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1989-07-03 第114回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年七月三日(月曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  六月二十二日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     西村 尚治君      大塚清次郎君     倉田 寛之君  六月二十三日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     大塚清次郎君      西村 尚治君     上杉 光弘君  七月一日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     渕上 貞雄君      原田  立君     及川 順郎君  七月三日     辞任         補欠選任      上野 雄文君     野田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         福田 宏一君     理 事                 岡部 三郎君     委 員                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 大塚清次郎君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 本村 和喜君                 一井 淳治君                 野田  哲君                 渕上 貞雄君                 及川 順郎君                 下田 京子君                 山田耕三郎君    国務大臣        農林水産大臣   堀之内久男君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡  光君    説明員        国土庁防災局防        災企画課長    杉谷 洸大君        厚生省生活衛生        局食品保健課長  野村  瞭君        厚生省生活衛生        局食品化学課長  内山 壽紀君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産省経済        局統計情報部長  海野 研一君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        食糧庁次長    近長 武治君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (平成元年産米の生産者米価に関する件)     —————————————
  2. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七月一日、菅野久光君及び原田立君が委員辞任され、その補欠として渕上貞雄君及び及川順郎君が選任されました。  また、本日、上野雄文君が委員辞任され、その補欠として野田哲君が選任されました。     —————————————
  3. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 次に、農林水産政策に関する調査のうち、平成元年産米の生産者米価に関する件を議題といたします。  まず、平成元年産米の生産者米価について政府から説明を聴取いたします。近長食糧庁次長
  4. 近長武治

    説明員近長武治君) 平成元年産の生産者米価につきまして、七月一日に、米価審議会諮問いたしましたので、その諮問の概要について御説明申し上げます。  まず最初に、諮問諮問についての説明を朗読いたします。     諮 問   平成年産米穀政府買価格について、将来にわたり我が国稲作の健全な発展を図るとの観点に立ち、需給事情にも配慮しつつ、稲作担い手層生産費及び所得を考慮し、行政価格連続性安定性観点から所要調整を行い、併せて銘柄間格差拡大して決定することにつき、米価審議会の意見を求める。   平成元年七月一日          農林水産大臣 堀之内久男     諮問についての説明   米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産の確保を図ることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式によりその時々の需給事情等に応じて行ってきたところであります。   このような中で、昨今の米をめぐる内外の諸情勢にかんがみ、生産性の高い稲作担い手となる農家生産組織集団の育成を通じて稲作の一層の生産性向上を図り、農業経営の安定を確保しつつ、国民の理解の得られる価格での米の安定供給に努めることが現下の重要な課題となっております。   