運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1989-10-25 第116回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成元年九月二十八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。    委員長 戸塚 進也君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 井上 喜一君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君 理事 河村  勝君       赤城 宗徳君    伊藤宗一郎君       稻葉  修君    上村千一郎君       大塚 雄司君    木部 佳昭君       佐藤  隆君    塩川正十郎君       塩崎  潤君    戸沢 政方君       西岡 武夫君    伊藤  茂君       稲葉 誠一君    清水  勇君       山花 貞夫君    冬柴 鉄三君       山田 英介岩    滝沢 幸助君       安藤  巖君 ────────────────────── 平成元年十月二十五日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 戸塚 進也君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 井上 喜一君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君       赤城 宗徳君    伊藤宗一郎君       上村千一郎君    木部 佳昭君       清水  勇君    山花 貞夫君       冬柴 鉄三君    山田 英介君       滝沢 幸助君    安藤  巖君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         宮内庁次長   宮尾  盤君         皇室経済主管  永岡 祿朗君         法務政務次官  田辺 哲夫君         法務大臣官房長 井嶋 一友君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省保護局長 佐藤 勲平君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君  委員外出席者         郵政省郵務局総         務課長     足立盛二郎君         最高裁判所事務         総局総務局長  金谷 利廣君         最高裁判所事務         総局経理局長  町田  顯君         最高裁判所事務         総局民事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     三ケ月 章君         参  考  人         (東北大学法学         部教授)    小田中聰樹君         参  考  人         (日本弁護士連         合会事務総長) 大石 隆久君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     田中 龍夫君   戸沢 政方君     田澤 吉郎君   伊藤  茂君     新村 勝雄君   清水  勇君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   田澤 吉郎君     戸沢 政方君   田中 龍夫君     上村千一郎君   井上 普方君     清水  勇君   新村 勝雄君     伊藤  茂君     ───────────── 九月二十八日  刑事訴訟法の一部を改正する法律案坂上富男君外三名提出、第百十二回国会衆法第四号)  刑事施設法案内閣提出、第百八回国会閣法第九六号)  刑事施設法施行法案内閣提出、第百八回国会閣法第九七号)  民事保全法案内閣提出、第百十四回国会閣法第四〇号)  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第六三号) 十月二十四日  刑事施設法案早期成立に関する請願(太田誠一紹介)(第一〇七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項 並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項 について、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料要求等の方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 戸塚進也

    戸塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ────◇─────
  4. 戸塚進也

    戸塚委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所金谷総務局長町田経理局長泉民事局長島田刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 戸塚進也

    戸塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ────◇─────
  6. 戸塚進也

    戸塚委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政に関する件の調査のため、本日、参考人として東京大学名誉教授三ケ月章君、東北大学法学部教授小田中聰樹君、日本弁護士連合会事務総長大石隆久君の出席を求め、意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 戸塚進也

    戸塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、そのように御了承願います。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。      ────◇─────
  8. 戸塚進也

    戸塚委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
  9. 坂上富男

    坂上委員 参考人の三先生方大変お忙しいところお出かけをいただきまして、ありがとうございました。  きょうは、政府側参考人先生方と交互に一問一答式に御質問をさしていただきますので、あるいはしばらくお待ちをいただくようなこともあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。  私、日本社会党所属坂上富男でございます。  まず、最高裁にお聞きをしたいのでございますが、いわばこの地裁、家裁支部適正配置問題、今後これからどういうふうになさろうとするのか、簡単で結構でございますから、これからのプログラムについてお話しいただきたいと思います。
  10. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 十月の十七日に、最高裁判所一般規則制定諮問委員会という委員会に今回の支部適正配置の問題について諮問いたしておりました答申が出ました。それに基づきまして、現在私どもの方の地方裁判所家庭裁判所の所長らが中心になられまして、統合検討しているいわゆる統合検討対象庁管内自治体弁護士会その他関係機関にこの答申内容を御説明に上がりまして、また、当該支部の個別のいろいろな事情に関する御意見をお聞きしているところでございます。その地元説明の結果の報告を私どもの方で整理さしていただきまして、その上で裁判官会議規則改正していただくという予定になっております。規則改正のあれといたしましては、年内あるいは一月あたりにしていただければと、事務当局としてはそういうことを努力目標にして現在鋭意作業を進めているところでございます。
  11. 坂上富男

    坂上委員 そうしますと、これは規則制定になりますと来年の四月から実施、こういうことですか。
  12. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおり、規則制定後すぐ実施するというわけにはまいりませんで、一定の準備期間が必要でございますので、仮に十二月なりに規則改正をしていただきましたといたしますと、四月なり五月なりのところが施行日というようなことになろうか、こう考えております。そのあたり裁判官会議で決めていただくということで、これからの作業の結果とも絡みまして、必ずしも確定はしておりませんが、四月ないし五月にでも実施できればということで作業を進めておるところでございます。
  13. 坂上富男

    坂上委員 昭和五十九年三月九日の法務委員会議事録でございますが、これによりますと、山口最高裁判所長官代理者が御答弁なさっておりますが、こういうふうに言っております。この関係ほどうなりますか。  例えば、臨司の提言で御指摘のございましたような高裁支部廃止あるいは乙号支部原則的廃止あるいは簡裁名称変更などは考えておりませんし、現在の簡易裁判所の性格あるいは理念というようなものを変えるつもりも全くないわけでございます。 こう言っておるわけでございます。今なさっていることとこの答弁と矛盾しないでしょうか。
  14. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 矛盾いたしませんで、現在私どもの行っております乙号支部統合検討と申しますものは、検討対象庁五十八でございます。乙号支部百五十七ございますが、先ほどの臨司答申で御指摘のありました乙号支部原則的廃止というのには当たらないと思っております。  支部適正配置につきましては、五十九年二月時点に、筒裁適正配置支部適正配置ということで、いわゆる法曹者協議会最高裁判所法務省日本弁護士連合会で行っております法曹者協議会問題提起をさしていただきまして、そしてまず法律改正の必要な簡裁適正配置から検討していただくということで検討していただき、そして法律改正していただいて、昨年の五月にそれが実施をされた。作業の順序といたしまして、それでは支部適正配置ということで今回作業さしていただいているわけでございまして、簡裁適正配置当時から既に予定されていたところでございまして、当時の山口局長答弁もそのことを当然の前提として申し上げたものでございます。
  15. 坂上富男

    坂上委員 さらに山口代理はこうおっしゃっておりますが、後からこの問題とあわせてお聞きをいたします。  そのことによって裁判所を御利用いただく国民の方々に御迷惑をおかけしている事態が果たしてないであろうか。裁判所配置を現在及び予想できる将来の社会事情にマッチするように見直しをして、司法全体の充実を図るのが国民の負託にこたえるゆえんではないかと考えまして、問題提起をした こう言っております。  これは、本当に今行っておりまするところの支部廃止問題がこのような言葉と一体合致するかどうか、こういう点を中心にしてまずお聞きをしたいと思っているわけでございますが、参考人先生方、今回のこの廃止問題等についてどのようなお考えがございますか、日弁連事務総長の方から、簡単で結構でございますが。
  16. 大石隆久

    大石参考人 日弁連事務総長でございますが、私は六十一年度の日弁連会長当時、簡裁適正配置問題についても担当副会長として携わってまいりまして、今回法曹者協議委員事務総長としても初めから入っております。そういう関係から申しますと、地家裁支部適正配置の問題については、簡裁とは問題を異にするのではないかという視点で考えたわけでございます。  まず第一に、地家裁支部が持つ司法上の機能や果たしている役割は簡易裁判所とは比較にならないほど重要なものである。  それから第二には、最高裁から今回示された構想は、全国の乙号支部のうち五十八の裁判所、これは三七%に当たりますが、これを検討しようということはまさに国家的な大事業に当たるのではないか。そういうことから考えますと、弁護士にとって執務上便宜であるかどうかという次元の問題ではなくて、やはり国民裁判を受ける権利の保障という視点から、その支部廃止されることによる影響、特に地域住民の意思を最大限に尊重すべきではないかということを考えました。本年の二月以来、各該当の自治体あるいは議会関係者等が大変な思いで存続を日弁連にも陳情に参りましたし、ほとんどの自治体でこの問題について強い関心を示して反対決議をしている。そういう状況を見ますと、やはりこの理解を得ることがまず第一に大切ではないかということを考えました。  三つ目に、今回の適正配置司法充実強化の諸施策の一環であるということで、適正配置によって司法充実を図ろうという御説明でございます。ただ、今回廃止される支部にはほとんど裁判官配置されておりません。三つの庁以外は非常駐だったと思います。そういうことからいきますと、簡裁のときと違って、その廃止によって裁判官をほかへ回すということはもともとあり得ないことでして、これまで支部の方へてん補という形で出張していた裁判官執務時間に余裕ができ、それによってある程度訴訟の促進が図られるという利便はございましょうが、それと引きかえに、その不便を忍ぶ、時間的、経済的な負担を受ける国民にそういう充実策理解されるかどうかという問題、これは日弁連としては、そういうことで充実策を図るべきではないのではないか。  問題は、裁判官現状において不足しておる、そういうことから、現状前提としての適正配置問題であろうと思いますが、まず充実ということについては裁判官増員を図るべきではないか。現在直ちにその増員を図るということを実現することは非常に困難であるということもよくわかります。しかし、将来どういう構想裁判官増員充実していくのか、それに対して阻害している要因は何か。例えば、裁判所予算の問題あるいは事件基本とする予算編成のあり方、裁判官環境整備の問題あるいは別に三者協議で行っております司法試験改革等についての給源の確保等それぞれ難しい問題がございますが、そういうことの検討をし、当面の施策として行うということであるならば、それについて十分の理解を得るような努力をすべきではないか。  そういうことから、今回の適正配置問題については、結論的には反対するという態度でございます。  以上です。
  17. 坂上富男

    坂上委員 三ケ月先生にお尋ねをいたしますが、三ケ月先生最高裁一般規則制定諮問委員会委員とされまして中心的な御意見を吐露なさっておるやに伺っているわけでございます。  その答申内容を見ますと次のようなことがあるわけでございますが、どういうふうに解釈をしたらいいかわかりませんので御説明をお伺いしたい、こう思っておるわけでございます。  まず、地家裁支部配置明治時代裁判所配置とほとんど変わらない、こういうような観点から、人口分布の変化、交通手段の発達、こういうようなことから見ると、「見直しは、むしろ遅きに失したというべきである。」こう書いてあるわけでございます。そこで、「支部適正配置早期実施すべきであり、要綱には全面的に賛成である。」こうおっしゃっております。この意味でございますが、地家裁支部充実させようという意味なんでございますか、それともこれは指摘するように統廃合を早くした方がいい、こういう意味なのか。  それから今度は、二番目でございますが、要綱に掲げる統合検討対象支部の範囲は狭過ぎる、こういうふうなこともおっしゃっておりまして、「五十八庁については、例外的な事情を過大視することなく統合検討すべきである。」。  その次に、三番目に、「地元関係者意見も聴きながら各支部の個別的な事情をも考慮して統合の当否を判断するという検討の手法も当を得たものである。」こういう御指摘があるわけでございます。  そこで、結論とされましては、地元関係者意見聴取せよ。特に、改めて地方自治体、検察庁、弁護士会、警察、調停協会司法書士会等地元関係者意見聴取し、各地の実情を正確に把握して判断されたい。  その次に、小規模乙号支部統合でございますが、これには、存置の必要性に影響すると思われる交通機関の便数、それから道路状況管内遠隔地市町村からの所要時間等の具体的な交通事情、それから当該地域の将来の発展性、これも考慮しなさいよ。  それから、廃止支部管内住民に対する措置として、かくかくしかじかの手当てをなさいよ、こういうようなことが書かれておるわけでございます。  そして、結果的に「司法充実策の推進」ということが書いてありまして、もっと司法充実させろ、こういうふうに書いてあるように理解をしているわけでございますが、今私が御指摘を申し上げました点、もう少し御見解をお聞かせいただければありがたい、こう思っております。
  18. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 三ケ月でございます。  ただいま御紹介になりました答申の線と、それから委員会の席上で私が述べましたことは全くそのとおりでございまして、どこの辺を特に強調してお答えしたらよろしいのかちょっと判断に苦しむのでございますが、一番初めに、今回の統合というふうなものが司法充実になるのか、司法弱体化に連なるのかというのが大きく分かれるところだろうと思います。  私はむしろ、今御紹介がございましたように、もはや今のような交通事情社会事情人口動態前提にいたします以上、今のような形で裁判官がおらない裁判所、これはちょうど同じ事態に今から三十年以上前にフランスが直面いたしました。フランスの当時の人たちは、そういう裁判官が常駐しない裁判所骸骨裁判所と申しました。骸骨裁判所というものは司法の運営にとりまして決していい姿ではない。骸骨裁判所はできるだけ廃止して、そして裁判官が常駐する裁判所統合すべきである。何と過半数ぐらいの裁判所を整理統合した例がございます。  そういうところから見ましても、比較司法制度角度から見ましても、やはり現在廃止対象になっておりますような裁判官が常駐しない庁あるいは常駐させられない庁、そういうふうなものをただ置いておき、そこに人員と機構を整備して置くということが、本当に国民全般のためにあるいは司法制度のために適当かということになりますと、私はそこに述べましたようにむしろ反対でございまして、やはり時代の趨勢に応じまして司法はみずからの姿を変えていくべきでございますし、そうしてそういう角度からいたしますならば、私はむしろこの答申フランス改革におくれること三十年、それからまた不常駐庁を全部廃止するというわけじゃございませんで、いろいろな考慮から今の数に絞ってまいりましたところは、やはり法制審議会、それからこの国会の御審議をいただく法案による改正ではなくして、最高裁判所規則制定権の行使に基づくものであるということでかなり抑えた線であろう、私はそう考えておるわけでございます。ただ、基本的に申しますならば、せっかく何十年ぶりの大改革をおやりになるならば、もう少し大幅でもよろしいのではないかという意見を申し述べた次第でございます。  あとはどういうことを申し上げましたら御質問の趣旨に合うでございましょうか。
  19. 坂上富男

    坂上委員 いま一つ重要なことは、地元関係者意見聴取
  20. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 これはやはり、裁判所廃止するということにつきまして地元関係者がもろ手を挙げて賛成するという事態は、私はおよそ考えられないことであろうと思います。ともかく、裁判官が常駐しない、事件は一月に何件、こういうふうな小さい、そういう裁判所でございましても、やはり裁判所が存在するということについて愛着を持つのは当然でございます。  しかし、そういう愛着を持つということと、それから一国の司法制度全般のエネルギーをどういうふうに配分し直すのが適正かという問題との間には、やはり司法行政当局の御苦心が要るのではないだろうか。ただ、たまたま地方のその土地の住民の感情というふうなこと、これはよくわかるのでございますけれども、それがなければ一切の改革が進まないということになりましても、私はまた別な問題を生じてくるように思います。  私が委員会で申し上げましたことは、そういうふうな気持ちというものはよくわかる、したがってこういうふうなことをおやりになるについては、もう地方裁判所長が本当に丸腰になって民衆の中に飛び込んでいってほしい、そうしてなぜこういうふうな改革をしなければならないのかということについてとことんまで話し合っていただきたい、こういうことを私は申し上げたわけでございまして、住民気持ちを考慮するということにつきましては、そういう形で配慮するのがこういう問題の性質としては適当であろう、こう考えておるわけでございます。  あと何か、どこか……。
  21. 坂上富男

    坂上委員 いま一つは、乙号支部統合に当たり留意すべき点として、交通機関道路、そういうようなことについても触れられていますが、これに対する御見解
  22. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 前にたまたま、先ほど大石事務総長の御指摘のございました簡易裁判所統廃合、これは法律事項でございますので、この法務委員会で私は公述人として意見を申し上げた次第でございますが、その簡裁配置の場合の基本と申しますのも、これは道路交通事情あるいは住民動態、将来の発展性、そういうふうなファクターを考慮して考えるべきだという基本線でございましたし、そしてまた、先ほどちょっと指摘いたしました外国の骸骨裁判所統廃合の問題の基準もまた同じようなことでございます。  今回も私はそれと同じような基準でもって統廃合をおやりになるというのが、司法政策一貫性という角度から適当なことであろうと思うわけでございます。仮に前の簡裁での統廃合のときの基準というふうなものと余りにも食い違った統廃合基準ということをわずか二年足らずの間に実現するということはかえって問題ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  23. 坂上富男

    坂上委員 結構でございます。  裁判所を含めまして、参考人先生にもこの問題をひとつ御検討いただきたいのでございますが、簡易裁判所廃止をいたしました。そして、その廃止をした裁判所管内住民の諸君が裁判の提訴について一体どういう対応をしたかということに対する資料になると思うのでございますが、これをどういうふうに御理解なさるのでございましょうか。  私は新潟の出身ですが、巻の簡易裁判所廃止になりまして、新潟簡裁統合になったわけでございます。これが六十二年の五月からでございまするから、六十二年の五月から六十三年の四月までの一年間をとってみますると、巻の簡裁が六十二年の五月から六十三年の四月まで——六十三年から実施でございますか、失礼しました。この一年間、巻の簡裁では四十三件ありました。新潟簡裁では千二百五十八あったわけであります。合計いたしますと千三百一件でございます。これが今度六十三年の五月から平成元年の四月まで統計をとってみますると、新潟簡裁統合されたわけでございますから、どれぐらいの数になったかといいますと九百五十四件、こういう数字でございまして、その差が、約二百五十ぐらい件数が減っておるわけでございます。  それから、今度は富山県でございますが、朝日簡裁廃止前は七十八件あったのでございます。魚津簡裁が九十八件ございまして、合計百七十六でございます。朝日魚津統合になったわけでございますが、これが百四十七ということになりまして、三十件減りました。それから今度は、同じく富山城端簡裁というのでしょうか、これが七件ありました。そして砺波簡裁が三十五件で、年間四十二件でございました。これが砺波統合されまして三十五件になりまして、差し引きいたしますと七件減っているわけでございます。  もちろんふえているところもありますが、こうやって減っているところが出てきておるわけでございます。これは最高裁としてはどういうふうなお考えに立っておられるか。  私は、これは裁判を受ける権利を住民が放棄しているのだろうと思うのです。いわば遠距離、いろいろな事情からいって、もう裁判所に行くことはないわ、泣き寝入りしようとか、こうしようというような結果が出ているのじゃなかろうか、私はこう思っておるわけでございます。私は、もちろん簡裁廃止について強く反対をいたしました。しかも、私は巻簡裁について討論いたしまして、その反対理由を詳しく述べたのでございますが、一顧だにされませんでした。そんなような状況でございまするから、さてこの結論を見てみますると、こうやって事件が減っているということは大変なことでございます。  もちろん、これは最高裁調査をいただいたものでございますが、ただし書きはついています。「廃止簡裁の管轄区域に属する事件数については把握していない。」こう言っているのです。だけれども、これはやはり有力な資料です。そして、減っているということは、やはり私はこの巻の地域の住民あるいは朝日の地域の住民の皆様方が権利放棄、裁判所に対する裁判を受ける権利を泣く泣くやめているのじゃなかろうか、放棄されているのじゃなかろうか、こんなふうに思っておりまするが、最高裁、まずどのようなお考えでございましょう。  それから、小田中先生でございますが、先刻のことも含めまして、今こんなような資料も出ているわけでございまして、まず最高裁答弁をいただいてから、また先生のこの廃止問題に対する御意見を賜りたい、こう思います。
  24. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 委員指摘の数字は私どもの方でお届けいたしました数字でございまして、そのとおりでございます。  長期的に申し上げますと、廃止した簡裁関係事件が減るということは何ら異とするに当たらないところでございます。人口の減っているところ、過疎化現象のあるところの簡易裁判所廃止いたしましたので、むしろ長期的に見れば事件の減傾向のあるところを廃止したわけでございますので、これが減ってくるということはある意味では自然なことでございます。  しかし、短期的に見ました場合にただいま先生の申されたような数字がどうかという問題はございます。私どもの方では、私どもの職員団体の方からそういうことを言っているようでございましたので、調べました。先生既に御案内のこととは思いますが、簡易裁判所事件と申しますのは六十年ごろがピークでございます。その後簡易裁判所事件は減少傾向にございます。例えば、簡易裁判所適正配置実施されました六十三年の五月から十二月までの事件数と、その前年の六十二年五月から十二月までの事件数を見ますと、全国の簡易裁判所で一八・二%の事件が減っております。これは廃止した簡裁関係あろうとなかろうと、全般的な減少傾向でございます。先生の挙げられましたような簡易裁判所関係で確かに事件の減少がございますが、またお届けいたしました資料でお示しいたしたとおり、ふえているところもございます。しかし、全般的に見まして、廃止簡裁の受入庁の事件数が減っておりますというのは、これは全国的な簡裁事件減の傾向を反映したものでございます。  それから、もう一つ御説明させていただきたいのは、そういう廃止簡裁管内事件が減っているではないかという指摘がありましたので、廃止いたしました簡裁の管轄区域内に住所を持っている人が訴えを控えるということがあるだろうかということを見るための一つの資料としまして、その廃止簡裁管内住民が原告あるいは調停の申立人になっている事件数というものを、簡裁廃止後と廃止前と個別の記録に当たって調べてもらいました。そういたしましたところ、これも確かに件数は減っておりますが、一二・一%の減少でございます。全国の簡裁の減少が一八・二%でございますので、むしろ廃止簡裁管内にある事件の件数の減少はそれを下回っているということになっておりまして、このようなことから見まして、私ども、必ずしも簡裁廃止したために申し立てが減ったあるいは訴えが減ったということは、今の数字からは直ちに言えないのではないかと思っております。もちろんこれにつきましては、今後も事件数の推移、その原因等について十分検討してまいらなければならないと思っておりますが、簡裁廃止したために申し立て、訴えがちゅうちょされて減ったのだ、こういう言い方は数字に基づくものとしては正しいものではない、このように考えております。
  25. 小田中聰樹

