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1989-11-21 第116回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月二十一日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 丹羽 雄哉君    理事 伊吹 文明君 理事 高橋 辰夫君    理事 野呂 昭彦君 理事 畑 英次郎君    理事 粟山  明君 理事 池端 清一君    理事 貝沼 次郎君 理事 田中 慶秋君       稲垣 実男君    今井  勇君       小沢 辰男君    木村 義雄君       古賀  誠君    笹川  堯君       高橋 一郎君    津島 雄二君       中山 成彬君    三原 朝彦君       持永 和見君    大原  亨君       川俣健二郎君    永井 孝信君       渡部 行雄君    新井 彬之君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    田中美智子君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 戸井田三郎君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房審         議官      森  仁美君         厚生省児童家庭         局長      古川貞二郎君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁運営         部長      土井  豊君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    七瀬 時雄君  委員外出席者         総務庁人事局参         事官      畠中誠二郎君         大蔵省主計局共         済課長     乾  文男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         部改革推進企画         官       藤井 章治君         運輸省運輸政策         局運輸産業課長 小幡 政人君         労働省労働基準         局賃金時間部労         働時間課長   諏訪  佳君         参  考  人         (日本国有鉄道         清算事業団理事         長)      杉浦 喬也君         参  考  人         (日本国有鉄道         清算事業団共済         事務局長)   長野 倬士君         社会労働委員会         調査室長    滝口  敦君     ───────────── 十一月二十一日  国民医療改善に関する請願中路雅弘紹介)(第五〇五号)  同(東中光雄紹介)(第六五四号)  脊髄空洞症特定疾患難病指定に関する請願大野潔紹介)(第五七二号)  国民年金等公的年金改悪反対に関する請願永井孝信紹介)(第六五三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第六六号)  被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案内閣提出、第百十四回国会閣法第七七号)  平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案大出俊君外二名提出、第百十四回国会衆法第一〇号)      ────◇─────
  2. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案及び第百十四回国会大出俊君外二名提出平成元年度における国民年金法等年金額等改定特例に関する法律案の各案を議題といたします。  これより各案について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。持永和見君。
  3. 持永和見

    持永委員 今議題になっております年金関係の三案について御質問を申し上げたいと思います。  まず、野党がお出しになっているスライド法案についてでございますが、これにつきましての厚生大臣考えをひとつお伺いしたいと思います。  厚生年金国民年金というのは制度的な仕組みとして五年ごと財政の再計算を行って、緻密な数理計算を行いまして、五年間の生活水準賃金の動向に応じて年金額引き上げをしたり、あるいは数理計算の結果に基づいて必要な保険料改定をしたりするという制度的な仕組みがきちんとつくられておるところでございます。その間は年金額実質目減りを防ぐために物価スライドによってその間のつなぎを対応する、こういうような仕組みになっております。今回平成元年度はちょうど再計算の時期に当たるわけでございまして、そういう意味で、今回政府の方としても実質改善を伴った、そしてまた懸案の問題を処理するための改善を御提案されている、こういうことになるかと思いますが、そういった財政計算をきちんとやって、その結果による制度改善ということではなくて、野党のお出しになっているのは当面の物価スライドだけを切り離してやろう、こういうようなお考えのようでございますけれども、やはり法律の建前、制度仕組みからいって年金制度の長期的な安定を図る、また信頼にたえ得る年金制度をつくるためにはこのスライドだけを切り離してやるということはいささか問題があるのではないかと思っております。  そしてまた、消費税の問題が今大変国民的な問題になっておりますけれども、この問題について、特に逆進性の問題がありまして、年金受給者など、そういった所得の低い人たち負担が重くかかっているのではないかというような議論がされておるわけでございます。こういった観点を踏まえまして、我々自民党としては今度の実質改善スライドは〇・七%、実質改善は約六%というものをひとつ十月からではなくて四月にさかのぼってやろうじゃないかという、参議院議員選挙でそういった公約をいたしておるところであります。したがって、今お出しになって審議を行われております年金改善法案につきましては何としても本体の実質的な改善、実質的な財政計算に基づく見直しを優先させ、それをできるだけ早く実現させるのが国会としても大変大事なことだと私は思っておりますが、そういったことにつきまして厚生大臣のお考えをひとつお伺いしたいと思います。
  4. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 委員指摘のとおり、この年金は昨年春に物価スライドをして以来改定をされておりません。その中に御承知のとおり税制改革による消費税実施というようなものがあったわけでありますから、当然年金受給者にとっては、御承知のとおり二千五百万人の方々が早く給付改善分を含めた支給を待ち望んでいるところだと思います。同時に、その給付改善をしていくためには当然負担の問題もつきますので、やはりいろいろな意味での御意見等も、また、別の御意見もありますけれども、いずれにしても年金受給者にとってみれば一日も早い給付改善部分を含めた支給を望んでいるところだろう、かように思うわけであります。  そこで、先生指摘のとおり切り離して改善部分だけ、あるいは物価スライド部分だけというのではなくして、その負担面も同時にあわせて実施をしていくということが私は将来の安定のために絶対必要である、かように思っております。しかしながら、一方給付改善面だけは早くやらないと、逆進性の問題もあって非常に困っておるという御意見も十分わかるわけであります。そういう意味で、今御提言のありました給付改善の四月にさかのぼって実施するという御意見等もありましたけれども、これらの問題は本委員会審議を通じ、また与野党間でも十分お話し合いをしていただいて、国民期待の持てるような改善が同時に通過していくということが望ましいように思います。
  5. 持永和見

    持永委員 年金問題を論じます場合に、高齢化社会のこれからのあり方、あるいはその中における年金制度の果たすべき機能なり役割、そういったものをやはりきちんと議論し、そういった前提の上に立って年金制度が今後いかにあるべきかという議論を展開することが必要であろうかと思っております。そういった意味で、これから日本高齢化が急速に、そして外国に例を見ないスピードで進むわけでございますけれども、そういった人口構成高齢化といったものについては当然年金とか医療とか福祉、そういった社会的な費用というのは重なってくるかと思います。社会保障負担の将来の問題あるいは人口構成高齢化の問題、そういった問題について、たしか六十三年だったと思いますけれども、二十一世紀における給付負担展望という政府としての見解をお出しになったと承っておりますが、その内容について大筋を御説明いただきたいと思います。
  6. 加藤栄一

    加藤政府委員 御説明いたします。  まず人口構成の変化につきましては、我が国は今お話のありましたように大変急速に高齢化が進むわけでございまして、六十五歳以上人口の総人口に対する割合で見ますと、昭和六十年に一〇・三%でありましたものが西暦二〇〇〇年、平成十二年には一六・三%、さらに二〇一〇年、平成二十二年には二〇・〇%、二〇二〇年、平成三十二年には二三・六%にまで進むわけでございます。また、これを六十五歳以上人口と二十歳から六十四歳までの生産年齢人口の対比で見ますと、老人一人当たりの生産年齢人口昭和六十年に五・九人でありましたものが平成三十二年には二・三人ということになるわけでございます。  こういう高齢化の進展に伴いまして社会保障に対する負担も増大するというふうに見込まれておりまして、今先生がおっしゃいました昨年の三月にお出しいたしました「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障給付負担展望」におきましては、現行制度前提として試算いたしますと、社会保障負担すなわち社会保険料等でございますが、昭和六十三年度は約三十二兆円で、対国民所得比で一一・一%でありますものが、平成十二年度には六十五ないし七十五兆円程度、対国民所得比で一四ないし一四・五%程度平成二十二年度では百二十五ないし百五十五兆円程度で、一六・五ないし一八・五%程度に対国民所得比がなるわけでございます。
  7. 持永和見

    持永委員 今御説明がありましたように、大変な高齢化社会、そして大変な社会保障費用が必要になるわけでございますが、特にその中で年金というのは非常に大きな役割機能を果たすことになるかと思います。そういう意味で、厚生省がたしか昨年、長寿社会のための施策ビジョンといいますか福祉ビジョンをお出しになっていると思いますけれども、そういった福祉ビジョンの中で、公的年金の果たす将来のビジョンについてどういうことを示しておられるのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  8. 加藤栄一

    加藤政府委員 お話しの昨年十月に国会提出いたしましたいわゆる福祉ビジョンでございますが、この中で基本的な考え方を立てた上で、年金医療等につきましてそれぞれビジョンをお示ししております。  この中では、年金につきまして、まず、公的年金についてはおおむね現在程度給付水準を引き続き維持する。第二に、保険料率については段階的に引き上げることとするが、将来過大な負担にならない水準にとどめる。第三に、平成七年を目途とする公的年金制度全体の一元化に向けて、今後とも給付負担公平化を図るための措置を講ずる。第四に、支給開始年齢につきましては、雇用その他の条件整備を図りつつ、将来できる限り早い時期から段階的に六十五歳とすることを目標とする。第五に、公的年金を補完する企業年金を育成し、普及を図るという考え方を明らかにしております。
  9. 持永和見

    持永委員 そういうようなことで、年金に対する期待役割が大変多いわけでございますけれども、現在、二千五百万人の方々公的年金を受けておられる。二千五百万人というのは国民四・四人に一人ぐらいということになるわけでございますし、また世帯数からいいますと、恐らく二世帯に一人は必ず公的年金受給者がいる。そういうような、年金国民各層に深く根づくような時代にまさになったと思っております。  これからますます年金に対する国民期待そして役割というのはふえる一方だと思いますけれども、一体公的年金をこれからどういうふうに基本的に持っていこうとお考えなのか。そしてまた、公的年金の特に生活保障としての給付水準というのを一体どういう基本的な考え方制度的に仕組もうとしておられるのか。これから老後生活というのはますます長くなる、年金に頼る生活期間もますます長くなるわけでございますが、そういった点について大臣の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 御承知のとおり、これから高齢化社会に向かってますます年金は大切な役割を果たしていくことになると思います。この公的年金仕組みの問題は、御承知のとおり世代間扶養という仕組みでされているわけであります。そのために、働く世代人たちは、その当時の生活水準あるいは物価等を勘案して給与支給されるわけでありますから、当然それに基づいた年金物価スライドあるいは実質価値の維持を図るほか、さらに再計算期ごと国民生活水準の向上や賃金の上昇に応じて年金額改善していく、そして老後生活を確実に支えていくという役割を果たしていくものであります。  さらに、今回の改正は、そういった観点から給付改善を行おうとするものでありまして、公的年金役割を、今後本格的な高齢化社会に向かって果たしていける役割を安定的に支えていく、こういうふうなつもりで提案をいたしているわけであります。
  11. 持永和見

    持永委員 公的年金制度で一番大事なことは、制度の長期的な安定をきちんと図っていくということと、制度自身に対する国民信頼をつなぎとめていくことだと私は思います。  最近、公的年金につきまして、特に国民年金保険料が毎年毎年上がっていくというようなこと、あるいは一部では、せっかく六十歳支給だと思って掛けたのに、いつの間にか六十五歳支給になってしまったんじゃないかというようなこと、これはPR不足というか説明不足もあるかと思いますけれども、そういったことから、最近、民間の生命保険に入った方が多少老後生活保障としてはいいのじゃないかなというような意見もちまたに聞かれるようなことでございます。公的年金私的年金とを単に数字の上だけで損得論議をするというのは非常に問題があるかと思いますけれども老後生活設計として、確実な、しかも安定したものを求めるというようなことから、どうも私的年金の方が約束されたものをきちんともらえるから、しかも保険料も初めから決まっているから私的年金の方がいいのじゃないか、いささかそういう風潮があちこちに見られるようになってきております。これは私は非常に問題だと思うのです。その点について厚生省としてはどういうふうにお考えなのか、また、どういうふうに国民理解なり納得を求められようとしているのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  12. 水田努

    水田政府委員 公的年金役割については、ただいま大臣からお答えしたとおりでございます。  私的年金というのは、払い込んだ保険料に利息をつけてそれを原資として保険給付がなされるもので、そもそも公的年金私的年金役割が違うわけで、これを数字的に比較するのはいかがかと思いますが、あえてこれを比較させていただきますと、厚生年金につきましては、開始年齢を六十五歳に引き上げたといたしましても、国庫負担があること、事業主負担があることによりまして、平成元年十月に四十歳の方で払い込んだ保険料と受け取る給付の総額を比較した場合、給付の方が三・三倍、三十歳の方で二・七倍、二十歳の方で二・三倍、こういうことに相なります。  また、国民年金につきましても、国庫補助がありますことによりまして、同じケースで計算いたしますと、四十歳の方で二・四倍、三十歳の方で一・六倍、二十歳の方で一・四倍ということで、決して保険料よりも減るということはございません。
  13. 持永和見

    持永委員 今局長が言われたとおりだと思うのですけれども、問題は、特に国民年金なんかで、当然加入とはいいながら、国民年金加入というのは個人の任意によるところが多いわけでございます。そういう意味で昨今、国民年金に入ってもなあという感じの方が町の中には非常に多い。そういった点について、世代間の支え合いとして公的年金はどうしても必要なんですよ、そして公的年金については、今おっしゃったように国庫負担があるとか物価スライドがあるとか、生活水準の変動があればそれに応じてきちんと年金というのは直していくんですよというような点についてのPRといいますか、国民に対する理解納得を求められる方策がやや少し不足しているのじゃないかなという感じがいたしております。この点についてぜひぜひ積極的なPRお願いしたいと私の方からも思いますけれども大臣の方でそういう方向に向かっての御努力お願いできるように、ひとつよろしく御配慮をいただきたいと思います。
  14. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 私は、年金については世代間の合意が必要であるということをたびたびこの席でも申し上げましたけれども、私は世代間の合意が、例えば給付を受けて支えられる世代間の合意ということではなくして、あるいは支える人だけの合意ではなくして、この年金制度というものがこの国で行われていることに対する日本国民の社会的な合意世代間合意だろうと思うのです。でありますから、その部分的な合意ということになるというと、年金を受ける人はたくさん給付を受けたいし、また支える人は少しでも軽い方がいいということになるというと、社会的合意の中で対立する——対立すると言うとおかしいけれども、その社会的な合意の中で部分的に合意に置いている力点が違ってくるというと、せっかくこういった世代間扶養という、すなわち物価スライドしていく、あるいはよく私も言いますけれども、この間のオイルショックの狂乱物価、ああいうようなときでも支えられていくのは、やはり何といっても支えていく世代人たちがその当時の経済情勢物価に見合った給与を得ている。したがって、その人たちの大体七〇%くらいを支えていこう、負担をしていこう、そういった意味での世代間扶養に対する社会的な合意というものをよく認識していないといけないのではないか。そのためにはやはり、厚生省としても公的年金の意義というものをよく宣伝といいますか、理解を求める努力をしていかないというと、自分は貯金をしていた方がいいのだと思う、あるいは私的年金の方がいいと思う、私的年金とかそういった貯金というものは確かにいいことであるけれども、もし狂乱物価のようなものが出てきて大きなインフレが起こるというようなときには、とてもとても支えられていかない、そういう仕組みに対する合意を得る努力が一番大事なんではないかと思います。
  15. 持永和見

    持永委員 ぜひひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、支給開始年齢の問題でございますが、支給開始年齢の問題につきましては、先般も伊吹委員の方からいろいろ御質問がありましたので、私は、支給開始年齢引き上げ条件整備といいますか連動がどうしても必要だと思われる高齢者雇用の問題について、ひとつ労働省の方に二、三お伺いを申し上げたいと思います。  これから若い人たち人口高齢化に伴いましてどんどん減っていく日本人口構成にありますけれども、そういたしますと、やはりどうしても高齢者雇用の場というのは必然的にふえざるを得ないし、また現実に、やはり人間の生きがいとしては働くことに一番の生きがいを感ずるのではないかという気がいたします。そういう意味高齢者雇用というのは、よしにつけあしきにつけこれはふえていくという必然的な展開にあるかと思いますが、やはり国としてそういった高齢者雇用条件整備を積極的に展開していくことが何よりも必要なことだと思います。労働省は昨今、高齢者雇用の問題について大変積極的に取り組みたいというような意欲があるやに聞いておりますけれども平成年度予算要求、そういった中で高齢者雇用対策についてどういうことを考えておられるのか、ひとつまずお伺いをしたいと思います。
  16. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、高齢化社会が進展しておりまして、それに伴いまして労働力高齢化ということも進んでおります。したがいまして、近い将来の展望を見ましても、労働力の増加というものを高齢者に依存せざるを得ないという状況が参ってきておりますし、また、人生八十年時代社会参加あり方という点から申しましても、六十五歳程度までの雇用を確保するということが極めて重要な施策になってきているわけでございます。そういった中で、私ども労働省といたしましては、高齢者の長年培った知識、経験、能力を十分に活用しながら我が国経済社会の発展に不可欠な労働力を確保していくというようなことで、高齢者方々雇用の場を確保することは労働行政の最重点課題であるというふうに考えております。このため、来年度概算要求におきましても、高年齢者雇用対策を最重点課題とし、六十五歳までの高齢者雇用の拡大を図る観点からの助成制度改善などを内容といたしまして、前年度に比べてかなり大幅な拡充で予算要求をいたしているところでございます。
  17. 持永和見

    持永委員 今御説明ありましたように、労働省としても来年度高齢者雇用についての助成措置というのは積極的にお考えだということでございますけれども、もちろんその予算的な助成措置、そういった面で高齢者雇用を積極的に誘導していくことも必要でございますが、やはりシステムといいますか、そういった法制面での何らかの手当てというのも必要ではないだろうかという感じがいたしております。雇用審議会でもその問題について今検討がなされているというふうに聞いておりますけれども、こういった高齢者雇用の法的な整備の問題についての労働省取り組みについてお伺いを申し上げたいと思います。
  18. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 ただいまお話にございましたように、高齢者雇用の法的な枠組みにつきましても、去る十月二十四日に雇用審議会に対しまして、労働大臣から六十五歳までの雇用機会を確保する対策について法的整備あり方を含めて諮問を行っておりまして、現在雇用審議会におきまして熱心な御討議をいただいているところでございます。私どもといたしましては、もし御意見がまとまれば年内にも御答申をいただきたいということでお願いをしている状況でございます。
  19. 持永和見

    持永委員 これだけ年金支給開始年齢の問題が大変世間的に、社会的に大きな議論を呼んでおるところでございます。また、日本社会構造からいっても高齢者雇用というのは必然的に積極的に取り組まざるを得ない、そういう状況でございますので、労働省として、政府としてもこの高齢者雇用の問題については今後ともぜひひとつ積極的な、勇猛果敢な取り組み方をよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、ちょっと大蔵省にお伺いいたしますが、今回、厚生年金支給開始年齢を六十五歳にする、これを政府としては法律で提案されております。今官民格差の問題だとか年金制度一元化だとか、こういうことを言われておりますけれども、そういった中で、共済年金支給年齢は今現実に幾らになっておりますか。そしてまた、この厚生年金の六十五歳との絡みで共済年金支給開始年齢をどういうふうに今後やっていこうというふうにお考えなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  20. 乾文男

    乾説明員 お答えをいたします。  共済年金支給開始年齢は、厚生年金の男子と同様原則六十歳とされてございますが、従来五十五歳であった時期がございまして、それの経過措置が現在進行中でございまして、平成元年現在、共済組合支給開始年齢は五十八歳でございます。  それで、厚生年金が六十五歳に引き上げ法案が出されていることとの関連でございますけれども、この公務員共済の年金につきましても、六十五歳までの支給開始年齢引き上げは、国共済自身の財政事情及び公的年金の大宗を占める厚生年金との整合性を考慮すれば避けて通れない課題であるというふうに考えているわけでございます。したがいまして、共済年金支給開始年齢の問題につきましては、本年三月二十八日の閣議決定、これは厚生年金支給開始年齢引き上げ法案提出に当たって行われた閣議決定でございますが、そこでは「共済年金については、その職域における就業に関する制度・運営等にも留意しつつ検討を進め、厚生年金との整合性を図る観点から、右記と同様の趣旨の措置を講ずるよう対処していくこととする。」と述べられておりまして、私どもといたしましても、この閣議決定にのっとって今後検討を進めてまいりたいと考えております。
  21. 持永和見

    持永委員 やはり、これから公的な年金制度というのは、整合性といいますか、そういうものがどうしても必要なことだと思います。年金の中で長い間の官民格差がいろいろと言われておりまして、これから将来年金国民的に大変大事なことになるのだから、それを何とか一元化しようじゃないか、お互いの整合性を保っていこうじゃないか、そういう方向にあるわけでございますから、共済についても六十五歳支給が避けて通れないという御説明がございましたけれども厚生年金と歩調を合わせて将来ともに支給開始年齢の問題に取り組んでもらいたいと思うわけでございます。  次に、保険料のことでちょっとお伺いします。  今回の改正案で、財政計算による見直しでは保険料が二・二%引き上げられる、こういうことになっております。前回の財政計算では、たしか一・八%ずつの引き上げを五年ごとに行うというような計算であったように記憶をいたしておりますけれども、この点について関係者の方々に対する説明が少し足りてないのではないかという節がうかがえるわけでございます。なぜ前回一・八%だった引き上げが二・二%の引き上げになったのか、その点をお伺いを申し上げたいと思います。
  22. 水田努

    水田政府委員 年金財政の将来推計をいたします場合に、人口学的要素というのが極めて大きいわけでございます。厚生省財政計算を行います場合には、人口問題研究所の将来人口推計をもとにして行っているところでございます。前回の再計算は五十六年の推計を用い、今回の再計算は六十一年の推計を用いました。その結果、平均寿命が男女とも前回よりも三歳延びております。そして、平成三十二年における厚生年金の老齢年金受給者が前回再計算時に比べて二百五十三万人増加するということが見込まれるようになりました。その結果、最終保険料が前回の再計算では二八・九%であったものが二百五十三万人増加することに伴いまして、今回最終保険料率は三一・五%と相ならざるを得なくなりました。私どもは、こういう高い負担には後代の方がたえ得ないということで、段階的に開始年齢を六十五歳に引き上げることによって最終保険料を二六・一%に抑える、こういう設計を立てました。この最終保険料に到達するまで約七回の再計算を迎えるわけでございますが、その間、単年度赤字を出さず、かつ積立金に手をつけない範囲でそれぞれの再計算期ごとの上げ幅を等しくするようにしながら最終の二六・一%に持っていくためには、毎回二・二%の上げ幅が必要だ、こういう結論が出て今回法律改正をお願いいたしているところでございます。
  23. 持永和見

    持永委員 今御説明がありましたように、将来の最終料率が三割を超さない程度国民加入員の方々負担を抑えるとすれば二・二%ずつの引き上げが必要だ、こういうことになるのだと思います。今いろいろと国会の中でも、新聞などでは保険料の二・二%が引き下げられるのじゃないだろうかという議論が出ておりますけれども保険料の引き下げというのは必ず後代にッヶが来ることは間違いないと思います。先般も伊吹議員の方からいろいろ御質問がありましたけれども、やはりこの際、公的年金を長期的に安定させてお互いの世代間扶養として国民信頼を確保していくためには、いたずらに後代負担をふやす、後代にツケを回すようなことがあってはならないと思うのです。そういう意味で、今、財政計算に基づくきちんとした数理計算に基づいて我々はそれを守っていかなければならないと思いますが、大臣としてはどういうふうにお考えでございましょうか、御見解をお伺いします。
  24. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今局長が答弁いたしましたとおりに、今回の保険料については将来の負担を考慮して設定されたものであります。したがって、先ほど申しましたように、世代間扶養負担をする世代人たち合意、先ほど申しましたのは社会的な世代間扶養合意で、そして負担者だけの合意というものは成り立たないので、負担者だけの合意というものが、同時に給付を受ける世代がその昔からの約束の延長線上にあるわけでございますから、後代に適当な負担ということでいかなければなりません。そうなってくると、今局長が申し上げましたように、人口構造も変わってきておりますし、ピーク時に達する平成三十二年度を目指してこれからの負担にたえられる安定したものにしていくためには、やはり二・二、本人負担で一・一というのは避けて通れないものと思っておりますので、何とぞ御理解をいただいてこの法案を通過させていただきたい、かように思う次第でございます。
  25. 持永和見

    持永委員 次に、積立金の運用問題でちょっとお伺いいたしたいと思います。  年金の積立金というのは将来の給付財源でございますから、あくまで安全に運用される、そしてもう一つは有利に運用される、こういうことがぜひ必要なことだと思います。厚生省の方では、昭和六十二年度からだと思いますけれども年金の積立金の自主有利運用といったものをやっと導入された。今までは財投一本で運用されておりまして、財投の金利はたしか今五・一%ではないかと思いますが大変低い。そういった中で年金の積立金を有利運用することによって、それが将来の保険料引き上げの幅を圧縮する財源に回る、また給付の財源にもなる大変大切な財源でございますから、そういった意味で、せっかくされました積立金の自主有利運用はできるだけ高利に回る、しかも、その枠をできるだけ多くするということが必要だと思いますけれども、現在の実績を教えていただきたいと思います。
  26. 水田努

    水田政府委員 年金積立金の自主有利運用事業は、内容的には二つございます。年金財源強化事業と資金確保事業の二つがあります。  六十三年度の運用実績を申し上げますと、年金財源強化事業につきましては、資金運用部に預託した場合に比べて一・七八%上回っております。資金確保事業については一・五四%上回っております。両方合わせまして六十三年度分の実差益は六百億に及んでおります。
  27. 持永和見

    持永委員 今御説明のあったとおりで、六百億ということになりますと年金の膨大な運用から見ればそう大きな額ではありませんが、これをやはり伸ばしていくということがどうしても必要なことではないかと思います。そういった意味で、今後の自主運用につきましての大臣の御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  28. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 持永先生指摘のとおり、自主運用というものは、やはり年金財政をより強固にしていくためにも、今局長がお答えしたとおり、実績を上げているわけでありますから、これからもその拡大を図っていきたいと思いますので、よろしく御支援のほどをお願いいたします。
  29. 持永和見

    持永委員 私は時間が余りありませんので次に行かせていただきますが、基金の問題を少しお伺いいたしたいと思います。  今回の改正がどちらかというと給付の問題あるいは保険料の問題、支給開始年齢の問題、そういった点に議論が集中されておりまして、基金の問題についてのいろいろ幾つかの改正が盛り込まれておるのですけれども、そういった問題についての議論がなされてない。厚生年金基金にしても今度新しくできる国民年金基金にしても、やはり国民方々老後の生活の保障あるいは生活をより豊かにするためには大変大事なことだと思うのですけれども厚生年金基金については、たしか六十三年度制度改正がありまして、通算制度改善だとか、あるいは解散した基金加入員の支払い保証だとか、そういった幾つかの改善措置が取り込まれたと思うのですけれども、今度の改正の内容で、基金の積立金の運用方法、こういったものについての拡大措置があると聞いておりますけれども、この運用方法の拡大についての趣旨を御説明いただきたいと思います。
  30. 水田努

    水田政府委員 六十一年に閣議決定されました長寿対策大綱の中で、企業年金の充実を図るために資産運用の一層の効率化を図るべし、こういう条項がございまして、これを受けまして、厚生省の中に企業年金等研究会を設けまして一年余の御審議をいただきまして、その結論といたしまして、最近の資産運用の高度化、多様化のニーズに合うようにするために、運用範囲を従来の生保、信託からさらに投資顧問に参入の道を開くこと、それからさらに、運用体制の整備を整えているところには自主運用の道を開くように、こういう御意見をいただきましたので、今回それに即した改正をしております。  端的に申し上げますと、総資産の三分の一については信託、生保、それから新たに投資顧問会社がそれぞれの専門性を発揮しながら競争ができる。それからさらに、総資産が五百億を超える基金については自家運用の道もあわせて開く、この二点の改正措置を講じているところでございます。
  31. 持永和見

    持永委員 そういった意味での改善が図られるわけでございますけれども、特に今御説明の中で投資顧問業者、これについてはいろいろ議論もあったと思うのですけれども、この投資顧問業者にも年金基金の積立金の運用について、参画をしたというその趣旨をもう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  32. 水田努

    水田政府委員 二十年前に厚生年金基金ができました当時の年金資産の運用は貸付金が中心でございましたが、今日では有価証券運用がほとんど中心になっているわけでございます。これは、日本に限らずアメリカ、カナダ、イギリスにおいても同様でございまして、特にアメリカの場合は生保、信託、投資顧問が年金資産の三分野を分け合っている、こういう形に相なっているわけでございます。日本におきましても六十一年に投資顧問の法律ができまして、この認可業者はアメリカの州年金とか企業年金にも積極的に参加しておりますし、国内的には年金福祉事業団の自主運用や共済年金の運用にも参画している、こういう実績があることから今回参入の道を開いたところでございます。
  33. 持永和見

    持永委員 昨今、厚生年金基金の結成状況あるいは組合員の加入員数が大変な勢いでふえているやに聞いておりますけれども、これは非常に結構だと思うのですね。厚生省でお伺いすると、今基金の数が大体千三百ぐらい、そして加入員が九百万を超しているというようなことでございますから、全体の二千八百万のうちの三割ぐらいが基金に入ったということで、そのことは大変結構なことだと思うのです。今後とも厚生年金基金がうまく運用されますように、そしてまた、厚生年金基金の育成普及について厚生省としてもぜひひとつ頑張っていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  次に、国民年金基金についてちょっとお伺いいたします。  国民年金基金、実は、自営業者というのは御案内のとおり基礎年金しかないということで上乗せの年金についての渇望が大変久しいものがございます。こういった中でようやく今回国民年金基金制度の創設というのが法律の中に図られ、大変歓迎をしている、また期待をされている面も多いと思いますけれども、せっかくできた制度でございますから、これにつきましてはできるだけ多くの自営業者が加入する、そしてまた、できるだけ設立に当たって要件その他について弾力的な運用を図っていただいて、この国民年金基金ができやすいような、そういった指導なり条件整備というのを積極的にお願い申し上げたいと思いますが、その点について厚生省考え方をぜひひとつお聞かせください。
  34. 水田努