また、米の潜在需給ギャップ拡大に伴い、平成元年度においては水田農業確立対策の推進と併せ米需給均衡化緊急対策を実施しているところであります。しかしながら、消費減退傾向の強まり等から米の需給は依然として過剰基調で推移しており、需給均衡化を確保するための的確な対応が必要となっております。   さらに、近年の国民良質米志向の強まりの中で、政府米の円滑な売却を図るとともに、需要に応じた生産を誘導していくことが必要となっております。   このような状況の下で、米穀政府買価格につきましては、我が国稲作担い手層に焦点を置き生産性向上価格に的確に反映するとともに需給調整機能を強化した新しい算定方式により算定し、併せて市場評価等を踏まえて適正な銘柄間格差を設定することが必要となっております。   本年産米穀政府買価格につきましては、以上の事情総合勘案の上、稲作担い手層生産費基礎とし生産費及び所得補償方式により算定し、行政価格連続性安定性観点から所要調整を行い、併せて銘柄間格差拡大することとしてはどうかということであります。  引き続きまして、お手元にお配りしてあります「平成年産米穀政府買価格の試算」という資料について御説明申し上げます。  まず、一ページの左の算式でございますが、これは前三年の評価がえ生産費平均分子といたしまして、前三年の平均収量分母として六十キログラム当たり価格を求めるものでございます。この場合の生産費対象農家とり方につきましては、まず個別経営農家につきましては、米価審議会米価算定に関する小委員会の報告に即しまして、生産性が比較的高く規模拡大意欲があること、相当労働時間を稲作に投入していること、農家経済面においても相当程度稲作収入に依存していることという観点に立つとともに、機械効率的利用にも配慮して作付規模一・五ヘクタール以上の農家をとっております。  生産組織集団については、今後我が国稲作担い手として位置づけられるわけでありますが、生産組織集団はその実態が多種多様でございまして、そういう事情から現段階において生産費調査の直接の対象とはしておりませんので、体系的にその生産費を把握することは困難な状況にございます。しかしながら、事例調査で見ますと、大規模個別農家に匹敵する生産性を実現しているものも多数見られます。また、稲を主位作目とする生産組織集団に対する調査の中で、組織化によるコスト軽減効果等について調査をしておりますが、これらの調査結果から推定いたしますと、生産組織集団平均的な生産性水準は、個別経営農家の三ないし五ヘクタール層の水準に匹敵すると推算されますので、元年度における生産組織集団取り扱いにつきましては、一・五ヘクタール以上の個別経営農家生産費をもって代替することとしております。  算式分子でございますが、対象農家の十アール当たり平均生産費について、物財雇用労働費など実際に支払う費用につきましては生産費調査結果を物価修正するとともに、家族労働費につきましては都市均衡労賃評価がえし、実際の支払いを要しない自己資本利子自作地地代につきましても、一定評価方法により算入をいたしまして、これらを合計した評価がえ生産費を算出し、これを対象農家平均単収、つまり分母でございますが、これで除しまして求める価格つまり米全体の農家庭先価格相当するわけでございますが、この求める価格算定しております。  なお、昨年の算定におきましては、生産費対象年がすべて豊作年でございましたので、収量変動平準化係数を乗じておりましたが、本年産につきましては、六十三年の作況が九七であり、前三カ年の作況平均は平年並みに該当いたします一〇一になること、それから生産費及び所得補償方式では生産性動向に配慮するとともに、安定性を確保する観点から過去三年の実績をとることを基本としていること、こういうことを踏まえまして、収量変動平準化係数は本年産米については採用しないこととしております。  次に、一ページ右の算定でございます。  1は、先ほど申し上げました求める価格でございます。  2の基本となる価格は、求める価格最寄り検査場所までの運搬費を加算したものでございまして、一万五千六百六十六円となっております。これを前年の基準価格と比較いたしますと八百四十二円、五・一%のマイナスとなっております。  次に3でございますが、後ほど御説明申し上げます経過措置としての調整額を加算したものでございます。この結果、前年の基準価格に比べまして四百二十一円、二・五五%のマイナスとなっております。  次の4のウルチ類一等裸価格と書いてあるところでございますが、これは基準価格基礎に、銘柄間格差等級間格差等前提に三類一等価格を算出したものでございます。  二ページの左の5になります。これは基本価格と呼んでおりますが、ウルチ一ないし五類、一−二等平均包装込み生産者手取り予定価格でございます。前年と比較いたしますと四百二十七円、二・五五%のマイナスとなっております。  なお、二ページの左の下段に類別・等級別価格一覧を掲げております。後ほど御説明申し上げますが、類間格差につきましては本年産からこれを拡大することとしております。  続きまして二ページ右の算定要領でございます。