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1989-10-16 第116回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月十六日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 小里 貞利君 理事 越智 伊平君    理事 佐藤 信二君 理事 谷川 和穗君    理事 中島源太郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       上村千一郎君    小渕 恵三君       大坪健一郎君    大野  明君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    近藤 鉄雄君       左藤  恵君    佐藤 文生君       田澤 吉郎君    田中 龍夫君       高鳥  修君    野中 広務君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    細田 吉藏君       村山 達雄君    井上 普方君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    新村 勝雄君       辻  一彦君    野坂 浩賢君       木内 良明君    坂口  力君       冬柴 鉄三君    水谷  弘君       川端 達夫君    楢崎弥之助君       岡崎万寿秀君    児玉 健次君       柴田 睦夫君    中路 雅弘君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 後藤 正夫君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 石橋 一弥君         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         農林水産大臣  鹿野 道彦君         通商産業大臣  松永  光君         運 輸 大 臣 江藤 隆美君         郵 政 大 臣 大石 千八君         労 働 大 臣 福島 譲二君         建 設 大 臣 原田昇左右君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     渡部 恒三君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      阿部 文男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      斎藤栄三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 志賀  節君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 石井  一君  出席政府委員         内閣審議官   菊地 康典君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣総理大臣官         房管理室長   櫻井  溥君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局審査部長 植木 邦之君         宮内庁次長   宮尾  盤君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  服藤  収君         青少年対策本部         次長      福田 昭昌君         北方対策本部審         議官      鈴木  榮君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁物価         局長      栗林  世君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      田中  努君         科学技術庁研究         開発局長    須田 忠義君         科学技術庁原子         力局長     緒方謙二郎君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         環境庁水質保全         局長      安橋 隆雄君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房長 國分 正明君         文部省生涯学習         局長      横瀬 庄次君         文部省体育局長 前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省社会局長 長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         食糧庁長官   浜口 義曠君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         工業技術院長  杉浦  賢君         運輸省国際運輸         ・観光局長   宮本 春樹君         運輸省地域交通         局長      早川  章君         運輸省航空局長 丹羽  晟君         海上保安庁次長 野尻  豊君         郵政省郵務局長 小野沢知之君         郵政省通信政策         局長      中村 泰三君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 若林 之短君         労働省労政局長 岡部 晃三君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房総         務審議官    木内 啓介君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房長 小林  実君         自治大臣官房総         務審議官    芦尾 長司君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      太田  博君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     野中 広務君   砂田 重民君     伊吹 文明君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君   日笠 勝之君     木内 良明君   金子 満広君     中路 雅弘君   不破 哲三君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     砂田 重民君   野中 広務君     奥田 敬和君   木内 良明君     日笠 勝之君   中路 雅弘君     児玉 健次君     ───────────── 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉成正君。
  3. 倉成正

    倉成委員 先週の十三日にニューヨーク株式が史上二番目の暴落をいたしまして、百九十ドル下げて二千五百六十九ドルになっておりますが、この影響日本株価あるいは円の相場に影響するのではないかと懸念されておりましたけれども、きょうの午前九時十五分現在の東京株式平均株価前週比五百三十八円十五銭安の三万四千五百七十七円八十七銭と大幅に安くなっておりますが、これらの問題を踏まえて、どういう背景があるのか、また今後の日本株価あるいは経済にどのような影響があるのか、もしお見通しがあればお聞かせいただきたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、先週末のニューヨーク株価アメリカユナイテッド航空の親会社でありますUALに買収を提案しておりますグループの資金調達が困難になりました状況をきっかけとしまして、プログラム売り中心にして引け間近に売りが殺到したということから、今委員が御指摘になりましたように、対前日比百九十ドル五十八セント安、六・九%安という数字が出てまいりました。それを受けましたきょうの東京市場寄りつきは、委員が御指摘のような数字でありますけれども、一時期五百三十八円十五銭の下落でありましたものが、今三百三十七円程度まで戻っておりまして持ち直しておるようであります。  これは、株価というものの性格からいたしまして確たる見通しを申し上げることは困難でありますけれども、現在、日本国内を眺めましたときに、企業の収益あるいは国内の空気というものは引き続き好調を持続しておると考えられますし、また、その先週末のニューヨーク株価下落につきましても、米国経済の基調が変化したという状況ではございません。むしろニューヨークにおける個別買収事案に起因するところが大きいものと考えられまして、私どもは、日本株価が大きく落ち込むとは考えておりません。引き続き注意をしながら見てまいりたいと思っております。
  5. 倉成正

    倉成委員 ただいま大蔵大臣から御答弁がございましたけれども、事ほどさように、世界経済は密接に結びついておる、世界のどこかで起こる出来事世界じゅうに何らかの形で影響を及ぼすということは御承知のとおりでございます。すなわち、今日の国際政治経済情勢というのは相互依存関係にある、非常に密接に結びついておる。これは環境問題一つをとってもおわかりのとおりでございます。それからもう一つ、今日の世界政治経済を考える場合に、もし一言でこれを言えということになりますと、変化時代と呼ぶことができると思います。相互依存変化、この二つの言葉が今日の世界政治経済をあらわす言葉ではなかろうかと思うのでございます。  そこで、その世界政治経済における変化の問題としてまず三つほど私は挙げてみたいと思います。一つ東西関係緊張緩和、第二番目は一九九二年のEC統合、それからまた、日本、アジアのNIESの台頭、この三つの項目を挙げてみたいと思うのでありますが、その中で一九九二年のEC統合について、少し私の所見を交えながら御質問申し上げたいと思うのでございます。  私はかねて、日本欧州との関係を緊密化することは、米、欧州日本のいわゆるトライラテラルな関係を安定的なものにする上で非常に重要なことである、また、ひいては世界の平和と繁栄に資するものとの信念を持っております。ちょうど一九七八年、日本国会は超党派で日本EC友好議員連盟を結成いたしまして、日本欧州議会との間の関係を持ってまいりました。そして一九七八年八月、第一回会議をルクセンブルクで行いまして、その後、東京で昨年、第十回会議を行いまして十周年を迎えたところでございまして、この日本国会欧州議会会議には、御列席の海部総理大臣初め関係閣僚、ここに並んでおられる閣僚八名ほど御参加いただいておりますので、十分御承知のとおりと存ずる次第であります。  振り返ってみますと、欧州統合への動きは、かつては御案内のとおり、第一次大戦後の欧州の復興ということを唱えてまいりまして、いろいろな人がいろいろなアイデアを出してまいりました。その後、欧州統合への動きは、欧州石炭鉄鋼共同体、いわゆるECSCの結成によりまして、アイデアの段階を超えまして具体化の一歩を踏み出しました。一九五二年の出来事でありますが、ちょうど四十年後の一九九二年にEC単一市場達成を予定するに至りました。この間、統合への動きは紆余曲折を経験しましたが、今や新しい局面を迎えようとしております。  この数年間のEC日本との関係を見ますと、大きな進展を見ました。長年の懸案であった酒税問題の解決を初めとして自動車税の問題、また自動車医療機器化粧品の分野での基準・認証問題など、多くの問題について改善がありました。また、日本ECとの間の貿易投資も拡大しております。貿易額は昨年往復で七百億ドルに達して、投資累積額は両方向の合計が三百億ドルに上っております。私が特に注目しておりますのは、我が国ECからの輸入が好調に伸びているということでありまして、本年一月から八月にかけての期間について見るならば、日本への輸入伸び日本からの輸出の伸びの約二・七倍を記録しました。この結果、日本の対ECの黒字はこの期間中一兆六千億円と、前年比五・六%縮小しております。  こうした好ましい傾向日本EC双方努力の結集であります。我が国について言いますと、内需主導型の経済運営を図るとともに、市場アクセス改善し、さらに構造調整を推進することによって輸入の増加がもたらされております。他方、欧州においても最近、日本市場重要性に対する意識変革が進みまして、英国のオポチュニティー・ジャパン、オランダの対日アクションプログラムといった対日経済関係発展のためのプログラム欧州側のイニシアチブで出されるようになりました。単一市場の出現が近づくにつれてEC産業界における企業家精神はますます高揚し、日本に対する積極姿勢もさらに拍車をかけるものと信ずるわけでございます。  しかし、今日、日本アメリカとの関係を考えてまいりますと、日本ECとの関係は、ただいま申し上げましたような点では必ずしも満足すべき状況ではないというふうに考えるわけでありますが、日本ECとの関係についてこれからどのように考えていくべきか、また現状認識をどう考えておられるか、お伺いをしたいと思いますが、これは通産大臣でも外務大臣でもどちらでも結構であると思います。
  6. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  今先生指摘のように、最近日本EC間の貿易EC側努力と我が方の努力と相まって輸入が順調に拡大して、日本ECとの間の貿易インバランスが好ましい方向改善されつつあるということは、先生指摘のとおりでございます。我我としては、そういう傾向がさらに好ましい方向に進むように努力をしてまいりたい、こう考えております。  なお、九二年のEC統合に向けて、そのEC統合が真に開かれた市場となって、日本経済にとっても世界経済にとっても望ましい方向に行くように、これからも注意深く見守りながら、主張すべき点は主張して、望ましい形でのEC統合が進むように努力をしていきたい、こう考えているところでございます。
  7. 倉成正

    倉成委員 ただいま通産大臣のお答えがございましたように、日本ECとの関係はよい方向に向かっていることは事実でございます。これを、日本EC双方努力によってさらにEC日本との関係の流れを確固たるものにすることが必要だと考えるわけであります。  ただ、ここで、一九九二年単一市場達成という予定が公にされて以来、いわゆるフォートレス・ヨーロッパ懸念が時に触れて表明されていることは御承知のとおりでございますし、すなわち、市場規模の利益を求めて単一市場を目指すECが外に対して閉鎖的な姿勢をとるようなことがあれば、まさに自己矛盾であり、そのようなことはあり得ないと思いますけれども、このフォートレス・ヨーロッパに対する懸念があることは事実でございます。  それからさらに、ガットとの関連におきまして、EC統合ガット体制とどのように結びつくかということも一つ大きな懸念の材料でございます。これらについて、もし御意見があればひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 松永光

    松永国務大臣 九二年EC統合が成りますというと、先生もよく御承知のとおり、人口では三億二千万、GDPで四兆七千億ドルという世界最大級単一市場ができ上がるわけでありまして、それが世界経済日本経済に及ぼす影響は極めて大きいわけであります。それを日本にとっても世界にとってもいい方向に持っていくために最も大事なことは、先ほども申し上げましたけれども、EC統合、その市場というものが世界に向けて真に開かれたものになるということが一番大事なことだというふうに私ども認識いたしております。  そういうことでありますので、先般サッチャー首相と会談した際にも、またアンドリーセン委員長と会談した際にも、真に開かれたEC統一市場になることを強く要望いたしました。これに対して、サッチャーさんもアンドリーセンさんも、力強い、開かれたものにするという回答をいただいたところでございます。
  9. 倉成正

    倉成委員 ただいまお話しのような方向に行くことを心から期待するわけでありますが、このためには絶えざる対話を進めていくことが必要であるし、また、注意深くECの動向を見詰める必要があると思います。  先ほどお話がございましたが、市場統合を通ずる欧州経済活性化世界経済活性化にもつながるものでありまして、私もEC統合を強く支持するものでありますが、ECが、一進一退はありながらも今日に至るまでの欧州統合、そのモメンタムを維持してきた背景には、二度の大戦を通じて大きな惨禍を経験した欧州国民主権国家という枠組みへの反省があると思うわけでありまして、いわゆる壮大なる実験が今ヨーロッパで行われつつあると認識をしております。したがって、これらの問題については、経済的な面でただいまお話を申し上げましたけれども、これから政治的側面から欧州統合を考えてみたいと思います。  この四十年間に国際情勢も大きく変化をいたしました。ECSC発足の一九五二年当時、欧州人々は、朝鮮戦争のように欧州でも冷戦が熱戦に転化するのではないかとの危惧の念を深めておりました。今日多くの人々は、東西間の緊張は緩和したとの認識を深めるとともに、冷戦構造そのものも変わるのではないかとの予感を持っております。  このように東西関係変化してきた直接の原因は、ゴルバチョフ書記長ペレストロイカやグラスノスチという言葉によって呼ばれるソ連国内体制変革に乗り出し、この目標を達成するため平和な国際関係を求めて、いわゆる新思考外交を展開していることにあります。しかし、こうしたソ連の新しい動き背景には、戦後、米国中心とする西側諸国のとったコンテインメント政策がその大筋において成功し、欧州諸国日本が、第二次大戦の戦禍から立ち直って、今日の経済繁栄達成し得たとの事実があることを忘れてはならないと思います。米国欧州日本ソ連との間にこれほど大きな経済的、技術的格差が生じなかったとしたら、果たしてペレストロイカという思い切った体制改革が始まったでありましょうか、そういう感を私は抱くものでございます。  もっとも、東側における体制改革が始まったからといって、西側体制やイデオロギーが勝利したとか、その正しさが証明されたとか申すつもりは毛頭ございません。そのような安易な結論を急ぐことは、我々が国内に抱えるさまざまな問題から目をそらすことにほかならないと思うからであります。国際情勢は急速な変化局面を迎えつつある、換言するならば不安定な局面に入りつつあると言ってよいでしょう。  今から考えると、従来の冷戦構造には安定的な一面もありました。すなわち、フルシチョフ時代が終わり、一九六〇年代後半に入ってからそうした一面が出てきた感じがあります。戦略核のパリティを背景にして、米ソ間には相手の勢力圏には直接の介入は控えるとの黙契のようなものがありまして、将来に向けて大胆なビジョンは持てないかわりに、現状を維持していけば大事に至らない、単純化して申せばこうした状況があったと思います。  それに比較しまして今日は、未来の青写真を自由に描くことが許されるような気分がある一方、果たしてその青写真に従って建設を進めることができるかという、もしかしたら土台が崩れてしまうのではないか、そんな不安が共存しておるのであります。  ソ連がハンガリー、ポーランドの自主性を尊重し、その民主化自由化の諸施策を容認していることは確かでありましょう。しかし、それが急速に進展し、仮定の話でありますが、ワルシャワ条約条約体制にひびが入ってソ連安全保障影響が及ぶと判断される事態となれば、両国の自主性はどこまで尊重されるでしょうか。ソ連がそうした重大な局面に際してどのような行動に出るのか、もちろん予断の限りではありません。しかし、本来仮定の問題は細かく詰められるものではありません。ただ確実なことは、ソ連安全保障影響ありと判断される事態が生ずれば、東西間の緊張緩和はとんざし、各種の軍縮構造の基盤も消滅するであろうということであります。  不安定要因ソ連国内にも種々存在します。バルト三国を初めとし、ウクライナ、アゼルバイジャン等々幾多の民族問題があります。ペレストロイカのかけ声にもかかわらず、消費物資が不足するなど生活水準が一向に上がらないことに対する国民のいら立ちもあります。保守派からの現政権に対する強い不満も見逃すことはできません。長期的に見て、ソ連国内体制変革は不可避であるとしても、短期的には後戻りの可能性は常に存在すると見ておいた方がよいと思います。  欧州は今日、冷戦の端緒となった欧州東西分割を克服する方向動き出す好機を迎えておりますが、この好機は今まで述べてまいりましたように多くの不安定要因を持っておる。しかも、それは専らソ連・東欧圏の内部に根差すものであります。したがって、外部に位置する米国欧州日本としては、ソ連・東欧の民主化自由化が安定的に、かつ漸進的に行われていくことを歓迎し、かかる方向での変化を助長するため、側面から支援するとの姿勢をとるのが適当と思います。支援の手段としては、消費物資の輸出、民生安定に資するジョイントベンチャー、債務救済、東側の経営者、管理者に対する研修など、種々の形が考えられます。タイムリーな支援は、安定的、漸進的な変化を促す上で大きな効果を発揮するものと確信いたします。  このような観点に立つならば、日本が東欧諸国に対していかなる貢献ができ得るか、また具体的にどのようなことを考えておられるか、御意見を承れれば幸せでございます。
  10. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御指摘のとおり、社会主義圏におきます経済的な矛盾といいますか、生産活動が非常に停滞をいたしておりまして、そのことによっていろいろな政治改革、経済改革が進められておりますが、その行き先ははっきりと確認することがまだできない混沌たる状況であることはお説のとおりであります。政府といたしましては、西側のサミット加盟各国とも協議をしつつ、ポーランドに対する緊急食糧援助を含め、ハンガリー等に対する経営ノーハウの習得のための人材育成等、あらゆるできる限りの協力を各国と協調のもとにやってまいりたい。ひいてはそれが東西関係の安定、発展に通ずるものではなかろうか、このように現在考えております。
  11. 倉成正

    倉成委員 私といたしましては、ただいまの外務大臣の答弁結構だと思いますが、今後欧州東西分断を克服して新しい国際秩序を築き上げていく過程において、留意すべき若干の点を申し上げたいと思いますので、これに対する御所見を外務大臣なり総理大臣からお聞かせいただきたいと思います。  その第一は、緊張緩和が進み、ソ連からの脅威感が薄らぐにつれて、今まで日米欧間にあった連帯感が薄れ、経済的あるいは社会的な摩擦が先鋭化して、各国の利害が正面衝突してしまうのではないかという点であります。外からの脅威が減ると内部対立が表面化する、これはすぐれて人間的な現象と申せますが、それゆえにこそ十分に理性的な対応が必要と思います。対応に失敗して保護主義の台頭を許したり、狭隘なリージョナリズムの興隆を招くようなことがあってはなりません。世界的な大不況でも招くようなことになりますと、米国欧州日本が戦後営々として築き上げてきた経済繁栄も雲散霧消し、それが経済的基盤のみならず政治体制をも揺るがすに至るであろうことは、既に我々が経験したところであります。  日本欧州米国の間の協力は、既に主要国首脳会議やOECDなどさまざまなマルチの場と二国間の協議を通じて強化されております。また、民間レベルにおいてもさまざまな形での交流、意思疎通が図られております。私は、このような米欧日協力体制をあらゆるレベルで強化することが今後ますます重要な意義を持つものと考えます。いかにして各国の利益の衝突に理性的に対応していくか、リーダーシップの発揮が一層求められると信ずるのであります。  次に、安全保障の分野に触れてみますと、ソ連は軍事費を節減し、民生部門に資金を回す必要もあって軍縮に熱意を示しております。ゴルバチョフ書記長は最近、欧州通常兵力削減交渉、CFEを促進し、来年末に欧州サミットを開いてファイナライズすることを提案しました。この交渉を通じてNATOとワルソー条約機構との間で通常兵力の均衡が達成されるならば、欧州安全保障から見て極めて有意義な重要な意義を持つと思います。NATOが結成されてから四十年間、東側の地上兵力の優勢ということが西側人々の不安の種でありました。NATOでは今日に至るまで柔軟反応戦略の是非やアメリカの核の傘のクレジビリティーの問題、最近ではINFなどさまざまな問題をめぐってさまざまな戦略論議が行われてきましたが、そのすべてはソ連の優勢な通常兵力にいかに対処するかとの問題に端を発していたと申せましょう。  欧州における通常兵力の均衡が達成されるとして、それ以後の課題はいかにしてその均衡を維持するかということでありましょう。ソ連は軍縮交渉の結果、兵員、兵器の数を大幅に減らすことになりましたが、今後は、一九八八年の第十九回共産党協議会の決議にあるとおり、質の改善中心課題に据えて軍事力の整備を図ることと思われます。  他方、西側諸国では、緊張緩和の進行と軍縮交渉の進展につれて国防予算の削減を求める声が当然高まるでしょう。しかし、今次のCFE交渉に関する限り、NATOの現在の兵力量をやや下回る水準で東西兵力の均衡を目指しているわけですから、交渉が妥結してもNATO各国の軍事予算の大幅な削減が可能になるかは疑問と思います。したがって、当分の間、通常兵力の均衡維持のための努力が必要になることを世論によく理解してもらうことが必要であると思いますし、この点は日本の場合も例外ではないと思います。  私は先ほどから欧州東西分断の克服という言葉を使ってまいりましたが、それは結局のところ東西両ドイツの分割の克服にほかならないと思います。ゴルバチョフ書記長は、その著書「ペレストロイカ」の中で、東西両独の分断という現実の上に立って欧州の家を建設するような呼びかけ、百年後にどうなるかは歴史に任せようと言っております。確かにドイツの分割を早急に解決しようとしてもかえって混乱を招くばかりであります。しかし、欧州の家について語るのであれば、ドイツについての長期的なビジョンが必要であります。今後東西間の緊張緩和が進み、人や物の交流が活発化するにつれ、ドイツの東西分割をいかに克服していくか、欧州において議論が盛んになるものと思います。  私はこの極めて難しく、極めてデリケートな問題を議論する資格はございません。しかし、あえて一言申し上げるならば、問題を解くかぎは、統合された欧州という枠組みの中にあるのではないか、それがフェデレーションになるのかコンフェデレーションになるのかわかりませんが、単なるNATO、ネーションステートの枠を越えたところに最終的なゴールがあるのではないか、そのような漠然たる予感を持っている次第であります。  そういう意味において、一九九二年に単一市場達成したEC諸国がどのように統合の度合いを深めていくか見守る必要があると思います。これらの点について、特に日独議員連盟の会長をしておられます海部総理、また外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本ECとの間にあっていろいろ御尽力をしてこられた倉成先生のただいまの御質問、私も同感でございました。特にEC統合いたしますけれども、この間来日されたフラニッキー・オーストリアの首相とお話をしておりますときに、ちょうど中立国で東西のはざまのところにあって、東西の軍縮その他について場所を提供したり話し合いを促進したり協力的な関係にあったオーストリアも、一九九二年の欧州統合を見据えてECに加盟したいということを意思表示をされておるわけです。そして、ECがさらに統一された市場として、そして世界の中の重要な役割を担っていかなければならぬということも表明しておられます。  私の方としては、そういったときに、この間来られたアンドリーセンECの副委員長とのお話のときに、どうか域外にも同じような開放体制で自由貿易体制をきらっと守っていくECであってほしいという希望を強く述べましたし、またそんなことを願っておるものではないというお返事であります。  ただ、先生言われたように、日本アメリカの間の関係アメリカECとの間の関係、これは経済面でも政治面でも非常に長い伝統と歴史の中で太いものがございますが、日本ECの間は、いろいろの御努力によって年々太くはなってきておりますけれども、日米関係や米・EC関係と比べると、貿易の面でも政治的対話の面でも、まだ三角形の一辺としては一番弱い面ではないかと思っております。ですから、今後はECに対しても、我が方も言うべきことは言い、ECから聞くべきことは聞く。  先日の税制故止のときでも酒税の問題や自動車税の問題やいろいろございましたけれども、国際化社会の中で日本が果たすべき役割を果たしながら、同時にまた、先生指摘のように、東西緊張の枠組みが緩和されたら、今度は西側でいろいろな緊張の激化が起こったり、いろいろな貿易面のトラブルがあってはいけないという御指摘、そのとおりでありまして、ですから日本輸入努力をし、内需拡大の政策を一生懸命行って、アメリカからの輸入もふやしておりますけれども、EC諸国からの輸入も御指摘のようにふえておるわけでありまして、特にことしの一月から八月までの割合を見てみますと随分ふえております。二けたの伸びであります。そういうようなことをどんどん続けることによって、日本アメリカアメリカECEC日本というこの三角形を政治的にも経済的にも安定した、均衡のとれた太いものにしていく努力を一層続けていって、自由と民主主義と市場経済社会をしっかりと守っていく、日本も一角としてそれなりの対応をし協力をしていかなければならぬだろう、こう考えております。
  13. 中尾栄一

    中尾委員長 外務大臣はよろしゅうございますか。
  14. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今総理がお答え申し上げましたとおりだと思います。  今までECと東ヨーロッパの諸国との間の経済交流はコメコンを通じて行われておりましたが、最近このEC各国の間に経済統合を前にして東ヨーロッパの共産圏の国々と二国間の各種の協定が結ばれようといたしておりまして、まさに新しいヨーロッパの夜明けが近づいていると思っておりますが、私ども日本といたしましても、アメリカ中心西側陣営が協力をしながら新しい世界繁栄のために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  15. 倉成正

    倉成委員 総理並びに外務大臣から御答弁がありましたが、一言、変化の過程にある、変化ということは非常に不安定な要因を含んでいる、したがって絶えず注意深くこの変化を見守る必要があるし、また適切に対応していく必要があるという、ことを申し上げておきたいと思います。  それでは次に、いわゆるボートピープル、難民の問題に触れたいと思います。  いわゆるボートピープルが日本に漂着したのは昭和五十年代からだと思いますが、これがだんだんふえてきたのが五十四年、五十五年、五十六年、五十七年と千名の大台に達しましたけれども、五十八年以降だんだん減ってまいりまして、六十三年に二百十九名という状況でございました。ところが、ことしの一月から四月まではいささか平穏でありましたが、五月以降急速にその難民が、難民と称する人たちが日本に上陸してまいりまして、一体これからどうなるのだろうという非常な不安を国民も持っておるわけでございますけれども、これらのボートピープル、難民が急速に日本に上陸した背景というか理由というものはどういうところにあるか、お聞かせいただきたいと思います。
  16. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 最近、特に昨年の暮れぐらいからベトナム難民が日本のみならず東南アジアにも急増いたしました。この原因はおおよそ二つと考えられております。一つは、ベトナムの経済情勢が極度に悪化してきたこと。それからもう一つは、既にそういった状況のもとでベトナムのボートピープルが次第にふえ始めておりましたけれども、これに香港その他東南アジア諸国が、このままではとても収容し切れない、こういうこともありましてスクリーニングの制度を導入する、こういった体制を整えつつあったわけでございます。したがいまして、そのようなスクリーニングが実施される前に、このボートピープルで外へ出よう、そういったことからの駆け込みの出国といったものがあったのではないかというふうに考えられております。
  17. 倉成正

