運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1989-11-08 第116回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月八日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 魚住 汎英君 理事 尾身 幸次君    理事 岡島 正之君 理事 杉山 憲夫君    理事 谷津 義男君 理事 渡部 行雄君    理事 草川 昭三君 理事 大矢 卓史君       松野 頼三君    上田  哲君       三野 優美君    古川 雅司君       野間 友一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 戸井田三郎君         労 働 大 臣 福島 譲二君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    加藤 栄一君         厚生大臣官房審         議官      伊藤 卓雄君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君         厚生省児童家庭         局長      古川貞二郎君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁運営         部長      土井  豊君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省労政局長 岡部 晃三君         労働省労働基準         局長      野崎 和昭君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         労働省職業能力         開発局長    甘粕 啓介君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局技術振興課         長       福原 淑弘君         法務省入国管理         局警備課長   町田 幸雄君         外務大臣官房審         議官      高橋 雅二君         大蔵省主計局司         計課長     設楽 岩久君         文部省高等教育         局医学教育課長 小林 敬治君         厚生大臣官房会         計課長     山口 剛彦君         農林水産省畜産         局流通飼料課長 本田  進君         通商産業省基礎         産業局製鉄課長 中島 一郎君         運輸省貨物流通         局陸上貨物課長 縄野 克彦君         労働大臣官房会         計課長     廣見 和夫君         会計検査院事務         総局第四局長  山本  正君         会計検査院事務         総局第五局長  安部  彪君         環境衛生金融公         庫理事長    山下 眞臣君         決算委員会調査         室長      竹尾  勉君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十一年度政府関係機関決算書  昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書  (厚生省所管労働省所管環境衛生金融公庫)      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、厚生省所管労働省所管及び環境衛生金融公庫について審査を行います。  この際、厚生大臣及び労働大臣概要説明会計検査院検査概要説明、続いて、環境衛生金融公庫当局概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和六十一年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算に関する説明  昭和六十一年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額九兆七千七百二十億八千六百二十一万円余でありましたが、その後、予算補正追加額三千二百十八億五千四百六十万円余、予算補正修正減少額六百六十五億二千七百九十四万円余、予算移替増加額四百二億三千七百五十五万円余、前年度繰越額三百四十億五千三百四十九万円余、予備費使用額千三百六十七億五千八百二十九万円、差引四千六百六十三億七千六百万円余を増加し、歳出予算現額は十兆二千三百八十四億六千二百二十一万円余となりました。  この歳出予算現額に対し、支出済歳出額は十兆千十五億八千五百六十六万円余、翌年度繰越額は五百六十九億七千四百七十八万円余、不用額は七百九十九億百七十七万円余で決算を結了いたしました。  次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活保護法による生活扶助基準につきましては、国民の消費水準等の動向に対応して改善を行ったほか、少人数世帯の処遇、教育扶助等についても、それぞれ所要の改善を図り、総額一兆七百十四億六千六百九万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費であります。  社会福祉施設の運営費につきましては、入所者の一般生活費等の増額をはじめとして、職員の勤務時間の短縮に必要な業務省力化等勤務条件改善費の増額などを行い、所要の経費を支出しております。  また、施設整備費につきましては、特別養護老人ホーム心身障害者福祉施設等各種社会福祉施設及び地方改善施設の整備に対して七百七十八億八千八百八十万円余を支出しております。  老人福祉費につきましては、老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、ねたきり老人等に対する福祉対策として家庭奉仕員の増員を行うとともにデイ・サービス事業ショートステイ事業等の拡充強化を図り、一兆七百二億八千九百三十六万円余を支出しております。  児童保護費につきましては、児童保護措置費内容改善を図るとともに、心身障害児(者)対策、母子保健衛生対策などの推進を図り、三千八百二十四億八千五百六十六万円余を支出しております。  さらに、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千九百八十七億九千六百八十万円余を支出し、母子福祉対策につきましては、母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付原資として、三十九億六千六百八十万円を支出しております。  このほか、身体障害者福祉対策として、障害者社会参加促進事業、「障害者の住みよいまち」づくり推進事業及び在宅障害者デイ・サービス事業の拡充を図るほか、在宅の重度障害者に対する特別障害者手当等の支給制度を実施するとともに、身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。  以上、社会福祉費として、総額一兆九千五百四十三億七千五百四十万円余を支出しております。  第三は、社会保険費であります。  国民健康保険事業につきましては、昭和六十一年度末における保険者数は、三千四百三十七であり、その被保険者数は、四千五百五十三万余人となりております。  昭和六十一年度におきましては、市町村国民健康保険の運営の安定化に資するための国民健康保険特別交付金を含め、医療費及び事務費等に要する経費として、二兆四千六百三十五億三千七百四十八万円余を支出しております。  また、社会保険国庫負担厚生年金保険国庫負担及び国民年金国庫負担に要する経費として、三兆六千二百六十八億九千七百六十三万円余を支出しております。  このほか、児童手当の給付費及び事務費に要する経費として、六百六億八千六百五十八万円余を支出しております。  以上、社会保険費として、総額六兆千六百十四億四千二百九十九万円余を支出しております。  第四は、保健衛生対策費であります。  原爆障害対策費につきましては、各種手当の額の引上げ等の改善を行うなど施策の充実を図り、千六十八億六千七百八十八万円余を支出しております。  精神衛生費につきましては、精神衛生法に基づく措置入院費及び通院医療費の公費負担に要する費用として、五百八十七億五千三百五十五万円余を支出しております。  このほか、結核医療費として、三百七十三億六千八百十八万円余、疾病予防及び健康づくり推進費保健所費らい予防対策費老人保健法による保健事業に要する経費等の保健衛生諸費として、九百七十二億二千五百八十八万円余を、それぞれ支出しております。  以上、保健衛生対策費として、総額四千七百九十七億六千二百二十三万円余を支出しております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましては、遺族年金等について恩給の改善に準じて額を引き上げるとともに、戦傷病者等の妻に対する特別給付金の継続及び増額等の措置を講じたほか、遺骨収集及び慰霊巡拝を実施いたしました。  また、中国残留日本人孤児対策につきましては、訪日肉親調査対象人員を大幅に増員し、肉親調査を概了させるとともに、定着自立促進対策の充実・強化を図ったところであり、遺族及び留守家族等援護費として、総額千五百十二億二千二百十八万円余を支出しております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  環境衛生施設の整備を推進するため、昭和六十一年度は、廃棄物処理施設三百九十八か所、簡易水道等施設四百五十八か所、水道水源開発等施設三百二十二か所の整備について、それぞれ補助を行い、環境衛生施設整備関係費として、総額千九百六十二億九千九十四万円余を支出しております。  次に、特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計の決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計から二兆二千三百七十一億二千八百五十一万円を繰り入れました。  まず、健康勘定の決算額について申し上げますと、収納済歳入額五兆三千十二億三千三十四万円余、支出済歳出額五兆二千五百六十六億百四十六万円余でありまして、差引四百四十六億二千八百八十八万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十二年三月末の事業所数は、九十四万余か所、年度平均保険者数は、千五百七十万余人に達しております。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額十五兆三千百八十八億八千百二十九万円余、支出済歳出額十兆八千二百二十三億四千七百五十九万円余、でありまして、差引四兆四千九百六十五億三千三百六十九万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十二年三月末の事業所数は、百五万余か所、年度平均保険者数は、二千七百二十六万余人に達しております。  次に、児童手当勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額千四百二十七億三百八十五万円余、支出済歳出額千二百六十六億四千五百十二万円余、翌年度繰越額一億五千百十四万円余でありまして、差引百五十九億七百五十八万円余については、このうち十三億二千三百七十万円余をこの勘定の積立金として積み立て、百四十五億八千三百八十七万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均支給対象児童数は、二百六十九万余人であります。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額四千五百五十九億千四百七十五万円余、支出済歳出額四千四百三億八千三百五十六万円余、翌年度繰越額三十四億四千三百三十一万円余でありまして、差引百二十億八千七百八十七万円余については、このうち、六十億二千八百八十七万円余を健康及び年金の各勘定の積立金に組み入れ、六十億五千九百万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  第二は、船員保険特別会計の決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から八十億九千四百二十四万円余を繰り入れました。  その決算額は、収納済歳入額千五百四十七億三千四百四十一万円余、支出済歳出額千百九十五億二百九十九万円余、超過受入額八億四百二十六万円余でありまして、差引三百四十四億二千七百十五万円余については、このうち、三百四十三億八千八百六十六万円余をこの会計の積立金として積み立て、三千八百四十九万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均の被保険者数は、十六万余人であります。  第三は、国立病院特別会計の決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計から千三百八十三億五百九十八万円を繰り入れました。  まず、病院勘定の決算額について申し上げますと、収納済歳入額三千八百七十三億七千百六十万円余、支出済歳出額三千八百三十億四千九百三十七万円余、翌年度繰越額三億四千百六十二万円でありまして、差引三十九億八千六十万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十一年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万二千余人、外来患者数は、一日平均四万千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三千二百五十九億五千四百二十四万円余、支出済歳出額三千百三十八億三千八百十二万円余、翌年度繰越額十億九千五百万円でありまして、差引百十億二千百十一万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十一年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均四万二千余人、外来患者数は、一日平均一万千余人であります。  第四は、国民年金特別会計の決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計から一兆四千四百二十三億六千百四十五万円余を繰り入れました。  まず、基礎年金勘定の決算額について申し上げますと、収納済歳入額五兆九百五十五億千四百六万円余、支出済歳出額五兆十一億千八百七十万円余でありまして、差引九百四十三億九千五百三十六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、国民年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額四兆九千五百六十二億七千三百二十一万円余、支出済歳出額四兆三千九百七十五億六千五十七万円余、超過受入額二千三百六十八億七千四百十万円余でありまして、差引三千二百十八億三千八百五十三万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十二年三月末の被保険者数は、三千四十四万余人で、そのうち、保険料の免除該当者は、二百二十五万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額七千七百三十三億四千百八十六万円余、支出済歳出額六千八百五十二億九千二百七十九万円余でありまして、差引八百八十億四千九百七万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆三千二十一億八千三百九十一万円余、支出済歳出額一兆二千九百九十九億千六百四十三万円余でありまして、差引二十二億六千七百四十七万円余については、このうち、一億二千七百六十一万円余を国民年金勘定の積立金に組み入れ、二十一億三千九百八十五万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十一年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に堪えないところであります。  今回不当事項として指摘を受けましたものは、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収額が不足していたもの二件、健康保険及び船員保険傷病手当金等並びに厚生年金保険及び船員保険老齢年金等の支給が適正でなかったもの二件、医療施設運営費等補助金及び老人保護費補助金補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの十三件、児童扶養手当の支給が適正でなかったもの一件及び医療費に係る国の負担が不当と認められるもの七件であります。  意見を表示され又は処置を要求された事項は、生活保護の被保護世帯に対する扶養義務者の扶養の履行の確保について及び特別養護老人ホームの入所者に係る生活指導管理料の支払について並びに国民年金保険料の免除に係る事務処理の適正化についてであります。  不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了したところでありますが、今後とも、適用事業主及び船舶所有者に対し、報酬に関する適正な届出の指導・啓もうの徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。  健康保険及び船員保険傷病手当金等並びに厚生年金保険及び船員保険老齢年金等の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、被保険者及び適用事業主等に対し、適正な届出の指導・啓もうの徹底を図るとともに、関係書類の調査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。  医療施設運営費等補助金及び老人保護費補助金の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。  児童扶養手当の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも現況届等の調査・確認事務について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、児童扶養手当の適正な支給に努力いたす所存であります。  医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、老人医療の受給者に係る診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。  意見を表示され又は処置を要求された生活保護の被保護世帯に対する扶養義務者の扶養の履行の確保について及び特別養護老人ホームの入所者に係る生活指導管理料の支払について並びに国民年金保険料の免除に係る事務処理の適正化については、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講ずるべく改善を行う所存であります。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十一年度決算厚生省についての検査の概要に関する主管局長の説明                  会計検査院  昭和六十一年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項二十五件及び意見を表示し又は処置を要求した事項三件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一六号及び一七号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、いずれも事業主又は船舶所有者の提出する被保険者資格取得届等において制度の理解が十分でなかったなどのため、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬月額が事実と相違しているものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、保険料の徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号一八号は、健康保険及び船員保険傷病手当金等の支給が適正でなかったもので、健康保険については、被保険者及び事業主が制度を十分理解していなかったりなどして傷病手当金及び出産手当金の支給の基礎となる傷病手当金請求書又は出産手当金請求書記載内容が事実と相違しているのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、傷病手当金等の支給が適正を欠いたものであります。また、船員保険については、被保険者であった者が制度を十分理解していなかったため、傷病手当金請求書記載内容が事実と相違しているのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、傷病手当金の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号一九号は、厚生年金保険及び船員保険老齢年金等の支給が適正でなかったもので、厚生年金保険又は船員保険の年金の受給権者及び事業主並びに船舶所有者が制度を十分理解していなかったなどのため、年金の受給権者が被保険者資格を取得した際に事業主及び船舶所有者が提出する資格取得届記載内容が事実と相違しているものなどがあったのに、これに対する調査確認等が十分でなかったり、適正な資格取得届が提出されているのに、事務処理が適切でなかったりしたため、老齢年金等の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二〇号から三二号までの十三件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。  これを事業別に区分いたしますと、検査報告番号二〇号から二二号までの三件は、医療施設運営費等補助金でございます。  この補助金は、都道府県市町村等の開設する公的医療機関が行うへき地中核病院運営事業等に要する費用を補助するものでありますが、事業主体では、巡回診療等に要した医師等の人件費を過大に算定して補助対象事業費を過大に精算していたものであります。  検査報告番号二三号から三二号までの十件は、老人保護費補助金でございます。  この補助金は、養護等を要する老人を特別養護老人ホームに入所させ養護した都道府県又は市町村に対して、その措置に要する費用を補助するものでありますが、補助対象事業費の精算に当たり、老人やその扶養義務者から徴収する徴収金の額を過少に算定していたり、民間施設給与等改善費の計算を誤っていたりしたため、国庫補助金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号三三号は、児童扶養手当の支給が適正でなかったもので、児童扶養手当認定請求書、現況届又は資格喪失届記載内容が事実と相違しているものがあったのに、これに対する指導及び調査確認が十分でなかったため、手当の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号三四号から四〇号までの七件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。  これを事業別に区分いたしますと、検査報告番号三四号から三九号までの六件は、老人保健法に基づく医療の実施に係るものでございます。  これらは、老人保健法の適用を受けます七十歳以上の老人等のうち、老人福祉法に基づいて特別養護老人ホームに入所している方に対する医療に関するものでありますが、医療機関が医療費を請求するに当たり、入院していない者の入院料を請求したり、診療を行っていない者の医療費を請求したり、また、理学療法料、往診料、皮膚科処置料等について誤った保険請求をしたりしていたのに、市町村において、これらをそのまま認めて支払っていたため、国の負担が適正を欠いたものであります。  検査報告番号四〇号は、健康保険法等に基づく療養の給付に係るものでございます。  これは、医療機関が、許可病床数を一定の範囲以上上回った患者を入院させた場合の医療費の請求が誤っていたのに、町等において、これをそのまま認めて支払っていたため、国の負担が適正を欠いたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、生活保護の被保護世帯に対する扶養義務の履行の確保に関するものであります。  生活保護は、生活に困窮する者に対してその困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長することを目的とするものでありますが、扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとされております。  しかしながら、六十二年中に扶養義務者の扶養の履行状況について調査いたしましたところ、扶養義務者の世帯に相当額の所得があって被保護世帯に仕送りなどの援助が期待されたり、扶養義務者が被保護者を扶養しているとして税法上の扶養控除を受けているなど扶養義務を履行すべき個別の事由があったりしているのに、これら扶養義務者に対する扶養の要請が十分でなく、扶養の履行が全く又は十分になされていないなどの事態が見受けられました。  したがいまして、厚生省におきまして、扶養能力を調査する体制の整備、扶養能力の調査に関する指導の徹底、費用徴収権を発動できる体制の整備などを行い、もって生活保護事業の実施の適正を期するよう改善の処置を要求いたしたものであります。  その二は、特別養護老人ホームの入所者に係る生活指導管理料の支払に関するものであります。  老人福祉法に基づく特別養護老人ホームの入所者に係る医学的な生活指導管理は、ホームの基本的な業務の一つとされており、ホームの嘱託医が、施設内に併設されている診療所において行っているものでありまして、これについては診療報酬の保険請求ができないものとされております。  今回老人保険事業の医療費について調査いたしましたところ、特別養護老人ホームの嘱託医が行っているホームの入所者に係る医学的な生活指導管理について、別途に嘱託医の所属する保険医療機関等生活指導管理料として診療報酬の請求をし、市町村等がこれを十分調査することなくそのまま支払っていて不適切な事態が多数見受けられました。  したがいまして、このような事態を解消するため、厚生省におきまして、市町村及び保険医療機関等に対して特別養護老人ホームの入所者に係る生活指導管理料保険請求できない旨の指導を行い、その周知徹底を図るなどして、保険請求及びその支払の適正を期するよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  その三は、国民年金保険料の免除に係る事務処理の適正化に関するものであります。  国民年金の保険料は、被保険者が所得がないとき、保険料を納付することが著しく困難であると認められるときなどの場合には、都道府県知事に国民年金保険料免除申請書を提出し、一定の基準に基づく審査を経て免除されることとなっておりますが、保険料の免除の状況を調査いたしましたところ、前年分の所得税が賦課されているなどしていて保険料の負担能力があると認められる者について免除していた不適切な事態が多数見受けられました。  したがいまして、このような事態の発生を防止するために、社会保険庁におきまして、被保険者等に対して国民年金制度及び免除制度の趣旨を周知徹底させるようにすること、社会保険事務所に対して審査を充実させるようにすること、免除基準の運用に当たり通達等を整備し都道府県等に対して国民年金制度及び免除制度の趣旨を徹底させるようにすることなどの措置を講じ、申請に基づく免除に係る事務の適正化を図り、もって、年金給付財源の確保と国民年金法の適正な運用を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十九年度及び六十年度決算検査報告に掲記いたしましたように、資産保有者に対する生活保護及び福祉年金と公的年金との併給調整の適正化について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する厚生省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要の説明を終わります。     ─────────────    昭和六十一年度労働省所管一般会計及び特別会計決算説明要旨  労働省所管の昭和六十一年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千九百十七億四千七百十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千八百八十五億四千五十九万円余、不用額三十二億六百五十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数五百九十箇所、事業数一千九百三十、失業者の吸収人員一日平均三万二千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  次に、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労働保険特別会計法に基づき昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆七千百九十五億五千八百四万円余に対しまして、収納済歳入額一兆六千八百八十六億四千五百五十四万円余でありまして、差引き三百九億一千二百五十万円余の減となっております。  これは、徴収勘定からの受入れが予定より少なかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆七千百九十八億六百六十九万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆七千百九十五億五千八百四万円余、前年度繰越額二億四千八百六十四万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆三十八億一千四百九十万円余、翌年度繰越額二億四千七百八十二万円余、不用額七千百五十七億四千三百九十五万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の支払件数は、五百三十四万三千件余、支払金額は、七千二百四十二億六千三十四万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、支払備金等に充てる経費であります。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆九千九百九十六億一千六百九十七万円余に対しまして、収納済歳入額一兆七千九百八十八億四千八百六十八万円余でありまして、差引き二千七億六千八百二十八万円余の減となっております。  これは、予備費を使用しなかったこと等により、積立金からの受入れを必要としなかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆九千九百九十八億八千二百八十五万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆九千九百九十六億一千六百九十七万円余、前年度繰越額二億六千五百八十八万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆四千九百九十二億七百九十万円余、翌年度繰越額一億三千五百十八万円余、不用額五千五億三千九百七十六万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等四事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇労働求職者給付の月平均受給者実人員は、一般求職者給付六十七万四千人余、日雇労働求職者給付十万二千人余、また、高年齢求職者給付、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付の受給者数は、高年齢求職者給付八万人余、短期雇用特例求職者給付六十五万四千人余、就職促進給付二十六万八千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付八千九百二億六千七百八十三万円余、高年齢求職者給付三百七十二億二千百九十九万円余、短期雇用特例求職者給付一千四百五十五億七千五百十五万円余、日雇労働求職者給付五百二十七億一千八百七十三万円余、就職促進給付六百八十二億八千六百八十一万円余となっております。  また、雇用安定事業等四事業に係る支出実績は、支出済歳出額一千八百十二億一千百五十七万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、失業給付費等であります。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆五千四百六十六億七千八百五十万円余に対しまして、収納済歳入額二兆五千六百三十一億五千七十四万円余でありまして、差引き百六十四億七千二百二十四万円余の増となっております。  これは、雇用保険に係る保険料収入が予定より多かったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも二兆五千四百六十六億七千八百五十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二兆五千四百四十五億三千五百七十八万円余、不用額二十一億四千二百七十二万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  この事業の実績の概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数二百十一万余、労災保険適用労働者数三千六百六十九万人余、雇用保険適用事業場数百五十万六千余、一般雇用保険適用労働者数二千七百八十万人余、日雇雇用保険適用労働者数十四万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険料の返還に必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計のうち、労働省所掌分の炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百七十四億五千八万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百七十億六千五百二十五万円余、不用額三億八千四百八十二万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業の実績の概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数三十七箇所、事業数百五十、就労人員延四十万七千人余となっております。  次に、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十六箇所、事業数二百一、就労人員延六十七万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和六十一年度一般会計及び特別会計の決算の概要であります。  なお、昭和六十一年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十一年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長の説明                  会計検査院  昭和六十一年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項四件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号九三号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号九四号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職、あるいは就労しておりますのに、失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして給付の適正を欠いたものであります。  検査報告番号九五号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号九六号は、雇用保険の定年延長奨励金の支給が適正でなかったものであります。この奨励金は、定年の引上げによる高年齢者の雇用の延長の促進を図るため、六十歳以上に定年を引き上げた事業主に対して支給するものでありますが、定年を引き上げた日以後に雇用した労働者を対象被保険者として申請したりしているなど支給要件を欠いておりましたのに奨励金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、労働者災害補償保険の年金と厚生年金等との併給調整に関するものであります。  労働者災害補償保険の年金は、受給権者が、その支給の事由と同一の事由によって厚生年金等の支給を併せて受けるときには、所定の労災年金額に一定の調整率を乗じ、減額調整して支給することとなっておりますが、その調整を行わないまま年金を支給していたために、支給額に過払を生じていた事態が見受けられました。  したがいまして、労働省において、受給権者に対し、適正かつ速やかに厚生年金等の受給状況等を届け出ることについて周知徹底させ、労働基準監督署に対し、厚生年金等の受給状況等についての調査確認を十分に行うよう指導するとともに、定期的に調整を行っていない受給権者に関するリストを労働基準監督署に送付し、調査確認を行わせるなどの審査体制を確立するなどして、労災年金の支給の適正化を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、昭和六十年度決算検査報告に掲記いたしましたように、雇用保険の特例一時金の支給について意見を表示いたしましたが、これに対する労働省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要の説明を終わります。     ─────────────    昭和六十一年度環境衛生金融公庫の業務の概況  一、環境衛生金融公庫の昭和六十一年度の概況につきまして御説明申し上げます。  昭和六十一年度の貸付計画額は、一千七百六十億円を予定いたしました。  その原資としては、資金運用部資金の借入金一千八百五十八億円から借入金償還等九十八億円を控除した一千七百六十億円を充てることといたしました。  これに対しまして、貸付実績は、一千六百七十一億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、八・八パーセントの増となっております。  二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。  昭和六十年度末における貸付残高は、六千三百四十六億八千万円余でありましたが、昭和六十一年度中に一千六百七十一億円余の貸付を行い、二千二百二十五億八千万円余を回収いたしましたので、昭和六十一年度末においては、五千七百八十九億五千万円余となっております。  三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。  昭和六十一年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが二百四十六億三千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、二百二十八億二千万円余で総貸付金残高の三・九パーセントとなっております。  四、次に昭和六十一年度の収入支出決算について御説明いたします。  昭和六十一年度における収入済額は五百二十五億四千万円余、支出済額は五百二十億六千万円余となりました。  まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は五百二十五億四千万円余でありまして、これを収入予算額五百四十八億一千万円余に比較いたしますと、二十二億七千万円余の減少となっております。  この減少いたしました主な理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額五百六十五億一千万円余に対し、支出済額は五百二十億六千万円余でありまして、差引四十四億四千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。  五、最後に昭和六十一年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は六百四億一千万円余、借入金利息、事務費、業務委託費、滞貸償却引当金繰入等の総損失は六百四億一千万円余となりました。  この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。  以上が昭和六十一年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十一年度決算環境衛生金融公庫についての検査の概要に関する主管局長の説明                  会計検査院  昭和六十一年度環境衛生金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  4. 中村靖

    中村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。魚住汎英君。
  5. 魚住汎英

    ○魚住委員 魚住でございます。公的病院の適正配置について、こういうことで表題をつけまして、厚生省当局並びに関係省庁にお尋ねをいたしたいと思います。  皆さん方の御努力で、近年地域の医療が大変向上しておる、こういう評価を持っておるものでございます。しかしながら、公的病院といいますと、それぞれの地域社会から見ました場合に非常に評価の高い信頼性のある施設として今日では位置づけをされておるわけでありますが、その配置を見てみますと、それぞれの設置をされた施設の法律によって、例えば明治四年に鎮台病院としてスタートをしたものもありますし、また、その他それぞれ時代の要求に従って時間的な差、いわゆる時差をもってそれぞれ独自にそれぞれの地域に自由な意思で設置をされた病院がほとんどでありまして、今日、今申し上げましたように大変な社会的な評価を得ていながらそれらのものをコントロールする官庁がない、コントロールする審議会なり、またそれらのものを適正に配置をしていこうという機運すらもない、こういうことを痛感するものでありますが、まずそういうようなことを前提として大臣並びに厚生省の方々にお伺いをしてみたいと思います。  例えて申し上げますならば、私どもの熊本市に公的な病院と言われるものが全体で十近くあるわけであります。隣同士に設置をされておりますものもありますし、また半径一キロぐらいの中に七カ所ぐらいのものが設置をされておるわけでありますが、私が最も言わんとすることは、それらのものはそれぞれの病院が完全な形での機能を果たしておらない。地域住民から見れば非常に信頼の高いものであるけれども、残念ながら、設置をしておる病院の施設の面から見ても、例えば面積が足りない、面積が足りないがゆえに十分な設備ができない、また、そこに働く人たちのスタッフの問題もありましょうし、いろいろな問題があるわけですけれども、それらのものをこの際、それぞれ設置をされた時点でのその意義というものは既に果たされておるかと思いますが、しかしながら、今日ではもうその施設をつくったときの意義よりも、むしろ位置づけというのが、一般に開放され、地域の公的な病院、そういうようなことで位置づけされておる、そういう意味合いの方が強いわけでありますから、私は、少なくとも何らかの意思を持って、また市街地のことを考えますと、昔の市街地と今日の市街地では随分市街地の発展も、また再開発その他のいろいろな要因も当然考えた配置というものをしていかなければならない、こう思うわけであります。しかし、残念ながらそういうような配置を指示していくような形での監督官庁がない、こういう思いがあるわけでありますが、その辺のところについてもぜひひとつお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。  いずれにしましても、今日まで大変なそれぞれの時代をその病院が果たしてきた役割というのは立派なものであったことを認めた上に、なおかつ、地域の要望を担った適正な配置、そういうようなものを考えるときが来ておると思うわけでございますので、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  6. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 先生御指摘のとおり、日本の医療のあり方というものがいろいろな角度から新しい時代に適応した対応の仕方を考えていかなければならないという点では、まさにそのとおりだと思います。  そこで、地域性あるいは国は国全体としての整合性等も図っていかなければなりませんけれども、去る六十年の医療法の改定で、地域医療計画をそれぞれの地域で立てて、その実態に適合した配置体系をしていかなければならない、そういう観点から各県でもそれぞれの計画を立てていただいておるわけでありますが、やはり公的な国の機関は国の機関として、同時に、行革の中でもうたわれておりますように、その役割を国の果たしていく役割にふさわしい体制の立て直しをしていくべきであるという観点に立ちまして、今それぞれ整備を進めているところであります。その整備を進めていくためには、当然地域でのいろいろな長い伝統の中に置かれてその使命を果たしてきたそれぞれの病院でありますから、いろいろな地域の感情等もあり、また、その病院が同じ国でも機関がそれぞれ違うという観点からすれば、やはり同じように話し合っていかなければならない、そういう意味で、まずその地域からの合意を得るための努力を重ねていくということが一番大事なことであろう、こういうふうに考えておるわけであります。  特に、先生の今御指摘の熊本地域には、同じような力のある、そして市民から期待をされている病院が同じような設備をして同じような対応をしているということよりも、むしろ、そういう意味ではそれぞれ特徴を持って高度の医療を果たしながら進めていくということが当然必要であろう、かように考えておる次第であります。
  7. 魚住汎英

    ○魚住委員 問題意識をちゃんととらえていただいておりますので、重ねて申し上げることもありません。  お願いをしたいことは、病院というのは、そこの地域の中に住む人たちから見れば、本当にいい病院がすぐそばにあってということは日常の生活の中で大変安心して安全で暮らしていけることにつながっていくわけですね。しかしながら、それらのものを適正に配置をするその機能というものを大臣、ぜひひとつ何らかの形でお考えをいただきたい。  具体的な名前を出すことを差し控えさせていただきたいと思うのですが、私どもが現在知り得る範囲内において、例えばA病院とB病院は隣同士にある。片一方、いろいろの営業内容、毎日の診療数その他を見てみますと、大変A病院は低い、しかも採算割れをしておる。そこにおいては大変な赤字に悩むものもある。ところがすぐ隣に、隣接するものとして大変地域から信頼を受けて大変な成績を上げておるところがある。よって、そこの信頼が高いというために、もう少し施設も拡充していきたい、いろいろなものをもっと立派なものにしていきたい、こういう願望があるわけですが、残念ながらスペースの関係でそういうようなことはできない。そういうことであるならば、我々から見れば、それは隣同士にあるのだから合併しちゃって、それで一つのより完全な形のものができればそういう方が一番いいのではないか、こう考えるのは、これは当たり前だと思うのです。  ところが、残念ながらそれぞれ設置の法律が違うものですから、それを、あなたのところはもう赤字だからやめませんかとか、あなたのところは信頼が高いのだからもっと拡充していってどうにかやりませんか、こういうようなことはだれも今の段階では言えないのですね。ですから、それぞれの経営体の方々に私もいろいろお聞きしてみたのですけれども、自分の方からよそ様のことは言えない、また自分の方がぐあいが悪いからよそ様に対して何だかんだ、こういうようなことは言えない。それはそうだと思うのです。  しかしながら、今も前段で申し上げましたように、公的な病院の社会的な位置づけというのは非常に高いのだ、それがあることにおいて、ただ医療を受けるという形だけではなくて、そこの地域のいわゆるイメージというものだって、また、そのほかいろいろな社会的なそこの地域を評価する事柄だって大変な地域イメージがあるわけですね。ですから、そういうようなことからしていきますと、公的な病院がそこに一つあることとないことにおいては随分そこの地域のイメージも違う。よって、私どもが住んでおりますところはそういうようなものはありませんから、例えば大きな工場を工場誘致しようと思って工場誘致をします、そうしますと、本当は工場のあるところに住んで、そこから子供さんたちをそこの学校へやってほしいわけですけれども、残念ながらそういうような公的病院や何かがないものですから、それがあるところに住まいだけを移してしまう、こういうような形になるわけですね。言うところの遠距離通勤で、そこの工場誘致をしたところへ通勤をする、こういう状態が僕らのところはあるわけです。これは全国各地にも同じようなことがあると思うのです。  そういうようなことから考えていって、やはり公的な病院を何とかして適正に、あの医療計画に基づいたベッド数その他ということをそれはもちろん基本にしなければなりませんけれども、そういう地域づくりのためにも、スクラップ・アンド・ビルドで、いわゆるより完全なものをそれぞれに東の方、西の方、北の方、南の方、こういう形でぜひひとつ配置ができるように、今後ひとつお考えをいただきたいと要望を申し上げておきたいと思います。  次に、国立の熊本大学附属病院のことでありますが、私どもの地域のお医者さん、これらの九〇%近くは熊本の国立熊本大学の医学部の御出身の方がいらっしゃるわけであります。言うならば、私どもの地域医療の人材の供給源であり、また地域住民の医療に基づいた安心ということから考えると、まことにもって大きな位置づけをされておるわけでありますが、その施設を見てみますと極めて老朽化しており、なおかつ、刻々と変わる社会の情勢に合わせて次から次にいわゆる張りつけてきたようなものであるわけでありますが、何とかしてより近代的な、先ほど来申し上げますようにより地域から信頼を受けるようなより完全な施設、そういうような形にしていただけないものかどうかということを考えておるわけですが、文部省いかがでしょうか。
  8. 小林敬治

    ○小林説明員 お答えをいたします。  熊大の医学部附属病院、講座数で三十七、診療科で二十と全国でもトップクラスにランクする陣容を誇っておるわけでございます。また、病床稼働率等から見ましても、十分に地域の医療機関として機能していると私ども拝見をいたしておるわけでございますが、残念ながら御指摘のように施設面で大変見劣りするものがございます。  それで現在、学内で全面的な中長期的な観点を含めた施設の整備計画というものを目下検討を進めている段階でございまして、そうした大学の結論を踏まえながら、先生の御指摘に沿うような形で今後文部省としても努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  9. 魚住汎英