算定要素とり方について整理しております。  まず(1)の家族労働費でございますが、家族労働費につきましては、生産費及び所得補償方式のもとで都市均衡労賃により評価がえを行っております。都市均衡労賃はここに書いてございますように、前年同様、都道府県別米販売数量により加重平均した事業所規模五人以上千人未満事業所製造業賃金を採用しております。  二ページの右下に一時間当たり労賃を掲げておりますが、このうち男女込み労賃は直接家族労働評価に用いております。また、男子労賃自給肥料等にかかる間接労働評価に用いております。なお、労賃単価は前年産に比べいずれも四・三%の上昇となっております。  次に、三ページの左のアでございますが、規模五人以上千人未満労賃について説明しております。現物給与等調整前のものでございます。規模修正及び期間修正は、データの制約から労賃規模期間について修正を行っておりますが、その計算の手順を整理しているものでございます。  それから次に、イは労賃に加算いたします現物給与相当額加算手法について書いてございます。  それからウは、労賃から控除いたします通勤手当相当額の減額の手法について整理しているものでございます。  それから続きまして、三ページの右の(2)の物財雇用労働費について申し上げます。  従来物価修正については基準期間比較期間とも各年の一月から五月までの平均物価指数を用いてまいりましたが、本年産につきましては、四月から消費税が導入されまして農家が購入する肥料や農薬などの生産資材につきましても消費税が課せられている、こういう状況を踏まえましてこれを適正に価格に反映させる、そういう観点に立って、本年産特例措置といたしまして、基準期間比較期間とも四月及び五月平均を採用しております。このことによりまして、農家の仕入れにかかる消費税負担価格に適正に転嫁されることになると考えております。  なお、課税農家米販売農家の中の〇・三%程度であると見込んでおりますが、この課税農家販売に伴う消費税負担につきましては、先般生産者麦価におきます取り扱いと同様に、適正な転嫁を保証するという観点から別途一定額を加算することにしております。  続きまして(3)の副産物価額でございますが、副産物はわら及びくず米でございまして、生産費から控除されますが、ここに掲げております係数生産費調査にあらわれたそれぞれの年の副産物物価修正する係数でございます。  続きまして四ページの左の(4)の資本利子でございます。  資本利子借入金自己資金に区別しておりますが、この割合は三年に一度行っております米生産費補完調査結果によっております。借入金金利は、補完調査にあらわれます借り入れの実態にその後の実勢を織り込んで算出しております。自己資本利子につきましては、実際には支払いを要しないいわゆる所得付与部分でございますが、従来から農協預金金利評価して価格に算入しております。定期貯金金利は、去る六月十九日に〇・五六%引き上げられましたが、本年産におきましては安定性等に配慮し、前年産適用金利金利上昇幅の二分の一を織り込むこととしております。  それから次は、(5)の物件税及び公課請負担でございます。  物件税及び公課請負担は、収益の有無にかかわらず稲作を行っていることに賦課されるものを従来どおり計上しております。なお、土地にかかる固定資産税は別途地代に織り込んでありますので、ここでは除いております。  続きまして四ページ右の(6)の地代でございます。  まず、自作地につきましては、実際の支払いを要しないものでございますが、所得付与部分として従来から価格に算入してきております。本年産につきましても従来同様土地資本利子の考え方により、一般の他の固定資産税評価額九万五百十六円、十アール当たりでございますが、この数字に十年利付国債応募者利回りの直近一年の平均、五・〇一三%を乗じて算定しております。また、小作地等につきましては生産費調査実績値を算入しております。  次は、(7)の企画管理労働費でございます。  企画管理労働費につきましては種々の論議がございましたが、本年産につきましては担い手層生産費基礎米価算定することとしておりますので、これを前提に一・五ヘクタール以上の平均企画労働時間一・三時間を都市均衡労賃評価がえして算入しております。なお六十三年産は、御案内のように一・五ヘクタール以上層の平均企画管理労働時間の二分の一を算入しております。  次に(8)の算定値は、以上の各要素を積み上げた十アール当たり評価がえ生産費でございまして、平均いたしまして十四万二百三十四円となります。これを六十キログラム当たりに引き直すために、次の十アール当たり平均収量算定するわけでございます。十アール当たり平均収量は三カ年間の平均で、四ページの右下にございますように五百四十三キログラムとなっております。  次に、五ページの3にございます運搬費でございますが、農家庭先から最寄り政府指定倉庫までの運搬費及び受検に要する経費を米生産費補完調査結果に基づいて算定しております。  次に、調整額算定でございます。  先ほど御説明いたしましたように、求める価格運搬費を加えた額が担い手層生産費基礎として算定した基本となる価格でございますが、この水準は、前年の基準価格一万六千五百八円に比べますと五・一%のマイナスとなります。