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1989-10-12 第116回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月十二日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 小里 貞利君 理事 越智 伊平君    理事 佐藤 信二君 理事 谷川 和穗君    理事 中島源太郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 村山 富市君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君       石渡 照久君    稲村 利幸君       上村千一郎君    江口 一雄君       大坪健一郎君    大野  明君       奥田 敬和君    金子 一義君       亀井 善之君    倉成  正君       小坂徳三郎君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    左藤  恵君       佐藤 文生君    砂田 重民君       田中 龍夫君    高島  修君       野田  毅君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       細田 吉藏君    非上 普方君       上原 康助君    小澤 克介君       川崎 寛治君    菅  直人君       沢藤礼次郎君    新村 勝雄君       辻  一彦君    市川 雄一君       坂口  力君    日笠 勝之君       水谷  弘君    川端 達夫君       楢崎弥之助君    米沢  隆君       岡崎万寿秀君    辻  第一君       野間 友一君    不破 哲三君       藤田 スミ君    藤原ひろ子君       正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 後藤 正夫君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 石橋 一弥君         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         農林水産大臣  鹿野 道彦君         通商産業大臣  松永  光君         運 輸 大 臣 江藤 隆美君         郵 政 大 臣 大石 千八君         労 働 大 臣 福島 譲二君         建 設 大 臣 原田昇左右君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     渡部 恒三君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 森山 眞弓君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      阿部 文男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高原須美子君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      斎藤栄三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 志賀  節君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 石井  一君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         人事院事務総局         任用局長    森園 幸男君         内閣総理大臣官         房管理室長   櫻井  溥君         公正取引委員会         事務局審査部長 植木 邦之君         警察庁刑事局長 中門  弘君         総務庁長官官房         長       山田 馨司君         総務庁人事局長 勝又 博明君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         総務庁行政監察         局長      鈴木 昭雄君         総務庁統計局長 井出  満君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁長官         官房長     斎藤 次郎君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      田中  努君         科学技術庁研究         開発局長    須田 忠義君         科学技術庁原子         力局長     緒方謙二郎君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵大臣官房長 保田  博君         大蔵省主計局長 小粥 正巳君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局長 大須 敏生君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   岡本 吉司君         文部大臣官房長 國分 正明君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      坂元 弘直君         厚生大臣官房長 黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      長谷川慧重君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         食糧庁長官   浜口 義曠君         通商産業大臣官         房総務審議官  関   収君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省通商         政策局次長   堤  富男君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省航空局長 丹羽  晟君         海上保安庁長官 塩田 澄夫君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治大臣官房長 小林  実君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 持永 堯民君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   倉成  正君     亀井 善之君   田澤 吉郎君     金子 一義君   浜田 幸一君     江口 一雄君   渡辺 秀央君     石渡 照久君   野坂 浩賢君     沢藤礼次郎君   市川 雄一君     大久保直彦君   川端 達夫君     米沢  隆君   辻  第一君     野間 友一君   正森 成二君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     渡辺 秀央君   江口 一雄君     浜田 幸一君   金子 一義君     田澤 吉郎君   亀井 善之君     倉成  正君   沢藤礼次郎君     小澤 克介君   米沢  隆君     川端 達夫君   野間 友一君     不破 哲三君   藤原ひろ子君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   小澤 克介君     野坂 浩賢君     ───────────── 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  3. 市川雄一

    市川委員 きのうに引き続きまして、きょうは防衛問題を中心にお伺いをしたいと思います。  まず、防衛問題に入る前に福祉問題と環境破壊の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  公明党は、昭和六十年から老人福祉緊急対策百億円プランというプランを立てまして、毎年国会でいろいろな形で老人福祉の問題を取り上げてまいりました。昨年の国会におきまして私たちは、寝たきり、あるいは寝かせきりと言った方がいいのかもしれませんが、のお年寄り対策について三本柱という、ホームヘルパーあるいはショートステイデイサービスという、こういうものの充実政府厚生省に御要請をいたしました。  そこで、昨年の国会の議論の中で公明党が強く要請をいたしまして、政府の方におきましてお約束をいただいた問題について、この際確認をしておきたいと思います。  一つは、当初政府の案では、二〇〇〇年までの十二年間で寝たきり老人などの在宅福祉対策について、これを緊急三カ年、前倒し実施をするというお話がございました。  まず、そこでお伺いいたしますが、ホームヘルパー、これはこれから介護という問題が非常に日本社会において重要な問題になってくるわけでございますが、政府の当初の予定では、二〇〇〇年までに五万人の方を整えるということでございましたが、現在二万七千百人、これを十二年かけずに三カ年で五万人にする、こういうお話でございました。平成元年度どの程度の増員が見込まれ、平成年度、そして三年度、どんな計画で十二年間五万人が三年で五万人というこの緊急三カ年計画実施されるのか、まずホームヘルパーについてお尋ねを申し上げたいと思います。
  4. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 お答えいたします。  昨年の秋の臨時国会公明党の方から提案をされました三本柱につきましては、公党間でお約束をいたしておりますので、そのことについては慎重に検討をいたして現在進めておるところであります。  それは、今御指摘のありましたホームヘルパーについては、平成年度要求として、元年度は三万一千四百五人でありましたけれども、それを二年度に三万五千七百五人とし、そして将来、平成年度を目途にして五万人という目的達成のために努力をしていきたい、かように思っております。  それで、御承知のとおり、私たち日本高齢化社会というのは、昔は家族間で支えられていたものでありますけれども、今では世代間で支え、そして社会全体としてこの問題を取り上げていこう。特に在宅の問題については我々は心してやっていかなければいけないのではないか。年金にしても医療にしても、公的な部分で大きな世代間で支えていくと同時に、家庭の中でお年寄りの面倒を見ていかなければならない。そういう意味で非常に大きな負担が家庭にかかります。そういう意味で、これからは特にこういった公明党さんの主張しておる三本柱については注意深く見守って、努力していくつもりであります。
  5. 市川雄一

    市川委員 寝たきりのお年寄りの数が約六十万人、二〇〇〇年には百万人、痴呆性のお年寄りは、現在六十万が二〇〇〇年には約百十万、こういう政府御自身の見通しがあるわけでございまして、介護という問題はこれから日本社会の非常に重大な問題になってくる。そういう意味におきまして、ぜひこのヘルパーの充実、緊急三カ年、どうぞ三カ年できちっと目標を達成されますよう、強く重ねて御要請を申し上げたいと思います。  次に、短期間の保護施設でありますショートステイについてお尋ねをいたします。  これは政府案では二〇〇〇年、今から十一年でございますが、約五万ベッド計画でございました。昨年私たちは、これを三年で四倍にふやす、現在二千五百ベッドでございますが、約一万ベッドぐらいに圧縮してもっと急いでやった方がいいんではないのかということを申し上げまして、ほぼそういう趣旨でおやりになるというお話を承っておりますが、この点につきましても、平成元年度、約千九百床ふえるやに聞いておりますが、平成年度、三年度、この一万床、現在の二千五百ベッドが三年で四倍増の一万ベッドになるのかどうか、お見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  6. 黒木武弘

    黒木政府委員 ショートステイについてのお尋ねでございます。基本的な考え方大臣からお述べしたとおりでございます。  状況を申し上げますと、六十三年度ベッド数で二千三百七十四床でございました。これが元年度に四千二百七十四床、二年度要求として七千百七十四床を要求いたしておりまして、ただいま御指摘になりましたように、公党間のお約束として前倒し平成年度に一万床ということに向かいまして最大限努力をしているところでございます。
  7. 市川雄一

    市川委員 もう一点、デイケアでございます。  お年寄り寝たきりのお年寄りを一日預かるデイケアあるいはデイサービス、これは介護をしている方にとっては一日でも預かっていただくということが非常にリフレッシュの期間になるし、あるいはそれなりのきちっとした看護をしていただくという意味におきまして重要な施設でございます。政府の当初目標では二〇〇〇年に一万カ所、まあ昨年の話ですから十二カ年で一万カ所、現在六百三十カ所でございますが、これも私たち公明党が強い要請をいたしまして、三カ年で四倍増の、現在六百三十カ所を二千五百カ所に緊急整備する、こういうお話でございました。平成元年度は四百五十ですか、二年度が六百五十、三年度が七百七十というようなことも聞いておりますが、この辺の三カ年の実施見通しについて御答弁をいただきたいと思います。
  8. 黒木武弘

    黒木政府委員 デイサービスについてのお尋ねでございます。大変これからの柱になっていく施策でございまして、在宅のお年寄り、特に体の不自由な方等が昼間だけこのサービスを行っているところのデイサービスセンターに来ていただきまして、それこそ入浴から給食サービスあるいはリハビリテーション等を日中だけお預かりしてサービスを行う施設でございます。六十三年度に六百三十カ所でございましたけれども、ただいまの公党間の約束によって急ピッチ整備を進めてございます。平成元年度で六百三十カ所が千八十カ所に増加をいたしましたし、二年度要求として千七百三十カ所に要求をいたしております。  ちなみに、予算で申しますと、四十六億であったものが九十二億、百五十九億ということで、予算的にも急ピッチにふやしておるわけでございまして、お約束の二千五百カ所に向かって私どもは最大限努力をいたすつもりでございます。
  9. 市川雄一

    市川委員 この在宅福祉三本柱、ホームヘルパーショートステイあるいはデイケアデイサービス、この中でやはりホームヘルパーという問題が一番難しいだろうというふうに思います。  そこで、これは厚生大臣でも、あるいは厚生省の方でも結構なんですが、こういうホームヘルパーというマンパワーが不足している。しかしこれから高齢化社会が間違いなくやってくる。介護という問題は極めて重要な問題だと思います。一方で退職された看護婦さん、潜在看護婦さんの人口が推定二十万もしくは四十万と言われておりますが、一定期限看護婦さんとして勤務をされて、十年なり二十年なり勤務をされて、そういう方に何か社会的な資格というのか、そしてそれなりの待遇をきちっと考える、こういう形で潜在している看護婦さんを生かしていくというか起こしていくというか、そういうこともこのホームヘルパーということを考えたときに非常に重要な対策になってくるのではないかと思いますが、その辺についてもし大臣御所見があれば承っておきたいと思います。
  10. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 委員提言の退職、在宅看護婦さん、長い間病院その他のところで看護婦としての経験を積んで、しかも今一方社会には在宅寝たきり老人であるとか、あるいはそういった者を抱えながら、家庭環境を見るというと、やはり奥さんたちが仕事に出ていったり家でどうしても人が足りない、そういうような環境が非常に多いわけでありますから、今でも退職して在宅しておられる看護婦さんをどういうふうにして活用したらいいかということは大きな問題であると同時に、その看護婦さん自体の中にいろいろな考え方が起こってまいりまして、最近ではそういった人たちが集まって、そして直接住民からのサービスにこたえていくというようなことがだんだんだんだん自分たち考えの中に出てきているようであります。しかし、こういったもの、ただそういう町の中に起こってきた傾向をそのままにしていくということは、やはり一方在宅看護あるいはそういったお年寄りに対するサービスという点から見て不適当である。そういう意味では、むしろ役所の方からもそういった者に対する責任感のあるような立場を与えてやって働いていただくようにしてもらった方がいいのではないか。また同時に、そういったことは、やはり医療との接点に入る問題でありますから、その辺の交通整理というものも十分していかなきゃいけないと思いますけれども、いずれにしても、今深刻な状態にある在宅福祉という面に大きな役割を果たす人材であるということは間違いがないと思いますので、御提言についても十分検討して、これから進めていきたい、かように思っております。
  11. 市川雄一

    市川委員 総理、現在フロンガスとか地球温暖化あるいは熱帯雨林の伐採による砂漠化、いろいろな地球環境破壊の問題が先鋭的な問題になりつつあります。  そこで、今政府として、政府行政縦割りになっているわけですけれども、これを例えば環境庁一定権限を持たして、縦割り縦割りとしつつも総合的に各省別に行っていることを束ねて調整するとか、そういう権限環境庁に持たせて、地球環境対策本部というか政府としてこの地球環境問題に総合的に取り組んでいく、そういう中核をつくって行政的に対応すべきではないのか、こう私は考えますが、総理、どんなお考えですか。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘いただきました環境問題が極めて重要なことと、それぞれの省庁にまたがっておる分野も多いことにかんがみまして、環境庁がそれらの各役所との日ごろの連絡を密接にするとともに、環境庁中心になっていろいろな対策が一本化できるようなことは、委員指摘のように望ましいことでもあり、また、内閣といたしましても、地球環境問題担当大臣というものを置きまして、環境庁長官にそれを兼務してもらったということは、環境庁にその立場を十分自覚して、今おっしゃったような方向で、行政の窓口を環境庁一つで、環境庁に聞けばどんなことでも連絡調整してできるような仕組みをつくっていきたい、こういう気持ちでおりますので、そのように今鋭意各省間で話し合いを進めておるところでございます。
  13. 市川雄一

    市川委員 環境庁設置法の改正、所要の手続を踏んでおやりになると思いますが、ただもう一つは、これに関連しましてODAの問題でございます。ODAの関連では二点ございます。  一つは、国連総会で決議された一九九〇年度までに〇・七%にするというODAGNP比目標でございます。現在日本は〇・三二%、世界で第十二位。ノルウェーが一番、オランダが二番、デンマークが三番、スウェーデンが四番、フランスが五番。総理も、国際国家日本とか世界に貢献する日本ということをおっしゃっているわけですから、このODAについての目標、いつごろ達成されるのか、何か具体的なお考えをお持ち合わせですか。どうですか。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ODAに関しましては、年年できる限りの努力をしており、金額だけをとらえてみますと、日本世界有数援助国になったのでありますが、おっしゃるように、GNPとの比率でいきますと、まだまだ努力目標には及んでおらないところ遠いわけでありますから、これはいつまでという具体的な目標はなかなか言いにくいのですけれども、年々の措置においてできるだけ上積みをし、努力をしていきたい、こういう基本的な姿勢で取り組んでまいる気持ちであります。
  15. 市川雄一

    市川委員 この間あるテレビ局の番組でも取り上げられておりましたけれども、ODA日本開発援助をする、その国の環境破壊にそれが、意図したものではないのですけれども、結果として環境破壊につながっている。こういうことを考えますと、ODAのあり方がこれから問われてくるのではないのか。日本政府は善意で援助をしているつもりなんですが、それが結果としてその地域の環境破壊を大きく引き起こして、援助されている側の国の国民の反発を買う、こういう問題が起きてきていると思います、現実に。この点について、十分おわかりだと思いますが、どんなこれからお考えでございますか。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 途上国援助というのは、途上国の健全な発展を心から願ってするものでございますから、それが結果として途上国環境破壊するようなことになってはいけませんので、途上国環境問題の重要性にもかんがみて、援助実施する際の環境配慮を強化する方針でありますが、具体的には環境配慮のためのガイドラインの整備などに努めて、今後とも本当に両国の間で喜ばれる、そして途上国のためになる、環境にも十分配慮した援助になっていきますように努力をする考えでございます。
  17. 市川雄一

    市川委員 私たち公明党としても、この環境問題には積極的に取り組んでいこうということで、早い時期に酸性雨の深刻なヨーロッパとかに環境破壊視察団を党独自で派遣したい、こう思っております。  それできょうは、「46億年目のSOS!」という公明党でこういう本をつくりました。これは青少年あるいは一般の方々に極力地球環境破壊という極めて難しい問題をわかっていただきたいということでつくったわけですが、これを総理にちょっと一冊御贈呈申し上げたい。  そこで総理地球環境白書というのをお出しになったらどうかと思うのですね。白書というと非常に難しいイメージがあるのですが、今もう劇画の時代ですから、そういう意味では、日本経済入門の劇画なんというのもあるわけですから、日本地球環境白書、これを劇画、漫画でおもしろくわかりやすく青少年の方々、私は環境教育ということも非常に大事だと思うのですね、そういう認識をみんなが持つということが極めて重要なことだと思いますので、御提案でございますが、地球環境白書、あわせて青少年向けにわかりやすく漫画で出版する、こういうお考えはないかどうか。これはいきなり総理に聞くと、総理でよろしいですか、それとも環境庁長官
  18. 志賀節

    ○志賀国務大臣 大変積極的な前向きの御提言を心から感謝をいたします。  なおまた、このような機会に地球環境問題を含めた環境問題に御発言のありましたことは、多くの国民一人一人があるいは人類一人一人がその認識に立たない限り環境行政は全うし得ないわけでありますから、御質問をいただいたこと自体にも深い感謝をしておる次第でございます。  この漫画、劇画でどうかという御意見は、私自身も大変時宜を得た御提言であると思います。できることならば、そういうことで多くの、特に若い人たちにこういう認識に立ってもらいたい、かように考えておりまして、既に私も、ただいま先生がお示しになられました劇画を拝見して、何か一歩先んじられたなという率直な印象を持っております。  それから同時に、私ども政府といたしましても、この「図で見る環境白書」というものを昭和六十三年に、小さなものでございますが出しておりますし、また財団法人日本環境協会作成の、環境シリーズパンフレットと題して、これは題名は「世界環境考える」、もう一つは「環境保全への世界の取組みを考える」、また「地球規模の大気汚染を考える」、そして「地球の未来を考える」等々を出しておることも、この機会に申し添えさせていただきたいと存じます。
  19. 市川雄一

    市川委員 最後に、環境問題では総理に締めくくりで御答弁いただきたいのですが、これは与野党反対はないと思うのですけれども、地球環境破壊防止あるいは地球環境保全、これに取り組む日本としての意思を内外に明確にする、そういう意味におきまして国会決議をしたらどうかというふうに私は考えておりますが、総理は行政府の長ではいらっしゃいますが、また同時に自由民主党の総裁でもいらっしゃいます。どうお考えでしょうか。
  20. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 地球環境日本が積極的に取り組まなければならぬということは、いろいろな国の首脳との会談においても確認をしたことでございますし、また市川委員のいろいろなお話を承っておって私が考えておりますこと、これは地球環境問題というものを通じて国際化という物の考え方が違ってくる。要するに、空気には国境がありませんし、水には国境がない、そして地球的規模で、丸い一個の立体像でもって考えていかなければならぬわけですから、日本だけで片づく問題ではございません。ですから、いわんや国内においては超党派、各界の皆さん全部に力を合わせて御理解、御協力を願わなければならない問題だと思います。  国会の決議の問題にお触れになりましたが、それは院の各党の皆さん方の御協議によって適切な結論をお出しいただくのがいいことだと私は思いますが、結構な御提案だったと思います。
  21. 市川雄一

    市川委員 防衛問題に移りたいと思います。  防衛庁長官お尋ねいたしますが、平成年度で大綱水準の達成ということが言われております。その大綱水準達成後、現在の五カ年中期防が終了して次の防衛力整備計画に入るわけでございますが、政府は既に六十三年十二月二十二日の安全保障会議で、現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画政府として作成する必要がある、こういうことを既にお決めになっていらっしゃいます。  そこでお伺いいたしますが、この中期的な計画というのは、また五年でお考えなのか三年なのか。それからポスト中期防、これは総額幾らぐらいをお考えになっていらっしゃるのか。総額、金額ですね。まず、この二点、三カ年なのか五カ年なのか、総額が幾らになるのか、この二点をお聞きしたいと思います。
  22. 松本十郎

    松本国務大臣 平成年度で現在の中期防が終わりますので、その締めくくりに当たるということで大綱の達成のために概算要求を行い、これから予算の策定に向かって鋭意努力するわけでございますが、その後は次の中期防をどうするかということになるわけであります。  委員指摘のとおり、昨年の十二月に安全保障会議におきまして、引き続いて政府として現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画を策定する必要があるということが言われておりますが、その際に、あくまで憲法なり専守防衛の基本的な政策はもちろんでありますが、その上に立って今のところ防衛庁では検討中でございまして、今の段階において三年にするとか五年にするとか、あるいはそれに応じて金額がどの程度になるとか、この辺のところはまだまだ積み上げ計算も行っておりませんし、勉強、策定の努力を続けているところでございますので、お答えできる段階には至っておりません。
  23. 市川雄一

    市川委員 総理、非常にのんきな話だと思うのですよ。もう来年度の概算要求、防衛予算四兆円規模で概算要求して、「防衛計画の大綱」、五カ年の計画が終わる、概算要求終わったのですよ。次の五カ年だか三カ年だかわかりません、その総額もまだわかりません、そんなばかな話はないのですよ。それでは防衛の議論できないではありませんか、そんなこと言ってたのじゃ。もう既に、ちゃんと防衛庁では五カ年であるとか総額は二十五兆円程度とか、その程度のことは議論しているのでしょうよ、当然。しかもそれが国会で聞かれて出せない、言えないというのじゃしょうがないと思うのですよ、こんなことでは。それじゃ何も国会で防衛議論できませんよ。もうちょっときちっと答えてくださいよ。
  24. 松本十郎

    松本国務大臣 今後の中期防を策定するに当たりましては、おっしゃるように、三年、五年の問題も片づけなければなりませんし、さらに今後、国際情勢が今複雑に動いておりますが、どのように見通しがつくのか、あるいはまた防衛技術が日進月歩で進んでおりますが、どのように軍事技術が進んでいくのか、この辺の分析も十分に行った上でなければなかなか積み上げられないというのが実情でございまして、そういう意味で、まだ申し上げる段階でないということでございます。
  25. 市川雄一

    市川委員 だって国際情勢は防衛白書にもちゃんと書いてあるし、二つの大綱が前提とする国際情勢というのは決まっているのじゃないですか。大綱が前提とする国際情勢というのは書いてありますよ。これは変わったのですか。変わってないのでしょう。ですから、国際情勢は動いていますけれども、あの大綱の前提とする国際情勢に別に何も変更がなければ予定どおりなさるわけでしょう。それから日進月歩で技術が進歩している。これは当たり前の話でして、こんなことは防衛庁が毎日研究しているわけですから、今さら何もきょうになって今研究しなければならないという問題じゃありませんから。事ほどさようにどうも防衛問題というのは議論しづらい。それはもっと防衛庁がオープンに議論しようという意気込みを持たなければできないと思いますよ、そういう意味では。総理、どうですか。常識で考えて、五カ年計画が終わろうとして次の五カ年の計画がわかりません、言えません、総額幾らになるのだかわかりません、こういうことで国会でシビリアンコントロールとか議論ができますか。総理、どうですか。もうちょっと積極的に、次はこう考えてます、こういう考え方で今度はやりますとか何カ年で大体総額幾らぐらいですとか、もっと早目早目に国会にそういうことをどんどんどんどんここで自由に答弁ができなければ、私たちは防衛問題の議論なんかできませんよ、やりたくても。総理、感想だけ聞かしてください。どうですか。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御議論の問題は、昨年の安全保障会議において中期的な防衛計画を引き続き作成するという基本だけは決めました。それは今御指摘になったように、シビリアンコントロール、国会の御議論の中で、しかも節度ある防衛力の整備をして、我が国の専守防衛という趣旨に従った防衛力をきちっと整備していく、こういうことの必要性を認めての計画でございました。ですから、それはきちっと決まったらもちろん国会にお示しをしていろいろと御議論をいただかなきゃならぬものでありますから、ただいま鋭意作業を続けておるところである、こう思いますので、引き続いて中期的な計画を策定する、そこまでが今決まっておるところであります。
  27. 市川雄一

    市川委員 それでは、ちょっと私の方で試算をしてみましたので、資料をお配りしたいと思います。そういう御答弁をなさるのじゃないかということで試算をいたしました。  まず、簡単に表の御説明を申し上げますと、表1のGNPの計算は、八八年度GNPの実績値三百七十一兆に八九年度政府見通し五・二%を乗じて三百八十九兆、これに閣議決定されております経済運営五カ年計画あるいは「世界日本中長期経済研究会報告」経済企画庁、これが見通しとして発表しておりますGNPの四・七五、この八八年の実績値に八九年度政府見通しの五・二%を乗じ、さらに経済五カ年計画で示されている名目の平均伸び率の四・七五%を乗じて九〇年度の名目GNP四百九兆、これをGNPの基本に置きました。また、ポスト中期防の一九九一年から九五年は、五カ年計画が二年で終わりますので、その後のGNPの伸びにつきましては、経済企画庁発表の「世界日本中長期経済研究会報告」、これが発表しております実質四・二五%、これを使いました。これがGNPの計算でございます。  そこで、まず新聞等では既にポスト中期防、五カ年で二十五兆円という金額が防衛庁筋とかいろいろな形で新聞にもう既に出ております、二十五兆円という金額が。したがって、防衛庁はまだ決めてないとおっしゃっておりますが、新聞等に出ました二十五兆円、平成年度から平成年度までの五カ年二十五兆円、これで先ほど申し上げましたGNPを分母にしまして計算をいたしますと、総額二十五兆円はGNP比一・〇八九%、そして五カ年の平均伸び率が六・一二二八%、非常に高い伸び率を示しております。GNPの伸びよりも高い伸び率。  この二十五兆円ということは恐らく否定されるでしょうから、今度はもう一つ計算の方法を変えまして、試算2というやつで、九〇年度価格、すなわち政府の概算要求四兆一千六百八十八億円、これに現在の中期防の計画策定段階の伸び率五・三六八五%、これを、九〇年度の概算要求に五・三六八五%を掛けて総額をはじき出してみましたら二十四兆四千五百十二億。大体防衛庁筋ということで流れてくる金額と一致するわけですね。これは現在の中期防の伸び率を九〇年度の概算要求に掛けて出した金額ですから、その規模が二十四兆四千五百十二億、GNP比で一・〇六五%、こういう数字が出てきているのですが、防衛庁長官、大体この辺じゃないんですか、お考えになっていることは。どうですか。
  28. 松本十郎

    松本国務大臣 先ほど来お答えいたしておりますように、まだまだ積算が進んでいないわけでございまして、こういうふうな数字になるかどうかは、今の段階では申し上げられません。
  29. 市川雄一

    市川委員 今の段階では申し上げられません、いつなら申し上げられるのですか。
  30. 日吉章

    ○日吉政府委員 直接に作業を担当しております政府委員でございますので、私からお答えをさしていただきたいと思います。  私どもは、委員ただいまおっしゃられましたように、この期間中の経済財政状況を眺めながら、それとの調整を図って最終的には決めないといけないと思いますけれども、現在私どもは、まず防衛所要としてどのようなものを事業の内容に盛り込んでいくか、こういうふうな形で積み上げの試算をいたしている段階でございますので、大臣からも申し上げましたように、総額が幾らということをまずもって頭に置いて作業いたしておりませんので、総額の見当はついておりません。  それでは、いつごろつくかということでございますが、これは中期防の最終年度の来年度予算をいろいろ最終的にお決めいただくというようなことも見通した上で、その次の年度からどうするかというような形で検討を始めないといけないと思いますから、かなり先の方になってくるのではないか、かように考えております。
  31. 市川雄一

    市川委員 きょうは幾ら伺ってもお答えないでしょう。しかし、まあこの辺の金額になりますよ、伸び率から見てもGNPから見ても。これは経済の専門家とコンピューターの技術者にはじいていただいたわけですから、大体この辺ですよ、金額は。  そこで、議論を申し上げたいのですが、例えばこの表をつくってみてよくわかったことは、GNPと防衛費の伸びにデフレーターを掛けて、この一番最後にグラフが出ていますが、GNPがぐっと伸びていった、その割に防衛費がそんなに伸びないで済んだ。何か防衛費が節約されたように思うのですが、そうじゃなくて、予想以上に景気がよかった、景気がよくなったということと、原油安があったということと、円高があったということと、結果として物価が安定した、したがってGNPがぐっと伸びた割には防衛費は低くおさまった、こういうことが一つこの表から言えるわけです。  それからもう一つは、現在の中期防が発表当時おおむね十八兆四千億、こうおっしゃっておりました、五カ年で。しかし、これは五・三六八五という伸び率は実質の伸び率で計算をされていますから、もしこの五カ年に物価上昇があると十八兆では終わらなくて十九兆八千億ぐらいいくんじゃないか、八%ぐらいの伸び率を示してしまうんじゃないかということが言われたのですが、結果として五・八二六五五%におさまっている。もちろん中期防を立てたときの予想伸び率の五・三六八五よりは高い伸び率にはなっているわけです。しかし、うわさされたほどの伸び率にはならなかった。それは今私が申し上げたような、この五カ年に経済が非常に景気が上向きになった、原油が安くなった、急激な円高があった、結果として物価が安定した、これがGNPよりも防衛費により響いたということが言えると思うのです。  ところが、これからの五年間、これからの五年間が問題なんです、総理。これからの五年間、それは経済の基調を何とか維持していく、これはそれなり努力はできるかもしれませんが、急激な円高、二百四十円が百二十円、二百四十円が百四十円とか、こういう円高は、もうこれはとても日本の経済が破壊されてしまうでしょう。したがって、原油が安くなるとかあるいは急激な円高というものは、これはもう期待できませんですよ、これからの五カ年は。ですから、今までの五カ年とこれからの五カ年は防衛費を考える場合、全く変わってくると私は思いますね。  そのことがこの表からはっきりしているわけですが、申し上げたいことは、この何年間か決算ベースではGNP比一%枠の中におさまっているのですね。当初予算では一%を超えた。しかし、決算ベースでは一%の枠の中に結果としておさまっている。せっかくおさまっているのですから、総理、今度は結果としておさまるのではなくて、政府のポリシー、政策意思として一%以内に防衛費をおさめていく、こういう強い御決意をお持ちになりませんか。どうですか。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際情勢のいろいろな変化の中で、やはり我が国が我が国の安全をきちっと確保するために必要なものとして大綱に基づく防衛力の整備、これは節度あるものであり、しかも五十一年の閣議決定の精神をきちっと踏まえてやっていこうということに決意をしてやっておるわけでありますから、毎年毎年の努力、毎年毎年の作業の中に、その精神と前提に申し上げました諸条件との整合性を見出しながら努力をしていきたいと思っております。
  33. 市川雄一

    市川委員 そこで、私たちは提案申し上げたいのですが、防衛庁筋から漏れてくる二十五兆円、現在の中期防の伸び率を九〇年度概算要求で延長して計算してみますと二十四兆四千五百十二億円、これは全部で一・〇六五%とか、二十五兆円の場合は一・〇八九%、GNP比で超えているわけです。したがって、防衛庁が考えていらっしゃる二十五兆円から一割防衛予算をカットする、二兆五千億をカットして二十二兆五千億、そうしますとGNP比で〇・九八%。あるいは九〇年度の、平成年度の防衛予算GNP比一%以内で組むと四兆九百二十四億円。これを毎年毎年一%枠を守るという前提で五カ年計画を組みますと、総額が二十二兆九千五百二十六億円、平均伸び率が三・八五%、GNP比でジャスト一%です。ですから、二十二兆九千五百二十六億円というのが五カ年でGNP比一%ジャスト。防衛庁が考えているのが二十五兆円。我々は一割カットして、二兆五千億をカットして二十二兆五千億、〇・九八%、GNP比で。この辺がある意味では一番金額としては一%枠の中におさまる金額である。これから経済もそう楽ではないと思いますし、第一、国防の基本方針の中には、国力国情に応じて防衛力の整備を行うというふうに書いてありますし、防衛白書あるいは大綱、どこを読んでもそのときどきの経済事情を勘案してとか財政事情を配慮してとか、そういうことを書いてあるわけでございまして、GNPの伸びが政府の実質の見通しで三・七五あるいは四・二五という見通しにもかかわらず、防衛費の伸びが六・一二二八あるいは五・三六八五とか、GNPの経済の実力よりも防衛費の伸びが上を行くというのはどんなものでしょうか。これは国防の基本方針の国力国情に応じてというものに反するのじゃありませんか、防衛庁長官。数字が今言えないと言っちゃったものですから議論ができなくて苦しんでいらっしゃるんですが、そうでないと否定されるのなら、恐らくもっと低い二十兆ぐらいの総額、金額ですか。とにかく防衛費がGNPの伸びよりも高いというのは問題ですよ。これを伺っておきましょう。
  34. 松本十郎

    松本国務大臣 今後の防衛費の策定に当たりましては、正面装備に何と何とがさらに要るか、そういう積み上げ計算をし、あわせて指揮・通信機能を初め隊員の住環境あるいは勤務環境等の改善にどのような予算が要るかということを積み上げながら、結果として総額が出るわけでありまして、初めから一%、その精神は尊重いたしますが、したがって、十八兆ですか、委員指摘のような数字を出しておいて、それにはめ込むということは、考え方としては、今の段階においては我我はとらないところでございまして、それがまた六十二年一月の閣議決定の方針でもありますし、さらにまた、おっしゃいますように、委員指摘のとおり、これからの経済というのは円高なりドル安、いわゆる原油安等のいい条件がとても期待できないとなれば、ますますそういう経済の見通しの上に立って日本国民経済がどうなるか、GNPがどう進むか、その中で頭をまず一%の数字はこうだから抑えるというのは、我々としてはとても積算できないというところでございます。
  35. 市川雄一

    市川委員 私が指摘申し上げているのは、GNPの伸び、経済の成長、GNPというのは個人消費が六〇%ですから、ある意味では国力国情というものをそれなりにあらわした指標であるというふうに理解をしているわけでして、そのGNPの伸びよりも高い防衛費の伸び率というのは、これはいかがなものか、国民の理解を得られないのではないか、こういう指摘をしておるわけでございます。したがって、総額を最初に決めて防衛計画考えておるわけじゃありません、もちろんそれはそうだろうと思いますが、総額を先に決めて防衛計画考えろなんということを申し上げているわけではありませんでして、しかし、総額は五カ年で明示しますと政府の方が言い出したのですから、何をおっしゃっていますか。政府の方が五カ年総額明示方式ということを言い出したのじゃありませんか。ですから、総額を問題にしているのですよ。その総額をはっきり出しなさいということを言っているわけでして、今の中期防の伸びよりも高い伸び率、それからGNPの伸びよりも高い防衛費の伸び、これはおかしいと思うのですね。  時間が非常に少なくなってきましたが、総理、ヨーロッパではニューデタント、このニューデタントということについてはいろいろ解釈が分かれるだろうとは思いますが、ゴルバチョフ書記長は抑止から抑制へと、必ずしもこれは軍縮ということではなくて、今までは拡大均衡だったのが縮小均衡、まあゼロを目指してはいるのでしょうが、ゼロには直ちになるわけではない。拡大均衡が縮小均衡。ゼロを目指している。しかしゼロにはならない。しかし拡大から縮小に流れが向かっているということは、これは私は事実だと思うのです。したがって、そういう中でアジアの軍縮というのは全然まだ考えられてもいないし、どういうテーブルで議論するのかということもまだ決まってない。ブッシュ大統領も、冷戦の時代は終わった、こう言う。ゴルバチョフ書記長も、ペレストロイカ、冷戦の思考から脱却しようということを言っている。ヨーロッパではそういう動きがもう既に始まっているわけですよ。総理、したがって、今年、来年という射程よりも、日本としてアジアにおける冷戦の終わり方というものを総理は十分に頭へ入れておかなければいけないんじゃないですか。そのときにGNPの伸びよりも高い防衛予算が必要なのかどうか。現在の中期防よりも伸び率の高い防衛予算が必要なのかどうか。やはり国民から見て、私は何となく世界状況に逆行しているんじゃないのか、この防衛力整備のあり方は。  ヨーロッパでは、特に西独なんかでは、もう限られた予算を効率的に使おうというので、非挑発的防衛とか防御的防衛とか、既に公明党では専守防御という、ハリネズミ論とこう言われましたが、むしろ攻撃よりも防御主体の自衛隊論を出しましたけれども、そういうことがヨーロッパでは平和学者の間で防衛戦略が議論されておる。それが何か日本では、旧態依然として防衛庁が、次の計画はまだ言えません、総額はわかりません。もっとこういうところでこういう議論が活発にできるためにも、私はもっと防衛庁が積極的な資料を出していただきたいし、総理に申し上げたいことは、アジアの冷戦の終わり方を総理としてお考えになって、日本としてしかるべきリーダーシップを発揮されるべきではないのか。そういう意味から考えて、この防衛予算、ポスト中期防、私は問題だと思いますね、こういう組み方は。何となく国民から見ていますと、どうも世界状況は変化している、変わっている、どうも日本だけ変わってないんじゃないかというのが率直な印象です。総理、どうですか。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、米ソのきょうまでは、限りない力と力の均衡をより高い次元で達しようとした方向が、反省と対話の中で、そしてソ連にペレストロイカが起こり、いろいろINFの全廃条約が合意されたり、軍備管理の方向へ、そして究極的には廃絶ですが、今は軍備管理の方向へむだを省いて行こうという発想があって、そちらへ動きつつあるということは御指摘のとおりだと思います。  ただ、率直に申し上げて、日本の防衛力というのは、米ソの軍拡時代に一緒になって軍拡したわけでも何でもありませんし、日本は我が国の専守防衛のために必要にして十分な節度あるものは何であろうかということを追求してやってまいりました。ただ、戦後ヨーロッパは現状凍結、平和共存、国境線、第二次世界大戦以後のものはお互いにいかなることがあっても移さないようにしよう、変えないようにしようという合意があって、そこで平和が構築されてきた。アジアの場合は残念ながら現状凍結、平和共存という理念がなくて、やはり力と力で相手の国を認めないとかあるいは国境線が変わるとかいろいろなこと等も現実として続いてきました。きょう現在も分裂国家が自由な立場で話し合いをして解決してもらわなければならぬという願いが非常に強まっておることも事実でありますし、またデタントという言葉とはほど遠いように、カンボジアの和平の問題も一生懸命努力しておりますが、全面的、包括的な和平にはまだまだこの間のパリ会談の失敗等を見ても末長い努力を続けていかなければならぬ。私は、アジアに冷戦構造が終わって、そして全く新しい状況が来たから日本もというには、ヨーロッパとアジアの事情は少し違うのではないかと思うとともに、アジアのそれらのところに本当の平和と本当の安定が来るように、外交的な努力日本としては相応に一生懸命やっていかなければならぬのは、これは当たり前のことでありますが、ただ防衛力の整備の問題は、そういった状況を踏まえた中で、世界はいまだ力の均衡というものも背景にあるんだという中で、我が国の防衛のためには節度のある防衛力の整備をしていかなければならない、私は基本的にはこういう認識を持って臨んでいこうと思っておりますが、節度あるものである限りは間違いございません。
  37. 市川雄一

