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下稲葉耕吉君 派遣報告をいたします。
去る一月二十六日から三日間、
塩出委員長、猪熊
理事、
秋山委員、西川
委員と私、下稲葉の五名は、
検察及び裁判の
運営等に関する
調査の一環として、最近における司法行政及び
法務行政に関する実情等について
調査のため、愛媛県と広島県に行ってまいりました。
派遣日程の第一日目は、松山刑務所と、その構外作業場として刑務作業を行っております大井造船作業場に参りました。
第二日目は、広島高等
裁判所におきまして、同
裁判所、広島地方
裁判所、広島家庭
裁判所、広島高等
検察庁、広島地方
検察庁、広島法務局、広島矯正管区、広島地方更生保護
委員会及び広島入国管理局のそれぞれの機関の方から管内の概況について
説明を伺い、懇談いたしました。さらに、引き続いて広島拘置所を視察し、翌日帰路についたのであります。
初めに、刑事施設、すなわち松山刑務所及び広島拘置所の
状況について申し述べます。
まず、松山刑務所は、構内の作業場のほか、今治市に近い大井造船所において、民間企業の理解と
協力を得て
昭和三十六年以来、構外の刑務作業を実施しております。ここではただいま四十数人の被収容者が作業に従事しておりますが、彼らは犯罪傾向の進んでいない
改善の容易な者でありまして、高松、東京、大阪その他の管区から集合した者であります。ここで彼らの起居する寮内の居室は鉄格子も錠もなく、またその寮生活の全般にわたって、ある程度彼らの自治が認められております。また、彼らは電気溶接、ガス溶断、クレーン運転等の技術を習い、多数の者が所定の資格を得ております。
次に、広島拘置所について申し上げます。
本拘置所は、未決の者の拘禁施設であるため、刑務作業は施設の維持管理のための自営作業と、分類
調査中の受刑者及び余罪受刑者並びに請願作業の未決被収容者を
対象者とする生産作業のみであります。また、教育活動の
対象者は自営作業についている受刑者を中心に行われております。
刑事施設の視察に当たってなされた主な
質疑の
内容は、構外作業における作業費等をめぐる問題、被収容者の学歴、既決の者と未決の者との処遇の異同、拘置所に既決の者が収容されている理由、刑務所勤務
職員と拘置所勤務
職員との
人事異動の
状況等でありました。
次に、
裁判所及び法務省の各機関の代表者の方から、それぞれ管内概況について
説明を承りました。
まず、
裁判所関係の
昭和六十
年度から六十二
年度までの三年間の
事件処理の
状況を申し上げます。
広島高等
裁判所の取り扱った民事
事件、なお以下で民事
事件と申しますときは行政
事件も含めて申しますが、これらは全体として
増加傾向にあります。また刑事
事件は、
昭和六十一
年度は著しく
増加しましたが、六十二
年度はおおむね横ばいとなっております。
管内地方
裁判所の民事
事件について申しますと、民事執行の配当
手続、不動産等及び債権等に対する強制執行の
事件の
増加が目立つほか、全体としてほぼ横ばいであります。
管内
簡易裁判所の民事
事件のうち、訴訟
事件は年々減少傾向にあり、また
調停事件は
昭和五十八年十一月、貸金業規制二法の施行後は大幅に減少してまいりました。
管内地方
裁判所及び
簡易裁判所の刑事
事件は全体上して横ばいであります。
管内家庭
裁判所の家事
事件及び少年
事件は、全体としてやや減少ぎみでありますが、少年
事件におきましては低年齢化及び女子のかかわる
事件の
増加傾向が注目されます。
以上で
裁判所関係のあらましを述べましたが、いずれも
事件の
処理は順調に進んでおるということであります。
次に、
検察庁関係を申し上げます。
最近の広島高等
検察庁管内の犯罪情勢は、全般的には平穏に推移しておりますが、中には凶悪重大事犯、地方公共団体
職員らによる贈収賄事犯等も少なからず発生しております。最近三年間の当管内の
事件受理人
員数は、道交法の
改正により従来刑事
事件として
処理されていたものの一部が反則
事件として
処理されることとなったのに伴い、減少してまいりました。また、六十三
年度は、
起訴件数がやや減少し、不
起訴件数が
増加しましたが、これは、交通事犯の実情にかんがみ、悪質事犯に厳しく、軽い事犯には実情を酌んで対応するという
検察当局の方針も要因であると存じます。
次に、広島法務局の管内
状況を申し上げます。
当法務局管内の出先機関は、
昭和四十五年には六支局、五十五出張所がありましたが、四十六
年度からの登記所適正配置
計画の実施により、現在八支局、十八出張所となりました。登記
事件は、特に都市部周辺の登記所において急増し、
内容も複雑化してまいるとともに、事務のコンピューター化についても本会計
年度から始まり、種々困難な
状況の中で移行作業が鋭意進められております。かかる
状況でありますから、今後法務局の事務の円滑な運営を図るためには、さらに一層の諸条件の
充実が必要である旨の強い要望があったのであります。
次に、保護観察所について申し上げます。
保護観察官の携わる
職務の実情は、多方面にわたり、過重な負担となっており、それがため
増員方を強く望まれたのであります。
また、更生保護会等の民間
協力組織につきましては、かねて財政的基礎が不十分で運営の苦しいものが少なくないとして、その
充実強化を要望されました。
次に、広島入国管理局の管内事情を申しますと、最近の業務の特徴としては、境港と北朝鮮との貿易が活発になってきたこと、韓国の社会経済の急速な発展に伴い、下関−釜山間の交流が盛んになったこと等であります。また
昭和六十三
年度は、入国事前審査業務が大幅に
増加するとともに、下関港において不法就労を目的とする韓国人の入国を図る者の
増加が目立ってきたということであります。
さて次に、
関係機関の庁舎施設及び宿舎の営繕
状況について申し述べます。
まず、
裁判所関係では、庁舎はおおむね整備されており、宿舎も数においてはまずまずの
状況と承りました。
検察庁におきましては、さらに一層の執務環境の整備が図られるよう要望がありました。宿舎については、都市圏はともかく、地方においてはいまだ不十分であり、特に若年独身者層の宿舎の
充足率が低く、また既設の宿舎にあっても老朽化が進んでいるところが少なくないとのことであります。
次に、法務局
関係につきましては、庁舎の緊急に整備を要する老朽狭隘のものが多数存し、早期の対応を望まれました。宿舎についても、出先機関が地方に分散するので省庁別宿舎の設置を期待されたのであります。
なお、以上の
説明を承った際における主な
質疑としては、宿舎を国が提供した場合と民間が提供した場合との賃借料の格差、先般行われた
簡易裁判所統廃合の地域住民に対する影響の有無、暴力団対策、更生保護の業務に従事する団体等をめぐる
状況等であります。
さて、今回の視察に当たりましては、御多忙中にもかかわりませず、資料の準備、その他数々の御配慮をいただきまして、
関係の諸機関の皆様に対し、深く感謝の意を表する次第であります。特に、司法、法務の仕事は、矯正行政を初めとしてまことに地味な、かつ御苦労の多い分野であると
承知いたします。ここにその御労苦を謝するとともに、この際、御
便宜、御
協力をいただきました
関係の方々に対し、厚く御礼を申し上げる次第であります。