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安藤委員 私は、
日本共産党・革新共同を代表して、
出入国管理及び
難民認定法改正案に対する反対討論を行います。
政府は、
外国人労働者の
受け入れ範囲を広げる方向をとるとしながらも、
単純労働者については従来どおり、
受け入れないという方針を貫き、「
不法就労」の
摘発・規制だけを強化しようとしています。しかし、こうした方向では、急増する
外国人労働者問題を正しく解決することはできないと
考えます。
日本の大企業は、アメリカの世界戦略を補完しながら、アジア
諸国を中心にした発展途上国へ新植民地主義的に進出し、激しい収奪を行っています。それがこれら
諸国の貧困を一層深刻なものにしています。そのため
日本で働き、家族を養っていきたいと
考える
外国人労働者に対し、それを締め出すようなことは、あってはならないことです。
日本政府の
対応は、
労働を
目的とした国際的な移動の自由は原則的に認めるべきであるとしているILO百四十三号条約の
立場を否定するものです。
今
我が国に求められていることは、
外国人労働者の急増を必然的にもたらしている内外の状況や国際的に確認されている原則を重視する
立場に立って
対応することです。
反対の第一の理由は、本法案が、
我が国政府が従来からとってきた
単純労働者の
入国は絶対に認めないとの姿勢を一層強化するために、いわゆる「
不法就労」に対する罰則の新設、強化を行おうとしている点であります。罰則の新設、強化によって、ある程度「
不法就労」に歯どめをかけることができるかもしれませんが、現在の
経済と
労働事情の実態を根本的に変えられるわけはなく、それどころか逆に暴力団の介入など規制逃れやその他悪質な行為を潜行させることになりかねません。さらに、現実に十万人余とも言われる「
不法就労者」を根こそぎ取り締まることは至難のわざであり、これをすべて強制
退去で処理するということでは、相手国との
関係でも到底
受け入れられるものではありません。
また一方で、
外国人労働者を入れさせよとの外圧をかわすため、「研究」や「企業内転勤」「
法律・会計業務」など多国籍企業やアメリカからの要望の強い部門の
在留資格の新設などに見られるように、欧米等の経営者や
技術者等に対しては門戸を広げる一方、逆に東南アジア、中近東などのいわゆる「
単純労働者」は締め出すような便宜的差別的扱いも、認められるものではありません。
第二の理由は、
不法就労助長罪の新設についてであります。「
不法就労」をあっせんしている悪質な
ブローカーを厳しく取り締まることは当然必要でありますが、これは、現行法の
もとでも十分取り締まることができるのであり、
単純労働者
締め出しの
もとで新たな刑罰を設けることは、
外国人を雇用している中小業者等に対しても同じ罰則で取り締まることになり、人手不足に悩む中小業者の営業に対する脅威になりかねないものであります。秩序ある
受け入れ制度を確立した上で、悪質な
違反者(雇い主)への罰則を設けよというのが、我が党の主張であります。
さらに、
労働のできる
在留資格を持つ
外国人本人に対しても、その枠外の
労働を
許可なく行った場合の罰則を強化していますが、
アルバイト等に厳し過ぎる制限を設けている現状の
もとで、さらに
外国人に対する処罰を
拡大することとなり妥当ではありません。
第三の理由は、現在のいわゆる「
不法就労者」問題についてであります。
政府はこれらの人々に対し、強引に処罰し、
退去強制しようとしておりま
すが、これでは問題は何ら解決せず、かえって深刻な
生活権侵害と
人権問題を惹起するおそれがあることは明らかであります。
今日、
外国人の「
不法就労」問題は看過できない状態にあります。現状において暴力団や悪質なあっせん業者の無法をはびこらせ、
外国人労働者の無権利状態が野放しにされており、そのことから
日本の
労働者の
労働条件や国民生活にまで悪
影響を及ぼしかねない状態になっているのであります。これは、
外国人単純労働者の導入拒否という態度をとり続けてきたことが大きな原因となっています。
政府はこれらの人々の
人権を擁護する
立場から、
退去強制で事足れりとするのでなく、現状
改善の緊急対策をとることこそが今求められているのです。
労働者の国際的移動を原則的に認める
立場に立って、国際的にも通じる条件を整備するための具体策をとることは、
政府に課された義務であります。
政府は次の諸点について、直ちに具体的対策を検討すべきであります。すなわち、国籍による
労働条件の差別を禁止している
労働基準法第三条の遵守、二国間協定の締結、
受け入れ枠の設定、滞在期間の限定などの施策を緊急に実施して秩序ある
受け入れを行っていくことが、
外国人単純労働者問題の正しい解決の道であると
考えます。
なお、本
改正案には、
在留資格の整備で、従来法文上余り明確でない
規定しかなかったのを活動
内容を含めて具体的に
法律で定めるようにして、
法務大臣の裁量の
範囲を極力少なくし、
外国人にとってわかりやすくすることや
入国審査手続を簡易・
迅速化して上陸の利便を図っている点など
改善点も含んでいます。さらに、新設した罰則を法施行以前からの
在留者には適用しない点など、在日朝鮮人を初め現に
日本に
在留している
外国人の既得権の後退を防ぐ
配慮もなされています。
しかし、これらの諸点を
考慮しても、さきに述べた理由から、全体として本
改正案に反対するものであります。
政府が、
外国人「単純」
労働者を締め出すというかたくなな姿勢を改めて、
受け入れを原則的に認め、そのための条件を整備することを強く要求し、私の反対討論を終わります。