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加藤参考人 加藤でございます。
外国人労働者問題に関する連合の考え方並びに私の考え方、そして本法案に対する考え方を申し述べたいと思います。既に各
参考人の御
意見の中で重複する部分もあろうかと思いますので、簡単に申し上げます。
まず第一に、人、物、金と一口で申しますけれども、物、金の次に人の自由化であると、いわば延長線上に論ずる方もおられますが、残念ながら物と金とそして人との間には本質的に差があり、この地球は人類のために我々がつくってきた秩序あるいは世界でございまして、物と金と同列に人が論ぜられることにつきましては、まして
労働力というえたいの知れない
状況でその人格を外した形で論ずることにつきましては、私はいかがなものかと感じます。まして、その
労働市場が自由化されるということにつきましては、例えばEC、
経済共同体のような形で
経済体制を各法制のもとに整備をされて単一のものにするというような
状況において初めて可能であるわけでありまして、政治、
経済、文化、
社会、あらゆるもので異なる体制、国家間において
労働市場が開放されるということについては、過去そういう議論は学者の間においてもなかったのではないかというふうに思います。
二点目は勤労観の問題でございまして、
皆様方先輩諸氏におかれては特に強いかと思いますけれども、戦後我が
日本国のこの
経済発展、再生の道というのは、言ってみると私
たちが、すべての国民がある意味で公平、平等に扱われてきて、額に汗を流して働いてきた結果であると我々後に続く者も感じております。すなわち、職業に貴賤はない。総理大臣であろうがあるいはタクシーを運転する者であろうが港湾に働く者であろうが、働くということについては貴賤はないのであって、その報酬については随分差がありますけれども、それが私
たちが今までとってきた
一つの哲学ではなかったかと思います。この勤労観というものについては、我々
労働組合といたしましても二十一世紀に我が
日本国においては続けていきたい、このように思います。職業にいいもの、悪いものの差をつけることはやはり
日本国の将来の発展にとってもよくないのではないか、このように考えておるわけであります。
三点目に、国は国民のためにあるものであります。特に、
我が国においては完全
雇用を国民に保障するということが大変重要であるというふうに考えます。
雇用なくして福祉はないわけでありますので、国が完全
失業率でいえば二カ二分の一以下というふうに
雇用政策の中で言っておりますけれども、私
たちは二%以下ということを主張してきました。また、マクロな
雇用保障ではなくてミクロな
雇用保障も非常に重要であります。先ほど
小井土参考人も申されましたように、
女性の問題、
高齢者の問題、そして心身障害者の
雇用の保障、それらのものが十全になされて、初めて国が国民に対して約束を守ったというふうに我々は考えておるわけでございまして、まず
日本国における就労保障というものは
日本国憲法のもとにある我々が第一であり、かつ、不幸にして
日本に在住される方々に保障されるものではないか、このように考えるわけであります。
以上三点を基本にいたしまして、私
たちはそういう考え方の中で、しかしながら
外国人労働者というものを完全に遮断するということは考えておりません。むしろ、現状以上に
拡大をするということについては、その
方向は賛成であるというふうに考えております。ただし、
受け入れるべき
外国人労働者、これを考えるに当たっては、私
たちは
三つの
条件がある、原則があると考えております。
一つは、国内の
雇用・
労働との調和ということがあります。二つ目は、
社会、諸制度を含めた環境の整備ということでございまして、
三つ目は国民的
合意。この三原則が確立しなければ
外国人労働者の
受け入れということについては問題が大変大きいのではないかというふうに私は考えておる次第であります。
そこで、
外国人労働者を
受け入れるに当たっての
条件でございますけれども、これにつきましては、私
たちは、
一つは国内の
雇用や
労働条件に悪
影響を及ぼさないこと、二つ目は
雇用主の責任が明確にされること、
三つ目はその
外国人労働者の
受け入れが
日本の
社会にとって有用であること、四つ目はそれらの
社会的コストの負担が明確にされること、これは後年、十年ぐらいしたときに、これはだれが払うんやというようなことがないように当初から明確にされるということであります。五つ目は、
関係する国内
労働者の
意見が十分反映されることということでございます。これは、我々国内
労働者が利害の当事者であるということを考えれば当然ではないかというふうに考えております。
次に、これらの
条件をもとにして、じゃ個々の
労働者固有にどういう
条件があるかと申しますと、
一つは十分な職業
能力を有するということでございます。これは単に書面上の
資格があればいいということではございません。実証され得る十分な職業
能力があるということであります。二つ目は本人並びに周辺の者に安全衛生を確保するための最小限の知識を有するということでありまして、基本的には、例えば立入禁止でありますとかそういうところには入らない、劇物の所在がわかっておる、あるいは地震が来ればぱっと火の元を消せるとか、そういうことを含めた基本的な
条件というものがあるのではないかというふうなことでございます。
また、我々は不法就労者を
雇用する者あるいは
あっせんする者に対する罰則の必要性については過去から申し述べてきました。ただし、不法就労者を直ちに国外退去させるということの必要性は考えておりますけれども、その間における当該
労働者の
保護については十全な措置というものが基本的
