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1989-12-01 第116回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月一日(金曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 吹田  愰君    理事 井上 喜一君 理事 榎本 和平君    理事 斉藤斗志二君 理事 笹川  堯君    理事 宮里 松正君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 塚田 延充君       天野 公義君    有馬 元治君       大村 襄治君    加藤 卓二君       亀井 善之君    竹中 修一君       玉生 孝久君    玉沢徳一郎君       野呂 昭彦君    古屋  亨君       堀之内久男君    森   清君       森下 元晴君    稲葉 誠一君       角屋堅次郎君    多賀谷真稔君       広瀬 秀吉君    井上 和久君       鈴切 康雄君    吉田 之久君       浦井  洋君    柴田 睦夫君       東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵省主計局次         長       小村  武君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      鈴木 勝也君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       東郷 和彦君         外務省欧亜局東         欧課長     当田 達夫君         外務省国際連合         局軍縮課長   神余 隆博君         海上保安庁警備         救難部長    赤澤 壽男君         高等海難審判庁         海難審判書記官 平石 英世君         内閣委員会調査         室長      林  昌茂君     ───────────── 委員の異動 十二月一日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     森   清君   河本 敏夫君     野呂 昭彦君   堀之内久男君     玉沢徳一郎君   武藤 嘉文君     亀井 善之君   大出  俊君     稲葉 誠一君   浦井  洋君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     武藤 嘉文君   玉沢徳一郎君     堀之内久男君   野呂 昭彦君     河本 敏夫君   森   清君     奥野 誠亮君   稲葉 誠一君     大出  俊君   東中 光雄君     浦井  洋君     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第一三号)      ────◇─────
  2. 吹田愰

    吹田委員長 これより会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚田延充君。
  3. 塚田延充

    塚田委員 最近では、東ヨーロッパ情勢が日々変化するような状況で、毎日のように新しい情勢変化が飛び込んでまいります。  ところで、私けさニュースを見てびっくりしたのですけれどもフィリピンにおいて何か大きな変化が起きたらしいというような報道がございました。フィリピン情勢に何か大きな変化が起きたことに関しまして、フィリピン政府から外務省の方に公式連絡が入っているのでしょうか。そして、入っているとすれば、その内容の概略を御報告願いたいと思います。
  4. 鈴木勝也

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  既にテレビのニュース等で御承知のとおり、本未明、マニラにおきましてフィリピンの国軍によりますクーデター試みというものが起こりまして、現在なお事態は流動的であるという報告現地大使館から受けておるところでございます。  先ほど御質問のございました、フィリピン政府から我が国政府に対して何か正式の連絡ないし要請というものがあったのかという点でございますけれども連絡はございます。現地大使館は、マラカニアン宮殿、それからマングラプス外務大臣等含めまして逐次連絡をとっておりますが、正式の要請というような点につきましては、私ども現時点まで特に正式の要請があったということは承知いたしておりません。
  5. 塚田延充

    塚田委員 そのクーデター試みがどの程度規模なのか、まだ事態は流動的だと思われますけれども、私どもが最も心配するところは、フィリピンには在留邦人かなりおられます。そして業務出張者、さらには観光旅行者など短期滞在者を合わせますと、かなり日本人方々フィリピンに滞在しているものと思われます。その動乱と申しましょうか騒乱によりまして、これらの方々に既に何らかの被害が出ているのかどうか、そういう情報に接したかどうか。それから、今後これらの邦人方々に対する保護措置をどのようにとられるのか。緊急を要すると思われますが、外務省ではどのように緊急態勢を組んでどのように対処されようとしているのか、御説明いただきたいと存じます。
  6. 鈴木勝也

    鈴木説明員 マニラ在留邦人の数でございますけれども、こういう突然の事態でございますので、最新数字がどうなっているかという点については若干留保させていただきたいのでございますが、私どもが平素把握しておりますところでは、フィリピン全体で大体三千数百名、そのうちの二千六百名強がマニラ在住在留邦人として登録をされてございます。もちろんこの数字には短期旅行者業務出張者等は含まれておりませんけれども、先ほど御指摘ございましたように、相当数短期旅行者というのがあるのだろうと思います。  それで、在留邦人の安否でございますが、在留邦人につきましては、現地大使館との現時点までの電話連絡等によりますと、特に死傷者というようなものは出ておらないということでございます。  政府として、短期旅行者を含めての在留邦人の安全のためのいかなる措置をとっているかということでございますが、とりあえず本未明の事態にかんがみまして、直ちに現地大使館の方から、平素からございます在留邦人連絡網、これは電話連絡網でございますが、それを通じまして、在留邦人については自宅にとどまるようにということをまずやってございます。それから、短期旅行者は当然ホテル等に滞在しているわけでございますが、これも把握できる限りにおきまして同様の勧告をいたしております。それから、現地日本人学校は、とりあえず本日は休校ということにいたしております。  以上でございます。
  7. 塚田延充

    塚田委員 次に、東ヨーロッパ情勢についてお尋ねしたいと思います。  冒頭申し上げましたとおり、各国とも本当に音を立てるごとく大きな変化がまざまざと起きているわけでございますけれども、現在の東ヨーロッパ情勢について国別に簡単に御報告いただきたいと思います。
  8. 当田達夫

    当田説明員 東欧においては、ただいまのところ、中央統制経済の行き詰まりあるいはソ連ゴルバチョフ書記長自身が推進しておりますペレストロイカの影響などによりまして、国民民主化要求改革への機運が非常に高まっていると受けとめております。  具体的には、東欧諸国中、特にポーランドハンガリーにつきましては、自由と民主主義及び市場経済に移行するということで、根本的な改革を目指しているものと考えております。  また、従来改革に消極的と見られていました東ドイツ及びチェコにおいても、つい最近国内の指導部が交代しております。また、東ドイツにおきましては、東西ドイツ間の自由通行を認めるということがございまして、大きな前進を見せておりますし、つい最近、チェコでは一九六八年以来の大規模なデモ、集会が続きまして、また、ゼネストが実施されるということがございまして、また、憲法から党の指導的役割が削除されるということ等ありまして、民主化に向けて大きく前進していると承知しております。
  9. 塚田延充

    塚田委員 いよいよ今週末にはマルタ洋上において米ソ首脳会談が行われます。この首脳会談テーマがどういうものになるのか、外務省として米政府から事前公式レクチャーみたいなものを受けているのかどうか。報告と申しましょうか、いわゆる事前レクチャーがあったのかどうか。それも踏まえながら、そのテーマは何になると思われるのか、外務省としての見解をお述べいただきたいと思います。
  10. 東郷和彦

    東郷説明員 お答え申し上げます。  マルタにおける米ソ首脳会談でどういう話し合いになるかということにつきましては、事前にしかるべきレベルでアメリカの方からそれなりの話はございました。まさにこれから始まるところでございますので、外務省としても深い関心を持ってフォローしております。  何がテーマになるかという点につきましての外務省見方いかんという御質問でございます。これは、私ども承知しているところでも、ゴルバチョフ書記長ブッシュ大統領の非公式な、腹を割った話し合いであるというふうに聞いておりますので、確たる見通しを申し上げるのは困難な点もございますけれども、当然のことながら今大きな音を立てて動いております東欧情勢、それから米ソ間で関心の的になっておりますいろいろな地域問題、こういうようなことが話し合い一つになるのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  11. 塚田延充

    塚田委員 米政府外務省レベルといいましょうか、それなりレベルにおいて打ち合わせがあったとのことでございますが、ではずばりお聞きいたしますけれども軍縮問題についてはテーマになりそうでしょうか。
  12. 東郷和彦

    東郷説明員 申し上げます。  軍縮問題は、これは軍縮の協議というのが、申し上げるまでもなく今三つ分野において、つまり戦略兵器削減交渉欧州通常兵力削減交渉化学兵器全廃条約、この三つ分野において、現在、具体的な交渉米ソ間を含めまして進展しておるわけでございます。したがって、今回のマルタの非公式な会談において、そういう交渉の具体的な問題について特に突っ込んだ話し合いがされるというふうにはちょっと今考えておりませんが、しかし、当然のことながら軍縮問題というのは米ソ間で最も大事な問題でございますので、米ソ間の一般的な問題として何らかの話は触れられることになるだろうと思います。  以上でございます。
  13. 塚田延充

    塚田委員 それでは、東西ドイツの再統一問題など、ドイツ問題がテーマになる可能性はあると思われますか。そのような事前レクチャーはあったでしょうか。
  14. 東郷和彦

    東郷説明員 ドイツの再統一問題ということでございますれば、そのような問題をテーマにするというふうには聞いておりません。ただ、今変化する大きなヨーロッパ情勢の中で、ベルリンの壁がなくなったという状況が今後の国際情勢の中でどういう意味を持ってくるかということは、これは冒頭に申し上げましたように、米ソ首脳の非常に大きな関心事にはなると思います。
  15. 塚田延充

    塚田委員 米ソ首脳にとりましては、欧州との比重の差はあれやはり極東問題というのが大きな関心事だと思います。極東問題について話し合われる可能性があるかどうか、いかがでしょうか。
  16. 東郷和彦

    東郷説明員 冒頭に申し上げましたように、両首脳の非公式な話し合いでございますので、先ほど申し上げましたように地域問題、それは極東における種々の問題を含めまして話し合われる可能性はあるかと思いますけれども、今の国際情勢の一番の焦点というのは、繰り返して申し上げておりますように東欧、それからソ連変化というところでございますので、触れられるとしてもどの程度になるのかということは、ちょっと私、推測しかねる点がございます。
  17. 塚田延充

    塚田委員 海部総理大臣東欧訪問日程に上っているとマスコミなどを通じて伝えられています。今のところ外務省として把握しているところでは、この東欧訪問スケジュールはどのように設定されようとしているのか、そして訪問された場合、国別が決まると思いますけれども、その際の基本方針、そして各国別話し合い内容がどういうものになるのか、これらについて御説明いただきたいと思います。
  18. 当田達夫

    当田説明員 総理東欧訪問につきましては、現在種々状況を勘案しておりまして検討中でございます。具体的にどういう日程かということについては、現在のところ、まだ最終的に決定しておりません。  総理東欧訪問の目的でございますけれども、先ほど御指摘のような、国際社会が非常に大きく動きつつある中で総理がいろいろな国の指導者たち国際情勢について意見を交換するということは、まず極めて重要だと考えております。具体的に東欧地域について申し上げますと、最近の民主化進展しているという情勢にかんがみまして、我が国との二国間関係のみならず国際政治上もますます重要であると認識しております。今後の欧州情勢ひいては東西関係全体の安定的な進展のために、我が国としても貢献することが非常に大切であると考えております。  具体的に議題としてまだ確定しているわけではございませんけれども、基本的な考え方といたしましては、我が国は、改革の最も進んでいるポーランドハンガリー両国民主化改革努力の支援をするというような基本的な考え方で、それを通じて東欧諸国全体とも関係を増進していく、そういうような考え方で臨みたいと考えております。
  19. 塚田延充

    塚田委員 外務省当局は、総理大臣ヨーロッパ出張につきましてまだ日程を立ててないという御見解でございますけれどもマスコミを通じて既に一月の上、中旬あたりに東欧二カ国、そして西欧二カ国というようなことが伝えられておりますが、これは全くマスコミの推測なんでしょうか。それともマスコミ報道というのはかなり信憑性があるのでしょうか。今の外務省計画そのものとの対比においてお答えいただきたいと思います。
  20. 当田達夫

    当田説明員 現在、日程を調整中でございまして、最終的に決まったものではない、そういう状況でございます。
  21. 塚田延充

    塚田委員 もし総理大臣が一月の上旬もしくは中旬にヨーロッパ訪問される場合、西欧も入るのか、これについてのみ確認しておきたいと思います。
  22. 当田達夫

    当田説明員 西欧につきましては、西欧の中のサミット主要国につきましてまだ面識を得ていない国もございますので、含まれることは非常にあり得ると考えております。
  23. 塚田延充

    塚田委員 総理大臣ヨーロッパ訪問に際しまして、外務大臣が御同行されるようなスケジュールを考えておられますか。
  24. 当田達夫

    当田説明員 私ども事務当局といたしましては、具体的にそのようなことは承知しておりません。
  25. 塚田延充

    塚田委員 ヨーロッパにおいては、かなり大きな変化東ヨーロッパ諸国を中心に起きていることは申し上げたとおりでございます。そしてまた、御答弁もいただいたとおりでございます。それと比較いたしましてアジアの方がどうなっているかということでございますが、冒頭質問申し上げたフィリピンクーデター騒ぎは別といたしまして、アジア地域軍縮問題でございます。  本年の五月に、ソ連の当時のゴルバチョフ書記長は、アジア地域における軍縮についても提案をされておりますけれども、この件につきましてその後何かの進展を見せておられるでしょうか。その辺の状況について御説明いただきたいと思います。
  26. 神余隆博

    神余説明員 お答え申し上げます。  ゴルバチョフ書記長の一連の軍縮提案の中には、妥当な方向への第一歩として評価し得るものもあるというふうに思っておりますけれども我が国といたしましては、それがアジア太平洋地域戦略環境に及ぼす影響等につきまして、今後の具体的な実施ぶりを見ながら慎重に判断する必要があるというふうに一般的に考えております。  委員指摘の御提案は、五月十七日のゴルバチョフ書記長の訪中に際しての極東ソ連軍削減構想、それを指しておるというふうに理解しておりますけれども、これにつきましては、委員承知のとおり、ソ連東部からの二十万人の一方的な削減、それからそういった削減内訳を具体化したものでございます。ただ、この提案につきましては、指しております極東地域の範囲、あるいはその削減の対象となります部隊あるいは艦艇といったものが種類も含めまして明らかではないという状況にございまして、必ずしも細部にわたって詳細に明らかになっておらないという問題点があるというふうに考えております。  我が国といたしましては、膨大な軍事力を有します極東ソ連軍削減自体は基本的に歓迎するところでございますけれども、他方、例えば先ほど申しましたように海軍の艦艇につきましても近年最新型の艦艇が配備されておるとか、あるいはまた量的な増強はともかく質的な増強が図られているという状況にかんがみますれば、今回の提案が実行されたといたしましても、我が国安全保障に対して根本的な影響を及ぼすものとは考えておりません。その後何らかの具体的な動きがあったのかということでございますが、特にございません。
  27. 塚田延充

    塚田委員 極東ソ連軍のうち、我が国北方領土に一個師団、これが含まれていることは周知の事実とされております。その点についてお伺いいたしますが、ただいま話題としておりますゴルバチョフ議長の本年五月の軍縮提案のうち、極東からも十二万の陸軍撤退するというようなことが含まれていることは事実だと思います。その十二万の陸軍撤退の中に、我が国固有領土である北方領土に確かに駐留していると思われる一個師団が含まれていると考えてよろしいのかどうか。そしてこの北方領土駐留の一個師団についてまだ撤退見通しが立ってないとすれば、我が国としてはやはりこの一個師団については早期に撤退が行われるよう強く要求すべきだと思います。この五月以降、ゴルバチョフ提案を踏まえて、この一個師団撤退について我が国としてはどのような外交ルートを通じて撤退すべく要求した交渉を行ってきたのか、この経緯とその成果についてお尋ねしたいと思います。
  28. 東郷和彦

    東郷説明員 お答え申し上げます。  ゴルバチョフ書記長が北京で明らかにしました陸軍部隊十二個師団削減、この中に今北方領土に駐在しております一個師団が入っているのかいないのかという点につきましては、非常に残念ながら、ソ連側の方からはこれまでこの十二個師団内訳がどこにあるかということについての説明がただいま御説明いたしたようにございませんでしたので、私どもとしてそれを確と判断するだけの資料を持ち合わせておりません。  そこで、この十二個師団の中に入っているにせよ入っていないにせよ、いずれにせよ、この北方領土に駐在している一個師団ソ連兵力というものが削減されるべきであるということにつきましては、まさに先生指摘のとおり私どもも強くそういうふうに念じておる次第でございまして、これまでの特にハイレベルの本格的な交渉外務大臣レベルそれから次官レベルでの交渉で累次この問題を持ち出しましてソ連側要求してきております。残念ながら、これまでソ連側からはこの点に対して肯定的な感触というのは何ら得られていないというのが現状でございますが、今後のソ連側との特にハイレベルでの接触において、明確にこの我が方の考え方を引き続き提示していきたいというふうに念じております。
  29. 塚田延充

    塚田委員 現在、我が国固有領土でございます北方領土にはどのくらいのソ連人が住んでおられますか。これについては軍人民間人分けてもいいし、民間人のみでも結構です。私のポイント民間人の方に置いております。
  30. 東郷和彦

    東郷説明員 お答え申し上げます。  北方領土にどういう民間人軍人人たちが住んでいるかということにつきましては、私ども報道等を通じまして情報を得ておるわけでございますけれども、総じて軍人を含めて四、五万ということではないかというふうに思っております。その中で軍人がどのくらいで民間人がどのくらいかということはちょっと正確に把握しかねておりますけれども、四、五万のうちのかなりの部分はもちろん民間人であるというふうに考えております。
  31. 塚田延充

    塚田委員 北方四島の返還につきましては、我が日本国民の切なる願いであり、当然の要求でもあります。また、我が国政府としてもそのために全力を尽くしておることにつきましては、敬意を表し、今後ともさらに頑張っていただきたいとお願いする次第であります。  さて、この北方四島がもしも返還された場合、今お尋ねいたしましたところかなり民間人がおるとのことですけれども、それらの民間人方々はすべて退去していただくことになるのでしょうか。そして、もしその方々が残留を希望される場合には、そのまま居住を認めることになるのでしょうか。居住を認めた場合のその方々の国籍とかいろいろな資格とかいうことはどうなるのでしょうか、仮定上の問題ですけれども。これは仮定ではなくて、我が国固有領土であるわけですから、当然、今はっきりしておくべき問題だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  32. 東郷和彦

    東郷説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、今私ども全力を尽くして返還のための交渉をやっておるところでございます。ソ連側は、グロムイコ時代に、もし日本北方領土問題を提起するならばグロムイコはもう日本に来ないということで八年間平和条約交渉は中断しておったわけでございますが、シェワルナゼになりましてから平和条約交渉が再開され、なかんずく去年の末から平和条約作業グループというのを新たに設置して、そこで初めて本格的なテーブルに着いた話し合いというのが始まったばかりなところでございます。  ただ、まさに先生指摘のように、非常に遺憾ながら、ただいま現在そのテーブルの向こうでソ連側がしてきております議論内容というのは非常に厳しいものがございまして、一言で言えば、歴史的、法的、あらゆる観点から見て北方四島というのはソ連領土である、これは疑う余地のないことである、日本が言っていることというのはそういう観点からはすべて根拠がないという議論を非常に厳しく展開しているというのがただいま現在の状況でございます。  そこで、私どもとしては何とかこれに突破口を見つけるべく全力を尽くしておるところでございますけれども、まさにそういう状況のもとで、ソ連返還に同意した場合に今後北方四島がどういう状況になっていくかということは、ある意味返還問題そのものを今後交渉の中で考えていく一つの重要なポイントになってくる問題だと思いますので、日本政府がその問題について今どういうふうに考えているかということは、大変申しわけないのですけれども現時点ではまだその問題を本格的に御説明する段階には来ていないのではないかと考えております。  以上でございます。
  33. 塚田延充

    塚田委員 確かに、ソ連側では北方領土ソ連領土であると主張しているかもしれませんし、それなりの法体制を組んだり、また、社会システムをつくり上げているかもしれませんけれども我が国におきましては、少なくとも理論的には我が国領土だと主張しているからには、そこに住んでいる方々がどういう資格で住んでおり、新しい事態が起きた場合にはどのようになるのかということは常に明らかにしておかなければ、主権が及んでいるということにならなくなってしまう危険性が理論的にはあると思います。そういう意味においては理論研究かもしれぬし、当然のことですけれども、これについてははっきりさせておく必要があるのではないでしょうか。  そして、もしソ連の民間の方が交渉妥結などによって北方領土を去るというような場合に、生活保障の問題とかいうことが出てくる可能性もあると思います。我々は、我々の領土だからそうしてほしいというわけで要求しているのです。そして、向こうが帰りますといった場合には、その準備をしなければならぬと思いますが、もしソ連の民間の方が我が国固有領土である北方領土から彼らのいわゆる本国領土の方へ移られる場合、もし生活保障などを我が国政府要求してきた場合、どうなりますか。
  34. 東郷和彦

    東郷説明員 当然のことながら、北方四島についての主権を取り戻したいということで全力を尽くしておるわけでございますから、これにソ連が同意して北方四島の主権が返ってくるという事態になれば、日本の主権のもとでこれまで行われてきた北方領土での現実のいろいろな問題を考えていくということになるのは先生指摘のとおりでございます。  ただ、それじゃ具体的に、その場に今住んでいる方々について一体ソ連がどういうことを要求してくるのか、ソ連として何を考えていくのか、また、その場合日本政府としてもどういうふうにやっていくか、これは、非常に残念ながら今の段階ではそういうことをソ連との間で考えるには余りにも隔たった交渉状況でございまして、何とかそういうことをソ連との間でまじめに話せるようなところに一歩でも近づけたいということでただいまやっているという点をぜひ御理解いただければと思います。
  35. 塚田延充

