と言われております。それから、これを何年間かかかりまして償還をしていくわけでございます。従来の方法でありますと、二年据え置きで十五年の償還をしていくわけですね。したがいまして、その間金利がついていくわけでありまして、それを含みますと、大体一年間に十アール当たり三万一千円を負担をしていく、こういうことになるわけでございます。総償還額、つまり金利を含めました総償還額が五十万一千円、約五十万円ぐらいになる、こんな状況になっているわけでございまして、御承知のとおり、農家の負担といいますのは受益の限度において負担をする、こういうことが法律上定められているわけでありますけれども、そういった観点からいたしますと、なかなかこういう従来のルールによります負担ができない、こういうことになるわけであります。  私どもの方は、米の方は、生産費は大体十アール当たり十一万五千円ぐらいですね。それから全体の粗収入が十四万円ぐらいでありまして、したがいまして、大体所得が十アール当たり二万五千円ぐらいのところであるわけであります。そういうことを念頭に置いていただきますと、この負担金の重さということがよくおわかりいただけると思うのでありますけれども、今まで農林省も計画償還制度その他で努力はいただいておるわけでありますけれども、到底今までのようなところでは償還ができないような状態だとも思うのでありまして、これは相当思い切ったことをやっていただかないと、この負担金問題というのは解決しないと私は思うのであります。私は今、加古川西部の事例を申し上げましたけれども、全国かなりのところでこれは見られるところだと思います。  これは確かに昭和四十年前後から今までの期間の、いろいろなことが起こりました、そういう事情によって事業の中身が変化をしてきまして、したがいまして、この農家の負担が大きくなってきたわけですね。だから、こういった事業につきましては特別の対策をやはり考えていかなくちゃいけないと私は思うのでありまして、どういうようなことをお考えなのか、ひとつお聞かせをいただきたいし、またその努力をしていただきたいと思うのであります。  あと、自治大臣の方も、これは県が第一次的には国に償還をいたしまして、県が農家の方に賦課をしていく、こういうルールをとるわけでありますけれども、ひとつ自治省の方におかれましても思い切った特別対策を、特別措置をとっていただきますようにお願いするのでありますけれども、それぞれ大臣の御所見を賜りたいと思うのであります。
  268. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 先生の御地元の土地改良事業における負担金も相当重くのしかかっておるというふうな話を承りました。  そのような問題に対処しなきゃならない、このようなことから、御承知のとおりに、国営事業におきますところの償還期限を延長するとか、あるいは耕種別に償還をしていくとか、いわゆるその償還方法の改善とかというふうないろいろ施策を講じてもきておるわけでありますけれども、しかしそういう中において、とても今のお話のとおりに償還困難ではないか、こういうふうなところもあるのではないか。このようなことから、何しろ全国で今土地改良事業を実施されておりますのは五千五百カ所、こういうふうなことでありますか ら、農水省にプロジェクトチームを設けまして、実態どうなっているのかまず調査をして、そしてその上でしっかりと実態を把握して対策をしっかりと確立をしてまいりたい、このような考え方でおるところでございます。
  269. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 土地改良事業における農家負担、受益者負担という考え方からいえば、これは農家が負担すべきものであって、地方団体が負担すべきものではございません。しかしながら、今井上委員指摘のように、農業行政が変化し、農業が大変厳しい情勢の中に立たせられ、また、農家の皆さんには減反という厳しい国の政策による要請等が、協力等が求められておる中で、農家経済は大変厳しい状態になっております。  今農林大臣からもお話がありました。鹿野農林大臣、大変、農家負担を軽減させるために汗を流しておるようでありますから、国のその措置を見ながら、これに合わせて地方自治体もできる限りの協力をするように努力してまいりたいと思います。
  270. 井上喜一