    倉成委員 いわゆるベトナム難民、そしてまた最近偽装難民ということがよく言われておりますけれども、偽装難民というのは一体どういうものか、お伺いしたいと思います。その現状もあわせて御報告いただきたいと思います。
  18. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員指摘の偽装ボートピープルという問題でございます。偽装難民ないしは偽装ボートピープルでございますが、これは本来ボートピープルの問題は、ただいま委員指摘になりましたように、インドシナの情勢に関連してベトナムからボ!トピーブルが脱出をして、そしてそれが日本に到着する、こういう状況でございましたが、本年の五月に日本に直接到着をいたしましたボートピープルから始まりまして、直接漂着をするグループの中にベトナム難民を偽装して中国人等が混乗してきておるという事実が発見されたわけでございます。これまでこういうボートピープルとして日本に直接到着をしたケースというのは九月末日までで二十件、二千五百二十六名を数えておるわけでございまして、そのほかについ数日前にまた新しいボートピープルの到着がございまして、これを足しますと合計で二十一件、二千六百七十九名というものが今日まで到着しておるわけでございます。  これについて、まず、ただいま申し上げました本来ベトナムから到着するボートピープルを対象に日本国政府はボートピープルの難民という問題についての着眼をいたしまして受け入れを行ってまいりましたのですが、中国からの人たちがこの中に入っているということで、これについて審査を行いました結果、ただいま十月十三日現在までの法務省当局の調査では、中国から渡来したと判明した者はそのうち七百五十五名に及んでおる、こういう状況でございます。
  19. 倉成正

    倉成委員 日本語の中で難民という言葉があらわれてきたのはいつごろか、ひとつどなたでも結構です、政府委員で結構ですから、お答えいただきたいと思います。
  20. 福田博

    福田(博)政府委員 従来から難民あるいは亡命、いろいろな言葉が用いられてきておりますが、英語ではまとめてレフュジーという言葉が使われてきております。いわゆるきちっとした法律用語として難民という言葉が使われるようになりましたのは、我が国が一九八一年に加盟いたしました難民条約、それを受けて入管法の改正が行われまして、その中にも難民という言葉が出てきております。
  21. 倉成正

    倉成委員 最近は新聞紙上で難民という言葉が非常によく出てくるわけですけれども、日本には国境を越えて大量の人々が流入するというような事態が今までなかったものですから、いわゆる難民というような言葉は最近まで使われなかったと思います。レフュジーはもちろん国際的な言葉として使われておりますが、日本語の難民という言葉はごく最近のことであろうと私は思うわけであります。  特に我が国においては過去難民問題に直面した機会が少なく、経験や情報が非常に少ない。一九七五年にインドシナからの難民が初めて救いを求めてきて以来今日まで、その対応は、いろいろ政府の対応も試行錯誤を繰り返してきたと思うのでありますけれども、最初は、インドシナ難民については、ベトナム人自身が船を運航して直接やってくる、あるいは公海上に漂流しているのを外国船やあるいは日本船がこれを救助して連れてくる、そういうケースがあったわけでございますけれども、一九七五年五月十二日サイゴンの陥落後半年足らずの間に難民が日本に来ましてから、いわゆる日本の上陸許可、出入国管理令十二条に基づく上陸特別許可、最初は十五日、それが七六年七月以降三十日になり、また外国船が救助した場合には、出入国管理令の十八条によって、水難上陸許可ということで十五日から三十日の許可を与えたと記憶しております。  そこで、現在難民が上陸して、難民と言っていいのかボートピープルと言っていいか、言葉は別としましても、日本に漂着した後、どういう手続でどういう形でその難民が日本に定住し、あるいは第三国の方に行くのか、その経過をわかりやすくひとつ説明していただきたいと思います。あわせて、現在どういう状況にあるのかということを明らかにしていただきたいと思います。これは政府委員でも大臣でも結構です。
  22. 股野景親

    股野政府委員 まず、ボートピープルが日本に到着いたしますと、これはことしの九月の十二日にボートピープルの取り扱いについての方針を新しく取り上げることになりましたので、九月十三日以降については新しい取り扱いになっております。そこで、九月十三日以降の状況についてまず御説明申し上げたいと思います。  ボートピープルが日本に到着をいたしますと、その場合に、明らかにこれは不法入国であるということが歴然としている者を除きまして、果たしてどこから、本人たちの申し立てでベトナムから来たという申し立てがあって、その点についての確認がまだ十分とれないという状況でございますと、まず、入管法に基づきまして審査をしっかり行うために、一たん審査を行うための仮上陸という許可を与えます。そしてその仮上陸の許可は、これは審査を本格的に行うための許可でございます。この審査を本格的に行う過程におきまして、まずいわゆるインドシナからの人ではないということがはっきりした場合、これは不法入国扱いとなりますので、仮上陸の審査の過程から今度は不法入国者としての扱いに移行をいたします。  それから、ベトナムから来たボートピープルであるということが諸種の状況によって明らかになったという場合には、今度はそのベトナムから来た人たちについて、ことしの六月に開かれましたインドシナ難民国際会議における国際的な合意を踏まえまして、我が国としても新しくその難民性ということについてスクリーニングを行うことといたしております。そのスクリーニングは、いわゆる難民条約で示されているところの難民性というものを持っている、その蓋然性があるかどうか、こういうことで判断をいたしまして、これはまた入管法上に基づく判断をいたすわけでございますが、その結果これはいわゆる難民としての蓋然性を有すると認められた者については、一時庇護のための上陸許可というものを与えるというこになります。  しかし、そうでなくて、これはやはり難民としての蓋然性が認められないという者については、その一時庇護のための上陸許可ではなくて、また退去強制への手続を行うものの該当者として扱う、こういうことになってまいります。  以上がボートピープルの最初に到着したときの状況でございます。  一時庇護のための上陸許可を与えられました者、これはいわゆる難民としての蓋然性を認められている者でございますが、これにつきましては、その本人の希望によりまして、日本への定住を認めるか、あるいは第三国への定住を認めるか、それぞれその希望に応じた手続を進めていく、こういう状況になります。  ただいま申し上げましたのがこの九月十三日に新しくスクリーニングを発足させた後の取り扱いでございまして、実はそれ以前におきましては、これは累次の閣議了解をいただいております中で、インドシナからの難民の取り扱いのことが決められておりますので、その従来の扱いでまいりますと、ただいま申し上げました一時庇護のための上陸許可というものについて弾力的にこれを与えるという運用をいたしてまいった経緯がございます。そこで、従来既に一時庇護のための上陸許可を与えられて、そして日本に定住し、あるいは第三国へ定住していった、こういう人たちがいろいろおるわけでございますが、ただいま委員指摘のように、このように日本が受け入れを開始いたしましてから日本で定住を許可された人たちの数は、本年の六月末までで六千百六十七名という数になっております。
  23. 倉成正

    倉成委員 今いろいろな手続を経てやるということでありますけれども、現在、いわゆるボートピープル、また難民が漂着しまして、その人たちがいろいろな施設にいるわけですね。大村の難民一時レセプションセンターであるとか品川の国際救援センター、その他日本赤十字やカリタス・ジャパン、立正佼成会、こういうところで一時的に滞在しているわけですけれども、これらの実情ということについて、私は政府の首脳の方々、十分よく承知していただきたいと思うのでございます。それは、現地の小さな町村で、難民が参りますと、人道上の見地からいろいろ食糧の手当てをしたり、衣服の手当てをしたり、難民の方々が毛布が欲しいと言えば毛布をやったりするわけでございますけれども、とにかく保安庁の船から仮に持ってまいりまして上陸するといっても、検疫、もし病気を持ってきたらどうするかとか、いろいろな心配があるわけですね。一例を申しますと、福岡入国管理局の長崎の出張所というのがありまして、職員は六名ぐらい。そこに百八名ぐらいたったと思いますが、難民が来まして、八十二平米、本当に狭いところに、会議室ですから広くあるはずはありません、そこに難民がおりまして、そして八月三十一日から九月四日までおりました。その状況を見てみますと、八十二平米ぐらいのところに百名以上の難民の人たちがいまして、手洗いは一つ、シャワーなんかの施設もほとんどないということで、そこに四、五日過ごさなきゃいけない。そこで、市の方で見かねまして施設を提供するということになったわけですけれども、施設は提供するけれどもそのほかの面倒は見るわけにはいかないということで提供したわけですけれども、現実の問題としては、やはりガードマンが要るとかいろいろな、毛布をやるとかあるいは食糧のあっせんをするとかいうことになるわけですけれども、そういうときに食糧をどこかの飲食店から、古名以上の人を四、五日養うということになりますと相当な食糧費になるわけですけれども、一体その金をどこから払うのか、どうするのかというようないろいろな身近な問題がたくさんあるわけです。  そこで、私は、これについて今いろいろ政府で協議をされておるからあえて申しませんけれども、やはり現場の気持ちに立って、そういう人たちが余り心配しないで人道上の立場から一生懸命難民の世話をし、そして一時レセプションセンターに入るまでの間やりましたことについては、政府が責任を持って迅速に対応していただきたいということをお願いしたいわけでありますが、特に現地の希望をいろいろ申し上げますと、私は、難民が漂着した各市町村の実態を全部個々に当たりまして、長崎県のみならず各地当たりまして状況を調べてみました。そういたしますと、いろいろな要望が出てくるわけです。  一つは、海上で健康を守るために検疫をしてほしい。それから難民処理に関する国の責任について、国の方でも市町村を呼んでいろいろやっていただいておるようですけれども、一体船の処理費、焼却費はどうするのかとか、あるいはどこの省がどういう担当をするのかということをやはり明確にやっていただくことが必要じゃないか。それで、難民が漂着した場合には、いわゆる処理の手続、これは経費の流れを含めまして、地方自治体のマニュアルというか、どういうふうにしてやったらいいと、各省庁の責任区分というようなことも明らかにするということが混乱を回避する上で私は非常に大事なことであると思いますし、また、従来難民の漂着に伴っていろいろな経費がかかっております。例えば、天草の牛深に上陸した難民が逃げた、そこで県警その他がその人たちを捜し出すために大変な手間がかかった。そうすると、その費用はばかにならないわけですね。そういうようなもの。それからまた、小人数の職員でやっておりますからなかなか行き届かない。そうすると、アルバイトを雇うといってもアルバイトには超勤がつかない、ガードマンも雇わなきゃいけない、なかなか目に見えないようないろいろなものが出てくるわけですけれども、そういう問題についてやはり的確にひとつ対処していただきたいと思いますので、この点では細かいことは要りませんので、総理、ひとつそれを迅速に地方が困らないようやるということをおっしゃっていただきたいと思います。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 難民の実情については、日ごろ、特に長崎県にはいろいろと接点としての御苦労も多かろうと思いますし、また、倉成委員御自身で方々にまでお問い合わせをいただいた結果については、ただいま拝聴したところでございます。日本も一万人までまず枠を決めて難民の皆さんを本当に困った方は人道的にきちっと受け入れていこう、それから、いわゆる偽装難民と言われるような方々については、これは六月に決まりましたスクリーニングの制度等を生かして、そして不法入国ということがはつきりすれば送還をしていくということで対応もしてきております。しかし、地方の自治体がそれによっていろいろ困っていらっしゃることをどうするかということにつきましては、これは国としてそういった対応をしていかなければならぬという問題だろうと思いますので、関係各省庁と今の御質問の御趣旨等も踏まえまして十分検討して、地方にできるだけ御迷惑をかけないように、しかも、本当に困った方は地方にも御協力をいただいてきちっと対処していくことができるようにしていきたいと考えます。
  25. 倉成正

    倉成委員 今総理のお言葉ございましたけれども、迅速に地方が困らないようにお願いしたいと思います。  恒久問題に触れる時間がございませんけれども、いわゆる先ほど定住枠が一万人というお話がございましたが、現実に六千百十六名が今日本に定住しているわけですけれども、アメリカは七十二万、カナダが十二万、オーストラリアが十二万、フランスが十万、西独が二万三千、それから日本より非常に人口も少ないようなノルウェーが六千三百七十二というふうに日本と大体同じぐらいのものを入れているということになりますと、この難民の問題というのは、現在日本に滞留しております不法滞在者、すなわち観光ビザやあるいは就学のために来ましてそのまま日本に居残っている人たち、この数は十万とも言われ、いろいろな数が言われているわけですけれども、そういう問題についてもう目をつぶるわけにはいかないときに来た。  これは、今国会でもいろいろな質疑が関係同僚あるいは先輩各位からされておるわけでありますけれども、やはりひとつこの難民問題を契機に、私は、日本のこれらの外国から来る人たちに対してどう対処するか。それからまた、相互依存関係で、中国が不安定になる、韓国が不安定になる、あるいはベトナム、インドシナ半島が不安定になるとなれば、そのままこれが日本国内影響してくるわけでありまして、相互依存関係は非常に深いということを考えますと、基本的にひとつこの難民問題を契機にしてこれらの問題を掘り下げていただくよう御要望申し上げたいと思いますが、総理の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法と秩序をきちっと守っていかなければならぬという根本に立ちまして、いろいろなものには、倉成委員指摘のとおり、きちっと対応をしていかなければならぬ、こう考えております。
  27. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御案内のとおり、日本は今国際社会に難民を一万人受け入れる約束をいたしております。現在六千数百人に達しておりますけれども、難民と先生指摘のようないわゆる国際的難民と言われる者は、政治的弾圧、宗教的弾圧を受けて自分の国を捨ててきた人たち、この人たちを受け入れるというのが原則になっておりまして、今問題になっております経済的な目的で日本に入ってくるという方々については、国際的なスクリーニングの枠でこれをきちっと整理しなければならない、このように考えておりますが、今後国際社会の中での日本として、この難民問題というものをどういうふうに取り扱っていくかということについては、国連の難民高等弁務官事務所とも十分相談をいたしまして、その結論を出してまいりたい、このように考えております。
  28. 倉成正

    倉成委員 真剣に御討議いただくことをお願いしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  29. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて倉成君の質疑は終了いたしました。  次に、伊吹文明君。
  30. 伊吹文明

    伊吹委員 自民党の伊吹文明でございます。一時間、お時間をいただきまして、総理、関係大臣に現下の諸問題についてお承りをいたしたいと思います。  参議院選挙では、自民党についてまことに苦しい結果が出ました。私たちはその原因をいろいろ反省をしながら既に再生への道を歩いているわけでありますが、私は、政治改革の大きなポイントの一つは、国会を論議の場とすることだと思います。この委員会の状況を見ておりまして、我々同僚の議員も論議に参加でき、いろいろ意見を述べ、討論ができる、その中から我々の知らないことを野党の人たちにも教えていただき、また我々の議論も野党の人たちに聞いていただく、本来、私は国会はそのような場だと思っております。  そしてまた、各大臣の御答弁を伺っておりましても、お役人の書いた想定問答ではなくて、それを見ずに自分のお言葉で話していただいておることを大変私は心強く思いますし、ましてや説明員などというものはほとんど要らない大臣が多いということは、まことに私は心強いことであります。さらにこれを一歩進めて、野党の方と与党の我々が直接議論をし、対話をし、それを国民に聞いていただく、そのような場がやがて参議院で来ることを、私は心待ちをいたしております。  さて、まず本日は、経済及び財政運営の問題について伺いたいわけでありますが、それに入ります前に、社会党の山口委員が御質問になりました新天皇の即位の礼及び大嘗祭について、基本的な問題を伺いたいと思います。  今般の今上陛下の即位の諸式は、御承知のとおり新憲法下で初めてのことでございますから、我我は誤りのないスタートをし、立派な伝統をつくらねばならないと思っております。その基本的なこととして、まず憲法第一条に、天皇は日本国及び日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基づくとございます。そして第七条に、国会を召集するのは陛下のお仕事である、こう規定されておりますが、平和憲法を守る、憲法を守ると言っておるある政党が開会式に不参加という状態があるわけでございますけれども、政治家のお一人として総理大臣はこのような状況をどうお考えになりますか。
  31. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、日本国の象徴であり、その地位は日本国民の総意に基づくと憲法には明らかにされております。そして、国会はそのもとに召集があり、開会式が行われておるわけでございますから、私は、でき得れば全員の議員がこれに出席をしていただきたいと心からそう願っております。
  32. 伊吹文明

    伊吹委員 皇位は——皇位と申しますより天皇の地位というものは、憲法に規定をされておる憲法上の地位でございます。そして、昭和天皇が崩御されまして皇位が継承されるときは、皇室典範の定めるところによってこれを行うと記されております。旧明治憲法下においては践祚の儀ですね。これは、剣璽渡御の儀と言われておるものでありますが、それと即位の礼と大嘗祭、この三つを完了した場合に皇位を継承されたということが伝統的な解釈となっております。  ところが、このことは明治憲法下の皇室典範には明記されておるわけでありますが、新憲法のもとでは、御承知のように皇室典範第二十四条に「皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う。」という規定しかございません。皇位継承の条件ほどのようなものだとお考えでしょうか。これは法制局長官にお伺いいたしたいと思います。
  33. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  今委員、即位の条件というふうにおっしゃられました。憲法におきましては、今御指摘のように、「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」こういうふうにございます。皇室典範でも、先ほどの二十四条でございますが、そこで「即位の礼を行う。」ということで書いてございます。  即位の礼に何が含まれるかということについては、既に御即位に伴いまして、この春に剣璽等承継の儀及び即位後朝見の儀というのが国事行為として行われたところでございます。なお、いわゆる即位礼と申しますか即位の礼と申しますかにつきましては、どのような方式で、どのような内容を含めるか等のあり方につきまして、即位の礼準備委員会において検討をしているところでございます。
  34. 伊吹文明

    伊吹委員 御答弁は、検討しているから今まだ未定だということだと理解をいたしますが、践祚という行為は既に完了をいたしております。となりますと、あとは大嘗祭ということと即位の礼ということになるのではないかと思いますが、大嘗祭と即位の礼は密接不可分のものであるのか、それともこれを分離できるものなのか。山口委員が先般御指摘になりましたように、憲法第二十条との関係、つまり宗教に対して国が関与すべからずという規定でありますが、このような規定との関係で国事行為とするということは大変難しいという答弁を繰り返された法制局長官もいらっしゃいますが、私は憲法に定められた皇位を継承するための条件ということと考えるならば、これは皇室の、少なくとも公的な行事だと思いますが、このあたりは法制局長官、いかがですか、大嘗祭。
  35. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、現在、即位の礼準備委員会におきまして、その内容等を検討しております最中でございますので、今の御質問にしかとお答えするわけにもまいりません。なお検討を続けたいと思っております。
  36. 伊吹文明

    伊吹委員 いろいろ、この問題は新憲法下で初めて生ずる問題ですから、なお委員会でよく詰めていただかねばならぬ問題が残っております。例えば大嘗祭をどこでやるかという問題ですね、仮にやるとすれば、これは明治憲法下の皇室典範では、即位の礼と大嘗祭は京都でやるということが明記をされております。我々は伝統に従って、少なくともこの二つの行事は現下の皇室典範に行う場所が明記されていない限りは私は京都でやるべきだと考えておりますが、多分これも委員会で検討しておるとおっしゃるでしょう。だから、あえて問いません。しかし、既に、国事行為としての即位の礼と別に、大嘗祭を皇室行事だと理解するという学説もあります。もしも、国事行為が即位の礼であり、大嘗祭が皇室行事だなどという解釈に立つのであれば、私は、このやる場所が東京と京都に分かれるということも当然生じてくると思います。  まあ今の問題を総じて言えば、戦争中のいろいろな皇室あるいは天皇のあしき利用ということに対する反省は反省としてやらねばなりませんが、同時に日本の大切な伝統とかあるいは日本の歴史の重みとか、こういうものを忘れては近代国家としてのアイデンティティーというか身分証明書というものはなくなってしまうというふうに私は考えますが、この即位の式、大嘗祭に限定をすると総理はなかなかお答えしにくいと思いますけれども、国家としての歴史、伝統、文化、こういうものについて、これを大切にする政治というものをやっていただきたいと思いますが、この点についてはいかがですか。
  37. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的な項目につきましては、委員もお察しをいただき、御発言いただいたように、ただいま検討委員会で慎重にいろいろなことを踏まえて、憲法の趣旨に沿いながら、そしてきょうまでの皇室のいろいろな儀式の伝統等も踏まえながら、あらゆるものを勘案して慎重に検討しておるさなかでありますから、そちらにお任せをいただきたいと思います。  後段でお触れになりました、国としての歴史とか文化とか伝統というものをどう考えるか。国としての歴史や文化や伝統というものは、これは大切に考えて、これを継承していかなければならない、これは当然のことだと考えております。
  38. 伊吹文明

    伊吹委員 最初に私が申しましたように、天皇の地位というのは憲法第一条に規定をされておる憲法上の地位でありますから、その地位を継承され、その地位につかれたということを公にあらわされる諸儀式というものは、少なくとも皇室の公事であると私は理解しております。したがって、この公事について、やる場所がどこであるとかあるいはどのようなものを公事とするということがはっきりと皇室典範に書かれていないということは、私はやや皇室典範上、立法上の欠陥があるのじゃないかと思います。書かれていない限りは伝統にのっとってやる。伝統にのっとってやられないのなら、皇室典範に新しい場所、新しいやり方を明示していただくというのが私は法制国家としてのあるべき姿だと思いますので、この点は要望として申し上げておきます。  それから、総理の御発言の中に、国の歴史、文化、伝統というものの重みを考えていきたいという御発言がありました。私は京都はまさにそのような町だと考えております。  さて、昭和天皇の御遺徳をしのぶためにいろいろな構想が今民間で行われております。昭和記念館構想と一括して言われておりますが、これを政府として、やはりいろいろな構想を一つにまとめて、でき得れば今総理がおっしゃったように伝統と歴史と文化というものを大切にし、それにふさわしい土地にこれを設置していただきたいと私は思いますが、いかがですか。総理、お願いします。
  39. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま具体的に御指摘の、昭和天皇の御遺徳をしのび、国民からの浄財によって昭和天皇記念館を建設しようという構想が検討されておるということは承っておりますけれども、政府といたしましては、事業計画など設置者側の構想の具体化をいま少しお示しをいただまで待って、今後必要に応じて対処していきたいと考えております。
  40. 伊吹文明

    伊吹委員 それでは、次の問題に移らせていただきます。  この委員会でも種々議論が出ておりましたが、現在国民の間に資産格差という問題が非常に大きな問題になってきております。日本は欧米諸国に追いつけ追い越せということで一生懸命やってまいりました。そして、フローの面ではすばらしい国になりました。そして、ストックの面でも今世界一の資産国になりましたが、そのストックは金融資産と株式とそれから土地というものにほとんど集中されておると言ってもいいと思います。総理がおっしゃった公正を中心として考える政治というのは、まさにこの資産の配分の問題、これが大きな問題の一つだと私は思いますが、まず企画庁長官にお伺いをいたします。  ことしの経済白書に、私は企画庁は大変いい分析をしておられると思うのですが、「国民資産のGNP比率」という分析がございまして、従来の設備投資、いわゆる物をつくる、あるいは通信、鉄道、道路、こういうものは大体GNPの伸び率と同じ伸び率で大きくなっておる。しかし、金融資産と土地はGNPの伸び率よりもはるかに大きな伸び率で伸びておるという表があるわけですが、この資産が非常にふえてきた、特に今申し上げた金融資産、土地、株式、こういうものがここまで大きくなった原因は何だと思われますか。
  41. 高原須美子

    ○高原国務大臣 経済企画庁がやっております国民所得統計によりますと、おっしゃいますように我が国国民総資産の残高は名目GNPの十六倍という大きさに達しておりまして、そのうち約半分の二千五百兆円が企業設備や住宅、土地などの実物資産、残り二千八百兆円が預貯金、株式等の金融資産となっております。これを名目GNPに対する比率で見ますと、おっしゃいますように企業設備や住宅については名目GNPに対する比率が昭和五十五年以降ほとんど変わっておりません。それに比べまして、土地や金融資産の名目GNPに対する比率は非常に上昇を続けております。  そこで、お尋ねのその理由でございますけれども、まず金融資産の増加がなぜ起こっているのかと申しますと、まず第一にこれは、AからBへ、BからCへというふうに資金の流れがある場合に、Aの資産、Bの資産と二重に資産が計上されるということから、非常に資金の流れが多段階になっているために総資産残高が膨張するということが一つの原因として挙げられると思います。もう一つは、近年のおっしゃるような株価の上昇というものが金融資産の名目残高をふやしてきているというふうに思っております。これも大きな原因、株価の上昇も大きな原因だと思います。また、土地につきましても、地価の上昇が名目の土地残高をふやしているということになっていると思います。
  42. 伊吹文明

    伊吹委員 現状の説明はそのとおりでしょうね。  それで、なぜしかしそのようなことが起こるのかというもう一歩突っ込んだ議論をしてみたいと思いますが、物の値段というのはやはり需給で決まるというのが自由経済の原則であります。今買い方、つまりお金を持っている人、これをどうとらえるかということでありますが、日本銀行が通貨を発行し、そして預金がなされ、定期預金がなされるということで、このお金をもって物を買うわけですね。ところが、所得倍増であるとか列島改造であるという時代の初期のころは、日本人はまだ設備投資をどんどんやりたい、イノベーションをどんどん進めたいという気持ちがありました。したがって、通貨の発行量に対してそれを受ける実物投資のチャンスというのは非常にあった。しかし、ここまで日本が成長してくると、経済の大きさに比べてどうしても実物投資のチャンスが少ない、イノベーションも大きな流れとしてはほとんど使い切ってしまった。そうすると今長官がおっしゃったように、あちらのものをこちらへやり、こちらの土地を他人の名義にかえるという取引が行われて、そこに介在する一人一人はなるほど利益を得るけれども国全体としては土地はふえてない、株価が上がったからといって例えばその会社が二分の一の値段で商品を我々に提供してくれるわけではない、こういう現象が今起こっておるんだと私は思います。  その中で一番大きな問題は、やはり国民から見ると土地の問題であろうかと思います。国土庁長官は、資産の増加の中でも一番大きな国民的な関心事は土地の問題であって、地価を引き下げるために全力を尽くすという御答弁をこの予算委員会で行っておられますが、土地の値段がここまで上がった条件は、事情はいろいろあると思います。総体的に言って、土地がここまで増価をした原因は、国土庁長官、どのあたりにあると思っておられますか。
  43. 石井一

    ○石井国務大臣 土地問題は本当に深刻な問題だと認識いたしております。また、まことに広範な分野に関連をしており、一言でどうして問題が解決するかということ、大変難しい、厳しい問題だと認識いたしております。  東京の地価が六十二年、六十三年に物すごく暴騰をいたしました。その年の数字は、住宅地で五七・一%、六十二年でございますが。商業地で七六・一%。六十三年は少し下がっておりますけれども、その半分ぐらいの程度でやはり高騰しておる。東京中心になりまして、その次の年は地方の大都市あるいは周辺の部分、だんだんと広がっている。都市の中でもやはり商業地から周辺の住宅地というふうに広がっていく。  その原因を一々言っていっても切りがございませんけれども、要は需給のバランスをどのように変えていくか。需要の面につきましては、余りにも集中した東京一点集中をやはり分散させていくということも必要でありましょうし、土地のいわゆる投機買いというふうなものについても厳しい規制をしていくということも必要でありましょうし、土地供給の問題につきましても、時間がありませんから一々申し上げませんが、いろいろの施策を行っていかなければいけないと思います。  ただ最後に、委員の御指摘の問題について率直に答えさせていただきたいと思うのでありますが、なぜ、まず中心が上がったのに周辺が上がるか、東京が上がった次に大阪なり名古屋が上がるか、これは割安感だということだと思うのであります。比較して安いから今のうちに買っておこう。やはりこれは仮需要だと申してもいいだろうと思います。金が余り、土地が最も貴重であるという国民心理がここに集中してきておるというところに大きな問題があります。そのために大蔵当局も今これまで以上に努力をされておりますし、私も担当大臣としてこれに真剣に取り組んでいきたい、こう考えております。
  44. 伊吹文明

