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1989-11-15 第116回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月十五日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 近藤 元次君    理事 笹山 登生君 理事 杉浦 正健君    理事 保利 耕輔君 理事 松田 九郎君    理事 柳沢 伯夫君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 滝沢 幸助君       衛藤征士郎君    川崎 二郎君       菊池福治郎君    小坂善太郎君       田邉 國男君    武部  勤君       玉沢徳一郎君    鳩山由紀夫君      二田 孝治君    三ツ林弥太郎君       宮里 松正君    山口 敏夫君       山崎  拓君    石橋 大吉君       沢藤礼次郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    前島 秀行君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  鹿野 道彦君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    松山 光治君         林野庁長官   甕   滋君         林野庁次長   小澤 普照君         水産庁長官   京谷 昭夫君  委員外出席者         環境庁自然保護         局企画調整課長 大木 知明君         運輸省港湾局環         境整備課長   橋川  隆君         参  考  人         (全国森林組合        連合会専務理事) 泉 総能輔君         参  考  人         (鳥取日南町         長)      高橋 篤史君         参  考  人         (島根大学農学         部教授)    森  巖夫君         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ───────────── 本日の会議に付した案件  森林保健機能増進に関する特別措置法案内閣提出、第百十四回国会閣法第六五号)      ────◇─────
  2. 近藤元次

    近藤委員長 これより会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出森林保健機能増進に関する特別措置法案を議題といたします。  本案につきましては、第百十四回国会において既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 近藤元次

    近藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────  森林保健機能増進に関する特別措置法案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  4. 近藤元次

    近藤委員長 本案について審査を進めます。  これより質疑に入ります。  本日は、本案審査のため、参考人として全国森林組合連合会専務理事泉総能輔君鳥取日南町長高橋篤史君、島根大学農学部教授森巖夫君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。泉参考人高橋参考人森参考人の順に、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、泉参考人お願いをいたします。
  5. 泉総能輔

    泉参考人 ただいま御紹介にあずかりました全国森林組合連合会専務の泉でございます。  衆議院農林水産委員会先生方には、日ごろ、私ども森林組合系統を初め、森林林業振興発展のため格別の御指導と御高配を賜っておりますことに対し、深く感謝いたしております。  申し上げるまでもなく、我が国森林林業を取り巻く状況は、木材価格の低迷や外材との競合などまことに厳しいものがございます。これに伴い、山村社会における過疎化現象林業就業者高齢化などから林業生産活動が著しく停滞している状況にございます。  一方、我が国経済の著しい伸展に伴い、国民森林に対する要請は、木材生産水資源涵養国土保全にとどまらず、心の安らぎと快適な生活を志向すべく緑を求め、森林浴を楽しむなど、保健休養の場としての期待が極めて高くなっておりまして、このような都市住民のニーズを林業山村の側からは、森林保健休養の場として整備することによって山村林業活性化につなげていくことが大きな課題であると考えておるところでございます。  御承知のとおり森林組合は、明治四十年の森林法改正制度化され、自来八十年有余にわたりまして森林造成保全事業を実施してきましたが、いまだかつて森林を荒廃に導いた悪例はなく、高い信用を得ながら今日に至っております。したがって、私ども森林組合系統は、地域林業中核的担い手として、我が国林業振興山村活性化を図るため日々努力を重ねてきております。この中で、森林都市住民保健休養の場として活用し、森林を総合的に整備していくという、いわゆる森林総合利用にも積極的に取り組んでおります。  全国森林組合連合会としては、各地森林組合動きを踏まえ、昭和五十九年に決定した「森林組合体制刷新運動」において、重点課題一つとして森林保健機能活用を取り上げ、系統一丸となって推進してきたところであります。この運動期間は今年度で終わりますが、平成二年度からは新たに「森林と人いきいき運動」を五カ年間にわたり実施する方針にしております。この中で「恵み豊かな森林と魅力ある山村の創造」を課題一つに取り上げ、森林の総合的な利用を進めるため、地域の条件に即して森林レクリエーション等総合的な利用促進を図ることといたしております。  例えば、大阪府における高槻森林組合は、公有林である高槻市有林と十人の所有者から成る私有 林合計四十五ヘクタールを対象に、みずから森林内に林間歩道休憩施設シイタケフレーム栽培施設等整備する中で、生産されたシイタケをバーベキューの原材料に提供するとともに、クリ園につきましてはクリ拾い場として活用するなどで森林保健休養機能を高度に発揮させ、年間九万人の利用者地元から感謝されております。このため、就労の場として果たす役割も大きく、森林組合作業班通年就労に役立っており、貴重な林業労働者地元定着に寄与しております。なお、対象森林管理もあわせ行われ、健全な森林造成も図られておる次第でございます。  もう一つの例を挙げますと、神奈川県小田原いこいの森の事例でございます。この森林は、四十六人の所有者から成る三十ヘクタールの森林でありますが、小田原市が、地権者、すなわち森林所有者でございますが、地権者から土地を借用し、保健休養機能活用の場として施設整備し、小田原森林組合森林管理施設の運営を受託しておるものでございます。私ども森林組合連合会は、去る十一月五日、小田原市の郊外にあるこのいこいの森でグリーンキャンペーン「親と子の森林教室」を開催いたしました。この森林教室は約二百人の定数で計画しましたが、四百人の応募者があり、このような行事をいかに多くの市民が希望するかを再認識したところでございます。林内の散策、二十五年生杉、ヒノキ林の間伐、枝打ちの実演、製造中の木炭シイタケ栽培の見学、森林についての親子の対話等を通じ、保健休養教育等の有意義な一日でございました。この施設年間利用者は約五万人、森林管理及び施設経営を受託する森林組合延べ雇用日数年間一千人余に達しており、地元林業地域活性化に役立っていることを見聞したところでございます。小田原市の作成いたしましたこのいこいの森の案内書によれば、「このいこいの森は、小田原市が森林の大切さを身近に認識していただき、木材生産ばかりでなく、休養の場として活用して戴くために開設したものです。いこいの森の豊かな自然ときれいな空気の中で、やすらぎと明日への活力を求め、健全な心身をつちかい、緑を通してふれあいを広めてください。」とつづってございました。このいこいの森の案内書内容は、本法案の目的や趣旨に沿っているものと考え、あえて御紹介を申し上げた次第でございます。  このような各地の取り組みはありますが、一方では意見の取りまとめなどに苦労しているのも実情であり、その中から、一つには、森林総合利用について明確な法制度上の位置づけがないこと、二つには、保健休養の場を整備していく上で森林所有者の円滑な合意形成の手法が確立されておらず、現行の個別許可では煩雑なばかりでなく計画的な整備が図りがたいこと等の問題が浮き彫りになって出ております。そこで昨年十一月には、森林総合利用森林保全を図りつつ計画的に進めるため、全国森林組合代表者大会の名において森林総合利用のための制度の創設を政府、農林省に強く御要望したところでございます。  次に、本法案について申し上げます。  この法案は、森林保健休養利用制度上明確に位置づけられるという画期的なものであり、その内容を見ましても、一つには、森林の施業と施設整備計画的かつ一体的に進めるために、既に林業関係者に広く定着しております森林計画制度活用することによりまして、森林所有者の円滑な合意形成を図る手続が明確に示されていることであります。二つには、森林の諸機能に支障を及ぼさない施設整備技術基準、つまり総量規制技術的基準が明示されるとともに、許可手続合理化が図られていることであります。また、施設整備が不適切な場合には森林法監督権限が行使できるなど、森林保全のための十分な措置が講じられていると考えております。これらのことを通じまして、林業山村立場を配慮した法案ではなかろうかと考えております。また、不在村山林地主が増加している現状の中にありまして、地域林業中核的担い手としての森林組合がより積極的に森林総合利用に取り組めるよう、森林保健施設整備する場合について員外利用の特例が設けられておりますが、これは、森林保健機能増進に関して森林組合役割が高く評価されていることのあらわれと受けとめておるところであり、森林組合系統としても、今後とも森林の適切な利用努力していきたいと考えております。  このように本法案は、私ども森林組合系統の要望を十分反映して政府から提出されたものと理解しており、大いに賛成すべき法案であると考えております。本法案早期施行を強く御要望するとともに、その施行を受けて、森林組合系統としても今後一層森林総合利用に取り組むとともに、このことが山村活性化森林林業活力回復にも裨益することを期待いたしまして、本法案についての私の意見といたします。(拍手
  6. 近藤元次

    近藤委員長 ありがとうございました。  次に、高橋参考人お願いをいたします。
  7. 高橋篤史

    高橋参考人 私は、鳥取日南町長高橋でございます。  私の町は、鳥取県の最西南端、岡山、広島、島根の三県に境を接する中国山脈真っただ中の町でございます。我が国文豪井上靖先生本町に建てられた文学碑の中に「ここ中国山脈稜線 天体植民地 風雨順時 五穀豊穣 夜毎の星闌干たり 四季を問わず凜々たる秀氣渡る ああここ中国山脈稜線 天体植民地」とおっしゃいました。すなわち「天体植民地」とは、宇宙の神々が住みつきたくなるようなよいところというふうにおっしゃっておられました。美しい自然と人情にはぐくまれた土地でございまして、面積鳥取県の一割を占める三万四千ヘクタール、うち森林面積が三万六百ヘクタールでございまして、林野率九〇%を占める山村の町であります。森林を守り、国土保全し、水資源涵養している立場から、本日、本委員会意見陳述機会を与えていただきましたことにつきまして、大変光栄に存ずる次第でございます。本町は、昭和三十四年内閣総理大臣勧告を受けて旧七カ村が合併いたしまして、当時の人口一万六千人でございましたが、現在は八千五百人となっております。六十五歳以上の人口比率は二四%を占め、過疎高齢化対策が急務でありまして、農林業基幹とした町づくりに取り組んでおるところでございます。かつて、天叢雲剣伝説の地として古くからたたら製鉄が営まれ、木炭地域経済を支えていたのでございますが、昭和三十年代の燃料革命により木炭生産は完全に斜陽化し、これに伴いまして人工造林が盛んになってまいりました。本町の場合、三万六百ヘクタールの山林のうち国有森はわずか千三百ヘクタールと少なく、ほとんどが民有林で占め、しかも保有山林十ヘクタール未満の零細林家が八五%を占めております。杉、ヒノキ中心とした人工林率は約六〇%に達し、森林資源活用が我が町の一番活性化のために重要なことであると認識しているところでございます。その意味におきまして、このたびの森林保健機能増進に関する特別措置法案は、まことに当を得たものと存ずる次第でございます。  御承知のように山村をめぐる情勢が大変厳しい中で、就業改善所得向上を図り、地域活性化していくためには、最後まで頼りになる地域資源を最大限に活用した産業振興することが必要と考えております。この場合には、地域資源といたしまして最大のものは森林でございます。産業中心基幹産業である林業を据えておることが得策であろうかと考えております。しかし、戦後の植林がほとんどでございまして伐期がいまだ到来しておらないため、林業だけでは所得確保は十分でなく、森林等地域資源活用した産業に複合的に組み合わせて育てていくことが最も大切であろうかと考えております。また、森林レクリエーション活動など、森林保健休養の場といたしまして利用していくこともその一つといたしまして重要であろうと考えております。特に近年都市住民は、森林浴レクリエーション体験学習の場として森林利用することに強い期待を持っております。このような利用にふさわしい森林があるところは、地域おこし、村おこしとしてこれ を積極的に整備する必要があると考えております。  そこで、若干手前みそで恐縮でございますが、私の町の幾つかの例を申し上げてみたいと思います。  本町町有林の場合を申し上げますと、町有林は現在千七百四十二ヘクタールでございまして、そのうち一千ヘクタール造林を達成いたしました。単純計算ではございますが、五十年伐期の杉、ヒノキを毎年二十ヘクタールずつ伐採できる経営目標を掲げておるところでございます。主伐できるのは二十一世紀からでございまして、今後保育等質的充実管理体制充実を図る必要があります。しかしながら、沈滞する山村地域の中にあって、町有林経営は大きな就労の場を提供するとともに、路網整備造林技術向上等地域林業に果たしてきた役割は極めて大きいと言わなければなりません。さらにまた、高度経済成長の過程で町内林地が買いあさられ、町外者所有森林が激増いたしました。本町では、このような林地流出を抑えるため、流出のおそれのある森林の取得や、一たん流出した森林を買い戻したりいたしております。中でも、町外地主から買い戻しました六百ヘクタールの山は、町民の森として、また子供たち自然体験の場として今提供しております。これは、ルバング島から奇跡の生還を果たしました私の同期小野田寛郎君を講師に、毎年夏この山で町内小学生下流地域小学生が一緒に参加して行う自然体験塾を開催して、今六年になっております。  また、本町では都市との交流事業国際交流ども推進しておるわけでございますが、都市との交流事業の一環といたしまして、ふるさと日南邑事業がございます。町と農協森林組合、商工会とで第三セクターを設けて運営しておりますが、十万平方メートルの森林利用し、景観を保ちながら自然体験の場として体験実習館運動広場テニスコート、森のことなら何でもわかる森の文化館体験農園を配置し、町と村の交流を図っております。これは単に村の活性化という観点のみではなく、交流によって都市人々山村を十分理解していただく願いが込められておるわけでございます。  さらに、本町では、水の大切さを理解することから日野川の上流と下流との交流を進めておりますが、下流の米子市及び境港市では、本町山林を求めて造林を実施し、市民の森として活用していただいております。  また、全国に会員を持つ地元農協によるシイタケオーナー制度、すなわちしいたけ友の会都市との交流一つでございます。また、資源エネルギー活用として、農協森林組合、町で第三セクターの株式会社、小水力発電公社をつくりまして、現在、小水力発電事業も行っております。このような国土保全自然保護と開発との調和を図りながら、地域住民と密接な連携のもとに、模索しながら町づくりを進めておるところでございます。  今回、この法案につきましては、保健休養の場としての森林事業に関しましては、単に都市住民レクリエーション休養のためのものということではなく、山村活性化に向けて、林業者所得確保につながる森林資源活用の重要な方策の一つとしてとらえておりまして、山村側の希望を取り入れ、地域自主性を大切にしていく面で、私は極めて重要であるものと考えております。  次に、これまで町づくりに携わった者といたしまして、その体験めいた話をさせていただいて恐縮でございますが、さきに申し上げましたように、保健休養の場としての森林整備は、これまでは町が主体となって行ってまいりましたが、整備に取り組むための契機がなかなかつかめなくて困っておったところでございまして、特に私有林を含むとなると、零細森林所有者が多いため、まとめるのに大変苦労しております。また、経済面で直ちに効果が出ないのではないかというところもございまして、森林所有者の理解を得られず苦労することがございます。さらに、森林管理が低下する中で、施設整備のみが行われ、森林自体整備が十分に行われない面もございます。今回の法案では、保健休養の場として森林利用を進めることについての法制面からの明確な位置づけができるのは、このような事態を改善していく上で画期的な措置となり、私の体験からいたしまして、このような仕組みができれば、これまでのような苦労はなくて、本当にやりやすくなると思うわけでございます。法案成立の場合におきましては、この制度利用いたしまして、林業者森林組合、町村が一体となり、地域自主性基本として、このような森林利用に向けて森林整備を進めてまいりたい。また、このような地域自主性基本となるならば、私ども計画に賛同してくれる民間資本とも強調しながら整備を行っていけるものと考えております。  さて、いま一つ我が町で進めております都市山村との交流場づくりについて、私の考えを申し上げていきたいと思います。  都市栄え、山村滅ぶ、人類の文明は果たしていつまで続くのであろうかというのは、私たちが一番心配しているところでございます。山村をめぐる情勢が厳しい中にありまして、これを克服し、その活性化を図るためには、林業者等山村住民自助努力はもとより、都市住民による物心両面にわたる協力が必要で不可欠なものであろうかと思います。すなわち、山村維持発展は国全体に影響を及ぼす問題でありまして、ここに居住する人々だけではなく、国民全体で山村活性化のために努力することが必要と考えております。  このような意味で、先ほど申し上げました本町における都市農村との交流事業として、ふるさと日南邑事業の展開をしておりますが、本町自然景観を基礎といたしまして地域住民が精神的な連帯感を強め、みずからの地域歴史的発展と潤いのある美しい農村づくりを、自助努力目標に展開しております。景観条例や緑の文化基金を設置いたしておりますのもこのような趣旨からでございます。都市住民人々に実際に山村を訪れていただき、山村実情やすばらしい自然に触れ、それらを十分に理解してもらうことが必要であります。保健休養のための森林利用は、この都市山村交流に一層役立つものと考えております。このような森林利用を通じまして、分収育林などにより都市住民森林造成に直接参加してもらいますとともに、水源涵養のため森林につきましては下流域住民からその造林費の一部を拠出していただくような動きが活発化することを期待しているものでございます。また、このような経済面での協力に加え、山村住民による山の管理が、森林の持つ水源涵養国土保全機能の発揮を通じて、山村地域ひいては国土を守ることに大いに寄与しているという意識を持っていただき、山村住民を応援していただけることを願うものでございます。山村住民も、多数の国民がみずからの仕事を評価してくれたらどれだけ心強いものであろうかと考えております。  美しい自然だけでは人々は住めないわけでございまして、特に若者の定住の場所になり得ないのが山村でございます。本町では、子供のときから山に親しむよう、小学校対象に、今八つの小学校のうち五つの緑の少年団を結成し、緑と森を大切にしております。都市小学生を一年間預け入れる山村留学里親制度を始めましてから現在で六年目を迎えております。人づくりを積み上げて町づくり国づくりへというモットーのもとに、健康づくりを含めたあらゆる機会をとらえて生涯教育学習に取り組み、生涯教育宣言の町として、健康で豊かな町づくりを進めております。今回の法案が、立派な山をつくると同時に、生涯教育実践の場として、また、保健休養の場としての森林利用を通じまして、都市山村交流促進に大いに役立つことを念願しております。  これで私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  8. 近藤元次

    近藤委員長 ありがとうございました。  次に、森参考人お願いをいたします。
  9. 森巖夫

    森参考人 御紹介いただきました森巖夫でござ います。早速愚見を申し述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、この十数年来、特に一九八〇年代に入りましてからの最も際立った社会現象一つに、森林というものに対する世間の関心が著しく高まってきていることが挙げられるかと思います。すなわち、まず地球的な規模の問題としては、熱帯林の減少とか砂漠化の進行、さらに酸性雨による森林枯損など、つまり、今日国際的にも極めて緊要な問題となっております地球温暖化現象などとの関連において、ある種の危機感を持って森林問題が提起されております。また、国内に限って見ましても、一方では急速な工業化都市化の進展に伴う生活環境の悪化のもとで、いわゆる余暇時間の増大や所得水準向上などを背景に、緑、とりわけ量的にも質的にもその中核となるべき森林に対して、国民一般は熱い期待を寄せております。そういう期待が、例えば、時には森林浴自然体験学習を初めとして、林内におけるスポーツやレクリエーションなどを含むさまざまな活動となってあらわれておりますし、また時には、その方向性が異なり、あるいはその内容程度の差はありますけれども、いわゆる自然保護運動として展開されているものと考えられるわけであります。  他方、森林への関心の高まりは、近年における林業活動をめぐる厳しい状況にも向けられております。すなわち、長く続いております木材需要及び木材価格の低迷、山村過疎化のもとでの林業従事者の減少や高齢化などによって、人工林の除間伐や保育作業のおくれが、最近幾分緩和されつつあるとはいえ目立っておりまして、産業としての林業振興の視点からも森林問題が取り上げられております。ここで今日の林業状況についてるる申し上げる必要はありませんが、このような今日の林業活動の不振は、結局のところ健全な森林造成を困難にし、林業者がひとしく期待しております国産材時代の到来を不可能にするばかりではなく、それはまた国土管理上にもゆゆしき事態を引き起こしかねないと憂慮されるわけであります。  このように、今日の森林問題の内容は、実に多面的であると同時に、いずれの局面もそれぞれ相互に関連を持ちながら、極めて深刻であります。さしあたりここでは地球環境問題とのかかわりにつきましては割愛しますが、そして専ら国内の森林問題に目を向けることといたしますが、これまでのところ率直な印象としては、ただいま申しましたような森林への関心の高まりの中で、都市住民サイドの森林に対する期待ないし関心と林業及び山村サイドからの要望とが必ずしもうまくマッチしていなかったのではないか、もっと両者をうまくドッキングさせる仕組みをつくる必要があるのではないかと感じられるのであります。  若干具体的に申しますと、都市サイドの緑の欲求の高まりは、森林対象として営まれる経済活動、すなわち林業を初めとして森林利用の一切を否定するような極端な自然保護運動に走ってしまったり、反面では全く反対に、緑を求めながらも結局のところ大事な緑資源を破壊してしまうような、いわば乱開発と呼ばれるような事態を引き起こしたりしていることを目にすることがあります。前者は、林業山村というものに対する認識不足と言わざるを得ませんし、後者はまた、自然とか緑の象徴としての森林の重要な意義についての理解の不足と言わざるを得ないと思うわけであります。ともに誤りであることは言うまでもありません。やはり、一口で言うならば、我が国の風土の条件と経済社会の成熟度に調和した、あるいはそれに対応した、いわば日本型の自然保護なり森林利用なりが求められるべきであると言うべきでありましょう。  私はかねがね、森林には大きく分けて四つの顔があるなどと申しておりました。その一つは、経済資源としての顔であります。木材等の林産物を供給する役割であります。第二は、環境資源としての顔であり、国土と人間生活の安全や快適さを保障する役割であります。三つ目には、文化資源と申しましょうか、歴史的、文化的な遺産を継承し、また健全な人間の育成、青少年の教育などに役立つ役割であります。そして四つ目は、生物資源としての顔であり、多種多様な動植物の生息と遺伝子の貯蔵庫としての役割であります。  いずれの分野についても細分すれば多種多様な働きが挙げられますが、従来、例えば森林計画制度や保安林制度などによってそれぞれの機能確保されるよう特別の措置が講じられているわけでありますけれども、これまでのところ、どちらかといえば木材生産国土保全等の機能が重視されているのに比べて、最近著しく高まってきておりますところの森林保健機能への対応が必ずしも十分であったとは言えないのではないかと考えられます。そして、この森林保健機能の重視は、今日、都市住民サイドからの要請と山村林業サイドからの要請とを結びつける重要なきずなになる分野であると考えるのであります。  しかし、御存じのように、森林整備基本でありますところの森林法に基づく森林計画制度においては、森林保健機能増進に関する事項は取り上げられていませんでした。そのため、多数の所有者を含む一団の森林保健休養利用を統合し、これを誘導することはできなかったわけであります。また、林地開発許可制度はありますものの、それに基づいて設置された施設敷等はいわば森林法の傘の外に出てしまうことになり、それへの監督ができなくなるといった不都合が生ずるおそれがあったのであります。加えて、施設と周辺森林の施業との関連も必ずしも調和がとれているとは言えない状況でありました。少なくとも制度上、一体的関係は保障されていなかったと言わざるを得ません。  今回上程されております森林保健機能増進に関する特別措置法案は、このような問題点に着目して、まず都市住民の自然への触れ合いの欲求にこたえつつその活力山村に導入し、都市山村交流を図るために森林保健施設とその周辺の森林の施業とが一体的かつ計画的に行われるよう措置するという考えに基づくものであると理解するわけでありますが、そのような方策は今日広く望まれているところであり、適切なものであると考えます。  なお、ここで特に強調したいことは、森林保健機能に対する欲求が高まっているからといって、開発許可を得たからといって、むやみやたらに森林保健施設を設置してよいというわけではありません。恐らくそれは都市住民の真の森林への期待にも沿わないことになるでありましょう。ところが従来、施設整備についての技術的基準は必ずしも明確ではありませんでしたし、中にはひんしゅくを買うような例があると指摘されております。先ほども申しましたように、森林は多種多様な働きを有しているのでありますから、いかなる森林についても保健機能以外の諸機能が破壊されるようなことがないように留意する必要があります。言いかえますと、保健休養以外の諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるときに限って森林保健施設整備が求められるべきであります。法律案にはそのような規定が明確に与えられていることをも評価したいと思います。  なお、このことと関連いたしまして、専門家によって森林保健機能増進に関する技術基準が科学的に検討され、それに基づいて省令が定められるとのことでありますけれども、蛇足ではありますが、その技術基準が厳しく守られることを関係者に強く期待したいと思います。  私は自分の専門領域との関連もあって、比較的多くの農山村に出かける機会に恵まれております。そこで耳にすることの大きな問題の一つは、農山村における後継者の確保難であります。つまり、若者層が喜んで住みつくような農山村を築くことの緊要性、必要性であります。そのための一つの手段として、森林保健機能増進によって都市ないし民間の持つ活力が導入されるならば、若者層ももう少しは山村に定着するようになるのではないかと期待しております。実際そのような成功例を見聞することは少なくなくあります。  一方、都市住民もまた、緑への渇望の中で、健全に管理された森林の中で営まれる野外レクリエーション活動こそ正しい意味での保健休養であり、それを求めていると考えます。そのためには適切な森林施業が不可欠でありまして、施設整備と一体的にかつ技術的にも高度な森林施業が推進されるならば、この法案が目的として掲げておりますところの林業地域振興国民の福祉の向上が実現できるのではないかと確信しているところであります。  今回の森林保健機能増進に関する特別措置法案に関連して、以上、愚見を開陳して終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手
  10. 近藤元次

    近藤委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 近藤元次

    近藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹山登生君。
  12. 笹山登生

    ○笹山委員 参考人の三先生、きょうは御苦労さまでございます。時間もございませんので、順を追って逐次御質問したいと思います。  まず泉参考人にお伺いしたいと思います。  私も森林組合とのおつき合い、非常に長いわけでございますけれども、実際のところもう林業組合はまさに今気息えんえんの状態でございまして、こういういい一つのシステムができても、やりたいところほどなかなかそれまでやれない状態のところが多いのじゃないか。それに対して森連なりまたは県森連なりでどのような支援体制、バックアップ体制をとっていくかというのが非常に大きな課題ではないか。非常に現実的な話をして申しわけないわけでございますけれども、その考えをどうされているのかということが第一点でございます。  第二点は、森林組合としては非常に新しい事業でございますから、森林管理するのは非常になれていらっしゃる方々でございますけれども、こういうような休養施設なり保養施設ということはソフトが伴うものでございまして、この辺のいわば保健機能のためのソフトの支援というものをどうやって賄っていくのか。町と結託してやるのか、いろいろな案があろうかと思いますけれども、その辺の管理体制なりまたはその辺のソフトの向上ですか、そのようなものをどう考えているか、人材養成をどう考えているのか、この二点目をお伺いしたいということでございます。  三点目は、先ほど二つの例を御提示いただきましたけれども、先ほどの例は小田原そして大阪高槻、このようなことで非常にアクセスがいい、そして日帰りが可能なところでございます。先ほどの日南の例は非常にアクセスが悪いながらも御苦労されている。したがって、この休養を考える場合、都市近郊なのか過疎型なのか、あるいは日帰り型なのかそれとも滞在型なのか、いろいろなタイプ別に一つの考え方をモデル化する必要があるのじゃないかということでございます。その三点につきましてまずお伺いしたいと思います。
  13. 泉総能輔

    泉参考人 それではお答えさせていただきます。  第一点の関係でございます。言うなれば、非常にいいこういう条件のシステムが与えられても、これに森林組合はなかなか取り組むようなことが難しい面があるが、どのように取り組むか、その考え方をという趣旨ではなかろうかと思います。     〔委員長退席、保利委員長代理着席〕  まず、先ほど若干触れましたけれども、私ども、千七百余の末端の森林組合関係と考え方を一つにいたしまして行動をとる、必ずしもそれは地域森林林業の実態によってできないところとできるところとはございますけれども、物の考え方として思想統一をするというような意味合いで、先ほど若干触れましたけれども、私どもの「体制刷新運動」というのがございますが、これが今年度で終了いたしますので、新年度からは「森林と人いきいき運動」という五カ年計画につきまして全国的な思想統一を図ることといたしております。この中に先ほど触れましたような保健機能の面、特にレクリエーション等を加味いたしました森林の総合的な活用というようなことでまとめてございますけれども、この法案国会で採択していただくこととなれば、私ども、この法案についての内容等を全国に十分に情報として伝達いたしまして、また、ときには今まで先輩森林組合がこういう保健休養施設という面でいろいろ活用されております事例もございますので、それぞれの地域が取り組むとすればそれに合ったような事例というようなものを参考にしてスムーズにやっていただくように指導いたしたい、このように考えております。  それから次に、保健機能のソフト部門でございますが、今までの実績を見ても、市町村行政それから県行政というようなところと、要するに地方の自治行政と一体になりましてこういうような事業に取り組むことが最も大切ではなかろうかと思いますので、そういう点をこれからも考慮し、取り組むときにはそのように対応するように手がけていきたいと考えております。  それからもう一点、先ほど御紹介いたしました高槻あるいは小田原等についてはわりかた日帰りコースということで便利なところでございますけれども、そのほかの一泊泊まりのようなところでは、やはり宿泊施設等も簡易につくりまして、都市住民の人たちがおいでいただいた場合には利用していただくような措置で、全国的にそのような対応措置をしているところもございます。むしろそういう過疎化された地域につきましては、ただいま先生から御指摘がありましたように、宿泊施設その他、遠距離からの方々の便宜を図るようなこともこういうような保健休養施設整備には配慮すべきではなかろうか、このように思っております。  以上でございます。
  14. 笹山登生

    ○笹山委員 ありがとうございました。そういうことで、全く新しい事業でございますので、ひとつ新たな体制でもって頑張っていただきたいと思います。  では、次に高橋参考人にお伺いしたいわけでございますけれども、私ども、この森林レクリエーション機能というものを考える場合に一番ネックになるのは、レクリエーションリーダーですね、そういう人材、いわばソフトが不足しているというようなことをつくづく感じるわけでございます。幸い日南さんの場合は小野田さんという非常にスター的な方を中心にしてのそういう活動が行われて、非常にうらやましい感じがするわけでございますけれども、ひとつそれをきっかけにして、もう少し、レクリエーションリーダーを育てる一つの塾といいますか、レクリエーションリーダーを育てる一つの場を設けるということもこれからまた必要なんじゃないかというふうに思うわけでございます。その辺、いかがお考えなのかということがもう一点。  もう一つ日南さんでは山村留学里親制度があるということでございます。現在、山村留学制度というのは四十三町村、六十七校ということで、大体年間四百人程度の方が関東を中心にして過疎県の学校に留学している。中身はいろいろあるかと思うのですけれども、病気がちの方とかいうのが多いのか、その辺の内容が大体どういうものなのかということと、恐らく日南さんの場合にも一人か二人がぽちぽちと何年かごとに留学しているというのが実情だと思うのですよ。これを毎年継続的に送り込んでいくというためには、何かその辺の、山村留学のためのセンターなり、出し手と受け手の一つ紹介センターのようなものがやはりないと、三年に一回一人ぐらい来てもその辺の効果というものがなかなか上がりにくいのじゃないかと思いますが、その辺いかがお考えでしょうか。
  15. 高橋篤史

