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1989-11-10 第116回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月十日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 相沢 英之君    理事 大石 正光君 理事 柿澤 弘治君    理事 北川 石松君 理事 中村正三郎君    理事 浜田卓二郎君 理事 河上 民雄君    理事 神崎 武法君 理事 林  保夫君       糸山英太郎君    椎名 素夫君       中村喜四郎君    浜野  剛君       深谷 隆司君    石橋 政嗣君       高沢 寅男君    渡部 一郎君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     守屋 武昌君         防衛庁防衛局調         査第二課長   嶋口 武彦君         環境庁長官官房         国際課長    加藤 三郎君         外務大臣官房審         議官      高橋 雅二君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 十一月九日  国際開発協力基本法案(第百十四回国会衆法第九号)の提出者川崎寛治君外十五名」は「川崎寛治君外十四名」に訂正された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大石正光君。
  3. 大石正光

    大石(正)委員 きょう大臣が十分ほどおくれてまいるようでございますので、その前に、つい数日前まで行われました地球環境会議に関して、ちょっと御質問させていただきたいと思います。  先日開催されました地球環境会議で、実は大会宣言が発表をされたわけでありますが、そこの中において、二酸化炭素削減を二〇〇〇年までにするというお話であります。特に先進国発展途上国とのそれぞれの問題が二つあるわけでありますが、まずもって、その中でアジアにおける日本立場として、この地球環境会議二酸化炭素削減ということに関しまして、日本がどのような役割を果たしたらいいかということを、まずアジア局長お話を聞きたいと思います。
  4. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 アジア局長答弁の前に、実は今回の会議におきまして討議された内容と、それから基本的なCO2排出の問題について、ちょっと簡単に御説明をさせていただきたいと思います。  二酸化炭素は、御案内のように、地球温暖化の非常に大きな原因というふうにされておりまして、したがいまして、先般のハーグにおきます会議におきまして、各国安定化する必要性というのを認識いたしまして、それで今後、気候変動に関するパネルがございますが、そこで検討されるレベルにできるだけ早期に安定させることが必要だということに合意をいたしたわけであります。この二酸化炭素の問題につきましては、さらに森林二酸化炭素を吸収する役割を当然果たしているわけでございまして、この森林減少を食いとめる、むしろ食いとめるのみならず、純増を目指すというふうな目標が示されたわけであります。そういった観点から、さらに途上国に対する資金的援助の具体的なあり方についても検討が要請されているということでございます。  特に、アジア諸国につきましては、今後炭酸ガス排出について、途上国の場合におきましてはなかなか先進国と同様にいかない面もございますけれども、やはり技術移転その他を通じて協力していくということも必要でございますし、さらに森林減少についてもいろいろと協力する必要があるというのが一般論でございます。  特にアジア地域につきましては、改めてアジア局長なり経協局長から答弁があると思います。
  5. 大石正光

    大石(正)委員 国連局長からいろいろお話をいただいたわけでありますが、日本環境公害で随分いろいろと努力をし、日本の産業の寄与のために努力をして今日まできたわけでありますが、今回の環境会議の中で、外国の記者から批判的な質問がかなりあるわけであります。日本がかつていろいろな面で、二酸化炭素硫黄酸化物のいろいろな除去の問題で公害設備をして、環境庁が非常に厳しい規制をして今日の日本があったと思うわけでありますが、今日日本世界に貢献する役割の中で、そういう問題をもっと積極的に取り入れていかなければならないと私は思うわけであります。  今回のこの会議に際しまして、環境庁長官がお見えになっていろいろと発言をされたわけでありますが、この会議の要点だけを、環境庁でどのようにこれから考え、これから前向きで国際的に貢献をしていかれるのか、その辺をひとつ御質問をしたいと思います。
  6. 加藤三郎

    加藤説明員 今回の会議につきましては、環境庁といたしまして、人類の将来にとって重大な脅威となる温暖化問題に立ち向かうためには、環境政策を担当する閣僚が、先進国とかあるいは途上国の別なく、また国の体質の違いを超えて多数参加しまして、政治レベルで具体的にコミットすることが重要という観点から、私どもといたしましては、環境庁長官を代表といたしまして積極的に対応してまいったわけでございます。  今回の成果の主なところを幾つか申し上げますと、今先生が触れられましたCO2などの温室効果ガス排出安定化することの必要性世界で初めて認識したという点、しかもそれは、一方で世界経済安定的発展を図りつつというそういう文脈の中で、今申し上げましたCO2などの排出安定化というものを認めたことは非常に重要なことだというふうに考えております。  それから、私ども先進工業国といたしましては、このIPCC、政府間で設けられておりますパネル、それからさらに、その後に引き続きます第二回の世界気候会議で検討されますその安定の水準目標水準を決めるわけでございますが、その水準に可能な限り早く達成すべきことも合意したということも非常に重要なことだというふうに考えておるわけであります。  それからさらに、この会議では、熱帯林等森林減少に歯どめをかける、そしてその熱帯林等森林資源の増減をバランスさせ、さらに二十一世紀の初めからできるだけ年間千二百万へクタールという割合で増加させるという暫定目標を示しまして、その実現可能性をさらに検討することになったといったようなこと、非常に重要な成果が得られたというふうに思っております。  私どもといたしましては、今先生おっしゃられました、かつての公害対策におきます経験、そういったものを十分に生かしまして、政府部内では関係する省庁と十分に協力をしながら、今回の宣言に盛られた趣旨を最大限に活用しますように努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  7. 大石正光

    大石(正)委員 今お話しのような形でぜひとも環境庁のかつての経験を生かして国際協力をしていただきたいと思うわけでありますが、この環境会議の中で、それぞれ先進国の中で二つに大きく分かれたような気がいたします。例えば日本とかソ連、アメリカ、イギリスとか非常に積極的に工業が進化しているところと、先進国でありながら工業というものがある程度積極的に進んでない地域と、大きく分かれるわけでありますが、特に発展途上国に関しましては大変大きな問題になっていると思います。いろいろとJICAを初め各国で、アジア各国の中でも盛んにその会議をしながら、地球環境整備、特に日本の場合は熱帯雨林とか熱帯の材木とかアジアの中でさまざまな批判があるわけでありますが、やはりアジアの中での日本役割は大変重要になってくると思います。  特に、ヨーロッパで問題になっております酸性雨硫黄酸化物大気汚染に関しての酸性雨日本でもかなり強くなってきているわけでありまして、その影響力の一番の大きいもとは、やはり中国だと思うわけであります。中国は石炭や石油を使った化石燃料を中心にいろいろと工業化を進めておるわけでありますが、中国もかなりその点を意識いたしまして、できる限り早い時期に大気汚染等を含めた公害を少しずつ除去する方向で考えているようでありますが、ぜひ日本外務省においても、この点を支援しながら、日本がこれから公害のさまざまな問題を、経験を生かしながら中国技術援助資金援助をする形で、大気汚染に対してともに二国間の協力をしてもらうことがぜひとも必要じゃないかと思うわけであります。どうかその点、ぜひ前向きで実行していただきたいと思いまして、その点を外務省としてはどのように考えているか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  8. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生指摘中国との関係を具体的にお話しさせていただきます前に、先ほど国連局長から一般的な話がございましたけれども援助を担当しております私からアジア諸国との関係に焦点を絞って具体的にどういうふうに対応を考えているかということを申し上げたいと思います。  私ども大げさに言えば車の両輪で考えてまいりたい。一つは、アルシュ・サミットの際に日本が表明いたしました基本方針でございますけれども、今後三年間で三千億円程度の環境を改善していく援助を行っていくということで、積極的に環境をよくする援助を車の一つの輪とし、それからもう一つの柱は、従来から行ってきております援助を進めるに当たって、特にインフラ関係援助についてでございますが、少しでも環境を悪くすることのないようにしっかり対応する、そういう見地から、先般も円借款を担当いたします海外経済協力基金でガイドラインを作成いたしまして公表した次第でございます。こういう二本柱で対応してまいりたいと思っております。  中国に関しましても同様でございまして、先生指摘大気汚染に関しましても、水対策騒音対策等も含めまして、北京にいわば中国環境問題に対します頭脳ともなるべき環境保全センターを設置するということで、竹下総理が昨年夏、中国を訪問されました際に合意をしておられるわけでございます。その後の出来事によって若干作業が中断をしておりますけれども基本的には私どもは、中国に対しましても環境関係援助、これは今申し上げました三千億円の中になりますけれども、積極的に考えていきたい。それから通常の援助におきましても、大気汚染等にも十分配慮した、そういうことのないような援助をしていきたい、こういうふうに考えております。  具体的な、先生指摘酸性雨に関しましては、私が承知しておりますのは、酸性雨原因に関しては、さらに究明する点が必要だということになっておりますが、隣国、特に韓国中国とは、この問題について既に話を始めておりまして、例えば韓国に関しましては、日韓科学技術協力協定のもとで酸性雨調査研究協力を進めるべく情報交換をやっていると承知しておりますし、中国との関係におきましても、今私が申し上げました援助の点も踏まえつつ、日中環境会議においてこういう問題が議論され出したと承知しております。
  9. 大石正光

    大石(正)委員 日中間においても日韓間におきましても、この大気汚染の問題を含めて、ぜひとも今後とも大いに努力していただきたいと思うわけであります。  大臣がお見えになりましたので、中国との問題をお聞きをしたいと思います。  実は、ブッシュ大統領が一周年に当たる七日にホワイトハウスで、米中間関係について、さきニクソン訪中米中関係の今後に大きく貢献するものだ、天安門事件は障害になったが、地政学から見ても、米国は中国との関係の再正常化に努めなければならないという発言をされておるわけでありますが、大臣は、アメリカの対中国政策の中で、日本がどのように米中の間で仲介をされていかれるのか、ちょっとお考えをお聞きしたいと思います。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 日本中国との関係は、アメリカヨーロッパ基本的に大変異なっておる。しかし基本は、我々は一衣帯水の地域にあって、歴史的にも文化的にもあるいは通商上も過去長い歴史の上での深い関係がございます。そういう意味で、中国近代化改革開放路線日本政府としては引き続き協力をしていきたいという考え方基本にございますが、アメリカの対中政策というものも、今のところ大変厳しい姿勢をとり続けているという中で、日本災害援助とか文化の交流とかという面につきましては、今引き続き前向きの姿勢で対処しておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  11. 大石正光

    大石(正)委員 この間の天安門事件で、さき宇野総理大臣三塚外務大臣が、アジアにおける日本の位置づけや、そしてまた人道的には賛同するけれども日本は経済的、地勢的に見て中国への制裁はしない、アメリカヨーロッパに対してもそういうことをしないようにという発言をしていただきましたことは大変すばらしいと思うわけであります。  ここ一両日キッシンジャー長官訪中しております。ニクソン訪中するときもキッシンジャー訪中するときも、本来ならば十月に入る予定で、その当時既に組んでいたはずであります。ところがどちらも日にちがかなりおくれました。またもう一つは、非常に不思議なことでありますが、ニクソン大統領訪中したときは天安門事件での人民解放軍が広場からいなくなり武装警官にかわりました。今回キッシンジャーが行ったときには鄧小平さんが中央軍事委員会主席をやめる。とにかくアメリカに対して意図的にやったような感じがするわけであります。アメリカも対中政策を大いに考え直さなければならないと同時に、中国アメリカ立場をよくわかって、アメリカに対して反省を促しているような気がしてならないわけであります。  私は、アジアの中の日本がいかに中国とともに助け合いながら世界平和に貢献する必要性があるかということはもちろんわかっているわけでありまして、これから対中政策の中でもっともっと日本独自の考え方を推し進めながら、ぜひとも協力を進めていく必要があると思うわけでありますが、その点をどのようにお考えでございますか。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府としては、天安門事件以来どのようなことが日中間に起こったかといいますと、先般伊東正義代議士を団長とする超党派使節団訪中されまして、そして今まで外国からの来訪者には会っておられなかった鄧小平氏を初め中国の当時の指導者たちが皆さん会われて、虚心坦懐に日本訪中団といろいろお話し合いをされたということは、それだけ大きな意味を持っているというふうに私ども理解をいたしております。  また、この使節団先生方には大変御苦労をいただきましたけれども、西側の中の日本が、政府ではなしに、与党も含めた超党派議員団が訪問し、中国首脳と会われて虚心坦懐な話し合いが行われたということを私ども日本政府としては大変高い評価をいたしております。
  13. 大石正光

    大石(正)委員 そのようなお話でありますが、実は参議院選挙のときに天安門事件で与野党ともいろいろと発言をされました。今回伊東先生が行かれたのは、私はそのようには感じておりません。あの参議院選挙一つの釈明に行かれたと私は率直に言って思っております。中国もそのように考えていると私は解釈をしているわけであります。  アメリカ中国は非常に友好関係にありますけれども日本はかつて中国にいろいろと御迷惑をかけたということもあり、アメリカ中国立場日本中国立場はやはり微妙に違ってくると思います。そういう意味では、中国に対して、資金援助の面でも、ただ表面的な道路や鉄道やダム、そういう施設をつくるのではなく、西ドイツやアメリカがやっているように、人材教育やもっと積極的に内部に入った資金援助並びに技術援助教育面援助をやらなければ、日本に対して中国国民が感謝をする気持ちにはならないと私は思うわけであります。  今公害施設研究所をつくられるようでありますが、日本は、フィリピンでもそうでありますが、報道でいろいろ御指摘あるように、施設はつくるけれども、ただつくっておしまいであって、その後の運営とか、そういうものに対しては監督もしないし管理もしない、ただ人を派遣して終わるわけであります。特に、中国における医療の研究所中国の病院に対しましても、医者は派遣するけれどもレントゲン技師看護婦やさまざまなそういう面での補充が全然されていない。ですから実質は動かないと同じであります。アメリカがいろいろな資金援助なんかしているときに、必ず後々まできちっと管理をして運営しているように、ODAという資金援助なり無償、有償の援助をするならば、最後まできちっと面倒を見ながら、人材教育をしながら育てていくという、そういう一つ方法をやらない限り、いつまでも日本世界の金持ちで、ただ金をもらえばいいという国で終わってしまうと私は思うわけであります。ですから、これからのODA資金援助の中での基本的なことは、私は、そういう面を含めた長期的な資金というものを考えながら、ただ数をいっぱいやればいいというのではなくて、そういうものを考えて、これからの援助方法を絶対考えなければならない。そのためには、毎年予算で大分御苦労されておるわけでありますが、そういう面での人材の確保というものをもっと積極的に進める、私はそのことをぜひ大臣お願いをしたいと思うわけでございます。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生指摘のように、相手国人づくりあるいは教育に対する協力というものは、ODAを実施する上で不可欠の案件であろうということは私も十分承知をいたしておりまして、さきアジア太平洋経済閣僚会議におきましても、日本政府立場としては、アジア太平洋地域における人づくり、これに対して日本協力をするということを申しておりました。御趣旨を十分踏まえて政府としてはこれから対応してまいりたいと考えております。
  15. 大石正光

    大石(正)委員 ちょうどきのう鄧小平さんが中央軍事委員会主席からおりられまして江沢民さんがなりました。前にいろいろと流れの中で趙紫陽さんが要するに副委員長になられてやられたわけでありますが、なかなか中国の軍としてはそれを受け入れにくかったわけであります。今回、鄧小平さんがおりられて江沢民さんを中央軍事委員会主席にされるわけでありますが、それは中国やり方でありますから、私ども何もそのことに関して発言する必要はないわけでありますが、ただ、このような形によってどんどん時代が若返ってまいります。江沢民氏がどのような形で鄧小平氏から受け継いで、軍事を監督し、そして中国国民指導するかということは、これからの中国考えでありますが、あの天安門事件の後、私も中国に参りまして、北京大学学生教授とも話をいたしました。しかし、あの開放の中でのやり方、それぞれ学生運動基本的には学生も了解し、中国政府も了解をしております。ただ、やり方がまずかったということでありまして、中国学生教授はもっと地道に長期的に中国内部改革をしたい、そのことを大前提に考えているわけでありますが、その大きな流れの中で今中国はどんどん若返りをしております。そしてまた軍事委員会若返りをするわけでありますが、これから先、日中間において今まで長期的に田中先生大平先生時代に日中の正常化を図られてから、日本中国に対して積極的な若い方々へのアプローチが非常に少ない。古い友人にばかり積極的に行くだけであって、今新しいそれぞれの各大臣やそれぞれの先生方にはだれ一人として行かないのです。私は、なぜ農林省環境庁も含めて、通産省も含めて、各省が積極的に中国の各部と交流をし、事務次官交流を重ねることをしないのか。私は何回となく通産省農林省事務次官お話をしました。行きたいという話はするけれども、何となく行きにくくなっているのか行こうとしない。私は要するに、トップレベル会談よりも事務サイドレベル会談交流をもっと重ねた上で密接に結ばれなければ、ますます日中間が必要なときに表面だけで終わってしまって、だれ一人として将来お互いに助け合っていくのがなくなって、何か日本だけ残されたような感じの、かつてニクソン日本を飛び越えて正常化を米中でしたように、私はそのようなことが非常に起きる気がしてならないわけであります。ぜひともその点を大臣にこれから御指導をいただいて、その面を含めて積極的に日中間に対してのもっと奥深い行政を、交流をひとつしていただきたいと心からお願いを申し上げます。  時間が余りありませんので、最後の御質問をさせていただきますが、実は今いろいろと騒がれております外国人留学生の問題があります。特にこの間のベトナムや中国の難民という形の問題があったわけでありますが、今この中ではいろいろ技術者単純労働者不法就労者と三つに分かれての外国人労働者受け入れがあるわけでありますが、今入管法の中でいろいろやっている中で改正をしているわけでありますが、不法就労者が約十万人ほどいるわけでありまして、その方々が結局は何もしないまま非常にわけのわからないようなベールに包まれた形で問題が出ているわけであります。いろいろ入管法改正をしているようでありますが、私はもっとこれを幅広く受け入れるべきであると思いますが、大臣はどのようにお考えでございますか。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生の御指摘のように、今の日本国内におけるいわゆる不法就労している外国人、約十万人と推定をされております。この不法就労者がなぜ日本にこれだけいるのかということは、結局観光ビザとかあるいは留学生というようなタイトルで入国された方々日本における高賃金のいわゆる建設現場とかいろいろなところで働いておられる。この問題をきちっと国家として整理をしていかなければ、問題は何十年かの後に日本国家にとって大きな問題になっていくことは間違いがないと外交を預かる者としては考えております。  御案内のように、今の日本は大変な経済成長をいたしておりまして、きついあるいは汚い、危険、このような作業現場にはこのごろの日本の働く方々がなかなか行きたがらない。もっと高い賃金でいい安全な場所がある、しかもきれいな場所がある、こういうことでございまして、そこらにこの労働者のニーズというものが現存していることは否めない事実だろうと思います。それだけに結局労働賃金が高い。そこへ観光ビザとかいろいろなビザで入ってこられた外国人が働いておられる。その実数が政府でどれだけ把握できるか。これは極めて重要な国家の問題でございまして、しかもこの労働自身構造といいますか、このまま放置いたしますと、いわゆるきつい、汚い、危険な労働現場外国人労働者が集中してくるということになりまして、労働構造労働人口構造上の一つの変化が日本国内に定着してくる可能性が極めて大であろうと考えております。  こういうことでありまして、これが何十年かたった後の日本における労働市場で一体どういう影響を与えてくるか、そういうことを考えておりますと、やはりここできちっといわゆる日本の入国に関する、研修を目的とした外国人受け入れ、これの制度を明確にしなければならない。そして研修が終わったら、相手国との協定によって、例えば二年あるいは三年間で期限が切れた場合にはお帰りをいただくということも必要になってまいりましょう。また、いわゆる現在のような不法労働の場合には、労災事故が起こった場合の補償というものは一体どうなっていくのか。そこいらが一つの大きな日本国内の現在まで社会保障に包まれた、発展途上国から見れば本当に夢のような社会保障制度を日本自身が今つくっておるわけでありますから、そういう社会保障体制が発展途上国と比べると比較にならないほど完備した日本で、入ってきた、時限を切った外国人の労働に対する補償問題あるいは保険問題、これをどのように扱っていくかということは、単に外務省だけの問題ではございませんで、労働省も厚生省もすべて、法務省ももちろん関係省庁が協議をし、さらに国家としてどのような考え方でこれからこの発展途上国からの研修者あるいは労働者というものに対処をするかという基本的な政策を早急に確立しなければならないというふうに理解をいたしております。
  17. 大石正光

    大石(正)委員 時間がほとんどありませんので、確かに大臣の言われたような方向で進めていただきたいと思うわけであります。  実は、この間テレビでちょっと対談をしましたときに、千人からの電話がありまして、外国人労働者を認めるか認めないかという千人のアンケートの中で、約六割が反対だということであります。今若い人が三キと言われる汚い、危険、きついとかいうようなさまざまな仕事をやらないわけでありますが、私が今質問しました三つの問題は、日本が国際社会の中でこれから積極的に貢献をしていく中で、日本国内の世論というものがいかに大切であり、国際社会の世論とどれだけかけ離れているかということを考える共通の点であります。  これから、ひとつ外国人労働者を含めて、ぜひとも日本の世論、日本の国民の考え方をもっと積極的にオープンにさせ、もっと国際社会人の責任を持たせるように各省ごとに努力しながら世論形成に努めていかなければ、幾ら政府が推し進めて、正しい正しくないと言われても、結局は形だけに終わってしまうと思います。どうかひとつ今後とも、今御努力されております大臣のお考えのとおりに、国際世論の中での責任を十分国民に理解されるような努力をぜひともしていただければ、私は今の外国人労働者を含めた諸問題も解決の方向に向かうと思うわけでありまして、その点をひとつお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  18. 相沢英之

    相沢委員長 柿澤弘治君。
  19. 柿澤弘治

    柿澤委員 きょうは中山大臣に、日本を取り巻く諸情勢、その中で今大石委員からもありましたけれども日本の果たす責任、グローバルパートナーシップという問題についてもお聞きをしていきたいと思います。  今大石委員からも言及がありましたが、きのうの鄧小平さんの交代、これは外務大臣としてはいい方向だと思っておられますか。
  20. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生お尋ねの新しい中国軍事委員会の人事の異動、そういうものにつきまして、私どもは、中国近代化路線というものは既に定着をいたしておりますし、改革開放路線も引き続きその線上で進んでいくものだというふうに認識をいたしております。
  21. 柿澤弘治

    柿澤委員 そうすると、これからの対中新規援助等についても前向きで取り組む一つのきっかけになり得るとお考えでしょうか。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ新しい中国政府首脳あるいは党の幹部の具体的な政策の発表というものが行われておりません。しかし、外務省といたしましては、これからの中国政府の政策がどのように前へ向いていくのか、そこいらをしかと見定めた上でこれからの政策を決定してまいりたい、このように考えております。
  23. 柿澤弘治

    柿澤委員 江沢民さんが新しい責任を引き受けたという段階で、今まで以上に積極的に働きかけていく一つのチャンスだと思いますが、どうでしょうか。
  24. 中山太郎

    中山国務大臣 今江沢民氏が新しく指導者としての地位につかれたということは、一つの極めて大きな中国の十年間にわたる鄧小平氏の指導体制がかわったということでございますが、日本政府外務省といたしましては、文化交流の面で、日中文化交流のために既に文化交流部長を団長とする団を中国に派遣いたすことを昨日決定いたしました。
  25. 柿澤弘治

    柿澤委員 こういう一つのきっかけをつかんで、日本の外交も対中政策についてウエート・アンド・シーでなくて、ある意味では交流を深める方向で考えていくということも必要ではないかと思いますし、それと同時に、アメリカを初めとする西欧諸国が望む中国のより一層の開放、より一層の民主化の定着、そういうものについても日本が積極的に発言していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御意見のとおりでございまして、私どもとしては、西側諸国と緊密に連絡、意見の交換をしながら、今後の対中国政策に取り組んでまいりたいと考えております。
  27. 柿澤弘治