    伊吹委員 今国土庁長官が御答弁いただきましたように、私はやはり国全体としてのマネーフローという観点から見た場合に、外国貿易でも日本は随分稼いでおります。金はあり余るほどある。そして国民も実はやってほしいことが多々ある。これは総理よく御存じのように、私は大きくいって、外交問題、安全保障の問題は別として、四つあると思うのですね。  一つは、やはり安心できる老後、これがまず第一点。それから、退職をしたときに退職金でやはり住宅ローンを返せるような土地政策、住宅政策、これが私は第二番目。それから、食料品を中心として消費者物価がやはり外国に比べて非常に高い。一ドル百四十円というのは自動車貿易をする場合のレートとしてはいいけれども、アメリカで一ドルで買える牛肉は日本ではとても百四十円では買えません。このあたりのいろいろな問題。それから、言うならば勤務時間短縮の問題。この四つぐらいが私は今国民の夢としてあるのじゃないかというふうに考えております。国としては金がある。しかしながら、その金を受けて国民を幸せにするような設備投資の機会は非常に少ない。したがって、個々人の立場からいうと、法人の立場からいうと、お金をやはりもうけなければならないから、あちらのものをこちらへやり、こちらのものをあちらへやるということからいろいろな問題が生じておる。  私は、海部総理は政治改革、政治不信の後始末あるいは消費税の問題の見直し、前の内閣から引き継がれたいろいろな問題があって、今そのことに忙殺をされておられると思いますが、本来の政治というのは、やはりこのような現状を踏まえて国民に新しい夢を与える。例えば池田総理が所得‐倍増というのを打ち出したように、海部ビジョンというのをいつの日か私はつくって、政治家として攻めの政治をやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  45. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御指摘国民生活を豊かにしていくための、あるいは将来に向かっての、一人一人に明るい希望や夢を持ってもらうために何が今日阻害要件になっておるかという御指摘が具体的にありましたけれども、一々ごもっともなことだと思って私は承っておりました。  同時に、私が所信表明で触れましたことも、実は社会は公正なものであって、そして心豊かなものであるべきだ。そして少なくとも二十一世紀に向かってそのような社会をつくりたいという私の大きな願いを込めて語りかけたわけでございまして、そのために片づけなければならない具体的な問題については、例えば土地の問題を見れば、土地はやはり投機の対象にしてはいけない、あるいは土地は公共財だということをしっかりみんなが自覚をして、そしてまじめに働く人々から夢を奪わないように、具体的に家の問題が片づくためにはどうするかという施策に今一生懸命取り組んでおり、とりあえずはここで土地基本法を通していただきたいとお願いしておりますことも、そういった夢につながっていく重要な施策だと心得ておりますし、老後の問題、その他労働時間の問題、仰せのとおりでございます。  私どもは、そういったことを踏まえて、本当に心豊かな、日本が豊かな国になったと言われたことを一人一人の御家庭の生活の中でも質を高めて実感できるような、そんなことを実現させていきたい。それが政治の持っておる前向きの大きな使命であるということは委員指摘のとおりでございまして、私も一生懸命に頑張っていくつもりでございます。
  46. 伊吹文明

    伊吹委員 総理の御決意をぜひ私は実現をしていただきたい。国民はそれを待ち望んでおると思います。  具体的に少し申し上げたいのですが、民間には金があり余っておる。国民はやってほしいことはたくさんある。しかし民間には残念ながら一時ほどの設備投資でそれを受けるだけの活力がなくなってきている。したがって政府が主導権を持ってやらねばならない。しかし、財政の現状からいうと国債の増発をしてこれをやるのは非常に難しい。といって増税でもって民間の資金を公共部門に移すということも政治的に非常に難しい。ここで私は、中曽根さんは民間活力ということを考えたと思うのですね。ですから、余り財政が負担にならないような補助金、利子補給や規制緩和やあるいは税制上の恩典でもって民間に活力をよみがえらせて、民間にあり余っているお金を国民生活を充実していく方向に使いたい。しかし、残念ながらそれがつまずいた原因は、私は土地問題にあったと思うのです。したがって、海部ビジョンというものがいずれ出るときには、土地でつまずかないようにしなければならない。だから海外に大きなプロジェクトをやるか、あるいは都市中心の今の地価の高騰を緩和するようなものは海部ビジョンの中心になるべきだと考えております。  地価を下げるためには、規制の緩和ということが一つ大切です。例えば高さ制限を撤廃する。しかし一方で公共財という側面を考えねばなりませんから、余り個人のわがままと言うといけませんが、公共のためには私権をある程度制限しなければいけないということは逆にございます。それからもう一つは、先ほど国土庁長官がおっしゃったように、やはり需給というもので価格は決まってくるわけですから、供給をふやすということですね。供給をふやすということからいうと、竹下内閣のときに打ち出した首都圏機能の地方分散、これは私は非常に大切な方向だと一つ考えております。それからもう一つは、今進んでおる東京湾の埋め立て、このようなプロジェクトを推進すること。それから三番目は、リニアだとか大都市周辺の交通網を整備して、東京圏、近畿圏あるいは東海圏というものを広げる、そして広い土地を利用できるようにするということだと思いますが、そのあたりは海部ビジョンの中に、あるいは総理の今の構想の中に入っておりますか。
  47. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは非常に広大な計画でありますから、今委員指摘の中に具体的にお触れになった二つ、三つの問題、これは私もそれは考え、考えというよりも夢の段階でありますけれども、夢として考えたこともありました。しかし、現実に着手され始めた問題、例えばリニア新モーターカーの問題なんかにしますと、実験線で、まだ実験をこれからするわけですが、あれがもし東京と大阪の間を一時間で結ぶということが具体的な姿となってあらわれたときには、これは恐らくいろいろな変化が国土に起こってくると思います。そうして、今言われておる東京一極集中の問題というのも、それによって一時間以内の首都回廊という感覚で物を見れば、いろいろなまた新しい発想が出てくるのではないだろうかという気がいたします。  それから、これもまた夢の段階の話でありますけれども、例えば土地を新たに我々の知恵と努力でつくり出していくという発想、今委員東京湾の島ということをおっしゃいましたけれども、私は東京湾に島をつくろうという計画をお持ちの方からいろいろお話を聞いたことがございます。私自身も、本当にそういったことができるなれば、環境の問題とかいろいろな問題等を踏まえて、それができるならと思って、いろいろお話を聞いたり、そして御議論をしたりしたこともございました。現実の問題としてはいろいろなことがあるようでありますけれども、しかしそれは何とか乗り切ることができるものならば乗り切って、そういったことも夢の段階から計画の段階に移行させることも非常に大切なことではないかと私も夢として描きながら思っていることは事実でございますけれども、それをここで具体的にお示しをして、かくすればかくなるというお答えをするまでにはまだ至っておりませんので、努力を続けさしていただこうと思います。
  48. 伊吹文明

    伊吹委員 それでは、その夢の問題、抽象的な問題から少し具体的な問題に移りたいと思いますが、財政運営の問題について幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  我が党の三塚政調会長が本会議で申し上げた、予算関連法案、特に今般議論になっております大きな歳入の改廃の法案が参議院先議で出てくるという問題でございます。  なるほど、国会法には、予算関連法案も、議員一人一人の立法権というものがありますから、参議院においても推薦者が一定数に、それを支持する人が一定数あれば参議院においても提案できるということは法律上整備をされております。しかしながら一方で、憲法と国会法というものを考えますと、まず私たちは議院内閣制というものをとっております。そして内閣総理大臣の指名は、海部総理もそうであったように、衆議院の指名が優先をいたします。したがって、衆議院で指名された内閣総理大臣が内閣というものを構成をする。そしてその内閣に予算編成権というものがある。したがって、そこで編成された予算というものは、当然衆議院にまず付託される。そして、その審議が衆参両院で行われた場合に、お互いの決定が違った場合には衆議院の決定が優先するという法律構成になっております。  さてそこで、もしも内閣の命運を決するような極めて大きな歳入歳出の法案が参議院で先議をされた場合に、もちろんこの法律について参議院が仮にこれを議決をして衆議院に送付をしたとしても、衆議院がこれを否決した場合には、両院協議会の開催をせずに、これを衆議院の決定をもって廃案とすることができるということが書いてあります。  しかしながら私は、いろいろ大きな政治問題が起こってくると思う。例えば歳入歳出の大きな法案、内閣が提出した予算の根幹を変えるような大きな法案が参議院で継続審議になっておる、あるいは参議院で議決をされて衆議院に来ておる段階で政府として予算編成を迎えるというようなケースが生じた場合には、大変な問題が政治的にほ起こってくると私は思うのです。だから私は法律論としては、参議院で予算関連法案、仮にそれが大きな歳入の法案であっても出すことは法律的にはできると思いますが、政治的には非常に大きな問題があると思う。予算編成権を持っておられる大蔵大臣は、こういうことが起こった場合に大蔵大臣としての役割を十分にお果たしになれるとお思いになりますか、大蔵大臣
  49. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは先般もどなたかの御議論にあったわけでありますけれども、やはり院における法案の発議の問題に関することでありまして、行政府からコメントをすることには適切を欠くものだと思っております。
  50. 伊吹文明

    伊吹委員 行政府の大臣としては当然そういう答弁になると私は思うんです。今の国会法、財政法それから憲法の各法律の相互の関係を考えると、当然のことでありますが、参議院を構成しておる政党も、衆議院を構成しておる政党であるわけですから、多分今の法律の立法の際の考え方は、そのような状態を前提とするならば、大きな歳入歳出の予算関連法案は良識を持って、まず議院内閣制、そして総理大臣の指名の衆議院の優先、そしてその内閣による予算編成権と予算の衆議院先議、そして予算の決定についての衆議院の優先ということを前提にする限り、良識を持って衆議院に提出してこられるという前提に私はなっておったと思うんですね。ところが、残念ながらそうじゃないことが起こったわけですから、我々はこれは院の問題として将来法律改正をするなりなんなりということを考えないと、政府としては極めて予算編成が難しくなるんじゃないかということを私は危惧いたしております。  具体的に幾つかのことを私は申し上げたいと思う。  今野党が出しておる予算法案について幾つかの細かな問題について私は伺いたいと思うんですが、自然増収というものを野党は約一兆三千億財源に見ております。自然増収の定義というのはいろいろあると思いますが、当初の見込みに対して次の年の税収がこれだけふえるという見込みがあります。それから当初の予算の見込みに対して決算でこれだけ税収がふえたという定義と、自然増収というのは私は二つあると思うのです。一つは、当初予算での見込みに対して決算でこれだけふえたというのは当初予算の財源にはできません。したがって私は、野党の言っておられる自然増収というのは、今年度の予算の当初見込みに対して来年度の予算がこれだけ税収見込みがふえるんだということだと思いますが、一方、当然物価が上昇すれば年金はそれだけ上げなければならない、お年寄りがふえれば高齢者の老齢医療はそれだけふえるという当然増というものが歳出面にあります。したがって、昨年度の当初予算に対して本年度これだけふえるというのは、歳出面において当然それだけの財政需要というものが、それに対応する財政需要というものが見込まれておるわけですから、これを税収にするということが一体可能なんだろうかどうなのだろうか。これはいずれ参議院で細かな議論がなされると思いますが、自然増収という、今野党の言っておられる自然増収という定義は私はよくわからぬが、こういうものを税収と見込んで大蔵大臣なら予算編成ができますか。
  51. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに委員が御指摘のように、俗に自然増収と申しますときに幾つかの使われ方がございます。そして今、野党の皆さんの代替財源に関して法律案はまだ提出をされておらない状況でありますから、これはその御審議の際にまた政府の意見を聞かれれば当然申し上げる機会もあるでありましょう。  ただ、御指摘の、その歳入と歳出という視点からだけ一般論として申し上げていけば、確かに近年におきましては、毎年度歳入面におきまして何がしかの税収増はございます。また、歳出面におきましても、毎年度特例公債を可能な限り縮減をするための歳出の徹底した見直しとか合理化という作業に取り組んで、財政改革を強力に推進してきているわけでありますけれども、それでもなお特例公債に依存せざるを得ない予算編成というものを本年度まで余儀なくされてまいりました。我我は来年度何とかしてこれを脱却しようと必死の努力を続けていくわけでありますし、しかし、そういう状況でありましても、多額の公債残高を抱えており、これから生ずる利払い費が歳出の二割近くを占めるという状況の中には変わりはないわけでありまして、財源に余裕があるといった状態の論議は展開できる状況ではない、そのように思います。
  52. 伊吹文明

    伊吹委員 もう一つ、これもいずれ参議院で議論されるでしょうが、野党案の中で、物品税というものを一兆五千億財源として見ておられます。そして、この物品税の税率が一〇%、八%、五%という野党の提示もあったけれども、何か最近の新聞を見ておると、自動車労連や電機労連との関係もあるらしくて、八%、六%、四%という案に変わってきておるというふうにも伺っています。いずれしっかりとした法案が出てくれば、そのあたりを踏まえて参議院の同僚議員が議論をすると思いますが、仮に八、六、四という税率を前提として今の課税客体を変えないということであれば、自動車と家電製品という最も税収の大きいところに最高税率の八%を当てて、しかも毎年毎年一〇%ずつぐらい購買量がふえるだろうというので一〇%の年間伸び率を計算しても、私の計算では一兆円にならぬと思いますよ。そういうものが財源になっている。こういうものがどんどん参議院で出てくるという状態では、大蔵大臣、どうですか、こういう前提で予算編成の責任者として責任が果たせますか。
  53. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まだ御検討中と承っておりまして、結論を拝見しておるわけでありますから、何ともこれは申し上げようがありません。  ただ、代替財源といいますからには、基本的にこれは制度上の手当てがきちんと行われるべきでありまして、その手当てが仮に行われておらず、税収見積もりの是正といったようなことで計算合わせが行われているとすれば、あるいはそういう対応をなさるということであれば、これは制度上の財源手当てがきちんと行われているとは言い得ないという問題を生ずることは間違いないと思います。
  54. 伊吹文明

    伊吹委員 私は、今の景気の現状から見ると、来年度の予算大蔵大臣はどういう形で組まれるか今いろいろ検討しておられると思うのですが、少なくとも景気刺激的な予算は私は組むべき景況ではないと考えております。しかしながら、今の例えば自然増収と物品税とこの二つをとっても、果たして財源になり得るんだろうかということになれば、当然その分は赤字国債の増発、つまり景気刺激的な予算を組まざるを得ないということになりますね。そしてしかも、例えば日本経済新聞に中谷さんという大阪大学の先生が書いておりますが、極めてこれは景気刺激的な結果になるのではないかという記事がございます。今、財政を通じて景気運営全体について責任を負っておられる大蔵大臣としては、こういうことが重なってくると日本経済の運営についてどういう責任をお持ちになられるでしょうか、ちょっと伺いたい。
  55. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 非常に多くの仮定の置かれる話でありますけれども、野党が仮に御主張になっておられますような消費税廃止という事態がどういう影響になるかといえば、それに対する代替財源がどのような姿になるかによって、まず第一に大きくこれは変わってまいります。  しかし、基本的に、私どもは今委員に御答弁を申し上げましたように、我が国が積極的な財政運営を必要とする状況にあるとは考えておりません。そして、明年度赤字国債脱却、特例公債脱却という方針を変えるつもりもございません。ただその中で、既に発行いたしております国債の残高を考えますとき、そこから生ずる利払い費の増というものを考えますとき、我々としては非常に厳しい予算編成を行うことになる。当然行財政改革というものは進めながら歳出の削減にも全力を挙げなければならなくなるであろう、そのように考えております。
  56. 伊吹文明

    伊吹委員 今私が二、三の例を挙げましたように、予算関連法案、特に大きな予算関連法案の参議院先議という問題については、政府の予算編成権、そしてその予算編成権によって編成された予算をどの程度国会が修正できるかという問題をも含めて、それを扱う者の節度というものが一方に要求をされるし、同時に法的にもいろいろ考えねばならない問題を含んでいると思いますので、これは与野党を問わず国会議員としてこのあたりの将来の問題は院の問題として私は考えていくべきだと考えておりますので、委員長においてもよろしくお取り計らいをお願いいたします。
  57. 中尾栄一

    中尾委員長 そのように取り計らいます。
  58. 伊吹文明

    伊吹委員 さて、今度は自民党が言っております消費税の見直しについても触れなければ不公平だと思います。  私は、本会議で三塚政調会長が申しましたように、あの売上税の大混乱があって議長裁定というものが出ました。そしてあの議長裁定にかかわったすべての政党は、その議長裁定にのっとって、直間比率の見直し、そして税制改革というものについて国民にやはり責任があり、真摯にこれを国民の前に議論をすべき責任があると思います。  ところが、残念なことに国会というのはほとんどこの税制改革の問題について審議ができませんでした。先般のNHKの消費税についての三日間の特集のあの視聴率があんなに高かったということは、あの議論をやはり国会でしてもらって、そして国民はそれを聞かせてもらって判断をさせてもらいたかったということだと思います。私も国会議員の一人として、審議ができずに、そしてあのような不幸な形で消費税法案が通ったということについて政治家としての責任を深く感じておりますが、まず総理はこの点についてどう思われますか。
  59. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 税の中身がどのようなものであるかということをやはり国民の皆さんに理解と納得をしていただく。税は負担をしていただくものでありますから、これは必ずしもすべて愉快な話ではございませんけれども、必要なものであり、憲法にも定められておる納税の義務でもございますから、そこを御理解と御協力をいただくように十分に事情を説明をしなければならぬという基本的な立場は、私もそのとおりだと思います。そういった意味で、今後ともでき得る限り御議論を通じていかなる税金がいかなるときに必要なのかということに皆さん方の御理解をいただくように努力をしていかなければならない、こう思っております。
  60. 伊吹文明

    伊吹委員 私は、今一番大切なことは、お互いに、与党と野党が相手の案の揚げ足をとるということじゃなくて、審議をし合うことによって、野党からも我々は教えてもらわねばならない、しかし同時に、野党の人たちも我々の案を真摯に審議をしてもらわねばならない。  例えば「良薬は口に苦し」という言葉があります。したがって、この薬は苦いよ、苦いよ、苦いから嫌いですか好きですかということをあおり立てて票をとるということがあってはならない。苦いけれども、やはりその薬はこういう効果があるんだということも説明しなければならない。したがって、何事も表と裏とがあります。消費税が好きですか嫌いですかと言って、嫌いだという結論を出させたら、必ずその穴埋めという、代替財源案という、増税案という苦い薬を提示する義務があります。年金の引き上げという甘いことを言えば、必ずその後ろに保険料の引き上げとか給付の年限の延長という苦い薬はついてまいります。  私は、今一番大切なことは、この見直しの議論についてもそのような間違いを犯さないことだと思います。例えば、内税をとるということになれば、便乗値上げの危険性が非常にふえるという苦い面が出てまいります。そしてまた、免税制度を廃するということになれば、零細な企業の方に記帳義務を強いるという苦い面が出てまいります。食料品を非課税にするということであれば、伝票の操作をするという売上税万式、つまり大変複雑な記帳の方式を入れてこなければならないという苦い面が出てまいりますし、それを避けようとすれば、食料の生産あるいは流通に従事をしている人に、仕入れの消費税は抱かせるけれども、売り上げのときには消費税をかけちゃいけないという極めて非合理なことになります。したがって、私たちは、勇気を持ってはっきりとメニューを示さねばならない。これをやればこういうことが起こります、これをやればこういうことが起こりますということを、国民を信頼して国民にはっきりと示して、国民の選択を受けねばならないと思いますが、メニュー方式で損得を国民に示すという考え方について、まあ審議会に諮問をしているから今答えにくいと大蔵大臣おっしゃるかもわかりませんが、いかがでしょう。
  61. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに、今私は審議会に作業をお願いをしており、また、党の方においても党の税制調査会において御検討をいただいておるさなかでありますから、確たることを申し上げることはできません。しかし、少なくとも私は今まで国民から御要望のある見直しの御意見、これはすべて俎上にのせていただきたいということをお願いをしてまいりました。同時に、仮にその御意見が採用できなかった場合に、どういう理由でそれが採用できなかったかということを明らかにする必要があるということも申し上げてまいりました。基本的に委員の御意見と相共通する部分を持つような感じがいたします。
  62. 伊吹文明

    伊吹委員 この委員会の冒頭質問で、社会党の山口委員が、浅沼委員長や保利衆議院議長の言葉を引用されまして、政治家というのは選挙のときに口当たりのいいこと、あるいは有権者に受け入れられやすいことを言って票をとるがというお言葉がありました。政治家一人一人として、もちろん私もそうですが、自民党も拳々服膺しなければなりませんが、これは野党も含めて、好きですか嫌いですかという議論ではなくて、やはり良薬には苦い部分があるということをはっきりと言って票をとるというのが私は本来の政治の筋だと思います。したがって、この言葉は、我々は自民党として拳々服膺すると同時に、野党の皆さんにもお返しをしなければならない言葉だと考えております。  さて、このような考え方について、総理はどのように思われますか。
  63. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども触れましたように、税というものは、国民の皆さんに負担をお願いするというものでありますから、これは愉快な、心楽しい話ではございません。けれども、すべての人が社会を支えておっていただく、社会を支えておっていただく方が社会共通の費用を受けていただく、このことのお願いをするのが基本でございますから、日本国の憲法にも納税は国民の義務として明記されておるのはそういったところに背景があろうかと思うのです。  さて、税のことで一昨年ごろまでのいろいろな世論調査をずっと調べてみますと、やはり国民の皆さんの税に対する御不満の中に大きかったものは、御指摘のように高過ぎるという指摘や、あるいは不公平である、特に直接税に偏り過ぎておった今までの体系でいくと中堅サラリーマンの方に非常に重い負担があるということが、これは事実として我々の理解の中にございました。私どもは、その中から、諸外国と比べて税が高過ぎるから製造業の空洞化というような言葉が新聞の字面になったり、あるいはいろいろと直接税が高過ぎる、もう少し間接税と直接税の問題を検討しなければならぬではないかという問題意識も随分受けてまいりました。  そこで、今回の税制改正というものは、そういったことを全部踏まえて、所得と消費と資産課税のバランスのとれた税体系にしていくことによって全体的には公平な税制ということを目指しましたし、また、大幅な減税先行ということによって中堅サラリーマンの方や法人税の減税というところにも思い切った対応措置をとってきたわけでありますから、その中の一環としての消費税の導入でありますが、消費税三%は入るけれども、個別の物品税というものはこれでなくなっていくわけでありますし、そういったこと全体を踏まえて、あなた自身の将来を安心して支えていくための税制に変えるのですから、みんなで支えていくこの国のためにどうぞ御理解をくださいという気持ちでやったわけでございます。  ですから、この税の体系そのものについては、私は、これを変えようとか消費税をなくしようとかそういう立場ではなくて、より一層の理解と定着を進めるために、見直すべき点があればどこが見直すべき点なのか、それを思い切って見直していこう、そのために党にもお願いをして、国民の皆さんの議論によく耳を傾けてもらいたい。どこを見直すべきか、政府税調にも見直しのためのフォローアップ小委員会というのを既にスタートをして、いろいろなところでいろいろな立場の方々の御議論、御意見を冷静に聞いていただいております。そして、最近の新聞の世論調査等に出てきますいろいろな見直せという国民の皆さんの期待や、どこをどうするかというような問題等についても、出てきた問題のすべてについて、どういうことなのかということを耳を傾けて聞き、検討を重ねておるところでありますから、定着を図るためにでき得る限りの努力をしたい、また、この気持ちは党にも他の関係閣僚にも伝えて協力を願っておるところであります。
  64. 伊吹文明

    伊吹委員 ともかく、野党の諸君からのやじも飛んでおりますが、自民党としては見直しをするということは発言をしたわけです。官僚の議論あるいはいろいろな団体の意見を聞けば、良薬の部分の裏に隠されている苦い部分が必ず指摘されます。苦いからやれないよということは言えませんよ、これは、言った限りは。したがって、私たちは政治家としてこのことにどう決断をするかという立場に追い込まれていると思います。そして、このことを幾らお役人に伺っても、役人は自分の守備範囲で理論的なことしか言いません。まさに政治家として決断をしなければいけないという問題なんですね。したがって、私は、幾つかの私なりの考え方がありますが、これは特に大蔵大臣は、今見直しについて諮問をしておられる立場ですから、私の提案についていい悪いというお答えは大変やりにくいお立場におられますし、また仮に伺ったとしても、お役人がつくった想定問答では、それは難しいとか、だめだとかいうことに必ずなるでしょう。したがって、私は一方的に私の考えを述べておきますから、御参考にしていただきたい。  まず、高齢化対策ということをうたい文句にして消費税を導入したということは紛れもない事実です。したがって、私たちは、何か目に見える形で、老人医療の問題なのかあるいは年金の問題なのか、消費税が入ったからこうなったということをやるべきだと一つ思っております。  第二番目。食料品の非課税ということは多くの人たちが希望いたしております。しかし、同時に、食料品の非課税をするためには大変難しい問題が裏にあることは事実であります。したがって、食料品のうちで政府が管掌している物資、例えば米、麦、こういうものについて財政負担をしてでも三%の末端価格が下がるようにすべきだ。これは私の考えです。  第三番目。内税というものをとれば必ず便乗値上げが生じます。したがって、総額表示方式をとるべきじゃないか。  四番目。簡易課税制度はやはり若干の縮小をすべきじゃないか。  五番目。納税貯蓄制度というものを設けて、零細企業の人たちが預かっている消費税について、運転資金に使ったりしておる場合に、納期が来た場合にこれを簡単に払えるような制度をつくってあげるべきではないか。  この五点が私の考えです。これを御参考にしていただきたいと思います。  最後に総理に申し上げます。  いいことだけ言わずに、やはり良薬を申し上げれば苦いということを言っていただかねばなりません。今、私は国民に率直にそれを問いかける政治というものが一番望まれていると思います。政府の提案した良薬の苦い部分を指摘して票をとるということもまずければ、野党の案の揚げ足をとって野党を追い込むということでもなく、お互いに議論し合って国民のために何をやるかということが一番大切なことだと思います。  石橋湛山総理大臣は、民主主義というのは民意をくみ上げねばならない制度であるけれども、民衆に迎合しては成り立たない制度だということを言っておられます。苦い部分ということを必ず言っていただく総理であっていただきたい。いかがですか。最後に質問をして、終わりたいと思います。
  65. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 言うべきことはきちっと物を申し上げ、お願いすべきことは国民の皆さんにもきちっとお願いをする、こういうつもりでおります。
  66. 伊吹文明