    井上(喜)委員 農業の状況、大変難しい状況でありますし、また農政不信というようなことが言われているようなそういう状況でございまして、今大臣からそれぞれ御答弁をいただきましたけれども、ひとつこの負担金の軽減につきましては、農家が負担できますように、農家が負担金を負担できる限度にまで軽減していただきますように、思い切った措置をとっていただきますことを希望をいたすものでございます。  あと質問を予定しておりましたけれども、時間が参りましたので、これで終わります。
  271. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて佐藤君、井上君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鉄三君。
  272. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鉄三でございます。私は、リクルート事件の反省から政治資金集めのパーティーに厳格な規制を加える必要があると考え、その点を主として中心に質疑を行いたいと思います。  総理は、我が党の石田委員長の代表質問に答えられまして、政治資金パーティーには行き過ぎが批判されている、このように述べられました。そしてその規制の必要を述べられたと思います。  そこで伺いたいのですが、具体的にどのような点が行き過ぎとして批判の対象とされていると認識をされているのか、総理の御所見を伺いたいと思います。
  273. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 このことに関しましては、この数年来といいますか、回数が非常に多くなってきた。それは主催する議員の数も多いわけですから、それに対して対応をされる財界の側からも多過ぎるではないかという御批判が出ておったことは議員御承知のとおりでございます。同時に、リクルート事件に端を発した政治不信の中には、政治と政治資金とのあり方、特に公私の混同あるいは透明度が低いとかあるいは多額のものが動いておるではないか、いろいろな御批判がございました。私は、そういったことすべてを謙虚に受けとめて、できるだけそういった世論にこたえていくような政治改革をするということが政治不信を少しでも取り除いていくためのなすべきことである、このように考えましたので、あのような御答弁をさせていただいた次第であります。
  274. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今総理も言及されましたが、本年六月十九日に経団連など経済五団体と自民党の四役の方との懇談会の席上で、五団体側から十項目にわたる政治改革の提言がなされたと伝えられております。そのうち政治資金パーティーの部分に関しましては、将来は原則禁止を念頭に置いて制度改革を考えるべきだが、当面の措置として政治家個人や発起人形式はすべて禁止し、政治団体主催であっても党の承認を要するとすべきだ、このように述べられ、その提言のペーパーは我が党を含む各党にも届けられております。この提言のうち、政治家個人や発起人形式はすべて禁止すべきだという部分について総理はどのようにお考えになりますか。
  275. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま御指摘の我が党四役に対する十項目の御批判はそれぞれに厳しく受けとめなければなりませんが、やはりこの中にはいろいろな前提等もございまして、国からの補助の問題とか選挙制度の思い切った見直しとかいろいろなことも書いてあって、その中の一環として確かにおっしゃったとおりのことが書いてございます。自由民主党の中でもこれらのことについては皆厳しく受けとめておりまして、もう既に、この財界の提言をもらう前だったと思いますが、今年一月に、自由民主党としては自発的にパーティーに対する批判等に関して自粛をしようという自粛申し合わせを党でいたしまして、閣僚とか派閥のパーティー開催は自粛をするということをきちっと党で決めておりますし、また、最近の党の政治改革大綱の中においてもいろいろ決めておりますが、去る国会自民党が提出いたしました政治資金規正法の改正案をごらんをいただきましても、特定パーティーは政治団体で開催するということや、批判の一つであったろうと思われる、青天井という言葉はよくないかもしれませんが、どこまでいっても制限なしというのではいけませんので、パーティー券の購入限度を厳しく百五十万円というふうにきちっと決めた案等をつくって国会提案をしておる、こういうことでありますから、我が党の姿勢もここににじみ出ておる、このように受けとめております。  済みません、今我が党と言いましたが、自由民主党のと言いかえさせていただきます。
  276. 冬柴鐵三

    冬柴委員 加えましてこの提言の中には、企業としてはパーティー券の購入は一回十枚、一枚三万円として三十万円以内とするようなことが付言をされたように伝えられておるのですが、その点はいかがでございましょうか。
  277. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはもう財界側の御意見として受けとめなければいけないと思いますが、同時に、この提言の中には政治の改革に対する御提言もありまして、これは自由民主党にとって厳しいことかもしれませんが、派閥中心の金集めじゃなくて政党中心の金集めにしなさい、政党に対する献金はどんとするからというようなことも含めて、政治資金の要るものは要る、けれども集め方その他について考えてほしいという発想の一環として十枚ということがここに出てきておるわけでありますから、前後すべてをよく読んでみまして、私どもはその真意も理解しながら、また自由民主党においてもいろいろと御討議が繰り返されていくだろう、このように思っております。
  278. 冬柴鐵三

    冬柴委員 自治大臣にお伺いしたいと思います。  自治省は従来、政治資金パーティーの収入に関しまして、一定の限度を超えた場合には寄附として政治資金規正法上の規制を受けるとの行政解釈を示してこられました。その正確な内容を御説明をいただきたいことと、これは現在もなお維持をしておられるのかどうか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  279. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 細かいことでございますので、政府委員から答弁させます。
  280. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 パーティー券の購入についてでございますけれども、そのパーティー券の価格が社会常識の範囲内であり、出席を前提として購入されるものである限りは、パーティーと対価関係にあり、政治資金規正法上の寄附には該当せず、これによって得られた収入は事業収入である、こういうふうに従来から解釈しておりまして、現在もその解釈を維持いたしております。
  281. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今読み上げられたところを考えてみますと、寄附とされない範囲の積極的要件というのは、いわゆる出席を前提とした妥当な枚数を超えている部分のみであり、消極的要件としては、枚数は妥当であっても一枚の価格が非常識であってはならない、そういう受けとめ方をいたしておるわけですが、このような行政解釈は具体的にどのような場面で生かされて、そしてその行き過ぎの歯どめとされてきたのか、自治省にその点を伺いたい、このように思います。
  282. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 本来、パーティー、政経文化パーティーとか、これはロッキード事件の反省の中に 立って、むしろ当時は、これは新しい政治資金のあるべき姿ということで、特定の企業や特定の人から多額の資金をいただくのでなくて、不特定多数の人からわずかずつ政治資金をいただく、むしろ模範的な集め方というようなもので出発をいたしました。したがって、これは千人の方に千枚のパーティー券を買っていただいて、千人の方に集まっていただいて、仮に一万円のパーティー券で、経費が六千円かかって四千円のものが残って、これで千人の人たちがある政治家に対して、一生懸命国のためにまじめに働いてくださいということで、これはすばらしい発想ということで出発したものであります。ところが、その後だんだん時間がたつに従って、一社で何十枚とか何百枚とかいうことで、今示されたように、これはちょっといろいろな批判が出てくるようになったわけですから、根本はやはり節度を超えてはならないということ。  政治資金そのものに対する私の考え方がそうですけれども、やはり政治資金を集めることが悪いのではなくて、これは国民皆さんが、なるほど、ああいう姿であの程度のものであり、しかも、あれだけ国のために働いているならばいいだろうとお許しをいただけるように、きれいに集め、きれいに使っていく。できる限り特定の企業、特定の人に偏らないで、不特定多数の者が望ましいということであればこれはいいわけですけれども、その節度を超えたというような批判の中から、今冬柴議員が御心配になっておられるような問題等が出てまいりましたので、そういう反省の中に立って、党は党としての一つの基準を設け、また、今後は立法措置等でそういうような誤解を受けないような方向に向かって、節度あるパーティーであるべき努力を進めていかなければならない、こう考えております。
  283. 冬柴鐵三