    柿澤委員 日米問題でございますが、実はけさもヒルズ・アメリカ通商代表と朝食をともにしてまいりました。そこでヒルズ通商代表は、今回の第二回の構造協議、SIIの進展についても自分は非常に不満足であるということをはっきりおっしゃっておられました。このままいくと、来年の春までに具体的な成果が得られるかどうか心配である、その場合には議会の対日批判というものが強まって抜き差しならないところへ来ることを非常に恐れる、こういうことをおっしゃっておられました。私ども日本側も、このSIIが何とかスーパー三〇一条の発動とか日米の貿易戦争の激化を避けるために成功してほしいと考えておりますし、自由民主党の中にも経済調整に関する特別調査会をつくって、その点について政府、各省庁とも連携をとりながら、政治的なイニシアチブをとるべきものについてはとっていくということで努力をしていきたいと思っているわけですが、どうも一回、二回の日米の話し合いを聞いていますと、やはりこれは四つ相撲をとっているというよりも、何かまだ離れて突っ張り合っている、しかも各省が自分のところは悪くないという形でいろいろ主張を展開しているように思えて仕方がないのですが、外務大臣として日本のこの対応の仕方をいかがお感じでしょうか。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 外務大臣といたしましては、この日米間の構造調整会議を含め一連の日米間の外交案件が極めて重要な段階に差しかかりつつあるという認識を持っております。  先般来の予算委員会でも申し上げておりますけれども、やはり世界じゅうで、また西側陣営にとっても日本にとって一番大切な国は一体どこの国かということを国民がしっかり認識をして、これから日本の外交に御理解をいただかないと、日本の外交というものがなかなかうまく広がっていかない。そういう意味では、アメリカ合衆国というものは安全保障条約の日本との締結国でございますから、日本にとっては一番大切な国家でございますが、経済上ではこの日本の方が一方的に貿易の膨大な黒字を計上して、そのためにアメリカの議会が大変硬化をしているというのも事実でございます。しかも、先生今御指摘のように、明春にかけて日米関係は極めて厳しい状況に入る可能性がある。  そういう中で、日本の外交を預かる者としてどういうふうにこれから考えていかなければならないかというのは、私は率直に申し上げまして、いろいろな日米間の懸案を先送りするのではなくて、的確に、個別な問題はできるだけ早く日米間で合意がとれるように結論を出すことが外交上極めて必要であろうというふうな認識に立っております。そうして私ども、日米間が今日まで維持してきた、あるいは国会議員同士の会合、政府間の話し合い、そういうものの中で醸成されてきたこの不動の信頼関係が一歩たりとも崩れないような形を堅持するということが日本の安全と繁栄のためにもう絶対不可欠な条件であるという認識を持っております。
  29. 柿澤弘治

    柿澤委員 中山大臣のお考えを伺って私も大変意を強くしておりますが、先般の参議院選挙のときにも、農産物の自由化に対する農民の懸念が自民党に対して大変厳しい結果をもたらしたと思うのです。そういう意味で言うと、最近そうした農業問題だけでなく、例えば流通問題の改善とかいろいろな問題について問題が起こるたびに、アメリカにそんなに譲歩をする必要があるか、むしろ言うべきことをきちっと言うべきではないか。「NOと言える日本」という本も出て大変話題になっているようですが、もちろん言わなければならない点についてはっきり日本側の主張を言うことも大事です。それからアメリカ側に求めるべきことを求めることも大事です。しかし議論をしている段階からもう行動すべき段階に来ている。そういう意味では、日本側が一方的に行動する必要もあるのではないか。そうでないと、日米間に大きな火種をつくってしまうということを私は心配いたしております。そういう意味で、必要な段階になりましたら、外務省または外務大臣がぜひリーダーシップをとっていただいて、これは各省の問題ではなくてまさに外交問題でございますから、日米間の火種をおこすようなことのないようにひとつ努力をしていただきたい。またそういう意味で総理大臣もリーダーシップをとっていただきたい。そういうふうに外務大臣からもアドバイスをしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 先生の御指摘になりました点は、我が国にとりましても極めて大事な問題でございます。  私は、三日前でございますか、先般のアジア太平洋閣僚会議に出席されたベーカー国務長官とも会談をいたしまして、日米間の信頼関係というものを堅持するということ、お互いが信頼し合って物事を処理していくことが原点であるということもお互い認識をし合っております。ベーカー長官との間ではいろいろな日本の外交問題も話をいたしておりますが、先送りをしてはならない。今先生指摘のように、各省がそれぞれこの協議に参加しておりますけれども日本の縦割り機構の原因から問題を解決せなければならないのを先送りしてはならない。これが一番大事だと思います。そして問題の重要性を国民の皆様方にもよく認識をしていただく。政府が国民と一緒になって、御理解をいただいた上でアメリカとの外交問題の火種を消していくという努力をせなければならない。そういう意味では、自由民主党の特別の調査会ができまして、党を挙げてこの問題にも御協力をいただくことに政府としては深い敬意を払っておる次第でございます。
  31. 柿澤弘治

    柿澤委員 日本は経済大国になりました。それなりの実力をつけてまいりました。ですから、アメリカに対してもイコールパートナーとして言うべきことは言うという姿勢は決して間違っているとは思いません。しかし、一方で日本人の心の中には依然としてやんちゃな弟分というような思いがあって、何かアメリカに対してやんちゃを言うような気分がないわけではありません。そして、それがむしろかっこいいとか新しいナショナリズムだというふうに誤解をしている部分があるのではないかと私はおそれます。むしろ日本外交が心がけるべきことは、実るほど顕の下がる稲穂かな、この大国の度量ではないか、こう思うわけです。そういう意味でも、やはりここのところは、今までパートナーとしていろいろな形で日米は助け合ってきたわけですけれども、ここひとつ日本が助けるべきときだというような思いも必要なのではないか、こう思っておりますので、ぜひとも大臣のリーダーシップを心から期待いたしたいと思います。  それに関連して安全保障問題があります。安全保障問題では、アメリカ側は防衛分担金の増額とか基地の経費の分担の増加を議会が新たに決議をする働きが出てきておりますが、日本としてはこれもある程度リーズナブルな範囲で引き受けていくべきだと思いますが、その点はいかがでしょう。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 今アメリカ議会でいろいろな議論が出ておることは私も承知をいたしております。私どもは、日米安全保障条約のもとで今までも自主的に日本努力をしてまいりましたし、今後とも自主的に日本としてはやるべきことをやっていくというようなのが考え方でございます。
  33. 柿澤弘治

    柿澤委員 ということは、必要があれば地位協定の改定も考えるというふうに考えてよろしいですか。
  34. 中山太郎

    中山国務大臣 現時点では地位協定を改定するということは考えておりません。
  35. 柿澤弘治

    柿澤委員 そうすると、地位協定を改定しないでやれることというのはどのくらいあるのでしょうか。
  36. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 今現在行っておりますこと以上の追加措置を考えておりませんので、御質問趣旨にお答えすることは今の段階でできません。
  37. 柿澤弘治

    柿澤委員 先ほど大臣は、追加的な措置といいますか、やれることはやるというふうにおっしゃっていただいたので、その点は私はやるべきだというふうに思って賛意を表したわけですが、やることを考えてないというのはどういうわけですか。
  38. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 大臣が仰せになりましたとおりでございます。現在地位協定を変えることは考えておりませんから、地位協定が許す範囲内でできるだけのことをやっていきたいというふうに考えていることで、今やっておりますいろいろな種類のものもございますけれども、それに新たに何かを考えているということはございません。したがって、地位協定云々ということになりませんということを申し上げたつもりでございます。
  39. 柿澤弘治

    柿澤委員 そうしますと、アメリカの議会で例えば防衛分担の増額要求というようなものが決議されたとしても、日本としてはとにかく動く余地がないということでしょうか。
  40. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私どもが今承知しておりますところでは、国防予算授権法案の中に議会の意向としていろいろなことが盛られているというふうに承知いたしておりますけれども、先ほど来大臣が仰せられておりますように、それはそれとして我が方としては自主的に何ができるかを考えていくということでございます。
  41. 柿澤弘治

    柿澤委員 外務省の苦しいお立場もわかります。特に参議院がもう与野党逆転しちゃっているわけですから、そう簡単ではないということもわかりますが、しかし、最近の社会党を中心とした連合政権協議などを拝見いたしますと、日米安全保障条約を認める、また自衛隊の存在を認める、合理的な防衛についての考え方を打ち出しつつございます。その中には民社党も入っていらっしゃるわけですから、そういう点で今までのタブーをひとつ取り払って、これは与党だけでなく野党に向かっても現実を説明しながら、国民的なといいますか、コンセンサスを得る努力を一層すべきではないかと思いますが、大臣、その点いかがでしょうか。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 防衛問題に限らず、アメリカの議会がどのような仕組みの中でアメリカの法律をつくり、あるいは決議をするというようなことになっておるかということを我々は政府として国民の皆様方にさらに積極的に説明をし、アメリカという、この民主主義国家の今までの考え方あるいは議会の権力、それと政府との関係というものをもう少しわかりやすく国民の皆様方にお話をし、これを理解をしていただかないと、日米問題の火種というものはなかなか消えていかない。今まで議員間の交流、特に自由民主党、民社党を中心に日米間の議会人の交流が行われてまいりまして、今日までのいい関係ができてきたわけでありますけれども、ここでさらに突っ込んで、社会党も含めてアメリカとの議会の交流に御協力をいただくということは、日本にとっては決してマイナスにならないと政府考えております。
  43. 柿澤弘治

    柿澤委員 そうした形で私たちも国民的な合意の形成に努力をすべきだと思いますし、またアメリカの議会人との交流を図りながら、その中での意思疎通を図っていく、防衛に関する共通の考え方を持っていくということに努力をすべきだ、こう考えておりますので、その点をつけ加えます。  次に、日ソ関係の御質問をしたいと思います。  ヤコブレフ・ソ連共産党政治局員、ゴルバチョフ議長の右腕だと言われているヤコブレフ政治局員が来日をいたします。このヤコブレフ政治局員の来日というのは、これからの日ソ関係を前進させる上で大きな契機になると各方面から期待をされておりますが、外務大臣としての御所見を伺いたいと思います。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 ヤコブレフ政治局員の来日を機にいろいろな今日まで戦後四十四年間冷え切った日ソ関係というものについて、今回は議会が招待されたわけでございますので、自由民主党を初め各党各派の先生方が、このソ連の外交政策の責任者とも言われるヤコブレフ氏を団長とするソ連の訪日団、しかも随員も相当たくさん来られますので、虚心坦懐にこれから二十一世紀に向けての日ソ間の新しい協力とか展開について、あるいはまたアジア太平洋の平和と安全保障問題についても忌憚のない御意見を交換していただくことは極めて重要なことだと認識をいたしております。
  45. 柿澤弘治

    柿澤委員 時あたかもソ連の中でもアファナシエフ、モスクワの古文書大学の学長さん、これは代議員なわけですけれども、日ソ関係改善のために、北方四島は日本の固有の領土だ、返還すべきだというような意見を述べていらっしゃる。そういう意味では、ペレストロイカの中で柔軟な新思考外交を繰り広げているゴルバチョフ外交の中で立ちおくれていた部分と言われていた北方四島問題についても、ソ連の中で多様な意見が出つつあるということは、私どもにとっては一つの前向きの兆候というふうに受け取れるわけですが、その辺はいかがでしょうか。
  46. 中山太郎

    中山国務大臣 ゴルバチョフ政権のもとでペレストロイカとグラスノスチという新しい新思考の政策が具体的に浸透してきている。そういう中で、従来発言できなかった問題について、しかも領土問題について発言される方が出てこられたということは、大変日本政府としても重大な関心を持ってこの意見を拝聴しております。ただ、それがソ連の政府、最高首脳の意見かどうかというところに日本政府としてはまだ大きな問題点があるというふうに認識をいたしております。
  47. 柿澤弘治

    柿澤委員 最高首脳の意見かどうかまだわからないという御意見で、まさにそのとおりだと思いますが、そうした多様な意見をぜひソ連の中で醸成させるように、これは日本として努力の余地がいろいろあるのじゃないかと思います。私も最近ソ連の雑誌に原稿を一つ送りました。まだ載せてくれるかどうかわかりませんけれども、そういう形で多様な意見の交流のパイプを広げていくということも、私どもとして努力をしていかなければならない点ではないかと思います。日本の北方四島に対する態度は、これは国会決議にもありますように、四島の返還ということで固まっているわけですが、しかし、そこにたどり着く道程についてはいろいろな、これもまた多様な意見があっていいのではないか。あっちが多様になってきているのにこちらが一枚岩だというのも何かちょっと異様な感じかするのですが、この点はいかがでしょうか。
  48. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、今日までの数次にわたる国会における超党派による満場一致の北方四島一括返還の決議、これは我が日本国民の願望でございますから、これを否定するというような考え方政府としては持つわけにはまいりません。この国会決議を踏まえて、私どもはこのこれから始まろうとするヤコブレフ氏の訪日による虚心坦懐なこれの将来の意見交換、また十二月に行われる日ソ平和条約作業グループの会議あるいは明年三月のシェワルナゼ外務大臣の訪日等、そういう機会をとらえて私どもが幅広く意見を交換していく中で、北方領土の返還という問題については日本国民の願望であるということを踏まえて日ソ間の交渉をやってまいりたいと考えております。
  49. 柿澤弘治

    柿澤委員 四島返還が日本国民一致した願望であるという点についてはもちろん私どもも同感でございますし、その線で交渉を進めていただきたいと思いますが、そこにたどり着くプロセスについては、いろいろ想像力を働かせたといいますか、プロセスというものがあっていいのではないかな、そこのところは一つの道しかないというふうにお考えでしょうか、多様な道があるとお考えでしょうか。
  50. 中山太郎

    中山国務大臣 もちろん外交上の問題でございますから、いろいろと多様な道があろうかと思います。  なお、日ソ間の話をこれからいろいろとプログラムに従って進めていかなければならない時点になってまいったわけでありますけれども、その前に一番大事なことは、やはり日米の間にこのような日本の対ソ外交の新しいプログラムというものの説明をしておく必要があるということで、先日キャンベラにおきまして、私とベーカー国務長官との間で一応現在セットされている日ソ間の外交日程というものを率直に話をし、アメリカ側のこれに対する評価といいますか、つまり同意というものも既にいただいております。私どもは、日米間の信頼関係を損なわない、これがやはり基本でございますが、その上に立って米ソの会談あるいは日ソ間の会談というものをこれから外交として展開していく、このようなことが必要かと考えております。
  51. 柿澤弘治

    柿澤委員 例えばソ連側でも北方四島について非武装地帯化するというような提案も出ているやに聞いております。また暫定的にソ連、日本両国民が居住するような形態も考えられるというような提案があるやにも聞いております。そういう問題も先方から提案をされているわけですが、もしもソ連側が北方四島を非武装化するというのであれば、その際日本側としては、例えば今困窮しているソ過経済を救うために消費財についてのクレジットを与えるとか、そういうパッケージを考えてみてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  52. 中山太郎

    中山国務大臣 領土の問題につきまして、現時点で政府としてどのような提案がなされるか、具体的にまだ一切連絡がございません。そのような時点で、それがもしという仮定のもとにこちらが政府考え方を立てるということは、かえって日ソ間のこれからの外交交渉に影響があるのではないかということを外務大臣としては考えておりました。ヤコブレフ氏の国会招請による来日の場でひとついろいろと御議論をいただくことも極めて重要な意味があるのではなかろうかというふうに外務大臣としては考えております。
  53. 柿澤弘治

    柿澤委員 自由な立場でヤコブレフ氏と議員として意見の交換をすることは有意義であるというお話をいただきましたので、私たちもできるだけそういう交流のパイプは深めて広げていきたい、こう思っております。  それからもう一つ、ヤコブレフ訪日の際に日本としてやるべきことは、ペレストロイカに対する支援の姿勢というものをもう少し明確に出していいのではないだろうか。アメリカブッシュ大統領が明確におっしゃっておられますし、ヨーロッパの諸国もそういうことをしておりますが、日本は依然として将来についての不確かさというものを理由にしながらペレストロイカ支援という姿勢を明確に出しておりません。その点はいかがでしょうか。  それともう一つアメリカヨーロッパ等では、既にソ連経済、東欧経済もそうですけれども、これを世界経済の枠組みの中にできるだけ早く受け入れるべきである、インテグレートしていくべきであるということで、IMF、世銀のブレトンウッズ体制にソ連を参加させるにはどうしたらいいか、ガットに入れるにはどうしたらいいか、そのためにはルーブルの交換性を回復させるにはどうしたらいいか、こういうようなことを議論されていると聞きますが、日本もそういう点について前向きの検討をしていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  54. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  政府といたしましても、現在ソ連の内外で起こっておる、特にソ連の国内での改革の方向につきましては、これを多大な関心を持って見ておりますし、特にその肯定的な側面については、これを歓迎している次第でございます。そういうこともありまして、私どもとしましても、このソ連の中での経済改革が行われている中で、最近調査団を受け入れまして、この調査団は日本の経済の中における日本政府役割について調査したいということでございました。ソ連側の経済省庁あるいは中央委員会の次官クラスあるいは次長クラスから成る代表団でございます。この代表団を受け入れましたのは、我が国の経験努力がソ連でのペレストロイカの参考となり、その肯定的変化を助長することは好ましいという考えに立ちまして、また我が国の現状を専門家の目で見ることによって、我が国に対するソ連の正確な理解が高まるということが日ソ関係の発展に資することを期待した上で迎えたものでございます。そういうことで、私どもとしても、ペレストロイカの肯定的な面について、これを歓迎しつつこのような具体的な措置をとっているということを御報告申し上げたいと思います。  それから、先ほど先生の方からIMF、世銀等への加盟のお話がございましたけれども、これにつきましては、ソ連自身長い目標として加盟を考えているということは承知しておりますが、もちろんまだ具体的な申請は出されておりませんし、それから一般的な見地から申し上げましても、IMF加盟国になるためには、それにふさわしい国内経済体制を整える必要があるわけでございますし、西側におきましても、一般的にはそういう点につきましてかなり共通の認識があるということを申し上げられると思います。
  55. 柿澤弘治

    柿澤委員 質疑時間がなくなってしまいましたので、最後一つだけ、ポーランド、ハンガリーに対する支援、東欧支援の問題をお伺いして終わりたいと思います。  先般、当外務委員会でも相沢委員長を団長にポーランド、ハンガリーを訪問いたしまして、日本への熱い期待を私ども実感してまいりました。中山外務大臣の来訪も待たれているようでございますし、きのうはマイェフスキ・ポーランド外務次官が海部総理への招待の親書をお渡ししたということも聞きました。ポーランド、ハンガリーについては、この国の民主化、自由化への努力を支援し、そして戦後長く続いてきた国際情勢の枠組みに対して新風を吹き込むという意味で、日本は積極的に米国、EC諸国等と協力をして支援をすべきだと思いますが、どうも日本政府の決断といいますかタイミングが非常に遅いという印象を私どもは受けております。今度は十一月二十四日に二十四カ国会議があるようですけれども、それまでの間には、きょうの新聞に出ていたように、一億ドルないし二億ドルというきちっとしたプログラムを持っていけるように、これも中山外務大臣のリーダーシップを発揮していただきたいと思っておりますが、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。
  56. 中山太郎

    中山国務大臣 既にポーランド、ハンガリーに対する支援の問題につきましては、海部内閣としても、その方針で進んでおります。  ただいまこのポーランドのことにお触れになりました。昨日確かに外務次官から海部総理への親書を私が受け取って総理にお伝えをいたしました。私どもといたしましては、この二十四日にブラッセルで行われる関係国の局長レベル会議におきまして、日本から具体的に結論が持ち出せるように、ただいま鋭意努力をしている最中でございます。これで日本としてはできるだけ速やかに金額等の決定もいたしたい、このように考えております。
  57. 柿澤弘治

    柿澤委員 終わります。
  58. 相沢英之

    相沢委員長 河上民雄君。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 今もお話に出ましたが、来ヨーロッパの情勢につきまして大臣のお考えを承りたいと思います。  ことしの夏、相沢委員長を団長に衆議院の外務委員会が超党派調査団を派遣いたしまして、私もその一員であったわけですが、ポーランド、ハンガリー、スペインと回ってまいりました。当時、ポーランドでは共産圏における初の非共産主導内閣が誕生するという歴史的な瞬間に立ち会ったわけでございますし、ハンガリーでは東ドイツからの市民のハンガリーへの流入、これをどうするかというのが現地の政治判断を迫られる大きな問題であったわけでございます。ところがその後、もうほんの数週間もたちませんうちに大変な急展開でございまして、東ドイツの難民というか市民の脱出は十数万にも及びまして、その結果、鉄壁と思われましたホーネッカー体制が退陣する、こういうようなことになっていることは御承知のとおりでございます。  この展開の速さというのは、実は私ども非常に気になるわけでございまして、これを通じまして感じますことは、やはり何といいましても、非常に重要なことですが、ヤルタ体制の崩壊と言ってもいいような大きな変化、また一九四五年以来のスターリン型のいわゆる社会主義体制というものが大きく動揺している、そして、その結果として今東西関係が大きく変わろうとしているんじゃないか、こういうことを私どもは感ずるわけでございます。マゾビェッキ首相が指名された当時、イギリスの「エコノミスト」という雑誌で、社論の中で、一個の妖怪がベルリンから北京にかけて徘回するであろう、こういうように言っておるのですけれども、これは言いかえれば西側、西欧諸国がこれをどう受けとめるかということが問われているとも言えると思うのです。その点では日本も例外ではない、こう思います。  こうした東欧の非常にテンポの速い変化、雑誌「世界」では奔流という言葉を使っていますけれども、これに対して日本政府としてどう受けとめておられるか、今後どう受けとめていくつもりか、それをまずお伺いしたい。
  60. 中山太郎

    中山国務大臣 やはり今河上委員指摘のように、大変なスピードで国際政治が大変動を起こしているということは、委員の御認識と全く私も一緒でございます。最初のこの改革、何といいますか変革の引き金を引いたものは、やはりソビエト・ロシアのペレストロイカ、グラスノスチによるソ連邦の経済体制の変革への志向、あるいは外交上の問題、あるいは軍縮への方向、いろいろな模索が続いておりまして、特に米ソ間の激しい対立から対話の時代へ、そして米ソ間に新しく協力の場ができつつあるということも、委員御認識のとおりでございます。  そういう中で、コメコンの影響下にあるこの東ヨーロッパの国々においては、先生御視察いただきましたポーランドを初めハンガリーにおいては複数政党制が誕生する、東ドイツではホーネッカー体制が崩れる、いろいろな共産党一党支配の中で行われてきた中央統制経済というものの破綻が各地に、各国に出てきた。そういう中で民主化を求める国民の激しい要求が政府を突き上げるというような状況になってきて、さらにその中でポーランドとハンガリーというものが、いわゆる社会主義経済体制から自由主義の原理を導入していこうという、この新しい動き、そういう動きの中で、日本の外交を預かる私といたしましては、やはり米ソ間の新しいこの動き、また東ヨーロッパにおける新しい動き等も見ながら、絶えず西側陣営の結束を固めながら、この東のいわゆる新しい動きに対して、東西間の緊張緩和に向けて日本が何ができるかという問題について、今後日本政府としてはポーランド、ハンガリーの支援を初め世界の緊張緩和のために努力をしていかなければならないと思っております。  ただ、変化のスピードが極めて速いものでございますから、私どもとしては、毎日動きを重大な関心を持って見て、その事態に対応する姿勢というものを早急に決断しなければならないような、新しい戦後初めての変化の時代に入ったと認識をいたしております。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  61. 河上民雄

    ○河上委員 外務省の担当者の方は、今大臣が言われたような感触で受けとめておられるかと思いますけれども、実務的にどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  62. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 ただいま大臣が御答弁なさいましたように、これは歴史的な動きであり、戦後の欧州における体制を大きく変える可能性のあるものとして、その安定化を注目していきたいということであります。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 そういう変化があるということは、もう皆さん大体認識しておられるようなんでございますが、しかし西欧あるいは東ヨーロッパ改革派の方々と話しておりまして非常に強く感ずることは、今大臣も御指摘になったように、ソ連のゴルバチョフがもし倒れたら、この今の改革流れもおかしくなってしまうんじゃないか、そういう意味でゴルバチョフを大切にせないかぬ、ゴルバチョフを支えなきゃいかぬということを公然と言う人もありますし、またそういう気持ちであることはありありとわかるわけでございます。  ところが、ゴルバチョフが登場いたしましたのは一九八五年ですが、ここ数年間我が国では、特に政府・与党の皆さんは、いや、ゴルバチョフの言うことは当てにならぬ、あんな者の言っていることを信じたら大変なことになるという感じでごく最近までおられたような気がいたすのです。まあ、そうでないということはなかなかこれまでの御発言からいってあり得ないことだと思うのですが、その点、今のお話から、外務大臣あるいは外務省としまして、ゴルバチョフをやはり大切にせなならぬ、あるいは支えなければ、今のこの東西関係の変化というものを生かすことはできないというふうに判断しておられるかどうか。
  64. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 ゴルバチョフ書記長が始めましたペレストロイカの路線というのは、やはりソ連の経済にあるいは社会体制に根づく危機的な状況に対処して、これを改革する以外にほかにないという第二の革命ということで呼ばれている改革でございますので、その行方は、これがソ連の内外において肯定的な側面を定着化させるのであれば、それは我々としても大いに歓迎するところであるという立場でおりますので、そういう側面を今後とも十分に注視していきたいと思いますし、それについては肯定的な評価をしている次第でございます。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、ここ数年ずっと慎重な態度をとってこられたのと少し変わったというふうに判断してよろしいわけですか。
  66. 中山太郎

