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山田耕三郎君 私は、
所信に関連をしてお尋ねいたします。
ただいま本年産米価の決定についての御論議がございました。
我が国の米価は二年連続の
引き下げで経過をしてまいりましたのは御承知のとおりであり、その
理由は、簡単過ぎるかもしれませんけれ
ども、
我が国の
生産者
価格が
国際価格に比べて高価であるからであります。日本には
国際価格に比べて高いものは幾らでもあります。だからといってすべてが下げられるものではないことは、それぞれにはそれぞれの条件があるからであります。
だから、高いから
引き下げるという単純な思想では、
所信で述べられましたような
農業経営の安定を
確保するどころか、
農業の健全な
発展など期待し得ないのではないかとさえ思いますし、ましてや巷間伝えられる、選挙前だから据え置きするというこの心情は、お互いに選挙を戦う者としてわからないではございませんが、
我が国農業は今やこのような小手先の対応では済まされない状態に立ち至っておるのではないか、私は深刻に
考えております。
価格の構成要素はそんなに簡単、明快なものではありません。たとえ
価格の
引き下げが必要だという観点に立たれたとしても、
価格を構成する要素を克明に
調査し、
農業の健全な
発展が可能となる将来を見通した広範な総合
施策でなければいけないと思います。
時間の
関係で詳しく申し述べることはできませんので、意は尽くせませんけれ
ども、
価格を構成する主要な要素の数点だけを申し述べ、この指摘をなおざりにしていただかないよう、
価格の
引き下げは
我が国農業の健全化を図るどころか、
国民いじめ以外の何物でもないことを批判されないようにぜひお願いをいたしたいと思います。
まず、どういうことが
関係しますかというとやっぱり今の日本の
物価高であります。本来、円高は喜ぶべき経済現象だと私は理解いたしております。にもかかわりませず、
国民は世界の先進国の中でも最高の
物価高に悩まされておるのもまた反面の真理であります。これは円高差益の還元が不十分だからであります。
このごろ、週刊誌の広告を見ましても二ページにわたって、あの焦げ茶色の広々としたオーストラリアのビール麦農園が写し出されております。モルトの広告でありますけれ
ども、「麦芽一〇〇%」と書いておりますんですが、もしオーストラリアの麦芽一〇〇%であったといたしましたら、このごろでこそ若干円安にはなっておりますけれ
ども、ひところと比べたら三分の一の値段で輸入をされておらなければならないのでありますが、実感としてそのようなことが私たちには感じられません。例えば、今日本での三百五十ミリリッター入りの缶ビールは、これは二百三十円でありますけれ
ども、アメリカの同等の缶ビールはわずかに六十円、やっぱりこういうものを飲みながらの農民生活でもありますことを
考えてみる必要があります。
もう一つは、社会資本の充実のおくれであると思います。
午前中の
質疑の中にも出てきましたように、コストに占める
流通経費の論議がございました。今日、
我が国では高速道路は有料というのが常識であります。アメリカやドイツでは無料が常識であります。したがって、日本では通行料の値上げのたびに
利用者の抵抗が絶えません。ただの遠距離輸送と有料の遠距離輸送とでは、競争で既にもう負けておるということは事実であります。このように、確かに
我が国は経済大国とは言っておりますけれ
ども、社会資本の充実に関しては、これから政治がまだまだ解決していかなければならないものがたくさん残っておることを実証しておるように思います。
もう一つ、小さいことかもしれませんけれ
ども、軽視できないものに人の心の荒廃があります。
私は、ただいま会派に所属をいたしておりませんということだけで参議院の公用車の
利用の権利を奪われております。日本のある官庁ではタクシーで横づけすることを禁じておるところさえあります。ただ、そのことの不満を申し上げようとしておるのではありません。私自身、私の一つの信念がありますので、こういう
立場を守っておるのでございますけれ
ども、ただこのような
関係で、東京駅と議員会館との往復はタクシーに依存をいたしております。
最近、特に感じますことは、普通の料金でありましたらこれは八百円
程度の行程であります。しかし、車の流れのよいときには最低七百三十円で済みます。けれ
ども、流れが悪いというよりは、一番高いときは千百五十円を支払うことがあります。四百円の格差がありますけれ
ども、その原因は運転手さんが稼ぎを少しでも多くしようということから不必要なところを回ってしまうということであります。心が悪くなったとはいえやっぱり農民はまだまだ素朴でありますし、善良だと思います。そんなところへ心の荒廃した悪徳商人が入り込んできて収奪をしていきます。気の毒で見ていられないようなこともございます。
このように
我が国の人の心が荒廃することは、やっぱり一つはぴりっとしない今日の日本の政治にも責任があるのではないか。このように思いますと、やはりその一員として責任を感じるものでございます。こういったところも何とかして直さなければやっぱり農林行政もそのとばっちりを受けるのではないか。とは申し上げましても、以上のようなことは農林
大臣の直接の所管の仕事ではありませんので、あえて御所見を求めようとは思いません。ただ、このような所管外の要素が
生産農民に重くのしかかっていることを御理解いただいた上で、今後の
施策に配慮してほしいと思うのであります。
その他にマイナス条件といたしまして、やっぱり日本
農業は
経営規模の零細性、狭隘な
国土が持つ極めて困難な自然的条件がありますことは、先ほ
ども大臣も申されました。それなりの対応をしておいでになりますけれ
ども、規模の
拡大はなかなか遅々として進みません。
さらに、もう一つの問題は、
内外格差の高まっておる
肥料だとか、さらには農薬、農機具、一般農用
資材等は直接
関係のある分野です。
生産コストとの連動性の極めて高い、これらの
価格の動向とは無
関係に
生産者米価だけの
引き下げで終始することでありましては、日本
農業の安定や健全化はあり得ないところか、角を矯めて牛を殺すたぐいのこととならざるを得ないと思います。確かに米価の
国際価格は高いが、
国内価格としては他の
物価との比較から若干低くなっているとさえ私たちは思っておりますのでありますし、相互
関係には何の矛盾もございません。他の
物価がむしろ値上がりしておる中で米価だけを
引き下げていくという、こういったことで
所信に申されましたような、日本
農業の安定とそして健全化を期待できると思われるのかどうか、担当の方からの御所見を承りたいと思います。