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1989-09-26 第115回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年九月二十六日(火曜日)    午前十時四十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         黒柳  明君     理 事                 鈴木 省吾君                 福田 宏一君                 安永 英雄君                 矢原 秀男君     委 員                 下稲葉耕吉君                 中西 一郎君                 林田悠紀夫君                 北村 哲男君                 清水 澄子君                 千葉 景子君                 橋本  敦君                 山田耕三郎君                 紀平 悌子君                 櫻井 規順君    国務大臣        法 務 大 臣  後藤 正夫君    事務局側        常任委員会専門  播磨 益夫君        員    説明員        内閣官房インド        シナ難民対策連        絡調整会議事務        局長       菊地 康典君        警察庁警備局外        事第一課長    石附  弘君        総務庁行政管理        局管理官     川邊  新君        法務政務次官   田辺 哲夫君        法務省入国管理        局長       股野 景親君        法務省入国管理        局警備課長    町田 幸雄君        外務大臣官房外        務参事官     石垣 泰司君        外務省経済協力        局政策局長    大島 賢三君        大蔵省主計局主        計官       浜中秀一郎君        労働省職業安定        局外国人雇用対        策室長      吉免 光顕君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (難民問題に関する件)     —————————————
  2. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、後藤法務大臣及び田辺法務政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。後藤法務大臣
  3. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 一言ごあいさつを申し上げます。  このたび、私が図らずも法務大臣に就任いたしまして法務行政を担当することになりました。内外にわたり困難な問題が山積しておりますことを思いますとき、私の職責が極めて重大であることを痛感いたしております。  法務行政に課せられた使命は、何よりも法秩序の維持と国民権利の保全にあると私は考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎないものとして確立され、国民権利がよく保全されていることが極めて肝要であると存じます。私は、こうした認識のもとに、法務行政の各分野にわたり一層の充実を図り、時代の要請に応じた適切な施策を講ずるよう努めまして、国民の御期待にこたえる法務行政の遂行のために万全を期してまいりたいと存じます。  しかし、これらのことは、委員長を初め委員皆様の御理解、御協力なくしては果たすことができません。どうかよろしく御支援、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げます。  以上、簡単でございますが、所信の一端を申し述べまして就任のごあいさつといたします。
  4. 黒柳明

  5. 田辺哲夫

    説明員田辺哲夫君) 過般、海部内閣発足に伴いまして法務政務次官を拝命いたしました田辺哲夫であります。  難民問題を初め、法務行政は極めて多事多難でございますが、後藤法務大臣のもとによき補佐役といたしまして最善を尽くす所存であります。  もとより未熟でございますが、黒柳委員長及び委員諸先生のよりよき御教導をお願い申し上げましてごあいさつといたします。  ありがとうございました。     —————————————
  6. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 検察及び裁判運営等に関する調査のうち、難民問題に関する件を議題といたします。  まず、政府から報告を聴取いたします。後藤法務大臣
  7. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 委員長を初め委員皆様には、常日ごろ法務行政の適切な運営につきまして格別の御支援と御鞭撻をいただいていることにつきまして、厚く御礼申し上げます。  さて、本日の当委員会におきましては、最近急増を見ましたボートピープルの現状とこの問題に対する当省方針を御説明申し上げ、委員皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。  第一は、ボートピープル審査等についてであります。  最近のボートピープルの特徴は、その多くが迫害からではなく生活苦から逃れることを目的としており、しかも日本を直接目指して比較的大型の船舶により到着していることであります。  このような状況に対しまして、当省といたしましては、本年九月十二日の閣議了解に基づき、ベトナムからボートピープルとして到着した者が真の難民かどうかについて慎重に審査を行い、難民難民でない者との区別をして扱うことにいたしました。この結果、インドシナ難民と認定された者につきましては従来どおり一時庇護のための上陸許可することとなりますが、インドシナ難民と認定されなかった者につきましては退去強制手続をとることになります。  第二に、ベトナム難民を偽装した中国人不法入国者についてであります。  最近のボートピープルの中にはベトナム難民を偽装する中国人が多数含まれていることが判明いたしました。これらの中国人不法入国者として退去強制手続が行われておりますが、その数は九月二十六日現在七百三名に上っております。  このような事態対応して、当省におきましては、本年八月二十九日以降に我が国に到着したボートピープルについては、我が国領土に仮上陸させた上で本格的な上陸審査実施することとしてまいりました。  また、本年五月二十九日以降八月二十八日以前に到着したボートピープルのうち既に一時庇護のための上陸許可を与えられた者につきましても、再調査を行い、その結果、難民を偽装した中国人であることが判明した場合には、不法入国者として退去強制手続をとり、中国送還する方針であります。  第三に、収容施設拡充等についてであります。  当省所管大村難民一時レセプションセンターにつきましては、本年九月十二日の閣議了解により、いわゆるボートピープル急増に対処するための緊急臨時措置として、八百名程度の居住棟を増設するため、予備費を使用することが決定されました。  また、ベトナム難民を装った中国人及び審査の結果難民と認定されなかった者など退去強制手続のため入国者収容所等収容すべき者が多数に上り、その期間も長期となることが予想されますので、大村入国者収容所拡充等所要措置を早急に講ずることにつきまして検討中であります。  第四は、中国側への申し入れについてであります。  ボートピープルの問題につきましては、既に我が国政府見解外務省から中国側に伝えられているところでありますが、ボートピープル審査及び退去強制手続等実務を所管しております当省立場から、去る九月十八日、当省入国管理局長より在京中国公使に対して、我が国としてはベトナム難民を偽装する中国人等不法入国者として退去強制する方針であり、中国政府がこれらの者の引き取りを行うよう要請するとともに、今後中国人等ベトナム難民を装って中国から不法出国することの再発を防止するため、中国政府において必要な措置を講ずることを希望する旨の見解を伝えました。  以上、ボートピープルの問題につきまして最近の状況当省対応について御説明申し上げましたが、最後に、本件対策の円滑な実施につき委員皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
  8. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 以上で報告の聴取は終了しました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 安永英雄

    安永英雄君 政治や人種、宗教上の理由から迫害を受けて祖国を捨てなきゃならぬという、こういった状態が世界の各国でやっぱりあるわけで、これは非常に悲しい痛ましい問題であるわけでありますが、特にインドシナ関係ではジュネーブ難民に関する国際会議があったときに報告があったと聞いておりますけれども、一九七五年以来、二百万人のインドシナ人々祖国を去って庇護を求めておる。そして百六十万のところが大体恒久的な解決が終わっておる。しかし、さらに二百万人という数はますますふえていく傾向にある。こういう報告もあるわけでありますが、日本として、経済大国としても、この難民を積極的に援助し、手を差し伸べる、これは当然なことでありますし、私の今から質問する立場というのは、そういった立場質問をしていきたいと思います。  そこで、今大臣の方から簡単な報告がありましたけれども、私はぜひ大臣の口からお聞きしたいことがあるわけです。  それは、急に三十三件、二千九百五十人という、短期間のうちにこういった大量のいわゆる難民と称する人々が九州、沖縄に上陸してきた。したがって緊急の場合ですから多少の混乱はあるにしても、政府がとった態度立場、処理の方法、こういったものについては確かに対処の仕方が鈍い。それから後追いばかりやっている。そして現地任せ。  私は現地に行って詳細に意見も聞いてまいりましたけれども、実に大混乱で、上陸地点自治体あるいは消防団、あるいは善意を持って援助をやってくれた人々、この人たちはとにかく、何と言いますか、混乱をした状態の中で必死になって活動を続けられた。しかし、確かにやはり政府法務省だけとは申しません、特に自治体あたり混乱ぶりというのはこれは目を覆うばかりであります。時間がありませんから、多くの例は申しませんけれども、例えば佐世保の税関の宿舎、これあたりに一時入れたらどうかと言うと、大蔵省の方でこれは宿舎じゃない、難民受け入れの土地ではないからだめだ、あるいは公民館に行くと自治体の方からだめだとこう言われる。天幕を張ってとにかく雨の降る中、最後はもと来た船にまた乗せようかなどというような騒ぎまであっておる。  私は多くは申しませんけれども、こういった政府の後追い、手違いの問題については一言あってしかるべしだと思うんですが、これは政府を代表して法務大臣、どうですか。国民皆さんにあるいは当該の現地皆さんに一言あってしかるべしと思うんですが、どうですか。
  10. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま安永委員の御指摘につきまして、私も現地を視察いたしてまいりました。  法務省といたしましては、とにかく急激に増大したボートピープル対応するために、本省はもとより関係部局協力を得まして難民大村収容所等における取り扱い等につきまして最善努力を尽くしておりますけれども、何分入管の職員は、委員も御承知のことと思いますけれども、過去十年間にほとんど横ばいの状態でございました。その中から極力人を割いて緊急事態対応るための努力をいたしてきておりますけれども、その力には限界がございましてなかなか私どもの希望するとおりには進まなかったことも事実でございます。  また、法務省だけではなく各省庁とも関係を有する問題でございますので、内閣インドシナ難民対策連絡調整会議というのを設けまして、そこで各省との連絡調整を図りながらこの問題の対応に努めているところでございます。
  11. 安永英雄

    安永英雄君 これに時間をとるわけにはまいりませんけれども、今おっしゃったようなわかり切った定数その他の問題について足らなかったから手薄だったと、こういうのは実は政府として、後でも私質問しますけれども、これは言いわけにはならないんです。以上でとどめておきますけれども。  九月十一日にやっと四年何カ月ぶり難民対策連絡調整会議というのが開かれた。これは早く開くべきで、もう五月に上がってきたときから、この連絡会議を早く開かないと十二省庁にまたがる仕事なんだから大混乱をすると私は思ったんだけれども、なかなか開かなくて、九月の十一日、一応おさまったような時期にやっと開かれたというのも私は不満なのです。  しかし、今その報告がございましたので、これを中心に質問をしてまいりますが、今おっしゃったところで、このボートピープル難民条約に基づく難民と、それからよりよい生活を求めて来る経済難民、こういったものに選別する、そのために今度は資格審査制度というのを十三日から設けるということが決定をされた。そして経済難民というのは不法入国者として取り扱って自主的な帰国を促していく、中国偽装難民については不法入国者として送還をする、そしてさかのぼっては適用しないというのが一応私聞いておる内容なんです、今報告にはなかったようですけれども。これは五月から今日までのところと、それ以前のところとの区切りが行われておるというふうに聞いております。  つまり、従来、簡単な審査で既に一時庇護上陸許可を与えたベトナム人日本で定住や第三国への出国を認められるということなんでしょうか。そして、既に実施に入っているということですけれども、ここらあたり、今大臣が簡単におっしゃったんですけれども、この資格審査制度というのを新しく入れて、どう変わっていくのか、もう少し説明をしていただきたいと思うんです。
  12. 股野景親

    説明員股野景親君) 大臣がただいま御報告申し上げましたとおり、先般来新しいスクリーニング制度発足を見たわけでございます。このスクリーニング制度は基本的にインドシナ難民についての選別を行うことがその趣旨でございます。  インドシナ難民につきましては、従来、昭和五十四年七月の閣議了解に基づきましてボートピープルとして到着する者に一時上陸許可を弾力的に与えるという運用を行ってまいりましたが、去る本年六月のジュネーブで開かれましたインドシナ難民国際会議における合意を踏まえまして、我が国もいわゆる難民条約に照らした難民と認められ る者とそうでない者とを区別するという扱いを行うことにいたしました。それがこの九月十二日の閣議了解での趣旨でございます。その中身は……
  13. 安永英雄

    安永英雄君 それはいいです。時間がありませんから聞きますけれども、いわゆる資格審査制度というのを設けて現在の難民問題に対処しようというねらいは明確に何をねらっているかということであります。
  14. 股野景親

    説明員股野景親君) インドシナボートピープルの問題は一九七五年、南ベトナム政治体制の変革があって以来十数年にわたって続いている問題でございまして、そのためにこれによって難民受け入れてきたベトナム近隣ASEAN諸国、さらには香港等における負担が非常に増してきたという状況が一方にあり、他方において、最近ではいわゆる難民条約にいうところの難民性を持たない、いわば経済的な出稼ぎを目的とする人たちがボー十ピープルとして流出してくるという状況があったので、そういう状況に対する一つの歯どめをかける、難民問題についての基本的な解決に向かっての一歩を踏み出すという観点から、ことしの六月、国際会議においてそういう選別制度が始められ、それに基づいて日本もその制度を導入したということでございます。
  15. 安永英雄

    安永英雄君 経済難民という形で、これは歯どめの意味不法入国者として入国者収容所にその身柄を入れるわけでしょうが、問題は結局、相手ベトナム政府側対応にあるわけですから、とにかく自主的な帰国というふうなことを言っておいても相手国のあることだし、また不適格と言われた、経済難民と烙印を押された人が帰らないというふうな意思表示もあるといった場合に、中国は別です、ベトナムというのに限って言えば、これはあくまでも強制送還ということに踏み切るのかどうか  ここで、それと一緒外務省の方にお聞きしたいんですけれども、今大臣の方から多少概括的な中国ベトナムに対する外交交渉の話がありましたけれども、聞くところによると、ベトナム受け入れというふうな意思表示はまだ全然ない。中国もこっちから言っただけでこれに対する反応もないというふうなことも聞いておりますが、強制送還するのかという問題、それからベトナム政府中国政府、これに対する難民問題の折衝の経過なり現在の結果について報告を願いたいと思います。
  16. 股野景親

    説明員股野景親君) まず、退去強制の問題についてでございますが、不法入国者として判断された者については入管法に基づきまして退去強制手続をとることになります。  実際の送還につきましては、これは委員指摘のとおりベトナム側態度いかんにもよるところがございます。これは日本のみならず、このたびのインドシナ難民国際会議スクリーニングについて合意を見た関係諸国いずれも共通の問題がございます。そこで、関係諸国さらには国連難民高等弁務官等との協力のもとにベトナム側との話し合いを行っていく必要がございますが、送還が実現するまでの間は退去強制手続に基づく収容を続けていく、こういう考えでございます。
  17. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) お答えいたします。  ベトナムにつきましては、ボートピープル流出防止のためにベトナム政府実効的措置をとることが必要でございますので、従来からベトナム当局に対しまして再三外交上の申し入れを行っております。八月三十日にはパリにおきまして中山外務大臣からベトナム外務次官に対しまして申し入れを行いました。  その際、先方反応は次のとおりでございました。日本政府国民の懸念は理解する。ベトナム不法出国抑止措置を既にとっているが、完全な抑止は困難である。今後とも努力していきたい。ベトナム国民国外脱出を手助けする非合法組織があるとの点については、日本側協力援助を得たいということでございました。  先般の閣議了解がございまして、私どもも新しいスクリーニング制度につきましてベトナム側説明をいたしました。その際、今後新制度が適用されてスクリーンアウト、すなわち難民と認定されなかった者についての送還の問題が生じるということも先方指摘済みでございます。先方はその場では何らその点については態度を明らかにいたしませんでした。
  18. 安永英雄

    安永英雄君 中国一緒にということですか。
  19. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) 中国との関係につきましては、最近、我が国に直接漂着しましたボートピープルの中にベトナム難民を装った中国からの不法入国者が多数含まれているという状況にかんがみまして、八月三十一日に日本駐在中国公使に対しまして外務省国連局長より三点申し入れました。  第一は、日本漂着ボートピープル中国立ち寄り及び立ち寄り先からの中国人の乗船に関する事実関係調査。第二は、中国からの不法出国者身柄引き取り。第三は、中国側不法出国抑止に向けた厳重な取り締まりの三点でございます。  これに対して先方は、不法入国したとされる中国人身柄引き取りについては、日本側より提出のありました資料に基づき中国側において調査確認し、その結果、中国公民であることが判明すれば中国政府としては前向きに対処する用意があるという応答でございました。  さらに、九月十四日、北京におきまして中国外交部スポークスマンが、記者会見におきまして、九月七日までに日本側より詳細な資料の提供を受けた三十九名については現在真剣に調査中である。これらの者が中国公民であれば、中国は引き取る旨明言しております。  さらに、九月十七日、中国訪問中の伊東正義日中友好議連会長に対しまして、李鵬総理より、中国人不法入国者送還していただいてよいという発言がございました。  中国側に対しましては、九月二十六日まで百二十六名に上る不法入国容疑中国人リストを手交して、目下実務レベルで協議を進行中でございます。
  20. 安永英雄

    安永英雄君 ベトナムの方は、今の報告を聞きましても、相当真剣にやらないと永久に、今さっき強制送還はしないで、とにかく日本にとどめおいて、身柄拘束という形はあるけれどもという話がありましたけれども、それは相当長期間になりますよ。真剣に外務省としましても、特にベトナムについての折衝というのは、国連関係とも一緒になって早急に片づけなければこの難民問題は片づきませんよ。  中国の問題は、私の感じでは、今報告がありましたけれども、むしろ中国から来ておる不法入国者という者の調査を早く終わって、その調査結果を早く中国にどんどん送っていく。ばらばらばらばら送るんじゃなくて、早急に進めなければこれは進まない。こういった点で外務省も相当努力してもらわなければなりません。また、これについての調査その他はやっぱり法務省関係も早急に、人員等も定員をふやせないんなら、これは別の方法で通訳の問題その他の問題は早急に整備をして急がなければ、今の枠の中でやりくりしておったら、一年も二年もかかるんじゃないんですか、この調査だけで。そういった感じがしますので努力してもらいたい。これは要望を申し上げておきます。  ただ問題は、今のいわゆる入管法の十八条の二ですか、この中で資格審査制度を入れて進めておるわけでございますけれども、ここで中国の問題につきましては今調査をしておる。私の聞いたところでは八月の二十八日、これは発見月日です、先ほどもらいましたのと多少違うかもしれませんが、八月の二十八日から九月一日までに上がってきた人員について、ベトナム人中国人との区分けを審査しておるということですが、その結果についてお知らせいただきたいと思います。
  21. 股野景親