    伊吹委員 終わります。
  67. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて伊吹君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開するとととし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後二時開議
  68. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  69. 新村勝雄

    ○新村委員 総理ほか関係各大臣に順次御質問をいたします。  まず総理にお伺いをしたいのですが、今、政治上の最大の争点あるいは問題になっているのが消費税であります。そこで、この消費税が、先般の参議院選挙で国民からノーという回答が出たということは、総理も既に御認識であると思います。なぜそういうことになったかということについてお伺いをしたいと思います。
  70. 中尾栄一

    中尾委員長 新村君、恐れ入りますが、マイクをもうちょっとお近づけになってください。
  71. 新村勝雄

    ○新村委員 今の問いはいいですか。おわかりですか。参議院選挙で消費税が国民からノーという判断あるいは回答をいただいたということについては、総理は既に御認識だと思いますけれども、なぜそういうことになったかということについてお伺いしたいと思います。
  72. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 参議院選挙の結果は私も厳粛に受けとめておりますが、参議院選挙は消費税をどうするかということだけで争われたものではなかったと思います。そして、なぜあのような結果になったかということにつきましては、これは率直に申し上げて、リクルート事件に端を発した政治不信というものも原因としてありましたでしょうし、またいろいろここで御議論いただいておるように、農政上の問題点もございましたでしょうし、その他それぞれの地域にいろいろ固有の問題もあったでございましょう。そういった国政全般を含めての御議論の中であのような結果が出た。消費税に対しても、それが全く影響しなかったとは申しません。いろいろと御批判をいただいたということは謙虚に受けとめております。
  73. 新村勝雄

    ○新村委員 選挙というのは一つの政策についての可否を問うものではありません、これは国民投票じゃありませんから。総括的に包括的にその政治に対する判断が出るということでありますけれども、消費税が国民から拒否を受けたということについては、総理も御認識であるわけであります。  そこで、なぜそういうことになったかということについてでありますけれども、これについては明確な御返事、御答弁がありませんけれども、やはりそれは政府・自民党がこの税を導入するについて国民の皆さんの御了解あるいは納得が得られなかったということ、それから政府。自民党がクリアしなければならない大きな問題があったにもかかわらず、それが依然としてクリアされないということだと思います。その大きな問題というのは何でしょうか。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今委員から御指摘のあったことを我々の方の視点からとらえてみますと、導入時におけるいろいろな問題について大変残念なことがあったということが一つと、それからもう一つは、リクルート問題から発した政治不信の中で、この消費税問題というものを、冷静に消費税だけのことについて御理解と御納得をいただけるように御説明を続ける時間がなかったこと、それらのことについては、政治不信を招いたことを我々の方で大いに反省をして、それは今後政治改革を通じて努力をしていかなきゃならぬ問題であります。その二つのことが大きな原因となって、この前の参議院選挙のときには国民の皆さんからあのような御審判を受けた、私はそのように受けとめております。
  75. 新村勝雄

    ○新村委員 総理は極めて抽象的におっしゃいますけれども、具体的に申し上げましょう。それは、この消費税を導入するについての手続、特に公約違反ということですね。公約違反という事実があったことは、これは何人も否定できないと思います。当時の自民党総裁、内閣総理大臣中曽根康弘氏が、あの選挙のときに、大型間接税は導入しないということを繰り返しこの選挙の中で有権者に向かって演説をされた。これはお認めになりますか。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのようなことがございました。
  77. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、その選挙で選ばれた国会、衆議院に売上税、そして後では消費税、これが提案をされたということをお認めになりますか。
  78. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのとおりに提案されまして、提案されましたから、今度は国会の中の与野党の御論議の中で、これは大変な批判も反発も起こりまして、そしていろいろな経過があって、先生承知のとおり議長裁定となり、与野党の話し合いがつかずに売上税は廃案ということに相なりました。そして、そのときの議長裁定に与野党の皆さんが応じていただいてお話し合いをして、そしてその反省に立って新しい消費税というものを、どうしても税制改革はしなければならぬということでいろいろ議論をし、検討をし、お願いをしておる、こういうふうになっておると私は受けとめさせていただいております。
  79. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、中曽根総理がやらないと言ったという事実がありますね。それから一方には、消費税、大型間接税を導入したという事実があるわけです。この二つの事実は全く矛盾するものですよね。これは矛盾、絶対矛盾、絶対的な矛盾だと思いますよ。それを国民に向かって納得を得るあるいは説得をする、これはできないわけですよ。絶対矛盾というのは、これはもう絶対矛盾ですから。これは、政策の問題やあるいは政策の整合性や何かの問題ではなくてロジックの問題なんですよね。絶対矛盾ですから、これはロジックの問題として、既にこれは救済できない矛盾を犯しておるということだと思いますよ。  それで自民党さんはその後、議長裁定ということがある、議長裁定によってこの問題は治癒した、救済されたというふうにおっしゃいますけれども、総選挙というのは国民に直接お約束をし、国民はそれを信じて選挙をしたわけでありますから、そうして三百有余議席がそこで国民の代表として選出をされたわけでありますから、これは国民、八千万有権者と政治との、あるいは自民党との約束であったわけです。ところが議長裁定というものは、これは確かに国会議員の約束でありますけれども、したがってこれは軽いものではありませんけれども、これは直接八千万有権者との約束ではない。直接八千万有権者は議長裁定についてはあずかり知らないわけですよ、理論的には。ですから、この選挙における絶対矛盾とそれから議長裁定というこの事実、これは同列に論ずるものではないのですね。同列に論ずることは絶対にできないのですよ。これは論理的にできない。それは、八千万有権者との約束、それから国会の中の約束事あるいは、これは取引とは言いません、約束ですから。これは約束ですから約束なりの権威はあるでしょう。あるでしょうけれども、同列に論ずることはできないわけですよ。その点いかがでしょうか。
  80. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 理屈を申し上げる気持ちはございませんけれども、私の受けとめ方を率直に言わせていただきますと、国会は国権の最高機関で、国の唯一の立法機関で、そして議員の皆さん方はそれぞれ国民から直接の負託を受けて、そして出てきておいでになる。そしてその議会の最も権威あるシンボルとして議長があるわけで、その、議長がまた国民代表の各党の皆様に物を申し上げた。しかも議会の場で申し上げた。しかも、その議長の裁定によって与野党の話がつかなかったときは、この売上税という法案は廃案だ、そうです、と議長があっせんを示して、それを与野党の皆さんがお話をしてのまれたということになれば、八千万国民はあずかり知らぬとおっしゃるよりも、八千万国民を正当に代表して議会に出てきていらっしゃる各党代表の皆さんが、憲法上に唯一の立法機関と言われておる議会で、議長さんの裁定に従おうということで合意をするということは、これは今の議会制民主主義というものからいったら、それは大きな重みのあるものである、私はこのように理解をさせていただいております。
  81. 新村勝雄

    ○新村委員 それは議長裁定が軽いとは言いませんよ。議長裁定が意味がないとも言いません。しかし、議長裁定という院内の行為と、それから時の政権あるいは政府が八千万有権者に約束をして、その八千万有権者の意思表示として代表が選出をされたということ、その事実、これとは同列ではないと思いますよ、これはどう考えても。一方は、直接国民の皆さんの判断によって、その判断があらわれたわけですよね、三百議席は。議長裁定は重いけれども、重いけれどもやはりそれは間接的に、選ばれた人たちの中で決められたことですからね。あずかり知らないとは言わないけれども、国民の皆さん方の直接の意思表示、八千万国民の直接の意思表示と、それから議院の中の意思表示あるいは意思決定とはこれは明らかに違う。これを同じだとおっしゃいますか。
  82. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国は、制度として直接民主主義ではないと私は思っておりますので、ですから直接民主主義の国なれば、八千万国民の直接の意思ということを絶えずしなきゃなりませんが、議会制民主主義でありますから、やはり私は党代表の皆さんに議長が語りかけるということは、これは大変なことではないでしょうか。しかそのとき、選挙のときにいろいろな項目がございまして、いろいろな御公約もしました。ところが、そういった話の一点だけを持ってきて、しかもそれを強引に、そのことだけで選挙をやってきたわけでもございませんし、それからまた、そのことによって議会が混乱したときに、議長さんがそういうあっせんを出されて、与野党の合意ができないときはこの法案は廃案だねと念を押されて、そうなんだ、廃案なんだと、議長さんは廃案ということをはっきりおっしゃって、そのかわり直間比率等抜本的にお互いに話し合ったらどうだ、協議会の場をつくって新しい税制改革にスタートしろということをおっしゃったと私は理解しておりますので、素直に考えますと、議長さんの裁定に従ったということは、それは議会としては当然のことだと思いますし、それから八千万国民の皆さん、あずかり知らぬことだとおっしゃいますが、あのときもちゃんとこれは公にされて報道されて、あれほど重要な大騒動の後の結果でありますから、詳しく報道機関を通じて国民の皆さんには報道も行き渡っておるわけでございますので、国民の皆さんもそのことは御承知をいただいておることである、私はこう受けとめさせていただいております。
  83. 新村勝雄

    ○新村委員 いや、それは直接民主主義という制度の問題ではなくて、日本の政治の基本はやはり選挙でしょう。選挙によって権力が生まれるわけですから、選挙によって権力の交代もあるわけですから、選挙が最高のこれは政治的な意思決定のプロセスですよ。それに比較をしたら——議長の権威は認めますよ。議長の権威も認めるし、国会議員の申し合わせ、これも認めますよ。極めて重いと思います。重いと思うけれども、やはり総選挙の約束の方が重いと思いますよ、それは。そうでないと、総選挙で何と言っても後で、そのときに選出をされた議員が、それと異なるどういうことをやってもこれは許されるということになりますからね。それは論理の飛躍だと思いますよ。だから、総選挙の決定が重いのか、あるいは議院の、あるいは議長でもいいです、議長のお決めになったことあるいは中でお決めになったことが重いのか、それを比較すべきだと思いますね。
  84. 中尾栄一

    中尾委員長 法制局長官、参考までに……。
  85. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」こういうことが憲法の四十一条に定まっております。その上で、ただいま御指摘ございましたけれども、議院を構成する最高の権威として議長がいらっしゃいますので、議長のあっせんは極めて重いもの、こういうふうに私は考えております。  なお、衆議院につきましても、「衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。」こういうことでございますので、議員がその任期にある間、それはいわゆる代表制民主主義、全国民から選出された議員でこれを構成し、そこで議論が尽くされるという意味では、そこにおける議長の重みというのは大変なものであろう、かように考えております。
  86. 新村勝雄

    ○新村委員 ですから、そういう字句の解釈ではなくて、そうだとすれば、総選挙のときにやらないと言ったことを後で議院の中でそれと全く逆なことを決めるということ自体どうなんですか。それは、そういうことはやるべきでないでしょう。それは、その総選挙の前の経過はだれでも知っているわけですから、それと全く違った裁定ということは、これは民意に明らかに反するわけですよね。また、その総理・総裁が約束したことを、全く逆なことを議院の中でやることもあるいはそういう裁定をすることも、これは民意に反するということになりませんか。
  87. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、先ほど申し上げましたように、私どもは負託を受けて議員となって、議会制民主主義の中で議長さんのあっせんで、売上税は廃案というそのことにきちっと従ったわけで、そして将来に向かって、それでも必要な税制について御理解と御納得をいただきたい、こう思って提案をしてお願いをしておるわけでございます。  そして、選挙が重いか、これは選挙の一票一票が議員のスタートでありますから、選挙のときの結果というものは極めて重いものだと私は思っておりますが、負託を受けて任期の間、議員の皆さんの、代表として議会制民主主義というものが初めて成り立っておるのではないだろうか、こう思うのです。
  88. 新村勝雄

    ○新村委員 だから、重いですよ、それは。議長の裁定も重いんですよ。先ほどから申し上げているとおり重いんですけれども、同じ重いにしたってそれは差があるはずですよ。  消費税にしても売上税にしても、総理が言われるように、これは先進国でやらないのは日本だけだ。ヨーロッパではもちろんやっておりますね。その税率も高いところは二十数%。あの権利意識の強いヨーロッパ人が、あるいは極めて論理的なヨーロッパ人がそういう税制を認めているわけです、納得しているわけですよ。日本がなぜ納得しないのですか。これはおかしいんじゃないですか。それはやはり公約違反というクリアすることのできない失敗を皆さん方がおやりになったからですよ。これについては、これは報道の示すところによると、自民党の中の先生方もいっぱい公約違反を謝らなければならないということをおっしゃっているというじゃありませんか。この公約違反について、これは何らかの形で皆さん方はこれをクリアしなければ国民は納得しないと思いますよ。クリアの方法は、やはり売上税が廃案になったときに解散・総選挙をすべきだったのですよ。それもしないで別の案を出してくるということは、これは全く民意を無視をしたと、結果的にはなりはしませんか。
  89. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙で示される民意が一番重いものであるということは、そのとおりだと思っております。そして、議会制民主主義というものは選挙によって、暴力とか革命とかなしに政権交代のできるルールも定められておるのだということ、それが一番重いものだということも私はよく存じております。けれども、私たちが今ここで先生に申し上げておることは、その問題は国会の中で議長さんから、これは廃案だ、与野党話がつかないときは廃案だという御指示があり、お話し合いをして、結局結果として売上税が廃案になったというときに、謙虚にいろいろなことを我々も反省もし、厳しく受けとめもしました。けれども、税制改革というのは非常に大事なことで、やっていかなきゃならぬことでありますから、国民の皆さんにこれをもっと御理解いただくために、納得いただくためには、議長の裁定に従って直間比率等の、中には不公平税制を含んでおるという御指摘もございました。そのとおりであったでしょう。そういったことの継続的な協議を与野党でずっとお続けもいただき、そういう中から国民の皆さんにお願いすべきことはお願いをして、何とか御理解と定着をいただくようにしていきたい、こう思って努力をしておるわけでありますので、その点についてはどうぞお認めをいただきたいと思います。
  90. 新村勝雄

    ○新村委員 そうすると、公約違反ということについて国民に対して正式に釈明をするなり、陳謝をするなり、あるいはその事実をクリアする何らかの方法をおとりになる考えはありませんか。
  91. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 売上税が結果として廃案になったときに私どもは大変残念な気持ちもいたしましたけれども、しかし、いろいろの導入時の問題とかその他のことを踏まえて、議長さんがそういう話がつかないときは廃案だということをお示しになり、その廃案を我々は受けたわけでありますから、それはあのときに売上税が消えるということで一つの終わりを迎えた、廃案という極めて厳しい事実を我々は受けたわけでありますから。そして謙虚に反省をして、新たないろいろな議論をしながら、それでもなおお願いしなきゃならぬものがあるのだという、そういう立場でお願いをしておるのでありますから、これはお認めをいただきたいと思います。
  92. 新村勝雄

    ○新村委員 税制改革について否定するつもりはありません。ただ、問題はやはりその導入の方法だと思うのですよ。何といっても公約違反ということについてクリアされていないと言わざるを得ないわけです。同じことを言ってもしようがありませんから、その公約違反ということはクリアされていないということを、これは最後に申し上げておきたいと思います。クリアされていない。これはロジックの問題ですから、海部総理が日本一の雄弁家であられても、一年かかって弁論を展開をされてもこれはクリアできないですよ、国民の前では。それを最後に申し上げておきます。  次に政治改革ですけれども、今総理は政治改革法案を提案していらっしゃる。そして総理は、政治家が金を集める、金集めに走り回るようなそういう状況はなくしようということを言っていらっしゃいますよね。それからもう一つは、今のような状況であれば、これは総理をも含めて、いわゆる政治家は大変危険な政治風土あるいは法体系の中に置かれていると思います。  例えば、総理がおっしゃるリクルート問題のけじめ、一線を引いて、その前の政治資金についてはこれはいいのだ。これはいいのかもしれません、その前に受けられた方々は通常の浄財として受けられたわけでしょうから。それをしも責めるという気持ちはありません。しかし、その後になってたまたまそのお金が浄財ではなかったという、そういうことがあり得るわけですよ。法律的には遡及することができないわけですけれども、道義的にはやはり遡及されるというか、そういった感じを国民は持つと思うのですね。ですから、総理が一線を引いた前に政治資金を受けられたことについて今責めるつもりはありませんけれどもね。ありませんけれども、それは国民から見れば公明正大とは言えない点も若干あるのじゃないかということです。  ですから、そういうことをなくするためには、政治家の政治活動あるいは選挙費用、そういったものについてはでき得る限り公費で支弁していく。政治家をそういう危険な状態の中に置かないということが必要だと思うのです。これはリクルートにしても——これはパチンコだって同じだと思いますよ。パチンコだって、浄財と思って受ける、それは今の法体系であればいいわけですから、今の状況のもとであればいいわけですからね。ところが後で、例えばパチンコの問題が起こ‐った、あるいはリクルートが起こったという場合、それはさかのぼって政治家は責任を問われますね。極めて不合理ですよ、これは。だからそういうことをなくするということが必要だ。  そのことについては総理、ここでしばしばおっしゃっておりますけれども、そうすると、今の政治改革法案ではとてもこれは達成できないわけですね。新聞報道によると、自民党では団体献金、組合献金、企業献金を一切なくする構想だということでありますけれども、その構想とそれから現在出ている政治改革法案、これとは大分ずれがあると思いますし、総理がおっしゃっているその理想と現在の政治改革法案、あるいはまた自民党でおつくりになっている政党法ですか、それとは大分ずれがあるのですけれども、そこらはどういうふうに総理はお考えになって、将来どういうふうな手順でその理想に達しようとされているわけですか。
  93. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、政治資金とそれから資金の集め方という問題でいろいろ世の御批判も受けることがあったわけですから、根本的には、もっと政治家個人が政治資金に対して、自分で集めるとか頭を使うとか時間を使うというようなことがだんだんなくなっていくようにするのが理想であると私は思っておるのです。  そしてそのためには、政治にお金がかかり過ぎる現状、そういったものをどうやって改めていったらいいかという問題。政治家一人一人に政治倫理をきちっと持てということは、これは当然のことでありますし、それから、衆議院でも議決をされた行為規範に従って動けということも事実ですけれども、個人の倫理観に訴えるだけではどうにもしにくい問題があるというならば、お金がかからないような制度、仕組みを考えていかなきゃならぬ。自由民主党が、リクルート事件に対する不信、あるいは今先生いみじくもおっしゃったように、報道されておるパチンコ問題に対する不信、こういったものは、私は、やはりお金が要るという現状をなくしていくところに最終の目的を置かなければ究極的に果たし得ない問題でございますから、そこで我が党としては、入りの方を抑えるとともに出の方も抑えるために、今国会には二つの法案が出ておるわけであります。あれは資金の透明度を高めていこう、おっしゃるように、手のひらを返したように一〇〇%おまえの理想に達しておるかと言われると、それはいろいろ御意見もお考えもございましょう。けれども、この時期、自民党が政治改革をしたい、政治不信から乗り越えていきたいという強い願いで、みんなが心を合わせてやろうと決意をして、まず初めて提出した法案があの二つであった。あれはやはり私はその方向に向かっての前進であった、こう思っておりますので、あの法案は国会の御論議を通じて適切な結論が出るように心からお願いをしたいと思いますし、さらに、それだけでは全部片つきませんから、選挙のときのお金を公営で使えるようにするとか、あるいは将来政党法も絡んでくる問題ですが、政党に対する国庫の補助を、例えばアメリカ流でいくのか、あるいはドイツ流でいくのか、あるいは北欧の国のようにいくのか、いろいろ姿かたちは違いますが、それぞれ公費が負担をしておるという国の例がたくさんあるわけでありますから、それなればそういったものをこちらも考えて、合意ができるならばそれを受け入れていく。  そして、これは自由民主党だけのことかもしれませんが、将来たくさんお立てになるということになれば、社会党にも起こる問題だと思いますけれども、派閥同士で候補者を立てなきゃならぬ。中選挙区のままでは派閥同士の候補者が選挙をやることがある。同じ政党の者同士で選挙をやっておると、どうしても、ややもすれば政策論争から違う世界に足を踏み出しかねないこともあるというようなこと等いろいろ考えますと、選挙というものは政策を通じて論争できるような姿に持っていくのが一番究極の目的だな、政治改革の本当の姿というのはここまで考えていかなければいけないなということを私は思いまして、これらの一連のことを、今回出した工法案を踏み出しに、さらに議員の皆さんの資産公開の法案なんかも準備、用意されて各党でお話し願っておりますから、こういったものも出していただく。その中で適切な結論を出しながら、最終的には選挙のあり方にまで入っていかなければ政治不信を取り除く政治改革にはならない。  私は、リクルート事件に端を発した不信を取り除いて信頼を取り戻していくためには、与野党の皆さん方に御理解をいただき、御協力をいただき、まさに最高機関である国会でお話しをいただいて、資金の入りの方、資金の出の方について適切な御議論を賜りたい、こう考えておるわけでございます。
  94. 新村勝雄

    ○新村委員 政治不信はやはり公約違反が最大ですから、これをクリアしていただきたいということと、それから政治資金については、政治家が危険な状態の中に身を置かなくて済むような、そういう環境をつくってもらいたいということを特にお願いしたいと思うのです。  次に、建設談合の問題について、関西空港の問題についてお伺いしますが、時間がありませんので、これは続けてお伺いしますから、後で続けてまとめて御答弁をいただきたいと思います。  私は、昨年八月、衆議院決算委員会で、関西空港工事にかかわる談合問題を資料をもとにしてただしました。この指摘は、公正取引委員会調査で立証され、先月六日、排除勧告が出されたわけです。この問題は、国内法に違反しただけではなくて、日米構造協議でアメリカ側が排他的な取引慣行として談合体質の改善を求めるなど、国際問題となっております。建設市場への参入を目指すECあるいは韓国などでも成り行きを注目しているわけです。そこで、この際、政府も業界もきちっとした対応が必要ではないかと思います。  公正取引委員会に伺いますが、今回の海土協の談合が起こった背景、原因ほどこにあるのですか、これが一つ。私は、この談合の摘発について公取の姿勢が極めて弱腰であると断ぜざるを得ないのです。あれだけはっきりした証拠がありながら、一年間もこれが放置をされていたということはどういうことであるのか。それから、関係業者や海土協の立入調査はなぜ行わなかったのか。また、この工事が国家的大プロジェクトであり、限られた土砂を合理的に供給するためにはやむを得ないというような公取のお考えがあったそうでありますけれども、これは極めて遺憾なことであります。  そして、この問題とは別でありますけれども、関連ありますけれども、構造協議で米側が談合問題を取り上げると見るや慌てて排除命令を出したというのが公収の、これは真相ではないのですか。建設談合については五十七年の静岡の事件以来、公取は談合を取り締まる熱意が極めて薄い、そして業界の内部告発などがないようにしてもらいたいという注意をしたという話がありますけれども、この種の問題に対する姿勢を伺いたいと思います。また、ガイドラインを見直す考えはございますか。これが第二点。  先日の排除勧告の対象となったのは、護岸工事の二千万立米でありますが、このほかに地盤改良、造成工事などがありまして、土砂は全量で一億五千万立方メートルに達するはずです。海土協の談合は他の工事にも行われていると言われております。これは、独禁法違反ではありませんか。また、この談合のフィクサーは大林組の、これは名前を言っていいと思います、もうだれでも知っているのですから。平島栄常務であるということは周知の事実であります。関西には彼を中心とした長い間の談合の組織があるというふうに言われておりますが、この海土協の談合が明るみに出た、これを機会にこういった体質を一掃することが必要であると思います。なお、現在でも清和クラブあるいはみおつくしクラブ、これは談合の組織ですが、これがあると言われておりますけれども、これらについて、海土協談合調査の過程でこういったものをなぜもっと明らかにしなかったのか。これが三点。  今回の談合事件について建設省は、公取の排除勧告後、関西地区での指名停止、建設業法に基づく再発防止の徹底等の指示を行っております。ところが、今回関係した会社のうち五社は、米軍横須賀基地の施設工事に絡む談合事件に同じ会社が関与しているということですね。これらの事件の一連の指導をしているのは、平島氏や大林組だと言われております。これらの人物や会社に警告を発したことがありますか。これが四点。  海土協の談合問題に関連して巨額の資金が関係企業から集められたということが言われておりますが、国税庁は海土協、平島氏等について税務調査をしたことがございますか。  在日米軍が発注した横須賀基地の施設工事をめぐる談合で米国政府が関係建設会社に損害賠償を求めているという問題があります。これについて、米側の賠償請求に対して応ずる考えで交渉に入っている企業がありますか。それからまた、否認をして争う考えの企業はありますか。日本企業が米政府調達から締め出されるおそれはありませんか。これについて建設、通産の御見解をいただきたいと思います。  以上です。まとめてお願いします。
  95. 中尾栄一