    ○小田中参考人 小田中でございます。  ごく一般論、抽象的なレベルで申しますと、地家裁支部適正配置の問題というのは、これは検討に値する問題でありましょうし、また場合によっては必要な改革を加えるということが出てまいりましょう。ただしかし、問題は中身だと思うわけでございます。検討する際の姿勢といいますか、もっと正確に言えば理念、目的、それからさらには検討する際の基準の問題、さらには結果ないし影響をどう予測するかという問題、さらには改革をする場合の手順の問題ということになろうかと思います。  先ほどから出ておりますところでも明らかなように、その評価の基準というものは、私は国民裁判を受ける権利というものでなければならないと考えるものでございます。この国民裁判を受ける権利というものは、御承知のように憲法三十二条で保障されている国民の権利であるわけでございます。この権利につきましては、その沿革をたどってみれば、十七、八世紀ごろからのイギリス、それからフランス、ドイツ、さらにはアメリカ等の沿革があるわけでありますが、我が国に限ってみましても、明治憲法時代からこの権利は保障されてきているところであります。  ただ、ここで我々が考えなければならないのは、現在のように基本的人権というものを非常に保障しようとする、しかもそれを司法裁判によって保障していこうとする、そういう基本的な方向をとっております現在の憲法のもとにおいては、この裁判を受ける権利というものは、単に消極的あるいは形式的なものではないということでございます。この権利は、いわば基本的人権を保障するための基本的人権ともいうべき非常に重要な位置を持っているものであり、憲法上重要な意義を持っているもので、そしてその発現態様というものも豊富な形でとらえられなければならないというふうに私には考えられます。そして、このような考え方は、最近では憲法学界のみならずその他の訴訟法学者等の間でも非常に有力というよりは、むしろ通説になりつつあるというふうに言っても過言ではないように思われるわけであります。  具体的にその権利が裁判所配置等の問題についてどのように発現するかということが問題になるわけでございますけれども、それをわかりやすく言えば次のようなことになるのではないだろうかと私は考えるものでございます。  それは、まず第一に、裁判所が身近にあるということでございます。それから第二には、その裁判所国民に対して平等に開かれているということだと思います。それから第三番目には、その裁判所が人的、物的両方の側面において充実したものでなければならないということだと思います。  国民に身近な裁判所というのは、これは距離だけの問題ではございませんで、もちろん距離もありましょうが、それだけではございませんで、執務体制等も含めて、とにかく国民に対して身近な、手の届くようなものでなければならないという意味でございます。  それから、国民に対して平等に開かれるということの意味は、これは国民の間にはさまざまな階層、条件の差がございます。端的に言えば、過疎地におられる方もおりましょうし、またこういう大都会、過密地におられる方もおられます。あるいは経済的なレベルで言えば、貧困な方もおられますし富める方もおられます。あるいは教養のある方もおれば教養のない方もおる。法律的知識のない方もおればある方もおる。いろいろな条件の違いがあるわけでございます。しかし、その条件の差にもかかわらず、国民に対して平等に開かれている、平等に利用しやすい、そのことが裁判を受ける権利の非常に具体的な、重要な中身の一つではなかろうかと考えます。  それからまた、第三に、充実した裁判所でございます。単に裁判所があればよいというのでは決してないわけでございまして、国民要求、ニーズにこたえるような、人的、物的に充実した裁判所でなければならない。  以上の点が、私は裁判を受ける国民の権利というものが裁判所配置等の問題について発現する場合の具体的な態様であるというふうに考えるものでございます。  このような基準に照らして、今回の最高裁一般規則制定諮問委員会の御答申、あるいはその基礎になりました最高裁でおつくりになりました要綱というものが果たして充足されているであろうかというふうに私は問題を立ててみたいと思うわけでございます。そして、そのような基準に照らして見た場合に、この要綱及び答申には、基本的に見て、理念、目的の点が一番はっきりしていると思いますが、国民裁判を受ける権利というものについての観点が希薄という印象を免れないのではないだろうか。これは権利の問題でございまして、単に便益、便宜の問題でもなければ感情の問題でもないわけでありまして、権利の問題として考えてみた場合に、これは非常に重要な問題ではなかろうか。先ほど申しましたように、裁判を受ける権利というものは、基本的人権を確保するための基本的人権、もっとつづめて言えば基本的人権の基本的人権ともいうべき重要な権利でありますので、その権利については十全な保障が必要である。にもかかわらず、今回の適正配置に関する答申及び要綱にはその姿勢が希薄ではないだろうか、これが私の一般的な感想、印象でございます。
  26. 坂上富男

    坂上委員 さらに御質問を続けるわけでございますが、法務局の廃止に当たりましては、廃止をする庁は建物の古い方を優先的に廃止されたようでございます。私の知っておる与板の法務局と栃尾の法務局があります。栃尾の法務局は、年間六千件の事件といいましょうか手続がありまして、与板の方は三千件でございます。しかし、建物を見てみますると、栃尾の方が古しゅうございまするものですから、栃尾が廃止になりまして与板が残りました。  さて、今回の裁判所廃止問題を見てみますると、これはなかなか問題が多いんじゃなかろうか、こう思うのでございます。無計画な行政が行われているんじゃなかろうか、こう思うのであります。  廃止対象に長野の木曽があります。これは昭和六十一年新築でございます。静岡の掛川があります。六十年でございます。それから長野の飯山がございますが、昭和六十年でございます。それから常陸太田、五十九年、茨城でございます。木次と言うのでしょうか、これが五十七年、島根県でございます。篠山、五十六年、兵庫県でございます。それから小浜、五十六年、福井県でございます。五十六年、水沢、岩手県でございます。五十五年、大町、長野県でございます。それから水口、昭和五十五年の滋賀県でございます。それから佐伯、昭和五十五年の大分県。それから富岡、昭和五十四年の群馬県。まあこの十年、新築された支部の名前を書き出していただきまして御質問するわけでございますが、せっかくこうやって十年以内につくった建物が利用されなくなる、これはなかなか問題だろうと思うのであります。  法務省の方は、何か建物の早い遅いによって相当、廃止基準を決められたようでございます。裁判所は一体この問題をどういうふうにお考えになっておるのか。うちらの委員であります清水委員が言っておりました。何だって裁判所というのはこういうむだなことをするのですか、それだったら建てなければよかったじゃないか、こう言っておるわけでございます。真っ向から反対いたしますと言って、きょうは私に意を託されておられます。そういうような状況であるわけでございますが、こういうようなことは最高裁は一体どういうふうにお考えになっておりますか。日弁連としてはどうお考えになっておりますか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  27. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  今、委員指摘のような経過で支部が新築されてまいりましたことは、そのとおりでございます。  私どもは、庁舎を新築いたします場合に、基本的には古い木造の庁舎をなるべく早く近代的なものに建てかえたいということでずっと進めてまいったわけでございます。今の支部の建築も今申し上げましたような経緯のうちにでき上がってきたものでございます。  いろいろの御指摘がおありのこととは思いますが、私ども支部あるいは簡易裁判所適正配置を打ち出しましたのは、御承知のとおり五十九年の二月でございます。その五十九年の二月以降に新たに予算を要求いたしまして建てましたところといいますのは、今御指摘の中のうち木曽支部とそれから飯山支部でございます。木曽支部の場合は、実はこれは場所は変わったわけでございますけれども、もと建っておりました裁判所の敷地について町の方から強い譲渡要求があったわけでございます。町民総合文化会館を建てたいということで、裁判所のありました場所が非常にそれに適地だということでぜひそこが欲しいという御要求が町の方からあり、私どもの方として、適地があれば町の御要望にもお沿いしましょうということで、かなり長い経過の後に、ちょうどこの時期に適地が見つかった、町の方の御要望もあるので新しく建てたということになります。それから飯山支部は、委員も御承知のとおり日本有数の豪雪地帯でございます。ここに古い木造の庁舎をいつまでも放置しておくということになりますと、やはり執務環境の問題からいたしましても、また安全上の問題からいたしましても問題がございます。そういうこともありまして、問題を提起した後に建てました二支部があるのは事実でございます。  今回の場合、実は地裁、家裁の支部廃止いたしますけれども簡易裁判所が残るわけでございます。したがいまして、現在ある庁舎は今後は簡易裁判所として使用していくということになるわけでございます。もちろん、支部として建てられておりますので若干の余裕がある庁舎になることは間違いございませんけれども、まあ私どもといたしましては、従前事務室の片隅で行っておりました受け付け相談等につきまして、こういう余裕があるところにつきましては独立の部屋で相談等をやることによって有効に使えるものと考えております。
  28. 大石隆久

    大石参考人 日弁連会議の中で、先生が御指摘になったような強い意見はありました。ただ、この問題につきましては、各地でどのような経過でそういう庁舎を建てていったのかということまでは日弁連としては検討しておりません。  私は浜松という甲号支部で三十年近く仕事をし、すぐ近くの乙号の掛川支部でも仕事をしておりますので、その建てかえたときの状況はよくわかるわけなんですが、個別に申しますと、やはり掛川の支部が非常に木造で古くて二階へは上がれないというようなこともあったり、個別の事情はいろいろあったろうと思います。そういうことよりも、ただいまの最高裁説明で、簡裁は結果的に残るからそれで充実したサービスができるということですが、三者協議の初めの段階では、地家裁支部廃止した場合に、そこの併置簡裁は根こそぎ廃止という構想を打ち出されまして、これについては、日弁連としてはそれこそ大反対をして、それを撤回していただいたという経過がございます。結果的に言えば簡裁が残ることになりましたけれども構想自体からいくと先生のような御指摘が当たるのではないかなというようにも思われるわけでございます。ただ、今後の個別事情の考慮というところでは、新しく建てた庁舎の問題というのは重要な問題として考えるべきではないか、そのように思っております。  以上でございます。
  29. 坂上富男

    坂上委員 さて、裁判所の方、いかがでございましょうか。今、日弁連事務総長答弁もあったわけでございますが、まず一つは、併置簡裁は今後もう廃止をしないのでございますか。それから、最初は支部廃止して、間もなく併置簡裁廃止しようとお考えのようだったのでございますが、これはもう完全に心配ないのでございますか。もうこうやって簡裁廃止をする。今度は支部廃止する。そして今度は支部のあった簡裁廃止する。片っ端からこうやって廃止をされたのでは、住民の立場としてはもうたまったものではありません。一つの裁判所を、建物を新築するなんというのは住民は大騒ぎをするのです。もう関係者全員が何回も上京して陳情したりいろいろのことをして、やっとこの新築建物をつくるわけでございます。今後はこの廃止支部にかわるべき代替処置を講じますので、それを十分利用できるのだから価値があるのだ、こうおっしゃいます。そうだとするならば、簡裁やめませんか。このまま存置させるということで変わりはないのでしょうか。また三年か五年たったら、これやめだなんと言われても大変困るわけでございますが、裁判所、どうされます。
  30. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 先ほど大石参考人のおっしゃったことで若干誤解を招く点があろうかと思いますので申し上げさせていただきますが、私ども昨年の六月からいわゆる三者協議会でこの問題を議論していただきました際に、協議のテーマといたしまして、当初はこういう支部適正配置に関する検討基本的な方向、それをどのあたりにすべきかという検討をお願いしたわけでございます。  その際に、支部適正配置とともに、簡易裁判所につきましても次のような問題があるということを申し上げさせていただいたわけでございます。さきにさせていただきました簡裁適正配置につきましては、法制審議会で有識者を含めました多数の方々の御意見をちょうだいいたしました。それによりますと、簡易裁判所におきましては事件数が百二十件以内、そして受入庁までの時間がこれこれ、そういうところでの線引きが行われたわけでございます。その枠内に入る簡易裁判所については廃止検討すべきだということになったわけでございます。私どもとしては、その法制審議会答申との関係を考えたわけでございます。支部のあるところには必ず簡易裁判所がございますが、その支部廃止した場合に簡易裁判所が残ります。その簡易裁判所は、いわゆる独立簡裁という形に残りました場合に、前の簡裁適正配置に関する法制審議会答申検討枠の中に入る事件数、受入庁への時間という簡裁が若干ございます。そういうものについて、それをどうすべきか、法制審議会答申との整合性を考えればそれについても廃止検討しなければならなくなる。これは、支部廃止するところにある全部の簡易裁判所をなくするなどと申し上げたことは一度もございません。支部をなくした場合に独立簡裁になった、その際の前回の法制審議会答申検討枠の中に入るような簡裁についてはそれを検討すべきかどうかという問題が生ずる、そういうことを問題提起させていただいたわけでございます。  そして、三者協議会の協議の当初の段階でそのことについて御意見をお聞きいたしましたところ、日弁連の方からは、それは問題である、反対であるという御意見をちょうだいいたしました。あるいは法務省の方からも御意見をいただきました。そういったことをいろいろ踏まえまして、そして十二月の段階でさらに協議が進みまして、我我の方で支部廃止する検討の範囲をお示しする段階に至りまして、その時点では簡裁につきましては今回その検討をすることはしないということを明らかに申し上げたわけでございます。  そして今後の問題といたしましても、私どもこの委員会でもさきに申し上げさせていただいたわけでございますが、簡易裁判所適正配置を第一次適正配置といたしますと、今回の支部適正配置は第二次適正配置でございます。これは一連のものでございますが、それらと一連のものにあるものとして第三次適配として簡裁統廃合検討するということはいたしませんということをこの前もこの委員会で申し上げさせていただいたわけでございます。  相当先の将来のことになりますと、これまた社会事情がどのように変わるかわかりませんし、今の時点で私どもがとやかく申し上げることではございませんので何とも申し上げられないわけでございますが、五十九年来進めてきたこの一連の適正配置作業としては今回の支部適正配置をもって区切りをつけさせていただきたい、そのつもりでおります。近い将来、三年先等に簡易裁判所をまたなくするということは考えておりません。むしろ、簡易裁判所国民に利用していただきやすい身近な簡易裁判所にするということで、簡易裁判所充実策、種々工夫をこらしてまいりたい、このように考えているところでございます。
  31. 坂上富男

    坂上委員 さっきの答弁とあわせて申し上げたいのでございますが、簡裁廃止によるところの影響というのについては、廃止地区におきます低減率といいますか、事件件数の減ったのは約一二%、それから簡裁全体で減ったのが一八・二%だ、こう言っているわけでございます。これはやはり重大な発表だろうと私は思うのです。一二%しか平均よりも減ってないということなんですね。でありますから、やはりそういう過疎の地域、廃止になる地域というものは事件としてはなかなか問題があるものですからその一二%しか減ってないのであって、普通ならば一八・二%減るべきものが一二%になっているというのは、それだけやはり裁判を求める声というのが大きいのじゃなかろうか、私はこうも思っておるわけでございます。  それから今度、裁判所、この点はどうお考えでございますか。具体的で恐縮でございますが、私の新潟県の場合の甲号審判件数です。これはその五種類の中に入っておりませんが、これは大変な、家庭裁判所等に対する重要な存置する基準になるのだろうと私は思うのでございます。  廃止対象になっております村上ですが、甲号審判が五百七十一、それから柏崎が六百十四、それから六日町が七百三十七、糸魚川が五百十四、この数字というのは相当な数字でしょう、平均的に見てみますると。これがこの五種類の中に算入されていないわけでございます。しかも甲号審判というのは、本当に住民家庭裁判所に気楽に家庭問題を解決していただきたい、こうやって気楽に出てきてお願いができるという制度なんでございます。でありまして、これだけの数字というのはやはり過疎の地域、いわゆるこういう不便な地域においては大変多いのじゃなかろうか、こう思っているわけでございます。特に新潟の場合、私が調べる範囲において調べた数字でございます。多分、きっと過疎の地域はこういう甲号審判というのは多いのじゃなかろうかと思っておりますが、これはどういうふうに評価しますか、この数字。
  32. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 ただいま委員指摘事件のことは、事件は甲類審判と申す事件のことだと存じますが、家庭裁判所の甲類審判事件、これは確かに事件数としては相当数の事件数がございますし、委員指摘支部の甲類審判事件の数もそのとおりでございます。  私ども、いわゆるこの相関表で基本的指標として用いましたのは五種事件という事件に限っております。これは訴訟事件、調停事件家庭裁判所の乙類審判事件、そういう当該事件の処理に当事者の出頭を繰り返されることを要するような、そういう主な事件に限ったわけでございます。これは前回の簡易裁判所適正配置の際に、簡易裁判所についてはいわゆる三種事件ということで基本的指標をとらしていただいたわけでございます。それで法制審議会も全員一致でお認めいただいたものでございますし、今回もそれと全く同様の手法で、いろいろな事件の中で特に当事者の出頭との関係で注目しなければならないこの五つの種類の事件、これは調停事件まで含めまして取り上げさせていただいたわけでございます。  そういたしまして、一応の相関表というのをつくって、そしてその検討枠に入った検討対象庁の中で、五種事件以外の、家庭裁判所の甲類審判事件を含めましてその他のもろもろの事件事件数というものをそれぞれの個別事情として見るということを申し上げておるわけでございます。甲類審判事件、全然無視するということではございませんで、このあたりは繰り返し繰り返し申し上げておるところであります。  ちなみに甲類審判事件は、その八割以上を占めます子の氏の変更とか相続放棄とかあるいは保護義務者選任等の事件につきましては、申立書の添付書類あるいは書面照会に対する回答書等の書面審理によって処理することが可能でございます。私どもの方、今回支部廃止いたしました場合に、簡易裁判所におきまして家事の、家事事件関係につきましても窓口相談と申しますか、手続案内と申しますか、そういった面を充実したいと思っております。定型の申立書を備え置いたり、あるいは手続の御案内のパンフレットを置いたり、そういうことをいたしまして、そして家事事件についても残る簡易裁判所で案内させていただきますれば、そしてそこにある定型申立書で申し立てを書いていただければ、基本的にはそれを郵送してくだされば、あとは基本的には出頭を要しないで裁判所が処理さしていただける事件でございます。そういった観点から、この相関表における基本的指標からは甲類審判事件を除いたわけでございます。  事件としましては、その他もろもろの令状事件だ、保釈事件だ、いろいろな事件がございます。そういったものも全部同じ比重で件数を数えるということで果たしていいかどうかという問題がございまして、簡易裁判所の場合の手法と全く同様の手法で今回もさしていただいたということでございます。
  33. 坂上富男

    坂上委員 日弁連事務総長、いかがでしょうか。この相関表についてどのようなお考えでございますか。特に、甲類審判については個別事情として考えるけれども基本的な計算の仕方には入れなかった、こうおっしゃっておるわけでございます。相関表の見方、それから立て方、日弁連はどのようなお考えですか。
  34. 大石隆久