    冬柴委員 事務局で結構ですが、先ほど示された行政解釈がどのような場で過去に生かされたか、生かされてなければそれはそれでいいのですけれども、その点について端的に短く、自治省にお尋ねをいたしたいと思います。
  284. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 先ほど申し上げましたのは政治資金規正法の解釈としてそういう解釈をとっておるということでございますから、いろいろパーティー等をなされる場合に、そういう解釈を踏まえてやっていただくことを期待しておるということでございます。
  285. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に移ります。  法務省刑事局長伺います。自治省の右の解釈によって寄附と認められた部分、いわゆるパーティー券を購入した以上の部分につき政治資金規正法に基づく届け出がなされていない場合、同法違反として検察権が行使されるべきだと私は解するわけですが、そのような取り締まり事例が過去にあったかどうか、その点についてお尋ねをいたします。
  286. 中尾栄一

    中尾委員長 端的に短く。
  287. 根來泰周

    根來政府委員 政治資金規正法の違反につきましては、人員の統計はとっておりますけれども内容についてはとっておりませんので、確たることは申し上げかねますけれども、余りそういう事例は私の経験から見て聞いたことはございません。
  288. 冬柴鐵三

    冬柴委員 自由民主党は平成元年五月三十日に、いわゆるけじめ、すなわち、「「リクルート問題」に対するわが党の措置」というものを決められました。その中で、常識の範囲を超えたパーティー券の購入を受けた人についても道義的政治的責任がある旨を定めたと伝えられているのですが、総理から、そういう定めがあったかどうか、御確認をいただきたいと思います。
  289. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 党が定めましたけじめ案の中に、そういった表現がありました。
  290. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ここで、いわゆる常識の範囲を超えたパーティー券の購入の意味ですが、具体的に総理はどのようにお考えになりますか。
  291. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは、具体的に何枚以上とか幾らということについては極めて定めがたいといういろいろな問題がありましたし、当時までの、お金が非常にかかるという状況の中で、事業収入として届け出をしながらパーティーをやってきたわけでありますが、それはいささか甘えがあったとするならば、そこにどうして限度を設けたらいいだろうかということを自由民主党でもいろいろ御議論をいただき、上限を決めて、これに従っていこうということを決定をいたした次第であります。
  292. 冬柴鐵三

