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1989-11-30 第116回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月三十日(木曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 吹田  愰君    理事 井上 喜一君 理事 榎本 和平君    理事 斉藤斗志二君 理事 笹川  堯君    理事 宮里 松正君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 塚田 延充君       天野 公義君    有馬 元治君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    竹中 修一君       玉生 孝久君    野呂 昭彦君       古屋  亨君    堀之内久男君       武藤 嘉文君    森下 元晴君       緒方 克陽君    角屋堅次郎君       多賀谷真稔君    広瀬 秀吉君       井上 和久君    鈴切 康雄君       浦井  洋君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 水野  清君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 松本 十郎君  出席政府委員         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         管理局長    菅野  雄君         人事院事務総局         給与局長    中島 忠能君         人事院事務総局         職員局長    大城 二郎君         総務庁人事局長 勝又 博明君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       児玉 良雄君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      米山 市郎君         防衛庁人事局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 植松  敏君         防衛施設庁長官 松本 宗和君         防衛施設庁総務         部長      吉住 愼吾君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省条約局長 福田  博君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      荒  義尚君         外務省アジア局         北東アジア課長 今井  正君         外務省北米局安         全保障課長   重家 俊範君         外務省経済局経         済安全保障室長 杉本 信行君         大蔵省関税局管         理課長     川  信雄君         特許庁総務部国         際課長     清水 啓助君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      中島 健三君         内閣委員会調査         室長      林  昌茂君     ───────────── 委員の異動 十一月二十九日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     田邊  誠君 同日  辞任         補欠選任   田邊  誠君     多賀谷真稔君 同月三十日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     野呂 昭彦君   広瀬 秀吉君     緒方 克陽君   吉田 之久君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   野呂 昭彦君     河本 敏夫君   緒方 克陽君     広瀬 秀吉君   川端 達夫君     吉田 之久君     ───────────── 十一月二十九日  一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三号)  特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出第五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三号)  特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出第五号)  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第一三号)  平成元年四月分から同年七月分までの扶助料に係る加算の年額等の特例に関する法律案起草の件      ────◇─────
  2. 吹田愰

    吹田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  順次趣旨説明を求めます。水野総務庁長官。     ─────────────  一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案  特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  3. 水野清

    水野国務大臣 ただいま議題となりました一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、一括してその提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案について、御説明申し上げます。  本年八月四日、一般職職員給与改定内容とする人事院勧告が行われました。政府としては、これらの内容検討した結果、一般職職員給与については人事院勧告どおり実施することが適当であると考え一般職職員給与等に関する法律について所要改正を行うこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、法律案内容について、その概要を申し上げます。  第一に、全俸給表の全俸給月額人事院勧告どおりそれぞれ引き上げることといたしております。  第二に、初任給調整手当について、医師及び歯科医師に対する支給月額限度額を二十五万五千円に引き上げるとともに、いわゆる医系教官等に対する支給月額限度額を四万五千五百円に引き上げることといたしております。  第三に、通勤手当について、交通機関等を利用して通勤する職員に対する全額支給限度額月額三万円に引き上げること等といたしております。  第四に、新たに単身赴任手当を設け、単身赴任職員に対し、月額二万円、さらに職員住居配偶者住居との間の交通距離の区分に応じて最高一万八千円を加算して支給することといたしております。  第五に、期末手当及び勤勉手当について、六月期の支給割合をそれぞれ百分の百五十及び百分の六十に引き上げることといたしております。  第六に、非常勤委員、顧問、参与等支給する手当について、支給限度額日額二万九千六百円に引き上げることといたしております。  以上のほか、附則において、施行期日適用日俸給表改定に伴う所要の切りかえ措置等について規定するとともに、関係法律について所要改正を行うことといたしております。  続きまして、特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました一般職職員給与改定にあわせて特別職職員給与について所要改正を行おうとするものであります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、内閣総理大臣等特別職職員俸給月額を、一般職職員給与改定に準じ、引き上げることといたしております。  第二に、常勤及び非常勤委員支給する日額手当支給限度額を、一般職委員日額手当改定に準じ、引き上げることといたしております。  第三に、一般職職員単身赴任手当支給されることになるため、秘書官に対しても単身赴任手当支給されるよう改定することといたしております。  第四に、国際花と緑の博覧会政府代表俸給月額を、一般職職員給与改定に準じ、引き上げることなどといたしております。  以上のほか、附則において、この法律施行期日適用日等について規定することといたしております。  以上が、これらの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
  4. 吹田愰

    吹田委員長 次に、松本防衛庁長官。     ─────────────  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  5. 松本十郎

    松本国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、このたび提出された一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に準じて、防衛庁職員給与改定等を行うとともに、退職手当算定の基礎となる勤続期間を計算するに際し、防衛大学校等学生としての在職期間について自衛官としての在職期間に通算する場合の要件を改めるものであります。  すなわち、改正の第一点である防衛庁職員給与改定等につきましては、参事官等及び自衛官俸給並びに防衛大学校等学生学生手当一般職職員給与改定の例に準じて改定し、あわせて営外手当について改定するほか、一般職におけると同様、新たに単身赴任手当を設けることとしております。  なお、一般職職員給与等に関する法律の規定を準用し、またはその例によることとされている事務官等俸給通勤手当期末勤勉手当医師及び歯科医師に対する初任給調整手当等につきましては、同法の改正によって、一般職職員と同様の改定防衛庁職員についても行われることとなります。  改正の第二点である防衛大学校等を卒業した者の退職手当算定に係る学生としての在職期間通算要件を改めることにつきましては、現行学生から自衛官に任用されたことに加え、その任用に引き続き自衛官として一定期間以上在職したことを通算要件として、本制度をより適切に実施することとするものであります。  以上のほか、附則において、施行期日適用日俸給表改定に伴う所要の切りかえ措置等について規定しております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  6. 吹田愰

    吹田委員長 これにて各案についての趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 吹田愰

    吹田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口健二君。
  8. 田口健二

    田口委員 ただいま議題になりました一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に関しまして、幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  今年の八月二十九日だったと思いますが、今年度人事院勧告が出された際に、本委員会におきましても人事院総裁の方からその概要について御説明がございましたし、その後、若干の質疑も行われたわけであります。私はそのときにも申し上げておったのでありますが、確かに今年度の人事院勧告内容を見てみますと、一時金についてはほぼ十一年ぶりに〇・二カ月分の増額が織り込まれております。あるいはまた、単身赴任手当という新しい制度の導入も入っておるわけでありまして、一定評価はできるとは申し上げましたが、一〇〇%評価をするわけにはいかない。それはなぜかと申しますと、今申し上げました一時金の支給率アップというのが、私ども考え方からするとやはり民間比較をして少ないのではないか。私ども考え方としては、今日の民間における一時金の支給状況から見るならば、これは当然総体で五・二カ月に復元をすべきである、こういうふうに考えておったわけでありますが、結果的には〇・二カ月の引き上げで、トータルとして五・一カ月ということにとどまっておるわけであります。これは一体どういう調査の結果こういう数字になったのか、まずそのことをお伺いいたしたいと思います。
  9. 中島忠能

    中島(忠)政府委員 一時金につきましては、かねがね先生方及び労働団体皆さん方からいろいろな御意見をちょうだいしております。そこで、私たちもこの調査につきましては、調査に当たる職員に対しまして慎重に、かつ、十分詳細に調査するように申しておりますし、そういう精神で各調査員調査に当たったと思います。  具体的に申し上げますと、民間給与というのは、一時金も含めまして一番変動するのはやはり春季賃金闘争だと思います。したがって、私たち春季賃金闘争が終わりました五月の連休明けから調査にかかりまして、民間の最新の情報を把握できるように努めております。具体的に申し上げますと、毎年同じでございますけれども、昨年の五月から本年の四月までの民間の一時金の支給状況というものを把握いたしまして、それに基づいて民間支給月数というものを算出し、公務員支給月数と対比いたしまして、その増減に基づいて勧告をいたしておるわけでございます。本年もそういう作業の結果、五・一カ月という〇・二カ月分アップ勧告を申し上げましたけれども、今先生がおっしゃいますように、民間状況というのは、ことしの夏もあるいはことしの暮れも昨年よりいいようでございます。そういう観点から見ていただくと少しずれているという感じかいたしますけれども、私たちは、従来からの方式に基づいて、慎重に、かつ、詳細に調査をして御報告申し上げているということでございます。
  10. 田口健二

    田口委員 今お答えがあったように、公務員給与については人事院勧告制度というものがあって、言うならば法定制度として決まっていくわけですね。今給与局長がおっしゃったように、春季賃金闘争、いわゆる春闘の段階民間の場合は一時金が決定をされる、もちろんそういうところもあるわけです。ところが、そういう春の段階年間臨給として決定をするところもあれば、夏冬別々に交渉をして決めていく、こういうところも大手の中では結構あるわけですね。ですから、今おっしゃったように、昨年の四月から調査をし、五月の段階まで引き続いて調査をやってそれが翌年度の人事院勧告にはね返ってくるということであれば、公務員の一時金というのはまさに民間に比べると一年おくれということになるわけですね。かねがね私どもがそのことを主張してまいっておるわけでありまして、そういうことになれば、いわゆる公務員法上に言うところの情勢適応の原則からいってもこれは逸脱をしてくるのではないか、こういうふうな感じもするわけです。  今も給与局長お話はありましたように、ことしの夏もそうでありますが、とりわけ暮れの一時金については、新聞報道等で見れば民間伸び率は非常に高くなってきている。例えば電機あるいは電力、高いところでは大体五・八三月というトータル年間臨給はなっている。低いところでも五・二三という数字も出ているわけです。しかるに、公務員の場合には、今年度の勧告が実施をされるとしても五・一月ですね。民間の発表された状況を見ますと、小数点第二位、今申し上げましたように、高いところで五・八三月、低いところでも五・二三月ということになっています。公務員の場合は五・一月です。民間の場合は、小数点二位まで具体的に出して一時金の支給率というのが発表されているわけです。この辺はどうなんでしょうかね。小数点二位の問題については人事院としてはどう扱っているわけですか。
  11. 中島忠能

    中島(忠)政府委員 小数点以下第二位の扱いでございますが、民間支給月数を算出し、その結果、小数点以下第二位が出ました場合には、公務員の現に支給されておる月数比較いたしまして差が出る、その差の小数点以下第二位というのを切り捨てて今まで勧告をしてきております。もう少し具体的に申し上げますと、公務員支給月数と比べまして高い支給月数民間で出てきた場合に、公務員支給月数を引き上げることになるわけですけれども、そのような場合には小数点以下第二位を切り捨てておる。また反対に、公務員支給月数の方が多い、民間支給月数の方が少ないというようなことになった場合には、小数点以下第二位というものを切り上げて今まで勧告してきておるということでございます。そういう扱いを従来いたしておりますけれども、やはり公務員期末勤勉手当性格あるいはまた、民間ボーナス、いわゆる賞与の性格というものを相互に対比して考えました場合には、それはそれなり理論はあるというふうに私は考えております。ただ、そこに考えるべき問題があるかもしれないというふうには思いますけれども、私たち考え方としては、従来そういう考え方で対処してきております。
  12. 田口健二

    田口委員 それでは、今の給与局長の御答弁状況でいって、これほどこまでとるかというのはちょっと問題があると思いますが、例えば昭和四十五年以降、実際に小数点以下二位の扱いについて、切り捨て切り上げをやられてきたということになれば、実際に切り捨てられた月数というのはどのぐらいの月数になるのですか、その二位以下を切り捨てたことによって。どうでしょうか。
  13. 中島忠能

    中島(忠)政府委員 突然の御質問でございますが、今も国会に来る途中車の中で二十年間というのを見ておったのですが、その端数を合計いたしますと、おおむね〇・七月分になるのではないかというふうに思います。切り上げたものは〇・一三月ということだと思います。  間違いがございましたら後ほど訂正させていただきますが、それで間違いないと思います。
  14. 田口健二

    田口委員 そうしますと、今のお答えでも、切り捨てから切り上げの分を差し引いても〇・五月ぐらい格差が出てきているわけですね。ですから、私が先ほども申し上げましたように、今日の勧告制度の中からいっていわば公務員の一時金については民間の一年おくれになっている、しかも、その一年おくれの中で小数点以下の端数処理の問題で切り捨てられてきて、現実にはこの二十年間で〇・五月ぐらいの差が出てきておる。これは公務員にとっては大変な損失だろうと私は思いますね。これはやはりやり方というものを検討してもらわなければならないと思うのです。今の勧告制度、四月あるいは五月の調査時点をぐっと繰り下げてということは、八月勧告という今日の状態からいうとなかなか難しい点があろうかと思いますけれども、もう少しそこのところは技術的に工夫をして、公務員に対して損失がないような処置をすべきではなかろうかというふうに思います。  総務庁長官給与担当大臣として、いわば公務員使用者責任者という立場もあろうかと思いますが、この点についてはどうお考えになりますでしょうか。
  15. 水野清

    水野国務大臣 先生公務員立場に立っての今のお話は、なかなか傾聴に値するお話だと私は思っております。  ただ、私ども人事院勧告を尊重して公務員給与の基本給からボーナスもあわせて実施するということが立場でございますので、人事院勧告どおり実施していきたい、かように思っております。
  16. 田口健二

    田口委員 そこで、再度人事院の方にお尋ねをいたします。  今まで申し上げてまいりました一時金の支給月数小数点以下二位まで採用することについては、官民比較方法として、現行制度上何か問題がありますか。先ほど給与局長の御答弁があったように、今まで採用されてきたやり方でなければならない何か理由があるのかどうか、ひとつその辺の見解をいただきたいと思います。
  17. 中島忠能

    中島(忠)政府委員 今までのような方法を採用してきたことの理論というのは、やはり公務員の一時金と民間ボーナス性格面において違う。民間ボーナスの場合には、企業によっても異なりますし、あるいはまた、同じ企業でも部署によって異なる、同じ部署でも個人によって異なるというふうに、収益の反映という面が非常に色濃く出ておるわけでございますが、公務員の場合には、まあそういう色彩というものも考慮しなければならないのでしょうが民間ほどではないということと、もう一つは、給与法定主義がとられておりますので、民間ほど細かな事情を反映するのはどうかというようなことが実はあったわけでございます。そういうことで、先ほど来御説明申し上げておるような方法をとらせていただいておるわけでございます。  それでは、小数点以下第二位まで採用することについて、理論上突き詰めて言うと何か支障があるのかということになりますと、理論上どうしてもそれはだめだということにはならないと思います。私は、今までの取り扱いというのは、理屈理屈として通っておると思いますけれども、今先生が御指摘になりましたように、二十年間なら二十年間というものを振り返ってみた場合に、やはり切り捨てられたものの累積が多いじゃないか、切り上げたものより多いじゃないかということについては、人事院としてもかねがね問題意識を持っておりましたし、こういう議論が出てくると、それなりの対応を改めて考えてみる必要があるのかなというふうに考えます。
  18. 田口健二

    田口委員 それでは、人事院総裁お尋ねをいたしますけれども、今私が申し上げてまいりましたように、一時金の算出に当たって、当然民間に準拠をして小数点以下二位までを採用して勧告の中に反映をすべきだと私は思っておるわけでありまして、先ほど委員会理事会の中でも各党の御賛同をいただきましてこの分について後ほど附帯決議を出させていただきたいと思っております。このことについて、人事院総裁としてどのようにお考えでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  19. 内海倫

    内海政府委員 いろいろな経緯につきまして、あるいは考え方につきましては、ただいま給与局長からるる御説明を申し上げておるとおりでございます。しかし、給与全般という問題を考えてみますと民間給与に準拠してこれを定めていくのが一番合理的であると考えますと、現状あるいは将来を考えますと、小数点以下二位という問題も決して無視していいものではない、十分検討の対象にはなると思いますので、今後におきましても、我々としては在来も決して無視してきたわけではありませんが、検討をいたしていきたい、こういうふうに考えております。
  20. 田口健二

    田口委員 それでは最後の質問になりますけれども防衛庁長官先ほど防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の御提案をお聞きをした中で、防衛大学卒業生のいわゆる退職手当支給の問題について、自衛官として就任をし、一定期間在職をすることによって支給考えたいというお話があったのです。私もまだ勉強不足でありますが、それを具体的にちょっと教えていただきたいと思うのです。現状と、それから今後どうやっていこうとお考えなのか、そこのところをまずお聞きをしたいと思います。
  21. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 お答えをいたします。  防衛大学校等の課程を終了した場合に、現状では、引き続いて自衛官として任官しましてやめた場合に、例えば一日でも任官されますとそこで退職手当支給されます。その場合、学生としての期間、四年間でございますが、それを二分の一通算して退職手当支給される形になっていたわけでございます。それを今度は、引き続いて自衛官に任官された期間として六カ月を要件といたしまして、六カ月在職した後に退職した場合に初めて学生としての期間を二分の一通算するという形に改めたということでございます。
  22. 田口健二

    田口委員 そこで、重ねて今の御説明についてお尋ねをしますが、防衛大学校等の卒業生が自衛官として就任をする、その後、六カ月を超えた場合に学生期間が通算をされるということですから、六カ月未満で退職をした場合には、その学生期間は一切通算をしない、こういうことですね。
  23. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 六カ月未満で退職した場合には、退職手当支給されないという形になります。
  24. 田口健二

    田口委員 終わります。
  25. 吹田愰

    吹田委員長 次に、井上和久君。
  26. 井上和久

    井上(和)委員 給与法に関連をいたしまして、若干御質問いたしたいと思います。  日本人は働き過ぎである、こういうことを海外からも特に言われております。この働き過ぎということが原因になりまして、過労死が最近社会問題となっておると思います。時代的な流れといいましょうか、技術革新あるいは国際競争、さらには経済的な動き、構造変化、こんなものが原因となりまして、残業過多による長時間労働あるいは深夜労働、さらには休日勤務など、それに加えまして人間関係とか肉体的、精神的に大変重要な事柄が累積をいたしまして、そのあげくが過労死だというふうな結果を生むわけでありますし、同時に、過労死に至らないにしましても、まさに過労死予備軍といってはどうかと思いますが、健康障害の方々も非常に多く見られるというのが今の段階じゃないかというふうに思うわけであります。民間企業に限りませんで、国家公務員におかれましても同様の状況にある、こう思わざるを得ないのであります。また、この労災の認定の可否も大変難しい状況にある、そういうふうなことを私は認識をいたしております。  そこで、まず過労死について何点かお尋ねをいたしたいと思います。  今月の九日の新聞に次のような報道がございました。五月下旬から相次ぐ難民の審査に当たっていた法務省の福岡入国管理局の職員の方お二人が過労で亡くなられた、こういう記事でございました。難民の到着後、連日審査に追われ、大変な日日が続いていたようであります。公務に全力で取り組んでおられたことと想像するものでありますが、このお二人については公務災害として認定されたのかどうか、この経緯も含めまして、人事院にまずお伺いをいたしたいと思います。
  27. 大城二郎

    ○大城政府委員 本年五月ごろからいわゆる難民が多数九州方面に漂着いたしまして、こうした状況に入国管理局で対応してきたわけでございます。福岡入国管理局の職員二名がそういう業務の中で九月及び十一月に死亡したという事故がございました。このうち、先に亡くなられました福岡入国管理局の警備課長補佐の方のケースにつきましては、さきに法務省の方から私ども内容の協議がございまして、その勤務内容、超過勤務時間数等を調査検討いたしたわけでございますが、総合的な判断の結果、私どもとしては公務上と認定すべきであるという結論に達しております。その旨法務省の方にも御連絡申し上げておりますが、法務省の方では、十一月二十七日付で公務上の災害と認定するという通知を出されているというふうに承知いたしております。  それからもう一人の方、佐世保港出張所長の方のケースでございますが、現在、法務省において事実関係を調査中と伺っております。近いうちに、また私どもの方に協議があるものと思っております。その状況を踏まえまして検討したいと考えております。
  28. 井上和久

    井上(和)委員 人事院に重ねてお伺いをしたいと思いますが、国家公務員の公務災害の申請件数並びに認定数、さらにはこの数年間におきます死亡者数等の推移につきまして、どのようになっておられるかお伺いをしたいと思います。
  29. 大城二郎

    ○大城政府委員 公務災害の関係につきましてのお尋ねでございますが、全体的な特に死亡の状況について申し上げたいと思います。  公務員の死亡者数でございますが、病死、災害死を含めまして、昭和五十八年度では千五百六十四人、昭和五十九年度では千四百六十五人、六十年度が千三百三十二人、六十一年度が千三百十二人、六十二年度で千二百十九人となっておりまして、いわゆる死亡の状況としては減少傾向を示してきております。  その中で公務災害として認定された死亡者の数でございますが、昭和五十八年度三十九人、五十九年度三十三人、昭和六十年度二十五人、六十一年度三十六人、六十二年度四十四人ということになっております。年によって変動がございます。最近、若干の増加というような状況があるわけでございます。
  30. 井上和久

    井上(和)委員 この過労死について、民間におきまして、労災保険の適用が業務上の理由による死亡かそうでないかというような判断が大変難しいということで、認定をめぐりましてしばしば対立といいますか、トラブルが起こっておるというふうに認識をしております。遺族の中には、労災申請すれば補償が支払われることがわからなかったというか、知らなかったという場合もあるそうであります。国家公務員においてはこのようなことが現在まで何件かあったと思いますが、この実態について教えていただきたいと思います。
  31. 大城二郎

    ○大城政府委員 いわゆる過労死と言われるものに相当するものとして、脳・心疾患による公務上の死亡災害ということで認定された件数として申し上げますと、昭和五十八年度から、四人、八人、四人、五人、七人というような方の死亡についてこれを公務上の災害というふうに認定することをしてきております。これはいわゆる過重な業務による負担が脳・心疾患の発生に結びついた、いわゆる職務との関連において公務上と認定できるかという点が非常に問題になるわけでございまして、その点についてのいろいろな考え方、御意見等があるわけでございます。  私ども、国家公務員の災害補償に関しましては、いわゆる認定指針なるものを出しまして、その認定についての基準等を定めまして、それに基づいて認定するということで、その過重負担の実態を詳細に調査して、それに基づいて的確な判定を下すようにという努力をしているつもりでございます。
  32. 井上和久

    井上(和)委員 この際ですので、公務災害認定基準というのはどのようになっておるか、これをお伺いしておきたいと思います。
  33. 大城二郎

    ○大城政府委員 いわゆる認定指針としていろいろ定めているわけでございますけれども、脳・心疾患による死亡等についての認定に当たりましては、発症前における職務上の過重負荷という観点から、本人が従事した勤務の内容、勤務密度、勤務量等をもとに公務起因性を判断するというふうにいたしております。  この認定に当たりましては、日常の職務に比較して質的、量的に過重な職務に従事したかどうか、これを発症前一週間を中心にしまして詳細に調査いたします。さらに、それ以前の疲労の蓄積等を含めて精神的、肉体的な過重負荷が公務遂行上存在したか否か、これを医学的知見を基礎にいたしまして判断する。そういう基本的な考え方を指針に定めておりまして、それに伴いまして必要な調査事項等を指針において規定している。それに基づいて実態を調査し、判断をするというふうにしているわけでございます。
  34. 井上和久

    井上(和)委員 ただいま御説明いただきましたが、一昨年、二十六年ぶりに過労死の労災認定の基準というものが緩和をされました。旧の基準は、倒れる前日に従来の業務と比べて過激な出来事があった場合しか労災ということを認めなかったということでありますが、新基準では、ただいまありましたように、倒れる前一週間に所定の業務に比べて過重な労働に従事した場合に、遺族年金や障害年金が支給される、こういうことで、今言われましたように、一週間前というふうにお決めになりました。言いますと、過労死という場合にはもっと長期にわたって蓄積されたものというのが非常に大事じゃないかというふうにも思うわけでありまして、この点について一週間とされた理由等についてお伺いをしておきたいと思います。
  35. 大城二郎

    ○大城政府委員 いわゆる認定に当たりまして一週間前の勤務状況というのを特に結びつけて考えているわけではございませんが、問題は、その発症と職務実行との関連性がどうかということでございます。医学的には、そういう原因があれば比較的短期間で発症に結びつくということでございますが、その間、一週間ぐらいの期間をとればそういう関係が比較的明らかになるであろう、その辺の調査を詳細に行うということでございます。  しかし、これに限定するということではございませんで、その職務の過重性というのを判断する上で、付加的な要因としてさらに一カ月間にわたります勤務状況もあわせて調査してそれを参考にするということを現にいたしております。なおかつ、いろいろ質的な過重性の問題もございまして、個々別々にいろいろなケースがございます。そのケースに即して実態的な判断をするように指針では定めているところでございます。
  36. 井上和久

    井上(和)委員 次に、大蔵省にお伺いをしたいと思うのですが、成田の新東京国際空港に成田税関の支署がございます。この税関の職員の業務は大変重要なのであります。特に、輸入貨物の検査を初めとしまして、税関手続、旅具、徴税事務等がありますが、輸出入貨物の増加、さらには出入国の旅客数の増加というものが年々増大をしております。電算化と申しますか、業務の効率化に努めておられるようでありますが、それでも旅客数あるいは貨物量のふえ方というのは、先日もテレビで報道しておりましたが、大変な量であるということであります。  このような仕事量の増加という状況である反面、税関全体の職員数は、定員事情というものがあり、極めて厳しい状況にある、こういうふうに聞いております。それだけに、職員の方々への負担というものが増大をしておる、これは当然こういうことが起こるであろうと思うのであります。  ちなみに貨物の取扱量を調べてみますと、十年前の五十四年においては四十五万トン、それが六十三年では百十九万トンと、十年で三倍近くにふえております。また、現在の空港施設の対応能力というのが五十万トン程度と言われております。輸入食品の検査等を行う食品衛生監視員も不足をしておることも報道されておりました。  これにつきまして、これは昨年の十二月の新聞記事でありますが、若干申し上げたいと思います。  「全国九つの税関で働く職員の死亡がこのところ増えているというのが、」さしずめ問題であるとしまして、   昨年は一昨年の二倍の二十四人。ことしは先週末までで十八人。特に、五十代後半の職員が目立つ。気にした大蔵省がいろいろな統計と比較しながら原因を追跡したら、残った答えは「輸入の急増に伴う過労の影響」ということになった。日本経済の構造変化の一つの表情である。   この五年、十年の税関の変わりようは激しい。入港してくる船の数は増えなくても、積み荷のほとんどがコンテナ貨物。このため入港と出港の間が極端に短いから忙しくなるし、勤務時間も延びる。それに通関業務を急ぐ必要のある食料品や生花などのナマモノの増え方はすごい。飛んでくる飛行機、それとともにやってくる人間と貨物は「倍」で数えた方がいいほどだ。   おまけに、覚せい剤や大麻、銃砲の押収量も増えているし、ココム違反の東芝機械事件以後は共産圏向け輸出に向ける目も厳しくせざるを得ない。仕事は増えるが、増えない定員の枠内でのやりくりが続く中での不幸が起こっている。 こんなような記事が出ております。  これを確認をしておきまして、まずこの空港に勤務する税関職員について、過労死で亡くなられた方がおられましたら教えていただきたいと思うのです。
  37. 川信雄