    大石参考人 相関表そのものについての日弁連の考え方としましては、いわゆる五種事件、これは訴訟中心のものでございますが、そういうものあるいは民事、家事の調停事件、それから乙類審判事件。五種事件それと、それが最近五年間の平均で一年間二百四十件というところで線を引きまして、それから順次件数が少なくなっていくところに応じて廃止庁と受入庁との間の交通所要時間が一時間からだんだん長い相関表をつくったわけでございますが、まずこの基準を決めた二百四十件というものについて、なぜ二百四十件なのかという合理的な理由がないのではないか、この点が三者協議会以来、日弁連最高裁と一貫して食い違った点でございます。  例えば、簡裁のときは百二十件のところで切ったわけですが、これは年間の平均の三分の一というところで切ったというふうに聞いておりますが、さらに重い事件を扱う地家裁支部の場合に年間平均のほぼ半分に当たる二百四十件というところは何だろうかというようなことでございまして、その基準について合理性が考えられないので、それをもとにして検討する、その位置づけによって検討するということは納得できないという姿勢で来たわけでございます。  その中には、説明としましては、確かに五種事件以外、甲類審判事件その他についても全部個別事情として考慮するということは何回も説明を受けております。ただ、それを相関表の位置づけによって配慮するということでは納得できないということで来たわけでございます。甲類審判事件の点につきましては、司法統計年報にも全部出ておりますので、相当多数あることも事実でございます。これは書面審査が多いということは事実でございますが、受け付けてもらうにはやはり御本人なりが裁判所へ出かけていって、こういう問題について申し立てをしたいということを申し上げる、私の見ている限りでは大変親切にそこで説明もし、教えてやって、それでやっておるということでございまして、ただ備えられた書面を見てあとは出していけばいいというようなものではなくて、やはり書面を出すまでの段階での司法サービスというものが家庭裁判所においては非常に多く行われておるというのが実態でございます。こういう甲類審判事件あるいは、そのほかまだ数値には出ませんけれども、家事相談というものも非常に多用されておりまして、非常に残念なことでございますが、こういう過疎地においては弁護士の事務所もないというところも多いわけでございまして、国民としましては、裁判所へ行ってそういう相談をするという司法サービスも非常に行われておるという実態から見ますと、単に五種事件だけの相関表ということについては問題があろう、そういう見解でございます。  以上です。
  35. 坂上富男

    坂上委員 さて、今申しました甲類審判問題でございますが、今私が挙げました四つの支部は五百件から七百件に及んでおるわけでございまして、東京管内の宇都宮家裁の栃木支部あるいは足利支部あるいは前橋の桐生支部あるいは長野の上田支部、飯田支部、いずれも甲号支部でございますが、これに匹敵する事件数であるわけであります。そのほか執行、保全、これも相当数でございます。でありまして、確かに訴訟事件が少なくとも、こういうような事件というのはやはり地域の特殊性の中から相当出てくるのではなかろうかと、私は実は思っておるものでございまするから、ひとつ重要な参考資料にしていただきたい、こう思っておるわけでございます。  その次に、今度は地元関係者意見聴取の問題でございます。  この答申には、この答申を機会に、改めて地方自治体、検察庁、弁護士会、警察、調停協会司法書士等の地元関係者意見聴取して、各地の実情を正確に把握するよう努められたい、こういう話でございますが、今どの程度進んでいますか、最高裁
  36. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 地元に対する説明あるいは地元からの御意見聴取ということにつきましては、昨年十二月に検討対象庁として具体的な支部の名前を出させていただきました段階で、暮れから一月にかけまして、各地家裁の所長方に管内自治体等をくまなく回っていただきまして御説明申し上げ、そしてその際に、御意見をお聞きいたしました。またその後、この問題が三者協議会で協議されております過程で、それぞれの自治体からは各地方裁判所家庭裁判所の方に何度となく陳情されておられます。その際に所長がお会いしまして、詳しいことを聞かせていただいておりますし、あるいは最高裁の方へも直接お越しになられる自治体の数も非常に多うございます。私、お相手しただけでももう既に五十回以上、延べ人数にしますと何百人かになろうかと思いますが、来られます都度できる限りの都合をつけて、三十分余りあるいは場合によっては一時間近くお話を承り、また私ども説明させていただきまして、またそれに基づきまして、その後、各自治体からそれぞれの支部の具体的な事情を詳しく書いていただきました書面を送って知らせていただいたりしております。  そうしたことで、今回の一般規則制定諮問委員会答申を得るまでの間に、相当の事情は把握させていただいたつもりでございます。しかしまた、その答申を得ましたので、改めてこの機会にということで、現在、地方裁判所家庭裁判所の所長が、先ほども申し上げましたとおり、当該支部管内関係機関自治体等を回っていただいて鋭意御意見を聞いていただいているところでございます。そういう状況でございます。
  37. 坂上富男

    坂上委員 さてそこで、その意見の聞き方と事情聴取の仕方について私は少しお聞きをしたいと思っております。大変形式的な意見聴取に終わっているのではなかろうか、こういうことでございます。  例えば地元関係者が何月何日の要望書のとおり、廃止には反対です、こうやって話をし出した途端、その出かけられた裁判所の責任者の方が、わかりました、失礼します、こう言って帰ったというのです。どこかおわかりですか。  その次、事情に通じていない自治体関係者にいきなり専門的、個別的な説明をして、直接反論もありません、こういうことになりまするや、一応反対しているものの具体的理由は薄弱であるとして意見聴取を打ち切っている例も報告をされてきております。これは裁判所の判決を書いたようなものだ。これじゃ問答無用だ。どうぞひとつ参考人先生、特に三ケ月先生、こういう事実がやはりあることはあるのです。一体これはどういうふうに理解をしたらいいのか。もう五十八庁決まったのだからこのままやりますぜ、あなた方余り文句言わぬでくれ、こういうお話のようにしかとれません。口頭聴取だけでなく、文書をもって示された地元関係者意見も尊重されなければならないと思っておるわけでございます。そのためには相応の期間を置いて意見聴取をすべきだと思っております。  そこで、今度は最高裁判所地元住民らの意向を聴取するについて甚だ遺憾の話を聞きました。本年七月、大分県議会議長らが陳情した際、応接に当たった職員が逆にしかり飛ばすことがあったと聞いております。また十月十一日、関係地元自治体住民が東京で集会を持ちました。私も行った。中村先生も行かれました。そして、その決議を持って陳情に最高裁に赴いたとき、応接の職員が、あなた方が反対したって実施するものは実施するのだ、こういう放言をしたと報告されております。まことに遺憾のきわみでございます。私は質問通告の中に、応対した職員の官職、氏名を言ってくれ、こう言っておりますが、ここでは聞きません。後からで結構でございます。私の部屋にお答えをいただきたいのでございますが、こういう声が上がっているわけであります。あるいはこんなことはありませんとおっしゃるかもしれませんけれども最高裁判所のこれに対する対応について私は言っているのです。態度について言っているわけであります。しかも、裁判を受ける権利、これの喪失につながるのじゃないかと思って心配をしているから聞いているわけでございます。何か臨時行政調査会の答申にのっとって、いわば裁判の独立として憲法で保障されております裁判所をこうやってばったばったと廃止をする、しかもその廃止に当たりましては問答無用、こういうような態度であってはいかぬと思っているわけであります。  私も簡裁廃止のとき質問申し上げました。一体、同意を必要とするのですか、理解でいいのですか。皆さん理解といえば非常にいい言葉だ。二度も三度も、廃止になるのです、廃止になるのです、そうですか、それじゃどうしようもありませんかねというのが地方自治体答弁です。これを理解をされたなどといって理解されたのでは、こっちはとんでもないことでございます。そんなような意味におきまして、この支部廃止問題というのは法律でないだけに慎重にしていただきたいし、日弁連総長がおっしゃいましたとおり、いわば裁判を受ける権利の剥奪につながるものでございまするから、私は大変な問題だろうと思っているわけであります。最高裁、こういう具体的事実についてどのようなお考えですか。また、事実このとおりあったかどうかわかりませんけれども、少なくとも類似のことがあったのだろうと思いますが、いかがですか。
  38. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 今おしかりいただいたわけでございますが、私どもの方としてはそういう事実はないと信じております。  具体的な例を出されました大分県議会議長が七月に来られたということでございますが、七月にお見えになったということはございません。大分県議会議長からは陳情のため、最高裁とかあるいは大分地家裁に参られたということはございません。  それからもう一つの例でございますが、十月十一日に最高裁の方へ来られた方に対して応対した職員が非常に失礼を働いたということでございます。応対させていただいたのは私あるいはその他の総務局の職員でございます。  当日、雨が降っていてタクシーが拾えなかったので全員来られなかったということでございますが、五つの自治体の方がお見えになられました。その際も、私はどうしてそういうことが伝わるのか非常に意外でございます。非常に和やかな雰囲気の中でむしろ静かにお話を聞かせていただき、私の方の説明も静かに聞いていただいたと思っております。  ただ、お越しになられました自治体の中のお一人の方、町長がいらっしゃいまして、私これまでも既に三回お会いいたしたと思っておりますが、その方が今回の支部統廃合に対する反対ということで、ある時点におきましてマイクロバスに横断幕を掲げ、あるいはたすきがけ、鉢巻きをして、そういった格好でそれぞれの地元裁判所あるいは高等裁判所の方にいらっしゃったようなことはございました。それに対しまして、私の方は地元意見なりは静かに聞かせていただくので、特に裁判所事件を裁くところであるので、そういう派手ないわゆる反対のデモンストレーション的なことをされると、何か事件裁判までがそうした声に押されて裁判するのではないかと一般の国民に誤解を与えては困るので、そういうことは慎んでいただきたい、私たちは反対の声の大小ではなくて、その中身によって客観的な事情を公正に見させていただいて判断させていただくのです、そういう点ぜひ御理解いただきたいということを申し上げました。反対してもやる、そんなのむだだとか、やるものはやるなどというようなことを決して申し上げたわけではございませんで、もしそのことで御不審がございましたら、当日は遠野市長さん、そのほかの自治体の方もお見えになられましたので、そういう方々に聞いていただければと思います。  ちょっと手前みそで申しわけありませんが、先ほど来申し上げましたとおり、陳情に来られた方には私ども予定を変更できるものは変更してでもお会いいたし、三十分あるいは一時間非常に丁寧に応対させていただいているつもりでございます。そういったところから少なからぬ市長さん、町長さんから、私は他官庁の陳情の状況は知りませんが、ほかの行政官庁と違って裁判所は非常に誠実に対応していただける、感謝しておりますということをお礼を言われたことがございます。これは私ども最高裁の方もそうですし、地裁に行きましても高等裁判所に行きましても非常に誠実な対応をしていただけるということをおっしゃっていただいております。私、そういう陳情の方々、お見えになられた方々に対する応対については自信を持って申し上げられます。裁判所は決してそういう無礼なことはいたしておりません。ぜひ御理解いただきたいと思います。
  39. 坂上富男

    坂上委員 各地方における具体的な陳情あるいは事情聴取の仕方について、いろいろまちまちでございましょうから御答弁ございませんでしたが、そういうこともあることだけ御理解ください。決して今最高裁でおっしゃったようなことだけではないのでございます。どうぞ、地元関係者意見聴取はきちっと真摯に受け取りをいただきまして、ただ聞きおくだけではだめでございまして、ひとつ十分そしゃくをしていただいて生かしていただきたい、こう思っております。  さて、いま一つ、「存置の必要性に影響すると思われる交通機関の便数、道路状況管内遠隔地市町村からの所要時間等の具体的な交通事情当該地域の将来の発展性等についても考慮すること。」といって答申がなされております。これは個別的にどのような御配慮をいただけますか。  例えば新潟なんかは雪がすごいです。三メーターってどのくらいの高さかわかりましょう。三メーターのところがあるのです。こんなところを、幾ら道路がよくなったって雪があげられるはずはないのです。そういうところから来るわけでございます。今先生方にこの時間表をお配りいたしました。これだけでも大変だろうと私は思っているわけでございます。今言った個別的な事情、どの程度御配慮いただけますか、最高裁
  40. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたが、私ども一応の検討対象庁を切り取るための相関表におきましては、例えば受入庁への所要時間というのは、当該支部所在地の中心街から公共交通機関によって受入庁の裁判所に行くまでの時間を計算して出しております。これにはもちろん乗りかえのための待ち時間、あるいは駅におりてからの徒歩時間も含めたものをとらせていただいております。  それに対する御批判の一つは、それは支部のある町の中心地からの時間で、管内にはもっと時間のかかるところがあるという御指摘がございます。それは私ども十分承知しております。そして、そういった管内の奥深いところから受入庁まで行かれる時間がどのくらいかかるかといったことも見させていただくということを申し上げております。また、先ほど先生の御指摘がありましたような冬季の交通事情、そこは豪雪地帯でどうなるかといったことも個別事情として十分考えさせていただくということは申し上げておるわけでございます。  ただ、この種の裁判所なりをなくするという作業につきましては、どうしても横並び、公正、公平に事を進めなければならないという問題がございます。そのために一つの目安としてこういう相関表というのをつくったものでございます。これを管内の各市町村からいろいろとりますと非常に問題がございます。何枚もの相関表になる。それが果たして一般の方に見ていただきやすい簡潔で一覧性のあるものになるかという問題もございますし、また人口がわずか五百人ぐらいの最遠地の村からの受入庁までの時間をとって相関表をつくるということも、必ずしも当該管内の平均的な姿を反映させるものではございません。  そういったところから、人口も多くて事件の出方も最も多いと思われるのが一般である裁判所支部の所在地の中心地からの交通時間を相関表の上では設定させていただいて、一枚の簡潔でわかりやすい表にしました上で、これの位置づけを見ながら、先ほど申し上げました個別のもろもろの事情を個別事情としてそれを考えて、そして相関表の位置と両方にらみながら、どこを残し、どこを廃止するかということを決めていきたい、こう考えておりますことはかねがね何度も申し上げておるわけでございますが、そこの御理解が得られないのか、あるいは御理解なさった上であえてそうおっしゃるのか存じませんが、裁判所はこういう相関表によって画一的に事を進めようとしているという御批判が弁護士会あたりからなされておるわけでございます。私どもは、画一的に進めるのではなくて、検討対象庁につきましてそれぞれの個別の事情をもう一本の柱として見させていただいて、残すところ、廃止するところを決めていきたい、こういうふうに申しておるわけでございます。
  41. 坂上富男

    坂上委員 ひとつ地元の要請はきちっと真摯に受けとめて対応していただきますことをお願いいたしたいと思っております。  余り裁判所問題ばかりやるなというお話でございますから、一般質問的に少し御質問申し上げます。  刑事局長さんの方になるのでございましょうか、苅田町事件の問題でございます。  平成元年一月三十日、花房正蔵ほか一名に対する検察審査会への申し立てについて、不起訴処分は不相当である、こういう判断が出されました。特に、税金五千万円の行方を何としても追及すべきである、こうおっしゃっております。この「五、〇〇〇万円の部分に限っては、尾形智矩を受け渡しの相手方として指呼するものであって、その余の事実関係においては氏名不詳者の存在及びその氏名を認定するに足る証拠はない。」少なくとも五千万についてはこうだ、こう言っておるわけでございます。検察庁、これについてどう対応されるつもりなのか。  その次、同じく苅田町議会から審査申し立てのありましたいわば地方自治法の出頭に関する違反問題でございますが、平成元年十月十九日に、本件不起訴処分は不当である、こういう判断が下されたわけでございます。「一〇〇条委の制度の重要性と本件が地域住民をはじめ、社会的にも多大の関心を集めた事件でその影響が大きいことを考慮するならば、検察官の不起訴処分は失当といわざるを得ない。」こういう議決になっておりますが、この捜査状況はどんなふうになっておりますか。検察はどういう見通しを持っておられますか。
  42. 井嶋一友

    井嶋政府委員 本日、事前に御通告いただいておりませんでしたものですから、きょうは局長が会同に出ておりますので参っておりません。  私からお答えをいたしますが、検察審査会からのそういう議決があったということは承知をいたしておりますので、検察庁においてその趣旨を十分吟味して再調査をするものだと考えておりますが、それ以上のことは、私、所管でございませんからちょっとわかりませんので、次回にお願いいたしたいと思います。
  43. 坂上富男

    坂上委員 ちゃんとこうやってわざわざ印刷して全部配ってあるはずだ。何をそんな答弁しているのですか。殊にこうやって、苅田町の住民、税金や地方自治法に関する重要な問題なんだ、こう言っているわけでございますから。官房長、あなたに怒ってもしようがないと思いますが、私は質問するときはこうやってちもっと文書で出しているのです。どこか手落ちがあったのでしょうが、もう少しひとつきちっと答弁いただきたい、これは重要な問題なんだから。これだけ落とすなと党の方からも言われてきておるのでございますが、これ以上質問のしようがない。まことに残念です。  さて、その次、商法改正、どの程度審議が進んでおりますか、問題について。ちょっと簡単にお話しいただきましょう。
  44. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 昭和六十一年に民事局参事官室から試案を公表いたしまして、非常に多方面から御意見をちょうだいして、それを踏まえまして法制審議会の商法部会で検討が続けられております。現在この商法の改正要綱答申案作成の最終に近い段階に入っておりまして、近くこの答申が得られるものと考えておりますが、それが得られましたならば、私どもといたしましては、できるだけ早く法律案提出いたしたいというふうに考えております。
  45. 坂上富男

    坂上委員 何か十二月二十日に最終的な結論を出して、そして、それをもとにいたしましてされるというお話でございますが、そのようにお聞きをしていいのですかな。そこで、法案は三月ごろ出すという予定ですか。それもあわせて聞きます。  それから次に、会計監査人に関連をいたしまして、商法の特例法の第二条の基準をどういうふうになさるつもりなのか。それから会計調査人の調査に関して、監査法人を加えるか加えないのか。それから三番目に、税理士の調査人となる資格について差異を設けるつもりなのかどうか、あるいはその会計調査人制度というのは新しく加わるのか加わらぬのか。この件、概要でいいですから。
  46. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 商法部会をいつ開くかということはまだ必ずしも確定いたしておりません。十二月に開くということを考えたこともございますけれども、あるいはこれが一月にずれ込むかもしれないという状況でございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、答申をいただきましたならば次の通常国会には改正案を提出させていただきたいというふうに思っております。  その中身の一つといたしまして会計調査人制度に関しましての御質問がございました。これは試案で御提案申し上げました中の重要な一つの柱でございますけれども、非常に御意見が分かれるところでございます。そこで去る五月に、法制審議会の外でございますけれども、学者とか会計の実務家、つまり公認会計士あるいは税理士の方々、さらに法務省担当者から成る調査制度の研究会を設置いたしまして、そこでこの問題について別途研究をしていただいております。これは、できるだけ早くそのめどを出していただくということを期待しているわけでありまして、その研究会での成果を踏まえまして、調査制度について、法制審議会商法部会といたしましては最終的な審議を行って結論を出されるものと思っております。したがいまして、その内容につきましては、まだどういう形になるということを私からお答えできるような段階ではございません。
  47. 坂上富男

    坂上委員 ちょっと要望しておきますが、法務省、特に商法改正問題は大変重要な影響を及ぼすものでございます。民事局長、あるいは詳しいところまでまだ御存じないかもしれませんけれども、参議院の構成が変わりました。したがいまして、社会党がこれに賛同いたしませんと通らない場合も幾らもあるわけでございますから、今度はひとつ社会党と慎重にこの法案作成に当たって御協議をいただかないと、むやみやたらに反対ばかりしていいものでもございませんから、私たちは特に法務省にいろいろと商法改正について御注文も申し上げたいと思っておりますので、ひとつその答申を受けましてから立法化されるまでの間にきちっと各党と十分な話し合いをして、できるならば満場一致で商法改正が通るような対応をしていただきたいな、こんなふうに要望いたしますので、ひとつ御理解をいただきたい、こう思っておるわけでございます。  さて、今度は調停委員先生方、保護司の先生方人権擁護委員先生方、大変なボランティア的な活動を自分の仕事を犠牲にしてまでやってもらっているわけでございます。これらの人たちの活動があってこそ調停制度が保持され、保護制度が維持され、人権擁護が確立されているんだろう、こう思っておるわけでございます。これの実費弁償でございますが、今大体どの程度、どういう基準でなさっているのか。どうも少ないんじゃなかろうか。概算要求をするに当たりまして、こういう点についてどのような御配慮をなさっているのか、少しお答えをいただきたいなと思います。
  48. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 調停委員は、坂上委員御承知のとおり、昭和四十九年十月の制度改正によりまして非常勤の裁判所職員となりまして、裁判所職員臨時措置法により準用されますところの一般職の職員の給与等に関する法律第二十二条第一項に基づきまして、非常勤職員に対する給与でありますところの手当が支給されております。  この手当は、制度改正当初は一日六千五百円でございましたけれども、ほぼ毎年増額いたしておりまして、現在では一日一万三千七百円になっております。私どもは、今後とも一般の公務員の給与の動向等を見ながらこの手当の増額にさらに努力を続けていきたいと考えている次第でございます。
  49. 佐藤勲平