    ○魚住委員 学内で全面的な施設の整備計画が進められておる、まことにありがたいことでありますし、せっかくおつくりをいただくのでしたら、ぜひひとつ立地のこともお考えをいただきたいと要望申し上げておきたいと思います。どこにどういうぐあいになんということは申し上げませんから。  熊本市は、御承知のとおり都市の景観条例をつくってすばらしい未来都市をつくっていこう、こういうことで物事を進めておるわけでありますが、現在立地されております熊本大学の附属病院等は、設立当時は極めて郊外のしかも医療に適した、学問に適した土地であったわけですけれども、今日ではもう町の中心部になりまして、言うならば繁華街の一角であるわけであります。そういうようなことから考えて移転もされた方がいい、こういうぐあいに考えておりますし、施設の整備には移転も一緒に考えられる、こういうようなことになろうかと思いますので、ぜひひとつ頑張っていただきたいと御要望を申し上げておきたいと思います。  次に、国立の熊本病院ですが、この熊本病院は熊本の城内に一応位置しておりまして、先ほど申し上げましたように明治四年に鎮台病院としてスタートをしたというのがこの病院の歴史であります。医学的にまた医療的に大変な評価を受けておるところでありますが、ちょうど熊本市は今申し上げましたように未来都市を目指してということで景観を整える、こういうことで進めておるわけですが、その中におきましても、家庭裁判所等の跡地は市において買収をし、なおかつ公園として整備をしていこう、こういうことであるわけです。  ところが一番前面の、一番見ばのいいところに、実は熊本病院の極めて老朽化した、と申し上げては失礼でありましょうが、そのような施設がありまして、歴史から考えますと、鎮台病院ですからその当時の軍隊があったところにいわゆる病院があるのは当然であったでありましょうが、時代の経過とともに、今その場所にあることが適切であるかどうかということを考えると、決してその答えはイエスだとは言えないと思います。そういうようなことでありますから、一番最初に申し上げましたように、ほかの公的な医療機関と統合していただいて、適正に配置をしていただいて、どこかに移転をしていただくという考えはないかどうかをお伺いしたいと思います。
  10. 伊藤卓雄

    ○伊藤(卓)政府委員 お答えをいたします。  国立熊本病院につきましての由来は先生の方で御指摘いただいたとおりでございますが、昭和二十年に厚生省に移管後も、現在地におきまして整備充実を図ってきたところでございます。  今日におきましては、国立病院・療養所の再編計画に基づきまして、熊本県全体を診療圏といたします総合的な診療施設、それから国際協力の基幹施設として位置づけをしまして、国立にふさわしい役割を果たせるように機能強化を図るつもりでおりますけれども、移転につきましては、現在のところ特段そういう場所におけることについてお話等も出ておりませんで、ここにおきます整備ということを前提に考えておるところでございます。
  11. 魚住汎英

    ○魚住委員 お立場からすれば、そのような御答弁であろうかと思います。ただ、私どもは、そこに住む地域住民の一人として、社会というのはいろいろな要素があって初めて成り立つわけでありますが、病院としての位置から考えますと、極めてふつり合いな場所であることは皆様方も御承知のとおりであろうかと思います。また、その隣に合同庁舎がありますし、片一方では、都市の景観をつくるために多額の費用を投じながら、いろいろな歴史的な建物を、古くなったものを、廃棄処分になったものを買収して整備をしていっている。片一方では、長い歴史があるところだから、こういうことに基づいて、またもちろん地域的な要求その他もあるのですが、それを充実拡大をしていかれる。こういうことになってまいりますと、都市の景観を整備する、こういう観点からすれば極めて反対なことをやっておる、こういうことになるわけですね。  ですから、皆さん方の方でぜひお考えをいただきたいことは、その中で整備をされることはまことにもって厚生省だけからすれば当然なことでありましょうが、ぜひひとつそういうようなことも、私が一番最初に申し上げたように、やはり公的な医療機関というものの果たす役割、持っておるその意義、そういうようなことから考えていって、どこに配置をし、どこで整備をしていったらいいかという、その適正配置ということをしっかりお考えをいただき、今後お進めをいただくように要望を申し上げておきたいと思います。  次に、機能のことでありますが、今いろいろと申し上げましたように、それぞれの時差を持って公的な病院ができてきたわけであります。例えば医療計画にありますように、都市部において病床過剰地域において病院が隣接しておるようなところで、二つの病院を強制的に一つに統合して病床数や高額医療機器を削減したり、今ある病院の病床を計画的に削減して病床の不足している地域に移す、そういうような抜本的な方法をとらないと、いつまでたっても病床数の地域格差はなくならないと思いますが、病床過剰地域での既存病床の強制的な削減はできないのでしょうか。また、厚生省には公的な医療機関を強制的に統廃合し、適正配置を行う権限はないのでしょうか、お尋ねいたします。
  12. 仲村英一

    ○仲村政府委員 病床過剰地域におきます病院の統廃合のお尋ねでございますが、いろいろ法律上、憲法に定める職業選択等の関係でそのようなことは実際上難しいわけでございます。  私どもといたしましても、医療法を六十年に改正いたしまして、地域医療計画ということで計画的に医療供給を見直すべきではないかということで法律を改正させていただいて、各県に地域医療計画をおつくりいただいたわけでございますが、その場合にでも、やはり医療法上は、開設の中止でございますとか増床数を削減させるというふうなことも、制度上は勧告という仕組みにせざるを得なかったという経緯もあるわけでございます。  しかし、ただいまお尋ねの公的病院が乱立しておるという実態も既にかなり以前から指摘をされている部分もございまして、これは昭和三十七年に医療法が、議員立法でございましたけれども、公的病院の病床については規制をするというふうな仕組みがとられておったわけでございます。その結果と申しますか、今お尋ねの病床不足といいますか、少ない地域に病床がふえた結果にもなっておりますが、基本的には自由開業医制ということで日本の制度は成り立っておるわけでございますので、そういう強制的な権限はないということでございます。  しかし、冒頭厚生大臣からもお答えいただきましたように、特に熊本、特にと申しますか熊本の例などで私が仄聞するところでは、院長さん同士でいろいろお話をなさって、機能の重複がないようなことでやっていくというふうなことも新しい動きとして出ておるように伺っておりますので、もちろん医療資源の有効利用という観点からはそういうことも必要ですし、あるいは一方においてはやはり競争原理と申しますか、質の向上という点で、先ほど先生からも御質問の中にございましたけれども、そのようなことで熊本県全体の医療レベルが上がるというメリットもあり得るということでございますが、結局地域住民の医療が質を維持しながら効率を考えていくということで、地域医療計画の中でそれぞれの自治体がそういう方向でお考えいただくということで、私どもも今後各県にいろいろ指導をしてまいりたいということで考えておるところでございます。
  13. 魚住汎英

    ○魚住委員 おっしゃるとおり、私どももその辺の認識は持っておるわけですが、何としても十八兆を超す医療費、そしてますます高齢化していく社会、医療費の高騰等を考えながら、強制的な統廃合などというのはできない、こういう現在の、現行法上は難しいでありましょうが、何とか今ある医療機関の相互の機能や業務の合理的な、なおかつ、その効率的な連係を進めていく、そういう手だてはないものかをお尋ねいたします。
  14. 仲村英一

    ○仲村政府委員 地域医療計画をおつくりいただく際に、各県に審議会をお置きいただいて、そういう観点から協議をしていただくということもございましたし、地域医療計画の中で、言葉はいろいろあるわけでございますが、任意的記載事項というのがございまして、そこでは各県の実情に応じた地域医療確保の問題、これはもっと幅広く国民の健康づくりからリハビリテーションまでのいわゆる包括医療と申しますか、そういうものを地域単位にお考えいただくということで、その計画をおつくりいただいております。  ただ、計画がまだできたばかりの県もたくさんございまして、今お尋ねのようなことで実際に地域の末端でそれがうまく機能しておるかどうかというところは若干問題があるわけでございますが、これはもう少しお時間をおかしいただきたいと思うわけでございますけれども、具体的なことといたしましては、病院と診療所の連係というふうなことで、現に熊本の国立病院などでは、地域医療研修センターということで地元の開業医さんがそこへお集まりいただいて、共同の症例検討会をするとか生涯教育の場に活用していただくとかいうことで、地域の広がりを持った病院機能というものをもっともっと考えていきたいということでいろいろやり始めております。  それは、別に国立病院に限らず、文部省の大学附属病院でもそういう動きが出ておりますし、各種の公的病院でも、先ほど申し上げました機能の分担、あるいはさらに連係を保つということで、患者を相互に紹介し合うシステムでございますとか、高額医療機器につきましては例えばこちらの病院で買えばこちらの病院は買わないというふうな共同利用システムと申しますか、そういうふうなことで情報の交換、提供とか、ハード、ソフトいろいろの面で、今後お尋ねのような方向で連係を保つということでやっていくようなことを、私どもとしても指導してまいりたいと考えております。
  15. 魚住汎英

    ○魚住委員 ありがとうございました。  医療機器の共同利用でありますとか患者の紹介システムでありますとか、そういうような効率、より合理的な姿を求めて御努力をいただく、こういうことでありますから期待をしております。  私は一介の民間企業の経営者という立場もあるのですが、そういうような者から見れば、まだまだ極めて不必要な分野というものがたくさんあるわけですね。ところが、それぞれのいわゆる故事来歴があって、その沿革というものに縛られて、しかもそれは当然法律制度というようなものがあるわけですが、そういうようなものに縛られるがゆえに、自分たちでそれだけ改革をしなければならぬ、合理化もしていかなければならぬ、地域的な、また社会的な時代的な要求、そういうようなものも全部わかっておりながら、どうしてもその呪縛の中から自分自身を解き放つことができない、こういうものを皆さん方それぞれお持ちだと思うのです。  そこで、要望をしておきたいと思いますが、それぞれの公立病院から、現在の状況と将来の展望、こういうようなことでも結構でありますからお聞き取りをいただいて、ぜひひとつ将来に向かって、私が今申し上げたように、最初大臣から御答弁いただいたように、本当にあるべき姿というのはどういうものだというようなものをおつくりをいただくように御努力をいただきますように要望しておきたいと思います。  次に参りたいと思いますが、労働省にお伺いをいたしたいと思います。  御承知のとおり、人生五十年の社会から人生八十年の社会に完全に社会は移行しております。それに対応いたしまして雇用の問題が大変な問題だと思うわけでありますが、高齢者の雇用の問題についての省としての御所見をお伺いいたしたいと思います。
  16. 福島譲二

    ○福島国務大臣 労働省といたしましても、高齢者雇用は最重点の一つとして今取り組んでおるところでございます。  御承知のように厚生年金法も六十五歳引き上げが予定をされておりますが、しかしそれについてはまだまだ余裕もございます。しかし、それを待たずに、それはそれとして全力を尽くして、高齢者、格別今六十歳定年の定着、そして、さらに六十五歳までの高年齢者の雇用の確保あるいは高年齢者を多数抱えられる企業に対する助成策、そういった面を通じて全力を尽くしてまいりたいと思っております。  なお、今人生八十年時代というお話がありましたが、それにふさわしい雇用のあり方を示すために、長寿社会雇用ビジョンというものを策定中でもございますし、さらに、今六十五歳までの雇用機会の確保のために雇用審議会にお諮りをいたしまして、その具体的な方策、場合によっては法的整備のあり方を含めて今後どう進めていくかについて折々御協議をいただいておるところでございます。
  17. 魚住汎英

    ○魚住委員 まさに時代的な要求であろうと御認識をいただいて、日夜御努力をいただいておりますことに感謝を申し上げております。  全国で三千三百の市町村がありますが、高齢化の高い市町村は全国で二千七百あるんだそうです。このような市町村は概して財政力の弱いところであります。私としては、例えば市町村の高齢化率等の指標により、高齢者の雇用に対する助成金を当該市町村に傾斜配分すること等により雇用の促進を図る等の制度を考える必要があると思います。  そこで、労働省の地域雇用開発を促進するための現行制度、そして今後の対策についてをお伺いいたしたいと思います。
  18. 福島譲二

    ○福島国務大臣 魚住委員らしいユニークなアイデアかと思います。私自身、魚住委員よりも、より過疎であり、経済力、財政力の弱い、そしてまたお年寄りのたくさんおいでの地域の出身の一人として、そのような元気いっぱいの発想に思いをいたされるお気持ちはよく理解をし、また共感を覚えるところでございます。  しかし、今労働省といたしましては、雇用機会の乏しい地域の雇用対策としては、昭和六十二年に策定をいたしました地域雇用開発等促進法、これは、地域雇用開発の助成金を中心として、その指定地域内で格別新たに事業所を設置するとかあるいは地域の住民を雇用するとか、そういう事業所に対して刺激を与える措置でございますが、さらに本年に入りましてその実効をより一層上げるために改正をいたしたところでございます。その他、シルバー人材センターの拡充等、最重要課題の一環として、先ほど申し上げましたように今後とも一層その充実に取り組んでまいりたいと思っております。
  19. 魚住汎英

    ○魚住委員 時代を認識され、的確に手を打っておられるということを存じ上げておりますが、まだまだ今ようやく緒についたということであろうか、そういう認識を持つものでございます。どうぞひとつ今後の御努力をお願い申し上げておきたいと思います。  次に、外国人労働者問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  外国人の労働者問題は、もう既に閣議その他で決定をされ、根本的にはそのようなものは認めないのだ、こういうことであるそうでありますが、不法就労をしているということは、逆の面から見れば、これは社会が必要としておるからそれだけのものに働く場所を与えておるということにもなろうかと思うのでございます。法治国家として不法就労に対しては厳正に対処すべきであるとも考えますし、また片一方では労働力の不足、特に三キと言われるように、きつい、汚い、危険というような仕事に対しては労働者を確保することすらも難しいという社会の情勢、そういうようなことを総合的に考えて、今日までの措置というのはわかりますし今日の法律の定めもわかりますが、今後の対策としてどういうようなことをお考えであるかということをお尋ねいたしたいと思います。
  20. 福島譲二

    ○福島国務大臣 人手不足ではございますが、そのような事態に安易な形で外国人労働者に依存するということにつきましては大変大きな問題があろうと思います。現在景気が大変いいわけでありますが、いつまでも続くわけでもないと思います。将来、景気が悪くなったようなときに真っ先に整理をされるのはそういう方々でございますし、それはその段階でまた国際的な摩擦も誘発するかと思います。現在、そういった方々が存在するからといって不法就労という事態を追認するわけにはまいらないと思います。  格別、最近、不法就労をめぐりまして賃金のピンはねとかいろいろな不当な事案がたくさん出ておることも憂慮されることでございますし、また、不法就労者が今のまま放置をされるということは労働市場や労働条件にも悪影響を及ぼすわけでございます。そんなことで、私ども、事業所に対する指導を中心といたしまして、本月下旬、外国人労働者問題啓発キャンペーン旬間ということで集中的な啓発、指導を事業所に対して展開をいたしたいと思っております。  なお、今、職業に貴賤はない、にもかかわらず三キということで、今の日本の若い方々がそういう嫌がられるような仕事につきにくいという実態、まさに御指摘のようなことがあろうかと思います。しかし、そういう嫌がる仕事、三キと言われるような仕事、これを全部外国人労働者にお願いするというような形は、やはり日本の国民として、国際的な立場の中におきまする日本人の立場としてとるべきことではないのではないかなと考えておるところでございます。  外国人労働者の不法就労の問題につきましては、今後、関係省庁、格別法務省等とも十分な連携をとりながら、不法は不法でございますので、そのような事態がないような形で全力を尽くしてまいりたいと思いますし、そういう意味合いにおきまして、きょうは法務省がおいででないかと思いますが、今入管法の提案をいたしておりますが、この早期成立もぜひお願いをいたしたいと考えておるところでございます。
  21. 魚住汎英

    ○魚住委員 適切な御答弁をいただきましてありがとうございました。実情を知れば知るほどいろいろな角度からの矛盾というものがあるわけであります。しかしながら、これは何らかの方法で、今の法律の縛りというものが当然あることはもう私どもも十分存じ上げてはおりますが、国際国家日本である、また世界に果たす日本の役割、その他いろいろと私どもは自民党として表題を掲げ、やっておるわけであります。それらのものとのすり合わせ等も、賢明なる福島大臣でありますから、当然頭の中におありだろうと思いますが、ぜひひとつ、今お答えになりましたような形での今後に対する適切なる対応、こういうようなことを考えて御努力いただきますことを要望申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  22. 中村靖

    中村委員長 次に、谷津義男君。
  23. 谷津義男

    ○谷津委員 ただいま魚住委員の外国人労働者問題について、私も重ねて質問をさせていただきたいと思います。  私は、外国人労働者問題について、不法就労その他いろいろな面について、外国人労働者を受け入れるということについて反対の立場に立っているものでございますが、その反対の立場にありながらも、現実の問題というのは非常に大きな問題になってまいっておりますものですから、労働大臣を初め関係各省の皆さん方にお尋ねをしたいというふうに思っているわけでございます。  労働省は、局長名をもちまして七月二十五日付で都道府県に通達を出しました。これは労働者問題の対応についてということでございますけれども、その中におきまして、外国人の就労の実態の把握に努め、その状況に応じ、事業主から報告を徴収するんだというようなことで出しておりますが、この件についてはどのような状況になっておるか、その概要をお知らせいただきたいと思います。
  24. 清水傳雄

    ○清水政府委員 お答え申し上げます。  ことしの七月、当面するこうした不法就労等外国人労働者問題の事態に対処いたしまして、何分にもこの問題、私ども第一線機関におきましても、必ずしもこうした対応が、きちっとした考え方あるいはマニュアル、そういう形で十分な習熟度合いがない段階でございまして、そういった意味合いで、基本的な考え方なりあるいは対応の仕方を全国的に通達をいたしまして対応させるべきだ、こういうふうに考えて行っておるわけでございます。  主要な点は三点ございます。  第一点は、やはりこの問題については、雇用主の方々におかれて、十分この問題についての御理解をいただくということが一番重要な事柄であろう、政府としての基本的な考え方を含めたそういう御理解をいただく機会をできるだけ多くつくってやっていくべきである、そういうことが第一点。  それから第二点といたしましては、不法就労そのものの状況、やはり放置するわけにはいかない、直接的、基本的には法務省を初めとするそうした機関におきまして衝に当たられるわけでございますけれども、労働省としても労働省なりにそれに対応するあり方といたしまして、状況の把握、それからそういう事態の是正指導、それから極端な事態の場合にはどういうふうに対処していくか、そういう対処の仕方。  それから第三点目といたしまして、現実に安定所の窓口にも御相談においでになる場合がございまして、そういうふうな場合に適正に、どういう形で外国人労働者の方々に対してきちっと対応をやっていくべきか、そういうことを中心として通達をいたしておるわけでございます。  現実のその後の状況でございますが、まず現段階といたしましては、各地域におきます事業主団体、幾つかの業種の方々の代表の方々とか、あるいはそういう主な企業の方々に対して、まず実情なりそうした面の考え方等につきましていろいろと第一線機関を通じてお聞きをしておる、今現在そういう段階でございます。
  25. 谷津義男

    ○谷津委員 この不法就労の問題につきましては、実際に不法残留十万人とも言われておりまして、その数字は約十万人だというふうにいろいろと答弁が今まであったようでありますけれども、現実にはもっと数多く不法な就労をしているのではなかろうか、不法残留と不法就労の数というのは違うのじゃないかと思うのですけれども、その辺はどういうふうに労働省は認識しておりますか。
  26. 清水傳雄

    ○清水政府委員 実態の認識の問題でございますが、現実に不法就労事案として摘発をされた外国人は昭和六十三年に約一万四千人に上る、それから本年上半期においても九千三百人が摘発をされ、前年同期比二九%増、こういう状況になっておるわけでございます。これはもちろん御指摘のように氷山の一角というふうに言われておりますし、法務省の方で推計をされました数値、これは先生御指摘のように、いわゆる入国管理上の記録の出入りの計算上から約十万人を上回る不法就労者がいるじゃないか、こういう推計がなされておりますが、そのほかにも、例えば観光目的等で滞在をされているその滞在期間中の不法就労の問題とか、こうしたものがその上に加わってくるだろうというふうに思いますし、十万人を超える形の不法就労がいる、こういうふうに私ども認識をいたしておりまして、正確な形につきましては把握は非常に難しい、こういう状況でございます。
  27. 谷津義男

    ○谷津委員 法務省にお尋ねいたしますけれども、不法残留ということで法務省も約十万人ということを申しておるのですが、今お話がありましたように、観光パスポートなんかで入ってきまして就労している面もかなりあるのではなかろうかというふうに労働省も今認めておるわけであります。私もそういう感じがするわけでありますけれども、法務省としてはその辺のところはどういうふうな調査をしたり、あるいはまたいろいろとその辺の検討をなされておるのか、その辺をお知らせいただきたいと同時に、既にパスポートが切れているというふうな人もいるのではなかろうかと思うのですが、その辺のところはどのような実態になっておるのかをお知らせいただきたいと思います。
  28. 町田幸雄

    ○町田説明員 まず第一に不法就労者の数ということでございますが、私どもとして把握している数は、先ほど来ここでお話が出ておりますように、出入国の要するに出国者と入国者の差、こういう客観的な数字、それからもう一つは、私どもが摘発いたしまして調べた者たち、こういうものからの要するに実情、こういった二つの資料をもとに推測しているだけでございます。それ以外の資料がないというのが実情でございます。そのような数字から見ますと不法残留者十万ということでございますので、ややそれを上回る数字という程度のところが我々として言える数字ということでございます。  それから、パスポートが既に切れている者がいるのではないかという御指摘ですが、それはいるように思います。ただ、この点について明確に、それでは何人、どこの国の者がいるのかということは把握できないわけでございます。なぜ把握できないのかといいますと、それぞれの国によりましてあるいはそれぞれの個人によりましてパスポートの有効期限が違っております。マルチのものもございますし単発のものもございます。それをその都度、入国の際に、Aという人はどういうパスポートで有効期限何年であるということまでは把握するシステムになってございません。したがいまして、不法残留者の数はある程度推測できますが、パスポートの有効期限がどうなっているのかということについてまでは把握できるようなシステムになっていないのが実情でございます。
  29. 谷津義男

    ○谷津委員 労働省にお尋ねしますけれども、今、不法就労で職についている外国人であっても、実はけがをした場合はこれは法的に保護されている、いわゆる労災保険の適用の範囲に入るんだということでありますけれども、この人たちが帰国した場合、労災保険というのは帰国しても請求権というのですか、その権利というのはあるのでしょうかどうでしょうか、この辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  30. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 御指摘のとおり、労災保険は使用者の労災責任を保障している保険でございますので、そして使用者の労働者に対する保障責任というのは労働者が外国人であろうとも当然負うべきものでございますので、労災保険の対象にも当然なっているわけでございます。  なお、その外国人労働者が帰国されました場合で、年金等の受給権を持って帰国されました場合は、やはり日本人の労働者と同じように、それぞれの国に年金を送金いたしております。
  31. 谷津義男

    ○谷津委員 これは、手続とか何かで帰国してから大変な苦労があると思うのですが、この辺は支障なくやれるのでしょうか。  それからもう一つ問題なのは、不法就労していて労災保険を請求した場合に、その時点で不法就労というのが、はっきり言うとばれるわけですね。そうすると、なかなか請求をしないんじゃなかろうかというふうな懸念があるわけでありますが、現実には全部出ているんでしょうか。それともそういう請求というのは出ないのが多いんでしょうか。その辺のところはどういうふうに掌握しているでしょうか。
  32. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 送金事務につきましては、現在のところ格別支障が生じているとは聞いておりません。  お尋ねの後段の、果たして被災労働者がきちんと申告をしているかどうかという問題でございます。  非常に微妙な問題であろうかと思いますが、現実に、昭和六十三年一年間では七十一件の労災の申請がございました。恐らく、死亡災害あるいはそれに準ずるような、年金支給の対象になるような重い障害につきましては、たとえ強制送還の危険を冒しても申請をしておられるのではないかというふうに思います。ただ、非常に軽いけがの場合にどういうような対応をしておられるか。私どもも若干問題があるのではないか、そういうふうに思っております。
  33. 谷津義男

    ○谷津委員 法務省にお尋ねしますが、帰国する場合に、こういうふうな労災保険を受けられないまま、けがをしたまま帰国する人も出るかと思うのですが、法務省が入管で見る限り、この辺のトラブルというのはないでしょうか。
  34. 町田幸雄

    ○町田説明員 私ども、不法就労外国人として入管法違反ということで摘発した者の中に、若干名ではございますが、例えば指が切れているとか、そういうような者がおりました。そういう事例の場合、私どもとしては、働いていた先の使用者を探しまして、そして労災の手続をさせてというようなことをやっております。そういう例が確かに実務上散見されるということは事実でございます。
  35. 谷津義男

    ○谷津委員 こういうふうな問題で、不法就労といえどもこういった労災の対象になる、いわゆる国の責任においてやらなければならない問題というのを幾つも事例として今聞いたわけでありますけれども、不法就労ということの現実は、使ってはいかぬというような閣議決定等もありますけれども、問題は、現実的にはかなり就労しているという実態があるということを私どもは踏まえながら対応を考えていかなければならない。これは大事なことだろうと思います。時には国際問題すら起こるのではなかろうかというふうに思うわけでありますけれども、この問題についての対応というのが非常にあいまいになっているんじゃないか。これは各省間のいろいろな問題等もあるのでありましょうけれども、最近外務大臣が提案をしまして、関係閣僚会議というふうなものに格上げをしてやりたいという考え方があって、この内閣の中にこれをつくるんだというふうな新聞報道がなされておりますが、新聞報道等によりますと、何か法務省がこれに対して抵抗しているというふうな報道もされておるのですが、法務省はどんな考えでこれに当たっているのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  36. 町田幸雄

    ○町田説明員 委員御指摘の新聞報道というのは私どもも承知しておりますが、そのような事実はございません。  なお、外国人労働者問題については、政府の統一見解といたしまして、専門の技術、技能を有する者は可能な限り受け入れる、それから、単純労働者の受け入れについてはなお多様な角度から慎重に検討する、研修生の受け入れは国際協力上の見地から内容を充実する、それから、現在国会で継続審議中の入管法の改正案の早期成立に努力する、そういう旨を外国人労働者問題関係省庁連絡会議において決定されているところでございまして、新聞報道のような事実はないと私どもは思っております。
  37. 谷津義男

    ○谷津委員 私はこれは重大な問題だろうと思いますので、ぜひ各省協力して、早急な対策あるいは解決策が必要ではなかろうかと思うのです。  ところで、また労働省にお聞きするわけでありますが、人手不足という現実は非常に大きな問題になっております。特に大企業の存在するところにある中小企業等においては、この人手不足というのは死活問題になっていることも事実でございます。  実際に雇用者側からすると、外国人を使うのは悪いことだということは十分にわかっていながら、なおこれに依存しているという実態があるわけでありますけれども、この問題については、使っては悪いということであるならば、この不足している労働者問題に抜本的な対策を考えてやらなければならない、これが労働省の一つの仕事であろうと考えるわけでありますが、この点大臣はどのようにお考えですか、お聞かせいただきたいと思います。
  38. 福島譲二

    ○福島国務大臣 最近、全体として人手不足と言われることが大変多い状況であることは今御指摘のとおりでございます。しかし地域的に見ましても、例えば北海道、九州等はまだ有効求人倍率も一に達してない低い状態でございますし、また年齢的にも、高年齢者ではあるけれどもまだ元気で働く意欲をお持ちの皆様方に思うように雇用の場がないということもございますし、また御婦人の職場に対する進出の意欲もますます高まっておる状態でございますし、人手不足の問題はそのようなことを背景としてまだまだ十分に対処できるし、そしてまたそういう形で対処していかなければならないのではないかな、安易に外国人労働者に依存するというようなことは避けていかなければならないのではないかなと思っております。  実は昨日も私の選挙区の方からいろいろな方がお見えになって、この問題を話しておられるのを聞いておりましても、外国人労働者なら少し安くても使用が可能ではないかな、こういうふうなことを念頭に置かれて、外国人労働者が少し何とかこちらの方にも来るようにできぬか、こんなようなお話がないでもないわけでございます。  私どもは、基本的にはやはり国内の労働力需給の問題は労働力需給の問題として全力を尽くして対処していきたい、そのような努力がないままの安易な外国人労働者の導入というものは、我が国の労働条件の向上とか雇用構造の改善をおくらせる原因にもなりますし、また、経済社会全体として後世に及ぼす大変大きな影響を考えた場合には、十分慎重に考えていかなければならないと考えているところでございます。
  39. 谷津義男

    ○谷津委員 大臣のおっしゃるとおりだろうというふうに私も考えておるわけでございます。  実際の問題としまして、労働者不足ということが起こっておるために、ここで締めれば締めるほど、むしろブローカーとかそういう人たちが暗躍する場がまた出てくる感じもするわけであります。また、もしこれを窓口を広げて入れるということが起これば、こんな言葉は適切じゃないかもしれませんけれども、外国人労働者予備軍といいますか、各国から日本に向かってじゃんじゃん入ってくるという危険もあるのじゃなかろうかと私は思うわけであります。ですから、この窓口ということについては本当に慎重を期していかなければならないということは十分にわかるわけでありますし、ブローカーに暗躍の場をつくらせないためにも、この辺のところの対応は非常に大変なものがあるのじゃなかろうかと思うのですが、これをやり抜かなければならぬというふうにもまた一方で思うわけでございまして、このブローカーの暗躍の場をつくらせないためにもこの外国人労働者対策の問題についてははっきりと対応策を打ち出さなければならない、そういう時期に来ているというふうに私は思うのでありますけれども、労働省はこれをどのように考えておりますか。その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  40. 清水傳雄

    ○清水政府委員 私ども御指摘のとおりだと考えておりまして、労働省、労働行政の立場からそうした具体的な事案、例えば派遣法の違反の問題でございますとかそういう事案に適切に対処し、かつ、適正な形で就業秩序が保たれるようなことに、先ほど申し上げましたような通達を中心といたしまして対処をいたしていくことといたしておりますし、また、現在入国管理法の改正案が国会で御審議中でございまして、その法律の早期成立を待って、私どもといたしましても、法務省の方にも十分御協力を申し上げつつそれをベースとした適切な対応をとってまいりたい、このように考えております。
  41. 谷津義男

    ○谷津委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、この問題は各省との連携が非常に大事なことだろうというふうに考えておりますので、なお一層この問題には連携をとりまして、同じ立場に立っておるわけでありますから、ひとつ適切な対応を早急にしていただきたいことを要望いたしまして、終わらせていただきます。
  42. 中村靖

    中村委員長 次に、三野優美君。
  43. 三野優美

    ○三野委員 あすの本会議に上程される予定であります年金法改正問題でありますが、年金制度のあり方についてまずお尋ねをしておきたいと思うのであります。  言うまでもなく、年金制度が税制とのかかわりでいかにあるべきかということが世の注目を浴びておりますし、大きな関心を呼んでおるところです。人間だれしも子供の養育とみずからの老後を心配しない者はないわけでありまして、若い時代には元気でできるだけ働きもしましょうし、公平、公正であれば能力に応じて納税をする義務があることは自覚しているわけです。同時に、老後のための年金制度があるからこれに加入して、その代償としての安心できる年金制度の確立、これは男女を問わず職業の別なく求めているところなわけであります。  したがって、さて、今日の年金制度がこの国民の期待にこたえるかどうかということについては必ずしもそうなってはいない、幾つか問題点があると思うのです。きょうは、時間の都合上一、二点だけお尋ねをしておきたいと思うのであります。  きょうは、国民年金及び厚生年金の、特に積立金の運用方法について質問をいたします。  政府は、去る通常国会に年金法改正法案を出しているわけですけれども、一つには厚生年金の掛金を引き上げる、支給開始年齢を延長する、こういうものが中心になっているわけであります。いわば将来の年金財政に非常に不安を示してこういう案を出しているのだろうと思いますが、国民の側は、我々が積み立て年金資金というものの運用についてそれなりの関心を持っていることは言うまでもありません。  そこで、まず第一に聞きたいのは、他の年金制度と違いまして厚生、国民年金保険料がなぜ大蔵省の資金運用部資金でなければならないのか、その理論的な根拠、共済はそれぞれ自主運用をやっているけれども、これだけはそうでなければならぬ、ここのところをひとつ聞かせてもらいたいと思うのです。例えば国は年金給付に際しての負担はしますが、それは給付の際にするのであって、積立金はあくまでも加入者の積立金なんですが、それがなぜ大蔵省でなければならないのか、資金運用部でなければならないのか、この点はどうも我々素人にはわかりませんので、その点ひとつ大臣にお尋ねしておきたいと思います。
  44. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  厚生年金国民年金積立金はもとより、政府が所管しておりますところの特別会計に所属しますところの積立金は、資金運用部資金法の規定に基づきまして資金運用部にすべて預託をするようになっていることから、積み立てを預託しているわけでございます。
  45. 三野優美

    ○三野委員 まことにわからぬ話でして、あなたは法律説明だけしているので、私の質問に答えてないわけです。私ども加入者の立場からしてみて、これは国民、市民の財産を将来のために積み立てているのですよ。それがなぜ大蔵省でなければならぬのか、資金運用部資金でなければならぬのか、この点を聞いているわけです。法律の解釈を聞いているわけじゃないのです。だから、その質問に対して、市民的な質問に対してちゃんと答えてください。  さてそこで、時間がありませんので二つ目も一緒にいきますが、この六十八兆円の資金が財政投融資として各分野に配分されていますね。住宅、生活環境整備、厚生福祉、文教、中小企業、農林漁業などに重点的に配分されているわけです。この貸し出しをしている利率と市中銀行の融資の利率との差はどのくらいですか。
  46. 水田努

