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1989-11-29 第116回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月二十九日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 近藤 元次君    理事 笹山 登生君 理事 杉浦 正健君    理事 保利 耕輔君 理事 松田 九郎君    理事 柳沢 伯夫君 理事 水谷  弘君    理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    衛藤征士郎君       川崎 二郎君    菊池福治郎君       小坂善太郎君    武部  勤君       鳩山由紀夫君    二田 孝治君      三ツ林弥太郎君    宮里 松正君       谷津 義男君    山崎  拓君       五十嵐広三君    石橋 大吉君       沢藤礼次郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    前島 秀行君       吉浦 忠治君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  鹿野 道彦君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         農林水産省食品         流通局長    鷲野  宏君  委員外出席者         大蔵大臣官房企         画官      福田  進君         厚生省年金局年         金課長     松本 省藏君         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ───────────── 委員の異動 十一月二十二日  辞任         補欠選任   石破  茂君     古賀 正浩君   衛藤征士郎君     平泉  渉君   川崎 二郎君     長谷川 峻君   武部  勤君     渡辺 栄一君   玉沢徳一郎君     石渡 照久君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     玉沢徳一郎君   古賀 正浩君     石被  茂君   長谷川 峻君     川崎 二郎君   平泉  渉君     衛藤征士郎君   渡辺 栄一君     武部  勤君     ───────────── 十一月二十一日  米の輸入反対等に関する請願(岡崎万寿秀君紹介)(第五三八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月二十四日  水田農業確立後期対策に関する陳情書外四十六件(第四三号)  農業基盤整備事業に係る地元負担軽減に関する陳情書外八件(第四四号)  国営土地改良事業に係る地元負担軽減に関する陳情書外一件(第四五号)  地域林業活性化に関する陳情書外四件(第四六号)  竹島周辺海域における漁業安全操業の確保に関する陳情書外二件(第四七号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第六九号)      ────◇─────
  2. 近藤元次

    近藤委員長 これより会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部勤君。
  3. 武部勤

    武部委員 御承知のとおり、農林年金制度は、農林水産施策の推進上重要な役割を担っている農林漁業団体役職員に、市町村の職員に劣らぬ資質のすぐれた人材を確保しようということで、その福祉の向上に資するよう昭和三十四年に厚生年金から分離、発足したものであります。以来今日まで公的年金制度一つとして、また農林水産施策遂行の上からも重要な役割を果たしてまいりました。本日はこの農林年金制度について、地ならし改正ということで政府の提出している改正法案について、以下幾つか質問をしたいと思います。  まず、農林年金制度は、制度発足から三十年を経過しまして、その間幾多制度改正などを経まして、今日ではその内容対象団体も充実していると存じますが、農林年金制度における年金受給者の数、それに退職給付の一人当たり平均年金額は現在どのぐらいになっているか、このことをお尋ねしたいと思います。
  4. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員の方からお話がございましたように、農林年金公的年金一つの独立した制度として昭和三十四年から発足をいたしたわけでございます。現在では加入団体、これは農協あるいは土地改良区等あるわけでございまして、一万二千余の加入団体組合員の数では四十九万人余の現役の方が加入されて、老後の安定のための制度としてあるわけでございます。現在お尋ね年金受給者の数、現に年金権が発生をいたしまして年金を受けておられる方の数でございます。これは、昭和六十三年度末、ことしの三月末で十八万三千人の方が年金給付を受けられておるわけでございます。  御案内のとおり、年金には最も典型的な退職に伴う退職給付に係る年金のほかに、障害給付でございますとか、あるいは遺族の方にお払いする遺族年金、そういうものがあるわけでございますけれども、そういう種類別の差を捨象いたしまして、全体で十八万三千人の方が年金を受け取っておられる方になるわけでございます。そのうち最も代表的な退職給付を受けられる方は九万八千人いらっしゃるわけでございます。  この退職給付対象になっておられる方につきまして、給付水準年金額を申し上げますと、平均百六十五万円になっておるわけでございます。これは退職給付といいましても、組合員として在職された期間が二十年以上の方と二十年未満で既に退職給付を受けられた方と二通りいらっしゃるのですが、そのうち組合員期間が二十年以上の方について一人当たり平均額を申し上げますと百六十五万円になっておるということでございます。
  5. 武部勤

    武部委員 そこで、今回の法律案が通れば平均的年金額がどの程度増額されるのか、この点はいかがですか。
  6. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 ただいま申し上げましたように、現在最も典型的な二十年以上経過されました退職給付は、平均百六十五万円に給付水準がなっているわけでございますが、今回、ただいま御審議をいただいております法律改正の中に盛り込まれている給付水準改定措置幾つかあるわけでございまして、その結果、当然百六十五万円の給付水準上昇するわけでございますが、その今回の給付水準改定内容幾つかございますのでまずそれを申し上げますと、四月から前年の物価上昇率〇・七%の上昇ベース引き上げをやることになっておりまして、これによる分が月額ベースでは十三万七千円から十三万八千円、〇・七%の物価上昇を反映した引き上げになるわけでございます。さらにまたことしの平成元年の十月から、給付水準そのものを見直すことによりまして年金額引き上げ措置を講ずることにいたしておりまして、これはモデル試算によりますと対前年度で四%程度引き上げになるわけでございまして、先ほどの月額ベースで十三万七千円からスタートしてカウントいたしますと十四万三千円ぐらいになるわけでございます。これは十月からでございますから、年ベースに引き直しますと、先ほど申し上げました百六十五万が百七十二万ぐらいに給付水準のアップが見込まれるということでございます。
  7. 武部勤

    武部委員 ただいまお話しのとおり、この法律案が通れば本年四月分から〇・七%、十月分から約四%年金額引き上げられることになるわけです。またそのほか、この法律案には給与の低い方のために設けられている、勤めながら年金支給を受けるいわゆる在職支給、この支給割合の区分を従来の三段階から五段階にふやす措置を講ずるとか、年金支給日について従来年四回だったものを年六回にふやす措置を講ずるなど、すべて給付改善につながるきめ細かな措置が盛り込まれているわけでありますから、これを一刻も早く成立させ、今回の措置を一日千秋の思いで待っている全国の受給者方々に一日も早く増額された年金を届けることが重要だ、こう思うわけであります。  また、この給付改善措置については、政府案では十月分から本格的な引き上げが行われることになっているのでありますけれども、我が党のさき参議院議員選挙における選挙公約では、これを四月分にさかのぼって実施する旨の発表をしているわけでありまして、受給者方々に対する福祉充実を図る意味から、ぜひこれを実現させていくべきであると考える次第であります。  そこで次に、公的年金制度一元化について若干質問いたしたいと思います。  御案内のとおり、昭和五十九年二月の閣議決定があり、この中で、最終的には昭和七十年、すなわち平成七年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる、こういうふうになっているわけであります。そしてこの閣議決定を受けて昭和六十一年度においては、全国民対象とした共通基礎年金を導入し、農林年金を初めとした被用者年金制度は、この基礎年金の上乗せとして給付する仕組みとなったところであります。本年は平成七年一元化完了時点までの中間時点に当たるわけでありまして、政府の方では、いわゆる一元化完了地ならしとして、各年金法改正にあわせて制度間の負担調整法案さき通常国会に提出いたしまして、今臨時国会審議がなされているわけであります。しかし、いずれにいたしましても平成七年における一元化完了の具体的なイメージがわいてこないわけであります。これについては、組合員または受給者の間に、今後農林年金はどうなってしまうのだろうという不安の声もあるわけでありまして、この一元化の具体的な姿について現時点でどのように描いているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  8. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 一元化の問題につきましては、今委員の方からお話がございましたように、五十九年の閣議決定から一元化に向けての作業といいますか制度間の調整が始まったわけでございます。五十九年の閣議決定を受けまして六十一年度から基礎年金が、各公的年金共通のいわば一階建て部分年金としてスタートをした。それが一元化の最も最初のスタートであったわけでございます。ことしは、お話がございましたように、制度間の給付負担均衡化を図る、平成七年の最終的な一元化に向けてのいわば地ならし措置として負担給付調整を図る、成熟度の差による負担のアンバランスというものを、暫定的な措置でございますけれども調整を図っていこうということで、別途そのための法案が提出されておるわけでございます。  そういうものを踏まえまして、今後残された期間内にさらに一元化の仕上げをしていくということになるわけでございますけれども、率直に申し上げまして私どもも、最終的に一元化をどういうところに収れんしていくのかということについて、現段階で明確に申し上げることは困難なわけでございます。理屈の上では、それぞれ分立しております制度をそれぞれ存続させながら、給付負担の両面におきまして今回行われる暫定的な調整をさらに進めて整合性を図っていくという形の一元化ということも理論的には考えられますし、また、各制度制度として分立させないで統合し、一つ制度として確立していく中で負担給付一元化を行っていくというような形も当然想定されるわけでございます。そういう、いわば理論的に想定されるものはあるわけでございますが、現実に最終的な姿がどう落ちついていくのか、これは今後我々も厚生省その他の関係省庁とも連絡を緊密にしながら検討する必要がございますし、また、年金問題というのは非常に大きな国民的な課題でございますから、最終的にはやはり国民の大方の納得を得る姿で決着をさせていく必要があるわけでございます。  いずれにしても、今後さらに詰めがなされる年金一元化に向かって、ただいま御審議をいただいております農林年金の持つ独自性というものも、あるいは経緯というものも十分尊重しながら、農林水産省としては一元化作業に慎重に対処していきたいというふうに考えるわけでございます。
  9. 武部勤

    武部委員 まだ時間がありますから、今の段階でかちっと固めてしまって身動きのとれないような状態にしてしまうのも問題ではないか、こう思うのですけれども、ただいまのお話にもございましたが、農林年金公的年金制度一つでありますけれども職域年金制度としての役割も持っている、こう思うわけですね。これは他の制度と比べてどのような独自の部分というものを持っているのか、そのことの御説明をいただけますか。
  10. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金制度独自性についてのお尋ねでございますが、例えば、農林年金の場合は各県の農協中央会に連絡協議会が置かれておりまして、年金の支部的な機能も果たしております。そのことを通じまして、事務コスト軽減あるいは組合員へのきめ細かい指導ができるというような体制が仕組まれてございますし、それから、掛金を原資とします積立金につきまして、現役組合員の方に還元融資をやるというような福祉事業も実施しているところでございまして、そういった特色を有しているわけでございます。
  11. 武部勤

    武部委員 ただいま御説明のとおり、独自の部分というものが現にあるわけでありまして、これが他の制度に比べてメリットに働いているわけでありますが、これが仮に平成七年に公的年金制度が完全に一本化して一つになってしまうというような極端な事態を想定いたしますと、先ほど答弁された独自部分、すなわちメリット部分も存続していくかどうか、まずかなりの部分が消えていくだろう、こう思われるわけであります。このようなことを念頭に置いて今後この問題は十分に議論されていかなければならない、こう思いますが、一元化へ向けて農林年金制度をどのように続けていく考えか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  12. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 さき昭和六十一年の改革で、公的年金制度一元化の第一歩といたしまして、御案内のとおりに全国民共通基礎年金制度を導入いたしまして、いわゆる一階部分一元化を図ったわけであります。公的年金制度一元化の最終的な姿につきましては、ただいま局長からも答弁をいたしたわけでありますが、今回地ならし改正として提出されております制度間負担調整法案による負担調整の推移を見ながら決められていくものと考えておるわけでございますが、これらの対応につきましては、独自性を有する農林年金制度をどのように位置づけしていくかということが大変重要な問題だ、このように考えております。今後、組合員代表あるいは事業主代表あるいは学識経験者等から構成されます農林年金制度に関する懇談会を開催をいたしまして、この場で関係者の意見を十分伺いつつ、農林年金制度設立経緯等も踏まえまして、今後の農林年金制度対応について誤りのないよう対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  13. 武部勤

    武部委員 ただいま大臣からお答えをいただきましたように、この問題は平成七年までに公的年金制度あり方を問う重大なまた難しい課題であろう、こう思うわけでありますが、ぜひ農林年金独自性なり期待される役割なりが損なわれることのないように、各制度の存続を前提として進めていただきたい、こう思います。  さて、近年における我が国社会高齢化のテンポは実に驚くべきものがあるわけであります。全人口に占める六十五歳以上の人口割合で言いますと、一九八五年では我が国が一〇・三%、これは例えばスウェーデンの一七・九、イギリスの一五・一、西ドイツの一四・七%などに比べてまだ低い数字でありますが、これが二〇二〇年には二三・六%、すなわち四人に一人が高齢者ということになるわけであります。これは、スウェーデンの二二・八、西ドイツの二二・三、イギリスの一八・七%などを抜いて世界一の高齢化社会になるものと予想されるわけであります。この進展の速さは世界に類を見ないものでありまして、またさらに近年における家族形態の変貌、すなわち核家族化の進行による高齢化世帯の増加は、例えば男子六十五歳以上の高齢化世帯は、昭和二十九年には四十万世帯であったものが、昭和六十二年には三百五十万世帯と九倍にもふえているわけであります。このことは、従来家庭内で子が老いた親の世話をするという私的扶養形態が崩れてきて、社会全体で高齢者を扶養するという公的な世代間扶養形態に移行してきたということでありまして、公的年金制度の果たすべき役割がますます重要なものになってきたと言えると思うのであります。その意味からも公的年金制度は、安心して老後を任せられるような、将来にわたって健全で安定したものでなくてはならないわけでありまして、そのためには財政健全化ということが何よりもやはり重要なことだ、こう思うわけであります。  そこで、農林年金財政問題について以下伺いたいと思いますが、今回本法律案により、賃金の上昇率などを織り込んだ年金額引き上げ措置が講ぜられるわけでありまして、農林年金財政の長期的安定、健全化を図る上から財政計算は避けて通れないと考えるのでありますが、この点についてはいかがお考えでありましょうか。
  14. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 ただいまお話がございましたように、年金額改定が今回行われます。その概要につきましては先ほど申し上げたわけでございますけれども給付水準引き上げられるということになりますと、給付の最も基礎的なべースはやはり掛金をどうするかというような問題になってくるわけでございまして、その前提としての財政計算を実施するということが各年金を通じての原則であろうというふうに理解をいたすわけでございます。  農林年金につきましても、従来五年に一回の財政計算という考え方をとっているわけでございますけれども、前回、昭和五十九年をベース計算をし、現在の掛金率ベースをそこで見通しをしたわけでございます。五年に一遍のタームということでございますと、平成二年に実施して、その結果掛金率に変動を要するという場合には平成三年四月から反映されるということになるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、ことしの十月から給付水準引き上げを行う、他の公的年金とのいわば均衡を図るという意味での給付水準の見直しが行われるわけでございますので、やはり年金の長期的な安定的な制度としての維持を図っていくというためには、財政計算を行った上で、それとの兼ね合いを踏まえて対応していく必要があるわけでございまして、五年目を待たずに再計算をやる必要があるという考え方に私どもも立ちまして、年金当局に対しましてもそういう考え方対応していく考えでございます。
  15. 武部勤

