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1989-11-09 第116回国会 衆議院 土地問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月九日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 大塚 雄司君    理事 粟屋 敏信君 理事 大坪健一郎君    理事 大原 一三君 理事 桜井  新君    理事 井上 普方君 理事 薮仲 義彦君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       衛藤征士郎君    加藤 六月君       金子原二郎君    鯨岡 兵輔君       佐藤 守良君    椎名 素夫君       田村 良平君    武村 正義君       谷  洋一君    中島  衛君       穂積 良行君    柳沢 伯夫君       大原  亨君    菅  直人君       中村  茂君    草川 昭三君       小谷 輝二君    中村  巖君       森田 景一君    安倍 基雄君       辻  第一君    中島 武敏君  出席国務大臣         建 設 大 臣 原田昇左右君         国 務 大 臣 石井  一君  出席政府委員         国土庁長官官房         長       北村廣太郎君         国土庁土地局長 藤原 良一君         大蔵大臣官房審         議官      濱本 英輔君         国税庁税部長 福井 博夫君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省道路局長 三谷  浩君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         経済企画庁物価         局審議官    関野 弘幹君         法務大臣官房審         議官      濱崎 恭生君         大蔵省銀行局調         査課長     中井  省君         大蔵省銀行局保         険部保険第一課         長       山本 孝之君         国税庁税部資         料調査課長   吉川  勲君         参  考  人         (日本国有鉄道         清算事業団理         事)      前田喜代治君         参  考  人         (日本銀行総務         局長)     田村 達也君         土地問題等に関         する特別委員会         調査室長    若杉 公朋君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  土地基本法案内閣提出、第百十四回国会閣法第六一号)  国土利用計画法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第六二号)  土地基本法案伊藤茂君外三名提出、第百十二回国会衆法第一五号)  国土利用計画法の一部を改正する法律案大出俊君外八名提出、第百十一回国会衆法第一号)      ────◇─────
  2. 大塚雄司

    大塚委員長 これより会議開きます。  第百十四回国会内閣提出土地基本法案、第百十四回国会内閣提出国土利用計画法の一部を改正する法律案、第百十二回国会伊藤茂君外三名提出土地基本法案及び第百十一回国会大出俊君外八名提出国土利用計画法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本国有鉄道清算事業団理事前田喜代治君及び日本銀行総務局長田村達也君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────
  4. 大塚雄司

    大塚委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。菅直人君。
  5. 菅直人

    菅委員 きょうは、土地基本法中心に、特に野党四党で提出をしました土地基本法政府案対比中心質疑をさせていただきたいと思います。  きのう、国会の近くを歩いておりましたら、大塚委員長のポスターが目にとまりました。たしか、若い人が東京に住めるような政治をという趣旨のことが書いてありました。私も東京選出の議員でありますので、そういう点では全く大塚委員長と同じ感想を持っておりまして、今や新しく家を持つ人は東京都にはなかなか住めなくなっているという現状があることは、もう両大臣ともよく御承知のとおりだと思います。とにかく、この土地基本法が本当に多くの国民にとって住宅取得でプラスになるものになるのか、あるいは、一部懸念されているように、これが逆の契機になって、再度東京などの大都市地価高騰の引き金にでもなったのでは、一体何をしたんだということになるわけですから、そういう点も含めて十分議論をしなければならない、させていただきたいと思っております。  そこで、早速具体的な本題に入っていきたいわけです。  四党案政府案対比の中で、最も具体的な大きな差と言われておりますのがいわゆる地価評価の一元化、四党案では第九条に書いてあるわけですけれども政府案にはその規定が全く入っていないということがあるわけです。そこで、この問題はかなり議論をされておりますけれども、その理論的といいましょうか、法的な根拠について詰めた議論というものがまだ必ずしもなされ切っていないと思いますので、まずその点から議論をスタートさせていきたいと思います。  まず、これは国土庁になると思いますけれども、現在のいわゆる一物四価と言われる現状についてどのような認識を持っているのか。具体的に言いますと、実勢価格公示価格相続税評価額固定資産税評価額の差がどの程度になっているというふうに認識しているのか、その現状認識を伺いたいと思います。
  6. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 地価公示価格に対します固定資産税評価及び相続税評価割合がどの程度と考えておるかという御質問でございますが、相続税評価につきましては、課税当局の方から、地価公示の大体七割程度を目標に評価をされておるというふうに伺っております。現実にはいろいろな事情もございまして、まだ必ずしもぴったり七割にそろっていないと思いますが、そういうふうな現状ではなかろうかと思います。  また、固定資産税評価額につきましては、特にここ数年の大都市圏における異常高騰によりまして、地域的なばらつきがかなり大きくなっておるのじゃないかと見ておりまして、開差の大きいところでは一割ぐらいから、かなり高いところでは四割近くくらいの間に分布しているのじゃないか、そういうふうに見ております。
  7. 菅直人

    菅委員 それでは、特に乖離の激しい固定資産税について自治省に伺いたいのですが、なぜこういうことになってきているのか、また、こういう乖離を起こしていることについて、おかしいというふうに思わないのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  8. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 固定資産税におきます土地評価に当たりましては、固定資産税という性格が、継続的にその土地を保有するということを前提にいたしまして毎年度税負担を求める、こういう基本的な性格から、現実売買価格そのものではなくて、例えば将来の期待価格などの要素というものは取り除いて修正をして価格というものを評定するということにしているところでございます。したがいまして、土地需給関係が非常に逼迫しているところにおきましては、将来の期待価格などといういわば不正常の要因というものがかなり働いて地価形成が行われているということで、こういう要素固定資産税評価においては除くべきであるという指導地方団体に対しましてしているところでございます。  そういうことによりまして、昨今の地価高騰に伴いまして大都市におきます実際の売買価格固定資産税評価額との間に開きが出てきているということでございまして、地価が安定している昭和五十年代の前半ごろまではかなりそういうものが接近をしていたわけでございますけれども、こういう事情によりまして、現段階では固定資産税評価額と、売買実例額そのものというのははっきりわかりませんけれども、例えば地価公示との間にもかなり開きが出てきているということでございまして、これは固定資産税性格ということから見ましてやむを得ないものではないかというふうに考えているところでございます。
  9. 菅直人

    菅委員 常識的に考えて、二割程度乖離とか三割程度乖離というのなら、まだ常識の範疇でもそれは多少あるのかなと言えると思うのです。ただ、先ほど国土庁の見解でも、中には一〇%、つまり十分の一というふうなところもある。ここまで来ると、常識の範囲でちょっと、値上がりの期待値があるからとかそういうことではとても納得できない乖離になっていると思うのです。  そこで、では、この問題がどういうふうに土地政策上、矛盾を引き起こしているかということを一、二挙げてみたいのですけれども、まず自治省に聞きたいのですけれども、私の手元の資料では、例えば東京都と佐賀県あたりを比べてみると、公示価格固定資産税評価額の六十三年度の比較でいうと、東京都が特別区で一六・七%、つまりは一〇〇に対して一六・七、佐賀の場合は四九・三%となっております。これは、例えば百万円の土地佐賀東京に、ある人が、Aという人とBという人が持っていた。そうすると、東京では十六万七千円に固定資産税評価をしてくれる。しかし、佐賀では四十九万三千円として固定資産税評価をされる。つまり、約三倍ですか。固定資産税評価に三倍ぐらいの差が出る。売れば同じ百万の土地が、固定資産税評価でいえば三倍、場所によって差が出る。つまり佐賀の方が高くなる。こういうことは不公平と言えないのですか。
  10. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 固定資産税評価は、御案内のとおり三年に一回ずつ評価をするということで、最近の地価公示とこの評価との比較をいたしますと、一〇%台という率が出るわけでございますけれども、これは一つは、この三年間の固定資産評価期間の間に極めて異常な地価高騰東京中心にした大都市圏におきまして起こっているということを反映しているものだというふうに考えるわけでございます。またもう一つの問題は、先ほども申し上げましたが、やはりこういう土地需給関係比較的安定している地域におきましては、いわゆる期待価格などの不正常の要因というものが余りないということに対しまして、大都市圏のようなところでは、いわば売り手市場と申しますかそういうところで非常に地価が高騰しているという要素がございまして、これを直ちに固定資産税評価額に反映するということは、固定資産税性格から見ましていかがなものかなということで、そういう要素は排除して評価をしていくということでその違いが出てきているものだと思うわけでございます。
  11. 菅直人

    菅委員 聞いていることに答えてもらいたいのです。不公平と思わないかということなんです。資産課税でしょう、これは。固定資産というのは資産です。資産課税で、同じ売れば百万のものが東京佐賀で三倍も固定資産税評価額が違う。税率一緒ですから結果的には税の負担が三倍も違ってくる。こういう現状は不公平だと思いませんかと聞いているのです。
  12. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 売買におきまして譲渡益が出た場合の所得課税につきましては全く同じ課税が行われるわけでございますけれども東京におきます地価形成と、それから今例に出ました佐賀県の地価形成というものを比較いたしますと、先ほど来申し上げましたような期待価格といいますか、そういう要素地価が上がっているという要素が非常に大きいということを反映して地価形成がなされている。その地価形成のなされている要因というもの、不正常な要因というものをそれぞれ外して評価をするということによって固定資産税の公平な負担をお願いするという立場でございますので、地価形成のいろいろな要因というものは一応除いて考えた場合に固定資産税負担が公平かどうかということを判断すべきものではないかと思うわけでございます。  そういう観点から見まして、現在の固定資産税負担というものが必ずしも不公平だというふうに言い切れるかどうかということは、私どもはそういう観点には立たずに、正常な要因というものをできるだけ純粋に取り出して評価をして地価形成というものを反映させるということで努力をしているところでございます。
  13. 菅直人

    菅委員 この問題でもう一つ矛盾点指摘をしてみたいと思うのです。  これは建設省にも非常にかかわりが多いことなんですけれども、かつて中曽根内閣のとき、あるいは現在に至るまで、例えば東京山手線の内側などは規制を緩和しろという一方の声があるわけです。規制を緩和すればもっと高層化が進むのではないかということで、一部規制を緩和した例があるわけですね。しかし、現実には規制を緩和して何が起きたかというと、まずその場所土地の値段が二倍、三倍に上がる。そして、確かにマンション業者が買ったところは二階建てが五階になり十階になったかもしれない。しかし、すぐ隣の二階建てとか一階建てのところはそのままである。そのままでいられるというのは、これはいい悪いということではなくて、固定資産税評価は隣が三倍に上がろうが四倍に上がろうが三年間で十数%程度しか上げないという、ますます実勢価格乖離するから、十階建て利用ができる土地であっても、もとの利用できないときの価格で、あるいはそれを基準とした固定資産税評価額評価をされている。つまり、一方で規制緩和すれば高度利用が図れるじゃないかといっても、保有税に関してはそれが全然運動しない、そういうことの矛盾も出てきていると思うのですが、自治省、どうですか。
  14. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 固定資産税評価に当たりましては、今御指摘のような都市計画上のいろいろな利用規制なりそういうものも評価の考慮の対象といたしまして具体的な評価をしていくということになっているわけでございます。したがいまして、現実にその土地が十階建て利用されるかあるいは平家で利用されるかということは一応度外視をいたしまして、その地域都市計画上の規制というものがどういう規制が当たっているかということを前提にいたしまして土地評価をすることを建前にしているところでございます。  したがいまして、そういう容積率が大きくなった地域につきましては、一方ではそれなりに土地の効用が大きくなったと見るべきだと思いますから、そういうものを配慮して次の評価がえでは評価をしていくということになると思うわけでございます。
  15. 菅直人

    菅委員 それでは、ちょっとこの問題のもとに戻りたいと思うのです。  先ほどから不正常価格とかいろいろなことを言われております。そこで、では固定資産税評価というのはもともとどういう形で行われるべきものなのか、まず本法地方税法には何に対して固定資産税をかけると書いてあるのですか。
  16. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 地方税法におきましては、固定資産税は、市町村長自治大臣が定める固定資産評価基準によりまして固定資産価格を決定し、その決定した価格に基づいて課税をするということになるわけでございますが、この価格は、地方税法におきましては「適正な時価」をもって価格とするということにしているわけでございます。  ただ、この「適正な時価」ということにつきましては、この固定資産評価基準ができました昭和三十八年以来、私ども地方指導している考え方といたしましては、この「適正な時価」というものは正常な条件のもとにおける取引価格をいうということにいたしまして、先ほど来申し上げましたような、現実売買価格そのものによるものではなくて、現実売買実勢価格に正常と認められない条件がある場合においては、これを修正して求められる正常売買価格によるものであるということで、地方団体指導しているところでございます。
  17. 菅直人

    菅委員 一つ一つ言いますから、余り先走らないで結構です。そういう指導そのものを問題にして今議論しているのですから、まず本法を聞いたわけです。  それでは、時価というのは日本語ではどういう解釈ですか。
  18. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 いろいろの解釈はあろうかと思いますが、例えば岩波の広辞苑などを引いてみますと、「時価」というところでは「その時の相場。その時の市価」、こういうことが書いてあります。
  19. 菅直人

    菅委員 まさにそうでしょう、「その時の相場」。そのときの相場というのは何ですか。まさに売買価格じゃないですか。本法に「時価」と書いてあるでしょう。それを何かねじ曲げた解釈をするのを後で一生懸命説明したって、本法には「時価」と書いてあるわけでしょう。その本法で書いてあるそのときの相場から十分の一にも乖離をしていくというのは、明らかに異常じゃないですか。どうですか。
  20. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 地方税法におきましては、適正な時価というものを固定資産評価額にするということにいたしているわけでございます。そういう意味では、適正な時価というものを固定資産税性格から見てどのように解釈をしていくかということで、私ども先ほど来申し上げたような解釈をしているわけでございます。
  21. 菅直人

    菅委員 ですから、それがおかしいんじゃないですかと言っているんですよ。「適正な」という言葉がついた途端に急に、「時価」、さっきまさに「その時の相場」というふうにみずから広辞苑を引いて言われた、それが十分の一とか三分の一とかに化けるというのは、常識的には考えられないわけですよ。もし、そういうふうにしなければいけない理由があるならば、それは税率で緩和するとかあるいは別の減免措置を設けるのであって、行政が勝手に認定するその時価というものを自分の都合といいましょうか自分流解釈つまり普通の国民がまさに広辞苑や普通の時価という言葉で理解するものと全く違う解釈をして、そしてそれを押しつけておいて、自分のつくった理由の方を、法律のことはそっちに置いて、いやこういう理由だ、ああいう理由だ、それは全部行政上の理由じゃないですか。もし何らかの理由でそれが高過ぎるというのであれば、負担が大き過ぎるというのであれば、それは税率でやればいいんじゃないですか。どうですか、自治省
  22. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 固定資産税評価に当たりましては、先ほど来申しましたような適正な時価というものを算定する、その適正な時価というものは、基本的には現実売買実勢価格から正常でないと思われる要素を除いて評価をするという考え方で一貫して、私ども地方自治体と一緒になってその評価をやっているわけでございます。  その場合に、時価と、実際の売買実例評価額との開きというものは、先ほど例にもございましたとおり、土地需給関係の非常に逼迫している地域比較地価が安定しているところとでは、その開きぐあいが必ずしも一致していないわけでございます。これはやはり地価形成上、いろいろな要因地価というものができ上がっているわけでございますから、それを一律に時価一定割合固定資産税評価にするというのであれば、お話のとおり税率を下げる、税率で調整するということも一つの方法かと思いますけれども地域地域によって不正常といいますか、そういう地価形成要因というものが違いますから、これをやはり取り除いた価格評価をして課税をするという方がむしろ実用に適するのではないか、こういう考え方で今やっているわけでございます。
  23. 菅直人

    菅委員 これは関係省庁の皆さんも今聞かれているとおわかりのように、自治省なんでしょう、そちらは。そんなことは自治に任せればいいじゃないですか。別に税率を全部一定にしなくても、ある幅での変動は認められるんでしょうし、つまり何か逆の理由、逆の理由を使って自治省自分流解釈をする。さっきから言われている解釈は全部法律事項じゃないはずですよ。通達とかそういうもので全部勝手に解釈をして、そしてそれを押しつけて、矛盾が出ると、今言われたように、全国一律にしなければいけないからだとか。しかし現実には先ほど佐賀東京の例を挙げたように、今度はそういう矛盾したやり方原則的に押し通そうとするから、同じ資産価値がありながら固定資産税実効税率で三倍も差ができるということになるわけです。つまり原則時価なんですから原則に戻して、例えば東京異常高騰がある、これは何とかしなければ、何とかといいましょうか一遍に負担を増大できない。それなら東京都は都市計画税を、一部減免面積上限をつけてやっていますけれども、そういうやり方もあるかもしれないし、あるいは法律改正なり条例改正なりを連動させて一時的に固定資産税税率地域によって抑えるというやり方だって十分できるわけです。そういう原則に戻らないでおいて既存のやり方を頑迷に維持しようとする。これはもう十分に御承知でしょうけれども、今から土地税制の問題が、この基本法が成立した場合には起きると思いますが、保有税議論に常にこの問題がついて回っているわけです。  そういうことで、この固定資産税評価問題だけでこれ以上時間を費やすわけにいきませんので、これに並んでまだまだ問題があるものですから、もう一つの問題を同じこの一物四価のことでちょっと提示をしておきたいと思います。  今度は大蔵省に、相続税について聞きたいのです。  相続税路線価でやるという表現で、先ほど国土庁説明だと公示価格の七割をめどに大体決めている、年ごと改正をされているというふうに私も承知しております。しかしもう一つ農地対象には全然別の基準があるんじゃないでしょうか。その基準を簡単に言っていただきたい。それで、例えば一番わかりやすい東京ではどういう相続税評価になっているか、あわせて述べていただきたいと思います。
  24. 福井博夫

