○森(清)
議員 刑罰をかけるというときには、やはり最終的には刑罰を受ける個人の刑事責任ということがはっきりしておらなければならない。連座制という
選挙法上の概念と刑罰をかけるということは結びつかないのじゃないかと私は思います。したがって、刑罰の本質は、故意に構成要件に該当する
行為を行った者が刑罰にかかるわけでありまして、そういうことを考えると、刑罰法規をもって臨むことについてはいろいろ
法律的に
検討しなければならぬ問題があります。
野党案と
自民党案の違いがそういうところにありますので、我々はそういう観点を含めまして、
本人、特に
政治資金団体というのは
本人がやっているのじゃなくして、ほかの人がやって
本人の
政治活動を応援してくれているわけでありますから、そういう点についても
法律的にさらに詰めが必要じゃないかというふうに考えておりますが、いろいろ
野党案は
野党案で出ておりますから、我々も十二分に
検討させていただいておるところであります。
それから、ここに立ったついででありますが、これは
自民党を代表してとかということじゃなくして、イギリスの
政治腐敗防止法にお触れになりましたので、私の個人の見解をちょっと申し上げておきます。
今お触れになりましたように、イギリスは
政治腐敗がひどかったわけです。そして千八百八十何年だったと思いますが、いろいろやりながら今の原形ができたのであります。それは日本で言うと明治十六年。明治二十二年に
衆議院選挙法をつくりまして、ほとんど
罰則は、恐らくそれを翻訳したのだろうと思うくらい入れているわけですね。したがって、日本の
選挙法の
罰則などというのはもう完全無欠に近いもので、今度追加するのを含めたら完全無欠な
罰則ができておると私は思います。
選挙法規の中では世界で一番細かい
罰則をつけておるのじゃないかと考えております。抜け道はほとんどふさいでおる。それがなぜ守られないかということについては、これは
罰則でございますから、非常に厳格な刑事捜査手続あるいは公判手続というものがあるから、それが十二分に立証されない、そういう点があるのではないか。
そうしたらイギリスはどうなっているのかといいましたら、そういう点についてはいわゆる
罰則をだれそれに適用して、それがどうこうということじゃなくして、それを皆さん連座制、連座制と言っておるのですが、そうじゃなくして、日本流で言えば当選無効訴訟をやるわけですね。だから、それは検察官といいますか捜査する人間がやるのじゃなくして、有権者はだれでも当選無効訴訟を起こせる。したがって、刑事裁判じゃないわけです。そして今度は連座制とかいう概念じゃなくして、その当選無効は
本人及び
本人のために
選挙運動をしている人間、これは非常に幅広い概念で、いわゆる日本で言う
運動員と称する者をすべて含みまして、その人間がそういう
選挙違反行為をすれば、それは
罰則にかかって、最終的に起訴されるかどうかは別として、その当選無効訴訟という裁判の中でそれが確定したならば、
本人が当選したその
選挙そのものが無効になる、そういう制度になっておるわけですね。
しかも、これはエージェントという言葉を使っておって、日本へ腐敗防止法を紹介した人
たちがそこら辺を間違えて、
選挙エージェントというのが条文に書いてある。それは日本で言う今の
選挙責任者みたいなものです。それだと思い込んでそういう紹介をしたものですから、日本と同じだと思ったのですが、そうじゃなくして、イギリスの腐敗防止法あるいは現在の
国民代表法には、
選挙責任者というのはエレクトラルエージェントと書いてあるのですね。そのほかに、今言ったようなことは単にエージェントと書いてある。そのエージェントの範囲というのは、今選
挙部長も答弁したように、我々が通常の言葉で言う
運動員なんですね。
だから、その辺の日本の紹介の仕方が間違っておったものですから制度として入っておりませんが、イギリスの腐敗防止法を入れるのならば、改める点は、今言ったように
選挙無効訴訟を有権者がやれることとすること、そして今言った連座制とかいう概念、日本で言う連座制の概念じゃない概念での
選挙無効訴訟ということ、それから裁判手続としては、
法律的評価を下す必要はないわけでありますから、事実の認定にすぎない一審で終わるということ、こういうことでイギリスでは、我々いろいろ調査をいたしましたが、まず日本で言うような
選挙違反とか資金を余計使うとかいうことは一切なくなっている。これはそういう点では非常に参考にすべき点でありますから、腐敗防止法の導入を
検討するならばそこへ踏み込んだ
検討が必要である、このように考えております。