    高橋参考人 お答えいたしたいと思います。  先ほどおっしゃいました、これは私の町で単町で思いついた事業でございまして、中四国で一番大きな町をつくらせていただきました。あるものは山だけという中で何が生かせるかということで、私は「三つの見直し、四つの欲望」というのを 十年前に起こしまして、それを実践するある手段としてのそういう形を設けてみました。それは、小野田自然塾の場合は、ちょうど私の同期の小野田君が、こんな形でおれも十年もすると終わってしまうだろう、しかしながら何か国のために役立ちたい、こんな青少年が育って日本は大丈夫かというふうなことで議論する中で、子供のための奉仕活動をやってみたいということも相々まちまして私が山を買い戻したという、活用の手段として始めたのが出発でございます。これは全く単町でございまして、制度もございません。したがって、仰せのように、本当は組織的な人材あるいはまた機関というものをぴしっと整備してやらないと、永続性がないと意味がございませんし、価値が上がってこないというふうに思って、今、教育委員会中心としまして先生を主体にリーダーの町内派遣ということでやっております。ただ、申し上げましたように、町の人に入ってきてもらわないといけませんので、必ず町の小学生を来させていただいて、しかも電気も水道も全く何もない森の中で必ずやるということにしておりまして、町の人が大変喜んで参加してもらって、六年目になりますけれども、毎年百人以上の方がやらせてもらっております。仰せのようにぴしっとした機関というものが必要だなということで、事故等に対しましてはだれが責任を負うかということにつきまして、日南町長高橋が責任を負いますということで負わしていただいておるような状況でございます。  それからもう一つの問題につきましては、確かにこれも都市の方に町から出かけていこうということで、関東町人会、関西町人会というふうなことから私の町でやっておることを話したり、あるいはまた、あるマスコミがちらっと流したようなことがおもしろいことをやっておるなということで年々ふえてまいりまして、大体大阪が主体でございましたが、昨年から関東、特に神奈川、東京そして横浜とか蕨市、そういうふうなところからことしは八人の生徒にいらっしゃってもらって、中にはもう一年おらしてもらえぬかというふうなことが出ておりまして、これも、過疎地の小規模学校をどうして活性化させるかということで、全く制度も何もないのを私の町で勝手につくってやっておることでございます。方々からいろいろなことをやっていらっしゃる情報を聞きまして、やはりこれも、きちっとした教育の問題も含めたものをつくっていただくというふうなことがありますれば、さらにこの価値が上がってくるではないかというふうなことを感じながら、今北九州から関東までというふうな生徒を迎えて、これまた学校の先生が生涯教育の一環として張り切ってやってもらっておりますので、私も、継続して続けていきたい、その機能の十分な発揚のための制度等の導入について御配慮いただければさらに幸せかと思っております。  以上でございます。
  16. 笹山登生

    ○笹山委員 森参考人にはちょっと時間がなくなったのであれなんでございますけれども森林法の中にレクリエーション機能を設けるというのは世界的にもなかなか難題でございまして、私の知る限りでは、一九七五年の西ドイツの連邦森林法の改定のときに、片一方では同時並行的に連邦自然保護法というものがありまして、それとの整合性をめぐってあのときにいろいろ問題があったというふうに聞いておるわけでございますが、その辺いかがでございましょうか。
  17. 森巖夫

    森参考人 まことに申しわけありませんが、全く知識がございません。
  18. 笹山登生

    ○笹山委員 じゃ、以上で終わります。
  19. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 竹内猛君。
  20. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 参考人の皆さんには御多忙中御出席をいただきまして、貴重な御意見をありがとうございました。  私ども社会党では、参議院選挙後の各地での御支援にこたえながら、新しい農業政策を地域住民の皆さんの要求とともに今つくりつつありますが、その中で中山間地帯というところに重点を置いたものがあります。最近全国の代表にお集まりをいただいたときに、せっかく立派な政策をつくってもそれを受ける者が中山間地帯にはいなくなってしまうではないか。農村の後継者が四、五年前にはお医者さんは七千五百人、農村には四千八百人という時代がありましたが、最近では三千五百人から今年では二千百人になってしまった。三千四百を超える市町村があるのに後継者が二千百人ということになれば一町村に一人も残らないという形になる。財界では、あと五年もたったら跡取りがなくなってしまうだろう。こういう状態のときに、せっかく立派なものをつくっても受けて立つ者がない。それをどうしたらいいかという問題で、これは日南の町長さんにお伺いをするわけですが、お話によると七つの町村が合併をして一万六千人ですか一万五千人の人口が現在は八千五百人になった。しかも六十五歳以上は二四%いらっしゃる。こういうことになると、まさに日本の農業の縮図みたいな形になっている。これをどうするかという問題で、何よりも各地域の実態に沿ったメニューを地域から出して、それに国がその財政を支えていく、そういう制度にしなければならぬ。社会党では、フランスがやっている農村青年を保護する制度というようなものを今度新しく提案しようと思っておりますが、この点について日南の町長さんにお伺いしたいと思います。
  21. 高橋篤史

    高橋参考人 お答えいたしたいと思います。  御存じのように、私の町も過疎高齢化に悩まされておることは先ほど申し上げましたが、愚痴を言うことは私は嫌いでございます。農村が厳しいということは歴史の流れの中ではこれまでもあったことではないかということで、厳しいという受けとめ方じゃなくして、今の現実をどうして開いていくかということで、先ほど申し上げましたような単町であらゆる制度をつくったり、あるいはまた都市の中にこちらがみずから出ていって知恵をかりたり、また情報を取得したりというふうなことを繰り返しておるところでごさいます。確かにそのような若者の減少ということには悩みを持っておりますけれども、私はそのようなときにこそ本当のエネルギーが出るものだというふうに若干の体験から覚悟しておりまして、私の町は乏しい中に大変な活力を出させてもらって、今に見ておれというふうなことを私は口癖のように申し上げて、ともに元気づけておるところでございます。国会先生方には大変でございましょうが、そのような中で何が一番大切なのかということをよく御存じのことでございますので、先ほど話したようなことにつきまして、また制度等も含めたものをつくっていただければありがたいものと私は思っております。
  22. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 続いて森参考人にお尋ねいたします。  自然保護団体のやや強い厳しい要求、それから利益主義の乱開発というものの調整、調和をとらなければならない、そういうことがこの法案には盛り込まれている、だからこれはよろしい、いい法案だ、こういうお話でございます。さてそこで、この問題はやはり一番大事なところだと思うのです。これは後で森林組合の専務理事さんからもお伺いしたいのですが、最近日本開発銀行が、都市交流、農山村活性化するという形でパンフレットを発行しまして、それでリゾートレジャー、ふるさと産品、山村留学、観光農園など八つを挙げて、それぞれについて各地の進んだ実例を紹介している。この銀行ではこの冊子を希望する自治体等に配っていくというのです。こういう形で既に自治体が今やろうとしている、あるいは林野庁が今なそうとしていることを開発銀行がやる。こうなってきたら、これは紛らわしいですね。  それから、ゴルフ場の問題があります。ゴルフ場は、端数は除きますが、現在全国に千六百ある。そして農林水産省も、二千くらいはつくってもいいじゃないか、ある業界では二千二百は必要だとおっしゃる。我々も別にゴルフ場、ゴルフを否定するわけじゃありませんが、ゴルフ場はやはり民有林対象になるのです。国有林の一部を開放してくれという話もあるが、大体民有林だ。そうすると、そこに農薬をまく、けしからぬ、まずそこに ある自然の形態が壊れるだけではなしに、地域の皆さんがこれについては大変心配をする、こういう問題があります。最初の問題については森参考人から、後のゴルフ場の現状と今後の問題等については森林組合の方からぜひお願いしたいと思います。
  23. 森巖夫

    森参考人 先ほど申し上げましたように、森林の多面的な利用、なかんずく保健機能増進レクリエーション利用と言いかえてもよろしいかと思いますが、それをめぐって二つの極端に対立する方向があるように思われるわけです。今度の法律案を、私まだ十分な勉強とは言えませんけれども一応勉強した限りでは、その二つの対立する考え方が持つ問題点を、言うならば調整あるいは両者の調和を図ろうとしているところに積極的な意義があるのではないかと考えておるわけでありますが、先ほどの御質問の中にも先生の御意見の中にもありましたように、今農山村地域が大変な危機的な状況の中にあって、その中でもある種の発展を見せている村や町があることも事実であります。それは基本的には自助努力を基礎にしなければいけませんけれども、今日の農林業状況を見るならば、農山村の中だけで完結的にあるいは狭い意味での農林業だけで自立化することも極めて難しいことも事実でありますから、都市との交流を何らかの形で図らなければいけないということで、さまざまな形の都市交流があると思いますし、そのことが都市住民の欲求にもこたえることになるという意味で高く評価するわけであります。ただ、お話にありましたように、都市山村交流に対する社会的ニーズが非常に高まっているからこそさまざまな経済活動をする銀行とか商社とか利潤本位の事業体なども取り組むわけですが、それが利潤本位に取り組むことがもたらすマイナスを事前に計画的に一体的に防いでいこうというのがこの法律のねらいではないかと考えたわけであります。  以上、お答えにならなかったかもしれませんが、終わります。
  24. 泉総能輔

    泉参考人 ただいま先生の方からの御質問でございますが、日本開発銀行や特定の企業体が独自でやればというようなお話であるとすれば、なかなかやはり営利を目的とした関係は必ず後、問題にしこりを残しやすいというようなことも考慮に入れまして、先ほども若干触れましたけれども、今までの実績も、市町村あるいは県の行政を中心に御指導を受けながらこの森林保健機能という面に取り組んできた経緯がございますので、そのことによって地域住民の方々の考え方も十分に反映されたものであれば、私ども安心して手がけますので、そのような考え方でこれからも配慮していきたい、このように思っております。よろしくお願いします。  ゴルフ場の関係につきましては、この保健機能増進に関する特別措置法ではゴルフ場が対象にはならないものと我々は初めから考えておりますので、それ以上のことはお答えできないと思っております。その辺につきましてはよく御審議いただければ幸せかと思います。
  25. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間も来ましたが、私は長野県の蓼科高原の山の中に生まれて、嫌というほど山のことについては知っております。海抜千二百メートルでありますから、こよなく山を愛している者の一人で、農村を大事にしなければならないということは小学校のころからよく知っております。それからまた、現在は選挙区が筑波山のふもとであり、関東一の筑波山でありますからこれもまたよく承知をしております。そういう中で、資本が利益を中心にどんどんリゾート開発だの何だのといって所有権を求めて投資をする、こういうことに対して自治体なり国なりが、営利中心のものでなしに、皆が公平にといいますか、つまり山村留学であるとかそういったいろいろな形の交流——私は、この間この委員会の皆さんと一緒に兵庫県の神崎町のグリーンエコーを見てまいりまして、ああいう形のものが非常に好ましいではないか、こう思っているのですが、この点についてはどなたにお答えいただきましょうか。日南町の町長さんがよろしいでしょうか。そういう形で、つまり自治体として資本の導入を好むか好まないかという問題なんです。これをどうして抑えるかということなんですね。森林組合の方からと両方から、結論だけで結構ですから、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  26. 高橋篤史

    高橋参考人 そういう高度の国のあれに携わるようなことを言うだけの知識というものは私も持っておりませんが、町と村との交流を進める基本のものは、町だけが栄えるとか山村だけが滅びるというふうなことでなくして、ともどもに栄えようというのが私たちが単町で起こした出発でございまして、そのような意味でまた国の方でお考えになって、そういう観点からおつくりいただければと思っております。それ以外のことは、私はちょっとあれがございません。
  27. 泉総能輔

    泉参考人 私どもも、団体の森林組合法という法律の中に営利を目的としないということを前提にすべての事業に取り組んでおるところでございますので、そういう関係では、先ほど若干触れましたように、都道府県とか市町村行政というような点のいろいろの御意見等を承り、これらに取り組むべきが妥当ではないかという考え方の基本姿勢でおりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  28. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうもありがとうございました。
  29. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 水谷弘君。
  30. 水谷弘

    ○水谷委員 参考人の皆様、大変お忙しいところ貴重な御示唆を賜り、ありがとうございました。公明党の水谷弘でございます。  最初に森先生にお願いをいたしたいと思います。  私どもが心配しておりますのは、先ほど先生がおっしゃいました森林の持つ四つの顔、これをしっかり維持しながら、その中で都市農村山村交流とか国民的な緑に対する要求にこたえ、さらに森林もしっかり守っていく、こういうことでこの法律をつくったという御認識でありますけれども、現在、全国それこそリゾートブームで大変な開発ラッシュです。先ほどおっしゃった地球環境保全の問題、自然環境の保全ということに目を向けますと、このまま開発がなされていいのか、開発抑止という方向が大事ではないかという基本的な認識でいるわけであります。  それで、具体的なことでまことに恐縮でございますけれども保健機能を高度に発揮させるための施設についてここで縛りをかけておるのですけれども保健機能よりも最優先すべきものは国土保全であり、水源の涵養であり、生活環境保全である。こういうものがしっかり守られた上で、限定された中で保健機能増進のための施設が配置されるのであるならば了とする。そういう面では、今まで例えば保安林解除についても、住民、関係者の異議申し立ての制度とかいろいろありましたけれども、それらは全部この法律によって除外されておる。農林水産省並びに都道府県が責任をもって認定をするのですからそういう事態は当然起きないであろうという想定のもとに、本来ある保安林解除に対するいわゆる関係者の異議申し立ての権利をも奪ってしまっているわけであります。先生、そういう意味で、この特別措置法が今私が申し上げるような懸念がないかどうか。そういう観点からはこれをどういうふうに御判断しておられますか。それが一つ。  もう一つは、この特措法によって相当厳しい技術基準なるものを、私も精査させていただきました。これは内容はかなり厳しゅうございます。しかし片方では、この区域を設定する以外の場所ですね。リゾート開発等で民有林が開発されておったり保安林が開発の対象になったりしておりますが、現行の保安林制度及び林地開発許可制度も、今回この特措法がこういう形で技術基準で縛りをかけるとするならば、森林全体ということを考えれば、当然それらについても今回のこの技術基準の方向を尊重してその運用については適正化を図るべきだと私は考えておりますが、この二点、お願いいたします。
  31. 森巖夫

    森参考人 お答えいたします。  大変高度なといいましょうか、法体系上の問題でございますから私の守備範囲とはいささか違うのでございますけれども、認識不足のところはお許しいただきたいと思います。  今回この法律に基づいて、森林保健機能増進のための基本的な方針を国が定めるわけでありますが、それに基づいて地域森林計画なり森林所有者が立てる施業計画が立てられることになっているようでありますけれども、この基本的な方針あるいはそれぞれの地域森林計画なり施業計画なりは、当然のことながら、森林の持っているさまざまな機能が総合的に高度に発揮されることを前提にして立てられるものであると考えております。したがって、保安林制度に定めてありますようなさまざまな重要な機能、先生が挙げられました国土保全もそうでございますし、水資源もそうでございますし、それらの機能を損なうような計画は、出発点においてこの森林保健機能増進基本方針になり得ない。つまり、出発点においてもう既にそれらの森林の持つさまざまな公益的機能が、保安林の機能もそうでございますが、そのほかの経済的な機能も含めて総合的に実現できることを前提にしているものだと理解するわけであります。したがいまして、その後の、例えば保安林の解除手続の省略というのでしょうか、あるいは異議申し立てがないというふうなことについても、そのことは、結論からいえば規制の緩和には全くならないのではないか。つまり、出発点がもう規制しているわけでありますから、それ以上規制するということは手続上どういう問題なのかなという気がむしろするわけでございまして、規制の緩和ではないというふうに考えております。  それからもう一つ技術基準でありますが、先ほども最初の意見開陳のときに申し上げましたけれども、私も拝見いたしましたけれども、本当に厳しいというか、特に、かつて二十年近く前のいわゆる乱開発が行われたあの経験を十分踏まえて厳しく定められているものでありますし、そしてまた、国あるいは林野庁当局がつくったというよりも、学者等が入って厳密に定めた基準でありますから、あれを厳しく守られることを、むしろこれから開発しようとする者、あるいは森林施業をやろうとする者にお願いしたいというのが私の気持ちであります。  ありがとうございました。
  32. 水谷弘

    ○水谷委員 泉参考人高橋参考人、同じ質問といいますか御意見を伺いたいわけであります。  先ほど来のいろいろなお話の中で、やはり森林所有者森林組合、それから特に関係市町村、この三者の意向、考え方というものが、この区域の設定、いわゆる保健機能森林という区域を設定するわけでありますけれども、この区域の設定にこの方々の意向が十分反映されるのであろうか、私はそこがちょっと心配なんです。基本方針についての条項、第三条がございますけれども、この中で「農林水産大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。」とうたってあります。これは協議事項であります。協議は形式上いろいろやりました、しかし、地方自治体の意向、意見森林所有者森林組合の皆さん方の意向とがぶつかったときの意見調整とか、これに対してどういうふうにするとか、それがないわけなんです。そういうことを私は大変心配をするわけであります。  現在、私も各地のこれらの保健休養施設を見ておりますけれども、それはいずれもかなり市町村が相当乗り込んでつくり上げている。また、森林組合も主体的にそこへ乗り込んでおつくりになっていらっしゃるもの。私は、何も大企業や大資本がこういう開発をしてはならないという考え方には立ちません。しかし、その資金を出す方の側の意向とかいろいろなものがどうしても強く出てくる。また、施業計画を出されるのは森林所有者かもしれませんが、実際にその事業をやるのはかなりの大資本や大企業が事業を推進していくという形態になる場合がある。そういうときに所有者森林組合や市町村のこのお考えがぴしっと位置づけられるようになっていませんと、所期の目的に反するような形の開発が行われやしないか、こういう心配があるわけでありますが、この点について、この法の中で十分であるというふうにお考えになっておられるか、それとも、そういうことについてはもっとしっかりこの法の中で位置づけが必要であるとお考えなのか、お二人からちょっと御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。
  33. 泉総能輔

    泉参考人 ただいまの御質問に対しまして、私、森林組合系統立場として考えてみたいと思います。  この保健休養施設というような点で森林を有効に活用するという点においては、まず第一に森林所有者というものはどう考えているか、要するに、私ども関係する組合員でございますけれども、組合員の方々がどういうお考えにおるかということをまずたださなければいけないと思います。そして、その考え方が必ずしもこの法制度に適合しなければ、それは我々森林組合という立場で組合員に対していろいろ指導する義務が出てくると思います。  それから、その段階におきまして森林組合としてはどう取り組むべきかということになっていきますけれども、この取り組みに当たりましては、どうしても森林組合所有者でひとり相撲ということは非常に難しい問題ではなかろうかと思いますので、やはりこの問題には、先ほど申し上げましたような市町村行政あるいは都道府県行政というような意向を十分に酌みながら、時には森林組合中心になりまして、この三者の意見調整というものが運用段階として図られる場合もあるでしょうし、時には市町村なり県行政が中心になって我々に働きかける場合もあるのだろうと思います。そういうようなことを考えながら、この三者等の意見の調整を図り、あるいは図っていただきまして、あくまでも私ども森林というものの造成保全が一番大事な仕事でございますので、森林造成保全というようなものを損なうことがないように、その点につきましてはこの法案も先ほど来基準が厳しいと言われるくらいいろいろございますけれども、そういう基準に適合するようなことで取り組む姿勢が大事ではなかろうか、このように考えております。
  34. 高橋篤史

    高橋参考人 お答えいたします。  私は、専門家でもございませんし理論を持ち合わせていないわけでございますが、全く個人的な考え方でございますけれども、かつて高度経済成長の末期に、私の町からゴルフ場用地へとセスナ機を飛ばしまして、三千六百町歩の山が土地に消えたことがございます。それはゴルフ場とか投機ブローカーのなせるわざであったわけでございます。私はそのときに実は、若かりしときでございましたので、それだけは何とかやめてくださいということで、反対運動と言わずに、ゴルフ場をつくる前にもっともっと我々は山を守る義務があるぞということで、ちょっと県にお願いしてゴルフ場の規制をしてもらったのが昭和五十年の初めでございます。自来緩和されましたけれども、私もそのようなことは余りやるべきではないなというふうな考え方にはなっておりますが、今私の町にリゾートという波が押し寄せてきまして、コンサルの皆さんが私の町は乱開発というようなことじゃなくして、親自然型の、すなわち自然に親しむ型の開発はどうかという提案をしていただいたことがございます。私は、それには賛同させてもらっております。私も県の保安林の委員をさせてもらっておりまして、時々申し上げておりますけれども、これはやはり調和のとれたものを求めていかないといけない。その出発点は、先ほども意見がありましたように、我々は山を守り育てるという使命がございますので、それから逸脱をしないようなことだけは私は考えていく必要があろうかなということだけは忘れないようにしておるところでございますが、余り専門的なことは、私はそれだけのものを持ち合わせないのでお許しをいただきたいと思います。
  35. 水谷弘

    ○水谷委員 どうも、お忙しいところありがとうございました。  以上で終わります。
  36. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 滝沢幸助君。
  37. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。お三人の参考人さん、お忙しいところありがとうございました。大変教訓に満ちた御意見をいただきまして、まことにありがたく存じます。  私は、一々御氏名を特定せずに、私が信じておりますることと今回の法案等につきまして、いささか気になること等を申し上げさせていただきますので、これに対して御感想、御意見がおありの方々に、一言ずつ御意見をお漏らしちょうだいできればありがたいと存じます。  さて、お三人とも、そのような御年配と承るものでありますが、戦後一時ベストセラーと言われました「二等兵物語」、あの作家の梁取三義という先生は私の方の出身でありまして、つい先ほどその文学碑がふるさとにできました。その詩は数行ございましたが、最後に、あの地方の山です、神々が遊んだ山だという言葉で結ばれております。また、おなじみ石川啄木は、ふるさとを追われて出ていって都会で苦しむんだけれども、しかしふるさとの山はありがたきかなという歌を残しております。私は、いろいろと法的に言えばありまするけれども、例えば所有権はいかあれ、私は山川草木ことごとく、そこに生まれ、そこに生きる者、神様よりその管理をお預かりしたものというふうに思っているわけであります。逆に言えば、石川啄木はとにかくあの岩手の山々のことは放棄をして、残った人々に委託をしてふるさとを捨てたと言っても過言ではないでしょう。  そうした中でひとつ私は実情をお訴えいたしたいことは、私の方は島根県の状況とは全く逆で、ことごとく国有林であります。すなわち、そこに住む者の所有にも管理にも至らざる、国の権力がこれを経営する国有林であります。このことについて、国有林解放が叫ばれた時代もありましたが実りませんでした。これをいかがお考えであるか。  もう一つ。そのような思想に立つならば、今回のこの法案において保安林の解除手続等が簡略され、かつ異議申し立て等の道が閉ざされておりまするけれども、しかし私は、やはりその地域の者が、もちろんそれは市町村長の意見を聞くと書いてありますからそれでいいのだとおっしゃるのでありましょうけれども、やはり地域住民意見を吸収することにもっと勇敢でなければならぬと私は思うわけであります。いかがでありましょうか。  もう一つは、私が申し上げたような思想に立つならば、都会の方々がふるさと、田舎に、いわゆる過疎地、この過疎状況において命がけでふるさとの山河を守っておる者のところに時々おいでになって遊びにいらっしゃるために山林はあるのではない。第一義的には何といっても、所有者でありかつその地域に住む者のものでなくてはならぬというふうに考えますれば、この都市住民の、保健機能増進といえばいい言葉でありますが、日本は戦中も戦後も美名のもとに別のものが行われるということがございまして、そういうふうに思うならば、保健機能増進はよろしいことでありますが、しかし逆に言うならば、都会の金権勢力の金もうけになったり、あるいはまた乱開発になったりするおそれなしとしない。そういうふうに思うならば、いわゆる都会のそうした者とこの地域の者との協力関係というものがもっときちんと定められた方がいい、私はこう思います。そして、この法律とは直接関係ありませんが、日本が南の島々において自然林をいわば伐採をする、後進国に対するそのような措置が批判されていると聞いております。御見解あらば、三人のお先生、ひとつそれぞれおっしゃってちょうだいしたいと思います。
  38. 泉総能輔

    泉参考人 ただいま滝沢先生から、非常に今までの歴史的ないろいろ経過を踏まえまして御質問をなされたわけでございます。それで、神々の歩んだ、住んだ山とか、啄木等の残された言葉等を引用されておられますけれども、やはりこの大先輩の方々が残された言葉というようなことが山の崇高さというものに結びついており、この崇高さというような点を含めまして今日の保健休養ということで、非常に世の中物質主義化からさらに心の安らぎのような方向に向こうという国民のいつわらざる希望がこのように反映されているのではないかと私は思っております。  それで次は、この保健機能森林というようなものの施設整備をするということにつきましては、先ほども私が若干触れましたけれども、何はさておき、やはり地域の方々がどのように考えておるかということを十分に尊重をし、このような事業に取り組むことが大切ではなかろうかと思います。したがいまして、そういう山村の純朴な方々の、しかも過疎という条件に恵まれない地域においては、そこに行かなければ味わうことのできないような特用林産物とか、そういうようなものの生産も生かしつつ、初めてそこに活力が回復されると思いますので、そういう点で取り組むべきではないか、このように思っております。そういうことで、ただいまの先生の御質問に対しまして感じましたので、お答えになるかどうかわかりませんが、よろしく御指導いただきたいと思います。
  39. 高橋篤史

    高橋参考人 お答えになるかどうかわかりませんけれども、滝沢先生の考え方に私は大変共鳴をしておるところでございます。先ほど申し上げましたように、私の町は井上先生の第二のふるさとでございまして、先ほどの碑文の中に、「天体植民地すなわち宇宙の神々が住みつき全くよいところ」というふうな最高の表現をしていただいておりますので、そのような立場に立って我々も、町村行政も含めた山の問題、地域の問題を考えていかなければならないというふうに思っております。特に保安林の問題につきましていろいろな御意見がございましたが、私の町にも随分ございまして、国有林は少のうございますのでトラブルはございませんけれども、保安林につきましては、なぜ保安林を維持しておれるかという根本を調べてみますと、それなりのことはやはり国がきちっとやらなければならぬという大きな使命を求めて、大切さを考えてやっていらっしゃるようでございます。私はかつて飯島清一先生とちょっと議論をやったことがございまして、その中で先生いわく、大切なことは国自身がやるべきものだ、そして、そのことを個人に提供したりそんなことをやるから大切なことがだめになるぞ、いかに金が要ろうとも国家の損失になるようなことを任しておってはいかぬというふうなことを言われたことを、私は大変興味深く聞いたことがございます。私の町もあらゆる農用地開発、また畜産振興、そのような方面に行く間に必ずぶつかっていく問題等もございまして、国家の機能と目的というものは十分考えながら、国民全般が享受できるものについては多少のことは考えていただいてもいいのではないか。その過程においては地域住民の利害に反したり、あるいはまた国家的な損失に及ぶようなことはぴしっとやっていただかなければならぬではないかということを考えておるつもりでございます。私も非常に学がございませんので詳しいことは申し上げられませんが、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  40. 森巖夫

    森参考人 先ほどは滝沢先生の森林哲学とでもいうべき御意見を拝聴いたしまして、大変示唆を受けました。そのことを前提にしてでございますけれども、幾つかの問題点を御指摘いただいたわけでございますが、特に都市山村交流の問題について、私はその意義を高く評価すると先ほど申したわけでございます。確かに現在の都市山村交流とはいっても、言葉の正しい意味で相互に平等に行き交うというよりは、相当多くの場合都市のわがままといいましょうか、一方的な流れのもとに山村側が従属させられているという事態があることをしばしば目にするわけであります。場合によると、都市住民の入り込みなどは本当に御免こうむりたいという気がするときさえございます。しかし、そうはいっても現実に都市住民がいっぱいおり、そして先ほど申しましたように、都市住民が緑への欲求を高めつつあるという客観的な背景もあるわけでありまして、ちょっと話がそれますけれども、先ほど笹山先生から冒頭に森林教育のインストラクターとでもいいましょう か、都市住民山村に入り、あるいは森林に入ったときに、森林のよさを本当に味わえるような指導者の養成が必要ではないかという御指摘があったわけでございますが、私もそばで聞いておって、まことにそのとおりだ、今それが欠けているからこそさまざまな一方的な流れでもあるし、山村側がマイナスの被害を受けたり、あるいはそういう状況があるからこそ、利益本位といったらいいでしょうか、資本のわがままのもとに森林がめちゃくちゃにされるということにもなる。健全な森林観を国民の中に育成していくためには、拒否することも必要ですけれども、やはり現時点では前向きにといいましょうか、いろいろな形を通じて、経験を通じて森林の大事さ、林業の意義、山村人々生活、文化というものを知らせる方向に持っていくべきではないか、こういうふうに考えたわけであります。
  41. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 参考人の皆さんにはそれぞれお答えをちょうだいしまして大変ありがとうございました。また、委員長御苦労さまでした。ありがとうございます。  終わります。
  42. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 藤田スミ君。
  43. 藤田スミ

    ○藤田委員 参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。先ほどからお話をお伺いいたしまして、自然に対する、とりわけ森林に対する皆さんの愛情というものについては本当に胸が打たれるような思いがいたしました。にもかかわらず、私どもは、今回の法案は全体として保安林の規制の緩和を主体とするリゾート法と強く関連している開発志向型の法案だと考えざるを得ないわけであります。  実は、私の地元にも紀泉高原というささやかな山がございます。その中にはキャンプ場もございまして、子供たちはそこでいろいろと自然を楽しむわけですし、家族ぐるみの楽しみもしております。ところが、ここ数年前から大阪の経済界が勝手にここに開発の絵をかきまして、アドバルーンを上げるようにしばしばマスコミにも登場をしているわけです。もちろん当該の町も、そういう計画には全く参加をしておりませんし、大阪府の方も実際にはよく知らない、こういうふうに言われるわけです。今保安林などの関係で、この計画はまさにアドバルーンと言えるかなというふうに思っておりますけれども、しかしこの法案が成立をしていけば、これはアドバルーンではなしにいよいよ現実のものになっていくんじゃないか、実は私はそういうことを大変心配しております。また、財界の代表でもある日経連が行革審に対して、保安林内林地開発にかかわる手続の簡素化、森林施業計画制度の弾力的運用、こういうものを提言しておりますが、こういう財界の動きについてどういう御感想をお持ちか、最初にお願いをしなくて大変恐縮ですが、まず泉参考人お願いをいたします。
  44. 泉総能輔

    泉参考人 私の方から先生の御質問にお答えしたいと思いますが、お答えになるかどうか、その点お許しいただきたい、このように思います。  先ほど先生の方から大阪の経済界等の話が出て、せっかくの高原の保健休養的な施設がだんだんと経済界に侵食されるのではないかというような心配事のお話を承っております。そのことが逆に財界の動きというようなものにも関連あるのかどうかという御心配もなされていると思っております。私ども森林組合立場ということになりますと、先ほど何人かの先生からも御質問ございましたとおり、あくまでも森林というものを維持造成する中において、その機能というものは公益的機能面でもいろいろございますけれども、その公益機能のバランスのとれた中において特に保健休養機能というようなものを抜き出して都市住民の方々に御利用いただき、またそのことによって森林林業というような非常に過疎化された山村実情にも触れていただき、片や山村においてはそういうような点でまた活性化に結びつけていこうという考え方を持っております。そういうようなことで、経済界の方々が言われたことにつきましては、私どもも特にこれについてとやかく言う立場にはございませんが、やはりあくまでも日本の大切な森林というようなものが、木材の将来は十分な住宅資源あるいはその他紙等の資源活用にもなり、片や公益的な面で、水資源涵養あるいは保健休養ということで国民の皆さん方に十分に楽しんでいただく機能、そして国土保全にも十分役に立つというような哲学で取り組んでいきたいと思いますので、今後とも御指導のほどをお願いしたいと思います。     〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 藤田スミ

    ○藤田委員 ありがとうございます。  次に、森参考人にお伺いをいたします。  この法案をめぐっては既に朝日新聞の「論壇」などで、リゾート開発を容易にするために従来の保安林制度を改悪するものだ、こういう大学の教授や弁護士などが反対の声を上げておりますのはもう御承知のことだと思いますが、林野庁は、この法案による開発で施設用地面積が三〇%であっても保安林機能は残る、こういうふうに言っているわけですが、その科学的根拠はもう既に立証されているのでしょうか。この点が一つでございます。  また、相当な開発行為がなされるために、その資金を投入した分を回収しなければなりませんが、現在のようにだれでも、言ってみれば無料で森林浴ができる中で、有料での森林利用が果たして国民に受け入れられるのか、これは多分に入山料の問題にも連なると思うのですが、私はかつてこの場所で入山料の問題を取り上げたことがございますが、これは単にお金が要るということじゃないと思うのです。入山料の問題は、結局人の気持ちをとんでもなく荒らしてしまう。現に山の愛好会の多くの皆さんは今、山をきれいにしようとみずからボランティア活動に参加をして、広くみんなに呼びかけて山を掃除をする日なんというのを決めたり、大変ユニークな活動も見られるわけです。私はそういう気持ちを踏みにじっていくんじゃないかという点で大変問題だというふうに思っておりますが、御意見をぜひお聞かせください。
  46. 森巖夫