    ○水田政府委員 今私お答えいたしましたのは、年金積立金を資金運用部に預託している根拠を申し上げたわけでございます。  年金積立金は、労使の拠出に基づくのは御指摘のとおりでございますが、我が国の公的年金制度は世代間扶養の形をとっておりまして、徐々に積立方式から賦課方式の方に移行をしてまいるわけでございます。世代間扶養の形をとりますと、どうしても公的年金制度を維持していきますためには一定の経済成長が持続されるということが大変大切なことであると私どもは考えております。資金運用部に預託をいたしまして、その資金が社会経済の基盤の育成に寄与し、ひいては日本の経済の発展に貢献をしている、これに年金資金が寄与するという側面は持たざるを得ない、私どもこう考えております。  ただし、現在、この積立金は、ここから生まれます果実がやはり給付の財源として大きなウエートを持っておりますので、私どもは六十一年度から自主運用事業というものを開始いたしております。そのほかもう一点は、三十六年からいたしておりますが、四十年間ぐらいにわたる長期の加入をしていただいておりますので、福祉還元というものを住宅融資その他でさせていただいております。私どもは、財投協力、自主運用、それから福祉還元、この三つをバランスをとりながら年金積立金を運用していくことが最も妥当ではないかと考えておる次第でございます。  なお、金利でございますが、今お尋ねの金利は、資金運用部の資金は五・一%でございます。それから、現時点における長プラは六・二%でございます。
  47. 三野優美

    ○三野委員 これは大臣、私が聞いているのは、他の共済の資金は御承知のとおり自主運用。厚生、国民年金はなぜ社会的に寄与するために大蔵省でなければならぬのか。そこで、厚生、国民だけは社会的に寄与しなければならぬので、ほかのはせぬでいいのかということになってしまうわけです。なぜそうでなければならぬのかというところが問題なんです。  例えば、あえて言うなら二つ目の問題と一緒になりますが、実際には資金運用部には五・一%、そして資金運用部からまた各団体に貸しているのが五・一%、市中銀行は六・二%になっているじゃないですか。そうすると、国民年金、厚生年金の加入者は、おまえらは日本の経済の発展のために社会的責任を負わなければならぬから、おまえだけちゃんと大蔵省の財投でなければだめよ、こういうことになってしまうの。そうはならぬでしょうということを言っている。なぜこれだけがそこにならなければならぬかということがわからぬわけです。私は法律上の解釈を問題にしているわけじゃないので、政治論をやっているわけです。その点を聞いているわけです。こういう差が現に出てきているのですからね。おかしいじゃないの。だからそこのところを問題にしたいわけです。決して言いわけだけ聞きに来ているわけじゃありませんから、その点はしっかりと受けとめてもらいたい。
  48. 水田努

    ○水田政府委員 共済組合は一応国と別の独立の公法人でございますが、国の資金はすべて資金運用部資金法で一括資金運用部が管理するという形になっておりますが、共済組合も同じく財投にその資金の一部を入れて協力する、それから自主運用する、福祉還元するということで、私どもがやっております財投協力、自主運用、それから被保険者に対する福祉還元、この三つの要素で運用されている点においては私どもと基本的に変わりはない、このように考えております。
  49. 三野優美

    ○三野委員 いいですか、共済年金の方はみずからの判断で一部資金運用部に融資して使ってもらいましょう、こういうことですね。国年と厚生年金は当初から全額資金運用部でなければならぬ、そういう制度的な違いがあるということを私は言っている、そこを言っているわけなのです。だから、これについては私は後から大臣に聞こうと思っているのですが、そこのところを指摘しているわけです。なぜこれだけそこでなければならぬのか、頭から資金運用部でなければならぬのかということが問題なわけですね。  さて、そこで、住宅なり生活環境整備なり文教その他、政府が政策上対応すべきところに年金積立金が五・一で使われているわけです。市中銀行はもっと高いわけ。当然、文教や住宅や生活環境整備などは本来政府の固有の業務なんですね。それは資金運用部から来ようが来まいがどうせやらなければならぬことなのです。資金運用部から流れるのはいいですよ。なぜそれが五・一で使われなければならぬのか。本来、安い住宅あるいは完備した文教施設、これは当然政府がやらなければならぬことでしょう。資金運用部のをお使いになるならお使いになってもいいけれども、いや、この年金積立金を使うとするならば、市中銀行並みに政府が払う、利子補給をする、それならわかりますよ。あえてこの低利の部分だけをつかみ取って、政府がやらなければならぬ、あるいは市町村がやらなければならぬことにこれを使うというのは、いわば年金積立金を犠牲にしているのじゃないか、この是非についても問題のあるところじゃないかと思うので、この際聞いておきたいと思います。
  50. 水田努

    ○水田政府委員 御案内のとおり、厚生年金国民年金も、保険給付を行う事業と並んで老後の生活の安定に寄与するための福祉施設活動を行うことが法律上認められております。したがいまして、確かに先生が御指摘のように、老後の生活の安定を期するためには住宅を持つとか健康の増進維持に寄与するような施設を整備するというものを一般会計でやるというのも一つの方法ですし、政府もそれをやっているのです。  しかし、そこにはおのずと限界があるために、やはり被保険者の方は三十年なり四十年という長い期間にわたって保険料を納められて、その間は受益がないわけでございますので、それを低い金利で長期で貸していただいて、住宅を持ちたいという要望等も非常に強うございますし、また年金改正の都度附帯決議でもそういう面で寄与するようにということもいただいておりますことから、私どもは、還元融資という形で住宅融資等を行ってまいっております。現在までに二百二十万人の方に年金の融資で住宅の建設等に寄与をさせていただいたということで、これもやはり年金制度を円滑に行うために必要な事業ではないか、このように私どもは考えておる次第でございますので、何とぞ御理解をいただきたい、こういうふうに思う次第でございます。     〔委員長退席、谷津委員長代理着席〕
  51. 三野優美

    ○三野委員 あなた、住宅だけをつまみ上げてやったわね。住宅だって加入者の中には利用する人としない人とあるわけです。当然不公平が生まれるわけでしょう。  じゃ聞きますが、文教施設だとか農林漁業施設だとか生活環境整備も、これは厚年と国民年金の者が背負わなきゃならぬの。本来一般行政の中で、一般会計の中でやるべきことでしょう。それをここに転嫁しているという事実がここにあるわけなんです。だからそれを問題にしているわけです。あえて言えば住宅だって利用する人としない人とあるわけです。  しかも、私が問題にしているのは、あなたの方は年金は加入者から金を預かっている、もらう方だ。それを大蔵省に持っていっているけれども。その年金財政が豊かで、しかも将来とも心配なくて、どうぞほかの政策にも使ってくださいというのならわかりますよ。いや、これから三十年もたっていったらば、みんな死ななくて困る、年金給付が困難だから六十歳を六十五歳にしなければならぬ、掛金も上げなければならぬと言っている状況のもとで、そういう犠牲的なことをやらせておいて、加入者の側から見たら、何だこれは、こう私どもは質問を受けるわけです。あなたは受けないかもしれないけれども、私は選挙区で受ける。預けた金はどうなっているの。答えられますか。法律上のことを私は言っているのではない。法律に問題点があればその法律を変えるのが国会なんですから、そこを問題にしているわけです。だから筋が違っているんじゃないの。これほど年金財政が厳しく言われている状況の中で、いかに効率的に活用して、そして加入者に心配ないように、引き上げもしない、あるいは六十を六十五なんということを言わないで安心してできますようにというために、預かっている側は積立金というのは効率的に使う義務があるでしょう。しかも積立金には政府の金は入ってない。政府は給付のときだけ出すのであって、全く加入者の金でしょう。これについて大臣どう思いますか。
  52. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 委員の御指摘の趣旨はよくわかります。年金は、御承知のとおり、仮に積み立てたものを金利なり有利運用に、こういったものだけで成立しているとは私は思わないのです。  と申しますのは、昭和四十八年から、御承知のとおり今までの積立方式から大きく転換して賦課方式に変わってまいりました。すなわち、将来年金を受ける時代に、その当時の生活水準に見合ったものを給付していかなければならないという意味で、今までの仮に金利を有利に運用しただけでは、経済の成長が非常に大きく発展していきますから、どうしてもその当時の生活水準を維持するものにならない。そのために、物価にスライドして、そして生活水準にスライドして、そうした給付をするために、そのときの年金に加入している人の給与の水準、その水準に見合った保険料を納め、同時にその保険料というものが今受給する人に与えられる、そういう仕組みになっておるわけです。  御承知のとおり、今、年金受給をしている方々は、恐らく終戦当時すいとんを食べて、本当に安い給料で、最低賃金制の中で営々として働いてきて積み立ててきた人たちが、今ビフテキを食べて、そして海外旅行ができるような国民の生活水準になった、それらの水準に見合った給付を受けようとしておりますから、そういった働いている人はその水準に合った給与を当然得るようになります。そのベースが基準になって納められて、そして給付を受ける。同時に有利運用というものも当然すべきである。今までのように何でもかんでも大蔵の中に納めていてその中からという、先生の御指摘のこともよくわかります。それで、最近は、そういった意味での有利運用なり自主運用なり、そういったものもぼちぼちと手がけてはおります。しかし、何といっても安定しなければいけない。もちろん不安定な、投資みたいな形ではいけません。そういう意味で、今言ったような制度の中で運用してぼちぼちと自主運用も行われるようになって、その範囲も年々拡大されるようになって、先生の御指摘の方向を向いて歩いていくことは事実であります。
  53. 三野優美

    ○三野委員 では、こういうことですか。かつては積立方式と賦課方式になっている。したがって、そのときの給付に対して必要なものについては、もちろん積み立て部分もあるが、あとは政府が責任を負う。あるいはその当時の加入者が保険料を引き上げることによって処理する。いわば時代が変わりつつあるから積立方式だけを考えないのだ。しかし、積み立ての自主運用というのも今否定はしませんでしたね。  いずれにしても、もちろんそれが時代の移り変わりによって変わっていくにしてみても、やはり我々が積み立てた金が有効に活用されて、できるだけ負担が少なく、かつ、給付の際に心配ないように、現に六十歳、六十五歳なんて言い出しているわけですから、そういうことがないようにするためにはできるだけ効率的な運用というものがなされなければならぬわけです。そこのところに問題を絞って質問をしているわけであって、それがこういう施設に安い金利で活用されるということは、積立者にしてみれば、加入者にしてみればまことに納得のいかないところだよ。これは県や市町村や国がやらなきゃならぬことをなぜ我々に背負わすのだ、こういうことですから、この点については誤解のないように、これはまた後で……。  そこで、もう一つついでに聞きます。先ほど言ったように厚年なり国民年金の預託金利は五・一%ですね。年金福祉事業団の自主運用分が六・五%と、きのう聞きました。企業年金が八・五%、こういうふうに差が出てきたわけです。これについてはどういう考え方を持ちますか。
  54. 水田努

    ○水田政府委員 預託金利は、確かに現在五・一%でございますが、厚生年金と共済組合の運用実績を直近の六十二年度で申し上げますと、厚生年金は六・七七%で回っております。国家公務員共済が六・四九%、地方公務員共済が六・一三%、私学共済が六・七四%、農林共済が七・一二%ということで、資金運用部の預託金利が他の共済の運用実績に比べて著しく劣るということはないことはひとつ御理解をいただきたいと思います。  それで、先生の御指摘の事業団の六十一年度から始めました自主運用事業、それから厚生年金の事業、この差はどうやって生じているのかということでございますが、資金運用部資金というのは確定金利で長期の貸し付けを行うという性格で、すべてが貸付金でございますが、事業団、それから厚生年金基金というのは生保、信託に委託をしまして、これは貸付金というよりはむしろ株式とか外債とかいろいろな不動産運用という多角的な運用を行っているところでございますが、同じ生保、信託に預けております事業団と厚生年金基金でも、今六・五と御指摘の八・五%程度という乖離が生じておりますのは、企業年金の場合は二十年前からの歴史がありまして、その当時取得した不動産なり株式なりの含み資産がございまして、それを処分することによって、吐き出すことによって高金利を持続していますが、それもやはり競争が非常に激しいために含み資産も吐き出してだんだん下がりつつあるわけでございまして、含み資産のない同じ生保、信託を使った事業団のものはやはり二%の乖離があるというのは含み資産を持っていないからだ、こういうことでございます。  資金運用部資金との差は、株式その他の運用を行っていることとの差でございますが、いずれにいたしましても、ハイリターン、ハイリスクと言いますように、やはり高金利を得るということは一面非常に大きな危険を伴うので、私どもは、非常に多数の金融機関に分散しながら、注意しながらこの自主運用を、さっき大臣が申し上げましたように、ステップ・バイ・ステップで拡大しながら事業団の体制を整えながら拡大をしていっているわけでございますが、これらは常に危険を伴うもので、やはりこの点については、非常に貴重な労使からお預かりしておる金でございますので、安全の上にも安全を期して、かつ、有利な運用をしてまいらなければならぬもの、私どもはこのように心得ながらやっておる次第でございます。
  55. 三野優美

    ○三野委員 そこで大臣、私は次のことを私の考え方を申し上げて御批判いただきたいと思いますが、実は、今幾つかの問題点が出たように、資金運用部の資金というのは、もちろん安全性はあるけれども、しかし同時に、効率的な立場からいうと非常に問題点がある。そこで、厚年なり国民年金積立金運営は根本的に考え直すべきではないか。私は、これはやはり加入者、もちろん使用者、労働者側は入りますが、あるいは政府も入ってもいいと思いますが、第三者を含めた積立金運営委員会みたいなもので自主管理をすべきである、その自主管理のもとにおいて一体どれをどう活用すべきかということを決めるべきである、そして、あくまでもこの資金の活用に当たっては加入者本位で効率的な運用というものを第一義的に考えるべきではないのか、こういうように思うわけであります。  三つ目には、政府が行う諸政策については、年金基金に背負わすことなくやはりみずからの責任で対応すべきであって、こういうものはけじめをちゃんとつけるべきである、もし年金基金を使う場合には一般資金と同じように利子補給をして、利用者が安く活用できるようにして、年金基金に迷惑をかけないようにすべきである、こういうように思うのです。  そこで、自主管理の上に立って、例えば政府の財投資金の方へ幾ら渡すかということについてはそこが決めるべきであって、とにかく加入者のは全部大蔵省に入ってしまって、そこから厚生省の方が、お願いします、自主管理を何とかできませんかなどという性格のものでは本来ないのだ、こういう仕組みに改めるべきであるという考え方を持つのですが、どうでしょうか。大臣にこれだけ一つ聞いておきたい。
  56. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 先生の御指摘のお気持ちはよくわかります。しかし、日本の年金制度は、最初から説明をしておりますように、今では世代間扶養になっておるのですね。世代間扶養というのは、今の世代の人が生活している水準が根底にあるわけです。そして、積み立ての場合には利子を少しでも有利な運用をしながら展開をしていく。どうしてもそこには世代間扶養の場合よりもはるかに危険性も伴いますし、世代間扶養というものは、同時に別な意味で、国民すべての人がこの制度に合意を与えていかないと成立がなかなか難しい。そういう意味で大きな問題を共同負担している。  例を挙げるというと、例えばお年寄りの医療の問題でも、世代間扶養の形をとっているから、年金施策、保険制度だけでなくやっていけるので、今一家にお年寄りが一人で月額百万だとか二百万だとかというのはたくさんあります。もしこれを家庭で、一軒の家でそれを賄うとしたら到底その家では賄い切れないし、破産になってしまうし、あすからの生活が困ってしまう。そういうようなものを世代間扶養という形で支えているということで保障されているということを考えていかなければならない。  それで、今我々の年金制度の中にいろいろな仕組みがあります。公的年金の中にも共済年金、そして厚生年金、そういう中では官民格差がある。いろいろな問題が今までありました。そういう官民格差もなくすように今努力をして、そして将来は、平成七年には年金をすべて一元化しようというところまで行っているわけであります。その一元化の一番大事なことは安定ということで、しかも公平に、大きな格差があって官はいいけれども民は悪いというものではなくして、そういった一元化する仕組みに到達をしながら給付の安全を求めているわけであります。そういう中で有利な運用という面も考えていかなければいけない場面もあるけれども、それが前面に出て不安定な状況をつくり上げていったら大変なことになりますから、はたから見るとどうもまだるっこいな、もっと有利な運用をしたらいいじゃないかというようなお気持ちもわかりますけれども、この一元化を達成する目的に向かって現在の世代間扶養の仕組みを維持していきたい、私はかように思うわけであります。
  57. 三野優美

    ○三野委員 率直に申しまして、時間がないのでこれ以上突っ込みませんが、私はまだ納得しがたい点があるわけです。たとえ運用の仕方あるいは性格が変わっていきつつあるといってみても、やはりもっとちゃんと効率的に運用する面があっていいのではないかという問題点がある。これは時間がありませんから。  最後に一つだけ聞いておきますが、国年が三十六年に月百円で始まりましたが、二十五年掛けて二千円と、こういったわけです。今八千円になっていったわけです。それで四十年掛けて、国年の百円が二十五年で二千円ということから考えてみたら、幾ら払ったら整合性があるのか、これをちょっと聞いておきます。
  58. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 百円払って二千円、今は八千円払っているのに五万円じゃないかということでございますが、御承知のとおり、先ほど来申し上げているように世代間の扶養という形になっておりますので、当時百円払ってくださっている方に今五万五千円払っているわけなのです。でありますから、今払っているお金が八千円でありますけれども、その方がいただくときには十二万円なり十六万円なりというようなことになっているのだと思います。百円払っている人が今五万五千円もらうわけですが、その当時はこんなに日本の水準がばっと上がるということは想定していなかったものですから、それが世代間扶養にがらっと変わりましたから、そういう意味で、今の生活を保障しているという意味で考えていただかないといけないのではないか、かように思います。
  59. 三野優美

    ○三野委員 私の選挙区に一遍大臣が来て説明してもらおうかな。私はそこで質問されるとよたよたしているわけで、あなたがそうやって説明できるから、一遍説明してもらおうかな。  労働省にお尋ねしますが、私のところは四国なのですけれども、全国的に見ていると、いわば国鉄清算事業団、JR、特にJR各社において労使関係の紛争がずっと各地に出ているわけです。地労委だけで八十八件で五十六本の命令が出た。中労委で一件。東京地裁では緊急命令が出て、これは応じたらしいのですが、私のところでも、松山地裁から高松高裁で原状に復しなさいという判決が出たわけです。  そこで、地労委の役割と位置づけについて聞きたいのでありますが、これほど全国的に地労委の決定が出てもJRは一切応じない。これについて、労働省は地労委の存在についてどういう理解をしているのですか。もう地方委なんというものは通過駅みたいなもので、能力もなければ社会的な責任もないと思っているのか。それとも労働省はこれは大変だとお考えになっているのか。地労委の委員の中には、もうやめさせてもらうほかない、これじゃとてもじゃないけれども社会的な責任は負えない、全然権威がないじゃないか、こういう意見も出ているのです。この地労委の存在あるいは地労委の決定について、民営化したといえどもJRは国の資本ですから、これに対して労働大臣はどう考えますか。世間的には余りにも信用できない、不信だと言っているわけです。
  60. 岡部晃三

    ○岡部政府委員 地労委の存在意義というお尋ねでございます。  この労働委員会制度は中央、地方とあるわけでございますが、地方労働委員会は、不当労働行為の審査の機能と労使紛争の調整という二つの機能を有しているわけでございます。これまで、我が国の労使関係の安定につきまして地方労働委員会は非常に貴重な役割を果たしてまいったと思っているわけでございます。  仰せのJRの紛争でございますが、ただ不当労働行為制度と申しますのは、この地方労働委員会の命令に不服があります場合には、その当事者は再審査を申し出ることができる、あるいは裁判所に行政訴訟を申し出ることができるということが法律的にも確立されているわけでございまして、それが確定せざる間は、これは地労委で命令が出ましてもまだ使用者の任意の履行にまつという建前でございます。したがいまして、このJRの問題につきましては、労働省としては円満な労使紛争の解決を望んでやみませんけれども、しかしながら現在手続が進行中である、このように御理解をちょうだいしたいと思うわけでございます。
  61. 三野優美

    ○三野委員 大臣、今も局長から話があったけれども、私は法手続のことを聞いているわけじゃないのです。地労委という存在が事JRについては今もう社会的意味をなさないようになっている、そう地労委が言っているわけです。これについて、所管する労働省として困ったことだと思っているのか、何とかしなければならぬと思っているのか。あるいはこの決定は、一件や二件と違うのですから、八十八件の中で五十六本もの決定が出たけれどもなおかつ応じない。世間では地労委なんというのはないに等しい、通過駅みたいなものだと言っていることについて、労働大臣、あなたはどう考えるのですか。どうこれに対応しようとされるのか、あるいはJRに対してどう指導しようとしているのか、その見解を聞いているわけです。手続のことは私も弁護士ですから少し知っているわけです。手続は聞いていないわけです。
  62. 福島譲二

    ○福島国務大臣 一般論といたしましては、今局長も申し上げましたように、地労委が我が国の労使の安定的な関係の維持のために大変大きな役割を果たしていただいたと、私どもも高くその御労苦に対して、また今までの果たされた役割に対して敬意を表し、評価をいたしておるところでございます。  ただ、現実に今御指摘のように、JRの問題につきましてあるいは地労委の皆様方に今お話があったようなお感じをお持ちの方もなきにしもあらずかなと私も否定はいたしません。しかし、この問題は、今の段階におきましてはまさにJRの判断におきまして係争中の案件でございまして、その評価については、今私どもの立場から申し上げるのは避けさせていただきたいと思っております。事柄が大変複雑微妙な背景があるだけに、今の段階ではこのような御答弁でお許しいただきたいと思っております。
  63. 三野優美

    ○三野委員 時間が来たので終わりますが、労働大臣、少しちゃんとしてもらいたいと思います。お願いしておきます。
  64. 谷津義男

    ○谷津委員長代理 渡部行雄君。
  65. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最初、通告しました順序を時間の関係で変えて御質問をいたします。  そこで、まず最初に、全国の医大附属病院の中に医療酸素の代金請求及び診療報酬額等の請求に不当なものがあったと会計検査院から指摘されたと報じられておりますが、その実態について明らかにしていただきたいと思います。
  66. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 過日、会計検査院から、ただいまお述べになりましたような事実の指摘がございました。この実態と申しますのは、医療用の酸素につきまして、現行の診療報酬請求の方法が、実際の購入価格を十円で割って得た点数で請求することになっておるわけでございますが、個々の病院におきましてその運用の実態を見ますと、必ずしも現実の購入価格を十円で割った金額どおりになっていない、こういうケースがあったということでございます。  この取り扱いといたしましては、酸素の容器と申しますか、例えばタンクに液体酸素が入っていてそれをパイプで患者に流して使うとか、あるいは持ち運びが容易なようにボンベに入っているものをその患者のベッドのところで、あるいは患者が移動中にも使うとかいろいろな形態がございまして、実際の購入価格もまちまちでございます。ただ、個々の患者に対して実際にどの容器の酸素を使ったかということを正確に把握して請求することが現実には困難な面もございまして、この問題については請求方法についてももう少し改善をすると申しましょうか、いろいろ具体的な細目をさらに決めるというような必要性もあるということも指摘されておる、こういう実態でございます。
  67. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただ、これは指摘されたからというだけでなしに、なぜそういう問題が起きるのかというその辺をやはりはっきり把握しないでは、改善のしようがないと思うのですよ。一体、厚生省指導の中に問題があったのか、向こうの書類提出を書く場合の認識に問題があったのか、それとも故意にそういうことをやったのか、この辺を明確にしていただきたいと思います。
  68. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 幾つかの問題点が重なっておるというふうに認識しております。  現在の診療報酬の請求上、先ほど申しましたように、購入価格を十円で割ってその点数で請求せよ、こういう取り決めになっておるわけでございますけれども、実際の請求に当たりましては、やはりこれだけの取り決めでは現実に正確な請求を行うことがなかなか難しい面もあるということは私ども認識いたしております。また、医療機関側においても、医療機関によって実態はいろいろであるとは思いますけれども、ある程度厳密にそういった計算をしているところと、それからさらに、ある程度の推測と申しますか推計と申しますか、こういうことで請求しているところもあるのではないか。必ずしも不正という意味での故意があったという認定はなかなか困難でございますけれども、やはり現在の請求方式それから実際に請求する側、双方に原因があったと考えております。したがって、今後は双方について対応を考えていく必要があろうか、こういう認識を持っておる次第でございます。
  69. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 問題は、厚生省自身がはっきりとつかんでいないんじゃないですか。問題があったのはなかなかつかみにくいとか、あるいはどういう事情でそうなったかはいろいろ複雑な状況によるとか、そういう答えでは答えにならないんですよ。新聞等ではこの医療酸素が二倍にもなって請求されている件もあると言われておりますし、そしてまた、市場販売価格がそれぞれ違うという場合にどの販売価格をとったか難しい。そう言っても、買ったものの値段がついているんだから難しいなんて言っていられないと思いますよ。だから、もっとはっきりした把握をしていかないと、どういうふうに改善するのか、今の御答弁の中からは方針が出てこないでしょう。そこをきちっと言ってくださいよ。
  70. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私がお答えいたしましたのは、病院によっていろいろな使用の状態も違いますし、また、請求をするときの金額の計算に当たってのいろいろな作業の内容というものにも違いがあるということを申し上げたわけでございます。  いずれにいたしましても、現在の酸素の購入単価には相当開きもありますし、実際に多数の患者に使用した場合にどの酸素を使用したかということをある程度明確にしながら請求をしなければならない、こういう点についてもやはり私どもとしてはさらに検討すべき点があろうかと思っておりますので、できるだけ請求のルールに従った請求ができるように今後十分検討をしていきたいと考えておる次第でございます。
  71. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは指摘した方の会計検査院にお聞きします。この点は会計検査院は明確に把握したから指摘をしたんだと思いますが、その内容をわかりやすく説明してください。
  72. 山本正

    ○山本会計検査院説明員 私ども、毎年厚生省に関しましていろいろな事項について検査しておりますが、その中の一項目として先生おっしゃった酸素がございます。ただ、現在この問題につきましては内部で検討中でございまして、いまだその結論に達しているわけではございませんので、この場での御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  73. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは不思議なことですね。ここで明らかにされない、国民に明確に答えられないことがどうして新聞の記事になるんですか。そういう会計検査院のあり方はおかしいんじゃないですか。その点について釈明してください。
  74. 山本正

    ○山本会計検査院説明員 新聞に載ったことは事実でございますが、これが会計検査院の方から出たわけでもないであろうかと思います。  私どもの組織上、私どもの公式見解と申しますのは、憲法に従いました会計検査院法で検査会議というものがございまして、そこで最終意思決定がされたものが検査院の判断であるということになります。その段階にまだ至っておりませんのでお答えすることができないということを申し上げているわけであります。
  75. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは、なるべく早くその結論を出してくださるよう要望しておきます。  次に、薬の副作用及び医療ミス等による事故が最近多発しておるようでございますが、これに対する厚生省の事実認識と今後の対策について明らかにしていただきたいと思います。
  76. 仲村英一

    ○仲村政府委員 医療ミスについてお答えを申し上げます。  私ども、医療ミスというのは、直接人命にかかわる事故でございますので、医療機関としての使命に背くばかりではなくて医療に対します信頼を著しく損なうということで、あってはならないという立場に立っておるわけでございますが、個人の重大なる過失でございますとかいろいろなことで起きておることも御指摘のとおりでございます。したがって、私どもといたしましては、今後医療機関内部の管理体制の整備でございますとか、それらの業務に従事する職員に対する研修等を行って、内部的な管理を向上させていきたいというふうに考えております。  また、不幸にして医療ミスが発生した場合におきましては、その原因を徹底的に究明いたしまして、再発防止策が可能な場合には心要な措置を講じたいというふうに考えておるところでございます。
  77. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いわゆる薬の副作用、薬害で死亡した方が二十三人にも及んでいるわけでございます。しかも死亡被害に関係のあった医薬品は三十一品目と言われております。こういう状況の中でこの二十三人の死亡に対してはどういうふうに対処されたのか、この点が一つでございます。  それから、被害者救済のために昭和五十四年に医薬品副作用被害救済基金法、あるいは製薬会社や薬局の拠出金による医薬品副作用被害救済・研究振興基金が設立されて、そして副作用の被害者に医療費や障害年金遺族年金などを給付する制度ができているわけでございますが、これでは不十分であるというところから、現在厚生省は障害年金に三級を新設することを考えておられるということでありますが、これはいつから実施されるおつもりなのか。また、中央薬事審議会ではこれに関する具体的な適用基準や給付内容を決めると言われておりますが、現在の検討内容について明らかにしていただきたいと思います。
  78. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 被害者救済基金での年金は、今おっしゃいましたように三級相当、二級相当、いろいろなレベルがあるのですが、もう少し広げないといかぬということで検討しているところでございます。  いつからかということでございますが、財政計画とか認定の基準とか、まだ検討中でございますので、検討がまとまり次第ということで、できるだけ早く結論を得たいと思っておる段階でございます。
  79. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 何を聞いているのですか、前の質問に対しては何も答えていない。そんなでたらめなことがありますか。
  80. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 失礼いたしました。  死亡者の問題でございます。今先生おっしゃいましたのは六十三年の死亡者の数でございますが、この方々につきましては一部は被害者救済基金に申請が出ているものと思われますが、死亡された方について、企業の責任という問題がある場合とない場合といろいろございまして、救済される場合、救済されない場合がございます。現在、すべての方についてどうなったかということは把握されておりません。
  81. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 こんなでたらめなことがありましょうか。薬害が原因で死亡したというのに救済された場合とされない場合があるということなら、救済制度なんて何も要らないでしょう。  そして、この際の責任はどちらにあるのですか。製薬会社にあるのですか、それとも投与した医師にあるのですか、あるいはそういう薬を許可した厚生省にあるのですか。その辺の責任分野を明らかにしてください。
  82. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 医薬品につきましては、御承知のとおり有効性、効き目と、副作用、安全性というものとのバランスの上に成り立っておるものでございまして、したがいまして副作用を完全に防ぐことは非常に困難なことでございます。そういう責任関係の追及ができない性格のものの場合もあるということから、被害の救済基金ができているわけでございます。しかし、こういった副作用をできるだけなくす、防ぐことは、メーカーあるいは国の当然の責務でございまして、承認審査を厳格にするとか、あるいは承認後、市販された後に医療機関から情報をとりまして、副作用がどういう場合に発生しているかということをできるだけ早くつかみまして、情報を伝達する、できるだけ防ぐということをいたしているわけでございます。  それから、亡くなられた方のいろいろな事情があろうかと思うのでありますが、救済基金に対しましては申請主義をとっておりますので、いつごろ申請されるかあるいは申請されないかという問題については、把握がなかなか困難な状況でございます。いろいろな資料を整えて請求することが必要でございますので、六十三年に亡くなられた方についてどうされるかということは今の段階ではまだ把握できないわけでございます。
  83. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 把握できないのをいいことにして救済されないまま放置されていたのでは、被害者はたまらないですよ。  新聞等によれば、昨年一年間で千二十五人が医薬品の副作用被害者として出ているのですが、この数字は厚生省から出ているのでしょう。厚生省から出たとすれば、確実に副作用による被害者と認定されたものと思っていいと思うのです。ところが、「六十三年度までの十年間に請求したのは七百三十一人にとどまっている。」さらに「実際に医療費年金支給をうけた被害者は四百七十三人で、障害の程度が軽かったり、症状と副作用の関係がはっきりしないとして不支給になった人は九十一人に上る。」こういうふうに出ているのですが、全く数字が合わないですね。どういう場合に被害者という認定がされるのか、その辺を明確にしておかないと、後でいろいろな問題にこれは発展すると思うんですが、いかがでしょうか。
  84. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 認定されます場合は、薬の投与による被害であるというふうに因果関係が証明されている者について支給されるわけでございます。病気でございますからいろんな結果をもたらすわけでございますが、それが薬を服用した結果であるかどうかということの認定が必要なわけでございまして、申請された方がほかの原因で亡くなられたりあるいは障害になったりというような場合にはこれは認定されない、因果関係がはっきりしている場合にこれは認定される、こういうような基準になっておるわけでございます。  それから、非常に数が少ないという問題でございますが、これは患者さんの方にもいろんな事情があると思うのでございます。個人的に事を改めて問題にしたくないというような事情をお持ちの方もあると思うのでございますが、そのほかに医療機関での因果関係の証明、これが非常に難しいというようなことを聞いております。お医者さんとの関係で、薬を飲んだ結果何らかの被害が出たということを――いろいろ診断書をとりに行ったり、あるいはその間の因果関係を証明してもらう……(渡部(行)委員「簡単に要領よく答えてください」と呼ぶ)……というようなことを証明していただく手続が非常に難しい、あるいはお医者さんにそういうことを頼めない、こういうような事情もあると聞いております。
  85. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 認定が難しいとか、いろいろ難しい話ばっかりされておりますが、この一千二十五人というのはどうして把握したのですか。
  86. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 その数字は、承認後の薬の副作用につきまして、医療機関あるいは企業から報告を求めております。その報告の中で被害が出ている人の人数でございます。
  87. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それじゃ、自主報告をしたならば何も難しいことないじゃないですか。この限りにおいてはちっとも難しいことないと思いますよ。他人が見て、いいかげんに、おまえは薬害だと言われたら、これは非常に難しいけれども、あるいは医師とその患者の間に訴訟でもあるならば難しいけれども、その機関から正式に報告されたものだったら何も難しいことないんじゃないですか。これは時間の関係上このくらいにしますけれども、もっと正確に問題把握をしてもらわないと、特に厚生省の問題は重大ですから、よろしくお願いします。  それでは次に、年金審議会では、被用者年金制度の一元化を図るためには、新たな単一の被用者年金制度を創設すべきであるとされております。これは、可及的速やかに各制度間に残されている支給要件の差異等についての十分な検討と調整が行われるべきである旨を強調されておりますが、現在の検討状況についてひとつ御説明をお願いいたします。  また、その際最も重要な問題は、鉄道共済年金の取り扱いであるわけです。これは早く結論を出さないと、鉄道共済年金は構造的に赤字が進行することになっておりますから、自助努力を含めどのような構想をもってこれらの調整、推進に当たられるおつもりか。これはまあ厚生省年金審議会からお答えを願いたいと思います。
  88. 水田努

