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1989-05-18 第114回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年五月十八日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月十七日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     久世 公堯君      志村 哲良君     木宮 和彦君      永田 良雄君     大塚清次郎君      柳澤 錬造君     栗林 卓司君      野末 陳平君     秋山  肇君      青木  茂君     木本平八郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 青木 幹雄君                 岩本 政光君                 遠藤  要君                 田沢 智治君                 野沢 太三君                 対馬 孝且君                 中野 鉄造君                 近藤 忠孝君                 勝木 健司君     委 員                 石本  茂君                大河原太一郎君                 大塚清次郎君                 大浜 方栄君                 木宮 和彦君                 久世 公堯君                 佐々木 満君                 下稲葉耕吉君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 高橋 清孝君                 谷川 寛三君                 中曽根弘文君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 二木 秀夫君                 松浦 孝治君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 本岡 昭次君                 矢田部 理君                 山本 正和君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 諫山  博君                 吉岡 吉典君                 栗林 卓司君                 秋山  肇君                 木本平八郎君     政府委員         大蔵政務次官  吉村 真事君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君     事務局側         常任委員会専門         員       宮下 忠安君     公述人         中央大学教授  富岡 幸雄君         中央大学教授  丸尾 直美君         全国農業協同組         合中央会常務理         事       石倉 皓哉君         日本平和委員会         代表理事    福山 秀夫君         第一勧業銀行顧         問       坂本 春生君         山一證券経済研         究所理事長   加藤 隆司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成年度一般会計予算内閣提出衆議院送  付) ○平成年度特別会計予算内閣提出衆議院送  付) ○平成年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 予算委員会公聴会を開会いたします。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算平成年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、平成元年度総予算三案について、お手元の名簿の六名の公述人方々からそれぞれの項目について御意見を拝聴いたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  富岡公述人丸尾公述人におかれましては、御多用中にもかかわりませず本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を賜りまして今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度の御意見を順次お述べいただきまして、その後委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承りたいと存じます。  まず、財政税制につきまして富岡公述人にお願いいたします。富岡幸雄君。
  3. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) おはようございます。  中央大学の商学部の教授富岡幸雄であります。  私は現在、大学で税務会計学及び租税学研究し、学生に講義をしております。若いときは国税官庁に十五年ほどお世話になって、現場でいろんなことを学んだわけです。ここにいらっしゃる谷川寛先生とは東京国税局相当期間一緒に仕事をさせていただきまして、谷川寛先生に親しく御指導を賜ったものでございます。  きょうは税制財政について意見を述べろというわけでございますが、承りますれば、本院において目下御審議中の平成元年度総予算の中には消費税という新たな税金が三兆六千百八十億組み込まれております。したがいまして、新しい税金である消費税の問題を中心としながら、昨年行われました税制抜本改革につきまして所見を述べる予定でございます。今、委員長から忌憚のなき意見を述べろと、こういうお許しをいただいておりますから、かなりお耳ざわりのことを述べることにならざるを得ないかと思いますが、あらかじめ御容赦賜りたいと思います。  その前に、私のようなつたない研究をしておる者に対しまして、参議院が貴重な時間を与えていただき、そして先生方お忙しい中をこのように御臨席賜りまして、私の所見の一端を述べることをお許し賜りましたことを、初村委員長初め委員各位先生に厚く敬意と感謝を表します。  ただ、申し上げたいことは、昨年も三月二十二日にこの場で意見を述べました。そのときはまだ税制改革がどうなるかという段階でございまして、税制改革のありようについて、どっちかというと総論的な話をしたわけです。まず、税財政改革基本的前提としては、行政改革とか政治改革が必要であるということ、そして歳出の抜本的改革が必要である、そして同時並行的に、租税理念原点に立脚し、公正公平を実現する税制の真の税制改革が必要であるということを申し上げたわけです。そして、具体的に所得税法人税における大変大きな欠陥、つまり不公平税制について是正方をお願いしたわけであります。  特に、所得税につきましては多くの人が触れておりますが、大企業課税についてはほとんど議論がされていない。マスコミやその他においても余り取り上げられていない。事柄が非常に複雑でございますから。特に国際課税について、税金を納めてない大企業がたくさん存在するという事実を私は二年ほど前にある文献で明らかにしたわけですが、外国税額控除制度欠陥とかタックスヘーブン税金天国の乱用とか、巨大企業が目に余る租税回避、そして場合によっては租税通脱が行われているわけですね。その点につきまして、御質問に答えながら詳しく述べたわけです。  ところが、あなた方がお決めになった税制改革はどうでしたか。もちろん、外国税額控除についてもタックスヘーブンについても若干の手直しをされましたが、極めて不十分です。つまり、不公平税制の元凶である一部の大企業優遇税制についてほとんどメスが振るわれなかったということです。そして、やらないでほしいということを声をからしてお願い申し上げた消費税を強行導入されたということです。まことに残念です。まずそのことを、大変率直に申し上げて恐縮ですが、若干の苦情を冒頭申し上げておきます。  昨年は三月二十二日だったんです。ことしは衆議院予算委員会にも三月二日に招かれて同じような意見を述べているんです。これで三回目です。参考人意見を聞くのも結構だが、聞きっ放しで、聞いたすぐ直後強行採決などしないように。聞いてもっともだと考えましたら、党派に関係なくそれを取り入れていただいて、少しでも我々が意見を述べる意欲を失わないようにしていただかなければ、国会権威にもかかわるのではないか。大変失礼なことを申し上げて恐縮でございますが、よろしくお願いします。  さて、消費税が導入されました。そして法律は通っても何とか凍結してほしい、それが一番今好ましい選択であるということを三月二日の衆議院予算委員会でも声をからして申し上げたわけですが、とうとう実施されました。そして一カ月半になりました。この消費税は、国民生活に日常的に影響し、経済的な負担となるばかりか、精神的ストレスを蓄積し、そして政治不信をも背景として国民の怒りと不満が爆発しているのが現状です。  大蔵省からいただいた資料によると、意外に円滑に順調に定着しつつある。何をもって円滑に定着しているか、その概念にも問題があります。今、消費者が払った税金が国庫に入らないといって国じゅうが騒いでいます。昨日の本院におかれましても、委員方々大変政府と熱心に御議論なさっておられました。手直し議論も行われております。事業者は、消費者負担した税金を懐に入れて、言葉は悪いが横領することができるシステムが内蔵されたわけです。便乗値上げも甚だしいと非難され、物価問題が非常に危険な状況になりつつあるということは周知のことです。  消費税は、これを実際にかぶる担税者消費者でありますが、事業者納税義務者です。納税義務者事業者ですね。本来は消費税代理徴収入にすぎないんです。ところが、今回の消費税仕組みの実態では、便乗値上げや、消費者税金として負担し、事業者消費者から預かった税金を自分のもうけとして取得できる益税ですね、利益の益に税金の税、税金をもうけること、益税ができるという仕組みがあるわけです。節税というのは、税金を合法的に節約してうまい税金の納め方をするというアイデァですね。  今から三十何年前に、私が国税庁におるときに節税の本を書いて大騒ぎになったんです。節税の言い始めです。私は節税という言葉をつくり、節税という文化をこの国につくりました。今回は、あなた方は益税という新しい税のカテゴリーをつくられた。それは消費税の中に内蔵する欠陥ですね。  資料を使ってよろしゅうございましょうか。――(資料を示す)  消費税には、言われておりますようにどんぶり勘定を認める帳簿方式アバウト課税ですね。けた違いに大きい特別制度課税売り上げ三千万以下は免税業者、六千万以下は限界控除制度の適用、そして課税売上高五億円以下は簡易課税。ここにはありませんが、あいまいな半年間の弾力的運営。これらは消費税欠陥です。これらをめぐって国会でもマスコミでも今大騒ぎしているわけです。ただ、これは私に言わせれば、消費税の持つ単なる技術的な欠陥なんです。小さい欠陥なんです。それだけが消費税欠陥ではないんです。  きのうの本院のこの議論を聞いても、全部聞いたわけじゃありませんが、新聞やラジオで聞いているわけですが、それを直せばすべて解決するかのようにとれるような議論が行われていることが問題です。こんなことは、消費税法案をつくったときに最初からわかっていることです。簡易課税をやれば、付加価値率の高い業者益税になるということはわかっていることです。予想されたことですよ。  消費者消費税に対する恨みが、今、商店街中小零細のお店屋さんに向けられているんです。家庭の主婦と商店街商人方々現場でけんかをしているんです。竹下さんに対する恨み現場商人の方に向いているんですよ。方向が違っているんだよ。これが今、全国的に波及している消費税狂騒曲です。日本じゅうが狂っちゃっているんですよ、狂騒曲。しかし、これらはすべて技術論です。消費税論議をする場合、最初からわかっていることですよ。  大蔵省の方いらっしゃいますか。これは最初から大蔵省が仕組んだシナリオなんだよ。国会を通すために、自民党税制調査会を通すためにアバウトな、みんなが受け入れやすい、業界が反対しないようなものをつくったんですね。いや、わかります。その気持ちはよくわかります。そうすれば、結局消費者不在消費税だったんですね。代理徴収入である事業者消費税でもうける。転嫁ができる人はもうけることができるという変な税金なんです。ですから、国会で余り審議されていませんから、通るまではよくわからなかったんです。通っちゃって実際に施行してみたら、消費者が取られている税金が国に入らないんじゃないかということになって、今大騒ぎです。  消費者が怒ることによって消費税手直しできるんです。手直しすることによって簡易課税制度を大幅に圧縮し、将来は段階的に廃止する。免税点も三千万を一千万ぐらいにする。場合によったら五百万ぐらいに下げる。そして帳簿方式インボイス方式に直す。これは最初から仕組まれた予定の行動なんです。ここで揺り返しが来て手直しがなされて初めて、最初大蔵省政府が考えたような消費税ができるんですよ。これは予定シナリオどおりなんです。騒げば騒ぐほど、政府大蔵省は喜んでいると私は思います。意見があったら質問してください。  実は、このような技術的欠陥は、消費税の持つ本当の欠陥、本質的な欠陥をカムフラージュするために政略的に採用されたトリックです。腐ったお菓子の外装の包み方を幾ら改めてもだめなんです。これは包装紙です。消費税というお菓子を包んでいる包装紙です。包み紙です。包み紙が破けているとか、ゆがんでいるとか、色が悪いとかいうと議論が、免税点簡易課税限界控除是正なんですね。問題は、それが直ったからといって、中身が問題なんですよ、中身が。幾ら包み紙を直しても、腐ったお菓子は腐っているんです。だめなものはだめというところが実は問題なんですよ。  どうせ時間がありませんから、時間があるだけしゃべりますから、後で質問してください。質問は、だれが何をしていただくか全然打ち合わせしていません。何を質問したらいいかという連絡もありましたが、そんなことは要らないと、何でもいいから自由に聞いてくださいと私は言いました。フェアにやりましょう。  そこで、問題は本質的な欠陥です、消費税本質的欠陥。これですよ。(資料を示す)消費税のの本質的欠陥。でも、参議院は立派ですよ。参議院は良識の府ですよ。衆議院は物すごくやじが飛んだんです。発言できなかったんです、物すごいやじで。すごかったですよ。議事録を見てください。私は頭へきて、どなっちゃったんですよ。ここはそんなことはないと思います。(「冷静に」と呼ぶ者あり)冷静にやりましょう。  まず、消費税本質的欠陥ですね。これは租税基本原理原点に照らして、容認することができない欠陥なんです。これが問題なんですね。第一が、弱い者いじめ逆進性です。逆進性による不公正、アンフェアですね。これは悪平等な大衆課税になっています。後で御質問があれば、税制改革が家計に与える影響ですね、(資料掲示大蔵省試算が上にあって、私の計算が下にあります。これは質問のときに備えて用意しました。  二つ目は、生活必需品にも課税する過酷な税金。  三つ目は、ぜいたく品にも生活必需品にも同じ税率で、同率の単一税率課税する不合理さ。これは先ほどの帳簿方式という技術的な制約からきているんです。単一課税原則非課税なしよという仕組みは、消費税の持つ本質的欠陥なんですが、これは技術的欠陥本質的欠陥と融和したわけです。技術論本質論を本末転倒にさしたという悲劇がここにあるわけです。単一税率ですから、ミンクのコートもダイヤモンドのようなぜいたく品も、そして人間生活に不可欠な食料品やお薬も同一の税率課税されるという容認しがたい不合理があるわけです。  それから本質的欠陥の第二は、放漫財政への危険ですね。これは申しわけありませんが、消費税が導入されたために大蔵省は喜んじゃって、財布の口を開きましたね。本年度予算は、対前年比六・六%のアップ。長いごとゼロシーリングマイナスシーリングで苦しんだわけですが、地獄のかまのふたがあいたわけですね。打ち出の小づちとも言うべき消費税が導入されて、財政は一段と放漫化への危険がある。これは重大です。  それから次いで三つ目は、不公平税制放置ということです。これは去年もやりました。不公平税制、現在直接税に限りなき不公平が存在するんです。私はこの点だけにつきましても、資産課税の欠落、それからタックスエロージョンの拡大、タックスシェルターの放置、多国籍企業など国際的企業の、巨大企業国家帰属からの離脱、世界的スケールでの租税回避、こういう現象が起こっているんです。これが是正されないで放置されちゃうんです。  私は、昭和六十三年度平年度分で、所得税の不公平の是正で三兆一千六百億円、法人税については三兆一千九百億円という試算を発表しました。法人税所得税是正だけで実に六兆三千五百億という数字が、私個人の研究で出たわけです。これは不公平の是正ですね。これらが十分になされなければなりません。――時間ですか。
  4. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) いや、まだ三分あります。
  5. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) あと三分ですね。  問題はここです。これが今は私のような学者が身のほども省みず、身の危険を冒しながらこういうことを言うわけです。こういうことを言うことができるんです。本当にすばらしい国ですね。これがだんだん言わなくなります。十年もたてば、税金というのは消費税だと、不公平税制なんてものは忘れられてしまうんじゃないか。これが私が一番心配することです。そして、今回確かにやってくれましたね。キャピタルゲイン課税是正もやった。不十分です。それから、いろんな受取配当金の益金不算入の是正もやりました。不十分です。これ、いかに不公平税制是正が不十分かは各党が質問してください。  問題は、こういうように不公平税制是正がなぜできないかということが大変深い関係があるのは、これは税制改革政治改革の絡みですね。政財官界癒着の構造、政治金権体質個別利益誘導政治の深化、そしてサイレントマジョリティーを無視してノイジーマイノリティーと自民党族議員癒着税制改革まで政治家が利権化し、税制を空洞化し、租税論理を破壊したということです。国が滅びます。今の状態は最悪です。リクルート疑惑によって汚れた手の政治家が不公平きわまりない弱い者いじめ消費税を強行導入し、これを推進し、混乱に目を覆うという救いがたい状態です。  そこで、提案があります。提案税制改革のやり直しです。もう一回不公平税制是正消費税の凍結、廃止、速やかにこれを凍結していただいて不公平税制是正をする。そして税における公正と正義の実現、国民から真に尊敬と信頼の得られる税制をつくることです。税金政治の顔ですよ、政治の顔。今の税金はどういう顔をしていますか。税は民主政治の顔であり、尊厳と権威を確立しなければなりません。税の生命は公正と正義です。これが貫かれなければなりません。税は国民納得理解が必要です。納得理解が得られるような税制改革をしていただくことをお願いし、御清聴に感謝して終わります。  ありがとうございました。
  6. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  次に、社会保障につきまして丸尾公述人にお願いいたします。丸尾直美君。
  7. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) それでは、公述させていただきます。  今回の予算と非常に関係あります税制改革におきましては、所得消費資産への課税のバランスの是正高齢化社会に備えての安定財源の確保という二つのことが重視されました。政府に対しましてもこの二つの点を野党各種民間団体なども要請しまして、政府もそれにこたえまして福祉ビジョン福祉に関する将来計画などを二回にわたって示しました。そして、前年度補正予算で、やはり野党要請などもありまして、老齢福祉年金受給者への臨時福祉給付とか在宅介護のための一時金五万円等々、福祉関係の支出をしました。また、今年度予算で確かに政府野党各種団体要請等にこたえまして力を入れたところもあります。  まず、そういう点は正当に評価したいと思いますけれども、例えば在宅ホームヘルパー、四千人ふやして国の補助率を三分の一から二分の一にした、そして予算も一〇〇%近く増額した、そういう点とか福祉関係施設整備費在宅ケアショートステイ事業の開始等々、評価するべき点はあるわけです。また、資産課税に関しましても、一応キャピタルゲイン税株式に関して導入するということをした。  そういう点を見ていきますと、政府は、消費税導入所得税減税福祉ビジョンの提示と老人福祉サービスの拡充、株式に対するキャピタルゲイン課税などによる資産課税への強化等をセットにした一種の社会契約的な改革をやったんじゃないかと一見見えるわけです。  しかし、政府の期待に反しまして、今回このように政府の政策に対しまして不信感が高まってきたというのは、もちろん増税というのはいつでも反対が強いということとか、リクルート事件が重なったとか、いろいろ事情があるでしょうけれども、やはり基本的な点において、消費税導入見返りとして多くの国民が期待し、野党労働組合等々が期待していたことに関しまして非常に反している、裏切っているということが基本的であろうと思います。そういう点をきちっとやっていれば、こうまでは批判は高まらなかったのではないかと思います。  私も富岡先生と同じだと思いますけれども、やはり税特委員会三つのことをぜひやってくれと言いました。消費税見返りとして、一つは、既に年金改正のときに附帯決議になっていました基礎年金の真の意味での充実最低額を一律にもう少し引き上げるという問題、そのための公費負担段階的にふやしていく、そういうことに消費税を使えと。二番目に、老人医療費公費負担比もこれもすぐとは言わないけれども段階的に引き上げていくということ。そして三番目に、寝たきり老人等の重介護充実、そのための費用の負担。そういう三つの点はまさに高齢化に伴って不可避的に増加する項目であるし、生存にかかわる緊要度も非常に強いニーズであるし、消費税逆進性を相殺する効果もありますし、それに将来の予測が比較的しやすい。  そういうことで安定的に財源消費税の何%を向けていけばいいというようなことができるわけでして、その両方を関連させて、これだけやるから高齢化社会にとって国民が不安に思っている年金の基礎的な部分老人医療の基礎的な部分老人福祉サービス、その点はしっかりと保障しますよ、これが消費税を導入したことによる最大のメリットであるというようなことを明確にしていただければ、まさに一種の社会契約的な改革が成立して国民の合意ももう少し高まったと思うわけですが、それをおやりにならなかったということが非常に残念であるわけです。今回の予算におきましても、そういう基本的な方向を示した上で、段階的な改善の第一段階として予算を位置づけていくということがあれば非常によかったのではないかとちょっと残念に思っているわけです。  それから、資産面の課税に関しまして、やはり今御指摘がありましたように非常に不十分であり、バランスの是正という点で、確かに税金の中で、資産にかかわる税金という意味ではそれほど資産税金に対する比重が下がっているわけではないし、むしろ上がっているという点もあるわけですが、ただ、そのもとになる資産が非常にふえている。例えば株式の市場価値でも、一九八六年度の初めには二百兆円程度であったのが今や東京証券取引所だけで五百十兆円になっているとか、土地は政府の推定でも二年間で四百兆円以上ふえているとか、そういうふうに対象となる資産が飛躍的にふえている。勤労者は、四千五百万人の勤労者が一生懸命頑張って賃上げしても、ふえる賃金額というのはせいぜい一年十兆円かそこらであるわけです。そういうことを考えますと、やはりそのバランスの維持というのは、税制全体の中で資産課税が何%、消費課税が何%、所得課税が何%というんじゃなくて、その母体となる資産なり所得に対する税の比率が全体としてどうなっているか、そこを重視いただくということをぜひやっていただきたいと思うわけです。  それから次に、社会保障の中心になりますのは、お金が一番かかるのは年金ですけれども、年金に関しまして政府は、たまたまことしは年金再計算の年でもあるということもありまして、社会保険料率男子一二・四%を一四・六%にするとか、それを決めまして年金支給開始年齢をおくらせる話が出てきたわけですが、これは政府としては既定の方針であったということでしょうけれども、やはり国民的感情としては、社会保障による福祉への見返りを期待していたときだけに非常に反発があったように思われます。その辺の配慮が不十分だと思います。  それからまた、将来の年金を予測して毎年度予算にも反映さしていかなければならないわけですが、政府が一たん将来の社会保険料率の予測を発表しますと、例えば六十歳支給だというと三一・五%あたりになる。そうすると、それをもう既定の事実のように使ってみんな話をしちやうわけです。ところが、前回のときと今回のときでその保険料率は、同じ計算してもこれは想定いかんによって非常に違ってくるわけです。特に私が強調したいのは、就業構造の違いの影響と、それから年金の運用の利回り自体もそうですけれども、それ以上に給付費対年金の積立金の比重をどう操作していくかということです。物すごく違うわけです。将来になりますと年金総額というのは国民所得の十数%になってくるわけです。今のお金でいったら一〇%で三十七兆。十何%といったらもう四十兆とか五十兆のお金になってくるわけですね。ですから、その給付費の倍の積立金を維持するなんといったらこれは大変な額になっちゃうわけです。ですから、給付率に対する比率を維持するだけでもう膨大な保険料が必要になってくる。したがって、その調整をどうするかによって保険料率というのは物すごく違ってくるわけです。  それから就業構造も、どれだけ生産年齢人口があるかだけではなくて、どれくらいの人がその中で就業するかとか、雇用を拡大してきっちりとたくさん保険料を払ってもらうとか、社会保険にちゃんと加入するかとか、いろんなことで違ってくるわけです。その辺の詰めが非常にお粗末だということは前もちょっと申しました。やり方によっては、そういう就業構造とか雇用を安定的に拡大していくことによって意外と働く人の比率は下がらないんですね。例えば今、高齢化が世界で最も進んでいるスウェーデンと日本を比べますと、日本は全人口のうち就業して働いている人は、去年の統計で四八・五%です。それに対してスウェーデンは、同じ年に大体五三%ぐらいであるわけです。スウェーデンの方が働いている人は人口の中で五%近く多いわけです。それだけ働いている人が税金を払い社会保険料を払っている。計画のやり方によってそこが非常に違ってくるということです。ですから、その辺を十分考慮されて雇用をこういうふうにしてやっていけば、そしてまた年金の積立金をこういうようにやっていけば、そうすれば人口高齢化のピーク時でも三一・五%でなくて、あるいは六十五歳にして二六・一%でなくてかなり違ってくる。  その三つの組み合わせ次第で、私の計算ではもう四%ぐらいの保険料率の相違というのはすぐ出てくるわけです。それから、もちろん政府基礎年金公費負担分を段階的に引き上げて三分の一から二分の一にする。そういうことによっても若干違う。そういうことは簡単に計算できますけれども、そういうことを十分詰めてなくて、一たん発表した数字がひとり歩きさして、それをもとにもうこうだこうだと言っていくと、国民はよく計算はわかるわけではないけれども、何か何となくおかしいではないかと。何かはかに手があるのではないかということを考えるわけですね。  その辺の疑問を納得させるようなビジョンを示す。ビジョンを示すというのは、将来の数字をばっぱっと出してこうだよというだけではなくて、もう少し納得的にその辺のことを示していくということが必要であり、その方向に沿って保険料率もこうやっていく、基礎年金もこうしていくというようなことが必要なわけです。  それからまた、ことしの予算に直接関係あることでは、年金再計算期ですから、例えば基礎年金を五万五千五百円に引き上げていくとか、四十年加入の給付額をこれくらいにしていくとかいろいろありますけれども、その辺でも私ちょっと計算してみて疑問になるのは、例えば基礎年金も一九八四年度、昭和五十九年度に決めたときには一人当たり国民所得の三〇・八%、ほぼ三〇%、そういう決まりになっていたわけですけれども、今度のやり方で五万五千五百円にしましても、それはその数字ですと恐らく二八%くらいですかな、二七%台に下がります。これはピーク時で、その後、次の年金再計算までは物価スライドだけですから実質値はそう下がってきますね。  そういうことを考えていきますと、これとかあるいは厚生年金の報酬比例部分の給付率も、給付率自体は標準報酬に対して三〇%と同じに見えます。しかし、標準報酬の対賃金比がかなり下がっているわけです。ですから、賃金に対しては下がる計算になっておるわけです。下げなくちゃならない理由があるならば、そういうこともはっきり出して説明してくださればいいんですけれども、そっとひそかに下げていくというのは余りいいことではないんじゃないか、そういう感じもしています。これをやるための予算措置が出ているわけですから、そういうことももう少し追求し納得させる必要があると思います。  それから、福祉といいましても私はこれはもう一つ、社会保障そのものでなくて真の豊かさを実現するための、まあ政府の言う実感できる福祉、豊かさですね。そのためにはやはり生活の質の充実が非常に重要だ、これも政府が非常にこのごろ言っているわけです。特に住環境のアメニティーとか文化とか大事になるわけですけれども。政府がそういうことを重視しますよ、生活の質を重視しますよ、豊かさを実感できるようにしますよと言う割には、予算に反映されていないように思うんです。そうであるとすれば、例えば住宅関係などにしましても、いい住宅をつくるためにはもう思い切って利子補給をする。お金はいっぱい余っているんですから、そのお金が土地投機になったり株投機になったり海外へ行くよりは、そのお金に利子補給をつけてやっていい住宅を、十五年、二十年たてばすぐだめになるような住宅でなくて、本当に質のいい美的なゆとりのある住宅をつくるためにそういうのを補給するというような、そういうことに思い切ってお金を使っていいんじゃないかという感じがするわけです。  その辺のところをちょっとこう見ていきますと、例えばスウェーデンという国はちょっとまあ特殊だから反発を招くかもしれませんけれども、人口が日本の一四・五%のスウェーデンの国家予算に計上されている住宅融資の利子補給は、一クローネ二十一円、今の率で換算しますと三千七百十七億円です。日本の場合が三千四百八十九億円で、日本よりは多いんですね。人口は十四・五分の一ですけれども。非常に利子補給に力を入れていい住宅を建てさしている。そういうことが住宅の質をよくし、生活の質を改善することにつながるわけですね。  あるいは、もう一つ文化ですね。これからアメニティーと同時に文化が非常に重要になるんですけれども、同じく例えば文化予算を見ますと、日本が今度の文化庁予算で芸術文化振興それから文化財保護のための予算がふえまして四百九億四千五百万円です。これはたまたま人口八百四十万人の国のスウェーデンの芸術振興、文化財保存予算四百八億円、ほとんど同じですね。そうすると、スウェーデンはあれは変わった国だからあんなふうになったら大変だと言われますから、もうちょっとほかの国を言いますと、イギリス、フランス、イタリアはいずれも人口は五千万人台ですけれども、そういう芸術振興、文化財保護の予算が、イギリスが八百八十四億、フランスが一千九百七十八億、イタリアは芸術助成だけで八百八十四億、音楽助成だけで五百四十五億と日本の文化庁予算全体よりも多いわけです。  やはり生活の質とか文化、アメニティー、そしてそういうものを充実さして真の豊かさを実感さしていくためには、それは口で言うだけではだめなんです。やはり予算に反映さしてそういうことを充実さしていくということが必要であるのであって、日本の場合は民活を使ったりしてそういうことをやりますから、別にスウェーデンのような国をまねする必要はないけれども、余りにもそういう文化とか住宅に対して政府の力の入れ方が少ない。それからもう一つは言うまでもない、老人福祉サービスに対しての力の入れ方が少ない。  そういう点をもう少し的確に事実を把握して国民にもみんな率直に知らせて、そしてそういうことを改善するためにはこれこれの増税をするし、消費税予算もそういうことにも間接的につながっていくというようなことで納得いくような説明をして、なるほどそうすれば消費税を導入したりして予算がふえ、そして真の豊かさも実現されていくという、そして老後も安心だという、そういう感じを与えることができるような予算にぜひしていただきたいと思います。  何とかそういう方向に、今度こういうところで話させていただくときにはかなりそういう方向に動いたと喜ぶことができるように、ぜひ期待したいと思います。
  8. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 石本茂

