○
山田耕三郎君 私は、外国人単純労働者問題についてお尋ねをいたします。
第二次大戦前のことは別として、
日本における外国人労働者をめぐる問題は今始まったばかりであると言っても過言ではございません。しかし、その問題の拡大がいかにも速度が速いというところに問題があります。今日、
日本で外国人労働者にどう
対応するかという問題は、ヨーロッパやアメリカから来ている外国語教師や技能を持つ専門家について存在するのではなく、いわゆる単純労働者と総称をされる
人々が今
日本に大量に流入しつつあるということが問題なのです。したがって、この問題に限り私は私見を申し述べ、所見をお伺いいたします。
前にも述べましたように、外国人労働者の問題は比較的新しいが、その増加の速さには恐ろしいものがあります。入国管理局の推計によっても、一九八八年末における
不法就労者は約十万人、八六年末現在推計値はわずかに二万八千人、八七年末のそれは約五万人であることから推測をいたしますと、年間およそ一・八倍という速度で増加しておることになります。これは、問題が新しいのにもかかわりませず、
事態は極めて切迫しておることを示しております。
したがって、
日本では既に外国人労働者に対する多くの論議がなされております。これまでの論議は、ヨーロッパ諸国が戦後好況時の労働者不足を
解決するため国策として外国人労働者の導入を図った、それが今日では処理しがたい多くの難問を
受け入れ国の社会に残しているという実態を理由に、外国人労働者の流入を阻止すべきであるという、いわば鎖国論であり、これに対し別の意見は、国際化社会の中で
経済大国日本の果たすべき役割は、物や金だけの自由化ではなしに、これと並んで人間も自由化を実行していくこと、いわば開国論であり、これに最近の産業界の人手不足が拍車をかけております。
今日の
政府の
方針は、
大臣の答弁にもありましたように、鎖国論に近い
立場のようですが、各
省庁レベルになりますと、その
関係範囲が非常に広範であるために一様ではありませんが、全体として開国と鎖国の間を揺れ動いてきておられるようにも思われますし、それらは所管される事項の
関係でやっぱり
対応も若干ながら両方に分かれており、このこともあるいはやむを得ないことかとは考えます。すなわち、
受け入れる意見にしても拒否する意見にいたしましても、いずれも問題が残り、簡単に
解決できないほど複雑にして困難なものだと思われます。
以上のことを前提として、次の二点をお尋ねいたします。
まず第一点は、外国人単純労働者の流入を果たして阻止できるのかどうかということであります。阻止できるとする意見の論拠は、外国人労働者流入に対して政策的関与が可能だとする発想です。しかし、どのような人為的な障壁を設けてみても彼らの流入を阻止することはできないと思う。その論拠は、資本主義的経済における蓄積のための最も有効な
方法は低賃金労働力の利用であり、そのためには資本が低賃金労働力を求めて移動するか、あるいは低賃金労働力が資本のもとに移動するかという二つの
可能性が考えられております。
ただし、国境の存在のために、通常は資本の移動の方が容易であります。しかし、国境とても労働者の移動を阻止することができない、それは
日本を含め先進国の今日の現実な問題となっていると主張する研究者もありますが、果たして阻止し得るとお考えになるのか、労働省及び
法務省の御所見を承りたいと思います。
第二点は、
日本に流入しておる外国人労働者の実態は明らかになっているのかについてであります。
外国人労働者の人権が問題になるほど、
日本に滞在する外国人労働者は既に
日本の労働市場の底辺に組み込まれているのです。政策決定の前提として最も大切なことは、まず
調査だろうと思います。
日本人だけで納得できる理屈で正当化するのではなく、
日本における外国人労働者の実態と抱えておる問題点を総合的に認識して、それによって外国人労働者問題の今後の展開はどうなっていくのかを予測し、その上でとるべき政策を十分考えていくべきだと思います。そのためにはかなり長期間を要する
調査であることも考えられますので、当面緊急避難的な
措置の
対応もあわせ必要かと存じますが、これらに対します労働省及び
法務省の所見を承りたいと存じます。