    ○水田政府委員 鉄道共済の赤字問題の解決についての決意の点は大臣からお答えいただくといたしまして、まず最初に、年金審議会の意見書に則しての処理の手順、これについて私からお答えをさしていただきたいと思います。  本格的に高齢化が進んでまいりますので、産業構造とか就業構造の変化にたえ得る安定した年金制度にするためには、公的年金を一元化しなければならないという大きな命題がございまして、このことにつきましては、昭和五十九年二月の閣議決定で公的年金を一元化するという大方針が決められまして、これに則しまして、一階部分の基礎年金については六十年改正で全国民この制度に加入するという形で実現をいたしております。残っております課題は、二階部分の被用者年金制度の一元化をどう進めるかということが課題になっております。  給付の面につきましては、六十年の改正の際に共済組合の方が厚生年金の水準に将来に向かって合わせるという改正をしていただきましたので、給付の面の水準については公平が図られた。  残る大きな課題は、負担の不均衡をどう是正するかという問題でございますが、この点につきましては平成七年までに完了するという先ほど申し上げました五十九年の閣議決定がございますので、一昨年、公的年金の閣僚懇で次の再計算、すなわち今回の被用者年金の再計算のときに、中間措置として負担の不均衡の地ならし措置をやるという申し合わせがあるわけでございます。  これを一方ににらみながら、年金審議会の方では、一階部分の基礎年金との整合性を図りながら二階の部分の統合を図ろう。一階の部分というのは、国民年金、厚生年金、各種共済組合というのはそれぞれ歴史、沿革があるので、その制度を残したまま基礎年金に二重加入するという形で一階部分は整合性を図った。二階部分についてもやはり同じく各制度、歴史、沿革を持ち、積立金あるいは福祉施設それぞれ違った内容を持っているので、これを一本にガラガラポンとするということは困難だろうから、一階部分と同じく単一の被用者年金制度を平成七年につくろうではないかという御提言をいただいているわけです。  いわば第二基礎年金的なものを被用者年金についても二階部分でつくりましょう、その間の中間措置として負担の不均衡をまず今回の再計算のときにやろうということで、制度間調整法というものを被用者年金制度が合意する範囲でつくりなさい、そのための指針として、審議会から、一階部分との整合性をまずきっちり図りなさい、すなわち三十六年四月以降の期間について、被用者年金の大宗をなす老齢給付、これは厚生年金の部分に限定して調整を図りなさい、こういうことで関係各省並びに関係審議会の御賛同を得まして、現在制度間調整法というものを提出をいたしているところでございます。  なお、自助努力につきましては国家公務員共済組合法の中で手当てをいたす、その二つの法案が出されているところでございまして、これの対処については大臣からお答えをいたします。
  89. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今局長から経過についてお答えしたとおりであります。私も、この問題は年金法の改正と絡んで非常に関心を持って、成立に努力をしていこう、かように思っております。
  90. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 鉄道共済については何もお答えがありませんが……。
  91. 水田努

    ○水田政府委員 鉄道共済の自助努力を便宜私からお答えをさせていただきます。  国家公務員共済法の中で今回自助努力として手当てされている中身は、今後赤字が三千億発生をいたします内容の五割強に相当します千五百五十億について自助努力で解決する、こういうことになっております。その具体的な内容は、保険給付の見直しで二百億、保険料の引き上げで百五十億、JR各社の特別負担で二百億、清算事業団の特別負担で八百億、それから財政調整事業、これは国家公務員共済組合連合会が行うわけでございますが、これで百億、その他利子収入で百億、計千五百五十億。残りの千四百五十億につきましては、先ほどお答え申し上げました制度間調整法によって厚生年金、NTT、地方共済、私学共済、農林共済の拠出によって対応する、こういう形に相なっております。
  92. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これはJRあるいは各共済年金間の調整ができて――その承諾はどうなっているのでしょうか。承諾を受けられましたか。
  93. 水田努

    ○水田政府委員 制度間調整法につきましては、関係各省がそれぞれの審議会に諮問して前国会に法案提出し、今国会、近く審議を受ける、こういう運びになっております。  それから国家公務員共済組合の自助努力についても、国共審の御了解をいただいて法案が提出されたものと大蔵省から承っているところでございます。
  94. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、この問題は一応全部調整了解済みであると解釈していいわけですね。
  95. 水田努

    ○水田政府委員 基本的にはそうであろうかと考えております。
  96. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、今度大臣にお伺いしますけれども、今国会に提出されている改正年金法案、これはあす趣旨説明があるわけでございますが、その中の問題点について若干お伺いしたいと思います。  その第一は、今度の国会は今までと様相が一変したと言っていいと思います。それはつまり与野党の合意が得られなければどんな法案でも成立しない場合があるということです。今までの国会環境とは全く環境が異なっている、そういうことをまず認識として常に考えていなければならないと思います。ですから、政府は、一たん提案したものだからといってこのメンツにこだわることなく、早目に妥協点を見出して法案の成立を図るべきではないか、こういうふうに私は思うわけであります。  中でも最も争点となっているものは、年金支給開始年齢を六十五歳に繰り延べるということであります。今そんなに急いでやる必要があるだろうか、非常に疑問でございます。それよりまず、退職後直ちに年金受給者になれるようにして退職後の生活不安を取り除いてやる、このことが最も重要ではないかと思うわけです。現在でも六十歳定年制は六割の企業しか実施されていない状態であると言われております。あとの四割の中小零細企業に働く低賃金労働者が一たび退職した場合に、微々たる退職金しか支給されていない人々の退職後の生活をどうお考えになっておられるか、この点について大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  97. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 初めに、今国会では今までと情勢が違うので与野党間で合意を得る必要があるのではないかというお話でございますが、今までも、我々政府は、提案をした法案はやはり国会の中で審議をされて、そして審議の上において与野党間である程度の合意を得、審議し尽くした段階で採決をし、賛成、反対ということで決着がつけられているわけであります。基本的にはそのとおりでありますけれども、御承知のとおり、現在国会でこれから審議されようとしている年金法案は国民すべての共通の問題であります。そのために、まず審議をしていただいて、審議の過程においてそれぞれの政党がそれぞれの考え方を代表して討論をしていただき、その結果を待って当然法案の採決が行われるものと私どもは考えております。  ただ、その争点の一番大きな問題の六十五歳支給開始年齢の問題については、御承知のとおり、公的年金は世代間扶養の形式をとっております。したがって、給付を受ける側と給付支給してくれる立場に立っている現役世代の負担というものと、その双方のバランスがとられていかなければどちらにも不満が残る。その不満が残るということは、世代間の合意を得たということになりません。したがって、そういう意味でその調整をしていくことが一番大事であります。  もう一つは、高齢化社会という時代になって、今までは七人で一人を支えてきたけれども、これから先は二人で一人だということになると、やはり支える側の負担というものを考えていかなければならない。そうなると、給付保険料というものを一方に考えなければいけないし、これから将来を展望して安定的な供給をしようと思えば、当然その負担をしていく世代と負担を受ける世代との整合性、バランスを保っていかなければならない、こういうようなことで非常に重要な選択であることは間違いありません。  しかしながら、一方、今先生御指摘のように、退職後どうしたらいいかということを考えてみますと、やはり年金がなくて退職をしてしまうというようなことは大変不幸なことであります。したがって、開始年齢ということを考えるためには当然雇用の状況というものは考えられなければいけません。しかし、年金を受給している人たちは、御承知のとおり今は六十歳からいただくようになっております。しかし、六十歳からいただくのですけれども、一方、実際に年金を受給している人の平均的な水準は六十二歳に今なっているわけであります。でありますから、まさに雇用と年金受給をする時期というものは全く一致している。そういう意味で、私どもは今度は六十五歳という将来的な展望、二十二年に向かっては六十五歳支給がよかろうということで提案をしているわけでありますが、先ほど来申し上げておりますように、国会審議の過程を十分尊重してまいりたい、かように思っている次第であります。
  98. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大臣、将来は二人で一人の老人を抱えなければならない、言ってみれば養わなければならないというような趣旨の御答弁がありましたが、それは全く算術計算的に考えたものであって、私計算してみると、そんなものじゃないのですよ。それは掛金も上がっていくし、掛金も中には入っているし、そして自分たちが今まで社会のために働いてきたその余剰の財産もあるはずです。そういうものを一切くるめると、GNPはどんどん上がっていくし、そういうものとの調整を図りながら計算をしていかないと、ただ、今の老齢人口と就業人口との比率で二対一と決めるのは余りにも単純過ぎる、算術計算でしかないということです。そういう思想は捨てていただかないと困ります。  そこで、自民党が年金法案の大幅修正を今検討しておる。しかも六十五歳支給は凍結しようじゃないか。そこで給付改善を最優先に処理していこうというようなことが党内で検討されているそうですが、その点について一言お願いします。
  99. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 先ほど申し上げましたように、私たち政府は、現在提案されている法案を国会に御審議願おうというわけであります。したがって、自由民主党でどう考えているかということは、やはり国会の場で、委員会の場でそれぞれの政党との間でいろいろな話がされるだろうし、その審議の過程の中でそういったことがどう出てくるかはわかりませんけれども、私たちは提案側でありますから、その御審議の結果を見守っていこう、こういうふうに考えております。
  100. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間が本当にありませんので、少しオーバーさせていただいて。  今政府は年金加入者記録の一元化を進めているということですが、現在の記録管理は厚生年金が事業所単位、国民年金市町村単位になっておるわけです。これを今後国一本に集約されるおつもりなのか。  また、一九九五年には共済年金を含めた公的年金制度の一元化が予定されているわけでございますが、さらにそれに加えて、やがて納税者番号制も考慮の範疇に入らざるを得ないと考えられますが、それらの問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  101. 土井豊

    ○土井政府委員 第一点目の加入者の記録管理の問題でございます。  現在、私どもの高井戸、三鷹にございますコンピューターのシステムにおいて厚生年金国民年金、それぞれ個人の記録管理をいたしております。ただ、厚生年金から国民年金に移った方は年金手帳の番号が二つございまして、二つの場所で記録管理をしている。そういうことから、年金の裁定あるいは年金相談等におきまして実務上いろいろ支障が生ずるということで、この管理のあり方につきまして現在内部で検討しているという状況でございます。  なお、私どもといたしましては、年金の番号につきまして、そういった年金加入者、被保険者の記録管理という立場で今のあり方を検討しているわけでありまして、納税者番号というお話がございましたが、そのようなことにつきましては念頭に置いておりません。  それからまた、一元化の問題でございますけれども、現時点におきましては、私ども、国民年金あるいは厚生年金の中における事務処理、事務管理というような形で検討しておりまして、共済を含めた問題をどうするかといったような点については、今の段階ではまだ未着手の問題でございます。
  102. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 国の予算というのは国民の金でございますから、国民の金を使うのにむだを少なくするということがまず考えられなければなりません。目の先だけの対策だけを追っていって、やがて、ああ、このことはむだだったというようなことのないように、もっと長期の見通しを立てて対策をやるべきだと思います。これは要望しておきます。  最後に、消費税の問題で、海部総理が総理になった途端に、私は消費税を福祉目的税的な税金にしたい、こういうことを言われたのは、これは国民全部知っていると思うのです。しかし、福祉目的税という位置づけをしたならば、これは全く消費税の理論には合わない税制になってしまうと私は思うのです。したがって、この福祉目的税というのを厚生省の立場、厚生大臣の立場からすればどういうふうにこれを受けとめておられますか。この点をお伺いいたします。
  103. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 このたびの税制改革は、御承知のとおり高齢化社会にたえ得る税体系という意味で、長寿社会に向かっての負担という面を考慮した税制改革であると思います。そのために、御承知のとおり、所得減税を大幅に行い、同時に負担の公平、横の公平という意味で消費税が導入されたわけでありまして、全体として長寿社会に向かって安定した税体系を求めるという思想がそこにあるわけであります。  したがって、私どもは、その消費税というものについて、御承知のとおり、福祉目的的な使い方をするとか福祉に使うとかいろいろな形で言われております。しかしながら、厚生省が福祉に使っている予算というものは十一兆円あるわけでありますから、当然消費税をもし目的税としてやるならばとてもそういったものでは賄い切れない。そういう意味で、これが福祉目的税としてその範囲の中で将来とも賄われるということは不可能なことである。しかしながら、税法の改正をした精神からすれば、その消費税というものの使い道というものが福祉に重点的に使われていただくべきものであるというふうに私どもは考えておるわけであります。したがいまして、総理が言われたのも、福祉目的税にするという限定をしたものではなくして、そういう気持ち、精神を披瀝されたものと思っております。
  104. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そういう御精神ならば、来年度予算は相当福祉関係に大きく予算がつくものと期待しております。どうかよろしくお願いします。  以上で終わります。どうもありがとうございました。
  105. 谷津義男

    ○谷津委員長代理 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ────◇─────     午後一時二十七分開議
  106. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田哲君。
  107. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いわゆるMMR問題、麻疹、はしかですね、おたふく風邪、風疹の三種混合ワクチンの問題についてお伺いをいたします。  今非常にお母さん方が心配をしているテーマでありまして、東京の国分寺とかあるいは静岡県とかがこの接種をとりあえず中止するというような事態が起きておりまして、このような自治体への全国からの自治体の問い合わせというものも数十件に達している、あるいはそれ以上かもしれません。  四月から始まったこの接種で、今までのところで百二十五例の無菌性髄膜炎が出ている。非常にシリアスな事態だと思っておりますが、厚生大臣は、これは大変重大な、重要な問題だという御認識をお持ちですか。
  108. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 御指摘のワクチンは、やはり国民の健康保持、予防という点から、当然この問題は厚生省としても重視をしていかなければならない、そういう認識の上に立っております。
  109. 上田哲

    ○上田(哲)委員 今回の事態がこういうふうになっているということについては、これは重大な問題だというふうな御認識でしょうね。
  110. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 そのとおりであります。
  111. 上田哲

    ○上田(哲)委員 専門家である事務当局にお伺いをいたしますが、この事態、四月から始まったばかりだというのに、これまでのところ、無菌性髄膜炎百二十五例という事態は予想線上にあったものですか、意外な結果でありますか。
  112. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のMMRワクチンにつきましては、そのワクチンの接種後におきまして無菌性髄膜炎が起こることはまれには起こる、しかし、まれに起こりましても、その起こっているものはワクチンに由来するものか、あるいは野生株の自然感染によるものかについては定かではない、おおむね自然感染によるものが多いであろうというようなことが、従前、いろいろの小児科の先生方を中心にして言われておった事例でございまして、そういう面で、先生からお話のございました百二十五例と申しますのは、ことしの四月以降に接種されました子供さんの数が大体五十万人おられるわけでございますが、その方々の中で、ワクチンを接種した後にいろいろ副反応が出ておった事例が都道府県調査によりますと百二十五例あったということでございまして、百二十五例全部が全部無菌性髄膜炎であるかどうかについては、さらに詳細な検討が必要であろうというぐあいに思っているところでございます。
  113. 上田哲

    ○上田(哲)委員 全部が無菌性髄膜炎であるかどうか、あるいはその由来するところが野生ウイルスによるものか、そうした問題が判別の問題として今後に残りましょうけれども、そういうものが一般的に含まれるパーセンテージということにはならないだろうけれども、蓋然性の中でいって、それにしてもおっしゃるようにそうした事象が起こり得るという経験値はあるけれども、そういう推定値をはるかに超える数字である、その点で私は百二十五例というのは予想を超える事態であるというふうに見るべきではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  114. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 確かに先生お話ございましたように、五十万人に打ちまして、そのうち百二十五人の副反応の事例が出ておった。その中にかなり無菌性髄膜炎の患者さんもおられるとは思いますけれども、そういう面で、頻度から申し上げますと世界と比べましてもかなり頻度が高い、ちょっと予想を超えている割合の発生であるというぐあいに認識いたしております。
  115. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、行政当局の認識としてかなり重要な問題だととらえなければならないと思うのですね。この辺のところは言葉の問題として少し私はすっきり、かっちり答えてもらいたいと思いますよ。  例えば、アメリカでは二十年前からやっているとかあるいは十年前からやっているところもいろいろあるわけですけれども、これは必ずしもフィールドワークからいってイコールにはならないだろうし、イギリスでは去年から始めたとかいろいろなことはありましょうけれども、やはり一定の容認限度といいましょうか、ワクチネーションの限界というものがありましょう。しかし、そういう中でいうと、麻疹と風疹の問題はないのだから、この場合はおたふく風邪なのですから、おたふく風邪の占部株、この占部株ということがはっきりしているわけですから、この段階まできてこの数字というのは、私はやはり病理的に、学問的に、疫学的にかなり重要だというふうに考えているのが、例えば公衆衛生審議会の中でも当然な認識だと思うのですね。その認識を明確にひとつお答えいただきたいのです。
  116. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生の御指摘ございました公衆衛生審議会の中の子防接種委員会から御意見いただいているわけでございますが、その御意見の中身といたしましては、まず一つには、早急に正確な実態把握を行い、「その結果を踏まえて再度委員会を開催し、当面の措置を検討する必要がある」というのが第一点でございます。第二点におきましては、これまでの調査によりますると、「MMRワクチン接種後、概ね数千人~三万人に一人の割合で無菌性髄膜炎の発生している可能性があり、看過し得ないこと。」それから、麻疹、おたふく風邪とともに流行がおさまりつつあることから、正確な実態把握ができるまでの間、MMRワクチン接種は慎重に行う必要があるというような御意見をいただいておるところでございます。  この御意見をいただきまして、私ども早急に各県にこの内容についての御通知を申し上げまして、慎重な配慮を求めているところでございます。
  117. 上田哲

    ○上田(哲)委員 権威である公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会が「看過し得ない」と言っているのですよ。看過し得ない、見逃すわけにいかない事態であると指摘しているのですから、私は行政当局がもう少しこれは大変なことだという認識を明確に示されるべきだと申し上げているわけです。どうも表現が甘いのじゃないか。これは普通死にませんよ。しかし平均二週間余りの入院が必要なのですよ。子供ですから、子供にとって髄液を取るということは普通の認識にはないのですよ。普通の病気と考えてもらっては困るのです。これがこういう形になってきたということは、審議会でもはっきり「看過し得ない」と言っているのですよ。行政当局は看過し得ないと本当に思っているのですか。
  118. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 ただいま御説明申し上げましたようなことで予防接種委員会からの御意見をいただいているわけでございますので、私どもといたしましては、予防接種委員会のお言葉にもございますように、都道府県に対しまして、先生お話ございましたように、子供さんから髄液を取ってウイルスを分離するのは非常に難しい話でございますけれども、そういう検体を取っていただきまして、国立予防衛生研究所の方へ検体を送っていただいて正確な検査をする、あるいは副反応発生事例の詳細調査というものを実施するなどいたしまして、MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の正確な発生頻度の把握に努めてまいりたいということで、各都道府県の方にいろいろ調査をお願いいたしているわけでございます。  そういうことで、このような調査の結果が判明するまでの間は、MMRワクチン接種につきましては慎重に行うようにということで指導いたしているところでございます。
  119. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんなことを聞いているのじゃないのですよ。これは占部株が悪いということははっきりわかっているのですよ。百二十五例の中にはエンテロウイルスだろうとかあるいは無菌性髄膜炎でないかもしれないとか、いろいろなことをおっしゃるのはそのとおりです。日本脳炎がはやっているときになら、日本脳炎でなくても日本脳炎だと誤診される数字も入ってくるというのは、行政当局としては当然な数値としていつもわかっていることですよ。百二十五例がイコールだとは言っていません。そして、これはみんな退院することができるのだということもある。そんなことはわかっているのですよ。例えば今度のこの百二十五例の中にはエコーウイルスもはっきりあるわけですからね。そういうエンテロウイルスの問題を考えれば、別に百二十五が全部イコールだとは言ってないが、こういうような場合に疑似症状も含めて、疑似診断も含めてわずかに四月から今日までの間に五十万の中で百二十五例も報告されたということになったら、ゆゆしき事態だと行政当局は思っているだろうなと私は聞いているんで、これから調べるだの調べないだのという話を聞いているのじゃない。調べるのは当たり前のことなんです。そこの認識をしっかりしてくれということを聞いているのです。簡単に答えてください。
  120. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 非常に重要な問題であると認識いたしております。
  121. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうなんですよ、大臣。そこから始まらなければしょうがないのです。そこを出発点にしていただかないと私は血の通った体制にならないと思うから、そこは非常に重要な問題だということを大臣から一言もう一遍言ってください。
  122. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 医学の進歩というものも、ある意味では、昔はミルクで育てて、はしかでばっさりというような時代には、小さな生命が医学の進歩のまだ不十分な段階においてはたくさん死んでいったのです。しかし、そういったものを乗り越えて一方においては医学というものはだんだん進歩もしてきている。しかし、進歩をしても、一人の生命といえどもその生命に影響が起こる、あるいはその後の子供の健康に非常に大きな障害が残るとか、そういうことは数ではなくして、医学あるいは社会の進歩、人の幸せ、そういったものを追求していく世界においてはいつの時代でも重要な問題だと私は思います。
  123. 上田哲

    ○上田(哲)委員 余計なことですが、戸井田さんは中国残留孤児のために非常に献身的に努力されているのを私はよく知っていますから、小さな命を、特に子供の問題を大事にするということは一生懸命やってもらいたい。これは認識論として言葉が甘いから、私はそこをもう一遍しっかりしたところから出発してもらいたかった。  さて、ヒューマニズム論ではなくて疫学論としてはっきり聞きたいのだが、五十万人やって百二十五人だ。エンテロもあるだろう、それはいい。それはいいが、ワクチネーションの問題として、野生ウイルスの場合だったら三、四百人に一人云々ということが公衆衛生審議会から出ていますね。野生ウイルスならそうだろう。ワクチネーションすればずっと上がるだろう。これは当たり前のことなんです。野生感染でほっておくわけにいかないから、ワクチネーションをするとすれば、この場合どこまでならばいいんだと考えているのですか。
  124. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生のお尋ねは非常に難しい問題だというぐあいに思います。過去にいろいろなワクチンがございまして、ワクチン接種を行いますとそれだけの効能・効果は十分にあるわけでございますが、一方においては副反応という事例も起きてまいっております。そういう面で、副反応の発生頻度の問題、さらには副反応の程度の問題といいますものをいろいろ勘案して、予防接種行政を進めていかなければならない問題だと思います。  そういう面で、個々のワクチンごとに判断が異なるかと思いますけれども、私ども、専門家集団でございます審議会の中の予防接種委員会に十分意見を聞きながら、そういう予防接種行政を進めてまいっておるということで御理解いただきたいと思います。
  125. 上田哲

    ○上田(哲)委員 理解できませんね。専門家としてはもう少し具体的に答えてもらいたい。  今回はPCR法というのがこの夏に予防衛生研究所でできたわけですね。これまでわからなかった野生かワクチネーションかということがわかるようになった。これは七月なんです。そういうことになって、公衆衛生審議会が言っていることは、このPCR法によって鑑別法の精度を高めてみたところ、現在は十万人から二十万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生している可能性があると言っているわけですよ。そうですね。十万人、二十万人に一人という数字で厚生省はいいと思っているのですか、そうでないのですか。
  126. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  PCR法につきましては、精度が十分とした場合に、先生お話しございましたように、十数万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生している可能性があるというぐあいに予防接種委員会ではお話しでございます。おたふく風邪に自然感染した場合におきましては、ワクチンに比べましてはるかに高い率で無菌性髄膜炎が発生する。その一部は重篤な脳炎も併発することもあり得る。一方におきましては、これまでの調査の結果、ワクチン接種後の無菌性髄膜炎においては後遺症もなく予後は良好である、今後とも麻疹接種時にはMMRワクチンの接種を推進することが望ましいというぐあいに、九月の時点でございますが、予防接種委員会からそういうような御意見をいただいておりますので、それに基づきまして私ども予防接種行政を進め、今般さらに高い頻度で副反応が出てまいったということを踏まえまして、いろいろ調査をやっている段階にございます。
  127. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まるっきり答弁にならないよ。あなた方が金科玉条にしている公衆衛生審議会の伝染病予防部会の予防接種委員会が、PCR法によってと言っているのですよ。PCR法というのは、あなたわかっているのかわかってないのか知らないが、つまり野生のウイルスにかかったのかワクチンによってかかったのかを判別できる方法ができたのです。だから、入っているかどうかなんて話をしていたのでは議論にならないじゃないですか。それによって分けてみたら十万人ないし二十万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が出ておると言っておるわけですよ。そうでしょう。まじっているかまじってないかということはないのですよ、このPCR法によって。だから、はっきり鑑別をした結果、まさに野生ではなくてワクチネーションによって発生したのが十万人、二十万人に一人ということは、行政当局として多いと思っているのか多いと思ってないのかということを聞いているのです。
  128. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 十数万人に一人という頻度で無菌性髄膜炎が起こるということではございますけれども、私ども、ワクチネーションによりますメリットといいますか、子供が健康に育つための利益もあるわけでございますので、十数万人に一人というような割合でございますれば接種を続けてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  129. 上田哲

    ○上田(哲)委員 やっとそこへ来た。普通にほっておいたら、予防接種をしなかったら三、四百人に一人はかかるかもしれない。だから、ワクチネーションをすれば十万人ないし二十万人に一人は出るかもしれないが、今度これがわかったから、この程度ならいいと思っているなら、議論は別にして、それはあなた方の基準ですよ。それはそれとして議論を進めましょう。  ところが、今やってみたら、どうもそれどころではなくて、おおむね数千人から三万人に一人、幅は随分広いけれども、数千人から三万人の幅で出ている可能性があると指摘されているわけでしょう。そうですね。これだったら困るのですか困らないのですか。
  130. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 ただいまの事例、百二十五名がすべてワクチン由来の無菌性髄膜炎であるということになれば非常に大きな問題であるというぐあいに思っております。そういう面で、ワクチン接種とこの無菌性髄膜炎と思われる症例との間の関係につきまして、現在いろいろ調査を進めておる段階でございます。
  131. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まるっきり答えられないですね。  もう一遍戻りますよ。野生ウイルスの場合は、PCR法によってこれははっきり入っていないのですから、いいですね。議論はそこに行ってもらっては困りますよ。ワクチネーションによって生ずる無菌性髄膜炎が十万人ないし二十万人に一人というならそれはワクチネーションをやる意味がある、あなた方ははっきりそう言われている。ところが今出てきたのは、公衆衛生審議会がはっきり調べた数値の推測としては、まさに数千人から三万人、ちょっと幅は広いけれども、数千人から三万人に一人出ている可能性がある。数千人から三万人ということになってきたら、このワクチネーションは実施することが適切であるのかないのかということを聞いているのです。
  132. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 現在わかっている範囲におきましては、五十万人に接種して無菌性髄膜炎と疑われる症例を含めまして副反応が百二十五例、それが大体数千人から三万人に一人の割合という形で発生しているのがわかっております。でございますから、その副反応の事例が、無菌性髄膜炎といいますか、ワクチン接種あるいは無菌性髄膜炎という形で診断が確定するといいますか、そこら辺がはっきりわかるようにいろいろな調査をやっておるということでございまして、現在のところそういう面での調査をいろいろ進めております。  いずれにしましても、先生御指摘のように、数千人から三万人に一人の発生頻度ということになりますれば、これは非常に大きな問題でございますし、予防接種委員会の意見も十分聞きながら私ども今後対処していかなければならないというぐあいに思っております。
  133. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは私が調べたのじゃないんだから、はっきりしてもらわなければいけない。こんなに回りくどい答弁しか出てこないというのは困るから、厚生大臣にも委員長にもぜひひとつもう一遍整理をしてお聞き取りをいただきたいのだが、十万人、二十万人に一人ならばよかろうと明らかに厚生省は言っている。それはそれで置いておきましょう。ところが、まさに厚生省が指針を得ている公衆衛生審議会の委員会の結論として、はっきり、このPCR法という野生であるかワクチンによって出たのかということを鑑別できる方法によって調べた結果が、今回はこのMMRというワクチンをしたことによっておおむね数千人から三万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生している可能性があると公式に報告が出ているのです。この中にエンテロが入っているか疑似のものがあるかもしれないなどという話はしていない。それがこれだけいる可能性がある。はっきり出ている。しかもはっきりした報告書の中で、だから「看過し得ない」と書いているのですよ。いいですか。公衆衛生審議会の接種委員会がはっきり、これだけの数字がある、看過できないと言っているのに、行政当局は看過できると思っているのですか。ほかの話をしないで、その認識をしっかり示してください。
  134. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 十月の二十五日に予防接種委員会から御意見をいただいておるわけでございますが、この中におきまして、少し長文になりますけれども読み上げますと、「これまでのところ、都道府県等から報告された無菌性髄膜炎患者と思われる者の中で、予後不良なものはないが、今回の調査によると、MMRワクチン接種後、概ね数千人~三万人に一人の割合で無菌性髄膜炎の発生している可能性があり、看過し得ないこと。」ということでございまして、これは都道府県からの報告のあった事例をそのまま見て数千人から三万人に一人ということでございまして、この都道府県の報告のあった事例すべてについてPCRをやって云々ということではないわけでございます。そういう面で、先生お話しのございました、百二十五例の報告例があったわけでございますが、これを全部PCR法によってきちんとワクチン由来の無菌性髄膜炎であるということがはっきりしますれば、これは非常に大きな問題でございますけれども、そういう面で、この百二十五例の事例自体が全部PCR法によってワクチン由来かあるいは野生由来かについての鑑別は現在やっているところでございまして、そういう面で、現在のところ、いわゆる臨床症状からの発生頻度ということで御理解いただきたいと思います。
  135. 上田哲

    ○上田(哲)委員 半分認めますよ。しかしこれは困ったな、こういう認識では。だから私は基本的な認識を求めたのです。これは大事件ですよ。重大な認識を持ってもらわなければ困るわけですよ。  五十万人と言われたが、まだたくさん母親がいるのですよ。子供を連れていく母親がどうしていいかわからないのがいっぱい日本じゅうにいるのですよ。あなたの方は慎重にやられると言っているだけでよくわからない。だから審議会が言っているのだって、数千人から三万人、こんなのは学校の数学の時間で言ったらめちゃくちゃな言い方ですよ。数千人から三万人なんてこんなめちゃくちゃな分母のとり方でも、こっちの端とこっちの端をとればこの中には入ってくるじゃないですか、PCRだって何だって。これを指摘しているのですよ。十万人、二十万人に一人ならば、議論はあってもまあそれはいいことにしましょう。しかし、数千人から三万人に一人、まさにワクチンをやったことによって無菌性髄膜炎になっている子供が出ていると、審議会がはっきり「可能性があり、」と言っているじゃないですか。だから看過できないと言っていることを、まだ十分にやっていないし、臨床の結果であってPCRが全部行われているわけではないからさほどではないということをあなたは言うのですか。そんな言葉じりで問題になっていたら、さっき大臣が言った一人の命という問題がなくなってしまうじゃないですか。そんなことを言ってもらっては困るのですよ。私はこんな議論をこんな段階でやりたくない。大事な問題だから、さっきも大臣が言われたように、一人の子供も不安にさせないために万全の措置を講ずるというのが当たり前のことじゃないですか。一人出たって考えなければならないところへ、審議会がはっきり看過できない、慎重にせよ、こういうふうに言っているときに、まだまだ完全にPCRが済んでいるわけじゃないから何とも言えないみたいなことを言っていて、世の中の母親の不安というものに対してあなた方は責任を持っているという気持ちになれますか。私はこういう言い方をしていてはいけないと思いますよ。答弁ありますか。わかっていればこれで進みますよ。どうですか。
  136. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生御指摘のように、世のお母さん方は非常に心配しておるということを十分認識いたしております。そういう面で、このMMRワクチンにつきましては、接種に当たりましては十分地域の流行状況等を勘案しながら慎重に対処してほしいということで指導通知を出しておるところでございます。都道府県におきましては、その流行状況等見ながら、このMMRの三種混合のワクチンを使わずに単味のワクチンを使うとかいうような自治体もございますし、あるいはその流行状況も勘案して、そういう面で引き続き十分注意しながら接種をするというような体制をとっているところもいろいろございます。  私どもとしましては、先生お話しのように、いつまでも都道府県の自主判断に任せるということでなしに、早くどちらかにすべきであるという考え方のもとに、いろいろな調査等やってできるだけ早く答えを出してまいりたいと思っております。
  137. 上田哲