    説明員股野景親君) 現在、ことしの五月二十九日以降到着しましたボートピープルについて、逐次人員の手配のつく限り最大限の努力をいたしまして、中国人であるかそうでないかという判定の調査を行っております。これは五月の二十九日以降到着した人たちについての調査でございますが、その結果、中国人容疑が濃いということを 判断いたしまして入国者収容施設収容した人員の総計は、けさ現在で七百三名となっております。
  22. 安永英雄

    安永英雄君 結局、この七百三名という数字は、八月二十八日から九月一日までの間の難民と称する中のウエートとしては大きいですね。ほとんどこれは中国人が大半を占めているというふうに見ていいわけだろうと思うんですが、この七百三というのは大体もう最終的な数になりますか。
  23. 股野景親

    説明員股野景親君) 審査は続行しておりますので、まだ引き続きこの数はふえる可能性があると思います。  ただいま委員指摘のとおり、私ども八月二十九日以降到着したボートピープルについての審査を先に急いでおりますが、ただいま申し上げました七百三名という数は五月二十九日以降到着した者全員についての調査の結果でございますが、そのうち大部分は八月二十九日以降到着したグループの中から中国人と判定したものでございます。
  24. 安永英雄

    安永英雄君 この七百三名の中に、いわゆる問題になる中越紛争時にベトナム出国して中国に定住した、こういう人が入っていますか。あるいはまた、私はまだ聞いていないけれども、私もやはり非常に心配しておるんですが、天安門事件等の問題で入っている人はないか。七百三名の中にそういった人も含まれているのか、含まれていないのか。
  25. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいま御指摘中越紛争当時、中国へ移った元ベトナム在住華僑グループ、これは今の七百三名の中には小人数でございますが入っております。ただ、これはまだ我々としても調査を引き続き続行中でございますので、十分その背景については確認するには至っておりません。  それから、もう一つ天安門事件関係の御質問でございますが、この点については、委員の御指摘意味は、あるいは天安門事件に関連して難民であるという申し立てをした人間があるかどうか、こういうことであろうかと思いますが、我々この天安門事件関連につきましては、これは今まで申し上げましたいわゆるインドシナ難民ボートピープルに対する扱いとは異なる態度で臨まなければなりません。この関連になりますと、いわゆる難民条約に基づくところの難民性の申請ということが手続的には考えられるわけでございますが、従来、我々この難民条約に基づく難民認定手続について実際に申請が行われたかどうかという内容については、本人の保護の問題もございまして、具体的にその国名その他を明らかにするのは差し控えさせていただいている状況がございます。  ただ、今までのボートピープル状況に見まして私どもとして申し上げられることは、いわゆる天安門事件等に関連して、今度のボートピープルとして来た人の中にそういうことの関連で我が方に何らかの申し立てを行ってくるという可能性は極めて乏しいと考えております。
  26. 安永英雄

    安永英雄君 今、中国人ベトナム人との選別をやっている。それで中国人とわかれば、これはもう身柄を拘束して強制退去を命じる。  問題は、やはりその後に残ったベトナム難民の問題。この中でいわゆる経済難民という形の者がその中に何人おるか。こういった段階にもう入るだろうと思うし、入っているかもしれないと思うんですが、もう時間がありませんから聞きますけれども、今も局長から話が出ましたが、インドシナ難民のいわゆる難民という定義ですね。これは、正確に聞きたいんですが、どういうふうに定義されておるのか。
  27. 股野景親

    説明員股野景親君) 先般の六月のインドシナ難民国際会議において、難民と判定することの基準についての一応の合意がございまして、その合意は、難民条約で言うところの難民ということが基本的な基準になるということが示されておりますが、他方これを我が国の法制度の上で判断いたしますと、先ほど来申し上げております入管法の十八条の二という条項の中の書き方になりまして、その十八条の二に記された基準が我が国にとっての難民であるかどうかを判断する基準になるということで臨んでおります。
  28. 安永英雄

    安永英雄君 確認しておきますが、本来は難民条約に言う定義に基づいて今から先、厳しく選別をする。今までの人はさかのぼってまではやらない。この五月以降難民として来ておるその人たちについて、審査の基準というのはこれは厳しくやる。それは難民条約によってやる。しかし、我が国については「これに準ずる理由」でその生命、身体の自由を害されるおそれのあった地域から逃れて日本に入った者という形の基準で今から資格審査をやるというふうになるんですか、どうです。  今までの場合は、審査制度というのが入ってなかった場合には、多少の事情聴取その他でこの十八条の二の適用で日本に定住させておったわけですね。今度違うというのはどういう形で違うんですか。厳しくやるというのはどういう具体的な基準でやるか、具体的にひとつ。今もうやっておるだろうと思うんですけれども、具体的な問題も含めてその基準というものをお示し願いたいと思います。
  29. 股野景親

    説明員股野景親君) 従来の取り扱いでは、昭和五十四年七月の閣議了解に基づきまして一時上陸許可を弾力的に与えるという運用をいたしてまいりました。したがって、その運用のもとではこの十八の二にかかわる審査許可についてもまさに弾力的な運用を行ってきた次第でございます。  これからは新しい制度のもとでこの十八条の二の条項を厳格に実施する。したがって、従来は十八条の二で審査を行っても弾力的な運用を行ってきたという経緯がありますが、今度はこれを厳格に実施するということでございます。  なお、厳格に実施するにつきましても、これは先ほど申し上げましたジュネーブにおける国際合意を踏まえた審査になりますので、国連難民高等弁務官事務所等の意見というものも私どもは参考にするということは考えております。
  30. 安永英雄

    安永英雄君 もう時間がありませんから私これで終わりますけれども、今何ともわけのわからぬ答弁なんですよ。今度は厳格にやる。そして難民条約に基づいてやる。しかし、今までもずっと弾力的に運用してきて、閣議了解も得ておるので弾力的にやる。しかし、それを厳しくやる。しかし、弾力的なことも考えておかなけりゃならぬ。何ともわけのわからぬ話ですよ。  最後に申し上げておきますが、これはやはり入管法の改正、これを正式に国会に提案して、みんなが納得した基準というものをもうはっきり決めて、その都度変わっていくような閣議了解あたりでやっていくやり方は改めるべきじゃないか。今までは法律を余りぴしっと決めておくと、状態が非常に変動するときにはその法律が邪魔になるということもあったけれども、今から先の難民の形態、こういったものも大体見きわめがついた以上はやはり法律改正をやらなきゃならぬ。そういう意図はあるかないか、法務大臣見解を聞いて終わります。
  31. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) お答えいたします。  難民の認定や一時庇護のための上陸許可など、難民問題への基本的な対応につきましては、我が国難民条約に加入するに際しまして、政府として難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律案を取りまとめ、国会で御審議をいただいたところでございます。なお、今回閣議了解で認められましたインドシナ難民へのいわゆるスクリーニングは、出入国管理及び難民認定法第十八条の二の一時庇護上陸ということに基づいて行うものでございます。
  32. 北村哲男

    ○北村哲男君 難民間の対立の問題についてお伺いしますが、品川の国際救援センターではベトナム難民中国難民の対立が深刻化しておりますが、現在の状況とその原因、そして今後の対策についてお伺いしたいと思います。  そして、なぜこの対立が品川の救援センターだけに起こっている現象なのか、ほかの施設ではないのかという問題。また、一時外泊で衝突回避を図ったということもありますけれども、対象はわずか五十人で、残る五百四十四人はそのままであ るというふうな報道もあります。それで問題が解決したということになるのかどうか。  さらに、九月十七日の読売新聞の報道では、中国系とベトナム難民の対立のために傷害事件が起こったと言っております。どういうふうな事件であったのか。この件はいわゆる刑事事件として捜査の対象になっているかどうかをお伺いしたいと思います。
  33. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) 品川にございます国際救援センターにかかわります実情について御説明申し上げます。  いろいろ報道がなされておりますが、品川の国際救援センターには現在千二百三十名が収容されてございます。品川センターの本来の最大収容人員は七百二十名でございまして、その約二倍に相当する者が入居しているということでございます。  本来、品川国際救援センターは、一時庇護上陸を認められたインドシナ難民が、大村レセプションセンターである程度期間を経過しました後に第三国への定住を待機している間、または日本定住希望者につきましてはその定住の準備といたしまして日本語教育、社会適応訓練等を行う施設でございまして、入居者は専らインドシナ難民、従来はほとんどベトナム難民だけでございました。それが今般のボートピープル我が国上陸急増という事態に対処いたしまして、他の難民関係施設もいっぱいになったという状況を踏まえまして、定員以上の入居者となったわけでございます。  その中には、いわゆる相当数の中国から乗船したと見られますボートピープルが含まれているということが後刻判明いたしまして、したがいまして当初想定されなかった状況のもとで、入居者間でベトナム系の者、中国系の者、人数におきまして中国系の者がベトナム系よりも上回るという状況に達しまして、入居者間の不安、あつれきといいますか、いろいろな摩擦問題が生じたわけでございます。  私どもとしましてはこの事態を深刻に受けとめておりまして、現在、警察御当局の全面的な御協力も得つつ、センターの警備、管理の強化、今後いろいろな事件の発生を防ぐとともに、周辺住民の不安の解消にも努めるようにしてございます。  さらに、先ほど委員指摘がございましたが、緊急的措置といたしまして、身元保証のはっきりしている者の一部の者に対しまして、法務省とも御相談の上、短期間の一時外泊も認めたわけでございますが、今後の措置といたしましては、やはり民族的、人種的状況の異なる人たちが同時に入居しているという基本的な問題がございますので、双方とも分離を希望してございますので、目下分離のための諸施設について関係方面と相談中でございます。
  34. 北村哲男

    ○北村哲男君 次の質問をいたしますが、中国人偽装難民のことにつきまして、中国人偽装難民流出防止及び不法入国した偽装難民引き取りについて、中国政府に対してどのような申し入れを行ったのかという点。それと特に同申し入れに対する中国側の回答、これは先ほどもある程度出ているんですが、その次に大事なことは、中国公民であることが確認された者は引き取る意向であるというふうに言われましたが、その中国公民とは一体何かということ。  さらに、中国公民であることを我が国において確認することは困難であると思われますけれども、それについてはどう考えるか。また、本人、関係者等の供述によって中国人であることが確認されても、戸籍の未届けなどの事情によって中国側中国公民であることが確認されなかった場合、これでも中国側は引き取るということになるんだろうか。この点についてお答えを願いたいと思います。
  35. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) 中国当局との折衝経過については先ほども触れましたが、基本的には八月三十一日、在京中国公使に対して外務省国連局長から申し入れた次第でございます。中国側反応は、委員指摘のとおり、一貫しまして中国公民と確認される者については引き取るということでございます。  しからば中国公民とは何かということが当然問題になるわけでございますが、中国側のこれまでの発言等を見ますと、中国公民と言ったり中国人と言ったりした場合もございます。したがいまして、私ども政府側としましては、中国公民とは一般的に中国人という意味理解してございますが、ただ今後、その具体的な内容につきましては中国側との具体的な折衝の過程でおのずと明らかになっていくものと考えています。目下百二十六名の具体的な資料を渡して、法務省とも御相談の上さらに追加資料を提出すべく準備中でございますが、その具体的なやりとりの中で具体的中国公民意味、内容がはっきりしていくものと考えております。
  36. 北村哲男

    ○北村哲男君 関連しての質疑になりますが、天安門事件の問題なんですが、現在日本に在留している中国の留学生や就学生が多数おりますけれども、さきの天安門事件に際して日本でも彼らを中心に反対のデモ等が行われました。このデモ行動がテレビで報道されたために中国の官憲に反政府的な行動をした者として顔が知られ、逮捕等の迫害の危険にさらされているという話を聞いております。  そこで、留学生、就学生だちは一日でも長く日本に滞在したいのですが、就学ビザあるいは留学ビザが期限切れになって帰国を余儀なくされている人たちが、その期間延長のために入管に殺到している。しかし、入管のそれらの人に対する態度がはっきりしない。その人たちは本国に帰ると迫害を受けるおそれがある人たちでありますけれども迫害を受けないという中国側の保証が得られない限り在留延長をすっきりと認めることはできないのだろうかということが現実の問題として起こっておりますけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。
  37. 股野景親

    説明員股野景親君) 本邦で既に在留を認められている中国人留学生等から、先般来の中国の情勢を踏まえて在留期間を更新したいと、こういう申請があります場合には、これはまず入管当局としてはその申し立ての事情というものをよく判断する必要があると考えております。そして、その申し立ての事情、それからまたその背景等についてよく吟味をいたしますが、これは個別のそれぞれの判断になると思いますけれども、個別によく判断した上で、これについて弾力的な対応ということも考えてまいるという基本姿勢でかねてより臨んでおります。
  38. 北村哲男

    ○北村哲男君 今個別的な判断というふうに言われましたけれども、その中には、中国にそのまま帰すと迫害を受けるおそれがあるのでそれについては配慮するという趣旨、積極的な趣旨があるというふうに聞いてよろしいわけですか。
  39. 股野景親

    説明員股野景親君) これは、まさにその個人個人がどういう申し立てを入管当局にするかという問題でございまして、仮に今委員指摘のような申し立てがあれば、それを実際に裏づけるような事情があるかどうかということについて個別に判断をするということでございます。
  40. 北村哲男

    ○北村哲男君 次の問題をお聞きしますが、先般の衆議院の法務委員会におきまして股野局長は、仮放免という手続も併用するという答弁をされておりますが、その後の新聞報道では仮放免は行わないという方針とも報じられております。仮放免は行わないということは、身柄引き取りが行われるまでは収容を継続して交渉の手段とするということなのかどうか、この点を確かめたいと思います。
  41. 股野景親

    説明員股野景親君) 出入国管理及び難民認定法の五十四条に仮放免という制度が規定されておりまして、先般の衆議院における御質疑の際に私が御説明申し上げましたのは、この五十四条という仮放免の制度があるという制度的なことを御説明することが私の趣旨でございました。  現在問題になっているボートピープルについて、この仮放免の制度を具体的に適用するということは当局としては考えておりません。これは我々としてあくまで制度的な問題についての御説 明であって、我々の方針としては、収容を続けて、そして中国側に対して今後も強力に送還ということについての交渉を進めてまいる、こういう方針で臨んでおります。
  42. 北村哲男

    ○北村哲男君 話が飛びますけれども、新聞報道によりますと、難民受け入れの基準の問題についてデューク・オースチン米移民局広報部長という人が、日本ボートピープルについては米国の難民受け入れ基準を準用するとよいというふうに語っておるという報道がありました。  もし、わかりましたら、その米国の基準と日本との違いの基本的なところはどこなのか。そして米国の基準を準用することができるのか、できないか。できないとすると、その理由を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいま委員の御指摘の米国の関係者の発言でございますが、私どもといたしましては、米国側としても難民であるかどうかの判定は基本的に難民条約に定めた考え方で判定をしていると承知しております。私どもとしても、したがって、その点については同じ難民条約を基本にして判定をするという点で同じでございます。
  44. 北村哲男

    ○北村哲男君 基準は同じであるというふうに理解してよろしいわけですね。
  45. 股野景親

    説明員股野景親君) 基準は同じ難民条約でございます。  なお、一言つけ加えさせていただきますと、難民については、いわゆる難民条約に基づくところの難民として扱いを受けるものと、先ほど来御審議をいただいておりますインドシナ難民と二つのものが我が国としても対象になるわけでございまして、インドシナ難民につきましては先ほど来申し上げているインドシナ難民国際会議を踏まえての対応ということになります。
  46. 北村哲男

    ○北村哲男君 もう一つ、外国の例ですけれども、フランスでは、国連難民高等弁務官事務所が認めた難民であるならば面接程度で入国を許可されると言われております。その基準は一体何なのかということ。国連難民高等弁務官事務所が認めた難民の基準は何かということと、それと日本で採用したスクリーニング制度とはどう違うのかを明らかにしていただきたいと思います。
  47. 股野景親

    説明員股野景親君) フランスについても、私どもの承知しておりますところでは、同じくいわゆる難民条約に基づく難民の概念を難民の判断基準にいたしておると承知しております。また、国連難民高等弁務官側との関係、これも同じくフランスは国連難民高等弁務官側との協力関係を維持しながら難民についての運用を行っておるところでございます。  我が国についても、難民条約を基本にするという点は先ほど来申し上げているように同じでございます。ほかに、同じく国連難民高等弁務官事務所側との連絡、協力関係というものも維持いたしておりまして、今般実施いたしますスクリーニングに関しましても、国連難民高等弁務官事務所側から私ども審査に対して、立ち会いを行うことを基本的に合意いたしておりますが、国連難民高等弁務官事務所側の立場は、関連する国際機関としての参考意見を言う、こういう立場でございまして、私どももそういうものとして協力関係を続けていくということにいたしております。
  48. 北村哲男

    ○北村哲男君 にもかかわらず日本では、難民に関しては極めて厳しいというふうに言われておりまして、あるいはアメリカ、フランスというのは非常に緩やかであるというふうに言われているのは、基準は同じでも運用の実態で厳しくしているというふうなことがあるんじゃないですか。
  49. 股野景親

    説明員股野景親君) 私どもといたしましては、従来、難民条約に基づく難民認定申請手続というものを難民条約上の一つの義務として遂行いたしておりますが、それに関連しては、私どもは適正な対応をいたしていると考えております。
  50. 北村哲男