    ○石本茂君 お二方の先生の御高見ありがとうございました。  私は、社会保障関係いたしますことで丸尾先生二つ三つお尋ねをしたいと思います。  本年の二月でございましたか、二十一世紀へ向けての年金と保健医療、福祉サービスの研究ということで、社会的最適ミックスを求めてというようなことが現代総合研究集団から報告兼提言ということで発表されました。  この福祉ミックスというやや耳なれない言葉でございますが、これは老後、先生も今お話しございましたけれども、万一の場合の所得保障とか介護サービスを公的な社会保障給付だけでなく、民間企業による給付とかあるいは家族とか地域社会、ボランティアなどからの寄附、支援というようなものの組み合わせでやっていこうとする考え方だと理解するわけでございます。今後、我が国の世界に例を見ない高齢化社会の到来、これはもうはっきりわかっていることでございまして、社会的保障を公的部門だけに頼るということは困難であるというふうに私は思うわけでございます。このような福祉ミックスというような考え方には先生も関心をお寄せになっておられるように私は受けとめておりますのですが、その最も適当な組み合わせというようなこと、そうした点につきましてどのようなお考えをお持ちでございますか、お尋ねをいたします。
  10. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 福祉ミックスは、おっしゃるように公的部門、これは中央、地方政府福祉供給、それに加えまして民間――民間といいましても民間のいわゆるシルバー産業的なことでやることと、もう一つは企業内福利厚生でやること、両方ありますね。それに加えて、インフォーマル部門、家族とかボランティアとか近隣とか非営利団体、そういうことの組み合わせでやっていこうという考えは、今御質問のあったとおりでございます。  そして、そのミックスというのは、この議論が意外と出てきたのは、日本は日本で日本型福祉社会というのはそういう考えもあったと思いますけれども、それぞれ現状が違うから同じミックスでも発想が違うわけですね。北欧とかイギリスなんかで出てきているそういう考えというのは、要するに余りに公的にやり過ぎた、例えば特別養護老人ホームにしても、あるいはケアつきマンション的なものにしましても、スウェーデンのような国ではほとんど全部公的にやってきた、そういうところにもう少し民間を入れてもいいのではないかということになるわけですね。  そしてまた、ホームヘルパーも、よく引用されますように既に、パートが多いですけれども、五万人公的ホームヘルパーが雇用されている。日本が今度大増員して三万人ちょっとですから、人口一四・五分の一の国よりもずっと少ないわけです。そういう国で考えますと余りに公にお金を使い過ぎて、そこはもう少し民間とかインフォーマル部門を見直して生かしていいのではないかという考えが出てきているわけですね。  ただ、日本の場合で考えますと、ちょっと逆なところがあるわけですね。例えば老人福祉サービスでもホームヘルパーとかデイセンターとか――ディセンターなんというのは数年前までほとんど全国になかったわけですから、そういうものを考えますと、あるいは公的ケアつきマンションにしましてもやっと東京都と神奈川県関係ででき始めた程度でほとんどなかったわけですから、日本の場合は最適ミックスというと、むしろ公を充実させようということが老人福祉サービスなんかの場合には出てくるわけですね。  ただ、年金に関しましては若干違ってくると思うんですね。日本は、年金は少なくとも制度的給付率ではまあまあの線まで来ている。ただし、標準報酬に対してはまあまあだけれども、標準報酬自身がボーナス、サービス等を入れた賃金に比べると低いから、それと比べるとまだ低いわけです。ですから、それですとやはり公的な年金だけでは不十分だから、そこへ企業年金、職域年金それから個人年金などで補いましょう、また自助もあって、自分でもいろいろやりましょう、政府も本来ならばそういうところをもっと助成しましょう。例えば現総研のアンケートでも言いましたように、やはりみんなが期待する老後の生活に比べると年金はフルに入っても四、五万円は足りない。そこを補うまでは何とか、福祉ミックスという場合には、政府は民に対してかなりいろんな助成措置をとるとかそういうことがあっていいと思いますね。特に公的年金、それから今、アメリカで非常に発達しています株式購入とセットにしたESOPですね、ああいうような制度とか、イギリスやアメリカは確かに、アメリカは民間重視で、イギリスもサッチャーさんは民間重視ですけれども、民間重視というからには補うためのあるところまでの福祉代替的な制度に対しては非常に思い切った補助をしているわけですね。そういうことをやって、総合的に見て大抵の人が老後の生活を安心できるようなそういう姿を描けるようにする、そういうことが必要であろうと思います。  一言で言いますと、ここが福祉ミックスの最適点というのは国によって若干違いますし、それからこっちに要るかあっちに要るか、ミックスで私的なものをふやすか、あるいは公を重視するかで違ってくるということですね。
  11. 石本茂

    ○石本茂君 次にお尋ねいたしますのは、今、先生のお話の中にも随分出ておりましたが、老人福祉についての考え方でございますが、ここ十数年間を見ておりますとかなり変革はしてきたように思いますけれども、ただいまの福祉ミックスということのほかに在宅ケア重視の考え方が大きく出てきたように思うんです。医療などの関連分野との連携とか相互化なども叫ばれておりますし、政府でも今年度予算を見ておりますと在宅ケアを重視いたしまして、そして今お話しのありましたホームヘルパーとかショートステイとかデイサービスのような事業を三本柱にしましたような予算を組んでおるわけでございます。  医療の面では、老人保健施設もだんだん目に立つような設備ができつつございますけれども、この老人福祉のあり方あるいはこの理念、そういうものについて先生は非常に深いものをお持ちでございますので、今お聞きもいたしましたけれども、今後の我が国の老人福祉は一体どうあるべきかというようなことをお聞かせいただければありがたいと思います。
  12. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 政府がことし在宅福祉元年と言われるようにそこに力を入れ始める、これは野党要請も非常に強かったと、その両方だと思いますけれども、非常に結構なことであると思うんですね。ただ、非常にふえた、福祉予算が一〇〇%近くふえたとかいろいろありましても、元が余りに少なかったものですから、将来ビジョンとの関係でもう少し、どれくらいの人が結局ケアされて、どれくらいお金がかかるかというようなことを一つは金銭的にきちっとさせる必要があるわけですね。  例えば、ディセンターを二〇〇〇年に一万カ所というと大体一万三千人に一カ所、中学校が今一万一千人弱に一カ所ぐらいですから、大体それくらいの規模になります。それから、特養を二十四万床、老人保健施設を二十六万から三十万床、それからまた病院に残る人、ショートステイが三万人等々、こう計算してみますと、大体そのときの、二〇〇〇年の六十五歳人口の三・何%ぐらいまで介護される、それが実現されればですね。それを、残ったところを在宅で五万人のホームヘルパーでやれるかどうかという問題が出てくるわけですね。そういうところをもう少し詰めて考えて、そして予算措置も計画のもとにだんだんそれに基づいた方向に動いていくという、そのビジョンをきちっと金銭的に立てることが必要だ、大事だと思うのです。  それから、世界の傾向はおっしゃるように在宅ケア重視であるわけですけれども、在宅ケア重視になっているヨーロッパの場合を見ますと、既に施設ケアが六十五歳以上老人の五%以上、十分あるわけですね。日本の場合は、特養が一%、老人保健施設は今できたばかり、あと病院にかなり入っていて何とかやっていますけれども、それにしても非常に少ないわけですから、在宅ケア重視は非常にいいんだけれども、しかしやはり施設についてもこれくらい必要だという、その点の組み合わせをここでも、在宅ケアと施設ケアのミックスで全体としてどれくらいがケアされるかというその辺のビジョンをしっかり示す必要がありますし、それから私、常にお金のことをよく言いますけれども、在宅ケアと施設ケアでどっちの方がどれくらいお金が違うか、そして入る人はどっちが幸せなのかとか、そういうことをもうちょっときちっとはっきりさせていく必要があると思うんです。  それから施設ケアにしましても、例えばヨーロッパの若干の国などに比べたりしますと余りに施設がお粗末なわけですね。プライバシーが尊重されない、ないし一部屋に二人とか四人ぐらいは当たり前というようなそういうことでいいのかどうか。やはり施設に入ってもこれは住居だ、病院に入ってさえもそれは一つの生活の一部であるという考えで、そういうときの質を充実させていく、そういう思想がもっとあっていいと思うのです。  そして、そういうのにお世話になるのは必ずしも貧しい恵まれない一部の人じゃなくて、自分ももしかしたらそうなるかもしれないという、そして自分は入っても構わぬという、あそこなら安心だというぐらいの、そういう施設をだんだんつくっていく必要があるのじゃないか。そうすれば、そのためにはお金が要るだろう。人のために出すと思うから出したくない、自分のためで、社会保険であり年金と似たようなことだとわかればもう少し出てくると思うのです。  老人福祉サービス関係というのは、いろいろ積み上げて計算してもそんなに大したお金じゃないんですよ。ですから、今お金を使おうとしたら福祉充実に非常に効果的な分野じゃないかと思うのですね。ことし出た芽をぜひ大いに発展させていっていただきたいと思うのです。
  13. 石本茂

    ○石本茂君 大変深い示唆をお与えいただいたと思います。ありがとうございました。  次にお尋ねしたいと思いますのは、先ほど先生のお話の中にも随分出てきた問題でございますが、政府は昨年の福祉ビジョンで、年金支給開始年齢の六十五歳引き上げを明確に打ち出したわけでございます。具体的な計画も政府の中では固まっているように受けとめているわけでございますが、私はいろいろ考えまして、これもやむを得ないことかなというふうに考えておるわけでございます。  この点につきまして、日経産業消費研究所というところが三月に調査をいたしました。その結果を見ますと、年金支給開始年齢の引き上げはこれはやむを得ないのじゃないかという意見が割合多いということと、ただ保険料の負担の増加は嫌だということが大きく出てきております。これは、国民の皆さんはこのままでは保険料負担が増加してしまうんじゃないだろうかというようなことに最も強い懸念をしておられるのじゃないかというふうにも受けとめたわけでございます。支給開始年齢の引き上げということは、これは私も素人でございますが、すべて来年から引き上げられるのじゃないかというようなことを心配する向きがあるわけでございますが、これも今後二十二年の間に段階的に引き上げていこうとするものであるというふうに受けとめております。  私は、今後の急激な高齢化社会を前にいたしまして避けて通れないことであるというふうにもこれは考えるわけでございますが、先生の先ほどのお話を承りましたけれども、もう一度この基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 日本も高齢化がどんどん進行して、将来は今の最高高齢化国のスウェーデン等よりもかなり高齢化するということ等を考えますと、給付率をかなり北欧などに近づけるとすれば、これは大変な保険料率になるということは、これは常識的にもわかりますし、計算しても比較的簡単にわかります。  ただ、先ほど言いましたように、そのとき用いる変数いかんによって四、五%ぐらいまでの違いはあり得ます。その中には不確定な点が多いわけですから、政府としては安全度を見てちょっと高目に出しているということが言えると思うのですけれども、それにしてもやはり長期的には六十五歳支給に段階的に動いていくということが私もやむを得なくなってくるんじゃないかと思いますね。そのためにはもう少しいろんな政策、変数を操作して、こうしてもこうなるんだということを納得させることが必要ですし、それからまた、よく最近言われますように、少なくとも六十五歳までの雇用が絶対安全だという、それのビジョンがまず明確になって、もしその前に職がなかったらどうするんだと。そこの保障を、部分年金的なものと失業手当的なものを組み合わせたような形で保障していく。どんなことがあっても六十五歳までは大丈夫だよ、雇用を中心とした保障があるんだということをつくっていけば、将来はやむを得ないんじゃないかと思います。  そのビジョンを明確にして、やむを得ないということをもう少し納得させることですね。その過渡期の措置をとるということ、それができていないから反対されているんじゃないかと思っています。
  15. 石本茂

    ○石本茂君 私は三つのことについてお伺いをしたわけでございまして、ほかにもまだお聞きしたいこともございますが、時間を多く超過してしまってもいけないと思いますのでこれでやめますけれども、非常に深い御示唆をお与えいただきました。心から感謝いたしております。今後ともいろいろとお導きを賜りますことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  16. 山本正和

    ○山本正和君 両先生、本当にお忙しい中おいでいただきまして心から感謝申し上げます。  参議院衆議院と違いまして粛々と予算審議をいたしておりますので、どうぞひとつ御遠慮なく御意見をお述べいただきたいと思います。  私、まず富岡先生にお伺いしたいのは、先ほど不公平税制是正によって六兆三千億ぐらいの財源が出る、こういうお話がございました。不公平税制是正ということがいろいろ言われておるのでありますけれども、なかなか国民の前にはっきりとしたイメージが出てまいりません。その意味でもう少し、不公平税制是正すればこうなるよと。しかも、これは企業にとってもそんなに損害でないと私は思うんでありますが、特に、かつてイギリスやフランスが十八世紀、十九世紀にかけて大変発展した当時に国内に資本をしっかり投下した。日本のように余った金を何か脱税をしたり、外国に投資したりというようなことをせずに、企業が国に対する責任を果たしておったというふうなことも含めまして考えますと、どうもおかしい、これだけ豊かな国が一体何なんだというようなことを思いますので、その辺をまずお教えいただきたい。  それから二番目に、今度の消費税の根幹的な問題として言われております事柄で、税というのは憲法で示されておりますように明確で公正でなくてはいけない。それはすべて法律によって定められる。消費税というのはいわゆる憲法に触ればせぬか、こういうふうな疑問がございます。その辺を少しお教えいただきたい。  それから三番目に、大蔵省試算しております消費税の家計に占めるいろんな数字がございます。そして、減税なんだ減税なんだとこう盛んに言っておられる。ところが、庶民はそういうふうになかなか受けとめておらぬわけでございます。ですから、消費税というものと今度の減税の効果というものとの関係、そういうものについてひとつ先生のお考えを承りたい、こう思います。
  17. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) 山本先生から大変たくさんな、かつ重要な問題をお尋ねいただいたわけですが、逐次お答え申し上げてまいります。  不公平税制というのは、税のあるべき理念、原理原則から見てそれが外れている、こういう場合ですね、これを不公平税制というふうに言うと思います。その場合、間接税にも確かに不公平税制がございますが、今、問題になっておるのは所得税法人税、つまり直接税における不公平税制是正が十分であったかどうかということでございますね。直接税の場合には、この場合主として個人の所得にかかる税金所得課税、法人の所得にかかる法人税でございます。もし御質問があれば相続税についても述べますが、その場合、問題は課税ベースですね。課税所得に対して税率を掛けたものが税金なんですから、課税ベース、課税所得が適正であるかどうか、課税所得の概念と課税所得の計測方法というか計算方法がより妥当なものであるかどうか、これが問題なんですね。  私は、先ほども冒頭に税務会計学という学問を研究しているんだ、こう申しましたが、私は、課税べス、課税所得研究、これを長いこと、三十何年、もう四十年近くやってきた人間なんです。そして、会計原則とか税務会計原理とか、そういうものを明らかにして、法人、個人を通じてあるべき課税所得とは何かということをやってきたつもりです。  資料を使ってよろしゅうございますか。――(資料を示す)  こんな絵をあるところで使ったんですが、丸がございますね。この丸は十五夜お月さんです。真ん丸ですね。これは満月形。この満月形が我々の学問、税務会計学の原理によって算定されたあるべき課税所得です。理念的ですね。ゾルレンです。ところが、現行の税法は特別措置であるとか優遇措置であるとか益金除外であるとか、いろんな複雑怪奇なシステムがあります。これは税務会計のメカニズムです。かなり技術的専門的です。そのためにエロージョンといって、たまたま黄色い部分でございますが、課税ベースが浸食されているわけですね。虫食い現象。海の水がひたひたと浸って岩を削っていくという現象がエロージョンですね。あのように課税ベースが削られているわけですね。庭の桜の葉っぱが毛虫に食われてすかんすかんになっているような状態、これが課税ベースの現状なんです。こういうぐあいにへこんでいる部分があるわけです。中には若干、引当金の設定が不十分であるとか、必要経費の認識に問題があるとかいう形で課税してはならないものにも課税しています。出っ張っている部分があります。拡張化現象。圧倒的にへこんでいる部分が多いわけですね。この課税べースの是正が必要なんです。  先般の税制抜本改革所得税、住民税の税率の引き下げをやっていただいたことは大変いいと思います。大変結構で国民は喜んでいると思います。消費税ばかり議論して所得税、住民税の減税が余り認識されていないんじゃないかということを政府がおっしゃっていますが、全く同感です。そのことも正しく評価して、トータルで税制がよかったかどうかを議論しなきゃならないことは私も同感なんです。考え方は私は皆さんと違わないと思っているんです。  問題は、税率を下げたが課税べスの是正が必ずしも十分でなかったということですね。ですから財源がなくなりましたね。その財源消費税という新たな大型間接税に持っていったというところに基本的な問題があるわけです。ですから、税率を下げるときは特別措置とか優遇措置とかそういうもので必要がなくなったものをやめていただくと。課税ベースの正常化ですね、それをやることがよかったんです。アメリカの税制改革やよその国ではそれをやっています。ですから、所得税税率を下げるときは、法人税税率を下げるときは、それぞれの課税べスのゆがみとひずみと欠落を直すことが大事なんです。消費税を入れることじゃないんです。  もう一つ資料がございます。(資料を示す)  日本の税金で高いのは税率なんです。世界的に見ても決して所得税法人税も高くありません。高いのは所得税税率であり法人税税率だったんです。こんなに高い法人税ですと日本の企業は海外に進出しちゃう、おれたちはアメリカに本店を移すと言って経団連や財界が政府を脅迫しているということが新聞に出ておりましたが、これはおかしいんです。  これはあくまで例え話ですよ、これは講義の材料ですが、あるべき所得、満月形を一〇〇〇としますと、特定の大企業などの課税べスは三分の一ぐらいですね。三〇〇ぐらいしか把握されていないんです。把握されていないという問題は、税制上の欠陥と税務執行の欠陥ですね。二つあります。税務執行の問題は、また御質問があればぜひ答えたいと思っています。この辺で税務行政を立て直さなかったらえらいことになります。その二つの面から、制度と執行の両面から三〇〇ぐらいしか課税対象として把握されていないんじゃないか、浮かび上がっていないんじゃないか。  ですから、税率は比喩的に言って五〇%ぐらいで高いわけですね。三〇〇掛ける五〇%イコール一五〇。国家財政は赤字、火の車。福祉財源も十分得られない。福祉についてビジョンも示されない。先ほど丸尾先生御指摘の問題がございましたね。そういうことです。これを私は、月にかかった雲を払う。そうすると満月になります。明るくなります。タックスエロージョンをやめることです。戻す。戻せば税率がうんと下がります。税率がうんと下がっても税収がうんと入ります。これが私の提案です。下の理想が、一〇〇〇に戻します、一〇〇〇に戻すと税率は三分の二ぐらいに下げていいんです、三分の二ぐらいに。仮に三〇、そうしても税収は三〇〇、倍入ります。これをやってほしいんです。これをやるのが税制抜本改革だったんですね。これをやらない。一部やっていますよ、一部やっていますが、キャピタルゲインだってそうじゃないですか。たくさんの取引ですね、三十回以上で十二万株以上の人は総合課税でたくさんの税金を取られましたが、四月一日から源泉分離と申告分離の選択ですね。恐らくもうけた人は源泉分離をとりますね。源泉分離というと取引額の一%ですよ。一千万、株を売って仮に三百万もうけても、十万円の所得税だけ払えば済むわけですね。これでは有価証券取引税の変形でして、入場料払うだけですよ。  先ほど資産課税是正ができた、キャピタルゲイン課税是正ができたというような議論もございましたが、できたが中身が問題なんだと。早くプライバシーの保護を十分にしながら納税者番号制度とか、つまり脱税ができないような仕組みをきちっとつくって所得のあるところには必ず課税してもらう。応能負担原理によってきちんと課税するというやり方をすれば、消費税は要らないのじゃないか。土地の問題もそうですね。そういうような問題があります。そういう是正をしていただくわけですね。  先生の御質問の一つ目の後半に、企業のありようですね、一体企業というのはどうなんだ、企業が国にどのような貢献をしているのかということですが、残念ながら、多国籍企業と言われる日本の巨大企業は世界を舞台に大変な仕事をしています。もちろん大きな貢献をしています。昔は、多少企業が問題を起こしてももうけがあれば半分近いものを国に納めましたから、その金が福祉や教育や文化や治安維持に回ったんです。ところが今の大企業は、世界で仕事をしていますから、日本の大企業の稼いだ金が日本の国民福祉に回らない、こういう状態ですね。多国籍企業といっていますが、言葉は大変失礼ですが無国籍企業である、国籍不明の企業である。それらがカリブ海のイギリス領のバハマ、バーミューダ、オランダ領アンティルとか、税金のない夢の島々にいろんなペーパーカンパニーをつくって巧妙な手段で税金逃れをしているわけです。  国税庁も一生懸命やってくれています。大蔵省もやってくれていますが、人手不足ですよ。終戦直後と同じ人間でやらしているんですよ、あなた方は。国会の責任ですよ、これは。ちゃんともっと国税庁の職員をふやして、待遇も優遇して、現場の職員もやる気が起きるようにしていただけば相当メリットがあります。行政改革で役人の数を減らすことは必要ですが、余り忙しくないところの人を回して一生懸命勉強していただいて、三年か五年やれば少しはわかるんですから、そしてやはり国税庁の職員を充実させてやっていただきたい。  海外問題。日本の企業はボーダレスエコノミーですから、国境を越えて活動していますから、日本の税務行政も国境を越えて世界じゅうに調査の網を張るような形でやっていく必要がありますね。  今、タックスヘーブン税制の話をしたわけです。タックスヘーブンというのは税金天国なんですよ。夢の島々。税金のない島々、国がいっぱいあるわけですね。例えば一番多いのはバーミューダあたりです。カリブ海にいっぱいありますが、実際は世界じゅう至るところにあるんです。税制改革前までは税金天国として大蔵省が規制する、そこにペーパーカンパニーをつくっても、ペーパーカンパニーならば親会社の所得に合算して課税する合算課税というタックスヘーブン対策規制税制があったんですね。その適用対象は三十三地域でした。ところが私の調査によると、それ以外にアジア・太平洋地域には十三、カリブ海、中南米にも五カ所、ヨーロッパにも十二カ所ぐらい、アフリカ、中近東にも相当ケース、合計三十六の地域があったんです。これは地図があります。見えないでしょうが、この赤いところは大蔵省が野放しにしているところです。タックスヘーブン税制の規制のないところです。  つまり、税金天国が三十三、大蔵省の網にかかっておったわけです。大蔵省令で規定しておりました。野放しのところが三十六あったんです。今回の税制改革で確かに省令を改正しましたが、九カ所追加しただけです。私は三十六カ所あるよと言うのに、大蔵省は、大蔵省というか政府は九カ所しかやってくれなかった。まあ、やったことだけは評価されます。大いに努力に尊敬敬意を表しますが、もっと我々学者の意見をばかにしないで、新聞やいろんな雑誌に書いているんですからもっとよく調べて、十分に抜け穴のないような制度をつくること、抜け穴のない制度をつくり、そして職員も充実さして、しっかり気持ちよく働けるような仕組みにしてやっていただいたらどうでしょう。  それから、この前、一昨年でしたか、ある総合雑誌に「税金を払わない大企業リスト」という論文を書いたんです。中曽根さんが売上税を提案して列島騒然になりかかったときですね、三月号、二月十日発売でしたから。「税金を払わない大企業リスト」という論文を書いて、日本の巨大企業の固有名詞を出しながら、この会社は世界をまたにかけて売り上げが十六兆円ある、利益が五百億円もありながら日本という国に税金を一銭も払ってないということを固有名詞を挙げてやったわけですよ。さすがに大蔵省も驚いて、外国税額控除制度について若干の手直しをしてくれました。しかし、不十分です。どういう点が不十分か。これは昨年の予算委員会で詳しくやりましたから、それと今回の改正と比べてください。つまり、土地とか株の問題もありますが、もっと大きいのは、世界をまたにかけていろんな仕事をしていただいておる多国籍企業、こういうものに対する課税が非常に不十分である。つまり、日本税制は国際化におくれているわけですね。企業の海外進出を促進した時代につくったわけです。このタックスヘーブンは、大蔵省が調べただけでも三十三カ所に二千七百十一社あるんですよ。膨大な数で毎年毎年ふえているんですよ。五十七年三月には千五百二十四社あった。それが六十三年三月には二千七百十一社にふえているわけです。ふえるということはメリットがあるからですよ。やはり制度的に欠陥が、大変失礼な言い方で申しわけありませんが、不十分さがある。それらを是正していただくことが大事だ。  何も私は、企業いじめ税金を取れと言っていませんよ。企業は金の卵を産む鶏ですから、まじめな国民の勤労の場所ですから、企業は健全に発展していただいていいんです。法人税税率は今四二ですね。これが四〇になりましたね。税制改革後は三七です。アメリカが三四、イギリスが三五ですから、日本の法人税税率は三〇に下げてください。三〇に下げることができます。私の言うタックスエロージョンをなくせば三〇に下がるんです。日本の法人税は先進国の中で一番低い税率にしてください。そのかわりにタックスエロージョンをやめて抜け穴のない国、もうかったら税金をちゃんと払う、企業が国家に対して帰属意識を持つ、国家も企業に対してきちんとやるべきことをやってやる。そして、全体の国民が、みんな納めているんだよ、おれもつらいけれども、みんな納めているんだな、大企業もまじめに納めているんだな、ありがたいな、じゃ、ということで、直接税で一生懸命やってください。直接税であと十五年ぐらいもちます。やがて丸尾先生のお出ましを願って、高齢化社会になったときは間接税も必要ですよ。私は間接税反対じゃないんですよ。賛成なんですよ。中身が悪いと言うんです、今の。やるべきことをやらないんだよ。直接税で巨大な六兆円も七兆円もの不公平を残しておきながら、わけのわからないことを言いながら、それで強引に国民の嫌がることをやったからまずいんですね。  税金というのは、まず褒められる税金はないですよ。私も十五年税務署にいたから知っています。憎まれました。その中で苦労してやっているんですよ。だから、曲がりなりにも国民が我慢して納得できるものをつくってやらなかったら、国会は通っても税務署の現場がもちません。いいですか、このことが大事です。このことはぜひひとつ、私は昔国税におりましたから、後輩のためにも国税庁長官のためにも言っておきます。いいですね。その意見もあります。  それから二つ目は、税は公正で明確でなきゃならぬ。憲法に違反するおそれがあるんじゃないか。憲法に違反するかどうかは法律の問題です。私は中央大学では法学部も出ておりますが、商学部で会計学、租税学教授ですから、学者は自分の専攻学問につき権威ある見解を述べることがならわしでありまして、国会に呼ばれた以上、法律の専門家でないくせに憲法違反云々を述べることは差し控えたいと思いますが、その疑い濃厚であるというふうに一市民として感じます。  なぜかというと、今回の税金は非常にわかりにくい税金です。まず第一が、今回の消費税は非常にわかりにくい税金です。生活それ自体が課税の原因となる生活税です。消費税では、借金をして物を買っても税金がかかります。しかも、食料品など基礎的な生活必需品までかかりますね。一方、土地や株式を買ってもこれには消費税はかかりませんね。貯金してもかかりませんね。理屈はわかりますが、庶民感覚からすればぴんとこない感じですね。頭にきますよ。税金というものは、税金負担し拠出する根拠が負担能力があるかどうかではないんです。負担能力、担税能力があるかどうかじゃなくして、人間が生きている、息をしているということ自身が課税の原因になっちゃった。これは大変な税金ですね。これが問題です。  二つ目は、税金を物価にしちゃった。税金が物価に変身しちゃった。物価税です。本来、転嫁と値上げとは別問題ですよ。独禁法学者も言っています。政府は値上げの方法についてのカルテル、転嫁の方法についてのカルテルを認めておりますが、これは大変な間違いです。税を、消費者が逃れることができない物価に置きかえてしまった。強力なタックスマシン、増税マシンを導入したということですね。  三つ目は、消費者商店街を争わせている不信税。欠陥税制で、消費者が納めた税金が国に入らないと冒頭問題になりましたね。そういうことが今盛んで、それで奥様方と商店街とが今ちょっと不和の仲ですね。ショッピングというのは楽しいものなんですよ。市民の文化なんですよ。その市民が商店街に行って、便乗値上げがされているんじゃないか、外税か内税か何かわけのわからない形で取られていますから、しゃくにさわってしようがないんですよ。そのしゃくにさわっているのがリクルート問題と絡んで国会に対する不信になって、先生方は非常に損しているんですよ。消費税という税金はかわいそうですよ。この税金は大事な税金なんだが、不幸な出生の経路をたどったということですね。これは民族の悲劇です。この税金を将来五十年も百年もやられたら、恨みつらみがずっとつながっぢやって、国会とそれから政府に対する恨みがつながっていくんじゃないか。これが政治不信で大変なことなんだ。よし、では一回出直した方がいいというのはそういうことなんですよ。  それから四つ目は、事業者代理徴収入に仕立て上げているんです。嫌がっていますよ、みんな。事業者代理徴収入政府広報の文書によると、消費税消費者負担し、事業者が納める税金ですと。あんなビラをつくってもったいないですよ、税金が。税金のむだ遣いですよ。やめた方がいいと思いますが、一生懸命やっている。御苦労さまな話だ。事業者は、納税義務者の名のもとに税務署にかわって税金を徴収する徴税代理人になったんだ。四月一日から税務署がふえたわけだな。税務官吏が足りないから、全部日本の業者を徴税代理人にしちゃった。これは問題ですよね。  そういう点で、非常に問題がある税金である、こういうことですね。この辺で、ひとつ根本的に見直していただければありがたいと思っております。  時間が超過して恐縮でした。御清聴ありがとうございました。
  18. 及川順郎