    佐藤(勲)政府委員 申し上げます。  民間の篤志家であります保護司に対しましては、委員申されたとおり、職務を行うために要する費用の全部または一部を支給することができる、いわゆる実費弁償金の支給という制度になっております。  本年度予算におきましては増額が図られまして、保護観察事件を担当したときは、その担当事件一件について一カ月四千二百七十円以内の支給ということになっておりまして、委員もう御承知のとおりに、保護司の職務は近年の犯罪や非行の態様等の多様化、複雑化に伴いまして処遇が非常に困難になっております。そのような活動に報いるために、今申された実費弁償金の増額は今後とも私ども努力してまいりたいと思っているところでございます。
  50. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 人権擁護委員につきましても、委員御承知のとおり、人権擁護委員法によりますと給与は支給しないということで費用を実費弁償するということになっておりますところから、人権擁護委員が住所地以外のところに協議会の出席等で旅行いたしましたときは、これは旅費支給をいわゆる公務員の旅費基準に準拠したような形でやっております。そういう管外に出ない、自分の住所地で擁護活動をしていただいた場合におきましては、実費の趣旨で日額千七百円を限度として支給をさしていただいているということでございます。  全体の予算といたしましては、できる限りこれの充実を私どもも図っておるところでございまして、予算の計算上、委員一人当たり年額で積算しておりますが、平成元年度におきましては一人当たり単価二千円アップしていただきまして、年額二万四千円で計算しておるところでございます。
  51. 坂上富男

    坂上委員 ありがとうございました。終わります。
  52. 戸塚進也

    戸塚委員長 次に、安藤巖君。
  53. 安藤巖

    安藤委員 日本共産党の安藤巖でございます。参考人先生方、御苦労さまでございます。  まず最高裁にお尋ねをしたいんですが、ただいまいろいろ議論になりましたが、今度の地方裁判所家庭裁判所支部統廃合関係につきまして、統廃合の対象になっている管内住民人たち国民人たちが、この統廃合については非常に強い関心を持って存置をしてもらいたい、統廃合反対という意向を相当高めておられるわけです。  そこで、私はまず最初に、その一つの指標として署名について事例を挙げ、そして最高裁のお考えをお尋ねしたいと思うのです。  これは私がいろいろお邪魔をして事情をお聞きしたうちのごく一部であります。最高裁の方も把握をしておられる面もあるかと思いますが、まず一つは、松山地裁、家裁管内の大洲、八幡浜両支部統廃合反対の署名であります。これは一九八八年三月三十一日現在で署名数八万六千八百八十六人、これは両支部管内の人口が十五万七千百五十五人ですから、まさに六〇%以上の人たちがこの統廃合反対というふうに署名をしておられるわけであります。それから大分地裁、家裁管内佐伯支部関係では、統廃合反対の署名が有権者の六六・三五%になっております。それから臼杵支部では、有権者の八二%が反対の署名をしておられるわけです。それからさらに、これは盛岡地裁、家裁支部管内でありますが、これは胆江日日新聞という新聞でありますが、この新聞の報道するところによりますと、水沢支部関係では、水沢支部というのは水沢市、江刺市、胆沢郡下二市一町一村が管内でありますけれども、水沢支部管内で先月の九月二十九日現在七万三千人、水沢市内では四万こ千人が有権者の数、そのうち三万一千三百人、実に約七六%以上の人たち反対だという意思表示をして署名をしておられるわけなんです。  そこで、こういうような事実を最高裁は把握しておられるかどうか、まずお尋ねします。
  54. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 検討対象庁管内地元住民のそういう反対の署名につきましては、私どもの方へどっさりと届けられたりしているところも多うございます。現在、先生指摘のところにつきまして正確な数は覚えておりませんが、先生のおっしゃることでございますので、おっしゃるとおりであろうと思います。
  55. 安藤巖

    安藤委員 これはきちっとお調べになって、こういうふうに住民人たち反対の意思表示をしているということはきちっと把握していただきたいと思うのです。  この反対署名の趣旨、これは、裁判所がなくなっちゃ困るとか、格好がつかぬとか、あるいは町が寂れるとか格が落ちるとか、いろいろな話があることはあるんですが、私はこの署名用紙の写しをいただきましたけれども、どういうような中身、趣旨でこういう署名がなされていると最高裁理解しておられますか。
  56. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 地元住民支部統合反対されます理由としましてはいろいろございます。裁判を受ける権利を損なわれるといったことを挙げられることもございますし、あるいは自分らの支部のある町は歴史的に由緒のある町なので裁判所がなくなることは耐えがたい、そういったこととか、あるいはふるさと創生の動きに逆行するとか、あるいは今後開発、発展を期待してそのための努力をしているのに、裁判所支部廃止はそういったものに水を差すものであるとか、あるいは逆に、行政機関に次ぎまして裁判所支部までなくなると一層過疎化に拍車がかかる、そういった反対等いろいろございます。あるいは個別の事情を挙げられまして、何々支部管内は非常に豪雪地帯で、冬季交通が途絶したりする、そういった事情を挙げられたり、あるいは管内の奥が深いので現在ある支部の所在地まで出てくるにも時間がかかるとか、そういった地理的な条件を挙げられるところもいろいろございます。  その他もろもろございますが、公約数的なところで申し上げますとそういったところでございます。
  57. 安藤巖

    安藤委員 今、総務局長さん最初におっしゃった、裁判を受ける権利が損なわれる、これがやはり一番大きな柱になっているんですね。支部廃止されると、憲法が保障する主権在民、それから法のもとの平等、裁判を受ける権利が侵害される、これを一番大きな理由として、統廃合には反対、こういう署名に参加をしておられるわけなんです。こういうような国民の声、これを最高裁はどういうふうに受けとめておられるわけでしょうか。
  58. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 私どもとしましては、地元住民の方々が、当該支部事件数が少ないにもかかわらず、個々の裁判所を存続させてほしい、裁判所がなくなることは寂しいとおっしゃっていただく気持ちは大変ありがたいものと思っておりますし、それはそれとして大変重く受けとめなければならないものと思っております。  ただ、裁判を受ける権利を損なう、こういう理由に対しましては、今回の支部統廃合は、むしろ裁判を受ける権利を実質的に保障する道としてこれがいいんだ、こう考えて私たち選択させていただいたものでございます。  安藤委員十分御承知と思いますが、裁判官もいない、弁護士もいない、そういう支部におきましては、実際に訴えが提起されましても、裁判官てん補していき、そして弁護士さんも本庁所在地等から行かれる、そういった関係から非常に期日が入れにくうございます。本庁であれば、期日と期日の間隔はあるいは一月程度で入ったり、もっと短く入ったりすることもある。それにもかかわらず、そういう裁判官の非常駐庁支部等におきましては、例えば期日と期日の間隔が三月以上になっている、そういう実態がございます。その他もろもろ、適当な時期に本当にここで和解を進めたらいいという時期に期日が開けなくて和解ができないとか、そういった民事、刑事を通じましていろいろ審理のひずみが出ております。  裁判は、訴えが提起されれば裁判を受ける権利を保障したというものではございませんで、やはり当該紛争の個々の、個別の事情に即しまして、紛争解決の適当な時期に適当な判決なり和解なりができるということで初めて裁判を受ける権利が実質的に保障されるわけでございます。そういった現在の裁判官常駐庁支部におけるいろいろな審理のひずみを正し、審理を充実させ、そして適時適切に、いいときに判決が出せるというような裁判を行っていきたい、そういった目的から今回の支部統合の問題も出させていただいたものでございます。私どもは、裁判を受ける権利を損なうことではなくて、むしろそれを実質的に保障できる道として今回の支部適正配置の問題を考えているわけでございます。
  59. 安藤巖

    安藤委員 安藤委員十分御承知のことと思いますがというお話がありましたが、全然わかりません。先ほどの、裁判官不在庁だから云々と期日の問題等々おっしゃったのですが、きちっと常駐させておけばいいんですよ。常駐体制をとればいいんです。裁判官をふやせばいいんですよ。それを充実させるということをしないでおいて、裁判官がいないから期日が入れにくい、裁判の進行が遅くなる。僕は話が全く逆だと思いますが、この問題はまた別の機会に十分お尋ねをしたいというふうに思います。  そこで、今、署名のことを申し上げたのですが、関係の地方自治体、特に市町村の人たちの、特にこれは議会ですね、それが統廃合反対決議というのをしておられるのですけれども、これはどのくらいというふうに最高裁は見ておられるか。あるいは県議会の反対決議は幾つあるというふうに見ておられますか。
  60. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 たくさんの自治体がございますが、その中でも特に乙号支部統合に関しましては、管内市町村数にして約四百ございますが、そのうちの三百くらいの市町村から意見書あるいは陳情書といったものを出していただいております。また、県単位の形で申しますと、約二十くらいのところからそういったものが出ておる、こう理解しております。
  61. 安藤巖

    安藤委員 大体そういうような数字ですが、こういう自治体の意向というのはどういうふうにお考えなのか。どうしても反対だという場合でも、これは押し切るおつもりなのかどうか。  例えば、もう一つ念のためにお尋ねしますと、これは少し前にいただいたのですが、「平成二年度政府予算編成並びに施策に関する要望」として全国都道府県議会議長会が、「地方裁判所及び家庭裁判所支部配置見直しについて」、それで、結論だけ申し上げますけれども裁判所が「地域社会に果たしている役割・重要性を認識し、」というようなことを言い、そして「地方公共団体の意見を十分尊重して専ら効率性のみを重視することのないよう特段の配慮をされたい。」こういう要望も出ておるのですが、どういうふうにして尊重されるつもりなんですか。
  62. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 地元自治体からいろいろな反対の書面あるいは直接の陳情がございます。私も、先ほども申し上げましたとおり随分大勢の方と会わせていただきましてお話を承りました。そうして、陳情に来られる方の共通するお気持ちとしては、残してもらえるものなら残してもらいたいというお気持ちでございます。  しかし、私ごく率直に申し上げさせていただきますが、いろいろな市長さん、町長さんとお話をさせていただきまして感じましたことは、確かに自治体の長のお立場でこの裁判所がなくなることについてぜひ残してもらいたいというお気持ちを持たれるのは事実でございますが、反面、私どもが今回の支部統廃合支部適正配置作業全体の性質、意義、そういったものについて御説明を申し上げますと、さすがに市長さん、町長さん、いわゆる自治体の長の方は大変物事を大所高所からごらんいただきまして、全体として行っております支部適正配置作業につきましては大変御理解してくださっておる、こう感じております。  いろいろ自治体の長のお立場としてそういう住民の意向も受け、陳情に来られるのは事実でございますが、私どもこの種の作業につきまして、当該市町村長の同意を得て行うということは、この前安藤委員にも申し上げましたとおり、なかなか事の性質上難しゅうございます。しかし、できる限りの理解を得て、そして作業を進めてまいりたいということで、来られる陳情には応対させていただき、また、高等裁判所地方裁判所におきましても、そういう陳情については十分誠実に対応させていただいているところでございます。  いろいろお聞きいたしますと、自治体の方々の反応も、例えば支部の所在地と、同じ支部管内ではありますが所在地以外の自治体の長とでは若干受けとめ方も違うようでございます。もちろん、支部のある町の自治体の長の方が残してもらいたいということについて御熱心でございます。管内の所在地以外の自治体の長の中には、我々はある程度最高裁の行っておられる作業理解できるけれども、また、同じ管内の市町村として支部の所在地の自治体と連帯してやっていかなければならないので我々の立場も御理解いただきたいとか、あるいは中には、こういうあれで何度も陳情したりして申しわけないけれども、むしろ早く決めていただく方がいいんではないかというようなことまでおっしゃってくださる方もございます。あるいは中には、こういう作業の性質は十分理解できるし、自分もこの種の作業についてはそれなりの理由があってそのこと自体については特別反対するわけではないんだが、しかし、残せるものなら残してもらいたいということで参ったんだとか、あるいは、弁護士の方から行ってこいというお勧めがあったので参ったんだとか、そういったことを仰されます。  私ども決して説得ということをしているわけでございませんが、事柄の性質を客観的に説明させていただきますと、例えば今回は簡易裁判所が残って、そこでむしろ事件の七割以上が簡易裁判所で扱われる。また、私どもの方としては簡易裁判所の機能を充実させて、あるいは、家事事件も含めたそうした手続、利用の相談等も拡充していきたい、窓口にこういう書式も置きたいといったことを説明申し上げますと、まあ安堵されると申しますか、ほっとされる市長さん、町長さんもいらっしゃるのでございます。自治体の方々の反応というのは、やはり全体としてのその書面でなされるのと、また、直接お会いしてお聞きするのとでは違うなあといった感じも持っておるところでございます。  いずれにいたしましても、こういう作業はできる限り誠実に御説明申し上げて、地元自治体住民の方々の御理解を得ながら進めていかなければならない、そう心がけたいと思っております。
  63. 安藤巖

    安藤委員 自治体の方々の意向は住民の代表ですから、しっかり意見は聞いていただきたい、尊重していただきたいと思います。  そこで、日弁連大石事務総長さんに一つだけお伺いしたいんですが、先ほど日弁連の考えをお聞きしました。そこで、三者協議あるいは制定諮問委員会は、これはそれぞれ日弁運から推薦された委員ということで出ておられるわけですが、三者協議日弁連としての御態度だと思うんですが、日弁連代表で出ておられた方々の委員会におけるこの統廃合についての御態度ですね、どういうようなふうでございましたか。
  64. 大石隆久

    大石参考人 三者協議につきましては、先生のところへも行っていると思いますが、日弁連の中間意見というものがあると思います。その形で協議を続けてきたものでございまして、一応の到達点がその中間意見ということでございます。  それから、制定諮問委員会につきましても、これは日弁連代表ということではなくて弁護士として任命されたわけでございますが、やはり私としましては、一方日弁連事務総長という立場もございますので、その中間意見に基づいた方向で意見は述べてきたつもりでございます。  以上です。
  65. 安藤巖

    安藤委員 法曹三者の三者協議の一角を占める日弁連の御態度が、先ほど来参考意見としてお聞きしておりますように、この統廃合反対。だから、三者協議の一角の日弁連反対しておられるのをどうやってこれを押し切れるのだろうか。十分審議を尽くして、合意を得て行うという国会の決議もあるわけですから、それに違反するのではないかというふうに私は思うのです。  それで、時間の関係がありますから相関表についてお尋ねをしたいのです。  相関表につきましては、事件数の関係は今回はおくとしまして、所要時間。先ほど一枚の紙でさっとわかるように簡潔に目安として出したんだというふうにおっしゃったのですが、管内統廃合の対象になる支部所在地の自治体中心から受入庁までというのでは、それは一目瞭然として一枚で簡潔でいいかもしれませんが、やはり端の方の人たち、受入庁から遠い方の人たち裁判を受ける権利は一体どうなるのだ。だから、そういうところから通うとどのくらいになるのだ、一番長い時間、それもきちっと相関表に書き込むのは別に困難なことじゃないと思うのですよ。だから、そういう点では私はこの相関表における所要時間というのはとんでもないごまかしじゃないのかという気がするのです。  全部申し上げる時間的な余裕がありませんが、例えば盛岡地家裁管内の遠野支部の場合、相関表によると七十六分から九十分以内となるのです。これは受入庁は花巻だというふうに聞いております。ところが、太平洋岸の釜石、あの釜石製鉄のあるところです。さらに南の大槌町というところも管内です。遠野から釜石までJRで駅から駅までで一時間。私車で実際行きました。一時間半かかりました。その釜石からまたさらに大槌町まで列車で二十分かかります。だから、七十六分から九十分に八十分をプラスしなければなりませんよ。だから、こういうのをきちっと入れるべきだと思うのです。そういうのを入れて、これは諮問の参考として要綱をお出しになって、その要綱についている別表なんですから、この相関表は。それを制定諮問委員会のたたき台にしているわけですから、やはり正確なのを記入すべきだというふうに思います。  名古屋地裁管内でも、これも詳しいことは言いませんけれども、新城支部なんですが、これは恐らく豊橋だというふうに私は聞いておりますけれども、これは富山村とか作手村とか、いろいろ長野県と岐阜県と愛知県の県境というようなところも管内なんです。そこから豊橋へ出かけていくにはもう相関表に書いてある所要時間ではとてもじゃないが行けない、こういう情勢です。だから、そういうような事実と相違する相関表の所要時間をつくって、そしてこれを諮問委員会審議の対象にするなんというのは私はもってのほかだと思うのです。  それで、もう一つついでに言いますと、大分地家裁管内の佐伯支部の場合、これはどこが受入庁になりますか。
  66. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 後の質問の方からお答えさせていただきますと、佐伯支部につきましては、受入庁は大分地家裁の臼杵支部でございます。  それから、相関表の点は、先ほど坂上委員の御質問にもお答えさせていただきましたが、決して間違ったことは書いておりませんで、相関表として支部のある町の中心地から受入庁までの時間をとらせていただいた。そして、当然当該支部管内にはそれよりも受入庁に行くまでに時間のかかるところもあることはもう百も承知しておりまして、そうしたことはそれぞれの管内の広さということで個別事情の問題として見させていただくということを申し上げているわけでございます。最遠隔地からとりましても、先ほども説明いたしましたとおり、例えば人口が五百人程度というところがございます。それで、五百人では五種事件にしまして年間一件は事件が出ないのでございます。そういったところのものをとって相関表をつくるのがいいか、あるいは廃止支部管内には、受入庁に行く方が時間的にも近いとかあるいは交通の便もいいというところもございます。受入庁の方に近いところの町につきましてはそういうことがございます。  そういったものでいろんな相関表をたくさんおつくりして、そして自治体関係者にお示しすることが理解を得られやすいのかと申し上げますと、私はそうではなくて、やはり一枚の簡潔で一覧的にわかりやすいもので相関表をつくらせていただいて、大ざっぱな横並びの位置をごらんいただきまして、そしてその上で私どもの方で管内の個別の事情として、最遠隔地からどのくらいかかるか、あるいはその手前のところからはどのくらいかかるか、そういった事情も見させていただきます、そういう御説明をさせていただいた方が理解を得やすいのではないかと思いまして、そういう相関表をつくらせていただいたものでございまして、諮問委員会でも各委員は十分御承知でございますし、三者協議会でも繰り返し繰り返しそのことは御説明申し上げております。現に私ども作業といたしましても、地家裁からの報告に基づきまして、それぞれの管内自治体からの受入庁までの時間がどのくらいかかるかということは把握させていただいております。  以上でございます。
  67. 安藤巖

    安藤委員 今の佐伯の関係で引き続いてお尋ねしますが、臼杵支部が受入庁だ、そうすると臼杵支部はどこが受入庁ですか。
  68. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 大分地家裁の本庁でございます。
  69. 安藤巖

    安藤委員 この相関表を見ますと、佐伯支部、そして臼杵と両方あるのです。佐伯支部は臼杵支部に受け入れて統廃合だ、ところが臼杵も統廃合の対象になっているのですよ。どうなるのですか、これは。佐伯支部から所要時間四十六分から六十分、臼杵までの時間です、これは。佐伯から大分だと百二十三分かかります。臼杵へ行こうというのに臼杵がまた統廃合される、それが大分だ、そうなれば佐伯は大分じゃないですか。そうするとこの四十六分とか六十分というのはおかしいじゃないですか、統廃合される対象も統廃合の対象になっているのですから。これはどういうふうに理解したらいいのですか。
  70. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 その点は、我々のお示しいたしましたのは文字どおり検討対象庁でございまして、五十八が廃止候補庁じゃございません。この五十八の中には、今佐伯、臼杵の関係先生挙げられたわけでございますが、もっと端的に申し上げますと、大洲、八幡浜、これは大洲を廃止する場合は八幡浜が受入庁になる、八幡浜を廃止する場合は大洲が受入庁になる、いわゆる相互受入庁と私たち呼ばせていただいておりますが、そういうものとして出させていただいております。また、兵庫県の篠山、柏原もそうでございます。ですから、佐伯、臼杵につきましては、例えば臼杵をなくしますと佐伯の受入庁がなくなるので佐伯は存続することになる。そういった意味では、これも三者協議会で繰り返し御説明申し上げておりますが、準相互受入庁というような呼び方で呼んでおりまして、いわば技術上二者択一的なものとして提示させていただいている、こういうものでございまして、五十八の中には当然残さなければならないものも含まれておるわけでございます。
  71. 安藤巖