    ○上田(哲)委員 五十万人接種したのですが、この後どれぐらいの数の人が接種の予定になっているんですか。
  138. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 昨年の成績を申し上げますと、昨年ははしかの単独接種行っておったわけでございますが、この件数が大体百十万件でございます。そういう面で、この三種混合ワクチンMMRにつきましても、大体百万から百十万人の方々がお打ちになるだろうと思っております。
  139. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大変な数でしょう。大変な数が、今心配しながらどうしようかと思って考えているんですよ。これに対してどうしてやろうかという指針が十分でないということは、甚だおかしいでしょう。MMRはあなた方が推進したんですよ。そうでしょう。あなた方が推進したんですよ。あなた方が推進したことが、向こうに不安があってどうしていいかわからぬというようなことを、ほっといていいわけないじゃないですか。  今の話で非常に困るのは、十分に慎重にやるように指導しておる。これはとんでもない話なんだ。大臣、ここに私は最大の問題があると思うので話を飛ばしていくのですけれども、そもそも四月から始まった。そして厚生省としてはぜひこれをおやりなさいということ、推進せよということで進めていたのですよ。ところがこういう状況があっちこっちで出てきた。例えば前橋のように、これは熱心だったからそういうことがわかってきたということもあるわけですから、それはそれで前橋を非難する気は何もないのですね。そういうことがあっちこっちにいっぱい出てきた。これは大変だということになってきた。たまたまさっき言った鑑別できるPCR法が出てきたのが、国立予研で七月ですね。これで鑑別できるようになった。ところがそのときにこういう時間のずれがある。厚生省が出したのは九月十九日ですね。九月十九日にはどうも臭いなということが少しにおっていたし、九月八日付で公衆衛生審議会から、これはちょっと臭いぞということがにおってきていた。しかし、公衆衛生審議会にもこれは問題があると思うのだが、ここでは公衆衛生審議会はまだ「MMRワクチン接種を推進されたい。」と書いているんだ。したがって、これを受けて九月十九日の厚生省から出た各都道府県あての通達によると、これもまだ推進なんだ。円滑に進めると書いてあるんです。そしてその次に出たのが十月二十五日なんです。この十月二十五日の厚生省の通達のもとになったのは、その前の公衆衛生審議会の意見があるわけですね。ここで「慎重」という言葉が出てきたんです。つまり、四月からこういう事例が起きていたけれども、七月にPCRが出てきたけれども、厚生省推進推進で、九月にもまだ推進で出していた。そして十月二十五日になって「慎重」という言葉が出てきたんです。実際に、この問題についてはお母さん方が判断してやりなさい、都道府県で適当にやりなさいということになっているんですよ。「慎重」という言葉ぐらいいいかげんなことはないのです。行政用語としての「慎重」ということは、これはどういう意味なんですか。
  140. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 MMRワクチンの安全性に関します正確な実態の把握のための調査が終了するまでの間、都道府県におきましては、その都道府県におきます流行状況等も勘案しつつ、当面、MMRワクチンにつきましては、その接種を見合わせることも含めましていろいろ検討して打っていただきたいという意味でございます。
  141. 上田哲

    ○上田(哲)委員 つまり、役所用語で「慎重」というのは、見合わせてくれということなんですよ。これが最大の問題なんですよ。役所用語の「慎重」というのは、日常用語の「慎重」とは違うんです。そうっとやりなさいというんじゃないのです。見合わせてくれ、やめてくれということなんですよ。やめてくれということを言えばこれはわかる。ところが慎重にやりなさいなんという話ではこれはわからないでしょう。まず、都道府県はわかるか。都道府県は半分ぐらいわかる。都道府県は半分ぐらいわかるので、どうしようか、こうしようか。そこで例えば国分寺や静岡のようにやめたというところもある。お母さんはわからないですよ。やった方がいいか、やらない方がいいかわからないですよ。髄膜炎になったら困るじゃないか。当たり前でしょう。私はこういうやり方が問題だと言うんですよ。  なぜこんな言い方になっているかという根底は幾つかあるのです。  一つは、都道府県予算を組んでそれで接種することになっているから、接種することになっている膨大な県民なり市民なりというものに対して急にやめたとは言えないですよ。だから、しようがないからそのまま行こうということになる。これは不安ですよ。  もう一つは、これは悪意ではないけれども、MMRはやがておたふく風邪の株をかえてちゃんとしたものになったときに、一遍やめたと言っちゃうとまた復活することが非常に支障があるだろう。これは、行政上の指導としてそういうおもんぱかりをすることは悪意とは私は思いませんよ。しかし、それにしてもこれは、そんな先のことを考えることじゃなくて、目の前の問題として、自分の子供に注射をするのかしないのかという判断としては最終的には母親の判断ですよ。これは非常に困るわけです。慎重にということが取りやめてくれということであるというのなら、なぜそういうことをもっとはっきり言わないのですか。その理由は何ですか。
  142. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生にお言葉をお返しをするようで申しわけございませんが、私ども、慎重な実施といいますものにつきましては、取りやめることも含めまして慎重に実施するということで、取りやめなさいという意味では全くございません。やめることを検討するのもいいでしょうし、引き続き実施するのも結構ですよ。ただ、それはあくまで都道府県がその地域におきます流行状況等を勘案して、地元の予防接種の協議会なりそういうところと十分意見を交わして、どういう形で実施するか慎重に考えてやっていただきたい。それも、あくまで私どもいろいろやっております現在の調査が終了するまでの間、慎重にやっていただきたい。  私ども、今後MMRワクチンにつきましては、引き続き実施するかどうかについては、現在いろんな調査をやっておりますので、その結果が出るまでの間は、そういう面で自治体がそれぞれの関係のところとよく相談をし、慎重にやっていただきたいという意味で申し上げているところでございます。
  143. 上田哲

    ○上田(哲)委員 取りやめることも含めてといったら、取りやめることもあるわけですね。言葉のあやで議論してはいけないと私は思いますよ。「慎重」という言葉の中に、何%なのか知りませんけれども、取りやめを含めてとおっしゃるわけですね。取りやめた方がいいということも含むわけですね、何遍もおっしゃっているんだが。含むということは、取りやめることがいいという判断もちゃんとあるわけでしょう。取りやめた方がいいか取りやめない方がいいかという、そういう指示というのは適切だと思いますか。
  144. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 ワクチン接種と無菌性髄膜炎との関係が、現在得られているデータだけではなかなか判断が困難であるというような予防接種委員会の御意見もあるわけでございますので、そういう面で、その時点で取りやめなさいあるいは続けなさいということを予防接種委員会の意見を聞きながら私どもいろいろ考えたわけでございますが、予防接種委員会の方といたしましても、地域の流行状況等勘案しつつ慎重にやるというような御意見をいただいておりますので、その趣旨に沿って、私ども、都道府県の方に指導してまいっております。都道府県都道府県におきまして、その地域におきます風疹なりあるいはおたふく風邪の流行状況というもの、それから今までいろいろやってきておりました経験等踏まえまして、専門の先生方の御意見を聞きながら、どのように対処するかを御判断いただくということでございまして、そういう面で、慎重にという意味は、都道府県にある程度の御判断をお任せしたと言われますればそのようになるわけでございますけれども、私ども、物を決めるに当たりましては、やはりきちっとしたデータなり何らかのものをそろえた上で、適宜対処してまいりたいというように考えておるところでございますので、そういう面で、このような表現で都道府県指導しておるということでございます。
  145. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃ、具体的に聞きましょう。取りやめるところは、どこで取りやめた方がいいんですか。どこでは取りやめなくてもいいんですか。あなたの方で考えている、分布図でも何でも説明してください。具体例、一つでも二つでも結構です。
  146. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 十月の調査の時点におきましては、この副反応の出方につきましていろいろの県について事例を調べました。その中におきまして、MMRの副反応の多い県あるいは発生しないというぐあいに届けられている県と、いろいろございます。そういう面で、それぞれの県におきます状況といいますものをいろいろ勘案していただいて、県の方で指導していただきたいというぐあいにお願いいたしておるところでございます。
  147. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ですから、全国を統括する厚生省の判断として、この県はやめるべきだ、この県はやめなくていい、あったら例示してみてくださいというんですよ。
  148. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 予防接種委員会の御意見の中で「地域の流行状況を勘案しつつ」ということがございますので、まずその地域におきます流行状況、はしかとそれからおたふく風邪の流行状況というのをにらんで、もしそういうものの流行状況がもう終わっているということであるならば単独接種という形になるかと思いますし、まだ流行が続いておるということであれば引き続き十分慎重に配慮しながらMMRワクチンの接種を続けるというような自治体もあろうかと思います。そういう面で、地域の流行状況といいますのは……
  149. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんなことはいい。つまり、具体的な例示はできないんでしょう。把握してないんですね。同じことを言われてもしようがないから。いや、なければいいんですよ。そこを責めようとは思わないから、例示できないんだったら、できないでいいんです。できないんですね。  いや、できなきゃいいんですよ。できるんですか。できるんなら立ってください。そうでなければもう時間を節約しましょう。できるんですね。できないのなら怒りますよ。
  150. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 流行状況は、サーベイランス事業をやっておりますので、それぞれの自治体でどのような状況にあるかというのはわかります。それを踏まえて自治体が御判断するということになると思います。
  151. 上田哲

    ○上田(哲)委員 例示できないなら立たなくていいと言ったじゃないですか。つまりわかってないのですよ。それはふまじめだ。私はここで防衛論争のような議論をしようと思っているわけじゃないんだ。あなたの非を鳴らそうと思っているわけじゃない。具体的に百万という子供を抱えた母親がわからないんだから、もっと親切な、丁寧な方法を考えなければいけないじゃないか。やらない方がいいということも含むんだなんということを「慎重」なんという言葉で流して、地域で勝手に考えるといったって、じゃ都道府県の衛生部がどういう権威と相談しますか。  それは七月、八月という一番危険な時期というのは終わりましたよ。おたふく風邪の流行も峠を越していますよ。そんなことは私たちも全部知っていますよ。だからそういう意味では地域別のいろいろな状況はあるだろう。あるだろうが、それを全部「慎重」なんという言葉で全部おっ飛ばして、それで適当にやりなさいでは、母親の判断はできないですよ。こういう不安を、死にはしないだろう、重症にはならないだろう、二週間もすれば退院できるだろうからということで甘く見ているということでは、私は行政の任務は果たせないだろうということを言っているのですね。そうでしょう。局長もうなずいておられるから。私はここでそんなこと追及するために言っているんじゃない。やはりもっと温かみのあるというか、手の差し伸べられる立場で考えてもらわないといけないですよ。  ちょっとアングルを変えますけれども、今、占部株が非常に悪いわけです。いろいろな外国の株もあるだろうが、一体いつごろになれば、まあ単味もあるだろうが、MMRという混合ワクチンという形で麻疹とおたふく風邪と風疹を一緒にするような形の復活に値するような新しい株、適切な株というものの採用は見通せるんですか。
  152. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 占部株にかわる株の開発の問題でございますが、技術的な問題がございまして、私がいつと言うことは非常に困難でございますが、メーカーとも相談して、一生懸命早く、できるだけ安全なもの、それから外国の例も調べまして開発に努力いたしたいと考えております。
  153. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうすると、今のところは見通しは立たないのですか。
  154. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 今申し上げましたとおり、技術の今後の見通しでございますので、確たることを申し上げることは残念ながら非常に困難でございます。
  155. 上田哲

    ○上田(哲)委員 再度伺いますが、それは見通しが将来にわたって立ちにくいということか、近時点では立たないということか、どういうことでしょう。
  156. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 後段におっしゃいました近時点では立たない、こういう意味でございます。
  157. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。  ではもう一遍こっちを聞きますけれども、そうするとそれが近時点で立たなければ、おたふく風邪を外して単味でやるというようなこともあるのだろうと思いますが、そういうことですか。
  158. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 それぞれ単独のワクチンを使うということも考えております。
  159. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ではもう一つ聞きますけれども、PCRによって、そして最終的に公衆衛生審議会の結論にもゆだねるという手続を含めた上でこの検査、そして今おっしゃった、もう一遍MMR混合にするかあるいは単味でいくかというふうな結論が出るのはいつですか。
  160. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、現在それぞれの自治体で分離されましたウイルスについての、野生株かワクチン株かについての調査、あるいはその副反応の出方、症状等についての詳細な調査、それから、それ以降に接種されております方々の中における反応の出方といいますのをいろいろ調査をやっております。そういう面で、私ども十一月、十二月には都道府県からの報告をいただきまして、また予防接種委員会にお諮りいたしたいというぐあいに考えております。
  161. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは大臣含めて結論に入りますが、このMMR、問題があるなら問題でありますけれども、そもそも私は、このワクチネーションそのものには賛成ですから、そういう意味では慎重な立場も含めながら、安全な適切なワクチネーションを進めてもらいたいという立場にもちろん立ちますよ。そこで、そういうことでいえば、その路線の中で、今日のこのようなあいまいな指示というのは間違いだと思うのですね。だから、例えて言うとおかしいけれども、これはほっておいたら野生ウイルスで三、四百人に一人かかるようなことであるよりも、適切な株によってワクチネーションすることが正しいということは一つの方向なのだから、ただしこのワクチネーションについては不安がある、この橋は渡った方がいいが、この橋を渡るについては、落ちて死ぬことはないけれどもけがをすることがある、もしもけがをする場合には今の制度によって医療補償もするのだが、しかしここはひとつ十分にそのことをわきまえてやっていただきたい。事情はこうなのだ、あるいはこれだけの期間があれば、もうしばらくお待ちいただければこういう形になるから、おたふく風邪は外して麻疹と風疹だけの単味のこともやるのだから、それならそれでできますよというような、わかりやすいノーティスをつけるべきだ。橋の前に立て札を立てることが当然な必要性があると私は思うのですよ。このままにして百万のお母さん方を不安の中に閉じ込めておくということはこれはやはりやるべきではない。そう遠くない時期にこの結論が出るのだろうと私は期待をしているから、直ちに――九月に出して十月に出してくるくる回っていて全然下がわからぬ。地方の自治体やなんかの衛生部かなんかに、地元のお医者さんの言うことを聞いて考えなさいなんということでは、これは責任を果たしていると言えないと思う。だから、その種の幾つかの要項を、このMMRにはこれだけの今問題点があります、そしてやがてこの見通しでこうなります、現在ならばこうなります、この種のことを明確にした、はっきりした指導通達を各自治体に出すべきだ、私はそう思うのですが、いかがですか。
  162. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今、上田先生の御指摘と政府委員とのやりとりを聞いておりまして、まさに高度の知識、技術、そういった判断が求められている問題でありますから、我々素人がどうこうということを言うことはいけないと思いますけれども、しかし、百万人からのお母さんたちが的確な指示がないために迷うという環境だけは、できるだけ早くそういったものを解消すべきだろうと思います。そのためには、やはり何といっても、今申したように、我々が素人の判断でやるべきものではなくて、きちっとした、公衆衛生審議会の中でも既に幾つかの検討と方向性が出ているようでもありますから、そういったところで、この十二月までの間にそういった各県からの報告等を聞きまして、そしてそれに基づいたさらに適切な指示ができるような方向を検討をしていきたい、かように思います。
  163. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大変前向きになりましたので、最後にもう一遍だけ。  速やかに、できるだけ早く、通達でなければ通知でいい、そういうものをすぐ出してもらいたいということについて御確認をいただきたい。
  164. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 そのように考えております。
  165. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。これは大変結構なことです。一日も早く通達ないし通知を出していただきたい。あいまいな、慎重ということではない具体的な指針を与えていただくことを刮目いたします。  労働大臣、お待ちいただいておりますが、杉乃井ホテル、西日本で最大のホテル、これだけのものが突如として、部外の我々にはうかがい知れない感じなのでありますが、ロックアウトが行われている。争議の内容もよくわかりませんけれども、いずれにしても、仮処分の決定も三十六名の地位保全と賃金支払い命令が出たようでありますが、それ以上に、このホテルに四百社の出入り業者等もあって地域の経済が大変混乱している。県も市も地元のあらゆる団体も一日も早い解決を望んでいるという話だそうであります。労働省にそうした要請をしておきましたので、どのような状況であるか、そして、これに対して速やかな解決のためにはどのような方針が立てられるべきであるか、地元民の不安を解消する立場から詳細な御報告をいただきたいと思います。
  166. 岡部晃三

    ○岡部政府委員 大分県別府温泉の杉乃井ホテルの労使紛争でございます。  本年の三月に会社側が人員削減を含む合理化を提案いたしまして、それに端を発しまして労使紛争が発生をいたしまして、八月二十八日に組合側は二十四時間ストライキに突入する、それからまた、会社側は十月十一日にロックアウトに入るということで紛争が深刻化しているところでございます。  現在、主としてこのロックアウトの解除の問題、それから従業員の解雇をめぐる問題、それから合理化をめぐる問題というような争点を中心に紛争が継続をしているわけでございます。  先生お話しのように、本件は大分地裁、大分地労委において係争中でございます。地元大分県におきましても、労使双方から事情を聞く等のことをしているようでございますが、現在のところ労使間に相当の意見の隔たりがあるというのが現状でございます。
  167. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、労働省としてはどういう関心を持っているのですか、そして早期解決というのはどのようにお考えなのですか、またどのような指導をなさるのですか。
  168. 岡部晃三

    ○岡部政府委員 このホテルにつきましては、地域の経済に与える影響が極めて大であるという報告も受けております。私どもとしましては、早期円満解決が図られるように期待をしているわけでございます。  本件の法律問題につきましては、大分地裁、大分地労委において係争中でございますので、その推移を見守ってまいりたいと思いますが、しかし、御指摘のように、そのような社会的に非常に影響の大きい問題であることにかんがみまして、県において現在労使にテーブルに着くようにということを呼びかけているわけでございますが、私どもも、労使関係安定のために、県としても最善の努力を尽くすように改めて指示をいたしたいと考えております。
  169. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣、これについての御関心をお承りしたい。
  170. 福島譲二

    ○福島国務大臣 私も、出身地の隣県のことでもございますし、かねてから地方紙等を通じて杉乃井ホテルの問題については私なりに心を痛めておったところでございます。  今局長から話がありましたように、地域経済に及ぼす影響ももちろんでございますが、これだけ大きな規模のホテルで、そこに、別府温泉に行って泊まられることを楽しみにしておられるたくさんの方々が現地に行かれて、思いがけなくもう泊まるホテルもない、あるいはこのホテルを根拠地として大きな大会が開かれようとしているときに、その大会もままならないというような状況を私も見聞きいたしております。  別府にとっては大変大きなホテルではありますし、今御指摘があったようにたくさんの関連企業も持っておられることでもありますし、従業員もまたその生活にもお困りになるお話でございますから、労使関係が円滑にいくようにということは私どもの望みでもございますので、大分県を通じて、労使の双方が同じテーブルに着いて、できるだけ早く円満に話し合いがつくように、私どもといたしましても指導をいたしてまいりたいと存じます。
  171. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  172. 中村靖

    中村委員長 次に草川昭三君。
  173. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川であります。  まず厚生大臣に二、三、最近与党の方からいろいろと厚生行政の基本的な問題あるいは厚生行政を超した今日的な問題について発言があるようでございますので、これは厚生省の考え方ということよりも、政治家としての厚生大臣の見解を承りたい、こう思うわけであります。  最近の報道によりますと、消費税問題というのがいろいろと議論になっておりまして、特に見直しの要綱の中に、これは与党の考え方でございますけれども、逆進性緩和のための新たな社会的弱者に対するいろいろな提言があるように承っております。その中で、消費税による新たな負担を強いられている階層の方々を中心に特別給付金支給するというような報道もあるやに聞いておるわけであります。あるいは消費税の税収の一部を全国民の共通の基礎年金の国庫負担分に充当し、将来の年金保険料アップを抑制するというようなことも言われておるようでございます。これは当然のことながら、非常に重要なことでございますので当局としてはいろいろな案があるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この際大臣としての見解を求めたい、こう思います。
  174. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 御指摘の問題は私どもも新聞紙上で拝見をいたしておりますが、一時金の給付については、御承知のとおり、昨年の税制改革の過程において公党間でお約束があり、支給されたことは知っておりますが、新しくそれを続けて一時金を支給するというようなことについては、私ども政府といたしましてはまだ直接そのお話も聞いておりませんし、いずれにいたしましても現時点においては考えておりません。  それからもう一つは、基礎年金の問題につきましても、そういった発言が税調その他の段階で、あるいは党の幹部の発言があったということも報道紙上で聞いております。しかしながら、私どもといたしましては、今年金法を提案いたしておるわけでありますから、ようやっと合意をいただきまして、明日は衆議院の本会議において御提案をすることができるようになりました。当然そういった中において各党間の意見というものが交わされることだろうと思います。そういったものの流れの中で、私どもが国会に提案して、その提案の中における御審議を見守って対処していきたい、かように考えている次第であります。
  175. 草川昭三

    ○草川委員 大臣自身もいろいろな提言を過去なされたように我々は受けとめているわけであります。また、あすいよいよ本会議で三時間にわたるこの種の質疑があるわけでありますけれども、提案が少なくとも本会議に出る前に、与党の方から基本的な問題点についての発言が出てくる、ということは、政府としては、そもそもこの法案の根本そのものに、今日的な情勢から考えると無理があったのではないかというように私は率直に言わざるを得ないわけであります。  また、この年金の取り組み等については、これも私どもが新聞等でおうかがいする限りでは、大蔵大臣自身も、就任の際に、戸井田さんを厚生大臣にぜひ、これは特に医療問題あるいはまた年金等の問題についての専門的な知識、そういうものをコンビにして、それこそ日本の将来に向けての厚生行政のあり方が必要だと認識された、そういう立場からあなたが厚生大臣に就任をされたやに聞いておるわけでございますけれども、もう一度この年金の六十五歳繰り延べ凍結を含めた問題について御意見を賜りたい。お願いを申し上げます。
  176. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 私どもが提案した年金法の改正法案というものが、現時点において客観的に受け入れがたい提案であったというような見解を私はいたしていないわけでありますが、やはり今国民すべての人たちに関係する問題でありますし、また同時に政党間においてそれぞれ意見というものが交わされている段階でありますから、それぞれいろいろな意味での御意見というものを拝聴はいたしております。拝聴いたし、そして、そういった中においてさらに国民的に御理解をいただかなければいけないのかなというような問題もあります。  いずれにいたしましても、そういったことを新聞紙上から聞くのではなくして、私どもは、国会に提案されているわけでありますから、国会という場において各党間で、それぞれ公式な立場で、その審議の過程において表現をしていただくことだろう、かように思っております。  そういう中で、我々は審議を通じて私たちの考えは私たちの考え方として御説明を申し上げ、そしてまた新たな御理解をいただく努力もいたしますし、また御提案に対しての御意見というものも十分に聞きながら進めていきたい、かように思っております。
  177. 草川昭三

    ○草川委員 国会の論議の中でいろいろな提言があればそれについては十分聞いていく、こういう答弁でございますが、現時点における大臣の大変苦慮した御答弁だと思うわけであります。  この際、消費税の福祉目的税化ということがよく言われておるわけでありますが、もちろんこれも参議院でこれから議論が始まるところでありますし、また衆議院でもいろいろな議論が出るわけでありますが、本席におきまして、厚生大臣としての福祉目的税的な構想、この問題について、もしそういう提言が出てくるとするならばどのようなお考えか、改めてお伺いをしたいと思います。
  178. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 福祉目的税化のこの御発言、あるいはそういう御意見が、党内税調の中であるいは政府の審議会の中で各段階においていろいろな御発言があることは聞いております。そして、福祉目的税という発想は現在の消費税を財源とした中で言われているわけでありますが、私どもは、福祉目的税という形で、現在の厚生行政にかかっている費用、十一兆円からのお金を捻出をしようと思ったら、消費税では当然間に合いません。とても間に合わない。そしてまた同時に、そのために財源確保のために税率を上げるという問題もそこに付随してくる。そういう意味で、福祉関係者の中でもまだしっくりした受けとめ方をしていないところもあるわけであります。  しかし、今回の税制改革というものが、いわゆる大幅な減税等を含めて消費税が行われたわけでありますが、その段階において、将来の日本の高齢化社会を支えていく世代間扶養の仕組み、その仕組みの中にあって、負担する側の現役世代の人たちの負担を軽くするために一方においては減税をしている。そういうような仕組みになっているわけでありますから、全体としてその税体系というものが長寿社会にたえ得るような体系づくりをしようという考え方の上に立っているわけでありますから、当然福祉に手厚く対応してもらうという意味で、福祉に重点を置いた配分というものを考えていただいているものと私どもは思っておりますし、私どももそのつもりで主張をしていこうという考え方でおります。  しかしながら、この問題は既に国会の中においても、消費税を一方においては廃止をしよう、一方においては見直しをしようという、国会を二つに分けての一つの論争点でありますので、今その論争点の中にあって、将来の高齢化社会を支えていくにふさわしいあり方というものを模索していくべきであろう、私どもはかように考えております。
  179. 草川昭三

    ○草川委員 短絡的な福祉目的税化についての否定的な答弁があったと思うのですが、私がなぜこの問題を取り上げたかというのは、実は、海部総理が新しく総理に選ばれた後の発言の中で、福祉目的税的なというような一つの発言があったわけであります。ですから、国民の皆さんも恐らくこの消費税即福祉目的税化というものに、総理自身がそういう言い方をされたわけでありますから、かなり関心を持っておることは事実であります。ところが、今答弁がありましたように、厚生行政としては短絡的なそんな簡単なものではございませんよ、税全体の中で福祉の予算というのが増大をするならばそれは要求をしていくんだ、こういうような御趣旨の答弁があったと思うのでありますが、総理が就任早々にこの消費税の福祉目的税化というようなことをなぜ御発言になったのか。これは厚生大臣に聞くのは大変恐縮ではありますけれども、私は、その際既に厚生省としても総理にはいろんなレクチャーをしておみえになるわけですから、ああ、そうか、総理自身がそういうことを言われるならそういう方向に引っ張っていくのかな、こう思ったわけであります。ところが今の厚生大臣の御答弁を聞くと必ずしもそうではない。こういう食い違いは国民としても大変迷惑な話になるわけでありますが、その点はどうでしょう。
  180. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 海部総理も、消費税というものは福祉に手厚く使っていきたいという意味の発言で、今でもそのことは変わっていないと思うし、私どもはそのことを歓迎をして、もちろん私たちもそのつもりで、その方向で努力をしていく、かように考えておるわけでありますから、決してその間に違いがあるとは思いません。  同時に、そういう意味では、お年寄りに対する投資というものはある意味では積極的に投資をしていくということがあっていいんだというふうに私は考えておるわけであります。ということは、人生八十年時代になってきたわけで、今までは、五十歳過ぎて定年になった、定年になってしばらくたったら不幸にしてこの世を去っていったというのが過去の歴史の現実であります。しかし今は人生八十年。六十歳の定年を終えても二十年間というものはいろいろな拘束を受けない自由な時間として、人生の最後を楽しく、健康で豊かに過ごしていこう。そういった人生計画というものを考えていくならば、御承知のとおりお年寄りというものの生活保障である年金であるとかあるいは健康を守るための医療であるとか、そういったところに一つの投資をし、活発な投資が行われたものが、同時にお年寄りの手からいろいろな経済の活力になっていくような再投資が行われていくというように、仕組みが変わっていくことによって、本当の意味での長寿社会というものがつくり上げられていくのだろうというふうに考えているわけでありますから、福祉にこれからも十分手厚く考えていきたい、我々はかように思っております。
  181. 草川昭三

    ○草川委員 その問題はまた別の場で論議をさせていただきたいと思いますが、今長寿社会の問題が出ましたので、ここでちょっとあわせて。  厚生省は今長寿科学研究センター、これは仮称でありますけれども、この構想があるわけでありますし、かなり具体的な調査というのですか、調査費もついておるように聞いておりますが、どのような進捗状況か、あるいはまたどのような検討が進められているのか、お伺いしたいと思います。
  182. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 ただいま御質問のありました(仮称)長寿科学研究センターでございますが、六十一年、天皇陛下御在位六十年記念事業ということで検討を開始したわけでございます。その後、厚生省では現在長寿科学研究センター、仮称でございますが、これの検討会を省内に設置いたしました。規模、設置主体、研究分野、立地条件等について検討中でございます。できるだけ速やかに結論を出したいということで、現在精力的に御検討をお願いしている状況でございます。
  183. 草川昭三

    ○草川委員 今有力な候補地というのですか、設置を希望する県を具体的に明示をしていただきたい、こう思います。
  184. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 十数県から誘致の御希望が出ておりまして、それぞれにヒアリング等もいたしておりますが、主なところといたしましては愛知県、滋賀県、京都府等がございます。
  185. 草川昭三

    ○草川委員 最終的に設置場所が決まるのは、もうそろそろ、来月あるいは今月には決まるのではないだろうかと言われておりますが、最終的に設置場所が絞られるのはいつごろになるのか、お伺いします。
  186. 加藤栄一

    ○加藤政府委員 私どもはできるだけ早く設置場所を決めたいというふうに考えて努力してまいったところでございます。何月までにということを現在お約束できる状態ではございませんけれども、できるだけ早く結論を出したいということで努力してまいりたいと思っております。
  187. 草川昭三

    ○草川委員 では、次に移ります。  現在、診療報酬の改定について医療関係の団体から幾つかの要望が出ておるわけでありますが、それぞれ何%の引き上げを要望しているのか。あるいはまた次期診療報酬改定の見通しはいつごろになるのか。これは中医協で審議をしておるわけでございますから、また中医協の審議状況、この三つをかいつまんで御説明願いたい、こう思います。
  188. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 最初に、診療報酬の改定についての関係団体からの要望でございますが、先月、中央社会保険医療協議会の場におきまして、日本医師会推薦委員等から診療報酬改定についての要望が出されたわけでございます。その際、診療報酬引き上げ所要率として、これは団体推薦委員からの要望でございますが、平均四・六五%という数字が示されております。このほかに、中医協の場とは別でございますが、日本病院会、全日本病院協会等からも、厚生省あてに診療報酬の改定要望が提出されているというのが現在の状況でございます。  この診療報酬改定の今後の見通しの問題でございますが、御承知のように、診療報酬につきましては、従来から国民医療費の動向、保険財政の状況、賃金・消費者物価の動向、医業経営の実態等、医療を取り巻く状況を総合的に勘案して改定が行われてきております。現在、中央社会保険医療協議会におきましても診療報酬の合理化等という課題で議論が始められておるわけでございますが、先ほど申しましたように、まだ診療側の委員から要望が出されこれについて議論が緒についたという段階でございますから、今後の具体的な推移についてはまだ申し上げられる段階にはございませんが、最近におきましては、この問題を今後中医協において各委員が意見を交換しつつ十分検討していこうという申し合わせになっておるわけでございます。十月と十一月と二回既にこの問題については議論が交わされておりますが、現在の段階では、今後の方向についての具体的な内容という面についての全面的な議論にまではまだ至っておらないという状況でございます。
  189. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、中医協の公益側の委員の中で、伊東先生の私的勉強会というのがいろいろと報道されているわけであります。これは、私的勉強会とはいうものの、単なる私的勉強会ではなくて、今後の医療行政の中に与えるインパクトはかなり大きいものがあると思うわけでありますが、一体この私的勉強会の性格というものをどのように評価をしておみえになるのか。全くの個人的な勉強会にすぎぬというのか、この答申案というのが今後かなり大きな役割を果たすのか、厚生省としての評価をお伺いしたい、こう思います。
  190. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私どもの立場から評価というようなことを申し上げるのが適切かどうかちょっと疑問もございますが、この研究会は、中央社会保険医療協議会の公益委員である伊東光晴氏が主宰をされております勉強会でございまして、ただ、その趣旨といたしましては、社会保険診療と密接な関係を持ちながらも保険医療との関係ではこれまで必ずしも十分な検討が進められてこなかった、こういう分野につきまして、例えて申しますと、医薬品、医療機器といったような医療保険の関連領域につきまして、各関係者との意見交換を通じて十分検討を行うことによって、将来の良質で効率的な社会保険医療の確立のための方策について研究を行う、こういう趣旨でございます。したがって、ここである程度の議論がなされまして、仮に報告というような何らかのまとめが行われたといたしますと、それをどう取り扱うかということにつきましては、この伊東委員の御判断にもよるものでありますし、現在の段階で具体的にこれをどのように今後取り扱っていくかということまではまだ決定はいたしておりません。  しかし、中医協の公益委員としての伊東委員が、各方面の関係者と十分いろいろ意見を交換されて、また、各関係者がその場で表明した意見というものにつきましてはいろいろな意味で今後の医療保険の運営にとって参考になっていくもの、こう考えられるわけでございます。
  191. 草川昭三

