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1989-11-17 第116回国会 衆議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月十七日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 島村 宜伸君    理事 尾形 智矩君 理事 川崎 二郎君    理事 久間 章生君 理事 武部  勤君    理事 二階 俊博君 理事 新盛 辰雄君    理事 長田 武士君 理事 小渕 正義君       魚住 汎英君    岡島 正之君       加藤 六月君    亀井 静香君       亀井 善之君    鴻池 祥肇君       佐藤 敬夫君    関谷 勝嗣君       高橋 一郎君    増岡 博之君       緒方 克陽君    左近 正男君       吉原 米治君    浅井 美幸君       西中  清君    中路 雅弘君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 江藤 隆美君  出席政府委員         運輸省貨物流通         局長      寺嶋  潔君  委員外出席者         警察庁交通局高         速道路課長   小池 登一君         総務庁行政管理         局管理官    西村 正紀君         厚生省社会局生         活課長     浅野 史郎君         運輸省貨物流通         局審議官    土坂 泰敏君         労働省労働基準         局賃金時間部企         画室長     石川  透君         労働省職業安定         局雇用政策課長 伊藤 庄平君         建設省建設経済         局民間宅地指導         室長      高橋 健文君         建設省道路局道         路交通管理課長 山本 正堯君         建設省道路局高         速国道課長   橋本鋼太郎君         運輸委員会調査         室長      荒尾  正君     ───────────── 本日の会議に付した案件  貨物運送取扱事業法案内閣提出、第百十四回国会閣法第七四号)  貨物自動車運送事業法案内閣提出、第百十四回国会閣法第七五号)      ────◇─────
  2. 島村宜伸

    島村委員長 これより会議を開きます。  第百十四回国会内閣提出貨物運送取扱事業法案及び貨物自動車運送事業法案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾形智矩君。
  3. 尾形智矩

    尾形委員 限られた時間でございますので、早速単刀直入に質問をさせていただきます。  最初に、貨物自動車運送事業法案について御質問を申し上げます。  まず最初に、この法案骨子を御説明いただきたいと思います。
  4. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物自動車運送事業法骨子でございますが、大きく分けて二つの柱がございます。  一つは、経済的な規制緩和でございます。これは、従来免許制でございましたトラック事業許可制に改め、したがって需給バランスのチェックはしないということになります。それから、運賃は従来認可制でございましたが、これを届け出制に改めます。また、事業区分として従来は路線事業区域事業二つに分かれておりましたが、これを統合いたすことにしております。  また、一方の柱において社会的規制強化ということをいたします。これは、トラック事業における安全の確保を図るために過労運転、過積載等防止を図るための措置をいろいろ設けております。法律自体にそのような規定を設けると同時に、運行管理者試験制度を導入いたしたい。貨物自動車運送適正化事業指定法人実施させるという措置を講じます。また、悪質な荷主に対する勧告制度も設けております。  このように、経済的規制緩和社会的規制強化二つの柱として新しい法律を提出しております。
  5. 尾形智矩

    尾形委員 運輸政策審議会物流部会でいろいろ討議をされたようでございますが、この中にトラック業界の代表が入っていなかったというように承っております。業界意見が十分反映されておるのかどうか、業界意見を十分聞いておるのかどうか、そこらあたりの点について御答弁をお願いいたします。
  6. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 本法案策定に当たりましては、トラック業界と十分緊密に意見交換をいたしました。多少の異論もございましたが、十分に説明をいたしましてその納得を得るに至りました。その結果、本年の三月末に本法案国会に提出することとなった運びでございます。
  7. 尾形智矩

    尾形委員 十分話し合いもし、またいろいろな了解も得られておるということでございますが、ここが具体的に運用していく中で一番重要になってくるわけでございまして、そこらあたり、十分これからも注意をしていただきたいと思います。  具体的中身に入らせていただきますが、この法案によりましてトラック事業者利用者にとってどういうメリットがあるのかということについて具体的に御説明をいただければと思っております。
  8. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 まずトラック事業者創意工夫に満ちました事業活動が迅速かつ的確に行えるようになります。  具体的には、従来積み合わせが原則禁止されておりました区域事業者にも積み合わせを認めることになります。この結果、多頻度輸送小口輸送等サービスを従来の区域事業者が効率よく提供できることになります。特にこの点は中小事業者にとって大きなメリットをもたらすことになります。また、路線事業者にとりましては、従来使用する道路変更を一々認可を取るとか、その際に道路管理者との協議が義務づけられておりましたが、この点の規制緩和される等、幹線ネットワークの効率的な運営が可能になる。また、全体的に行政手続の大幅な簡素化が図られる等のメリットが挙げられます。  これらの結果、利用者としては新たに多様なサービスを受けることができますし、また、現在の輸送サービスの質的な向上メリットが期待されるものでございます。さらに、輸送秩序確立によりまして、不公正な競争を排除し秩序ある競争が行われることになります。法令遵守し、適切な事業運営に励む事業者輸送サービスが安全を犠牲にした不公正な競争によって脅かされ、悪貨良貨を駆逐するというような状態がいやしくもないようにすることになります。この結果、利用者としては良質な輸送サービスを安定的に享受できる等のメリットが期待されるものでございます。
  9. 尾形智矩

    尾形委員 局長さんの答弁を聞いておりますと、すべていいもの尽くしでございまして、全く問題はないというふうに聞こえるわけでございます。いい面もたくさんあろうかと思うのですが、 懸念をされる面も幾つかあるのではなかろうかというふうに考えております。  例えば許可制になりますと、個人トラックとか、それからまた零細事業者違法行為を繰り返す事業者が増加をする懸念もなきにしもあらずというふうに私どもも考えるわけでありますが、この点についてはどういうふうに理解をされておるか、御答弁をいただきたいと思います。
  10. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 今回免許制許可制に改められますが、そうなりましても、一定規模以上の車両台数確保することあるいは適切な収容能力を有します車庫を保有する等の適切な事業計画を有すること、またさらに、法令遵守等に関する資質あるいは財産的基礎確保など適切な事業遂行能力を有することも審査いたしますので、だれでもが事業参入できるということにはなりません。したがって、御指摘のような事態を招くことはないと考えております。
  11. 尾形智矩

    尾形委員 トラック協会人たち意見を聞いてみますと、一番懸念をいたしておりますのは、だれでもこれに参加できるということでいわゆる過当競争というようなことが行われるのではないか、したがって、生き残っていくためにはどうしてもいろいろな違反行為というようなことが繰り返されるのではなかろうかというふうに懸念をいたしておるところでありますが、その点について、大丈夫だということだろうと思いますけれども、もう一度その点についてもはっきりお答えをいただければと思っております。
  12. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 先ほど申し上げましたように、悪貨良貨を駆逐するということがないように不公正な競争防止するための規定をいろいろ設けております。また、運賃ダンピング等は、運賃届け出制に変わりました後でも不当な競争を招くような運賃はこれを変更することを命ずることとしておりますし、さらに、悪質な荷主から運賃ダンピングを強要されて違法行為を行うというようなことに立ち至った場合には、そのような悪質な荷主に対して再発を防止する措置をとることを勧告することができるという規定も設けております。そのようなことで御心配の点を防止するようにいたしております。
  13. 尾形智矩

    尾形委員 先ほど局長答弁の中で一部お話がございましたが、運賃届け出制になりますと、ダンピング運賃ということになりまして、運賃秩序が大変乱れてくるのではなかろうかというふうに考えられますし、それからまた、届け出運賃を守らない事業者がだんだんふえてくるというふうに考えられますし、同時にまた運賃問題を考える場合に一番の根元は、荷主トラック業者との関係が一番大きな問題になってくると思います。適当な言葉かどうかわかりませんが、悪質荷主とかいうふうなことになってまいりますと、これに対する取り締まりと申しますか具体的なことについてもう少し突っ込んで御回答いただければと思っております。
  14. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運賃ダンピング防止につきましては先ほども少し触れましたが、運輸省といたしましては、各都道府県のトラック協会に対しまして、そのようなことがないように荷主理解を得るための荷主懇談会開催等を指導しておるところであります。しかしながら、六十一年十二月の公正取引委員会調査結果等によりましても、荷主の強制によりまして違法行為を余儀なくされているという実態が明らかにされておりまして、トラック事業者に対する規制遵守及び厳正な行政処分のみならず、荷主からの不当な要求を受けやすい環境を改善する施策が必要であると考えております。  そこで、先ほど申し上げましたように、まず民間団体による秩序確立のための啓発運動を促進するとともに、違法行為を強要するような悪質な荷主に対する運輸大臣勧告制度を創設した次第であります。
  15. 尾形智矩

    尾形委員 今申されたようなことはよくわかるわけでありますが、この点については、現実問題といたしまして、いわゆる荷主トラック業者との関係というのは非常に主従の関係になるわけでありますから表面に出にくいという形、それを具体的に摘発とか表面に出していくという形のものがなかなかとりにくいという場合も出てくるのではなかろうか。いわゆる泣き寝入りと申しますか、そういうことのないような措置を講じていかなければならないと思うのでございますが、そこらあたりに対する対応というのはいかがでしょうか。
  16. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 荷主との交渉におきましてトラック業界側がどのようにその交渉上の地位を高めていくかという問題になろうかと思います。そのためにはトラック業界側の自覚を高める、いたずらに値引きに走ることのないように心がけるとともにトラック業界側の体力をつけるということが重要かと思います。とりわけ中小企業者にとりましてその経営基盤を強くするということが肝要でありますので、従来から進めております構造改善事業等により中小企業者経営基盤を強め、それによって荷主に対する交渉上の地位強化していくということが重要かと考えております。
  17. 尾形智矩

    尾形委員 この点についてもう一回お聞きしたいわけでございますが、トラック運送事業の九九・五%は中小企業で占められておるというふうに数字の上では言われておるわけでございます。そういう意味では非常に弱い立場にあるわけでございまして、体質強化を図っていくということでございますが、話の上では成り立っても現実にはなかなか厳しい状況にあるということになってまいりますと、荷主側からいろいろな意味で弱い立場にあるわけでございます。したがって、何とか経営を維持していこうということになってまいりますればどうしても無理を聞かなければいけない、そしてまたスピードを出し過ぎたりして凶器に変わっていく場合も考えられるわけであります。この点が非常に大きな懸念をされる点だろうというふうに私は考えておるわけでございますが、この点についてもう一度お答えをお願いいたしたいと思います。
  18. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 不公正な競争に走って運賃ダンピングをやる、そのために今御指摘ありましたようなトラックが走る凶器に化するという事態が最も懸念されるところでございますので、その点は冒頭に申し上げましたように、社会的規制を強める措置をいろいろと設けております。したがいまして、安全面に対する規制は従来に比して格段に充実をされるわけでございます。また、その実施上の手段として貨物自動車運送適正化事業実施機関というのを設けて、役所の手の及ばざるところは民間団体の自主的な活動によって補強していくという措置がとられております。また、先ほども申し上げましたように、運行管理者試験制度を設けるというようなもろもろの措置を盛り込んでおりますので、この点については従来よりも格段の前進があると考えております。
  19. 尾形智矩

    尾形委員 御答弁趣旨はよくわかりましたので、ひとつ全ト協等を含めて民間団体とも十分協議をしていただきまして、悪質荷主業者を圧迫しないような形をぜひとっていただきたい、これは要望にかえさせていただきます。  次に、現行大型トラック重量規制緩和でございます。新行革審答申でも取り上げられているところでございますが、現在までの検討状況それから今後の見通しについて御答弁をお願い申し上げたいと思います。これは総務庁建設省警察庁運輸省といろいろ関係があるようでございますので、関係の皆様からそれぞれ御答弁をお願い申し上げる次第です。
  20. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 とりあえず私の方からお答えさせていただきます。  車両諸元に関する制限緩和につきましては新行革審答申でも指摘されておりまして、さらに規制緩和推進要綱で閣議決定されているところでございますので、現在関係省庁すなわち建設省警察庁運輸省において協議し、検討を進めているところでございます。
  21. 西村正紀

    西村説明員 先ほど局長からも御説明ございましたように、車両諸元に関する制限緩和につきましては、答申を受けまして同年の十二月十三日 に規制緩和推進要綱という形で同文を閣議決定しております。本年の六月に関係省庁から私どもがその推進状況をフォローアップいたしましたところ、相互に連絡を密にし、関係省庁においてそれぞれ所管事項について検討中であるとの報告を受けております。  総務庁といたしましては、答申趣旨に沿いまして引き続き関係省庁で密接な連絡をとられ、積極的な検討が行われることを期待しております。
  22. 山本正堯

    山本説明員 お答え申し上げます。建設省でございます。  新行革審答申につきましては御指摘を受けておりまして、御案内のとおりでございますが、道路を通行する車両につきましては、現在道路法道路構造の保全と交通の危険の防止の観点から限度を超える車両の通行を禁止しておりまして、車両制限令でその最高限度を決めてございます。この道路法及び車両制限令規定をいたします制限値道路整備状況との関連で定められておるものでございまして、例えば橋をつくるときには二十トンの設計車両で橋をつくるわけでございますが、それに見合った制限値車両制限令で決めておるということになってございますので、道路を通行する車両制限緩和につきましては道路整備状況に応じて検討がなされていくということになってございます。  以上の点を踏まえまして、車両重量制限早期緩和につきましては、大変難しい問題ではございますけれども関係省庁連絡をとりつつ現在検討を進めておるところでございます。
  23. 尾形智矩

    尾形委員 いろいろ検討中が多いようでございますが、検討中では困る場合もいろいろ出てくるわけでございまして、どうぞそこらあたりはひとつ前に踏み込んでいただいて、十分納得できるように早急に御努力をいただきたいと思っておるわけでございます。  過労運転防止するために、高速自動車道大型貨物自動車駐車場及び休憩所施設の設置が必要になってくるんじゃなかろうかというふうに考えられるわけですが、この点につきましてどういう見解をお持ちでしょうか。
  24. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 現在トラック運転者休憩施設仮眠施設を持ちますいわゆるトラックステーションというものを全国に二十八カ所設けております。なお、今後八カ所の計画がございます。また、日本道路公団におかれましても、高速道路沿線にこのような施設をつくることを計画しておられると聞いております。
  25. 尾形智矩

    尾形委員 八カ所計画のようでございますが、これは要望が非常に高いようでございます。大臣もおられます。大変決断と実行の大臣でございますから、決断をいただきまして、ひとつどんどん実行していただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。  時間がございませんので、次に貨物運送取扱事業法の方に移らせていただきます。  いろいろお聞きをいたしたいわけでございますが、限られた時間でございますので法案骨子は結構でございますが、この法案策定に当たりまして通運業界との意思疎通、十分なる協議がなされたかどうか、その点についてまず最初にお伺いをいたします。
  26. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 この点につきましては、先ほどトラック業界の場合と同様、全国通運連盟とも十分意思疎通を図りまして、その納得を得た上で法案を提出したものでございます。
  27. 尾形智矩

    尾形委員 そういう前提に立って御質問を申し上げますが、これもさきの法案と同じことでございますが、この法案によって事業者利用者にどういうメリットがあるか、端的に御回答いただきたいと思います。
  28. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 この法律におきましては、貨物運送取り扱いに関する横断的な制度整備されるとともに、事業規制制度が簡素合理化されることになります。これによりまして事業活性化が図られることになり、広範な物流ニーズ対応した事業の新しい発展が期待されるところでございます。また、貨物運送取扱事業の契約上の責任が明確にされるとともに、事業改善命令等制度が設けられることによりまして、適正かつ合理的な事業運営確保されることになると考えております。  また、利用者にとりましても、以上のような貨物運送取扱事業の展開によりまして、一層良質で利用しやすいサービス提供が受けられるということで、利便性が高まることとなると考えております。
  29. 尾形智矩

    尾形委員 今度の改正法案による事業規則現行事業規則相違点、それを御答弁いただきます。
  30. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物運送取扱事業法案は、現在輸送機関ごと縦割り事業法におきまして規制されている貨物運送取扱制度利用運送事業運送取次事業に分けまして、これを一元的な法律規定することとしておるものでございます。事業規制変更点輸送機関ごとに異なっておりますけれども、その主な改正点は次のようなものでございます。  まず、事業参入につきましては、利用運送事業許可制運送取次事業登録制としております。これに伴いまして現在需給調整を行っております通運事業利用航空運送事業につきましては需給調整規制が廃止されます。また運賃制度につきましては、現在運賃認可制度をとっております事業も含めまして、運賃、料金は不当な内容については変更を命ずることのできる事前届け出制となります。
  31. 尾形智矩

    尾形委員 細かくお聞きいたしたいわけでありますが、時間がありませんので次に参ります。  第二種利用運送事業を設けた理由を御説明いただきたいと思います。
  32. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 第二種利用運送事業と申しますのは、鉄道または航空利用運送と、その貨物集配とを一体的に行う事業をいいます。具体的には現在の通運事業者利用航空運送事業者の多くがこれに該当いたします。  鉄道輸送航空輸送におきましては、ダイヤに従った高速サービス提供されますので、この特性を生かした輸送サービス利用者に結びつけるために利用運送事業者がみずから集配体制整備いたしまして、利用運送とみずから行う集配とを一体的に行うことが通例でございます。これによりまして鉄道及び航空輸送サービスの円滑な提供が実現されているところでございます。このような現状と、鉄道航空輸送特性にかんがみまして第二種利用運送事業を設けたものでございます。
  33. 尾形智矩

    尾形委員 運賃届け出制になりますと、ダンピング運賃秩序が乱れたり、届け出制運賃を守らない事業者がふえてくるのではなかろうかという懸念があるわけでございますが、この点についてどういう見解をお持ちでございましょうか。
  34. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 本法におきましても、不当に高いあるいは不当に安い、不当な競争を招くような低い運賃、あるいは荷主によりまして不公正な取り扱いをするような運賃に対しましては変更命令をかけることができることになっております。これによりまして運賃の公正を担保することとしております。
  35. 尾形智矩

    尾形委員 時間がございませんので最後にまとめて二つ運輸大臣から御答弁をお願い申し上げたいわけでございます。  一つは、日米構造問題協議でのトラック運送事業規制に関する米国指摘内容、そしてまた日本対応の方針について大臣の御見解をお願いいたしたいと思います。  それからもう一つJR貨物が誕生いたしましてから鉄道貨物輸送が復調してきておるようでございます。関係の皆さんの御努力は一番のもとになるかと思いますが、その原因はどこにあるというようにお考えになっておられるか。以上二点、最後大臣に締めくくっていただきたいと思います。
  36. 江藤隆美

    江藤国務大臣 日米構造協議におきましては、例えば良質な新規参入規制が厳しくて受け入れないために運賃が割高になったり、あるいは物流 が順調にいかなかったりして、今後の輸入拡大というものに対して阻害要因になっておるのではないか、これらのことが実は指摘されたわけであります。このことは、日米構造協議ではありませんが、先般各機関を通じて、例えばサッチャー首相日本を訪れたとき、あるいはまたアメリカとの経済閣僚会議においてベーカー国務長官が、輸入拡大日本はするといったって成田が航空機の受け入れもしない、それから貨物取り扱いのスペースがない、時間がかかる、こういうふうなことで、言うこととやることと違うじゃありませんかという意見が実は述べられたわけであります。そういうことがやはりこの物流というものに対してずっとアメリカ側意見があるものだと思います。  したがいまして、何せ三万八千の業者サービス競争をしておるわけでありますから、私は、日本トラック業者サービスは決して米国に比べて劣っておるものではないと思っております。そのことは日本が強く主張し、また新規参入その他の問題についても、今回規制緩和を図りながらさらに物流の順調な発展サービス向上を図ろうとしておるのだ、こういう説明に対してはアメリカ側も一応納得をしたところであります。  それから、JR貨物が対前年比で一〇一%ふえたということがありますが、五千七百万トンを超すものになってきたのではないかと思います。ひところ大変減ってきたわけでありますが、だんだん順調に回復しつつある。それはJR努力もありますが、コンテナ化一つ原因であろうと私は思っております。  私は酪政会の幹事長をしておりまして、ひところ、乳価決定時期というのは、キロ当たり一円上げるのは大変なことでありまして、何十銭単位の交渉をいつも政府とやるわけですが、北海道から大阪までだったと思いますが、例えば牛乳を貨物で運ぶのとタンクローリーで運ぶのとでは十七円違うのです。ところが、あの当時は貨物輸送が順調でなかったものですから、トラック輸送タンクローリーにかわってしまった。十七円違いますと一トン当たりその価格が約十万円違うのです。これは大変な違いだったのですが、最近はいろいろなトラブルもなくて、貨物輸送、貨車輸送というのが信頼を得るようになってきたということがだんだんに貨物量をふやしてきたということではないかと私は思っております。
  37. 尾形智矩

    尾形委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、最後要望しておきますが、この改正案、趣旨をいろいろ説明をいただきますと、すべてすばらしいということになっておるわけでございますが、なかなか中身はいろいろ問題があろうかと思います。当然政令や通達や省令やいろいろな形で細則を指示しなければいけない面がたくさん出てくると思います。その際には事業者トラック関係者との十分なる協議を重ねましてこの改正案の趣旨が十分生かされるように御努力いただくことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  38. 島村宜伸

    島村委員長 新盛辰雄君。
  39. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今回の貨物二法、まさしく四十年ぶりの輸送事業にかかわる大変革を来す、ある意味では輸送構造の革命ともいうべき内容をはらんでおるわけでございますが、貨物輸送事業のこうした状況が何によって新しく変わってきているのか、その認識をお聞かせください。
  40. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 物流産業は、御指摘のとおり、時代とともに大きく変わりつつございます。一つには物流業におきますもろもろの技術革新が進んでおりまして、例えばコンテナ化でありますとか、海におきましてはもろもろの専用船が出てくるということがございます。また、需要者側からも物流業に対するもろもろの新しいニーズが出てきております。最近では少量多頻度の輸送を要請する、あるいはジャスト・イン・タイムといいまして非常に時間に厳しい要請が出るというようなことがございます。そのような要請に対応するために物流業の側でも新しい物流システムを形成しまして、ごく身近な例では宅配便というようなサービスが出てきておるわけでございます。そのように物流産業は時代の要請に応じてその質を向上させるような活力のある産業であると認識しております。
  41. 新盛辰雄