    ○川説明員 ここ数年、税関の業務量が急増しているのは事実でございますけれども、過労を原因として亡くなった税関職員の事例はございません。
  38. 井上和久

    井上(和)委員 ないという御答弁なんですが、医学的に言いましても、これは過労死ですという病名はないと思います。心筋梗塞であったり、あるいは脳内出血なり、脳溢血なり、そういう死因だろうというふうに思うのでありますが、こういう点で、実態というもの、その点はどういうふうに考えておられますか。過労死という病名はないのですから、ほかのことでも、そうじゃないかなと思うようなこともありませんでしたかね。現実というのは僕はちょっと違うのじゃないかという気がするのですよ。
  39. 川信雄

    ○川説明員 ここ数年の税関職員の死亡につきましていろいろ調査したわけでございますけれども、税関では五十歳以上の職員の比率が最近高まってきている等いろいろな事情が重なり合って死亡者数がふえてきたのではなかろうかというふうに考えております。
  40. 井上和久

    井上(和)委員 人員の配置状況等の調査、そういうことも含めましてもっとしっかりとやってもらいたいと思うのです。この記事にも載っておりましたように、大変労働が過重であるということは事実だと思いますので、これについて、今後のことも御答弁を願いたいと思います。
  41. 川信雄

    ○川説明員 税関の業務量増に対処するため、従来から事務の重点化あるいはまた機械化等を図ってきたところでございますけれども、今後ともこうした施策を進めるとともに、要員確保についても引き続き最大限の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
  42. 井上和久

    井上(和)委員 最後に、総務庁にお伺いをしたいのですが、全国八十三万の国家公務員を所管をされておりますが、先ほど申し上げましたように、経済的なあるいは社会的な急激な変化あるいは進展によって、それぞれの部署において大変業務量がふえているというようなところが出てくるであろうと思います。それに対しての定数枠の問題、またその予算の関係もありまして、大変難しい面があるというのもわかるわけでありますが、こういうふうに人命にかかわる問題になってくるわけでありますので、これについて今後対策をどういうふうにお考えになっておられるか、お伺いをしておきたいと思います。
  43. 百崎英

    ○百崎政府委員 ただいま税関と入管の職員の例を挙げられまして、定員管理についての査定当局の考え方の御質問がございましたが、私どもといたしましても、最近のこれらの機関におきます業務量の増大に対応いたしますために、非常に厳しい定員事情の中でもできるだけの配慮を行ってきているつもりでございます。定員の増加のほかに、そういう機関の内部における職員の適正配置ということも重要なことでございますので、そういう点につきましても関係機関にいろいろお願いしているところでございますが、いずれにいたしましても、今後、私どもは今御指摘のような点を念頭に置きながら、実際の現場の実態を十分に把握いたしまして適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  44. 井上和久

    井上(和)委員 どうもありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  45. 吹田愰

    吹田委員長 次に、塚田延充君。
  46. 塚田延充

    ○塚田委員 本年十一月の初めに、新行革審の中の公的規制の在り方に関する小委員会が報告書を行革審に対して出したわけでございます。これに絡みまして行政改革につきまして二、三お尋ねしたいと思います。  行政改革はいわば天の声ということであり、その目標といたしましては、仕事を減らすこと、そして、人を減らすこと、ひいてはそれがお金を減らすことになる、これが目的であります。官僚機構というのはほっておけば自己増殖のような形で際限なくふえていくということは、古今東西を問わずどうしても起きがちな事実でございます。それに歯どめをかけようということで第二臨調が設置され、あの土光会長のもとにかなり厳しい行政改革が推進されたわけであり、国民もそれに対して拍手喝采をしながらその行方とその成果を見守ったわけでございます。土光臨調はかなりの成果を上げたとは言われておりますものの、結果論から見ると、国鉄、電電、専売、この三公社を民営にした、それから、自己増殖するものについてはこれ以上ふえないようなある程度の歯どめはかかったけれども、いわゆる行政機構そのものが縮小して、小さな政府、効率的な政府になるというところまでは至っていないのではないかと思われます。そして、行政改革の結果につきましては、例えば竹下元総理大臣も、行革はいい線までやったけれども実際上はまだ道半ば以前であるというような感想も漏らしておったわけでございます。  ところで、この件に関しまして総務庁にお尋ねいたしますけれども、行政改革の推進の仕方につきましては新行革審にすべてをお任せして、その答申を待って、それを事務方として各省庁に配付し、またその報告を聞くという、単なる事務のまとめ役のみなのか、それとも効率的な行政全般を管轄するものとして、みずからの業務として積極的にそれに取り組む必要があるのかどうか、すなわち行政改革については単に新行革審の事務方だけで終わるのか、それとも本来の機能としての役割を認識されているのか、そういう業務があるのかどうか、この辺についてお尋ねしたいと思います。
  47. 百崎英

    ○百崎政府委員 行政改革の進め方につきましての御質問でございますが、行革審に任せっ放しで総務庁事務当局は独自の活動をしていないのではないか、多分こういう御趣旨の御質問だったと思います。  一つは、今おっしゃいますように新行革審に幾つかのテーマをお願いいたしまして御検討いただいておりますが、当然のことながらその成果を行革の一つとして実施に移す。そのほかに、私ども事務当局といたしましては、御承知のとおり、毎年度行革大綱というものをつくって閣議決定をいたして実施しておりますが、この中身は、いわゆる行革審の答申以外に各省といろいろ折衝いたしまして、機構、定員あるいは特殊法人等の合理化、そういったものを盛り込んだ大綱をつくって今実施しているということでございます。
  48. 塚田延充

    ○塚田委員 昨年十二月に新行革審は、その答申においてトラック事業を例示いたしまして、それらを含めた七十ほどの個別課題につきまして改善の提案をしております。この具体的な提案に対してそれぞれの担当省庁がどのように扱ったのか、総務庁としてはどのようにそれをチェックし、今後進めようとしているのか、昨年十二月の答申についてのその後の状況についてお答えいただきたいと思います。
  49. 百崎英

    ○百崎政府委員 昨年の公的規制の緩和等に関する答申のその後の状況についての御質問でございますが、御指摘のとおり、昨年答申を受けまして、政府といたしましては早速昨年末にその推進要綱というものを閣議決定いたしまして、今その実施に取り組んでいるところでございます。私どもといたしましては、その政府の実施状況のフォローアップをする、こういうことで行革審の小委員会でこのフォローアップ作業を続けていただきましたが、つい去る十一月二日にその結果が一応まとまりました。  それによりますと、昨年の答申のうちいわゆる運営の改善に係る部分については前進が見られるけれども制度改革を含めた本格的な成果を上げるにはなお一層の努力が必要だ、こういう御報告をいただきました。私どもといたしましては、この報告を厳しく受けとめまして、引き続き強力に推進をしてまいりたいというふうに考えております。
  50. 塚田延充

    ○塚田委員 このたびの小委員会の内部報告では、行政指導や認許可の基準を定めるための行政手続法を制定したらどうかという新しい提案、そして、それについて審議するための中立的、専門的な、例えば調査会みたいな機関を設けたらどうかというような提案がありますけれども、これに関しまして総務庁はどのような見解をお持ちでしょうか。
  51. 百崎英

    ○百崎政府委員 ただいま御指摘がございましたように、行政手続法制の整備についての報告が一応出されましたけれども、私どもといたしましては、今後の国際化というようなことを考えた場合に、事務方といたしましてはやはり法制化の必要があるだろうというふうに認識いたしております。そこで、今この小委員会報告が行革審本体の方に上がっておりまして、そこで御審議いただいておりますので、その答申を待ちまして、できるだけ政府部内で前向きに検討を進めてまいりたいと考えております。
  52. 塚田延充

    ○塚田委員 過重な行政指導が諸悪の根源とまでは申しませんけれども、それがあるがゆえに利権構造が出てくる温床にもなっているということが言えると思います。実際、リクルート事件にしてもパチンコ事件にしても、公的規制を強くしようとか緩めろとか、これに絡んでいろいろ事件が起きてくるわけです。そういうことからしますと、公的規制につきましては、もっと緩和するということがどうしても必要だと思います。  そうした場合、私どもとしては、かねてより、このような公的規制については、その目的、趣旨があるのならば期限を設けなければいけない。規制が一たん生まれると半永久的に続いてしまう、そしてそれが一つの構造となって、それゆえに利権構造に結びつき、そこにいろいろ事件が起きてくるというわけです。そうなりますと、公的規制そのものについてはすべて期限を設ける、いわゆるサンセット方式、これをやらなければ抜本的な改革にはならないと思うのです。このサンセット方式の推進について新行革審の方に諮問しているのかどうか、諮問してないとしても、総務庁としてこのサンセット方式についてどういうやり方で今後推進しようとするのか、御見解を伺いたいと思います。
  53. 百崎英

    ○百崎政府委員 サンセット方式の導入についての御質問でございますが、私どもも、事柄の性質によりまして時限を付す必要があるものはできるだけ時限を付すということでこれまでもやってまいっております。例えば補助金等につきましてもできるだけ時限を付すというようなことでやっておりまして、ことしの予算におきましても、たしか六十数件につきましてはそういう時限を付されております。  審議会にサンセット方式について諮問をしているかというお尋ねでございますが、そのこと自体はそういう形で諮問いたしておりませんけれども、常にそういうことを念頭に置きながら行革審の方でもいろいろ規制の緩和等について御審議いただきたい、こういう態度で臨んでおります。
  54. 塚田延充

    ○塚田委員 総務庁はいろいろな意味におきまして行革の推進の主務官庁でございますし、国民の期待も非常に大きなものがあると思います。新行革審の答申を、つまみ食いではなくて、諮問したからには全面的にそれを実施する、また、新行革審に頼るのみではなくて、みずから主体性を持って行革を推進し、行革の推進を通ずることによって、単に仕事、人、金のみならず、いわゆる利権の温床になるようなことを打破する、このような見地で今後さらに努力されることを期待いたしまして、質問を終わります。
  55. 吹田愰

    吹田委員長 次に、柴田睦夫君。
  56. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回の給与改善の平均三・一一%の引き上げは、これまでの臨調行革による賃金抑制、消費税の導入による物価の上昇、共済年金の大幅な掛金引き上げなどで重い負担がのしかかっております公務員労働者の生活実態から見て、不十分な水準であります。また、人勧に関連して、地域調整手当支給地区分の改悪も人事院規則で行われようとしておりますが、極めて遺憾であります。  そこで、総務長官に伺いますが、人事院勧告は八月四日に内閣と国会に提出されました。しかし、政府が人勧取り扱い方針の閣議決定をしたのが十一月二日、法案が提出されたのはきのうの十一月二十九日、勧告から法案の国会提出まで四カ月近くかかっております。一体なぜこんなに法案の国会提出まで日をかけるのか。それから、一緒に伺いますが、これまでの政府の人勧の取り扱い状況を見てみますと、一九七〇年から七三年までは、八月に出した勧告をその月の八月に勧告取り扱い方針を閣議決定しております。そして、七三年には九月二十一日に法案が提出されております。勧告から法案提出まで一カ月と十日足らずです。七八年も九月二十七日に法案が提出されております。そういうことを考えますと、その気になれば早くできると思うのですが、一体なぜこんなに時間をかけているのか、まずお伺いします。
  57. 水野清

    水野国務大臣 お答え申し上げます。  給与担当大臣といたしましては、従来から、人事院勧告制度尊重の基本姿勢に立ちまして、勧告をできるだけ早く完全実施するように努力をしてまいったところでございます。しかし、一方、国民の大多数の御理解をいただいて公務員給与改定を行うためには、国政全般との関連について各方面から慎重に検討をする必要が出てまいりました。このため、給与関係閣僚会議におきまして、公務員給与等に特に関係の深い閣僚の方々から、人勧制度趣旨を踏まえつつそれぞれの立場からの論議を尽くした上で、方針を決定したわけでございます。  このように取り扱い方針を決定し、関係法案を国会に提出してきょうの御審議をお願いするまでにはある程度の日時を必要とすることは御理解をいただけると思いますが、給与担当大臣といたしましては、御指摘の点をよく踏まえまして、今後ともできるだけ早期に結論を得るように努力をしたいと思っております。
  58. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 きょうは質問時間がありませんので、議論に入るわけにはいきませんけれども総務庁長官はできるだけ早くやらなくちゃならないというお答えでありますので、この人勧が公務員労働者の労働基本権の代償として設けられたいきさつから考えてみましても、速やかに給与改善を実施するのが当然だと考えております。人勧の性格づけを別にいたしましても、公務員労働者の生活にかかわる切実な問題でありますし、しかも、四月実施の勧告という内容からいたしましても、早い時期の閣議決定、それから法案も早く提出するということが大事であると思います。ですから、このことを私は強く要求しておきます。  次に、人事院総裁にお伺いいたしますが、一つは単身赴人手当の問題です。  今回の給与改正単身赴任手当を新設いたしました。制度を確立したこと、それから加算額部分を官民較差分の枠外としたことは一定評価ができると思います。しかし、基礎額を官民較差の枠内としたこと、それから実態から見ますと支給水準が低いということについてはやはり問題があると思います。例えば東京と京都を新幹線で往復しますと二万五千九百四十円になります。これに対する加算額は一万二千円であります。東京―福岡ですと、新幹線往復は四万二千六百円、加算額は一万八千円です。人事院は、加算額が往復料金に直接対応するものではないと言われるわけでありますが、加算額の趣旨というのは帰宅旅費などを念頭に置いて設けていることははっきりしております。実際上、現実的に見ますと、加算額というのは旅費の半分程度ということになっております。こうした実態から見て、加算額の水準が低いというのは当然であると思います。そういう点で、今後実態を十分に踏まえて改善を検討すべきではないかと思いますが、この点についての御見解。  それから、一緒に期末勤勉手当支給月数小数点第二位の採用についてお伺いします。  この問題は、これまでも随分と論議をされてきたところでありますが、この後の給与法の採決に当たりましてこの問題の附帯決議が付されることになっております。私も小数点以下第二位まで採用すべきであると考えておりますが、人事院総裁先ほど検討するという趣旨答弁をなさいました。その点から、来年度の人勧から速やかな実施をすべきだと思いますが、この点はどうか。  この二点をお伺いいたして終わります。
  59. 菅野雄

    ○菅野政府委員 単身赴任手当の分に関してお答え申し上げたいと思います。  今回の単身赴任手当の額の決定に当たりましては、民間事業所の単身赴任者に対する措置の水準なり分布状況、あるいは単身赴任者の生計費、帰宅旅費等の負担の実態などを総合的に勘案しつつ、かつ、帯同赴任者との均衡、給与全体としての配分等の要素も考慮した結果、今回の額とすることが適当であると考えたわけでございます。  なお、加算額につきまして御質問がございました。加算額につきましては、単身赴任手当は基礎額、加算額一体として一つの手当考えておりますが、加算額は、家族との日常接触機会を失っている単身赴任者が家族のもとへ帰宅あるいは家族を呼び寄せる際に要する費用、電話、手紙等の通信に要する費用など、結果として家族との距離におきまして区分を設けまして加算額をするということにいたしたわけでございます。その決定に当たりましても、各交通機関の運賃の実情であるとか単身赴任者の帰宅の実態と費用とか、通信費用の状況とか、民間における措置の状況等を総合勘案いたしまして決定いたしたわけでございます。  したがいまして、現段階におきましてはこの額は妥当な額と考えておりますが、将来的には、やはり民間における措置の動向であるとか、単身赴任となっている職員の負担の状況であるとか、帯同赴任者との均衡、そういうものを総合勘案しつつさらに随時検討は進めていきたい、このように考えております。
  60. 中島忠能

    中島(忠)政府委員 期末勤勉手当小数点以下第二位の扱いにつきましては、先ほど田口議員からもいろいろ御指摘がございました。私たちは、その議論が出てくるに至った背景とか考え方というものを院内でよく議論いたしまして、対応を決めていきたいと思います。附帯決議が付せられますと、私たちはその附帯決議を尊重する方向で検討するということは、先ほど総裁から御答弁申し上げたとおりでございます。
  61. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  62. 吹田愰

    吹田委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  63. 吹田愰

    吹田委員長 この際、日本共産党・革新共同から討論の申し出がありますが、理事会で協議の結果、御遠慮願うこととなりましたので、御了承願います。  これより採決に入ります。  まず、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  64. 吹田愰

    吹田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  65. 吹田愰

    吹田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  66. 吹田愰

    吹田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  67. 吹田愰

    吹田委員長 お諮りいたします。  この際、ただいま議決いたしました各案中、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、井上喜一君外四名から、五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。田口健二君。
  68. 田口健二

    田口委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府並びに人事院は、特別給の改定に当たっては、民間支給実態を確実に反映させるよう努めるべきである。  本案の趣旨につきましては、先ほど質疑を通じて明らかになっておりますので、簡潔にその要旨を申し上げますと、期末勤勉手当については、現在、小数第一位までを基礎として改定しておりますが、民間支給実態をより確実に反映させるため、小数第二位までを基礎として改定するようにすべきであるということであります。  よろしく御賛成くださいますよう、お願い申し上げます。
  69. 吹田愰

    吹田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  70. 吹田愰

    吹田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総務庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。水野総務庁長官
  71. 水野清

    水野国務大臣 ただいまの一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、今後とも検討し、努力してまいりたいと思っております。     ─────────────
  72. 吹田愰

    吹田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 吹田愰

    吹田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  74. 吹田愰

    吹田委員長 次に、平成元年四月分から同年七月分までの扶助料に係る加算の年額等の特例に関する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来の理事会等において御協議願い、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得た次第であります。  本起草案の趣旨及び内容につきまして、便宜、委員長から概要を御説明申し上げます。  最近の経済情勢等にかんがみ、平成元年度の恩給の改定措置は既に実施されておりますが、遺族たる恩給受給者に対しては、福祉の向上を図る必要があると考えまして、本年八月分から実施した扶助料等に係る寡婦加算及び遺族加算の年額の引き上げ措置を、本年四月分から七月分までのものについても実施しようとするものであります。  以上が本起草案の趣旨及び内容であります。     ─────────────  平成元年四月分から同年七月分までの扶助料に係る加算の年額等の特例に関する法律案起草の件     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  75. 吹田愰

    吹田委員長 この際、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。水野総務庁長官
  76. 水野清

    水野国務大臣 本法律案につきましては、政府としては、やむを得ないものと考えております。
  77. 吹田愰

    吹田委員長 お諮りいたします。  本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  78. 吹田愰

    吹田委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。  なお、本法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 吹田愰

    吹田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ────◇─────     午後零時二十六分開議
  80. 吹田愰

    吹田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚田延充君。
  81. 塚田延充

    ○塚田委員 まず初めに、潜水艦「なだしお」と釣り船第一富士丸の衝突事故に関しまして御質問いたしたいと思います。  マスコミ各紙などの報道によりますと、「なだしお」の航海日誌が改ざんされたということですけれども、この事実関係について、防衛庁の事実についての調査結果をお聞かせいただきたいと思います。
  82. 米山市郎

    ○米山政府委員 「なだしお」航泊日誌問題の事実関係でございますが、これは当時の錯綜した状況の中で鉛筆書きをしてあったものを、事後に整理、清書して航泊日誌が作成をされたということは事実でございます。その際、山下艦長は、時刻について速力通信受信簿の方がより正しいと判断して、衝突時刻につきまして、これをもとに整理をさせたと私ども調査をいたしているわけでございます。庁内におきまして、事故後かなり早い時期に、こういった三十八分が四十分という数字で航泊日誌が書きかえられているという事実を私どもも承知をいたしまして、関係の当事者に説明を求め、ただしました結果、今申し上げたような事実が判明をいたしたものでございまして、改ざんというようなものではないと私どもは判断をいたしております。
  83. 塚田延充

    ○塚田委員 改ざんという言葉自体は、辞書などによりますと、そこに書いてある文字を自分に都合のいいように書き直すことということであります。ということは、そこに意図なり隠すことが一般的には含まれているはずでございます。しかし、ただいまの防衛庁からの説明も踏まえますと、航海日誌は艦長が最終の作成責任者であり、艦長が記録をより正確にしようとして整理したのだとすれば、この事実をもって一方的に改ざんと報道することには大きな疑問があります。仮に報道された艦内の様子などが事実といたしましても、それを改ざんであると認定することは疑問でございます。この点につきましては、内部文書なるものにかかわる新聞報道を読みましても、何を根拠として山下艦長以下が特別の意図を持って実施したと断言しているのか、その報道自体に疑問を感ずるわけでございます。この点につきましては、その整理によって「なだしお」側が有利になる、あるいは再加速の判断ミスについて追及を免れるねらいがあるとある新聞社の一方的な推測、憶測を交えた報道があるわけでございます。防衛庁側は整理が行われた事実は認めているわけですけれども、そうなれば、改ざんかどうかというようなことは、それを司法当局がその意図を含めて調査、判断することになるのじゃないかと思います。  そこで、この件につきまして海上保安庁にお尋ねしたいのですが、この事実関係をもってして改ざんが「なだしお」において特段の意図を持って行われたものと認めているのかどうか。海上保安庁の「なだしお」の改ざんに関する見解を求めたいと思います。
  84. 中島健三

    中島説明員 お答えいたします。  私ども海上保安庁といたしまして事件を知りましたのは、横須賀の地方総監部より最初に連絡があったことで知ったわけでございますけれども、その連絡のあった時刻は十五時三十八分ということでありました。この十五時三十八分という時刻は、後ほど調べてみました航泊日誌等の記載と違っておりましたので、その点については詳細に捜査を行ってきたところでございまして、その過程で航泊日誌の修正といいますか、そういう事実があったということは承知いたしておりました。ただ、この修正が証拠隠滅とか偽造とか、そういうような特段の意図を持って行われたものというふうには考えておりません。
  85. 塚田延充

    ○塚田委員 特段の意図を持ってないとすれば、辞書などに言われる言葉の定義の改ざんとは言えないのじゃないかと思います。もしこれが特段の意図を持ってやったということが認定された場合、改ざんがあれば、これは犯罪となるのでしょうか。海上保安庁、お願いします。
  86. 中島健三

    中島説明員 そういう意図でなされたということであれば、証拠隠滅とか公文書偽造とかいうような罪に問われるという可能性はあると思いますけれども、私どもといたしましては、今回の事実がそういうふうな証拠隠滅とか公文書偽造なりに当たるというふうには考えておりません。
  87. 塚田延充

    ○塚田委員 海上保安庁は、航海日誌というものは、どういう性格のものと考えておられますか。
  88. 中島健三

    中島説明員 航海日誌は、船員法によりまして、船長が船内にこれを備えつけ、航海の概要等必要な事項を記載することが義務づけられている書類だというふうに理解しております。
  89. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、事実関係についてお尋ねいたしますが、この衝突事故当時、第一富士丸には航海日誌はあったのでしょうか。
  90. 中島健三

    中島説明員 第一富士丸の船内に航海日誌はございました。
  91. 塚田延充

    ○塚田委員 日記帳があっても、これは日誌として書き込まれていて初めて法律が規定した航海日誌ということが言えると思います。第一富士丸の航海日誌には事故当時の模様について、日誌として事実がきちんと記載されていたのでしょうか。また、それが「なだしお」のように清書されたとかもしくは改ざんされたとか、そういう事実が第一富士丸にはあったのでしょうか。
  92. 中島健三

    中島説明員 第一富士丸の航海日誌につきましては、航海の概要につきまして不記載という事実がございました。
  93. 塚田延充

    ○塚田委員 これは大変なことだと思いますね。不記載ということは法律違反になるはずですが、何法にどのように違反するのでしょうか。
  94. 中島健三

    中島説明員 ただいま申し上げました船員法に違反するということでございます。しかし、今回この事実を我々は調べたわけでございますが、当日の航海の概要について記載はございませんでしたけれども、船員法違反として立件するほど悪質なものではないという判断のもとで、これを船員法違反で送致はいたしませんでした。
  95. 塚田延充

    ○塚田委員 いわゆる「なだしお」の航海日誌改ざん問題というのがマスコミによって大きく取り上げられております。事実は防衛庁の説明どおり、改ざんというよりは、どちらかといえば清書的なものであった。この事実を、いわゆる特段の意図があって犯罪的な行為のように改ざんしたというようにマスコミは一方では取り上げておる。ところが、第一富士丸の方は航海日誌そのものすら全然書いておらない。これについてマスコミが全然取り上げておらない。もしくは当局もそれについて発表しておらない。これは余りにも片手落ちな報道の仕方であり、また当局の対応の仕方でございます。  それから、衝突のときに「なだしお」の乗組員がおぼれた者の救助に当たらなかったとかいうような事実が報道されて、それが事実であったとか事実でないとかいろいろなことが国民の関心を大きく呼んだわけであります。しかし、この人命救助問題についても、事実と違ったことが一方的に報道されておる。こういうことで、海上自衛官などの間において、どうも自衛隊たたき、一方的に意図を持ってやられているのではないかというようなことで、自衛官のモラールに大きく影響が来ていると私は思います。  そこで、防衛庁長官お尋ねいたします。今の改ざん問題にしたって、清書的なものを針小棒大に、これこそいわゆる意図的に、事実を曲げて伝えるに近いようなことが行われておる。一方の第一富士丸は、船員法に違反して航海日誌すら何も書いてない。これが平等に報道されていない。そのために自衛隊がつまらぬ誤解を国民の間に生じさせてしまった。このような問題につきまして、自衛官のモラールを維持するためということも踏まえて、長官の御見解を伺いたいと思います。
  96. 松本十郎

    松本国務大臣 塚田委員の自衛隊、特に海上自衛隊員のモラールについてお励ましの言葉、ありがたく受けとめております。  この航泊日誌の問題、我々は書き直し、清書と言っていいのでしょうか、それはございましたが、何らかの意図を持って改ざんしたというものではないという認識を持っております。ただ、もとの鉛筆書きの記録というものを破棄したといいましょうか、そこに若干国民の皆様に誤解を与える余地があったということで、これは反省をいたしております。  自衛隊、特に海上自衛隊員の士気でございますが、私も八月に防衛庁長官就任以来、時間を見つけては各基地を視察をしております。黙々として国の守りに徹しておる自衛官の諸君の姿を見て、私も頭の下がる思いであり、この実態というものを国民の皆様に十二分に御理解と御認識をいただきまして、そして激励もいただく、そのことがまた自衛隊員のモラールの向上につながるということでございまして、国民の皆様にそういう御理解と激励をいただきますような配慮と施策を講じたいと思いますし、防衛庁といたしましては、そのような万般について最善の努力をさらに続けてまいりたい、このように考えております。
  97. 塚田延充