    冬柴委員 さて、総理御自身のことで恐縮ですが、総裁選出馬に当たりまして、リクルート社から五年間にわたって総額千四百四十万円の資金提供を受けたこと、そのうち七百九十万円が政治資金パーティー券の購入という方法によったことなどを明らかにされたと思います。  そこで、問いが若干細かくなって恐縮ですが、六十一年五月二十九日に三万円券を百枚、三百万円、翌六十二年七月十日には、三万円券百枚、やはり三百万円をそれぞれリクルート社が購入したとされたと思いますが、この二つのパーティーの開催の主体はどこであったのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  293. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の最初の六十一年の方ですが、これは海部俊棚君の永年在職議員表彰祝賀会事務局というのが主催者になりました。六十二年の方は、二十一世紀を目指す政経講演会事務局というのが主催者になりました。そして、今御指摘のような件を含めて事業収入がございましたので、それを私の政治団体に移して報告をいたしました。
  294. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私の常識に照らしますと、一夜のパーティーに一企業が三百万円、百枚の券を購入するということは、到底出席を前提とした購入とは解することができないわけです。まあ常識の範囲を超えたものと思うわけですけれども、リクルート事件という大事件を我々経験をした現在、静かに顧みまして、この三百万円は常識に照らせば大きかったと考えられるかどうか、総理の現在の心境をお尋ねしたいと思います。
  295. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 券をいろいろとお願いしますときに、うちの事務所から、出席を前提としてとかあるいは他の人に引き受けていただくとかいうようなことを余り細かく詰めないでしてきたのではないか。私は、当時いろいろなことは全く知らない中でやったことですが、私の責任でありますし、きょう現在に立って冷静に考えますと、自由民主党から出されておりますパーティー券の大口購入限度額というものを超えておるわけでありますから、私は、みずからを今後は厳しく戒めて、注意を払っていかなければならぬ問題であると謙虚に受けとめております。
  296. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今もう先におっしゃったわけですけれども、自由民主党のけじめの中では、「社会常識を逸脱した関係が新たに発覚した場合、その内容により、さらに厳しい対処を求める。」というふうに書かれておりまして、それは、事件発覚以前のものでもそのように対処するということが書かれているわけでございます。  ところが、我が党の委員長の代表質問で、総理、あなた自身の問題を含めいかなる反省をされましたかという問いには、リクルート事件発覚以前のことで通常の政治資金だったと思ったと答弁をされましたけれども、今の御答弁とは若干ニュアンスが違うわけですけれども、その点もう一度お尋ねをしたいと思います。
  297. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 石田委員長にお答えしましたのは、私は事件発覚前の通常の政治資金と思って受け取っておりますと。ですから、それは特に事件との関係は全くなかったと私も思います。ただ、今先生からじきじき、今の次元で冷静に考えてそれはどうであったかという重ねての御質問になりますと、最近のいろいろな状況や党の出しております上限案なんかから見ますと、みずからを厳しく戒めていかなければならない、今後は注意をしてまいりますと率直に申し上げたわけでございます。
  298. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私どもは、リクルート事件という大きな問題で、もうこのような問題が今後起こらないように国会審議をしていかなければならない わけでございますけれども自民党から提出された政治資金規正法の一部を改正する法律案は、政治資金のパーティーの規制を一部盛り込んでおります。先ほど総理の御答弁にもありました。したがいましてその要旨を、事務局からでも結構なんですが、簡単に、自民党案のパーティー規制の部分だけで結構ですが、説明をいただければありがたいと思います。
  299. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 便宜私から説明をさせていただきます。  自民党案では、一つは、収入金額二千万円以上のものを特定パーティーといたしまして、これについては政治団体で開催するものとしております。第二番目に、六十万円を超えるパーティー券の多額購入者の氏名を明らかにすることといたしております。第三に、百五十万円を超えるパーティー券の購入を禁止することとしております。四番目に、公務員の関与を禁止することとしております。  このように承知いたしております。
  300. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党も本院に政治資金規正法の一部を改正する法律案を提出をいたしておりますが、その中には、政治家個人または発起人形式のパーティーは禁止する、このようにいたしております。この案は、さきに掲げた経団連等の五団体提案と同一でありまして、この点が従来政治資金規正法の資金の入りというものを不透明にしていると言われている点でございます。自民党案、先ほど御説明いただきましたが、この点については手をつけていられないように解するわけでございますが、ぜひこれにつきまして、政治資金の透明度を高めるという、そのような立場から総理のお考えを伺っておきたい、このように思うわけでございます。
  301. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは自民党の案として、従来の、今までの制度の中でいろいろな議論をいたしまして、少なくとも透明度を高める必要がある、ただ、急激に理想を追って全部だめになってもいけないという現実に立脚した議論皆さんそれぞれのところで闘わせながら、少なくとも透明度を高めるために前進しようというのでこの案ができたものと、私も当時は政治改革推進本部の行動隊長という立場にもあって、この皆さんの熱心な御議論も肌で感じておりました。そういった意味で、これは一歩前進をさせて、透明度を高めていくことが政治改革の入り口である、こういうふうに思っておりますので、率直に申し上げさせていただきます。
  302. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、我が党はパーティー券の収入も政治資金規正法上はすべて寄附金として扱うべきだという考えに立っているわけですが、この自民党案によれば、パーティーの年間の開催回数の定めが、制限がありません。それから、パーティー収入を政治資金規正法による年間総量規制の枠外に置いているというふうに思うわけでございますけれども、この点について総理のお考えをお示しいただきたい、このように思います。
  303. 浅野大三郎