    ○新盛委員 デレギュレーション、規制緩和策というのは自由競争の申し子であると言われていますね。これによって、トラック事業者三万八千、九〇%は中小企業、そして軽自動車輸送事業者も五万事業者いるわけです。こういう状況で見ますと、これからのこの改正によって起こるメリット、そして片やデメリットというのはどういう認識をしていらっしゃいますか。
  42. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 メリットにつきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろな利用者要望に応じた新しいサービスが展開しやすくなる、これは物流業自体にとっても望ましいことであり、また、利用者のサイドから見ましても望ましいことでございます。  他方、デメリットといたしまして、競争が行き過ぎますともろもろの社会的な弊害が生ずるという心配も当然ございます。したがいまして、このような弊害を防止するためのもろもろの社会的規制強化措置も今回の法案には盛り込んでおるわけでございます。
  43. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今、国際流通の中で、日米構造協議でも議論になっておりますように、国内参入利用運送あるいは取次運送各分野にわたってもそうですが、既にアメリカではもう十年を超す実績があります。しかし、航空の位置で見ましても、アメリカではもはやギブアップ、ある意味では規制緩和の弊害が増大をして、もう一回再規制をしなければいけない、手直しをしなければいけない、こういう事情も生まれてきているわけでありますが、その認識はどうですか。
  44. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 御指摘のように、米国におきまして一九八〇年代に航空あるいはトラック事業規制緩和されたわけでございますが、トラックにつきましては、参入について、免許基準に関する挙証責任を、免許の申請者からこれに反対する者に転換する等を内容とするものでございました。規制緩和以後、これに否定的な見方をする方は、倒産がふえた、あるいは離職者がふえた、交通事故がふえたという議論も確かにございます。  しかしながら、連邦運輸省は、サービス向上した、あるいは倒産事業者あるいは離職者の数は、デレギュレーションの結果ではなくて、むしろ不況の結果である、あるいは経済的規制と安全性との間には直接的な関係がないというようなことから、規制緩和は成功であったという評価をしておると聞いております。私どもとしては、再度これを規制強化するという動きがあるということは聞いておりません。
  45. 新盛辰雄

    ○新盛委員 高く評価しておられるということではございますが、予想に反して寡占化が非常に進んできている。弱肉強食である。特に中小零細企業の方は力がない、そして系列化される、統合される、そういう部面だけが前面に出てくる可能性がある、これについてはどういう認識ですか。
  46. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 今回の貨物二法におきます規制緩和措置は、米国のやり方をそのままとったものではございません。一方において、規制緩和措置をとりますが、それには緊急調整措置その他のいわゆるセーフガードがいろいろついております。したがって、野放しの自由化をするものではございません。これに参入を許される事業者は、適切な事業計画を持っており、事業遂行能力を持っておる者に限られることは従来どおりでございますので、野放しの自由競争の結果中小企業者等の多数の倒産を招くという事態はないものと考えております。
  47. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ところが、みずからが輸送手段を持たないでソフトウエアを武器にして営業する物流商社というのが、この法律案に関してもそうだと思いますが、新たな企業が誕生してくる。いわゆる大手が、それは輸送手段を持たないのですから、それが現実の問題として垂直的に出てくるという危険性がある。その封じ手がどこにあるのか、これも疑問です。どうですか。
  48. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ただいまお話のございました大手企業の物流会社、これは多く運送取扱業の部類に属することになろうかと思いますが、運送取扱事業者と申しますのは、荷主と実際の輸送を行う、新しい法律の取扱業法におきましては実運送事業者と言っておりますが、その実運送機関との間をつなぐ、橋渡しの役をするわけでございまして、これはそれなりに存在理由がある。輸送機関の側から見ても、みずから集荷をしないでも荷物を集めてまとめて渡してくれるというメリットがございますし、荷主の側にとりましても、みずからふなれな輸送業者との交渉をしなくてもきめ細かいサービス提供してくれるということで、双方にとって存在理由があるわけでございます。したがって、実運送機関と運送取扱業とは両々相まって、相補いながら発展していくべきものだというふうに考えております。
  49. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣、ここは非常に大事なところです。取扱事業法にしても貨物自動車運送事業法にしても、法律としては複合一貫輸送体系をつくる、こうおっしゃっておりますね。まあマージャンでいえば一気通貫をつくれというのです。ところが、どうしても和了しない。真ん中のあたりに港湾運送事業法などというのがございますが、それらのところは素通り。ある意味では、そういう商社がいわゆる運送事業というそれではなくて、大きな形態の中で、複合一貫輸送の中で出てくる。その場合は、運賃とか料金とかあるいは職域の侵害、こういうものが起こってくるので、あなたがおっしゃっているようにはならぬ。大臣、この辺のところについてひとつ教えてください。
  50. 江藤隆美

    江藤国務大臣 詳細については事務当局にまたただしていただくことにいたしまして、基本方針としては、まず今までのトラック業界その他関係業界意見を十分聴取して、その上でこの法案を提出するということを原則としてきましたから、御意見のような問題はそれに含まれておるわけであります。  また、取次業者というのが、これから経済機構の複雑化に伴って必然的に出てくるということも考えられるわけでありまして、その場合においては、あくまで荷主に対して取次業者が責任を負わなければならぬという問題も当然出てきます。昭和二十六年に法律が制定されて約四十年をけみしてきますと、我々が想像しておった以上に、予想しなかったものがいろいろ出てきます。戦後ですと、まだ荷馬車運送の時代も我々宮崎やら鹿児島では随分あったのですが、そういうものはなくなって、農業でもフライト農業の時代だと言われるようになってきた。コンテナ輸送などというのも当然新しい分野であります。  それらのことを考えますと、新規のそういう大手のものが出てくるということは当然考えられることでありますが、法案内容、作成の過程においてはそういうことも十分検討しながら法案はつくってあります。したがいまして、本日から御審議をいただくわけでありますから、審議の結果を踏まえて、今後、政令、省令、施行規則等を決める段階においてもその点は十分配慮しながら取り進めてまいりたい、こう考えておるところであります。
  51. 新盛辰雄

    ○新盛委員 具体的にいきますと、路線や宅配便業者などネットワーク業者が新たな事業所を展開していく、そしてネットワークの拡大を図る、あるいは地場の荷物の吸い上げなどを行っていく、そういう実態は確実に出てくるわけですね。そして大商社やメーカーも続々とトラック事業に進出をして競争をあおる。これは現実的にそう出てくると思いますね。そうしたことによって系列化、統合化されていくことを望んでおるのかどうか。これは中小零細企業の業者は非常に戦々恐々たる思いだと思うのですよ。それを、そうじゃないという保証をこの法案は明確にしておりますか。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  52. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 大企業の系列会社というのは現行法制のもとでもいろいろ設けられておりますし、行政当局として大企業の子会社だからといってこれをチェックするという意図はございません。新法のもとにおきましても同様でありまして、そのような動きを助長しようという意図はございませんが、それを阻止しようという意図もございません。これは経済活動の一環として行われるものでありますから、どのような事業者も公平に扱うという態度で臨みたいと思っております。
  53. 新盛辰雄

    ○新盛委員 さらに具体的に、今路線と区域が一本化される、そのことによって混載が認められていくわけですね。業界外から参入も起これば混載をベースにした営業方式をとる、業界の二極分化が早まってくるし、現実それが出てくる、このことは否定できませんね。どうですか。
  54. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 路線と区域の事業区分の統合につきましては、貨物の小口化あるいは多頻度化等が進みます中で高度化、多様化します荷主のニーズに即応できますように、現行区域事業積み合わせ貨物の運送を認める政策的な必要性が高まっていることを主な理由として統合したものでございます。したがって、従来の区域事業者積み合わせをすることができるということは、中小業者にとりましてとりわけメリットがあるところでございまして、大手の路線業者が一方的にその領域を侵食するということには必ずしもならないと思います。
  55. 新盛辰雄

    ○新盛委員 営業力のある事業者はますます力をつけますよね。そして成長するでしょう。逆に荷物を奪われたり衰退していく事業者がこの法案によって出てくる、それをどうするかということではそんなことありませんとおっしゃいますが、現実的にそういうことになるんじゃないですか。だからこの点の封じ手をどういうようにするのか。  さらに料金の届け出制にも問題がございますね。大手企業の利益率が高まれば、料金も低料金の方へダンピングを設定することはできるでしょう。中小企業の方はそういうわけにはまいりませんね。ますます苦しくなっていく。だからつぶれる、倒産する。この現実的な問題が出てくると思うのですが、そういうことは出ませんか。
  56. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 不当な運賃ダンピングにつきましては、運賃変更命令をかけるという制度がございますので、届け出られました運賃が不当な競争を招くようなものでありますと、これは運輸大臣において変更を命ずることになります。また、一たん届け出ました運賃は、これを厳格に守るべきことが事業者の義務となっており、これには罰則もついております。そのようなことで、不当なダンピング競争が起こらないような措置は本法において整えられております。
  57. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうもそこのところがぴったりこないのですが、後でまたいろいろと論議をする機会もございます。  こうしたことで業界構造は上位集中化し、二極分化して系列化して、そして特に都市内の物流は、これは構造そのものが根本的に変わってくるという事態になると思うのですね。これまで運輸省の方は共同配送、協業化の指導を進めてこられたわけですね。これからそういうことにはならないわけですか。これはどういうことなんですか。
  58. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 従来進めてまいりましたもろもろの中小企業対策、ただいま御指摘のございました共同化、協業化あるいは共同受注、施設の共有等のもろもろの構造改善事業は今後も一層これを強力に推進する所存でございます。したがいまして、中小企業者を見捨てるというような政策をとるものでは全くございません。
  59. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣先ほど尾形委員の構造協議問題で非常に明快なお答えをいただいたんですが、これから外資系が日本の企業にどんどん進出してくるだろう、ねらっているということなんですが、これは新たな競争を生み出すことにもなるわけですね。競争するということは活性化を促すこともあります。しかし、いわゆる日本の資本力、外資の側は、どういうふうな内容を持つにしましても相当過激なことになりはしないか、そういういわゆる参入を心配するのですが、どういうふうにそれをするのか。排除というわけにはいかぬだろう。しかし、ある意味では国内の力をつける意味で必要じゃないか、そういうふうな認識なのか、 これについて明確なお答えをひとついただきたい。
  60. 江藤隆美

    江藤国務大臣 外国、なかんずくアメリカの企業が日本参入したいというのはかねがねの要望でもありますし、また政治的にもそういうことがしばしば論議されてきたところであります。特に一番ひどいのは実は公共事業でありまして、実際はアメリカの企業が一回入ったことがあるのです。ところが、やはり商習慣やら言葉の問題、技術の問題等がありましてうまくいきませんで、一般土木についてはやはりこれは無理だということで撤退をして、今いろいろ空港だあるいは橋梁だ、もろもろ言ってきますけれども、実際はコンサルタントになった。コンサルタント部分に参入させろということに変わってきて、一般の土木工事ではなくなってきたのじゃないかと私は思っておるのです。  このトラック輸送というのは、もう御案内のように車も必要でありますし、それから従業員もたくさん要りますし輸送基地が必要で、この土地の高いところで改めて輸送基地をつくってそうして日本業者競争するということは、私は事実問題としてなかなか困難ではないか、こういうふうに認識をいたしております。
  61. 新盛辰雄

    ○新盛委員 では具体的に少し入っていきたいと思うのですが、私どもは、この法案の修正をしなければならぬ部面がたくさんあるな、あるいはこの内容いかんによっては非常に大変な混乱を巻き起こすこともあるなという気がするわけでありまして、貨物自動車運送事業法関係では許可の更新制をひとつ創設してもらわなければいかぬ。これは事業者の資格の厳正な審査、更新制導入や改善命令、行政処分の厳正運用等について、過当競争となって秩序を乱すことのないようにそれを防止する策、こうしたことについて御見解をいただきたい。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ただいまお話のありました事業許可の更新制についてでございますが、御趣旨は、一定の期限を許可に付して、その間に違反行為等があった者はこれを更新しないというような措置をとるという趣旨かと理解いたしますが、私どもといたしましては、このような措置はむしろ行政改革の流れには反することになるのではないかと思っております。  トラックの場合には事業者の数は三万八千に及んでおるわけでございまして、これらの事業者から何年かに一回更新の申請が出てくるということになりますと、その処理には大変な行政的負担を伴います。また、事業者にとりましても一々更新の手続をとるという負担を強いることになります。私どもといたしましては、むしろそのような違法行為を犯す事業者に対しましては適時適切な措置をとる、そのためには計画的な監査を行いまして、重大な違反があった場合には、場合によりましては許可の取り消しという手段もございます。そういうことで必ずしも定期的な許可の更新制ということを導入する必要はないのではないかと思っております。
  63. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これはまた議論しましょう。  次に、貨物自動車運送適正化事業実施機関の財団法人化ですね。これについては当然適正化を図る、こういうことにこの法案はなっているわけですから、そういう財団法人化については明確にしてあるようで少しぼけておる面がございますが、どういうお考えでしょうか。
  64. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物自動車適正化事業につきましては、民間の自主性に基づきましてこれを実施するという考え方でありまして、国はこれを行う民間法人を指定いたしましてその後押しをするという性格のものでございます。その実施につきましては、必ずしも財団であるか社団であるかという区別は基本的な問題ではない、社団でありましても公益法人でございますから、その中立性は十分保たれているわけでございまして、公益法人であれば財団、社団、いずれでも十分であると考えております。
  65. 新盛辰雄

    ○新盛委員 公益財団の設立はぜひひとつ検討していただかなければなりません。それと、きょうは労働省、警察庁も呼んでおりますが、この際、お答えいただかなければなりません。  一番問題になるのは、これまで二九通達など出されておるわけですが、この労働時間が守られていない。しかも長時間労働、そして、全日本トラック協会が行ったアンケートでも大変な実態であります。こうした長時間労働の全体的拘束を、これから世の中はゆとりの時間を持ちなさい、役所は土曜閉庁でございます、どんどん流れが変わっているとき、相変わらずこのトラック運転者の条件は悪化している。これはゆゆしきことなのでありまして、労働省はこの辺の指導をしてきた、しかし、業界では守られていない。だから、今回の法律社会的規制の一番中心になったのは、これから制裁をどういうふうに行政としてするか、ここにこの法案の、またある意味では中身として大事な面があるわけですが、この点ちょっと労働省、お答えください。
  66. 石川透

    ○石川説明員 先生御指摘のとおり道路貨物運送業、労働時間が非常に長いという実態にございます。労働省といたしましては、四十二年に二九通達という通達を出しまして、その短縮のための指導に努めてまいりました。また、五十四年にはその内容も改めまして、二七通達という形で指導に努めてきたところでございます。  御指摘のとおり、労働基準法の改正により段階的に労働時間を短縮していこうという時代になりまして、この道路貨物運送業の労働時間の実態は非常に問題であると私どもも考えておるところでございます。そこで、六十二年四月から中央労働基準審議会に自動車運転者労働時間問題小委員会というのをつくりまして、関係労使も入りまして労働時間短縮のための規制のあり方について御検討をいただいたところでございます。一年半にわたります関係労使も交えた真摯な検討の結果、六十三年十月に御報告をいただきまして、それを受けて本年二月九日に今度は新たに労働大臣告示という形で労働時間短縮のための改善基準、これを告示化いたしたところでございます。  これまでの指導の根拠といいますのはいわば局長通達でございましたが、これからの指導の根拠は、関係労使も入りました大臣告示ということで、ぜひともこれは守っていただきたいと考えているところでございます。本年四月から、その新しい改善基準に基づきます周知徹底、監督指導を実施することにいたしておりますが、これまで以上にその改善基準が守られるように私ども努力してまいりたいと考えております。
  67. 新盛辰雄

    ○新盛委員 労働省としても努力はしていただいておるようですが、この法案でも明確にこれからやっていかなければならない条件整備があるわけです。事業用自動車の健全な運行が行われるようにするためには、必要とされる乗務時間等にかかわる基準として運輸省令を、あるいは労働省令を守ってほしいという規定を明確に法案の中に入れてもらわなければいかぬと思っているのです。法案担当者はどうですか。
  68. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 社会的規制強化の一環として、過労運転防止ということは非常に重要な措置一つであると思っております。これは、従来でも運輸省令であります運輸規則に基づきまして厳正に実施するように努力してまいったところでありまして、今後もこのような努力を一層強化してまいりたいと考えておるわけでございます。
  69. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今、後ろで声が出たように、ちっとも効果が上がってないのです。私も実態的にそれぞれ調査どもしておりますが、何といったって今トラック運転者は年々どんどん減少していますし、それは養成もするのでしょうけれども、大変な過重労働でありますから、それだけにこれから物流の根底をなす貨物自動車の運送を大変阻害していく面が出てくると思うのですね。だから、こうした面を守っていただければ、確実にゆとりのある社会的な生活をする環境になればみんな集まってくるわけですよ。それが、いわゆる経済志向が強うございますから、事業主はまたそうでしょう、しかし働いている側の方も考えてもらわ なければならぬわけですから、ここのところはぜひひとつ明確な指導命令が出されるような設定をしたい、そう思っております。もうここはお答えは要りません。  さらに、警察庁、来ていらっしゃると思うのですが、過積み及び運転者の過労を防止するために、これはこれまでいろいろ現実的には運輸省あるいは事業主のやらなければならない措置でございますけれども、このことによって起こる事故、これは過積載の表示を命ずるとか、あるいは備えつけの義務をさせるとか、多少警察の方からそんなことの規制措置をとらなければならぬと思っているのですよ。そして、先ほどの休憩所を二十八カ所つくってあります、これからまだ八カ所つくります、これは行政側の運輸省が指導しなければならないことでしょうが、こんなもので足りるわけないですよ。だから、こうした環境の中ですから、これまでの事故、特に夜間を含めて走る長距離運転トラックのそうした事故の概要、そうして何が一番原因なのか、そのことについてお答えいただきたいと思います。
  70. 小池登一

    ○小池説明員 お答えをいたします。  昭和六十三年中の貨物自動車の交通事故発生状況でございますけれども、トータルで六十一万四千四百八十一件でございます。前年に比べまして四%の増加となっております。うち、死亡事故でございますが、これが九千八百六十五件でございまして、約一割の増加。ただ、これを高速道路だけに限って見ますと、貨物自動車の全事故は六千六百三十六件ということでございまして、対前年一四・二%の増加、死亡事故は二百九十件、前年比で三一・八%の増加となっております。これをさらに事業貨物車だけを取り出してみますと、高速道路の特徴でございますけれども、全事故に占める割合が二五・四%、死亡事故に占める割合は三七・九%、こういう割合になっておるところでございます。  そこで、御質問の二番目の、こういった事故の原因で一番多いのは何かということでございますけれども、六十三年中の貨物自動車の事故原因を見てみますと、全事故ではやはりわき見運転が一番多うございまして二万八千九百三十三件、貨物の全事故のこれは約一六%に当たります。次いで安全不確認、これが二万三千八百四十三件でございまして、一三%を占めております。続いて動静不注視、一時不停止、全事故で見ますとこういった順になっております。  死亡事故で見ましても、やはりわき見運転が一番多うございまして三百五十九件でございまして、貨物の死亡事故の約一三%を占めております。次いで漫然運転、ぼんやり運転でございますが、三百三十四件、最高速度違反三百十一件、続いて過労運転ということで百九十二件、約七%、こういった順序になっております。
  71. 新盛辰雄

    ○新盛委員 お聞きのとおりでございまして、年々事故が大変増大をしている傾向、こういう面ではわき見運転が主力だとおっしゃいますけれども、実際は他のトラックとの競争意識が働いているという面もあるんじゃないかと思考します。しかし、現実にこれを防止しなければならないわけですから、防止するための原因を確かなものとして見きわめて、そこできちっとした安全連行体系をこれからどう確立するか。もちろん今回の法律では運転者に対する指導管理をする運行管理者の資格試験も強化をしてやろうという面では、確かにある面では前進であります。しかし、これが実効を伴わないといけないわけですから、この面についてまたこれからも明確にしていかなければならないと思います。  過積載表示装置等を備えつけなければならないという義務強化ですね、こんなのは簡単にできるんじゃないですか。これはどうですか。
  72. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ただいまお話のございました過積載が外部的に明らかになるようないわゆる自重計といわれるものでございますが、これは現在開発されておりますものはまだ信頼性に乏しいと言われておりまして、これの装着を義務づけるということはなお時期尚早ではないかと考えております。
  73. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そんなことだからいけないのですよ。これは現実的にやらなければならない。それは今の環境の中では予算もかかることだし、事情もいろいろありましょうが、こうしたことについては積極的に行政ベースとして考えていくべき問題だと思います。この点はまたやがて明確にならなければいけませんから、次に進みます。  それと、変更是正命令の発動条件ですね。ある意味ではこの要件を具備する基準、こういうようなことはどうなんですか。できやしませんか。
  74. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 運賃、料金につきましては届け出になっておるわけでございますが、その運賃の中身が適正な原価に適正な利潤を加えたものを著しく超えるというような、ある意味では非常にアッピングといいますか、そういう内容のものである場合であるとか、合理的な理由がなく荷主に対して差別的な取り扱いをするものであるとかそういったような場合、あるいは不当にほかの事業者と自分で競争上有利な条件をつくるためにダンピングをする、そういった内容のものである場合には、具体的に変更命令をかけていくということを考えております。
  75. 新盛辰雄

    ○新盛委員 こうしてずっと質問してきますと、今貨物自動車の運送事業法にかかわる問題、これは陸上を走っています。今度法律が二本出てしまったのですね。いわゆる新行革審の流れとしてデレギュレーションをやりなさいよ。そのために今回は企業の系列化、複合一貫輸送体制が根底に流れまして、そして片や貨物運送取扱事業法、こう二本出ているのです。どちらが主なんですか。
  76. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物自動車運送事業法は、実運送機関でありますトラック輸送規制するものでございます。一方、貨物運送取扱事業法案は、もろもろの実運送機関にかかわります運送取扱業を横断的に規制する法律でございます。これは実運送機関、取扱事業、それぞれが両々相まって発展すべきものでございますので、トラック法案と取扱乗法案とは密接な関連はございますけれども、どちらが主でどちらが従だという関係はないと考えております。
  77. 新盛辰雄

    ○新盛委員 警察庁と労働省の方は大変御苦労さまでした。御退場願います。  今、それは従じゃない、主じゃない、表裏一体のものだ、こうおっしゃるわけですけれども内容的には、一番重視すべきはこの貨物運送取扱事業法だ、そう私は思うのですよ。これがいわゆる規制緩和の眼目であろう、こう認識しているわけです。  この定義にいたしましても、実運送の中には陸海空含めるいわゆる運送事業者がそれこそ入ってくるわけですね。ただ、先ほど冒頭に総括で言いましたように、マージャンでいう一気通貫、和了しませんよ。中が抜けていますよ。この港湾の運送事業法関係ございません、こうなっているのですよ。だから、今貨物自動車の運送取り扱いと、こちらは陸上ですから、今度は具体的に貨物の運送の取扱事業と表裏一体だとおっしゃるのなら、この辺のところも明確にしなければこの法は成り立たないのじゃないですか、まずその骨格について……。
  78. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物運送取扱事業法案は、自動車、航空、海運、鉄道というような輸送機関を利用するあるいはそれに取り次ぎを行うという取扱事業を規律するものとして立案したものでございますが、港湾につきましては、港湾運送が限られた場所で行われる事業である、いわゆる一定の距離の間を貨物を輸送するという点から見ますと、極めて特殊な特定された場所における作業であるという特性、及び事業法規としまして港湾運送事業法という現行法がございますが、これは他の運送事業法規に比べまして極めて異質な性格を持つものでございます。いろいろと歴史的な背景がありましてこのような法律になっておるわけでございます。したがいまして、このような特殊性を考慮に入れまして港湾運送事業については取扱事業法案の対象とはしなかったものでございます。
  79. 新盛辰雄