    中山国務大臣 ゴルバチョフ政権誕生後、結局この指導者としての考え方、新思考によるペレストロイカ、グラスノスチ、そのようなものを具体的に進めていくために、果たしてソビエト連邦において行われた憲法改正あるいは人事の問題、そういうものがうまくゴルバチョフの考えているとおりに進むかどうかということに国際的に重大な関心を持っておったことは、日本のみならず西側諸国も共通の意識を持っておったと思います。  そういう意味で、今日非常にソビエト政府の政治というものが、この新しい改革路線というものあるいはグラスノスチ、ペレストロイカを進めていくという姿勢が相当前へ向いてきたことは事実でございますけれども、問題はこの新しい方向について権力を失うグループ、こういうものが現実に存在することも否定できない問題だろうと思います。特に約千七百万と言われるソビエトの官僚機構というものが、新思考による政治を、政策を遂行していく上で、これにうまく協力ができるかどうか、そういう点を含めて私どもは、このゴルバチョフ指導体制というものが安定して、そして緊張緩和を東西間につくり上げていく、そうして国民の生活というものを安定する方向に持っていくということについては、今欧亜局長答弁申し上げたとおり、そのようにこの新しい動きについては歓迎をするという考え方を持っております。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、近く開かれます米ソ首脳の洋上会談ですね、これにつきましては、先般この委員会におきまして、私どもの同僚の高沢委員の方から御質問申し上げたところでございますが、そのときお答えの中に、これは来春の予定された首脳会談への中継ぎ的な性格を持っておるというふうな御回答もあったんですけれども、私は、何かそういうものではなくてもっと重要な意味を持ってくるんじゃないか、一九四一年のフランクリン・D・ルーズベルトとチャーチルの大西洋上における洋上会談に匹敵するくらいの重要なものになる可能性も十分はらんでいるんじゃないかと思いますが、その点いかがでございますか。例えばアメリカの今の姿勢からいいまして、ソ連に対するいわゆるジャクソン・バニク修正条項の取り扱いあるいはソ連への最恵国待遇供与とか米ソ通商協定可能性とか、そういうようなものまで含んでくるのではないか。その辺はいかがでございましょう。
  68. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 私どもが承知しております限り、今回の米ソ首脳会談は、特に議題を決めることなく、非公式な中間的なものとして開催されるということだと伺っております。  そういう中において、先ほどの御指摘のようなアメリカにおきます最恵国待遇の動きでございますけれども、御承知のように、一九七四年にこのことが議題になったことがございますけれども、当時の移民法に関連するソ連側の姿勢を理由に、アメリカの中でジャクソン・バニク修正条項というのが出まして、これが凍結されたという経緯は御承知のとおりでございます。最近に至りまして、ブッシュ大統領がソ連の移民法の改善を評価いたしまして、ソ連の移民法の体系が国際的な水準に合致するようになるのであれば、この凍結を一時解除してもいいということを申し出されておられます。そういう傾向で、アメリカの中にこれを見直し、ソ連に最恵国待遇を与えようという動きがございますけれども、そのためには通商条約を交渉して再度締結をしていくというような手続も残っておりますから、方向は見えておりますけれども、まだ今後の話であるというふうに了解しております。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 それと関連いたしますけれども、我が国のココムに対する対応が今の流れの中で今後変わってくるという可能性はどのようにお考えでしょうか。
  70. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 ココムにつきましては、これに加盟しております加盟国の間の申し合わせにより実施しているわけでございますので、その申し合わせを忠実に守りつつ、我が方としては、この効果的な実施ということに配慮しつつ、今後ともやっていくということでございます。  そういう意味で、ココムの中でももちろん古いものは見直し、そして少数の、限られた品目の周りに高い障壁をつくるべきだという議論が行われていることは事実でございますけれども、なお東西関係におきまして、特に経済関係におきまして、安全保障の見地も重要であるという共通の認識も存在するということを申し上げたいと思います。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 今の外務大臣の御報告によりますれば、海部総理がポーランドからの招待を受けておられる、こういうことでございますし、新聞等によれば一月にもポーランドを訪問したいというような方向でございますけれども、これは大体そのように我々は理解してよろしいわけでしょうか。行かれる以上は何か献立を持って行かれるのだと思いますし、また日程なども、当然今の政治情勢からどこを選ぶかというのは大きな問題だと思うのです。献立と日程について外務大臣に伺いたいと思います。
  72. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ国会が開催中でございますし、これからの政治日程というものは国会優先でございますから、国会の審議の経過の上で判断するべき問題であろう。そのような時点で一月の総理訪問について具体的に日程を決めているというようなことはまだございません。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、ポーランドの方は、特に外務次官がわざわざ日本まで来て、外務大臣を通じて総理に親書を渡しておられるわけですから、当然期待をしておられると思うのです、具体的な日程、献立について。余りそう否定的なことを言われると、向こうは大変がっかりすると思うのですけれども
  74. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げまして、この国会の開催中、野党の各党から解散をしろという要求も出ておることでございまして、日本政府としては政治日程が非常に決めにくい。こういう政治情勢の中で、解散がないというような状況でいわゆる年内予算編成が完了するとして、来年の一月の自然休会に入るという見通しがはっきりいたしますれば、先方からの御招待もいただいておることでございますから、政府としてはいわゆる首脳外交というものが必要であろうという判断を決めるだろう。私はそのように外務大臣としては考えるべきであると考えております。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 西ドイツのコール首相はポーランドを訪問して十億ドルの援助を既に発表されておるのでございます。先ほど献立と申し上げましたけれども、いわゆる国際問題専門家の間では、ポーランド援助について西ドイツと日本が主役になるのではないかという言い方もされておるのです。外務大臣政府としては、別にコールさんに張り合うわけじゃありませんけれども、どの程度のことをお考えでいらっしゃいますか。また技術的にODAで処理できるのか、それとも全く別な会計を考えねばならないのか、そういう点もあわせて伺いたいと思います。
  76. 中山太郎

    中山国務大臣 実は、先生も御案内のように、このDACの援助対象国の中にポーランドとハンガリーが含まれておりません。そういう意味で、ODAを適用するということは、日本の法律の解釈からすると非常に難しいという考え方がございます。一方、我々は西側の一国として、このポーランド、ハンガリーの援助につきましては、既に意思を決定しておりますから、その細目につきまして欧亜局長から現状の御報告をさせたいと思います。
  77. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 今ポーランドに対する援助につきまして、アルシュ・サミット以来議論されていることを簡単に御報告申し上げたいと思います。  第一に、ポーランドにつきましての食糧緊急援助ということが話題になっており、これについて各国二億七千百万ドルのコミットが今までなされております。それからさらに、ポーランドの市場経済への移行をスムーズにするためのマネジメント協力環境協力というような分野での協力が議題になっており、それについて各国で約六億ECU出すべきだという一つ目標がECから提案されております。そういう状況がございます。それからさらに、ポーランドがIMF等構造調整について合意ができることを条件に、ポーランドに対して財政援助を与えるべきであるという議論がなされております。  この三つの分野が主にポーランドに対する援助の内容として各国間で議論がされ調整がされている状況でございます。日本政府として具体的にどういうことが行い得るかということにつきましては、鋭意部内で検討中というのが現在の状況でございます。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 今ポーランド、広くは東ヨーロッパ全体の奔流につきまして日本政府の対応を伺ったわけでございます、ソ連を含めてでございますが。外交青書あるいは防衛白書を通じまして、こんな厚いのをいただいておりますけれども世界は変わりつつある、けれども日本政府のスタンスは頑固に変わらずにいこう、こういうようなトーンで書かれておるような気がいたします。今は対決の時代から対話の時代にがらがらっと変わりつつあることは、皆さんもう御承知のとおりでございます。ここでソ連は潜在的脅威という哲学をなおかつ続けられるのかどうか。何度聞いても、答えは大体わかるような気がするのですが、先ほど外務大臣は、やはりソ連のゴルバチョフ政権の安定度を見きわめてからというようなお言葉もちょっとあったのですけれども、したがって、今の動きを肯定的に見るまでに若干の時間がかかったというようなニュアンスでお答えがありました。これは、もし近く行われます米ソ洋上会談、そして来年の米ソ首脳会談、さらに再来年のゴルバチョフ書記長の日本訪問、こういうような中で、そういうものが確かめられていった場合に、ソ連は潜在的脅威というこの哲学をそのときにはこだわりなくもう一度検討し直す、そういう用意はおありでございましょうか。
  79. 中山太郎

    中山国務大臣 日本の安全保障に関する国家基本問題でございますから、この問題について私どもは極めて十分な注意をしていかなければならないと考えております。  今先生お話しのように、十二月二日、三日に行われる地中海での米ソの首脳会談、これは先日私オーストラリアでベーカー国務長官ともそれの経過についてお話を承りました。そのお話を御紹介いたしますと、明年予定されている米ソ首脳会談というものに先立ちまして、ブッシュ大統領とゴルバチョフ書記長との間に人間的な何といいますか話し合いをした経験がまだ全然ない、こういう中で米ソの首脳間の信頼関係を醸成する、そういう一つの問題、さらに議題を決めないで、そして国際情勢全般について双方が意見の交換をしたい、こういうことでこの夏ごろから米ソ間で話し合いが行われておって、やっとこの日程が決まったというふうなことでございます。  今先生指摘のように、国会が招待されて来週お越しいただくヤコブレフ氏を団長とするソ連の訪問団の訪日、最高会議方々の国会での各党とのお話し合い、こういうものの中で、いろいろとソ連の新思考外交というものの考え方が出てくるということは、私どもも十分期待ができるものでありますし、また明年のシェワルナゼ外務大臣の訪日、また明年の暮れごろに予定されている日本の外務大臣の訪ソ、それからゴルバチョフ書記長来日へのいろいろな事務レベルの協議、それに合わせて、その間には恐らく米ソの関係あるいは米ソ首脳会談が公式に来年開かれます。またヨーロッパの政治経済の変化、そういうものの中で、私どもは来るべき新しい国際政治が平和を志向した新しい展開を始めていくという確信が持てた時点で、もちろん先生のおっしゃるような潜在的脅威というものが解消される日が来ることを外務大臣としては期待しているものであります。
  80. 河上民雄

    ○河上委員 今の外務大臣のお答えをいただいたところで、少し話題を次に移したいと思います。  既に大臣も御承知のとおり、最近朝鮮半島の情勢が非常に激しく動いております。もちろん何らかの声明とかそういうものが出ているわけではございませんけれども、いろいろの往来があることは御承知のとおりでございます。  その一つは、金日成主席がひそかに中国を訪問したというふうに伝えられておりまして、必ずしも関係国がこれを公式に確認をしているわけではございませんけれども、大体そのように理解していいのではないかというような情報に接しているわけでありますが、その背景を日本政府としてはどういうふうにお考えでありますか。まず事務方の方から伺います。
  81. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  御案内のように、新聞報道でいろいろ取りざたされておりまして、私ども北京の大使館を通じまして中国政府に金日成主席訪中につきまして確認方を努力いたしておりますけれども、先方はノーコメントということで通しております。逆に、あえて申しますれば、先方は否定はしていないということでございます。  さて、その背景にどういうことがあるのかということにつきましては、今の段階で訪中自体が確認されておりませんので、第三国の間のことでございますから、私どもから軽々に、これまた新聞には、最近の朝鮮半島をめぐる情勢についての意見交換だったのではないかとか鄧小平さんのああいう辞任にまつわる話があったのではないかとかいろいろ取りざたされておりますけれども、私どもとして有権的にこういう目的を持った中国訪問であったということを申し上げる段階にはまだないような気がいたします。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 一方、アメリカの元国務省国務次官補で日本でも非常になじみのあるシグール氏が、これはひそかにではなく一教授としてピョンヤンに招かれ、事実上は国家主席の李鐘玉、外務大臣の金永南、また朝鮮半島南北統一問題の担当者であるホ・ダムの諸氏と会って帰ってきておられるわけでございます。そのほかかつてアメリカ中国駐在大使を務めた人の訪朝も伝えられております。外務大臣、こういう動きについてどのようにお考えですか。  また、新聞報道によりますと、シグール氏はソウル訪問の後日本に立ち寄って、そしてアメリカに帰られたということでありますし、外務大臣は特に朝食会をセットしてお会いになったということでありますが、シグール氏からどういう御報告を受けておられたか、この委員会で報告を願えれば幸いです。
  83. 中山太郎

    中山国務大臣 シグール氏と私は実はもう十数年来の友人でございまして、外務大臣でなくても絶えず、ワシントンに行けば会いますし、彼が日本へ来れば会うという関係でございました。北朝鮮あるいは韓国訪問の後でたまたま日本を訪問されるということで、私が特に朝食をともにいたしたということでございます。  そういうことで、シグール氏のお話を御紹介すると、北朝鮮の姿勢というものは余り変化はないということでございまして、私ども日本政府が最大の関心を持っております第十八富士山丸の抑留された方の問題につきましても、変化はなかったというお話がございました。
  84. 河上民雄

    ○河上委員 朝鮮半島情勢につきましてはいろいろな角度から検討する必要があると私は思っております。もちろん今具体的にこういう大きな変化があった、公式的な声明とかそういうのはないわけで、ないにもかかわらずいろいろな動きがある。これは一種の時の兆しのようなものであって、私どもはこうした時のしるしに耳を当てていくこともまた外交の非常に重要な責任ではないかと思っておるわけでございます。  ソ連の態度は、やはり中ソ関係の改善という枠組みの中で朝鮮半島問題を処理していきたいということではないかと思いますし、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮は、これは私の感触でございますけれども、米朝関係のパイプをつくることに非常に熱意を持っておる、それからまた南北対話についても非常な熱意を持っておるというふうに受け取られるのであります。かつてカーター大統領時代アメリカはいわゆる三者会談を提案いたしましたけれども、北はこれを拒否した経緯がございますが、現在のピョンヤンの態度からしますと、むしろ三者会談をオーケーする可能性が十分あるのではないかというような気が私はいたしますけれども外務省はいかがお考えでしょうか。     〔柿澤委員長代理退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  85. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  まさに先生仰せのとおりでございまして、北朝鮮の現在の考え方は、私ども想像いたしまするに、いわゆる三者会談というものに対して大変な熱意を持っておるということだと思います。しかしながら、これも御案内のとおりでございますけれども、もう一方の、三者の一つの当事者でございます米国の方が、この朝鮮半島の問題というのは、当面やはり南北の真剣な対話を通じて進展が図られるべきものであるという強い態度をとっておりまして、そこに両者の立場がなかなかかみ合わないというのが現状のように思います。
  86. 河上民雄

    ○河上委員 しかし、私はここで思い起こすのですけれども、米中接近のとき日本の頭越しに行われたという外務省として苦い経験をお持ちであるわけでございますが、当時の佐藤総理が非常に烈火のごとく怒った表情を私は今でも思い起こすのでございますけれども、実は私は一九六九年の夏に行われました第二回日米民間人会議に社会党として初めて出席をいたしまして、ここにおられる石橋さんも社会党の書記長でおられたように記憶しておりますが、党としても御了解をいただいて出たのですけれども、そのとき偶然お会いしたアメリカの代表の一人がラムズフェルド氏で、彼と非公式に話をいたしましたときに、これは必ずニクソンは米中接近をやるというふうに私判断いたしまして、毎日新聞社の「エコノミスト」にそのように書いたことを覚えております。それから二年間、残念ながら外務省はなかなか私の意見にうんと言っていただけなかったのでございますが、一度あったことは二度あるということにならぬように、ある事柄にとらわれて大事な時の兆しを見失わないようにしてほしい。そうしないと、先ほど来お話がありましたように、金をあちこちばらまくだけの経済大国ということで世界から侮りを受けることになるのじゃないか、こんなふうに私は心配いたします。  ここでまた重ねて皆さんの御意見を伺うのもいかがかと思いますが、ただ、ここで一つだけ確認しておきたいと思っておりますのは、竹下内閣時代に、朝鮮半島問題の平和的な解決のために、朝鮮民主主義人民共和国との関係改善にも意欲を示す答弁を国会において総理みずからされたスタンスというのは、今も変わっていないというふうに私ども考えたいのでございますが、どうも最近いろいろな国会の論議を見ますると、その点ちょっと不安になりますので、その点大臣から伺いたいと思います。
  87. 中山太郎

    中山国務大臣 お尋ねの竹下総理発言は、現内閣においても変わっておりません。
  88. 河上民雄

    ○河上委員 大臣は、先般国連で、南北朝鮮、つまり大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国の加盟問題について触れられまして、同時ないしはいずれか先にというような言い方をされたというふうに伺っております。これは私ども調べるまでもなく、これまでの日本政府の態度から見ますると、日本政府は同時加盟ということは言われておりますけれども韓国を場合によっては優先させてという御発言あるいは提案というのは今までなかったのでございまして、これは私は無用な発言であったのではないかというような心配を持っております。ましてや最近の、北朝鮮はいわゆる危険な国家であるというような政府側の発言も、私はこの国際情勢の中で大変無神経な発言だったというふうに思うのでありますが、これらにつきまして、もう少し慎重な、次の瞬間何が起こるかわからないあるいは打開しなければならないこういう状況の中で、一歩一歩足を踏み締めていくような国際的な発言というものが必要じゃないか、私はそう思うのですが、大臣並びに外務省のお答えをいただきたい。
  89. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 まず、先般の大臣の国連における演説の件でございますけれども、あそこで大臣からお述べになりました趣旨は、要するに、韓国が単独加盟というものを希望するのであれば、韓国の加盟国としての資格に特に私どもは問題ないと考えておるわけでございまして、国連の普遍性という観点から、これはこれで支持し得るということをお述べになったわけでございまして、これはあの時点で日本政府が政策を変更したということではございませんで、一貫してかような立場日本政府としてはとってきたつもりでございます。ちなみに、日本政府だけではございませんで、このような考え方アメリカを初めとして多くの国におきまして支持されておるところでございます。  それから、先般来国会で、予算委員会等での御議論ございましたけれども、あの御議論は御議論として、先ほど大臣から御発言、御答弁がございましたように、政府としてやはり北朝鮮との関係をできるだけ改善したい、こういう努力はそれはそれで続けていきたいというのが現在の内閣の一貫した姿勢であると私ども理解しております。     〔浜田(卓)委員長代理退席、柿澤委員長代理着席〕
  90. 河上民雄

    ○河上委員 我が国と朝鮮との間には第十八富士山丸問題という不幸な問題もあるわけでございまして、特に十一月の十五日で事件発生以来六周年を迎えるわけであります。私は、一億二千万の日本国民の中に、こういう二人の方が抑留されている事実というものは、やはり外交全体の中でもう少し大切に、真剣に扱われるべきではなかったかという気がしてなりません。一匹の迷える子羊を探し出すために九十九匹の羊を置いてでも出かけていくのが羊飼いであるという例え話もありますが、先般来の国会論議は余りにもその点では無神経であったというように私は思わざるを得ないのでございます。ひとつ今日の朝鮮半島情勢の中において、第十八富士山丸の問題について政府としてさらに真剣に取り組む姿勢をここで表明していただきたい、こんなふうに思います。
  91. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、この第十八富士山丸問題の解決のためにできるだけの努力を今後とも続けてまいりたいというふうに考えております。
  92. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど、既に他の同僚議員からお話がありましたので、私は余り繰り返して触れるのもいかがかと思いますが、中国鄧小平氏が軍事委員会主席の地位を引退を表明されました。このことにつきまして政府としてどういうようにお考えであるか、もう一度伺いたい。
  93. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 昨日の記者会見におきまして、大臣の方から、鄧小平主席の辞任のニュースを聞かれまして、中国における一つ時代の節目、変わり目が来たという感じがつくづくするということを記者会見で述べておられました。  今回のいわゆる五中全会のもう一つのポイントは、鄧小平氏の辞任とともに、今後の中国経済の運営のあり方について一つの方針を出したところに大きな意味がございまして、それは一言で申し上げますと、改革開放という従来の路線は引き続きこれを堅持していくということが第一点。そして第二点は、しかしながら、それを堅持していくためにもしっかりした基盤が中国経済に必要だという認識のもとに、これから、ことしから三年、あるいは場合によってはそれ以上の期間をかけて経済の整とんと申しますか環境の整備と申しますか、そういうことに力を注いでいきたいという趣旨があわせて発表されたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、ただいま中国情勢、いろいろなことがそれはそれで起こっておりますし、経済もなかなか難しい問題も抱えておりますので、そういった状況を日本政府としても注意深く分析、見守っていきたいと思っております。  ただ、もう一点つけ加えさせていただきますれば、中国鄧小平氏の辞任によりまして、中国の内外に対する姿勢自体が、先ほど改革開放がそれなりに維持されるであろうということを申し上げましたけれども、これが大きく変わるということは予想する向きはございませんし、またそういう前提で、我が国との関係も今回のこの辞任劇によって非常に大きな影響が出てくるというふうには私ども考えておりません。
  94. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど大臣は、今後の中国との関係におきまして、文化面における責任者の交流を図るというようなお話をされておりましたが、経済関係でこれまで決まっていること、経済援助の計画とかあるいは今後の、将来どうあるかというようなことにつきまして、これを再開するめどというのをどの辺に置いておられるか、ただ情勢を見守るというだけでなく、ここにポイントを置いて、その時期をはかりたいというようなことがおありであるかどうか、その点をちょっと伺いたい。
  95. 高橋雅二

    ○高橋説明員 お答えいたします。中国に対する援助につきましては、先ほど行いました渡航自粛勧告の解除以来、それまで事実上停止、中断されておりました経済協力案件は、それぞれ個々の状況、それから先方の受け入れ態勢の状況に応じまして徐々に再開してきているところでございます。  今後のことでございますけれども、新規案件につきましては、今先生の御質問でございますけれども、緊急的かつ人道的な援助は別といたしまして、やはり引き続き現地の情勢がどういうふうになるのか、また国際的な動向がどうであるのか、それから今実施しております案件の進捗状況とか、そういうようなことをいろいろ勘案いたしまして、そういうのを見きわめまして慎重に対応していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  96. 河上民雄

    ○河上委員 中国との関係は六・四以降大変難しい状況に置かれていることは、私ども十分骨身にこたえて承知しているわけでございますけれども、私は、ここで日中関係につきましては、二つのポイントが必要だと思っておるのです。  その一つは、天安門事件に対する見方というのは、我々と中国とは非常にかけ離れていることは事実でありますけれども、しかし近代史における日中関係という長期的な見通しの中で中国とどういうふうにやっていくかということ、その視点を我々は絶対忘れてはいけないと思うことが一つ。  もう一つは、我々に一番身近な朝鮮半島の問題でも、やはり中ソ関係というのがもう一つの軸になっていることも事実です。もちろんアメリカ韓国あるいは北朝鮮との関係もありますけれども、中ソ関係というのは一つの大きな軸になっているわけで、これは三十年間対立していたのがことしの春終息を迎えた、こういうことを考えますと、中国というのがやはりアジア外交の一つの拠点になっているという事実も我々は十分考えていかなければならないというふうに思っておるわけです。  現にアメリカは、キッシンジャーをあるいはニクソンをというように、現在公式のポストにない人を多用しながら中国との関係、例えば先般の国慶節の前夜祭の祝宴にはへイグ元国務長官が出席して貴賓席のようなところへ座っているというような状況を見ておりますと、やはりそういう外交というのは、今日、単に外務省だけがやるんではなくて、もう少し幅の広い、さらに言えば民間外交までも含めての努力というのが必要なんじゃないか、中国との関係についてはそういった観点からも留意していく必要があろう、私はこんなふうに思います。そういう意味で、先ほど大臣は、日中議連の伊東会長ほか超党派の各副会長が訪中されたことに言及されましたけれども、何かもう少し幅広い努力が必要じゃないか、こんなふうに思っておりますので、これを要望して、私の質問を終わりたいと思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。
  97. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生指摘のとおり、中国アジアにおける立場、これは日本にとりましても、今までも大切でございましたが、これからも大変大切な国、しかも友好関係を深めていかなければならないし、経済協力も深めていかなければならない国と存じておりますが、不幸な天安門事件が出ました。しかし、この問題は中国の内政上の問題というふうに私は理解をしておるわけでございまして、このキッシンジャーニクソン氏の訪中というようなお話は、私はかねて存じておりました。日本としては、伊東先生を中心にする超党派訪中団に行っていただくということについては本当にもろ手を挙げて実は喜んだわけでございまして、そういう意味で、その当時の鄧小平氏、また中国の首脳は、初めて西側から来た超党派の賓客を厚く出迎えて、そして虚心坦懐な話を双方が行われたと私は報告を受けております。そういう意味で、キッシンジャーあるいはニクソン氏の訪中の前に、日本超党派の日中友好議連の先生方が訪問されて、中国の首脳部と虚心坦懐な話をしていただいたことは、日本国家にとりましても中国にとっても極めて意義の深いものであったというふうに私は高い評価をしておりますが、先生の御指摘のように、日中関係の改善のために今後さらに努力をいたしてまいりたいと考えております。
  98. 柿澤弘治