    ○塚田委員 テーマを変えます。  いよいよ今週末にマルタ島沖で米ソの洋上サミットが行われます。時折しも、東ヨーロッパでは雪崩が起きたように各国において民主化運動が起き、それに現政府がほとんど応ずるというような形で、いわゆる社会主義体制、共産主義体制が変革をしようとしている時期にまさに差しかかったわけであります。  そんな中で、最も衝撃的な事実というのは、ベルリンの壁の崩壊、これは象徴的な事件といいましょうか事実でございます。となりますと、東西ドイツの再統一という問題が国際的に大きくクローズアップされてまいります。まさにそのような潮流の中で、呼応するがごとく西独のコール首相が二十八日、東西ドイツ再統一に関する十項目の綱領なるものを発表いたしました。残念なことに東ドイツのクレンッ書記長は全く正反対の見解を発表したようでございます。分断国家である東西ドイツが統一国家になるのかどうか、世界の今後の趨勢に大きな影響を与えると思います。しかし、これは短時日にどうのこうのということにはならないと思います。しかし、我が国も世界の情勢を注視する中において、この東西両ドイツの行方については重大な関心を持たざるを得ないと思います。  そこで、外務省にお伺いいたしますけれども、東西ドイツの再統一について、それが望ましいのか、それとも時期尚早とかいうことがあるのか。いずれにしてもこれはドイツ国民が決めることではございますけれども、地球国家の一員として、日本政府としてどんな見解、感想をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  98. 荒義尚

    ○荒説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、現在ヨーロッパ情勢が非常に流動化しておるということで、その中で、御指摘のようにおとといのコール演説でドイツの再統一ということが西独の政治目標であるというような重大な発言があったわけでございます。  本件につきましては、これはもう先生御指摘のとおりでございますけれども、まず東独としては、ドイツの二国家論ということから統一に反対しておりますし、またソ連の方も、反対というような意見を出しておるということでございます。また西側各国の方でございますけれども、このドイツ問題というのは、御高承のとおりECの今後の動向、さらには欧州を中心とします東西関係に重大な影響を及ぼしかねないということで、こういう表現がいいかどうかわかりませんけれども、言うなれば、各国とも複雑な気持ちで事態を見守っているという状況かと思います。我が国として望ましいのかどうか、簡単に申せ、こういう御質問でございますけれども、正直に言って大変難しい状況でございまして、事態も流動的であるということで、大変役人的な表現になりますけれども、我が国としましては、今後両独関係がどういうふうに動いていくのか、そこら辺の動き、それから欧州全体の動きというものを慎重に見守っていきたいということしか現在では申し上げられません。
  99. 塚田延充

    ○塚田委員 以下の質疑は防衛庁に対して行いますので、海上保安庁の方、そして外務省の方、ありがとうございました。  それでは、防衛庁にお尋ねいたします。  次期中期防の作成作業は現在どのような進捗状況になっておりましょうか。
  100. 日吉章

    ○日吉政府委員 次期中期防でございますが、これにつきましては、昨年の十二月の安全保障会議の議論を踏まえまして、防衛庁といたしましても、庁内それぞれの担当部局が個別具体的な作業を開始するに当たりまして、全般的な整合性を確保することを目的としまして、まず、基本的な方向に関する庁内のコンセンサスを得るための議論を現在実施しているというのが防衛庁内部の検討状況でございます。  これをもう少し具体的に申し上げますと、人事施策や教育訓練施策等の後方分野を中心に、その基本的な方向について検討を行っているところでございますが、こうした議論を踏まえまして、今後庁内の個別具体的な作業を逐次進めていきたいと考えております。  最終的な政府計画の取りまとめでございますが、これにつきましては、防衛庁としましては、でき得れば計画の初年度となります平成三年度の予算の概算要求までに策定されることが望ましいと考えておりますけれども、これは政府段階で決めることでございますが、私どもといたしましては、それに間に合いますように庁内の作業は進めていっているところでございます。  いずれにいたしましても、最終的に「防衛計画の大綱」との関係をどうするか、あるいは防衛関係費のあり方をどうするかというような点につきましては、防衛庁の検討作業もお踏まえいただいた上で、安全保障会議を中心とします政府全体の中で総合的に御判断いただく必要があろうか、かように考えております。
  101. 塚田延充

    ○塚田委員 ただいま外務省の方はお帰りいただいて結構と申し上げましたけれども、これはドイツ問題についてのみでございまして、防衛分担金につきまして質問しますので、北米関係はお残りいただきたいと思います。  さて、世界の軍事情勢、場合によっては我々がつい先ほどまでは予測もできなかったほどの大きな変化を遂げる可能性が出てまいりました。それにつきましては、冒頭申し上げたマルタ島沖での米ソ・サミットでございます、ここにおいて特に東西両陣営とも欧州におけるかなり大幅な軍縮について話し合われる可能性も伝えられております。そして、これと連動するわけではございませんが、アメリカ政府そのものも一九九〇年度予算以降かなり軍事予算を圧縮するというような報道もございます。このようなことを踏まえますと、今までの延長線としての次期中期防であってはいけないのではないか。ぜひ今から起きてくる世界の諸情勢をよく踏まえながら防衛計画の作成作業に取り組んでいただきたい、このようにお願いするものであります。  さて、次期中期防も基本的には五カ年計画になるのじゃないかなと伝えられておりますけれども、いかがでしょうか。それとも場合によっては三カ年計画で今の変動する世界情勢に備えようとするのか、あるいはまた、三年目にローリングを行うというやり方でやろうとするのか、その辺の事情を御説明いただきたいと思います。
  102. 日吉章

    ○日吉政府委員 次期中期防の計画対象期間でございますが、これにつきましても、今後、安全保障会議等におきまして検討される問題ではございますが、防衛庁の立場から一般論として申し上げますと、中期的な防衛力整備を計画的に進めるという点から見ますと、ある程度の期間の見通しが必要でありますし、逆に対象期間が余り長くなりますと、正確な見積もりを行うことが難しくなる、こういうことがございます。そういうことを考えますと、今委員が例示されましたように、五年とか三年とかいうのが一応常識的な期間、線ではないか、かように考えております。  また、ローリング方式を採用するかどうかという点でございますが、計画の弾力性の確保とか激しく変動しております時代の変化への対応というような点を考えますと、ローリング方式というのはすぐれた面を有していると私どもも思いますが、他方におきまして、計画上の所要経費とその実績との関係が容易に把握できることが望ましいというような観点に立ちますと、またこのような観点から昭和六十二年の閣議決定におきまして、中期防期間中のローリングは行わないとしたというような経緯などを考慮すると、この方式につきましても慎重に考える必要がある面もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、期間そのものをどうするか、あるいはローリング方式をかませるかどうかというような点につきましては、今後の国際情勢、さらに計画そのものの内容、それらを詰めながら総合的に安全保障会議等の場において検討、御判断をいただきたいと考えております。
  103. 塚田延充

    ○塚田委員 防衛費の歯どめの問題です。対GNP比にするのか、それとも総額でやるのかということでございますけれども、これにつきましては、防衛庁は既に総額で歯どめにしようということになっているものと理解をしております。次期中期防でも、その歯どめは総額でいくわけでしょうか。そして、これが万一三カ年計画でいった場合、その総額というものは歯どめとしてどういうことになるのか、ましてやローリングになった場合にどうなるのか、その辺の事情について御解説いただきたいと思います。
  104. 日吉章

    ○日吉政府委員 この点につきましても、先ほど来申し上げておりますように、今後、安全保障会議等におきまして最終的には検討、御判断をいただかないといけない問題でございますが、防衛庁の立場から一般論として申し上げたいと思います。ただ、防衛庁もこういうふうに最終的に態度を固めているというようなことではございませんで、ただ一般論として申し上げますと、いわゆる総額明示方式と言われておりますものは、防衛力整備計画におきます整備の内容とその裏づけとなる経費を一体として明示することになりますので、防衛力の整備に当たっての具体的、合理的な指針とするには適切なものではなかろうか、こう考えられますし、また、こういうような考え方に立ちまして、昭和六十二年一月の閣議決定で、中期防衛力整備計画期間中の防衛関係費のあり方を、いわゆる総額明示方式を採用するというようなことにした経緯もございます。こういうようなことから考えますと、具体的な防衛力の整備内容とも離れて一般的な経済指標等にリンクさせて金額を設定するという方式よりも、より望ましい方式ではなかろうか、かように考えております。  さらに、期間によりましてこの方式に差があるのか、あるいはローリング方式を用いた場合どのようにこれを総額明示方式等と関連させるのかという点でございますが、このあたりまではまだ具体的に検討を進めているわけではございません。したがいまして、ローリング方式をかませました場合等は、これは全く参考でございますが、前にも当委員会で御説明をさせていただいたことがあろうかと思いますが、金額的には三年間、五年間の、例えば五年で三年たちましてローリングをするというような場合には、三年たちまして、さらにローリングいたしまして二年プラス三年といたしました場合に、前二年につきましては全計画の残り二年分の金額を限度とするとか、そういうようなことを考えられるのも一つの方法かと思いますが、これは観念的な一つの考え方でございまして、ローリング方式そのものを採用した方がいいという結論にも立っておりませんので、そこまで詳しいことは検討いたしておりません。私が今申し上げましたのは、ローリング方式を採用すると、金額といいますか、経費面からのチェックといいますか、それが十全に機能しなくなってしまうと必ずしも言い得ないのではないか、工夫の余地というのがあるのではないだろうかという点で申し上げたわけでございまして、ローリング方式を採用したいとかするとかいうような意図を持って申し上げたのではない点は御理解賜りたいと思います。  いずれにいたしましても、この点は、冒頭に申しましたように、今後計画全体とそのときの国際情勢等を眺めながら政府全体で慎重に御判断をいただきたい、かように考えております。
  105. 塚田延充

    ○塚田委員 次期中期防では、五十一年に作成いたしました防衛大綱と別表はどうなるのでしょうか。もしこの防衛大綱と別表を見直さない場合、次期中期防としての目標は、大綱水準の維持というふうに自動的に解釈されるのでしょうか。その辺、お尋ねいたします。
  106. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員ただいまの御質問は、先ほど委員の方から御指摘がございましたように、国際情勢が近時極めて流動的に動いている、そのときに、我が国の防衛力整備も従来と同じような考え方でよろしいのかどうかという問題提起をされていらっしゃいましたが、そういうお考えとの一連のお尋ねかと思います。  ところで、次期防につきましては、昨年十二月の安全保障会議の議論を経まして、政府全体として中期防終了後も中期的な計画をつくるということが決められたわけでございますが、そのときの認識といたしましては、現時点におきましては、その大綱の基本的な枠組みを見直さなければならないような国際情勢の基本的な変化はないのではないかというような認識があったということでございます。ただ、そのときには、必ずしも安全保障会議で明確な認識といいますか、意見の一致を見ているわけではございませんで、今後この点は安全保障会議が最終的に次期防を決定する際に決められることでございますが、私ども防衛庁が現在作業をしている前提といたしましては、現在の状態におきましては「防衛計画の大綱」の基本的な枠組みを見直さなければならないというような国際情勢等の基本的な変化はないのではないか、かように考えております。  それは委員も既に御案内のように、五十一年の「防衛計画の大綱」は、世界的な大規模な紛争、また我が国周辺におきましてもそのような紛争が起ころ可能性は少ない、こういうふうな認識のもとに立ちまして、そうして我が国が独立国として平時から基盤的に整備をしておくべき必要最小限度の中の限定的小規模な侵攻に対しまして原則として独力で対処するような防衛力を整備するということを基本的な考えといたしておりますので、現在のような国際情勢の中におきましてもその枠組みは変える必要はないのではないか、かように考えているわけでございます。  また、別表等の改定の問題でございますが、これにつきましては、大綱の基本的な考え方を踏襲する場合でも、大綱の仕組みの上からは理諭的に可能であるという旨を従来から申し上げているところでございます。ただ、しからば別表を変えるのか変えないのかといいますと、これは、私はただいま理論的な考え方を申し上げたにとどまるわけでございまして、変えるとも変えないとも決めているわけではございません。  それでは、次の御質問でございますが、中期防が達成されますと、大綱に定めます防衛力の水準をおおむね達成することになるわけでございますが、その場合に、次期防におきましては、どういう点に政策目標といいますか、計画策定の目標を置くのかということでございます。私どもといたしましては、大綱が定めている目標とすべき水準が達成されたといたしましても、その水準を維持していくということそのもので大変な努力を要するというような点、それから正面装備はある程度量的に達成されることになりますけれども、これを支えます後方分野には立ちおくれている点が多うございますので、この点に十分配意いたしまして、正面装備、後方含めまして、全体として有効な防衛力を整備することに一つの目標を置く必要があるのではないか、こう考えております。  さらに、最近の人的資源の確保、こういうような観点から申しますと、次期防におきましては、防衛力発揮の基盤となるすぐれた隊員を確保、育成することが非常に重要になってこようかと思います。そういう点に留意しなければならないと思います。現在、作業を進めておりますけれども、そのような認識に立ちまして、具体的な計画、作業を進めていきたい、かように考えているところでございます。
  107. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、アメリカからの防衛分担要求決議についてお尋ねいたします。  アメリカ合衆国におきましては、昨日のブッシュ大統領の署名をもって防衛分担要求決議が発効されました。日本にとって重大な影響が及ぼされるものと予想されます。まず、この防衛分担要求決議そのものについて、本来は日米交渉ということになりましょうから外務省の所管かとは思いますけれども、防衛政策全般を担当する防衛庁長官として決議に対しての御感想をお伺いいたします。
  108. 松本十郎

    松本国務大臣 在日米軍駐留経費の負担増を求める附帯条項を含む一九九〇会計年度国防授権法案は、十一月の九日に下院本会議、そして十五日に上院本会議において可決をされまして、夕べといいましょうか、十一月二十九日に大統領が署名しましたことは、委員御指摘のとおりでございます。今後、米政府がこの決議を受けてどのように対応しようとしているのか、まだ定かではございませんが、その辺の見きわめをしながら注視しているところであります。我が国としましては、実質的な立場で日米安保体制を維持発展させる、あるいは信頼性を向上させるという大事な課題を背負っておりますので、その辺のところを見きわめながら我が国としての方向を定めたいと思いますが、今のところはまだ、そういう希望なり期待があるやには聞いてはおりますが、何ら正式のあれはございませんし、あくまでも駐留経費の問題は、我が国が我が国の独自の立場で、今のような経済大国になったことを認識しながら国際情勢等も勘案しつつ決めるべき問題だ、こういうふうに考えております。
  109. 塚田延充

    ○塚田委員 この件につきましては、主務官庁が外務省のはずでございます。すなわち日米交渉ということになるからであります。今防衛庁長官は、この件については具体的な米側からの交渉の動きはまだ具体的にない、このように言明されましたけれども、今後早い時期にアメリカからいろいろなこの決議に基づく交渉を要求されるものと思います。そうした場合、どういうことが問題点になり、我が国国内としてどのような問題点がそれに連動して出てくるのか、その辺、駐留米軍のバードンシェアリングについて、この決議に絡んで今後どのように動くのか、外務省の見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  110. 重家俊範

    重家説明員 先生の言われましたこの法案は、先ほど大臣からも御答弁ありましたように、二十九日、大統領の署名を得て成立したわけでございます。しかし、その署名に当たりまして、大統領自身ステートメントを発表いたしまして、この法案中の幾つかの条項につきましては留保がある、署名をしたけれども、日本関連事項を含む幾つかの条項は、外交政策の実施に関するあるいは外交交渉に関する情報の管理についての大統領の憲法上の権限を侵すおそれがあるということを同時に指摘しておりまして、同時に、かかる大統領の権限が制約を受けないような形で関連条項を解釈するつもりであるということを述べておるわけでございます。したがいまして、今後の対応ということでございますが、まず、米政府が今後どういうふうに対応してくるのかということを見ることが必要であろうと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、従来から我が国は日米安保体制の効果的な運用という観点から最大限の努力をしてきておるわけでございまして、今後とも、この問題につきましては自主的に考えていくべき問題だというふうに考えております。
  111. 塚田延充

    ○塚田委員 このたびの決議によりまして、地位協定そのものの改定など必要となってくる見通しでしょうか。それともそれはなしに、特別協定の範囲内でもってうまく処理できる程度におさまると考えられますか、いずれでしょうか。
  112. 重家俊範

    重家説明員 アメリカの考え、具体的に要求が参っているわけではございません。したがいまして、地位協定との関係がどうなるか、特別協定がどうなるかということにつきましては、お答えを差し控えさせていただくのが適当ではないかと思います。いずれにしましても、我が国としては、現行の地位協定及び現行の特別協定の中で可能なことをできる限り最大限実現することでやってきておるということでございます。
  113. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは次に、自衛隊の装備や施設の効率的な活用方法についてお尋ねいたします。  自衛隊の主要装備の耐用年数、これほどのような根拠に基づいて算定しているのか。その算定の際に、西側諸国がどのような年数を出しているのか、そういう実例をも参考にしているのかどうか、この辺の事情について御説明いただきたいと思います。
  114. 植松敏

    ○植松政府委員 主要兵器の耐用年数の件でございますが、それぞれ火砲、戦車あるいは艦艇、航空機で若干の差はございますが、簡単にどういうふうにして耐用年数を決めているか申し上げますと、まず火砲あるいは戦車等の使用年限につきましては、技術的、経済的な要因等総合的に勘案いたしまして、個別に用途廃止するか否かを決めることにいたしておりまして、一般的な基準として耐用年数をあらかじめ定めてはおりません。例えば六一式の戦車の場合について申しますと、原則として取得後二十年を経過したものにつきまして個別に検査を実施いたします。その上で、修理等に多額の経費が必要となるものにつきましては用途廃止をすることといたしております。  また、艦艇につきましては、老齢船舶調査の時期に達した艦艇につきまして、これは護衛艦、潜水艦、あるいは掃海艇、それぞれ違いますが、例えば護衛艦でございますと、十六年たちますとこの老齢船舶調査の対象になります。その調査の時期に達したものにつきまして、個別の艦ごとに技術的な調査を行いまして、その結果、安全性などを勘案いたしまして決めることにいたしております。  それぞれ個別の艦ごとに違いますが、過去の実績を見ますと、護衛艦では、平均しまして約二十四年護衛艦としての役割を果たした上で、護衛艦としては無理でございますが特別任務を限定いたしまして、例えば訓練支援にとかあるいは教育用にとかいうことでさらに特務艦として使うことにいたしておりますが、平均いたしますと、それを含めまして除籍まで約二十八年程度でございます。また、潜水艦につきましては約十六年程度になっております。これはやはり個別にそれぞれ違いますが、平均いたしますと、その程度でございます。  また、航空機につきましては、固定翼航空機については、疲労試験等をいたしまして、その結果と運用実績とを勘案いたしまして、また回転翼、いわゆるヘリコプターにつきましては、飛行安全を確保するに必要な修理に要する費用が多額になることによって、修理がかえって非効率になるというようなケースについて、それぞれ判断をいたしまして、それぞれ航空機は機種ごとに累積飛行時間を定めまして、これをもって耐用命数といたしております。例えば固定翼機のF1で申しますと、約四千時間というような数字で、これは時間数で出してございます。  以上、主要装備につきましての使用期限の定め方でございますが、西側諸国との比較を基準としているのかというお話でございますが、こういった装備品の使用年限につきましては、事柄の性格上、必ずしも諸外国の耐用年数というものが明らかでございません。公開資料等から私どもそれなりの推測等はいたしておりますが、私どもが調べている限りでは、特に我が国と諸外国との間にそれほどの差はないものというふうに考えております。
  115. 塚田延充

    ○塚田委員 耐用年数につきましては、技術面であるとか経済面であるとか、その辺を勘案して、その都度個々の装備や施設についてチェックしてやるというやり方、これは評価されるべきだと思います。それしか方法がないと思います。しかしながら、一般的にどうも自衛隊の場合西欧諸国よりも耐用年数が短いようだぞというような心配が持たれておることは事実でございますので、その件についてのみきつく指摘し、しかも、経済面ということもあるかもしれぬけれども、例えば護衛艦とかなんかにつきましては訓練用に使うとか教育用に使うとかいろいろな活用の方法があると思いますので、それらについては、国民の財産でございますから、ぜひ慎重に御検討をいただき、大事に使っていただきたい、このように思うわけでございます。  さて、主要な設備施設そのものはそれでいいとして、ちょっとみみっちい話でございますけれども、護衛艦そのもの戦車そのもの、これは、技術面とか経済面から見たらばもう耐用は過ぎたから廃棄しなければいけない、このような答えが出ても、それに積載されております火砲などの火器の問題、言うならば独立して使える部品でございます。こういう武器類とそれから民間の通常の機械設備とを一緒にしてはなんですけれども民間においては、使えるものについては分解してでもそれを使って、また別な面で活用するというくらいの厳しいやり方をとっているわけでございます。日本の場合、残念なことには、火砲につきましては、実弾射撃などのチャンスが極めて少ない。となると、戦車及び護衛艦そのものは、例えば二十年とかなんとかたてばこれはもう新式にかえなければ確かに技術的にも世界の趨勢に追いついていけないということもありましょうし、また変に修理してもかえって経済的にコストがかかり過ぎる、ならば新鋭のものにかえるべきであることは当然でございます。しかし、積んである火器につきましては、今言ったように、ほとんど実弾射撃してないからぴかぴかで使えるのじゃないか。となれば、それらの火砲を新しい戦車もしくは護衛艦に移しかえるとか、それは技術的に見て旧式になっているからまずいということになれば、全く発想を変えて、それらの火砲類を基地防衛のための予備火砲として備蓄して、予想敵の襲来に備えて少しでも役に立てる、これはちょうど予備自衛官と同じような考え方でございますが、そのように火砲、火器については特別な活用の仕方を考えてもいいのじゃないかと私個人的に考えますけれども、いかがでしょうか。
  116. 植松敏

    ○植松政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、限られた防衛予算を極力有効に活用するという見地から、一つはそれぞれ装備品をできるだけ長く維持し使っていくということで努力しておるわけでございますが、あわせていよいよ戦車等使用にたえなくなったもので用途廃止をする場合につきましても、そこに搭載されております部品につきましては、転用可能なものにつきましては部品取りをいたしまして、それぞれその組み込み部品を別の整備用に使うとか、ほかのシステムに使えるものについてはほかの武器システムに使うとかいうようなことで努力をいたしております。  また、火砲につきましても御指摘のとおりでございまして、例えば六一式戦車の戦車砲身あるいは車載機関銃等につきましても、使用可能なものにつきましては、それぞれまたほかに補用部品としてあるいは交換部品として、あるいはそういう形で別の武器システムに組み込むというような形で再使用できるものは再使用するということで現在も実施いたしております。
  117. 塚田延充

    ○塚田委員 最後に、自衛隊機の民間空港の活用につきましてお尋ねいたします。  有事によらず平時によらず、自衛隊機が燃料切れが急に起きてしまったとか、また、機器の故障が起きたとかいうような緊急事態の発生は、常に起き得るものであり、今までも起きていたはずでございます。これらの場合、本来でしたらば自衛隊基地に着陸するのが当然のことではございますけれども、緊急やむを得ず民間空港に離着陸すれば難を避けることが可能だ、しかもそれしか方法がない、このようなことも常に起きてくると思います。これらのときに、今の体制でいわゆる民間空港との間、すなわち運輸省との間はどのような取り決めになっており、スムーズにいっているのかどうか、またこれについて問題点があるのかどうか、これらについて御答弁いただきたいと思います。
  118. 米山市郎

    ○米山政府委員 先生お尋ねの緊急時における対処につきましては、常々これに備えるような対策を講ずる必要があるということは、御指摘のとおりでございまして、自衛隊機の民間空港への着陸を円滑に行うため、必要に応じまして運輸省と連絡をとり合っているところでございます。  具体的な点を若干申し上げますと、こういう緊急時において自衛隊機がより安全に民間空港に着陸するためには、一つは、航空機と飛行場との通信連絡手段があること、第二点といたしまして、航空機に飛行場着陸のための航法支援機材があること、この二つの事項が必要でございます。それとあわせまして、事前に飛行場の状況を承知しているということが望ましいわけでございます。このため、防衛庁といたしましては、民間空港に着陸するため航空機に所要の無線、これはVHFの無線機でございます、それとILSの装置を装備することといたしております。また、運輸省と調整を行いまして、必要な民間飛行場に自衛隊の航空機と連絡をとるための対空通信施設を運輸省の方でも設置をしていただくというようなことで、逐次進めているところでございます。  若干問題といたしましては、慣熟のための飛行がなかなか進んでいないという状況がございます。これにつきましても、鋭意運輸省あるいは地元との協議を進めまして、何とか実施できるような方向へ持っていきたいというふうに考えております。
  119. 塚田延充