    中尾委員長 順次政府委員に答弁をさせますが、まず公正取引委員会梅澤委員長
  96. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先般のいわゆる関西空港の護岸工事に伴います、これは談合事件じゃございませんで、カルテル事件でございますが、いろいろな御指摘があったわけでございますが、まず、事件の原因、背景という御質問でございますけれども、それぞれ違法事件につきましては、それぞれの原因、背景というものがありますのかどうか、私どもは、判明いたしました客観的事実について法に照らして厳正に対応する立場でございますので、原因とか背景とかいうものに対するお答えを的確に申し上げる立場にはございません。  それから、一連の措置が非常に公正取引委員会弱腰である、立入検査をやっていない、証拠がはっきりしている事件になぜ一年もかかるかという御指摘でございましたけれども、昨年夏、各種の情報端緒に接しまして、事務局が即刻事態の究明に入ったわけでありまして、検査なり調査の手法は行政機関が一番効果的と考える方法で対処するものでございます。  一年という時間が非常に長いという御指摘でございますけれども、過去のいろいろな事件を見ましても、事件の規模によりましてかなりの年数を要するものが多々ございまして、今回証拠がはっきりしているではないかという御指摘でございますけれども、一つの違法事件として法に従って処理をする以上は、事実の整理それから証拠の収集等所要の時間をかけ、しかも、結論が出ましたところで先般の決定を行ったわけでございます。  それから、今回の事件について、先ほどの原因、背景の御質問にも関連するんですが、公正取引委員会はこういった事件を生じるのはやむを得ないというふうに考えているらしいという御指摘でございますけれども、そういうことは一切ございません。  それから、今回の措置につきまして、アメリカの圧力があったために命令を出したのではないかということでございますが、これも一切そういう事実はございません。日本の独占禁止法に照らし、日本政府としての公正取引委員会が厳正に措置をしたということでございます。  それから、そのほか残余の関連事実について公正取引委員会が、関連事実と申しますか、委員が御指摘になるいろいろな事実についてつかまえておるかということでございますけれども、私どもは独占禁止法に基づきまして独占禁止法違反事件に限定して行政権限をもって調査をする立場でございまして、法律によって犯罪捜査等本来の目的以外に権限を行使するということも許されておりませんし、そういった事実の有無にかかわらず、我々はカルテル等違反事件の事実をつかまえ、それによって法を厳正に措置をするということで我我の任務は果たしておると考えております。
  97. 望月薫雄

    ○望月政府委員 お答えします。  今般のいわゆる海土協の事件につきまして、建設省としましては、公正取引委員会の審決を待ちまして直ちに指名取引停止、これを直轄工事の関係でいたしております。と同時に、建設業法上に基づきます指示処分、こういったことを関係会社にやると同時に、あわせて、こういった談合事件が今日なお残念ながら後を絶たないということに着目いたしまして、業界に対する指導を一層強めてまいりたいということで、そういった面での指導に努めている中でございます。  それから、お話の中で、特定の方のお名前を出しながらの御質問ございましたけれども、私ども、そういった方について現実がどうであるかということを十分承知している立場でもございませんし、また、そういった観点からの警告等、お話ございましたけれども、一切いたしておりません。  それから三番目に、星友会事件に絡んでの米国動きとの関係での御質問ございましたけれども、これにつきまして私ども、現在、基本的には民事の問題であるという認識に立ちまして事態を静観中でございます。
  98. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、総理にお伺いしますが、今貿易摩擦、特に日米間の貿易摩擦あるいはいろいろな意味での摩擦があると思うのですけれども、構造協議等も行われておりますが、自由貿易というのはこれはやっぱり日本のどうしても守らなければいけない体制だと思いますけれども、自由貿易体制を守っていくためには、あるいは発展をさせていくためには、どういう基本的な心構えなり条件なりが必要でしょうか。
  99. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 戦後の日本がこうして明るい社会、豊かな暮らしを実現することができましたのは、今委員指摘のとおり、自由貿易体制というものの中で、日本がある意味では非常に幸運な状況に置かれながら各界の国民の皆さんの御努力によって成長することができたのだ、私は率直にそう思っております。したがいまして、自由貿易体制というものを守り抜いていきたいというのは私どもの大きな決意でございます。  したがって、今、東西の両陣営に分けていろいろお話し合いが進んでおりますけれども、むしろ先進工業国間で一番テーマになっておるのは、まさに先生のおっしゃったような自由貿易体制をどうやって守っていくか、ややもするとあらわれようとしておる管理主義というものに対してどのような説得をしていくのかということが大きな角度であり、それにはお互いにおのおの努力をしなければなりません。今から十数年前初めて始まりましたサミットのころは、インフレのない経済成長ということを各国共通の旗印で頑張っておりましたが、今は自由貿易体制をどうやって守っていくかということが各国の協調して目指す旗印になっていることもこの問題の重要性を示しておる、私はこう思っております。  そこで今度は、それを守っていくためには日本はどうしなければならないか。私も最近の各国との首脳会談においては、日本は内需を拡大することによって輸入の促進が図れるような、そういった内政をうんと努力をすることによって日本輸入を拡大するようにしていきます。同時に、相手国も日本市場のことを調べ、日本市場へどんなものが向くかを考え、日本に対する輸出の努力もしてもらいたい。両方の努力が相まってお互いに貿易不均衡というものを取り除いて管理主義に入らないようにしていこう。そして、それはあくまで違っておるところばかりをお互いに探し合って、ここが違う、ここがいけないということを言い合うだけでは問題解決になりませんので、信頼関係に基づいて包括的な自由貿易体制を守るためにはどうしなければならぬかという前向きの努力をそれぞれの国同士でやっていこうということになっておりまして、最近、この一月から八月までの輸出輸入の統計を見てみましても、アメリカから日本への問題、そしてEC諸国から日本への問題、日本は内需に力を入れてそれぞれの国からの輸入をふやしておりますし、日本の輸出も、もちろん出てはおりますけれども、輸入伸び率に比べるとそれははるかに低い率で出ておるわけでありますから、全体としてバランスのとれたそうした自由貿易体制を守っていく方向に身をもって今努力もしながら、そういう主張を繰り返し続けておるというのが今日の状況でございます。
  100. 新村勝雄

    ○新村委員 やっぱり自由貿易体制を維持発展させるためには相互主義ということも必要でしょうね、黒字ばかりため込むということではこれは相手の立場からすればおもしろくないはずですから。  そういうことで内需拡大に努力をされていると思いますけれども、今盛んに問題になっている農産物の自由化、特に米の問題がありますけれども、米については、特にまた米だけではなくて農産物の自由化については、これは極力自由化を阻止をする。米については自由化しないということを政府も言っておられますけれども、ただそれを守るということだけではこれはだめなわけですよね。それに対しては何らかのそれに伴う政策なり思い切った輸入の拡大なりということが必要だと思いますけれども、そういう点で、米は絶対に守るということであればそれを守る手だて、これが必要だと思いますけれども、それはどういうことでしょうか。
  101. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 米につきましては、日米間の問題といたしましては、その問題はウルグアイ・ラウンドでお互い全体としてのルールをつくる上において話し合っていきましょう、こういうふうなことでありまして、基本的には米の重要性という問題につきまして今までもあらゆる機会を通して私どもは話をいたしてきた、こういうことであります。  また、農産物の問題につきましては、御承知のとおりに日米間の農産物の貿易ということにだけいたしますと百四十五億ドルのいわゆる輸入超過になっておるわけであります。それだけの努力もしてきておるわけでありまして、そういう意味では農産物に関しましては輸入大国であります。そういうことで、輸入大国としての立場から食糧安全保障の問題に十分配慮すべきである、このような基本的な考え方も私どもは申し上げておるところでございます。
  102. 新村勝雄

    ○新村委員 米は単なる商品ではなくて日本人の心である、あるいは日本人の文化そのものである、そのとおりだと思いますね。それはアメリカの方から見れば、デトロイトなりあるいはハリウッドなりはアメリカの精神だと言うかもしれませんね。だから、そういう点、やはり総合的に考えていかなければいけないと思うのですけれども。ですから、例えば米を絶対に守るというのであれば、農村がGMあるいはフォードの車を百万台買いましょうというようなことであれば、やはりこれはアメリカの心情に訴えることもできるし、米を守るという大義名分も立つと思いますよね。ただ米を守るのだという、これは必要は必要だけれども、米を守るのだというだけではだめですよ、それは。相手方に何か与えなきゃこれはだめでしょう。  そういう点で、最近ヒルズ代表が来て、いろいろ話があったそうでありますけれども、新聞報道等では、ヒルズ代表の言うことは一々ごもっともだ、ごもっともだからこそ日本は頭にくるのだということを言っておりますけれどもね。人間は対談していて全く相手が見当違いのことを言っている場合には、にやにや笑って済ませますね。ところが、相手が肺腑を刺すような真理をついてきた場合には、これはおもしろくない、頭にきますね。だけれども、頭にきてはだめですよ、それは。頭に血をのぼせるのではなくて、ますます冷静になって、やはり両国の話し合いを続けなければいけないと思うのですね。  やはり歴史を見ますと、一つの覇権国に対して必ず後進国が追い上げてきますよ。例えば、第一次大戦の前にはパックス・ブリタニカの体制に対してドイツが追い上げていったわけでしょう。その追い上げていったその緊張は、第一次大戦という戦争で決着をつけたわけですね。それから、太平洋戦争にしても、日本は既成の秩序に対して追い上げていった。これはやはりあのときに日米の交渉をあそこで成立させるべきであったと思うのですけれども、やはり摩擦、国と国との摩擦はやはり太平洋戦争という戦争で決着をつけていますね。ところが、これからは戦争で決着をつけるわけにはいきません、これは、絶対に、どんなことがあっても。だから、それはやはり両国の、まあ覇権国、あるいは日本は覇権をねらっているということであるかどうかわかりませんけれども、とにかくアメリカの覇権に対して日本が追い上げているということは事実だ。事実たけれども、それを力によって解決することはできないわけですから、両国が冷静になって話していかなければならないと思うのですよ。  ところが、最近の日本の一部の人たちの論調を見ますと、これは自民党の著名な政治家の言っていることでありますけれども、もうアメリカのお世話になる必要はない、安保条約も要らない、自前で軍備をやって、やっていくのだというような言説をなす人もいますね。これは極めて危険なことじゃないでしょうか。安保条約をなくするということを、平和の方向に安保条約をなくするということを我々は主張しています。ところが、その議論によると、自前の軍備をして、日本経済だけではなくて軍事においても覇権国を目指すという、そういうにおいがあるわけですよ。これは極めて危険だと思います。  それから——いやいや、そういう言説をなす方がいらっしゃる。これは危険だと。いや、海部総理は三木門下の俊才ですから平和王義者だと思いますよ。誠実な政治家だと思いますよ。思いますけれども、そういう危険な議論が日本にあるということ。で、その危険な議論に対して既にアメリカでは反応を示しているというのですよ。日米の関係について極めて危険だという反応を示しているというのですけれどもね。そういう今の日本の一部の風潮でしょうがね、全体ではないでしょうが、一部の風潮に対して総理はどうお考えですか。
  103. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな幅の広い御議論は日本じゅうにあろうと思います。けれども、私がここで申し上げたいことは、日本という国は、先生指摘のように、小ぢんまりとつじつまを合わせて、日本だけが一国の中で全部片つけるなんていうことは、資源の面からいっても文化の面からいっても全くできない国になりました。ですから、ただ単にアメリカのみならず、世界じゅうのあらゆる国々との間で貿易関係が生まれ、相互の依存関係が生まれてきておるわけでありますから、もうどの国の世話になるとかならぬとかいうことでもありませんし、また軍事大国に日本がなって、自分の国で自分のすべてをというようなことも全体として考えたことはないわけでありますから、あくまでもこの国際秩序の中で、自由貿易体制の中で原材料を輸入しながら、それにいろいろと加工をしながら、それを輸出をしながら、そしてそこに貿易バランスの問題でどうしても世界の国から今日本はいろいろな努力を強いられております。一生懸命努力もしております。けれども、まだまだ日本の黒字というものがアメリカにもEC諸国にもその他の国々にもいっぱいある状況の中ですから、それなれば委員指摘のように何かほかのことをしなきゃならぬじゃないか。なるほど日本とは貿易上ではインバランスが目につくけれども、それ以外に技術協力や経済協力や、あるいは途上国の累積債務問題に対して取り組む姿勢とか、地球の環境問題に対して取り組む姿勢とか、そういった方面にいろいろな貢献、いろいろ汗を流しておるんだなということを認めてくれるようなことを、我が方も一生懸命努力をしながら私たちの政治を進めていかなければならぬときだ、このように時局を受けとめております。
  104. 新村勝雄

    ○新村委員 あと一問いいですか。  これは交通問題だけではなくて、住宅問題あるいは土地問題にも絡むわけでありますけれども、東京中心として考えた場合に、東京の東側が鉄道が極めて疎である。疎というのは粗いのですよ。西側、北側はいっぱい放射線がありますけれども、東側には放射線は常磐線一本しかないのです。これは日本の政治あるいは文化が西側から東漸してきたという、そういう歴史的な事実にもよるのでしょうけれども、東側が極めて取り残されているわけです。  これについて第二常磐線という新しい構想がありますけれども、これが運輸政策審議会で答申をされて、まさに棚ざらしというか、何年たっても先に出ないわけです。ところがあの地域は、これは東京一極という問題もありましょうけれども、相当にまだ人口包容力があるわけです。そういったことが一つ。それから、東京周辺の均衡ある発展を図るという意味からいっても、第二常磐線というのは交通政策あるいは土地政策、地域政策にとってもう最大の問題だと思います。最も緊急性のある問題だと思うのですね。政策というのは、これはたくさんの選択肢のうちでどれをとるかということが政治なんでしょうから、どれをやるかということをひとつ正しく判断をしていただけば、あの第二常磐線はもう緊急の課題だということはどなたが見ても明らかなわけなんです。  運輸大臣ももちろん認識はされていると思いますけれども、既にこの問題が運政審で取り上げられてから、もう長い間一歩も前進しないわけですよ。確かにこの間法律通りましたけれども、法律通っただけではだめなんで、あの法律を活用して実際に仕事を進めなければいけないわけですから、その点で、ぜひ交通政策の第一にあの問題を取り上げていただきたいと思います。これは決してェゴではなくて、客観的な一つの要請だと思いますから、大臣、いかがでしょう。
  105. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 東京がますます一極集中になっていく、これは政治的な課題で、排除しなきゃならないということが一つあります。もう一つは、サラリーマンの住宅に対する夢がだんだんだんだん遠くなっていて、果てしなくこれは希望を失う結果になりつつある。こういうことを考えますと、いわゆる大量交通手段による新しい都市の過密化の排除と新しい都市の形成というのが私は必要だと思っておるんです。  まさに仰せの常磐新線につきましては、私ども運輸省として何としてもやりたいプロジェクトでありまして、秋葉原から筑波学園都市まで六十キロ足らずであります。ここに約六千ヘクタールから八千ヘクタールの住宅団地をつくって、十五万戸の住宅をつくろう。私は、十五万戸の住宅ということは、五十万人の都市でありますから、職住近接、職場とそれから住宅が隣接した新しい都市をつくっていくという考え方が必要であろうと思うのです。要する事業費が六千億と計算されておりますが、私はやはり一兆円ぐらいかかるのではないか、こう思います。しかしながら問題は、東京都それから埼玉、千葉、茨城、各県にまたがることでございまして、茨城の知事さんは非常に熱心であります、非常に熱心。ですから、私ももう二度お目にかかっておりますし、都内の各区長さんたちにもおいでをいただいて、実は我々の考え方をお話しして御協力を願っておるところです。  今事務的に何が問題で何をどうしたら問題が先に進むかということを努力しておりますし、さきに国会においても法律を通していただいてお励ましをいただいたわけでありますから、全力を挙げてこの問題は海部内閣のときにひとつ実現の方向に向かって実績を上げよう、こういうことで頑張っておりますから、よろしく御協力を賜りたいと思います。
  106. 新村勝雄

    ○新村委員 総理、今の運輸大臣のお話、わかりましたね。  今十五万戸の住宅ができると言いましたけれども、十五万戸の住宅が供給をされれば住宅の価格が一五%下がるという、これは学者の推計があるわけですよ。ぜひひとつお願いしたいと思います。  終わります。
  107. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて新村君の質疑は終了いたしました。  次に、木内良明君。
  108. 木内良明

    木内委員 さきの国連における中山外務大臣、シェワルナゼ外相との会談を踏まえまして、ゴルバチョフ・ソ連最高会議議長兼書記長が一九九一年来日することが既に発表されているわけでありますけれども、いわばこのソ連の最高首脳の来日というのは我が国にとってこれまでなかったことでありまして、日本政府としましても再三にわたってこれまで来日要請をしてきたわけでありますけれども、なかなか実現を見なかったという経緯があるわけであります。また、世界のデタントの流れの中でゴルバチョフ書記長中心的役割を果たしてきていることもこれまた事実でありまして、そういった意味から、日ソ関係の歴史の中でも、今回のこの一九九一年の同書記長の来日というのは極めて大きな出来事であろう、日程であろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、まず、申し上げた点につきまして、総理はこの書記長の来日をどう受けとめておられるのか、お考えについて伺いたいと思います。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりの両国外相の話し合いもございまして、ゴルバチョフ書記長が、二年先のことでありますけれども日本に訪日するという日程を初めて表明されたということは、両国のきょうまでの歴史上初めてのことでありますから、私は非常に重要に受けとめております。  と申しますのも、日ソの間には、隣国でありながらきょうまでなかなか厚い壁があって、両国の関係が前進しません。それは、前進させるためには北方領土問題を解決するという大きな問題と、そして平和条約を締結する、そして初めて友好関係に向かっての本当の意味の前進があると我々は思っておりましたので、北方領土問題を解決し、そして平和条約を結ぶための一つの節目になるのではないか、このようにも我々は受けとめさせていただきながら、さらにそれに向かって来年の日ソ両国の外相会議やあるいは向こうの外相の日本訪問、こちらからも外務大臣を送りながら日ソの対話を二年先のゴルバチョフ書記長の来日までの間にもさらに一層積み重ねて、両国の理解を深めながらそのような真の友好関係を樹立できるように努力をしていくことが、アジア・極東の平和のみならず世界の平和と安定のためにも役に立つものだという基本認識に立って大いに努力をしていきたい、このきっかけになるなれば非常に幸いである、確かに一つの節目になる、このように受けとめております。
  110. 木内良明

    木内委員 確かに、今総理がいみじくも言及をされましたように、この二年後といういわば大変長期タームにわたる外交日程を明らかにするということは異例のことではないか、こういうふうに一つは思うのですね。  これまでソ連側は、書記長の訪日には成果が必要である、こういう立場を常に表明をしてきているわけです。今回この訪日が明言されたことについて、これまでソ連側が表明をしてまいりました、この訪日に当たっては成果が必要だという、こうした視点に立った何らかの前提条件がつけられているのかどうか、この点について政府の見解を承りたいわけでありますが、国連における両外相会談に臨まれました中山外務大臣の方からまず承り、重ねて総理の見解も承りたい、このように思います。
  111. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員指摘ゴルバチョフ書記長の来日につきましては、先般のニューヨークにおける日ソ外相会談において、シェワルナゼ外相の方から条件なしで、前提条件なしでこの時期のお話がございました。この明後年のゴルバチョフ書記長の来日までに、まずシェワルナゼ外務大臣が訪日される時期についてかねていろいろと両国間で話し合いをしておりましたが、先般の日ソ外相会談におきまして三月というお話がございまして、さらに日本国の政治情勢というものも踏まえて時期を明示してもらいたいということをお願いして、三月中旬ということに御返事をいただいたわけであります。その後シェワルナゼ外相の方から、ゴルバチョフ書記長の来日前に日本外務大臣の訪ソを求める、こういうお話がございました。  両者ではそのような認識に基づきまして合意をいたしたわけでございますが、なお、日ソ外相会談あるいはゴルバチョフ書記長の来日前に、既に日ソの外務省それぞれの担当部局におきましては作業グループの会合が進んでおります。そういう細部の事務の進行状況につきましては欧亜局長の方から答弁をさしていただきたいと思います。
  112. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  今回のゴルバチョフ書記長の訪日につきましては、昨年の十二月の日ソ外相会談以来の経過がございまして、昨年の十二月の会談におきましてシェワルナゼ外務大臣の方から、日ソ関係には重要な問題があり、それは首脳レベルまでいかなければ片づかないということで、首脳レベル会談を前提として外相会談で準備をしていくという合意ができております。その一環といたしまして、今回、先ほど中山大臣からお話のございましたように、シェワルナゼ外務大臣の訪日、それからそれを受けて日本国の外務大臣の訪ソというものを踏まえて準備をしていこうというふうに、対話の筋道がついた上での話であると御了解いただきたいと思います。  そして、さらにその一環といたしまして、首脳会談ということになれば平和条約も非常に重要な問題になるからということで、日ソ間の平和条約作業グループというものが合意されておりまして、現在までに既に本年三月、四月と二回これを開催してきております。その中で、北方領土問題についての詳細な議論とともに、平和条約の内容についてもかなりの議論が進んできております。  それで、今回その平和条約作業グループを十二月の中旬に再開するということに合意を見ておりますし、そのように首脳会談ということになれば平和条約の問題が基本的な問題であるという認識を踏まえながら具体的な作業を進めていきたいというのが日ソ双方の共通の認識でございます。もちろん、領土問題につきましていまだ立場は異なっておりますけれども、ソ連側も日本側も平和条約が両国の関係の基本に重要な問題であるという認識が生じてきたということはそれなりに対話の成果であろうと受けとめておりますので、今後ともこの作業グループの作業を重視しながら対話の道を拡大していきたい、そういうふうに考えております。
  113. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今詳細にわたって御説明を申し上げましたように、日本ソ連の間にある非常に大きな壁は北方領土問題であることはひとしく皆さん御承知のとおりでございます。しかも、その問題を踏まえていろいろ話し合いや作業グループも進んでおるわけでありますし、明年はまた両国の外相がそれぞれお互いに訪問し合いながら対話を一層深めていく、こういうことになって、そして明後年の書記長の来日でありますから、私は、この問題について日本側の期待しておることを、日本側の考えておることを十分承知しているソ連側が何の前提条件もつけずに話し合いを進めていこうとしているその態度に、私の方も強い期待を持ってこれに臨みたい、そしてそのための対話を十分に積み重ねていきたいと考えております。
  114. 木内良明

    木内委員 今いろいろ答弁をいただいたわけでありますけれども、一つは、この書記長の訪日に当たっては成果が必要であるといういわばソ連のこれまでの表明、これに対する第一点はそれぞれのいわゆる外相の相互訪問、それから御答弁にあった平和条約の問題が明確になったわけでありますけれども、そこで総理、現実の訪日までには約一年半程度の時間があるわけでありまして、日ソ関係では、今もたびたび総理が言及されておりますように、北方領土の問題も実は大きな懸案となっているわけでありますけれども、この進展も期待されるというようなニュアンスで今お聞きをしたわけであります。  また加えて、アジアの軍縮問題、まさにこれから正念場を迎えることになってくると思うわけでありますけれども、そこで総理は、今までの御答弁を踏まえて、さらにこの書記長の訪日、それからそれまでのいわば訪日の時期までの日ソ関係に取り組む具体的な方針というものをどう考えておられるのか。また、この書記長との会談の主要な目的あるいは議題といったものはどういった内容になってくるのか。こうしたいわゆる外交の問題でありますからすぐさま言及できない点もあろうかと思いますけれども、今の率直な総理の御見解を承りたい、こういうふうに思います。
  115. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな前提を抜きにして、二年先ということにはまだ間はありますけれども、日本に来るという意思表示を明確にされておる以上、我が方としてはそのときにいろいろな我が方の立場もお話をして、実りのある節目のものにしたいと願うのはこれは当然のことでありますけれども、それまでどのような基本方針で臨むかと言われれば、その他にも今例えば経済交流の問題とか、あるいは人物交流の問題とか、文化交流の問題とか、いろいろ人的な交流とか、経済関係のできるだけの協力、交流というものは現に続いてはきておるわけでありますから、そういったことも続けながらさらに対話を進めていく。そして、来年に予想される両外務大臣の相互訪問のときにも一層の対話を深めていく。そして、アジアの安定と平和、ひいてはそれが世界の安定と平和に直結するようになるように、日本ソ連の間の関係も安定的な平和的な本当に将来に向かってのものにしていこう。それは、やはり北方領土問題を片づけ、平和条約をきちっと締結するという我々の念願を達成できるように、一歩でも二歩でもそのときに近づけるように努力をしていこう、その一点に絞った努力をこれから二年間全力を挙げて続けていかなければならないと思っております。
  116. 木内良明

    木内委員 次に、防衛問題の関連でお尋ねをしたいと思います。  去る八日に、米海軍の航空母艦ミッドウェーの元艦長であるユージン・キャロル氏が記者会見で、艦長時代の一九七一年にミッドウェーが横須賀に寄港した際に核兵器を搭載していたことを示唆した発言を行っているわけであります。これは七一年の五月ということになっているわけでありますけれども、外務省は、まずこの事実関係、すなわちこの時期にミッドウェーが横須賀に入港していたかどうかについて調査をされたかどうか、入港の有無はあったかどうか、お答えを願います。
  117. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 その事実は捕捉いたしておりません。(木内委員「何ですか」と呼ぶ)承知いたしておりません。
  118. 木内良明

    木内委員 こうした日本への核兵器の持ち込み問題といいますのは、七四年九月のラロック証言、それからライシャワー発言、さきのタイコンデロガ搭載水爆の水没事故、こういうぐあいにこれまでも再三疑惑が実は提示されてきたわけでありますけれども、政府はその都度、核持ち込みは事前協議の対象であって、米側から事前協議がなかったから核持ち込みはあり得ない、条約というものは信頼関係が基礎だ、米国を信頼している、こういった答弁で何ら国民の疑問に答えてきていないのではないか、私はこれを痛感をするわけであります。そうした現実の一方で非核三原則は堅持をすると言ってきているわけでありますけれども、こうした説明と経緯だけでは国民は納得のしようがないわけでありまして、恐らく海部総理としてもいわば一人の国民に立ち返ったときに、このままでいいだろうはずはない、こういうふうに実感としてお持ちになっておるのではないか。  信なくば立たずといいますけれども、もしこういうような状況が、さまざまな形で事実関係についての証言なりあるいは状況というものが提示されたときに、事前協議の対象であってその協議の持ちかけがなかったからないんだ、信頼関係だけだというような釈明の仕方あるいは発言の仕方といいますのは、私は、行く行くは日米安保もあるいは日米関係それ自体をも損なうような亀裂を国民の間に生じさせる、不信感を募らせる原因となってくるのではないかと思うのですね。その意味で、まず総理の見解を今申し上げた点についてお示しをいただきたいと思うのです。
  119. 中山太郎

    ○中山国務大臣 実はいろいろと旧米軍関係の方の御発言があったように新聞報道で存じておりますけれども、政府としては、現在一私人である人たちの意見をコメントする意思は持っておらないということを御理解いただきたいと思います。  なお、この事前協議の問題につきましては、一九八六年、米国の戦艦ニュージャージーが日本に寄港いたします際に、当時の倉成外務大臣がマンスフィールド駐日米国大使に対して、事前通告を忠実に守っておるかどうかということの確認をされております。その際、マンスフィールド大使から、米国としてはこれまでも事前協議の義務を忠実に果たしてきたし、今後もこの義務を守っていくという返事が参っておりますので、政府としてはこの返事を信じておる次第でございます。
  120. 木内良明