    柿澤委員長代理 高沢寅男君。
  99. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、きょうは内政干渉という問題、その問題を下敷きにしながら幾つかの問題についてお尋ねをいたしたい、このように考えます。  まず、内政干渉ということの定義を政府としてはどのようにお考えか。昭和六十一年の二月二十六日、この衆議院の外務委員会の審議がありまして、その際、日本が他国に対して経済の援助を供与する、その援助の供与との関連で、相手国に対する内政干渉のようなケースが出るということが心配される、そんなことがあってはならぬという立場から内政干渉についての御質問があって、その際、当時の安倍外務大臣がこういうふうにお答えになっておるわけですね。「これから国際社会で日本が貢献をしていく上においては、やはり日本なりのことも言わなければならぬ立場もあるわけでございますから、そういう日本役割日本の責任と内政干渉、そういうものとの関係をどういうふうに規定をしていくか、どういうふうにとらえていくかということについては、これからいろいろとひとつ検討さしていただきまして、そういう面で検討の結果が出れば御報告をさしていただきたいと思います。」こういうふうなお答えが昭和六十一年二月の本委員会であった。  その後、外務省内部で内政干渉の定義といいますか、そういうようなことについて何か検討を進められて一つの結論を得ているというようなことがあれば、ひとつここで御説明を願いたい、こんなふうに思います。
  100. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先生お尋ねの安倍大臣答弁につきましては、その後本委員会で発表といいますか答弁されたという記録が見当たりませんので、大変申しわけないのですが、この際改めて内政干渉についての考え方を述べさしていただきます。  国際法上の概念としての干渉というものは、概念規定の仕方はいろいろあり得ますが、一般的に言いまして、現状の維持または変更を目的として国際法上他の国が自由に処理し得るとされている事項に立ち入って、強制的にその国を自国の意思に従わせようとするということだと言われております。このような一般国際法上の干渉の定義につきましては、安倍大臣発言の前に何回か政府側から答弁したことはございます。  いずれにいたしましても、どのような国家の行為が干渉に当たるかということは、ケース・バイ・ケースで判断していくことになります。
  101. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういう内政干渉という事態が起きた場合に、何か国際的枠組みでそういうものをやめさせるとかいうふうな、枠組みというふうなものは一体考えられるのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  102. 福田博

    ○福田(博)政府委員 今申し上げたのは、一般国際法上の定義でございまして、それに反することが行われるときにどういう仕組みが国際法上あるかといいますと、典型的な例としては、例えば武力を行使することによって命令的な関与、つまり内政干渉を行うというようなことになりますれば、これは今や国連憲章その他でがっちりとした仕組みが出ている。むしろ、あえて憶測を入れて先生の御質問に対してお答えするとすれば、最近よく内政干渉と言われておりますことは、本来国がその国の国内問題として処理できる権限がある、そういう能力があるものについてほかの国がいろいろなことを言う。その言い方がかなり強い場合もあるし、弱い場合もある。  最近の具体的な例で国会で問題になったものを申し上げますと、六月に天安門事件がございまして、このときに人権の関係からいろいろな国がいろいろなことを申しまして、中国は、基本的人権をどのように保障していくかということは、それぞれの国に任せられた問題であるから、これは内政干渉であるということを申しました。  こういう問題につきましては、確かに基本的な人権の保障というのは一国に任せられているという意味では国内問題でございます。他方、国際法上あるいは国際場裏におきまして人権について非常にさまざまな議論が戦後行われてきているというのも隠れもない事実でございまして、それに基づいて各国がそれぞれの立場から発言するのも、また現実問題としてあるし、それは認められてしかるべきだということで、そのあたりの兼ね合いというのは、国際法の問題を離れて適当かどうかというような尺度で考えられるべきことだと思います。
  103. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、もう一つの例として南アフリカのアパルトヘイト、これに対しては、経済的な制裁を加えるとかいうような形で、人道問題ですから、これはただ単なる内政では済まぬというような国際的な対応がありますね。これも一つのケースであると考えていいですね。
  104. 福田博

    ○福田(博)政府委員 アパルトヘイトの問題につきましては、これは国連できちっとした決議がございまして、この決議に基づいて行っておるわけですから、南アフリカ政府がどういう考え方をしておっても、それが内政干渉に当たるというようなことは全くないわけでございます。
  105. 高沢寅男

    ○高沢委員 内政干渉ということに日本がかかわる場合、日本が他の国に対して内政干渉を侵すようなケース、その例としては、最近よく言われる援助の問題ですが、発展途上国援助を供与する、しかし、その援助が結果として相手の国の偉い人の懐へ消えてしまうとか、その援助が本来の援助目的に合致していない、その効果が出ないというようなときに、相手国における日本援助の使い方というようなことについて、こうすべきだとかこうしてほしいというようなことが当然こちら側からすれば出てきますから、そういうことが相手国から見て内政干渉ということになりがちではないのかという点が心配されるわけです。この辺のころ合いといいますか、当然外務省が一番表に立たれるわけでありますが、その辺はどんなふうに考えておられますか。
  106. 福田博

    ○福田(博)政府委員 確かに先生指摘された問題というのは、膨大な経済援助を行っていく中において不適切な例があった場合に、援助供与国としてどういうことができるかという問題と考えることができると思いますが、それがどこまでできるか、これは法律的なお答えで大変恐縮でございますが、例えばそれが着実に履行されるために会計検査をやったらいいではないかというような考え援助供与国側としてはあるわけですが、会計検査というのは、これは国が一国内で、その領域内に持っております主権行為として、まさにその国だけがちゃんと有権的に施行できる権利でございます。したがいまして、我が国がその供与した援助がどのように不適切に使われているか疑いを持っていたとしても、相手の国で会計検査をするというのは、これはまさに主権の侵害に当たります。それでは、じゃ同意を受けたらできるかといいますと、これは国家というのは平等でございますので、確かに理論的には同意を受ければできるという考え方もできますが、しかし、一般国際法上の基本的な概念である国家は平等であるという考え方に立ちますれば、そういうことを同意を得てやるということも、実は不適切な行為であるということも言えるかと思います。現実問題としては、個々の具体的なケースによって判断せざるを得ないわけですが、その点については我が方の善意がどういうものであれ慎重な対処が必要となるというのが国際的な現実だと思います。
  107. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度は逆に、日本が内政干渉を受ける、されるというふうなケースですね。このことについてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど来個々の質問の中にも出ているわけですが、日米の経済構造協議、この中で、これは本来は日本アメリカに対して、あなたの国の経済構造はこうなっておるから、これをこう直しなさいと言う、アメリカ日本に対して同じことを言う、お互いにその相手の国の経済構造のあり方について、その要求なり意見を述べ合うという形は対等なわけですが、現実の、これはまさにケース・バイ・ケースの具体的なケースに入ると思いますが、アメリカから日本に対して要求されてくることの性格によっては、まさに内政干渉というような性格が出てくるんじゃないのか、私はこんなふうに実は思います。  一例として、日本には大店法という法律がありますね、地域の商店街を守るという意味で。大規模小売店の出店についての規制を加えている。こういうものは、アメリカから見ると、それは日本の経済構造の非常におくれている面だ、日本の流通機構を近代化せよ、それでなければアメリカの商品は日本へ入らないということで、この大店法の規制をやめろというふうなことがアメリカ側から現に来ているわけですね。あるいは建設業界には日本に伝統的な談合というやり方があります。このよしあしは我々が当然検討して直すべきは直すということになりますが、アメリカ側からすると、先ほど柿澤さんの言われたヒルズさんなども、これをやめさせろ、これに罰則を設けろというふうなことを言われるということになると、これはまさに日本の国の、我々の管轄事項に対する一つの大きな介入ではないのかというようなことも考えられますね。そういうケースがこの日米間の経済構造協議の中で非常にたくさん出てきておる。  そして、その場合に、アメリカの方は一つの決め手を持っておる。つまり、そういうことで日本の経済構造改革が満足できる結果が出ないというようなときは、通商法三〇一条の発動というふうなことをちらちらさせたり、一種の、いざというときの、アメリカ日本に対するピストルを持っておるというふうに表現してもいいんじゃないか。日本は同じようなケースで向こうの対応が不満足な場合、アメリカに対して、日本はどうもこうするぞというピストルはないということではないのか。こういう日米間の力関係の中では、本来は対等な、そしてお互いの経済を改革するための話し合いであるものが、結果としては内政干渉になるというふうなケースが私は現に目の前へ来ておる、こんなふうに思いますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  108. 中山太郎

    中山国務大臣 先生指摘の日米間の構造調整会議における双方の立場というものは、お互いが平等の立場でお互いの問題あるいは自分の国の問題というものを議論し合う、こういう基本的な日米間の合意は日米首脳会談で決定を見ております。  また、スーパー三〇一条の扱いにつきまして、私も同席をいたしましたが、スーパー三〇一条で一方的にアメリカ国内法で日本に向かって圧力をかけてくるということは私どもは認められない、そんなものをやらずにひとつ対話でやっていこう、こういうことをはっきり申しております。  構造調整協議にいたしましても、先方は明年春までにというような日限を切って冒頭に出てまいりましたけれども、海部総理から明確に、日本としては、それは構造調整協議の結論が出る努力はしますけれども、いついつまでにやれるという問題ではありません、それは双方が誠意を持ってお互いに協議をしていくということが原点でなければならないということを日本政府立場として明確に先方に申し入れてきた次第でございます。
  109. 高沢寅男

    ○高沢委員 私、今のように内政干渉はあってはならぬし、またしてはならぬというこの大前提に立ちつつ、ただ、今大変な国際化時代と言われるわけですね。こういう時代になってくると、一つの国の管轄事項、この垣根の中に入り切らない、そういう問題が幾つか出てくるんじゃないのか、ますますふえていくんじゃないのか。  一例として、国際通貨の安定というような立場からG7とかG5とかいろいろそういう会議がやられておりますが、その中で、ある国に対して、この段階ではおたくは公定歩合を上げてくれとか公定歩合を下げてくれとかいうようなケースが出てくることは今までもあったし、これからもたくさんあると思いますね。そういうときに、ある一国の公定歩合を上げる下げるということについて国際経済上の立場から要求されるというような、その要求の仕方も非常にストレートにやる場合もあるでしょうし、そうでなくて間接的にやる場合もあるでしょうが、そういうケースの中で、これは内政干渉だというようなとらえ方でするのが一体適当であるのかどうか。  私は、そういう点において、これから国際化時代と言われる中では非常にその辺のデリケートな、判断の難しいというケースがふえてくるのじゃないかと思います。そうすると、そういう時代におけるこういう内政干渉をやってはならぬ、受けてはならぬという、これらの国際的な原理原則も何か新しい物差しが必要になるんじゃないのか、こんなふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  110. 福田博

    ○福田(博)政府委員 従来、一国が専権で決められる事項について、新たな国際法の発達、例えば多数国間条約ができるとかいうことを通じて、本来一国だけで決められていた事項についても、国際的な合意のもとにおいてのみ主権を行使できるという事項は随分ふえておるわけでございます。先ほど例に挙げました人権の例をとりましても、戦後いわゆる人権規約というようなものができている。これは、その限りにおいて加盟国というものは新たにできた国際規範に従って行動しなければいけない。その意味で、一国に任せられている国内事項というのが減っていくわけでございます。  他方、国内事項として残ってはいるが、国際的な交流あるいは関係というものがふえることによって、ほかの国も意見を言える分野というものもまたふえてきておるわけでございます。その傾向が経済のみならず安全保障その他いろいろな分野、文化の面、環境の面、そういうところにおいて非常にふえている。この点につきましては、確かに一つの国がそれぞれ決めていける権限は持っておるが、ほかの国の考え方についても、それがいわゆる最初に申し上げました干渉に当たらない限りにおいては、それなりの意見として耳を傾けて、決めるときは自分で決めるということでやっていくことだと思います。
  111. 高沢寅男

    ○高沢委員 これはもう文句なしに内政干渉だと言えるようなケースについて、これは日米間ですがね、お尋ねしたいと思います。  先ほども出ましたけれども、この十一月二日にアメリカの上下両院で、日本の防衛のために日本に駐留しているアメリカ軍、その米軍の直接経費の全額を日本に負担させようという内容の決議の草案ができた。これは日本の次期中期防はアメリカと協議しながら策定することを求める、その中期防の中では空中警戒管制機(AWACS)あるいは空中給油機などはアメリカから完成品で買うことを求める、あるいはまたアメリカ政府に対して、日本韓国などと安全保障問題にかかわる多国間協議をやるようにアメリカ政府に求めるというふうな内容のことがこの決議の草案としてできたということですが、この草案はその後上下両院のちゃんと決議として決定されたというふうになったのかどうか、この経過とその後の成り行きをちょっとお尋ねしたいと思います。
  112. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 十一月二日、上下両院の協議会において国防予算授権法案についての合意が成立いたしました。そして九日に下院を通過しておりますけれども、上院はまだ通過しておりませんで、手続的には、これは米国の立法手続のことでございますが、大統領がそれに署名すれば成立するということになりまして、まだ成立しているということではございません。
  113. 高沢寅男

    ○高沢委員 それが成立した場合、アメリカ大統領がその決議をそのまま受けて、今度はアメリカ政府の問題として日本政府に対して迫ってくるというふうなことの可能性、決議はされてもアメリカ大統領としてはそれはそのままはやらない、ストレートにはやらない、そういうふうな可能性の点はいかがでしょうか。
  114. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 これはまだ成立しておりませんので、正確にお話しすること、これは加えて外国の法律でもございますから、できませんけれども、頭のところに、以下は米国議会のセンスである、従来、意向と訳す場合が多うございますけれども、そのように書いておりまして、これは拘束力を持っているということでもございませんので、先生が今おっしゃられましたような事態に立ち至るというふうには、今のところは思っておりません。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 高沢寅男

    ○高沢委員 この種のケースは、今までも随分アメリカの議会で論議されたりというようなことはあるし、また日米間の話し合いの中で、アメリカ側からこの種のことは要望されたというケースもいろいろあったわけで、したがって、まだ決議としては成立していない、成立したときにアメリカ政府はそのままそれでもって出てくるかどうかはわからないという今の有馬局長お話ですが、一応そういう問題が来るというふうな立場に立って、その場合の対応というふうなことを私はお尋ねをしたい、こう思うわけです。
  116. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私ども繰り返し申していることでございますけれども、安保条約上我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、我が国を防衛する立場にあります米国として、我が国の防衛努力でありますとか、日米安保体制の運用ぶりにかかわる諸問題に関心あるいは期待を有するというのは自然なことだと存じております。したがいまして、今後とも我が国としては、外交の基軸であります日米関係の一層の発展を図るという意味で、かかる米国の感触自体については、それはそれとして留意していく必要があるだろうと思っております。それで我が国のこの分野における努力というものは、憲法あるいは基本的な防衛政策等に従ってあくまでも自主的に行っていくべきものであることは申すまでもありません。したがって、これが内政干渉といった性格を持っているというふうには考えておらないのでございます。
  117. 高沢寅男

    ○高沢委員 今有馬局長から安保について触れられましたが、このことでちょっとお尋ねします。  日米安保条約では、在日米軍の目的、これは一つ日本の安全に寄与する、これが目的である。もう一つは、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する。目的としてはこういうふうな二つの目的が出されているわけですね。そうすると、そういう目的でアメリカ軍が日本に駐留し、そしてアメリカはそのための費用の支出をしております。そのアメリカの費用の支出の中で、これは日本防衛の目的の費用である、これは極東防衛の目的の費用であるというふうな区別なり仕分けが果たしてできるのかどうか、その辺はいかがでしょう。
  118. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 これも従来から申し上げていることでございますけれども、我が国の平和と安全は極東の安全と密接に結びついているわけでございまして、極東の平和と安全がなくて我が国の安全は十全を期しがたいということでございまして、このような基本的認識に基づいて安保条約第六条に基づいて米軍の駐留を認めているわけでございますし、在日米軍が我が国及び極東の安全に寄与する役割を認識して提供しているわけでございますから、在日米軍経費の項目について、今先生がおっしゃられましたような区分をいたすということは、事実上不可能であると存じております。
  119. 高沢寅男

    ○高沢委員 その両者の関係は、不離一体であって、これは区分けはできない、こういうお答えでありますが、そういたしますと、今度は逆に裏返して、駐留アメリカ軍の支持のために日本の側から経費の支出がなされているわけですね。とすると、日本側からなされる駐留米軍のための経費、これは日本防衛のため、これは極東防衛のためというような区別が一体できるか、こうお尋ねしたいわけですが、この点は不離一体である、こういうお答えになるのですか、いかがですか。
  120. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そのように存じます。
  121. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、日本の支出する費用の中に極東防衛のための性格のものが、分離はできないけれども入っておるというお立場ですね。このことは何もないときはあるいはそれでいいかもしれない。しかし、何か一朝事がある、そうして安保によって在日米軍は日本の基地から極東の平和と安全のための戦闘行動に出動するというような事態が、これは安保条約ではそういうことをあり得ると想定しているわけです。そのときに、日本が在日米軍を維持するために出しておる経費は、そういう極東における米軍の戦闘行動のための費用というものに当然性格が転化するということになろうかと思います。こういうふうに考えていいですか、いかがですか。
  122. 福田博

    ○福田(博)政府委員 安全保障条約をアメリカと結んでおりまして、我が国は安保条約六条に基づいて米軍に対して施設及び区域を提供している、かつまた、地位協定に基づいて費用の分担もしておるということでございます。これは米軍に対して持つ費用、それが中身はどういうふうに仕分けされるかというのが先ほどの御質問だったと思うのですが、それはなかなかできないであろう。しかし、その支出する費用というのは、あくまでも安保条約及びその地位協定に基づいて我々が米軍のために提供している施設及び区域並びにその費用であって、先生の御質問のように、直接どれが極東の防衛のために使われるのかという仕組みにはなっていないと思います。
  123. 高沢寅男

    ○高沢委員 お札に色がついていないと同じで、その仕分けはできないと思いますけれども、しかし、今言ったそういう安保の性格、在日米軍の目的との関連からすれば、我々が出している費用は、一朝事あるときは、まさに集団自衛権につながる費用であるというふうに私は考えるわけです。この点は、きょうは私の考えとして指摘しておいて、これを認めると言っても無理でしょうから、その点はもうここまでにしておきましょう。  それで、もう少しまた進みたいと思いますが、昨年の四月二十日に当外務委員会で有馬北米局長は、一九八六会計年度の在日米軍経費としてアメリカから支出された費用は三十三億ドルである、その内訳は軍人軍属関係人件費が二十一億ドル、それから運用維持費が八億ドル、軍事建設費が一億ドル、燃料油脂費が三億ドル、合わせて三十三億ドル、こういう御説明をされたわけですが、同じような費目の分け方で、その後の一九八七、八八、八九会計年度の数字の掌握されていると思いますが、説明願いたいと思います。
  124. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 一九八七米会計年度につきましては三十六、その後三十八というふうに直されて教えてまいっておりますけれども、その内容につきましては、今先生がおっしゃられましたような項目という意味での内容につきましては、私どもまだ承知いたしておりません。  それから、八八、八九年度については、まだ承知いたしておりません。
  125. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちょっと遅いじゃないですか。承知しておりませんということは、向こうから何か言ってこなければこっちは何も言いようがないということですか。これは御承知のとおり、米軍基地の日本人従業員の手当等々について日本は特別協定まで結んで、本来ならば出すべきでない費用まで随分出してきておるという状況のときに、アメリカが出しておる在日米軍の直接経費の内訳も掌握していないというようなことでは、私は大変無責任ではないかと思うのですが、これはやれば掌握できるのですか。いかがですか。
  126. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 いろいろな数字があるということでございますけれども、行く行く捕捉することはできると思っております。
  127. 高沢寅男

    ○高沢委員 早急にやってもらいたいと思います。  そこで、それでは八六会計年度で有馬局長説明されたその内訳の中で、米軍基地で働いている日本人労務者の少なくも給与は当然米軍が負担して現在に至っています。この八六会計年度のさっき言われた軍人軍属関係費二十一億ドル、運用維持費八億ドル、軍事建設費一億ドル、燃料油脂費三億ドル、この内訳の中のどこへ基地の日本人従業員の給与というものが入っておるのか、これはいかがですか。
  128. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私ども正確に承知いたしておりませんけれども、強いて申せば、そのうち軍人軍属関係人件費の中に含まれているのではないかと思います。私は正確に記憶しておりませんけれども、この分担ぶりがかつて変えられたことがあったということはございます。
  129. 高沢寅男

    ○高沢委員 では、早くその辺の正確な掌握をしてもらいたい、そしてまたひとつ御報告いただきたい、こんなふうに思います。いかがですか。
  130. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 わかる範囲において最善の努力をいたします。
  131. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度の米上下両院の決議の線で、今度は駐留米軍の直接経費は全部日本が持てというようなことが出てくる場合、今まで我々が、日本が持ってきたほかに今度はどういう項目を持つことになるのか、これはいかがでしょうか。日本人従業員の給与部分、これは当然持てということになってくるでしょう。あるいはまた基地の光熱費を持てというようなことになってくるんじゃないのか。その辺のところはいかがですか。
  132. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まだ何分成立いたしておりませんので、詳細に見ているわけではございませんが、今おっしゃられましたような項目ということで期待を表明するのが議会の意向ということかどうかまだわかりません。それから表現が「オフセット」ということになっております。相殺するというふうによく訳しますが、その中身がいかなるものとして考えられるかというようなこともわかりません。今後も正直申しましてわかるかどうかなんでございますけれども、にわかにお答えできないということを御理解いただければと存じます。
  133. 高沢寅男

    ○高沢委員 なかなか御理解ができないけれども、時間の関係で前へ進みましょう。今はまだ成立はしていないからというお答えを有馬さんやっておられますが、これが成立し、実際のアメリカ政府の態度として出てきたときには、今のようなお答えでは済まぬということも言っておきますよ。  それで、こういうことをお尋ねしたいと思います。在日米軍駐留のための我が国の支出は、地位協定二十四条の二項に基づいて支出されているわけですね。アメリカ側の支出は二十四条の一項に基づいて支出をされている。この大枠はもう申すまでもないと思います。それで昭和五十三年度から日本人従業員の福利厚生費等を、それから五十四年度からは日本人従業員の給与のうち国家公務員の給与水準を超える部分、こういう経費は日本側で持ちましょうということになってきたわけですね。それから五十四年度からは施設費についても、老朽米軍隊舎の改築、米軍家族住宅の新築あるいは消音施設の整備、こういうふうな経費は日本側で持ちましょうということになってきている。当時、これが思いやり予算という言葉で呼ばれたわけですが、この思いやり予算というのは、今は日本側で持っているけれども、本来の地位協定の二十四条の精神からすれば、こういう経費はもともと二十四条一項でアメリカ側の持つ経費であった、こういうふうに見ていいわけですな。いかがですか。
  134. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 在日米軍従業員の労務費につきましては、昭和五十三年度から福利費及び管理費を、それから昭和五十四年度から国家公務員の給与条件に相当する部分を超える格差給、語学手当及び退職手当の一部を、いずれも地位協定の第二十四条一項の米側の負担の義務というところの合衆国軍隊を維持することに伴う経費には該当しないという考え方によって我が方で負担しているところでございます。それから御指摘の家族住宅等の提供、設備、施設の整備につきましては、地位協定第二十四条二項によってその経費を負担しているわけでございます。  後者につきましては、たびたび申し上げておりますけれども、米軍は地位協定第三条に申しますところのいわゆる施設、区域内についての管理権の行使の態様として、議事録にもございますけれども、一連の行為を行うことができてきている。しかし、その中には我が方が施設、区域の提供であるとして行うこともできるものもあるわけでありまして、後者の枠組みの中で家族住宅等の施設提供の整備を行ってきたということでございます。
  135. 高沢寅男

    ○高沢委員 では逆に伺いますが、思いやり予算ということを日本側でやるようになる以前は、今のような経費はアメリカが持っていたんでしょう。アメリカが持っていたとすれば、これは二十四条一項に該当するものだということになるのじゃないですか。
  136. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず施設、区域の方から申しますと、今申し上げたことの繰り返しになりますけれども、確かに米側がそれまで行ってきていたものの一部を我が方が行うようになった。それについての地位協定上の考え方と申しますのは、米側がいわゆる管理権の行使の態様として行ってきたもの、これは我が国が二十四条二項に基づいて、すなわち施設、区域の提供にかかわる経費として我が方が持つことができる、そのようなことで我が方が負担することになったわけであります。いずれもが支払うことができるようなものがあるんだ、いずれもが行うことができるようなものがあるんだということでございます。  それから、福利費及び管理費、それから公務員の給与条件に相当する部分を超える格差給、いわゆる語学手当等につきましては、米国が当然には負担しなければならない、労務を雇用するに当たって当然には負担しなければならないものを超す部分のものがあるであろうということにいたしまして、昭和五十三年以後これを負担してきているということでございます。
  137. 高沢寅男

    ○高沢委員 二十四条一項に該当するものなんだけれども日本が今負担しているというようなことでは、地位協定に違反しているということが明確になりますから、そう答えられないんでしょう。けれども、例えばこれはどうですか。日本人の従業員の調整手当等を最初から二分の一を日本が負担するという特別協定を結んで、その後すぐ、今度は全額負担するという特別協定で、今は全額負担していますね。これも私から見れば、本来二十四条一項でアメリカの負担する経費を今や日本側がかわって負担しているという性格のものだと思いますが、いかがですか。
  138. 福田博

    ○福田(博)政府委員 先生指摘のとおり、一昨年と昨年、本委員会におきまして御審議をいただきまして、日本人労務者の手当の幾つかのものにつきまして、最初はその半分まで、昨年はその全額まで日本側で負担するという協定を結ばしていただきました。これはまさに先生指摘のとおり、二十四条一項、三項からは、協定上は特別協定をつくらなければ日本側で負担することが適当でないものでございますので、国会の御同意を得て、そういう協定を結んだわけでございます。
  139. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうやって、本来二十四条一項でアメリカ側の負担すべきものを、いろいろな名目をつけたりあるいはそのための特別協定を結んだりして、皆次々と日本側が負担するということになってきている。これに対して、先ほど触れたアメリカの上下両院の決議という線で、仮にその直接経費は全部日本が持てということになってきて、そして日本人従業員の給与も持ちましょうあるいは光熱費も持ちましょう、こういうふうなことになってくると、もう二十四条一項に該当するアメリカの出す金は何もなくなるじゃないですか。ゼロになるんじゃないですか。そういうときに、あとアメリカの出すものが一体何か残りますか。あったら説明してください。
  140. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まだ成立していない法案について推測するのも何でございますが、先生が想定されるような事態が生じる形での内容ではないということでございます。
  141. 高沢寅男