    ○塚田委員 終わります。
  120. 吹田愰

    吹田委員長 次は、竹内勝彦君。
  121. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 一九八七年十二月八日、御承知のとおり、米ソにおきましてのINF全廃条約が調印されまして、大きくニューデタントとして世界の流れが進んでいっておるわけでございます。いよいよ二日後には米ソの首脳会談を控えておる。そこにおきましても、この軍縮、デタントという問題がさらにまた進んでいくのではないか、こういうように考えられるわけでございます。日本政府といたしまして、その後の米ソの軍縮の状況、あるいは決意なりそういったものがどう進んでいったあるいは進んでいこうとしているのか、どのように掌握しているのか、これは大事でございますので、まず米ソの状況をできるだけ詳しく、わかっている範囲で御説明をいただきたいと思います。
  122. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 委員ただいま御指摘のとおり、INF条約が締結され、現在それが実施に移されているわけでございますけれども、それに続く軍縮交渉といたしましては、まず戦略核削減交渉、START交渉があるわけでございます。これについてはおおむねその五〇%の削減を行うという点が合意されております。また、核運搬手段についての内訳というような点についても、今までにかなりの進展が見られてきたわけでございます。まだ残っている問題といたしまして、例えば移動式のミサイル、それから海上発射の巡航ミサイルをどう扱うか、航空発射の巡航ミサイルをどう扱うかというようなことで幾つかありますし、SDIとの関係というような問題もまだございます。しかし、これにつきましても、米ソ双方とも多少の歩み寄りが見られております。現在の東西関係の進展している状況の中で、START交渉はまたさらに進展をするという期待が持てるのではないかというふうに考えております。  さらに、米ソ間の軍縮交渉で非常に重要なのは、ヨーロッパにおける通常兵力削減交渉でございます。これは米ソだけではございません。むしろNATOとワルシャワ条約との間の交渉でございます。これにつきましても、削減の方法について東側と西側との考え方が非常に近づいているという状況でございます。西側が非常に問題にいたしておりましたソ連・ワルシャワ条約側の非常に優位にございます戦車等、そういうものを共通シーリングまで引き下げるという原則が合意されております。この方の交渉も現在ヨーロッパで進んでいる情勢によりさらにその進展が期待されるのではないかと存じます。  そのほかに、化学兵器に関する軍縮・軍備管理という問題がございます。これも米ソの間ではその話がかなり進んでいると聞いております。ただ、化学兵器になりますとかかわってくる国が非常に多いこと、問題が非常に複雑であることで、まだ時間を要するのではないかという感じがいたしております。
  123. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私が要望しているのは兵力の具体的削減です。ゴルバチョフ書記長が例えば一九八八年十二月七日に国連で演説をしております。あるいは北京における演説であるとか、数字まで挙げて具体的に削減、軍縮に触れております。それからアメリカにおいても、米紙の報道によれば米軍二十五万人削減へというように具体的に軍縮に向かっていろいろ進んでおる。そういう発言がある、また報道がある。そういったものをどうとらえておるか、それを具体的に数字も挙げて説明をいただきたい、こう述べたわけでございます。もう一回。
  124. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ゴルバチョフ書記長が発表いたしました兵力削減提案につきましては、昨年の国連演説において五十万人の削減を行うということを発表いたしております。それと同時に、ワルシャワ条約、東欧諸国に駐留しております師団のうち戦車師団六個、そのほか渡河強襲部隊等も撤退させるということを発表しているわけでございます。その後、極東に関連する部分として、中曽根元総理等三極委員会に対する言明として、五十万人のうちソ連東部について二十万人を削減する等のやや具体的な発言をいたしております。さらに、北京における演説におきまして極東部十二万人の削減を行うということを発表いたしております。この実施状況につきましては、はっきりしたところはまだわかっておりませんが、例えば東ヨーロッパから引き揚げるというふうに約束いたしました六個戦車師団のうちの半分が引き揚げを完了したというふうに見られております。モンゴルからも四個師団のうちの三個師団を引き揚げるということを約束したわけでございますけれども、この三個師団のうちの一個戦車師団は既に撤退を完了しているというふうに見られております。そのほか、五十万人削減全体、そのアジア部分につきましてどの程度の実際の削減が行われたかということ、それからその兵器、装備がその後どうなっているかということについては、今のところ必ずしも我々も情報をつかんでおりません。  委員ただいま御指摘のアメリカの方につきましては、確かにチェイニー国防長官が今後米国としても国防費の削減を行うということを表明いたしておりますけれども、現在いろいろ数字が挙がっているものにつきましてはこれは報道ベースでございまして、本当にアメリカが具体的にそれでどのような形の削減を行うかということについては必ずしもまだ明らかになっていないと承知いたしております。
  125. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そういうことを言っているんじゃないんだよ。だから、そういう報道も含めて、そういう決意もあり、そういうものをどう掌握しているか。ソ連の状況はもういいです。私は米軍の二十五万人削減というような一つの報道を掲げて言っておるのですから、もう一歩具体的に、そんないいかげんな報道がこの情報の時代に行き交うわけがない、国民はみんな見ているんですから。そんないいかげんな答弁をしないで、米軍に関しての今後の兵力削減、決意でいいと私は言っているんですから、そういうものをどうとらえておるのか、もう一度それを御説明いただきたいと思います。
  126. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 米国の削減につきましては、ただいま申し上げましたとおりその内容については現在報道にとどまっているわけでございます。例えば数としては、九一年度に百ないし百六十億ドル削減する、九二年ないし九四年度までに千八百億ドル削減するというような、そういう数字も挙がっておりますし、それから内容につきましても、これも全く報道ベースでございますけれども、陸軍十三・五万人削減、海軍六十二隻、空軍の航空団五個を削減する、そういう数字が挙がっております。  ただ、これは現在のところは本当に報道ベースでございますし、例えば最近のNATOの国防相会議において、アメリカが同盟国と相談をしないまま一方的に削減をするということはあり得ない、まさにヨーロッパにつきましてはヨーロッパにおける兵力削減交渉の進展とその結果に基づいて削減する、そういう意図を表明しているわけでございまして、この報道がどの程度の信憑性があるかということはちょっと判断しかねる次第でございます。
  127. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 くどいようですが、数の問題はそれでいいでしょう。では、米ソは具体的に軍縮に向かっていくのか、兵力削減に向かっていくのかあるいは反対に増強に向かっていくのか、どうとらえておるのか、明快にお述べ願いたいと思います。
  128. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ソ連につきましては、既に一方的な削減を発表いたしておりますし、実際にどの程度までそれが実現されているかどうかは必ずしもはっきりわかっておりませんけれども、削減の方向に向かっていること、これは間違いないかと存じます。  それから、アメリカにつきましても、現在の国際情勢の中、またアメリカ自身の財政的な困難というような事態から見まして、国防費が今後増大するということは非常に難しいということ、これは常識的に見まして当然かと存じます。そういうことから、恐らく削減の方向に向かうということは間違いないかと思います。  ただ、その内容それからその効果、これは数的な削減と質的な向上という側面が米ソともにあるかと思います。したがって、戦力としての効果というものは今の段階では非常にはかりにくいのではないかと存じております。
  129. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 長官にお伺いしておきますが、現在の世界全体の流れというものが平和、軍縮、そういったものに大きく流れていっておる、これは常識でございます。そこで、今政府の御見解というものがございました。現在の東ヨーロッパの大きな流れの問題あるいはINF全廃条約の締結、そしてまた、いよいよ二日後には米ソ首脳会談を持ちましてさらにそういったものを進めていこう、こういう大きな流れがございますね。そういう中で、長官として現在その任に当たられておるということは非常に重要なお立場ではないか、こう思うわけでございますので、ここではっきりと、長官がその世界の軍縮の流れというものをどうとらえておるのか、それをお述べいただきたいと思います。
  130. 松本十郎

    松本国務大臣 委員御指摘のとおり、米ソの対話が進み、軍縮が着々と話し合われて進展していることは現実でございます。しかしながら、きのう、おとといですか、行われましたNATOとアメリカの防衛大臣といいますか防衛長官の会合の結果のコミュニケ、これも新聞報道でございますが、これを見ておりましても、NATOについて、今アメリカは、軍縮交渉で決まるまではむしろ今のままの姿を堅持するわけでありまして、一方的な軍縮はやりませんとはっきり言っておるわけであります。そして、極東におきましては、ゴルバチョフ書記長の発言その他軍縮声明もございまして、大変望ましい方向ではございますが、それが現実にどのようになっていくかということにつきましては、これから十分注視し、見きわめなければならない、そういう認識を持っております。  しかも、十二月二日、三日のマルタ島近くの艦上における米ソ首脳会談、これは結論は出ないであろうと伝えられておりますし、軍備管理のみならず、経済の問題についても話し合うというふうなことが伝わってはおりますが、そういう中で世界がどのように現実に動いていくのか、これを見きわめなければならぬという立場でございまして、望ましい方向であり、また、全体としての軍縮が進むことは大きく期待したいわけでございますが、現実はまだ期待の段階にとどまっておりまして、我々は現実の姿を十分見きわめながら対処しなければならぬ。そういうことで、特に極東については、あれほどテンポの速い動きで進む東ヨーロッパあるいは欧州大陸に対しまして、まだまだそこまではいっておらぬ、こういう認識を持っておりますので、今後のことにつきましては、さらに慎重に対処してまいりたい、このように考えております。
  131. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私はそこまで言っていないのです。今の米ソの、INF全廃条約から始まり、そして今後の戦略核削減交渉やらあるいはまた二日後に予定されておる米ソ首脳会談、そしてまた、報道の域を出ないということですが、米紙の報道等を見ましても、具体的にもう予算も減らしていく、SDIの予算も減らしていく、そういうような流れの中にあって、またそういう報道がある中にあって、長官は、では、この米ソが今後軍縮に向かっていくととらえておるのかあるいは軍拡に向かっていくととらえておるのか、それを伺っておる、これだけのことですよ。日本の対応というふうなことはこれはまた後の問題ですから、それを明快にお答えください。今のでは全然わからない。
  132. 松本十郎

    松本国務大臣 米ソが対話を進め、軍縮の方向に進んでいることはもう現実でございまして、我我は期待を持って見守っており、軍縮の方向にまた進むだろう、しかし、それには相当の時間がかかると考えております。
  133. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこでお伺いしておきますが、この防衛白書を読ましていただきましたが、依然としてソ連脅威論。具体的に申し上げます。例えば四十四ページにあるように、「極東ソ連軍の配備・展開状況についてみれば、」云々とずっと述べられておりますが、「師団の約六割、戦闘機の約六割、爆撃機の約八割が配備されるに至っているのに加え、ソ連最大の艦隊である太平洋艦隊がウラジオストクを主要拠点として展開している。このように、今日では、この地域に極東ソ連軍の大半が配備・展開されている。さらに、このような極東ソ連軍の増強に伴い、わが国周辺における艦艇と軍用機などの活動が活発化している。」というような表現。そのほかにも幾つもございます。例えば、「米ソ両国の保有する圧倒的な核戦力及び通常戦力を中心として東西が軍事的に対峙しているという実態については、基本的な変化が生じたとはいえないであろう。」というような言い方でもございますし、またさらに、「ゴルバチョフ書記長によって表明されたソ連軍の一方的削減についていえば、それが言葉どおり実施されたとしても、依然としてソ連の軍事力は西側に対して優位にあり、さらに、このような削減表明を行う一方で、引き続き核戦力及び通常戦力の両面にわたり質的強化を図っている。」というように、ますます軍拡が進んでおるというような表現にこれはとれるんだな。これはどういうことなんですか。
  134. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま委員が読み上げられた各箇所、これは現実に基づいて事実を書いたものでございます。  まず最初に、日本近辺の沿海州、カムチャッカ半島、サハリン、千島等におけるソ連軍の配備について、これは今回の白書において初めて掲げたわけでございますけれども、経緯からいいまして、極東ソ連軍が六〇年代以来ずっと強化されてきた中で、最近になって特に我が国の周辺におけるその配備というものに重点が置かれているという動きに注目いたしまして、それをはっきり皆様に御理解いただきたいと思って書いた次第でございます。  それから、米ソの対峙につきましてでございますけれども、START交渉、これが進展いたしまして五〇%の削減ということが合意されるということについて我々は大きな期待を持っているということを先ほど申し上げた次第でございますけれども、しかし、このSTARTというものは、あくまでやはり両方の抑止力を同じレベルに保ったままで、相対的に同じにしておきながら全体のレベルを下げようという交渉でございます。五〇%残った戦略核の威力というものは依然として極めて大きなものでございます。かつ、この交渉に向かって特にソ連の場合、現在戦略核の近代化に非常な努力を払っております。SS18という、これは米国が一番ソ連の戦略核の中で恐れている兵器でございますけれども、これのMod5という改良型が出ておりますし、SS24、25という新しい移動型の戦略核が開発され、かつ、配備をされている。また、潜水艦発射のミサイルについても、タイフーン型とかデルタIIII型という全く新しい潜水艦が建造され、また配備されている。こういう現実があるわけでございます。したがって、そういった意味では確かに交渉という側面はございますけれども、これは米ソの戦略的な対峙ということを前提としながら両国とも交渉をしているということではないかと存じます。  それから、ソ連極東部におきましても、その兵力の削減がゴルバチョフの発表によって実施されていることは事実でございますし、白書にも書いてありますとおり、削減自身は非常に評価するわけでございますけれども、同時に、太平洋艦隊、それから航空機におきましては近代化というものがまた非常に速いペースで進んでいるわけでございます。現在のところでは、削減された兵力を相殺するに十分な近代化が行われているというのが我々の認識でございまして、これは現実として我我は白書に記したわけでございまして、別にソ連に対する脅威というものをあおっているということではないと存じます。
  135. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それではもう一回お伺いしておきますが、例えば六〇%極東ソ連軍が配備しておるというような具体的な数字まで掲げて、例えば師団の約六割、戦闘機の約六割、爆撃機の約八割が配備されておる、これは非常に具体的なのですね。先ほどは、削減の方は具体的な数字というのはわからないというような表現で御答弁がございましたけれども、こういったものに関してはわからないのであって、ただ、この白書にその脅威が非常に具体的に書かれておるのはこれはどういうことですか。どういう資料に基づいて、あるいはちゃんと実際のものをどのようにつかんだのか、その点を御説明いただけないと、今の答弁では納得できないのですよね。
  136. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 白書で用いております数字というものは、各種の公刊資料というものも参考にしながら、また当庁が独自に得た情報に基づいて確認しながら、事実を総合的に判断しながら分析し、それに基づいて白書に掲げているわけでございます。
  137. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そういう答弁しかできないだろうと思っております。ただ、先ほど長官も御答弁いただきましたように、軍縮に向かっていくということは、それは期待も入っておりますと長官は言いましたが、これは今の世界の流れから考えて進んでいくであろうということはだれでもわかることです。  そこで、今回概算要求として六・三五%増、四兆一千億の要求をされた根拠は何ですか。これはどうしてもわからない。
  138. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 ただいま防衛庁は四兆一千六百八十八億円の概算要求をさせていただいております。その基本的な考え方でございますけれども、まず第一は、中期防の最終年度ということで同計画の総仕上げを図りたいという基本方針のもとに、正面装備の質的充実を図っております。それに加えまして、隊舎、宿舎等生活関連施設の整備あるいは指揮・通信、情報機能の充実、練度の向上、あわせて基地対策、こういうような後方関連部門を重視して要求案をつくっておるところでございます。
  139. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 アメリカの、例えば「ミリタリー・バランス」により作成されたものでございますけれども、その軍事費の推移、米国の例だけで結構でございます。一九八六年から現在まで述べていただけますか。
  140. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 アメリカの国防予算の推移でございますが、予算書ベースで申し上げますと、いろいろな定義がございます。権限額、支出額等ございますが、支出額で申し上げますと、一九八六年が二千七百三十四億ドル、八七年が二千八百二十億ドル、八八年が二千九百四億ドル、八九年、これはまだ見積もりでございますが二千九百八十三億ドル、九〇年、これは先ほど大統領が署名したという案でございますが、二千九百九十二億ドルでございます。
  141. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今いろいろな方法があるがと述べられましたが、本年の予算委員会で配付された資料が私のところにあるのでございます。その資料は「最近五年間の世界主要国防衛費の推移(ドル建て)」で、これは日本、米国、西独、英国、ずっと最後の下は中国まで出ております。今の数字ですとどんどんふえていっておる、そういう数字でございますが、この資料では、米国のドル建ての国防費の推移を見ますと、一九八七年から一九八八年には減っておりますよね。一九八七年におきましては二千八百八十四億ドルであったものが一九八八年におきましては二千八百六十億ドル、このように減っておりますよね。この資料はどんなことになっているのですか。もう一度御説明ください。
  142. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 ただいま私の申し上げましたのは名目の数字でございますが、伝えられておりますのは、実質ベースで米国予算を見ますると、権限ベースでは八六年以来五年間ダウンをしております。支出ベースではここ二年間ダウンをしておる。こういう状況でございます。
  143. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 このようにダウンしておる状況防衛庁長官、どのようにお考えですか。
  144. 松本十郎

    松本国務大臣 アメリカの場合は、委員御高承のとおり、五〇年代には二けたの防衛予算の増加がございましたし、その後デタントに入りましてダウンをいたしましたが、それでもGNPの六%、七%というふうな高い割合の防衛費を予算として組んでおる姿でございまして、ダウンの仕方は大変微々たるダウンでございますので、それらの全体の流れを見ますと、やはり依然として蓄積されていく軍事力は大きいし、ダウンとはいいながらまだまだ大きな額の軍事費が支出されている、こう見ております。
  145. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ダウンしておることはお認めになりました。しかし、GNPの比などは聞いておりませんので。  そこで、先ほどもあった削減あるいは軍縮の流れというものを認め、そういう中でなぜこの日本においてのみ、六十二年におきましてはあの中曽根軍拡路線によりましてGNP一%枠という目安、本当にそれが最後の頼りであった、そういうものを取っ払ってしまって、そして本年も依然として、若干でございますけれどもGNP一%を突破した概算要求を出していっておる、そして、さらに六・三五%というような突出をさせてきた、この流れというのはどうしても理解できない。これはだれでも理解できないと思う。日本だけ逆行している。どう説明しますか。もう一度御答弁ください。
  146. 松本十郎

    松本国務大臣 先ほど答弁申し上げたとおり、アメリカあるいはソ連の場合は長年にわたって蓄積されたものがあるわけでございまして、それが新しく上に乗っかるフローがやや減ったからといって依然として大きいわけでございます。  日本の場合は、委員御承知のとおり、戦後あるときから、細々という言葉はどうかと思いますが一%、こういう程度のものが積み重なってきているわけでございまして、依然として低い。そして、五十一年度につくりましたあの大綱、これは憲法の定めによる専守防衛の範囲で最小限これだけは要るのだということでございまして、そこまでにまだ達しておらないというのが現在の姿であります。日本として最小限の防衛を達するためには、少なくともこの大綱の水準まで到達しなければならない。充実の段階がアメリカ、ソ連あるいはヨーロッパの国々に比べまして日本はまだまだ低い段階にとどまっている、こういう認識を持って、来年度は最小限ここまでは要るのだという概算要求をしているということであります。
  147. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 長官、大間違い。先ほど私、「ミリタリー・バランス」を引きまして申し上げましたが、例えばその中で、一九八九年から一九九〇年、英国の国際戦略研究所が発表したこの「ミリタリー・バランス」では、日本の国防支出は西側諸国の中で米国に次いで第二位です。そして、これはNATO式の計算方法による。これは旧軍人恩給あるいは海上保安庁などの準防衛力、警察隊などの経費を含む、こうしておりますけれども、そういうものを見たとしても、西側におきまして世界第二位。そして、同じく一九七一年と一九八六年を比べた防衛予算の伸び率、これは米国防総省の共同防衛の同盟国の貢献度、一九八八年版にあるわけでございますが、一九七一年から一九八六年の伸び率は、米国は二五%、米国以外のNATO諸国においては三一%なのに対して、日本は一三九%と異常な突出ぶりなのですよ。これをどう説明しますか。
  148. 松本十郎

    松本国務大臣 委員御指摘の「ミリタリー・バランス」は、軍事費については国際比較がなかなか難しいのですが、第二位と書いてあるかと思えば、末尾についております別表では第六位になっております。NATO方式、いろいろあろうと思いますが、計算の仕方によっては日本は第六位になる。しかも、ことし一年あるいは来年の要求といったフローの姿だけで軍事力をはかられることはいかがと思うわけでございまして、もとが少ないから当然ほどほどのところまで達するには大きく伸びざるを得ない、これが現実の姿でございまして、もとのある程度あったものが伸びないものと、ほとんど少なかったものが大きく伸びたものとを同日に談ずるということはいかがなものかと私は考えます。
  149. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 第六位と第二位の計算の違いをもう一度説明してください。
  150. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 委員ただいま御指摘いただきましたように、本文では西側先進第二位、NATO方式によればと書いてございます。ただ、再三御説明しておりますように、NATO方式というのは秘になっておりまして、また「ミリタリー・バランス」自身も計算方法を詳細に書いておりませんのでわかりませんが、今までの議論では、先ほど大臣からもお話がありましたように、軍人恩給費だとか海上保安庁の経費が足されているのではないかと思います。この経費を足しますと防衛関係費の約一・四倍になりますので、これと他のNATO諸国とを比べれば、確かに計算上は西側第二位、こういうふうになるということでございます。
  151. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この問題のみで余り時間はとれないわけでございますが、とにかく世界の軍縮の流れに逆行しておるということをどうか認識していただいて、今後の防衛問題に対処していかなければならないことを重ねて要望しておきます。  そこで、次の問題に移りますが、先日来日いたしましたソ連のヤコブレフ氏が、領土問題なのかどうなのかちょっとそれはよくわかりません、後でいろいろと説明を追加したり、修正したのかどうか、その点はよくわかりませんが、いずれにせよ、私どもは領土問題を何としても解決していかなければならない、これは日本国民の願いでございます。そういう中で、ヤコブレフ氏が第三の方法という発言をいたしました。この問題に関してどのようにとらえておるのか、外務省、その点に関してコメントを最初にいただきたいと思います。
  152. 荒義尚

    ○荒説明員 お答え申し上げます。  ヤコブレフ政治局員が来日した際に第三の方法と申したということについてどう受けとめておるか、こういうことと思いますけれども、ヤコブレフ政治局員は、第三の道あるいは第三の方法と若干表現は変わっておりますが、私どもとしましては、要するに対話を通じて日ソ関係を改善したい、こういう意欲を表明したものだろうというふうにまず受けとめておりまして、そういうものとして評価はしておるということでございます。  それで、この対話を通じて日ソ関係を改善する、こういう考えあるいは方法論と申しますか、これは突き詰めますと、結局は、現在行われております平和条約の作業グループ、これを推進し、同時に日ソ関係を多面的に発展させる、こういう趣旨でございまして、新しい日ソ関係構築の必要性という点については、ヤコブレフのそういう一般的な考えと我が方の認識は一致しておる、こういうことは言えるかと思います。  それで、我が方としましては、先生御高承のとおり、本年の五月以来、領土問題を解決して平和条約を締結することを最重要課題とする五つの要素から成ります日ソ関係全体の拡大均衡、こういう考え方、イニシアチブを発揮しまして対ソ関係の推進を図っておるということで、今後ともそういう方向で努力を続けていくということでございます。
  153. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一点お伺いしておきますが、シェワルナゼ・ソ連外相がソ連外務省で北方領土の共同管理論について興味深いアイデアだ、こういう発言がございます。北方領土を非武装化し、日ソ両国が共同統治するというこの四島の共同管理論、これはソ連の改革派学者から提起されたことがあるわけでございますけれども、この共同管理論に関してのシェワルナゼ外相の発言等々を踏まえて御見解を外務省に伺っておきたいと思います。
  154. 荒義尚

    ○荒説明員 私どもとしましても、ただいま先生御指摘のような意見が表明されたということ、そういう事実は承知しておりますけれども、現在御承知のように、我々としましてはあくまで四島一括返還という立場でございまして、この時点でそういった考え方について我々としてどう考えるということを申し述べる段階にはないというふうに考えておる次第でございます。
  155. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 二年後にはゴルバチョフ書記長の来日が予定されておるわけでございますが、とにかく日本にとりましては北方領土返還という大きな問題があるわけでございます。もちろん目標は二年とかそんなことで言っておるわけじゃございませんが、こういったものに今後具体的にどういうような取り組みをしていく決意なのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  156. 荒義尚

    ○荒説明員 確かに先生おっしゃるように、先般九月の国連総会の際の外相会談で、先方から九一年のゴルバチョフ書記長の訪日という話がございまして、そういう意味で今後の日ソ関係のスケジュールの中に一つの具体的な段階ということでそういう見通しが出てきておるわけでございますけれども、それに向かってどう取り組んでいくのかという御質問かと思います。  具体的な段取りということでお答えしますけれども、まず、本年十二月の十八、十九日、東京でございますが、平和条約の作業グループということをまず予定しておりまして、その後、明年の三月でございますが、シェワルナゼ外相の来日ということも一応予定されておりまして、さらにその後我が国の外務大臣が訪ソする、こういう段取りがございます。我々としましては、今後こういった一連の日ソ間の対話というものを真剣に進め、そういう中で九一年のゴルバチョフ書記長の訪日問題、これをそういったプロセスの中で具体化していく、こういう考えでございます。
  157. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今後の現中期防、そしてポスト中期防、そういったものを踏まえてまずお伺いしておきますが、現中期防は平成二年をもちましてこれが最終年になるわけでございますが、「防衛計画の大綱」の水準というものは完全達成なのかほぼ達成なのか、まず最初に御答弁ください。
  158. 日吉章

    ○日吉政府委員 おおむね達成されるという状況でございます。
  159. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、ポスト中期防というものは九〇年代の我が国の新しい防衛計画と位置づけていかなければならない、こう思うわけでございますが、その防衛理念、そして防衛哲学というか、どういうものを理念として持っておるのか、御答弁ください。
  160. 日吉章