    安藤委員 いや、大洲、八幡浜のことは知っておりますよ、相互受入庁だ、これは印があるからね。ところが、この佐伯と臼杵の場合、全くそんな印もないし、佐伯が臼杵だ、受入庁がまた統廃合される。これじゃ一般規則制定諮問委員会委員先生方審議をしていただくための最高裁判所要綱の添付の別表の相関表というにはお粗末過ぎると思うのですよ。いいですか、佐伯が対象となるのは臼杵だ、その臼杵も統廃合の対象になる、そうすると佐伯の受入庁への所要時間四十六分から六十分、それは臼杵なんですよ。ところが臼杵が大分だとなれば、佐伯は大分になるんじゃないですか。そうすると優に百二十三分、枠から外へ出るんだよね。だからこれは事実に反するというふうに申し上げざるを得ません。  そこで、時間が来ましたからもう一つだけ申し上げたいのですが、今いろいろ幾つか申し上げたのですが、所要時間の関係でいいますと、とてもじゃないが、例えばこれは佐伯支部管内の宇目町の木浦というところですが、朝七時二十五分に出て大分へ行くとすると、大分に十一時十七分に着くのです。裁判所へ着くのが十一時四十分。もう十二時二十八分に大分から乗らないと、夜、木浦へ帰れないのです。そうすると裁判所におる時間は十一時四十分から十二時まで、わずか二十分、こういう計算ですよね。これでは泊まりがけじゃないと行けない。前に、ごく最近最高裁判所の出された裁判所配置の問題について、乙号支部、昔は区裁判所と言っていた、その乙号支部を設置した目的は、泊まりがけで行くようでは本当に国民裁判を受ける権利に対して重大な支障になるというので区裁判所というものを設けて、それを乙号支部にした、こういう経緯があるということも私は聞いております。だから、そういうことになると、今度の統廃合によって泊まりがけで行かなくてはいけないところがたくさん出てくる、これは重大問題だと思います。だから最後にその点を一つ指摘をして、その問題についてお答えをいただいて質問を終わります。
  72. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 遠隔地の市町村から受入庁に行くのに非常に交通時間がかかるというところがございます。そういう場合には公判期日、弁論期日を、開始する時間によっては終わった後、泊まっていただくというようなことも出るところもございます。しかし、それは期日を入れる時間の工夫によってカバーできるところもございます。そういったもろもろの個別の要素を慎重に見させていただこう、こう思っております。
  73. 安藤巖

    安藤委員 ほかの参考人先生方には、時間の関係でお尋ねする時間がありませんで失礼いたしました。  どうもありがとうございました。
  74. 戸塚進也

    戸塚委員長 参考人各位におかれましては、御多用中、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  75. 戸塚進也

    戸塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田英介君。
  76. 山田英介

    山田委員 私は、不動産の登記制度あるいは公示制度に関連をいたしまして、若干の質問をさせていただきたいと思います。  申すまでもございませんが、この不動産登記制度の基本理念といいますのは、不動産の現況あるいは権利関係というものを迅速かつ正確に公示をすることによりまして国民の権利の保全を図る、この場合の権利というのは財産の安全あるいはまた取引の安全というようなことが当然柱になるわけでございますが、それを確保するところにその基本理念というのがあるものだと私は理解をしているわけでございます。  我が国の不動産公示制度は百年を超える歴史を有しております。そして、近年になりまして大きな公示制度の変革がなされようとしているわけでございます。言うまでもございませんが、登記のコンピューター化の問題でございます。薄冊の制度からコンピューターシステムの制度へこれが移行あるいは変換をされたとしても、不動産の登記制度の基本理念というものはいささかの変わりもない、このように思うわけでございます。  そこで、まずいわゆるコンピューター化、ブックレスシステム移行の現状について何点かお尋ねをいたしますが、現在全国で四カ所、板橋、名東、大河原、大阪本局、この四カ所でブックレスシステムが稼働しております。その進捗状況につきまして御報告をいただきたいと存じます。
  77. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 昨年、不動産登記法の改正をしていただきまして、その改正法に基づきまして、電子情報処理組織によって登記事務を行う庁を法務大臣が指定されることとなりました。この規定に基づきまして、現在まで五つの登記所が指定をされております。ただいま委員のお挙げになられました四つの登記所のほかに、さらに今月に入りまして東京法務局江戸川出張所もコンピューターでもって行うことができるようになりまして、現在はこの五つの登記所でブックレス処理を行っているという現状でございます。  この後、さらに現在ブックの登記簿からコンピューター登記簿への移行の作業を行っておりまして、これはこれから先ブックレス化するための前提作業でございますけれども、現にこれを行っているところが全国で八カ所ございます。これはいずれも作業終了次第、順次コンピューターシステムを設置いたしまして、ブックレス処理を開始することとなる予定でございます。さらに、その後次々に移行作業実施していかなければならないわけでございまして、そのような準備も若干の庁において進めているというのが現状でございます。
  78. 山田英介

    山田委員 現在、八カ所でブックレス処理をするための準備を進めておるというお話でございました。具体的にその見通しをお伺いしたいわけでございますが、今年度中にいわゆるブックレスシステムに移行する予定の箇所、それから来年度中に移行をさせたい、こうお考えになっておられます箇所、ございましたら具体的にお示しをいただければと存じます。
  79. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 現在の進行状況でございますと、福岡法務局粕屋出張所は年内十二月までにブックレスの稼働に入れると思っております。さらに年が明けまして広島法務局海田出張所、ここもブックレス処理が始められるものと思っております。残る六つの登記所でございますが、これは名前を挙げますと、札幌法務局西出張所、高松法務局丸亀支局、東京法務局田無出張所、大阪法務局天王子出張所、名古屋法務局春日井支局、仙台法務局東仙台出張所でございまして、これらはいずれも来年度の比較的早い時期にブックレス処理が開始できるものと思っております。
  80. 山田英介

    山田委員 最初の御答弁で、現在全国で、江戸川出張所を加えまして、板橋、名東、大河原、大阪本局、合わせて五カ所でブックレスシステムが稼働しておるということでございますが、今日までこれらの実験あるいは稼働、実際に稼働させてみて、問題点として御当局が御認識をなさっておられます点、具体的にございましたら何点かお示しをいただければと存じます。
  81. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 昨年十月に板橋でコンピューター処理が始まりましてからほぼ一年がたったわけでございますけれども、全般的に見ましておおむね順調に稼働してまいっているというふうに言ってよろしいと思います。  問題点と申しますと、ブックの登記簿からコンピューターの方へ移行するに当たりまして、若干の移行の誤りというようなものが出てきているということもございます。それから、これは極めてまれでございますけれども、時にコンピューターの作動に支障が生ずるということも一、二ないわけではございませんでしたけれども、これは極めて短時間のうちに復旧できておりまして、実務の処理の上には格段の支障を生じていないというふうに認識をいたしております。
  82. 山田英介

    山田委員 今、移記ミスの問題をお話しになられましたわけですが、乙号事件といいますか、謄抄本、現在は登記事項証明書あるいは要約書というような形でこのいわゆる指定庁管轄下では発行されているわけでございますが、この移記ミスによりまして現場では混乱があるようでございます。それで、例えばこの登記所で執務をされておられます方々の組合、全法務の大会などでも、全体としては五%ないし三%ほどの移記ミスがあるというような報告がなされているわけでございます。局長、この移記ミスは、職権によって発見され次第に更正をされるわけでございますが、現時点までで大体どのくらい職権更正の御報告を受けておられますのか、正確な数字がわかれば一番いいわけでございますが、概略でも御説明をいただければと思います。
  83. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 この移行に当たりましての誤りと申しますのは、その多くは誤字、脱字等の軽微な誤りでございまして、そういったものも全部含めての話でございますけれども、大体報告を受けておりますのが一千件ぐらいでございます。これを、移記をいたしました不動産の登記事項の数と対比いたしてみますと、割合にいたしまして〇・〇三%ぐらいでございます。三%ではございませんで〇・〇三%ぐらいという数字になろうかと思います。  ただいま申し上げましたように、その多くは誤字、脱字というような極めて軽いミスでございますけれども、中には登記事項を漏らしたというようなものもあるわけでございまして、そういったものを含めまして職権更正事件はただいまのような数でございます。  この移行に当たりましては、務記に誤りがないかどうかを照合、点検して、絶対に誤りのないように十分な照合、点検を指導いたしておるわけでございますけれども、今後ともこういうことのないように適正な指導に努めてまいりたい。この成績は順次向上してまいっております。そういうことでございますので、今後さらに、可及的にこれは減少させ得るものと思っております。
  84. 山田英介

    山田委員 そういたしますと、三%と〇・〇三%ですと大変数字に大きな開きがあるわけでございますが、これはどういうことなのでしょうか。  例えば職権更正する場合に、報告すべき程度のミス、あるいはしないでもいいミスというのが、具体的に現場ではそういうふうに基準か何かあるのでございましょうか。この大きなパーセンテージの差というのはどういうことになるのでしょうか。
  85. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 これは私どもの方で指定をして報告させている事項ではございません。報告事項としているわけではございませんけれども、どれくらいあるのかということを調査したものがこういう数字でございます。登記事項との割合で申しまして今のような数になっているということでございます。
  86. 山田英介

    山田委員 恐らく、すべて職権更正したものは例えば本省民事局の手元に報告せよというふうにやった場合には、また数字は大きく違ってくるのだろうと思われます。いずれにしても、現場的には全法務の大会での報告事項ですからそう大きな狂いはないはずだというふうに、常識的にこれは受けとめられるわけでございまして、それによりますと五ないし三%、こういう数字が出ておるということは一応踏まえておいていただきたい、こう存じます。  それで、登記申請の大半は司法書士という有資格者、職能がこれをほぼ独占的に取り扱いをいたしているわけでございますが、そのコンピューターシステム移行のための指定庁管轄の現場のそういう司法書士の方々からの声をいろいろ聞いてみますと、実際問題として、この移行過程における移記ミスというものがかなりの度合いで発見をされている。したがって、このコンピューターで発行しております登記事項証明書あるいは登記事項要約書、あるいは全部事項証明書というふうなものをベースにして登記申請の手続をやろうとすることに非常に大きな不安を感じておりまして、そして結局は閉鎖された、いわゆる磁気ファイルに移記をされましたその大もとの登記簿、薄冊の方ですが、この閉鎖登記簿をやはりもう一度重ねて閲覧をいたしませんと、実際問題として不動産取引などの立ち会いができない、こういう声をしばしば耳にするわけでございます。  こういう点につきましては、先ほど局長答弁の中で、順次この移記に伴うミスというものは減少する傾向にあるということでございますし、また一層の充実を期してまいりたいということでございますから、それに尽きるんだろうとは思いますけれども、実際に閉鎖登記簿を閲覧して、そして登記申請をせざるを得ないという現状につきまして、重ねて局長の御見解をお伺いしたいと思います。
  87. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 現行の登記簿からコンピューター登記簿へ移行をいたします際には、現に効力を有する事項だけを移すという法律の制度になっておりますので、そういう関係からいたしまして、関係者の方々は、コンピューターの方へ移された、そのコンピューター登記簿から打ち出された登記事項証明書だけでは足りずに、さらにその前歴を尋ねるために閉鎖登記簿にまでさかのぼって閲覧をされる必要があるという場合も当然あるわけでございます。このコンピューターの方へ移行されたものに誤りがあるということのために閉鎖登記簿を閲覧する必要が出てくるという場合も、それはないわけではないと思いますけれども、それは今申し上げましたような数字から考えますとそれほど多いものではないのではなかろうか。  このように登記簿を移記いたしますのは、今回のこのコンピューター化のためだけでなく、これまでの制度の上でも、委員既に御承知のように、粗悪用紙の移記の場合であるとか、枚数過多による移記の場合であるとか、法律上の制度がそういうふうにあるわけでございまして、そのような場合にも、やはりそれ以前の状態を知るためには閉鎖登記簿の閲覧をしていただかなければならないのでありまして、それと今回の場合とで格別違いはないのではなかろうかと思っております。
  88. 山田英介

    山田委員 局長、それでは仮に移記に伴うミスがございまして、それを確認するためにと申しますか、権利変動のその実態がどうなっているのかということをどうしても閉鎖登記簿にさかのぼって閲覧などをしなければならない、仮にそういうことがあった場合には、それは局長のお話みずから立て分けられておられますから、そういう場合には例えば閲覧手数料は、ではやはり返された方がいいんじゃないかな、仮にそういう事例があった場合はですよ。いわゆる不動産の、転々流通する、転々権利変動するその歴史、前歴というものを調べる必要があって閲覧するのは、当然閲覧手数料を支払われるべきだろうと私も思います。しかしそうじゃなくて、本来であればコンピューター化された登記要約書あるいは事項証明書等が全く正確であれば閉鎖登記簿にさかのぼって閲覧をし手数料を納める必要がない、そういう場合に、もし万が一移記ミスによってそういう問題が起きた場合には、細かい話で恐縮でございますが、国民負担にかかわる部分でございますから、局長、そう立て分けて今御答弁なさいましたけれども、もしそういう移記ミスに伴う閉鎖登記簿の閲覧、これは恐らく登記印紙というのですか、これを張って閲覧させてもらうわけでしょうけれども、そういう事情であるということがわかれば、申し出を踏まえて、じゃそれはお返しします、ちょっと細かいことで恐縮なんですが、そういうこともあり得るのじゃないでしょうか。また、そういう対応をなさる方が親切というものじゃないでしょうか。その点いかがでございましょうか。
  89. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 今、私は場合を分けて御答弁を申し上げましたけれども、登記手数料令においてはそういう場合分けをしているわけでございませんので、現行の政令を前提とする限りは閲覧をなされた方からはすべて手数料をいただくということになろうかと思います。  仮に移行のミスがあるとして、当事者の方はそれを従前の登記簿謄本などと対比して間違いを発見されるというふうな場合でございますと、そういう資料を添えて登記所の方にお申し出になれば、登記所の方でそれを調査してみるというような実際上の運用は可能ではなかろうか。これは恐らく現場における運用の問題ではないだろうかというような感じがいたします。
  90. 山田英介

    山田委員 ちょっとしつこいようで恐縮ですが、現場の運用の問題であるとして、登記官の方方も非常に職務に忙しいわけでございます。そういうのはどうぞ閲覧してください、こう仮に現場で対応なされたとします。当然それは所定の手続を踏まえて、ということは手数料を払って見せてもらう、こういうことにどうしてもなりかねないのじゃないか。忙しいそういう登記官の方々が、じゃ調べてみましょうということになる場合もあるでしょうし、そうじゃなくて、おかしいなということで確認の意味で先に司法書士なりが、要するに利用者が閲覧をしてしまった、これは明らかにその後移記ミスだとわかりました、そうなった場合には、これは移記ミスによる余分な手数料の支払い、閲覧ということになりますから、これはひとつお返しください、現場でこう申し上げた場合に、それは弾力的な現場の運用、対応ですから返していただける、こういうふうに考えてよろしいですか。
  91. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 一たん納付されたものを還付するというためにはそれなりの法律上の制度がないとできないわけでございますので、ただいま御指摘のような場合ですと、それをお返しするということは制度上は不可能ではないかと思います。それはむしろ、やはりここがおかしいではないかということを登記所の方に事前にお申し出いただくという方法をとられるべきではなかろうか。その場合に、具体的な資料を添えてここがおかしいぞということを指摘されますと、それを登記所の方が忙しさにかこつけて調べるのを拒否するということは、これはあり得ないことだと思っております。
  92. 山田英介

    山田委員 委員長、ちょっと政務次官あるいは局長さんに資料を見ていただきたいのでございますが、よろしいでしょうか。
  93. 戸塚進也

    戸塚委員長 どうぞ。
  94. 山田英介

    山田委員 今お持ちいただいておりますのは移記ミスの具体的な例でございます。登記簿の謄本。コンピューター化されておりますので登記事項要約書ということになりますか、その原本でございます。  そのうちの資料の一と書いてあります方からちょっと見ていただきたいのですが、これは非常に重大な移記ミスに属することでございます。  実は、なぜこの誤記入あるいは移記ミスというものが発見されたかといいますと、根抵当権の変更登記を依頼を受けました、受託をした司法書士が、この全部事項証明書を見ましたときに、依頼された変更登記に係る大もとの根抵当権設定登記がなかったのですね。それでわかったのです。変更登記をお願いされて、あるはずの根抵当権設定登記の記載が全く欠落をしておったという具体的な例でございます。  それで、従来の簿冊の方の登記簿を見てまいりますと、コンピューターに移記をすべき事項は御案内のとおり現に効力を有する登記事項ということですけれども、この今で言えば閉鎖登記簿、乙区の順位番号五番の根抵当権設定、これがまさに現に効力を有する登記なわけです。これが全く欠落をして、それで、既に抹消登記がなされております乙区一番の根抵当権設定登記、それから、これも既に抹消されておりまして現に効力を全く有しない順位番号四番の根抵当権設定登記が、何と、コンピューター化されましたところのこの全部事項証明書の方に間違って記載をされておるという、これが事例の一つでございます。この書類から明らかに出てくるわけでございます。先ほどの御答弁では、誤字、脱字等の極めて軽微なミスが非常に多いんですということでございますが、中にはこういう重大な移記ミスも発生をしているという一つのこれは参考事例として。  それから、資料二の方でございますが、これは何と、一筆の土地について六カ所にも職権更正登記が及んでいる。職権更正登記が六カ所なされている。御専門でございますから余り細かい御説明も要らないかと思いますが、例えば資料二の方の全部事項証明書の乙区の一番付記五号、それから二番付記一号、ここでまず債務者の本店を誤記しているわけです。誤って記入しているわけです。  それで、この誤った登記事項を職権で更正登記をしたわけなんですが、この職権更正登記がまた誤ってしまった。一番付記六号、二番付記九号を一番、二番根抵当権更正とやってしまった。これは誤記入、誤って記入した。これをまた一番付記七号と乙区五番でさらに職権で更正をしておる。それからもう一つは、同じその一筆の土地の中で乙区の二番の付記六号、これを誤って記入してしまった。それで、その誤りを正すために二番根抵当権者の本店、これがまた誤ってしまった。それをもう一度職権で二番付記十号と二番付前十一号で職権更正をしておる。ですから、その一筆の全部事項証明書の中で何と六か所にも職権更正登記がなされている。これがそれを具体的に示している証明書でございます。  ですから、現場では先ほど千件ほどだ、あるいは〇・〇三%ほどの割合でしか移記ミスというものは発生していないという御認識でございますけれども、現場の実際におきましては重大な移記ミス、それから今申し上げましたとおり、極めて初歩的な、しかもそれを繰り返し職権更正をしなければならないという、まあ登記の実務に関係をなされた方から見れば、これは一体何をなさっておられるのかと思われても仕方がないような、そういう誤りが出てきておる。現場においてはそういう実態があるということをぜひ本省におかれても御認識をなさるべきであると思いますし、なぜこんなことになるのだろうかというその分析、あるいは的確な対処というものがなされてしかるべきだ、私はそのように思うわけでございます。局長いかがでございましょうか。
  95. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 お示しになられました事例は大変遺憾な事例であると思います。このような誤り、特に登記事項を丸々落としてしまうというような誤りは、これは大変致命的なものでございまして、このようなことは絶対にあってはならないと考えております。甚だ遺憾ながら、こういうふうに登記事項を遺脱したというような例は単にこれだけにはとどまりませんで、幾つかの事例は報告を受けております。これは、今後移行作業の中でどのようにその誤りをなくしていくか、今後の移行作業の完璧を期する上での貴重な参考資料であると思っております。今後とも十分にその点を配慮してまいりたいと思っております。
  96. 山田英介

    山田委員 そこで、私は、ことしの春先でございますが、名古屋の名東出張所、これはいわゆる指定庁になっている、現在ブックレスシステムが稼働している一カ所でございますが、視察をさせていただく機会がございました。きっとそこだけということではないのだろうと思いまして、今万全を期したいという御決意を伺いまして、大変結構だと思うのですけれども、具体的に、それじゃどうすればこういう脱落、欠落、重大な移記ミスというようなものを含めてこれを最小限に食いとめられるか、限りなくミスをゼロに近づけることができるかというところで、ちょっと気になる部分があるのですが、いわゆる薄冊から、磁気ファイルですか、磁気ディスクに移記をする場合に、最終的にミス等がないかチェックする段階が、現職の登記官が目を適しているという形が必ずしもとられていないように思うのです。例えばかつての登記所長さん、登記所の所長さんであった方とか、それは確かにいわば専門家と言えば専門家、能力を持っている方々だとは思いますが、やはり現職の登記官が最終的にはチェックをした上で、それが磁気ファイルにきちっとおさめられる、あるいはそれがアウトプットされて事項証明書とかという形で利用者に渡るということでないと、御決意は御決意としてよくわかるのでございますが、そこのところを何らかの形で現職の登記官が、校合というのでしょうか、移行完了の最後の段階におけるチェックをなさるようなシステムをとりませんとなかなか難しいのじゃないかなというふうに、これは私が行ってみての実感なんです。この辺はどうなんでしょうか。この五つの指定庁、そこにおける移行の最終チェックは現職の登記官がきちっとやっているのかどうか。あるいは、もしやっていないとすれば、そういう方向で検討する余地があるのじゃないですかと私は思うのですが、その辺のお考えをお示しいただければと思います。
  97. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記所は御承知のように日常の業務が極めて多忙をきわめておりまして、そうでなくても人員に不足をしているのが現状でございます。その登記所において、ブックの登記簿から磁気ディスクの方に移記をする作業をしなければならないわけでございますので、それだけの業務が余分に加わってまいりますから、そのための人を割くということが極めて困難な情勢にございます。そこで、これの主要な部分は民間に委託をする。それは専門的な知識を要するわけでございますから、登記所職員を退職したOBの人にその主力を頼っているわけでございます。  ただ、最終段階でのチェックは、移記校合として校合官である登記官がこれをしなければならないのはもちろんでございまして、最終的な責任は登記官にある。ただ、その登記官は、今申し上げましたように日常の業務を担当しておりますから、一字一句に至るまで全部チェックをするということは実際上なかなか困難な状態にあるということは私どもも認めざるを得ません。そういう体制を前提にいたしまして、しかしながら登記官においてポイントだけは押さえるような体制を何とかつくれないものかということを考えてまいりたいと思います。要は、これからどのようにして人の手当てをしていくかという問題に尽きることになってまいります。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
  98. 山田英介