    武部委員 ところで、農林年金の将来の財政見通し概要について、現時点でわかっていれば、その成熟率の動向、収支の見通しなどについてお聞かせ願えないでしょうか。
  16. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 まず成熟率でございますが、これは昭和六十三年度末では二一・二%、つまり年金受給者一人を現役組合員四・七人で支えるという現状でございますが、将来は当然平均余命年数も延びるということ、それから、新たに年金受給権が発生される方も今後急速にふえてくるわけでございます。片やそれを支える現役組合員は、農林漁業団体の雇用の現状から見まして、現在四十九万人余いらっしゃるわけでございますが、これが今後拡大するということは極めて困難だ、横ばいと見るべきだろう。そういたしますと、成熟化のピークを迎えるのは平成三十九年度ごろであろうか、その段階では四六・六%程度、つまり年金受給者一人を組合員二・二人で支えるというようなことが想定されるわけでございます。  このような見通しのもとで、今回、平成元年度に予定されております、先ほど申し上げました給付水準改善を実施するものとし、かつ、現在適用いたしております掛金率千分の百三十四、これを組合員年金当局で折半をするということで負担をしているわけでございますけれども、この千分の百三十四の掛金率を据え置いたと仮定いたしますと、平成六年には一年間に支払う年金額が収入を上回る、つまり単年度で赤字になる、以後積立金を取り崩して、平成十七年になりますと、現在一兆円余あります積立金がその段階ではゼロになってしまうということも予想される、そういうような財政状況にあるわけでございます。
  17. 武部勤

    武部委員 ただいまのお話のとおり、現行の掛金率千分の百三十四を将来とも据え置いたら平成十七年に積立金がゼロになる、その後は、その年に必要な給付に要する金額をその年に全額もらうことになるという大変な事態になるわけであります。そのような事態を回避するためにも、掛金率段階的に引き上げいかざるを得ないものと私は考えるのでありますが、ただその場合でも、掛金を払う現役組合員立場生活実態などを十分考慮に入れて、あるいは時間をかけて話し合いをし、理解を得た上で実施に移すという姿勢、態度が肝要かと思われるわけであります。農林年金においては、財政計算の結果仮に掛金率引き上げざるを得なくなった場合には定款を変更してこれを行うことになるわけでありますが、十分に年金財政の将来について、後になればなるほど若い人たち負担が重くのしかかってくることになるわけでありますから、若い人たちとも議論した上で実行するという説得力のある手順を尽くして行うことが必要である、かように考えるわけでありますが、この点についていかがお考えか、伺いたいと思います。
  18. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 仰せのとおり、掛金が幾らであるかというのは現役の方の生活に非常に影響のある問題でございますが、同時に、長期的に安定した年金を構築していくということについては、単に年金支給を受けている方のみならず、将来受けるべき現役の方にとっても大変重要な問題でございます。したがって、今回財政計算当たりましても、掛金引き上げの問題につきましては、最終的にはやはり関係者の十分な理解コンセンサスを得た上で手順を尽くして進める必要があるというふうに思っておりまして、中央の懇談会あるいは地方の地区別会議を通じまして十分コンセンサスを得ながら進めていただくよう、年金当局に対してもそういう立場指導してまいりたいというふうに考えております。
  19. 武部勤

    武部委員 ぜひひとつそのようにしっかりお願いしたいと思います。  時間がなくなってしまいましたので、実は私は農林年金制度に関連して今後の農協あり方等について質問したいと思っていたわけでありますけれども、最後に大臣のお考えだけ聞いて終わりたいと思います。  御承知のように、近年我が国農業は非常に内外情勢厳しいもとで、牛肉・かんきつの輸入自由化決定、米価を初めとする農畜産物の価格の抑制、さらには当面する水田農業確立後期対策への対応など、幾多試練に直面しているわけであります。このようなときにこそ、農家協同組織体であり、また地域農業中心的組織である農協が、農家と一体となってこれらの試練に立ち向かっていくことが各方面から期待をされていると思うのであります。しかしながら最近の農協活動を見ますと、残念ながらみずからの組織経営維持を図るため信用事業あるいは共済事業などの経済活動に力点が置かれ、営農指導事業組合員農家の切実な要請に十分こたえていないのではないかという批判が系統内外にあることも事実であります。また、農協系統挙げて推進されている農協合併については、これは経営基盤安定強化に資するものであるという意味で重要なことだとは思います。しかし、形式的な合併はかえって農協農家との結びつきを希薄化するのではないかとの声もあるわけであります。農協組織事業運営に当たっては、金融自由化の急速な進展状況のもとで、農村社会及び農業構造の変化に伴う組合員農家のニーズの多様化等に的確に対応していくことなど、困難な問題を抱えておることは十分承知しておりますが、農協が今後とも農家協同組織体として、また地域農業中心的組織としての機能を十分に発揮していくためには、組合員である農家の真摯な要求を真剣に受けとめ、組合員のための組織であるという原点に立って、組織事業運営の見直しに積極的に取り組んでいくことが避けて通れない課題である、かように考える次第であります。  最後に、大臣農協組織事業運営の見直しについての農林水産省指導方針をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  20. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 最近の農業、農協を取り巻く環境の変化の中で、農協組合員のための組織であるという原点に立って組織事業運営の見直しに積極的に取り組むことは大変重要なことであると考えておるわけでございます。このような点から日ごろから指導を行っているところでございますが、農協系統組織におきましても昨年十二月に「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」を決議いたしまして自主的な改革を開始しておる、こういうことも承知をいたしております。農林水産省といたしましても、このような農協系統組織の自主的な取り組みとあわせまして、営農指導事業の適切な実施あるいは責任ある執行体制の確保等を図る観点から、本年の二月に指導通達を出しまして、今後の農協組織事業運営に万全を期しておるところでございます。
  21. 武部勤

    武部委員 ありがとうございました。  終わります。
  22. 近藤元次

    近藤委員長 次に、田中恒利君。
  23. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 同じような趣旨の内容になるわけですが、今の御答弁を聞きながら、若干具体的にお尋ねをいたします。  一つは、公的年金一元化、新しい年号で平成年度までにということでありますが、今もお話がありましたけれども、これがどうもぴんとこないわけであります。どういうふうになっていくのかさっぱりわからなくて、これから農林年金を含む共済年金厚生年金国民年金などの具体的な改革内容審議をしなければいけないという問題があるわけでありますから、我々としてはこういう方向に向かって進むというものが欲しいのですが、それが今のお話を聞くとどうも不明確であります。そこで私は大臣に、ある面では大臣の御決意に関することになるかもしれませんが、少しお尋ねいたします。  大臣はたしか公的年金関係閣僚会議のメンバーであると思います、つまり農林年金の主管大臣でありますから。そこで具体的にいつごろまでに青写真が出てくるのか、まだ全然わかっていないのかどうか。大臣自体はこの閣僚会議にそれほどたくさん出ていらっしゃるわけじゃないと思いますが、これまでの経過から七十年度にやっていくということなんでありますが、そうしたら、細かいことは別にしてもいつまでに大体の構想が出ていくのか。つまり、私どもが聞く範囲では、最も理想的に一本というものもありますね。あるいは、国民年金を中心にして今度基礎年金というのもこの改革の一つの分野ですが、地域年金的なもの、職域年金的なもの、そういう二つの考え方もあるやに聞いておる。あるいはそれにもう一つ、三つ、つまり厚生年金と共済組合年金国民年金と。こういうことなどいろいろ言われておるのですね。そういう行き着くところがちょっとわからないのです。これについて大体どういう方向なのか、これが一つであります。  それから、農林年金というものが一体どうなっていくのか、これは先ほどのお話を聞いてもなかなか——今国鉄とたばこが一つ財政的に問題になっておりますが、財政的には続いてのランクに走ってきているわけですね。けれども、これは今日の農村あるいは農業団体を囲む内外の情勢というのが非常に大きな圧力になっていることは御承知のとおりであります。それだけに我々としては、この農林年金を充実して職域年金としての機能を発揮させなければいけないわけでありますが、農林年金についてはこの中でどういう位置づけになっていくのか、その辺が不明確なんであります。そういう点で、大臣の方で、年金の全体的な一つの姿を考え意味で、こういう方向に向かうだろうということでも結構でございますが、ひとつお考えをお示しいただきたいと思うわけであります。
  24. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 昭和六十年改革で公的年金制度一元第一歩といたしまして、先生御案内のとおりに、全国民共通基礎年金制度を導入いたしまして、いわゆる一階部分一元化を図ったわけでございます。今回、各制度を通じまして負担調整を行う制度間負担調整法案国会に提出いたしまして審議をお願いしているところでございますが、平成七年を目途とする一元化の最終的な姿というものにつきましては、各年金制度は存続し給付負担の両面におきまして整合性を図り一元化する、また、各年金制度を統合して新たな単一制度のもとで給付負担を一元的に行う、このように理論的にはいろいろ考えられるわけでございます。いずれにせよ一元化に当たっては、農林年金制度設立経緯なりあるいは独自性等を踏まえまして、対応につきまして誤りのないよう、組合員代表なりあるいは事業主代表等関係の皆様方の意見を十分伺いながら慎重に対処していきたい、このように考えておるところでございます。
  25. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 理論的には農林年金は存続するということはわかっておるが、現実的には今から給付負担調整などの中でということで、何かもやっとしておるわけですけれども、現行共済制度というのは大体存続をしていく、理論的にも実践的にもそういう方向に向かうだろうと我々は一応考えておりますが、そういうことではございませんか。
  26. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 大変難しい御質問で、先ほどから申し上げておりますように、それから大臣からも今御答弁しましたように、最終の一元化の姿が具体的にどういうものになるかというのは、現時点では率直に言いまして非常にわかりにくいわけでございます。確かに、六十年に基礎年金が導入された、一階部分については制度の統一性といいますか共通性が非常に高まった、純化したということでございますが、ことしやることになっております各年金を通ずる共通部分についての負担調整ということは、あくまでそれぞれの制度を分立しながら、しかも五年間の暫定措置といたしまして、それぞれの制度の基本的な掛金なり給付水準はそのままそれぞれの制度の枠内にとどめながら、負担の面で調整措置をやるという手段がとられていることは御存じのとおりでございまして、こういう手段をずっと追っていくのかなという感じもいたすわけでございますけれども、果たして本当の一元化の最終的な姿が、制度の独立を維持しながら負担調整をやるという、ことしとられております手段と違うようなものが出てくるのかどうか、我々も率直に言いまして非常に難しいことで、今の段階でこれ以上申し上げるのは困難でございますけれども、先ほど大臣が御答弁いたしましたように、どういう一元化内容で収れんいたすにしても、農林年金の果たしている役割経緯というものを踏まえて慎重に対応していきたいというふうに考えているわけでございます。
  27. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 わかりました。これは大きな問題なんですね。日本の社会あり方社会保障制度あり方高齢化社会の大黒柱、それだけに確かに慎重ということもありますが、平成七年というのはそんなに長くないですよ。一元化というのがそんなに簡単にいくような状況でもないと私は思うので、やはり政府の方も思い切ってできるだけ早く国民に、日本の年金制度はこういう方向に向かっていくというのを出すべきだと思います。ですから、今関係閣僚会議とか、何かその下に局長さん中心の調整会議のようなものを持っていらっしゃるようですが、余りそれも活発に動いているようには見受けませんが、もう少しこの問題については農林年金立場を主張しながら、農林省としてもひとつ政府に対して特段の前向きの姿勢で進めてもらいたい。我々は、各種年金制度というものを存続させながら全体の給付負担一元化をどういうふうに持っていくのか、こういうことが政府考え方の方向だろうという認識をしながら、同時に私どもとしても煮詰めていきたい、こう思っております。  そこで、年金財政現状見通しについて大ざっぱなお話があったわけでありますが、特にこの農林年金というものを考えた場合にどういう特徴があるのか、もう一遍ひとつ御回答いただきたいと思います。
  28. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金の特徴でございますけれども昭和三十四年に独自の制度として発足してきたわけでございますが、農林漁業団体に勤められておる役職員のための老後の安定、福祉の実現という趣旨で行われている制度でございまして、わけてもその中心になる加入団体農協でございまして、県の農協中央会に連絡協議会を設けまして、それがいわば年金の支部というような機能も果たしておられますし、そういう場を通じまして、現役の方が老後に備えて準備をするということについてもいろいろ御指導申し上げる、それからまた、積立金の有効な活用を図るために、現役組合員の方に対する還元の融資あるいは施設の運営というふうなことをやっておるわけでございまして、そういう点に農林年金独自性があるのであろうというふうに認識をいたしております。
  29. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農林年金制度的には、仕組みの上では公的年金制度とほとんど同じ状態になっておる。しかし内容的には、先ほどもいろいろ詳しい数字の御説明もありましたけれども、基本的に農林年金に加入していらっしゃる農林漁業団体役職員の給与というのは、各種年金の中でも最も低いわけですね。これが一番の問題であります。ですから受給者年金給付額も、少しずつは上がっておりますけれども、やはり低い。これは一つの特徴でありまして、実態としては、仕組みは同じだけれども中身が問題である。これをどう変えるかということはお役所や年金当局の問題ではないかもしれませんけれども、しかし実態としてはそれがありますね。  それから、先ほどもお話がありましたが、数ですね。今日の農林漁業の実態の上に立って、加入者数がふえないだろう。特に、今非常に心配をしておるのは若い人ですね。つまり、二十歳とか三十歳、特に二十歳代の若い働き手というか職員農協などにもなかなか少ない。私どもが大ざっぱに聞いておるのでは、大体年間二万人ぐらいの人がやめていく、二十歳代。それに対して一方五千から一万六千人ほどが新しく入っていくにすぎない。したがって、毎年四、五千人の人が二十歳代少なくなっていく。これは将来展望に立った場合に非常に大きな問題であります。私はこういう点が農林年金の最大の、まだ追いついていかなければいけない課題だと思うのです。これは農林漁業団体を中心として働く人々などが処理しなければいけない問題であるが、多分に今日の農林漁業を囲む客観情勢、一般情勢というのが反映しておるわけでございますから、そういう意味で、この年金制度に対してやはり政府は特段の力を注がなければいけない必要があると思っております。こういう点について政府のお考えがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  30. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 今委員の方からお話がございましたような実態にあることは、私ども認識をいたしておるわけでございます。特に組合員の数の動向についてお話がございましたけれども、農林漁業に関連する団体ということで、農林漁業は今産業としての非常に難しい時期に来ておるだけに、それが農林漁業団体役職員の雇用の状況にも非常に影響しているということは仰せのとおりでございまして、そういったことから現役組合員の今後の増加が非常に困難である。母集団の拡大、母集団が安定してふえていくということが安定した年金財政維持していく上での一つの大きな要素であることは間違いないわけでございますが、それは非常に困難である。片や、高齢化というのは各職種を問わず押し寄せてくるわけでございまして、そういうことで急速に成熟度が進んできているという実態にあるわけでございまして、職域によりまして、産業構造の変化というものによりまして影響の度合いが違うわけでございますから、そういう違うものをそれぞれの職域ごとに年金という世界でそれぞれ独立して仕組むことによる問題ということになろうかと思うわけでございます。しかし、先ほどから申し上げているように農林年金独自の役割経緯というものがあるわけですから、年金財政現状を十分踏まえながら、できるだけその安定を図りながら独自性維持に努力する必要があるだろうというふうに考えるわけでございます。
  31. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 余り時間がありませんので、あと一括して二つ三つお尋ねしておきますのでお答えいただきたいと思います。  一つは、財政計算掛金の大幅増というものが伝えられておりまして、いろいろな意見が我々にも寄せられているわけでありますが、大体どの程度になっていくのか。そして今、国会でもこの掛金の問題は各共済年金、特に厚生年金のところで議論されておるようでありますが、もうこれ以上上げるべきでないという意見が相当強くて、いろいろな意見が投げかけられておるようであります。予定されるものよりもやはりできるだけ抑えたい、こういう空気が流れておるやにも聞いておるわけでありますが、改めて監督官庁である農林省としては、この掛金の増に対して、増は若干いたし方ない、こういうことなんでありますけれども、しかし相当大幅な上昇になっていく。さっき申し上げましたように、本来根っこが低いところでありますから、今千分の百三十六ですね、これが相当上がっていくということになっていくとやはり問題であります。これについての御意見。  それから、財政調整法で農林年金はこれから五年間百億ですね。毎年二十億拠出をしていく、こういうことになるわけでありますが、この二十億の影響というのが本年度の場合年金財政に大きな影響を与えないか年金の収益というものは、掛金よりも運用益などの面が相当多いように聞いておるわけでありますが、二十億の影響をどういうふうに見ていらっしゃるか、これが二番目であります。  そして最後になりますが、厚生省、来ていただいておりますが、財源調整法で農林年金は二十億でありますが、厚生年金それから私学、いろいろなところから約三千億の拠出金が出ますね。これはどういう根拠で出されるのか。拠出率というものを出していらっしゃるわけでありますが、各年金ごとに違いますね。成熟度が違うといったようなことでしょうが、もう少し細かくこの算定した根拠について、私、できましたら細かくやりたいけれども、時間がありませんから大ざっぱにお尋ねしておきます。  以上三つです。
  32. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金財政計算をただいまやっておるわけでございますけれども、その場合やはり年金財政の安定を図る見地から四つほどの前提条件を置く必要があるわけでございます。一つは単年度の収支が赤字にならない、さらに二番目に積立金の取り崩しという事態に至らない、三番目は急激な変動がある場合にも対処できるだけの準備金を常に保有する、四番目に後代になるほど上げ幅を大きくせざるを得ないというような事態にならない、この四つほどの前提を置きまして、かつ現在の農林年金支給開始年齢である六十歳で将来の収支を計算いたしますと、やはり掛金を千分の三十ずつ引き上げる、御案内のように現在百三十四でございますから、少なくとも今回百三十四を百六十四ぐらいに引き上げないと、将来における財政の安定が困難になるのじゃないかなというふうに見通されるわけでございます。先ほど申し上げましたように、将来とも百三十四で据え置きますと平成十七年には積立金が全部なくなってしまうというようなことも想定されるわけでございますので、先ほど申し上げたような四つの条件を前提に置きますと、千分の三十ぐらいの引き上げは安定を図る上で必要かなと見られるわけでございます。いずれにしましても、これは年金当局関係者コンセンサスを得て定款を変更するという手続を踏まれるわけでございますので、私どもは今後の推移を見守りながら適切な対応ができるように、関係者ともどもに努力をしていきたいと思うわけでございます。  それから、今回の暫定措置としての負担調整、これは農林年金につきましては一年間に二十億のいわば持ち出しになるわけでございます。これは先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現在の掛金に反映させないでその外側で負担調整をやるということでございますから、これに伴って掛金引き上げという事態にはならないわけでございますが、これはあくまで積立金の運用益の範囲内で対応する、現役組合員の方の掛金引き上げにつながらない措置であるということでございます。
  33. 松本省藏