    ○高沢委員 つい笑い声も出ましたけれども、私はもう少し権威のあるお答えがいただきたい、こう思います。  とにかく私の見方では、もしこれを日本受け入れれば、二十四条一項のアメリカ側の支出はもうなくなるということになると思います。そうすると、一体この地位協定の存在の意味は何なんだ、二十四条の存在の意味は何なんだということに当然なろうかと私は思いますが、その段階で一体地位協定は改定するのかどうか、きょうもそのお尋ねがありました。今は検討していない、今は考えていない、こういうお答えでございましたが、この今はという言葉の意味をちょっと説明してください。
  142. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先ほど大臣も仰せられたことでございますけれども、米国の議会が申しておることとは別に、私どもは私どもの安全保障についての認識に基づいて、従来から在日米軍経費負担についてできる限りの自主的努力を行っているということであって、この努力を行っている今、地位協定改正考えているということはございません。
  143. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、地位協定の改定などはもってのほかであって、したがって今度は大臣に御要望したいのですが、地位協定二十四条一項によるアメリカの支出がゼロになってしまうというふうな事態は、もう絶対そうさせてはならぬということだと思います。  そうなれば、今ここで新たに日本に対して負担を求めてくると予想されるものについては、もうそういう負担はノーである、そういう負担は日本は断じてしない、この立場はまだ決議ができていなくたって言えるでしょう。これは大臣、いかがですか。これははっきり日本政府として、あるいは我々は日本の国会の立場ですが、その立場で、これ以上アメリカから在日米軍の直接経費の負担を日本に求めてくることに対して、それはノーであるということをはっきりしてもらいたいと私は思いますが、いかがですか。
  144. 中山太郎

    中山国務大臣 日米安全保障条約のもとで日本の防衛の努力というものは日本政府が自主的に行ってまいりましたし、今後とも自主的に努力をしていかなければならないと考えております。  先生指摘の日米地位協定改正問題につきましては、現時点ではそのようなことを検討いたしておりません。
  145. 高沢寅男

    ○高沢委員 検討いたしておりませんというお答えでは、私は大変不満足です。  かつてアメリカから日本に対して、駐留米軍の費用を半分減らすから、そのかわり自衛隊の予算をその二倍ふやせというような要求が、これは吉田内閣の時代でしたか、あったことがありました。鳩山内閣の時代でしたかな。当時日本政府は、これは日本の予算編成の自主権を侵すものであるといって、アメリカの占領下から放れて間もない時代でも、それに対しては日本は拒否したという前例があるのです。  私は、外務大臣に対して、アメリカからそういう新たな要求が来ることに対して、もうこれ以上はノーであるという答えが今ここで当然あってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  146. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ法律が成立をしておりませず、また米政府もその意思を表明しておらない時点で、今先生せっかくのお尋ねでございますけれども、私は先ほどの答弁でひとつ御理解をいただきたいと思います。
  147. 高沢寅男

    ○高沢委員 私はきょうは最初内政干渉という問題から話が始まったわけです。その具体的なケースとして今の問題をずっとお尋ねしてきましたけれども、今度の米上下両院の決議の中にある、今の駐留直接経費の全額負担の問題とか、あるいはこれから日本で策定されるであろう新しい中期防の作成過程も全部アメリカと相談して決めろというふうなこと、それからその中で問題の飛行機をアメリカから完成品で買えということとか、あるいはアジア太平洋地域日本韓国も含めた集団安全保障の仕組みをこれからつくっていくんだとかいうふうなことが議会で決議されること自体、これは政府の要求として出てこないとしても、私は重大な内政干渉ではないのか、こんなふうに思うわけです。  特に、この種の問題は、さっき私は国際時代になると内政干渉であるかないか大変デリケートだと言いましたが、これはストレート、もうそのものずばりの内政干渉であるし、それこそ最悪、最大規模の内政干渉であるととらえるべきだと私は思いますが、この点は大臣の御所見はいかがですか。
  148. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、民主主義の国家においては議会でいろいろな意見が出てくる、しかも自分の国の利益を中心に、国民の利益を代表される国会議員が自国の利益のためにいろいろな意見を述べ、そしてそれの賛成があれば成立するというこの立憲民主政治の過程では、いろいろな国でいろいろな意見が出てくることは当然だろうと私は思います。日本においても、領土問題については各党一致して四島の一括返還ということを主張し続けているわけでございますから、その点はソ連から見れば、それは内政干渉である、こういうことになるのじゃないでしょうかと私は思っておりまして、この議会政治というものは、各国においていろいろな意見が出てくる、それが法律として成るか決議案として成るか、それはその国その国の国情によったものではなかろうかと思っておりますが、内政干渉はさせない、さすべきでないという先生のお考えというものは十分立派な御意見であると私は認識をいたしております。
  149. 高沢寅男

    ○高沢委員 時間が来ましたので、終わりますが、それほどアメリカが在日米軍の経費でもうかなわぬ、日本で持てというふうなことを言われるならば、今度地中海でゴルバチョフ書記長とも会う、アメリカとソ連の関係ではデタントと軍縮のそういう話し合いは大変進行しておる、ますます進行する、こう思いますけれども、そういう状態の中で、まさにアメリカ世界全体、特にアジア太平洋軍事的プレゼンスを大いに縮小すべきである。韓国における米軍の削減の問題も既に具体的なテーマに上がっておる。日本にいる米軍の存在も減らすべきである。基地を減らし軍隊を減らすべきであると言うことは、むしろこちらからアメリカに対して言うことは、決して内政干渉ではない、こう思うわけです。  以上の私の見解を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  150. 相沢英之

    相沢委員長 午後二時十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ────◇─────     午後二時十分開議
  151. 相沢英之

    相沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  152. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、私はまず日中問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  鄧小平軍事委員会主席辞任の報が昨日の夕方から示されているわけでございますが、外務省としてのこの問題に対する御見解をまず承りまして、今後の影響性あるいは見通し等につきましてお尋ねをいたしたいと思っているわけでございます。
  153. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  昨日、委員仰せのような鄧小平主席が、党の中央軍事委員会主席ということでございますが、辞任のニュースが流れました。そこで私どもは、これが今後の中国の内外の情勢に及ぼす影響を分析しておりますけれども、その後発表されましたコミュニケによりましても、鄧小平氏の辞任はあるも、この改革開放路線といいますか、その辺のところはきちんと堅持していくということがコミュニケにもうたわれておりますし、今回の辞任によって中国の内外に対する姿勢がこれで大きく変わるというふうには私どもは予想しておりません。  また、日中関係に及ぼす影響につきましても、これが直接日中関係に大きな影響を及ぼすというふうにも考えておりません。引き続き改革開放路線は、それはそれで堅持されていくであろうと思います。  それから、新聞では鄧小平氏の辞任が非常に大きく取り上げられておりますけれども、今回の五中全会のもう一つの重要な側面は、今後の中国の経済運営をどのように取り運ぶかということを決めて、これを発表したことでございまして、そこでも改革開放は引き続きこれを進めていくということがうたわれておりますとともに、それがゆえに、やはり当面中国がいろいろ経済面で抱えておる困難を克服するために、コミュニケによりますれば、御承知のように、ことしから少なくとも三年間、経済のいわゆる調整といいますか、中国流に言いますれば経済の環境の整備、そして経済秩序の整とん、これを一生懸命やっていくんだ。言葉をかえて言いますれば、いわば中国は三年間経済は引き締めの時代に入るということがあわせて発表されたわけでございます。
  154. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 先日私は、伊東正義氏の率いる日中議連の会長、副会長訪中団の一人として訪中をいたしたわけでございますが、中国に対する国際的な評価、信用はここのところ政治的にがた落ちなわけでございます。それがただ政治的な面でがた落ちというだけではなく、我が国の無償援助も第三次円借款八千百億円の執行も事実上ストップしておりますし、何よりも世銀の融資がストップしている状況の中で、日本側がそれに対して対応することができない状況にあるということをつぶさに聞かせていただきましたが、昨日の鄧小平辞任あるいは中国側の経済政策の対応を見ておられまして、これはどういう方向で我が国として対応するかということを既にお考えのことではなかろうかと思っているわけであります。  我が国として困難を感じますのは、中国経済に対して支援をするということが手放しでできる状況ならば何も問題はないのでありましょうけれども、問題は、政経両面にわたる日中問題が密接に絡んでいて、我が国は欧米諸国と足並みをそろえて、人道上の問題あるいは人命尊重の問題、民主主義の執行の問題について中国側に対し敢然と批判的立場をとるのか、あるいはそれを一部その部分について中国との協調を優先する立場で行くのかという微妙な判断のところにおありのように見えるわけであります。そして、その答えは、経済協力あるいはその他の経済的な諸問題に対する態度で見えてくるのではなかろうかと私は思うわけでございます。ちょうど経済界の訪中団が今中国に向けて出発をしているのは、予備的な調査としては私は結構なことだとは存じますけれども、問題は、日本政府中国政府に対する政治的見識がどこにあるのか、どう確立するかによって、経済協力あるいは借款等の問題に対する日本政府立場が決まってくるのではなかろうかと思うのであります。  この問題は深刻であり重大であります。本日は局長等もずらりお並びであり、また大臣も厳然とお座りでございますから、定めて立派な御方針が表明されるだろうと私は楽しみにしているわけでありまして、まさにテレビ各社が注目するべき鋭い御意見が今から展開されるものと信じまして、御答弁お願いしたいと思うわけであります。
  155. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 後ほど大臣からも御答弁があろうかと思いますが、とりあえず私の方から御答弁させていただきます。  委員仰せのように、まさに二つの問題があるわけでございまして、第一点は、六月四日に起こりましたあのような天安門事件に対しては、あのような事態に対しては、これはこれで日本政府は毅然として、これに対する日本立場中国に申し伝えるという面があろうかと思いますし、それはそれでいろいろな機会に日本側のこれに対する考え方というものは申し述べてきております。他方、それとともに、末永き隣国中国との関係をやはりこれはこれで大切にしていきたい、永きにわたってこれとの友好協力関係を壊してはいけないという側面がございます。  そこで、当面その延長線上で、委員お話しになりました新しい第三次の円借款、経済協力等をどうするかという問題がございますが、これは累次国会でも御答弁申し上げておりますように、一つは、中国の情勢の帰趨をもう少し見きわめる必要があろうか。それから第二点は、国際間の声といいますか、アメリカを初めといたしまして、中国に対する考え方、今の情勢に対する立場というのはまだまだ厳しいものがございますので、そのような新しい段階に日中関係が進むにいたしましても、最小限米国等の理解、日中関係の新しい展開に対する理解、これを求めながら進める必要があろうかと思っております。そうでありませんと、何かアメリカ等から後ろ指を指されながらおずおずと進める日中関係でありますならば、これは非常に脆弱なものでございますし、そういうものは中国のためにもなりませんし、日本のためにもならないということでございまして、時至らば、やはりアメリカ等のその辺の理解を求めながら、中国との関係を進める必要があろうかと思っております。
  156. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は天安門事件が発生した際、六月四日でございましたか、六月六日に日中議連の正副会長会議をやりまして、七日、日中議連理事会、拡大理事会を行いまして、国会議員の中で五百三十名を擁する議連でございますから、そこにおける深刻なお話し合いというのを行わしていただいたわけでございまして、局長もそこへ御出席になり、情報を教えていただいたいきさつがございます。その結果として、その議論の中で中国に余り厳しいことを言うなという議論も相当あったわけではございますけれども、これはいかぬ、人道上の問題である、これは内政干渉にわたるわけではないという、その言葉は出しませんでしたけれども、みんなの意見としてこれは言うべきは言い、ただすべきはたださなければならぬという方針を議員同士で打ち出したいきさつがあるわけでございます。その結果として、両院にわたる議員の絶対的大多数を占めるこの議連としては、中国天安門事件について極めて遺憾である、しかも武装力をもって青年を初めとする民衆に対して銃撃を加えたことはよろしくないという極めて厳しい調子のものをつくり出したわけでございます。  ところが、それに対しまして政府の方は、むしろ欧米諸国と組んで、これに対する対応を少し厳しくなり過ぎないように、中国立場をそんたくした立場をとられたように国際関係において見られてきたわけでございます。私は残念ながらこの対応は明快でないと思います。ということは、中国に対して一番の友人であり、一番の隣国のものであるならば、こういうときこそ政府として明快な見解を述べることが重要であると私は思うわけであります。私は、その上に立って中国側に対して今こそ言うべきことを言わないと、これはむしろ将来に禍根を残してしまうと思われるわけであります。中国は、中華の国であり、自尊心の高い国でありますから、とても謝るものではないという状況もあり、また国際関係の中において、各国政府が高官をあちらに派遣することはよろしくないというので自制されているのはわかりますが、私たちは議連の代表という形で中国側に対して日本側の不快の限りを申し伝えました。伊東正義氏は内政干渉をするつもりはないがという前提で、角砂糖をなめながら、糖尿病の体を押して、中国側に対してそれこそありとあらゆることを正規の会合あるいは影のレセプション等で申されました。私は、李鵬氏に対して中国側の態度が良好でないことを申し上げた上、青年を殺したことがどんなに大きな被害を招くか、またデモ隊を禁圧したりしたことがどんなにひどい問題になるかをるる説明をいたしましたところ、先方は深い反省の意を表するとまで述べたわけであります。  私どもは議員としてそこまでいたしましたが、政府の対応がそれに続いてないことを残念だと思っているわけであります。円借のところだけをぎゅっと絞って、欧米諸国の後ろで絞っているだけ、そして注意は本格的にしないというだけでは、何ともかんとも底意地の悪い官僚的手法ではないかと思われかねないからであります。日本政府として青年を銃撃することはよくないと明快に言うべきであります。しかも、デモ隊をやっている、この世界で民主化する御時世において、それをブルジョア民主主義などと言ってデモをすることを禁圧しようなどと考えることはとんでもないことであると日本政府が言わなければならないと思う。そして、その上において円借については、むしろ世界の国々に対して中国を経済的に追い込むということがどんなに大きな波乱要因になるか、世界の不景気の引き金になるかということをるる申し上げなければならないと私は思います。  三年間の調整政策の実施などということは、それこそまるで昔の輸血の反対の瀉血を長期間にわたってやるようなものであって、国民生活に対する打撃ははかり知れない。最近は経済協力資金は枯渇し、回転資金は枯渇状態になり、そして農民や工場の一部における給与の支払いも、また手形で行われるとか国債で行われるとか、しまいには繰り延べが起こるとかいう状況にもなっている状況であって、こういう波乱要因を起こすことは好ましくない。事なかれ主義だけで推移するのではなく、聞きにくいことを堂々と言うという態度でなければ第二次の日中友好関係はできないのではないかと私は思うわけであります。第一次の日中友好は、国交正常化のための共同声明と平和友好条約との二つででき上がってありますけれども、これは政府間の協議でおります。しかし政府間の協議のほかに今見詰められているものがある。それは中国の大きな民衆の目であり耳であり声であります。  これに対して対応できるだけの態度を日本人はとらねばならない。そうすると言うべきを言わねばならない。そして、その上でけがもある程度しなければならない。その上で私どもはこの隣国を我々の力で穏当な道を切り開くべく助言を与える必要があるのではないか。私は、これは内政干渉の道ではなく、日本国民という一番中国に対して何かをしなければならない道義的な負い目を持っている国家としてあるいは政府としてやるべきことではないかと思いますが、いかがでございますか。
  157. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 まことに仰せのとおりだと存じます。私どもも先般の天安門事件に対する日本政府の認識を述べるについて逡巡なり憶病さがあるわけではございませんで、決してそういうことはあってはならないと思っております。委員もあるいは御記憶かと存じまするけれども天安門事件が起こりました直後にいろいろなレベルで、こういう天安門事件のようなことは決して許されるべきではないということを総理、外務大臣あるいはそれ以下のレベルで述べております。  ここに一文ございますので、そのうちの一例を申し上げますと、外務次官が直ちに中国の在京の大使を外務省に招致いたしまして、次のように中国側に日本側の考え方を申し述べております。すなわち、民主化を要求する学生、市民による運動が長期化し、戒厳令がしかれておるという状況のもと、四日未明以来の軍の実力行使により多くの人命が失われた、こういう痛ましい事態に至ったことはまことに遺憾である。日本政府としては、今回の事態について、貴国の、中国政府の行為は人道上の見地からもまことに許しがたいことで容認できないことである。中国政府の強い自制を求めたいというようなことは、それはそれできちんと私ども中国側に伝えておるつもりでございます。
  158. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣の最近のお言葉の中から今のようなお声を聞いたことは私はないのでございますが、御自分の御見解を述べていただけますか。
  159. 中山太郎

    中山国務大臣 まず最初に、渡部委員が日中友好のためにかねて御苦労いただいておりましたし、また伊東訪中団では御一緒いただきまして、中国政府首脳、党首脳にいろいろと率直にお話をちょうだいしたことを大変感謝をいたしておりますし、敬意も払っております。  私、率直に申し上げまして、この天安門事件の問題につきましては、中国の外務次官がパリのカンボジア和平会議に来ておりました節に――日中のいわゆる外相会談をやろうということでございましたが、先方は外務大臣が来ずに次官が会議に出席しておりました。その席で私の方から次のように申しました。天安門事件は極めて遺憾なことであると存じておる、殊に日本国民は、テレビが各家庭に普及しておる、それで人工衛星によってこの天安門事件の惨劇というものを全部家庭で目の当たりに見て大変大きなショックを受けた、今日まで日中の友好に対して日本の多くの国民が非常に好意的な感情を持っておったが、この事件は人道上の問題で日本の国民に大変大きなショックを与えたという事実を率直にお伝えをいたしたい、私どもは一日も早く中国開放改革路線で西側諸国と話し合いをするという姿勢を示されることを心から期待をしたいということを率直に申しております。
  160. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 中国に参りましたときに、日本側は旅行制限がございまして、その旅行制限を解いてもらいたいと中国側は猛烈に述べておったわけであります。それはまさにお伝えいたしましたし、そして大臣はそれを決断していただきまして、感謝しておるわけであります。  そしてまた、戒厳令について、何で戒厳令などというばかなことをやるのかとどれぐらい申し上げたかわかりません。これは、中国側は最近戒厳令をやめて、そして実質的に廃止して、軍隊における北京制圧を武装警官隊によるものに変えた。つまり、私どもの主張に似たやり方ではございますが、機動隊型の制圧というものに切りかえた。またポスターあるいはデモあるいは演説等について、集会ですね、許可制で認めるという形にすることによって憲法の規定を一部改正した。そこまでやってきた。これは、中国は言葉の上ではすごく反発的ではありながらも、いわゆる私どもの持つ民主化への方向へと一歩一歩近づきつつあることを示している。このボディーランゲージに近い中国側の対応というものにはこたえてあげる必要もあろうかと私は思います。  私はその意味で、厳しく評価する、三百十九名殺して数千人傷つけたと言っているのが正しいかどうかわかりませんけれども、そういう公式声明でそれを認めている中国、そして、国内の権力闘争の中でデモ隊に対する対応も余り的確でなかった中国という状況もよくわかるがゆえに、これに対して日本側としては次のアプローチが必要なのではないか。したがって、いつまでも欧米の後ろについて、経済協力を、首を絞めるというだけならば、これはただのけんかにすぎない。経済協力を控えるというなら、どこまで行ったら経済協力を緩めるということは明示すべきであって、その目的もないで、ヨーロッパアメリカが経済協力しないからうちも経済協力しないのだあるいは借款もやめるのだというだけでは、それは見識でもなければ何でもない。対米追随外交ということを私は昔ここで何回も言った一人でございますが、また始まったのではないか、アメリカの国務省の後ろから反抗すればいいとだれかがその中で思っているのではないか、一番そう思っていない人に私はそう申し上げたい。ここのところについてある種の判断というものを外務省が今こそ毅然として言うべきときが来ているのではないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  161. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げて、日中の関係というものは、従来中国と他の関係とは異なった立場にございましたし、また今後とも大変近い国家としてこれからの友好親善を深めていかなければならないことはお説のとおりであります。  ただ、アメリカに追随をしているというような御発言がございましたが、私どもは別にそのような観点では物事を判断してはおりません。あくまでも日本日本独自の考え方で物事を判断するということでございますが、先般御参加をいただき、御苦労いただきましたこの超党派のいわゆる訪中団議員団にいたしましても、実はよその国と比べて日本先生方訪中が一番早かったということも、私はそれなりに中国側が評価をしていただいていると考えております。  私どもは、経済協力の問題につきましては、アルシュ・サミットでいろいろと協議も行われた経過もございますが、日本はIMF等の話し合いも、これにはやはり参加をしておりますし、そこいらの点も踏まえながら、日本としていかなる時期にいかなる決断をやるかということにつきましては、ひとつ今後の政府の判断を見ておっていただきたいと考えております。
  162. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 経協局長にお尋ねをいたしますが、中国に対する円借あるいは無償、現状では凍結していると見てよろしいわけでございますか。また、第二次の円借については、現在のところどうなっておりますか。
  163. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 お答えいたします。  私ども中国に対します経済協力は継続案件と新規案件に分けて考えておりまして、先ほど来話題になっております第三次円借はまさに新規案件でございまして、これに関しましては、先ほど来中山大臣及びアジア局長から申し述べたとおりでございますが、継続案件について申し上げますと、これは技術協力、無償資金協力、それから円借款円借款は第二次円借款でございますが、対象でございまして、この継続案件は、天安門事件後かなり影響を受けまして、相当なものが中断をされましたが、その後、中国におきます情勢の回復に伴いまして、徐々に再開を行ってきております。  国際的に見ますと、先進諸国は同様の対応をしておりまして、新規案件に関しましては慎重に検討する、それから継続案件については、今申し上げたようなことで事実上中断されたのもございますけれども、これは徐々に再開していくという方針で諸外国も対応しております。日本と同じでございます。
  164. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では次に、難民のことについて伺います。  中山大臣は、先日、長崎の大村難民センターを初め国内施設を二カ所訪問されたと新聞紙上で伺いました。また十一月三日には香港のベトナム難民キャンプもお訪ねになり、そのピッチの速さ、足の速さといいますか、現場に踏み込まれたその御努力に対して敬意を表したいと存じます。深刻な難民に対する日本側の取り組みというものは、新しいルールというのをつくり上げなければならない非常に面倒な時期に当たっていると私は思うわけでありまして、恐らく各省庁との連絡調整等もおやりになりながら明快な指針というものを今固めつつあるという段階ではなかろうかと存じておるわけであります。  私は、この問題について一つずつお尋ねするのではなく、一つずつお尋ねすると話がむしろ混乱するだろうと思いますから、まとめて申し上げますが、大臣の御見解を承りたいと存じます。  まず、日本で困っていることが数点ございます。それは不法入国者でございます。私の事務所に対する相談件数の中に不法入国者の方から問い合わせがございまして、何とか日本人として定着したいのだという希望が時々ございます。それを見て思いますと、相当の件数があるなという感じがいたしまして、この間約十万人というお話を役所の方から伺いましたが、実質は十五万人クラスではないかと思われる節がございます。この不法入国者をこういうふうに大量に抱えていくということになりますと、法制上も混乱を来すし、取り締まり上も問題だし、下手して麻薬の売人なんかになるなどというよからぬきっかけになるというのは好ましくないので、これを処理する的確な方法が必要だなと一つ思っておるわけです。  もう一つは、我が方では兵庫県にかばん地帯があるわけであります。豊岡かばんと申しまして、安い工賃のかばんをつくっておるわけでございますが、職人がいない。もう全くいないので黒字倒産が連続しておるわけであります。また、私の住む神戸では、土建業者の中で、仕事をするブルーカラーの人がいなくて困っておりまして、どこの方に聞きましても、ブルーカラーの人を求める声が中小企業のケースでございまして、一様ではございませんが、三割から五割の人が足りない。社員が百名でございますと、五十人足らぬとか三十人足らぬというのはざらに聞こえてくるという状況でございます。こういう人たちは、もう難民でも何でもいいからともかく入れてくれぬか、入ってきたのは全部大企業が採ってしまうではないか、けしからぬと叫んでいるわけです。その希望がありますので、そういう人たちの希望も一方にあるということであります。  もう一つは、例によって流れ込んでくる経済難民でございますけれども、先日沖縄の離島の一つに参りましたら、昔から台湾との間で人が行き来しているわけでございますね。ところが本土に返還されてから行き来ができなくなっちゃって、結婚した相手が向こうにいる、親戚も向こうにいる、そうやって行き来しながら暮らしているし、どっちかから税金を高く取られたからと逃げたり、向こうでそれこそ悪い軍人なんか出るとさっと逃げたり、お互い同士そんなことやりながら暮らしている。むしろ非常にフレンドリーな感じで国境線の往来というものが行われている。国境線があいまいなわけですね。そのあいまいなところで暮らす方々が、最近難民船と称するものを政府にお届けした途端にえらいことしかられて、全部追放することになった。黙ってりゃ問題ないのに、そう言っているわけであります。百人規模なんかで来ないで、五人や十人だったらいつでも片づけているんだと叫んでいるわけであります。こういう問題も処理していただかなければならぬ。  そこへもってまいりまして、最近、実は中国の福建省の留学生を私は面倒を見ておるわけであります。一グループ面倒を見させていただいておりますが、大した面倒を見ておるわけではございませんが、時々懇談会をやって彼らを激励しているわけでございます。そうしましたら、この間からの難民船の中に友達や何かが非常にいるんだそうでございまして、難民のグループが、難民船として踏み込んでくる以外にあらゆるつてをたどって入ってきているわけでございますね。特に最近の問題では、彼らがひどく言いますのは、中国難民は経済難民として拒絶されるけれども、ベトナム民と称される方々が、香港がだめなら台湾があるよ、台湾がだめなら日本があるよと。ベトナム難民は比較的受け入れるというルールをおつくりになったことが今どっと知れ渡りまして、ベトナム難民は全部あらゆる方法を使って日本に行こう。中国難民には厳しいが、ベトナム難民にやわらかい日本、こういう評価が出始めているんだそでございまして、また彼らのグループの中には、難民船と称するものを仕立てて、そして手伝ってもうけようという人まであるんだそうでございまして、そうすると、ベトナム難民が今陸続として日本へ向かって、幸せな国日本へ、ベトナム難民だけを入れる日本へという兆候が始まりかかっている。この無協定状態の中で、こういうものを放置するのはいかがなものかなと思うわけでございます。  そしてもう一つは、フィリピンの話でありますが、フィリピンにおきまして大量の看護婦日本あたりでいうと欧米系の看護婦の一番優秀なAクラスの看護婦を猛烈に今育成をいたしております。これは日本看護婦がいない、介護人がいないというのに呼応したやり方なんだそうでございますが、キャバレーで歌う芸能人というのを日本に送るのは限界がある、では看護婦を送りましょうというので、看護婦の養成にかかっているのだそうでございます。大体アメリカに向けての看護婦は平均賃金が二十五万前後で出ているようでございますが、日本でございますと三十万円を楽に超すというので、いよいよ日本向けに国際的な看護婦の資格を持つ者を大量養成して送り込みたい。老人ホームやその他に当たったところでは大歓迎である。まさにその大歓迎の雰囲気が日本側の各地域にあることはもうわかっているわけであります。  我が国を一体どういう国にするかという基本問題を含めまして、この問題は入国管理の問題ではない。単なる労働の問題でもない。日本人の社会構造全体に対する重要にして深刻な判断をしなければならないのではないか。それはあるルールをつくるとともに、現実の問題が起こるたびに次々とかなりスピーディーに機動的に変動させるところのルールをつくる、あるいは指導する機関もまた必要なのではないか、こういうふうに思われるわけであります。  また、受け入れの方で言っておるのでございますが、ベトナム語の通訳、中国語の通訳が足らなくて閉口しておられて、入管の事務所あるいはUNHCR等におきましては、もう大変だと。外務省の出先あるいは地方自治体の出先では非常に往生しておられるのでございますが、日本国内におられるベトナム人、ベトナムから移動された方あるいは中国から移動された方等では、我々を使ってくれるのなら幾らでもやってあげるのに、どうして政府は我々に物を頼まないのだろう、こう言っているわけであります。  こんなことも全部ひっくるめまして、今後どういう方針でいかれて、この辺我が国民に対してすっきりした方針を示していただけるのか。今の現状で結構でございますが、方針をお示しいただきたいと存じます。
  165. 中山太郎