    ○新盛委員 端的に聞きますが、港湾運送事業法、 実運送ではないわけですね。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  80. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 実運送の定義に含めておりませんので、港湾運送事業というのは実運送ではございません。したがって、貨物運送取扱法の適用対象ではございません。
  81. 新盛辰雄

    ○新盛委員 除外している、これは明確になりましたね。じゃ、除外規定を明確にどこかへ挿入する必要はありませんか。
  82. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ただいま申し上げましたように、実運送事業の定義から極めて明確に外れておりますので、これに重ねて別の除外規定を設けるということはむしろ法制的には不可能であると考えております。
  83. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いや、私がそれを言うのは、貨物運送取扱事業法と港湾運送法は貨物取り扱いの職域、運賃、料金なども含めて実際の商行為、商いをする、このことは関係があるのですかないのですか。関係あるのでしょう。
  84. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 港を通過いたします貨物、これにつきまして運送取り扱いをいたします場合に、もちろん港湾におきます作業がなくしては貨物は動かないわけでございますから、経済行為として当然取扱事業者と港湾運送事業者との間には取引関係が生ずることになります。しかしながら、港湾運送事業を営むことができますのはあくまで港湾運送事業法に基づく免許を持った事業者に限られておりますので、取扱事業者はその港湾運送事業者のお客として取引の当事者となるという関係になります。
  85. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そんなことにはならないでしょう。除外ということにはならないということにつながるのじゃないですか、あなたは除外ですよ、こう言うけれども。そういうことになれば関連性的にはこれは除外ということにならないですよ、中に取り込むということになるのですよ。
  86. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運送取扱事業者は港湾運送事業法上の何らの資格を与えられる者ではございません。したがいまして、現行の港湾運送事業法に定義されております港湾運送事業はあくまで免許を受けた事業者のみが行うことができます。したがいまして、取扱事業者は港湾におきます貨物移動をこれらの免許事業者に委託するという形で、そういう意味で顧客として取引に参加する、こういうことに相なります。
  87. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いや、そうならないですよ。じゃ、利用運送人によって港頭地区から、港のところから内陸へ行うことは当然予想されるでしょう、今あなたの言う商取引的に言えば。そうすると、港湾運送事業の領域あるいは職域が確実に侵されるのですよ。そこで、運賃とか料金などそういうことが完全にある意味ではたたかれてしまう、それはもうあなた、コンテナのときに港湾労働者がそれこそ十万人近く削減されたのですね。今回もそうなりはしないか、それをどこで担保するのですか、どこで保障するのですか、それだけ聞かせてください。
  88. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 先ほどから御説明申し上げておりますが、利用運送人がいわゆる複合一貫輸送のような行為をした場合に、当然港湾では港湾運送の仕事をしなければそういうことは完結しないわけでございますが、それは先ほどから申し上げておりますように、この取扱人の資格を持っただけではできないのでございます。それは先ほどから申し上げているように、実運送の中に港湾運送が入ってないものですから、この取り扱いの資格を持っただけでは港頭地区で港湾運送の仕事はできません。そうなりますと、どうしてもその仕事が必要であれば、現に港湾運送事業の免許を持っておられる方にお願いをいたします。そうすると、先生が今おっしゃっておられますように港湾運送事業のお仕事を奪うというようなことではなく、港湾運送事業のお仕事を利用運送人から見ればとってきたという格好になると思います。  それから、運賃につきましては、港湾運送事業者にお願いします以上は港湾運送事業法の適用を受けますので、港湾運送事業法認可料金を利用運送人は港湾運送事業者に払わなければなりません。そういう意味で、港湾運送事業の職域を奪うとか運賃をたたくとかいうようなことにはすぐに利用運送人がつながるものではないのです。
  89. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そうおっしゃるのなら、では百歩譲って、そのことは法律修正の中で、私は修正を出したいと思っているのだが、そういう中で整理ができますね、あなたがおっしゃっていることを譲ったとしても。それは確認できますか。実態はそうならぬでしょう。
  90. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 今私が申し上げたのは、制度上、利用運送と港湾運送事業はこの法律でどういう整理になっておるかということでございますが、それはこの法文上、今私が申し上げたとおりの整理になっておるわけでございます。したがいまして、確認と申しましても、法文でそう整理されているということでございます。
  91. 新盛辰雄

    ○新盛委員 法文ではそう整理されているけれども、実態はそういかないわけですよ。  だから、ここはまず第一に、委員長、御提起申し上げますが、港湾運送事業法の除外規定をひとつ明確にしてほしいということを後で御相談していただきたい。
  92. 久間章生

    ○久間委員長代理 その点については、また後ほど理事会に諮りたいと思います。
  93. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それから、この貨物運送取扱事業と実運送事業者との間における運賃収受の適正化、公正な取引関係を担保してほしい、こう私どもは思っているのです。この関係は、いわゆる荷主利用運送、実運送そして港湾運送間の運賃、料金の関係も明確にせよという意味を含めているわけですが、この点についてはどうでしょうか。
  94. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物運送取扱事業者が届け出運賃、料金は、利用運送事業の場合には実運送の運賃、料金と取扱事業者が取ります取扱手数料が含まれるものでございます。  また、運送取次事業の場合には、荷主から受け取ります取次手数料を届け出ることになりますので、実運送事業者に支払われます運賃は取次事業者を経由しまして荷主から支払われるということになります。  港湾運送の場合でございますが、この港湾運送はこの取扱事業法案の適用対象にはなっておりませんが、取扱業者が港湾運送事業者に港湾運送を委託する場合には、それに要する運賃、料金は荷主から収受して、これを港湾運送事業者に支払うということになります。したがいまして、港湾運送事業法認可料金となっております港湾運送料金は、荷主から取扱業者を経由して港湾運送事業者に支払われるということになります。
  95. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その辺、ちょっとわかりにくいのだけれども荷主がこの荷物を運んでください、これは複合一貫輸送ですから、今度はここに新たにできましたこの法律によりましていろいろな実運送の業界があるわけですね。そしてまたそれによって運ばれてくる、港湾のところを通るときは今おっしゃるような形だとおっしゃいますが、この法案からはどうしても陥没しているわけですよ。だからそこを、あなたの方ではこの港湾運送事業法によって運賃、料金を明確にすればいいということになるというのなら、この運賃、料金を一括に決められた場合は、これは現実の問題として港湾の方はこれにかかわり合いはない。こうなれば、これはどこかの職域もあれも港湾運送事業法でやるような仕事は全部この運送利用人の方でやってしまうのではないですか。商社が入るのですよ。外側の全く実運送をしない連中が入ってくるのですよ。現実的な問題としてどう処理するのですか。
  96. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 繰り返し申し上げておりますように、港湾におきます港湾運送事業に該当する行為は港湾運送事業法の免許を持つものでなければ行うことができないわけでございます。したがいまして、今おっしゃいました複合一貫輸送事業者というものが荷主との間に入ります場合にも、港湾運送事業者の収受すべき料金はあくまで港湾運送事業法に基づいて認可された料金でなければならないわけでございます。これは複合一貫輸送業者から支払われる、顧客たる利用事業者から港湾 運送事業者に支払われるということになります。
  97. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうもその辺のところの実態的な面ではまだ不明確でございます。それで、ここで実運送事業者に対する適正原価と利潤、その保障、またさらに実運送事業者間の不当な競争を排除するその運賃、料金、制度、こうしたことをやっていくのにはどうしても利用運送、実運送、そして港湾運送間の運賃、料金の今おっしゃっている関係を何らかの形で明確にする必要があると思うのです。法案の附則でもいい、そういうふうに何か改めてもらいたい。でなければ、恐らく現場の方では混乱が生じてくる。それは、あなた方はそんなことはありません、港湾の中においてはそんな問題は一つもないのです、こうおっしゃっていますけれども、現実の問題としてここが一番大事なところですから、ぜひともここの面を御検討、御再考を促したいと思うのですが、この辺のところは大臣、いかがですか。
  98. 江藤隆美

    江藤国務大臣 限られた時間の御質問でありますから、説明不足の点もありますので、後刻また事務当局から御説明もよくさせますし、また関係業界意見も、まだ審議の期間もありますからよく聞く機会もつくって、そして、これはとにかく荷役が主体の世界でありますから、そういう人たちが限られた職域で御心配になっておる向きもよくわかりますので、御心配がないように十分研究をさせていただきます。
  99. 新盛辰雄

    ○新盛委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  100. 久間章生

    ○久間委員長代理 緒方克陽君。
  101. 緒方克陽

    ○緒方委員 ただいま同僚議員から総括的に質問がなされましたが、私はその二法案の中で特に参入の問題と運賃、料金規制の問題、そういう問題について両法案にかかわって質問をしていきたいと思いますので、細かな内容もございますから、ぜひ具体的に答弁をお願いしたいというふうに思います。  実は、私はいろいろな意味でこういう運送関係の職場に出入りをしているわけでありますが、率直にこんな言葉を最近聞いたわけです。三キという言葉を知っているかということで言われました。三キというのは一体何かというと、運送業の職場は、労働者はきついというのが一つですね、それから二つ目が汚い、そして三つ目に危険だ、そういうことで三キの職場が今あるわけだけれども、そういう状態の中で今度規制緩和がやられていったならばもう本当に大変じゃないかということで、率直ないろいろな意見を聞いておりますので、そういう立場でぜひ真剣な回答をお願いしたいと思うのです。  その前に委員長にも恐縮でありますが、今度の関係交通安全とか事故に関連して厚生省の方もお呼びしております。余り長い間待たせてもと思いますので、恐縮ですが、交通事故とその被害者請求の問題でちょっとお聞きしたいと思うので了解願いたいと思うのですが、厚生省お見えでしょうね。  その質問内容は、交通事故の被害者救済の問題であります。生活協同組合であります都市職員共済会や自治労共済、これは組合がやっております。それから日教済などは自賠責分も含めて一括請求をされているわけでありますけれども、町村職員の共済だけがこれをされていないということで、被害者救済という観点からもこれはぜひもうしてもらいたいという声を、陳情を受けたわけであります。事故が起きて請求する場合には事故証明が必要でありますけれども、これは原本以外は認めないという立場になっているわけでありますから特に問題ないのではないかということで、担当であります厚生省が調査をされてぜひ指導をいただきたいと思いますが、この点について一つだけまずお願いしたいと思います。
  102. 浅野史郎

    ○浅野説明員 お答えいたします。  今先生御指摘のように、生活協同組合で自動車共済をやっているのが幾つかございますけれども、その中で町村職員の入っていらっしゃる町村共済、それがやっております自動車共済では一括請求ということができないことになっておりますし、それから被害者から直接請求というのも同じようにできないということでございます。その結果、被害者の方の便宜という点ではやや問題があるというのは御指摘のとおりでございます。  私どもの方でも、町村共済に対してそういう意味でのサービス向上ということをやっていただくようにお願いしているところでございますけれども、現実のところは損害査定員の量と質の問題ですとか持っている資金量の問題ですとか事務処理体制というのは、今のところ一括請求というものをするだけの自信がまだないという状況でございます。せっかくの御指摘でございますので、私どもも町村生協共済に対しまして前向きに検討するように指導してまいりたいというふうに思っております。
  103. 緒方克陽

    ○緒方委員 それではそういうことでぜひ指導をお願いしたいと思います。厚生省お帰りになって結構です。  そこで、まず貨物自動車運送関係参入の問題についてお尋ねします。  今回の法改正では参入規制事項の中でいわゆる需給調整規定を外しているということでありますが、これが一番問題であろうというふうに思います。本来この需給調整というのは参入規制の根幹をなすわけでありますけれども、現実には、今まで政府の方、運輸省道路運送法によって需給調整をしなければならないということになっていたのを、私に言わせればそれをやらずになし崩しにやってきたという経過があったわけであります。運輸省みずからがこれを放棄してきたということになっているわけでありまして、その積み上げの結果として、需給調整が機能していないからということで結局今度の規定から外すということになっているわけであります。これは運輸省自体がみずからやってきたという責任もありますけれども、非常に問題ではないかというふうに思いますが、この点についてのお答えをいただきたいと思います。
  104. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 現行道路運送法の運用といたしまして、従来トラック輸送に対する需要は非常に堅調にふえてまいりました。したがいまして、免許申請あるいは増車の申請があります場合に、これが過剰である、供給過剰になるというケースは見られなかったわけでありますので、そのような新規参入あるいは増車が認められてきたわけでございます。  新法のもとにおきましては、先生御指摘のとおり免許制から許可制への移行に伴いまして需給調整は基本的にはしないということになっており、新規参入をすべきか否か、そのような需給バランスになっておるかどうかは第一義的には当事者の経営判断にゆだねるということに相なります。しかしながら、著しく過剰な供給力が提供されることになる場合には緊急調整措置を発動いたしまして新規許可の停止あるいは増車の停止をすることは、既に申し上げたとおりでございます。そういうことで、野放しの需要増大ということはチェックをするということになっております。
  105. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の答弁というのは全く納得できないと思うわけです。さっき同僚議員であります新盛さんからもお話があったように、そんな状態でやられてきたから結局、長時間労働、事故は起きる、そしてダンピングはやられるということで、さっき言いました三キというような職場の実態になっているわけでありまして、私は今のような答弁には納得しがたいということだけ申し上げておきたいと思います。  また、緊急調整の問題については後ほど質問するか同僚の方がされると思いますが、そういうことで反論だけしておきたいと思います。  それからいま一つ、これはもう同僚議員から既に言われたことでもありますが、今まででも大変問題があったし、これから規制緩和ということでいろいろ問題があるであろうということを考える場合には、私どもとしては五年ごとの更新制度の導入というのが必要ではないかというふうに考えます。この有効期間の制度は、登録制ではありませんけれども、既に旅行業においては取り入れら れておるわけでありまして、自動車運送事業においても、不適格な事業者参入を阻止したり、参入後いろいろ問題を起こすような不適当な事業活動防止するためにも五年ごとの更新制をやって、その時期にチェックをするということが必要であろうというふうに思いますが、その点についてお答えを願いたいと思います。
  106. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 トラック業界におきましては、三万八千という非常に多数の事業者が存在しております。仮に五年というような許可の更新制を導入いたします場合の行政上の負担というのは、極めて大きなものがございます。他方、事業者も五年ごとに更新の手続を踏まなければならないということで事務的な負担がふえるわけでございます。悪質な違反行為があって事業の許可を取り消さなければいけないような事態がありました場合には、これは何も五年の期間を待つことなく直ちに措置する必要があるわけでございまして、そのような違反があるかどうかを見出すためには監査を定期的に行ってその徹底を期するということを考えております。そういうことによりまして、五年というような更新制を導入する必要はないと私どもとしては判断をしております。
  107. 緒方克陽

    ○緒方委員 これまた先ほどと同じようになりますけれども運輸省としては、所轄官庁としては余りにも実態を把握されていないのじゃないかというふうに思うわけです。私は、この運輸委員会の前に、交通安全特別委員会などでもこの貨物運送の実態、それから事故の問題、それから長時間労働の問題、いろいろ取り上げてきましたけれども、実際にはその悪質業者、その上に荷主がいるわけですが、ほとんど荷主から押されてトラック業界が苦しんでいる実態です。それにしても処分をされたとかいうようなものは数的には少ないという状況の中でありまして、数が多いからということで結局放置をされているという現状については非常に問題があるということを、私はこの際、今の問題では指摘しておきたいと思います。  今のお答えで、政府としてはどうもその必要はないのではないかということのようですが、我々は必要だという観点で、法案を提案されている趣旨から次の点も考えられるということで申し上げたいわけであります。  今度の法律で適正化事業実施機関というのが設けられて、そこに権限が付与されていくということですが、中身をいろいろ聞いていきますと、実態としては、トラック協会の中におられます百九十九名ですか、そういった人たちが二重の監察をもって何かやるということのようでありまして、非常にすっきりしない問題であって、これではこの法律が通っても実際に今日の問題点は解決しないのじゃないかというふうに思うわけであります。そんな観点から、適正化事業実施機関へ権限を付与してこういった事故をなくする、あるいはいろいろな問題を解決するというようなことが必要であろうという意味で申し上げます。  今も申し上げましたように三万八千社もあってなかなか大変だということでありますけれども、その更新の作業が現在の運輸省のスタッフでは確かに足りないかもしれない。先ほど事故の関係でも監査をやっていろいろやるというようなことを言われましたけれども、なかなか人間が足りないということのようですから、この法律の目的にも「民間団体等による自主的な活動を促進する」という項目があるわけでございまして、そんな意味から、適正化事業実施機関に対して更新手続の事前審査等一部の権限を付与して業務の簡素化を図ることも可能というふうに考えるわけであります。この点についてお答えを願いたいと思います。  また同時に、これはこの適正化事業実施機関の問題でありまして関連して申し上げますが、その際、更新手続の審査については、許可基準のうち事業適確遂行能力ということのみについての審査でも、その一部権限の付与の中で十分機能ができる、そういうふうに思うわけでありますが、その点についてお答えを願いたいと思います。
  108. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物自動車適正化事業実施機関に更新手続の審査の権限を与えたらどうか、こういうお話でございましたが、もともと事業を開始する際の許可申請の審査業務は、その内容から見まして、行政機関でございます運輸省及び運輸省の出先機関が個々の具体的な案件に即して裁量的な判断をしなければならないものでございます。仮に許可の更新制を導入するという場合におきましても、その審査業務は同様の性格を有するものと思われますので、定型的な業務とは言いがたい。したがいまして、民間団体でありますところの適正化実施機関にこれを行わせることは適当ではないというふうに考えます。  また、更新の際の審査について許可基準の一部、すなわち事業遂行能力だけを審査させればいいではないかというお話でございますが、これにつきましては、むしろ更新制をとるというよりは、先ほど来申し上げておりますように、計画的な監査をやるということでチェックすることにより実質的な機能は変わらないものだと思っております。したがいまして、あえて更新制という制度を導入する必要はないのではないかというふうに思っております。
  109. 緒方克陽

    ○緒方委員 先ほど同僚議員の質問のときにも、片一方のときには運輸省にはなかなか人がいなくて、体制がなくてと言われながら、事業のチェックについては定期的な監査の中でちゃんとやっていく。あるいは長時間労働の問題とかあるいは事故関係に関する調査とかいろいろなことをやられていると思うのです。  今その計画的監査の中でちゃんとやっていくということをわざわざ答弁いただきましたからこれはお尋ねするのですけれども運輸省運輸局がありまして、陸運支局があります。大手から中小まで三万八千ありますけれども運輸省というのはそんなにきめ細かく各業者を定期的に監査をする能力がおありですか。
  110. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運輸省といたしましては、現在の道路運送法の施行を確保するという見地から、各出先機関、地方運輸局及び陸運支局にその事業者の定期監査を行うように指示をしておるところでございまして、年々必要な処分を行っておるところでございます。私どもとして、これで十分であるとは申し上げられませんが、今後ともその徹底に努めていきたいと思っております。さらに、適正化事業実施機関を通じまして、行政の手の届かないところにつきまして予防的に違法行為防止を徹底していくという考え方で、その両々相まちまして、法令遵守を徹底させていきたいと思っております。
  111. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の局長答弁は矛盾していると思うのです。定期的な監査については十分やっているかと言うと、いやなかなか一生懸命やっている、陸運局、陸運支局を通じてと言うけれども、私のところの佐賀の陸運支局は建物自体も小さいですよ。例えば課にすれば何名かしかいないですよ。そんなところは十分にやれていないということで、今まで繰り返し問題にされて、先ほど言われました百九十九名ですか、我々も要望してふえてきたんだけれども、今度はその人たちに指導監督をやってもらって、両々相まってと言われる。人格を持って一定程度の仕事を適正化事業実施機関にやらせると言うと、今度は、いやそれはできない、政府の権限だ。今度は事故の問題その他で言うと、いや適正化事業実施機関じゃなくて、運輸省にいるトラック協会に配属されている百九十九名の何とか指導員ですか、正式の名前はちょっと忘れましたけれども。こんな矛盾した言い方というのはないですよ。
  112. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 事業開始の許可をするあるいは事業の許可の取り消しをするというような行政処分、このこと自体は行政機関である運輸省及びその出先機関が行わなければならないことは言うまでもないところでございます。適正化事業実施機関にゆだねますのは、これは事実としての違反行為の発見に努める、そのような事実が出てまいりましたときには運輸省の出先機関に持ち込んでその処分を仰ぐ、こういう形でございまして、行政処分自体は運輸省でやらなければならない。した がいまして、適正化事業実施機関はその補助行為を行うという仕分けをするわけでございます。その補助行為が十分活発に行われますれば、運輸省の行政上の法の適正な執行が強化される、こういうことに相なるわけでございます。
  113. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の答弁はなかなか納得しがたいところですが、ほかの項目もありますから、進みたいと思います。  今のような私の論点から、適正化事業実施機関の人格については、いろいろな意味で一定の権限を持つことが必要だというふうに思いますので、社団法人ではないという形で進められるべきであるということを申し上げ、これはまた同僚議員からもいろいろ言われておりますから、そういう意見であるということだけちょっと申し上げて、次に入りたいと思います。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕  次は、先ほど緊急調整措置があるというふうに言われました。需給調整はしないけれども緊急調整措置の方法があるから大丈夫だというふうに言われたわけでありますが、これが一体どうなのかということですね。  この法律で言う緊急調整措置について、その実効性を上げるためには適時かつ迅速に、また機動性を持って発動されなければならないというわけでありまして、その発動がどういう手続で、時間的にも、アメリカのスーパー三〇一じゃないですけれども、日時を決めてこうやるんだということがなければ、非常に問題じゃないかと思います。そして、その緊急調整措置の発動は透明性を持たせなければならない、緊急調整措置の発動の手法が明確に規定されていなければならぬと思うのですが、その点についてはどういうふうになっているのですか。規定的にはっきり言ってください。
  114. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 緊急調整措置の発動につきましては、先生御指摘のとおりこれを設けた趣旨が損なわれることがないように適時適切にこれを行っていく必要があると思っております。  法文は第七条でございますが「運輸大臣は、特定の地域において」途中省略いたしますが、「供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰となっている場合であって、当該供給輸送力が更に増加することにより、第三条の許可を受けた者であって当該特定の地域にその営業区域の全部又は大部分が含まれるものの相当部分について事業の継続が困難となると認めるときは、当該特定の地域を、期間を定めて緊急調整地域として指定することができる。」こういう規定がございます。これを具体的に発動するに当たりましては、御指摘のように一定の基準によってやるわけでございますが、輸送実績報告書、自動車輸送統計報告書等から出てまいります需給の状況を示すもろもろの諸指標、データの把握につきまして整理を行い、これによりまして需給状況の把握について的確に処理できる手法を確立したいと思っております。  具体的な発動要件につきましては、実車率とか実働率とか、実働一日一車当たりの輸送トン数あるいは営業収支等の数値を見まして、これらを基本的な要素として運用を図りたいと思っております。これにつきましては、先生の御指摘のように透明性を確保したいと思っております。
  115. 緒方克陽