    森参考人 先生の御質問の中で、今度の法律は開発志向型ではないか、こういう御指摘でございますが、法文の第一条にもありますように、森林利用を総合的に発揮していく、森林利用増進ということをもってすぐ開発というかどうか、これはかなり議論の分かれるところになるのではないかと思いますけれども、それはさておき、今度の開発の規制の基準の科学的根拠いかん、この点でございますが、これまた、まだ中間報告の段階かとは思いますけれども、大学の教授等を中心としてその道の専門家の方々が集まって検討して、私は農山村地域経営ということを専門にしておりますが、その立場から従来の開発の実態を見て、先ほどひんしゅくを買うような事態があるとも申しましたけれども、そういう事態と比べればかなりの程度厳しい規制であるし、科学的根拠となりますと私専門の分野ではありませんから、これは絶対間違いない、真理だと言い切るだけの自信はありませんけれども、少なくとも従来の乱開発とは随分と違う規制がかけられているというふうに理解しております。  それから、もう一つ都市住民森林への入り込みについてでありますが、先ほどもちょっと申しましたように、確かに都市住民のマナーの悪さは本当に目に余るものがあります。これは何らかの形で、何とかして規制しなければいけません。ですがしかし、他方森林の実態を余りにも知らない人や運動があることも事実だと思います。まことに変な例でございますが、枝打ちをしているのを見て、それが森林に対する、樹木に対する破壊的行為であるかのごとく考える、あるいはそういうふうな論調を張るというようなこともあったりしたわけでありますから、これは山村林業家の人々にとってみれば、とても許すことのできない考え方であるし発言であるというふうに山村人々は言っております。そういう観点から、今度のこの法案の中では森林の施業ないしその施設について監督が及ぶ形で、従来の開発許可制度もも ちろんあるわけですが、従来の開発許可制度は三つの条件を阻害しない場合は開発を許可しなければならないということになっていたのに対して、今度は幾つかの条件をつけて、これを満たすものでなければ許可してはならないということになっている点においても、これは、条文の読み方は私は専門ではありませんけれども、その面からもむしろ開発促進型というよりも抑制型と見るべきであるし、もし財界などがその点を理解せずにこれによってもう野となれ山となれ、何でもできるんだというように思っているとしたら、これこそ法律についての無理解であると言わざるを得ないのではないかと私は思っております。ぜひここに掲げてある厳しい規制が厳格に実施されるように行政当局並びに森林所有者やこの保健機能増進に取り組む人々お願いしたいと思うわけであります。
  47. 藤田スミ

    ○藤田委員 最後になりますが、現在の保安林制度においては、保安林の解除に際しては利害関係人がそれに異議のあるときは意見書の提出、公開の聴聞を行うことができるだけではなく、解除に際して開かれる森林審議会の内容についても情報公開によってその内容がわかるなど、関係者に対する配慮があるわけであります。  そこでお伺いいたしますが、森参考人高橋参考人お願いをいたします。  ところが、今回の法案では、総面積の三〇%もの開発が認められても保安林の範囲内ということで何のチェックもできないし、また、このような決定を下した経緯についても全く情報公開されないという極めて非民主的な手続になると考えるわけです。このようなことが保安林制度の中に持ち込まれる点について、お二人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  48. 森巖夫

    森参考人 保安林制度は先生も御存じのように、我が国の大事な森林を守る上で極めて重要な法律的な措置であると理解しておりますけれども、今度のこの保安林解除手続の省略というんでしょうか、それは決して保安林そのものを否定するものではない。法律の第二条の中で厳格に規定してありますように、施設の「設置によって森林の現に有する保健機能以外の諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるものに限る。」と明定しているところを私は高く評価したわけであります。ですから、このことによって保安林制度の持っておる崇高な精神といいましょうか、あるいは民主主義の原則といいましょうか、それが破壊されることにはならないというふうに理解しております。
  49. 高橋篤史

    高橋参考人 お答えできるかどうかわかりませんけれども、保安林の問題につきましては私たちは古くから、ある使命感を持って実践してきておるところでございます。現在のような姿になってまいりますと、なぜこんなにというふうなことが住民の中から出てくるのも事実でございます。率直に申し上げますと、私がここの参考人で出るということが知れ渡ったところが、それはもっと保安林が地域住民に使わせてもらうようになるか、そのことをあんたは言っておかなければいけんぞと極端なことをおっしゃる町民もおりました。私は県の審議会委員もやっておりますし、保健保安林の委員もやっておりますので、絶えずそのようなことは歴史の流れにおける立場というものはしっかり踏まえていかないと、勝手な個人的な利害関係に基づいてそんなことをやるべきではない、またやってはいけないというふうに考えておるところでございます。特にやってはいけないこと、やらなければならないことというものはぴしっと決まっております。私も学のない者でございますが、そのような立場で今の委員を貫かせてもらっております。  詳しいことはわかりませんけれども、先ほど申し上げましたように、その次のものについてはそんなに厳しいといいますか緩和してもらったとは私は理解しておりませんでして、極端なことを言いますともっと皆が使えるようなことができないでしょうかと思っておりますけれども、無制限に国自身がそれらのことをなさるべきではない、そうしてまた、だれもが享受できるような活用の方法だけは考えていただきたい、基本だけはぴしっと守っていただきたいというふうに私は思っております。
  50. 藤田スミ

    ○藤田委員 大変ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  51. 近藤元次

    近藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  参考人各位には、御退席をいただいて結構でございます。どうもありがとうございました。  午後一時から委員会を再開することにし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  52. 近藤元次

    近藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出森林保健機能増進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹山登生君。
  53. 笹山登生

    ○笹山委員 大臣、連日御苦労さまでございます。きょうは、森林の持つ保健機能法案に関する質疑でございますけれども林業に限らず、生産空間と余暇空間といいますか、これの調和というのがこれからの農林漁業の一番のポイントではないかというようなことを感じますので、この審議に先立ちまして、全般的なこの辺の考え方をひとつお伺いしたいというふうに思うわけでございます。  私ども、前から市民農園とかまたは農村リゾート、このような構想を立てながら農村活性化のための何か大きな戦略をひとつ立てなければいかぬというようなことで努力してまいりました。幸い、農林水産省の方も、農村の持つ多面的な地域資源、それに注目した新政策が展開しつつある、これは非常にありがたいことでございますけれども、今後、中山間地域活性化のための一つの戦略とか、あるいは私から言わせれば今の農村活性化戦略がどうも手詰まり状態にあるのではないかというようなことを感じまして、それをどうやってこれから農政の中に位置づけ、そして戦略としてどうやって使っていくのか、その辺の大臣の御所見をひとつ賜りたいと思います。
  54. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 笹山先生、市民農園等々の問題につきまして積極的にお取り組みをいただいておりまして、敬意を表させていただきたいと思います。  農山村には緑なり土地なり水という豊富な地域資源が賦存しておりまして、これらを多面的に活用し、そして農林業あるいは農山村活性化を図っていくということが大変重要なことであることは、まさしく先生おっしゃるとおりだと思います。そこでこのような考え方に立ちまして、農地の市民農園等への活用に資するよう御案内のとおりに特定農地貸付け法を先般施行いたしました。現在その周知徹底に努めているほか、森林につきましては、森林浴保健休養の場としての利用促進するため本法案を提出しているところでございまして、農山村活性化のための条件整備に順次努めているところであります。特に、今申されたとおりに中山間地域におきましては、その地域資源というものを生かしながら特色のある農林業振興や定住条件の整備というものを通じた地域活性化を図っていく必要がありまして、このための対策を今後とも積極的に推進をしていきたい、こういうふうな考え方でおるところであります。  また、このような構想の具体化を図っていく上におきまして、関係者を初め広く英知を結集する必要がありますことは、今先生おっしゃられたとおりでございまして御指摘のとおりでございます。研究会という形をとるかどうかというものはこれからの検討課題でございますが、ともかく広 く英知が結集されるよう関係部局を督励してまいりたい、このように考えております。
  55. 笹山登生

    ○笹山委員 よろしくお願いいたしたいと思います。  経済局長にちょっとお伺いしたいのですが、私ども今考えております農家民泊を主体とした農村リゾート構想、ただこの構想だけがひとり歩きする。その前提がないといかぬ。その前提というのは、やはり農村らしい空間とかあるいは農村らしい景観、快適性、そのようなものを取り戻すための土地利用に対して、何らかのインセンティブを与えなければいかぬのではないかというようなことを考えておるわけでございます。  そこで、私今注目しておりますのはECの動きでございます。ECの一九八八年のEC規則ナンバー四千百十五号という中にEC粗放化計画というものがなされまして、その中で粗放化なる概念が出されたわけでございます。これは単なる生産調整の一つの変形なり新しい動きという以外に、やはり農村農業の持つ景観的な土地利用、環境的な土地利用に対して一つのインセンティブを与えようというような一つの新しい動きではなかろうかと私は思うわけでございます。  またもう一つ、これは経済局の和泉真理さんがこのところ、「英国の農業環境政策」という、非常に私ども中山間対策を考える上で示唆に富む本を出されました。この中で言われているのは、やはり農村の多様な機能というものに注目して、多様化というものをキーワードにして農村活性化を図ろうというようなことで、粗放化、多様化というものが我が国にとっても大きな一つのキーワードになるのじゃないかというふうに思いますが、その辺の局長さんのお考えをちょっと簡単にお願いしたいと思います。
  56. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 EC共同体で粗放化計画が取り上げられているというお話でございまして、御案内のことでございますけれども、ECは既に十二カ国の加盟国を抱えて、農産物の生産なり貿易の面でも非常に大きなゾーンを形成しているわけでございます。特に、一九八〇年代まではどちらかといいますとECは農産物の輸入国としての性格が強かったわけでございますが、八〇年代に入りまして、これは技術の革新でございますとかあるいはずっと適用してまいりました共通農業政策の効果による点もあると見られておるわけでございますが、八〇年代に入りまして穀物、酪農品などの主要な農産物が大変な過剰生産の状態になって在庫を抱える、その在庫の処理のために財政負担をせざるを得ないという事態に直面をいたしました。その過剰の解消というのが今日のECの農業政策の最大の課題になってきているわけでございます。また同時に、例えば西ドイツなどでの緑の党の運動などに見られますように、従来環境を保全する、環境にいい効果を与えるというふうに見られていた農業が、逆に非常に集約的な生産方法、肥料なり農薬を大量に投入する、そのことを通じて環境へマイナスの影響を与えるというような問題が出てきているわけでございます。そこで、一九八二年以降各種の生産抑制的な改革措置が実施されまして、共通農業政策の改革に取り組んでいるわけでございます。  この改革は、その主軸はやはり域内の価格水準をできるだけ抑制をしようという価格政策に関する手段がその中心をなすものでございますけれども、あわせて構造政策的な改革措置も取り上げられてきておりまして、その中にただいま先生の方からお話のございましたいわゆる生産の粗放化、エクステンシブファーミング、インテンシブに対し、エクステンシブファーミング、粗放化というやり方による生産抑制を導入することになってきているわけでございます。  具体的には、ことしの一月からパイロット的にEC全体の計画といたしましてそういうものを導入したわけでございます。その内容を簡単に申し上げますと、過剰生産にある穀物、牛肉、ワインなどを、他の生産物の生産を増加することなく五年間で最低二〇%以上生産を減少せしめる場合に農家に奨励金を交付するという制度でございますが、そのやり方として、日本の減反のように端的に面積を減らすとかあるいは量を減らすということだけではなくて、肥料の投入量なり農薬といったような生産手段の縮減を通じてそういう効果を図っていこうという内容でございまして、環境に対する保全、あわせて生産の抑制を図る、いわば一石二鳥の効果をねらうという対策を導入したわけでございまして、まだ始まったばかりなのでその具体的な成果については申し上げにくいわけでございますけれども、注目すべき動きではないかというふうに思うわけでございます。
  57. 笹山登生

    ○笹山委員 そういうような世界的なトレンドの中で、構造改善局あたりはかねてから水辺空間の復活とか、あるいは直線的な水路を曲線的にするとか、いろいろ景観を重んじた一つ土地利用というものをされておるというようなことで、これから農村リゾートプロジェクトをやる場合もそのような前提条件を少し整理しなければいけないというふうに私は思うわけでございます。せっかく来ていただきましたが、ちょっと時間の関係で、私の意見のみを申し上げます。  そこで、森林の今回の法案でございますけれども、私はこの法律というのは非常に画期的な一つの転換ではないか、いわば森林法が制定されて以来、レクリエーション機能に注目して森林を法的に裏づけをするというのは、なかなか一つの世紀的な事業ではないかというふうに評価するわけでございます。各国もこのレクリエーション機能森林に付加するということは非常に最近の話でございまして、例えば西ドイツは一九七五年の連邦森林法の改正のときに、森林法の中にレクリエーション機能というものを位置づけ、その関連施設というものもその中に明記するというようなことでございます。今回の我が国におけるこの位置づけでございますけれども、これは西ドイツのように直接話法的に森林法の中に位置づけるということでなくて、森林法の定める森林計画の中にこの辺のレクリエーション機能というものを位置づける、いわば直接話法でなくて間接話法である。しかも、そのレクリエーション施設整備とともに、本来の業務である森林施業というものをバランスよく位置づけるというようなことで、非常に知恵を絞ったマイルドな格好ですんなりレクリエーション機能森林に潜り込ませたということではないかと思うわけでございまして、その辺、これまでの法的な裏づけがなかったことによっていろいろ困ったこと、そして今後この法的な整備によってどのような体制が図られるのか、その辺の御意見林野庁長官からお伺いしたいと思います。
  58. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま先生から御指摘をいただいたような姿で、今回私ども保健休養の場の整備につきまして新しい法案を御提案さしていただいておるところでございます。  森林の持つ多面的な機能、特に保健休養の場としての森林利用につきましては、午前中も参考人の御意見等もありましたように、各地でこれが進んできております。これにつきましては、ただいま大臣から申し上げましたように、山村活性化のためにも今後助長していく方針をとっておるわけでございますが、現状におきましては、この保健休養の場としての森林利用につきまして幾つか問題点があるように感じておったところでございます。  まず、森林に関する法制度において、御指摘もございましたように必ずしも位置づけがはっきりしない。特に、保健休養の場を整備していく上で、何分その多数にわたる森林所有者を統合、誘導いたしまして円滑な合意形成を行っていく仕組みがない、こういうことが指摘されておりました。また、森林利用する場合に、現行制度は一件一件の許可となっておりまして、必ずしも計画的、合理的な推進の仕組みにはなってはいないわけでございます。また、現実にキャンプ場等施設整備いたします場合にも、森林保全上必ずしも適切でないものがあるんじゃないか、また、間々その周辺の森林の施業がおろそかになっているんじゃないか、こういった指摘もあったところでござい ます。また、今の法体系でございますと、施設の敷地になった箇所が森林法の傘の外に出てしまう運用になりますものですから、施設整備につきまして監督が十分でない、例えば不都合な事態が生じてもこれを是正するような仕組みがない、こういうような問題も実は指摘されておったところでございます。  そういった問題点を踏まえまして、この法案森林保全利用の新しいルールづくりをしようということで、大臣が基本方針を定めますとかその計画的推進を森林計画制度の中に位置づけますとか、施設整備につきましても施業と一体的にこれを定めまして、総量規制あるいは技術的基準に適合しなければならないとか、またそれを守るために都道府県知事が計画認定を行うとか、不適切な事態が生じた場合には原形復旧の命令等ができる、こういった措置を講じて、今後的確にやってまいりたいということでございます。
  59. 笹山登生

    ○笹山委員 それで、この新法案の概要が公表された後、いろいろ新聞等一部反論があり、そしてその反論に対するまた反論があり、再反論になる、非常に活発な御議論がされた、私はこれは非常にいいことだと思うのですよ。こういう一つの画期的な転換の中において、いろいろな意見が発生するということは非常にいいことだと思うわけでございますが、その反論が誤解に基づく反論であるとすれば、やはりきちんと林野庁としても反論をこの場で正式にしていただきたい。  大体五点があったと思うのですけれども一つは、施設整備をすることによって森林の破壊につながるのではないかというような御意見。そして二番目には、総量規制を設けても区域が、分母が大面積になれば分子も大きくなってしまうのではないかというような大規模開発のおそれに対する反論。三番目は、保安林伐採許可を不要とするというのは規制緩和の行き過ぎではないかというような御質問ではなかったか。四番目は、保安林伐採跡地への植栽免除の特例、これも規制緩和の行き過ぎではないかというようなことだと思います。五番目は、計画認定に利害関係人の意見書提出ができないのはおかしいというようなことだと思いますけれども、保安林というものも大昔から、いわば禁伐林というような格好での延長線上で明治以降来ているということでございますから、歴史のいろいろな価値観の変化に応じていろいろ流れがあるというようなことでありますから、我々もかなりその辺は時代に即応した考え方をしていかなくちゃいけないんじゃないかというような感じもするわけでございます。  この辺、以上五点につきまして林野庁の御意見をお伺いしたいと思います。
  60. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘のございました新法案についての各方面からの御意見、特に、その誤解と思われる点があるのではないかという点につきましてお答えを申し上げたいと思います。  五点ございまして、第一点は、その施設整備森林の破壊につながるのではないかということでございます。  もちろん、その施設整備が何事のためでございましても無秩序なものであっては困るということはそのとおりでございますけれども、一方、森林というものは一団のものとして機能を現実に発揮しているということでございますので、その施設整備のために樹木の一部でも代採されると直ちに機能に支障を生ずる、こういうことではございません。利用保全を両立させるために、その施設の規模でございますとか配置等の許容限度をはっきりさしたルールづくりをすることがむしろ重要であるということでございまして、新法案の仕組みはこのルールとして検討され、確信を持って御提案をしておるところでございます。  具体的には、先ほど申し上げましたように森林計画制度の中に仕組みまして、それぞれの計画手続、認定の基準、さらには監督権限、こういったものが図られておるところでございます。  それから第二点でございますが、総量規制との関係で、森林の区域を広くとれば幾らでもその施設面積も広くなって、結果的に大規模な開発も促進されるのじゃないかといった点でございます。  この総量規制につきましては、私ども、その区域が非常に大面積にわたる場合には、これを流域を勘案した小区画に分けましてこの規制を適用していくというふうに考えておりまして、特定の区域に施設が偏るといったことはないようにしたいと思っております。さらに、総量規制だけではございませんで、個々の施設の規模、配置等につきましても一定の制限をきちんと設けますので、心配されるような大規模開発がこれによって促進されることはないというふうに考えております。  それから第三点は、保安林の伐採等について許可が要らなくなるので、規制の緩和ではないかといった点も御批判の中にあるわけでございます。  計画の認定の際にそもそも現行制度の場合以上に総合的に十分審査が行われる仕組みであるといったことは申し上げたとおりでございますけれども、そういうことをいたしますと改めてまた許可をするということにいたしました場合には手続が二重になる、この二重許可を防止するという観点から、この法案による手続をとった場合にはこれまでの保安林の伐採等の許可は要らないというふうにいたしたものでございます。  なお、この法案対象にならないと申しますか基準に合わないような大規模な案件、これが間々ゴルフ場等の例を引き合いに御指摘のある点でございますけれども、そういった案件につきましては従来どおり保安林の解除の手続に従ってやっていくということでございまして、この保安林の伐採等の許可とはまた別の世界に、これまでどおりの規制は依然として設けられておるという点を御理解いただきたいところでございます。  第四点の、保安林の伐採跡地へ植栽義務が免除される特例も規制の緩和になるのではないかといった点でございます。  これは、新法案の仕組みに従いまして総量規制あるいは技術的な基準等に適合した施設整備を行うことでございますと、整備後も保安林の公益的機能は維持されております。また、そういった保安林の公益的な機能が維持されるものに限って認めるんだということを法律も明定しておりますので、その機能回復のための植栽義務というものを免除しておるところでございまして、規制の緩和といったことではございません。  それから、最後の第五点でございますが、計画の認定に当たりまして、利害関係人による保安林の解除の場合のような意見書の提出等の手続の規定を設けていないのはいかがかといった点についてでございます。  これにつきましても、新法案の仕組みに従いまして総量規制あるいは技術的基準に適合した施設整備をいたします場合は、整備後も保安林の公益的機能は維持される、また維持されるような規制が行われるということでございまして、保安林による受益者の利益というものが侵害されることにはならないということでございますので、こういった保安林の解除の場合に受益者の利益を侵害するおそれがあるということで決められております意見書の提出等の手続は設けていないということでございます。  なお、ただいまも申し上げましたように、森林の公益的機能の維持が困難な程度に大規模な施設の場合というのは、保安林については現行の保安林指定の解除、その他の森林については現行の林地開発許可手続というものが厳然とございまして、それによって適切な運用を図っていくというふうに考えております。     〔委員長退席、松田(九)委員長代理着席〕
  61. 笹山登生

    ○笹山委員 環境資源の中で森林の持つ比重が非常に高いということですから、当然そういう森林と環境保全の問題というのは切って離せない問題でございましょう。先ほどお話ししました西ドイツの連邦森林法の制定の場合も、同じ時期に相前後して連邦環境保全法が出まして、それですり合わせが非常に苦労したというようなお話も私聞いております。我が国の場合は、唯一森林法の第二十五条で、自然環境保全法に指定される原生自然 環境保全地域は保安林の対象にしないというようなことで、いわば保安林は過熟林であれば計画的に切るんだというようなことで、原生の自然林とは違うんだという一つ位置づけがなされているわけでございます。今後ますますこのような環境保全的な問題がセンシティブになってくる場合、その辺の森林の持つ環境保護機能というものをもう一回林野庁の方としても整理して、そしていかなる論理にもたえ得るような一つの理論武装を今からやっておく必要があるのではないかと思うわけでございます。ですから、今回歴史的な転換でレクリエーション機能森林の中につけたということでございますが、次は、その辺の環境保全的な問題に対してどう対応するかという理論の構築をひとつこれからもやっていただきたいなと思うわけでございます。  残りの時間で若干質問いたしますけれども、実はこの前、ある森林のリーダーがブナの林に子供たちを連れていきまして、子供たちに聴診器を持たせた。聴診器を持たせて行ってブナの木に当てる。そうすると、トクトクトクというブナの水を吸う音が聞こえた。非常に感動的な音である。しかし死んだ木に聴診器を当てても全然音がしないというようなことで、子供たちに聴診器を持たせて山に行かせるということ一つだけでいかに多くの教育効果が上がったかという一例でございます。  このように、せっかくこういう保健、保養の場を設けても、そとかプレーリーダーとか、そういうものがいませんと死んだ場所になってしまう。鳥かごができたわけでございますから、これからそれに対していかに鳥を追い込むといいますか、ちょっと例えが悪いわけでございますけれども一つのソフト策なれに魂を入れる森林レクリエーションリーダーりプレーリーダー、森林レクリエーションリーダー、そのような養成をやっていかないと死んだスペースになってしまうのじゃないか。その辺を林野庁としてどうお考えになるか。それだけ質問を申し上げまして、私の質問を終わります。
  62. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘いただきましたような趣旨から、森林レクリエーションリーダーともいうべき人たちの存在が非常に大事ではないかというふうに私どもも考えております。特に、都市住民が通常森林に接する機会が少ないといったこともございますし、都市山村との交流というのもまだ何といっても新しい形の活動であるといったことからいたしましても、そういった交流活動でありますとか森林利用につきまして指導する人たちを育成する必要があるというふうに考えております。  このため、林野庁といたしましては、新しい分野なものでございますからまだ十分な対応にはなっていないと思いますが、ただ、国有林におきまして、森林インストラクターを養成してこれから一層活動していこうということを考えておりますほか、民有林におきましても、こういった趣旨からの指導者の養成を図るために何か新しい事業を起こして、これを一層進めていきたいというふうに今考えているところでございます。
  63. 笹山登生

    ○笹山委員 終わります。
  64. 松田九郎

    ○松田(九)委員長代理 串原義直君。
  65. 串原義直

    ○串原委員 森林保健機能法案と私は申し上げますが、この法律案提出の目的、それから真に政府がこの法律によって求めたいとしたものは何なのか、まずお教えください。
  66. 甕滋

    ○甕政府委員 お答え申し上げます。  近年、特に森林浴でございますとか森林内のレクリエーション活動、言うなれば保健休養の場としての森林の利活用というものが国民的に非常に関心を高め、期待が寄せられているというふうに考えております。また林業山村の側から申しましても、保健休養の場としての森林整備いたしまして都市山村との交流を図る、理解を深める、さらには、それを通じて林業山村活性化を図っていきたいという強い要望があるわけでございます。そのため、保健休養の場として今後森林利用に供していく場合に、森林に関する法制度上の位置づけをはっきりしてもらいたい、あるいは森林所有者相互間の合意形成手続をはっきりさせまして、許可手続がスムーズにいくようにといった要望もございます。また一方、森林の利活用に当たっては、森林保全をしっかり確保しなければならないといった点にも十分留意していかなければならないという問題がございます。  私ども、そういったもろもろの要請にこたえまして本法案を御提案しておるところでございますが、森林保健機能増進を適切に促進するために、森林利用のための施設整備森林計画制度の一環として位置づけまして、森林保全に十分留意しながら施設整備が適切に促進されるような仕組みをつくりたいというのが本旨でございます。
  67. 串原義直

    ○串原委員 六十二年でしたか、リゾート法が制定されましたね。一口にリゾート法と言われておると思いますが、このリゾート法も、我が国の自然条件を生かしながら主要な対象といたしまして保健的活用を図っていくのが目的であろうと思う。このリゾート法と本法との関連がどうなるのか。ここが違います、リゾート法と本法の違うところはここです、こういうものがありましたらお示し願えませんか。
  68. 甕滋

    ○甕政府委員 お話ございましたいわゆるリゾート法でございますけれども国民の余暇活動に対する需要にこたえまして一般的にスポーツ、レクリエーション施設などの整備をしていこう、その際、民間活力利用して促進していこうという内容のものと承知をしております。ただ、その中では必ずしも森林の維持をリゾート整備の条件とするということにはなっておらないかと思います。施設整備に当たって森林保全のために具体的にかくかくの措置が必要であるといったこともございません。  一方、この私ども法案につきましては、林業山村の側に立ちまして、森林そのものを維持するということを基本といたしまして保健休養の場としてその利用促進していこう、また、それを通じて地域活性化を図っていこうというところにねらいがあるわけでございます。  したがいましてこの法案は、林業関係者の間に定着しております森林施業計画中心に、地域森林所有者の主体性のもとにこの制度活用することによって森林施業と施設整備を一体的、計画的に進めていこうということを規定しようというものでございます。森林の諸機能に支障を及ぼさない施設整備の基準もそれに伴ってはっきりさせておるところでございますし、認定計画に反する施設整備等があったような場合には原形復旧命令等森林法の監督規定が行使できる、こういった措置も講じられておるわけでございます。そういった具体的な点におきましていわゆるリゾート法といったものとの性格はおのずからはっきりしておるというふうに思っております。
  69. 串原義直

    ○串原委員 今御答弁の中で、本法はつまり森林、山を守るということが第一であります、それにお話しのような諸機能を生かしていくことを考えておるわけであります、こういうことでした。だといたしますと、本法が推進されることによりまして、中山間農業地帯と言ってもいいでしょう、山林地域と言ってもいいと思いますけれども、それと同時に山を持つ皆さんの受けるメリット、それからその地域における効果、どういうものがあるのでしょうか、お示しください。
  70. 甕滋

    ○甕政府委員 この法案は、民有林保健機能増進を進めるに当たりまして法制度上の位置づけをはっきりさせるということでございまして、それを通じて、その主体となっていただくべき森林所有者にとりましては、従来からの森林から木材生産するということで収入の道にしていこうということにとどまらず、森林をそのまま使いまして例えば施設使用料が入るような場合には、山の樹木の価値そのものを収入源につなげるという新しい森林林業経営の展開も容易になるということが考えられるわけでございます。また、その森林の持っている機能を一層高度に高めまして、地域の波及効果ということも当然期待されるように 思います。これが法手続の上では森林計画制度がおなじみのものでございますから、これを使って森林所有者相互間の合意形成がより容易になる、それから、もろもろの規制の許可を受けるといった場合にも全体計画についての包括認定といった適正な道筋がつけられるというようなことも考えあわせますと、そういったことが各地においてやりやすい、またこれを進めていく際の一つの契機になるといったようなことも期待されるわけでございまして、全体を通じて、森林林業厳しい中でございますけれども、こういった新しい機能を一層充実させていく中で山村活性化にも裨益していき得るものではないかと考えているところでございます。
  71. 串原義直

    ○串原委員 本法で対象にしようと考えておられる森林地域面積、規模、これはどの程度のところをお考えですか。それは、ぴしゃっとした、百万ヘクタールということであるかどうかは別として、およそこんなことを考えておりますというものがおありになるでしょう。いかがですか。
  72. 甕滋

    ○甕政府委員 ちょっと難しい御質問でございますが、まず、どういうふうに面積が決まっていくかということを申し上げたいと思います。  仮にこの法案が成立を見ました場合には、施行後速やかに基本方針を決めましたり全国森林計画の変更を行ってまいるわけでございます。その後、各都道府県におきまして、市町村でありますとか森林組合等の意向を聞きながら地域森林計画の変更を行います。この地域森林計画は現在期間が十年間というのが立てられておりますので、その変更でございます。さらに、森林所有者がそれにのっとりまして森林施業計画を策定して、知事の認定を受ける、こういうような手続が今後予定されておるわけでございます。  それでは、どのくらいの対象森林を見込むのかという点でございますけれども、近年の森林レクリエーション需要の状況等を考えますと、相当数の実施が見込まれるというふうに考えておりますが、具体的には今申し上げましたように地域森林計画の変更でございますとか森林施業計画の認定の過程で全体の実施規模が決まってくるということでございますので、今の時点で対象面積はどのぐらいになりますということを具体的に申し上げるのは難しいわけでございます。  それではどんなイメージで考えているのかということになりますと、私ども、既に整備が行われている箇所の状況でございますとか意向調査とかいうようなものであえて見当をつけてみますと、保健機能増進を目的とした森林面積ということではおおよそ二十万ヘクタール程度になるのではないかといった感じを持っております。  恐縮でございますけれども、そんなことで御理解をいただきたいと思います。
  73. 串原義直

    ○串原委員 今の御答弁は理解できるわけですよ。それはなかなか難しいと思う。けれども、おおよそという話でありましたので、それは一応受けとめておくことにいたします。  そこで、今のお尋ねと関連して、小区画の場合もある程度のめど、上限を決めておかないと、分母が大きくなることによりまして開発の歯どめがなくなるのではないか、こういう心配の意見もあります。私もそう思う。そして、大規模開発に道を開くということを避けていくために、対象森林の間隔、A地区とB地区の間隔、この間隔についてもある程度規制をしていく必要があるのではないかと思います。この辺についてどのようにお考えでございますか。
  74. 甕滋