    中山国務大臣 外国人不法就労の問題を含めて難民問題とお話がございましたけれども政府といたしまして考えておかなければならないことは、現在日本国内で不法就労をしている外国人が的確に把握されているところがあるかどうかということが、まず一つ原点にあるのではないかと思います。今先生指摘のように、約十万人あるいはさらにもう数万いるのではないかという推定がされているわけでありますが、そのようなことがなぜ起こっているのかということは、先生指摘のように、大変な経済成長力を持った日本労働賃金が非常にいいということで、ここに就労場所を求めた発展途上国からの人たちがやってきている。しかし片方では、日本国内ではだんだんと日本人が汚いとかあるいは危険とかきついとかといった労働条件の就労場所に行きたがらなくなってきた。そこに結局需要と供給の原理が働いて、人が欲しいという日本のいわゆる事業経営者の方々、そういう中で、日本に入ってきた観光ビザを持った人とか留学生ビザを持った人たちがそれぞれ賃金を求めてそういうところで働くという現実の問題が実は我が国にあるわけであります。この問題は、私は今ここで政府として、先生がおっしゃるように、きちっとした国家としての考え方を整理して国民に示すとともに、外国に対して日本考え方を明確に明示しておかなければならない時期がやってまいったと考えておる次第でございます。  そういう面から考えますと、まず第一に不法入国者は強制退去させるというのが日本国内法の原則でございますから、不法入国は一切認めない、密入国も認めない、こういうことは明確に外国に示しておかなければならないと思います。  まず第一に、先生が御指摘になりました難民問題でございますが、長崎のレセプションセンターあるいは品川にございますアジア福祉教育財団がやっておりますベトナム難民の日本への定住のための施設、そういうところを見て回りましても、結局急増する、本当に急増した難民の収容施設というものが実はもうパンク状態になりつつあるというのが現実でございます。御案内のように、長崎の大村収容所は二百人の収容人員のいわゆる政府施設でございますけれども、今ここに千人近い中国系の人たちが収容されている。その人たちに対応するために、二百人の収容能力で決められた基準の法務省の入国管理官、こういう人たちがいわゆるオーバーしてしまって、いろいろなところから駆り集めて、それで難民の処理に当たるということでございますが、これは、来た人たちの意見がございます。それはいわゆる収容されている人たちが、日本で働かせてくれないなら即刻母国に帰りたいという意見を出しているわけでありまして、やはりそういうことになってまいりますと、相手国政府に身元の確認を求めた上で、確認された人たちに身柄を引き取ってもらうという作業をしなければ、日本の収容施設というものはもう既にパンク寸前になりつつあるのではないか、こういうふうに私は率直にきょうは申し上げておかなければならないと思います。  こういう中で、私が実際自分で歩いてみて、香港では結局五万五千人余りの難民が収容されておりますけれども、本当に昔の英軍の兵舎の中に、もうこれ以上入り切れないというぐらいの人たちが収容されている。そういう香港政庁の悩みは、秋になると、このベトナムからの人たちはここへボートピープルとして来なくなってきた、しかし、春になったらどうするか、もう収容人員はとても収容し切れない、もう限度を超えているというのが香港政庁の意見であります。そういう中で、中国からの難民はもう中国に向かって強制送還をしているというのが香港の今のあり方であります。  こういう中で、日本政府としては、先般来、日本における不法就労の外国人の人たち、この人たちに対して関係各省庁での事務レベル会議が持たれておりましたけれども、やはり先生指摘のように、危険で、そして汚くて、きついという職場にいわゆる不法就労する外国人が集中的に集まってくるということになりますと、これは一つ日本の労働力のいわゆる構成分野というものがここで二重構造になってくるという問題が国家として現存をして、これは将来何十年か先に日本の国民全体がこの問題について一つの大きな苦難に当たるだろうと私は考えております。  そういう意味から、国際国家になった日本でございますから、もちろん外国人日本への受け入れというものを厳重に規制するということは、今後はなかなかそういう考え方では国際社会で信用される国家としては生きていけない。そういうことになってまいりますと、いかなる条件で研修生を受け入れるか。あるいはまた今先生指摘のように、日本看護婦が不足しておる。ヘルスケアとかいろいろなことで、ホームステイをやっている人たちにどうしてサービスをするかというような問題も含めて、この外国人看護婦日本に入れることにどういう問題が存在をするのか。あるいは、例えば建設現場に入ってきて働くような人たち、あるいは工場で研修生として実習訓練をする外国人研修生の方々、この人たちが日本へ来て、将来日本の婦人たちと恋愛関係ができて、結婚をするというような問題も必ず出てくることも考えておかなければならない。そのときのいわゆる国籍の問題あるいは生まれてきた子供の問題、それから社会保険の問題をどのように扱うのか。あるいは事業場で研修している際に労災事故に遭うといった場合の扱いをどうするのか。  こういう問題は、国家としては大変重大な要素を含んでいる問題でございまして、このために、実は先般私は官房長官に対して、この事務レベル協議だけでは済まない、国家の重大な一つの構成問題に関係してくるということで、関係閣僚の懇談会といいますか、関係閣僚会議を設置すべきであるということを外務大臣として正式に要請をして、海部総理も、これに対して、そのような措置を講ずべきだという判断を下されたという経過をこの際申し上げておきたいと思います。  なお、一言訂正をさせていただきたいのは、先ほどIMFと申しましたのは世銀でございますので、訂正をさせておいていただきたいと思います。
  166. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その閣僚懇談会の設置までは私も大賛成なんです。  ただ、拝見しておりまして、ここで心配なのは、のろいことと拙速だという二つの条件、反対の条件があるということです。そして国民としてもっと何とも言いがたい気持ちがしているのは、いつになったらどうなるんだよという煮え切らない気持ちであります。自分の身近に意外にこの関係者が多いからでございます。  そしてもう一つ、そこで私はいつごろまでにできるかをお尋ねしなければなりません。これをひとつある程度の見通しをお示しいただけるとありがたいと存じます。  それからもう一つは、人を入れるということは簡単でないと私も思います。私も中国生まれで日本へ帰ってまいりまして、相当長い期間にわたりまして引揚者というのでいじめられたいきさつがございますが、私は腕力もありましたし、いじめるのをやっつけ返すだけの馬力もございましたので、まあこんなことになっているわけでございますが、いじめる日本人の狭量さといいますか、混血が既に終わって、何百年も、何千年も経過した日本国において、新しい人とうまくやっていくという教育というのがやはり必要な人間的要素ではなかろうかと思います。そういう面についても、ひとつその懇談会の際にぜひとも御反映をいただけるとありがたいかな、こう思っているわけであります。
  167. 中山太郎

    中山国務大臣 国際化をしてまいります国内の問題、これは、外国人がこの日本の中でどのように研修をし、どのような場所で働き、どのような場所で研究するかということは、やはり国民全体がこれからの国際社会に生きる日本として、先生の御指摘のように、一つ考え方をきちっと立てておかなければならない時期にやってまいったと思います。  なお、この問題につきましていつごろまでに関係閣僚会議が設置できるかということでございますが、この国会が終了する時点をめどに関係閣僚会議を設置したいというふうに期待をいたしております。
  168. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いや、それで意見がまとまるのがどれくらいかと私申し上げましたが……。
  169. 中山太郎

    中山国務大臣 この意見をまとめる際に、率直なことを申し上げまして、私は、一番問題になってくるのは、この入れるべき相手のいわゆる母国、相手国、例えばフィリピンから研修生を入れるとかいろいろな問題がございましたときは、フィリピン政府日本政府との間に研修受け入れにかかわる協定をつくる必要があると思っております。つまり研修期間何年にするかという問題が一番基本的な問題でございまして、日本研修生を送りたいという国との間には個別にこの協定を結ばなければならない、外務省としてはそのように判断をしておるわけでございますが、その場合に、関係する省庁が先生も御案内のように非常にたくさんあるわけですね。入国管理は法務省であって、そしていわゆる労働関係は労働省であるとかいろいろな関係がございまして、特にその関係の中でも、今までの、日本に生まれ、あるいは日本に居住して掛けてきたいろいろな社会保険の積立金を、結局対象者として新しく入ってくる外国の人たちに、さあ加入させる制度をどうするのか、いろいろな問題をこれからは御協議をいただかなければならないと思いますが、いつごろまでにこの結論を出せるかという問題でありましたら、私はできるだけ早くやるように事務方を説得しなければならないと思います。  それから、閣僚会議においては、やはり大所高所から閣僚が、国家の将来、いわゆる国の中にいろいろな外国の人間を入れてくるわけでありますから、そういうことについての将来の展望というものもしっかりとそこで議論をして、これからの方針を固めるということが必要であろうと思います。
  170. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 恐らくこの問題は一国だけで協議できる問題でさえないだろうと思いますし、国連においても協議をしなきゃならぬテーマにもなりますでしょうし、大変なのはよくわかっております。可及的速やかに結論を出されますように、まずお願いしたいと思います。しかも、その結論がすばらしいように、もう一つお願いしなきゃならぬと存じます。  きょうはこの辺にこの問題はしておきたいと存じます。甘いのでございますが、初めての質問でございますから、甘目にこの辺はしておきたいと存じます。  もう一つは、日ソ問題についてお尋ねをしたいと存じております。  地中海のマルタの洋上で米ソ会談が行われる、こういう激動期にありますものは、戦後四十四年間にわたるヤルタ体制が崩壊状況に至ってきたのではないかとさえ極言する方もおられるわけでございます。また、米ソ間の接近は、西欧、東欧の差をなくすほどの大変化を発生させつつあるわけでございまして、それに伴い当然日本の周辺に対しても大きな変動があらわれるのではなかろうかと存じます。そこで私は最近の対ソ情勢がどう動いているのか全く知らない立場の一人としてお尋ねをするわけでございます。  まず、一番けちな話から申し上げますと、きのう参議院において外務大臣は、対ソ貿易は政経不可分の立場でやってきたがというのに対して、政経不可分でなくてもよいとおっしゃったかのごとく受け取られる御発言があったのだそうでございますが、人によって明快ではございません。恐らく大臣は非常に巧妙な言い回しをされたのか、聞く人が間違っていたのか、私の理解が不十分なのかは存じませんが、その点をまずお尋ねしたいと思います。  と申しますのは、我が国は昨年、対ソ貿易は既に第三位の立場に位置しているのでありまして、政経不可分が原則であると言うなら、平和友好条約を結んでないにもかかわらず第三位というのは相当なものでございまして、これを指しておっしゃったのかもしれないなと私は思っているわけであります。明らかに対ソ関係において、政経不可分などというような古めかしい議論でない新しいルールをつくらなければならないとそろそろお考えになり始めたのかなと私は推測をしているわけでございます。そうすると、勉強家である大臣としては、定めて深い配慮から何かを言いたくておっしゃったのではなかろうかと思うわけでございまして、このチャンスにどうぞお触れくださいますようにお願いします。
  171. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  従来、政府といたしましては、政治、経済分野が全体としてバランスのとれた発展を遂げなければならないという立場から、無原則な政経分離という原則はとらないということを基本的な立場としてきたことは御承知のとおりでございます。他方、日ソ関係におきましては、可能な、適切な範囲での実務関係の進展ということは、これはまた日ソ関係安定の観点から好ましいことでございますので、そういうことで互恵的な貿易が順調に伸びてきたというのもまた従来の経緯でございます。  それで、先ほど先生が御指摘になりましたように、一九八八年におきましては、往復日ソ貿易額が五十九億ドルと、日ソ貿易史上最高のレベルにまで達しており、これは西独、フィンランドに次いで第三位、しかもフランス、イタリアを超しており、そしてアメリカ日本の六割、イギリスにおいては日本の半分以下という状況になっておるということで、そういう意味では、実務的な互恵の範囲での貿易がかなりの程度まで達しており、これはやはり日ソ関係の安定に役立っている。しかし、基本的に政府といたしましては、やはり政治的な安定が得られてない状況においては、政経不可分の原則のもとで限度があるということも事実であるということを従来申し上げてきたところでございます。
  172. 中山太郎

    中山国務大臣 今局長が実際の計数を挙げて、日ソ間の貿易が西側の諸国の中では第三位にある、しかも米英あるいはイタリーと比べるとはるかに大きい貿易を行っておるということは御理解をいただいたと思います。  私どもは、ヤコブレフ氏を団長とする訪日団が来週お越しになるわけでございますが、これは国会が招待をされたというような形での来日でありますが、その機会に政府といたしましてもぜひお目にかかって、これからの日ソの経済関係あるいは政治問題、各般にわたって腹蔵ない意見の交換をさしていただきたい、このように考えております。
  173. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最近、懸案の領土問題につきましてもソビエト側の関係者から続々おもしろい御発言が聞こえてくるわけでございまして、またソビエト側の関係者に会いますと、我々に対してもおもしろい意見を言ってほしいという要望がかなりたくさんあるわけでございます。私といたしましては、おもしろい意見をこの場合言った覚えは全くございませんで、厳として政府基本方針と同じく私どもも頑張っているわけでございますが、この最近のソビエト側の傾向を拝見しておりまして、ひょっとすると大きな決断を迫られるのではないかという感じがいたしますし、ソビエト側がひょっとすると、東独と西独が合併することについてさえも甘い発言があるほどのソビエトの最近のペレストロイカの状況でございますから、これはまた私たちが注目に値するほどの平和と友好の大発言があるのではなかろうかと夢を見ているわけなのでございます。この辺のあたり、領土問題に関するさまざまな提言、日本に対するアプローチ等をどう判断しておられるのか。私は、日ソ友好を愛する方の立場として、両国に安定的な国家関係と民衆の関係ができ上がることを喜ぶ立場として御質問をするわけでございますが、お話しいただけるところをお話ししていただければと存じます。
  174. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ両国にとって極めて重要な御発言かと存じます。御案内のように、従来数次にわたりまして衆参両院において全党の一致した決議が行われております。つまり北方四島の一括返還、これが両院における数次にわたる決議でございます。その決議をした国会が御招待をして、ヤコブレフ氏を団長とする、ソ連の外交の実力者と言われる方が団長として日本へ来られる、そこで日本の国会の各党の方々と懇談をされる、こういうふうなことを考えますと、従来の国会の数次にわたる北方四島の一括返還を求める決議案を受けまして、政府としては、領土問題をまず解決する、その後に平和条約を締結したいということを正式にソビエト側に申し伝えてきておるわけでございます。私どもといたしましては、この国会の数次にわたる各党一致した御決議を踏まえて、このヤコブレフ氏は当然来日されるわけでございますから、国会の場でひとつ各党の方々がこの領土問題に関して腹蔵のない意見を交換していただき、そうして政府側も、そのような御意見の交換の状況というものも逐一私どもの方で勉強さしていただき、また政府政府として、このヤコブレフ氏と会談をする際に、どのようにしてこれから日ソ関係を全面的に友好促進をし、平和条約を締結し、そして新しいアジア太平洋時代に備えて日ソ関係正常化するかということについて、私どもとしては前向きに対処していかなければならないと考えております。
  175. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 若干事実関係で補足させていただきたいと思います。  最近、領土問題に関しましてソ連側から学者を中心にしていろいろな意見が出ていることは確かでございます。最近の例を幾つか御紹介させていただきますと、例えばスラビンスキ極東の諸問題誌の編集長が、二島返還は一九五六年に約束したことであり、これはソ連側の義務であるという議論を展開したことがございます。それから東京におきましてアファナシエフ・モスクワ古文書大学の学長が、四島は返還すべきであると考えているということを述べ、その後、非軍事化、共同所有、平和条約締結、三段階方式を提案したいという意見を述べているというようなこともございます。最近におきましては、サハロフ博士が東京におきまして、千島列島の重要性を理解、第二次大戦前に存在していた国境の保存が正しい基準というようなことを演説で述べておられるということもございます。それからグリー人民代議員が北方領土にソ日両国がともに主権を持つことを提案するというようなことを議論しておる。このように、ソ連側におきまして、特に学者の方々の間に日ソ間の領土問題を解決しなければならないという認識を前提とした意見が出てきていることは事実でございますし、注目されることだと思います。  ただ、私どもとしては、ソ連政府立場におきましては、従来の平和条約交渉あるいは外相会談等を通じましてソ連側の原則的な立場に現在までのところ全く変化が見られなく、かなり厳しいものがあるというのが現実であるということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  176. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、日ソ間に横たわる問題は、領土問題ともう一つは水中における核能力の存在だと存じます。オホーツク海、日本海の北部、そして日本海溝の北部、東北の前方海面等に強大な原子力潜水艦が米ソともに存在しておる。この様子というものは、世界の核軍縮がぐいぐい進んでいるのに、もう不愉快をきわめるわけであります。私どもは、不愉快をきわめながら、交渉する相手と交渉したことがないという悲しみを持ってこれを見守っているわけでございまして、私は北方領土だけが返れば万事が終わるというのはおかしいのではないかなという気もしているものでございますから、こういういよいよの両方のトップレベルのお話し合いがありますときには、日本周辺における核能力の軍縮についてもぜひ十分の判断と、それから討議をしていただけるとありがたい。もちろん議員個人として私どもは何でもお話し合いをさせていただく用意はございますけれども、これもまた大きな意味合いにおいて重要なテーマではないのか。そして、それは日ソ間の問題だけではなくて、明らかにアメリカの問題であり、明らかに朝鮮半島の問題であり、明らかに中国の問題で、そして明らかに世界じゅうの安全保障全体に絡む問題であると存じます。これに対して余り範囲を広げれば広げるほど問題の解決はかえって遠くなるのかもしれませんし、さじかげんも必要なのかもしれませんけれども、少なくとも日本国民にとってごく近接した海面下の核兵力の存在というものについては、私どもは見るべきを見ておかなければならぬかと存じているわけでございますが、いかがでございますか。
  177. 中山太郎

    中山国務大臣 先生指摘の北部太平洋における米ソ両国の核装備の原子力潜水艦の配備は、私もよく存じておりまして、そのような状況の中で北方領土問題の日ソ間の協議をこれから行う、あるいは忌憚のない意見の交換を行うという場合には、当然のことながら、米ソ間の話がどうなるかという問題が国際政治の場では当然考えておかなければならない問題でございまして、私ども安全保障条約を結んでおる米国との間の信頼の上に立ってこれからの日ソの交渉というものをやっていかなければならない。先般、キャンベラにおきましてベーカー国務長官とも、いろいろこれから日本がソビエトとの間にどのような外交的な話し合いがいつ行われるか、この件につきましては私が正式に――ヤコブレフ氏を団長とするソ連の最高会議方々の来日、これは国会の招待によるもの、そして十二月には日ソの平和条約の作業グループの事務レベル協議が行われるということ、三月の中旬にはシェワルナゼ外務大臣の訪日がある、さらに明年の暮れごろに日本の外務大臣が訪ソを行う、そして再来年にゴルバチョフ書記長の来日がある、このような一つの日ソ間の外交プログラムというものが既に設定をされているわけでございます。  そういう中で、今御指摘のように、この北部太平洋をめぐる核の問題、あるいはアジア太平洋地域における安全保障の問題というものは、単に日ソ交渉だけでの問題ではございません。そういう意味で、日本といたしましては、これからこの地域の安全、また領土の返還問題について交渉に当たりますにつきましても、十分な配慮が必要であろうと考えておりますし、また各党の先生方にも御協力をいただいて、この長年の日本の国民の宿願というものをどのように解決していくか、さらに日ソ間のこれからの平和と友好あるいは協力というものをどういうふうに将来展開していくかということについても、これから国を挙げて真剣に考えなければいけない重要な時期に差しかかったと判断をいたしております。
  178. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この問題は、難民条約どころではなくて、さらに慎重かつ大胆なお取り組みをぜひともお願いをしたい。  先ほど日中問題についてかなり嫌みを申しましたが、日中問題の安定も、またその交渉の裏側に断固存在しなければならないわけであって、日中関係がますますだめになる最中に日ソ関係の協議をするということは、今回のケースの場合にはあり得ない、逆に日本国のバーゲニングパワーを弱めるばかりだと私は思うのでございまして、その意味では、日中関係もそうした大きな取り組みの中でもう一回見直しをしていただくのがよろしいのではないかと私は思っているわけであります。  さて、時間がなくなりましたので、最後に嫌みを一つだけ申し上げたいと存じます、今までも申しましたけれども。  一つは、ここのところ外務省が国際会議のところでいろいろなことを各省庁と組んでおっしゃっている問題ですが、環境保護の問題で、フロンガス問題、炭酸ガスの問題、熱帯横林、マングローブの保護の問題、フロンガスと炭酸ガスは、これを制限しようというお話でございますが、新聞を見ておりまして見るにたえない交渉ぶりではなかろうかと私は存じております。少なくとも世界に先駆けて環境保護にこたえる日本でなければならないのに、もうヨーロッパでの悪口ときた日には話のほかでございまして、「経済の悪漢」などという言葉が平然と出ていますし、「エコロジカル・テロリズム」なんという言葉が日本に寄せられておりまして、また「公害を輸出する日本」とか「日本世界一の環境破壊者」であるとか「自然を食い尽くす日本」であるとか、新聞の見出しを見ているだけでも後ろめたく気の重いようなレベルの話が多いわけであります。  各省庁に言わせれば、現実的に申しまして、炭酸ガスの規制などというものについてそう簡単にやれば発展途上国がぐあいが悪くなるよというのはわからないではありません。しかし、私の住む神戸におきましては、市長選挙の交渉のときに炭酸ガス排出基準を断固決めまして守らせたいきさつがあるわけでありまして、工場の炭酸ガスの排気ガスについてはコントロールできる自信がございます。また硫黄酸化物につきましては、数年のうちに完璧にこれを実施したいさきつもあるわけであります。問題はトラックだけなのです。このトラックの排気ガスについてはなかなかややこしいのはよくわかっております。ところが通産省がもう必死になって、現実的なと称して外務省を引きずり回している。交渉するのは通産省なのか環境庁なのか農林省なのか私はよくわかりませんが、少なくとも外交するに当たって世界じゅうにののしられていることでは外交ができないのではなかろうか。外務大臣はもう数年前より総理級の人物でなければできないような重要ポストになりました。国内諸官庁に対してある程度の見識とそして強烈な政治力のある方が歴代任命されてこられたわけでございます。私は大臣にこういう形で攻め寄るのは余り好まないのではございますけれども、ここのところ余りにもひどい。何を偉そうに言っているかと私は言いたくて仕方がない。フロンガスにつきましては、私は工学部の出身でございまして、フロンガスの代替品についても百も承知、二百も承知、ここで論戦する用意もございます。熱帯樹林をちょん切った問題につきましては、私の関係者の中に森林及びパルプの輸入業者がおりまして、詳細に私は存じ上げておりまして、議論できる用意がございますが、きょうはもう時間がなくなりましたからやめます。  大臣、これは政治的見識の問題であろうかと私は最後に思うわけでございまして、外務省としては、本当は外交をするのが外務省ではございますが、国内諸官庁を率いて外交一元化の立場から交渉なさる以上は、国内諸官庁にも言うべきを言う。こんなあほなことをしておったら世界の中の孤児になる。何をなさるのですかという政治的な御見識が必要な時期が来たのではないか。そうでないと、諸官庁に引きずり回されて何を交渉しているのかわからなくなってしまう。ここのところは一言申し上げたくて、最後に時間をちょうだいいたしまして申し上げたわけでございます。今後の御奮闘をぜひお願いしたいと存じます。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 今御指摘のような点がないと私は申しません。私は、やはり外交というものは、外務省が外交の窓口であり、外交の総攬者は外務大臣であるというみずからへの自覚も持っておりますし、そのような立場で今後外交を進めていきたいと考えておりますが、もう国際化がここまで進んでまいりますと、国内で国際的な問題を与野党問わず御認識をいただき、外交即内政である、内政即外交だという時代がやってまいったということで、私は就任以来外務省の幹部に対して、そのような考え方でこれから外交を展開せよということを申しております。
  180. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間が参りましたので、終わりますが、ODAに関する基本に関して討議をしたかったのでございますが、御関係の皆様方にはお許しをいただきたいと存じます。次回に譲らせていただきます。どうもありがとうございました。
  181. 相沢英之