    水田政府委員 御案内のとおり、現行制度は職能型基金がございますが、要件が厳しいために現実には一つもできておりませんので、これを大幅に緩和するとともに、職能に属しない方でも加入できるように、都道府県単位の地域型基金をつくることにより積極的に従業者の方にも参入する道を開く、こういう道を講じておりますので、先生の御指摘されたことを踏まえながら運用を適切にやってまいりたいと思います。
  35. 持永和見

    持永委員 よろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、制度調整法の問題でちょっとお伺いいたします。  今回、各年金制度の間で制度調整をやるということで法律をお出しになっております。先ほど来申し上げておりますように、これは将来の年金一元化のワンステップとしてこういう調整法をお出しになったというふうに聞いておりますけれども、今現在、各種公的な年金制度の中では幾つかのアンバランスがありますね。先ほど大蔵省は、今現在、共済年金支給開始年齢が五十八歳だというお話でございましたが、現実厚生年金は六十歳、そしてまた、報酬比例部分につきましても、厚生年金の場合はたしか千分の七・五、共済年金の場合は職域的な退職年金的な要素もあるからということで千分の九になっているのじゃないかと思いますが、そういった面での違いもある。そしてまた、肝心の国鉄共済などでは最終報酬を、しかも退職前に昇給をして、その昇給をされた最終報酬をもとにして年金額計算するというような仕組みをとっておられる。各制度間に給付の面でもそういった大変なアンバランスがありますけれども、そういったアンバランスを放置したままでの財政調整だったら国民納得できない。特に厚生年金の被保険者は納得できないと思います。そういう点でどういうような措置をとろうとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  36. 水田努

    水田政府委員 被用者年金制度間に御指摘のとおりの差異があることは事実でございますが、負担の不均衡を公平に行いますために、昨年の年金審議会の意見を踏まえながら、厚生年金水準で各制度を横断的に切り取って、それを対象にやるという仕組みをとっております。  具体的には、老齢給付のうち、六十歳に到達、移行した者の分に限る、それから一階の基礎年金との整合性を図るために昭和三十六年四月以降の期間分だけにする、それから水準厚生年金水準で切り取ってやる、こういうことで不公平が生じないように調整対象を決めているところでございます。
  37. 持永和見

    持永委員 そうしますと、今回の措置で、例えば平成年度、来年度にこの調整交付金の交付を受ける、言うなればプラスをこうむる、財源的に援助をしてもらう保険者というのはどことどこですか。
  38. 水田努

    水田政府委員 鉄道共済とたばこ共済でございます。
  39. 持永和見

    持永委員 鉄道共済への援助は幾らになっていますか。
  40. 水田努

    水田政府委員 平成年度から六年度までの五年間平均で、千四百五十億でございます。
  41. 持永和見

    持永委員 鉄道共済の危機的な状況についての財政措置として、鉄道共済が三千億の赤字があると言われている。三千億の赤字の中で、まず千五百五十億円を自主努力しますよ、こういうことを言われておるような節もあるのですね。私は、それはおかしいと思います。この財政調整によって千四百五十億なら千四百五十億出せますよ、あと自主的な努力で千五百五十億円努力して、三千億円の赤字を何とか解消しますよ、そういうような発想でないと私はおかしいと思うのですね。最初に赤字があって、赤字の中で千五百五十億円国鉄で自主努力するから、残り千四百五十億円は厚生年金が中心になりますけれども厚生年金を中心として財源的な助成をする。これは発想としておかしいと思うのですが、その点についてどうですか。
  42. 水田努

    水田政府委員 論理的には先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、昨年の年金審の意見書においては、やはりそれだけの制度調整を行うためには、鉄道共済側の自助努力も十分見きわめた上で最終的な態度を決するということが現実問題としてあったことは事実でございます。
  43. 持永和見

    持永委員 これは、これから年金制度一元化あるいは調整といったような問題は至るところで出てくると思うのですけれども、そういった問題を処理する場合にやはり発想、考え方をきちんとしておかないと、これは厚生年金加入員にとってはたまらぬことなんですよ。厚生年金が千四百五十億の中で千百何ぼか、大部分を厚生年金加入員から出すわけですから、その辺、厚生年金加入員が納得できるような発想でないといかぬし、私が申し上げたように、まずこの財源調整措置、これがきちんと世の中でコンセンサスの得られるものであるならば、それによって計算した結果これしか出せませんよ、あとは幾ら赤字があろうと何であろうと、これは国鉄の方で見てくださいよ、こういうのが筋だと思いますので、その点はひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次は、年金の支払い問題でありますけれども、先般も伊吹委員の方からも御質問がありましたけれども、今二千五百万人の受給権者が年金改善を一刻も早くと待ち望んでおられますね。私なども地元へ帰って年金受給者人たちと会いますと、年金改善はいつからやってくれるのだ、年金改善はなるべく早く、今国会審議しておりますよ。十月からでもやってくれ、十一月からでもやってくれ、早く受け取りをさせてくれというような御意見が大変多い。そういった中でこの支払い問題、社会保険庁の方では大変膨大な事務量でございますから、二千五百万人の中で恐らく社会保険庁で抱えておられる受給者が二千二百万人くらいいると思うのです。  そういった人たちに対して改定の通知書を出す、そしてまた支払い通知書を出す、これは膨大な事務量だと思いますが、そういった膨大な事務量をひとつ手際よく敏速に、できるだけの努力をして処理していただかなければならない。それがまた年金受給者期待にこたえる道だと思いますけれども、たしか法律では、厚生年金国民年金ともに支払いの時期は来年になりますと二月が一番最初だと思うのですけれども、この二月の支払いに間に合わせるためには、いつぐらいから支払い業務に着手する必要があるのか、お答えをいただきたいと思います。
  44. 土井豊

    ○土井政府委員 今国会法案が成立した場合におきまして、年度内最後の支払い期であります平成二年二月、この時期に新年金額改定差額を一緒に払いたいということで考えておりますが、このためにはお話しのとおり相当の作業日数が必要でございますので、私どもとしては十一月末ごろを目途に作業に取りかかるということが必要であると考えております。
  45. 持永和見

    持永委員 これはひとつ社会保険庁、全力を挙げて、総力を挙げて頑張っていただきたいと思います。  お伺いしますと、今支払い通知書あるいは改定通知書、そういった通知書が二千二百万に及ぶために、その発送の時期になりますと、中央郵便局から二トントラックが三十七、八台来て、その支払い通知書を運ぶというような話も聞いておりますけれども、これだけ膨大な事務量でございますから、しかし、それを迅速にするというのがやはり社会保険庁としての責任だと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、児童の問題についてちょっとお伺いを申し上げたいと思います。  高齢化社会になって年金の問題、これは生活の支柱としての年金の問題というのは大変大事な問題でございますが、あわせて二十一世紀を担う児童については、児童の健全育成対策というのが高齢者対策に劣らない非常に大事な問題だと思うのですね。そういう意味で、まず児童の健全育成、これから先の高齢化社会を担う、そして二十一世紀の未来の日本を担っていく、そういった児童の健全育成について、厚生大臣としてのお取り組みをまずお伺い申し上げたいと思います。
  46. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 高齢化社会は、別の面から見れば、より少ない人口高齢者を支えていく社会でありますから、高齢化の問題は、一面、次代を担う児童の問題でもあると見えるわけであります。  近年、出生率の低下は、女性の社会進出など児童を取り巻く社会環境が大きく変化しているわけでありますが、この中で、あすの高齢化社会を明るく、かつ活力のあるものにしていくためには、児童を心身ともに健やかな環境の中で生み育てていくことが重要な課題であろう、こういうふうに思っております。  家庭に対する支援や児童の健全育成対策を中核として、保育対策や母子保健対策の充実強化を図るなど、次代を担う子供を安心して生み育てることのできるような環境をつくっていきたい。特に、児童の環境というものは社会面、家庭面、そして児童の接触する子供たちの社会、こういった面に特に気をつけていかなければならない、かように思っております。
  47. 持永和見

    持永委員 今大臣からお話がありましたように、社会環境の変化で児童の健全育成の問題も様相がだんだん変わりつつあると思っております。子供自体の数はそうふえなくても、健全育成と絡んでの保育に対する需要というのはだんだん多様化をしていると思うのですね。婦人就労が拡大する、あるいは御婦人の就労形態が変化するという中で、保育の需要が多様化していると思います。乳児保育とか夜間保育とか、あるいは障害児保育とか延長保育とか、そういったもろもろの多様なニーズに対応した児童の健全育成、そしてまた保育所が、地域社会の中できちんと根をおろした形で地域全体の児童の健全育成に機能を果たしていく、役割を果たしていく、そういうような保育所のあり方がこれから必要なことだと思いますけれども、来年度の保育対策、明年度平成年度の保育対策として、政府としてどういう予算を要求し、どういうことを考えておられるのか、お伺いを申し上げたいと思います。
  48. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 御指摘のように、女性の社会進出というもの、こういうことによる子育てと社会進出を両立させる保育対策が大変重要であろう、御指摘のとおりでございます。私どもとしましては、延長保育あるいは乳児保育等について、そういった特別対策の拡充ということを考えてございます。  例えば延長保育につきましては、平成元年度で延長保育の対象児童二十人というものを六人ということにし、大幅な拡充を図った、これをさらに来年度も強化していきたい、かように考えております。  それから、乳児保育につきましては、実施保育所数につきまして、対象を六百余拡充いたしましたが、これと同様に来年度も乳児保育に力を入れていきたい。  それからもう一つは、いわゆる緊急時といいましょうか、お母さんが病気になる、あるいは例えば月水金だけというふうにパートで働いている、そういうふうな緊急一時的な保育のニーズというものが出ておりますので、私どもとしては、そういった特別保育対策の強化と同様に、こういった緊急一時的な保育サービスに対する施策も講じてまいりたい、検討してまいりたい、かように考えております。
  49. 持永和見

    持永委員 時間のようでございますから、これで私の質問を終わらせていただきますが、今回出されている年金法、二千五百万人の受給者方々が一刻も早く改善の金額が手元に届くのを待ち望んでいるわけでありますから、早くこの法案が成立されますことを心からお願い申し上げますとともに、やはり年金制度というのは長期的な安定によって二十一世紀に揺るぎない制度に仕組んでおくことが必要でございますので、そういう意味から十分な御審議お願い申し上げたいと思います。  そういうことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。     ─────────────
  50. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております各案審査のため、本日、参考人として、日本国有鉄道清算事業団理事長杉浦喬也君及び共済事務局長長野倬士君、両君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  52. 丹羽雄哉

  53. 川俣健二郎

    ○川俣委員 本論の年金に入る前に、せっかく厚生大臣と運輸省の皆さんが同席されている委員会ですから、ちょっと事実関係だけただしておきたいと思います。  これは新聞を見た限りでございますので私も真偽のほどはわかりませんが、JRにまつわる二つの明暗というか、いい方と悪い方と言っては悪いが、まずは明暗の暗の方です。  二、三日前、十一月十八日にJR東京総合病院の酸素保険料不正請求、何と原価の三十三倍。こういうことがあり得るのだろうかと思うが、再三注意、支払いカット、こういうのが載っておりました。これは私たちはどういうように見たらいいですか。
  54. 藤井章治

    ○藤井説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたJR東京総合病院におきます医療用酸素の保険料の請求額につきましては、厚生省の監督のもとにございます、各保険者にかわりましてその支払いなどを代行いたします社会保険診療報酬支払基金によりまして審査を受け、その審査を踏まえました単価に基づき算定された額であると聞いておるところでございます。  そのような中におきまして、御指摘のあったように会計検査院から、同病院の酸素購入価格と、これにかかわる保険料請求額の開差の問題の指摘を受けたところでございまして、同病院におきましては、この指摘をも踏まえまして、保険料請求単価を逐次見直し、現在においては、酸素の実際の購入価格を基礎とした単価に基づき請求を行っておる状況、そのように聞いておるところでございます。
  55. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この種の問題は厚生省ともかなりかかわりがある問題ですから、どうせこの委員会でやるでしょうから、次に入りたいと思います。  せっかく暗の方を出したから、明の方を。  身障者の運賃割引制度、内部障害者にも適用へと、これは江藤運輸大臣から記者会見でなされておるのです。私たち社会労働委員会では長年身体障害者対策の向上を図ってきたところでありますが、いよいよ動き出してくれたかなと思っています。法律上の該当者であることがはっきりすればといううたい文句があるのですが、できれば精神薄弱者と難病患者の皆さんにもと、そういうように受けとめていいのか、その辺も事実関係としてお伺いいたしたいと思います。
  56. 小幡政人

    ○小幡説明員 お答えさせていただきます。  先生指摘のとおり運輸大臣の記者会見におきまして、従来内部障害者について割引の対象になっておりませんでしたJR各社、民鉄各社並びに航空会社につきまして、今般内部障害者を割引待遇の対象にすることにさせていただいたわけでございますが、運輸省といたしましては、そういう身体障害者割引等々のいわゆる社会福祉割引につきましては、基本的には事業者の負担によるということではなくて、公的な負担によるべきであるという考え方を持っております。しかしながら、先ほど申し上げました内部障害者につきましては、実は同じ身体障害者福祉法という法律体系の中で措置されております外部障害者方々とのバランス問題、さらにまた、実際に御負担いただきます民営事業者の中の一番大手でございますJR各社の経営状況がおかげさまで改善されつつあるということにかんがみまして、JR各社が内部障害者を割引対象とすることについて前向きの意向を表明したというようなことがございまして、そういう観点から実は事業者負担による割引制度としての内部障害者を対象とする措置を今回実施することにしたわけでございます。  そういうことでございますので、先ほど御指摘ございましたような精神薄弱者の方々の問題あるいは難病の方々の問題等々につきましては、基本に立ち返りまして、事業者負担ということではなく、公的負担によって措置されるべきものと考えているところでございます。その意味で今後の検討課題ということでございます。
  57. 川俣健二郎

    ○川俣委員 外部障害者が二百十二万人、内部障害者が二十九万人、五十人に一人というのが障害者として苦しんでいるわけですが、今課長が話されたように、世はまさに事業者負担という個々のものではなくて、公的な、国がみんなで負担しようとする世の趨勢にございますので、私もこれは非常に進展したなと思って評価しているわけでございます。  そこで本論の年金に入りますが、きょうは大変にお忙しい杉浦理事長にお見えいただきまして、委員長の了解をいただきまして、杉浦さんには分割・民営の際に予算委員会に何回も来ていたださまして御苦労をされてきた方でございますので、その辺の歴史的な背景などもお互いに意見の交換をしてみたいと思います。  きょうは厚生省の中で社会保険庁、さらに大蔵省、運輸省、労働省の皆さんがお出ましでございますので、ぜひ私たちの気持ちを聞いてもらいたいと思います。  今持永同僚委員質問されておりましたが、この問答弁席におられたと思ったら、さすがと思って聞いておりました。問題は、JRのOBも泣かせ、法外に保険料を上げて現役も泣かせ、しかも、それでも足りなくて余り縁戚でない隣のうちの子供らまで泣かせるという大騒ぎの法案が絡んでいるだけに、これは国会でじっくり腹を合わせて上げなければならないと思います。  そこで、大臣に伺う前に、国会提出された日はいつだったか。それから、ついでながら、年金審議会の諮問と答申の日はいつだったか。それから次に、制度審議会の諮問の日と答申の日はいつだったか。そして最後に、国会に出されたのはいつだったか。これをどなたでもいいからちょっと事務的に話してください。
  58. 水田努

    水田政府委員 まず法案でございますが、国民年金法等の一部を改正する法律案国会提出いたしましたのはことしの三月二十九日でございます。それから、被用者年金制度間の費用負担調整に関する特別措置法案国会提出いたしましたのはことしの四月十四日でございます。それから、年金審議会に御検討をいただきまして、意見書の提出をいただきましたのは六十三年の十一月二十九日でございます。御検討を開始していただいたのは六十二年の九月からでございます。十七回にわたる全員懇談会と四回の小委員会を経て意見提出をいただいております。それから、同じく法案を諮問いたしまして答申を年金審議会からいただきました日付はことしの二月二十七日付と相なっております。制度審議会から御答申をいただいたのはことしの三月六日でございます。諮問した日付につきましては後ほどちょっと調べてお答えをさせていただきます。
  59. 川俣健二郎

    ○川俣委員 じゃ諮問の日はちょっと。  私はその制度審のメンバーの一人ですから、ぜひここで聞いておきたいのは、なぜこんなに急ぐのだろうかという感じをここで話をしたかったからでございます。  そこで大臣、三月二十九日に国会に出された。もうかれこれ六カ月、七カ月。一日も早くと支給日を待っている。特に消費税の四月からの実施のあおりというのは、国民年金厚生年金の比較的金額の少ないお年寄り、すなわち所得税減税の恩恵を受けない層が一日千秋の思いで持っていると思うのです。これは大臣も十分わかっていることだと思いますが、なぜ今までこのように審議が、六カ月、七カ月たってようやく審議が始まったのだろうか。提案者と国会意見がなかなか合意できなかった。ところが、合意しているものもある。それは、毎年やっている物価スライド〇・七%、財政計算による給付改善厚生年金で言えば六%。物価スライドは四月一日から、後者は十月一日から、こういう法案です。ところが後者の給付改善は、去る七月の参議院選挙で、よし、四月にさかのぼってやろう、こういうように時の幹事長、今の大蔵大臣が公約をした。これは国民はだれしも耳に入っている。そこで、まず合意したものからやろうではないか。一日千秋の思いで待っているのだから。  今審議しようとする政府提案の年金法案と三野党、社会党、公明党、民社党の国対委員長がそこに三人お並びになって提案された、合意したものからまずやろう、こういうようなことでございますが、大臣、今まで六カ月も七カ月も滞っておったという責任は大臣も提案者として感ずると思います。政治家としても、与党、野党を問わず感じていると思います。その辺の、なぜこのように今までほっておかれたか、審議に入れなかったか、政治家同士ですからひとつ具体的に聞かせてください。  それからもう一つは、年金審議会にかけて制度審議会にかかる、そして国会に出される。その際に、労働三団体のお三人が退席されたという騒ぎがあった。これも御存じかと思うが、そういうようなことも含めて少しお話し願いたいと思います。
  60. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 大変難しい問題で、なぜ法案審議がおくれたかということにはたくさんの考えられる理由があるように思います。  今政府委員からお答えいたしましたように、法案提出が三月の末である、二十九日ということが大変遅いという面も一つありますけれども、それ以上に大きな問題は、ことしは予算審議が大変長くなりまして、それは予算審議の長くなったことにはいろいろな問題があると思いますが、そして四月二十八日に衆議院を通過いたしております。それが参議院では自然成立という形を経てきたわけで、そのとき既に会期のほとんどが終わりかかってきているという状況が一つは考えられます。  そしてさらに、会期末が六月二十二日でございましたけれども、その会期末を前にして内閣がかわった、六月三日に宇野内閣にかわった。そして施政方針演説をしたり、いろいろな状況が、今年は過去の例から見れば考えられないような問題が次々起こってきて、国会の中で正常な一つの提案されている法案審議の俎上に上らなかった。もちろんこの問題については上り得る可能性もないではなかったけれども、やはり今言ったような状況の中でありますから、当然提案者と国会との間の合意が得られなかったということもあるのだろうと思います。さらに、この原因というものを追及して、だれがどうこうということは政府では言えませんけれども、客観的な状況がそういう状況の中であったということだけは事実でありますから、お話し申し上げることができると思います。  あともう一つお尋ねのありました制度審の答申のときに退場したという問題については政府委員から答えさせていただきます。
  61. 水田努

    水田政府委員 年金審議会は御案内のとおり法律上全員が学識経験で構成されておりまして、学識経験であるところの労働者側委員が答申の際の総会の席で退場されたというのは御指摘のとおりでございます。私どもは再計算をいたします場合には常に審議会に事前に長時間かけて御検討いただきまして、それをもとに再計算を完了し、予算編成をし、法案をつくり、そこで最終的に年金審に正式に諮問をする、こういう手続をとるわけでございますが、その際に学識経験であるところの労働者側委員開始年齢引き上げについて非常に強く反発をなさるということがございまして、亡くなられました福武会長は非常に心配をされまして、できるなら何とか円満にまとめたいということで、二月十七日に答申をいただくという予定であったわけでございますが、総会を一回引き延ばしまして、予算関係法案提出期限である二月二十八日の前日、二十七日ぎりぎりまで会長、会長代理が説得されましたが、我々は立場があり、これには賛意を表することができない、退席することで意思表明をしたいということで退席されましたが、私ども会長を補佐する立場にある者として、こういう形になったことは極めて残念であり、今後こういうことのないように努力をしてまいりたい、このように考えております。
  62. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうことじゃなくて、年金審議会ばかりでなく制度審だって最終段階で三人来なかったのです。なぜかと言っているんだ。具体的にわかっているでしょう。それがはっきりしなければおれはだめだと思うよ、上辺の審議では。何と何が特に問題になったか。
  63. 水田努

    水田政府委員 六十五歳の支給開始年齢に反対である、これが理由でございます。
  64. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、やはりそのくらいのことは言ったっていいじゃないですか。  そこで、労働省伺います。  六十五歳、これは何としてでも、やはり労働者としては問題点であることだけは事実でございますので、この問題については特に同僚の永井委員が後ですぐに追いかけて深めますけれども、一つは、諸外国は一体どんな状態になっているのだろうか。というのは、定年制と年金との関係はどうなっているのだろうか、労働省は担当省ですから。
  65. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 お答えいたします。  我が国の継続雇用と申しますか終身雇用慣行に根差した定年制といったようなものは欧米諸国にはないというふうに承知いたしております。そこで、現実の問題といたしましては、欧米諸国におきましては年金支給開始年齢はおおむね六十五歳となっておりまして、現実雇用から引退される年齢もおおむねそれにリンクしているのではないか、かように承知いたしております。
  66. 川俣健二郎

    ○川俣委員 おっしゃるとおりですね。この定年制度というのは諸外国にはない。日本独特のものである。すなわち、働けなくなった、まだ働ける、個人差が十分ある。あるいは、子供がかわりに雇用されるから自分は年金生活者になるとか、いろいろな状況にあります。ただ六十五歳が是か非かという論議ではなくて、定年になって給料が断絶する、そうすると、六十歳定年というのはあるんだから五年ぐらい待ったっていいじゃないか、こう言う。しかし、卑近な例だけれども私の地元にあるバス会社、独占企業でしょうが千人規模のバス会社がいまだ五十五歳です。そうすると、十年待たなければ年金にありつけない。六十歳にしてもまだ六割ぐらいでしょう。労働省が行政指導でやると言って太鼓をたたいても企業はなかなかそれについてこれない。そうすると、たとえ六十歳にそろってみたところで五年は断絶なんです。どうやって暮らすか。  こういうことを考えますと、私は制度審にも口を酸っぱくして言ったのですが、問題は労働省の将来の雇用の問題、そして日本の定年制というのがどうしても取り払えないなら、この機会だから日本の定年制をぼつぼつ諸外国並みに考える時期に来たのではないだろうかと私は言いたいけれども、そうはいっても皆さん方に今すぐ取っ払えと言ったって無理だろう。それでは、厚生大臣労働大臣も今はかわってしまった、昔の人だ。特に日本の政界、政局というのはからから変わって、外人がよく、せんだっての総理がすぐかわってしまったな、こう言うんですけれども労働大臣厚生大臣もかわった。したがって、どうたったかということを、随行された担当者が労働省厚生省にいると思いますが、私たちは三月六日の答申がやっとだった、それはなぜかというと三名は退場する、雇用はどうなるか、その青写真がなければこれはとても通せない、それでは厚生大臣労働省にかけ合いに行くということで、昼のニュースからじゃんじゃん、厚生大臣労働大臣のところに直談判に会いに行った、直談判というか雇用の方をひとつよろしくというかけ合いに行ったのはいつで、どういうことをお話ししたのか、ちょっと聞かせてくれませんか。
  67. 水田努

    水田政府委員 小泉大臣丹羽労働大臣と二月十七日と三月三日、二回お会いになっておられます。その際に、前厚生大臣から労働大臣に対しまして高齢者雇用の促進について要請がなされました。特に小泉大臣は、六十歳前半層の就業機会の一層の拡大に特段の意を用いて積極的に対応していただきたい、こういうお願いを申し上げました。これに対しまして前労働大臣から、労働省としては六十歳前半層の雇用対策を最重点課題として推進しており、必要があれば法的整備を含めて一層の拡充に努めるということと、また、人生八十年時代を踏まえて長期的な展望を示すべく長寿社会雇用ビジョンの策定に取り組んでおるところである、年金雇用の問題は密接に関連するので今後ともいろいろと協力し合っていきましょう、こういうことが話し合われました。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 三月六日に答申がまとまる直前に一番肝心な雇用の問題、やはり先行しなければならない六十五歳云々というのを三月六日の直前にようやく厚生大臣が言ったということを今局長が言われました。しかもお答えは、やはり正直に言わざるを得ないと思いますが、今は六十歳の定年制にまず全力を尽くして労働省としては行政指導をやっているというのがやっとです。ところが法案が六十五歳でひとり歩きする。これはとてもじゃないけれどもできる相談ではない。そうなると新聞の方では、新聞ですから、与党の政調会長が六十五歳云々はおろそう、カットしよう、こういうことから何となく年金審議が始まろうか、こういうようになったのはみんな知っております。大臣国会の関係、予算委員会の関係ということでは、国民はそれは血の通った答弁ではないと思う。そうじゃないでしょう。やはり六十五歳の問題と、さっきお話しした国鉄の人方を泣かせ、OBを泣かせ現役を泣かせ隣の子供まで泣かせるという三千億問題でしょう。そのくらいのことはわかるでしょう。  そこで、運輸省から大蔵省がJRの年金をもらったというか、公共企業体共済法が国家公務員等共済組合法に変わって、統合法案ができて今大蔵省で管掌しておる。しかし、過去の積み重ねは国鉄、運輸省である、こういうこともあって、きょうは何としてでも杉浦さんにもおいで願ったわけですが、一体そうすると、この皆さんの資料によると、毎年毎年三千億円足りないから何とかしてくれ、一体どうしてくれというのか、どうしようというのか。     〔委員長退席、粟山委員長代理着席〕
  69. 水田努

    水田政府委員 三千億の赤字は平成年度から平成年度までの五年間平均で三千億が生ずるわけでございますが、基本的には、一つは、平成七年の公的年金一元化の中間措置として今回提案しております制度調整法によって千四百五十億を賄い、残りの千五百五十億は国鉄の自助努力によって解決して、これによって支払いの遅延その他を生じないようにいたす、こういうことで今回関係法案提出いたしておるところでございます。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 厚生省が答弁するというのはどうも、大蔵省が好むと好まざるとにかかわらず預かってしまっているんだから、大蔵省から答弁してくれ。三千億、五年後にはどうなるのか。
  71. 寺村信行

    ○寺村政府委員 御指摘のとおり、毎年三千億円の赤字が五年間にわたりまして発生するものと見込まれております。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 五年間の後、五年は出してくれ、じゃ六年目はどうなるのかと言っているんだよ。
  73. 寺村信行

    ○寺村政府委員 その後も相当程度の赤字の発生が見込まれますが、平成年度以降、公的年金一元化の問題がございますので、その問題の検討との関連で検討されるということになりますので、とりあえず平成年度までの措置を現在考えているところでございます。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっと課長、あなた専門だろうから、三千億ずつ五年間お願いすれば、後はきれいになって、今まで救ってくれた人方に少し今度は応援するとか、あるいはゼロになるということなのか、三千億が六年目はどうなるんだ。それは次長に言わせたってだめだろう、あなた、担当課長だろう。
  75. 寺村信行

    ○寺村政府委員 恐らくそれ以降も三千億円程度の赤字が発生するものと見込まれます。
  76. 川俣健二郎

    ○川俣委員 厚生大臣、こういうことなんだ。三千億ずつ五年は、まずとりあえず一兆五千億。国鉄のOBや現役も入れて、自助努力も入れて三千億不足でしょう。その三千億不足というのは五年たっても三千億ずっと不足なんだ、そういうことで確認していいですか、厚生大臣どうですか。
  77. 水田努

    水田政府委員 そのように承知いたしております。
  78. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、五十八年の三月一日、社会保障制度審議会、今隅谷さんが会長ですが、当時は前の大河内一男先生が会長であった。社会保障制度審議会は内閣総理大臣の所管であることは御案内のとおりでございます。五十八年三月二十九日に、大蔵大臣、運輸大臣そして郵政大臣、三大臣に国家公務員共済組合法等の一部改正についての諮問を受けた答申をなさっております。  これをちょっと参考までに読んでみますと、「現行の各種公的年金制度は、将来、収支の著しい不均衡から行き詰まりを来すおそれがあり、」五十八年当時です、「それを解決するためには、速やかに総合的な対策を確立することが必要である。その場合には、国民年金制度への信頼を損なうことがあってはならないことはいうまでもない。」積み立てたらいつの間にかよそへ出されておった、積み立ててきたら、厚生年金国民年金が大してレベルがいいわけじゃない、潤沢であるわけがないのによそへ出されておったということは、大河内先生制度審はちゃんと見越して「国民年金制度への信頼を損なうことがあってはならないことはいうまでもない。」「これまで、国は、公的年金制度全般の将来展望を明らかにしていないにもかかわらず、今回の諮問を公的年金制度の再編・統合の第一段階として位置づけていることは、甚だ理解に苦しむところである。」展望は全然なくて、ただ、君のところは少し黒字だから一緒になろうや、一緒になる前に少し出せや、こういうようなことは国民信頼を失うということと、公的年金制度に対する将来展望なくしてこういうことをやるということは理解に苦しむという答申をしておる。  しかも、こういうふうにも言っています。「国鉄共済組合の危機的状況については、」これは五十八年だ、「かなり以前から予測されていたところであり、本審議会もその解決策を講ずべきことを繰り返し指摘してきた。それにもかかわらず、今日まで国の責任にも触れた具体案が提示されていないことは遺憾であり、さらに国としての格段の配慮が望まれる。」こういうのがあるわけでございます。  そこで、国の責任ということですが、この辺で杉浦当時総裁ですか、私は、六十年十月三十日の予算委員会で分割・民営目前、そして大蔵委員会も、分割・民営の一つの課題、大きな問題は年金問題だということでかなりやっております。同僚委員の議事録が全部出てきております。国の責任、国の責任ということで詰めておるわけですが、この辺は杉浦さん、少し思い出していただいて、やはりこういうことじゃなかったなと思うのでしょうが、やはり国の責任が関与しないといかぬのじゃないかと思うのですけれども、杉浦さん、一遍この辺でちょっとお話しください。
  79. 杉浦喬也