    市川委員 時間が参りました。総理並びに防衛庁に御要請申し上げたいのですが、これは次の機会に伺いますが、ポスト中期防の防衛力整備をしていく基本になる考え方ですね、理念、考え方、きょうそれを伺うつもりでおりました。伺えば、恐らく大綱ということを持ち出してくるというふうに思っておりましたが、大綱はもう新しい防衛力整備計画の理念ではない。なぜかならば、あなた方がもう踏んだりけったり、換骨奪胎し過ぎてしまったからですよ。一%枠とか単年度方式、五カ年計画は用いません、それをやめて今度五カ年に戻してしまった。特定の第三国を脅威といたしません、ソ連の潜在的脅威がふえていますから、これも壊れてしまった。あるいは、おおむね四次防と同水準、質の改善なんて言いながら、洋上防空を持ち込んでしまった。ですから、そういう意味で大綱は既にもう死んでおります。  ですから、新しい防衛哲学なり理念なり、あるいは防衛力増強に歯どめのかかる考え方をきちっと防衛庁としては用意されて、次期中期防の総額を早く出していただきたいということを御要請申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  38. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  39. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、さきの総理の所信表明演説に関連し、若干の質問をいたしたいと思います。  まず最初に、総理の政治姿勢についてお伺いをいたします。  今次臨時国会は、御案内のとおり、さきの参議院選挙において参議院が与野党逆転した後、初めて開かれる国会でございます。それゆえに国民の皆さんの関心も高かろうと思います。特に、消費税の行方もさることながら、政局の動向について、巷間伝えられる国民の最大の関心は、果たしてこれで政局は安定する方向に向かうのか、それとも混迷の時代に入るのか、あるいはまたいい方向に政治が変わってくれるだろうかという、そのことが率直に言って最大の関心ではないかと思うわけでございます。  私は、二つの方向性があると思います。一つは、昨日も浜田先生が取り上げておられましたが、参議院が逆転をした結果、場合によっては重要法案、これはともすると与野党対決法案が多いのでございますが、このような重要法案が衆議院は通っても参議院は通らない、参議院は通っても衆議院は通らない、ことごとく物が決まらない、そして、その影響は国民の肩の上にずっと乗ってくる、そういう状況、両院協議会を開いてもまた決まらない。そういうことがあって、今後は政局はかなり混迷の時代に入るのではないかという懸念が一つある。もう一つの懸念は、これはもうそんなことになったら大変だ、国民の政治不信をまた増幅していくではないか、この際いろいろと理屈やメンツはあろうとも、政治はもともと党利党略のためにあるのではない、国家と国民のためにあるという原点に立ち返って、いろいろと議論を尽くして建設的な合意をつくっていこうという議会制民主主義の真骨頂が始まる、そういう時代のスタートになるかもしれない。両面あると思うのでございます。  しかしながら、総理、もちろん我々はその後者の道を何としても苦労してでもつくっていかねばなりませんが、過去の総括をする限り、そう簡単なものではないような感じがいたします。そういう意味では、よほどのこと与党も野党も政府も役人も大きな意識改革が迫られている。大げさに言えばコペルニクス的な意識改革が求められているのではないか、そういうふうに思っておりますが、とりわけ政府・自民党の責任は重いと言わざるを得ません。しかし、総理の所信表明演説を聞いておりましても、どうもそのあたりの大変さが残念ながら伝わってこないのでございまして、総理として、政局の動向あるいは政治のかじ取りをされる役目として今後どういう対処をされていこうとなさっておるのか、はっきりと物を言ってもらいたいと思います。
  40. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、衆議院と参議院の現状をそのまま直視しますと、衆議院と参議院の意思が、数字を照らし合わしてみますと、過半数のある院と過半数のない院ということになるわけですから、よほどの決意とよほどの努力で一生懸念話し合いをして、問題の核心に触れるような議論もして、同時に一〇〇%主義というのを、この際はどこまで歩み寄ったら国のために、国民生活のために妥結することができるかという歩み寄りが、非常に忍耐と時間はかかりますけれども、行われなければならない、そういった議会政治になってくるであろうということを私は思うんです。  そういった反省に立ってこの国会に臨む決意を述べろということであるなれば、私は今米沢委員が述べられた前者よりも後者の方の段で、政府としては、そして自民党としては、野党の皆さんと胸襟を開いていろんなことを話し合いながら、わかりやすい議論を通じて結論を導いていくように、マル・ペケあるいはイエスかノーかというように、法案が通るか通らぬかだけに焦点を絞らないで、どうしたら議会政治が円滑に進んでいくかということについて心を砕いていかなければならぬと、私はそのように事情を厳しく受けとめております。
  41. 米沢隆

    米沢委員 今回のこの参議院選挙の争点は言わずもがなでございますが、一つはリクルートの問題があり、一つ国民の理解を得られないままに導入された消費税の問題があり、農政不信があり、まあこれを三点セットと言われますが、そのほかに残念ながら宇野スキャンダルだとかあるいは女性べっ視発言等が大きな話題に相なりました。しかし、あの選挙の結果の雪崩現象みたいなものを見ておりますと、確かにこの三点が大きな争点ではあったかもしれませんが、しかし、その三点セットだけで議論されたというよりも、長年にわたる国民の政治不信というものの蓄積の上に三点セットが火をつけて、そして、それが爆発したという結果ではなかったのかなと率直に判断をせざるを得ないのでございます。  御案内のとおり、リクルート事件に見られますように、長期政権ゆえの金権、人はそれを腐敗と呼んでおりますが、そういう自民党の政治体質、あるいは政官財癒着でつくられる政策形成のメカニズムといいましょうか、国民にとっては非常に不透明であるという問題提起、あるいは派閥政治の弊害や緊張感を欠いた緩みあるいはおごりの政治あるいは政治倫理の欠如等々、それを許しました野党にも大きな責任はありますが、いわば自民党政治そのものが問われたのではないか、こう私たち考えております。  その点について、海部総理はどういうふうな認識をされ、例えばあのような雪崩現象が地殻変動的に変わったとお思いになるのか、それとも一過性のものであるというふうにお思いになるのか。私は、自民党の政治を改革するだけではなくて、日本の政治そのものをどう世界に向かって申し開きできるように変えていくのかという、今本当に正念場に立っておるという意味において、総理のこれからの決意のほどを伺っておきたいと思います。
  42. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 去る七月の参議院選挙の結果については、私はこれを厳粛に受けとめております。そして、その原因はどこにあったか。今おっしゃるように、三点セットと言われるものがあったことも、これは事実でございます。けれども、大変残念であったことは、これは他党のことには言及いたしません。リクルート・スキャンダルによって政治不信を巻き起こしたということを自由民主党としては厳しく受けとめております。そして、そのためにせっかく税体系全体の議論が、将来の問題として国民の皆さんに我々の描いておることが十分御理解がいただけなかった、もっとこれは周知徹底をして、その中での御判断をいただきたかったという気も率直にいたしております。  そういったことを踏まえて、これからは将来に向かってどのようにしたら地方の魅力ある地域づくりができるか、あるいは政治不信を乗り越え、我々が先頭に立って政治改革をやっていくことによって国民の信頼を取り戻して、自由と民主主義というものを旗印に市場経済のもとでここまで明るい社会をつくり、豊かな暮らしをつくってきた我々の物の考え方というものは、根本において間違いないものですから、これを支持してもらいたいということを今後も引き続いて訴え続けていく決意でございます。  そのためには、みずからが改めるべきは改め、政策努力をし、不信を払って内容等を十分に説得する努力をして、二十一世紀を迎えるためのいろいろな税制改革その他について努力をしていかなければならない、その努力をしておるという過程を通じて信頼を回復していかなければならない、また回復できるものだと私どもは心で信じて前進をしていこうと思っております。
  43. 米沢隆

    米沢委員 総理は再三にわたりまして選挙の結果を厳粛に受けとめる、こう言われております。しかし、所信表明演説等を聞いておりましても、例えばこの三点セットであるリクルート事件についてのけじめにしましても、あるいは国民からかなりの拒否反応を受けた消費税の問題にいたしましても、あるいは農政不信の問題にいたしましても、厳粛に受けとめておるという演説になってない。  例えば、所信表明の中でリクルート事件の反省としてなぜリクルートのリの字も出てこないのか、あるいはまた、リクルート事件のけじめは本当に検察の捜査が終わった段階でほぼ終了したというふうに自覚をなさっておられるのか。例えば海部さんの派閥の河本会長は、ちょうど九月の三日の河本派の研修会で講演をされて、「いくら政治改革を唱えても、リクルート問題にしっかりとした「けじめ」をつけないと国民から信頼されない。仏教に「大死一番」(死んだつもりで奮起すること)という言葉があるが、責任ある人たちはそういう精神で善処してほしい」と。そういう声が全然伝わってないのではないか、こう思われてなりません。  さきの国会からの懸案でございます刑事訴訟法第四十七条に基づく灰色高官を含むリクルート事件の全容等について、やはり率先して報告をするという姿勢を持ってもらいたいと思いますし、あるいはまた、今臨時国会においてもリクルート等の特別委員会等をやはりつくろうということで、そして、その場でまじめに前向きに議論しようという意思を表明されることが本当は海部さんのおっしゃるけじめ、政治改革のスタートではないか、こう思っておるわけでございますが、その点についてどうお考えになるか。  また、消費税の問題については後で触れますが、特に農政不信の問題、これは今日の政治不信と同じように根が深い問題だと思わざるを得ません。今度総理は、この選挙結果において農民の政治不信の根源をどこにあるというふうに本当は思っておられるのか、何を反省されたのか、これから国際競争力を失った農業をどう再生されようとしておるのか、特に農業基本法農政、大転換するようなそんな決意があるのかないのか、そのあたりを本当は国民が知りたかったのではないでしょうか。お答えいただきたい。
  44. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自由民主党は、リクルートの問題について、これは厳しい反省をし、それを乗り越えていくことこそが政治改革のための努力であると決めて政治改革大綱を発表しておるわけでありまして、私はそれに従って政治改革を忠実に行っていくことが政治不信を取り除く一つの大きな道筋である、こう考えておりますし、御指摘のように、残念ながら刑事事件に及びましたけれども、あのことによって全部片ついたとは思っておりません。そして自由民主党では、残念ながらいろいろな御批判の中で、みずからけじめもつけていかなきゃなりませんから、党がけじめ案をつくり、リクルートの未公開株の譲渡を受けた人々はそのけじめ案に従って対処してもらっております。同時に、これから二度と起こさないための努力をするために、法案を出したり、あるいは今後またいろいろな問題点を考えながら、政治改革を行うその中で反省に立った努力をしたい、こう考えております。  また、農政問題につきましては、これはやはり私は、所信表明で述べましたように、戦後から、あの食糧不足の時代からきょうまで土を耕し続けてこられた農家の皆さんに対する感謝の気持ちをまず忘れてはならないということを申し上げて、そして魅力ある、希望の持てる農村づくりのために力を入れていかなければならない。農業の生産性を高めることとか、あるいは国民の皆さんの納得できるような価格での農産物の生産性の向上とか、いろんな問題があります。これからの需要と供給の見通しをただいま農林省で作業中でありますけれども、いずれにしても、食糧供給の自給力を高めながら、農村生活というものが、もっと多角的な国土、地域に対する役割等も考慮して、魅力のある農村になるように政策努力をしていかなければならぬ、このように考えておるところであります。
  45. 米沢隆

    米沢委員 先ほどの質問の四十七条に基づく全容解明、法務省をして督励するような気持ちになってほしいと言ったのですが、そのお答えがない。あるいは農政についても、今おっしゃったようなことはよく今までもずっと聞いてきた話ですね。本当に新しく何かをやろうとされておるのか、それともただ過去の延長線の中でじわじわ考えながらやっていくという、そんな方式での農政の転換なのか、そのことを聞きたかったのですね。
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 刑事訴訟法の捜査資料の公開の問題につきましては、前国会で現在の法令の許す範囲内において最終報告を申し上げたと報告を受けておりますけれども、新たに国会から御要請があれば、法令の許す範囲内でどのような御協力ができるかということについて検討をさせていただきます。  また、農業についても、今までの惰性とか、今まで言ってきたとおりのことを繰り返しておるだけではございません。これは今までと違って、食生活の実態が変わってきたがために、また食糧生産のいろいろな状況が国際的な問題の中でいろいろな対応を迫られてきた中で、農家にも変化が起こってきておることは事実でございます。同時にまた、農家の後継者の問題もよく議論になりますが、私は、農家の後継者の問題というのも、これは農村に若い人が魅力を持つような農業にならなければならない、そのためには、農業生産とかお金の問題だけじゃなくて、生活環境の問題とか文化の問題とか、いろいろなことも総合的に考えていかなきゃならぬと思っております。新しく変わりつつございます。それに対してどう受けとめ、どう対処していくか、全く新しい角度から取り組んでおる次第でございます。
  47. 米沢隆

    米沢委員 次は、消費税の問題に移りたいと思います。  参議院の選挙の争点は、先ほど言いましたようにいろいろございました。しかし、私は、やはり消費税問題がいろんな政治不信要因と増幅されまして、それが国民の大きな判断材料になったのではないかと推測をいたします。そして与野党は逆転になったわけであります。この結果から見て、国民は消費税を、また今回の税制改革をどう受けとめていたんだろうか、受けとめたのであろうか、それを総理、どう判断されますか。  私は、消費税に対する拒絶反応もいろいろな角度からのものがあったと思っています。一つは、消費税そのものがけしからぬという声もありました。あるいは高齢化社会を展望したり、あるいはゆがみやひずみを直すという税革においては、やはりわからぬわけではないと。しかしながら、手順がけしからぬ、あるいは審議不足である、あんな格好で強行導入するのは何事かという、そういう御批判もありました。また最初から、これは公約違反だ、選挙というやはり洗礼を受けて初めて議論すべきものだという声もありました。あるいは欠陥が多過ぎるという声もありました。あるいはまた、消費税というのは一体何なんだ、なぜ今ごろ一挙に出てきたのだ、わからない、なぜまた今出さなきゃいかぬのだという声もたくさんありました。  そういう意味では、消費税に対する拒否反応もいろいろな角度からの理由による拒否反応が多かった、こう見ていいのではないかと思います。選挙のときよく我々も動きましたけれども、国民にとりましては、いわば国民に認知されない、国民的には認知されないものが何か強行導入されたという印象を持っておられるような感じがいたしました。しかし、既にもう導入されて施行されてしまっているから、国民の反応も複雑だというのが率直な私は印象ではないかと思うのでございます。  先ほど申し上げました拒否反応のいろいろな角度からの論点も、定量的には分析できません。しかし要するに、そのことは何を意味するかと問われれば、やはり国民の大半の皆さんの御意思は、与野党とも原点に立ち返って、国民にわかるように論議をし直してもらいたいという声ではなかったのかなと私は思うのです。消費税を一たんその意味では白紙に戻して、国民の理解が得られるように、その是非も含めて税制改革そのものをやり直してもらいたいというふうに我々は素直に聞いたのでございます。総理の見解はいかがですか。
  48. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、消費税の必要性、なぜこれを導入しなきゃならぬかということだけが静かに議論されるような雰囲気の選挙ではございませんでした。それはリクルートに端を発した政治不信、御指摘のようなああいった政治不信の状況の中でありましたから、内容についての冷静な必要性、そこにまで国民の皆さんが目を向けてくださる十分な余裕もなかったでしょうし、また、我々の方に説明をする時間もなかったことも、これは大変残念なことでございました。けれども、私たちはこれをある日突然出したというのじゃなくて、この税の仕組みの中で消費税だけを入れてどうこうというのじゃなくて、直接税と間接税のあり方の問題や、個別物品税のあり方や、あるいは中堅サラリーマンの皆さんの所得に対する非常に偏った税の姿とか、いろいろなものを踏まえて税制改革全体が必要だということで、これは御提案申し上げたものでありますし、また、将来の高齢化時代を控えて、今のままで税の仕組みが変わりませんと、ある試算によれば、ただいまのサラリーマンの税の負担が総収入の九%程度、それが二〇一〇年になれば二倍になる、一八%になる。そこまでいってしまうと、今度は重税感どころではないというようなこともいろいろ将来を展望すると出てくるわけですから、この不公平感を除いたり、いろいろ所得と消費と資産とバランスのとれた税制をつくらなければならぬ、いろいろなことを考えたわけであります。  これは米沢議員も税特の理事として終始熱心に審議に御参加をいただいた御経験から十分御理解がいただける我々の提案したときの気持ちであったと思いますけれども、そういったものは必要なものでありますから、これをどうして定着させていったらいいか、私はそのように考えておるわけです。ですから、消費税の是非だけの選挙ではなかった。ほかのリクルートに対する御批判も、おっしゃったように、農政に対する問題も、国際情勢の中でどう対応したらいいかという問題も、あるいは地域の持ついろいろな問題も含めての選挙の結果でございましたわけですから、その結果は謙虚に受けとめて、どのようにして御理解をいただいたらいいか、どうしたらこれがさらに定着をしていくかという点に、今私たち気持ちを集中して考えておるところでございます。
  49. 米沢隆

    米沢委員 今いろいろ言われましたけれども、結局冷静な議論で選挙が行われなかった。しかし冷静に見ていた人もいるわけですね。それも実際は分析できないかもしれませんが。しかし私は、欠陥消費税をああして拙速に拙速を重ねて強行導入されたというそのことが、幾ら理屈を言われても、税制改革の理念を述べられても、そして皆さんの立場からは整合性のある議論だと思っていらっしゃるかもしれませんが、トータルとしてああいう結果が生まれたということは、やはり我々としては税制改革そのものがトータルとしては国民の皆さんに理解を得られないし、どうもおかしいという税制に対する不信感を植えつけたということは、私は間違いない事実ではないかと思うのでございます。  そういう意味で、早々と欠陥消費税を導入して、そして混乱を大きくしておるということを考えれば、欠陥消費税を含めて税制改革をやり直すという、そこまで謙虚にやはり下がって、税制改革を今後どうするかという、国民の合意をどう取りつけるかという、そんな姿勢に立たないと、あなたのおっしゃる厳粛にこの結果を受けとめるということにはならないんじゃないでしょうか。
  50. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今米沢委員の御指摘でありますが、税制改革をやり直すという考えは、私は少なくとも責任者としてとっておりません。今総理からも述べられましたように、私ども参議院選を戦い抜きまして、その中で本当に厳しい国民からの御批判を浴びてまいりました。殊に私は責任者として国民に対してお話を申し上げるときに、リクルート事件を初めとする政治不信というものが自由民主党に一身に集まる中で、いかにどういうお話をしようとしましても、リクルート事件に対するおわびと、そのおわびの言葉を踏まえての政治改革についての取り組みを申し上げ、それなりの御納得をいただかない限り、後の話に耳を傾けていただけないという情けない思いを繰り返しておりました。しかし、その中におきましても、税制改革そのものに対しての国民の御批判はなかったと私は思っております。  税制改革はいわば一軒の家であります。そして既に所得税、住民税の減税あるいは法人税の減税、そして従来からとかく御批判の問題でありました個別間接税、物品税の体系を根底的に改める立場から、これを廃止して消費税を導入しました。その税制改革全体の姿については、私は国民からの御批判はなかったと思っております。その一つの大きな柱である消費税については、確かに国民から厳しい御批判がございました。この間取りについては本当に内部の見直しをしなければならない、私どももその責任があると考えておりますが、税制改革そのものを白紙に戻すということを私は国民は求めておられないと思っております。
  51. 米沢隆

    米沢委員 税制改革の一番大きな柱である消費税があれほど不信を買ったということは、トータルとして税制改革は不信の目で見られておるというのが素直な言い方ではないでしょうか。税制改革をしなければならなかったことは、これは当然だとおっしゃればそうかもしれませんが、その結果やった税制改革は、消費税を柱にして、ほとんど消費税を軸にしてつくられた税制改革でございますから、税制改革は不信はなかった、消費税だけがという議論はちょっと本末転倒じゃないですか、大蔵大臣
  52. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が、別に私はその言葉じりでの議論をしようとは思いません。しかし、税制改革そのものも白紙に戻してとお話しになりましたから、それは税制改革の中には既に国民に定着をし、その行為すら忘れられかけております所得税や住民税の減税も含まれております。また法人税もございます。そして物品税の廃止と、そして消費税という新しい柱という組み立てを申し上げたわけでありまして、消費税そのものの見直しというものを我々は真剣に取り組んでいるさなかであります。
  53. 米沢隆

    米沢委員 私は消費税を白紙にして税制改革をやり直そうというので、税制改革やり直しだけを議論したのではありません。我々は参議院選挙におきましては、欠陥消費税は撤回させて税制改革をやり直そうという公約で戦いました。そして選挙の結果、四党が協力いたしまして、今回は三点セットで今臨もうとしておるわけでございます。  第一の問題は、いわゆる欠陥消費税を白紙に戻すのでございますから、廃止法案が一本。なぜ廃止するんだ、こうおっしゃいますけれども、私は税制改革そのものをやり直さなければならぬと思っておりますので、今自民党さんがいろいろ議論されて苦労されておる見直し、実際はちょっとしか見直しできないんだと思いますね、消費税の税体系を変えない限り。そういうような技術的に少少ちょっと手を加えるというようなものではなくて、やはり徹底的な抜本的なメスを入れるという方向を考える場合には、一たんお引き取り願うことが、退路を断って議論することが大事だろうと思ったからでございますし、またこの際、行財政改革等についても、もっとやり直しぐらいの議論をし直さないと、実際は緩み切っておるという反省もあります。したがって、廃止法案一本でございます。  そうしますと、約六兆円ぐらいの財源がなくなる。今までならば、そんなのは政府・自民党が考えろと言って無責任にやっておったらよかったのでございましょうが、今度はもうそうはいかない。やはりそれは無責任なものであろう。したがって、六兆円というお金を右から左につくるなんというのはそう簡単なものではありませんが、苦労して苦労して何とか整合性のある代替案をつくろうではないかと、これは野党は一生懸命勉強させていただきました。本来ならば、やり直そうというならば、実際は二年ぐらい前に返えればいいんですね、すべて。そしてやり直すというのが一番の筋かもしれません。あるいは六兆円なくすのですから、その分は歳出カットで対応しようというのも筋かもしれませんが、それは実際政治的には難しい話だ。したがって、代替財源を何とか整合性のあるものにまとめていこうという努力が続けられまして、結局、その後基本法に基づいて議論する二年間の臨時暫定的な財源として済みませんがお願いしますというようなものをつくろうと、こういうことになったわけでございます。そういう意味で代替財源法一本、もうすぐこれは提出をさせていただきます。  同時に、消費税を白紙にして代替財源がもしうまくできたとしても、それで税制改革はハッピーかといいますと、そうではない。御承知のとおり、消費税を導入して税制改革が行われたことは事実でありますし、あるいは背景としては、やっぱりシャウプ税制以来のゆがみやひずみを正していこうではないかという税制改革、あるいは高齢化社会に対応する財源はどうしたらいいんだろうかというまじめな議論、そのあたりはまたもとに返ってしまうわけでございますから、そういう意味で二年間かけて国民の合意を得られるように、やっぱり基本法というのをつくって、その法律に基づいて議論をしていくことが当然なのかな、こういうことで税制改革基本法一本。したがって、三本をつくったという経緯について私は御理解をいただきたいと思うのでございます。  それに対しまして自民党そのものは、何かいろいろと御批判があります。批判があっても結構でございます。手ぐすね引いて待っておるという話もありますが、結構でございます。我々だって政府・自民党の法案にぼろくそ言うた経緯もたくさんあるのでございますから、ここはやっぱりお互いに言い合って、そのあたりの欠点や長所をお互いに議論し合うことが国民の皆さんの税制に対する理解を深める手段でございますから、少々ボディーブローが効いたとしても、それは私は避けて通ってはいけない、そう思っておるわけでございます。いわば、しかし考えてみますと、我々はこの税制改革の筋道をもう一回追い直して、国民の理解の得られる税制改革をやり直そうという提案そのものだということを政府もわかってもらわなければいかぬ、こう思うのでございます。  問題は、皆さんが強行してやったそのことで国民が混乱をしておる、不信に満ちた目で見ておる、そのことをしりぬぐいするために我々はわざわざ苦労しながら三点セットで対応しなきゃならぬという、そのことを考えてもらわないと、ただやっつけさえすればいい、野党の揚げ足取りでやっつければいいという、そんな発想でこの税制改革の議論をするならば、私は間違ってしまうと思うのですね。現にもう与野党は逆転しておるのでございますから、参議院は。その冷厳な事実を考える限り、ただお互いにぼろくそ言い合うというだけでは不毛の対立に終わってしまう。そのことを実際どういうふうに厳粛に受けとめておられるのか、そのことが私は自民党に問われているのだと思うのでございます。今回の税制改革のあり方にどういう反省を持って、積み残された問題がたくさんありますが、そういう問題の数々にどういうスタンスで取り組もうとされておるのか、そういう政治姿勢が総理、問われているのではないかと私は思うのでございます。  もし少々の見直しでお茶を濁すなんということになりますと、私は将来にわたって、もしあなた方が希望されるように、少々定着したとしても、常に税制に対する不信の念を国民が持ち続けて、いつでもこれは政争の具にされるという、そういうことだってあり得るということを私は考えてほしい。そういう意味では、これは政治という面でも、税制改革という面からも、百年の大計を間違うようなことにならにゃいいがなと私はまじめにそう考えておるのでございまして、総理、やはり大所高所に立って税制改革をやり直すという決断があってしかるべきだ、こう思うのです。どうですか。
  54. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、野党各党が御提案になります消費税廃止を求められる法律案、あるいはその将来の展望を定めるための二年間までの青写真をつくられる再改革法案ですか、そして今御準備をされておられると伺っております代替財源に関する法律案、これらについて国会が徹底的な論議をされることということを非常に期待をいたします。また、その中において、政府もまた求められれば御意見を申し上げる機会が与えられることを願っております。そして、今米沢委員指摘でありましたように、大変税というものに対して今国民の関心が向けられておりますその状況というものは、これは開き直りととっていただいては大変困るのでありますけれども、私どもの立場からいたしましても、税というものについて国民に認識を深めていただく上では、ある意味では千載一遇の機会を与えられたのかもしれません。そして、その中において、政府は誠実に国民の声を伺いながら、その見直しを進めているところであります。  そして、繰り返し私も申し上げてまいりましたが、見直しについての御要望というものは、皆我我は俎上にのせて検討させていただき、結果として採用できない項目については、なぜそれが採用できなかったかについても国民に対して御説明を申し上げる場を持ちたいと考えておるわけでありまして、政府もまた真剣に見直しに取り組んでおることだけは御理解をいただきたいと思います。
  55. 米沢隆

    米沢委員 見直し論議は、後に譲らしてもらいます。  私は、今回の消費税がなぜここまで国民の拒否反応を受けたのか、そのことを本当は単に税をうまくやればいいという議論じゃなくて、政治全体として考えねばならぬことという意味考えてみなきゃならぬと思うのでございますが、やはり結果的に言うと何かといいますと、今度税制改革をやられる場合、理念を掲げられましたよね。ところがいろいろとつくる過程においてぐちゃぐちゃされてしまって、その理念がつくり上げた税制改革にほとんど反映されないという中途半端なものになってしまったということが一番問題じゃないか。しかし、やはり最初掲げた理念で一生懸命その税制を持っていって、それを通じて私たちの理念はこうでしたと説明されるから、むなしく聞こえて国民にはわからない、これがまあ難しく言うと本当のところじゃないのかなと、こう思うのです。  二つだけ私は申し上げたいと思うのです。  一つは、例えば今度の理念といいましょうか物の考え方に、所得だ、資産だ、消費、バランスのとれた税制体系をつくるんだとか、あるいはまた来るべき高齢化社会に備えて活力ある福祉社会を創出するためだ、いろいろな議論が言われたわけでございますが、しかし、所得、資産、消費のバランスをとる税体系をつくるといっても、一番今何が問題になっているかというと、よく言われるように資産格差の拡大。そんな資産について、資産課税について、あるいは資産性所得についてほとんどこれは手が加えられていない。そして、ただ消費税を入れて、所得の方を減らしたというだけで、バランス論の中で、資産はどうしてくれますかという、これが今国民の欲求不満の第一でしょう。そういう意味では、いろいろと理念は述べられたけれども、今一番大事な、資産をどうするか、資産課税をどう強化していくのかという、その部分に触れられない税制改革なんというのはナンセンスだと言う人もおるわけですね、これは。それが一つですね。  それからもう一つは、高齢化社会への対応ということが言われるんですけれども、しかし、今度の税制改革を見て、一体どこで高齢化社会と結びつくのか。あなた方流に言えば、安定財源をつくることが高齢化社会に対応するということだけれども、国民のサイドから見たら、そんなしち面倒くさいことはわからぬ、実際は。わからないから、高齢化社会に対応する、福祉に対応する、だから消費税を入れたと政府は言いながら、何で年金の改悪法案がすぐ出てくるんだと、そんな笑い話が出てくるんです、皆さん。一体、この高齢化社会に対応する今度の税制改革、具体的にどういう連動性がありますか。実際のところはないんですよ。ない。  なぜ、ないか。例えば今度の税制改革で消費税を入れた。これが五兆九千億ですね。六十三年度ベースでバランスをとったときには五兆四千億の消費税の税収だ。物品税で三兆四千億もう食ってしまう。残りは二兆円だ。二兆円のうち国が地方自治団体に払う消費税分が一兆円だ。約一兆円しか残らない。所得税減税をやったその源資の一部でしかないわけですから、高齢化社会や福祉のために何か使われたなあなんというのは、発想の持ちようがない。あえて高齢化社会のためだとおっしゃるならば、これから税率アップを見込んで仕組みを入れたというだけにすぎない。そのことは皆さん説明しにくいでしょう、実際は。実際そうじゃないですか。税収という面から見たら、高齢化社会に対応して消費税がどういう関係があるかと言われれば、今から伸びていく需要に対して時あらば税を上げていきますよという、その仕組みだけ入れさせていただきましたというにすぎないじゃないですか。どうなんですか。
  56. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 税制改革法第五条の第一項に「国及び地方公共団体は、今次の税制改革の趣旨及び方針にかんがみ、福祉の充実に配慮しなければならない。」という文章がございます。まさに今回の税制改革の一つの大きな柱というものは、五十年代の後半になりまして非常に国民の中に強くなってまいりました税に対する重圧感、すなわち、非常に中堅サラリーマンに対する所得税の重圧がきいてきて不満が高まっていたこと、あるいは物品税等のゆがみ、ひずみといったものに対する御批判が強くなってきたこと、結果として税制改正を求める国民の声が政府に対する御要望のトップを占める状態になりましたことの中から、まさに所得、消費、資産というものにバランスをかけた、直間比率の見直しを含めた税制改革を行うということが一つの柱でありました。  と同時に、高齢化社会の到来というものを考えます場合に、今のような税体系をそのままに続けていたのでは、特定の階層、所得税負担階層に非常に大きな重圧がかかってしまうということから、広くお互いが支え合う仕組みを今のうちに用意しなければならないという大きな目的があり、こういう形をとってきたことも事実であります。  むしろ、今委員が御指摘になりましたような問題点になりますと、これから先の社会保障について、例えば所得保障、医療保障について、一般財源を充当していく方式を我々は採用するのか、あるいは保険料による方式を基本とし、時に応じて一般財源を投入する方式をとるのか、国民の御選択に係る問題にも係るわけでありますが、基本としては、今申し上げたような考え方で、この税制改革というものが行われていることは御理解をいただきたいと思います。
  57. 米沢隆

    米沢委員 安定財源をつくるための措置、それが結果的には高齢化社会に通じるんだという話だけれども、国民はそう短絡的に考えないんですよね。そう短絡的ではない。長期的に、もっと総合的に説明をしても本当は理解しにくいんですね。  以下答えてもらえますか。消費税みたいなものを入れて、高齢化社会がやってくる、福祉の需要が多くなる、したがって消費税お願いしますと皆さんおっしゃった。何ですぐに年金改悪法案が出てきたり、また次は医療改定で、また保険料のアップだとか国庫負担がちょっとふえていかざるを得ないというような事態になるんですかと、こう問われたときに、どうお答えになりますか。
  58. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 年金改革が改悪、なぜこういう改悪法案が出たのかということでございますけれども、この年金法案というものは、財政再建は再建、年金の改正は改正、ちょうどことしは、平成元年は財政再計算の年に当たっておりますので、御承知のとおり、今の年金社会保障というものは世代間の支えでありますから、先世代人たちを後世代の人が支えていくわけでありますから、将来に向かって安定していなければいけません。そのために法律で五年に一度改正をするようになって、その時期に当たったので、税制改革もやはりその時期に将来展望を見ながら行われたものでありまして、決してこれは、年金がこのときに飛び出してきたのが、改正法案を出したのが改悪だというようなことを言われることはまことに残念なことで、私どもはやはり給付をよくしていかなきゃいけないし、同時にそれに見合う負担もしていかなければいけない。しかし、負担と給付の間で、これも将来展望を見てみるならば、やはりどこかでお年寄りの役割といいますか、後代に受ける立場人たちもある一定考え方を持っていこうとすれば、やはり給付を受ける開始年齢というものが、後ろに、六十五歳になるということも、やはり安定ということを考えてやっているわけでありますので、決してそういうふうなお考えにならないで、ぜひこの法案が通るように御協力のほどをお願いしたい、かように思うわけであります。
  59. 米沢隆

    米沢委員 年金法案の提案説明を聞いているんじゃない。それぐらいみんなわかってます。わかっておる。言いたいことは、高齢化社会に対応するために消費税を入れさせてもらいたいという言葉がやはり先走りする。中身としては実際わかってない。安定的な財源、安定的な税体系をつくることが高齢化社会だというとわかりにくい。したがって、消費税を入れながら何でそんなにまた保険料を上げないかぬのですか、これは当然の素朴な質問だと思うのですね。結局問題なのは、やはりこれから先の高齢化社会考えたときに、今度の税制改革で言わねばならぬことは、仕組みを入れただけだということをあなた方は言わぬところに、これは欺瞞性があると私は思うのですよ。そういう意味で、結局国民は、これはやがてこの仕組みが動き出すな、大衆増税の道がどんどんどんどん広がっていくなという懸念が広がる。これは竹下元総理のいわゆる九つの懸念の中にも入っていた。現にそういう気持ちを持っておられるわけですね。  だから、我々はあの税制改革の議論の中で、わざわざ、やはり行政改革みたいなものを、行財政改革を徹底的にやって、結局変に歳出がふえないようにしていかないと、消費税がやおら動き出すぞ。したがって、もう本当に行財政改革を徹底して、財政需要が小さくなるように、少なくとも大きくならないように徹底的に行財政改革をすることが、この仕組みが動かない最大の歯どめだな。あの当時、国会があるから歯どめだとおっしゃったけれども、国会なんていうのはいつも塗りかえていく歴史なんでございますから。財確法だって、いつもこんな国会があって、財確法をいつも提案されて、承認して、何とか国債発行してくださいと言っていますよね。次から次に塗りかえられて今日のああいう赤字国債が大きく積もり積もったのでございますから、国会なんというのはそういう意味では余り信用できない。本当は政府そのものの、予算そのものの財政需要がぎりぎり抑えられる努力をしない限り、どうしてもどこかで歳入が欲しいなということになって増税になっていくのですから、そういう意味で、行財政改革の推進こそまさに歯どめになるんだということで、この前の税制の議論のときにも、「今後、消費税率が経年的に上昇するのではないか、という国民の疑念に応えるため、今後とも引き続き行財政改革を強力に推進し、」「政府保有の土地、株式等の資産の適切な売却に努めるなど最大限努力と工夫を行い、長期的に国民負担率の上昇を極力抑制する。」という覚書をあなた方と取り交わした。  しかし、まあ消費税の論議で忙しかったのかもしれませんけれども、その行財政改革は一体どうなっておるんだ、進んでいるのか、言葉だけだったのか。こんな調子だったらまたぞろこれは本当にこの仕組みが動き出すチャンスが目の前に来たんじゃないのかなと私は思っておるのですがね。まじめにやっておるんですか、政府は。
  60. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今さまざまな御指摘がありました。  ただ、政府として行財政改革、特に行の部分については総務庁長官からお答えをいただくわけでありますが、今まで与党の行政改革の責任者当時、米沢さんを初めここに御列席の各委員にも随分お手助けをいただき、私は行政改革をやってまいりました。そして、その意味においては、私は御信頼をいただきたいと思っております。  そこで、政府として歳出の削減に全力を尽くすことは当然でありますし、明年度予算編成において、我々は赤字国債依存体質を脱却したいという目標を立て、これに全力を挙げて取り組んでまいります。そして、御指摘になりました政府の保有の株式とかあるいは資産の売却というものにつきましては、あるいは細かくお尋ねがありましたならば個別にお答えをさせていただきますが、国民の財産でありますものを手放していくわけでありますから、適時適切なタイミングを見ながら、今までも処分をしてまいりましたし、これからも同じような姿勢でこれを進めてまいりたいと考えております。
  61. 水野清