    ○甕政府委員 一カ所当たりどうするのか、またそれが森林保全等の上で心配のないようにする必要がある、こういう御指摘かと思いますが、私どももその点は十分考慮していかなければならないと考えております。ただ、そのために一カ所当たり上限を設けるとかいうことをしたらいいかどうかといった点につきましては、なかなか難しい問題であろうと思っております。  この法案の本旨は、先ほども申し上げておりますように、地域の実態に応じまして森林所有者等がいろいろ工夫をして対応していただきたいということでございまして、地域の実態すなわちその地域におきます森林状況森林所有のあり方等々、これはもう御承知のように全国いろいろな形があるわけでございまして、一律に、これまでなければいけないとか、これ以上あってはならないとかいうふうにも決めがたいのではないかと思います。  ただ、そういうようなことをしないで十分心配のないようにできるのかといった点になるわけでございますが、もともとこの法案におきましては、対象森林全体の公益的な機能確保しなければならないといった観点で、総量規制にいたしましても技術的基準にいたしましてもきちんと図っていくということにしておるわけでございますし、また、対象面積がかなり広くなるといった場合には、施設が特定の区域に集中しないように、流域等にも配慮しながら一定の単位ごとに適用していこうということも考えておるところでございまして、そういったことによってそれぞれの森林におきます公益的な機能の発揮が確保される、保全と両立する形での施設整備が行われるということがそれぞれに確保されるということをもって、そういった御心配になるようなことにはならないのではないかと思っております。  ただ、具体的にどういう姿で展開するであろうかという点につきましては、これまで整備が行われている一カ所当たりの状況を見ますと、大体平均面積が百十ヘクタール程度というのが実績でございます。平均的に見ますと今後とも大体この程度の規模になるんじゃないかというふうに考えております。しかしこれは平均でございますので、具体的には小さいものは十ヘクタール程度のものから大きなものは数百ヘクタール程度のものまでいろいろの規模があるということ、そういう実情にあるということは御理解いただきたいと思います。
  75. 串原義直

    ○串原委員 平均では百十ヘクタールというお話がございました。平均ですから、今御答弁のように大きなのは五百ヘクタール、六百ヘクタールというところもあるわけでございましょう。しかし、そうであるとすれば、つまり関係する団体の皆さんの心配する点がそこにあるのではないか。五百へクタール、六百ヘクタールということになりますと、分母が大きくなりまして心配をするような施設も設置可能ということになっていくと考えまするので、長官、私はこのところが実は大事なところだと思うのです。ある意味ではポイントかもしれません。したがいまして、一地区の区画、このことについてはおよそ百ヘクタール前後とか、この程度のところをめどにしていくことが望ましいと思いますというような考え方をお示し願いたいなと思うのであります。ここのところが大事なところだと思うのです。長官、いかがですか。
  76. 甕滋

    ○甕政府委員 大規模開発になりがちである、それが森林保全を損なうおそれがある、こういう点につきましては、私どもそういうことがないようにということで考えておるわけでございまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、非常に地域が広くなるといった場合には、下流域の集落等の分布状況等も十分考えまして、流域を配慮して小流域ごとに基準を適用するという必要があるように思っております。また、現実にそうしたいと思っております。  あえて申し上げますと、これまでの経験で申しますと、大体五十ヘクタール程度に区切りましてやっていったらどうだろうか、やっていくことになるのではないかと思っております。また、対象森林面積の大小にかかわりませず傾斜等による施設の設置あるいはその設置に当たりましての規制、それから一カ所当たりの面積、それから施設施設の間の距離、建築物の高さ、さらには切り土高、盛り土高等の制限をする、こういうことをいたしておりますので、森林保全に関してはきちんとこれが実現されるのではないかと思っております。  でございますので、先ほど申しましたことから理由は繰り返しませんけれども、一律に一定の面積を示してこうだというようなことは、お言葉で はございますけれどもなかなか難しいのじゃないかと考えております。
  77. 串原義直

    ○串原委員 ただいまの御答弁の中で五十ヘクタールという数字もお挙げをいただいたのでありますが、今の御答弁のところは重要なところです。これは心して運用していってもらわなければいけない、こう思っておりますから、どうぞしっかり今の点は頼みます。  そこで、本法では、この森林保健機能計画に定める森林保健施設の位置や規模、構造等が一定の基準に適合していれば認定をいたします、こうなっております。この認定があれば開発行為等の従来の許可を不要としている。といたしますと、これまでの保安林内における土地の形が変わることあるいは内容、質の変わること等の審査が緩和をされて、歯どめがなくなるという心配がある。この点はどうなんですか。
  78. 甕滋

    ○甕政府委員 この法案におきましては、保健機能森林の区域において施設整備を行う場合に、施設面積総量規制の範囲内であること、あるいは個々の施設の位置、規模、配置、構造等、さらにはその周辺の森林の施業の方法といった事柄につきましての技術的基準をきちんと適用していくというふうに申し上げておるところでございます。これは実は、これまでの制度にはございませんでしたはっきりした定量的な基準をつくっていこうということでございます。保安林については、保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼさないと認められる場合ということがまた要件に付加をされているわけでございます。  こういうふうに、知事がはっきりした基準のもとに厳正に審査をして森林施業計画を認定するということでございますので、保安林の中での立木の伐採等の許可を不要にしているということでありますけれども、これはこの制度による審査をもっていわば審査済み、こういう形になっておりますので、二重許可を排除したという措置として御理解をいただきたいわけでございまして、この規制が緩和されるといったこととは事柄が違うというふうに思っております。  なお、この制度に乗ってこないもの、いわば保安林の機能がなくなってしまうために保安林を解除しなければならないといったケースも、これまでもございましたし、今後もあるわけでございますけれども、それはこれまでどおり保安林の解除の手続によって適切に対応をしていくということでございまして、保安林について審査が甘くなるとか緩むとか、こういうような事柄では実はないわけでございます。
  79. 串原義直

    ○串原委員 法第二条の二項について伺うわけでありますが、「森林の有する保健機能を高度に発揮させるための公衆の利用に供する施設」というその「施設」はどのようなものを指しているのでしょうか。この「施設」の中身は政令で定めるというのですけれども、ここで、こんなことを考えています、その中身はこういうことでありますとお答えを願っておきたいと思うのです。お願いします。
  80. 甕滋

    ○甕政府委員 森林保健施設といたしまして政令でこれを定めることになっておりますが、これは具体的には、森林保全に留意しながらその森林活用を図るために公衆の利用に供する施設ということになりまして、休養的な施設といたしましては、例えば休憩舎でありますとかあずまやでありますとか展望台でありますとかいうものがあろうかと思います。また教養的な施設としては、樹木園でございますとか体験林業施設、野外劇場等といったようなものもあるかもしれません。またスポーツあるいはレクリエーション施設としますと、野営場、遊歩道、林間広場あるいはフィールドアスレチックですか、こういったものも考えられるところでございます。  そういったことを念頭に置きまして、それでは政令でどういうふうに定めるかということにつきましては、それぞれ具体的な施設を一々列挙するということではございませんで、地域の創意工夫によってさまざまな施設が出てくるということも考えられますし、個々のものを全部拾い上げるということも難しいわけでございますので、これまでにある立法例に倣いまして、例えば休養施設、教養文化施設、スポーツ、レクリエーション施設というふうな形で規定をしていくことになろうかと思います。
  81. 串原義直

    ○串原委員 ずばり伺いますが、スポーツ、レクリエーション施設の中にゴルフ場は含まれますか。
  82. 甕滋

    ○甕政府委員 もともとこの法案に定めます森林保健施設というものは、「その設置によって森林の現に有する保健機能以外の諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるものに限る。」というふうに法律上も明定をされておるわけでございまして、これを具体化した総量規制あるいは技術的基準から見まして判断するわけでございますけれども、一般に見られるようないわゆるゴルフ場は、そういったものに照らして森林保健施設ということとしては想定しておりません。
  83. 串原義直

    ○串原委員 最後に大臣に一言お伺いをしたいのでありますが、ただいま長官から御答弁をずっとちょうだいしてまいりました。  そこで、この森林保健機能増進に資する事業、これは森林所有者はもちろんですけれども森林組合あるいは地方公共団体、それから地方公共団体あるいは森林組合等々と共同して事業会社が出資をして事業をやる、言うならば第三セクターと言ったらいいでしょうか、そういうようなところができるだけ主体であって、大きな会社、大きな資本を持つ会社あるいは大きな資本を持つ金融機関等々が余りハッスルをするということでないことが望ましい、私はこう思うのです。ずばり言うならば、地方の地域森林組合や市町村、まあ公共団体と言ったらよろしいでしょうか、そういう人たち地域をよくしようという熱意から出てきてやられる事業中心であってほしい、私はこう思うのですね。大臣の御所見を伺いたいと思う。
  84. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 先生おっしゃるような点につきまして十分留意をしていかなければならない、こういうふうに思います。  御指摘のように、地方公共団体や森林組合の積極的参画を促すよう指導申してまいりたい、このように考えております。
  85. 串原義直

    ○串原委員 時間が来ましたから終わります。
  86. 松田九郎

    ○松田(九)委員長代理 沢藤君。
  87. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣、初めての質問になりますが、御就任おめでとうございます。同じ東北人として大いに期待をいたしたいと思います。御健闘をお祈りします。  そこで、最初の質問を、基本的な問題について大臣の御所見あるいは価値観というものをひとつお伺いいたしたいと思うのですが、農林水産業の日本あるいは地球的に持っている、果たしている役割、こういった面につきまして大臣はどのような価値観を持っておられるか、それをまずお聞きしたいと思います。
  88. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 まさしく農林水産業基本的には、自然の調和の中におきまして自然を破壊しないで、自然を再生産しながら発展できる産業でありまして、そのような意味から、地域をつくっていく上において大きな役割を果たして、また自然環境保全のためにも大変な役割を果たしておる。そういう国民生活にとりまして不可欠の役割と同時に、国民に対して食糧の安定供給というふうな、これまた重要な役割を果たしている。まさしく今日の我が国にとりましても、毎日毎日の生活の中で大変重要な役割を果たしている産業である、このような認識をいたしておるところであります。
  89. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 ありがとうございます。  実は私は、別の質問を準備しておったのです。というのは、人間生きていく上に絶対なくてはならないものを三つ挙げていただきたいというふうな、私、元教師だったものですからついこんな設問を考えるのですが、こういう設問はちょっと失礼に当たるのだろうと思って先ほどのような御質問を申し上げたのですが、この答えはもう既にお気づきだと思うのですけれども、まず空気であります。これは空気がなければ数分間で死んでしま います。水であります。そして食糧であります。もう一つつけ加えるならば温度ということになるかもしれませんが、まず空気、水、そして食糧、この三つを生産し、保持し、涵養しているのは何かといいますと、これは農業、林業、水産業であります。したがって、この農林水産業というのは、産業構造上の第一次産業というふうなものではなくて、むしろ基礎産業である、あるいは生命維持産業である、環境保全産業であるという位置づけをきちんとしないと、農林水産行政というのは原点が揺れるという考え方を持っておるわけであります。  私、ここ数年間農林水産委員会でいろいろ論議をする中で、例えば農畜産物の自由化の問題であるとか減反政策の問題であるとかいろいろ出てくる中で、政府あるいは内閣内部で、外務、通産と農林水産というような形で必ずしもすとんと意見が一致しないという場面もあったように感ずるのです。そういった中で、ひとつ内閣の一員として大臣は、生命を維持する基礎産業なんだ、環境保全産業なんだ、その責任者であるということの自覚と自信を持たれまして、事に当たっては一歩も引かないというくらいの気概でお励みいただきたいと思うのですが、その決意のほどを一言お聞かせ願いたいと思います。
  90. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 農林水産業のさらなる重要性というものを認識をさせていただきまして、懸命な努力を払ってまいりたい、このように考えております。
  91. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 さて、森林関係に入りたいわけでありますが、私は、今提案されております森林保健機能増進に関する特別措置法案そのものというよりは、むしろこの法案の背景、この法案が生まれてきた経過あるいはそれを支えている背景、あるいはこれを提案なさっている提案者の基本的な理念、考え方、そういったものを中心に御質問申し上げまして、次に前島、石橋両同僚議員がフォローしますので、あわせて一体のものというふうに御理解願いまして、法案内容から外れる場合もあると思いますがひとつ御理解をいただきたいと思います。  まず最初に、今大臣に御質問申し上げたことと類似するわけでありますが、森林の持っている機能森林の果たしている役割、この重要性というものについてどのように評価し、把握なさっているか、これをお聞きしたいと思います。
  92. 甕滋

    ○甕政府委員 森林は御承知のとおり我が国国土の約七割を占める、この狭いかつ急峻な国土に多くの人口がおりまして、また極めて高度な経済文化活動を展開している、こういう実態にあるわけでございます。そこで森林が、林産物の供給だけでございませんで、水資源涵養あるいは山地災害の防止、自然環境の保全形成といったいわゆる公益的機能の発揮を通じまして、国民経済あるいは国民生活に重要な役割を果たしておるところでございます。申すまでもないところでございます。  こういった森林に対する期待、要請にこたえましてその多面的な機能を高度に発揮していかなければならないということで、これまでも各種の森林政策、あるいはまたこのたびはその一環といたしまして、その保健休養機能の一層の発揮といった点をねらいとしてこの法案も提出させていただいているというような次第でございます。  なお、この森林機能につきまして、世の中の理解を得るためにもどの程度の評価を与えるべきか、いろいろ計量的な努力もこれまでになされておるわけでございますが、これは御承知のとおりなかなか難しい問題を伴うわけでございます。特に最近になりますと、炭酸ガスを吸収する、こういった点もいろいろ言われておりまして、それじゃそれが具体的にどんなふうに評価されるべきかといったことについては、率直なところその計量の手法といったものもはっきり見出されておるわけではございません。したがいまして、評価がどうかというような点に関しまして、私どもは世の中の理解を得るためにもはっきり説得力のあるものを今後いろいろ工夫して出していかなければならないというふうに考えております。あるいは降水量と森林の保水量の関係でございますとか、炭酸ガスの問題でありますとか、なお研究をさせていただきたいと思っております。
  93. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今長官も申されましたように、森林の果たしている役割は非常に重要で、しかも多岐にわたっている。空気、酸素をつくるという点ももちろんあるわけですね。これはちょっと余談になりますけれども、東京に出てきますと鼻毛が伸びるのです。これはもう人間の持っている自衛本能のあらわれでございまして、空気が汚れますと、これをろ過するための鼻毛が自然に伸びる、こういうことなんです。やはり人間にとって空気というのは大変に重要なものでございまして、これは森林あるいは農産物を含めまして緑の植物の果たしている大きな役割だろうということを認識したいと思います。  また、これもお話がありましたが、国土保全水資源涵養。これはある学者から聞いたのですけれども、もし霞が関の人たちが農業、林業に余り関心を示さないのであるならば、関東平野に面した山林の木をみんな切って、水田のくろ、畦畔ですね、あれを穴をあけて待っていれば、一雨来れば霞が関は水浸しになる、こういう話があったわけであります。それほど国土保全に果たしている役割というのは大きいと思うのですね。  そこで、お聞きしたいのですが、日本列島に一年間降り注ぐ降水量、それをどのくらい森林が保持しているというふうにお考えか、お聞きしたいと思います。
  94. 甕滋

    ○甕政府委員 森林の保水量がどうなっているか、こういう御質問かと思います。  この問題につきましてもなかなか一概にこうだというふうに言いにくいわけでございまして、正確なお答えにならないわけでございますが、私どもの見当をつけておるところを申し上げさせていただきますと、もちろんいろいろな前提を置いて試算をしてみるわけでございますけれども我が国森林への年間降水量が約四千百億トン程度ではなかろうか。それに対しまして、森林の保水量を最大限見た場合に、年間降水量の約六割、二千三百億トン程度になるのではないかといった数字がございます。
  95. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 その数字は私の調べております数字とほぼ一致するわけです。これは水年報から持ってきた数字ですけれども、四千百億トンのうち、まず第一次として約七〇%の二千九百億トンが保持されるが、葉っぱの表面から蒸発する水等が約六百億トン、差し引いて、今長官言われました二千三百億トンということになると思うのです。私の住んでいる岩手県の中で最もでっかい田瀬ダムというのがあるのですが、これが総貯水量が約一億トンということですから、この二千三百億トンという森林の保持機能は、言葉をかえればかなり大きな規模のダムの二千三百に匹敵する、こういうことも言えるかと思うんです。  これは単純な表現ですからあるいはいろいろ論があるかもしれませんが、そういうようなことで、私ども森林機能に依拠しているということを自覚する必要があると思うのです。そういった意味で、森林の果たしている役割はまさしく公益的な役割あるいは公共的な役割というものが非常に大きい、こういうことを申し上げたいわけであります。産業としての側面、これはもちろん大事であります。ただ、数字的に見ますと、林業所得というのは国内総生産の〇・二%、しかし国土面積からいえば六七%という面積を持っているわけです。ですから、産業的な面で林業あるいは林野事業というものをああだこうだと言うと同時に、言ってはいけないとは言いませんが、言うと同時に、この国土の六七%を占めていて、天から降ってくる水をしっかりと保持する役割を果たしているんだ、そしてまた我々の生存に必要な酸素を供給してくれているんだということを念頭に置いて林業を進めていく必要があるだろうと思うのです。  ですから、私はさっき大臣に価値観という言葉を使ったのですけれども、私たちは、いろいろな 問題にぶつかって判断を迫られます。あるいは幾つかの政策の中から政策を選択するという決断、判断を迫られる場合が多いわけですね。その場合にどのような価値基準、原点でそれに尺度を当てるかによって判断は違ってくるわけであります。X軸、Y軸、その交わるところの原点をどこに据えるか。そういった場合に、ここ列島改造以降と言っていいのでしょうか、私はややもすれば金の多寡、経済性で判断をするという傾向が強いような気がする。数字を持ってきて、アメリカの米はこのくらいで買える、日本の米はこのくらい、だからアメリカから買うんだというふうな単純な発想、つまりそろばんで価値判断をするという弊が強くなっているんじゃないかという気がするのです。これはどうぞひとつ、生命産業、環境産業をつかさどる農林水産省は価値観というもののX軸、Y軸をきちっと据えてかかっていただきたいということを御要望申し上げて、次の質問に入りたいと思います。  今申し上げたような意味で、国土保全あるいは水資源涵養ということになりますと、保安林あるいは国有林の果たす役割というのは極めて大きくなってまいります。そこで、今まで話し合ってまいりましたいろいろな考え方、基本的な考え方あるいは価値基準というものを据えながら次の質問に移っていくわけでありますが、次は、国有林野事業と国有林野事業の会計制度について二、三御質問を申し上げたいと思います。  まず、具体的なところから入ってまいりますが、昨年と今年、一九八八年と八九年の国有林野事業の収支予算があるわけでありますが、これの大まかな特徴をお示し願いたいと思います。特に私注目したいのは、収入の中に占める借入金と、支出の中に占める償還金の実態を中心にして、去年とことしの予算の特徴というものをお示しいただきたいと思います。
  96. 甕滋

    ○甕政府委員 国有林野会計の予算の特徴という御質問でございます。  御承知のように、国有林野事業につきましてはただいま経営改善の途上にございまして、事業運営の能率化あるいは要員規模の縮減、さらには販売対策の強化、資産の利活用による自己収入の確保といった各面におきまして改善計画にのっとった努力を推進しているところでございますけれども、その財務事情は依然として厳しい状況にございます。そこで、最近の予算におきましても、まず自己収入につきましては、需要動向に応じまして付加価値を高めた木材販売活動を強化する、さらには林野、土地の売り払いを促進する、分収育林やふれあいの郷等によります新規収入の確保ということに努めます一方、歳出につきましては、人件費の抑制あるいは投資の効率化等を柱にして経費の削減に努めておるところでございます。あわせて、この経営改善の円滑な実施を図るため、また国有林野事業の推進のために財政措置も講じておりまして、一般会計からの繰り入れもふやしてきておる、こういう状況でございます。  そういった中で、お尋ねのありました借入金に関してでございますが、借入金への依存は残念ながら続いておるわけでございまして、財投からの借入金の歳入に占める割合につきましては、六十三年度は二千七百億、四七・五%になるわけでございます。  また、長期借入金の利子償還金につきましては千九百四十九億、割合といたしますと三四・一ニ%、こういう現状になっております。
  97. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今最後の部分で、収支予算の中に占める借入金、返済金、これの率のお話がありましたが、借入金の総予算に占める割合が四七%、半分近くまで借金で予算を組んでいる。しかも、支出のうちの四割近くが借金返済だ。これはもう借金を中心として予算を組んだとしか言えないような状況なわけですね。しかも、その借金返済の中でたしか六〇%は利子分でしょう。利子に対する返却になっておるわけです。  こういう状態というのは、普通の会社はもちろんでありますけれども、自治体の予算としても私は考えられません。私は県議会におった関係から県のこういった問題にぶつかるのですけれども、公債費が二〇%となったらこれは赤信号、それを超えれば赤字再建団体指定、こういうことですね。ですから、私はどうしてここまできたのだということの追及を今するつもりはありませんけれども、こういう借金をして借金返しをするという、例えてみれば借金を食うわけでしょう。下からも排せつしますね。すっと素通りするだけでなくて利子分を吸い取って出ていくわけですから、体がやせ細るのは当たり前ですよ。ここは反省、点検して、思い切った手法でもってこの悪循環をどこかで断ち切る。国の全体の財政運営なり制度の中で、それは制度がこうだとか林野庁にそんなに金を回せないとかという大蔵の理論があるかもしれませんけれども、しかしこれは、普通の素人の目で見たらこんなばからしいことはない。これはきちっと断ち切れば、次の年度から四六%を借金しないで済む。支出のうちの三十数%が借金返済、しかもその六割が利子分だというふうな、全く間尺に合わない予算を組まないで済む。こういうことについての何かばらりずんという方法なり決断というものは出てこないでしょうか、どうですか。
  98. 甕滋

    ○甕政府委員 この借入金の問題でございますが、これが増加をしてまいりまして、ただいまお話しのように、支払い利子償還金の増大が財務を大変圧迫しているといったことが実情でございます。国有林野事業を今後適切に運営していくために、何とか借入金への依存を抑制いたしまして自己収入を確保していく、あるいは支出の削減等を一層図るといった点が基本ということで、現在六十二年七月に改定強化した改善計画に基づく諸般の自助努力を尽くしておるところでございます。所要の財源措置もあわせて講ずることによりまして、まず経営の健全性の確立、これは収支の均衡というものを実現していかなければならない。同時に、累積債務の減少に向けて努力を傾注していかなければならないというふうに考えておるところでございます。  ただ、この現状は、御指摘もございましたけれども、今後の経営上も極めて重大な問題をはらんでおるところでございまして、いずれにしましても国有林野事業の健全性を確立するために、本当にどう対処していくべきかといった議論は今後尽くしていかなければならないと考えておるところでございます。現在、国有林野事業の健全性を確立するための総括的な対応策につきまして、林政審議会の場で検討も始めていただいておるところでございます。
  99. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今お答えありました累積赤字、債務残高の処理について次にお聞きしたいのですが、たしか債務残高は六十三年末で一兆八千八百七十六億円、この数字は間違いないでしょうか。長官、どうですか。利子分も含んでいるかどうかもあわせてお願いします。
  100. 甕滋

    ○甕政府委員 お話しの数字のとおりでございます。
  101. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 利子の分も含めてでしょうか。
  102. 甕滋

    ○甕政府委員 今の数字は国有林野事業が借り入れをしておりますその累積の残高ということでございまして、これは、これまでも年々借りております分について、一部償還をしておりますその利子は既に払ったものもある、しかし、今後の支払いの分についてはまだ利子として残っておるわけでございますが、そういった関係は含まれておりません。
  103. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 質問の結論としてはこの累積赤字をどう処理するかという方策をお聞きするということになるわけですが、その前に、年度別に償還計画を持っておられるのか、お聞きしたいのです。  事前にいろいろお聞かせ願ったところでは、現行改善計画の骨子というものでもって今進行しておる、こういうことでもって、私ども県段階の知識しかありませんけれども、こういう借金をしている場合には、何年度には幾ら返しますよ、こうこうこう返していきますよ、ピーク時は何年ですよ、そして何年には償還は終わりですよ、年次ごとの、年度ごとの償還計画というものがあるわけなんです。なければ、これはとてもじゃないが運 営できないんですね。それが、お聞きすると、どうも数字的にはっきりした年度別の償還計画というものを持っておられないようです。これはどうでしょう、やむを得ないということで、この現行改善計画でもって当面やるんだということなのかどうか。そこは簡単でいいですからどうぞ答えてください。
  104. 甕滋

    ○甕政府委員 年度別の償還計画についてのお尋ねでございますけれども、長期にわたる償還計画、いろいろ試算は私どもの中で当然行っておるわけでございます。ただ、収入につきましては、大宗を占める木材収入が木材価格の動向に多く影響されるわけでございますし、支出につきましては、物価、賃金、財投資金の金利等、社会経済の変動によって影響を受ける要素も大きい。さらには一般会計繰り入れあるいは財投資金の借り入れ等につきましても、御承知のとおり毎年度の予算編成を経て決まるといった変動的な要素が避けられないわけでございまして、公式的なものとしましてこういった償還計画になっておりますということをお示しすることは、これまでも御勘弁をいただいておるということでございます。
  105. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 何度お聞きしてもそういうことだろうと思うので、これ以上年次、年度別の計画を示せということはここであきらめます。しかし、やはり言っておきたいと思うのです。自治体レベルでもこれはきちんとやっているのです。また、償還計画がなくて借金をするということもかなり無責任なような気がするので、この点については、改善計画をきちっとやりながら、なるべく早い時期に償還計画が浮かび上がってくるように努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  この問題の締めくくりになるわけですが、先ほど来話し合いになったとおり、国有林あるいは森林の持つ公益性、公共性ということを我々は重視していくのだということで、あなた方と私とはほぼコンセンサスが成立したわけであります。とするならば、国有林の六〇%が保安林であるという事実もありますし、造林投資資金の六〇%はいわゆる公共的な勘定分になるという考え方に立って、累積赤字の解消策として毎年の元利償還の六〇%くらいは一般会計から繰り入れるべきだ、こういう主張をしたいわけであります。林野庁所管国有林の約六割が保安林であることに注目したい。累積債務のうち、造林投資資金一兆五千七百九十一億円の約六割は九千四百八十億円ということに単純計算をすればなるわけですが、これは公益的な勘定分として毎年の元利返済を一般会計から繰り入れる。こういう債務の解消方法を私たちは強く提言したいのですが、いかがでしょうか。これは大臣ですか、長官ですか。
  106. 甕滋

    ○甕政府委員 累積債務を今後どうするのか、またこれを解消していく上でただいま、ある考え方のもとに一般会計からこれを払っていったらいいのではないかという御提言もあったわけでございます。  私ども、おっしゃいますように国有林の果たしている公益的な機能、あるいは今後期待されております社会経済的な一層の機能強化を図っていく上で、まずその経営の健全性を確保することが基本であろうかと思っております。したがいまして、その経営の健全性の確保を今後どのように図っていくかということにつきましては、これまでも関係各方面とも協議しながら鋭意検討してまいって現在の改善計画というものに取り組んでおるわけでございますが、今後さらに総括的な対応策の検討の中でその点を十分詰めて検討していかなければならないと考えておるところでございます。そういった中におきまして、さらに各方面でいろいろ御意見あるいは御提言も承りながら進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  107. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 言葉でおっしゃったことのさらに裏の裏と申しますか、心情的なものも含めてわかるような気がするのですが、経営改善努力一つの担保にしながら財政当局に切り込んでいく、言ってみればこういうことだと私は思うのです。  それにしても、今私どもは社会党としての一つの方針を固めているわけでありますけれども、累積赤字を解消して経営を軌道に乗せる、もちろん収益勘定も大事にしていく必要がある、それはそれでいい。もし収益勘定で余裕が出たならば公益的な勘定の方に繰り入れることもあり得るというふうに、幅を持たせながらこの会計を立て直していくことが必要だと思うのです。これから私どもは継続してこのことを要請し、政府に申し上げていきますから、林野庁あるいは農水省としても、大変な実態があるわけですから、これはよほど思い切った措置なり思い切った行動あるいは方策によらなければこのピンチは抜け切れないと思う。ただ単に職員の首を切ればいいとか事業を縮小すればいいとか営林署の建物、土地を売ればいいという問題ではないと思うのです。これは会計制度の構造上の問題です。そのことをしっかりと腹に据えて、今後政府、といっても政府の一員であろうと思いますけれども、財政当局に立ち向かっていっていただきたい。私どももこの点については党を挙げて主張し、運動してまいりたいと思っております。  さて、時間もあと十数分ということですので、最後の問題に入りたいと思います。  リゾート法あるいはリゾート法的手法、先ほどから既にいろいろな論議がなされております。いわば大型開発か環境保全か、あるいはリゾート開発か農林水産業かという二者択一を迫られるケースもないわけではない。こういう意味で最後の質問は、リゾート法と農林水産業との関係、あるいは農山村活性化の対策と開発行為との関係という点で幾つかの質問を申し上げておきたいと思います。  まず最初に、農山村活性化という問題について御質問申し上げたいわけです。  今まで私どもが取り扱ってきた法案なり政策の中で、いろいろな規制緩和でもって、例えば農用地利用増進法の改正、農地転用の許可基準の改正あるいは農村地域に工業の導入を促進するとか海洋のリゾート開発とか、いろいろな手法が打ち出されてきています。今度の森林法の説明の中にも、農山村あるいは森林事業活性化という言葉を使っておられるわけです。私はそれはそれで一つの考え方だと思いますから、一つの手法だと思いますから、これはいいのです。  ただ、大臣、私はぜひ考えていただきたいと思うのは、農山村活性化のためにいろいろな手法を駆使なさることはいいのだけれども、本来的に農山村活性化は農業そのものを活性化する、林業そのものを活性化するのが筋道なんです。その筋道をきちっと精魂込めてやる。それに対するいろいろな補助手段あるいは補足的な手法として工業導入があってもいいでしょう。リゾート開発もあってもいいでしょう。しかし、それが本筋じゃないのだということを、ここできちんとお考えをお聞きしたいのです。
  108. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 農林業は農山村の主要な産業でありまして、これらの地域活性化を図るためには、農林業振興を図ることが基本的に重要であると思います。同時に農山村は、緑なり水なり、非常に自然環境に恵まれたゆとりのある生活空間といたしまして豊富な地域資源を擁しておりまして、これを多面的に活用することは農山村活性化を図っていく上で重要なことと考えております。このような地域資源活用を図ることは農林業振興と相対立するものではなく、むしろその一環として重要な位置づけを占めるものと考えております。このため農林水産省といたしまして、従来から生産基盤の整備なり担い手の育成なり技術の開発普及などの推進とともに、地域資源活用対策の推進を図ってきたところでございます。
  109. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 環境庁、来ておられますでしょうか。ひとつ簡単に御質問申し上げたいと思います。  開発と環境保全という問題で重要な役割を果たすのは、私は環境庁だと思います。しかも、開発というものが農山村あるいは海洋を舞台にして行われた場合に開発側と自然保護というややもすれば対立的に考えられる、このバランス、自然保護という立場にウエートを置いてバランスをとるの は、私は環境庁だと思う。そういう意味で、くどくど聞きませんけれども、自然環境保全審議会のある小委員会の報告をめぐって、一部の報道で、環境庁は開発寄りじゃないか、こういう指摘がなされた経緯があるのですが、その反論という意味じゃなくて、それを含めて先ほど来論議になっております開発と環境保全、これについての環境庁の基本的な考えを一言お聞かせを願いたいと思います。
  110. 大木知明

