○草川委員 問題は
行政機関のやる気があるかないかということにまたもとへ戻るわけでありますけれ
ども、少なくとも、一九七四年に制定をされた
国土利用計画法というのは、当時画期的な
土地政策ではなかったかと
評価をされている面もあったわけです。しかし、この十二条、十三条の実施ということは残念ながら今まで一回もやられていなかった、こういうことになりますね。
これはある学者なりいろいろな研究家の方が言っておるわけでありますが、これまでにこの
法律を適用する機会が一度はあった、こう言うのですね。一九七九年の五月、埼玉県の伊奈町で、
土地区画整理組合が保留地五十三区画、九千五百平方メートルの公売入札を行ったところ、何と二千三百八十一人が押しかけて、公売最低
価格の二倍前後の落札が続出をした。同町は大宮市の北東に位置し云々。こういうことでございますが、当時の人口は二万人弱で、主要交通機関は非常に不便だ、一時間に一、二本のバスしかない文字どおり陸の孤島であった。それまで
宅地としてはほとんど注目をされていない
土地であった。ところが七八年一月、東北・上越新幹線に併設される新交通システムが同町から大宮まで走ることが決まり、一躍、ベッドタウンとして注目されることになった云々。そういうときに同町の
地価も暴騰することになり、
国会において
国土利用計画法の適用を求める論議が行われた。埼玉県の知事もその適用の検討を表明したが、結局適用されずに終わった。そのとき
国土庁土地利用調整課が、新幹線のような広範囲な事業の中で一カ所だけ適用するのはどうか、あるいはこの
地価暴騰が果たして投機的取引なのかどうか慎重になったのが伝家の宝刀が抜かれなかった
理由である、こういうように言われておるわけであります。
要するに、今回いろいろと監視区域の制度が設けられてきておりますけれ
ども、このようなせっかくの
国土利用計画法の適用のチャンスがあったにもかかわらずそれができていなかった。こういうのも日本の
土地政策の根本的な過ちがあるわけでありますが、その点についてはどのような考えを持っておられるのか、あるいは反省をしておみえになるのか
国土庁にお伺いをしたい、こういうように思います。
藤原(良)
政府委員 ただいま御
指摘がございまたように、確かにこれまで埼玉県等でも
規制区域の指定について真剣に検討されたことがあった報告を受けております。しかしながら、この
規制区域の指定要件と申しますのは、
土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われている、さらに
地価が急激に上昇している、またはそれらのおそれがある、この二つの要件が満たされた場合に知事が指定するということになっておるわけでございます。
先ほどの埼玉県のケースにつきましても、そういう要件にかんがみ、
土地取引の状況あるいは
地価の動向の詳細な調査を実施された結果、当時区画整理地区内の
地価は上昇しておりましたが、街路整備の進捗等
土地の効用増と申しますか、そういう部分を反映した部分が相当あった、また新交通システムも計画がまだ具体化していなかった、しかも地元農家の換金需要もそれほど強くない、そういうふうな御判断をされ、要件が満たされていないということで指定を思いとどまられたようでございます。
我々としても当時はそういう知事の判断を尊重したわけでございますが、ただ、この
規制区域、
先ほどの指定要件で述べましたように、かなり強い私権制限を行ってございます。例えば、ほとんど
地価は指定時の
価格に近い
価格で凍結されますし、また、
利用目的も収用
対象事業とか自己の居住の用に供する場合その他限定的に列挙されてございまして、
地域社会経済に及ぼす影響が非常に強うございます。そういうこともございまして、まだ
現実的には都道府県知事でこの指定に至る判断を下されたケースはないわけでございます。
ただ
国土庁といたしましては、
地価の高騰に対処するためには、六十二年六月に
法律改正して創設していただきました監視区域をまず的確に運用する。できるだけ
地価高騰に先立ってこの区域を指定し、また、指定後の
地価動向いかんによっては適時適切に届け出
対象面積を引き下げながら、まず監視区域によって急激な
地価の高騰を抑制していきたい。しかしながら、なお監視区域の厳正的確な運用によっても
地価の上昇を抑制することができない、そういう事態に立ち至った場合には
規制区域の指定について検討するように今後とも関係
地方公共団体を
指導していきたい、そういうふうに考えております。