    ○水野国務大臣 ただいまお話しのように、消費税の審議をされた国会におきまして、前々国会でございますか、民社党と自由民主党並びに政府との間に、行政改革を新税制導入に当たって真剣にやらなければいかぬ、また、やりましょう、こういう話し合いがあったということは、当時私は担当でございませんが、聞いております。  そこで、お話のように、行財政改革、今大蔵大臣からもお話がございましたが、どのくらいの実効があったか、こういうことでありますが、これは鈴木、中曽根内閣以来のものを少し振り返ってみますと、御承知のように、国鉄改革を初めといたしまして三公社の民営化をいたしました。また、日本航空の民営化をやったことも委員御承知だと思っております。さらにまた、公務員の純減において約三万人の実績を五十七年度から平成元年度まで上げてまいっております。さらに各省庁の整備統合ということで、私が今おります総務庁というのも、これも御承知のとおりだと思いますが、かつての行政管理庁と総理府の大半を統合して一つ役所としたわけでございますし、その他、各省庁において地方局の整備統合あるいは地方出張所の整備統合などもやってきたことも御承知のことと思います。この結果、NTT、日本航空などの株の売却によりまして約十一兆円の歳入を上げている。これは大蔵大臣からのお話もあったことでございますが、この十一兆円は国債の償還のほか社会資本の整備などに充てて、行政改革の実績は私は国民に還元されつつあるというふうに思っているわけでございます。  しかし、行政改革というものは、今後とも、これは委員の先ほど来のお話のように、絶えず続けていかねばいかぬことでございますし、こういうふうに税について非常に国民の各位の関心が高い時期でもございますので、私どもは、行財政改革というものは、なお一層これは真剣にやっていかねばいかぬ、かように思っております。  少し長くなりますが、現在行革審において御審議をいただいておりますのは、これも新聞紙上その他でごらんになったと思いますが、国と地方との関係についての見直しを早くやらねばいかぬ、あるいは公的規制の緩和の問題、さらには行財政改革の全般において、これは行革審が来年の四月に現在の立場が法的に切れてしまいます。そのポスト行革審についてもどうするかということについて御審議をいただいておるわけでございまして、いずれこの答申をいただいて、その線に沿って実施を進めていきたい、かように思っておるわけでございます。
  62. 米沢隆

    米沢委員 いろいろ詳しく御説明をいただきましたが、しかし、国と地方の関係の問題だって、公的規制の緩和の問題だって、許認可行政の合理化の問題だって、これはもう言われて久しいですよ。もう眠気が差すぐらいに長い時間議論されてきたのです。実際はそのあたりが、確かに積み重ねですから、皆さんもお仕事ですから、それは積み重ねで何かやっておられるでしょう。それを説明すれば、今長々とおっしゃったように、何かあったような気がすると私は思うのですよ。しかし、その進みぐあい等は、進捗度合いみたいなものは、私はもし民間という感覚でするならば、これはもう遅々として進まぬという印象そのものですね。  あるいはまた、補助金の行政、特に補助金の行政のあり方ですね。いつまでもむだな陳情行政が続いておるじゃありませんか。高い飛行機代で乗って何人もやってきて、時には皆さんが予算分捕り合戦をするために、一々おまえら集まれ、集まれと言ってやっておるでしょう、皆さん。そんなのがまたむだなんですよ、実際は。そういうところに本当にメスを入れましたか。中央官庁に、本当に本丸にメスが入りましたか、実際。過去をおっしゃったら、蓄積されておるのです、仕事をされておるのですから。月給もらって飯食うてきたのだから少々やってもらわなければ困る、そんなのは。しかし、その進み方が私は非常にのろいと言っておるわけでありまして、ぜひ今後頑張ってもらいたいと思います。  同時に、財政再建。来年は赤字国債からの脱却ができるのだそうでございますが、しかし、それで財政再建、終わりませんよね。これからの財政再建の策、一体どういうふうに考えておられるのか。赤字国債を今度は減らす方向に行くのか、それとも出さないという方向が基本なのか。建設国債までできれば少しずつ減ずっていくというような大胆な財政再建計画をつくっていくのか。隠し借金みたいなのがありますね、三十兆円近く。そんなものをどう扱うのか。もうここらである程度の基本的な物の考え方ぐらいは披露してもらわないと、税制改革なんか行政改革とあざなえる縄のごとき関係にあるわけだから、ただ税制だ税制だ、高齢化社会だと言ったって、それだけがひとり歩きしておるんじゃないのですね。一方では、それに要る財政がどうなっていくのか、そして大変厳しい財政状況をどういうふうに再建していくのかという、もうここらで第二段階目の財政再建対策に対する物の考え方を、大臣、はっきりしてもらわなければ、税制なんか議論するような気分にならない、そんなのは。
  63. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、今日本の経済が極めて安定しております状況を非常に幸いと思っておりますし、この状況の中で赤字国債依存体質からの脱却をまず果たしました後、続いて、今委員が御指摘になりましたような問題を考えました場合には、財政規模の拡大という方向をとる状況にはないと考えております。  現在、赤字国債依存体質脱却をどういう目標を立てるかについては、財政審に御審議を願っておるところでありますが、少なくとも今御指摘になりましたいわゆる隠れ借金と言われますさまざまな繰り延べ措置等、また、今御指摘には入りませんでしたけれども、国鉄改革の結果、土地の売却によって赤字を減らしてくるはずでありましたものが、現実の土地の状況から土地の処分を繰り延べておりますうちに、累積債務の増大をしてきております国鉄清算事業団の債務の処理、こうしたものは当然これからの目標として我々は取り組まなければなりません。そうした中で、これから先も我々は厳しい歳出のチェックを行ってまいりたい、そのように思っております。
  64. 米沢隆

    米沢委員 行財政改革が推進されない限り、税に対する信頼は本当は確立されない、そういう関係にあるということをぜひ御自覚いただいて、叱咜激励をして効果が上がるように頑張っていただきたいと思います。  それから、先ほど消費税がなぜこんなに拒否反応を受けたのかということで、理念が生きていないという話を申し上げました。  もう一つは、もうここでも再三取り上げられておりますけれども、やはり今日の資産格差、土地の値上がり、株の値上がり、その恩恵にあずかる人、あずからない人、ニューリッチ、ニュープアの出現、昔は国民はほとんど中流意識というのを持っておったという世論調査がありますが、このごろ中流意識がどんどん減ってきて、気持ちは中流だけれども、実際は欲求不満がたまりたまっておるというのが普通のサラリーマンの皆さん方の気持ちそのものではないのかなと思います。ここまで土地が上がってしまいますと、特に都心等では自分の一生住む家さえできないなんというのは、これはもう政府の失政そのものだと私は思いますね。そういうものがやはり今度の消費税についても、確かにサラリーマンの皆さんでも年収の高い方は減税の恩恵にあずかったんですから、にもかかわらず消費税嫌だというのは何かと言ったら、やはりそのあたりに大きな要因があるのではないのかな、そこに私は思いをいたすべきだと思うのでございます。それが言うたら不信を買った落とし穴みたいなものだ、私はそう思うのでございます。  そういう意味では、やはりこれからの税制義諭、私はやり直しを主張しますけれども、実際はそのあたりの対策等も含めて――それは一挙に効果は出ませんよ。しかし少なくともこういうことをやろうじゃないか、こんなことをやりますというような議論が並行的にあって初めて税に対する理解が深まるわけであって、一方は放置して、そして全然それがいい方向に向かうどころか悪くなりつつあるという状況の中で税制だけ何とかやってくださいという、それはちょっとタイミング的には完全に誤ったのではないか、こう思うのです。  特に、今度の消費税というのは、結局こういう背景があるとおっしゃっていましたね。例えば所得が上昇して平準化した、だから買い物されるときぐらい消費税三%出していただく担税力みたいなものはお願いしていいのではないか。これは垂直的公平よりも水平的公平、そういう発想ですね。ところが、一方では景気がいいときがちょうどいいんだとか、物価が安定しているからそういう物の考え方を導入するにはちょうどいい時期だとおっしゃったけれども、実際は、昭和五十年代後半ぐらいから所得格差はじりじりと大きくなりつつあるのですね、国民階層の中で。ましてや資産格差、これは一挙に大きくなっていきつつある。もう絶望感ですわね。努力をして何とかなるというのが日本社会の活力の原因だった。今はもうたまたまそこに生まれたからよかった。たまたまじいちゃんが土地を持ったからよかった。努力いかんにかかわらず、ニューリッチで思い切り遊べる人種と、一生懸命働けども働けども全然ニューリッチについていけない、そういう社会をつくり出したのは政治の責任だと思わなければいかぬ、こう思うのです。そういうところが置き去りにされながら、こちらの方で高齢化社会と。本当に今苦しんでおる、相対的に貧困感を持っておるこの皆さん方は、将来大変だから大変だから。わかっておるのですよ。わかっているけれども、考えたくないですよ、もう出すことで。というのが政治課題として残されている大きな問題ではないかな、私はそう思っているのでございます。  特に、ジニ係数という所得、富の再配分がどう行われておるか。これはもうずうっとじりじり上がってきましたよね。貧富の格差が大きくなりつつある傾向にあったのですよ。その上、今度の税制改革は、高額者を減税して、低所得者の皆さんから税負担をお願いするということでございますから、ジニ係数はもっと悪化したということですね。だから、いかにも冷静に議論したらわかってもらえるだろうとか、我々のPRがうまくいけばうまくいったでしょうなんという程度のものじゃないんですよ、本当に背景にあるものは。そこにやっぱり思いをいたすときに、定着させるために見直しをするという、そういうことで一生懸命頑張りたいという気持ちはわかりますけれども、私はそのことが絶対にうまくいかないという感じがするんですね。もしあなた方一方の方の、こちらでドラスチックに効果が上がるようなものがあれば、少々わかってくださるかもしれませんよ。しかし、こちらの方が台なしにされて、こちらの方だけうまくといっても、ちょっと化粧を変えただけで消費税等が拒否反応がなくなるということを考えること自体がやはり甘過ぎると私は思うのですね。後でそれはいろいろと申し上げますけれども、実際はこの見直しというのも考えれば考えるほど難しいですね。本当に難しいですね、これは。消費税という税体系を変えない限り、簡単なものじゃないですよ、こんなのは。結果的にはちょっと薄紅をつけたくらいになるでしょうね。それで国民がどう反応するか。それが次の衆議院選挙でしょう。それはまた後で質問させていただきますが。  ところで、ちょっと脱線しますけれども、その資産大国の問題ですね。ことしの経済白書によりますと、八七年末の国民総資産残高は五千三百三十八兆円。世界一ですね、これは。このうち土地の資産が千六百三十三兆円。日本全体の正味資産、国民純資産というのだそうですが、二千五百四十六兆円で、このうち六四・三%は土地が占めている。だから、こんな高い資産価格であれば、アメリカの土地が四つも買えるとか、日本の二十五倍ぐらいの面積ですから、土地の単価はアメリカの百倍に相当する。こんなのは気違いざたですね。そして、八七年には土地資産の増加分が、付加価値分が初めてGNPの三百四十五兆を超えて三百七十四兆となった。土地が幾らインフレになって値が上がっていっても、全然国民全体にとっては生活が豊かになることじゃないですよね。もともと一年間かけて全国民が一生懸命働いてつくった付加価値よりも土地の値上がり分が大きいなんというのは、国土庁長官、今度のを見ておって血が本当に騒いで、本当にやろうかなと思わぬと男じゃない、そんなのは。現に一番大きな問題は、先ほど言いましたように、白書にも書いてありますように、地価の上昇によって土地資産の評価額が名目的に膨らんだところで国民生活の豊かさに直接結びつくものではないから、これを国富の水膨れだという。企業はこのような土地資産を持って、土地価格は上がりますと担保価値が膨れますから、それでまた金を借りてまた土地を買うことができる。サラリーマンは一生懸命家を買おうとして貯金をするけれども、その貯金した金が土地に回って値が上がって結果的にはどんどんマイホームの夢は遠ざかっていく。あるいはまた、企業の株ですね。株もかなり上がりましたね、これは。企業が持っておる株、持ち合いをやっていますから、大体今上場企業で八八年度で六七・四%株式の持ち合いをやっていますね。このあたりアメリカから非難されておりますが。これはやはり高株価を維持する一つの装置ですよね。そして土地が上がる、株も上がる、株が上がったらまた土地も上がる、そういう総合的にお互いに関連しながら、結局どんどんどんどん株も上がれば土地も上がっていく。会社が大きな株価になれば、それだけ時価発行を通じて低コストの資金を調達できる。また株式の担保が上がりますから銀行借入限度もふえていく。いいことばかりなんですね、これは。今はですよ。土地が上がる、株が上がる、このことが逆に現在の繁栄の一部を支えているかもしれませんね。  しかし、このことは何を意味するかといいますと、そこのふえるところはどんどん大きくなるけれども、それにあずからない人はみんな劣後に置き去られていって、サラリーマンのみはどんどんどんどん打ち砕かれていくという、そういう仕組みが現在の日本の経済社会の中にもしはまり込んでしまったとするならば、一体どういうことになるのだ。持てる者はますます富み、貧しさ者はますます貧しくなる。マルクス、レーニンの何か本を読んでいるようなものだ。ここまで高度に発達したこの日本社会が、今やそういう土地や株の水膨れの結果、何かそちらの方に総崩れしていくのではないか。うまくいっているときはいいですよ。水膨れの上の経済ですから、それは拍車をかけたら伸び率は高いでしょう。しかし一たん崩れ去ると、その人だけの被害じゃない、国民全体の被害になる。もう少しこの水膨れ経済というものを直視して、もう一回経済を改めていく、そういうことに取り組まないと大変なことになるのじゃないのかな。じわっとボディーブローが効いて、十年先、二十年先日本は大変かもしれませんよ。その上高齢化社会だ。そのあたり一体経済企画庁長官、どういうふうに今のこの水膨れ経済を見ておられるのか、何が問題だと思っておられるのか。また総理大臣、それを変えていかねばならぬ、そういう発想がありますか。  国土庁長官、もう早く土地ぐらいはおさめるようにしましょうよ。特に土地税制等も積み残された問題です。残念ながら土地基本法がまだ審議が始まっておりませんけれども、早く成立させて、でき得れば、もう土地は少なくとも投機の対象にしないというような税制、持っておったらもうかるなんという土地神話を崩すような税制、そしてそれなり社会開発が進んで、値上がりした分についてはお返し願って、その分で社会開発をしていくというルール、そういう三つの少なくとも原則を守った土地税制をぜひつくるべきだと思う。  これは大蔵大臣に尋ねると同時に国土庁長官にも御答弁いただきたい。
  65. 中尾栄一

    中尾委員長 順次御答弁を願いますが、まず経済企画庁長官
  66. 高原須美子

    ○高原国務大臣 経済白書を御引用いただきまして大変ありがとうございました。経済企画庁が大変客観的な役所であることを改めて認識いたしました。  本年度の経済白書におきましては、確かに資産残高が増加し、その保有や取引の経済全体に与える影響をストック化と申しまして、その進展が日本経済に与える影響や対応策について分析検討しております。  ストック化は、現在の景気上昇を支えるプラス面が確かにございます。でも一方では、確かに委員指摘のように、マイナス面もございます。白書では、そのマイナス面を、土地の値上がりによる「名目的な資産価値の増加による国富の「水膨れ」」というふうに確かに指摘いたしました。そして、これは「国民生活の豊かさに直接結びつくものではない。」というふうに分析をお示しし、また地価上昇に伴いまして、持てる者と持たざる者との格差があることも指摘しております。  その対策といたしましては、私はやはり土地問題が中長期的な観点から一番必要になると思っております。東京に集中している土地需要の分散、あるいは土地税制の活用等による土地供給の促進といった需要供給の両方面にわたる対策が必要となっておりますほか、開発利益の還元などによる社会資本の効率的な整備も必要であるというふうに思っております。  これは既に白書の中で十分指摘しているところでございます。こうした施策を通しまして、これから企画庁としましては、国民生活の豊かさに結びつくようなストック化を実現していく必要があるというふうに考えております。  以上でございます。
  67. 中尾栄一

    中尾委員長 続いて、国土庁長官石井一君。
  68. 石井一

    ○石井国務大臣 委員の御指摘、まことに適切な御指摘であるというふうに拝聴いたしましたし、これは大変な御激励をいただいた、こういうふうに受けとめさせていただきたいと思うのでございます。  資産の格差の元凶になっておりますのが土地でございます。土地のあるところにさらに富がたまり、また社会投資がどんどんと加えられておるのにかかわらず、それだけの適切な負担というものを求めてないという税制になっておる、こういうことも確かでしょう。そして、この国において土地を保有するということが先進国と比べましていかに安いか、そういう基本的な問題もございます。そういう意味から、今回、御指摘のとおり、土地基本法というものをひとつこの国会で成立させていただきまして、土地に対します基本的な概念が、土地は個人のものだというものから、土地は公のものなんだ、利用すべきものなんだ、土地を保有するのにはこれだけ高い金がかかるんだ、こういう形への発想の転換をぜひともお願い申し上げたいと思います。基本法が通過いたしました後に、具体的な御指摘のありました問題につきまして、土地税制に確実にメスを入れていくということ、大変難しい問題でございますけれども、これに取り組んでいきたいと思います。  ちなみに、この国で土地所有者が三千数百万と言われておりますが、その家族等を入れますと七、八千万になる、こういうことになりますと、七割ないし八割の方が土地所有者である。こういうことを申し上げますと、多少軽率のそしりがあるかもわかりませんが、七割、八割の所有者というのは、やはりある意味においては有利な立場に立っておるわけでありますから、土地の税制その他に対しましては大変な抵抗を示されることになるかと思います。しかし、資産の格差というようなことを考えましたときに、これは政治の最大の課題としてひとつ取り組んでいかなければいかぬ問題だ、私はそういうふうに認識をいたしておりますので、今後ともひとつ民社党におかれましても、積極的な御協力をお願い申し上げる次第でございます。
  69. 中尾栄一

  70. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほど御指摘がございましたけれども、現実にそれでは所得格差が拡大しているかといえば、実際は景気拡大に伴う雇用情勢の改善を通じまして格差拡大という傾向は生まれていないわけであります。ところが、まさに御指摘になりましたように、土地あるいは株の高騰といったものが一部の高所得者のマネーゲームみたいな感じで報ぜられております中で、非常に大きい心理的な影響を与えておると私は思っております。そして、そういう意味では、私どもは御指摘のように、引き続いて資産課税の適正化というものに努力をしてまいりますし、殊に、今までも例えば土地転がし等に対してはさまざまな手だてを講じてきたことは御承知のとおりでありますが、土地基本法が制定をされまして、土地に対する哲学が確定いたしますならば、また税としても新たな対応ができるかと考えます。しかし、それは消費税導入の意義とはまたかかわりのない別種の部分として考えなければならないことではないでしょうか。
  71. 米沢隆

    米沢委員 今は、土地に対する対策を強化して、土地税制を苦労があるけれども新しくつくり直そうということまで合意できたわけですね。資産といえば、土地だけではなくて、株もある、金融もある、実物資産といいますか商品取引等もある。やはり私は、確かに今は土地の問題が大きな問題ですけれども、トータルとして資産性所得というものをどういうふうな形でうまく格差が是正されるような税体系に持っていくのか。これはやはり大きな土地だけではない問題だと思うのですね。そのあたり大蔵大臣一体どう考えていらっしゃるのか、考えをまずお伺いをしたいのです。  特に、シャウプ税制そのものが御承知のとおり富裕税を持っておったり、あるいは株のキャピタルゲイン等も、これはもう最初から原則課税だったですよね。ところが、資産性所得というのは捕捉がしにくい、捕捉の手段がちゃんとない、申告するまじめな人が損をして、申告しない人が得をする、だから原則課税を非課税にする、富裕税はやめましょうということになってきた。まさに資産性所得はシャウプ税制のときにはちゃんと踏み込んでおったのですね、大体物の考え方として。ところが所得の捕捉ができないがゆえにといってみんなまたどんどん堕落の道を歩いていったのですよ。そして、今また資産性所得等についてもある程度の捕捉をして、やはり資産の格差が拡大しないような方向に持っていこうではないかというのだから、やはり資産というものを何らかの形で捕捉するような手段を考えない限り、その手段はないけれども資産性所得を何とかやれといっても、これは無理ですよね。もうこの段階では、資産性所得を捕捉をして、これ以上にこの社会不安が広がらないようにするためにも、せめて資産性所得は総合的に捕捉できるような手段を考えようじゃないかなんという時期にもう来ておるんじゃないかと思うのですね。確かにプライバシーの問題がありますよ。しかし、ここまでコンピューターソフトが発達した中でプライバシー法案をちゃんとつくってうまくやれば、そう目に指を突っ込むような感じですべてがオープンになるなんということは絶対あり得ないと私は思うのですね。そこらは知恵の出しどころだと思うのです。  そういう意味で、資産性所得に対するあるいは資産課税に対する税制をどういうふうに基本的に持っていこうとされておるのか。そのためのまず前段階である資産というものを、資産性所得をどう捕捉するかという手段について、どういう発想で今政府は取り組んでおられるのか。納税者番号等の小委員会等をつくって、政府税調でも御検討いただいた経緯がある。ところが、今ここに来て、野党を攻撃するためにそれを持ち出して、大変になるぞといっておどして、何かいかにも怖いものが来るような、オオカミ少年が来るようなことを言い始めた。これは非常に私はけげんな現象だと思うのです。竹下総理は消費税導入に一生懸命でございましたから、わかったわかった、資産性所得について捕捉の手段でも考えようというところまでお話しになった。ところが、今逆になっておるのですね、逆に。大蔵大臣の見解を聞きたい。
  72. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今私はちょっと一瞬きょとんといたしておりますけれども、私はそういうことを申し上げておったことはないと思います。そしてまた、政府として野党が納税者番号制度を提唱されることについて、大変なことになる、大変なことになると国民に申し上げておることもないと思います。  資産課税というものを前提にして今御論議がございましたが、委員指摘のように、確かに今土地というものの異常な状況の中で、土地を切り離しませんと、例えば証券あるいは金融その他についての冷静な議論ができにくい雰囲気にございます。そうした中におきましては、確かに納税者番号というものを、政府も関係省庁の実務者レベルから成る研究会を設置しまして、技術的、専門的な検討をしておるところでありますが、今委員は、そういうものは大丈夫だとおっしゃいましたけれども、やはりプライバシー問題でありますとか、制度導入に伴いまして国民が受忍していただかなければならない煩わしさとか費用などについての国民的な合意が必要であることを考えますと、国民の合意形成というものを見守りつつ、さらに検討していくという税制調査会の答申の方向を頭に私どもは描いておるわけであります。  なお、一つ補足をさせていただきますと、実は私は昭和四十年代の初めに当時の行政管理庁が国民背番号を提唱したときの記憶が消えません。このときには、税あるいは社会保険その他さまざまな問題から同様の論議が出まして、当時の行政管理庁は相当真剣な検討をされた上で、国民背番号というものを世に問おうとされました。ただし、これは当時野党をも含めまして大変な世論の反発に遭いまして、結局表に出ないままにつぶれ去ったことがございます。その当時、例えば社会保険番号を使おうかとかいろいろな論議が内部でなされておりましたことを多少私も存じておりますけれども、それは完全に表に出る前につぶれ去ってしまいました。こういうことを思い起こしてみますと、言うべくして国民の御理解を得るに時間のかかる問題ではないかという個人的な感じは率直に持っております。
  73. 米沢隆

    米沢委員 何も簡単なものだと言っておるのではありません。確かに個人のプライバシーの問題等もありますが、しかしこの際、やはり今政治課題として資産格差の拡大をどう防いでいくのか、これ以上水膨れする日本の経済にある程度さお差す政策が必要なときに、やはり税制としてもそれにきちっと対応しなければならぬだろう。そうなれば、やはり捕捉の手段というものを、昔話をして怖い話ばっかりするから国民は怖くなるのですよ、そんなのは。私は、簡単なものではないと思うけれども、やはりそのあたりの手段を確立して、お願いする時期に来ておるのではないですかということを申し上げたかったわけでございます。  さて次は、政府・自民党が今努力をされております消費税の見直しについてお聞きしたいと思います。  総理は、所信表明演説や昨日来の質疑応答で、国民の声をよく聞き、消費者の立場をも十分配慮して、見直すべき点は思い切って見直していくと述べられております。しかし、その見直し案の大綱ができるのは十一月の下旬、そして政府税調や自民税調にかけるのが十二月の中旬、これは完全にこの臨時国会には間に合わないということになります。さきの参議院選挙では、我々は欠陥消費税を撤回させて税制改革をやり直しましょうと公約を掲げて戦った。自民党さんは見直しをしようと言って戦ったわけですが、そのときは何も見直しの中身もわからぬければ、ただ見直しを言っていれば適当にやれるわという調子の公約だったのですか、これは。
  74. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 当時の責任者として私が申し上げてまいりましたことは、見直しをいたします、ただし、その参議院選、あの当時の時点において、今出ております消費税見直しの御意見は、消費者の方々と、その消費者と接するいわば窓口の部分の御意見であります、やがて納税が始まれば、納税義務者としての御意見も出てくるに違いありません、私どもはその双方の御意見をよく伺い、見直していくつもりでありますと申し上げてまいりました。
  75. 米沢隆

    米沢委員 この話は昨日来の議論で水かけ問答ですから、もう私はやりませんが、やはり見直し案を早くつくって、少なくともこの臨時国会が消費税国会と称されるようなものになっておるわけですから、政府の案として出されるのが本当は責任のある立場だと思うのです。結局消費税は、今国会には見直し案はあなた方は出さない。結局皆さん方のつくった見直し案で予算編成をして、そして次の通常国会予算とともにその見直し案を審議する、こういう段取りですよね。しかし、こういう情勢ですから、予算は通ります。しかし、見直し案は通らない。通らないと今度は予算執行できないという状況になるのじゃないですか。
  76. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私どもは見直しをし、その国民の声に基づいて見直し案をまとめ、法律として提出をいたしました段階で、野党の皆様にも御協力をいただきたいと願っております。
  77. 米沢隆

    米沢委員 だから、拙速に拙速を重ねてただ出せばいいと言っておるのじゃありませんよ。少なくとも、例えば竹下総理は九つの懸念を表明された。もうこれは言いませんけれども、九つの懸念がありましたね。結果的に半年たったわけです。懸念に照らして現実が一体どうだったのか、そのことが本当は見直しの原点でなくてはならぬのじゃないでしょうか。それプラス、やってみて今度は消費者の反応もある。事業主の皆さんの考えた以上にこんな問題があるということに広がるわけで、その後者の部分は確かに今から時間がかかるかもしれませんよ、それは。前者の部分はもう分析されておっておかしくないんじゃないですか。九つの懸念、現実はどうだったのか。確かにおかしかったというならば、見直しのまさに原点は既にあるのじゃないですか、それは。それが何で、こんなところは見直したいんだ、こういうものが今ポイントになっているということまで言えないのですか。やった後の話は別ですよ、これは。集約もいろいろありましょう、消費者の反応は。しかし、九つの懸念を表明されて実行されて、そして現実はいろいろもう既に出てきておるじゃないか。九つの懸念、現実的には本当にそうだ、大変だということが。それはもう見直しの原点じゃないんですか。なぜそんなことが言えないのですか。
  78. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 言えなかったわけではなく、昨日来そういう趣旨からの御質問は今が初めてであります。  そこで、竹下総理から示されました当時の懸念の中のいわゆる逆進性の懸念につきましては、歳出面での配慮など可能な限りの対応をいたしてまいりました。なお、社会的に弱い立場にある方々に対しましては、今後ともにきめの細かい対策を講じてまいるつもりであります。  また、税率引き上げに対します懸念につきましては、先般海部内閣として税率の引き上げを行わない旨を所信表明で総理国民に対してお約束をしておられることであります。  また、物価及び転嫁についての懸念でありますが、最近における物価の動きは、委員御承知のとおりに極めて安定的なものになっておりますし、転嫁も適正に行われております。  また、事業者の事務負担の懸念につきましては、その仕組みにおきまして、中小事業者の納税事務負担に配慮してさまざまな措置を講じてまいりました。  また、納付された消費税が国庫に入らないのではないかという御懸念につきましては、通産省の調査によりますと、売上高三千万円以下の小売業のうち、約四割の事業者がほとんど転嫁をしておられず、サービス業にありましては約七割が転嫁をしておられない状況にあるという報告でありまして、事業者免税点制度などによりまして生じる減収の多くの部分は、消費者がそれだけ安い価格で物を購入されることができるということを意味しておるわけであります。  最後に、地方団体の財政運営に対します懸念というものにつきましては、地方に対する財源配分など必要な措置を講じてまいりました。  今、実施前に心配をされておりました各種の懸念というものは、それぞれに解消されつつありますけれども、今後ともに定着に向けて最大限努力を払ってまいるつもりであります。
  79. 米沢隆

    米沢委員 何かもう見直しなんか要らぬような話ですね、これは。見直しは要らぬけれども見直しするんだと言っておるような感じですね。
  80. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 そんなことは言ってないですよ。九つの懸念についてお尋ねになりましたので……。
  81. 米沢隆

    米沢委員 そう聞こえますね。  当面、今話題に上っております見直しの対象、新聞紙上等、あるいは消費者の皆さんの声を聞く限り、挙げてみますと、ざっとこんなものだと思いますね。  一つは、総額表示または内税方式への統一の問題、一つは非課税品目の拡大の問題、簡易課税の見直しの問題、免税点や限界控除の見直しの問題、複数税率やインボイス、アカウント方式を改変したらどうかという議論もある。あるいは福祉目的税、転嫁できない場合の救済対策、そして低所得者対策についての、これは消費税本体の問題ではありませんが、低所得者対策等、大体八つぐらいに検討課題としては絞り込めてきておるのではないかと思うのですが、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。  しかし、これはいずれにしても、難しい問題をはらんでおるような気がしますが、総理は見直すものは思い切って見直すなんということをおっしゃっておりますが、本当にそうなりますか、これ。
  82. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま御指摘なさったような問題点が今議論になっておるということは、私も新聞や各種の世論調査や方々の御意見で十分承知をいたしております。それらの問題について私たちもいろいろと対応を考えて、謙虚に耳を傾けながら見直して、定着ができるものは思い切って見直していきたい、こう考えております。
  83. 米沢隆

    米沢委員 例えば内税方式への統一、これは買い物の都度税を負担したことが明らかになって消費税の痛税感が大きい、これを何とか解消しようとか、一円単位で買い物するのはもう不便だ、こういうものを解消しようということでクローズアップされておる問題でございますが、しかし、政府ですよね、外税方式でちゃんと転嫁ができるようにしましょうと言って一生懸命頑張ってくださったのはね。同時に、やはり外税だから痛税感がある。痛税だから逆に本当はタックスペイヤーの意識を確立する意味でもいいんだという原則的な議論がありますが、まあしかし、今ごろ内税方式へ統一されても、もう消費者は税がかかっているのを知っておるのですから、これはまやかしにすぎないという声の方が強いですね。また外税でなければならぬという業界も物すごく多い。一体、内税方式の統一なんてそう簡単なものなんでしょうか、大蔵大臣
  84. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、その当時は私は大蔵大臣ではないわけですけれども、この税が動き始めた段階におきまして、政府として、あるいは法律として表示方式についての内容を定めたことはないと思っております。しかし、その中で外税というものがある程度主導的な役割を果たしてまいりましたのは、やはりその商品を国民が自分の手元に引き取られる段階で一体幾ら税を負担されたかがわかる方がいいのではないかということと同時に、便乗値上げを防ぐというねらいがあったのではないかと想像いたしております。しかし、今日になりますと、消費者がこれだけ関心をお持ちいただければ、私は、便乗値上げというようなことをほとんど考えなくて済むでありましょうし、そうした中では必ずしもその外税というものにこだわらなければならない状況は変わったのかなという気持ちもしないではありません。  しかし、これは一つは、よく誤解を生みますのは、流通段階まで含めてその表示の問題を論議しておるということではないわけであります。往々にして流通段階から外税でなければ困るとかいろいろな御議論が出るわけでありますけれども、今世間で問題にされておる、恐らく委員が今ここで提起をされておりますのも、最終のお店屋さんの店頭と消費者の間の表示のことでありましょうが、私は、これは消費者がいずれを選ばれ、またそれぞれの業態の中で一番その業態に合うものが何かということで自然に定着していく性格のものではなかろうか。その意味では、総額表示というような考え方、すなわち、その商品を自分が手元に引き取るために幾らお金を支払うかという金額が表示をされながら、その中に含まれる本体価格あるいは税額が同時に表示をされるようなやり方も工夫の中にはあっていいのではないか、そのようなことも思っております。いずれにしても、これは法律で強制すべきことだとは私は考えておりません。
  85. 米沢隆

    米沢委員 それから、非課税品目の拡大というのですね。今度は消費税が導入されて個別物品脱がなくなりましたので、一挙になくなりましたので―――僕は一挙ではない方がいいと言ったのですが、一挙になくなりました。結局ダイヤモンドもおれたちの食う米も水も税率一緒かと言われてちょっと答弁に困りましたね、僕らもいろいろ聞かれて。何でダイヤモンドと私らが飲む水や食料品が同じ税金を払わなければいかぬのですかと。感性的には全然これは答えられない。確かに非課税品目をほとんどなくしたのが今度の消費税、単一税率三%でございますから、やはり低所得者や年金生活者の皆さんは大変負担は重いなという感じがします。そういう意味では、本当に共通の声は、生活必需品ぐらいは税金を取らぬようにしてくれというのが私は本当の声だと思いますね。これは本当に大胆にこれがやれればですよ、大胆にやれれば、かなり拒否反応はなくなるかもしれない、僕もそう思いますね。  しかし、御承知のとおり、何を基準にするかという問題もある。非課税と課税を混在させると末端の税額控除が混乱する。あるいは案分計算までこれはしなければなりませんね、デパートあたりでは。そういうことの複雑さも出てくるというようなことで、これまた非課税品目を生活必需品にまで延ばして大きくしてこたえるということは、確かに国民は喜ぶことだけれども、実際は消費税という仕組みの上からできませんね。もしやるならばインボイス方式にしなければならぬ。そうしたら事業主の皆さんがまた怒り出すだろう。そういうことで、非課税も拡大しますと言っても、実際は本当にぬえ的なことしかできないのではないかと思うのですね。もしこのような生活必需品ぐらいは、それは対象はぴしっと決めなければいけませんが、ぐらいは本当に免除しよう、非課税にしましょうという判断に立たれるならば、消費税の仕組みそのものを本当は変えなければいかぬですね。消費税の仕組みを変えるぐらいの気持ちで、このような非課税の範囲を大きくしようという方向に行くんでしょうか、大蔵大臣
  86. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今政府税制調査会に私どもは御審議をお願いをし、小委員会で見直し作業が進行中であります。その中で、その内容を今私が予測をすることはできませんけれども、我々としては、消費税という仕組みを定着させていきたい、国民に何とか御理解を願いたいということで努力をしておるわけであります。そして、かつて売上税が論議をされましたときに、このときには非課税の品目が多過ぎる、範囲が多過ぎるということで大変おしかりを受けました。またインボイス方式だからけしからぬというおしかりもいただきました。今回その反省の上に立って消費税を構築し、国民に御理解をお願いをしておるわけであります。
  87. 米沢隆