    ○北村哲男君 さらにもう一つ、フランスの問題なんですけれども、フランスでは八〇年代に入って経済的理由による難民がふえた。これも入国許可の対象にしているというふうに言われておりますけれども、こういうことについては御存じでしょうか。あるいはわかっている範囲で御説明をお願いします。
  51. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいまのフランスの事情について当方としては詳しくは存じておりません。ただ、先ほど来申し上げておりますように、難民と一口に申しましてもいろいろな用語の使い方がございまして、一番厳密な意味では難民条約に基づく難民ということでございますが、そのほかに例えば何かの大きな動乱があるとかあるいは食糧危機があるといった場合に、国境を越えて人が移動するというような場合にも難民という言葉が幅広く用いられている状況もございます。そういう点で、必ずしもその難民という言葉自体からは中身が十分判定できないという事情もございます。
  52. 北村哲男

    ○北村哲男君 法務大臣にお伺いしたいんですけれども法務大臣は外国人労働者の受け入れ問題について、先日の九月十九日でしたか、相当高い質を伴った労働であるならば労働として単純であっても受け入れることを検討すべきだという趣旨発言をされております。これを九月二十二日では、我が国は外国人労働者を単純労働に使うことは全然考えていないというふうに発言の訂正をしておられますけれども、現実に我が国では十万人以上と見られる資格外労働あるいは不法残留の労働を放置しておる。そういうことが社会的事実として定着しておる。  一方、そういう事実が、アングラではあるけれども、法の外、アングラであるということによって法の保護の外に置かれ、いわゆる外国人労働者の人権の侵害とかあるいは不当な賃金とかという問題がある中で、時代のニーズと反するような形の発言のように思われますけれども法務大臣はその二つの発言の中で、その真意といいますか、本当のお考えといいますか、あるいは本当のお考え方はもう少しふやすべきではないかと考えておられるのではないか、そのように思えるんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  53. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 先般、十九日の大村を視察いたしました後の記者会見での私の発言が新聞紙上で報道されました。先般の記者会見における発言は、単純労働に従事する外国人についてはこれを受け入れないというこれまでの政府方針を踏まえた上で、質の高い技術者や熟練した技能を有する者についてはその受け入れの範囲を拡大する方向で検討すべきであるという趣旨を述べたのでございました。  なお、国会の御審議をお願いしております出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案は、ただいま申し上げましたような趣旨で、専門的な知識や技術または技能を持って我が国で働きたいということを念願している外国人の受け入れを拡大する方向で在留資格等の改変を行うというような趣旨のものでございます。
  54. 北村哲男

    ○北村哲男君 現実には、町の中では建設労働者とかサービス業、いわゆる飲食業なんかの裏方という人たちの中には正式でない不法労働者たちがたくさんいるわけですけれども、この事態については徹底的に取り締まってそういう事態をなくすべきだというふうにお考えなのか、ある程度それを認めて、社会的ニーズとしてあるということをお認めになるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  55. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 現在の時点におきましては、これを認めるという考え方をとるべきではないというように考えております。
  56. 北村哲男

    ○北村哲男君 現在の時点では確かに違法かもしれませんけれども、将来的に、社会が要求している事態に対していわば門戸の開放というか、受け入れの個別的条件を整備するなりあるいは滞在日数をある程度制限するなり、そういうふうなある程度の条件を整えて積極的に広げていくという方向はお考えにならないんでしょうか。
  57. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 今後の国会の御審議等によってそういう問題が検討されるようなことがあれば、そのときはそのときの問題であるというふうに考えておりますが、今の段階におきまして はそのようなことは考えておりません。
  58. 北村哲男

    ○北村哲男君 昭和六十年にインドシナ難民の定住枠を五千人から一万人に拡大したということがありますが、現在の定住者の実数と、そのうち日本に直接到着したボートピープルの数、アジア諸国に一時滞在中の難民日本に定住するため入国した者の数の内訳はどのようになっているか。それで、現在までの難民の認定数はどのくらいになっておるのか。
  59. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいままで難民をどのぐらい受け入れたか、こういう御質問であると思います。  これは昭和六十三年の末までの数字でまいりますと、我が国日本で定住するということで受け入れインドシナ難民の数が五千九百二十一という数になっております。約六千名近くを定住として受け入れているということでございます。  我が国は、またほかの国との比較がなされる場合に、これについていろいろ御議論はおありだろうかと思いますが、日本の国の一つの事情というもの、これは本来、国土が広くて移民を大幅に受け入れてきた諸国とまた非常に違うという事情もございますので、そういう中にあって、インドシナ難民受け入れについて政府は、ただいま委員指摘のとおり一万人という枠を用意しておるわけでございますが、それに対してただいま申し上げましたような、既に定住を認め、今後もその中での定住ということについては引き続き努力をしていくという考え方で臨んでおります。
  60. 北村哲男

    ○北村哲男君 現在までの難民の認定数はどのくらいかということはおわかりですか。
  61. 股野景親

    説明員股野景親君) せっかくの委員のお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、難民認定手続については具体的にどこの国から何名という認定の仕方を公表することを差し控えておるという経緯がございまして、これは本人たちが、難民ということが迫害ということを一つの基本にするという申し立てに基づいての申請手続になりますので、その点について国別の発表はいたしておりません。  ボートピープルについての数字は今手元にちょっと持っておりませんので、この点については別途委員に御報告申し上げたいと思います。
  62. 北村哲男

    ○北村哲男君 今のようなお話ですけれども、それではもう一つ中国人の留学生及び就学生は現在どれぐらいの数になっているかは大体わかりますか。
  63. 股野景親

    説明員股野景親君) まず、入国者という数で御報告申し上げたいと思いますが、昨年、昭和六十三年中に留学という目的日本に入国いたしました中国人の数は、千六百二十六名という数になっております。  他方、留学というのは委員御承知のとおり大学レベル以上の教育機関で学習をする人間でございますが、これに対しまして日本語学校等のレベルで勉強する学生については就学という形での在留資格があるわけではございませんので、ただ就学として法務大臣が在留特別許可を与える形での受け入れでございますが、そういう就学というカテゴリーになっている人間が中国から昨六十三年で二万八千二百五十六名入国いたしております。
  64. 北村哲男

    ○北村哲男君 ただいまの就学生、留学生の数はどうもありがとうございました。  先ほど国別の難民については数を差し控えるというふうに言われましたが、全体でどのくらいかということぐらいは言えませんか。
  65. 股野景親

    説明員股野景親君) 委員の御指摘の全体の数でございますが、昭和五十七年、これは現在の入管法における難民認定申請手続というものが発足してからの数でございますが、本年の八月までの間に難民認定を受けた人の数は総数で百九十四名という数がございます。
  66. 北村哲男

    ○北村哲男君 今の数を聞いても、五十七年からかなりの年数の間に二百名足らずというのは極めて少ない数と思いますけれども、これは日本に特殊な理由があるかどうか。他の国と比較すると極端に少ないと思えるのですけれども、その辺はいかがですか。
  67. 股野景親

    説明員股野景親君) 私ども難民条約に基づく難民認定数というものについての国際比較の数字を持っておりませんが、ただ先ほど申し上げましたように、難民条約の一般的な運用については国際的な条約の運用でございますので、基本的には各国とも、日本と各国と同じ基準で臨んでおると考えております。
  68. 北村哲男

    ○北村哲男君 五月以来、非常に多くの難民船の漂着があったんですけれども、八月の終わり以降その漂着はとまっておるというふうに聞いておるんですが、それは事実かどうか。それはどういうことを原因としているのか。そして少しおさまったが、今後十月以降、来年にかけてまた来る可能性があるのか、そういう見通しについてはいかがですか。
  69. 股野景親

    説明員股野景親君) 今年の九月五日以降については、直接漂着するボートピープルというものは、我々の方でそういうものを相手にしたということは起こっておりません。委員指摘のとおり、確かに八月について非常に短期間の間にボートピープルの漂着ということが多量に発生したわけでございますが、これについては我々として、まず、そのもとになった原因についていろいろ考えた結果として、その船がそもそも出航してきている地域についての対策ということを考えなきゃいけないということが一番急ぐべきことだったと考えておりまして、先ほど来御説明しておりますように、その意味中国から船が来ていると判断されるものが非常に多かったので、八月三十一日に外務省を通じまして中国側にこの防止についての申し入れを行った。また先般、法務省側からも同様に中国側に同じ点についての申し入れを行いましたが、これについて中国側は、中国側としての取り締まりを強化している、その結果が一つにはその後のボートの漂着ということが見られていないということになってあらわれている一因であろうということを言っております。  また同時に、私どもといたしましては、九月十二日に閣議了解をいただきました新しいボートピープルについてのスクリーニング制度というものを採用しているということも明らかにしておりまして、それがもたらす効果というものも一つ考えられるところでございます。  問題は、また気象条件によるということも考えられるところでございますが、それでは今後はどうかということになりますと、これは私どもとしても今のような状況が続くことを願っておるものではございますが、他方、このボートピープルの中に日本での出稼ぎということを志向するという向きが非常に強いという背景を考えますと、今後についても我々としてはなお予断を許さないという気持ちで対処していかなければならぬと思っております。
  70. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  71. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査のうち、難民問題に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私は、難民問題を中心といたしまして、入国管理行政あるいは入国管理体制、こういうふうな問題につきましてお伺いいたしたいと思います。  まず最初に、先日、法務大臣は御多忙の中を九州に赴かれまして難民関係の施設を視察されましたり、あるいは関係者と会談されたと承っておるわけでございますが、まず難民問題についての大臣の所信を冒頭にお伺いいたしたいと思います。
  73. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 難民問題につきましては、けさほども私の所信を申し上げましたとおり、当面の非常に差し迫った問題でございますので、従来考えておりますよりもはるかに急いでこれへ の対策を立てなければならないということで、法務省はもちろん挙げてこの問題の解決のために、対処するために努力をいたしている次第でございます。  先般、かねてから難民問題についての詳細な説明を聴取しておりましたが、なお私自身、大村の収容所等をやはりこの目で見ておく必要があるということを感じまして、早い機会にそれを見たいと思いまして、十九日に収容所並びにレセプションセンターの視察をいたしてまいりました。  現在、収容所につきましては、その収容所のいろいろ関係施設の改善等につきまして鋭意努力をいたしているところでございます。また、レセプションセンターにつきましても、現在プレハブの建設がかなり進みまして、これに一時収容しておりましたテントから移すというような段階に入っているところでございますが、これはあくまでも臨時的な措置でございまして、収容施設の拡充を図りますためには今後さらに予算措置等についても努力をいたさなければならないというように考えております。  当面、できる限りのことはやっておりますけれども、また可能な限り職員を動員いたしまして、現在その対応に当たっておりますけれども、何分収容された人員等の数も多い、また用語、言葉も違うというような問題から、なかなかこれに対応するということが困難な問題も多うございまして、苦慮いたしているところでございます。  なお、この改善のためにはさらに努力をいたしたいと思いますので、この上とも御協力を賜りますようお願いいたしたいと思います。
  74. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 本年は、特に五月以降ボートピープル日本への到着が急増いたしておるわけでございまして、その実態につきましては先ほど資料をいただきました。三十三件、二千九百五十名ということでございます。  そこで、このボートピープル人たちを分類いたしますと、いわゆる難民偽装難民に分けられる、それから難民の中でもいわゆる政治難民経済難民に分けられる、このように思うわけでございまして、いわゆる政治難民につきましては、難民条約あるいは入管法の十八条の二に規定する人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であることにより、あるいは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるというふうな者がこの政治難民に該当すると思うのでございますが、そのように理解してよろしゅうございますでしょうか。
  75. 股野景親

    説明員股野景親君) まず審査について、ただいま下稲葉委員指摘のとおり、入管法の十八条の二の規定によりまして難民性審査を行う。そこでいわゆる難民と認められるか、そうでないかということの判定をするということでございます。
  76. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そこで、政治難民経済難民の問題でございますが、従来はいわゆる難民という形で、先ほどの表現をかりますと弾力的な運用というふうなことで、率直に申し上げまして経済難民について余りそうやかましいことは言わなかった。それが、今回の国際会議に基づき九月にいわゆる審査規定、スクリーニングというふうなものを設けて、政治難民経済難民をはっきり分けて、経済難民についてはだめだけれども政治難民については受け入れよう、こういうふうな方針を確立した、そのように理解してよろしゅうございますか。
  77. 股野景親

    説明員股野景親君) そのとおりでございます。
  78. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それではお伺いいたしたいと思いますが、この三十三件、二千九百五十名の難民のうち、政治難民経済難民に該当する者が幾らか、あるいは偽装難民に該当する者が何名ぐらいいるのか、あるいはまだわからぬのが幾らぐらいいるのか、現在検討中の者が幾らぐらいかというふうな概数をお示しいただければありがたいと思います。
  79. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいま御指摘の点、審査を続行いたしておりますが、まず分けなければいけないのは、インドシナ難民か、そうでないかの区別でございまして、いわゆる中国からの偽装難民というのは、これはインドシナ難民ではございませんのでその点の区別を行っておりますが、引き続きまだ審査は続行中でございますが、九月二十六日現在の時点をとらえますと、インドシナ難民ではなくていわゆる中国人、あるいは中国人としてベトナムにかつて住んでいたけれども、その後中国に定住をしていたことのある者など等の疑いで、インドシナ難民でないという容疑収容をいたしておりますのが合計で七百三名という数になっております。それ以外の、それではいわゆる政治難民経済難民かという区別については、現在まだ基本的な調査を行っている段階でございますので、その点についての区分はいまだ数字としては行っておりません。
  80. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは、九月の十二日でしたか、閣議了解ができたというふうに承っているんですけれども、これらのボートピープル急増に対しまして政府はどのような対応をしているのか、またしようとしているのか、難民調整会議の方で、あるいは法務省でも結構ですが御答弁いただきたい。
  81. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) お答えいたします。  政府対応としては二つございまして、一つは、今、下稲葉委員が御指摘になった閣議了解をつくったということでございます。それからもう一つは、その閣議がございました前日に連絡調整会議というのを行いまして、その場におきまして、目玉は幾つかございますけれども、一番大きな決定事項は大村のセンター及び品川のセンターの増築を決定したということでございます。
  82. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それに関連いたしまして、政府予備費を決定したと承っておるんですが、予備費の額とその内容をお伺いいたします。
  83. 浜中秀一郎

    説明員浜中秀一郎君) ただいま御指摘いただきました、九月十二日付で予備費の使用を決定いたしましたが、その内容を御説明申し上げます。  すなわち、本年五月以降、ボートピープル上陸が多数に上っておりますが、これらの者を上陸後一時庇護し、収容するための大村難民一時レセプションセンター、こちらに収容いたしますが、定員二百名のところ、これを大幅に上回る者が入所しており、宿舎等々に入り切れず、屋外テント等に起居している状況となっておりました。このため、緊急にプレハブの収容施設約八百名分を設置することとし、この設置等に必要な経費一億二千万余りを九月十二日の閣議において予備費使用することといたしました。  またさらに、民間難民救援施設のうち、日本赤十字社の一時滞在施設の定員増、百五十名から三百十名に定員増をすることといたしまして、これに要する経費として施設運営費等を内容とする三千三百万余りの予備費使用を同じ九月十二日に決定したところでございます。
  84. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 閣議了解によりますと、外務省の方の系統になると思うんですが、品川にあります国際救援センター、これを三百人分増加するというふうな内容が盛り込まれておりますが、これについての予備費が見当たらないんですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  85. 浜中秀一郎

    説明員浜中秀一郎君) ただいま御説明申し上げましたとおり、予備費を使用いたしまして施設等の拡充を図る点は大村のセンター及び日本赤十字社等の関連でございます。 ただいま御指摘いただきました国際救援センターでございますが、こちらにつきましても入所者数が定員を大幅に上回っている状況であるため、収容施設を先生御指摘のとおり三百名程度拡充することといたしましたが、これらにつきましては予備費の使用でなく、既定経費の範囲内でこちらの施設の拡充をすることができるということが見込まれましたので、そのような対応とすることといたしましたが、いずれにいたしましても、施設を拡充するという対策を講ずるところでございます。
  86. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 午前中の質問、それから先ほどの政府側の答弁でも、いわゆる中国系の難民と思われる人が七百二名というふうな御説明でござい ました。片や中国側に紹介している人員が百二十六名ということでございましたが、この差はどういうわけでございましょうか。
  87. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) ただいま出ました七百三名という数字は、私ども不法入国者として退去強制手続をとっている者でございます。そして、委員御存じのとおり、退去強制手続の結果、退去強制令書というものが出まして、その者について国外へ退去させるということになるわけでございますが、百二十六名という数字は、退去強制令書が出ました者のうち私どもで事務的に中国側が国内で調査をやりやすいように資料をまとめておりまして、中国側にそのまとまった数字をとりあえず渡したものでございまして、この数字は順次ふえていく、こういう性格のものでございます。
  88. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 中国系のいわゆる偽装難民に対する政府の対処、これが大変重要なことだと思うのであります。  今、日本の国内では不法就労者問題というのが大変な問題になり、国会なりその他でも議論されているわけでございますが、オーバーステイあるいは目的外居留、活動というふうなことで十万人ぐらいの人たち不法に滞在している。その中に単純労務者なりなんなり問題になっている人もいるというふうなことでございます。この人たち退去強制なりなんなりやっているわけですけれども、それにいたしましても、パスポートを取り、そしてビザをもらって入国してくる。  ところが、いわゆる偽装難民というものはパスポートもない、ビザもない、いわゆる全くの密入国者だと、こういうふうに私は理解するわけですけれども、そういうふうな人に対する政府方針というのは、これはもうびっしりしていなくてはならない。退去強制をいたします、退去強制をいたしますと言うけれども、実際、その退去強制の効果のあらわれるようなやり方でなければしり抜けになってしまう、このように思うんですが、その辺についての政府対応あるいは決意、その辺のところをお伺いいたしたいと思います。
  89. 股野景親