    塚田委員 交渉交渉でその難しさはよくわかります。しかし、我が国固有領土であることは厳然として今も事実であるというところから、そこに住んでおられる方に対して、法的な意義づけと申しましょうか、これをしておくのは我が国は主権者として当然のことじゃないでしょうか。ひとつこの点を研究していただきたいと思います。  次に、北方領土との関連で、竹島と尖閣列島についてお尋ねいたします。  竹島は我が国固有領土であります。しかしながら、韓国がこれを占拠しているのは私は不法だと思います。政府も不法とされているはずでございますので、その速やかな撤去を求めていくべきだと思いますけれども、その方針に変更はございませんか。
  36. 鈴木勝也

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  竹島の問題につきましての政府の立場は従来繰り返し御答弁申し上げておるとおりでございまして、竹島が歴史的にも国際法上も我が国固有領土であるということについては全く疑いのないところでございます。御指摘のとおり、韓国側が竹島に警備員を配置する事態が長年にわたって続いているということはまことに遺憾なことでございまして、これは、従来政府の御答弁で不法占拠という言葉を使っておると思いますし、その点は私も確認させていただいてよろしいのだろうと思います。  それを放置しておくのかという点でございますけれども先生よく御承知のとおり、竹島の不法占拠の問題につきましては、従来、再三というかほとんど毎年韓国側に対しまして外交チャネルを通じて正式に抗議をいたしてきております。
  37. 塚田延充

    塚田委員 尖閣列島も我が国固有領土であります。そして、ここは竹島と違いまして我が国の実効支配も現に及んでおります。この尖閣列島につきまして、中国との関係においてその領有権を棚上げにしたなどということは断じてあってはいけないと思いますけれども、この辺の状況は中国との関係においていかがなっておりましょうか。
  38. 鈴木勝也

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  尖閣諸島につきましても、我が国固有領土であるということは歴史的にも国際法上も疑いのないところでございます。さらに、先ほど先生の方から御説明がございましたように、尖閣諸島につきましては我が国の実効支配が十分に及んでおる状況でございます。したがいまして、我が国の側から見れば領土問題というものはそもそも存在しないというのが政府の立場でございまして、いわゆる棚上げというようなことは毛頭ございません。
  39. 塚田延充

    塚田委員 次に防衛庁になりましょうか、外務省でしょうか、お尋ねいたします。  国連の停戦監視団などへの国家公務員の派遣についての問題でございます。これら国連停戦監視団などに自治省などの職員が派遣される場合には何の問題もないと思いますけれども、防衛庁のいわゆるシビリアンの職員が自治省の方々と横並びのような形で、その中のメンバーとして加わって停戦監視団へ派遣されるということは、法的に何か問題があるのでしょうか。
  40. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまお尋ねの国連の停戦監視団などへの派遣でございますが、これにつきましては現在のところ具体的な検討を行っているわけではございませんので、確たることを申し上げられないことをまずもってお断り申し上げさせていただきたいと思います。  ただ、せっかくのお尋ねでございますので、あえて一般論として申し上げるとしますと、国連の停戦監視団に関することが現行法制上防衛庁なり自衛隊の任務、権限として規定されているわけではないと思われますので、その身分が自衛官であれ、その他の者、いわゆるシビリアンであれ、防衛庁の職員の身分のままで派遣するということには法制上問題があるのではないかと考えてございますが、ただいまも申し上げましたように、具体的に検討しておりませんので確たることは申し上げかねることをお許しいただきたいと思います。
  41. 塚田延充

    塚田委員 それでは、制服自衛官が、人事異動とか何かも含めましてシビリアンになって、そして他省庁の職員と同様にこの監視団に入って派遣されるというようなことが人選の都合でもし起きた場合、こういうことはやはり法的に問題が起きるのでしょうか。
  42. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  あくまでも一般論の問題でございますので確たることを申し上げられないわけでございますが、自衛官、シビリアンというものの性格分けをどのようにするかということもございますので、少なくとも防衛庁の職員の身分で参加するということには法制上やはり詰めなければいけない問題があるのではないか、かように考えております。
  43. 塚田延充

    塚田委員 総理大臣の外遊のためなどを目的といたしまして政府専用機が購入されることが既に決定されております。そしてこの運航につきましては自衛隊が担当することになるのではないかと思います。もし自衛隊が担当することになると、総理が外遊される場合など自衛隊のパイロットがこの運航に当たるのに、現在の法律上問題が生じましょうか。
  44. 日吉章

    ○日吉政府委員 政府専用機につきましては、政府といたしましては現時点で調達を進めているわけでございますが、現在は総理府が管理運用するということで進められているわけでございます。ただ、今後現実に専用機が入手されまして、それを管理運用することになりました場合にどういうふうにするかという具体的な点につきましては、いまだ決まっておりませんで、今後関係省庁で十分検討することとされております。  したがいまして、ただいま委員からお尋ねの点につきましては仮定の問題でございますので、必ずしもその問題としてお答えするのは適当ではないのかと思いますけれども仮定の問題として一般論で申し上げますと、防衛庁が政府専用機による国賓等の輸送を行う、「等」の中には総理大臣も入るわけでございますが、総理等の輸送を行うこととなった場合には、やはり自衛隊法第百条の五の規定に基づいて行うと考えるのが常識的ではなかろうかと思います。そうなりますと、その規定の中には輸送し得る地理的範囲を必ずしも国内に限っているわけではございませんので、内閣総理大臣等を海外へ輸送することも可能ではなかろうか、かように考えておりますが、これはあくまでも仮定の問題としてお答えをしたわけでございます。
  45. 塚田延充

    塚田委員 総理大臣など政府高官もしくは政府への賓客の輸送のみならず、海外において緊急事態が発生したため、例えば在外邦人の救出をさせるため政府専用機を使うこともあり得ると思います。そのような場合、この運航に自衛隊のパイロットが携わることは現行法上どんな支障が考えられるでしょうか。
  46. 日吉章

    ○日吉政府委員 これにつきましても、先ほど来申し上げておりますように全く仮定の問題としてお聞き取りをいただきたいと思いますが、政府専用機による緊急時における在外邦人救出の輸送に関することは、現行法制上、防衛庁、自衛隊の任務、権限として規定されておりませんので、これを実施する場合には、所要の法改正等の手続が必要になるのではないか、かように考えております。
  47. 塚田延充

    塚田委員 仮定上の問題としてそのようなことを考えた場合には所要の法改正が必要になるであろうという御回答でございますが、その所要の改定というのに該当する法律はどういうものですか。そして、そのどの部分をどのように改正すれば対応できることになるのでしょうか。
  48. 日吉章

    ○日吉政府委員 まだ検討いたしておりませんので、そこまで詳しい御質問に対してはお答えをする準備ができてございません。ただ、参考に申し上げますと、現在ございます百条の五には、「長官は、国の機関から依頼があった場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」という規定がございます。こういうものが一つの参考になろうかと思います。
  49. 塚田延充

    塚田委員 ただいまの局長の御答弁によりますと、あくまでも仮定としてしか物を言えない、答弁できないというわけでございますけれども、現に政府専用機の購入はもう手続が済んで、納入される時期が近づいてくるわけでございます。いつまでも仮定仮定と言っているわけにはいかず、現実の問題となるわけでございます。その運航をどうするのだということなしに航空機のみが来たとすれば、これは無用の長物になってしまうわけであり、運航しなければもちろん予算のむだ遣いにもなるわけでございます。そうした場合、特にパイロットに限って考えてみた場合、民間航空会社のパイロットを臨時雇いするとかいうのでしたら、何も政府専用機を購入する必要はなかったわけであります。しかしながら、パイロットというのは、一般にいるわけではほとんどございません。ずばり民間航空会社からパイロットを借用しない限りは、あとは自衛隊になるというのは理の当然であると思うのです。そして政府専用機を購入すること自体、自衛隊のパイロットによる運航を前提としているのではないかということは周知の事実でございますので、この問題についてもう仮定仮定というわけにはいかないと思います。今まではそうでいいかもしれませんけれども、これらの問題につきまして関係省庁におきまして、運航管理の責任は総務庁だそうでございますから、総務庁などを中心として、現実の問題としてこの問題の解決に当たっていく必要があろうし、また、いざ運航しようという場合に、法律上の不備、欠陥などで問題が生じて空港で足どめなどを食っては大変なことになります。法体系について事前の御検討を今の時点から十二分に進められるようお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  50. 吹田愰

    吹田委員長 次に、東中光雄君。
  51. 東中光雄

    東中委員 私は、潜水艦「なだしお」のいわゆる航泊日誌の改ざん問題についてお伺いします。  教育訓練局長は、十一月二十八日の本委員会における質問に対して、「なだしお」の衝突時刻が十五時三十八分と報告されているのに航泊日誌は十五時四十分衝突となっているので、内局はおかしいと思って関係者の事情を聴取した、それは昨年の七月三十一日であるという趣旨の答弁をされておるわけですが、当時、防衛庁内局というのはどこか知りませんが、どこですか、航泊日誌の衝突時刻が十五時四十分となっているということを内局として知って、そして不審に思ったということになるわけですが、どういう経過で知ったか、その間の事情を明らかにしていただきたい。
  52. 米山市郎

    ○米山政府委員 お答えをいたします。  当時、「なだしお」事故後の対応といたしまして、内局、防衛局と教育訓練局が精力的にこの問題に取り組んでおりました。そういう意味で、内局の防衛局及び教育訓練局の担当者が、先ほども先生の御質問の中にもございましたが、衝突事故につきまして、事故の第一報が十五時三十八分となっていたにもかかわらず航泊日誌の記載が十五時四十分になっているということで、そこに食い違いがございますので、その事実を関係者からただしたというものでございます。
  53. 東中光雄

    東中委員 第一報が三十八分になっておる、これは電報を打っていますから明らかなのですが、航泊日誌が四十分になっておるということをどうして防衛局内局が知ったのですかということを聞いているのです。いつ知ったのですかということを聞いているのです。
  54. 米山市郎

    ○米山政府委員 事故原因につきまして私どもそれなりの調査をする必要がございます。また、国会への対応等もございます。その意味で、航泊日誌のコピーを見てそういうことに気づいたわけでございます。
  55. 東中光雄

    東中委員 そうすると、七月二十三日の航泊日誌のコピーを内局、特に防衛局を中心にして内局まで持ってきて、それを見て、そして、ああそうなっているなと認識をして、電報と違うじゃないか、こういうことですね。見たのはいつですか。
  56. 米山市郎

    ○米山政府委員 事故後かなり早い時期ということで、ちょっと日にちの特定は、私も詳しくは承知をいたしておりません。
  57. 東中光雄

    東中委員 かなりと言うほど不正確な言葉はないので、この間のあなたのお話では、七月三十一日にはもう事情聴取をしたというわけですから、だからそれより前に見て、おかしいと思って呼んで事情聴取、こういうふうになるわけですね。だから三十一日より前、二十八日か二十七日か、そのころは連合審査のあるときですから、その日がわからぬというのはおかしいですよ。とにかく内局もコピーを見たことは間違いない。その内局が見たコピーに四十分となっておった。その時期は、かなりじゃなくて、いつですか。
  58. 米山市郎

    ○米山政府委員 記者会見の中にも三十一日という特定した日にちが述べられておりますけれども、また、今お話しのように連合審査が二十八日にあったということでもございます。いろいろ国会への対応等を考慮して、事実調査をできる限り精いっぱいやろうということで、いろいろな資料を取り寄せ、また、関係者の意見も聞いたということでございますので、その以前、かなり近い時期と御認識をいただきたいと思います。
  59. 東中光雄

    東中委員 そうすると、そのときはもう知っておったわけですね。それで、三十一日の日曜日の夜から翌日にかけて、ちょうど横須賀海上保安部の取り調べの合間を縫って、山下艦長らを呼んで事情聴取をした。その結果、午後三時三十八分だった航泊日誌の衝突時刻を、機関科の速力通信受信簿の同四十分の記載に合わせて書き直したことがわかったということを西廣防衛事務次官は十六日午後、記者会見で発表していますね。ここで、通信簿に合わせて航泊日誌を書きかえたということがそのときにわかったわけですね。わかって、結局、衝突時刻は何時だと思ったのですか。
  60. 米山市郎

    ○米山政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、防衛庁といたしましては事故後かなり早い時期に、衝突事故について第一報の十五時三十八分と、航泊日誌の記載が十五時四十分となっているということで、そこに食い違いがあるということで、関係者から報告を求めたわけでございます。その結果、当時の錯綜した状況の中で、鉛筆書きをしてあったものを事後に整理、清書して航泊日誌が作成されたということは事実であるということをつかんだわけでございます。そしてその際、山下艦長は、時刻については速力通信簿の方がより正しいと判断して、衝突事故についてもこれをもとに整理をさせたということが判明をいたしました。ただ、防衛庁といたしまして、そうした本人の説明を受け、その結果これは意図的に書きかえたものではないという判断をいたしたわけでございます。
  61. 東中光雄

    東中委員 えらい先回りして弁解していますけれども、それこそ意図的にやったことの先行自白みたいなものですな。  私が聞いているのは、航泊日誌は三十八分と書いてあったものを、清書か何か知らぬけれども、鉛筆書きであったものをペン書きに書きかえた、そのときに四十分にしたというのでしょう。だからそれは書きかえたのでしょう、清書であっても何でもいいですが。鉛筆書きで三十八分であったものをペン書きにして四十分に変えたということは認められたわけです。航泊日誌がそうなったからといって、今までは三十八分衝突ということで防衛庁は来たわけでしょう、国会に対しても。そういう答弁ありますよ、日吉さんもそういう答弁をしていますよ。だから、そうなっておったものを、今度は航泊日誌を書きかえたんだということがわかった。それは意図的かどうかを聞いているんじゃないのです。今聞いているのは、それで防衛庁としては、三十八分衝突というふうに公式に認めてきたものが航泊日誌が四十分に書きかえられている。それは一つの事実として認めても、実際に衝突したのは何時だというふうに防衛庁としては考えたのかと聞いているのです。
  62. 米山市郎

    ○米山政府委員 書きかえということを申しておりますが、これはあくまでも航泊日誌作成の過程の問題でございまして、メモをしっかりしたペン書きに直した、その際に、十五時四十分という数字をとったということでございます。衝突の時刻につきましては、当初十五時三十八分ということで第一報を報告いたしております。それは、できるだけ早い時期にとにかく事故の報告をしなければならないというところから、いろいろな艦内の数字との突き合わせもなく、十五時三十八分ごろということでとりあえずの第一報を出したわけでございます。  なお、衝突時刻そのものにつきましては、後刻海難審判におかれまして十五時三十九分少し前ということで確定をいたしているわけでございます。
  63. 東中光雄

    東中委員 そういう時間稼ぎはやめなさい。それはいいですが、私が言うのは、それでは防衛庁としては、七月二十三日の航泊日誌のコピーは防衛局で見たということを言われましたね。今、速力通信受信簿の方がより正確であると言われているわけですから、それももちろん見ておられるのでしょうね。それも全然見ないままで信用するということじゃないでしょう。見ておるのですね。どうですか。
  64. 米山市郎

    ○米山政府委員 速力通信受信簿も見ております。  なお、先ほどの答弁の中で、十五時三十九分少し前ということで確定をしたと申し上げましたが、第一審でそういう認定がなされているということで訂正させていただきたいと思います。
  65. 東中光雄

    東中委員 そうすると、防衛庁の防衛局には二十三日の航泊日誌のコピー及び受信簿のコピーが両方ともある、検討したのだから。それをここへ出してくれということを、この間も何回か要求されましたね。社会党の方からも要求した。全部拒否しているでしょう。なぜですか。防衛庁は見た。あるのだったら出したらいいじゃないですか。出せないような都合の悪いものですか。航泊日誌は本来秘密文書でも何でもない。それが改ざんかどうかということが問題になっている。証拠物の対象です。そのコピーを持っておって出さない。受信簿も持っておって出さない。どういうわけですか。
  66. 米山市郎

    ○米山政府委員 防衛庁といたしましては、航泊日誌等のコピーは持っておりますが、現在海難審判が係属中でございます。また、地検の事情聴取等も行われている最中でございますので、そうしたものを提出することを差し控えさせていただきたいと思います。
  67. 東中光雄

    東中委員 差し控えるというのは、秘密文書ですか。そうじゃないでしょう。  それでは、やり方を変えましょう。海上保安庁、お見えいただいていますね。七月二十三日の航泊日誌、それから同日の速力通信受信簿、これは押収されておるものだと思うのですが、証拠物たる書面であるか、あるいは刑事訴訟法の三百二十三条による証拠書類ですね、通常の業務で作成された証拠能力のある証拠物として押収されておると思うのですが、今どこにありますか。いつ押収されましたか。
  68. 赤澤壽男

    赤澤説明員 お答えします。  今御質問にございました航泊日誌、速力通信受信簿、これらにつきましては、海上保安庁は、捜査上必要と認めました関係書類等すべて含めまして初動捜査の段階で押収をいたして、証拠資料として検察庁へ送致してございます。
  69. 東中光雄

    東中委員 初動捜査のときにと言われましたが、初動捜査はいつ、だれに対して行われたのですか。
  70. 赤澤壽男

    赤澤説明員 お答えします。  事故の発生した直後、初動捜査にかかっておりますが、そこに極めて直近したところで押収をいたしております。時刻は、ちょっと今申し上げる資料を持ち合わせておりません。
  71. 東中光雄

    東中委員 七月二十三日午後十一時三十八分、「なだしお」に海上保安庁から乗り込んで、そこで艦長及び関係書類の初動捜査をやったというのは、航海日誌の記載から見てもはっきり言えるのです。しかもその後、午後十一時三十八分、真夜中ですが、それから数時間、夜明け前までやっているのです。そのときに航泊日誌を押収したというわけです。そういうことでしょう。
  72. 赤澤壽男

    赤澤説明員 時刻については差し控えさせていただきますが、一連の初動捜査の段階の中で押収をいたしております。(東中委員「深夜でしょう。何で差し控えるのですか」と呼ぶ)
  73. 吹田愰

    吹田委員長 そこで二人でやりとりしてもらっては困りますから。
  74. 東中光雄

    東中委員 差し控えるというのは何ですか。証言拒否じゃないですか。深夜だろうと僕は時間まで言って聞いているんだから、それを差し控えるというのは何ですか。なぜ時間を差し控えるのですか。要するに自衛隊をカバーするためにはっきりしたことを言わないというのかね。  あの日、衝突が起こったのは二十三日の三時三十八分、そして午後七時には沈んだ方の漁船の船長を海上保安庁は呼び出して初動捜査、質問しているのです。そして自衛隊の方へはなかなか行かないのです。どうしても行かぬから、救助作業だと言って行かぬから、とうとう十一時三十八分に乗り込んだのです。そして真夜中にやった。そういう経過はもう明白ですよ。そういう事実をなぜ差し控えるのですか。差し控える理由を言いなさいよ。どういうわけで差し控えるのですか。
  75. 赤澤壽男

    赤澤説明員 お答えします。  初動捜査につきましては、「なだしお」の方には、先ほど先生から御質問のございました二十三日の夜間になりますが、二十三時過ぎに初動捜査を開始いたしております。その初動捜査の流れの中で押収いたしておりまして、正確な日時については控えさせていただきます。
  76. 東中光雄

    東中委員 だから、正確な日時は聞いておらぬ、夜中でしょうと言っているのです。
  77. 赤澤壽男

    赤澤説明員 夜間でございます。
  78. 東中光雄

    東中委員 事実を認められたようです。なんであんなにカバーするのか。正確な日時なんて聞いてやせぬのやから。十一時三十八分から数時間、こう言っているんだから、正確な時間なんて聞いてやせぬです。正確な時間は差し控えるなんて、わからぬから差し控えるのじゃなくて、事実を認めるなら認めなさい。  そのときに持っていったわけでしょう。そしてその持っていく前に、要するに十一時三十八分に来てから初動捜査で引き上げられるのだから、その前に書きかえられたわけですよ。防衛庁の方はその書きかえを清書というのかどうか知りませんが、その書きかえをやった時刻はいつごろだったのですか。
  79. 米山市郎

