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国務大臣(
竹下登君) 一九七〇年でございますか、昭和四十五年、我が国の国会においては公害国会というものがございました。したがって、そのとき、いわゆる産業開発と環境問題をどう調和さすかと随分長い議論をしたわけでございますけれども、それが今、先進国の中でも地形的に海に囲まれておるという恵まれた態勢にありますだけに取っつきやすかったわけでございますけれども、確かに国内的な問題では先進国中におきましてもなお進んでおる状態にあるというふうに、私どもは諸外国へ行きますとそういう評価がされておるわけでございます。
しかしながら、今やっぱりそれは国内問題として取り上げることなく、
一つは、先ほどもおっしゃっておりましたオゾン層の問題とか温暖化の問題とか熱帯雨林の問題とか、そういう地球規模の問題と、もう
一つは、産業進出として出かけていったものが、きょう個別問題を中心にして御議論いただいておりますような問題を起こしてはならぬというようなふうに環境問題が発展してきたと
思います。したがって、日中平和条約十周年ということを記念いたしまして、日中の間の友好環境センターというものをつくることに先般李鵬さんとも合意したところでございます。
そこで、我が国のこの環境問題、地球規模の環境問題の取り組み方になりますと、確かに今、ちょっと表現が適切でないかもしれませんけれども、リーダーとは、地球環境を語らざるリーダーは知性と教養と良心なき者であるというふうな、ある種のいいムードでございます、それは。しかし、それがいわゆる産業開発と全く相反するものになってはいけないという点も私も各地を回ってよく感ずるところでございます。したがって、今
青木長官の方で計画されておるのが、先生も今御指摘なさった六月の
アジアの閣僚
会議でございますね。参加がまだ二カ国決まっておりませんでしたので、私の方からお勧めしてまいりましたから御参加いただけると思っております。
それからその次が、今度は学者の方を集めましてUNEPと共催にいたしまして大
会議をやろう、こういうことでございます。とかく我々
政治家の議論になりますと精密さを欠くことがございます。例えば、私自身も議論しておりましても、熱帯林と熱帯雨林の区別はどうか、あるいはブラジ
ルの二酸化炭素が
日本へ到着するのに何時間、何日かかるかなんということになりますと私どももわかりません、率直に言って。だが、したがって、
政治家の議論ももちろんいいが、やっぱり地道な学者の知見を集めて、それから今まで本当に、細々ながらと言っちゃ表現悪いのですが、UNEPが、
日本が最大の拠出国ではございますけれども、いろんな研究をされてきた、そういうものを持ち上げることによって全体の体制というものを国際的に、
世界的にリードしていく、その先進国の
一つとしての役割を果たさなきゃならぬというふうに思っております。
それから、今おっしゃいましたマレーシアへも行ってまいりまして、やっぱりマレーシアで話が出ましたのは熱帯林、いわゆる焼き畑の問題でございました。確かに、私が申しておりますのは、今までも協力しておりますけれども、伐採した跡地の植林とか造林とか、そういうことを
日本が今協力しておるわけでございますが、基本的にはそれはわずかなもので、次から次へと山を焼きまして、そうして数年間そこで収穫をして次へまた移っていく。だから、そういう農業をしなくてもいいような豊かな国づくりをする方が本当は、私どもが協力しております植林とか、植林は資源の再生産にもなりますから、それよりも大事だと、こういうようなお話もございました。
そして今、個別問題としてまさに御指摘なさった問題につきましては、これは
政府――
政府とおっしゃいましたが、やはりそれぞれの国の主権があるわけでございますから、そういうものを二国間で話しするときには
政府対
政府の話になっていぐわけでございますけれども、おっしゃいましたように閣僚
会議をつくらせていただきました。まだ一回も開いておりません。できたばかりでございますが、これらの
会議がその機能を発揮いたしまして、そうした問題についてもそれぞれの対応策がなされますことを心から私も期待をいたしておるところでございます。
したがいまして、国際
会議、条約に関するもの、二国間の問題に関するもの、それから国内法に関するもの、なお、私はいつも申しておりますように、進出企業のお方は言ってみればよき企業市民となってくださいということも、精神的にはそういう背景を踏まえて申し上げておるところでございます。後の内閣にもこの閣僚
会議が十分に生かされますようお伝えしようと思っております。