    ○浅野(大)政府委員 総理のお考えについての御質問でございますが、便宜私の方から、従来なぜパーティー収入を寄附収入と考えてないかということを申し上げたいのでございますが、これは、あくまでもやっておりますことが事業としてやっておりますものですから、そこに一つの対価性があるだろうということで事業収入と解釈してきておったということでございますので、いろいろ制度を組み立てる場合に、理論的な問題としてその辺をどう考えるかということもあろうかとは思う次第でございます。
  304. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは自民党案ですから、役所の人が説明するということは、まあ便宜していただいていますけれども、イレギュラーだとは思いますけれども。  それでは自民党の総裁として、年間開催回数を制限をしないということ、それから規正法の年間総量規制の枠外に置いているという、その点について総理、総裁としていかがお考えか。私は、改革するというのであれば、それは甚だ不徹底ではないかというふうに思うわけです。一社が一個人に出せる限度というものは法定されているわけですけれども、それと別のルートで、パーティー券購入という形であれば、ひどい事案になりますと、昨年リクルート事件で明らかになりましたけれども、わずか一カ月の間に八千万円のパーティー券が購入されているという事例があります。そういうことを考えますと、一企業が出し得る政治資金の総量規制というものを規正法がしているのに、それと別ルートでそういうものが出せるということはおかしいと思うのですけれども総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  305. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 政治改革、これは各党共通して国民の前で努力をしておるところでありますけれども、今冬柴委員から御質問等の問題については、自由民主党がさきの国会で政治資金の透明度を高めるための法案等を議員立法で出してございます。したがって、これらの問題は各党協議して進めていただく問題でございます。政府の方は、選挙制度審議会を再開いたしまして、ここで来年の三月末までに答申をいただくことになっておりますけれども、今のような問題は、せっかく自由民主党で提案しておるのでありますから、この法案審議等を通じてぜひ冬柴委員の高邁な御意見等もどんどん出していただいて、各党協議してこれを進めていただきたいと思います。
  306. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、これは政治家みんなが反省をしてこういうものを正していかなければならないという立場で聞いているつもりでございます。このような巨額の政治資金が無税で、しかも自治省への届け出もなされずに授受をされてきたという驚くべき事実がリクルート事件を契機に明らかにされることにより、国民の政治に対する信頼を大きく失墜しているということは事実でありますから、総理も所信表明の冒頭に「政治への信頼の回復こそ内閣の最も緊要な課題であり」「政治改革の前進に誠意を込めて努力を続け」ますと、こういうふうに決意を披瀝されたと思うわけでございますので、総理・総裁としてこの点の改革については熱意を持って取り組んでいただきたいというふうに心からお願いをしたいと思います。  会社の行う政治資金の献金の適否を重要な争点とする判決例の中に、最高裁判所の昭和四十五年六月二十四日大法廷判決があります。この判決の要旨は、結論的には、会社による政治資金の寄附は、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認める限り、会社の権利能力の範囲に属する行為である、このような要旨になっているわけでございますけれども、よく内容を読んでみますと、その中には、取締役が会社を代表して政治資金を寄附することは、その会社の規模、経営実績その他社会経済的地位及び寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてなされる限り、取締役の忠実義務に違反するものではない、このようにも判示しているのでありまして、明らかに取締役のなす政治資金の寄附について忠実義務との関係でかなりの制約を課している点を見逃してはならないと思うわけでございます。  この法理は、会社が政治資金パーティーのパーティー券を購入する場合にも当然その射程距離とするものであると私は考えるわけでありますが、この判決の判示する「諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内」を一律抽象的に定めたのが政治資金規正法による会社、団体による寄附の総量規制の規定に当たると私は考えているわけでございますけれども、法制局長官に御意見を伺いたいと思います。
  307. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま委員指摘昭和四十五年六月二十四日の最高裁判決は、いわゆる八幡製鉄事件と呼ばれるものだと承知しておりますが、その判決におきましては「取締役が会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたっては、その会社の規模、経営実績その他社会経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、右の範囲を越え、不相応な寄附をなすがごときは取締役の忠実義務に違反するというべきである」、こういうことを判示してございます。もう御承知のとおり、これは会社の内部におきます 会社と取締役との間の関係につきまして、商法の二百五十四条ノ三に規定いたします取締役の忠実義務に違反するかどうか、こういう点について述べられたものと考えております。  他方、政治献金の総量規制に関します政治資金規正法の二十二条の規定は、政治資金の集め方に節度を持たせますために、政治資金の授受を量的な面におきまして公法上規制したもの、かように考えておりまして、前に申し上げました会社と取締役との間の民事上の規制を定めました商法の規定とは異なる観点から定められたものと考えております。  したがいまして、お尋ねのように、これがいわゆる「諸般の事情を考慮して、合理的な範囲」というものを一律的に定めたのだ、そういう意味でその一律に定めたのが総量規制に当たるのだ、こういうところまでは言えないのではないか、かように考えております。
  308. 冬柴鐵三

    冬柴委員 政治団体の数についてももう少し考え直さなければならないのではないかというふうにも思います。  恐縮ですが、総理は政治団体を幾つ持っていられるのですか、総理自身ですね。
  309. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自治省へ届け出ているのは三つでありましたけれども、指定団体というのをつくらなければならぬので、昨年つくりましたから、今活躍しておる——活躍という言い方はちょっと取り消します。今あるのは四つであります。一つが指定団体です。
  310. 冬柴鐵三

    冬柴委員 昭和五十八年の十一月二十八日に総理の後援会である誠友会がある会社から五十万円、そして同じ日に新政治経済研究会というところは同じ会社から百万円というふうに入金されたということを総理自身報告をされたと思うのですけれども、こういうふうに二つに分けると、現実には百五十万という政治献金がその日に行われているわけですが、これが届け出に出てこない、そういう面があると思われるわけでございます。また、恐縮ですけれども、その千四百四十万という金額も、総理自身が言われなかったら届け出の中では出てこなかったと思うのですね。  そういうことを考えますと、政治献金の透明度を高めるという観点からは、後援団体というものは一つにするか、あるいはそれは結社の自由というのもありますから幾つもあってもいいけれども、少なくとも政治資金の届け出は名寄せをして、総額がこの政治家は一年間にこれぐらい入って、そしてまたこれだけ出ていったんだということがわかるような名寄せをした届け出、そういうことが必要ではないかと私は思うわけですけれども、その点についてのもし御意見を伺えたら幸いなんですが、よろしくお願いしたいと思います。
  311. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のようなことは私が調査をした結果出てきましたので、そのとおり正直に公表したわけでございます。そういうルールが目の前にあったというところで厳しさを欠いたんだろうと思いますが、今後は、自由民主党の案の中にも、私が見せてもらうと、政治団体の関係政治家の名前は全部これを公表する、ここまで書いてございますから、それはおのずから全部の額がわかるようになってくるのではないか、これは一歩透明性に向かって前進ではないか、こう考えます。
  312. 冬柴鐵三

