○大野(功)
委員 私は、まず
道交法改正につきまして、
道交法を支えている
基本的な哲学、
考え方、あるいは
警察行政というものを支えている
基本的なフィロソフィー、この点について
考えてみたいと思うのです。
我々の生活には、やはりお巡りさんが寒空でパトロールをしてくれているから安心してまくらを高くして寝られる、これはもうよくわかっているところであります。
警察があるから我々は安心して市民生活ができる、これは非常によくわかっているわけでありまして、このような
意味で、今行政改革ということも叫ばれているわけでありますけれ
ども、どんなに行政改革を進めていっても、どんなにむだを省いていっても、私は
警察というのは行政の中で最後まで残る仕事だと思っております。ついでに言わせていただきますと、私は
大蔵省出身でございますので、税務署も最後まで残るのではないか。と申しますのは、お巡りさんの月給を払うためにはやはり税金が要るわけでありますから税務署も要るのではないかと思います。
一方におきまして、我々庶民感覚からいいますと、例えば気持ちよく運転していて突然にお巡りさんが飛び出してきて、あなたはスピード違反しているんじゃないか。スピード違反とか、例えば駐車違反とか信号無視とかこういうのはたまたま見つかるわけであります。みんなスピード違反しているものが見つかればそれは公平でありますけれ
ども、けさも
安田さんの御
質問に
金澤長官だと思いますけれ
どもお答えになって、
警察の行政というのは
基本的には
不偏不党、公正である、だれにもくみしない、こうおっしゃっていたと思いますけれ
ども、例えばスピード違反などは、見つかりますとどうも見つかり損じゃないか、これが庶民感覚だと思います。税金も同じでありまして、税金も脱税が見つかると見つかり損だ、これも庶民感覚だと思うのです。しかしながら、ここで十分にこの庶民感覚を踏まえながら
道交法改正に当たってみんなで
考えなければいけない
問題、これはなぜそういうことが起こるのか、こういう
問題でございます。
今回の
道交法改正では、初心運転者講習、場合によっては再び新しく再試験をしてもらって免許証を取ってもらわなければいけない、こういう
問題が出てきておりまして、これこそまさに初心者だけに新しい過重な負担を負わせるわけであります。ここでなぜ初心者だけにそういうふうな新しい過重な負担を負わさなければならないのか、このところを十分に
考えて、そしてそこを国民の皆様に十分認識してもらわないと、これはどうしたって
道交法改正というのは本当に公平な行政なんだろうか、何が
目的なんだろうか、こういうことで国民が戸惑いを覚えるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。
だからこそ、
基本的な
問題について私はお尋ね申し上げたいのでありますけれ
ども、人間というのはホモモーベンス、つまり動く動物であります。動く動物でありますから、動けば動くほど物も動き、それから
お金も動く、経済活動は活発になっていく、これは当然のことでありまして、人間を動かす、これは
道交法の精神でいいますと迅速という精神だと思います。こういう点では経済政策というのは明らかに効率を重んじた政策でなければいけない、これも当然だと思います。
見えざる手が働いてみんな勝手に任しておけばうまくいくんだ、これはアダム・スミスの
考え方でありますけれ
ども、それに対してやはりそういう経済的効率、人に任しておけば利己主義と利己主義がぶつかって世の中どうにもならなくなるよというのが、ここに
警察行政の
問題が出てくるんじゃないか。経済的利益の追求のみではいけなくて、やはりそこに公平とか教育とか安全とか公正とか福祉とか、そういう
問題が当然出てくるわけでありまして、なかんずく安全の
問題を十分に認識していかなければいけないんじゃないか。
歴史的に振り返ってみますと、これまで例えば見えざる手、アダム・スミスと、それから公平とか福祉とか公正とか、そういうものを
考えてきたケインズ、ケインジアンの
考え方と、どっちをとるかということで政策は進んできておりますけれ
ども、このところどうも、例えば国鉄の民営化
問題を代表にして効率を重んじ過ぎているんじゃないか、効率主義に走っているんじゃないか、こういう
問題があるんじゃないか。しかし、いかに経済政策が効率に走ろうとも、
警察行政ではそういう効率性ではだめだと思います。そういう経済政策に見習っていたんじゃだめじゃないか。
警察行政こそまさに効率主義、つまり
警察の
皆さんがおっしゃる迅速と安全が両立すればいいのです。両立すればいいのだけれ
ども、往々にして両立いたしません。両立しないときに、果たして見えざる手に頼るのか、それともそこに介入をしていくのか、
こういう大変深刻な
問題が出てくると思うのであります。
そこでお尋ねしたいのでありますけれ
ども、効率と安全が両立した場合はいいのでありますが、全く両立しないとき、相反するとき、これは絶対に効率をとるんじゃなくて、国民の皆様に少しは御負担いただかなければいけない。それから
警察、行政の方も負担していただかなければいけない。行政もそれから国民も両方に負担はかかるけれ
ども、コストはかかるけれ
ども、やはりここはどうしても安全ということをとってもらいたい。狭い日本なぜ急ぐとかいう、あれは実にうまい標語だと思うのですけれ
ども、あの標語にあらわされているように、急ぐよりもやはり安全なんだ、そのためには少し初心者の方にも御負担いただきたい、それから
警察行政も少し面倒になりますけれ
ども、そこはやはり行政の方も負担しましょう、こういう精神が今一番大事なんじゃないかと思いますが、庶民感覚が一番よくおわかりの、政治経験豊かな、我が尊敬する大臣にひとつここだけは
お答えいただきたいと思います。