    ○米山政府委員 正確な時刻につきましては私もつまびらかにはいたしておりませんが、夜分と聞いております。
  80. 東中光雄

    東中委員 八時ごろに集まって、それは正式の会議と言えるかどうかは別としまして、報道されていますね。船長が集めて、それであなた方の言う清書だ、要するにその受信簿に合わせて四十分にするということを、新聞の記事によると艦長は権限で命令した、そしてその作業に入らせた。だから、八時に集まって十一時三十分までの間に書きかえた、そういう順番になるわけですが、それを否定しますか、それは大体そういうことだということになりますか、どうですか。
  81. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌の作成は最終的には艦長の責任になりますので、艦長といたしましては、航泊日誌のメモ書きとそれから速力通信受信簿の記載とのずれというのを統一をしたいということで、恐らくその担当者それから関係の者たちから状況を聞くというような場を持ったことは承知はいたしております。
  82. 東中光雄

    東中委員 時間的には極めて明白であります。  もう一つ、海難審判庁から来ていただいているのですが、海難審判庁の一審の裁決によりますと、証拠の標目というのがございまして、その中には航泊日誌抜粋、それから速力通信受信簿抜粋、無線業務日誌抜粋というものの写しが公開の審判廷で審理されたということがあの裁決文から明白にうかがえるのですが、ここに言うている航泊日誌抜粋というのは七月二十三日の「なだしお」の航泊日誌、それから速力通信受信簿抜粋というのは同じく二十三日の「なだしお」の速力通信受信簿ということだと思うのです。それはその写しだと思うのですが、それは審判廷へどういう経過で出されて、どこから出してきたものですか。
  83. 平石英世

    ○平石説明員 お答えいたします。  航泊日誌写し及び速力通信受信簿写し、これは写しが出ております。これは理事官の関係者取り調べの段階で、理事官が関係者からとったものでございます。
  84. 東中光雄

    東中委員 関係者というのはだれですか。「なだしお」側の公務員から、防衛庁職員、自衛隊職員から出されたという性質のものだと思うのですが、どうですか。
  85. 平石英世

    ○平石説明員 理事官が「なだしお」側の関係者を取り調べた段階で、そのとき取り寄せたものでございます。(東中委員「どこから取り寄せたの」と呼ぶ)「なだしお」側の乗組員の関係者から取り調べの段階で提出されたものでございます。
  86. 東中光雄

    東中委員 それは公開の審判廷で審理されている記録なんです。ですから当然私たちだって手に入ります。防衛庁は出さぬと言っていますけれども、私たちの方にはちゃんと手に入っています。  それでお聞きするのですが、まず速力通信受信簿、これは七月二十三日分なんですけれども、この受信簿の作成については、この受信簿を記載した柿添二曹という人が審判廷へ証言に出ています。私たちの方から傍聴に行ってそれを聞いております。それによりますと、この速力通信受信簿というのは、速力通信が上から来る、それを受信した、前進原速と言われたら前進原速の機械を回してそれを書き入れる、書き入れるのはその都度ボールペンですぐ書き入れるのだ、だから間違いがないものなんです、こういう証言をしているようです。そういうものに間違いありませんか。
  87. 米山市郎

    ○米山政府委員 速力通信受信簿は、今委員指摘のように、運転室において機関科の当直員が、艦艇の速力、それから前後進の別等を記録をいたすものでございます。
  88. 東中光雄

    東中委員 その都度ボールペンで記載をするんだという証言をして、現にこの物もそういうふうにしたのですという趣旨の証言をしておりますが、防衛庁確認できますか。
  89. 米山市郎

    ○米山政府委員 そうした証言の一々について私どもコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  90. 東中光雄

    東中委員 事柄の性質を聞いているのです。それはそれでよろしい。  それでは、速力通信受信簿、昭和六十三年七月二十三日付、ナンバー一、ナンバー二、ナンバー三、ナンバー四、それからナンバー五と五枚あります。朝の六時五十五分から書いてある。一番最後は二十四時というふうになっています。そこで、これがその都度ボールペンで書いていって、間違いないんだということが前提なんですが、この速力受信簿に四十分衝突という記載があるような話が先ほどありました。電文では三十八分ということだけれども、こっちが四十分と書いてあるからそれに合わしたんだ、こういう話ですね。だが、四十分の衝突記載ほどこを見てもないのです。衝突したかどうかということを書くのじゃないのです。衝突なんていうのは、どこからも衝突と言ってこないのですから。今言うように速力とかでしょう。だから、衝突は記載がないのです。それを記載に合わしたんだというふうに言うたのは一体どういうことですか。
  91. 米山市郎

    ○米山政府委員 速力通信簿の記載は、十五時四十分の項で停止、それから衝突警報という二つの事項が記載をしてございます。今お話しのように、速力通信受信簿には衝突という事実についての記載はございません。ただ、衝突警報が鳴り、機関を停止をしたということが極めて接近をした時刻に起こっているわけでございまして、そういうことから衝突がその時刻に起こったという判断を艦長がしたというふうに私ども承知をいたしております。
  92. 東中光雄

    東中委員 艦長の問題じゃないのです。この受信簿の記載に合わせて航泊日誌の記載をしたんだ、今のだとまた判断をしたというのですが、第一、警報が鳴ってからそれで停止をしたんだ、極めて接近した時間だ、そんなこと、どこにも書いてないのですね。全く主観的に言うているだけであります。だから、これには書いてないということをまず確かめておきたい。  それから、これにはなるほど「衝突警報」と書いてあります。衝突警報は、これは受信事項じゃないわけですね。速力とかに関係のない、本来受信簿に載せるものではないのです。そのことは柿添氏自身も審判定で言うているのです。そういう関係になっているのだということをまず指摘をしておきたい。  そして、これ自体の記載が私たちは後から書かれたものじゃないか、その都度ボールペンで書いたということにはならないということをこの物について申し上げたいのですが、防衛庁は前に検討したことがあるのですから、見たことがあるのですから。  これを見ますと、「一五三八Z」これは機関停止です。同じく「B―」バック一速、だから後進原速です。それから次に「BFull」、「B」はバックですね。「Full」はフル回転です。だから後進いっぱいというふうに書いてある。これが三十八分です。それから、この後進いっぱいについては柿添氏は審判廷でこういう証言をしておる。私は十六年の経験がありますけれども、後進いっぱいというようなものを潜水艦がやるというのは経験したことがありません。後進原速ぐらいはあるかもしれないけれども、本当にむちゃくちゃのとっさのことだということですね。そういうふうに言うているのがここに記載があるわけです。  そして、その次に四十分「Z」と書いてあります。だから、いまだかつて経験したことのないような後進いっぱいの、それの停止が四十分だと書いてある。それでその次の欄にちょんちょんとして「衝突警報」という書かぬでいいものが書いてある。これは非常に奇妙な記載になっているのです。そして四十一分「三分の二」と書いてあります。これは前進三分の二です。それから四十一分「Z」と書いてあります。次に四十八分「B三分の二」、ということは後進三分の二ですね。それから同じく四十八分に「Z」と書いてある。停止です。そして四十九分に「三分の二」、今度は前へ三分の二です。そして同じ四十九分にそれはまた停止になっている。そして五十分に「B三分の二」、これは後進三分の二ですね。そして同じ五十分に「Z」、停止になっておるのです。それから後はずっと何もないのです。ということは前進をやった、一分以内にすぐ停止をやる、それでまた後進をやる、一分以内に停止をやる、また前進をやる、一分以内に停止をする、こういうふうにやっているのですね。これはじっとしているということなんですよ。そのままでおったら流されますからね。行ったりとまったり後ろへ行ったり、こうしてじっとしているという意味なんです。私も船に乗ったことがあるからわかります。  ところが、問題は、三時五十分以後の記載を見ますと「一六〇〇Z」、正時間ですね。四時「Z」で、毎分回転数が九十二・七、そして積算指示が五四六九〇、こういう数字になっておる。これは全部正時間の回転数を書くわけです。だから前進後進の速度を書くのじゃないのです。そしてその次は「一七〇〇」になっておる。もう一時間何もしていないことになるのです。そしてずっと何もしないで白紙のままで次のページの「一七四三」、要するに五時四十三分まで、そこからまたさっきも言ったように前進、停止、後進、停止が続くわけです。ところが、そうするとこの記載でいきますと、三時五十分から五時四十三分まで約二時間近くの間、ここで一切機関の後進も前進も何もしなかったということになるわけですね、書いてないんだから。そうしたら、あの浦賀水道で、この船、「なだしお」がじっとしておって、エンジンを何もしなかったらどうなりますか。浮上しているのですから風と潮で漂流ですよ。航海日誌によると、救援作業をやっておるということになっておるのでしょう。ところが漂流しておったということになるのです。そんなことあり得ぬでしょう。これは事実と違うんです。  しかも、それはないんだったらないで、同じ姿勢をとっておるときはそのまま次へ続いていくのです。ところが、この欄があいているんです。本当に停止しておったんだったら、停止のままで何もしなかったのだったら五時四十三分にすぐつながっていかなきゃいかぬのです。そのとき、その都度書いていくんだったら、あいているのは一体何事か。これはおかしいでしょう。これは後からつくり出している。そして、ここまで書いて、恐らくあれが来たから、十一時三十八分に保安庁から来たから、これは書けなかったんです、完成できなかったんですね。そうとしか考えられない。こういう記載になっておってそういう解釈をせざるを得ない。私ははっきり断言できると思いますが、どうですか、それについて言い分はありますか。
  93. 米山市郎

    ○米山政府委員 「なだしお」は、事故後救助活動にも精いっぱい努力をいたしたわけでございまして、その間、停止をして救助活動に従事をしたというふうに聞いております。
  94. 東中光雄

    東中委員 そんなこと私聞いているんじゃなしに、私が今申し上げた速力通信受信簿について、こういう記載になっておって、それはこういう意味である、そうとしか考えられないが、そのことについて防衛庁としては、これを見たのでしょう、検討したのでしょう、これに合わしたということを認めたのでしょう。そういう立場でおって、私が今言うていることについて、この物を見て、それは違います、私たちの見たのと違うと言うのだったらそれはそれでもいいでしょう。そうじゃなくて、そのとおりだというのだったら、その解釈は私が言うているぐらいに厳格にしなかったのでもうそのまま認めてきたんだということになりますわね。それについて、私の言うたことについて、この物について言い分があるか。一言もございませんというのだったら一言もございませんで結構です。
  95. 米山市郎

    ○米山政府委員 関係者から説明を求めた段階におきまして、航泊日誌につきましては、作成の過程ではございますが、メモ書きを清書をしたという事実は私ども承知をいたしました。速力通信受信簿につきましてはそのようなことは一切ないというふうに承知をいたしております。
  96. 東中光雄

    東中委員 私の言うていることについては一言も、弁解も反論も何もできない、聞いていることだけを言うたというだけのことですね。そうでしょう。事実はそうなっているのだから。そして、そうすると、あなた方の論法でいきますと、この受信簿の記載の方が正確だから、それと航泊日誌を比べてみて、そして航泊日誌の方は、違っているところは正したというふうに聞いているというのですね。  ところが、これを見てみますと、受信簿の中に、十八時九分に「潜水作業開始」という項目が入っているのです。受信簿ですよ、皆さん持っているでしょう、それを見なさいや。「一八〇九潜水作業開始」というのが入っていますね。そして同二十一分「潜水作業終了」と書いてあるんです。今後ろで一生懸命同じものを見ていますからね。ところが、航泊日誌の方を見ますと、「潜水作業開始一七五九」なんです。そして「同上終了一八二一」なんです。終了時刻は合っています。ところが「潜水作業開始」の時刻は十分違うのですね。さっきのは、衝突なんて書いてないのにいろいろ推測して二分の違いを直したというのです。ところが、これは何と十分違うけれどもそのまま残っておるのです。これはどう説明されますか。
  97. 米山市郎

    ○米山政府委員 艦内の記録というのは、やはり記録をつける人によって特に時間に対応したものはばらばらになるということはある程度やむを得ないものであろうというふうなことを私もいろいろな関係者の皆さんから聞くわけでございます。そういう意味で、時間のずれはむしろある意味ではあってもしかるべさものなのかもしれません。そういう意味で、先日の西廣事務次官の記者会見の中でも、そのままにしておくべきであったというようなことも申し上げているわけでございます。
  98. 東中光雄

    東中委員 それでは、なぜ衝突時刻だけ食い違いが起こっておるわけでもないのに、「警報」というのが四十分の後はちょんちょんと書いてあるから、接近しておった時間だから、順序が逆のことを書いてあるのに、受信簿では衝突が四十分だということになるんだ、それでわざわざ航泊日誌を三十八とあったのを四十に変えたんだ。その割には、潜水作業というのは両方とも書いてあるわけです。これも重要な作業でしょう。十分も違っています。別に、そういうことはよくあるんだ、そっちの方だけ何でそうなるのか、それはやはり意図があったということになりますよ。それはそうとしておきましょう。  そこで、航泊日誌は一日一枚、裏表ぐらい書くんだという説明をこの間されました。七月二十三日の航泊日誌はそうですか。何枚ですか。
  99. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌の記載といたしましては、一日一枚、二ページを使うのが原則でございます。それで書き足りないような事象がたくさん起こる場合には、後ろの方に予備紙というのがございまして、ミシン線で簡単に切り離すことができるようになっておりますが、その予備紙をつけ加える、それはのりで張りつけるようでございます。そういうことで整理をするようになっておりまして、この日もいろいろな事象があった関係で予備紙を使っていたと私は聞いております。
  100. 東中光雄

    東中委員 あなたがまともに答えようとしないのは本当に不誠実きわまると私は思います。七月二十三日の分は何枚ですかと聞いたのです。二枚じゃないですか。四ページでしょう。どうですか、この点は。
  101. 米山市郎

    ○米山政府委員 予備紙を一枚張りつけた形ですので、四ページということになります。
  102. 東中光雄

    東中委員 その四ページ、二枚で書きかえた分と捨てた分があるんですね。これは書きかえた分だと思うのですが、これは二枚とも書きかえたのですか、あるいはそのうちの一枚だけ書きかえたのですか。
  103. 米山市郎

    ○米山政府委員 予備紙の方だけでございますので、一枚でございます。
  104. 東中光雄

    東中委員 そうすると、この二枚のうちの一方は鉛筆で、書きかえた方はペン書きということになっているわけですか。
  105. 米山市郎

    ○米山政府委員 簿冊に最初からとじ込んである部分につきましては、ペン書きで書いてあったというふうに私は承知しております。
  106. 東中光雄

    東中委員 鉛筆で書いてあった分、鉛筆で書いてあって鉛筆の形が残るからというので清書をして四十分に変えたという分、それから、そうでない分の方は初めから鉛筆じゃなくてペンで書いてあった、言われている趣旨はこういうことですか。
  107. 米山市郎

    ○米山政府委員 訓練の最中あるいは錯綜時等事象が頻繁に起こるような場合には、鉛筆書きでメモをしておくということはよくあることでございます。
  108. 東中光雄

    東中委員 そうすると、二十三日の分は二枚あるわけですが、一枚目の分は展示訓練をやっているときなんです。訓練部分なんです。だから錯綜するのでしょう。あなたは訓練など錯綜するときは鉛筆書きがよくあると言った。ところが、その分は訂正してない方の部分です。それで書きかえた方の部分というのは、衝突時間を四十分にしたというのですから二枚目の分なんです。そうすると錯綜している訓練中の分はちゃんとペンで書いてあった。そして衝突の部分が書いてある分は鉛筆書きだった。途中で鉛筆書きになるのです。もう衝突を予測したのかしれぬな。そして今度はその分を清書するというので後ろから持ってきて差しかえた、今の答弁からいけばこういうことになるわけです。ちゃんと物を持っている相手に言っているのだからごまかしたってだめですよ。そうなるのです。  そこで、十五時三十八分「後進一杯」「一五四〇防水部署発動」「一五四〇第一ふじ山丸と衝突(東北防波堤Ltの一一〇度一・七ML)」という記入があります。そして「一五四〇Z」機関停止、そこから「一五四一A/R A/R 溺者救助部署発動」「一五四二第一ふじ山丸全没」こう書いてあるのです。  そこでお伺いしますが、三十八分となっておった分を四十分に変えたというのは、どの部分が三十八分になっておって四十分に清書したのか説明してください。
  109. 米山市郎

    ○米山政府委員 鉛筆書きのメモといいますか、予備紙に鉛筆書きしてあったものが現段階で手元にございません。破棄をされたというふうに聞いております。その点については大変適切を欠いたことだというふうに私どもは考えております。そういう状況でございますが、少なくとも衝突事故につきまして十五時三十八分を十五時四十分に速力通信受信簿等との突き合わせから直したというふうに聞いております。
  110. 東中光雄

    東中委員 これは艦長の責任においてやる航泊日誌である、だから正確を期さなければいかぬから、艦長が指示をして清書をさせてそういうふうにさせたということですね。
  111. 米山市郎

    ○米山政府委員 航泊日誌は艦長の責任において作成するということになっております。
  112. 東中光雄

    東中委員 ところが、艦長の責任においてやった航泊日誌、先ほど申し上げましたように、「一五四〇第一ふじ山丸」、「ふじ」は平仮名です。「第一ふじ山丸と衝突(東北防波堤Ltの一一〇度一・七ML)」こういう記載なんですね。これは全没も、四十二分「第一ふじ山丸全没」なんです。富士山丸というのは北朝鮮に拿捕されたということで有名でありますけれども、ここで衝突したのは、全没したのも富士丸ですね。第一富士丸でしょう。そして、第一富士丸との衝突をはっきりと公式に認めている艦長の文書があるわけですな。ここに私、電文も持ってきていますよ。これはなかなか厳格なものだなと思って見ました。こういう電文がありますよ。  「P 二三一七三八I JUL 八八」Pというのは至急報ですかね。二十三日、一七三八というのは五時三十八分、Iというのは日本時間ということです。それで、ジュライ八八。だから、五時三十八分に打ちましたという電報です。それで、打ったのは「ナダシオ―カンチヨウ」と書いてあります。「FM ナダシオ―カンチヨウ」。そして打つ先、「TO」ですね、打電先は「CMS」海幕長です。それから「SFシレイカン」自衛艦隊司令官です。それから「SBFシレイカン」潜水艦隊司令官です。それから「二SLシレイ」第二潜群司令、高原司令です。それから「二SDシレイ」これは二潜隊司令です。及び「INFO」インフォメーションですが、「Y―RHソウカン」これは横須賀地方総監。それから「Y―RSPチョウ」これは横須賀調査隊長。これあてに艦長が打った公式電文です。  その中身はどうかといったら、衝突時間は七月二十三日「一五三八I ヨコスカコウ トウホク ボウハテイLT一一〇ド一・七マイル」と書いてあるのですね。それで、衝突した相手は「ダイ一フジマル」とちゃんと書いています。そしてこの船が沈没したのは「一五四〇I ドウセンチンボツ」こう書いてあるのですよ。だから、衝突した相手は第一富士丸であるということを海幕長から自分の直属全部、その地域を管轄しているところ全部にインフォメーションを出している。その公式の電文で三十八分衝突でしょう、そして四十分沈没でしょう、相手は第一富士丸。そのほかもっといっぱい書いてありますよ、ただいま救助中とか何人乗っておってどうしたとか。これは公式の電文ですよ。これをあなた方が聞いたのでしょう。これは五時三十八分に打っているのです。  ところが、三十八分衝突というのは、そのほかにも四十一分に「ちとせ」に対して打っていますね。護衛艦に救助を頼むということで打ったのが四十一分です。三時四十一分に打つ電報で、三十八分衝突しましたという電報なんですよ。だから、それは今から三分前ですということです。そういう電報を艦長の許可を得て、決裁を得て出しているわけでしょう。  それからその次に、五十五分にまた通信隊を通じて、今度は衝突が三十八分、そして相手は第一富士丸と書いてあるのです。そして、沈没が四十分、これも公の電信です。  だから、衝突したすぐ後、三分後に出したものが三分前に衝突しましたと出しているのです。そして、そのときはまだ相手はわからぬですね。漁船と衝突と書いてあるのです。それで、五十五分になったら第一富士丸だということが書いてあるのです。それで、沈没の時間が四十分と書いてあるのです。これも公電ですね。これは全部艦長が決裁しているのですよ。起案する者がおって、艦長、航海長であった副長、そこらの関係が全部見ないで決裁することはないのですよ。第一、艦長は回避行動を起こした本人でしょう。そして、衝突したのだから。衝突する十秒前にヒュヒューンという警報を鳴らしましたと艦長は証言していますよ。だから、わあっと回避しようと思ったけれども、回避し切れぬで当たったんだ。当たったら、操艦しておった責任者である艦長が、いつ、どこで、どういう速度で当てたんだ、こんなもの認定できぬようなことだったら艦長たる資格なしやな。艦長の責任で直後に電報を打ったのでしょう。  それを今度は艦長の責任において清書させたというこれを見たら、何のことはない、「第一ふじ山丸」と、大体相手が違うがな。そして、時間が四十二分沈没なんていったら、四十二分沈没だったら、四十一分に最初の救助電報を打っているのですから、沈没もしておらぬのに救助電報を打つわけないでしょう。四十一分に救助電報を打ったということは、その前に沈没したということでしょう。沈没もしておらぬのに何で救助をする必要がありますか。そうでしょう。そういう状態になっているのですよ。それを今度は、四十一分に電報を打っているその艦長が、三十八分に衝突したというて打っている、四十分に沈没したというて打っているその艦長が、正確を期すためだというて四十二分に沈没をした、しかも「第一ふじ山丸」、こんなことを書いているのですから。これが改ざんでなくて一体何ですか。こんなことになるわけがないでしょう。艦長の責任においてやらなければいかぬのだ、だから狂わしたんだ、もとになっておる受信簿には書いてない、艦長自身がやってきた、これは決定的ですね。  三十八分に衝突して沈没したから、四十一分に救助が必要だといって、自分は行かれぬからといって僚艦に、護衛艦に出したのでしょう。その後初めて沈没するのだったら、まだ沈没しておらなかったんだというふうなことを書いた時期は、この電報を三つ打ったもう一つ後なんです、夜なんですから。公式電報が五時でしょう。これをやり出したのが八時でしょう。だから、明らかに自分のやっていたことを変えた、こういうことになると思うのですが、どうですか。何か言うことがあったら言ってください。
  113. 米山市郎