    米沢委員 政府の苦衷のほどもよくわかりますけれども、実際は非常に難しい。もし消費税の仕組みそのものを本当に変えるということならば、これは抜本的な改革になるわけでございまして、まさに我々の言う二年間議論しましょうということにつき合っていい問題だと私は思うのですね。  それから、その他簡易課税の方式だとか免税点の問題点等が言われておりますが、やはりこれは実際はやってみたら政府の設計ミスだということがわかったということですよ。控除率の問題も実際はありましたよね。そういう意味で非常に問題点は幾つでも出てくるけれども、実際どう対応するかということは本当に難しいなというのが今我我の率直な意見でございまして、そういう意味で、消費税の定着を促進したいという気持ちと、実際は国民の皆さんが言う消費税の欠陥を是正するという方向は非常に結びついていかないような結果になっていくのではないのかなということを私は考えます。  それからもう一つ、公共料金の消費税の問題ですね。国が法律を決めて地方自治体にお願いして、こんなにばらばらの対応があることは珍しいですね。ここにもやはり準備が不足だとか合意の形成について時間がかかってないということが私は問われておるんだと思います。八月一日現在で普通会計分で四分の一の市町村が見送っておるという。これは一体どういうことですか。今度の見直しの中では、もう公共料金には消費税をかけない、よく加藤寛先生なんかおっしゃっておりますが、公共料金には消費税をかけない、本体を三%下げて消費税をかける、その分のマイナス分は、だったら国が合理化でやれ、地方自治体は行革でやれ、そんなところまで本当は言ってもらえるのですか。
  88. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 八月一日現在で都道府県、指定都市の使用料、公営企業料金等への消費税の転嫁の状況は、普通会計分で五十八団体中、一部実施のものを含め四十三団体、公営企業については、上水道事業では三十七団体のうち三十一団体、工業用水道事業では四十八団体のうち四十五団体が料金の改定を行っております。  市町村については、都道府県を通じて把握したところでは、一部実施も含め普通会計では約七割、公営企業の水道事業では約八割、下水道事業では約七割、病院事業では約八割の市町村が料金の改定を実施しております。  自治省としては、当然のことながら、新税を定着していただくために、円滑に転嫁するように指導をしてまいりましたが、これは地方自治でありますから、議会もございます。しかし、当然今後も法の趣旨にのっとって、これが完全に実施されるように御協力をいただいてまいる所存でございます。
  89. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私の立場といたしましては、自治大臣が今お述べになりましたように、公平を欠かない状態を早く生み出していただきたいと願っております。
  90. 米沢隆

    米沢委員 お聞きしたいのは、例えば見直しの中で、公共料金等を本体価格を三%下げて、その下げた分は国が負担する、地方自治体が負担するという話も漏れ聞いておるけれども、そんなところまで踏み込んでくれるのですかと今聞いておるのです。
  91. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今まで政府税調、小委員会として、消費者団体を初めさまざまな方々の意見を聴取しておられ、その結果を今、まだヒアリングが続いておるように承知をいたしております。これをどうまとめていただけるのか、そして最終的な御見解をお示しをいただけるか、私としてはそれを待っておるわけであります。
  92. 米沢隆

    米沢委員 時間ももう残り少なくなりましたが、日米関係を一言質問してみたいと思います。  先般の日米首脳会談で訪米されまして、アメリカ大統領とグローバル・パートナーシップというのを重ねて確認されたよし聞いております。特に大変厳しい世界環境の中でのいろいろな諸課題がございますので、それにともに力を合わせて対処していきたいということは、日米関係の発展のためにもいい道筋だと私は思います。  ただしかし、こういうような認識の一致とは裏腹に、最近の日米関係というのは何か異常な状況ですよね。一体これは日本政府として責任はないんだろうか、そういうことをよく感じるのです。異常というよりも、相当危険な状態に立ち至っているのではないかという危惧の念があります。  例えば、例のFSX、次期支援戦闘機の共同開発問題。これはもう既に昨年の十一月政府間で締結されていた取り決めを完全に踏みにじって、またぞろやり直そうと言ってくる。それで日本側は大幅に譲歩して決着せざるを得なかった。幾ら政権が交代したからといって、ブッシュさんが議会に弱いからといって、こんなのは過去余り例のない話ですね。何かもうぎらぎらし始めておるということがこれでよくわかります。  特に問題なのは、アマコスト氏が言っておったことが書いてありましたが、今までは少なくとも防衛と経済は切り離すという論理で来たけれども、ここまで来ればもう経済も防衛も一緒だと、大変危険な発想の議論をしておられるのですね、政府の高官が。こういう意味では、このFSXの共同開発の問題等は非常に異常さを示しておる要因だと思うのですね。  もう一つは、御案内のとおり包括貿易法のスーパー三〇一条。こん棒を持ってきて、おまえは不公平だと決めつける。そして会議をやるから来いとこう言う。言語道断だという気がしますね。ガットはどこに行ったんだという気がしますね。しかし政府は、こん棒を持った会議には入りたくないとおっしゃっておったけれども、ついつい入っていってもう会議を開いておる。これはどういうことですか、こんなのは。  あるいはまた、このごろよくマスコミ等に取り上げられますが、ジェームズ・ファローズ氏の「日本封じ込め論」、オランダのジャーナリスト、バン・フォルファン氏の書いた「日本パワーのなぞ」、まさに日本の特殊論。今まではその特殊論はありましたけれども、そう市民権を得られるほど広がってはなかった。今まさに、日本というのは何ぼ言うてもわからんやつだ、ぶん殴らなければわからんやつだ、だからぶん殴って言うことを聞かせるためには、ちゃんと目標を与えて、これをやれ、これをやれと追いかけていく以外にない、やらなかったらぶったたく、そういう発想の物の考え方がこういう本なんかを通じてわあっと広がっておる。まさに日本に対して非常に理解のある皆さん方がこういう方向に走り始めておるということは、重大な日米関係の危機ではないか。あるいはまた、管理貿易、保護貿易をまっしぐらに走るような問題ではないか。一体こういうものに対して日本の外交は何をやってきたんだ、本当に、こういう世論が育つまでに。  また、アメリカの対日観もかなり変わったと言われますね。これはどこの新聞かわかりませんが、二月の世論調査では、日本とソ連どちらが脅威かと言われて、かつてはカナダに次いで日本は非常に優秀な成績であったのでございますが、今度はレーガンが悪の帝国ソ連と言ったそのソ連よりもぐっと下になって、日本の方が脅威だ、好きでないという世論が醸成されつつある。これもやはり異常ですね。そして日米の構造会議、構造協議というのが始まってきた。  この一連の動きは大変異常な連続だ。そしてスーパー三〇一条の会議に乗っていかれる、日米の構造協議に乗っていかれる。先が思いやられるのですよ、これ。先が思いやられる。特に日米構造会議あたりは、彼らはもう来春には中間報告を出して、それも成果が上がらなければいかぬとおっしゃっておる。こちらの方はそう簡単にいきませんよ、文化にさわる問題ですから、一年ぐらい協議を続けて、できるものからやりましょうという調子だ。最初のボタンのかけ違いで、どういう性格にするかというボタンのかけ違いがあると、結果的には、また来春には、一年先にはまたぞろこういう日米関係が悪化するような状態に発展していくだろう、泥沼になっていくのではないか、そういう感じがしてなりません。  そういう意味で、一体今までこういう状況になったのは、アメリカがこういら立っておるのは、それは彼らなりに、それなりの彼らが反省しなければいかぬことはありますけれども、日本がしなければならぬことを怠って、通産外交でも外務省の外交でも、政局が混乱しておる中に我々は何か忘れたものがあったのではないか、そんな反省があるのか、また、なぜこういうことになったのか、あなた方に責任はないのかということを問いたい。
  93. 松永光

    ○松永国務大臣 委員指摘の中で、私の所管すなわち通商貿易関係の事柄についてお答え申し上げたいと思います。  まず第一の問題、スーパー三〇一条に基づく交渉、これに応じたのではないかという御指摘でございますが、そういったことはございません。我我は制裁を前提とする、そしてガットの精神に反するスーパー三〇一条に基づく交渉は応じないという姿勢はずっと堅持しておるわけであります。これからも堅持してまいります。  ただ、委員も御存じと思いますけれども、この九月にハワイで行われました日米貿易委員会において日米間の貿易の事項が話し合われたわけでありますけれども、その際、総括的な議論を行った際に、アメリカの方で指摘をしておるスパコン、衛星等についての話があったわけでありますが、それは三〇一条に基づく交渉ではないという前提での話になったわけであります。  なお、詳細は、その委員会に出席した通政局長が出ておりますので、必要があればお答えさせます。  次に、通商関係で、御存じのとおり、アメリカの日本に対する要請、大変厳しいものがあるわけでありますが、その背景には何があるのかという御質問でございました。  委員も御存じのとおり、我が国の貿易黒字は四年連続九百億ドルを超すような状況であります。一方、アメリカの貿易赤字は六年連続一千百億ドルないし一千二、三百億ドルを超す、そういう関係であります。そしてアメリカの膨大な貿易赤字の半分近くが日米貿易で起こっておる、そして、その赤字幅の縮小が遅々として進まない、そういったことなどがアメリカのいわばいら立ちの背景にあるのじゃなかろうかな。また、技術の問題についていえば、いろいろな分野で日本の技術がアメリカに追いついてきた、そのことについてのいら立ちもあるのかもしれません。  いずれにせよ、そういったことがありまして日米関係がぎくしゃくしてまいりますと、そして、その結果が自由貿易体制そのものにもひびが入るなどという事態になりますと、事は重大でありますし、日本の将来の発展にとって極めて厳しい状況になりますので、通産省としては何としてでも貿易黒字幅の縮小に向けて最大限努力をしなければならぬ。すなわち、内需拡大、そして輸入拡大策を講ずることによって黒字幅の着実な減少に向けて最大限努力をしなければならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。  また、技術の問題につきましては、日米間の技術協力をさらに進めることによって問題の解決を図ってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  94. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員指摘のとおり、今日の日米関係は、貿易のインバランスをめぐって大変難しい状態になっていることは私も十分存じております。  御案内のように、アメリカは国内の財政では非常な赤字を出しております。この財政を解決するためにグラム・ラドマン法を成立させて、それに沿って、たしか一九九三年だったと思いますが、そこへ向かってアメリカの財政赤字を直していく、こういうことで現在進めております。  一方、貿易の問題につきましては、アメリカとECの間にアメリカ側の赤字貿易が続いておりましたが、これも今年度黒字に転化をいたしました。今通産大臣が御答弁申し上げたとおり、対日貿易におきましては、先月でも日本からのアメリカへの輸出が七十九億ドル、アメリカからの輸入が三十九億ドルでございますから、アメリカのこの通商政策に大きな力を持っておる議会としては、この問題を何としても解決するために全力を挙げるというのがアメリカの関係者の一つの基本的な考え方でございまして、私ども日本といたしましては、今までのこの緊密な、また相互関係の深い日米関係の上に問題がさらに大きくならないように、外務省としては一日も早く日米の信頼が確固たるものになっていくように全力を挙げて努力をいたしたい、このように考えております。
  95. 米沢隆

    米沢委員 あと二分ありますから……。時間がなくなって大変残念ですが、最後に政治改革に関連して一言申し上げたい。  リクルートの教訓を生かすためには、やはり政治改革をまず第一歩から、できるところから始める、そういう意味で、今懸案の政治資金規正法案、公職選挙法案あるいは資産公開法、できれば政治倫理法もつくってもらいたい。合意のできる範囲で我々全力を挙げて早期に成立するように努力をいたしますが、しかし、それだけをやったからといって政治改革はまさに序盤中の序盤ぐらいのことで、実際は本当はまだ奥の深いものがある。  そこで、ぜひ我々は考えてもらいたいと思っておることは、民社党が今政党に対する公費補助制度をつくろうということを提案しています。これはある程度時間がかかるかもしれません。しかし、政治に金がかかる、その金の集め方にいろいろな問題があるとするならば、やはり政治活動を自由にし、それを自由にやれるように、一々金を集めなければいかぬことばっかりが政治家の仕事で、本来の仕事は一割か二割の頭でやるなんということを排除していくことが本当は政治改革だとするならば、やはり安心して仕事ができる、金を集めるために変な物すごいエネルギーをかけて、実際の政治は余りエネルギーがかからぬというこの状態を脱するためには、もうこの段階で政党に対する公費補助制度、いろいろな外国の例がありますよね、そういうものをやはり勉強しながら、もうそういう制度を導入していいんじゃないかな。そうなりますと、企業献金みたいなものも、これはある程度どんどん減らしていくということにもなると思いますね。そして個人献金の道を開く、そういうものが、政治資金の集め方にかかわる一つの問題として、我々は非常に大事な問題ではないかと思っています。そういう点についてひとつ見解を伺いたい。  もう一つ日本というのは政治に対して金を出すという、そういう環境が本当は薄いですね。だから、どこかくれやすいところに行くということになって問題になるわけですから、国民がやはり政治に一円でも出そう、百円でも出そう、千円でも出そう、それを支えていくものが、制度があった方がいい。そういう意味で、やはり個人献金で本当に政治を、だれはばかることなく政治が議論できるようにするためには、個人献金を集めるシステムをつくる。そのためにはやはり個人献金そのものを、大蔵省は渋るかもしれませんが、税額控除ぐらいするような制度でないといかぬと私は思うのですね。  それから、自治大臣に聞きたいのだけれども、今例えば寄附金は国税の場合には所得控除ですわね。ところが地方税にはこれがないんですね。だから一挙に地方税が高くなるという印象が僕らは強いですね。  そういう意味で三つの問題。政党に対する公費補助の問題、それから個人献金を促進させるために税額控除制度をつくれないのか、地方税に寄附金控除ぐらい早くつくったらどうだ、この三つについてそれぞれお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  96. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今御提起になりましたような御論議を含め、政党に対しましての公的助成がさまざまな場面で論議の対象になっておりますことは私もよく存じております。自由民主党の政治改革大綱におきましても、「主として国庫補助を内容とする政党法の検討にはいる。」となっておるわけでございます。この問題は、政治資金のあり方に関連する一つの検討課題でありますが、やはり前提としては、政党法というものがどういう形で取りまとめられるのか、その政党法というものの持つ内容にもよろうかと思っております。我々とすれば、これは財政当局の立場でありますから、国会の御論議また選挙制度審議会を初め各方面においてどういうコンセンサスが生まれてくるのか、その結果の政党法の姿がいかようなものになるのかを見守らせていただきたいと考えております。確かに今所得控除はございますが、税額控除を採用してはおりません。その理由その他につきましては委員よく御承知のとおりであります。しかし、将来その政党法のできました姿、その内容によりまして、これはまた検討すべき課題ではなかろうか、そのように考えております。
  97. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 現行の制度の中でも、選挙でも宣伝カーあるいはポスター、チラシ、人件費等国で支出しておるものがございます。また議会活動でも、立法調査費等国で支出しておるものがございます。より積極的な米沢先生の御提言でございます。これは総理の御指導のもとに勉強をしていかなければならない問題であろう、こう思っております。  税の問題については担当者から答弁させます。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日もいろいろ申し上げましたけれども、私は、ただいまの米沢委員の御指摘の特に公費負担の問題について申し上げますと、政党法というものの前提がどうしても必要ではありますが、しかし、ヨーロッパで行われておるような、例えばドイツの一票ごとに五マルク方式とか、議席の方式とか、あるいはアメリカで行われておりますような秘書の人件費とか、いろいろなものを公費でその大半を負担して政治活動に対して心置きなく行動できるようにしておるという外国の前例等を非常にきょうまで注目をして、研究もしておりますので、党の改革要綱の大勢にも従って、そのような方向に向けてどのようなことをしていったらいいのだろうか、前向きに考え努力をしていきたいと考えております。
  99. 中尾栄一

    中尾委員長 自治省の税務担当として、湯浅税務局長
  100. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 個人住民税におきましては、従来から寄附金控除という制度を原則として置いていないわけでございますけれども、これは御案内のとおり、個人の行う寄附というものが必ずしもその地域の地方団体と直接関係がない、また、この寄附金を受け取る方々と寄附金控除を行う納税地の地方団体とが地域的に異なるというような場合がございまして、相互の応益関係が必ずしも認められないというようなことがございまして、従来から原則としてこの寄附金控除というものを設けていないわけでございます。したがいまして、この個人住民税の基本的な仕組みというものを前堤といたしまして、ただいまお話しの点につきましても慎重に検討していく問題だと思うわけでございます。
  101. 米沢隆

    米沢委員 終わります。
  102. 中尾栄一

    中尾委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  103. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、楢崎弥之助君から関連質疑の申し出があります。米沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。楢崎弥之助君。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はまず、海部総理とは昭和三十五年の同じ年に当選してきた者として、総理就任を祝福をいたしたいと思います。  それはそれとして、直ちに質問に入らしていただきます。  昨年、安倍晋太郎幹事長が、昨年の夏以前のリクルートとのいろんな問題はあるかもしれないが、いや、夏以降です、以降は問題になるが、以前は問題にならない。きのうあなたは、昨年事件が発覚した以前は関係ないとお答えになりました。私は刑事責任よりも政治家の道義的政治的責任はずっと深く幅が広いと思います。たとえ刑事責任に該当しなくても、道義的政治的責任が問われる。まさにロッキード事件のときの灰色高官はそうでありました。その認識は総理と一致しましょうか。
  105. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨年の夏とか事件発覚というのは、同じような意味で私も発言したとおとりいただきたいと思います。  それから、刑事責任というものと政治的道義的な角度からの責任というものはおのずから差があるものである、そのように理解しております。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 差があるということは、政治的道義的責任は幅が広い、そうですねと聞いているんです。それはいいですね。そうであればいいんです。  そこで、御案内のとおり、リクルート事件の刑事的な責任は、刑事責任です、これは昭和六十一年九月ごろのいわゆるリクルートコスモスの未公開株、還流のね、これの譲渡問題が贈収賄罪の対象になっている。そうでしょう。それから、あなたが文部大臣しておったころに関係がございます文部省の高官が十数人、このリクルートとの癒着において責任を問われております。これは去年の夏以前の問題である。政治的道義的責任を持たなくちゃならない政治家がどうして去年の発覚以後は問題だけれども、発覚以前は問題にならないのですか。甘いんじゃないですか、その考えは。役人も問われておるんですよ、発覚以前の問題を。もちろん刑事責任も問われている。既に政治家が二名起訴されている。だから、リクルートのけじめということを考えるときに、去年の夏あるいは発覚以前の問題は、これは何も責任ないんだと言うことは、海部総理としてはおかしいんじゃないですか、政治改革をおっしゃる以上。
  107. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘なさっておる意味が私にはよく受けとめかねるんですけれども、例えばどういうことでしょうか。私どもがいつも言っておりますのは、政治責任とおっしゃいますけれども、それはいろいろな行為があったり、いろいろな事件、疑惑というようなものを想定されるようないろいろな行為があれば、それは刑事責任で追及されるわけであるし、そういったことがなくても、例えば私の政治資金のように、通常のものだと思って受け取っておったが、しかしそれは広く多くの方々から政治資金を受け取ってやってきたわけで、それはたくさんありましたから、党内のけじめ案というのが事件発覚前の通常のものなればということで、そこで一線を引いた。しかし、刑事責任と政治責任とは違うということで、党のけじめ案では、今御指摘になった未公開株というものにかかわった議員の身分については、それはけじめ案の中で対処をしてもらうという方針を当時の党が決定をしておる、それはそれだけ責任が重いというふうに考えます。ただ、それだけの人だけに責任があって党は知らぬというわけじゃなくて、党全体も厳しくこれを受けとめて政治改革に資していかなきゃならぬ、反省の資料にしなければならぬということも、党のけじめ案を発表するときに最初に申し上げておることでございます。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この灰色高官問題については国会の方で話し合うということになっておりますから、それはしばらくおきます。  ただ、政治家の政治的道義的責任というものは、刑事責任よりもはるかに範囲が広い。そうしないと、役人ですら去年の夏以前の問題で責任を問われておるのに、政治家がそれを問われないなんというのは、それはあなた、綱紀粛正なんて言われませんよ、と私は思います。  そこで、総理はリクルート社との関係はいつごろから生じましたか。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 リクルート社との関係は、私の政治資金に関する限りは昭和五十八年ごろからだったと思いますし、それから、私の記憶には全くありませんが、私が総裁就任のころに、昭和五十二年ごろに講演に行ったのじゃないかという御指摘もございました。しかし、古い資料でありますし、私の事務所では調査しようがありませんし、私も講演には気軽に何回でも出歩く方でありますので、どうしてもそこのところはわかりません。そういうことです。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が短うございますから、時間が短いから、答弁を長くされると困るのです。  それで私は、総裁選挙、八月五日、あなたを含めて三人の総裁候補が記者会見されましたね。それを私見ておりました。新聞にも載っております。あなたはそのとき、リクルート社との関係について、今日のような社会問題を起こす会社とはわからなかった、物を頼まれたこともなければ、小人数で会食したこともないとおっしゃいました。それから八月七日ごろだったと思います。夜テレビのインタビューでまた同じようなことをキャスターから聞かれて、私はリクルート社から物を頼まれたこともなければ、してあげたことも絶対にない、こう答えております。さらに、今もちょっとお話が出ました献金問題については、五十八年からとあなたは発表されている。そして千四百四十万。なぜ五十八年ということで区切られたのですか。
  111. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の事務所でわかる限り自主的に調べると、そして公表したのですから、わざと区切ったわけじゃなくて、その前は事務所ではわからないということなのです。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、あなたの事務所でわからなかったかもしれない。いや、私は、私の事務所は私だけですけれども、調べたらあるのですよ。お見せしましょうか、見たことないならば。ちょっとこれ三枚、よろしゅうございますか、総理にお見せして。
  113. 中尾栄一

    中尾委員長 はい。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり日本経済新聞、毎日新聞、あなたの地元の中日新聞、六十一年四月一日の朝刊に、リクルート社が新聞の一ページを使って「就職おめでとう。」という新聞広告を出されておる。そこにお見かけのとおり、あなたは写真入りで、あるいはイラストみたいな形で出されております。これはリクルート社から頼まれて名前を出されたのですか、それともあなたが自発的に寄稿なさったのですか。
  115. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今お示しいただいたこの「就職おめでとう。」というのでありますけれども、おっしゃるとおり、この新聞に新就職者を激励するために出してくれということで、コメントを書いて、そしてこのようなことを出したことを覚えております。新聞に載ったことも思い出しました。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 思い出していただいて助かります。  礼金が出ておるはずです。もしあなたが御存じなかったら、事務所の方で徹底的に調べてください。私はその筋からちゃんと確かめておりますから。大体百万円以上のはずです、一件について。  それから、海部総理は人柄は立派な人だと私は思っていますから、悪気で言っているんじゃないのですよ。特に毎日新聞のところを見てごらんなさい。いいですか、こういうふうに書いてありますよ。真ん中に「先輩たちのメッセージをお贈りします。」と書いてある。その先輩にあなたは入っている。その下のイラストを見てください。「世の中そんなに甘くないからなッ」「わかってます」ともう一人は言っている。「なるべく、こういう先輩と組むべきだぞ、諸君!」、これはまさにリクルート社の商法をシンボライズしていますね。あなたは組むべき相手になっている、あなたの責任じゃないかもしれないが。こういうことで文部大臣としてのあれを使われているんですから、もうリクルートが文部省をどのように毒しているかは御存じのとおりだから、あなたにその気がなくっても非常に利用しているわけです。  それで、私はもう一つ、これも古い話でしょうが、さっきちょっと出ましたけれども、はっきりさしておきたいと思います。講演が、あなたの事務所の発表では、文相時、六十年十二月から六十一年七月、これは中曽根内閣のときの文相のとき、このときに講演をされて百万円礼金をもらわれている。ところが福田内閣の文部大臣のときにあなたは二遍講演されておる。あなたの事務所でわからぬとおっしゃるから、これもお見せしますが、つまり月刊リクルート第百十八号、昭和五十二年九月号にあなたの講演が載っておる。それは五十二年七月五日、名古屋の国際ホテル、第二十九回リクルート・シンポジウム、講演の表題は「今後の教育行政」。同じく月刊リクルート第百二十号、昭和五十二年十一月号、これは五十二年九月二十日、東京パレスホテル、第三十一回リクルート・シンポジウム、講演表題は「高学歴社会における大卒者雇用」であります。  私は、ここで、今まで私もこの事件に告発者の一人としていろいろと東京地検に通いました。大体リクルート商法というのは、リクルートの政官界の工作パターンというのは決まっているのです。決まっている。どういうパターンでやるかというと、まず社内誌に寄稿をお願いする。それから新聞広告にあいさつ文をお願いする。さらに講演を依頼する。そしてそれぞれ謝礼金を払う、あるいは車代として現金を払う。これは百万円以上です。そしてその現金は領収証なしです。そしてその後いわゆる酒食のもてなしをやる。これが常套手段です。あなたと言っているのじゃないですよ。大体今までひっかかった人のです。これをよく頭に入れておってください。こういう形でリクルートは政治家に近づくんですよ。  そこで私は、あの有名な、私もここで初めて、例の小高正志という「大野」の下足番さんが「夜に蠢く政治家たち」という本を出しました。これは昭和五十三年の話ですが、ここにあなた随分出るのですよね。私が調べたところで十数回出られておりますね。それで、覚えていらっしゃらないから記憶を呼び戻していただきたいから言っているのですが、そして特に、はっきり申し上げまして、竹下元総理あるいは安倍晋太郎前幹事長、それにあなた。非常な顧客です。そしてリクルートの江副氏はどの部屋でも出入り自由であります。あなたはお会いになっておるかどうか知りませんよ。これも証人があります。  それから、五十六年の三月三十一日、日本リクルートセンターの銀座G8ビルの竣工式がありましたね。あなた、それに出られましたね。
  117. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今いろいろ資料を見せてもらって記憶を思い起こしておりますけれども、私は何回も方々の講演に行っておりますから、こういうものがあれば、私がここへそのとき行ったんだなということでしょう。  それから百万円もらったとか、それから何とかいう本に出ておった、私が出入りしておった話ですけれども、出入りしたこと自体を否定しませんけれども、あれは出席した人の名前を何かきちっと書いて特定をして出された本でもあるし、また故人の書かれた本でありますが、あそこで同席したとか、あそこでいろいろしたとかいうことは、これは誓ってありません。申し上げておきます。  証人があるとおっしゃるが、証人があったらどうぞひとつ私がどこで会っておったのか、もう少し聞いてください。絶対にありません。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今私は、五十六年三月三十一日の落成式に出られましたかと。十一階であった。そのときには当時の安倍晋太郎、このときは政調会長ですね、それから問題の藤波副幹事長、あなたは広報委員長として出られているのですね。だから、非常に私はリクルートとの関係は浅くないということを言いたいから言っているのですよ。  それから、百万円の問題についても、今あなたの事務所が発表しておるとおり、一回行っただけで、中曽根内閣のときの文部大臣で一回行っただけで百万円もらっていらっしゃるのですよ。昭和五十五年の一月にリクルートセンターが主催したシンポジウムに藤波労働大臣も出られた。このときの講演謝礼金が百万円なんですよ。だから百万円というのは相場なのです。  そこで、総理はおわかりにならないかもしれないが、きょうは覚えてないことも私明らかにしましたから、ぜひ、このとき幾ら謝礼金が出たのか、今までの発表以外にこういう謝金、そのお調べをいただきたいと思います。どうでしょうか。
  119. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、私の事務所でわかる限りのことを調べて、パーティー券から政治献金から、そして講演料もありましたと言うから、それは全部発表しなさい、こう言って出したのでありますから、私はあれがすべてだと思っております。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昔のことは忘れたとおっしゃるから、もう一遍事務所で聞いてくださいと言っているのですよ。それはやはり私も物忘れをよくしますから、確かめてくださいと丁寧に申し上げている。  そこで、リクルート本社のビルの地下一階に、リクルート社が一〇〇%資本を出している子会社、クラブ・パッシーナという飲み屋があります。これは昭和五十七年に開店をしております。ここを仕切っておるのは元日航スチュワーデスのMという方です。これは写真週刊誌にも載ったことがある方です。藤波元労相や森元文部大臣もこの常連です。あなた、行かれたことがあるでしょう。
  121. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私はそういうところへ行ったことはありません。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、証言者があってこれを聞いておるものですから、もしこれは行ったことがなかったら、大下英治という方の「自民党を震撼させた男」この百十七ページにそう載っています。これは私確かめた。だから、もし間違いならば、あなた抗議しなくちゃいけません。本名で出ていますから。  そこで、私が申し上げたいのは、総理、現職の大臣が特定の企業のために協力することあるいは利用されたりすることは厳に慎むべきだと思います。憲法の十五条には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」こうなっているんですから、私はこの精神にも反すると思う。だから、国会議員は国家公務員法の適用は受けないそうでありますけれども、文部省の役人はこういうことで、八十二条でしたか、一部の者に奉仕したということで責任を問われてやめておるわけですよね。それで、しかもあなたが文部大臣のもう最終段階だったと思いますが、問題の高石さんをあなたは次官にしているんですね。しかも、あなたの文部大臣のときに部下の人が大分、今度十数名責任を問われてやめさせられているあるいは懲戒を受けている。だから、監督責任者としてのあなたは、私は相当の責任があろうと思う。こういうものが私はリクルートのけじめではないかと思うのです。私は、そういう点で責任を明確にすることが――それで、そのほか、今差し上げたものの中に、結局頼まれたか自分で自発的に寄稿したか知らないとはおっしゃっているけれども、進んでされることはないと思いますね。そういう寄稿を、あるいは広告文、やはりリクルートから頼まれたんじゃないか、だからしてあげたんじゃないか。そうすると、私はやはりあなたが八月五日に記者会見で言われた、リクルートから物を頼まれたことはないし、してあげたことはないというこれにちょっとひっかかるんですよね。  それから、これは調べてみていただかぬとわからぬけれども、私の計算では千四百四十万のほかに五百万という金が動いていると推測せざるを得ないんですよ。これは一緒にもう一度申し上げますが、事務所によく相談をされて明確にしていただきたい、このように申し上げておきます。  それから、私はもう一つお聞きしたいことがあるのですが、これはことしの二月十八日の予算委員会で社会党の川崎委員も問題にしましたけれども、世界平和研究所、これはどうされるつもりですか。いわゆる世界平和研究所というのは中曽根さんが六十三年、去年の六月二十八日につくられた。六月二十八日に閣議了解をされて指定団体になっている。指定団体になっているから、外務省や大蔵省や防衛庁や通産省の四省庁から課長クラスの人が出向しているでしょう。そしてこの世界平和研究所は事務所はどこにあるか。これは千代田区の紀尾井町の四の一、フォーラムビルの六階にあります。この六階を区分所有しているのが丸高産業の子会社のマルタカトレーディング。つまり中曽根さんの山王経済研究会の一員、しかも檜木さんという人が会長です。この人はいわゆる住友金属鉱山、あるいは旭化成などの転換社債で株の売買益をたくさん取っておって、税務署に申告漏れしている。しかも中曽根さんの株による資金づくり、仕手と言われている。こういう人のところを世界平和研究所が借りているのですよ。それで、こういう世界平和研究所をつくったって、中曽根さんはあんなふうに謹慎中でしょう。これ以上政府は何のためにあれを援助するのですか、役人までやって。  そこで私は、総理がおかわりになりましたから、この際、政府の指定団体ということを取り消していただきたい。しかとこれをお伺いしておきます。
  123. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私に関する前半のことで、いろいろ言われましたからはっきり申し上げさせていただきますが、私は銀座や新橋のバーやクラブは、御指定になったところに限らず、そんな常連として出入りするようなことは日ごろいたしておりませんので、二人の名前を挙げて本に書いてあるとおっしゃいますけれども、それは事実と反すると思います。  それからもう一つ。私は、事務所において調べられる限りのものは調べて、講演料は本来の意味の政治資金ではないのではないかということも思いましたけれども、そうはいってもあるわけですから、これは正直に出しておけということで出したわけです。それから、五十二年のことは調べても記録も残っておりませんし、わかりませんでした。そういったことで、私はあれがすべてである、こう思って発表しておるのです。なお秘書に聞くことはきちっと聞いてみますけれども、この前半のことだけは私には覚えのないことでございます。  それから、平和研究所の問題については官房長官に答えてもらいます。
  124. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 世界平和研究所は、世界的な視野を持って国際的に開かれた国際問題の研究機関を設立することによりまして、平和で繁栄した世界の実現に寄与しようという考えに基づいてつくられたものと聞いております。  その目的は、安全保障問題を中心に政治経済その他の分野における国際問題について調査研究し、総合的な政策を国の内外に向けて提言し、これらの研究に関する国際交流を促進し、人材の育成を図り、もって世界の繁栄の維持及び強化に寄与することを目的とするとされておりまして、これは非常に公益性の高い団体であるということを認められ、閣議了解して支援することに決めているものでございます。目的は今もそれと変わらず、事業を推進していると聞いておりますので、指定をやめるということは考えておりません。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは全く違いますよ。最初は二百億という資金の用意をしておった、民間から吸い上げる。それが無理になって百億に削った。リクルート事件が起こった、全然集まらない。問題の江副氏からは四十億程度の資金提供を期待しておったけれども、これもだめになった。それで結局、今中曽根さん自身が中心になって、三億五千万円ぐらいしか集めてないはずです。しかもですよ、これは理事長が中曽根さん、もちろんですけれども、金集めの担当者は藤波さんであり、また株をもらった渡辺元官房副長官ですか、そして藤波さんや渡辺さんは理事です。評議員にはNTTの問題の真藤さん、それから諸井さん、公文俊平さん、飯島清さん、牛尾さん、こういう人たちが評議員になっている。つまりリクルートから全部株をもらっている人たちが占めている、幹部を。こういうことをいつまで許すんですか。恥ですよ、これは。それは中曽根さんが個人的にやられる分は勝手ですよ。これを政府が指定団体にして、そして援助をするなんてもってのほかだ。国際的に恥ずかしいです、こういうことは。だから、これはひとつもう一遍、今のようなおざなりの答弁ではなしに、真剣にひとつ総理考えていただけませんか。これはもう指定団体の解除をぜひしていただきたい。
  126. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 基金の集まりぐあいが悪いという話は聞いておりますが、賛助会費その他の収入を積極的に集める努力をしておられると聞いておりますので、政府といたしましては、今後の財団の努力を見守っていきたいというふうに思っております。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 絶対にそれは私どもは許せないと思います。  これで終わります。
  128. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて米沢君、楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、村山富市君。
  129. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、まず諮問委員会と議会の審議のあり方について、ちょっと冒頭にお尋ねしておきたいと思うのです。  これは、私が百十三臨時国会で不公平税制の問題についてお尋ねをしたときに、そのときの宮澤大蔵大臣が、今は諮問委員会に諮問中でありますから見解を述べることは差し控えさせてもらいます、こういう答弁があった。諮問委員会に諮問していることが国会で議論ができない、これはやはり国権の最高機関としての国会の審議のあり方はこれでいいんだろうか、こういうふうに不審に思ったのですが、きのうまた与野党のやりとりを聞いていますと、橋本大蔵大臣が同じような答弁をされていましたね。  私は、やはり諮問をしている立場からすれば、諮問の審議に影響を及ぼすというようなことは配慮をした方がいい、こういう御判断だと思うのだけれども、しかし、そうかといって、この国権の最高機関である国会の中で、そのことを理由に意見が述べられないというのでは、国会の審議は滞るのではないか。  私は、この委員会で答弁されたことが、それは幾らか関係の委員の皆さん方の頭の中に残るかもしれませんけれども、しかし審議会は審議会で、それに拘束されないままに自由に審議をして答申を出す、そうすればいいんではないか、こういうふうに思うんですが、そこらのあり方については、これからもやはりいろいろ関連が起こってくる問題ですから、この際明確にしてもらった方がいいというふうに思いますから、ひとつ見解を承ります。
  130. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 議員の立場でいろいろ御発言をいただき、御議論をいただくということは、これは当然尊重さるべき権利であると私どもは受けとめておりますし、それから、審議会をつくりますというのは、我々が各界の方々のいろいろな御意見を聞いて、そして施策のために尊重させていただいてやっていくというきょうまでのルールに従ってやってきておるものでございますから、そこに諮問をしてお願いをし、答申をいただいたらそれを尊重して反映していこうというときには、余り予断と憶測を持って、お願いした我々の方からそこで審議中の問題について違う議論をどんどん展開していくのはいかがなものかなという、むしろ慎みの気持ちを持ってその審議会の結論が出るのを待っておる、こういう姿勢で対応をいたしておるところでございます。
  131. 村山富市

    ○村山(富)委員 そこで、そういう配慮をされてからの御発言だと私は思うのですね。思うけれども、それでは審議会から答申が出るまでは国会の中では審議ができない、議論ができない、こうなったのでは、これは悪く解釈すれば、次から次に審議会をつくって、そして諮問をして、その答申が出るまではちょっと見解述べられません、こうなったのでは、これは国会は空洞化しますよ。国会の審議ができませんよ。だから、そこらのあり方については、もう少しやはり納得のできるような、きちっとした見解を述べてもらう必要があるのではないか。私は、今後の国会のあり方についてもこれから参考になりますから、この際はっきりしてもらいたいと思うのです。
  132. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、広く国民の皆さんのいろいろなお立場の方の自由な意見を述べていただいて、そしてまた専門的な知識やいろいろな問題等についても専門的な立場での知識を述べてもらう場面もありましょうし、要するにそういったものを参考としながら政策の方向に誤りなきを期していきたいという気持ちがありますから、審議会でいろいろ御議論を願う。予断と憶測で入り込んでしまうのはいけないという問題もあるわけですから、審議会にお任せした以上、その答申を待って、今度は答申を、また出たときには我々の意見といろいろすり合わせながら答申は尊重していろいろ政治を行っていく。だから重要な御意見として承るようにしておるわけであります。
  133. 村山富市