    説明員股野景親君) 退去強制の実効をあらしめるということがこの問題について極めて重要であるという認識を私どもも持っておりまして、そのためにまず審査を厳格に行いまして、そして不法入国と判定された者を退去強制手続に従いまして収容を行う。  他方、送還を行うためには送還先である中国側がこれに応ずるということが大事でございますので、これは先ほど来御報告申し上げておりますように、外務省とも協力いたしまして中国側に対して送還の早期実現について今大いに努力をいたしておるところでございまして、また、こういう問題が再発しないように中国側でも不法出国の取り締まりを厳格化するということが必要であって、その点についてもあわせて申し入れているところでございます。
  90. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 百二十六名については資料を添えて申し入れしたと。七百三名が今お話しのように私はどんどんどんどんふえていくだろうと思うんですが、仮定の話で非常に恐縮ですけれども中国側中国公民であるとすれば受け入れるという前向きの姿勢を示しておられる、これは非常に結構なことです。ところが、百二十六名なら百二十六名のうち半分なら半分は公民として認めるけれども、あとはなかなかそれは認めがたい。あるいは七百何名についてもそうでございますが、日本政府としては中国系の偽装難民であるというふうに判断するけれども受け入れ国がそういうふうな姿勢でなかなか積極的な対応を示されない、そういうふうな場合にはどうなさいますか。
  91. 股野景親

    説明員股野景親君) そういうことがないように十分に資料を添え、中国側に対して日本側の提出した資料に基づいての判断を的確に行うよう強力に話し合いを続けてまいりたいと考えております。
  92. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私は、偽装難民の問題の一番難しいところは、今指摘いたしましたようなところにあるのじゃないかと思うんです。そういうふうな問題につきまして日本政府が非常に柔軟な姿勢をもし示すことがあるとするならば、それが直ちに相手国なり国際的な関係ではね返りまして、これに対する対応というものは取り返しのつかないような状態になるおそれなしとしない。さなきだに、不法就労者対策につきまして大変頭を悩ましている段階でございますし、今申し上げましたように、段階的に言いますと、それよりも質の悪いいわゆる密入国者であるわけでございますから、そういうふうな人たちが例えば収容所に長いこと収容されている、行き先もない、まあ知らず知らずのうちに消えてなくなってしまうというふうなことでは全く困るわけでございまして、その辺につきまして改めて法務省、そしてまた衝に当たるのは外務省だろうと思いますし、あるいは難民調整会議、この辺の決意をお伺いいたしたい。
  93. 股野景親

    説明員股野景親君) 委員指摘のとおりの決意をもって事に当たってまいりたいと思っております。
  94. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) 外務省といたしましても、いわゆる偽装難民中国への送還につきましては、今後実務的な協議を通じまして折衝に当たってまいりたいと考えております。
  95. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 先ほど申しました九月十一日の連絡調整会議におきましても、今委員指摘のような懸念が表明されまして、それに対して法務省出席者の方から、そういうことのないように考えろということが述べられたわけであります。
  96. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 法務省の答弁はよくわかりました。外務省の答弁はよく理解しにくいんですが、もう一遍ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  97. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) いわゆる偽装難民中国への引き取り送還に際しましては、実務的な協議を通じまして円滑な解決を図っていく所存でございます。
  98. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 この問題はこの程度にいたしておきます。  次に移ります。  難民船の到着によりまして、地元の関係自治体を初めといたしまして関係者の方々が予想もしない事案に遭いまして、予算その他の問題で苦慮しておる、午前中の安永委員の御指摘にもあったとおりだと思うのでございます。  私は、そういうふうな意味で特に政府にお願いしたいわけですが、難民関係関係省庁が十二省庁に及んでいるというふうに聞いております。そういうようなことで、難民調整会議が官房副長官を長としてこの辺の調整に当たっておられるということはよく理解ができるわけですけれども対応がやはり適時的確に行われるためには、この種の事案に対応するマニュアルというものが確立されているということが必要だと思う。  地元の人たちは、どこに陳情すれば何ができるのかできないのか、あるいはこういうふうなことはできるのかできないのか、あるいは補償をしてもらえるということでも、いっしてもらえるのか、その手続はどういうふうにすればいいのか。その辺のところがはっきりしておれば、現場の人たちはそれなりに安心して、それぞれの対応をすべきところに対応するというふうなことで円滑に行われると思うんですが、今度の場合は単なる難民のほかにいわゆる偽装難民の問題も絡んできているわけでございますし、いろいろ問題が複雑になってきている。それだけに私は早急に政府がそのような手順なりなんなりを決めたものをつくられて、それを示されるということが、国民もマスコミもあるいは関係の市町村も安心して、あるいはまた活力を持って、自信を持ってこういう問題に対応できると思うんですけれども、この点についていかがでございますか。
  99. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 委員指摘のマニュアルについて、我々も全く同感だと思っております。  現時点におきまして、できておりますものと現在できつつあるものと、実は二つございます。  既にできておる方のものは、これまで地元市町村が負担いたしました食費から始まって船の焼却費まで、これをどのような形で政府の方に連絡してもらって、それを国連難民高等弁務官が支払 うか、これはマニュアルというような名前で呼べるものが既にできております。  それからもう一つの方は、これはまだ現在検討中で、来月初めにもできる予定でございますけれども、一たん難民の船が地元へ来たような場合に一番先にどこへ連絡をして、その後どこへ連絡をずっと続けていくか、言ってみれば連絡網のようなものでございまけれども、これは今申しましたように来月の初めぐらいにできる予定でございます。
  100. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 偽装難民についてお伺いしたいわけですけれども難民が到着いたしますと、その時点でいわゆる偽装難民かどうかわからない、いわゆる一般的にはボートピープルということで受け入れがなされる。今度の場合も、いわゆる中国系の人たちであるということがわかったのは相当後だったというふうに思うんてす。そういうことになりますと、偽装難民について難民高等弁務官が所要経費を支弁かるというわけにいかないだろうと思うんですね。そうしますと、実務的にどの段階でどういうふうな手順で処理されるようなことになるのか、その辺について御説明いただきたいと思います。
  101. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 今政府で考えておりますのは、地元で支払っていただいた金が全部地元の負担になっては、これはもうとんでもない話だということで、まず地元に御迷惑をかけないということが大前提になっております。それで、難民の経費につきましては、UNHCRは先ほど申し上げましたように支払う。それから難民でない者については、これは当面UNHCRが立てかえてくれるということで地元の負担はない、そういうことになっております。  委員指摘の後者の方の支払いの細かい点につきましては、現在のところ関係省庁で協議中でございます。
  102. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 そうすると、偽装難民ということで事案を処理するのは、いわゆる密入国者というふうな扱いで法務省の所管になると思うのでございますが、法務省は今回の場合に、先ほど見てみますと予備費の中にそういう関係の経費というものは一円も入っていないわけでございますが、その辺のところはどういうふうになさっておるわけですか。
  103. 股野景親

    説明員股野景親君) 初めから不法入国者だということが明らかである者については、これはこれまでも不法入国者としての取り扱いを行っております。  従来、仮上陸という形で審査を続行しておって、その中から偽装難民であるという観点で不法入国者として入国者収容所収容する者、こういう者が今出てきておるわけでございますが、さらにその後も、五月二十九日に最初に到着したボートピープルから始まりまして全体についての再調査も行うことにいたしております。こうなりますと、これは不法入国として扱うべき人間の数が相当数に達すると思われます。  これについての予算措置は、今委員指摘のとおり、我々としてぜひ急がなければならないことでございまして、具体的には大村入国者収容所収容能力の拡充ということを中心に、職員が十分にその任に当たれるようないろいろな配慮のための予算も必要でございまして、こちらについては現在予算措置を急ぐという観点で関係当局と協議を鋭意行っているところでございまして、近々にも結論を得たいと考えております。
  104. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 次に別の問題に触れたいと思いますが、難民問題といわゆる治安問題について御質問いたしたいと思うのでございます。  我々の調査によりますと、香港におきましてベトナム難民の問題がいわゆる治安問題化しているということを伺っているわけでございます。五万名とか六万名とか言われているわけですが、それほどの難民を香港が受けている。そういうことで難民の出身地の相違による難民同士の集団的な衝突でございますとか、あるいは難民と警備に当たる警察官との衝突、さらには収容所からの数百名単位に上る脱走、現在も、先ほど来お話がございましたが収容施設を建設しようということに対する地元民の反対、実力行使、あるいは難民に対する配給食糧の奪い合い、争奪戦といいますか、というようなことによる暴動が伝えられまして、そういうような過程の中で難民自身の中にも死亡者を出している、あるいは多数の負傷者を出している、あるいは警備の警察官もけがをするという問題が起きまして、いわゆる治安問題化しているということでございます。  先般、品川の国際救援センターでございますか、そこにおきましても、これは警察庁もおいでのようなので事案の概要を承りたいわけですけれどもベトナム系の人たち中国系の人たちのトラブルが起きている。それに報道関係人たちも巻き込まれてけがをした人がいる。香港までのことはないんですけれども、そういうふうな問題が起きかねないと思います。そういうことになってはいけないわけでございますので、まず警察庁にその辺のインドシナ難民による刑事事件の発生、あるいは最近の実態、そしてその背景というふうなものについて御意見を承りたい、このように思います。
  105. 石附弘

    説明員(石附弘君) お答えいたします。  先生御指摘のように、警察といたしましても、香港においてベトナム難民による各種不法事案が発生し、死者までも出ていることは報道等を通じて承知しております。これを形態的に見ますと、収容難民同士の大規模な乱闘、それから難民と付近住民との衝突、それから難民と出動警察部隊との衝突事件、主としてこの三つの形態があるようでございます。  現に我が国におきましても、規模は異なりますが、都内品川の国際救援センターにおきまして、九月十六日でございますがベトナム難民中国難民による凶器使用の集団暴行傷害事件が起きています。これは、施設内にございます鉄製の物干しざおを折ったものを凶器として使っておるわけでございますが、重軽傷十一人が出ている。次に九月十八日の事件でございますが、取材中の記者及び制止警察官に対するやはり凶器使用の集団暴行傷害事件等刑事事件が起きております。さらに、これは八月二十七日から九月二十日にかけてでございますが、脱さく逃亡事案というようなものも発生しているわけでございます。私も現地を視察してまいりましたけれども、そういうことで難民をめぐる治安情勢まことに厳しい状況にあるというふうに見受けられるわけでございます。  こうした事案に対処するため、警察では、所轄警察署に警備本部を設置いたしまして警戒警備を強化するとともに、周辺地域への重点パトロールなど住民の安全確保に努めているところでございます。また、関係省庁に対しては、ベトナム難民中国難民との分離収容措置、さらに管理体制の強化等施設の適正な管理措置について要望したところでございます。  この対立抗争の原因等につきまして、私どもは次の五点があるように思います。  一つは民族的対立ということでございます。これはもともと中越間に非常に歴史的な民族対立があったということ。二番目に言葉の障害で意思の疎通が不十分である。三番目に被害者意識、強迫意識が双方に高まっている。それから四番目に自己防衛のための凶器の準備。これは、以前はベトナム系の収容人員が多く優勢であったわけでございますが、中国系の難民が入ってきたということで勢力が逆転しております。それが一つの恐怖心、また相互に自己防衛というようなことのために凶器を準備しておる。それから五番目は外部からの応援ということでございます。これは既に国際救援センター等を退所し都内や首都圏に定住した難民収容施設内の確執に敏感に反応いたしまして、ベトナム難民応援のために不法にこの施設内に侵入したというような事案が生じております。  以上でございます。
  106. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 今実態を聞いて、なるほどそうかなというふうに思うわけでございますが、さらに一つ私なりに考えてみてつけ加えたい点は、品 川の国際救援センターというのはもともと日本語を勉強したり、大村の難民一時レセプションセンター収容された人たちが、日本に定住したいとかなんとかということで、日本語を勉強したりあるいは職業訓練したりするためのセンターであると理解しておるわけです。そこへ今度中国系の偽装難民というのがわっと入ってきた。これは、本来は大村の難民レセプションセンターなり、あるいは中国系だということがはっきりわかれば入国者収容所収容されるべき性格の人だと思うんですね。  それが、そういうふうな種類の違う、しかも民族の違う人たち一緒になっている。片や、こっちは子供もおれば女の人もおる。一方は要するに偽装難民で、日本で働きたいという非常に屈強な人たちが多い。しかも数が多いということになれば、力関係ははっきりするわけですよね。そこところが、それこそ今お話しのように収容所がないからというふうなことで背に腹はかえられないでやられたことだろうと思うんだけれども、やはりその辺の配慮というものを何とかしていただければ、この種の事故というのはもともとあり得なかったんじゃないかというふうに思うんです。  警察庁からいろいろ一応の分析があったわけですけれども、その辺のところはよくおわかりになっておるし、そうは言ってもというところがいろいろあるかもしれませんけれども、やはり十分こういうふうな行政の上で配慮していかなければならぬ問題であろうと思います。  そこで、次の質問に入ります。  難民問題が多発するようになった原因なりなんなり、いろいろ取りざたされるだろうと思うんですが、私は、一つには日本の国際的な好景気といいますか、そして一応労働力不足ということが伝えられている。そういうことをカバーするために外国から労働力がいろいろ流入している。その一つのあらわれがいわゆる不法就労者の問題。単純労務者が足りないからということで需要と供給のバランスの関係で流入しているが、それがなかなか難しくなってきたということで、旅券も持たないしビザも取らない偽装難民という形で入ってくる、そういうこともこの問題の一つの背景にあるんじゃなかろうかというふうな気がするわけです。そうだとするならば、繰り返して申し上げますけれども、こういう不法就労者に対する政府対応というものが非常に毅然としたものでなければ、国際的な批判も受け、そしてまた、この種の事案の根本的な解決も図ることができないということになるのじゃなかろうかと思うのでございます。  そこで、そのことと関連いたしまして、いわゆる入管行政の実施体制の問題について触れてみたいと思うのでございますが、まず、入管事務に従事している職員の数と、ここ数年、何年でもいいですけれども、その増減の状況をお伺いいたしたい。
  107. 股野景親

    説明員股野景親君) 平成元年度において本省、さらには地方入管局、収容所等、全部合わせまして定員が約千七百六十名でございます。  この人数につきましては、平成元年度において増員を見た経緯がございますが、過去昭和五十四年以降の動きを見てまいりますと、六十三年までの間に約千七百五十名前後でずっと推移してきたという状況がございまして、本年度、平成元年度において実質的な増員が図られたという状況にございます。
  108. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それに対応する出入国者数、それから違法調査といいますか、あるいは在留資格の審査、そういうふうな件数の推移を、数字だけで簡単でいいですから御説明いただきたい。
  109. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいま昭和五十四年以来の数字について御披露申し上げた次第でございますが、まず出入国者数でいきますと、これは昭和五十四年当時約一千三十万程度であったものが、昨昭和六十三年には二・一倍程度、二千百六十万程度にまでふえておるという状況がございます。  それから不法就労等の法違反案件、これを違反調査案件として我々は扱っておるわけでございますが、我々として取り扱ったこういう案件の数、これは昭和五十四年当時で約二千五百件程度でございましたが、昨昭和六十三年では取扱件数が大幅にふえまして、約一万七千八百件程度にまでふえております。  また、在留資格、これは既に日本に在留している外国人の在留の問題について、その在留期間の延長あるいは在留資格の変更等にかかわる在留資格関係の案件でございますが、これは昭和五十四年当時で約三十六万案件程度ございましたが、昨昭和六十三年では六十九万五千件程度にこれもふえておるという状況がございます。  最後のこの在留資格関係については、これは一部いわゆる特例移住の案件が一時的にございましたので、その件数は外した一般の在留資格案件の数でございます。
  110. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 ただいまの説明を聞きまして、つくづく感ずるわけでございますが、対象の案件というのは出入国者数あるいは在留資格の審査数、あるいは強制退去の数は伺いませんでしたけれども、そういうようなものまで含めますと数倍になっておるというのが実情でございます。しかも昨今、不法就労者問題というのが大変議論されているわけなんですが、実は退去強制したいんだけれども収容所がいっぱいで入れられない。だから、これ以上もう余り摘発してほしくないとまでは言いませんけれども、なかなか実行ができないものだから、できない。  それでも退去強制なりなんなりの対象案件というのはふえているわけで、だから十万人を超えるほど目的外活動だとかオーバーステイしている人たちがいるというふうなことで、一罰百戒的なぐらいの活動で違反者を完全になくするまでとてもいかないのじゃないかというのが今の入国管理行政の実態ではないか。これは将来に向けて必ず私は禍根を残すと思います。それに対するびっしりした態勢というものが確立していなければ、そういうふうなまあまあ、まあまあというと語弊がございますけれども、そういうふうな態勢でいく限り必ず禍根を残す。ところが、降ってわいたようにと言っては言葉は悪いですけれども、今度は難民問題というのが出てきた。それに覆いかぶさってきたわけですね。  難民問題の処理のために、福岡の入管人たちが原則としてやるわけですけれども、九州以外の入管局なりあるいはその他の職員が何名ぐらい応援に行っておられますか、その実態を承りたい。
  111. 股野景親