    及川順郎君 初めに、丸尾先生に御質問をいたしたいと思います。両先生に御質問がございます。  日本の高齢化社会が急速に進行しているという状況の中で、非常に大事な柱は年金、医療、介護。その中で私どももそうした時代の対応に向けて介護に力を入れるということで今回の予算を組むにつきましては努力をしてきたわけでございますが、もう一つの重要な柱というのは年金の問題でございます。  先生が専門週刊誌にお書きになった「年金改正の在り方再考」という論文を見させていただきまして、私どもも大変同感を受ける点があるわけでございますが、一つは、年金の中で政府が、厚生年金の保険料率がもし年金支給開始年齢を六十五歳に引き上げない場合、これを試算しております。その試算が三一・五%というぐあいに試算をしておるわけでございます。前提条件があるわけでございますが、受給者にしてみますと、その過程が省略されてそれだけすとんと入ってきますと、おどしのようにとられたり、果たしてそういう状況になった場合に今度は若い人たちがその負担をしなければならぬということに対する不安も出てくる。こういうことから、この保険料率の適正な設定の仕方に対するお考えがあれば伺いたいということが一点です。  それからもう一点は、年金の将来展望を考えますと、どうしても基礎年金をしっかりいたしまして、比例部分のところに厚生年金国民年金を新地域年金という形にする、あるいはまた、企業年金とか個人年金の比例部分を上乗せする形で充実していかなければならない。今回の消費税導入の中で高齢化社会に向けての費用拡大を目指しての安定財源の確保が一つの理由になっておるわけでございますが、年金における基礎年金と比例部分のそれぞれの被保険者の負担部分についての基本的な考え方について、先生の御所見があれば承りたいと思うわけでございます。  それから、富岡先生にお伺いしたいわけですが、私ども消費税の反対を貫いていく中で税制改革に対する基本的なスケジュールとしまして、まず不公平税制是正をしっかりやり、そしてこの税収の潤沢な時期に焦らずに、消費税の導入はこれは焦る必要はない、二、三年あるいは三、四年しっかりとその動向を見定めた上で、税収についてどうしても将来的に間接税の検討をしなければならないという状況を見定めた上でその検討に入るべきである。残念ながら、このような税制改革のスケジュールは、消費税の強行によってその道をふさがれたような今状況になっておるわけでございます。  私たちは、やはり国民が今望んでいる消費税撤廃、不公平税制是正するというこの民意というものを尊重してこれからも頑張っていきたい、こんな考え方を持っておりまして、消費税を撤廃した場合の財源見通しをどうするのか、この点についてもそれなりに計算をしておるわけでございまして、その裏づけもきちっと持った試算を現在しておるわけでございますが、先ほど先生不公平税制の見直しだけで六兆三千五百億の見通しが立つという試算を述べられておりまして大変意を強くしたわけでございますが、消費税を撤廃して税制改革の出直しをやっていく上において、そのプロセスにおける税収の見通しについて先生の御所見があれば承っておきたいと思うのでございます。どうぞよろしくお願いします。
  19. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 年金の将来計算、特に保険料率につきましては、おっしゃるように出てきた数字が、やはり一般の人から見ますと反発するだけの資料とか計算が困難であるということから、どうしてもひとり歩きするようになりますから、そこがどういう要因によって左右されるかということを明確にして、その組み合わせ次第によってはこうなるということをはっきりさせることが必要であると思います。  政府は、将来の成長率、それから物価上昇率、積立金の運用収益率等の違いによってどうなるかということを示して、中位推計を多少多目に少な目にと、こうやっているわけですけれども、先ほど言いましたように、それ以外に生産年齢人口のうちどれくらいが就業をするか、就業をしているうちのどれくらいが雇用されるか、雇用されている人のうちどれくらいが実際に社会保険料を払う保険加入者になるか、加入者が実際にどれくらい滞納しないで払うかとか、そういうことに依存するわけでして、それを過渡的に全部やるのは非常に大変ですけれども、二〇二〇年ぐらいになりますと給付に対する積立金の比率というのは大体安定してくるわけですね。そういうふうにしますと、就業構造の影響でどれくらい保険料率が違うかというのはすぐ計算できます。  それから、積立金を先ほど言いましたようにどれくらいの率で維持し続けるか、あるいはある段階にいったらもう積立金を給付に対して同じような二倍とかそれくらいの比重に維持しなくて、積極的に取り崩さなくても給付に対する比重がだんだん下がっていくのに任せていく、その維持するかしないかだけで保険料率はもう二%前後違ってきますね。  それから、運用収益はどれくらい給付に対して積立金を維持しているかによって違いますけれども、その運用収益率の一%の違いが、今、一九九五年から二〇〇〇年ぐらいに想定している積立金の給付に対する比率、それくらいの比率のときに考えましても、やはり社会保険料率は〇・五%ぐらいは違う、その段階だけで切ってでも違うんじゃないかと思います。  そういうふうにいろいろ違うわけですから、その組み合わせをどうしていくかということですね。  特に重要なのは、婦人の就労がどれくらいになるか、高年者にもできるだけ働いていただいて保険料を払っていただくようにするかどうかということ、そして保険料徴収の対象をどのくらいのところまでにするかとか、そういうことで違ってきますから、いずれにしても詰めた計算をして、少なくどもいろんな分野の代表の人が納得するような説明ができて、それを通じて国民納得するというようなことが必要じゃないかと思うんですね。  それから、今、基礎年金の実際の給付の三分の一を政府公費負担することになっていますけれども、この部分をもう少し上げていく、上げていきながら実際に支給される基礎年金最低額を上げていく、これが一番基礎的な消費税に対する見返りになると思うんです。それを段階的にやっていくということを先ほど申し上げたんですけれども、そういうことをやっていきますと、二〇二〇年ぐらいになりますと基礎年金だけでも、もしだれもが完全に受給するようになりますと国民所得の七%ぐらいという大変な比率になります。ですから、公費負担を三分の一から二分の一にふやすだけで国民所得の一%ぐらい余分な財源が必要になります。しかし、社会保障の最も充実すべき分野としましてはやはり基礎年金最低額を上げていく、そのために公費負担分を段階的に上げていくということは一つの考え得る政策の柱であろうと思います。  先ほど三つ言いましたね。老人医療公費負担分を段階的に上げていく、それから老人福祉サービス、特に在宅介護とかそういうところの重介護の費用に対する医療の看護に準じた社会保険扱いのようなこと等、やはりいずれも高齢化社会の進行につれて確実に増加していく費用ですし、ニーズが高まる分野ですし、しかも非常に最低の生活というか、生命に関係ある基本的な国民の不安を左右する非常に大きな要因に関係があるところですから、そういうところに重点的に予算を向けていくということは好ましいんではないかというのが私の考えであるわけです。  以上です。
  20. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) 及川先生の御質問にお答えいたします。  消費税への反対を貫いていただいて、そして不公平税制是正を主張していただいている先生の御意見に対して、私ありがたいと思って感謝申し上げます。ぜひこの消費税の撤廃をしていただいて、そしてまた、間接税改革は出直された方がやはりいろんな意味においてよろしいんじゃないかということです。  問題は、それまでの過渡的なことですが、今、国民の一部に、もうできたものはしようがないんじゃないか、もうやっているんじゃないか、一円玉で取られているんじゃないか、今さらこれをとめるとかえって新しい混乱が起きる、こういうような気持ちが一部にあるやに報道されていますが、実はこれが一番危険なんです。  消費税で一番問題が起きるのは、九月の暫定期間が終わって、十月から納税義務者である事業者が申告します来年の三月です。個人企業者が一年分の消費税を来年三月三十一日までに申告します。そのときに、おれは転嫁してなかった、転嫁しておったのでは商売ができなかったから取らなかった、だから納めないよと言ったときに、税務署の第一線とトラブルが起きることを私は非常に心配しているんです。消費税は円滑に定着したという判断は早計ですね。来年の申告が全部終わってみて、それで税務調査も全部終わったところでそれを判断していただかなきゃならないんで、消費税の本当の混乱は、納税義務者の申告の時期なんです。それに対して今から手当てをしていただく必要がありますね。(「時間が来ている」と呼ぶ者あり)  そうですが。時間が過ぎているといったって、私が始まったときは、もう二分ぐらいしがなかったんです。どうしますか。
  21. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) あと一分やってください。
  22. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) それで、これはがんなんです。がんでも初期ならば切開手術をすれば助かります。ですから、一年以内ならば命に別状がないと思いますから、ぜひ一年以内に切開手術をしてください。  それで、財源としては、個人では、貯蓄課税是正、配当課税是正、有価証券のキャピタル課税是正、土地の譲渡所得課税是正、そして先生方の政治資金への若干の課税をいただいて三兆一千六百億。法人の方は、受取配当金課税是正、配当軽課措置の廃止、これは国がやりました。引当金制度の是正、税務会計制度の自由化、弾力化の是正、そして先ほどの外国税額控除制度の再度の見直し、それからタックスヘーブン乱用の規制強化、海外取引による脱税の取り締まり、そして、大変恐縮でございますが、公益法人や医療法人、協同組合に対する課税の適正化、そして準備金とか要らなくなった特別償却等の是正ですね。それで抑えに抑えて三兆一千九百億。合わせて六兆三千五百億です。  ちょうだいしました予算書によると三兆六千百八十億ですから、十分処理できますね。このうちでやっていただく。  あと、税制改革についての新しい提案もございますが、時間がもうないようですから、ぜひどなたか必ず御質問をしていただいて、それをひとつここで述べさせていただきたいと思います。  御清聴ありがとうございました。
  23. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 富岡先生質問をいたします。  基本原理欠陥という第一に、逆進性を挙げられました。政府も、消費税が逆進的であるということは認めるんですが、今回の税制改革全体としては逆進性が緩和されて累進性が逆に強まったという、こういうことを言っています。そんなはずないんだと思うんです。垂直的公平よりも水平的公平、薄く広くという結果の税制改革ですし、上の方はもう一〇%も下がっているんですから、そういうことはないと思うんですが。  ただ、政府がもっともらしい計算をいたしまして、この間、それで論争をしたんですが、その計算によりますと、年収に対する税額比率で見ると、第一分位と第五分位の差が六・五倍であったのが、今回の改正で二十五倍になったから、だから累進性は強化されたと言うんですね。  これは大変なトリックがありまして、これは私指摘したんですが、このトリックというのは要するに使えない資料なんです。これは標準世帯と言うんですが、妻は配偶者特別控除、それから子供については三十五万プラス十万の教育加算控除、大体三百万クラスのその辺のものによっているんですから、それは減税になるのは当たり前で、比較にならないもので比較しているということを指摘いたしました。  私自身計算してみますと、要するに、手取りで前と後を調べてみますと、上へ行けば行くほど手取りのアップ率が高くなってくるとか、それから今まで年収配分に比べて減税配分が下の方は低く上の方が多いという、その辺を見てみますと、これは明らかに逆進性は強まっておる。これは明らかだと思うんです。そういう点では、先生もあそこに準備されたのもそういうことを御説明しようと思って持ってこられたんですが、その表も含めて、この辺の政府の言い分に対する御批判をいただきたい、これが第一点であります。  それから第二点は、いわゆる国際化論。  その一つとして、日本の法人税は高過ぎるというお話は先ほど御説明がありました。もう一つ盛んに言っておりますことは、先進国ではほとんどみんな大型間接税を導入しているので、そういう国際化から見まして日本でも必要だと言うんですが、これは先生の著書を拝見しますと、逆に、消費税は国際的にも孤立をすると経済的な観点から御説明されておりますが、この辺をわかりやすくお願いしたいと思うんです。  持ち時間、この範囲でひとつよろしくお願いしたいと思います。
  24. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) 近藤先生の御質問にお答えいたします。適切な御質問をいただいてありがとうございました。  逆進性ですね。これはもう間接税そのものの持つ性格が逆進性なんです。ですからヨーロッパの間接税、付加価値税は、イギリスの食料品のゼロ税率とか、フランスやイタリアでやっているような奢侈品とか高度の便益品とかぜいたく品には特別高い割り増し税率、それから食料品とか水等については軽減税率。複数税率ですね。つまり、消費の質に応じてぜいたく品には高い率を、それから生活必需品の基本的なものには課税をしない、それからそうでないものについてはしかるべき課税をするという応能負担原理が間接税にもあるんです。直接税だけが応能負担原理で、間接税は何でもいいよということでは困るんですね。世界の付加価値税を研究して、こんなに悪平等で逆進性の強い消費税はまれです。これは大変な問題なんです。  先ほど近藤先生が、所得税の減税によって大いに負担は緩和されたと。実はこれが問題なんですよ。高齢化社会でこれから財源が要るんですから、はっきり言って増税をすべきなんですよ。増税をする必要があるんですよ。増税をするのに何で減税先行なんですか。十年前に大平総理は、赤字財政をなくすために増税であるとはっきり打ち出しましたね。立派ですよ。政治はうそを言ってはいけません。厳しくとも国民に、困っているんだ、国は大変なんだ、だからおまえたちもひとつ考えろということを言ってやった方がいいんですよ。耳ざわりのいいことばかり言わないで、選挙の問題もございますけれども、私はわかりますが、はっきりみんなで言っちゃえばいいんですよ。みんなでそれを言えばだれも落ちないですよ。(「怖くない」と呼ぶ者あり)そうなんだ。はっきり事実を言ってほしいんです。事実を言わないから大蔵省は苦労しているんですよ。本当ですよ、皆さん。全員がそれを言ったら、参議院議員になる人がいなくなったら成り立たないんだから、だれか入るよ。  ですから、これ見てください。(「いいこと言うよ」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。大蔵省は年収でやっているんですよ。年収で三百万の場合はどうだと。サラリーマンの夫婦子供二人の標準家庭で、先ほど先生御指摘のような一番有利になるような前提を置いているんですね。それはもう先生が言ってくれたから私は言いませんが、それで計算しているんですよ。でも、年収三百万とか五百万と言ったんでは庶民にぴんとこないんですよ。月幾らかと、月二十万だと言えば少し我々の庶民感覚に近づくんですよ。  私は、大蔵省の数字を、端数計算が大変だったんですが、月割りにしたんですよ。三百万の人は二十五万なんですよ。月収二十五万の標準家族のサラリーマンは、今まで所得税、住民税がこれは改正前が四千円。確かに三千三百三十円減税してくれました。よかった。ところが消費税が二千八十円入るんですね。差し引き千二百五十円の減税、一年間で一万五千円の減税ですと、こう言っているんです。月収五十万の人は七万八千円の減税です、月収八十三万の人は二十三万二千円の減税です、こう言っているんです。これはモデル計算ですからいろいろ言い分がございます。  問題は、二十五万の収入のうち、幾ら消費支出に充てるかという消費性向のとらまえ方ですね。大蔵省消費性向は七五・六です。私は、生活協同組合等の実態調査をもとに計算し直すと八〇ぐらいです、抑えても。そうなりますと、消費税は二千八十円じゃ終わらないんですよ。五千三百三十円ぐらいになります。問題はここですね。  それから、同じ消費の中でも課税になる消費と非課税消費とありますね。消費支出における課税、非課税の区分の問題ですね。ここにもまた大蔵省の計算はちょっと御遠慮していただいているところがあるやに承りまして、私の計算ですと、消費税は五千三百三十円。差し引き二千円の増税なんですよ。月収二十五万の人は二千円の増税です。これが富岡教授試算です。意見が違うんです。一年間で二万四千円の増税なんです。  大蔵省は三百万から始まっているんです。そして上に行きますとこうなります。私は月収五十万のところで初めて減税になります。一万円です。ですから、月収五十万以下の人はみんな増税なんです。サラリーマンの八割以上が増税なんです。大事なことは、三%の導入時の現状においてですよ。三%じゃ済みませんよ。丸尾先生の話をお聞きしていると、どんどんこれから負担が重くなりますから、やがてこれが一〇になり一五になるんですよ。どうなりますか、そのときは。  問題は、大蔵省の計算は三百万以下は書いていないんですよ。仮に十五万、年金生活者、福祉家庭、それらの人は所得税がかかっていないんですよ。所得税のかかっていない人が所得税の減税の恩恵に浴せますか。払っていないのが減るはずはないよ。消費税がふえるばかりです。三千六百四十円。なぜこの下の人の計算を入れないんですか。底辺の人の計算を入れないんですか。政治というのは弱いところに光を当てるのが政治なんですよ。その人たちが消費税の直撃を受けているんですよ。どうですか、皆さん。そうでしょう。それで四万三千円の増税ですよ、この人たちは。取られっ放しだ。それに対して一万円の福祉臨時給付金、寝たきり家族で五万円。一遍だけ。毎月やってください。(「そうだ、毎月やれ」と呼ぶ者あり)毎月やってください。そんなことはできないよ、今後は。  だから、税金においてもやはり負担の公平、応能負担というものも入れるんです。竹下総理は財政全体で考えるんだとおっしゃっていますが、できるかどうかわからないですよ。ですから、税金そのものも曲がりなりにも逆進性にならないようにしてもらう。いただいた資料によると一五%になっちゃうんですよ、将来。一五になったときはどうなりますか。これは年額二十一万八千円の税金なんです。一五%になると、月収が十五万の人は一年間に二十一万八千円、一四五・六%一カ月半払うんです。こういう状態ですね。
  25. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 時間が来ましたから。
  26. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) 時間が過ぎまして申しわけありません。  ありがとうございました。
  27. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう一つあったんだけれども、国際化の問題。
  28. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) 国際化、しようがないね。済みません。
  29. 勝木健司

    ○勝木健司君 両先生、御苦労さまでございます。  私は、時間が限られておりますので、恐縮ですが、要領よく御回答いただきたいというふうに思います。  丸尾先生にお伺いをしたいというふうに思いますが、昨年の消費税導入の論議の際に、高齢化対応ということで十月でしたか、「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」ということで、福祉ビジョン国会に提出されたわけであります。先生もごらんになったと思うわけでありますが、内容的にこれをどう評価されておるのか。特に年金と雇用との連係の問題について政府の認識は大変薄いように感じられるわけでありますけれども、先生のお考えをお伺いしたいというふうに思います。
  30. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 福祉ビジョン野党が要求しているということで、それにこたえるものとして、正直言ってもう少しきちっとした、がつちりしたものが出ると予想していたんですけれども、意外と簡単なものであったという印象が一つあります。そして、簡単なものであり、その基本的なところの数字等にかなり疑問があったということです。  先ほど言いましたように、例えば雇用者が就業者の中で今七五%ありますけれども、この七五%の比率が、二〇〇〇年、二〇一〇年も、既に今七五%になっているんですけれども、あの福祉ビジョンですと表には数字が出ていませんけれども、計算しますと大体七五%ですね。不変ということになっているわけです。その他、いろんな就業構造等、雇用等にかかわるところの指標が非常に不十分だということがまず一つですね。  それからもう一つは、六十五歳までの雇用をどう維持するかということについての雇用政策ビジョンのようなものが非常に欠けていたということですね。福祉ビジョンということで、それは入らないというふうに考えたのかもしれませんけれども、社会保障だけと考えたのかもしれませんけれども、その辺のところが不十分だったということが、労働組合、連合等が非常に反発しているところであります。この計画を日本に適した形で部分就労・部分年金をやっていく、それをきちっと出しておけばもう少しよかったんじゃないかと思うんですね。  最近、そのつなぎとして政府もだんだんと考え出してきていますし、労働組合とかいろんな学者から出ていますけれども、やはり年金と失業手当とを組み合わせたような形を入れまして、就業を基礎としながら、万一就業がうまくいかなかったときは高齢者用失業手当という形と部分年金とをうまく組み合わせてやっていくやり方があると思うんです。スウェーデンも初め、部分就労・部分年金を入れる前に、高齢者の失業というのを非常に優遇して長期間失業手当を出したわけですね。それが部分就労・部分年金になっていくわけです。その辺の組み合わせを考えた雇用ビジョンというものをもう少ししっかりさせていだだくと、年金支給開始年齢引き上げの合意というのが少しは高まってくるんじゃないかと思います。
  31. 勝木健司

    ○勝木健司君 ありがとうございます。  今おっしゃいましたように、年金の支給開始年齢を六十五歳とするための定年年齢と、そういう年金支給開始年齢のドッキングというものがやっぱり不可欠じゃないかというふうに思っておるわけでありまして、そういった意味ではとても今の時点では容認できないということであります。  そして、保険料の引き上げとか給付率の引き下げ、年金支給開始年齢の引き上げといった現在検討されておるもの以外に、年金財政についての国民の信頼、そしてまた将来の年金についての安心感を高めるために国は一体何をなすべきかということで、先生の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  32. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 将来に関しましては、まず経済の安定成長をできたら四%ぐらいまでずっと維持し続けていく、完全雇用を維持していく、これが非常に基本的なんですね。これをきちっとやっていって勤労者の実質手取り所得が二、三%ずつふえていけば、社会保険料と税金負担率が現状の国民所得の三六%ぐらいから、二〇二〇年に五〇%ぐらいまでふえてもそんなに心配することないんですね。私、これ計算して、今度、季刊「社会保障研究」という雑誌に出しますけれども、詳しく見ていただければわかりますけれども、要するに手取りがきちっとふえていけばいいわけですよ。  例えば、年金支給開始年齢を六十歳でなくて六十五歳までにする。それをやるとやらないとでどれくらい手取りの伸び率が違うかというのを計算してみますと、スムーズにずっとこれを上げていくというちょっと機械的な計算でして、まあ勤労所得の手取りの伸び率は平均的に見て〇・一%ぐらいは違うと思うんですけれども、要するに、負担を重くしていくとどれくらい手取りの伸びが違ってきますよというこの感覚でやるとわかりいいんじゃないかと思うんです。労働者は賃上げで今度何%かと考えているわけですね。それとの見合いで考えていくと、税金をこれくらい重くして、社会保険をやって、年金をこういうふうにやっていくと、そうすると手取りが本来なら二%だけれども一・五%になるとか、それがどっちがいいんだというふうな、そういうことを非常にわかりいい形で選択させて、もう少し組み合わせで、我々はこれを望むんだというのがわかるように示すことが必要だと思うんです。  それから、よかれあしかれ、先ほど最初に御質問がありましたように、ある程度民間とかインフォーマル部門等を生かさなければならないということになりますとすれば、その民間が福祉代替をやってケアつきマンション等々ができたとき、それがいかに代替するかと。それが今のようなやり方だと何千万も払わなくちゃ入れない。そうすると、ほかの人は、もっと低所得者はできないということがありますからね。民間でやるとしても、それにどういう形で政府が関与していけば、政府が直接やるよりも早く、ずっと安く、そしてかなりの人が利用できるかというようなこととか、それからインフォーマル部門を生かすとして、在宅介護を非常に重視するなら、五万円の一時金を上げるというだけじゃなくて、先ほど富岡先生がおっしゃったように毎月やれぐらいのね。そうすると幾らお金がかかるか。これは簡単にできますよね。今仮に在宅ケア二十万人に全部五万円やっても年間六十万円ですから、そうすると幾らというのはその条件で出ますね。まあ二千億にはならないわけです。  そういうような計算等をして、どれくらいのことをやればどれくらいのお金がかかるかというようなことをもう少し……
  33. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) はい、時間でございます。
  34. 秋山肇

    秋山肇君 富岡丸尾先生、お疲れさまでございます。  私は富岡先生にお尋ねをいたしますが、先生節税という言葉をおつくりになったという話で、それからそれに関連して、不公平税制是正ということの中で公益法人も中に入っていましたけれども、宗教法人について先生はどうお考えですか。この一点で、時間がそこに出ていますけれども、あるだけお答えいただきたいと思います。
  35. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) 秋山先生にお答えします。  不公平税制というのは非常に概念が不明確なんですね。もちろん最初から不公平を意図してつくったものじゃないんですよ。それぞれ政策的な理由、産業政策、経済政策、社会政策、いろんな配慮がございまして、税の公平を犠牲にしてもそちらが優先する、そして国民経済全体によりプラスが大きくなって、国民福祉と文化に貢献するというのが政策税制ですね。税は政策がむしろ中心なんですよね。そういう意味で、政策を妨げてはいけません。税には、財源確保ということと所得再配分機能ということと経済の成長安定という重要な機能がございます。  ところが、例えば公益法人――宗教法人と言わずに公益法人と言った方がいいと思うんですよ。公益法人というのは民法三十四条によりつくられた法人で、公益を目的とし営利を目的としないそういうもの、社団法人、財団法人、それからあと宗教法人、学校法人、いっぱいあります。これらは法人税法では別格になっているんですね。法人税法の規則によって三十三でしたか、特定の業種だけ、特定の経済行為だけに課税しているんですね。物品販売とか金銭貸し付けとか、そういうように限定されていますね。  その中に、例えば金融資産の金融収益、それから今は財テクが盛んですが、そういう財テクというのか、財テクというよりかむしろ本来の公共事業をやるために必要な資金を自分で努力をしてやる、公費だけに頼らないで自助努力する。福祉と同じ問題がありますね。そして、一生懸命苦労して収入を得る。それに対して課税をするわけです。その課税の中に金融資産によるところの金融収益等が含まれておりませんね。これは議論があると思います。学校法人なども課税されれば中央大学も困りますけれども、そこは率直に検討していただいていく必要があるんじゃないかというふうに私は考えております。  まだ時間があります。質問してください。
  36. 秋山肇

    秋山肇君 私は何で宗教法人と言ったかというと、節税の手だてに、あちこちに大仏様ができているとかいろいろありますので、先生のお考えをお聞きしたい。
  37. 富岡幸雄

    公述人富岡幸雄君) わかりました。  あれは節税ではございません。租税回避です。  税金を減らすには三つあります。脱税、タックスイベージョン、これは租税通脱。それから、私の言っているタックスセービング、租税政策、節税。グレーゾーンがあるんです、灰色高官。グレーゾーンがあってその分野が租税回避なんです。税法の抜け穴くぐり、法網をくぐる、悪知恵を働かす、そういうグレーゾーンがあるんですね。しばしば公益法人等がその租税回避に利用されていることが問題なんです。  節税は、国民の権利ですから胸を張ってやってください。節税でない、脱税と節税の中間のところにグレーゾーンとして租税回避、タックスアボイダンスがあるということでございます。
  38. 木本平八郎