    冬柴委員 国税庁にちょっと聞いておきたいのですけれども、パーティー券を買い受けた方の会社が、一般的に企業会計がどのような経理処理をし、税務申告はどのようになされるべきと考えていられるのか、また現にどうなされているのか、その点についてお伺いをしていきたいと思います。
  313. 岡本吉司

    ○岡本政府委員 お答え申し上げます。  会社が政治家とか政治団体からパーティー券を購入した場合の法人税法の課税上の処理でございますけれども、一般的には寄附金を支出したものとして処理しているものと思っておりますけれども、法人がそのパーティーに出席することが、例えば同業者との親交を深めるとかそういった交際費的な感覚で処理、つまり交際費としてその場合に処理されたならば、それはそれとして我々は認めているところでございます。したがって、会社の方は寄附金か交際費かいずれかで処理していると思います。課税上それがその後どうなるかといいますと、それぞれに限度計算がございます。交際費は交際費、寄附金は寄附金でそれぞれ限度計算がございまして、一定限度を超えますと超えた部分が課税になってくる、損金扱いにならないということでございます。
  314. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、消費税に移らせていただきます。  憲法八十六条には、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」これは、毎年の収入と支出についての予算国会において議決するという単年度編成主義といいますか、そういうことを明定していると思うわけでございます。  政府は、消費税導入に関しましていろいろなことを事由として、立法理由として従来挙げてこられました。そのうちでも、高齢化社会の到来とそれへの対応の必要性を述べていられると思うのですけれども、その点について、まず大蔵大臣から立法理由を端的にお伺いしたいと思います。
  315. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 本委員会におきまして何回か同趣旨の御答弁を申し上げましたが、改めて繰り返して申し上げさせていただきます。  昭和五十年代に入りましてから、国民の政治に対する御要望の中に、次第に税の改革を求める声がふえてまいりました。それは、シャウプ税制施行以来、次第に経済情勢の推移の中で日本の税制というものの中から直接税に対する負担が重い状況が生まれてきておったからであります。そして、それは中堅サラリーマン層を中心とした勤労所得に対する重税感、圧迫感というようなもので、国民に陰うつな気持ちを与えるようになりました。また、個別物品税の持つさまざまなひずみ、ゆがみといったものが、これは税体系の中における矛盾としても誕生をしてまいりました。さらに、法人税等が外国に比べて高くなったというような問題も御承知のとおりであります。そして、昭和五十年代の後半になりますと、国民の政治に対して求めるそのトップに税制の改革というものが出てまいりました。  そうした中から税制についての見直しの論議がスタートをし、そしてさまざまな曲折の中で所得税法人税、住民税の大幅な減税を一方で行いますと同時に、そしてこれによって例えばサラリーマン重税感を和らげるといったことをとると同時に、個別物品税廃止することにより、一方では物品税の持つひずみ、ゆがみといった問題点、さらには個別の商品のねらい撃ちという批判を海外から受けておりましたものに対する答えも出したわけであります。そして、それにかわる新たな所得消費と資産とのバランスをとる中におきまして、消費税を採用してまいりました。  しかし一方においては、これは高齢化社会の到来というものを考える中におきまして、今からお互いがお互いを支え合う仕組みを用意していくことによって、将来高齢化がますます進んでまいりました段階においても特定の階層に負担がかかり過ぎないというための仕組みを加えておるということであります。
  316. 冬柴鐵三

    冬柴委員 高齢化社会の到来に備えるというその意味は再々述べられたところでありますし、今も確認させていただいたところでありますけれども、それでは厚生省に伺いますが、高齢化社会のピーク、それはいつなのか、そのときには六十五歳以上の人というのは全体の日本の人口に占める割合は何%ぐらいを予想しているのか、現状と比較して述べていただきたいと思います。
  317. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 御説明いたします。  いつから高齢化社会、こういうふうに確定したものではございませんが、高齢化社会へ向かって我が国が進んでまいるわけでございます。厚生省といたしましては、高齢化社会に対するビジョンを先般つくったわけでございますが、二十一世紀初頭からを目指してそういうビジョンを出しております。
  318. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いやいや、御老人の人口に対する割 合を聞きたかったわけです、現状とそれからピーク。
  319. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 まず、人口に対します六十五歳以上の方の比率を申し上げます。  平成二年、現在が、六十五歳以上の全人口に対します割合でございますが、一一・九%。これに対しまして二〇〇〇年、平成十二年でございますが、一六・三%の構成割合でございます。さらに二〇一〇年、平成二十二年、六十五歳以上の方の割合二〇%でございます。それから平成三十二年、二三・六%でございます。
  320. 冬柴鐵三