    福井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問東京都ということでございましたので、市街化区域内の農地評価につきましての御質問ということでございました。これが何か別の基準によりまして評価がされているのではないかというような御趣旨ではなかったかというふうに思いますけれども、基本的には農地評価につきましても、最終的といいますか一義的には宅地評価というものにリンクをされております。  それで、宅地評価につきましては、先ほど来いろいろお話がございましたように、公示価格、それから精通者意見、そういったものを総合勘案いたしまして評価するわけでございますけれども先ほどお話がございましたように、公示価格の大体七〇%をめど評価をしておるというような状況になっているわけでございます。それが宅地評価でございます。  ただいま申しましたように、農地価格につきましても特に別の基準があるわけではございませんで、基本的には宅地にリンクしているということにつきまして、ちょっと御説明を申し上げたいと思います。  そこで、市街化区域内農地でございますけれども、これは二つに分かれます。一つ市街地農地ということでございまして、転用許可を受けたもの及び転用の届けが既にあったものでございます。それからもう一つ市街地周辺農地ということで、それ以外のものということになっているわけでございます。  前者につきましては、先ほど申しましたように一応宅地ということを原則にいたしまして、ただこれはまだ宅地になっておらないわけでございますから、宅地評価額からその宅地にするための造成費、そういったものが必要でございますので、その造成費を控除したところで評価する、基本的には宅地からその造成費を引くというような考え方になっているわけでございます。  それから市街地周辺農地、その他のものでございますが、これはまだ宅地転用についての可能性がないわけでございますので、その点を考慮して若干低目に評価する必要があるという考え方に基づきまして、ただいま申しました市街地農地宅地マイナス造成費といったものに対しましてある程度のしんしゃく率を掛けるということになっておりまして、そのしんしゃく率は現在八〇%ということで運用をいたしているという状況でございます。
  25. 菅直人

    菅委員 農業投資価格というのは、これはどういうことですか。
  26. 福井博夫

    福井政府委員 農業投資価格と申しますのは、仮に農地につきまして引き続き営農をするということが明らかな場合には、その相続税評価に当たりまして特別の評価をするということになっておるわけでございます。これにつきましては、結局土地評価審議会におきまして評価がなされるわけでございますけれども、これはただいま申しましたようにあくまでも農地として今後とも使っていく、宅地可能性がない。したがいまして宅地転用可能性といったものを除きまして、あくまでも農地として、耕しましてそこで作物をつくっていくといった場合に成立するであろう取引価格は何であろうかということで、土地評価審議会等の審議を経まして決定しておる、そういう性質のものでございます。
  27. 菅直人

    菅委員 東京は幾らですか。
  28. 福井博夫

    福井政府委員 東京と言いましても広いわけでございますけれども東京の最高のもので十アール当たり八十四万円くらいの数字になっておるところでございます。これは、東京の中での最高の価格というのが大体そのくらいの数字になっておるという状況でございます。
  29. 菅直人

    菅委員 一平米当たり幾らですか。
  30. 福井博夫

    福井政府委員 十アール当たり八十四万円でございますので、一平方メートルで八百四十円というふうな数字になろうかと思います。
  31. 菅直人

    菅委員 それは転用できないのですか。本人がそこにマンションを建てたいと思っても転用できないのですか。
  32. 福井博夫

    福井政府委員 ただいま申しましたように、農業投資価格といいますのはあくまでもその後引き続き営農をしていくということが前提でこういうふうな扱いになっておるわけでございますので、例えば事情が変わりまして営農の意思がなくなった場合、あるいはまた、一定の部分につきまして取り崩して宅地転用するといったような、条件が崩れました場合には原則に戻りまして宅地並みの課税を受けるということになるわけでございます。これはあくまでもそういう営農の意思を継続している間における一種の特例、猶予措置であるということになっているわけでございます。
  33. 菅直人

    菅委員 聞いていることに答えてください。転用できないのかできるのかです。
  34. 福井博夫

    福井政府委員 転用法律的にはもちろん可能でございますが、一定の手続によりまして転用するということになろうかと思います。私が申し上げておりますのは、転用いたしました場合にはこのような納税猶予制度はないということになるわけでございます。
  35. 菅直人

    菅委員 先走らないでくださいね、議論がややこしいから。  つまり、私も東京に住んでいますからよくわかるのですけれども、よく言われるように農地が、今問題にもなっている宅地並み課税というものが実行されておりませんで固定資産税が安いというのは一般によく知られているわけですが、相続税評価が今の大蔵省説明のように、営農の意思というのでしょうか、それが明らかな場合には、一平米当たり、東京で最高で八百四十円というのですね。じゃ、それが都市計画決定かなんかで永久的に農地である、あるいは緑地であるということが保証されているかといえば、本人があしたになって気が変わればそれは構わない。ただ、その場合にはもとに戻って税金を取る。  ついでに言いますと、もとに戻って税金を取る場合も、例えば私が東京周辺の農家の息子だとします。そして、例えば親父が亡くなって相続した、その土地が一万坪あった。私の理解では、転用した場合、たしか二〇%までは転用した分だけもとの路線価で取る。しかしそれを超えると、二一%になると一万坪全部がこの八百四十円の適用を受けられなくなる。多分今でしたら一平米百万くらいですか、千倍くらいに一遍に評価が上がってがっぽり取られる。ですから大体一世代で二〇%以上の土地農地から転用がなかなかできないのですね。これは建設大臣国土庁長官もよくお聞きいただきたいのですが、つまり今一生懸命宅地並み課税なんかしていろいろ考えておられるようですが、相続税の問題もあわせて考えておかないと、実は私が農地をたくさん持っている農家の息子であれば、そう簡単には転用はしないですね。大体の人はマンションの一つや二つ持って現金収入をたくさん持っている、収入源をたくさん持っている人が多いですから。  今いろいろ言われましたけれども、農業投資価格という評価相続税評価額にしているということがこれまたいろんな矛盾を起こしているわけです。これは、大蔵省に三多摩の自治体の首長が要請文を出しています。つまり自治体が農家から土地を借りるわけです。そして、そこをゲートボール場とか公園とかにするわけですね。今一斉に返してくれと言われております。固定資産税の方は自治体が減免をしていますから、これは農地並みあるいはゼロになっております。しかし、もしその土地所有者の本人が亡くなった場合は、借りた土地現状がゲートボール場とか、少なくとも更地のような形になっていれば、この農業投資価格の適用は受けられないわけです。そうすると、八百四十円が急に百万円ぐらいの評価になってしまうわけですね。ですから、もうちょっとおじいちゃんぐあいが悪いから早く返してくれ、ブルドーザー入れて農地に戻して八百四十円で相続が受けられるようにする。八百四十円ということは、少々の土地があったって今の相続税でいえば税金はかからないわけですね。受けておいてどうしても売らなければいけないときは、さっき言いましたように二割を限度にしてちょっと売る。そのときはまた、十年ぐらいたっていれば値上がりもしているでしょうから、最初の値段よりも金利を乗せているといっても大したことはないというころになって、もし売るとしても十分余裕を持ってやればいい。これが現状なわけですね。  大蔵省にもう一回聞きたいのですけれども、こういうあり方が正常なのか正常でないのか、大蔵省としてはどういう見解を持っているのですか。これはちょっと矛盾している、何とかしなければいかぬと思っているのか。これは当然のことだ、売れば百万になるような土地現実に八百四十円で評価されるという仕組みが正常なのか、ちょっとおかしいというふうに大蔵省、税の当局としては考えているのか、どうですか。
  36. 福井博夫

    福井政府委員 ただいまの御質問の点でございますけれども、私どもといたしましては、一定の経済的な価値を持っている財産、この場合土地でございますけれども、それの評価相続税評価をどうするかというのは、私どもの考えておるところでございます。  そこで、ただいまの農業用地でございますけれども、実際にそこで農業として使われていくということになりますと、その評価の中に宅地化された場合の利益といったものを含めて評価するのは必ずしも正しくない。そういたしますと、やはりそこで、農業でさらにその内容を分析してみますと、いろいろなものをつくった、その作物がどういうふうに売れるだろうか、そういった収益であるとかそういったものが評価一つ要素として入ってくるわけでございます。  そういう評価要素というものを考えてみますと、農業の評価に当たりましてはやはり宅地と相当違った評価の方法が使われるわけでございますし、結果としてその宅地化利益に含まれていないというような意味におきまして、この二つの評価が相当大きく分かれてくるというのも、これは一つ評価の方法としては体系的にでき上がっている評価の方法であるというふうに私どもは考えているところでございます。
  37. 菅直人

    菅委員 これを聞かれてもわかるように、さっきの自治省固定資産税評価の勝手な解釈と、これは大蔵省だけがやっているのかどうか、ちょっと必ずしも言えませんが、今の少なくとも農地、これも農地の中では、逆に、実際にこの農業投資価格でも売買できないような地方農地もあると聞いているわけです。ですから、趣旨そのものに私は反対しているのじゃないのです。今言われたのは趣旨だけです。じゃ、現実はどうなっているか。現実は、東京周辺でいえば平米百万もするような土地が八百四十円で相続をされていて、そういう特典を受けていて、ある意味では今転用はほとんど自由ですから、転用したいときにはいつでも転用できる。しかし、転用しないで二十年頑張り切れれば税金は事実上かからない。二十一年目に転用すれば全然それはもう大丈夫。こういう制度が一般庶民の感覚からしておかしいのではないですかと。これだけ資産の格差、土地の格差が言われている中で、いわば大都市所有者を保護しているわけです。  今まで一物四価問題についてるる議論をしてまいりましたけれども、両大臣にそれぞれ関連するところが多くあったと思うのです。まず国土庁長官に、政府案には残念ながらこの問題が触れられていないわけですけれども、新聞報道等によれば、いや、場合によってはなんということも報道している分もありますが、長官として今の議論を聞かれた中での感想をお聞かせいただきたいと思います。
  38. 石井一

    ○石井国務大臣 私は、ただいまの意見を聞いておりまして、大変重要な問題の指摘であるというふうに認識をいたしております。ただ、自治省固定資産税の立場、また大蔵省相続税の立場、それだけを見てみますと、過去の沿革と申しますか、成立の過程から今日に至りますまで、それなりの、納得できると申したら語弊があるかもわかりませんが、説明はあったように思えるわけでございます。  ただ、私の立場から申しますと、私も土地問題をいろいろ見てみまして、やはり最もナウな、新しく、また今後これに沿って土地政策を推進していかなければいけないものは何かと思いますと、総合土地対策要綱ではないかというふうに思っております。ただいまの御議論を昨年六月に閣議決定をいたしておるわけですから、これは大蔵大臣自治大臣も当然連帯責任を持っておられる話でございますけれども、最近の異常な地価高騰に対処するために、地価形成に関する適正化をやらなければいけない、そのためには土地評価の制度の見直しをやるべきだということを原則的にうたっております。その中で、まず第一に公的な土地評価の適正化と相互の関連の確保、これは今委員が指摘されておる非常に重要な問題点ではないか。自治省自治省意見があり、大蔵省大蔵省意見がございますが、これがかえって逆に土地高騰に拍車をかけたり、あるいは建設に阻害を与えたり、あるいはまた土地を当然公共に利用されるべきものにブレーキをかける、こういうようなことになっておる一面が確かに出ておるのではないか。  そこで、まず相続税評価に関してでございますけれども、総合土地対策要綱におきましては、「相続税性格を考慮し地価公示との均衡を図りつつ、その適正化を推進する。」これは抽象的ではございますけれども、やはり土地地価公示評価との均衡の中に著しく格差があいてきておるものに対しては、時代の変化とともに配慮を加えなければいかぬのではないかということを言っておる。東京都におきます農地の相続とか、あるいは今ゲートボールの問題などの指摘がございましたけれども、この辺の問題は当然新しい対処の仕方があるのではないか、そういうふうに考えます。  それから、固定資産税評価については、「固定資産税性格を考慮し地価公示との関係に十分配慮しつつ、その均衡化、適正化を推進する。また、評価に際して地価公示関係資料の活用を図るよう地方公共団体を指導する。」とございます。これは、東京佐賀県の例の場合に、こういう指導をもっと強化しながら、どちらかをそろえるとは書いてありませんが、均衡化とか適正化、私も広辞苑をちょっと調べてみたいと思うのでありますけれども、そこに味のある指導をやはり示唆しておる、こう思います。  次に、以上の二つの相続税評価固定資産税評価の「公的土地評価の適正化等を推進するため、国土庁大蔵省及び自治省による連携体制を整備する。」とございます。これにつきましては、私の立場で、委員のおっしゃるとおりすぐにできるかどうかは別といたしまして、今後この連携体制を強化するということについてはこの席でひとつお約束しておきたいと思います。  なお最後に、「固定資産税評価については、個人のプライバシーの保護に配慮しつつ、評価の適正の確保に資するため、基準地等に係る路線価の公開を行うなど適切な措置を講ずるよう地方公共団体を指導する。」こういうふうなことが含まれておりますので、仮に今申しました適正化とか均衡化とか、それにはやはり過去の沿革なり考え方をも含みつつ、極度の大きな変革はできないにしても、非常に異常な状態になっておるというものに対しては修正を加えろ、こういうようなことが政府の決定としてできておると私は思いますので、そういう形で今後臨んでいきたい、そう思います。
  39. 原田昇左右

    ○原田国務大臣 管委員の大変御勉強なすった御指摘については非常に傾聴に値する御議論だと思うわけでありますが、特に固定資産税については、これは今国土庁長官がお触れになりましたが、確かに今までの歴史、慣習ということから現状を見ますと、いろいろ問題点が出てきておることは事実でありまして、もう少し原点に返って考え直せということは私はそのとおりだと思います。こういう点についても、ぜひこれから御意見を貴重な御意見として検討していくべきではないかと考えております。  その次に、相続税の問題で、特に市街化区域内の農地についてお触れになりましたが、私は、都市計画というものと税制というもののリンケージをもう少ししっかりこれから考えていかなければならないのじゃないか、例えば農地として保全すべきところについては逆線引きをやるとか、あるいは生産緑地制度を活用するとか等々、しっかりした都市計画制度との関係において税制面でもそれとリンクして考えていただくということをぜひともこれからの問題点として検討させていただきたいと思っておる次第でございます。
  40. 菅直人

    菅委員 これらに関連してもう一点だけ。  きょうは法務省にも来てもらっているのです。それで、今土地の登記は法務省の仕事になっているわけです。それで、その登記内容、いろいろ権利関係あるいは場所等があるわけですが、土地政策からしますとこの登記制度が、まさに先ほど大臣が言われました連携という意味で必ずしも十分とれていないのじゃないか。例えば、私が以前行きました台湾では、地政局というところが逆に土地台帳を持っていて、それがほぼ全部コンピューターに入っていて、そしてそれが必要な場面には、例えば課税当局が見る、あるいはほかの役所が使う。台湾の場合でいえば、どちらかといえば土地に関するすべての情報を地政局というところが調査をし管理をしているという形なわけです。そういった意味で、土地登記のあり方についても、例えば売買価格などを、せめて自主申告でもいいですから売買があったときには書かせる。そうしておけば、今よく言われる原野商法みたいに坪五円で買ったところを東京で五万円ぐらいで売るなんということも原簿を見ればすぐわかるわけですね。そういうことを含めて、もう少し法務省のものというだけじゃなくて、まさに土地行政全体の情報整理という形に使うべきじゃないか。あるいは、場合によったらそういうふうに変えるべきではないかと思うわけですが、法務省いかがですか。
  41. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 我が国の現在の不動産登記制度は、もう既に御承知のところと思いますけれども、不動産に関する権利関係を公示するということを目的にいたしておりまして、あわせて土地の地目でありますとか地積でありますとか、そういった物理的な状況についても公示をいたしておりますが、あくまでもその権利の対象である不動産を特定するための情報ということで、これをあわせて開示することにしているわけであります。また、そういう制度でございますために、その申請はすべて当事者の申請に基づいてする、しかも、その申請の受否の決定は当事者が提出した書面によってのみ審査をする、こういう制度になっております。  したがいまして、現行の制度のもとで御指摘のようにその取引価格といったものを登記するという制度をとりました場合には、これはやはり同じように当事者の申請に基づいてやるということにならざるを得ないわけでございまして、そういたしますと、必ずしも適正な、真正な、本当の取引価格が公示されるということの保証がないということになります。そういたしますと、かえって取引の混乱を招くというおそれも出てこようかと思うわけでございます。  したがいまして、現在のところ、不動産登記制度を所管する私どもの立場といたしましては、御指摘のような措置を直ちにとるということは困難ではなかろうかというふうに考えております。しかしながら、御指摘の点については私どもといたしましても将来の検討課題といたしたいというふうに考えております。
  42. 菅直人