    木本平八郎君 丸尾先生にお願いします。  私は、丸尾先生の御意見にはもう一二〇彩賛成なんですが、きょうは一つだけ、資産課税という問題について先生の御意見を承りたいんです。  今、日本列島の上には五千三百兆円の資産が形成されているんですね。そこから出てくるキャピタルゲインが年間四百六十円兆になっているわけです。ところが、これには全然と言っていいぐらい課税されていないんです。勤労所得であるGNPの三百七十兆円近いものにはがっちりかけられている。  個人の資産はちょっと別にしまして、法人が持っている土地と株式だけですが、株式が先ほどのように五百十兆円、それから土地が千六百兆円。これは経済企画庁の計算ですが、合わせて二千百兆円あるわけですね。これに対して二%かけても四十二兆円の税金があります。消費税並みの三%なら六十三兆円あるわけですね。これだけかけますと、もう消費税の問題もなくなるし、年金の問題もなくなるし、それからサラリーマンの税金だって、両方合わせて十五兆円ぐらいですかね、それも全部要らなくなる。この考えについて御意見を承りたいと思います。
  39. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 先ほどもちょっと言いましたように、所得というフローに対して資産の比重が非常に高まっているわけですね。例えば、株式も一九七五年には上場会社全体でGNPの二九%ぐらいだった。今は百二十何%になっていますね。そういうものに対応して資産にかかわる課税がふえていいはずですけれども、税金の中の比重はほとんど変わっていない。それはおかしいわけでして、やはりおっしゃるようにふえていいと思うんですね。  ただ、土地などに関しましては、中にはほんの三十坪の土地に住んでいるとか、そういう人がいろいろありますから、今もいろいろその辺は軽減措置をしていますけれども、そういうところはきちっとして、全体として一種の富裕税的なものになりますけれども、資産課税できちっと取っていく。土地に関しても株式に関しましても、富裕税的なものにするか、土地で言ったら固定資産税ですね、それともう一つはキャピタルゲインを正当に課税する、このことをきちっと組み合わせてやっていけば、日本の分配上の諸悪の大半はそれで解決するんじゃないかというふうに思います。ぜひやっていただきたいと思います。
  40. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  以上で財政税制及び社会保障に関する意見聴取は終了いたしました。  二言お礼を申し上げます。  富岡公述人丸尾公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心から厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時から公聴会を再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  41. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 予算委員会公聴会を再開いたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  石倉公述人、福山公述人におかれましては、御多用中にもかかわりませず本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を賜りまして今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度の御意見を順次お述べいただきまして、その後委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承りたいと存じます。  まず、農業につきまして石倉公述人にお願いいたします。石倉皓哉君
  42. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) ただいま御紹介いただきました私、全国農業協同組合中央会常務理事をしております石倉と申します。よろしくお願いを申し上げたいと思います。  私の担当掌管は農政と国際を担当させていただいております。なお、若干補足しますと、昭和五十二年から六十年まで農政を経験したことがございます。考えてみますと、今日の農政と当時の農政を比べてみますと、単純に比較できませんが、大変さま変わりをしたという感じで、当時のことを思い出しますと、ケネディ・ラウンド、東京ラウンド、それから日米交渉というものを経験しまして、当時の中川・ストラウス会談とか、そういった体験も持っております。また農政に戻りましたので、先生方の一層の御指導をまずよろしくお願いしたいと思います。  なお、本日、こういった本委員会におきまして公述人としまして意見を述べさせていただく機会を与えられましたことをまずもって大変光栄に存じ、感謝申し上げたいと思います。  早速でございますが、平成元年度農業関係予算並びに関連事項につきまして、率直に意見を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、平成元年度の農業関係予算につきましてでございますが、自由化関連対策や構造政策などで新たな施策が盛り込まれたということにつきまして、基本的には賛成を申し上げたいというふうに思うわけであります。しかしながら、今日の厳しい財政状況等、諸般の事情を考えますと、対前年度比でマイナス百二十九億円、率でマイナス〇・四%の削減、こういう意味でほぼ前年並みということにつきましては理解ができないわけではございませんが、特に強調したいのは、今日の国際化に伴う今後産業構造の調整をするという必要性、そういう観点から申し上げますと、むしろ増額があってしかるべきではないかというふうに思うわけであります。  次に、関連事項、特に最近の農政不信の動きにつきまして感想を述べたいと思います。  まず第一点は、農家の農政不信というのは極めて深い、根強いというふうに言っても過言ではないというふうに思うわけであります。特に、農業地帯や青年層で非常に農政不信が強いということが指摘できると思います。その背景、理由につきまして一言で申し上げますと、ここ数年来農家にとっては余りにも厳しい事態が続いたということに尽きるのではないかというふうに思うわけであります。  具体的に指摘をさせていただきますと、まず第一点は行政価格、特に生産者米価の引き下げ、二点目は、いわゆる十二品目を含む牛肉・かんきつの自由化、それから三点目は、昨年の東北地方を中心とする冷害、それから特に経済界あるいはオピニオンリーダー、政府委員などによるいわゆるいわれなき農業批判あるいは農家たたき、別の言い方をしますと農業・農家バッシング、こう言ってもよかろうと思いますが、そういったことで農家は全く立つ瀬がない、肩身の狭い思いを強いられているということを申し上げたいわけであります。このことを私は特に強調しておきたいと思います。  こうした事態というものは、農業関係予算の削減あるいは食糧自給率の低下にも象徴的に示されていると言っても過言ではないと思います。  具体的に申してみますと、農業関係予算につきましては、五十七年度以降七年間でマイナスの六千七十六億円、パーセントでいきますとマイナスの二〇%、こういう厳しい予算の削減がなされているということであります。先ほど指摘しました牛肉・かんきつ等の自由化あるいは二年連続の生産者米価の引き下げ等、厳しい環境変化に対応しまして、経営規模の拡大とかあるいは加速度的な生産性向上の促進あるいは需要の動向に即応した農業生産の再編成、こういったことを今後強力に進めていくということからいきますと、こういった予算の削減というものは限界に来ているんじゃないか、こういうことを私は申し上げたいというふうに思うわけであります。  また、価格関係予算を見ましても、先ほど言った期間で比べてみますと、二五%が一三%というふうに約半減をしているということであります。これを、米国やEC等が逆に価格とかあるいは所得支持のための予算は大幅に増額をしているということと比べますと、極めて好対照であるというふうに言われます。一九八〇年から一九八八年の間にアメリカは四・五倍、ECは二・四倍、それに比べまして日本は〇・五倍、こういう状況でございます。それから自給率につきましては申すまでもないということでございます。  農家も事態の厳しさ、すなわち国際化の急激な進展とかあるいは財政事情とかあるいは農業生産の一層の合理化、こういうものはやらなければならない、こういケことをはっきりわかっているわけでありますが、何しろ自然相手の産業でありまして、しかも、我が国のような国土条件の制約のもとでは農業の改革というものは相当時間がかかる、こういうことをぜひ先生方に御理解いただきたいというふうに思うわけであります。つまり、農業改革の急激な展開というものはあり得ないということであります。したがいまして、今後、以下の点につきましてぜひ先生方の御配慮をお願いしたいというふうに思います。  第一点は、若者にも希望を与える日本農業の将来展望の確立ということをぜひお願いしたい。最近、農協組合長によるアンケートの結果を見まして、圧倒的に将来展望の明示ということを全国の組合長さんはこいねがっているわけであります。  それから二番目には、やはり年老いた農業者にもそういう方たちも包み込んだ温かい施策の展開をお願いしたい。  三番目は、農業を含む地域経済の振興ということをぜひお願いしたい。  それから四点目は、農業たたきあるいは農業いじめではなく、農業、農家に対する温かい思いやりと理解はぜひ必要ではなかろうかというふうに思うわけであります。  あえて強調したい点でありますが、農業予算というのは、言うまでもなく国民生活にとって不可欠の食糧の安定供給ということに係る非常に重要な予算であります。農業は、活力ある地域社会の形成、あるいは国土、自然環境の保全等我が国の経済社会の発展、あるいは国民生活の安定のために基本的かつ多面的な役割を果たしているということをぜひ御理解いただきまして、したがいまして我が国の農業が置かれております自然的、国土的あるいは経済的な要件の中で、そういうものを十分踏まえて魅力ある農林水産業の実現方に向けまして先生方の今後一層の御配慮をお願いしたいというふうに思うわけであります。  次に、系統農協の長期方針について若干先生方にポイントを、せっかくの機会でございますので、御紹介したいと思います。  まず第一点は、農家、農協も今日まで自助努力につきましては鋭意努力をしてまいったわけでありますが、今後とも一層努力をする姿勢でございますので、何とぞよろしくお願いしたいと思います。  それから、御案内のとおり、昨年の十二月に第十八回全国農協大会を開催しまして、「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」、これを決議したわけであります。内容は、国際化の中での日本農業の確立、二点目は魅力ある地域社会の創造、三点目はこれを可能とする農協の組織、事業、経営の革新というものを図ってまいりたいというふうにしているわけであります。  そのことをもう少し具体的に内容について触れてみたいと思いますが、第一点目の国際化の中での日本農業の確立でございますが、日本農業の再編につきましては、国際化が進む中で低コスト化の追求と健康・安全、これはヘルシー、それから高品質、ハィクォリティー、それから高技術ハイテクノロジーのいわゆる三H農業の展開及び加工・流通部門への取り組みの強化、そういうものを通じまして農業所得と付加価値の確保を図ってまいりたいというふうに思っております。  コスト低減の目標につきましては、具体的に言いますと、米については三割、小麦については四割から五割、大豆については五割、こういった形で具体的な低減目標を掲げて、十年後にはこれが均一的にそういった農家が展開されるように努力をしていきたいということで実践に入っているわけであります。  それの具体的な手法でございますが、地域営農集団の育成というものを通じまして、特に農用地の利用調整、こういうものに取り組む中で、担い手農家の育成確保、そういうものと生産の組織化というものを追求してまいりたいというふうに思っております。現在、全国で地域営農集団は二万七千二百二集団というふうになっております。それから、魅力ある地域社会づくりあるいは競争力と活力ある経営の創造、そういうものをさらにやっていきたい。  具体的な実践でございますが、全中の理事会が推進本部となりまして、現在四十三都道府県でこの県大会を開催をしておるということであります。そういった中で全中の理事会の中の専門委員会なり各種委員会を通じまして、先ほど言いました農地を生かす人づくりとかあるいは創造と交流に基づく地域づくりとか、期待と信頼にこたえる農協づくり、こういう三づくり運動を強力に展開してまいりたいというふうに思っております。  せっかくの機会ですので、そのように系統農協としましても、日本農業の発展と地域社会の振興に全力を尽くす所存でございますので、どうか先生方の御支援と積極的な御協力をお願いしたいというふうに思っております。  最後に、関連事項としましての米の市場開放問題について触れてみたいと思います。  まず、米の市場開放問題につきましては、御案内のとおりウルグアイ・ラウンドの協議に今日ゆだねられているわけであります。去る四月の貿易交渉委員会、これはジュネーブで行われたわけでありますが、ここではようやく農業分野につきましても中間合意が達成されまして、長期目標としての農業の支持及び保護につきまして一定の期間にわたり相当の漸進的削減を行うことということが合意をされたわけでありますが、全国の農業者はこの米の市場開放との関連で大変な不安を抱いているわけであります。  基礎的な食糧あるいは食糧の安全保障、農業の非経済的な側面への配慮といった我が国政府のこれまでの主張というものをぜひ堅持して実現をしていただきたいというふうに思っているわけであります。我々生産者、生産者団体といたしましても、総力を挙げて米の市場開放阻止に向かって頑張ってまいりたいというふうに思っております。特に最近では、諸外国との農業団体との交流も深まっておりまして、国内の食糧、農業問題については、国民の合意を目指しながらこの問題の解決に全力を挙げて当たっていきたい、こう思います。  米の重要性につきましては、農業、食糧あるいは地域経済、文化、国土保全や環境の維持など多面的な役割を果たしているということでありまして、極めて私は重要だと認識をしておるわけであります。どうか十二品目あるいは牛肉・かんきつの二の舞にならないように重ねて先生方の御尽力、御努力をお願い申し上げたいと思うわけであります。  終わりに当たりまして、いろいろ御意見を申し上げさせていただきましたが、どうか農業団体の真意をお酌み取りいただきまして、今後の農業の発展、二十一世紀へ向けての農業の発展のために御尽力をいただきますことをお願い申し上げたいと思います。  どうも長時間にわたりまして私の意見を御清聴いただきまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。  以上をもちまして公述といたします。
  43. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  次に、外交防衛につきまして福山公述人にお願いいたします。福山秀夫君。
  44. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) ただいま御紹介をいただきました日本平和委員会代表理事、世界平和評議会の代表委員をしております福山秀夫と申します。  私は、外交・防衛の二つの分野につきまして、今年度予算案の示す方向と、日本のこれからのあり方につきまして率直に意見を申し述べたいと思います。  まず第一に、ことしの防衛関係費の基本的な特徴について所見を述べたいど思います。  防衛関係予算は、総額で三兆九千百九十八億円ということで、昨年に比べまして五・九%もふえております。一般歳出の対前年度伸び率三・三%というのに比べて二倍近い大きな伸び率でございます。GNPの一%が一つの目安とされてまいっておりましたが、三年連続してこの一%は突破されるわけであります。もはや歯どめがなくなって、とめどなく肥大化を続けるのではないかという憂慮の声も聞かれるということは当然であろうかと思います。しかも、一方でNATO、北大西洋条約機構でありますが、この基準でもってこれに軍人恩給だとか、海上保安庁の諸経費などを加えまして、これをドルに換算すると、既に現在アメリカ、ソ連に次ぐ世界で三番目の巨額な防衛費だということは、これは米国でさえも認めているところでございます。  そして、ただ単に金額が大きいというだけではなくて、内容を見るとき、このままでいったら大変なことになるのではないかという憂慮を感ぜずにはおれません。それは、一つはASW、すなわち対潜水艦戦争の体制が新たに異常なほど増強されているということでございます。すなわち、新たにSURTASS艦と呼ばれる音響測定艦が導入されます。またASWセンター、潜水艦を撃滅する作戦センターも増強されるわけであります。またさらに、P3Cというものも、一機約百億円もいたしますが、この対潜哨戒機が十機ふやされる。百機体制にもう一歩ということになるわけでございます。これらがすべて日本を守るためということで行われるわけでありますが、これは実態を見るときにとんでもない話であろうと思います。  言うまでもないことかと思いますが、現在の潜水艦は、昔のじっと沈んでいて軍艦や商船が通ると沈めたというあの潜水艦とは全く違う海の化け物のようなものでありまして、各種の核弾頭つきのミサイルの命中精度が非常に高まってきた。陸上の基地は百発百中で破壊されるという危険が高まっております。そういう中で、最後まで生き残って、いざというときには相手国に正確に核ミサイルを撃ち込む。そのために海中を高速で移動する核ミサイルの発射基地、そういう性格が今の潜水艦の昔と全く違う特徴だと思います。  したがいまして、ASW(対潜作戦)の強化ということ、そしてこのための日米合同演習が非常に激化、強化されておるわけでありますが、そういう中で、日本はアメリカの核戦争体制の中に全面的に組み込まれていく、その最も強力な補助部隊、補完部隊となり、そして巨大な国費を投じたハイテクノロジーを駆使いたしまして核戦争の主力と渡り合う、そういう方向にのめり込んでいくわけでございます。これは日本人として政治的な立場の違いを超えまして深く憂慮し、直視しなければならないことではないかというふうに思います。  また、ASWだけではなく制空権の確保のために、これも一機百億円近いF15戦闘機が十一機増強されます。またペトリオットミサイル一個群、これも一千億円以上かけて増強されるわけであります。これらはアメリカの核のやり――核の攻撃はアメリカで、それを守る盾に日本が組み込まれる、そういうことを強めるものではないかと思います。  そしてさらに、指揮、通信、情報関係にも一千億円を超える巨額な予算が計上される、OTHレーダー、つまりソ連などの奥地まで状況を正確にかむ、そういう予算も巨額でございます。  これ以上詳しくは申しませんが、これは備えあれば憂いなしということではなくて、むしろ人をのろわぱ穴二つということに通じる非常に大変な状況ではないかというふうに思います。  アメリカのブッシュ新大統領は、九年ほど前になりますが、ちょうどレーガン候補と大統領のポストを争うその選挙戦の中でありましたけれども、核戦争で勝者になることができる、勝つことができる、すべての核を発射しても国民の数%以上生き残らせることができると語ったことが伝えられておるわけでございます。しかし、自国民の九十何%かが死んでしまったそういう状況で、たとえ相手の国民が全滅したとしても、それが果たして勝利と言えるものでございましょうか。  しかも、このブッシュ氏の話録は一九八〇年、九年ほど前のものですが、その後一九八二年ごろからは米ソ両方の科学者が核の冬の危険を訴えているわけであります。現在、存在する五万発の核兵器の一%ほどが使われたとしましても、都市や森林や原野が火の海になりますと、大量のすすだとかちりが空を覆います。地球上が氷に閉ざされて、生きとし生けるものがすべて死滅するというのが核の冬であります。米ソが戦争状態になって、たとえソ連側が一発も撃ち返さなかったとしても、あるいはソ連が撃ち込もうした核ミサイルを全部アメリカが撃ち落としたという場合を考えましても、アメリカがソ連内の街だとか林、原野といったものを効果的に燃やせば燃やすほど核の冬が激しくなりまして、アメリカも氷づけになってしまって潰滅するほかなくなってしまう、自分で自分の首を締める、そういう事態が明らかになってきたわけであります。  今、世界は激動の状況にございまして、アメリカ、ソ連両方が核軍拡競争のツケで財政、経済の困難に苦しんでおります。米ソだけではなくて、世界の各国でさまざまな激動が生じていることは詳しく申すまでもないことでございます。日本でも抜本的な政治改革が求められるそういう状況にあることも多言を要しないわけでありますが、これは世界的な激動と時期が合致しております。問題は、どういう改革が本当に今必要とされているかということだと存じます。  ブッシュ新政権の求めるままに、日本がバードソシェアリング、責任分担をしょい込んでいく。そして米国は、ことしなどは軍事費、国防予算凍結と、実質的には削減というようなことをしておるわけでありますが、その米国の身がわりになって日本がどんどん軍事費をふやしていくということでは、アメリカが落ちた穴にこれから我々が入り込んでいくということだけではないかと思います。本当に日本の安全を保障し、平和を確立して繁栄を実現していくというためには、核の傘だとか軍事同盟、軍事ブロックといったものから離脱する以外に道はないというふうに私は確信いたします。  そこで第二に、私は核兵器の持ち込み問題について意見を述べます。  広島、長崎を体験した日本人にとりまして、非核三原則を国是として堅持するというのは当然のことであって、さらにこれを世界各国にも要求していくということがいわば日本の国民的な、歴史的な使命でもあると存じます。核抑止力などといって核兵器がふえればふえるほど核戦争が阻止される、平和で安全に暮らせるといったようなことは、全くブラックユーモアとでも言うべき背理であるというふうに思います。  西洋では、大砲がたくさん集まればひとりでに火を噴き始める、そういうことわざがあるようでありますが、核兵器は、できると早々に広島、長崎で使用されたわけですし、朝鮮やベトナム、台湾海峡、キューバ、その他いろんなところで、アメリカ側の記録を調べただけでも十何回か使われようとしたことがありました。ただ、日本を初めとする国際的な世論、それへのおそれだけが実際の使用を思いとどまらせた、そういう経過がございます。  しかし、朝日新聞の一九七五年から八一年にかけての三回の世論調査によりましても、常に日本国民の八割近くが非核三原則に賛成しております。一方では、同じく七割から八割の人が、この非核三原則の中で、持ち込ませないという方針が守られていないということを答えておるわけであります。  最近、ニューズウイーク誌が報道して、グリーンピースが明らかにいたしました二十四年前のあの空母タイコンデロガの水爆搭載機の沖縄沖の水没事故によりましても、その二日後にあの航空母艦が横須賀に入港している。そういう事実から見まして、核兵器がトランジット、一時通過で日本の港に持ち込まれてきたということは確実だと思います。  これにつきましては、ごく最近のニューズウイークが、「今日、日本政府はロシアンルーレットを演じていたという証拠を目にした。日本国民は、日米同盟にどんなに妨げになろうと、より厳格な制御もしくは管理を要求するだろう」、そういう報道をいたしておるわけでございます。私は、このニューズウイークの皮肉というのは、今の日本の状況を鋭くえぐっているのではないかというふうに思います。  私は、アメリカのラロック提督らが一九七八年の十二月七日ですか、第一回の核戦争会議の全議事録を翻訳したことがございます。同氏の了解で日本訳を出版したことが七年ほど前にありますが、そうした縁でラロック氏が数年前に横須賀にやってきましたときに、米国の軍艦が横須賀に入ってきているが核兵器を全部積んでいるかどうかということについて再度念を押しましたら、言下にラロック氏は、必ずそれは積んだまま入っているということを申しておりました。  実際、アメリカとソ連の核戦略は、米国からソ連へ、ソ連からアメリカへ三十分間で戦略核ミサイル、大陸間弾道ミサイルが飛んでいくということを基本にいたしまして、四六時中奇襲攻撃に備える、そういう体制でありまして、したがって戦術核兵器、戦域核兵器といったものもそういう事態にいつでも即応できる、そういうことで前線配備されているわけであります。ふだん丸腰でいて、いざというときあわててハワイなりグアムに行って積んでくる、そういうことはあり得ないわけでございます。  政府はこれまで、米国は日本国民の核兵器に対する気持ちと日本の非核三原則を尊重するということを言っており、また日米安保条約で核持ち込みは事前協議の対象になる、ただし協議がないから持ち込みはしてないということを十年一日のごとくオウムのように繰り返して言ったわけであります。  しかし、アメリカの基本政策は核兵器の有無を明らかにしないことだというわけでありまして、これは事前協議と真っ向から矛盾するわけであります。事前協議をやったら、つまりこの船が核兵器を積んでいて、これから持ち込むんだということがはっきりするからであります。だから、事前協議がないから持ち込んでいないというのは、全く子供だましの議論ではないかと思います。もうこのような議論は通用しなくなっているということを私は強調したいと思うのであります。  私自身、東京の横田基地のウォッチングに何回も加わったわけでありますが、弾薬庫のそばに核魚雷、アスロックの特殊なコンテナでありますが、それが台の上に置かれているのを三、四回見たことがありますが、ラロック提督にこれについて聞いてみましたら、これも間違いなく本物のアスロックが入っていたと考えていいだろうと言っておりました。  私も、平和運動の中で世界各国に交流だとか会議参加のため何回も出かけておりますが、アメリカでは、例えばグアム島のアプラ軍港ではポラリス潜水艦基地の真上を民間航空路が通っているわけでありまして、私もグアム島に行くときに何回も見かけております。ハワイのオアフ島でもパールハーバーに突き出ているウエストロッテというところに三千発の核弾頭が貯蔵されているということは現地の新聞も公然と報じておるところでございます。スコットランドのホリーロッホ基地では目の前で潜水母艦からポラリス潜水艦にミサイルを積み込むところを見ました。  申したいのは、五万発も今米ソが核兵器を持っているという中で、こんなふうに各国国民の生活の中に核兵器が公然と姿をあらわしているという実態だということでありまして、したがってその非核三原則、持ち込ませないというこの原則を本当に守らせるためには、非核法といったものをニュージーランドのようにつくりまして、出入りごとに核兵器のあるなしを確かめるというか、非核の申告書を提出させるということが必要ではないかと思います。  日米安保条約があるからそれは無理だということであれば、ちょうど来年で現行安保条約の調印、批准から満三十年になるわけでありますが、その安保条約そのものの見直しが必要ではないかというふうに思います。  最後に、私は日米安保条約と軍事ブロックの問題について述べたいと思います。  あの旧安保条約は一九五一年に調印されて、五二年に批准されたわけでありますが、あれは米軍の直接占領下にあった日本にいわば押しつけられた形であった、ほかの選択肢はなかったということは歴史的な事実であると思います。六〇年の安保のときは我々が選択をできたわけでありますが、陸海空三自衛隊が大きく伸びてきたということを背景といたしまして、これが米軍と共同作戦を行うということが新たに第五条で義務づけられ、また第三条では軍事力の増強、第二条では経済協力も義務づけられたわけであります。  これで西側の一員になった。核の傘にはっきりといよいよ深く入り込んでいくわけですが、これで日本の軍事費は安上がりになった、安全が守られたという意見を言う人もございますけれども、しかしこれを事実に基づいて見るならば、かくのごとく特に一九七八年の例のガイドラインの策定以後、米軍と自衛隊の統合軍化が進められてくる、一千海里シーレーン防衛だとか不沈空母発言というふうなものもございましたが、中東や欧州の有事に直ちに極東でも呼応して日本が有事に突入する、それが経済大国になった日本の西側の一員としての責務だというようなことで、軍事費の年ごとの大幅な肥大化、これはヨーロッパのどこにも、他国には例を見ない、そういった積み重ねがずっと続いてきているわけであります。これは日本民族の運命を西側の核保有国と一蓮托生のものにするということで、これほど危険なことはないのではないかと心配に思います。  私は、防衛施設庁のこれは国会に提出した資料でありますが、五二年から八六年まで、この間に十六万七千件以上の米軍の事故と犯罪があって、日本人約一千人が死亡しているわけであります。これに復帰前の沖縄を加えますと十八万件以上、死者が千二百十九人に上るということも指摘しておきたいと思います。  最近は、ますます実戦さながらの在日米空軍の低空飛行で、馬が驚いてはね上がって大けがをするとか死ぬとかいったような事故だとか、夜間離着艦訓練を厚木などでやる。その問題も、騒音の被害などもむしろ最近は以前よりもずっとひどくなってきているわけであります。  このアメリカ空母の母港というのは、世界を見渡しても日本だけにしかない。ラロック提督なども、全くこれは日本が引き受ける必要のないことだ、航空母艦なんというのは海の上をどこにでも行けるのだと言っておりましたが、そういうことを私たちははっきりと認識すべき時点ではないかというふうに考えます。  それから、自衛隊の基地を米軍がどんどん共同使用するようになったということでもって、七年間に実際に米軍が使っている基地というのは日本で二倍近くにふえているということも申したいと思います。  それから、思いやり予算が七八年の十年前には六十二億円だったのが今や一千四百二十二億円と十年間で二十三倍に伸びた、急増したということも指摘しておきたいと思います。  最後に私は、日本経済新聞が十二月二十五日に報道しておりますが、アメリカの共和党系のエコノミストが消費税強行採決につきまして、防衛費の拡大だとか途上国援助だとか、これが長期的、安定的に拡大を望めるということで大きな期待を込めているというのを見たわけであります。しかし、これについては今、地殻変動とも呼ばれるような大きな国の世論の変化があるわけでございまして、良識の府である本院が、ぜひこの点につきまして、この消費税の廃止のために御奮闘されることを切に期待いたします。  もう終わりますが、全体として今世界は非同盟の国が百カ国を超えるという流れに向かっているということで、私たちが本当の安全を守る、集団的に安全を守る道というのは軍事ブロックによる道ではないということを強調いたしまして、話を終わらせていただきます。  御清聴どうもありがとうございました。
  45. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  46. 大河原太一郎