    ○草川委員 今も答弁がありましたように、従来長い間、医療問題あるいは医療行政問題をめぐるそれぞれの意見というのは、中医協あるいはその他の社会保険審議会等で議論には出ておるわけでありますが、十分な検討が必ずしも行われてきたとは言えない、こういう公益委員側の焦りがあると私は思うのです。だから、そういう意味でこの伊東先生が中心になる審議会というのはかなり突っ込んだ御意見をされると思うのですが、その反面、今までの歴史的な厚生行政というのは、公益委員の先生から指摘をされるような問題点が多過ぎたのではないかと我々は言わざるを得ないわけです。そういう点で、従来とは違った意味で、この伊東先生を中心とする公益委員の勉強会というのは今後かなりインパクトを与えるということを私は先ほど言ったわけでありますが、厚生省としてこれをどのように評価をされるのかわかりませんけれども、ひとつ今までの問題を徹底的に一回見直していくという、これからの審議のあり方に資していただきたいと思うわけであります。  そこで、それを踏まえて、いずれ診療報酬改定というものが出てきます、医師会の方からも出ておるわけでありますから。問題はその財源をどこに求めるかということになるわけであります。当然のことながら、先ほどの大臣にもございましたように、大蔵省に対していろいろな要求が出てくると思うのでありますけれども、診療報酬改定の財源と薬価引き下げとの関係を一体どのように考えるのか、あるいはまたこの審議会の中で、あるいは伊東先生の私的勉強会の中でどのような議論になっておるのか、お伺いをしたいと思います。
  192. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 理論的に申しますと診療報酬の改定と薬価基準の改正は別個のものでありまして、制度上直接的な関係はないと言えるかと思います。しかしながら、薬価基準の改正を実施いたしますと現実の問題として一般的に医業経営に影響が出るということは否定できないわけでありまして、これまで現実の姿としては、薬価基準の改正と診療報酬の改定は、必ずしも完全に一致してはおりませんけれども、あるいは同時期に、あるいはほぼ近い時期に行われまして、医業経営の安定という見地からこういう取り扱いがなされてきておるというのは事実でございます。  この診療報酬の改定の財源は、診療報酬としていかにあるべきかということを十分中医協で御議論いただいた上でその内容を決めていくものであるわけでありますけれども、同時に、薬価基準について実勢価格に基づく引き下げが行われた結果、その財源というものを、ある意味では医療保険の合理化によって生じたものと考えれば、これを診療報酬の改定に振り向けるということはまた理にかなったことでありますし、必ずしもそれだけにこだわるものでもないわけでありますけれども、そういう全体の関連の中において現実の取り扱いの方向を見出していくのが適当であろうというふうに考えておるわけでございます。
  193. 草川昭三

    ○草川委員 私がなぜそういう質問をするかというと、制度上は別個のものであることはお互いに十分承知をしておるわけでありますが、今の答弁にもありますように、現実的には同じ時期に引き下げがあり、そしてまた診療報酬の引き上げがある、こういうことになっておるわけです。そういう状況はいずれにしても必ずアリ地獄という形になっていくわけでありまして、際限のない薬価と薬価差益あるいはまた医業経営の安定、この繰り返しが続いておるわけであります。私は、この伊東先生の私的勉強会等においてもそのようなものがどう解決をされるのか、大変注目をしておるわけであります。  厚生省は今まで余り公の場では言っておりませんけれども、薬価差益というのは全体で幾らぐらいあるのだろうか、医療費の中における薬剤費の割合は三〇%だということが言われておりますが、この際、薬価差益がどのくらいあるのか、あるいは厚生省としてどう見ておるのか、お答えを願いたいと思います。
  194. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 御指摘のように、厚生省はこれまで公的な薬価差益の数字というものを発表しておりませんし、現在でもこの点に関する直接的な正確な統計データというものは把握しておりません。しかし、いろいろなデータからおおよそどのくらいかなという推計はできないわけではないわけでありますので、試みに幾つかの前提を置いて試算をしてみますと、昭和六十二年度においては一年間でほぼ一兆三千億程度ではないか。極めて大ざっぱな推計ではございますが、そういう見当はつくというわけでございます。
  195. 草川昭三

    ○草川委員 厚生省の方から一兆三千億というお話は、私どもも公の場では初めて聞いたわけでありますけれども、医業経営における薬価差益の位置づけというものについて、これもまた従来繰り返し議論になっておるところでありますけれども、一兆三千億ということを踏まえながら、薬価差益の位置づけについてどのように考えておみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  196. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 薬価差益は、言うまでもなく制度として本来予定されているものではございません。医薬品については購入価格をもって支払いを行うわけでございますが、現実の状態として薬価差益が医療機関の収入になっているということは否定できないわけであります。したがいまして、私どもも、医業経営についての実態という面から見ますと、やはりそういう収入があるということも十分考慮する必要があろうかと思っておりまして、いろいろと数字についての評価は立場によって違うかと思いますが、私どもといたしましては、医業経営についての検討を行うに当たってはこの収入も参考にしているということでございます。
  197. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、医薬分業の推進ということに話を進めていきたいわけでありますけれども、平成元年、いよいよ厚生省は医薬分業の確立について大変な決意で矢継ぎ早にいろいろな方策を打ち出しているわけであります。大変世論の流れも分業指向という方向にいくのではないかと思うのでありますけれども、厚生省の医薬分業の推進状況についてひとつお伺いをしたいと思います。
  198. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 推進状況を申しますと、まず今どれくらい分業がなされているかということでありますが、いろいろな見方があります。私どもは処方せんの枚数と外来の処方数との推計をいたしまして、どれくらいかということで数字を出しておりますが、ほぼ一〇%程度というふうに見ております。最近国立病院なんかの問題もありまして伸びておると思いますが、六十三年時点ではほぼ一割程度しか進んでいないということでございます。  推進のための対策でございますが、従来から、一つは、医師会、歯科医師会、薬剤師会それぞれ代表の方、あるいは公益的な方で、分業懇談会を設置しまして検討を続けております。それからモデル地区的な対策をやっておりまして、全国の八都道府県で基盤整備事業というのをいたしております。ここでの実際の成果を見てこれをいずれ全国に及ぼしていこう、その資料を得よう、こういうものでございます。最近におきまして、国立病院、保健医療局の方にもいろいろ御協力いただきまして、全国で三十七の国立病院におきまして処方せんの発行を進めるということをいたしております。  それから薬剤師サイドの問題でございますが、長年この分業というのは行われておりませんために薬剤師さんの技術的な面での研修が必要と判断をいたしまして、そのための研修財団を設立いたしておる、こんなようなことを進めておるところでございます。
  199. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、これは私どももいろいろと、厚生省の資料を見ながら私どもの立場からいろいろと勉強をしておるわけでありますが、今の院外処方せんによる調剤と院内の調剤を受けた場合の患者の一部負担の金額の差、いわゆる処方せん料だとか調剤薬局の費用等いろいろと考えてまいりますと、院外処方せんの調剤の方が患者にとっては負担増になる。こういうことになりますとこれは分業推進にブレーキがかかることになると思うのでありますけれども、この差を何らかの方法で解消するという気持ちはないのか、お答えを願いたいと思います。
  200. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 御指摘のとおり院外処方の場合と院内処方の場合で診療報酬の点数が変わってまいりますので、それに伴って患者の一部負担の額が変わるというのは事実でございます。この問題については私どももいろいろと認識をしつつ研究をしておるわけでございますが、やはり医療機関と保険薬局との業務内容の問題とか、特に処方せんを発行するという医薬分業に伴う業務についての診療報酬の問題等ございまして、ある程度の差がつくというのはやむを得ないことではないかと考えております。  また同時に、医薬分業自体が患者にとってもメリットのあることでもございますし、これはケースによっていろいろと相違はございますけれども、基本的には患者にとってもメリットのある制度推進しようという意味で、多少負担がふえるという面について御理解もいただきたいという気持ちを持っております。しかし、この負担の差が余り大きなものになりますと確かに医薬分業の推進を阻害する要因となりかねないという問題が一方にございますので、こういった点の兼ね合いにつきましては十分留意しつつ、今後検討をしてまいりたいと考えております。
  201. 草川昭三

    ○草川委員 患者が受け取る処方せん、その中身によって随分違うと思いますから簡単には言えませんけれども、今私が申し上げましたように、院外の方が負担が多いということだけが少なくともひとり歩きをするとするならば、ブレーキになるわけであります。また、今もおっしゃいましたように、一応そういう状況というのは認められているわけですから、私は何らかの対応を考える必要があると思うのです。  それからもう一つは、問題は薬局における医薬品の備蓄の問題になります。よほどこれは、一万数千点の備蓄が町の調剤薬局で常時なされるということは、私は実質的には不可能だと思うのです。そこへ処方せんを持つ患者がお見えになるということになりますと、大変患者にも迷惑がかかることになりますし、薬局経営という面からいっても、常時すべての薬を備蓄をするということは、これは有効性の期限ということもありますから不可能になります。だから、そこでいわゆる三師会とかいろいろな対応があると思うのでありますけれども、現実には、今薬剤師の方々も大変苦労して、処方せんにない薬を備蓄センター等にわざわざ車に乗って手当てに行かれるというようなことで、いろいろと苦労してみえるわけでありますけれども、受け入れ態勢の整備について国として薬剤師会等に何らかの助成をするという考えは持っておみえにならないのか、お伺いしたいと思います。
  202. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 御指摘のように、薬局で薬をそろえる、品ぞろえの問題は非常に工夫を要する問題でございます。診療所でございますと大体百ないし二百あるというふうに言われております。大きな病院になりますと千あるいは千五百、二千というような薬の種類を使うわけでございまして、そういう医療機関がたくさんあるわけでございますが、薬価基準に収載されている品目は一万五千、おっしゃるとおりございます。これを全部そろえるというのは至難のわざで、おっしゃるとおりでありまして、ただ、現実にその地域の医療機関で使われております薬というのは、医療機関と御相談しますと大体見当がつくわけでございまして、医療機関との接触、御相談というようなことが一つあると考えます。  それから、それでもいろいろなかなりの品目数が必要だと思われますので、今行われております方法は、薬剤師会でひとつ備蓄センターをつくるというようなことが行われておるわけでありまして、こういった方法は一つの解決策としてよろしいんじゃないか。さらに、これを発展させますと、本来、卸業の方でそういうものをきちんと対応していくという体制が必要だと思うのでありますが、一遍にいかないとすれば、備蓄センターというようなものが一つの方法。これに対しましては低利の融資だとか、こういったような方法がとり得ると考えております。
  203. 草川昭三

    ○草川委員 今、県段階でそれぞれ何カ所かの備蓄センターはありますが、何せ我が国土というのは広いわけでありますから、それは、各市町村に本来ならば一カ所、あるいは広域行政の中での備蓄センターを私はもっとつくらないと、いかに卸が直接駆けつけるというようなことをおっしゃっていますけれども、現実にはなかなかそうはいかぬのではないかと思います。これは私の方からきょうは要望という形で申し上げておきたいと思います。  そこで、文部省に来ていただいておりますので、大学の附属病院の院外処方の内容についてお伺いをしますが、たまたま私の手元に名古屋大学の附属病院の処方せんの発行率があるわけでありますが、これを見てまいりますと、昭和五十八年が一四・六、五十七年が一五・一ですからこれが一番でありますが、六十年で一〇・七、六十一年で一〇、六十二年で九・四、六十三年で九・二、こう毎年減ってきておるわけであります。今の厚生省、これまた後で厚生大臣の決意をお伺いをしますが、非常に厚生省としては分業の決意を述べ、いろいろな方針が出ておるわけですが、肝心の大学の附属病院の処方せん発行率が低下をしておるのですが、この矛盾をどのようにお考えになるのか、お答えを願いたいと思います。
  204. 小林敬治

    ○小林説明員 お答えをいたします。  国立大学の附属病院、この十年ばかりを見てみますと、処方せんの全部の枚数は約七百三十万枚から一千四十万枚というぐあいにふえておるわけでございます。これは御承知のように新設の医科大学が十六大学次々と開院をいたしまして、その影響がかなり大きかったかと思います。  それで、先生今御指摘の院外処方せんの率というものを見てみますと、この十年間で、確かに昭和五十四年、五年、六年あたりが一二%台、それから、外来だけをとってみますと一九%または一八%ぐらいということでございますが、その後ややパーセンテージといたしましては落ちてきておるわけです。それで、最近の六十二年、三年あたりになりますと、入院・外来両方ひっくるめた場合の院外処方率というものが一〇%台ということでございます。ただ、これは一たん最低まで落ちてやや回復をしておる数字でございます。それから、外来だけをとりましても、一時期一六%台まで落ちたものがややこの二年間一七%台まで復活をしておる、こういう状況にございます。  ただいま名古屋大学のことをおっしゃられましたけれども、この全体の数字が落ちております理由は、明らかに新設医大が院外処方を今のところ全く基本的に出してないということの効果でございまして、全体の院外処方率の絶対数は微増になってございます。  新設医大がなぜ院外処方を出さないのかということが次に問題になるわけでございますが、これは、開院直後でもございますし、院内か院外かという問題を検討するいとまもなかった、また患者さんの数も余り多くないので、病院の薬剤部において何とか賄えるというふうな状況が続いてきたためと私どもは見ておるわけでございます。  それともう一つ、もう開院してから長いもので十年以上もたちますので、この新設医大の方も院外に処方せんを出してもそろそろいいんではないかなということで、私どもも病院長さん方にお尋ねをいたしますと、やはり先ほど御意見ございましたけれども、新設がいずれも市街地をちょっと離れたところに立地されておりまして、その近辺に保険薬局等の開設がほとんどない、それから、県内のそうした薬局の様子なども大体調べておられて、まだ受け皿としてどうだろうかという不安を大学の先生方が持っているというふうな実情があるように私ども考えております。  文部省としては、基本的に既設大学と新設大学におきまして処方せんのあり方について差異を設けるつもりは全く持っておりません。  それから、ただいま御指摘がございましたように、名古屋大学が数字が落ちておるというのは何か特別な理由があるのかどうか、私どもちょっと今承知をいたしておりませんので、後日調べさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、魚住委員長代理着席〕
  205. 草川昭三

    ○草川委員 今国立大学、特に新設の方に地域的な条件があり、院外処方が少なくなってきておるという話ですが、私の指摘をしたのは非常に古い名古屋大学の中においてもそういうことはございますよ、こういうことを申し上げておるわけであります。これは厚生省、せっかくこういう決意を言っておるわけでありますから、新しい大学、そして場所が不便なるがゆえに実は院外処方の発行というのはもっとふやすべきではないだろうか、こういう趣旨にもなるわけでありますので、厚生省と文部省はよく相談をしてやっていただきたいと思うわけであります。  そこで、時間がどんどん過ぎますので、薬歴カードというのは今回の中の大きな目玉事業になっております。例えばかけ持ち診療、歯医者さんと内科の先生にかかる、これは同じような薬があったり、あるいはまた副作用等が併用した場合に起きる可能性もあるわけでありますから、薬歴カードというものを医薬分業によって薬剤師さんのところにつくっていただきたい、こういうような趣旨もあるわけであります。  そこで、この薬歴カードのやり方、これは一歩間違えますと人権上の問題にもなるわけでございますし、あるいはまたしっかりやっていただくならば、フォローアップをしっかりやっていただいて投与した薬の効果いかん、これをフォローしていただくという面ではまたこの薬歴カードというのは大変効果があることでございますが、その点についてどのような方向に持っていかれるのか、見解を求めたいと思います。
  206. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 今お話しの薬歴カードの問題は、日本薬剤師会でも検討がなされておるところであります。特に御老人の場合、老人医療の対象になるような方々の場合には非常に合併症が多いわけでありまして、幾つもの医療機関に行く、幾つもの医療機関で薬をもらうというようなことがございまして、場合によっては同じ薬を別の医療機関で二度もらう、あるいは三つ同じものをもらう、場合によってはまた相互に飲んではいけない薬を医療機関同士が知らないために飲んでしまう、その結果場合によっては副作用を起こす、こういうようなこともあるわけであります。そういう意味で、かかりつけといいますか、自分で薬をもらう薬局を決めておいていただきまして、そこで一元的にそういうものをチェックできるというようなことは非常に望ましい、特に御老人なんかの場合には望ましい点があるわけであります。したがいまして、日本薬剤師会で検討されておりますそういう仕組みについては、私どもはできるだけ支援をしてまいりたい、いろいろな角度でそういうものの普及にサポートしてまいりたいと考えております。
  207. 草川昭三

    ○草川委員 では、この問題については厚生大臣から、医薬分業推進についての大臣の決意、見解というよりは決意をお伺いしたいと思います。
  208. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 医薬分業は既に法制化されて大変長い年月がたっておるわけでありますが、現実には、今質疑がありましたようにいろいろな問題があって十分な普及がなされているとは言えない状態であります。特にその大きな原因の一つは、やはり町の方へ行くとどうしても診療所の先生と患者さんとの間には非常に深い信頼関係等もありますし、そういう中で、薬局でもらうよりも先生の手から直接もらった方が、病院からあるいは診療所から直接もらった方が何となく信頼できる、そういうような問題もあるのだろうと思います。これを普及していくためには、特に患者さん、それから診療側、こういった関係者の理解を深めていかなければなりません。  しかしながら、いずれにしても、今先生御指摘のように、重複投与とかあるいはそれに基づく副作用とか、そういったことを考えていけば、特に患者さん等が高齢化してくれば、そういったいろいろな意味での記憶も薄いしそういう注意力も少ない、そういった方々に指導をしながら、飲んだ薬の効果が十分に上がるように、副作用なんか起こらぬように、そういうようなことを考えてくると、ますます医薬分業というものが非常に大事だと思います。同時に、この医薬分業を進めるためには、拠点的にやったのではだめなので、点から面へ広げていくことによって初めてその効果があらわれてくる、こういうことも考えながら十分この効果が上がるように努力をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  209. 草川昭三

    ○草川委員 では、この医薬分業の問題は以上で終わりまして、放射性医薬品の問題について質問をしたいと思います。  それで、このそもそもの発端は、医薬品メーカーのミドリ十字が、医療機関への放射性医薬品の販売窓口であるところの社団法人日本アイソトープ協会に対し、厚生省の承認を受けていない放射性検査薬を承認済みと偽って書類を提出、同協会が各医療機関に配る価格一覧表に掲載をした、これがそもそもの発端ではないか、こういうように思います。  そこで、いろいろと過去のことは時間の関係がございますので省きまして、問題は、未承認医薬品の販売が長期間わからなかった原因は一体どこか、これは薬務局にお伺いしたいと思います。
  210. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 放射性医薬品につきまして非常に長い期間わからなかった、そのとおりでございます。  これはいろいろなことがあると思うのでございますが、一番の原因は、放射性医薬品というのは流通ルートが普通の医薬品と違うわけであります。半減期がございまして、飛行場から工場に入れてすぐ持っていかないといかぬ、一定の期日を決めて運ぶ、こんなようなルートでございまして、通常の医薬品でございますと、メーカーから卸、卸から医療機関ということでなっておりますが、流通ルートが一つ違うため、やや監視の面がそちらに向いていなかったというようなことが一つございます。  それからもう一つ、医療機関の現場の問題でございますが、現場におきましても、普通の医薬品は薬務系統で扱うわけでございますが、この放射性医薬品につきましてはレントゲンを取り扱っている方面での処理になっておりまして、通常の薬関係については従来から非常にうるさくいろいろ言われている、注意を払っているわけでございますが、やや放射線を扱っている現場とは離れていてその辺が行き届かなかった、こういう点が大きな原因かと考えております。
  211. 草川昭三

    ○草川委員 今の答弁は国民の皆さんが聞くと大変驚く話でして、いかに縦割り行政であろうと、医療界において薬局、薬剤の先生方と放射線の先生方と立場が違おうと、我々は医療機関というものそのものを信頼してやっておるわけであります。あるいはまた、今回の場合は不正請求事件というのになっておるわけでありまして、このミドリ十字の医薬品にかかわる不正請求事件を防げなかった厚生省の保険局にも問題があると思うのですが、それはどういうことか、保険局にお伺いしたいと思います。
  212. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 基本的には、医療機関側に保険請求のルールについての理解が不足していたということがあろうかと思っております。これは薬価基準に収載されていない医薬品を使ってはならないという極めて初歩的なものではありますけれども、そういった点についての認識が十分でなかったということが一つ挙げられると思います。  また、この放射性医薬品が通常の医薬品とは異なった特殊なものであるということから、病院内における購入から使用、保険請求に至るまでの間において管理体制にも不備があったということも言えるかと思っております。  さらに、もう少しさかのぼって考えますれば、やはりこういうミドリ十字という会社が未承認の放射性医薬品を販売していたことと、それから、そういった放射性医薬品のすべてを取り扱う国内での卸売一般販売業者である公益法人の日本アイソトープ協会においても、その点の確認を十分していなかったというような問題が挙げられると思っております。
  213. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、社団法人日本アイソトープ協会でありますが、これは社会的にもかなり格調の高い生い立ちがあるわけであります。それで学術界ではメッカと言われた団体でありまして、大変失礼でありますが、そんじょそこらの団体とは違うわけであります。ところが、この協会を通じてしか放射性医薬品を購入できないシステムになっておる、これは今の答弁にもあったとおりであります。  そこで、この社団法人日本アイソトープ協会に対し、厚生省はどのような指導なり勧告を行ったのか、お伺いをしたいと思います。
  214. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 昨年の十二月二十三日付で、文書によりまして今回の事件に対します警告をいたしました。それから同時に、今後の管理体制の根本的な改善を図るように指示をいたしたところでございます。それから、これについての回答も参りまして、アイソトープ協会としては体制の整備、それから研修、こういったようなことを行っております。それからさらに、現在、この協会に検討会を設けてもらいまして、放射性医薬品の販売等、財団との関係についてどうあるべきかというようなことについて検討をしていただいておるところでございます。  いずれにしましても、アイソトープ協会が独占的にやっております関係で、これが先ほど委員は非常に大変な団体であるというようなお話もございましたが、私どもの立場から見ますと、卸売業を行っておるわけでございまして、このアイソトープ協会が適正に業務を実施してもらうということが私どもの立場からは要請されるわけでございまして、そういう立場でアイソトープ協会の指導をやってまいりたいと考えております。
  215. 草川昭三

    ○草川委員 ここで、アイソトープ協会を担当する科学技術庁にお伺いをしますが、今いろいろと厚生省の方から指摘されたわけでありますが、今後こういうような事態はもうない、そういうふうに御判断になられるのか、あるいはまた、なお長期間、問題点が内攻しておるので体質改善のためには時間がかかるとおっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  216. 福原淑弘

    ○福原説明員 ミドリ十字事件は一義的にはミドリ十字によるものと私どもは判断しておるところでございますけれども、公益法人であります日本アイソトープ協会が未承認医薬品の販売を防止できなかったという点については遺憾としているところでございます。  科学技術庁としては、昨年七月二十九日に日本アイソトープ協会から事件の経緯等を聞きまして、翌月三日、同協会会長に対しまして、今回のような事態の再発防止に努めるよう強く指導したところでございます。  今後とも、日本アイソトープ協会が公益法人としてその設立趣旨に沿った事業を適正な体制で実施するよう指導監督してまいりたい、そのように考えてございます。  なお、具体的にどのようなことを考えておるかということでございますけれども、先ほど御答弁がありましたように、現在RI協会の中で、放射性医薬品の販売体制において日本アイソトープ協会がいかなる役割を担い、その管理体制はいかにあるべきかということを検討する検討会を設けて検討しておるところでございまして、その検討会の結果を踏まえまして私どもも必要な対応をとっていきたい、そのように思っております。
  217. 草川昭三

    ○草川委員 今、放射性医薬品の売上高というのは六十三年で五百三十四億を売っておるわけですね。ここは、今厚生省の方からも、大変な卸販売だ、普通の卸販売ということから考えるともっとしっかりしてもらわないと困る、こういう言い方にもなるわけであります。  五百三十四億の放射性医薬品を独占的にRI協会がやるわけでありますが、よく実態を調べてみると、これは全くの通過だけの団体なんですね。実際上の放射性医薬品の納入はそれぞれのメーカーなんですね。いろいろなメーカーがこういうパンフレットを持って歩くわけですね。たまたまこういう定価表の中には会社の名前があって、その上に日本アイソトープ協会というのがある。これを見ると、例えば三〇%引きで売りますよ、あるいは各包装単位によっては二〇%引きでやりますよ、普通のプロパーが薬を診療機関に売りつけるのとはちょっと違う感じで売っておるわけでありますが、私がここで言いたいのは高値硬調をしている、かたいという意味ですね。高値でこの放射性医薬品というのが納入をされているのではないか、こう思うのであります。ちなみに五百三十四億売りながら、平均マージンが三%だといいますけれども、物によっては六%も七%ものマージンをこの放射性医薬品でかけて、社団法人日本アイソトープ協会の収入になる。少しこれは高過ぎるのではないか、問題ではないかと私は思うわけであります。それは信頼性があればそれなりにアイソトープ協会がマージンをかけてもいいんですけれども、ミドリ十字の問題等を含めましていろいろと間違いをチェックすることができなかった、こういうことでございますが、その点はどうお考えになるのか、お答えを願いたいと思います。
  218. 福原淑弘

    ○福原説明員 日本アイソトープ協会におきます放射性医薬品の取り扱いにつきましては、卸売業というようなお話がございましたけれども、その現実を御説明いたしますと、各メーカーとの間で委託契約を結んでおりまして、その委託契約に基づきましてユーザーからの受注、それからメーカーに納めるべき代金の請求及び回収ということをやっておるところでございまして、直ちにそれが卸売業かというのはひとつ考えどころではないかというふうに思っております。  それで、日本アイソトープ協会の放射性医薬品の取扱高は、今草川先生がお話しになりましたように五百億を超えておるところでございますが、そのうちの三%といいますのは、単に放射性医薬品を販売するだけの経費ではございませんで、それを将来処理するための費用という形で使っていくものでございまして、そういう意味から三%というのは現時点では妥当なパーセントではないか、そのように考えております。  なお、どの程度のパーセントを取るかといいますのは、収益企業ではございませんので天井に向かって非常に高くしていくということは決して考えてはおりません。最近放射性医薬品の販売高がふえてまいりまして、三%というような額を適宜見直しておりまして、それは各メーカーごとの販売額に応じてパーセントをセットしていったわけでございますけれども、六十三年度は最高六%であったものを元年度は四%にしているということで、どの程度の金額を取るかということはその必要額に応じて設定しているというところでございます。
  219. 草川昭三

    ○草川委員 私の言いたいのは、協会が眠り口銭的に平均三%取るのは、高過ぎるということも一つありますし、それからもう一つは、放射性医薬品そのものの価格が高いところで安定をしておるということが言いたいわけです。普通の薬はもっと購入サイドからたたかれて下がっていくのだけれども、放射性医薬品というのは、メーカーの決めた値段に対して科学技術庁の所管するこのRI協会が独占的に受けるわけですから、その上に三%乗せてしまうと価格が下がっていないということをひとつ現状として認識をしなければいかぬと思うのです。  なぜそんなに高いのか。それは独占的な窓口だ、しかも今のRI協会の理事長というのは、前の大阪大学の山村先生を初めとするそうそうたる学会の教授連中がずっといるわけですから、購入する医療機関が、大学の附属病院であろうと国立病院だって頭上がらぬでしょう、形とすればそういう先生が売るのだから。そんなばかな組織がありますか。今普通の卸はいろいろな会社があります。非常に苦労してプロパーをつくって売る。RI協会はメーカーの仕切り値段にオンコストだけして、しかも何か文句があるなら大学の先生が後ろについておるわけです。これは公認せざるを得ないですよ。だから高値安定するということはひとつ問題だというわけです。これは本当に決算的な問題でもあるわけであります。それから、将来の廃棄物処理等にも要ると言いますけれども、おたくの方は廃棄物処理の費用というのはきちっととっているわけです。年間環境整備事業収入、予算で十三億、決算では十四億九千、これは六十三年から元年三月までの収支決算に出ておるわけですから今の答弁はおかしいわけです。その点はどう思われるか、お伺いをしたいところであります。  そこでもう一つ、時間がどんどん迫ってくるものですからお伺いをしますが、アイソトープ協会を通じていろいろと診療機関、あるいはもう一つ衛生検査所に納入をしております。この衛生検査所というのはどちらかというならば診療機関の下請ですね、検査を専門にやるわけですから。ですから、そういうところに放射性医薬品というのはどの程度納入をされているのか聞きたいわけでありますが、厚生省と事前レクのときには、放射性医薬品の衛生検査所における使用量はわずかだと言っております。しかし、科学技術庁からの答弁によりますと、かなり数字が大きくて、大体医療機関の半分近くを検査機関が使っている、こういう統計があるのでありますが、厚生省はその点どのように把握をしておるのか、お伺いをしたいと思います。
  220. 仲村英一

    ○仲村政府委員 社団法人のアイソトープ協会の調べでございますが、昭和六十三年八十五の衛生検査所が購入をしておりまして、全体の費用は百七十二億でございます。
  221. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、今度は社団法人日本アイソトープ協会についてお伺いをしますが、アイソトープ協会は放射性医薬品一覧表というのを持ってみえるわけであります。これを各医療機関なり今答弁がありました全部で八十七でございますか、衛生検査所等に持っていくわけでありますが、この中に「健保 健康保険適用の「有」、「無」」というのがあるのですが、それはどういうことを指すのでしょうか。
  222. 福原淑弘

    ○福原説明員 ただいま先生御指摘の放射性医薬品一覧表は、各メーカーから協会が必要事項を徴取いたしましてそれを整理したものでございまして、それを全ユーザーに配付しているというものでございます。そもそも、この一覧表に載せております医薬品は薬事法上承認はされているというものでございますけれども、今御指摘の健保と書いた欄は、さらに健康保険が請求できるか否かということを有無というところで明記しておるところでございます。
  223. 草川昭三

    ○草川委員 厚生省にお伺いしますが、専門的な言葉でございますから私ども事前に資料請求したわけでありますが、厚生省の方で保険請求できない放射性医薬品、こういうのをいただいたわけです。専門的な言葉ですからちょっと厚生省にお伺いしますが、これは厚生省医療課の大西さんからいただいた資料でございます。「51ホルモン」という中にアマレックスというのがございます。アマレックスMT4、メーカーはアマシャムという会社で、一〇〇テスト用五万五千円、こういうことが書いてあります。それからスパックT4RIAキットという名前の放射性医薬品、これは第一RI研究所の試作品、一〇〇テスト用で五万五千円、こういうのがございますが、これは薬価基準に収載されていない品物だと言ってこの表をいただいたわけですが、どうでしょうか。
  224. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 これらの医薬品は検査試薬でございまして、この中には、例えばある症状の正確な診断ではなくて最初のスクリーニング用として薬事法上認められているものもございますし、医療のための診断用として承認されているものもございます。社会保険の請求の場合にはあくまでも医療のための診断ということが前提となりますので、例えばスクリーニング用としての承認を受けたものについてはこれを使った請求はできないことになっておりますけれども、診断用として承認されたものを使った検査につきましては診療報酬支払いが可能である、こういうことになるわけでございます。
  225. 草川昭三

    ○草川委員 そういう答弁ならば、社団法人日本アイソトープ協会放射性医薬品一覧表の中にある健保有無、こういうことになりますと、ただいま私が指摘をいたしましたアマレックスMT4、一〇〇、これは五万五千円でどうぞ、こういうことになるわけでありますが、これは健保有ということになります。  私は、こういう表の配付というのは、前回のミドリ十字の薬価に収載されていないものを振りかえ請求をしてしまったということに通じるのではないだろうか。こういう放射性医薬品一覧表を今なお、平成元年七月二十日現在でRI協会は配付をしているわけでありますが、これは不親切というよりも、今の局長の答弁を聞いた方はそれなりの対応をして、請求すべきもの、できないものとの判断がつきますよ。しかし、これだけ見れば、今日本の納入されているところの診療機関あるいは衛生検査所では間違った受けとめ方をするのではないだろうか、私はこう思うのですが、その点はどう判断されますか、お伺いします。まず科技庁から答えてください。
  226. 福原淑弘

    ○福原説明員 この放射性医薬品一覧表と申しますのはかなり前から使っておるものでございまして、今回のミドリ十字事件に際しましては、その内容の記載不備ということで多くの方に御迷惑をかけたということで深く反省しておるところでございます。その一つの原因が、先ほどの欄につきましても各メーカーから自主的というか主体的に表示されたものをそのまま掲載していたという落ち度がございまして、そこにつきましては厳しくその管理体制を改善し、正しい情報を載せるようにと強く指導したところでございます。それを受けまして、協会におきましては、必ず厚生省の発表されております情報をもとにそれをチェックし、かつ、メーカーからもその承認を得た状況というものを正確に把握してその欄に載せるということを強く指導し、それを実行していたはずでございますけれども、もしも先生御指摘のような不備があるならば、そこはさらなる指導をしてまいりたい、そのように考えます。
  227. 草川昭三

    ○草川委員 私、これをどこかからぼこっと持ってきたわけでなくて、きのうの夜、あなたからこれはいただいたものですよ。私がどこかから持ってきたのではなくて、科学技術庁のレクチャーのときにあなたが私に見せたわけですから、私はこれを見て質問をしておるわけですよ。それはこの一例を見てもいかに問題があるかということだと思うのです。先ほど厚生省の方は、RI協会に対してもいろいろと厳重な指導をした、こういうことを言っておみえになりますが、この一例を挙げても不親切だと思うのですが、どのようにお考えか、お伺いをします。
  228. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 この健保適用有無ということと、先ほど保険局長が申しましたのは、同じ医薬品でありましても承認されてない効能のものに使えばそれは健保の請求ができないというふうに聞いておったのでございますが、あらゆる医薬品につきまして、承認されております効能というのは決まっておるわけでありまして、それ以外のものには使えない。この点は医療機関でそれぞれの医薬品につきましてきちっと承知をしていただかなければ、これを全部載せるということはなかなか困難だと考えます。したがいまして、各メーカーの持ってきます際に、添付書、こういうもので判断していただくしかないのではないか。これに全部載せるということは、各医薬品について全部承認の効能を載せろ、こういうことになるのではないかというふうに思います。
  229. 草川昭三