    山田委員 この移行作業のところは、大きく言えば百年以上続いてきた我が国不動産登記、公示制度の本当に根幹にかかわる大事な作業なわけです。ここに間違いが出ますと、その後どのようにシステムが構築されたとしても、運用されたとしても、大もとのところに問題があれば、これは簿冊システムで今日まで百年の余皆さんが御苦労なされてつくり上げてきた、育ててきたこの制度が、逆に国民の信頼を損ねかねない、損ねる結果になりはしないかと私は非常に心配をするわけでございます。そこのところの対応を強化しようとすれば、確かに限りのある法務省関係予算あるいは登記特別会計の実態を見たときに、これはいわゆる財源措置と密接に絡むものであるということもよくわかるわけでございます。しかし、事の重大性にかんがみて一層の努力をなされますよう強くこれは要望をさせていただきたい、こう思います。  それで、ちょっと前後して恐縮なんですけれども、そういうような流れで、結局登記事項証明書なるものに対する信頼が損なわれかけていると言ったらちょっと言い過ぎ、あるいは時期尚早なのかもしれませんが、余りそのように欠落している証明書あるいはまた細かな本店の所在地の間違いとか、こういうことがございますと、これはいや応なくもう一度閉鎖登記簿に戻らざるを得ないということにつながってくるわけでございます。ですから、そこのところの考え方も、ぜひひとつすべて、おかしいと気づかれたところは現場の窓口で登記官に申し出てください、その登記官がそれを調査することを拒むはずはない、これはそのとおりなんですが、全体についてやはりそういう移記ミス等が多く発生をしておりますと、責任を持って受託をするという立場における司法書士等の方々にしても、これは非常に不安である、コンピューターシステム化で交付された事項証明書、要約書等をそのまま信用して、そして申請手続に入っていいのかどうかためらいがちであるという実態があることもぜひ御承知おきをいただかなければなりません。そこで、私は当面の間とか当分の間とかという形で、移記ミスを少なくすること、限りなくゼロに近づけることが根本的に大事なことでございますが、しかし、向こう一年間とかあるいは向こう二年間とかそういう期間を区切ってでも結構ですから、閉鎖登記簿の閲覧手数料などは手数料令、省令で決まっているからということでございますけれども、何らかの形でやはり特別に通達を出されるとかということも含めて、この件はぜひ御検討をいただきたいと御要望申し上げる次第でございます。  最後になりますが、ずばりお伺いをいたしますが、登記手数料を値上げなさる御予定ございますか。
  99. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記手数料は登記特別会計における歳入の重要な部分をなしているわけでございますが、特別会計が発足いたしました六十年七月に改定されて以来相当期間経過しておりますので、次年度、平成二年度の予算概算要求におきまして、平成二年四月一日から謄抄本の手数料、それから閲覧の手数料をそれぞれ改定することを考えまして、そのようにお願いをいたしているところでございます。
  100. 山田英介

    山田委員 それでは、幾らから幾らに予定されているのか、ちょっと明確にしていただきたいと思います。
  101. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 謄抄本の交付手数料は現行は一通四百円でございますが、これを六百円に改定する。ただし、激変を緩和するという意味で最初の一年間は五百円にとどめ、平成三年四月以降六百円にするという考えであります。  それから、閲覧の手数料は現行は二百円でございますが、これを三百円に改定するという考えでただいま折衝を行っているところであります。
  102. 山田英介

    山田委員 私の持ち時間が参りましたのでここまでにいたしますけれども、今るるやりとりをさせていただきましたコンピューター化に伴う移記ミスが非常に多い、そういう事情の中で、それに関連をする閉鎖登記簿を閲覧せざるを得ない状況が一方にあり、それはすなわち国民負担を増大させるということに直結する問題であり、そしてもう一方、きょうは議論できませんでしたけれども、国、地方公共団体あるいは公社公団、特殊法人等が請求をする謄抄本あるいは証明書等につきましては、これは手数料を納めること不要というふうにされているわけです。免除されておるわけでございます。しかし、登記特別会計というものが設置をされて、そのもとでコンピューター化の大事業を進めていく、あるいはまた登記簿謄抄本等のそういう登記情報を供給するコストというものを賄わなければならないという制度のもとで、いつまでも国等の請求に係る部分が手数料免除のままでいいのかどうか、私はこれは民事行政審議会の答申にもございますように、国等においても受益者たる立場においてやはり登記手数料は支払うべきである、こう考えるわけでございます。  そういうことがございますのに、前回改定の時期から数年経過したからということで来年四月一日から登記手数料の値上げに踏み切ろうとなされている、あるいは踏み切ったというやり方は国民は納得しないのではないか、私はこのように思います。したがって、一切値上げをしてはならぬということより、むしろ、値上げをなさる前に、登記手数料を引き上げる前にやるべきことが幾つもあるんじゃないですかということを私は申し上げたいわけでございます。その点だけ私の考え方を明らかにして、後日また機会を改めてこの問題については論議を深めさせていただきたい、かように存じます。  以上で終わります。ありがとうございました。
  103. 太田誠一

    太田委員長代理 中村巖君。
  104. 中村巖

    中村(巖)委員 私は、地方裁判所家庭裁判所支部統廃合につきまして最高裁判所質問をいたしたいと思います。  地方裁判所及び家庭裁判所支部統廃合というか適正配置というか、この問題については最高裁判所が鋭意推進をされてきたところでございまして、その間法曹者協議を経まして、さらにまた一般規則制定諮問委員会にお諮りになったということでございます。一般規則制定諮問委員会は十月十六日に答申をされておるところでございます。  そこで、この問題というのはいわば法律事項でもございませんし、言ってみれば最高裁判所司法行政の一環として進められているわけで、規則制定諮問委員会がありましてもこれは諮問委員会でありまして、この意見を聞くというだけの話で、実際行政を進めるのは最高裁判所であるわけでございます。  まず第一点としてお聞きを申し上げたいことは、今日以降のこの問題に対する手順あるいはスケジュールということ、そしてゴール、どこを目指してやっていくのか、この点をお聞きいたしたいと思います。
  105. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 十月十六日に答申の決定がありまして、翌十七日に正規に答申していただきました。それから現在にかけまして地方裁判所家庭裁判所の所長さん方に検討対象支部管内自治体、その他関係機関をくまなく回っていただきまして、この答申内容を御説明申し上げるとともに、検討対象支部の個別の事情につきまして御意見をお聞きいたしております。その作業がまだ当分、検討対象支部を多く抱えているところでは非常に数がたくさんございますので若干時間がかかりますが、それをできるだけ早く最高裁の方へ御報告いただき、整理いたしまして、できれば年内あるいは一月に裁判官会議規則改正をしていただきたいと思っております。  その後、規則改正後それを実際に施行いたしますまでの間に準備期間が必要でございますので、事務当局の考えとしては四月なり五月なりぐらいから施行できればということで、そういうことを目標に作業いたしておるところでございます。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  106. 中村巖

    中村(巖)委員 そうすると今のお話では、平成二年の四、五月ごろからそういう統廃合をされる支部においては実際に裁判の事務をもうやらない、こういうことになりますか。
  107. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 原則的にはさようでございます。若干、受入庁等で新しく庁舎を増築しなければならないとかいったところにつきましては、施行については別途考えなければならないところもあるいは出てこようかと思いますが、原則的には四月ないし五月ごろから、検討対象支部統合することが決まったところにつきましては受入庁の方で裁判手続を進めるということにいたしたい、そういう目標で作業しているわけでございます。
  108. 中村巖

    中村(巖)委員 最高裁は、この検討対象庁が五十八庁なんだということで、相関表に基づいて言っておられるわけでございますけれども、今までの物の言い方では、五十八庁全部が統廃合されてしまうわけではない、もっとも相互受入庁とする庁もありますから五十八庁にはならないのですけれども、それにしても五十八庁全部ではないんだ、事情によってはそれは存置をする庁もあり得るようなことをおっしゃっておられるわけです。  ところが一方、諮問委員会答申の中で主要な意見というところでは、「五十八庁については、例外的な事情を過大視することなく統合検討すべきである。」こういうふうに言われているわけでございます。もっとも、この答申自体、その辺が実に矛盾があるというか、一方ではそう言いながら、他の部分では「具体的な交通事情当該地域の将来の発展性等についても考慮すること。」こういうふうになっていて、ちょっとその辺が、どういうふうに最高裁がこの答申を受け取っておられるのかということと、最高裁当局自身としてはこの五十八庁のうちどのくらいのものを統合するという考え方で臨まれているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  109. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 今回いただきました答申の中で、いわば要綱承認くださった賛成意見の中の主要意見ということで(1)、(2)、(3)、(4)と書いてございますが、この答申の趣旨は、賛成意見の中にも非常に強いと申しますか、最高裁構想、まだ手ぬるいぞという強い御意見から、大体いい見当ではないかという御意見まで若干の幅がございます。そういった幅のある意見を1、2、3と書かしていただいたわけでございます。  私どもの方は、かねがね申し上げておりますとおり、この相関表というのは検討対象庁でございますので、そしてそこで基本的な指標ととっております五つの種類の重要な事件事件数、それから受入庁へ行くまでの所要時間というのは、当該支部統合した場合に住民に影響を及ぼす不便の程度を見る上では非常に重要な要素と考えておりまして、それを一方では見ながら、また他方ではその他の事件事件数だとか、冬季の交通事情だとか、管内の広さだとか、あるいは地域の発展性とか、そういったもろもろの個別の事情をもう一本の柱として見させていただいて、そして相関表の位置を見ながらそういう個別事情を踏まえて決めていくというふうに考えておりまして、相互受入庁、それから相互受入庁に準ずるようなところのほかに、やはり相関表の太線に近いところになれば、あるいはその当該地域発展性があるとか、その他の理由で今回統合を断念した方がいいというところも幾つか出てこようかと思っております。  その数は、現在、地元から改めて御意見を聞き、個別事情を聞いておりますところでございますので、今幾つということを申し上げるのは適切でもございませんし、またあらかじめ一定の数を決めて作業しておるというふうな誤解を招いてもあれですので、申し上げるのは御遠慮させていただきたいと思いますが、個別事情を正確に見た上で公平、客観的に裁判官会議で判断していただきますように、私ども資料づくりに精を出したい、こう思っております。
  110. 中村巖

    中村(巖)委員 その問題は、個々の自治体あるいは住民とすれば大きい問題で、一生懸命最高裁理解をしてもらえれば自分のところは外してもらえるのか、あるいはいかに言っても全く外してもらえないのか、こういう問題につながるかと思いますので、ただ外れる可能性もありますよ、協議によってはみたいなことで幻想を振りまくというのは余りよくないんじゃないかなという気がするわけでございます。  そこで、午前中来の論議の中にも、この地裁、家裁の支部統廃合するということが裁判を受ける権利を損なうものであるということが言われておりまして、そうであるかどうかということについて厳密な法律上の論議というものは私もよくわかりませんが、確かに裁判を受ける権利というものは憲法上保障されているわけでありますから、それを損なうものであったら、これは憲法違反ということになりかねないわけでございます。  私自身とすれば、私、とにかくやはり裁判所というのは多数存在することが、それは住民の利便の上からいっても、裁判を受ける権利というものをいわば厚く保護をするという意味からいっても重要なことであって、裁判所の効率化を図るんだということで統廃合を進めるということは決して望ましい方向でないというふうに思うわけでございます。  そういった意味では、確かに一面、最高裁判所が言われるように統廃合を進めることによって実質的に裁判を受ける権利を強化するんだ、こういうこともあるいは言えようかと思いますけれども、実はやはり基本的な問題点は、実質的に強化をするということは、今裁判官が足りないで裁判官の非常駐庁というのが多数存在している、そこに問題があるので、そういう裁判官さえ多数おられればできるだけ多くの箇所に裁判所を置くということが望ましいのではないか、こういうふうに思うわけですが、その辺について最高裁の御見解はどうでしょうか。
  111. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 中村委員のおっしゃるのもごもっともでございますが、現在裁判官非常駐の支部というのは九十八ございます。そこへ全部裁判官を一人ずつ張りつけるということは、それなりの一つのお考え方でございますが、しかし、それは他方では本庁あるいは大きい支部の陣容の弱体化を招くことでございます。  現在、検討対象支部として五十八出しました。裁判所の組織の数から申し上げますと、本庁が五十ございますし、支部が二百四十二ございます。組織の数は二百九十二でございます。二百九十二分の五十八でございますので、組織の数の割合としましては約二割が検討対象支部でございます。しかし、そこで取り扱っております事件は、地裁で申し上げますと全体の一・八%でございます。組織の数としては二割でありながら、事件の数は一・八%。そこに例えば裁判官を一人ずつ置くことが全体の司法充実のためにいいかというふうに考えますと、私どもは決してそれが適当な策だとは思わないわけでございます。一方では裁判官もできる限り陣容を充実させるということはおっしゃるとおりでございますが、ただ事務量は、少ないところでは年間二十件というところがございます。そういうところへ一人置くことが果たしていいのかどうか。  あるいは、現在九十八庁ある非常駐庁につきまして、そういうところにも常駐化していくということが、例えば修習生から判事補への希望者をふやすことになるのか減らすことになるのか、その問題がございます。中村委員も既に御承知の現在の司法試験の非常に難しい状況からしますと、修習を終えます方々の平均年齢は非常に高くなっております。その間、相当な期間あるいは費用をかけて受験勉強に取り組んでこられた、そういう方が、非常にへんぴなところまで転勤があり、そういう職業になろうとする方がふえるかと申しますと、これは一般的には非常に難しゅうございます。また、核家族化で兄弟も少なくなりまして、親の面倒を見なければならない、あるいは奥様の親の方の面倒まで見なければならない、そういった状況で転勤の多い裁判官になるということが、修習生の中で希望される方の比率としてはかつてに比べますと減ってきているのが実情でございます。  私ども、そういう点ではできるだけ任官者を多数確保できるように努力はしております。しかし、そういった事情を考えますと、例えば今以上にへんぴなところにも行っていただかなければならないといったことを打ち出すことが果たして裁判所裁判官の数をふやすことにつながるかどうかといいますと、率直に申し上げまして疑問な点もございます。  そういった事情もあれこれ判断いたしまして、決してメリットばかりでもございませんで、マイナス面もいろいろあろうと思います。しかし、それは比較いたしまして、やはりこうする方がプラスが多い、司法充実のために役立つということで、今回の支部統廃合適正配置の問題を出させていただいたわけでございます。
  112. 中村巖

    中村(巖)委員 時間がなくなりましたから、最後に要望として申し上げますけれども、やはり地方のそれぞれの自治体なり住民の方々の考え方、今現在ではこの問題に対しては相当反対が強いようでございますので、そういう意見をできるだけ酌み取るようにしていただかなければいけないのではないか。切り捨て御免的に、これはもうだめなんだよ、おたくは事件がないからだめなんだよ、あるいはまた、おたくはとにかく受入庁に近いからだめなんだよということで機械的に処理をされて住民意見を聞かぬようでは、これは愛される裁判所にならないんだ、こういうふうに思いますので、その辺のことを十分考慮をされて今後の手続を進められるように要望をいたします。  終わります。
  113. 戸塚進也

  114. 太田誠一

    太田委員 今、中村委員からも質疑があっておりましたけれども、私も地方裁判所家庭裁判所統廃合の問題についてお聞きをいたしたいと思います。  五十八庁ということでございますけれども、今この統廃合の対象になっております地域では大変重大な問題、深刻な問題として受けとめられておりまして、私が知っておる範囲でも、存続に向けた運動というのは大変な盛り上がりを示しております。例えば、商工会議所とか商工会とか農協だとか青年会議所だとかあるいは市町村だとか、そういうところまで含めて存続運動のための大会をたくさんの人数の人が集まってやっておられるわけでございまして、正直に申しまして、私も法務委員会に所属をいたしましてもう十年たつわけでございますが、法務委員会関係する問題でこんなに地域が盛り上がるというのは初めての経験で、むしろ戸惑っておるぐらいのことでございます。  言ってみれば、歴史と伝統のある都市、あるいは一つの生活圏、経済圏を構成しております広域的な地域の中心都市というものから地裁、家裁の支部がなくなるということで、そのこと自体が衝撃になっておるということもございますし、また、午前中からの御議論にもあるように、このことによって裁判を受ける権利というものが著しく損なわれるのではないかというふうな危惧も持たれておるわけでございます。  しかしながら、これはこの際、裁判所というものについてこれだけ地域住民の方々の関心が盛り上がった、そういう機会に、地域住民の方々が裁判を受けるというそのことを、あるいは裁判所とのかかわり合いというものをわかりやすいものにしておく必要があると思うわけでございます。もちろん、この統廃合については先ほどからのお話のように慎重に進めていただかなければならない。何か縦横のグラフをつくって斜めに線を引っ張ってこれでおしまいというふうなことであってはならない。やはりそれぞれのこれまでの歴史も踏まえていただかなければならないし、あるいはそれぞれの都市の重要性というものもまた考慮してもらわなければならないわけでありますから、慎重に扱っていただかなければならないというふうに思います。しかし、先ほど申しましたように、この際、裁判所地域住民のかかわり合いというものをわかりやすいものにするために幾つかの点について御質問を申し上げたいと思います。  まず、裁判を受ける権利について支障を生ずるということを危惧されている点でありますけれども、これは端的に言えば距離が離れてしまうわけでありますから、ここで距離が離れるということ、統廃合をされるということによって裁判を受けるために過重な負担を強いられることになるのではないか、こういう危惧があると思うわけであります。裁判を受けることに伴う負担というものは、一つは、自分が実際に時間を費やして、今までだったならば自分の住んでおる地域で、生活圏で事足りておったものが遠くに行かなければいけないという手間といいますか時間を費やさなければいけない、そういうコストがあるわけでありますし、また旅費をかけて行かなければいかぬというコストもあるわけであります。それに関連して、いや、統合されればこういうメリットもあるということがあれば、それもこの際明らかにしていただきたいし、こういうコストがかかるということも、両方、デメリット、メリットを明らかにしていただかなければならないと思います。  それからまた、もう一つの点でありますけれども裁判が始まってから終わるまで、解決に至るまでの時間は一体どうなるのかというようなことも、これは明らかにしていただきたいと思うわけでございます。まずその点から。
  115. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 確かに、支部統合いたしますと、当該支部のございました地域に住んでいらっしゃった住民あるいはその近くに住んでいらっしゃった方には、その受入庁まで足を延ばしていただくということになるために御不便をおかけいたすことになります。しかし反面、現在私どもの提起いたしました五十八の検討対象支部は、その大半が裁判官もおりませんし、弁護士さんもいらっしゃいません。そういうところですと、現在は裁判官てん補といいまして、本庁あるいは大きい支部から出張していくという形になりますし、弁護士さんの方もそういう本庁、また大きい支部の所在地から出張していかれるわけでございます。弁護士さんのお金の取られ方は、私は詳しいことは存じませんが、そうしますと、弁護士さんが出張されるとなりますと、出張費用というものがかかるわけでございます。これは弁護士さんの個人差がございますし、時には奉仕的になさることもございますが、一般的なことを申しますと、何がしかの出張費を取られるということになります。この金額は私は存じておりませんが、これを仮に三万円といたしますと、五回出張してこられると三、五、十五万円がかかるということになります。今回それを統合いたしまして、弁護士さんのおられるところでなさりますと、その出張費用の分はかかりません。  しかし他方では、民事訴訟でございますと、そして弁護士がつかれた事件で見ますと、普通は弁護士さんが訴訟代理人として法廷で主張、立証なさるわけでございまして、当事者が行かれる必要はないわけでございます。しかし、争いのある事件では当事者本人尋問ということが行われます。これは簡単な事件ですと一回で済むのが普通でございますが、少し入り組んだ事件等では、それが一回ではないで、もう一回かかるということになります。そうしますと、そういう例を前提にいたしますと、二回自分らの住んでいる住所地から受入庁まで行っていただくのに、当事者御本人の方の旅費、あるいはその分仕事を休まなければならないという分の損失が発生するわけでございます。それがどの程度になるかというのは、これは難しゅうございますが、仮にそれが二万としますと四万、三万としますと六万といったことになりまして、経済的ではそういったメリット、デメリットが出まして、その訴訟代理人の出張の点を考えますれば、むしろその弁護士費用はかからなくなるという意味では少しメリットが大きいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど申されました審理の進め方の問題になりますと、やはり裁判官もいない、弁護士もいない、あるいは刑事で申しますと、支部の正検事さんはいらっしゃらないというのがほとんどでございます。そういうところですと、やはり出張して処理いたしますので月に三回とかあるいは四回とか、日が限られてまいります。御多忙な弁護士先生がついておられますと、なかなかそこでやりくりがつかないので、次回の期日を入れるとなりますと、つい先になってしまいます。本庁所在地ですと、あるいは一月あるいは二月というところで期日が入りますものが、平均的な姿といたしましては、今回の検討対象支部では、民事では三・三カ月かかるというような状況になっております。それを、受入庁であればそこには裁判官がおりまして、週何回かの法廷が開ける、弁護士さんも一回の法廷に出られる時間が、遠いところまで往復される時間が必要ございませんので、他の事件と一緒に受けて入れることができる、そういったことから期日と期日の間隔、私ども開廷間隔と申しておりますが、それが短くなるというメリットがございます。  先生地元の、例えばこれはほんの一例でございますが、甘木支部というのがこの検討対象支部に入っております。これを私どもの方で調べさせていただきましたら、仮に刑事事件を例にとりますと、甘木支部の刑事事件の開廷間隔というのは三・五カ月となっております。これを福岡地裁に仮に受け入れたといたしますと、福岡地裁の本庁では刑事の開廷間隔は〇・七カ月でございます。そういった面では早い時期に結論が出る、そしてそこで人的あるいは物的に整備されたところで充実した審理が行える、むしろその方が裁判を受ける権利の実質的保障という面では有益なのではないか、こういったことを考えているわけでございます。
  116. 太田誠一