    大河原太一郎君 両公述人には大変御苦労さまでございます。  順次お伺いをしたいと思うわけでございますが、時間の制約等もございますので、なるべく簡潔にお願いをしたい、さようにあらかじめお願いを申し上げているところでございます。  石倉公述人からまずお伺いしたいと思うわけでございますが、石倉公述人もおっしゃっておりましたけれども、国際関係では厳しい市場開放、あるいは国内においては国民納得し得る価格水準ということで内外価格差の是正、さらには国際競争力のある農業の体質強化といろいろな課題がある中で、米価を初めとする農産物価格の引き下げ、あるいは牛肉・オレンジ等の自由化というようなことでございまして、大変厳しい情勢、あなたは、経済調整のしわが最も農業に寄っておるというお話でございました。そして一方では、お話が具体的にございました農林関係予算の五十七年以来の削減のお話でございます。大体一七%ぐらいの縮減合理化を行ったというわけでございますが、今日の農業情勢から見て、その縮減合理化については限界点に達しているという点については私どもも同感でぐざいまして、今後の財政運営につきましては、このような厳しい農業情勢を配慮した取り扱いが必要である、さように思うわけでございます。これは私の意見でございます。  将来の展望を開く農業の構築の基盤をつくるという大変重要な時期でございますので、それに関連した以下三点につきまして御意見を聞かせていただきたいと思います。  まず、農産物自由化問題、これが農政不信とか農政のしこりの原因であるということでございまして、確かに農村における農家の不安も、この自由化路線がどうなるかという点であるかと思うわけでございます。  考えてみますと、昨年のいわゆる十二品目、ガットの理事会において、ガットの農産物貿易ルールに照らしてクロであるという大部分の品目の結論が出ました。さらに、引き続いて日米の牛肉・かんきつ二国間交渉があったわけでございます。外交交渉でございますからなかなかわかりにくい。我々も大方の国民に対する説得が大変少なかった。また、生産者団体の皆さんもそれについての周知徹底について私どもとしてはさらに一段やっていただきたかった、さように思うわけでございますが、ガットの十二品目問題の採決、審理を見ますと、牛肉・かんきつ問題については当然ガットでも大変我々にとって不利な結論が出ることは明白であった。したがって、二国間交渉で自由化の時期をできるだけ稼ぐ、あるいは高い国境障壁、関税等を設けて被害を最小限にとどめる、そういう非常に厳しい選択がとられたわけでございまして、この点についての理解が必ずしも十分ではなかったというふうに思うわけでございます。  もっとも、あなたもこれを評価しておりましたけれども、対策について、例えば昨年の臨時国会で畜産二法が成立した。また、千三百億以上の対策予算が計上されておったわけでございまして、今それぞれの分野において対応のための努力が行われておるわけでございますけれども、このような自由化に伴う日本農業の対応という点について、生産者団体としてはどういうふうなお考えで進めておられるかという点についてもお聞きいたしたいし、またいわゆる農政のしこりの自由化問題等についてどう考えるか、ほぐし方はどうするかという点についてもお話を承りたいと思います。  農家の皆さんが最も不安に感じております米の自由化問題については、当委員会等でもいろいろ御議論があったところでございまして、ガットの中間レビューでも出たように、純輸入国としての日本の食糧安全保障、農業の非農業的な大きな役割、これが事項として取り上げられたわけでございまして、我々は、かねがねの米の自給方針というものを堅持しながら、今の純輸入国としての食糧安全保障の立場、これから米を守っていくという姿勢が必要であるというふうに考えておるところでございますが、この点についてのお考えを聞かせていただきたい、さように思うわけでございます。  それから第二点は、公述人の同じくお話があったわけでございますが、構造政策の推進の問題でございます。  兼業化、老齢化あるいは過疎化という中で、農業生産の停滞から地域社会に非常に不安が出ているわけでございます。かてて加えて、今申し上げましたように内外価格差の是正だとか、さらに農産物を原料とする食品産業等からは、低廉な原料が欲しいというような要求が一段と強くなっておるわけでございまして、その中で農業が対応いたすためには、やはり生産性の高い効率的な農業経営、これをつくっていかなければならない。これは石倉公述人のお話にもあったところでございます。経営規模の拡大なり、あるいはあなたが力点を置いてお話しになりましたような集団的な営農組織というようなものの確立が大事かと思うわけでございますが、あなたが強くお触れになりました、二十一世紀を展望した農業の基本的役割の中にも触れておるわけでございますが、具体的にどの点に重点を置いて今後進めていくかについて、参考のためにお話しすることがあったら聞かせていただきたい、さように思うわけでございます。  それから第三点は、米政策と食糧管理のあり方の問題でございます。  御案内のとおり、五月十一日ですか、農政審議会の小委員会の報告が出たようでございます。この内容については逐一申し上げませんけれども、米の自給方針は堅持をいたす、また基幹的主食である米については、その需給及び価格の調整については国が責任を持つという点を明らかにした上で、やはり米の消費、流通、生産と、あえて逆から言いますが、制度の乖離というものが非常に甚だしい。したがって、これに対応して食管そのものをもたせるために制度の改変が必要だというようなことであるかと思います。具体的に言えば、民間流通の長所を生かしました自主流通米制度、これを主体にして米の管理をしていくとか、さらには需給調整の一環として、ただいま御案内のとおり四百万トンを超える過剰事態でございますが、これについて行っておる生産調整について、やはり生産者と農業団体、生産者団体の皆さんが主体的にこれに取り組む必要がさらに必要だということが言われておるようでございます。  これら諸点について、生産者団体としての皆さん方がどういうふうなお考えを持ち、どういう対応をなさっていくか、それについての御意見を聞かせていただければと思うわけでございます。  以上、大体三点を中心にしてお答えを願えればありがたいと思うわけでございます。  次に、福山公述人にお尋ねを申し上げておきたいと思います。御所論を十二分に承りましたが、これからの私のお尋ねは御見解を異にする部分が多々あるかと思うわけでございますが、二、三点につきましてお伺いするところでございます。  まず第一点は、我が国外交の基本というような大きな話なんですが、昨年の米ソの核軍縮合意を初めといたしまして先日の中ソの歴史的な和解、長い間の対決から対話と協調というのが今日の国際政治情勢だというふうに思っておりまして、この点については世界平和のために一層の推進が今後期待されなければならない、さように思うわけでございます。ただ、世界の政治情勢が一朝一夕で百八十度転換をいたすというようなことはなかなか困難ではあるまいか。むしろ我々は、かねてからの主張でございますけれども、可及的に低レベルの抑止と均衡、これによって平和を達成していく、緊張を緩和していくということであって、むしろ米中ソの各国がこのような政策に変わってきているのではあるまいかと、さように思っておるわけでございますが、それについて何かお考えがあったら聞かせていただきたい、さように思うわけでございます。  それから、先ほどもお話があったようでございますけれども、米ソ等のいわゆる超大国の政策転換、デタントヘの前進というものについては、申すまでもございませんが、大きな軍事力が国民経済なり国民生活に対する負担が大変大きいという点が背景にあることは否めないところでございます。そういうような動きの中で我が国の立場といたしましては、大経済国であることは間違いございませんし、「世界に貢献する日本」というような外交を考えますと、日本経済自体がさらにさらに中長期的に活性化をいたしまして、世界経済の安定と繁栄、これに対して貢献することがやはり大きな全体としての世界平和への基礎的条件づくりに役立つのではあるまいか、さように思うわけでございます。  中ソのあの歴史的な和解が行われましたけれども、あのような長い間のイデオロギーの過剰とか教条主義というようなものがその国の外交にとってやはり十分慎重に考えられなければ相ならぬ、さように思うところでございますが、それらの点について御所感がございましたらお願いを申し上げます。  それから、やや個別的な問題でございますけれども、これも外交の問題でございます。東アジアの軍縮の問題、我々周辺の問題でございますが、INF条約の発効だとか欧州の通常戦力交渉の開始に見られるように、東西の軍縮機運が大変高まっておりますが、それに関連いたしまして、東アジアの軍縮についても我が国が率先して努力をいたすべきであるというような議論も出ておるところでございますが、この点については、東アジアの地域はヨーロッパのようなNATOとそれからワルシャワ条約機構との対峙という基本的構図と異なりまして、地理的だとか政治的、軍事的に複雑な様相を呈しておると思うわけでございまして、それだけにアジアにおける軍縮というものにはなかなか困難を伴う、ヨーロッパよりも困難を伴うものだというふうに考えられるわけでございます。それで、それに対しては、やはりドラスチックな軍縮措置よりも、外交、政治あるいは経済関係というような地道な改善の積み上げによって問題を前進させるべきではあるまいかというふうに思うわけでございますが、その点についての御所見がございましたら聞かせていただきたいということでございます。  最後に、御所論とも関係するわけでございますが、日米安保体制をめぐる環境の変化の問題でございます。  中国が、一九七二年の日中国交正常化以来、日米安保体制に異議を唱えないという姿勢をとっております。また、ソ連も最近日米安保条約が日ソの平和条約交渉の障害とはならないと述べるようになっておるところでございます。  こうした変化を静かに見ますと、INF条約の成功要因の一つが西側の結束の結果であったと、それと同様に、安保体制のもとにおける日米両国のかたい結束がこのような事態をもたらしたものだというふうに考えておりまして、しばしば今まで言われておりましたように、我が国が東アジア等を中心とした中ソなどとの関係を改善してアジア・太平洋地域の緊張を緩和するためには、安保体制から脱却し非同盟の立場をとるしかないという議論に対しては、その条件が大きく変化してきたのではあるまいか、さように思うわけでございます。  かいつまんで申し上げましたけれども、それらの点について御意見がございましたら聞かせていただきたいと思います。  以上でございます。
  47. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 公述人にお願いをいたします。  質問者の時間が二十二分のうち、質問者は十四分使っております。残余八分しかありませんから、二人で四分ずつの簡易な御答弁をお願いします。  まず、石倉公述人
  48. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) ただいま大河原先生から三点の御質問がありました。  第一点の自由化についてどう思うかということでございますが、率直に言いまして、日米の厳しい環境条件の中で残念ながら結果としては我々としてもやむを得なかったのではないか、こういうふうに思っているわけです。ただし、農家の心情は、現在日本が世界の最大の輸入国、こういう中で輸出のツケが農業に回ってきたんじゃないかという点に大変不満を持っている、こういうことであります。  確かに、外交交渉が難しい点は十分に我々幹部としてはわかるわけでありますが、農家の現場段階ではなかなかそういう専門的なことは理解しにくい。また、急速に展開をされたと、今まで枠拡大で来たものが自由化ということで質的な転換になったということでまことに残念に思っているわけであります。しかし、この自由化は後戻りできませんので、我々としましては、平成元年度あるいは六十三年度補正予算を含めまして一千五百億円余の予算の措置をいただいたと、あるいは畜産二法のそういった立法措置も含めて輸入農産物に負けないような農業の体質づくりに懸命に努力してまいりたい、こういうふうに思っております。  それから、構造改善の展開でありますが、先ほど冒頭申し上げましたように、あくまでも我々としては経営規模の拡大、個別経営の拡大、これは言うは易しいのですがなかなか現実問題難しいということで、やはり現実的な対応としましては、地域営農集団というふうに我々は言っておりますが、要するに生産の組織化を通じてコストの低減を図っていきたい、こういうふうに思っております。  それから、食管のあり方につきましては、我々は、簡単に申し上げますと、まず今回の小委員会報告をどう受けとめているかということでありますが、基本認識としましては、米の持つ重要性からして生産者あるいは生産者団体のみならず国民生活全体に与える影響も大きいということで、その運営は確かな見通しのもとに米の安定供給にいささかの支障もあってはならないと考える、こういうふうに触れておりまして、全く認識はそのとおりだと思います。  それから、先生も御指摘になりましたようないろいろな点につきましては、今後生産者及び生産者団体、十分我々の意見を述べさせていただきまして、十分具体的な詰めをして、慎重な展開が必要ではないかというふうに思っております。  非常に限られた時間ではございますが、御理解をいただきたいと思います。
  49. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) 四点について簡単にお答えいたしたいと思います。  第一点、低いレベルの抑止と均衡が必要でないかということでございますが、現実の問題といたしましてソ連が兵力を五十万人一方的に削減する、欧州では二十四万、南部で六万、アジアからは二十万人と、これには太平洋艦隊も含めてだというようなことが中曽根前首相が会談したときにゴルバチョフ氏から言われているようであります。こうした一方で、あちらが減らしていくのに対してこちらも減らしていくということならば話は合うんじゃないかと思うんですけれども、ソ連の方は減らすけれどもこちらは着実にずっとふやしていくということはまさに矛盾を含んだものでございまして、これはやっぱり力で抑止する、それから均衡を保つ、何がバランスなのか均衡なのかというのが甚だ難しいところでございまして、そうした抑止均衡論ということではなくて、やっぱりもっと積極的に軍縮へのイニシアチブをとるということが今必要なのではないかというのが私の考えるところでございます。  第二点につきまして、世界経済の安定化への貢献が今重要ではないかという点につきましては、経済の安定化にもちろん異存はないわけでございますが、あのODA、政府開発援助については先ほど余り触れませんでしたけれども、そういった点につきましてもアメリカの戦略を補強するようなそういう戦略的な援助ではなくて、本当に人道的な立場からの援助を基金に対して、あるいは経済的な本当の民生の安定向上に対してやっていくというところに日本の一つの重要な役割があるのではないか。そういう点ではニューズウイークの最新号、これは日本語版の方ですが、冷戦後の世界というものの中に、日本の経済帝国主義との戦いがこれから問題になるんだというような非常に挑戦的なことをアメリカ側で言われているということが報道されているわけでありますが、そういう挑発に乗るのではなくて、やはり冷静なる対応が今求められておるというところだろうと思います。  なお、東アジアの軍備の問題について三番目にお話がございました。これは既に触れましたように、東アジアにおきましてソ連が兵力を削減していくと、大体報道もそうですけれども、私どもが見ておりましてもアメリカの第七艦隊の空母機動部隊に比べるとソ連のあのミンスクだとかいったような、巡洋艦、航空母艦というのにも値しないような、ああいうのはまあいわば横綱と子供の相撲みたいなものだということが言えると思うのでありますが、そういう中で、ふやし続ける方向ではなくて減らすことがやっぱり今必要なのではないか、力によって譲歩を引き出すということではまた逆戻りしていく危険が大きいわけであります。そういう点で、ドラスチックでなくというふうにおっしゃいましたけれども、やはりこの辺でかなりドラスチックな方向が必要とされているのではないかという気がいたす次第でございます。  それから、日米安保体制をめぐる環境の変化、これは全く今大きな変動が起こりつつあるというところだと存じます。日米のかたい結束という点を強調されたわけでございますが、西側のあの変化の大きな要因としましては、特に一九八〇年代に入りましてからヨーロッパでもアメリカでも史上空前の反核、平和の運動が起こっているわけでございますね。例えば西ドイツのボンなど、人口二十五万とかいう話ですが、そこに五十万の人が集まって、いわゆる限定核戦争ということでヨーロッパが戦争になっては困るというような動きが高まる、そうした世論の反映というのが大きくやっぱり国際政治にも響いているのではないかというような点で、先生方の御奮闘に敬意を表するとともに、私どももまた世論づくりという点でぜひ平和の方に発展させてまいりたいというふうに存ずる次第でございます。  簡単でございますが、これで終わります。
  50. 及川一夫

    及川一夫君 お二方大変御苦労さまでございます。  まず、私は石倉公述人にお伺いしたいんですが、最初に、石倉さんが報告された、また述べられた中で一点ちょっと確かめておきたいことがあるのであります。  今日の農政に対して不信が横溢している、特に青年層がということを言われて、ずっとそのベースで話が展開されたというふうに私は受けとめるわけでありますけれども、私の認識としては、とりわけ青年層という意味は農協青年部という意味で、我々議員に対してアンケートを求められましたね。一つの組織の中で、特に青年部が基本組織の政策にかかわる問題についてアンケートが行われるということは、それだけ農政に対する不信が強いというふうに受けとめてはいるんですが、しかし、じゃ農民全体としてはいかがなものだろうかというふうに考えると、農民全体の不信として私どもは存在をしているという認識に立つものですから、とりわけと言って青年層の問題を意識されて報告されたという事情ですね、現状というものはどういうものなのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  51. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) 今の及川先生の御質問でありますが、私はあえて特別な意味があって言ったわけではありませんが、特徴的に言えば、現在いろいろの農政の動きのある中で農業地帯あるいは農協の青年部を含めてと、こういう意味でありまして、先生と同じでありまして、全体的に農政不信が全国的にあるという点については同じでございます。あえて特別な意味はございません。
  52. 及川一夫

    及川一夫君 そういう前提を受けとめまして、二つだけ御質問を申し上げておきたいと思います。  その一つは、「コメ自由化革命」という本がことしの二月に実は発行されておりまして、この中身は、お読みになったかと思うんですが、結論的に言えば、畜産振興事業団あるいは農協というとらえ方で、ここを解体し革命を起こさなければ日本の農政は成り立たないというところが結論なんですけれどもね、この本は。ということが書かれているわけですが、内容的には農民の実情とか、歴史的なものとか、それからこれまでの農政と、今現実に国際化しているということを含めた日本の農政という問題の接点はどこにあるのかという究明なしに、少しめった切り過ぎるじゃないかなという感じが私はするんです。しかし反面、やはり今の農政が抱えている問題をずばりついている面もあるのではないかと、こんなふうに受けとめているわけであります。  そこで、農協の中央会として、この種問題は、本になったからという意味じゃなしに、個々にやはり出てきた問題でもあろうと思いますので、総括的にどんな受けとめ方をされ、これに対してどうこたえようとされているのか、極めて短い時間ですから、大変言いにくい問題もあろうかと思いますけれども、お答えいただければ幸いだというのが一つであります。  それから二つ目に、農協青年部のアンケートに対して、各議員それぞれ自主的な立場で回答されたと思うのであります。したがってトータル的に、どんな回答が出ているのか、それをまた政党別に寄り合わせてみたらどんな回答になっているのか、私も存じ上げてはいないんですけれども、ただ、いろいろ漏れ承る中で次のようなことが回答としてなされているということを御紹介して、これに対してどうお考えになるかということをお聞きしたいのであります。  その内容は、「食糧安全保障については、平常時における現実の豊かな生活の保障ではなく」、これは農民自体に対する生活の保障ですね、「一たん緩急ある際の国民の生存に必要な食糧確保をどう図っていくかを基本とすべきです」と。まあ一口に言って、不測の事態にどう対応しようとするのか、国内農業のポテンシャルを確保しておけばいいんだと、そういう角度で対応すればよろしいと、こういう考え方の上に立って述べられた回答だろうと思うんです。この辺なんかについてはどうお考えでしょうか。  以上、二点についてお伺いしておきたいと思います。
  53. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) まず、最初の一点の御質問でありますが、先ほどの冒頭の意見の中で私申し上げましたように、農政不信の背景、理由はたくさんあるわけであります。その中で特に私強調しましたように、いわゆる評論――経済界あるいはオピニオンリーダー、多分先生のおっしゃるのは屋山太郎先生のことだと思いますが、先生は多分政府委員もやっておられるわけですね、そういった人たちが非常に農業批判をやる。これが農家にとっては相当大きな影響を与える、こういうことをまず冒頭申し上げたわけであります。  私も、実は屋山先生とは広報時代に何遍もお会いしているわけでありますが、それはさておきまして、私のちょっと感想を言いますと、屋山先生は比較優位の原理に基づく国際分業論、こういうものを何より非常に重視をしているということであります。したがいまして、先生の主張によりますと、我が国の食糧の自給とかあるいは安定供給という問題は、先生の考えどおりにいけば、国家としてのそういった食糧の安定供給の基盤が非常に崩壊していく、こういうふうな主張につながっていくというふうに思うわけであります。先生はそういったガットの自由貿易体制というものを非常に重視をしておられますが、私に言わせれば、現在はガットの中にもアメリカのウエーバー十九品目あるいはECの可変課徴金問題等々、非常に大変ないろいろな課題を抱えている、こういうことでございますので、そう簡単に自由貿易推進体制というふうにいかないのであって、農業問題というのは、自由貿易推進体制という、そういう論理になじまないというふうに私は考えているわけであります。  あえて先生が言っていることを申しますと、日本人が豊かな生活を享受できない責任は食料品が高いことにあるんだと、こういうふうに主張をしておられるわけですが、現に経済構造調整に関する世論調査、これによりますと生活の豊かさを実感していると。理由では食生活の充実、何と六九・四%が挙げられているわけです。逆に豊かさを実感していない理由の上位は、税金等の重さ、労働時間の長さ等が挙げられておりまして、屋山先生がおっしゃるような食生活が充実してない、その理由は国内食料品が高いんだと、そういう理由は回答の順位からいきますと八位ですね、五三%。こういうことからも先生の主張はちょっとひどいんじゃないかと、こういうふうに思っているわけであります。先生のそういった主張は理解に苦しむわけであります。  したがいまして、私どもとしましては、そういう主張をされるとするのであれば、政府委員でございますから、もっと国民の各界各層の意見を十分踏まえた慎重な発言があってしかるべきじゃないかというふうに思うわけであります。  それから二番目に、青年部のアンケート調査に基づく食糧安保論について先生から御質問があったわけでありますが、私どもとしては、食糧の安全保障論というのは具体的には国内の自給率を向上させる、こういうことでなければならない。じゃ、すべて何が何でも自給するんだ、そういうことじゃなくて、基本的な食糧、米を初めとしてそういった問題については国内完全自給でいくべきである。どうしても国内でつくるよりも外国から輸入した方がいいんじゃないかというものについては検討の余地があるんじゃないかというふうに思っておるわけですが、食糧安保論につきましては各界各層の人々によってかなり幅広い論議がなされているというふうに思っておりますが、私どもはECに学んで、やはり食糧、農業問題の国民的合意というものを国論の統一として今後目指していくべきだ。そういう一環としてこの食糧安保論についてもこれから大いに議論をして、統一的な理解をしていくべきではないかというふうに思っております。
  54. 及川一夫

    及川一夫君 第一点の問題では、私があえて著者の名前を言わなかったのは、いないところでいいの悪いの言ってもいけないものですから。ただ、市場に流れている、また売られている本ですからかなり読まれているだろう。これを農協の組織としてどう受けとめるのか。政治に対する提言もあの中に入っていますね。あるいは今の農水省のやり方、あるいは農政そのものに対してもかなり突っ込んだ問題提起をしているわけですから、我々もいい悪いは別にしてやはり受けとめて、日本の農政というものを本当にどう進めさせて、それこそ農民のためにも国民のためにもなるような農政であるべきかということを追求しようと思っておりますので、できれば石倉さんにも農協中央会として、あの種問題に対して、二十一世紀云々の話をお聞きいたしましたけれども、具体的にこたえられるようなことがやはり大切ではないかと、こんなふうに思っておりますから、よろしくお願いしたいというふうに思います。  福山先生に一点だけちょっとお伺いしたいというふうに思うんです。  先ほどの先生も御質問されたわけですが、中ソ首脳会談でございますね。我々から見ても、少なくともアジア平和のためには大きく役立つと、そういう意味で竹下総理も歓迎するという答弁が一つあるわけですけれども、それはそれとして確認をしながら、それでは中ソの関係が一つの固まりになるということがヨーロッパあるいはアジアの各国から見てどんなイメージでとらえられるのだろうか、またどんな役割を果たそうとしているのか。これは今判断するのは大変だということを思いながらも、率直なもし御意見があれば聞かせてもらいたい、こういうふうに申し上げて質問にかえます。
  55. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) 早速いろいろジャーナリズムで取り上げられている取り上げられ方としましては、かつては兄弟国であったのが、その後全く対決状態になって、現在は友人関係に戻ったというふうな端的な言われ方をしているということじゃないかと思いますが、私も現在の到達状況というのは大まかに言えばそういうことではないか、そんなことを感じておるわけでございまして、何か中ソがまた一つの固まりになって同盟関係に入ったというようなことではないというふうに思います。私ども平和運動の中で、中国の平和擁護委員会の人だとかあるいはソ連の平和委員会のメンバーだとかともいろいろな接触もあり、議論も重ねてきたわけでございますけれども、それぞれの国の方針というものがあり、それぞれの平和委員会のあり方というのも、率直に申しまして、それぞれの大国的な立場の反映というようなことも今までかなりいろいろ経験いたしまして、それはそれで私どもも言うべきことをきちんと言ってまいったつもりでおるわけでございます。  今後の問題として、両国が関係を修復する、通常の関係になるというのは歓迎すべきことでございまして、国境の軍隊を両方が減らしていくとか、それから争点になっているような問題の解決に努力していくとか、今後もさらに前進させていくということは必要であり、また経済的な交流というのは、隣同士の非常に大きな国同士ですから発展せざるを得ない、するのがまた望ましい、そういうことであろうと思いますが、そういう大国主義的な点でのブロックみたいなことになるのはやっぱり避けてもらいたいし、そのように私どももいろいろ要望を出していきたいと思います。世界の世論が求めているのもそういうところであり、そういう方向がこれからの発展の方向ではないかというふうに考えておるということだけ申し上げたいと思います。
  56. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、まず最初に石倉公述人にお尋ねしたいと思いますが、先ほど来大河原委員から、また今は及川委員からもお尋ねがありましたいわゆる農村部の青年が日本農政に対する非常な不信感を抱いておる、あるいはそういう傾向が広がりつつあるということに関連いたしまして、これは私の見聞するところでは、農政ばかりではなくて、いわゆる農協そのものに対する造反的行動もあるやに見聞いたしておりますが、この点について農協としてはどのようなとらえ方をなされているのか、これが第一点でございます。  それから、これも先ほどの質問に関連いたしますけれども、食品産業対策についてお尋ねします。  最近、加工食品の消費量が非常に増大したり、あるいは外食産業が非常に急速な伸びをしている。こういうことから、食品産業の動向が必然的に我が国農業に及ぼす影響は非常に大きくなりつつあるわけです。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 しかし、近年におけるこの急速な円高の傾向で、それが影響いたしまして食料品の内外価格差がますます大きくなっていっている。食品産業の中でも流通業とかあるいは外食産業は、原材料を割高な国内産の農産物より割安な海外からの輸入食品へ依存する、こういう傾向がございまして、さらには割安な原材料や割安な労賃を求めて、表現が適切でないかもしれませんけれども、海外へ逃げ出す、こういうような傾向も強いようでございます。食品産業もそうしたことから空洞化という動きがだんだん強くなっていくんじゃないか、そういう懸念があります。  ちなみに貿易統計で見ますと、枝豆、トウモロコシあるいはジャガイモについては国内需要量の七四%が輸入である。こういうことからしましても非常に憂慮されるわけですが、こうした冷酷な現状に対して、我が国農業として、また農業団体としてはどのように対処していこうとされているのか、この件について国や経済界に対してもし御要望があればその点もお尋ねしたいと、こう思うわけです。  次に、構造政策についてお尋ねします。  これは、もう近年とみに農業後継者が激減する一方でありまして、それに伴いまして高齢化が進んでおる。このまま放置すれば我が国農業あるいは農村の崩壊に拍車がかかってくるんじゃないかという懸念も出ているわけですけれども、そういうために農業の構造政策を円滑に進めようということで今取り組んでいるのは事実でございます。この構造政策を進める上で私が特に懸念しているところは、政府が一昨年来米価を大幅に引き下げてきておりまして、本年からはこれをより確定的なものとするべく米価算定のあり方に新しい方式を導入する、こういう方針があるようですが、この新算定方式が導入されてまいりますと、いずれ五ヘクタール規模以上の農家を算定の対象とするという、こういうことがねらいではないかというように思うんですけれども、そうなりますと米価水準は、米価を引き下げ始める前の昭和六十一年産米の米価水準に比べて約二割程度引き下げられるというようなことになるんじゃないか。  そこで、三ヘクタール、五ヘクタール規模の農家にとっては米価の二割引き下げは粗収入の二割減となりますけれども、反当たりの所得では少なくともこれは三割から三割五分程度の減収となる。こういう試算をするわけですけれども、このいわゆる三ないし五ヘクタール規模の農家の中には、今後さらに規模拡大を図り、将来ともに日本の稲作の担い手を志している農家も少なくないわけです。しかし、今申し述べたような実情のもとでは多くの農家が脱落を余儀なくされるという結果になるのではないかと思いますが、こうした農家の経営を守り育てるという視点を重視して、各種の施策について整合性ある政策体系を確立すべきじゃないかと私は思います。  以上、三点についてお尋ねいたします。
  57. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) まず、第一点の青年部を中心とした農政不信の動きにつきまして、先生は、これは農協に対する造反ではないか、こういう御指摘があったわけであります。私どもは全国的な動きをつぶさに承知をしているわけでありますが、この動きは何も反自民に結集されているというだけでなくて、もっと逆に言えば、それじゃ他の党はよろしいのかということでもないということでありまして、私先ほどから言っておりますように、率直にいろいろな要因が総合勘案されて、要するに農家は将来展望を見出せない。例えば、今苦しくても三年後はこうなるんだ、こういうことがあれば、私はまだ頑張れるのじゃないかなということであります。したがいまして、先ほど言いましたように、農業予算につきましても、いろいろな施策についても、やはり温かい配慮と政策展開が必要ではないかというふうに思っておりますので、私どもは農協そのものに対する造反というふうには受けとめておりません。  それから二番目の食品産業、まさに先生御指摘のとおり最近急速に伸びております。これは先生の御指摘のように、一つの大きな要因はやっぱり円高等によりますが、さらに言いますと、最近の特徴は、輸入農産物も今までは原材料としての構成が六割で、半製品、製品というのは三割、四割と、こういうことであったわけですが、今逆転しておりまして、むしろ加工品、そういう半製品、製品が原材料にかわって輸入されておる、こういう実態でありまして、先生の御指摘のように、それはもうまさに製造業についても産業の空洞化ということが懸念されているわけであります。そういう点については、先生の御指摘は十分理解できますし、またそのように認識しております。  したがいまして、私も冒頭に申しましたように、今後の農協としましても、やはりそういった流通・加工の分野に積極的に今対応を強化して付加価値をどうやって高めるか。業界の方に聞きますと、やはり本当は国内物が欲しいんだ、要は品質をよくしてくれ、こういうことでありまして、そういった面についても最大限努力してまいりたい。  それから最後に、構造政策の問題でありますが、先生もおっしゃるように非常に最近後継者が激減しております。それから、米価問題についてもいろいろ論議をされておりますが、この問題は、まさに今、組織討議を展開中でありまして、今後の米価をどうするかということとの関連もありまして、現在組織討議を展開しているところでありますが、我々の基本的な立場としては、やはり新算定方式の一・五ヘクタール以上を対象とする米価算定にはどうしても理解ができないということです。そういったことで、いろいろ政策を絡めて今後展開をしていきたいと思いますが、しかし一方では、先生がおっしゃるような三ヘクタール、五ヘクタールの農家がやはり稲作の基幹農家でありますので、そういった農家を今後どうやって守っていくかということも考えていかないといかぬというふうに思っております。
  58. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は農村出身の議員として、石倉公述人にもたくさんお伺いしたいことがありますが、時間の関係上、防衛・外交に集中せざるを得ないことをまずお許し願いたいと思います。  先ほど福山公述人の話で、防衛費についての性格、意味というのは非常によくわかりました。つけ加えて私は、ODA予算の問題についてどうお考えになっているかをお伺いしたいと思います。  私がお伺いしたいのは、ODA予算というのは昨年もことしも非常に大きくふえた分野であり、日本の国際公約にもなっております。もちろん、人道上これはふやすべきだと思います。ところが、このODA予算をめぐってアメリカ側からの一連の発言を見ると、疑問を持たざるを得ないものがたくさんあることです。特に、アメリカの国防報告にまで日本の経済援助をふやすことが述べられているということに至って、私はこのODAの問題、この性格、今、日本に求められているODA強化というものについて、福山公述人はどのようにお考えになっているか、まずお伺いしたいと思います。
  59. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) ただいまアメリカの国防報告の中での日本のODAについての触れ方の問題がございましたが、これはODAと日本の防衛費と合わせまして、GNPの三ないし四%を要求する。つまり西側諸国、NATO諸国並みにふやすことを求めると。端的に言いますと、三%だと二倍以上、四%というと三倍ぐらいになるかと思うんですが、そういう内政干渉に類することをアメリカの議会が決議しているということは、甚だ心外なことであるというふうに私思う次第でございます。  先ほどは時間もありませんで深く触れませんでしたが、ケリーと申します人、これは会計検査院の国家安全国際問題担当局の次長をしている人でありますが、ODAの問題に関連いたしまして、「日本はその他のアメリカ側の責任分担の意味をもつ提案の実行にも着手している」ということを申しております。   一九八〇年、アメリカに催促されて、日本はトルコにたいする対外経済援助を増やした。トルコは西側同盟にとって戦略的に重要な国である。さらに日本は、その他の戦略的に重要な国々、たとえばエジプト、パキスタン、韓国、オーマンなどへの対外援助を増やした。日本は、対外援助予算を一九八〇年の一六億ドルから、一九八七年の四七億ドル以上に増やした。 ということで、明らかにアメリカが期待しておりますのは戦略的な防衛責任の分担ということで、武力に関しましてはアメリカが核を軸としてやっていくと。自衛隊にその補完、補助を求めつつ、対外経済援助という点につきましては、日本が主体になってやっていくことを求めているということが、端的にこのケリー担当局次長の話の中にもあらわれているということが言えると思うのであります。  同じことは、これはどちらかといえば私どもと違う立場の方ではありますが、佐伯喜一さんという野村総合研究所の相談役、あの方のお話の中でもはっきりODAに触れまして、  現在のODAの理念あるいは目的から考えますと、戦略的援助というのは目的にはずれるわけです。ODAの理念においては、南北問題の根底にある相互依存の認識と人道的考慮が理念でありますし、目的としては先進国と発展途上国との経済格差の是正、貧困・飢餓の救済が目的になっているわけであります。   やはり、今後のバードン・シェアリングの問題に日本が対応していこうとすれば、ODAの中に実質的な戦略的援助をどういうふうにして取り込んでいくかということを考えざるを得ないと思うのです。 こういうことを佐伯さんが言っているわけなんでありますが、これはどうも私どもの伺っております本院参議院で一致点として確立されてきた人道的な援助、それから飢餓の克服、それから自主的な経済の発展に対してODAを導入していくという方向とは反する方向へ、戦略援助の方向をアメリカが求め、そういうことについての配慮が必要だというような意見も出てきているというのが現状でありまして、これはやっぱり今後厳しく考えていく必要がある問題だろうというふうに思います。
  60. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今、防衛費、ODAがアメリカの戦略的な要請に沿ったものだというお話でございますが、話がちょっと今度は変わりますけれど、米の自由化という問題に関連しての日本の姿勢についてもひとつお伺いしたい点があります。  米の自由化については認められないということは、参議院会議でも各党一致の決議がございますし、先ほど来話がありますように、日本農民の展望にもかかわる問題だと思います。ところが、そういう決議のあった直後に松永駐米大使が記者会見をして、米の輸入自由化の問題については米側から見て進展があったと評価できるものでなければならないということを日本の対応について記者会見で述べ、新聞にも大きく報道されております。私はこの記者会見の記事を見ましたときに、はて、この人はどこの国の立場に立っている人だろうかなという疑問を持ちました。  私、きょうお伺いしたいのは農業問題としてでなく、日本の大使がこういう発言をする根源というのは一体日本のどのような外交姿勢から出てくるものだろうかという点について重大な疑問を持ちますので、この点、福山公述人はどのようにお考えになるか、お伺いします。
  61. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) 端的に申しまして、ただいまの点は現行安保条約第二条に日米経済協力ということがうたわれているわけでありますが、やはりそこから根本が出ているというふうに思います。  日米経済協力の中で振り返ってみますと、日本の炭鉱はすべて石油に圧倒されて閉鎖される。牛肉やオレンジの問題も、輸入自由化と経済協力の中で農民が大きな不安を持つに至っている。先ほどからも御論議がいろいろ重ねられておりますが、ついに米の自由化問題まで参っておるわけでございます。これに対して松永大使のような御発言があるということは、国民の要求を優先するのではなくて、やっぱり安保の方を優先するという立場からこういうことが出てくると思うものでございまして、その点では今の先生のお話にもございましたが、昨年本院が全会一致で採択されました米の自由化反対に関する決議、これは立派な見識を示されたものだと私は考えておりますが、あの見解に対して深く敬意を表するということを申し上げたいと思います。
  62. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最後に一言。  水爆を搭載した米軍機の水没事故というのは国民に大変不安を与え、この委員会でもさんざん論議が行われました。こういうことが起こらないようにする方策は何かということについて、最後に福山公述人にお伺いします。
  63. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) 問題は、タイコンデロガを初めとするアメリカの船が、先ほども申しましたように核兵器を積んだまま平気でアメリカの国是なるものを、基本方針なるものを掲げまして、あるともないともはっきりさせないままで実際は積んで出入りしているというところに問題があると思いますので、この点はニュージーランドだとかあるいはフィリピンなどで非核法、核兵器を持ったものは実際入れないし、持って入ったら処罰するというところまではっきりさせているわけでありますが、非核三原則を掲げる我が国としてもそういう方向で政策をはっきりさせることが必要であり、そして根本的にはやっぱり安保条約を根本から見直してこれを変えていく、なくしていくということが必要であろうと思います。  以上です。
  64. 勝木健司