    ○草川委員 今の答弁は私、非常に不親切だと思うのですよ。もし今のようなことを言えば、現実にメーカーはこんな厚いものを持って歩いているのですよ、メーカー自身は。だから、この中でだって説明しようと思えば幾らでもできるんですよ、こんな厚いのを持っているんだから。それは今どういうおつもりで答弁をされたか知りませんけれども、そういう態度がどこかおかしい。これは、今までのこのミドリ十字の問題等の原因につながっていく指導上の不備だと私は思うので、もうちょっとしっかりしてもらわなければ困ると思うのです。  ちなみに衛生検査所への納入状況、これは今度厚生省所管になりますよ。納入状況の放射性医薬品の名前をいろいろと挙げていきますと、やはりペプシノーゲン1キット、これはミドリ十字。あるいはクレチンT4栄研(一〇〇)。これなんかを見ておりますと、茨城県、神奈川県、大阪、香川県、東京都、それぞれ出ておりますが、相当なものが納入されております。こういうものもいわゆる薬価としては収載をされていないわけでありますね。薬価として収載されなくてもそれなりの道があるんだよということでありますけれども、少なくともこの衛生検査所ということを考えてみると、どこかの診療機関からの下請で受託をしておるわけでありますね。そういうのを見ていくと、本当にすべてが薬価収載に関係のない薬として使われているのかどうか。私は薬価収載にある薬と振りかえ請求をするような面がまだ残っておるのじゃないだろうか、こういうような感じがしてなりません。  時間がもう五分前になってしまいまして、時間がないので、これは大変問題なところで終わってしまいますけれども、衛生検査所の経営状況あるいはまた衛生検査所の過当競争あるいはまた最近の運営等を見てまいりますと、衛生検査所も県に対する登録ということで終わっておるわけでございまして、衛生検査所での検査のあり方等も含めますと、今後問題が残っておるのではないかと私は思います。  そこで、時間が来ましたので最後に質問をいたしますが、今私が発言したことを含めて、衛生検査所に対する指導監督を今後どのように行っていくのか、お答えを願いたいと思います。
  230. 仲村英一

    ○仲村政府委員 前段のお話は、診療報酬の請求に直接かかわりない検査を受託するということもあり得るわけでございますので、研究用とかそういうことに使われることもあるのではないかということでお答えをさせていただきたいと思います。  衛生検査所の全体の監督と申しますか指導と申しますか、そういう問題については私どもの所管なわけでございます。御指摘のとおり八百二十カ所余りで登録されておりますが、これもそれぞれの登録基準とかを設けてやっております。それから指導監督ができるような仕組みになっておるわけでございまして、標準的には二年に一回ぐらいということで通知を出して指導しておるわけでございますが、経営状態その他は必ずしも的確に把握されておりません。  しかし、問題は、今るる御質問になった中身といたしましては、行われます医療の質に影響する部分があれば問題ではないかということだと思いますので、私ども、衛生検査所の制度、管理の問題、そういう点につきまして、引き続きさらに努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  231. 草川昭三

    ○草川委員 これで、最後に大臣に質問して終わりたいと思います。  今の答弁を聞いておりますと、薬価収載をしていない薬はまだ大分ある、こういうことですね。医薬品として認定されているけれども収載されていないものがある。そんなものはメーカーの責任でどんどん薬価に収載をするよう申請すればいい、あるいはまた厚生省の方も医薬品として認定をされるならば早期認可を図ればいい。我々にとっては紛らわしいですよね。そういう紛らわしくないような薬事行政を強く求めていきたいと思います。  最後になりますが、放射性医薬品の流通のあり方について、アイソトープ協会という社団法人が厚生行政とは非常に違った立場にあるわけであります。しかし、この社団法人日本アイソトープ協会というものは、別だ、別だと言いながらも、今日の医療の中に非常に大きな役割を果たしてきておるわけであります。こういう問題について厚生大臣はどうお考えになるのか、お答えを願いたいと思います。
  232. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今、先生と政府委員との間に質疑が交わされておりましたけれども、私もいわゆる技術者ではありませんし、そういう意味で、今聞いた話が初めてである場面も非常にたくさんあります。しかしながら、いずれにしても、放射性物質が同時に医療の面に使われる段階で、既にその支払い機関というものは公的機関で支払われるというようなことになるわけでありますから、その間の取り決めあるいは秩序を十分に検討して、そして手落ちのないような取り扱いをしていくことが特に必要であると私は感じました。そのために、そういうような場面は、これから高度の医療開発等が行われてくるに従って、いわゆる今までの製薬のルートからでなく、新たなそういったアイソトープ協会のような高度の放射性物質の管理をしている団体、こういったところがかんでくる場合がある。そういう場合には、必要以上に今までの慣習、秩序、そういったものが理解されていないで取引が行われるということになれば必然的に問題が起こってくるわけでありますから、さらに検討して、再びこういったことが起こらないような十分な対応をしていかなければならない、そういうふうに痛感をいたしました。
  233. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、運輸省関係の方に全然質問が行われずに、せっかく来ていただいて申しわけなく思っておりますし、労働大臣を初め労働省にも大分予告をしてありましたが、質問ができずに申しわけございません。おわびをして終わりたいと思います。どうもありがとうございます。
  234. 魚住汎英

    ○魚住委員長代理 次に、大矢卓史君。
  235. 大矢卓史

    ○大矢委員 ただいま草川委員の方から質問がございました放射性キセノンにつきまして、通告いたしておりませんけれども、若干私も意見を述べさしていただいて御答弁を求めたいと思います。  ただいま質問の中で明らかになりましたことは、製薬の許可が得られる、ということと同時に、薬価に載せていただかなければこれが出回らないわけであります。薬価に載せられないままにアイソトープ協会を通じてこれを売ったというところに問題があるという指摘であります。その以前に、やはり同じ厚生省の中で、この放射性キセノンを使います機械を許可をするところがございます。そして、それに使う放射性キセノンについて使ってもよろしいという許可をするところがございます。そしてまた、これが薬価に記載されるというこれらの問題、これが一元的に行われておらない。そこにやはり私は大きな問題があると思います。  これだけの問題ではございません。ほかの問題もあろうと思いますけれども、そういうちぐはぐな行政が現在行われておる。そのことについてどうお考えでございましょうか。
  236. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 保険請求の問題につきましては、これは、薬価基準に収載されているものを使用して医療を行うということは大前提でございますが、さらにもう一つその前提といたしまして、薬事法によって承認された医薬品であるということが必要になってまいります。私ども、それぞれ医療保険とそれから薬事行政、内容的には関連もございますけれども、また別の分野の仕事をそれぞれ担当しておるわけでございまして、この点についての連絡を緊密にしなければならないということは当然でございます。  しかし、ミドリ十字のケースにつきましては、メーカーの方からの薬事法上の承認申請というものが実際にはなかなか出てこなかった。申請に手間取っている一方で、現実に大量の販売が行われたというところがまず問題の根源でございまして、これは、医療上必要なものであるならば速やかに承認の申請をし、そして薬価基準に収載をするような手続をとるというのが本筋であろうかと思っておるわけでございます。  いずれにしても、今後こういう問題が発生しないように、薬事法の承認問題と薬価基準の収載問題等については、十分緊密な連絡のもとに実施することに努めたいと考えております。
  237. 大矢卓史

    ○大矢委員 それでは、それを使う機械がいつ許可になって、放射性キセノンそのものが使用できるという――容量の大きさではございません、たまたまこれは二百という容量の大きさは許可になっておりませんでしたけれども、その前にもう既に許可になっておるから、これはまた保険も使える状態になっておる、そういう中でこういう問題が起きてきたと思いますけれども、いつ機械が許可になって、そして放射性キセノンというのが、五十ミリでございますか、これがいつ許可になり、そして保険に掲載されておったか。たまたまこの二百は許可になっておりませんし、保険に掲載されておりませんけれども、それらの点を詳しくお答え願いたいと思います。
  238. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 ミドリ十字の事件に関連しまして、医療機械の方が承認されておってそれに使うガスの方の承認がおくれた、こういう話がよく言われるのでございます。しかし、私どもそれも調査をいたしておりますが、その承認されております機械は既に使える医薬品がもうあったわけでありまして、ただ医療機関にとりまして、これは医療機関の立場もわかるわけでありますが、やや使いやすいものが承認がおくれたというような事情はございます。確かに医療機械と医薬品の承認というのはこれはちょっと別の系統で行われておりまして、期間がずれることも、ミドリ十字の事件ではございませんがほかにもあるわけであります。先般のそういった御指摘もございましたので、できるだけ間違いのないように、承認の時期をできるだけ合わせるというようなことではっきりした方針を出して、そういったやり方で最近では進めております。
  239. 大矢卓史

    ○大矢委員 放射性キセノンだけではなくて、非放射性キセノンの機械もあると思います。これも既に許可になっておると思います。しかし非放射性キセノンの許可がまだおりておらない。そういう時間的なずれ、それを今薬務局長はおっしゃったと思いますけれども、そういうふうに、同じ厚生省の中で、機械は許可はするけれども、それを使用できる、またそれが薬価に載る、この三つの段階に分かれておる。そこにやはり、先ほどから草川委員も指摘されましたように、非常に使う方から言って、また我々使っていただく方としたら、そういういいものであるなら一日も早く使っていただければ結構だし、使う必要がなければそういう機械も許可しなくてもいいわけでありますから、そこらを厚生省の中で一貫した、俗に省あって国なしと言われておりますけれども、局あって省なしというふうに、各局々で許可をおろすところが違う、それがばらばらになっておるというところに問題があると思うのですけれども、大臣いかがでございますか。
  240. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 今政府委員が御説明申し上げましたように、このキセノンの問題等も含めて、こういった誤りが起きないように厳重に対応していくつもりであります。
  241. 大矢卓史

    ○大矢委員 それではその問題は以上にいたしまして、次に厚生年金の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  過般の参議院選挙で、いろいろと野党の勝利、自民党の敗因が言われておりますけれども、その中にやはり厚生年金を六十歳から六十五歳に引き下げと申しますか、支給年齢の延長と申しますか、そういうものが平成二十二年度へ向けて段階的に行われていく、これが、それをこれから受給される方々にとって非常に怒りに変わったということもあるわけであります。あすこれが正式に本会議に提案されるようでございますけれども、先ほどから質疑の中でございますように、これについていろんなことが取りざたされておりますし、また、橋本大蔵大臣が幹事長時代にこれの凍結というようなことも言っていらっしゃいました。それについてまず大臣に御所見を承りたいと思います。
  242. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 御承知のとおり、昭和六十年に改正された現在の年金法の中で、開始年齢は法律的に六十五歳というふうに決められておるのです。しかし、附則で「当分の間は六十歳」ということになっておりまして、それをさらに、これからの長寿社会を見越して、当然本則にある六十五歳をどのように実施に移していくかということで、御承知のとおり、今度の提案の中には、平成二十二年までに六十五歳という一応スケジュールを立てているわけであります。しかし、そのスケジュールも、一応そのスケジュールに基づいて将来設計を立てますけれども、その時期については再び国会の了承をいただいて御審議をいただいてゴーのサインをいただく、そして実際にスタートするというのが現在の私どもが提案をしている法案であります。  そこで、御承知のとおり、そのことは、多くの方々の中には、雇用が十分に、まだ六十歳定年であるのにどうこうという意味で、いろいろな御批判をいただいていることも事実であります。その証拠に、今六十歳からでありますけれども、現実の開始されている支給年齢の平均的な水準は六十二歳から支給されているのが現状で、それはやはり六十歳にあっても被保険者の立場にあるという関係で、実際にやめられて職を離れられてから年金を受けるときが六十二歳平均だということになっております。でありますから、もちろんそういったことから見ても、やはり雇用の条件というものはいろいろな意味で関係が深い。そういう意味で、皆さん方から、各党からの御意見等も踏まえてスケジュールを決めて、それからスタートに際しては、雇用関係等を見て改めてゴーのボタンを押すというふうな形で、現在は提案をいたしておるわけであります。  そこで、先ほど御意見がありましたように、現在国会の様子が参議院は逆転しているじゃないかというお話があります。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、提案したものを国会の場で十分に御審議をいただいて、そして各党のそれぞれの立場で御質疑をいただく、そういう中で我々はまた判断をしてまいりたい、かように思っている次第であります。
  243. 大矢卓史

    ○大矢委員 そこで、審議の一つの材料として今日までの数字が出てきたわけであります。  いただきましたのは四十五年、五十年、五十五年、六十年、六十三年と、五年ないし三年ごとのものをちょうだいをいたしました。そして、「収入」と「支出」、そして「収支残(積立金にまわる額)」ということで、「積立金」というのが最後に書かれておりまして、これからいきますと、六十三年度は、収入が十六兆三千億円でございますか、そして支出が十兆六千億円、それから収支残が五兆六千億円、そして積立金の総合計が六十六兆となっておる、そういうことでよろしゅうございますか。
  244. 水田努

    ○水田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  245. 大矢卓史

    ○大矢委員 そこで、平成十二年にはどうなるんだということになりますと、これはまた収入が三十八兆六千億、支出が三十五兆一千億、そして収支残が三兆四千億、そして積立金が六十三年よりも多い百二十兆になる。これは、今提案をされておりますそういう数字に基づいて六十五歳にやっていく、そういう仮定でやってまいりますると、二十二年、それは収入が六十四兆二千億、そして支出が六十三兆三千億、そして九千億の収支残、そして百三十四兆円の積み立てがある。平成三十二年度には、収入が百兆二千億、そして支出が百兆一千億、その収支残が一千億だ、そして積み立ての残が百四十六兆ということになっておりますが、それでよろしゅうございますか。
  246. 水田努

    ○水田政府委員 そのとおりでございます。
  247. 大矢卓史

    ○大矢委員 そこで、私どもが六十五歳にすべきではない、六十歳支給にすべきだということで資料を出してもらいました。計算がなかなか難しいと言われながら出てまいりました資料が、六十歳支給の場合、平成三十二年度だけでありますけれども、先ほど収入が百兆二千億ということでございましたけれども、六十歳支給の場合には幾らになるかといいますと百十兆八千億になるという数字をいただきました。そして支出が幾らになるかといいますと、百兆一千億が六十歳支給の場合には百十兆三千億で、先ほどの三十二年の収支残が一千億が五千億にふえるわけであります。しかし、積立金は六十五歳の支給のときよりも減りまして、それでもなおかつ百二十四兆円残るのだという、試算がちょうだいしたこれにございますけれども、それでよろしゅうございますか。
  248. 水田努

    ○水田政府委員 私どもは六十五歳を前提に再計算をいたしておりまして、先生のたっての御注文でございまして、職員を徹夜させまして、とりあえず最終年次の六十歳にいたしました場合には保険料率三一・五%になるという前提で計算したのが、今先生御指摘のとおりの数字でございます。
  249. 大矢卓史

    ○大矢委員 これは、六十五歳の場合には三十二年度はどういう前提なのですか。
  250. 水田努

    ○水田政府委員 これは保険料を二六・一%に抑制するという前提でできている数字でございます。
  251. 大矢卓史

    ○大矢委員 パーセンテージの違う前提というのはどういうことなのですか。
  252. 水田努

    ○水田政府委員 私ども、大臣が常々御答弁申し上げておりますように、公的年金制度はこれから世代間扶養という格好を強めていくわけでございます。厚生年金は特に、これから三十年間で老齢年金受給者が現在よりも三倍急増いたします。しかも経済成長に伴って年金額を改定する、こういうことになりますので、完全な賦課方式でまいりますと後代の人は非常に負担が急激に重くなってまいりますので、後代の負担がなだらかになるように、保険料の中から積み立ててその運用収益で後代の人の負担が急激にふえることを抑制する、そういう機能を持たせるという形で積立金積み立てているわけでございます。  もちろん、現在積立金の割合はほぼ六年分の積立金を持っておりますが、ピークになった時点では約二年弱で押さえてあります。これは各公的、世界各国そうでございますが、積立金というよりも不時の場合の支払い備金、こういう感じの性格に変わる、こういうものでございます。
  253. 大矢卓史

    ○大矢委員 これは、あなた方が提案をされますその基礎でやられました数字でも百四十六兆円の積立金が残る、しかしそれはいろいろなケースがございます。六十五歳にならないで六十歳のまま推移をしていく場合、またこの保険料を現在のままで値上げせずにいく場合、またおたくらの方で希望している率にずっと上がっていく場合、いろいろなものを想定をして、議会なり国民の前にそれを明らかにして、どういう選択をするかということを国民に問うていくということでないと、何か知らぬ間に、上がるんだ下がるんだと言っている間に、そういう数字が出ないんだということでは、あくまでもあなた方の出しておられる平成十二、二十二、三十二というのは一つの仮定の数字なんですね。それが、こういう前提が変わったらどういうことになるんだ、こういうことになって、こういうことになったらいけないからこういうことをお願いしたいということであるならわかりますけれども、その数字が出ないということ、こうなってくると、ただ単におたくらがこれが正しいからこのままやってくださいということになりますと、冒頭申しましたように自民党さんが勝った負けたがいいとかいうことでなしに、議会そのものが一体何を審議しているんだということになってくる。真剣にそういう数字をすべて出していただいて、そして与野党問わず、これはもう国民的な課題ですから、これをどうしていくんだということにならなければ、ただ単に六十五歳がいいんだ、六十歳がいいんだ、それは何でだ、それは非常に赤字になるからなんてことを言いながら、決してこれは赤字にならないわけですね。あなた方が試算を出したって、今の六十六兆から百四十六兆になるという試算をしていらっしゃるわけですから、果たしてそういうような目途がいいのかどうか、そういう積立金があることがいいのかどうか、それも含めて私はやるべきである。  三十二年から先がどういうカーブを描いていくのか私は知りませんけれども、あらゆるデータを出していただいて、国民の前ではっきり、どれを国民が選択をされるのかということでなければ――これも一つの大きな税金だと私は思います。その税金を国民がどう選択されるのか、そこいらをもっと親切にやっていただかないと、幾ら資料を請求しても出ない、あげくの果てに出してきたものが六十歳でやってみても百二十四兆円残るんだということになってきたら、それは今説明を聞いたからある程度わかりましたけれども、しかしそれは普通の人にはわかりません。これはこれで負担が上がっていくんだということの前提ですけれども、負担が上がらない場合は保険財政はこうなりますよというものを出してもらって、それを一体どうされるかということを真剣に、これからの議会というのはかつての与野党対立の時代とは違いますので、皆さん方が考えていることと議会が考えている政治的な判断も含めて、いつ、どういう形で、どういう方向を向いたらいいのかということもやらないと、国民がまたしても消費税と同じようにだまされたということになってくるわけです。おたくらの言うことは正しいと思って何でも与党は通そうとする、野党は反対しようとする、そういうような図式でこれからの議会運営はできないわけであります。参議院では既にこれから六年、十年という間が不透明な時代になってきたわけでありますから、真剣にそういう資料を出していただいて、この議会でもってそれを討論して、また国民にわかるように説明をして、一体どれを選ぶんだということをしていかなければ、今後この問題は、六十五歳がいい、六十歳がいいと、ただ単にそれだけの議論を今はしているような感じですから、消費税と同じような感じになってまいります。自民党さんはまたしても今度は厚生省でつぶされてしまうというふうになりますので、そういうことのないように真剣に、これからどういう資料をつくっていけばいいのか、いろいろな幾通りもの資料が要ると思いますが、それを示していく必要があるのに、相変わらず通してくれ、通してくれというだけで、そういう資料もつくっておらない、難しいからつくらない。難しいといったって、これは現実におたくの方の都合のいい資料だけはつくっているわけですから、その都合のいい資料ですら百四十六兆という、国の赤字財政と同じような、借金と同じようなここに積立金ができていくという計算になっているわけで、これを見せたら、これで六十五歳にしていいとはだれも言わないと思いますよ。そういう今のことも含めて、大臣いかがでございましょう。
  254. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 御指摘の点は、一つには前提があるのです。その前提は、積み立ててきたお金で将来の年金を賄うという観点に立てば、もしインフレがあったり、そして積み立てた金の値打ちがぐんと下がってしまった場合には、公的年金の果たす役目はできないわけであります。  そこで、先ほどもありました、国民年金で百円払ったら二千円もらえると言ったのに、そのときは二十倍であった。今は八千円払っている、それなのにもらう金は五万円だ、二十倍ないじゃないか、こういうようなことがありました。しかし、百円払っていて逆に五万円もらえる、二千円じゃないのです。それは何だといったら、今の社会がそれだけ大きく成長してきております。そこで、物価に合い、そして経済成長に合い、国民生活の水準に合った給与をどうやって賄っていくかといえば、今働いている人たちは当然その社会の中でその水準に見合った給与を求めていきます。そうすると、その求めた給与の中でどれだけは先世代の年金受給者に対して自分がそれを賄っていくかという観点に立って、世代間の支えであるという観点に立って物を見ないと、とてもとてもそういったような負担はできないじゃないかということになってくると思うのです。ですから、今そこで読み上げられたその数字も、そういった支えがあるからそこまでの年金支払えるのだという計算になっているわけでありますから、もとのその合意である世代間扶養という合意の点をはっきりと認識していただかないと、やはり六十歳の問題も、それで後代の子供や孫に重い負担をかけていくことになるからその年齢の分でも考えていこう、あるいは負担の面でこのままいったならば現役世代が負担が多過ぎるということになれば、その負担と開始年齢とどちらをとるかという選択の問題になってくるのであります。そういう観点から見て、やはり今の世代間扶養という仕組みであるからこそ、今日の高い水準で、終戦当時にはすいとんを食べて生活をしていた時分に納めたお金でも、今日のビフテキ食べて海外旅行できるような豊かな時代の生活を保障ができる、そういう仕組みになっておると考えていただかなければならないのではないか、かように思います。
  255. 大矢卓史

    ○大矢委員 大臣、そういうおっしゃっている精神はよくわかるわけです。けれども、そのためには、みんなに納得してもらうためには、いろいろな資料を出していただきたい、計算をしていただきたい、そして、みんな並べてどちらをとりますかというのが選択ですね。そうでなしに、ただ、今考えているこういう形でやりたい、その言っていらっしゃるこれすらも、それは厚生省の方の試算でございます。ですからこれは、インフレになったらこれをやるのにどうしますか、これはこっちがもし逆に聞いたらどうなりますか。そんなことを前提に置いてやっていることはないわけでしょう。だから、一つの同じ条件の中で数字を出してもらわないと、インフレになったらむちゃくちゃになりますというなら、これは何も審議のしようがないですね。ですから、その精神はわかりますから、これから六十歳の場合にどうなりますかといいましても、六十歳でもいろいろなやり方がありますね。だから六十歳、今のままで、そしてその料率を今みたいに上げていく場合と、上げない場合にはこうなりますよ、いろいろな幾通りものものを出してもらってやるべきだと思いますけれども、どう思いますかということをお聞きしているのです。
  256. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 そのとおりに思います。  そして、そのためには、何といっても、提案されて、その提案されている問題に対するそれぞれの御意見というものによって政府側では答弁をしなければいけないし、あるいは求められた資料は提出しなければいけない。そういった中でお互いが、その提案されている法律案に対して理解を深め、あるいは疑問点を指摘し、そういう審議の中で結論が出るのでありまして、やはり多数、少数、結果はそうでありますけれども、多数になっても少数になっても、結局最終的にはその国会の中における意思決定をするわけでありますから、そういう意思決定をする前に、求められた資料を提出するのは当然のことでありまして、そのためにはぜひ審議をしていろいろな御意見等も求めていただきたい、かように思います。
  257. 大矢卓史

    ○大矢委員 これは局長、非常に苦労していただいて六十歳のものを出していただいた。それまでにそういう資料、今までの厚生省が持っていらっしゃる三十二年までの資料、これはすっと出てきますね、自分の方で試算されたものですから。それ以外の資料というのはない、こう言うのです。そういうことでなしに、今からでもそういうものをつくって、やはりいろいろなケースがありますから、こういうことになりますよ、こうした場合にはこうなります、こうした場合にはこうなりますよ、ですからこういうふうにしていただきたいということで、それをその後はやはり政治的な決着をしなければならぬと思いますけれども、ただ単に役所が、六十五歳を平成二十二年にやりたい、それはこういう形に数字はなりますよというだけでなくして、今言いましたように、六十歳の場合に保険料をこのままに据え置いた場合にはどうなるんだ、またこういう場合にはこういう形でやっていけます、こういう形ではどうしてもやっていけませんという数字をいろいろ出していただきたい。それが今ないと言うのです。そんなことがなしに、こういう大事なことを提案しておられるということは非常におかしい。おかしいですけれども、現実にないとおっしゃるのですから、局長、それを至急につくっていただいて、やはり審議があしたから始まるというのですから、議会に出していただきたいと思います。
  258. 水田努

    ○水田政府委員 大臣がお答えいただいた点ですべてに尽きているわけでございまして、私どもコンピューターの中にデータを入れているわけですが、時間をください、こう申し上げたわけでございまして、私どもの先ほど御説明申し上げておりますのは、やはり後代の方の負担の限界が保険料率として二六%程度だろう、そういう前提で設計をしているので、二六%程度の三十年後の人の負担を抑えるための方法論についてはいろいろな方法があるし、それについては、あらかじめ資料要求をしていただければ十分こたえ得るように今後の審議に御協力をさしていただきたい、このように思っております。
  259. 大矢卓史

    ○大矢委員 そういうことで、あらゆる資料をそろえて、これはもう消費税と並ぶくらい非常に大切なことでございますから、十分な御審議ができるようにお願いをいたしたいと思います。  それで、その厚生年金の中でいろいろな施設をつくっていらっしゃいます。この施設の総合計が今どのくらい金額的に、いわゆる先ほどのこの六十六兆円ではございませんけれども、一体幾らくらいあるのですか。
  260. 土井豊

    ○土井政府委員 厚生年金保険の福祉施設の状況でございますが、現在九十七カ所の施設を設置しております。中身としては、厚生年金病院十カ所、厚生年金保養ホーム三カ所、厚生年金会館二十一カ所、休暇センター十五カ所、老人ホーム等三十六カ所、スポーツセンター四カ所、健康福祉センター八カ所、そのような内容になっております。
  261. 大矢卓史

    ○大矢委員 総資産が幾らですかと言っている。
  262. 土井豊

    ○土井政府委員 恐縮でございますが、ただいま手元に持ち合わせておりません。  なお、平成元年度は三百八十億程度の予算を計上して事業をやるということにいたしておりまして、最近は各年度大体三百数十億という予算規模で施設を建設しているという状況でございます。
  263. 大矢卓史

    ○大矢委員 時間がありませんので。  そういう施設を毎年毎年金をかけて、一体全体で今幾ら施設を持っているのですか。必要な施設ばかりだと思いますよ。思いますけれども、一体総資産が幾らあるのですかということです。この収入・支出と別に、やはり皆さんから拠出していただいたそのお金、それが積立金では六十六兆ありますけれども、それ以外に幾らの資産を持っているのか。そしてそれを運営をしておる厚生団、これは毎年毎年黒字が出ておって非常に結構なんですけれども、この黒字のそれを積み立てて一体幾らになっておるのか、それらもすべて明らかにして審議をしてもらわないと何もできないわけです。そういうようなことを実際にやっていらっしゃる方、自分のところでどれだけの資産を持っているかぐらいはわかっていそうなものだ。それを請求しても出てこない。  そしてこの施設、それはもうこれからも必要なものばかりだと思います。しかし、その発想が、形の上では市町村から府県へ行って国へ来る、保険庁へ来るという格好のようでありますけれども、実際は私の選挙区でできるものを私は知りません。地元の人たちもだれも知りません。あそこにこういう何か施設ができるようですけれども、一体何ができるのですかと僕は聞かれた。市に聞いてもはっきりわかりません。府へ聞いたら、これは社会保険庁だと。お聞きしましたら、どういう施設ができますという簡単なものでおしまいです。それはそれで、おのおのそういうはやりですから、いろんなものができてくると思いますよ、実際にそれはどこでも欲しいものだと思います。しかし、それは、やはり一つの企業としてそれだけの、大体百億なら百億のものをかけてつくろうとしたら、企業の場合には戦略戦術というものがあって、どういうものがそこに合うのかを研究するわけですから、つくろうと思ったら、そういう研究をしてやっていただかないと、そのうちに何とか黒字になるわ、それは私に百億円くれてそれで事業をやったら必ず黒字になります、そういうようなことでなしに、やはりこれだけ大事な年金支給年齢をどうしよう、こうしようという中では、一つでもそういうことが不信を抱かれたら、そういうものは全部だめになってしまう。  ですから、そういうものも含めて私は数字を出していただいて審議をさしていただきたい。それでないと、これはこれで別だ、金を三百八十億使ったんだからそれは別だ、毎年毎年消えてなくなるんだというようなことでは、なるほど六十六兆円からしたら三百八十億円というのは大した金ではないかも知りませんけれども、一般的に言えば大した金であります。一つの施設をつくるのに、我々の吉本が四十五億かけた。社運をかけて四十五億かけたのです。ところが、一つの役所のそういう施設をつくるのに、百億というのが簡単に扱われております。そこらをもっと真剣に金を扱わないと国民が納得しないということ、これだけは申しておきます。  時間がございませんので、労働省の関係に移らしてもらいます。  御承知のように労働省で、週刊ポストで長い間連載をされておりました問題、いわゆるODAにかかわる疑獄ということで、長い間連載をされておりました。それはそれなりに労働省では対応されると思いますけれども、ここに言われておりますOVTAの問題でございますけれども、これがODAとどういうかかわり合いがあるのか、外務省にまずお答え願いたいと思います。
  264. 高橋雅二

    ○高橋説明員 お答えいたします。  ODAと申しますのは、先生御案内のとおり国際的にOECDの開発援助委員会で定義が決まっておりまして、開発途上国の民生、経済、社会開発の発展に資するための資金というようなことで、幾つかの条件が決まっているわけでございます。  さて、その実施する段階に至りまして、我が国内ではODAの実施機関というのがございます。そのほかにODAは、その実施機関のみならず、いろんな機関にお願いして御協力いただいておるわけでございます。大学とか研究所、いろいろな公益法人、あるいは場合によっては民間の企業にもお願いする、そういうことがございます。  さて、この労働省所管の団体のOVTA、今先生がおっしゃいましたOVTAの事業の全体がどういうものであるかにつきましては、私、全容については承知しておりませんが、その事業の中の一部に、国際的にODAというものに当てはまる事業を御協力をお願いしておるというふうに承知いたしております。そういうことで、OVTAはODAの事業の実施に当たって御協力いただいておるというふうに考えております。
  265. 大矢卓史

    ○大矢委員 その財団法人海外職業訓練協会、その中のどういう事業が、そして幾らの事業がODAにカウントされておるのか。といいますのは、これからもODAというのはどんどんふやしていかなければならぬと言われておる。たまたま何かやっておるものをつかまえて、これもODAです、あれもODAですということで、そういうものに日本の国は金を使っていますよということになるのか、そこいらをはっきりしていただきたいと思います。
  266. 高橋雅二

    ○高橋説明員 お答えいたします。  各国が自分勝手にこれがODAだということがないように、今申しましたように一応厳格なODAの定義が決まっております。それに照らして考えますと、海外職業訓練協力センターというものの行っている事業のうち、民間企業が海外で職業訓練を行う際の指導員の訓練とか海外派遣専門家の養成訓練、こういうものは開発途上国の経済開発に資するものではないかということでODAに当てはまるのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  267. 大矢卓史

    ○大矢委員 ですから、全体は幾らぐらいになるのですかと言っているのです。
  268. 高橋雅二

    ○高橋説明員 私は、OVTAの全体の姿はちょっと存じておりませんので、大変申しわけないのですけれども、その部分に関する限りはODAに関連している、こういうふうに申し上げたいと思います。申しわけありませんけれども、私はOVTAが全体としてどの程度の予算規模で、どういうような事業をやっているのかというのはちょっと私自身つまびらかにしませんので、御了承いただきたいと思います。
  269. 大矢卓史

    ○大矢委員 労働省、いかがですか。
  270. 甘粕啓介

    ○甘粕政府委員 海外職業訓練協力センターの関連予算につきましては、平成元年度におきまして約七十九億四千万という状況にございます。このうちODAとしてカウントされておりますのは六十一億ということになってございます。
  271. 大矢卓史

    ○大矢委員 全体の建設費用が百八億だと聞いておりますけれども、今のお話だと七十九億、それの六十一億がODAにカウントされておる。しかし、おたくの方から出しておられるこれによりますと、先進国、開発途上国、そういう海外へ出ていかれる人たちの訓練をやるんだということですけれども、実際はどうなんですか。そんなに、七十九億のうち六十一億もいわゆる発展途上国にこれから進出される方の面倒を見ていらっしゃるのですか。
  272. 甘粕啓介

    ○甘粕政府委員 幾つかございますが、一つは元年度予算におきまして七十九億ということでございますが、これが非常に大きかったのは、先生今お話ございましたように、海外職業訓練協力センター、これ自体の増設ということがございまして、これが四十三億あったということで、非常に経費がふえているということが第一点でございます。  それから、先生今御指摘ございました先進国、開発途上国、開発途上国だけではなくて先進国に対してもいろいろな事業をやっているではないかというお話がございましたが、ちょっと面倒くさいのでございますが、海外職業訓練協力センター、これは雇用促進事業団が建設をしたものでございます。それから、今先生御指摘のパンフレットは、雇用促進事業団から海外職業訓練協力センターの運営を委託されているいわゆるOVTA、海外職業訓練協会の事業概要を述べたパンフレットではないかと思いますが、このOVTA自体はいわゆる財団法人でございまして、民間企業等が出資をいたしまして、広く海外への企業進出に伴ういろいろな職業訓練の問題その他について事業を行う財団であるということで、先進国も幅広くこのパンフレットに入っているのではないかというふうに思っております。
  273. 大矢卓史