    ○杉浦参考人 国鉄改革の基本的な方向づけといたしましては、大変いろいろな議論がございましたが、やはり国鉄自身の徹底的な合理化と自助努力といいますか、努力、それを前提といたしまして、それで抜本的な民営化、分割化ということに踏み切り、その際に、従来の財政を非常に圧迫しておりました国鉄財政そのもの、それから今御議論になっております年金財政も絡ませて、諸般の国鉄関連財政の非常に大きな原因でございました長期債務の処理を徹底して行う、こういうようないわば三本柱ということを基本にいたしまして国鉄再建計画が組まれ、昭和六十二年の四月からそれが実行されたという状況になったわけでございます。まず国鉄みずからの努力が基本であるということが考えられたわけでございます。  そこで、現在に至っておる状況の中で、いろいろな問題のほとんどを私ども国鉄清算事業団が背負う。人の問題なかんずく大きな問題は長期債務の処理ということでございまして、この長期債務の処理に当たりましては、これも国の方針がございますが、私どもは土地を処分し、あるいは持っておるJRの株式を処分する、いわば自己財源、これに大いに努力せいということを前提とし、最終的になお残る債務につきましては国がこれを負うというように決められているところでございます。  一般的な状況としてはそういう状況でございます。
  80. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この辺のくだりは大蔵大臣に聞かせたいところです。大蔵大臣は厚生行政を知らない人じゃないので、ありったけ覚えている人なのですが、それはまた後で大蔵省に大蔵大臣にかわって聞かせてもらいたいと思います。私らは、確かに社労ではあるが、普通の言葉で言うと、出してくれという方が来ないで出す方が一生懸命に汗をかいているということで、大蔵委員会が並行的におやりになっているそうで向こうの方に大臣がとられているようでございますから、その点は、政府委員でだめだということじゃございませんが、特に大蔵大臣に聞いてもらいたいことであります。  そこで、今、杉浦さんがおっしゃったのに、一人で苦労をしょってきたという感じがしてしようがない。これはなぜかというと、分割・民営のときには、とにかく分割・民営だけは通してくれと言わんばかりに哀訴嘆願の姿勢であった。雰囲気はそういう国会だった。そこでみんなの質疑があって、最終的に、最後ではないが、中島さんという政府委員がこういうふうに答えています。六十年十一月十五日の大蔵委員会の議事録です。   これから国鉄分割・民営化という改革を実施していかなければいけないわけでございまして、これを実現していくためには、やはり現在国鉄で働いている職員、それから年金受給者であるOBに対して不安を与えないようにしていくことが大切だと思います。 立派なことを言ってくれているのです。   そういう意味におきまして、何とか国鉄の関係の年金が維持できるようにしていく必要があるわけでございまして、十二日に当委員会におきまして大蔵大臣もおっしゃいましたように、国が責任を持って解決策を講ずるということでございます。運輸省といたしましても、大蔵大臣の御発言の趣旨に沿いまして、関係のところに御理解を求め、努力をしてまいりたいと思っております。 こういうように大蔵委員会では答弁している。うちの方の委員会も各党、公明党も民社党も全部やっておりまして、いい質問をしておりますが、とにかく分割・民営を通してもらいたいということからだろうと思いますけれども、こういうようなことを言っておるのでございます。  そこで、厚生大臣、先ほど六十五歳云々の問題を出されました。それは、高齢化社会に向かって将来財源が不足することがむしろ基本だと思います。そう言っていながら、他人と言っては言葉が適切でないかもしれないが、国家公務員共済組合のグループではない厚生年金から千百四十億出しなさい。千百四十億といったら、みんなが出す千四百五十億の七割八分ぐらいになりますかな、私の計算は。これは何となく理解できないものがあるんだね。大臣、そういうことでしょう。結局自分たちは我慢をして、そして年も五歳延ばして、その財源の千百四十億、五年間。五年たったらゼロになるかといったら、そうじゃないという。まだ続くかもしらぬけれども、まずとりあえず五年、こういうことだというのだ。そうすると、あなた、厚生年金の責任者としてこれは国民信頼を得られるかな。どうです。
  81. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 厚生年金の担当であると同時に年金すべての担当でありますが、御承知のとおり公的年金の安定というものの一角が崩れかけてきている現象がもう相当以前からあったと思います。そして、そういう環境の中で公的年金が安定していくためには、より幅広い勢力といいますか団体というか、年金グループが一緒になって支えていくことがこれからの高齢化社会に向かっての年金の一番大切なものであろう。安定する基盤をより強固にするためにはどうしたらいいのかといえば、今までの公的年金の中でも、例えば共済もあるし、あるいは厚生年金も被用者年金もあります。そういうようなものがそれぞれ分かれているのではなくして、むしろ一元化をすることによって全体的に安定的な、崩れる団体が出てこないような状況をつくり上げていかなければならない。そういった発想から恐らく公的年金一元化構想ができて、そのためにはお互いの給付の面もいろいろと格差があってはいけない。そこで給付面での官民格差をまず是正をし、それから今度は負担面の、特に国鉄のように本当に少数の者で非常に多くの負担をしていかなければならない困難な環境のところも救済していくためには、やはり負担する者の格差も是正をしていかなければならない。さらに、もっと大きく進んでいけば、大勢の年金受給者を支えていくためには、負担給付のバランスだけではなく、支えていく人たちのことを考えれば、支給開始年齢も世界の潮流から見て日本もそういった方向に努力していかなければならない、こういうような関連の状況の中で生まれてきたものだと私は思っております。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 お話はわからぬわけではないが、一体一元化一元化といって、一元化の定義ないでしょう。我が党は党大会で決めて、大原先生そこにいますけれども一元化というのはこっちから提案した、そうだ、一元化やろうと。何のことはない、あなた方の一元化というのはちょっと黒字のところを集めろや、これだけだ。それじゃ一元化じゃないな。  それから、年金担当大臣だとおっしゃいますけれども、私は二十年前から社労ですけれども、生意気に予算委員会で、もう年金省か年金庁をつくるべきでないかという予算委員会の議事録が出てきたが、年金担当大臣という免状はもらったかもしれないけれども、どこが年金担当かな。財源はそれぞれにある。支給のあれもそれぞれに権限がある。ただ厚生年金という、二千何百万人もいる、成熟度がないんだからまだ黒字、黒字を持っている大臣だから、あれのところを担当大臣に持ち上げて、あれから少し引き出そうじゃないか、これだけの年金担当大臣よ、おれから言わせれば。  そこで、私は制度審で参議院の山本正和さんも同じ制度委員で、二人で意見書を書いたことを思い出したのですが、財政調整のこれは矛盾だ。「被用者年金制度調整については、「一元化の中間時点の地ならし」と位置付けながら、」政府は位置づけるという、「目標たる一元化の姿については、その概要すら示されていない。」一元化、わかりますか皆さん、一元化というのはどういう意味なのか。私にわかるように説明してください。「また、制度間の「給付及び負担の不均衡を是正するため」としながら、その実は、厚生年金等に鉄道共済に対する支援を強制する」、法律で強制するという眼目だけ。そうでしょう。「これらはいずれも、政府案の自己矛盾ないし羊頭狗肉の性格をよく示している。」こう書いたものを意見書に出した。ところが、文書に出すのはよくないからしゃべろということでしゃべったわけですが、一元化というのはどういうことかな。政府一元化というのはどうとらえている。
  83. 水田努

    水田政府委員 公的年金一元化、五十九年二月の閣議決定で平成七年までに完成させるという方針が既に決まっているところでございます。一階部分の基礎年金につきましては六十年改正で既に実現をいたしております。二階部分に当たります被用者年金につきましては、まず給付面の整合性というのが六十年改正のときに将来に向かって行われ、残された課題としては負担の不均衡、こういう問題に相なっております。  平成七年に被用者年金制度負担及び給付の両面にわたる制度一元化を図るわけでございますが、これを一挙に持っていくことはなかなか困難であるということから、六十二年の公的年金閣僚会議において、その中間に、被用者年金制度はそれぞれ財政計算期を迎えるのでその段階において中間的な地ならし措置を講じよう、こういう申し合わせが行われ、こういうことを踏まえながら私ども年金審議会においては、公的年金、被用者年金一元化のあるべき姿としては基礎年金の場合と同様被用者年金、それぞれ歴史、沿革その他を持っておりますので、その制度を存置したままいわゆる二階部分に相当する第二の基礎年金的なものに二重加入することによって、同一保険料率、同一給付の新しい制度を創設する、こういう御意見をいただいているところでございまして、それを見据えながら、それとショートしないように今回の制度調整をやるべし、こういう御意見をいただき、それに即して今回の改正案を出さしていただいた、こういうことでございます。
  84. 川俣健二郎

    ○川俣委員 基礎年金を導入したというのは、我我長いこと出したことで非常に評価しておるわけですが、私は何を言おうかというと、財源がある程度潤沢にないと国の財源を投入しないといけないのだというのが皆さん方の意見とあるいは違っているかもしれない。杉浦さん、これ以上自助努力というのは無理だよ、かわいそうだよ。国鉄の人方だけ保険料を上げておいて、今働いている人を、しかも今までもらった人をカットして、ダウンさせて、それ以上に、しかも五年たてばゆっくりするかといったらそうじゃない。同じように三千億つきまとってくるわけだ。肩身も狭いばかりじゃない。保険料は上がる、支給はダウンする、これ以上自助努力は無理なのだ、こういうことなのです。  そこで、僕は財源論に入ります前に、ちょっとこの辺で聞いておきたい、聞きたくなった。JRの人間が高い高いと言うけれども、一体どの辺が高いのだろうかということで調べてもらったら、二十八年二カ月ぐらい、これが厚生年金とJR年金が出てきた。これは二十八年二カ月で、トップの人をちょっと見てもらいたい。トップの人、いわば偉い人ですな。トップの人方二十八年二カ月ぐらいしかない。トップになると天下りしちゃうから。それから、一般職員の方は厚生年金もJRも三十六年六カ月、これぐらいは十分います、四十年というのはもうぼつぼついなくなったけれども厚生年金もJRも三十六年六カ月は一般の職員の平均。この二つをちょっと聞かしてください。
  85. 水田努

    水田政府委員 私の方から厚生年金のケースの場合をお答えいたします。  二十八年二カ月加入で常に標準報酬の最高限を歩いたとした場合の年金月額は十八万七千円になります。それから次の御質問の三十六年六カ月加入して平均的な標準報酬を歩いた方の年金月額は約二十万円でございます。
  86. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私が言ったのは、二十八年二カ月は厚生年金もJRも偉い人、きのう打ち合わせしたものをちょっとじゃべってごらんなさい。
  87. 寺村信行

    ○寺村政府委員 加入期間二十八年二カ月で国鉄のかなりトップの方でございますと三百四万円でございます。それから、三十六年五カ月加入期間の平均の年金額は二百十六万円でございます。
  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 きのう持ってきた資料はそのとおりなんですよ。二十八年二カ月ぐらいで厚生年金の偉い人、JRの偉い人、平易な言葉で申しわけない。三十六年六カ月は厚生年金もJRも一般の職員、こういう結果なんですよね。厚生年金の二十八年二カ月の偉い人は二百二十三万円、JRは三百四万円。ところが、三十六年六カ月勤めてもJRにいたんでは二百十四万円しかない。厚生年金はむしろ二百四十一万円になる。一般の職員というのは年限でずっと上がっていくわけだから。ところが、国鉄というのは高い、高いと言うから、どこが高いんだろうかと思ったら、偉い人が高い。もう時間がないから、資料をきのうもらったからこれは私の方から言いますけれども、六十二年度末で年金受給者がJRの場合は三十五万九千二百二十三人、二百五十万から三百万の人は五万六千三百人、三百万以上三百五十万までの人が七千三百三十四人、何と三百五十万以上の人が七百四十七人もJRにはいる。とてもこれは厚生年金にはない。だから、中間のところはJRは低いのです。JRの方は平均一般職は低いのです。こういうことを何となく聞いてみたかったのであえて質問したわけでございます。  そこで、先ほど申し上げました、問題は、財源がなければこれ以上自助努力といったって無理だよ、ではどうするかということになるわけですが、大蔵大臣代理でひとつ答弁してもらいたいのですが、あなたの方の大臣方々委員会で、鉄道共済のみに国の負担を行うことは公平性の観点から不適当と断言しておられる。そうかね。そう言っていますか。
  89. 寺村信行

    ○寺村政府委員 国の負担とすることにつきましては、結局国民からの税金で賄うことになりますので、現在どの年金制度財政事情は厳しい状況で自助努力を行っておりますし、また、各制度を通じまして基礎年金の三分の一に集中して国庫負担が行われているという現状におきまして、鉄道共済にのみ特別の国の負担を行うのは公平性の観点から問題がある、こういう認識でございます。
  90. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、事業団から出す八百億というのは、やはり回り回って国の方からの金でないか。三千五百億のうち清算事業団から八百億出すわけでしょう。どうです。
  91. 寺村信行

    ○寺村政府委員 清算事業団が負担しておりますのは、旧国鉄時代の事業主としての立場で承継債務は最終的には清算事業団が引き受けるわけでございます。そういう立場で清算事業団が引き受けているということになります。ただ、この承継債務は、これから土地、株式等の売却処分を行った上で、なお足らざるところにつきましては国において処理をするということが決定をされておりますので、今後の問題としてそれにどのように対応するかということでございます。
  92. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなんだよ、寺村さんはおつむがいいのだけれども、やはりまだ血が通っていないんだよ、もらったばかりだから。運輸省から大蔵省が一緒くたにもらったばかりだから、まだ内容に精通していない面があると思うので、こちらの方から言います。  この間、これは十九日の朝日です。   運輸省と国鉄清算事業団は、二十六兆九千億円にのぼる事業団の長期債務の返済を進めるため、「不動産転換権付きローン」という新しい手法による土地処分を始める方針を決めた。事業団は、来年度は東京都渋谷区の中央病院跡地と恵比寿駅隣接地、大阪市北区の大阪駅南の三カ所を対象とし、実際に土地処分を行う子会社を今年度中に三社設立する計画を固め、運輸省と詰めている。事業団は、来年度の土地処分の売却収入を五千億円と見込んでいたが、新しい手法による土地処分によって六千億円近く上積みし、一兆円を超える売却収入を目指す。 これは御努力されて六千億ふえる。六千億の半分あれば三千億だ。これは時間がありませんけれども、こういうことが出ております。  さらに、これはやはり相変わらず清算事業団が出すか、厚生年金が出すか、国鉄のOBや現役が出すかというだけの話なんです。ところが、さっき、国の税金です、こういうことで抵抗を感ずるという寺村さんのお話ですが、国の税金、国の税金と言いますけれども、ちょっと皆さんにさっきの資料を配ってください、貴重な資料だからいない人にはやらないで、いる人だけに。これは、超党派で、皆さんで財源を出そうじゃないですか、その相談ですよ。  その前に、去る十月二十六日参議院予算委員会でこういう質問があったのです。六十三年度の決算には一兆七千億の余剰金が出てきた。これは寺村さんの方は専門です。しかし、その半分は財政法に決められて国債整理基金に繰り入れられる。これはしようがない。残り八千五百億をどう使うのか、こうした予期しなかった財源は、被用者年金一元化までの五年間のつなぎとして行う、鉄道共済の救済のところに使うのがいいでしょう、臨時応急手当てにこそ使われるべきではないでしょうか、皆さん、そうなっております。その非常に興味を持った質問があったので、橋本大蔵大臣の答弁もまた注目される。  そこで、もう一度聞くのですが、中小企業の労使が汗を流して拠出し厚生年金保険料から毎年一千百四十億円、五年間で五千七百億円をもらおうという法案よりも、とりあえずこういう決算剰余金のような膨大な金で手当てをしておく、その間サラリーマンの年金一元化プログラムをサラリーマン全体が納得できるようなプロセスで繰り上げる、こういう論議がなされておる。そうしたら、大蔵大臣は、その八千億の半分はこういうように使いたい。パート減税にまず使いたい。パート減税はこの余剰金を使わなくたって法案が通ったのだからちゃんとあります。それから、人事院勧告による給与財源に使う。さらに、災害その他予備費に使う。冗談じゃないよ。災害の予備費というのはちゃんと予算にあります。そこで、四番目の社会福祉のための基金、こういうことで答弁を濁したってそれはいかぬ。  そこで、皆さんにお配りした半ぴらのものをちょっと見てください。「近年における租税・社保負担率の推移」というのがあります。Aが租税負担率、Bが社会保障負担率。これをずっと見てごらんなさい。一九八三年から、一九八五年は昭和六十年ですかな、一九八九年までずっと見ますと、社会保障負担率が一〇・七から一〇・九、一一・〇、一一・一、一一・五、こうなっています。ところが、社会保障国庫負担率のところを皆さん見てくれませんか。上から言います。四・七、四・六、四・四、四・三、四・二六、四・一、四・〇、かすかに下がりっ放しなんです、果てしなく落ちてくる。ところが皆さんにお配りした二枚目の大きなものを、私はなけなしの財源でコピーしてきましたが、「社会保障給付費、社会保障負担国庫負担の推計」、ここの「国庫負担」のところを見てくださいよ。六十年度実績、一九八五年ですね。昭和六十年度四・四だった。こっちもそうです、そのとおりです。四・四だった。それが四・一であった。平成元年はこれが四・〇になります。ところが、七十五年の推計を見てごらんなさい。これは五と二分の一%というのは五・五%です。こういう資料が官庁から届いた。五・五%。ところがどんどん下げてきて、五・五%にするという見込みは、これは経済企画庁は呼んできませんけれども、こういうことです。その次の「国民所得」は四百六十兆円です。そこでもう一遍小ささなあれに戻ってもらいたいのです。一九八九年四・〇%になったのですが、この一九八九年の国民所得の見通しは三百兆です。ちょうど三百兆だというのです、大蔵省は。三百兆。これはおれがつくった作文じゃないですから、この表は。三百兆がもしも〇・一%、一九八八年が四・一%国が社会保障負担したのだから、同じように一九八九年も四・一%であったとすれば〇・一%この四・〇に足してもいいはずなんだ。そうすると、三百兆の〇・一%、ちょうど相談したように三千億出るじゃないですか。  あっちを泣かせ、事業団に工面させ、苦労させ、しかも国鉄のOBを不安にし、現職を不安に陥れて、しかも隣のうちまで頼む。そして頼んで、五年救えばじゃどうなるかということがない。そういうことで、一元化とか財源とかというのはないでしょうがな、あなた方。そうじゃない。私の今まで言った数字が間違いがあるか、あるのなら反論してもらいたいけれども、どうです。反論あるようだな。     〔粟山委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 寺村信行

    ○寺村政府委員 財政状況についてのお話がございましたので、若干私ども考え方を申し上げさせていただきます。  確かに、一九八三年と申しますと昭和五十八年でございます。それ以降租税負担率が非常に上昇しておりますが、先生指摘のように国庫負担率が下がっているという現象がございます。実は、この間に国の財政がどのような推移をしたかと申しますと、五十七年以降マイナスシーリングが行われたわけでございまして、その間に各省の予算が大幅なマイナスを続けてきた。そのようなマイナスを続けざるを得なかったのは、第一次石油ショックと第二次石油ショックによります不況に対応しまして、公債を増発して景気の回復を図らざるを得なかったという五十年代前半から半ばにかけての経済状況がございました。その結果として膨大な国債費の負担が増加をしてまいりました。したがいまして、この租税負担率の増加が現状におきましては、当初予算でごらんいただきますと、すべて国債費と、それからマイナスシーリングの中でも社会保障、ODA等、その中でも伸ばさざるを得ない経費に財源が配分されている、こういうような状況を示しているものだと理解をいたしております。
  94. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたのあれはわかりますから、反論でないので、ただ、せっかく出した資料ですから。一九八三年から一九八九年までの間に社会保障国庫負担が〇・一%ずつ下げてきているという資料は認めてくれますか。
  95. 寺村信行

    ○寺村政府委員 私自身は今初めて拝見した数字でございますので、ちょっとすぐにと、差し控えさせていただきたいと思います。
  96. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは非常に大事な話ですから。〇・一%落とした、この〇・一%を出してくれると、国民所得の〇・一%ですよ。三百兆の〇・一%イコール三千億。せっかく寺村さんがもうちょっと待てと言うんだから待ちますが、別に予算委員会みたいにここで審議をやめようかなんということは言わないから。大原さんにもその資料をもらってさらに詰めさせてもらいますから、それまでにぜひ。私はそういう論議をすべきだと思うよ。これが大事だと思いますよ。この中であっちを泣かせこっちを泣かせ、おまえ何ぼか出せ、こんなことはやめようじゃないですか。それが嫌なら、やはりスライドと待っている給付改善を先にやるべきだよ。私らそういう決意でこの社労委員会に臨んでいますよ。  それから、ちょっと時間がありますから問題だけ出しておきますが、沖縄年金が、私らも現地に行って、西銘知事が、要請一つだけあります、それは何だろうと思ったら、厚生年金がどうしても本土の七五%だ、何とかしてくれないか、こういうことでございますので、私は時間がありませんから、これは後ほどに議員が詰めると思いますけれども、このお話を御存じですか。
  97. 水田努

    水田政府委員 この問題につきましては衆議院の社労で請願が二回採択されておりますし、私どもも知事から陳情を受けておりますので、問題の所在はよく承知しているつもりでございます。現在、どう解決したらいいか検討させていただいているところでございます。
  98. 川俣健二郎

    ○川俣委員 前向きに検討してくれていますか。
  99. 水田努

    水田政府委員 二回請願が採択されているという事情を踏まえて、財政当局と前向きに検討させていただいているところでございます。
  100. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、最後にどうですか。今までの私の提案を含めた質問でしたけれども出し法案をどこまでも固執するのが大臣だろうと思うが、直すこととかなんとかじゃなくて、話はわかりましたぐらいはひとつ。
  101. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 この社会労働委員会は、川俣先生初め年金その他非常に専門的な御提言をしていただけるような優秀な先生方がたくさんおられますので、そういった御意見がお互いに十分検討されていくことだろうと思います。私どもは、今提案している立場でありますので、各党間あるいはこの国会における論議を通じて努力をしていきたい、かように思っております。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これで終わります。ありがとうございました。杉浦さん、どうもありがとうございました。
  103. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ────◇─────     午後一時八分開議
  104. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。永井孝信君。
  105. 永井孝信

    永井委員 午前中からいろいろな質疑がございまして、今回のこの年金関係に関する法律は大変重要な問題点を含んでいると思うわけであります。  まず冒頭に、政府厚生年金支給開始年齢を六十五歳に繰り延べる、もう随分議論されてきておりますが、この関係についてちょっとお伺いをしておきたいと思うわけであります。  将来の公的年金一元化展望してという構想のもとに、鉄道共済への財政調整を含めて法律案提出されているわけであります。まず、全体の年金の関係から、高齢者雇用あるいは所得保障について、基本的に一体どのようにお考えになっておられるのか。厚生大臣の答弁をお願いをいたします。
  106. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 基本的な考えといたしましては、支給年齢の問題につきましては、御承知のとおり高齢化社会を迎えて、受給者とそれを支える後世代の者との負担の関係を十分考えていかないというと、後世代に大変大きな負担を強いることになってしまうわけであります。  一方、そういう意味からいえば当然雇用の関係におきましても十分保障されるという前提が必要でありますが、日本の現在の年金受給者の実態を見ますというと、現在は六十歳支給ということになっておりますけれども、幸いにして実際に年金受給者になっている方々の平均的な年齢を見ると大体六十二歳平均になっている。六十歳支給の中で六十二歳平均で受給をしているということは、それだけ雇用というものがある程度保障されているという関係に立っているように思います。でありますから、やはり六十五歳というものを設定する上においては、将来の負担というものを極端に高くならないように水準を合わせた結果である、かように思っております。
  107. 永井孝信

    永井委員 今受給平均年齢が六十二歳で、その限りにおいては雇用保障もかなり進んできているという御認識が示されました。そうですね。この関係については後ほど改めてお伺いをいたしたいと思いますが、この年金改革と称する中に鉄道共済年金への援助の問題があります。不足財源は鉄道共済年金の場合単年度で三千億円、そのうち千五百五十億円は清算事業団、JR各社及び鉄道共済の現役と現在受給している者が負担をする、残りを他の制度から出してくれ、拠出してくれというのが財政調整法の趣旨であると思いますが、そのとおりで間違いございませんか。
  108. 水田努

    水田政府委員 平成七年の被用者年金一元化の中間措置としまして、人口の一層の高齢化あるいは産業構造、就業構造の変化に耐え得る制度にしていくため、現在厚生年金では現役七人で一人の老齢年金受給者を支えているのですが、鉄道共済では被保険者一人で老齢年金受給者一・六人を支えるという不均衡が生じておりますので、緊急にこの不均衡を是正するため今度の制度間の調整実施させていただいているわけでございます。
  109. 永井孝信

    永井委員 他の制度に依存する分千四百五十億円、そのうちの七八%、いわゆる数字で言いますと千百四十億円を厚生年金から出してほしい、こういう案になっているわけですね。厚生年金加入者、概数でありますが二千七百六十八万人いらっしゃいますが、その人たちの心情は穏やかでないということはよく理解できると思うのですね。それは保険制度をとる以上、保険料というのは自分たちの保険集団のために出すのであって、拠出をしているのであって、他の制度のために拠出しているわけではないのですね。これはきょうの議題ではありませんけれども、ちょうど健康保険のいわゆる老人健康保険に対する加入者按分率の問題でも同じことが言えるわけであります。政府は、今回の制度調整一元化の地ならしだというふうに言っているわけですね。一元化というのであれば、午前中も一元化とは一体どういうものかということを同僚の川俣議員からいろいろお話もございましたけれども、各制度のこれまでの歴史的な経緯やあるいは違いを十分踏まえて検討されなければならないと思うのですね。厚生年金共済年金とはそれぞれ制度の生い立ちが根本的に違っているわけですね。制度仕組み給付の設計、国庫負担あり方ども全然違っています。そういった歴史を引きずっての現在の姿なのですね。ここのところをひとつきちっと踏まえてもらいたいと思うのです。  例えば厚生年金では国庫が負担していた部分を、旧公共企業体の共済年金の場合に当てはめてみますと、公経済の立場でその国庫負担に当たる部分を事業主が負担してきているわけですね。事業主が負担してきたということは、企業と、それぞれの公共企業体の企業と共済組合は一体のものでありますから、このような取り扱いがそれぞれの公共企業体への大きな負担になってきたことは、これはもうだれがどう言ってみたって否定することはできないと思うのです。ひいては、そのことが原因で合理化がなされ、人員削減という形で結果的に共済組合員、現役の人たちですね、現役の人そのものの数字が減ってきて、いわゆるOBになる人の数がふえてくる、これが今局長が言われた一人で一・六という大変な成熟度になってしまったわけですね。これが財政悪化を招いた大きな原因である、この面は否定できないと思うのです。一方的な話で恐縮でありますが、こういったもろもろの問題にきちんとけじめをつけないまま、赤字になったからといって安易に他の制度負担を求めるというのは私は基本的に納得ができないわけであります。この点について御答弁を願います。大臣、ひとつよろしくお願いします。
  110. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 御指摘の趣旨はよくわかるのです。しかし、公的年金というものは将来に向かって安定した供給が引き続きなされるということが国の大きな責任であろう、私はかように思います。そういう観点から見て、やはり日本年金制度はいろいろな生い立ちがありまして、それぞれその特徴といいますか、その年金制度仕組みの中においてそれぞれの性格の異なったものをたくさん持っていると思います。  そういう関係で、一つ一つの年金というものが単一に立っていくためには、今言ったような経済の関係が相当変わるなり、あるいは国鉄のように、昔は国鉄中心に物が輸送されていたけれども、道路がどんどん普及する、自動車が普及する、だんだん国鉄というものの利用度が少なくなってくる、そういうような経済社会の中の大きな変化もある。そういうようなもので、それぞれ違った団体がいろいろな意味で受ける風当たり、そういったものをどうやって守っていこうかとすれば、全国民的な規模で大きな年金仕組みを組んでいくということが、将来的にはすべての国民がみんなでいろいろな意味でのカバーをし合っていって、そして安定したものが支給される。そういう考え方に立っていくことによって、やはり国鉄の場合も今日の状態というものは、相当さきからある程度そういう心配はされておったわけでありますから、当然そういう中でその支えをしていこうというので、公的年金一元化というものを国が決定をしてきたわけであります。  それで、その第一階段として、御承知のとおり共済と厚生年金のような民間の被用者年金との間で給付面でのバランスをとる、格差をなくす、それが六十年でございましたけれども、今度の場合にはその負担の格差を是正していこうという、ちょうど平成七年の一元化の中の途中の経過措置としてそういう仕組みにしているわけであります。でないと、あれのためにおれたちがこういうふうな負担をしなければならない、あるいはあれを救済するためになぜおれたちがこれだけ負担しなければならないのか、どうしてもそういった次元の話になってしまいますので、勢い国全体としてこの年金制度を安定する仕組みの中でどう解決していくかという方法を模索していたわけであります。そういう意味で御理解願ったら幸せだと思います。よろしくお願いします。
  111. 永井孝信