    ○松本説明員 お答えを申し上げます。  今回の制度調整でございますけれども、先生御承知のとおり、各被用者年金制度の中で不公平のないように一定の共通給付部分というのを想定いたします。もう少し具体的に申しますと、老齢給付であって六十歳以上の者に支給されるもの、例えば共済年金ですとまだ五十何歳で支給される部分がございますが、そういうものは除外をさせていただきます。六十歳以上の方に支給される部分、それから期間としては昭和三十六年四月以降の期間にかかわるもの、これは制度がそれぞれ発足した時点が違うものでございますから、一定の期間を押さえなければなりません。それからさらに給付水準厚生年金並み水準で押さえる。こういう四つの要素で各制度共通給付部分というのを押さえるわけでございます。これを被用者年金制度全体で足し込みますと全体としての制度調整対象となる給付の総額が出るわけでございます。概算で申し上げますと約八兆円という規模の額になるわけでございます。これが受給者方々共通で受け取る部分、こういうことになるわけでございます。  今度は支える方でございますけれども被用者年金制度現役方々がどれだけ支える力があるかということになるわけでございまして、全被用者年金制度の六十歳末満の加入者の方々の標準報酬の総額を足し込みます。これもちょっと概算で申しますと、約百兆円近い数字になるわけです。これが現役方々全体の支える力になるわけです。先ほど申しました約八兆円の受給者に対する年金給付、これを現役方々の約百兆円という標準報酬で共通に支えるということで、一種共通負担率というのが出てまいります。この共通負担率ごとに各被用者年金制度現役負担力、これは被用者年金制度ごとの標準報酬総額ということになるのでございますが、これを掛け合わせますと各制度ごとの負担する額というのが出てまいるわけでございます。  そして、例えば農林年金の場合で申しますと、現役の方がそういう意味で支えるためにお金を出す額といいますのが、平成年度から平成年度までの五年間の暫定措置でございますので、毎年度平均で拠出金というのが約千十億でございます。そして一方で、農林年金の方が今度は受給者として交付を受ける額が同様に毎年度九百九十億円、その差し引きとして二十億円というのを、結果として実質的に毎年度拠出をしていただくという形になるわけでございます。  同様の仕掛けで、厚生年金の場合ですと、差し引きいたしまして実質的な負担額というのが千百四十億円というふうになりますし、先生御承知のとおり、NTTの場合には三十億、地方公務員共済は二百七十億、そして私立学校共済は三十億、全体合わせますと千四百九十億になるのでございますが、そういうような形で計算というか、それぞれの負担というのが出てまいる。それぞれ負担額が違ってくるというのは先生の御質問にもございましたけれども、各制度ごとに現役受給者との割合成熟度と申しますか、それの違いがあらわれてくるということでございます。
  34. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間が参りましたので終わらせてもらいますが、今のお答えで若干意見もあるのです。局長さん、これはあなたのところだけじゃない、厚生省が中心になるのだろうが、ともかく高齢化社会へ入って、受給者が多くなって労働力がそれほどでない、だから今のあれでいくとこうなっていくから掛金を上げるより手がないんだ、この論法が政府年金改革の論法ですけれども、しかしそれだけではない。いろいろな要素がある。我々は別な対応策として、労使間の掛金率であるとか国庫補助を基礎年金三分の一から二分の一に向けて努力したらどうだ、こういうことを言っております。それだけではなくて計算そのものにもやはり問題があると思うのですよ。それは基本的に、経済のパイプがぐんぐん大きくなっていっておるわけですから、大きなパイプ、つまり個人の収入がふえておるのですから、それに対しての掛金率がどんどん、仮に同じであっても、量は多くなりますね。だから経済成長をどのぐらいに見るのかといったような問題があるわけですよ。その辺こそある面では非常に不明確だ、三十何年も先のことになったら。だけれども、それはそれで仮定の数字でもって押さえておるのでああいう結論が出るのです。だから掛金をどんどん上げていかなければパンクしてしまう、こういうことになるので、必ずしもそうはならない、なっていないということだけはここで明確に申し上げて、私の質問を終わります。
  35. 近藤元次