    ○緒方委員 今、例えば「著しく」というのは、どの程度が「著しく」なのかというのは非常に難しい問題だし、それから実車率とか収益率には出るのだろうけれども、一体その辺はどういうパーセントのところまできたときかというのがはっきりしないと、いや、この地域は八〇%だ、この地域では六〇%だとか、例えば実車率とかなんとか見ても、そんな差があっては困ると思うのです。その辺はやはり明確に、もちろん法律ではあれですけれども、政令とかその他わかりやすいものできちっとしないと実効が発揮されないと思いますから、その辺は明確にしてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  116. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 緊急調整措置の発動要件は、設ける場合には恐らく通達等によって規定することになろうかと思いますが、これは先ほども申し上げましたように透明性を保つためにだれにでもわかるようにしたい、こう思っております。
  117. 緒方克陽

    ○緒方委員 今、通達等ということのようですが、その辺は通達よりももっと高いものがいいんじゃないかという気持ちを持っておりますが、それは意見だけ申し上げておきます。  それから、次に緊急調整措置と中小零細企業への配慮の問題ですが、結局一番打撃を受けるのは中小零細なんですね。大手は何とかいってもいろいろ持ちこたえることはできるわけですけれども、その場合の中小零細企業の経営の安定という観点に十分な配慮がなされなければいけないと思いますが、どういう措置をなされるのか、具体的にお示しを願いたい。
  118. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 トラック事業におきます著しい過当競争というものが起きました場合には、その事業特性から大多数を占めます中小企業者経営の困難という社会的に見過ごすことのできない事態をもたらすおそれがございます。産業活動の重要な基盤でございますトラックサービスというものを安定的に確保する必要があるということがこの法律の保護法益の一つでございますので、この点は十分考慮していきたいと思っております。  また、トラック事業におきます著しい過当競争は、極端なコストの引き下げさらには過労運転、過積載というような危険を社会的にもたらしまして看過し得ない事態になりますので、これを防止するということも二つ目の保護法益でございます。  また、過当競争によって影響を受けやすい中小企業者が九九%を占めておりますトラック事業の実態を勘案いたしまして、将来的に過当競争が生じました場合に生ずる社会的な弊害は甚大であると思われますので、この緊急調整措置の発動というのは中小企業対策として重要な要素を持っておると思っております。  ただ、緊急調整措置が発動されるような状況におきましては新規の許可あるいは増車というものは一律にストップをするという考えでございまして、そこのところで中小企業者であるかどうであるかという差別はするべきではなかろうと思っております。
  119. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の問題については一番大事なところですから、一応抽象的にお答えになりましたけれども、非常に大きな問題ということで私たちは認識しております。今までも制限をするというふうにやっていて実際には需給調整をやらずに、今度は緊急調整だということで、ばらばら、あっという間に時間がたってしまったということにならないようにするために、これからもまたきちっとした対応を求めていきたいと思います。  次に、参入基準事項の規定化をしてもらいたいということで質問をいたします。  参入の基準については、輸送の安全を確保するために適切な事業計画、その他事業遂行上適切な計画、三つ目に適確な事業遂行能力、この三つが挙げられているわけでありますが、これも先ほどの緊急調整措置と同じようにやはり透明性と統一性が必要だと思うわけで、それが確保されなければならない。そのために、この三つの基準というのは一体どういうものなのかということが明確に規定をされなければならぬということでありますが、この三つの基準についての規定、これも基準でありますが、どんなものが参入基準の規定になるのかということについてお答えを願いたいと思います。
  120. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 三つの基準につきましては、それぞれ具体的に定める必要があることは当然のことでございまして、その具体的な内容につきましてはまだ固めておりませんが、できるだけ各地方運輸局で不合理な差異が出ないように、できるだけ具体的な方針を明らかにする所存でございます。
  121. 緒方克陽

    ○緒方委員 今、地方局で差異が出ないように具体的な方針を明らかにする所存でございますということですが、方針というのは一体どういう形で出されるのでしょうか。
  122. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 まず過労運転防止その他輸送の安全の確保関係でございますが、これにつきま しては具体的な審査項目といたしまして、休憩施設整備であるとか運行管理者の選任であるとか車庫の整備であるとか、そういったことについて具体的な基準を通達で決めて地方局に示したいと思っております。  それから、二番目でございますが、事業の遂行上適切な計画ということでございます。これにつきましては、具体的な審査項目といたしまして事業用の施設の維持であるとか規模であるとかあるいはそれを使用する根拠、借りているのか所有しているのか、営業区域の範囲、事業収支、こういったようなことについてやはり同様に基準を決めて地方局に示したいというふうに思っております。  それから三番目でございますが、いわゆる適確に遂行していける能力の問題でございます。これにつきましては、道路運送事業というものをやっていくために必要な知識なりあるいは経営組織、財産的な基礎、こういったことについて同様に一定の基準を決めて地方局に示したい、こういうふうに考えております。
  123. 緒方克陽

    ○緒方委員 今私が質問したのは、また後ほどしますけれども、通達でやられるのかそれとも省令なのかということで、通達ということですから、後ほどその中身についてはちょっとまた御質問させていただきます。局長答弁は通達でやられるということですね。  次に参入基準の問題であります。  今日までの参入基準については、さっきも地方局で差異があったという話が出ていたわけでありますが、各運輸局の公示によってされてきた部分があるわけであります。今回規制緩和ということでいろいろな新しい業者も入ってくるということなどもあるわけでありますから、この際明確に法令規定すべきというふうに思いますが、どういう措置をされるのかお尋ねしたいと思います。
  124. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 参入基準を設定します際の形式でございますが、これにつきましては、経済変動等に伴います適時適切な改定を行う必要もあろうかと思いますし、先ほど地域によって不合理な差があってはならないと申し上げましたが、地域の特性というものはございますので、それに応じた合理的な差というものはあってしかるべきであろうというふうに思っております。そういう意味では、やはり形式といたしましては地方運輸局の公示が適当ではないかと思っております。これは、言うまでもなくだれにでもわかるという形で公表されるわけでございます。
  125. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の地域の特殊性というのは、ちょっと時間がありませんから後ほどお聞きをして次の委員か、また私が補足して質問させてもらうか、そういうことで後ほど地域の特殊性というのはどういうことなのかということで内容を示していただきたいと思います。  次に、安全確保のための事業計画の基準について二点お尋ねしたいと思います。  安全確保のための事業計画の基準については、法案の第十七条で(輸送の安全)ということでありますが、その(輸送の安全)の第一項が含まれているというふうに考えていいのかどうか、それが一つですね。  それからもう一つは、安全確保事業計画の基準については、事業者経営管理、それから法令遵守等の専門的な知識と、これはさっきちょっと答弁がありましたけれども、また適当な事業計画には具体的に最低保有車両数やそれから一定の経済的基礎、つまり資本金の最低額とかあるいは回転資金が最低は幾らだということを明記すべきだというふうに思うのでありますが、以上の点についてお答え願いたいと思います。
  126. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 最初に御指摘のありました輸送の安全確保のための事業計画について法案の第十七条一項が含まれるかという点でございますが、これは含まれると考えております。したがいまして、そのような事項についての基準を設ける所存でございます。  参入基準には事業者経営管理あるいは法令遵守の専門的な知識が必要であるとか、最低保有車両の数あるいは一定の経済的な基礎、財政的な基礎が含まれるということは当然でございまして、これらの基準につきまして、地域の特性に応じた合理的な基準を設定していきたいと思っておりますが、形式としましては必ずしも省令によって定める必要があるとは考えておりません。
  127. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の二つの問題ですが、一つは、ちょっと最後答弁を聞き漏らしましたので、この基準についてはどういう形で、通達でされるのか何でされるのか、それが一つ。  それから、私が質問しましたのは経済的基礎、つまり最低保有車両数は言われましたからそれはわかりましたけれども、経済的基盤、基礎というものの中に資本金の最低額や回転資金の問題を入れるべきではないかというふうに質問したのですが、その点についてはお答えがありませんでしたのでお答え願いたい。
  128. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 最初の形式の点でございますが、これは基本的には本省から通達を出して基本的な事項を定めたいと思っております。しかしながら、先ほど来申し上げますように地域の特性というものもございますので、細目につきましては、本省通達に基づきまして各地方運輸局の公示という形でこれを定めることとなると思っております。  経済的基礎としてどのような基準を設けるかということにつきましては、今後なお詰めていきたいと思っております。
  129. 緒方克陽

    ○緒方委員 では、経済的基礎については詰めていきたいということですから、これは、新しく制度が発足していくわけですからそういうものもぜひ入れていただきたいということで要望申し上げておきたいと思います。  それから次に、荷主と運送事業者との対等な取引関係。これが、荷主と運送業者の間で力関係で押されているということで、事故の問題その他もいつも議論されているわけでありますが、この際、運賃、料金の認可制を廃止して事前届け出制になるわけでありまして、そういう中で、当然として運賃ダンピング行為が拡大することが予想され、危惧をされるわけであります。現在の運賃ですら完全に収受されていない状況の中で過当競争の大きな原因になっているわけでありますが、いかに運賃の適正な収受の実効性を担保するかということが求められているわけでありまして、新しいこの法律の施行に伴ってそこが非常に危惧されるし、大事な問題であろうというふうに思います。  荷主と運送事業者との対等な取引関係をつくり上げるためにはもちろん業者努力をしなければなりませんけれども、やはり行政としてもそこらについての基本的な考え方を明示した上で政府全体として指導をしなければならぬ問題があるのじゃないかというふうに思いますので、この点については大臣の方から御答弁をお願いしたいと思います。
  130. 江藤隆美

    江藤国務大臣 トラック業者は零細業者が多いということで、委員の御質問も、そういう特に零細企業の業者が圧迫を受けてダンピング等の被害を受けるのではないかという御心配が念頭にあってのお尋ねであると思います。現在もいささか守られていない向きがありまして、これは極めて残念なことであります。しかし、今回は届け出制になりましてもこれは守らなければならないわけでありまして、もし不当な料金でもって運送業者にいわゆる圧迫を加えるというようなことがあれば、これは是正命令が出される措置が講ぜられておりますわけで、これに従わなければ、さらにまた、それより一段と強い措置を講ずる、こういうことになっております。  それからもう一つは、いわゆる適正化事業というものを発足させる。これは今までなかったことでありまして、特に業界の皆さんは自分たちの死活にかかわることでありますから、この適正化事業という中でそういうことが起こらないように、起こったら直ちに対応ができるようにしっかりこれを運用させていく。それからもう一つは、零細業者も多いわけでありますから、これからも中小企業近代化促進法に基づいて合理化あるいは効率化等について近代化事業、構造改善事業を進めて いく、こういう考え方で取り組んでまいりたいと思っております。
  131. 緒方克陽

    ○緒方委員 今そういうことで大臣から決意表明があったわけでありますが、新法制定という状況ですから、一体何があるのかわからぬという危惧を私はしっかり持っております。そんな意味で、特に荷主と運送事業者関係でいわゆる運送事業者が大変な苦悩に陥らないように、特に中小企業者が陥らないような対策を具体的な行政措置の中でしっかりやられるように希望をしておきたいと思います。  次に、貨物運送取扱事業法における運賃の問題について少しお尋ねをしたいと思います。  貨物運送取扱事業法における運賃でありますが、この法律によって運送取扱事業の許可それから登録及び運賃、料金の届け出は実運送の運送モードごとに行われるというふうに理解をしていいのかどうか、そこをお尋ねしたいと思います。
  132. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ただいまの御理解のとおりでございます。  貨物運送取扱事業法におきます利用運送事業の許可または運送取次事業の登録につきましては、事業計画または登録簿におきまして、鉄道、自動車、航空、内航海運、外航海運という各事業に係る実運送の輸送機関をそれぞれ明記することになっております。その輸送機関変更または追加するという場合には、事業計画変更認可または登録事項の変更登録を要するわけでございまして、どのような輸送機関でも自由自在にできるというものではございません。実運送の輸送機関ごとに取扱事業参入をチェックするということでございます。  また、運賃、料金の届け出につきましても同様でございまして、実運送の輸送機関ごと運賃、料金の内容を取扱事業者届け出るということにしております。
  133. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは、運賃、料金の内容について少しお尋ねをしたいと思います。  運送取扱事業法によります運送取扱事業者届け出運賃、料金は荷主より収受するものであって、その中には実運送にかかる運賃、それから集配が伴う場合にはその集配料、そしてそれに運送取扱事業者の収入部分である取扱料金を含む、そういう内容のものであるというふうに理解をしていいでしょうか。
  134. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 そのとおりでございます。  貨物運送取扱事業者が届け出ます運賃、料金には、利用運送事業の場合には実運送にかかります運賃、料金、さらに、第二種利用運送事業の場合には集配料金を含めますが、これと利用運送事業者が取得いたします取扱手数料、その双方を含むというふうに理解をしております。  それから運送取次事業の方でございますが、これは荷主から収受します取り次ぎの手数料を届け出るということになっておりまして、実運送事業者に支払う運賃、料金は荷主から取次事業者を経由して実運送事業者に支払われる、取次事業者はその手数料だけを受け取る、こういうことに相なります。
  135. 緒方克陽

    ○緒方委員 その運賃、料金に絡んででありますが、取扱業者と運送業者との間の運賃、料金の収受の問題でお尋ねしたいわけであります。  貨物運送取扱事業者と貨物自動車運送事業者との間の事業者間の運賃、料金の収受は、これは質問通告してなかったのですが、私承知していない面もありまして、これは現行どのように行われているのか、今回どういうふうになるのか、その差異があるのかどうか、それが一つ。  また、このことに関しては当事者間のいわゆる契約内容で行われるのかどうか、これが二つ目です。だから、これで合計三つ目です。  最後に四番目として、この契約内容はどういう項目が入るというような基準があるのか、その四つについてお答え願いたいと思います、今新たに言う問題ですが、現行の問題については当然承知をされていると思いますので。
  136. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 まず現行から申し上げますと、取扱事業者と実運送事業者の間の関係につきましては、現在は道路運送法の適用がないという取り扱いになっております。取扱事業者利用者の間で道路運送法の適用がある、取扱事業者と実運送の間ではない、こういう関係になっております。したがいまして、そこで収受される料金はこれは当事者間の契約で決まる、こういう取り扱いになっております。  それに対しまして今度はそれがどう変わるかということでございますが、今度はそこに貨物自動車運送事業法の適用がございます。それは結局、実運送側から見ますと、つまりトラック側から見ますと、お客が本当の荷主であるか、それとも取扱事業者が来たか、それと関係なくやはり運賃運賃でもらわなければいかぬわけでございますので、そこのところが今度は新しくこの法律に従って届け出をしなければなりません。そしてその届け出が、先ほどから申し上げておりますように不当に高いものであったり差別するものであったり、あるいは不当にダンピングするようなものであると変更命令がかかる。そういうふうに、今度は取扱事業と実運送事業の間が変更命令の対象になる、こういうことでございます。
  137. 緒方克陽

    ○緒方委員 契約内容の基準はあるのかどうかということについてはどうですか。
  138. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 今申し上げましたように、今度は運賃につきまして貨物自動車運送事業法に従いまして実運送事業者届け出をしなければなりません。したがって、届け出て場合によっては変更命令を受けることがあるわけでございますが、そういう格好で確定した運賃、これを取扱事業者は払う、こういう格好になります。そのときの支払いについては当然貨物自動車運送事業契約に基づいて支払いが行われる。今までと違う点は、今までは法律の光が当たらなかったけれども今度は法律の光が当たっておる、根拠は両方とも契約でございます。
  139. 緒方克陽

    ○緒方委員 私の言っているのは、いわゆる契約内容というのはいろいろあると思うのですよ。もちろん運賃はあるだろうけれども、契約というのはそのほかに何かあるのかな、そこらは一体どうなのかなという意味で聞いているわけです。
  140. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 まことに申しわけございません。多少理解が不十分であれでございますが、取扱事業者と実運送事業者の間には、いわゆる運送契約が成り立つ、それは新法でも旧法でも変わりはございません。それに、旧法では法律の光が当たらなかったけれども、新法では貨物自動車運送事業法届け出の対象になるというふうに光が当たる、そこが変わるということでございます。
  141. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは、契約内容の基準は変わらないということで、今光が当たるというふうに言われましたけれども、当たるかどうかはこれからの問題でございますが、意味はわかりました。契約内容、契約の様式そのものは変わらないという意味で、僕は変わるのかどうかということを聞いたわけですから、それはわかりました。  それで、次に貨物自動車運送事業法における運賃、料金の変更命令の基準についてでありますけれども届け出運賃、料金について変更命令を行う該当事項に三点挙げられているわけでありますが、この各項目ごとの判定基準は一体どうなっているのかということでございます。その点について……。
  142. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 法案の第十一条の第二項に変更命令の基準が規定されておるわけでございますが、その第一号の適正原価、適正利潤超過の基準でございますが、利用者による適正な負担を確保するというためには、当該事業者の全事業収入が適正コスト及び適正利潤を超える不当に高い超過利潤を得ることがあってはならない、これを防止するためのものでございます。  また、第二号の、「特定の荷主に対し不当な差別的取扱いをする」という点でございますが、これは公益性の高い輸送サービスの享受を容易にするために、特定の大口荷主や長距離輸送の利用者だけを不当に割安にしたり、あるいは逆に一見客や近距離輸送の利用者に不当に割高となるような運賃の設定を防止するためのものでございます。  それから、第三号の基準でございますが、「他の一般貨物自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるもの」ということでございますが、同種のサービス提供する他者との関係において不当に安い運賃の設定、これにつきまして具体的な指標としましては、その時点とかその地域におきます適正原価を基礎としまして適切に設定し、これを各事業者が知り得るように措置をしたいと考えております。
  143. 緒方克陽

    ○緒方委員 何か今の答えでは、その時点、その地域の実情によって適切にやるということでありまして、非常にあいまいもことしているわけでありますが、時間が来ましたから、それは一体どういう——その時点というのは大体どういう時間をとるとか、その地域というのはどういうことか、それから適切にやるということですが、その基準が非常に明らかでないわけですね。しかもそれは例えば通達でやるのか公示でやるのか、そんなことも明らかになっておりませんが、それをお聞きしたいのと、時間が参りましたので、あと最後につけ加えて答弁をしてもらいたいと思います。もう一点だけですね。  最後は、届け出運賃を収受しない場合の措置でありまして、事業者みずからが届け出運賃でありますから、これはもう当然のこととして守らなきゃならぬということでありますが、それが現実に守られない場合の処分は一体どうなるのかということで、罰則規定を見てみると、運賃届け出ずに収受した場合と、二つ目に、変更命令に違反した場合にはあるけれども届け出運賃を収受していない場合の罰則規定はない。これは命令を出すとかなんとかということなのか、そういうことのようですけれども、果たしてこれでいいのかどうか。やっぱり運賃の適正収受を図るためには同じような趣旨でこれはやられるべきではないかというふうに思うのですが、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  144. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 先ほどお答えに対してさらに御質問がございまして、その時点、その地域とは何かという点でございますが、もろもろの経済現象の変動に伴いまして指標が動いてまいりますので、定期的にこれを変えるというよりは、むしろ経済の実態が変わったときに必要があればこれを改定するということになろうかと思います。  地域につきましては、いわゆる経済圏を基礎とします事業地域を考えております。  公表の方法につきましては、今後さらに検討をしていきたいと思っております。  それから、届け出ました運賃を収受しない場合に罰則がかかるのかどうかということでございますが、これは第七十六条の規定によりまして、届け出をしないで運賃または料金を収受した場合ということに該当しますので、刑事罰の対象になります。
  145. 緒方克陽

    ○緒方委員 時間が参りましたのでこれで質問を終わりますが、なかなかまだ解明されてない点もありますし、要望申し上げたい点もありますから、我々の要望についてもしっかり踏まえていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。
  146. 島村宜伸

    島村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ────◇─────     午後一時三十六分開議
  147. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西中清君。
  148. 西中清

    ○西中委員 このたび提出されました流通二法案、これは、規制が多くて自由な事業活動制限されがちでございました貨物運送事業の分野を、需要、ニーズの多様化や高度化に対応して、新規参入運賃制度などの規制を大幅に緩和することによって運送事業活性化を図る、さらに貨物自動車業界の過積載や過労運転などを防止して輸送の安全を確保するという趣旨のように聞いておるわけでございますけれども、初めに、現時点における貨物運送事業の基本的な状況認識、どういう業界の姿であるという認識をしておられるか、まず概要を伺っておきたいと思います。
  149. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 お答えいたします。  トラック輸送は、少量多頻度輸送、ジャスト・イン・タイム輸送、附帯サービス物流ニーズの多様化、高度化の進展によりまして国内貨物輸送トンキロの五割を担っております。売り上げ総額は八兆円に及ぶなど、今や物流産業の中核としての役割を果たし、我が国の経済、国民生活にとって不可欠のものとなっております。しかしながら、トラック事業者数三万八千のうち九九・五%は中小企業が占めておりまして、荷主企業に対して零細な規模の事業者であることが適正な運賃の収受に関し必ずしも対等な交渉を行いがたいと考えられること、長時間労働、過積載、交通事故、公害問題等、企業の内外において社会的に見て好ましくない要因を内包していることも各方面から指摘されておるところでございます。  運輸省といたしましては、このような現状にかんがみまして、労働条件の適正化、安全運行の確保等を徹底した上で、事業遂行について適確な能力を有する事業者が、物流ニーズ対応事業活性化が図っていけるような環境整備を行うことが必要であると認識をしております。
  150. 西中清

    ○西中委員 私はきょうは主に貨物自動車運送事業法案の御質問をいたしたいと思っております。  この大きな目的の一つは、需給調整などの新規参入規制認可運賃の廃止など、いわゆる経済的な規制緩和、これがまず大きな問題になっていると思います。免許制というのは事業者にとっては、これは今まで信用なり財産なりの一部分のように認識をしている方が多かったわけでありますが、これが許可制になるということは事業者にとってはいわば革命的なことであろうかと思います。こういう大きな変化、ここにはそれなりの大きな理由があると思いますけれども、それを明確にしていただきたいと思います。
  151. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 御指摘のとおり、現行道路運送法のもとにおきましては、トラック事業への参入需給調整を伴います免許制度によっております。しかしながら、我が国の産業構造が変化していく中で新しい物流ニーズ対応するために必要となるネットワークの拡大、あるいは小口貨物積み合わせ運送などが弾力的に行えるような事業規制とすることが必要になってきております。このために、サービスの多様化、事業展開の迅速化等の要請の高まりに対応しまして、かつ、それと同時に事業の適正かつ合理的な運営を図るため、事業計画が適切である、適確な事業遂行能力を有するという質的な審査を申請について行う許可制とすることに切りかえることとしたわけでございます。
  152. 西中清