    永井委員 この一元化負担の格差をなくするとか給付の格差をなくするとかいろいろな目標は掲げていらっしゃるわけですが、しかし、例えばこの鉄道共済でいいますと、国鉄共済のときに最終年度で四十二万人という職員数でありました。これがJRになったときにはその半分の二十一万人になっているわけですね。これは自主的に二十一万人にしたのではなくて、国有鉄道から民営化するときに国の政策としてその半分の二十一万人の職員に削減をしていったわけですね。そうすると、退職した二十一万人は年金をもらう側に入ります。あとの二十一万人の人が今までの退職者を含めて負担をしていかなければならぬということで大変な成熟度になってきているわけです。これを他の厚生年金などの他の年金加入者から見ますと、国の政策でここまで鉄道共済の財源が厳しくなってきたのではないのか、それを安易に我々にその負担を求めてくるのは納得できない、私はそれに尽きると思うんですね。  あるいは、ついでのことに申し上げますが、日本の場合、年金の労使負担というものが全体的に折半になっております。これを主要国と比べてみますと、労使折半は主要国の中でアメリカと西ドイツだけでありまして、イギリスは労の一に対して使用者の方は一・三、フランスの場合は労の一に対して使用者の方は一・七五、イタリアでは労働者の一に対して使用者が二・二、スウェーデンにおいては全額使用者負担、こうなっているわけですね。ここにも、働く人々にとって年金負担が非常に重いものになってきている。社会保障という観点から見ると、いま少し全体的に年金の財源のあり方については国が考えるべきではないのかということをすべての方たちは念願として持っていらっしゃるわけですね。だから、こういう労使の負担の割合のあり方についても再検討するとか、あるいは国民合意を得られるような成案がきちっとできるまで、例えば一元化についてもまだその構図がはっきりしていないわけでありますから、成案がはっきりつくられるまで、当面の財源不足に関する問題は、いわゆる自助努力の上に厚生年金や国の一般会計から一時借入金で対応して、その間に具体的な措置を講じる、そして一元化あり方を検討していく中で、それらの始末は国の責任において処理を図る、このようなことも考えるべきではないかと思うのですが、どうでございましょう。
  112. 水田努

    水田政府委員 まず、保険料の労使折半の問題でございますが、確かにフランスは三対七、イギリスは四対六の形をとっておりましたが、やはり国際競争に勝つため、現在労使折半の形にほぼ近づきつつあるというふうに承知をいたしております。我が国の場合は、労使折半は定着しておりますし、中小企業の経営者の負担考えますと、これを変更することは必ずしも適当ではないのではないかと考えております。  それから、次に国鉄の不足財源の問題でございますが、これは大きく分けまして、恩給時代に見合う不足財源、これは約五兆円ございます。これはすべて清算事業団に債務として引き継がれ、清算事業団が対処することといたしております。  それで、問題は国鉄共済が三十一年に発足した以降の赤字の処理の問題でございます。この三十一年以降の国鉄共済の赤字の原因は、有識者懇の報告書の中にありますように二つあると思います。一つは、先生が御指摘のように、産業構造の改革によって急激に鉄道産業が衰退したことに伴う人員の削減、いわゆる国鉄共済の責任に属しない面と、それから制度運営の面で保険料引き上げが十分でなく、財政負担の裏づけのないままの給付改善が行われた面、この二つがあろうかと思います。後者の面につきましては、国鉄みずからの自助努力で解決すべき問題であると私ども考えております。前者の、国鉄共済の責任に起因しない、保険集団として急速に縮小していった、その結果現役の人が先輩を背負う大変過大な負担になっている面については、先ほど大臣がお答え申し上げました平成七年による負担の均衡を図るという姿と整合性を保ちながら、今回関係者の合意が得られる範囲内で財政措置をとらさしていただいておる、こういうことでございますので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。
  113. 永井孝信

    永井委員 私が一つの提言を申し上げておる中に、労使の折半のあり方を、こう申し上げました。局長は、労使折半が定着してきている、こう言われました。しかし、労使というからには、労働組合もいろんな要求を持っておりますね。労働組合の要求の中に労使折半で結構だという労働組合どこにもないんですよ。全部三対七の割合にせいという要求を今までずっと出してきているんですね。だから、定着しているんではなくて、労働者側の要求が取り入れられずに労使折半のまま押し切られてきているというのが、労働者の立場からすればそういう理解なんですね。  ところで、今非常に日本の国は景気がようございまして、私の持っておる資料で見ますと、大手の二百三十六社だけでも内部留保額は四十三・五兆円だ、こう言われています。定かな数字を私はきちっと証明することはできませんけれども、そう言われております。そういう大きな内部留保を持っておるような大企業がいま少し労働者の負担を軽くするために労使折半のあり方を少し割合を変える、三対七くらいに変えていく、こういうことにすれば財源というものは十分に出てくると私は思うんですね。こういう関係も含めてもっと真剣に考えるべきではないか、私はこう思います。  これについては時間の関係でこれ以上議論することは避けておきますが、今の状態のままで固定化してしまう、そうして今言われたように、恩給関係についても五兆円を清算事業団に引き継がせているというのでありますが、これは国鉄時代に国の負担をするものを公共企業体だからといって、その事業体に負担をさせてきたことと思想的にも実態的にも全く変わっていないわけですね。このことで果たして国の責任が果たせたことになるんだろうか、ここは非常に問題でありますから、この辺のところはひとつ私どもの提言を含めてさらに検討を深めてもらいたい、こう思うのですが、一言だけお答えいただけますか。
  114. 水田努

    水田政府委員 私どもといたしましては、今回提案いたしております制度調整法とそれから国共法の改正に伴いますところの自助努力によって暫定的に五年間の対応を講じよう、このように考えているわけでございますので、何分御理解をいただきたい、このように考えております。
  115. 永井孝信

    永井委員 幾ら理解してほしいと言われても私は理解することができません。これははっきりさしておきたいと思います。私どもは、あくまでもそういう年金の財源のあり方については国の責任を中心に置いてきちっとけじめをつけてもらいたい、こういうことをここで強く言っておきたいと思います。  時間の関係がありますから次に入りますが、さて雇用年金のリンクの関係であります。政府案では、男子の場合ですが、一九三八年、昭和十三年の四月以降に生まれた労働者、サラリーマンの年金支給開始年齢が繰り延べされることになっているわけですね。昭和二十一年生まれ、つまり一九四六年の四月以降に生まれた労働者については五年間も繰り延べをされる、そして六十五歳になる、こういうことになっているわけであります。政府案は言うまでもなく、これらの労働者やサラリーマンにとって大変深刻な影響を及ぼす問題だと私は思います。  この問題は午前中にも出ておりましたけれども年金審議会において労働者側の代表委員全員が抗議の退席をしている。これは局長も答弁されておりました。この労働者側の委員の、まあ言えば後ろに存在する人たち、いわゆる国民の中の勤労者、労働者ですね、この人たち国民の数からいって圧倒的な多数を占めているわけです。その圧倒的な多数を占めている労働者を代表して出ている労働者側の委員の全員が抗議をして退席をした、こんなことで、そんな中でつくられた審議会の答申というものをもとにして今回の法律案が出されている、これで果たして国民的な合意形成が可能だと考えていらっしゃるのかどうなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  116. 水田努

    水田政府委員 年金審議会の経過については午前中お答え申し上げたとおりでございますが、私ども厚生年金財政を長期的に安定させるためには避けて通れない課題であると認識をいたしておりますが、一面、御指摘のとおり、高齢者雇用の進捗状況にも関連をいたしますので、その具体的な実施に当たっては別の法律で施行を決めることにし、改めて国民の皆様の合意を得る、こういう手続をとらさしていただいているところでございまして、開始年齢引き上げをするということは、くどいようでございますが、社会的にも個人的にも十分な準備を要することでございますので、あらかじめできるだけ早くその計画を明示させていただいた、こういうことでございます。
  117. 永井孝信

    永井委員 大臣、聞いていらっしゃいますか。審議会で労働者側代表委員が退席をしたということは極めて重大なことだと私は思っているのです。この法律案審議してそれを決定する、いわゆる可決する、その可決の前提は、この国会に対して国民の皆さんが多くの期待を持っているわけでありますから、国民の皆さんがなるほどこれならやむを得ないという納得ができるということが前提でなければいかぬと思うのです。  繰り返し申し上げますけれども、圧倒的な多数の労働者を代表した委員が、こんなことはもう認められないと言って退席をした。審議会というものは、たとえ意見の少々の食い違いがあっても、意見が並列されることもありますけれども、一応ノーマルな状態で全員参加のもとに出した答申というものがもとになって法律案の作成ということになっていかなければいかぬと思うのです。片方で圧倒的な多数を持つ労働者の代表が退席してしまった。あとの残った者だけで、表現は悪いのですが、適当に答申をつくった。その答申が金科玉条で、これ以外にないという形で国会に出されることに私は非常な不信感を持つのです。これで果たして、年金の将来一元化を含めて、財政調整も含めてでありますが、年金問題について国民の皆さんが納得してくれると大臣は本当に心から思っていらっしゃるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  118. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 民主主義社会におきましては、各界各層いろいろな立場の人たちがそれぞれの意見を自由に表現することは当然であります。でありますから、審議会の中で圧倒的な多数の労働者を代表する委員が総退場をしたということもその一つの表現であるのかもしれません。しかしながら、それがすべてを決定するわけではありませんので、さらに、そういったものが法案になり、国会という国民を代表するそれぞれの立場、それぞれの政党というものが自由な発想のもとに論議をし、そして最終的に国民期待にこたえられるものを生み出すというのが民主主義の原則であろうと私は思います。  その過程で、今言ったような総退場というものがあったことは、私もその当時は余りよく知っておりませんけれども、今、今朝来のいろいろな答弁の中で聞き及んで知ったわけでありますが、そういうようなことはまことに私どもにとっては、今言われたようにいいことではありません。非常に好ましいことではありませんけれども、その結果も踏まえて今委員が御指摘のような審議もされているわけでありますから、その審議を通じて最終的にさらに結論を出していかなければならない、私はかように思っております。
  119. 永井孝信

    永井委員 いずれにいたしましても、こういう非常に正常でない形で出された答申に基づいての法案でありますから、国民の立場からいうと、この法案に大変無理があるということをここであえて指摘しておきたいと思うわけであります。  続いて、高齢者の生活の関係であります。  高齢者の生活を支えるため、当然収入が伴わなくてはなりません。それが賃金収入であるのか年金収入であるのか、いずれであろうとも収入がないことには生活ができないわけでありますから、それを言葉で言えば所得保障と私は言ってみたいと思うのでありますが、この所得保障について一体どのような考え方を持っていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
  120. 水田努

    水田政府委員 高齢者雇用所得については、雇用所得かあるいは年金所得によって所得の中断が生じないようにしてまいらなければならないものと考えております。そのため、私どもは、六十一年の長寿対策大綱それから昨年の第六次雇用対策基本計画という政府の方針に沿いまして、六十歳定年の完全定着と六十歳前半層の雇用の推進を図る、こういう政府の方針がございますので、それを見据えながら、先ほど申し上げましたように開始年齢平成十年から二十二年にかけて段階的に引き上げるという将来計画を提示をし、その雇用の進捗状況を確かめながらその具体的な実施を別の法律で定める、こういう法律を出させていただいているわけでございまして、私ども雇用年金が接続することが必要であると考えているわけでございます。  なお、開始年齢引き上げに当たりましては、繰り上げ減額年金制度を設けまして、マイペースで働きたいという方について所得の補完ができる道もあわせて講ずることといたしておるところでございます。
  121. 永井孝信

    永井委員 今局長は、雇用年金支給開始がリンクされなくてはならない、だから雇用保障の進展状況を見ながらと、こう言われました。しかし、法律案では、平成年度から順次繰り延べていって最終的に六十五歳にしようと言っておられるわけですね。そうすると、今の局長の答弁からいくと、政府案で言う六十五歳の支給開始にするときには六十五歳までの雇用保障が確立しているという前提での法案ですね。どうですか。
  122. 水田努

    水田政府委員 六十五歳は、既に前回改正で厚生年金は六十五歳になっているわけでございますが、附則で、当分の間、六十歳から支給する、こういう形になっておりまして、当分の間の支給措置を本則に戻す将来計画を示したものでありまして、決して強行規定ではございません。スケジュールを示しているにすぎないので、これを実際に動かしていくためには別の法律で施行を定めるということにいたしているわけでございまして、前提としては、高齢者雇用が推進するということがなければ別の法律で定めるということについての国民の御納得はなかなか得にくいのではないか、私どもはこのように考えておる次第でございます。
  123. 永井孝信

    永井委員 労働省、今のような答弁なんですね。そうすると、雇用問題の所管官庁は労働省でありますから労働省にお伺いいたしますけれども、例えば西欧諸国では高年齢者雇用所得保障という関係については必ずしも法律によって雇用年齢を決めているのではないのでありまして、労働協約や社会慣行としてでありますが、年金をもらう年齢までは雇用が確保されている、社会的にそういう状況が確立をしているわけですね。  例えば、ある学者の著述を引用させてもらって恐縮でありますが、早稲田大学に鈴木という教授がいらっしゃいます。一九八八年の十月十八日号の「旬刊 福利厚生」というのにもこのことの調査結果をお書きになっていらっしゃいますが、「西欧では公的な所得保障(年金)が得られる年齢に達したときにはじめて企業論理である定年制が可能になる。」、このように分析していらっしゃるわけであります。我が国においても雇用年金の接続ということを私どもずっと叫んでまいりました。それを大原則として確立されなければならないはずであります。しかし、労働時間の短縮問題の場合と同じように、このことがなかなか現実的にできていない。やはり法的措置をきちっと講じる必要があると私は思うのです。雇用の側からいえば、原則として公的年金の受給資格が得られるまで年齢を理由として一律に定年退職させてはならない、解雇してはならない、こういうことを法律的に確立すべきではないかと私は思うのです。  一九八〇年のILO百六十二号勧告というのがございますが、この問題については本会議でも同僚の池端議員が質問いたしておりますが、雇用及び職業における年齢を理由とする差別待遇を防止するための措置をとるように指摘をし、具体的には特定の年齢での雇用の終了を強制的なものとする法令その他の規定は見直されるべきであるというふうにこの勧告の中で強調しているわけですね。しかし、日本の実態はこれとはるかにかけ離れているわけでありますが、この関係について、いわゆる雇用保障という問題について労働省はどうお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  124. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 本格的な高齢化社会の到来を迎えまして、高年齢者が安心して生活を送れるようにするためには、高年齢者雇用の場を確保いたしまして、雇用から年金への円滑な移行を図ることが重要であると考えておりまして、政府長寿社会対策大綱でもそういう考え方が盛り込まれていると思います。労働省といたしましては、今後ともこの点に十分留意しながら高年齢者雇用対策を積極的に推進してまいる所存でございます。
  125. 永井孝信

    永井委員 この雇用問題は非常に重要な問題でございますから、少し掘り下げて質問してみたいと思うのでありますが、中高年齢者雇用促進法が廃止をされましたね。そして高齢者雇用安定法が制定をされました。そして、その中で幾つかの助成金の制度を設けているわけです。そして、その助成金の制度を設けて行政指導で高齢者雇用の安定を図るというふうになっているわけでありますが、その助成金制度を中心にして高齢者雇用が安定できるように、雇用保障ができるようになるというふうに本気で考えていらっしゃるかどうか、一言でいいですからお答えください。
  126. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 やはり高年齢者雇用の確保の推進を図るためには、労使、特に事業主の方々にいろいろの形で御努力願うとともに、ただいま御指摘高齢者雇用安定法を活用しながら行政指導を進めていく必要があると思いますが、助成金もその中の、事業主に推奨していくための一つの手段でございまして、基本的にはやはり労使の方方、事業主の方々雇用に対する努力というのが基本にあろうかと思っております。
  127. 永井孝信

    永井委員 この労使の努力ということも今言われましたね。例えば現在法律的には六十歳定年制ということになっているわけですね。これをちょっと振り返ってみますと、私も当委員会で何回も質問してまいりました。六十歳の定年制を法制化せよと要求したら、当時の労働省の担当大臣は、昭和六十年に六十歳にいたします、これを繰り返し私にも答弁してきたのですね。ところが昭和六十年に六十歳の定年制になったかといえば実はならなかった。法律案が出てきたのはたしか昭和六十二年でありました。そのときになってやっと六十歳定年制ということを法制化いたしました。しかし、それとても努力義務でしょう。拘束力は持っていないわけですね。だから、いつまでたっても定年制は低く抑えられたままである。そんな中で、今言われているように、この年金支給開始年齢を将来は六十五歳にする、その対象者にすれば将来に不安を持って当たり前でしょう。だとすると、今までの労働省の進めてきた定年制の延長という問題がなかなか効果を上げなかったとすると、この年金の改革とあわせて、ではどのように年次計画で雇用保障の年齢を高めていくことができるのか、その具体的なプロセスというものを明らかにすべきでありましょう。どうでございますか。
  128. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 六十歳定年制の定着の問題につきましては、昭和六十一年の高年齢者雇用安定法で事業主の努力義務とするとともに、定年の引き上げの要請、勧告その他の行政措置を規定しておりまして、その制度を最大限に活用しながら努力してまいったつもりでございますけれども、現在、六十歳以上定年は六一・九%ということになっております。したがいまして、私どもといたしましては昭和六十一年度以降、例えば百人以上の企業規模に対して強力に行政指導をいたしてきておりますが、こういった状況も見ながら、平成六年完全定着化という目標を掲げまして前向きにさらに行政指導をやってまいりたいと思っております。  また、六十歳代前半層の雇用対策につきましては、こういう高齢化社会が進展しておりますので、その雇用確保のあり方について法的整備を含めて雇用審議会審議お願いしているところでございます。
  129. 永井孝信

    永井委員 私が聞いているのは、昭和六十年、六十歳の定年制をしくようにします、目標を達成しますと到達目標を明らかにされてきたわけです。私がこの社会労働委員会に籍を置いて十年来ずっと言い続けてきたことなんです。ところが、六十年になって六十歳定年制ができなかった、そして六十年を越えた後で法制化された。しかし、それとても努力義務で、拘束力がないからなかなか効果を上げていない。そうして今度は、そのときに、先ほど申し上げたように中高年齢者雇用促進法を廃止をした。高齢者雇用安定法を制定した。そして助成金制度を取り入れた。  ここに労働省出しました各助成金の内容の一覧表がございます。莫大な金も使ってきているのです。その努力は認めましょう。努力は認めるけれども、では現在どうなっているのか。ちょっと数字を挙げてみたいと思うのですが、当初の目標年でありました昭和六十年には、六十歳定年制を何らかの形で取り入れたのは全体の五五・四%にすぎなかった。六十一年になってやっと五六・六、そして六十三年度、昨年度五八・八%、今年度はやっと六一・九%にすぎないのですよ。ざっと四〇%の企業が現在でもなお六十歳以下の定年制をしいているわけですね。この現実を、これから年金支給開始年齢の繰り延べをするという法案出しているときに、雇用を担当する労働省として一体これをどのように考えていくのか。これは私は非常に問題だと思うのですね。しかも現在でも五十五歳未満の定年制の企業がなお二一・二%も存在する。果たして将来の六十五歳支給開始のときに所得保障、いわゆる年金生活に入るまでの雇用関係の維持とそのための賃金収入を保障できるようになるのかどうなのか、これは非常に私は問題だと思うのです。  しかも今言ったように、例えばかつては定年延長奨励金というものがございました。この定年延長奨励金でいいますと、毎年度百億以上の資金を助成として労働省は使ってきているわけですよ。大変な努力だったと思うのです。これだけの努力をして現在なおこういう状態です。これで果たして年金生活に入る人たちの保障が雇用の上でできるのかどうなのか。どこまでの決意を持って労働省がこの問題にリンクをさせるようにするのかどうなのか、これをお答えいただきたいのです。
  130. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 六十歳定年の定着の問題でございますけれども、定年を引き上げることにつきましては、それぞれの労使間においていろいろその背景となる制度がございます。そういったことでいろいろと克服しなければならない課題も多いわけでございまして、そういったことから数字的に伸びていないところもございますが、高齢化社会がますます進展し、今後高齢者の活力を活用しながら社会経済の発展を遂げていかなければならない状況でございますので、さらに六十歳定年の定着に向けて行政指導と申しますか、法律に基づく行政措置を強化しながら積極的に六十歳定年の定着に努めてまいりたいと思っております。
  131. 永井孝信

    永井委員 私が具体的に申し上げておりますのは、六十歳定年制を法制化したけれども努力義務にすぎない、だからいまだに、先ほど私が指摘しましたように、ことし現在でも六一・九%しか六十歳定年制をとっていない。しかも六十歳定年制をとってはいるけれども、企業の実情によってそれ以前に肩たたきで退職を求めていくという企業がこの六一・九%の中にかなりの企業数を含んでいるのです。しかも五十五歳以下で定年制を現在もなお固執し続けている企業が、政府の統計を見ましても二一・二%も存在しているではないか。そして、くどいようですが、先の、将来の話であっても、六十五歳からの年金支給開始にしていこう。今は、当面の間六十歳支給となっているものを本則に戻そうというわけでしょう。では、本則に戻すときに、果たして今のような状況の中で六十五歳まで生活ができるような収入の道を保障する、いわゆる仕事につくことができるということが片方でないと、高齢者の生活は成り立っていかないわけでしょう。言いかえれば、六十五歳の支給開始をすることが先なのか、六十五歳まできちっと就職を保障して、保障ができたから六十五歳からの年金生活に入るようにしようということが先なのか、このいずれかが今問われているわけでしょう。このことを私は聞いているのですよ。だから、労働省が前向きに努力をすると言ってみても、現在なおそういう雇用状況の中で、年金支給開始を六十五歳にするという年度までに六十五歳の定年制がきちっと保障できるような展望を持っているのかどうなのか。それが労働省の仕事でしょう。これを聞いているのですよ。
  132. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 雇用年金の関係は、密接に連携をとりながら施策が図られるべきであると考えております。私どもといたしましては、高齢化社会の中で高齢者の活力を生かすために、六十五歳までの雇用の確保のあり方について法的整備を含めまして現在雇用審議会審議お願いいたしておりますので、私どもといたしましては、その審議の結果を待ちまして適切に対処してまいりたいと考えております。
  133. 永井孝信

    永井委員 何でも審議会に逃げ込むということは私はいいことではないと思うのですね。審議会に対して労働省がどれだけの積極的な姿勢を示すかということにも大きな問題点があろうかと私は思うのですね。加えて、この今の高齢者雇用安定法ができるまでは、いわゆる六%の高齢者雇用率というのがございましたね。これが現在廃止になっているわけですね。廃止になりましたから、定年延長の奨励金も現在ではなくなりました。  そこで、私は一つの提案をしてみたいと思うのでありますが、心身障害者の皆さんの場合には雇用率が設定されておりますね。そうして、その雇用率を達成しない企業についてはいわゆる納付金制度で、その雇用すべき人の頭数に対して一定額を納付するという制度がありますね。今、高齢者雇用安定法ができましたけれども雇用率がなくなったという現状の中で、なお企業が定年制を延長させることに消極的な姿勢が出てきている側面も私は見逃せないと思うのです。したがって、その心身障害者の場合と同じように、改めて高齢者を雇い入れる企業に対して一定の賃金助成措置を講じる。そのために、高齢者を雇い入れていない、定年を延長しない、現在でいうと六十歳の定年制、この六十歳の定年制の法律を守っていない企業については一定の拠出を求める、納付金制度を求める、こういうことにして、高齢者対策を推進するお考えがあるかどうか、私は一つの問題として提言をしたいと思うのですが、どうでございましょう。
  134. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 高齢者雇用制度につきましては、先生指摘になりました昭和六十一年の法改正で、それまで努力義務として規定してあったものを廃止したわけでございますが、これは、雇用制度につきましては、企業の業種、業態あるいは年齢構成が多様であるにもかかわらず、一律に一定割合の高年齢者雇用を求めるということ、それ自体にはやはり無理が多いという問題があろうかと考えております。  ただ、御指摘のとおり六十歳代前半層を多数雇用することに対して奨励的な施策というものがやはり必要であろうかと思いまして、私どもは六十歳代前半層の雇用割合が一定以上の企業に対しまして多数雇用報奨金制度を設けておりますが、来年度におきまして予算要求で、この制度の拡充について大蔵省予算要求をしているところでございます。
  135. 永井孝信

    永井委員 どうも答弁がすっきりしないのですね。私は自分で、やはりこれはやるべきじゃないかという立場で提言をしているのですが、例えば中高年齢者雇用促進特別措置法が廃止をされて、昭和六十一年ですか、いわゆる高齢者に対する総合対策法案が可決をされましたとき、このときに附帯決議がついています。その附帯決議は、六十歳未満定年を定める事業主に対し、定年引き上げのための効果的な行政指導を行うということをつけましたね。そして、社会党、公明党、民社党、共産党、この共同提案に係る議員立法の法律案を撤回をして賛成したという経緯が存在しているわけであります。  我々の出しました法案は、撤回するに当たってそういう附帯決議をつけて、労働省はその附帯決議の趣旨を踏まえて努力するという約束をされました。努力はしてきていないとは言いませんけれども現実努力の成果としてあらわれていないではないか、だから、より雇用主に対して定年延長を図っていくような、そういう雇用保障、所得保障ができるようなことを進めるために、私は今一つの提起をしてみたわけであります。それが、将来の問題として労働省がどこまでの決意を持って、では考えてみようというのかどうなのかの問題なんですね。これを私は再度答弁をしてもらいたい。  もう一つは大臣、終身雇用日本雇用慣行だ、こう言われてまいりました。この終身雇用ということはどのように御理解されているのか、お答えいただきたいと思います。
  136. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今の論議を私は聞いておりまして、いわゆる定年制と支給開始年齢というものが全くリンクするという考え方は一つの理想論ではあります。その考え方は間違っているというわけじゃありませんよ。それで、大事なことは、例えばそういうようなリンクをしてしまうということになると、現在は六十年です。六十歳で支給開始年齢になる。しかしながら、今受給者支給開始の平均年齢が六十二歳なんです。そうすると、それがもし完全リンクということで考えてまいりますと、逆に、おまえはもう六十一歳だから年金もらいなさい。しかし、若い六十歳あるいは五十歳の後半時代人たちの気持ちを聞くというと、定年退職しちゃうよりも働きたいという意欲も大分持っている。そうなってくると、僕は言い方が悪いか何か、なかなか難しい問題だけれども、リンクと言うけれども、どういうような形が理想なのか。やはり雇用というものが継続されていなければ六十二歳でもって年金受給者の平均ということはない。六十二歳が平均ということは、六十三歳もあれば六十五歳もある。いろいろな形を全部平均して六十二歳になっている。しかし、定年制は六十歳だ。しかし、実際その定年制というものは完全に六十歳になっているのかといったらそうではない。まだまだ低い面もある。  そういう関係からするというと、年金支給開始年齢雇用というものは非常に大事な要素ではありますけれども、実際の面から見るというと、まあ、鐘が鳴るのか撞木が鳴るのか、鐘と撞木の合が鳴るという言葉があるけれども、こういうような環境の中で、だんだんと社会の構造の変化とともに発展していくのじゃないか。そして、求められていく社会が、終身雇用といっても、できるだけ働ける時代はもう働きが保障されるという時代にまで、あるいは求めによって、国民の要望によってはそういう歩み方をしていくのが理想なので、一遍に一つの制度をやったからこうなんだというような、余りかたくなな考え方をすると、どうしても今のようなことになってくるのじゃないかなというようなことを、私は聞いていて感じました。私は、もちろん法律家でもなければあるいは専門家でもないのだから、一つの考え方として、意見として……。
  137. 永井孝信

    永井委員 今の大臣の発言というのは、確かに一つの見識であろうけれども、私は非常に問題点を含んでいると思いますね。働きたいという意欲を持っているのです。働きたいという意欲を持っているけれども働かせてもらえないのが現状なんです。だから、六十五歳に年金支給開始が始まるということになっていったときに、六十五歳まで働いてもらうことができるという保障が片方にあれば安心して年金生活に入れるということが一つ。六十五歳になってもかくしゃくとして働きたい人は六十五歳を超えて働けばいいわけであって、そのときにはその働きたい人の働く場所というのもこれまた確保されなくてはいけないし、保障しなくてはいけない。  しかし、現実の問題は、大臣の言われたことこそが理想であって、六十歳で年金は今もらうことができるわけですね。当面の間ということで、本則には六十五歳になっておっても。六十歳からもらえるのですけれども、では六十歳まで働ける状況になっているかというと、今言ったように六一%強しか六十歳まで働く保障はされていない。五十五歳でやめさせるということもある。問題の鉄道共済でも今のJRでも五十五歳で定年ですよ。そういう現実を見たときに、私が労働省に言っているのは、働きたい人はいつまででも働ける、そういう職場を確保する、その働くという権利を保障する、片方でそれがきちっとないと、年金支給開始だけ年齢をどんどん繰り延べるということが先行したのでは高齢者の生活は一体だれが保障するのですか、ここを私は問題にしておるのですよ。  だから、大臣、ちょっと勘違いされておる。平均六十二歳と言うけれども、それは現実に六十五歳からの支給開始になって、当面の間ということで六十歳から支給してもらえるようになっている。しかし、全体を見ると、では六十二歳まで全部が仕事ができているのかというと、そんなことはないのです。高齢者が退職したらまず再就職は難しい。高齢者になっても間違いなく高い給料でポストが約束されているのは官僚ですよ、官僚の天下りですよ。一般の国民はそんな恩恵はないのですよ。みんなどうやって働こうか、どうやって暮らしていこうかということで四苦八苦している。せめて年金がすぐにでももらえればなというのが皆さんの実態でしょう。鉄道共済でいうと、五十五歳でやめて、今暫定的に経過措置でもらっている年齢でも五十八歳ですよ。その三年間どうするのかという問題が出てくる。一般の企業でも、私が最前指摘をいたしましたね、五十五歳以下で定年制をしいている企業というのは二一・二%もある。その人が全部再就職できていますか。労働省、できているということをここで胸を張って言えますか。そういう問題ですよ。改めて答えてください。
  138. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 それはそのとおり、リンクしていないのは現実はそのとおりです。しかしながら、やはりその逆のことも、そういった現象はどうしても結果としてはあらわれてくるだろうと私は思います。
  139. 永井孝信