    菅委員 ですから、今の法務省の言い方も先ほど来の言い方と共通していて、法務省としては、土地登記はこういうものである、だからこれはできるけれども、これはできない、そういうことになっているわけです。しかし、先ほど言いましたように、そういう枠を超えて土地政策上の観点から考えれば、もっと踏み込んでそれを活用するといいましょうか、あるのではないか。  それから、先ほど長官がこの土地対策要綱の中で「固定資産税評価については、個人のプライバシーの保護に配慮しつつ、」という文章を読まれましたけれども、これも実は非常に議論があるところなんですね。つまり大蔵省の発表している路線価については、それは一戸一戸の価格ではないとは言っても、道路で値段がついている。そうすると、ここにある、例えば私のうちがこの道路に即してあれば、これが幾らになるかというのは客観的にわかるわけです。しかし、それに対して固定資産税評価額は本人でなければ知らせない。それはプライバシーの保護だ。しかし、土地というものの性格、これは後ほど時間があれば基本的な問題として議論をしたいわけですけれども、いわば地球の表面なわけですね。あるいは国の領土なわけです。その土地をだれが持っているかということ、あるいはそれがどういう公示価格なり固定資産税評価額になっているかということが、果たしてプライバシーというものによって守らなければならないほど、何といいましょうか、個人的なものなのか。それなら路線価だってそうではないか。何もわからなくなるわけですね。逆じゃないか。じゃ公示価格だって発表すべきじゃないじゃないか。おれのところを勝手に公示価格なんて発表されちゃ困るという話になったら、何もできないわけです。  そういう意味からいえば、この要綱の中に書いてあることで言えば、まさに公示価格一つの基本として、公示価格をもっと充実させる必要があればもっと充実をさせる、あるいは地方自治体にも協力を求めるような、連動させる形で充実をさせていく、そういうことを前提として、先ほどの連動性なり、均衡化、適正化というのはちょっと中途半端ですが、連携体制を強化する、そういうことでなければならないと思います。国土庁長官にその点を確認をしておきたいと思いますが、いかがですか。
  43. 石井一

    ○石井国務大臣 政府案の十五条に、「税制上の措置」というところで、「税負担の公平の確保を図りつつ、土地に関し、適正な税制上の措置を講ずる」、こういうようなところがございます。これは野党案にない一つの特徴ではないかというふうにも考えておるわけでございます。  ただいま御指摘がいろいろございましたプライバシーの問題に関しましては、なるほどというような気持ちにもなりますが、例えば、我々閣僚の財産の公開などを実際にやってみまして、大変いい制度だなとうなずける面と、これをここまで各人全部にやっていくとどうなるだろうか、国会議員全体にやりますとこれはどうだろうかというようないろいろな議論もございます。  だから、このことにつきましては、この機会に私の個人の意見を申し述べるのをひとつお許しいただきたいと思うわけでございますけれども、少なくとも土地行政の一元化でございますとかその他の問題につきましては、大変建設的な提案だというふうに受けとめさせていただきまして、はっきりと閣議決定の中にも、この問題については大蔵省自治省国土庁が相連携して、ひとつこれらの問題について整理をするべきだという意見もございますので、今後前向きに受けとめさせていただくということで御了承いただきたい、こう思います。
  44. 菅直人

    菅委員 この一元化というのは、地価の一元化と同時にいわゆる行政の一元化ということも四党案には入っているわけでありまして、政府案には一元化については特に規定がないわけです。確かに、調査については一部ありますけれども、やや弱いという感じもしますので、それはまた与野党含めての議論の中で、今の大臣の意向も踏まえながら進めていければというふうに希望を申し上げておきます。  それでは、かなりこの問題に時間をとりましたので、少しピッチを速めていきたいと思います。  今お手元に、ちょっと見えにくいかもしれませんが、四党案政府案対比をずっと並べてみました。順次これを進めていきたいのですが、建設大臣が十二時までということなので、特に建設大臣にかかわりの深いところから進めていきたいと思います。  それは、土地利用計画の問題についての両案の比較であります。  政府案を見ると、この土地利用計画については三条で、一般的な意味の適正な利用及び計画に従った利用という表現がありまして、その後十一条、十二条に、少し具体的とでも言うのでしょうか、幾つかの項に分けてのせられております。野党案では、六条、七条を中心に、国と都道府県、市町村の計画、特に市町村が市町村の全体計画をつくるということと、市町村の部分的な、いわゆる地区的な詳細計画をつくるということをきちんと明記しているわけです。こういう点で、政府案利用考え方がやや不明確ということと、私もいろいろな方の意見を聞いているのですが、高度利用とか土地利用の転換とか、そういうことが十一条、十二条とも入っていて、下手をすると地上げ屋に理論的根拠を与えることにもなりかねないんじゃないかと危惧されている向きもあるわけです。  もちろん土地高度利用が必要なところは大いに高度利用すべきですし、転換が必要なところは大いに転換すべきですけれども、それをどうするかはまさに利用計画の中身の問題であって、別に高度利用するために利用計画をつくるというふうに決める必要はないわけで、そういう意味では利用計画というものの意味づけ、あるいはだれがつくるべきとか、いわゆる基礎自治体である市町村がつくるべきとか、こういうものは都道府県がつくるべきとか、最低限そういうものをきちんとすることがこの土地基本法の本来の性格に適するのではないか、このように思うわけです。この点についての見解をいただきたいと思います。
  45. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 まず、政府案の基本的なところを御説明させていただきます。  御指摘のとおり第三条の二項で「土地は、適正かつ合理的な土地利用を図るため策定された土地利用に関する計画に従って利用されるものとする。」ということで、計画の策定義務あるいは計画の充実等につきまして基本理念として定めておるわけでございます。この基本理念を受けまして十一条等で計画の策定方向を規定しておりまして、先ほど指摘がございましたように、十一条では、地域の実情に応じて詳細化を図るとか、あるいは社会経済情勢に応じて広域的な調整を図りながら、計画を策定し充実する方向づけをしておるわけでございます。  この中で高度利用あるいは適正な土地利用の転換といった方向づけもしておるわけでございますが、特に大都市地域におきましては遊休地の有効利用あるいは再開発事業によります有効利用の促進というのも非常に重要でございますし、また、市街化区域内の農地の計画的宅地化あるいは工場跡地等の低・未利用地の有効利用の促進等を図る必要がありまして、こういう地域につきましてはできる限り地域の実情に応じてその詳細化を進めていくことが特に重要だと考えられますので、そういった計画策定の基本的な方向を十一条一項等で示しておるわけでございます。
  46. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 都市計画の方でお答えをさせていただきます。  都市計画におきまする土地利用計画につきましては、国土利用計画等の上位計画に基づきまして、かつ広域的、根幹的な土地利用計画は知事が、それから地区計画、再開発地区計画等の地区レベル計画につきましては市町村が定めることといたしているところでございまして、基本的にはこの定着している土地利用の計画の仕組みによってその運用の充実を図りながら進めていきたいというふうに考えているところでございますが、四党御提案の案におきまする全国計画、都道府県計画、市町村計画という新たな制度の創設はいわば上位計画的なものであろうかというふうな理解をしておりまして、これが充実していくということは一つの検討課題ではあるというふうに考えております。  以上でございます。
  47. 菅直人

    菅委員 これは特に建設大臣にもお聞きをいただいておきたいのですが、私もこういう計画法の専門家じゃないのですけれども、大分いろいろと建設省からもレクチャーを受けたのですけれども、何回聞いても、よくこんなに複雑なことになっていて、わけがわからない。とにかく全国を五つの地域にまず分ける。それは都市地域であり、森林地域であり、農業地域であり、自然公園とか自然保全とかなんとかに分ける。さらにそれが今度は都市地域がほぼ都市計画区域になって、その都市計画区域が線引きで市街化区域と市街化調整区域に分かれて、市街化区域の中が八種類に分かれて、さらにそれ以外に十五種類あるとか、そしてそれぞれに今度は建築基準法のいろいろなものがかかっている。そして一部ダブっていたり、特例があったり、非常に複雑になっているわけです。  私は、もちろん具体的なところで、いろいろな計画ですから、例えばこの駅前はこういうように使った方がいいということがあった場合にある種の例外といいましょうか、そういうことが生じるのは当然だと思うのです。しかし、何かそれは手続上どういう形でそれを決めるかということをしっかりしておけばいい話であって、いろいろ精密にできているような反面、用途変更がぽっぽぽっぽ起きる。用途地域の変更なんというのも私などもどう考えていいのか。例えば建ぺい率なり容積率を低くとっているところがある。説明を受けると、ここはなるべく空閑地や緑を残したいから低くとっているのだという説明がある。しかし現実には、非常に地価高騰が来て親が住んでいたうちに兄弟が二人で今度は住みたい、建ぺい率がこれじゃにっちもさっちもいかないから何とかしてくれ。じゃ、どうするのか。どんどん用途が、地域が変わっていくとか、そういうものに対する一つの基本的な考え方がないまま、いろいろな制度ができ、いろいろな変更が行われているということが実感ではないか。  結果において、じゃ、どういうことにこの間なってきたのか。これは大都市部を見れば、私も今回は参加できませんでしたが、前回の土地特別委員会で、たしか委員長一緒でしたけれども東京の大分高いところから下を見たら、まあよくもこんなに無秩序にできた町だなというぐらい無秩序である。計画法の数が多い分だけ無秩序になっているのじゃないかという気さえ率直なところするわけです。  そこで、この土地基本法をせっかくつくるわけですから、そういう物の考え方を多少整理をして、そしてその整理をした中で具体的に計画をつくっていく。計画のポイントは、主体がだれであるのか。もちろん全国計画は国でつくるべきでしょう。しかし、ある範囲は都道府県かもしれませんが、主体は具体的な計画の場合にはやはり基礎自治というものを非常に重要視する必要があるのではないか、私はそういうふうに思うわけです。そういう点で、果たして政府案のこの規定でそういうものがもう少しきちんとなっていくのか。下手をすれば今でも屋上屋を重ねているものにさらにもう一つ屋上に別のものをつくっただけで終わってしまうのではないか、そういう効果がちゃんとあるのかないのか、その点についての見解をまず聞いておきたいと思います。  そして同時に、計画主体について、詳細な計画とか広域な計画とかありますが、だれが計画の責任主体になるのか、あわせて聞いておきたいと思います。
  48. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 お答え申し上げます。  基本法十一条一項、二項におきましては、土地利用計画の策定目的、それと策定に当たっての勘案事項など基本的な事項を抽象的に定めておるわけでございます。それと、国及び地方公共団体に対して土地利用計画の策定義務づけをやっております。だから、主体につきましては国、地方公共団体が作成するということでございますが、先ほど土地利用計画が非常に複雑な計画体系になっておるという御指摘でございます。御指摘のとおりいろいろな計画が多岐にわたっておりますが、国土利用計画法の計画体系を見ましても、計画は全国計画、都道府県計画、市町村計画と、一応公共団体、国のレベルでそれぞれつくられることになっております。これらは一応マスタープラン的な計画ではございますが、フィジカル的な、即地的な計画といたしましては同法に土地利用基本計画というのがございます。  先生が先ほどおっしゃいましたように、全国を五地域に分け、調整を要するところは調整事項等を勘案しながら計画を策定し、実現を図るという内容の計画でございますが、この土地利用基本計画を上位計画といたしまして個別具体の法律に基づきましてさらにフィジカルな都市計画とかあるいは農振計画、森林法に基づく計画等々があるわけでございます。そういう計画に基づいて秩序的な土地利用を図っていこうということでございますが、計画主体につきましては、それぞれの段階でつくられるわけですから、国、知事、市町村長とあるわけですが、市町村段階の計画は、これは今までの既存体系を見ましても、住民の意見等を反映させながら市町村長が策定する、そういうことになってございます。基本法策定後もそういう現行計画を充実させながら、さらに必要な場合にはいろいろ見直し等も行う必要があろうかと思いますけれども、そういう現行体系を前提にして充実強化を図っていく、そういうふうな考え方基本法は規定しております。
  49. 菅直人

    菅委員 今の説明を聞いておりますと、何か四党案説明していただいているようでして、今言われたとおりのことが四党案ではもうちょっとはっきりと書いてある。しかし政府案の方は、それがどうも説明を受ければそうかとも読めるけれども、少なくともそのあたりがはっきりしてない、そういうふうに受けとめられるわけです。  そこで、もう一つだけ、先ほど言った懸念を解消しておきたいのですが、この土地基本法先ほど言いましたように、一部の心配をする人は、開発促進ばかりが優先して何か地上げ屋の理論的根拠にでもされるのではないかという心配をする向きも実際あるのです。そういう点、どうなのか、そこだけ確認をしておきたいと思います。
  50. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 基本法では第二章の「土地に関する基本的施策」の中で、十一条に土地利用計画の策定の条文がございまして、その二項で計画を策定する際の配慮事項といたしまして、「地域の特性を考慮して土地高度利用土地利用の適正な転換又は良好な環境の形成若しくは保全を図るため特に必要があると認めるときは土地利用計画を詳細に策定する」云々という規定を置いております。それと、さらに十二条で、そういった計画の実現を図るために、土地利用規制に関する措置あるいは計画に係る事業の実施その他必要な措置を講ずることとしておりますが、この両条文に高度利用という文言が出てまいりますのであるいはそういうふうな御懸念をお持ちの方もおられようかと思いますけれども、要は大都市地域におきましては遊休地等の利用促進、これは高度利用でございます、さらには必要な再開発、そういった事業を地域の実情に応じて適切に行う、そういう意味で高度化の必要はあるのじゃなかろうか。また、市街化区域農地の計画的宅地化あるいは工場跡地の他用途への転換、そういった利用転換も土地利用を有効適切に図っていくためには非常に重要なファクターでございますので、そういう面を特に計画策定の段階では配慮しながら、必要に応じて詳細な計画あるいは広域的な調整、そういうことを行いながら計画の充実を図ろう、そういう趣旨でございまして、いわゆる地上げ的な高度利用といいますか再開発だけを言っておるわけじゃございません。計画に基づくあくまでも適正、合理的な土地利用の推進のための計画充実、策定、そういう趣旨でございます。
  51. 菅直人

    菅委員 これも、今の説明を聞いていればますますちょっと心配になる。  つまり、計画の中身のことは、まさに計画をする主体の中で議論をされればいいわけです。あるところは確かに高度利用すべきところも出るでしょう。しかし、逆に言えば、ある部分は逆に緑に一部戻して環境をよくするという部分も出るわけでして、それをこういう基本法と名づけたものの中にこういう目的で計画をつくれみたいなことを誘導するというのはちょっと趣旨が違うのではないか、このことを申し上げておきます。  そして、建設大臣がおられるうちに一つだけちょっと、個別の問題といいましょうかかなり大きな問題ですが、この間、建設省宅地並み課税を強化するという方針が新聞紙上等で報道されておるわけです。  この宅地並み課税の問題というのは非常に長い議論がある中で、地権者のいろいろな議論はもちろん従来からあるわけですが、それと同時に、その地域自治体なりその地域に住んでいる人が果たしてそれを肯定するんだろうか否定するんだろうか、つまり賛成するんだろうか反対するんだろうか、それを考えたときには、その土地がどのように利用されるのかによって、肯定する場合、いわゆる賛成する場合、反対する場合出てくるだろう。簡単に言えば、宅地並み課税だけをぼんとやって、マッチ箱のような家がぎっしりいっぱいになるあるいはワンルームマンションのようなマンションがあっちこっちに乱立する、そういうぐらいなら今のままの方がよっぽどましではないかというのが大多数の意見である、私はそう思うわけですね。  そういう点で、この利用の仕方との関係でどのようなことを考えておられるのか。つまり、例えばそこは三分の一は公園になります、あとの三分の一は不足している公共施設になります、あとの三分の一はゆったりした住居地域になりますとか、そしてそれが具体的に、単に希望的プランというのではなくて、ある意味では必ずそうなりますという法的な担保も含めて、そういう計画がきちんと担保も含めてできるというような制度があるのかないのか、あるいはないとしたらつくるつもりがあるのかどうか、その点について特にお聞きしておきたいと思います。
  52. 原田昇左右