    ○米山政府委員 今るる先生の方からいろいろ御指摘がございました。第一報では十五時三十八分、またそれに関連をいたしまして各方面に打電をいたしました内容もおっしゃるとおりでございます。  そういうことから、私ども、航泊日誌に十五時四十分という記載があることに疑問を抱いて調査をしたわけでございますが、冒頭に御説明をいたしましたように、清書をしたものであるという判断をいたしているわけでございます。
  114. 東中光雄

    東中委員 なぜこの二分をそんなにやるのかということがどうしても残るんですよ。これはもう明白なんです。航泊日誌によっても、受信簿によっても「一五三六Z」というのがあります。これはヨットを避けるために機関停止をしたというのです。そして「一五三七II」というのがあります。これは前進強速でしょう。だから、前を突っ切るんだといって前進強速をかけたのが三十七分なんですから。これは両方の記録ともそうなっていますね。そして、三十八分になって「Z」が出てくるのです。それは前進強速の停止なんです。そして後進原速、後進いっぱい、こうくるわけですね。それは全部三十八分になってからやっているのです。そして衝突は三十八分ということを電報で打っているのでしょう。だから、三十八分になってから、うんと前へ行っていたやつを停止をし、そして後進いっぱいまで、十六年間やったことないようなことをやって、そして面かじいっぱい切った。しかし、同じ三十八分中に当たってしまった。これはもう明白な追突の理由ですね。突っ込んでいったようなもんですがな。同じ三十八分という表示が三十七分三十一秒から三十八分二十九秒までを言うというようなことを言うていますけれども、仮にそうだとしても、一分の間に、うんと前へ進んでおったやつを停止をして、後進いっぱいにして、それから面かじを切って、そしてその三十八分中に当たっているんだから、だからこれはもうまさに――面かじなんというのは潜水艦の場合にはなかなかきかないのです、きき出したらぐっと行きますけれども。だから、ぼんと当たりにいったということになるのです。これでは困る、そういうことでどうしても時間が要るわけですよ。  前進原速から後進いっぱいにして、そして停止をするのにどれくらい時間がかかるかと言ったら、「なだしお」については一分三十秒ということが出ているのです。前進強速だったのですから、それを後進いっぱいにしたら二分近くかかるんです。だから、当たるまでの間にどうしても二分間稼がなければいかぬわけです。後ろはもう稼ぎようがないのです。ヨットとの関係があって三十七、それから三十八分にやった。変えようがないのです。だから当たった時間をずらしたのですよ。二分間というのは貴重なんです。そして、もう止まっておるところへ向こうが来たんだ、こういうことを言うためにとんでもないことをやったものだから、つじつま合わせにこれを変えていくものだから、四十二分沈没なんということになるんです。  沈没した船の電気式の時計が、沈没したことによってとまるんですね、電気仕掛けの時計ですから。機関室にあった時計のとまっている時間が、これはもう検証調書ではっきり出ていますよ、三十九分十七秒です。数分でとまるというのです。だから三十九分十七秒にはもう機関室は浸水しておったということの客観的証拠なんです。その前に当たっているということは当然でしょう。そういう性質のものを、あえて二分おくらした。そして四十二分沈没なんて書いておる。これは全くのでっち上げです。こういうのを公文書改ざん、証拠隠滅。三十名の業務上の過失致死傷事件であって、しかも業務上の海上交通往来危険罪、重大犯罪でのこういう隠滅行為、これは断じて許せない。単なる改ざんじゃないのです。証拠隠滅です。被疑者ですよ、初動捜査に来たときの山下艦長は被疑者なんです。その被疑者が証拠物たる書類を命令で、責任だからと言って書きかえさした。書きかえさしたのは全くのうそだ。これは証拠隠滅罪、私は断言してはばかりません。反論があったら反論してください。
  115. 米山市郎

    ○米山政府委員 衝突時刻につきましては、先ほども申し上げましたように海難審判の第一審で十五時三十九分少し前ということで一応の認定をいただいているところでございます。防衛庁といたしましては、事故後かなり早い時期に今るる御説明申し上げましたような調査をいたしまして、とるべきことはとったわけでございます。意図的なものではないという判断をいたしているわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題につきましては現在海難審判で審理をいただいているところでございます。また、検察庁における事情聴取も行われている段階でございますので、そうした第三者機関による御判断を待ちたいと思っております。
  116. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  117. 吹田愰

    吹田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ────◇─────     午後一時十七分開議
  118. 吹田愰