    冬柴委員 高齢化社会に備えるということは、今伺ったように徐々に、二〇〇〇年から二〇二〇年をピークとしまして、二〇二〇年二三・六%というそれに向けて高齢化社会への財政需要が増加すると思われるわけですけれども大蔵大臣、そのように理解してよろしいですか。
  321. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の御質問方向がもう一つはっきりつかめませんけれども、仮に税制改正前の税制でありましたならば、勤労者に対する税の負担というものは、到底若い働き手がたえられるものにはならなかったでありましょう。そして、今こうして税制改革を行いましても、やがて高齢化が進めば進むほど、やはり国民に御負担を願う度合いというものはいや応なしに少しずつ高まっていくことにはなってまいります。しかし、その限度を臨時行政調査会の答申においても、租税社会保険料双方の負担を足しましても現在の西欧、欧米諸国の負担よりもできるだけ低いところに抑えるようにという指示も出ておるわけでありまして、そうした方向に向けて制度そのものを見直していく必要があろうかと思います。
  322. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私の尋ねているのは、高齢化社会が到来をいたしますと、それに対応する財政支出というものが大きくなるかどうかということをお尋ねしたわけですが、当然に大きくなると思うわけでございます。したがって、それに備えて消費税をこのたび導入をされたと思うわけですけれども、そうすると、財政需要に従って消費税率というのは上がっていくということを前提にされているのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  323. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 少なくとも所信表明に際し、また本委員会におきましても海部総理は、みずからの内閣の間において税率を動かす意思はないということは明言をしておられること、御承知のとおりであります。そして、臨時行政調査会、ただいま引用いたしましたその御意見の中でも、できるだけ社会保険料にウエートをかけていけという御注意もございます。しかし、結果として将来、租税での対応をお選びになるか、あるいは社会保険料での対応をお選びになるか、これは国民の選択によることでありますが、今すぐに消費税率を動かそうというつもりもありませんし、我々は今からこの準備をしていくことによって、急激な負担の増を招かないで済む状態を早くつくっておきたいということであります。  本委員会で先般御論議がありました中に、いわゆる働き手の数の総体的な御論議もありました。そして、それほど大きく高齢化のピーク時になっても働き手の数としては減らないという御意見もありました。しかし、人口の高齢化が進めば進むほど医療にかかる負担はふえてまいります。また年金の支出もふえてまいります。こうしたことを考えていけば、今からその準備をしておくことは、私は我々の世代の責任であると考えております。
  324. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私が伺っているのは、短いスパンのことじゃなしに、二〇二〇年を見通したときに我々がこの消費税をいいか悪いかという判断をする場合に、将来例えば税率が一〇%ぐらいになるということが予想される場合と、やはり三%でいくんだというふうに考えた場合とでは、結論が異なってくるのではないか。その点につきまして、高齢化社会に備えてということになれば、二〇二〇年には今一一・九%の高齢者が二三・六%、ほぼ倍増するわけですから、その需要を賄うために、例えば福祉目的税というような考え方も示されたことがありましたけれども、もし消費税にそのようなものを頼るとするならば、税率は三%でおさまらないことはもう全くはっきりしているわけでありまして、そのような論議がなされぬままに消費税がいいか悪いかという議論がされることはフェアな議論ではない、このように私は思います。  したがいまして、二〇二〇年という高齢化社会が到来することが予想されているわけですから、その財政需要をこの消費税で賄うということになれば、これは当然に税率は今よりは上がる。そういうことが当然の前提になっているかどうかということを伺うわけでありまして、今海部内閣の時代に上げないということは、もうこれは一つの公約としてお受け取りできるわけですけれども、それを超えた二〇二〇年、どうなるんだろう、こういうことを国民の前にお示しをいただきたい、このように思うわけでございます。
  325. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ちょうど委員と私は、想定されるその二〇二〇年ごろには八十を過ぎておりますから、生きておりますかどうかは必ずしも確定をいたしません。しかし、その時代を想定いたしますとして、逆にその想定について委員にお尋ねをすることが許されるなら、その時点における所得税あるいは法人税あるいはその他の税率を固定されるのでありましょうか。また、社会保険に係る各種の保険料は、現在と同じ負担でいくという推計でありましょうか。あるいは消費税税率は動かないとして、社会保険料のみでこれに対応するということでありましょうか。そのお示しをいただく方向によりまして試算は幾通りもできようかと思います。  要は、その時代における、我々の世代が本当に高齢化のピークを迎えた時点において支えていただくその時期の国民が、税を選択をされるか、保険料を選択をされるか、あるいはその時代までの間に我々が高福祉高負担を求めるのか、中程度負担で中程度の福祉を求めるのか、そうした選択によってその組み合わせは変わるものではないでしょうか。私はそう考えております。
  326. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この点についてお伺いしたいわけですけれども、いわゆる単年度の編成、予算というものは平成元年度なら平成元年度の歳入と歳出を国会で議決をして、それに従って収支が行われるわけでありまして、まだ到来していない高齢化社会、これに備えて今それの準備をしておくということが憲法のこの八十六条の規定との間でどう整合するのか、その点について大蔵大臣のお考えをお示し願いたいと思います。