    ○村山(富)委員 それはまことに失礼な話で、それじゃ国会の審議はどうでもいいのか。いや、それは審議会は各国民の声を一生懸命聞いて専門家に議論してもらう。この答申は尊重して行政に移していく、実施に移していく。それでは国会の審議というのは一体どういうような役目を果たすのですか。僕はやはりそうでなくて、それは国会国会の中で、これは国民の声を代表する機関ですよ、やはり。その国会の中では十分審議をしてもらう。それぞれ議論を、意見を言う。その意見も参考になるなら参考にしてもらえばいいじゃないですか。そして審議会は審議会の委員の自由な立場でそれに拘束されないまま議論をして、そして結論を出して答申してもらう。こういう関係にあった方がむしろやはりより多く民主的に反映されていいのではないか、私はそう思いますよ。
  134. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初の答弁のときの冒頭に申し上げましたけれども、国会における議員の皆さんの御議論、御意見というものは尊重すべきものである、これは第一義的なものである、こう申し上げておりますので、私は政府立場として、政府の審議会にお願いしておる者の慎みの心情を申し上げたのですけれども、予断と憶測で、お願いしておいた途中でほかのことを政府でいろいろ言うのはかえっていかがかということを申し上げましたが、その大前提として、国会における議員の皆さんの自由な発言というものはこれは尊重する、当然のことだと最初に申し上げておりますので、どうぞその点は国会軽視しておるとかいろいろそういうふうにおとりにならないようにしていただきたいと思います。
  135. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、これで余り時間をとっても困るのだけれども、そうしますと、それは言葉だけの話であって、諮問委員会に諮問しておる案件については、今審議会で審議をされておりますからここで見解を述べるのは差し控えさしてもらいます、だから国会の審議はできないわけです、その限りにおいては。そうでしょう。そんなことで国会はいいのか、こういうことですから、これはひとつ、これだけで時間をとってもなんですから、できればこの予算委員会中にもっと正確にきちっと御答弁をいただきたいというように思います。
  136. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私の答弁から出ました話でありますから、率直に私の言葉で申し上げたいと思います。  これは村山委員御承知のように、私、厚生大臣当時に、社会保険審議会で論議中の問題を答弁しまして、大変後でおしかりを受けたことがございます。審議会で議論中のものを何だといっておしかりを受けました。そして、時々そうした場合に、ある場合は審議会に諮問をしておきながら何だというおしかりと、両面がございます。  ですから私は、どちらがどちらというようなぎりぎりした話ではなく、国会の御論議に我々もできる限り加えていただく、しかし、やはり諮問した責任者として一定の限界はございます。同時に、国会の御論議は逆に審議会にも当然反映をする。私はこれはどちらがいいとか悪いとかという話よりも、いかに国会の論議が審議会にも反映し、同時に審議会の審議の結果というものが国政の上に生かされていくかということを考えていけばいいのではないかな、今そんな感じで拝聴いたしておりました。
  137. 村山富市

    ○村山(富)委員 今大蔵大臣から答弁がありましたように、国会国会で自由な審議をしていく、それから審議会は審議会で自由な討議をしていく。そういう建前からすれば、お互いに拘束をされない立場で、それはやはり見解があれば見解も述べていただいて十分議論していくというのが当然の話ではないかというように思いますから、これはいずれにいたしましても、先ほどの総理の答弁ではちょっと納得できませんので、ひとつ見解をまとめて、この予算委員会が終わるまでにもう少し皆さんが納得できるような答弁を私はいただきたいというように思うのです。  次の質問に移りますけれども、私は、これから福祉社会の基本的な方向、あり方について、若干総理の見解を聞いておきたいと思うのですけれども、あなたは本会議の答弁の際に、これからの日本の福祉社会は、公的福祉を中心としたヨーロッパ型にするのか、それとも自助型のアメリカをモデルにしていくのか、どちらかを選択せねばならぬ、こういう意味の答弁がございましたね。総理はどういうふうに今お考えですか。
  138. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今私たち考えておりますのは、将来に向かってできる限り手厚く福祉を進めていかなければならないということはこれはもちろんでありますけれども、しかし、このごろ家族を中心にした在宅介護だとかいろいろな角度からの御意見等も出てきております。結局どちらがいい、こちらがいいというのじゃなくて、日本型といいますか、日本の風土、歴史、伝統にふさわしいようなそういった自助努力も含めながら、家族の枠も考えながら、しかし政府としてはどの辺まで手を尽くしていったらいいのだろうか。モデルはヨーロッパ型とアメリカ型がある、こういうことを私は申し上げたわけで、そこのところは、まさに国民の皆さん、与野党の皆さん、国会における御議論の合意を通じて、この辺まで前進させていこう、それではこうしようということになっていく。  ですから、この間うちの福祉ビジョンの御議論を聞いておりましても、そういったお年を召して介護を要する方々に対する対策はこうしたらいい、ああしたらいい、ホームヘルパーの問題とかショートステイの問題とかデイサービスの問題とか、いろいろ御議論になっております。そういったことをここで合意されたならば、それを積み上げながら政府としてはできるだけのことをまたしていく。  だから、二極に分けてしまって、どちらにというよりも、私は、何かこう、合意の上にみんなが理解して納得して進んでいく日本型の福祉というものも考えてもいいのではないか。まさにそれを模索すべきだという気持ちで所信で申し上げた次第でございます。
  139. 村山富市

    ○村山(富)委員 言葉で言えばそういうことも言えるかもしれませんけれども、具体的に今の日本の福祉のあり方というものを検討してみますと、これは数字が明確に示しているのですね。例えば、一九八三年の資料ですけれども、租税と社会保障負担率ですね。これを見ますと、イギリスや西ドイツは五三・三%から五三・五%ですね。フランスが六二・二%、それからスウェーデンは一番高いのですけれども、六八・八%になっていますね。それに比較して日本は三三・九%なんですよ、この八三年には。六十三年になってやっと三八%になっていますね。それで、アメリカが三五・四%なんです。  もう一つ社会保障給付費の対国民所得比の割合を見ますと、イギリスが二五・九%、西ドイツが三〇・九%、フランスが三六・八%、スウェーデンが四三・三%なんですね。これに対して日本は一四%なんですよ。それでアメリカが一七・九%なんですね。日本は一〇%台なんですよ。  この数字で見る限りにおいては、日本の福祉というのはだんだんだんだん好むと好まざるとにかかわらずアメリカ型になりつつあるのですよ、この数字から見ますと。これはもう偽れませんよ。これはどう思いますか、こういう数字を見て。
  140. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 日本の福祉がヨーロッパ型から比べると大変に低い水準にあり、だんだんだんだんアメリカ型に近寄っていくんではないかという御意見でございましたけれども、私たち日本社会の構成は、明治以来ずっと家族社会の伝統の中で生活をしておりましたが、最近の近代化社会に入るに従ってだんだんだんだん所得保障なあるいは医療なり、そういったものが世代間の支えになってきております。そうなってきますというと、どうしても負担をする国民考え方、こういったものとの合意を、新たな合意をつくっていかなければならない。長い長い伝統の中から新しい時代に向かっての合意をつくっている非常に大事な時期にあると思いますが、これからは日本の水準というものも、やはりヨーロッパ型のような高いものではなくても、それに近い水準といいますか、そういったことを求めていかなければいけません。しかし、国民の中には、やはり同時に行革の答申等もありまして、やはりヨーロッパ型との間にはまだまだ大きな開きがあります。  そしてまた、そういう中で在宅福祉というようなものを求めながら、負担とは別にそういった意味でのより豊かな高齢化社会をつくっていきたい。高齢化社会というものをはたから見るというと、やはり負担する若い世代から見るというと、どうしても高齢者が豊かな生活をしていればやはりそういったものに希望を持つし、すなわちお年寄りの生活というものが若い者にも夢を与えていくような仕組みにしていかなければならない、かように思うわけであります。
  141. 村山富市

    ○村山(富)委員 僕はいろいろな中身を聞いているのじゃなくて、この数字から見る限りにおいては、だんだん日本の福祉というのは自助型になりつつあるではないか、これははっきりしていますから数字は。こういうことを言っているわけです。これはもう間違いのない数字ですからね。  そこで、次にお尋ねしたいのですけれども、十月の五日の参議院の本会議社会党の安恒議員がこういう質問をしているのですね。一九八二年七月の臨調答申は日本の租税、社会保障負担率について五〇%よりかなり低位にとどめる必要がある、その理由は一体那辺にあるのかというような質問をしたときに、総理は、国民の活力を維持する必要があるというふうに答弁されておるみたいですね。これは、既に西欧諸国なんかは、先ほども数字を挙げましたけれども、北欧諸国が七〇%に近い水準にある。それからイギリス、西ドイツも五三%から五四%と高い水準にあるわけですけれども、こういう社会を活力のない社会というふうにごらんになりますか、どうですか。
  142. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 高福祉高負担の国がどのようなことになっておるかというレポートとか本なんかを私なりにいろいろ読ませていただいたり、またそれらの国を見せていただいたときに、一人一人の人々が幸せに豊かに暮らしていらっしゃるということ、それは認めます。けれども、活力という点からいくと、これは私が率直に申し上げるのですけれども、余りそういった方の負担が高くなってしまうと何か活力がなくなるのじゃないか、私がそういう印象を受けて帰ってきたことも事実でありますし、やはりある程度はそこのところのバランスを考えていかなきゃならぬなと、こんなことを感じましたので、私の気持ちを率直に申し上げた次第でございます。
  143. 村山富市

    ○村山(富)委員 今総理が言われたような意見を持っている方もあろうかと思うのですね。これまでよくこういう言葉が言われていましたね。例えば英国病とか、それからスウェーデン病とか、それから先進国病とか、こういう言葉が使われておるのですけれども、社会保障が経済成長を阻害するというふうに考えておる意見もあるのですけれども、こうした何といいますか、社会保障と経済成長との関係あるいは国民の暮らしとの関係等について、経済企画庁長官はどういう見解をお持ちですか。
  144. 高原須美子

    ○高原国務大臣 委員おっしゃいますように、これからの高齢化社会を迎えまして、長生きしてよかったと言えるような長寿・福祉社会ができてくれれば本当にいいなということで、これは大変重要な課題だと思っております。  それで、御指摘のように、社会保障が高くなりまして高福祉になると、経済活力、経済成長との間にどんな関係があるかということがいつも問題になるわけですけれども、その場合、やはり高福祉の中身というものをある程度お教えいただかないと具体的に申し上げられない、一概には申し上げられないと思うのです。  ただ一般論として申し上げますと、福祉水準というのが適切な負担に支えられているときにはよろしいと思うのですけれども、やはり負担をするのは後代、つまり現役世代の働く社会が負担するわけでございますので、その負担能力の限度を大きく超えるようになりますと、やはり働く意欲も落ちますし、経済活力も落ちるのではないかというふうに思います。経済活力に影響はやはりあるという心配を私自身は持っております。  そういうことで、政府といたしましては、先ほど総理がおっしゃいましたように日本型福祉ということで、これは経済計画にも掲げておりまして、そういう日本型福祉と経済活力を両立させながら、長生きしてよかったという長寿・福祉社会をつくり上げていきたいというふうに思っております。
  145. 村山富市

    ○村山(富)委員 何かわかったようなわからぬような答弁だけれどもね。それはやはりいろいろな意見があるから、その意見をやはり踏まえて、バランスのとれたような答弁をしているわけですよね。それはそのとおりだと思いますがね。  ただ、これまでの日本における社会保障の足取りを振り返ってみますと、例えば一九六〇年代に出されました厚生省の厚生白書、これには「福祉国家への道」という副題がついているのですけれども、社会保障が経済成長を阻害するという主張に対して堂々と反論しているわけです。すなわち、社会保障は経済の安定を通じてその成長に寄与すると、こう書いてあるわけですよ。社会福祉は経済成長に寄与している。さらに勤労意欲を阻害する、今さっきちょっと発言がありましたけれども、という主張に対してこれまた反論しているわけです。すなわち、社会保障の充実は、生活の不安定感の除去によって、安定した勤労をもたらし、労働の生産性向上に寄与する、こう言っているのですよ。  それで、もっと的確に決定的な文章もあるわけです。それは、社会保障政策と経済政策の優位性を、このような角度からのみ判断することが既に誤りを犯している、もともと福祉国家における社会保障の実施は、基本的には、社会連帯と生存権尊重の思想から要請されるものであり、その要請は、いわば実利的判断を超越した絶対的なものである、こう述べているのですよ。これは政府が発行した厚生白書ですよ。この見解と今まで総理が述べられたあなたの見解とどうですか。
  146. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 社会保険の保険料が、高福祉高負担でもう負担にたえ切れないように高くなってしまうということは、率直に言ってよくないことだ、それは活力を失わせる、やる気を失わせる一つの原因にもなるんではないかと、私はこう考えております。
  147. 村山富市

    ○村山(富)委員 それは古い古いという話がありましたけれども、一九七三年度の厚生白書も「転機に立つ社会保障」という副題で高福祉社会の実現ということを目標にうたっているのですよ。  私が振り返ってみますと、これまでは福祉はずっと前向きに進んでおったわけです。こういう考え方で進んでおった。ところが、一方では、逆に国民の自立自助と相互扶助を強調し始めたのは一九七五年当時からなんです。そして、これを決定的にしたのは中曽根内閣が出現してからだ。これから、がっと変わってくるのです。  こういう経過を振り返ってまいりますと、私はやはりこれからの社会保障、社会福祉のあり方が若干気になるわけですよ、こういう傾向から推察しますと。だんだんだんだんその傾向が強まっていくんではないかという心配があるわけです。  そこで、我が国の、今私が申し上げましたようなものを実証するために数字を挙げて傾向を見てみますと、我が国の租税、社会保障負担のここ二、三年の動向について見てまいりますと、租税負担率は二七・四%、二七・四%、二七・三%と大体横ばいなんです、いいですか、租税の負担率は。社会保障負担率は一一・〇%、一一・一%、一一・五%とだんだんこう上がるわけです。で、ここが一番問題なんですけれども、全体として租税負担率は横ばいであっても、そのうち社会保障関係の国庫負担分は四・三、四・一、四・〇、だんだんだんだん落ちてきているわけですよ。こういう傾向にあるんですよ。この傾向がどこまで続くのかという心配があるわけですよ。  そこで、私は、こういう傾向に対して、これはひとつ大蔵大臣、どういう御見解を持っておりますか。
  148. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今私も過去を振り返りながら考えて、なるほど確かに厚生白書に御指摘のような記載の続いていた時代があったな、改めて思い起こしております。  ただ、委員に改めて申し上げるまでもなく、よく御承知のことでありますけれども、我が国の高齢化というものが現実の問題としてとらえられるようになりましたのは、殊に国民の間で心配をされるようになりましたのは、まだそう日がたっておりません。同時に、人口構造の上では若い国と言われた時代がつい最近まで続いておりました。その人口構造の若い国と言われておりました時代から今日に至るまでのカーブは、欧米諸国に例を見ない急角度に変化をしているものであります。そのカーブと今お挙げになりました厚生白書の記述あるいは数字を当てはめていただきますと、私はそれなりの方向が一つ出てくるのではないかと思っております。  もう一つ、私が御指摘を申し上げたいと思いますのは、先ほど厚生白書で引用になられました昭和四十八年あるいは五十年ごろ、このころには一般的に国民の中においては世代間同居というものがいわば当たり前の姿であり、その上に社会保障とか福祉行政というものが組み立てられていた時代であります。しかし、そのころから核家族化というような言葉がしきりに使われるようになり、またニューファミリーというような言葉も使われるようになり、世代間同居をむしろ古い姿とするような空気も世の中に出てまいりました。そして、これは住宅政策その他、ほかの要因もございますけれども、その当時に比べますと、今日は相当世代間同居率ほ落ちております。むしろこれからの社会保障とか福祉行政考えてまいります場合に、私はこれは厚生大臣が主管大臣としてお考えになることでありますけれども、所得保障、医療保障、公共福祉サービスのいずれに我が国として重点を置いていくべきであるのか、これは家族構成の変わり等とあわせて考えなければならないことでありましょうし、国の負担の仕方についても、その辺がやはりベースになって検討されるべきものである、そのように考えております。
  149. 村山富市

    ○村山(富)委員 私がこういうことを申し上げましたのは、やはりこれまで、それは客観的な情勢も変わってまいりますから社会保障や福祉のあり方も変わってくることは当然ですよ。しかし、その底に流れておる基本的な考え方が変わってきたんでは、やはり国民は不安に思うし、政治不信を募らせますよね。ですから今までは、今私が白書を読み上げましたような考え方でずっとやってきておる。それが途中から今度は考え方が変わって、そして逆になってくる。こういうことになりますと、それはやはり不安や不信を持つのは当然ですよね。  私は今の国民の声を聞いていますと、それはよく言われますように、日本の国は一番貯蓄率が高いとか、それからここにも世論調査した結果がありますけれども、やはり皆さんは老後に不安を持っているんですよ。安心できるような福祉が本当に保障されるのなら、ある程度の負担は当然じゃないか、してもいいというぐらいの声を持っている人が圧倒的に多いのですよ、世論調査を見ますと。だけれども、問題は、安心できる社会保障がないから不安に思っているのですよ。これを示すのは私はやはり政府の責任ではないかと思うのです。ないですよ、これは今まで。例えばあなた方は、これは後でまた時間があれば申し上げますけれども、消費税の問題が盛んに議論されていますね、これを福祉に充当するとか、こう言っているでしょう。第一、国民の圧倒的多数が反対したやつを強引に押し通しておいて、評判が悪くなったら今度は目先を変えて何とか国民の世論を転回していこうというような気持ちもあるのかもしらぬけれども、突然これは福祉財源に使おうとかなんとかいったって国民は信頼しませんよ。だから、そんなものを考えるのではなくて、私はもう少しまともに、この福祉というものはどういうふうにするんだ、そのためにはこれだけ負担がかかりますよ、どうですかということを明確に示して、国民にも問うて、そして合意を求めてやっていくというようなことをしっかりやったらどうですか。
  150. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 社会保障、福祉行政のベテランである村山委員にあえて私は反論をいたすつもりはありません。しかし、例えば長寿社会に対する考え方、あるいは福祉ビジョンとしてある程度具体的な内容も含めた構想は、政府は何回も提示をさせていただいているはずであります。そしてまた、我々はそうしたものを頭に置きながら考えておりますし、今回の、今引用されました税制改革の中における消費税につきましても、国民の福祉向上に役立てるということは明瞭に言われている内容でありまして、それを逸脱して私どもが物を申し上げておるわけではございません。
  151. 村山富市

    ○村山(富)委員 政府から示されておるのはこれだけですよね。「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」。私はやはり、そのことをもう少し国民の皆さんが理解するように明確に示してそして問うという態度があっていいのではないかというふうに思うのです。  そこで、今大蔵大臣からいろいろ答弁がありましたから、ちょっと関連してお尋ねしますけれども、大蔵大臣、あなたはNHKの討論に出られていましたね。そこでこういう発言をされているのです。「日本人はこれから先、一体、核家族化の道を選ぶのでしょうか、それとも世代間同居の姿を選ぶのでしょうか。このことについてのお答えがなかなかいただけないんです。」これが前提ですね。そして「スウェーデンのように三世代同居が一〇%以下という状態を私たちはつくるのを望ましいと思っていない。できるだけ世代間同居が望ましいと思っている。そうすればスウェーデンのように、こんなに高い税率を掛ける必要はないはずです。私たちはそう思いますし、いわば「中福祉中負担」という形になっていくでしょう。」こういうことも言っておるわけですよ。  これから推測をされますと、世代間同居をすれば余り金がかからない、核家族化を選ぶと金がかかりますよ、どちらを選ぶのですか、こういうふうに聞き取れるのだけれども……。
  152. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私のテレビにおける発言を途中を飛ばしておまとめになりましたようでありますので、今御指摘の部分を正確に申し上げます。  「日本人はこれから先、核家族化の道を選ぶのでしょうか、それとも世代間同居の姿を選ぶのでしょうか。」という問いかけの後、「ちょうど十年前、私は厚生大臣をしておりました。そして、日本型の福祉社会というものは、世代間同居を大切にしていくことによって、ただ単にお金には代えられない民族の心というものを残していける、こうした考え方を強く述べてまいりました。」私が申し上げているのはこういう言い方であります。そして、「今日までも、実は日本人が世代間同居をどうしていくんだろうか、あるいは核家族化の方向に行くんだとすれば、それに対してどうするんだろう、そういう国民的な議論というのがされてないんです。」というのが私が提起した問題であります。安上がりとかどうこうではありません。  仮に世代間同居を続けるといたしましても、その場合には、お年寄りはどうしてもやはり病気をなさりやすいわけでありますから、家計に著しい圧迫をかけないようにとすれば、先ほども申し上げました所得保障、医療保障、公共福祉サービスというものの中で、医療保障の部分には手厚くなければなりません。それでなければ家族崩壊にもつながりかねないのですから。しかし、それだけではなくて、同居であれば、例えば家族に対する、寝たきりのお年寄り介護その他を考えれば、ホームヘルパーその他を増員し、家庭内においてそのお年寄り介護ができる状態を整備しなければなりません。  しかし、同居を選ばないという考え方国民が立つとすれば、その場合に整備すべきは、ホームヘルパー整備ではなく、むしろ入所できる施設整備していき、その施設内における介護というものを考えなければならないという問題提起でありまして、安上がりとかどちらが高くつくとかいうことではない、政策の重点をどこに置けばいいのかという選択の問題であるということであります。
  153. 村山富市

    ○村山(富)委員 まあ、それはあなたは、そういうふうに解明した方があなたのためにはよかったですよ。テレビを見た人はみんなそういうふうに受け取っていますよ。だから、きょうはここであなたがそういう解明をしたので、見ている人は、ああそうだったのかと思うかもしれませんけれどもね。  ただ、世論調査なんか見ましても、やはり同居してできるだけ家族から介護してもらいたい、これは伝統的に、あなたがおっしゃるように日本人の心だと思うのですよ。だけれども、どちらを選択するかといって迫るのは、これはやはり僕は少し問題があると思うのですね。なぜならば、それは、そういう気持ちはあり期待はあっても、今の住宅の事情、それから子供の所得の状況等を考えた場合に、やはりもうこれ以上子供の世話になるのは忍びない、だから私は年をとったら施設に入りたい、こういうふうに希望している人も、これは働いている労働者の人の中には多いのですよ、世論調査を見ますと。それは何も施設に行きたいというのではなくて、今申し上げましたような生活環境の中から、やむを得ずそういう指向を求めているのですね。だから、私はやはり、もし大蔵大臣が今言われたような状況というものを期待しておるのだとするならば、そういうことが実現できるような施策をどんどん講じてやって、そして、住宅もちゃんと確保できるというぐらいにしたらどうですかね。  そして、今は家庭介護なんかたって、介護手当も何もないでしょう。だから、一家の中で寝たきりのお年寄りができたら家族は崩壊しますよ。先ほど質問もありましたけれども、東京なんかじゃ、これはもうサラリーマンは東京じゃ住めませんよ、家族は。全部皆単身赴任じゃないですか。手が届かぬですよ。こういう状況にある中で、どちらかを選択してください、こう言われたって、これは選択のしようがないじゃないですか。私はやはり、そこにもう少し政府の責任を持った立場というものがなければならぬというふうに思うのですよ。この点は、強く私は意見として申し上げておきます。もうそれは答弁はいい。  ですから、私はやはりそういう意味からしますと、住宅やらそれから住宅改善手当やらそれから在宅介護をしている家族に対する介護手当やら、そういうものをやはり十分考えてやっていく必要があるのじゃないかというふうに思うのですが、そういう点に対する見解だけはひとつ答弁してください。
  154. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は実は、村山委員御記憶のように、住宅その他まで含めて、厚生大臣のときから同じ意見を申し述べております。そして、その国民の選ばれる道によって、私は政府としての対応もまた変わってくる、そういうことを申し上げておるわけでありますから、御理解をいただきたいと思います。
  155. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 在宅における家庭状況というのは今大変厳しい状況だと思うのです。そしてそれは、お年寄りを抱えて、そして実際にはそのサービスの仕方もいろいろな意味でまだわからない。そしてそういったようなことをどこに求めていったらいいのか、いろいろ施設はあるけれども、そういった意味での情報もなかなか入ってこない。そういうようなことを、我々はきめ細かくサービスを行き届くようにしていく必要が私はあるだろうと思うのです。これは財政的なものよりも、そういった意味での国民に対する思いやりといいますか、そういうようなものがあることによって、今行われている制度というものがより密接に国民の利便に供することができる、そういうふうに考えております。
  156. 村山富市

    ○村山(富)委員 これはもう大蔵大臣も、今の厚生大臣も十年間一緒に社労でやってきた仲だから、みんな詳しくて何ですけれども。  次に、年金の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、きのうもこの委員会でちょっと発言がございましたけれども、参議院選挙の結果参議院が逆転をして、これはいや応なしに、衆参両院で多数を握ったという形じゃなくて、もう強行採決もできないわけですから、したがって審議を尽くして、話し合いをしながら合意を求めて国会を運営する、こういうふうにならざるを得ないと思うのですね。  そこで私は、そういう国会になるように期待をしながら、私どもは年金法の継続審査になっています案件につきましては積極的に審議を尽くしていく、そして、できるだけ必要があれば話し合いもして合意を求めて、国民の期待にこたえられるような国会にしよう、こういう立場からこれから御質問したいと思うのです。ただ、これは社労の委員会でやればいいことですけれども、しかし内閣全体が責任を持ってもらわなければならぬ立場もありますから、きょうはここでひとつ質問をさしてもらいたいと思うのです。  まず、今度出されています法案の中に、〇・七%の物価スライドをするという案件があるわけですね。改正案が出ているわけです。この物価スライドは、これは従来は本法とは関係なしに特例措置でもってやってきているのですね。なぜなれば、本法の方は、五%以上物仙の変動があった場合に物価スライドをする、こういう規定になっていますからね。したがって、本法とは関係なしに特例措置でやってきているのですよ。ですから私どもは、前の臨時国会のときにこの法案が継続審査になるというときに、予算はもう既に検討しているんだから、これだけ別個に特例でもって措置をすれば直ちに実施ができるではないかというので、議員立法でもって特例措置をやりなさいといって法案を提出したのですよね。これもお預けで継続審査になっているわけですね。私は、これはやはり年金受給者に対する温かい心のないあらわれだというように思うのですが、これは異論がなく各党とも合意ができる案件ですから、直ちにこれはやはり議決ができる問題だというように思うのですが、どうですか。
  157. 水田努

    ○水田政府委員 大臣がお答えになる前に、技術の面についてお答えをさしていただきたいと思います。  再計算時に生活水準の向上や賃金の上昇に合わせまして給付水準を設定しまして、次の再計算期までの間はその年金の給付水準の実質価値を維持しますために毎年度物価スライドを行っているわけでございますが、その毎年度行いました物価スライドに要した給付費の財源は、次回の再計算期において設定されました保険料の中に組み込む、こういうことに相なっておりますので、私どもは、再計算時における法律改正においてはスライドといえども保険料引き上げと切り離して実施することはやはり適切でない、このように考えておりますので、よろしく御理解をお願い申し上げます。
  158. 村山富市

    ○村山(富)委員 それはちょっとおかしいんじゃ ないの。物価スライドというものはそんなこととは関係なしに今までやってきているのですよ。なぜやってきたかといいますと、恩給は賃金にスライドして上がっていきますから、恩給が上がっていくのに年金が上がらぬというのはこれは不公平だというので、物価スライドはずっと今まで特例でやってきたのじゃないですか。ただし、あなたがおっしゃるように、たまたま財政再計算の時期に一緒になったからそれをかみ合わせて扱っただけの話であって、本来は特例でもってやってくる性格のものですよ、これは。ですから、私はこれを切り離して今やれとかなんとか言っているのじゃないのです。これは直ちにこの国会で議決できる、合意できる事項ではないか、どうですかと聞いているのです。どうですか。
  159. 水田努

    ○水田政府委員 恩給の点にだけお答えをさせていただきます。  恩給は全部国庫負担で費用負担いたしますので、再計算と関係のない制度でございますので、その点は御理解をお願いしたいと思います。
  160. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 村山先生の御説もよくわかります。そして一方に、給付改善を待っております大勢の方々もおりますから、そういうような方々のことも考えて、ぜひこれは一括して処理をいただくように御協力をお願いしたいと思います。
  161. 村山富市

    ○村山(富)委員 いやいや、そうするとこの〇・七%については、これは別に異議はないのですね。  それから、今お話もございましたように、財政再計算に基づいて例えば標準報酬の見直しとかそれから定額の見直しとかいろいろすることによって五・三%ですか、給付が改善されるわけですね、上がるわけです。これは十月から実施をする、こういう前提で政府案は出されているわけですね。それを参議院選挙のさなかに自民党の方から、いや四月にさかのぼってやろうということを公約をされておるわけです。そうしますと、これは本来、財政再計算に基づいて十月から実施をするということを前提にしているわけです。今あなたがおっしゃったように、保険料もそういう見合いで引き上げるということの計算の上に立っているわけですね。そして計算をしてまいりますと、十月から実施をするのを四月から繰り上げて実施しますと、大体三千億円くらい金がかかる、そして国庫負担分が約七百億円、そうすると二千三百億円は保険料から払う。そうすると、これは自民党が公約をしたのはいいけれども、国庫負担だけでもって公約したのならいいですよ。しかし、保険料の負担までさせるものを公約したというのはちょっと問題があったのではないか、私はこう思いますけれども、これは今後の厚生年金の財政上の問題に何にも関係ありませんか。
  162. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  釈迦に説法で恐縮でございますが、政府は財政再計算をいたしまして、長期にわたる収支のバランスを図り、その計画にしたがって予算を設定し、法案を提出をいたしているわけでございますが、国権の最高機関である立法府において修正があった場合には、次回の再計算においてその点は調整する以外に方法はないものと、このように考えております。
  163. 村山富市

    ○村山(富)委員 まあ、局長に聞けばそういう答弁しかできぬだろうけれどもね。しかし、それはいずれにしても厳密に再計算をして、そして、後から申しますけれども、保険料も二・二上げるということを前提にして十月から実施をすることによって財政の調整ができる、こういう前提でやっているわけですから、したがって、二千三百億円余計出さなければならぬ、こうなってまいりますと狂いができるのは当然ですよね。だからこれは、むしろやはり自民党の責任で、保険料から賄うのではなくて、この分だけは全部国庫負担をするというぐらいの計らいをしたらどうですか。
  164. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今年金局長が答弁をされましたように、次回の再計算時、十分御相談をさせていただきます。
  165. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは、いずれにいたしましても、この五年ごとの再計算でこれだけ年金が改善をするわけですから、先般も日比谷公会堂で全国から三千人ぐらい集まりまして集会がありまして、厚生大臣も御出席になっておりましたけれども、各党の代表も全部出てあいさつをしておりました。それを聞いておりますと、これはもう全く異口同音に異議はないというお話ですから、これもまた合意できる事項ですから、私は、やはりこの臨時国会でできれば決着をつけて、そういう方方の期待にこたえてやるべきだというふうに思うんですね。  それから、ただこの保険料、さっきから出ていますけれども、これは前回の改定時は、将来の方針を見通して、厚生年金は五年ごとに一・八%引き上げる、それから国民年金は三百円毎年引き上げるということによって足りる、こういう方針をとっておられた。それを今度は、厚生年金は二・二%、それから国民年金は四百円に上げるということになったわけですけれども、その主たる理由は何ですか。
  166. 水田努

    ○水田政府委員 前回の五十九年の再計算は、五十五年の国勢調査の結果、人口問題研究所が五十六年に将来人口推計を策定いたしました、それに基づいて財政再計算を行いました。今回の財政再計算は、六十年の国勢調査の結果に基づきまして六十一年に人口問題研究所が同じく将来人口推計をいたしました。その結果、前回と今回で男女の平均寿命が約三歳程度延びた、このことによって受給者は増大すること、並びに受給期間が長期化することによりまして、ただいま先生の御指摘の数字になった、こういうことでございます。
  167. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは、いずれにしても、この保険料の引き上げが妥当なものであるかどうかということは、おのずから審議をしていけば合意を得られる問題だというふうに思いますから、これはひとつ社労委員会で十分その審議を尽くして何とか合意を得るように努力をしていただく必要があるというふうに思うのです。  ただ、残りますのは、支給開始年齢六十五歳に引き上げですね。これは、政府の案は、平成十年に六十一歳にして、三年ごとに一歳ずつ引き上げて、平成二十二年に六十五歳にする、こういう案なんですね。これは、やはり年金というのは、雇用と年金とはリンクしていなければいかぬ。ですから、仮に六十五歳になって、六十歳で定年でやめられた、この五年間は何で暮らすのか、こういう問題も起こってまいりますし、これは労働省の最近の高齢化に備えての雇用の確保ということで、いろいろな計画を立てて努力もしていますし、救援措置もつくっているわけです。援助措置もつくっているわけですよ。だけれども、私が承知する限りにおいては、まだ今六十歳定年がようやく六〇%ぐらい、五十五歳以上という六十歳までの間でやめていかれる職場というのがまだ一五%ぐらいある。こういう状況からずっと類推してまいりまして、現状、労働省も一生懸命努力をしているようですけれども、しかしなかなか高齢者の雇用の確保は難しい。だから、とてもじゃないけれども平成二十二年の段階に六十五歳まで働く職場が確保されるということは保証の限りではない、私はこういうふうに見ているわけです。これは必要があれば労働大臣の答弁を聞いてもいいのですが、そういう雇用の見通しについてはどうですか。
  168. 福島譲二