    ○原田国務大臣 まさに今の御心配の点、我々も同感でありまして、乱開発されるのならもとの方がよっぽどいいわけであります。  そこで、その地域を中高層住宅に、きれいな市街地整備とあわせてしていこうという地域であるとすれば、その都市のイメージ、地域のイメージがわかりやすいような地区計画制度というのがございますから、こういうものを活用していただいて、地域の方々、土地所有者の方々で十分御相談をいただき、計画的な宅地化ができるように区画整理の手法とか地区計画の手法を十分活用していただいて、全体として調和のとれた町づくりができるように、しかも中高層の住宅をお願いする場合にはぜひともそれに対してインセンティブとして容積率をかさ上げするとか、そういうことも考えまして、全体としてよくなったな、そして地権者にとっても農地のままに置いたよりはずっと収入も上がったな、こういうようなことにしていくことが非常に大事ではないかな、こういうように思っておりますので、ぜひまた菅先生の御指導をお願いしたいと思うわけであります。
  53. 菅直人

    菅委員 そうすると、都市計画法の地区計画というのが今四種類あるようですが、場合によってはこれに加えて何らかの規定を設けるということも考えているというふうに理解していいですか。
  54. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 新しい制度というものも今議論をいたしております。
  55. 菅直人

    菅委員 新しい制度ということなので、そういうことも含めての検討中だというふうに理解しておきますが、先ほど大臣が言われた中で一つだけ申し上げておきたいのは、農業をやっていたときよりも収益が高くなるようにというふうに言われましたけれども、実はほとんどの場合、農業をやっていたときよりも収益が高いというのが今は余り効き目がないのですね、特に大都市周辺では。それよりは、先ほど言ったように資産保全ですから、中途半端に——それは農業よりは今だったら駐車場にするだけでも一時的収益は高いわけですけれども、それよりは農地のまま持っていた方が税の面で確実に財産が保全できるということが大きいので、例えば農業収益の何倍になるからこう土地転用されるはずだというのは必ずしも余り効き目がないという私の認識をあえて申し上げておきたいと思います。  建設大臣は十二時で出られるということなので、建設大臣に絡む話を一応これで終わりにさせていただきます。あと残りの時間を、先ほどお渡しをした四党と政府案対比を含めて、順次確認的な意味も含めて御質問をしていきたいと思います。  まず、時間があと三十分少々なので多少端的にお答えをいただきたいのですが、この基本理念の中で、四党案では土地性格というものを一応前文、一条で多少書いたわけです。政府案にも二条に一部ありますけれども、これは公共性の問題と関連をすると思うのです。  つまり土地というのは何か、私なりに考えてみると、まず一つは地球の表面である、それで水がないところといいましょうか。あるいは別の表現で言うと、今度は国土、いわゆる領土である。あるいは魚とか一部の生物を除いては、まさに動物、植物が生存をする場であるということになると思うわけです。ですから、土地の公共性というのはそういう土地そのものの性格からして当然のことだ。例えばこの時計が私のものであるというのとこの土地が私のものであるというのはもともと全然性格が違うんだ。だれも地球の一部を私のものというふうに言えるのは、それは神様がいれば神様は言えるかもしれないけれども、言えっこないわけでありまして、あくまで土地というものは性格的にそういう公共的なものなのだ。それに対する所有権というのはあくまでいわば仮の姿とでも言いましょうか、そういう一種の約束事であるというふうに理解すべきではないか。それに基づいて公共性ということについて考えていく必要があるだろう。  それで、四党案では、土地というものについて「土地に関する権利」という表現になっておりますけれども土地の所有権というものを、財産権という意味では憲法二十九条によって保護されるものの対象に入るけれども利用という意味ではこれは公共の福祉を優先すべきときちんと明記をしているわけです。それに対して政府案は少し持って回った言い方になっておりまして、第二条の表現は「公共の福祉のため、その特性に応じた公共的制約が課される」、非常に回りくどくなっているわけです。端的に何かこれは違うのか。違わないとすればもっとすっきりすることができるのじゃないか、野党案でいいのじゃないかということになるわけですが、いかがですか。
  56. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 土地につきましては、ただいま御指摘のとおり、政府案でも第二条におきまして、土地は限られた貴重な資源であり、諸活動にとって不可欠の基盤である等、大変公共的な性格の強い特性を持った土地だということを明記しております。その点におきましては、基本的認識は全く一致しているのじゃないかというふうに考えております。さらに、野党案では利用については公共の福祉優先という規定を置いておられますが、政府案では、少し回りくどいという御指摘がございましたが、土地の公共的な性格の強いという特性に応じた公共的制約が公共の福祉の観点から課せられるのだというふうに規定してございます。  要は、憲法二十九条においても、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」というふうに規定されておりますので、この憲法の規定をさらに土地について敷衍しまして、憲法の中で許容される範囲で、「公共的制約」というのは難しい言葉かもしれませんが、公共的な観点から権利内容を制限されるべきなんだ、そういうふうな趣旨の規定を置いたわけでございます。  したがって、その意味するところは非常に近い、ほとんど同じだというふうに考えておりますが、ただ、国土利用計画法でも、その理念規定の中で、国土の利用については公共の福祉が優先するという規定を明示しております。ただ、国土の利用という場合と、この政府案土地基本法が規定しております財産権の対象たる個々の土地とでは若干違うのじゃないか、そういうふうな点も検討し、政府案のような規定になったわけでございます。
  57. 菅直人

    菅委員 これと関連して、政府案の第八条に「国民の責務」という項があります。この二項には、「国民は、国及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力するように努めなければならない。」四党の案は、同じく「国民の責務」というのを三条に置いておりますけれども、「国民は、その有する土地に関する権利を公共の福祉に従い行使する責務を有する。」と述べてあります。つまり先ほどの条項と連係させて考えると、何か政府案というのは、公共の福祉というのは国とか地方公共団体が決めることが公共の福祉で、国民はそれに従え、その制約を課すのだというふうな、どうもそういう、何といいましょうか思想が見え隠れしているように思うわけです。しかし、本来国民の責務というのは、まさにこれは主権者が主権者として自分たちのことをどうあるべきかということで考えるのが本来の筋であって、それを国や地方公共団体に従う義務という形で規定するのは、国民の責務という意味からいってもおかしいのではないか。あくまで公共の福祉という観点で、それぞれ一人一人の国民もその立場を十分に考えて土地に関して行動しましょうというのが本来あるべき姿ではないか。そのこともあわせて見解を聞いておきたいと思います。
  58. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 政府案八条で国民の責務の規定を置いておりまして、その一項で、「国民は、土地利用及び取引に当たっては、土地についての基本理念を尊重しなければならない。」ということで、こういった行為に対する規範として土地に関する基本理念を尊重していただこうという趣旨の規定を置いたわけであります。さらに二項で、「国民は、国及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力するように努めなければならない。」という規定を置いておりまして、確かに野党案とはその点が異なるわけでございます。  ただ、現在土地所有者は延べ三千万人余に及ぶ状況でございます。そういう非常に多くの方が土地の権利行使にかかわっておられるわけでございますので、国民の方々に基本理念を自覚した行動と土地対策に対する理解、協力をお願いする、そういう趣旨で二項も置いたわけでございます。もちろん、この国及び公共団体の施策といいますのはこの基本理念に基づいて策定される施策でございますので、そういう施策に対しましては協力義務をお願いしようということでこの二項を置いてございます。
  59. 菅直人

    菅委員 今の答弁を聞いていても、なぜ政府案でなければならないかという答弁には必ずしもなってなくて、わざわざ回りくどく言ったり、あるいは本来の国民の責務という考え方とは若干異質な表現になっているのではないか。あわせて聞いておきます。一条の中に、これはこの法律の「目的」ですね、その中の一つに「適な需給関係の下での地価形成に資する見地か土地対策を総合的に推進し、」とあるわけです。四党案では、前文及び一条に「適正な地価形成」、「良好な宅地の供給」、こういうことを目的とすることが明らかにされているわけです。非常にこの現が不自然なんですね。「適正な地価形成に資する見地から」ならまだわかるのですが、「適正な需給関係の下での地価形成」、これは一体何を意味しているのか。極端に言えば、適正な需給関係で幾ら値上がりしてもそれは仕方ないということを言うためにわざわざこれを入れているのか。少なくとも普通第一条という理念で言えば、国民にとってこの法律がどういう目的なり意味を持つかということを明らかにするわけでしょうけれども、これはどういうことですか。
  60. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 地価は、他の財と同様に、基本的には需給によって自由主義経済のもとでは定まるわけでございますが、しかしながら、我が国におきましては、土地に対する大変強い執着意識もありまして、土地については市場メカニズムは必ずしも健全に機能しているとは言いがたいと思います。したがいまして、第一条では「適正な需給関係の下での地価形成」という表現で、適切な公的介入を通じて市場メカニズムを健全に機能させることにより適正な地価形成を図ることを意味する規定として、こういう表現を置いたわけでございます。
  61. 菅直人

    菅委員 これは、大臣、よくお聞きいただきたいのですけれども、市場メカニズムが適正に機能していれば土地問題は解決するというのであれば、もっと以前に解決したと思うのですよ、それは業界の問題とかいろいろなことで。そうではないのでしょう、今の我々の基本認識は、あるいは少なくとも大勢の人が考えていることは。つまり、市場メカニズムがそのメカニズムとして機能したとしても非常に異常な問題が起きる。別な言い方をすれば、別な機会でも言いましたけれども土地というものがもうかる財である。もうかる財に需要が集まるのは当然だし、逆にもうかる財であるから売らないのも当然だ。売るのが不自然なぐらいもうかる、やれ二割、三割上がるわけですから。市場メカニズムはある意味では機能しているのですよ。もうかるものにはどんどん買いが入り、あるいはもうかるものには売りが出ない。あしたになれば二割上がる、来年になれば二割上がるとわかっている株を売りに出す人はいない。どんどん上がるわけですよ。買おうとする人はどんどん出る。自由主義経済のメカニズムはちゃんと働いているわけですよ。しかし、メカニズムが働いているからというか、働いていてもというか、異常な値上がりになっている。そこで、こういう基本法をつくって利用とか利用計画とか税のあり方で変えていこうとしているわけですから、その根本の理念のところに市場メカニズム云々というようなことを盛り込んでいるというのは全く筋違いじゃないですか。
  62. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 確かに市場メカニズムは機能しているわけでございますが、それが健全に機能しているかどうかが問題だというふうな認識をしております。例えば一般の財でありますと、通常は価格が上昇いたしますと需要が縮小し供給が増大する中で均衡が保たれるわけでありますけれども土地というのは、いろいろな要因、原因がございましょう、上昇局面では投機とか仮需要とかむしろ需要が増大する。また、供給は売り惜しみ等縮小傾向さえしかねない。しかも、供給には非常に時間がかかります。非弾力的であります。そういう面で健全に機能しない面が非常に強うございます。この「目的」の規定は、そういった非健全に機能しがちなメカニズムに公的な介入によりまして枠をはめ、投機的な需要を排除し、供給を適切に促進する、そういう中で適正な地価形成を図っていこう、そういう趣旨の規定でございます。
  63. 菅直人

    菅委員 ここは大臣に一言だけお答えをいただいておきたいのですけれども、この条文そのものを今すぐどうこうというのは大臣のお立場としておっしゃりにくいと思うのですが、大臣、いいですか、つまり、今の局長の答弁ですと、土地は特殊な財で健全に市場が機能していないからこういうことになっているという言い方なのですね。しかし、私は、その認識そのものが若干違っていると思うのです。つまり、特殊な財であるという認識の中身が違っていると思うのです。  よく言いますように、利用を目的とした取得であれば、車を一台持っている人はもう五台も十台も必要ないわけですから、買おうとは思わないし、あるいは値段が高ければほかのメーカーがつくるわけです。利用を目的としたものであれば、需給バランスというものはあるところでとれると思うのです。しかし、株とか国債のように資産そのものとしてのものであったら、これは需給バランスというのがあり得るのか。例えば、あした年率三割の国債を発行する。それを一億円分発行する。あっという間に売り切れますよ。十億円分発行する。あっという間に売り切れますよ。少なくとも金の供給が続く限り、三割の国債を発行したらあっという間に、それが百億円だろうが一兆円だろうが、場合によったら百兆円だろうが、売れてしまうわけですよ。需給バランスなんてないわけですよ、株とか国債とかそういう資産的な財には。だから土地というのは、そういう資産的な側面と、いわゆる車とかテレビのように、我が家をつくりたい、オフィスをつくりたい、そういう利用的側面が重なっている。しかし、利用的側面だけでないからこういう現象が続いているわけです。こういう意味で需給関係という議論の中だけで決着がつかないのだという認識が必要なのであって、何か健全な需給と不健全な需給があるみたいなことで考えること自体が認識として非常に間違っている。少なくともそういう認識に立つことは問題解決をちょっと横道にそらすと私は思うのです。  そういう点について、大臣、全般的認識でいいですから、どう思われますか。
  64. 石井一

    ○石井国務大臣 大変難しい問題だと思っておりますが、要は、現在の日本の土地というものが土地神話というようなものが構築された中に、普通の商品というふうなものではない条件下に置かれておる、したがって、いわゆる通常の価格で、まじめに働いておられる方々との関係において全く手の届かないものにまでなってしまっておる、したがって市場メカニズムというふうなものがまともに働かないような環境下に置かれておる、したがって土地基本法を制定することによりまして大いに土地の供給をやり、またそのほかいろいろの、公有地を放出する等々の中からもう一度市場メカニズムが作用するような状況に持っていきたい、そういう願望がこの基本法の中に込められておるのではないか、私はそういうふうに認識いたします。
  65. 菅直人

    菅委員 そこは若干私などの認識とはニュアンスが違いますけれども、とにかくこれは基本法と名づけた法律の中で、こういう、何といいましょうか、地価形成という、ある意味では非常に重要な「目的」の中にこういうものが、「適正な需給関係の下で」なんてことが入ることは非常に不自然で、例えばこれは別個に、今もよく議論されておるように、大蔵省銀行局が銀行の行政指導をする、ノンバンクをコントロールする、そういうときに異常な貸し付けはおかしいじゃないか、そういうところで言うのなら大いに結構な問題ではあるかもしれない。しかし、少なくとも土地の基本を議論するときにこういうことは非常に不自然であるということを重ねて申し上げておきます。  そういった意味で、基本理念について幾つか申し上げましたが、次に、税とか利益に応じた負担という問題です。  政府案では、五条、十四条、十五条にそれぞれ、価値増加に伴う適切な負担とか社会資本整備による利益に応じた適切な負担とか税制上の措置が規定されております。四党案では土地税制原則ということで、土地処分等の利益への適正な課税土地保有についての適正な課税と、割とシンプルでわかりやすいと私は思いますが、そういう形になっております。  この政府案の言う三つの規定、特に私はこの十五条の規定が、税という表現でいえば唯一ではないかと思いますけれども、「国及び地方公共団体は、土地についての基本理念にのっとり、」途中は省きますが、「税負担の公平の確保を図りつつ、土地に関し、適正な税制上の措置を講ずる」、これはどういうことが含まれているのか。基本理念と言われると、それはいろいろなことが書いてあるわけですからあれなのですが、土地税制に対して政府案はどういう方向性を示しているというふうにこれから理解できるのですか。
  66. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 お答えします。  まず五条でございます。  申すまでもないことでございますが、土地の価値の増大は、他の財と異なりまして、人口や産業の集中あるいは道路、鉄道等の社会資本の整備、さらには都市計画変更等によります開発可能性の増大等、いわゆる外部的な要因によってもたらされる面が多いわけであります。すなわち、土地の所有者等がみずからの努力によらないで膨大な利益を受けるケースが多い。したがって、これに対する不公平感も増大する、そういうふうな現状ではないかと思います。また、このような資産としての有利性を土地が有しておりますので、国民土地所有に対する執着意識も強くなっております。五条は、このような点を踏まえまして、公平の確保に資するほか、資産としての土地の有利性を減殺するという観点から、所有者に対して利益に応じて適切な負担を課することを明らかにしたものでございます。  この五条の基本理念を受けまして具体的な施策の展開方向として、十四条の受益者負担金制度及び十五条の土地税制について規定を設けております。  十五条の内容でございますが、土地税制の措置といたしましては、基本理念、五条を説明しましたように、第一に適正利用、投機抑制、適正負担の内容が盛り込まれておるわけでございます。こういう基本理念にまずのっとって措置を講ずることが重要であるということであります。また第二には、土地利用計画を実現するために講ぜられる施策、そういう施策を踏まえて税制措置が講ぜられるべきであること、第三に税負担の公平の確保を図りつつ措置が講ぜられるものとしておるわけでございます。  野党案と比べさせていただきますと、野党案の「適正な地価形成に資する」という考え方は、政府案でも投機抑制の理念を負担の理念として規定しておりますから、この点は実質的には一致しておると思います。また、「社会的公平を確保する」という考えを野党案では明示しておられますが、これは適正負担の概念あるいは税負担の公平の確保という規定の中ですり合っておるのではないかというふうに考えております。また保有税等については、有効かつ合理的な利用を促進するという考えのもとに税措置を講ずることとしておられますが、政府案でも適正な利用の理念にのっとり、それぞれ税措置を講ずるとしておりますので、これは全く一致しておると言っていいのではないかと理解しております。
  67. 菅直人