    近藤委員長 次に、石橋大吉君。
  36. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ちょっと重複するかもしれませんが、念のために、まず財政計算に関連をする質問からさせていただきたいと思います。  一つは、財政計算を一年早目に行う理由は何か。二つ目は、財政計算の結果はどうなっているのか、農林年金財政現状と将来見通しはどうか。それから三つ目に、掛金率の設定はどうなっているか。最初に簡単にお答えいただきたいと思います。
  37. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 まず財政計算を一年早めるわけでございますが、これは五年に一遍ということで形式的にそれを踏襲いたしますと、再計算の時期は来年、実施は再来年の四月からということになるわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、今回給付水準引き上げを改革の内容として御審議をいただいておるわけでございまして、やはり年金財政の安定のためには給付引き上げ財政計算を踏まえて実施をしていくというのが大原則でございますので、給付引き上げをことしからやるということに見合って財政計算の時期を一年早めているということでございます。  それから財政現状と将来の見通しでございますけれども財政を規定します最大の要因であります成熟率二一・二%が、将来平成三十九年度には四六・六%、つまり現役二・二人で一人を支えていかなくてはいけないというような事態も想定されるわけでございまして、現在の掛金率千分の百三十四を据え置いた場合には、平成十七年には積立金がゼロになるというような事態も想定されるわけでございます。  そこで、再計算によります掛金率の設定の作業を現在行っておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、四つの前提条件を置きまして、かつ今後における公的年金における共通の指標といたしまして物価上昇率二%、給与の上昇率四%、積立金の運用利回り五・五%という前提を置きますと、そういう別提のもとでの財政計算をやりますと千分の三十程度掛金引き上げを実施する必要があるという現段階での試算が出ているわけでございます。今後来年の三月までの間に、関係者コンセンサスを得るための所定の手続をとりまして定款の変更という手続がとられるわけでございますけれども、現段階ではそういう試算になっているわけでございます。
  38. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 少し突っ込んだ話をお聞きしたいのですが、前回第五回の財政計算のときには、制度改正に伴いまして新しい計算方式が採用されて、ベア率、年金改定率を五%、運用利回りを七%、組合員数を五十九年度末の実績四十八万五千七百十四人で以後一定、こういう別前提条件に基づいて計算が行われて、収支見通しの策定に当たっては、原則として各年度とも収支差がマイナスとなることなく、また、支出の一年分程度積立金を保有しながら成熟時の掛金率へスムーズに移行できるように成熟過程における掛金率を設定した。その結果、改正後の制度内容による場合は、五年ごとに千分の二十五ずつの引き上げを実施していけば、最高掛金率となる昭和九十六年度、二〇二一年度以降千分の二百九十八で、以後一定で推移する見通しである、こういうふうにされてきたように私は理解しているわけです。  今度の再計算で千分の三十上げなければいかぬ、こういうことになったというわけですが、計算のどこが大きく変わって千分の三十というような掛金引き上げになったのか、あるいは計算の基礎でどこが変わったのか。さっきもちょっと話がありましたが、組合員の加入、脱退の状況、給与の上昇率、各種年金者の消滅動向、積立金の運用利回り、経済成長率、こういういろいろな要素があると思いますが、この辺ちょっと念のためにお伺いしておきたいと思います。
  39. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 前回の財政計算のときに前提になりましたのは、物価と賃金の上昇率がそれぞれ年率五%、運用利回りは七%という前提を置いて、かつ平準掛金率という算定の方式をとったわけでございます。  今回は、平成七年の一元化に向けて各公的年金一元化の方針が既に決まっているわけでございますので、再計算当たりましても前提条件については各公的年金共通前提を置くということで、物価、賃金についてはそれぞれ、物価につきましては二%の年率、賃金については四%、運用利回りにつきましては五・五%という前提を置いての試算をしているわけでございます。かつ、先ほど来申し上げておりますように、年金財政の安定を維持していくという見地から四つの前提条件を加味しているわけでございまして、そういう前提条件に立っての新しい掛金率の算定をやっているということでございます。
  40. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 引き続いて伺いますが、掛金率の設定に関連をしまして、農林年金掛金率は他の制度に比べてどうなっているのか。それから、掛金率はもう限界に達しているのではないか。さらに、非常に大幅な引き上げをするわけですが、この引き上げについて組合員に対してどういうふうな手だてでもって理解をしてもらおうとお考えになっているのか。この三点、まとめてひとつ伺いたいと思います。     〔委員長退席、保利委員長代理着席〕
  41. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 まず、農林年金制度掛金、現在千分の百三十四でございます。これは昭和三十四年の制度発足の当時は千分の七十八でございましたけれども段階を経て、前回の昭和六十年の再計算によりまして千分の百三十四に引き上げられて現在に至っているわけでございます。昭和六十一年度の際の見直しが現在そのまま適用されているということでございます。  他の制度掛金につきましては、厚生年金でございますけれども平成元年度、今年度制度改正を見込んだ財政計算を行いまして、ことしの十月から保険料率を、従来は千分の百二十四でございますが、百四十六に引き上げるということで法案に盛り込んで、それを御審議いただいているということでございます。それから国家公務員等共済組合については、千分の百二十二・六でございましたのがことしの十月から千分の百五十二に引き上げ措置がとられたということでございます。  それから、負担の限界ではないのかというお尋ねでございますけれども掛金がやはり支給の一番中心である財源でございます。基礎年金部分についての国費による助成でございますとかあるいは積立金の運用益というものも当然支給財源になるわけでございますが、やはり掛金が一番の根幹となる財源でございます。それから片や年金給付水準につきましては、今回も他の年金並みに横並びの公平性というものから改善を図っていく必要があるわけでございますし、そういう給付水準あるいは理論的な本来あるべき掛金率というようなものを加味して考えますと、現在の掛金率は必ずしも高いものではないというふうに見ておるわけでございます。今後は人口高齢化が進みますし、片や、先ほど申し上げましたように農林漁業団体に雇用されている現役の方の数がふえるという見込みが非常に難しいわけでございますので、成熟度は急速に増大が見込まれるわけでございます。それで、そういう成熟度の急速な増大というもとで、世代間の急激な負担の増にならないような給付負担の両面における公平性ということを確保するような掛金水準を当然求めていく必要があるわけでございます。  掛金引き上げにつきましては、これは年金財政の見地から適切な水準を設定する必要があるわけでございますけれども、同時に現役組合員の方の負担に直接響く問題でございますので、関係者理解を十分得て、納得のいく手続を経てこれを進めていく必要がございます。最終的には団体及び組合員代表の方から構成をされております組合会の議決を経て定款を変更するという手続をとられるわけでございますが、その間慎重な十分なコンセンサスが得られるような手順を尽くして進めていただけるよう、年金当局にもお願いを申し上げているところでございます。
  42. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、国庫補助金の関係あるいは労使の折半負担の問題等に関連して少し伺いたいのです。  制度は違いますけれども、第二回、第三回、第四回の財政計算のときには、大幅な掛金引き上げ組合員に一挙に過大な負担を招く、そういう意味でいろいろな形で軽減措置がとられておるわけです。今度もかなり大幅な引き上げになるわけですが、そういう何らかの軽減措置をお考えになることはないのかどうかということ。  同時に、国庫補助金の関係について、基礎年金の三分の一が今国庫負担になっているわけですけれども、これを二分の一ないしは全額負担、こう言いたいところですが、そこら辺についてどういうふうにお考えになっているのか、ちょっと伺いたいと思います。
  43. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 過去の財政計算の際の掛金引き上げのやり方についてお話がございました。  前回も、農林年金について昭和六十年に再計算を行いました場合も、平準保険料率というものをまず算定をいたしまして、厚生年金における平準保険料率と現実の保険料率の比率を適用いたしまして、いわば理論値をかなり軽減するという措置をとったことは確かにございます。今回はそういう計算を必ずしも直接踏襲をするという形での再計算の試算を行ってないわけでございます。が、当然理論的には平準保険料率、いわば今後一定の与件を置いて想定される年金財政の推移を前提にいたした場合に、今後年金保険料率をいかなる水準で保つのが適切であるか、引き上げないで済むのかということを理論的に計算をいたしますと、現在の支給年齢では三〇五パーミルぐらいに引き上げる必要が出てくるわけでございまして、これは現在の千分の百三十四からいたしますと倍以上の引き上げに一挙になるような数字でございまして、もちろんそういうことは現実性がないわけでございますのでそれを踏襲するわけにいかないわけでございますが、そういう理論値もあるわけでございまして、片やそういうものをにらみながら、現在の千分の百三十四から、財政の安定性を確保しつつ、かつ将来において急激な掛金率引き上げを余儀なくされるような事態を回避し、現役の方への急激な負担の増大というものを避けるというような見地になりますとそこにおのずから限度があるわけでございまして、段階的な引き上げかつ財政の安定性という両にらみで計算すべき性格のものであり、そういう観点に立っての試算の結果が、先ほど来申し上げているような数字になって試算がされているわけでございます。  それから国庫補助の問題でございますけれども、これは昭和六十一年度制度改革の際に、従来は給付費に対して一九・八二%の国庫補助があったわけでございますけれども基礎年金という国民共通の基礎的な年金の導入に伴いまして、その部分について拠出金の三分の一補助というふうに制度内容が変更されたわけでございます。ただこれは、昭和三十六年以前の組合員期間に係る部分につきましては、農林年金のいわばつなぎの性格の年金といたしまして従来の国庫補助の形態が続いているわけでございますけれども、基本は基礎年金への三分の一の拠出補助ということになっているわけでございます。  社会保険料方式をとっている年金制度におきまして、事業主組合員で基本的には折半をするという中で、基礎的な部分について国が三分の一を負担するという現行の制度がいわば共通制度としてとられているわけでございまして、そういう趣旨で御理解をいただきたいと思います。
  44. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 引き続きまして、御承知のように、農林年金については従来から全国農林漁業団体振興会からの助成があるわけですね。掛金の大幅引き上げに関連をして、この助成金を増額するなどして組合員負担軽減するような方法は考えられないのかどうか、ぜひ考えてほしい、こういうふうに思いますが、この点が一つ。  それからもう一つは、労働組合側からはかねてから労使の折半負担を七、三の負担割合に変えてほしいという要求が全国的、地域的に出されておりまして、ところによってはある程度これが実現をしているようなところもあるわけですが、こういうようなことについて、この際さらにひとつ積極的に考えていただきたいと思いますが、この点についてどうお考えですか。
  45. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農業協同組合等の相互扶助を行うため社団法人全国農林漁業団体振興会がありますが、全国の農林漁業団体がこの振興会を通じ農林年金に対し資金援助を約二十九億余行うことによりまして、理論的な年金水準が千分の二程度軽減措置が図られているわけでございます。私どもは、この措置は国の六億程度の補助もございますけれども農林漁業団体年金加盟団体の大変な御努力で資金援助が行われているわけでございまして、掛金負担軽減という点から大変評価をし重視しているわけでございますけれども、これを今後どうするかということにつきましては、やはり第一義的には関係団体の方のお考えにまつべきことではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  それから労使の折半の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、負担の公平性という観点から社会保険料方式をとっている我が国年金制度におきましては、組合員あるいは被保険者と事業主が折半で負担をするというのが大原則でございまして、この負担割合組合員のみに有利に改正をするということにつきましてはいろいろ問題があるのではないかなという考えを持っておるわけでございます。
  46. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、資金運用についてこの際ちょっと伺っておきたいと思います。  今度の改正によりまして余裕金運用に関する法律規定が変わって、政令にゆだねる、こういうことになるわけです。この掛金の大幅引き上げをしなければいかぬような財政事情もあるわけですが、特に農林年金の場合は収入の四分の一は運用益だというようなこともありまして、殊さら資金運用をどうするかということが重要な問題だと思いますが、この点どういうふうにお考えになっているのか。農林年金は、他の年金にない非常な努力をされてそれなりの成果も上げておられるようでございますが、この際、ちょっとこの辺について承っておきたいと思います。
  47. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 積立金の運用の問題でございますけれども、現在、積立金が約一兆二千億ぐらいあるわけでございます。これを効率的に運用することによりまして年金給付の財源として活用していく、さらには現役組合員の方の福利厚生に活用していくことでございます。現在約八百億余の運用益が出ているわけでございますけれども、これを今後さらに効率的に運用していく必要がございます。今回お願いをいたしております改正法案の中でも、この運用につきましてより機動的な運用ができるように、他の共済年金と同様に運用方法について政令に委任して、その中で運用ができるように措置をしていただきたいということでお願いをいたしておるわけでございます。
  48. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 財政問題に関連をして、最後に、組合員数の問題について念のために伺っておきたいと思います。  賃金が低いこと、掛金が低いことなどもありまして農林年金の将来は必ずしも明るくない、こういうような状況もあるわけですが、そういう点で組合員数が将来的にどういうふうに推移をするか、この辺の見通しをどういうふうに持っておられるのか。  関連をして、農林年金から出されております資料によりますと、昭和六十二年の公的年金受給者一人当たり年金額を見ますと、国公共済連合会組織組合で二百二万円余り、国公共済の旧公共企業体等で二百十四万円余り、地共済が二百二十九万円、農林年金は百五十五万円余り、非常に低いわけですね。低い原因は先ほど言いましたように、給与が低いところに根本的な原因がある、こういうふうに思われるわけです。  ちなみにこれらの共済の六十二年の平均給料月額一人当たりを見ますと、国公共済連合会組織組合で二十九万円余り、国公共済の旧公共企業体等で二十八万三千百十円、地共済で二十五万七千六百四十三円、農林年金が二十一万五千六百五十円、こういうふうになっておるわけですね。  いろいろ聞きますと、所得の年額自体は余り農協関係も変わらないようですけれども、実際には年金退職金に反映しないような形でいろんなものが支払われておる、ここに根本的な問題もある、こういうふうにも聞いているわけですね。後でもちょっと申し上げますけれども、将来のことを考えると、やはりこの辺を、労使関係、労使の交渉事項でもありますが、同時に余りにも低い状態を放置していくことは行政の観点から言ったって問題があると思いますから、ぜひひとつ適切な指導のもとで改善をしていただきたい、こう思っておるわけですが、この点どういうふうにお考えになっているか。  同時に、職員数が非常に減っていくような可能性がある。この間の委員会でもちょっと言ったのですが、最近は中国地方の広島県のマツダ自動車の関連でも臨時工の賃金が時間給三千円だ、こういう形になっているわけですね。それでも若い人がやめていく。大変困っているわけですが、どうも農林漁業団体でも同じような傾向がありまして、時給三千円どころか非常に低いわけですけれども、どっちにしても現状で一番問題があるのは若年層。聞くところによりますと、毎年二万人ぐらいの新規採用があるけれども、わずかの間に一万五、六千人もやめていく、こういうような状況もあるようですが、若い人たちがふえないということは、長い目で見れば年金財政の運営をそういうところから困難にしていくわけですから、存続ができないような状況に追い込んでいく。そういう意味では、若い職員に対する対策、処遇の面、教育の面いろいろあると思いますが、こういう状況をどういうふうにして克服をしようとしているのか、どういう対策をお考えになっておるのか、この機会に改めて聞いておきたいと思います。
  49. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 最初の、農林年金組合員の将来の見通しの問題でございますが、これは昭和五十五年度を境にいたしまして大幅に鈍化をしております。ここ数年伸び悩んでおるわけでございます。昭和六十三年度末では農林年金組合員として加入されている方の数が全部で四十九万四千人程度になっているわけでございますが、全体として減少ということはございませんけれども、一年間に増加する数が非常に減ってきている。六十三年度では千人を割っているという実態にあるわけでございます。今後どうなっていくのかという見通しについては、今までの、五十五年以降の大幅な鈍化の傾向がさらに急激に進むかどうかについてはなかなか見通しが困難でございますけれども、少なくともこれが急激にふえるということはまず予測されないわけでございまして、今回の財政計算当たりましても将来相当長期間にわたって見通しをしているわけでございますけれども組合員数は現状で横ばいという前提に立っているわけでございます。  それから、他の制度に比べて年金平均額がどの程度かということでございますけれども、六十二年度末で退職給付を例にとりますと平均月額で十三万三千円ぐらいでございますが、これを一〇〇といたしますと、例えば国共済の場合は一三三、厚生年金では一〇一、厚生年金とほぼ拮抗しておるわけでございますけれども、私学共済が一一七と、農林年金より高いものになっているわけでございます。今回、横並びで物価上昇等により引き上げるとともに、給付水準改定をやるわけでございますが、現状ではそういう格差があることも事実でございまして、これは年金が標準給与額比例方式といいますか、基礎年金については定額でございますけれども、給与に比例する。その標準給与については現役の給与の変化に連動して財政計算の際に見直しをやるわけでございますけれども、基本的には職域でございます農林漁業団体での給与水準年金の世界でも反映してこざるを得ないということがあろうかと思うわけでございます。  それから、職員退職問題につきましては、確かに比較的若い方がやめていくということもあろうかと思いますけれども、私どもは、やはり魅力のある職場になって若い方々がそこへ職を求めていくということが、農林漁業団体の事業あるいは職務を的確に実施をしていただくためにも人材の確保が極めて重要であると認識いたしております。系統組織におきましても昨年の十二月の農協大会におきまして、雇用環境の整備のために、週休二日制の問題あるいは年次休暇の計画的な付与の問題、就労時間の短縮等の問題でございますとか若手職員に対する研修の強化などの条件整備の方針を立てて積極的に取り組んでいるわけでございまして、こういう農協の自主的な努力を役所としても側面から適切に指導をし、対応してまいりたいと考えておるわけでございます。
  50. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ひとつさらに馬力をかけて指導をお願いしておきたいと思います。  時間がなくなりましたので少し省かなければいかぬかと思っておるところですが、次に、年金スライドの関係について一つだけ聞いておきたいと思います。  今度、法律改正によりまして完全自動物価スライド制にする。賃金スライドは一体今後どうなるのか。物価スライド制にして、上がっているときはいいわけですが、下がったときには一体どうなるのか。賃金は物価が下がっても比較的硬直的だと思いますが、自動的にこの年金だけ下げられたのでは、これは現役人たちとの所得の均衡の面からいったって、生活の面からいったって、機械的な扱いをしてもらっちゃ困る、こういう感じがするのですが、この点どういうふうにお考えになっているのか、このことをまずひとつ聞きたいと思います。
  51. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  年金の賃金スライドの問題でございますが、財政計算の都度、年金額計算の基礎となっております標準給与を財政計算時の直近の水準に再評価をするということをやっているわけでございます。今回の改正におきましても、昭和六十一年度以降再評価を行っていないわけでございますけれども、前回の再計算以降の標準給与についての全被用者の平成元年度の給与水準ベースに再評価を行いまして年金額改定するということで、財政計算の中で賃金、給与の上昇を反映させるという措置を講ずることにいたしているわけでございます。  このように、賃金スライドは原則として年金財政計算期に行うということにしておるわけでございますけれども、再計算期と再計算期の間は、物価上昇による年金額の実質的な価値の目減りを防ぐということで、これまでは五%以上の変動があった場合には政令によりまして自動的に物価スライドを行うということにしていたわけでございますが、最近の物価の低位安定という状況を踏まえまして、今回の法律改正で、物価の変動についてはすべてスライドにより自動的に年金水準に反映をさせていくという措置がとれるような改正をお願いしているわけでございます。  下落した場合の減額の問題についてお尋ねがございましたけれども、今回の法律が成立をいたしますと、物価が下落した場合にも政令によりまして減額することになるわけでございますが、仮に、減額措置をとるべきではということでそういう措置を講ずる場合には、法律の措置が必要になるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  52. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 一元化問題については、時間が来ましたので、また先ほどかなりありましたから、これは一応省略をしておきたいと思います。  支給開始年齢の関係について。支給開始年齢の引き上げをどう考えておられるのか。農林漁業団体の定年の実態をどう見ておられるのか。こういう現状と将来の見通しに立って、支給開始年齢の問題を一体どういうふうに処理をされようとしているのか。これはできたら大臣答弁でひとつお願いしたい、こういうふうに思います。
  53. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 大臣の御答弁の前に私の方から定年制の実態についてまず申し上げますと、六十三年八月現在では総平均で五十八・七歳になり、五十七年八月現在が五十七・七歳でございましたから、総体としては漸次延びてきているわけでございます。  それから、六十歳代前半の雇用促進、定年年齢の引き上げの問題についてでございますが、高齢者雇用に係る条件整備につきまして、政府として、長寿社会における年金と雇用の連携の確保及びそれぞれの施策の総合的な推進を図るために長寿社会における年金と雇用に関する閣僚懇談会が設置をされ、検討を進めることになっているわけでございます。農林水産省といたしましても、これらの検討状況を注意深く見守り、農林漁業団体における定年延長も含めた総合的な高齢者雇用対策について、関係省庁とも連携をとりながら検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  54. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 今回の農林年金法の改正案におきましては、他の共済年金制度と同様に、厚生年金法改正案と異なりまして年金支給開始年齢を六十五歳に引き上げ措置は講じられておりません。しかしながら、厚生年金における支給開始年齢引き上げとの整合性を図る観点から、将来におきましては厚生年金と同様の措置を講ずる旨の閣議決定を三月に御案内のとおり行ったわけでございます。今後本格的な高齢化社会を迎えるに当たりまして、年金財政の長期的な安定を図るためにもこの問題は避けて通れないものと考えられるわけでございますが、職域における就業の実態なりあるいは他の年金制度の動きなどに十分留意しつつ、適切に対処してまいりたいと考えております。
  55. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 最後に、制度間負担調整法案に関連して一つだけちょっと聞いておきたいと思います。  いろいろ聞くところによりますと、農林年金もやがては成熟度が高まってきて、負担調整してもらう側に回るのではないか、こういうような心配もあるようですが、そのときには一体どういう自助努力が求められるのか。三階部分をとにかく削れ、こういうようなことになるのかどうか。また、そういうことが近い将来来るという状況を踏まえながら今後どう対処しようとされているのか、この点一つだけ、最後にちょっと承っておきたいと思います。
  56. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 今回の制度調整では、お話がございましたように、農林年金は五年間毎年二十億の負担を行う、二十億持ち出しをするということで、全体の負担調整措置対応することになるわけでございますが、これは五年間の暫定措置ということで、その後についてこれが当然行われるというものではないわけでございます。  年金全体の一元化を図る過程で、成熟度に差があるそれぞれの年金制度一元化していくということになりますと、将来の一元化が具体的にどういうところに収れんするかは別といたしまして、今回の財政調整といったようなものがこの五年間で直ちに必要でなくなるというような事態は想定がなかなか難しいわけでございまして、成熟度の差というものは今後かなり残っていくというふうにも見られるわけでございます。そうしますと、今委員の方からお話がございましたように、現在では五人に一人という程度成熟度でございますけれども、急速に成熟度が進んでいるというのが現在の農林年金でございますので、将来持ち出しじゃなくて他の制度による受け入れ、財源の補てんというようなことが必要になるような事態も理論的にはあり得るということでございます。しかし、そういった場合にも自助努力というのが当然その前提条件になるかどうかについては、これは必ずしもそうではないのではないか。今回も制度調整につきましては、給付共通部分について全制度共通負担率で負担するというのがいわゆる制度調整内容になっているわけでございまして、自助努力というものが当然の前提というふうには私ども理解をいたしていないわけでございます。
  57. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。これからもひとつ一層改善に努力をしていただきますようにお願いして、終わりたいと思います。
  58. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 次に、水谷弘君。
  59. 水谷弘