    ○大木説明員 環境庁といたしましては、自然環境を保護する、自然の保護、そういうものが非常に大事である、こういうふうに考えておるところでございます。  そういう観点から、自然環境保全法あるいは自然公園法等を所管しておるわけでございますが、特に自然公園法等につきましては、すぐれた風景地である自然を保護すると同時に利用というものも図る、こういう趣旨で法律が成り立っております。我々といたしましては、開発が行われる場合につきましても自然環境等の保全というものがとれるように、そういう意味から十分にいろいろな問題につきまして対処していく、従来も対処してきましたし、今後も対処していきたい、そういうふうに考えております。
  111. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 項目としては最後になるわけでありますが、水産業と環境保全、環境保全と水産振興という問題で、一つの例を引きながら質問を申し上げたいわけです。  岩手県に大船渡湾という湾がございます。ここで最近問題になっておりますのは、湾内の水の汚濁、汚染であります。そのことによって湾内の漁場が三分の一になったという指摘も漁民サイドからなされております。何とかしてくれ、これは湾内の水質汚濁が進行して湾内の漁場が圧迫されている、被害が大きい、しかも、そういう評判が立ったものですから大船渡湾でとれた海産物は売れない、漁民にとっては死活問題だという指摘がなされている。私も先日現地でいろいろな視察、調査をしてまいったわけです。  そこで、この問題は複合的な原因があると思われますので、運輸省、水産庁、環境庁、三つの省庁にそれぞれお聞きしておきたいと思うのです。  まず一つは水産庁ですが、今申し上げた大船渡湾の湾内水質汚濁が進んでいて、漁場が圧迫される、水揚げが減る、売れない、こういう実情、訴えをどう受けとめてどう対処するかということがあるわけです。もちろんあそこの港湾は管理は県でありますからそれは県の問題だと言ってしまえばそれまでですけれども、これを大船渡湾という特定ではなくて、湾に隣接している市街地がどんどん都市化が進行する、そのことによって生活雑排水がたくさん出てくる、事業場、工場からの排水が出てくる、そういった問題は共通の課題として国内にはたくさんあるはずです。それに対してどう取り組むかという一つのモデルとしてお答え願いたいのですが、水産庁の御見解をまずお聞きしたいと思います。
  112. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま大船渡湾の水質問題についての問題提起でございます。  この地域はカキ、ホタテガイの養殖漁業、それにウニ、アワビのいそ漁業が展開をされている地域でございますけれども、この数年来の開発の進展あるいは生活様式の変化ということがございまして、工場、事業所からの各種の排水の増加あるいは生活雑排水の流入によりまして、関係する水域におきます水質あるいは底質の悪化が懸念されておるという状況を私ども承知しております。ごく最近におきましては、順調に発展をしてきておりましたこれら関係漁業の生産高がやや停滞的に推移をするという状況も見られておるというふうに承知をしております。  基本的に湾内の漁業の保護育成を図っていく上で、ただいま申し上げましたような状況下で漁業としての環境保全をいかに図っていくかということが大変大きな課題と思っております。大船渡市を中心にいたしまして、六十一年から家庭雑排水を削減するためのモデル事業を実施してきておりますとか、あるいは県においては、ことしじゅうに大船渡湾の水質管理計画を策定して実行していくというふうな御予定もあると承知をしております。これらの取り組みによって、水産の側で懸念される水質の汚染あるいはまた底質悪化というものが歯どめをかけられていくということを私ども期待をしておるところでございます。  また、一般論として申しますと、このような養殖漁業等が展開される水域での底質あるいは水質の悪化に対応する方策としまして、しゅんせつを行うとか作澪を行って漁場条件を改善するための補助事業を我々特っております。この大船渡湾でそのような構想まではまだ具体化されておらないようでありますけれども、そういった事業活用も含めて、地元なり県当局のこれからの御検討次第で我々も一緒に相談にあずかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  113. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 五分前ですという紙が回ってきたので、質問の仕方をちょっと変えさせていただきます。  環境庁には質問を準備しておったのですけれども内容を要望という形で申し上げますので、今後の取り組みをよろしくお願いしたいと思うのです。  今の汚濁の原因の大きな部分はやはり家庭雑排水と事業排水だというのが大体共通理解のようでございます。これの対策を現地はもちろん一生懸命やると思いますけれども、何しろ財政力も弱いしいろいろな課題を抱えています。下水の排水施設がないような状態ですから、ひとつ市、県と連絡、連携をとりながら、御指導、御援助を賜りながらこの排水の浄化、環境の回復ということについて御努力お願いしたいということを申し上げておきたいと思います。  運輸省にお願いしますが、実は漁民の中には、湾口防波堤が築かれて、それが海の水の流れを邪魔してそれで漁業に影響を与えたのではないかという意見もあります。そして、昔船が通ったつけ根の部分に約十メートルの水路があったわけでありますけれども、そこを通してくれれば海の水が流れていって漁場が回復するんじゃないかという意見があります。運輸省の方とこの前お話ししたら、シミュレーションの結果その他でもって、一部分を開放したところでそれは湾全体の浄化には結びつかないという結論に達したようであります。そうですね。とするならば、この問題をどう解決するかという最後の問題になるわけであります。  今既にお答えになりましたけれども、湾に隣接する地域都市化進行による排水対策をまずきちんとやる、それから海底に沈んでいるヘドロの撤去をやる、覆砂をする、そして同時に、湾口防波堤については論議が残ると思いますから私はここでどっちがいいという黒白の決着はつけません、いずれそれも含めて幸いに港湾計画の改定がなされるわけですね。今お答えになった水産庁、環境庁等との連携を密にしながら、港湾計画策定の中で総体的に湾内の整備、そして浄化を進めていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  114. 橋川隆

    ○橋川説明員 大船渡湾はそのほぼ全域が重要港湾区域として指定されておりまして、港湾法の第三条の規定によります港湾計画を策定し、これに基づきまして港湾の開発、利用保全計画的に推進することといたしております。先ほど先生から御指摘ございましたように、現在、同港の港湾管理者でございます岩手県が同港の港湾計画の改定のための準備作業に着手したところと承知いたしております。  運輸省といたしましては、大船渡湾の環境改善と水産振興地域振興、並びに津波対策と湾域及び背後地域の安全確保等、関係者の意見も聴取し総合的に検討し、適正な湾域利用が図られますよう引き続き港湾管理者を指導してまいりたいと考えております。
  115. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 要望を一つだけお許しいただきたいと思います。  今のお答えのとおり、複合している原因があるわけでございますから、縦割り行政じゃなくて、ひとつ仲よく緊密な協力体制をしきながら、現地とも連絡をとりながら進めていただきたい、ぜひこれはお願いしておきたいと思います。  今その港湾の問題で現地と連絡しておりましたら、最近地震が群発しまして海岸地域に非常に不安が広まっている。湾口防波堤に対する信頼度というのはあるわけでございますが、釜石、久慈の湾口防波堤の建築についてはぜひ急いでいただきたいという電話がありましたので、一つつけ加えて要望しておきます。  終わります。
  116. 松田九郎

    ○松田(九)委員長代理 前島秀行君。
  117. 前島秀行

    ○前島委員 沢藤委員基本的な点を質問されましたので、具体的な点を中心にして質問をしたいと思います。特に、今沢藤委員が言われましたように、人間が生きていくのに大事な三つのうちの二つはやはり森林と密接な関係があるということであります。したがって、その大事な森林に手を加える、開発するということでありますから、一歩間違うと大変な事態になりかねないという問題を含んでいると思いますので、若干細かくなるかもしれませんけれども質問をさせていただきたいと思っています。     〔松田(九)委員長代理退席、杉浦委員長代理着席〕  最初に、いわゆる都市の人たちが、ビルの林立している殺伐とした都市生活に対して自然を求める気持ちが非常に強いということは、私はそのとおりだろうと思っているわけであります。そういう面で森林保健機能保健機能と盛んに言うわけであります。最近の開発ブームとの非常に密接な関係の中で繰り返されて、ある意味では保健機能というのがひとり歩きしているような気がしてならぬ部分があるわけです。そして、今度の法案も、森林保健機能増進するのだ、そのためにとこうなっているわけでありますが、森林保健機能ということと、森林がどういう状況にあるならば今盛んに言われている保健機能を本当に果たし得るのか、その辺の概念というか考え方というか、出発点をまずお聞かせを願いたいと思います。
  118. 甕滋

    ○甕政府委員 森林保健機能でございますけれども、そういった言葉はこれまでにも保安林の目的として「公衆の保健」というふうに使われている例がございますし、また森林組合事業として「公衆の保健の用に供するものの保健機能増進に関する施設」といった例もございます。  その内容でありますけれども森林が山岳、渓谷、湖沼等と相まってすぐれた景観を構成していることがあるわけでございますが、その森林の内部で森林浴休養レクリエーション活動等が行われ、そこを訪れる人たちに快適な環境を提供するという機能があるとされておるわけでございます。なお、森林の有する、気象条件の緩和とか、ばいじん等のろ過作用等も言われまして、生活環境保全機能もあると解されておると考えております。
  119. 前島秀行

    ○前島委員 いわゆる森林の持っている保健機能を高度に発揮させるという観点で森林を見ると、何だかんだと言っても、いじらないということが、より高度に発揮させる条件ではないだろうかというのがまず第一私はあるのです。しかし、一定の便利性というか条件を整備してやらなければ、森林が本来持っている保健機能と都会の皆さんの享受とが一致しない、こういう形で施設整備という問題が出てきていると私は思うのです。したがって、施設整備というのは、あくまでも森林が本来持っている保健機能をより高度に発揮させるための補助機関というか補助設備だと解釈しなければ、本法で言う森林保健機能増進するという形にならないと私は思うのです。そういう角度で目的が書かれているわけでありまして、森林が本来持っている保健機能増進させるその施設は何かというのは、二条で政令で定めるとなっているわけであります。そういう意味で具体的に書かないとは言ってあるというけれども、林野庁としては、保健機能増進させるのだということになれば、より高度に発揮させる施設としてはこういうものがあって初めて保健機能増進させるのだということが想定されなければ、本法の目的を発揮できないと私は思うわけでございます。保健機能増進させるための政令で定めるという二条の設備について、具体的に書かないというのではなくて、そういうものを想定していなければ目的は達成できないわけでありますから、先ほどの串原委員の質問とはもう少し具体的に、その設備について考えている点を明らかにしてほしいと思います。
  120. 甕滋

    ○甕政府委員 森林保健施設についての考え方は、先生が今おっしゃった内容に尽きると思います。また、その法文上の表現といたしましても、第二条の第二項二号にございます「森林の有する保健機能を高度に発揮させるための公衆の利用に供する施設」ということでございまして、その考え方が明定をされておるというように思います。そういった施設につきまして「政令で定める」、こういうことになっておるわけでございますが、先ほども御説明申し上げましたように、この政令上の表現といたしましては、これまでにもある立法例に倣いまして、地域の創意工夫の中でいろいろ出てまいります施設が可能となりますように、例えば休養施設でありますとか、教養文化施設でありますとか、スポーツもしくはレクリエーション施設でありますとか、宿泊施設等というような規定の仕方になろうかと実は思っております。そういったものについて、具体的にどんなイメージがあるかといった点につきましては、これは先ほども申し上げたかと思いますけれども、休憩舎、あずまや、展望台等もございましょうし、樹木園、体験林業施設、野外劇場等もありましょうし、また野営場、遊歩道、林間広場、フィールドアスレチックといった施設もあろうかと思います。これはこれまでにも実際にこういった例がございますけれども、およそそういうところで見られるものが対象になるであろうというふうに思っております。
  121. 前島秀行

    ○前島委員 先ほど長官は、施設の中にゴルフ場は想定しない、こういうふうに言いましたけれども、後でちょっと議論しますけれども、長官の方で想定してなくたって、僕はこの法律から見ると、できる可能性があるというふうに思っているわけであります。その議論はまた後でしますけれども、私は、ゴルフ場もでき得る、可能性がある、こういうふうに見ているわけですが、その場合、先ほど言いましたように、本法の趣旨、それから森林の持っている保健機能を高度に発揮する、こういう観点から見て、ゴルフ場は入るか入らないか。ある森林の持っている機能がマイナスにならなければいいじゃないかという議論ではなくして、積極的な意味森林の持つ機能を高度に発揮させるという観点から見て、ゴルフ場は入るか入らないか、その辺の基本的な考え方をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  122. 甕滋

    ○甕政府委員 森林に設置されますスポーツ、レクリエーション施設といったものを一般的に見ますと、それはスポーツ、レクリエーション活動をする人たちに対しまして、森林の持つすぐれた景観でありますとか快適な環境を提供するということでありましょうから、これは森林保健機能を発揮するということに当たると思います。したがいまして、そのための施設整備することは、森林の持つ保健機能を高めるというふうに言えると思います。  ただ、その場合、これが大事な点でありますけれども、あくまで森林の果たしておるその森林役割を発揮しながらこれを展開するということが基本的な考え方でございます。言いかえますと、具体的には第二条第二項の定義にありますように、「その設置によって森林の現に有する保健機能以外の諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるものに限る。」こういうふうに明定をされておるわけでございまして、したがいまして、これを具体化した総量規制技術的基準から実際の具体的な森林保健施設というものを判断していくということになるわけでございます。
  123. 前島秀行

    ○前島委員 要するに、森林保健機能という立場から見てもゴルフ場は入るということですよね。そういうふうに理解してよろしゅうございま すね。その他の持っている機能を侵さない限りにおいてという、こっちの消極的な部分じゃなくして、積極的に本法の目的である森林の持っている保健機能増進させるという立場から見てもゴルフ場は考えられる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  124. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま申し上げました総量規制あるいは技術的基準に適合しなければならないわけでございまして、それでは今おっしゃいますような一般に見られる形のゴルフ場がそういった基準に適合するかどうか、こういうことになろうかと思います。ただ、具体的に私ども学識経験者の御検討を仰ぎまして現在考えております基準は、総量におきましても、裸地の場合には全森林の一割、草地の場合でも三割ということでございますし、傾斜の問題もございます。また一カ所当たりの施設、これはゴルフ場につきましては、恐らくクラブハウスでありますとか各一つ一つのコースでありますとかいうものが施設に当たることになると思いますけれども、その大きさ、これも傾斜等によりますけれども、一カ所最大で三ヘクタール以内でございますとか、建物につきましては一千平米以内でございますとか、また施設間の距離は五十メートル以上であるとか、物によれば百メートル以上であるとか、それからさらに切り土、盛り土の規制等々がございますので、そういうものに照らしますと、一般に見られるゴルフ場というのは私どもの考えではとても基準に合わない、そういう実態にあると思っておりますので、先ほど来ゴルフ場は想定してはおらないというふうに申し上げております。
  125. 前島秀行

    ○前島委員 要するに長官の考えは、技術基準の方で合えばゴルフ場はええんだ、本来の森林の持っている保健機能増進という観点から見るとゴルフ場は入らない、こういうことだと私は思いますので、これ以上このことについては——もし違ったら長官言ってください。私は今の話から見ますと、この技術基準の方に合致すればええんだということだと思いますので、もし違ったらまた後であれしてください。  そこで、いわゆる現行ある保安林制度あるいは開発許可制度と本法における一連の認定との関係についてお聞きしたいんですが、まず最初に、現在の森林法等々である林地開発許可制度、保安林制度の特徴といいましょうか原則といいましょうか、要点を簡単に御説明願いたいと思います。
  126. 甕滋

    ○甕政府委員 林地開発許可制度は、一般の民有林におきまして乱開発を防止しなければならないといった観点で設けられて運用されておりますことは御承知のとおりでございます。また保安林の解除につきましても、これを他用途に使うために保安林でなくする、林地でなくするといった事態にこたえるための制度として手続が決められておるということでございまして、一つの点を申し上げますと、これは森林森林以外のものにする、こういうことになる場合であろうかと思います。いずれにしましても、これまで森林でございましたし、また、周辺の国土保全その他配慮すべき事項がございますから一定の規制がございましたり、代替施設をつけるという条件がございましたり、これは森林でなくするにしましても、もろもろの配慮をして適正に行っていこうという制度になっておるわけでございます。
  127. 前島秀行

    ○前島委員 林地開発許可制度が出てきた四十九年の森林法の法改正の議事録をいろいろ読んでみますと、当時の開発ブームという形の中から議論をされて、この制度で守れるかどうかというかなりの議論がなされているようであります。  そこで、まず手続的な問題でちょっとお伺いします。  この法の方には出てこないけれども、議事録には出てきますが、局長通達において、いわゆる開発を許可する過程において地方自治体等々の意見を聞け、あるいは、県が許可するわけですから県の森林審議会等々の意見を聞け、こういうふうに局長通達で指導し今日に至っている、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  128. 甕滋

    ○甕政府委員 林地開発許可の場合でございますが、都道府県知事に申請書が提出されるわけでございます。それで知事が必要に応じて、おっしゃいました関係市町村長、都道府県森林審議会等の意見を聴取するということを、これは運用通達で指導をしておるという実態でございます。
  129. 前島秀行

    ○前島委員 そこで、手続のことともう一つ許可の条件の問題ですが、いわゆる林地開発許可森林法の十条には三つの条件というものが言ってありますね。国土保全水源涵養と環境保全、こういう三つの条件の中で、それを侵さなければいいよ、こういう形になっているわけですね。今度は、それにかわり得ると言っては語弊がありますけれども、かわり得るものは何に該当するのでございましょうか。
  130. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま林地開発許可の基準として三つの点があるという御指摘がありましたが、その三つの点が法律に書かれておりまして、それを具体的に運用いたします際に通達におきまして、具体的な開発行為をする森林の植生、地形等の自然条件でございますとか水の利用状況等を総合的に勘案しまして、防災施設、貯水池等の設置計画、あるいは残置管理する森林の割合等、厳正に審査をしているという実態でございます。  今回の法案で出しておりますのは、これが法律におきまして公益的な機能が妨げられないようにという保安林に対する規定等のほかに、具体的に先ほど来申し上げております総量規制あるいは個別の技術的な基準というものを政令で定める、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、その政令におきまして個別の、先ほど来その一端を申し上げましたけれども、もろもろの基準を計数的にこれはこれまでになくきちんと決めていこうというふうに考えておるところでございます。
  131. 前島秀行

    ○前島委員 基準がいい悪いはまた後であれしますけれども、そうすると、これからはこの基準が開発を許可する条件だよ、クリアしておるかどうかということだよ、こういうふうに理解できると思うのです。そうすると、この基準の議論はあれしますけれども、基準に合格さえすれば、手続的には従来の手続とは変更になる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。特に、従来の森林法で言われるこの三つの条件というものは、審議あるいは議論する場というのはこれからはなくなる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  132. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま基準を政令で定めるというふうにあるいはお答えしたかもしれませんが、もしそうだったといたしますと、省令で定めるということでございますので申し上げておきたいと思います。  そこで、現在この法律の二条の二項二号でこの施設についての基本的な考え方が打ち出されておるわけでございますが、そこにはっきり書いてございますように、「森林の現に有する保健機能以外の諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるものに限る。」ということで、この施設の性格といいますか制約がはっきりしておるわけでございます。これはやはり公益的な機能とされております国土保全水資源涵養、さらには環境の問題等を全部含めましてクリアしたものでなければならないということでございます。それでクリアしなければならないわけでございますけれども、具体的な担保がなければなりませんものですから、それは省令によりましてこういうものであればクリアできるというものははっきり示しているというわけでございます。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
  133. 前島秀行

    ○前島委員 技術基準のことはまた後で議論しますからいいですけれども、それがクリアされたとなると、この林地開発許可のときに局長通達で出しているような、市町村の意見を聞けとか県の森林審議会等々で十分反映するように努力せい、こういう通達で出しているような手続は要らなくなりますよということでしょう。
  134. 甕滋

    ○甕政府委員 実はこの法案におきまして関係の地域住民の意向も当然反映していかなければならないという点は含められておるわけでございまし て、具体的に申しますと、保健機能森林の区域でございますとか区域内の施業の方法、森林保健施設整備に関する事項等につきましては、地域森林計画でこれを決めるというふうになっております。したがいまして、その地域森林計画を樹立または変更する場合には、森林法の規定に従って都道府県森林審議会あるいは関係市町村長の意見を聞くということになるわけでございます。  これがさらに具体的な森林施業計画を定める、それで森林所有者をベースにして計画を進めていこうといった場合に、これは当然のことでございますし先ほど大臣からも申し上げましたように、やはり地域振興中心になっております市町村長にお取りまとめの労をとっていただく、関係者の意見調整もしてもらう、こういう役割は当然予定をしておるわけでございまして、地域森林施業計画の認定といったような際にも、市町村長の意見が十分反映されるように都道府県知事を指導していきたいと考えておるところでございます。
  135. 前島秀行

    ○前島委員 そうすると、今度は施業計画の際に森林審議会に諮るからそこで意見を聞くようにする、こういう理解でよろしゅうございますね、いいですね。  じゃあ保安林のことについて伺いますが、ここで保安林の方は、いわゆる住民異議申し立てあるいは場合によっては行政訴訟というものが保障されているわけでありますけれども、今回本法に基づいて施設整備する、それが保安林がかかる、こういった場合は、こういう従来あった異議申し立てあるいは行政訴訟等々は発揮できるのかどうなのか、その辺のところを確認をさせていただきたいと思います。
  136. 甕滋

    ○甕政府委員 保安林の場合のお尋ねでございますけれども、これは解除いたします場合は、保安林の指定目的に即した機能がなくなるということでございまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、一定地域住民の利益に直接的に影響を及ぼすおそれがあるというわけで、意見書の提出の手続が定められておるわけでございます。これに対しましてこの新しい法案の場合には、保健機能を発揮すべき森林として指定された区域内の施設整備につきましては、これも先ほど来申し上げておりますような総量規制あるいは一定の技術的基準に適合する、また保安林の場合には指定目的に即した機能が損なわれないという場合にのみ、計画が行政庁の認定を受けられる、こういうことになっておりまして、この認定を受けた計画に従った施設整備でございますれば保安林の指定目的に即した機能が維持されるということになっております。したがいまして、直接的な利害関係者に対する意見を聞く、こういうことは定められておりません。それで、なお現行の森林法におきましても、いわゆる三十四条許可、伐採許可でございますとか作業の許可に当たっては、こうした住民意見書提出の機会は与えられておりません。これはやはり、森林性が継続する、森林でなくなることによってその利害関係に直接の影響を及ぼすものではない、こういう考え方であろうかと思います。
  137. 前島秀行

    ○前島委員 そうしますと、結局は保安林解除じゃないんだから、その機能制度としては残っているわけだから、結局技術基準のクリアがその保安林を結果において開発するといいましょうか、手をつける条件だ、こういうふうになると思いますね、考え方として。  そこで技術基準について伺いたい。まず、その技術基準の前に総量規制、先ほども議論がありましたけれども、私はどうもこの総量規制というのがパーセントで来ていますからはっきりしないわけでありますけれども、私の理解力が足らないのかどうかわかりませんけれども、この総量規制になる根拠を、長官、悪いですけれども、もう一度説明をしてくれませんか。
  138. 甕滋

    ○甕政府委員 そもそも総量規制の考え方でございますけれども森林性を保ちながら施設整備を行っていく場合に、森林機能の低下を防ぐためには整備対象森林面積に占める施設用地の面積を一定比率以下に抑える必要があるという考え方でございます。そこで現在、裸地利用の場合は一〇%以内、植生状態の利用では三〇%以内が安全を見ても適当であるというふうに考えておるわけでございますが、これは施設設置に伴いまして対象森林の持つ機能の低下を最小限に抑える、それから、その低下分については森林施業の適切な実施等によって補完し得る範囲、こういう観点で検討されまして、そういった数字が適当であろうと考えておる次第でございます。
  139. 前島秀行

    ○前島委員 いろいろな言葉としては出てくるけれども、いわゆる総量規制というならば、率を出してきた場合には分母を規制しなければこれはトータルとしてならないわけでして、何々の条件とか何々を満たせばとかいうことになりますと、先ほどの議論に戻ると別な議論が出てくるのですよ。総量規制をしているから心配するなというなら、分母を規制しなければ総量規制にならないのですよ。規制というのであれば数字でなければ意味がないのですよ。どうですか、長官。
  140. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまあるいはそこまで申し上げるべきであったと思いますが、この総量規制につきましては、おっしゃるように分母と申しますか、対象森林面積が大規模にわたる場合に、施設が特定の場所に集中しまして結局その場所をとれば相当大きなものになってしまう心配がある、こういうお話かと思いますが、それは避けなければならないということで、流域が一番適当かと思いますが、下流城の集落等の分布状況にも配慮して特定の流域に施設が集中することがないように小流域ごとにこれを適用するということが必要であろうかと思っております。  その点が一つと、それから御心配の点に関してつけ加えますと、技術基準の中で一カ所当たりの面積としては規制があるわけでございます。施設間の距離でありますとか、設置箇所の規制でありますとか、切り土高、盛り土高の制限でありますとかいうようなことが伴っておりまして、御心配のような大きなものが一カ所にまとまってつくられる、その結果悪い影響があるのではないかということは避けられるであろうと考えております。
  141. 前島秀行

    ○前島委員 総量規制なんて言わなければ私こんなことを質問しないのですよ。今長官が言ったように、下流住民の云々だとか等々を考えて範囲を決めるというのなら、私はこんな質問はしない。総量を規制するから心配するなと言うからこういう質問をするのでして、そうなると思うのですよ。  それで、先ほど小流域は五十ヘクタールと言いましたね。ちょっとゴルフ場を想定してみたいと思うのですけれども、この小流域というのは、ゴルフ場十八ホールなら十八ホールでもいいです、十八ホール全体を含めて小流域というのですか。そこのところ、どう考えているのですか。
  142. 甕滋

    ○甕政府委員 先ほど申し上げましたように、この具体的な技術基準に照らしますと、ゴルフ場ということで私どもが見ておりますようなものは到底基準には当てはまらないというふうに思います。その判断は結局、五十へクタールということを持ち出すまでもなく、その流域別の下流城にも配慮した総量規制あるいは個別の一カ所等の規制等々からして、それはないのだ、非常に考えにくいというふうに御理解いただきたいと思います。
  143. 前島秀行

    ○前島委員 余りしつこく言いませんけれども、私は、できると思います。それが広範囲になるから、財政的にというか、経営的に買えないだろうとか、あるいは小流域云々だからできないだろうと思いますというふうに長官は言っているわけでしょう。ここで別な意味で、ゴルフ場は許可しないというようなところは法文上に出てこないし総量規制だと言っているけれども、分母は規制してなくて率でいくわけですから私はできると思うのですよ。この総量規制という議論の中からは絶対できるだろう。これは長官はできない、こう言っているので、この法案施行されたときにどうなるか、いずれまた議論をしたいと思います。  次に、技術基準の設定をされてきた、いわゆる三〇%、一〇%等々というのがこれからの決定的な要因になると私は思うのです。この論理構成から見ると、この技術基準を設定したから心配する な、こういうことですから、この技術基準が、いろいろ心配する、あるいは本当に森林保健機能を高度に発揮するかどうかのすべてだろうと私は思うのです。そういう面で、この技術基準というのはどんな経過の中で、どんな形でできたのか、そして、これの根拠というのは自信を持って林野庁は言い得るのか。その辺のところをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  144. 甕滋

    ○甕政府委員 総量規制なり技術基準が非常に重要な役割を果たすものである、それが一つこの法律自体にも不可欠の要素になっているという点はおっしゃるとおりでございまして、私ども、この基準につきましては、技術的に見てきちんとしたものであることはもちろん、それが一般にも納得されるものでなければならないというふうに考えております。  そういった観点で、これまでもこの法律の検討とあわせましてこの技術基準をどのようにつくるかという検討はしてきております。具体的には、その道の専門家でございます大学教授でありますとか、研究者等の学識経験者で専ら構成していただきました研究会を開催して検討を行ったわけでございます。したがって、これは純粋にと申しますか、科学的な根拠に基づいていろいろ数字が出てきておる、こういうふうに思います。当然これをベースにいたしまして、本法成立の暁には省令に定めてまいりたいと考えております。
  145. 前島秀行

    ○前島委員 具体的に数字をもって示したということのプラス面とマイナス面というのは両方あるような気がするのです。ある意味ではかなり縛って有効に発揮するという部分と、逆にそうじゃない部分があると私は思うのです。というのは、土地条件とか周辺のいろいろな条件というのが特に地域によって違ってくるわけですね。例えば、想定する地域住民が住んでいる地域の距離の差だとか山の角度だとか、いろいろな条件が違ってくる。あるいは一つの自然の条件、雨量についても、地域によっても雨の降り方というのは違ってくるのですよ。わずか百メートル、二百メートルでも、山の方はいつも降るところと全然降らないところという形で、数字ではあらわせないような条件が地域地域で非常に違ってくるわけですよ。そういうところは、この数字でもってそれをかなり固定してしまったといいましょうか、これが大きなウエートを占めたところでは非常にマイナスの危険性が伴ってくるわけです。私はそう思うのです。そういう意味で、数字を出してぴしっと取り締まるということのプラス面はいいけれども地域によって事情が違う、条件が違う、マイナス面が必ずあるのだから、これをカバーするのは地域の声なんです。そこで、先ほど私がしつこく聞いたのは、林地開発許可制度とか保安林解除における地域の声、自治体の声、あるいは森林審議会の中で地域実情を一番よく知っている人の声を聞くことが数字で示したマイナス分をカバーする方法ではないか、こういうふうに私は理解するのです。だからそこを大事にしてくれというのですよ。  例えば、私のところは静岡で、新幹線の三島、沼津、富士のあの周辺なんです。愛鷹山というのがあるのです。その裏に富士山があるのです。そしてわずか数百メートルしか離れていないところに通称浮島という湿地帯があるのです。その前後に二十万の沼津市民と富士の人たちがずらっといるのです。これは浮島と言われるだけあって、かつてはちょっと愛鷹山、富士山に雨が降ると田んぼがそのまま流れてしまうという地域だったのです。そしてやっと水路をつけて、せめて流れないようにはしたけれども、依然湿地帯なんです。その地域に学校が建っているけれども、傾きそうな危険性があるという地域なんです。愛鷹山なんか本当に教百メートルしか離れてない。その後ろにはすぐ富士山がある。こういうところにほかの地域と同じように何%なら、三〇だ、一〇ならいいのだということが適用できるのか、こういうふうに言いたいのです。  だから、地域によっては、その自然条件によっては数字であらわしたことの危険性がいっぱいあると私は言いたいわけです。それをカバーするためには、長い歴史を持って、長く住んでいるその地域の人の声を聞くものはちゃんと保証しておけ、担保しておけ、こういうふうに私は言いたいのです。その辺、長官どうですか。数字で示してしまって、それが決定的なウエートを占めていく怖さといいましょうか、マイナス要因は地域によっていっぱいあるのです。それをカバーするのは地域の声なんです。自治体の声なんです。住民の声なんです。これを何らかの形で、本法をやっていく過程において明確にしてもらわないと、とんでもないことが起こらぬとも限らない、こういうふうに私は思いますけれども、どうですか。
  146. 甕滋

    ○甕政府委員 数字を示したことのよさ悪さと申しますか、悪さの面もあるという御指摘でございます。まず数字を示す場合にいろいろ気をつけなければならない点があるわけでございまして、基準の中におきましても、例えば傾斜に応じてどうであるとか、樹冠疎密度に応じてどうであるとかいうきめ細かな検討が実はなされておりまして、それによって、一つの数字ではございませんで幾つかの数字が出されております。ただ、それも数字でございますが、現実にそれを当てはめる場合に、保安林につきましては、この基準と同時にそれと並んで、対象森林の全部または一部が保安林の場合には、その指定の目的の達成に支障を及ぼさないと認められるときに限って認定をするのだということで、数字の基準だけじゃないということは法律でも決めておるわけでございます。  それからまた、具体的にこれを行ってまいります場合に、先ほど申し上げました地域森林計画各地実情に応じて決めることになっておりまして、その実情に応じてこの区域の設定等はなされる、またその際に市町村長等の意見を聞く、こういうことも予定をしておるわけでございまして、御注意の点は十分生かしながら運用してまいりたいと考えております。
  147. 前島秀行