    菅委員 全く一致しているならわかりやすい方を採用していただきたい。この条文を読むと、基本理念があちこちにばらまかれているわけですから、基本理念にのっとりと言われても、解釈を聞いてやっとああそういうことにのっとるのかということになるわけでありまして、基本法ですから国民的にもうちょっとわかりやすい法律にすべきではないかと思います。  さらに、この問題で一、二確認をしておきたいのですが、この十四条で言う社会資本整備に関連する利益に応じた適切な負担というのは、先ほど受益者負担ということを言われましたが、具体的にこういう税以外にどういう形で取るつもりなんですか、そのことを一応お聞きしておきたいと思います。
  68. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 十四条では、道路、鉄道、下水道、公園等の社会資本の整備に関連して土地所有者等が著しく利益を受ける場合において、受益の範囲や程度が特定される場合については、公平の確保等の見地から、利益に応じた適切な負担を求めることとしております。  本条に基づいて現在展開されております施策といたしましては、都市計画法に基づく受益者負担金制度、下水道の負担金とか区画整理の公共減歩等もこれに該当するかと思いますが、その他都市計画法の特定街区制度の活用による公開空地の提供とか総合設計によるそういった空地の提供等もあるかと思います。さらに、現在東京臨海部で進められております大街区方式の区画整理事業制度の活用、この中でも受益者負担の思想が出ているのじゃないかと思います。その他負担金とか協定等の形でも現にいろいろこういった受益者負担の活用が行われておると思いますが、そうした現行制度の活用あるいは改善等の施策がこの基本法十四条の規定に基づいて今後も展開されていくのではないかと期待している次第でございます。
  69. 菅直人

    菅委員 それでは次に移ります。  あと野党四党案にあって政府案にないものは、公有地の拡大、さらには宅地供給という規定の二つであります。  四党案では十一条に公有地拡大の推進ということで、良好な都市環境の計画的な整備を促進するために公有地の拡大を推進しようじゃないかということを特に設けたわけです。これは特に大都市部の再開発とか公園用地などの問題でいいますと、自治体が土地を持っていればかなりやりやすいわけですけれども、それが全くないところは非常に難しいという現状があるように思うわけです。買えばいいといってもなかなか土地がないわけですから、そういう点で特に設けたわけです。  また宅地供給ということは、特にこの土地基本法の背景になっておりますのが、農地が足らないというのは余り最近は聞かないわけですけれども宅地が非常に高いということが最大のテーマとしてこういう問題が特に強調されているわけですから、そこで宅地供給ということをあわせて十条に設けたわけです。この点、政府案として入っていないのですが、その見解を伺いたいと思います。
  70. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 まず、公有地の拡大についてでございますが、政府案第十二条におきまして「適正な土地利用の確保を図るための措置」を規定しておるところであります。この規定におきまして良好な住宅宅地の供給、土地の有効高度利用の促進等のための道路、公園等の社会資本の整備が図られていくものと考えておりまして、公有地の拡大の推進はこのような社会資本整備を図る上で必要な施策だというふうに認識しております。ただ、しかし、基本法では施策の基本的な方向を定めるということで整理してございますので、現在の政府案では公有地の拡大の推進等の個別具体の施策にまでは規定が及んでいないということであります。  また、宅地の供給促進でございますが、これも政府案第十一条におきまして、人口及び産業の将来見通し、土地利用の動向等の諸条件を勘案して必要な土地利用計画を策定するものとしておりまして、この規定を受けまして、大都市圏等住宅需要が逼迫しておる地域におきましては、宅地供給の積極的な推進が図られるべく必要な土地利用計画も作成されるのじゃないかというふうに考えております。  また、十二条において「適正な土地利用の確保を図るための措置」を規定しておりまして、これにより宅地供給のための所要の事業も展開されていく。公有地の拡大と同じでございますが、個別具体には規定してございませんが、そういう中でこういった事業、施策も包含しておるというふうに理解しておるところでございます。
  71. 菅直人

    菅委員 個別具体的なものは入れていないと言われるのですが、先ほど来何か自分の都合のいいところはかなり個別具体的に、需給関係とか高度利用とかいろいろ入れて、ある意味で公有地とか宅地供給なんというのは、個別と言っても国民的に非常にわかりやすい大きな個別問題ですよね。ですから、こういう法案の中に、そういういわばこの法案をつくる大きな目的が、宅地供給とか、あるいは都市をうまくつくっていく上での手法としての公有地拡大とかあるわけですから、他の法律もありますけれども、盛り込んでも決して不思議ではないし、わかりやすくていいのではないかということを申し上げておきます。  大分時間が経過をしてまいりましたが、あと法制上の措置ということについて、政府案では九条に「土地に関する施策を実施するため必要な法制上及び財産上の措置を講じなければならない。」と規定が設けられております。四党案ではそのことをもう少しはっきりと四条の中で「必要な関係法令の制定又は改廃を行わなければならない。」というふうに規定をしております。  たしか一昨日の議論の中でこれは基本的には同じだという答弁もありましたけれども、この野党案、四党案なり政府案をいろいろ見ている専門家を含めた民間の皆さんの議論の中で、この政府の土地基本法が成立したとしても果たして本当に実効性があるんだろうかということがかなり強く指摘をされております。あり得るとすれば、この理念に基づいていろいろな具体的な法令が具体的に拘束力を持った形で改変されていくことの中で実行されていくんだろうと私は理解しているわけですが、この九条はそういうふうに読んでいいのですか。
  72. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 御指摘のとおりでございます。  基本法は、形式的には憲法のように他の法律に優越するものではございませんけれども基本法と銘打って土地に関する基本理念あるいは施策の基本的な展開方向を定めておるわけでございますから、今後国や地方公共団体が新しい施策、制度を考えていく場合にはこの基本法にのっとった方向で考え、検討されるべきものだと考えております。また、既存の法律につきましても基本法の示す方向に則しているかどうか常に検討が加えられていくべきものでございます。いろいろな行政運用についても同様だと考えております。
  73. 菅直人

    菅委員 時間もなくなってまいりましたので最後に大臣に、きょうのこの議論を聞かれて、一部飛ばしたものもありますがほぼ全部の条文にかかわる問題を四党案政府案対比の中で議論をしてきたわけです。この法案の提出の経緯はもう大臣みずから言われているように、四党案の方が先に出て政府案が出されてきた、審議の形は、形式は両方やっているわけですが政府案中心にした審議という形にもなっていますが、まさに新しい今の国会情勢の中で、よりいいものをつくるという方向で柔軟に対応するということを大臣の方から一昨日も答弁いただきましたけれども、さらにきょうの議論を踏まえてこの基本法成立のために、野党の四党の提案を含めて大いに、何といいましょうか、いいものはどんどんとっていくということであるかどうか、そのあたりの決意のほどを最後にお聞かせをいただいておきたいと思います。
  74. 石井一

    ○石井国務大臣 いろいろの観点から、さまざまな御提案をいただきましたことを十分拝聴させていただきました。  ローメーカーと申しますが、ローメーカーがどういう切れ味でどういう趣向でその作文をするかということによりまして議論は分かれると思いますが、求めておりますことは政府案も野党案も非常によく似ておると申しますか、目的としておるところは非常に一致しておるところが多いと思うのでございます。その基本法考え方と申しますか基本理念と申しますか、しかし、要は今後それを踏まえて国民的課題を解決するためにどう対処するか、こういうところが非常に大きな問題ではなかろうかと思います。  そういう意味におきまして、本日いろいろ提起されましたもろもろの問題、例えばこの法案の作成の過程において処理できる問題もございましょう。あるいは、ある部分の問題におきましては今後の課題として検討をすべき問題もあるでありましょう。それからまた、単に土地基本法という問題でなく、日本の税制全体、あるいはそのほかの法体系、あるいは過去のいろいろの積み重ねの行政の中からもう少し長期的に、しかしやはり国民的課題として解決していかなければいかぬ問題もあるでしょう。いろいろの問題がございますけれども、私といたしましては、何も、ある政府案だけにとらわれるという姿勢でなく、コンセンサスを求めて柔軟に対応させていただき、政府として決断するべきこと、この時点でできることはひとつしっかりとやりたい、そういう気持ちを持っておりますことを申し上げたいと思います。
  75. 菅直人

    菅委員 終わります。
  76. 大塚雄司

    大塚委員長 この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ────◇─────     午後三時四十六分開講
  77. 大塚雄司

    大塚委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  78. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三であります。  まず最初に、経済企画庁物価局の方にお伺いをいたしますが、昭和六十二年の九月に企画庁の物価局は「首都圏における地価対策」というものの問題提起をいたしました。これは、大分時間が経過をしておるわけでありますけれども、主としてサラリーマンという立場から、地価対策というものあるいは持ち家問題、こういう観点からいろいろな問題提起をしたわけであります。その中に「投機鎮静化のための応急対策が必要である。」この中でもいろいろなことを言っておるわけでありますが、「投機的需要の抑制」こういう項目が基本的な考え方の中にあるわけでありますけれども、その中でどのようなことを触れているのか。特に「金融の自粛指導」についての問題提起を御説明願いたい、このように思います。
  79. 関野弘幹

    ○関野説明員 ただいま先生御指摘の経済企画庁におきます「首都圏における地価対策」というのは、昭和六十二年当時、特に首都圏における地価の上昇が著しかったということで、企画庁としても地価問題を重要な政策問題というふうに認識いたしまして、地価問題に対して物価局内に設けましたプロジェクトチームで検討を進めて、その結果を提言として取りまとめたわけでございます。  内容は、御指摘のように、平均的な勤労者が合理的な通勤可能範囲内で住宅を入手できるような地価の水準を試算いたしまして、その目指すべき地価水準を実現するために、先生今の御指摘のような投機的需要の鎮静化のための応急措置ということも述べているわけでございます。この点につきましては、その次の昭和六十三年六月に閣議決定されました総合土地対策要綱におきましても、投機的な需要の鎮静化のための金融の抑制ということが取り上げられておりまして、この点に関しましては大蔵省銀行局から関係のところに通達が出ているというふうに承知しております。
  80. 草川昭三

    ○草川委員 私がなぜ今の時点になりまして六十二年というかなり年限のたった経済企画庁の地価対策を持ち出したのかと申し上げますと、今も答弁がありましたように四十歳代前半の中堅勤労者が購入可能な住宅価格は三千万円程度だ、こういうような趣旨からいろいろと提起をしておるわけでありますが、もう残念ながらそういう希望、夢というものは砕かれてきておる、こういうことからきょうの質疑を始めていきたいと思うわけであります。  そこで、今回、土地基本法案政府案というのが出されているわけでありますが、第七条の中には「事業者の責務」という項がございます。「事業者は、土地利用及び取引(これを支援する行為を含む。)に当たっては、土地についての基本理念に従わなければならない。」こういう文言があるわけでありますけれども、この中で金融機関というものはどういう位置づけになるのかお答え願いたい、こういうように思います。
  81. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 七条で「事業者の責務」を規定しておりまして、「事業者は、土地利用及び取引(これを支援する行為を含む。)」そういった行為を行うに当たっては「基本理念に従わなければならない。」というふうに規定してございます。特に金融機関につきましては、直接みずから土地利用、取引される場合はもちろんこの事業者に該当するわけでありますが、直接利用、取引するのではなく、間接的にこれを支援する行為、例えば融資行為、そういったものも理念に従って行っていただく必要がある、そういうふうな趣旨でございます。
  82. 草川昭三

    ○草川委員 そのことは銀行等を含むと、こういう今の答弁があったわけでありますが、問題は、きょう日本銀行からも来ていただいているわけでありますけれども、金融機関の不動産業向けの貸し出しの動向を今どのように数値的につかんでおみえになるのか、お伺いをしたいわけであります。日本銀行は金融機関の土地関連融資の動向について大変強い関心を払っていると思うわけでありますし、つい最近も、日本銀行総裁も講演や記者会見、こういう機会にかなりはっきりとした言葉で発言をしておみえになるわけでありますが、まず総裁がどのような御発言を最近なすっておみえになるのか、改めてお伺いをしたい、こう思います。
  83. 田村達也

    田村参考人 日本銀行の総務局長田村でございます。  最近の地価動向は、地方でかなり顕著な上昇が続き、また都内でもまた再び上昇が見られるということでございまして、こうした地価の上昇がインフレ心理を引き起こしたり、一般物価の上昇につながったりするようなことがあってはならないという観点から、日本銀行は非常に関心を持って注意しておるわけであります。  土地価格の問題は、いろいろな土地利用に関する法律やあるいは税制というものが大きな意味を持ってくると思うのですが、金融機関の融資活動がこういった土地価格の上昇を助長したり、あおったりするようなことがあってはならないというような観点から、日銀の総裁はいろいろな機会をとらえて金融機関に対して注意を喚起しているところであります。  一番典型的な例は、さきの地方銀行大会、十月十九日でございましたけれども、そのときに申し上げているわけでありますが、基本的には、金融機関等がいかなる分野、いかなる企業に融資を行うかということは自己責任に属するところであるわけですが、銀行は我が国の貯蓄と投資の関係を仲介する最も重要な機関であり、そういった意味での資金配分上、公共的な役割が高い、そういった枢要な地位を占めておるわけであります。かりそめにも地価高騰を引き起こすような金融活動を行ってインフレ心理の発生や国民生活の不安定をもたらすようなことがあってはならないというわけであります。銀行はまた一国の決済システムにおいて中核的な地位を占めるという意味で、各種の金融機関業界の中でも特別な地位にある、その資産の健全性を維持する必要が高いと言えるわけであります。銀行において仮にも安易な土地取引や土地の値上がりを前提とした貸し出しが行われるようなことがあってはならないというふうに総裁は論じております。
  84. 草川昭三

    ○草川委員 今、かりそめにもとか仮にもとか、かなり日銀としても強い懸念というのですか警戒心を持って、土地、不動産に対する融資、こういう行き過ぎをいさめていると思うのでありますけれども、金融機関の不動産業向けの貸し出しの現状を数字を挙げて説明していただきたい、このように思います。
  85. 田村達也

    田村参考人 関連計数の推移を申し上げますと、全国銀行の不動産業向け貸し出し残高は、直近のこの八月末で四十四兆七千六百五十八億円という数字になっております。残高の前年比伸び率は一三・四%でございます。この残高の前年比の推移を見ますと、ここ二、三年の伸び率のピークは六十二年の三月でございまして、三二・七%という増加率を記録しました。その後、国土利用計画法改正による監視区域制度の導入や金融機関に対する土地関連融資の自粛要請などによりましてかなり伸び率が鈍化してまいりまして、六二年度末、すなわち六十三年の三月末では一一・三%の伸びとなりました。その後六十三年度に入り幾分伸び率を高めた後、ことしに入り一三%台の前半という動きとなっております。  以上のように、全国銀行の不動産業向け貸し出し残高の伸びは、急増を示しました昭和六十一年、六十二年に比べれば比較的落ちついたものであります。そしてその内容も、最近ではオフィスビルの建設あるいは都市再開発プロジェクト等、実需に結びついた貸し出しが中心というふうに聞いております。しかし、先ほど申し上げましたように最近のところで残高前年比が一三・四%という伸びであります。銀行の貸し出し全体の伸びが八%であるわけでありますから、まあかなり高い伸びであることは間違いないところであります。  こういう状況でありますから、日本銀行としても、先ほど述べましたような観点から、今後の金融機関の不動産関連融資の動向につきましては、今後とも注意深く見守っていきたいというふうに思っております。
  86. 草川昭三

    ○草川委員 今、一三・四という伸び率は比較的安定をしておるのではないだろうかというような趣旨の答弁がありましたが、それは六十一年とか六十二年は三二%ですからね、その三二に比べてみれば一三%台というのは多少はと、こういう言い方がありますけれども、今お話がありましたように平均八、それに対する不動産関連は一三・四ですからやはり強い。だからこそ総裁の警戒心の強い発言があったのではないか、私こう思うのです。  しかもまた、今実需に応じた融資が行われているのではないだろうかと言われましたが、これは私、きょう後で、具体的な問題提起で、本当に実需に応じた融資が行われているのかどうかは少し問題提起をしてみたい、こういうように思います。  そこで、大蔵省も来ておみえになりますから、今、日銀の方から金融機関の不動産業貸し出しの動向という全体的な報告がございましたが、ひとつ大蔵省銀行局としての考え方なり、あるいは金融機関という位置づけになるかどうかは別でありますが、生命保険あるいは損害保険等の融資もあるわけでございますが、その生命保険あるいは損害保険の中における不動産業に対する融資の状況はどうか、お伺いしたいと思います。
  87. 中井省