    ○福島国務大臣 委員御意見のように、ただいま高齢化社会がすばらしいスピードで進展をいたしております。そして、お年寄りの雇用の場を確保するということは、これは私どもにとっても最も重要な施策の一つとして、重点事項として考えておるところでございます。  しかし、ただいまのところ、私どもの施策の最大のポイントというのは、その中でも、六十歳定年というものをできるだけ完全に定着化させていこうということと、同時に、六十五歳までの継続雇用をこれまた極力推進していこうということを今考えておるわけでございまして、平成年度予算といたしましても、従来に増して今の二点について新しい仕組みをもって全力を尽くしてまいりたいと考えております。  なお、今、支給年齢の引き上げの関連についての御意見でございましたが、私どもといたしましては、冒頭申し上げましたように、高年齢者の方方の雇用の確保というものは、それ自体として何よりも大切なものとして、今のような形で今後とも鋭意取り組んでまいる決意でございます。
  169. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間がないものですから一方的に言わせてもらいますけれども、ヨーロッパなんかは雇用と年金の接続というものを一番重視しているのです。ですから、労働協約なんかで、年金に結びつかない定年退職はあり得ないというようなことをぴしっと決めているのですね、労働協約で。公的な所得保障が、年金ですね、得られる年齢に達したときに初めて企業論理である定年制が可能になる、こういう前提に立って雇用契約が結ばれている。そこまで日本も保障されていればいいですよ。ですから、年金を六十五歳支給開始にするのであれば、六十五歳以下の定年は認めないというぐらいのことを法律できちっと決めるのならそれはいいですよ。だけれども、それは法律で決めるというのはなかなか難しいでしょう。  そこで、私は一つ考え方を述べたいと思うのですが、私はやはり年金の支給開始年齢は六十歳でいい。だけれども、労働の質と本人の健康の状況によっては六十歳までも働けぬ者もあるかもしれない。例えば坑内夫なんかそうですよね。そういう者については、本人の選択で、私はやはり五十五歳から年金をいただきたい、こういう人についてはある程度減額年金を上げたらいいじゃないですか。しかし、六十三歳になったけれども私は健康で幸いに働く職場もある、まだ年金は要りません、こういう人もあるかもしれませんよ。こういう人は六十三歳からプレミアをつけてやったらいいじゃないですか。だから、年金を受給する側のニーズに応じて弾力的に運用していく。そして、政策的に、六十歳を超してもまだ健康ですから、ここに六十歳を超えた方もおられるでしょうけれども、まだまだ隠居する年齢じゃないですよ。だから、これは健康のためにも生きがいのためにも働いた方がいいという人は多いのですよ。ですから、そういう人には積極的に雇用の場を確保してあげる。そして、働く職場が確保されていけば自動的にこの支給開始年齢は引き上げられていく、政策的に誘導していく、こういう方策をとるべきであって、先ほど言いましたように、法律で定年もぴしゃっと決め得るのならそれはそれでいい。だけど、それが決め得なければそういうぐらいの考え方を持ってやったらどうか。在職老齢年金もある。スウェーデンのように部分労働、部分年金制度もある。いろいろ工夫を考えれば方策はあると思うのですよ。そういう工夫と努力をして国民のニーズにこたえていく、これは私はやはりやるべきことではないかというふうに思うのですけれども、それをいきなり法律で決めるというのはおかしいというのが私の意見なんです。  そこで、今まで申し上げましたように、この国会で同意ができて議決ができるもの、議決ができないのはこの支給開始年齢六十五歳です。これは十年先、二十二年先にやろうとする話なんだから、それをことし決めなければならぬものと抱き合わせをしなければ同意できない、これはまたおかしな話で、私は、やはりこの際切り離してぴしゃっとこの国会で決着をつけて、そして国民の期待にこたえるというふうに取り計らっていただきたいということを意見として申し上げておきます。  それから、同時に、これは年金というのは政府は七十年に一元化するという閣議決定を持っているのですよね。ですから、これから年金をどうしていくかということは大きな問題になってきているわけですよ。そういう問題と絡み合わせて支給開始年齢をどうするかということも真剣に考えていいんじゃないですか。そういう扱いをぜひしていただきたい。  そこで私は、これから年金制度の中で一番大きな問題になってくることについて一、二これから申し上げたいと思うのです。  その一つは基礎年金です。特に国民年金もこれは同じですけれども、今市町村の役場に行って聞きますと、国民年金の担当の職員が一番苦労していますよ。何に苦労しているかといいますと、毎月八千円の掛金なんですよ。八千円掛けて四十年掛け続けて六十五歳から月五万五千五百円なんですよ。だから、気の遠くなるような話だ、こういう気持ちもあるし、八千円という掛金はこれから掛け続け切れませんというのでそのままやめてしまうという人がだんだんふえつつある。そういう人を口説いて、そして説得をして検認率を上げなければ厚生省からペナルティーがかけられるというので、一生懸命苦労してやっているんですよ。これが現状なんですね。これは、今国民年金をもらっているのは平均三万円ぐらいですよ、月に。三万円ぐらいの年金で公的年金と言えますか。そうでしょう。私は、やはり国民年金というのは、だんだん所得の低い人はもう掛け得なくなる。所得の高い人は国民年金なんか当てにせずに民間の保険会社の年金に入る。だから、ある意味では国民年金はこのままにしていたら空洞化していくという心配があるのですよ。  厚生省はいろいろ工夫したのでしょう。努力されたのでしょう。今度は各県単位に国民年金基金をつくる、こう言うのです。一口五千円なら五千円で掛けていく。八千円の掛金を掛け得ない人がふえつつあるのに、二階をつくったってそれは五千円の基金には入れませんよ。そうでしょう。金のある人はいい。所得の高い人はいいですよ。だから、そういう仕組みを現状のままつくると、国民年金の中に格差を拡大していくのですよ。そして、ある意味からしますと、やはり国民年金全体が崩壊する心配もありはしないか。だから、ある意味からしますと、基礎年金を導入したのは、財源が安定している被用者年金を取り込んだ方がいいというので基礎年金を導入したのではないかという意見さえあるのですよ、実際に。ですから私はやはりこの国民年金というのは検討する必要がある。  そこで、基礎年金というのはナショナルミニマムとして国が最低全部の国民に保障するという考え方でつくったのですから、これは三分の一の国庫負担でなくて二分の一の国庫負担にふやしていく。そして行く行くは税方式でもって賄うようにして、そして国民年金も所得に応じて二階部分をつくっていく。そうすれば、基礎年金と二階部分の年金ももらえて、国民年金も、農業される方も商売される方も被用者年金と余り変わらないような年金を受給することができる。若干掛金は高いでしょうけれども、それはしようがありません。私はそういう仕組みを真剣に検討していく必要があるのではないかというふうに思うのですが、これはだれに答えてもらえばいいのですか。そういう基礎年金国民年金のあり方について今後どういうふうにお考えになっていますか。
  170. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 基礎年金の法案は、この前の六十年の改正のときに改正されたわけでありまして、そのときに、被用者年金とやはり国民年金を一本のものにして、そして公平を期するために三分の一の国の負担を導入したわけでございますので、さらに今ここで国の負担をふやすというような時期にはまだ来ていないと私どもは思います。  さらに、この基礎年金の上に、被用者年金と同じように今度の改正の中では国民年金の上乗せ部分を御提案申し上げておるわけであります。そういう意味で、この基礎年金の性格というものもそういう意味では変わってくる。こういうふうに被用者年金とまたさらに基準が合わされてくるという意味で新たな期待も生まれてきているわけでありますので、よろしくお願いいたします。
  171. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは厚生大臣もよく承知の上ですから。ですから、大臣就任のときに、これは消費税との絡みがあって言ったのだと思いますけれども、基礎年金は三分の一から二分の一にこれは変えた方がいい、こういう発言もされていましたね。やはり僕は、これは党派を超えて共通して国民のための年金をどうするかということは真剣に議論していいと思うのですよね。そういう意味で、ひとつ大いに意見は意見として申し上げておきますからね。  それから、鉄道共済年金をどう財政調整していくかという問題ですね。これはもう国鉄関係者は大変不安に思っていますよ。私はこれは冒頭に申し上げておきますけれども、公的年金ですからね。公的年金ですから、金がないから支給できませんなんということは絶対できないですよ。そんなことをしたら、ほかの全部の年金は壊れてしまいますよ。これは信頼の上にできているわけですからね。これはちゃんとやはり前提として確認しておく必要がある。  その上で、私は、やはり今の国鉄の、これまでの国鉄の現状を考えた場合、あの戦後の経済復興のときには人も物も全部国鉄が担ったのです。人も要ったのですよ。だから抱え込んだ。道路が整備されてマイカーがふえていく、空港が整備されて客が飛行機に乗っていく。物も人もどんどんとられていったのです。そこで人が余ってきた。それで合理化をやって、そして人を減らしていったのですよ。これは国の政策としてなされたことなのです。だから国に責任がある。国がちゃんと責任を持ちなさい。当然の話です。  そこで、いろいろ苦労したけれども、いよいよ六十五年から三千億円不足する。その不足する財源をどうするかというので、これは気の毒な話ですよ、肩をたたかれて、あんた早くやめたら特別昇給をさせます。特別昇給をしますと年金が上がるのですよ。そういうプレミアをつけて肩をたたいてやめてもらった。やめてもらった人が今計算をし直されて減額されるのです、年金が。既得権を奪われるのですよ。しかも、今現職で働いている国鉄の組合員は掛金が一番高いですよ。これだけOBやら職員に自助努力を押しつけておるのですよ。これは限界です。これ以上はできませんよ。  そこで、あとの残りの金をどうするかという話になるわけです。私はやはり、そういう経過からする国の責任というものを考えた場合に、もう少し国なり、これは清算事業団も同じでしょうけれども清算事業団、それからJR等々がもう少し深刻に受けとめて、そしてもっと努力していく。その上で、もうそこまで頑張っているんだからやむを得ぬじゃないか、まあお互いの話だから協力しようじゃないか、こういう状況をつくっていかない限りは、これは幾ら何でも厚生年金に千百四十億円出してくれと言ったって、直ちにイエスとは言わぬでしょう。言えないと思いますよ、私は。  厚生年金は厚生年金なりに、これだけの積立金があるというのは、やはり脱退した一時金で切られたものもあるし、しかもまだまだ成熟度が低いのですよ。それだけやはり厚生年金は厚生年金なりに努力をして犠牲を払ってきているのですよ。給付も違いますよ、言わしてもらえば。ですから、私はやはりそういう意味における政府の責任、国の責任、それからJR、それから清算事業団等々がもう少し真剣に深刻に受けとめて汗を流すべきだというふうに思うのですが、どうですか。
  172. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 国鉄改革の論議の途中から、鉄道共済の問題は大変深刻な問題として国会でもたびたび論議になりました。そして、その中から今回言われておりますのが、その三千億円という赤字に対しまして、鉄道共済自身の自助努力において千五百五十億円を、そして公的年金二九化の地ならしとしての被用者年金制度間の負担調整により千四百五十億円、これによって対応していくこととして所要の法律案が既に国会に提出をされているわけであります。  国の負担というお話でありますけれども、結局はこれは国民の税金で賄うものになるわけでありまして、どの年金制度も財政事情の厳しい中で自助努力を行い、また各公的年金制度を通じて基礎年金の三分の一に集中して国庫負担を行っておる状況の中で、鉄道共済のみに特別な国の負担を行うということについては、公平性の観点からこれは不適当なことではないかと考えております。  また、JR各社の特別負担ということでありますけれども、国鉄改革の際の論議を思い起こしていただければ、それだけの余力をつけてJR各社をスタートさせておるわけではございません。殊に三島会社のように基金によってその運営を賄っておるところもあるわけでありまして、これはおのずからその限界がございます。また、清算事業団の負担と申しましても、これは処理する債務の増加につながることでありまして、やはり十分な理由があるものでなければ清算事業団の負担とするのは筋違いではなかろうかと私は思います。やはり鉄道共済のこの巨額の赤字に対応していく、そして年金の給付を確保していき、将来の一元化につなげていきますためには、先ほど御異論のありました部分も含めて年金関連各法を今関会において御審議を願い、できるだけ早期に成立をさせていただく必要があるのではないかと考えております。
  173. 村山富市

    ○村山(富)委員 僕は今大臣の答弁と若干違うところがありますのは、国鉄の年金だけに国費を入れることについては公平を欠く、こういう発言でしょう。だけれども、それは国鉄というのは、さっきから言っていますように、それだけ国のために、経済の復興のために役立って働いてきているのですよ。その分はやはり皆さんで若干は見てあげるという気持ちぐらいはあっていいのじゃないか。ヨーロッパなんかでも、それは同じような道をたどっている国鉄があるわけですよ、鉄道があるわけです。そういうものに対してはやはり国の負担で賄っている部分があるわけですから、私はそういう配慮はしていいのじゃないかというように思いますから、これは意見として申し上げておきます。  それから、これはきのう厚生大臣に申し入れをしておきましたけれども、沖縄は日本に復帰をした段階で、厚生年金日本年金と沖縄の年金と若干の格差ができているのですね。その格差はぜひひとつ是正してくれ、こういう要請が大変強いので、厚生大臣にもその旨要請してありますけれども、これはどうでしょうか。
  174. 水田努

    ○水田政府委員 沖縄の方が復帰されました際に不利にならないように、その当時としては最大限の許される範囲での措置を講じたところでございます。  具体的には、中高年齢十五年という経過措置が厚生年金の中にありますが、それを年齢によってさらに四年から十四年に短縮をいたしました。それで、御案内のとおり四年の加入をもって厚生年金のほぼ半分の給付を占める定額部分については二十年の満額年金を支給する、こういう形をとっております。  あと半分の報酬比例部分というのは、これは厚生年金の原則がございまして、自分が加入し保険料を納めた者に対価として支払う、こういう形になっておりますので、この部分について、やはり加入期間が短かった、あるいは賃金水準が低かった、こういうことから、結果的に全体として見ると本土との間に格差があるので、これを何らか改善してほしいということが衆議院の社労においても請願等が採択されているところであり、私ども、どうしたらよいか今真剣に研究をさせていただいている、こういうところでございます。
  175. 村山富市

    ○村山(富)委員 それはぜひ、格差が是正されるように今後もひとつ頑張ってくださいね。  それから最後に、私は消費税と福祉財源の問題についてやりたかったのだけれども、時間がないものですから、これはまた別の機会に譲ることにして、鹿児島の国立病院の移譲の問題をめぐって、これは阿久根市議会が国立病院を医師会立病院に移譲することに議会が決議したわけですね。これに対して住民が反発をして、議会はもはや市民の代表ではないと解散を訴える署名運動を起こして、そして多数の署名を得てリコールが成立をして、これからいよいよ本格的な解散のリコールが始まるわけです。こういう騒動を起こしているのですね。  これは私も、この法案を審議するときに、社労でいろいろ審議をしたわけですけれども、時の斎藤大臣が、その地域の住民の声を無視して強行するようなことはいたしません、こういうお話も聞かされておるわけでありますけれども、こういう住民運動が起こって市議会がリコールされるような状況になっているというのは、私はやはり異常な状態だと思うのですが、これは、これから行う移譲の第一号なんです。この第一号がこういう形でもってやられますと、これから先の移譲問題については、全国的に影響が波及してきますよ。ですから、こんなやり方はやるべきではないと私は思うのですが、どうですか。
  176. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 国立の阿久根病院の問題でありますが、御指摘のとおり昨年、これは昭和六十一年から全体計画が発表されて以来ずっと長い間地元の関係者との協議が続いて、そして今お話がありましたように市議会も合意をし、そして地元の医師会に譲渡された。そして今は、いろいろなトラブルがありましたけれども、順調に進んでいるようであります。しかし、住民から提起されておりますリコールの問題はこれからも続くわけでありますが、特に私たちが気を使って、そういう意味でトラブルがないように指導をしておるところであります。  しかし、さらに問題として我々のところに残っておるのは、職員の問題についてであります。昨日も先生方からいろいろと御指摘がありました。それで、その職員の処遇につきましては、配置転換について十月中に職員の希望を確認して希望がかなえられるように最大限努力をする、そして市町村立病院等への就職希望者については就職のあっせんに努める。なお、退職手当の問題につきましては、これは総務庁と個別にさらに協議をして進めていきたい、かように思っておるわけであります。特に従業員の問題は、これからの生活の問題でありますので、十分努力をしていきたい、かように思っております。
  177. 村山富市

    ○村山(富)委員 いずれにしても、この法案を審議するときの審議の経過もありますし、できるだけやはり地域住民の意見というものを十分くみ上げてそして推進をしていく、やるのならやるということにしていただかないと、こんなトラブルが起こりて、市議会がリコールされるような状況も問題にせずにどんどんやられていくというのではこれは大変な問題ですから、私は、できれば撤回してもらいたいというふうに思います。  ひとつそういう意見も申し上げておきまして、今大臣から答弁がありましたように、職員の扱い等についてはそごのないように十分ひとつやっていただきたいということを強く希望しておきまして、時間が参りましたから質問を終わりますけれども、高齢化社会の問題やら社会保障の確立の問題等については、今までありましたような意見も踏まえて十分ひとつ、これは大蔵大臣も、さっき言いましたように厚生大臣も十分経験をされた方方ですから、この際、この内閣でもってつくり上げるような気持ちで頑張っていただきたいということを心から強く要請をして終わります。
  178. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  179. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、海部総理初め関係閣僚に御質問いたします。  まず、総理はさきの所信表明で、私はさきの参議院通常選挙において示された国民の意思を厳粛に受けとめていますというふうに言われました。まず消費税の問題で聞きたいのですけれども、あの参議院選挙の審判で、あなた方が公約違反で、しかも国会の強行採決で実施した消費税について、国民の同意が得られなかったということはお認めになりますか。
  180. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 さきの参議院選挙において示された国民の意思というものの中に、消費税の問題も確かに含まれておったと思います。しかし、それと同時に、それは消費税の中身よりも今おっしゃったような導入のいきさつについて大変残念なことがあった、それからリクルート事件に端を発した一連の政治不信というものもあった、その他地域に絡まる問題もあったでしょう。いろいろなことを含めて参議院選挙ではあのような審判を受けたのだと私は思い、消費税だけを取り上げて、それが廃止か存続かだけであの選挙が戦われたものだとは私は受けとめておりません。影響があったことは率直に認めております。
  181. 不破哲三

    不破委員 だけだったかどうかというのじゃなしに、消費税について同意が得られなかったかということについて聞いたわけです。そして私たちは、はっきり選挙の結論は廃止だった、これは国民多数の意思だったと思うのです。自民党の中の消費税の導入に大きな役割を果たした金丸元副総理でさえ、あれは消費税のリコールだという発言をされたぐらい、この問題は大きな意味を持ちました。ところが、またあなたのきのうの答弁を聞いていましたら、参議院選挙で争われたのは廃止か存続かだったということも言っていました。それについて審判が下った以上、少なくともこの国民の意思がまず廃止だと受けとめるべきが当然だと思うのですね。そうであるならば、政府がその参議院選挙を経た後の国会に臨み国政に臨むときに、少なくとも廃止を含めて消費税の問題の再検討をするというのが主権者である国民の意思に忠実なゆえんであると私は思うのですけれども、ところがあなた方の態度はそうでない。あなたの所信表明自体が、まず廃止は全く考えていない、廃止という結論を排除した上で、見直しで国民の同意を得ると言っている。一体あなた方が、この参議院選挙での国民の審判に対して、見直しなら同意を得られると言う考え方の根拠はどこにあるのですか。
  182. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 参議院選挙のさなかのいろいろな議論を思い出していただけばわかるように、廃止だけで論争をされたかとか、それから見直しということを申し上げたわけでありまして、きのうも申し上げたように、廃止をして、それがそのままなくなって後そのままだというのではなくて、いろいろな復活、あるいは物品税が戻る、電気ガス税が出てくる、法人税はまたもとへ戻るというようないろいろなこと等を考えて、それをあわせての御議論ではなかったと私は思いますし、また消費税の問題は、私どももいいと思って提案をし、税制改革は必要だと思ってやったのですが、それは消費税を入れただけではなくて、税制改革全体の中で、中堅サラリーマンの負担を軽くするような減税の先行とか、その他いろいろなことをあわせてやったわけでありますし、選挙で争われた論争点はそれだけではない、ほかの問題もたくさんあったわけでありますから、私は国民の皆さんに定着するような見直しをすることによって、税制改革の全体像というものを眺めていただいて御理解をいただきたいと思っておるわけです。
  183. 不破哲三

    不破委員 あなた方が消費税が要ると思って提案したことはだれでも知っているのです。しかし、それが受け入れられなかった。その時点に立って問題を検討するときに、初めから廃止という問題を外してしまって、廃止は絶対にあり得ないのだということで見直しだけを押しつけるというのは、国民の審判に対して余りにも傲岸不遜な態度じゃないかということを私は言っているのです。しかも、見直しでと言うけれども、見直しの中身はもう私は聞きません、ないと言っているのだから。まだあなた方も考えていない。それからまた国民に示されていない。そのあなた方の見直し案が国民の批判に対してこたえるかどうかということを判断する基準を国会にも国民にも示されていない。その段階で、廃止だけは絶対にないということをあなた方が決めて国会に臨んでいること自体が、私は客観的に言って非常に、傲岸不遜という言葉が妥当だと思うのですけれども、謙虚でない、厳粛でない態度だということを指摘せざるを得ないわけであります。  それで、これ以上これを言っても進みませんから中身に進みますけれども、その参議院選挙で国民が消費税に対して不満を持ち、批判を持ち、反対した理由はたくさんあります。逆進性の問題、これはもう明瞭な事実です。それからまた、日常のすべての必需品に毎日毎日税金がかかって、それこそ痛税感で日本じゅう満ち満ちているという問題もあります。それからもう一つ大きな問題としては、諸外国の例を見てもわかるように、消費税という税金、大型間接税という税金、これは一たん導入されたら途方もなく膨れ上がるということが、これはもう世界の各国の通則なんですね。そのことに対する危惧もあります。私はそういう問題すべてを、きょうあなた方が見直し案を持たない中ですべてを言うつもりはありませんが、まず一点について、この税率の問題について最初に絞って伺いたいと思うのです。  ちょっと紹介をしますが、昨年十二日に国会で消費税が強行成立させられたときに、ヨーロッパから朝日新聞の通信員がこういう通信を送ってきました。日本の税率は三%だが、今後もこの水準でとどまり続けるとはだれも考えていない。これはヨーロッパの人たちですね。いずれ自分たちと同じように二けた税率になるものと見ている。消費税は政府にとって当てにしやすい税金であることを熟知しているからだ。つまり、ヨーロッパ各国で消費税を経験して、これは最初は低く導入されても、必ず上がって二けたになるということをどこも経験しているから、共通して、日本で三%でやったがそうなるだろうというようにその日に通信が来ました。それで、三%の税率でさえ約六兆円ですから、これは莫大な重圧を生活に加えているわけですが、将来にわたって三%の税率を変えないということをあなたは約束できますか。
  184. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 既に御承知のように、海部総理は先日の所信表明演説の中におきまして、海部内閣としては消費税の税率を引き上げる考えはないということを明確に申し上げております。  また、消費税の税率は法律に規定されておることでありまして、国会こそが、まさにこの国会こそが税率引き上げについての最大の歯どめとして機能するものと我々は考えております。大変海外からの話を引用されましたけれども、私は、これは国会というものの存在が、それ自体が歯どめであるということだけを申し上げたいと思います。
  185. 不破哲三

    不破委員 二番目のことから言いますと、やはり同じ新聞のある通信は、この連続値上げをしたすべての国が国会での承認を条件としていたということをつけたりにしていた、つまりこれは何の歯どめにもならないということが経験則だということも言われていたということを紹介しておきます。  それから、私の内閣では三%を上げないということは竹下元総理も言いました。しかし、あの約束は四カ月しかもたなかったですね。つまり、自分の内閣で上げないということは、海部内閣が何年続くかということは、私は予言者じゃありませんから予測しませんが、そう何十年も続くわけない。だからつまり、私の内閣で上げないということは、将来に関して約束したことにならないのです。しかも、従来の各内閣、例えば竹下内閣のときに大蔵大臣が二十一世紀までは三%でいくんだという発言をしたら、すぐ大蔵省の官僚が翌々日記者会見をして、あれは違っていたという訂正をして、大蔵大臣自身も国会で訂正答弁をしました。それからまた、宇野首相自身が、高齢化社会を三%で迎える、永久に三%でいくんだという言明を記者会見でしたら、官房副長官が、宇野さんの言う永久という意味は宇野内閣一代という意味だという記者会見をやって訂正をしました。だから、今までどの内閣でも、自分の内閣の先のことを言った者は全部大蔵官僚主導で訂正させられているというのが現状なんであって、私はその実績に立って将来の問題を伺っているわけです。  それからまた、ヨーロッパのことを言いましたが、ヨーロッパ並みという話はいつも出てくるのですね。例えば竹下元首相が十二月に国会で答弁したときに、私の内閣では上げないと言ったときに、将来のことを聞かれて、未来永劫上げないとは言えないと。そのときに、ヨーロッパで付加価値税の税率を引き上げてきた事例にもちゃんと言及しているわけです。  それからまた、三%の税率を決めた山中税調会長が、この決めたときの記者会見で、三%をとめないかと聞かれたときに、これも明確ですが、よその国は一〇%以上二〇%近いのが通例だ、どの税も永久不変のものではない、歯どめを明記して自縄自縛の法律を提出するような不見識なことはできない。このときにもやはりヨーロッパの一〇%、二〇%税率という問題が話題に上っているわけですね。決定者の方から話題に上っているわけです。  だから私は聞くのですが、あなた一代の内閣約束をされても国民は安心できないので、自民党の総裁なんですから、一体自民党が導入したこの税率について、将来ヨーロッパのような一〇%、二〇%に接近するようなことはないのかどうか、そのことについて明確な保証をいただきたいと思うのです。
  186. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、自分が責任を持って自分の言を守れる、そしてまた私の内閣で責任を持ってやっていかれるという限度において発言をしておるわけでありまして、責任を持って三%の税率を上げないと言うのは、総理大臣としては自分の内閣においてということにとどまるべきだと思っております。
  187. 不破哲三

    不破委員 後で言いますが、高齢化社会の議論をするときはすぐ二十一世紀が出てくるのに、この消費税の話をするときには自分の内閣の限度しか物が言えない、そこにあなた方の矛盾があるんですよね。  それで、では角度を変えて言いますが、この消費税の問題あるいは売上税の問題、大型間接税の問題が自民党及び政府で問題になった最初の時期にどういう構想が問題になっていたかを検討してみると、例えば昨年の一月ですが、当時の安倍幹事長は、大型間接税を問題にするときに、現在七対三になっている税の直間比率を五分五分ぐらいにシフトさせないといけないと思っている、これが自民党の大きな構想だということを幹事長当時に発言をしています。  それから、当時の渡辺政調会長は、これは読売国際経済懇話会で、これは外人を主として相手にしたところですが、やはり間接税は、直間比率は将来六対四ぐらいにシフトをしなければいかぬというように言っています。一体これがどれぐらいの間接税の増額になるかという問題ですね。これはちょっと伺いたいのですが、大蔵省でしょうか。今度消費税を導入した時点で直間比率はどれぐらいになっていますか。
  188. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 平成元年予算で申し上げますが、国税の場合、直接税が七二・一%、間接税等が二七・九%でございます。
  189. 不破哲三

    不破委員 それを一つの基準にしますと、七二・一%の直接税というのは三十八兆四千億円余りだと思いますけれども、それを基準にして、例えば渡辺氏が言った六対四のシフトにした場合、どれぐらいの間接税の増加が必要になりますか。
  190. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいま平成元年度ベースで申し上げましたが、この平成元年予算ベースで、現在改革の途中の時点にございますけれども、この改革が完全に行われました場合には、直接税の比率が七〇を切りまして六九%ぐらいになるだろうというように私ども見ております。したがいまして、間接税等の比率が三一%ぐらいになるものと考えております。
  191. 不破哲三

    不破委員 だから、六、四にするには何兆円の増税が必要になるかということです。
  192. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいまの、バランスの問題でございますから、全体の歳入の規模を一定にいたしまして、直接税と間接税の比率を変えるわけでございますから、平成元年度ベースでいいますと、ちょっと計算をさせていただきますけれども、他方が減り他方がふえるという形で総額一定考えてみなければいけない問題だろうというように思います。
  193. 不破哲三

    不破委員 時間の節約上、ちょっと私の計算を言わしてもらいますと、平成元年度、ことしの予算は過渡的ですが、一応それを足がかりにして計算をすると、税の総額が変わらないで、間接税をふやした分だけ直接税を減らすとすると、間接税をあと六兆四千七百億円ふやす必要があるのです、つまり増減税同額ということで。直接税をいじらないで、それで間接税をふやすことで六、四にしようとすると、あと十兆七千八百億円の増税が要るんですよ。だから、真理はその中間にあるだろうと思うので、六兆から十兆の間の増税をしないと渡辺さんの言う六、四シフトにならない。  それから、安倍さんの言う五、五シフトになりますと、さっき言ったような税の総額を変えないで、それで直接税の減った分だけ間接税をふやすというやり方で五、五にした場合には、間接税の増税が十一兆円必要になります。それから、直接税をそのまま据え置いて、それに合うところまで間接税をふやすというやり方で五、五にすると、必要な増税額が二十三兆円になります。後で大蔵省で検討してください。つまり、この場合にも真理は十一兆円と二十三兆円の間ぐらいになる。  今まで政府や自民党のかなり高い地位にある幹部の人たちが消費税を最初に持ち出したときに、五、五だとか六、四だとかが目標だと言ったときの目標を間接税の増額ということにプラスしてみると、今度やった六兆円の消費税導入に加えて、少なくとも六兆円とか十兆円とかそれを超えるような新しい間接税の増税をやらないと五、五とか六、四にならない。そういう目標をあなた方は大きく打ち出しながら、その第一歩として消費税をやったというのが現実の事実なんですね。ですから私は伺っておるわけですが、もう一つ聞きます。  売上税が導入されたときに、その前に政府税調が答申を出しました。その答申の中に、大型間接税が必要だということを挙げた理由の幾つかの一つに、弾力性という問題を挙げていますね。「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になる」というのがこの税制の利点だ。この「弾力的な対応」とはどういう意味ですか。
  194. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 消費税の弾力的措置のお話でございます……(不破委員政府税調の小倉さんの答申ですよ」と呼ぶ)売上税のときでございますね。
  195. 不破哲三

    不破委員 そうです。名前はついていませんでしたが、答申には。八六年十月の答申です。小倉さんの答申です。
  196. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 今度の弾力的運営ではなくて……
  197. 中尾栄一

    中尾委員長 売上税のときの弾力的運用の問題。
  198. 不破哲三

    不破委員 「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になる」のがこの税制の特徴だと書いてありますね。
  199. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 突然のお尋ねでございまして、ちょっと確認さしていただきたいと存じます。先ほどの御質問とちょっと、計算をしておりましたものですから、申しわけございませんが、ちょっと確認をさしていただきたいと思います。
  200. 不破哲三

    不破委員 しかし、これは今度売上税、消費税という問題が連続して問題になってきた根底にあるのが小倉税調の答申なんですね。そのときに大型間接税を導入する理由が挙げられて、それの結びが、今言ったように「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になる」、つまり将来の財政上の需要が大きくなれば、税率を引き上げるといえば弾力的に引き上げられる。もっと大きくなればもっと引き上げられる。要するに、弾力というのはゴムのことですから、ゴムのように幾らでも伸ばせるのがこの税制の特徴だということを明確に答申して、その答申を受けて売上税が出され、それを換骨奪胎した形で消費税を出された、こういうことがあるわけですね。それで、違っていれば後で答弁してくれればいいのですが、そういうものですから、私はこの消費税という大型間接税を導入した以上、これが将来どうなるのかということについて国民に物を言わないで、それの是非を論じさせるわけにいかないと思うのですよ。  しかも、あなた方はこの税制について二十一世紀を展望しての税制だとかよく言われる。それからまた、将来の社会設計に不可欠な税制だとも言う。二十一世紀を展望したらこういう税制がなければ安定財源にならないんだと言う。そういうことを言いながら、二十一世紀どころか数年先のこともわからぬ。まあ、いつおやめになるか知りませんけれども、私が内閣総理でいる間だけの保証しかないというのでは、まさに国民にとっては、言葉は悪いけれども、目先のことだけといいますか、海部内閣のときだけのことを考えて入れてみたらえらいことになったと後でほぞをかむことになること間違いないというように思うわけですね。  ですから私は、見直し見直しと言うけれども、あなた方の見直しは何かにおいだけかがせて中身はさっぱりわからない。本当にこのごろは思い切ったのか大幅か、そういうこともだんだんわからなくなっているようですけれども、要するに、ごく部分修正をやって存続させるということだけ、もう定着させるということだけが残っている。定着のためにはいろいろな見直しもやるのでしょうが、定着させさえしたらいいという態度ですね。この根底には、やはりそういう仕組みを入れてしまえば、後は逆のといいますか、税率引き上げを含む見直しも自由勝手だということが根底にあると思わざるを得ないわけです。  私はさっき冒頭、ヨーロッパの観測のことを言いましたが、ほぼ同じころに日本のマスコミも、これは日本経済新聞ですが、似たようなことを言っていました。「「何よりもまず制度をつくる」のが政府・自民党の本音である。税率を一%上げれば、たちまち二兆円近い税収がころがり込むという魅力は大きい。政府・自民党が消費税率引き上げの誘惑に負ける恐れは十分ある。」今三%ですが、本当にこれが五%になったらあと四兆円の増税、ヨーロッパの最低並みの一〇%になったら十二兆円の増税がかかってくるわけですね。そういう危険のある税制を導入しながら、それを一体将来どうするんだ。一年先、二年先、三年先のことも示さないで、二十一世紀の税制だといって国民の是非を仰げるかということを私はまず言いたいわけであります。それを国民に言わないまま、この税制を当面の見直しだけでどうこうしろと言うんだったら、まるでこれは密室協議とは言いませんが、政治の密室性ここにきわまれりと言わざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  201. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私どもがこの税制を考えましたときに、今御指摘のように、二十一世紀を展望してという、将来に向かって今のままのゆがみやひずみをそのままにしておいたのでは、これは直接税に、しかも中堅のサラリーマンにかかる負担がどんどんふえていって、しかも一昨年ごろまでの新聞の世論調査を見てみますと、税に対する不満の中でいつも一番、二番を争ったのが、高過ぎる、あるいはクロヨン、トーゴーサンという言葉に変わってしまったぐらい定着した不公平ということでございました。だから、この中堅サラリーマンにかかる不公平、偏った税制というものも変えなければならぬ。高過ぎる、諸外国と比べて日本の法人税その他が高い。結果として、ほっておいたら製造業の空洞化という嫌な言葉も活字として出てくるようになってしまった。国際競争力をきちっと持たせなければならぬ。  そこへもってきて、すべての人が広くそして薄くできるだけ社会共通の費用を負担していくというのは、やはり社会を明るくし、連帯の心を持っていくためにも大切なことではないか。しかも、高齢化社会はヨーロッパと違って日本には非常なスピードで近づいてきておることも御承知のとおりであって、これらに対する対応として、年金医療にどれだけの費用をかけなければならぬかということは、先ほど来の御議論で福祉ビジョンの中でも出てきておる。こういったものを負担しなければならぬときに、今のままの税制ではいろいろなゆがみ、ひずみもありますから、所得と資産と消費、そして不公平を是正しながら、中堅サラリーマンの減税は思い切ってやりながら、法人税の減税も考えながら、いろいろなことの中で全体の仕組みの中で消費税は導入いたしましたが、税制全体の改革をやったわけです。  ですから、そのときに当たって、将来の税率の問題ばかりを御議論なさいましたけれども、私は私の内閣の限り三%を変えることはいたしませんと、こう申し上げましたのは、少なくとも将来に向かって私の決意を述べたわけであって、いつどうなるかわからぬとおっしゃいますが、この間私はおかげさまで再選もさしていただきました。私の内閣の続く限りは変えませんし、それから直近の参議院選挙のときもこのことは訴えました。茨城県でもこれを訴えてきました。国民の皆さんは、それならば、思い切って見直すならば、我々の声もよく聞いてやってくれよ。新聞の世論調査を見ましても、見直しをしなさいというお声も随分多くなってきておると私は受けとめさしていただいております。  ですから、税調にもお願いをしてある、党の税調にもお願いしてある、各省庁もいろいろなところで今国民の皆さんの声を聞いておるわけでありますけれども、そういった声を聞きながら御理解と納得のいただくような改革ができるなればどこだろうか、そこはできたら思い切って見直していこう、こう言っておるわけでありますから、どうぞ御理解をいただきたい。
  202. 不破哲三

    不破委員 茨城のことをよく言われますけれども、参議院選挙のときにはあれは消費税の審判だけではないと言い、茨城のことになると見方が賛成を受けたんだと、これは我田引水も甚だし過ぎると思うのですね。しかも茨城では、三年前であなた方は六四%支持があったのですよ。六四%支持があったところで、この前四九%から補選で五一%に、投票率が減った中でふえた。これは自民党のそういう政策に対する批判がそれで少しでも低まったと考えたら大間違いだということだけは言っておきたいと思うのです。  それから私は、税率のことばかりと言いますけれども、まだ質問を始めてから二十分です。これからいろいろ聞くわけですから、税率について明確なお答えが出ないから言っておるわけで、次にあなたの御希望どおり進めさせてもらいます。  それで、私が次に聞きたいのは、例えば橋本さんが新聞に顔入りでしょっちゅう出されている広告でも、消費税は高齢化社会のためだということをしきりに言われています。総理に伺いたいのですが、私は消費税がどうして高齢化社会のためになるのかということがさっぱりわからぬのですがね。わかりやすく簡単に説明してください。――総理に聞いているのですよ。
  203. 中尾栄一

    中尾委員長 尾崎主税局長、大蔵省。先ほどの問題もございますから、答弁を含めましてお願いいたします。
  204. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 おくれまして申しわけございませんでした。お話が進む前にお答えをしておきたいと思います。  先ほどの計算でございますが、六、四のベースにいたしますと六兆四千億ぐらい間接税の方へ直接税から移さなくてはいけません。ただ、先ほど申し上げましたように、実は平成元年度ベースというのはまだ平年度化しておりませんので、特別に税制改正をしなくても二七・九が三一ぐらいまでは上がっていくという要素はございます。  それからもう一つは、昭和六十一年十月の「税制の抜本的見直しについての答申」の中で、間接税改革の、なぜそういう間接税改革をやるかということについてお尋ねでございました。  なぜ間接税改革をやるかということでございますけれども……(不破委員「弾力的の意味を聞いているのですよ、全部言われたら時間がかかりますから」と呼ぶ)いえ、簡単に申し上げますけれども、この答申の言っておりますのは、公平な税負担を確保する観点から税体系における間接税の位置づげに適切に配意することが要請されているということでございまして、こういう要請につきまして、現行の個別間接税制度という基本的枠組みを維持しながらやっていくことには無理がある。したがいまして、枠組みにとらわれず思い切った改革が必要である。こうした観点から諸外国における間接税制度の例や理論的に考え得る諸制度を慎重に検討した結果、現行物品税等にかえて広く消費一般を原則的に課税対象とするというものが最も適切であるというのがポイントでございます。
  205. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 我が国の高齢化のスピードというものが諸外国に比べて極めて急速であることは御承知のとおりであります。例えば八十歳以上の方々の人口の増加の人数というものを考えてみましたとき、昭和三十五年から五十五年までの間は年平均で五万人弱ふえている程度でありました。しかし、昭和六十一年から六十三年、年平均で約十六万人増加をしているわけであります。これだけのピッチで高齢化を進めております。  そうした中におきまして、政府は、長寿社会対策の指針として昭和六十一年の六月に長寿社会大綱を閣議決定をし、昨年の十月「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方目標について」というものを提出をし、二十一世紀の初頭に向けて年金及び医療の水準、福祉サービス目標等、可能な限り具体的に示しながら、その考え方に沿って総合的な推進を図ってまいりました。  このような人口の高齢化が急速な発展をしていく中で、従来の税制をそのままとしていきました場合には、既に非常に不満の高まっておりました勤労所得に対する税負担というものが一層高まり、その結果、重税感、不公平感というものが一層深刻化をする、そして税制のゆがみがさらに拡大をするという事態を招くわけであります。勤労意欲や納税意欲も当然そがれるでありましょう。こうした事態を避けるために、所得課税においての負担の公平を図ると同時に、税体系全体として実質的な負担の公平を図る観点から、所得課税への負担を軽減をし、広く薄く生活規模に応じた負担をしていただく税体系を構築したということであります。  先ほど委員は、国会は歯どめにならないという趣旨の御発言がありました。他国の例を引かれましたことでありますが、私は、日本国会がそれほど権威のないものだとは思っておりません。
  206. 不破哲三