    ○勝木健司君 時間の関係で、石倉さんに農業問題について二点ほどお伺いをしたいというふうに思います。  今、日本の農業は、輸入の自由化を行わないといいながら輸入自由化を行ってきたことに象徴されますように、言ってみれば積年の場当たり農政によって現在多くの農家が農業の将来に対して非常に大きな不安を抱いているように思います。そういった意味で、今や活力ある農業を構築していくためにも自由貿易体制に適合し得るような日本の農業の発展的構造改革の確立というものが迫られておるんじゃないかというふうに思うわけであります。そういった意味で、例えば国際化された中での適正な競争というのも長期的には必要ではないかというふうに考えるわけでありますが、一点御所見をお伺いしたいということ。  そしてもう一点は、我が国の食生活は豊かになっておるということで、したがってその求める食材も多種多様になっております。そこで、農業者の方にも常に消費者二ズがどこにあるのかということをつかんでいただきたい。そして、その二ズに合った品質の高い農産物というものを生産する必要があるんじゃないかというふうに思うわけであります。また、その一方では経営規模を広げていく、あるいはコスト削減努力を続けていく、あるいは生産性を上げていくということによりまして、農業をめぐる国際的あるいは国内的な厳しい環境下でも力強い農業経営というのが行われるのではないかというふうに思うわけであります。  我が党も、先般、日本農業を二十一世紀に向けての希望ある産業とするために農業先進国ビジョンというものを示しております。そこで政府も、農家が安心して農業を営めるようなそういう農政の具体的な長期ビジョンというものを策定し、農業者に明示すべきであるというふうに考えておるわけであります。石倉さんも農業の将来展望の確立というものを挙げられておりますけれども、二十一世紀に向けての農業のあり方について御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  65. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) まず最初に、構造改革は長期的には必要ではないかという先生の御指摘、全くこれは同感であります。ただし、私、先ほど言いましたように、我が国の農業は歴史的あるいは国土的、経済社会的に非常に制約された、それぞれの国の農業生産の形態というのはそれぞれ歴史なり背景を持っているわけで、したがいまして画一的にいかないということを十分念頭に置いて、やはり相当時間をかけて、そういう意味では緩やかな改革にならざるを得ないと思いますが、そういった視点が必要ではないか。どうも最近すぐコスト論議あるいは市場競争原理の導入、こういう経済合理主義一点のみの論議が横行しているように思いますが、やはり農業の置かれた実態というものを十分踏まえてやる必要がある。そういう意味で先生の認識とは基本的に一致しておりますが、要するに農業改革には時間が必要だと、こういうことをぜひ御理解いただきたい。  それから、食生活の多様化あるいは消費者の二ズの変化、これも十分に承知をしております。そういった意味で、率直に言いまして、今までの農業団体としてのこの分野における取り組みは不十分であったわけでありますが、最近は非常にそれぞれの県あるいは単位農協でもこういった具体的な展開が進んできております。したがいまして、先ほど言いました二十一世紀の基本戦略の中でも明記しておりますので、要は、あとは具体的にどう実践していくかということで努力を傾注してまいりたいというふうに思います。  それから、長期ビジョンについてというお話がありましたが、全中といいますか、農業団体の当面の長期ビジョンというか中期ビジョンは、一応団体としては基本戦略、こういうものを掲げておりまして、これをいかに実践するか、またその実践を通じて新たな課題にチャレンジをしていくということは必要ではなかろうかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  66. 勝木健司

    ○勝木健司君 それでは、福山先生にちょっと一、二点お伺いしますが、まず、最近の中国の学生の民主化の動きというものをどう先生は見られておるのか、共産主義体制の破壊につながることはないのかどうかということ。  そしてまた、ソ連のペレストロイカやグラスノスチをどう見ておられるのか。言ってみれば共産主義と民主主義、あるいは共産主義と市場経済というものは両立し得るのかどうかということを、時間がありませんけれども、お伺いをしたいというふうに思います。
  67. 福山秀夫

    公述人(福山秀夫君) 講釈師見てきたようなうそを言いというようなことを言うわけにもいきませんが、私も全く同じテレビなどでの情報を聞いたり見たりしながら感じたことを申したいと思うんですけれども、共産主義と民主主義というのが全く対立するものだとは私は必ずしも考えないものでございます。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  というのは、歴史は古くなりますが、ちょうどリンカーン大統領が奴隷解放の戦いをやっていたときに、若いカール・マルクスが第一インターの書記かなんかをやっていて代表してメッセージを送って、リンカーン大統領も感謝の電報かなんか返事を出しているんですね。そういう要素も歴史的にもあるもので、いろいろひずみも出ているようですから、その中で若い人たちが先頭になっていろいろこうあるべきだと正義感に燃えたりして要求を出してくるというのは当然であり、それが大きく静穏に行われているというのは結構なことでもあろうかというふうに私は思っておるわけであります。  ソ連におきましても、そういう点でいろいろな問題点はございまして、平和運動の面などでは私どももいろいろ渡り合っているという面もあるわけなんですが、しかし、このままペレストロイカ、グラスノスチ、いろんな情報を公開していく、それからいろんな違う見解があるわけですが、それをみんなが言って、交流しながら一致点を探していくというような流れになってきていることは、これは結構なことだろう、基本的にはそういう方向ではないかというふうに考えておるわけでございまして、市場経済という点からいけば市場経済的な要素を大いに取り入れることによって、基本は計画経済の要素を決して棚上げはしておりませんけれども、どう調和させていくかという点でまだなかなかうまくいっていない面もあり、これから習熟していくという方向ではなかろうかというふうに考えているということだけ申し上げさしていただきます。
  68. 秋山肇

    秋山肇君 石倉、福山両公述人、御苦労さまでございます。  私は、石倉先生にお伺いをいたしたいと思います。  昨年の秋の冷害を、福島、宮城、岩手と視察に行ってまいりました。一生懸命やっている篤農家の田んぼが悪くて兼業農家の方がいいというようなのが現実の姿であったわけですが、私は、そのときに感じました二点についてお考えをお伺いしたいんです。  協同組合の本来の精神で言うと、やはり困ったところを助けるという気持ちがなければいけないと思うんですが、東北が米がとれないで自然の生産調整ができたというような、農家の人はそう思うかどうか知りませんが、東京の消費者は深刻に受けとめないという問題があるというふうに私は考えます。また岩手に行きましたら、あのやませの気象を逆手に使ってホウレンソウをつくったり、夏大根をつくって大きな収入を上げたという実例も聞かしていただきました。  この二点、お互いがもう少し力を合わして消費者にPRをしたらどうかということと、先ほど、希望の持てる農業の中に我々が政策立案をすることも大事でしょうけれども、農家の皆さん方が自発的に進められていることがありましたら、実例を挙げてお話しをいただきたいと思います。
  69. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) 協同組合の基本理念は、相互扶助、その前提として人間尊重を前提とした組織であることはもう先生十分御承知かと思います。ただし、そういうことでありますが、なかなか協同組合の原則とか理念というものと現実の動きが必ずしもぴたっといっているかどうかという点については常にやっぱり反省をしながら、チェックをしながら前進をしていかなきゃいかぬということを思っておりますので、そういった点で、現実の中でそういったことがあれば反省もし、直し、前進していかなきゃいかぬと、こういうふうに思っております。  それから、あらゆる食料あるいは農産物の消費者に対するPRでありますが、私も四年間実際問題として広報活動を展開したわけであります。なかなか言うは易しくて行うはかたいというのが実感でありまして、やはり国民の各層各界にいかに食料農業問題の重要さ、具体的には、言ってみれば農産物の消費拡大につながるような対策についてもやはりこれは私は粘り強い努力の積み重ねしかないのではないかというふうに思っております。  お答えになったかどうかわかりませんが、よろしくお願いしたいと思います。
  70. 木本平八郎

    木本平八郎君 石倉常務にお伺いしたいんですが、私は、国会では数少ない米の輸入自由化論者なんです。これに対してアメリカのエコノミストが、その私の意見には反対だ、日本は米を輸入自由化しちゃ困るということを言うわけですね。真剣な顔をして言っているわけです。これはどうしてかというと、もしも輸入自由化をすると、確かに数年間は日本の農業界あるいは農家は大混乱を起こすだろう。しかし、統廃合をやって日本人のことだから必ずまたよみがえってくるに決まっている。そうすると、十年たったら日本はもう世界的な農産物の輸出国になるはずだと。それで、農業というのはこれは先進国の産業ですから、日本が農業でおくれているというのはもうおかしいんだということを言っているわけなんですね。もちろん彼は、日本の耕地が非常に小さくて零細化されているということはもう百も承知しているんです。これに対してどういうふうに思われるかということが一つ。  それからもう一つ。彼は、日本の米作農家がどうして海外進出をしないんだ、日本の米作農家に海外に来てもらいたいという国はいっぱいあるはずだが、どうしてなんだということを言っているんですが、この二点について御意見を承りたいと思うんです。
  71. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) まず最初に、米の輸入自由化論者だとおっしゃる先生の御見解には、残念ながらくみするわけにはいきませんが、それは御容赦いただきたいと思います。  ただ、先生に御理解いただきたいのは、実態を申し上げますと、世界じゅうでお米の生産は精米換算で三億トンなんですよ。実際に米が出回っているのは三ないしは四%。これは言ってみれば、日本の今の米生産に匹敵するわけです。つまりあとは、九七、八%は自給をしている。これは何を物語っているかというと、基本的には各国とも米を大事にしている。逆に言えば、そういった貿易量の中で、仮に一定の国に集中するということになると、これは国際価格が騰貴をする、こういうことは目に見えた論理じゃないかというふうに思います。ましてや、日本は先進国だから将来は農業の輸出国になるはずだ、こういうことは、夢としてはそういうふうになるかわかりませんが、どうも私の実感として、日本は本来的に稲作を中心とした自給型農業である。アメリカはやはり粗放農業であり輸出型農業である。ECはやはり家族経営を中心とした複合経営型の農業だ、こういうやっぱりそれぞれの国の置かれた条件があるんじゃないか、こう思います。せっかくの機会なので、御理解いただければありがたいと思います。  以上でございます。
  72. 木本平八郎

    木本平八郎君 海外進出の問題は。
  73. 石倉皓哉

    公述人(石倉皓哉君) 海外進出につきましても、現在若干、ミカンとか一部の果物につきまして輸出の努力をしておりますが、全体の量からいうと微々たるものでありますが、これはやっぱり一つの蛇口として重要視して、今後このパイプを太くしていかないといかぬのではないかという点については、全く先生の御指摘は同感でございます。
  74. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  以上で農業及び外交・防衛に関する意見聴取は終了いたしました。  一言お礼を申し上げます。  石倉公述人、福山公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心から厚く御礼を申し上げます。(拍手)  速記をとめて。    〔速記中止〕
  75. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 速記を起こしてください。     ―――――――――――――
  76. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 一言ごあいさつを申し上げます。  坂本公述人、加藤公述人におかれましては、御多用中にもかかわりませず本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を賜りまして今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度の御意見を順次お述べいただきまして、その後委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承りたいと存じます。  まず、政治改革につきまして坂本公述人にお願いいたします。坂本春生君。
  77. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) ただいま御紹介にあずかりました第一勧業銀行の顧問をしております坂本と申します。よろしくお願い申し上げます。  私、一昨年、通産省を退官いたしまして以来、もう国会に全く御縁がないかと思っておりましたら、このたび図らずもこういう形でまた国会の門をくぐらせていただきました。  きょうの公聴会は、ほかのテーマにつきましてはおのおの皆様専門家の方々がおいでになって公述をされておられるわけでございますが、事私のテーマ、政治改革につきましては、私は全くこれについて何のバックグランドも持ち合わせておりません。むしろお聞きくださる先生方の方が本件につきましてはプロでおられて、公述します私の方が素人の一市民にすぎないという立場ではございます。しかしながら、せっかくお招きにあずかりましたので、どの程度お役に立つかわかりませんけれども、私の私見を早速述べさせていただきたいと思う次第でございます。  まず、最初に申し述べさせていただきたいと思いますことは、政治改革ということの基本姿勢についてでございます。  このたびのリクルートの問題に絡みまして、いわゆる政治腐敗という非難が大変なされているわけでございまして、これにつきましてはもう各方面からありとあらゆる厳しい批判が既になされておりますが、私はこのことと、政治が本来ならば非常に広い識見とそれから確固たる信念に裏づけられて行われるという、こういうことにもかかわらず、お金という経済力で政治が侵され操られたというような批判でございますが、そういう批判と、それから今、世界の中でリーダーたるべき日本が相変わらずエコノミックアニマルの域を出ず、日本が大国と呼ばれるときには必ず前に経済がついて経済大国と呼ばれるという、こういう状況とは本質的に同じものがあるんではないかという気がいたしております。  それで、収賄罪のような犯罪は論外でございますけれども、そういう法に触れるような行為ではなくて、にもかかわらず今回政治家の行為として社会の批判を浴びておられる行為というのは、恐らく人間としての倫理の問題、哲学、それから誇り、そういうような、一口に言えば人格の問題ではなかろうかと思います。  同様に、日本という国が、世界に対して自分自身では何も悪いことをしていない、悪いことをしている意識がほとんどないにもかかわらず、世界各国と摩擦を起こし、ジャパンバッシング、日本たたきというようなことが日本に対して行われている。これはまた、日本という国一国としての風格の問題ではなかろうかと思うんです。そういう意味で、私は先ほど申し上げましたように、この日本の中の政治家に対する批判と世界の中の日本に対する批判というのは一脈通じているところがあるように思います。  戦後四十年間、日本という国は、経済に強くなる、経済のみに国連をかけてここまでやってまいりました。それはそれなりにある成功、大変な成功をおさめたと思います。しかしながら、その反面では、社会に大変なゆがみを生み出してしまったということでございます。  このゆがみは、例を挙げましたら切りはございませんけれども、東京一極集中と言われるような状態、土地や株を売りさえずれば一夜にして億万長者になれるという状態、そしてまた、子供相手の教育の世界ですら人間性を全く忘れた偏差値という数字で子供を仕分けしているゆがみ、こういうゆがみが日本の社会に、ありとあらゆるところに蔓延しているのではないかと思うんです。そして、こういうゆがみの上に今問題になっているような政治、政界のゆがみ、非常におかしなことが生まれてきているんではないか、私はまず基本的にこういうふうに思います。ですから、今回の政治改革というのを議論されますときには、やはり社会の根本にメスを入れる形でこの議論が行われませんと、幾ら議論をしても何かむなしい感じがするような気がいたします。  そういう意味で、私は最初に申し上げたかつた政治改革ということを議論するに当たっての基本姿勢としては、私どもが今まで余りにも経済に凝り固まり、豊かな知性とか人間性を忘れ、他人の痛みを分かち合う情感を忘れてしまっている、こういう私ども社会の価値観をもう一度ここで見直して、新しい価値観をつくっていくことの努力から始まるんではないかと思います。もっと人間で言えば人格、先ほどの国際的な社会での、日本の社会で言えば風格、こういうものを構築できるようなもう一歩高度の価値観を私どもの社会に植えつけていく、これがまず私は政治改革をするときの基本になければならないことだと思います。もし、これがない限りは、目に見える現象だけをつかまえて幾ら政治改革をしたところで、氷山の一角を削り取っているにすぎないのではないかと思います。そういう意味で、私は、ぜひこの政治改革に当たっては、今、基本的に私が申し上げましたことを踏まえた上でいろいろな議論をしていただきたいと思うんです。  そして、あえて蛇足ではございますが、一つの提案をいたしますならばかつて日本は世界と経済協調をどういうふうにやっていくかというときに、経済構造調整研究会ということで前川委員会なるものが発足して、大変高度なディスカッションをなさり、日本の方向をある程度示唆なさいました。私は、今回の政治改革に絡みまして、やはり日本社会のこれからの価値観はどうあるべきか、これからの日本の風格、日本の国家としての理想像はどうあるべきかということを、経済だけではなくて、これは哲学家、思想家、芸術家、あらゆる方々を含んだ高度な委員会をつくっていただき、ここで日本のあるべき姿を大いに論じていただくということも、またこれからの価値観をつくっていくことに対して有益な方法ではないかと思います。今まで政府が本気でそういうことを大変高度な場で取り組まれるというのはどうしても経済だけでございますので、その辺からまず改めていく、政治がこういう社会の根本を変えていくことにやはり大きなサポートができるんではないかという気がいたしている次第でございます。  こう申し上げますと、それじゃみんな社会が悪いのかということになりますが、私は決してそうは思っておりません。それはどうしてかといいますと、もちろん政治家だけじゃなくて社会も悪いんですが、一番私は感じますことは、いわば金権体質というようなものは人間皆潜在的には持っておりますし、社会に潜在的には存在しているものでございます。ですけれども、それが一番極端な形でまた最もゆがんであらわれるというのは、大変申しわけないんですけれども、政治の世界ではないかと私は思うんです。何となれば、政治の世界というのは、言ってみれば一番権力に近いということでございますから、そういう金権的な体質に対する誘惑といいますか、そういう体質が顕在化するチャンスが一番大きく、かつ多いのではないかという感じがするわけでございます。  それと同時に、こう言ってはなんでございますが、やはり政治家方々はいろいろな意味で世の中の常識というものからかなり離れがちになる立場におられる。こういう理由によりまして社会のゆがみが政治というものの中に一番極端にあらわれる、それが今回の政治の腐敗と言われるところにもあらわれてきているんではないかと思います。  ですから、そういう意味で、私が申し述べました政治改革の基本的姿勢はもちろん大切なんですが、さらにその上に、特に政界においていろいろな腐敗に対してきちっとこの際けじめをおつけになる、ないしは政界独自の今後のいろいろな改革をなさるということは、これまた大変重要なことだと思います。そういう方向で今、政治の内外におきましていろいろな意見が出され、いろいろな検討がなされていると思います。私はそれのすべてにもちろん触れることはできませんけれども、特に三点だけここで政界におけるといいますか、政界にかかわった政治改革の具体的なことに触れさせていただきたいと思います。  第一点は、やはり何と申しましても、政治の根幹でございますお金のかからない選挙制度と、それからやはり議会制民主主義の本質を取り戻すという点でございます。お金のかからない選挙制度につきましては、これはいろいろなことが現在検討されていると思いますが、政策で選挙を争う、サービス合戦ではなくやはり政策論争で選挙民が一票を投じる、そういうことが非常に選挙にとって本質的なことは今さら言うまでもございませんし、それからやはり国民の一人一人が同じ重みの一票を持つということも、これはもちろん必要なことであると思います。そういう意味で、定数是正の問題とか選挙区制度の問題、こういうことがこれから政治の中でいろいろ検討されるべきだと思います。  そしてさらに、選挙で選ばれて出てこられた方々の議員活動についてでございますが、私はぜひお願い申し上げたいのは、ぜひ議員でおられる政治家方々は議員活動の本拠を国会の審議の場に置いていただきたいと思います。国会の審議の場でことごとく意見を尽くす。それも単に政府委員に対して議員が質問するという形ではなくて、議員と議員、政党と政党の間でとことん審議の場で議論が尽くされる、これがどうも必ずしも十分に働いていないのではないか。私どもが一国民として外で見ておりますと、国会でのかなりのエネルギーが審議のための手続、そして審議の結果、結論についてのみ多く費やされている気がいたします。これでは国民が、代表した議員に対して、そして国会に対して、信頼感を置くことは難しいのではないかと思います。  そういう意味で、私は第一点としては、やはり本来のあるべき選挙制度、そして議会民主主義の本質をきちっと取り戻していただきたいというのを申し上げたいと思います。  それから第二点目は、今回のリクルートの問題ないしは政治の腐敗、金権政治と言われる今回の現象に絡みまして、かなり議員の方々の活動について規制を加えるような風潮があるように思われます。私は、このことについては余り規制を多くすることはよくないのではないかと思うんです。議員活動そのものについて規制を多くしますことは、かえって裏道を繁栄させることになるように思います。  したがいまして、いろいろ不都合なことはございましょうが、それは最低限の規制にとどめ、できれば規制じゃなくて、むしろおやりになっていること、例えば資金をどうお集めになっているか、ないしはそれをどうお使いになっているか、これをガラス張りにしていただくことが必要じゃないかと思います。要するにいろいろなことを公開していただく、議員の方々がこうやってやっておられる、それを広く知らせていただくことが、私はある意味では一つの拘束になって議員活動を適正なものにすると思うんです。それを、やたらと規制規制と手も足も出なくなるようにすることは、私はかえってやみの中にいろんな活動を葬ることになるような気がいたします。  それと同時に、私はこういう場だから申し上げるわけではございませんが、議員の方々の適正な活動というのはどのくらい費用を要するものかということをこの際一度きちんと洗い直されて、私はやっぱりある程度公的にきちんと議員の方々の活動を支持する必要があると思います。今は議員の方々が実際に活動されるのに要している費用と、それからこれを公的にサポートしている費用とは余りにも差があり過ぎるんではないかと思います。そういう点で、もう一度この点の見直しがされることを期待いたしたいと思います。  そして最後に、単に政治家方々に御注文申し上げるばかりではなくて、私どもが選挙民としてこれからの政治改革に最も協力しやすく、かつ一番協力しなければいけないのは、今までもいろいろ言われておりますが、政治家方々から冠婚葬祭等に関して金銭を受け取るという悪習を直すことではないかと思います。そういう意味で、これについてはいろいろな規制も幾分は既にございますし、これからもそういう規制をすることが考えられているようでございますけれども、私はこの点については例外なしに厳しい規制をすべきだと思うんです。といいますのは、相手が不特定多数でございますから、例外など設けますと決してきちっと規制が行き届かないと思います。  そういう意味で、ちょっと極端かもしれませんけれども、国会先生方からは、ごく身近な近親者といいますか、何親等かまでの親族を除きましては一切冠婚葬祭その他の場合においてもお金などをいただかない、出した方もいただいた方も罰則を受ける、このくらいのことを私はやってもおかしくないんではないか。このくらいしなければ、日本の社会のもうああいう昔から続いた金銭のやりとりの悪習というのは直っていかないように思います。  以上、私は申し上げましたけれども、特に最後の点につきましては、国会議員の先生方は選挙民から選ばれた方でございますので、一種の名誉職として地元でおつき合いをなさって構わないのではないかと思うんです。ですから、何も金銭を使わなくても先生が何かの会においでくださった、または何かの会にお言葉をくださったというだけで、もういただいた方は名誉に思う。そういうような慣習ができてこそ、初めて私は議員の方が本来の議員の姿を取り戻すんではなかろうかと思います。  今まで私は、最初政治改革に絡んで社会の根本にございますいろいろなゆがみを直すことが政治改革の基本的な問題だということをまず申し上げました。ですけれども、それだけではもちろん事足りません。やはり必要なけじめ、必要な政治の中における改革は、これからどしどし進められるべきだと思います。そういう意味で、私は三点ほど私なりの私見を申し述べました。  そして最後に、これはどのくらい実行できるかどうか自信がないものですから今の三点の中では申し上げなかったんですが、まだ少々持ち時間がありますので、あえて一言だけつけ加えさせていただきますならば、先ほど国会先生方に、議会の中で、審議の場で本来の活動をしていただきたい、審議をもっともっと充実していただきたいということをお願いしたんですが、でき得れば国民の前にテレビやラジオでもっともっと国会の審議の状況を伝えるようなそういう方策がとれないものでしょうか。私は外国に住んだことがありますけれども、それから外国に住んだ方々からいろいろ聞いたことがありますけれども、諸外国ではもっともっとつぶさに国会の模様が、報道機関、特にテレビ、ラジオを通じて国民の前に知らされているようでございます。ふと私の選んだ先生が今どんなことを国会で言っておられるであろうか、どんな議論をしておられるであろうかと思うときに、チャンネルを回せばそれをいながらにして見られるとまではなかなかいかないかもしれませんが、それに近いような体制をぜひこの際御検討いただきたいと思うんです。これはお金のかかることでもございますし、なかなか難しいことだと思いますが、あえてそれを承知で政治改革の一助として御提案申す次第でございます。  大した意見も申し上げられませんでしたけれども、率直に申し述べたつもりでございます。ちょうど私の持ち時間もなくなりますので、これで陳述を終わらせていただきます。  御清聴大変ありがとうございました。
  78. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  次に、国際経済・金融につきまして加藤公述人にお願いいたします。加藤隆司君。
  79. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) ただいま御紹介にあずかりました加藤でございます。国際経済・金融ということで、平成元年予算案の審議に関係いたしまして参議院予算委員会で公述をさしていただきます機会を得ましたことを大変光栄に思っております。  三点申し上げてみたいと思うわけでございますが、一つは、八九年の世界経済、関連しまして日本経済の問題。二番目が、八〇年代に入りまして世界経済に五つの不均衡があるわけでございますが、もうあと一年もしないで八〇年代が終わるわけでございますけれども、その問題。それから、ちょうどニューヨークの株価の大暴落がありました年に米ソの話し合いが始まったわけでございますが、新しい流れが五つまた起こってきておると思うわけでございますが、このようなこと。その三点につきまして申し上げてみたいと思います。  それで八九年の世界経済でございますが、七〇年代のオイルショックの後レーガン大統領が出てまいりまして、八二年あたりから各国景気が回復してまいったわけでございますが、八八年はようやく世界全体が大変恵まれた状況になりました。GNPで申しますと、各国とも大体四%ぐらいの実質成長があった。そして、貿易の方でも物量的に九%を超えるような伸びがあったわけでございます。主としてその要因になりましたのは、各国いずれもそうでございますが、設備投資が非常に伸びた。その上に立ちまして、本年の世界経済は引き続き大変好調でございます。四%の成長率が四分の一落ちたところ、まあ大体三%ぐらいの成長率を続けるであろうと、非常に恵まれた状況にございます。  あえて問題点を申しますと、三点ございます。一つは、アメリカを中心とする国際収支あるいは貿易収支の不均衡がだんだんと縮小してまいったわけでございますが、本年はまた拡大に転ずる気配が出てきておる。それから第二点が、昨年まではおおむね物価が安定していたわけでございますが、いずれも主要国物価が上昇を始めておる。成長率で申しますと昨年が四%で本年が三%でございますが、物価率は目下のところこれが逆になっておりまして、昨年は三%ぐらいであったのが本年は四%を超えてきておる。第三点が、ドルのレートをめぐりまして、変動制に入りましてから十五年ほどたつわけでございますけれども、その間いろいろなことがありましたが、どうも昨年の後半ぐらいからドルがまた強くなってきておる。  この三つの現象が出てきたわけでございますが、第一点の貿易のアンパラの縮小がまた拡大に転じたという問題、これで世界貿易に対してアメリカのいろいろな管理貿易的な考え方が出てきておる。これは世界経済にとって非常に厄介な問題になる。それから第二点のインフレーションの問題でございますが、日本の例で申しますと、円高で、石油の価格が下がって、金利が下がったという三つの要素があったわけでございますが、それが皆逆の方向に動き出しておる。アメリカの例で申しますと、インフレを抑えるために金利を上げますと株価に効いてくる、あるいは累積債務国の負担増になる。それからドルが余り強くなりますと、アメリカの貿易の赤字の縮小が鈍る。そして、管理貿易的な考え方が強く出てくる。そういうような問題の原因になるわけでございます。  それから日本経済の角度から見ますと、例えば昨今の新聞で一ページを飾っているテーマで申しますと、一つは円が弱くなってきているという問題、もう一つはスーパー三〇一条だとか二二七七条の電気通信条項とか、どうもアメリカがまた厄介なことを次から次にと言っておるというようなこと、あるいは公定歩合がきようにでも上がるのか、あしたにでも上がるのかというような議論、こういうようなテーマが国際経済・金融に関しまして私どもの目に大きく映るわけでございますが、先ほど申しました世界経済全体の三点の問題との絡み合いが全部あるわけでございます。  日本の経済は一九八六年、昭和六十一年の十一月から拡大局面に入っておりまして、三十カ月拡大局面が続いております。一番の問題は、これがいつまで続くかということに最大の関心があるわけでございますが、それにしましても、家計部門で申しますと有効求人倍率がもう一を上回っておる。地域によって低いところもございますが、一を上回っている。企業部門は、ことしの三月は前年同期比で利益が二割ふえておる。来年の三月も一割ぐらいふえるだろう。政府の部門で申しますと、中央政府の税収は恐るべくうんと入っておる。昨年のごときは、租税弾性値が三になっておる。  こういう三点から見まして、大変日本の経済がうまくいっているということなんですが、さて、これがどういう要因でぐあいが悪くなるのかといいますと、過去の経験によりますと、一つは外からのインパクトでございます。これは石油ショックの例もある、あるいはニクソンショックの例もある。今回の場合は、恐らく貿易摩擦に絡む外からのインパクトだろうと思うわけです。もう一つは、インフレーションになりますとどうも景気が悪くなる。今回、例えば明日卸売物価の四月が出るわけでございますけれども、かなり今までのレベルから見れば高いんじゃないのかと。国際経済との絡みで、そういうような問題が日本経済にどうしても関連して出てこざるを得ない。  二番目の問題でございますが、八一年からレーガン大統領になったわけでございますけれども、世界経済に五つのアンバランスがありまして、それがあるものは大きくなりあるものは弱くなっているわけでございますが、引き続き続いておる。  一つは、重複するようなことになりますけれども、アメリカと日本とかドイツとか韓国、カナダの間の貿易のアンバランスでございます。昨年までだんだんと縮んでまいったわけですが、本年はそれが拡大傾向にある。一番問題は、このアメリカの貿易の赤字が積み上がりまして幾らになっていくのか。例えば昨年の十二月で見ますと、日本の対外黒字とアメリカの対外純負債と両方足しますと恐らく一兆ドルになる。アメリカの対外負債は、一九九〇年ぐらいには一兆ドル近くになるというような計算がございます。金利払いが現在の八%で見ても八百億ドルぐらい要るようになるんじゃないか。この一番目の問題が一番厄介な問題だろうと思います。せっかくよくなったのがまた再び悪化に向かっておる。  二番目の問題が、アメリカ経済に内在する連邦財政赤字の問題と貿易の経常収支赤字の問題でございます。  ようやく財政赤字が減り出したわけでございます。本年の九月までは千六百三十三億ドルというような数字になっておりますが、恐らくキャピタルゲインの課税関係で百億ドルから二百億ドル税収がふえるだろう、千六百億ドルまで行かないだろうということになっております。現在、議会で審議されております本年の十月からの財政赤字でございますけれども、目下のところは国有財産を売り払って九百九十億ドル台だというんですが、議会の予算局は千三百億ドルぐらいになるんじゃないかと。しかし、GNPの対比で見ますと、経常赤字の方も財政赤字の方も徐々に減りつつあります。そうしてアメリカ経済は、全体としてハードランディングとソフトランディングとどっちかわからぬという三つのタイプでことしの前半は言われていたわけですけれども、今やソフトランディングになるだろうと。ソフトランディングというのは、成長率の軌道が二・五から三のところへだんだんと収れんしていって物価もおさまってくる、金利も下がってくる。それで貿易赤字の方も徐々に減り財政赤字も徐々に減るというような説が多数説になりつつありますけれども、さてどうかなという問題がある。  三番目の問題は、累積債務の問題でございます。  約一兆二千億ドルぐらいの債務がある。再三再四いろいろな対策が立てられてきたわけでございますが、何が問題であるのかということですけれども、一つは、世界経済の撹乱要因になる。二番目は、本年特に中南米で十五カ国で選挙があるわけでございます。そして調整疲れといいますか、要するにIMFや世銀から金を貸す場合に厳しい緊縮経済政策を求めるために、大衆の不満となかなか好転しないことに伴う社会不安が起こってくる。それが、たまたま本年集中的に選挙があるものですから非常に厄介な問題である。三番目は、金を貸している銀行の問題であるわけです。四番目は、アメリカが専ら輸出相手国であるという問題がある。ベーカー提案とか現在の財務長官の提案とかいろいろな案がございますが、つい二日か三日前に、ニューヨークで金を貸している国の主な銀行あるいは財政当局の二つの会合が行われたわけでございますけれども、これはパッチワークと言うわけですが、いろいろぼろきれを当てていく以外に手がない、一挙に解決はなかなかできない問題であります。  日本の経常黒字の問題でございますが、これに関連しまして、一つは、防衛費をふやすかという問題がある。ところが、これはどうもおもしろくない、外の方の意見でございますが三番目は、ODAとか経済協力をやらせるかと。これはやはり日本に市場を制覇されちゃう。そうすると、後ろ向きの累積債務に日本の黒字を引っ張り込めば比較的被害が少ないんではないか。日本はいろんな問題がありますので、進んでそういう方向に黒字を使おうとしておりますが、これもやむを得ないんではないだろうか。  それから第四点が、ヨーロッパの失業の問題でございますが、これもなかなか解決ができない。  それから第五点は、石油価格と一次産品の問題でございます。  石油価格は現在大体OPECが満足するような価格に来ておる。一次産品の問題も、世界の景気が調子がいいものですから価格が取り戻してきておりますけれども、累積債務国が一次産品供給国であるというようなことで、長い間一次産品の価格が低迷しておりました。  こういうような五つのアンバランスの結果、地域主義と保護主義が強まってきているという問題があるわけです。ところが同時に、一九八七年の十二月の米ソの首脳会談を転機にいたしまして、また違った側面で五つの動きが出てきていると思います。  一つは、平和の風が吹き出した。三十八カ所ぐらいの紛争地域があったわけですが、それぞれが快方に向かっている。最後に残った中南米の問題も、どうやら米ソでだんだんと静かな方向に動き出した。新聞紙上では、先日の中ソの首脳会談が大きく報じられておりますが、これはソ連の内部の問題、アメリカの内部の問題、ソ連とアメリカに共通する問題、そして国際環境が絡みまして、四つの要素が絡んで平和の風が吹き出した。国際経済・金融を考える場合には、どうしてもこういう潮流を無視することはできない。  二番目の問題は、前回一九二九年の株価の暴落の後、国が経済にいろんなことをやらないとうまくいかないんだというような何か考え方が世界を風摩しまして、特にアメリカの例で言いますと、ニクソン共和党政権もやはりそういう考え方でやりましたところ、レーガン大統領の小さな政府というような考え方あるいはサッチャー首相のサッチャーリズムというような考え方、そういう新たな潮流が起こってきた。  同時に、社会主義経済と資本主義経済の競争の問題があったわけですが、戦後四十年にして、どうも資本主義といいますか市場経済の方に軍配が上がったというような問題がある。  この間、ドルが非常に強かったわけでございますが、ドルのヘゲモニーの衰退という問題が起こってきた。日本から見ますと、昭和二十四年に一ドル三百六十円になったわけでございますが、昭和四十六年のニクソンショックのときに三百八円になった。昭和五十三年の十月の末に、カーター大統領のときでございますが、百七十七円になった。その後レーガン大統領が出てまいりまして、昭和六十年の二月には二百六十円になったんですが、ちょうどその年の九月のプラザ合意以降、強くなったり弱くなったりありますが、傾向的にドルが弱くなって、例えばきのうは百三十七円、本日は百三十九円を超えたんですけれども、さっきの数字を見ますと百三十八円何がしになっております。三百六十円から見れば、大げさに言えば半分にドルが弱くなってきておる。このドルが弱くなったことに象徴されるアメリカの世界における力の相対的な低下という問題がある。したがって五番目に、アメリカとしては新しい国際経済秩序を模索しようとしているわけでございます。  戦後のドルのヘゲモニーを中核とするIMF・ガット体制というのがほころんでまいりまして、ベーカー国務長官が言うには、戦後四十年間アメリカの対外政策というのはソ連の封じ込めということに絞られてきたけれども、これからは環境とか麻薬とか新しい経済秩序ということを模索するんだと。それに関連して日本封じ込めだとかそういうような議論も出てきておりまして、この行方というのは非常に難しい。現在、学者の間で議論されております五つの代替案があるわけでございます、  一つは、アメリカのヘゲモニーをもう一回回復する。二番目は、日本が中心になるのかどうか。三番目は、日本とアメリカが手をつないでやっていくのか。あるいは、フリーライダー論というのがございまして、日本の立場でございますが、現在の地域主義と保護主義を傍観しながらいくか。五番目が、多数国間の多角的な指導体制をとるのか、国際協調的にやっていくのか。この五つが言われておりますが、いずれもだめである。結局は、現状のアメリカを兄弟の中の一番上の兄貴として、兄貴にふさわしいかどうか、いろいろ振る舞いに腹が立つところが多いわけでございますけれども、そういうふうにしながらやっていく以外に手がないんじゃないのかというようなことが言われております。  時間がなくなりましたが、大体申し上げようと思っておりました三点を申し上げました。  どうも御清聴ありがとうございました。
  80. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  81. 木宮和彦