    相沢委員長 林保夫君。
  182. 林保夫

    ○林(保)委員 中山外務大臣初め皆様御苦労さまでございます。きょうは国際情勢調査でございすけれども、臨時国会始まって以来、もう半ばを過ぎながら、本当に待ちに待った日が来たような感じでございます。それにしては時間が限られておりますので、あえて私の方からもいろいろな意見を申し上げながら、ひとつきょうは三点について御質問申し上げたいと存じます。  ポイントといたしましては、戦後の東西といいますか、あるいはヤルタ体制といいますか、第二次大戦後の状況が全く根本から変わるような状況になっておる。それは激しい変化であろうと思いますし、画期的な、歴史的な、そしてまた見ようによっては二十一世紀を間近にして、もう十年でございますけれども、いい方向に行くのではないだろうか。まさにそこに日本が、そしてまた皆さん方の外交努力が大事なときでございますだけに、御苦労でありますけれども、ぜひひとつしっかりした見通しと理念とを持たれまして、私どもともどもに国政の一部を担う立場としてもやっていかなければならぬ、こういうことで大臣にきょうはひとつそういった御決意について、手短で結構でございますけれども、まずお伺いしておきたいと思います。
  183. 中山太郎

    中山国務大臣 今先生指摘のように、国際政治といいますか、第二次大戦後続いてまいりました巨大な核軍事力を背景とした米ソの厳しい対立が、やがて対話の時代に入り、そして今米ソ間では協力の話の舞台が設定されようとしていると私は認識をいたしております。また非同盟の各国でも、この夏でございますね、九月に非同盟会議というものが開催されました。そこでの議論も従来の考え方から大きく変化をいたしておると認識をいたしておりまして、まさに国際政治は大きな勢いで激動の時代に入ってまいり、そして新しい時代を模索しつつあるというふうに認識をいたしております。
  184. 林保夫

    ○林(保)委員 まさにその方向は新しい世界の政治秩序、経済秩序、社会秩序、あらゆるものを秩序立てしなければならぬ、こういう視点で私ども民社党は微力ながらも頑張っておる、このことを申し上げながら、まず第一に、ソ連を含む東欧関係でございますが、けさ七時のニュースでしたか、目の覚めるようなニュースがございました。つまり戦後長々と私たちがいつの日か、いつの日かと待ち望み、なお難しいと思われておりました東西ドイツの壁が払われた、こういったニュースでございます。ゴルバチョフさん、しっかり頑張ってペレストロイカをやっておりますけれども、これは単なる口頭禅ではなくて事実ではないかと思いますが、外務省ではどのような報告を現地の実情として受け取られておるか、まず実情をお聞きしたいと思います。
  185. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  九日に東ドイツ閣僚評議会が発表した決定の全文がございますので、御紹介申し上げたいと思いますが、これによりますと、「国外への私的旅行は無条件に申請が可能である。許可は速やかに与えられる。例外的な場合にのみ却下される。」ということで、東ドイツ国内関係当局は、「現在適用されている定住のための出国の条件が満たされていない場合でも、定住を目的とした出国のために遅滞なくビザを発給するよう指示を受けた。」ということで、「定住のための出国は西ドイツ、および西ベルリンとのどの国境通過検問所でも可能である。」ということを発表しております。これによりまして、先生おっしゃいましたように、確かにこれは劇的な、歴史的な決定であると受けとめられておりますし、アメリカ側においても、ベルリンの壁は事実上撤去されたというような感想も述べられております。  従来、この九月以来、オーストリアとの国境が開かれて以来、チェコの国境等も通じてかなりの人が出て行ったわけでございますけれども、最近まで、チェコの国境を通じても四万人、それからその他全体を通じまして、ことしになりまして二十二万人の人が出国したということが伝えられておりますけれども、今回のこの措置によりまして、昨夜からもう既にベルリンの中の検問所におきまして車の長蛇の列ができているという状況があるということも聞いております。  他方、本件につきましては、これがドイツ情勢に、あるいはひいてはヨーロッパ情勢そのものに大きな影響を与え得る問題でもありますし、これがヨーロッパの安定に害を与えないような形で発展していくということについては、各国とも非常に関心を寄せておりますので、今後日本政府としても、その成り行きに十分に注目を払っていきたいというように考えております。
  186. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  今西欧ではEC各国、自由に旅行ができるようになっておりますが、そこまで行っているのでしょうかどうでしょうかという点、一つだけ。
  187. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  今回の発表文に関する限り、従来の特別な条件を満たされない者に対しても出国が認められるということで、かなり自由に出国が認められているようでございますけれども、今後の推移において具体的にどのように実行されるかということは、なお注目をしていく必要があるだろうというふうに考えております。
  188. 林保夫

    ○林(保)委員 お話しのように、私もやはりこれはまさに画期的な、考えられなかった事態だ、このように言っていいと思うのです。我が党でも、永末委員長が十月三十一日にウィリー・ブラントさんが成田へ立ち寄られましたときに会談いたしまして、もう共産主義の終えんだ、そしてまた世界は変わるという確認をいたしましたし、私自身も永末委員長と一緒に、十一月二日に我が党を訪ねられましたSPDの議員団の皆さんといろいろ懇談させていただきまして、一体どれくらいこちらへ来るんだろうか、大臣、率直に申し上げましてわからぬと言いましたね。ゼロから百万人ぐらいだろう、政府はどうするんだ、党はどういう立場なんですかと言っても、これも今懸命になってやっておるという大変な情勢でありましただけに、大きなニュースであったと同時に、やはりある程度そういうことは東欧ではもう既にほっておけない状況が出ておったのじゃないかと思います。  したがって、これを静かに見守りながら、どうやっていくかという点につきまして、三点、ひとつ大臣から明確にお答えいただきたいのですけれども、いかがでございましょうか。  一つは、東西ドイツの統一について日本政府はこれまで一度も問題に触れておりません。これについてはどういう見解を持っておられるか。私どもは同じ民族だからいいじゃないだろうか、こう思いますし、過日来られた友党の皆さん方は、人種、言語、文化、これは一致しています、ただ、いろいろな形で行き来いたしますと、住宅の問題、労働の問題、雇用の問題、そして学校の問題、これは交流と統一の問題ですけれども、いろいろあるので、これはどうするかという問題がまさにペンディングなので、今一生懸命やっておるんだ、こういうことでございました。  その点が一つと、それから二番目は、これからココムの問題をどのように考えていったらいいのか。短くて結構ですから、どういうふうな検討をやるのかという問題。  それから、三番目の問題といたしましては、これはすぐにでもやっていただきたいのですけれども、私も国連議員連盟の事務次長といたしましてたびたび国連を訪問いたしながら、いつもひっかかる問題があります。大臣、御存じでしょう。国連憲章五十三条の中に敵国条項が入っていますね。第二次大戦で敵国であった国ということで日本と西ドイツが入っています。これをやはり大臣に早々と取っていただきませんと、国連の分担金の額だけではございません、我々も大いに協力したい、しかしあれがやはりとげで刺さっている。これがドイツの関連でいろいろあったというふうにも聞いておりますだけに、その三点について明快なお答えを承りたいと思います。
  189. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生指摘の初めの二つの問題につきましては、私の方からお答え申し上げたいと思います。  確かに、現在の東西関係が非常に進んでおる中で、また最近出国が認められたというようなことから、東西ドイツの再統一の可能性についての議論が高まっていることは事実でございます。しかし基本的には、これは東西ドイツの話でございますけれどもヨーロッパの現実というものを考えますと、東におきましても、西側におきましても、ドイツの統一につきましてはいろいろな議論のあるところでございます。それから、先ほど先生が御指摘になりましたように、それぞれの国内においてもいろいろな難しい問題もあるようでございます。そういう意味で、このドイツの統一の問題というのは、やはりヨーロッパの全体に大きな影響を与え得る問題ということで、今後とも注目をしていく必要がある問題だろうと思います。  それから、第二の問題につきましては、ココムの件でございますけれども、ココムの申し合わせに参加している国々が一致してこれを守っていこうということで運営しているわけでございますので、その中でこれをより合理化すべきであるという議論が行われておりますし、またその方向での審議が行われておりますけれども、東西関係におきまして、依然として安全保障の見地からの配慮は必要であるというのが共通の認識でございますので、その中でこれをいかに簡素化しつつ有効に実施し得るかという各国の申し合わせに従って、我が方としてもこれに対処していくということだろうというように考えております。
  190. 福田博

    ○福田(博)政府委員 第三番目の敵国条項に関する御質問でございますが、国連憲章の五十三条と百七条に敵国条項がございます。これにつきましては、もちろん先生案内のように、今やそれは極めて時代おくれのものである、早くなくなってほしいという認識は我が国において極めて強いわけでございますが、現実の問題として、先ほど話題になりましたベルリンの地位というようなことについては、まさにこの条項が生き続けているという側面もあったわけでございます。最近ヨーロッパ、特に東ドイツ等で起こっている変化というものがさらに進展して、こういうものが廃止される日が一日も早く来ることが私たちの希望するところでもあります。
  191. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、ぜひ御関心を強く国政の場でお互いに持ちながら、これを解決していきたい、こういう念願でございます。  東欧そのほかに対します経済的な援助の問題もいろいろございますが、基本線だけはきっちり私たちの世代の間でやはり解決したい、こういう思いを持っていますだけに、きょうの画期的なニュースと関連いたしまして、注意を喚起する意味で申し上げたわけで、御答弁ありがとうございました。ぜひひとつお互いに努力する課題としてコンセンサスを得ておきたいと思います。  時間がございませんので、次に移ります。  第二の問題は、これまたきのうでございましたけれども鄧小平さんの引退、江沢民さんの中央軍事委員会主席への就任などの人事でございます。私も渡部先生、日中議員連盟の伊東会長と御一緒に、党を代表いたしまして、過日、三日間中国を訪問させていただきました。そのときの大変強烈な印象、そして、ああこうか、こういう問題を踏まえながら現在中国日本政府との間ではどういうことになっておるのか。制限的な関係というふうに聞いておりますが、外務次官以上の高級レベルの折衝はしないということになっているのでしょうか。  それからもう一つは、帰りまして九月二十二日でございましたか、渡航の制限、自粛の解除を許可されたと聞いておりますが、現状がはっきりどうなっているかということを率直に事務的にお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  192. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま日中間交流につきまして、政府レベル交流につきましては、ここしばらくの間、閣僚及びこれに準ずるレベルにおきまして、日本の方におきましては交流を自粛する、差し控えるということになっております。
  193. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、皆さん方の北京の戒厳令解除の見通しをどのように持っておられるかということを開きたいわけでございますが、私なりに現地で聞きましたところ、李鵬総理並びに江沢民総書記は、戒厳軍の銃を百ないし二百丁とられておる、これが回収されるまではどうしても解けないんだ、こういう言い方でございました。しかし、私どもの提言といいますか、格別そこにおられる渡部先生も言っておられましたが、警察への切りかえ、こういうことで過日切りかわったようでございますし、だんだんと違った方向が出ておると思います。  そして、私ども改革開放といったような線での経済側面、社会側面は認知できるかと思いますけれども、なお思想的には何か固くなりつつあるというような印象を私自身は受けてまいりましたけれども、これから中国との関係においては、一つは経済関係をぜひひとつ、日中間の友好の基礎は変わらぬのだということをもうどなたも繰り返して言っておられました。そしてその中で、例えば経済問題についてトップから、NECと鉄鋼プロジェクトあるいは経済特区はぜひお願いしたい、こういうような具体的なことまで要望されてきており、先ほど来お話しのように、何か使節団みたいなものを、文化関係でございますか、御派遣なさるようにも聞きましたが、可能な限りやるということでございましょうけれども、どういうスケジュールでこれからやっていかれるのでございましょうか、承りたいと思います。
  194. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 いろいろな点、お触れになりましたけれども、経済関係の方でございますが、まず貿易の面、数字を調べてみますと、先ほど来御説明しておりますように、中国側が引き締め政策に入っておりますので、日本からの中国に対する輸出は、その影響を受けまして、若干伸びが低調でございますが、まことに私どもが勇気づけられておりますのは、日本に対する中国からの輸入、これは昨今の状況にもかかわりませず逆に大変多くふえております。それから投資でございますけれども、投資の方は、やはりこれは個々の企業の方の御判断でございますけれども、やはり昨今の中国の情勢の影響でございましょうか、若干低調ぎみでございます。  それから、政府ベースの経済関係ということになりますと、これも先ほど来出ております、継続しております経済協力は、これはこれで予定どおり順調に進んでおります。御議論がありますのは、新しい経済協力をどうするかということでございまして、これにつきましては、今政府の中で諸般の情勢を眺めながら慎重にタイミングを見計らっておるということでございます。  それから、文化交流お話がございましたが、こういう困難な状況でありますれば、むしろ私どもは人物交流といいますか、青年交流学生交流、学者の交流、こういう文化交流こそはむしろ積極的にやっていこうではないかという気持ちでおりまして、近々、まだ時期を具体的には定めておりませんけれども政府ベース、両国の担当の局長レベル日中間の文化交流、今後これをどうするかということを、これは年に一回やっておりますけれども、これを近々北京でやることを予定しております。
  195. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣にひとつ中国問題についてお聞きしたいのですけれども、過日、最後鄧小平さんに会いましたら、実務者の実力者二人、というのは李鵬さんと江沢民さんですが、会ってこられたので、もう何も話すことはありませんという中で、鄧小平哲学みたいなものがございまして、非常に印象深かったのは、今の世界でつらつら問うのに、一番いかぬのは列強支配だ、こういう言い方ですね。大国支配という意味にかえてもいいと思いますが、そういった中で、サミットにおいて、第四項でございましたか、中国非難決議をやったのは、あれは軽率ですね、こういう言い方で、それでは何が大事なのだと言いましたら、平和五原則のネールの思想、周恩来も合意した。それからバンドン会議の思想でいかなければいかぬ。NATOだとかワルシャワ・グループだとかという分け方をする時代はもう過ぎましたよと言って大変哲学的な話をしておられました。したがって、我々も西欧の一員である日本立場と隣国のアジア立場と二つを兼ね合わせて、隣国なるがゆえに西欧とは違った対応があればいいのだろう、こういうことで行ったわけでございますけれども、何か大前提の西欧の一員というのを否定されたような感じ鄧小平さんとの間にございまして、これから対応する場合に、やはり先ほど来議論もございましたけれども、ある程度日本独自の対応をいろいろな面で考えるべきだと私は思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  196. 中山太郎

    中山国務大臣 日本はやはり中国との地理的な距離も極めて近い国でありますし、歴史も文化も非常に深い関係を持っておる国家でございますから、私ども日本政府といたしましては、この日本国の考え方でこれから対処をしていかなければならないというふうに思っておりますが、一方サミット加盟国としての立場もございますから、それはそれとして一応理解を求めながら、日本としての姿勢というものをやはり堅持していかなければならない、このように考えております。
  197. 林保夫

    ○林(保)委員 難しい立場だと思いますが、ぜひひとついろいろな多様な対応をお考え願いたい、このように希望申し上げますが、時間があと十分しかございませんので、もう最後の日ソ関係に入りたいと思います。  過般来、ヤコブレフ・ソ連政治局員がこちらへ大勢で私どもの招待といいますか、お願いで来る、要請で来るということになって、大変な北方領土の返還をめぐる問題、そのほかいろいろ出ておりますが、きょうは時間がございませんので、北方四島に限ってお話を聞かせていただきたいと思います。  実は、私は仲特の委員並びに外務委員と両方の立場から同じ質問で同じことをずっと繰り返しているわけです。大臣にその事実おわかりにくいと思いますけれども、私が一番言っているのは、沖縄返還のときのことを頭に描きなから、四島返ってきて大臣どうするのだという質問をしているわけです。おわかりいただけるかと思います。そういう対応が日本に全くないではないか。これは私なりに、亡くなられた玉置総務庁長官・北方領土対策委員長、それから高鳥さん、それから山下さん、そしてたしか宇野外務大臣にも特別委員会に御出席いただいて、その話を詰めたことがございます。大臣、皆さんなしですね。北方四島が日本に返ったときにどういう対応であの島を経営するかといった視点でございます。総理に聞くというお話もございました。宇野外務大臣は、私は案があるけれども、今担当大臣として披露する立場にはない、こういうことでございましたけれども、いろいろそういうものがなければ、もう既にヤコブレフさんも、我々は既にかなりのことをやっている、大臣お読みになったと思います、これは読売の記事でございますけれども。一方的なソ連側の提案ばかりでなしに、日本側も出してこい、こいう言い方できておりますね。そしてまた、おもしろいのは、先ほど来お話にもございましたけれども、二島返還、四島返還とは言わぬけれども、非軍事化あるいは共同経営とかあるいはそこを自由化地帯にするのだということのほかに、あそこを夢の島にしようじゃないか、パスポートなしにして、入管なしにして、そしてまた温泉もあそこはあるようですね。海の幸もあるから北東アジアの夢の島にしようというような言い方だと思いますけれども、こういう報道までされております。このことについて外務省は、その夢の島構想についてどのような御判断をされますでしょうか。私ども、ヤコブレフさんが来たときに、そういう話があったときにどう答えたらいいかというのを教えておいていただきたいと思います。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  北方領土の問題につきまして、ソ連側からいろいろな意見が出ていることを私どももよく承知しております。これはやはり現在のグラスノスチのもとで、ソ連側においても北方領土の解決が必要であるという認識が強まっているということが一つ挙げられるだろうと思いますけれども、当面それはソ連の学者、ジャーナリストの間に限定されているという感じがいたします。政府関係者との正式な交渉の場におきましては、先方の北方領土問題についての原則的立場は極めて今は大変厳しいということでございます。そういう中におきまして、政府といたしましては、やはり交渉の場におきまして、その実現を図ることに全力を挙げるというのが当面の立場でございまして、やはりその後の問題について現在の段階で云々することは適当でないということだろうというふうに考えております。
  199. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、北方四島の周辺の状況でございますが、きょう防衛庁の皆さんに来ていたださましたけれども、昨年に比べてどうかという、いろいろ申し上げるよりもその方がおわかりいいと思いますが、極東ソ連軍のプレゼンス、スクランブルの状況、そのほかお答えいただきたいと思います。  それからもう一つ、北方四島にソ連人が何人おるかという質問を、これは三回目の質問でございますけれども、四回目になりますか、これもお聞きしたいと思います。
  200. 守屋武昌

    ○守屋説明員 では、私の方から最初にスクランブルの状況だけお話しいたしまして、あと担当課長の方からソ連機の配備状況について御説明いたします。  緊急発進、スクランブルの状況でございますが、六十三年度は八百七十九件でございます。前年度に比しまして約四十件ほどふえております。  以上でございます。
  201. 嶋口武彦

    嶋口説明員 昨年からことしにかけて極東ソ連軍の増強というのは主として質的な強化でございまして、艦艇、航空機についても増強されております。一方的削減の提案がございまして、これについても一部は確かに実施されていることは事実でございますけれども、今後これが自主的な戦力の削減につながるものかどうか。またこれに伴って戦力の再編成という可能性もございますので、私どもといたしましては慎重に見極めていきたいというふうに考えております。
  202. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つ教えていただきたいのですが、削減のポイントはどことどこだったのか。それと、過日大きな何か軍艦が日本海に入りましたね。あれは何という船でどういう目的か。その二点を防衛庁にお聞きしたい。
  203. 嶋口武彦

    嶋口説明員 削減のポイントは、地上兵力、特に戦車が主体である。また航空戦力についても一部削減が行われております。海軍戦力、艦艇についてもございますけれども、これはほとんど老朽艦でございまして、戦力と言えるほどのものではないということでございます。  他方、先生指摘の船は極めて不思議な船と申し上げますか、大型の三万二千トンぐらいの船でございまして、これはどういう目的で来ているのか、回航されているのかよくわかりませんけれども、仮に居続けるということになれば、極東地域太平洋を含めてソ連軍の作戦能力というものは向上するであろうというふうに考えております。
  204. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一点、SS20はどうなっていますか。ふえていますか。
  205. 嶋口武彦

    嶋口説明員 約束どおり着実に減らされているというふうに承知しております。
  206. 林保夫

    ○林(保)委員 それでは、民間人含めて四島にどれだけソ連の人がおるかという点について。
  207. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  累次の報道によりますと、軍人を含めて四、五万人だという答えになっております。軍人は約一万人ぐらいいるのではないかと推定されておりますので、民間人は約四万人ではないかと思われます。主として漁業コンビナートあるいは養漁場等、漁業関係に従事する人が多いと聞いております。
  208. 林保夫

    ○林(保)委員 そういうことになりますと、日本人はおらないわけですね。  それからもう一つ。過日報道関係やそのほか、あるいはまた水野総務庁長官も勇躍乗り込もうとしたら閣議で自粛というのですか、抑えられたような感じですが、その理由と、日本人がいるかいないか。もしいないとすれば、先ほど来お話しになっている四段階解決や三段階解決なんかが出ておる中で、住民の意思ということになったら、日本人は一人もおらぬ、その意思で決まる、こういうことになりますので、その辺の絡みでお話しいただきたい。
  209. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  従来、我が国の同胞がこの四島には一万七千人住んでいたことは御承知のとおりでございます。これが戦後ソ連が不法占拠いたしましてから、すべて日本に追い返され、あるいは日本に渡航したという状況がございますので、そういう状況のもとで日本人は一人も住んでいないというのが現状でございます。  そういうことでございますので、ソ連側におきましては、住民の意向を問うということを申しますけれども、不法占拠をしているという状況のもとにあるということが基本的な現実だろうというふうに思います。
  210. 林保夫

    ○林(保)委員 時間の制約がございまして、乱暴な質問になって恐縮に存じますが、ありがとうございました。  最後大臣、いわゆる日ソ関係の日程でございますね。先ほど来お話を聞いておりますと、ヤコブレフさんが来られる、それからこの十二月中旬に平和条約の作業部会の開催もございます。そしてまたシェワルナゼ外相の来日、多分大臣も来年末にお行きになられるだろう、そしてゴルバチョフさんの来日というような形でございます。現在交渉をいろいろ御腐心されておりますが、過日はベーカーさんと大臣の間、そしてまたその前は宇野総理、その前の外務大臣というような形でいろいろしておられますが、現状私どもがいろいろ聞いております中で、北方領土の返還の側面についてどの辺まで外交交渉上、新聞情報の伝えるところでは、いや、二島ぐらいは返してもいいという話が出ているんだぞというような話もございますが、事実かどうか。その辺をはっきり聞かせていただけたら、このように思います。
  211. 中山太郎