    永井委員 時間がありませんので、労働省ちょっと答えようとしないのでなんですけれども、私はもう時間が来ておりますので……。答えますか。
  140. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 先ほどの先生の御質問にお答えさせていただきます。  高齢化社会の中で人生八十年時代社会参加あり方から見ましても、また若年労働力不足基調になる中で、高齢者の能力、知識を活用しながら経済社会の活力を図っていく必要があると思っております。しかしながら同時に、率直に申しまして企業の側に若年志向も強いという現実もございますので、そういった年齢間のミスマッチを解消しながら六十五歳までの雇用を確保するという方策を十分準備しながら一つの枠組みとしてつくっていくことが重要であろうと考えておりまして、私どもは先般雇用審議会に六十五歳までの雇用あり方について法的整備を含めて御検討をお願いしたところでございます。  また、六十歳定年の定着化につきましては、昭和六十一年法制定以来、昭和六十一年度に、これは百人以上の規模を中心にやっておりますけれども、五二・〇%でございましたものが、平成元年、本年度には六四・三%ということで一二・三%の伸びを示しておりますので、私どもはさらにこの法に基づく措置を徹底しながら、定年制の定着のためにさらにさらに努力してまいる所存でございます。
  141. 永井孝信

    永井委員 もう一言だけ言っておきますが、高齢者の失業者に対する失業給付の問題であるとか失業手当の問題、所得保障、いずれにしたって高齢者所得がないと暮らしていけないわけであります。だから、執拗なまでに私はこの雇用保障、所得保障のことを追及しているわけでありますが、それについてはなかなか具体的に話が出てこない。労働省の今の答弁を聞きますと、六十五歳の定年制に向けて積極的な姿勢で取り組むということでありますから、その成果をぜひひとつ上げていただくように期待をしていきたいと思うのですが、そういうことが具体的にまだ決め手がない、そういう条件の中でこの年金支給開始年齢だけ、たとえ将来の問題であったとしても引き上げていこうということについては断じて私は納得できません。したがって、この法案を撤回することを求めて私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。     〔委員長退席、粟山委員長代理着席〕
  142. 粟山明

    ○粟山委員長代理 新井彬之君。
  143. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 私は、ただいま議題になっております法案につきまして質問をさせていただきたいと思います。  今、高齢化社会を迎えまして、厚生省、いろいろな問題において努力をされている、そういうことで、今回の法案がいいとか悪いとかということは別にいたしまして、一番大事な省になりつつあると私も思っておるわけでございますので、今後ともしっかり頑張っていっていただきたい、このように思うわけでございます。  今、国際化、情報化、そしてまた高齢化というのがずっと進んでいる、こう言われている中で、高齢化社会の総合対策、こういうものを全体的にどういうぐあいにせなければいけないのかということを皆明確にしていかなければいけないときに参っているのではないか、こういうぐあいに思っているわけでございますが、高齢化社会の基本的な考え方高齢者に対する基本的な考え方、こういうことを昨日基本的に厚生大臣にお伺いをしたい、こういう質問通告をいたしましたら、質問をとりにこられた方が、それは余りにも幅が広過ぎてどういう観点で答えるというのは物すごい答え方がありますということで、それなら私が先に私の考えを申し上げます、それについて厚生大臣としてどのようにお考えになっているかということをお伺いしましょう、こういうことで申し上げました。  私は、高齢化社会というのは本当に大変いいことである。昔、子供は宝である、こういうことがございました。今は私はお年寄りの方、高齢者というのは宝である、このように思っているわけでございます。昔、小さいときでございましたけれども、経済が非常に苦しくておば捨て山というような話を聞いたときに、自分の両親、おじいちゃん、おばあちゃん、本当にそんなことがあっていいのだろうか、これはもうとにかくこんなことがあってはいけない。やはり今の日本国民方々はお年寄りの方を大変大切にしておられますし、そしてまた大事にもされている。  そういう中で、お年寄りの方がどんどんふえてこられるわけでございますけれども、アメリカのある実業家が言っている言葉の中に、二〇一〇年までに人口の三分の一にもなる五十歳から七十五歳までの世代は教育水準が高く健康であると思われる、この世代の有用性に注目せず負担と見るのは彼らの才能と活力を浪費することであり、社会的、財政的に巨大なコストを招く。我々は、これらの市民の生産性に関心を持つよりほかに選択の余地はない。今後、社会の福祉に貢献する彼らの能力は無視できないほど大きい。これは、後で私も具体的にいろいろなことを申しますけれども、そういうことでとにかく今は情報化でございますから、世界各国で年金制度がどうなっているとか、医療がどうなっているとか、本でもテレビでもどんどん出ているわけでございます。それはもうまさに国際化、日本だけで今まで考えておったことが、これからはもう世界じゅうのいろいろの国のいいところ、そういうものをどんどん取り入れていける時代にある。  そういうわけでございまして、よしんばこの高齢化社会において、とにかくお年寄りの方が、いい老人ホームをつくって、そしてある程度のお年になったらそこへ入っていただきましょうとか、そういうような考え方というものがあるならば、これはやはりこれからの時代に向かって大きく意識の変革をしなければならない。ただ、意識変革というのは一番難しい問題でございます。  前、ガリレオが地動説を唱えたときは殺されそうな目にも遭っている。しかし、今はもうそれは当たり前。これが十年先、二十年先になれば本当の当たり前のことが、どこかの時点でやはり意識変革があってずっと行われていく、こういうようにも思うわけでございまして、厚生大臣も本当に多くの方とよく対応されている、そういう実態も知っております。そういう中で、この高齢者の方方の基本的なお考え高齢化社会に対する基本的なお考え、これについてお伺いをしておきたいと思います。
  144. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今、新井先生いろいろな例を挙げて、お年寄りは宝であるというお話、まさに私どももそのとおりに考えております。昔言われたうば捨て山なんという話を例に出されましたけれども、決してそういう封建時代のようなことになってはいけないということは当然であります。  人生八十年時代になり、そして海部総理がよく言われるように、百歳という時代が本当に手の届くところへ来ている。このことは一体どういうことなんだといえば、今まで人間というものがあくせくあくせく働いて、働いて、働いて、その終着駅からしばらくしたらばこの世から亡くなっていたという人生五十年時代から見ると、仮に今定年制が六十歳だという話を今までずっとたくさんしておりましたけれども、仮に六十歳にしても、それから二十年間というのは、一生懸命に働いてきた時代から解放されて、自分自身の自由な時間を持つ時代になったんだ。その自由時間というものをどのように自分自身で将来的な設計を立てていくのかというのは、一人一人がなすべきことであろう、それぞれの人たちがみんな違った考え方を持っていかなければならない。  しかし、その社会を保障していくために、国としてはやはり一つは年金の問題、一つは医療の問題、そして幾ら人生八十年になっても寝たきりになってしまったり、あるいは動きがとれないというような状態であれば、やはり二十数年間という自由時間が決して夢ではなく惨めなものになってしまう。そういうようなことを一つ一つどう保障していったらいいのかということが大きな課題になってくるだろう。人生八十年代の自由時間である二十年間を元気老人で過ごしたい、こういうような希望を満たしていくことが大事である、かように思います。  でありますから、今先生指摘のように、それには意識改革が必要なんだというお話もありましたが、まさにそのとおりで、その意識改革をする第一は、やはり例えば年金保障の、今年金審議をしておりますので例をとれば、世代間扶養という仕組み、社会の約束、こういったものをどう現実に進めていくかということになると、やはりいいとこ取りだけしていたのではその社会というのは保障はできないから、ある程度負担もしていかなければならない、こういうようなことの社会的な合意、一人一人のそれに対する理解、これが意識変革だろう、かように思います。よろしくお願いいたします。
  145. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今いろいろとお話をいただきまして、経済生活においては年金雇用、それからまたその他の財産の運用、あるいはほかの所得とか、いろいろあろうかと思います。また、医療については、これはやはり健康第一、したがって、健康対策ということもしっかりやっていただかなければいけない、あとは生きがいというようなことがございます。  これも後でまた申し上げますけれども、この前、一つの医療の問題でございますけれども、アンデルセンさんというデンマークの元福祉大臣日本へ参りまして、シンポジウムが行われたわけでございます。デンマークというのは、もう寝たきり老人なんてほとんどいない、がんの末期患者、そういう方々しか寝ていないんだというぐらい、医療の面でホームヘルパーさんなんかも非常にたくさんいて充実しているというお国でございますけれども、その方が申しているのは、   たとえば、助けを呼ぶと十分以内に訪問看護婦とホームヘルパーが駆けつけてくる在宅ケア二十四時間態勢の試みが十年ほど前から始まっていますが、高齢者のための安心感と同時に経済性もあることが分かりました。   人口四万余りのある自治体では二十四時間ケアが始まったら病院のベッド十床分とプライエム五十人分が要らなくなり、二億五千万円浮きました。二十四時間ケアにしたための経費一億五千万円を引いた一億円が節約できたことになります。高齢者が安心して自宅で生活できるようになった、それが最も重要なことですが、経済性もあったということです。 というようなことで、新しいやり方によっては、もう世界じゅうでいろいろとやられている。そういうようなことも今後よく取り入れてまいらなければならないときに来ている、このように私は思っているわけでございます。  そこで、年金問題についてでございますが、まず公的年金に対する国民の不信感と申しますか、そういうことについてちょっとお伺いをしておきたいと思いますが、実際に支給される老齢年金の平均は、厚生省の示すモデル年金よりもかなり低く、公的年金だけでゆとりある老後生活ができるのかという不信感がある。一九八八年、昭和六十三年三月末における実際の老齢年金支給額は、厚生年金が月十三万一千五百七十七円で、旧国民年金が二万九千二百九十八円、基礎年金月二万八千三百九十九円となっており、一九八八年モデル年金である十八万五千百二十五円と比べても、厚生年金は五万四千円近い開きがある。  また、一九八八年の基礎年金のモデルは五万二千二百六十七円で、国民年金の実際の支給平均額とは約二万三千円の差が出ている。こういうことで、モデル年金というのは当然四十年掛けたらこうだということをしなければいけませんけれども、実際になかなか四十年本当に勤められる方はいらっしゃらない、いろいろの事情があるわけでございますけれども。そういうことでこのように大変開きがある、こういうこともよく重視しなければいけませんけれども、実際生活との関連でどのようにお考えになっているのか、お伺いしておきます。
  146. 水田努

    水田政府委員 厚生年金については、御指摘のとおり平均額は十三万二千円になっております。これは中高年齢特例ということで、四十歳以降の方は十五年の加入期間で支給するという特例措置をとっている、この該当者がこの受給者の中に多いということと、残念ながら女子労働者の方の賃金が低いために、女子の受給者の方がもらえる年金額が低い。これが結果的に平均額を下げている、こういうことになっております。  それから国民年金につきましては、現在受給者の大半が五年年金や十年年金という経過年金受給者であることと、それから本来の国民年金につきましては開始年齢六十五歳でございますが、実際的には七割近い人が繰り上げ減額を請求しているため、結果的に金額が二万九千円ということになっている、こういうことが実情になっておりますが、今後加入期間が延長してまいりますので、私どもが示しておりますモデル年金国民の多くの方が到達し得るものと考えております。
  147. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 先ほども厚生大臣からもちょっとお話あったようでございますが、これからの時代というのはどこかの会社へ勤めてずっと四十年間働くというよりも、フリーアルバイターなど若者の仕事に対する価値観というものが非常に変わってきている。時間に拘束されることなく自由に働きたいという若い人がふえているわけでございます。また、自営業などでも年金加入されていない人がわりかた多くなっているのではないかと思われます。  このような社会状況の中で、四十年加入ということが厳しい社会になりつつあるのではないかと思われますし、年金には公的年金企業年金、個人年金の三本柱があるわけですが、このような社会的な変化の中で公的年金というものをもう一遍きちっと位置づけておかなければいけない。先ほどの公的年金で、あの金額で最低限度の生活はできる方もいらっしゃるかもわからない。しかし、家賃とかいろいろな関係でできない方もいらっしゃるかもわからない。そういうことで、この年金というものは、ここまではこうなんですというようなことをある程度言っておかなければいけないのじゃないか、こういうぐあいに思いますが、いかがですか。
  148. 水田努

    水田政府委員 確かに最近の雇用の形態は、一つの企業に終身雇用するというよりも、条件がよければ移転するというアメリカ型の雇用形態になりつつあることは事実であろうかと思いますが、生涯フリーアルバイターで過ごすという方もなかなかないと思います。いつも大臣に御答弁していただいているのですが、公的年金というのは一定の給付水準国民に約束し、その実質価値を維持しながら、さらに生活水準賃金の上昇に見合って再計算期ごと年金額改定をする、こういう社会的な仕組みに積極的に国民の皆さんに協力し、参加してもらわなければならないと思っておりますので、このことについては御指摘のとおり、私どもは一生懸命国民PRをし、理解をし、この制度に協力してもらうように今後ともさらに進めてまいらなければならぬものと考えております。
  149. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今回の改正案のモデル年金は、夫婦で月十九万七千四百円という水準で現役の男性サラリーマンの平均月収の六九%である。現役サラリーマンは子供二人を養育し、住宅ローンなどがあるわけですから、そういうものがかからないということで、六九%というのは妥当な額ということも考えられますけれども、総務庁の一九八八年度家計調査報告を見ますと、全世帯平均世帯人員が三・六三人、世帯主の平均年齢四十八・三歳、これの一カ月平均消費支出は二十九万三千百五十八円、こうなっております。このうち、勤労世帯を除く一般世帯では平均世帯人員が三・四二人、世帯主の平均年齢五六・五歳、これが二十六万二千九百八円、こういうことで出ております。このように、実際の一般家計とモデル年金とは六万円強の差というものが出ている。  民間の研究機関である現代総合研究集団がまとめた普通の市民が安心できる老後生活のためにというアンケート調査では、一カ月の生活費は二十五万から二十七万円を想定している。また老後の生活について、孫に小遣いを上げられる程度のゆとりと答えた人が、男子で四七・九%、女子で四八・六%、次に、消費を切り詰めてつつましく暮らすことになるだろうが、男子で四四・二%、女子で三八・五%、こういうことで九割の人がつつましい老後を想定しているわけでございます。  公明党が行った高齢化社会に関する意識調査でも、高齢化社会での暮らし向きの問いに対しまして、現在より暮らしにくくなると答えた人は六四%、六割を超える人が高齢化社会に不安感を持っておる。老後の生活資金は何か、これは複数回答ですけれども公的年金がトップで八一・六%。ところが、公的年金老後の生活をどの程度賄えるかとなると、半分程度が五一・三%、ほとんど賄えない二七%という現状のアンケート調査が出ているわけでございます。実際の支給額の平均が十三万円弱となっておるわけでございますが、公的年金では老後は心配だという方が非常に多いわけでございますけれども、これは当然企業年金だとか個人年金だとかいうこともやらなければいけないということになるのか、それとも公的年金ではここまでやりますよというようなことがあれば、もう一度ちょっと答弁をいただいておきたいと思います。
  150. 水田努

    水田政府委員 公的年金老後生活のベーシックな面を保障するというふうに位置づけているわけでございまして、老後の生活のありようは個人によってそれぞれニーズが違うと思いますが、より豊かな老後生活を送りたいという方は自助努力として公的年金をベースとしながら企業年金なり個人年金によってそれを補完していただくという形をとることが望ましいのではないか、私どもはこのように考えております。
  151. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 もう一つお聞きしておきたいのですけれども、五年ごと年金というものの掛金とかその支給とかいろいろ変わってくる再計算があるわけでございますけれども、この中で、今回は自動物価スライド、こういうことでずっとなってまいるわけでございますが、この六九%支給と、いうのは基本的に最後まで変えないということが言えるのかどうか、それをちょっと一遍確認をとっておきたいと思います。
  152. 水田努

    水田政府委員 私どもは、厚生年金の約六九%の給付水準を将来とも維持していくということになりますと、最終保険料平成三十二年度では三一・五%になる、これは後代の負担に到底耐え得ないので高齢者雇用の進展に見合ってこれを二六・一%まで引き下げることによってその当時における負担者とのバランスを図ってこの制度を維持していく、こういう組み立てをいたしておりますが、この開始年齢引き上げが計画どおりに進めることができないということであれば、国民の選択の問題であろうかと私どもは思いますが、やはりその時点においては給付水準あり方を見直すという問題も生じてまいろうかと思います。  なお、私どもは、現在基本的には六九%という給付水準を守るという方針であることは間違いございません。
  153. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 厚生省人口問題研究所による将来人口推計によりますと、日本の総人口は二〇一三年、平成二十五年に一億三千六百万人程度で頂点に達し、それからごく少しずつ減り始めるということが言われているわけです。一方、これを支える二十歳から六十四歳までの生産年齢人口の割合というのは次第に低下していくものと見込まれるわけでございますが、これの内容についてちょっと御説明をしていただきたいと思います。
  154. 水田努

    水田政府委員 午前中、ほぼ同じ御質問持永先生からも受けたわけでございますが、財政計算のときの将来の財政収支の見通しの大きな要素をなすものは人口学的な要素になるわけでございます。私どもは再計算をするに当たりましては厚生省人口問題研究所の将来推計を使って再計算を行っているわけでございますが、前回の再計算のときには五十六年の推計を用い、今回の再計算のときには六十一年の推計を用いたわけでございますが、この前回と今回の将来人口推計で非常に違った点は、平均寿命が男女とも三年延びているということでございます。このことは年金財政の上でどういうことになったかと申しますと、平成三十二年における厚生年金の老齢年金受給者が前回再計算のときに比べますと二百五十三万人ふえる、こういう結果に相なっているわけでございます。これは最終保険料率にどのように響くかと申し上げますと、前回の財政計算のときには二八・九%というふうに公表していたものが二・六%上がりまして三一・五%になる、こういうことでございます。私どもは、三一・五%というのは到底後代の人が負担できないという判断からこれを二六・一%に下げるということにいたしたわけでございますが、上記の理由から前回の再計算で六十五歳支給開始で二三・九%としていたものが二・二%上がる、こういうことに相なったわけでございます。     〔粟山委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 そこで、日本の国の場合は出生率というのが非常に減っている。諸外国についてもいろいろあるわけでございますが、日本の場合の出生率が減っているという問題は、これは大きな問題だろうと思うのですね。これはもう年金問題もさることながら、とにかくこれからの日本国民がずっと減ってしまうわけでございますから、この出生率の低下についてどのようになっているのか、そしてまた、これに対してはどのように出生率をもっと上げていくような方策というのを考えられているのか、お聞きしておきたいと思います。
  156. 加藤栄一

    加藤政府委員 我が国の出生率の状況でございますけれども、合計特殊出生率、女の方が一生の間に何人の出生をされるか、こういう率でございますが、これが我が国では戦後ベビーブーム以降低下しておりまして、その低下状況が定着しております。六十三年度におきましては一・六六という水準でございます。またこの原因といたしましては、主として晩婚化の傾向が最近著しいということなどによるものと考えられておりまして、厚生省といたしましては、赤ちゃんを産んで育てやすい環境をつくっていく、そのための必要な施策を推進していくということが必要であるというふうに考えております。
  157. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今の、必要な施策、そういう環境をつくる、そういう必要な施策というのはどのようなことを考えられているのか、ちょっと具体的に……。
  158. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 出生数あるいは出生率の低下ということは子供が非常に少なくなるということでございますが、結局のところは子供が家庭とかあるいは地域社会の中で兄弟あるいはお友達と触れ合う機会が少なくなる、あるいはもまれる、いい意味におきまして、もまれるという機会が少なくなるというようなことで、この出生率の低下というのは、子供自身にとっても、その成長にとって大きな問題ではないか、と同時に、先ほど来のお話のような高齢者扶養の負担の問題、そういった問題が出てくると思います。こういったことから私どもとしては、家庭に対する支援策あるいは児童の健全育成というようなことで、大臣から午前中にお話がございましたが、子供を安心して産み育てていくような環境づくりというようなものを総合的にやっていく必要があるのじゃないか。例えば母子保健とか健全育成対策とかあるいは保育の問題とか、いろいろございます。と同時に、この問題につきましては、やはり国民的な議論というものが行われ、その国民のコンセンサスの形成というようなものが必要ではないか、かように考えておりますし、そのことを期待いたしておる次第でございます。
  159. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 そこで、先ほどからいろいろ答弁をいただいておったわけでございますが、年金というものをもっと明確に、ここまでの生活はできますよということにしなければいけない。あるいは六十五歳支給については、先ほどからもいろいろ議論がされておりました。重なるかもわかりませんが、私もこの六十五歳の問題についてちょっと聞いておきたいと思うわけでございますが、今の意識からいきますと非常に不安をお持ちになっておられる、これは間違いないのです。  今回のこの年金改正につきまして、それはもう二千五百万人の方々、この方々がいろいろな御意見をお持ちでございます。もっと極端に言えばある程度お年が、高校生になるのですか大学生になるのですか、よくわかられた方は、年金問題というのは生まれた赤ちゃんから全部関係するわけでございますから、これは国民的な課題である、だから、意見だってもういろいろある。そういう中で、いかに公平で、そして今の日本の経済大国の中で、どういう方々がどういう形で本当にだれ一人漏れなく生活ができるようにするのか、これはいろいろ意見があるところでございます。  そういうわけですから、この現状からいいまして、そうなるのかならないのか、非常に不安感をお持ちであろう、こういうぐあいに思います。それはまさしく六十歳代前半の雇用所得の保障が確かなものになるのかということですね。これが解決できなければ六十五歳ということについての不安感をお持ちである。現在定年が六十歳以上という企業は六一・九%と六割そこそこ、定年が五十五歳以下という企業がまだ二一・二%もあるという現状では、国民納得が得られないというのは当然のことであります。日経連の見解においても、六十五歳支給に一応賛成ながらも、六十五歳定年制の導入で雇用問題を解決するのは適切ではない。六十代前半は肉体的、精神的に個人差が大きいこと、また企業は今後一層新興工業経済地域諸国などとの激しい競争をしなければならないとの見方を出しておるわけです。  また、労働省が一九八八年十一月、各企業の労務担当に聞き取り調査をしたところ、六十五歳への定年延長は実現困難とする企業が五割を超え、残る四割も情勢を注視するとして、前向きな企業は一つもなかったと聞いております。定年延長もまだ不十分である状況の中でどのように六十歳代前半層の雇用を確保していくのか。これは、この問題について厚生省労働省というのがどんな打ち合わせといいますか、そういうものをしてこの法案が出てきたのか。労働省は、これはよろしい、そのうちにこういう手当てでやりましょう、こういうことで出てきたのかどうか、まずお聞きをしておきたいと思います。
  160. 水田努

    水田政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますように、六十一年に政府は長寿対策大綱を決めております。それから、昨年第六次の雇用基本計画というものを策定しております。その中で、六十歳定年の定着と六十歳代前半層の継続雇用を確保する、こういう方針が決められているわけでございます。また、昨年国会の要請で厚生省労働省福祉ビジョンというものを共同して出さしていただいておりますが、私ども年金の面については、できるだけ早い機会から六十五歳に段階的に引き上げるということをうたわさしていただいておりますし、労働省の方は、六十歳定年の定着と六十歳代前半層の継続雇用の確保、こういうことを出さしていただいているところでございます。  法案提出に当たりましても、両省よく協議し、円滑に閣議決定を得、今回提出をいたしておる、こういう運びになっております。雇用年金の問題につきましては、関係閣僚懇も既にできておるところでございまして、政府が一体として取り組む、こういう体制に相なっているところでございます。
  161. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 六十歳定年の問題につきましては、先生指摘のとおり、六十歳以上の定年は六一・九%でございますが、これを決定あるいは予定する企業まで含めると七九・三%になっております。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、法に定められた行政措置を活用しながら、六十歳定年の定着化にさらに一層努力してまいるつもりでございます。  また、六十五歳までの雇用の確保につきましては、やはり人生八十年時代社会参加あり方、あるいは若年労働力不足基調になり、高齢者の長年蓄えた知識経験を生かしていくという観点から、着実に計画的に年齢間のミスマッチを解消するように努力してまいりたいと思っております。  厚生省との連携につきましては、私ども雇用年金が密接な連携をとられるべきであるという前提に立ちながら、高齢者雇用についてさらに一層積極的に努力するという労働省の立場で話し合いに臨んでいるところでございます。
  162. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 政府は今答弁があったようなことでございますけれども、実際は嘱託のような形で残ったり、紹介所などでは、再就職ができるのは大企業のサラリーマンを中心としたごくわずかな人である。多数の人々はわずかな退職金で会社を退き、再就職先も臨時雇用やパートタイマーのような不安定な職業が中心となると考えられている。今話がありましたように、有効求人倍率を見ても、昭和六十三年十月で三十歳から三十四歳が二・一一倍、それから五十歳から五十四歳が〇・七八倍、五十五歳以上〇・二四倍と、労働力不足と言われながらも、高齢者の就職は大変に困難となっており、高齢者が安心して職業につけるという状況はどこにもない、こういうのが今の現状であります。だから、いろいろ言われましても、これはやはりもっといろいろな施策というものをやっていかなきゃならない、このように私は思うわけでございます。  例えて言いますと、今週休二日制の進みぐあいというのはどうなっておりますか。
  163. 諏訪佳

    ○諏訪説明員 お答えいたします。  週休二日制の進捗状況でございますが、六十三年時点で完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は二九・五%となっております。前年と比べて一・〇ポイント増加しております。また、何らかの週休二日制の適用を受ける労働者の割合というものは七九・九%と二・三%増加しております。特にこの何らかの週休二日制の適用労働者の増加はここ五年分くらいの増加に相当いたしまして、改正労働基準法の施行によりまして着実な増加を見ているという段階でございます。
  164. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 国も公務員の方々も来年から週休二日制をやられる、こういうことが出ております。これで大体全体、ほかの企業も大体週休二日制というものを目がけてずっと出ていくと思うわけでございますけれども、まず私が思いますのは、いろいろ外国で日本人の生活実態というようなことでシンポジウムがあって、そこでいろいろ話が出たようでございますけれども、七月にワシントンで日本高齢化のシンポジウムがあり、日本状況を報告した。引退に対する意識が日本と米国ではまるで違う。彼らには引退は権利であり幸せである。日本人には働くことが生きがいで、六十五歳支給に反対する声も、早く引退したいからではなく、六十五歳までの雇用がないからである。ある米国人が指摘していた、働きバチの日本人の感覚も今の中高年のもの、週休二日のレジャーを経験した若い世代が引退するころには米国人と同じになるのではないか。  それからもう一つは、現在のライフパターンは、二十歳前後から定年まで労働し、その間に結婚し、子を二人養育し、住宅を取得する。労働生活中は租税、社会保険料負担し、教育費と住宅ローンを支払い、したがって、労働時間の短縮より賃上げを選び、ひたすら労働に励まざるを得ない。定年後は二十年間あり余る余暇をもてあますというように、労働生活と余暇生活に完全に二分されている。そうではなく、労働と余暇を生涯にわたって配分することはできないものか。若年、中年層にも余暇は必要であり、高齢者にも労働する自由が必要である。ライフパターンをこのままにして後の世代は高い保険料を受け入れるだろうか。  近年、行政は高齢者雇用対策取り組み始めた、こういうようなことが出ているわけでございますけれども、今ここにいらっしゃる皆さん、まあ大臣はもう六十五歳以上、まあ高齢者であろう、あと委員部の皆さんとかあるいは厚生省の皆さん、また調査室の皆さん、こういらっしゃるわけでございますけれども、言ってみれば、これだけの人で極端に言えば年金をつくったとします、さあそこで今の働き方というのは、先ほども指摘がありましたように、日本人というのはとにかく休暇があってもとらない。ヨーロッパなんかは一年間に一月くらいあるみたいですね。ところが、アメリカ人が早くリタイアしたい、退職したいというのは、一年に三週間くらいしかない、だからえらい、私は自由なことをしたい。また、アメリカ人の場合というのはボランティア活動といいますか、そういうものが非常に発達している。近所の人ともうとにかく食事したりして、いつもパーティーを開いている。ところが、日本人というのは隣に住んでいる人とあいさつしない。ボランティアなんてどこでどうやっていいかわからない。だから、やめたらやめたでじっとして暮らすしかしようがない。  そういうわけですから、幾ら趣味が将棋であっても、朝から晩まで将棋をしてお金を幾らでも上げますといったって、そんなことを楽しむような人はいないと思うのです。やはり一日のうちにどのぐらいか働いて人のためになるということは人間として非常にとうといことでありますし、それから非常に人間の特権みたいな、確かに自分が年がいって人から面倒を見てもらった、こんなに真心あふるるお世話というのは、こんなうれしいことはないだろうと思うのです。しかし、逆に今度は、一生懸命に人のことを面倒見てあげることも非常にうれしい、こういうようなことでございますけれども日本の人というのはとにかく働くときには有給休暇もとらないでずっと働いて、六十歳定年だ、六十五歳定年だ、このライフスタイルというのは大きく変えなければいけないのじゃないか、こう思っているわけです。  例えて言いますと、公務員の方々が、局長だってどこか天下りするかどうか知りませんけれども局長なんという方は少なくとも世界じゅうの年金を勉強されているのです。そして、国費でもっていろいろされて、ある意味では大変な貴重品ですね。何を聞かれたってわかる。その方が途中でどこか生命保険会社へ行っちゃったなんということでは、これは国損ですよ。だから、少なくとも今の局長が、年金問題で、大変だからいろいろやりましょう、六十五歳でも七十歳でも元気な間、ただし、私も年だし、ちょっと体が悪いから毎日は出てこれませんよ、昼から出ましょう、そういうような形でレジャー、休暇、バカンスもとりながら平均していくというような生活でなければ、これからとてもやっていける時代ではないのじゃないか。  だから、若いから温泉に行ったらおかしいとか、十日間の休暇をとったらおかしいなんて、そんなことじゃない。だから、きょう、ここにいる皆さん方が、実際自分として、いや、私は六十五歳まで働けますよ、私はちょっと体が悪いから、やはり六十歳になったら家へ帰ってというふうに、これは家事だって大変ですよ。僕も一回家で留守番をしたことがあるのですけれども、掃除、洗濯、食事をつくるということは、なるほど女の人も家事、家事と言っていたけれども、大変なことだな、これはもう総理大臣がやったって一婦人がやったって同じ手間がかかるのですよ。ただ、いろいろの立場がありますからあれですけれども、それだけの時間とあれがかかる。  そういうことで、ここにいる皆さん方が、役所から、極端に言えば少なくとも厚生省は、それは確かに給料というものがあります。だから、段階的にどんどん上げていくという、それはどこかで頭打ちしなければいけないかもわかりませんよ。それはそういうことになるかもわからない。年金だってそうなっているわけですから。まあ総定員制というような問題がありますし、若い人にしかできない仕事もあるでしょう、いろいろありますけれども、そういう形で一遍これからの日本の模範というものをまずは役所から、労働省とか厚生省に見せていただきたいと私は思うのでございます。そういうことについてのお考えはいかがでございますか。
  165. 諏訪佳