    不破委員 あなたの説明よりも新聞に書いた方がまだわかりやすいですね。この間もよく言われますから、現在、一人のお年寄りを支えている働き手の数は五・九人。海部さんも言われていましたね。しかし、三十年後の私たちの子供たち、孫たちが働き盛りになるころには、働き手二・三人で一人のお年寄りを支えなければいかぬ。これはもうしょっちゅう言われて、私はおどかしの数字だと思うのですね、これは。  それで、実際にこれは人口統計から計算してみると、二十歳から六十四歳までの世代で六十五歳以上のお年寄りの数を割ったんだと思うのですよ。これは、そうなりますから。しかし、六十五歳以上の方が働かないかというと、大臣席にも七人おられますし、それから国会にも勘定してみると二百三十一人の方がいますよ。だからお年寄り、六十五歳以上の方は全部支えられておるんだという観念自体が、これは非常にごまかしの話ですね。それからまた、社会で働かないで支えられているのはお年寄りだけだというのも、これも誤った話で、だって子供たち、教育の年齢にある子供たちはやはり社会全体が支えているということになるわけですね。ですから、私はこの数字には非常に魔術がある。問題をもし数字的に言うのなら、人口の中で一体どれぐらいの人が就業者になっているかということを見るのが一番確実だと思うのです、これは。今お年寄りも、長寿になるに応じて働く方も多い。それから、今まで家庭におられた奥さん方も働いている方も多い。だから、就業者数で人口を割った数を見ないと、本当にその社会の度合いはわからぬのですね。  また質問して長くなると嫌ですから、ちょっと計算したものを言ってみますと、例えばあなた方が言う、現在ですよ、一九八五年の総人口が一億二千百五万人ですよ。就業者数は五千八百七万人ですよ。これは政府統計です。比率は四八%、つまり、四八%の就業者が一億二千百万人の人口を、まあ支えているという言葉が使われるから使いますが、言っていいでしょう。  じゃあ三十年後にはどうなるか。ちょっと統計は、これは二〇一〇年までしか出ていないので就業者数があれしますが、一億三千五百八十二万人というのが政府の推定です、人口。就業者数の推定が六千四百八十万人です。四七・七%ですね。四八・〇%から四七・七%に変わるだけです。人口統計だけは二〇二五年まで出ていますが、一億三千四百六十四万人と若干減るようですが、就業者数は若干増加の傾向が見られています。しかし、二〇一〇年の就業者数で勘定してみても四八・一%。大体一九七〇年から人口の中の就業者数というのは変わっていないんですよ。変わっていないのに、そういう人為的な数字を使って、これからは働く者にたくさんかかって大変だ大変だとおどかして消費税を押しつけようとする。私は、ここのところは根本から考え直してもらわなきゃいけないと思うのです。  それからもう一つ言いますと、要するに所得税その他は働く者にかかっているんだ、これは負担がかかり過ぎるから税制を変えるというのなら、お年寄りの働かない者から税金を取り立てようというのが高齢化社会対策だとなるじゃありませんか。私は、こういう考え方自体が大もとから間違っていて、しかも日本の向かっているという高齢化社会の実態に合わない。そこら辺は初めからちゃんと計算し直して、やはり自民党・政府のこの消費税と高齢化社会との関係いかんということについては、正確な議論をしてもらわないと困ると思うのです。  しかも、私が言いたいのは、ではそういって高齢者社会が来るからどうだどうだと言うんだけれども、その高齢化社会対策はどうなっているかというと、これに対しては確かにビジョンは発表しています。しかし、あのビジョンを見て、一体自分が老後になったときにどういう面倒を見てもらえるんだろうかということがわかる人はまずいないと思いますよ。いろいろな方針も出ています。しかし、現実にはそういうビジョンを肉づけた現実のあなた方の政策の実行の実際というのは、高齢者を優遇するどころか、もう非常に無情冷酷な政治が横行しているということを言わざるを得ないのです。  例えば今から十六年前、田中内閣の時代ですが、福祉元年ということが言われました。あのときに高齢者の医療無料化制度が導入されました。あのときは確かに高齢者の医療は優遇されていました。しかし、今は高齢者の医療の差別が国の大方針になっているんですね。まさに無数の悲劇があるんですが、私、ここに、ことしの五月の東京新聞に相次いでお年寄り医療相談が二つ出ていたので、ちょっと紹介さしてもらいますが、一つはこういう相談です。  体の衰弱が目立って自宅療養していた九十二歳の父が、三日前から起き上がることができなくなりました、それまで往診された医師から、もう自宅は無理だから入院しなさいと言われたので、自宅でできるだけ最期を迎えさせたいと努力したが、やむを得ず入院させることにして近くの病院に電話した。それで、みんな話をして、九十二という年を聞くと全部断ってくる。とうとうどこにも入れなかったという投書です。それに対してこの地域の医療評議会の健康センターの方が答えているのは、「私たちがなんとか手を尽くしてみますが、率直に言って自信はありません。」「老人保健法が大きな障害になっています。」という回答ですよ。  それから、その一週間後に出た医療相談はこういう話です。「まことにうかつなお話ですが、七十歳の夫が病に倒れ、入院療養するはめになって老人をめぐる医療状況が大きく変わったことを、はじめて知りました。」という主婦の方ですね。「病気になったとき、これまでと同じように、なじみの病院に気軽に入院・療養できるものと信じきっていたのが、それは幻想だったことを痛感させられた」「夫は最初、ある総合病院に入院したのですが、二カ月ほどで追い出されてしまいました。これは夫だけのことでなく「老人ならだれでも入院期間を短くされている」とは、ある看護婦さんがささやいてくださった言葉です。いったいどうしてこんなことになったのか」説明してくれ。それに対する回答も、「端的に言えば、それは老人保健制度によるものです。」やむを得ないんだと。  こういう実態が現実に、これは二つの新聞の医療相談ですが、私どもの身近でも本当に六十九歳までと七十歳以上でがらっと医療状況が変わって、もうどんな病気にかかっても安心して病院にかかれないという事態が無数に生まれていて、そして本当にそれでお年寄り自身も、お年寄りを抱えた御家庭も呻吟している。老人保健法施行以後無数にそういうことを見聞きしますが、あなた方は、海部さんはそういう実態を御存じでしょうか。
  207. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今委員指摘の具体的な事例で、老人保健のために医療にかかれなかったという具体的な例については私は聞いておりませんけれども、やはり四十八年の老人医療無料から、その後負担というものが、一部負担が出るようになって、そういったことがやはり無料時代と非常に違ったということなのかもしれませんけれども、その具体的なことを検討さして、調べさしていただきたい、かように思います。
  208. 不破哲三

    不破委員 ちょっと厚生大臣、まだ任期早々なんでお詳しくないんだと思うんですけれども、ちょっと余りにも全く知らないというのは本当に悲しいと思いますね、日本の政治実態として。  私も今度調べて改めて本当に驚いたのですが、老人保健法で老人差別について二つの大きな柱が打ち込まれたわけですよ。つまり、病院で六割以上七十歳以上の老人を入院さしている病院は格下げになるという制度ですね。つまり、ベットの六割以上を老人が占めると、そうするとその病院には診療報酬の方が点数が格下げになって、それで一般病院よりは低い点数しか来なくなる。経営できなくなるわけですね。だから、病院ではできるだけ高齢者を入れたくない。それで、もうぎりぎりになって格下げになったら大変だから、救急病院で駆けつけても年を聞いて断るという例がいっぱいある。  それから、お年寄りだったら、入院するときに何カ月で退院するということを、病状のいかんにかかわらず誓約書を書かされるという例もある。実際に本当にかかれないという例、無数に聞きます。特に公立病院ほどひどいというから、私は締めつけが激しいんだと思うのですね。これが一つですよ。それで、例えば病院の一番基礎になる診療報酬から出る入院医学管理料という点数ですか、これは大体老人病院になると五割から六割台に格下げになりますね。そうなったら大変だからお年寄りを入れない。  私は厚生省に聞きたいんですが、一体そういう点で、お年寄り一定以上抱えたら病院が格下げになるというような制度をやっている国ほかにありますか、公的な医療制度を持っている国で。私は日本だけしかないんじゃないかと思うんだけれども、伺いたいんです。
  209. 黒木武弘

    黒木政府委員 お答えいたします。  我が国の医療制度、委員指摘のようにそんなにひどいものじゃ決してございません。世界に冠たるとは申しませんけれども、これだけの長寿社会を、長生きの国をつくっているわけでございますから、立派な質の高い医療を展開していると思っております。  そこで、老人病院の制度でございますけれども、これは別に格下げとか差別とかいうことではございません。老人特有の慢性疾患に着目して、それなりの診療報酬のあり方、それなりの合理的な診療報酬を定めてお支払いしているわけでございまして、決して差別とか格下げの老人病院制度をつくっているわけではございません。  なお、さらに申し上げますと、私どもは、お年寄りはできるだけ家庭とか地域社会、住みなれた社会でお過ごしになるのがやはり適当であろうということで、病院を望まれたら当然老人病院で結構であるわけでございますけれども、さらに中間施設老人保健施設とかあるいは老人在宅施設を用意しまして、お年寄りの、あるいは体の不自由なお年寄りの、あるいは病気のお年寄りのための総合的な施策の中で展開しているつもりでございます。  外国で老人病院という制度があるかどうかでございますけれども……(不破委員「点数が下がる制度があるかと聞いているんです、老人病院じゃありません」と呼ぶ)それは承知いたしておりません。調べますけれども、老人保健制度自体が我が国特有の制度でございますから、恐らくは諸外国に老人保健制度に基づく老人病院制度というものは、老人保健制度自体が我が国の特有制度でございますから、ないというふうに考えた方がいいかと思います。
  210. 不破哲三

    不破委員 格下げがないなんというのはとんでもないんですよ。医学管理料というのは入院の一番基礎手当ですが、一般病院に老人が入っているときは、最初の一週間は四千六十円、一日来るんですよ、診療報酬が。それが老人病院に格下げされると二千五百十円になるんです。そして、もう一段下の許可外老人病院になると二千二百五十円になるんですよね。五割五分ですよ。そうなったら経営をやっていけないから、みんな老人をできるだけ入れたくないということになるわけで、これが格下げでないなんというのはとんでもない話ですよ。  老人病院という制度はありますよ、外国にも。しかし、老人病院だからといって点数を下げるというような制度は、私は随分調べたけれども、海部さん、サミットに行かれたら聞いてごらんなさい、どこにもありませんよ、一般の公的な医療保険制度のあるところでは。アメリカみたいに健康保険制度がなかったり、公的医療制度のないところは別ですよ。あるところで、そういうものがあるところはどこにもないと思いますよ。  それからもう一つ聞きます。老人、これは一般病院でもそうですが、例えば同じ手当てをやるにしても、七十歳を超えた者と七十歳を超えない者で点数が違ってくるというのはどういう理屈か。例えば点滴をやるでしょう。そうすると、ここの皆さん方で六十九歳以下の方は、点滴を一回やると診療報酬から七百五十円病院に来ることになっているのです。七十歳を超えると二百円になっちゃうんですよね。なぜ、そういうお年寄りなるがゆえに同じ手当てをやっても点数が来ないか。これは枯れ木に水をやるなということの具体化なんだということを言っていた医者がいましたけれども、なぜ同じ点滴をやっても手間のかかる老人には二百円しかやらないのか、どこへ行って聞いてもわかりませんでした。説明してくれませんか。
  211. 黒木武弘

    黒木政府委員 診療報酬の点数にお触れでございますけれども、それはお年寄りに差し上げる給付とかお手当じゃございません。医療機関に対する支払いの仕方の問題でございます。したがいまして、医療機関にどういうふうにその経営を担保するためにお支払いをするかというのが診療報酬でございますけれども、先ほど申しましたように、一般の病院は急性の患者、若い人たちの病気にふさわしいような診療報酬体系をつくりまして、それなりのお支払いをしておる。老人病院は、先ほど申しましたように長期、慢性の疾患が多いわけでございますから、そちらにウエートを置きまして、注射とか点滴の点数を低くして、介護だとかそういうものにウエートを置いた診療報酬の体系ということになっておるわけでございますので、決して私どもは差別とは考えておりません。
  212. 不破哲三

    不破委員 つまり、こういう実態を知らない方が机の上で絵をかいて、それで老人医療の方針書をつくっているからこういう悲劇が起こるのだと思うのですよ。私が言った点滴の例は、一般病院であってもお年寄りになったらそうなるのですよ。だから、ある病院の院長は、これは七十歳以上の患者には事実上点滴注射をするなということだと言われていますよ。それから、一年以上入院された長い重い病気の患者さんですと、お年寄りの場合だったならば、注射や点滴を幾ら一日にやっても、日千円と頭が決まっていて、それ以上は国から来ないという制度になっている。実際に病院にお年寄りをたくさん抱えたら格下げになるという制度と、それからお年寄りに手当てをしたら点数が国から来ないという制度の二つのために、今、日本老人医療というのはめちゃくちゃになっているのですね。それが老人保健法によって決められたことだ。  しかも、今、病院にいるよりも家にいた方がいいんじゃないかというけれども、これは私は論争するのは大変ですから、朝日新聞の最近の社説をちょっと引用してみます。  ヨーロッパでは「往診する医師、広い権限を持った訪問看護婦、訓練されたホームヘルパーなどの人材が十分な数存在し、地域医療システムが整っている」だからそれができる。ところが、今まで日本では「「献身的な家族」の無給労働を前提に在宅医療を進めてきた。」しかし、もうこれは限度で、それができるのは一握りの幸運な人々だけだ。「家族の世話の得られぬ人は、自己決定どころか、安上がりの病院や施設で人権さえ侵される恐れがある。」アメリカでは現実化していると朝日は指摘しています。しかも、在宅医療の前提になる家の広さがないじゃないかということまで指摘しているわけですね。  だから、そういう条件を整えないままシステムを変えて、病院を経営していくためにはお年寄りを病院に入れないようにする、それから病院を経営していくためにはお年寄り医療をできるだけやらないようにする、そして無理やり経済の力で地域や医療の準備のないところへ投げ出すというのがあなた方が老人保健法によって進めてきた今の現実だ。私は、そのことを政府はもっと実態調査して調べるべきだと思うのです。もう本当に各地でそういうことについての無数の報告書がありますよ、厚生大臣は聞いたことがないと言われたけれども。  それからまた、恐らくこの話を聞かれている方方で家族や御親族にお年寄りの病人を抱えておられる方は、本当に老人保健法施行以後、どうやったらいいのかということで悩まれていると思いますよ。そういうことが現実に進みながら、それについてどういう改善をするかの改革案も示さないままで、高齢化社会に備えてこの消費税だ。その話を聞くたびにお年寄りは肩身が狭いと言うのです、自分たちのためにみんなに消費税がかけられると言われていると。私は、この点ではあなた方に、どちらも国際的には全くない例です。日本だけの、まさに世界に冠たると言われているけれども、日本だけの独特の老人差別制度です。私は、そのことを根本的に改めてもらうとともに、高齢化社会対策のために消費税なんだというような言い分は引っ込めてもらいたいと思うのです。  最後にちょっと一つだけこの点で、私も最近感心したので引用させてもらいますと、老人保健法制定当時に、ある病院長がある新聞にこういう投書をしていましたよ。二百七十七のベッドを持っている責任ある病院の長です。この人が老人保健法を読んで、老人保健法全体が示している老人医療に対する明らかな軽視、差別、そして老人の生存権すら否定しかねない基本的考え方に比べれば、自己負担の新設などはかえって小さい問題だ、ある年齢を境にしてこれだけはっきり差別をうたった法律が今までに果たしてあっただろうかということを、二百七十七のベッドを抱えた病院長が警告していましたけれども、まさにそのとおりの事態が起こっている。そういうことを改めることこそ、高齢化社会対策にとって必要なことであって、今のような、それをほっておいて消費税の理屈に使うということは、本当に許しがたいということを私は言いたいと思うのです。
  213. 中尾栄一

    中尾委員長 厚生大臣戸井田三郎君。しっかり答えてください。
  214. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 いろいろとお話を聞きましたけれども、やはり物の見方が変わればこうも変わるのかなということを私たちは痛感いたしました。差別でないものが差別に映ったり、あるいはそういうようなことの事実関係を私たちはこれからよく調べてみようと思います。それで、やはり実際制度の上でそういうような制度はないんだから、そういうようなことが、制度のないようなことをもし行っているというようなことがあれば、それはやはりちゃんとしなければいけませんから、そういう意味で、私は今の不破委員の言われたことに対し、さらに厳しく見てみようと思います。
  215. 不破哲三

    不破委員 制度にないと言われたけれども、明確に制度にあるんですよ。老人の、病院の三つのタイプがあって、そのタイプに応じて点数が決められていて、だから海部さん、これはあなたに直接もう聞かないけれども、よく調べて、こういう現実に制度がつくられているんだと、老人保健法によって。それによって、こういう専門家が医療相談を受けても新聞紙上で言わざるを得ないような実態があるんだということをよく踏まえて対処してもらいたいということをあなたに言っておきたいと思います。
  216. 中尾栄一

    中尾委員長 厚生省、関連して答えなさい。
  217. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健法は、老人福祉法とともに老人のための制度でございます。したがいまして一部負担も、一般の人が一割、二割、三割負担されているところを三%程度の負担で、お年寄りには医療が完全にサービスができるという形をとっておるわけでございます。したがいまして、いろいろと御事例をお挙げになりましたけれども、私たちは、老人のための制度として大事に大事にその制度を運営しているつもりでございます。したがって、調べろと言えば調べますけれども、私どもとしては、そういう老人が不当な差別をこの制度のために、あるいは病院のために、老人病院制度があるために受けていることはないものと確信をいたしております。
  218. 不破哲三

    不破委員 これは確信の問題ではなくて制度の問題であって、私は、政府と庶民と立場が変わればこうも見方が変わるものかというのは、あなた方と同感ですよ。  それで、次へ進みます。  そういうことが一方で言われていながら、昨日、思いやり予算という言葉の是非について議論がありましたが、片方では大変な思いやりが進行しているというのが日本の政治の現実なんですね。私は伺いたいのですが、今在日米軍基地に対して日本政府がどれぐらいの費用を負担していますか、防衛施設庁、伺いたい。
  219. 松本宗和

    松本政府委員 在日米軍の駐留経費を負担しております額でございますが、平成元年度で申しまして、提供施設整備関係、これが歳出ベースで八百九十億でございます。それから労務費の一部負担、これが五百三十二億円。合わせまして千四百二十三億円でございます。
  220. 不破哲三

    不破委員 これに各省庁が出している負担分があるでしょう。これも合わせると、政府からもらいましたから私言いますが、二千八百六十億円負担しているんですよね。厚木の騒音対策費を含めると三千百七十四億円というのが、これが日本政府の在日米軍に対する負担分です。これを在日米軍五万人で割ると、大体一人当たり六百万円ぐらいの負担になるという計算ですね。一体世界のアメリカの同盟国の中で、こんなに米軍基地に対してたくさんの経費を出している国がありますか。
  221. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 駐留米軍に対します接受国の財政支援ぶりを比較いたしますのは、大変難しゅうございます。例えば、ドイツにおきましては米軍だけで二十五万人が駐留しておりますし、それが我が国の国土の三分の二ということでございますけれども、加えてNATO諸国の場合は、駐留米軍ということだけではなくて、西独の場合にはNATO諸国から送られております軍に対しての支援ということがあるし、加えてNATOインフラファンドと申しまして、NATOのためだけの別途のファンドというものがございます。  例えば一九八六年、その年我が国は、今先生が取り上げられました数字で申しますと約二千八百三十九億円ということでございますが、その際、西独はすべてを入れまして二千二百億円。したがいまして、これを二十五万で割りますと、頭当たりは違いますけれども、西独の場合には、我が国の防衛支出がGNPの約一%というときに三%ということでございまして、比較は大変難しゅうございます。
  222. 不破哲三

    不破委員 この比較は、援助を受けているアメリカがどう感じているかが一番いい物差しになると思うのですよ。  アメリカの国防次官補のアーミテージ氏は、去年の二月に、一九八八年度日本日本に駐留する米軍五万五千人を支援して二十五億ドル支出することになっている、これは一人当たり四万五千ドルとなる、これはアメリカが世界じゅうのどこで受けている支援に比べても最も物惜しみしないものであると高い評価を与えています。それから国務次官補のシーグル氏は、注目に値することだが、我々が同盟義務を負っている若干の国で、我我は基地取り決めと引きかえに受け入れ国政府に金を支払っている、これとは対照的に、日本が米軍に実質的に提供している受け入れ国支援計画は、我々がどの国で受けているそれよりも最も気前のよいものである。まさに国防省も国務省も、日本が最も気前がいいということを証明してくれているわけですね。  私も改めて数字を調べて驚いたのですが、八九年度に米軍が太平洋の全基地で基地建設費用として米国政府要求している額が二億七千八百万ドルなんですよ。日本が昨年度、八八年度に米軍の基地建設費用を分担しているのが五億八千六百六十七万ドルですよ。太平洋の全基地に米国自身が支出している二倍を日本は基地建設に使っているのですから、これは気前がいいと言われるのは当たり前だと思うのですね。  しかも、私はここで大事だと思いますのは、そのアメリカで、もっと日本から費用を出させろという議論の中で、アメリカのジレンマを指摘する声があるんです。これだけ金を出させていながら、アメリカの基地についての日本の発言権を抑え過ぎている。例えば、日本の基地を使って外国を攻撃するときに、NATO諸国だったら拒否権がある、日本は事前協議さえすれば勝手に使える。これはアメリカの最近の議会の報告書にあることですよ。日本にとっては米軍は特権を持っているんだから、余り要求するとまずいんじゃないかとか、そういう議論があるくらい、日本は金は出しているけれども基地をアメリカが使う権利と自由を保障しているという点では、まことにこれもまた気前いい国になっているという問題があるんです。  それで、もう一つその基地を勝手に使えるという点で私が重大だと思うのは、これも国会で何遍も問題になっている核の持ち込みの問題です。特にことしは、核の持ち込みの問題では事前協議の規定がありますけれども、この十数年考えてみても、七四年のラロック証言、八一年のライシャワー言明、それから八七年我が党が明らかにしたラスクの機密電報ですね、持ち込み協定の存在を指示した。それから、ことしの五月に明らかになったタイコンデロガの水爆水没事件ですね。それからつい先日の、ミッドウェーの元艦長が、核空母は一度核を空母に載っけたら、もう任務遂行中載っけたままでおろすことはないという言明、さまざまな疑惑がこの間に起きているわけです。  改めて私は海部さんに伺いたいんですけれども、これだけの疑惑が、六〇年の安保で事前協議の取り決めが結ばれたと言われてからこれだけの疑惑がずっと生まれていて、世論調査をすれば日本国民の大多数が核持ち込みの危惧を感じている。そういう事実を前にしても、核は絶対に持ち込まれていないし、持ち込まれなかったと断言できますか。
  223. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 二つの問題に基本的なことを私がお答えさせていただきます。  最初のお尋ねでしたけれども、私は日本の国の今日の平和と安全と発展は、やはり日米安保条約というものに起因するところが非常に大きかったと思っております。この日米安保条約というものは、ほかの国がアメリカと結んでおる条約と違って、日本にとっては極めて幸運なといいますか、バンデンバーグ決議の唯一の例外であったということも御承知のとおりで、こちらの平和と安全は守ってくれるけれども、アメリカが攻撃されたときは日本はアメリカへ守りに行く、そういった義務はない、それは日本の憲法上、日本の政治上当然のことだという極めて幸運な、もっと言葉をかえて言えば日本にとっては極めて都合のいい状況で結ばれて今日まで来ておると思うんです。ですから、アメリカの中にいろいろな議論がございました。今先生は気前がよ過ぎるとおっしゃったけれども、むしろ日本はもっと金を出すべきではないかという声もアメリカにさんざんあったことも御承知のとおりです。けれどもしかし、日本は守るべきいろいろな制約、節度があってきょうまでやってまいりました。ですから、気前がいい、出し過ぎておるとかそういうことじゃなくて、日本とアメリカの信頼関係のもとで日本はでき得る限りのことはしてきたということであります。  それから、二つ目の非核三原則の関連の問題ですけれども、私は、あれはきちっと守られてきておると信じております。そうして、事前協議の制度が日米安保条約にもございます。事前協議は、されたときには非核三原則の原則をきちっと貫いてこちらは拒否をいたします。ですから、信頼関係の上に立ってのこの日米安保条約ですから、私は事前協議がなかった限りは、それは全くなかったんだということを疑いを持たないで信じております。同時に、そういうふうに運営されてきたと思っております。
  224. 不破哲三

    不破委員 具体的なことで一つだけ聞きます。  タイコンデロガの事件が六五年にあったことがわかりましたね。あのときに、十二月五日に水爆を沖縄の仲におっことした、これはもう明白な事実です。それで、このタイコンデロガが十二月の七日に横須賀に入港して四日間停泊したということも航海日誌で明らかになっています。だから、あのタイコンデロガは水爆を落とさなかったらそのまま多分、少なくとも落とした一個に関してはですよ、そのまま横須賀に入ってきているはずなんですね。あのことに関して、タイコンデロガの核を積んでの入港に関して、日本に事前協議の申し入れはありましたか。
  225. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 仰せのとおり、一九七五年十二月五日に……(不破委員「六五年ですよ」と呼ぶ)一九六五年十二月の五日にタイコンデロガから事故で飛行機と一緒に滑り落ちたということがございます。どういう状況のもとで滑り落ちたか、訓練のために出発するところだったとかいうようないろいろなことが言われておりますが、その後十二月七日から横須賀に入ったという話はございますけれども、いまだそれは確認されておりません。  大切なことは、先ほどまさに総理が仰せられたとおりに、事前協議が行われない限り、核が持ち込まれます際には、艦船によるものをも含めて、これは事前協議の対象になるわけでありまして、これがその主題になった場合には、ノーと言うことは米国の最高首脳を含めて十分承知しているわけでありまして、その辺についての疑いはないということでございます。
  226. 不破哲三

    不破委員 おかしいんじゃないですか。十二月の五日におっことしたのですよ。それは沖縄から、沖縄の沖を通って横須賀に向かっていたのですよ。おっことしたのはたまたまのことであって、そのまま行けば横須賀に入っているわけでしょう。そのタイコンデロガが核を積んだまま横須賀に入るとすれば、これは海部総理の言うとおりだとすれば日米間で起きる最初の問題であって、大問題ですよね、このまま入っていいかどうかということは。それについて何の事前協議の申し入れもなかったというのなら、それでしかもまだ政府は確認してないのですか、タイコンデロガが横須賀に入ったかどうかは。それさえも日本にいまだに知らせないというのだったら、もう核を積んでいようがいまいが、アメリカの空母は日本の港勝手自由ということじゃないですか。
  227. 中山太郎

    ○中山国務大臣 一国の安全保障に関する条約を立場考えますと、相手国の相互信頼という以外に安全保障条約を維持していく原点はないものと考えておりまして、そういう意味から私どもは、アメリカ政府も日米安全保障条約の事前協議というものについては確認をいたしております。
  228. 不破哲三

    不破委員 自民党政府のこの問題は宗教みたいなものでして、現実にこういう事実があってもアメリカに質問もしない。目の前に核があっても、これは核ではないと信じるかもしれません、あなた方その態度だったら。だから私は、そういう事実一つずつについて、やはり非核三原則を本当に守るというのだったら、タイコンデロガ事件ならタイコンデロガ事件について徹底的に調べて、あの航空母艦が核を積んだまま横須賀に入ろうとしたのは事実なんですから、そういう問題について事前協議の必要がないと考えているのがアメリカの態度かどうかということを明らかにして、初めてあなた方がはっきり物が言えるわけです。それをいまだにやってもいないということは、私たちは、非核三原則の擁護について本当に真剣な対応をとっていないと言わざるを得ないと思うのです。つまり、そういう勝手な使い方をしているという問題ですね。  もう時間がないから次に進みますけれども、その米軍基地に対してもっと金を使えという要求がありますが、恐らく日米間の協議でも出ているのだと思うのですけれども、政府はどう対処するつもりですか。
  229. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず第一に、その際横須賀に向かっておったか否かということは、今確認しておるところでございます。第二に、その事政の際どのような状況で事故が発生したかということ、これは私どもは的確に承知していないということでございます。  それから、先ほど、日本政府は在日米軍の施設、区域を自由に使用させることができるということが米国において言われているということを仰せられましたけれども、繰り返して申し上げるまでもありませんが、直接戦闘作戦行動に従事する場合を含めて事前協議というものが厳然と存在しているわけで、我が国における施設、区域が特にそれと相違しているということはございません。  それから、現在米国の議会におきましてはいろいろ異論がございますけれども、在日米軍支援をいかなる形で行うかということは、あくまでも我が国政府が自主的に決めて行うことでございます。
  230. 不破哲三

    不破委員 今私は基地の費用の問題を問題としましたが、軍事費の本体である自衛隊の費用ですね、これも最近二十年間の膨張の仕方もこれは極めて異常なもので、最近アメリカの国防総省が同盟国の一九七一年からの軍事費の増強ぶりについての数字を発表しましたが、NATO諸国が一・三倍、アメリカが一・二倍台なのに、日本は二・四倍台という物すごい急上昇をしている。その結果、現在の日本の軍事費は、アメリカ、ソ連に次ぐ世界第三の地位にまでなっている。これは事実ですね。それで、憲法では戦力の保持を禁じられている日本で、自民党の解釈はいろいろあるんでしょうけれども、世界第三の軍事費を使うところまで軍備が拡大したという事実について、総理、どう思いますか。
  231. 松本十郎

    松本国務大臣 軍事費というのをどのように計算するかは、いまだにまだ確たるものはございません。日本が三番目だと言われる計算のもとは、軍人恩給並びに海上保安庁の予算が入っております。かつての軍と現在の自衛隊とは別個でありますので、そういう恩給予算を軍事費に入れないで、あるいは運輸省の海上保安庁の予算を入れなければ、日本は五番目、六番日になるわけでございます。
  232. 不破哲三

    不破委員 そういう比較をするのだったら、外国の方も引かなければいけないのですよ。だから、アメリカの会計検査院の一番新しいバードンシェアリングの報告でも、日本はちゃんと三位に位置づけられている。防衛白書に引用している「ミリタリー・バランス」のイギリスの報告でも、新しい版では第三位に位置づけられているのです。そこまで拡大しているのです。  それで、最近アメリカの米議会調査局が一九九〇年代の日米関係という報告書を出したのですね。この中に、特に八〇年代の日本の自衛隊の増強についてこういうことが書いてある。  時間の関係で多少省略しますが、レーガン政権は日本に対して、シーレーン防衛などの軍事的任務を提案すると同時に、一九八一年に日本がそうした任務の遂行上必要とする将来の戦力構造を提示した。主要な構成要素は、迎撃戦闘機、主としてF15から成る十個飛行隊、駆逐艦、フリゲート艦七十隻、対潜哨戒機P3C百二十五機等々である。レーガン政権は、在任期間を通じて、日本の自衛隊をこの目標に向けて増強するよう強く促した。日本の対応は、レーガン政権の防衛と戦略援助に関する提案に忠実に従ってきた。  つまり、自衛隊の増強計画についてレーガン政権から一九八一年に提示されて、それの実行を迫られて、それを忠実に実行してきたとこの米議会の報告書には書いてあるのですが、そういう事実がありますか。
  233. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員が御指摘になられました記事そのものは承知いたしておりますけれども、私どもといたしましては、米国政府からそのような要請を受けたということはございません。米国側にはいろいろな希望なり気持ちがあるではありましょうけれども、私どもは、あくまでも自主的に我が国防衛のために防衛力を整備しておるわけでございます。
  234. 不破哲三

    不破委員 そうすると、この米議会調査局の報告書は、日米関係の真実を伝えていないと言われるのですか。
  235. 日吉章

    ○日吉政府委員 これは米議会の一機関の作成した報告書でございます。したがいまして、国際的な儀礼といいますか、そういうようなこともございますので、日本政府の防衛庁として一々コメントするようなものではないと考えております。
  236. 不破哲三

    不破委員 そうすると、あなた方の日米間の信頼関係というのは、アメリカの方はそういう事実に違ったことを書いても一々日本の方から訂正は申し入れない、それから核の疑惑が起きても、それについて一々質問もしない、そういう一方的な関係なんですね。  日米関係の基本について、日本の軍事力の増強は、あなた方は自主的にやってきたのだと言う。ところがアメリカの方は、議会の正式な報告書で、これはレーガン政権が一九八一年に要請をした戦力構造を提示したものだ、それを忠実にやってきて日本はここまで来ているのだということをアメリカの議会の報告書で正式に書いている。重大問題じゃないですか。それが事実と違っているのだとしたら、これはあなた方の日米関係のまさに根本にかかわる問題じゃないですか。総理、ここら辺で立ったらどうでしょう。
  237. 日吉章

    ○日吉政府委員 米国は、私どもがかねがねからも申し上げておりますように、我が国のシーレーン防衛能力の一層の向上につきまして多大の関心を抱いているのは事実でございます。それは米国議会におきますいろいろな議会証言等からも明らかでございます。  一方、防衛庁といたしましては、ただいまも申しましたように、あくまでも自主的な判断に基づきまして、シーレーン防衛能力を含めまして、我が国の防衛力の整備に努めているわけでございます。  したがいまして、米会計検査院報告書の記述というようなものは、このような事情を……(不破委員「議会調査報告書ですよ。まだ会計検査院やってませんよ」と呼ぶ)失礼いたしました。米国のその報告書というようなものは、このような事情を述べているにすぎないもの、かように理解いたしております。
  238. 不破哲三

    不破委員 先ほど海部総理は、日米関係というのは双務的なものじゃないんだ、日本はアメリカを守る義務がないと言っているけれども、アメリカが提示した、例えばP3Cを百機以上備えよ、これは要するにソ連の原子力潜水艦隊に対する対潜攻撃力を備えるということですよね。百機ということは、これは第七艦隊の四倍ですからね。第七艦隊が太平洋からインド洋にかけて持っているP3Cは二十五機ですから、日本が百機備えたということは、ソ連の原子力潜水艦隊に対する四倍の攻撃力と調査力を持ったということですよ。つまり、これはアメリカのそういう任務分担を与えられて、それにふさわしい戦力構造を指示されて実行してきたということになるんですよ。  総理はさっき、守る任務がないと言われましたが、今まさに海上自衛隊が米軍と戦後最大規模の太平洋演習に参加しているでしょう。日本の護衛艦隊群が四隊全部参加しています。P3Cもある限り参加しているのでしょう。これはまさにアメリカの機動部隊を護衛する意味でやっているんじゃないですか。今やられているPACEXの演習というのは、まさに戦後最大規模の、アメリカが太平洋で持っている軍隊の全部を動員しての演習だと言われますが、それにここまで成長した日本の自衛隊、八一年にアメリカが指示したとおりの戦力構造を持った自衛隊が、海上、航空、陸上、全軍挙げて参加しているということ自体が、この議会報告書のいわば内容を証明していると私は思うのです。  それで、これ以上あなた方認めるつもりはないでしょうから次に進みますが、今度の九〇年度の防衛庁の要求が達成されると、大体中期防は達成されますね。それで国防大綱もほぼ実現されると言われている。その次の防衛計画が問題になっていると思いますが、この進行状況はどういう調子ですか。
  239. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一言申し上げさせていただきますけれども、我が国のただいまの防衛力の整備は、「防衛計画の大綱」というものを決定しまして、それに基づいて計画的に中期防を達成する。これはアメリカに言われたからやっておるのじゃなくて、我が国の自由と安全をきちっと確保していくために防衛力の整備をしておるわけでありますから、これは自主的にここが必要な限度だということを考え、他の政策の整合性との中できちっと毎年の予算を決めておるわけであります。ただそのときには、私たちはみずからが決めた一つの節度ある基準というものを守りながらやっておるということでありまして、これによって日本の安全と平和が確保されておる、こう認識しております。  また、細かいことは防衛庁から答えてもらいますけれども、今の演習の問題でも、アメリカの艦隊の護衛なんという目的では決してございません。日本が有事の場合に、日本のために動かなければならぬときに、米国との間の共同作戦をするときに、練度を高めておかなければ日本のためにならないという日本側の事情に立ってやっておるわけでありますから、これはそのように御理解をいただきたいと思います。
  240. 松本十郎

    松本国務大臣 日米共同演習につきましては、ただいま海部総理の御答弁のとおり、日本有事の際の共同訓練でございまして、あくまでそれは個別自衛権の関係でございます。  それから、中期防達成後の平成年度以降はどうかということでございますが、御承知のとおり、昨年の十二月の安全保障会議におきまして、今後も中期的なものをつくっていくべきだ、その際には、憲法その他自衛隊、防衛庁が守ってきております国の方針そのものを踏襲してやっていくわけでございますが、それを踏まえまして、今防衛庁では個々の作業を始めている段階でございまして、今具体的にどこまで進んでいるというところまで申せる段階ではございません。
  241. 不破哲三

    不破委員 総理は、国防の大綱を実現するために軍備を拡大してきたんだと言いまして、これは大体実現するわけですから、次の防衛計画は、そろそろ軍縮になるんでしょうな。いかがですか。もっとふやすんですか。
  242. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのときのいろいろな情勢を判断をして、検討をして結論を出してまいります。
  243. 不破哲三