    ○水谷委員 今国会の最も重要なテーマの一つとして、年金全体の改正の問題が今議論をされているわけであります。農林共済年金公的年金一つとして、特に農林漁業団体役職員の重要な公的年金として、その充実と、そしてまた将来の安定的な発展が重要になってくるわけであります。そこで私は、今回総合的に論じられております年金総体について、まず考え方を述べさせていただかなければならないと思うわけであります。  今回年金の改正に当たって、六十三年に〇・一%の物価スライドが実施されただけでその後据え置かれたままになっている、この物価スライドの問題、それからさらには財政計算に基づく給付改善、この二つについては、既に四月から消費税が導入されて年金生活者にとっては大変深刻な事態が今起きている中で、これは早期に、早急に実施をしなければならないと同時に、この実施時期は四月にさかのぼって実施することが当然であるわけであります。それはよしといたしますけれども、あわせて公的年金一元化、さらには平成年度からの年金支給開始時期の段階引き上げ、こういう問題も大きな問題として一括して提案が出てきているわけでありまして、年金受給者にとってはあめとむちといいますか、この内容そのものについては大変重要な問題をはらんでいるわけであります。特に、一元化の問題については、先ほど来からいろいろな議論が起きておりますけれども、その一元化への国民コンセンサスを形成できるようなビジョンというものがなかなか出てこない。年金というこの制度から考えてみて、その制度は普遍性そして安定性、公平性を欠いてはならない、こういうことが要求されているわけでありますが、なかなかそれが明確にされてきていない。  それからもう一つは、この年金支給開始年齢の引き上げという問題については、これは各方面大きな議論が起きているわけでありますけれども昭和二十九年支給開始年齢を五十五歳から六十歳に引き上げた。二十九年から三十五年間経過をいたしている。しかしながら、いまだに六十歳定年制を実現している企業は企業全体の五八・八%にしかすぎないわけであります。ここへもってきて六十五歳への支給開始年齢の引き上げというこの議論は、どう見ても国民の側からすれば全く理解ができないし、過去の経緯を見ても、平成年度からの年金支給開始年齢の段階引き上げというのは、国民として決して納得できる問題ではないわけであります。特に、若い層と違いまして六十歳から六十四歳、この年齢層のいわゆる有効求人倍率というのは〇・一%という現状であります。そういう現状から見ても、いわゆる雇用政策というものがしっかり確立をされていかない限り、このような支給開始年齢の引き上げということは年金制度全体をひっくり返してしまうような抜本的な制度改正にかかわる問題であるわけでありまして、私は断じて容認することはできないわけであります。  特に、農林漁業団体の定年制の問題について先ほど局長が答弁をされておりますけれども、その実態から考えて、このような引き上げについて、その将来の方向性について、その担当の省である農水省として果たしてこのような方向についていけるのか、それにたえ得るような雇用環境の整備というものが図られていけるのか、まず最初に、私は、具体的な問題に入る前に、今一番問題になっておるその点について、農水省の考え方をお伺いしておきたいと思うわけであります。特に、国家公務員について定年制が昭和六十年の三月三十一日から六十歳と決定されて、共済年金制度では現在、その支給開始年齢を六十歳に繰り延べる措置をとっておる最中、そういうこともあわせて、農水省の見解を伺っておきたいと思います。
  60. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  支給開始年齢の問題は、年金全体の安定性あるいは年金受給者の期待にこたえるという観点から非常に大事な、年金を支える大きな要素、柱であろうと思うわけでございます。今回厚生年金につきましては、今お話がるるございましたように、支給開始年齢を平成二十二年度まで段階を追って引き上げるという提案がなされたわけでございますけれども、それに絡んで大変重大な問題になっておるということは私どもも十分承知をいたしておるわけでございます。が、今回御提案をいたしております農林年金法の改正案におきましては、年金支給開始年齢の引き上げ措置は講じていないわけでございます。が、厚生年金についての引き上げ措置との整合性という観点から、三月二十八日の閣議では、厚生年金との整合性を図る観点から同様の措置を講ずるという趣旨の閣議決定がなされておるわけでございます。今後、厚生年金の受給年齢の引き上げがどういう対応で最終的に決着されるのかということも見きわめる必要があるわけでございますけれども一元化に向かって今後進めていく過程におきまして、年金支給開始年齢につきましても整合性を確保していくという基本的な要請があるわけでございます。  一方では、今先生の方からお話のございましたように、年金と雇用とは非常に密接な関連があるわけでございます。雇用条件の整備ということを離れてただ年金支給開始年齢のみ機械的に引き上げるということは、これは非常に大変な問題を惹起するわけでございまして、支給開始年齢の具体的な引き上げ水準なりあるいはそのペースにつきましては、雇用条件の整備の状況というものを十分踏まえ、総合的な観点から行っていく必要があるわけでございます。基本的にはやはり成熟度が、高齢化のもとで、各年金ともそれぞれ差はございますけれども、今後高まっていく、片や現役の方の給与水準年金水準にはそれなりの適切な水準が確保される必要があるわけでございますし、また掛金につきましても一定の限界があるということになりますと、やはり支給開始年齢についても適切な調整措置というものは避けては通れない問題であることは御理解いただけると思うわけでございますが、具体的な進め方につきましては、それぞれの職域における就業の状況、雇用条件の整備に十分配慮していく必要があるわけでございます。そのための閣僚懇談会も設けて検討が進められることになっておりますので、我々としては関係省庁とも連絡をとりながら慎重に対応していきたいと思うわけでございます。
  61. 水谷弘

    ○水谷委員 支給開始年齢の問題については、それを議論していきますと時間がなくなってしまいますのでその辺で終わりますけれども、雇用調整、雇用環境の整備、それは最重要の問題でありますと同時に、私どもが提案をいたしております働きながら年金を受給できる体制、いわゆる部分就労部分年金というその議論を本格的に起こしていく、そしてその実現のために環境を整えていく、将来の年金像を考えたときに、私どもはそれはどうしても重要な位置づけをしていくべきであると考えているわけであります。  もう一つは、いわゆる基礎年金部分、現在の一階建ての部分ですね。将来の年金一元化の方向の中で、これまた大きな議論を起こしていかなければなりませんけれども、この一階建ての部分水準の低さというのが大きな問題である。これはこの制度が導入される五十九、六十、六十一年、いろいろな議論が起きておったわけでありますが、これについても将来はしっかりとした位置づけをすべきであると考えております。さらには、掛金負担増を少しでも低く抑えるために、いわゆる積立金資金の有効的な運用と、基礎年金部分に対する国庫負担の現在の三分の一を二分の一に引き上げるべきだ、このことも含めて、今後の真剣な検討、取り組みを申し上げておきたいと思うわけであります。  次に、先ほど来の質疑財政計算の中で、計算上この農林年金掛金負担増がどのぐらいの数値として計算されているのか、私先ほど伺っておりませんでしたので、改めてその数値をお伺いをしておきたいと思います。
  62. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 現在年金当局でやっております年金財政計算前提では、先ほど申し上げたわけでございますが、年金財政を安定的に運営をしていくという見地から必要な四つの条件を前提に置いておるわけでございます。第一は、単年度収支が赤字にならない、第二は、積立金の取り崩しというような事態の発生を避ける、三番目には、経済情勢が短期間のうちに急激に変化した場合にでも対応できるような一定の準備金を常に保有するという点、四番目は、後代になるほど五年ごとの掛金引き上げ幅が大きくなるというようなことにならないように配慮していく、こういう四つの前提条件を置きまして、かつ、現在の支給開始年齢六十歳を維持した場合に将来の見通しはどうかということを計算をしたわけでございます。そういたしますと、掛金は千分の三十ずつ引き上げていく、そうしないと今申し上げたような四つの条件を満たすことにはならないということが想定をされるわけでございます。  ちなみに、前回の再計算のときにはそういう方式をやったわけでございますが平準保険料率という考え方がございます。いわば理論値でございます。この率で掛金を徴収すれば、いわばずっと相当長期にわたって年金財政が保たれるという保険料の考え方がございます。それですと千分の三百五というような水準に一挙になるわけでございます。一つの目安としてそういう理論値というものがございますが、当然、現在の千分の百三十四という数字からそういう大幅な引き上げの保険料率に行くことはできないわけでございまして、段階的に引き上げ、かつ、先ほど申し上げたような四つの前提条件を満たすということで算定をいたしますと、千分の三十という数字になるわけでございます。
  63. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほども、他の厚生年金並びに国家公務員共済等の掛金率との比較の上から、既に限界に来ているのではないかという議論がございました。私も全く同様の考えに立っているわけであります。現在の百三十四にプラス三十で百六十四、大変な数字になっていくわけでありますが、やはり農林年金のいわゆる当事者として、自助努力といいますか、それはもちろん必要でありますけれども農林漁業団体役職員に対する給与水準改定の問題等、さらには一歩突っ込んでその団体の経営内容等、これについて農水省は十分な指導をし、さらに実を上げられるような方向にこれからも積極的に取り組んでいただきたい、そのように申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、先ほど来いろいろな議論がございましたので、法案に対する質疑、具体的な問題についてはその辺でやめておきたいと思いますが、農林年金の将来の安定的な発展を期するためには農林漁業そのものの将来の発展というものが一番大事になってくるわけでありまして、その関連から、先般農水省が示された水田農業確立後期対策についてお伺いをいたしたいと思います。  いろいろな生産者団体、皆さん方の真剣な御要望、それに対して政府も真剣に取り組みをされたその姿はうかがうことはできます。しかしながら、この後期対策において、結論的に申し上げれば、我が国の水田農業が本格的に確立をされていくような方向性、ビジョンというものは示されなかった。そのことについてはまことに遺憾であります。転作面積、前期で七十七万ヘクタールであったものが後期の目標面積として八十三万ヘクタール、このような目標面積の決定がなされたわけでありますが、この面積は東北全県、そして中国、九州、四国、そこにある全水田面積に匹敵する面積になってきたわけであります。これだけの水田面積を有効に転作できるかどうか、これは我が国の水田農業確立に対しては本当に重大な問題でありまして、これは何も三年間で終わってしまうのではなく、現在の方向性を考えれば将来ともこの方向は堅持せざるを得ない部分が相当あるわけであります。そういう意味では、少なくとも後期対策において、この期中においてこの転作目標面積がさらにふえるようなことがあったり、自助努力という形で生産者団体にまた緊急対策を申し入れるようなことがこの上に乗っかっていったならば、これは大変なことになる。そういう意味で、最低限、転作目標面積の八十三万ヘクタールを超すような改正、そういう目標面積の設定が期中に行われてはならない。そういう意味大臣のお考えをまずここで伺っておきたいと思います。
  64. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 後期対策の転作等いわゆる目標面積は八十三万ヘクタール、こういうふうなことでございまして、米の需給均衡を図るとの基本的な考え方のもとに、大豊作や大不作というような特別の事情があればともかく、三年間原則固定するとの考え方決定されたものでございます。この目標面積のもとで生産者、生産者団体の主体的な取り組みを基礎といたしまして、行政も一体となりまして水田農業の確立に向けて努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  65. 水谷弘