    吹田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  119. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は、海部総理大臣の御出席をいただきまして、いわゆる防衛二法、これの質問をさせていただきたいと思っております。  たまたま、質問に入る前に、海部総理は東海三県の関係で大変よしみをいただいておりますし、また同時に、私と同じ選挙区の田村代議士が衆議院議長をやっておる。今ちょうど東海三県にとっては、総理も愛知であり、議長は三重である。こういった時期に海部総理大臣に防衛問題、外交問題で質問するというのも何かのえにしかと思いますし、私は今期限りで政界を引退をする、そういう考え方を持っておりますから、そういう点では大変思い出の多い委員質問ということになるだろう、こう思っております。  それで、外交、防衛問題をやはり総合的に考えなければならぬ。言うまでもなく、一国の安全保障というのは、もちろん防衛力というのは基本問題として存在しますけれども、同時に、最近の首脳外交の展開等をお互いに見ておりましても、外交的努力といいますか、あるいは外交の役割といいますか、従来にも増して非常に大きいということを痛感させられるわけでありまして、また同時に、総合安全保障の問題というのは、食糧等を含むいわゆるそういった安全保障面も総合して考えなければならぬ。同時に、それを支えるものは、やはり国民的基盤であるということをお互い忘れてはならないと思うのであります。  たまたま、きょう質問に入ろうと思いましたら、けさ、早朝からフィリピンで御承知のような国軍の一部がいわゆる反乱を起こしておるという大変不幸な事態が出ております。私ども、民主国家を形成する場合に、軍隊でもって政権を転覆させるというふうなことは断じてあってはならないことでありまして、私どもの古い時代を考えてみますと、日本の場合もかつては五・一五事件があったり二・二六事件があったり、そういう不幸な経験を持っておるわけであります。そういう点で、アキノ大統領が健在である、全国的にその反乱というのは波及していない、軍の方としてはやはり説得をもってなるべくこれを鎮圧したいということでありますので、フィリピンのこういった反乱については一刻も早く鎮静化することをこいねがう一人であります。  国際情勢全体を見てまいりますと、海部総理も十分御理解のように、数年来、特に、ソ連ゴルバチョフ書記長が登場以来とあるいは申していいのかもしれませんけれども米ソを中心にした首脳会談が活発に展開されていく。また、それに呼応して先進諸国の首脳会談、いろんなものが展開をされていく。そして、大変難しいことであったけれども、中距離核戦力の全廃条約が締結される、これは実施に移されるということがございます。また、アジア等を見ましても、アフガンのいわゆるソ連軍の撤退というふうなことも実現したわけでありますし、また、ベトナムのカンボジアからの撤退、これはまだぴしっと行われておるかどうかには若干報道等で議論があるようでありますけれども、しかし、それにしても、これはやはり話し合いを通じて実施の方向に向かっておる。いわば力対力というふうな紛争じゃなしに、できるだけ国際的な先進諸国が入って、話し合いで、イデオロギー的には対立する面があっても、それを乗り越えて解決していこうということが顕著に出ているわけであります。したがって、戦後のいわばヤルタ体制と言われるようなもとで、米ソを中心にした東西の対立というものが長く続いてまいりまして、時に緊張があり、時にデタントがありましたけれども、基本的にはこの枠組みというのは大きな変化がなかったということも言えるかと思います。  しかし、最近の東欧情勢、こういうものを見てまいりますと、ルーマニアその他一部のところは従来の方針を堅持しておりますけれどもポーランドにしろ、あるいはチェコにしろ、あるいは恐らく東欧の優等生として大きな変化があるいはないのではないかと言われておった東独においても、大きな民主化の波の中で政治改革に乗り出そうとしておる。私ども、いわゆるベルリンの壁というものを訪れたとき、分裂国家の悲劇というものを絶えず感じさせられたわけでありますけれども、このベルリンの壁が崩壊をして東西ドイツの間が自由交流ができるようになってきた。それらを通じてお互いが感じ取ることは、東欧諸国の今後の進展がどういうふうに進むかという点についてはある程度今後の推移を見なければならぬ点がありますけれども、とうとうたる大勢で民衆の基盤の上に立って一党独裁の政治体制が変わっていく、また、現に変わっておるというところが多く出ておるわけでありまして、これらの東欧諸国の動き、また、ここ数年来強力に展開されてまいりました米ソ首脳を中心としたいわゆる首脳外交というものの外交的努力によって、デタント方向というものは明るい日差しがさらに光を増しておるという実感を強くしておるわけであります。  あすからマルタ島沖で米ソ首脳会談が行われる。今日、相対的には米ソの国際的影響力というものは低下をいたしまして、日本であるとか、あるいはイギリス、ドイツ、フランス、そういったところが戦後復興の中から大きく力を増してきておるということはございますけれども、やはり依然として国際政治の舞台では米ソ首脳の果たすべき役割というものは極めて大きいという点で、あすから二日間行われますマルタ沖における米ソ首脳会談というものにも大きな期待を寄せておるわけであります。  海部総理大臣は、こういった国際的な進歩と自由と大きな民主化の嵐の中で、一国の総理としてどういうふうに国際外交あるいは政治の軸足を進めていこうとするのか、その辺からまずお伺いいたしたいと思います。
  120. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 冒頭先生が私と先生とのことについてお触れをいただきましたが、長い間、新幹線なんかで一緒になって御指導をいただいた隣県の先生として御尊敬も申し上げておりましたし、また、勲一等旭日章に輝かれましたことにも最初に心から敬意を表させていただきます。  また、その長年の御経験を通じて、最近起こっております国際情勢の動き全般に通じて、ここでいろいろ御意見を加えてお述べいただきましたこと、私も同感するところ多々ございまして、そのとおりの気持ちで素直に承っておりました。  第一に、東西の対立とかあるいは東西の対決というような構造、枠組みがございましたのも事実でありましたけれども、最近は対決、対立ではなくて対話に入っていこうとすること、これは先般の私とブッシュ大統領との首脳会談のところでもはっきりと確認をしたことでございますし、また、世界の流れがそうなってきております。特に、お触れになりました東欧諸国を中心とする東西の枠組みの中における大きな変化というものは、私は全体として望ましい方向を目指しながら、平和共存といいますか、新しい関係を模索しておる、このように全体としては受けとめさせていただいております。こういった傾向が定着されていくことが世界のためにも非常にいいことである。日本といたしましては、この方向に向かってできるだけの協力もし、できることがあったら努力もしていかなければならないと思っております。  先般、ブッシュ大統領から、今お触れになりましたマルタにおける首脳会談を行う前に、私の話も、意見も聞いておこうというので、電話をもらいました。そのときブッシュ大統領は、マルタ会談というのは、ただ単に軍備管理の問題を話すのみならず、経済の改革の問題や安定の問題を話し合うけれども、これは広く世界の問題について触れるつもりで、東欧のことのみならずアジア太平洋地域の問題についても、その地域の平和と安定のために日本がどのような重要な役割を果たしておるかということも十分理解しながら、世界的な規模話し合いをしたい、こういうことでございました。私はそれに対して、会談の成功を心から期待をしますと同時に、やはり世界の平和と世界の安定、またアジアの問題についても言及をし、その平和と安定のためにも役立てようとされておる首脳会談のあり方というものに賛意を表した次第でございます。定着するように努力を日本もこれからしていかなければならぬと思います。
  121. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あすから開かれますマルタ会談というのは、戦時中に開かれたいわゆるヤルタ会談日本からしますと、このヤルタ会談というのは、ソ連の参戦を約束することを前提に、あるいは千島であるとかあるいは樺太であるとかを全く日本の直接かかわりのないところで――北方領土問題という国民の悲願の問題も、ソ連側はそれを主張の有力な一つの根拠にしておるわけでありますけれども、いずれにしても、戦後の東西関係というのはヤルタ体制と言われたりしておるわけであります。そういった中であすから行われますマルタ会談は、新しい二十一世紀に向けてのいわゆる国際政治の幕あけと言うのにふさわしい成果を生み出してもらいたいものだというふうに思うわけであります。  問題は、東欧諸国情勢を見ましても、あるいはそれと関連して東西ドイツの将来展望としての再統一問題というふうなことを考えてみましても、従来のいわゆるNATO体制あるいはワルシャワ体制という軍事的な対決というものが、最近の東欧情勢等も含めてどういうふうに平和の方向で切りかえていかれるかということが注目しなければならぬ点だと思うのであります。  たまたまゴルバチョフ・ソ連最高会議議長兼書記長がイタリアを訪問して、そしていわゆるNATOあるいはワルシャワ、こういった軍事の従来の対決について、軍事面を薄めて政治的な協議の場にしていくべきだということを言っておるのも、一つには、これからの行き方の有力な考え方だというふうに私どもは受けとめておるわけであります。いずれにしても、そういう情勢の中で、広く緊張緩和に向けての問題、あるいは特に東欧諸国の問題の中で、ポーランドとかハンガリー、こういうところについては、過般のアルシュ・サミットを通じて援助をやっていこう、こういう取り決めもなされておりまして、それに基づいてアメリカのブッシュ大統領自身がポーランドハンガリーを本年の七月の時点で訪問をしておることも御案内のとおりであります。  それで、海部総理は、政治情勢にもよると思うのでありますけれども、こういった激動する国際情勢、特にヨーロッパ情勢、新しく動いておる、これからの平和、デタントへの方向という中で、東欧諸国訪問のプログラムを報道として私どもは聞いておるわけであります。まさに時期としては、政治情勢が許せば一国の総理として行くべき時期だろうというふうに私自身は受けとめております。そういう点で、今検討中というのは、午前の質問のときの外務当局、外務の政府委員の答弁でございました。これは政治情勢にもよりますが、やはり東欧訪問したいというふうに考えられるのは、総理の発意がなければそういうことにならぬだろうと思うのです。政治情勢が許せば東欧訪問をされるというのは、時期的にはやられていいことだというふうに私は思っておりますけれども、その辺のところについては今日時点でどうお考えでしょうか。
  122. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本としましては、世界の平和と繁栄のために汗を流す外交をしなければならぬ、世界に貢献しなければならぬというのを基本に考えておりますし、また、先般のサミットこおいて、東欧諸国変化民主化、そして自由を求める動きというものに、経済改革にはそれなりの協力もしなければならぬ、それが決まったわけでありますから、日本としても応分の協力はしていくということは既に決めておりますが、現地へ行っていろいろな方に出会ったり話を聞いたり、また、どのようなことがいいのか、どうしたことがお役に立てるのか、また、将来どんな動きになっていくのか、直接相手の首脳ともいろいろお話をしてみたいということを私自身は考えております。  ただ、御承知のように、相手国もあることでございますし、また、年が越して来年国会が再開されますまでの間、歴代の総理も外交問題処理に時間をかけてきたという前例等もありますので、その辺のことも十分踏まえながら、まだ今具体的にどこへいつといつとは言えませんが、先生指摘ポーランドハンガリーのこと等も念頭に置きながら相手国との調整を進めておるさなかだ、このように御理解をいただきたいと思います。
  123. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 外務省の方から少しお伺いしたいのですけれども冒頭に取り上げましたフィリピンの国軍の一部の反乱問題、こういうところの現時点で掌握しておる状況について御報告を願いたいということが一つと、それから、関連をいたしまして、ポーランドハンガリーに対する日本政府としての援助は、これは先般のアルシュ・サミットに基づいて、その条項に従ってやられるわけでありまして、過般森山官房長官も、新聞記者会見等を通じて、とりあえず骨格的に決まった点あるいは緊急食糧援助等まだこれから詰めていかなければならぬ点、そういう点を骨格を明らかにしながら発表されたわけでありますが、これらの現時点の検討状況というものについて、総理以外で結構ですから御答弁願いたいと思います。
  124. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 第一点のフィリピンクーデター、今まだ帰趨は定かではないところがございますけれども、現在の状況を御説明申し上げたいと思います。  委員承知のように、本日の未明に海兵隊二個中隊から成る反乱軍が空軍基地を襲撃するという事態がございました。ビリャモール空軍基地と申しますけれども、現在、いまだ反乱軍の支配下にございます。そのほか、国営放送の周辺地区及びクラメ基地というのがございますけれども、この周辺でまだ銃撃戦が行われておるようでございますが、マニラの市内はそれなりに平穏というふうに現地の大使から報告が来ております。フィリピンの国軍が、アキノ大統領の命令によりまして、現在反乱軍の鎮圧に全力を挙げているという状況でございます。アキノ大統領御自身の点につきましては、これは私どもの大使を通じまして、安全であられることがはっきりと確認されております。
  125. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  東欧に対する支援の問題でございますけれども委員指摘のとおり、アルシュ・サミット以来二十四カ国の間で東欧に対する支援が協議されてまいりました。その内容等も踏まえまして、我が国としてもこれに対する応分の協力をするということで鋭意検討してまいりましたけれども、今回、十一月二十四日の第三回目の会議におきまして、当面我が国としてでき得る援助につきまして公表いたしました。先日、官房長官から公表いたしましたとおり、一・五億ドルの商品借款ということで、IMFとの構造調整ができることを条件にこれをポーランドの通貨安定基金のために協力するということで発表いたした次第でございます。その他、ポーランドに対する緊急食糧援助、ポーランド及びハンガリーに対するマネージメント協力、あるいは環境改善という技術協力の面につきまして、ただいま予算措置等も含めて鋭意検討中というのが現在の段階でございます。
  126. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間が限られておりますので、次に、ソ連問題の関係について総理に若干お聞きいたしたいと思います。  日本の例えば毎年の防衛白書を見ても、これは防衛サイドからの問題でありますけれども、いわゆるソ連の脅威論というのが基本にあって、そしてことしの場合は、特に各新聞の報道等を全部取り集めて社説を見たり解説を見たりしていても、予想される一部の新聞ではそう書くだろう、というのは大体慎重な見方に賛成をするという書き方ですけれども、それ以外のあらかたのところは、いわゆる今日の大きく揺れ動く中で進もうとしておるデタント方向というものに対して、ポスト中期防というものに対する一つの布石として、従来以上に防衛白書においては、これでもかこれでもかと言わんばかりに、ソ連極東におけるところの強力な力、そしてまた、それにポスト中期防を通じて対応していかなければならぬという布石的なそういうものが強く出ておるという見方をしておったと思うのであります。  私は、十数年来、たまたま要請されまして、日ソ議員連盟の事務局長というのを務めてまいりました。前任者の石田会長に仕え、現任者の櫻内会長にお仕えして、十数回、単独で、あるいは国会からの白濵仁吉先生を団長とする代表団の副団長として、あるいは円卓会議の取りまとめ役としてやってまいりました。大体、三重県の選挙区からいえば余り関係ないと言って事務局長をお断りしておるのに、どうしてもということで引き受けたのがきっかけでありますけれども、しかし、それは別にして、ソ連というのは、国民としては話してみると非常に親しみやすいし、スポーツはなかなか強いし、文学、芸能、いろいろな面でも国民に親しまれておるわけでありますが、国対国とか、場合によっては政党対政党と言ってもいいかもしれませんが、なかなか手ごわい相手でありました。そういう中で、議員外交を通じて、政府が進める施策が我々と同じ方向であればこれを強力にバックアップするという役割も果たしていかなければならぬということで、微力ではございましたけれどもやってまいりました。そして、政界から身を引くということもありまして、過般、事務局長を新しい人にバトンタッチをしたのであります。  私は、第二次世界大戦のときには青年時代でございましたが、学校を卒業して、正規のいわゆる初年兵として入隊をし、幹部候補生として教育を受け、将校になるやフィリピン戦線に小隊長として、さらに、一たん召集解除になって帰りましたら息もつかせず再び召集になって、今度は中支に中隊長として参りました。戦争が非常に終わりの段階になって、本土危うしというので、本土決戦部隊で、慌ただしく満州、北鮮を通って、潜水艦の攻撃を受けながら新潟に着いて、艦載機の激しい攻撃が行われておる中を、九州の五島の現地中隊長に行けという命令を受けて、長崎の惨たんたる原爆の惨状を体験して、福江で戦争が終わったわけであります。したがって、私は、戦後の自分の行くべき道というのは、やはり長崎原爆の惨たんたる惨状を原点として私の戦後のスタートが始まったというふうに思っております。再び広島、長崎のような惨禍を日本が受けてはならない、そういう意味で、日本が戦後、平和文化国家としてスタートするその戦列にはせ参じようというふうなことで、労働運動や平和運動の中で、農林省の昭和二十八年時代は本部委員長ということで活動したりしたわけであります。そういうことだけに、私の場合は、核廃絶に対する熾烈な願いというのが強いのであります。それは昔も今も変わりがないのであります。  そういう立場から見ますと、米ソ首脳会談を通じて、わずか数%でありましょうけれども、いわゆる中距離核戦力が全廃される条約が実施に移される、また、戦略核についても五〇%は少なくとも削減しようということで話し合いが粘り強く行われておる。もちろん米ソが九十数%の核超大国であって、イギリスが持っておる、フランスが持っておる、中国が持っておる、その他にもここは持っているんじゃないかという国もありますけれども、何といっても米ソが思い切った核兵器の削減、そしてこいねがわくは核廃絶を全体としてやっていかなければならぬというふうに思うわけであります。  それは、新しい方向が進んでおることは、私どももやはり日本国民の核廃絶への原水爆禁止の運動、そういうものが大きな国際的な力になったと思いますけれども、しかし一方では、核抑止論というのが根強く防衛のサイドではあるわけであります。これは防衛白書を見ても、あるいは外交青書を見ましても、今日いろんな複雑な情勢の中で大きな大戦にまで至らなかったのは、米ソの核抑止力というものが大きく働いておるというふうに言っておるわけであります。  ただ、山口書記長等と海部総理がやりとりをやられた議事録、また、市川さんとやられた議事録とか、いろいろそういう最近の予算委員会の議事録なんかに目を通したりしたのでありますが、総理もやはり平和が保たれてきたのは核の抑止ということが働いておる。これが余り国際政治の舞台の指導者の中に根強くありますと、これをどんどん減らしていくという力が一定のところでとまってしまうということになる。言うまでもなく、従来の広島、長崎の原爆の威力からははるかに数百倍の核ができておる。私は、いつも防衛二法等の議論のときに、竹下前総理のときにもいろいろ言ったのでありますけれども、今日のお互いの生きておるこの世界、日本、これは一見極めて平和的な環境の中で生きておるように見えますが、一朝過って米ソのいずれかの指導者が核のボタンを押すとかいうふうなことで、第三次と名のつくような世界戦争、絶対あってはならぬわけですけれども、そういうことになった場合は、世界人類の破滅という事態にまで追い込まれる。日本が水爆をそんなにたくさん攻撃を受けなくても、北海道や東北や関東やあるいは東海やあるいは近畿、中国から九州というふうなところにそれぞれ一発ずつ投下されたとしただけで、恐らく全く立ち上がり不能な状態に追い込まれるだろうというふうに私は思うのでありまして、そういう意味では、一見平和の時代に生きておるように見えますけれども、さらに洞察して考えれば我々は恐怖の時代に生きておるという基本的な認識の上に立っておるわけであります。  そういう点で、核抑止力ということがどちらからも言われておると思いますけれども、基本はやはりそれをなくするというところに理想と目標がなければいかぬといった点等も絡めて、総理の御見解をひとつお伺いしたいと思います。
  127. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和を維持していく、そういった大きな願いを持って立ち向かっていくということは、私はそのとおりだと思います。そして、同時にまた、先生今御指摘になりました核軍縮の問題でありますけれども米ソの両首脳先生と全く同じように思ったから、現実的な第一歩としてINF、すなわち中距離核兵器の全廃条約に調印をしたのだろう、こう私は眺めております。ただ、理想はそういうことでありますから、私どもも究極の目標として核廃絶を目指すということは、私もそれはそのとおりだと思っておりますが、現実の問題にいきますと、平和と申しましても、まだいろいろなところに力の均衡によって保たれている部分が多いという現実もまたあるわけでありますし、また、核兵器が抑止力としての効果をおさめてきたということも、ある一面からはそのとおりだと肯定をしなければならなかったのがきのうまでの現実であったと私は思います。そういう現実を踏まえながら、その中でさらに究極の目標としての核軍縮を目指して、今は軍備管理の中で一歩一歩前進をしておるという世界の現実を眺めますと、私も究極の目的が達成できるような方向に向かって現実的な歩みを続けていかなければならない、このように考えます。
  128. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ソ連関係では、お互い国会の本会議、衆参両院とも決議をした。また、国民的な悲願であります北方領土問題を解決して平和条約を締結するという問題は、前段の問題が壁になっておりましてなかなか進まないのであります。私が日ソ議連の事務局長をやっておった当時も、そういう点では政治局員と会ってもどなたと会っても、櫻内先生も非常に熱心に首脳と会われたときは主張されますし、私も補佐役として主張しました。あるいは他のところで私がやる場合も、それは必ずそういうことでやった。それは必要である、また、やらなければ日ソ関係の本来の正常化というものは生み出されないというふうに思ったからであります。  ただ、ゴルバチョフ書記長がやがて訪日される。それまでの間は、御承知のように平和条約作業グループができたり、事務次官レベル協議が行われたり、あるいは外務大臣は機会あるごとに会うという形です。まあ、日米の関係というのは非常に緊密である。日米の安保条約が存在するということはありますけれども、新任された総理は必ずアメリカへ行かれる、そしてまた何かあると行かれる、また他の機会にも会う、こういうことでございますけれども外務省に言わせますと、鳩山総理が一九五六年の十月に病身を押して行って日ソ共同宣言をまとめて、日ソの国交の関係が一応開かれる。そして、七三年には田中総理がモスクワに乗り込みまして日ソ共同声明というものをつくって、戦後残されたいわゆる諸問題という中には領土問題があるということで、もう非常に渡り合って、日ソ共同声明というものをつくったわけであります。これがまた領土問題では議論を呼んでおるわけでありますが、ちょうどそのとき、私は国会代表団でモスクワを通ってルーマニアに入る途中でしたけれども現地の大使館は、二等書記官、一筆書記官といわず全部総動員態勢で田中さんのソ連首脳部との会談全力投球をするということで、こちらへ来たのは外務省ではなくて日航の現地支店長だった。実はもう大使館はてんやわんやでございまして、国会代表団が参られましたけれども私にかわりにということで参りましたという話でした。そういうことはございましたけれども、実際は戦後の日ソの関係で本格的に総理自身がソ連首脳と、北方領土問題だけではありませんけれども、かんかんがくがくやって、重要問題を解決するというふうな努力は、この二回だけでありまして、あと、八二年に鈴木総理がブレジネフ書記長の葬儀に行かれる、八五年に中曽根総理がチェルネンコ書記長の葬儀に行かれる、これは弔問外交でありました。  こちらが非常に難しい問題を解決しなければならぬというふうな立場に立てば、我々の方は四回行った、あちらからは一度もおいでになっていない、だからまずあちらから来るのが先決である、こういうことで、大体今のような状態になっておるわけであります。  その中で、多くは触れませんけれども、中曽根総理は非常に執念を燃やして、あちらからゴルバチョフ書記長が来る、折り返し自分が行ってこの問題をひとつ真剣にやろうという、私はその情熱を感じ取っておったのでありますけれども、これはなかなかそういう形にならなかった。  海部総理は、いずれゴルバチョフ書記長が来られるから、それまでの間、外相会談、それから事務次官レベル協議、あるいは平和条約作業グループでやっていく、それに任そうというふうなお気持ちですか。一国の総理として、国会で、対外的にも日ソ関係はまず北方領土問題を解決して日ソの平和条約をつくることが大前提であると言っておる以上は、そういうあちらから何回来て、こちらから何回行った、向こうから来るのが当たり前だということだけではなしに、情勢いかんにもよりますけれども、こちらからでも場合によっては出かけるという気概でこういう問題には臨まなければならぬ。今のようなあちらから何回、こちらから何回、あちらから来るのが当然だと言っておるような形では、この難しい問題はなかなか解決に向かわない。  ただ、従来私どもが最初ソ連を訪れたりしてやってまいりましたときから見ますと、やはりこの北方領土問題についてはソ連としても避けて通れない問題であるという意識は大きくなりました。だからこそ北方領土問題も、双方ともに歴史的なことからいろいろなことを渡り合って議論をしておるという段階にある。非常にかたい姿勢は示しておる。示しておるけれどもアジアで経済的、政治的に大きな影響力を持っておる、中国と並び大きな力を持っておるアジアのリーダーの日本というものを無視しては、アジアにおけるやがて来る太平洋時代というものにソ連は対応できない。したがって、北方領土問題はソ連としてもなかなかさばきにくい難問題ではある。これをどうするかということについては、グロムイコみたいにニェット外務大臣というのではこれはだめでありますけれどもゴルバチョフ書記長というのは、新思考の中で政治的に大所高所からどう判断するかというところにも我々としても期待が寄せられる面があるわけであります。  そういう点で日ソの問題はやはりこの懸案事項を解決するのが大前提であるということは、そのとおり私は考えておりますけれども、そのためには、かすに大きな時間をもってしてはいけない。あらゆる努力をしなければならぬ。議員外交もありましょう、あるいは民間外交もありましょう、そういうことを含めて。そうでないと、とうとうたる体制で進んでおるソ連を含むこの首脳外交の展開の中で、日本ソ連との関係だけは首脳外交はブランクのままであるということは恐らく許されないだろうというふうに思うのでありますけれども、その点、海部総理いかがにお考えですか。
  129. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ソ連日本関係を安定したものにしていきたいという願いは私も強く持っております。先日、ヤコブレフ政治局員が日本に来られた。そのとき、私は会談もいたしました。そして、今先生が例に挙げられましたように、かつてのグロムイコ外相が何度も日本に来て話をされるとき、例えば総理グロムイコ外相の会談にも私は横に同席させていただいた経験を持っておりますけれども、取りつく島がないというような、だめだという態度じゃなしに、今度のヤコブレフさんは、私が初めて会って歓迎のあいさつをしていろいろお話をしたときに、大変大きな口をあいて笑われたとか、ああいった顔を見たことは珍しいとか言った人があるほど。  しかし、顔つきだけでなくて本当に実務関係はどうなっておるかといいますと、御指摘のように、今日本ソ連の間では平和条約の作業グループの話が進んでおります。同時に、我々としてもかねてから領土問題を解決して平和条約を締結したいという願いは持っておりますから、そのことを繰り返しお伝えもしました。けれども、それが両方にいろいろな背景があり、いろいろな事情があり、なかなかそう簡単に乗り越えられないものであるとするなれば、同時にまた実務関係とかあるいは人物の交流とか、いろいろ信頼関係を高めていくようなことだけはどんどんと幅広く続けていこう、そういうことも申しました。今年の五月に日本側からソ連側提案しております五項目の中にもそういったことは全部含まれておりますし、また、首脳の相互訪問をやって、御指摘のような首脳外交もソ連との間で積極的に展開していこうというこちらの意思も申し入れてございます。当面は両国の外務大臣が、既に接触もしておりますし、また来年は早々、三月には接触をする、そういうようなことで話し合いをいろんなレベル、いろんな段階で積み重ねていって、信頼関係を醸成して、首脳会談が必要だと判断しますときには、何回来てもらったから何回行ったからということなどは一切これは考えておりません。お話をする機会があったならば、それは必要に応じてしていかなければなりませんし、幸い今度は、何の条件もつけないでゴルバチョフ書記長が初めて日本訪問するという意思表示も外相会談でされておるわけでありますから、そういったものは日ソ関係にとっての一つの節目になると思って私は歓迎をしよう、こう思っておりますし、私の方も必要があるなれば、そういう条件が満たされるなれば、そのときには日ソ首脳会談は、どういう形であろうとも積極的に行うべきものであると考えております。
  130. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 往復をやっておりましたら、まだ幾つかの重要な問題を残しておりましたけれども、あと十分ばかりというところへ来たようであります。  そこで、防衛二法の関係の問題で、基本的な問題をお伺いをしていきたいと思うのです。  社会党、公明党、民社党、社民連とかそういうところがやがて来る総選挙で躍進をして、そして連合政権をつくろうというときに、安保、自衛隊問題というようなことがいろいろ議論されて、財界は社会党たたきで何とかかけるとかいろいろなことがあって、社会党の考え方はもっと現実的になれという声があるわけです。しかし、海部総理も私どもも、国会に出てきた時分というのは、六〇年安保のあらしを経験しておるわけです。深くは触れませんけれども、それから七〇年安保があり、そういう激しい闘いの中で、ある意味ではアメリカ側は、やはり日本の防衛の問題、あるいは安保条約でいろいろやっていく問題も、日本国民世論あるいは革新のそういった激しい行動というものを無視してはこれはやはりできないだろうという、逆の面でそういう理解がある。ある意味ではこれは逆説的でありますけれども。  そういう中で、自衛隊問題、一国の独立と平和を守る、国民の生命財産を守る。国際的常識から言えば、これは自衛力を持つ、また、各国ともにそれは持っておる。しかし、日本の場合は、一つは憲法問題がある。言うまでもなく、第九条に触れるまでもなく、政府・自民党といえども、あるいは防衛庁といえども、今日の平和憲法のもとでは幾つかの制約がある。集団自衛権はこれを行使することはできない、あるいは、最近は少し絞ってまいりましたけれども、敵国を壊滅的状態に陥れるような大陸間弾道弾とかあるいは戦略爆撃機といったようなものはいけないとか、あるいは徴兵制はできない、あるいは海外派兵もできない。いわば、普通の国であれば一応そういうことについてはそれぞれの国の良識に基づいてやっていくということはありましても、日本の場合は幾つかの重要なかなめのところを制約されておるという条件がある。したがって、自衛のための必要最小限の実力というものが第九条の戦力を超えるかどうかは絶えず問われる問題であるということがございます。  したがって、自衛隊を認めるかどうかというときにも、認めてコンスタントにいけばいいというのじゃなしに、今度の中期防、ポスト中期防というものを考える場合に、十八兆四千億規模でいわゆる「防衛計画の大綱」、別表を含む、それは概成される、来年で。ポスト中期防をどうするのか、あるいは別表問題をどうするのか。白書では、そういう点はこれからということでほとんど触れておらないわけだけれども、そういう場合に、あるいは二十四兆円と言い、あるいは二十五兆円と言い、いろいろ前触れで五カ年を想定して、トータルの十八兆四千億に見合う次のポスト中期防はかくかくの金額になるだろうというふうなことが出てきたりする。国際的にはデタントがどんどん進んでいく方向である、ジグザクはあるかもしれませんが。そういった中で、日本だけがソ連を想定をして、まだまだ足りないということでそのままのパターンで拡大していくことが許されるか。私は、それは許されないと思う。そういう点に立てば、ポスト中期防の問題も、国際情勢をまず総合的に考える、その上に立ってどれだけの防衛力を整備するかというのが、これが大前提になっておるということであります。そういう点から、ポスト中期防問題あるいは別表を含むこれからの日本の防衛力をどう整備するかという問題については、慎重の上にも慎重、あるいは国際的なデタント方向に背を向けてやるということは許されないという基本に立って進めることが必要であろうと思うわけでありますけれども、それらの点について総理からお答えを願いたい。
  131. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、我々が初めて国会に出てまいりました約二十九年前の問題、あるいは、たしか、記憶に誤りなければ、今御指摘の平和時における防衛のあるべき姿、そして「防衛計画の大綱」、ああいったものができましたのが昭和五十一年であったと思います。そしてそれから今日の現状、国際情勢も世界の対立から対話へという状況に流れてきておることも私はよく理解をいたします。そして、その中にあって変わらないものは、やはり我が国は憲法の精神、憲法の趣旨を踏まえながら、みずからの国の安全を国民の皆さんのためにきちっと確保する、こういう目的を持った自衛隊をきちっと整備をしていかなければならぬというので、目標を立てて、ただいまのところは、中期防衛力整備計画に従って整備を進めてきておるということでございまして、間違っても軍事大国になろうとか諸外国にどうこうとかいうようなことは毛頭考えておらぬわけでございますし、そういう過去の反省に立ってのまた自衛隊であるということも私は十分深く自戒をしておるつもりでございます。
  132. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 松本防衛庁長官も御出席でございますが、全体的に私が進めてまいりました国際的な情勢、これはまだ中国問題があり、アジア全体の一員であるという立場から議論すべきことは多いのでありますけれども、それは時間の関係もありますから。  そういう中で、我が国の防衛を預っておる防衛庁長官として、ポスト中期防を目指し、必要最小限と言っておるものが防衛的な空母も持てるとか、アメリカのいろいろな本を読んだり資料を見ると、既に国会の中の小委員会で議論されておる中に空母問題が出てきたりいろいろな新しいものの整備問題が出てきたりしておるということでありますけれども、あくまでも節度を守った、かつての世界を相手にした陸海軍の夢を捨てた、憲法下にふさわしい自衛隊の行き方、そういう点からいくと、「なだしお」問題も批判さるべき点があるし、これは竹下総理とやった問題でありますけれども、そういうことにも謙虚に自衛隊の姿勢として省みるところをつくらなければならぬ。  同時に、私は、栗原防衛庁長官が長官をやっておられる当時に防大の視察をした。それに基づいて、若い世代の大学へ行っておる者であれば、自宅から通うか下宿から通うかという状態であるが、防大は練度を高める、防衛的な教育も受けなければならぬということで集団生活をするわけですけれども、やはりそこには若い世代の感覚やそういうものにふさわしいような環境をできるだけつくってやるということが必要だ、だから、化学のための特別教室はああいう状態ではだめだ、それを整備せい、三段、四段ベッドは改めたらいい、海上訓練の合宿所は半分は畳にして半分はベッドにせいとか、あるいはおふくろが訪ねてきたりいろいろな者が訪ねてきたとき、あるいは同じ高校を出て防大に入っても、部隊の編成が分かれてしまうとなかなか会えない、だから、会って話ができるように学生舎の前のところの見晴しのいいところへはベンチをつくれ、いろいろなことを提案した。ただ一つ、まずベンチをやってくれた。これは角屋ベンチでございますといって、学生が笑っておる写真を何枚も私のところへ送ってきた。恐らくこれは、やかましい社会党の角屋代議士が提案をしたものをやるのだから笑ってくれ笑ってくれと言って撮ったのだろうと私は言ったんですけれども、そうだったかどうかわかりませんよ。  要するに、この間、市ケ谷へ行ったり横須賀へ行ったのですけれども、兵の生活環境とかいろいろな面は、我々が軍隊に入っておった当時は相当な劣悪なものですけれども、そんなことを言ったのではなかなか自衛隊へ来てくれないということになる。あるいは防大へ来て将来のリーダーになってやる場合に、中退していく者、任官拒否していく者が一割もあるという状態、この調子でトップまで行くのは、あるいは幹部として行くのはという気を起こすようなことではいかぬ。人間的な点あるいは若いときには若い世代の感覚をちゃんと織り込んだそういう体制、それこそ国民のための自衛隊のあり方ということにもなる、若い世代の諸君に共感を得るような自衛隊という姿にもなるだろうと思うのでありまして、そういう点を含めて、防衛庁長官から御答弁を願います。
  133. 松本十郎