人権を守る上でも必要ではないか、このように考えておりますし、いわゆる暴力組織の支配下にある
労働者等の
保護については十全な
対応が必要ではないか、このように考えております。
私
たちは、特に
アジア開発途上国の
経済の発展、政治の安定等については心から希望するものでありますけれども、それらの方法論に、その国の
労働者を大量に
受け入れて、もって国際協力とするのはいかがか、こういう論もございますけれども、
労働者を輸出する、海外に派遣し、その送金で国内
経済を成り立たすということが長く続いたためしはございません。道のりは遠くとも、その王道というのは、各国の国内
産業を育成していくということが一番大切なことであり、その国自身に見合った
産業を興し、そして
雇用を開発をしていく、これが大切である。そのために国際協力もあるし、我々
労働組合もその一端として協力を惜しまない、このように考えております。
我が国にある
スキル、技術等を海外の人
たちに与えるための
研修等については我々は大いに賛成であるということも既に明らかにしたことでございます。
さて、以上の考え方をもとにいたしまして今回の法案についての考え方でございますけれども、まず第一に、個々の
受け入れ、就労活動の具体的な基準については法務省令で定めるというふうになっておりますけれども、しかし私
たちが過去いろいろ考えてきました中で、この具体的な基準をどのように運営するかということが一番重要ではないかというふうに考えております。例えば
企業内の出張ということで本店が
日本にある場合の海外支店の採用者を国内に呼び寄せることについては社内転勤の扱い、このようになっております。このことの考え方については私は否定するものではございません。ただし、直接的な支店なのか、あるいは一〇〇%資本を支配する
企業なのか、あるいは合資、ジョイントベンチャー的な、例えば五一%支配するのか、連結決算対象なのか。
企業の形態というのは、既に
日本の中におきましても分社化されたり分離化されたり、いろいろ多様化しておるわけでありまして、それらの扱いの問題、そしてそれらの職業
能力、そういうものを一体どのように特定していくかだとか、いろいろ具体的な基準においては問題がございますので、これらがどのように決められていくかということについては我々多少の不安を持っております。また、それらを決めていく手続につきましても、私は、多少といいましょうか、我々自身も参加の場が必要ではないか、このように考えておるわけであります。
二点目は、就労
資格証明書の交付等について取り扱いがなお不徹底な部分があるのではないか。ただ、この扱いにつきましては諸論がありますからなお議論する余地もあろうかと思いますけれども、この就労
資格証明書の交付についてはいま
一つ議論は徹底されるべき必要があるのではないか。また、
雇用主責任を明確にするという意味で就労
資格の確認方法についても議論が残っておるのではないかというふうに考えております。他方、
研修生のOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングという場合のその
あり方論について、やはり個々にある
労働組合が現場においては一番よく精通しておりますから、その労組の事前
合意ということも必要になってくるのではないか、このように考えております。
以上のような問題点を感じます。これらにつきましてはより一層の御議論をお願いしたいし、善処をお願いしたいと思いますけれども、しかし現下の
外国人労働問題、特に不法就労問題を考えますに、在留
資格を整理し、基準を公開し、手続の簡易化、迅速化を図り、
雇用主への罰則規定を新設した点につきましては、連合としては一応の評価ができるものではないか、このように考えております。
外国人労働者の取り扱いにつきましては、私は総合的政策であるというふうに考えておりますし、先ほど申しましたように各界の議論の一致をもって
対応することが重要であるというふうに考えております。そういうふうな意味では、本法案の修正というものは十全ではないというふうに考えます。しかしながら、現下の
状況を少しでも改善するというのは百年の議論を待っておっては仕方がないわけでございまして、少なくともできることにつきましては迅速に改善の一歩を行っていく、そういうふうな意味では百点満点でなくても合格点であればやっていくという態度も重要ではないか、私はこのように考えております。
最後に、不法就労者であっても既に
労働の実績があればその者についてはいわゆる寛容する道を開いてもいいのではないかという議論もございます。しかし、このことにつきましては、在留
資格に違反した活動を行っておるわけでありますから、過去行った
労働に対して、当然本人の権利ということについては
保護すべきでございますけれども、過去不法な活動を行ったという実績をもってきょうからあるいはあすからの就労権を
日本で認めるということについては、私はいかがなものかというふうに考えております。不法であっても我慢をすれば、目を逃れさえすればいつかは花が開くということであって、この法治国家のいわゆる秩序の維持に役立つのであるのかということを考えたときに、
労働者の
保護と、しかしながらその取り扱いというものにつきましては次元が少し違うのではないか、私はこのように考えております。永年勤続のような表彰制度ではなくて、その本人自身は
保護されるけれども、本来法の厳格な適用のもとで
人権は十分尊重されながらも扱われていくということの方が
日本の場合には
状況に合っているのではないか、私はかように考えるわけであります。
時間が参りましたので、私の参考
意見は以上で終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)