    ○西中委員 昨年十二月一日の臨時行政改革推進審議会の答申に、需給調整規制を廃止し、資格要件を中心とした許可制度に移行する、あわせて許可基準の明確化を図るとございます。  法案の第六条の「許可の基準」というのがございますけれども、ここには四つの項目の基準が示されておるわけでございます。この四項目、いろいろ書かれておりますけれどもかなり抽象的な表現でございますので、これは具体的に言うと一体どういうことになるのか、四項目一つ一つ明確にお示しをいただければありがたいのですが。
  153. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 許可の基準は第六条に四項目挙がっております。第一号の過労運転防止その他輸送の安全の確保に十分な体制が整っているかどうかという基準でございますが、具体的には仮眠、休憩施設整備運行管理者の選任、運転者確保、車庫の整備等の状況を見ていくことになります。  それから第二号、「事業の遂行上適切な計画を有するものであること。」これにつきましては、主に利用者の利便を確保する上で十分な体制が整っているか否かを判断することになります。具体的には、各事業施設の位置、規模、営業区域の範囲、事業収支の見通しなどでございます。  それから、第三号にございます申請者がみずから適確に事業を遂行する能力があるか否かを判断 する基準でございますが、具体的には法令遵守等に関する資質、またその企業の財産的基礎などを見ていくことになります。  それから、第四号にあります特別積み合わせ貨物運送を行う場合の上乗せ基準でございますが、これは貨物の紛失、滅失等の防止の観点から、事業場の積みおろし施設の能力、貨物の追跡管理の方法等について審査を行う予定でございます。
  154. 西中清

    ○西中委員 今御説明をいただきましたが、これは現行認可基準にも多く盛られているものであろうと思うのです。現行の基準と今回の改正による基準の違いはどういうところに出てくるのでしょうか。
  155. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 事業計画事業の重要かつ基本的な事項に関する計画でございますので、事業許可は、この計画に従って事業実施されることを前提としまして、その適切性について許可基準に照らした審査を経て行われるものでございます。したがいまして、事業計画変更に際しましても、その変更内容について再度許可基準に照らした審査を行い、その適切性を確保するために、事業計画変更を原則として認可にかからしめる必要がございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたようにトラック事業につきましては、高度化、多様化するニーズに弾力的に対応して迅速かつ適切な事業活動を行い得るようにするという本法の制定の趣旨に即しまして、事業者経営判断のもとで迅速に変更し得ることによって経済動向に対応した弾力的な事業展開を可能とする政策的な必要性が生じております。このために、現行事業計画変更では営業所の名称の変更等軽微な変更以外はすべて認可にかからしめているところでございますが、新しい法案におきましては、従来認可が必要でありました事項、例えば事業用自動車の増車について、これは事前に届け出ればよいというより簡便な手続で行うことを考えております。
  156. 西中清

    ○西中委員 今御説明いただきましたけれども現行認可基準と今回の許可の基準というのは余り変わらないなという感じがしないわけではない。そういう点で今一例を挙げられたようでございますけれども、この辺のところがちょっと規制緩和と言うにはなかなか問題があるのではないかなという気もしないではございません。  もうちょっと申し上げますと、免許制というものが今回許可制ということになるわけですが、提出される事業計画認可のままで強い規制が加われば規制緩和意味がなくなっていく。先ほど説明いただきましたけれども、これから作業が行われる部分も多いのでしょうが、今説明のとおり、現行認可基準とどこが違うんだろうなということはごく一部ございまして、あいまいなままでまいりますと六条は空文化するという関係にあると思うのです。したがって、くどいようでありますけれども現行法と比べて具体的にどう変わるのか、どう変わっていくのか、この辺のところを具体的にもう一度お話しをいただきたいと思います。
  157. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 免許制から許可制への移行に伴う違いは、需給調整を行うか行わないかという点でございます。従来は、法律需給調整を行うという規定になっておりましたが、許可制への移行に伴いましてこの基準はなくなります。残りの部分につきましては、先ほど申し上げた事業計画とか事業遂行能力等につきましては、従来同様のチェックをしていくことになります。
  158. 西中清

    ○西中委員 これから詳細の部分をお詰めになるのでありましょう。できれば今わかっておれば一番いいわけでありますけれども規制緩和ということがこの法案の大きな柱ということを先ほどおっしゃっておるわけでございますから、その点は十分配慮しながらやっていただかなければならぬのじゃないかと思うわけでございます。  それから、重ねてお願いしておきたいと思うのは、事業変更の場合も一々運輸省認可が必要である、実質的に実態的に規制が強過ぎるという声もまだ高いわけでありまして、需給調整を廃止するだけではなくて、具体的に許認可事項というものを一遍総ざらいをする、洗い直す必要があるのではないか、こういうふうに私は思っておるわけです。できるだけ簡素にしていくということを含めて御検討をされてはどうかと思うのですが、お考えはございますか。
  159. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 行政簡素化ということがこの立法の趣旨でございますので、御指摘のように、可能なものはできるだけ規制緩和していきたいと思っております。  その一つの大きなものが、先ほど申し上げましたが、増車をする場合に従来は一々認可を必要としておったわけでございますが、これは実際非常に件数も多くて時間もかかっておりました。これを届け出制にすることによりまして機動的に輸送力が増強されるということに相なります。その他、事業計画の記載事項の簡素化、添付資料の簡素化施設の概要を示す図面といったものを省略する等、行政手続簡素化に努めてまいりたいと思っております。
  160. 西中清

    ○西中委員 先ほども御説明をいただきましたけれども貨物自動車運送事業者は六十二年度約三万八千業者、それに軽自動車を加えますと八万八千業者ということでございますが、そのほとんどが中小企業、むしろ零細企業が多いわけでございます。ただでさえ今も競争の激しい業界でございますが、仮にこの法案が成立をいたしますと、業界内ではさらに競争が激化する。そして系列化とか集約化等が進むというふうに見るわけでございますが、運輸省としては今後の見通しをどうお考えになっておるのか、その辺のところをお伺いしておきたいと思います。
  161. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 御指摘のとおり、トラック事業は九九%が中小企業でございます。そういうことで、これら中小事業者経営の維持ということには十分配慮していかなければならないと思っております。それらのことは運政審の物流部会の委員においても指摘されておるところでございます。  そういうことで、本法におきましては、著しい過当競争になった場合に、新規参入を停止する等の緊急調整措置、あるいは違法行為を強要するような荷主に対する勧告制度等を新設しているところでございます。また、中小事業者事業基盤の確立につきましては、何も事業規制ばかりが能ではございませんので、中小企業の構造改善事業の着実な推進等事業活動の環境整備の方につきましても力を入れていきたいと思っております。
  162. 西中清

    ○西中委員 特に激しい変化という業界状況になるわけでございますから、ただいまの幾つかの施策、とりわけ構造改善等につきまして十分力を入れていただきたい、このように要望をいたしておきたいと思います。  そこで、第七条の緊急調整措置でございますけれども、これはどのような要件で発動されるのか、具体的に御説明をいただけないでしょうか。
  163. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 第七条にございますように、緊急調整措置は、特定の地域におきまして供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰となっている場合であって、かつ供給輸送力がさらに増加することによりまして、第三条の許可を受けて営業しておる事業者であって当該特定の地域にその営業区域の全部または大部分が含まれるものの相当部分が事業の継続が困難となると認められるときに、期間を定めて緊急調整地域として指定する、その場合には、新規の許可あるいは増車がストップされるということになります。特定地域にその営業区域の全部または大部分が含まれる事業者の相当部分というところでございますが、考え方として、おおむね三分の一ないし二分の一ぐらいのところで具体的に決めていきたいと思っております。「期間を定めて」とございますところは、おおむね一年程度の期間を考えております。
  164. 西中清

    ○西中委員 これは状況がいろいろ変化をするわけで、運輸省としても当然日ごろからいろいろ監察をされると思いますけれども、やはり協会その他組合等が具体的に運輸省に申し上げてお願いをするというような形になるのでしょう。その辺のことはどういう形になるのでしょうか。
  165. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 緊急調整措置を発動するという事態は、供給力が需要を非常に上回っている事態でございまして、それ自体を何よりも見守って痛感しておりますのは事業者自身でございますので、そのような業界からの要望というのは重要な一つの参考になろうかと思います。しかしながら、陳情があればやるというものでもございませんので、客観的なデータを輸送実績報告書あるいは自動車輸送統計報告書等から拾い出しまして、実車率とか実働率、実働車一日当たりの輸送トン数などなどの数字を十分検討いたしまして明確な運用を図ってまいりたいと思っております。
  166. 西中清

    ○西中委員 少し細かいことですが、七条の2の項目ですが、「著しく過剰」というのはどういう状況を指すのでしょうか。
  167. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 「著しく過剰」というところのパーセンテージ等につきましてはまだ具体案を持っておりません。これから十分検討していきたいと思っております。
  168. 西中清

    ○西中委員 次に、運賃について御質問をいたしたいと思います。  現在の貨物自動車の認可運賃は昭和六十年に決められてからそのまま据え置かれてまいったわけでございます。既に四年を経過したわけですが、かつては二年ローテーションというようなこともございました。しかし、経済状況の変化等もございますから必ずしもそれにこだわるものではございません。しかしこの四年間でかなり人件費が上昇しておることは間違いないわけでございまして、トラックの実勢運賃も上昇をしておると思います。  したがいまして、六十年認可運賃そのままで新法の施行ということになりますと、やはり現行認可運賃一つの目安のような形になるのではないか。したがって、届け出運賃にもそれなりの影響を持ってくると思うのです。したがいまして、このままでいいのかどうなのか、私も何とも申し上げるにちょっとはばかるのですけれども、常識的に考えても、一度きちっとした形で洗い直す必要があるのではないか。要するに、施行前にあるべき運賃はこの程度ではないかということが一つ出てくれば、あと過当な競争、価格競争というものを未然に防げるのではないか、ある程度抑えられるのではないか、こういうことも考えないわけではございません。したがいまして、これを一遍改定を行うというようなことで検討してみるというお気持ちはあるのかないのか伺っておきたいと思います。
  169. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ただいまお話がございましたように、労働時間の短縮その他の要因によります人件費の上昇などがございまして、現行認可運賃の改定をしてほしいという要望業界にあることは承知をしております。ただ、現在のところ運輸省といたしましては、現時点で運賃改定の必要があるという数字をまだ得るには至っておりません。今後もデータの収集、精査に当たりたいと思っております。  それから、これから行われます時短によります人件費の上昇等によりまして輸送コストが今後見込まれるということもございますが、そういうことを織り込んだ上で値上げの必要性があるかどうか、またその時期がいつであるべきか、その辺につきましては慎重に検討をしてまいりたいと思っております。
  170. 西中清

    ○西中委員 これはいろいろな見方ができると思うのですけれども、最近は極めて経済が好調でございますから荷動きが非常に激しい、ですからフル操業であるという一面があって、それが結局は過労運転というようなことにもつながってくる、こういう一面も実はございますね。ですから会社が現在経営状況がよろしいとか悪いという状況だけで判断をすると、上げる必要がないんじゃないかというような一つの答えも出てくると思うのです。今度の法案の大きなねらいの一つでございます過積載、過労運転等を防止するという観点からも、その点は総合的に判断をしなければ誤るのじゃないか、こういうようにも思っております。御検討をいただきたいと思います。  そこで、届け出運賃変更命令の件でございますけれども、今後競争の激化に伴って届け出運賃は不当に低く設定される可能性もあろうかと思います。法案では、運賃届け出については、十一条で三項目の事項に該当した場合は届け出運賃等の変更を命ずることができることとなっております。ここのところも極めて重大なところでございまして、この一、二、三の項目「適正な原価」であるとか「不当な差別的取扱い」であるとか「不当な競争」というようなことは記されておるわけでございますけれども、これもかなり抽象的な感じがしないわけではございません。したがいまして、具体的には何を、どのようなことを指しておるのか、詳しく御説明をいただきたいと思います。
  171. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運賃変更命令を発動します基準につきましては、当然これから詰めていかなければならないと思っております。  御指摘の三号ございますが、一号につきましては、事業者の全収入が適正コスト及び適正利潤を超える不当に高い超過利潤を得ることを防止する、具体的に何%というようなことはまだ申し上げられるほど詰まっておりませんが、引き続き検討させていただきたいと思っております。  それから、第二号の不当な差別的取り扱いの基準でございますが、これは特定の大口荷主とか長距離輸送の利用者だけを不当に割安にしたり、あるいは逆に一見客や近距離輸送の利用者に不当に割高となるような運賃を設定することを防止するものであります。不当にと申し上げた点につきましても、今後その目安となるものを考えていかなければならないと思っております。  それから第三号の不当競争の基準でありますが、事業者間の健全で公正な競争確保するために、同種のサービス提供する他者との関係においてこれまた不当に安い運賃の設定を防止するものでございますけれども、この基準につきまして具体的な指標、数字につきましては、その時点あるいはその当該地域におきます適正原価を基礎としまして適切な判断を加えていきたいと思っております。
  172. 西中清

    ○西中委員 運賃制度というのは極めて重要なことでございますので、先ほど届け出運賃の問題であるとかただいまの変更命令の問題であるとか、ここらあたりの問題はできるだけ明確にするということが重要ではなかろうかと思います。したがいまして、その辺のところはぜひ明確な基準を示していただきたいということ。中には標準的運賃の公表をしたらどうかというようなことも言っている方がございますけれども、それはこの法の精神からいってちょっとどうなのかという疑問もわかないわけではございませんが、そういうことが可能なのかどうなのか。不可能とすれば、少なくともこの運賃制度はだれが見ても公平にわかるようにできるだけ明確にしていただく、こういうように願いたいと思うのです。その点どうでしょうか。
  173. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 この法案におきまして、標準運賃という制度を第六十三条で規定しております。ただこの場合の標準運賃と申しますのは、常時公示されるものではなくて、需給バランスが著しく不均衡になっている、あるいは物価等が急激に変動して高騰したり下落したりしているというような異常な事態に、運賃の安定化を目的として期間を定めて設定されるものでございまして、これはめったに設定されるものではございません。そういう意味では、平常の事態におきましては標準運賃というものは設定しないというのがこの法律の考え方でございます。
  174. 西中清

    ○西中委員 それでは次に、市街化調整区域内における事業施設についてお伺いをしていきたいと思います。  これは建設省の方が主体でございますから建設省の方にお伺いするのですけれども大臣にもひとつ大いに力を出していただきたい問題でございます。  都計法の二十九条に基づきまして、現在、路線トラックは例外としてこの調整区域における事業施設を許されております。しかし、区域トラックは認められていないわけでございます。今度の法改正では路線、区域の別がなくなることに相なります。したがいまして、この都計法関係規制は一体どういうようになっていくのか、まず建設省にお伺いをしてまいりたいと思います。  結局この路線、区域がなくなる、要するに路線トラックというのはなくなるわけでございますから、今後全く認めなくなるのか、いずれかの形で線引きをしてこの制度を残すのか、あいまいであっては極めて不公平な問題になりますので、この点をひとつはっきりとしていただきたいと思います。
  175. 高橋健文

    高橋説明員 ただいま御指摘のございました開発許可手続の取り扱いでございますが、都市計画法では、公益上必要な建築物のための開発行為につきましては、開発許可の適用除外としておりますのは御指摘のとおりでございます。  ただ具体的には、その適用除外となる施設を政令で定めておりまして、一般貨物自動車運送事業につきましては、路線については適用除外としておりますが、区域につきましては開発許可の手続をとっていただくこととしております。  今回の貨物自動車運送事業法案によりますと、この一般と区域の区別が法的になくなりまして、すべて一般貨物自動車運送事業として一本化されることとなるわけでございますので、開発許可手続の段階では先ほど申し上げましたように都市計画法の政令でいろいろ決めておりますので、政令の段階で運輸省と十分相談させていただきたいと思っているわけでございます。
  176. 江藤隆美

    江藤国務大臣 かつての建設大臣当時の秘書官に答弁の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。  これは農地の問題にかかわってよその役所に関しますから、私からお答えさせていただきたいと思います。  去年福島県に行きましたら、ある町長さんが東北縦貫道路のインターチェンジのところへ連れていきまして、これほどの場所に工場がたくさん来たいといって全部決まっておる、ところが農振地域がかかってだめなんだということであります。帰りましてから、農林省にそういう話をしたのです。インターチェンジの周辺に米をつくらせて、米をつくりたいところにつくらさぬということが間違いではないのか。だからインターチェンジの周辺というのは農振地域を、希望があれば外したらいい。それからゴルフ場の規制等につきましても、行ってみますと、山の谷間のあの谷地田を生産調整させて、そういうところに減反奨励金をやっておる。こんなのもおよそ時代に合わないではないか。  それから町の真ん中へ、都市に入る国県道で、車が年がら年じゅう渋滞しておるその周辺に、相も変わらず米をつくっておる。やはりそういうこともこれからやめて、米をつくりたいところにつくらせ、米をつくらなくても転用のできるところはやったらいいじゃないか、こういうことで、昨年来検討を農林省に煩わせまして、高速道路のインターチェンジの半径三百メートルは、希望があるならば農振地域を外そう、こういうことにいたしました。  それからもう一つは、国道、県道の周辺も、特定の地域においては、これはまだ結論が出ていないのですが、どの程度どういう要件を整えたら外していいのかということを、今もっと具体的に検討を進めております。  ゴルフ場の問題は、半分くらい農地がかかってもいいではないかということに緩和をしてきたわけですから、そういう立場から、これはひとり運輸省だけではなく、国の万般の施策にかかわることでありますから、そういうこれからのトラックターミナルあるいは物流基地の確保ということ等については、十分各関係の役所と相談をして具体的に進めていきたい、こう考えております。
  177. 西中清

    ○西中委員 これは長い問題でございまして、私も何回かここで質疑をさせていただいておりまして、市街地はこのところの猛烈な土地価格の高騰で、新しい参入を認めるなんといったって、市街地に土地を求めて新たに事業をするとか、またこれだけ輸送量がふえておるのに倉庫、車庫が狭いというようなことで、広げようにもなかなか広げられない。ですから、新規参入を認めるといったって、実態的にこの土地価格ではこれが大きなネックになる。ですから、かけ声だけで実際はそうはならないということも起こりかねないわけでございます。  もちろん市街地において、そういう狭いところで作業をするということは作業上も危険があるし、公害的なものも少なくないわけでございまして、そういう点で先ほど大臣おっしゃられたようなお考えを大いに広げていただいて、ぜひこの点を解決をしていただきたい。とりわけ大手路線業者はそれなりの資金的能力を持っておりますから、それはどこだって土地の手当てはできるかもわかりませんが、ほとんどが中小零細でございますから、こういう人たちが市街地でどうこうするということは本当に不可能に近い状況でございます。そのこともあわせてお考えをいただきたい。  ついでにと言っては何ですけれども、営業所と車庫の間の距離もこれは規制をされておるわけでありますけれども、今度はどういうように緩和をされるのか、伺っておきたいと思います。
  178. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 御指摘がございましたように、大都市地域におきましては、とりわけ土地の入手が困難になっております。したがいまして、営業所と車庫の間の距離というものも必ずしも現行基準をそのまま適用することが現実的であるかということは見直さなければならないと思っておりまして、これは拡大の方向で現在検討をいたしております。
  179. 西中清

    ○西中委員 次に、輸送の安全という問題でお伺いをいたしたいと思います。  この法案のもう一つの目的は、業界でこれまで問題となってきました過積載や過労運転防止という点でございますけれども、今回のこの法律でその点がどれほど効果を出すのか、ちょっと私は疑問を持っておるところでございます。  第十七条で、事業者が輸送の安全に関して守らなければならない義務規定がございますけれども、これに違反しますと、どういう処分を受けるのか、まず伺っておきます。
  180. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 御指摘の第十七条の安全確保規定を受けまして、本法案におきまして第二十三条に「輸送の安全確保の命令」という制度が設けられてございます。これは従来になかった極めて強力な措置でございます。  すなわち、トラック事業者が、過積載、過労運転を行う等により、本法により課せられた義務を履行しない場合におきまして、この義務違反によって輸送の安全が確保されないと認められるときには、この第二十三条の規定によりまして、当該事業者に対して必要な員数の運転者確保事業用自動車の運行計画の改善、あるいは運行管理者に対する必要な権限の付与その他の是正に必要な措置を講ずべきことを命ずることができます。この命令に従わない場合には、第三十三条の規定によりまして、運輸大臣は、六カ月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の使用の停止もしくは事業の全部または一部の停止を命じ、または許可そのものを取り消すことができることになっておりまして、極めて強力な制裁規定がついております。
  181. 西中清

    ○西中委員 この問題でよく取り上げられるのは、実際問題として、もちろん会社の経営上できるだけ物をたくさん運ぼう、また時間もいろいろ制約があるからどんどん働かなければならないとか、いろいろ運転者とか事業者だけでなくて、やはり荷主の方の問題も多いわけでございますね。今回、その点についてもいささかの配慮がなされておりますけれども、しかし実際現場では、違反だと言われて、だれにこれを積めと言われたかと聞かれたら、自分で積みましたと言う以外に道がないというのが実態でございまして、なかなか荷主のこととか会社のことは運転手さんが言えるものではない、実はこういう難点が大きく立ちはだ かっておるわけでございまして、その辺どうお考えになっておるのか。それから、こういう罰則があるからそれで担保されるのだというお気持ちもあるかもしれませんけれども、そういう背景をどう防いでいくのかというところを一つ視点を定めていかなければならぬと思うのです。そういう点どう考えているか、伺いたいと思います。
  182. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 おっしゃるように、トラック事業者荷主から仕事をもらうに当たりましては、無理な注文も聞かなければならぬというような事態があることは事実でございます。これは、基本的にはトラック事業者地位向上いたしまして、対等の交渉力を持たせるということが基本でございまして、そのためにはもろもろの中小企業の構造改善対策等を進めていかなければならないわけでございますが、本法におきましては、新たな制度といたしまして、第六十四条に「荷主への勧告」という規定を設けております。  これは全く従来なかった新しい制度でございます。トラック事業者が、安全規定に違反したことによりましてこの法律に基づく処分を受ける場合に、その処分に係る違反行為荷主の指示に基づいて行われたことが明らかである場合には、当該トラック事業者に対する命令とか処分だけでは再発の防止ができない、困難であると認められるときに、当該荷主に対しても、運輸大臣違反行為の再発の防止を図るために適当な措置をとるべきことを勧告することができることとなっております。これは全く従来なかった制度でございまして、御指摘の点に対する一つの解決になっておるかと思います。
  183. 西中清

    ○西中委員 その点は先ほど私もそれを言っておるわけですが、実効という点でなかなか難しい問題ではないか、こう思っております。したがいまして、細部を実際上どういうように法の運用をするのか、これはよっぽどよく研究をしていただいて効果のある方法をとっていただく、これは極めて重要でございますので、この点は強く要望しておきたいと思います。  そこで、昨年の十二月の政府規制緩和推進要綱によりますと「車両諸元に関する制限緩和について、その具体的な方向について早急に検討結果を出し、今後の道路整備の進ちょく状況等に応じて規制緩和を図る。」とされておるわけであります。例えば最大積載量の緩和等いろいろ問題になっておるわけでありますが、当然これは道路交通上の安全性ということを十分配慮しなければなりませんけれども政府のこの要綱を具体的にはどのような検討をなさったのか。めどはいつごろお出しになろうとしておるのか、その辺のところをお伺いしておきたい。  これは道路状況、とりわけ橋梁等の問題がございますので、この点建設省意見も伺っておきたいと思います。
  184. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 とりあえずお答えさせていただきます。  ただいま御指摘のありましたように、行革審答申車両諸元の規制の見直しということが盛られておりますので、関係省庁、すなわち建設省警察庁運輸省の間で検討を続けてきておるところでございます。まだ結論を得るに至っておりませんが、そのようなことが答申に盛られておりますので、何らかの結論を見出したく引き続き努力してまいりたいと思っております。
  185. 山本正堯