    ○前島委員 長官いろいろ言いますけれども林地許可制度と保安林解除時における住民の反映の仕方と、今度の認定をする過程における手続と、森林計画が出てくるからそこで審議会を開くから意見を聞けばそれでいいんだというのと、私は基本的に違うと思います。長官、地域によって事情が違うということは絶対にあり得るのですから。地域住民によって、傾斜は十五度だ云々だということは全然意味がない場合があるのですよ。同じ十五度でも地域住民が百メートルのところにいるか、千メートルのところにいるか、そこの雨量によって意味は全然違うわけですから、十五度という角度をとったからといっても全然違う。これはこれ以上あれしませんけれども、いずれにせよその辺数字であれしたことのマイナスをカバーする手だてはぜひ考えてほしい。これは通達あるいは政令、省令等々で補完できることでありますから、その辺のところはぜひ検討してほしいということを要望しておきます。  これに関連して、これで見ますと森林の売買が当然予想されるわけでありますけれども、その保安林の売買、所有権の移動に伴う税制の特例措置というのは今度の法案との関係でどうなりますか。当然これから移転が考えられると思いますけれども、特例措置がありますね、その辺の考え方はどうなるのか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  148. 甕滋

    ○甕政府委員 この法案に基づきまして保安林の中に森林保健施設整備するということでございまして、保安林は保安林ということでございます。そこで、売買と申しますか所有権が移転する際と申しますと、例えば不動産取得税のようなことかと思いますが、これも現行で特定の公益的用途に供するために取得する場合で、担税力等の問題もあると思いますが、特例がございます。したがって、原則的にはこれが適用されることになると思います。
  149. 前島秀行

    ○前島委員 私はその辺のところも議論があろうと思います。  それからもう一点、時間がありませんので要望としておきますけれども、いわゆる罰則と監視体制の問題。ここをちゃんとしておきませんと、どんなにいい規定、ルールをつくったって何の意味 もないことでありますから、ちょっとやりたいのですけれども時間がありませんものでやりませんけれども、この罰則と監視体制というものをちゃんとやってほしいということをお願いをしておきます。  最後に大臣にちょっとお聞きしたいのですが、時間があったらヒューマン・グリーン・プランのことについて細かく質問したいと思っていたのです。今林野庁の方がヒューマン・グリーン・プランという計画を持っている。そして私の富士地域の方もその一環として調査活動が始まっているわけです。ある報道によりますと、ヒューマン・グリーン・プランの一環として、国有林を使って百カ所のゴルフ場をつくりたいという構想を持っているやの報道もあるのです。百カ所ですよ。これが違っていたら違っていると言ってもらっていいですけれども。私の地域は、先ほど出ましたリゾート法で富士山のすそ野から伊豆半島の半分がリゾートにかかって、新たに四カ所のゴルフ場が許可された。現在富士山周辺にゴルフ場が四十二あるのであります。それに今度は富士山の国有林をヒューマン・グリーン・プランの対象にして、何をやるかについてはまだ調査段階ですから決まってないと思うけれども、こういう一連の考えからすると、林野庁、一体本来の林野行政というのは何だったのかなということを改めて問いたい側面もあるわけなんです。しかも、ヒューマン・グリーン・プランの計画についても私は全面的に否定はしないのです。ゴルフ場そのものも全面的には否定しないけれども、やはり本来の林野行政というもの、森林の持っている本来的な機能役割というものを大事にした上でヒューマン・グリーン・プランの推進にせよ林野行政をやらないと、何だということになりかねないということを私は非常に心配をするし懸念をする。今度の法案に対するいろいろな懸念も、一連のそういう行動といいましょうか施策の中から出ていることも否定できないものだろうと私は思っているわけであります。  そういう面で、時間が過ぎましたので最後に、大臣、本法の施行と同時に一連のヒューマン・グリーン・プランを含めた施策について大臣の決意を聞いて質問を終わりたいと思います。
  150. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 森林をいろいろな形で活用していくということの中におきましては、基本的には森林保健機能増進していく上におきましても森林制度保全に十分留意をしていくことが大事なことだ、こういうふうに思っておるところであります。
  151. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  152. 近藤元次

    近藤委員長 次に、石橋大吉君。
  153. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私はきょうは社会党では四人目ですから、野球でいえば四番バッターで最強力な打棒を発揮することにならねばならぬわけですが、今前島質問で大体強力打線は終わって、私はきょうは本来の四番バッターとちょっと違いますが、幾つか補足的なことを最初に伺っておきたいと思います。  まず、今度の問題で当面一番関心もあるし重要なのは、ずばり言ってゴルフ場の問題だと思います。そこで、今までかなり詳細にわたって質問がありました。高木課長も朝日新聞の藤原宇都宮大学教授の「論壇」での記述に対して反論を書いているわけですが、その中でも、一般に見られるような形態のゴルフ場は対象にならない、こう明確に言い切っておられるわけであります。午前中の全国森林組合連合会専務理事の泉総熊輔参考人意見でも、森林組合としてもゴルフ場などは今度の場合全く対象にならぬというふうに受けとめている、こういう明快な参考人意見陳述もありました。また、先ほど来から甕長官の話を聞いていますと、一般に見られるような形でのゴルフ場は対象にならないと言っておられるわけであります。前島質問でも指摘されていましたように、こうなれば国民地域住民の理解をするところでは、大部分のゴルフ場は今度はとにかく対象にならない、こう受け取るわけですね。しかし、一般に見られるような形態ですから、一般に見られないような形態があるのかどうか知りませんが、一〇〇%対象にならぬということではない。この際逆の角度からの質問になりますが、一般的だと見られないようなゴルフ場を許可する場合が何ぼかあるとすれば、その場合の具体的な考え方は一体どうなるのか、この辺ちょっとお答えいただきたい。
  154. 甕滋

    ○甕政府委員 私も先ほど来、一般的に見られるようなゴルフ場は想定されないと申し上げておりますが、現実に今開設されておりましたりあるいは造成中のゴルフ場で、この条件を何とか満たせるというようなものはございません。したがいまして、無理無理その基準に合わせてどんなものができるかということになりますと、ちょっと想像できないわけでありますけれども、ゴルフ場とは何かということにもなるかもしれませんけれども、ちょっと練習をやるとかいうような規模のもの等はあり得るかも知れません。ただ、一般にやはり心配されております開発ないしはそれに伴う問題が生ずるということで指摘されておりますゴルフ場といったようなケースは、これはこれまでどおり林地開発許可でありますとか保安林の解除でありますとか、そういうようなことでやはり行われていくことになるのではないかと思っております。
  155. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 しつこいようですが、もう一つ念のために聞きますが、とにかく特別に許可しなきゃならぬものの場合はちょっと想像がつかぬ、こういう話ですが、例えば普通十八ホールのものを半分にして九ホールくらいで、練習用のゴルフ場だと称してそういうゴルフ場を建設しようとした場合には、これはどうなりますか。
  156. 甕滋

    ○甕政府委員 今の具体的な事例に即してどうなるかということは、ちょっと勉強しておりませんので何とも言えませんけれども、全体の規模ということのほかに一カ所当たりの面積、それから施設の間隔というのがございますので、やはり極めて考えにくいと思います。
  157. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 おたくの、林野庁の資料によりますと、林地開発許可状況を見ますと、昭和六十二年の林地開発許可状況、とにかくゴルフ場が、件数で百八件、面積で五千三百九十四ヘクタールあるわけですね。ざっと平均して大ざっぱに見ると、一件当たり五十ヘクタールくらいだと私は思いますよ。単純に百分の一ですからね。全体の件数からすると千百六十八件のうち百八件がゴルフ場。面積は総面積で一万六百五十一ヘクタールですが、半分がもうゴルフ場なんですね。こういうことからいうと、さっき話を聞いていますと、一カ所当たり五十ヘクタールくらいだという話だったんですが、そういう意味では余り規制にならぬのじゃないかなという感じもするわけです。  それはそれとして、余り時間がありませんからちょっと次に進みますが、問題は、今度できる法律の適用から、さっき長官もちょっと触れられましたように、現在の林地開発許可制度あるいは保安林の解除の手続をとる、この境界はどういうところに線があるわけですか。例えば総量規制でさっきから説明があるような条件を超えたときには、現行林地開発許可制度や保安林の解除手続をとる、こういうふうに理解していいのですか、どうですか。
  158. 甕滋

    ○甕政府委員 林地にいろいろな施設整備を行ってまいります場合に、この法案に乗るものにつきましては、その区域でございますとか、その基準でございますとか、これが当然適合したものでなければならないわけでございます。そのほかの目的で森林を転用したいといった一般的に見られるようなケースにつきましては、これは大きいものはもちろんでありますけれども、小さいものにつきましても、林地開発許可なり保安林の解除なり、これまでの手続がこれまでどおりあるわけでございまして、そういった処理になろうかと思います。
  159. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、ゴルフ場はほとんど九九%対象にならぬ、こういうふうに理解してもいいような感じの答弁ですが、ゴルフ場ができた場合に一番心配なのは、御承知のように農薬の汚染ですね。こういう農薬の汚染について総量規制の関係があるのかどうか知りませんが、そこらはどうい うふうに考えておられるのか、参考までにちょっと承っておきたいと思います。最近一番問題になっている農薬です。
  160. 松山光治

    ○松山政府委員 ゴルフ場におきます農薬の使用の問題につきましては、本委員会におきましてもいろいろと御指摘をいただいておるところでございますし、私どもといたしましても非常に重要な問題、こういう問題意識で対応をいたしてまいっておるつもりでございますし、これからも対応していきたいというふうに思っております。その場合、我が国の置かれました気象条件その他からいたしますれば、適切な芝管理といったようなことを考える上では、やはり農耕地におきますと同様に一定の農薬の使用は避けられないということのようではございますけれども、しかし、農薬は、言うまでもなくその使用方法いかんによりましては国民の健康なり生活環境に及ぼす影響が懸念されるものでございます。したがいまして、私ども立場からいたしますと、ゴルフ場の立地を考える際に十分そのあたりに配慮していただく必要があろうかと思いますし、かつまた設計の面でも、いろいろなゴルフ場の例を都道府県からの報告を聞きましたところでは、例えば調整池を設けまして直接雨水が外に出ないというふうな工夫も凝らされているようでございます。そういうゴルフ場が多いというふうに聞いておりますので、そういった意味での工夫を凝らしていただくということがまずあろうかと思います。と同時に、私ども農薬行政を担当する立場からは、御案内の農薬取締法のもとで、残留性等につきましての安全性を確認いたしました上でかつ使用方法を定めまして、農薬の登録ということをいたしてございますので、登録された農薬をかつ適正に使用していただくということが基本的に重要な点であろうというふうに思っておるわけであります。現にそういう考え方のもとに、既に都道府県を通じましていろいろな意味での指導を行ってきておりますし、かつまた都道府県の段階でもいろいろな指導が行われております。また、ことしの八月には全国団体として関係者による安全問題を進めていく団体も結成されたという事情にもございますので、私どもとしては引き続きそういった団体も通じながら農薬の適正使用問題ということの指導に努めてまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  161. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 農蚕園芸局長の答弁としては非常に百点満点の答弁かもしれませんが、現実はなかなかそうはいきませんからね。物すごく農薬を大量に使用してあちこちで大変問題を起こしている状況があるわけですから、さらにひとつ厳しい対応をしていただきたい、こういうことだけこの際要望しておきたいと思います。  もう一つ、これは私が予告しておったわけではないのですが、さっきの前島代議士の質問ちょっと残っていますから私が念のために聞いておきますが、さっき最後に触れました罰則と監視体制の問題です。これはこの法案の中には入っていませんけれども、恐らく森林法か何かで考えられておるのではないかと思いますが、念のためにこの罰則と監視体制についてちょっと聞いておきたいと思います。
  162. 甕滋

    ○甕政府委員 この法案森林施業計画につきまして、施業とあわせて施設整備も的確に行っていく必要があるということで、これが的確に行われるような指導に特に留意していかなければならないことは当然のことでございます。その施業計画につきましては、これは既存の森林法の体系の中に、全国計画地域計画、それに即した森林施業計画という形でしっかり位置づけられておりまして、この施業計画は遵守しなければならないということで都道府県知事の監督権限が及んでおるわけでございます。したがいまして、そういうことが余りあってはならないわけですけれども、この計画に従わない施設整備が行われる、こういうようなことも仮にあった場合には、計画内容に従わないということであればこの法律によって、具体的には第七条、第八条によって林地開発許可とか保安林内の伐採等許可が言うなれば不要になっておるものが不要にできない事態に当然なるわけでございます。そこで、そういった場合には当然その取り消しの問題も生じますし、監督命令として原形復旧とかそういったことが伴うわけでございます。  それから罰則につきましては、これも具体的な条文はちょっと今直ちに出てまいりませんけれども森林施業計画に関する規定に違反をする等の場合にはきちんと第八章の罰則の規定が伴っておりまして、それによって、これはこれまでどおりでございますけれども措置されておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  163. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 森林保健機能増進に関する特別措置法案の関係については一応私の質問はそれくらいでおきたいと思います。  次に、これからの我が国森林林野行政の推進に関して、幾つか基本的なことをこの際お尋ねをしておきたいと思います。  まず一つは、世界の森林保全に対する我が国の責任及びそのとるべき施策についてどう考えておるかということをちょっとお聞きしたいのです。御承知のように十一月四日の朝日新聞の報道によりますと、世界の環境担当相らが参加をして地球温暖化防止を話し合いました大気汚染と気候変動に関するオランダの会議、十一月六、七日、これを目前にしてオランダでは日本非難のあらしが吹き荒れた。「アムステルダムで、日の丸をあしらった上に「ストップ・熱帯林への日本の立ち入り禁止」などと大書したポスターやチラシが出回り、日本製品不買キャンペーンが繰り広げられている。」と報道されております。そして「欧米諸国で日本非難が目立つようになったのは、九月の上旬からだ。政府が国連と共催した「地球環境保全に関する東京会議」が開かれたころだから、この会議が皮肉な結果を招いたのかもしれない。」こういうふうに言われておりまして、かなりこっぴどいレッテルを我が日本は張られている。「自然を食い尽くす日本」オランダ、「日本は世界一の環境破壊者」アメリカ、「公害を輸出する日本」インド、「日本は「環境村八分」の汚名を晴らそうと九月に地球環境保全東京会議を開催したが、表面的なカムフラージュであった」アメリカ、などなど。「とりわけ日本非難が集中しているのが熱帯林問題だ。九月八日には、ボン、ストックホルム、ローマなど少なくとも世界十二カ国二十都市で、日本の熱帯木材輸入に反対する一斉キャンペーンが繰り広げられた。」とも報道されているわけであります。  御承知のとおり、我が国経済が高度成長に入る一九五〇年代から六〇年代の前半にかけて木材価格は上昇し、木材需給が逼迫をするという事情を背景にして、丸太とチップの輸入に対しても関税措置がとられ、外材輸入が激増し、結果として多くの国産材産地は壊滅的な打撃を受けました。現在の我が国は用材需給規模は一億立方メートル、うち外材輸入によるもの約七千万立方メートル、国産材によるもの三千万立方メートル、群を抜く外材輸入国となっているわけであります。木材自給率は、今申し上げましたようなことから穀物自給率と同じように約三〇%に落ち込んでいるわけであります。国内林業の低迷が続くとともに山村過疎化、衰退が続いているわけでありますが、一方で森林率は世界先進国中断トツの高さ、こういうふうに言われながら国内森業を衰退させ、激しい国際的非難のあらしに直面をする、こういう非常に相矛盾したというか、こういう状況があるわけですが、このままでは非常に厳しい貿易摩擦の次は世界的な環境摩擦、森林林業摩擦にさらされて、我が国は国際社会の孤児にならざるを得ないのじゃないか、こういう心配、憂慮がされるわけであります。こういうことについて農林水産大臣としては一体どういうふうにお考えになり、また国際的にこういう問題に、日本が国際的な孤児にならぬようにするためも含めて、どういう措置をとられようとしておるのか、大臣の答弁を伺いたいと思います。
  164. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 世界の森林保全に対する我が国の責務ということでお尋ねをいただいたものと思っております。世界の森林、とりわけ熱帯林の 今日の大きな規模での減少、地球規模の環境問題とも関連いたしまして、早急に対策を要する課題である、大変重要な課題である、このような認識を持っております。  御承知のとおりに、国内におきましては一千万ヘクタールの人工林の造成実績を有する林業国といたしまして、従来から熱帯林保全造成に資するために、専門家の派遣なりあるいは研修員の受け入れなどの技術協力や資金協力等を実施するとともに、国際機関を通じた協力を行ってきているところでございます。今後とも、今お話をいただきましたとおりに、これまでの海外林業協力の実績を踏まえ、熱帯地域における森林の持続可能な開発と失われた森林の早期開発を図るため、より一層積極的な役割を果たしてまいりたい、このように考えているところであります。
  165. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今の問題に関連しまして、もう一つ二つ伺いたいわけですが、二つ目の問題は、私は、さっき言いましたように厳しい国際環境の中で我が国が果たすべき一つの具体的な措置として、国連において国際的な森林保全利用に関する国際森林条約(仮称)を制定すること、あるいは輸入木材に対して一定の課徴金をかけて、森林保全、再生のために運用する国連機関に創設する地球森林基金に拠出をして、熱帯林の消失が著しい発展途上国の森林保全と育成に当たることなどについて積極的なイニシアチブを農林水産省にとってほしい、こういうように思っているわけですが、国際条約の問題は農林水産省の枠を越えてもう少し大きな問題のようですからこれは一応別にしましても、今の地球森林基金の問題等に関してはどういうふうにお考えになっているか、ちょっとこの機会参考にお答えをいただきたいと思います。
  166. 甕滋

    ○甕政府委員 熱帯林保全、環境問題等、積極的に我が国として取り組むべきであるという御意見に対しましては、ただいま大臣からも申し上げましたように、我が国としても積極的に取り組んでいく必要があると考えておるところでございます。これはおっしゃいますように、国際的な連携のもとに取り組む、こういう面も当然あるわけでございまして、現在我が国に本部のございますITTOの諸活動を積極的に援助し、一緒になって推進する、こういう努力もいたしております。また、FAOが熱帯林行動計画を定めまして、各国協調した行動を進めておりますが、これにも積極的に参画いたしまして、熱帯林保全のための活動を進めていく必要があろうと考えております。  もう一つ、お尋ねの地球森林基金というふうにおっしゃいました点でございますが、どういう内容の、またどういう機能のものか、必ずしも十分承知しておりませんので、申しわけありませんが的確な答えにはならないかと思いますが、例えば財源として輸入課徴金を課しまして、それを原資として発展途上国の造林費用等に充てるというような構想もよく言われるわけでございますが、そういった点につきましては、発展途上国を含めましてその木材生産国の立場からどうかという問題が一つあろうかと思います。木材生産国から申しますと、我が国の関税の引き下げ等といった市場アクセスの改善について常日ごろ強い要請があるわけでございまして、その課徴金といったものについてどういった反応になるものか、また、課徴金の負担ということになりますと、当然国内の消費者の納得が得られるかどうかというようなことも考えられるところでございまして、いずれにしましても慎重な検討が必要ではないかという感じがいたしております。その点だけ申し上げさせていただきたいと思います。
  167. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 さっき言いましたように大変厳しい国際環境のもとにありますので、具体的にひとつこたえられるようなことで御検討をいただきたい、こういう要望をしておきたいと思います。  もう一つ、そういう状況の中で、さっきもちょっと言いましたように、最近の我が国森林は、年平均七千六百万立方メートルずつも蓄積を増加させている。大体外材の輸入量とほぼ同じ、こういう状況なんですね。やはり国際的な批判にこたえるためにも、この際、我が国木材生産量というか自給率というか、これを思い切って大幅に上げる必要があるのじゃないか。穀物自給率六〇%の提唱もしておるわけですが、この際木材自給率三〇%は当面五〇%ぐらいに十年ぐらいの間に上げる、こういう努力をすべきじゃないかというふうに考えますが、この点どうですか。
  168. 甕滋

    ○甕政府委員 木材の国内生産向上させて自給率を上げていくべきだという御所見でございます。国内生産を大いに振興しなければならないということは、私どももそのとおりと考えておりまして、もろもろの林業諸施策をこれまでも講じておりますし、今後さらに強力に進めていかなければならないと考えております。その場合、日本の森林の現段階におきます歴史的な局面というものも十分心得て進めなければならないと考えておるところでございまして、先生御承知のように、戦後造林の山が主体でございますので、この資源充実を図りながら本格的な主伐期を迎えるまでに国産材時代の態勢を整備していかなければならないというのが緊急の課題だろうというふうに考えておるところでございます。したがいまして、そういった今後の長期的なもくろみの中で、国産材の供給割合をふやす、それによってまた自給率と申しますか、国産材が主体となる時代を築いていかなければならないと考えているところでございます。
  169. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、森林総合整備法の制定について、ちょっとこの際林野庁の考え方を聞いておきたいと思いますが、いずれ私ども森林総合整備法案なるものについて機会を見て提出をしたい、こういうふうに考えておりますが、今度の森林保健法案もある意味ではそうですけれども、今や森林は、所有形態などの違いを越えて国民共有の財産として維持整備をし、また利用しなければいけない、こういう時代の要請になっておると思うのです。これまでは森林は、主として個別所有による森林経営として市場経済の枠組みの中で造成維持されてきましたが、そういう意味で言うと今やそういうシステムは限界に来ている、こういうふうに思うわけであります。国民が豊かな森林を保有し、その恵みを多様かつ多面的に享受し得るためには、長期的に総合的な視点がますます必要になっているのではないか、こういうふうに思います。現在森林資源の維持培養を図るために森林法がありますけれども、これもさっき言いましたように商品経済メカニズムのもとでの私的所有による個別経営を前提としたものですから、時代の要請にこたえるという点では十分でないんじゃないか、こういうように思っているわけであります。きょうから問題になっております保安林制度の問題にしましても、いろいろと空洞化をしつつあるのではないかというような見方もあるわけでありまして、この際そういう意味では森林の持ついろいろな価値を総合的に発揮できるように整備をしなければいかぬ、こういうふうに思っているわけです。一方で、民有林の二割は大体不在村地主の所有になっておって、地域林業開発や森林利用に当たって非常に問題になっている。不在村地主はこれからさらに拡大をしていくんじゃないか、こういうような傾向もあると私は思うのですね。そういう意味で、森林国民の財産として有効に利用していくためには、この際総合的な総合森林法というような新しい立法が必要になっているのではないか、こういうふうに思いますが、この点について林野庁の考え方をちょっと承っておきたいと思います。
  170. 甕滋

    ○甕政府委員 森林が最近ますます多面的利用が求められている、またさらにそれが今後より進んでいくのではないか、こういった御指摘は、そういう現状ではなかろうかと見ております。今回につきましては、森林保健休養の場としての利用を的確に促進するといったことで本法の御提案を申し上げておるところでございます。今後、この森林がどういった面でまたどういう役割期待されるかということについては、私ども森林を所管する者として注意深く見守っていくと同時に、その機能の一層の高度発揮というものに努めてい かなければならないと考えておりまして、諸施策の充実等に取り組んでいかなければならないと考えております。今後そういうことをいろいろ進めていく中で具体的に法的な措置も必要になるというようなことがございましたら、当然立法措置等についての検討を加えまして、森林林業政策を一層積極的に展開するといった観点から、森林林業政策全体の中で検討をしていく問題かと思っております。
  171. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、地域林業の確立についてひとつ伺いたいと思います。  御承知のように、農業基本法に対する林業基本法が制定をされまして、いわば構造改善政策を通じて経営規模を拡大をして、都市勤労者世帯の所得に負けないような所得林業を通じて確保しながら林業振興を図っていく、こういうことで基本法林政ともいうべきものが追求されてきたわけですが、さっきも言いましたように外材の輸入が膨大にふえたこともありまして、結果、残念ながら林業基本法の最大のねらいは実現をできなかった、こう言わざるを得ないのではないかと思っております。そしてまた、そういう厳しい状況の中でこれから農山村地域振興あるいは林業振興を考えたときに、自治体だとか森林組合中心にして地域で総合的な施策を展開をしていくことがますます重要になってきておるのではないか、こういうふうに思います。同時に、そういうことを考えたときに、これはちょっと農水省の権限を越える話になりますが、現在の林業構造改善事業あるいは山村振興対策事業、さらには過疎対策事業、こういうものはもう少し統合的に、縦割りの縄張りを越えて総合的な効果が発揮できるようなものに変えていかないともうどうにもならないようなところにきているのではないか、こういう感じを強く持っているわけでございます。そういう意味で、林業基本法はこの際山村総合振興基本法ぐらいに変えて山村あるいは地域林業振興を図るべきではないか、こういうふうに思いますが、この点いかがでしょうか。     〔委員長退席、柳沢委員長代理着席〕
  172. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま林業山村をめぐる情勢が大変厳しい中で林業山村地域活性化を図っていかなければならない、そのために既存の法律についてもその再編と申しますか検討を加えていかなければならないのではないか、こういった御所見でございます。  地域振興につきましては、私ども、そのときどきの政策課題ごとに地域の創意工夫等を生かせる形でそれを伸ばしていくということが基本であろうかと思います。そういった中で施策の展開を図っておるところでございますが、また地域地域林業事情、これも生産から流通、加工に至るまでその特性に応じた振興方策が必要でございまして、現実にはその法律並びに法律に伴います施策、助成措置等々によって弾力的に地域資源の有効活用生活環境整備等の措置も展開をしてきておるところでございます。そういった意味におきましては、現在の法律の体系の中でいろいろ必要な点が網羅されて進められておるというふうにも考えることができようかと思います。今後とも、それぞれ法律のねらうところを各地域実情に生かしながら効果的な林業施策を進めていく必要があると考えております。
  173. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 抽象的な答弁としてはそうなると思いますが、なかなか深刻ですので、山村地域あるいは林業の崩壊に一日も早く歯どめがかかるような具体的な措置をとっていただきますようにお願いをしておきたいと思います。  続いて、林業労働者所得保障あるいは社会保障制度充実、こういうことについてちょっと承っておきたいと思います。  御承知のとおり、林業労働者は長い間、極めて不安定な雇用そして非常に危険な重筋労働、加えて他産業には見ない低賃金、その他劣悪な労働条件の中で振動病に悩まされながら頑張ってきておられるわけであります。  私はついこの間、用事がありまして広島県のマツダ自動車の関連の工場を数社歩きましたが、今、中国地方の山間部でありましても自動車関連の工場では時給三千円だというのです。それでもなかなか労働者の確保ができない。下請の関連工場はどこへ行っても同じような話をしていました。時給三千円でもなかなか確保できない。あれこれ手を尽くしてやっと何人かの労働者を手に入れても、このごろの若い人、と言うとまた語弊がありますが、私らと違いまして、ある意味では、今までの日本人にはない個人主義的な個が確立をしているという点では歓迎すべきことかもしれませんが、まず週休がきちっとある、残業がない、これでなかったらさっさとやめていく、こういうわけです。こういう状況は、やはり非常に豊かな時代に育ちまして、生まれてから成人するまでほとんどハングリーな生活は経験をしたことがない、手足を汚してみずから働いたという経験をほとんど持たない、こういう世代であり、また現代の若者かたぎかなと思いますが、こういう状況が進んでいきますといよいよもって、農業もですが林業で働く若い人たち確保はできなくなりつつある、いよいよ決定的な状況を迎えつつある、こう私は思うのです。  ことしの三月末ですか、農林水産省の発表では、農業に従事をした新規学卒者は二千百人ですか、林業は百人おりますかどうか、林業はちょっと新聞に書いてありませんでしたが、恐らく全国でその程度じゃないかと思うのですよ。私は非常に深刻だと思うのですよ。そういう意味で、自然の労使関係や何かにほったらかしておくのじゃなくて、七割、八割に及ぶ森林地帯を良好な状態で保全をしていくためにも、この際やはり若い人たちが積極的に農業や林業に参入できるように、ある程度所得保障を考えるとか、不十分な社会保障制度をきちっと充実をさせるとか、こういうことを今真剣に考えないといかぬところに来ておる、こういうふうに思いますが、この点いかがでしょうか。できたらこれ、大臣にお答えいただくとありがたいのですが。
  174. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘の林業労働者の問題、大変深刻ではないかという御意見のとおりかと思います。したがいまして、林業労働力の育成と所得確保を図っていくために、林業政策の中でも特に力を入れておる分野の一つとして私ども取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。そのため、まず地域林業生産活動、これを活発にいたしまして、持続的にこれを拡大していくということが基本として必要であろうかと思います。それを通じてまたあわせてその就業機会確保する、林業事業体の育成強化も図っていくというようなことが必要であると考えておるところでございます。  それで林野庁といたしましてはそういった観点で、造林、林道、林業構造改善事業等の各種事業はもちろんでございますけれども、それとあわせまして林業労働者就労の安定、就労条件の改善、定着条件の整備について指導を強化する、あるいは就労環境の整備林業従事者の技能習得、安全衛生の確保といった面につきましても、林業労働者が安心して働ける場を整備していかなければいけないというふうに考えております。これからも林業構造改善事業あるいは林業労働者就労安定対策といった面で力を入れて対処してまいりたいと考えております。また、社会保障制度につきましても、労働省あるいは厚生省といった関係機関とも連携を図りながら、何といってもまだまだ各種社会保障制度への加入率が低いという状況でございますので、就労の安定化をさらに一層進めるといったことなどによりましてその加入促進について積極的に努力してまいりたいと考えております。
  175. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 大臣はどう考えておられますか。せっかくおられますから……。
  176. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 林業労働者所得確保、社会保障制度充実について、今林野庁長官から申し上げましたとおりに、地域林業活性化を図るということを基本といたしまして、いかにして定着してもらうことができるか、そういう定着条件の整備に対する指導とか、あるいは林業労働者の方 が安心して働く場所をつくっていかなければならない、こんなような考え方でこれからも努力をしていきたいと思っております。  また、社会保障制度充実につきましては、ただいま長官の方から申し上げましたとおりに、労働省なりあるいは厚生省等関係機関ともしっかりと連携をとりながら、非常に低い水準でありますいろいろな社会保障制度への加入促進につきまして、これからも積極的に努めてまいりたい、このように考えております。
  177. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 非常に深刻な問題ですから、具体的な処置について、直接的な所得保障などを含めて、ひとつ御検討いただきますようにお願いをしておきたいと思います。  最後に都市山村交流の問題についても予定しておりましたが、これも時間がありませんので省きます。  最後に、水産庁に質問をさせていただきたいと思います。日本海における韓国漁船の不法操業の問題について伺いたいと思います。  十月上旬の私の地元紙の報道によりますと、山陰沖での韓国漁船の違法操業、島根、鳥取両県の漁業取り締まり船が確認したところでは、日韓漁業協定や日韓漁業自主規制で合意している規制区域内を中心に八月末までで二千五百五十一隻に達し、過去四年間年間確認数を既に上回って最高となっている。うちトロール船は昭和五十九年以来最高の千八百四隻。月別では、日本側が沿岸百マイル以内の沖合底引きを禁止している六—八月の三カ月間で千六百六十六隻を占めている。韓国漁船が主に違法操業しているのは、隠岐島周辺の期間禁止区域で、トロール漁の中心はカワハギ、底引き綱はハタハタ、カレイ、エビ、カニねらいとみられているわけであります。二年前に合意した同自主規制による共同乗船や指導船派遣による取り締まり強化も違法操業をなくす決め手にはなっていないわけであります。また、漁業秩序の確立をねらって六十一年六月に設置された韓国慶尚南道と島根、鳥取両県の漁業友好親善懇談会も、韓国側の都合で第二回会合が一年以上延期されたままになっているわけであります。  そこで、以下二、三点について簡単にお伺いをしたいと思います。  まず一つは、再三の自主規制合意にもかかわらず、ことし特に韓国船の違法操業が激増している理由、背景を水産庁としてはどういうふうにお考えになっているか。二つ目は、水産庁は鳥取、島根両県の要請を受けて現地を視察する、こういうお考えもあったようですが、その視察の結果は一体どういうふうにお考えになっておるのか。それから三つ目は、さっき言いました十月に鳥取市で開催予定となっていました第二回漁業友好親善懇談会の開催はどうなったか、開かれたのか開かれなかったのか、開かれたとすれば結果はどうなったのか、開かれていないとすれば今後の見通しはどうか。四つ目は、韓国漁船の違法操業がこのまま年々増加をしていくとすれば、日本海の漁業資源は急速に枯渇を招くことになりますし、何よりも、減る一方の漁業資源を何とかしてふやすために必死になって努力しておる鳥取、島根両県の水産試験場や水産当局などの努力は全く水泡に帰してしまうわけであります。こういう点に対して、水産庁としては一体どういうふうにして今後対処をされようとしているのか、歯どめをかけようとしておられるのか。この点だけは、大変申しわけないですが、ちょっと伺って終わりたいと思います。
  178. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お話ございました日本海における韓国漁船の違法操業問題でございますが、まず違反操業、これは日本側の認識でありますが、山陰、北陸の沖合水域におきます韓国漁船のいわゆる違反操業、昨年は一月から十二月の間で二百三十七隻という認識を持っておりますが、本年に入りましてから増加いたしております。一月から十月までの総数で五百三隻を数えております。違反の内容といたしましては、底びき網漁船によります違反、それからアナゴかご漁船による違反、これが大宗を占めておる、こういう状況になっております。  この増加の原因はいろいろあろうかと思いますけれども、韓国政府も自主取り締まりにかなり力を入れておりますけれども、末端の漁業活動に依存する関係者の漁業意欲というものが大変強いものがあって、韓国政府の取り締まり努力にもかかわらずこのような事態を招いておる。我々も大変遺憾な事態であると思っておりまして、機会あるごとに先方に注意を喚起し、また抗議をしておるわけであります。本年の六月には、我が方の大臣から先方の部長、大臣に対しまして抗議を申し入れ、九月に入りまして、たまたま上旬に日韓議員連盟の総会がソウルでございましたので、その機会に、議員外交の一環といたしまして、韓国側議員及び関係の役所、団体に対して強い申し入れをしていただいたわけであります。さらに九月の末には、国連総会に出席をいたしました双方の外務大臣の間の話の中でこの問題を強く提起をしたわけでございます。また、十月の中旬でございますけれども、日韓の取り締まり実務者の会議を東京で開きまして、違反の実情について問題を強く指摘し、韓国側の取り締まり強化について申し入れを行いました。これに対して韓国側は、韓国政府としての取り締まりの強化なり、あるいは国内措置の強化について若干の回答を寄せておりますけれども、まだ残された問題もあるわけでございます。  こういった状況に対して、関係漁業者も大変不満を表明をしておりますので、私ども地域に、もちろんこれは、取り締まりの実施に当たりましては関係の県のお力もかりながら、海上保安庁あるいは水産庁の取り締まり船、各県の監視船のお力もかりて総合的に日本側も取り締まりをしておるわけでございますけれども、やはり韓国側の取り締まり努力というものがどうしても必要であるというふうに考えて、今後ともその努力は続けていきたいと思っております。また、国内におきまして、関係者の御認識あるいは問題提起に対応しながら、私ども関係者を地方に派遣をしていろいろ実情をお伺いし、我が方自身の取り締まりの強化あるいは先方に対する申し入れの基礎づくりをしておるわけでございます。今月の初めに私の方の担当部長を山陰地域には派遣をいたしまして、漁業関係者あるいは団体の関係者と話し合いを行わせております。  また、お話ございました地方公共団体レベルでのこの種の問題に対するコンタクトがあることは承知をしておりますけれども、今御指摘のございました島根県、鳥取県と先方の慶尚南道の間での話し合いについては、私ども詳細な情報を得ておりません。必要がありますれば、また関係者から事情を聞いて、実質的な都道府県段階での接触等々が可能となるようなお手伝いはするように努めたいと考えております。  それから将来に向けての問題でございますが、先ほど申し上げました実務者レベルで行いました九月中旬の会議で、先方も取り締まり強化のために一連の措置を新しく打ち出しております。例えば韓国側の取り締まり船の隻数をふやすとか、あるいは集中取り締まりをしていくとか、それから我が方の水域へ出漁する大型トロール船についての略号表示を大型化するとか、それから国内のいわば取り締まり措置の一環としまして罰則を強化するというふうなことを約束をしております。早急にこれを実行していくように我々督促をすると同時に、この会議の際に我が方から提起したほかの問題もございます。そういったものが着実に実現をして、実効性のある取り締まりが確保できるように、引き続き事務レベルでの協議もできれば年内にもう一回はやりたいなということで接触を図っておるところでございます。  いずれにしましても、関係の漁民の方々に大変御心配をおかけしていること、我々も大変遺憾に思っておるわけでございますが、韓国との間で、大変歴史的に特別の関係もある国でございます、友好関係を保持しながら、漁業については厳然たる態度で、この取り締まり効果というものを発揮できるようにさらに努力を続けていきたいというふうに考えておる次第でございます。     〔柳沢委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今御答弁をいただきましたように、大変関係地域の漁業関係者の皆さんにとっては深刻な問題でございますので、今後ともひとつよろしくお願いをしたいと思います。  山の問題から海の問題まで大変広範囲にわたりまして御答弁いただきましてありがとうございました。これで終わります。
  180. 近藤元次