    ○中井説明員 銀行局の調査課長の中井でございます。生命保険につきましては次に保険一課長からお答えさせていただきますが、金融機関全般の土地融資についてお答えさせていただきます。  金融機関の土地関連融資につきましては、その業務の公共性に照らし、かねてより通達の発出、それから大蔵省におきます特別ヒアリングの実施等を通じまして、投機的土地取引等に係る不適正な融資が厳に排除されるよう強力に指導してきたところでございます。先ほど日銀の方からもお話ございましたけれども、一時のピークの三十数%というところから現在では一〇%台、いろいろな御評価があろうかと思いますが、というところまで下がってきたということでございます。  それからまた、先般国土庁におきまして、最近の地価動向等にかんがみ、国土利用計画法上の監視区域制度に係る指導を強化したことと平仄を合わせまして、大蔵省においても、指導趣旨をさらに徹底させるという観点から、新たな通達の発出を含む以下のような一連の措置を講じたところでございます。  一つは、通達を発出しまして、投機的土地取引等に係る融資を厳に排除するという従来の通達の趣旨をさらに徹底させるとともに、先生からも御指摘ございましたけれども、いわゆるノンバンクたる貸金業者一般に対する金融機関の融資についても、その資金が投機的土地取引等に利用されることのないよう、資金使途について十分な審査を行うよう指導いたしております。それから、地価の高騰地域等を主たる対象とした特別ヒアリングの実施をいたす計画でございます。さらに、金融機関によるノンバンク融資の実態把握を目的とした事務連絡の発出、加えまして、金融機関のノンバンク融資の実態についてのヒアリングの実施を計画してございます。さらに、大蔵省でも金融検査をやっておりますが、その際にも土地関連の融資について重点的にチェックをしていきたいと考えております。さらに、ノンバンクの不動産融資の適正に関する自主的措置につきまして、これは大蔵所管でない業態もございますが、関係の当局からの要請をお願いしてございます。  以上のような措置を通じまして、今後とも投機的土地取引等に係る融資が厳に排除されるよう強力に指導をしてまいる所存でございます。
  88. 山本孝之

    ○山本説明員 生命保険会社及び損害保険会社からの不動産業者に対します貸し付けにつきましても、先ほど中井調査課長から申し述べましたような措置をとっておるわけでございまして、各種通達を発出したりあるいは特別ヒアリングを行っております。  なお、ちなみに生命保険会社が不動産業等に貸し付けております貸付金の残高は、平成元年度末で二兆三千七百三十二億円で、前年同期に比べまして一〇・六%の増というふうになっております。
  89. 草川昭三

    ○草川委員 今、銀行局の調査課長、保険一課長の方からそれぞれ答弁があったわけでありますが、比較的今土地は安定をしておるのではないかというような評価前提で答弁があったやに思うわけであります。  そこで私は、大変そういう状況については問題があるということをこれから申し上げたいわけでありますが、その前に国土庁に今度はお伺いをいたします。基本法では、俗に言うところの投機的取引の抑制、これは基本理念として非常に大きな位置づけになっておるのではないかと思うのでありますが、どのように今回の基本法で投機的取引の抑制を言っておるのか、お伺いをしたいと思います。
  90. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 お答えいたします。  土地基本法案におきましては、第二条で「土地についての公共的制約」、いわば土地についての理念の大原則を規定しておりまして、それを受けて、さらに三条から五条でそれを敷衍した理念を規定しております。その一つに、第四条で「投機的取引の抑制」という条項を設けておりまして、「土地は、投機的取引の対象とされてはならない。」という規定を置いてございます。
  91. 草川昭三

    ○草川委員 今おっしゃいましたように、土地は投機的な取引をしてはならない、こういうように基本理念としてきちっとした言葉があるわけでありますけれども、では、現在までありますところの国土利用計画法というのがあるわけでありますけれども、こちらの関係で関連をして意見を聞きたいわけであります。  こちらの方では十二条になりますが、「土地に関する権利の移転等の許可」「規制区域の指定」あるいは第十三条の「内閣総理大臣は、土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害」云々、こういうものがございますが、この関連はこの基本法の中でどのように入っているのか、お伺いをしたいと思います。
  92. 藤原良一

    藤原(良)政府委員 基本法十二条におきまして、先ほどの四条の理念を受けた形で土地利用に関する規制措置を適切に講ずる、あるいは十三条で取引の規制措置、ここでは「国及び地方公共団体は、土地の投機的取引が国民生活に及ぼす弊害を除去するため、土地取引の規制に関する措置その他必要な措置を講ずるものとする。」と規定しております。この規定に従いまして、個別法であります国土利用計画法の取引規制に関する措置が今後とも適切に運用されていくものと考えております。
  93. 草川昭三

    ○草川委員 問題は行政機関のやる気があるかないかということにまたもとへ戻るわけでありますけれども、少なくとも、一九七四年に制定をされた国土利用計画法というのは、当時画期的な土地政策ではなかったかと評価をされている面もあったわけです。しかし、この十二条、十三条の実施ということは残念ながら今まで一回もやられていなかった、こういうことになりますね。  これはある学者なりいろいろな研究家の方が言っておるわけでありますが、これまでにこの法律を適用する機会が一度はあった、こう言うのですね。一九七九年の五月、埼玉県の伊奈町で、土地区画整理組合が保留地五十三区画、九千五百平方メートルの公売入札を行ったところ、何と二千三百八十一人が押しかけて、公売最低価格の二倍前後の落札が続出をした。同町は大宮市の北東に位置し云々。こういうことでございますが、当時の人口は二万人弱で、主要交通機関は非常に不便だ、一時間に一、二本のバスしかない文字どおり陸の孤島であった。それまで宅地としてはほとんど注目をされていない土地であった。ところが七八年一月、東北・上越新幹線に併設される新交通システムが同町から大宮まで走ることが決まり、一躍、ベッドタウンとして注目されることになった云々。そういうときに同町の地価も暴騰することになり、国会において国土利用計画法の適用を求める論議が行われた。埼玉県の知事もその適用の検討を表明したが、結局適用されずに終わった。そのとき国土庁土地利用調整課が、新幹線のような広範囲な事業の中で一カ所だけ適用するのはどうか、あるいはこの地価暴騰が果たして投機的取引なのかどうか慎重になったのが伝家の宝刀が抜かれなかった理由である、こういうように言われておるわけであります。  要するに、今回いろいろと監視区域の制度が設けられてきておりますけれども、このようなせっかくの国土利用計画法の適用のチャンスがあったにもかかわらずそれができていなかった。こういうのも日本の土地政策の根本的な過ちがあるわけでありますが、その点についてはどのような考えを持っておられるのか、あるいは反省をしておみえになるのか国土庁にお伺いをしたい、こういうように思います。 藤原(良)政府委員 ただいま御指摘がございまたように、確かにこれまで埼玉県等でも規制区域の指定について真剣に検討されたことがあった報告を受けております。しかしながら、この規制区域の指定要件と申しますのは、土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われている、さらに地価が急激に上昇している、またはそれらのおそれがある、この二つの要件が満たされた場合に知事が指定するということになっておるわけでございます。  先ほどの埼玉県のケースにつきましても、そういう要件にかんがみ、土地取引の状況あるいは地価の動向の詳細な調査を実施された結果、当時区画整理地区内の地価は上昇しておりましたが、街路整備の進捗等土地の効用増と申しますか、そういう部分を反映した部分が相当あった、また新交通システムも計画がまだ具体化していなかった、しかも地元農家の換金需要もそれほど強くない、そういうふうな御判断をされ、要件が満たされていないということで指定を思いとどまられたようでございます。  我々としても当時はそういう知事の判断を尊重したわけでございますが、ただ、この規制区域、先ほどの指定要件で述べましたように、かなり強い私権制限を行ってございます。例えば、ほとんど地価は指定時の価格に近い価格で凍結されますし、また、利用目的も収用対象事業とか自己の居住の用に供する場合その他限定的に列挙されてございまして、地域社会経済に及ぼす影響が非常に強うございます。そういうこともございまして、まだ現実的には都道府県知事でこの指定に至る判断を下されたケースはないわけでございます。  ただ国土庁といたしましては、地価の高騰に対処するためには、六十二年六月に法律改正して創設していただきました監視区域をまず的確に運用する。できるだけ地価高騰に先立ってこの区域を指定し、また、指定後の地価動向いかんによっては適時適切に届け出対象面積を引き下げながら、まず監視区域によって急激な地価の高騰を抑制していきたい。しかしながら、なお監視区域の厳正的確な運用によっても地価の上昇を抑制することができない、そういう事態に立ち至った場合には規制区域の指定について検討するように今後とも関係地方公共団体を指導していきたい、そういうふうに考えております。
  94. 草川昭三

    ○草川委員 私は、今局長の答弁は地元の知事に責任を転嫁しておるわけでありますが、当時は国土庁土地利用調整課、そういう担当とはかなり話し合いをしたというふうに聞いておるわけですよ。その当時の決意がもう少ししっかりしておれば今日のようなことにならなかったのではないか。そこで反省を求める答弁を求めたわけでありますが、残念ながらそういう答弁にはなっておりません。  そこで、今の答弁はいわゆる監視区域でいこう、こういう言い方をしておるわけですね。ところが、監視区域でいこうと言っておっても、土地は残念ながら上がってきておるわけです。だから私は、これは一つの提案なんですけれども、国土法の監視区域では土地を買った場合には登記簿に取引価格を載せるべきではなかろうか。監視区域にこれは限るということでいいと思うのですが、取引価格というのが載れば、例えば○○の場所の○○坪を五千万なら五千万で買った、こういうことにすれば、その登記簿を見れば、一カ月後にその土地の値段が六千万とか七千万で売りに出ていればばかばかしくって買わない、こういうことにもなるわけですね。そういうサブの積極的な提案がないと——これを基本法に書けと言っておるわけじゃないですよ。そうじゃないけれども、そういう提案を次から次へと出していかないと、ただ監視区域をしました、監視区域をしましたと言うだけでは土地の高騰というのは抑えられない。また、公示の地価が五%とか一〇%上がれば事前に監視区域に指定をしてしまうというような自動調整弁というようなものが私は運用されてしかるべきだと思うのですね。そういう提案をあわせないと、幾ら基本法をつくったといっても私はそれは非常に弱いものになってしまう、こう思うのですが、その点はどうでしょう。これは大臣から一遍、ちょっと私の話を聞いておっていただいて少しコメントがあればお伺いしたいと思います。
  95. 石井一

    ○石井国務大臣 今委員が御指摘になっておるような状況が現に存在しておりまして、かつ、私の在任中でございましたら、ひとつ伝家の宝刀を抜きたいな、そういう気持ちで今のお話を伺っておりました。  なかなか初めてのケースが行いにくいということもあったんでありましょう。私も委員と同じような気持ちでいろいろ過去の経過を探ってみたわけでございます。茨城県にもそういう想定地があったと聞いておりますし、埼玉県、千葉県にもあったようでございます。しかしながら、革新都政と言われた美濃部知事もこれだけ長い期間これに同意をされなかった。当然東京地価はこれだけ上がりまして、そうして、これだけ広大な地域があったわけでありますから、これを行使するのには国土庁はしっかり指導をしなければいかぬと思いますが、同時に、知事のサイドでも他の経済的、社会的影響というふうなものを考えまして、そういう形の中から抜き切れないやはり地域事情というものも存在しておったのではないか。  私、今考えておりますのは、今後基本法ができました後に、例えば非常に大きな地域に対しまして土地の供給を行使しなければいかぬというふうな状況が起こってまいりましたときに、これは規制区域にするか監視区域にするかは別にいたしまして、そこが土地の供給でなく土地の先買いというような状況になりますと、これは何をするかわからぬということになるわけでありますから、国土利用計画法に関しましては今後これまで以上に厳しくその法の精神を生かしていきたい、そういうふうに考えております。
  96. 草川昭三

    ○草川委員 法案の審議はまた後でしますが、今の長官の答弁を力強いものとして受けとめて、本当に具体的な対応をしていただきたい、こう思います。  そこで、話題を少し変えまして、旧国鉄の土地問題に移っていきたいと思います。  旧国鉄用地の処分については、昭和六十二年十月十六日の閣議決定、こういうものがあり、また緊急土地対策要綱でその取り扱いが定められているわけでございますが、その後の資産処分の状況をまず事業団からお伺いをしたい、こう思います。
  97. 前田喜代治

    ○前田参考人 清算事業団が六十二年に発足いたしまして、膨大な債務と同時に土地を引き受けたわけでございますが、この土地の処分によりまして債務を償還するという役割を担ってスタートしたわけでございますけれども、たまたまちょうど地価問題が非常に厳しいことになりまして、私ども当初六十二年度は約三千億の収入見込みというのを立てて、売却見込みを立てておりましたが、実際に処分ができましたのは千三百二十九億ということでございます。それからまた、六十三年度でございますが、これもやはり三千億の予定を立てまして進めてまいりましたが、結果といたしまして二千四十一億の土地の売却ができたということでございます。  この間、土地の処分につきまして、地価問題がございましたので、一部地価高騰区域の公開競争入札を抑制するというようなこともございましたし、また、そのかわりに随意契約等で地方公共団体等に土地をお譲りする、ないしはまた、閣議等でもお話がございました地価の非顕在化というような手法をとりまして進めるという御指示もございましたので、そういった面についてもいろいろな検討を進めて実行に移しつつあるところでございます。
  98. 草川昭三

    ○草川委員 第二番目の問題でありますが、旧国鉄が所有をしてきたいわゆる大規模用地というのがあるわけであります。よく言われますように、汐留だとか、私ども愛知県で言うならば笹島とか稲沢、こういうところがあるわけでありますが、それに関する土地利用計画についての進捗状況というのはどうなっておるのか、お伺いしたいと思います。
  99. 前田喜代治

    ○前田参考人 事業団が引き継ぎました跡地の中には大変大規模な土地がたくさんございます。これは一部は、これは当然のことでございますが債務の償還に充てるというのが一つの目的でございますが、同時に、やはり大変大きな土地でございまして、貴重な空間ということで地域利用等について調和のとれたものでなければいけないというようなこともございまして、私ども資産処分審議会の中に土地利用総合部会というのをつくっていただきまして、地元で各地区に分かれましてそれぞれ事業団ないしは学識経験者、それから同時に各省庁それから地方自治体の専門の方にお集まりいただいて、それぞれの地域について諮問しました場所につきまして利用計画について御検討いただいているところでございます。諮問いたしました数は現在までのところで五十一カ所ございます。そのうち既に答申を得ましたところが約十六カ所でございます。
  100. 草川昭三

    ○草川委員 五十一のうちの十六答申でございますが、ほかの大規模用地に関する審議会の答申というのはいつごろになるのか、お伺いします。
  101. 前田喜代治

    ○前田参考人 これは現在鋭意各委員会において議論を詰めていただいておりますが、単に私どもが案をまとめてまとまるというものでもございませんし、もともとが、現在まだ鉄道の基盤整備といいますか、上の工事をやりまして土地をあげているような工事進行中の場所もございます。それから、ほぼ更地に近くなったようなところもございますが、まだいろいろな意味で進行中のところでございまして、できるだけ早く御答申をいただくように関係の方と御相談をしておりますが、大変大きい土地があるものでございますから事柄も大きく、したがいまして、意見といいますか、土地利用、地元の御意見を酌んだりいたしておりますとなかなかそう簡単にまとまらないケースも多うございまして、できるだけ早く案をまとめていただくように今委員会の方にもお願いをして進めているところでございます。
  102. 草川昭三

    ○草川委員 そこで建設省にお伺いをしますが、当然のことながらいわゆる都市計画土地価格の問題というのは非常に重要な問題になってくるわけでありますけれども、例えば今お話がありましたように大規模用地、愛知県の笹島、稲沢等も含むわけでありますが、このような跡地利用についての建設省の計画というのはどういうかかわり合いになるのか、お伺いをします。
  103. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 名古屋市の笹島地区につきましては、この地区が名古屋市の開発整備にとってきわめて重要な場所にございますところから、旧国鉄跡地を含みまする名古屋駅周辺の地区全体につきまして建設省及び関係省庁と合同で整備方針についてただいま調査を実施しているところでございます。  また、稲沢市の稲沢地区につきましては、昭和六十三年度に愛知県におきまして新都市拠点整備事業調査を実施したところでございまして、この調査をもとに現在、県及び市において具体的な整備計画の検討を進めているという報告を聞いておるところでございます。
  104. 草川昭三