    木宮和彦君 まず、坂本、加藤両先生、大変貴重な御意見をありがとうございました。  これから私、質問させていただきますが、両先生に三点ずつお話を聞きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  まず最初に、坂本先生からお伺いをいたしたいと思います。  大変貴重な御意見で、特に根本的なひずみ、政治、経済、社会、教育、あらゆるものに、日本は今や一つの大きな基本的なひずみが来ているのではないか、私も全く同意見でございます。  戦後四十年間、日本人はやはり欧米に追いつけ追い越せということで、もうなりふり構わずやってきたのが現状だと思いますが、文化というのはなりふり構わないのでなくて、なりふり構うのが文化だとよく言われております。例えば、急須でお茶を飲むにも、かつては急須の口に自分の口をつけて飲んだものでございますが、今はそうではなくて、九谷焼か何か立派な茶わんを茶托にのせて、しかも一人じゃなくて大勢の人とお話をしながら飲むというのがやはり文化である。そういう意味で、日本人はこれからそういうことに心がけていかにやならないと私も思います。  さて、きょうは政治改革につきまして、私は当面、政治改革には政治資金改革と選挙制度改革二つの課題があると思います。今の政治の現状には三つの問題点があると思います。まず第一に、政治に金がかかり過ぎること。二番目に、与野党の役割が固定化して政権の交代が望めないということ。三つ目に、国会運営が極端に非能率で前時代的である。先ほど公述人が指摘したとおりのことでございます。  その根本はいろいろあると思いますが、まず中選挙区制にあると思われております。現行制度で当選した我々現職議員は、与野党とも本能的にこれに抵抗しております、これを変えるということに対して。特に自民党の場合には、絶対多数を目指す我々自民党は、各選挙区に数人の候補を立てます。選挙区の党の組織、自民党は県連でございますが、これらはすべて候補者に対しては、数人の候補者に対して中立的な立場でもって、そうせざるを得ない立場でございます。ですから、各候補者は党の組織とは全く関係なく自分の個人的な組織をつくらないと当選できません。その組織の維持培養に恒常的に莫大な金がかかる。これが現在の中選挙区の現状でございます。ですから、中選挙区制の場合の最大のライバルは、野党の候補者じゃなくて、同じ自民党の保守党の候補者である、極端に言えばそういうことになろうかと思います。  相手が金を使えば対抗的に使わざるを得ないし、それぞれの候補者はそれじゃどうしてやるかというと、到底自力だけでこれを調達することはできませんから、党のヘゲモニーを争う派閥の実力者に援助を頼ろうとします。中選挙区制のもとでは、実質的派閥単位の保守連合党と言えなくもないと私は思います。野党も、万年野党に甘んじておりますと、この中選挙区制はそれなりの安定した議席が確保できます。よって、与野党とも中選挙区制のもとに、口先の建前とは別に、本音では議員という名の利権を分かち合っている嫌いがありますから、これを変えようと与野党とも今しておりません。  それでは、今度は小選挙区にすれば金がかからないかというと、そうでありません。単純小選挙区でも、例えば静岡県の場合でも県会議員に一人区がございますが、その場合には自民対保守系無所属という争いが相当あります。衆議院の場合にも、現在も中選挙区でただ一つの例外として定員一名の区がございます。奄美群島区でございますが、大変熾烈な保守同士の死闘が繰り広げられておりまして、そのような選挙区が小選挙区でも私はかなりたくさん出ると思います。それにはやっぱり金が要ります。もしも比例区を加味すれば、小選挙区に二人の自民党公認候補が出馬する可能性があります。それは比例区をたくさん入れようとするからであります。また、小選挙区の場合には新人の議員を生み出しにくいという、そういう一つの弊害もございます。  小選挙区でも中選挙区でも、いずれにしても金のかかる選挙というものは民主主義のコストであり、デモクラシーの基本である競争原理の代償として仕方がないのかな、それを払うべきであるかなという私は気がしないでもないわけです。公開された選挙が金権批判の余り、デモクラシー社会に角を矯めて牛を殺すことになるかもしれない。そのバランスを公述人はまず第一にどうお考えになるか、御意見を伺いたいのが一つでございます。  二つ目は、国会議員の選挙は個人選挙じゃなくて政党選挙あるいは団体選挙に移行しなさいという御意見がございます。  政党法ができて選挙公営が拡大しますと、まず第一に、政治結社の自由を損なうおそれがございます。第二に、無所属の新人が立候補しにくくなります。第三に、遺憾なことですが、売名的にこれを悪用しようとする者が出ると思われます。公営は現実には性悪説をとらざるを得ず、ルール破りや脱法行為が横行する政治や選挙になりはしないかと思われますが、もし公営にした場合には、そういうことに対してどういう対策があるか、もしお考えがございましたらお聞きしたい。これが第二でございます。  三つ目。過去の政治資金規正法にしろ、参議院の比例代表制の導入にしましても、金のかからない政治を目途としてやったわけでございますが、現実はその意図とは反対にむしろ悪くなっているのが現状でございます。といって政治家を志す人間がいなくなったり、あるいは政治不信がこれ以上高まることは国家にとっても国民にとっても大変不幸なことだとは思います。政治家だけの責任ではなくて国民全体の責任として、今、コンピューターやテレビジョンが非常に発達している時代でございますから、直接国民投票によって選挙制度を決定したり、あるいは議会政治のシステムに取り込むことができないだろうか、これは夢物語だろうかと私はいつも考えております。そうじゃないと思うんですが、もしそういうことについて御感想がありましたらお聞かせをいただきたい。  この三つをまずお願いいたしたいと思います。
  82. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 簡単にお答えさせていただきます。  まず最初に、中選挙区制と小選挙区制のバランスでございますが、先生が極めて的確に両方の功罪をおっしゃったとおりでございまして、私もそこは判断に大変迷うところでございます。  ただ、一言だけ申し上げれば、やはり選挙は政策で争うべきでございます。そういう意味では、小選挙区制の方が本質的にまさっているところはあると思いますが、弊害は両方とも多々ある、これは先生のおっしゃるとおりでございます。  それから、二つ目の公営につきましては、私は、まだ確固たる対応策を持ち合わせておりませんので、ちょっとここでお答えするのは慎ませていただきます。  それから、最後の先生の御提案につきましては、私、大変興味深い試みだと思います。そういうことも今検討されてしかるべき世の中になっているのではないかと思います。  以上でございます。
  83. 木宮和彦

    木宮和彦君 では、坂本公述人にもう一つお伺いしますが、一番最初の政策で争えと。これはそのとおりだと思いますが、小選挙区にしても必ずしも二党が争うということにはならないじゃないか、保守同士でやったりあるいは革新同士でやったりということで、日本の場合に、それは今までよりもむしろ死に票がふえるといいますか、あるいは逆に極端になるということも考えられるので、政策をもって選挙をするための一番の要請は何だとお思いでございますか。
  84. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 明確な答えができるかどうかわかりませんが、やはり同じ意見を持つ方々が一人の候補者を立てる、これが大前提だと思います。これがあれば政策での選挙はできるのではないかと思います。ですから、それがどちらの選挙制度でより適切かという問題ではないかと思います。
  85. 木宮和彦

    木宮和彦君 ありがとうございます。  それでは、次に加藤公述人にお伺いいたします。やはりお聞きしたいことは三点ございますので、よろしくお願いいたします。  まず第一には、今もお話がございましたが、最近再び日本とアメリカの貿易摩擦が激化を始めました。USTR、アメリカ通商代表部でございますが、四月二十八日に貿易の障壁報告を出し、今月の初めには対日制裁候補五十四品目を発表し、今月の二十四日には公聴会を開くことになっているようでございます。特に自動車電話の周波数割り当て要求は、日本がこれまでMOSS協議に基づいて誠実に実行してきた以外のものであるだけに我々はこのUSTRの要求を理不尽なものとして実は聞いておるわけでございます。非常に残念でございますが、貿易摩擦が再燃してきた背景には、まず第一に、経済的には日米貿易不均衡の改善のおくれがあるからである。また、政治的にはブッシュ政権への移行があるからである。私はこのような二つが原因だと思いますが、そのほかの原因としてどういうものが考えられるか、お教えをいただきたいと思います。  それから、アメリカがこのような制裁発動についてあるいは脅迫じみた要求を日本に突きつけておりますが、日本の態度としては、これはしようがないんだというぐあいに我慢をするのか、あるいは正々堂々とガットに提訴して争うべきか、この辺もひとつ御意見を承りたい、これがまず第一点でございます。  次に、第二点。  世界経済ののどに突き刺さったとげといいますか骨といいますか、そう言われている途上国累積債務問題があります。これは依然として世界の重大関心事の一つで、先ほどのお話の中にも、触れてございました。  一九八二年にメキシコでもってこの累積債務問題が表面化して以来、一九八五年のベーカー提案を初めとしていろいろな処方せんが提案されてまいりました。昨年は日本の宮澤提案が発表されました。またことしの三月にはブレイディ米財務長官によるブレイディ提案が発表されました。現在の財務長官のこのブレイディ提案が発表されて以降、同案を中心に世界の対応が考えられていますが、問題は民間銀行による債務の圧縮でございます。我が日本の民間銀行はアメリカの銀行に比較しまして償却積立金がかなり少ないのではないか、そのためにニューマネーと呼ばれる新しい資金供与が非常に困難ではないかと私は心配しておりますが、これはどうでございますか。  それからまた、アメリカではIMFや世界銀行の債務保証が公的機関による債務の肩がわりにつながらないかという心配も出ていますが、公述人のアメリカのブレイディ提案に対する評価と、我が国の、先ほど申しました国及び民間銀行の対応はどうしたらいいのか、また公的機関の債務保証についてどう考えたらよいのか、ひとつ公述人のお考えを承りたい、これが第二点でございます。  それから最後の三点目でございますが、最近の国際経済の大きな動きといたしまして、地域統合あるいは自由貿易協定が活発になることが挙げられると思いますが、一九九二年には、御存じのようにEC統合を筆頭に、アメリカ・カナダ自由貿易協定がことしから発効するし、またアジア自由貿易圏構想もございます。それからまた、アメリカとメキシコの自由貿易圏構想など各地でもっていろんな地域主義的な動きが目立っておりますが、日本とアメリカの自由貿易協定をやろうという話もあるやに私は聞いておりますが、このような動きはかつての経済のブロック化を招くのではないかという懸念を初め、非加盟国は経済的不利益をこうむるのではないか等、私はいろんな懸念を持つわけでございます。世界貿易発展のためには自由貿易を守らなければならないが、EC統合あるいはアメリカ・カナダ自由貿易協定などは、自由貿易発展にとってプラスになるのかマイナスになるのか、その辺の御見解を承りたいのがまず第一でございます。  また、我が国はアジア自由貿易圏をつくった方がいいとお考えになるかどうか、また日本とアメリカが自由貿易協定をつくった方がいいか悪いか、先ほども申しましたが、どうお考えか、それを加藤先生にお伺いをいたしたい。  以上、三点についてよろしく御回答いただきたいと思います。
  86. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 第一点でございますが、貿易摩擦その他の原因に何があるのかという御質問でございます。  昨今言われておりますのは、貿易摩擦あるいは投資摩擦、技術摩擦、それから金融摩擦あるいは文化摩擦というようにいろんなふうに言われておりますが、全部これらは絡んでいると思うわけでございます。  最近、向こうがいろいろ言い出しましたのは、ソ連の軍事力よりも日本の経済力の方が問題であるというような認識。第二次大戦のときのいろんな議論がございますが、一つはインフォメーションに非常にギャップがある、それからお互いに相手を見るイメージにギャップがある、最後がパーセプションにギャップがある、物の考え方、とり方にギャップがある。  これをいろいろ見できますと、貿易の摩擦あるいは技術の摩擦に安全保障が絡むわけでございますが、それから投資摩擦、農地を買うというようなことについてかりかりし出したり、いろいろありとあらゆる問題が出てきた。大体四回目ぐらいだと思うんですが、一回目はニクソンショックのときでございます。二回目が福田総理の七%の機関車論、三番目が鈴木総理の末期から中曽根総理にかけて。竹下総理のこれが遂に第四回目のところで、そういう最後のところまで来たかというような感じを持っております。いろいろ絡んでおる。  とどのつまり、アメリカは赤字を減らしたいということだろうと思うんですが、それは、日本がいかにいろんなことをやっても、向こう側もいろんなことをやる必要がある。余り腹を立てないで、じっと我慢でいくしかないんじゃないかと見ております。かりかりするわけでございますが、要因は、日本が非常にアメリカ市場に依存度が高過ぎるという問題があるわけです。それじゃ第三市場、国内の市場を開拓できるかという問題がありますが、現在そういうエネルギーが国内にないと思うわけです。それで、やむなく現在の路線を続けざるを得ないんじゃないのか。  それから二番目は途上国の問題でございますが、ブレイディ構想の問題。  これは、いろいろやってみる以外に手がない。現在、ニューヨークで二つの会合があったわけでございますが、どうもうまくいきそうもないというので、途上国の債務のディスカウントの幅がまたふえているという現象がきのうあたり出てきておりますが、まあだましだましやっていく以外手がない。  日本はやはり協力するということになりますが、個別の銀行や何かの立場は株主総会もあるわけですし、そういう問題がある。それを税金でいろいろやるようなことというのは、国会の皆様がどう考えられるかという問題でありますが、私はよろしくないと思うわけでございます。そういうようなところへだんだん追い詰められていくでしょうが、やはりしようがないという表現は非常にしゃくにさわるわけですけれども、全体そういうことで、現実はそういうふうにいくんじゃないか。  第三点が地域統合の問題でございます。  やはり先ほど、冒頭申し上げましたけれども、アメリカを中心にしていろいろ地域統合の動きがある。メキシコ、イスラエル、カナダあるいはヨーロッパの九二年の問題。全体の流れがそういう方向にありますが、我が国は多角的な、自由な世界経済が一番いいわけです。  しかし、考えてみますと、自由というのは強者の論理であるという問題もある。その辺が非常に難しい問題でございます。特に具体的な御質問が、日米の自由貿易協定というような議論をどう思うかということがございましたが、先方の方で一体どういう考え方があるのか。きのう出ましたある研究機関の発表は、そういうことをやるべきじゃないと言っております。私は恐らくアメリカ側がそういうことを持ち出さないだろうと見ております。  それから、アジアの地域の問題もございます。先ほど五つのタイプのことを申し上げましたが、今度竹下総理が東南アジアに行かれたときの演説の中にありますが、日本が主導権をとって大東亜共栄圏のようなことを考え、あるいは通貨圏としての円圏の創設というようなことを、評論家的にはいろいろあり得るわけでございますが、国際政治の現実と日本の力というものから見て、そういう道はとるべきじゃないんじゃないのか。竹下総理のジャカルタの演説の中にも、開かれた緩やかな文化的、経済的、そういう多角的な親睦の集まりみたいなことをおっしゃっていたと思うわけでございますが、やはりそういうことしかないんではないのかと思うわけでございます。
  87. 千葉景子

    ○千葉景子君 両公述人には、貴重なお話を伺いまして、ありがとうございます。  私は、まず坂本公述人に、政治改革の面から二、三御質問をさせていただきたいと思います。  先ほどお話を伺いまして、大変社会の根本的な問題から、さまざまなアドバイスをいただいたわけですけれども、その中で三点の具体的なといいましょうか、御提言をいただきました。一つは、金のかからない選挙制度、それから議員活動の規制をするのではなくて、むしろ公開をして周りで監視をしていくような形をとるべきだと。それから冠婚葬祭等に絡む悪習を是正していくと、こういう御提言がございました。  この中で一つは、金のかからない選挙制度と同時に、今言われているのは、選挙のみならず日常の、いわゆる選挙の言葉などで言うと地盤培養行為というんでしょうか、そういう部分にむしろ莫大なお金がかかっているという指摘もございます。それから、それと関連してくるんだろうと思いますけれども、そういう冠婚葬祭、こういう部分へのお金が非常にかかっている。これは以前から指摘をされている部分でもございまして、これをやめようではないかというのはこれまでにも出ていたことと私も記憶しています。  そういう意味では、御指摘は私も非常によく理解できるところなんですけれども、このあたりが今後、この社会の中で大変難しい部分だと思いますけれども、いかがでしょうか。何かこれを具体的に進めていくようなよい手段とかプロセス、そういうものがもしございましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  88. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 御質問の点につきましては、私は、先ほどお答えしました以上の考えは持ち合わせてないのでございますが、先ほどおっしゃった地盤涵養資金でございますか、こういう資金がどういう形で使われているのか、どの程度使われているのか。やっぱりこれは、さっきのガラス張りの話につながってくることでございますし、それに絡んだお金のやりとりは、全部規制するというのは無理だと思うんです。  ただ、冠婚葬祭のような対個人の何かの儀式、何かの会合に関するものは比較的捕捉しやすいといいますか、はっきりわかりますので、これはさっき申し上げましたように、ちょっと極端かもしれませんが、特別の親族関係などの結婚式、そういうものを除いては一切出す方もいただく方も罰則つきの禁止、これしかないように思います。  以上でございます。
  89. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういう厳しい手段を用いないとなかなかこの部分是正が難かしいような気もいたしますけれども、やはりこれから検討すべきところだと思うんです。  ところで、今回のリクルート問題、こういうのに絡みまして、政治のあり方あるいは政治資金のあり方というのが非常に問われるようになり、今、再検討が求められているときだというふうに思うんですね。今回もいろいろなお話がありまして、一体政治資金なのか個人にいただいたお金なのかよくわからない。あるいはそれが政治に使われるお金なのか、通常の経済取引と言葉で言われましたけれども、そういうものなのか、あいまいとしている。こういう中でさまざまな問題が起こっていると思うんですけれども、そういう意味では、これからやはり政治資金のあり方を是正していくということが私は必要ではないかというふうに思います。  そういう中で、やはり政治に使われるお金と私的資産として積み重ねられていくものをはっきりと区別していく。そして政治資金の面では公開をして、一定の枠をきちっと決めて、その中でお互いに平等な政治活動を行っていく。そして私的資産がそこでたまっていくようであれば、それはきちっと公開をしていく、こういうことも必要であろうかというふうに思います。  それから、お金を献金するというだけではなくて、今回は末公開の株式というような形で献金が行われる。なかなかこういう部分は、今の法律の中では規制が困難なわけですけれども、こういう献金のやり方、こういう部分にも一定の基準を設けていくべきではなかろうかと思うんですね。こういう意味では、未公開の株式ばかりではなくて、高価な品であるとか、あるいはちょっとちらっと出てきましたけれども、さまざまな施設などの無料提供であるとか、そういう部分も含めて基準をこしらえていく必要があるのではないか。  それから、これも非常に話題になっておりますけれども、パーティーですね。これも個人や任意団体というような形で逃れている部分もありますし、これをやはり何らかの形で明確にしていくということもあろうかというふうに思います。  それから、献金というものについては、やはり中心としては民主主義の基礎ということになろうかと思いますが、だれもがみずから政治に対して国民全体が責任を持っていくというような部分で、むしろ今度は個人献金をやりやすくしていくということも必要じゃないかと思うんですね。  こういうことも含めまして、そして、先ほどのお金のかからない選挙あるいは地盤培養にお金がかからないようにしていくというようなことも含めて、政治資金のための規制を、現在も政治資金の規正法がございますけれども、よりわかりやすい明確なものにしていく、こういう必要があるのではないかと私なども考えているところです。  今、何点かちょっと具体的な例を引きながら私の意見を述べさせていただきましたけれども、こういう面についてどんなお考えをお持ちでしょうか。市民のお一人という最初のごあいさつもございましたので、国民の目から見てもどんなふうにこういう面を考えていらっしゃるか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  90. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 御指摘の点、どれももっともだと思います。私も賛成でございます。  ただ、最後の個人の献金でございますが、私もそれが理想だと思います。ただ、残念ながら私どもの社会は、これだけの大国になりながら、その大国の豊かさと個人の豊かさに余りにもアンバランスがあるのではないかと思います。例えば経済人でも、本当に自分の費用でいろいろなことができる人がどのくらいいるかということになりますと、やはり今、企業というものが社会の中に大変な経済力を持っている社会だということがあります。そういう意味でこのままで個人的献金に移せるのかどうか、そこは私もちょっと疑問を持ちますけれども、最終目標としては、そして理想としてはおっしゃるとおりではないかと思います。  それ以外の点につきましては、全面的に賛意を表させていただきます。  以上でございます。
  91. 千葉景子