    近藤委員長 次に、吉浦忠治君。
  181. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、森林保健機能増進に関する特別措置法案について、基本的な事項について質問をさしていただきたいと思います。  後で同僚議員の藤原、水谷両氏から事細かに質問がありますので、私は基本的なことのみに限って質問を申し上げたい、こう思っております。  まず、立法に至った経緯が明確でないではないか、こう思うのです。要するに、その必然性はどこにあったのか、また何が発端となってこの法案を提出をなさっておられるのか。いわゆるリゾート法施行に伴いまして、マスコミ等で報道されましたように、他省庁から保安林あるいは林地開発許可規制について適切な配慮を行うことが求められたことに対する対応ではないのか、こういうふうに私は思いますけれども、その点についてお伺いをいたしたい。
  182. 甕滋

    ○甕政府委員 最近、何と申しましても森林浴でございますとか、森林レクリエーション活動といった保健休養の場として森林を利活用するということに国民的に期待が高まっているわけでございますが、これは林業の側からいたしましても、保健休養の場として森林整備することによりまして、都市との交流でありますとか都市住民に対して林業への理解と協力を求めるとか、こういった面でみずからの活性化を図っていきたい、こういう希望があるわけでございます。これは森林の持つ多面的な機能に着目しまして、森林整備をより高度にしていきたいという林業政策の本来の延長として私どもも伸ばしていくべきであろうというふうに考えておるところでございます。  ところで、そういった森林保健休養の場として利用していくという点につきましては、現実に各地でいろいろ試みがなされてきておりまして、これは非常にうまくいっているところももちろんあるわけでありますが、中にはいろいろ問題を抱えておるというところもなきにしもあらずでございます。私どもといたしますと、こういった現地の動きをよくトレースいたしまして、今後これを伸ばしていくということを、先ほど申し上げたような基本的な趣旨から考えていこうということが、この法案を検討いたしてきた動機の一つにもなっておるところでございます。  実態上どんな声があるかといいますと、森林に関する法制度がこの森林総合利用といった点で必ずしも明確な位置づけになっていない、それから大勢の森林所有者がまとまってこういった整備計画をつくっていくという手続も実際にはない、またさらには、森林保全上必ずしも適切な施設整備が行われない反面、肝心の森林の施業がおろそかにされている例も見られるというようなことで、やはり施設整備森林整備を一体的に的確に行っていくような仕組みが欲しい、こういう声が出てきておりまして、それにこたえていかなければならないと考えた次第でございます。  現実に、全森連でございますとか町村会等の要望もそういった角度から私ども承っておりまして、本法案につきましては、これを的確に推進していくためには森林関係者になじみの深い森林計画制度の一環として位置づけて、この森林保全に留意した施設整備促進していこう、こういう考え方で臨んでおるところでございます。
  183. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 順番に通告をいたしておりましたけれども、時間の関係でちょっとゴルフ場関係の方を先にお尋ねをいたしておきたいと思います。  本法案については、新聞紙上等でゴルフ場の造成を容易にする保安林制度の改悪であるとの指摘をされているわけでありまして、この件について後ほどに技術的基準を質問するところでまた伺いたい、こう思っております。  まず、私の選挙区、いわゆる房総半島ですけれども、これを空から見ますとほとんど大地が虫食い状態のような、いわゆるゴルフ場が散在しているのが目立つわけであります。極端な言葉で言えば、大地をこねくり回して、そして土地の形質を全く変更して造成されたものが多い、こう言われるぐらいゴルフ場が多いわけであります。航空写真をごらんになればおわかりになるとおりでございます。今は国民の関心が大変ゴルフに向いておりまして、先を競うように造成の申請なりが出されているわけでございます。国民の関心がこういうふうにあるときにはいいのですけれども、まあ去ることはないだろうとは私は思いますが、ちょうどボウリングのような、そのブームが去った後に廃墟と化すような形にならないとはだれしも断言できない。そうしてみますと、森林に大きな穴だけが残ったということにならないようにしなければいかぬ。できれば現状の乱開発状態から、今後のゴルフ場の開設については慎重であるべきだというふうに私は思っております。それは、私はゴルフができないからこういうことを言っているわけでは決してございませんので、そういうことを申し上げたい。  ところで、ゴルフ場の農薬の大量使用ということは先ほどから同僚議員から質問が出ておりましたけれども、これの環境への影響というものが最近特にクローズアップされてきております。日本のゴルフコースというのは、私はできなくて発生地等を調べて恐縮でございますけれども、イギリスに発生した、こう言われております。そして、そのイギリスから見て、比較しますとゴルフ場そのものが物すごく整備され過ぎている。いわゆる庭園の中でプレーをしているようだ、こういうふうに言われている学者もいるくらい。英国からアメリカ、アメリカから日本というふうに入ってきているうちに、より日本的にゴルフ場は改造されたもの、こう思うのです。そのおかげで農薬の大量投与による管理が問題になってきている。生態系の慢性的な被害が心配されてきておりまして、私の千葉県も、千葉県ゴルフ場等の開発事業に関する指導要綱というものがつくられているわけです。こういう要綱で指導に当たっておりますけれども、これは適切かどうかはこれからの問題でございますが、農水省は今後どのような取り組みをなさるのか、今までどういう取り組みをなさってこられたのか、まずこの点を伺っておきたい。
  184. 松山光治

    ○松山政府委員 ゴルフ場におきます農薬の使用の問題でございますが、農薬の使用、言うまでもなく人の健康なりあるいは自然環境の保全といった私どもにとってかけがえのない問題にかかわる重要事項、こういうふうに厳しく受けとめておりまして、そういう観点から適切な対応を行ってきたつもりでございますし、またこれからも行っていきたいというふうに考えておる次第でございます。  言うまでもないことでございますが、やはり我が国の場合、高温多湿だという条件の中で、ゴルフ場におきます芝等の適切な管理をやっていく上におきましてはどうしても一定の農薬の使用は避けられないようでございます。当然、その使用方法いかんでは健康なり自然環境なりに悪影響を及ぼすという問題があるわけでございます。そういう観点から、御案内のように農薬取締法に基づきまして毒性なり残留性等につきましての厳密な試験データをもとにして環境庁長官なりあるいは厚生大臣なりがお決めいただきます諸基準、それに則した形で厳正に私どもの方で検査して、安全性を確認いたしました上で使用方法も明らかにして登録をする。それで、その登録をした農薬をきちんと使っていただくというのが私ども立場でございますし、また、指導方針でもあるわけでございます。  今までどういうふうなことをやってきたのかということでございますが、近年におきますゴルフ場における農薬の使用問題への関心の高まりということも厳しく受けとめまして、これまでの指導に加えまして昨年特にこの点につきましての通達を発しまして、都道府県を通じた適正使用問題に 取り組んでおるところでございます。  指導いたしておりますポイントは、やはり登録された農薬を使用してもらわなければいかぬ、同時に、使用方法なり使用事項なりの使用上の注意事項というものをきちんと守っていただかなければいかぬ、また環境条件を考慮いたしまして必要な危害防止対策ということも十分やってもらわなければいかぬ、こういうことでの指導を行っておるわけでございます。同時に、毎年都道府県等と連携いたしまして実施いたしております一般的な農薬危害防止運動がございますけれども、ことしもその中でゴルフ場の農薬の安全使用の徹底ということを行ったつもりでございます。  各県における取り組み、それぞれの地域の事情に応じてさまざまな取り組みがこれまで既に行われてきております。市町村なりゴルフ場なりあるいは農薬の販売業者に対しまして文書で指導したとか、あるいはグリーンキーパー等のゴルフ場の管理者の講習会を開催したとか現地指導、そのほかに千葉なり山梨等の県ではゴルフ場に対する指導要綱の制定といったような形をもった指導も行われております。この間、残念ながら適切を欠く使用が見つかったという事例も一部にございまして、そういう事例については即刻適正を期するような指導が行われたという報告を受けておるところでございます。  私ども、今お話し申し上げましたような考え方で都道府県を通じての指導をこれからも強めてまいりたいというふうに思っておりますが、一方、ことしの八月、民間の関係者によりましてゴルフ場等緑地におきます農薬の安全対策を推進する全国団体といたしまして、任意法人でございますが、緑の安全推進協会というのが結成をされております。したがいまして、こういった団体との連携も図りながら、緑地におきます適正な農薬の指導という点をさらに頑張っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  185. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ゴルフは私やらないけれどもゴルフ場の近所をよく歩くのですが、基準を守っていらっしゃればある程度、自然発生的なもの、動植物、そういうものが完全に死滅するような状態にはならないと思うのです。そちらに座っていらっしゃる方はほとんどゴルフをおやりの方だと思うのですが、ゴルフ場には一匹も蚊がいないのですね。一匹も蚊がいない、これは普通常識では考えられません。こうなると、今局長答弁にもありましたけれども、基準をきちっと守っていてそこで蚊がいないような状態にはならない、こう思うのです。ですから、やはり示された以上、徹底的なその範囲内の取り締まりだけはしなければいかぬ。  私も不勉強ですけれども、ゴルフ場が完成されると、これはどこの所管が監督しているわけですか。造成なり農薬部門は農蚕園芸局長が今答弁していますが、完全にでき上がったゴルフ場というのは省庁はどこがやっているのですか。
  186. 甕滋

    ○甕政府委員 所管の問題で私がしかと申し上げる立場ではございませんけれども、ゴルフ場につきましてはいろいろな行政的な面で通産省がおやりになっていることはあると承知しております。
  187. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 飲料水の問題でもう一点だけ伺っておきたいのですが、現に飲料水として水源涵養保安林からの水を利用しているところも少なくないというふうに思っておりますが、こうした生活に密接に利用されているような水源涵養保安林、これは今後ゴルフコースの造成を行わせるべきではないというふうに私は思いますけれども、この点について長官、どういうふうにお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  188. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまのお話は飲料用水として直接使用しております水源涵養保安林等にお触れになったかと思いますが、これはもちろんゴルフ場等として開発することは可能な限り避けるよう指導しておるところでございます。ただ、やむを得ずその保安林の地域にかかる場合等にはかわりの水源を確保するというふうに、飲料水を利用している受益者が承知できるような条件を整えた上で保安林の解除の申請をするというような指導を行っておるわけでございます。そういうふうに受益者の同意もあり、申請がありました場合に、用地選定の妥当性、防災施設の設置等の各要件についても厳正に審査をいたしまして、かつ、代替保安林の指定も条件にするといったこともいたしまして解除をしているという例でございます。
  189. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ゴルフ場の件はそれくらいにさせていただきまして、もとへ、本論に戻しましてこの法案の問題について伺っておきたいのですが、特措法でなければならない、なぜ特措法になさったのかという点を伺っておきたいと思うのです。なぜ森林法の改正として提案なさらなかったのか。  本法案は、農林水産大臣保健機能増進を図るべき森林の設定、整備に関する基本的な事項について基本方針を定め、全国森林計画及び地域森林計画等を追加して定めること、また、林地開発許可等の特例を設けること等、諸事項が森林法に対する特別立法的性格をあらわしている、こう思うわけでありますが、国民保健休養の場としての森林の存在価値は今後ますます増加するものと考えるわけです。そうしますと、森林行政を行う上から、できる限り一元的に改正する方が国民にわかりやすいのではないか、こう思います。一部には、今回の林地開発許可等の特例を設けたことは、明治三十一年に森林法が制定されて以来、約九十年日本の森林を守ってきた保安林制度が今崩壊の危機にさらされている、こう指摘する向きもあるわけでありまして、特措法としたその理由を明確にしておく必要があるのではないかと私は考えておりますけれども、長官、どういうふうにお考えかどうか。
  190. 甕滋

    ○甕政府委員 まず、この法案のねらいといたします森林保健機能増進を行ってまいりますには、森林に入林する人々の利便性と申しますか快適性と申しますか、そういった角度から、そのための施設整備するということが欠くことができない要素でございます。ところが、現行の森林計画制度は御承知のとおり森林自体の施業に関するものでございまして、施設整備については触れられておりません。そこで、この施設整備を含めて森林計画制度のもとに森林保健機能増進を適切に位置づけまして規制もしていくというためには、新たな法制度が必要だということになるわけでございます。この場合の法律として森林法の改正でというお話といいますか、その御指摘もあったわけでございますが、どうしても森林法の体系を超える部分が出てくるということでございまして、新法案を特別措置法という形式で提案をさせていただいているところでございます。  具体的に法体系上の問題として森林法を超える部分というのは、例えば森林保健機能増進に関しまして農林水産大臣基本計画を定めるというような点、それから森林組合事業利用の特例を設けるというような点、また、森林法の目的に加えまして今回の森林保健機能増進といったことが国民の福祉の向上に寄与するということも目的に掲げているといったこともございます。また、森林法森林全般についてその対象としておりますのに対し、この法案は、保健機能増進を図ることが必要だ、こういう角度から、一部の限られた森林対象としているというようなことがございます。そこで、政府内部でもそういった点を検討いたしまして特別措置法という形式にさせていただいておるところでございます。  ただ、ちょっとお触れになりました保安林制度等が緩められる心配があるという声もあるということにつきましては、森林計画制度を土台とするといった森林法との連携はしっかり書き込んでおるところでございまして、それを緩めるとかいうことではないということもつけ加えさせていただきます。
  191. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 わからない点がありますのでお尋ねをいたしているわけですが、本法案で、保健機能増進を目的とするものであります、こうなっていますが、その法文でも「保健機能を高度に発揮させる」という文言を使用しているだけでありまして、その保健機能とは何であるか、明確にこれは定義されていないのではないかと思うのです。私もその保健機能ということについて考えてみま したけれども、何と説明していいのか、森林法を見ますと、保健保安林というものがあります。その指定の目的は「公衆の保健」ということになっております。また、森林組合法においても類似の用語が使用されているというふうに聞いておりますけれども、保健または保健機能もおおむね同じ意味だろうというふうに私は思います。そうしますと、森林法に保健保安林制度、こういうものがあるわけですが、こういうものがあるにもかかわらず屋上にまた屋を重ねる本特措法案を提案した根拠が薄れてくるのではないかというふうに思うのです。私はやはり森林保健機能の定義を明確にしておくべきではなかったのか、こう思うのですが、この点教えていただきたい。
  192. 甕滋

    ○甕政府委員 森林というものが国土保全水資源涵養あるいは保健休養の場の提供等も含めまして公益的な機能を有しているというふうに一般に理解されておるところでございまして、この森林保健機能というのも公益的機能一つとして、すぐれた景観あるいは森林浴等の場になるということを通じましてそこに入林いたします人たちにも快適な環境を提供する機能があるわけでございます。これが森林保健機能ということで一般に理解をされておるところでございます。  法律上どうかということでございますけれども、そういった目的のために森林の施業とあわせて森林保健施設整備するといったところに眼目がございますので、森林保健施設としては、森林の他の機能を損なわないものである、こういう前提のもとに政令におきまして具体的には定義をして決めていく、こういう構成をとっておるところでございます。
  193. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今定義について答弁をお聞きしましたけれども、林野庁として具体的にどのようなものを想定なさっておられるのか。言葉をかえて言いますと、森林保健機能としてどの程度の範囲まで考えていらっしゃるのか、お答えをいただきたい。
  194. 甕滋

    ○甕政府委員 森林保健施設の具体的な定義と申しますか、どんなものが当たるのかといった点でございます。  これは、今のように政令で定める、こういうことになっておりまして、政令におきましては、各地域がいろいろ工夫をいたしまして保健機能増進に役立つ施設を考え出してまいりますものはその目的に沿ってそれが極力認められていく必要があるという角度から、休養施設でございますとか教養文化施設でございますとか、スポーツもしくはレクリエーション施設でございますとか、それらに伴います宿泊施設等という規定をしていこうと考えておるところでございます。これは現実には各地で既にいろいろ本件についてのお取り組みがございまして、幾つかの事例ないしは蓄積があるわけでございますが、今申し上げましたその施設の中では、やはり多く見られますのは休憩舎でありますとか展望台等、樹木園、体験林業施設、野営場、遊歩道、林間広場等、そういった森林と一体となってこれを利用していくような施設が念頭にあるということでございます。
  195. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 森林保健機能増進に関しては、大臣が基本方針を定めて全国森林計画において基本的事項を定めることから、国有林についても本法案趣旨に則して対応していくべく、本法案の第十条で「国有林野の活用について適切な配慮をするものとする。」こうされているわけでありますが、具体的にどのようなことを考えておられるのか、お答えをいただきたい。
  196. 甕滋

    ○甕政府委員 この法案森林保健機能を高めていこうという対象民有林でございますけれども、隣接する国有林も含めてこれを一体的に整備していくことがその森林保健機能増進をより一層進める上で必要であるという場合があるわけでございます。そういった場合に、市町村あるいは森林所有者等から、森林保健施設整備のために国有林野を活用してもらいたいという要望が当然あり得るわけでございまして、そういった場合には国有林野事業との調整を図りながらその活用を進めていこうという趣旨でございます。その場合、国有林野法あるいは国有林野の活用に関する法律等に基づきまして、具体的には売り払いでございますとか貸し付けでございますとか使用許可等を行っていくということになると思います。
  197. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、保安林の指定の解除の場合についてお尋ねをしておきたいのです。  住民意見書の提出の手続がこういう場合にはされるわけですけれども、本法案では盛り込まれていないわけですから、この点が保安林制度の改悪につながるという批判もあるわけです。保安林としての機能が維持されてきているという理由づけから盛り込まれなかったということでありましょうけれども、最近の諸情勢から見まして、富士山ろくの名水で名高い柿田川と申しますか、ここでさえもその汚染が問題化しておるわけです。ある日突然にそういう大規模な開発がなされて、住民の方の感情を逆なでするようなことになりはしないかという心配をいたすわけです。いわゆるコミュニケーションの不足がもとで招かざる誤解を生むようなことになりはしないかということで、この法案の中で、何らかの形で住民意見を聞く方途を残すべきではなかったのかな。例えば知事が施業計画の認定に当たっては都道府県森林審議会に諮問をする、それでその審議会の中で住民意見を聞くことを義務づけられるとか、こういう措置をきちっととるべきじゃなかったのかな、こういうふうに思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  198. 甕滋

    ○甕政府委員 今回の法案によりまして、施業と施設を一体的に展開していく、そのための計画の認定を行う、こういう仕組みを御提案申し上げておるわけでありますが、これは、これまでも申し上げておりますように、森林の他の機能に支障を生じないこと、保安林の場合にはその保安林の指定目的を損なうことがないことということが基本的に法律上決められておる事柄でございます。したがいまして、それを受けた総量規制なり個別の技術基準なりは、当然その範囲の中で運用されるべきものでございますし、またそういうものとして具体的な基準も検討してまいっておるところでございます。したがって、今後の運用に当たりましては、その基準に照らして誤りのないような運用が行われるという意味で、これはこれまでの保安林を解除するとかいった、森林森林でなくする手続とは基本的に異なるという点があるわけでございます。  ただ、御指摘のように具体的な計画をつくる際に何らか住民意見を反映できる手法は望ましいではないか、必要ではないか、こういった点につきましては私どもそのとおり考えておりまして、まず地域森林計画でその保健機能森林の区域でございますとか施業の方法でございますとか保健施設整備に関する事項を決めるわけでございますが、その地域森林計画につきましては、森林法の規定に従って都道府県森林審議会、関係市町村長の意見が徴されることになっておるわけでございます。さらに具体的な制度の運用に当たりましても、市町村長が地域振興中心でございますので、その意見を聞くというようなことも県を通じて十分指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  199. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 技術的な基準について伺っておきたいのです。  先ほども問題になっておりましたけれども、朝日新聞の「論壇」でこの法案に関する議論を読ませていただいたわけですが、林野庁は、厳しい総量規制技術的基準を定めることで保安林の機能は維持されるというふうに主張されております。法律に委任されたその総量規制技術的基準であるから容易に変えられないとは考えられるが、強化することはあっても緩めるようなことはないとしてもそういう点どういうふうに理解していったらいいのか、この点お答えをいただきたいと思います。
  200. 甕滋

    ○甕政府委員 御指摘の基準の点でございますけれども、これは「森林の現に有する保健機能以外の諸機能に著しい支障を及ぼさない」というふうに限られておるわけで、その趣旨を体したものと して決められるわけでございます。これは法律で明定されておる方針でございますので、今後ともこれに反するといいますか、それをないがしろにするような内容総量規制なり技術的基準は定めることができないということでございます。  この基準そのものは、この法案趣旨に忠実に沿いまして技術的な観点から、現在の学問的な、あるいは科学的な知見の上に立って定めるわけでございますので、今後そういった科学的あるいは学問的な面での進歩と申しますか、その蓄積によってその必要が生じたようなときはまた別でありましょうけれども、現段階で今決めようとしております規制を変更するというようなことは全く考えておらないところでございます。
  201. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この技術的基準は相当厳しい内容を織り込むことを検討されているようですけれども、そういうふうに説明を受けたんですが、そうなりますと、この基準にのっとってゴルフコース等の造成を行うことは不可能になりはしないか、こう思うのですが、そういうふうに解釈していいのですか。
  202. 甕滋

    ○甕政府委員 私どもが一般的に見ておりますようなゴルフ場は、この基準に合わないであろう。したがって、私どもはゴルフ場がこの森林保健施設になることはまずなかろう、こういうふうに思っております。
  203. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この法案技術的基準が厳しい内容であるとすれば、現存の手法であります林地開発許可基準に則して開発しようとすることになると思われるわけでございますが、それではこの法案をつくる意味が半減するのではないかと思うのです。  また、現存の林地開発許可制度では乱開発の防止が達成し得ないという問題が生じているところから、林地開発許可基準の強化は図られるべきではないかと考えるが、この点、どのようにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  204. 甕滋

    ○甕政府委員 林地開発許可制度でございますが、これは災害の防止、水源の涵養あるいは環境の保全等に支障を及ぼさないように配慮しながら、秩序ある適切な森林の開発が行われるように、その適正な運用についてこれまでも指導してきているところでございます。したがいまして、今後ともこの林地開発許可制度につきましては、森林を言うなれば転用する、森林でなくするといった面におきます規制としては適正な運用を図ってまいりたいと考えております。  その場合、現在の社会経済の発展につれまして国土の開発が進んでおるところでございますし、森林の有する水源涵養、災害防備、生活環境保全といった公益的機能の果たすべき役割も急速に高まっておるところでございますので、この林地開発許可制度におきましても一層その重要性が感じられるところでございます。そのため、今後これをどういう運用をしていったらいいか、今回この法案に基づきます具体的な基準等が明らかにされた折でもございますので、この林地開発許可制度を今後どうするかといった点も検討課題であろうというふうに考えております。
  205. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その林地開発を行う場合に、開発する者は残置森林を四〇%残せば開発が可能のように運用がなされておるわけですが、この場合の残置森林は、自然森林土地の形質を変更した後に植栽によって生ずる造成森林をも含めて運用されておるわけですから、この自然森林造成森林の割合を明確にさせずに運用で行われるために大規模な造成によって土地の形質がまるっきり変更してしまうようなことが平然となされはしないかという問題、これは問題じゃないのか。この点、運用に任せずに明確にすべきではないか、こう思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  206. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘ございましたように、確かに現行制度の運用に当たりまして、開発行為に伴う森林を残置する、その際自然森林が原則だということにしておりますけれども、やむを得ず一時的に土地の形質を変更した後で、これはなるべく早くということでございますけれども、伐採前の植生回復をする、森林造成をするというようなことがございます。私どもは、森林保全という観点からいたしまして、安易に造成森林の比率が拡大されないようにということでこれまでも指導してきております。  ただいま御示唆がございました自然森林造成森林の割合をはっきり決めた方がきちんとした規制になるのではないかといった点につきましては、先ほど申し上げました林地開発許可の要件もこの際見直し検討をしていきたいとも考えておりますので、その中でそういったことの可否等も含めまして検討させていただきたいと思っております。
  207. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 現行の法制では、一ヘクタール未満の林地の開発が連続して行われるような場合、いわゆる林地開発許可基準では縛れないという現実があるわけですね。こういう大面積の開発を結果的に許してしまうというふうに、いわば脱法行為とも見られるような不心得者が出ないとは限りませんから、山林が虫食い状態になってしまう。こうした弊害は何としても防止しなければならないというふうに思うのですけれども、こういうことに対するお考えはどういうふうに思っていらっしゃるのかどうか。
  208. 甕滋

    ○甕政府委員 御指摘の不心得者と申しますか、そういった行為が行われてはならないわけでございますが、私ども一ヘクタール以下の開発行為について知事の許可の適用をどのようにしているかということを申し上げますと、一件ごとの開発行為はこれは一ヘクタール以上という原則はあるわけでございますが、一ヘクタール未満でございましてもその開発行為が二カ所以上にわたって行われている、あるいは合わせると一ヘクタール以上になるというようなことで一体性を持つ開発行為だというふうなものにつきましては規制の対象としておるということでございまして、これは次官通達でございますけれども、開発行為の規模は人格、時期、実施場所の相違にかかわらず一体性を有するものの規模であるということを明らかにいたしまして、今後も適正な運用に努めてまいりたいと考えております。
  209. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、長官と大臣にもあわせてお答えをいただきたいのですけれども、この法案国民森林浴を初めとして森林に親しむという大変いい面もあります。保健休養の場としての森林への期待が高まってきておりますし、森林保健機能と他の機能との調和を図りながら山村過疎という現実に何とか歯どめをかけようという、活性化を図りたいあるいは山村林業家の皆様の熱い期待にこたえられるといったような確信のもとに出されているわけです。  最近の新聞を見てみますと、これは長野県の野沢温泉村の記事が掲載されておりましたが、活字の見出しに「大手の資本はゴメン」あるいは「山村にスキー場 栄える農家民宿」、こう出ておりまして、大手観光業者の進出を期待しないで自分たちで進めるリゾート開発を展開しているという例が報告されておりました。山村が大手資本の食い物となったり、リゾートだけが栄えて山村林業が滅ぶようなばかげたことにならないようにしていかなければなりませんけれども、惜しむらくは山村自体に出資する資金がない。やはり助成措置を含めて地方公共団体なり森林組合事業主体とする第三セクター方式を導入するなど、強力に指導していかなければ成果は得られないのではないか、こう考えるわけです。  この法案に対する決意のほどを長官並びに大臣にお尋ねして、終わりたいと思います。
  210. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 林業山村活性化を図る上で地域がその主体性を十分発揮して進めることが必要であると考えております。このため本法案におきましても森林所有者みずからが計画を樹立することとしているところでありますが、森林所有者以外の者が計画の実行に参画する場合でありましても、従来の森林保健休養の場としての利用の事例から見まして、地方公共団体あるいは森林組合などが大きな役割を果たすことが重要と考えております。したがいまして、森林保健休養の場としての利用を推進するに当たりましては、御指 摘のように地方公共団体や森林組合の積極的な参画を促すよう指導していきたいと思っております。
  211. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ありがとうございました。終わります。
  212. 近藤元次