    ○大矢委員 この雇用保険の中の失業給付、そして四事業ということになっておりますけれども、これはやはり、私も先ほど申しましたように、すべて物事の発想というのは、そういうものが必要だ、ODAならODAでそれが必要だというなら、ODA予算を組まれて外務省を通じて出されたらいいと思います。そうでなしに、雇用保険の方でなぜ百八億もの金をつぎ込んでそういうODAの仕事をしなければならぬのか。雇用保険の支出というのは国内で雇用を確保していく、そして国内で再雇用のためにいろいろな訓練をしていくとか、いろいろなそういう事業があると思います。海外へ雇用が流出するようなところへ金を使っていくという、それはやはり発展途上国に対してODAが必要と思うならODAの予算でおやりになったらいいわけであって、雇用保険でそういう金を、全体からいきますと百八億だと、これは大したことないんだと言うかもわかりませんけれども、そういう発想が、私は、官僚が自分が天下り先をつくるためにそういうものをまずつくって、そして後から理屈づけをしていく、そこをいろいろなことをマスコミで言われ、そしてそれは自分でフォローしたつもりでございましょうけれども、しかし逆に言いますと、今言いましたように、ODAはODAで必要であります、必要であるから外務省のそういうODA予算でやるならやるということでやらないと、これは幾ら弁解をされましても、そういうふうにならないと思います。この点十二分にこれから検討していただいて、そういうことのないようにやっていただきたいと思いますけれども、大臣いかがですか。
  274. 甘粕啓介

    ○甘粕政府委員 私ども、雇用保険法に基づきまして能力開発事業ということを行ってございますが、現在の高齢化の問題あるいは情報化の進展、そういうことに対応いたしまして必要な能力開発事業というものは一生懸命進めているところでございます。金額的には、私ども能力開発関係の予算については人件費を除きまして約一千億強を計上させていただきまして、時代の変化に対応した能力開発向上に懸命に努めているところでございます。  なお、ただいまお話のございましたODAということでの海外職業訓練に携わる人たちの能力開発の問題でございますが、先生御承知のとおり、こういう国際化の時代を迎えまして企業の進出が非常にふえている、あるいはそれに伴いまして海外でそういう海外の人たちの訓練に携わる、あるいは研修生を受け入れてそういう人たちを教育訓練するという必要性が非常に増大してまいりまして、一般的な訓練だけではなくて、語学の問題あるいは異文化、考え方を知った上できちんとした教育訓練をしなければならない、そういう能力が勤労者に求められているということで、職業能力開発の一環としてさせていただいているところでございます。
  275. 大矢卓史

    ○大矢委員 僕は大臣に答弁を求めたのです。もう時間が切れておりますので、そういうことじゃなしに、私が言いますように、そういうものはそういうもので必要なら必要でODA予算でやったらいいのです。雇用保険でそういうことをやる必要はないと思う。私は私の見解を持っております。それについて、大臣に最後に一言だけお願いします。
  276. 福島譲二

    ○福島国務大臣 私もOVTAの現地を一遍視察してまいりましたが、民間企業で外国に出向きまして研修等の指導に当たられる方々が極めて熱心にその研修に従事しておられるのを見まして、私は本質的にODAの精神に沿うものではないかなという感じを持ってまいりました。ODAにカウントされるものとして整理しても、委員御指摘のようにそれほどおかしなものではないのではないかなという感じを持っておりますが、なお今後とも十分に御趣旨を検討させていただきたいと思っております。
  277. 大矢卓史

    ○大矢委員 もう時間が来て、申しわけございません。これは見解が違いますので、また引き続いてやりたいと思います。ありがとうございました。
  278. 魚住汎英

    ○魚住委員長代理 次に、野間友一君。
  279. 野間友一

    ○野間委員 最初に、労働省所管について、労働大臣福島さん並びに関係者にお伺いしたいと思います。  過労死の問題であります。残業とか過労死、こういう日本語が今ではそのまま欧米語化していますね。ちょうどフジヤマとかゲイシャとかがかつてありましたけれども、そういうことであります。本来ならば過労死はデス・フロム・オーバーワークということになると思いますけれども、日本的特殊な現象として欧米がとらえておるということは既に御案内のとおりであります。  新聞、雑誌等々たくさん私も見ましたけれども、いろいろございます。きょうお持ちしましたのはシカゴ・トリビューン、去年の十一月十三日付の新聞ですが、「ジャパニーズ・リブ・アンド・ダイ・フオー・ゼア・ワーク」、仕事のための日本的な生き方と死に方、こういうようなショッキングなことで、これは大阪の椿本精工の平岡悟さんという人の死についてトップで出しております。つたない翻訳をいたしますと、   非情な日本の企業軍隊の隊列をなしている何百万人という労働者と同様、平岡悟氏は優秀な兵士だった。会社が第一で家庭は最後、くつろいだり、週末や休暇をどうしようかなどといったくだらない考えは、頭にない人だった。   中間管理職であった平岡さんは大阪にあるベアリング工場で、二十八年間以上の間、一日十二ないし十六時間、週七十二時間、時として九十五時間もの勤務を忠実に勤めあげた。   平岡さんは、今日では、金儲けと世界経済での優位を目指す日本という戦場での一人に数えられている。猛烈な勢いで突っ走る日本企業の戦列に不可解な突然死が広まりつつある。 こういうことで、いろいろと書いてあります。  確かに労働時間の数、即それだけで過労死ということにはならないわけですけれども、労働省のいろいろな資料を見ましても、経済大国日本あるいは世界一の金持ち国と言われておりますが、豊かさそのものは国民、勤労者は実感はほとんどありません。この労働時間をとってみましても、製造業の生産労働者の年間の実労働時間、これは一九八六年の数字で二千百五十時間、フランスより三・七カ月長い、西ドイツと比べても三・六カ月も長い。しかも、第二次石油ショック前の一九七八年と比べてみますと、フランスは百二十九時間、西ドイツは六十四時間短縮されておりますけれども、日本の場合には逆に十三時間延びておる、こういうのが実態であります。  私は、最初に労働大臣にお聞きしたいのは、こういういわゆる過労死が今大変な社会問題、政治問題になっておりますけれども、これらについてどのような所感あるいは所見をお持ちなのか、まずお伺いしたいと思います。
  280. 福島譲二

    ○福島国務大臣 高齢化社会の到来を迎えまして、心臓病あるいはまた脳卒中、こういった病気による死亡者が国民全体の死亡者の三割以上を占めるようになったと伺っております。そういう中で、一家の大黒柱という立場の方々が過労死というような形で亡くなるということは、これはもう本当に大変不幸なことでございまして、そのようなことがないように、労働行政の重要な課題として取り組んでまいりたいと思っております。  そのためには、今も御指摘ございましたが、全体として労働時間を短縮する。中でも、オーバーワークを避けて、月五十時間を上限とする時間外労働の規制の徹底を図っていくということも大変大切と思っておりますし、また、こういった高齢者の方々についての健康診断につきましても格別な配慮をいたしまして、一般健康診断につきましても、つい十月から成人病の増加に対応できるような健康診断項目の充実強化なども図ったところでございます。
  281. 野間友一

    ○野間委員 この過労死を考える場合には、当然のこととして事前に要するに健康管理をきちっとして、こういうオーバーワーク、過労死にならないように未然の予防をするということと、不幸にして過労死になった場合にこれをいち早く救済する。とりわけ労働災害に対する補償という二面性が非常に大事だと思います、今労働大臣もいろいろと言われましたけれども。  そこで、私がお聞きしたいと思うのは、昭和六十二年に「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」、これは三十六年二月十三日付の通達から久しぶりにこういう通達を基準局長名で出されたわけであります。二十六年ぶりの改正です。具体的にこの過労死に関する改定というか改正の部分を端的に説明していただきたいと思います。
  282. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 御指摘の過労死と言われますものは、高血圧あるいは心疾患等の基礎疾病をお持ちの方が、長時間労働とかあるいは仕事上の過度のストレス等によりまして、その基礎疾病が急激に増悪しまして突然死に至るという状態を指すものと理解しておりますけれども、従来は、それに対する業務上かどうかの認定の基準につきましては、御指摘のとおり昭和三十六年以来の基準がございまして、発病前、突然死の前二十四時間以内に異常な出来事に遭遇したことということが業務上の条件になっていたわけでございます。しかしながら、その後、そういった突然死の生ずる原因としては、異常な出来事だけに限るのは狭過ぎるということで、専門家の御意見を承りまして、昭和六十二年に、発病前二十四時間以内というのを一週間に期間を延ばしまして、かつ、異常な出来事に遭遇したことのほかに、業務による過重負荷が加わった場合という要件を加えまして、これによって弾力的に認定をしていこう、そういうことにいたしているところでございます。
  283. 野間友一

    ○野間委員 おおむねそのとおりだと思うのです。  そこで、具体的にひとつケースを挙げてお聞きしたいと思いますが、私の地元の和歌山には住友金属工業株式会社の和歌山製鉄所というところがあります。そこの海南工場に所属されておられた千野盛規さんという方がございます。この方が昨年の十月二十七日に仕事場でとうとい命を失われました。これは病名はクモ膜下出血であります。  そこで、まず労働省にお伺いしたいのは、この千野氏の過労死の問題についてどのようにその実態を把握されておるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  284. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 御指摘のとおり、住友金属和歌山製鋼所海南工場の労働者でいらっしゃいました千野さんという方が、昭和六十三年十月十九日、事業場内において倒れているところを発見されまして、直ちに病院に収容されましたが、不幸にして十月二十七日に至りクモ膜下出血により死亡されたという事実は承知しております。  なお、御遺族の方におかれましては、労災保険給付の請求をすることを検討しておられるということも承知しておりますが、まだ請求は私どもいただいておりませんので、それ以上詳細なことは現時点では承知いたしておりません。申請をいただきました段階で早急に調査し、適切に対処したいと思います。
  285. 野間友一

    ○野間委員 私がこの具体的なケースを挙げた理由、これは実際に会社が正確に労働者の出退勤と申しますか労働時間、そういうものをチェックしておるのかどうかということに直接かかわっておりますし、そのことが実際に果たして過労死になるかどうかということとのかかわりでも大変大事だと思いますので、若干お伺いをしたいと思うわけであります。  実は、今局長も言われましたが、これはまだ労災の申請はしておりませんが、会社がこの千野さんに関して「私傷病死亡報告」という、こういう一枚物の紙を出しておるわけであります。これによりますと、その勤務状況を見ますと、これは工場の中で大便をする姿勢で、安全帽ですが、ヘルメットをかぶり、安全靴をはいたまま倒れて、そしてこの人は亡くなった。倒れたのが十月十八日であります。そして、この勤務の状況について、これはそこにありますね。これを見ますと、代休、休日、有休、休日、休日。病気で倒れられた前十日間、会社が出しました資料によりますと、実に休みが五日間、十日のうち五日間が代休なり休日あるいは有休、実際にこういう記載があるわけですね。ところが奥さんに聞きますと、とてもじゃないがそんなに休んだことがない、大体二日連続して休むなんていうことはありようがない、こう言われるわけであります。しかも、この報告書の中でありますように、この方は作業長代行、そしてこの海南の小径管工場の東工場、西工場、二つを見ておられる、大変激務でありまして、そして仕事は工具の職場で働いておられた方であります。それで常昼の勤務、つまり昼勤務なのですけれども、この方は建前の上では午前八時から午後十六時三十分、こういうふうになっておるわけですね。ところが、実際には前日の作業報告並びに当日の作業計画、これを報告しなきゃならぬ。六時半にうちを出て、七時には会社に着く。そして八時になりますと、所長コールと申しまして、いろいろな工場長を経由してそういうものを報告して、それから仕事が始まる。七時から実は仕事を毎日やっておるわけですね。  ところが、その死亡報告書を見ましても、勤務については常昼勤務、八時から十六時半ということしか書いてないわけですね。そしてこの休日についても、今申し上げたように奥さんの話ではほとんど続けて休んだことはない、こう言われるわけですね。それから夜は、規定では十六時三十分がタイムオーバーですが、夜の十時、十一時以前に帰ったことがない、こう言われるわけですね。工具の職場というのは、いろいろな何か修理とか新しくいろいろな機械が入ってくる、それがトラブルがないかあるか、あるいは試運転等々、休みでもどうしても出ていかなければならぬ。だから、休日と一応形式では書いてありますけれども、これは実態としてはそうではない。それから、夜も午後七時前までに帰ると、あなた体が悪いのかと奥さんが言われるほどに十時、十一時が続く。それから夜中、翌日に帰ることもざらである、こういうのが実態のようであります。  この報告書を御覧になってもおわかりのとおり、最初に発見されたのは十八日二十時、午後八時。この人の勤務からいいますと午後四時三十分で終わるわけですが、午後八時に古田という成品職場の方が丙番早出で便所に行った、水洗と寝息のような音がした。これが、直接はこの千野さんを見ておりませんけれども最初の発見。その後いろいろ経過がありますけれども、こういうことなんですね。  ところが、この方の「就業月報」、これを見ますと、これは十月分について十一月八日に作成しておりますが、便所でしゃがみ込んでおった十八日ですが、この日の残業時間は一時間。十一月八日につくっておりますからずっと後なんですね。なぜこんなようになるのかということなんです。  私はまず局長にお伺いしたいのは、こういう実態と乖離したことについて、実はここにはタイムカードも出勤表もないわけですね。それで工長、作業長とずっとありますが、工場長以上の方はどういうふうに勤務をチェックするかといいますと、自己申告、これだけなんですね。自分で申告する。ところが規定では八時以降になっておる、十六時三十分で終わり、タイムオーバーになっておる。そうしますと、七時から毎日働いておっても自分が申告する紙の上では八時から働いた、こういうふうにせざるを得ない。残業も毎日連続して深夜に及ぶ。ところが予算の枠がありまして、例えばある月は八時間、ある月は十二時間、その枠の中でそれぞれの日に分配をして、そのトータルは会社の指示したものに合わせるような形でこれを申告する、これが実態なんです。ところがこれを客観的に証明するものが実際にはない。例え奥さんが仮に何時に出て何時に帰ったということをつけておったとしても、規定は十六時三十分になっておりますから、どこか飲みに行って帰ったのじゃないか、おそくなったってそれは関知しない、こういうことになるわけで、だから奥さんとか家族の人がチェックをしても、これはしようがないわけですね。  この最大の問題は何かといいますと、今申し上げたようにタイムレコーダーがありませんし出勤簿がない、自主申告。職制になりますと会社の方針の枠の中で自分で虚偽の報告をする、申告をする、こういうことが実態なんですね。  この報告の中でも、例えば「死亡関与項目」の中に、最初に発見した古田さん、この人は丙番と書いてありますね、丙番というのは二十三時十五分から出るわけですけれども、水洗と寝息のような音を聞いたのは二十時、八時でしょう。つまり十一時十五分から丙番が始まりますが、この古田さんは午後八時にこういう音を聞いた、こういうことが実態なんですね。  ですから局長、労災申請があった場合に、こういう形式というようなものではなくて、実態を十分調べた上で適正な判断をするべきであるというのが一つと、それからもう一つは、タイムレコーダーとか勤務表とか、客観的にこれをチェックできるようなものがない限り、どんなに例えば今局長が言われた通達で若干改善されるということが仮にあったとしても、これは働かないわけですね。客観的にチェックする、例えば労働時間がどうなっておるのか、実際には何時から何時まで働いたか、あるいは休日でもこの人は出勤しておるわけですけれども、こういう実態がつかめないわけですね。ですから私は、何らかの客観的にチェックをするタイムレコーダーなり出勤表、こういうものがなければ過労死というものの実態が判断できない、こう思うのですけれども、その二点について一遍考え方を聞かしてほしいと思います。
  286. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 会社側の方が私どもの方、監督署の方へ相談に参ったことがあるようでございまして、その際に、今先生御指摘の内容が記載された報告をお持ちいただいて御相談いただいたようでございます。しかしながら、労災申請が出ました場合には、これのみに基づくわけではございませんで、事実として客観的にどういう勤務状態であったかということを十分調べまして判断をさせていただくことになるというふうに思います。  それからタイムレコーダーの件でございますけれども、確かに一面では客観的に記録が残るという意味で、タイムレコーダーによる出退勤管理というのはそれなりに長所もあるかと思いますが、最近の傾向といたしまして、労働者本人の自主性、自発性を尊重した勤務形態にしたい、そういった機械等に拘束されたような勤務というのは余り望ましくないというふうにお考えになる経営者あるいは労働者の方もいらっしゃいまして、そういった事業場におきましては、従来あったタイムカードによる出退勤管理にかえまして、御指摘ございましたような本人の自己申告によるということになっているところも最近では少しずつふえているようでございます。そういった場合に労働時間の正確な把握が困難になるのではないかという御指摘でございますが、確かにそういった問題もあろうかと思いますけれども、さりとてタイムレコーダーの使用を義務づけるとかというほどの問題ではないというふうに思います。  いずれにしましても、実際の労働時間を正確に把握するということは重要なことでございますので、そういう前提に立ちまして適切な方法を選んでいただく。私どもとしましては、本人の自己申告に問題があると認められるような場合には、同僚に確認を求めるとかそのほか、若干手数はかかりますけれども、そういったような方法によりましてなるべく客観的な実際の労働時間を把握するように努めていきたいというふうに思います。
  287. 野間友一

    ○野間委員 この報告の中にもありますように、この方はこの工場の中の労働組合の中央委員、副支部長ですね。これは鉄鋼労連の傘下の労働組合ですけれども、こういう人でも、作業長代行という職制ですが、要するに会社の方針があるでしょう。方針の中で、つまり七時から毎日所長コールが八時まであるそうですけれども、そういう仕事をしてもそれは勤務時間にカウントされない。ですから、このルーズなやり方が、一つはやはり残業時間、労働基準法上の八時間労働という拘束、それから残業時間、こういうものを全く無視する、これが形骸化していくという問題がありますし、もう一つは、今申し上げましたように、今大変な問題になっております過労死ですね、この場合に実態がなかなか把握できない、この二面があると思うのですね。  今あなたはタイムレコーダーを強制的に云々はできないと言われましたけれども、これは、一昔前は会社がきちっと、一秒でもおくれたらもうすぐに遅刻、あるいは一分でも早く出れば早退としてそれで賃金上の差別をするということで、労働者は非常に反発しておったわけですね。ところが、最近ではそうでなくて、サービス残業ということで、会社はこれがないことによってすごく利益を受けているわけですね。こういう点で、ですから何らかの客観的なチェックをする、そういうことを考えなければ、私も何回も銀行のサービス残業について商工委員会等でもやりました、御案内のとおりですけれども。そういう裏づけがなければどうしようもない、どうしようもないということにならざるを得ないと思うのですね。  ついでに言いますと、今労働強化の中で、ここでの、要するに病死ですね、これがすごくふえております。これは一九八三年から八九年九月二十日時点までいろいろ調べてみました。これは、私事前に言っておいたので資料をお持ちだと思いますが、在職の死亡者数、この中で事故、例えば交通事故とか自殺、こういうものを引きますと、実に九十五名、在職中に亡くなった百六名のうち九十五名が病死、この中でほとんど労災という認定がない。私も名簿を全部リストアップして持っておりますけれども、こういう状況なんですね。しかもこれは平均年齢が四十歳代の大体後半、こういうことです。ですから、今ではこの職場でも「鉄チャン満コロ」、まあ要するに鉄鋼労働者ですね、満期になればころっといく、あすは我が身、こういう非常に深刻な命に対する不安が後を絶っておらぬわけですね。やはり相当こういう病死がふえている。  ちなみに、これは以前と比べますと相当な数の増加になる。しかも今合理化でうんと数が減っておるでしょう。労働者の数が減っております。減った上での病死の人数の増加ですね。こういう実態について、労働省は一体把握されておるのかどうか、どうすればいいのか、そのあたりを、私は、一つは、客観的にそういう労働時間、勤務時間をチェックする何らかの指導がなければ、実際には、今のような自主申告とか自己申告、こういうようなものに任すというか放置しておきますと、労働者はますます労働強化、労働密度の強化ですね、労働時間の長期化ということが避けられないと思うのですね。いかがですか。それでもあえていいとおっしゃいますか。
  288. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 最初に大臣からお答え申し上げましたように、また先生からもお話ございましたように、こういう過労死と言われるような不幸な事態をなくする。  そのためには、まず第一に、先ほど申し上げましたように、この過労死と言われるのは基礎疾病があるわけでございますので、成人病の基礎疾病をお持ちの方でございますので、これを健康診断によって事前に発見する、そういうことが非常に重要だということで、今年の十月から健康診断項目を大幅に充実いたしまして、肝機能検査から心電図の検査まで含めまして成人病の発見に努めるようにしたわけでございます。そしてさらに、その発見された結果に基づきまして産業医の方に適切な健康指導をしていただくということ。  それからもう一つは、やはり長時間労働あるいは長時間労働によるストレスが引き金になるわけでございますので、その長時間労働をなくする。それを私ども月五十時間を残業の上限として指導しておりますので、このガイドラインの徹底を図る、こういったことによりましてこの問題を根本的に解消していきたい。  また、それと同時に、労働者本人の方もやはり日ごろから健康管理に気をつけていただく必要がある。そういう意味で昨年、労働安全衛生法を改正いたしまして、事業主が健康確保増進のための努力をするように義務づけたところでございます。  そんな形で問題解決に対処していきたいと思います。
  289. 野間友一

    ○野間委員 私の質問に答えてくださいよ。あなた、そんなに建前を並べても、実際には現場ではそうなってないわけですね。これはここだけじゃないのですよ。どこでもそうなんです、私も調べてみましたけれども。だから、残業時間をなくする、労働時間を短縮するとか云々と言いますけれども、実はそれを客観的にチェックする方法がないわけですよ。これはどうしますか。だから私は、何らかのこういう、だれかが客観的に物を見る、客観的にチェックできるという方法がない限り、こういうものは後を絶たないということを言っておるわけです。それについてのお答えと同時に、通産省お越しですね。通産省、私、お願いしておりましたけれども。  鉄鋼大手五社、どこでもそうですけれども、特に住金の場合非常な合理化の中で人が減っております。例えば八八年が六千九百七十六人が出向、本体本工が二万六百人、八九年が一万八千七百人に減りました。出向が八千三百十三人、それから一九九〇年になりますと、本工も含めて本社の労働者が一万六千九百人、それから出向が八千八百人、すごい馬力で、ここだけじゃありませんけれども、人が減っておるということですね。これはそのとおりでしょう。大方でよければ、正確な数字かどうかは別にしても、大体の数字の確認を……。
  290. 中島一郎

    ○中島説明員 お答えさせていただきます。  今御指摘のとおりでございまして、住友金属工業が昭和六十一年に公表しまして六十三年に改定しました中期経営計画の中で、御指摘のような形での人員削減というものが織り込まれて実施に移されております。
  291. 野間友一

    ○野間委員 大体、生産量は、今は鉄景気で、しかも未曾有の高利益を出しておりますけれども、一億トンを超えておりますよね。だから、人は減るわ、しかもああいう形でサービス残業をどんどん、記録に出てこない、そういう仕事をさせる。その中で、先ほど数字を挙げましたけれども、大変な数の病死がふえておる。これが実態なんですね。しかも、それを客観的に捕捉する、そういうチェックする方法が全くない。これでもいいとおっしゃいますか。しかもこれは労働組合の中央委員の方です、この方は。どうでしょうか。
  292. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 先ほども申し上げましたように、タイムレコーダーというのも一つの有力な方法ではあると思いますけれども、自己申告による管理というのもまた一つの方法であると思います。現に、最近ではフレックスタイム制度というようなものが非常に普及しておりますけれども、そういう場合はやはり自己申告を中心とせざるを得ないということでございまして、そういった管理の仕方にもそれなりの長所もあるわけでございます。  しかしながら、いずれにせよ正確に労働時間が把握されないような出退勤管理というのは問題でございますので、そういう問題が起こらないよう私どもとしても指導に努めてまいりたいと思います。
  293. 野間友一

    ○野間委員 フレックスタイムというのは、何時から何時までと自分で自己申告するわけですけれども、そのことと、それでは現実に何時から何時まで働いたかということは全然別ですからね。そうでしょう。それを一緒にしては困りますよ。  それで通産省、「通産ジャーナル」の中で、十一月二十二日は「いい夫婦の日」ということを何か決めたようですけれども、もう間もなくやってきます。この「通産ジャーナル」の「「ゆとり創造月間」にあたって」という文章を読んでみますと、「いずれにせよ夫婦で余暇を楽しむことは、休暇も取らず残業に明け暮れる毎日に埋没し、平日の余暇時間は仕事の付合いに奪われ、たまの休日もゴロ寝かテレビといった」云々と、ゆとりがない。有給休暇の取得率が我が国では約五〇%ほどで低迷している。これは通産省も労働省の統計も含めてこういう評価をしておるわけで、実際そうなんですね。しかもこれが、冒頭に申し上げた日本人の生産労働者の実際の実労働時間、この中に全然入らない部分がありますから、これを入れますとまたえらいことということになるわけですね。  そこで、私は申し上げたいのは、一つは、労働災害、過労死の場合の救済をできるだけ弾力的に――私は事故前一週間、これは根拠は全くないと思うのです。もっとはるか以前から十分にこれを考慮した上で検討する。非常に弾力的に労働者を救済するというのが労働省の役割であるとするならば、そこらあたりは十分な適切な処理をするべきであるということが一つ。  それからもう一つは、先ほどから言われておりますように健康管理ですね、これは非常に大事であります。しかも、しかしながら過労死はずっと数がふえておる。世界でもこれは非常に有名になって、過労死という日本語が外国語化しておる、こういう状況ですから、どうやって過労死と労働とのメカニズム、どういうのがあるのか、どうすればこういうことのないようにできるのか、労働省は当然これらに真剣に取り組む必要があるのではないかと思います。  その二点についてお答えいただきたいと思います。
  294. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 過労死と申しますのは、先ほど申しましたような内容を指すものと思いますけれども、その原因をさらに考えてみますと、基礎疾病である高血圧あるいは心疾患というのは、仕事が原因となって悪化することもあるかと思いますが、加齢による場合あるいは私生活の影響、種々ございます。それから、引き金になります直前の過重負荷というのも、確かに仕事の過重負荷もあるでしょうけれども、それ以外の過重負荷もあり得るということで、非常に判断が難しい問題でございます。そういう意味で弾力的には扱わなきゃならないというふうに考えておりますけれども、判断はまた逆に非常に難しいということでございます。  そこで、お尋ねの第二点になるわけでございますけれども、従来労働衛生の対象にしておりました職業性疾病というのは、仕事と疾病との因果関係が最初からもう明白なたぐいの疾病でございました。ところが、今問題になっております過労死とかあるいはそのほか若干いろいろな疾病がございます。最近むしろふえておりますのは、そういう仕事も関係があるけれども仕事以外のことも関係がある、医学的には作業関連疾患と言っておりますけれども、そういうものが非常にふえてまいりまして、この問題はほとんどまだ研究されておりませんので、当面は先ほど申しました六十二年の認定基準で運営すると同時に、根本的にその作業関連疾患の原因、対策等を考えまして対策を講じていきたい、そういうふうに思っておるところでございます。
  295. 野間友一

    ○野間委員 この点についての労働大臣の端的なお考え方を承りたいと思います。
  296. 福島譲二

    ○福島国務大臣 御質問を承りながら、私どもも、過労死というその危険性、身につまされて感ずる一人でございます。  先ほど申し上げましたように、恐らくその年代の方々は一家の大黒柱をなされる方々でありますし、そして、場合によってはこれから人生の余生をゆとりを持って過ごそうとされる、そういう方々の年代であります。本当にこれからのゆとりある人生を持つためにも、冒頭申し上げましたように、労働時間の短縮等全力を尽くして、大変これまた難しい問題ではございますが、委員も御指摘のように、欧米諸国の水準にできる限り現実的に近づけていくという努力を払うと同時に、また本件、自分の体は自分でやはり摂生を保ち、そして休養をとって、できるだけそういう過労に陥らないようにするのは自分自身の摂生の問題でもございます。しかし、それはそれとして、労働省としてもいろいろな立場から過労死にならないような配慮をいたす所存でございます。先ほど申し上げました健康診断の充実等もその一環としてこれから進めてまいりたいと思っております。
  297. 野間友一

    ○野間委員 この過労死のメカニズム、これから問題だと思うのですけれども、労働省としても真剣にそれを研究し、そして解明していくということをぜひお願いしたいと思うのですが、いかがでしょう。
  298. 福島譲二

    ○福島国務大臣 御指摘のような形で、来年度予算要求におきましても新しい措置としてこの予算確保するように努めてまいりたいと思っております。
  299. 野間友一

    ○野間委員 富国生命のいろいろな調査、「サラリーマンの”酷使度”と”過労死”」ということしの八月に出した書物があります。これを見ましても、大体自分は過労死の可能性があるとした人が約半数、こういうことですね。時間の関係で省きますけれども、ぜひこういうものを十分研究していただいて、労働者の命というのは地球よりも重いわけですから、遺漏のないように重ねて要求しておきたいと思います。  時間が余りありませんので、最後になりますが、ちょっと厚生省所管でお聞きしたいと思います。  それは、今大変な問題になっておりますアフラトキシンという猛毒ですね。これは急性毒性の強さあるいは発がん性の強さ、大変なものであります。これがピーナッツバターあるいはピーナッツチョコレート等のピーナツ加工品から日本で検出された。昭和四十六年、これが初めてのようですけれども。国内の通常の保存状態ではこれは産生されないということで、結局これは水際でチェックができずに、トルコ産とかさまざま外国からのようですけれども、これが日本に入ってきたということのようであります。  それで、名古屋市の癌学会でも国立がんセンターの長尾美奈子発がん研究部の部長さんの研究の報告等々、これも既に新聞報道にもありますし、これを本当に水際で確実にチェックするということは非常に急務だと思うのです。しかしながら、実際にはその体制が万全かどうかということになりますと、非常にお粗末だと私は言わざるを得ないと思うのです。果たして胸を張ってこれでいい、安心しろということを言えるのかどうか、厚生省並びに農水省、これは飼料用穀物の関係、アメリカのトウモロコシの関係では農水省に関係がありますから、両省にお伺いしたいと思います。
  300. 目黒克己

    ○目黒政府委員 輸入食品につきましては、食品衛生法に基づいて監視を行っているわけでございますが、この御指摘のアフラトキシンの監視体制につきましては、これは過去の違反の状況あるいは文献情報あるいは各国の情報等必要な調査を行ってきておるのでございます。  現在ではアフラトキシンによります汚染が懸念されます落花生、ピスタチオナッツあるいは香辛料等の食品を重点的に原則として全ロット検査実施している、こういう状況でございます。
  301. 本田進

    ○本田説明員 お答えを申し上げます。  飼料につきましては、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律というのがございまして、これに基づきまして飼料等についての規格基準を定め、飼料製造業者に遵守させるとともに、肥飼料検査所による立入検査実施し、安全性を確保するということにしておるところでございます。  配合飼料中に含まれるアフラトキシンにつきましては、国際的な基準に準拠しまして、配合飼料中の含有量が一般のものにつきましては二〇PPm、それから乳用牛とか哺乳期用のもの等一定のものにつきましては一〇PPbを超えてはならないという行政指導基準を定めまして、その徹底を図っているところでございます。  また、原料となりますトウモロコシにつきましても、米国産の六十三年産のトウモロコシにつきましては干ばつの影響によりアフラトキシンの汚染が懸念されましたことから、特別の措置といたしまして、アフラトキシンの含有量が二〇PPb以下であるという旨の米国連邦穀物検査局の証明書を添付して輸入するよう輸入業者を指導するとともに、飼料の製造業者に対しましても当該証明書の添付されたものを用いるよう指導を行っているところでございます。さらに、以上のような措置徹底を図るため、飼料検査所におきましては、必要に応じまして飼料製造工場とか港湾サイロ等の立入検査実施しているところでございますけれども、現在までのところ問題となった事例は認められておりません。  今後とも引き続き現体制を継続して、万全を期していきたいというふうに考えております。
  302. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りました。  最後厚生大臣に要求したいと思うのですけれども、実際に検査体制がきちっとしておっても、現に国内でこれが見つかっておる。厚生省も非常にこれを重要視して、来年度は十名のいわゆる食品Gメンの増員要求ということをやられるようですけれども、絶対にこういうような恐ろしいものは水際でストップさせるという決意のほどと、そしてやはり大幅な人員増をぜひかち取って、そして国民、消費者が安心して生活できるようにぜひお願いしたい、このことをひとつぜひ答弁いただきたいと思います。
  303. 戸井田三郎

    ○戸井田国務大臣 御承知のとおり輸入食品もこのごろ大変ふえてまいりましたし、そういう意味で検疫という面をさらに一層強化をしていきたい、特に今二十一検査所八十九名の体制でやっておりますけれども、これは来年度も今御指摘のように強化して、さらに一層の努力をしていこう、かように思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  304. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  305. 魚住汎英

    ○魚住委員長代理 次回は、来る十日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会