    説明員股野景親君) かねてから全国各地の入管局の職員を福岡入管局あるいは大村収容所の方へ応援派遣をしておりまして、大体六十名程度の数の応援派遣を今までいたしてきておりました。  しかし、これは地方入管局、ほかのつまり応援を出している方の地方入管局の仕事の現状も極度に人手不足の状況にあるということがございまして、その意味で応援を長期に実施するということにはなかなか困難もございますので、ある程度交代で応援体制もとっていく必要がありますので、ただいま申し上げました数について、まず地方入管当局から応援を行いましたが、さらには地方入管当局のみでは足りない状況が出てまいりましたので、法務省の別の局、矯正関係人たちあるいは検察側の事務官の応援等も得るということで、応援体制についても日をある程度限って交代して応援を行っていく、こういう状況で今対処しているところでございます。
  112. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 六十名ぐらい九州以外の入管局の人を応援に出しておる。そのほか矯正局だとか検察庁からも応援に出しておる。この委員会でもしばしば論議されているわけですけれども、矯正局系統の職員ですら、この前の法律の改正なりなんなりで大変足りない。土曜日曜の面会についても大変問題があるんじゃないかという議論がされているわけでございまして、そういう人たちすら持っていかなければ何とも対応ができない。ということは、そういうふうなことの結果、非常にお気の毒なんですけれども九州の入管局の寺井さんとおっしゃいましたか、課長補佐の方が本当に過 労のために心不全かなんかで亡くなられた。そうした犠牲者まで出しているという実態ですね。  今度はひっくり返して全体の入管行政を見てみますと、さなきだに人が足りなくて一罰百戒みたいなことで糊塗せざるを得ない。糊塗するという言葉が適当かどうかはともかくとして、そういうふうな実態にある。その中からさらにこう持ってきているということになりますと、本来の入管行政、やらなくてはならないことが本当に手抜きにならざるを得ない。穴だらけにならざるを得ない。それがまた大きな問題になる。そういう過程で、やはり手抜きになればつけ込む人もあるかもしれない。いろいろな形で、そのしわ寄せが各方面に出てくると思うんです。このことについては、それは法務省も増員なりなんなりお考えになっておやりになっていることだろうと思うんですけれども、今のペースで進む限り、なかなか実態は改善されない。しかし、このままの格好でいかざるを得ぬというわけにはいかぬだろうと思うんですね。  そういうふうなことで、今その実情を伺ったんですが、増員なりあるいは予算措置というのは法務省は要求する立場でございますので、その人員なりなんなりをつける方の立場の総務庁それから大蔵省、そのような実態に対応する予算なり人なりをつける方の立場からひとつお考えを承りたいと思います。
  113. 浜中秀一郎

    説明員浜中秀一郎君) ただいま御指摘ございましたように、法務省におきます入管関係業務は最近事務量が大変増加をいたしているところでございまして、私どももその点はよく法務省当局からも承っておるところでございます。  この中にありまして、職員の増員の問題でございますが、後ほどまた総務庁の方から詳しく御答弁申し上げるかと思いますが、例えば全体の職員数を政府全体として削減を図っていく定員削減の中で、例えば入管局の職員につきましては昭和六十一年度におきましては千七百四十名でございましたが、その後この事務量が増加している、他方定員削減も図っていく、こういう中で、昭和六十三年度におきましては千七百四十九名、そして平成元年度におきましては千七百六十五名と、最近では急激に増員を認める等の配慮をしてきているところでございます。  また、このような実態でございますので、定員の増加のみに頼ることなく、各般にわたる対応を構ずる必要があろうということで、入管業務の電算化、また出入国審査経費及び不法就労特別対策経費等大幅な増額を認めてきたところでございまして、御参考までに申し上げますと、入管業務の電算処理のための経費は、平成元年度におきましては昭和六十三年度に比べまして約六割の増加を見ているところでございますし、また入管関係関係予算も、法務省予算が全体で抑えられている中で約二割の増加を見ているところでございます。  このようにきめ細かく対応を図っていくということが必要でないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、今後さらに業務の増加が見込まれるような状況でございますので、多面的な角度から検討を加えて、業務が円滑に推進されるように考えてまいりたい、このように存じております。
  114. 川邊新

    説明員(川邊新君) ただいま大蔵省の方からもお話ございまして、若干繰り返しになるかもしれませんですが、特に入国管理行政の事務量が大変ふえていることは私どもも十分承知しているところでございます。ただ、先生御承知のとおり、現在公務員全体の定員削減計画を行っているところでございます。例えば平成元年度におきましても、国家公務員全体で三千人を超える人員を純減しているという状態でございます。そういう厳しい定員事情のもとではございますけれども入管部門につきましては、そういう事務量の増大を勘案いたしまして、平成元年度におきましても法務省の御要求に対しては重点的に配慮した増員を行ったところでございます。  また、今後どうしていくかということだろうと思いますが、現在平成二年度の要求を受け取ったところでございまして、検討しているところでございますが、厳しい定員事情が相変わらずあるわけでございますけれども、要求内容を十分精査させていただきまして、適切に対処してまいりたいと考えております。
  115. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私も役人をやっておりましたけれども、役人の答弁というのは大体ああいうふうなものだろうと思うんです。役所は役所の立場があっていろいろ仕事をやっておられるわけですし、それもわからぬわけじゃないんだけれども、やはり今日本が置かれている国際的な立場、そして入管行政の重要性、そして今具体的に多くの重要な問題が山積している、そういう中でどういうふうな対処の仕方をしていくかとなれば、まず、その基本的な対処の方針があって、そしてそれに伴ういろいろな施策、やり方というのが出てこなくてはならない。ところが、もう定員の削減ありき、それから予算の枠はこれだけだと、その中で泳ぐしかしようがない。なるほど国庫は無限じゃございませんから、締めるところは締めてやらぬといかぬし、難しい問題もあると思うんだけれども、その辺のところは役所の方でも十分認識してほしいと思うんです。  先ほども予備費の問題でちょっとお伺いしました際に、外務省の三百人分の施設拡充は既定経費の中でやるんだというふうな御説明がありました。それ以上は聞きませんでしたけれども、予算の要求をするときはぎりぎりだ、ぎりぎりだというふうにやっていて、そしていつも今ごろになりますと節約がかかってきて、その中からある程度の金を出さなくちゃならない。その中でやはり今申し上げましたようなことを応急の処置として対応するということになるのかなというふうなことに思いついたわけでございます。  そういうふうなことももちろん大切かもしらぬが、こそくなことではなくて、やはり問題の重要性を認識し、そして要らぬ行政はもう率直に大胆に切っておけばいいんです。その中で重点的な、しかも国際的なテーマになっていることについては大勇断をもって臨まなければ行政は確立されない、前進しない、このように思うわけでございますが、最後にそれにつきましての大臣のひとつ所信をお伺いいたしたいと思います。
  116. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 先ほど来、下稲葉委員から、今後の問題につきまして私どもに非常に勇気づけていただくようなお言葉をいただきまして、大変ありがたく存じております。  先ほど来、お話に出ておりますように入管関係の職員、相当な応援を出してやっているにもかかわらず、ほとんど極限状態で仕事をしているというのが実情であるように思います。これにつきましてできるだけ速やかに解決をしなければ、単に第一線で働いている者が極限状態にあるというばかりでなく、応援に出している側から見ますならば、経常的な業務の処理のために追いまくられ、それが行政サービスの低下につながるようなことになるおそれもないとは言えませんので、そういう対策につきましても考えていかなければならないと思います。  もちろん、大蔵当局におきましても、また総務庁におきましても、我々の今努力していることにつきましては理解を持っていろいろ検討をしていただいておりますけれども、なお、この上とも私どもとしても最大限度の努力をしながら、また定員あるいは予算等につきましても必要なお願いを続けまして、この入管業務に支障の起きないように努力をいたしたいと思いますので、この上ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。
  117. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ベトナム漂着難民に対する政府対応に関して、これは将来非常に大変な問題になる、こういうことで、黒柳議員と私、矢原はベトナム難民急増に対して現地の議員と一緒に八月二十八日に現地視察、長崎県の大村難民一時レセプションセンターの視察、八月二十九日には東京に引き返しまして、首相官邸にて四点にわたり対応策を早急に講ずるよう、石原官房副長官を通じて海部総理大臣申し入れました。そして八月三 十日には姫路の定住促進センターを視察いたしまして、いろいろと要望を伺ったわけでございます。  そういう中で対応していただいていると思うのでございますが、今回、国際救援センターの九月十六日の乱闘事件を見まして、私たちは総理大臣に対して当面の対策として、一つ収容施設の緊急な増設等を行わなければ問題が起きてくる。例えば大村においても二百人のところに八百人、そしてテントを張りつけて大変な状況になっている、そういうことで私たちは人道上の配慮について政府に強く訴えたところでございます。  先般も同僚議員からいろいろの質疑がございましたけれども、重複は避けますけれども、こういう問題が出ることについて事前に私たちは懸念を持って政府に訴えている。そういう中で一つは、十二省庁にまたがると言っているけれども法務大臣にこれは簡単に答えていただきたいんですけれども、やはり窓口を一本化しなければ各省庁の横の連携も、責任はどの省庁がとるのか、こういうことで非常に対策がおくれてくる。そういうことで今後の課題としては、十二省庁の中で責任は私たちがとります、どういう問題が起きても縦横早急にやります、こういう明確な責任の所在というものがなければならないと思いますが、その点の答弁をいただきたい。  そして、具体的な問題としては、こういう懸念を指摘しているのに、なぜそういうふうな大量の人たち対応する施設がつくられないのか。事件が起きて後追いになっている、こういう責任についてはどう考えているのか、伺います。
  118. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま矢原委員の御指摘、非常にごもっともなことであると思います。  御承知のとおり、現在、この行政は各分野にまたがっておりますので、その連絡、調整のためには政府としても努力をいたしているところでございますけれども、なお問題の解決はなかなか私どもの思っているように速やかには進んでまいりません。したがって、これを改善いたしますためには、さらに政府全体が一丸となって努力をするようなことを考えていくということが当面の緊急な課題であると思います。従来行っておりますやり方だけではなく、さらにそれを強化していくための努力政府としてもしなければならないということは、私、法務大臣としても十分念頭に置きまして、関係方面との折衝に当たるように努力をいたしたいと思います。  収容施設につきましても、先ほど来お話が出ておりますけれども、例えば大村の場合につきましても、緊急な対策といたしましては、自衛隊の協力を求めて一応テントを借りて収容するというような方法をやっておりますし、またこれは直接法務省の所管ではございませんけれども、一時収容レセプションセンターにつきましては現在プレハブの工事を進めておりまして、テントからそれに移すことをやっているところでございますけれども、しかし、プレハブと申しましても、私もこの目で見てまいりましたけれども、すぐぱっと建つようなものではございませんし、まず整地をしてそこに建設をしておりますけれども、長い雨続きでぬかるみの上に建設を続けているというような難工事をやっているというようなのが実情でございまして、速やかにやらなければならないことは重々わかっていながら、なかなかすぐにはそれができないということで、目下急いでやっているところでございます。これからもさらに努力を続けたいと思います。
  119. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 質疑が非常に重複している面もございますけれども、この収容施設の問題からいろんな問題点が中越の人たちによって今起きている。  先ほども質問があったかと思いますけれども、もう一回ちょっと伺いますが、インドシナ政治難民経済難民、それから偽装の中国人その他となるんでしょうけれども、もう一回、わかっている月日の中での人数、それから予算措置の数字、予備費の問題と予算措置と二つに分かれると思いますけれども、この点もちょっとだけ明確に、わかる範囲で結構ですから、きちんとした御答弁をいただきたいと思います。
  120. 股野景親

    説明員股野景親君) いわゆるインドシナ難民とそれから偽装難民、これは中国から来たボートピープルがこれに当たるわけですが、この区別ということが第一に我々が行わなけりゃならないことでございます。  これにつきましては、先ほど来御説明を申し上げている数字を重ねて申し上げますが、五月二十九日、最初のボートピープルが到着して以来今日までの間に、我々として偽装難民つまり中国からの人間としてこれは不法入国であるという扱いで収容施設収容している人間、これが合計で七百三名でございます。  なお、ボートピープルとして現在このほかにももちろん到着をしておるわけでございますが、それについてもなお偽装難民としての中国人をさらに判別する調査を続行しておりますので、この七百三という数字は今後もさらにふえる見込みでございます。  そのほか、今度は九月十二日の閣議了解をいただきました新しいスクリーニング制度で、本来の難民といわゆる経済難民との区分、これを今後新しく行うことになっておりますが、これについての区分は現在準備中でございますので、まだその区分をした数というものは出ていない状況でございます。  それから別途、今度は収容施設についての問題でございますが、これは先般の九月十二日に閣議で決定をいただきました予備費の支出につきましては、ただいま大臣からお話のありました大村の一時レセプションセンター、これの施設の増設について、約八百人分を収容するプレハブを建設する予算手当てというものをここでいただいたという経緯がございます。  他方、今度は不法入国を行ったと判定されて収容施設収容される人たち、これは大村の収容所等の法務省収容施設収容することになりますが、どちらについてはまだ新しい予算措置について現在鋭意研究中でございますが、こちらも非常に急ぐという事態がございますので、近々にもその結論を得るように目下関係当局と協議をしている、こういう状況でございます。
  121. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 先ほど矢原委員の御質問につきお答えいたしましたことで、ちょっと私のお答えが不正確なところがございましたので補足させていただきたいと存じますが、それは大村の一時レセプションセンター、これはうちの所管でないというようなことを申し上げましたが、これは法務省の所管で財団法人アジア福祉教育財団、そこに委託をしてやっているということで、所管はうちでございますが、その点がちょっと間違っておりましたので訂正させていただきます。
  122. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 先ほども質問がございましたけれども、私たちもこの第六十一条の二の「難民の認定」というものが、例えば中国人偽装難民の場合でも出入国管理及び難民認定法違反ということで、大概身柄は拘束、同法に基づき強制送還のための退去強制令書配付まで、職員の皆さんが少数で非常に苦労されている。通訳の方も非常に少ない、そして彼らのボスと五人ほど私たちがいろいろと質疑をしても全くはかどらない。こういうことで該当の職員の皆さんも、臨時の方を含め大変な努力をされていらっしゃる。そういうところで不幸な事故も起きたということで、私たちも非常にそのときもやはり胸を痛めたわけでございます。こういう問題と、それから収容者の健康とか衛生に対する、当時私たちも食事を一緒にしたりしてみましたが、ハエも飛んでいる、そういう中で赤痢も出てきた、こういう問題もございましたけれども、これはやはり留意をしていかなくてはいけない。  こういうことを考えておりますと、今後の問題点として、六月にジュネーブで開かれたインドシナ難民国際会議での包括的な行動計画に基づく難民認定法の厳格な運用、インドシナ難民対策連絡調整会議事務局の設置による行政の窓口の一本化というのは、これはやっぱり早急にやらなければいけないと私は非常に痛切に感じるわけでござい ます。  こういう事態の中で、私たちが総理大臣申し入れをする。九月の六日には衆議院の法務委員会が取り上げていらっしゃる。いろんな項目も出ておりますが、その中で一番最新のものは、九月の十一日に関係省庁会議、それから十二日に閣議の了解、こういうふうになっておりますけれども、やはりこれは明確な責任の所在をきちっとさせるために窓口は一本化しなければいけない、こういうことでございますから、この点は、先ほど法務大臣から答弁いただきましたけれども、早急に検討してやっていただきたい。重ねてもう一回答弁を伺いたいと思います。
  123. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいまの矢原委員の御意見、本当に収容所の問題につきましてつぶさに御検討いただき、大変示唆に富んだこれは重要な御意見を承りましたことについては、私どもも大変感謝をいたします。  なお、ただいまも御要望のありました政府が一体となってこれに対処するための努力というのは、法務大臣といたしましてもこれからも続けてその実現の方向に向かって努力をいたしたいと思いますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  124. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 それから、地方公共団体のすべての費用については国が補償する、こういうことは私たちが申し入れした段階でも答弁いただいたわけでございますが、これについては地元から申し入れがあればすべてをきちっとしている、こういうことが続いているわけですね。答えてください。
  125. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 地方公共団体の負担した費用につきましては、現在、各市町村から実際に支出した分を我々の方で受け取っておりまして、それをまとめております。早急に各地方団体に払うことができると思っております。
  126. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私たちはベトナム政府中国も含めるわけですが、この経済難民流出防止中国は偽装の問題でございますけれどもベトナムについて外務省から伺っておるところでは、このベトナム対応でコ・タク外務大臣が六月の十三、十四日、ジュネーブでの国連主催のインドシナ国際会議で、経済難民流出防止について沿岸警備と送還の問題を日本側が訴えたのに対しまして、自主的に帰る人は受け入れる、強制送還受け入れない、こういう二点のベトナムの返事で、その後交渉がなされておらないようでございますけれども、この点については現時点でどうなって、そして今後どうするのか、その点をはっきり伺いたいと思います。
  127. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) お答えいたします。  ベトナム政府に対しましては、先般来、再三にわたりまして外交申し入れを行っているわけでございますが、最近では、先ほども触れましたとおり、八月三十日にパリにおきまして中山外務大臣からコー・ベトナム外務次官に対して申し入れたとおりでございます。その申し入れの主眼点は、特にその時点ではベトナムに対して流出防止のための実効的措置をとるようにということでございます。  その後、内閣の新たなる措置が出まして、閣議了解後、ベトナム政府に対しまして我が国の新しい制度説明したわけでございますが、そのときも今後新しい制度のもとで難民認定をされなかった者、いわゆるスクリーンアウトされた者の送還につきましても先方指摘済みでございます。ただ、新スクリーン制度発足したばかりでございますので、新しい制度のもとで具体的に送還すべき者がまだ生じておりませんので、今後ベトナム政府との折衝の問題であると考えております。先生おっしゃられましたベトナム政府の従来からの立場といいますか、自主帰還を受け入れて強制的な送還受け入れない、これは国際会議等の場でベトナム政府が表明している立場でございます。
  128. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 今後とも外交交渉できちっとした努力をしていただきたいと思います。  私たちはもう一つ、この漂着の難民に対して、我が国に漂着するに当たって、いわゆる第三国の援助等とか、報道によりますとブローカーの問題等々もありましたけれども、いろんな働きがあるのではないか、そういうことに対して政府は実態を調査して厳正なる対応をすべきである、こういうふうに申し入れたわけでございますけれども、現時点においてどういうふうな把握をされ、そしてその実態にどう対応されようとしているのか、その点を伺います。
  129. 股野景親