    近藤委員長 次に、藤原房雄君。
  213. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 午前中、参考人質疑がございまして、また御意見があったり、同僚委員からも各方面からいろいろな論議がございました。森林保健機能増進に関する特別措置法につきまして若干の質問を申し上げたいと思います。あらゆる角度から随分いろいろと検討しなければならぬということがたくさんあろうと思うのでありますが、それぞれの立場でいろいろお話がございましたが、一部重複する点もあるかと思いますが、どうぞひとつ御了解いただきたいと思います。  最初に、山村振興ということ、今日本の国情について長々申し上げるつもりもないのでありますが、四全総に象徴されますように、日本の国が東京一極集中のような形のものを多極分散のような形にすべきである、またふるさと創生といいますか、そういうものに象徴されますように、各山村等についても十分に配慮をすべきであるということも言われております。また最近は、森林の多面的な機能利用すべきである、こういうことについても四全総等におきまして若干触れられておるわけであります。そういう中でこのたびの法案が出てきたんだろうと思いますが、それにしましても、山村振興法という法律があって山村につきましてはそれなりの対策を講じ、そしてまた過疎法がございまして、明年これは改正しなければならぬ時限立法になっておりますが、また新しい策定をしなければならぬだろうと思うのでありますけれども山村とか過疎地とか、こういうところにつきまして何らかの雇用の場をつくる、こういうことをいたしませんと老齢化がどんどん進み、そしてまた若い人たちがどんどん流出をする、こういうことが言われてもう久しいわけであります。  本来ならば国土庁の方に来ていただいて、この辺のことについて十分に現状を把握しながら今後のあり方等について議論しなければならぬことだろうと思うのでありますが、本日はこの法案審議ということですからそれぐらいにとどめておきますけれども、このたびこの法案をつくるに当たりまして、山村振興ということについてこの法律が、この事業が大きな役割を担う、一遍に雇用の場を大きく創出したりまたその地域を大きく変えるということではないのかもしれませんが、それなりの効果をあらわす、こういうこと等を念頭に置いてのこのたびの法案の策定であろうと思うのでありますが、その間のことについて御所見をお伺いしておきたいと思います。
  214. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘のとおり、過疎化あるいは高齢化に悩む山村の側から、豊かな地域資源であります森林活用していきたい、具体的には保健休養の場として利用するということも含めましてそれを地域活性化に生かしたい、こういう要望が強いわけでございます。私どもも、この法案を提案させていただいているにつきましては、こういった山村活性化に資するという観点を大きなねらいとしておるところでございます。  確かに御指摘のように、それではこの法案によって各地において一遍にいろいろな盛り上がりが生ずるであろうということにならないかもしれません。しかしながら、その個々の山村地域をとりますと、その地域森林資源の総合的な利用が図られ、またその地域振興に寄与するという面では大きな役割を果たすことができるであろうというふうにも考えておりまして、その運用に当たりましてそういった面を十分考慮して進めたいと考えておるところでございます。
  215. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 この法案を提出いたしましたのは農水省でありまして、林野行政に携わる立場からしますと、森林を大事にといいますか、しっかり守り抜いていくということが第一義的に意義があろうかと思います。そういう中で、こういう森林の多面的な機能利用するという都市の方々の、都会の方々の要望というか、こういうニーズといいますか、こういう時代の推移の中で、森林森林として大事にするということの上に立って、要求の大きい、要望の大きい、多面的な保健機能というものもあわせてまた進めようということだろうと思うのでありますが、あくまでもこれは森林を守る、山を守るという山の側に立つ、どっちの側に立つといって対立する意見を私は言っているわけではありませんが、あくまでも起点といいますか、山を守り木を守るという立場が厳しく法の制定というものの根本になければならぬ、こう思うわけでありますが、大臣、このたびの法案を提出いたしました当事者としまして、そこらあたりの御決意のほどをひとつお伺いしておきたいと思います。     〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕
  216. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 森林保健機能増進していく上におきましては、ただいま先生申されたとおりに、森林保全に十分留意をしながら一体となった形で進めていかなければならない、このように考えております。
  217. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 進めていかなければならないということはもちろんでありますが、山を守り木を守るというその本質を外れてはならぬ、こういうことをしっかりと踏まえた上でのこのたびの法案の提出である、そこらあたりのことをお聞きしているのですけれども
  218. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 今先生申されたような御趣旨に沿って、森林保全というところにも十分留意をしながらしっかりとやってまいりたいと思っております。
  219. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 自然保護団体の方々のいろいろな意見もあるわけでありますが、リゾート法ができまして二年、その間にいろいろなことが言われているわけであります。非常に大規模なリゾート地域各地にいろいろな計画が立てられる、こういう中にありまして自然保護団体の方々のいろいろな御意見を聞きますと、とかくリゾート法になぞらえるといいますか、ややそれに似た傾向のものではないか、森林もまたその中に大きく組み込んでいくという意向がその中にはあるのではないかという危惧が非常にあるわけであります。そういうことを考えるにつきましても、林野庁としまして当然山を守るということの上に立ってのこのたびの法案であって、リゾート法とは大きな違いがあるのだろうと思う。そこを、違いがあるということは私どもそれなりに理解をいたしておりますが、リゾート法による大規模開発とこの法案との大きな相違点といいますか、このたびのこの法律が持つ意味というもの、この点をひとつ明確に御説明をいただきたいと思うのであります。
  220. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま大臣からも申し上げましたように、この法案は、先生のおっしゃるとおり森林そのものを維持する、保全するという基本的な立場でその保健休養の場としての利用促進するというねらいを持っておるわけでございます。したがいまして、この仕組みの上でも、林業関係者の間に定着しております森林施業計画中心とした森林計画制度活用する、それから、地域森林所有者の主体性のもとに森林施業と施設整備計画的あるいは一体的な推進を図るということにしておるところでございます。また、施設整備の基準についても明確にいたしまして、またこれがきちんと守られるような体制を考えておるというところがこの法案の特色であると言えるわけでございます。  御指摘のありましたリゾート法は、国民の余暇活動に対しましてスポーツ、レクリエーション施設といったもの等の整備を民間活力利用して促進するという目的でこれは一般的なリゾート整備ということになっておりますが、ただいま申し上げました本法案がねらいとしております森林の維持といったような点から申しますと、必ずしも全部がそういったことを整備の条件といたしますとか森林保全のための措置を講じますとかということになっておるわけではございません。その点、この法案とリゾート法との違いははっきりしているのではないかと思います。
  221. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 リゾート法ができましてから、 それぞれ大企業を中心といたしまして各地にいろいろな計画を立てる。市町村もまたこのリゾート法にのっとって我が町の発展をということでいろいろ計画を立てる。そういう中にありまして、このたびの森林保健機能増進に関する特別法は森林保健という名目にはなっておりますが、日本の今までの推移を見ますと、日本の国の七割が森林だと言われておりますが、比較的急峻なところにつきましてはなかなか手がつけられない。今日もまだ、平たん地でありましても遠隔地とか急峻なところにつきましては開発がどちらかというとおくれているわけでありますが、比較的開発しやすいところについては大規模開発ということでリゾート法にのっとった形のものができ、そして結局、森林保健機能云々という大義名分はありますが奥地の方に追いやられる、と言うのは語弊がありますけれども、奥の方、深部の方にこういう設定がなされるという形で、非常に大事な保安林指定やなんかがあります地域につきまして対象になる、そういう可能性が考えられるわけであります。  こういう法律をつくるときには今までの経緯もあっていろいろ作成されるのでありましょうが、そういうところについて、具体的にどういうところが適地になるのか、こんなこと等も念頭に置き、また全国森林組合連合会のようなところとも具体的なお話をしながら、具体的な町名があればあったでまたそこに合った形でどうするかということももちろん念頭に置きながらの策定になるんだろうと思います。なくても、大体こういうことが想定されるという想定も加えてのこの法案の策定であったのだろうと思いますが、この法案をつくるに当たりまして、どういうところを描き、またどういう形を理想として描かれたのか、そういうこと等について、ぜひひとつお聞きしておきたいと思います。
  222. 甕滋

    ○甕政府委員 この法案施行してまいります中で、森林保健機能を発揮していく上で適切な森林の区域あるいはまた整備されるであろう姿、こういうものにつきましては、現実に各地で進んでおりますもろもろの事例等を私どもいろいろ調べております。その中で多くのケースといたしまして、市町村、森林組合あるいは森林所有者の共同というような形で、保健休養に通した地域につきまして森林と一体化いたしました施設整備等も行いまして成功もしておる、こういう事例がございます。  具体的にこれからどういうふうに整備を進めるかという点から申しますと、この制度といたしますと、基本計画を大臣が明らかにし、また全国森林計画の上でもその基本的な事項を規定してまいることになりますが、具体的には、各県におきまして地域森林計画を変更するなり定めまして、保健機能の発揮の場となる森林の区域でございますとか具体的なものを決めていくことになるわけでございます。  これは、奥地というお話もございましたけれども、必ずしもどこどこということではございません。保健機能整備してその機能をより発揮させるといった観点からは、やはりおのずからその適地というものがございますので、具体的に地域森林計画で決めてまいります際に、県におきまして市町村長等の意見地元の事情も十分くみ上げた上でそれを決めていく、こういうことになるわけでございまして、そういったものの中でいろいろ適切な整備を進めてまいりたいと考えております。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 これは実際に実施する段になりますと、山林所有者にとりましてはそれなりのメリットといいますか効果が出てくるのだと思います。山村、特に林家の方々の現状というのは、私が長々申し上げるまでもなく、林業白書の中にもございますように、林業所得、またその林業所得の家計費充足率というものを見ますと他産業とは比較にならないぐらい非常に低い状況にあります。そういう意味では、これは一遍にできることではなくて慎重に進めていかなければならないことだろうと思うのでありますが、この法律にのっとっていろいろな施設ができるということになりますと、当然林家の方々につきましてもそれなりの効果というものはあるだろうと思います。その辺のことにつきましては当然お考えになっていらっしゃると思います。若い人たちの雇用の場創出ということとあわせまして、その地域には何らかの効果があるのだろうと思いますが、その辺はどう考えているかということ。  それから、これを実際やる段になりますと、森林組合、地方自治体が中核となってやるようなことになるのだろうと思います。先ほど来同僚委員からもいろいろなお話がございましたが、大企業というようなことではなくて、地方自治体、森林組合、第三セクターのような形でということを言われておりますが、この今後の運営に当たりまして、その地域の林家の方々、また森林組合、市町村、これらの方々がどういう効果をもたらされ、また今後どのような役割を担うことになるのか、その辺のことをひとつお伺いしておきたいと思います。
  224. 甕滋

    ○甕政府委員 森林所有者と申しますか林家にとってのメリットというお話でございます。  これは先ほど先生もお触れになりましたが、山村活性化を図っていく上で、その持っております重要な資源である森林機能を大いに利用することによって、所得なり雇用の場としてこれを活用するという点が基本的に重要であろうと考えております。現にこういった事業に取り組んでおります事例が各地で見られますが、その中におきましても、これまで林木の生産にのみ依存しておった、それも、まだまだ植えたばかりで年月が浅いわけでございまして、現実に換金できる道はそれほどは開かれていないといった状況の中で、特用林産物の収入でありますとか、これも山の産物でございますが、そういったものとあわせましてこういった保健休養の場も大いに活用している、こういう実態にあるわけでございます。これはすべてのところで同時にというわけにはまいりませんけれども、そういった条件のあるところにつきましては、なるべく早急にこの面におきます取り組みを促すことによりまして、山村活性化につなげていければということを願いとしておるところでございます。  また、これを進めてまいります際に、御指摘のありました森林組合でございますとか地方公共団体、これが非常に重要な役割を果たすものと考えております。御意見のとおりと思います。現実に、この関係者の合意形成の取りまとめに当たりますとか事業の企画推進に当たりますとか、そういったところがイニシアチブをとって進めておる例がもうほとんどでございます。したがいまして、これからこの制度を運用してまいります際にもそういったところの意見を十分聞きまして、実態に即したものとしてこれを展開していく必要があるということは当然でございまして、そのように努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  225. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 同僚委員からもいろいろ議論のあったところなんですが、一つは、新しいこういう法律をつくらなければならないその理由ということ、いろいろ各委員からお話ございました。確かに先ほど来のいろいろな御説明を伺いましてそれなりに理解はするのでありますが、今まで林野庁も今日までの民有林に対する施策といたしまして、森林とのふれあい環境整備対策事業とか森林総合利用促進事業とか複合機能森林活性化緊急対策、こういうようなことで山村地域に対しましてはそれなりにいろいろな事業を進めてまいりました。それはそれで一つ山村活性化事業ということで今日まで進めてきたわけでありますが、こういう今までの事業と今度のこの新しい法律の制度によりますものと今後どういうふうに地域振興に役立たせていくのか。これは、箇所づけとかいろいろなことからいいましてあらあらのことはわかるのですけれども、そうたくさんあるわけじゃございませんから。しかしながら、それぞれの機能を発揮できるような形で場所を選定してこれらの事業を進められてきたのだろうと思います。こういうものと新しいものとが競合するよ うな形にならないのか、さらにまたそれを推進することになるのか、その辺についてはどうなんでしょう。
  226. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘のように、林野庁といたしましては、これまで森林とのふれあい環境整備対策事業でございますとか体験の森整備造成事業等の事業を進めまして、保健休養あるいは教育、文化等の森林機能を高度に発揮させるためのモデル的な森林あるいは施設整備を進めてきておるわけでございます。また、これは今後もその趣旨から充実強化を図っていかなければならないというふうに考えておりまして、来年度予算等においてもその面でいろいろ考えていかなければなるまいと考えております。今回この法案によりまして整備対象森林が明らかにされ、またその整備対象森林の中で具体的な整備も行われていく、こういうことでございますので、原則的に申しますと、そういったところでこの助成事業も行いまして、その整備のお手伝いをしてまいるということが望ましいと考えております。  もちろん細かく申しますと、現状のアクセスとか利用施設等の問題がありまして、整備対象森林にはなっていないところで事業をやりたいんだというようなこともありまして、それはまたそれでその対象にする必要があるということもあろうかと思いますけれども、せっかくこの制度を始めるに当たりまして、この制度の目的が効果的に達成される観点からは、私どもの補助事業も極力こういった制度対象になるような森林で実施されることが望ましい、そんなふうに指導してまいったらどうかと考えております。
  227. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 次に、先ほども申し上げましたが、認定要件としての総量規制とか技術基準の考え方ということが非常に大事なことになるのですが、これは技術的なことですから専門家の方々にいろいろ研究をしていただいて技術基準を決めたんだということであります。  最近の技術的なことというのは、時代の推移、また気候の変化、いろいろなことで考えなければならない時点も来るだろうと思いますし、地球自体の温暖化なんということも言われて、あす、あさってのことではないのかもしれませんが、このところ森林を守るということの上に立って厳しくこれを施行するんだという先ほど来の大臣初め皆さん方のお話をお聞きいたしますと、総量規制やまた技術的基準というものは相当厳しいものでなければならぬと思いますし、それから、林業を守るという立場に立った林野庁が企画する、立てる、つくる法律でありますから、そういう点については十分な配慮がなければならぬ、こう思うのであります。一つ一つ技術基準とかなんか申し上げる時間もないのですけれども、認定要件としての総量規制とか技術基準、これは非常に大事なことで、先ほど来同僚議員からのお話もございましたが、そこらあたりのところが今の危惧の多いところなんですが、これらのことについてどういう基本的な考え方の上に立ってお決めになられたのか、そしてまた、いろいろな要素等考え合わせて非常に厳格にやった、そういうことだろうと思うのでありますが、その辺のことについてひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  228. 甕滋

    ○甕政府委員 技術基準等の重要性にお触れになったお話は、私ども全くそのとおりに考えております。  本法案のねらいでございます森林保全を図りながら、その一層の利用を進めるといった基本からいたしましても、それを担保する具体的なものといたしましてはこういった技術基準等の的確な設定とその運用ということになるわけでございますから、この設定につきましても十分慎重な検討を行って決めたいと考えております。これまでに関係のその道の専門家でございます大学の先生あるいは研究者等の学識経験者で技術基準研究会といったものを開いていただきまして検討を行ってきております。こういった基準はやはり科学的にきちんと決めていかなければならない、行政の独断というようなことを言われてもまた困るわけでございますし、そういうことではなくきちんとしたものを私どもも示していきたいと考えております。  個々具体的な事柄につきまして、それぞれの専門の立場から検討が加えられておりますのでこの場でるる申し上げることは差し控えますけれども総量規制の問題にしましても、その面積の比率は森林機能が低下するにしても最小限に抑える、またその低下分は森林施業の適切な実施によって補完し得る範囲にするという観点がはっきりしておるわけでございます。また個別の技術基準等につきましても、その規模、位置、構造、配置等にわたりまして必要な観点からの検討が加えられまして、その数値がはっきりしてきておるということを申し上げておきたいと思います。
  229. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 今の話に関連するのでありますが、この技術基準等につきましてはいろいろ説明いただきましてそれなりに、我々は技術的なことになりますと素人みたいなものですからあれですけれども、非常にシビアになさっておるという感じがするのでありますが、今後またこの問題につきましては厳しく私どもも勉強していきたいと思います。  そういう森林というものをしっかり補完するんだということの上に立っていろいろ進めていくということがどうしても大前提にあって、開発行為もまたその原点の上に立ってなさるということでありますが、それに付随しまして、計画認定に当たっての異議意見の提出機会を設けなかったのはなぜかということは同僚委員からもいろいろお話ございました。そのお話の中に、答弁では森林機能、公益的機能に支障を及ぼすようなことはしないからなんだということを何度も言われておったのでありますが、そうしますと今申し上げた技術基準とか総量規制とかこういうものが完全でなければならぬということになるわけであります。こういうことからいって認定要件というのは非常に重要なことになりますし、また、保安林解除ということになりますと、保安林解除の申請をする手続がダブるとかなんかということよりも慎重さが今要求されておるのじゃないか。煩わしさとか、そういうこと等も全部あわせて検討した上で計画を認可するということなんだから同じことを二回することはないんだという御説明だろうと思うのですけれども、それは事務手続やなんかについてもダブルチェックということがあるわけでございますから、またある程度の時間的な差がございますと検討しなければならないこともあろうかと思いますし、そういうことからいいますと、認定要件というのは非常に重要なことになるのだろうと思います。  こういうこと等もあわせまして、同僚委員もいろいろお話ししておりましたが、異議意見の提出の機会を設けなかったということについてもっと慎重さが必要だった、私どもそういう感じがしてならないのですけれども、その辺については基本計画のところできちっと勘案したのだからということでいいのかどうか、ちょっと危惧を抱く面なんですが、どうなんでしょう。
  230. 甕滋

    ○甕政府委員 この法律のねらいでございます森林保全という重要な部分を担保するために、慎重な手続をとるべきではないかという御趣旨は私どもよくわかるところでございまして、これが的確に担保されるというために、先ほど来御説明しておりますような計画制度等の仕組みを申し上げておるわけでございます。この計画制度等の手続の中で厳格な要件に適合する場合にのみこれが認められる、こういうことでございまして、これと対応するとみなされますいわゆる森林法の三十四条許可、立木の伐採でございますとか行為の制限等々の場合に、同様に、これは森林性を失わない場合の手続として異議意見等の手続が規定してないということもまたあわせて申し上げておるところでございます。  ただ一つ、一般に誤解されてときどきお話がございますのは、これまでの保安林解除の手続が挙げて今回の認定の制度によってなくなってしまうんだという理解と申しますか、誤解の上に立ちまして問題とされるということがございます。これは 実は、皆さん御心配になります大きなゴルフ場とか森林性を失わせて開発をしていくといったようなケースにつきましては本制度にはのってまいりません。これまでどおり保安林の解除という世界の話でございますので、そういった心配されるような開発のケースは、保安林の解除というこれまでの制度にのっとり、かつ、その手続に従って処理をされるということでございます。先生もお触れになりました新聞の御意見等を拝見しましても、明らかにその保安林解除で対応するようなケースを例にとられましてこの法案を批判されているというようなこともございますけれども、それは私どもよく御理解をいただくようにこれからも御説明をしてまいらなければなるまいと考えております。
  231. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 それとまたもう一つ林地の開発許可等の特例を設けたこと、これは規制緩和ではないか、こういう懸念も抱くわけでございますが、何といいましてもこの保安林につきましては今十一種類ございまして、総森林の三二%保安林の指定がある。八百万へクタールという大きな保安林の網をかぶっているわけであります。それぞれの機能に応じて、特性に応じて指定がなされているわけであります。こういう非常に重要な意義を持っているわけでありますが、そこに対しましてもやはりこの今までの手続とは違うということなのでしょうか。事前の審査の中でこれらのことについても十分になにするということで、二重にダブらないように行政としてこういう措置をとられた、先ほど来いろいろ説明をいたしておりますけれども、保安林の重要性ということからかんがみまして、もう少し慎重な配慮があってよかったのではないか。  それから保安林につきましても、この保安林解除につきまして事前の計画の中にも、やはり自然公園の特別地域みたいなところについては——これはそういうところにかかるわけはないと思うのですが、例えばなのですけれども、そういうところはもちろん禁伐区ということでなるわけはないだろうと思うのでありますけれども、保安林解除につきまして、今までの基準や何かにつきましては同じ制度の中での運用ということになるだろうと思いますが、今までやった現行法の中での森林法そのほかのものでやっておるものと、今度は新しい法律にのっとって行われるものとのかみ合わせみたいなものがきちっと整理されませんと、新法だけ見ていますと、そっちの方でやらないかなと思ったらどうもそうじゃないのだというようなことでなかなか理解できない面もあるのじゃないかと思います。ここら辺についてちょっと御説明いただきたいと思うのです。
  232. 甕滋

    ○甕政府委員 手続面におきまして保安林あるいは林地開発許可がこれまでと違う、本法案手続が違うという御指摘が間々ございますが、先ほど保安林のところで申し上げましたのと同様、林地開発許可の場合におきましても、この法案にのっとってきちんとした位置づけを与えられたもの以外、これまでのような開発に属するものはこれまでどおり林地開発許可で対応をするということでございます。  そこで、保安林あるいは林地開発許可を通じまして、これまでの運用と今度定められた基準等との関係はどうか、こういうお尋ねかと思いますけれども、何分今回定めようとしておりますような計量的なはっきりした基準というものはこれまでなかったわけでございまして、今回この法案の体系の中でそれをはっきりさせるということでございますから、それ以外のこれまでの取り扱いをどうするんだということは当然問題になるわけでございます。私どももこれを機会に、これまでの基準については一定の見直しが必要なのじゃないかというふうに実は思っております。したがいまして、今回この法案が制定されまして、基準も明定されるというようなことになりますれば、それを受けて、これまでの基準をどうするかという点についても結論を出してまいりたいと考えておるところでございます。
  233. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 最後になりますが、法律のことにつきましてはまた同僚委員からもお話ございますので、最後にちょっと、いつも言われておることではありますが、しかし重大なこととしまして、熱帯雨林の技術援助のことについてお伺いしておきます。  熱帯の森林、年に約一千百万ヘクタールのペースで失われている、こう言われているわけでありますが、国際的に地球環境問題が重大な関心を集めている中にありまして、熱帯雨林の保全と再生、そのために我が国協力が大きい期待をもって待ち望まれておる。今日までも技術援助というのは農水省もいろいろな形で派遣をしていることはお伺いをしておりますが、最近のガットの動きを見ましても、日本の果たすべき役割というのは国際的に非常に大きいのではないか。そういうこと等を考えるにつきましても、日本の国の持っております技術というものについて大いに活用するように頑張っていただきたい、こんな気持ちを持っておるわけであります。  今具体的に何をどうするということじゃございませんが、大臣、一言この考え方について決意のほどといいますか、今後のことについての御決意、お話をお伺いしておきたいと思います。
  234. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 これまでの海外林業協力の実績を踏まえまして、熱帯地域における森林の持続可能な開発と失われた森林の早期回復を図るために、この熱帯雨林の減少の問題は大変重要な問題だ、このような認識のもとに、関係行政機関等とも連携を図りつつ、より一層積極的な役割を果たしてまいりたい、このように考えております。
  235. 近藤元次

    近藤委員長 次に、水谷弘君。
  236. 水谷弘

    ○水谷委員 同僚委員が具体的な質疑をしていただきましたが、それらと関連した上で、何点かお尋ねをいたします。  本法案の第七条「開発行為の許可の特例」、それから本法案第八条「保安林における制限の特例」、この二つが、この法案がいわゆる開発規制というものではなく開発に特例を設けている、どうしてもそういう位置づけというふうに受けとられるわけであります。  そこで、本法案第二条第二項の二号にうたわれております「森林の現に有する保健機能以外の諸機能」というこの表現、この諸機能の重要な部分として、これは何度も指摘をされているわけでありますけれども森林法第十条の二第二項にある三つの規定、すなわち「森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生」させない、発生させるおそれがあるような開発はだめである。いわゆる諸機能を著しく損すると位置づける。それから二つ目は、「森林の現に有する水源のかん養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがある」、これもまたこの諸機能に著しい支障を及ぼすという項目に当たる。またもう一つは、「森林の現に有する環境の保全機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること。」この三つの規定が、ここの目的の規定である第二条第二項の二の「諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるものに限る。」というところとぴしっとフィットする。政府は、この法の趣旨を踏まえてそのように運用において明確になさることができるのかどうか、お尋ねをいたします。それが一つ。  もう一つは、第八条「保安林における制限の特例」、これについて、本法案の六条の三項の四号、ここに明確に「当該保安林の区域内において行われる森林保健施設整備が当該保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼさないと認められること。」このように本法案に規定をしておられます。これは第一号から四号までの形態をとっておりますが、その本文で「次に掲げる要件のすべてを満たすときでなければ、」とあるわけであります。そういう意味で、保安林における取り扱いについても、また開発行為の林地開発についても、森林法本法の持っているその規定をしっかり踏まえたこの法 律の位置づけであるということを明言できますか。
  237. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま先生から的確に御指摘があったとおりでございまして、これまでの森林開発許可に当たっての森林の諸機能に対する配慮、こういった点につきましては、二条二項二号におきます「森林の現に有する保健機能以外の諸機能に著しい支障を及ぼさないと認められるものに限る。」といった点に含まれておると当然解されておりまして、これがこの森林保健施設というものの基本になっておるという点でございます。  また、これを担保していくために、これも御指摘がございましたとおり、六条三項におきまして、第一号の「森林保健機能増進計画内容対象森林に係る森林保健機能増進を図るために有効かつ適切なものであること。」これは別といたしましても、第二号の「農林水産省令で定める比率」、第三号の「農林水産省令で定める技術的基準」が必須要件として満たされなければならない。それに加えまして、第四号が御指摘のとおり「保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼさない」と認められなければならないということでございまして、これらすべてが満たされるときでなければ認定がないということでこれを担保してまいりたいということでございます。
  238. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほど長官の御答弁の中で、小流域を一区域というような形でおおむね五十ヘクタール程度、こういう御答弁がございましたが、これはいわゆる分母の部分の対象面積の大変重要な部分であります。このことについて、再度それでよろしいのか、確認をさせていただきます。
  239. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまのお話は、総量規制を適用してまいります場合に、その対象森林面積が大規模にわたり、この施設が特定の流域に集中することがあってはならないといった関連で、先ほど私から申し上げた小流域単位にこれを適用してまいるといった点についてお触れになった問題でございます。  確かにおおむね五十ヘクタールというふうに申し上げておりますが、これは当然のことでございますが、地形が異なりますともちろん一律というわけにはまいりません。しかしながら、基本的な考え方として、下流域の集落等の分布状況に配慮して、この基準の的確な運用上、小流域ごとの適用が相当であるということははっきり申し上げておきたいと思います。
  240. 水谷弘

    ○水谷委員 技術基準に明示されるわけですか。
  241. 甕滋

    ○甕政府委員 これは、いわゆる技術的基準、こういうものと並んで総量規制ということで決めてまいる、その中でこれもはっきりさせたいと思っております。
  242. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、いわゆる地域住民のこの具体的な事業実施に対する意見を反映させる、市町村並びに都道府県。その手法として、先ほど長官は、全国森林計画の変更、それから地域森林計画の変更。  これは森林法の規定で確かに明確にうたわれておりまして、森林法第五条、その中のこれは第五項になりますか、「地域森林計画をたて、又はこれを変更しようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聞かなければならない。」このようになっております。さらには森林計画、第六条。そして第七条は「第五条第六項の規定により公表された地域森林計画意見がある者は、」ということで、意見の申し立ても森林法の中で規定をいたしております。  よって、法案の第四条の全国森林計画の変更と第五条の地域森林計画の変更、この二つは確かに、先ほど長官の答弁で、地域意見、また関係者の意見の申し立ての機会が十分あることと私は判断をしますが、それはそのとおりですね。
  243. 甕滋

    ○甕政府委員 そのとおりでございます。
  244. 水谷弘

    ○水谷委員 次に第六条。実は、具体的な施業計画を持ったいわゆる森林保健機能増進計画の認定の申し出があったとき、都道府県知事がこれを認定する。  さて、具体的な保健機能施設が明示されてくるわけでありますが、その段階で市町村長の意見を聞くこと、さらには、それがかなりの広域にわたる場合は都道府県の森林審議会にこれもまた意見を聞くとか、そしてまた、関係者からの意見の申し立てがあった場合はそれにしっかりと対応するというこの運用、この法六条の運用においてそのようなことをぴしっと位置づけられますか。
  245. 甕滋

    ○甕政府委員 森林施業計画につきまして都道府県知事が認定を行います際、地域実情を十分反映するような措置をとるべきである、こういう御指摘につきましては、私どもそのとおり考えておりまして、先ほどもいろいろ、市町村長が調整に当たられるお立場にもあり、そういった意見を十分反映するようにしてまいりたい、こう申し上げているところでございます。  ちなみに、この計画とは違いますが、林地開発許可制度の運用に当たりましても、その許可の際、都道府県知事が必要に応じまして市町村長の意見を聞く旨、通達で措置をしております。したがいまして、お話ございましたように、本件についても同様の運用を考えていったらどうかというふうにここで申し上げておきます。
  246. 水谷弘

    ○水谷委員 一番肝心なところであります。保安林の機能を持たせながら、そのまま森林保健施設がそこに配置されていく。保安林は保安林としてある。先ほどお話がございました十一の目的に保安林は設定されております。そういうことになってきますと、地域住民と関係市町村とこの事業をする人たちとの間に認識のずれ、その価値観の分かれ方、これが常にそこに発生してくる恐れがあるわけです。そういう意味で市町村長の意見を聞くこと。きのうの委員会で場外馬券売り場の話がありましたが、あれは市町村長の同意が必要である。同意事項から今度は、議会においてもかなり反対決議がされたりした場合はこれはちょっと難しいということで——今どんな立派なことであっても、地域住民の同意がなければこれはその地域にとっては悪いものだ、私どもはそういう認識も必要であります。全部が全部、反対運動があるからすべてだめだという考え方に私は立っているわけではありませんけれども、そういう真剣な意見をしっかり吸い上げる行政側の姿勢がないと、どんな立派な事業も円滑に推進できませんので、それに資するような通達並びに運用の段階での指導をしっかりお願いをしておきたいと思うわけでございます。  以上で終わります。
  247. 近藤元次

    近藤委員長 次回は、明十六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十三分散会