    松本国務大臣 角屋先生の長年にわたる御経験からの貴重な意見を拝聴しておりましたが、先生指摘のとおり、世界は、まず東欧から始まってついにベルリンの壁の崩壊という、まさに新しい二十一世紀に向かっての大きな流れがとうとうと進んでいるということは事実でございます。そして、それが望ましい方向であり、なるべくジグザグをしないで、アジアにも極東にも及んでくれることを我々は切に期待しているわけでございます。  ただ、軍事面で見ますと、ヨーロッパについてはNATOなりワルシャワ機構というものが変質する方向も考えられますし、特に、戦略核の半減なりあるいは中距離核の廃絶なり、さらにまた通常兵力削減交渉と、軍縮が進み、対話が進んでくるわけでございますが、極東につきましてはまだそこまでいっていないのが実情でございまして、望ましい方向でありますが、具体的にいつごろどういう形で軍縮なりデタントの方向が極東に及んでくるのか、我々もそれを注意深く見守らなければならないというのが今の姿でございます。  それを受けまして、来年度で現在の中期防が一応終わり、大綱の定める水準におおむね達するということでございますが、その後どうするかということが今度の問題でございまして、いずれ安全保障会議で広い、高い立場で最終的な御判断を願わなければなりません。しかし、一応達成された大綱の水準というものを維持することもなかなか大変でございまして、正面装備についてはそういう意味から質的な改善ということを一つ頭に置いてやらなければならないと思っております。  同時に、後方機能の一つとしての通信機能やあるいは指揮系統機能といったものの改善もしなければなりませんが、とりわけ一番取り残されておりますのは、角屋委員指摘のいわゆる隊員の生活環境あるいは勤務環境の改善の問題でございます。角屋委員わざわざ防衛大学に行っていただきまして、いろいろと貴重な御意見を拝聴して、我我もその方向で努力をしてきたわけでございますが、とりわけ防衛大学の、将来自衛隊の幹部になる諸君の生活環境、これまでは四人一部屋のような部屋で古い建物でございましたが、おかげをもちまして、昨年と本年度において五棟のうちの三棟が改築をされまして二人一部屋ということに相なりましたし、来年度の予算要求が実現いたしますならばすべてこれが新しいものに建ちかわるわけでございまして、三十年来の懸案がようやく片づくわけでございます。防衛大学の生徒の、将来幹部としての教育とか訓練は厳しくいたしますが、生活環境はゆとりを持ち、またプライバシーも持って、人間として生きていける、やっていけるような環境をつくることも大事でございますし、さらにまた、一般の自衛隊員につきましても、現在の隊舎、宿舎がいかにも古くて、水準からいって余りにもひどいというのが実情でございまして、これは何としてもこれからの数年間かけて立ちおくれを取り戻さなければならぬということでございます。その点についても皆様方の御理解と御鞭撻をいただきながら、後方のそういった生活環境あるいは勤務環境を改善して魅力ある自衛隊をつくるために全力を尽くしたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思うわけでございます。
  134. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間が参りましたが、最後に締めくくりとして、これからのやがて来る政治決戦も含めて、海部総理もこれを乗り切るには大変な山坂があると思いますけれども総理として、今後の内外の情勢に対応する政治的な決意をお答え願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  135. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな角屋先生の御質問の中に含まれております、日本及び世界の平和と繁栄を求めて首脳として努力をしろという御忠告と御激励をいただきまして、肝に銘じてこれからも頑張ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  136. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  137. 吹田愰

    吹田委員長 御苦労さまでした。  次に、井上和久君。
  138. 井上和久

    井上(和)委員 総理にお越しをいただいておりますので、私は初めに平成二年度予算についてお伺いをいたしたいと思います。  これは防衛費にも大きくかかわる問題でもございます。そこで、政府予算案というのは本年じゅうに決定をされるのか、それとも来年に越されるのか、これについて総理のお考えを伺いたいと思います。
  139. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 予算は年内編成をいたしたい、こう思って作業を進めるようにいたします。
  140. 井上和久

    井上(和)委員 平成二年度予算案の編成作業が今進んでおるということでありますが、これは消費税の見直しによる予算編成になりますか、そのあたりをお教えいただきたいと思います。
  141. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 消費税の問題につきましては、既に恒久税制としてスタートをしておるものであります。ただ、世論の動向等を踏まえて、ただいま党内で見直し作業、政府税調でも見直しの作業をしたところでございますが、結論がまだ詰め切っていないという大変微妙な段階でございますので、内容に立ち至ることはちょっと御勘弁をいただきたいと思います。
  142. 井上和久

    井上(和)委員 予算についてでありますが、国民の審判を受けてからだというような意見も新聞投書なんかにありましたり、いろいろな意見が出ておるわけであります。本格的な審議というのを国民の審判を受けてから行うべきだ、こんな声のあることに対しまして一言お願いをしたいと思います。
  143. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな問題の審議を進めていくということは、これは日々のなさねばならぬ義務であると考えております。また、国民の審判を憲法の規定に従って我々がいつの日か受けなければならぬということもまた厳然たる事実でありますけれども、これはおのずから次元の異なる問題でございますので、当面進めなければならぬ問題については審議を続けていただきたい、このように考えております。
  144. 井上和久

    井上(和)委員 当委員会におきましても種々議論がございました。戦後四十年以上続きました世界の枠組みというものが大きく今変わろうとしている、これは事実だと思うのですが、特にベルリンの壁が崩れ、戦後の東西関係の枠組みというものが非常に大きく変わり、まさにヤルタ体制の終えん、こういうふうなことが叫ばれる。その中にありまして、いよいよあすからブッシュ大統領ゴルバチョフ書記長との初の米ソ首脳会談が地中海のマルタ沖で開かれるわけであります。  そこでまず、総理にお伺いしたいと思うのですが、この会談でもってブッシュ大統領は冷戦の終結宣言をするというようなことも出ておったと思います。また一方、ソ連側の意見としましても、冷戦を地中海の底に沈めるというような表現があったというふうに思います。こういうふうなことを総合しましたときに、まさに東西の冷戦というものは終結した、これが流れじゃないかと私は思いますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  145. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、東西の大きな世界の対立の中で、特に東側陣営と我々が思っておりました中から、ソ連のペレストロイカ宣言をきっかけに自由化とか民主化とかいろいろ一連の動きが出てきております。そうしてブッシュ大統領も、東西は対立から対話の時代にというようなことを言われた。あるいは今委員指摘のように、今度のマルタ島沖の会談においても、対立の話じゃなくて、お互いにどうするか、新しい枠組みを求めての話し合いをするのだということでございます。私は、世界の平和と世界の繁栄のために、この会談が成功してくださることを心から期待をいたしております。
  146. 井上和久

    井上(和)委員 総理は明年の一月八日から東欧訪問される、こういうふうに仄聞をいたしております。これについてでありますが、政府は既にポーランドの通貨安定基金に一億五千万ドルの支援措置を表明をされております。これで我が国東欧への経済支援というのには前提条件を考えておられるかということであります。というのは、例えばアメリカは自由と民主化を原則として打ち出しておられます。そういうふうに考えますときに、我が国東欧支援の原則、意義づけというものはどういうふうになっておるのかを総理にお伺いをいたしたいと思います。
  147. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今お触れになりました東欧支援の問題につきましては、去るサミットにおいて合意が得られた問題であり、世界の平和と安定のために、今起こっております民主化、その努力が定着していくように、特に経済問題についてできる限りの援助をして、その肯定的な変化というものが成功していくように、定着していくように御協力をしたい、それは先進工業国間でサミットで話し合った国際的な義務の履行でもあるし、積極的に日本が世界に貢献していくという一つのあかしでもある、このように考えております。
  148. 井上和久

    井上(和)委員 東欧における動きというのが非常に急激でありまして、まさに日を追って変化をすると言っても過言ではないというふうに思うわけでありますが、この動いておる東欧の政策について我が国の対応の仕方というものをできましたらもう一度お話しをいただいたらと思います。
  149. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 対応の仕方をという御質問でございますが、私は、東西の対立が対話の方に、そして東側陣営に属した諸国が自由化そして民主主義、経済では市場経済の価値を認めるという方向に今改革の努力をされておるわけでありますから、それが願わくば定着して成功されることを願うわけであります。そのためにはでき得る限りの協力をしていきましょう、こういう基本的な考え方でございます。
  150. 井上和久

    井上(和)委員 次に、駐留費の問題につきましてでありますが、アメリカが日本に負担増を求めております在日駐留米軍経費、いわゆる思いやり予算についてであります。ブッシュ大統領は二十九日、一九九〇会計年度国防支出権限法案に署名をいたしております。その中で附帯条項として、日本政府に対し米軍人給料を除く在日米軍駐留経費の全額負担が求められておる、この問題につきまして、総理としての見解をお伺いしたいと思います。
  151. 松本十郎

    松本国務大臣 在日米軍の駐留経費につきまして、アメリカの上院並びに下院におきまして決議案が採択され、去る二十九日、ブッシュ大統領がこれに署名されたことは承知いたしておりますが、その署名の際に、事日本の駐留費の交渉について留保をしているわけでございまして、そういう中で米政府が具体的にどのように対応しようとするのかは十分これから見きわめなければならないと考えております。ただ、アメリカ側にはそのような国民世論を背景とした議会の要望もあり、政府も恐らく経済大国になった日本としての応分の負担ということに対する期待なり願いなりは持っておるだろうということが察せられるわけでございまして、我々としましては、日米安保体制を維持発展させ、信頼性を持続するために、自主的な立場で日本が独自に判断しつつ駐留費の問題に対処しなければならない、こういうふうに受けとめております。
  152. 井上和久

    井上(和)委員 独自の判断をされるということは大切でありますし、これに対しては慎重に当たっていただきたいと思うのですが、こういうふうなことがどんどん言われるということになってまいりますと、また、現実に思いやり予算もかなり大きなものが組んでございます。そういうふうになりますと、現在の地位協定を改定をしなければならぬのじゃないかというふうな動きもありはしないか、こういうことを私は感じるわけでありますが、この地位協定の改定ということについてお考えがありましたら。
  153. 松本十郎

    松本国務大臣 外務省がまず答弁すべきかと思いますが、政府といたしましては、現在のところ地位協定の改定については考えてはおりません。現在の協定の範囲内で何ができるかということを自主的に検討していきたい、こういうことでございます。
  154. 井上和久

    井上(和)委員 今お話もございましたようにまさに国際的にはデタント、これが流れでございます。アメリカの世界からの撤退、こういうことであります。それに伴いまして、同盟国の肩がわりということが結局予想される。これは流れがそういうふうになるのだろうというふうに私は思うわけでありますが、このデタントから米軍の同盟国の肩がわりによる動きというものについて、これは総理の認識を伺っておきたいと思います。
  155. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世界情勢の認識につきましては、確かに新しい枠組みができつつある、激しい対立だけではなくて対話の時代に入ってきておるという流れも一つございます。それは御指摘のとおりだと思いますが、しかし、局地的に見ますと、依然としてまだ緊張が高いところもある。例えばカンボジアの和平にしてもまだ完全な包括的和平には立ち至っていないという事実もございますし、ですから、そういったこと等を考えますと、我々の願いとか希望というものはたくさんございますが、現実的な枠組みの中で配慮をしていかなければならぬ問題も残っております。その意味では、我が国は自主的にみずからの判断によって我が国の安全と防衛のための努力をしておるわけでありまして、肩がわりとかそういうことじゃなくて、みずからの判断で我が国の防衛は適切な自衛力を持って、節度ある自衛力を持って守っていかなければならない。そのことがまたアジアの平和と安定、アジア太平洋地域の安定にもつながっていくのではないだろうか、このように考えております。
  156. 井上和久

    井上(和)委員 先月二十七日から三日間にわたりまして我が党の石田委員長が沖縄の基地、教育、戦後処理問題などの調査のために沖縄県に参りました。そして、二十八日に在沖縄米軍海兵隊基地の司令官、ロバート・B・ジョンストン准将と会談を行いました。その中で石田委員長は、沖縄返還協定で日米間で返還合意済みの米軍基地のうち五四%がいまだ返還をされていないという現状を指摘をいたしまして、狭い沖縄では返還の前提となっている代替地を出せる状態ではない、こういうふうなことをお話ししたそうであります。そして代替地条件の再考を求めました。これに対して同司令官は、基地の一部返還、すなわち廃止を含む縮小に賛成であり、代替地がなくても返還できる部分もある、こういうふうに述べたそうでございます。実務的な作業を進めていることを明らかにされたのでありますが、このような米軍の基地返還への姿勢、さらにはこの作業に入っておる、こういうことの一連の流れにつきまして総理の御所見を伺いたいと思います。
  157. 松本十郎

    松本国務大臣 公明党の石田委員長が沖縄に行かれていろいろ話し合われたことは、間接ながら伺っております。委員指摘のとおり、沖縄返還後二十年近い月日がたちながら依然としてまだ基地が相当返還されないで残っているということが現実でございまして、一方では日米安保ということからやむを得ぬ点もございましょうが、アメリカ側としましても、できるだけ基地の返還について努力をしたいということで検討していることは事実でございまして、いつまでにどこがということは申しかねますが、方向としては石田委員長が聞かれたような方向で進むだろうと思いますし、我々もそういう考えで向こう側にも折衝を続けてまいりたい、このように考えております。
  158. 井上和久

    井上(和)委員 防衛庁長官の御答弁をいただいたわけですが、もう一歩具体的にお伺いをしたいと思うのです。  こういうふうな実務的な作業が進んでおるわけであります。これは沖縄にとりましても、また日本の国にとりましても、大変重要な問題でもあると思います。この日米間で返還合意済みの米軍基地、今五四・四%だそうでありますが、このうちで代替地のないものの返還場所というのはこういうところだということについて、ぜひひとつ御答弁を願いたいと思います。
  159. 松本十郎

    松本政府委員 ただいま大臣の方からも御答弁申し上げましたけれども、現在具体的な問題については作業中でございます。したがいまして、残っております五三%余りの施設につきまして、どの部分は代替地が要らない、どの部分は代替地を要求されておる等の具体的な問題につきましては、まだここで御説明申し上げる段階にないということを御理解賜りたいと思います。
  160. 井上和久

    井上(和)委員 さらに、基地の問題に関連をいたしまして、事件、事故というものがよく起こるわけでありまして、これに対する対策として、県あるいは国、防衛施設庁等がもっと積極的に米軍と住民との調整役を果たすべきではないかというふうな話をいたしました。そして、東京にそういう調整をする委員会を設置してはどうかというような提案もしました。これに対しましてジョンストン司令官は、全面的にこれはいいことではないかというふうに賛意を示したということでありますが、これについてひとつ御見解を。
  161. 松本十郎

    松本政府委員 そのような今先生おっしゃいましたような目的をもちまして、現地で基地にまつわりますいろいろな共通の問題、これを自由な立場で討議しながら防衛施設、区域及び地域との調整を図っていくということが非常にいいのではないかということで、現地レベルで自由に討議をする場といたしまして協議会を持っております。三者協議会と申しておりますが、これは、構成は沖縄県知事、それから米軍は四軍調整官であったと思います、それから私どもの施設局長でございます。現在までに十三回でございますか会議を開きまして、返還の問題でありますとか安全対策の問題でありますとか、いろいろなことを協議してそれなりの成果を上げてきております。  今後の問題でございますけれども、やはり肩の張らない自由な立場で協議ができる場というところに意味があるかと思いますので、この協議会を今後もっと積極的に活用してまいるという方向で進んでまいりたいというぐあいに私どもは考えておるところでございます。
  162. 井上和久

    井上(和)委員 時間が限られておりますので先に行きたいと思います。  次に、次期防計画についてお尋ねをしたいと思うのです。  現在防衛庁におきまして次期防の策定作業が進められておると聞いておりますが、スケジュールから見ますと、来年の夏には平成三年度のいわゆる次期防における初年度の概算要求を行わなければならない、こういうふうな時間的なものもあるというふうに思います。それで、次期防の策定作業が進められている現段階にありまして、次期防はこうだという基本理念あるいは方向性、こういうものが非常に私はあいまいであるというふうに思います。これは当委員会でも、さきおとといでしたか、議論もしたのですが、そういう点で基本理念なり方向性というものが非常にあいまいだなというふうな感じを私は持っております。やはりそれがしっかりしないと、それから後に金額というのが出てくるのであろうというふうに思うのでありまして、基本理念や方向性というものをきちっと決めて、そして金額に向かっていく、これが当然の流れだというふうに私は思うわけであります。現段階において次期防の基本理念あるいは方向性というのはこういうふうに考えるという基本的な事柄について、ぜひこれは総理に御答弁を願いたいと思います。
  163. 松本十郎

    松本国務大臣 まず、防衛庁長官としてお答えいたします。  再来年からの次期防をどのようにするか、去年の十二月の安全保障会議でやはり引き続いて防衛計画を立てなければならないということは決まっておりまして、それを受けて今防衛庁としましては作業をやっております。基本的な考え方もこれまた安全保障会議の御決定にまたなければなりませんが、やはり世界の情勢がどのように動いていくのかということを見きわめながら、一応達成されると見られる「防衛計画の大綱」水準、これを質的に改善しつつ維持していくという観点で進めたいということであります。  その際に、ニューデタントで軍縮の方向に進んでいるからという御意見もございましょうが、我我は、世界の情勢が大きく動き、民主化あるいは自由と民主主義への道に進んでいることは十分認識いたしておりますが、事軍事面におきましては、とりわけ極東においてはまだ大きな変化はないので、そのような情勢が見通されるもとでは「防衛計画の大綱」で考えられているような理念を変更するような事態はないのではないかという前提に立っておりまして、そういうことで作業をこれから進めていこうというところでございます。
  164. 井上和久

    井上(和)委員 今のまさに国際的な流れというものからいいますと、軍事的なものに対して変化がないというような考え方だけが強く述べられるということは、この理念の方向を決める上において非常に問題があるのではないかというふうに私は思います。そういう意味で、今の流れというものをもっと大事にした考え方をとられることが大切じゃないかなというのが私の意見でございます。  ぜひそういうふうにしてもらいたいと思うのですが、具体的に言いまして、多年度方式でやるかあるいは単年度方式でやるかということ、これは大事なことだと思うのです。こういうふうに非常に変化の激しい時代になってまいりますと、単年度方式の見方というものが非常に大事じゃないかというような感じを私は持つわけでありますが、これはいかがでしょうかね。
  165. 日吉章

    ○日吉政府委員 昨年の安保会議でお決めいただきましたときには、防衛力整備といいますものはやはり中長期的な展望の上に立ちまして計画的、継続的に整備を進めなければいけないというような観点から、中期防終了後もやはり政府計画として中期的な計画を立てましょう、こういうことで関係者の意見の一致を見たところでございまして、確かにただいま委員指摘のように、世界の情勢は極めて流動的ではございますけれども、その中にもやはり将来を見通した形で計画的に整備を進めていくという観点からは、その期間を何年にすればいいか、あるいはまた弾力性をどのように持たせればいいかというような問題はあろうかと思いますが、やはり中期的な計画というものは必要ではないかと思います。  なお、先ほど防衛庁長官から、現在の大綱の基本的な枠組みは変える必要はないのではないか、こういうふうな認識であるというふうな御説明を申し上げましたが、委員御案内のように、この「防衛計画の大綱」といいますのは五十一年になされておりまして、そのときはいわゆるデタントムードというふうに言われていた時期でございました。その国際情勢の認識の前提は、世界におきまして大規模な紛争が起こる可能性は極めて小さい、我が国周辺においても同じである、このような国際情勢の認識に立っているという点を御理解賜りたいと思います。
  166. 井上和久

    井上(和)委員 将来を見通していく上で枠組みを守るということでありますが、むしろ将来の見通しというものをしっかり考えたらそれに対しては新しい柔軟な態度をとらなければならぬ、これが正しいのではないかと私は思います。  それで、平成二年度予算の概算要求でありますが、防衛費は六・三五%増、四兆一千六百八十八億円、こういう要求でございます。何度も申しますように、新デタントあるいは軍縮というような国際的な情勢の流れ、こういう中にありまして、この六・三五%というのは非常に世界の中でも飛び抜けたような伸び率でございます。こういう日本がいろいろな情勢の中でも飛び抜けた伸び率を示すというふうなことでありますと、結局日本の国に対する印象というものが非常に疑われるのではないか、悪い印象を与えるのではないかという気が私はするわけであります。特に、平和を希求するというか、そういうものが今国際的な流れであろうというふうな気も私はするわけでありまして、この新しい国際情勢により、これまでの我が国の防衛政策を基本的なところでも見直すことも必要だろうし、またこの予算についても考えなければならぬ、それが普通の意見ではないのかというふうな気がするのですが、これはどうでしょうかね。
  167. 松本十郎

    松本国務大臣 国際情勢については先生指摘のとおりでございますが、先ほどから申し上げておりますように、軍事面、とりわけ極東については依然として従来の姿が大きく変わっているとは認識できませんし、そういう中で、来年度は中期防の仕上げの年でもありますという意味で、あるいは突出と言われるかもしれませんがそういう要求をしているわけでございます。  それから、いま一つ申せますことは、アメリカ、ソ連あるいはヨーロッパの国々というものは、既に数十年にわたって一定の程度の伸びを続けながら蓄積が続いておったわけでございますし、我が国の場合は、戦後のある時期からようやく立ち上がって、細々と言ったら怒られるかもしれませんが、少しずつ防衛力を高めてきたということでございまして、いまだに最小限、専守防衛にふさわしいだけの水準にも達しておらないというのが今の姿でございまして、その大綱の水準に達するための最後の年でもありますので、そういうおくれて充実してきた日本の防衛力というものを考えれば、突出といえば突出かもしれませんが、おくれたものが追いつこうとしている努力である、こういう御理解をいただければありがたいなと思っております。
  168. 井上和久