    説明員股野景親君) この不法入国を防止するというためには、委員指摘のとおり、厳正な対応が必要でございまして、これには関連する情報をいろいろ我々としても十分入手する必要がございますが、これは法務省当局あるいは入管当局のみではなかなか十分に対応し切れない面がございますので、警察の、捜査当局の御協力もいただきながら不法入国に介在する組織等についての解明を目下急いでいるという状況一つございまして、国内的にそういう努力を重ねてまいります。  他方、また中国側の当局の協力による不法出国の取り締まりという面も非常に大事でございますので、この点も法務省当局として、外務省側とも協力しながら、中国側のこの点についての協力を得るというために既に何度かにわたって中国側と接触を持ってそういう話し合いを行い、また中国側不法出国について厳正に対処するという発言日本側に対して行っているという状況がありますので、そういう中国側との関係ということもあわせて今後も努力を重ねてまいる、こういう方針でございます。
  130. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 努力をしていただきたいと思います。  私たちが視察をした一つの中で、ちょっと衆議院でも今見ておりますと出ていないなと、いろんな質問の項目を見ましたんですけれども。  それは、姫路の収容施設に参りましたときに、定住ということですべての日本語の教育が終わり、そして仕事も行き先が決まる。ところが、帰ってこられる方々が異口同音に言っていることは住宅の問題なんですね。公共住宅、例えば市営、県営、または国関係の住宅あっせん等の問題はあるけれども、結局、食文化の違いで日本人の周辺の方々からいろんな非難を受けて、また帰らざるを得ない。だから住宅環境というものをもう少し配慮していただいて、公共の住居に入れるような努力をしていただけないかと、これは指導される方々からも強く、実態の分析の中でこれが一番なんですと。本当にこのことに国や県や市が協力して、なぜもっと力を入れていただけないのかと。  今ここでお話をする時間はございませんけれども、余りにも食文化が違うので、こう言えばもうわかると思いますけれども、周辺が全部もう協力をしてくれない、理解をしてくれない。この問題については皆さんのところにどう吸い上げられて、どう対応されているのか。だから私は、窓口の一本化が必要なんですよと、そういうことも含めて言っているんですけれども、お伺いしたいと思います。
  131. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 住宅の問題につきましては、まさに先生が御指摘になったように、日本に定住が決まった難民人たちの一番の大きな問題でございます。幸い、現在のところは難民に対する求人、難民を希望する会社は非常に多いため、我々も若干わがままを申しまして、住宅も職場と一緒に面倒を見てやってくれないかということを言っているわけですけれども、我々といたしましてもそれだけではとても未来永劫解決するものではないと思っておりまして、企業のみならず、地方団体等にもいろいろお願いして回っている状況でございます。
  132. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この点は横の連絡を密にしていただいて、これは人道的な問題があると思うんですね、そういう意味で一生懸命努力をしていただきたいと思います。  それから、九月十二日の閣議了解、そしてその前の十一日のインドシナ難民対策連絡調整会議、こういう中で関連する一時庇護のための上陸許可、第十八条の二でございますけれども、官房長官もこの前はこういうふうな詳しい奥深いところまで理解せずに発言をされたというような問題で いろいろ前後あったと思いますが、同条の第二号の難民を処理する判断の法的な手段、今までもやってこられた非常に拡大した、本当に緩やかなそういう対応というものは、人道的な立場から配慮されたと思うんですね。そういう意味で私はこの第二号の条項を見ておりまして、人道的配慮の見地というのはここにも明確になっている。  そして国際的なそういう立場の中で、じゃ今後何が問題になるのかということになりますと、各国の地域別の定住受け入れの数がその国がそれだけの条件を備え得るものなのかどうかということで、国際的に人道的にやはり問題が取り上げられてくると思うんですね。そのときに日本対応はどうなのか。受け入れがこの数だからこれでいいんだと、そういうわけにはいかない問題が今後はあると思うんです。たまたま途中で中国偽装難民の問題が出ましたから日本じゅうがびっくりして、その方の対応に追われてまいりましたけれども、既に国際的にはいろんな問題が出ております。  そこで私、データを申し上げますから、将来方向としてはどうすべきであるか、こういうことを法務大臣から最後になりますけれども伺いたいと思います。  これは五月末現在でございますけれども、「各国・地域別定住受入れ数推移」ですね。一番は米国で七十一万八千百九十九人。これはいろんな問題がありましたから彼らも責任を持っているんでしょう。カナダが十二万、オーストラリアが十一万、こう出ています。そうして日本対応する同じような国ということになると、やっぱりヨーロッパでは西ドイツになる。そうすると西ドイツは二万三千五百九十四人の定住の受け入れの推移が明確に出ている。西ドイツは五番目なんですね。そして英国でも、日本と同じような国になりますが、一万七千八百九十四人になっている。それから香港、ニュージーランド、スイス、オランダ、ノルウェーとなるけれども日本は十二番で、六千三十八。これは一万の枠の中でこういうふうになっている。今は少々ふえていると思いますけれども。  こういうふうな中で、日本の一万の枠というものは、当局では第十八条の二第一号、第二号の人道的配慮の見地、こういう中で難民条約とは別個に、いろんな諸般の状況からの判断の中で対応ができると、こういうふうな見解であろうかと思いますけれども、私は将来はやはり国際的な見直しが必定になってくる、こういうふうに考えるわけでございますけれども、その点を最後法務大臣見解を伺いたいと思います。
  133. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいま委員指摘のような各国の定住の受け入れ数の実態というのがございまして、日本についても日本の固有の状況というものがございまして、国土の小さいこと、あるいは人口が多いこと等の固有の状況を踏まえた上で、なおかつ日本として国際協力の観点から、これまで累次の閣議了解によって定住枠の数を増してまいりました。  現行では一万人という定住枠がございまして、これまでのところ、今までに受け入れている定住のボートピープルについては約六千人余りという状況になっておりますので、まだそういう意味では今の一万人の枠というものは機能しておるわけでございますが、今後については、そういうまだ一万人の枠というのが機能し得るというただいまの状況を踏まえた上で、なお関係する諸国等との協議もしながら適切に対処していく、こういうことが必要であろうと思っております。
  134. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま入管局長からお答え申し上げたとおりでございますが、当面は起きておりますボートピープルの問題等につきまして、法治国としてこれに対応することに全力を挙げているわけでございますが、やはり将来の問題といたしましては、人道的見地からこういう問題についてさらにいろんな角度から検討を加えて改善をしていくということは必要なことであろうと、そのように思っております。
  135. 橋本敦

    ○橋本敦君 マスコミが一斉に報道しておりますが、カンボジアに駐留しておりましたベトナム軍二万六千が本日をもって完全に撤兵が完了するということであります。二十五日にはプノンペンで盛大に完全撤兵の式典が行われたことも報道されました。  この問題は、カンボジアをめぐる和平の前進という、そういう面から見ましても、また長年にわたる駐留がベトナムの経済再建の上でも大きな負担になっていたことを考えましても、ベトナムにとっても大変よいことであり、難民問題が今審議をされておりますが、それとのかかわりにおいても私は歓迎すべき事態だと、こういうふうに認識しております。  まず、この点について法務大臣のお考えはいかがでしょうか。
  136. 股野景親

    説明員股野景親君) ベトナムのカンボジアからの撤兵という動きが現在、委員指摘のようにあるという事実がございます。これは長年の紛争のもとでベトナムがそういうカンボジア問題という重荷をしょっておったという事態ベトナムの国内のいろいろな困難の一つの大きな原因になっていたという状況がございますので、その観点からカンボジアからの撤兵ということが実際に実現するということは、ベトナムがそういう国内の困難に本格的に取り組めるという状況を開くという意味でよいことであろうと思いますし、また、そういうことを通じてベトナムが国内の経済社会発展を遂げるということが、いわゆるボートピープルの流出ということに対する一つの重要な防止の効果を上げてくるということを期待したいと法務省当局としても考えておるところでございます。
  137. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務大臣も同様の御見解だと承ってよろしゅうございますか。
  138. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 私も同様の見解でございます。  特に私は、例えばタイとカンボジアの国境にあります難民収容施設、カオイダンとかバンノンサメットとかいうところを見てまいりまして、向こうの人たちにも会いましていろんな話をしたこともございますので、今入管局長が申し上げましたようなことは、自分自身実感を持って感じているところでございます。
  139. 橋本敦

    ○橋本敦君 なお、カンボジアの和平を達成する上では、残虐なポル・ポト政権の内乱的策動を許さないための措置とか、いろんな問題が残るわけですが、ベトナムにとっては今後経済再建に一層力を入れていく上でもいいことだということでは認識が一致すると思うんです。  外務省は、この完全撤兵という事態がここまで進んでいる事実については、その事実の認識はお持ちですか。
  140. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) 今般のベトナム軍のカンボジアからの撤退につきましては、以前からの長い十一年越しの懸案でございましたけれども、撤退がなされるという形はもちろん今回一方的な形でなされているわけでございますが、一つは有効な国際的な監視という形でこの撤退が実行されるということで、この夏にパリで行われましたカンボジアに関しまする国際会議でも議論されておったわけですが、そういう形が確保されなかった。それから、カンボジアの国内問題につきましても、いろいろ議論がありましたけれども合意が見られないという形で、現在非常に微妙な状況になっているわけでございますが、そういった状況のもとでの一方的な撤退ということでございまして、国際的に合意された形でこれが実行されなかったということはやはり残念な部分があった、こういうふうに考えておるわけでございます。
  141. 橋本敦

    ○橋本敦君 残念な部分だけ言ってもらうために出てもらったんじゃなくて、基本的に完全撤兵という事態外務省としてもそれはそれなりとして歓迎すべきこととして受けとめていいはずじゃありませんか。
  142. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) ベトナムの撤兵に伴いまして、カンボジアの全般的な平和解決が包括的な形で図られるということが国際社会の願望でございまして、日本政府もそのために今般のパリの会議を含めまして積極的な参加をしてきておったわけでございます。一方、撤退がなされるというこ と自身は非常に重要なことでございまして、そういう方向に向けての重要な一歩であるというふうには思いますが、これが国際社会が納得する形で実行されるというところも同時に重要でございまして、そういう点を今申し上げたわけでございます。
  143. 橋本敦

    ○橋本敦君 いずれにしても、撤兵されるということ自体はいいことであるはずなんですよね。  そこでもう一つの問題は、今日の難民ということが出てくる歴史的な根源的な背景としてベトナムの大変な経済困難があることは、これはもう言うまでもないわけです。そういうベトナムの経済困難の根源は、歴史的に見ますと、言うまでもありませんがフランス植民地時代の搾取、それから日本軍の軍事占領、その間で二百万人が餓死するという事態もあったと言われておる。独立後は再びフランスの軍事侵略があり、アメリカのベトナム侵攻があった。そのために筆舌に尽くしがたいほど国土が破壊されたわけです。私も二度ほど調査ベトナムを訪れておりますが、本当に惨たんたるものです。  そういう状況を考えますと、このベトナムの経済復興ということについて、特別に今お話ししたような歴史的経過で多大の犠牲をベトナムにもたらした責任の一端を負う、我が国として、難民問題の根源的解決一つとして経済協力を進めていくということは、これは人道的にも、さらには平和の問題としても、難民対策としても、我が国の過去の責任を果たす上からいっても大事ですね。  ところが、一九七九年に決められたベトナムに対する百四十億円の援助は、大臣も御承知のとおりカンボジア問題を一つの契機にして停止をされ、凍結されたままです。したがってこの際、完全撤兵という状態が自主的にベトナムによって進められてきたという事実を踏まえまして、速やかに凍結を解除して、百四十億円の経済援助は速やかに行う方向を政府としては検討すべきである、そういうことを私は強く思うわけでございます。  この点について、難民問題の対策という観点からも大臣としての御見解をまず伺いたいのですが、いかがでしょうか。
  144. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 速やかに国際的な合意に達することができますよう念願をいたしております。
  145. 橋本敦

    ○橋本敦君 国際的合意とおっしゃるとちょっと抽象的なんですが、我が国は、カンボジア問題じゃなくてベトナムに対する経済援助の凍結は、こういう完全撤兵という新たな事態が出てきたときに新たな立場からこの凍結を見直すということが可能な方向だし、また、すべきである状況に今なってきておる、そういう認識で対処すべきだというように私は申し上げておるんです。ちょっと大臣の御答弁の趣旨が正確にわからないのですが、私の言っている趣旨理解していただけると思うんですが、いかがですか。
  146. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) ただいまベトナムに対します経済援助の話が委員の方から出されましたので御説明をさせていただきます。
  147. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がないから簡単に結論だけ。見直すのか見直さないか、そこのところだけ。
  148. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) ベトナムに対します経済協力につきましては、七九年度以降より一部の人道的な援助を除き凍結をいたしまして今日に至っておるわけでございます。日本としましてはベトナム軍がカンボジアから完全撤退をする、それからカンボジアの問題につきまして包括的公正な解決が達成されるということでカンボジア国内と周辺におきまして真の和平の達成が実現されるということを望んでおるわけでございます。そういうことが達成をされまして、ベトナムを含みますインドシナ全体の復興と経済発展に効果的な協力を行い得るような日が来ることを我々としても希望いたしておる、こういうことでございます。  先般のパリの国際会議におきまして最終的に発表されました声明によりますと、「包括的解決達成に必要な多種多様な要素の検討において進展を達成した。しかしながら、国際会議は、依然として包括的解決を達成することが可能ではないことに留意した。従って、会議を中断することが決定された。」というふうに述べているわけでございまして、六カ月以内に改めて適当な時期に国際会議を開催するための協議を行うということで、現在、真の平和の達成に向けて模索をしておるというのが現状であり、非常に流動的な時期にあるのであろうと思います。  そういう状況のもとで、一方的な形で撤退が行われておるということでございますが、日本政府といたしましてはこういった包括的な平和の達成がなされることを一日も早く望みつつ、この過程に積極的に貢献をしていくということで状況を見きわめたいというのが現状でございます。
  149. 橋本敦

    ○橋本敦君 そんな誠意のないことじゃだめですよ。いつになったら例えば三派連合、ポル・ポト政権の問題が解決するか。容易じゃないですよ。だからベトナムは思い切って自主的に完全撤退をやっているんです。そういう状況を踏まえて、あなたがおっしゃるような包括的な和平の合意ということを国際的に期待するとしても、日本としてベトナムに対するこの百四十億円の援助の凍結は解除をするという方向、見直すという方向についてこの完全撤兵という事態は前向きの一定の条件をつくり出している、こういう認識を持って対処すべきじゃないですか。当たり前のことじゃないですか。その点どうなんですか。
  150. 大島賢三

    説明員(大島賢三君) ただいま申し上げましたことの繰り返してございますけれども、真の平和が達成されるという状況を望みつつ、このような観点から今後の和平の過程の全般的状況を見守りつつ、日本ベトナムに対する援助政策あるいはインドシナの復興全体に対します政策というものを進めていきたいというのが現時点における考え方ということでございます。
  151. 橋本敦

    ○橋本敦君 今あなたが幾ら答弁しても、その中から出られないですわ。大臣はこれは歓迎すべきこととおっしゃる。そのとおりですよ。そして、この問題は今私が言ったようにベトナムに対する経済援助を含めて我が国協力をし、過去の問題を私ども日本も責任を負っているわけでしょう。そして、難民の根源的原因を解決をしていくという上でやはり大事な課題として、ベトナム軍の完全撤兵という事態援助再開ということで前向きに検討する重要な事実としてとらえるべきだ。これは政治的認識の話ですよ。大臣の答弁をぜひ伺いたい。それぐらいのことは当たり前じゃないですか。
  152. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 将来はそういう方向で努力いたすべきだと思いますが、これは外務大臣の所掌のことでございますので、私からの答弁は差し控えさせていただきます。
  153. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣はそういう方向でとおっしゃったから、難民問題を抱えている法務大臣として、私はそれは大臣の御発言として大事だというふうに受け取っておきます。外務大臣がいないものですから残念ですが、この問題はさらに議論されていくでしょう。  そこで、私の質問時間はもうあとなくなってしまったわけですが、今度の難民問題の本質は、私は何といっても先ほどから議論されている偽装難民中国の問題、これが基本だ思うんです。そこでこの問題については私は中国の責任は非常に大きいと思う。例えばベトナムからの中国領土への一時寄港や流出、それはまさにベトナム難民条約等で、ベトナム難民条約に加盟しているわけですが、中国自体が第一次庇護国としての責任を負う立場であることは明白ですね。それをさらに日本へ乗りつけるような船を出していくことを黙認し、援助するということになれば、みずからの第一庇護国としての責任を放棄するという意味で責任は大きいし、それに仮託して中国人たち難民を偽装して乗り込んでくるということを取り締まって抑え切れない、あるいは暗黙に容認するという事態でもあれば、これもまた中国の責任は大きい。  そういう意味で今度の難民問題の本質については中国の責任というのは極めて重大なんだということがまず一つは明白だと思うんですが、大臣の 認識はいかがですか。
  154. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) 不法入国をしている者が相当多く出ていたということは、中国から見ますと不法出国をしていた者が多く出ていたということでございますから、ともに法治国である以上、法治国としての対応を厳しくしていかなければならない問題である、そのように考えております。
  155. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、我が国としてはインドシナ難民をめぐる国際会議で決められた包括的行動計画とそれから国際法主権に基づいて厳しく対処をしていくというのが当然だと思うんですね。  そこで、最後に二点についてお伺いしますが、そういう意味では中国の責任が明白ですから、日本が七百三名退去要求をしておりますが、中国受け入れるのは当然だし、これを速やかに、かつ送還費用は中国が持って行うというぐらいの立場を明確にして、中国にきちっと申し入れてやるべきであるということが一つ。  それからもう一つは、こういう組織的な問題については、これは組織的に手引きをするグループ中国の側あるいは日本の側の日本語学校その他いろんなところであり得ると思うんですが、その実態を解明して、そういうものをなくしていく努力日本政府もやらなきゃならぬし、中国もやらなきゃならぬ。こういう問題を厳しく指摘して、これについてしかるべき対処を要求して、答弁を求めて私の質問を終わります。この二点です。
  156. 股野景親