    ○日吉政府委員 現在、米ソを中心といたしまして軍備管理・軍縮交渉が進められておりまして、低いレベルの力の均衡へ向けて着々とその交渉が進展しているのは事実でございまして、非常に喜ばしいことでございます。しかしながら、そういう形での核を中心としました、また、通常兵器によりましても攻撃的性格を有する抑止的部分の低いレベルの均衡、低いレベルに向けての軍備管理・軍縮というものが進められましても、東西両陣営に位置しておりますそれぞれの国がそれぞれ自国の安全を平時から守っているべき必要最小限度の自衛的防衛力の整備というものには十分意を尽くさなければならないと思います。そういう観点から、「防衛計画の大綱」は、我が国が平時から保有すべき防衛力整備の水準を示していたわけでございます。したがいまして、この水準は今後も維持する必要があろうかと私ども考えております。  そういうことになりますと、中期防によりまして「防衛計画の大綱」が目標といたしております防衛力整備の水準は、ただいまも申しましたようにおおむね達成されるわけでございますが、その及ばざるところを補うとともに、その水準を維持するだけでも相当の努力を要するかと思います。したがいまして、その努力をどのようにするかというような点が一つの考え方になろうかと思います。  それから、これまでの整備は、比較の問題でございますが、どちらかといいますと正面装備にとにかく重点が置かれてきた嫌いがございますけれども、今後は正面装備を支えまして全体として効果的な、効率ある防衛力が維持できる、発揮できる、こういうふうな形の後方をも含めました防衛力の整備、後方にどちらかといえば重点を置いた整備をすべきではないだろうか、かように考えております。  さらに、もう一つの観点といたしましては、これらの防衛力を発揮するためには、装備はともあれ、これを動かしますのは自衛隊員、人でございます。ところが、求人環境等は必ずしも容易なものではございませんので、防衛意識を確固として持った良質な隊員を確保する意味で、隊員確保のための施策、隊員施策等にも十分留意をしなければならないのではないだろうか。今作業中でございまして、この作業の結果、いろいろな新しい考え方が最終的には固まると思いますけれども、私どもはそういうような問題意識を持ちながら現在作業を進めているところでございます。
  161. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 最近の自衛官の充足率、これを御説明いただきたいと思います。
  162. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 平成元年十月三十一日現在の全体の合計の充足率は八八・七%でございます。
  163. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 最近のと言ったんだ。最近の推移をずっと教えてください。
  164. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 突然の御質問でございます。今手元にございますのは、ただいま申し上げました十月末とその一カ月前、九月三十日現在で八八・九でございます。
  165. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、充足率の推移を、今ございませんか。私のもとにはあるのですが、こちらで述べましょうか。――時間の関係上、私の方から申し述べます。  全体の推移はほぼ同じ状況でございますが、例えば陸上自衛隊、これは昭和六十年度でございますが、八六・六六%、ところが元年度は八五・六一%、まあダウンしていますよ。海上自衛隊、五十九年度は九七・三%、元年度は九四・八%。航空自衛隊、五十八年度九七・六%であるのが、元年度は九五・七%。こういうように充足率というものがいずれもダウンしておる。これだけここで防衛二法を一生懸命論議をして、自衛官をふやすのだということでこの内閣委員会におきましても相当論議を行いまして、そうしてこの防衛二法が過去におきましては成立してきました、今回はわかりませんが。こういうことから考えて、何でこの充足率がいつもこう同じようなもので、なおかつ、単年度のものをとってみると減っておるのですか。この辺はどうなっているのですか、これはひとつ説明してください、わからぬ。
  166. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ただいまの充足率の資料でございますけれども、最近のと御質問ございましたので、月々のということで理解したものですから、先ほど二カ月申し上げたわけでございますが、ただいま先生御指摘のとおり、年度末ベースで見ますと、例えば陸上自衛隊の六十年度末が八六・六六というようなことになっております。それで、元年度として言われたのはたしか九月時点、現在の九月時点の充足率ということで、元年度の末というのは当然まだわからないわけでございますので、その比較の時点が若干違うということだけ述べさせていただきたいと思います。  元年度末の計画で言いますと下がってはいない形になっておりまして、現段階で確かに御指摘のとおり九月、十月のあたりで充足が必ずしも進んでいませんので、その時点での充足率を見ますと下がった形になっておりますが、これは大変厳しい募集環境ではございますけれども、今後なお努力をして募集について進めてまいれば、充足率は今の時点よりは若干上がってくるであろうという期待を持っている次第でございます。
  167. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、今募集状況は大変厳しい、こうお述べになりましたが、この募集状況の推推、最近ではないですよ。私がちょっと先ほど言った言葉を訂正させていただきます。ここ数年ということで直させていただきます。それをお述べください。
  168. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 これは数字でございますが、五十九年度、応募者数四万三千二百八十三、入隊者数一万八千百二十三、それから六十年度、応募者数四万五千二百五十九に対して入隊者数が二万九百二十七、六十一年度、四万六千六十九に対して入隊者数一万九千百五十一、六十二年度、応募者数四万五千五百八十二、入隊者数一万九千六百三十三、六十三年度、応募者数四万三千百九十一、入隊者数二万二千八百七十五となっております。
  169. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それを述べていただくのと同時に、厳しい募集状況ということを説明していただきたいのです。どういうように厳しいのですか、その状況を今の充足率と絡めて。数字だけ言ってもらっても、これだけじゃわからないのです。
  170. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 六十三年度も、有効求人倍率等民間の活動の活発さを反映して、非常に募集状況は厳しかったわけでございますけれども、今数字で具体的に申し上げましたとおり、六十三年度まではどうやら何とか所要数を確保できていたということでございます。ところが、元年度に入りまして一層この傾向が強まりまして、ただいま現在のところでは非常に厳しさが増しておるということでございまして、先ほども九月末、十月末の充足率について数字を申し上げましたとおり、現在では元年度の上半期の実績が出ておりますけれども、その所要の計画数に対しまして約九割の実績という形が充足されておるといいますか、採用数が計画に対して九割ということでございます。したがいまして、あと後半年において鋭意努力をしたい、こういうことでございまして、現時点においてはその厳しさが予定に対して九割ということで反映されているわけでございます。
  171. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 充足率が厳しい、それからまた予定に対して九割ということは、今の数字説明してもらっても、例えば応募者が四万三千おって入隊者は二万二千、応募者は余計あるのだから結構なことじゃないかということしかわからないわけです。したがいまして、どういうわけで、例えば自衛官に対する魅力がないのか。入隊者は二万二千人だけれども、これは余りいい人材とは言えないけれども、そういう数を何とかそろえたんだというような状況なのか、そうでなくして、もう一級闘士がどんどん集まってきたんだというようなものなのかをもうちょっと具体的に説明しなければわからぬですよ、これは。もう一度説明してください。
  172. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 短期的には、最近の景気の上昇、拡大に見合いまして、有効求人倍率が極めて高い状況でございます。それからまた、来年の春の卒業生に対する民間企業の採用計画数も非常にふえておるという状況でございますので、それらの環境の中でごく最近の事情を申し上げますと、採用人数の確保自体がなかなか厳しいということでございます。  なお、六十三年度までの数字、応募者数あるいは入隊者数について先ほど申し上げましたが、それらにつきましても、特に六十三年度においてはある程度厳しかったわけでございますけれども、いろいろと募集努力その他をいたしまして人数的に確保したということでございます。質の問題につきましてはいろいろな見方があろうかと思いますけれども、とりあえずそれだけの人数のものを確保できたということでございます。今、最近厳しい状況と申しましたが、主として元年度に入っての現時点における認識というふうに御理解賜りたいと存じます。
  173. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今の求人というものは、確かに一般の就職の状況など考えてみても求人難ですよね。そういう中で人が欲しいというのは、どこだってそうなんです。ましてや国防というものに携わっていってもらう人材を集めなければならない、重要な自衛官の募集ですよね。そういうものに対して答弁としてもうちょっと意欲のある、こういった面をこういうようにしていかなければならぬのだ、大変なんだという実態を言わなかったら、こんなものわからないよ、みんな。そんなものじゃ充足率だってよくならないし、募集状況もよくなっていかないと思いますよ。何がよくないのですか。例えば魅力がない。もちろん後方支援というものの充実ですよね、そういうものの何が足らぬのですか。そういったものをここで、長官おるんだから、あなた方がよくちゃんとやっておかないと、いつまでたったってよくなっていかないじゃないですか。それを答弁してください。
  174. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 現在、自衛隊が抱えております募集難の状況というのは、いろんな原因があろうかと思いますけれども、当面一番大切だと思っておりますのは、隊員の処遇改善策としての隊舎、宿舎等の生活関連施設の充実を図らなければならない、これがおくれているという点であろうかと思います。  したがいまして、これについてはぜひとも平成二年度を含め、あるいは平成三年度以降の次期防の段階におきましても、隊舎、宿舎その他の生活関連施設について格段の充実を図っていく必要があると認識しております。
  175. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 人間の生活していく条件の中で、もちろん根本的なもの、衣食住というものは当然でございますけれども、その中にゆとりとか生きがいとか非常に高度なものが求められていく時代なんですよ。  そういう中で、今も話がございました自衛官の住の問題、宿舎の問題を取り上げますと、例えば私、京都ですから京都の状況を提出していただきましたけれども、いまだに二段ベッド、大部屋、何ら解消してないじゃないですか。それから木造の宿舎でも、二十五年以上たっているのがパーセントでいくと約四〇%。そういうような状況で、まず住の状況を取り上げても非常に魅力がないものだ、こういった面が考えられますよね。その辺、もうちょっと言うておいた方がいいですよ、答弁ください。
  176. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 特に京都地区についてお話がございました。京都の実情につきましては私どもも把握いたしておりますが、ほぼ全国並みの水準でありますけれども、いずれにしても、隊舎における二段ベッドも解消されておらないことも事実でございますし、老朽宿舎がかなり多いということも事実でございます。全国的なベースで言いましても同様の状況にございます。したがいまして、平成二年度の概算要求においては格段の努力を払い、かつ平成三年度以降もその方向に向けて努力をしてまいりたいと思っております。なお、隊舎の二段ベッドの解消につきましては平成二年度においてすべて解消するつもりで、今要求ベースではそういう形になっておるわけでございます。
  177. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 次の問題に移らしてもらいます。  日米経済摩擦の中でも防衛関連技術にかかわるハイテク摩擦というものは、非常に複雑かつ困難な問題を含んでいる。いわば構造摩擦の状況にあると思うわけでございます。米ソ関係がゴルバチョフ政権以降特に好転の兆しを見せている一方で、今度は日米関係というのは、このハイテク摩擦などを含めて構造摩擦によってむしろ緊張度が増した、こう言っても過言ではないのではないかと思うわけでございます。  そういう中で、特に日米間で問題となっておったFSX共同開発をめぐる摩擦についてまず伺っておきますけれども、この問題については最終決着は見ておる、こういうことでございますが、特に、エンジン技術とソフトコードの対日移転に関してのアメリカの同意というものはどうなったのですか。一番の問題点のところでございますけれども、まずその点からお伺いしておきたいと思います。
  178. 植松敏

    ○植松政府委員 御指摘のFSXの件でございますが、四月末にクラリフィケーションが終わった段階で、あとは比較的スムーズに流れておるわけでございます。エンジンの点につきましてはこのクラリフィケーションの過程で、量産段階に入りましてからエンジンが必要になるわけでございますが、我が国におけるライセンス生産が実効ある手段であるということを米側も確認をいたしておるわけでございまして、量産段階で具体化してくるというふうに期待をしているところでございます。  一方、御指摘のフライトコントロール・コンピューターのソフトウェアに関しますソースコードでございますが、これはクラリフィケーションの過程で、国家安全保障にかかわる技術ということで米側としてはこの部分は出せないということでございまして、その他のものにつきましては、極力FSXの開発のために米側は技術面でも協力をするということで確約ができておるわけでございます。
  179. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そして、私は前もこの問題を取り上げたわけでございますが、一九八八年十一月に日米において交わされた交換公文の見直しあるいは新たな政府間の何らかの取り決めなり合意なり、そういったものは何かあるのでございましょうか。
  180. 植松敏

    ○植松政府委員 この春に行われたクラリフィケーションは、御指摘の昨年十一月にまとまりました交換公文及び実施細目取り決めの内容につきまして双方で確認をし合うというものでございます。したがいまして、交換公文等の変更を伴うような事態は生じておりません。
  181. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 新たな何らかの合意事項というか、それにかわるとまでいかなくても、折衝の中で生まれた何かはあるのでしょうか。
  182. 植松敏

    ○植松政府委員 さようなものはございません。
  183. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 MOU、いわゆる了解覚書について、米国ではこれは議会に公開されておりますよね。我が国においてはこれが非公開ということで、この前も、そういったものに関しては一切述べられない、こういうことでございますが、情報公開原則、情報公開法そのものを云々しておる現在にあって、高度情報のこういう時代にあって、この重要な問題に関して、アメリカの議会においてはどんどん出てきておるものが日本では全然それが、反対にアメリカの方からこっちへ流れてくるというようなそんな事態であるということ自身がおかしいと思うのです。  そこで、この了解覚書、細目等についてオープンにすべきところはオープンにすべきですよ、秘密特許の問題もあるのですから。その面では、もうちょっとおおらかにやりなさい。その意味でオープン、どう考えますか。
  184. 植松敏

    ○植松政府委員 御指摘の了解覚書につきましては、日米間で不公表とするということにされておりますために文書そのものを公表することはできませんが、了解覚書の具体的な内容につきまして御照会等がございましたら、私ども説明し得る範囲で御説明したいと考えておるところでございます。そういうことで御理解をいただきたいと存じます。
  185. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 では、その中で説明できる分、概略で結構でございます、説明してください。
  186. 植松敏

    ○植松政府委員 FSXの共同開発に関する了解覚書の概要を簡単に申し上げますと、日本側の作成します運用要求に従いまして、日米のすぐれた技術を結集してF16を改造開発しようというのがこの共同開発の目的でございます。防衛庁が計画管理を実施し、また開発経費は負担する。主契約者につきましては日本企業が担当し、米国の企業は下請企業者として参加をする。また、日米間の具体的な作業分担は、経済的な効率性等に基づきまして今後決定をしていこう。さらに、米側はF16に関する技術情報を適切に日本に供与する、また日本側は開発の成果として得られました技術情報を適切に米側に供与するといった内容のものでございます。
  187. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 FSXは、単価幾らで、何機生産されるのですか。
  188. 植松敏

    ○植松政府委員 FSXは御案内のとおりこれから開発をしようというものでございまして、成功いたしますと量産ということになるわけでございますが、この段階では申し上げかねるところでございます。
  189. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 生産の計画年度、最終年度、これはわかりますか。スタートしてこの時点で終わる、その年度を明らかにしてください。
  190. 植松敏

    ○植松政府委員 FSX開発の現在の計画では、昭和六十三年度発足いたしまして、平成八年度までかけて開発をしようということでございます。
  191. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私どもの方で入手しておるというか伝えられておるものでございますけれども、FSXは単価五十一億五千万、そして全体で百三十機生産されるやに伺っておりますが、どうでしょう。
  192. 植松敏

    ○植松政府委員 再三申し上げますように、これからFS×の技術開発をやろうという段階でございまして、成功した上で量産に入ります段階のことは今予測がつかないわけでございます。当然のことながら、量産に入りましてもどのくらいの機数を生産するか等によっても変わってくるわけでございまして、一部新聞等でそういう報道がなされていることは承知いたしておりますが、私どもとしては現段階では申し上げかねるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  193. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 このFSXに関して仮想敵国というかあるいは仮想敵ミサイル、こういった物の考え方はあるのでしょうか、あればどんなふうにそれを進めているのですか。ないと、これはFSXの計画自体がおかしいのだからね。その点を御答弁ください。
  194. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  我が国は特定の国を仮想敵国というように考えていないということは、これまでも累次申し上げているところでございまして、FSXを装備するに当たりましても、特定の国を仮想敵国として装備するというようなことではございません。
  195. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そうすると、FSXの目的は何ですか。
  196. 日吉章

    ○日吉政府委員 我が国に経空脅威が参ります場合に、それを空でもって要撃するのが要撃戦闘機でございますが、その場合に、例えば着上陸侵攻してまいります場合に、それを洋上において対艦攻撃を加えまして着上陸を阻止する、あるいは不幸にいたしまして相手国が我が国に上陸いたしまして我が国内に陣地を構えました場合に、その対地を攻撃いたしましてそれの排除を支援する、こういうふうな支援機能を主たる目的にするのがFSX、いわゆる支援戦闘機の役割でございます。
  197. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 六十三年度から平成八年度までというものを明らかにしておりますが、それでは六十三年度、それから元年度、二年度の予算を述べてください。
  198. 植松敏

    ○植松政府委員 年度別に申しますと、昭和六十三年度予算において歳出予算額として約二十二億円、平成元年度予算におきまして同じく歳出予算額として約百二十億円を計上いたしてございます。また、平成二年度の概算要求といたしまして、防衛庁といたしましては歳出予算額で約百四十八億円を要求いたしておるというところでございます。
  199. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 米国のプレストウイッツ元商務省長官顧問は、国家安全保障会議、NSCにFSX問題で商務省、通商代表部が加わった、こういうことは米国がこれまで分離されてきた経済と安全保障が結びついたことだ、こう述べているやに伺っておりますが、ブッシュ政権というものが経済と安全保障の一体化という改革、転換、こういったもので一連の貿易摩擦あるいは技術摩擦を踏まえてどうとらえておるのか、また日本はどう対応しようとしておるのか、外務省でも、あるいはほかでも結構です、御答弁ください。
  200. 重家俊範

    重家説明員 日米間におきます大幅な貿易不均衡等を背景といたしまして、米陸、海等の一部に防衛問題に経済問題をリンクさせる、連結させるというような議論があることは承知しております。しかしながら、日米両国は従来よりそれぞれの立場から、経済、防衛それぞれの分野におきまして適切に対処してきておるわけでございますし、今後ともそのような観点から対応していくことが重要である、そういう考えに立って対処してまいりたいというふうに考えております。  なお、先生御指摘の、国家安全保障会議の会合に商務長官が正式のメンバーとして入るべきであるという動きがあるという御指摘でございますが、そのようなことを可能にするような法案が米の議会に出されておることは承知しておりますが、現在のところそれにつきまして特段の措置がとれらているというふうには承知しておりません。
  201. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ちょっと時間の関係で全部できませんので、もう一点お伺いしておきますが、SDIにおける技術交流、そしてまた今回のFSX問題などを踏まえてハイテク技術摩擦にかかわることでございますけれども、我が国の対外技術移転、これの対応、基本原則、政策なりについて、これは通産省ですか、どちらでも結構でございます、御答弁をいただきたいと思います。
  202. 杉本信行

    ○杉本説明員 先生の御質問趣旨は、我が国の高度技術移転の基本原則というふうにとらえております。我が国の基本政策といたしましては、現在東西対立の構造が変化しつつある、こういう状況でありますけれども、他方、東西間の基本的相違というものは依然として存在しております。したがいまして、国際の平和と安定が基本的にはまだ力の均衡と抑止によって維持されているという厳然たる事実もございます。したがいまして、我が国を含む自由主義諸国は、その安全保障確保の観点から、戦略的に重要な物資、技術の東側諸国への移転についてはケース・バイ・ケースで慎重に検討していく必要がある、こういうふうに認識しております。
  203. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一点お伺いしておきます。  FSX共同開発の摩擦問題あるいは技術摩擦、今後いろいろ考えられる問題の中で、日米間の特許の問題について特許庁にお伺いしておきます。  日本の先願主義と米国の先発明主義、両国の差異があるわけでございまして、いろいろ問題が生じてくるのではないかと思われますが、どんなことが考えられ、どんなように処理しようとしておるのか、御説明いただきたいと思います。
  204. 清水啓助

    ○清水説明員 お答えいたします。  今先生御案内のように実は二つの特許のとり方がございまして、一つは先に出願した者が権利がとれる、これがいわゆる先願主義でございます。それから、今先生御案内のように、先に発明した人がその権利を得られるというのが先発明主義でございまして、先発明主義のもとでは、複数の人が相前後して出願した場合にどちらの人が先に発明したかということが非常に重要な意味を持ってきます。したがいまして、先発明主義のもとでは、実際どちらが先に発明したかということを立証していく手続が必要になってきます。この手続と申しますのは、出願に当たりましては弁護士さんを使うわけでして、非常に多額の費用と時間を要します。つまり、要約いたしますと、先発明主義のもとではだれが一番先に発明したか、それを特定するための手続、これに非常に時間とお金がかかるということでございます。一説によりますと、この争いだけで五年から六年かかりまして、費用も数十万ドルかかったというケースも伺っております。また、この先発明主義に関連いたしまして、実はアメリカの法制のもとでは、米国内の企業、個人に対しましては、先発明王義に基づきまして発明した日にちをその発明時点として主張できるのに対しまして、外国からの、つまり米国外の企業、個人に対しましては、これは認めませんで出願日にするという差別的な取り扱いが生じております。これによりまして我が国の企業の一部が若干被害を受けたというケースも伺っております。  この先発明主義の問題、今とっている国は実はアメリカとフィリピンがございます。フィリピンにおきましては、今議会でこれを先願主義に変えるべく検討している最中でございます。したがいまして、現在先発明主義を掲げているところは米国だけという事態になります。  特許庁といたしましては、今申し上げましたように世界の特許保護の潮流が先願主義の方にありますので、米国が早期に先発明主義から先願主義に変えるべく、それとともに、先ほど申し上げました内外人差別の問題が解決されるようプッシュしていくことが一番得策と考えております。  具体的に申し上げますと、特許の問題は世界知的所有権機構、WIPOと呼んでおるのですが、その場で特許保護の国際的なルールづくりが今検討されております。特許保護の基本的な項目、大体二十二項目が中に入っておるわけですが、その中の重要項目としてこの先願主義の問題も入っております。先願主義に統一すべきという観点から非常に積極的に議論が進んでいるところでございます。特許庁といたしましては、この多国間の国際的特許保護のルールづくりの場で、米国の先発明主義を先願主義に変えるという問題が成就できますよう、ルールづくりの議論に積極的に貢献しているところでございます。
  205. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 では、あと一問で終わります。ちょっと大事なものがあったので、もう一問だけ外務省、お答えください。  御承知のように、北朝鮮に居住しておる日本人妻の問題、現在約六千人に及んでおると言われております。そのほとんどが離別後三十年以上も肉親と音信不通の状態だ。あるいはまた、わずかの音信を頻りに日本人妻自由往来実現のために尽力しておる、そういう状況でございます。そこで、日本におきましても、超党派の議員によりまして、自民党、社会党、公明党、民社党の議員が全部入っておるわけでございますが、日本人妻自由往来促進議員連盟ができております。とにかく大変貧困で困っておるとか、砂糖などを買えないとか、そういういろいろな手紙なども来ておるという中で、救援物資をこの超党派の議員連盟におきまして今やっておるところです。  これだけ御苦労をしてきておる人たちが六千人以上もおる。こういうことにかんがみて、政府としてぜひ何らかの対応を考えていかなければならない、そういう事態ではないかと思いますので、ひとつ明快なる御答弁をいただきまして終わりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  206. 今井正

    ○今井説明員 お答えいたします。  いわゆる北朝鮮在住の日本人妻の方々がどのような生活を送っておられるかということにつきましては、必ずしも十分な情報を持っておるわけではございませんけれども先生の御指摘になりましたそのような方々からのお手紙を見ますと、砂糖等が不足しており、非常に苦しい生活を送っておられるというふうに思われます。このような方方がこのような生活を強いられている、また北朝鮮に渡られて、数十年の長さにわたりまして一度も本国日本へ帰ってこられないというような状況にありますことを考えますと、非常に胸が痛みます。  外務省といたしましても、とにかくこのような方々の里帰りが現実のものとなるようにすることが非常に先決問題であるという観点から、赤十字あるいは第三国を通じまして累次働きかけをしてきております。ただ、遺憾なことに北朝鮮側から反応が得られておりません。このような問題につきましては、希望を失わずに粘り強く働きかけていくことが重要と考えておりまして、今後ともこのような努力を続けていきたい、かように存じております。
  207. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 終わります。
  208. 吹田愰

    吹田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時五十五分休憩      ────◇─────     午後四時十八分開議
  209. 吹田愰

    吹田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田睦夫君。
  210. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 最初に、「なだしお」の航泊日誌改ざん問題について尋ねます。  防衛庁は、「なだしお」の山下艦長が航泊日誌の衝突時間十五時三十八分を四十分と書きかえたことについて、速力通信受信簿の記録を根拠にした、こう答弁しておられます。今まで防衛庁は、衝突の前後「なだしお」が三回機関停止をしたことを認めております。第一回目はクルーザーとの衝突を避けようとしたとき、第二回目は衝突が避けられて前進強速を命じたが、今度は第一富士丸と衝突しそうになって短音声、面かじいっぱい、停止、後進いっぱいを命じたとき、第三回目は衝突をして直ちに機関停止をしたという停止であります。  これを速力通信受信簿と比べますと、第一回目は十五時三十六分、すなわちクルーザーを避けたとき。十五時三十七分に前進強速に移って第一富士丸との衝突を目前にした十五時三十八分に第二回目の機関停止であります。第三回目の機関停止は衝突した後で、これが十五時四十分ということになっております。十五時四十分機関停止の後に衝突警報が連続しておりますが、衝突警報は、これは当然第二回目の三十八分の機関停止の前に書くべきものを過ってあるいは故意に変えているということはこの受信簿を見れば一遍で明らかになります。ましてや衝突前後の指揮をとっていた山下艦長から見れば、衝突時間は第二回目の停止の後であって、すなわち三十八分か三十九分であって、第三回目の衝突後の停止のときではないということはすぐわかることであろうと思いますが、そうではありませんか。
  211. 米山市郎

    ○米山政府委員 衝突時刻の十五時四十分、これは速力通信受信簿の時刻がより正確であろうということで、航泊日誌の方にその数字をもって書きかえたということでございます。これは、速力通信受信簿には十五時四十分の、今先生御指摘のように、その同じ分の記載事項のところに停止と衝突警報と二つの事項が記載してございます。衝突は衝突警報の直後であったという証言もございまして、衝突時刻につきましては十五時四十分と判断をしたというふうに報告を受けているところでございます。
  212. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 報告を受けているということでなくて、恐らく皆さんが見ても、あの経過、三回の停止があって、衝突は二回目の停止の後で、三回目の停止の前であるわけですから、これははっきりしているでしょう。だから報告がそうであっても、受信簿を見れば四十分警報というのは間違いだとだれでもわかることでしょう。そうではありませんか。
  213. 米山市郎

    ○米山政府委員 十五時四十分のところに停止と衝突警報、二つの事項が記載してあるということを先ほども申し上げましたが、そのことから艦長は十五時四十分に衝突という判断をしたと私どもは承知をいたしております。
  214. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 改ざんされた航泊日誌でも、後進いっぱいという二回目の停止があります。三回目の停止は衝突の後でしょう。そうすると、速力通信受信簿は二回目の停止、後進いっぱいのところにあるわけでしょう。それから三回目の停止は衝突後になるのだから、その十五時四十分の停止の前に衝突をしているということは、自分でそれを命令した人ならば当然わかるはずなんですけれども、それはそう思いませんか。
  215. 米山市郎

    ○米山政府委員 先ほども、衝突時刻については十五時四十分と判断をした根拠につきまして報告を受けたことを御説明申し上げましたが、いずれにいたしましても、こういった事実関係につきましては現在海難審判で審理が行われている最中でございますので、第三者機関において正確に事実関係の認定と申しますか、確認がなされていくものと思っております。
  216. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それは違うのですよ。防衛局長が前に答弁しておられること、それから国会理事会に出された資料によっても、その三回目停止の前に衝突している。衝突をしたから防衛局長は直ちに停止したと。これが三回目なんです。クルーザー、それから後進をかけるとき、衝突した後の停止が三回目なんです。だから、実際にそれを命令した人ならば、これを見れば停止の前が衝突だということがさっとわかるはずなんです。防衛局長、どうですか。
  217. 日吉章