    ○水谷委員 もう一つ、この後期対策、すなわち水田農業確立対策、新行革審から明確にいわゆる奨励金、補助金体質からの脱却ということを指摘をされているわけでありますけれども、これはもうとてもナンセンスな話でありまして、これは補助金とか奨励金というものではなく、水田農業を確立していくためには少ないぐらいであって、どうしても必要な財政的な支援であるはずであります。そういう意味から考えた場合に、少なくともこのポスト水田農業確立対策において、その具体的な内容について助成補助金の個別的な内容については種々議論はあるでしょう、状況に応じてまた政策目的に適合できるような形態をとるのは当然であろうと思ってはおりますが、少なくとも総額においてこの水準は確保すべきである。このことは実は、後期対策をスタートして三年、これから三年、将来の水田農業確立のために生産者が鋭意努力をしようというその方向に重要な一つの大きな疑問を投げかけている、この新行革審の指針というのは。私は前回も大臣にこのことは伺ったわけでありますけれども、改めてきょうも、この後期対策の中で重要な問題の一つとして御指摘を申し上げておきたいし、政府を挙げて明確な結論を出し、総額水準だけは確保していくぞ、さらに目的的に必要なものがあるならばもっと積極的な、行政的な、財政的な裏打ちをしていくぞ、そのぐらいのことを生産者の皆さん方に申し上げていただかなければ、この三年間の方向性だって、生産性を向上するために、水田農業確立のために他の転作について真剣に取り組もう、またさらには地域営農集団等地域的な広がりを持ってそれに取り組もう、そういう真剣に転作に取り組もうとする皆さん方に対しては、三年後どうなるかわからないようなこんな助成補助金のあり方ではどうにもならない。今のうちにこのことは明確にしておいていただきたい、そういう意味でお伺いをするわけであります。     〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 後期対策を終わった後どうするかというふうな問題につきましては、いわゆる水田農業関係の施策のあり方でございますが、今後ともかなりの米の需給ギャップというものが見込まれる中で、引き続いての需給調整努力が必要ではないか。こういうふうな状況を踏まえながら、後期対策の推進状況も勘案いたしまして、水田農業の健全な発展を図っていかなければならないという考え方に立ちまして、助成の問題も含めまして今後検討していかなければならない問題だ、このように考えておるところでございます。
  67. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣、答弁しづらいでしょうけれども、もう少し率直に御自分の意思をあらわして結構でありますから、申し上げていただきたいわけです。それ以上立場上述べられないのでしょうけれども、しかし、このことはしかとやっておいてくださいよ。そうじゃないと、農業は工場で物をつくるようなわけにいかぬわけですから、少なくとも五年や十年という長い期間の中で作業というものが定着をし、そしてそれが営まれていくわけですから、三年先どうなるかわからないようなことではどうにもならない。大臣は、これをそのまましっかり確保すると言えますか。もう一回。
  68. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、今、後期対策をどうするかというふうなことを打ち出させていただいた中で、その後の施策につきましてはどうするかという問題でございますけれども、今の段階でどうするかというふうなところを申し上げるということは、なかなか困難な問題等もございまして、今後検討してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  69. 水谷弘

    ○水谷委員 さらに、農業交渉グループ十一月会合における日本提案についてお尋ねをしておきたいと思います。  これは本当に我が国の農林、特に農業の重要な将来の問題をすべて網羅していると言ってもいいぐらいでありまして、この提案そのものについては、その努力、真剣な取り組みについては私もそれなりに評価をしたいと思っておりますけれども、これだけの提案をする以上は、提案の中でこれだけのことを国際社会の場で明確に日本の意思としてあらわしたわけでありますから、それに合わせる国内におけるしっかりとした条件の整備といいますか、条件づくりというものは先行的に進めていかなければならない、そのように私は思うわけであります。特に、国境調整措置を適用するための条件という問題をガットの規則、規律、新しいルールの中に入れようということで提案をしているわけでありますけれども、その一番に、「当該締約国が基礎的食糧について維持すべき所要の国内生産水準を明示すること」、こうある。これは米を明確に念頭に置いての提案でなければならぬわけでありまして、そういうふうになってまいりますと、この国内生産水準というものの政府としての明確な考え方が重要になってまいります。それともう一つは、国境調整措置を講ずることについて「当該締約国の国権の最高機関の支持の表明が存在すること」、これがあります。まず一番目のことについて、政府としてこれを提案した以上どういうふうな方向で条件づくりを進めていくのか、それについてお答えをいただきたいと思います。
  70. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  日本の農産物交渉についての提案は、ただいま委員の方からお話がございましたように、一昨日のジュネーブにおきます農業交渉グループで包括的な正式の提案として出したわけでございます。この中での基礎的食糧についての提案が最も重要な部分であるわけでございますが、基礎的食糧については国境調整措置がとれるような体制をガットの中につくっていくというのが提案の骨子でございます。その場合の基礎的食糧とは何ぞや、国境調整措置を適用する場合に満たすべき条件とは何ぞやということをあわせて提起をいたしたわけでございますが、基礎的食糧につきましては、日本の米がそれに該当するというか、むしろ米のことを考えてこれを提案していることはもう間違いないわけでございますから、米がまさにそれに当てはまるような、しかし同時に、諸外国にもこの制度を必要とする国が適用できるような一般的な制度として提案する必要があるということで、基礎的食糧については、国民の食生活の中に占める栄養的な観点から見た重要度、それから、そういうものを国内で生産をするための政策的な裏打ち、そういう二つの要素から基礎的食糧の定義をしたわけでございます。その定義のうち、栄養的な条件はともかくといたしまして、政策的な要件としては、必要な国内生産水準維持するために国境調整措置を求めるわけでございますので、そういう国内生産水準維持するための政策的な裏打ちを当該国がやっていることが必要でございます。それは御承知のように、米については食管制度並びにその他の米の需給を確保するための制度がそれぞれあるわけでございまして、私どもはおおむねこういう条件、つまり、基礎的食糧にふさわしい国内生産水準維持のための国内政策措置が整備されているというふうに理解をいたしております。  それから、もう一つの条件といたしましての国境調整措置発動のために必要な国内生産水準を、どういう水準であるかということを示した上でこの適用を求めていく必要があるわけでございますが、これまた米については、明確な国内における国内生産水準についての方針があるわけでございます。国会の両院の決議におきまして、国権の最高機関である国会の決議という形で、国内生産水準については国内自給を維持するという方針が明確に出されておるわけでございますし、政府側としても、内閣総理大臣並びに農水大臣の方から国会の場で、国内生産で自給をするという基本方針を堅持するということを表明をいたしておるわけでございます。したがって、基礎的食糧に係る日本の提案が実現した暁に、日本についての基礎的食糧でございます米についての国内生産水準については、ただいま申し上げたようなことが適用の条件になるわけでございます。
  71. 水谷弘

    ○水谷委員 そうしますと、これが盛り込まれて、ガットのルールとしてぴしっと位置づけられたということになった場合に、今言われているのは自由化と市場開放、ミニマムアクセス、具体的に言うとこの辺の問題なんですね。これは、ミニマムアクセスもノーと、それにたえ得るものであるのかどうなのか、明確にしていただきたい。
  72. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 現行のガットの規定の中には、例えば十一条の第二項という規定がございますが、その中では、輸入制限をやる場合にも例外的に輸入制限を許容した規定でございますけれども、それを発動する場合にも、輸入については、ミニマムアクセスという言葉は使っておりませんけれども、国内の生産と輸入の比率が、そういう輸入制限措置を発動した場合でない場合、発動する前の状態と比較して適切な比率が維持されるべきであるという条項がくっついているわけでございまして、これを俗にミニマムアクセスと言っているわけでございます。そういう規制のもとでは、日本の基礎的食糧であります米の国内自給というものはガット上担保されないことにもなりかねないわけでございますから、我が国としては今回の提案で、そういう制約のいわば外側に新たなガットの措置として、基礎的食糧についての制度をガット上正規の制度として位置づけたいということで提案をしているわけでございまして、ミニマムアクセスの制約を受けない基礎的食糧についての国境調整措置が適切にとられるような制度を求めて提案をしているということでございます。
  73. 水谷弘

    ○水谷委員 大蔵省、お見えいただいておりますね。  自民党の税調で、食料品非課税という方向でいろいろ議論をされておられるようでありますが、これは自民党税調の方向性がどうとか、まだそれが決まっているとか決まっていないとかという議論を私はするのではなくて、いわゆる税理論上これがどうなるかということをお伺いをしておきたいわけであります。  現行の消費税の体制の中で、食料品全段階非課税にするということになりますと、間違いなく、消費者が期待しているような消費税分三%は明確に安くなるのか。そういう措置を講じた場合、食料品非課税、全段階、その裏には、農機具とか肥料とか農薬とか、生産資材すべてこれも非課税というふうにしなければ、そういうふうにはなってこないと私は考えるわけでありますけれども、まず、申し上げた第一点は、現在食料品にも上乗せされている消費税が、三%分、その分ちゃんと明確に安くなるのか、そういう保証ができるのか。  それからもう一つは、その全段ですべてのもの、運送費とか生産資材とかそういうものも非課税として、これを今の消費税の体系の中でやる場合にはどういうことをしなければならないのか。もしそれが、食料品は非課税という形で、現実的に生産者はその仕入れの段階で払ってきた消費税分、それをコストに転嫁できないということになっていくと、これは生産者が全部かぶることになってしまうわけでありますが、そのような手法は税理論上どういうふうに実現可能なのか。そのお答えはできますか。
  74. 福田進

    ○福田説明員 お答え申し上げます。  まず最初の御質問でございますけれども、先生今まさに御指摘ございましたように、農機具、肥料、飼料等について消費税が課せられているといたしました場合に、それにつきまして、そういうものを含めて食料品というのは価格が形成されているわけでございます。仮に食料品が非課税になったとした場合にどうなるかという御質問でございますが、前段階に含まれていたこういった農機具、肥料、飼料については、当然これはコストとしてはね返るわけでございますので、仮に食料品が非課税になったとしても、食料品の価格の三%分が丸々下がるということはございません。  それから、全部丸々下がるためにはどうすればいいのか、こういう御指摘だったと思います。なかなか難しい御質問でございますけれども、そのためには、すべてについて今申し上げましたような三%の税がかからない、こういうシステムにしない限りは、最後の段階で、最終的な消費者の段階で丸々価格が下がるということは難しい、こういうふうに考えております。
  75. 水谷弘

    ○水谷委員 いや、それはわかっているのですよ。そういうことなんですよ。だから、そういうことができるのかということ、そういう改正、見直しなんかできるのですか、こう聞いているわけです。
  76. 福田進

    ○福田説明員 見直しにつきましては、先ほど先生からお話がございましたように、今まさになされている最中でございますので、今のこの段階で私どもの方からどうこうと申し上げることはいかがと思われますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  77. 水谷弘

    ○水谷委員 私が聞いているのは、消費税というこの税の持ついわゆる税理論の中でそういうことができるのか、現在の帳簿方式、簡易課税制度等々、この消費税が現在かちっと、ある人は究極の税だなどという表現までするほど、一カ所いじくると全部ぐじゃぐじゃになってしまうようなこの税体系の中で、こういうことができるのですかと理論上聞いているだけの話で、見直しをしている自民党がどうこうということを私は申し上げているんじゃありません。自民党が一生懸命見直しをするとおっしゃっているのだから、うんと検討して、早く国会へ出しておみえになった方がいい、我々はそう言っているわけであって、それが、自民党のおやりになっていることについて大蔵の担当者として口を挟むなどということはあってはならないことでありますから、そんなことを聞いているのじゃないのです。私が申し上げたのは、消費税の現在の理論上そういうことができるのですか、こう聞いているわけです。
  78. 福田進

    ○福田説明員 お答え申し上げます。  非常に難しい御質問で、私の答えがそれに対して満足いくものかどうか、私個人としては自信がございませんけれども、要は理論的にどういうふうな仕組みをつくるかの問題であろうかと思われます。理論的にという御質問でございますので、理論的にと申し上げれば、理論的には可能ではないか、そういうふうに私は思っております。
  79. 水谷弘

    ○水谷委員 理論的に可能だということですな。理論的に可能なものを今度は実質的にそう見直す場合には、これは容易にできますか。
  80. 福田進

    ○福田説明員 お答えいたします。  ますます難しい御質問なんですが、要は、どういうものを理論的に見直すか、その見直しの中身によりましてそれが容易に実施できるかどうか、それは一口で申し上げますと、どういう見直しをするか、その中身次第だろうと思います。
  81. 水谷弘