    説明員股野景親君) まず、御質問の後段にありました、何らかの形で中国からのボートピープルが来ることについて介在する組織ないし人物の解明という点は、私どもとしても強力にこれを進めていく必要があると思っております。これは日本の国内でまず解明に努力するということでございますが、同時に中国側に対しても、中国側の取り締まりが行われないとこの問題については実効を十分期待することができませんので、その点についても中国側の取り締まりの強化と相互の密接な連絡ということを既に中国側には申し入れておるところでありまして、その話し合いは今後も強力に進めてまいりたいと思っております。  それから、送還実施についてでございますが、これは先ほど来御説明申し上げましたような段取りを経て、現在中国人と判定された人たち資料中国側に渡し、中国側とさらに実態的な話し合いを今詰めている最中でございまして、具体的な段取りについては今後中国側と鋭意協議を重ねて、早く実現をするということに努力してまいる所存でございます。
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 送還費用のお考えは。
  158. 股野景親

    説明員股野景親君) 送還費用というのは、これは実態的な問題になりますので、その点についても今後の中国側との交渉の中で早くそういう点についてもはっきりさせるということを努力してまいりたいと思っております。
  159. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私は、外国人単純労働者問題についてお尋ねをいたします。  第二次大戦前のことは別として、日本における外国人労働者をめぐる問題は今始まったばかりであると言っても過言ではございません。しかし、その問題の拡大がいかにも速度が速いというところに問題があります。今日、日本で外国人労働者にどう対応するかという問題は、ヨーロッパやアメリカから来ている外国語教師や技能を持つ専門家について存在するのではなく、いわゆる単純労働者と総称をされる人々が今日本に大量に流入しつつあるということが問題なのです。したがって、この問題に限り私は私見を申し述べ、所見をお伺いいたします。  前にも述べましたように、外国人労働者の問題は比較的新しいが、その増加の速さには恐ろしいものがあります。入国管理局の推計によっても、一九八八年末における不法就労者は約十万人、八六年末現在推計値はわずかに二万八千人、八七年末のそれは約五万人であることから推測をいたしますと、年間およそ一・八倍という速度で増加しておることになります。これは、問題が新しいのにもかかわりませず、事態は極めて切迫しておることを示しております。  したがって、日本では既に外国人労働者に対する多くの論議がなされております。これまでの論議は、ヨーロッパ諸国が戦後好況時の労働者不足を解決するため国策として外国人労働者の導入を図った、それが今日では処理しがたい多くの難問を受け入れ国の社会に残しているという実態を理由に、外国人労働者の流入を阻止すべきであるという、いわば鎖国論であり、これに対し別の意見は、国際化社会の中で経済大国日本の果たすべき役割は、物や金だけの自由化ではなしに、これと並んで人間も自由化を実行していくこと、いわば開国論であり、これに最近の産業界の人手不足が拍車をかけております。  今日の政府方針は、大臣の答弁にもありましたように、鎖国論に近い立場のようですが、各省庁レベルになりますと、その関係範囲が非常に広範であるために一様ではありませんが、全体として開国と鎖国の間を揺れ動いてきておられるようにも思われますし、それらは所管される事項の関係でやっぱり対応も若干ながら両方に分かれており、このこともあるいはやむを得ないことかとは考えます。すなわち、受け入れる意見にしても拒否する意見にいたしましても、いずれも問題が残り、簡単に解決できないほど複雑にして困難なものだと思われます。  以上のことを前提として、次の二点をお尋ねいたします。  まず第一点は、外国人単純労働者の流入を果たして阻止できるのかどうかということであります。阻止できるとする意見の論拠は、外国人労働者流入に対して政策的関与が可能だとする発想です。しかし、どのような人為的な障壁を設けてみても彼らの流入を阻止することはできないと思う。その論拠は、資本主義的経済における蓄積のための最も有効な方法は低賃金労働力の利用であり、そのためには資本が低賃金労働力を求めて移動するか、あるいは低賃金労働力が資本のもとに移動するかという二つの可能性が考えられております。  ただし、国境の存在のために、通常は資本の移動の方が容易であります。しかし、国境とても労働者の移動を阻止することができない、それは日本を含め先進国の今日の現実な問題となっていると主張する研究者もありますが、果たして阻止し得るとお考えになるのか、労働省及び法務省の御所見を承りたいと思います。  第二点は、日本に流入しておる外国人労働者の実態は明らかになっているのかについてであります。  外国人労働者の人権が問題になるほど、日本に滞在する外国人労働者は既に日本の労働市場の底辺に組み込まれているのです。政策決定の前提として最も大切なことは、まず調査だろうと思います。日本人だけで納得できる理屈で正当化するのではなく、日本における外国人労働者の実態と抱えておる問題点を総合的に認識して、それによって外国人労働者問題の今後の展開はどうなっていくのかを予測し、その上でとるべき政策を十分考えていくべきだと思います。そのためにはかなり長期間を要する調査であることも考えられますので、当面緊急避難的な措置対応もあわせ必要かと存じますが、これらに対します労働省及び法務省の所見を承りたいと存じます。
  160. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) お答えいたします。  第一点ですけれども、先生御指摘のように、いろいろな形でいろいろな立場から議論があるのは承知しておりますけれども、単純労働力の流入が見られるということで、そういうことから導入をするということになりますと、先生御指摘のように、我が国労働者の労働条件の向上あるいは雇用構造の改善をおくらせる、こういう面で問題があるかと思っておりますし、そのほか経済社会全般にわたっていろいろな影響が出てくるということが懸念されるわけでございまして、流入が認められるということから外国人単純労働力の受け入れについて考えるというふうには思っておりませんで、従来どおり慎重に対応していきたいというふうに考えております。  二点目の点についてですけれども不法就労者についての調査というのは、事柄の性質上なかなか実態を把握するというのは難しい面があろうかというふうに考えております。ただ、こういった人たちにつきましては、今申し上げましたように、労働市場あるいは労働条件と労働面でいろんな面の心配がされますので、実はことしの七月に各都道府県知事に対しまして通達をいたしました。外国人労働者問題に関する事業主等への指導あるいは不法就労に係る対応、それから外国人求職者等に対する対応ということで、都道府県知事に対し指示をしたところでございます。  私どもとしましては、こういうような事業主指導とかあるいは公共職業安定所の窓口で実際の対応をいたしますので、極力そういう点を通じて実態を把握してまいりたいというふうに考えております。そういう対応をしてまいりたいと思っておりまして、緊急避難的な対応といいますか、一時的な対応策については考えておりません。  以上です。
  161. 股野景親

    説明員股野景親君) まず、単純労働者の流入が果たして阻止できるのかという御質問でございますが、これは我々としてやはり阻止するという強い姿勢を明確に今しておるところでございます。それは現行の政策がいわゆる単純労働を認めないということでございますので、結果的に単純労働が今行われたとすれば、それは不法就労という形にならざるを得ないので、その意味での不法就労に対する当局としての厳しい態度というものを明確にしておくということが実際上必要であると考えておりますが、単純労働ということではなくて、外国人雇用ないし外国人労働一般という観点からまいりますと、これは法務当局としても、先ほど来大臣からの御発言にもありましたように、専門的な知識、技術、技能というものを持った人たちの就職機会ということを従来よりも拡大していくという方向で検討していくという考え方で臨んでおる次第でございます。  そういう観点で、昨年昭和六十三年でございますが、いろいろな形で日本における就職ないし稼働というものを合法的に認められる形で外国人が新規に入国した数も約八万一千余りに及んでおりますので、こういう雇用の機会というものは我々としても備える。他方、単純労働については、現行の政策のもとでは抑止ということで臨んでいく態勢をとっているということでございます。この点は、経済的な観点も確かに論議の中に重要な部分であるわけでございますが、そのほかに、こういう人たち日本に入ってきた場合に社会に与える影響ということもやはり多々考えねばならないというのが法務省当局側の考え方でございます。  それから第二に、外国人労働者の実態という点でございますが、これは我々なりに実態把握には常時努めておるわけでございますが、その中で残念ながら不法就労者の数がふえているということも事実でありまして、そういう点に対する対策を、今法務省の能力を最大限活用するのみならず、関係省庁側の御協力もいただきながらこれに対する対策を考えておるわけでございます。しかし、そういう問題についての基本的な考え方は、冒頭申し上げましたような合法的に日本で雇用の機会を認めてよい、そういうカテゴリーの人たちについての就労の機会というものの枠を今後従来以上に広げていくという方向で検討していく、それが当面一番いい方向であろうと考えております。
  162. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 次は、難民問題についてお尋ねをいたします。  法務省は、難民対策に現在忙殺をされておいでになります。痛ましい犠牲者まで出しながらの対応にもかかわりませず、その対策が後手後手に回っているとの批判も多く、特に入国審査官、警備官、通訳に加え、収容施設の不足は極端なようであります。法務省幹部の中でも、全く想定をしていない異常な事態と告白をしておいでになりますが、ある意味では理解はできないことはありませんが、しかし果たしてそれでよいのだろうかとの疑問も残りますので、次の点をただしたいと存じます。  私は、数年前に香港のベトナム難民収容所を視察をいたしました。その節、この状況日本にも無縁ではあり得ないだろうと言った案内者の言葉が今も印象的に耳に残っております。帰国して犬養道子さんの著書「人間の大地」の中の「海は見ている」の項を読みました。ボートピープルの初期のことのようですが、多くは中国ベトナム人がシャム湾や南シナ海で襲撃を受け、老幼男女を問わず大部分が殺されていくという極めて悲惨な状況の描写であり、再読する気にはなれないものでした。今回の主役はベトナム中国人のようにも聞いておりますが、いずれであれ人間である限り、その考え方は変わらないと思います。  すなわち海の難民となれば、だれでも先行きの海路の安全と経済問題は当然考えると思います。決して危険な方や貧しいところへは目指しません。今日のように、香港が満杯になっておるとすれば目指すは日本、韓国は極めて当然であり、季節は軽装で船上生活に耐えられる夏、しかも海上は比較的平穏で、おまけに貿易風に助けられるとあっては条件は整い過ぎており、中国の民主化事件の余波を重ねて考える場合に、今日のこの事態に一応の警戒はあってもよかったのではないかとの意見もあります。  また、あの長い海路、さらには比較的船足の遅い風変わりな木造の老朽船が漂着するまで何の情報も得られなかったのか、若干奇異に感じますが、その辺の法務省対応はどうであったのか、このことをお尋ねして、あとの問題は時間の関係で打ち切ります。
  163. 股野景親

    説明員股野景親君) ことしに入りまして、日本及び日本以外のASEANあるいは香港等におきましてボートピープル急増しておるという現象がございました。  ことし日本で非常に我々が大きな負担となりましたのは、先ほど来申し上げておる五月二十九日以降の直接漂着ケースが始まってからでございますが、それ以前には通常の小船でボートピープルベトナムを脱出した後、洋上で救出された人がその救出した船に乗って日本に来る、こういうケースがございました。そのケースも、実は五月の二十九日のあの直接漂着事件が起こる以前においては、例年になく早いテンポでふえておるという状況はございました。そういう意味で、近隣の諸国における出来事あるいは我が国にそういう洋上で救助された人たちが到着する数が近年になくふえておるという点については、法務当局としても注意を払っておったところでございます。  しかしながら、ボートが日本に直接漂着する、こういう状況については、これは今度の新しい事態でございまして、法務省当局としても何分にも国外でそういうことが起こり、船が出るという状況については把握できなかったという状況がございます。ただ、特徴的なことは、こういう直接漂着するボートが中国をもとにして、そこから日本に向かって発進してくるという状況がありましたので、これについては日本に来た後で調査の結果判明したという状況でございます。  したがって、そういうことが判明した後は、これは中国側に直ちにその点を通報することによって、現在の時点では九月五日以降直接漂着するボートというものは見られないという状況になっておるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、何分にも国外の状況でございましたので、法務当局としては、こういう直接漂着するという、特に中国から船が来る、そういう兆候ないし事前の情報というものは最近に至るまで把握していなかった、事前には残念ながら把握できなかったという状況がございます。
  164. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 大変時間の経過した中でお疲れと思いますけれども、よろしくお願いいたします。  初めに、入管業務、難民センターなどの実務運営に携わっていらっしゃる関係者の方々の御努力に敬意を表します。特に、九月四日、執務中に亡くなられました福岡入管警備課の寺井課長補佐に哀悼の意を表したいと思っております。  まず、この問題につきまして、現地混乱と住民の生活不安とこの難民問題という関係でお伺い をしたいと思います。  熊本県は牛深市魚貫町に八月三十日、ベトナム難民、これは実は中国系だということが判明いたしておりますけれども、百六十七名が漂着して、そのうち三十名弱が付近の山中に逃亡し、いわゆる山狩りになるものがございました。警察、消防団、青年団が総出という異常事態でございました。この事態に、住民は難民に対する不安と悪感情を持つようになっております。牛深がその後どうなったか、直接的正確な情報をお持ちでしたならば聞かせていただきたいと、まず思います。  また、そのことが起こりましたときのいわゆる緊急対策と申しますか、危機管理のノーハウをいかになされたかということをまずお聞きしたいと思います。  また、先ごろもう御質問が済みまして、半ばお答えが済んでおりますけれども、これらの支出が、例えば牛深では不時の支出として、これは正確ではございませんけれども一千万円以上とにかくかかったというような風聞がございます。これはマニュアル作成などで対応なさるということで先ごろ伺いましたけれども、具体的にこれからの問題として、実際の施設管理者の中で中国語やベトナム語のできる担当官の方がどのぐらいのパーセントでいらっしゃるのか、特にこの問題に関して、もしおわかりでしたら教えていただきたいと思います。先ほどお話のございました治安の問題につきましても言語が通じないということから起こることは大変多いと思いますので、この辺の具体的な問題をまずお聞かせいただきたいと思います。
  165. 股野景親

    説明員股野景親君) ただいま委員指摘の八月三十日に牛深市に漂着したボートピープルのその後の状況でございます。  八月三十日に到着しましたグループは、まず百三十七名程度の者が上陸地点の近傍でとどまった。他方、三十名については一時現場から姿を消す、こういう状況がございました。地元側に大変な御努力を願いまして、その三十名の姿を消した者たちもすべてその後身柄が確保された、こういうように承知をいたしております。  その後、この人たち全員につきまして入国管理局職員による審査を行っておりますところ、このうち百四名につきましては中国からの偽装難民という判断がなされましたので、これについては現在大村の入国者収容所収容をいたしております。残る六十三名については現在、大村の一時レセプションセンターを住居に指定をいたしまして、仮上陸のもとでさらに審査を継続しているという状況がございます。  また、このケースにつきましては特に地元側にいろいろ御協力を願ったという経緯がございますので、法務省当局といたしましても、内閣の事務当局さらには外務省側とも連絡をして、十分な地元側に対する対応をするように、現在関係機関の間で協議中でございます。  具体的には、難民連絡調整会議の方の事務局からお答え願いたいと思います。
  166. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 今、御質問ございました二点についてお答えいたします。  第一の点は、緊急対策でございますけれども、これは先ほど申しましたように、私どもで今マニュアルを二種類用意しております。この二種類のマニュアルを用意する過程におきまして、熊本県の方で現実に牛深市魚貫町で起こったことを参考にして、我々にもいろいろお知恵をかしていただきまして、これは非常に我々の参考となりました。  第二の点は、地元の負担が一千万に上ったということでございますけれども、私どもが熊本県を通じて得ております数字は若干これと異なりますけれども、これは最終的な数字が出次第、UNHCRの方で払うように取り計らいたいと思っております。
  167. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 今、私が特に伺いたかったのは、やはり現場で起こりましたことは、一番その場合に受けます者は現場の者でございます。住民であり担当者でございます。その場合に法務省ないしはその他の省庁からいかなる指揮というか、指示が出るものか。その場の雰囲気というものをぜひ伺いたいと思ったわけです。即その手が打たれたのかどうなのか。これは予定しておりません質問でしたので後でも結構でございますが、直ちに対策が行われたのでしょうか。
  168. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 私ども入管の施設は熊本県の牛深の方にはございません。私どもがこの事件を知りましたのは、警察庁の方から連絡を受けまして、発生間もなく私、警察庁の外事一課長から話を聞いたわけでございますが、外事一課長に、身柄の確保といいましょうか、それをぜひお願いしたいということをお願いすると同時に、身柄がどこかへ行かないようにしばらく市の方であるいは県の方でいわばホールドするようにやっていただきたいということをお願いしておきまして、他方、当方の職員を熊本の方に派遣して審査に当たらせるというような態勢をとったわけでございます。ただ、何分にもいわば福岡等から職員を派遣するより多少時間がかかったということはあったかと思いますが、そのような経過で対処をいたしました。
  169. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 この難民問題というのは、御承知のとおりでございますけれども、まず非常に国民的な関心が集まっているということでございます。いま一つは、国際的にも難民対策への評価というものが必ずあるということでございます。これを踏まえまして、まず国民的なコンセンサス、この難民問題の現状に対し、それから基本問題について政府対応して、国民的コンセンサスを得るべきではないかと思います。  例えば、意識調査というようなものを緊急に行われる御予定がおありになるか。あるいは既にもうそのような対策は行われつつありますでしょうか。  これは、例えばこの問題をとらえている一般の市民ですけれども、非常に難解なものであるということは薄々承知しつつも、やはり不安を感じたり、あるいは人道上どうだろうかというふうな問題を感じる等、非常に意見のまとまらないところがございます。意見がまとまらなくてもするべきことはしなきゃならないのかもしれませんが、やはり基本的にはこういう問題についての日本人のコンセンサスのようなものをどういうふうにおとりになるかお考えいただきたいということと同時に、そういった対策をおやりになるおつもりがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  170. 菊地康典