    木内委員 同じ問題を総理から……。
  121. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米安全保障条約という条約をきちっと結んで、その条約は日米の信順関係に基づいた基本的な条約でもございまして、それについては、今外務大臣が言ったように、日米間で重ねて核の持ち込みのときには事前協議をする義務がアメリカ側にある。私は、それによって、事前協議のない限り核の持ち込みはないんだということできょうまで何ら疑いなくやってきたということで、この信頼関係を大切にしていかなければならぬと思います。  また、我が方の立場を言えば、非核三原則というものは、これは国会の決議に従って私たちはこれをきちっときょうまでも守ってまいりましたし、きょうからもこの精神を貫いて守っていくべき原則である、こう考えております。
  122. 木内良明

    木内委員 まあ実際にはこれまでの答弁の域を出ていないわけだというふうに思いますけれども、いわばこの非核三原則を堅持するということは国是であり、そのために実際に努力をするのは政府としての国民に対する責務でもありましょうし、またその大前提になるのはいわば国民の信頼であろう。こうした状況というものを認識しつつ、しかし、今申し上げております八日のこの元ミッドウェー艦長の発言があり、あるいはラロック証言があり、ライシャワー発言等がこれありということで、国民にとっては極めて不可解な状況というものがあるのも事実であります。  私は、海部総理のさきの本会議における「政治への信頼回復」という所信表明をじっくりと拝見をいたしました。この中でこう総理はお述べになっているんですね。「今日、政治の過程がわかりにくく、政治と国民の心とのつながりが希薄になっていることを謙虚に反省し、民主主義の原点に立ち返って、政治を国民に開かれた明快なものにしてまいります。」「私もまた、信ずるところを率直に語り、対話を重ねてまいります。清新の気に貫かれた信頼の政治こそ、私の理想とする政治の姿であります。」。  一方でこういう総理の実は所信表明があり、一方で日本の、我が国国民を取り巻く非核三原則が本当にいわば取り決めどおり推移しているのかという率直な疑問、これがあるわけであります。  例えばGNP一%の問題にいたしましても、海部総理の師匠と言われる三木元総理の閣議決定、私は、そういった意味では、特に平和に対する海部総理の熱意はかなり大きなものがあるのではないかと思いまして、実際に今御提言を実は申し上げるわけでありますけれども、この事前協議の制度自体では事実国民の疑いというものを払拭し切れないのではないか。こうした実態のまま推移するということは、非核三原則はもとより、政府の政治姿勢、さらには日米関係そのものへの国民の不信感というものを募らせる原因になっていくのではないか。  その意味で、この事前協議にかわる、あるいは事前協議を十分に踏まえ、これをしっかりと残しつつ、さらに踏み込んだいわばチェックの機能というものを検討されるお考えはないかどうか、簡単で結構でございますので、御答弁をいただきたいと思います。
  123. 中山太郎

    ○中山国務大臣 米国の戦略といたしまして、艦船における核の所在の有無については一切公表しないというのが米国の一貫した戦略の方針でございまして、私ども日本国といたしましては事前協議の申し入れがないということで、私どもとしては、米国の艦船を含めたあらゆる兵器、核が装着されていないという認識に立っております。  なお、今総理からお話し申し上げましたように、事前協議の申し入れがあれば、非核三原則を国是とする日本といたしましては、常にこの持ち込みを拒否するという姿勢を貫いていくつもりでございます。
  124. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、私は私の信ずるところを率直に語りますと言いました。ですから、本当に思ったことは率直に申し上げておるつもりでございます。  そして、日米安保条約によって戦後きょうまで我が国がただの一日も戦争に巻き込まれたことはなかったという、この過去の長い事実を踏まえて、私は日米安保条約を信頼しておりますし、日米の信頼関係のもとで平和を守り抜いてきたというこの事実を大切にしていきたい、こう思っております。  そして同時に、国内では非核三原則というものもこれはきちっと守っていく、この原則はきちっと立てながら対応を続けていく決意でございます。
  125. 木内良明

    木内委員 非核三原則を守り抜く、これはもう当然のことでありまして、国民の納得するいわゆるチェック体制というものをさらに踏み込んで検討し得ないものか、こういうふうにお聞きをしたわけでありますけれども、なかなか答弁には至らないようであります。  そこで、プルトニウムの輸送に関する護衛問題についてお尋ねをいたします。  一九九二年から、英仏から我が国がプルトニウムを輸送する問題につきまして、松本防衛庁長官は六日、閣議後の記者会見で、海上保安庁の巡視船を使うという政府の従来の方針を再検討をして、自衛艦が護衛に当たることもあり得るという見解を示されたわけであります。同時に、同日の記者会見で渡邊外務省報道官は、外務省としては従来の方針に変わりはない、こういうことで、いわばばらつきがあるわけであります。  政府の統一した見解というものは一体どういうものであるのか確認をしたいわけでありますけれども、順次お尋ねをしてまいりたい。  初めに、防衛庁長官、御本人でありますけれども、真意はどこにあったのか、お尋ねします。
  126. 松本宗和

    松本国務大臣 プルトニウムの輸送につきましては、まだ海上輸送によるのか航空輸送によるのか決まってはおりませんが、仮に海上輸送によるとした場合にその護衛をどうするか、これは今政府の間で海上保安庁の巡視船を護衛船として派遣する可能性について検討しているという段階でございまして、私の真意は、これまでのそういった対応のしぶりに変わりはないということでございます。
  127. 木内良明

    木内委員 委員長、ちょっと済みません。今までの対応に変わりがない、もう一度ちょっと済みません。
  128. 松本宗和

    松本国務大臣 巡視船を出すことの可能性について検討しているということでございまして……(木内委員「巡視船ですか」と呼ぶ)海上保安庁の巡視船を護衛船として派遣するというその可能性について検討している段階でありまして、真意はそこの点で変わらないし、従来どおりの対応であります、こういうことです。
  129. 木内良明

    木内委員 自衛艦が護衛に当たることもあり得るという見解ではないのですね。
  130. 松本宗和

    松本国務大臣 そういう言い方はいたしておりません。
  131. 木内良明

    木内委員 重ねてお尋ねをいたしますが、自衛艦が護衛に当たるということはお考えにもなっていないし、可能性についても検討はされないというふうに受け取ってよろしいですか。
  132. 松本宗和

    松本国務大臣 目下そういう巡視船についての可能性を検討しているわけでありますから、護衛艦のことについては何ら今考えてはおりません。
  133. 木内良明

    木内委員 余り突っ込んだやりとりは避けたいと思いますが、報道によります内容とは大分違っているのかなというふうに率直に思っております。  それから、科学技術庁長官の見解を承りたいと思います。  このプルトニウムの輸送に当たっては、海上保安庁の巡視船では不安であり不十分なのかどうか。といいますのは、海自の自衛艦が護衛に当たるということが報道をされまして、いろいろな政府部内での話があったのかと思いますけれども、そうした背景一つに海上保安庁の巡視船のいわゆる能力の問題等について議論があったのかどうかお尋ねをしたいし、当初の計画では巡視船は何隻護衛につくということになっておられましたのか。
  134. 斎藤栄三郎

    ○斎藤国務大臣 お答えします。  一九九二年にプルトニウムをイギリス及びフランスから日本に持ってくることについては、先生指摘のとおりです。  それで、船で運ぶ場合の護衛をどうするかについては、従来どおりの方針は微動だにしておりません。すなわち、海上保安庁の船で警護をしていただく方針であります。したがって、今御質問の何隻とかいうようなことは全然話題にのっておりません。
  135. 木内良明

    木内委員 ちょっと違うのじゃないですか。余りこれは時間の関係でやりとりしたくないのですが、海上輸送で海上保安庁の巡視船をお使いになるというのが当初の計画ではないのですか。このときに巡視船を何隻護衛につけるという計画であったのか、それをお聞きしているわけですよ。
  136. 斎藤栄三郎

    ○斎藤国務大臣 お答えいたします。  海上保安庁に御依頼することについて政府部内で検討中なのであります。したがって、今先生御質問のような何隻というような点についてまだ全然触れておりません。
  137. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 先ほど大臣がお答えいたしましたように、返還プルトニウムの輸送は一九九二年を計画しておりまして、具体的な輸送計画はまだ決まっておりません。大臣がお答えしましたように、航空機で運ぶのか海上で輸送するのかを含めてまだ決まっておりませんので、海上輸送する場合の護衛のあり方をどうするか、それは具体的な輸送の計画を決めます段階で具体的に検討していくという予定でございます。
  138. 木内良明

    木内委員 あらかじめお断りをしておきますけれども、私はこの問題について現在の段階でいかなる具体的な立場をとるものでもございませんし、さまざまな報道が行われて、そうした中で率直な疑問がわいてくるから率直にお聞きをしている、こういうことであります。  これについて外務省の見解をお尋ねします。
  139. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  本件につきます基本的な考え方に関しましては、ただいままでに御説明がありましたように、外務省といたしましても、仮に海上輸送を行うこととなり護衛船が必要とされる場合には、海上保安庁の巡視船を護衛船として派遣するという可能性について現在検討しているということでございます。
  140. 木内良明

    木内委員 ちょっと確認で申しわけないのですが、今何とおっしゃったの。海上自衛隊の……(「保安庁の」と呼ぶ者あり)海上保安庁の巡視船ですね。はい、わかりました。  それから、ここまでお尋ねしましたので、運輸省にもお尋ねします。
  141. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 それぞれ答弁がありましたように、まだ最終的な決定が行われておるものではありません。  ただ、輸送機、飛行機で運ぶのか、それからもう一つは船で運ぶのか、二つの方法が実はあるわけでありますが、物が物でありますだけに、船で運んだ方がいいのではないかという意見等も多々ございまして、もし仮に船で運ぶ、輸送船で運ぶということになります場合には、海上保安の業務に当たっておりますいわゆる海上保安庁がこの任務に当たった方がいいのではないかということが今政府部内で検討されておるわけであります。  しかしながら、一万七千海里という長い長い距離を無寄港で実は日本に帰ってくるわけであります。途中でどこかに寄り道をしたり、あるいは途中で補給をするというわけにはまいりませんで、真っすぐに一万七千海里を帰ってくるわけでありますから、そのときには現有のいわゆる艦艇で十分なのかどうか、こういうことについても実は検討が行われておる、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  142. 木内良明

    木内委員 一万七千海里ということ、加えてさまざまな環境要件というものがあるわけでありますが、いまだ最終結論を得ていない。しかし、これまでの答弁の中では、自衛艦が護衛に当たるという可能性の検討についても行っていない。こういうことで、総理、最終的に確認をするわけですが、よろしいわけですか。
  143. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今それぞれの立場からお答え申し上げましたように、もし仮に船を使って輸送するという場合には、海上保安庁の船で護衛をするという案について検討をいたしておるということでございます。
  144. 木内良明

    木内委員 案について検討ということは、その案でなければさらにと、その検討の結果によってはという含みを感じさせる今の御答弁でありましたけれども、そういうことでよろしいでしょうか、受けとめ方は。
  145. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御承知のように、我が国においては海上保安庁が海上における犯罪の予防及び鎮圧の第一義的任務を有すると考えられることから、今後我が国の輸送船を使用して回収プルトニウムの海上輸送を行うこととなり、同輸送に当たる護衛船が必要とされる場合には、海上保安庁の巡視船をかかる護衛船として派遣することにつき現在政府部内で検討しておるところでございます。
  146. 木内良明

    木内委員 これは何度やりとりしても、恐らく政府部内で調整をされ、御苦労をされた御答弁かという気がいたしますので、これ以上はお尋ねをいたしません。  なお、日本の国際的貢献のあり方、自衛隊の行動のあり方、またアジア諸国などの見方などいろいろな問題があるわけでありますけれども、そこで、自衛隊の海外派遣、海外派兵の定義について改めて明確にするとともに、自衛隊法の改正等の関係、政府の基本的な方針というものをこの際明確にされたいと思います。  あわせて、仄聞するところ、防衛庁は護衛艦の派遣については、自衛隊法の改正が必要とされる国連平和維持軍への参加など、いわゆる本格的な海外派遣とは異なるとして、法的にも能力的にも問題ない、こういうふうに判断をしておられるようですけれども、見解はいかがなものか、法制局の長官にお尋ねをいたします。
  147. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 まず初めに、いわゆる海外派兵あるいは海外派遣という用語の定義と申しますか概念と申しますか、そのようなもののお尋ねでございまして、従来、いわゆる海外派兵ということにつきましては、一般的に言えば武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することである、こういうふうに定義づけて説明されております。このような海外派兵は、一般には自衛のための必要最小限度を超えるものでございますから、そういう意味で憲法上許されないということでございます。  これに対しまして、いわゆる海外派遣ということでございますが、これまた明確な定義を今まで必ずしもしておりませんが、武力の行使の目的を持たないで部隊を他国へ派遣すること、これは憲法上許されないわけではないと考えております。ただ、法律上自衛隊の任務、権限、こういうことについて規定されていないものにつきましてはその部隊を他国へ派遣することはできない、こういうことで、これは従来政府がしばしばお答えしているところでございます。  それから二点目の、今の輸送の護衛を海上自衛隊が行うこと、これが現行の自衛隊法上許されるかというふうなお尋ねでございました。  先ほどからお答えございましたように、海上輸送の護衛というのは輸送船あるいはその積み荷を十分に防護することを目的とするということであろうと思いますし、これは海上保安庁法にございますが、「海上における犯罪の予防及び鎮圧」ということを目的としたものとして海上保安庁が第一義的任務を有するもの、かように考えております。  ところで、先生お尋ねの海上自衛隊があるいは自衛隊法上可能か、こういうお尋ねは、多分自衛隊法の八十二条を念頭に置かれてのお尋ねかと思います。自衛隊法八十二条は「海上における警備行動」として、「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」こういう規定でございます。  それで、法律上いかがかというお尋ねでございますが、自衛隊が海上輸送の護衛をすることにつきまして、従来この八十二条の規定を発動した例はございませんし、また、仮にプルトニウム輸送を念頭に先生お尋ねでございましたが、そのような護衛を自衛艦が行う方向で検討しているわけではないというふうな先ほどからの答弁もございます。お尋ねの件については、法律上もなお慎重に検討すべきであろう、かように考えております。
  148. 木内良明

    木内委員 本年二月の本委員会におきまして、竹下当時総理が、プルトニウムの輸送に関しましてこういう答弁をされているわけであります。これは、いわゆる自衛隊の自衛艦による護衛ということの関連でありますけれども、「途中のいわゆる予測されるテロ、ゲリラの問題とかいうことについて詳細な分析をするに今の段階で至っていない。」いわばこれは脅威に対する評価に触れられたところかと思います。「今の段階で至っていない。」、その後脅威評価について何らかの作業が行われているのかどうか、お尋ねします。
  149. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのような検討はしていない、そしてまた、現在政府部内でも巡視船を使って護送船の役を果たせるということについてのみ検討をしておるところであります。
  150. 木内良明

    木内委員 この問題は以上にいたしますけれども、最後に総理にもう一度確認をさせていただきます。  巷間、新聞で報道されております自衛艦の派遣というものが、防衛庁長官によってそれまでの政府方針を変えるかのような印象の中で報道されていたわけでありますけれども、その事実についてはないということ、こういうことで受けとめてよろしいかどうか。
  151. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御引用になりました竹下総理大臣の答弁と同じように、今私たちは自衛艦による護衛については検討はいたしておりません。
  152. 木内良明

    木内委員 次に、角度を変えまして、住宅問題についてお尋ねをいたします。  住宅はいわば国民生活の土台でございまして、快適でゆとりある住まいの確保は、いわば生涯設計の社会、生活創造の社会を実現する上で欠かすことのできない基本的条件であろうかと思います。にもかかわらず、この住宅問題の克服は個人の努力を超えた問題に今なってしまっているのでありまして、今こそ政治が本気になって国家百年の計に立って住宅対策に取り組まなければならない、こういうふうに痛感をいたします。しこうして総理は、さきの所信表明の中で、とりわけこの住宅問題につきましては強い御決意で所信表明をされておられます。「快適な住宅を供給する総合的な住宅・宅地対策に全力を挙げて取り組んでまいります。」他のテーマとは極めて異質の、かたい決意での表現を使っておられるというのが私にとっては大変印象的でありました。  経済大国の我が国は、国民一人当たりの所得水準がアメリカを抜いて今世界第一位になっておりますけれども、この経済大国の実感というものが国民一人一人にいわば生活の豊かさ、潤いとして実感できないその大きな原因というものが私は住宅問題であろう、こういうふうに思います。今私たちが本当に目指さなければいけないのは、経済大国がそのまま生活大国に結びつく政治のあり方をいかに模索をするかである、こういうふうに思うわけであります。  そこで、まず認識の問題をお尋ねいたします。  この住宅問題は、経済大国から生活大国へと大きな作業が要求されております今、時代背景の中で極めて重要な問題である、国民生活に密着した最大の問題であると言っても過言ではないと思いますけれども、この点についての御認識を簡単にお述べいただきたいと思います。
  153. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一言で言いますとまさにそのとおりで、私は、住宅問題というのが今最大の関心事である、こう言っても言い過ぎではないと思います。
  154. 木内良明

    木内委員 今総理から、住宅問題はもうまさに国民の最大の関心事であるという御答弁がございました。  実は、公明党の東京都本部におきまして、先月の二十三、二十四日の二日間を使いまして、東京都本部所属の衆参国会議員、それから都議会議員、市町村議会議員、区議会議員、この三百八十名が一斉に町に出、国民生活の現場に体を運び、住宅に対するアンケート調査、いわば行動しつつ調査をしようということで、ゴーイング・リサーチ、こうネーミングをいたしまして調査活動を展開をいたしました。あるいはお聞き及びかもしれませんけれども、まさに三百八十名掛ける三十でありますけれども、結果的には一万一千百七十二名の調査対象の方から実は回答を得ることができました。調査としては極めて大規模な調査ということになるわけであります。  なお、ちなみに、党本部といたしましては、きのうとおととい、このゴーイング・リサーチの第二回として、高齢社会というテーマのもとでやはり一万人以上規模の調査を展開をいたしました。さらに来月もまた違ったテーマでこの運動に取り組んでいく、こういうことでありまして、いわば政治のあり方の原点といいますのが調査第一主義でなければならない、現場第一主義でなければならないという発想に基づいての実は行動であったわけであります。  このゴーイング・リサーチの調査の中で、住宅に対するいわば関心の問題、あるいは満足、不満足といった点についての設問について実は総理にお伝えをしたいのでありますけれども、さきに余暇開発センターから「住宅に対する満足度」というものが各国別に実は示されておりまして、例えばシンガポールは八〇%、それからカナダが七八%、アメリカが七一%、フランス六六%、フィリピンが四五%、その下にあるのが実は日本の四四%ということでありました。ところが、この申し上げました公明党東京都本部のゴーイング・リサーチ、いわば首都圏の中で特に東京都二十三区と三多摩全域にわたって行いました、その結果、満足していると答えた方が三二・七%、いわば国別の統計の四四%から、首都圏ということでさらに下回る数字が出ているわけであります。  そこでまず、東京を初めとする首都圏の住宅に対する満足度というものが各国横並びの比較の中で極めて低いという実態についての総理の御感想を承りたいと思うのです。
  155. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の調べたところによりますと、日本も確かに欧米先進国並みの世帯当たりの住宅数は確保されております。数字だけで言うと一世帯当たり一・一一という答えが出ておりますから数はあるのですけれども、問題は今委員指摘のようにその質、中身だろうと思います。  質的な面でいってみますと、やはり広さにおいてアメリカや西ドイツ、イギリス、フランスと比べて日本の場合は小さい、狭い。特に、全国平均と今御指摘東京圏というのを比べてみますと、全国平均、日本の家の広さが九十平米ありますのに、東京の、しかも借家というのを対象に持っていきますと、まあちょっと言いたくないのですが、三十九平米という数字になっておりますから、これを当てはめて類推しますと、今御指摘のように、日本の住宅に対する満足度というのはカナダやアメリカから比べると随分下の方であり、特に東京圏の方々が際立って不満な感触を持っていらっしゃるということは、私はこの数字からも明らかだろうと思っております。したがいまして、私が住宅問題というものは非常に大切に考えなければならないと思っております背景も、またそれと同じようなところに立脚点がありますから、数ではない、質の問題だ、このように受けとめさしていただきます。
  156. 木内良明

    木内委員 確かにこの世帯当たりの住宅数ということで、総理が今答弁されましたように、これまで我が国の住宅政策というものは戸数主義で走ってきたわけであります。しかし、やはり今日的な状況の中で質の向上というものがどうしても必要になってくるであろう。まさに私どものこのゴーイング・リサーチの調査の中にも明確に出ているのですけれども、不満であると答えた人が一万一千百七十二人のうち七千五百二十一人いたわけです。この中で、その一番の不満の理由は何ですかと聞きますと、四千五百七十九名、約六一%の人が、間取りが狭いというふうに答えているわけであります。  そこで、この住宅に関する不満を解消をいたしますとともに、すべての国民の住宅権を保障するための住宅基本法というものの制定が必要であろう。さきの本会議でも、公明党の石田委員長がその代表質問の中でこれについては触れたわけでありますけれども、すなわちこの住宅基本法の中では、住宅ミニマムについて国の責任を明らかにするとともに、住宅に対する国と地方の供給体制の明確化、今総理がお触れになりました広さの問題、居住水準の設定、宅地供給対策あるいは財政金融措置、こういった内容を盛り込んだ住宅基本法、これにはまた住宅白書の国会提出なども盛り込むわけでありますけれども、もって住宅問題解決へのいわば基本的な方途というものを明示する必要があるのではないか、こういうふうに思います。  特に、快適でゆとりある居住水準としてのあり方というのは、やはり最低私は、今後戸数主義から質の向上を図るならば、一人一室、一共同室の原則を確立して、標準世帯で、御夫婦それからお子さん二人、四人家族で四LDK、百平米、こういったいわば居住水準というものを明確化して、戸数もさることながら、いわば質の向上を住宅政策の中で進めていくべきであろう、こういうふうに思うのですね。  そこで、住宅基本法について再三にわたってこの制定を要求したいわけでありますけれども、総理からお答えを願いたいと思います。
  157. 原田昇左右

    原田国務大臣 木内委員お話しのように、大変詳細な調査を実施していただいたことに深く敬意を表する次第でございます。  御指摘のように、確かに間取りが狭い、質が悪いということは、大都市圏について、特に賃貸住宅については事実でありますが、さりとてそれを、住宅基本法を直ちに立てろということにつきましては、私ども、住宅政策の目標とか国、地方公共団体の責務とか、今お話のありました住居費の負担の取り扱いとか居住水準のあり方等について、まだまだ国民各層において、また各政党間において、いろいろ異なった考え方がございますので、コンセンサスが形成されるにはもう少し時間をかけなければならないと思うわけであります。  そこで、政府といたしましては、かねてから国民の居住水準の向上を図るために、住宅建設計画法に基づきまして、毎五年度を各一期とする住宅建設五カ年計画を策定して実施しておるわけであります。それによって着々居住水準の向上が見られておることも事実でありまして、その適切な実施を図っておるところでございまして、我々としても木内委員の御趣旨に沿いながらできるだけの努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。
  158. 木内良明

    木内委員 総理に重ねてのお尋ねをいたしますけれども、申し上げました居住水準の設定、設定とまではなかなか御答弁いただけないと思いますけれども、我が国のこの経済大国である実態、これをまたゆとりある生活大国に結びつけるという努力の目標の中で、いわば標準世帯百平米、一人一居室といった環境が用意されてしかるべきではないか、こういうふうに思います。したがって、法律の制定でございますとか規則といったことでなく、総理御自身がやはり国民一人一人が最低そうした百平米といった規模の居住水準を満たす住宅環境に身を置かなければならないというお気持ちを持っていただきたいわけでありまして、これが全力で取り組むということへのまた証左にもなろうと思うのですけれども、その点について御感懐で結構ですから居住水準の問題が一つ。  それからもう一点、本会議で石田委員長に対しましてこういうふうに答弁をされている。今まさに建設大臣が言われたこととダブるわけでありますけれども、「住宅政策の目標、国の責務、住居費負担の取り扱いなどに関し、国民及び各政党間のコンセンサスがまだ未形成だと考えます。」こういうふうに総理は答弁されているわけです。そこで、国民各層、各政党間のコンセンサスを得るためのいわば積極的な御努力を総理として、政府としてイニシアチブをとって進めていただきたい。コンセンサスができていないからそれはしようがないんだということではなくて、いわばその先頭に立って住宅対策、住宅問題の解決のために取り組んでいただくとともに、もってこの住宅基本法の制定に向けての積極的な御努力を願いたいと思いますので、重ねて以上二点についての御答弁をお願いしたいと思います。
  159. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一人一室、一世帯百平米を目指せとおっしゃることは、目指すべき努力目標として私はそれは結構な数値だと思いますし、また私の方も、現在住宅五カ年計画というものの策定の中で、二〇〇〇年までに目指すべき目標として四人世帯を、都市では九十一平米と見ておりますからちょっと百平米と比べると足らないのですが、都市では九十一平米。それから、一般の地方へいきますとそれが百二十三平米になるように、そういった目標を置いて五カ年計画を立てて、その目標を打ち立てていきたいという希望を持ってそれに向かって努力を続けておるということを申し上げさせていただきます。  同時にまた、今おっしゃいますようにコンセンサスができてくるように、そのためにはこれくらいのことをしてもいいんだぞという各政党間、国民の皆さんみんなの理解とコンセンサス、二十一世紀はこれくらいのところに住もうではないかということになりますように、政府としてもいろいろと各般の努力を続けさせていただきたいと思います。
  160. 木内良明