    ○諏訪説明員 お答えします。  年次有給休暇、特に連続休暇と申しますか、そういった面についてでございます。特に先生指摘のように日本人は周囲への気兼ね、あるいは病気等への有事の備え、またそういったことに絡みまして年次有給休暇の取得をしない、あるいは連続休暇の取得慣行がないという状況でございます。私どもといたしましては、国民生活にゆとりをもたらすという意味では非常に重要な課題考えております。その意味で、改正労働基準法におきましても年次有給休暇の計画的付与制度の活用といったものを決めておりますし、またこういったことで、これらの連続休暇の定着が図られるようにということで現在キャンペーンを進めております。  また、今後、連続休暇取得促進要綱というものを策定しまして、その普及促進に努める。これによりまして連続休暇あるいは年次有給休暇の取得促進を図りまして、労働時間の短縮と自由時間の充実といったものを進めてまいりたいと考えております。
  166. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今のは有給休暇をとるとかとらないとかというのですけれども、私の言うのは、もっと若いときも休むかわりに、もう六十五歳くらいまで本当に働いていただく、そして公務員の方でも有識者は顧問でも何でもいいのです、給料はそんなに全部は出ないかわかりませんけれども、これからの大事なことに対してはいつでも相談に乗ってやってあげる。今何か立派な局長がこの前いたと思ったら五十五歳でどっか行っちゃったとか、六十歳定年どころの騒ぎじゃないのです。六十歳までだれが残っていられるのですかというと、なかなか残っていられない。こんなことを役所がやっているようでは、こんな年金だけかけ離れてやるなんということはおかしいのじゃないかな、やはり役所が率先してやるべきことじゃないかな、こういうぐあいに私は思っているわけでございます。  もう一つの例を挙げますと、この方は太田さんという東邦生命の社長さんでございます。   私が提言したいのは、人間が利益で釣られた場合どうなるかということです。徳川幕府が、利益で釣られて殺し合いをする戦国時代をこれ以上続けたくないということで、正義を中心として……。そのときの正義というのは、ふるさとを大切に。そしてご先祖様を大切に。親を、先生を、そして伝統を、職場を大切にするという考え方。これは千古不易の論理だと思います。   ところが、終戦後また世界が利益を中心とするという考え方に乗って、日本がいまその最先端。その結果、われわれは豊かにはなったけれども、将来に希望のない世の中になったような感じがします。   では、いま正義とは何かといえば、徳川時代の正義も続いていると同時に、世界に通用する正義は温室化現象、フロンガスでのオゾン層破壊、森林消滅で人間が住めない世界になるのではないか。   日本の富と技術と努力をもって、世界に向かってこれが正義なんですと。戦争の準備なんかやるべきときじゃないという考え方を訴えるべき時期に入ったんじゃないか。   私どもはそういうなかで、日本高齢化社会に対して週休二日制を破って、二週間働いて一週間休む、二週間は大都会で、一週間は田舎で生活をするというその形に切り替えていこうということを、東邦生命から実施しようと考えているんです。   田舎に奥さんを残し、子供を残し、また学校も二週間勤めて一週間休むというやり方に切り替えれば、おじいさん、おばあさん、お母さんも子供も田舎にいて、そしてご主人は二週間大都会で働く。家もそちらにあれば、東京で地震があっても、燃えるのは社宅群と事務所で救われるんじゃないか。また、月給もいま全日本の半分近い月給が東京へ降っているけれども、奥さんが田舎にいれば、月給は半分東京に降っても、全部銀行口座を通して、田舎に降っていきます。東京と田舎が逆転して、共に栄えていく。   一週間はみんな一緒に生活を共同する。それで家族のぬくもりを残す。これをやらなかったら、いくら道義の作興や教育の振興をやっても、平素見たこともないお父さん、お母さんに、なぜ親孝行をしなければならないのかという問題が出てくる。これは私どもが生きている間にどうしてもやり遂げなきゃならない。この二〇〇一年までの間に、私は三週三直制で東京と田舎を引っ繰り返すということを、東邦生命からやるつもりです。 こんなことで、実際こういうことをおやりになりつつあるわけでございます。そういうことで、私は意識の変革ということを申し上げました。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕  もう一つ。私は非常に感謝しておるうちの家内のおふくろがおります。僕ら夫婦とも忙しいものですからほとんど家を出ておりました。子供三人をおばあちゃん一人で面倒を見てくださった。もう本当におばあちゃんがいたから助かったようなことでございますね。人を雇って面倒見てくれといったってなかなかこんなことできないのですよ。やはり自分のおばあちゃんであればこそ安心もできますし、こうあるという面もあります。この前テレビを見ておりましても、今何かベビーシッター、こういうふうな仕事まで出てきた。高齢化に向かっていろいろの問題が、そういう雇用というものが出てくるのじゃないか。お年寄りの方がお年寄りの面倒を見るというのが一番大事ではあろうかと思いますけれども、とにかくそういうことで世の中もずっと変わって、人間として本当にいいような社会というものをつくっていかなければならないな、こんなことも思うわけです。  また、今二世帯住宅というのが民間ではあるわけです、これは建設省の仕事かもわかりませんけれども。とにかく二世帯住宅において、さっきも出生率の問題がありましたが、本当に子供さんが隣の部屋にいらっしゃる、あるいは隣にいるわけですから面倒を見ていただける、そんなことで非常に助かっている。だから、私は厚生省が働きかけて、公営住宅を建てるときに、例えて言うと、お年寄りで一人暮らしの方々が、こういう間取りです、どうぞここへお住まいになってください、そうするとお年寄りの方がそこで仲よく十世帯なら十世帯、あとは普通の若い方もいらっしゃる。あるいは二世帯住宅というモデルはこういうことです、そういうようなこともどんどんやっていかなければ、全体的にこの急速な高齢化社会に間に合わないのではないか。  そういう中で年金というものが、うちのおばあもゃんもおじいちゃんの遺族厚生年金をちょっともらっているわけでございますけれども、それで少し孫にお小遣いをやったりして、これは結構気持ちの上で豊かな生活をしている。食べる物も、お年ですからほとんど食べられません。だけれども非常に安心した生活をされている。だから、もうこの意識変革、要するにお年寄りの方を別にしてそれで六十五歳だ何だかんだと切るようなそういう考え方ではなくて、もうそういう一つのものでもって、なるほどなというようなものを私はどうしても今後やっていただきたい。私は厚生大臣はそういうことができるお方だと思いますけれども、ひとつ厚生省のお考えも聞いておきたいな、このように思います。
  167. 水田努

    水田政府委員 私ども平成七年を境に若年労働力が急速に減っていくということと、日本人は大変働き過ぎだということを言われておりまして、欧米先進国に比べて三百時間から五百時間働き過ぎたということで、千八百時間に短縮する、こういう政府の方針があり、週休二日と有給休暇の完全消化ということで労働省が政策を進めていただいているところでございます。  今回の経企庁の国民生活白書によりましても、中年のいわゆる企業戦士は働き過ぎである、十分ゆとりある、先生指摘のような生活を送るために積極的に休暇をとり、高齢者にワークシェアリングをすべきであるというような提言もいただいているところでございます。先ほどからも労働省お答えがありますように、人生八十年時代、活力ある社会をつくるためには六十歳前半層まで生き生きとしてマイペースで働ける、こういう雇用環境を整備し、年金もそれに対応した形をとらさせていただくのが理想ではないか、私どもはこのように考えておる次第でございます。
  168. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 労働省の方といたしましても、労働者を守るという立場からいきますと、いろいろなことを厚生省と一体となって考えていただきたいと思うわけです。そういうことで今までがこうだからこうですということでは、急激な変化をもたらしてくるときにはとてもそんなことでは追いつかない。これをいろいろ指摘されているわけでございますので、どうぞ労働省の方もお願いしておきたいと思うわけでございます。  次に、減額の繰り上げ支給問題についてお伺いをしておきますが、今回の改正では、個々人の状況に応じて六十五歳前でも年金を受給できる道を開き、これを活用して生活設計を立てられるようにしようというものであります。この繰り上げ支給制度について説明お願いしたいと思いますが、特に繰り上げ支給の方法として幾つかの選択が認められることですが、この点についても説明お願いいたします。
  169. 水田努

    水田政府委員 支給開始年齢措置がとられました場合に、あわせて六十五歳前に退職された方の場合には、本人の希望で六十歳から繰り上げ支給ができる。その場合には、当然一定の減額を受けるわけでございますが、現在の国民年金の減額年金制度は、六十四歳までと六十五歳以降を通じて一気通貫の減額率になっているわけでございますが、六十四歳までの減額率と六十五歳を過ぎた後の減額率を企業年金支給状況あるいは退職金あるいは老後の貯蓄等その人の個人の老後の備えとの見合いにおいて、六十五歳前と六十五歳以降に幾つかの選択ができる余地を残して実情に合う老後生活がおくれるような仕組みに持っていきたい、このように考えているわけでございます。
  170. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 それで、国民年金では既にこの繰り上げ支給実施されているわけでございますが、この場合に用いられている減額率というのが非常に厳し過ぎるという批判があります。これを緩和する考えはないのか、また現在の繰り上げ支給の実態というのはどういうふうになっているのか、御説明を願います。
  171. 水田努

    水田政府委員 国民年金は、減額年金を受給しておられる方は全体の受給者の約七割の方が減額を受けておられます。この減額率の六十歳から支給します場合には約四割の減額を受ける、六十二歳の場合は約二八%というぐあいに繰り上げの年齢が若いとそれだけ減額率が厳しいわけでございますが、これを緩和するということになりますと、実態的に六十歳支給と同じ形になります。ただでさえ国民年金財政状況が厳しいので、この減額率を緩和するということは極めて困難だと考えております。
  172. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 国民年金の繰り上げ支給状況というのは昭和六十二年度、今話がありましたように、利用している人が六七%、支給額二万七千円、本来の年金額は四万六千三百円、繰り下げ支給六十五歳以上の方々は〇・〇三%、支給額は五万一千円、こういうことになっているわけでございますが、繰り上げと繰り下げでは倍近い開きがあるにもかかわらず、多くの人が繰り上げ支給を選んでいるわけです。これは高齢者の生活状況がたとえ減額されても早く収入を得たいということであり、厚生年金にもこのことが当てはまるのではないかと思われるわけでございます。これらの問題を解決していくためには、現行の在職老齢年金よりも、公明党が提案をしておりますスウェーデンのような部分年金・部分就労制度がよいのではないか、このように思うわけでございますが、こういう考え方についてはいかがでございますか。
  173. 水田努

    水田政府委員 スウェーデンの部分年金・部分就労というのは、既に十年を超える経験を持っているわけでございますが、スウェーデンの場合は御案内のように高額所得者は大変累進課税が高いということがございまして、結果的にはこの部分年金・部分就労というのは高額所得者に利用されている。それで、一定時間労働力を減らしますと賃金が減ります。その賃金の六五%を年金で補完するわけですが、フルタイムで働いている場合の税引き後の可処分所得よりも、時間を短縮し部分年金をもらった場合の可処分所得の方が結果的に多くなるということで、高額所得者が利用するというのが実態である、必ずしも制度のねらいどおりに運営されていないというふうにも言われております。むしろ私どもは、今回法律改正で高齢者雇用の促進を図りますために、在職老齢年金改善策を提案さしていただいておりますが、これの方がむしろ日本型の部分年金・部分就労という形で実態に合うのではないか、このように考えている次第でございます。
  174. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 私もこの減額支給、繰り上げ支給ですね、こういうことの内容については、やはりもう少し緩和をしてあげる必要があるんではないかということも思うわけでございまして、また検討していただきたい、このように要望いたしておきます。  次に、保険料アップの問題についてお伺いをいたします。  本改革案では、男性の保険料を一二・四%を二・二%引き上げ一四・六%とし、二〇二〇年、平成三十二年まで五年ごとに二・二%ずつ引き上げていき、最終的には二六・一%とするものであります。ところが、前回の一九八六年改革のときには、二十一世紀にかけて段階的に引き上げていくとして、一九八九年は一二・四%のまま据え置き、次の見直しである一九九一年から一・八%上げて、その後も五年ごと引き上げ、二〇二五年には二八・九%になる。支給開始年齢が六十五歳になれば保険料は二三・九%にとどまる、このようにされたと思いますが、この認識に間違いありませんか。
  175. 水田努

    水田政府委員 数字には間違いございません。
  176. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 前回の再計算と今回の再計算において最終的な保険料で二・二%の違いがあるわけでございますが、なぜこのような短期間に保険料の算定が変わってくるのか、積算の根拠を納得のいくようにひとつ御説明を願いたいと思います。
  177. 水田努

    水田政府委員 先ほども若干お答え申し上げたかと思いますが、年金財政の長期見通しというのは人口学的要素が極めて大きいわけでございまして、この再計算に当たっての基礎データとしては、人口問題研究所が作成しております将来人口推計を使うということにいたしております。前回の再計算と今回の再計算の際に用いました将来推計が、平均寿命が男女とも約三歳延びた、このことによって、平成三十二年における厚生年金の老齢年金受給者が前回の再計算のときに比べまして二百五十三万人増加するということに相なったことにより、最終保険料率が前回二八・九%と見込んだものが三一・五%にならざるを得なくなった、こういうことでございます。前回の再計算のときは、六十歳を六十五歳に段階的に引き上げることによって最終保険料率を二三・九%にするということになっていたものが、今申し上げましたことによりまして、これが二・二%上がりまして二六・一%にならざるを得なくなった、こういうことでございます。
  178. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 三年前ですか、この計算をして二百五十三万人の違いが出た。これはそのための再計算といえばそういうことになるのだろうと思いますけれども、今回の計算が、また三年後というのは大分変わるというようなことがあるわけですか。
  179. 水田努

    水田政府委員 私、人口問題の専門家でございませんので、その点は確たることは申し上げることができませんが、平均寿命については、世界の傾向から見てかなり頭打ちに来ているのではないかと思いますが、私ども今後の再計算の際に心配をしなければならぬのは、先ほど先生が御指摘になっております、一生の間に御婦人の方が子供を何人生むかという合計特殊出生率、二・一人で人口がふえもしない、減りもしない、こういう形のものが現在一・六六人に落ち込んでいる。これがいつ反転して二・〇あるいはそれ以上に回復していくか、これは統計学というよりも、むしろ国民一人一人の人生観その他の問題に属することで、この出生率についてはなかなか見込みが厳しい面があるような気がいたします。
  180. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 年金保険料のアップの問題でございますけれども、こういうぐあいにどんどん上がっていくということは大変なことですね。最後、もしこの法律案が通ったということになれば、六十五歳ということで二六%をオーバーする、そういうようなことで、実際問題、勤労者の皆さん方がそれだけの負担にたえられるかどうか、こういうようなこともあるわけでございますが、日本の企業というのは今大変な好況であります。これが今後どうなるかという予測も大変な難しい問題でございますが、そういう中で言われていることは、諸外国で経済摩擦を引き起こしている、大変な資金力で設備投資をどんどんしている、海外の不動産を買いあさっている。それに比べると、勤労者の給料や生活はほとんどよくなっていない。このことは、労働者に対する労働分配率が約六三%で、先進国に比べかなり低いためである。労働分配率を高めるためにも、保険料の労使折半を六対四か七対三にして、労働者の負担を軽くすべきではないか、こういうような意見もございますけれども、こういうことについてはいかがでございますか。
  181. 水田努

    水田政府委員 フランスやイギリスは御指摘のとおり、かつて労使の割合が三対七とか四対六であったわけでございますが、事業主の負担割合が高いということはそれだけ生産コストにはね返るわけで、国際競争力になかなかたえないということで、労使折半の方向に今変わりつつございます。我が国の国際経済の中に置かれておる状況を見ますと、これから事業主の割合を高めていくということはやはりなかなか厳しい問題ではないかと思います。特に、労使折半の原則を崩しますと、中小零細企業の事業主の負担というものも考えなければならぬので、私どもは、年金のみならず、医療その他の社会保険一般に通ずる原則でございますので、この制度を変えることは困難ではないかと思っている次第でございます。  それからなお、労働分配率の話が先生から御指摘がありましたが、私ども先進諸国の場合の労働分配率と比べてみましても余り差がございませんし、わずかではございますが、最近日本の場合は分配率も上昇してまいっておるということではないかと承知いたしております。
  182. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 日本は労働分配率が約六三%、米国は七七%、英国は八八%、西ドイツが七五%。これも、資料が今日時点で大分接近したのかどうか、その辺はわかりませんが、とにかく分配率がまだ少ないなということは確かではないかと思うのです。スウェーデンでは、すべての保険料は本人が負担せず事業主が負担する、フランスでは事業主が五二%、本人が四八%、イギリスは労使折半が原則だが、賃金が高くなると事業主負担が多くなる、こういうふうなこともあるわけでございまして、今後実際の負担率との問題でそういうこともまた考えていかなければならないときがあるのではないか、こういうぐあいに思うわけでございます。  国民年金についても同じことが言えるわけでございますが、保険料を一九九〇年に八千四百円に引き上げられ、その後も毎年四百円ずつ上がって二〇一〇年には一万六千百円となり、以後は引き上げなくてもよいということでございます。現行では毎年三百円ずつ引き上げ、二〇一〇年には月一万三千円とする。そこでお伺いをいたしますが、国民年金保険料の免除率及び保険料徴収率はどのようになっておるのか、お伺いいたします。
  183. 土井豊

    ○土井政府委員 昭和六十三年度の数字で申し上げますと、免除率は一二・二%という状況でございます。それから徴収関係でございますが、私ども検認率という形で徴収状況をあらわしておりますが、昭和六十三年度八四・三%という状況に相なっております。
  184. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 厚生省としては、この保険料の免除率というのが非常に今まで高かった、一九八四年には一七・四%ということでございましたから、この免除というものをもう一遍厳しく見直した。ところが、確かに免除率というのは減ったわけでございますけれども、では、その方々が掛けているのか掛けていないのかというと、そうではなくて、やはり掛けられない、何らかの形で掛けられない、こういうことで現在の加入者の約四分の一ぐらいの人が保険料を免除されるか滞納している実態というものがあるわけでございます。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕  そういうことで、保険料がアップしていけば免除世帯や不払いがふえ、それが保険料収入の減少、他の加入者への保険料負担の増大という悪循環が心配されるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  185. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 年金額改善受給者の増大していくに従ってそれに見合った保険料引き上げは避けられない。今回もその趣旨で保険料改定をしているわけでありますが、被保険者の負担能力にも配慮しながら、引き上げ幅もそのため極力小幅なものに抑える等配慮しておるのですが、負担能力のない方のためには特に保険料の免除制度も用意されておるところであります。特に、人口の移動の激しい都市部であるとか、また保険料の滞納について比較的そういった状況の多い都市部であり、また低所得者の多い地域なんかにおいても特に配慮して、そういった意味でのPRを徹底すると同時に、そういった滞納が生じないような最大の努力をしているわけであります。  どうしても納められないというような場合には免除をし、そして、そういった手続をしていただかなければいけないと思います。手続をしないというと、結果的には無年金者みたいな形になって救済の道がなくなってしまうということもありますので、そういう意味では、非常に大変な権利でありますから、十分PRをしてやっていきたい、かように思っております。
  186. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 確かに今国民年金に入られていない方、こういう方々にも役所からも何回もどうですかというようなはがきも届いておりますし、いろいろやられているのですけれども、今の世帯構成からいさますと、ひとり暮らしでいなかったり、若い人は夜しか帰ってこない、これも大変な努力だな。これを本当に説得して入ってもらう、我々近所見てみましても、いや、これはそれこそ夜そこへ待ち伏せでもするかやらないと、本人も悪気はないし、だれも悪気はないのですけれども、なかなかこういうことも徹底できないのだな、またそういう時代になってきたのだなということも非常に感ずるわけでございます。  そういうわけで、例えて言いますと、保険のことを説明するということについては、もう係員だけではなくて地元の自治会長か婦人会長か、あるいはそこらの民生委員の方、そこまでできるかどうか知りませんが、だれかそういう方が、ああ、あの人は夜帰っている、では私の方から言つておきましょう、この書類書けばあなた免除されるのです、どうですかと、そういう地域対話をできるような一つのものがないと、これからの多様化された時代の徹底というのは大変なことじゃないかな。だから本当に御苦労なさっておることはわかりますけれども、そういうようなことも考えないと、そろそろできないのじゃないかと思いますけれども、そういう面についてはいかがでございますか。努力とか、こういうことで今いろいろ悩んでいるとかということがありましたらお聞きしておきたいと思います。
  187. 土井豊

    ○土井政府委員 私どもといたしましては、そういった滞納あるいは無年金の発生を予防するために、きちっと加入していただくというような目的のために、いろいろな努力をいたしておりまして、例えば納付につきましては、毎月納付でありますとかあるいは口座振替といったような形のものをできるだけふやすように努力をいたしております。それからまた、加入の問題につきましては、個々に加入勧奨を行うとかあるいは一般的な広報活動をさらに充実していくということが必要であると思っております。  なお、ただいまお話しのように、いろいろな有効な方法につきましては、今後とも御意見伺いながら最大限努力してまいりたいと思っております。
  188. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 そこでこの保険料を上げる前に、年金に対する国庫負担の繰り延べ問題、こういう問題もきとっとしてもらわなければ多くの方がやはり納得できない。政府平成元年度予算において三千二百四十億円、昭和六十一年から平成元年度までの累計で一兆三千四百八十億円の借金をつくっている。国民への年金負担額を増大させようという限りにおいては、このような問題も整理する必要があると考えるわけでございますが、来年度予算に対する繰り延べはどのように対処するお考えでございますか、お伺いをいたしておきます。
  189. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 御指摘のとおり、非常に大事な問題の一つだと思っております。我々もこの問題については財政当局とも十分話し合って、そういうことがないようにこれからしていきたい、そういうふうな努力をしていきたい、かように思っております。
  190. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 次に、自主運用の問題についてお伺いをいたします。  年金積立金の自主運用の年度別の実績を見ますと、昭和六十一年度積立金五十三兆四千億円、自主運用三千億円で運用率〇・六%、昭和六十二年度積立金五十七・五兆円に対し自主運用二兆円、率で三・五%になり、本年度見込みでは六十七・三兆円の積立金に対し自主運用では六・七兆円、運用率で一〇%まで拡大してまいりました。運用実績の方でも、六十一年度に利差益三十・四億円、六十二年度利差益百六十六・五億円、六十三年度で六百六・一億円となっておるわけです。しかも六十二年度、六十三年度を比較しますと、自主運用率が二倍に対し、利差益は三・六倍に増大しております。これまで議論してまいりましたとおり、年金財源の問題は大変なことであるわけでございまして、せめて自主運用というのを、本来は一〇〇%させていただくというのが当たり前でございますけれども、これをもっと大幅に図ってやっていく必要があると思いますが、その点について、具体的に来年度はこういうぐあいになるのだとか、また見通しはこういうぐあいにやっていくのだとかいうことについてお伺いしておきたいと思います。
  191. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今御指摘のとおり、自主運用の拡大を通じてより多くの収益を上げてきた、成果を上げていることはそのとおりでございます。これからも我々といたしましてはこの自主運用の拡大に努力をしていきたい、かように思っておりますので、よろしく御支援のほどお願いいたします。
  192. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 次に、世代間格差の問題についてお伺いをしますが、五月十日の日本経済新聞に大学教授の研究論文が発表されております。これを見ますと、世代別の年金収益率、つまり老後に受ける年金額の総額が、現役サラリーマン時代に拠出し保険料をどの程度の利率で運用したときと同じになるか、これを年代別に検討したものであります。六十歳支給の場合は、昭和八年生まれで六・七一%、昭和十八年生まれで三・一五%、昭和二十八年生まれで一・二八%、六十五歳支給の場合は、昭和八年生まれ六十歳支給、六・七一%、昭和十八年生まれ六十三歳支給、二・一九%、昭和二十八年生まれ六十五歳支給、〇・〇三%、昭和八年生まれと昭和二十八年生まれでは余りにも大きな格差となってあらわれておるわけです。これを解消するためには保険料の大幅な引き上げしかないわけで、開始年齢引き上げても世代間の不公平は逆に拡大することになってしまうということであります。  そこで申し上げなければならないことは、今回の改正案の内容は、将来の危機感を訴え、保険料のアップ、開始年齢引き上げによる年金受給額の引き下げを図るなど、国民にだけ責任をなすりつけているように思われてならないのでございますが、国の努力はどこにあるのかわからない。このような世代間の格差を少しでも緩和し、将来の年金財政を安定させるために、基礎年金への国庫負担を二分の一にし、保険料アップを軽減すべきではないかと思うわけでございますが、この問題についてお答えいただきます。
  193. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 御指摘の点は、今までもそれぞれ御質問者の中にたびたび出された問題で、非常に高い関心を持っておられることは十分承知をいたしております。しかし、現行の三分の一国庫負担率でも、今後の高齢化の進展に伴う受給者増や給付改善に伴う給付費の増により、国庫負担額は相当な増高をするものと考えております。こういう状況下の中におきまして、今この時点で国庫負担率を引き上げるということはなかなか困難な問題のように思われます。
  194. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 この問題についても、どうしても国のそういう負担というものが今後考えられていかないと、今の状況からいって保険料のアップとかそういうようなことについても大変な問題になるのじゃないか、こういうぐあいに思うわけでございまして、今後この問題についてはまたきちっと聞いてもまいりたいと思うわけでございます。  私もたくさん質問通告をしておったわけでございますが、もう時間がなくなってまいりました。一つ、これはどうしても言っておかなければいけない問題があるわけでございますが、被用者年金制度間の負担調整問題、これが出ているわけです。被用者年金制度間の負担調整について内容的にはわかっておるわけでございますが、鉄道共済の状況についてお伺いしておきたいと思います。
  195. 乾文男

    乾説明員 鉄道共済でございますけれども、議員御案内のように昭和五十年代から財政状況が悪化してまいりまして、昭和五十九年からはいわゆる統合法というものに基づきまして国家公務員共済の体系に取り込み、算定方式の合理化、一〇%スライド停止等の措置を講じてまいったわけでございますけれども平成年度からは赤字額が年間平均三千億円に拡大するという状況になってまいりまして、これにつきまして閣僚懇談会のもとに鉄道共済問題に関する有識者懇談会を設けましていろいろ検討してまいった結果、来年度以降、三千億円の対策に対しまして、まず鉄道共済を中心とする自助努力によって千五百五十億円の対応をし、いま一つ、平成年度に予定されております公的年金一元化の地ならしとして、今、議員御指摘のございました被用者年金制度調整というものによりまして結果的に鉄道共済が年間千四百五十億円の受益になる、この二つをもちまして来年度以降の対策としたいと考えまして所要の法案を提出しているわけでございます。
  196. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 もう時間がありませんのでこっちで一方的に話をさせていただきますけれども、私たち、小さいときから国鉄というのは大変にお世話になりまして、明治、大正、昭和、それこそ日本の発展の基礎を賄ってずっと頑張ってこられた。特に国鉄マンというのは、それこそ年金でも二十五年とかそんなのじゃなくて、本当につついっぱい四十年間ぐらい働いてやってこられた。そういう中で社会構造の変化、あるいはまたモータリゼーション、そしてまた民営化とかいろいろなことがございます。そして、戦後のときに満鉄とかいろいろと引き揚げてこられた方の失業対策、そういうことにも利用される。あるいはまた赤字路線であっても公共路線だということでどうしてもそれを運行しなければいけない、そしてまた、こっちの線を引けと言えばまたそれも引かなければいけない。こういうようなこと、いろいろなことを思いますときに、これは日本国民全体において一つのこういうような状況にしているのを、私たちもいろいろと世話になりながらやってきたということが考えられるわけでございます。  したがいまして、今、年金一元化というような問題がございますけれども、そういう中で、私はいろいろな議論があろうかと思います。あろうかと思いますけれども、戦後から今までにおける一つの大きなひずみの中でこれを解決する方法というのは、さっきも話ありました半分の自助努力、そしてまた半分をどうするかということについて、やはり別途考えてやっていかなければならない問題ではないか、これは議論のあるところでございますけれども、私はそういうぐあいに思うわけでございまして、これを言っておいて、時間でございますから一応質問を終わらせていただきます。
  197. 丹羽雄哉