    説明員(菊地康典君) 意識調査を今すぐやるかということになりますと、これは必ずしも直ちにやりますというふうにはお答えできませんけれども委員が御指摘になりましたように、国民の中に今回のことしの夏以来の難民の大量の流入をめぐりましていろいろ意見が分かれておることは我々も承知しております。  実は昭和五十七年に、前段階での難民の問題が非常に華やかになったころに、総理府の広報室が世論調査というのをやっております。それで、その世論調査というのは私どもが一万人の枠をつくるような過程で参考になっておりますから、今回意識調査をやれという御指摘は非常に我々として検討に値する御示唆ではないかと思っております。
  171. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 先ほど午前中からのいろいろな御討議を拝聴しておりまして、やはり一番心配になることがございます。それは相手国対応でございます。相手国対応が、例えば中国の場合は中国公民と認められなければ引き取らないというふうな含みがあるようですし、また公民とは何かという解釈をこれからいろいろお詰めになるということもございました。ベトナムにつきましても、これはお引き取りいただくということについてまだ判然としないところがあるというふうにお伺いしました。  難民にも該当せず、それから送還をされるべきだけれども引き取られずで、日本国内にとどまるお人がふえてくる、こういう状況が予想されます。人道上のこともありますし、国際協調の見地からも恒常的な福祉政策も必要なんではないだろうか。人間である以上はやはり働くという権利もあ るでしょうし、それから人格権などが認められなければならないという問題もあります。それに対する御姿勢と対策はいかがでございましょうか。入管法に特別規定をつくる必要があるのかないのか、私も勉強不足ではございますけれども、こういう問題についてもお考えをいただきたいというふうに思っております。できれば大臣にお答えいただきたいと思います。
  172. 股野景親

    説明員股野景親君) 退去強制をすべき人が現実に今非常に多くなっておりまして、今後も当局による審査が進むにつれ、さらにその数がふえると思われます。それについて、まず多くの者については本来中国送還さるべき人たちであると判断されますので、中国側との送還交渉に大きな努力を今傾けているところでございまして、この点については中国側のできるだけ早い対応を得たいと思っておりますが、なおある程度の時間がかかるということは、これは私どもも今委員指摘のとおり予測しておるところでございます。  他方、新しいスクリーニングに基づくベトナム難民でないと判断された人たちについても、当然今度は送還という問題が起こってまいりますが、現段階ではこの数についてはまださほど大きくなるという予測ではございませんが、今後の事態は十分注目をしなければならないので、その意味でも収容されるベトナム人たちについても十分の態勢をしく必要がある。そういう意味で両面からの収容の態勢を十分確立するということが大事だと思います。  その際に、現状においては関連する施設が非常に限られており、また、その施設を管理する側の要員の数も非常に限られておるという状況で、入管当局も実は非常な苦しい状況にあるのが実情でございますが、先ほど来御説明申し上げましたような方向で最大限の努力を注ぎまして、その収容の施設、人員その他の態勢を十分に適正なものに持っていくよう今努力をいたしております。また、収容が仮に長期にわたる場合でも、十分被収容者の人権ということには配慮をした処遇体制をきちんとつくっていくということでございますので、今そういう意味での非常に限られた状況で、確かに現状は私どもとしてもいろいろ努力を必要とする状況でございますので、その努力を重ねて、その収容者を収容していく態勢が適正な状態運営されていくようにぜひ努力をしてまいりたいと考えております。
  173. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 最後に一言。  ボートピープル上陸リストを拝見しておりますと、前段のものと平成元年からのものと状況が刻々変わってきており、そして今回の難民問題というものが発生したということになっておりますが、今後こういった漂着てはない、組織的あるいは目的的な傾向というものが絶無であるということはないようにも思われます。ないかもしれないし、あるかもしれない。  今回、お答えいただきましたさまざまの御答弁を伺っておりますと、いわゆる緊急避難的対策というふうに受け取られてならないわけです。後手後手ということで再三お責めするということではなく、これからいわゆる抜本的な対策というものをお構えいただく必要がどうしてもあるのではないかと思います。法務大臣から一言で結構ですから、その辺につきお答えをいただきたいと思います。
  174. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいまのことにお答えいたします前に、先ほど紀平委員の御発言の冒頭、職務中殉職いたしました寺井という職員のことにつきまして御同情いただいたことにつき心からお礼を申し上げたいと思います。  ただいま御指摘の問題は外交折衝を今続けているところでございまして、この結果が出てまいりますし、また結果があらわれてくるためには非常に時間を要することではないかというように考えられます。  先ほど来の御質問の中にも、あらかじめ予測できることではなかったのかというような御意見もございましたけれども、今回の場合は予測できなかった事態が突然起きてきたという点で私どもの予測の能力の限界を超えていたことであったように私は思いまして、大変残念に思っておりますけれども、今後の問題につきましては、十分ただいまの御意見を念頭に置きながら、今後のボートピープルの扱い等につきまして、解決するまでの間、少なくとも我が国におりますボートピープルの人権にかかわる問題が起きるようなことが絶対ないように努力するよう私どもとしても最善の気配りをいたさなければならないと存じている次第でございます。
  175. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 一言前置きをして質問に入りたいと思います。  ベトナム難民問題が社会問題になっている中で、感謝するわけですが、九月二十日の日に国立劇場でベトナムの歌舞団の皆さんが見えまして、「アジア・太平洋うたと踊りの祭典」をやりました。私の郷里の静岡県相良町からも百人ほどの民謡の部隊が来まして、同じステージのもとで極めて正常な出入国手続のもとですばらしい文化交流ができた。それを目の当たりにしまして一言感謝をするものでございます。  大きな社会問題になっております難民問題について、質問をさせていただきます。最後法務大臣質問させていただくとしまして、最初に二、三関係当局に御質問したいというふうに思うわけであります。  私は、中国偽装難民を含めまして難民漂着問題が今この時点で発生をしたという要因、原因は何だろうかという点をきわめたいと思うわけであります。きょう、資料が提示されました。答弁の中で経済力の格差の問題とかあるいは諸外国におけるベトナム難民の入国規制がやや進んでいるとか、そういうことはひとつおいていただきまして、この時期にこういうふうに難民漂着といいますか、ベトナム難民問題が発生したということ、その原因は何でしょうか、これをお伺いしたいというふうに思うわけであります。  時間がないものですから私の方の問題意識を一つ二つ紹介して見解を伺いたいと思います。  一つは、インドシナ難民ジュネーブ会議というものが行われる前後にこういう難民の大量発生が発生しているということは、このジュネーブ会議関係がないでしょうかということが一つであります。五月ころから発生しておるわけですが、はるか前から準備されていると思いますが、三月の上旬にクアラルンプールにおいて準備会合が持たれ、そして六月にジュネーブ会議が持たれているわけであります。ここでの主題は、言うまでもなくスクリーニングにあらわれていますようなインドシナ難民のいわば入国規制の問題が大きなテーマになっているわけですが、それが一つの大きな原因になっての駆け込み難民というふうな傾向はないだろうかという点が一つでございます。  直接的な原因は幾つかあると思いますが、もう一つ私が気にしているのは、ベトナム並びに中国側に組織的、計画的な、政府じゃないですよ、行政側ではなくて、いわば難民を応援する民衆の側に、いわゆる日本流に言うならばブローカー的なあるいは運び屋的なそういう組織的な動きがなかったかどうか。そしてまた、日本側からそういうお誘いはないというふうに思いますが、そこら辺がどうかということです。このことをひとつ、周辺の国を含めましてちょっと御回答いただければありがたいというふうに思います。
  176. 股野景親

    説明員股野景親君) ことしになりましてボートピープル急増しているという要因について、ただいま委員が具体的に二点ほど御指摘になりました。  まず第一点の六月のジュネーブ会議との関係があったのではないかという御指摘でございますが、我々法務当局ないし日本政府としてもこれは同様の見解を有しております。すなわち、ことしの六月のジュネーブ会議は実は既に昨年から関係国の間で開催の準備が進められておりまして、そういう会議に向かって関係国の間の話し合いが行われているという情報がベトナムの国内で流れていたという経緯がございました。それが具体的に六月にいよいよ開催されるという決定があったこ とと、あわせてその会議において難民の資格審査を厳格化するという情報がベトナム国内で流れたということがやはりベトナムからのボートピープルの流出についていわば拍車をかける要因になったということが一つあったと我々としても考えております。  それからもう一点の委員の御指摘の、ベトナムないし中国側から日本にこういうボートピープルが来るについて何らかの仲介する存在があるのではないかという御指摘でございますが、この点についても我々も同様の疑いを持っておりますが、何分にも国外のことでございますので、十分にまだその点についての具体的な証拠というものを把握するには至っておりません。ただ、実際に漂流して到着したボートピープルの話をいろいろ聞いておりますと、何らかのそういう仲介する組織というものがあるのではないかという疑いを我々としても強く持つに至っておりまして、そういう点の解明は我々ぜひこれらベトナムないし中国の当局側の協力も得て解明を急ぐ必要があると考えております。  さらに、これ以外に急増した要因はないかという点でございますが、これは確かに基本的にはベトナムないしは中国という国の経済的な状況とそれから日本の経済的状況との対比ということが一つやはり基本にはあると思いますが、その中で、やはり最近はベトナムでも中国でも海外に関する情報の伝達ということが以前よりももっと容易になった。したがって、日本の最近の経済繁栄ぶりというものが広くベトナムでも中国でも国内一般に従来よりも知られるようになったという要因も一つ基本要因としてあるであろう。さらには、もう一つ、気象条件がたまたまボートピープルが出てくるのにとって障害がない状況であったということ等もあったのではないかと考えておる次第でございます。
  177. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 いま一つジュネーブ会議に関連しまして、日本側から、昭和六十年のいわゆる定住構想、定住枠一万人構想というものがあるわけですが、向こう三年間にわたって定住希望者を一千人ふやしたい、ふやすというような提言がこのジュネーブ会議でなされていると思うんですが、その波及効果というものも非常に大きかったのではないかという感じがするわけですが、その点がどうかということをお伺いします。
  178. 股野景親

    説明員股野景親君) これは外務省側からも補足を願いたいと思いますが、ただいまの委員指摘の、ことしの六月に日本政府が表明しましたこの数は、向こう三年間で千人を定住で受け入れるという数は、これは既に発表しておりますところの一万人の枠内での内数として打ち出したわけでございますが、これは関係各国がそれぞれ、現在既に東南アジアの各難民キャンプ等で滞在しているボートピープルの存在がそれらのキャンプの所在国に大変な負担になっているという状況にかんがみて、その負担を軽減し、さらには今後の根本的な解決に向かっての一歩とするという観点で日本政府もこれに協力したという経緯がございます。  したがいまして、この点については関係各国と歩調を合わせた措置であったわけでございますので、その意味でこれ自体が何らかの拍車をかけるというような要因になったというふうには考えにくいと存じております。
  179. 石垣泰司

    説明員石垣泰司君) ただいま委員指摘ジュネーブ国際会議の前後にボートピープル日本への流入の動きが見られるという点につきまして、駆け込み的要素があったのではないかということにつきましては、入管局長答弁のとおり、外務省といたしましても同様の見解を持ってございます。  ただ、三年間にわたり一千人の受け入れ自体も影響を与えたのではないかという点につきましては、これは六月中旬の国際会議で初めて関係省庁と御協議の上発表したものでございますのに対して、このボートピープルの流入といいますのは年初から、かつ中国からの疑いのある者については五月二十九日、その以前から始まってございますので、この千人という数字自体については直接影響はなかったのではないかと考えております。
  180. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 難民問題がことしだけのいわば突発的な要因で発生したならばいいわけですが、非常に気になる問題はやはり組織的、計画的にベトナム側あるいは中国側で民衆の側から、ある意味ではフィリピンやバングラデシュやパキスタンに後追いするような形で事態が進行していかなければいいがという感じがするわけであります。フィリピンにしてもバングラデシュにしてもパキスタンにしても、これは法律に基づいた出入国手続を経て入ってきて、そして日本不法就労、もっと言うならば日本側から見れば不法雇用がなされているわけでありますが、そこら辺のところを非常に注意していく必要があるのではないかというふうに思うので、フィリピンのような形の後追いにならないように、ベトナムあるいは中国と行政サイドで連携を密にし、情報の交換を密にしてやっていただきたいというのが私の希望です。  そこで質問ですが、この組織的、計画的な難民の動員という問題を考えてみたときに、フィリピンを例にとって申しわけありませんが、非常に正常な手続でも不法就労、不法雇用問題が発生しているわけですが、こういう民衆の側におけるブローカー的な仕事のあっせんあるいは賃金のあっせん等々をやる動きについて、法務省我が国対応あるいは近隣諸国の対応を見てどんなお考えを持っているのか。ベトナム中国についてそういう同じような後追いにならないように私の方はぜひ希望するわけですが、その辺の配慮があるのかどうなのか、ちょっとお聞かせいただければありがたいです。
  181. 町田幸雄

    説明員(町田幸雄君) 委員が今御指摘になられましたことについて私どもも同感に感ずる点はあります。それは今回の偽装難民につきましてはその動機、目的、それから社会的背景、こういったものがフィリピン等から来る不法就労外国人と全く共通であるという点について私も非常にわかるわけでございまして、そういう意味でいわゆる不法就労外国人問題とこのいわゆる偽装難民の問題とはかなり共通の面があるというぐあいに見ております。  先ほど下稲葉委員からも質問がございました。その中でも下稲葉委員の御発言にもございましたが、不法就労外国人の場合にはパスポートやビザを持ってくる、目的についてうそをついているということでございますが、いわゆるボートピープルでしかも偽装難民の方々はパスポートもビザも持ってこないわけでございまして、そういう意味では不法就労外国人以上に我々入管当局から見れば問題がある、そういうぐあいに認識しておるわけでございます。そういう意味でフィリピン等と同じようなことにならないように最善努力をしてまいりたい、このように考えております。
  182. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 最後法務大臣にお伺いしたいと思います。  日本の近代史、現代史を見ても、細かくは言いませんが、中国あるいはインドシナ三国との関係というのは大変な関係だったというふうに思います。そしてまた、日本の移民という歴史を見ても大変な歴史があったと思います。  人権宣言や難民条約等の人道主義の基本原則に立って、難民対策の行政のあり方を法務大臣がどんなふうにお考えになっているか、基本的な理念の問題ですが、お伺いをしたいということと、それから先ほどから出ていますように、食事あるいは保健、こういう点についてはそういう人道主義的な観点に立ってやっていただきたい。  あわせて、法令で裁くものは裁いていただかなければなりませんが、基本的な彼らとの接触の仕方について、特に現場の職員の皆さんに対する指導を含めまして、この難民対策の何というか、人道主義の観点に立った理念のような話あるいは指導の考え方について少々お伺いできたらと思います。
  183. 後藤正夫

    国務大臣後藤正夫君) ただいま櫻井委員から御指摘がございましたように、長い歴史を通じまして我々はやはり人道的な立場からこの問題に対 して考えていかなければならないということについて留意しなければならないことは、私も全く櫻井委員と同じ考え方でございます。  ボートピープルとして到着した者につきましては、一時庇護のための上陸許可するか否かの審査を行うに際しましても厳正な審査を行っておりますが、審査は先般のジュネーブインドシナ難民国際会議における合意におきましても触れられております人道的精神を踏まえたものとして行うということでございまして、その線に沿って日本でも行っているわけでございます。  また、他の手続の面につきましても、国際連合難民高等弁務官事務所、UNHCRの職員の立ち会いも行わせることにしておりますほか、さらに審査の結果、一時庇護のための上陸許可を与えられない場合におきましても、退去強制手続の中で特別審理官及び法務大臣に対して異議の申し出ができるという道も開かれております。また、これとは別に法務大臣に対し難民認定を求めることもできる道が開かれております。このように公正な判断の確保のための十分な手続的な保障がなされておりますので、今後も人道的配慮は十分に行われるようになるものと私どもは考えております。  以上お答えさせていただきます。
  184. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十八分散会