    井上(和)委員 次に、防衛白書についてお伺いをいたしたいと思います。  この防衛白書では、極東におけるソ連軍の軍事力についてこのように述べております。質的な面での増強が進んでおるということによって、「わが国に対する潜在的脅威であるのみならず、この地域の軍事情勢を厳しくしている要因となっている。」こういうふうに書かれております。これはちょうど昭和五十五年のソ連のアフガン侵攻後の防衛白書よりも、ソ連の脅威論というのはよりトーンが高い、こういうふうに新聞等でも報道もされておりますし、私もそう思います。こういうふうに今新しい時代の、東西関係の対峙から、冷戦構造から抜け出していこうというふうな流れだということは同じ認識だと私思いますが、こう考えましたときに、この防衛白書が編集されたのがどうしてもかなり前の話になりまして、最近の動きとは食い違っても多少は仕方がないかなと我々も話し合いをしたわけであります。そういうふうになりまして、この時点の違いというものは多少あろうと思いますけれども、この防衛白書にとらえておる段階と現時点での政府の認識というものは違っていいのではないかと私は思いますが、総理、これはどうですか。
  169. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま委員指摘のとおり、防衛白書が編集されましたのは大体六月終わりの時点でございまして、特に、最近の東欧における急激な情勢変化については防衛白書においては反映されておりません。そういった意味では、政治的な状況については防衛白書が必ずしも最新状況を示しているということにならないと存じます。  ただし、軍事情勢につきましては、六月の状況から現在の状況にかけて、私は変化はないのではないかと思います。そこら辺に示しております数字は、ごくわずかな例外、例えばモンゴルからソ連軍が一個師団明らかに大体撤退していると見られておりますけれども、それ以外は差はないかと存じます。委員はアフガンのときの状況と現在の比較ということをおっしゃいましたが、アフガン侵攻が行われました五十四年、五十五年の状況に比べて、現在の方がはるかにソ連軍の量も質も強力な状況になっていると思います。そういうことについては私ども客観的に示しているということで、脅威をあおっているということでは決してございません。
  170. 井上和久

    井上(和)委員 時間が参りましたのでこれが最後の質問になると思うのですが、こういうふうな現在の動きというものの中におきまして、特にソ連状況でありますが、経済的にあるいは民族問題などいろいろな事柄がソ連の中にも起こっております。しかしながら、ペレストロイカ路線あるいは軍縮路線、こういうふうに言われるようなものは、一つゴルバチョフ書記長の登場が大きな要因であったということは、これは否めないものであらうと思うわけでありますが、現在、ソ連自体を客観的に見ましても、軍縮路線あるいはペレストロイカあるいは情報公開、グラスノスチ、こういうふうな面で非常に開かれていっておる、変化をしておるということについては、これはまさに緊張緩和に向かうような動きであろう、こう思わざるを得ないと思うのです。そういうふうに考えまして、この点について政府は今後の対応等についてどのようにお考えなのか、全体的にお答えをいただきたいと思います。
  171. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、ソ連におけるペレストロイカというのは、いろいろな非常に広い面にわたって改革が行われ、進んでおると思います。そして、ソ連のペレストロイカの一環というべきか、あるいはこれと触発されるような形で起こったといいますか、東欧における一連の大きな自由化、民主化の動きというものは、ソ連東欧情勢あるいは東西欧州の情勢影響を及ぼすのみではなくて、それはアジア・太平洋の状況にも世界の状況にも、いい意味で平和と安定の方向に動いていくだろうと私たちは期待をしながら今見守っておるところであります。  それがきちっと成功していきますように心から願いますとともに、ただ、いろいろな国の変化も、例えば複数政党に入っていこう、自由選挙を行おう、政党の名前も変えてしまおうという先行したところもあれば、ソ連のように、ペレストロイカは確かに進んでおりますけれども、しかし複数政党による自由選挙の問題とかいうところにまではまだ意思表示が明確にされていない、依然として一党政党というのは続いていくのではなかろうかという考えも我々は持つわけでありますし、いろいろないい傾向というものは出てきても、それが本当に定着してもうすべてそのようになってしまうと今から思い込んでしまうのもいかがかなという気もいたしますので、その流れを歓迎しながら、それが定着していくことを願いながら、注意深く私どもは対応をしていかなければならないと考えております。
  172. 井上和久

    井上(和)委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  173. 吹田愰

    吹田委員長 次に、塚田延充君。
  174. 塚田延充

    塚田委員 今週末には、世界の注目を集めまして、マルタ島仲におきまして米ソ首脳会談が予定されております。米ソ首脳が会うということになれば、いつの時期であっても世界の注目がそこに集中するのは当然でございますが、どうも今回のマルタ島沖の首脳会談につきましては、質的にはるかに違った意味での期待を込めての世界の注目が集まっておるのではないか、このような感じがいたします。と申しますのは、やはりその背景でございます。東欧諸国の新しいいろいろな動き、そんな中で最も象徴的なものが、ベルリンの壁の取り壊しでございます。これは総理がただいま御説明されましたように、東西の対立から対話へという時代への移行を象徴するものかもしらぬ。そんな状況を背景にマルタ島沖サミットが行われるわけでございます。  総理は、先ほどの他の委員質問に答えまして、既にブッシュ大統領からホットラインを通じて、サミットについてのアメリカ政府の意図であるとかもしくは基本姿勢について報告を受けたということでございますけれども、それはベルリンの壁が崩壊した後でしょうか、それとも先でしょうか、そのブッシュ大統領から電話があったのは。大体いつごろのことでございましょうか。
  175. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 電話がございましたのは十一月の二十八日の朝でございました。
  176. 塚田延充

    塚田委員 そのブッシュ大統領からの報告の中、報告というのはおかしいと思いますけれども海部総理との電話会談の中で、軍縮問題についてかなり突っ込んだ意向などがブッシュ大統領から示されたでしょうか。そして、私として特に関心を持ちたいのは、極東情勢極東軍縮問題について話をするよとか、そのような意向がブッシュ大統領から示されたでしょうか。
  177. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ブッシュ大統領からは、マルタ会談を控えてぜひ話をしておきたかったという前置きの電話でございましたし、また、マルタ会談においてブッシュ大統領テーマとして取り扱うものは、軍備管理問題だけではなくて、経済問題を含めた幅広い話題について率直に意見の交換をしたい、こういうことでございました。そして、特に、アジア・太平洋の地域の安定についてもゴルバチョフさんと話をし、日本の果たしておる重要な役割も強調するつもりであるということはブッシュ大統領の方から言われたわけでして、私の方からは、会談の御成功を祈りますということと、マルタ会談の行方というものが世界情勢全般に影響を及ぼすわけでありますから、特に我々がそのことを期待しておりますし、アジア太平洋地域を含めた全体的な平和と安定につながるものであることを思っておりますというような私の気持ちも率直に伝えておきました。
  178. 塚田延充

    塚田委員 電話での会談ですから、それほど細かいことは海部総理の方からは話ができなかったのじゃなかろうかと想像するわけでございますけれども、単にマルタ会談の成功を祈るとか、アジア・太平洋についてもブッシュ大統領の方からそれについてしかるべく配慮するということが伝えられたそうでございますが、日本側の要望として、アジア・太平洋の安定のための極東ソ連軍の問題とかオホーツク海の安定とか、こういうことについて突っ込んで話をしてほしいというように、日本側の意向は総理の方から伝えてあるでしょうか。
  179. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 詳細な具体的な言葉についてまでここでいろいろ正確に再現することは差し控えさせていただきますけれども、もちろん私もアジアとそして太平洋地域の安定と安全、それから日本ソ連との間に安定的な信頼関係を持っていきたいと私どもが期待をして日ソの関係をしておりますことは、これは十分に御理解を願っておるものと思いますし、電話は十何分だったと思いますけれども、十分程度ですけれども、いろいろなやりとりもございましたが、そういった日本側の期待というものは十分に伝わっておると私は思います。
  180. 塚田延充

    塚田委員 次に、海部総理の通常国会再開までの時間を活用しての外交活動についてお尋ねしたいと思います。  各総理大臣とも定例的に、一月中旬以降開かれます通常国会の再開までの時間を活用して外交を展開されていることは事実でございます。海部総理もそれに倣うことになろうかと思いますけれども、現在、海部総理の胸のうちとして、いろいろ天皇陛下の一年忌などございますけれども、ぜひともその時間を活用したい、このように考えて、その考えに基づいて当局に対して準備を命じているのでしょうか。
  181. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一月の通常国会再開までの期間というのは大体常識的に、委員の頭の中にもあろうと思いますけれども、その間に内閣の果たすべき役割の一つである外交問題処理ということについて、私もいろいろ考えましたけれども、相手国もあることでありますから、その都合その他の日程の調整作業等をただいましておるさなかでございます。東欧問題等を念頭に置きながら、その案をただいま調整中でございます。
  182. 塚田延充

    塚田委員 もし海外御出張の場合、やはり東欧がねらい筋になるのじゃないかというふうにマスコミも読んでおられますし、多分海部総理の胸のうちもそうだと思われます。そうした場合、これは時間の制約もありましょうが、同時に西欧も、ついでと言ってはなんですけれども、同時訪問を計画されることになりましょうか。
  183. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 率直に申し上げますけれども、西側のサミット参加国の首脳の御都合等もあわせて、何というのでしょうか、問い合わせ検討中である、こう思っております。
  184. 塚田延充

    塚田委員 もし欧州訪問される場合には、外務大臣も御同行されることになりましょうか。
  185. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 外務大臣につきましても、外務大臣としてのいろいろな日程等もございますが、私の日程が固まりますときにおいて外務大臣と調整をしてみたいと思っております。
  186. 塚田延充

    塚田委員 東欧、特にポーランドハンガリーなどを計画されておるようにマスコミなどを通じて伝わっておりますけれども、そうした場合、ポーランドなどに対しましてのいわゆる経済援助、さらには、その他もろもろの技術援助も含めた援助を計画されると思いますが、アジア太平洋地域の諸国においては、日本が急に東欧が動き出したからといって東欧にスタンスを置き過ぎて経済援助をやった場合に、本来日本が予定しておるアジア地域への援助額を減らして、そして東欧へ持っていくのじゃなかろうか、そのような懸念が常識的に起きてくるのじゃないかと思います。この懸念に対しまして、総理として、そんなことはないんだよとかいうような御見解をお願いいたします。
  187. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは先生もよく御承知の上で御発言いただいておると思いますけれども我が国の対外援助総額は今百億ドルの台に達する。ただ、質の問題についてはいろいろございますけれども、そしてアジア地域についていろいろ配意してきたこともこれは事実でありまして、そのアジア地域のものをへずってとかそれをどうかしてとかいうような考えは、これは本当にございません。それは御理解をいただきたいと思います。
  188. 塚田延充

    塚田委員 もし総理ヨーロッパに行かれた場合、やはり時期的に見て東西ドイツの再統一問題というのがいろいろヨーロッパ内で議論を呼んでいるさなかに行くことになると思います。これにつきましては、既にコール西独首相が十項目の再統一へ向けての熱意を示されているようでありますし、それに対して東独側ではちょっとにべもない態度を、これは外交上の都合があるからでしょうが、されておるようでございます。日本総理大臣として、東西ドイツの再統一問題について例えば望ましいと思われるのか、それが平和につながるからぜひというような意向なのか、日本総理大臣として発言ができなければ海部俊樹さん個人としてでも結構ですから、ドイツ再統一問題についてお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  189. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私も各党の皆さんの御協力をいただきながら、日独友好議員連盟の理事長で毎年ドイツとは定期協議で交流いたしております。そのときにどんな話題が出たかということももう各党の皆さんよく御存じの方がここにもたくさんいらっしゃいますから率直に申し上げますが、ドイツ再統一問題はドイツ国民があくまでもお決めになることでありまして、そして、海部俊樹さん個人ですよといっても、これはそうでございません。けれども、コール首相のおっしゃった三段階に分けての方式というようなものもドイツの意見としては出てきたわけでありますから、これは私は注目すべきものだと思って見詰めさせていただいております。
  190. 塚田延充

    塚田委員 最後に、防衛庁長官にお尋ねいたします。  次期中期防の策定作業が進んでおるわけでございますが、どうも世界の流れとして、特に、今度のマルタ島沖での米ソ首脳会談において、場合によってはかなり大胆な欧州における軍縮の端緒が明らかになる可能性もあると思います。しかしながら、これまたソ連の今までの動きから見まして、極東地域におけるソ連軍の量及び質、これに変化が生ずるとはちょっと思えないような感じもいたします。  ということで、先ほどまでの御説明によりますと、そのような情勢を踏まえて中期防策定に入らざるを得ない、このように申しておられましたけれどもゴルバチョフ議長のパフォーマンスからすると、意外と近々に極東地域においてもかなり大胆な軍縮提案、こういうものがあるかもしれません。これは仮定の問題でございますけれども、そういうことがあったとしたらば、また、アメリカ政府そのものも九〇年度軍事予算については顕著な削減をしているようでございます、となりますと、基本方針は今のままでいいかもしらぬけれども、新しい事態が生じた場合には、柔軟に中期防について練り直す必要が出てくるかと思いますけれども、その辺の柔軟姿勢があり得るのかどうか、この辺について長官の御意見を伺いたいと思います。
  191. 松本十郎

    松本国務大臣 ソ連軍事力というのはもう委員承知のとおりでございまして、ゴルバチョフ書記長が近いうちに思い切って軍縮をやると既に本年の五月にも北京で軍縮発言がございましたが、いかにそれが現実に進んでおるのかというのを見きわめようとしております。なかなか範囲なりあるいは内容なりについてわからぬのですが、我々としましては、大きく軍縮に進むことはもう期待してやまないところであります。ましてや、これからさらに思い切った軍縮をやりましょうとアメリカと話し合いアジアにおいてもそれが進むことは望ましいことであり、また、実現できれば本当にそれは世界の平和、アジアの安定のためにいいことでありますので、期待しております。目に見えてそれが進めば、我が国といたしましても、今後の防衛計画について再検討しなければならないというのはもちろんでございまして、それをかたくなにこれまでどおりというわけでもございません。  ただ、我々の予見し得る数年先までの間にそのような劇的な現実というものは恐らくまだ来ないのではないか、そういう前提で、これまでの考え方を大きく変えるような国際情勢にはならないのではないでしょうかという考えで進めておりますので、その辺はさらに情勢の動きについて慎重に見守ってまいりたい、こう考えております。
  192. 塚田延充

    塚田委員 最後に、防衛庁長官にもう一度お尋ねいたします。  と申しますのは、私、きのうの当委員会においても御質疑申し上げましたけれども、潜水艦「なだしお」と釣り船第一富士丸の衝突事故でございます。この件につきまして、「なだしお」側が、いわゆる救助体制についてもおかしかったのじゃなかろうか、それから航泊日誌についてもおかしな働きがあったのじゃなかろうかとか、このようなことを大変追及されているわけでございますけれども、一方の釣り船の方は航海日誌すらない、書いてない。こんな片手落ちの状況でございますが、こういうことにつきましては、多分海難審判イコール裁判でございますか、ここで客観的な事実が明らかにされると思いますけれども、こういうふうにいわれもなく一方的に海上自衛隊のみが非難され、自衛官のモラールに影響があってはならないと思います。海上自衛官のモラール向上につきまして長官の御見解をお伺いして、質問を終わります。
  193. 松本十郎

    松本国務大臣 あの不幸な悲しむべき事故の後、一部の報道で潜水艦の乗組員は救助活動に十分でなかったと言われたこともございましたが、現在ではいかに乗組員が身を挺して救助に当たったかということはもうはっきりしておりますし、国民の皆様も篤と御承知いただいていると思います。  そしてまた、航泊日誌の書き直し、確かに書き直しをして国民の皆様に誤解を与えたことはまことに遺憾であり、申しわけないと思っております。しかし、特に意図することはなかったという気持ちは、我々はそれを信じているわけでございますし、実際に海難審判、その他第三者機関におきまして、何が真実であったかということはその場でいろいろ検討され、決まっていくわけでございまして、その結果としてあの航泊日誌の書き直しが大きくその判断を誤らせるような方向に動いたとは考えておりませんので、自衛隊、特に海上自衛隊の諸君の士気が落ちないように、さらに国民の皆様の御理解を得ながら防衛庁としましては最善の努力を尽くしていきたい、こういう考えでございます。
  194. 塚田延充

    塚田委員 ありがとうございました。終わります。
  195. 吹田愰

    吹田委員長 次に、浦井洋君。
  196. 浦井洋

    浦井委員 防衛問題に入る前に、せっかく海部内閣総理大臣御出席でございますので、きのう、きょうと国民の皆さん方が注目をしておられる例の消費税の見直し問題について、二、三御質問をしておきたいと思うのです。  総理はことしの九月の八日のバンクーバーの記者懇談で、十一月中に見直しの青写真を示すということを言われ、その後もたびたび十一月末決着を明言しておられる。きょうはもう師走ですね。十二月の一日であります。そういう国民へのたびたびの言明、公約が、結果としては十一月中には決まらなかったわけでありますから、守られなかったということになるわけです。どう反省されますか。
  197. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今、党内でまさにいろいろな角度から熱心に御議論をいただいておるさなかでありますから、私は、そういうお話し合い議論が続いていいものができていくように期待をしておりました。十一月の終わりごろに示したいと言っておったことについては、それはおっしゃるとおりでありますけれども、しかし、いい内容が固まっていくようにいろいろな御議論が続けられておる、努力中のさなかであるということで御理解をいただきたいと思います。
  198. 浦井洋

    浦井委員 総理大臣、やはり政治家というのは、一たん約束をしたり言明したりということになるとこれは重大な問題なんです。だから、さらに私言いますと、総理は十一月二十六日、佐賀市で対話集会をやられた。そこでさらに一歩進んで、食料品は非課税にすべきだという要望が出てきた、これに対して御指摘の点も含めて近く発表するという、いわば一歩踏み込んだ内容の言明も行っておられる。ところが、どうも今の時点での話でいきますと、やはり二%の軽減税率が中心の内容になりそうだというような感じもするわけであります。そうなってまいりますと、ここに私けさの朝日新聞しか持ってこなかったわけでありますけれども、とりようによっては総理としての重大な食言になりかねないとさえ私は思うわけなんです。どう対処されますか。
  199. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 確かにアメリカで記者懇談のときに、懇談の場で記者の方から質問されましたから、そのときに努力目標を示して、それは予算編成等も念頭にございましたから、大体十一月の終わりごろに青写真を示さなければならぬだろうと、こう言ったのでありまして、そういう場で言うせりふすべてが一分一秒も許されない公約だというようにはどうぞおとりにならずに、聞かれれば素直に答えるわけでありますから、そしてまたそれを果たそうと思って、党でも今皆さんが一生懸命御努力願っておる最中でありますから、議論が続いておるわけであります。  それからまた、私は予断と偏見でもって内容について申し上げたことはございません。それからもう一つは、いろいろな御質問がありますし、御質問は世論調査でお示しになったものがあることは承っておりますけれども、予断と憶測で物を言うことは慎まなければならぬということをきちっと申し上げておるわけでございますから、その点はおわかりをいただきたいと思います。
  200. 浦井洋

    浦井委員 私は一分一秒まで守れとも言うていません。それから、予断と偏見でもって総理に物を言っているわけではないわけなんです。だから、そこのところは誤解をしないようにしておいていただきたいと思う。  そこで、海部総理も含めて政府・自民党は、中曽根元総理が大型間接税は導入しないということで三百議席をとって、消費税というのは、竹下前前総理の時代に公約を裏切って導入をした。それで参議院選挙で自民党は敗北した。これは国民が明らかに消費税ノーという審判なんです。ところが今度は、海部総理はよくあちこちでいろいろ言われておる、消費税については思い切った見直し、小幅な手直しではなしに思い切った見直しということで、これは国民に期待を持たせて、結果としては大した見直しではないのではないかという点。それから、見直しの提示の時期並びに今の内容でもまたまた国民に対するいわば公約違反というような格好で選挙に臨まれるつもりですか。
  201. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、自由民主党の総裁選挙に立候補いたしましたときの約束の中にも、これは自由民主党がその前の参議院選挙でいたしました公約ですから、思い切って見直しをいたしますということは率直に申し述べました。それはいいと思ってやった税制改革の案でありました。減税の先行とか、所得と消費と資産との間のバランスのとれた公平なものにしていきたいとか、あるいは広く薄く社会共通の費用は皆で負担していただくようにしようという内容のものでありました。いいと思って提案をしてお願いしたのですが、いろいろ世論の御批判や世論調査の動き等を眺めますと、これは思い切って見直しをした方が定着をする、また将来の税制として続けていくために必要なことと判断しましたから、そこでそういう表現をし、また今まさに御努力願っておる最後の段階でございますので、お見守りをいただきたいと思います。
  202. 浦井洋