    ○千葉景子君 それからもう一点お聞きをしたいというふうに思っているんです。  これは、きょう加藤公述人には国際経済と国際金融という面で公述をしていただいたんですけれども、そういう国際的な面からも政治改革という面と共通な面があろうかと思いますので、御両人にこれはお尋ねしたいと思いますけれども、ひとつインサイダー取引の問題について御意見を伺わせていただきたいというふうに思います。  このリクルート問題に絡みましても、やはりインサイダー取引規制強化の動きというのは、これは世界的にも証券市場が一体化してきているということも関連して世界的な潮流だというふうにも考えます。我が国でも昨年の五月に証券取引法が改正をされまして、ことしの四月から全面的に実施をされているわけですけれども、やはり証券市場に対する一般投資家の信頼を確保していく市場経済からいっても、これは当然必要なことであろうかというふうに思います。  それから、個人が個別の情報によって利益を追求していくということを防止する意味でも、このインサイダー取引の規制というのは今後さらに必要なことではないかというふうに思うんですね。証券取引法の改正によりましても、諸外国等に比べまして我が国の規制というのは、規制の対象あるいはその内容等からいっても、まだまだ不十分な面があるのではないか。とりわけアメリカのSECのような制度、こういうものの導入などによってより開かれた市場、それから個人的な利益追求に走らないような防止策、こういうことも必要ではないかというふうに思うんですけれども、こういう点について、今回たまたま政治改革といいますか、その問題が発生したもとにこういう問題が出てきたということも含め、それから世界的なこれからの日本の市場開放、あるいは世界的な経済の中の日本という面から、坂本公述人と加藤公述人、それぞれのお立場から御意見を伺わせていただきたいと思います。
  92. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 私は、制度のことについてはきょう専門家としてお答えをする立場にございませんので、一言だけ申し上げますと、やはりインサイダー取引の問題は、政治家方々、非常に高度な情報を持っていらっしゃる方々に関しても厳しく対処すべき問題だと思います。  そういう意味で、今回の政治改革の中で株の売買その他でございますね、そういうことにも触れられている議論がなされているのは大変もっともなことだと考えております。  以上でございます。
  93. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 今お話がございましたように、非常に重要な問題でございまして、国際的にもそろえていくというような傾向があります。  見ておりますと、アメリカが一番進んでいるわけでございまして、そういう意味では、日本がおくれているといいましても、アメリカ以外の国に比べまして遜色がないと思います。これが政治資金の方にいろいろ使われるというのはおかしいわけでございまして、今度の四月一日からのことで少なくともそういう点がいろいろ配慮されていく。  問題は、ケース、ケースを結局積み上げていく以外に手はないだろうと思います。アメリカのSECの場合もそうでございまして、法律の条文の解釈、具体的なケースが出てそれでやっていくというようなことだろうと思いますが、非常に前進をしたんだろうと思います。  大事な御指摘だろうと思います。
  94. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは、加藤公述人にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  先ほど三つの御指摘がありまして、今新しい流れが起こっている、そういうお話がございました。そういう中で、中南米などのさまざまな紛争の解決、それから米ソの新しい流れ、こういう平和の風も吹いている、こういうことについては無視できないところだというお話もございました。今後、さきの中ソの首脳会談等も行われているというようなことも含めながら、日本の経済、予算等を見ておりますと、こういう動きについて長期的な展望を持ちながら、例えば日本とアジアにおける軍事力の削減、こういうものについての何か積極的な取り組み、こういう部分の芽がなかなか見られないというようなこともあります。  そういう意味では、経済の面だけではなくて、こういう部分にも目を向けていくという必要があろうかというふうに思うんですけれども、この点についてはどんなふうな御意見をお持ちでしょうか。
  95. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 私は、若干お話しのようなことについてはむしろやり過ぎているような感じを持つわけでございます。  先般の世論調査、あれは内閣でやったのか新聞社でやったのかは知りませんが、経済協力をもっとやるべしということについてどう思うかというのが出ておりましたが、余りやり過ぎているんじゃないかというパーセントがかなり高かったように見受けられます。問題は、本当に相手国の一般の国民の人にプラスになるようなやり方をやっていないんじゃないのかということを国民が思う。  現在、財政投融資等を一般会計でやっているわけですが、私はもう財政投融資をやめて全部税金のお金でやったらどうかと思うわけです。そうしますと、非常につらいわけですから国民がそういうものをよく監視するようになる。現在、日本の援助というのは本当に大丈夫かと思うぐらいどんどんふえているわけです。国民の関心はもうそれに向いていないわけです。ですから、税金の金でこれだけのことをやりますと、もっと国の中にやることがあるんじゃないかということは当然国民が考えるようになると思います。  やり方の問題だろうと思いますが、本当に相手国のみんなのためになるようなことができるのかどうか、若干後ろ向きかもわかりませんが、私はそんなふうに見ております。
  96. 千葉景子

    ○千葉景子君 今の御意見は私も同感なところがございます。どのような協力がされているのか、それが相手国で本当にそこの国民に役に立っているのか、こういうことがなかなか見えにくい、国民の目に見えない、こういうことが今指摘をされているところなんです。  今お話がございました、今後もう少しこういう経済協力の部分にわかりやすく、あるいはだれの目にもわかるようにするためには、その部分を何か公開をしていくとか、あるいはそこに基本的な仕組みをつくっていくとか、そういうことが必要なのではないかということも今指摘をされているところなんですが、そのあたりは御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  97. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 一番基本的なことは、やはり税金でやりますとみんなが気にするようになると思います。財政投融資の金は結局は借金の金なんでございますつかつては半々でやっていたわけですが、現在は二、一ぐらいの割合になっております。借金の方が二で、一般会計が一というような感じですが、本当は全部税金の金でやる、そうするとみんながどうかというふうに気にするようになると思います。  そのほか執行関係が、これだけの金を現在の四省庁体制でできるかどうかとかいろんな議論がございますが、結局いろんなことをやってみても、いい面もあれば悪い面もあるというようなことになって、やはり財政民主主義の立場からいえば国会が目を光らせる、要するに納税者が目を光らせるためには税金の金でできるだけやっていく。そうしますと、今、問題になっております。ただの金の割合が日本は低いというような問題もあわせて解消されるというようなふうに思います。
  98. 広中和歌子

    広中和歌子君 お二方のお話を大変興味深く、そして心して伺いました。  最初に、坂本公述人に御意見をお伺いいたします。  確かに今よく言われておりますのは、政治が揺らいでも経済は安泰である、それが証拠にちっとも株価は下がらないではないか、それから経済大国政治小国、むしろそれで国がうまくいっているんだという意見があります。さらには、だれが政権をとっても官僚がいる限り日本は心配ないんだと。政治に身を置いて三年になりますけれども、こういうことを聞きまして本当に恥ずかしく思っております。  しかしながら一方で、このような政治家の悪口を言うということは、同時に天につばをするようで、国民には自分にはね返ってくる。つまり選んだのは国民なんでございます。冠婚葬祭で非常にお金がかかるというふうに言われましたけれども、かかるのはお金だけではなくて時間もでございます。私は本当の意味での政治活動に時間を使うべきだと思いますけれども、大部分の方、私の場合はたまたま比例代表で選ばれましたので恵まれておりますけれども、ほかの政治家を見ておりまして批判する気になれない、そういうような状況がございます。  まず、それについてコメントしていただきたいと思います。
  99. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) おっしゃる御指摘は私ももっともだと思います。時間的にも大変な時間を費やしておられる、これは私も目の当たりに見ております。
  100. 広中和歌子

    広中和歌子君 坂本さんは元通産省官僚でいらしたということを伺いましたけれども、日本の官僚と特に現在の自民党、長年の三十年間政権政党であった自民党の結びつきというもの、非常に強力なものがあり、野党の側といたしましては本当に情けないような気がすることがよくあるんでございますけれども、官僚のお立場を離れられて、今、官僚の力そして政治との結びつきというものをどのように考えていらっしゃるか、コメントしていただきたいと思います。
  101. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 私は、長いこと公務員をいたしておりまして、みずから官僚の力が強いとか官僚が立派だとか、そんなことは全く言うつもりはございませんが、ただ、組織としてかなり独立性を持った組織であったことは大変いいことだったと思っております。  ただ、最近むしろそれが崩れているんではないかという心配が国家公務員の内外にあるように私感じております。ですから、それはやはりそれぞれの分野分野の独立性というのはきちんと保っていくことがよろしいと考えております。
  102. 広中和歌子

    広中和歌子君 これは、イギリスもサッチャー政権がもう十年近く続いておりますから、イギリスの場合も当てはまるかどうかわかりませんけれども、同じ政党政治のイギリスと日本との比較においては、日本の場合には、自民党の長期政権によって官僚の中立性が失われていると、官僚は本来中立であるべきだというようなことが言われているわけですけれども、そういう中でまさに野党が頑張らなければならないんじゃないかと本当に思います。  それから、サイレントマジョリティー、国民の声がもっと政治に反映されるべきだと思います。しかし実際にはノイジーマイノリティー、少数であっても大きな声を出す特定の団体企業、そういったものの声が反映されるわけですけれども、どういう形で個人の声が政治に反映されるようになるとお考えでしょうか、何か方法があればおっしゃっていただきたい。
  103. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) まずは基本的には選挙だと思います。やはり選挙で国民が意思表示をきっちりするということだと思いますが、それ以外は、やはり今の地元での政治家の御活躍が、きつきおっしゃったように、冠婚葬祭に出席するとかそういうことに非常に時間をとられている。  ただ最近は、若い議員、若いと申し上げますとここにおられる方を差別するようなことになって大変恐縮でございますが、そういう意味ではございません。年齢が若いだけではなくて精神的に若い方も含めさせていただきますが、若い国会議員の方々はそういうことを反省されて大変いろんな勉強会を持っておられます。私などもいろんな先生から率直な意見を聞かれる機会を得ております。  だんだんに、そういうことでもっともっと高い政治活動ということへ今脱皮しつつある芽は確かにあるんではないかと思います。  以上でございます。
  104. 広中和歌子

    広中和歌子君 それで、政策で争うということをおっしゃいましたけれども、その際、党議党則に拘束される現在の制度についてどう思われますか。むしろ党議党則に拘束されないような方法がとられるべきではないかと思いますけれども、それについてコメントしていただきたいと思います。
  105. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 多分それはアメリカのことを頭に置いて言っていらっしゃるんだと思うのですけれども、日本の社会の派閥、アメリカにも派閥があるそうでございますが、アメリカはテーマごとの派閥が多いようでございまして、その辺の政治体質が違いますので、おっしゃったことは私、党議党則に拘束されることがいいとは申しませんけれども、今即座にそれをどういうふうに変えたらいいかということにつきましては、余りにも体質が違い過ぎますので、ちょっとここでお答えするすべを持ち合わせておりません。
  106. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  次に、加藤公述人にお伺いいたします。  世界の自由主義経済はアメリカを中心として動いてきたわけでけれども、アメリカの経済のリーダーとしての牽引力というのが弱ってきた。三つの赤字、貿易、財政そして個人の赤字があり、非常にアメリカは困っている、それが日本に対する貿易圧力となってあらわれているというふうに言われているわけです。  たまたま私は、最近ミッドウエストの方に行きましてある経済学者としゃべったんですけれども、貿易赤字も大したことないって言うのですね。つまり、今、アメリカは戦後第二の投資ブームである。日本とかそのほかの国々がつくった黒字、それをどこかで使わなきゃならないので、それをアメリカで投資してくれているから大変結構だと。それから財政赤字に関しましても、連邦議会のレベルでは赤字であるけれども、それぞれの州レベル、ステートレベル、ローカルレベルでは五百億ドルといいましたかしら、黒字である。そして雇用レベルは、失業率は低いし、そしてインフレもない。そして個人の消費レベルも四%、最近ちょっとふえて六%と言われますけれども、日本的な計算をするとその倍になる。  ですから、日本と大して変わらないのだという見方があるのですが、それについてちょっとコメントしていただけますか。
  107. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 昨年の大統領選挙のときに、レーガン大統領がニューオーリンズで、いろいろ言うけれども七年間に千六百万雇用がふえている、そして物価がその間二十数%しか上がってないと、非常に自分の治政を謳歌したわけでございます。現実に、ニューヨークやなんかに参りますればみんなハッピーでいいわけでございますね。それは確かにそうだと思います。日本でいろいろ識者がアメリカの貯蓄を超えて生活をやっているとか、稼ぎを超えて生活をやっているとかいろいろ言いますが、一面では今のレーガン大統領の言ったようなことは真実だと思います。  ただ、最後の一点、問題は、外国に対する借金がだんだんふえてくる。ふえてもいいわけでございますが、結局金利を払わなきゃならない。最後に踏み倒すのかどうかというような問題はありますが、そこが唯一問題になるのだろうと思います。  これからアメリカの場合は立ち直るだろうと思います。いろいろな、ポール・ケネディの「大国の興亡」等々が出ておりますが、アメリカは大陸性の国家で、今までの覇権国家の中では多民族の国家でございますし、柔軟性が非常にある。初めて立ち直る大国というのがあり得るかもわかりません。  先ほど第一に、五つのタイプを申し上げましたが、アメリカのマークツーと言っておりますけれども、第二段階のヘゲモニー国家論というのがあるわけでございます。それならばこっちに余りいろいろくだらぬことを言ってこなければいいのですが、やはり借金がどんどんふえていくということは唯一気になっているだろうと思います。
  108. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本は、経済大国になっても結局はアメリカの肩がわりはできないわけで、アメリカを守り立てなくちゃならないということは事実だろうと思います。  日本が内需拡大をし、アメリカからの輸入を直接ふやすよりも、むしろ海外に、発展途上国などにODAでどんどん援助する、例えばマーシャル・プランなんかは、一時アメリカではGNPの二%まで使ったそうでございますけれども、日本も今〇・三%のレベルから少なくとも一%ぐらいに大幅にふやしていく、それが結局はアメリカに資することになるのだ、直接、輸入してあげることの三倍から四倍の経済効果があるということを、たまたまきのう勉強会に出まして、ユニセフのミスター・グラントという方が言ってらしたんですけれども、それに同意なさいますか、ちょっとお伺いいたします。
  109. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 私は若干、先ほども申し上げたのですが、違った意見でございまして、例えば日本の防衛力をやれやれと言ったのですが、だんだん怖くなってきておるわけでございますね。それからODAもやれやれと言ったわけですが、結局市場を制覇されちゃうと。したがって、累積債務のような後ろ向きに日本の黒字を引きずり込もうかというふうに見ております。それでは日本はやらないのかというと、そうもまいらない。  本当は、国内の市場をもっと拡大する、あるいは第三国市場を開拓する。ところが、日本の国内にそういうエネルギーはないと思うわけです。やむなくアメリカと手を結びながら、我慢に我慢を重ねながらやっていく以外に手がない。したがって、ODAもやったらいいと思いますが、もう一つ別のコースがありますけれども、これは理想論であってできない。  したがって、いろいろなそういうお金を振りまくやり方もやむを得ないんじゃないか。本当はもっと違った行き方があると思いますが。
  110. 諫山博

    ○諫山博君 坂本公述人にお伺いします。  リクルート事件から酌み取るべき最大の教訓は、企業団体政治献金はやめようということだろうと思うのです。  自民党の中枢的な幹部、竹下首相も含めてですけれども、リクルート関係の会社から億単位のお金や株を受け取る。こうなりますと、幾ら公正無私であろうと思ってもなかなかそうはいかないと思います。三木武夫さんがかつて、企業からお金を受け取ると企業のひもつきになりやすいと言われたそうですけれども、これは正当だと思うのです。  今、各党でいわゆる政治改革が論議されていますけれども、自民党の討議内容を見ましても、社公民連四党の共同の政策を見ましても、企業団体政治献金を直ちにやめようではないかという方向は出ていません。これでは金権腐敗政治の根本的な解決にはならないと私は考えております。  坂本公述人のさっきの説明で、個人献金一本にするのは理想だけれども、個人と会社は経済力の違いが大き過ぎる、簡単に個人の献金一本にするのは無理ではないかと言われました。私は、問題は経済力が大きいか小さいかではなくて、個人と企業団体には根本的な性格の違いがあると思うのです。個人というのは、政治活動の自由、思想、信条の自由、参政権が保障された主体です。株式会社は営利を目的とした法人です。そうなりますと、株式会社の政治献金、寄附、これがどうしても自分の営利目的と結びつくことは避けられないと思うのです。  私は共産党ですけれども、金権政治の根本的な解決のためには企業団体政治献金は直ちに禁止しようではないか、政治献金は政党や政治家を支持する個人の浄財に限るべきではなかろうか、この問題が私たちはリクルート事件から酌み取るべき非常に大きな教訓だろうと思います。個人の浄財に政治献金を限るというのは、遠い将来の目標ではなくて、やろうと思えばすぐできることではなかろうか。  この点について、坂本公述人の御意見を聞きたいと思います。
  111. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 確かに今おっしゃいましたとおり、私は先ほど、経済的な大きさ、どのくらい政治を支持する力があるかということで申し上げましたけれども、もう一つ今の御質問についてあえてお答えいたしますならば、やはり私は、企業にも営利を追求する株式会社としての役目だけではなくて、やはり公的な役割があると思います。ですから、そういう企業団体が公的な役割をある一定限度、それはあくまでも公的な役割、私的な利用じゃなくて企業の公的使命を果たす範囲内であるならば、私は一概にいけないとは言えないと思います。  以上でございます。
  112. 諫山博

    ○諫山博君 この点では、基本的な点で意見が一致しなかったことが残念ですけれども、次に小選挙区制問題に移ります。  選挙というのは政策で争うべきものだ、そのためには小選挙区制の方がいいのではないかという発言がありましたけれども、選挙を政策で争うべきものだという点では全く同感です。しかし、それは比例代表選挙であろうと中選挙区制であろうと小選挙区制であろうと同じことだと思うんです。私は小選挙区制に反対ですけれども、小選挙区制の非常に大きな弱点は、得票率と議席の占有率に非常に隔たりがあるということです。自民党のお方の質問にもありましたけれども、小選挙区制では死に票が出るという指摘がありましたが、まさにそのとおりだと思います。極端な場合を考えますと、五一%の票をとれば当選する、四九%の票は死んでしまう、こういうことになるわけです。  かつて田中内閣のころ、比例代表制を加味した小選挙区制が準備されたことがあります。あのときに赤旗が、当時の政治状況で試算すればどういうことになるかという計算を発表しました。自民党のことを出して悪いですけれども、自民党は四〇%台の得票で八〇%の議席を占めることができる、こういう結果になりました。同じような試算を朝日新聞も行いましたけれども、やはり結果は同じです。つまり、膨大な死に票が出るという問題もありますけれども、国民の声がそのまま議席に反映してこない、これが小選挙区制の宿命的な欠陥だと思います。  その点でいけば、例えば参議院の比例代表選挙では四〇%の票をとれば四〇%の議席を占める、二〇%の票をとれば二〇%の議席を占める。選挙区という点から見れば、これが一番大事なことだし、議会制民主主義の根本ではなかろうかと思いますけれども、御意見を聞きたいと思います。
  113. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 先ほどは基本的な点で相入れなくて申しわけないと思ったんですが、今回は基本的な点で相入れまして大変うれしく存じます。  ただ、今、小選挙区制の問題をおっしゃいまして、五一%とればよくて四九%ではだめだというお話があったんですけれども、私、そこはこの社会において極めて厳しいところで、ちょっと例は悪うございますけれども、みんな一生懸命勉強して、六十点とった人は合格して五十九点とった人は落ちるという大学の試験があり、それが人生を変えてしまうというようなこともありまして、なかなかわずかの差なのにというところはすべての分野にあることで、私もわかりながら、だからといって御意見になかなか同調するのもまた難しゅうございます。  ただ一つだけ、今おっしゃいました、なるべく国民の票が議員の数にあらわれるという意味では、一つの方法として、私は、先ほど申し上げましたように、専門家ではございませんのでわかりませんが、一個人として考えますと、小選挙区制の区切り方、どのくらい小さくするかというようなことでもある程度解決できるすべがあるのではなかろうか。これは素人意見で大変申しわけございませんが、一言申し添えさせていただきます。  以上でございます。
  114. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  115. 勝木健司

    ○勝木健司君 お二方の公述人先生、御苦労さまでございます。時間が限られておりますから、端的に御質問させていただきたいと思います。  坂本公述人にお伺いをいたしたいと思います。  現在の政治には金がかかり過ぎるということでありますので、この現状を改めて政治改革を進めていくためには何が最も重要であるかということであります。政治献金がある程度規制されない限り、今回のリクルート事件のようなこういう事件というものは再発する可能性があるというふうに思われます。  反面、政治資金に係る腐敗を防止するためには、ただ単に規制を厳しくしていくだけじゃなしに、やはりもっと充実した公費補助を実施すべきであるというふうに思うわけでありますけれども、あわせて御所見をお伺いしたいというふうに思います。  また、もう一点は、選挙制度に金がかからないようにするためにはということで、比例代表制を加味した小選挙区制度ということを衆議院に導入すべきだという意見もあるわけでありまして、政治改革を進めていく上でどのような選挙制度というものが理想的であるかということで、政策で争うということも言われておりますけれども、あわせて御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  116. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 適正な公費補助については、私も全くそのとおりだと思います。余りにも今乖離が甚だし過ぎるのではないかというふうに思います。  それからもう一つ、二つ目の問題でございますが、小選挙区制ないしは選挙区制度の話でございますが、先ほどからいろいろ御議論が出ておりますように、どれも一長一短がございます。ですから私も、実は本心は、先ほども申し上げましたように、非常に迷っております。ですから、私として何がいいということはここでとても申し上げられないのですが、再三繰り返すようですが、やはり政策本位の争いであってほしい、この気持ちだけを申し述べて、お答えにさせていただきます。
  117. 勝木健司

    ○勝木健司君 坂本先生にもう一点、価値観をやっぱり再構築していく時期に来ておるということであります。それは私もそのとおりだというふうに思います。  ところで、世の中の常識との乖離が永田町にはあるのじゃないかということでありますので、この間の竹下後継総裁の問題での伊東正義氏の態度をどのように評価されておるのか。派閥を解消する、あるいはリクルート疑惑関係者の議員辞職を迫ったというふうにも伝えられておりますが、その辺の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  118. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) まことに申しわけないんですけど、人それぞれ考え方が違いますものですから、ちょっと私は、ここで短時間で御評価を申し上げることは大変危険だと思いますので、遠慮させていただきたいと思います。
  119. 勝木健司

    ○勝木健司君 それでは、加藤公述人にお伺いをいたしたいと思います。  原油価格の見通しについて明らかにしてほしいというふうに思います。また、原油価格の影響を受けて消費者物価上昇率もどんどん上がっていくんじゃないかという危険性が言われておるわけでありますので、果たして政府の公約の二%ということに落ちつくのかどうかということについても考え方を示していただきたいということが一点であります。  もう一点は、現在円安が進行いたしておるわけでありますけれども、先生は適正な日本の為替レートは幾らぐらいを考えておられるのか、御所見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  120. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) 原油の方でございますが、去年の十二月に通関ベースで約十二ドルであったわけでございますが、四月に入りまして大体十六ドル、通関ベースでございます。見通してございますけれども、大体十ハドルぐらいまで考えておけばいいんじゃないだろうか。どんどん年内上がるということではないんじゃないのか。  それから物価への影響でございますが、日銀のモデルの計算によりますと、一バレル四ドルで〇・一%。したがって、去年の十二月が十二ドルでございます、四月の通関が十六ドル何がしてございますから、〇・一ぐらいもし日銀の言うのが合っていれば国内卸売物価が上がる。したがって、政府の物価見通し、石油だけではございませんので難しいわけでございますが、政府の見通しからそう外れることはないんじゃないのか。私どもの研究所も大体政府の見通しと同じような数字になっておると思います。  それから、次の円レートの問題でございますが、かねて言われておりますのは、神様も適正レートというのはわからない、そのときどきのレートが適正なんだと、そういうような議論もあります。一応ルーブルのときにレンジがあったとかないとか、いろいろ議論があります。私はなかったと思うんですが、言われておりますのは百二十円から百四十円というようなことが言われておる。今度百四十円を超えるかどうかという問題があるわけですけれども、まあ大したことはないんじゃないのか。だんだんとドルが弱くいったのが強くなってきておる。一番問題は、果たしてまたドルが強くなるんだろうかという点が気になるわけでございます。基調的には円が強くなっていきまして、二、三年でドルが弱くなりながら強くなるという動き方があるわけです。トレンドがだんだんとドルが弱くなってくるんですが、こういうふうにドルが包絡線でいくという考え方がございます。  長期的に見ますと、やはりドルは弱くなるんじゃないか。とりあえず目下のところはドルが百四十円を突き抜ける可能性はありますが、大体百二十円と百四十円の間ぐらいでいくんじゃないか。マルクが、非常に困ったことで、一・七から一・九といっておったやつが二に近くなるような情勢になってきておる。しかし、日本の場合にはそう気にすることはないんですが、若干物価との関連で申しますと、やはり日銀のモデルでございますが、十円円安になると〇・六から一・一の幅で国内卸売物価が上がるというようなことが言われております。したがって、余りどんどん円が弱くなっても困る。ドルの方から申しますと、四月二日の暫定委員会の報告にありますように、アメリカの貿易の赤字が減らなくなるようなドル高は困る、といって大幅なドル安も困るというようなところで、きてどの辺かということになりますが、百二十円から百四十円ぐらいというふうな感じで見ておけばそう間違わないんじゃないのか。
  121. 秋山肇

    秋山肇君 坂本公述人、加藤公述人、御苦労さまでございます。  坂本さんの政治改革に関する御意見、私どもも自分自身を律していかなければいけないというふうに感じております。時間がありませんので……。  私どもは、皆さんと一緒に政治家の姿勢を直していくという基本に向かっていきますが、私が感じますのに、最近はリクルートで知事選だとかいろんな選挙の投票率が上がっておりますけれども、どうも皆さんは、国政のときは割合投票率が上がりますが、地方議員の選挙になると、特に東京なんというのは、今度都議選が七月の初めにあるわけですけれども、こういうときに投票に行かない。何か、投票に行くのが悪いというんじゃないんですが、都政をばかにしているというか、政治家を全然相手にしてないというのがインテリの人のお考えのように思うんです。  我々が政治をもっと活性化して、皆さんの理解を得れば投票率が上がるということであれば簡単なんですが、選挙の投票日にヘリコプターを飛ばしてみたり、いろいろ選管なりに努力をしておりますけれども、投票される側からこの点について何かお考えがありましたら、御意見をお伺いしたいと思います。
  122. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) やはり投票に行かないというのは、現状に安心し切っているところがあると思います。ですからそういう意味で、今うまくいっているときに投票率を上げるというのはなかなか難しいことではございますが、でき得ればリクルートのような後ろ向きなことではなくて、前向きにもっとどんどん画期的な意見を出される方が多くて、それに対して議論が起こってくれば一番理想的ではないかと思います。  以上でございます。
  123. 秋山肇

    秋山肇君 確かにそうで、私は、やはり投票所に足を運んで、議員に気に入る人がいなければ白票を投じてこられる、投票率は少なくとも日本の民主主義国家で三分の二を超えてないと恥ずかしいんじゃないのかなというふうに思うんですが、坂本さんの御意見はいかがでしょうか。
  124. 坂本春生

    公述人(坂本春生君) 私もそのとおりでございます。今ここで選挙民として大変反省をいたしております。今後大いに投票に行きたいと思います。
  125. 木本平八郎

    木本平八郎君 加藤公述人にお願いいたします。  私の感じでは、今現在の世界の国際経済というか経済状況を見ていますと、もう昔ならとうに戦争になっていてもいいんじゃないかという感じがするわけなんですね。  例えば、先ほどもあったんですが、米の輸入自由化阻止の問題なんかは、消費者から主婦の方までみんな寄って、これはもう絶対に自由化しちゃいかぬとやっているわけですね。これ外国から見ますと、一億一心火の玉で、もう全部国論が統一されて何か戦争気構えみたいな感じに受けると思うんですよ。我々は決してそんな他意があるわけじゃなくて、本当に一生懸命にやっているんだ、輸出して外貨がたまるのが何で悪いんだ、アメリカももっと努力すべきじゃないかと考えているんですけれども、この考えがやっぱり通じないんですね、世界に。  逆に言えば、世界の人たちが何を考えているかということを実感として日本人ほど知らない民族はないんじゃないかという感じがするんですよ。国会の中にも、当然アメリカの考えていることが入ってこなきゃいかぬですけれども、新聞を通じてしか入ってこないというふうなことがあって、このままいくとどんどんコミュニケーションギャップからおかしくなっていくんじゃないかと思うんです。  国際経済の面から、こういう日本人の国際認識の欠陥のようなものをどういうふうにお感じになっているか、お伺いしたいんです。
  126. 加藤隆司

    公述人(加藤隆司君) おっしゃるようなことだろうと思いますですね。  だけれども、さっき申しましたんですが、第二次大戦の昭和十六年の前後を勉強した本が三年かそこら前に出ましたが、今思えば、戦争をなぜやったんだろうかと。負けることわかっている戦争であったわけですが、さっき申しましたように、一つはインフォーメーションのギャップがある。二番目には、日本がアメリカを見ていることとアメリカ人が日本を見ていること、それが実態から双方に非常にギャップが出ている。それから一つ一つの物の考え方が違う。この三つが結局最後のああいう大ばくちの戦争をやってやられちゃったということだろうと思うんです。今もまたその繰り返しのような気がいたしますが、今度はじっと我慢で、いろいろ無理無体を言われながら、こっちもまた妙なところがあると思うわけでございます。  例えば、もう済んだことなのでいいと思いますが、金属バットの件なんというのは明らかにこっちがおかしかったと思うんですね。今度のスーパーコンピューターのだって本当のところはよくわからぬわけです。富士通の社長は、向こうだって大学のディスカウントをやっていると。そうすると、向こうはディスカウントの幅を言っておるわけでございますが、そういうふうにどっちの言っていることが本当なんだかよくわからない、部外者には。結局インフォメーションのギャップがある。それから、我々がアメリカをいいかげんなことをやっていると見ておりますが、アメリカはアメリカで日本はずるいやつだと見ている。そういうイメージのギャップがある。  それからもう一つは、やっぱり先頭を走ると波風が当たりますね。余りくよくよしないで、稼ぐなら稼ぐ、それで出せと言うなら出すと。もう少し大らかにやっていく方がいいんじゃないのか。余り気にし過ぎている。御用聞きみたいに、こういうことをおれたちはやるがおまえどう思うかと、そんなことを一々聞かなくたっていいんじゃないのかというような、ちょっと暴論でございますが、全く同意見でございます。
  127. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  以上で政治改革及び国際経済・金融に関する意見聴取は終了いたしました。  一言お礼を申し上げます。  坂本公述人、加藤公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心から厚く御礼を申し上げます。(拍手)  これにて予算委員会公聴会を終了いたします。    午後五時散会