  198. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今私たちの世の中というのは、一つには高齢化社会に向けてどのような形でこれからの世の中を組み立てていくかというのが大きな問題だろうと思います。  一般に、国民はこの高齢化社会に対して将来の不安というものを大変感じている。昨年政府が取りまとめた福祉ビジョンは、端的に申し上げて具体的内容に乏しい、不十分である、このように私たちはその内容を見ながら考えているわけであります。福祉はやはり財政的裏づけを持った福祉ビジョンを明確にし国民の前に明らかにすることが、将来の不安を解消することになるのだろうと思います。  そういう点で、この問題について大臣はどのようにお考えになっているか、冒頭にお考えを明らかにしていただきたいと思います。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕
  199. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 日本長寿社会を目指して、内政の中で大きな問題の一つは、やはり高齢化社会をどのように構成していくかということであることは、先生指摘のとおりだと思います。そして、その一番大きな所得保障の面が年金制度であり、そしてまた健康を維持する上での医療、あるいは元気に健やかに生活を送れるような環境づくりをするという意味では、これからの在宅の福祉とかそういったようなものがやはり日本の現在における大きなビジョンの一つ。あるいは身体障害者の問題であるとか、いろいろなそれぞれのハンディキャップを持った人たちに対する将来計画というものが、いわゆる当面の内政上の大きなビジョンの一つだと思いますが、昨年その点については大きな意味ではお示しをしたところであります。  しかしながら、さらにこの問題を具体的にというお話が今ありますが、その具体的な裏づけの一つが今度の年金法の改正であり、また今医療問題については御承知のとおり老健法なり国民年金なり国保なり、そういった改正の問題、あるいは在宅の問題については在宅福祉に関するいわゆる三本柱である問題等も、ここで前倒しで大きく前進をした実施をしていこうというものを着々とお示しをしているところであります。さらにまた、具体的に年を追って着実な進め方をしていきたい、お示しをしていきたい、かように思っております。
  200. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、福祉ビジョンの重要な柱の一つが年金であるということは大臣も今御説明をされたわけであります。  今後の高齢化社会において公的年金が果たす役割についてどのように認識されているのか、大臣の御答弁を求めるものであります。
  201. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 この年金問題は、先生御存じのとおりに昭和四十八年物価スライド制を導入して、それ以来お互い大変努力をして今日まで築き上げてきたわけでございますが、昭和六十年には御承知のとおり基礎年金を導入いたし、そしてこの仕組みの中で一番大事なことは、いわゆる世代間扶養という形をとって、現在働いている現役世代人たちが、そのときの給与水準あるいは物価、そういったものを勘案してそのおおむね七〇%を目標にしたものをひとつ年金として所得保障をしていこう、こういうふうな観点に立って今日まで運営をしているわけで、今回の改正におきましても、その趣旨に沿って改定案を御提案申し上げている次第であります。
  202. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大臣がおっしゃられることよくわかりますけれども消費税を導入して四月から実施をされた。政府及び自民党は消費税を導入するに当たって、大きな国民に対する将来の不安とか高齢化社会に備えるためだ、こういう説得をなさったことは皆さんも御承知のとおりだと思います。  そこで、支給開始年齢引き上げ保険料の大幅引き上げ内容とする年金制度の改正を今国会提出をされて現在審議をしているわけでありますけれども国民がこれを素直に納得し得るかどうか、この辺について大臣の見解を求めるものであります。
  203. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 まず、今回の年金制度改正における保険料引き上げでありますが、これは年金額改善受給者数の増加、平均寿命が延びたこと等による年金受給者期間の延びに伴うものであって、年金制度の安定的運営のためにはぜひ必要なことである、かように考えております。そして厚生年金支給開始年齢引き上げにつきましては、給付水準を維持しながら後代の負担を適正なものに抑えるために避けて通れない一つの措置であろうと考えております。  一方、先般導入された消費税は、税の分野で働き手の直接的負担の増加を抑制しながら、高齢化社会において安定した財源の確保を図るためのものであると理解をいたしております。  いずれにいたしましても、この年金制度を将来にわたって安定的なものにしていくためには、給付改善をすると同時に、負担の面でも、やはり先ほど申し上げましたように世代間扶養という社会的な合意のもとに立って、さらに安定を確保していくことを考えていかなければなりません。しかしながら、いろいろな御意見等も、今、国会の中でも各党間でもいろいろな御提言もあり、検討されておるわけでありますが、私どもといたしましては、まず安定するためにどういう状況を確保しなければならないかということについては皆様方の御理解をいただきたいと思います。
  204. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、消費税問題も今国会議論しているわけでありますから……。ただ、一般的に考えますと、高齢化社会なり年金問題なり医療なり福祉なり、こういうことを含めて将来とも安定した国民生活をということで消費税というものが導入された、こういうふうに一般の国民は思っておると思います。それをさておきながら、今、年金額引き上げあるいはまた年齢の引き上げというものをされること自体は、やはり今福祉の基本的なあり方として、財政の豊かなときは福祉がより充実をされる、財政が厳しいときには切り捨てだな、こんなことが言われるわけであります。  そういう中で、例えば今回の減税問題も、保険料引き上げによりさきの所得税減税というものは恐らくもう吹っ飛んでしまった。厚生省はこの辺について正直にどのように把握をされているのか、率直にお答えをいただきたいと思います。
  205. 水田努

    水田政府委員 年収三百万の世帯の方は、年額で申し上げますと、所得税減税が四万円、消費税負担増が二万五千円、保険料負担増が二万四千円、差し引きいたしますと九千円の負担増になります。四百万の階層の方は、消費税負担増、保険料負担増を含めてもなお減税効果が八千円残ります。五百万の階層の方は一万四千円の所得税減税効果がなお残ります。六百万の方は三万八千円の減税効果が残ります。
  206. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今明らかになったように、要は低所得者の人たち逆進性とかいろいろなことを言われるわけでありまして、より生活の厳しさというものがこの低所得者の人たちにこたえるわけであります。この数字を見ても明らかではないかと私は思います。  そこで、実はこの老後所得保障の中で、先ほど大臣が言われているように、年金制度というものが中核であろうと思います。今回の法案には、この年金制度信頼を損なう重要な改正が盛り込まれている。すなわち、これは厚生年金支給開始年齢を六十五歳に引き上げるということであります。六十一歳以上の定年を定める企業は、まだ全体で四・三%にすぎない現状であります。雇用環境が整わないままに六十五歳に引き上げる、この規定は問題が非常に多いと思います。今の官民一体とした平均の定年は五十八歳であります。そして六十歳の年金支給開始年齢の現在のシェアは約六二%であります。こんなことからしても、相当問題ではないかと思います。そして、この六十歳から六十五歳までの五年間というものをどうして暮らせばいいかという端的な質問大臣にしてみたいと思います。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  207. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今委員指摘の、年金信頼を損なうということですが、最も大切な信頼というものはやはり公的年金の安定的な保障であり、そして給付改善も同時に社会的な合意として保障していく、このことが繰り返されていかなければなりません。ただ、一方においてその安定という問題が崩れ去ることによって失う信頼は取り返しのつかないものになってしまいます。そのために、まず安定をするために給付改善もするし、負担もしていく。そして、その負担給付とのバランスを考えて、さらには負担面、料率ばかりではなくして、支給開始年齢というものに着目をした負担の軽減ということを将来に向かって保障していく努力も必要であろう、私どもはかように思っているわけであります。  そこで年金というものが、今委員指摘のとおり、六十五歳になってそれが支給、六十五歳というところまで雇用が保障されていない状況でどうやってやっていくのだという御指摘でございますが、ごもっともでございます。しかし、そういうことにならないように努力していかなければならないから、雇用の確保も十分に図っていかなければいかぬ。そのために雇用が十分な保障が得られる見通しを立てて、同時に国会で再びスケジュールに基づいたゴーのサインをしていこうと二重三重に歯どめをかけているわけであります。  そういう中で、現実に今の年金支給されている平均的な年齢は、先ほどもお答えいたしましたように、大体昭和六十年の時代で既に六十二歳が平均の支給年齢に達しております。そのことは、六十二、三歳くらいまでの雇用というものが平均的な水準で、六十二歳まである程度保障されているという関係に立っているのだろう、かように思います。そういう意味におきまして雇用の確保ということが絶対的に必要であります。しかし同時に、年金雇用のバランスをとっていく努力もそういう観点から、そういうものを見逃すことのないような観点に立って努力をしていきたいと思っている次第であります。  また、この問題につきましては、きょう一日の審議の段階でも各党から大変な御意見が出ております。また、審議会の過程でも退場したという御意見もありました。でありますから、この問題についてはさらに提案したこの国会の中で審議をしていただいている過程において十分御意見等を闘わせていただいて、御理解を求め、また同時に皆さん方との間でも十分に話し合っていただきたいと思っております。
  208. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今大臣からも明らかになったように、年金雇用というのは表裏一体だと私は思うのです。そして、今六十歳の年金支給開始、六十歳の定年を求めている。しかし、そこまで行っていない。なおかつ、年金が今平均六十二歳で開始されているということであるならば二年のギャップです。今度は五年のギャップですから、将来大変なことになってくるであろう。  そこで労働省にお伺いしたいのですけれども、将来の雇用問題を含めて、年金だけが六十五歳の突出はいけないと私は思います。そういう点では、労働省は今の厚生省が打ち出している六十五歳の年金支給開始、これについて定年制をどのように考え、民間を含めてどのように指導しているかということが一点。  さらに、総務庁は現在の公務員の定年制問題について御指導をいただいたりいろいろなことをしていると思います。そういう点では、公務員の六十五歳の定年制をどのようにお考えになっているのか、これを質問させていただきたいと思います。
  209. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 お答えいたします。  六十歳定年につきましては現在六一・九%でございまして、決定、予定を含めまして七九・三%になっております。いずれにいたしましても、高齢者雇用安定法に基づく行政措置によりこれまでも努力してまいりましたし、今後とも努力してまいりたいということが六十歳定年の点でございます。  それから雇用年金が密接な連携をとるべきであるというのは御指摘のとおりであろうかと思っておりますし、また社会全体のあり方あるいは将来の労働力の動向、そういったことを考えた場合に、六十五歳までの雇用を確保することは非常に重要なことでございます。そういった意味では、計画的に年齢間のミスマッチを解消するためにあらゆる措置がとられるべきであると考えております。例えば、同一企業あるいは企業グループにおける六十歳を超えた場合のいろいろなニーズにこたえた雇用延長のあり方、あるいは高齢者、六十歳を超えた方々雇用状況がなかなか厳しゅうございますけれども、安定所等の総力を挙げて再就職に努力をするといったようなことでございます。いずれにしても、計画的にきちんとした段取りを踏みながら六十歳代前半層の雇用に取り組んでいくべきであろうと考えておりますし、関係労使の方々が参加していただいております雇用審議会においても現在熱心な御討議をいただいている段階でございます。
  210. 畠中誠二郎

    ○畠中説明員 お答え申し上げます。  一般職の国家公務員の定年は、現在原則として六十歳でございます。将来、共済年金につきましても厚生年金と同様の措置が講じられた場合に生ずる公務員の雇用問題についてでございますが、これにつきましては種々の観点から調査研究し、検討を進めるため、関係省庁の局長クラスを構成員とする検討委員会をこの四月に発足させたところでございます。  公務員の定年制度につきましては、先生も御存じのとおり、計画的な人事管理を通じて、公務の能率的運営を図ることを目的としておりまして、公務員の定年の延長につきましては、共済年金支給開始年齢改定問題のほか、このような公務の能率的運営に与える影響や、民間企業の定年制度の動向など、諸般の事情を総合的に勘案して検討する必要がある課題である、このように考えております。
  211. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今、総務庁が共済年金に対する一つの考え方を述べられておりますけれども厚生年金はもう既に、将来でありますけれども支給開始の年齢を六十五歳に設定しているんです。同じように共済年金もそう遠くない時期にそうなっていくであろう。そうしたならば、当然そこには定年の問題、雇用と定年あるいはまた年金という問題が表裏一体であろうという基本的な考え方で、そのメニューが当然出てしかるべきじゃないか、私はこんなふうに思うのです。  例えば、労働省、いいですか、今、日本の労働時間は世界一長いと言われて、一九九三年までに千八百時間にしよう、そういうことが言われて既に久しいわけです。しかし、現実にまだまだ二千百時間台でしょう。なかなかそういう点ではならないわけですよ。あるいは週休二日制の問題だって、もう十年も前からそういう問題が、定年とあわして労働時間の問題が言われている。しかし、現実問題として、社会全体がそれをまだ認知しないじゃないですか。それが、一方において年金だけが六十五歳でいいという理由は何もない、こういうふうに思います。  あわせて、公務員も同じように、共済年金のメニューというものを当然そういう形でつくっていくべきだと私は思います。これらについて両省庁とも答弁を願いたいと思います。
  212. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 労働時間の短縮、週休二日制の問題については、諸外国との比較においてもさらにさらに目標達成に向かって努力をすべきだと思っております。  高齢者雇用問題に関連いたしまして、比較的若い時期には非常に労働時間が長く、自由時間が少ない。逆に高齢になりますと、自由時間と申しますか、時間はあるけれどもなかなか雇用の場がない、そういういわばミスマッチといいますかアンバランスといいますか、そういった問題もあろうかと思っておりますので、今後六十歳代前半層を中心とした高齢者雇用の確保のあり方考えていく場合には、例えば労働時間をフレキシブルにするような、あるいは短時間あるいは隔日勤務といったような、そういった工夫も含めながら、あるいは加齢に伴う能力の減退を補完するような、いろんな、人間的な労働と申しますか、そういった措置ができるように工夫していくべきであろうかと考えております。
  213. 畠中誠二郎

    ○畠中説明員 お答えいたします。  共済年金支給開始年齢引き上げの問題と、公務員の定年制度の関係でございますが、この問題につきましては、公務員の雇用制度全般に与える影響の中で、先ほど申し上げました関係省庁による研究会の場で鋭意検討をしていきたいと考えております。
  214. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、なぜそういうことを申し上げたかというと、週休二日制の問題も、中小企業を含めて、社会的にそのことがなかなか実施されないわけですよ。どちらかというと、金融機関とか役所とか、公務員の皆さんがなって初めてそういう問題が実施されるわけですから、六十五歳の問題も共済年金も含めて、厚生年金だけではなくして、そういうことを含めて今の時点で青写真をつくってやるべきじゃないか、僕はこんなふうに思っているのですよ。  例えば労働省が今、高齢者雇用の情勢、将来の若年労働者の不足、労働時間の短縮によって改善されるように見込んでいるようでありますけれども現実に今、求人倍率を含めて大変雇用環境というのはいいわけです。ところが、四十歳前の人たちに対する求人倍率は非常に高いわけですけれども、逆に五十あるいはまた六十歳の高齢になってくるとなかなか雇用というものが、自分たちの好きなところに、好きな業種に勤められないというのが現実なんです。こんなことを考えて、労働省はじゃあ、高齢者雇用の促進のために具体的な取り組みをどのようになさっているのか、はっきりしていただきたいと思うんですよ。将来の六十五歳、六十歳から六十五歳、こういう形で推移をするわけですから、そういう点で、この高齢者雇用という問題が私は大変重要な柱になってくると思う。こういう問題について明確にしてください。
  215. 七瀬時雄

    七瀬政府委員 昨今、人手不足感が広がっておりますそういう雇用情勢下にありまして、例えば四十歳末満の有効求人倍率が一・六三倍であるのに対して、五十五歳以上では〇・二四倍といったようなことで、高齢者雇用情勢は依然として厳しい状況にある、こういう認識を持っております。このために六十歳定年の定着を基盤とした六十五歳までの継続雇用について企業に御努力を願うとともに、各種の助成措置を講じながら継続雇用を図っていきますとか、あるいは人手不足雇用情勢が相当いいにもかかわらず高齢者雇用が進んでいない地域に対する積極的な取り組みでありますとか、あるいは安定所の機能を充実させるために高齢者のためのキャリアセンターを本年度から主要都市に設置するなど、いろいろと継続雇用の推進という角度からも、あるいは再就職の推進という立場からも努力をしているつもりでございます。
  216. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、今回の政府原案では、六十五歳引き上げに関する部分の施行は別途法律で定めることとされ、厚生省は今回は年齢の引き上げのスケジュールを明示したのみとしているわけでありますけれども、これは雇用情勢の改善を踏まえた上で実施に移行する、こういうふうに理解してよろしいですか。
  217. 水田努

    水田政府委員 そのとおりであると考えております。
  218. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今労働省が、この高齢者雇用実態というものを大変厳しい環境である、求人倍率についても〇・二、こういう形で述べられておるわけですよ。局長は、この六十歳から六十五歳に年金支給開始をアップされたときに、その辺についての雇用というものが完全なものにできると認識されているのかどうか、明らかにしていただきたい。
  219. 水田努

    水田政府委員 先ほどからもお答えしておりますように、六十一年の長寿対策大綱に示しました政府の方針、それから昨年決定いたしました第六次の雇用の長期計画で、六十歳定年の定着、それから六十歳代前半層の雇用の確保、こういう見通しのもとに、さらに平成年度から若年労働力が急激に減る、それから労働時間の短縮も進む、高齢者雇用についての環境が今後非常に改善されてくる。そうすれば、企業戦士と言われているところの中年層と高齢者との間のワークシェアリングというものがうまく政策的に展開されるならば、雇用の確保は必ずできるのではないか、私どもはこういうふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、年金の年齢を引き上げていくというのは社会的に大きな影響を与えるわけでございますので、早目に計画を提示させていただいて、その実施については、先ほどお答え申し上げましたように、雇用の進捗状況の検証を受けながら施行に移させていただく、こういう慎重な手続で法案を出させていただいている、こういうことでございます。
  220. 田中慶秋

    田中(慶)委員 鶏が先か卵が先かじゃありませんけれども、少なくとも年金の場合はこれからの高齢化社会の生活の中核となるわけですから、そういう点ではパイを稼ぎ出す方が先であろう、こんなふうに思うのです。そういう点では、雇用という問題をもっともっと明確にしていかなければいけないだろうと思うのです。社会全体が六十五歳という定年制を認知するような形で、労働省政府もすべてが一丸となって努力をしている、こういう気配がまだ見られないと思います。必ず出てくるのは今定年六十歳だと思います。定年イコール六十五歳と答える人はどこにいますか。いないと思いますよ。そういう点では、年金だけが六十五歳ということはどうしても納得いかないわけであります。これらに対する考え方をもっと国民の前に浸透するようにしなければいけないのではないかと思いますけれども、その辺大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  221. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 人生のスケジュールは全体に、大体二十代から働くとして五十代、六十代、昔は人生が五十年ですから、それから先は長い人生はなかったわけであります。しかし、今は人生八十年時代でありますから、全体の中で元気な時代として働く時間帯をどの程度に設定するかというようなことも今回の国民白書の中ではうたわれているわけでありますから、労働時間も含めて新しい時代に見合った設定が今回の国民白書の中にも提案されているように私は思います。そういうことを考えて我々が現時点で、また将来を展望してどのような雇用関係を維持して、どのような年金受給をしていくか、そういう意味で新しい時代に合った働き方というものが実際に生まれてくるだろう、生まれてくるというふうな待ち方ではなくして、積極的にそういう時代をつくり上げていく努力を積み重ねていくべきである、かように思います。
  222. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、今雇用の拡大、あるいはまた年金支給年齢引き上げの問題が提案をされているわけでありますけれども政府原案では年齢引き上げ平成十年から、こうされているわけでありますから、そういう点では年金制度の見直し、次期の再計算のときまでに改めて論議をする、こういう形で間に合うのではないかと私は思う。そうすると、今政府あるいは労働省を含めてすべてが六十五歳という大きな雇用の拡大に向けて努力をされているならば、ある程度六十五歳なり六十三歳なりというものが社会的に認知をされてくるだろう、こんなふうに考えますけれども、その辺はどうでしょう。
  223. 水田努

    水田政府委員 開始年齢引き上げという問題は、個人的にも社会的にも大きな影響を与えると思いますので、私どもはできるだけ早く国民の前に将来計画を明らかにしておくのが政府の務めではないか、このように考えている次第でございます。
  224. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、実は私どもはかねてから、年金財政観点から、雇用年金の連帯を図る意味から部分就労あるいは部分年金という新しい仕組みも当然ここには検討されていいのではないかということを提案してまいりました。外国でもその例もありますし、また、今、六十歳から六十五歳に引き上げるということについて、こういう点では当然部分就労・部分年金という制度も前向きに取り組む必要があるのではないかと思いますけれども、その辺についてどのようにお考えになっておるのか、考え方を明らかにしていただきたい。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕
  225. 水田努

    水田政府委員 ごもっともでございまして、私どもは、日本型の部分年金・部分就労として現在ありますところの在職老齢年金改善するという形で対応することが最も妥当だということで今回改善措置をとらせていただいているところでございます。
  226. 田中慶秋

    田中(慶)委員 次に、給付の問題について質問をしてみたいと思います。  我が党の主張により、前回改正において基礎年金制度が導入されたわけでありますが、基礎年金給付水準の月額五万五千五百円は夫婦月額で十一万一千円になるわけであります。この十一万一千円で現実に生活ができるのでしょうか。もし生活ができると思うのでしたら、その根拠を含めて述べていただきたいと思います。
  227. 水田努

    水田政府委員 基礎年金給付水準は、前回の改正の際に、老後生活の基礎的な部分を保障する、いわゆる衣食住、光熱費を対象にそこを保障するという形で設定をさせていただいたわけでございますが、今回の改正に当たりましても前回の改正の考え方を踏襲いたしまして、具体的には、五年に一回ずつ行われております五十九年の総務庁の全国消費実態調査における六十五歳以上の単身無業高齢者の月々の基礎的消費支出、食料費、住居費、被服費、光熱費五万七百二十六円を基準として、その後の基礎的消費支出の上昇率一・二%で伸ばしますと、平成元年度価格でこれが五万三千百円となります。これに前回改正と同様、諸雑費の一部として二千四百円を乗せ五万五千五百円として設定をさせていただいたということでございまして、私どもは、老後生活の基礎的な部分を保障する、こういう考え方に立っております。
  228. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私が質問したのはそのようなことではなくして、十一万一千円で生活が本当にできるのかどうかという質問をしたのであって、今の社会で十一万一千円で夫婦二人生活できると思うのですか、局長
  229. 水田努

    水田政府委員 老後生活のすべてを賄うことはできないと思いますが、先ほどお答え申し上げましたように、消費の実態から見ましても基礎的な消費支出を賄うことは可能である、私どもはこのように考えておる次第でございます。
  230. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これはお互いイタチごっこかもわかりませんけれども、ただ私は、そういう点では、基礎年金給付水準をもっとアップする意味でも、国庫負担の現行の三分の一を大幅に引き上げ給付改善を図るべきではないか、こんなふうに考えているわけですけれども、その辺について局長考え方を求めたいと思います。
  231. 水田努

    水田政府委員 さきの年金改革で、全国民を通じて公平に配分をするということで国庫に三分の一集中されたわけでございますが、先ほど大臣の答弁にもありましたように、現行の三分の一の補助率をもってしましても、受給者増や今後の給付改善による給付費の増大によって国庫負担も急激にふえてまいりますので、今後の我が国の厳しい財政状況考えました場合に、この負担率を上げることはなかなか困難ではないか、このように考えております。
  232. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これは財政という問題も関係あるからでしょうけれども、はっきり申し上げて、少なくても年金局長の答えることじゃありませんわな。やはり年金局長というものは、将来の年金はこうあるべきスタイルであって、そこまで努力をしていかなければいけない、私はそんなふうに思うのですよ。  例えば、それだったらもう一つ、今低水準に抑えられている国民年金、この経過的老齢年金あるいはまた老齢福祉年金、こういうことを見たって、これだって非常に低いでしょう。それだったらこれを大幅に改善すべきじゃないかと思いますが、どう思いますか。
  233. 水田努

    水田政府委員 五年年金、十年年金、老齢福祉年金、この三つでございますが、十年年金につきましては、二十五年の本来的な加入期間に対して、十年の拠出でその十年分にさらに六割増しの金額で、今回の改正でございますと、三万三千七百十七円の金額を支給するわけでございますし、また、五年年金につきましては、十年年金の半分ということでスタートしたわけでございますが、これは改善をしてまいりまして、十年年金の八五%支給するというところまでいっているわけでございます。老齢福祉年金も五年年金とほとんど車間距離のない程度ぐらいまで改善をいたしておりまして、今回の改正で二万八千四百円のところまで持っていっているわけでございまして、これをさらに改善をするということは全体的に基礎年金の額を引き上げることとなり、将来の国民年金の被保険者の方の負担増を考えると、これ以上は無理ではないか、このように考えておる次第でございます。
  234. 田中慶秋

    田中(慶)委員 あなたが言っていることは矛盾していますよね。例えば世代間の中でのそういう負担問題は、先ほど来年金の基本的なあり方として述べられていますよね。しかし、確かにこの人たちは掛金は少ないかもわかりませんけれども現実世代間を言うならば、もっとこの人たちに手厚くしてもいいんだと思うのです。片方においては消費税を取り、片方においてはそういう問題を含めて、いろいろなことを含めてこれからの福祉という問題を想定する、確かにいろいろな五年年金、十年年金の問題はあるでしょう、しかし、生活は同じなんですよ。年寄りの生活は同じなんですから、そういう点ではこういう問題を、大幅に引き上げるべきじゃないかな、素朴にそんなふうに私は思うのです。大臣、いかがですか。
  235. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今田中先生の御提言の問題は非常に重要な問題で、御承知のとおり、今、年金制度というものは国民全体の社会的な保障の上に成り立っておりますけれども、その負担については国民合意が必要である。特にこの問題については問題意識としては非常に重要な問題意識として我々もとらえております。そして、さらに、この問題について金、負担という問題になると、これは年金を維持する問題も保険料も、同時にまた国から出す公費負担の面もいずれも税金でありますから、これの将来的な、非常に大きな額に膨れ上がっていくことを考えてみると、これは非常に重要な国民的選択が必要であり、しかし、問題意識としては当然この問題はその範疇に入るものと私は思っております。
  236. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大臣のそういうような前向きな答弁、私はこれからの医療福祉ということについて、我々も政治家なんですから、そういうことを議論すべきだと思うのです。今どちらかというと、むしろ後退的な論議しかできないわけであります。  例えば、今この保険料引き上げ、前回は一・八%でしょう、今回は二・二%になった根拠なんて私は何も感じられないわけなんです。給付負担の問題だって、必ず答えがそう決まって出てくるわけでしょうけれども、その辺も時間がありませんから、またあしたも質問させていただきますけれども、最後に、きょうはその辺の答弁を求めて、私の質問を終わります。
  237. 水田努

    水田政府委員 この問題につきましてはたびたびお答えを申し上げておりますが、五十六年の将来人口推計と、今回用いました六十一年の将来人口推計で、男女とも平均寿命が三歳延びた。そして、三十二年の受給者数が二百五十三万人増加した、これに伴って最終保険料率というものが大幅に拡大した、それを二六%まで抑えるということで、その間の保険料引き上げ幅を、単年度を出さず、積立金に手をつけないという形で平等に引き上げていこうとすると、二・二%の引き上げお願いせざるを得ない、こういうことでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  238. 田中慶秋

    田中(慶)委員 まだあと一分ありますから、それじゃ申し上げましょう。  それだったら、少なくても今六十七兆円の積立金があるわけですから、自主運用したらどうなんですか。はっきり申し上げて、まだ一割しかしてないじゃないですか。二分の一をすれば四千億から五千億、その利子が入るわけですから、何も年金だけを財投にする必要はないです、郵貯でも財投に充てればいいじゃないですか。お金が要るんですから、みんなで総体的に工夫してそういうことをすべきじゃないか。ただ数字だけのごろ合わせじゃいかぬと私は思うのですよ。その辺明確にしてください。
  239. 水田努

    水田政府委員 先ほど大臣からもお答えがありましたように、自主運用の拡大に平成年度の予算編成の際に最大限努力をしてまいりたい、このように思っております。
  240. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたから終わります。
  241. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 田中美智子君。
  242. 田中美智子

    田中(美)委員 国年の基礎年金を五万五千五百円に引き上げると言っていますけれども、現在この国年の受給者の平均額は幾らでしょうか。
  243. 土井豊

    ○土井政府委員 約二万九千円でございます。
  244. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、五年前にさかのぼって一一%で五千五百五十円上げるということですね。これは一般の方たちに非常にわかりにくいのですね。モデルで五万五千というのですけれども、現状は二万九千しかもらってないわけですから、二万九千の人が五千五百円上がるわけじゃないんですね。幾ら上がりますか。
  245. 水田努

    水田政府委員 個々によって違うわけでございまして、二万九千円というのは、先ほどからお答え申し上げておりますように、減額年金の請求をされた方の平均であって、結果的に二万九千円ということになっておりまして、その中には五年年金の方もあれば十年年金の方もあれば、二十三年年金の方もおられるということで、一律には申し上げられないと思います。
  246. 田中美智子