    木内委員 さらに、このゴーイング・リサーチの調査の中で上がってまいりました、現在の住まいに満足しているかどうか、こういう設問に対しまして、不満と回答をしている人が六七・三%あったわけでありますけれども、そのうちの約二四・七%の人が、家賃やローンが高くて困る、もうこれが切実な声として実は上がってきているわけであります。  そこで、私自身も実は調査をしてみましたところ、東京、大阪など大都市地域を中心にした住宅家賃の高騰というのは極めて深刻な事態になっている。本来、都市サラリーマンのための公共住宅である公団住宅でさえも家賃が異常な高騰を示しておりまして、例えば東京都港区の団地のコラム南青山というところでは、家賃が月額二十七万二千二百二十九円、広さも六十二・九平米と決して広くない。また、東京都中央区の団地でありますリバーシティ21イーストタワーズでは、家賃が月額二十五万九百八円、これが全部サラリーマンのためのいわば公共住宅として位置づけられている公団住宅の家賃なんです。率直に言って、どんなサラリーマンがこういうところにお入りになるのか、総理からもちょっと御感想を聞きたいところでありますけれども、それは結構でございます。  一方、低所得世帯のための公共住宅である公営住宅についても、相当これがまた高い家賃になっている。例えば都営住宅の平井七丁目第三アパートというところがありますけれども、家賃が五万七千八百円、さらに公営住宅と同様に国庫補助を受けて建てる地域特別賃貸住宅、これは中間所得層の方が対象でありますけれども、多摩ニュータウンでは七十平米のものが十万九千五百円、特にさきに申し上げました低所得世帯のための公共住宅であるさまざまな住宅というものが、もうとてもじゃないけれども庶民の感覚では払い切れない家賃の実態になってきているわけであります。  そこで、私がぜひ御提案を申し上げたいのは、家賃控除制度の創設という問題であります。  さきに建設省は平成二年度、来年度の税制改正要望としてこの家賃控除制度の創設というものを主張されておられるようでありまして、これは私どももこれまで家賃の控除制度の創設については主張をしてきたところでありますので、一定の評価を申し上げたいところであります。  そこで、まず、建設省が税制改正要望としてお出しになった家賃控除制度の内容でありますけれども、ごく簡単に政府委員の方から御説明を願いたいと思います。
  161. 伊藤茂史

    ○伊藤(茂)政府委員 御説明します。  現在要望しております内容でございますが、床面積が五十平米未満の賃貸住宅については月額五万円、年額で六十万円まで所得税、住民税の課税所得から控除をする。五十平米以上につきましては、家賃五万円未満の場合は全額、五万円以上十万円までの部分については、五万円と家賃の差の二分の一を五万円に加算をしまして、最高年額九十万円までを控除するというものでございます。しかも、一応所得制限をつけまして、一千万円以下の所得の方ということにいたしてございます。  それから、対象になる住宅でございますが、民間賃貸住宅、公団公社住宅、公営住宅ということで、社宅等につきましては考えておりません。  以上でございます。
  162. 木内良明

    木内委員 もう一度ちょっと御答弁願いたいのですけれども、そこで、この家賃控除制度の他の税制との整合性については十分整っている、こう判断してよろしいですか。
  163. 伊藤茂史

    ○伊藤(茂)政府委員 代表質問で同じような御質問がございまして、総理から御答弁ございましたが、そのときにも一応、食費あるいは衣料費とかという基礎的な生活費という中に当然家賃が入るわけでございまして、税制全体の体系の中でそういう生活費をどうするかという問題が関連してあるということでございました。私どももその問題点は十分認識しております。  それからもう一点は、住宅減税ということで、主として持ち家関係、あるいは固定資産税とか登録免許税とかにつきましては貸し家もございますが、そういった住宅減税全体の体系の中でこれがどうなるかという問題もあろうかと思います。いずれにしましても、そういう問題を踏まえまして十分議論をしてまいりたいと存じます。
  164. 木内良明

    木内委員 しかし、具体的な税制改正の案としてお出しになっているわけでありますから、十分検討とは言いつつ、検討を終えられての要望の提出であった、こう判断してよろしいでしょうか。
  165. 伊藤茂史

    ○伊藤(茂)政府委員 住宅行政を担当いたす者としましては検討済みでございますが、政府全体としますと、税務担当の省もございますし、当然に税体系全体の中での議論はあるものと思っております。
  166. 木内良明

    木内委員 そこで総理、住宅を担当する省としては既に検討を終えて、今の御答弁の意味からすると恐らく整合性ありということでの要望の提出であったと思われるわけであります。  そこで、総理の御答弁が本会議でございましたけれども、「家賃そのものを所得から」云々というくだりが答弁にあるわけでありまして、「家賃だけを取り出して特別な控除を設けることには基本的な問題があろうかと考えます。」という答弁になっているわけでありますけれども、既に住宅を担当する省内における検討は、整合性あり、あるいはそれに近きものということで提案が行われたものであろうと考えるわけでありまして、その辺についていわば隘路がクリアをされているわけでありますので、ぜひともこの家賃控除制度の創設についてはその実現に向けての前向きな答弁をいただきたいと思います。
  167. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 総理へということでありますが、税の主管の立場から申しますと、今建設省としての検討の結果はお述べになりましたけれども、それらの問題点のほかにもなお考慮すべき問題点はあるように思います。  と申しますのは、要するに非課税世帯の方々には控除は何ら効果を及ぼしません。その方々には家賃の問題はより切実でありましょう。そうしますと、そういう点も含めて十分検討をしなければならないことでありまして、本来基礎控除の中で対応すべきものでありますけれども、その視点を変えたといたしましても、要するに非課税所得以下の方々にとっては何らこれは解決策にならない。切実さはいずれが重いであろう、そう考えますときには、なお十分検討をする必要があると存じます。私どもとしても、御要望でありますから、建設省からの要求は十分に検討はいたしますけれども、そうした問題点があることもこの際明らかにさせていただきます。
  168. 木内良明

    木内委員 今の大蔵大臣からの御答弁の中に、いわば特定のケースについての御言及がございました。一定の所得水準に満たない民間賃貸住宅入居者——今大蔵大臣から政府委員の方への御指摘があったようでありますけれども、時間の関係で結構です。  あわせて、この家賃の控除方式との併用の中で、一定の所得水準に満たない民間賃貸住宅入居者に対する国による家賃補助制度というものも必要であろうかと思いまして、これもぜひ提案をさせていただきます。簡単な御答弁をお願いします。
  169. 原田昇左右

    原田国務大臣 家賃補助制度は、自力で一定の居住水準を確保できない低所得者等の世帯に対して確かに有効な措置の一つでありますし、木内先生御存じのように、欧米諸国でも実施されておるところであります。しかしながら我が国におきましては、今まで住宅宅地審議会でいろいろ審議していただいて、家賃の評価、家賃の支出能力の把握、管理運営のための組織、費用などの検討課題がなお残されていると指摘されておるわけであります。他の施策との整合性もありますし、国において全面的に実施を決めるにはなお慎重に対処すべきものと考えております。
  170. 木内良明

    木内委員 その必要性は認めつつも今後慎重な検討ということでありますので、ぜひ引き続いてこの実現に向けての御努力をお願いしたいと思います。  次に、重ねて建設大臣に二点提案と要望を申し上げます。  一つは、セミパブリック、準公共的住宅の建設ということでありまして、居住水準の向上と居住環境の改善という両面から、大都市地域における木賃アパートを公的融資または利子補給で、本人所有のまま不燃建築のセミパブリック住宅へ計画的に建てかえるよう、ぜひこれは推進方をお願いしたいのであります。  このセミパブリック住宅方式といいますのは、家賃高騰の原因となっております用地の購入が不要であって、関連公共施設の整備も少なくて済む、また、不燃建築化されるために都市防災上の視点からも非常にすぐれているという内容のものでありますので、これについての御答弁が一点。  それから、都市空間が国民共有の財産であり、さらに有効に利用されるべきであるという視点に立ちまして、単一建物に対する規制、いわゆる単体規制からエリアごとの地区単位規制に容積率の適用範囲を広げるエアライト制度、これを創設をされるように強く要望をしたいと思いますけれども、この二点について簡単な御答弁を願いたいと思います。
  171. 原田昇左右

    原田国務大臣 木内委員の御指摘のように、大都市地域の低質な木賃住宅の集合部分を建てかえまして、良質な賃貸住宅を確保するということにつきましては、私どもも大いに進めなければならないというように考えておりまして、三大都市圏の木賃住宅の集中する地域におきまして、建てかえのための再開発を強力に推進いたしておりますし、建てかえによる良質な賃貸住宅の建設に際しましては、住宅公庫による低利融資、国、公共団体による利子補給等の諸施策を実施しておりまして、融資条件によりましてその家賃を規制するという措置もあわせてとっておるところであります。今後とも住環境の整備と良質な賃貸住宅への建てかえ促進のために、総合的な施策を講じてまいりたいと思いますので、ぜひとも御支援を賜りたくお願いする次第でございます。  それから、今お話のありましたエアライトというか空中権の活用による都市空間の有効利用の問題でございますが、私どもといたしまして、従来同一街区において特定街区等の特別な手法を採用する場合にのみ認めてまいったわけでありますが、昭和五十九年の通達で、隣接する街区相互間においても容積移転を認めようということにいたしましたし、さらに六十二年の通達において、交差点を挟んで一点で接する場合でも認めるように拡充いたした次第でございます。今後とも都市空間の有効利用を図るためにはこの制度を大いに活用して住宅の高層化に資したい、こういうように考えておる次第でございます。
  172. 木内良明

    木内委員 これは総理、一点、国公有地の活用による公営住宅の建設促進という点についてお尋ねをしたいと思うのですが、先ほど来申し上げておりますこの調査の中で、公明党が掲げる住宅政策を幾つか、八点ほど並べた中で対象の方から最も要求の強かったのが実は国公有地を活用して公営住宅を建設する、約七千名近くの方がこの推進をということでお答えを下さっているわけでありますけれども、政府関係機関の地方分散計画等に伴いまして、東京都内に新たに跡地利用のできる国公有地というものが新しく出てくる、加えて現在でも遊休地のいわゆる国公有地というものがあるわけでありますけれども、こうした国公有地における住宅建設というものを、ぜひ具体的な、例えば調査作業、さらにはまた建設計画等を進めるという具体的な作業の中で進めていただけないものか、ぜひこれを提案を申し上げたいと思うのですね。これは建設大臣の方で御用意いただいていますか。
  173. 原田昇左右

    原田国務大臣 委員指摘のように、大都市における住宅問題を解決いたしますには、国公有地の活用はもちろんでありますし、また市街化区域内の遊休地の活用、さらには近郊における大規模開発、こういったものを相まって進めてまいらなければならないと思います。国公有地で住宅に活用できるものはぜひ活用させていただきたい、こういうように考えておりまして、国鉄の跡地等につきましても、清算事業団の所有地等につきましても、住宅公団等に譲渡していただきたいということを事務的には申し入れてあるということも伺っておる次第でございます。
  174. 木内良明

    木内委員 住宅問題の最後で、高齢化社会に関連してのいわば総合的住宅対策の中での高齢者向けの住宅の確保という点でお尋ねをいたします。  老後の住宅の保障というものは社会福祉の基盤であるという視点から、公共住宅の建設に際しては、先進諸国のように、住宅を建設する場合には一定の割合でいわゆる高齢者向けあるいは高齢者の御夫婦用の住宅というものをあらかじめ確保をするという計画的な建設というものが行われてよろしいのではないか、こういうふうに思います。必要に応じて法的措置を講じ、また、そうした高齢者、高齢者夫婦の入居に際しましては家賃面においての特段の配慮も必要だと思うわけでありますけれども、この点についてお答えをいただければと思います。  ちなみに、高齢者向け住宅建設の義務づけの外国の例を申し上げてみますと、デンマークでは、住宅建設の場合公共住宅の一〇%は高齢者向けのものを確保しなければならないということになっている。オランダでは六%、フランスでは公共住宅の五%といったぐあいに諸外国においての例があるわけでありまして、ぜひともこれは、数日来首都圏における住宅供給計画等のいわば特例措置の案なども建設省から大分大規模な中身のものが出ているようでありますから、こうした計画の中での一定の割合の確保というもの、ぜひ前向きな答弁をいただきたいと思うのです。
  175. 原田昇左右

    原田国務大臣 高齢化社会が急速に到来するわけでございますので、住宅政策においても高齢者に対する配慮ということが極めて重要な課題になってきておると存じます。この場合、高齢者の身体機能の低下への対応や居住の安定の確保を図っていくことが重要であると考えております。そこで、現行の第五期住宅建設五カ年計画におきまして、高齢者の居住水準や高齢者向けの規模、設備を備えた住宅の供給について定めることにいたしておりまして、これに基づいて、まず高齢者向けの公営住宅、公団住宅等の建設、入居面の優遇措置を構じております。  それから第二に、高齢者同居世帯に対する住宅金融公庫の割り増し貸し付けということを講じておるわけであります。  第三に、ケアつき住宅の供給につきましては、シルバーハウジング・プロジェクトの推進とか高齢者向きのケアつき高齢者住宅の供給促進等の措置を実施しているところでございます。  したがって、御指摘の高齢者の公的住宅供給体制に一定の割合を確保しろというのも、これは地域によって若干その実情も違いますし、内容も異なると思いますが、地方公共団体等と連絡を密にとりながら、できる限り高齢者の居住環境基準を引き上げていくような施策の充実を図りながら、総合的に推進するように努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  176. 木内良明

    木内委員 総理、これはぜひ総理に御答弁願いたいのですけれども、今地域差の問題等について建設大臣から言及がありました。しかし、私が申し上げておりますように、いわば高齢化社会の到来の中で先進諸国がやっておりますような公営公共住宅の建設に当たっては、高齢者用のいわばケアつき住宅といったさまざまな多様性のあるケースが考えられると思いますけれども、一定の割合というものは確保するようなそういう計画というものが今後策定されてよろしいのではないか。今も建設大臣からは比較的前向きの答弁だったように思うのですけれども、総理から一言ぜひ御答弁を願いたいと思います。
  177. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 高齢者向けの住宅の確保のために、公営住宅をつくるときにはその地域の実情に応じて割合等も明示したらどうかという御指摘でございます。御質問の趣旨を踏まえながら、建設省その他と十分協議をしながらそのような高齢者に対する対応も考えていかなければならない、こう思います。
  178. 木内良明

    木内委員 最後に、寝たきり老人の介護対策ということでまとめて何点かお聞きをいたしますので、関係大臣の御答弁を願いたいと思います。  さきに公明党は、ホームヘルパーの増員、デイサービスあるいはショートステイ事業の拡充など要介護状態の方々やその家族の方々への具体的な援助について要求をし、その実現へ向けての端緒を開くことができたといささか自負をいたしているわけであります。現在約六十万人と言われております我が国全体の寝たきり老人も、西暦二〇〇〇年を迎える時期になりますと、このまま推移をいたしますと約百万人になろうというふうに言われているわけであります。  そこで問題は、私は新しい視点としてぜひお訴えをしたいのは、今後増加するであろう寝たきり老人の方々に対する措置をどうするかという、そうした視点は一つありますけれども、いかにこの寝たきりの御老人の発生を予防するかということにまた一方の視点も持たなければならないであろう、こういうふうに思います。諸外国の例を申し上げるまでもなく、例えばヨーロッパでは、かつての寝たきり老人の実態よりも、いわば社会環境が整い、さらにまた医療環境等の整備によりまして寝たきり老人が減少をしてきているという例もあるわけであります。  そこで具体的にお尋ねを申し上げるわけでありますけれども、一つは、この寝たきりになる原因の学術的な解明を今後精力的に進めていただかなくてはならない。特に食生活を初めとして、骨粗鬆症という病気がお年寄りに多いわけでありますけれども、ちょっと立ち上がる瞬間にぽきっと骨が折れて、その外科的な原因によって病院に担ぎ込まれて、しっかり治療をやって、家族の理解があってリハビリに励めば寝たきりにならないで済むのに、そのまま寝たきりにされてしまうというような状況もあるわけでありまして、かつて厚生大臣をお務めになった渡部自治大臣もよく御存じだと思いますけれども、そういうケースが実はあるわけです。したがって、ひとつこれは骨粗鬆症の原因の究明ということが大事であろうと思います。この点についての調査、学術研究について、ぜひ精力的に取り組むべきだろうと思いますが、この点はいかがか。  もう一つは、ホームヘルパーの増員、デイサービスやあるいはショートステイ事業の拡充などということは、これは大幅な拡充に向けての端緒を開かせていただいたわけでありますけれども、申し上げたようなシステムが機能的に活性化された状態の中で生かされるには、やはりその情報拠点となる、キーステーションとなる介護情報センターというような組織が各市町村単位に必要ではなかろうか。いわば、それまで身内にいなかった御家族の中に寝たきり老人が出現をした、一体どうしたらいいんだろう、どういう施設があるんだろう、どういうサービスが受けられるんだろう、こういう問題に関する情報の提供というものがないために、やたら御家族は悲嘆に暮れ、あるいは慌て、また大変な思いをするというような事態があるわけでありまして、こうした制度を生かすとともに、寝たきりが発生したときにこれを寝たきりにしないという環境的な措置が講じられるように、このセンターといった位置づけも必要であろうと思うのですね。  以上の点につきまして、大分時間の関係でスピードを上げて申し上げたわけでありますけれども、御答弁をいただきたいと思います。
  179. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今委員から御指摘のありました寝たきり老人の防止のことでございます。これは今我が国の長寿社会に当たって最も大切な問題の一つであろう、こういうふうに思うわけであります。お年寄りは、御承知のとおり、若い間子供を育てて、そしてこれから人生の本当の自由な時間を得ようというときに寝たきり老人になってしまうというようなことがあったらば、最も悲惨な状態になってくるわけであります。お年寄りが悲惨な、惨めな目に遭えば、どうしても若い人たちに対して将来への希望というものもなくさせます。  そこで、委員指摘の寝たきりの原因というものを考えてみるというと、いろいろあると思います。それは一つ、がんならがんをとってみても、どの地域には肺がんが多いとか、あるいはどの地域に行くと胃がんが多いとか、どの地域へ行くと脳溢血やそういったものが多い、そういうような病気とその地域の長い間の環境、生活、こういったものと非常に関係が深い。あるいは塩分を非常に余計とっているようなところの人たちはやはり脳溢血になったりすることが多い。そういうような原因等をやはりその地域の住民にもよく教えてあげて、またそういうことの知識を普及させるようなことをして、そういう病気を防止をするということがやはり一つの問題であろう、こういうふうに考えます。  また、今、骨粗鬆の問題もありましたけれども、やはりこういったものはカルシウムというものを生活の中で摂取をするところが少ない。やはり、昔は地域社会でございましたので、その地域の慣習というものがその地域におけるところの健康というものに非常に関係が出てきたということがあるわけであります。そういう意味で、防止をしなければいけないということは最も大切なことだろうと思います。  この間、デンマークの福祉大臣が見えたときにやはり同じようなことを言っておりまして、これを防止するのには、公明党さんの主張されました在宅三本柱というのは非常に効果があるということを私は痛感したのです。それはそのときに、ついこの間でございましたけれども、アンデルセンという福祉大臣をされた方なんですが、その方は約八年ぐらいで寝たきり老人ゼロにしたと言うのです。もう今うちにはいませんよ、こういうことを言っている。本当にそうなのかどうかわかりませんけれども、やはりそれはあれだけ自信を持って言ったのだから。全然いないと言っていましたよ。そういう寝たきり老人は、僕は、病院に入っちゃっているんじゃないのかというお話をいたしました。  そういうようなことでございますので、やはり情報センター、いろいろな施設があって、いろいろなことをやろう。先ほど言った三本柱でも、住民が知らなければ何にもならない。そのために、住民の人たちに知っていただくように、地域の病院であるとかあるいはいろいろな方々の協力を得て、そこに相談相手を置いて、そして寝たきり老人にならないように、病院から家へ帰った、帰ってきたら自分の体力を回復しなければいけないのに、そのまま家で病院にいるときと同じような寝たままにしているというと寝たきりになってしまう。そういうようなきめ細かいサービスを先生方の御提言によってこれから実施をしていこう、かように思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  180. 木内良明

    木内委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  181. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて木内君の質疑は終了いたしました。  次に、野中広務君。
  182. 野中広務

    野中(広)委員 私は、質問の機会をいただきましたので、総理並びに関係大臣に数点について御質問を申し上げたいと存じます。質問時間をできるだけ短縮するようにというお話もございますので、ひとつ御答弁も簡潔にお願いをいたしたいと思うのでございます。  第一点は、ふるさと創生事業についてお伺いをいたします。  竹下内閣において、「自ら考え自ら行う地域づくり」事業、すなわちふるさと創生事業が実施をされ、全国の市町村におきまして地域の特色を生かした自主的、主体的な地域づくりへの取り組みが現在熱心に展開をされていることは、市町村制度が実施をされまして百年という大きな節目に当たり、しかも平成元年という新しい時代のスタートにまことにふさわしい事業として地方自治の歴史の上に特筆されるべきことであろうと高く評価するものであります。  特に、人口あるいは財政規模に関係なく一億円が交付税によって配分されましたことは大きな意義があると思うのであります。明治以来の地方自治制度が発足して百年、市町村は一度も中央政府から信頼されたことはなかったのであります。中央がつくりました、あるいは中央が示したメニューに適合しておれば補助金を認めてあげましょう、あるいは起債を認めてあげましょう、でき上がったものについては会計検査があり、それが不備であれば補助金の返還等が行われてきたのであります。金額は一律一億円ではありますけれども、中央政府が初めて地方を信頼し、そして地方みずからで考えなさい、さらに行っていきなさい、国は積極的に支援をしてあげましょう、これはまことにすばらしい決断であったと思うのであります。  今、地方において、ハード、ソフト両面の計画が、地域の人々みんなが参加して案をつくり、ようやく種がまかれました。離島や僻地では、一つの自治体だけでなく、数種の自治体が区域を越えてお互いに肩を寄せ合って頑張っているところも見受けられるのであります。私は、この芽を立派に育て、花を咲かせ、やがて実を結ばせるためには、一番障害になっていくのは中央政府における各省庁間の垣根であろうと考えており、現にそういう悩みを打ち明けてくる市町村も多いのでございます。それだけに、この事業が真に地方活性化を成功させていくためには、総理において閣僚会議あるいはふるさと創生事業を推進するための組織等をお考えをいただきまして、何とぞ各省庁が垣根を越えてそして協力をしていってくれるべきであると思うのでございますが、最初に総理のお考えをお伺いをいたしたいと存じます。
  183. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いわゆるふるさと創生事業というものが、各省庁の垣根を越えて協力体制を組んで、やる気をせっかく持った地方日治体にもっともっとそれが伸びていくように協力すべきではないかという角度の御質問と受けとめさせていただきます。  私は、地方が知恵を出し、国が支援するという形でそれぞれの地域が活性化していくということは大変重要なことだと受けとめておりますし、政府といたしましては、既に各省庁の連絡会議も置いて、各省庁の垣根を乗り越えてともに協力していくような組織をつくり、体制でやっておりますし、また私の内閣になりましてからも、この地域の活性化、地域がやる気を出してもらうことは大変大切と考え、新たに懇談会もスタートさせまして、各委員の皆さん方に一層の御理解とお力添えをいただきながら、この仕事がさらに地方の活性化のために役立っていくように鋭意努力をしていく決意でございます。
  184. 野中広務

    野中(広)委員 引き続いて自治大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  この事業を継続発展させていくためにはどのようなフォローアップをお考えになっておるか。また、この一億円というのは交付税で措置をされたわけでございます。したがいまして、交付税の不交付団体は実質的には措置をされることがなかったのでございます。市町村におきましてはみずからの財源でふるさと創生事業を計画しておるところもございますけれども、多くの不交付団体の議会や住民にとりましては、ふるさと創生事業というのがそれぞれの地域で大きなインパクトを持って住民に参加意欲を与えておりますだけに、このふるさと創生事業は我々のところではやれないのか、そういう不満やあるいは疑問が出ておるのでございます。全国の市町村が意欲を持って取り組んでいきますためには不交付団体にも何らかの措置が必要であると考えるのでございますけれども、大臣のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
  185. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 野中委員指摘のとおり、全国三千三百の市町村の多くの人たちが、このふるさと創生一億円事業によってみずからの町、みずからの村、すばらしい未来をつくろうと今大変意欲を持ってやっておりますので、これは種をまいただけでありますから、野中委員の御指摘のように、これに花を咲かせ実らせるために新しく地域づくり推進事業、これは二千億程度今考えておりますけれども、しかしこれで十分とするものではない。既存の制度を活用する等、これにさらに飛躍した事業が行われるように、今私は役所の者に命じておるところであります。  また、不交付団体については、これは制度上一億円については差し上げるわけにいきませんでしたけれども、しかしふるさと創生をやらなければならないのは、交付団体、不交付団体にかかわらずやらなければなりませんから、これはふるさと創生事業、またこれから地域づくり事業、これらのものは大方それぞれの市町村、都道府県でこういう事業をやりたいということを計画していただいて、これは起債を見てあげ、さらにこれの返還については交付税で見てあげる、こういった考えの制度が幾つかあります。また、新しく考えておりますので、これらについては不交付団体の市町村、都道府県にも大いに利用していただいて、すばらしい二十一世紀の地域社会をつくるように努力してまいりたいと思います。
  186. 野中広務