    ○日吉政府委員 私が事故直後、間接的に担当いたしておりました関係上お答え申し上げたことはございますが、今柴田委員からお尋ねのように、衝突前に至ります相関の内容につきましての事実関係を私は御説明をいたした記憶はないわけでございます。私は、当時専ら衝突後の救難作業関係の部分を担当いたしておりまして、その関係で、なぜ衝突後船が後方に下がったのか、それは救難活動を回避したのではないか、こういうふうな御質問がありましたときに、かかっておりました後進が働きまして後ろに下がったわけでございまして、決して救難活動を回避するために後ろに下がったのではございませんというふうな御説明をした記憶がございますけれども、衝突に至る経緯の相関上のことにつきまして御説明を申し上げた記憶はございません。
  218. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 去年の七月二十五日に防衛庁から出された衝突事故についてというのとその事故概要図というのがあって、これによっても停止がクルーザーのときに一回目、それから今言いました短一声、面かじいっぱい、停止、後進いっぱい、こうなっていて、それから衝突に至るわけなんです。だからそれをまさに通信受信簿は写しているわけですから、これを見れば、三回とまったということを言っている人ならばすぐわかることだし、ましてやそれを命令した人ならなおわかる、私はこう言っているのです。艦長はそう言っているからということで言われますけれども、艦長とすれば、最初三十八分に衝突、そういうことで電報を打ったりいろいろな処置をしているのです。そういう人が、三十八分といって処理をしてきた人が、今度は四十分というように書きかえた。これは重大な問題があるわけです。というのは、本人ならばなかなかそういうことはできないと思うのです。ところが、そこで書きかえたということにはやはり何か別な力が働いたと私は考えるわけです。結局、この書きかえというのが、今までの答弁を見ておりますと、高原第二潜水艦隊群司令官や寺下隊司令が「なだしお」に乗艦されていたわけですけれども、そういう中で開かれました士官室の会議で決められた。そうでなければ、自分が直接指揮して公式に報告している三十八分衝突ということを何か別な考え方がないと変えるようなことはあり得ないというように思うわけです。だから、この士官室の会議、それによって決まった、こう見るのが当然ではないでしょうか。むしろ山下艦長の意思よりも会議の意思だ、こういうふうに見るべきだと思いますが、いかがですか。
  219. 米山市郎

    ○米山政府委員 衝突後「なだしお」に高原群司令が乗艦をしていたという事実につきましては私どもも承知をいたしておりますが、私どもが承知をしている限りでは、その当時一生懸命救助作業に当たっていた、その救助作業に関する指示を与えるために乗艦をし、七時ごろ退艦をしたというふうに承知をいたしているわけでございます。  なお、会議ということを今おっしゃられましたが、具体的にどういうものであるか、何らかの形で艦長を中心に三十八分と四十分、二つある数字をどちらがより正しいものであるかという相談をする場というものがあるいはあったということは承知はいたしておりますが、具体的な内容等については私どもつまびらかにはいたしておりません。
  220. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 要するに防衛庁の方はこの問題を本格的に調べてない。ただ報告を聞いて、はいそうですかと言っただけだということを自覚されていると思うのです。  そこでもう一つ、防衛局長が今言われた問題ですけれども、去年の七月二十八日、衆議院の連合審査で、「なだしお」はおおむね停止した状態で衝突して、直ちに機関停止したが、この機関停止というのが私が言っている三回目の機関停止ですが、惰力で約二、三百メートル後退したという答弁をしておられます。衝突のときの「なだしお」に幾らかの行き足があり、あるいは行き足がゼロであった。その場で機関停止をすれば、衝突現場で停止するだけで、後方に進行する力は生まれない、これは初級物理学の問題であると思います。後進いっぱいで現実に後進するようはなって、それで後退していたから二、三百メートル後退したというふうに見なくちゃならないと思うのです。日吉防衛局長答弁は、直ちに機関停止した。これは直ちにではなくて衝突と機関の停止までの間には時間的な間隔がある。直ちにではなくて、現実に後進が始まってから機関停止をした、こういうことではありませんか。これは防衛局長の前の答弁です。
  221. 日吉章

    ○日吉政府委員 当時、事故直後でございまして、私どもは、私どもの部下といいますか、「なだしお」の乗組員等から報告を聞いておるものに基づきましてこういう報告を受けているというふうに申し上げたわけでございます。その後、海難審判所及び海上保安部におきましていろいろ事実関係が明らかにされてきているわけでございまして、したがいまして、第三者機関で明らかにされているものに基づきまして御判断をいただければと思います。  ただ、私ただいまこの担当を離れておりますということと、突然のお尋ねでございましたので記憶が必ずしも明確でございませんが、海難審判所及び海上保安部のお調べの結果は、片方ほぼとんど行き足がとまっているような、片方は三ノットか四ノットだったでしょうか、ちょっと不正確でございますが、いずれにいたしましても衝突はそれほどのスピードのものではないというふうに御判断をいただいていたと思います。  それからもう一つは、私、技術的なことは正確に存じませんが、船は陸上の車両と違いましてブレーキをかけまして直ちにとまるという構造ではございませんで、とめますときにはスクリューを逆回転させましてそうしてとめる、こういうふうな方法をとるものでございますから、とめますときには後進をかけているわけでございまして、機関を停止いたしましても何がしかそれによりまして後ろの方に下がっていくというような構造になっていると理解をいたしております。
  222. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 だから、ブレーキをかけてもその瞬間はまだ幾らか前に進む。ともかく前進全速をやっていたわけですから、それでブレーキをかけてもその瞬間は前に進む。そして静かにとまっていく。その前に進んでいる段階、あるいはとまった段階、その段階で今度は停止をかければそこにとまる。これは当然でしょう。それが現実に後進し始めている。そこに機関の停止をする。この場合は惰力で行くということが考えられますけれども、惰力でと防衛局長は今まで答弁されておりますので、私はその点をむしろ訂正してもらいたいというような気持ちで聞いているわけです。
  223. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 少し技術的なことを補足説明させていただきます。  潜水艦の推進機というのは、この場合はディーゼルで発電いたしまして、それをある抵抗等を入れましてモーターで推進するという形になっておりまして、エンジンをすぐとめるように命令いたしましたときに、ある回転数で、この場合は後進でプロペラが全力で回っておる状況でございます。そういう状況で命令をかけましたときにぱたっとスクリューがとまるというわけにはまいりませんで、その間に抵抗をどんどんふやしてモーターに行く電流を徐々に減らして、やがてその電流がモーターに行かなくなりまして、なおかつ、その場合でもスクリューのイナーシャがございまして、スクリューは後ろ方向に回り続ける。そういうことで、命令したら即スクリューがぴたっととまるということにはならない構造に機械的になっているようでございます。
  224. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そう言われるならまた聞かなければなりませんが、要するにブレーキをかけてもまだ行き足がある、前に進んでいる、その段階。あるいはそれがとまって大体停止する状態。そういうときに機関の停止をやれば、これはその段階で二百メートルだとか三百メートルだとか惰力で後退しますか。すぐとまるでしょう。
  225. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 突然の御質問できょうは正確な資料を持っておらないわけですが、そのことにつきましては海上保安庁でよくお調べいただいたことと思いますが、ほとんど行き足がとまっておるような状況で完全に停止するまでには何秒か時間がかかりますので、その場合、そのままスクリューは後進の回転を続けておりますと後ろへずっとイナーシャで行きます。風の状態とか水流の状態とかいろいろあろうと思いますが、今度は前進のスクリューを回しませんとその行き足というのはなかなかとまらないことになるのではないかと思われます。
  226. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 かえって混乱するような答弁でありますけれども、私が聞いているのはブレーキをかけた後ですよ。後進いっぱいにした場合でも前に進んでいる。あるいはようやく停止状態になっている。ここで今度は機関停止をやれば、その近くでとまるのじゃないか、潜水艦というのは二百メートルも三百メートルも惰力で後退する特殊なものであるのか、そこのところだけ、あるのかないのかを答えてください。
  227. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 正確にいつ、行き足がどのくらい、一メートル毎秒でありましたものか二メートルのスピードでありましたものか私どもよく承知しておりませんが、もうほとんどとまったような状況とか、いずれにしましても、そのときは後進いっぱいをかけておりまして、スクリューは後ろ方向にフル回転をしておった、そういう状況でありまして、行き足を一生懸命とめておる、やがてそれがいつの時点で後進いっぱいをとめるような命令が出されたのかも詳しくはわかりませんが、その前後に後進いっぱいの命令をかけたといたしましても、もうすぐにとまって後ろへ戻り始める……(柴田(睦)委員「いや、戻り始めてないときなんだ、聞いているのは」と呼ぶ)そこのところは、また詳しくは海上保安庁で調べておられると思いますが、後ろへいっぱいかけておりますれば、やがてとまってまた後ろへ全力で走り出すという形になるわけでございまして、そこへ後ろへイナーシャがつきますと、なかなかこれは、イナーシャが非常に大きいものですので、前進をかけませんととまらない状況になります。
  228. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 物理学の初歩の問題を超えた見解で、何か潜水艦だけ魔力があるみたいな言い方ですから、もう質問はこれでやめておきます。「なだしお」の問題につきましては、あした東中委員質問することになっておりますので、私はこの程度にしておきます。  次に、PACEXへの自衛隊の参加問題についてお伺いします。  八月の下旬から十月の末までに行われましたPACEX89、これは米太平洋軍にとって初めての陸・海・空・海兵隊四軍の統合演習で、空母四隻、約八万人が参加した、しかもカナダ、オーストラリア、フィリピン、タイ、シンガポール、日本、韓国、そうした太平洋周辺各国も参加したかつてない大規模な、過去前例のない統合実動演習として行われました。  このPACEXの一環として行われた日米共同演習、これはやはり過去最大の規模で実施されて、従来にない実戦的な形式が随所に盛り込まれて、軍事面における日米一体化の深まりを一段と印象づけるものになっております。大変私は危険なことだと思うのです。  この中で、海上自衛隊の問題について尋ねますが、まず、九月二十九日からの海の日米共同演習で我が国の海上自衛隊の護衛艦が、グアム海域から北上してきたアメリカの事前集積船と、沖縄から出発したアメリカ海兵師団を乗せた強襲揚陸艦隊、これをそれぞれ護衛したと言われております。これは、具体的にどこからどこまでの海域でどのような護衛をやられたのか。さらに、ここにアメリカの海軍も共同で護衛したのか、これをお伺いいたします。
  229. 米山市郎

    ○米山政府委員 お尋ねの件でございますが、本年度の海上自衛隊演習は、九月二十九日から十月十四日までの間に実施をいたしました。その際、海上自衛隊の一部の艦艇と米軍の輸送艦、今お話に出ました揚陸艦船、事前集積船、これらが共同訓練を行ったわけでございますが、これは安全に兵力や物資の輸送を達成することを目的として潜水艦等の脅威を撃退し、あるいは空からの脅威を防ぐという訓練でございまして、本州東南方海上において実施をしたものでございます。
  230. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その東南方海上というのはどこからどこに至るまでを言うのですか。
  231. 米山市郎

    ○米山政府委員 本州の東海域及び南方海域でございます。
  232. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、今の共同訓練は当然アメリカ海軍も一緒にやったということですね。
  233. 米山市郎

    ○米山政府委員 米軍の艦船は、事前集積船及び揚陸艦でございます。
  234. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それから、横須賀と大湊の護衛艦がアメリカの海兵師団を乗せた沖縄からの揚陸艦船団を、また、佐世保の護衛艦がグアムからの事前集積船航路を護衛して苫小牧沖まで北上する、そういう訓練を続けていたということであります。  続いて、九月三十日になりますと、アメリカの第七艦隊の旗艦ブルーリッジなど米艦が八隻、ヘリ搭載艦「しらね」、これは我が海上自衛隊護衛艦、このヘリ搭載艦の「しらね」などの海上自衛隊護衛艦八隻が横須賀を出港いたしました。それから、北上した日米主力艦隊は、十月二日に千島列島沿いに南下してきたと推定されます空母エンタープライズ戦闘群と、北海道根室南方と岩手県宮古東方を結ぶ海域で合流したと言われております。この海の日米共同演習は、前半の総合演習と後半の戦技演習に分けて行われたというようにお聞きしたのですが、演習ではどんな作戦が実施されたのか、お伺いいたします。
  235. 米山市郎

    ○米山政府委員 先ほども申し上げましたが、海上自衛隊演習、九月二十九日から十月十四日まででございます。その際、米空母エンタープライズを中心とした艦艇グループとおおむねその演習期間全般にわたりまして共同訓練を行っております。この共同訓練は、海上自衛隊と米空母等がそれぞれの戦術技能の向上を図り、我が国有事における共同対処行動を円滑に行うためのものでございまして、具体的には、対潜戦、防空戦等について演練を行ったものでございます。
  236. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、青森県の三沢基地の問題ですが、PACEX参加のアメリカ太平洋軍と海上自衛隊との共同演習が行われておりました十月八日午後一時五十一分から二時にかけて、青森県三沢基地を見ておりますと、アメリカのS3A対潜哨戒機が飛ぶ、これには尾翼部分にNLという記号がありますから原子力空母カール・ビンソンの艦載機であるわけです。この哨戒機が海上自衛隊のP3Cに誘導されて三沢基地に着陸した、こういう報告を聞いております。これは私のところに写真もいただいているわけです。このS3A対潜哨戒機というのはカール・ビンソンに十機積載されておって、対潜哨戒機としてレーダーデータや聴音データ処理能力があって、核爆弾B57二個を搭載可能な航空機であると言われております。しかも原子力空母カール・ビンソンには核兵器百個が積み込まれていると言われておりますし、核攻撃機A6イントルーダー十四機も積載されていると言われております。こういう面から見ますと、核攻撃部隊そのものでありますが、この核攻撃部隊と海上自衛隊が共同演習を行ったということを示しております。  そこでお聞きいたしますけれども、この核空母カール・ビンソン及び核搭載可能な艦載機との訓練、これはどういう訓練でありますか、お伺いします。
  237. 米山市郎

    ○米山政府委員 海上自衛隊は、海上自衛隊演習の後半、十月八日から十四日の間でございますが、米空母カール・ビンソン搭載の戦闘機及び対潜哨戒機等との間で共同して艦艇の防空に当たる防空戦、それから潜水艦の捜索、攻撃を行う対潜戦闘についての訓練を本州南方及び東方の海域で実施いたしました。
  238. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その点で、カール・ビンソンという核で武装した艦船との共同訓練、演習、これは何か特別の意味があるのじゃありませんか。
  239. 米山市郎

    ○米山政府委員 従来から、米国は、特定の艦艇、航空機等における核の存在については肯定も否定もしないという政策を堅持してきているわけでございますが、いずれにいたしましても、自衛隊と米軍との共同訓練は我が国の個別自衛権の行使が必要となる事態に備えて行われるものでございまして、米軍部隊の装備等のいかんによって共同訓練が実施できるかとかあるいはできないといったものではないと考えております。
  240. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 去年の十月にアメリカの長期統合戦略委員会が「封じ込め戦略の将来」という報告書を出しておりまして、その中に、ソ連の対日攻撃に対する日米共同の反撃作戦についてというのがあります。それを見ますと、「まず、宗谷、津軽、対馬の三海峡を封鎖してソ連太平洋艦隊の出口をおさえる、」二番目に、「つぎにソ連太平洋艦隊の基地ウラジオストクと、カムチャッカ半島のソ連戦略潜水艦基地ペトロパブロフスク間の海上交通路を遮断する。」三番目に、「そのあと米第七艦隊の空母機動部隊がカムラン湾にあるソ連軍事基地を破壊する、」四番目に、「これと並行して、ソ連潜水艦隊を一掃する作戦を展開する、」五番目に、「別の米空母機動部隊がソ連極東部の海軍航空隊基地を攻撃し、同時に、シベリア鉄道も破壊して陸上の補給路を切断する、」六番目に、「海上からの追加戦力投入と並行して強襲上陸部隊が千島列島に反撃戦力として上陸する。」こう言っておりまして、報告書は、この一連の作戦遂行のためにも「日本は本土および周辺海・空域の防衛にもっと努力しなければならない」と強調しております。  これが今のアメリカのアジア・太平洋における戦略であるということは間違いないと思うのです。この戦略は同盟国である日本の投入を前提にしております。PACEX演習というのはこの戦略に沿って行われているものであって、これに日本が参加するということは、もうそれ自体アメリカの戦略に日本が組み込まれているということを示すものだと思うのです。個別自衛権だとか個別的演習なんて言われますけれども、実際は、そういうアメリカの戦略の訓練、その中の一環として行われる、そういう性格を持つものではないですか。御所見を伺います。
  241. 米山市郎

    ○米山政府委員 いわゆる太平洋演習PACEXは米軍の幾つかの訓練を総称した呼称でございまして、米軍独自の訓練のほか、各国との共同訓練を含む演習をそういう言葉で総称したものでございます。個々の演習につきましてはそれぞれ別個のものでございまして、相互に関連はなく、太平洋演習が統一的なシナリオに基づいて行われているものではないというふうに承知をいたしております。我が国との共同訓練も、あくまでも我が国有事に備えての日米対処行動の円滑化を図るということとそれぞれの戦術技量の向上を図るという観点から例年どおり行ったものでございます。
  242. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そう言われますけれども、マスコミなどの報道を見てみましても、やはりその全体像の中の組み込まれている姿、こういうことが強調されておりますし、私も当然そう思うわけです。ですから、本当に個別的な演習であるということを主張されるのでしたら、それこそ日米共同演習のシナリオを示してそういうものじゃないんだということを言わない以上は、これはPACEXという全体の戦略に参加していると見られても仕方がない、こう見るのはまた当然だというふうに思うわけであります。  それではもう一つは、アメリカ太平洋軍の空前の大演習PACEX89が自衛隊を巻き込んで実施されているさなか、十月十四、十五の両日に第十九回日米安全保障事務レベル協議が初めて東京で開かれました。その協議は、十五日の午前中は会議場所である外務省の飯倉公館を離れて防衛庁の中央指揮所で行われておりますが、中央指揮所では何が協議されたのか、なぜ中央指揮所が使用されたのか、このあたりをお答え願いたいと思います。
  243. 日吉章

    ○日吉政府委員 最近、日米防衛事務レベル会議、いわゆるSSCは、ワシントンと東京の中間のハワイで行われるのが慣例化されておりましたけれども、古くさかのぼりますと東京で行ったことがございまして、ことし東京で行いましたのが初めてというわけではございません。ところが最近の慣例を破りまして東京で行ったのはなぜかということでございますが、これは、レーガン政権からブッシュ政権になりまして米側の安全保障関係のスタッフの決定がおくれたわけでございますが、そのうち我が方は国会の会期を迎えたものでございますので、私ども国会中に東京を離れるわけにはいかないということで、東京で開かれたわけでございます。したがいまして、ウイークデーも使うわけにいきませんので、十月十四、十五というふうに、今御指摘ありましたように土曜、日曜日に開いたわけでございます。  そのときに飯倉公館以外に中央指揮所をどうして使ったのかということでございますが、これは十五日の午前中だけ使ったわけでございます。十五日の午前中の主たる議題は、極東を中心としました国際軍事情勢に関しまして米側から私どもはブリーフィングを受けるということが主たる議題内容でございました。その場合に、特段の意味があったわけではございませんで、単に米側の国際軍事情勢についてのブリーフィングをするにはスライド等の器材を使用した方が説明が便利であるということがございましたので、かつまた、その内容の秘密保全に十分留意するというようなこともございまして、そういう点で設備の完備いたしております中央指揮所を使ったということでございます。
  244. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 協議の内容につきまして、今言われましたように極東を中心とした軍事情勢についてということが報道されているのもありますけれども、そのほかに、例えば「朝雲」の報道を見ますと、「二日目は午前中、防衛庁内の中央指揮所第二調整室に会場を移し、日米防衛協力の通信面の相互運用性について統幕と在日米軍が共同で説明。研究が順調に終了したことが報告された。」と報道しておりますが、こういう協議はあったのですか。
  245. 日吉章

    ○日吉政府委員 午前中の日程の中には今御指摘のものもございまして、午前中は今御指摘の点の協議も行われました。
  246. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 去年の五月十七日の内閣委員会で、防衛庁は指針に基づく共同研究の中で、防空関係の通信連接について、ハワイ会議で日米双方から中間報告が行われ、引き続きこの研究を進めていくことを合意した、こういうことを言っておられます。今「朝雲」の記事を読み上げましたが、「防衛協力の通信面の相互運用性について、研究が順調に終了したことが報告された。」、こうなっておりますが、今私が申し上げました研究はどうなっているのか、防衛庁からお答え願いたいと思います。
  247. 日吉章

    ○日吉政府委員 今お尋ねいただきましたのは、私どもがインターオペラビリティー、相互運用性の研究と称しているものを指しているのだと思います。これは日米間の防空関係の通信連接に限っているわけではございませんで、日米防衛協力のための指針に基づきますインターオペラビリティーの研究としまして、昭和六十二年より通信面全般の研究を進めてきたところでございますが、本年の九月にこれまでの研究がある程度まとまってきたことから一応の区切りをつけたというところでございます。この通信面でのインターオペラビリティーの研究につきましては、我が国有事の際の幾つかの典型的な共同作戦を例にとりまして、防空作戦というのもその中の一つとして取り扱われているということでございます。この成果を今回のSSCでも日米双方の研究担当者から報告をしたということでございます。
  248. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そこで、先ほど中央指揮所を使った理由に、スライド等の器材と言われましたけれども、スライドというのは大体こんな部屋でもできると思うのです、秘密性ということもございましたが。そうすると、この研究の成果について中央指揮所で実際に検証してみるということが必要だったから中央指揮所が使われたのじゃないか、私はそういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  249. 日吉章

    ○日吉政府委員 SSCは私どものような文官、シビリアン、それからユニホームといいますか、制服の人たちも入りましたところで行うわけでございまして、今柴田委員お尋ねのように実際作戦上の運用を試してみるというような場ではございませんで、あくまでもテーブルを囲みまして話し合い、意見交換をする場でございます。したがいまして、今申しましたように飯倉公館でなくして中央指揮所を使ったということは、単にスライド等を利用するのに既に備えつけの設備がございますので便利であるというだけの単純な理由でございます。
  250. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これは大分前ですが、昭和六十年の三月二十八日に、私が中央指揮所と横田の在日米軍司令部を結ぶ専用の通信回線について質問をいたしました。そのときは、通信連絡手段は電話、ファックス及びテレタイプだけである、そしてそのころは特に新しい通信手段についての計画もない、申し入れもないという趣旨答弁でありましたが、この両司令部の通信連絡手段は当時から変わりがあるのかどうか、現在はどうなっているのか、お伺いします。
  251. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員御指摘になられましたときに我が方の政府委員からお答え申し上げましたことと状況に変化はございません。
  252. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これは司令部と中央指揮所のことでありますが、そのほかに通信のインターオペラビリティーの研究、当然これを研究すれば実際にということが出てくると思うのですが、在日米軍と自衛隊の間には、そのトップだけではなくてそれぞれのところでいいのですが、映像の送受信ができる、そういう通信回線はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  253. 日吉章

    ○日吉政府委員 共同作戦に関連いたします通信施設等の内容につきましては、事柄の性質上、詳細に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  254. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それは、あるかないかも言えないわけですか。
  255. 日吉章

    ○日吉政府委員 御勘弁をいただきたいと思います。
  256. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは、その映像の送受信をやる手段、方法、そうしたものの今度は研究、あるいはそれを改善する研究は、当然このインターオペラビリティーの研究の中に入っておりますか。
  257. 日吉章

    ○日吉政府委員 抽象的に申し上げますと、インターオペラビリティーの研究の中では、自衛隊と米軍との間の司令部なりあるいは部隊がそれぞれどういうふうな内容をどういうふうな手段でもって情報を交換することが望ましいか、あるいは現状はどうなっているか、それを改善するためにはどういうようなことをすればいいかというような研究がなされるのは当然でございます。したがいまして、そういうふうな研究はなされているわけでございます。
  258. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、在日米軍の駐留経費負担問題であります。  アメリカの政府及びアメリカの議会などから一段と要求が強まっております在日米軍の駐留経費の負担増の問題、これはアメリカの要求も年々エスカレートし、負担額も日本の負担額は大幅にふえてきております。日本政府の在日米軍に対する負担は、八八年度で約三千百七十億円に達しております。それにもかかわらず、さらに負担を増額しようという動きであります。  松本防衛庁長官はさる十一月十四日に北海道に行かれて、その際の函館市での記者会見で、アメリカの議会による在日米軍経費負担増の要求問題に触れられまして、現行の枠組みの中で応分のことはやっていかなければならないだろうという趣旨のことを述べておられます。これは、アメリカの議会の負担増の要求があるということも見た上での発言だと思うのですが、この真意、どういうお考えで述べられたのか、まずお伺いいたします。
  259. 松本十郎

    松本国務大臣 在日米軍駐留経費の負担増を求める米議会の上院、下院の議決があり、また、昨日夜、大統領が署名になったことは既に御承知と思いますが、今後、米政府がこれに対してどのように対応していくのか注視していく必要があると思いますし、いずれにしましても、我が国の安全保障にとりまして、日米安保体制の効果的な運用を確保していく、これはもう不可欠なことであり、重要なことであるという観点を持っておりますので、従来からも在日米軍の駐留経費の負担につきましてはできる限り努力を行ってきました。今後も、この問題につきましては自主的に考えて対処していこう、こういう考えでございます。
  260. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 アメリカの下院の本会議それから上院本会議で、在日米軍駐留経費の日本の負担増の要請を盛り込んだ一九九〇会計年度の国防歳出権限法が可決されて、昨日、大統領が署名をして、結局最終的に成立するということになりましたが、この対日要求の部分について、どういう内容になっておりますか、外務省、お伺いします。
  261. 重家俊範

    重家説明員 先生の言及されました対日関係部分の主たる内容は、アメリカ議会の意向でございますが、その意向としまして、「日本は、自国の安全保障のために一層の責任を荷うべきである」あるいは「在日米軍の展開に当たって米国が負担している直接経費(米軍人の給与及び手当を除く)」こういうふうに書いてございますが、そういう「直接経費を相殺すべきである。」、それから「日本の経済的地位にふさわしい安全保障上の貢献を担うべくODA及び防衛費を合計した支出の対GNP比が一九九二年までに概ねNATO諸国の平均値になるように増大すべきである。」、こういうようなことを書いてございます。さらに、「大統領は、在日米軍の直接経費に見合う貢献を日本が行うことに同意を得るべく日本と協議する」ようにということが規定されておるわけでございます。
  262. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 大変な内容になっております。  思いやり予算による在日米軍の駐留経費の新たな負担増問題については、七八年から基地に働く日本人従業員の労務費の福利費、管理費、七九年から国家公務員給与水準を超える格差給与、語学手当退職手当の一部負担、これは日米地位協定二十四条一項で本来は米側負担と義務づけられている経費です。にもかかわらず日本政府は地位協定を拡大解釈して、アメリカの要求に対して積極的に負担の増額に応じてきました。政府は、これ以上の負担増は拡大解釈では無理だということになったのでしょう、八七年には地位協定に関する特別協定を結んで日本人従業員の退職、扶養、年末手当、こうした八手当の半額を負担いたしました。そして今度は、一年もたたない八八年三月にはこの特別協定を改正して、八手当の全額を持つということにいたしました。これも地位協定上はアメリカの負担と義務づけられた経費であります。  きのうも問題になっておりました八九年八月のアメリカ下院軍事委員長へのアメリカ会計検査院の報告では、日本の防衛力増強、在日米軍駐留経費の負担増、政府開発援助の大幅増額、防衛関連技術の協力、戦時の受け入れ国支援、平和維持活動の支援、こうした分野にわたって詳細かつ具体的に要求が出ております。その中で、円ベースの経費の項では、円建ての経費としては米軍基地に働いている日本人の給与、公共料金、日常的メンテナンス、契約に基づく艦船の修理が含まれる。これが要求する内容になっているのですが、ここに言っております日本人従業員の基本給、公共料金、日常的メンテナンス、契約に基づく艦船の修理費、これは地位協定二十四条一項の本来アメリカが負担すべき経費であると思うのですが、どうですか。
  263. 重家俊範