    不破委員 その次の防衛計画の問題について、日米間で協議が既に始まっていますか。
  244. 日吉章

    ○日吉政府委員 再三申し上げておりますように、我が国の防衛力整備はあくまでも我が国が自主的に進めるべきものでございます。ただ、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、日本有事の際には、日米共同して対処することもあり得るわけでございますから、米側の意向あるいは考え方というようなものも、十分自主的に勘案する必要があろうか、かように考えております。  なお、先ほど私は、委員が御指摘になられました米議会での証言報告書を、類似の内容でございましたものでございますから、米会計検査院報告書と承知いたしまして、承知しているというふうに申し上げましたが、その後の御質問で、それではないやに受け取れるような御質問でございましたので、もしそれではないとしますと、委員指摘の報告書そのものは、私承知いたしておりません。
  245. 不破哲三

    不破委員 ちょっと、中期防について日米間で交渉しているかという質問は。
  246. 日吉章

    ○日吉政府委員 冒頭に答弁いたしましたことで御答弁になっているかと思いますが……。
  247. 不破哲三

    不破委員 さっき私は、物も示して、米議会調査局の報告だと言って質問して、それに答弁あったのですが、結局意味なかったということですね、それを否定したけれども、さっき政府委員は。だから、これについての質問については、よく研究した上で、これに明確に書いてあるわけですから、日米関係のこの八〇年代のいきさつが。それについて後で見解を明確に示してください。きょうは間に合わないと思いますから、いいです。  それで、日米間では正式の協議はないというように聞きましたが、昨年六月、こういうことを聞きました。六月に自民党の安全保障調査会の大村代表団が欧米調査に行って、帰りにアメリカに寄ってアーミテージ次官補に会った。そのときに次官補が、ポスト中期防はより大規模かつダイナミックなものにすべきだという注文を出した。去年の六月に、中期防の後のポスト中期防ですね、もっと大規模でダイナミックなものにせよという話が出たということを私は安全保障調査会の報告書で読みました。ですから、アメリカからはもう既にサインが出ているわけですね。  しかも、これはことしの八月二十四日に出た、これが今あなたが勘違いされた方だと思うのですけれども、アメリカの会計検査院の「米日バードンシェアリング」、議会に出した報告によると、こう書いてあります。「国防総省は、日本がシーレーン防衛能力をさらに強めるための現在の防衛計画のもとで、既に約束されているものに追加する装備を持つように要請した。」既に約束されているというのは中期防までですよ。「日本はそのようにする意思を表明している。そのような追加項目の中には、OTHレーダー・システム、三ないし四の追加的迎撃中隊、」三中隊、四中隊ということですが、七十五機から百機ということですね。「十八機から二十機の給油機、それに十二機から十六機の長距離早期警戒機、イージス能力を持つ護衛艦、そして十五機から二十機の大型空輸・機雷敷設能力を持った航空機などが、含まれる。これらの項目は現行の計画のもとでは決められていないが、国防総省によれば、もし日本が防衛支出の現在の傾向を続けていくのなら、次の防衛計画のもとで、これらの装備を入手することができるはずだ、とのことである。」そして「日本は既に次の計画サイクルの意思を持っていることを示唆している。」つまり、既にアメリカが次期防についてこれだけのものを装備しなさいという要請をして、これは会計検査院の報告ですよ、米日分担の。それについて日本が意思を表明したということがここに書かれているわけですね。  これは、公式に会計検査院が米議会に報告している以上、米日交渉についての公式の報告と扱わざるを得ないわけですよ。まだ国会にも何の話もない。あなた方のところでも国防会議も開かれてないようですが、米日間では次の次期防にこういうことを入れる入れないという交渉は既に要請としてあるのですか。はっきりさせてもらいたいと思います。
  248. 日吉章

    ○日吉政府委員 米国防省の要人が、かつて我が国の防衛能力なり空中給油とか長距離早期警戒機能といったものの向上を期待している旨の発言を講演等で述べているということは事実でございますし、私どもも承知いたしております。  なお、私どもは大体年に一回事務的レベルの会議を開いておりますが、ことしも今週末の十四、十五に予定されておりますが、そういう場で米側との間で率直、フランクにそれぞれの、主として我が国のになりますが、我が国の防衛力に関し対話を行うことがございます。その対話の中で、個別具体的な装備あるいはその数等を交えながら議論をいたしますことはございます。しかしながら、それはあくまでも要請とか要求とか要望といったようなものではありませんで、フリートーキングの場でなされました話の内容でございます。私どももそれに対して、政府としてコミットする、そういうふうな場ではございません。非常にフリーな立場からお互いに担当者が意見を交換し合いまして、それぞれの国の政策に反映させるための材料にする、こういう場でございます。  そういう内容のものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  249. 不破哲三

    不破委員 この報告に書かれているのは、そんなフリーな簡単な話じゃない。具体的な数字を挙げて、こういう装備を何個中隊とか、こういう装備を何個とか何機とかいうことを明確に挙げているのですね。それからイージス艦についても、イージス艦というのは、アメリカの空母を守るために開発した特別な護衛艦ですが、それを日本は今二隻計画しているけれども、さらに二隻追加することを、用意が表明されているということまで書かれているのです。それが、もう何の制約もない自由な会話なんだ、いわば井戸端会議なんだという扱いをして、それで国会国民の前に通ると思ったら、私は大間違いだと思うのですね。  八一年のハワイ協議だって、あなた方はそう言ってごまかしてきたのですよ。つまり、実際にはそれがアメリカの日本に対する正式な要請になって、それが現に国防の指針になって、現実に途中で国防計画の数字まで変えて、P3CだとかF15だとか、ああいう装備機数をふやしたじゃないですか。  そういうあなた方が井戸端会議だと称していることが、実際には日本の自衛隊の拡大指針になっているのですよ。幾ら総理がここで建前から、耳にたこができるぐらい自主的自主的と言われても、現実には日米関係に記録されている事実が、アメリカの戦略計画のもとでその一翼を担って日本の軍拡が進められている。  それで、さっきの議会の報告書には、日米間で米軍と自衛隊の演習がレベルアップしていることは、ソ連に対抗する状況が強まっていることだと、そこまではっきり書いて、最近の演習まで書いていますよ。ですから、それがアメリカできちんと報告されていることであって、しかし、そのことが日本では議会に報告されていない。私はここに最大の問題があると思うのです。  そしてまた、日本にはそういう点では軍備拡充の約束はないと言われるけれども、何遍も渡辺美智雄さんに登場願って恐縮ですが、さっきの国際経済懇話会での渡辺講演では、消費税を導入しなければいけない理由を四つ挙げて、最初に社会保障、次が大企業のための巨大プロジェクト、その次が米軍基地と防衛計画、昭和六十五年までは年年五・四%ずつ実質的に防衛費を伸ばすという約束が米国との間にあるので、これはやめるわけにいかぬ、そういうことを全部挙げて消費税が必要なんだと説明しているわけですね。ですから、さっきの米国の会計検査院の報告の中で、この防衛費の五・四%ずつの増加傾向が続くならばと言っているのは非常に意味が深長だ。  確かに、海部さんがさっき言われたように、アメリカの方ではまだ足りないという声は多いわけですよ。うんとやってもらっているけれどももっと出せという要求が強いわけだから、今までの突出軍拡をもっともっと続けるという要求が強い。この議会の報告書では、九〇年代の末には日本の防衛費は一千億ドルを超えるだろうという予想までありますよ。十二兆円を超えるということですね。そこまで出ているのです。ですから、一方では高齢化社会対策と言いながら社会保障をどんどん切り捨てる、一方では渡辺さん自身が説明しているように、アメリカとの軍備の突出増強の約束をさらにいつまでも続けようとしている、ここに消費税の背景があるということを、あなた方は国民に率直に語るべきだ。  私たちは安保条約反対です。日本は同盟を結ばないで、どんな外国の基地も持たないで、非同盟中立になることが安全を守ると思っています。あなた方はそうでないと思っている。そうでないと思って確信を持っているのなら、そのために消費税が必要だというなら、何でそれをはっきり言わないんですか。一方で高齢化社会に対してああいうでたらめな議論をやりながら、肝心かなめなことを、外国の財界人や記者がいるところでは言うけれども、国会国民の前では言わないというんじゃ、まさにこれは議会制民主主義というものはないじゃないですか。私はそのことをはっきり言ってもらいたいと思うのです。
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは、私は一方的な御意見だと思います。我々は、この消費税問題を考えましたときに、将来の軍拡のことを考えて軍事費増大に回そうなんということは全く考えておりませんので、これははっきり申し上げますし、また、日本の所得そして日本の税の負担のあり方、全体の体系、姿かたちの中から改めていこうと思ったのは、まさに高齢化時代を迎えての安定的な税収の確保とかいろいろな問題であって、先ほど委員長ちょっとお触れになったこともありますけれども、確かに就業人口とそれから高齢者の間でバランスをとって数字は計算し直さなければおどかしだとかごまかしだとかおっしゃいましたが、しかし、高齢者が物すごくふえることも事実であり、ことしは満百歳以上の方も三千七十八人と初めて三千人の大台に乗るわけです。それらの方々に要る医療費、年金、その他のいろいろな国の高齢化対策の費用を見ますと、二〇一〇年ごろには二百兆から二百四十五兆になる。やはり膨大なものがかかる。そういうことを考えますと、税の仕組みを変えていかなきゃならぬということは何度も申し上げましたが、軍事費を増強するためにやっておるというのは、これはちょっと一方的なお決めつけだと私は反論をさせていただいておきます。
  251. 不破哲三

    不破委員 その二百兆から二百三十兆が消費税にかかるんだとすると、これは大変なことになりますね。ですから、そういうのがおどかしだと言うんですよ、私は。  それで、もうこれ以上詳しく言いませんけれども、もう一つ言えば、何十年先というけれども、例えば日本の高齢者の医療費が仮にあなた方の計算どおり四十年後に二・五倍になるとしても、それは国民経済が、GNPが、毎年〇・三%成長すれば届くんですよ、そういうことが可能なように。ですから、経済成長という要素を全く抜きにして、それでそういう計算をして、だから私は、もうこれ以上言わないけれども、おどかしの数学で固められていると言うんです。  それから、消費税を考えたときに軍拡のことは全く念頭になかったと言われたけれども、あの消費税を決めたときの自民党の政調会長が、はっきり消費税を決める要素の一つとして非常に詳しく説明しているんですよ、これは。だから、あなたの頭になかったかもしれないけれども、それは私は頭の中を推察できないから言いませんが、はっきり言明された事実で言えば、あの税金を決めたときの自民党の政調会長、政策の責任者が、はっきりこの要因には軍拡があるんだ、軍備拡大があるんだということを国際的な舞台で明言しているということだけは、活字になっていることですから覚えておいてもらいたいと思うのです。ですから私は、そういう点でははっきり物を言うと同時に、私たちは、そういう消費税はきっぱり国民の審判に沿って廃止すべきだということを申し上げて、次に進みたいと思います。  次は、リクルート金権政治の問題ですが、まずリクルートのけじめですけれども、海部さんにお伺いしますが、先ほども議論がありました。それで、あなたのリクルート社との関係は、先ほど思い出されたことも含めて考えると、大体いつごろからになるのですか。
  252. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 関係と言われると何か非常に誤解を招きそうですけれども、私は先ほどいろいろな資料をもらいましたから、何か昭和五十二年に名古屋かどこかで講演をしたことがあるとおっしゃいました。そういったことまでを全部含めて関係と言うなれば、その辺までさかのぼっておったのかおらなかったのか、私はいろいろと思い起こしたのです。講演を頼まれるといろんなところへ参りますから、あるいは行ったかもしれないということです。
  253. 不破哲三

    不破委員 それで、私は、あなたが今思い出されつつある講演はリクルートの雑誌で二回とも要約を読みましたから、これはまさか偽作ではないと思います。それで、文部大臣としてリクルート社の講演に第一次文相就任当時に行っている。私はその点で非常に重大だと思うのは、やはりリクルート社というのは文部行政の対象下にある企業ですよね。就職問題、進学問題、そういう文部行政の対象下にある特定の企業に対して、文部大臣という職にある者がシンポジウムの講演者になって行く、競争相手のいっぱいある中で、特定の企業に対していわばその応援役をするということの是非という問題があると思うんです。現実に考えてみると、海部さんは文部大臣として行った最初の人ではなかったけれども、最初の時期の一人でした。それで、ここからリクルート社と文部行政とのいろんな関係が、うちの大臣が行っているのだからということで平気で関係が進んでいくという事態が現に生まれたわけですね。その責任というものをあなたは考える必要があると私は思うのです。  それから二番目は、あなたが一九八五年十二月に第二回目に文相になった当時の問題です。このときには既にリクルート社は現実にいろんな問題を起こしていましたね。例えば進路指導の問題で、各高校から名簿をどんどんリクルート社が集める。その名簿の入手方法が是か非かという問題がもう既に議論されていた。それからまた、専修学校の誇大広告の問題でかなり問題になって、たしかあなたが在任中にその問題を検討する特別な委員会か何かをつくったはずです。そういうようにリクルート社に関して幾つかの問題がいわゆる文部行政の中では問題になっていた時期ですね。そのときにあなたは文部大臣になった。しかも、大臣の任期中に五百万円の献金をもらった。それからまた講演にも出ていった。そして、先ほど紹介があったように、リクルート社の広告に名前を出して、それでいわばリクルート社の、こう言っちゃ悪いけれども、スポンサー役を引き受けたわけですよ。文部大臣が、自分の文部行政の指揮監督下にある特定な企業で、しかも問題を起こしている、それが文部行政の場で問題になっている企業に対して、講演にも行く、広告にも名前を出す、そして献金ももらう、そういう立場に立つことが一体政治的な立場として是か非かという問題について、あなたはどう考えるかを聞きたいと思います。
  254. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のあのリクルート株式会社がこういうような社会的問題を起こす企業とは私は思ってもおりませんでしたし、それからまた、リクルートから文教行政に関してこうしてくれとかああしてくれとか依頼をされたり、それによって文教行政を曲げたことは絶対にございません。ただ、御指摘のように、私自身に関する問題は、通常の政治資金とか、あるいはパーティーのときにパーティー券を引き受けてもらうとか、あるいは講演に行ったときの講演料も含めて五百万円あったということは、私自身の厳しくみずからを戒める意味でこの前すべて公表したとおりでございます。
  255. 不破哲三

    不破委員 あなたがゆがめたと言っていないんですよ。文部大臣がリクルート社のスポンサー役をやっているという関係の中で高石事件が準備されたということを私は言っているんですよ。それであなたの任期中、あなたは十二月二十八日に文部大臣になって、それで一月には文部省に専修学校教育改善調査研究協力者会議というのをつくられています。ここで専修学校にかかわるリクルート社のいろんな問題が議論されているんですよ。つまり、あなたが文部大臣になったときには、既にリクルート社のそういう文部行政にかかわる問題が提起されていたわけですよ。だから、それを知らないまま過ぎた文部大臣だったというなら、それはそれで一つの話です。しかし、そういうことを仮に知らなかったとしても、文部大臣が自分の指揮監督にある特定の企業のスポンサー役を買って出るというのは、やはり政治的道義的に重大な責任問題がある。それは当然感じるべきだ。  それで、例の未公開株のばらまきがあったのは、あなたがやめた直後ですから、そこから事が始まったわけじゃないんです。それまでに文部行政とリクルート社の癒着が準備されていたわけで、まさにあなたの任期中もその一部にあるわけですね。ですから、あなたは先ほどから、いろいろなところから献金をもらうと言って、たくさんもらうことを自慢にするとは言わないけれども、リクルート社だけじゃないんだということを言われますけれども、そういう点では、私は、企業からの献金ということは、とりわけ特に文部大臣が文部行政にかかわり合いのある企業から献金をもらうということは、これは法のいかんにかかわらず重大な問題だということについて反省を求めたいと思うのです。  ところで、企業献金の問題ですが、企業から多額の献金を受けた候補者は企業の代弁者になりやすい、こういう主張がありますが、あなたはどう考えられますか。
  256. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その前に、私自身は社会的問題が起こるということを全く知らないときにやったことでありますし、資金規正法に基づいて届け出をしておる資金でございます。けれども、そのこと自身については、今後みずから厳しく戒めていきます、こういうことを何回も申し上げてまいりました。  それから、企業というものは、多額のお金を特定のところに出すと、その企業との間の関係がどうしても出てくるということは、それは、そういう御想像になればそういう状況になろうと思います。ただ、企業というものも社会的活動をしておる一つの存在でありますから、企業の献金がすべていけないと決めつけてしまうのもいささか短絡的ではなかろうかと私は考えております。
  257. 不破哲三

    不破委員 今あなたが短絡的だと言われた文章が実は三木さんの文章なんですよね。三木武夫さんが、田中金脈が起きたときに中央公論に「保守政治改革の原点」という論文を出された。その一つに、「企業は政治献金を行わず、個人献金として献金の額には限度を設けること、」という提案をし、その説明として、「企業から多額の献金を受けた候補者は企業の代弁者となり易い。」だから議員は、企業、団体の献金から独立し、政治家として自由な立場を確保しなければいけない。あなたは、企業は社会的存在だから企業からもらうのはルールだと盛んに言うけれども、三木さんはそういう立場を、短絡的な立場をとられていたということは、私はきっちり確認しておいてもらいたいと思うんですね。  それで、企業が社会的存在だからということを盛んにこのごろ自民党は言うけれども、すべての社会的存在に献金権があるわけじゃないんです。企業というのは営利を目的とした社会的存在なんですね。営利を目的にしながら大きな経済力を自由にできる社会的存在なんです。だから、そういう社会的存在に献金の権利を認めると、これは三木さんが言われるように、政治そのものが企業の代弁者になりやすい。これは鉄則なんですね。これは私どもが勝手に言っているわけじゃないんです。あなた方は、選挙制度審議会が日本では何回も今まで答申を出していますが、そういう企業や団体の献金の問題についてどういう立場をとってきたか御存じでしょう。その選挙制度審議会の考え方について、今どう考えられますか。
  258. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今まさに選挙制度審議会に、そのことも含めて現在の状況の中でどのように政治改革を行い、政治と資金との関係を明朗なものにしていくか、透明性を高めていくかということについても諮問をし、また、党の方でも政治改革推進本部をつくって、政治資金に関する透明度を高める、公私の混同をできるだけ避けていく、そのための歯どめや仕組みを用意をし、その法案が国会に提出されておるところであります。
  259. 不破哲三

    不破委員 選挙制度審議会の第一次答申は一九六一年に出ましたが、「会社、労働組合その他の団体が選挙又は政治活動に関し寄附をすることは禁止すべきものである。」これが第一次答申の内容ですよね。それから第二次答申では、一九六三年に出ましたが、「選挙資金および政治資金についての寄附は、個人に限る。会社、労働組合その他の団体からの寄附は禁止するという第一次審議会の答申を再確認するものとする。」これが第二次答申ですよ。それから政治資金について第三回目の答申では、第五次の答申は、これは自民党の抵抗が余り大きかったのですぐはできないけれどもということで過渡的措置を決めましたが、原則としては、政党の政治資金は個人献金と党費で賄われることが本来の姿である、こういうことを選挙制度審議会は一九六一年の発足以来一貫して主張してきているんですね。  それに対して今あなた方が、第五次では現実に妥協して一定の過渡的期間がかかる、禁止するまでに一定の期間かかるというふうに妥協したものを今度逆手にとって、企業献金の権利は本来の立場だということに今逆転させようとしている。これはまさに逆コースだ。私は、この点ではまさに金権政治の害悪がこれぐらい明るみに出た今こそ、選挙制度審議会でも認められたこの企業、会社、労働組合、その他の団体が選挙または政治活動に関して寄附をすることは禁止すべきだという大原則に、初心に返ることこそが、今あなた方政治改革を言うなら求められている。  それからまた、あなた方よくアメリカの例を持ち出されますが、アメリカではもう一九〇七年に企業からの献金を一切禁止して、一九四三年に労働組合からの献金を禁止しています。そのときに禁止の動機になった一つの裁判があるんですが、私、その裁判の判決に参加した判事の言葉で非常に同感したのは、そういう企業に献金権を認めるということは、公務員を選ぶというのは選挙人、有権者の固有の権利だ、有権者だけが持っている固有の権利を侵犯することになる、侵害することになるという立場で、企業や団体の献金の禁止を一九〇八年から堂々と主張して、現在ではこれがアメリカの合衆国法典の刑事及び刑事訴訟手続に取り入れられて正式の法典になっているということにこそ自民党は学ぶべきだ、政府も学ぶべきだ。それを、今まで選挙制度審議会の長い議論の歴史の中にはなかった、企業は社会的存在だからもう当然認められてしかるべきたというような逆転した立場日本の政治の原則をひっくり返すべきでは絶対ないと思いますが、いかがですか。
  260. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな例をお引きになって御意見でございましたが、アメリカが企業と労働組合からの献金を禁止してとおっしゃいましたが、アメリカの国会議員の姿を見てみますと、人件費とかあるいは通信交通費とか議員の活動費について国が非常にたくさんのものを見ておる、あるいはヨーロッパの国でもほかの公の立場の活動資金を見ておるというようなことと相まってそのようなことになってきたんだと私は受けとめております。  そこで、党といたしましても、自民党としましても、結局今のお金が要るという大前提に立ってお金集めのことばかりを考えておったのではこれはいけませんから、お金についてそういう公の政治活動ならば公費でもって補助をできるような制度仕組みはできないかというので、前提となる政党法の問題等を含めて政治改革の何本かの柱の一つとして今検討を進めておるところでありますし、そういったこと等を踏まえて、今の政治資金規正法は、限度を決めたり透明性を高めたり公私混同を避けたり、いろいろ出の方も入りの方も両方あわせて改革ができていくように、一歩一歩努力を進めておるところでございます。
  261. 不破哲三

    不破委員 アメリカの企業献金禁止法の制定のいわれは、あなたが言うようなものじゃないですよ。歴史は勉強し直してください。  それから、政治改革の議論をやる時間はありませんが、あなたは、今は言わなかったけれども、小選挙区制が一番金がかからぬということをしばしば言われますので、一言だけ言っておきますが、日本で最初に選挙が始まったときは小選挙区制で、これが二度やったけれども廃止されました。明治の時代ですね。廃止された理由は、金がかかり過ぎるというのが一番の理由だったということ、腐敗が横行したということが一番の理由だったということを一言申し添えて、私はあなた方の根本検討を求めて、次へ進みたいと思うのです。  それで、農業問題ですが、あなたは所信表明で輸入大国になるということを言われましたね。「内需主導型の経済構造を定着させ、輸入大国となる」。私は、新聞報道で見る限りだと、輸入大国という言葉が最初に出たのはブッシュ大統領との会談の席で、新聞報道ですから省略があると思うのですが、ガット・ウルグアイ・ラウンドでの日米協力の話がブッシュさんから出たところで、あなたは輸入大国になるよう努力しているという返事をしているという一問一答を見ました。  それで、それに関連して聞きたいのですが、あなたが言う輸入大国には、米の輸入自由化の容認ということは一切含まれないのかどうか、ここを明確にお答え願いたいと思うのです。
  262. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初に、先のお話の最後の部分だけ触れさせてもらいますが、私は、ただお金がかからなくなるから小選挙区を考えるなんていうことは言っておりません。私は、政策本位の選挙ができるような選挙の制度、仕組みというものを追求していきたい。そこに焦点がありますし、小選挙区になったらお金がかからなくなるというのは違うよという御指摘は、何も日本の歴史だけじゃなくて、アメリカの方でも小選挙区になってからもお金がかかっておるから、いろいろ制度、仕組みを考えていかなきゃならぬという点は、私もよく理解をして考えに入れておるところでございます。  それから、ただいまの御質問の輸入大国になるというのは、これは今、日米関係全体の中で、よく日米の議員会議なんかに私も行きますけれども、結局日本とアメリカとの輸出輸入の帳じり、日本の黒字、それが五百億ドル台で一向に減らないのはいけないではないか、何とかここをもっと減らすように努力せよという主張が随分よく出てまいります。私は、昨年一年間の日本のアメリカからの輸入は百億ドルふえたんだということをよく説明するんですけれども、それでも日本の輸出もふえておりますから、なかなか五百億ドルというのが減らない。  それなれば、日本はもっとこの国際的な経済摩擦を解消していくためには、いろいろな意味において輸入を拡大し輸入に努力をする、そういう輸入大国になろう、百億ドルでとまらずにもっと輸入できるものがあったら輸入しよう、アメリカ以外の地域にもいろいろ貿易バランスの狂っておる国がありますから、そういった国とのいろいろな関係を改善していくためにも輸入に努力をしていこう、こういうのが基本的な国全体の、世界全体を眺めての貿易バランスの中で日本だけに黒字が集まっておるという体質はどうしても改善していかなきゃならぬ、こういう大きなねらいがありますから、輸入を促進する、輸入大国になろうということを言ったわけであります。  また、米だけに焦点を絞って考えますと、これはこの間うち何回もお答え申し上げておりますように、国会における決議等の御趣旨も十分に尊重しながら自給を中心考えてまいりたい、この基本を申し上げておるわけでございます。
  263. 不破哲三

    不破委員 政策本位の選挙をやるかどうかということは、それぞれの政党の努力の問題ですよね。選挙制度が悪いから政策中心にやらぬというのはおかしい話であって、それぞれの政党がみずから対処していくことだ、これ以上もう時間がありませんから言いませんけれども、そういうことを一言言っておきます。  それから、貿易構造の問題も全体を議論すれば果てしがありませんが、もうあと五分ですから米に絞って言うのですけれども、米の輸入自由化は絶対にしないとはっきり言えるかどうかということを私は聞いているのですよ。自給を中心に対処するということは、中心ということは周りがあるわけですよね。つまり、大部分は自給だ、しかし一部自由化もあり得るんだとか、一部輸入もあり得るんだとかいう幅を持ってあなた方が対処しようとされておるのか、そこのところを聞きたいわけです。  例えば、今回の所信表明でも、「国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいります。」と極めて回りくどい言い方をしているでしょう。それで、基本的というときには必ず例外が伴うのです。対処というときには幅がつくのですよ。そうじゃなしに、この日本国民の主食である米については、ガットであろうが、どこの国の交渉であろうが、日本政府の基本態度で決まるわけですから、この問題に関しては一歩も引かないで、自由化は絶対しないんだということが輸入大国になるというあなたの言明に含まれているのかということを聞いているのです。それを答えてください。
  264. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 国内産で自給をするというふうなことは、国内産で自給をしていく、こういうことであります。(不破委員「自由化しないのですね」と呼ぶ)あくまでも国内産で自給をしていくということであります。
  265. 不破哲三

    不破委員 どうして輸入自由化に反対という言葉をあくまで避けるのかね。はっきり明言したらどうですか。議場席からも、言ったっていいと言われておりますよ。それを今国民、特に農業に関係している国民日本の食糧の前途を心配している国民が聞きたがっているのですよ。それを回りくどい言い方で、自給を基本的に対処していきますと。これは八割でやったって基本的に対処ですよ。輸入の自由化を認めるか認めないのか、そこを明確に答えてもらいたい。
  266. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 国会で自由化反対の決議をしていただいておるわけでありますから、その趣旨を体して国内産で自給する、この考え方を貫いてまいる、こういうことであります。
  267. 不破哲三

    不破委員 国会の決議は引用されるように自由化反対なんだが、政府の態度を言うときには自由化で対処する、どうしてそれが違っちゃうのですか。国会決議は自由化に反対だと言うんだから、政府は自由化認めない、これでどんな交渉も臨むということをはっきり言ったらどうですか。
  268. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 言っていることは同じでございます。
  269. 不破哲三

    不破委員 では同じと認めて、あなた方はこれからガットへ臨んでも、日米交渉でも、米の自由化は絶対に譲らぬという態度だということを確認させてもらいます。  それで、なぜ私はこれをこれだけ強調するかといいますと、今日本の食糧の自給率というのは、単に農業の運命にとどまらず、本当に深刻なところに来ていると思うのですね。これは農林水産省に伺うのがいいのかな。カロリーではかって食糧自給率、今幾らになっておりますか。
  270. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 カロリー自給率は四九%でございます。
  271. 不破哲三

    不破委員 世界百数十の国がありますが、食糧でのカロリー自給率が半分を割った国というのはどういう国がありますか、日本のほかに。
  272. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今、カロリー自給率が五〇%を割った国の名前をちょっと持ち合わせませんけれども、私どもと近い国としまして、スイスは六五%というふうになっておるのが近いです。(不破委員「割った国ですよ」と呼ぶ)今ちょっと割った国を持ち合わせておりません。  ただ、日本の場合になぜ低くなっておるかということを申し上げさせていただきますと、日本の場合に、経済の成長に伴いまして食生活が大幅に変わってくる、多様化した。そのような中ででん粉質食料が消費が減退した。一方、畜産物の消費が拡大した。残念ながら、畜産物のえさであります飼料穀物が、国内で生産構造とか価格の関係で供給が難しいというようなことになっておるわけでございまして、私ども、食用の穀物の供給でいきますと、かなり高い自給率を保っておるわけでございます。
  273. 不破哲三

    不破委員 日本のカロリー自給率ですね、七〇年には六〇%あったんですよね。それが七五年に五四%に下がり、八五年に五二%に下がり、八七年に四九%に下がり、もう七〇年のころから危機だ危機だと言われながら、いわばもうずっと低下してきている。  ところが、ヨーロッパ諸国の場合には、例えば七〇年には西ドイツは六六%で日本に似たものでした。しかし八五年には九三%ですよ。それから、イギリスは四八%で日本よりはるかに下でした。八五年には七七%まで持ち直しました。フランスは九八%でしたが、八五年には一二八%に上がりました。ですから、この二十年をとっても、あなた方は国際化国際化と言うけれども、食糧の自給については、あなた方がサミットで会うような国々はそれこそ大変な努力をして逆転させてきているのですね。それで、食生活が変わったから落ちても仕方がないとかそんな言いわけはしないで、自給率の向上という方針を出したら、やはりそれが着実に上がって国民の食糧確保の安定ができるように、実績も上げているわけですよ。ところが日本の場合には、国会で議論になるたびに自給率の向上に努めます、その自給率がこのごろは自給力にかわっているのが私非常に気にかかるのですけれども、努めます、努めますと言いながら歴年どんどんどんどん落ちてきている。  それで、さっき半分以下に割った国はなかなかちょっと見当たらないと言いましたけれども、本当に人口の小さい国しかないですよ。人口の小さい国なら、いざというときにいろいろな問題が起きても、これは貿易でかなり片がつくでしょう。しかし、例えば人口一億以上の国が世界には九つありますけれども、日本の次に低いのはソ連の八七%ですよ。そういう人口大国は、みんなやはりそれだけの人口を、自分の国内で食糧を賄えるように努力しているのです。それから、人口二千万人以上の国は世界で四十カ国あります。しかし、その中で一〇〇%以上の自給率の国が十二カ国、九〇%以上の国が十五カ国、八〇%台が六カ国、七〇%台が三カ国、五〇%台かそれ以下という国は日本しかありませんでした、二千万以上の国には。  つまり、これだけの人口を持っておるということは、やはり安全保障の面で言えば、それにふさわしいだけの食糧の自給ということを考えなければいけないということなのですね。食糧戦略ということまで言われる時代なのですから。ところが、実際の自民党政府の農政というのは、そういう形で、もうはるか以前から自給率の危険な状態が言われながら、どんどんどんどん低下に任している。しかも、その低下の度合いが、いつもオレンジや牛肉の自由化が問題になる、それで、それが崩れるごとにこの自給率の低下が激しくなるわけですね。だからこそ今度の問題については一歩も引かないでやってくれというのが国民的要望になり、今度の国政上の審判にもなったわけでしょう。  アメリカのヤイターという、今は農務長官ですが、日米交渉の代表がこういうことを明言していますよ。日本政府は風圧をかけさえすれば幾らでも折れる、ともかく圧力さえかければ幾らでも農業問題で折れる。これはまさに足元を見られている態度であって、そういうことが絶対にないと言って――アメリカが言っているわけだから、交渉者が。まあ私はだれがやったか知りませんが、しかし相手の国の代表がそういうことを平気で言っているわけだから、そういうことを絶対言わせないような交渉をきっちりやってもらいたい。
  274. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 昭和三十年代は自給率八二%です。そのときはお米一人当たり百二十キロ食べておりました。今六十八キロです。すなわち米の消費が減ってきた。その分畜産物を国民は食べるようになったのです。国土条件に制約のある我が国でありますから、畜産物の、いわゆる飼料穀物というふうなものはどうしても輸入に依存せざるを得ない、こういう事情からなんです。  我が国は計画経済でございません。食生活を規制するわけにいきません。そういう中においても生産性向上を高めていこう、こういうふうなことで、何とかこの下がってきておる自給率をこの辺で食いとめたい、こういうことでこれからも努力していきたい、こういうふうな考えであります。
  275. 不破哲三

    不破委員 農林省側の言いわけを聞いていると、自給率が下がっても仕方がないんだという弁明を一生懸命やっているように聞こえますよ。それでは困るわけですよ。  それで、先ほど私は七〇年から現在にかけて自給率が低下していたのを上がってきた国々を挙げました。計画経済の国は一つも挙げませんでしたよ。サミットであなた方がおつき合いをしているイギリスとかフランスとか西ドイツとか、そういう国の十数年間の実績を挙げているのですよ。日本には日本の条件があります。この条件のもとで国の安全ということを本気で考える以上、食糧の安全を、国の統治の責任を負う以上、食糧の安全について明確な見通し国民に示すのは当然の責任じゃないですか。食生活がこう変わったから下がっても仕方がない、そういう言いわけを担当者がしているようでは、やはりその面からも国民の不信を買う、農業の不信を買う、当たり前じゃないですか。もう少し真剣に考えてもらいたいと思いますよ。
  276. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 責任を持って農家の方々により一層の意欲を持ってやっていただく、このような考え方から、長期見通し、二〇〇〇年を目標年次として、需要、生産、どうなるか、今その策定作業にかかっておるのであります。何とかして農業者の方々に将来に対する見通しを持って農業に励んでいただく、このようなことのために今日努力をいたしておるところであります。
  277. 不破哲三

    不破委員 その二〇〇〇年の自給率向上の目標は何なんですか。二〇〇〇年の自給率向上の目標としてどういうことを目安に努力しているのですか。
  278. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 生産性の向上というふうな問題については規模拡大、こういうふうなことがあります。それから構造政策を思い切って進めていく、こういうこともございます。いろいろそのような施策を講じながら生産性向上の着実なる推進を図っていく、こういうことであります。
  279. 不破哲三

    不破委員 先ほど時間がちょっと初めの連絡と違っていましたので、企業献金に戻りますけれども、私は先ほど三木さんの話、日本の選挙制度審議会の一貫した流れ、それからあなた方がいつも手本にしているアメリカの考え方を言いましたが、そういうことを見ても、あなた方は、企業献金を最初の選挙制度審議会で確認したように、禁止する方向に前進するつもりはありませんか。
  280. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初の選挙制度審議会のころからのことを今ここで御指摘になりましたが、今私たちは、今の選挙制度審議会に諮って御検討もお願いをしておるところでありますし、早急に結論をいただきたいということで三月ごろまでには答申をいただけるようになっております。それを踏まえて、来年の十一月が議会制度百年の節目でありますから、そのときまでに、より公私混同のない、より透明性の高い政治資金に変えていく努力を現実的な課題として取り組んでおり、国会に提出してある政治資金規正法の改正案も、各党の御論議をいただいて適切な結論が示されますことを心から期待をしております。
  281. 不破哲三

    不破委員 これはあなた任せの問題であって、自民党という政党がこの政治資金の問題に関してどういう結論を持って国民に臨むのかということですよ。だから、企業献金の禁止、団体献金の禁止という問題について、自民党という政党、それからその総裁としてのあなたがどう考えるかということを聞いているわけです。
  282. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 企業というのが社会的に活動しておる現実の存在でありますから、企業献金が直ちに悪だというようなとらえ方は、私は今はしてはいけない、こう思っております。
  283. 不破哲三

    不破委員 しかし、この点についてあなた方から献金を取り立てられている企業自体が、企業献金の役割について随分言っているわけですよね。例えばここで紹介しておきますが、経済同友会の石原幹事は、企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待すると言い、それから旭化成の宮崎会長は、大きく得をするためにふだんから必要な献金をするのだと言い、住友電工の亀井会長は、企業献金それ自体が利益誘導という性格を持っていると言っている。まさに企業献金が利益誘導、営利のためのものである、政治を企業のためにゆがめるためのものであるということは、当事者自身が言っているわけですよ。  あなたはその点を、本当に政界浄化に努める気があるのなら、政治改革をするつもりがあるのなら、企業献金の合法化ではなしに、企業、団体献金の禁止にきっぱり踏み出すべきだ。それがリクルートからの献金でやはり文部行政の上でも大きな疑惑の歴史を持った、その歴史の道を歩んできたあなた自身のけじめでもあるということを私は強調して、質問を終わりたいと思うのです。
  284. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政治改革のために、政治がそのような政治資金等いろいろな関係を乗り越えていくためにも、思い切った政治改革をやり、政策中心の選挙に持っていき、そして公私混同のないような、そのような状況をつくっていきたい、それによって政治の信頼を回復していきたい、そう思っております。
  285. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十三日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会