    ○草川委員 では、次に移りますけれども、二月十日に土地対策関係閣僚会議の申し合わせがなされ、事業団の場合、監視区域内での公開競争入札の処分が緩和をされておりますね。その後の実績というのはどういう形で進められているのか、お伺いをします。
  105. 前田喜代治

    ○前田参考人 今御指摘ございましたように、二月に監視区域といいますか、入札問題につきまして一つの方針を出していただきました。この中で、私ども地価高騰区域につきましても、ある程度地価の高騰に影響させないように、あるいは場合によっては情報等連絡を密にして、可能なものについては入札もやむを得ないだろうという御指示もいただきましたので、私どもも鋭意関係地方公共団体と地価高騰につながらないような形の場所を選定いたしまして、いろいろお話し合いを進めてまいっております。  この結果、現在までに六カ所ほど実際には入札を実施いたしました。そのうち二カ所は応札者がなかったというような事態もございました。でございますけれども、いずれにしましても御方針をいただいた以降、自治体あるいは関係省庁の御指導をいただきまして、できるものは地価高騰に結びつかないような配慮をしながら入札をさせていただいているところでございます。
  106. 草川昭三

    ○草川委員 今からちょっとお伺いをするのは、今の答弁にあったように、地価高騰のおそれのないところをそれぞれ公開入札をしている。しかしこれは大規模の方ですね。ところが、いわゆる小規模なものについては六十二年、六十三年と随意契約あるいはまた公開競争契約がそれぞれなされてきておるわけであります。  そこで、これはたまたま十一月七日付の報道によりますと、下関の事業団の土地売却で落札者が、いろいろな条件があるにもかかわらず転売をしてしまった、そこに遊技場というのですか、パチンコ店ができるというような報道がなされております。かねて我々が心配をしていたような事態が既に始まっておるわけですが、その点の経過についてお伺いをしたいと思います。
  107. 前田喜代治

    ○前田参考人 十一月七日付の新聞報道をなされましたのは、下関市の彦島というところにございます旧鉄道の宿舎跡地を入札に付した場所の問題でございます。  これは経緯はどういうことかと申しますと、私どもは、この土地につきまして、約三千三百平米ございましたので、それを六十三年三月に一括いたしまして入札にかけております。ところが、このときには実は不調になりまして落札者が出なかったということになっております。したがいまして、私どももいろいろ検討いたしました結果、この土地を分割いたしまして小さい区画にして売った方が地元の需給等に合うのじゃないかということで、再度これを区分いたしまして入札いたしました。その結果、これを三つに分けたわけでございますが、そのうち二つは落札されました。その後、もう一度残った区画についても入札いたしまして、これも落札いたしております。初めに落札いたしました二つのうちの一つがその後転売されたというふうに私どもも確認をしたわけでございます。  問題はどういうことかといいますと、私どもも公開入札をいたしますときには、できるだけ投機につながらないようにということもございまして、比較的大きい土地につきまして、具体的に申し上げますと、市街化区域内の土地については二千平米以上、その他の都市計画区域では五千平米以上、それから何もないところでは、都市計画区域以外では一万平米以上につきましては、入札で落札した場合でも条件を付しております。これは国と似たような条件でございますが、同じような条件をつけておりますが、この場合には五年間の所有権移転禁止ということになっております。それから同時に、風俗営業、風俗関連営業につきまして五年間それを禁止するというような条件をつけて処分をいたしております。  したがいまして、ただいまの場所につきましては市街化区域の二千平米以上ということで、もともと売りましたときは三千平米ございましたので、これは不調に終わったわけでございますけれども、このときはこういう条件をつけて、落札すれば当然こういう条件がついたわけでございます。その後、その他の場所につきましては、区画を区切って売りましたけれども、これは大きい土地につきましては所有権移転禁止と風俗営業禁止という条件をつけておりますが、二千平方メートル以下の場合には特に所有権移転禁止等の措置をとっておりません。ただし、事業団の土地が直ちに風俗営業に使われるのも余り好ましくないということもありまして、風俗営業ないしは風俗関連営業についての禁止事項は五年間というのをつけております。ただ、この土地が御指摘のように転売されましたので、その後転売を受けた者に対してこの風俗営業関連の規制をつけられるかどうかということにつきましては、これはちょっと拘束する方法がございませんので、ある意味では残念でございますが、そのままの形になってしまったということでございます。  経過はそういうことでございます。
  108. 草川昭三

    ○草川委員 だから今の答弁は、結局、いろいろな制約があるけれども、しり抜けになったということだと思うのです。かねて我々が心配をしていたことが既に起きたわけでありますが、今から申し上げるのも、もっと問題な事例であるわけです。  清算事業団が昭和六十三年度の公開競争契約をしている中に、愛知県の半田市浜田町三丁目、国鉄の乙川駅というのがあるわけですが、ここの土地がどのように入札になったのか、説明をしていただきたいと思います。
  109. 前田喜代治

    ○前田参考人 愛知県の乙川駅周辺で二カ所にわたりまして入札をいたしております。一つは、面積が九千六百平方メートルでございます。これは六十三年十二月十五日に入札をいたしております。五名の方が応札されまして、落札をしたという土地でございます。それから、これとは別の土地でございますが、同じ乙川駅の反対側でございますが、ことしになりましてから入札をいたしました。これは面積にいたしますと千九百平方メートルでございます。ことしの九月十三日に入札をいたしまして、落札をいたしております。
  110. 草川昭三

    ○草川委員 武豊線の乙川駅の九千六百平米の方ですが、これは幾らで落札をしたのか、そして相手方はどういう方か、お伺いをします。
  111. 前田喜代治

    ○前田参考人 九千平方メートルの方につきましては、落札された方は法人でございます。名前は控えさせていただきますが、落札価格は約二十億でございます。
  112. 草川昭三

    ○草川委員 六十三年度公開競争契約の主な件名で事前におたくの方からいただいた資料の中には、乙川駅、半田市浜田町三丁目、九千七百平米、金額二十億五千万、こういうことでございますが、こちらが正しいのか、今あなたが言ったのが正しいのか、どちらが正しいのですか。
  113. 前田喜代治

    ○前田参考人 もう一度正確に申し上げますと、面積が九千六百五十二・二九平方メートルでございます。それから金額が二十億四千五百万円でございます。
  114. 草川昭三

    ○草川委員 それで、相手方は法人だということですから、それはそれでいいです。私の方は名前をつかんでおりますが、あえて申し上げません。株式会社○○企画という知多郡武豊町にある会社でございますが、これがどういう業をなしておるか、御承知でございますか。
  115. 前田喜代治

    ○前田参考人 私どもは公式にこれがどういう御職業をなさっているかは具体的にはあれでございますが、何か話としてはパチンコ店を経営なさっているというふうに聞いております。
  116. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、話を聞いておわかりのように、いわゆるパチンコ店経営というのはかなり何軒か持っておみえになるわけでありますが、その方が落札したわけです。  この落札をするときに地元では、これは場所が大変いいのです。国鉄武豊線の乙川駅というのですが、そばには大きなスーパーマーケットがあります。このスーパーも愛知県を代表する大きなスーパーであります。このスーパーも入札に参加したわけであります。ところが、このスーパーは、この土地は当時の地価では坪当たり二十万から三十万ではないだろうかということでございましたけれども、この方は坪七十万で落札したわけです。三千坪ですから大体そういう計算になるわけであります。ですから、地元ではとても信じられぬ。先行投資を含めても二十万から三十万、大体そういうような当時の相場だったわけでありますが、七十万で落札をしてしまった。隣に大きなスーパーがあるのです。だから、スーパーとしては駐車場も欲しいし、のどから手が出るようなところだ。だから、スーパーもかなり思い切った入札をしたわけですが、それからさらに三倍近い入札をされた。しかも、それは遊技場経営者だった。  これは一体どういうことなんでしょう。事業団は今でも高ければいいという方針を原則的に貫いておみえになるのか、その点の反省はどのようにしておみえになっておるのか、お伺いします。
  117. 前田喜代治

    ○前田参考人 事業団の土地が高ければ高いほどいいということでは決してございませんで、適正な価格売買されることが望ましいと思っております。  したがいまして、この場所につきましては、投機的な要素を持たないようにということで、画地も大きいわけでございますが、それぞれ規制をつけております。これは所有権の移転禁止ないしは風俗営業等の業務を行うことは禁止するということで、そういう条件をつけた上で入札をしたわけでございます。それから同時に、この土地につきましては、付近の公示価格等がございますが、事後的に調査いたしますと、必ずしもそのものということではありませんけれども、比準させますと必ずしもそんなに高い地価で落札したとは考えておりません。
  118. 草川昭三

    ○草川委員 これは自分の選挙区でございますから、私はよく知っておるところなんです。私の頭の中にも大体どういうところかというのは全部わかりますし、その周辺のスーパーあるいは工場地帯あるいは病院、いろいろなものも全部頭の中に入れて質問しておるわけでありますけれども、明らかに遊技場の経営者であるということ、そして転売禁止であるということ、あるいは将来風俗営業をさせないという条件がある、こうおっしゃっておりますが、年限の制限があるわけでありますから、いずれにいたしましてもこの一等地を手に入れるということは相当なメリットを予想して入札したに間違いはないと思うのです。  そこで、私はここで大蔵省に聞きたいわけでありますけれども、この会社がどこからこの二十一億近いもの、二十億五千万という大きな融資を受けたか、大変疑問に思うわけであります。私はここで銀行の名前を言ってもいいのでございますけれども、これは日本の都市銀行の中でもトップを争う都市銀行であります。そのトップを争う都市銀行がこの会社に融資をしておるという事実があるわけであります。大蔵省、どうお答えになりますか。
  119. 中井省

    ○中井説明員 ただいまお話がございました件につきましては、個別銀行の具体的な取引に係る事柄でございますので、大変申しわけございませんが、内容について申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
  120. 草川昭三

    ○草川委員 今私が言ったことをよく理解をして答弁していただきたいわけでありますが、私はこの会社に対しても名前を言っておりませんよ。そして、都市銀行の一番、二番を争う銀行だということは言いましたけれども、その銀行の名前も言っておりません。もちろん、言う以上は私はしかと確信を持って言っておるわけですよ。事前のレクチャーでは大蔵省に、どういう銀行だということも全部申し上げました。  だから、私がここで言いたいのは、一番最初に、日銀が不動産融資に対する大変懸念を持ってみえるという発言があった。大蔵省も、過去、六十二年当時から何回か銀行局長名をもって銀行、金融機関に対する不動産融資の規制ということを強く言っておる。にもかかわらず、これはごく最近の話ですよ。昨年の十二月の契約ですよ。一体どういうような形で大蔵省は銀行を指導しているのか。何なら私、ここで全部名前を申し上げてもいいですよ。にもかかわらずおたくの方は、個別案件だから答えられない。そんなこと私は百も承知ですよ。個別案件だからこそ銀行名を伏せ、企業の名前を伏せているのですよ。そういう答弁はないと思うのですが、もう一回答弁してください。
  121. 中井省

    ○中井説明員 金融取引につきましては大変微妙なものでございまして、例えば個別銀行の特定の取引を公表することによりまして他の健全な金融取引自体が影響を受けたり、ひいては預金者に不安を与える、信用秩序の維持が図れなくなるというような懸念がございまして、大変申しわけございませんが、個別銀行の具体的な取引に係る事柄については、内容について申し述べることは従来から差し控えさせていただいております。  ただ、一般論で申し上げますれば、先ほど申し上げましたように、大蔵省といたしましては、金融機関の業務の公共性に照らしまして、かねてより数次にわたる通達の発遣それから特別ヒアリングの実施等を通じまして、投機的土地取引に係る不適正な融資が厳に排除されるよう強力に指導してきたところでございまして、この施策は今後とも引き続き続けてまいりたいと考えております。
  122. 草川昭三

    ○草川委員 だから、もう一回聞きますけれども、厳重な指導をしてきた、にもかかわらず私が今申し上げたような事例がある。では、具体的なこの問題は一応保留しましょう。どこの銀行が二十億すべてを融資したのか、あるいは半分融資したのか、そういう内容については問いません。  いずれにしても、六十一年の四月以来数度にわたる銀行局長の通達がある。しかし、それが残念ながら、私が申し上げたように、昨年の暮れには遊技場に対して——普通の場合はトップ銀行というのは遊技場等については余り直接融資しませんね。にもかかわらず、この遊技場経営者にトップ銀行が融資をしたということは、土地ということがあったからこそ融資をしたと私は思うのです。しかし、その土地融資というものについては、銀行局長が何回か通達を出し、日銀総裁が従来にない大変な姿勢で警告を発している。にもかかわらずそういう事実があったということに対して、遺憾であるとか今後どういうようにヒアリングを緊急にやるとか、そういう態度を示さないと、結局通達は出したままになるじゃないですか。この土地基本法というものの中で、投機の抑制ということをこれだけ野党の方も提案し、政府の方も閣僚会議を開いて真剣に取り組もうというのに、現実に、私が先ほど来言っている金融の態度というものについて全然反省がない。一方ではしり抜けじゃないですか。大蔵省、もう一回答弁してください。
  123. 中井省

    ○中井説明員 何回も繰り返させていただいて恐縮でございますが、大蔵省といたしましては、かねてより通達を発遣し、また特別ヒアリングの実施等を通じまして、投機的土地取引に係る不適正な融資が厳に排除されるよう強力に指導してまいっております。今後ともそれは続けてまいりたいと考えております。
  124. 草川昭三

    ○草川委員 今、答弁を二回繰り返されたわけですが、私の方は、前回の答弁とさっきの答弁との間に、個別案件は一応置いておいてというそれなりの態度を言っているのですよ。だから、個別の融資をしたとかしないとかということはさておいて、現実に銀行局長通達を守っていない。しかもそれはトップ銀行だ。そういうトップに位置する銀行がそういう事実があったとするならば大蔵省はどうするかという一般論で答えてください。
  125. 中井省

    ○中井説明員 仮に通達違反というような事実がございましたら、一つは、速やかな是正を求めるという点、さらに、必要と認められる場合には責任の明確化等を図ってまいっております。
  126. 草川昭三

    ○草川委員 図っているというのは、今過去形で言っていますが、私が今これだけ言ったわけですから、そういう具体的な案件があるならば調査をしヒアリングを直ちに行うとか、そういう態度があってしかるべきだと思うのですよ。これは両大臣、聞いておみえになりますから、どこかできちっと、大蔵省の態度はなっておらぬじゃないかということを、閣議でも反映してもらいたいと思うのですよ。  もう一回具体的に、過去形でなくて、この問題提起に対して調査をするならする、もし事実ならば厳重な対処をする、こういうことを言ってください。これはあくまでも一般論でいいのですから。
  127. 中井省

    ○中井説明員 仮に通達違反というような事実が判明しますれば、一般論でございますが、例えば当局が厳重に注意するとか、先ほど責任の明確化というお話を申し上げましたけれども、例えば関係者について減給、降格等の処分を求めることもあり得るということでございます。あくまでも一般論でございます。
  128. 草川昭三

    ○草川委員 大変不満ですけれども、これは幾ら押し問答をしておってもあれですが、いわゆる公共性というものと社会的な責任という立場から、先ほど来から何回か繰り返しておりますが、日銀の総裁も言っているでしょう。大蔵省もそういう趣旨で銀行局長名の通達をしておるわけでしょう。ですから私は、一般論でいいから、こういう事実があるならもっと毅然たる態度をとるということがあってしかるべきだと言っているわけですよ。  両大臣、今のようなことはまさしくこの土地基本法の中に書いてあるわけですから、両大臣の見解を求めたいと思うのです。
  129. 原田昇左右

    ○原田国務大臣 今、草川委員のおっしゃっておる、一般論として、もしそういう通達違反あるいはしり抜けになるような行為があったとすれば、これはしかるべき法令なり方法によりまして、しかるべき処分を受けるのは当然だと私は拝聴いたした次第であります。
  130. 石井一