    ○水谷委員 時間がありませんので入口で終わってしまいましたが、以上で終わります。
  82. 近藤元次

    近藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  83. 近藤元次

    近藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。滝沢幸助君。
  84. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。政府委員の皆さん、大臣、御苦労さまです。  先輩議員の御質問を拝聴しておりますと結局聞くことがなくなってしまうものでありますから、大いに割愛しつつ二、三お伺いさせていただきます。  政府は、昭和五十九年の閣議決定をもちまして、公的年金一元化を目指すとして、まずもって六十一年より基礎年金制度を導入されるというような歴史的年金制度の改革に踏み出されたわけでありますが、国民すべての関心事は、ただいま六十歳よりの支給開始となっておりますものを六十五歳を目指して十年後から延伸するということの可否をめぐってのことだと思うわけであります。このことは定年制との関係もあるわけでありまして、この政府の基本方針というものが、定年制と五年間の支給開始の延伸ということの関係がきちんと国民的合意が得られないならば、今回の提案のようなことにおいてもやはり不安はつきまとうのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この間に処して今後の改革に対する取り組み方はいかがなものかというふうに申し上げさせていただきます。
  85. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 年金支給開始年齢の引き上げの問題についての御質問だと思うわけでございますが、確かに委員の方からお話がございましたように、厚生年金の場合は、段階を追ってでございますけれども、最終的には六十五歳に支給開始年齢を引き上げていくという措置を今回の改正法案に盛り込んでおるわけでございます。しかし農林年金につきましては、今回の法案には支給開始年齢の引き上げ措置は講ぜられてないわけでございますが、厚生年金との整合性を図る観点から、将来において厚生年金制度と同様の措置を講ずる旨の閣僚決定が三月二十八日になされております。  支給開始年齢自体、厚生年金につきまして政府提案の法案にそういう趣旨が盛り込まれたわけでございますけれども、最終的にそれにつきまして国会の場でどういう調整がなされていくのか、私どもはその推移を見守っておるわけでございますけれども、この支給開始年齢は、先ほども申し上げたわけでございますけれども、安定的な年金制度というものを維持していく上で非常に大事な要素になるわけでございます。当然、将来において年金支給を期待している方にとっては、支給開始年齢が雇用条件と無関係に延びていくということに対しては大変な不安があることは間違いないわけでございます。  一方、年金財政の安定を図るためには、現役掛金が財源の基本でございますのでその適切な掛金を確保する必要がございますが、同時に、急激に掛金を上げますとこれまたいろいろ問題が生じてくるわけでございます。また年金水準自体といたしましても、現役の給与水準、賃金水準と比べてやはり一定の適切なレベルというものがあるわけでございまして、前回の昭和六十年の制度改正でも最近における高齢化進展を踏まえまして、通常の年金支給開始年齢における組合員期間の延長、組合員期間がかなり長い組合員方々が出てくるわけでございまして、かつ年金権が発生した後に相当期間にわたって年金支給を受ける方がますますふえてくるという実態でございますので——年金水準というものをやはり現役の方と適切な水準のところに維持をし、過小であってもいけないし過大であってもいけないということが必要なわけでございます。そういう趣旨から、段階的な調整手順というものも定められて、そこへ向かって段階的に調整をすることが既に決まっているわけでございますが、そういうことを前提としつつ、片や年金支給開始年齢をどうすべきかということがまさに問われているわけでございます。これは雇用の問題と非常に密接に関連して考慮されるべきことであると同時に、今申し上げたように、掛金現役の給与水準との適切なバランスというようなものとあわせて年金財政を構築していく上での非常に重要な要素でございますので、そういう観点からの適切な支給開始年齢というものをやはり絶えず考えいかなければいけないということでございます。  これは各年金共通にそういうことが言えるわけでございますけれども農林年金についても、先ほど申し上げましたように成熟度が急速に高まり、平成三十九年におきましては二・二人の現役で一人の年金受給者を支えていくというようなことも想定されるわけでございますので、他の制度とのバランスも考えつつ、支給開始年齢についての整合性という観点からの対応が必要になってくるものというふうに考えているわけでございます。
  86. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 要するに今のお答えは、掛金給付の時期とさらに現役との調整というようなことで整合性を得たいということでありましょうが、わかりやすく再確認させていただきますれば、政府考えておりますこれら厚生年金、いわゆる公的年金等につきましては平成二十二年までに今六十歳であります給付開始の年齢を六十五歳に上げる、それが完全に六十五歳にたどり着くその階段と同じ階段でそれぞれ当該する定年制というものは延長される、それを見届けながら今後の改善策を政府は講じていく、こういうふうに整理してよろしゅうございましょうか。
  87. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 厚生年金改正法案におきまして政府が提案している厚生年金支給開始年齢の引き上げについては、今お話のございましたように平成二十二年度に六十五歳になるように、三年ごとに平成十年から一歳ずつ引き上げていくという提案の内容になっているわけでございます。  こういう提案を政府提案の中で行っているその背景としては、先ほど申し上げたような高齢化の伸長、そのことを反映した成熟度進展ということが当然あるわけでございますけれども、一方、雇用の問題と切り離して支給年齢というものは考えられないわけでございますので、定年制の延長あるいは雇用条件の整備というようなものの現状と今後の進展というものを見通した上でこういう提案をしているものと私ども理解をいたしておるわけでございますが、やはり現在の定年制の普及の状況等、あるいは雇用条件の整備、そういったものから政府提案に対して問題が提起されているのであろうと理解をいたしておるわけでございます。支給開始年齢をどこに定めるか、どういうペースで進めていくのかということに当たりましては、あくまで雇用条件というものは考慮さるべき非常に大事な要件であるというふうに当然理解をいたしておるわけでございます。
  88. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 二十二年までに六十五歳に引き上げるということは、二十二年までに定年は六十五歳になる、延びるというふうに理解をしませんと、国民的合意と賛成がなかなか得られないのではないかと思うわけです。それで、もしも経済状況等が非常に変わりまして定年制の延長等がなかなか困難な状況になりますならば、六十五歳まで引き上げるということは行われない、そのように理解していいですか。
  89. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  支給開始年齢は、年金権を将来において期待している方々にとって、年金制度の受益をしていく上での極めて重要な要素でございますから、それがいつからどういう年齢で適用されるのかということについては十分慎重に検討していく必要があるわけでございます。しかし、雇用条件の整備というものを離れて年金支給開始年齢というのを定めるということは困難でございます。当然雇用条件の整備というものを踏まえ、将来における雇用条件の改善の度合いというものを想定しつつ、支給開始年齢についての将来における姿というものを相当の期間を置きながらあらかじめ定めておくこともまた重要でございます。年金は非常に長期の制度として安定していく必要がございますので、将来における制度の変更というものはある余裕を持って定めていく、時間的な余裕を持って物事を進めていくことが極めて重要なことでございまして、そういう意味では将来における支給開始年齢の決定を相当事前にあらかじめやる必要がある。その場合に、将来における雇用条件の整備の状況というものは当然現状から踏まえた将来の姿を想定せざるを得ないわけでございますけれども、雇用条件というものが年金支給開始年齢と非常に密接に関連があるだけに、将来における見通しを慎重に立てた上で支給開始年齢の変更というものが講ぜられるべきものというふうに理解をいたしております。  将来の一定の年次における雇用条件が、具体的に定年制という形でどのように実現していくかということについては定かでない面も当然あるわけでございますけれども、全般としての雇用条件というものを踏まえて、的確な支給開始年齢の決定が当然行われるべきものというふうに理解をしておるわけでございます。
  90. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 表舞台が社労でありますこともありまして、各省庁にわたることでありましょうからなかなかはっきりしない面もありましょうが、やはりそこら辺の消息がはっきりしないところに大方の国民の不安があろうと存じまして、そういうところを整理されていく必要があるだろうというふうに思い、これを要望するわけであります。  ところで今度の農林年金の改正を見ますと、四月から物価スライドとして〇・七%、それに十月から今回の改正として三・三%、合わせて四%の改善というわけでありますが、これが他の年金との比較においてはどのような利害得失がありましょうか。
  91. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  昭和六十二年度末の農林年金、この中には退職に伴う年金給付のほかに障害年金でございますとか遺族に対する給付というような幾つかの種類があるわけでございますが、最も典型的な給付でございます退職給付を例にとりますと、六十二年度末の退職給付給付額は平均月額で見まして十三万三千円になっておるわけでございます。これを一〇〇として他の制度の同様の月額を指数化してみますと、厚生年金は一〇一、国家公務員共済の場合は一三三、私学共済の場合には一一七というような差があることは事実でございます。  今回の法律改正によりまして、物価上昇年金水準そのものの改善措置が講ぜられることになりまして、六十三年度末の月額十三万七千円が物価上昇によりましてまず十三万八千円になり、さらに給付水準の見直しによりまして四%程度引き上げが実現することによりまして、最終的には十四万三千円程度の月額になるわけでございます。
  92. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 乏しきを憂えず、等しからざるを憂えるという言葉がかつてありましたが、やはり生活という面では国民同じ課題を負っているわけでありますから、他の制度との整合性といいますか、よろしきを得ていただきたいと希望するものであります。  さて最後に、この年金の問題等をめぐりましても、関心は、農村が今後どうなっていくのか、そうした中で農協が果たしてまいりました役割、いわばその功罪と、そして今後これが制度としていかなる変革があるであろうか、またあるべきだろうかということになろうと思うわけでありますが、その間の事情に即して、ひとつ御意見があれば承りたいと思います。
  93. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金に加入している団体は、農協土地改良区、漁協、森林関係の組合等、全部で約一万二千三百ぐらいが関係されておるわけでございます。そのうちの一番の主体はやはり農協でございまして、かつては一万以上の農協があったわけでございますけれども、現在は四千を切るところまで広域化といいますか、合併による大型化が進んできておるわけでございます。四千弱といいましても、都道府県単位で引き直しますと、平均して一つの県に百というほどではございませんけれども、やはり相当数の農協がある。一市町村に複数の農協があるというような事例もまだまだ見受けられるわけでございまして、やはり規模の拡大による効率的な農協経営というものを実現していく上でも、それからまた、農産物についての地域間の競争等も相当厳しくなってきているわけでございますので、農産物の出荷の単位あるいは生産の単位を大型化をしていくという意味いから、農協の狭義の経営合理化という意味からも、それから農業の合理化という意味からも農協の基盤というものを広域化していく必要があるわけでございまして、合併助成法による合併を進めているわけでございます。  一方、農協については営農指導が十分行われていないのじゃないかという御批判があることも十分承知をいたしております。農協の方でもそういう点についても十分自覚されて、二十一世紀に向かう農協あり方につきましても現在部内におきまして鋭意具体化のための検討をなされているわけでございまして、我々はこういう農協の自主的な努力を側面から協力して、一緒になって、農協が持つ農村なり農業に果たすべき役割というものの期待に十分こたえられるような体制にもっていく努力をしていきたいというふうに思うわけでございます。
  94. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大臣、今のお答えのとおりだと思うのでありますが、先般の参議院選挙におきましては、税制あるいはまたリクルートと並び、農政のことが争点といいますか、国民の判断の一つのことであったのは事実でありますが、そうした中で、国が一市町村一農協ということを言い出して何年になるのか知りません。しかし現実は、農協指導者の大幹部がおられる農協ほど合併が遅いということすら言われているわけでありまして、その間の消息は何を物語るか、農協の政治的な発言力の問題にもかかわってこようと私は思うのでありますが、これらのことにつきまして、いわば大臣が見られて、先ほどの質問と同じことになるわけでありますが、所感あらば一言承りたいと思います。
  95. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 農協あり方につきましては、系統農協自身が自主的に今後どう取り組んでいくかというふうなことの取り組みもいたしておるわけでございますが、農林水産省といたしましても、これからの時代の流れに即応した形で対応できるような農協の姿というふうなことに対しましてこれからも指導してまいりたい、このように考えておるところであります。
  96. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 農政のことは議論すれば数限りありませんが、時間が参りましたし、今度のいわゆる農林年金の改正を機としまして、大いにひとつ本来の課題を消化すべく御検討あらんことを期待して質問を終わります。大臣、御苦労さまでした。委員長、どうもいろいろと御配慮ありがとうございました。終わります。
  97. 近藤元次

    近藤委員長 次に、藤田スミ君。
  98. 藤田スミ

    ○藤田委員 先日の委員会で私は宅地並み課税の問題についてお伺いをしたかったのですが、時間がありませんでして、若干の意見だけで終わりました。法案に入る前に、お許しを願って、若干この問題についてお伺いをしておきたいと思います。  先日、宅地並み課税問題で、都市の農業者が総決起大会を開きました。そこでも危機感は大変なものでした。大臣、報道によりますと、「農地は道路などの基盤整備を進めつつ、計画的に宅地化してほしい。宅地化する場合、企業の買収などで投機的な動きを防ぐべきだ。この二つの条件が守られるなら賛成する」、こういうふうに述べていらっしゃいます。私はこの問題について、この前も若干意見を申し上げましたが、大変残念に思いますのは、農林水産大臣であるにもかかわらず、都市農業の意義、役割について一言もお触れになっていないことです。  改めて言うまでもありませんが、特定市街化区域内農地のうちで長期営農継続農地は三万六千ヘクタールあります。東京や大阪で、安い、そして安全な野菜、新鮮な野菜を住民に提供し、貴重な緑の供給基地になっています。大阪では府下で生産される主な野菜の市場年間占有率は、キクナが八四・九%、フキが四八・三%、メキャベツが三九・二%。東京では同様に、ツマミナが八六%、コマツナが五七%、ウドが五一%にもなっています。そのことは何よりも都市住民が評価をし、非常に期待が高まっていることなのです。  市街化区域内農地の役割は、もちろんそれにとどまりません。防災面から見ましても、震災時の非常に重要な緊急避難場所になっています。それから、集中豪雨のときの雨水の吸収地として極めて重要な役割も果たしています。建設省の言うように東京圏で一万ヘクタールの農地が宅地化されたら、年間で四千三百八十万トンもの雨水が都市河川に流入し、集中豪雨があったときなどは深刻な影響を与えていくことは目に見えているわけです。  これらのことは、ほかならぬ農水省自身が米づくりの役割を主張するときに述べておられるその役割と、そう大きな違いがないわけです。このような貴重なかけがえのない都市農業の役割について、なぜ農水省は主張しようとしないのか、明らかにしていただきたいわけです。
  99. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 今、先生触れられたのは、十一月一日の土地対策関係閣僚会議での私自身の発言の問題ではないかと思いますが、いろいろと新聞で報道されておることも承知をいたしております。しかし私自身は、どのような発言を申し上げたかということにつきまして、これから先生の御質問等も関係ございますので述べさせていただきたいと思います。  私自身は、十一月一日の土地対策関係閣僚会議におきましては、まず国土の均衡ある発展を図る観点から、農山村地域の活性化が極めて重要な課題だ、このことを主張いたしました。活力と魅力にあふれる農山村づくりを進めるため、農山村の基盤の整備が重要である、この旨を発言をしたわけであります。そして、東京都などの大都市地域のいわゆる市街化区域内の農地につきましては、昨年の六月に御承知のとおり閣議決定いたしました総合土地対策要綱におきまして、市街化する農地と保全する農地とを振り分けをしていく、その振り分けた形において各般の措置を講ずることとされておるわけであります。これを前提といたしまして、市街化する農地につきましては、道路あるいは下水道、そういう都市基盤の整備をしながら宅地化を進め、そして土地の買い占め等によって投機的な土地取引が行われることのないようにする、こういうふうなことが必要である、こういうふうな考え方を申し上げまして、農林水産省といたしましてはこうした基本的な考え方のもとに協力をしていきたい、こういうふうに述べたわけであります。
  100. 藤田スミ