    野中(広)委員 次に、税制改正と地方税財源についてお伺いをいたしたいと存じます。  今回の予算委員会におきましても税制改正につきましては種々議論のあったところでありますが、私は、このたびの税制改正というのは、ここに至るまでの十五年間という長い経過が全く無視されまして、公約違反だあるいは強行採決だという大前提のもとに、野党の皆さん方は最初からあたかも反対をしておったかのようにかっこよく宣伝をされておるのであります。そして、税制改正の中の消費税のみが取り上げられておるのでございます。  すなわち売上税廃案の際の議長裁定あるいはその後竹下内閣のもとにつくられました国会の税制改正特別委員会の設置、あるいは委員会におきましては野党の皆さんも参加をし、そして税制のみならずリクルート問題もあわせて、特に江副氏の臨床尋問まで含めて行われたのであります。その後、採決の前提条件であります全党が公述人を出した公聴会が開催をされ、その後、所得税の前倒し減税、消費税の六カ月間弾力的運用の問題、あるいは生活弱者に対する生活補給金一万円の支給見直し条項等々がそれぞれ要求をされまして、政府・自民党はこれを了承し、採決されるべき条件はすべて整い、我々がかつて経験した健康保険法等の採決と同じような自民党単独という形での委員会採決となったのであります。幾ら金丸税特委員長が国会対策のベテランでありましょうとも、公聴会という条件整備なくして採決できなかったのであります。  その当時は、それぞれ、我が党が弾力的運用をやらせたんだ、あるいは我が党が一万円の臨時生活補給金を確保したんだと言って演説をされた方方もたくさんいらっしゃるわけであります。しかし、リクルート事件に対する国民の政治不信と新税に対する好きか嫌いかという、こういう国民の不満が出てくると、あたかも野党の皆さん方は最初から反対していたかのごとく公党の責任者までが言っていらっしゃるところに、私は逆に政治家の一人として不信を感ずるのであります。先刻もこの席で公約が随分問題になりました。選挙のときの公報や演説を公約というのなら、野党の皆さん方の公報の中身や演説の中身というのは一体公約履行とどうかかわってくるのでありましょう。私はまことに不思議に感ずる一人なのであります。  したがって、私は、先般の税制改正の全体像を見ることなく消費税のみを取り出して廃止するなどという考え方は反対であります。しかし、現に参議院において消費税廃止法案が提案をされておりますので、私は主として地方税財源の立場から数点の質問を自治大臣に行いたいと存じます。  創設されました消費税の約四割が地方へ配分されることになった経過は御承知のとおりでございます。この経過にかんがみまして、仮に消費税を廃止しようとする場合は、地方への配分相当額というのは自然増収といったようなあいまいなものではなく、完全に補てんする仕組みが提示されることが前提であると考えるのでありますけれども、そのお考えをお伺いをいたしたいと存じます。  第二点は、同じ消費税廃止の場合、地方団体への代替財源を考える場合には、収入の安定性、さらには団体間の格差是正にも配慮をしなければならないと思うのでありますけれども、このお考えをお伺いをいたしたいと存ずるのであります。  また、野党の方々は消費税廃止の財源として地方間接税の復元を考えておられるように聞くのであります。仮に、電気税あるいはガス税というものをもとのように復活させるとしたら、一体そんなことが可能なのかどうか、私はまことに疑問に思うのであります。この点につきましても自治大臣のお考えをお伺いをいたしたいと思うのであります。  一方、我が党の党内で議論をされております消費税の見直しに当たって、その議論の中には福祉目的財源化してはどうかという考え方がございます。地方への配分枠につきましては、これまた税制改革の経過等にかんがみまして、これを目的財源化することは問題が非常に多く、私に言わしめれば、そうすることは地方財政の独立性を侵したことになるのではないか、こう考えるのでありますが、これにつきましてもお考えをお伺いをいたしたいと存じます。
  187. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 野中委員指摘の点、地方六団体は今大変に心配をしておるところであります。今回創設された消費税の約四割が地方財源になっておりますから、これが廃止されるようなことになれば、これは地方財政は大変なことになってしまいます。つまり、電気税、ガス税、また料飲税を大幅に圧縮する、電気税、ガス税は廃止してその見返りとしてこれはいただいておるわけでありますから、一方だけをどうするというようなことが税制でできないのはもとよりであります。  また、福祉目的税についても、もしこれが全部福祉目的税に四割を使わなければならないというふうに使途を特定されるようなことになれば、全国三千三百の市町村それぞれの財政上の特色がありますから、恐らく小さな市町村では財政が硬直化して予算編成ができない、こういうような事態が起きると思います。  また「電気税、ガス税等を復活する、これも二年の間すぐやるというのも大変無責任な話でありまして、従来の物品税の中で随分と長い間の、委員おっしゃるとおりの議論の中で廃止されあるいは縮減されたものでありますから、廃止されたものを新しくまた新設する、こういうことになればそのためのいろいろの手続を踏まなければなりませんので、すぐにこれを復活させるというようなことが税制の筋論からいってできるはずのものでもございません。
  188. 野中広務

    野中(広)委員 関連をいたしまして、地方財政あるいは地方の公共事業等にも関連をいたしますので、大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。  第四次のNTTの株式売却の見送りが伝えられておるわけでございますけれども、株価の低迷がその主たる原因とは思うのでございますけれども、百五十万の株主がおるわけでございますから、株価の推移につきましては、国民の間からいろいろ心配の声を聞くことが私ども多いのでございます。大蔵大臣はその中におきましても最大株主でございますから、ひとつ大蔵大臣のお考えをお伺いをいたしたいと思うのであります。  さらに、この第四次の放出が見送られることになりますと、既に平成二年度の予算というのは概算要求が終わった今日でございますので、事業の遂行に非常に支障を来すのではないかという財源措置上の心配がございます。万遺憾なきを期していただけると思うわけでございますけれども、この財源措置につきまして、大蔵大臣のお考えをお伺いをいたしたいと思うのであります。  さらに、財源措置に伴いまして、無利子貸付いわゆるABCタイプでございますけれども、これを他の財源で賄うのでございますれば、特にBタイプ等の公共事業でございますけれども、補助率カット等を、この際地方団体との信頼関係にも準拠して見直して、復元をしていただくべきではなかろうかと思うのでございますけれども、そのお考えをお伺いをいたしたいと思うのであります。
  189. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一点でありますけれども、NTTの株価が昨年後半以降日経平均株価の上昇傾向に反しまして低下傾向をたどっております。また、分割問題の帰趨などNTT株式をめぐる諸情勢につきましては、市場に不透明感が存在をするという状況であります。こうした中から、現状においては投資家の評価が定まりがたいものになっているという感じがございまして、市場関係者の中に意見を聞いてみましても、売却した場合にはさらなる株価の低下をもたらすおそれがあると言う向きも多くありますし、証券会社におきましても、引き受けに慎重な姿勢を示される向きが多いわけであります。そしてまた、今委員が御指摘になりましたように、既存の株主を含めて投資家の立場に対しても慎重な配慮を払う必要があろうかと考えております。  こうしたことを考えてまいりますと、NTT株式市場価格及び株式市場全般に対する悪影響を及ぼすことなく市場において円滑な消化が可能と見込まれる状況とは言いがたい、そういう状況の中で今年度の売却を見送ることにいたしました。  現実の株価の水準でありますとか今後の見通しについてコメントすることは予断を与えることにもなりかねないことでありますので差し控えさせていただきたい、こう存じますが、やはりNTTは日本を代表する企業一つでありますから、今後とも株式に対して投資家の適正な評価が得られることを期待をしているわけであります。  また、御指摘のように、概算要求の基準を明示いたしました段階並びに提出をいただきました段階においてはこの決断をいたしておりませんでしたので、今御指摘のような問題が出てまいりました。これは、NTT株の売却を中止したわけでありますから、現在のNTT無利子貸付制度を単純に維持することは容易ではありません。しかし、本制度が目指した地域の発展、開発などの目的が図られるように留意していくことは当然考えなければならないことでありまして、二年度の事業の取り扱いにつきましては、その財源問題を含めて予算編成の過程で十分考えてまいりたいと思います。  ただ、今委員が御指摘になりました最後の問題でありまして、六十三年度まで暫定措置が講じられてまいりました事業に係る補助率についての問題は、元年度においてたばこ税の二五%を地方交付税の対象とするなどの財源措置を講じながら、それぞれの補助金などの性格に応じて適切な見直しを行ってまいりました。また公共事業等につきましても、国の財政がなおしばらく厳しい運営を迫られると考えられますし、事業確保の要請に当面基本的な変化はないと考えられますことから、平成二年度までの暫定措置として昭和六十三年度の補助率などを適用することとしているわけであります。暫定期間終了後の補助率などの取り扱いにつきましては、今後の情勢の推移を見ながら検討をしていくべき課題でありますが、現時点においては今申し上げた以上の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  190. 野中広務

    野中(広)委員 次に、NTT問題、主として私は労使間のあり方について郵政大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  私は京都の選出でありまして、京都は昭和二十五年から五十三年まで二十八年間、日本の灯台だ、あるいは革新知事だと騒がれました蜷川三知事が君臨をされたところであります。したがいまして、そこで府会議員をやっておりましたので、いささか質問は野党的になることがあろうかと存じますが、よろしく御了承願いたいと思うのであります。  また、十一年前に、蜷川さんの後、保守、中道の推薦をいただいて林田知事が実現をしたわけでございますが、私は副知事として在任をいたしました。京都というところで一体どうして一人の知事が二十八年間も知事を続けることができたのか、そういう実態を私は副知事の在任中点検をしてまいりました。  今その実態をここで申し述べることが質問の目的ではありませんので申し上げませんけれども、私に言わしめれば、京都人民共和国が目的意識的に、かつ組織的、計画的につくられようとしておった、こう言うことができると思うのであります。そして民主府政、革新府政というにはおよそほど遠い、役所の持つ権限と府氏の税金を使って知事の支持基盤と支持政党の組織拡大が行われていたのでありました。その中でも、労使の癒着というのはまことにひどいものがありました。組合専従は、二名を除いて本部はもちろん支部、分会まですべてやみ専従でありました。人事権も組合との協議、了解なしにやられなかったのであります。本論に入る前にほんの一例を御紹介申し上げたわけであります。  さて、去る十月二日に電気通信審議会がNTTのあり方について中間答申をされました。その内容がNTTの分割を強く示唆したものでありました関係か、早速、証券市場からは、株主の利益ほどうなるんだ、またNTTの山岸章全電通委員長は、土足で他人のところに踏み込むような不当な労使関係への介入だと激しく非難をされたと聞くのであります。しかし、電話加入数が五千万を突破をし、通信というものが電気や水道と同じように国民の日常生活に欠かすことのできないものとなっておる今日、NTTは国民全体の企業であります。今大蔵大臣もおっしゃったとおりであります。また、百年の間国民が営々として築いてきた財産でもあるわけでございます。三回の株放出をしたとは申せ、NTT株は依然政府が全体の六五%を所有し、将来も法律によって三分の一は所有し続けることになっておることを考えますときに、NTTは株主の利益を最優先するわけにはまいりませんし、労使関係もまたより透明性を要求されるものだと考えるのであります。  そこで私は、全電通の山岸委員長の著書であります、ここにございますけれども、大臣、ごらんになったことがありますか、「NTTに明日はあるか」こういう御本が出ております。中は、大変いろんなことが書いてあります。例えば、真藤さんが組合四役と最初に会ったときは、ギブ・アンド・テークだ、こうおっしゃったとか、あるいは真藤さんの口から、電電改革案は全国の料金区域ごとに分割・民営化をしようと考えておる、いわゆる全国で五百六十七の単位料金区域で電電公社を分割してやっていこうというようなことを考えたので、余りとんちんかんであるので、非常識な発想に頭にきて「あんた何を本気で考えているんだ、こう言ったとか、あるいは、それじゃひとつ県単位であかんかと言ったから、それもだめだ、こう言った、こんなことがいろいろ書かれております。  またもう一方で、元全電通の執行委員であります御原克百氏が「知られざるNTT労組」という著書を書いていらっしゃいます。これも私は通読をさしていただきました。この方は、自分がかって全電通の執行委員であった中から、退職後、私は非常にダラ幹であった、そういう反省の中からこの本を書いていらっしゃるのでありまして、これもまた詳細に申し上げることができませんけれども、支部長の組合費流用のゴルフとか、あるいは選挙はダラ幹の臨時収入源だ、こんなことを書いていらしたり、あるいは、処分者がその夜公社の幹部に宴席に招待される、昼は処分の辞令をもらって、その夜処分者全員が幹部に宴会に招待される、こういったことが具体的に書いてございます。また、やみ専従は当時で約二百五十人おった、こう書かれておるのでございます。これはこの方の著書の中に、今民営化されたけれどもこの姿は今もそのまま残っておる、こう著述をされておるのでございます。  民営化されて四年がたちます。やがて見直そうとする五年を迎えるわけでございますけれども、先ほど大蔵大臣の答弁にもありましたように、最近低迷を続けているとはいえ抜群の株価をつけたNTT株でございます。そして、リクルート事件というあの不幸な事件を除けば全く我が国最大の優良企業でございまして、華々しいスタートをしたわけでございます。六十三年度の営業収益も売上高で五兆六千五百二十六億円と、トヨタ自動車に次ぐ我が国第二位の優良企業であるわけでございます。そして、形の上では着実な歩みをしているかに見えるわけでございます。  そのNTTは、国内はもちろん国外の資本も競争相手として出てくる状態にありますし、今後さらに自由化は日米間において激しい対立を来すであろうことを考えますときに、あえてNTTの労使問題を、さきに申し上げましたお二人の著書を中心にいたしまして質問をし、やれ民主府政だ、革新府政だといってもてはやされた京都の蜷川府政の内部の黒い労使関係を、私もやや目的意識的に副知事在任中調査をいたしました。そして多くの証拠を把握いたしておるのでありますけれども、私は、その体制は地方公共団体と公共性を持った民間企業NTTとは本質的に異なるとは申せ、あえてここにNTTの今後の健全な発展を願いながら取り上げることにしたのであります。もちろん、だからといって、せっかく民営化の道を歩んでおりますNTTでありますので、郵政省等の権限強化や統制拡大は厳に戒めなければならないことを付言して、以下、この二人の御本の中から質問を展開をいたしたいと存じます。  NTTの労使間にあると言われる経営協議会とは、一体どのような組織であり、どのような頻度で開催をされ、どのような事項が協議対象とされておるのか、また、いわゆる団体交渉とはどういう関係にあるのか、お伺いをいたしたいと思うのであります。  全電通の山岸委員長は、先ほど申し上げました著書「NTTに明日はあるか」という中において、次のように述べていらっしゃいます。昭和六十年四月に締結された労使関係に関する基本協定に関して「「団体交渉事項以外の経営の基本政策など、重要課題について論議する場として経営協議会を設置する」とあるが、これは要するに、人事問題を除いて、経営側はあらゆる経営上の重要課題について組合側と話し合うということである。」と述べておられるのであります。また、元全電通の中央執行委員の柳原克百氏は、その著書の中で、人事問題についても組合は徹底したいじめ、告げ口あるいは労使双方の幹部間でのでき合いレース、これによって公社人事に介入をし、これは民営化後も、今も続いておると書かれておるのであります。  さて、人事というのは、申し上げるまでもなく会社にとって管理運営事項の最たるものであります。これを含めて、経営上のあらゆる問題を組合と話し合わなければならないというようなことでは、NTTは組合の了解がなければ何一つ経営判断ができないということになりはしないかと思うのであります。いわば、組合管理会社になっておるのではないかとの懸念さえ私は持たざるを得ないのでありますが、どうお考えでありますか。  また、全電通の山岸委員長の著書によれば、NTTには中央から職場段階まで四段階にわたって労働組合との経営協議会が設けられているとのことであります。本の中に、一般に経営協議会を設置している民間企業労使は数多くあるが、これらの場合は第一段階か、せいぜい第二段階どまりである、職場段階まで経営協議会を置いているところは数少ないのではないかと思うと、みずから述べていらっしゃるのであります。  かつて旧国鉄はこの現場協議制によって経営がおかしくなってしまいました。NTTは黒字会社ということで余り取り上げられてこなかったのでありますけれども、全電通の委員長自身がこう語っていらっしゃるように、現場段階まで組合との経営協議会が設けられておるという事例はまことに特異なものと私は思うのでありますが、大臣はこの点についてどのように感想を持っていらっしゃるか、お伺いをいたしたいと存じます。  ひとまずこれで切ります。
  191. 大石千八

    ○大石国務大臣 NTTによりますれば、経営協議会は、経営上の重要課題について忌憚のない意見交換を行う場として設置されたものであり、また現場段階においても中央における経営協議会と同様の考えをとり、総括支社、支社、事務所の段階まで経営協議会等を設置しているというように聞いております。  なお、その内容としては、合理化施策等を含む事業計画、機構改革等について、会社側、組合側、双方の幹部により年間数回程度開催していると言われております。  他の民間企業においてNTTのように四段階にわたって労使協議の場が設置されている例が一般的なものであるかどうかということに関してはつまびらかではございません。会社の規模等のこともございますので、その点に関しては確認しておりません。  また、経営協議会と団体交渉との関係でございますけれども、経営協議会は経営上の重要課題について労使の相互理解と意思疎通を図っているものとしておりますし、それから社員の賃金、勤務時間などの労働条件に関する事項に関しては団体交渉で決定しているというふうにNTTの方からは聞いておるところでございます。  しかしながら、NTTからは、経営協議会においては人事問題を除き事業経営の基本施策などの重要課題について論議することとなっていると聞いておりますけれども、公共料金を担当するNTTにあっては、いやしくも組合管理と言われるようなことがあってはならないものであることは当然でございまして、経営者としても国民の利益の増進を念頭に置いて平素の経営に当たっているものと考えておりますし、さらにそういった観点でこれからも国民の利便にかなうような経営になってもらいたい、このように考えているところであります。
  192. 野中広務

    野中(広)委員 さらにお伺いをいたします。  山岸委員長は同じ著書の中で、「経営協議会においてNTTの「適正利益水準は経常利益四〇〇〇億円程度である」ことを労使で確認した。」そして「この水準を上回る成長の成果は、「電話料金値下げ」によって、積極的に社会に還元していくという方針をとっている。」と述べていらっしゃいます。  電気通信審議会の中間答申でも指摘をしておりますけれども、NTTは過去において国会においても、適正な経常利益水準というのを三千四百億か三千五百億円とし、これを超えるものについては利用者に料金値下げする等の方針を表明してきたのでありますが、いつの間にか四千億に変わっておるのであります。山岸委員長がくしくも著書の中で「労使で確認した。」と記述をされておることを思うと、私はこれはまことに問題ではなかろうかと思うのであります。すなわち、具体的に言えば、四千億円以上の経常利益がなければ電話料金は引き下げない、これを組合が宣言したということになるのであります。また、設備投資も四千億円の経常利益が確保されなければ抑制される結果になってくるということになるわけでございます。  電電民営化の趣旨は、NTTを民営化して国民の利用者に低廉なサービスを実施しようとすることであったのに、民営化後の労使関係がこのようなことでは、何のための民営化だったのかということになり、労働側の取締役会等への権限介入でさえあるのではなかろうかと思われ、重大な問題であると考えるのでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。  また、同じ著書の中で委員長は、労使間で昭和六十一年十二月に締結した雇用政策に関する覚書に関して「要するに、飼い殺しはしないこと、しかも、「退職するまで」だから、ある意味では終身雇用的な雇用を保障している」と述べたり、また「NTT労使は、「現時点においては、かつての国鉄のような余剰人員はNTTには存在しない」ことを再三確認しあってきた。」と述べておられるのであります。  NTTは民営化後効率化に努めてこられておるわけでございますけれども、最近の資料を私が見てみますと、人件費については民営化後年々増加し、約二兆円に上っております。また、総費用に占める人件費の率も、民営化直後の三五・一%から三七・七%へと上昇をしてきておるのであります。NTT労使には、電電民営化の原点である経営の効率化を促進し、電話料金という公共的な料金値下げをしていくという努力が残念ながら不足しているのではなかろうかと思うのでありますが、いかがでございましょう。  また、NTTの職員の勤務時間は年間千七百六十五時間と、他産業の平均千九百十二時間に比べて極端に短いのであります。勤務時間が短いこと自体は問題ではないのでありますけれども、電話料金の公共料金的性格を考えますと、人が多く非効率な経営が原因で結果的に高い料金になっているのだとすれば問題だと思うのであります。  そのほか、NTTの組合出身の地方議員が約四百人近くいらっしゃるわけでございますけれども、それは在籍のままとなっておったり、あるいはこれらの人たちに賃金、手当等が支給されておるのではないかといったような投書が私どものところにあったりするわけでございまして、いろいろ問題が多いわけでございます。  したがいまして、電電三法の附帯決議にも労使間のこの中に介入しないということはうたわれておるわけでございますし、私も当時逓信委員会の理事の末席を汚しておりましたのでよく承知をしておるのでございますけれども、しかし、今回の中間答申というのはいわゆるNTTの経営全体のあり方を問題として指摘をしておられるのでありまして、電話料金という公共的な料金の引き下げを阻害している経営のあり方が民営化の原点に立ち返って問われておるところでございます。どうぞその意味において郵政大臣は、これから積極的にNTTが国民の期待にこたえられるように努力をしていくよう、鋭意御指導をいただきたいと思うのでございます。  時間がありませんので簡単な質問をいたしましたけれども、よろしく答弁をお願いします。
  193. 大石千八

    ○大石国務大臣 いろいろな御質問がございましたが、経常利益四千億円というのは適正利益水準であるかどうかということでございました。この適正利潤であるかどうかという問題に関しましては、他の公益事業並みの配当率とか配当性向を維持しつつ、最近の法人税減税も考慮して経常利益の適正なあり方について検討してみる必要があるし、また多角的な観点からいろいろ調べていく必要があろうと思いますが、いずれにいたしましても、NTTといたしましては極めて公共的な、民営化されたとはいえ公共的な分野であり、しかもあまねく全国に電信電話網が引かれているというような観点からいきまして、とにかく合理化ということに極力努めて、国民の期待にこたえるために料金の低廉化ということを目指していろいろな角度からまたこれから努力をしてもらいたい、このように考えているところでございます。
  194. 野中広務

    野中(広)委員 最後に、時間がありませんので、北方領土へのマスコミ人による取材につきましてお伺いをいたします。  本年四月以来、八月末の朝日新聞記者が取材行為としてソ連のビザをとり、北方領土に入域をいたしました。政府は、去る九月十九日閣議了解事項として、我が国国民の北方領土入域問題について内閣官房長官談話が発表されておりますが、これは、我が国国民ソ連当局のビザの発給を受けて北方領土に入域する事例が見られることに対し、ソ連の不法占拠下にある北方領土入域の問題点をお伝えし、御理解を求め、入域を行わないよう要請するという趣旨の官房長官談話であります。これが今回の朝日新聞記者の北方領土入域に関する政府の決着ということであるとするなら、私は残念ながら理解に苦しむものであります。  朝日新聞は、九月十一日朝刊で「北方領土 国後と色丹の素顔を見た」という白井記者の記事を掲載をし、その末尾に「おことわり」として「白井、佐賀両記者による今度の取材は、ソ連当局から査証(ビザ)を得て現地に入りました。しかし、このことで本社は、北方領土はソ連が領有するものと認めたわけではありません。ソ連側にも、その旨を伝えて取材に当たりました。」と釈明をしていらっしゃいます。しかし、これは釈明ではありません。すりかえであります。ソ連からビザを得たことそのものが、北方領土をソ連領域と認めたということであります。  政府は、朝日新聞の今回の行為に対し、どのような調査、措置処分をされたのでありますか。旅券の発行の際の渡航先、その後変更があったのかどうか、ビザ受給の経過、日本固有の領土であると先方に伝えたと記事に書かれておりますけれども、伝えた内容は何なのか、あるいはまた、それはどのように把握されたのか、お答えをいただきたいと思うのであります。  私は、朝日新聞の今日までの報道姿勢を考えるときに、あの教科書検定の際、文部省が強制的に突如として「侵略」を「進出」に書きかえさせたという、全く事実無根の虚報を行い、それによって重大な国際問題に発展したことに代表されるように、我が国の国益を害するという意図的なものを感ずるのであります。  官房長官談話にもありますが、我が国固有の領土である北方領土は、戦後四十数年ソ連の不法占拠のもとに置かれており、今日まで国民の総意及び国会での全党一致によるたび重なる決議をもって四島一括返還を求めてきたのであります。一方ソ連は、我が国国民ソ連当局のビザ発給を受けて北方領土に入域させる政策をとってまいって、人道問題であります北方領土への墓参も、昭和五十一年以来十年間、このために、ビザをとることによりソ連領土として認めないために遺族の方々は、痛恨の思いに駆られながらも耐えがたさを耐え墓参の中断をしてこられたのであります。この間、望郷の熱い思いを残しながら亡くなっていかれた方々もあるわけであります。この人たちの心情に思いをはせるとき、いかに国際的に難しい問題がございましょうとも、私は、官房長官談話という一般的な要請で今回の問題が決着されるとしたら、到底理解もできませんし、容認もできないのであります。  事は、朝日のカメラマンがアザミサンゴを傷つけた写真と同じように、手段を選ばぬ取材体質と同じであろうと言われましても、今度のことは全く次元が異なるのであります。国家の領土権を侵し、国家の崇高なる権威を傷つけたのであります。報道の自由とは、国益を超えてなお一〇〇%保障されるものではないのであります。これが一体、共産主義国だったらどうなるでありましょうか。いや、自由主義国でありましてもこんな状態では私はないと考えるのであります。世界に例を見ないのではないか。まことに残念に思うのであります。  このことが、国際関係の配慮の余り、政府の穏便な方針のために結果的にソ連の北方領土不法占拠の事実を固定化することに手をかすことになるのではないかと危惧をするのであります。すなわち、ソ連の政策によって、一般観光客がソ連のビザをとって旅行することにより領土権を是認するような事態にならないという保証はないのであります。  旅券法十三条一項五号は「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」に旅券の発給の制限を定め、同二十三条二項一号あるいは二十五条を適用して旅券の返却または没収を行うべきであると思うのであります。私はこのことにつきましても、現行旅券法がその適用が無理とすれば、また法はこのような異常なことを想定して定められてないとするならば、旅券法の改正をも含めてお考えになるべきであると思うのであります。  総理、私は今タブー化された問題について、ある意味では返り血を覚悟して二、三の質問をいたしました。しかし、私と同じ気持ちを持った国民もまた相当あると信じます。総理の答弁を求めようと思いませんけれども、何とぞ厳粛に受けとめていただくことをお願いを申し上げたいと存じます。
  195. 中尾栄一

    中尾委員長 まず、外務省都甲欧亜局長
  196. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の朝日新聞の記者によります北方領土入域についての取材につきましては、御指摘のとおりソ連の領土であるかのごとく先方の査証を得て入るということで、従来から政府がとってきた立場及び国民の総意に反するということで、これについてこの事実が明らかになり、そして九月十一日に記事が掲載された時点におきまして朝日新聞の代表者を外務省に招致いたしまして、遺憾の意を表明するとともに、このようなことが繰り返されないようにということを強く申し入れた次第でございます。  先生指摘の旅券法の件につきましては、現在北方領土が事実上ソ連の支配下にあるという現実を踏まえますと、その実効においてこれを規制をするということについてはなかなか困難を伴う面もございますので、この点につきましては慎重な配慮を要するという点がございますことは御理解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、このようなことが繰り返されてはならないというかたい信念のもとに、閣議了解という形で、国民の御理解をいただくために先般の閣議了解をお願いし、そして官房長官談話として広く国民に御理解をいただくための措置をとった次第でございます。御理解をいただければと思います。ありがとうございました。
  197. 野中広務

    野中(広)委員 今、私は答弁を求めないで総理にお願いをいたしましたが、もう一つ、個々の、本年春以来の我が国経済界の首脳、特に経済同友会の石原代表幹事を初め一部経済界幹部の、例えば竹下内閣の退陣や宇野内閣の中国天安門事件を中心とする政情について政府の対応を問題にしたり、あるいはリクルートのけじめ等々の発言は、最近ややトーンダウンをしておるとはいえ、一国の外交政策を批判したり、内閣のあり方に言及するなど、議会や内閣の上に昔の軍隊あるいは関東軍があらわれてきたような印象を与える発言は、このまま黙視しておけば議会制民主主義を侵しかねないと思うのであります。政府は毅然たる態度で対応するべきであることを申し添えまして、私の質問を終わります。
  198. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて野中君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会