    太田委員 今のお答えでありますけれども、全般的には裁判がスタートをしてそして解決するまでの時間は、統合された方が間隔があかなくなるから短くなる、全体としては短くなるということですね。はい、わかりました。  そういう裁判を受けるための費用、そしてまた裁判に要する時間、期間というものを考えればメリットもデメリットもある、むしろメリットの方が大きいということかもしれませんけれども、それでは、裁判所がなくなる、こういうことを端的に言われるわけでありますけれども、それは必ずしも正確ではなくて、簡易裁判所はあるんだということかもしれませんが、そこのところを、地裁、家裁だけではなくて、地裁、家裁がなくなった後、一体裁判所一般というのはどういう体制でそこに残るのかということをまずはっきりしていただきたいと思います。建物とか人とかがどうなるか。  それからまた、では後は地裁、家裁のかかわる問題については一切、この地域住民の方々はサービスというか、いろんな相談とかに応じてもらえる機会はなくなるのか、現地でそういう対応をしてもらえることはなくなるのかどうか、そこのところをさらに具体的にお答えをいただきたいわけであります。
  117. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 委員のおっしゃいますとおり、今回地方裁判所家庭裁判所支部統合いたしましても、そこにある簡易裁判所は残るわけでございます。そして、建物も残りますし、職員も残さなければならないわけでございます。そして、残る簡易裁判所におきましては、従来、簡易裁判所適正配置以来私どもの進めております施策でございますが、簡易裁判所住民に利用していただきやすい、身近に感じていただける裁判所にしたいということで、受付カウンターをオープン式のものにしたり、あるいはもろもろの訴状の定型書式というものを工夫してつくりまして、これはカーボン複写になっておるものでございますが、中には、問いに対して答えを書いていくとおのずから訴状ができるとか、あるいは四角の中を埋めていけば訴状ができる、そういったものをたくさんの種類用意いたしております。そういった簡易裁判所におきますサービスと申しますか、司法サービスを充実させる。  また、それとともに、今度支部廃止いたしますと家庭裁判所支部がなくなるわけで、家事事件の相談に行くのに遠くまで行かなければならないかという問題が生じますが、私どもの方では、残る簡易裁判所におきましてそういう家事事件の手続案内等をきちんとやらせていただこう、そして家事事件の先ほど申し上げましたような定型申立書とかあるいはいろんな御案内の書類も置かせていただき、御相談に見えたらその手続の案内の面では御相談に応じさせていただいて、そこで書いていただいたものを受入庁の方へ郵送していただくということで対応させていたいただきたいと思っております。それが一つでございます。  またもう一つは、支部廃止いたしましても簡易裁判所は残るわけでございますので、事件によっては当事者に受入庁まで来ていただくのは非常に酷であるというような場合につきましては、残る簡易裁判所の建物まで出張して出張処理というものを活用することもできるわけでございます。そういったことも活用して、できるだけ地域住民に及ぼす御迷惑の程度を減らしてまいりたい、そういうことを考えております。  先ほどの人員の点になりますと、残る簡易裁判所で、現在全体の事件の中では支部が三割弱、簡易裁判所が七割強の事件を扱っておりますが、そういう事件の処理もございますし、あわせて、先ほど申し上げました、今後存続簡裁でこういうサービスも行いたいという窓口案内、手続相談的な業務もございますので、そういった業務量もにらみ、そういうことをやっていくのに十分な人員の配置はいたしたい、こう考えておるわけでございます。今後、どのくらいの人数がどうなるかという点につきましては、具体的に検討対象支部の中からここを廃止するというものが決まった時点におきまして、そこの事務量をしっかりと見定めて十分な人員を配置したい、このように考えておる次第でございます。
  118. 太田誠一

    太田委員 ちょっと時間がなくなってきたのですが、統合される相手については、今の案には必ずしもこだわらずに十分住民意見を聞くという、その点はどうですか。ちょっと一言。
  119. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 地域の住民の方に御不便をかけることでございますので、先ほど来申し上げておりますとおり、検討対象支部管内自治体を各所長に回っていただきまして、そして御意見をお聞きし、それをきちんと整理して、裁判官会議で慎重に御判断いただけるように努めたいと思っております。
  120. 太田誠一

    太田委員 最後に、政務次官にお聞きをしたいわけでございます。  これは最高裁判所の問題でありますが、この地裁、家裁支部適正配置問題に対して政務次官はどうお考えになるか、御所感をお伺いしたいと思います。
  121. 田辺哲夫

    ○田辺(哲)政府委員 午前中から本問題の質疑を聞いておりまして、極めて重要な問題であるということを痛感しておるのでございます。また、法務省といたしましては、この最高裁判所支部統合が実現いたしますと、これに合わせまして地方検察庁の支部統廃合の問題も起こるわけでございまして、極めて大きな関心を持っておるところでございます。  最高裁判所がこのたびこのようなお考えを持つに至りましたのは、基本的には明治時代から長期にわたりまして維持されてきました現在の地裁また家裁の支部配置を、その後大きく社会的な変貌を遂げまして、この変貌に合ったように見直そう、こういうことに端を発したわけでございますが、この考えは決して、国民裁判を受ける権利を薄めようとかということでは絶対なかろう。むしろ反対に、司法の運営の効率化、また司法サービスの充実を図る、この考えに立脚しておるものと思うのでございます。  また、具体的手続につきましても、従前から、法曹三者によりますところの協議会を経、また、各界の有識者も参加いたしました最高裁判所一般規則制定諮問委員会、この答申を得まして、そしてさらに地元意見も聞き、そして個別事情も十分考慮して、最終的に最高裁判所裁判官会議によりまして裁判所規則を改正しようということでございまして、手続的にも極めて慎重な態度であると思うのでございます。法務省といたしましても、当委員会のいろいろの御意見等を十分参考にしながら、これが早期に実現いたしますことを期待しておるものでございます。  最後に、最高裁判所におかれましても、人権の最後のとりでが裁判所である、このような認識と、また司法充実というものをこれによりましてむしろ堅持し向上させる、このような立場からよろしくお願い申し上げたい、法務省としてもこんな考えでございます。
  122. 太田誠一

    太田委員 どうもありがとうございました。
  123. 戸塚進也

  124. 逢沢一郎

    逢沢委員 太田委員に続きまして、地家裁支部適正配置統廃合の問題についてさらにお伺いしたいわけでありますが、時間も限られてございますので、重複を避けて御質問申し上げたいと思います。  今回のいわゆる適正配置統廃合は、言う人に言わせれば行革の司法版じゃないか、こういう表現があるわけであります。今回の地裁、家裁に続いて、いずれ将来的には、その地域住民にとっては最も必要でありなじみの深い簡裁までもが統廃合の対象に、その俎上に上ってくるのではないかという懸念、危惧というものが、それぞれの地域を伺ってきますとかなり強いようであります。その将来展望は、非常に大きな課題でありますけれども一体どういうふうになっておるのか。予算でありますとか人員の縮小につながる、ひいてはそれが国民裁判を受ける権利を損ねてしまうと心配をするところでありますが、まず、ここの部分からお伺いをいたしたいと思います。
  125. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 裁判所という役所はいわば受け身の役所でございます。申し立てられた事件を適正、迅速に処理することを使命とする役所でございまして、そのときどきの状況に応じて裁判機能を意識的に縮小したり拡張したりするということはすべきでない役所でございます。  今回の支部適正配置につきまして、行革の司法版ではないかということが指摘されるわけでございます。それは、ある組織について、その機能を十分発揮するために、社会事情の変化に応じて効率的な組織になるように見直すという意味では共通する面のあることは当然でございますが、私ども今回の支部適正配置を通じまして、予算的に縮小を図るとかあるいは人的な縮小を図るというものではございませんで、むしろ裁判所の機能あるいはその他もろもろの面における力の充実を図りたいということでやっておるものでございます。  先ほどの簡易裁判所関係でございますが、簡易裁判所につきましては、いわゆる管轄法の改正国会でお認めいただきまして、昨年の五月から実施させていただいたわけでございます。これにつきましても財政当局あるいは国会の御理解を得まして、むしろ簡裁統合をしながら裁判官その他、一般職も含めまして増員もしていただきましたところでございますし、予算規模もむしろ拡張していただいたところでございます。  今回の支部適正配置につきましても、財政当局、国会の御理解を得まして、そういったことになるように一生懸命やりたい、こう考えてのものでございます。
  126. 逢沢一郎

    逢沢委員 先ほど太田委員も触れられた事件数といわゆる最寄りの庁までの所要時間のマトリックスが今私の手元にもあるわけでありますが、今度の統廃合の俎上に上っておりますのはこのマトリックスの左上の部分、ちょうど私の出身の岡山県でも笠岡そして高梁、勝山、新見と四庁がこの対象に上っているわけでございますが、先ほど太田委員も触れられたわけでありますが、仮に機械的に、近いからいいじゃないか、最寄りまで近いからいい、あるいは事件数が非常に少ないから、もうここは少し遠いけれども隣へ行ってもらおうというふうな簡単な割り切りをしていただいたのではこれは大変なことであるという認識を私ども持っているわけであります。私ども地元でも、それぞれの地域にとってはこれはまさに大変な事件であり、存続に向かっての運動が進められているということでありますが、伺いますと、今回のこの統廃合適正配置の処置というのがいわゆる司法充実強化のためだ、こういうふうなことでありまして、今まであるものがなくなるということがなぜ充実強化につながるのか、なかなか私ども素人にはわかりにくいところでありますが、そのところを改めてもう一度たださせていただきたいというふうに思います。  重ねて、もし仮にそういった事情がよく地域の住民の方にもわかる、理解できる、一部の不便はあるけれどもそれは納得しようということに仮に地元の合意がいただけた場合に、例にとらしていただいて大変恐縮でございますけれども、仮に私ども地元の勝山の庁が適正配置の対象になって統廃合された、そうなりますと、具体的には今後の家裁あるいはまた地裁に対する地域の方々の利便というものはどういう形で担保されるのか、あわせてお伺いをいたしたいというふうに思います。
  127. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 今回の私ども作業によりまして、国会議員の先生方に何かと御心配いただき、またお手数を煩わしておりますことは大変恐縮に存じておる次第でございます。特に岡山につきましては、検討対象支部ということで四つ挙げさしていただきまして大変御心配をいただき、また御厄介をおかけしておることを本当に恐縮しておるところでございます。  今回の支部統合によってどういうところが充実されるかということにつきましては、先ほど太田委員のお尋ねに対しましても申し上げましたが、勝山におきましても、裁判官もおらない、そして弁護士さんもいらっしゃらないということで、事件の平均開廷間隔というのは民事で四・六カ月、刑事で一・九カ月という状況になっております。これが例えば大きいところですと、例えば本庁などで考えますと、民事は三・〇、刑事が一・一といったような数字になっておりますし、これは全国の平均の姿では、本庁などではもう少し短い二・三七カ月と〇・八二カ月というような数字になっております。そして、開廷間隔が縮まりますとおのずから審理の期間も短くなりますので早い解決が得られるということで、一つのサービスの向上になろうかと思います。  しかし、そうは申しましても、あるものがなくなります。そうしますと、当該地域住民にとりましては御不便をかけることは避けがたいところでございます。しかし、そういった点につきまして、できるだけそういう御迷惑をかける程度を少なくしたいということで、幸い簡易裁判所は存続さしていただきますので、そこでのサービス機能をより一層高めたい。例えば簡易裁判所では扱わない家事事件につきましても、そういう手続、利用の案内とかそういったことを積極的にさしていただき、またいろいろな申立書の書式あるいはリーフレットというものも置かしていただき、そして手続の御相談には応じて、そしてそれを書いてくださって送っていただくというようなことを考えたい。また、いろいろお年寄りだとかあるいは遠隔地から受入庁まで行かれるには相当お気の毒であるという事件もございますので、そういった事件につきましては従来からもいわゆる出張処理と申しますか出張調停というようなことをやっておりましたが、今回の場合は簡易裁判所適正配置と違いまして、支部は引き揚げましても簡易裁判所の建物は残りますので、そこへ出向いていってそういう出張処理、出張調停を行う、そういったことも活用してまいりたい、そんなことを考えておるところでございます。
  128. 逢沢一郎

    逢沢委員 御説明をいただいたところでございますが、今さら私が申し上げるまでもなく、それぞれの田舎の町に参りますと、本当にメーンストリートの最もいい場所に裁判所が必ずと言っていいほどありますね。まさにそれは町づくりにとっても欠かすことのできない建物であり、あるいはまた目印である。しかも、つい最近それを整備したばかりだ、そしてその周辺の環境も整備した、そういうところも少なくないわけであります。どうぞそれぞれの地域の、また個別の事情ということにつきましても十分御勘案をいただきまして、慎重にも慎重の上の御判断を改めて心からお願いを申し上げておきたいというふうに思います。  さて、少し一般論に戻りたいわけでありますが、いわゆる司法行政充実強化、当然のことながらお互いにこれは努力をしていかなければならぬわけでありますし、また国民の皆様方がひとしく裁判を受ける権利、これも保全をしていかなければならぬわけでありますが、そのことについてさまざまな専門家の方々の御意見があり、また法務省としてもいろいろな専門家の先生方の御意見を聞かれておるわけでありますが、このほど、十月十七日に出されました一般規則制定諮問委員会答申、公になっているところでありますが、改めてその重立った趣旨、そして特にここが大切なところであったということを整理してお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  129. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 今回の答申では、私ども事務当局で考えましたこの支部適正配置作業三つの柱と申しますか、一つは、支部統合、小規模な乙号支部統合でございます。それからもう一つは、若干専門的になりますが、従来甲号支部乙号支部という権限によって二つの種類の支部を置いておりました。それを、規則上二つの種類を置いていたのをその規則上の区別をなくしまして、そしてどの支部でどの事件を扱うかということはそれぞれ地裁、家庭裁判所で決めていただくという改正をすることにいたしました。それが二番目の柱でございます。それからもう一つは、支部の新設というものも検討させていただきたいということを申し上げました。  それらにつきまして圧倒的多数の委員から御承認をいただいたということが一つでございます。特にその中でも小規模乙号支部統合検討する上では、先ほど来、委員の方から御指摘もありましたように、地元関係者意見をきちんと聴取して各地の事情を正確に把握しなさいといったことも留意点として挙げられたわけでございますし、その乙号支部統合に関しましては、住民に御不便をかける点を考えて、先ほど私が申し上げましたような残る簡易裁判所充実策あるいは出張処理に加えまして、廃止する支部の一部については、家事事件の受け付けと出張調停、出張審判を行う場所としての家裁出張所を新たに設けることも家庭裁判所出張所設置規則に所要の改正を加えてでも検討しなさい、そういった御指摘がありました。  その他、ほかにもございますが、さらに加えまして、こういう支部統廃合とあわせてもろもろの最高裁の方で従来進めております司法充実策、例えば訴訟手続の改善の問題でございますとか裁判所におけるOA化の問題でございますとか、あるいは人的機構の充実だとか物的設備の整備充実の問題だとか、あるいは先ほども申し上げました簡裁の機能の充実だとか裁判官執務環境あるいは生活環境の整備充実の問題だとか、そういった施策の方もこれまで同様に積極的に推進しなさい、そういった御注文をつけていただいたのでございます。
  130. 逢沢一郎

    逢沢委員 そういった手続は慎重に進めていただきたいわけでありますが、再度、地元説明を終えられた後、具体的にまたこのマトリックスに戻るわけでありますけれども、では、どこをどういうふうにするか、結論はいずれ出さなければいけないわけでありますが、大体それがいつごろの見通しというふうにお考えなのか、最後にその点をお伺いしたいと思います。
  131. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 これは最高裁における十五人の裁判官会議規則改正が決まるわけでございますが、私ども事務当局としては、その裁判官会議を年内あるいは来年の一月あたりにぜひ開いていただきたい、そして規則改正をしていただいて、若干の準備期間を置きまして来年の四月あるいは五月ぐらいからこの統廃合実施させていただきたい、そういうことを目標に現在一生懸命作業をしているところでございます。
  132. 逢沢一郎

    逢沢委員 今回の適正配置統廃合の問題について幾つかの点をたださせていただいたわけでありますが、改めてお願いを申し上げたいことは、どうか今回の適正配置というのはあくまで国民の皆様方の裁判を受ける権利がさらに強化をされる、充実をされる、いささかもそれを損なうことがないのだという原点、改めて御確認をいただきたいというふうに思います。また、これを契機に、さらに地域の皆さんから本当に愛される、また、なるほどこうだったのかな、非常にプラスの面で受け入れられる結果が出ますように格段の御努力をいただきますことを改めてお願いを申し上げまして、質問を終わりたいというふうに思います。ありがとうございました。
  133. 戸塚進也

  134. 滝沢幸助

    滝沢委員 委員長御苦労さま。委員の皆さん御苦労さまです。政府の皆さん御苦労さま。特に委員長、私の都合によりまして質問の時間等についていろいろと配慮いただきましてありがとうございます。  最高裁、そして郵政省等をお招きしておりますが、質問の項目が少のうございますから先に終わらせていただきまして、終わりましたらお帰りいただいて結構でございますからお願いいたします。  最高裁にお尋ねをいたしますが、陪審制度、これは有名無実といいますか、いつの間にか消えているのでありますが、これを復活したらいかがかという意見が相当各界からございまして、それで最高裁におかれてはアメリカ等にいろいろと調査をされてきたという経緯があります。昨年も質問させていただきましたけれども、最近また御勉強していらっしゃるようで、この間の消息につきましてひとつごく簡単に御説明を願いたい。簡単で結構です。
  135. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 陪審制度につきましては、先回ここで申し上げましたとおり、文献等に基づきまして基礎的な研究を続け、さらに今御指摘のように、昨年はアメリカにおける実情調査もやってまいりました。そういった結果を踏まえまして、引き続き鋭意研究を重ねているところでございます。何分にもテーマが刑事司法の根幹にかかわる非常に大きな問題であります。したがって、今御指摘もございましたが、今年度さらに裁判官一名をアメリカの方に一年半にわたりまして派遣しよう、また、英国にも五カ月間ということで裁判官一名を派遣する予定でございます。引き続き鋭意検討を進めてまいりたいと思っております。
  136. 滝沢幸助

    滝沢委員 我が国は御存じのようにいわゆる第一級の文明国、国民の知的水準も高いことでありますから、どうかひとつ、これが文明国並みに実現しまするように御検討を願いたいと存じます。  さて、郵政省さんにお尋ねをしたいのでありますが、いわゆる年賀はがきというものがもうあと幾日かで発売されると承っております。  ところが、このことを思いますると、昨年は陛下の御不例ということで、それがXデーなどと言われまして、果たして印刷に付して発売していいものかどうか、いろいろとお迷いになった経緯がございます。しかし、陛下の御平癒を祈る国民気持ちから言うならば、御存命中にそのようなことをおもんぱかって発行しないということは、不敬いとも甚だしいことでありまして、昨年の措置は私はよろしかったと思います。  しかるに今日、陛下が崩御あそばしてまだ一年にならぬ、いわゆる諒闇中であります。諒闇中におきまして国民がひとしく新年を祝うということはいかがなものであろうか。しかし郵政省は事業を伸ばしたい、はがきを売りたい、よくわかりますよ。ならば、例えば年頭のはがきというようなことで、いわば「年頭に当たり心から貴殿の御多幸を祈ります」というようなものでいいわけでありますから、これについてもっと陛下に対する深い弔意をあらわすところの工夫はなかったものかどうか。あるいはまた、省内においてそのような意見がいささかも出ないとするならば、私は郵政省の国民としての感覚を疑わざるを得ない。いかがなものであろうか。
  137. 足立盛二郎