    中山国務大臣 先生先ほどからお尋ねの点につきまして、欧亜局長から具体的に――ソ連におけるいろいろな日本の四島問題についての発言がございますが、実はソ連政府の意見としては、何らそのような話は実はございません。  そういう中で、実はソ連の外交政策がどのようにこれから展開をしていくのか。それは、このヤコブレフ代表団が日本に来て、国会でいろいろとお話し合いになる。また、その間政府も話し合う。こういう中でいろんな御意見が出てくるのではないかと私は期待をいたしておりますが、これはやはり両国間に横たわる最大の課題でございますから、この問題につきましては、やはりソ連政府の意見、これがどのような形で伝わってくるのか、私どもはそこいらが一番の重要なポイントであるというふうに認識をいたしております。  なお、極めて微妙な問題でございますので、私どもは国会の御決議を十分踏まえて、これから日ソの新しい外交交渉に臨んでまいりたい、このように考えております。
  212. 林保夫

    ○林(保)委員 率直にお話しいただいて、何も出ていないということ、それを確認して、これから私どももそれなりの対応をしていきたいと思います。  それから、大臣は先ほど来国会決議云々と言われました。尊重していただくのはありがたいし、我々もそれを守っていきたいと思いますが、私ども実際に歩いてみまして、戦後のあの苦難の中で、経験した人は特にそうなんでございますが、大臣、やはり民意の総意が四島返還になっていると思いますね。これはまた国議でもあろうと思います。それに対して、何をソ連との間で取引するかという問題も含めての問題もいろいろあろうかと思いますけれども、それはもう言わずもがなの話でございまして、しっかりした対応を、改めて政府の方で頑張っていただく、このことをひとつお願いしておきたいと思います。私ども、そういう点で軽々な民間あるいは国会ペースでの対応はやるべきではない、このように考えております。  ただ、一つ申し上げたいと思いますが、私も日ソ交渉のスタートのときに、あのときに行かれたのは重光さん、あるいは鳩山さん、あるいはまた河野さんだったと思います。私は時事通信社におりまして、当時特派員に出ておりましたが、二、三日前にも新聞に出ておりましたように、パキスタン大使館の深井龍雄さんにも接触があったようです。大きなチャンスを逸したなという実感をあのとき持ったことも事実でございます。しかし、なおあのときにやれば、また難しかったかなという感じもいたします。  しかし、いずれにいたしましても、今日まで延延としてやってきた問題でございますので、有終の美を飾るような、後世代に対する責任を果たすべくひとつ御努力お願いしたいし、私どもも驥尾に付し、またあるいは、時にはいろんな形で努力したいと思う。このことをきょうは確認させていただきたいと思いまして、あえて申し上げた次第でございます。
  213. 中山太郎

    中山国務大臣 この四島問題について大変熱心な御意見をちょうだいいたしました。  私も実は昭和五十五年第一次鈴木内閣で総務長官を拝命しておりましたが、当時北方領土担当の国務大臣として、この二月七日を北方領土の日ということに、いろいろと全国民の熱い願望を受けて閣議了解をした担当大臣でございます。今までの日ソのいろんな方々の苦しい外交交渉の経緯も十分存じておる人間でございまして、これからその当時のことも踏まえ、またそれ以後の日ソ関係の問題、あるいはこの激動する想像もできなかったようなソビエト自身の政治の改革問題、あるいは国際政治に臨むソ連の姿勢、東ヨーロッパの激動、こういう中で、これからの日ソ交渉に当たる外務大臣といたしましては、政治家として全力を挙げて取り組んでまいりたい、このように考えております。
  214. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。お骨折り多い時期でございますけれども、ぜひひとつ頑張っていただきますように心からお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  215. 相沢英之

    相沢委員長 松本善明君。
  216. 松本善明

    ○松本(善)委員 今世界情勢が社会主義国も資本主義国も含めて非常に激動の時期に入っていると思いますが、日米関係も非常に大きな変化をしようとしております。きょうは主にその点について質問をしたいと思います。  きょうの夕刊でも報道されておりますが、アメリカの下院本会議が九日、駐日米軍経費の日本全額負担の一九九〇年度国防予算権限法案を二百三十六対百七十二の賛成多数で可決をいたしました。附帯条項になった対日防衛分担要求の部分では、日本が米軍人の給料を除く在日米軍駐留経費を負担するよう求めているということでありますが、これは事実でしょうか。
  217. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 下院で最終的に採択されました法案そのものを見ておりませんので、そのとおりであるかどうかは存じませんけれども、その趣旨のことが従来から盛られていることはございます。
  218. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは、私どもの得た情報では、十一月二日のアメリカ上下両院の協議会で合意をされたものと承知をしているのですが、そうでしょうか。
  219. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 さようでございます。
  220. 松本善明

    ○松本(善)委員 最終案は別として、その法案の段階のものを外務省は入手をしていますか。
  221. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 入手いたしております。
  222. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは提出をしていただきたいと思うのですが、今ございますか。
  223. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 英文のコピーは持っております。
  224. 松本善明

    ○松本(善)委員 今その趣旨アメリカの米軍人の給料を除く在日米軍駐留経費を負担するよう求めているという問題について、ほぼそういうことだということでありますけれども、これは従来から私も当委員会で何遍も問題にいたしました。ピンクニー・東アジア太平洋局長が一九八〇年のアメリカ下院歳出委員会で、「我々の目標は、日本が、日本で働く我が国の軍事要員の実際の給与以外、すべてのアメリカの経費を引き受けることだ。」と述べているということで、アメリカはこういうふうに考えてやっているのだということを何遍も聞いた。有馬局長にも聞きました。外務省答弁は、いや、それは勝手なことを言っているのだということをずっと言ってきたのですよ。それが今現実になってきているじゃないですか。有馬さん、自分の答弁を振り返ってみて今何と思っていますか。
  225. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 これはあくまでも米国議会のことでございまして、頭書きのところに、私ども理解しているところでは、これは米国議会の意向である、「センス・オブ・コングレス」というふうに書いてございまして、かつ、負担と訳されるのかどうか、「オフセット」、普通ですと相殺といった表現が使われておりますが、その辺の内容がよくわかりません。したがいまして、きちっとしたお答えをすることはできません。  ピンクニー少将、当時の東アジア部長でございましたか、一九八〇年に先生指摘されましたような発言をしていることを私ども承知いたしておりますけれども、あの段階で米国政府は、そこで言われていることが米国政府考えでないということを申しておりました。
  226. 松本善明

    ○松本(善)委員 法的拘束力がないということを言っていますけれども日本が駐留米軍の直接経費の分担に見合う貢献に合意する協定締結のための交渉に入ることを要求している。この部分は大統領に対して法的拘束力を持っているのではないですか。そして、その交渉、協議の結果をアメリカ議会に報告することを義務づけているのではありませんか。
  227. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 話し合いに入れということは、「シャル」となっておりますから、多分力強い表現であろうと思いますけれども、内容そのものが具体的に何であるかということまでを指示しているというふうには、この段階では思っておりませんし、そうではないだろうと思います。それから取り決めに合意するようにといったような表現ではないと思います。
  228. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務省からいただいた文書でも、法的拘束力を有するというふうに書かれている部分は、「大統領は、本法案成立後、在日米軍の直接経費に十分見合う貢献を日本が行うことにつき同意を得るため、日本と交渉を行うこと。」というふうにございます。それから今局長の言われた、相殺という言葉を使っていると言うけれども外務省のよこされた文書でも括弧して負担というふうになっております。原文は法案段階でずっと前に入手されているわけですから、ここであいまいな答弁をするというのは相当な怠慢じゃないかと思うのですよ。どう解釈をするのかというのは、この国会で正確に答弁するのは当たり前じゃないですか。ここでは言えないというようなあいまいなことでは許されないと思いますよ。
  229. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この部分は、話し合いに入れというところが大統領に対して拘束力と申しますか、申し述べているということであります。話し合いに入るという部分であります。それから、先ほど先生がおっしゃられた部分は、まさに「センス・オブ・コングレス」というふうになっておるわけでございます。  それから、資料について仰せられたことでございますけれども、これは御党から、先生からの御要請に加えて、あくまでも仮訳であの段階でお渡ししたものでございまして、第一に、これは他国の条約でございますけれども、有権的にその段階で日本語に訳し得ていたわけはないわけで、私ども英語で一部は見ておりましたけれども、御要請に応じてあのとき全く暫定的に日本語でお渡ししたというものでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  230. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうにしたって、きょうの委員会があることはわかっているんだから、日本政府としてどう考えるかということを確定的に考えて出てくるのは当たり前じゃないですか。私は、そういうのは国会に対して非常に怠慢だ、国民に対して怠慢だと思うのですよ。  それから、法的拘束力がない、ないというふうに先ほど来答弁しておられたけれども、やはりあるじゃないですか。大統領に交渉に入ることを義務づけているとすれば、その中身は法案で決めている中身で交渉してくるということは明らかじゃないですか。私は、日本にとって重大な問題だということを認識してないから、そういうことになってくるんだと思うのですよ。  しかもこの法案は、共同防衛への貢献として、一九八一年の鈴木・レーガン共同声明で合意をされた一千海里シーレーン防衛の軍事分担の誓約に見合うため、海外経済協力費とGNPの一%とされている防衛計画を一九九二年までにNATOのレベルにまで拡大することを要求、これも重大なことだと思いますね。その具体化としてどういうことが言われているか。日本の次期防衛力整備計画を米国と協議しながら作成する。それから空中警戒管制機(AWACS)の完成品購入などを要求している。これは防衛計画大綱にもありません。それから空中給油機、追加のイージス新型護衛艦、これらを中期防及び次期中期防において完成品のまま購入することを要求する。これは本当に重大なことですよ。  こういう問題がアメリカの議会で決議をされているということについて、外務大任、先ほどは内政干渉ではない、議会で何を言おうとそれは勝手なんだという趣旨のことを言われました。そしてそれを千島問題で日本がソ連に要求しているのと同じだと言う。私は全く違うと思いますよ。千島問題について我が党は、全千島の返還をソ連に要求すべきだと言っている。これは第二次世界大戦の戦後処理を誤っているという領土問題の解決についての明白な国際問題であり外交問題ですよ。この問題と、日本の安全保障に関して、アメリカと相談をしろとかあるいは完成品を購入しろとか、それから米軍の要員の費用、米軍人の給与以外は全部日本に持たせる、そういうようなことを決議されていて、これは内政干渉ではないなんと言うのは、本当にどうかしていると私は思いますよ。先ほど言われるように、もし議会だから何を決めてもいいのだということになれば、それはもう日本の政治のことを何をやっても、議会だったら決議してもいいということになりますよ。そういう態度だから大店法だとか借地・借家法だとか、まさに日本の内政問題がアメリカとの交渉で決まってくる。こんなことは絶対許されないと思います。私は先ほどの外務大臣答弁は重大な問題だと思いますよ。それは取り消されるべきだというふうに思います。このような内政干渉は絶対許せないということを明言すべきではありませんか。
  231. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員指摘の問題、これはアメリカの国益をアメリカの国民の代表が集まった議会で議論をしていることでございますから、それはアメリカ内部のことで、我々の国家に対して彼らがどういうことを議論しているかということは、彼ら自身の問題であります。私はそのように理解をしておる。それで、下院で決議をされようと、まだ上院ではこれの審議にも入っておらない階段で、それが即刻日本に何か内政干渉してくるというようなことを決めてかかるということであってはならないのではないか。日本の国会でもいろいろな議論が出てきたことは、先生も御存じのとおりであります。いろいろな意見が出ています。いろいろな決議がされています。それが民主主義です。だから私は、どの国でもいろいろな批判をし、いろいろな議論をしていると思います。私は、そういう条件の中で日本の国会が日本の国益のために議論をし、そして日本の主権を主張するために議論をされることも、これは当然のことだと思うのであります。だから私が申し上げたことを取り消す意思は全然ありません。
  232. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は日本国内政策の問題をアメリカが決議をしたり法案にするということを問題にしているのです。そして、今私は外務大臣の認識はまことに甘いと思いますよ。二日にこの上下両院の合同決議案ができたときに、ナン委員長とウォーナー上院議員が記者会見をして、そのときにウォーナー議員は、国防権限法案のすべての内容はホワイトハウスと十分な協議の上でまとめられたものなので、ブッシュ大統領は必ず署名するだろう、こう会見で言っていますよ。ブッシュ大統領は、御存じのように、議会での勢力は民主党が方が強いですから、その議会との関係考えて、議会で決めたことをずっとやってくるだろうというのは多くの観測ですよ。そして上下両院の合同委員会で決めたのでしょう。上院は来週決めるだろうと言われている。大統領も署名するだろうということが言われている。もちろんまだではありますけれども、そういう問題について、いや、そんなことにはならぬだろうという認識で、何をやっても結構だ、私は驚くべきことではないかと思うのです。私は今の外務大臣の見通しは大変甘いのじゃないかと思いますけれども大臣、いかが思われますか。
  233. 中山太郎

    中山国務大臣 私も日本の外務大臣として外交の責任を持っておる立場でございますから、アメリカの議会でどのような議論が行われているかということは、我々の在米大使館を通じて逐一報告を受けております。先生が、私の考え方が甘いというふうに今御指摘でございますけれども、私の見方は決して甘くございません。やはり外交もございます。いろいろなアメリカの議会の中の問題もございます。そういう問題も十分踏まえて、私は外務大臣としての職責を果たすべく十分その点は考慮をいたしておるつもりであります。
  234. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは日本の地位協定の改定問題にも結びついてくるわけです。外務大臣、決算委員会であなたが答弁されたこととの関係で、猫の目外相発言といって報道されていますよ。北米同長が答弁をしたことをわざわざ、それは私の同意を得たものではないと答弁をされて、そしてそれをまた記者会見で変えられる。これは地位協定の改定問題等重大な影響があります。今アメリカの議会で論じられていることがまともにやってきた場合には、地位協定の改定が必至になると思いますけれども、それには応じないということを今の議論を通じて断言することができますか。内政干渉を許さない、日本日本だと言うのならば、地位協定の改定は応じないとはっきり明言できますか。
  235. 中山太郎

    中山国務大臣 今日まで日米安全保障条約のもとで我が国は自主的に我が国の防衛整備をやってまいりましたし、今後とも自主的にやってまいるつもりでありまして、現時点において地位協定改正を検討してはおりません。
  236. 松本善明

    ○松本(善)委員 では北米局長に聞きますけれどもアメリカの上下両院でこれが通って、日本にそういうふうに求められてきた場合には、これは地位協定の改定が必要になるのじゃないですか。そのいわゆる条約論ですね、北米局長がいいのか条約局長がいいのかわからぬけれども、条約論として、アメリカ下院できのう九日に通ったこの法案どおりにアメリカ政府が要求してきた場合に、地位協定の改定が必要なのかどうかという条約論をお聞きしたい。
  237. 福田博

    ○福田(博)政府委員 まだ法律として成立しているわけでございませんし、先方の法案ですから、定義や何か中身もよくわかりませんし、かつ、その結果を政府が受けて、そのとおり日本に言ってくるかどうかもわかりません。そういう仮定の質問に対してお答えするのは不適当と思います。
  238. 松本善明

    ○松本(善)委員 仮定じゃないのですよ。現実にもうやられているのですよ。そして、あなた方、二日に出た原案は入手をしているでしょう。それが最終的に九日に通ったときにどうなっているかは、変わっているかは、何の報道もありませんから、恐らく何の修正もなく通ったのではないかというふうに私は推測をしますけれども、その案のとおりになった場合に条約としてどうなるか。これは何も仮定の問題でも何でもないです。条約論としては、そういうふうなことになった場合には、この地位協定の改定が要るかどうかというのは答えるのは当たり前じゃないですか。何が仮定の問題ですか。条約論として聞いているのですよ。
  239. 福田博

    ○福田(博)政府委員 日米安保条約を効果的に運用するのは、我が国政府が当然関心を持って日々常に努力しておることでございまして、そういう努力は当然安保条約及び地位協定の範囲内において行われるということでございます。
  240. 松本善明

    ○松本(善)委員 答弁になっていないですね。答弁したくないわけでしょう。  私はなぜこれを聞くかというと、この地位協定の改定なしにアメリカの要求を何とかのます方法はないかということがアメリカで議論されているからですよ。地位協定の改定のあるなしにかかわらず、こういうことは応じないということを、大臣、海部内閣の方針として明言できるかどうか、もう一回聞きたいと思います。これは日本の自主的な立場として、アメリカが言ってきてから考えるかどうかということではなくて、日本政府の方針として、そういうものは応じない、アメリカの軍人の給与以外は全部日本が負担する、そんなことは応じられないと言えないのですか。大臣答弁を求めます。
  241. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  242. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう差し迫った問題についてそういうような答弁であるということは、このアメリカの要求を受け入れるという方向があるのではないか、あの地位協定改定問題についていわゆる猫の目答弁というふうに大臣答弁が評されたように、そういうものがあるのではないかという危惧を私は強く持っているということを申し上げて、次の問題に移ろうというふうに思います。  海部総理大臣は、訪米したときのナショナル・プレス・クラブでの演説で、「日米安保体制は、単に我が国の安全保障のためのみならず、東アジア・西太平洋全体の安全保障の大きな柱にもなっています。」ということを述べた後、日本努力目標としては、「我が国としては、我が国及びアジア太平洋の平和と安定のために、我が国自身の節度ある防衛力の整備に努めるとともに、日米安保体制の効果的運用を確保すべく、努力を継続していく所存であります。」こう述べられました。  大臣は、もちろん総理大臣の言われたことでありますから、同様に考えておられると思いますが、いかがでしょう。
  243. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は、日米安全保障体制を基軸とする日米協力関係が我が国を含むアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠であると認識しており、かかる認識は従来より明らかにしてきたところでございます。先般の訪米の際の海部総理の発言はかかる認識を述べたものでございまして、私も同様に考えております。
  244. 松本善明

    ○松本(善)委員 わざわざ別の言葉で言われまして、「東アジア・西太平洋全体の安全保障の大きな柱にもなっています。」という部分は外して答弁をされました。この総理大臣の言われた西太平洋というのはどこからどこまでを言うのでしょう。
  245. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 日米両国政府とも、従来から日米安保体制の上に立った日米協力関係が、我が国を含むアジア太平洋地域、東アジア、いろいろ申しますが、平和と安定にとって不可欠であるという認識を有しておりまして、これは繰り返し繰り返し明らかにいたしております。御指摘の海部総理の御発言もかかる趣旨を述べたものでございますが、東アジアであるとか西太平洋として特定の地理的範囲を念頭に置いて申しているものではないということは、従来から申しておるとおりでございます。
  246. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、西太平洋というふうに海部首相が言われたことは政府としての方針ではない、これは意味のない発言だ、こういうことになるんですか。
  247. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 質問の御趣旨がよくわかりませんでしたけれども、私が今申しましたのは、日米両国政府とも、従来より日米安保体制の上に立った日米協力関係が我が国を含むアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠であるという認識を有していることであって、これは繰り返し明らかにいたしております。そして御指摘の海部総理の御発言も、その趣旨を述べたものでございますけれども、従来からこのような表現の場合に的確に地理的範囲を念頭に置いて申しておるものではないということでございまして、これまたたびたび申していることでございます。
  248. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、西太平洋というふうにわざわざこの時期に新しい表現で言ったというところが、やはりそう簡単なものではないというふうに思っているのです。これは単なる認識ではなくて、東アジア・西太平洋全体の安全保障の大きな柱に日米安保体制がなっているんだ、しかも、それが我が国の安全保障のためだけではないんだ、東アジア・西太平洋全体の安全保障の柱に安保条約がなっているんだということを言っているから重大なんですよ。今までと同じ表現では決してないですよ。今までと同じだというのは強弁ですよ。  私はそれとの関係でお聞きしたいのでありますが、言うまでもなく安保条約は極東の平和及び安全の維持に寄与するということで規定をされております。この極東の範囲とこの西太平洋と言っているのとは、これは違うと思うのですね。表現も違いますし、これは一体どういう関係になっているのか、これを明確にしてもらいたいと思います。
  249. 福田博

    ○福田(博)政府委員 安全保障条約に「極東」という言葉が使われていることは、今先生が御指摘のとおりですが、これにつきましては、先生よく御承知のとおり附和三十五年の特別委員会において統一見解が出ております。つまり「極東」というのは、一般的な用語として用いられている「極東」は、地理学上正確に画定されたものではないが、安保条約上の「極東」は、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している区域であって、かかる区域は大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であることということを当時の統一見解で述べております。
  250. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは承知をしていますけれども、西太平洋といえば今言ったものとは全然違うでしょう。そういうことになるから西太平洋という概念が重大なんですよ。その関係はどうですか。極東よりもはるかに広いでしょう、西太平洋というのは。そのことを聞いているのです。
  251. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 安保条約上申します「極東」につきましては、その範囲に関して従来から認識を述べております。しかし、例えば昨年の一月の竹下総理のナショナル・プレス・クラブでのステートメントでは、「我が国は、質の高い防衛力の整備を図るとともに、日米安全保障体制の効果的運用に努めています。この枠組みは、」これは日米安全保障体制のことですが、「日本の安全のみならず、東アジアの平和と安定の土台となっており、結果的に西側諸国全体の安全保障の維持に寄与していると考えます。」と述べておられます。  先ほど申し上げましたように、アジア太平洋地域あるいは海部総理の御発言でありますところの東アジア・西太平洋全体の安全保障といい、これは地理的に定義された範囲ではありませんけれども、その平和と繁栄の貢献には役立っているという認識を述べているものでございます。
  252. 松本善明

    ○松本(善)委員 今まではアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠であるという認識というような言い方で竹下総理などが言っているのはもう承知の上ですよ。それと今度の言い方は違うのですよ。東アジア・西太平洋全体の安全保障の大きな柱に日米安保体制はなっている。そうなりますと、この極東条項に直接かかわってきているから問題なんですよ。それを西太平洋というのは地域的に指しているのではないというような、こういうのは私はまことに詭弁だというふうに言わざるを得ないです。  私の持ち時間が余りないので、別枠で答えるならいいですけれども、次の質問をしたいというふうに思うのです。――じゃ、ちょっと答えてもらおうか。
  253. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 念のために申し上げますけれども、海部総理がことしの九月一日にブッシュ大統領との会談の後に出されましたプレスリマークスには、「日米安保体制の上に立った日米協力関係が、我が国を含むアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠であるとの点で、大統領と私は一致しました。」というふうに述べておられますし、また、竹下総理が昨年の一月に行かれました際に、当時のレーガン大統領会談後に出されましたプレスリマークスでは、「大統領と私は、揺るぎない日米安保体制を基軸とする日米協力関係が、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠であることを確認しました。」ということで、常に同じ表現ではございませんけれども、認識としては繰り返し述べられているところでございます。
  254. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の引用したのが今の竹下さんの一月のプレスリマークスですよ。私承知の上で、今言ったとおりじゃないですか。  それで、問題はプレスリマークスじゃなくて、プレス・クラブでの演説で、外国でもアメリカで総理大臣が演説をするというのは重大なんですよ。その中でこういう表現がされているということを問題にしているのですよ。まあ、これ以上あなたの答弁を聞いても前進はないだろうと思うから、これでやめますけれども最後に聞きたいのは、タイコンデロガ、これはアメリカ政府に、あの事件から六カ月ですよ、航海日誌さえよこさない、一体これは督促しているのですか。
  255. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 折々にいたしております。
  256. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはあなた、事前協議制度が実際に有効かどうかという根本問題ですよ。折々督促しております。六カ月たって、いつまで待つのですか。あなた方のあれを待ってみてたら、もういつまでたっても、外務委員会を開くたびごとに、今督促しております、まだ来ておりません。何遍言いましたか。これは日本政府の権威にもかかわりますよ。一体いつまで待つつもりです。
  257. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 一九六五年十二月五日にこの事故が起きました後に、タイコンデロガがどこへ行ったかということについて大変に強い関心が寄せられておりますから、どこに行ったのかということを米国政府に外交経路を通じて照会しているわけでございますが、何分二十四年前のことでございまして、まだ回答に接していないということでございます。
  258. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣、これは何遍も問題になりましたけれども、六五年十二月五日に水爆を沖縄の沖に落っことしたのでしょう。これはもう明白な事実ですよ。それでタイコンデロガが十二月七日に横須賀に入港して四日間停泊したのですよ。水爆を落とさなかったらそのまま入ってきたということになるのです。しかも事前協議の申し入れはなかった。これが事実なら事前協議制度というものがもう全く空文だ、いいかげんなことだ、私たちが今まで批判してきたとおりだということを証明するものなんですよ。日本の安全にとっては重大問題なんです。これをちゃんとアメリカから回答を求めないということは絶対に許されないと思います。  それで、もしどうしても航海日誌をよこさないというならば、日本政府みずから情報公開法に基づいてこの航海日誌を入手をするとか、何としてもこれは入手をしなければならぬ問題だと思いますけれども、外務大臣としてこの問題に対処する決意を伺いたいと思います。
  259. 中山太郎

    中山国務大臣 北米局長が申しましたとおり、今後ともこの問題の解決と解明のために努力を続けさせていただきたいと考えております。
  260. 松本善明

    ○松本(善)委員 これを期限も切らずに、そういうような答弁をしているということは、いつまでたっても解決をしないという危惧を感じます。これは本当に日本の国民の非核三原則の問題でもありますだけに、日本の国民の期待に全く反するということを抗議をして、質問を終わりたいというふうに私は思います。
  261. 相沢英之

    相沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十六分散会