    ○石井国務大臣 国鉄清算事業団に発する質問でございます。  先日、土地関係閣僚会議の約二週間前に国鉄関係の関係閣僚会議がございまして、その席では、既に二月に一応凍結解除が行われておるのでもあるし、国鉄は二十六兆円ですかの負債を抱え、そしてその利子だけでも一兆五千億円を支払っておる、したがって、これを順調に進めさせていただきたいという強い要望が運輸大臣からあり、また大蔵大臣からもそれをサポートするような発言もございました。私は、その席で、あくまでもそこに書いてある閣議の了解は十分遵守していただきたい、特に今土地基本法がこういう重要な段階に来ておるときに、本年二月にさかのぼってどんどんと公開入札をやられるというようなことにもしなれば、これは非常に重要な問題を提起するんだ、こういう問題を提起いたしました。建設大臣もたしか私の意見を支持する発言をいただいたように記憶いたしておるような次第でございます。  実は、先ほどから議論を聞いておりまして、国鉄の方は非常に額の少ない計画すら十分消化されておらないという苦しみを持っておるんだろうと思うのであります。下関の例などはやや売り急いだのではないかという感じもいたしますし、ただいまの委員の選挙区の問題は私もよく事情を知りませんが、スーパーができ何がするという場合には、それだけの先買いと申しますかそういう思惑というふうなものもあっただろうと思います。  だから、そこで結論を申し上げるわけでございますけれども、今後、一定期間の転売禁止であるとか、あるいは周辺に対する地価の動向に照らすという条項であるとか、その他工事の完成の時期、いわゆる計画ですね、そういうふうなものを十分見きわめた上で、やはり国民の財産、別の意味でやはりそうしなければいけないという理由もあるので、これを進めさせていただきたいというふうに思います。  そこで、銀行の過剰融資の問題でございますが、これは私、就任いたしましてからもう二度にわたりまして強い要請をいたしたところでございます。先日、貸し出しの残高をチェックいたしますと、さすがに都市銀行では少ない。それよりもやはり大きいのが地方銀行でございます。先般来から銀行局が、プロパーに貸し出した銀行の貸し出し残額だけでなく、その先のノンバンクの経路まで追っておるというようなことを聞いておりまして、私も満足をいたしておったわけでございますが、今草川委員が御指摘になったのは少し前の事例のようでございます。最近は、こういうことはもう恐らく起こり得ない事情だと思うのでございますけれども、そういう事実がはっきり判明いたしておりますので、大蔵当局もここに来ておりますから十分それを留意してやっていくだろうと思いますし、必要があれば、もうこの事件一つを追ってみても仕方がないような気もするのでありますけれども、今後こういう問題が国土行政においてもあるいは大蔵省の融資行政においても御指摘を受けるようなことがないようにひとつ注意していきたい、そう思います。
  131. 草川昭三

    ○草川委員 この法律の中にも事業者の責務、一番最初に答弁をしていただいたように、金融の責任というのは明確でありますから、私は、しり抜けにならないように、そしてまた大蔵省自身も銀行の先のノンバンクまで対象を広げる、こう言っておるわけでありますから、それは厳重な対応をしていただきたいということを強く要望しておきたいと思うのです。  さて、これも建設大臣国土庁長官に聞いてもらいたいのですが、最近不動産業者の広告に、高収益を上げた法人に対し、法人税の節税というのですか、法人税対策の資産運用を目的としたマンション等の物件の購入案内が非常に目立つわけであります。利益隠しのために不動産取得を勧めるもので、地価抑制等を目指す立場から考えると、これはかなり問題があると思うのですね。  土地節税策として大変こういうのが流行しておる。土地を売らずに会社を丸ごと売るとか買うとか、こういうのは相続税対策として先例が出ております。「先生、これは朗報です。」という広告なんだけれども、日本とアメリカの不動産をパッケージにする。「所得税対策に最適な、新しい資産運用システム」、こういうことで企業の名前も書いてあるわけですね。「年収二千万円のHさんの場合」云々というので、所得税が三百九万円も減税をします、だからこれはマンションを丸ごと買いなさい、あるいはロサンゼルスにあるところの大型ビルを共同で買おうではないか、こういう非常に具体的な提案というのですか宣伝をしておるわけですね。  それからこの場合は、十億円クラス、超高級マンションを社宅に、役員用に借金購入しなさいよ、企業の節税になりますよ。これはある有名な、話題を呼んだ企業でございますけれども、一棟売り可能物件の御案内をします、「私どもではこの度、一棟売り可能物件のご案内をさせて頂く」云々ということで、「投資の一環として、また、法人税に対する税務上メリットをお求めの際にお役に立てると思っております。」というようなことで、予定物件は、物件総額が十五億四千万円、消費税を念のために含む、こう書いてありますけれども、そういうものを皆さんどうぞ手に入れなさい、そうすると節税だということで、またこれもどういうように受けとめていいのか。  いわゆる庶民感覚、私が一番最初に、きょうの質問は経済企画庁が言うところの庶民の立場からの問題提起だということを申し上げたのだが、どうもこういうものがはびこる風潮ということについてはいただけないと思うのですが、どのようにお考えか、お伺いします。
  132. 原田昇左右

    ○原田国務大臣 お答えします。  近年、リゾートマンションの販売戸数が増加しておるということは確かに事実であるわけでありますが、これを考えてみますと、社員の福利厚生施設としてリゾートマンションを購入する例があるのではないかという話も聞くわけであります。  今御指摘のように、不動産業者が節税対策に利用できるとして販売しているといったようなことについては、具体的には承知しておりませんが、不動産の販売に当たっておのずから節度のある行動が求められるものと考えるわけであります。まじめに働く人たちにせっかく供給すべきマンションがこういう節税対策で占められてしまうということでは大変問題でございます。  いずれにいたしましても、私は、リゾートにおいてある程度マンションの開発をして売れるということのリゾート側の開発としてはやはりやってもらいたいということもあるのでしょうし、その辺の状況についてはもう少し我々も検討してみなければならぬと思いますが、不動産の販売に当たっての節度というものはぜひとも要請してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  133. 石井一

    ○石井国務大臣 まさに土地神話の最たるものでございまして、不動産を転がす利益がいかに有利かというようなことが国民の間に定着しておる。こういうところの意識革命というものを本法によってぜひとも図っていきたいというようなことを考えます。大変遺憾なことでございます。  ただ、確かに法人に対する優遇措置、あるいは全く個人に比べて相続税がないというふうな問題等々、まさに違法行為でなく現に存在しておる法律をうまく利用してと申しますか、それにのっとった行為であるだけに、ただ単に精神訓話をやってみたところで、それこそ指導をやってみたところで、なかなかうまく解決する問題ではない。しかし、こういう問題は今後真剣に取り上げていく必要がある。  その意味で、この土地基本法は、土地をいかに利用してもらうかというサイドを強く重視いたしておりますと同時に、公共の福祉のために供してもらいたい、個人の利益を得るために土地があるのではない、そういう一つの基本的な思想がそこにあると思いますので、今後この法律とともに国民の基本認識が少しでもそちらへ歩んでいくようなことを考えていきたい。そして、その意識の転換というふうなことを図っていくと同時に、先ほど申しましたように具体的な個別案件に対して、法人税のあり方、法人の相続のあり方等々、このような不合理、不公正な商行為が成り立たない方向にやはり持っていく必要がある、そのように思います。
  134. 草川昭三

    ○草川委員 いわゆる節度を持って企業もPRをすべきだ、こういう答弁がありましたので、反社会的な、我々庶民の納得できない営業のあり方、それをまた業となすことは、私は日本の国全体としてぜひ本当に警戒をすべきことだと思うのです。もうかればいいというものでもない、こういうわけであります。  そこで、今この中で、日米の不動産をパッケージにしてPRをする、商売をするというのがたまたま広告であるわけであります。過日、私、決算委員会で両大臣にも質問をしたことがあるわけですが、海外における日本企業の不動産投資というのが少し目に余るのではないだろうか。海外不動産投資に必要な配慮ということを考えないと、対日感情というものを逆なでしないようにすべきではないかということを申し上げたわけであります。  そこで、きょうも繰り返しこの問題を提起するわけでありますが、アメリカあるいはオーストラリア、あるいはその他たくさんの国に対して日本の不動産業界がどんどん進出をしております。ある場合はビルを買うのもいいでしょう。あるいはまたある場合は大きなリゾート地帯を開発する。あるいはそこで大型のマンションを売却する、つくって売る。あるいはまた戸建ての別荘をつくって、それを日本人を初めとする外国人に提供する。それはゴルフ場つきでありマリーナつきである。一体日本人というのはどこからそれだけの金を持ってくるのだろうか。しかも、進出をする企業が必ずしも日本で名の通った企業ではないというのが最近の特徴なんですね。俗に言う日本で一流の名の通った企業でない、名前を聞いても日本ではどうも我々も承知をしていないような企業が、オーストラリアでは、あるいはまたアメリカでは、突如として大変な投資をしている。しかも、これも先ほどの銀行局の答弁ではありませんけれども、我々が探っていきますと、直接的には融資をしていないけれども一つ介在をしていろいろな、三百億とか四百億とか五百億の相当な融資を受けながらデベロッパー活動をしている、こういう問題があるわけであります。  しかも、今問題になりますのは、私もつい最近オーストラリアの現地へ行ってきたわけでありますが、例えばオーストラリアの例なんかでは、大変大きなリゾートの中にマリーナがある、あるいはゴルフ場がある、そこに一億円近い住宅が日本の企業によって売却をされている。そして、現地の人には、ここへ日本が大型の不動産投資をする、日本からも金持ちがたくさんやってくるから、ここは大きな、日本で言うならば鎌倉だとか江の島だとか、そういう一大観光地帯になると宣伝をするわけですね。そして、大きなリゾートセンターをつくり、現地の人の入居を募集する。ある場合は映画館として入ってくる、ある場合はブティックとして入ってくる、ある人はレストランとして入ってくる。  ところがオープンをしたものの、一向に入居者がないわけですね。入居者がないのではなくて、それは売却されている。日本人に買い取られているけれども、肝心の日本の人が来ないというので、そのリゾートセンターは開店休業、続々と閉店をしている。高い権利金を払い、高い家賃を払う、あるいはまたテナント料を払って店を開業したけれども、そのデベロッパーが言うほどのお客が来ない。よく調べてみると、その海外のリゾート地帯における別荘というのは日本人の名義になっていない、あるいはダミーの名義になっているのではないだろうか。いわゆる脱税対策として海外の別荘が購入をされている。  さすがの現地の人たちも、これはおかしい、日本が大型の投資をしてくれることはありがたいけれども、それは現地に利益を与えなければいけない、あるいは雇用開発をするということでなければいけない。しかし、結果として、昔一日五百円でゴルフができたのが、日本人が開発をしたために周辺の土地も上がって、一日、日本円でもう一万円近いものになってしまった。日本人はそれは一万円で安いからといって喜ぶかもわからないけれども、現地の人間の夢を奪ったといって現地人は大変な強い不満を持っておるわけですよ。こういうリゾートの開発というものあるいは海外における不動産投資というものが本当に認められていいのかどうか、私はこれは今後必ず問題になってくると思うのであります。  そこで、きょうは日銀にも残っていただき、大蔵省も残っていただいたわけでありますし、国税庁も来ておりますので、ひとつ日本からの海外不動産の融資の実態というのがつかめるのかどうか、あるいは、現在は把握できないとしても今後把握をするような方策というのを考えるのか、全く考えないのかどうか。まず日銀、大蔵省意見を聞きたいと思います。
  135. 中井省

    ○中井説明員 先ほど説明いたしました一連の通達、それに伴う措置につきましては、あくまでも国土庁からの要請等に基づきまして、国内における地価高騰等を背景に発出したものでございまして、基本的には国内における不動産関連融資を念頭に置いたものでございます。  しかしながら、先生御指摘ございました海外不動産に係る融資につきましても、金融機関の公共性にかんがみまして、国際的に摩擦の生ずるような投機的不動産取引等、不適切な取引について金融機関が関与することは慎むべきものと考えております。  したがいまして、海外不動産投資に係る融資につきましても、このような趣旨を踏まえまして必要に応じて指導をしてきておるところでございまして、今後とも適時適切に指導を続けてまいりたいと考えております。
  136. 田村達也

    田村参考人 お話しの海外の不動産投資でございますが、ダミーというお話もありましたけれども、投資の形態としてもいろいろ複雑なようでございまして、本邦の企業が直接投資をする場合あるいは子会社である場合あるいは現地法人に対して出資する場合等々あるようでございますし、その資金の手当てとしましても、海外で借り入れ調達をするとか増資で調達するあるいは海外で他の資産を売却するあるいは国内で他の資産を売却するといったような複雑な金の流れもあるようでございまして、日本銀行としてもこういう問題を勉強していかなければいかぬと思っておりますけれども、現在のところ、そういった具体的な流れを数字としてとらえることは不可能でございまして、今のところは、先生の御質問でございますけれども、まだ具体的な材料は持ってない状況でございます。
  137. 草川昭三

    ○草川委員 この海外の不動産投資はいずれ問題になると思うので、ぜひひとつ真剣な対応を求めておきたいと思います。  そこで国税庁にお伺いをいたしますが、日本人が海外で盛んに別荘等の不動産の購入をしているということを私は今申し上げたわけでありますが、国税当局はこういった情報を把握しているのかどうか。あるいはもし国際間にまたがる課税逃れのための投資ということがあるとするならば、国際的にもこれは大変信用を害することになるわけでありますが、当局の対応はどうか、お伺いしたいと思います。
  138. 吉川勲

    ○吉川説明員 お答えいたします。  国際化の進展に伴います海外取引の増加に対しましては、当局といたしましては、海外の税務当局との間で情報交換の規定がございます。それにのっとりまして積極的に推進いたしておりますほか、マスコミの情報を含めまして、あらゆる機会を通じ、課税上有効な各種資料、情報を収集するなどいたしまして、海外取引等に対する適正な課税の実現に努力しているところでございます。  先ほどお尋ねのありました不動産等につきましても、今申し上げたような形で資料、情報の収集に努めてまいっているところでございますけれども、今後とも適切に対処してまいりたいと思っております。
  139. 草川昭三

    ○草川委員 では、もう時間がないのでこの問題はこれで終わりまして、あとは農林省関係に少し質問をしたいと思います。これは石井長官も、農地宅地化することなど土地対策担当相として総合調整機能を発揮したいというようなことを発言しておみえになるようでありますし、農地宅地化促進という意向もあるのではないかとお伺いをしております。  そこで、農林省にお伺いをいたしますが、まず、大都市近郊において遊休化している農地があるわけでありますけれども、これらの貴重な土地について公共用地やあるいは宅地等の非農業的な土地需要にもこたえていくべきではないだろうか、こう思うのでありますが、農林省の見解を求めたい、こう思います。
  140. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 農地利用につきましては、農林省といたしましては優良農地の保全に留意しながら、また都市的な土地利用にも配慮して調整を図りながら適切に進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  特に大都市圏地域におきましては、先生御指摘のように耕作放棄地というようなものも目立つわけでございまして、私ども市町村を指導いたしまして、そういう農地につきまして、地域の活性化とか、それからまた地域の生活環境の整備を図る上で有効活用を図るような計画をつくって計画的に利用転換を図るように、こういう指導をしている次第でございます。
  141. 草川昭三

    ○草川委員 それから、これも同じことになるわけでありますけれども、実は東京都区内に国有農地というのがまだ大分あるのですね。これは、いつも私どもこういう話をいたしますと、東京都区内に国有農地などというのがあるわけないじゃないか、こう言う方が多いのですが、現実には東京都区内に国有農地がございます。あるいは関西にもあるわけであります。こういう東京都内、大阪市内の国有農地現状というのはどうなっているのか。かかるものがもっと公共用地なり宅地等にならないのか、現状と対策をお伺いしたい、こう思います。
  142. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生御承知のように、農地改革で買収した土地につきまして、市街化の進行とか、また零細な経営とか、そういうことで国が小作人に売り渡すのを保留した農地があるわけでございます。こういうものにつきまして、その後、昭和四十六年に国有農地等の売払いに関する特別措置法というものを制定いたしまして、公用、公共への利用に配慮しつつ、買収前の所有者またはその一般承継人等に売り払うための促進に努めてきたところでございます。東京都とか大阪市内とか、そういういわゆる大都市圏におきましても、特にその有効利用を図るために売り払いの促進に努めておるところでございます。  現在、昭和六十三年度末で東京都二十三区内の国有農地は八・五ヘクタールございます。それからまた大阪市内の国有農地は〇・三ヘクタールあるわけでございます。私どもとしましては、こういうものをできるだけ早く処分するようにいろいろ工夫をしておるところでございます。  具体的には、買収後の時の経過とともに売り払うべき相手方が旧所有者からその相続人に代がわりして権利関係が一段と錯綜して、その調査確認に日時を要する、それからまた、地価高騰によりまして旧所有者等の買い受け資金の調達が容易でない、こういうような事情にあるわけでございます。このため、特にこういう大都市圏に重点を置きまして、旧所有者等の特別調査また農耕貸付地等についての実需者の照会等各種の事業を創設するなどしまして売り払いの促進に鋭意努めておるところでございます。今後とも、国有農地の管理は東京都とか大阪府に委託しておるわけでございますけれども、適切な指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  143. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来ましたので、以上で終わります。  なお、建設省関係、大分質問が残りましたけれども、おわびをして終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  144. 大塚雄司

    大塚委員長 次回は、来る十四日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会