    ○足立説明員 お答え申し上げます。  今回の年賀はがきの発行に当たりましては、郵政省といたしましては、いろいろな点を考慮いたしまして郵政審議会の議を経て決定いたしたものでございます。先生指摘のようにいわゆる配慮を欠いた行為に該当するということは考えておりませんので、御理解を願いたいというふうに思います。  私どもいろいろ考えました点でございますが、一つは、昭和天皇陛下の崩御に際しての弔意奉表につきましてはさきに一月七日に閣議決定がなされておりまして、年賀はがきを発行すること自体は国の機関として差し控えるべき事項だということにはなっていないこと、また、哀悼の意を表すべき期間も終え、今日までその後相当の期間が経過しておるということでございます。また御案内のとおり、新年に郵便等によりあいさつを交わすということは国民の生活慣習として非常に定着しておるということでございます。また先生ただいま御指摘もありましたが、年賀はがきの発行ということが郵便事業の経営上極めて重要な地位を占めておるというようなこと、以上もろもろの点を考えまして発行いたしたような次第でございます。
  138. 滝沢幸助

    滝沢委員 あなたの答え長いから答弁要らないけれども、帰りましたら大臣に強くおっしゃってちょうだい。私がいつもここで大臣が見えないときにおっしゃってちょうだいと言うときに、聞いていくんだけれども、それに対する大臣の見解が私的にも公的にもあらわれない。甚だ不満であります。そのことをつけ加えて大臣におっしゃってちょうだいと申し上げるわけです。  政府が、陛下の崩御、一月七日土曜日、八日が日曜日、この二日をもって国民が喪に服する日を定めた。しかし、インドが一週間というものを初め共産主義の国、別に何も共産党に含むものがあるわけではありませんが、そのようないわば体制の違う国といえども三日あり五日ありしているわけです。日本の政府が、土曜日の朝早くお亡くなりになったことをいいことにして、土曜日と日曜日だけで服喪はよろしいと定めるがごとき日本政府の姿勢を私は糾弾しているわけです。その姿勢が、すなわち郵政省をして年賀状を発行することにいささかのためらいもなかったということではありませんか。私はこのことが、象徴天皇と憲法が変わりましても、象徴天皇に対する敬意を欠くものであると申し上げているわけです。大臣に強くこのことを申し上げたい。お伝えを願いたい。  次に、法務省関係で簡単な方からひとつやらせていただきます。  人名用漢字が二千百十一字で、あとは使ってはいかぬ、これは憲法に言う表現の自由という面からいってもいささか問題があろうというようなこともありまして、これをふやせという議論が多々あったことでありますが、これは省が最近いささかふやそうという作業をしていらっしゃったはずです。大臣がその後たびたびかわりなさって、いささか心配する点もあるのですが、いかがなっておりましょうか。
  139. 田辺哲夫

    ○田辺(哲)政府委員 きょう大臣は参議院の予算委員会に行っておりますので、失礼でございますが私から答弁させていただきたいと思います。  今御質問の人名漢字でございますが、総数が二千百十一字、そしてこの内訳が、常用漢字というのが千九百四十五字、それに戸籍法五十条にのっとりまして省令で人名漢字として百六十六字、こういうことになっておるわけでございます。  御質問は、百六十六字をもっとふやせ、こういうことだと思います。私も法務省でこの問題をいろいろ聞きますと、従前から当委員会におきましていろいろ御意見が出ていた、積極的にこれを検討せよということを承っております。そこで、法務省といたしましても、先生の御質問の以後、全国の区市町村、その戸籍係にいろいろ質問やら調査をいたしまして、実情がどうかということを鋭意検討いたしました。そして、現在この漢字の追加につきまして、法務大臣の諮問機関でございます民事行政審議会に検討を依頼しておるわけでございます。そして、その審議会は既に四回の会議を経ておりまして、今年度中にその答申をするということで鋭意努力中でございます。その審議会の答申が出る前に、現在私の立場でふやしますということは言えませんが、審議会で積極的な答申ができましたら、積極的に法務省でも検討する、こういうことで答弁にさせていただきます。
  140. 滝沢幸助

    滝沢委員 速やかに、ひとつ国民生活のために、日本の文化のために人名用漢字をふやしていただくようにお願いをしたいと思います。そして、要するに、撤廃していただかなければならぬ、そこまで続く道のりだというふうにひとつ覚えておいてちょうだいしたいと思います。  さて、先帝陛下の御大喪が二月二十四日、新宿御苑で営まれまして、世界から百六十四カ国の元首、首脳というような方々が御参拝いただきまして、厳粛、盛大に営まれたわけでありました。しかし、これが一部は国事、一部は皇室の行事というようなことで、大鳥居、大真榊を取り払ったり、いろいろと工夫をなさいました。これは、政府の御苦労のほどは察せられるわけでありますが、しかし、一連の御大喪が細切れに、そのように主催者が変わったり、精神が変わったり、予算の出方が変わったりするはずのものではない。甚だもって私は、政府の見解というのは、まあ何事も最近はそうでありますが、八方美人といいますか、あちらにもこちらにも顔を立てる苦労の作品のように見えるのでありますが、愚かなることであり、権威を失うものであり、多くの国民がこれに対して疑問を持つところであります。いかが反省しておられましょうか、簡単で結構であります、時間が制限されておりますから御答弁の方も簡単にしてちょうだい。
  141. 大森政輔

    ○大森政府委員 お尋ねの件につきましては、委員指摘のとおり昭和天皇の葬場殿の儀は皇室の行事として、また大喪の礼は国事行為としてそれぞれとり行われたわけでございますが、これは憲法の趣旨に従い、かつ皇室の伝統を尊重したことによるものであると理解しております。
  142. 滝沢幸助

    滝沢委員 法制局から見えていただいているはずであります。  そこで、今の答弁の中に憲法のことをおっしゃいました。いわゆる政教分離のことでありましょう。これは二十条ないしは八十九条というようなものが言われているわけであります。しかし私は、政府が自衛隊をもって憲法違反にあらず、第九条に抵触するものにあらずという解釈をなさったことは、非常なる英断といいますか、いわゆる諸説紛々たる学界の中において一つの見解を選ばれたものであるというふうに思います。しかしこれは、あの憲法を活字の上から厳密に見る限りは、自衛隊が軍隊にあらず、そしてこれが第九条に抵触せず、一面から言うと甚だもって相当の勇気のある解釈であったわけであります。そのとき法制局はどのように政府に対して進言なさったか、私は知りません。寡聞にして聞いておりません。しかし私は、あの総理大臣たる者がこの解釈でいくという一つの決断には敬意を表せざるを得ない。  ところが、この御大喪ないしは御即位の礼などなどをめぐりまして、政府の見解というものは甚だ法律の文章の文言、活字の間に埋没しておる。統帥者としての政府の見解があらわれていない。ゆえに、ことごとく法制局長官の言をもってこれは事足れりとしているわけでありますが、真田法制局長官が五十四年でありますかにおっしゃった見解というものが今も生きているがごとく。しかし、我が国は古来、法を尊厳なるものとしてこれをそのまま置きまして、解釈をそのときそのときに応じて拡大していくところに我が国の法に対する根本的特徴がありますな、比較法律学なんていうものもあるのでありましょうけれども。  ところが、日本はあの憲法を進駐軍のおっしゃるままに制定したいわゆる翻訳憲法と言われている。しかしドイツは、占領下は占領軍が憲法なんだから占領中は憲法は要らぬと言って、平和条約が締結されるまで憲法制定を拒否しましたね。そして、つくった憲法も三十三回の改正を、昨年ですか、なさったと聞いております。すなわちヨーロッパ等、特にこのドイツのごときは非常に厳密なる解釈をするものでありますから、時々その事象に応じて改正をする。日本は非常に緩やかな解釈をするものでありますから、欽定明治憲法もずっと改正されないまま新憲法に至る。新憲法も四十数年間改正をしませんね。これはしかし、憲法のために、法律のために国家国民があるのではなくて、国家国民のために法があるのでありますから、法の方が国家国民に合わせて変わらなくてはならぬ。変えないならば解釈を拡大したりしなくてはならぬということになります。これは法律先生と議論しても間違いないことだと思いますけれども。  そうならば、あの第九条をもって、憲法違反にあらず、自衛隊は軍隊にあらず、ゆえに第九条に抵触せず、しかし国を守るという奇妙な解釈で通るならば、皇室教なんて宗教はありませんから、天皇教もありませんよ、どうして御大喪が、ないしは御即位の礼、大嘗祭が宗教的行事であるということを規定することができるのですか。法制局長官の見解を聞きたい。
  143. 大森政輔

    ○大森政府委員 ただいまのお尋ねは、今後予定されております即位の礼及び大嘗祭のあり方というものについてのことであろうというふうに理解するわけでございますが、即位の礼の儀式のあり方等につきましては、委員も御案内のことと思いますが、大嘗祭を含めまして、現在内閣に置かれております即位の礼準備委員会において慎重に検討しているところでございます。したがいまして、その検討の結果を待ちたいと思います。お尋ねの件につきまして、まだ具体的なお答えをできる段階に至っていないということを御了解いただきたいと思います。
  144. 滝沢幸助

    滝沢委員 そうしますと、確認しまするけれども、行政の、ないしは政治の解釈があなたの解釈に優先するというふうに思っていいのだね。第九条の、あの自衛隊を合憲なりと解釈したときと同じに、政府の、行政の、政治の判断が法制局の見解に優先していくというふうに考えていいのだね。そうでしょう。  しかし、今までの例を見るとどうも逆であったものでありますから心配するのであります。総理大臣が、とにかく学界にいかなる学説があれ、法制局がどのような見解を持とうがこれでいく、全責任を持ってこれだというものに対して、政府の各省庁、各部局がこれに協力をしろ、全責任は総理たる私にあるというような姿勢を常々示されないところに私は非常に不満を持っているのでありますが、どうかひとつこのこともしかるべき筋から総理に伝えていただきまして、総理のお考えを私に何らかの形で、ひとつこれは御返事をいただきたいと思います。  そこで、今おっしゃったようなことで政府が今準備を進めている。すなわち、官房長官を長としまする検討委員会か準備委員会か知りませんけれども、そこでいろいろとやっていらっしゃるのでしょう。もちろんそうでありませんと、総理を長とするであろうと言われるこの即位の礼委員会では間に合いませんから、間に合わぬということの最初が予算の要求ですよね。予算要求作業予算編成作業が進んでおりますけれども、今どのような形でこれが進んでいるか。つまり、一月中に行われるでありましょうところの期日奉告の儀、これがまず何の予算でできるのであろうか。すなわち、政府予算なのかあるいは宮廷費か内廷費かというあたりが一つの示唆に富むことであるものですから、これをまずお尋ねしたいと思います。
  145. 大森政輔

    ○大森政府委員 先ほどのお答えを若干補足させていただきたいと思いますが、ただいま内閣に置かれております即位の礼準備委員会には私ども内閣法制局長官もその構成メンバーになっております。したがいまして、内閣法制局見解もこの準備委員会検討の中で申し上げる、そして反映していくということでございまして、内閣法制局が外で決まった見解をただ受け入れるのだというものではございませんので、その点御承知おきいただきたいと思います。
  146. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 即位礼、大嘗祭の関係につきましての予算の面のお尋ねでございましたが、先ほど法制局の方からもお答え申し上げましたように、大嘗祭を含めて即位の礼の儀式のあり方等についてただいま準備委員会で鋭意検討をしておるわけでございまして、その検討結果を待ちまして適切に予算的な対処をしていくものというふうに考えております。期日奉告の儀につきましても、この準備委員会での検討結果を待ちながら十分予算的に対処できるように考えていくことといたしております。
  147. 滝沢幸助

    滝沢委員 政府の皆さん、ふざけたことを議会の委員会でおっしゃってはだめですよ。これはいつもそうなのですよ。最近の政府は何事についてもそうなのです。委員会をつくって、委員会検討中、委員会が御検討中と言っているわけですよ。しかし、うちを建てるとき、皆さん設計士に設計を頼みますよ。だけれども、うちを建てるから設計してくれというだけの注文では設計士は設計できますか。これだけの坪数にしてくれ、庭はこうしてくれ、こういうことを注文するでしょう。いろいろな注文があってこそ設計ができるのですよ。委員会をつくるときに、そんなことうそですよ。委員会をつくって、委員会を隠れみのにしているのです。つまり、政府に一つの考えがあって、その政府の考えに賛成するがごとき各界の人人を委嘱する。常識でしょう。ならば、この委員会検討していただいておりますけれども、政府はこう思っておりますと、政府のこの考え方をその委員会が了としてくれるならばそれが実行されます。そうでしょう。違いますか。本当のことをおっしゃい。
  148. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 先ほど御答弁の中で申し上げましたように、即位の礼準備委員会というのは官房長官を長とする政府のそれぞれの方々を集めた準備委員会でございます。そこで即位の礼あるいは大嘗祭を含めて、これをどういうふうにとり行っていくかという基本的な問題を今鋭意検討いたしておるわけでございますから、その検討結果を待ちまして、予算的な面におきましても十分それに対処できるように進めていくと考えております。
  149. 滝沢幸助

    滝沢委員 それならば承ります。  大体宮内庁というのは、私は、天皇陛下をお助けする立場で物を考えていらっしゃるのか、それとも政府の出先機関のようなお考えなのかわからぬということをこの前の法務委員会で陛下の相続税に関する質問のときに申し上げました。私はきょうも同じ実感でいるわけでありますけれども、代々長官というのは議会においでにならない。だからこのことを長官におっしゃっていただきたいと申し上げても、長官からは何の反応もないというのがいつもいつものことでありました。  そこで、次長が責任を持って見えていらっしゃるならば私は次長にお伺いしますけれども、今日の皇室典範における即位の礼を行うことができるというあの文言の中には大嘗祭が含まれておる、こういうふうに私は解釈をします。  その論拠は、古来、大嘗祭が終了されなければ一連の御即位の儀式は完了しない、学者によりましては大嘗祭を終わることのなかった天皇を半帝と申し上げるという説をなす学者もいらっしゃるわけです。しかし、これはいささか御無礼というようなこともありまして、私はその説をとるものではありません。しかし、大嘗祭が終了されて初めて一連の御即位の御儀式、これは践祚から始まりまして大嘗祭に至りますまでは、何も践祚と御即位の礼と大嘗祭だけではありませんよ、私のごとき素人が知っているものでも十幾つのいろいろな行事があるのでしょう。それを細切れに、法の活字の面に合わせて解釈していくような官僚的発想はなさるな、私はこういうふうに実は申し上げているわけだけれども、長官がおいでにならな、い。そして、いつも次長に申し上げても、長官の耳に達しないのか、達しても黙殺されるのか知りませんけれども、今まで御返事があったためしはありません。議会を尊重し、議員を尊敬するならば電話の一本もあってしかるべきことも、電話一本参りません。  言うならば、これは宮内庁が昔の宮内庁の悪い面だけを引き継いで、紫の雲の上に立って陛下の名において宮内庁の考えがあらわれてくる。昔、陛下がおっしゃったと言えば何でも通った時代がありました。最近も、例えば納税のごとき、私は陛下にお目にかかって陛下は納税を、自発的にお納めになりましたかということを聞くことはできませんけれども、陛下のおぼしめしでありますという答えが出てきましたけれども、そのようなものではないかなと私は思いながらお尋ねするわけであります。  宮内庁は大嘗祭を御即位の礼と一緒に国家の行事、国事としてなそうといたしているか。もちろん、それは政府ないしはそのいわゆる委員会がこれに対して拒否すればなかなか宮内庁の案は通せないけれども、宮内庁としては一連のことを全部国事としてなそうとしているか。それとも細切れにしようとしているか。宮内庁自身の見解はいかがか。
  150. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 ただいまお話の中にございましたように、大嘗祭というものは皇室の長い伝統の中で重要な儀式であるというふうに位置づけられておりまして、私どもは皇室の伝統に沿いながら憲法の趣旨に沿ってこれをとり行うという考え方でおるわけでございます。  皇室典範二十四条の即位の礼の中にどういうものが含まれるかということにつきましては、これは既に剣璽等承継の儀、朝見の儀というものが国事行為として行われてまいりました。これから行われます即位の礼というものの中にどの範囲のものが位置づけられるかということにつきましては、宮内庁長官も準備委員会のメンバーとして加わっていろいろ検討を進めておるわけでございます。そういう中で、私どもといたしましては、大嘗祭というものは皇室の伝統に基づく非常に重い儀式であるという考え方のもとに準備委員会で慎重に検討していただこう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  151. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間が参りましたけれども、次長、いいかげんなことをおっしゃるなって。それは宮内庁長官が委員会に出ていくのでしょう。みんなそうでしょう、だれに聞いても委員会で今検討中だからそれに従ってと言って自分の意見を言わないわな。しかし、意見がある連中が集まるんでしょう。そのときに宮内庁はどういうふうに要求をし、どういうふうに発言をするか。宮内庁がその委員会に出るときの考えはどれだと聞いているのに、それでは答えにならないでしょう。そういうことなんですよ、最近の政府のやり方というのは。全部委員会におろす。その委員会委員会のと言って、それぞれの人が意見を言わないうちに委員会意見が決まって新聞に出る。そして国会ではきのうの新聞を拝見しまするとという質問になってくる。これが議会軽視でなくして何でありますか。宮内庁はその準備委員会にどのような案をひっ提げて出ていくのか、これを聞いているのです。  さっき剣璽等承継の儀とあなたおっしゃいましたね。これも間違っておるのですから。あれは剣璽渡御の儀なのですから。剣にも璽にもおのずからの神格がある。それがみずから渡られる。つまりお祭りのおみこしのような、あれも渡御というのでありますが、渡御というのはそれそのものに神位、神格があるということでありますから。人間が運送するという意味じゃありませんから。ことしなしなすったのは人間が剣と璽を運んだということですよ。もうそこに、あなたは古式にのっとりと言っておりますが、古式を壊しておりますからね。もう聞き飽きましたよ。伝統を踏まえ、古式にのっとり、憲法及び皇室典範の規定を踏まえ、これはもう聞き飽きました。  重ねてあなたに聞きます。この準備委員会に宮内庁長官、あるいはあなたがかわるのかもしれません、ここに参加するときのひっ提げていく案というものは、大嘗祭をもいわゆる国家行事として実現していただきたいという気持ちで行くのかどうかと聞いているのです。どうですか。
  152. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 宮内庁も政府の一つの組織であります。政府として、国として、この即位の礼あるいは大嘗祭というものをいかなる形でとり行っていくかということをただいま宮内庁長官もそのメンバーとなって鋭意検討を進めておるわけでございます。宮内庁としては、先ほど申し上げましたようにこれは皇室の重儀であるという基本的な考え方に立って政府の中で十分検討を進めていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  153. 滝沢幸助

    滝沢委員 わからないんですか、私の言っていることが。宮内庁長官はその準備委員会を構成する何人かの一人でしょう。十人なら十人十色の意見が出ていいわけだ、そこで相談をするわけだから、会議は。そこで結論が出るんでしょう。宮内庁は、仮に十人とするならば十分の一の特に重い立場だと思うよ。そのときにどういう案をひっ提げていくのかと言っているわけですから。空っぽで行くんですか。そういうふうに言葉のあやで議会をごまかしてはだめですよ。国民の総意に基づいた象徴だと憲法に書いてあるんでしょう。国民意見、議会の意見に対してそのようなことは、つまり陛下に対する裏切り、うそつきですよ。もう一回だけ、はっきり答えてちょうだい。
  154. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 重ねてのお尋ねでございますけれども、ただいま宮内庁長官もメンバーの一員として検討している中でございますから、このような段階におきまして、宮内庁としてあるいは宮内庁長官としてどのような考え方を持って臨むかということを申し上げるべきものではないというふうに考えております。
  155. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間がないんでありますからきょうはこれで終わりますが、私は法務委員会のこの質問に対する答弁の姿勢については重大なる不満がある。このことを次の委員会の冒頭ただすことを申し上げさせていただきまして、私の質問を終わります。
  156. 戸塚進也

    戸塚委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十七分散会