    山本説明員 お答えをさせていただきます。  行革審におきまして車両諸元に関する制限緩和につきまして御指摘を受けておりまして、また閣議におきまして要綱が決定されておることは御案内のとおりでございます。私どもといたしまして、現在御指摘に基づきまして、車両諸元に関する制限緩和について検討を進めているところでございます。  御案内のとおり、車両制限令におきましては、重量につきましては二十トンという制限値を設けておりますが、これは道路整備状況という関連で定められているものでございまして、すなわち道路をつくる場合、道路構造令に基づいてつくるわけでございますけれども、この道路構造令の基礎となります、いわゆる設計車両というのは、二十トンの車が通るということを前提にしてつくっておるわけでございまして、これと同じ値で車両制限令制限値が定められておる、こういう仕組みになっておるわけでございます。  例えば、今先生御指摘のように、橋の問題がございますが、橋が二十トンに耐え得るような橋として設計され、つくられておるということでございますが、この道路構造を改善して二十トンとか二十五トンとか三十トンとか、もっと大きな構造で設計されましたならばもっと大きな車両が通り得るということになるわけでございますけれども、現在の段階では車両通行の一般的な制限値緩和することは大変難しいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、道路整備に今後とも十分力を注いでまいりますが、その整備状況に応じまして車両制限検討をする必要があるというふうに考えておる次第でございます。  車両重量制限につきまして、早期に緩和することは大変難しい問題でございますが、先ほどもありましたように、運輸省建設省警察庁関係省庁連絡をとりまして、現在検討を進めているところでございます。
  186. 西中清

    ○西中委員 これは一朝一夕の問題ではございませんから、私も今すぐどうということは無理な話だろうと思っております。しかし業界経営運賃、労働、さまざまな面にこれは影響がある問題でございまして、これはそれぞれが作用をし合っていく問題でございますから、しっかりとお取り組みを要求しておきたいと思います。  次は、過労運転でございますけれども、現在貨物輸送量が非常に増大しておりまして、夜間の高速道路、これはトラックがつながって走っておる、こういう感じがするくらい大変な状況でございます。したがって、これは過労運転の上で一番問題になっておるわけですが、休憩施設高速道路上に少ない、こういう状況でございます。一刻も早くこれを整備していかなければならない。  当委員会、私もこの問題かつて取り上げておりまして、それなりのお取り組みをいただいておるようでありますけれども、この点一層整備に力を尽くしていただかなければならない。法律で幾ら過労運転はいけないとか何時間以内だとかなんとか、いろいろ規制をつくっても、では実際どこへ車をとめるんだということになると、もう道路上へはみ出してくるような駐車の状況が行われておるわけで、入るに入れないというところが非常に多いわけでございますから、これは急いで整備をしていただかなければならぬ重大な問題だと私は思っております。一般道路上ということになると、一々料金所を出なければならない。そのたびに通行料金が上がる、高くなるという矛盾もあるわけでございまして、高速道路上をそのままつながっておる休憩所をふやすということが大事なんだ。その辺のところをどういうように推進をしておるのか。運輸省建設省、両省からお伺いをしておきたいと思います。
  187. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 とりあえずお答えさせていただきます。  運転者休憩施設ということで、運輸事業振興交付金を使用いたしまして、全国トラックステーションというものを展開中でございまして、現在二十八カ所供用されております。また今後これを増強する計画がございます。  ただ、これはおおむね一般道路沿いでございまして、今お話しの高速道路沿いのものにつきましては、トラック業者のためのものを専用の施設としてつくりたいという申し出もしておりますが、道路公団としては、トラック向けだけというわけにはいかないけれども、それに大いに利用されるようなものをつくる計画があるということを承知しております。近々一カ所の着工に向けておられるというふうに理解をしております。
  188. 橋本鋼太郎

    ○橋本説明員 近年高速自動車国道において利用交通量の増大、長距離トラックの増加等に伴って、休憩施設の利用度が高まり、都市近郊では相当な混雑を呈している状況ではございます。  こうした状況対応するため、東名・名神高速道路等の混雑の著しい休憩施設においては、逐次駐車スペースの拡充整備を進めており、その結果、例えば東名・名神高速道路の大型車の駐車升総数は、供用当時の千二百七十四台分から昭和六十三年度末では二千七百五十二台、二・一六倍というふうに拡充したところであります。さらに、現在東名高速道路については海老名サービスエリア等十三カ所、名神高速道路等については多賀サービスエリア等五カ所、その他の道路についても四カ所、計二十二カ所というふうに改良事業を行っております。  また御指摘のように、トラック専用の休憩施設の設置につきましては、過労運転防止及び交通安全確保の重要性にかんがみまして従来から運輸省建設省日本道路公団及び全日本トラック協会の四者で検討を進めてきたところであり、その検討結果を踏まえて、今年度からは日本道路公団において設置の具体化に向けての調査を開始したところでございます。今後この調査をできるだけ早い時期に取りまとめて、さらに関係機関協議をして進めてまいりたいと考えております。
  189. 西中清

    ○西中委員 大臣、今お聞きになったとおりでございまして、これもひとつしっかりお取り組みをいただきたい。  次に、運行管理者についてお伺いをしておきたいと思います。  十八条に、一般貨物運送事業者は、運行管理者を置くことを義務づけておりますけれども現行道路運送法上の運行管理者とどこが違うのか、御説明いただきたいと思います。
  190. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 本法案におきましては、輸送の安全の確保を極めて重要な目的としておりますことは繰り返し申し上げるとおりでございますが、その実効性を高めていきます手段の一つとして運行管理者の体制の強化を図ることとしております。運行管理者の資格要件の強化及び地位向上を図ることとしているわけでございますが、具体的には、従来、事業用自動車の運行の管理または運転に関しまして一定の実務の経験を有する等、一定の経歴があれば運行管理者になることができたのに対しまして、新法のもとにおきましては、一定の実務の経験を有する者が、運行管理者試験に合格した場合などに交付される運行管理者資格証を受けている者でなければ運行管理者になることができないことにしております。  また、運行管理者の企業内におきます地位向上を図るために、運行管理者の業務の誠実な執行の義務、経営者が運行管理者に対して業務を行うために必要な権限を与えること、また経営者の運行管理者による助言の尊重義務及び従業員の運行管理者による指導に対する遵守義務などを定めているところでございまして、現行運行管理者制度に比べて格段に向上を見ているところでございます。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  191. 西中清

    ○西中委員 現行道路運送法二十五条の二では「運行管理者がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、一般自動車運送事業者に対し、運行管理者の解任を命ずることができる。」とありますが、解任された例はございますか。いかがでしょうか。
  192. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 過去十年間に道路運送法二十五条の二第三項の規定によりまして運輸大臣運行管理者の解任を命じた事例は、昭和五十八年の沖縄のタクシー事業者の事例、それから昭和六十一年の区域トラック事業者の事例の二件だけでございます。しかし、運輸大臣が解任をする前に自発的に事業者自身が解任しているというケースが当然多数あるわけでございますが、その数自体は把握できておりません。
  193. 西中清

    ○西中委員 こういう制度をせっかくまた改めておつくりになるわけですから、実効性のあるものをきちっとやっていくことは大事なことだと思います。  そこで、運行管理者には安全運行のさまざまな義務を負わせているわけでありますけれども、実質的な責任者としては事業者、特に中小企業が多いわけでございますから、事業者という立場の人に本当は運行管理についてもそれなりの責任があるのではないか、こういうように思うわけでございますけれども、その辺はどういうふうに判断をしておられるか、伺っておきたいと思います。
  194. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 第二十二条は、第一項におきまして「運行管理者は、誠実にその業務を行わなければならない。」としておりますが、第二項におきましては、事業者そのものが運行管理者に対して「業務を行うため必要な権限を与えなければならない。」あるいは第三項で同じく、「事業者は、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならず、」という規定を設けておりまして、事業者自身も運行管理者が適切な運行管理を行うような仕組みをつくる、あるいはその助言を尊重しなければならないという義務を課しておるものでございます。
  195. 西中清

    ○西中委員 運行管理者の試験というものがあるようですが、試験を実施する機関は具体的にはどの機関をお考えなのか、新たな機関をお考えなのか、その点を確認をしておきたいと思います。
  196. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運行管理者の試験の指定機関としてどこを指定するかにつきましては法の施行までに決定したいと考えておりますが、公益事業の目的の内容事業の実績、組織、財産的な基礎等を考えますと、社団法人全日本トラック協会が有力な候補の一つではないかと考えております。
  197. 西中清

    ○西中委員 そうしますと一カ所ということになると思うのですが、それで間違いないのか。全国的な展開の中でそれがふさわしいのかどうか、その点も伺っておきたい。それから、事故対策センターが運行管理者の研修を行っておりますけれども、ここではできなかったのか。その辺のことについてお伺いをいたします。
  198. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 試験をいたします法人は公益法人ということになっておりますので、事故対策センターは特殊法人ということで法文上難しいかと思います。ただ、自動車事故対策センターにつきましては運行管理者の研修を従来実施しておりますので、今後とも研修についてこのセンターの活用を考えていきたいと思っております。
  199. 西中清

    ○西中委員 次に、適正化事業実施機関について伺いますけれども、これは具体的にはどこをお考えになっているのか。トラック協会は現在この業務を実施しておるわけで、指導員も実際におるわけでございますが、新たにこういうことをやらなきゃならないのかどうか、ちょっと疑問に思わないでもないわけです。そういう点でどうお考えになっておるか、これらの問題についてお伺いをいたしたいと思います。
  200. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 適正化事業実施機関の指定につきましてもこれから検討しなければならないと思っておりますが、トラック運送に関する秩序確立に資する民間団体による自主的な活動の促進という法の目的に照らしまして、民間団体の具体的な申請を待って検討すべきものと考えておりますが、現在既に、先生御指摘のように、輸送秩序確立のための事業を各都道府県のトラック協会及びその全国組織でございます社団法人全日本トラック協会実施しておるところでございますので、これらの協会が申請した場合にはこれを指定しても特に問題はないと考えております。
  201. 西中清

    ○西中委員 そうするとこれは、各県の協会が申請した場合はそういう形でやる、申請しない場合はどうするのですか。
  202. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 実績等を考えますと、他に適当な機関が現在存在しておるとは考えられません。また、各トラック協会は現在そのような仕事をやっておりますので、指定法人の申請をしないという事態は恐らくないのではないかと考えております。
  203. 西中清

    ○西中委員 そうすると、実態的には現にあって指導員もおってという中で、新たにこれをわざわざ実施機関として行われるというのはどういうことなのか。一つ業界二つの法人ができるという、いわば行革から見るとちょっと首をかしげたくなるような部分がございますけれども、その点はどういうように判断をされているのか、お伺い いたします。
  204. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 実施機関の指定をします場合には、中央におきましては全日本トラック協会、地方におきましては各都道府県のトラック協会そのものを指定することを考えておりますので、これらの協会と別の団体ができるということにはなりません。
  205. 西中清

    ○西中委員 では、実態的に今行われておってわざわざこういうふうに指定するというのはどういうことなんですか。今そちらの方で御答弁いただいたように、ここはあるんだからもういいんだ、みんな申請もするんだ、こういうおっしゃり方になっておるわけですが、それなら、わざわざこれをやらなくて、現行の作業の中できちっとしたものをつくっていくということでも別に構わないという感じはしないわけではありませんが、その点はどうでしょうか。
  206. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 今回の法案におきましては特に第三章を起こしまして「民間団体等による貨物自動車運送の適正化に関する事業の推進」ということで、適正化事業実施機関の指定を行うことになっております。このような法律的な基盤を与えますので、現在のいわば任意的な活動に比べればはるかにその地位が明確になり、強力な指導ができるということを期待しております。
  207. 西中清

    ○西中委員 今の御説明、もう一つ納得できない部分もあるのですけれども、法で担保してそれだけのしっかりしたことをやってもらう、こういうことだろうと思いますけれども、実態的には余り変わったものができるような気もしないわけでありまして、その辺のところはひとつ、つくるならつくる上でまた強力な手を打っていただかなければならぬ、このように思います。  それから、これはトラック運送事業だけではございませんけれども、特に労働力の不足が問題になってきておるわけでございます。今後ますます日本経済が巨大化していって、こういう事態が深刻化するのではないかというように推測をいたしておりますけれども、こういう労働力不足が進行すると一番の被害者はだれかというと零細な企業、こういうことでございます。人手不足で倒産というようなことにもなりかねないわけでございます。したがいまして、やはりこれは早目早目に手を打っていかなければいけない非常に難しい問題である、私はそう認識をいたしております。  したがって、このトラック業界、現在でもそういう不足の声を聞くわけでありますけれども、この輸送量から見ましてどの程度の労働力が不足をしておるのか、その辺の実態をおつかみになっておるのかおらないのかお伺いをしたい。同時にまた、労働省はそういう調査をしておられるならばそれを伺っておきたいと思います。
  208. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 最近の労働省の調査によりますと、これはトラックだけではなくて旅客自動車運送事業も含めてでございますが、運転者の不足数は九万九千人に及ぶということを聞いております。運輸省といたしましても、事態は非常に深刻であるというふうに認識しておりまして、特に、最近の若年層の労働力が売り手市場になっているという中で、トラック業界が厳しい現場作業を抱えて労働力の確保をすることが極めて困難になっておるということを認識しております。したがいまして、今後労働力不足がネックになりまして円滑な物流サービス確保できないという事態にならないように、その対策を講じていかなければならないと考えております。  そのために運輸政策審議会で、九〇年代の運輸、交通政策の重要課題、基本的な課題を近く審議していただきますが、その中で物流業全体におきます労働力確保問題を取り上げていただくということを考えております。また、その答申をまつまでもなく、当面打つべき緊急対策につきまして近々まとめて、これを実施していきたいというふうに考えております。
  209. 伊藤庄平

    ○伊藤説明員 御指摘の不足の状況でございますが、ただいま運輸省の方から答弁のあったとおりでございまして、約十万人の不足というような統計が出ております。また、私どもの第一線の各安定所の窓口で見てまいりましても、職種別の求人倍率等を見ますと、貨物の運転手につきましてはこのところ求人倍率がかなり上がってきている、かなり逼迫した状況になってきている、そういうふうに把握しております。  労働省といたしましては、この人手不足の問題、内需拡大に伴いまして、全産業、全職種で人手不足感が広まりつつあるわけでございますが、とりわけトラックの運転手等につきましては、従来より改善の必要性が指摘されております長時間労働、そういった問題に代表される労働条件等の厳しさ、そういうところがどうしても若い人等から雇用機会としての魅力をそいでいくというところがございますので、業界の方でまずそういった問題の改善、私どももそれに対して取り組むところへはできるだけの指導あるいは援助といったものをしてまいりたい。そういう動きと相まちまして、私ども、労働力の需給調整機能を非常に高めまして、今窓口の方も全部オンラインで結びまして、相当な求人あるいは求職の情報量を用意してございますので、そういったものを駆使いたしまして、何とかトラック運転手についても充足率を高めるような努力をしてまいりたい、かように考えております。
  210. 西中清

    ○西中委員 大臣、今お聞きのように、この問題は近い将来極めて深刻になる可能性を持っておりますので、これからの施策を十分に願いたい。特に働く人たちの労働環境、労働条件、賃金、そういうものと密接なつながりを持ち、かつ過重労働、過積載にも関係し、そして運賃にも関係のある話でございます。総合的な問題で、どこか一つ直したって、事は簡単に解決するという問題ではないと思います。そういう点で、魅力ある仕事ということにならないとこれは大変な問題だというようにも思うわけでございまして、大臣としても労働省その他とよく協力をされまして力を入れていただきたい、こう思うのでございますが、いかがでしょうか。
  211. 江藤隆美

    江藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、トラックあるいはタクシー等に大変な人手不足を来すようになった、これは時代の趨勢ではありましょうが、もう一つ大事なことは年齢層が非常に上がってきた、若い人たちが集まらなくなってきたということは、お説のように労働条件がよくない、あるいはまた職場環境がよろしくないというようなことがあるのだろうと思っております。  私は、運輸省というのはこれから大きく転換をする時代で、許可、認可というのでは事足りずに、政策誘導していく官庁になる必要がある。許可やら認可で縛りつけて統制していくという考えではなくて、自主的な努力によって業界発展する方策を誘導していく大きな役割がある。そういう意味では、これから経営内容の安定、それから労働条件の整備その他万般整えて、職場がよりよい職場であるようにしていく大きな責任も、私どもにはこの法律改正をお願いする以上は負わされる、こういうふうに考えておるところでございます。
  212. 西中清

    ○西中委員 時間も大分迫ってまいりましたけれども貨物運送取扱事業法案について若干触れておきたいと思います。  これは、これまで個々の法律規定されておりました貨物運送の取扱事業を一本の法律に整理しようというものだと聞いておりますが、その目的、背景等について確認をしておきたいと思います。
  213. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 近年におきまして、経済構造の転換、国民生活の向上等に伴いまして、物流に対するニーズも高度化、多様化の傾向を強めてきております。貨物運送取扱事業は、利用者のニーズをいろいろな輸送機関についてのサービスに適確に結びつける機能を果たすものとして、一層重要な役割を担うことが求められている状況となっております。  本法案は、このような状況を背景にいたしまして、貨物運送取扱事業運営を適正かつ合理的なものとし、事業の健全な発達を図り、貨物の運送サービスの円滑な提供確保するために、現在運送機関ごとの個別の法律において規定されております運送取扱事業規制制度につきまして、その 内容を見直し、これを利用運送事業及び運送取次事業二つに区分いたしまして、事業の機能に応じた制度整備しようとしているものでございます。
  214. 西中清

    ○西中委員 貨物運送取扱事業につきましては、昨年十月二十五日の運政審物流部会の報告にございますが、この中で、複合一貫輸送についての任意の認定制度の導入を行い、複合一貫輸送を引き受ける事業者の責任の明確化、利用者利便の確保等について制度化を検討する等書かれておりますけれども、この法案ではこの点どういう扱いになっておるか、御説明をいただきたいと思います。
  215. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 昨年の運政審の物流部会意見におきまして複合一貫輸送についての制度的位置づけということの指摘がありましたことは先生お話しのとおりでございますが、今回の法律におきまして、複合一貫輸送については特別の規定を設けておるものではございません。複合一貫輸送についての責任の明確化、利用者利便の確保という課題につきましては、さらに今後検討していかなければならないと思っております。  今回の法律におきましては、鉄道、海運、航空、自動車、それぞれの輸送機関につきまして利用運送あるいは取次事業を行う場合を規定しておるわけでございまして、法律のどこにも複合一貫輸送に関する規定は置いておりません。
  216. 西中清

    ○西中委員 いわばその課題が残されているのではないかなというように私も思っておりますので、今後取り組みをしっかりとお願いいたしたい。  それで、最後でございますけれども、この貨物運送取扱事業というものは今後ますます大きく発展していくものではないかというように予測をいたしておりますが、その中で実運送事業者との間でさまざまな摩擦が起こる可能性も少なくないのではないか、また不公正な取引関係が生じるおそれも懸念されるわけでございまして、運輸省としてはこの辺のところをどう認識しておられるのか、どう対処されるのか、御説明をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  217. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運送取扱事業は、荷主と実運送機関の間で両者のニーズをつないでいくという役割を果たすものでございます。したがいまして、この運送取扱事業と実運送事業というのは相互に相補い、依存し合って、両々相まって運輸事業発展に尽くすという関係にあろうかと思います。  ただ、確かに御指摘のように、例えば運送取扱事業者が実運送事業者に対して支払う賃金の水準その他の問題が生ずることはあり得ると思っております。そのようなことにつきましては、直接的には実運送事業法の厳正な運用によりまして当該取引関係、すなわち取扱事業者と実運送事業者との間の取引関係の公正さを担保することになろうかと思いますが、一方で取扱事業者が自分の荷主に対して不当に低い運賃額を提示する場合等につきましては、本法案の中に盛り込まれております運送取扱事業者に対する届け出運賃変更命令規定の発動とか、不当に低い運賃額の届け出をしまして、その結果として実運送事業の適正運営が著しく阻害されるような場合につきましては、運送取扱事業者に対する事業改善命令の規定の発動等によりまして公正な取引関係確保に努めたいと思っております。
  218. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  219. 武部勤