    浦井委員 そこまで言われるなら、あえて私けさの朝日新聞を読み上げますけれども、よその党ですから私は直接関係ないです。「自民党内には、首相が見直し案提示の期限を切る一方で、国民との「対話集会」で食料品の非課税を見直しの柱とすることを表明するなど、党税調の見直し作業を時間的にも内容的にも拘束したのが混乱の一因、との批判が出始めており、最終的にどう決着するにしても、首相への不満が残りそうだ。」というようなことが書かれておるわけであります。私はもうこの辺で消費税の話は終わりたいと思うのですけれども、いずれにしても、大型間接税の一つである消費税は廃止する以外にはないということをはっきりと申し上げておきたいのであります。  そこで、防衛の問題でありますけれども、いろいろあるのですが、総理はPACEX89というのは御存じですね。これについてお尋ねをしたいのですが、簡単に説明しますと、ことし八月の下旬から十月末までアメリカの太平洋軍によってPACEX89がやられた。非常に大規模な演習が行われた。我が国の自衛隊もこれに積極的に参加した。これは総理に聞くのですよ、防衛庁長官に聞くわけではないのですが、この統合共同実動演習の性格について、一体どういうものであるのか、総理としてはどういうような報告を受けておられて、総理御自身はどういう認識を持っておられるのかということを総理からお答え願いたい。
  203. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の日米共同訓練は、自衛隊と米軍がそれぞれの戦術技量の向上を図り、我が国有事における共同対処行動を円滑に行うためのものである、そういうふうに受けとめております。
  204. 浦井洋

    浦井委員 いや、それはいつも内閣委員会で防衛庁長官なり防衛局長なりがお答えになることを口写しに言われておるわけであります。正式にはどういうのですか、パシフィックエクササイズエイティーナインですか、PACEX89について、総理が防衛当局の口写しのままに認識されておるということは私は非常に残念だ、また、あえて言うなら危険だというふうに思うわけであります。  きのうも同僚の柴田委員の方から申し上げたのでありますけれども、昨年の十月にアメリカの長期統合戦略委員会が発表した「封じ込め戦略の将来」という報告書、これを読んでみました。そうすると、そこにソ連の対日攻撃に対する日米共同の反撃作戦のシナリオが書かれておる。よく聞いておってくださいよ。それによりますと、まず三海峡を封鎖をする、そしてウラジオストクとペトロパブロフスクの間の海上交通路を断つ、そうしておいて第七艦隊がベトナムのカムラン湾の基地をたたく、同時にソ連の潜水艦隊を一掃する、そして極東ソ連の基地とシベリア鉄道を壊す、こうしておいて千島列島に強襲上陸するんだ、こういうものがここに書いてある。  これがアメリカのアジア・太平洋における対ソ戦略の一番の基本なんです。その文書の中には、これを実行していくのに日本の自衛隊の投入が大前提になっておる。まさにこれは集団的自衛権の行使ではないかというふうに私は言わざるを得ないと思うわけなんです。今度行われたPACEX89というのは、このシナリオを具体的にしかもできるだけ実戦形式に近い格好で試みたということで、例え少々古いですけれども、いわば戦前の旧日本軍の関東軍の関特演、こういうようなものと同じではないかというふうに思うわけであります。だから、こういうような対ソ威嚇的な演習はやめるべきではないか、私はこのように思うわけでありますが、総理はどうですか。
  205. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国有事における共同対処行動でありますから、おっしゃるように対ソ威嚇的な訓練に参加するなんという気持ちは毛頭ありませんし、そんなことは、それでしたわけではございません。
  206. 浦井洋

    浦井委員 もう一つ見逃せないのは、危険だと思いますのは、そのPACEXで、核兵器装備可能なアメリカの軍艦やあるいは艦載機がこの演習に参加をしておるわけなんです。核装備をしていると私がそう言えば、総理事前協議の話ということになってくるだろうと思うのですけれども、やはり核装備をしておると見るのが常識的な見方であるわけです。このアメリカ軍を海自、空自が護衛するというような、こういう共同演習というのは一体許されるのかどうかということ。こういうことになりますと、まさにアメリカの核戦略に日本がはっきりと加担をしておるということになる。そうなると今も質問で出ましたように、日本は世界のただ一つの被爆国であります。そういう日本国民としてはこれは断じて許せない軍事的な行動だというように私は思うわけなんですが、総理、どうですか。
  207. 米山市郎

    ○米山政府委員 米国は、特定の艦艇、航空機における核の存在を肯定も否定もしないという政策を堅持をしておりますが、いずれにいたしましても、自衛隊と米軍との共同訓練は、我が国の個別的自衛権の行使が必要となる事態に備えて行われるものでありまして、米軍部隊の装備等のいかんによって共同訓練が実施できる、できないといった問題ではないと思っております。
  208. 浦井洋

    浦井委員 もう五分前ですということでありますから、最後に「なだしお」問題について、本朝来いろいろこの委員会で議論をされたわけなんです。これは総理もよく御承知だと思うのです。去年の七月二十三日に起きたわけです。本朝来のいろいろな議論の結果、航泊日誌の改ざんが非常に重大な国民関心を呼んでおるわけでありますけれども、要するに、まとめてみますと、事故当日はすべて衝突時間というのは十五時三十八分になっておった。それが後から四十分衝突というふうに書きかえられて、その上もとの原簿というのは廃棄をされておる。これほど明らかな証拠隠滅行為はなかろうというふうに思うわけであります。海難審判庁でも言われておるように、この衝突事故では衝突した時間の確定、特定が非常に核心部分であって、初め海自が言っておったように三十八分衝突ということであれば、「なだしお」は衝突寸前にこそやっと回避行動を始めたかもしれないけれども、それは遅過ぎて、文字どおり一直線に第一富士丸に突っ込んでいって衝突した、だからそうなると「なだしお」の過失責任は決定的になる、これが本朝来の議論の結論、客観的な事実だと私は思う。その責任を逃れるために三十八分衝突を四十分衝突に書きかえたのではないか。二分というのはこの際極めて決定的だというように思うわけであります。  総理にお尋ねをしたいのですが、こういうような事故はもう絶対に繰り返してはならぬ。だからそのために――けさ方から防衛局長であるとか訓練局長であるとかいろいろな人の話を聞いておりますと、逃げて逃げて逃げまくっておるわけなんです。事実を認めようとしないわけなんです。だから、皆さんが持っておられる資料なり事実をさらけ出して、徹底してその原因究明を行うべきではないか。そうでなければ、これはもう自衛隊というのはまさに人命軽視ではないかという格好にとられても仕方がない。自衛隊の最高責任者としての総理見解を私はお尋ねしたい。
  209. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 冒頭におっしゃるように、こういった事故が二度と繰り返されてはならないように努めなければならぬのは、私もそのとおりに考えております。二度と起こらないように、それぞれの立場の方が厳しく戒めながら行っていただきたい。  また、具体的御指摘の今度の「なだしお」の問題につきましては、事故に係る記録を当事者の一方が整理することは適切を欠いたものでございますから、こうしたことにより皆様に誤解を与えることにつながったという点については、遺憾なことであると考えております。  いずれにせよ、「なだしお」事故の原因の究明や過失の認定等につきましては、海難審判庁等が行っているところであり、事故原因の究明等が公正に行われるものと確信しております。
  210. 浦井洋

    浦井委員 海部総理、もう終わりますけれども、それというのは、朝方から言われている後刻整理したとか、改ざんではないんだ、いずれ最後の判断は第三者の解明にまつんだというような、これは言いわけの言い方なんですよ。それはもうとんでもないことなんだ。しかも、これは山下艦長の判断だけでできるものではなしに、自衛隊ぐるみ、海上自衛隊ぐるみの改ざんなんだ。証拠隠滅なんだ。だから、そういうようなことをなぜ国民の前にはっきりさせないのか。防衛庁なり自衛隊なりは、そのいろいろな資料を国会なり適当な場所にきちんと出して、そして改ざんの事実を認める、そして、自衛隊に事故の原因があったんだということをはっきりと認めるということにならなければ、人命軽視、軍事優先のそしりは免れないというように私は思うのでありますが、何かありますか。
  211. 松本十郎

    松本国務大臣 先ほど総理御答弁のとおり、書き直しをし、もとの鉛筆書きを整理したことは遺憾であり、申しわけないとは思っておりますが、何が真実であったかというあの悲しむべき事故に至る経過につきましては、何も航泊日誌だけが証拠書類ではございませんで、あるいは速度報告の書類とか、あるいは海上安全センターの映像の解析とか、さらにはまた、沈んだ富士丸の時計のとまった時間とか、万般の事柄並びに関係者の供述等をもとに第三者機関である海難審判庁が正しく判断しているわけでございますので、その点で正しい結果が出ることを我々も望んでいるところであり、二度と事故が起きないように、さらにまたこのような誤解を招くおそれのあるような行為は二度としないように、これについては万全の対策を講じていこうと思っているわけでございます。
  212. 浦井洋

    浦井委員 もう終わりますが、松本大臣の言われることは言いわけであって、そういうことは許せないということを申し上げて、私の発言を終わります。
  213. 吹田愰

    吹田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  214. 吹田愰

    吹田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮里松正君。
  215. 宮里松正

    ○宮里委員 私は、自由民主党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、賛成する立場から討論を行うものであります。  我が国の独立を確保し、平和と安全を守ることが国家として最も重要かつ崇高な責務であることは、今さら申し上げるまでもありませんが、さらに、国際社会における西側陣営の一員としての我が国の地位が著しく高まった今日、世界的視野に立って国際社会の平和と安全の強化に貢献することが我が国に強く求められております。そのためにも、我が国がみずからの安全保障を確かなものにするため自主的努力を続けることは、極めて重要であります。  もとより世界の平和と安全は、人間最大の願いであり、課題であります。現下の国際情勢は、東欧諸国民主化の動き等により、欧州情勢は全般的に流動化し、東西関係は政治的側面を中心に変化の兆しが見られますが、今後どのような方向へ進むかを見きわめることは困難な状況にあります。  また、極東ソ連軍は、従来から膨大な軍事力を蓄積しており、ゴルバチョフ政権誕生後も、海、空戦力を中心として装備の質的強化を続けています。我が国周辺においても、艦艇や軍用機の活動が強化されており、これにより我が国に対する潜在的な脅威が増大しています。  このような状況のもとで、我が国としては、今後とも日米安全保障体制を堅持するとともに、自衛のため必要な限度において質の高い防衛力の整備に努めることが極めて肝要であります。  今回のいわゆる防衛二法の改正案は、過去に契約した艦艇、航空機の就役等に伴って必要となる海上、航空自衛隊及び統合幕僚会議の自衛官並びに有事の際の後方警備要員の充実等のために必要となる予備自衛官を必要最小限増員することを内容とするものであり、いずれも中期防衛力整備計画の四年度目に当たる平成元年度業務計画を実施するために必要な措置であって、極めて妥当なものと考えます。  もとより我が国の平和と安全は、ひとり自衛隊のみで全うし得るものではなく、防衛問題に対する広範な国民の理解と支持に立脚すべきものでありますが、今や、国民の大多数は、我が党及び政府の防衛政策に対する理解と支持を表明しており、この改正案も国民の理解を得られるものと信じます。  政府は、今後とも日米安全保障体制を堅持し、有効で効率的な防衛力の整備に努めるとともに、防衛問題に対する国民の理解と支持をより一層深めるべく努力し、アジア、ひいては世界の平和と安全に貢献されることを強く要望して、私の賛成討論といたします。(拍手)
  216. 吹田愰

    吹田委員長 次に、田口健二君。
  217. 田口健二

    ○田口委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  今年に入ってからのポーランドを初めとする東欧諸国における政治的地殻変動が、東西冷戦の象徴であったベルリンの壁さえも事実上消滅させ、戦後世界の古い秩序を足元から揺るがそうとしている中で、明日から地中海のマルタ沖で開かれる米ソ首脳による洋上会談は、世界の多くの人々に戦後世界の枠組みを書きかえる大転換点となるかもしれないという期待感を高めさせております。既に、米ソ両国は、国防費と通常兵力の大幅な削減を表明しており、軍拡から軍縮へという国際情勢の趨勢は動かしがたいところであります。  しかるに、政府は、極東ソ連軍増強を理由として、「防衛計画の大綱」では想定もしていなかったシーレーンの防衛や洋上防空の概念を導入した中期防衛力整備計画の達成を最優先課題としつつ、一九九一年以降の防衛力整備計画の策定を着着と進めているのであります。政府は、防衛力増強を推し進めながら、国民の最大関心事である計画の策定の基本理念はもとより、構想の片りんさえも国民の前に明らかにしようとしていません。  国民は、国際情勢が平和と軍縮に向かいつつある今日、政府が増税を強行し、巨額の予算を必要とする防衛力の増強を進めようとしていることに強い疑念を持ち始めております。  今、我が国がなすべきことは、新デタントと言われる時代にふさわしい平和外交や経済協力等による非軍事的分野でのより積極的な国際貢献、軍縮に寄与することでなければならないと思うのであります。  本改正案は、自衛官の定数増、予備自衛官の増員を図ろうとするものであります。これは、自衛隊が米軍の補完的役割を担いつつ、みずからの規模と能力においても際限なく増強しようとするものであり、このような軍拡路線を盛り込んだ本改正案には強く反対することを表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  218. 吹田愰

    吹田委員長 次に、竹内勝彦君。
  219. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行うものであります。  二十一世紀を目前に控えて、私たちは今、歴史的なターニングポイントに差しかかっております。申すまでもないことですが、国際通信の飛躍的な進歩により、今日、生活する日常の情報圏が拡大してきたことによって、自由な求めて大移動を開始した東欧の人々の歓喜の声がリアルタイムでストレートに伝わってくるときとなりました。今や新しい地球レベルの秩序を求めて、時代がまさに変革の時代に突入したことを実感します。  思い起こせば、一九八七年十二月、ワシントンでの日米首脳会談でINF全廃条約が調印されたときから、世界の舞台はニューデタント時代へ大きく回り出したと言えます。八八年五月には、アフガンに侵攻していた駐留ソ連軍の撤退が開始され、八八年六月には、米ソ双方がINF全廃条約を批准し、さらに同年、イラン・イラク戦争の停止やゴルバチョフ書記長がクラスノヤルスクでアジア太平洋地域安全保障強化のための七項目新提案を発表しました。  その後、ニューデタントは一層加速し、昨年十二月には、ゴルバチョフ書記長が国連においてソ連軍五十万人の一方的削減を表明する軍縮演説を行い、さらに年が明けた本年一月には、ソ連東部からの兵力二十万人削減を明らかにしました。  三月は、欧州での通常戦力と信頼醸成措置交渉がウィーンで開始され、五月には、中ソの和解が成立し、九〇年にソ連アジア部で二十万人の兵力削減するとゴルバチョフ氏が表明、その後は、米クロウ統合参謀長とソ連アフロメーエフ前参謀長等の相互訪問や米軍の大幅削減の提示、そして十月に入っての東欧の動きは新しい春の訪れを告げ、この二年余りの世界各国のニューデタントを象徴して余りあるものとしました。  私は、こうした今日のニューデタントをもたらした背景には、増大する軍事費が国民経済に重圧を与えたという経済的要因と、行き詰まった抑止論から脱却し、共通の安全保障観、いわゆる防御的防衛等の安全保障政策に変えるという政策変更という二つの要因があると思います。この平和軍縮の流れはもう押しとどめることはできません。  そうしたとき、平和憲法を持つ我が国の対応が、とうとうと流れる歴史に取り残されるようであってはなりません。今度こそはアジア・太平洋の地域軍縮我が国は先頭を切って歩むべきであると思います。と同時に、信頼醸成の促進、なかんずく防衛費の抑制を徹底して行うべきであると主張します。  以上のような基本的立場から、我が党は、今回の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。(拍手)
  220. 吹田愰

    吹田委員長 次に、塚田延充君。
  221. 塚田延充

    塚田委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。  近年、米ソ関係改善を初めとして世界的な緊張緩和の動きが広まり、特に、東欧における自由と民主化を目指す運動は大きな盛り上がりを見せております。まことに歓迎すべき流れであり、我我としても、一層の緊張緩和の実現に向け全力を尽していくことは当然であります、  しかし、一方、これによってすぐに軍事的な脅威が消滅したとか、軍事力の必要性がなくなったなどと考えるのは全く短絡であり、国際社会の現実を無視するものと言わざるを得ません。現に、米ソ両国とも、軍縮提案を行う一方で核兵力通常兵力を問わず着々と戦力の近代化を進めているのが実態であります。特に、極東におけるソ連軍は、ゴルバチョフ書記長軍縮提案にもかかわらず、一向に削減される気配がなく、むしろ着実な近代化を進めているのであります。  そもそも現在の緊張緩和の動きの契機となったINF全廃条約の締結は、西側自由陣営が結束を固め、ソ連に対して力と対話の二重路線を進めてきたからであります。したがって、我が国としては、緊張緩和へ向けた動きを踏まえつつ、しかし、依然として続く極東地域の軍事的脅威などに対処するため、適切な防衛努力を進めることが必要であります。  その際、私が強調いたしたいのは、人員の確保を含め、後方支援体制の充実ということであります。どのように高性能の兵器を導入しても、それを動かす優秀で士気の高い隊員が確保できなければ何にもなりません。特に、今後若年人口が急速に減少していくことを考えれば、今日のような社会状況のもとで自衛隊が若い隊員を定期的に確保し続けていくことは至難のわざであります。  また、従来から指摘されているように、基地などの抗堪性の向上や即応体制の強化、さらには継戦能力の向上や予備兵力の充実など、いわゆる後方体制の強化は不可欠の課題であります。現在作成中の次期中期防は、正面装備偏重に陥ることなく、これら後方体制の充実に十分配慮するよう強く要求して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  222. 吹田愰

    吹田委員長 次に、柴田睦夫君。
  223. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論をいたします。  今回の防衛二法案は海、空、統幕要員の自衛官を初め予備自衛官の大幅増員を内容としています。  これは、自衛隊がアメリカのアジア・太平洋戦略の補完部隊として三海峡封鎖、日本海、オホーツク海の制圧、西太平洋全域の制海、制空権の確保という任務を遂行するため、一層の増強を図るものであります。  海部首相は、ことし九月の日米首脳会談で、アジア・太平洋全体の平和と安全のための防衛力の整備を公式に表明し、軍事面でもアメリカへの強力な支援を約束しました。  来年度の防衛費要求額は四兆円台を突破し、防衛計画大綱に示された自衛隊増強計画の目標を達成します。既に次期防衛力整備計画の検討が開始され、さらに防衛力の増強を目指しています。今や、自衛隊は、世界第三位の軍隊となり、アメリカの核戦略に深く組み込まれ、ますます危険な役割を果たすものとなっています。  アジア・太平洋全域を舞台とした初めての米太平洋軍の統合実動演習への自衛隊の参加は、それを示すものです。カナダ、南朝鮮、オーストラリア、フィリピン、タイ、シンガポールも参加し、カムチャッカ半島の無力化、千島列島の占領、オホーツク海、日本海の制圧などのシナリオに基づくと言われるこの演習への参加は、憲法にも専守防衛にも反するものであります。  自衛隊の日米共同作戦計画は、シーレーン防衛、日米共同作戦研究を完成したのを初め、極東有事、インターオペラビリティー研究を推進し、そして昨年から、新たに波及型有事シナリオによる有事来援研究に着手しています。  また、既にNATOで実施に移されている戦時受け入れ国支援協定や相互兵たん支援協定の検討も開始されようとしています。これらは、アメリカの戦争に自衛隊を参戦させる態勢を一層進めるものであります。  在日米軍駐留経費の負担増は、我が国が条約上何ら負担すべき義務のないものであり、専ら米軍への支援を強化するものであります。  昨年七月、横須賀沖で死者三十名に達する大惨事となった海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と第一富士丸の衝突事故直後、「なだしお」の山下艦長らが、航泊日誌に記載されていた十五時三十八分の衝突時間を二分間おくらせる改ざんを命じ、原紙を廃棄させていたことが明らかにされました。この改ざんは、「なだしお」の衝突回避動作の決定的なおくれをごまかし、重大な過失責任を逃れるために、防衛庁、自衛隊が組織ぐるみで行った意図的な証拠隠滅であることは明瞭です。まさに、自衛隊の反国民的な体質そのものであります。  こうした情勢の中で提出された今回の防衛二法改正案は、日米の指揮・通信の統合化のための統幕要員や主要装備の導入に伴う自衛隊員の増員、第一線部隊に投入するための予備自衛官の確保など、日米軍事同盟のもとで憲法違反の自衛隊を増強するものであり、絶対に許すことはできません。  今日、すべての国民が求めているのは軍備拡大でなく軍縮です。  我が党は、アメリカの戦争に国民を巻き込む日米安保条約を廃棄し、非核、非同盟、中立を目指して進むことを要求して、反対討論を終わります。(拍手)
  224. 吹田愰

    吹田委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  225. 吹田愰

    吹田委員長 これより採決に入ります。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  226. 吹田愰

    吹田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 吹田愰

    吹田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  228. 吹田愰

    吹田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十六分散会