    重家説明員 先ほど、米議会会計検査院の報告書についてお話がございましたが、これは米議会の一部の考え方等をまとめたものでございまして、アメリカの行政府から我が方に対しまして、具体的な項目等について具体的な要請が行われておるというわけではございません。したがいまして、これをどうするのかということにつきましては、ここでお答えをさせていただくことは適当ではないのではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、政府といたしましては、日米安保体制の効果的運用という観点から、現行の地位協定及び現行の特別協定の中でできることを最大限行うべく努めてきているところでございます。この問題につきましては、今後とも自主的に考えていくべきものであるというふうに考えております。
  264. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ちょっとお答えになっておりませんけれども、時間ですからやりますと、PACEX89の中で日米の共同訓練、大変な訓練をやっております。それから、今のアメリカの要求に対して、今までの経過から見て、これを自主的という名によってほとんどみんな認めてきたということ、それから、インターオペラビリティーの研究なども大変なところに進んでいるなという問題、結局、軍事面における日米協力体制の拡大強化が一段と進行しておりますし、その内容は日米の一体化であって、アメリカと一緒に日本の自衛隊は戦え、そういう自衛隊づくりだ、こういう方向に進んでおります。これは、日本国憲法が厳然としてある中で全く相入れない事態、これをさらに進めるものでありますので、私は厳しく抗議をして終わります。
  265. 吹田愰

    吹田委員長 次に、広瀬秀吉君。
  266. 広瀬秀吉

    広瀬委員 最初に、防衛二法の審議に関連をして、外務大臣においでをいただきましたので、日本の対朝鮮政策について、特に北半分の朝鮮民主主義人民共和国との関係について、今、日朝の関係がまさに底冷えといいますか冬の季節の真っただ中にあるような気がしてならないわけであります。我々も戦後四十五年目を迎えようとしているわけでありますが、戦争が終わって日本の三十六年間にわたる朝鮮に対する支配体制から朝鮮民族が解放されて、その後半世紀に近い期間、何らの外交関係あるいは国交の関係改善がなされないままに進んでいる、そういう異常な状態にある。世界に国をなすものは今や百八十数カ国というような時代を迎えて、たった一つ、一衣帯水の朝鮮民主主義人民共和国とだけはいまだに関係正常化が行われない、これは日本外交の戦後における一つの恥ずべき点だと私は思っているのですが、その辺のところをまず外務大臣からお伺いをいたしたい。
  267. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のように、北朝鮮との間に日本の外交的な正常な関係が確立されていないことはまことに残念なことだと考えております。  北朝鮮は対する日本政府考え方は、去る三月に竹下総理が国会で御答弁を申し上げております考え方と、現海部内閣におきましても何らの変化はないということをまず申し上げておきたいと思います。北朝鮮と日本との間の外交関係が一日も早く改善をされていくことが望ましいという考え方を持っております。
  268. 広瀬秀吉

    広瀬委員 この委員会で前の宇野外務大臣にも二回にわたって聞いたのですけれども、全く同じような答弁であった。そういう状態で大変遺憾だと言われながら、さてそれではどうしたらいいのかという点について、両国が友好的に関係改善に向かって一歩でも二歩でも新しい展開を示せる、そういうものについて、外務大臣としてのお考えが何かあってしかるべきだろうと思うのですね。  とにかくもう半世紀も植民地抑圧の清算も終わらない、贖罪も終わらない。なるほど、言葉の上ではようやく竹下総理が三月三十日の衆議院予算委員会において一定答弁をされて、過去の事態をよく認識して自覚をしている、そして反省をいたします、それからまた、戦後の問題についても全く疎遠に打ち過ぎておった、このことも大変に遺憾に思う、そして自覚と反省の上に立って関係改善を進めたいと思っておりますという趣旨答弁をされて、我々、ことしの七月に朝鮮民主主義人民共和国の第十三回世界青年学生祭典に招かれて行った際に、ホ・ダム書記とお会いした際にもそのことを申し上げました。幾らかでもそういう遺憾の意を表明される、反省もされる、そして関係改善に向かって進みたいという総理大臣としての意思表明がございました。その点につきましては、朝鮮側も、これは一定評価はできる、しかし、その後一体日本国政府が我々との関係改善の方向に向かって具体的に何をなさいましたか、こういう反問をされたときに、我々は何一つ答えることができない状態になってしまうわけです。朝鮮側としては、総理がそういう方向を示されたならば、友好親善の方向に向かっての何か具体的な施策というものが形を持ってあらわれるであろう、こういうように考えるのは当然だと思うのですね。それがなされていない、これが現状だろうと思うのです。その点について、政府としても前提をつけずに両国政府同士で話し合いたいということも言われておるわけであります。そういうような立場に立って、両国政府同士でひざな突き合わせて話し合えるというところに向かって実現可能な何かいい知恵はないのか。友好親善の総理答弁を裏づける具体的な友好的な措置が政府によってとられない限り、これはいつまでたっても言葉だけあって一向に実行されない、こういうことになるのじゃなかろうかと思うのですね。だから、友好親善を求める方向に向かっての具体的な措置として外務当局は何を実行されるか、そういう具体性を持った答弁をいただきたい。
  269. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員が両国の関係の改善に大変御心痛をいただいていることに敬意を表しております。外務省といたしましても、何もしないで、竹下総理が発言をし、北朝鮮に対する日本政府考え方というものを国会の場で申し上げているということだけではなしに、第三国におります日本国の大使館から北朝鮮の大使館の方にお電話をかけ、再三お話し合いの場をつくるべく今日まで努力をしてきておりますし、その時点におきましては、大変積極的な対応をちょうだいする状況ではなかったという報告を正式に受けております。  なお、先生の御指摘のように、外務省としては、引き続き第三国を通じまして、日本の大使館から先方の大使館に対して一日も早く前提条件なしに話し合いができるような窓口を設定するための接触を続けてまいりたい、このように考えております。
  270. 広瀬秀吉

    広瀬委員 中山大臣は、過般の九月二十六日の国連の総会で演説をされました。実に立派なことを言っている。私もこの格調の高い演説全文を外務省からいただきまして、読ませていただいたわけでありますが、こういう国連の総会で、国際舞台で、大舞台で演説をされたわけですから、世界一の経済大国になった日本の外務大臣として実にふさわしい演説だと私は拝見したわけなんです。「国際社会は、対立から対話へ、抗争から協力へという大きな変化の中にあり、地域紛争の恒久的解決、繁栄の持続、地球環境の保全、人間尊重社会の実現等のグローバル・チャレンジの時代を迎えております。」まさにそのとおり、実に立派なお考えだと思うのですね。そしてまた、「東西関係における肯定的な変化は、地域問題、地域紛争の話し合いによる平和的解決にはずみをつけています。」こういう認識も持たれて表明されておるわけですよね。なるほど今お答えになりましたように、第三国を通じてというようなこと、これを私流に理解しますと、近い国で中国があります。北京に日本の大使館がある。そういう大使館を通じて朝鮮民主主義人民共和国の大使館との接触というようなことが、これは同じ北京のことですからあり得るとは思うのですけれども、そういうようなまどろっこしいことをやらずとも、日本政府がもっと友好親善の手を伸ばして、日本独自の立場で具体的な措置というものがやれないのか。こういう点が非常にいらいらするような、もどかしい気持ちがあるわけで、私は大変不満なんです。もっと主体性を持った自主的なアプローチというものがあり得ていいんじゃないか、そういうように思うのです。  先般も総理と、ちょっと立ち話ではあったけれども、あなたも竹下総理のあの考えを全く踏襲をする、全くその気持ちでやりたいということをおっしゃったんだから、解散・総選挙が近い、新内閣がどうなるかわからぬというような状態だけれども、それはそれとしておいて、あなたの内閣の中でこの朝鮮問題を打開をする、解決をするというぐらいの気持ちになってもらいたいという要望を私からも申し上げたわけですが、私もそのつもりで一生懸命やらせてもらいます、こう総理も言っておられるわけなんです。  そういうことですから、特にこういう立派な国際認識を持たれ、それを演説の中で言われる大臣が外交を担当されているわけですから、これは何か知恵があってしかるべきであらうと思うのです。  それで、日本の非友好的な態度、朝鮮側ではむしろ敵視政策とまで言っているのですよね。いつでもそう言う。我々は、そう敵視政策を持っているわけではないだろうとむしろ弁明をし、かわって釈明をしているようなわけなんですけれども、しかし、向こうがそう見るのは、特に向こうから政治関係のお客さんをお迎えする、政府のある程度高級レベルの人たちなんかが――かつて、そうトップレベルと言わないまでも、朝日友好協会の副会長をやっておられた玄峻極さんが来られた。それは日朝漁業暫定合意書の延長を目的にしてその交渉のために来られるというときに、日本政府がビザの発給を断ったというような国際的な非礼なことがございました。それはやはり国交がないというところから来るわけでして、政治的な発言、それから会合への出席なんということは一切やらぬでもらいたいという一札をとられてビザをもらう。それに新聞記者が承知しないで、会見を申し入れる。そして、どうだこうだとインタビューをされる。そういう場合に、率直な発言をしましたら、それがとがめられて、政治的な発言をした、政治的な行動をした、入国目的以外の行動だというようなことで、もう次は来ないでもらいたいというようなことでビザの発給を停止をするこういうようなことがあったのですね。例えば、元外務大臣をやられ、我々が行っていつもお会いをする朝鮮労働党の書記であり、前に大臣もやられたホ・ダム書記、この方なんかは日本のこともよく承知をしておりますし、日本の政治家で行った人たちなんかは大概の人が会っておるわけです。こういう人たちについて、無条件に来ていただいて、向こうも政治家なんですから、国内へ入ったって言論の自由のある日本なんですから、憲法上もそういう国なんですから、そういう点についても余り条件なんかをつけない、こういうような立場ぐらいとれないのか。七月に行きましたときに、課長クラスの人とホ・ダム書記と会った後雑談をしたわけでありますが、一番あなた方が敵視政策と思っているのは具体的に何なんだと実はざっくばらんに聞いてみたのです。そうしましたら、この前、ここでも私が質問をいたしましたが、新潟で卓球の国際大会をやったときは、法務省の当時の熊谷局長質問をいたしまして、これを受け入れるか、受け入れます、それはもう卓球の競技をやるために来るんだということで、スポーツの目的ということでビザもいただいて、来たわけです。どころが、新潟で、朝鮮総連の支部がある、下部機関があるわけでして、そこが昼食パーティを競技の間にやったわけです。そこへ選手団が出席をしましたら、途端にこれは目的外の行動である、こういうようなことで、こういうものは渡航目的にはないんだ、こういうことで非常に失礼な態度で接したというようなことなものですから、途中から競技をやめて、あす決勝戦で恐らく優勝したであろうに、本国と相談して帰ってしまった。ああいうような非礼なことはもう我慢がなりませんということなんかがあるわけですね。  そういうようなことで、もう本当に前提をつけずに、将来に対して政府間接触という立場でいくためには、向こうの高級レベルの政治家もあるいは官僚も呼ばれる、政府の高級的な地位にある人たちもお呼びをしてそこから話をつけるというような、やはり何かそういう具体性を持った一歩の前進というものがないとこれはだめだろうと思うのです。  あるいはまた、インテルサット、日本のKDDが行って向こうでも準備をした。そしていつでも、日本の郵政大臣の判を一つ押してくれればインテルサット条約機構のオブザーバーのような形で、これは正式な会員にはまだなれませんけれども、そういうことで放送衛星通信というものがすぐにでもできる状態になっている。それに対しても、ソウル・オリンピックに参加をしたらというようなことまではいったんですけれども、参加をしなかったということでそれもだめになってしまったというようないろいろな問題があるのです。  あるいはお互い貿易のそれぞれの事務所をピョンヤンと東京に設けたらどうかというようなことなんかもあったわけでありますが、そういうことなんかについても、アメリカ筋からはそういうことを認めるのじゃないかというような情報がきょうあたりの新聞にも載っておりますけれども、そのほか申し上げたら切りがありません。日朝友好議連での話で我々の方からむしろ提起した問題でも片づかない問題が多々ある。そういうようなものを一つ一つどれでもいいからまずやるというような態度はとれないものでしょうか。
  271. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私も、外務大臣をお引き受けして以来、この朝鮮半島の平和、安定への方向というものをどのように日本としては積極的に協力するかということについて重大な関心を抱いております。  御案内のように、先般ピョンヤンを訪問された米国の前のアジア担当の次官補であったシグール氏と私はもう十数年来の友人でございまして、私はちょうどアジア・太平洋の閣僚会議に出張する朝でございましたが、午前八時から朝食をともにしてピョンヤンのお話を実は承っております。そのようは、外務大臣としてはできるだけこの北朝鮮との間の問題を解決するための糸口、そういうものに対して実は心を砕いているということを申し上げておきたいと思います。  なお、御案内のように、先生も今私の国連演説を褒めていただきましたけれども、歴史は大きな音を立てて変化を起こしているわけでありまして、ヨーロッパの今日の変化、それにはそれなりの長い歴史が積み上げられてきたと思います。しかし、ヨーロッパに比べて、この東西の対立の緩和そして対話の時代、協力の時代へ向かう中で、アジアはこれからどのように変化を起こしていくのか。その変化を日本政府としてはいち早く認識をして、そしてその平和な環境を醸成していくために日本国の政府としてもできるだけの努力をしなければならない、このように私自身は考えております。
  272. 広瀬秀吉

    広瀬委員 大臣も忙しいようですので、三十分ぐらいという約束でしたから余り深く問題を掘り下げることができないと思うのですけれども、そういうお気持ちを持っておられる。米ソ両超大国を両極にした東西対立の構図というものあるいは枠組みというもの、そういうようなものが国際政治の中で今大きく音を立てて変化し、ソ連のペレストロイカを初め、東欧でもあれだけの社会民主主義的な方向への、市場原理を認める方向あるいは複数政党を認める方向あるいはまたさらにもっとより広い範囲で自由をというような要求が出て、今本当に大変な戦後政治の大転換の時期だ、国際政治の大転換の時期に来ている、こう思うのです。  その認識では一致しているわけですけれども、そういう点で、朝鮮における南北の問題というのも、置きかえてみれば、東西関係のはざまで、三十八度線の休戦ラインなどというのもできたりして両方に分断をされておる。今や東西両ドイツでは、この間コール首相が再統一の問題を構想して、いろいろ憶測はありますけれども、とにもかくにもそういうところまで来て、ベルリンの壁は壊れた、なくなった、こういう事態を迎えておるわけです。  そしてまた、一番日本に近い北半分に対して日本が何もしていなかった。それから、アメリカ軍が軍隊を送り、そしてまた経済的にも日本やアメリカの相当なてこ入れもあって、韓国も非常に発展をして、これはこれなりに結構なことです。同じ朝鮮民族の国家でありますから、アメリカもシグールさんが行ったのですから、日本だって大臣が行ったってちっともおかしくないわけだし、アジア局長が行かれたってちっともおかしくないと思うのです。そういうような一歩踏み込んだ、一皮むけた具体的な対策というものをやっていただかなければならない、そういうように思っているのです。これはひとつ頭に置いてください。返事は要りません。  ただ一つ、この際、私の日朝問題を何とか早く友好的な方向に持っていきたいという気持ちから大変遺憾なことは、このすばらしい演説の中でたった一つ、私が大臣の真意をはかりかねることがある。冒頭におけるこれだけの立派な認識を持ちながら、なぜ朝鮮半島問題で――今まで日本政府が、南北の自主的平和統一を支持する、これは歴代総理が常に本会議で我が党が質問すると言明してきたことです。そしてそれの方向に向かってあらゆる環境づくりをしていく、自主的平和統一をする、そのことを支持するのだという態度を持っておったのですね。したがいまして、朝鮮半島は一つである、朝鮮民族は一つであるということを北も南も同様に言っているわけです。これは南の場合だって、七十何%というのは常に朝鮮は一つだという、国民投票をしても世論調査をしてもそういうことになることだし、北は国家を挙げてそう言っているわけです。したがって、二つの朝鮮というものに結びつくような行動というものは、これは北側にとっては一番不愉快きわまることなんですね。その辺のところで、その方向をむしろ是認するように、国連加盟の問題について「日朝関係改善に努力するとともに、南北対話のための環境作りにも貢献したいと考えます。更に、朝鮮半島統一に至る過渡期の措置として、」ここから先が問題なんですが、「南北が同時であれ別々であれ国連に加盟することを、国連の普遍性を高めるとの観点からもこれを歓迎し、支持するものであります。」というこの部分は、そういう今までの日本政府の態度、朝鮮半島の南北の政権が二つの朝鮮に結びつくような策動ではないか、政策ではないかと言って一番不愉快に思うところをずばり出したような気がしてならないわけでありまして、自主的平和統一という問題と南北別々、韓国が先にということだって結構ですよというような言い方にとれるわけですけれども、その辺のところはどういうお気持ちでやられたのか、お伺いをしておきたいと思うのです。
  273. 中山太郎

    ○中山国務大臣 朝鮮半島におきます平和と安定が確保されて平和的な統一の日が一日も早く来ることに私どもは何らの異議を唱えるものでもありません。また、南北の両国が、両国と申しますか、韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国がそれぞれ国連へ加盟する条件が整って申請をされるという場合について、これを妨害する意思も全くないわけでありまして、国連加盟国が日本国の周辺に一国でも多く誕生するということは私は好ましい現象である。だから、こういう状況の中で、大韓民国であれ朝鮮民主主義人民共和国であれ国連加盟の申請をされる場合には、日本としては条件が整っておれば何ら異議を唱えるものではありません。この点だけは明確に申し上げておきたいと思います。
  274. 広瀬秀吉

    広瀬委員 大臣、これは大分時間がたっちゃいましたので時間が心配なんですけれども、そのお気持ちはそれはそれなりに理解できますが、そうすることによって自主的平和統一というのがより一層逆の方向に向かっていってしまう。善意でおっしゃったのだろうとは思うけれども、自主的平和統一への方向からは逆に離れていく、乖離していく、そういう方向性を出されたのではないかという非常に大きな心配があるし、そのことに対して、我が党の嶋崎議員が我が党の朝鮮対策特別委員会を代表して使節団で行きましたが、向こうでは非常に不愉快の念を示された、そういうようなことがまさに自主的平和統一を支持するという立場からは出てこないはずであるというのが北の、朝鮮民主主義人民共和国の考えである。そういう点を踏まえてこれからも賢明な、賢い、クレバーな選択をしてもらうように。この問題だけをやっていますと肝心の防衛問題の方をやれなくなりますので、きょうはそれだけでこの論戦をとどめますが、どうぞひとつ日本政府が言ってきた自主的平和統一を害さないように、その方向に向かうような施策というもの、そして、友好への一歩前進というものを具体的な姿で一つ一つ出していくような方向で外務大臣としてもお考えいただきたい、このことを要望して、きょうはお帰りいただいて結構であります。  それでは防衛二法の方に話を進めさせていただきます。  もう二日間やっておりまして、前に何人かの皆さんが随分質問をされました。今度の防衛二法も、幾分でも、少なくとも自衛隊を増強して充実させていくということであり、常識的に考えれば、軍備を少しでもふやしていく方向である、こういうような内容になっているわけであります。自衛官の数をふやす、あるいは予備自衛官の数をふやす、こういうことであります。そのほかまた、中期防に従っていろいろ兵器、装備等の質的改善等を図っていく、こういうような方向にあることは間違いないわけであります。  今国際的な情勢は、随分皆さんからも言われましたけれども、本当に米ソ対立ということ、あるいは対決と言ってもいいでしょう、そういう時代の終えん、冷戦構造というようなものが終わって,そして人類は共存共生の時代に入った。その背景にはいろいろな経済的要因もある。また、核抑止力に頼って、核抑止力は結局は巨大な軍事費を支出して、お互いもう経済的に耐え得るぎりぎりまで来てしまった。そういうようなことで、国の資源の配分というようなことでは環境問題が今日非常にクローズアップされてきている。そういうようなものを含めて、人間尊重という立場に立ったら、国民大衆の、グローバルな意味では人間そのものの生存を脅かすような時代をつくってしまった。その根源に軍事産業、科学技術の発展というようなものなんかもあって、しかもそれを支える経済的な力はもう限界に達した。  かつて世界を支配したドルの力ももはや、三百六十円から今や、きょうあたりは百四十二円ぐらいですか、そういう状態にもなっている。ひところは百二十円台あるいは百十九円台までドルの価値も下がる。しかも、かつての対外債権国、八千億ドルと言われたような巨額の対外債権を持ったアメリカが今や逆に五千億ドルもの対外債務を持つ世界最大の債務国に転落したというような状況、そしてまた社会主義で国を立て、共産党の一党独裁的な政治体制をしいてきたソ連も、アメリカとの対抗というようなことで軍備増強に次ぐ軍備増強をしてきてもはや耐えがたいところに来て、しかもこれ以上経済の停滞は許されない、国民生活をもっと豊かにしなければならぬという要請、そういうもので、国の限られた資源を軍備に向けるか、国民生活、福祉に向けるかという決定的な土壇場まで来たと見ていいような状況まで来てしまった。  そういう中からINF合意が生まれたり、そしてまたSTARTも、少なくとも半分ぐらいに減らそうじゃないか、地上軍もそれぞれ減らそうじゃないかということが米ソ両方から言われている。そして、軍事費もそれぞれに削減しようということがそれぞれの大統領あるいはゴルバチョフ書記長、こういうようなところから提案をされている。そしてまた、とこ数年来、毎年一遍ぐらいは両方の首脳が会ってお互いの信頼を高めている、CBMというのですか信頼安全醸成措置というような段階を迎えている。そういう中で、ひとり日本だけがここ数年来五%以上、六%、七%に近い軍事費の増大を計上をしている、こういうことについて防衛庁長官としてどんなふうに御所見をお持ちですか。
  275. 松本十郎

    松本国務大臣 広瀬委員御指摘のとおり、世界は大きく動こうとしております。冷戦構造も終わりを告げようとし、特にヨーロッパにおきましてはNATOとWPOの対峙というものが大きく変貌しようとしていることは事実でございまして、世界の流れは軍縮と対話の方向に行っていることは事実でございます。  ただ、人間の社会というものは、やはりきのうからきょう、きょうからあすへと歴史が流れておるわけでございまして、一瞬にして舞台が百八十度変わるということはなかなかないわけでありますが、とりわけアジア・極東におきましては、そういう欧州に起こっておる大きな流れが一日も早く実現をして、そうして文字どおり平和な姿が現出することを期待するわけでございます。しかし、まだまだ極東の実態はそこまで行かないわけでございまして、期待と現実、理想とありのままの姿とい、うもののギャップは抜きがたいものがあるわけでございますので、そういう中にあって、私たちといたしましては、いかに防衛政策を樹立し、対処していくかということが課題になるわけであります。  そして、その際どうしても御理解いただかなければなりませんことは、日本の場合、五十一年のあの大綱というものに基づいて、専守防衛に徹するにしても最小限この程度までは自衛力を持たなければやっていけない、こういう考えで来ているわけでございまして、せめてその水準に達するためは最後の努力をしているというのが今の姿でありまして、平成二年度の予算が実現確保できればおおむねその水準に達するとは思いますが、そういうことで、大きく増強するというよりは最小限のところに到達するためにおくれながら走っておる、歩いておる、それが今の姿でございます。どんどん増強しているという側面をごらんになるかもしれませんが、ゼロからスタートした日本としてはまだまだ十分なところまでいっていないので、十分なところまで到達しようと努力しているところであるということの御理解をお願いしたいと思うわけであります。
  276. 広瀬秀吉

    広瀬委員 お答えが懇切丁寧にあったわけでございますが、今国際的な軍事費の比較で、いろいろ物差しの違いや何かで比較はしかく簡単ではないと思いますけれども、最近では米ソを除いたらその次は日本の軍事費が一番高いのじゃないか。これはNATO方式で軍人恩給などを入れるとか入れないとかいう議論があったり、また為替相場の変動による計算の難しさなんかもあるだろうし、あるいは武器、兵器等の中身にもよるだろうが、少なくとも軍事費として支出をするものです。日本は経済大国にはなっても軍事大国にはならないのだというのはだれしもが認める、日本の政界、国会においても常識になっている言葉だと思うのです。しかしながら、二億三千万と二億六千万、人口的にもほぼ拮抗するような米ソに次いで軍事費が多いのは日本だろう、もうイギリスを抜いたというようなことが言われているわけです。いろいろな比較があって、第六位だという説もあったりしますけれども、防衛庁としては世界第何位と理解をしておるのですか。数字をもってお示しをいただきたい。
  277. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から日本の防衛費が先進国第二位、世界で第三位というふうな御発言がございましたが、これは先般発行されました「ミリタリー・バランス」の本文に書いてある数字でございます。なお、同じ「ミリタリー・バランス」の巻末の防衛費の比較におきましては、日本の数値は第六位というふうになっております。  先生もおっしゃいましたように、各国の国防費の比較といいますのは、定義、範囲それぞれ異なっておりまして、何をもって比較をすればいいかということがなかなか困難な問題でございまして、私どもは今まで「ミリタリー・バランス」のいろいろな比較をもってお答えを申し上げている、こういう状況でございます。
  278. 広瀬秀吉