  327. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 眼高手低という言葉がございます。目は高く手は低く、あるいは理想は高く実行は着実に、いろいろな言葉がございます。我々が国政を考えていく場合に、予算をも含みましてやはり遠い将来を眺めながらそこに向けて一歩ずつ進んでいく努力をするのは当然でありましょう。予算においても同様な精神は私はあるものと心得ております。
  328. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、まだ到来していない高齢化社会に備えて今消費税をこの段階で導入をするということにつきましては、大きな疑問を感じているわけでございます。それは憲法学者も指摘しているところでありまして、それは今後国会で十分論議をしていきたい、このように考えております。  総理は所信表明演説におきまして、消費税について「見直すべき点は思い切って見直してまいります。」このように述べていられます。この部分についての正確な意義を御説明いただきたいわけですが、先ほども同僚議員がお聞きをいたしたと思いますけれども、この見直しというのは、よもやその見直し作業だけを指すわけではなく、見直した結果現行の消費税法の一部改正という法案を提出されることを含むと思うわけですが、その点を御確認させていただきたいことと、思い切って行うという言葉は、その範囲が相当広範囲に及ぶと私は解するわけですけれども、その点につきましてはいかがでありましょうか。
  329. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今大蔵大臣とのいろいろな御意見も聞いておりましたけれども高齢化社会 が来るということはこれは確実にわかっておるわけでありますし、それから、満百歳以上の方がことしは三千七十八名に、三千人の大台にもう既に達していらっしゃる。こういう現状から見ますと、今まだ現実の問題じゃないからこれをほっておくというわけにはまいりません。  今委員は二〇二〇年ということで御議論なさいましたが、私は二〇一〇年というところのことをちょっと調べてみたのですが、今のままでいきましても大体二百兆から二百四十兆ぐらいの予算措置が要るようになってくるのです、いろいろな面で。そうしますと、そういった高齢化時代に今のままのまた直接税、間接税のあり方でほっておきますと、中堅サラリーマンの税収に対する負担率は二倍近くになるということも、これはあくまで計算上でありますが、なってくるわけです。そうすると、もう重税感どころではなくなるでしょうから、今のうちに徐々にそういったことに対して軟着陸できるように対応できるような、そんな対応をしていかなければならぬというので、高齢化社会が来るのだから、そしてそれは諸外国が経験したものよりももっと足並みが速いわけですから、そのときになって、いやあと言って慌てたのではこれはいけませんから、今からできるだけ準備をして、それに安定的な税収を確保できて、そして安心して老後が暮らせるようにしていかなければならぬという立場でいろいろ議論をしておるわけであります。  ですから、どうぞそういう意味での消費税であるということも御理解いただきたいし、また消費税そのものを黙って導入してほかのものは全然手を触れないというのではなくて、やはり中堅サラリーマンの減税の問題とか、法人税の問題とか、あるいはゆがみやひずみが非常に多かった物品税に対する配慮とか、すべての人々が世の中を支えるという実感に立って、広く薄くみんなで支える世の中をつくるという、そういう意味の公平感というものも根底にある税制をつくっていこうということでお願いしたのですから、消費税だけを取り上げてこれをどうのこうのという議論は、私は全体を踏まえてやはりやっていただきたいということをお願いしますとともに、私どもはそう思ってお願いをして恒久税制として一たんはスタートしておる税制でありますけれども、謙虚に国民皆さんの声に耳を傾ければ、いろいろな世論調査の結果見直しをすべきであるという声も非常にたくさんございます。私たちは、そういった問題を踏まえて定着させていきたい、御理解を願いたいという気持ちがありますから、そのためにはいつまでも、いいと思った、いいと思っただけではいけませんから、これはひとつ思い切って見直しをしなければならない。  それは独断であってもいけませんし、予断と憶測だけで物を言うのではまたいけませんから、いろいろな立場の御意見を聞く。政府政府税調で今きちっと見直し作業をしてもらっておりますし、党は党の方の税調で今作業していただいておる。各省は各省でそれぞれいろいろな消費者団体の代表とか福祉団体の代表とか、いろいろな方々の御意見を聞きながら、思い切って見直しをするときにはどこをどうすることが国民皆さんの声にこたえることになるのか。税の施行状況等も慎重に見きわめながら対応しておるわけでありますから、それを見た結果、こうしたらいいという私たちも確信を持って国民皆さんにお願いしなければならぬわけですから、それをお示しするときまでには少し時間がかかりますけれども、これは思い切って見直してやってまいりますから、どうぞ、まあ言葉の「た」か「て」かだけじゃなくて、こちらはもう決意として御理解をいただきたい、定着させていきたいというつもりで初めから申し上げておりますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  330. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に率直にかつ熱心に御答弁いただいたことに敬意を表しつつ終わりたいと思います。ありがとうございました。
  331. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて冬柴君の質疑は終了いたしました。  委員会散会後、直ちに理事会を開会いたします。  次回は、明十八日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会