    ○藤田委員 残すべき農地とそれから市街化するべき農地、そんなものを一体だれが決定することができるのですか。現に今、朝早くから野菜の出荷だとか栽培管理などで一生懸命働いておられる農民、農家の皆さんの存在というものを一体だれが排除することができるのかというふうに私は思うわけです。市街化区域内農地の人たちも、自分たちは農業生産をしているのだから本来農地に対しては農業課税をしてほしいと主張されているわけですが、これは全く当然の主張だというふうに思います。  そもそも、市街化区域、市街化調整区域の線引きというのは、一九六八年、新都市計画法によって行われることになったわけですけれども、当時の保利建設大臣、今の保利議員のお父様ですが、こういうふうにおっしゃいました。市街化になったために、今までの農地の固定資産税がうんと何倍にも上がるというようなことは断じて許しません。断じて許しませんというふうにおっしゃったのです。このことは、多くの農民は今日も耳の奥に残っているというくらいよく覚えていますよ。しかしその後、宅地並み課税の実施が打ち出されました。農民の皆さんの闘いによつて猶予制度が設けられました。その間、どんなに近郊農家は大きな不安を抱き続けて今日まで生活をしてきたかというその気持ちがわかりますか。にもかかわらず、農民は都市住民に新鮮で安い野菜を提供するために汗を流し続けて、今日まで重要な役割を果たしてきたのです。それに対して、だれが選択できるのですか。何の基準でそういうことを選択することができるのですか。私は、農民のこの気持ちを受けとめることもできないで、農水大臣ともあろう方が農地つぶしの先頭に立つというようなことがあってはならないというふうに思います。  もう一度お伺いいたします。農民の心を理解できると自負していらっしゃる大臣です。もう一度御所見をお聞かせください。
  101. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 市街化区域の農地につきましては、十年以内に市街化すべき区域という形で土地利用計画、線引きをされた農地でございます。この市街化区域内におきましては、農地転用は許可を要せず届け出で可能である、こういうようなことになっておるわけでございますけれども、ただ、この線引きを行われた際に、先生御指摘のように、宅地並み課税はしないというのが前提で行われたということもございまして、市街化区域農地がどちらかといえば非常に広目に線引きをされたという経緯があるわけでございます。そういう経緯を踏まえまして、長期営農継続農地制度、十年以上農業を継続したい、継続するのは適当であるという農地につきまして宅地並み課税を除外する、こういうような制度に現在なっておるわけでございますけれども、こういう振り分けといいますか、現在ある市街化区域の農地を一挙に宅地並み課税するということは適切でないということで、現行の制度ができているというふうに理解いたしておるわけでございます。  ただ、適正な土地利用、適正な町づくりという観点から、現行の制度についても見直すべきではないか、こういう議論が現在行われているということであると承知いたしておる次第でございます。
  102. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は大臣の御意見をお伺いしたのです。
  103. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 この問題は、先ほど答弁申し上げましたとおりに、その地域の町づくりをどうするかというふうな問題の中において、市街化する農地、保全する農地、こういうふうなことで振り分けられていくわけでございまして、そういう中でそれぞれの諸施策が講ぜられる、こういうことでございます。
  104. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間が限られておりますから、もうこれ以上質問できませんけれども、市街化区域内の農地は、そこに住む住民にとっても農業のある町づくりこそ今本当に望んでいることなのだということ、それから断じて宅地並み課税強化で農民から農地を取り上げるというようなことはやってはならないんだということを申し上げまして、次に、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案について質問をしていきたいと思います。  まず、農林漁業団体の定年状況についてお伺いをいたします。  ことし三月にまとめられました定年制度等に関する調査報告を見ますと、六十歳定年制が確立されているのは全体のわずか五五・二%にすぎず、五十五歳定年が九百五十七団体で、全体の一三%も残っております。こういう状態で支給開始年齢を六十五歳に引き上げるということはとても無理であることは明らかでありますが、現在五十五歳定年制が広範囲に残っている原因、今後の見通しを明らかにしてください。できるだけ御答弁は簡潔にお願いいたします。
  105. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 定年の問題についてお答え申し上げますと、昭和六十年と六十三年で比較しまして、五十五歳の定年制をとっている組合は当然減少してきておるわけでございまして、例えば農協をとりますと、二三・六%から一五・七%というふうに低下をしております。漁協、森林組合、同様に減少してきておるわけでございます。一方、六十歳以上の定年制をとる組合の割合は、いずれも増加をしてきておりまして、そういうのが定年制の実態でございます。  今申し上げましたように、一部になお五十五歳定年制の組合があるわけでございますけれども、総じて徐々に定年延長ということで動いてきているわけでございます。今後ともさらに延長が図られる、そして年金制度との整合性がとれるというふうに絶えず努力するように、関係団体に対する指導にも万全を期したいと思うわけでございます。
  106. 藤田スミ

    ○藤田委員 定年延長に対する指導の万全を期したいということですが、実際には「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」を見ましても、要員管理の徹底と職員の能力向上はうたっておりますが、定年制の引き上げは何にも記載されておりません。また先日の全国漁業協同組合大会の運動方針を見せていただきましたが、そこでも定年制の引き上げについては一言も触れておりません。農協や漁協自身がそういう状態なわけですから、果たして政府指導があって引き上げがどの程度まで進むのか。まして六十五歳への年金開始年齢の引き上げなどというのはとんでもないと言うべきではないでしょうか。その点を明らかにしてください。  また現在、農林漁業団体では、五十五歳定年だけでなく、男女の定年差別も行われているとされているわけです。これを裏づけるように、単位農協職員の年齢階層別割合を見ますと、五十歳から五十四歳では男子職員は一〇・三%、女子職員は四・七%と半分以下になっております。秋田県の場合を調べてみますと、県下百二十単協の中で男女同一の定年制をしいているところは四十九単協、四〇・八%、九〇年中に改善見込みというところが二十単協、一六・六%です。改善の見込みありませんという単協は五十一、四二・五%という数字になっているわけです。  この点について、本来男女の定年差別は男女雇用均等法違反でありますが、この法律自身には何の規制力もありませんし、結局農水省の強力な指導がなければ改善できないわけです。この点はいかがでしょうか。
  107. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農協職員の男女による定年の差、確かに今一部の事例をお引きになったわけでございますけれども、残っているわけでございます。  六十二年度の私どもの数字で申し上げますと、定年制を採用している組合、農協が全部で四千七十ありまして、そのうち男女で定年制に差がある組合二百八十七、比率では七・一%でございます。これは五十六年には一二・九%でございますから、相当改善してきていることは間違いないわけでございます。また一方、農協以外の一般の企業の定年制、これは常用で三十人ないし九十九人ぐらい雇用の規模を持っている企業との比較でございますけれども、そういう企業では、六十三年で男女で定年制に差があるというのが一〇・二%あるわけでございますから、農協の七・一%というものはそういったたぐいの企業に比べて特に農協の方が差があるということではない。むしろ農協の男女による定年制の差は、一般企業に比べるとまだ改善されてきているというふうに言えるのではないかと思います。  男女雇用機会均等法における法の趣旨というものを十分尊重して対応していただく必要がございますので、差別的な取り扱いの禁止といいますか、男女の差というものの解消に向かって指導をいたしておりますけれども、さらに我々としては男女差の解消に向けての努力に努めてまいりたいと考えます。
  108. 藤田スミ

    ○藤田委員 男女差の解消に向けての努力を約束されましたので、ぜひこれは実行していただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。  次に、新掛金率の設定についてです。今回の法案によって各種の給付改善がなされるわけですが、これを理由にして掛金の大幅増加が行われるとしたら、これは労働者に大きな打撃を与えることになるわけです。  私は第四回農林年金運営基本問題懇談会資料というのを持っておりますが、これによりますと、本来五年ごとにやる財政計算を四年で切り上げ、九〇年四月から共済掛金を現行の千分の百三十四から千分の百六十四に引き上げることを明らかにしています。これによって農林年金の標準給与で月額三千三百円の掛金アップになります。しかも、不当にもそれを一年前倒しでやるわけですから、労働者にとっては本当に大きな負担増になるわけです。  私は、本来労働者の負担を抑えることが政府の責任であると考えるわけですが、今回この計算の根拠として、先ほどからも出ておりましたが運用利回り五・五、賃金上昇率四・〇、消費者物価上昇率二・〇を使用しておりますが、運用利回りにしても過去三年の実績は七・一五なんですね。運用利回り五・五じゃないわけです。実績は七・一五%です。これから金利が上昇する傾向があるときにこれはいかにも低過ぎるわけで、したがって私は、ここで過去三年の実績で計算したらどうなるのかということを明らかにしていただきたいわけです。  また、農林年金中央共闘会議が、年金に対する国庫補助率を現行の基礎年金拠出金の三分の一を当面二分の一に増額することを要求しておりますし、掛金負担割合を労働者三、使用者七、これはヨーロッパ諸国では常識の負担割合ですが、こういうふうにしていくことも極めて重要だ。そういう点では、私はここで重ねて、労働者の負担を抑えることが政府の本来の責任ではないのか、この点についての御意見も聞いておきたいと思います。
  109. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 財政計算年金当局が現在作業をやっておるわけでございまして、今委員の方からお聞きになったような数字も現段階での試算としてあるわけでございます。  先ほども申し上げたわけでございますけれども、長期的な年金財政の安定を図るという見地から、財政計算当たりまして私どもは四つの条件を満たすようなことを前提に再計算作業をやっていただいておるわけでございます。一つは、やはり単年度で赤字が出ない。年金の収入の中心はもちろん掛金でございますけれども、単年度掛金を中心とした収入に対して年金の支払いの方が上回るようなことがないというのが第一条件。第二は、積立金の取り崩しをしない。三番目に、ある程度経済の変動が急激に来た場合にもそれにたえられるだけのアローアンスを持っておく。それから四番目に、掛金の将来における引き上げは、急速に後へ行くほど大幅に引き上げなくちゃいけないような事態にならないように配慮する。この四つは非常に重要な前提だということで計算をいたしております。また、物価上昇、賃金改定率、運用利回りにつきましても、先ほどお話があったようなパーセンテージで前提を置いているわけでございます。  これは将来の見通しでございますから、当然一つ見通しということで実績がそれに乖離することはやむを得ないわけでございますけれども、最近における経済の動向、将来の見通しというものをできるだけ着実に見通した上での計算をやる必要がございます。かつ、年金一元化見通した上で各年金共通前提を置くということで、計算をしているわけでございます。
  110. 藤田スミ

    ○藤田委員 私が聞いていることにちっとも答えられないで長々と今度の負担増になる問題をいろいろ弁解しはったら本当に困るのです。私はきのうから、七・一五%、過去三年の実績に基づいたらどれくらいになるのかというふうにちゃんと聞いているのですから、これは算数の答えみたいなもので、一言あったら言えるわけです。だからどうぞその御答弁をお願いします。  今、農協は、若者層が集団脱走、こんな言葉が起こるくらいごっそりやめる現象が起こっているわけです。日本農業が、相次ぐ農産物の輸入自由化、農産物価格の引き下げ、減反の中で存亡の危機に置かれている。そして、農業の将来見通しがなくなって展望を失い、また農協では事業推進と称するノルマの強制に嫌気が差して相次いで若者たちがやめていっているのです。こういうことがますます農協の就労状況高齢化させようとしているわけで、私は農水省の責任は非常に大きいと思います。今度の年金の問題もそういう点で大きなかかわりがあるわけです。大臣としてその責任をどう感じ、どう展望を開いていくおつもりなのか、数字とあわせて最後に御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  111. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 先ほど申し上げるのがちょっと抜けたわけで、大変失礼いたしました。  過去三年の実績を前提にした計算、これを行うためには、相当の計算のための手続あるいは日数を要することもございまして、直ちにそれをベースにした掛金がどうなるかについて申し上げることはできないわけでございまして、その点、御理解を賜りたいと思います。
  112. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 農協は、組合員農家の協同組織として、また地域農業中心的組織として重要な役割を果たしておりまして、その役割を今後とも維持していくためには、人材の確保、特に将来の農協を背負う若手の職員の確保が大変重要な課題であると考えております。これらの職員農協におきまして意欲を持って働けるようにしていくことが重要でございまして、このため、農協の系統組織におきまして、昨年十二月の農協大会におきまして雇用環境の整備、週休二日制あるいは年次休暇の計画的付与など就労時間の短縮等の問題、また、研修の強化等を通じまして活力ある農協づくりに積極的に取り組む、こういうふうな考え方を打ち出しておるわけでございますので、農林水産省といたしましても今後適切に指導してまいりたい、このように考えております。
  113. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。
  114. 近藤元次

    近藤委員長 次回は、明三十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十八分散会