    広瀬委員 私もあっちからこっちからいろいろ資料をあさって調べてみたのですけれども、一九八八会計年度各国通貨による金額ということで、防衛関係費三兆七千三億円、旧軍人恩給費一兆五千九百八十九億円、海上保安庁千二百五十三億円、NATO方式で言えばこの三つを全部足したものが広い意味で軍事費ということで、イギリスなどもそういう中に含まれているし西ドイツでもそうだというふうに聞いておりますが、これを合わせますと五兆四千二百四十五億円になる。これを仮に百四十四円で換算をいたしてみますと三百八十七億ドルになるわけです。米ソはけた違いで大きいわけでありますが、アメリカが二千八百六十億三千五百万ドル。ソ連は、二百何億ルーブルというような公式的なソ連発表があったようでありますが、ゴルバチョフさんが実際には三・八倍出しているのだというように訂正をされて七百三十三億ルーブル、ドルに直しますと千二百九十億ドルというまさにけた違いの大きさになるわけであります。イギリスは軍人恩給費などを含めて日本円に直せば四兆五千三百五十億円、これをドルに直せば三百五十七億ドルだ。先ほど私が申し上げた三百八十七億ドル、百四十四円で計算してもそのくらいになるということになれば、軍事費の支出ではもうイギリスを抜いた。同じように計算して西ドイツは三百五十億ドル、フランスが三百五十四億ドル、イタリアが百九十一億ドル、こんなことになります。世界の経済的な大国を上位から出してみてこういうような結果になるという数字もあるわけなんですが、もう一遍この数字についてどこかおかしいところがあったら御指摘をいただきたい。あなた方は、こういうようなことで世界の主要大国のドル換算の軍事費はほぼこんな順序かなということを肯定されますか、否定されますか。
  279. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 ただいま先生のお述べいただきました数字でございますが、防衛関係費に旧軍人恩給費、海上保安庁の経費を足しますと五兆六千三百二十億円となるというのは、そのとおりでございます。ただ、NATO定義が果たしてそれで正しいのかどうかということに関しましては、実はNATO定義そのものが秘になっておりまして私ども詳しくわかりません。おっしゃいますように、NATO定義の議論をいたしますときに軍人恩給費とか準軍隊と申しましょうか、そういう経費を合わせて議論されるごとが多いわけでございますが、果たして今申し上げましたような経費を足したものがNATO定義と一致するかどうかということは、実は私どもわかりません。  それから、あえて申し上げますと、諸外国のNATO定義の場合には恩給費の一部が入っているようでございますけれども、我が方の場合は、自衛隊と旧軍隊というのは一応関係がないというようなこと、また、NATO定義の中でも、すべての恩給費でなくて、どうも職業軍人の恩給費ではないのだろうかという考え方もあるようでございます。それから、準軍隊に関しましても取り扱いがまちまちでございまして、特に我が国の場合、海上保安庁は法律で軍隊の機能を営まないというようなことが書いてございますので、こうしたものを足してNATO定義として各国と比較することが果たしていいかどうかという問題がございますが、数字だけで申し上げれば、ただいま先生のおっしゃいました数字は我々の持っております数字と合致しているものでございます。
  280. 広瀬秀吉

    広瀬委員 この数字のとり方は、私もイギリスでは軍人恩給費を全額入れているのか、あるいはどういう限定条件があるのかそこまで詳しく調べておるわけじゃございませんから、結局この論争は若干水かけ論的なものにならざるを得ない要素を最初から持っているわけです。日本が世界一の高物価の国であるというようなこともあるいはあるかもしれないという気持ちもあるのです。しかし、少なくともこういうような数字が日本の学者や評論家の人たちなんかから出てくるというようなことが最近相当多いわけでありますし、また、アメリカあたりの見解なんかもそういう認識を持たれている。したがって、今までアメリカはソビエトを対決する存在、相手としておったわけでありますが、むしろ日本こそが脅威であるというように感ずるようになりつつある。これは主として経済の面だろうとは思いますが、今、日米安保条約があって、アメリカのプレゼンスによって平和が保たれておるのだという認識も国民の間にもあるわけでありますから、それらの点は譲るにいたしましても、今相当な軍事大国になりつつあるのではないかという疑いは国民がもう持ち始めている、そう思って差し支えないだろうと思うのですね。  そこで、私はいつもこの防衛二法審議の際に日本国憲法を引き合いに出すわけでありますが、これは単なる理念論争と一笑に付さないで、やはり防衛庁長官にも真剣に考えていただかなければならぬ問題だと思うのです。これは、経済大国にはなっでも軍事大国にはならないのだ、そして平和憲法の前文に基づいて日本は国際の信義に依拠して、人類の生存、国民の生々発展を期するのだということが言われているわけです。そして第九条を持っているわけであります。第九条は、少なくとも戦争の放棄そして非武装、戦力の放棄、こういう内容だと思うのですね。しかし、少なくとも今世界は主権国家時代で、その独立の主権国家である以上は、やはり自衛権というものは当然あるだろう、これは憲法も否定するところではないという、言うならば解釈憲法ということで、我々違憲説をずっと長いこととってきたわけでありますが、しかし、我々もこうして国会で参加をして自衛隊法あるいは防衛庁の法の審議をしているわけでありますから、法的に存在をするそういう自衛隊である、防衛庁である、こういうような観点はしっかり踏まえておるわけでありますけれども、やはり憲法前文を何回読んでも、九条を何回読んでも、どんどん軍備をふやして専守防衛という枠があったり、あるいは非核三原則があったり、こういうものを国是としていくんだという、そういうものなんかも実はそういう点から出発をしているのじゃないか。これはやはり憲法が明文をもって自衛権を認めているわけじゃない、解釈上そういうことが許される。こういう立場だろうと思うのですね。  したがって、そういうところからいえば、これはもういろいろなところで政府も言っているわけですけれども、節度ある防衛力。一%枠を突破したときの閣議決定をした後、官房長官談話が出ているわけでありますが、「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきたところであります」「我が国の方針は、今後とも引き続き堅持する所存であります。」これは当時の後藤田官房長官だったと記憶しておりますが、こういうことが基本だろうと思うのですね。  したがって、憲法が平和主義に徹して、非武装、戦力を持たない、戦争を放棄する、自衛戦争だからいいんだということは解釈上出てくるものであるということで、それも専守防衛の枠の中でというようなおのずからなる枠というものがそういう中から設定されてきている。そういうものは防衛庁長官としてはしっかり踏まえておいていただきたい。そういう希望を私は申し上げざるを得ないわけであります。世界情勢がここまで緩和の方向、そして対決から共存、共生、そして人類の生き残り、そして力があったら地球環境をそのために守っていこうじゃないか、その方にむしろ国家的資源配分をしなければ人類は生き残れないぞというところまで来た段階において、もう一遍憲法の原点を読み直すというか、認識し直すというか、自衛隊の存在自体も、そういう角度を常に忘れない、そういうところが必要だろうと思うのですが、その辺、長官からお伺いをいたしたいと思います。
  281. 松本十郎

    松本国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国の防衛政策、専守防衛に徹しまして、憲法を遵守しながら、経済大国にはなってまいりましたが、絶対に軍事大国にはならない、この信念には変わりはございません。  一言申させていただきますと、ことしの一月ですか、総理府が世論調査をやりまして、国民がどの国を軍事大国と思っているかという調査をしたのですが、ソ連については八八%が軍事大国と考えております。アメリカについては八五%、中国については二二%が軍事大国だと思いますと言っておるのですが、事日本につきましては六・五%でございまして、大方の国民も日本の現在の姿というものは決して軍事大国ではない。あるという方が六・五というのは少ないということでございまして、国民の皆様も今の自衛隊の姿が節度ある中で整備されているという御理解をいただいているものと考えたいわけでございまして、そういう意味で、絶対に今後も軍事大国への道は進まないということだけは、委員御指摘のとおり憲法を熟読しながら拳拳服膺してまいりたいと考えております。
  282. 広瀬秀吉

    広瀬委員 今松本長官は、軍事大国とは思っていないという人が九三%だ、こういうことを言われましたが、それを余り引用されてはいかぬのじゃないかと私は思うのですね。  実は、これもまた論争をしたら切りのないところだと思うのですけれども、最近防衛白書を出されました。私も質問するに当たって一生懸命読んでみました。特に前段のところで「極東ソ連軍の軍事態勢と動向」、日本の自衛隊はやはり対ソ脅威あるいは上陸、侵攻というようなこと、仮想敵国と言わないまでも、事家上は少なくともそれを目標にして組み立ててこられた、そういう認識はひが目の認識ではないだろうと思うのですね。  そこで、防衛白書が果たしている役割というもの、これはやはり正確でなければならぬだろうと思うのですね。ところが、強調し過ぎているという点が最近良心的な軍事評論家等からは指摘をされておりますね。一つの資料を用意してみました。一九八〇年から一九八九年まで。防衛白書では主要水上艦艇、これは一九八三年からしかございませんが、順繰りに、八十五隻、八四、五、六年は九十隻、そして八七年に九十五隻、一九八八年には百隻、一九八九年も百隻こういうように白書には出ているのです。  それで、次には潜水艦、一九八〇年で百三十隻と推定をしている。そして原子力潜水艦はそのうち六十隻である。八一年がちょっと数字がないのですけれども、一九八二年には百三十五隻、原潜六十五隻。八四年まで同じですね。そして八五年になると、潜水艦百四十隻、原潜七十隻。八六年も同じと推定をしている。八七年では百四十隻、原潜が七十五。八八年同じく、八九年も同じく、こういうように白書には書いてあるわけですね。これだけずっと明確な数字を示しておるわけです。  総隻数では、七百八十五、八百、それから八二年がちょっとなくて、八百二十、八百二十五、八百三十五、八百四十、八百四十、八百四十五、八百四十隻、こういうように総隻数を挙げておられる。  アメリカの「ソ連の軍事力」、米国防省で出しておるはずでありますが、アメリカの国防省が出しておるのでは、これは八三年以前はちょっと資料がないのですけれども、八四年、防衛庁の見積もりの水上艦艇九十隻に対して八十九隻、八五年では八十七隻、八六年は防衛庁見積もり九十に対して八十五、八七年は九十五に対して八十六と見ておる。それから、八八年の百隻に対して七十七、八九年は百隻に対して六十九隻、こういうように見積もっておるのですね。  潜水艦になると、またこれも大分差があります。一九八五年からの数字を挙げますと、防衛庁は百四十隻と言っているが百三十四隻、そのうち弾道ミサイル潜水艦が三十一、通常目的潜水艦が百三隻、こういうように言っております。同じように八六年百十五隻、二十五隻、九十隻、八七年では百二十隻、三十二隻、八十八隻。一九八八年では百四十隻に対して百二十二隻、そして原潜七十五に対して三十隻、通常潜水艦が九十二隻。八九年では全体で百十八隻、弾道ミサイル潜水艦が、これは核弾頭の載ったものという意味だろうと思いますが、二十六隻、そして通常潜水艦が九十二隻。こういうような見積もりを出しておるのですね。  そして総隻数についても、一九八三年度でも五十五隻の差がある。さらに八四年度では十九隻の差がある。自衛隊の防衛白書の方が多く見積もっているわけです。八五年度は二十五隻余計に見積もっている。八六年はこれはまた大変な差が出まして、四百三十隻の違いがある。八七年では、これがまた四百二十三隻の違いがある。アメリカの方が見積もった方がうんと少ないわけです。そして八八年が四百二十一隻の差があるわけですね。それで八九年度ではこれがさらに開いて、防衛庁の白書にあるのは八百四十隻だけれども、アメリカの「ソビエト・ミリタリー・パワー」というそこの見積もりは二百六十二隻である。これは約六百隻もの差がある。五百七十八隻の差がある。これはもうべらぼうに差が出ているのですね。  それで、「ミリタリー・バランス」なんかでも相当な差が見られました。一々言っていると時間がかかってどうしようもありませんからこれ以上言いませんが、「ミリタリー・バランス」における数字とも大変な差があるのですね。それからジェーン海軍年艦等を見ましても大変な差が見られます。こういうようなものは一体どっちを我々は信頼したらいいのでしょうか。こういうものがちゃんと出ておるわけですね。  したがって、松本大臣がおっしゃられた九三%は日本は軍事大国だと思ってないというのも、ソビエトの戦力、ソビエトの極東に対する配備あるいは全体的な軍備の陸海空にわたっての内容というものが非常に誇大に宣伝をされている、書かれているということがあるのではないか。そういうようなところは、これは先ほど長官がせっかく言明されました認識とこの防衛白書のソビエトの軍事力に対する見方というものが余りにも、意図的とも思えませんけれども、意図的に、こういう脅威があるのだからもっともっと軍備をふやさないといかぬのだということを国民の間にいつの間にか浸透させようという意図が働いておるのではないか。そうしてまた、そういうことで予算獲得のためにもプラスになるというようなところがあるのじゃないかと思うのです。  そのほかいろいろな兵器の部分で資料は大分あるのです。アメリカのSMPとか、いわゆる国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス」だとか、ジェーン海軍年鑑だとか、そんなところを見ただけでもこういう差がある、その辺のところは一体どうなっているのかなと疑わざるを得ないわけなんですね。その辺のところをひとつはっきりさせてください。
  283. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま委員から防衛白書における極東ソ連軍の軍備力が非常に過大に見積もられているのではないかという御質問でございますけれども、防衛庁におきましては極東ソ連軍、一般にソ連軍の軍事力につきましては、公開の各国の資料、先ほど委員の方からも御指摘されたいろいろな資料を参考にしつつ、また、我々の持っております情報等を総合いたしまして判断をして、それで防衛白書に記載しているわけでございまして、決して意図的に誇大に数字を挙げているということはございません。  先ほど委員から、特に米国防総省が公刊いたしております「ソビエト・ミリタリー・パワー」との比較でいろいろ数字を挙げられましたが、私の聞き取れました範囲ではその数字というのはいずれもそのとおりの数字かと思います。その中で、一つまずお断りいたさなければいけませんのは、「ソビエト・ミリタリー・パワー」にいたしましてもジェーン海軍年鑑にいたしましても、それからイギリスの戦略研究所が出しております「ミリタリー・バランス」も、これらのいずれの資料も、挙げている数字については時々その基準の変更が行われております。すなわち、艦船についてはいかなる艦船を含むかというようなことについて基準の変更が行われておりまして、それが実際にその公刊物の中に注として書いてあることもよくございます。例えば「ミリタリー・バランス」の場合は、非常にはっきりとそれぞれの年によって評価の仕方が変わってきているので、前の年と比べながら数字が上がった、下がったというような形の評価には適していないということがわざわざ断ってございます。したがって、一覧表として、この年には白書はこう、SMPはこう、ジェーンはこうという比較は、必ずしも的確な結果が出るということにはならないということではないかと存じます。  それから、特に「ソビエト・ミリタリー・パワー」との比較をいろいろなさいましたけれども、恐らくこれはその艦船を数える場合の基準の違いによって生ずる差かと存じます。我々の方としても、米国がいかなる基準に基づいて船を数えているかということは必ずしもわかりません。これはいずれも具体的な点になりますと秘になっているわけでございます。  例えば、一つは水上艦、主要水上艦の定義自身が恐らく違っているというふうに思われます。あとは、存在する船、これがあるかないかということは比較的簡単にわかるかと思いますけれども、その船がどういうステータスにあるかという点、ここに非常な差があり得るわけで、そこの評価の差ということがアメリカの資料と日本の資料との間に差が出てくる一番大きな原因ではないかと思います。  ちなみに、先ほど外国の公刊の資料は過去等において比較するのは必ずしも適当ではないと申し上げましたけれども、日本の防衛白書の方は基準を一定させて、基準を変更しないでずっと計算をいたしております。したがって、防衛白書の場合は過去との比較は可能であるというふうに申し上げたいと思います。  潜水艦についても全く同様のことかと思います。潜水艦につきましては、弾道ミサイル潜水艦というのは米ソ間のSALT交渉に基づくはっきりした限定がございますので、この数については一般的にどこの国においても差は出てこないかと思います。原子力潜水艦自身についても日本とアメリカの評価においては余り差がないような気がいたします。ですから、むしろ通常型の潜水艦において、艦はあるけれども、その艦がいかなるステータスにあるか、実際に実戦的に部隊に配備されているかどうか、予備艦として港に置いてあるかどうか、そういうようなところから差が出てくるのではないかと存じます。
  284. 広瀬秀吉

    広瀬委員 いろいろ工夫、苦労をされて数字を出しておられるのだとは思いますし、執筆をされる人も、どういうところからどういう的確な情報をとって国民に正しく知らせるか、こういうことでなければやはり白書の意味がないと思うのです。本当にどれだけの脅威があるのか、脅威の目標になっているソビエトの極東軍備配置はどうなんだというような点についても、少なくともゴルバチョフ以前のソビエトならばそういうことであるけれども、ソビエトも最近では極東における軍備も全体的な軍備縮小の中で減らしますということも言っておるのです。  さっきは艦艇の問題を取り上げましたけれども、極東ソ連の「航空戦力は、着実に増強されており、」と五十ページに書いてありますね。その点をやはりSMPの数字を見ますと、戦術航空機は千二百機であり、SMPの八四年版の千八百四十機に比し三五%減になっている。海軍機数は、五年前が四百四十機、今日四百八十機、これは若干の増。爆撃機は、全ソ連で当時八百五十機、今は八百六十機、これも少しふえているというようなことがあります。  また、SMPの数字によりますと、ソ連の航空機生産量は十年前に比べはるかに少ない。表では、一九八六年から八八年の平均で年約六百八十機。戦闘機生産、一九八〇年前は千三百機と言っていた。  こういう資料なんかから見ても、数字が少し正確を欠くというか、ソビエトの軍実力に対する過度の警戒心を国民の中に起こさせようということでの作為があるのではないかと疑わせる面があるわけですね。この辺の航空機の問題についてもちょっと簡単に答えてください。
  285. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 委員御指摘のとおり、航空機につきましても、防衛白書と「ソ連の軍事力」の間は差が出てきていることは事実でございます。ただ、「ソ連の軍事力」におきましては、極東ソ連軍の作戦機について戦術航空機と海軍機のみの機数を掲載しておりまして、その細部、内訳について明らかにしていないわけでございます。それがどういうものを含んでいるのかということがはっきりいたしておりません。一方、白書におきましては、極東ソ連軍の作戦機として爆撃機、戦闘機、哨戒機の機数を挙げているわけでございます。これは恐らく、アメリカ側のその資料の中には入ってない飛行機というものがあることによってそういう数字の差が出てきているものと思います。我々としては決して過大に評価しているものではなくて、非常に良心的に数えたものを掲げているつもりでございます。  ソ連の航空機の生産の状況について、これは我が方は確たる情報、独自の情報は持ち合わせておりません。しかし、その航空機の生産が減ったとしても、これが配備の減に直結するかどうかということは、必ずしもそういうことではないのではないかと存じます。
  286. 広瀬秀吉

    広瀬委員 話題を変えますが、FSX交渉が終わってもう実行段階に入っているのじゃないかと思います。この交渉はつきましても日本の立場から見ると、金は一〇〇%日本が負担をする、日本の技術は全く無償でアメリカに渡します、アメリカの技術には特許料、ライセンス料を払います、日本は得た技術を他に転用はいたしません、そういうように縛られている。アメリカは、自由自在に日本の技術を転用いたします、アメリカは技術提供に制限を加える、こういう内容で、これはいかにも日本が一方的にアメリカから押しまくられて、新しい次期支援戦闘機をつくるに当たってのアメリカとの技術交流日本は武器輸出についても非常にシビアな態度をとっておりまして、アメリカにだけしか認めてないはずであります、これは安保条約のおかげであるのでしょうが。しかも、日本から出した技術がそういうような条件のもとで開発をされ、日本の技術を含んだ航空機が第三国にどんどん輸出をされていく、そしてアメリカはそれでまた利益を得る、こういうようなことになっているのではないかという疑いがあると我々聞いておるわけなんです。その辺のところの進行状況、そういうものがどうなっておるのか、そして今私が指摘した問題はまさにそのとおりなのか、この辺のところをお聞きしたいと思います。
  287. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 御答弁いたします。  先生お尋ねの件は、先般行われましたクラリフィケーションのことをお尋ねと思います。クラリフィケーションにつきましては、米国政府が国内手続に基づきます対日技術供与にかかわる通告を進める過程で、FSX合意を円滑に実施するために取り決めいたしましたものを米国政府が日本政府にクラリフィケーションを要請してきたことを受けまして、日本政府といたしましても、米側の事情を踏まえて話し合いを進めてきたものでございまして、既存の取り決めに加えまして、これはMOUでございますが、新たな合意を行ったり、その取り決めの変更や修正を行ったというものではございません。このような意味合いにおきまして、先生おっしゃいますように日本側が譲歩したということにはなっていないと考えております。
  288. 広瀬秀吉

    広瀬委員 例えば日本から提供したFSXの技術、こういうようなものは、アメリカでそれを使って戦闘機をつくって、さらに営利会社でやるわけですから、その日本からの高度な技術をそのまま航空機に使ったものを諸外国に売るというようなことは、ちゃんときちっと制限されておるのですか、そんなことはないのですか。
  289. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 日本から提供いたします技術につきましてはMOUにもはっきり書かれておるわけでございますが、武器技術供与の枠組みの中で供与されるということになっております。武器技術供与の枠組みで供与されるということは、それを他の目的に使うとか第三国に移転するというような場合には協議が行われるということが規定してありますので、先生がおっしゃいますように、自由に無制限に使われるというふうには考えておりません。
  290. 広瀬秀吉

    広瀬委員 改めて協議するということなんですが、その際また押し切られるんじゃないですか。
  291. 鈴木輝雄

    ○鈴木(輝)政府委員 そのときは、米国から要請を受けました段階におきまして、その武器技術供与の趣旨、それから日米共同開発の趣旨を踏まえまして、慎重に判断していくことになろうと思います。
  292. 広瀬秀吉

    広瀬委員 その際にはまたアメリカの強力な力によって、日米安保条約でおまえたちは米軍のプレゼンスによって、また、共同作戦やガイドラインに基づくそういう方向で恩恵を受けているんだからという立場で押し切られてしまうおそれがある、そうなるとやはり武器輸出三原則等に触れることにもなるのではないか、そういうように思うわけです。  この武器輸出三原則だけではなくて、我々いつも関心を持っているのは非核三原則、これが二・五分の一だとか言われておるわけでありますが、タイコンデロガが沖縄の海岸近くに水爆を落とした、そのまま同じようなものを積んでおったに違いないものが横須賀に入港した、こういうようなことが新聞でも大々的に報道されたわけであります。その辺のところの事実関係というものはどうなっているのでしょうか。その船が同じ時期に来たということなんかがきちんと確認をされているのでしょうか。
  293. 日吉章

    ○日吉政府委員 本件は外務省の所掌でございますので外務省からお聞きいただけるとよろしいかと思いますが、日本側は非核三原則に基づきまして、米側がもし核を持ち込みます場合には米側から事前に協議が求められて日本側の同意を求めてこられるというふうな形になっていると聞いております。
  294. 広瀬秀吉

    広瀬委員 これはまた外務省に改めて聞くことにいたしましょう。  もう時間もございませんので、最後に、先ほど憲法論争を長官との間にいたしましたけれども、そういう立場で、世界の情勢、特に国際政治の枠組みが全く変わって冷戦構造が終えんした、こういう認識のもとで米ソがあそこまで突っ込んだ和解、そして軍縮の交渉に入っている、そして私の立場からすれば、ソビエトも今までのような脅威にはなってこないであろう、これは信頼醸成措置ということが国際政治の舞台で非常に強く叫ばれているようでありますが、やはりそのためにはお互い同士触れ合い、話し合う、こういうことをやったらいいと思うのですね。  きょうの新聞のトップに、これは日経でしたか、ソビエトの極東に日米欧三国の合弁会社を設立して石油化学の大プラントをつくろうというようなことまでも計画されているのですね。今までだったら、ソビエトの力をつけて軍事的脅威に結びつく、したがってそういう方向はできなかった、そういうことが現に行われる時代に入ってきた。ソビエトも、決定的な軍事大国、しかも極東からどんどん軍備を増強しているんだという方向、そういうようなものではなくて、これとの間にもやはり信頼関係を醸成するというような立場で、過般の極東海軍のソビエトの演習に招待を受けたがこれは実益が何もないだろうということで断られるというようなことなんだけれども、やはりそういうところにもどんどん出ていく。これは得るものがなくても、同じようにお返しをしてこちらにも来てもらうというようなことには日米双方からの反発があるかもしれぬがそういうようなことだってやっていく。信頼醸成ということがこれからの共存共生の人類が生き残る道。軍備拡大によって、国民の豊かな暮らしというものが、福祉ができなくなるというそういうぎりぎりのところまで来たような中で、ペレストロイカあるいはグラスノスチ、そういうような政策が本物として定着をしている。今まで完全な支配体制をとっておった東欧に対しても何らの武力行使もしないし、それをちゃんと理解をしながら眺めている今日のゴルバチョフの政権、もうソビエト自体がそこまで経済的にどうにもならない事態に来ているのだろう、したがって、もう全部発想を転換して新思考でやっていこうとされている。そういうようなものとの間にもっともっと軍備で対抗するということでいったら、やはり日本も、これはもう先ほどから軍事大国になったかどうかについて若干のすれ違いはあるけれども、そういうことになって日本自身がまた経済的に今の繁栄を続けることができない、国民の側からの不満がうっせきをするというようなことにもなりかねない日だって来ないとは限らぬわけであります。早目にそういうものから脱却をして、そして本当に世界人類全体が生き残る、サバイバルのための環境保全というようなところに国の貴重な限られた資源を使っていくというような方向にぜひひとつ進めていただく。そのためにはやはり節度ある防衛力。その根源には、少なくとも憲法の明文からは自衛隊の存在を認定するという方向は出てこない。これは解釈上そうだし、法的存在であることは認めるけれども、そういうものと考えるわけです。したがって、そういう点で非常にその原点を踏まえた対応というものを弾力的にとっていかなければならぬだろう、こう思うのですが、最後に長官の御見解を聞かせていただいて、時間が参りましたので、終わりたいと思います。
  295. 松本十郎

    松本国務大臣 委員御指摘のとおり、まず今進んでおりますヨーロッパにおける対話の進展、軍縮、平和への前進が一日も早く速いテンポで進むことを期待し、その流れが世界の動きが極東・アジアにも及んでくることを切望してやまないわけでございます。おっしゃるように、日本とソ連、海を隔てて近い国でありますから、信頼関係の醸成はもちろん大事でございますが、そのためにも、四十数年来の懸案であります北方四島の返還問題を処理して、日ソの間に平和条約が結ばれ、また一方で極東に二十数年間にわたって、それ以上にわたって蓄積されたソ連の軍事力というものが目に見えて激減しまして、我々もそれに対応して軍縮の方向に向かって大きく巨歩を進めることができますように願ってやまないところでございます。そういう理想がアジア・極東に訪れる日が一日も早いことを祈りつつ進んでまいりたいというふうに考えております。
  296. 広瀬秀吉

    広瀬委員 終わります。
  297. 吹田愰

    吹田委員長 御苦労さまでした。  次回は、明十二月一日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十四分散会