    ○武部委員長代理 小渕正義君。
  220. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私はまず最初に、このたびの法改正に当たっての運輸省としての基本的姿勢といいますか認識といいますか、そういうものについてちょっとお伺いしたいと思います。  御承知のように現在のトラック産業は極めていろいろな問題をはらんで、危機に瀕していると言っても過言でないような感じでありますが、そういう意味での事業規制政策の失敗でないかと私は思うわけであります。  御承知のように道路運送法が昭和二十六年に制定されました。当時、自動車といえばまさに貴重品的な存在です。そういった状況の中でこの道路運送法が制定され、免許制度の中で今日まで維持されてきておるわけでありましたが、その後の我が国の経済の発展、しかも高速道路網の整備等を考えますならば、そういった状況の中で適時適正に改正されなければならない問題でなかったのか。それが三十八年間もそのまま放置され、そして今回、何といいますか、規制緩和という行革審一つのにしきの御旗の中でやっとこの問題に手をつけた、こう言っても過言ではないと思うわけでございます。  そういう意味で、問題は、そういう規制緩和という一つの流れの中でではなしに、もっと運輸省自体がこの陸運運送事業に対しては積極的に現実に合うような対応が今までなぜされなかったのか、そういう感じを深くしているわけでありまして、そういう意味で、運輸省は、今日までのそういう一つの流れといいますか、そういうものをどのように受けとめられて、また反省し、問題点を理解しながら今回の法改正に当たられたのか、その点についてお伺いをいたします。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 道路運送法は制定以来何度か改正を見ておりますが、御指摘のとおり今回のような抜本的な見直しというのは今までなかったところでございます。これまで怠慢であったという御指摘は受けとめてまいりたいと思いますが、いずれにしましても、最近の新しい物流ニーズの高まりに弾力的に対応する制度にしなければいけないという一方の要請と、他方、安全の確保を一層徹底しなければならぬといういわゆる社会的規制強化というもう一方の要請にこたえようというのが今回の貨物自動車運送事業法案の立法のねらいでございます。
  222. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まずその点をしっかりとしておかないと、いかに法律を改正しましても、これが今後の運用の中でどう生かされるかということにも大きく関連してきますのでお尋ねしたわけであります。  先ほど来よりの質疑の中で、今回の法改正によって公正な競争を維持するんだ、こういうことが大きな一つの柱として言われておるわけであります。規制緩和して新規参入がどんどんできるような状態というのは、ある意味においては確かに一つの前進でありましょうが、今の我が国のこういう運送事業の実態からいくならば逆に競争を激化させるのではないか、そういう懸念なしとしないわけであります。  しかも、今のトラック産業の中で一番問題なのは、ダンピング行為による低運賃、そういった非常に低い運賃の中で、しかも働いている人たちは長時間労働、これはもうワーストワンの記録でございまして、ほかの産業からいきますと年間平均五百七十六時間も超過労働している、しかも交通事故はだんだん多発している、そして賃金は極めて低く、全産業平均で見ましても大体十万円程度は低い、こういうのが今の実態であります。そういう実態の中で、果たして今回のこの改正案によってこういったものがどれだけ改善されるという方向に行くのか、そういう意味で私は極めて疑問なしとしないわけであります。  先ほど来の質疑の中でお話を聞いておりますと、そういった見地から新しく第二十三条の義務行為違反だとか大臣の命令による第三十三条のそういった行為とかいろいろそういうことが今回は盛り込まれたので、そういった意味での適正化がより進むだろうということを言われておられたわけでありますが、果たして実効性があるのかどうか、非常に疑問なしとしません。現在まで許可制で現状のような状態なのですね。今度は届け出制運営されようとするわけでありますから、そういう角度から見た場合、果たしてこれが実効性が保たれるのかどうか、本当にこれはそういう意味で疑問なしとしないわけでありますが、その辺に対する一つの確信といいますか、そういうことはないということでの御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  223. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 認可制から届け出制ということは運賃に関する措置だというふうに受けとめてお りますが、確かに運賃届け出制になりますが、それにつきましては、一定の場合には変更命令をかけることができるという規定がございます。また、届け出運賃遵守につきましては、適正化事業実施機関等を通じましてその徹底を図るという措置をしております。また、安全面措置につきましては、先ほど先生からお話ございましたように、従来の法律に比べまして格段に強化された内容制度を導入しておるわけでございまして、これらと相まちまして事業の適正な運用を確保していきたいというふうに考えております。
  224. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 運賃制度の実効性について今お触れになりましたが、現在の認可運賃制度を事前の届け出制にする。今日までの認可運賃制度についても、道路運送法第八条で定められた機能が今まで余り発揮されていなかったのではないか、かなりのダンピング行為等が横行しておったのが実態ではないかと思うわけであります。認可運賃制度の中でも守られていなかったものが、今回の届け出制によって果たして政府がそれに対する実効性をどこまで上げ切れるのか、極めて疑問なしとしないわけでありますが、その点をもう一度、従来とこれだけ違った角度から我々は取り組むのだというようなことがありましたならば、ひとつそれをお示しいただきたいと思います。  それから、このトラック産業の現状について申し上げますならば、売上高は年間大体七兆八千億円程度だと言われておるわけでありますが、現在認可運賃制度は、実勢からいきますならばその六〇%程度で実際には運営がされて、結果的には六〇%程度であって、約五兆二千億程度。本当の運賃認可制度から見るならばそれだけマイナスされたままで七兆八千億という数字が出ておるのではないか、こういう見方も業界の中でされておるわけであります。それを年間で見ますならば、働いている人たちが大体九十六万人程度だということで、約百万人に直しますならば、一人当たり年間約五百二十万円ぐらいの水揚げ、実勢価格としてはそういう状態になっておる。現在運用されておる実態というのは、認可運賃制度の中でさえ実勢は六〇%程度ではないかというふうな一つの貴重なデータもあるわけでありますが、ここらあたりについてはどのように見られておるのか、この点も含めてひとつ御説明いただきたいと思います。
  225. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 トラック事業運賃につきましては、事業監査等を通じて承知しておりますところでは、確かに認可運賃との乖離が見られますことは遺憾ながら事実でございます。それが六割であるかどうかは私ども確認をしておりませんが、確かに完全な収受が行われていないということは遺憾ながら事実でございます。  認可運賃遵守は、まず何よりもトラック事業者自身の自覚が重要でございまして、事業者の監査を通じてその指導を行っておるところであります。またさらに、全日本トラック協会を通じまして、認可運賃収受の徹底を図るようにトラック業界荷主との懇談会を計画的に開催して、荷主にも認可運賃の収受を要請するように指導しているところでございます。  また、今回の法律でどこがよくなるのかという御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、不適切な運賃につきまして変更命令を出して是正するという仕組みがありますほか、適正化事業実施機関の創設によりまして運賃に関する違法行為に対する指導を強化する、また違法行為を強要するような悪質な荷主に対しまして運輸大臣の勧告を行う制度も設けておるところでございます。このような環境整備を図りまして、この運用を通じまして、届け出運賃の適正収受に向けて最大限の努力を行ってまいりたいと思っております。
  226. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 運賃制度の中で、今回標準運賃という一つの言葉が出ておりますが、今回の新しい運賃制度が本当に実効性が得られるならば、こういった標準運賃制というのは不必要ではないかという議論も出てくるわけです。そういうことで、この標準運賃制というのはどういう考え方の中でこのようなものが出てきておるのか。逆説的に言いますならば、実効性を得切らないならばもう標準運賃制だけにしてしまったらどうなのかという議論もまた出てくるわけでありまして、そういう意味で、いろいろそういった兼ね合いの中での標準運賃制というのは、いかなる考え方の中でどのようにやろうとなさっておるのか、お尋ねいたします。
  227. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 確かに運賃届け出制のもとにおきまして、平常な経済状況のもとにおきましては標準運賃というものを設定する必要性はないと思っております。ただ、供給輸送力が極めて不足する、あるいは人件費とか燃料費が物価の高騰等から上昇しまして事業者運賃が全体的に著しく高騰するおそれがある場合、あるいは運送原価に適正な利潤を加えた水準以上の運賃料金を使用した事業活動をそのような状況では招きやすいということからこのような動きを、このようなというのは、異常な経済状況の中でのそのような超過利潤を取ろうという事業者の動きをチェックする必要があります。それと逆に、また供給輸送力が著しく過剰になりまして事業者運賃が全体的に著しく下落するおそれがある場合につきましては、運送原価を割る運賃料金を使用した事業活動を招きやすいということがございますので、その下支えを図る必要がございます。  これらにつきましては、個々の事業者に対して運賃変更命令という強権的な措置をとることによって是正させることも可能ではございますが、むしろ運輸大臣があらかじめ標準的な水準として標準運賃を示すことによりまして、運賃変更命令を頻繁かつ広範囲に発動することを未然に避ける、そして公衆の利便を確保するという場合に標準運賃を設定するということでこの制度を導入したものでございます。
  228. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次にずっと移っていきます。  需給調整規定関係についてちょっとお尋ねいたしますが、先ほどいろいろお話が出ておりましたが、参入に当たっての需給調整規定は廃止し、免許制許可制にする。需給調整規定は、大体昭和四十五年ごろの自動車局長の通達で、一応実質的に廃止されているというのが今日までの状況ではないかと思います。そういう中で、法第七条に定められる需給調整規定について、これを本当に機能させるために運輸省としてはどのような努力をされるのか。この意図する方向と逆の方向の中で今日までやられてきたような批判もありますが、四十五年の時点において需給調整規定に問題があったならば、なぜそのときにそういった法改正の措置をとらなかったのか。これは結果論ですが、昭和四十五年からは、自動車局長の通達で実質的には需給調整はもう空文に終わっておるのにかかわらずその後法改正の措置をとらなかったが、これは今回の参入規制の反省の中でどのように生かされるのか、その点をお尋ねいたします。
  229. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 御指摘の昭和四十五年当時の通達でございますが、この当時は日本経済の高度成長の絶頂期でございました。各産業は大量生産による規模のメリットを生かす生産販売体制を導入しておりまして、むしろトラック輸送力が足りない、これを確保しなければならないというのが当時の課題でございました。したがいまして、免許申請とか増車申請が山のように出てくるという状況にありました当時としましては、免許制度の弾力的な運用でその場に対応するということが必要であったと考えております。  最近におきましては、国民の消費ニーズの多様化などを背景にいたしまして、多品種の少量生産が進んでおりまして、輸送需要も小口・多頻度輸送というふうに変わってまいりました。こういう高度化、多様化したニーズに、トラック事業者がそれぞれの創意工夫に満ちたサービス対応するということが強く求められてまいったわけであります。このような背景を踏まえまして、今回免許制から許可制に、したがって需給基準は見ないということにしたわけでございます。
  230. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 参入規制の問題で、緊急措置としての考え方、先ほど質疑の中でも出ておりましたが、要するに新しいスタートでありますから、 五年ごろ一応更新の見直しをする、そういうものがワンクッションとして必要でないかという意見に対しましては、膨大な業務になるのでとてもそれはできない、そういう意味での行政の煩雑さ等いろいろな理由でそれはできないけれども、監査といいますか、厳密な監査の中でそういうものは逐次チェックできるんだ、こういうふうな御答弁がされておったと思います。  答弁を聞いておりまして、一面そういった点に対する理解もするのでありますが、しからば監査というものは果たしてどれくらいの頻度でやられるのかなという疑問があります。そこらあたりとの兼ね合いでないとこの問題の判断はできないと思います。そういった点で五年ぐらいを一応ワンクッション置いて更新するような、そういったものがどうしても行政上煩雑であれば、監査の中でやるというわけでありますが、そういった監査が果たして実効性のある形で運営されていくのかどうか、その点疑問なしとしないのですが、そのあたりいかがですか。
  231. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 事業者に対する定期的な監査につきましては、ローテーションを組んで各事業者にまんべんなく行き渡るようにやっておるところでございますが、特に必要な場合には悪質な事業者に対して特別の監査を行う等重点的な監査も行うわけでございます。そういうことを通じまして事業の適正な運営確保できるようにやっておる次第でございます。監査の回数等は、地方の運輸局によりましてそれぞれ事業者数等も異なっておりますので、一定の頻度という基準は現在のところございません。
  232. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この問題はまた後で議論の機会があろうかと思います。確かに今の行政の実態からいって、悪い言葉になるかもしれませんが、単なる口約束だけで、実際はそういう実効性に欠けるのじゃないかという気がするわけでありますので、この点また別の機会に議論することにしたいと思います。  それから社会的規制について、今回は過積載とか過労運転防止の上においても新たに社会的規制をやるということで出されているのは、非常にこれは評価できるわけでありますけれども、罰則がついてない。労働基準法や道路交通法との関係における連動的な流れといいますか、そういうものが不明確であって、ただ単なる精神規定みたいな感じにすぐなるわけでありますが、この点についてもっと実効性のあるような社会的規制というものについてどのようにお考えになっておるのか、その点をお尋ねいたします。
  233. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 安全確保に関しましては、法案の第二十六条におきまして、必要と認めるときには運輸大臣事業改善命令をすることになっております。この命令に違反しました場合には行政処分がかかりますので、車両の使用停止等、事業者にとっては極めて効果の高い制裁措置が加えられることになります。
  234. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これでもまだ若干疑問なしとしないのでありますが、これはまた別の機会におくといたしまして、一応項目的に処理します。  適正化の事業実施機関についてでありますが、トラック事業の適正化のために適正化事業実施機関を設置して、事業者の自主的な活動によって輸送秩序確立を図るということになっております。基本的な構想についてはこれはもうまことに結構なことでありますが、フランスや西ドイツ等の類似したものを見ると、それらを参考にして産業秩序確立するということで、そこまで踏み込んだ中でこれらが設置されるのかどうか、その点と、問題は、運営に当たって少なくとも働く人の代表としての、また利用者の代表等も参加させながら運営するというようなお考えをお持ちなのかどうか、その点はいかがですか。
  235. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ヨーロッパで行われておりますような産業調整まで踏み込むかという御指摘でございますが、この制度につきましてはそこまでのことを考えておるわけではございません。  それから、労働組合の代表とか荷主の代表等の関係者から適正化事業の推進につきまして幅広く意見を聞きまして指定法人の業務運営に逐次反映させていくということは、適正化事業の成果を一層高めるものでありまして重要なことだと考えておりますが、その方法としましては現在行われております物流政策懇談会などを活用する方策を検討していきたいと思っております。
  236. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、時間が少ないので、貨物運送取扱事業についてお尋ねしますが、今回のこの法案の「目的」並びに提案理由の中で、利用者の利益の保護と利便の増進に寄与するということが中心にうたわれておるわけであります。従来の運輸関係事業法の目的の定義が、運輸事業の公共性と荷主への公正な競争輸送秩序確保、こういう柱が中心になっておったわけでありますが、今回の改正では、荷主の利益保護といいますか、これが目的というように大きく変わってしまっているわけであります。これは運輸行政として従来のそういった法理念の考え方から少し変わったのじゃないか、ゆがめるものじゃないかというような厳しい一つの批判的な見方もありますが、この点はどのように御説明されますか。
  237. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 本法の目的は第一条に規定してあるところでございますが、その中では「貨物運送取扱事業運営を適正かつ合理的なものとすることにより、」ということで、事業の適正化を図るということもうたわれておるところでございます。したがいまして、事業の健全な発達ということも目的の一つとして入っておるわけでございます。それとともに、「利用者の利益の保護」「利便の増進」ということも入っておるわけでございます。公共の福祉の文言が入っていないという点は、従来の伝統的な法律とは異なっておりますけれども事業運営を適正かつ合理的なものにすること、貨物の運送サービスの円滑な提供確保といった具体的な表現をとることによってこれをあらわしているものでございまして、法の理念としては従来と変わるものではございません。
  238. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今回の法改正の中で、私はここが一番ポイントだと思うのですが、新たに利用運送事業者というものを制度化するわけですね。これは要するに荷主と実運送事業者の間にこの利用運送事業者なる者が介在して、そしてここを中心にしてすべて今後物流は動いていくのではないかというような感じがするわけでありますが、あえてこういうものを制度化してきちっとすることの意味合いといいますか、そこらあたりがいま一歩理解できない面がございます。  確かに今、この物流関係は物すごい広範な、多様化した中でありますから、荷主対直接実運送事業者との間の中でこういった集配というか、両方扱うようなそういう業種が出てきてもやむを得ない面がありますが、あえてこれをきちっと制度化してしまおうというところに、私は、今回の法改正の一番大きなねらいかポイントがあるんじゃないか、そういう気がしてならないわけでありますが、その点についての考え方をお尋ねいたします。
  239. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 貨物運送取扱事業者は、荷主と実際の運送に当たります実運送事業者との間にありまして両者のニーズをつなぐという役割をしておるわけでございまして、それぞれ実輸送機関から見ましても荷主から見ましても利用価値がある、そのために実態として存在をしておるわけでございます。ただ、従来の輸送機関ごとのばらばらの事業法規におきまして、その取り扱いが統一されておりませんでしたし、必ずしも事業の実態を明確に反映した規定になっておりませんでしたので、今回、貨物運送取扱事業法におきまして横断的な規定を設けてその点を明確化しようとしておるものでございます。  利用運送事業と取次事業に分けておりますが、利用運送事業につきまして、現在も貨物運送取扱事業の一形態としてそれぞれの法規で規定が設けられておる場合がありますけれども、必ずしも取り次ぎとか代弁とかといった他の運送取扱事業との性格の違いが明確に区分されておりません。しかしながら、利用運送事業荷主に対して運送責任を負うという点で、実際の運送事業者と同じ機 能を有しておるわけでございまして、実運送事業者の側から見れば、小口貨物の集荷等の役割を果たすという重要な役割を持っております。そういうことで、このような事業を明確にとらえるために制度化するものでございます。
  240. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 問題はそこがポイントですがね。今のお話を聞いておりますと、小口の荷物、貨物荷主から直接実運送事業者との関係でつながるが、大体大きくいくと、何か荷主から利用運送事業者を経なくては実運送事業者の方に品物、貨物が動いていかない、必ずそこを通らなきゃ行かないというふうな考え方ではないと思うのです。やはり制度化された以上、なぜこれが制度化されるかということになると、そういう形の役割もあるんだという程度はわかるけれども、何かこれを読むときちっとそれが中に入ってしまって、そこですべてが、集配からあらゆる貨物がそこに集中されて、そこから流されていくようなことになりかねないような感じが非常にしますので、その点、念のためにもう一度お尋ねいたします。
  241. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 先ほど運送取扱事業、とりわけ利用運送事業の存在価値について申し上げましたが、御指摘のとおり、あらゆる輸送がこの利用運送事業を通じて行われなければいけないというような考え方に立つものでは毛頭ございません。それは荷主のサイドの選択によりまして、みずから実運送事業者に委託したいと思えばそうされるのは全く自由でございますし、自分はそういうことになれておらないのでその道のプロに任せたいという方、あるいは、ごく小口でなかなか船とか航空機にはそれ自体では載らないものが混載という形で送られるというようなケースには、間に入る利用運送事業の存在価値が出てくるわけでございまして、荷主の側でそういうものの利用価値を認めたときにだけこれは使われるというものでございます。
  242. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 その定義はわかりましたが、実際にこれを現実の動いている中で当てはめてみると、結果的に、この利用運送事業者の寡占化が進んでいくのではないか。もう荷物をほとんど集約し扱うのは、そういった利用運送事業者の資金量、いろいろな設備その他のもとで、ほとんどの荷物が、大半がそこで集中的に扱われるような方向になって、結果的には、利用運送事業者即実運送事業者をみんな下請、またそれを下請というような形の中に貨物が流れていく、品物が流れていく、実態としてはそういう形になっていくのではないか。私は、結果的に、この利用運送事業者の寡占化対策をきちっとしないことには、独占的にそういうものが大きな市場支配をしてしまうのではないか、非常にそういう危険性があるのではないかという気がするわけですが、そのあたりについてはいかがお考えですか。
  243. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 利用運送事業者が寡占化するのではないかという御心配でございますが、私どもとしては必ずしもそのように考えてはおりません。既に従来もこの事業は各運送機関ごとの運送取り扱い制度のもとで展開されてきたわけでございますが、とりわけ海上運送につきましての利用運送というのは、従来規制がございませんでしたので、いろいろな事業者が、これは必ずしも運送事業者でない人も含めましていろいろな事業者が進出しており、活発に事業を展開してきたところであります。  したがいまして、今後これが許可制にはなりますが、参入を厳しく規制するというというものではございませんので、そのようにうまみのある事業であればなお参入があり得るわけでありますし、特定の事業者だけが、あるいは少数の事業者だけが市場を独占するというような事態は招かないと考えております。
  244. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それは経済の実態を知らぬ、いや、知っておって言っているのだろうけれども、今からこの制度で進んでいくと貨物の大半は利用事業者がすべて握って、必ず独占というか、一社とかいうことでなしに数社の大きな力ですべてが、地域ごとかどこかで寡占化するような状況になりはしないか、そしてあとの実運送事業者その他みんな単なる下請、孫請みたいになってしまうのじゃないかという危険性が非常にあるのじゃないかという意味質問しているわけです。したがってこれは、それに対する何らかの歯どめ的なものが必要じゃないかと思いますが、これはもう議論になりますので一応これで質問をおいておきます。  あと一つ。もう時間がありませんが、先ほどから新盛委員からも質問が出ておりましたが、港湾運送事業は別だということですね。法律的にもこれは違うということで先ほどからいろいろ説明がされておりましたが、それはそれなりにわかります。  ただ、今港湾運送関係人たちが一番懸念されておるのは、新しい複合運送体制というか、特に国際化の中で進むとなれば、東京からアメリカのロサンゼルスに品物を運ぶ、逆でもいいですが、そういう一貫輸送体制の中で行われる場合に、港湾運送が間に入るわけですね。それで、間に入った場合に、港湾運送の業務の分だけは認可運賃制度。ところが全体としての一貫体制の中ではこれは許可制による運賃制度でしょう。だから、そういう中で果たして正常な認可運賃確保されるのだろうかという不安を非常に持っている。そういう不安が先ほど質問でもいろいろな形で出たと思います。それについては、建前でいけば単なる契約上の問題ですから当然それはそういうところだけきちっとされるはずだと言われても、実際の品物の流れの中ではどうしてもそこらあたりが一番大きな不安だ、そういう問題点があるのではないかということが懸念されておるわけです。そういう点が一つ。  それから、先ほども言うように、そういう多様化していく荷物、貨物の中でコンテナその他の輸送等を一貫してやる場合に、品物を詰めたり詰めなかったりするのが内陸でもされていくような状況になりはしないか、そうすると結果的に港湾運送業務の一部がそういう形の中で侵されていくのじゃないか。この二つ懸念というのが、竹下さんの消費税の九つの懸念と違うのですが、二つ懸念というのが港湾運送業関係者にとっては一番問題だと私は思うのです。この問題について建前としての説明を聞けば、別にそういうことはあり得ないと思いますが、実際に経済が動く中で品物が動く中では、今懸念されているこういう二つの問題が必ずや大きな問題として出てくるのではないか、私はそういう懸念をいたします。したがって、これはもう答弁の時間がありませんので、なお今後の課題としてお互いに検討して、何らかの歯どめが必要じゃないか、何らかの不安がないようにしなければいかぬという意味で、そういう問題、懸念があるぞということだけを申し上げて、これはまた次の機会にいたしたいと思います。以上です。
  245. 島村宜伸

    島村委員長 中路雅弘君。
  246. 中路雅弘

    ○中路委員 きょうは三点の問題についてお聞きしたいと思いますが、一つトラック事業の現状に関しての問題、もう一つは新しい法案運賃問題、三番目が港湾運送事業と取扱事業法案の関連について、時間が限られていますから、もし残されましたら次回に回したいと思います。  トラック事業の現状の問題ですが、トラック貨物輸送量が今二千四百六十二億トンキロですね。輸送トンキロで見ると、全輸送量の五〇・九%を占めていますし、輸送手段別で見ますと第一位ですね。トラック輸送なしに日本経済を考えることはできないわけです。その中で営業用トラック事業、これは採算性や利便性を第一義的とは必ずしもしない自家用トラックとの競争もありますが、さらには貨物運送事業者間の今激烈な競争の中で行われているわけです。しかも、その事業者の九九・五%を中小企業が占めている。なおかつ、受注産業ですから、そういう性格からいっても、他の産業に比べて事業者としての主体性が発揮しにくい事業だと思います。  日本経済を文字どおり支えているトラック事業者とそこに働く労働者の現況がどうかということですが、六十三年度の、昨年度の監査報告で調べ てみたのですが、道路運送法によってトラック事業者を対象としたこの監査報告では、監査実施事業者が四千六百九十五、うち同法による行政処分の件数が四千百九十六件ということで、一事業者で三、四件というのもありますからあれですけれども、数字的に単純にやりますと七八%が処分を受けている。同法と同法に基づく運輸規則の違反、例えば過積載は三千百四十九件、過労運転が二百五十九件、運転者の選任等の違反が百三件となっていまして、全部合計しますと、こういうものは六千五百八十五件、これも一事業者当たりにしますと一・四件という数字で、数字の上ではいわば違法行為実施しないと業務を行うことができないような状況にあるわけです。こうした違法行為が常態化している現状、これを運輸省はどのように認識されていますか。
  247. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 トラック輸送に対しますニーズが小口化、多頻度化、スピード化等の傾向にありまして、このような状況のもとでトラック事業者が厳しいサービス競争を繰り広げておる。その中で運転者の長時間労働あるいは過積載、運賃ダンピング等が少なからず生じている。したがって、いわゆる輸送秩序の改善が十分でないということは認識しております。  トラック運送事業におきます輸送秩序確立につきましては、昭和五十二年度から各地方運輸局及び主要な陸運支局に専任の貨物輸送監理官を置きまして、警察当局等の関係機関と連携をとりつつ、違法行為の是正のために取り締まりと指導に当たってきているところでありますが、引き続き体制の強化に努めているところでございます。また運輸省としましては、違反事業者に対する厳正な監査の実施輸送秩序改善指導員の増強、荷主理解と協力を得るための荷主懇談会の充実、荷主業界所管官庁への協力要請、地区物流政策懇談会の設置等々の諸施策を逐次協力に推進しているところでございます。  なお、現在御審議いただいておりますこの貨物自動車運送事業法案は、輸送の安全の確保輸送秩序確立を重要な視点として、社会的規制の徹底強化を期するための制度を盛り込んでおりますので、その早期成立をぜひお願いしたいと思っておるところでございます。
  248. 中路雅弘