    田中(美)委員 非常にわかりにくいようにわかりにくいように制度ができているし、わかりにくいようにわかりにくいように年金局長はお答えになる。もう少しはっきり国民に、自分は今幾ら、今度上がったら幾ら入るのかということが本当にわかりにくい。平均で今二万九千円もらっているわけですから、五年前の一一%上がるわけですから、五年前というのは二万六千七百五十二円だったわけですから、これに一一%を足しますと二万九千六百九十四円になるわけですので、今平均で二万九千円もらっている国年の方たちは一カ月六百九十四円上がるということなんですね。こういうことを、平均ですよときっちり説明してあげてほしいんです。その上で十年年金とか減額の人はこうなりますよ、こうならいいのですけれども、ばあっと初めから五万五千円ありき、五千五百円上げましたと言うので、みんな五千円が十カ月戻ったら五万円入るのではないかななんという勘違いをする。それは意図的にしているんじゃないかなと、私など嫌がらせの年齢ですから、そういうふうに思うわけなんですけれども、よく考えてみたら、一カ月六百九十四円、一日二十三円しか上がらない、夫婦で合わせても四十六円しか上がらないということは、余りにもひどい年金の、これでも改正と言うのだというふうに思います。  それで、現在年金をもらっている受給者の数は何人いるか、その人数の中で三万円以下の年金受給者は何%か。お答えください。
  247. 土井豊

    ○土井政府委員 国民年金の老齢年金の受給権者数は七百二十五万人でございます。そのうち三万円以下の方は六二%でございます。
  248. 田中美智子

    田中(美)委員 六二%、半分以上の方たちが三万円以下の年金だということです。先ほど同僚議員がおっしゃっていましたように、五万五千五百円、夫婦で十一万円だ。足らないけれども基礎的なものは賄えると局長さんは言われましたけれども現実は、そんなものをもらっている人は非常に少ししかいない、三万円以下が六二%もあるということをやはりはっきりさせてもらいたいと思うのです。  それで、一般の労働者の賃金はこの五年間で、そちらも五年でやりますからこちらも五年でやりますけれども、五年間で二四・三%上がっているのです。ところが、国民年金の方は五年間で一一%しか上がっていない。今、金持ち日本と言われている割には日本賃金は低いじゃないか、金持ちだと思っていたら、実際に日本人の生活を見てみたら随分低いじゃないかというようなことを言われています。それでも何とか日本の労働者は食べていっています。これが二四・三%上がっているわけですから。しかし、三万円以下の年金受給者というのは、これではとても基本的な生活が賄えるとは局長にしても言えないと思うのですけれども、賄えますか。二万九千円で賄えますか。
  249. 水田努

    水田政府委員 基礎年金というのは、平成年度からの満額の五万五千五百円というのは現実に発生し、現時点で最も長期加入しておられる方は二十三年でございますが、この方々は今回の改正で五万七百八円になるわけでございまして、くどいようでございますが、先ほどから申し上げておりますのは、繰り上げ減額年金を請求されているために結果的に金額が低くなっている、こういうことでございます。  なお、賃金の上昇率でございますが、一一%、これは年率に直しますと二・一%でございます。五十八年から六十三年の賃金の上昇率は年率にして二・九%でございますが、当然この賃金の上昇はすべて消費に回るわけではございませんで、貯蓄その他に回るわけでございます。基礎年金については消費支出の増大に伴ってやるということですから、当然その間に差があることはやむを得ないと考えております。
  250. 田中美智子

    田中(美)委員 よくそんなことを平気でおっしゃいますね。お年寄りは貯金も要らないし、温泉に行くための金を少しずつためていく必要もないし、ただその日その日飲んで食っていればいい、そういう発想じゃないですか。二万九千円で飲んで食うだけでもできますか。こんなことを言っていたら話になりませんけれども、余りにもひどいと私は思います。  こういう状態でいきますと、一般の労働者の生活とお年寄りの生活というのはもうどんどん、どんどん格差が広がっていく。労働者の生活を見ながらお年寄りはいつも本当に寂しい思いをして、生きていることが邪魔になっているんじゃないかというような感じになりながら、ただただ食う、飲む、それさえもできないような、結局だれかに助けてもらえなければ、子供だとか、子供のない人はどうするのかということですけれども、この格差というのはどんどん広がっていく。年寄りだって若者と同じようにきれいな服も着たければ、おいしいものも食べたければ、いいうちにも住みたければ、旅行もしたい、温泉にも行きたい、外国にも行きたいのです。それは死ぬまで同じだと私は思います。  自分の体が動けなくなったらなったなりに、それなりのいろいろな文化的要求もあるはずですよ。そんな動物のように、ただキャットフードを食わしといたらいいというようなものではないということです。労働者とどんどん差が出てくる。戦後は私たちは本当にアメリカの豚のえさのようなものを食べました。特に私もひどい生活をしました。しかし、あのときはみんながそうだったのです。だからいいとは言いませんよ。しかし、どんどん差が出てくれば、若い人たちはどんどん遊んだり、いろいろな文化的な要求も満たしているのに、年寄りはそれが何もできない。今の社会をつくったのはだれなんだという考えがこの年金制度の中では抜けているのではないでしょうか。お年寄りが社会の底辺に取り残されてしまうと私は思います。  今、厚年について触れる時間がありませんので、これはまた児玉議員にやっていただくとしまして、今私は国年のことを触れたわけですけれども、こんなささやかなものでもお年寄りは待っています。厚年もあわせまして、物価スライドの問題等、物価スライドというのはこれは労働者の賃金考えますと定期昇給だというふうに考えてもいいんじゃないでしょうか。また再評価の値上げというものはベースアップの部分に当たるものではないかと思うのです。金額を上げるというのは闘いですけれども、決まった定期昇給というものは闘ってとるものじゃないのですよ。当然の権利なんですよね。ですから、これをなぜ今まで払わなかったのか。四月にさかのぼって払わなかったのか。その当然の権利を今まで抑えていた。そうしていて、厚生大臣に至ってはこの間どこかの委員会では、あめとむちだなどというような言葉を使っていましたけれども、これはあめでは絶対ありません。当然の権利なんです。これを今まで払わなかったということは、本体と抱き合わせにして、それを通さなければこれは出さないぞということでやってきた姿勢というのは許せないと私は思うのですね。一日も早く本体と切り離して、このささやかな基礎年金に至っては一日二十三円というような安いアップ額は不満ですけれども、一日も早くこれをお年寄りの手に届けるというのは当然のことだと思いますけれども、その点厚生大臣にお伺いいたします。
  251. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 今、私があめとむちと言ったということでございますが、それは私が言ったのではなくして、その討論の席にあめとむちという言葉が出て、私はあめとむちのあめと言ったわけじゃないのです。私の言っている趣旨はその逆で、あめではなくて、改善部分とそれから負担の部分というものがあめとむちという言葉で出てきたので、あめとむちという言葉をそのときに私も使っただけで、私はそうは思っておりません。  それからもう一つは、年金制度先生はどうも暗い面ばかり見ちゃっているんじゃないかなと、これが事実だとおっしゃるだろうと思います、そのとおりだろうと思います。ですから、我々のこの社会の中にもいろいろな不遇な人たちもいると思うのです。そういうような人の救済の道もあるでしょうけれども、今、年金はやはり年金のモデル的なものを論議しているので、しかも、そのモデル的な問題も、御承知のとおり欧米諸国から見たらまだ非常におくれている。しかし、我々が目指している、現在志向している法律の上で計算したモデル的なものは、決して世界の水準から劣っていない。イギリスに比べてみてもそのとおり、ドイツに比べてもそのとおり、基礎年金というものは決してモデル的にはそう劣っていないのです。  ただ、もう一つそういった意味での年金というものが成熟していない面もありますし、今言った個別に他の方法で助けてあげなければいけないような人もいる。こういう関係の問題を年金だけに全部焦点を合わせていくと、どうしても暗い面だけが見えてきてしまって、年金の前進というものは私はなかなか得られないのじゃないかなというような考えも持たざるを得ません。そういう意味で、お話を聞けば先生のおっしゃっていることはよくわかります。
  252. 田中美智子

    田中(美)委員 暗い面というふうにおっしゃいますけれども、七百何万人かのうちの、明るい面にいたしましても五万円以下なんですからね。暗い面というのは、六二%いるとあなた今おっしゃったじゃありませんか。この人たちが暗い面ということは、半数以上の人たちが暗い面ということでしたら、年金制度は暗いということをお認めになったことだと思います。  次の質問に行きますが、今度は掛金は八千四百円、これは月額ですからね、八千四百円になる。夫婦二人だと一万六千八百円になる。年々四百円ずつふえていく。そして一万六千百円まで上がっていく。こういうことになりますと、上がるときのことは後にしまして、現在毎月八千四百円、一人か夫婦かわかりませんけれども、これを払っていく。今滞納者が、新聞など見ていますと、どんどんふえていくということはひしひしと国民感じているわけですが、今免除者と滞納者がどれぐらいいて何%ぐらいになるかということを数字をお示しいただきたいと思います。
  253. 土井豊

    ○土井政府委員 免除者の状況でございますけれども昭和六十三年度で申し上げますと二百二十三万六千人、一二・二%の免除率に相なっております。それから、滞納の状況でございますが、未納率という形で申し上げますと一五・七%の状況でございます。
  254. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、足しますと大体四百五、六十万の方たちが現在保険料を払ってないということですね。パーセンテージでいきますと、大体二八%ぐらいの人たち、三〇%近い人が払っていない。今、六十三年度というふうに言われましたけれども、年々ふえているというので、どうなるんだ、どうなるんだという声が出ておりますけれども、大体今現在、免除者と滞納者を合わせると三〇%は超していると言われるのですけれども、今のは六十三年度の数字ですから三〇%にもうなっているというふうに推定できますけれども、大体そうでしょうか。
  255. 土井豊

    ○土井政府委員 免除率の傾向を見てみますと、五十八年度は一六・七、五十九年度が一七・四、その後逐次減少しておりまして、現在は一二%程度ということになっております。したがいまして、この傾向が続くとすれば、逆に免除率の方は減少傾向である。  滞納率でございますけれども、最近数年間大体一%程度ずつ徴収実績が向上しておりますので、全体として今おっしゃいました三〇%を超えるというような状態ではなくて、大体二八%から少しそれが減るような傾向にあるのではないかというような見方ができるのではないかと思います。
  256. 田中美智子

    田中(美)委員 それは大分数字、インチキだな。あなたの方の出している数字で、そうじゃないですよ。確かに免除は少し減っています。これはもう締めつければ、免除しない。そうすれば結局、滞納になっていくんですね。だから滞納が厚生省出した表で飛躍的に伸びているじゃありませんか。今は滞納は一六%。今でも一五・七%でしょう。これはもうどんどんずうっとふえていっているわけですから、推定ですから何とも言えませんけれども、あなたは推定として減るだろうと言っているのですけれども、この推定で見ますと、ずうっと滞納者がふえているのですね。  ましてこの掛金が、ちょっと飛躍しますけれども一万六千百円になっている。そのなっていく過程でどんどん上がっていくわけですからね。最後には夫婦で三万二千二百円、毎月ですよ。毎月払うのですからね。一カ月滞納し、三カ月滞納したらもう十万円払わんならぬですよね。そんなことが、今まで滞納したり免除してもらっている人たちというのが、よほど宝くじで、ジャンボくじでも一億円年末にでも当たれば一遍に払えるかもしれませんけれども、そんなに一遍に、今までこうなっていた人がきゅうっとこういうふうにいくということはないですよ、今のような状態の中で。この景気がいい、いいと言われる中で、底辺というのは本当に大変な状態になっているわけです。  まして大学生がいたり専門学校に行ったりしている子供がいれば、これはもう大学生であって学校に行かないでアルバイトして自分で払っていればこれは別ですけれども、勉強に専念していれば、やはり今度大学生も出すんだということになれば、これがみんな八千四百円から一万六千百円までどんどん足していくわけですから、月に払うものというのは物すごい金額になるわけです、毎月毎月五万円も六万円もと。そうすると、主婦がパートで行っているのに、月に五万、六万という賃金は多いわけですからね。これを全部年金の掛金にとられてしまう、こういうふうな状態から見ますと、滞納者はこれから飛躍的に進んでいくというふうに想定している学者は大変多いと思うのですね。この点、大臣、滞納者がどんどんふえていったら大変じゃないですか、何とか手を打つということはできないのですか。
  257. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 滞納者がふえるということは、年金制度というものから見たら大変寂しいことだと思いますね。それで私は、一つは年金というものに今みたいに暗いと言うと語弊があるけれども、そういう面ばかり見ていかないで明るい面、年金というものはやはり将来保障されるんだという面を見なかったら、掛金を掛けていこうという、また希望も出てこないと思うのですね。  この前に、ちょうど決算委員会でしたけれども、ある方から御質問がありまして、自分の選挙区のお年寄りに聞かれて、ちょうど年金ができるときには掛金が百円だった、しかし将来、二千円もらえるのだからなといって、それだったら希望を持ってひとつやろうかといって百円掛けてきたんだけれども、その当時、二千円ということは百円の二十倍だから二十倍もらえるだろうと思っていたら、今二十倍になっていないということを言われたというのですね。  しかしながら、今言っている五万五千五百円とか五万円というようなものは、そのとき百円納めた人がいただく年金が五万円なんだというふうに考えていったら非常に夢があるのですね。ですから八千円掛けている人が五万円もらうんだといったら、だれも掛ける人いないのですよ。八千円掛けている人がいただくのはちょうど百円掛けて今五万円もらっているように、そのときには相当の額に、私はまだ計算はしておりませんけれども、額になってくるんじゃないか、こういう明るい面をひとつ理解していただきたいというふうに努力をしていくべきだろう、私どももよろしくお願いいたします。
  258. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣の発想は何だか競馬の発想のような感じで、百円掛けていたら夢があるとか、そういうふうに言われますけれども、今のお年寄りがどういう生活をしているかというふうに社会保障の発想から物を考えないと、それは競馬の発想と言えばちょっと失礼かもしれませんけれども、聞いていて、百円掛けていて夢があると言うと宝くじか競馬みたいな感じに受け取れたのです。  私は、七二年に初めて国会に出てきました。そのときに年金の話をしたときにも、将来のお年寄りが、十年後、二十年後のお年寄りがと盛んに言っていました。ところが、今だって二十一世紀の年寄りが年寄りがと言うのです。今の年寄りがどういう生活をしているか。国年の六二%が三万円以下です。昔百円掛けたからこの二万九千円には夢があるんだというふうにはお年寄りは思わないのですよ。実際にどう生活しているか、この観点に立っていないと、人ごとのように、競馬や宝くじのように、宝くじは夢がありますよ。何枚か買えば年末に一億円当たるかもしらぬという夢はありますけれども、そういうものと年金は違うのです。今、夢があるから皆さんが払うと言うのですけれども、免除者と滞納者というのは無年金になっていく予備軍でもあるわけです。  滞納者がどんどんふえて四〇%、五〇%になるという計算出しているある福祉関係の大学の先生がいるのです。その先生はまだ四十代なのに、最近私に、この年金の改悪以来もう入りたくないと言うのです。彼は国年じゃないけれども基礎年金になるわけだから、二十年先にこういうのはばからしい、だから年金を脱退すると言うのです。私的年金を掛けた方がよっぽどいい、そう言って、出ると言うのです。それで私はその先生に、あなたは何を言っているんだ、日本年金制度をどう成熟させるかということのために勉強している学者じゃないか、あなたが考えることは日本年金制度を崩していく発想なんだという論争をした。そうしたらその先生は、いや、今の政府のやっていることを見たら、これは崩れる、先に夢がない。今、戸井田大臣がおっしゃったように夢があれば掛けますよ。夢がないから抜ける、こう言っているのです。  これはここで論争しても始まりませんけれども、少なくともこの基礎年金制度というのは、このままにしておけば近い将来崩壊の危機にさらされるということは非常にはっきりしていると思うのです。ですから、払えないという人たちじゃなくて、共済年金であっても私学共済であっても厚生年金であっても、年金に入りたくないという人が出てきているということは事実ですので、いかに今の年金制度に夢がないかということを私は大臣に申し上げておきたいと思います。  次に、今無年金者が何人おりますか。
  259. 土井豊

    ○土井政府委員 私ども年金者に関する正確な統計は持っておりません。ただ、国民生活基礎調査等の実態調査で推計をいたしますと、約七十数万人程度という数字が出てまいるという状況でございます。
  260. 田中美智子

    田中(美)委員 この七十数万人というのはちょっと多い数ですが、推定ですから。前には百万ぐらいということを聞いておりました。この人たちはどうしますか。餓死するでしょう。どうします
  261. 水田努

    水田政府委員 PRすることによって加入していただく以外にないと考えております。  なお、蛇足でございますが、先ほど大臣が言われましたことを敷衍して言わせていただきますと、五年年金、それから十年年金加入しておられる方が現在もらっておられる年金額を月額に直しますと、納めた保険料の一カ月ないし二カ月分で現在の年金額をもらっておられます。
  262. 田中美智子

    田中(美)委員 今ちょっと聞こえなかったのですけれども、無年金者をどうするかということです。
  263. 水田努

    水田政府委員 無年金者については加入するようにPRをし、説得し、入っていただくということであろうと思います。
  264. 田中美智子

    田中(美)委員 ちょっと勘違いしていらっしゃるのですか。七十、八十になって今から加入するのですか。今七十になって無年金になっている人ですよ、これをどうしますかと聞いているのです。それを加入させるというのですか。
  265. 水田努

    水田政府委員 制度発足のとき五十歳を超えられた方については老齢福祉年金支給されるようになっております。
  266. 田中美智子

    田中(美)委員 そんなとぼけた、ふまじめな返事をしないでくださいよ。今全く年金をもらえない人を私は何人も知っているのです。七十一だとか七十五になって全然年金のない人がいるのです。  年をとったら年金で生活しようということが国民の中に定着したのはこの十年ぐらいですよ。その前は、本人の怠慢もあるかもしれませんが、しかし政府PRがどんなに悪かったか。さかのぼって掛金を掛けるということを今まで三回やりましたけれども、あのときだってテレビにもきちっと出さなかったし、国民に知らせる努力をほとんどしなかったじゃないですか。それでも、無年金者にならないようにということで何人かの人は救えましたよ。それから落ちこぼれた人がこんなにいるというのに、明治四十四年以前の人には老齢福祉年金がありますからと言われる。それは年金があるじゃないですか。私が七十何万と言うのは、年金がない人のことを言っているのです。そんなのは手の打ちようがありません、だれかに養ってもらうか餓死するかしかしようがありませんと、正直に、はっきり言ったらいいじゃないです  その次に、厚生年金の男性と、女性の平均受給額は幾らですか。
  267. 土井豊

    ○土井政府委員 昭和六十二年度の新規裁定者の平均年金額を申し上げますと、男子は十七万八千円、女子は十万八千円という状況でございます。
  268. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、女子の年金は男子の六〇・六七%ということで、非常に低いですね。これは二十年以上掛けた人ですけれども、この格差はいつになったらなくなるでしょうか。
  269. 水田努

    水田政府委員 男女雇用機会均等法が制定されまして、男女の格差が賃金の面においてもなくなれば当然年金額においても格差はなくなる、このように考えております。
  270. 田中美智子

    田中(美)委員 賃金の格差がなくなるのはいつごろだと推定していらっしゃいますか。
  271. 水田努

    水田政府委員 労働省じゃないので、その点はつまびらかにいたしません。
  272. 田中美智子

    田中(美)委員 労働省じゃないのでわからない。ということは、これは半永久的に格差がなくならないということですね、そうでしょう。掛金は今少しずつ女があれしておりますけれども賃金の格差というのはなかなかですよ。今だって男性の六〇%にいってないわけですから、これが一〇〇%にいくというのは、もう本当に半永久的と言ってもいいくらいに、格差はなくならないのですね。そうしますと、この状態がずっと続くということは憲法十四条に違反していますし、女子差別撤廃条約にも違反していますし、今局長がおっしゃった男女雇用機会均等法にも違反していると言わなければならないですね。それを、労働省でないからわからないということで厚生省は男女の格差を縮めることに全く手を打たないということでしょうか。打つ手はないということでしょうか。はっきりおっしゃってください。
  273. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 先ほどのことで申し上げておかなければいけない問題が一つあります。それは無年金者の問題でございまして、無年金者の救済をするために何回か、先生がおっしゃったように、やはりいろいろな努力を三回ぐらいやりましたよ。それでもある。年金というのはやはり加入という条件があるので、加入しない人の問題については年金というもので解決することは、加入者との差が出てきますからなかなか難しいんじゃないかと思います。  それから、今の男女差の問題でございますけれども、やはり男女間の給与水準というものもだんだん格差が縮まってきておりますが、職業によって、例えば男でも大工さんなんかは今物すごく高いですからね。普通のサラリーマンなんかから見たら問題なく高い。ですから、仕事によっても格差がありますけれども、大体流れとしては、男女雇用平等法等ができ、そして方向としては格差がだんだん縮まってきているのだと私は認識しております。
  274. 田中美智子

    田中(美)委員 それは格差はだんだん縮んでいくでしょう。ただ、それが何年先かと考えたときに、半永久的だ。今ここを見てください。ずっと全部男じゃないですか。女が半分いるんですからね。女が半分いるようになれば、ここにいらっしゃる方はみんな高級なんじゃないですか。そういう中にはなかなか女は入れない。そういう状態がある限りは、女の年金というのはいつまでも男の何%という低い年金でいかなければならないということだと思います。  それで、最後に申し上げますが、基礎年金は今申し上げましたように崩壊の方向を向いています。その前に、今大臣が言われましたけれども年金は掛けてなければ、こういうふうに言われましたね。それで、努力はある程度した。しかし、私はあの努力は非常に足らなかったというふうに思うのですね。第一、テレビや新聞で、早く掛けなさい、掛けなさい、何年にさかのぼってあれしますからというので、三回目のときには五十万近く払わないと戻らなかったのです。一回目は非常に安かったですよ。ですから、私など一生懸命PRしましたけれども、私一人の口では、幾らおしゃべりだって一億国民には知らせられないのですよ。だからあのときだって何遍も、広報なんかでちょこっと出したんじゃだめだ、テレビ、新聞すべてに、今まで払ってなかった人は大体何万ぐらい払えばいいんですよ、そうしたら年とってからちゃんと年金が出るんですよとPRをしなさいと言ったにもかかわらず、それは大臣じゃないかもしれませんけれども、少なくとも自民党政府はその努力を怠っていた。だから、本人が無知であったり、怠けていたり、金がなかったりという形でみすみす払わなかったということは起きているかもしれませんけれども現実に今ここに無年金者が出て、生活ができない人が出ているという現状は、これはやはりどういう理由があろうと社会保障というのは憲法で保障されているのですよ。  老人福祉法では基本理念として、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるもの」ということは福祉法で決められています。まして憲法では、一番有名な言葉である「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」、これは刑務所に入っていようと、どんなに怠け者であろうと生存権として憲法で保障されているのです。また、この二十五条の二項には、「社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」社会保障を受ける権利というのもあるわけです。  ところが今の日本年金制度というのは、基礎年金は崩壊の方向を向いていって、それをどこで食いとめるのか。崩壊してから、掛けた人にはお気の毒ですけれども滞納者がいっぱいいたために初めのとおりに払うことができませんなんて言われては、夢も何も持てないですよ。また厚生年金に至っては、これは上乗せ分ですから、いい悪いは別といたしまして、全く私的年金と同じ状態になっているんですね。基礎年金にわずかに三分の一の国の補助がある。それも今から考えてみますと、八五年でしたか、この年金制度の括弧づきの大改正がやられましたときに、あのままの制度でいけば国の出す金は二〇二〇年に八兆二千億。ところがあのときに、改悪したときに、そのままの制度で改悪していないですからね。基礎年金というような形で、どこが改悪されたのか国民にはよくわからない。でも、よく見てみると国の出す金が三兆五千億円も減るようになっているんですよ。だから、国が国民にわからぬように、わからぬようにどんどん手を引いていっているのです。  ですから、さっき言ったように、福祉の専門の大学の教師をしている人が、この年金ではもう嫌だから脱退して私的年金に入るというような、夢がなくなるような状態になっている。このような矛盾に満ちた年金制度は、幾ら頭のいい日本の官僚がいじくり回しても、手直しをしても、この矛盾というのは解決できないのです。この矛盾はどんどん拡大されているというふうに私は思います。国民年金に対する不信感もどんどんふえています。  ですから、今大臣のところには来ているかどうかわかりませんけれども生命保険会社とか郵便局も、郵便局は国がやっているんでしょう、あれがうちに来ますよ。そして私が国会議員と知らないで、奥さん、もう国の年金制度はとてもだめです、どんどん悪くなるから郵便貯金年金制度にお入りなさい、生命保険年金制度に入っておかなければ年をとって困りますよというようなことを言うんですね。ということは、一般の国民信頼してないだけじゃなくて政府の機関までが信用してないんですよ。今の年金制度に不安を持っているのです。年をとってから食えなくなって何とかしてくれといったって間に合わないわけですから、若いときから準備しなければならないということで、そういう方の年金に入る人が今非常にふえてきているというふうに思います。  それで、日本年金制度社会保障と保険制度の相乗りと言われているわけですけれども、先ほど言いましたように、国の出す金というものをどんどん減らしてきているわけですから、社会保障の部分が拡大されていかなければならないのです。こういう憲法で保障されている社会保障というのがあるわけですから、ここの部分が広がっていかなければならないのに、ここの部分がどんどん減っていっておる。そして保険の部分がどんどん拡大されていっているわけです。こういう方向を向きますと、日本国が年金保険株式会社を経営しているというふうな感じになってきているから、私的年金で郵便貯金に入ったり、生命保険に入ったりというふうなことというのはそこに不信感があるからです。国の年金制度老後は大丈夫というふうに安心していればそんなところへ掛けませんよ。こんなふうになっていると思うのです。  こういう形はどこに一番問題があるかというのは、私はこう思うのです。日本年金制度は、掛金を掛けた金額とそれを何年掛けたかという年限によって年金額が決まるようになっているんですね。ですから、働いているときの収入の多い人はたくさん掛けているし、それを長く掛けた人は年金額は高くなっているわけです。それが当たり前だ、これは自民党の議員はみんな思っていらっしゃるのですが、こんなのは社会保障考え方じゃないんですよ。日本国が年金保険株式会社をやっているのです。ですから私は、厚年の二階部分にまでそれを言えとは言っていません。少なくとも基礎年金というものは社会保障に近づけていかなければいけないんですよ。それが当然じゃないですか。そういう国が、今ヨーロッパにもどんどんふえています。スウェーデンでもデンマークでもふえています。ですから、基礎年金というのは、過去の生活がどうであろうと老齢化して事実上働けない状態になったお年寄りには、国と企業が責任を持って憲法二十五条に示されたとおりにやるべきだ。今の基礎年金部分を国と企業が負担する無拠出の最低保障年金に改め、すべての日本人に無条件で保障するように根本的に改革すべきだと思います。  大臣、これはよく聞いていてください。あなたが大臣のときに、すぐこのようにはできないかもしれないけれども、あなたが大臣のときに、こういうことを言っている議員がいたということはよく胸に入れておいていただきたいと思うのです。国と企業の負担で無拠出で最低保障年金をすべての日本人に無条件で保障するように根本的に改善すべきだと私は思います。そうすれば無年金者というのは全部解決できます。それから男女の格差というのは大幅に改善されます。その意味で、思い切った年金に対する発想の転換を今しておかないと日本年金制度は崩壊してしまうと思うのです。  金持ち日本と言われているのに国民は金持ちだという印象がないというのは、今はテレビでも新聞でもあらゆるところで言われているわけです。金持ち日本と言われるならば、少なくとも年をとってから生活は心配ないのだという安心感、せめてそれだけでも働く人たちが持つことができれば、金持ち日本の実感というのはそこからにじみ出てくると思うのです。多少賃金が少なくても、年をとってからは安心なんだ。それが、若いときに掛け切れないような掛け金を掛け、それも四十年も掛けなければ老後は安定してない。こんな国では、サミットに参加している国の中で最もおくれた国と言われているのは当然です。  大臣は、スウェーデンの年金水準日本は達しているなどということを本会議のときに言われましたので、これは御存じないなと思いましたけれども、スウェーデンにしてもデンマークにしてもお金のほかに、それだけの基礎年金人たちというのは家がただで提供される。車いすとかそういういろいろなものがただでやられる。医療もただでやられる。こういうものを全部やられる。現物給与がうんと多くなっているのです。それを全部ネグっておいて金額だけを、それも円高で円が上がったときの計算をしてくっついたなどと言うのは、無知と言おうか、それともためにする、国民に対して日本年金制度の欠陥を隠す姿勢と言わなければなりません。これについての大臣の率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。
  275. 戸井田三郎

    戸井田国務大臣 先生も眼鏡をかけておるし私も眼鏡をかけておりますけれども、お互いに眼鏡が違うとこんなに物の見方や考え方が変わるのかなというようなことがよくわかりました。大変御熱心に御説明をいただいて、先生のお考えは速記録にもきちっと残っておりますし、田中先生がああいうことを言われたなということは絶対に私たちは取り消したり速記録から削ったりとかということはしません。後世の人がよく見ていただけることだろうと思います。  ただ、年金は金じゃないと言うけれども、金の面で今皆さん方がいろいろ言っておられるわけで、スウェーデンとの問題は、水準はそう劣らないけれども、貨幣の価値、使い方あるいは福祉あり方といったことでスウェーデンとは差があることはよく存じております。ただ、この間言ったのは年金の問題で、イギリスでは夫婦で六十七万だ、それから西ドイツでは八十八万だ、それで日本では十一万だということは言いました。言いましたけれども、金だけでそう決まるものではないということは御指摘のとおりで、いろいろな面で努力をしていかなければならないことはよくわかります。
  276. 田中美智子

    田中(美)委員 眼鏡が違うと見方が違うとおっしゃいましたけれども、その見方の違いはどこが違うかというと、人間に対する愛情だと思うのです。貧しい人たちに、おまえたちは怠け者だから貧しいのだという考えがあればそういう見方になる。これは眼鏡の問題ではなくて、本当に人間に対する愛情、そして、どんな人に対しても生きる権利、憲法に保障された人権があるのだという立場に立てば考え方は一致すると思うのですけれども、そちらがその立場に立っていないということを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  277. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 次回は、明二十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会