    ○中路委員 いろいろ言っておられるわけですけれどもトラック事業者が法を厳守しようとすればまともな事業の継続がなかなか難しいということなんですね、今の現状は。ここの原因にメスを入れてこそ本当に抜本的なトラック事業の対策ということが言えるわけですけれども、私は、この一つの大きい原因は、トラック事業者の収入源である運賃問題、ここにあると思うわけです。昨年四月二十五日に運輸省が全日本トラック協会に出した認可運賃の厳守の徹底についてという通達は、このことを端的に示しているわけです。  きょう私一つ取り上げたいのは、同じ時期に運輸省が全日本トラック協会に——会長さんはきょうはおられないかな、加藤さんが会長さんだが、「法定社会保険への加入の徹底について」という指導通達を出しておられます。これは御存じのように、私も一度委員会で取り上げましたけれども、神奈川のトラック協会等の自主的な調査をもとにして出されて、全日本トラック協会がさらに八八年の七月ですか、自主的な点検を行っています。その結果について運輸省の方は御存じなのか、もし御存じだとすればそれについてどのような感想をお持ちか、お聞きしたいのです。
  249. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 社会保険未加入の事業者状況につきまして、全日本トラック協会で中間集計したものは手元にございます。それによりますと、平成元年の七月末現在で労災保険未加入の者が〇・八%、雇用保険未加入の者が三・〇%、健康保険未加入の者が一・八%、厚生年金未加入の者が二・〇%ございます。
  250. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほどお話ししました全日本トラック協会の自主的な報告を求めたわけですね。この報告書を見ますと、法律で定められた社会保険の加入率で見ますと労災保険が八三・二%、雇用保険が七八・四%、健康保険が七五・四%、厚生年金が七一%というふうに、一人でも雇用すれば強制加入である雇用保険ですら入っていないというのがあるわけですね。この結果が三月六日付の日本流通新聞に出ていまして、十二万人のドライバーが厚生年金に加入していないことになるという報道もあるわけです。  そうしますと、自分の将来の生活も保障されないということになりますから、そういう業界に人が集まらない、人が来るのは大変だというのは当然なんですね、今いろいろ求人も多いわけですから。厚生年金もないということになれば、なかなか若い人たちはそういうところに入ってこない。これは業界挙げて解決を急がなければいけない問題ではないかと私は思うのです。単に道路運送法の違反にとどまらないで、一般の事業としてもこれは成り立たないということですから。初めからこうした法違反を意図的にやるような人たちはいないと思うのですね、やらざるを得ない経営内容になっているということだと思いますが、大臣いかがですか。
  251. 江藤隆美

    江藤国務大臣 トラック業界の発生の経緯を見ると、国鉄に依存しておったものが急速に陸上運送、すなわちトラック運送に変わってきて、総トン数で言うと物流の大体九割を占めるようになってきたというところに一つの前提条件があると私は思うのです。ですから、何十年、何百年という伝統のある経営体ではなくて、トラック一台からスタートして、そして頑張って頑張って、夜を日に継いで物を運んで増車をして大きくなってきたという人たちもたくさんありますわけで、そういう中で考えてみると、その利潤追求に重点を置く余り、経営に対する責任感といいますか社会的な責任感というものに対していささか欠けておった業態もあるのではないかということ、これは私見でありまして、それが何も統計上あるわけではありませんが、今委員の質問を聞いておって感じたところであります。  しかし、これからは、これは法律に決まっておろうがおるまいが一つ経営者としての最低限の社会的な責任でありますから、あらゆる機会を通じ、機関を通じてこれが実行されるように努力をしてまいりたいと思います。
  252. 中路雅弘

    ○中路委員 社会保険の会社負担分は普通人件費の一五%程度だと言われていますが、人件費は全コストの構成の五〇%としますと、社会保険に入ってないと、輸送コスト比率で言いますと一五%の半分ですから七%くらい経営上は軽減することが可能なんですね。いわゆる認可運賃が上下の枠一〇%とすると、このコスト軽減の比重がいかに大きいかということがわかるわけですし、トラック業界過当競争の中では魅力的なコスト軽減策にもなるわけです。まして、今の統計だと、業者がコストダウンすれば、そうでない業者に与える影響、また脅威というのは非常に大きいということで、こうした問題の解決が非常に重要だ。また、そこで働く人たちをきちっと確保する上でも必要なわけですし、トラック労働者の労働時間が、よく言われますが、年間の労働時間で見ても二千八百時間、産業全体の平均労働時間二千百時間に比べますと大変に大きな差があるわけです。現行道路運送法下での運賃問題というのは、事業者経営安定とそこで働く労働者の生活を大きく左右することになっているわけなので、運賃問題の解決が一つの大きい問題になっているというふうに私は思います。  きょうは、この運賃問題との関連で審議法案について幾つか御質問したいと思います。  今回の貨物自動車の運送事業法案では、運賃現行法の認可制から届け出制になるわけですが、これは規制緩和ということになるわけですし、また届け出制としたのは、いわゆるトラック事業者に一定の自主性を発揮させることができるようにしたということだと思いますが、そのとおりですね。
  253. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 新しい法律のもとで運賃届け出制に移行するということは、事業者の自主性を認めるという趣旨であることは御指摘のとおりでございます。ただ、これが全く無制限にできると いうことではございませんで、著しく高い場合、あるいは特定の荷主に不公正な取り扱いをする場合、あるいは事業者間の不当な競争を招くようなものにつきましては変更命令をかけることができることは繰り返し申し上げておるとおりでございまして、運賃を全く野放しにしたということではございません。
  254. 中路雅弘

    ○中路委員 この新しい法案では、トラック事業者があらかじめ運賃及び料金を決めて運輸大臣届け出をし、この運賃または料金が能率的な経営のもとに適正な利潤を加えたもの、そして特定の荷主を差別しないこと、事業者間の不当な競争を引き起こさないものということにしているわけですが、現行法の認可制のもとでは個別の荷主ごとの運賃はあり得なかったわけですね。しかし、今度の新法案規定ですと、荷主との個別契約運賃届け出をするのを認めることになるのではないかと思いますが、これはいかがですか。
  255. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 本法の第十一条第二項第二号によりますと、「特定の荷主に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。」はその運賃、料金を変更すべきことを命ずることができることになっております。同じような状況にあります荷主に対して差別的な運賃を適用するということは、それが不当なものであれば、この基準に適合し変更命令がかけられることになると考えております。しかし、例えば大口割引等の同じ状況にある荷主であれば、同様に適用するというようなものであれば、この号に該当するものとは考えられません。
  256. 中路雅弘

    ○中路委員 具体的にお聞きしますけれども、能率とか生産性というのは各事業者ごとに相違することになるわけですし、その相違による運賃の格差をもって不当な運賃にするのかどうか。また、通常の取引をしている荷主とたまたましか取引をしない荷主とは、当然荷主によっては運賃が違うこともあるわけですね。これをもって特定荷主を差別することになるのか。さらに、事業者がさまざまな形態の運賃体系を持って事業を行っている場合、事業全体としては適正な運賃になるけれども、一部の運賃についてはコスト割れになった場合、この一部の運賃だけをもって不当な競争を引き起こす運賃とするのか。具体的にはこうした幾つかの問題があるわけですね。だから、こうした場合に不当でない運賃とはどういう運賃をいうのか、今私二、三具体的にお聞きしましたけれども一つ一つちょっと答えていただきたい。
  257. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 運賃の原価、いろいろな企業によって違う場合が考えられますが、運賃の算定はあくまでも適正な原価プラス適正な利潤ということでございますので、したがって個別の原価が違って、その結果運賃が違う、そのことだけをもってこれが不当である、是正命令の対象になるということにはならないと思います。個別に見てそれがあくまでも適正な原価、適正な利潤に入ればそれはそれなりに容認されるものであろうというふうに思います。  それから、もう一つおっしゃいました、たまたま来る方についての運賃がどうなるのかということでございますが、これはさっきも申し上げましたように、一定の合理的な理由があれば私は運賃というのは違っていいと思います。例えば長期の契約があるとか、大口の取引をしていただける、そういう方について割り引く、それはどなたが来てもそういうふうにするというのは私はいいと思いますが、たまたま一見の客であるからどうであるというような差別をするというのはやはり不当差別に該当することになるというふうに思います。
  258. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一度お聞きしますけれども、例えば何をもって輸送実態に基づく運賃というのかということですね。例えば、先ほどもお話ししましたけれども、多くの運賃体系を持って一つ事業者がやっている場合に、その運賃体系全体としては一応経営が成り立つけれども、輸送実態に合わないこともある。その中で個別にとれば割引する場合もありますね。しかし全体の経営としてはそれで適正な運営をやっているという場合に、輸送実態に合わない運賃というのはどういうことですか。それは輸送実態と合わない運賃ということができないのじゃないかと思うのです。政府が基準と言っている判断が事実上不可能じゃないかと思うのですね。運賃の適正な判断というのが主観的にならざるを得ないわけですね。その点はもう一度、基準というのはどこに置くのですか。
  259. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 運賃はいろいろな立て方がございまして、例えば距離であるとか重量であるとかあるいは大きさであるとか、あるいは一定の時間以内に着きますというような付加的なサービスをつけるとか、いろいろなやり方でサービス内容が違うと思います。したがいまして、そのサービス内容に見合った運賃であるならばそれは構わないと思いますが、一つサービスに対して複数の運賃がある。それも人ごとに、あなたに対してはこの運賃、あなたに対してはこの運賃、同一のサービスに対して違う運賃があるというのは合理的ではない。やはり不当な差別に当たる。しかし、サービス内容が違うから運賃が違うというのであれば、それはそのサービスの原価を反映したものに運賃が設定されている限り問題はないというふうに考えます。
  260. 中路雅弘

    ○中路委員 今まで認可制であったことから、運賃自体を抜きにしたセールスというのは余り前面に出てこなかったわけですね。しかし新法案のもとでは、このようなセールスがトラック事業者経営にとって死活にかかわる重要性を持ってくるわけですから、いわば運賃のダンピング合戦が一層熾烈になるということにならざるを得ないと思うのですが、その点はいかがですか。
  261. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運賃につきましては、先ほど申し上げましたように、事前届け出制にするとともに、不適切な運賃につきましては変更命令を行う仕組みとしております。さらに、届け出運賃につきましては遵守の義務がありますから、届け出運賃制への変更が御指摘のような事態を生じさせることはないと考えております。  また、適正化事業実施機関の創設によりまして、運賃に関する違法行為に対する指導体制の強化を図るとともに、違法行為を強要する悪質な荷主に対しまして勧告を行う制度を設ける等所要の整備を行っているところでございますので、これらの制度の適切な運用を通じまして届け出運賃の適正収受に向けて努力を行ってまいりたいと思っております。
  262. 中路雅弘

    ○中路委員 新しい法案変更命令をつけてこうした運賃ダンピング防止することになっているというお話ですけれども、一たん運賃届け出制にしておいて、運賃現行法の認可制のように事実上運用するということになれば、何も届け出制にしなくてもいいのではないかというふうにも思うわけです。  そして、このような状況で、適正でないと、これも非常に主観的な判断になると思いますけれども変更命令を出してもそれはどういう効力を発揮するわけですか。
  263. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 この法律に基づく命令に従わない場合には、事業の停止あるいは取り消しを含む行政処分を行うことがあり得ます。
  264. 中路雅弘

    ○中路委員 変更命令を出す基準は、どういう資料に基づいてどうして作成されますか。
  265. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 基準でございますが、利用者による適正な負担を確保するために、その事業者の全事業収入が適正なコストと適正な利潤を超える不当に高い超過利潤を得るということは防止しなければなりません。  それから、不当な差別的取り扱いの基準といたしましては、公益性の高い輸送サービスの享受、これをやはり生かさなければいけませんので、特定の大口荷主や長距離輸送の利用者だけを不当に割安にしたり、一見の客や近距離の客に不当に割高になるような運賃の設定は防止しなければならないと思っております。  また、三号の不当競争の基準といたしましては、事業者間の健全で公正な競争確保するために、同種のサービス提供するほかの会社との間で不当に安いものとなる運賃の設定を防止することに しております。  これらの基準を具体的な指標にしていかなければならないわけでございますが、それは時間と場所によって違ってまいりますので、それを勘案いたしました適正原価を算出いたしまして、それに基づいて具体的なメルクマールをつくって運用をしてまいりたいと思っております。
  266. 中路雅弘

    ○中路委員 事業者が一定の根拠に基づく運賃について出したものを変更させるには事業者経営内容にまで介入しなければ不可能ではないかと思うのですね。もしそれが可能とすれば、事業者経営の裁量にまで介入するということになるわけですが、こうした行為はいかなる法律をもってしても不可能ではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  267. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 その運賃が適正な原価を反映したものであるかどうかということを調べるために、必要な限度でこの法律に基づく報告の徴収、場合によっては監査なども含めまして必要なデータは集めた上で調査をするということになろうと思います。
  268. 中路雅弘

    ○中路委員 判断の基準がやはり主観的にならざるを得ないですね。運賃を前面に出したこうした営業が全面的に出れば、大手など資本力のあるトラック事業者はまだしも、トラック事業者は大半が中小企業かつ受注産業という性格を持っていますから、いわば事業者の自主性というのが他の事業者よりも、より以上の運賃ダンピングをどう行うかという、競い合うということにならざるを得ないと思うのですね。そういう点で今度のこの新法が、今でも非常に競争が激化しておりますけれども、さらにこれを一層激しくする、またそれはそこで働く労働者に犠牲がしわ寄せされるわけですが、大手資本などのこうした問題についての規制というのはどういうようにされていますか。
  269. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 ダンピング行為につきましては、それが大手資本であろうが中小事業者であろうが、法律の基準に照らして不適正な場合であるときには変更命令をかけることに変わりはございません。したがって、事業の規模のいかんにかかわらず、この法律の執行は適正に行っていきたいと思っております。
  270. 中路雅弘

    ○中路委員 荷主規制というのも出ていますけれども、この発動要件、これはどういう手順になるのですか。
  271. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 先生お尋ねの話、荷主勧告のことであろうかと思いますので、荷主勧告で申し上げたいと思います。  これは要件が三つございまして、一つは、主として安全関係規定事業者が違反をしたという事実がありまして、その事実に従って行政処分をする、そういうことが一つの前提でございます。  それと、そういう違反行為荷主の行為に原因があって起きておるということがもう一つの要件でございます。  それから三番目の要件としては、トラック事業者に対する処分ないし命令をするわけでございますが、それだけでは再発を防止することができないと認められるときということでございます。この三つの要件を満足する場合に荷主に対して運輸大臣が直接勧告をするということにしております。
  272. 中路雅弘

    ○中路委員 今おっしゃったように、この発動要件というのは何重もあるんですね。反する行為があった場合、荷主の指示やその行為に起因するということを明確にしなければいけない、なおかつその荷主を所管する大臣意見を聞かなければなりませんし、運輸大臣はそれを聞かなければ荷主に勧告を出すことはできませんし、しかも罰則もないということですから、これも実際には全く実効性の難しい問題だと私は思います。規制緩和して、この新法では事実上今よりも過当競争に拍車がかかるのではないか。トラック事業者の公正な競争を保障するという制度確立が今求められているのであって、私たちはそういう立場からこの新法には絶対に賛成するわけにいかないと思うわけです。今求められているのは、最初お話ししましたように、トラック事業者の公正な競争、そこで働く皆さんの現状、これをどう改善して秩序ある輸送の体制をつくっていくかということについてこたえていかなければならないと考えるわけです。  ちょっと時間が限られていますから、もう一問の港湾運送事業の問題と関連して、港湾運送事業法による港湾運送料金の監査実施状況というのを見てみましたけれども、監査品目数の約半分が認可運賃を完全に収受していないということですね。現行の港湾運送事業者としては、荷主等に対等の立場から料金の収受が行われていないという現状がこの監査状況でも出ています。これについてお考えはいかがですか。
  273. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運輸省当局におきまして港湾運送料金の監査をいたしました実施状況は、先般お手渡ししたところでございますが、昭和六十年度から五年間で申し上げますと、監査対象事業者数が六十年四十三、六十一年百六十、以降百二十八、四十九、平成元年はまだ途中でございまして、報告も全部上がっているわけではございませんので七となっております。監査全品目数が六十年が九十八、六十一年が七百六十二、六十二年が三百七十六、六十三年が百三十一、平成元年が二十五。そして警告しました品目数が、六十年が十二、その後三百七十一、百五十五、十七、平成元年が十三となっております。このようなことで、必ずしも港湾運送料金の完全収受が行われている状態にないということは事実として認識をしております。
  274. 中路雅弘

    ○中路委員 もう時間が限られていますから、貨物取扱事業法案について、時間の範囲まで続けますけれども、この法案の経緯は、八一年の運輸政策審議会答申に見られる複合一貫輸送の促進にあると思いますが、そのねらいは物流コストの削減ということだと思いますが、いかがですか。
  275. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 運輸政策審議会答申では、国際複合一貫輸送の促進ということが一つの目的として掲げられております。トータルコストの削減ということも一つの目的でありますし、高度なサービス提供ということも荷主にとって非常に重要な要素でございます。このようにしまして、利用者にとってより一層便利なサービス提供されることをねらいとしているわけでございます。  ただ、この運送取扱業法自体におきましては、複合一貫輸送という制度を設けているわけではございませんで、運送取扱事業、これは利用運送と取次事業に分かれておりますが、それぞれの輸送機関ごとの取扱行為について規定をしているものでございます。ただ、このようなことで従来不明確でありました利用運送事業者あるいは取次事業者の法的性格を明らかにしたということには意味があると思っております。
  276. 中路雅弘

    ○中路委員 この複合一貫輸送の実際の担い手は、港湾の場合にはどのような業者が該当することになるわけですか。また利用運送事業者とは、港湾ではどのような業者がなることになるのですか。
  277. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 我が国におきます国際複合一貫輸送の例としましては、船会社のようにみずから輸送手段を持っている事業者実施している例と、みずからは船舶などを保有せずに国際複合一貫輸送を実施している例がございます。  どのような事業者がいるかということでございますが、国際複合一貫輸送を行っております事業者団体として、日本インターナショナルフレイトフォワーダーズ協会というものがございまして、その正会員の百四十六社のうち百七社が港湾運送事業者でございます。ということからもわかりますように、港湾運送事業者がこのような分野に多く進出しております。  その事業者の内訳としましては、主として一種元請と海貨事業者でありますが、免許区分別に見ますと、無限定一種が四十三社、それから海貨限定が六十三社、沿岸専業が一社でございます。それから会社の規模を資本金の区分で見ますと、資本金一億円以上の会社が六十五社、三千万円以上一億円未満が二十八社、一千万円以上三千万円未満が十三社、一千万円未満が一社ということで百 七社がございますが、このようにかなり広い規模別の階層にわたってこのような複合一貫輸送が行われているところでございます。
  278. 中路雅弘

    ○中路委員 今度の取扱法では、その目的の中に利用者の保護ということはうたわれていますけれども、実運送事業者の保護はどこにもないわけですね。トラックや港湾運送事業者など実運送事業者の九〇%以上が中小企業でありますから、また受注産業でありますから、こうした実運送事業者の置かれている状況を、今回の法案、この中でどのように配慮等が行われることになっているのか、法文上は何もないのですが。
  279. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 取扱業法は、取扱業の健全な発展ということを目指しておるわけでございまして、実運送事業の方はそれぞれの実運送事業法でやるということでございます。ただ、取扱業の実運送事業に対する関係が非常に行き過ぎまして、実運送事業の混乱が生じる。それがまた取扱事業の混乱にもなってはね返ってくる、そういうようなところまでいった場合には、取扱事業に対する改善命令を出すということがこの法律の中に条文として入っておるわけでございます。
  280. 中路雅弘

    ○中路委員 運輸省は、港湾関係の皆さんとの交渉の席上で、港湾運送事業者である元請、海貨の業務は、本来的には取扱業者であるとした見解を示されたということを聞いているわけです。この見解によると、この取扱法案による利用運送事業者が直接専業の業者に荷を手配する仕事を依頼するということができることを示しているわけですが、そういうことになるのでしょうか。
  281. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 実際の作業会社に港湾運送を行わせるという行為は、港湾運送事業法の一種元請行為になりますので、これは免許事業者でなければできないことでございます。したがいまして、利用運送事業者だけの資格でこのようなことを行えば港湾運送事業法の違反になります。港湾運送事業法の免許を取って初めてそういうことが可能でございます。
  282. 中路雅弘

    ○中路委員 重ねてお聞きしますけれども、もしか今のようなことが可能ならば、先ほど私が指摘したように、これは港湾運送事業法の違反ということをはっきり言われましたけれども、取扱法は港湾運送事業法の事実上の空洞化をより一層促進するわけですから、この点ははっきりしておきたい、改めてこの港湾運送事業法の厳守を要請したいと思います。  さらに、荷主と元請、海貨業者の間に利用運送事業者が入った場合に、港湾運送事業法の下請禁止に該当するのではないかと思うのですが、このようなことがならない保障が具体的にあるのですか。
  283. 寺嶋潔

    寺嶋政府委員 港湾運送事業法上の一種元請業者は、船社と運送契約を締結しております荷主貨物を、当該船舶に積み込みあるいは取りおろす荷役作業を当該荷主から委託を受けて行う事業者でございます。取扱事業法上海上利用運送の許可を受けている利用運送事業者、いわゆるNVOCCと言われている事業者でございますが、このような事業者は船社にとっての荷主であり、港湾運送事業者は当該利用運送事業者から委託を受けてその貨物を船舶に積み込みあるいは取りおろす荷役作業を行うものでありますから、この利用運送事業者は港湾運送事業者にとって港湾運送事業法上の荷主と位置づけられます。したがいまして、利用運送事業者が一種元請業者に港湾運送を委託する行為は港湾運送事業法上適法だと考えております。
  284. 中路雅弘

    ○中路委員 今の、今度の法案と港湾運送事業法との関係の問題、ちょっともう少し突っ込んでお聞きしたいと思っていますので、きょうはもう時間が終了していますから、次回また機会がありますので、続けてやらせていただくということで終わりたいと思います。
  285. 島村宜伸

    島村委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会