そこで、前年産の作柄や最近の物価賃金動向に配慮するとともに、政府買い入れ価格連続性安定性観点から経過措置を講ずることとしております。調整額は、前年の基準価格から基本となる価格を控除した額に二分の一を乗じて算出しております。調整額格差の二分の一といたしましたのは、六十三年産価格は従来方式によって算定されたわけでございますが、新算定方式適用期間は三年間程度と考えておりまして、残りはあと二年となりますので二分の一というふうになること、このような事情等を勘案して、本年においては格差の半分を縮減して調整額を設定することが妥当と考えたものでございます。  次に、六ページに数字を掲げた表がございますが、これは以上の結果を原生産費価格決定年評価がえ生産費ということで整理したものでございます。  なお、最後に銘柄間格差の見直しについて御説明申し上げます。  政府買い入れ価格におきまして銘柄間格差につきましては、政府米の円滑な売却を図るとともに、需要に応じた生産を誘導する観点から、需要動向市場実勢等を反映して設定している政府売り渡し価格格差と同額とすることを基本としつつ、生産面に与える影響等に配慮して見直すこととしております。この場合、二類と三類の間の格差につきましては、売り渡し価格におげる格差五百五十円を基本とし、自主流通米拡大必要等に配慮して六十キログラム当たり百円の拡大を行い、現行二百五十円を三百五十円とすることとしております。  なお、一類と二類の間の格差については、一類がほぼ全量自主流通米となっている現状等もございますので、一類と二類との間の格差は据え置くことにしております。  次に、三類と四類の間の格差につきましては、政府売り渡し価格格差五百五十円を基本といたしまして、激変緩和観点から、さきの売り渡し価格改定における格差改定幅二百五十円を適用いたしまして、六十キログラム当たり四百五十円に拡大し、現行マイナス二百円をマイナス四百五十円とすることにしております。  なお、四類と五類の間については、これまで他の類の間に比べまして大幅に設定されてきておりましたので、今回は四類と五類との間の格差は据え置くことにしております。  以上の結果、一類と五類の間は三百五十円拡大することになるわけでございます。これは、現行売り渡し価格における格差二千二百円と、買い入れ価格におきます格差との差千二百円につきましてその約三分の一を縮小する、こういうことになるわけでございます。  以上でございます。
  5. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 次に、昭和六十三年産米生産費調査結果を聴取いたします。海野統計情報部長
  6. 海野研一

    説明員海野研一君) それでは、昭和六十三年産米生産費について御説明申し上げます。  まず、一ページに要旨ということで一覧表が出ております。この数字は、玄米十俵以上販売した農家平均でございます。特に今回は、昨年が冷害年でございました関係でつけ加えておきますと、米の生産費につきましては二割以上の被害を受けた農家は除外をして算定することになっております。  それでは左の欄、十アール当たりを見ていただきますと、物財費労働費ともにわずかながら減少いたしておりまして、その結果第一次生産費で十三万五千九百八十五円、第二次生産費十七万五千五百六十七円、いずれも一・〇%の減少ということになっております。これに対しまして右の方の欄、六十キログラム当たりで見ていただきますと、第一次生産費一万五千七百七十五円、第二次生産費二万三百六十七円、いずれも〇・七%の増加ということになっております。これは冷害影響、先ほど申しました二〇%以上被害農家は除いておりますけれども、やはり冷害影響がございまして、前年産の十アール当たり収量が五百子六キログラムであったのに対して昭和六十三年産では五百十七キログラム、一・七%収量減少しておるということによったものでございます。  このような収量減少等を受けまして、収益性のところでは粗収益三・二%の減ということになっておりまして、所得になりますと、先ほど申しました物財費等減少がございますけれども、粗収益減少が大きくさいてきでいまして、十アール当たりで五・五%の減少ということになっております。  二ページ以下に少し内容が書いてございます。  上の方は今申し上げましたようなことが書いてあるわけでございますが、費目の構成を見ていただきますと、労働費が三六・四%と最も大きいわけでございまして、次いで農機具費肥料費賃借料及び料金農業薬剤費という順でございまして、五費目で全体の八六・六%ということになっておるわけでございます。労働費につきましては、十アール当たり投下労働時間四十八・一時間と、初めて五十時間を割ったわけでございますが、労賃単価が上がっております関係がございまして、労働費としての減少はわずか〇・八%ということでございます。  次に、農機具費でございます。これは年々上がってきたものでございますけれども、ここ二年続けまして農家農機具購入が手控えられたというようなことがございまして、〇・二%ではありますけれども、初めて下回るという傾向を示しております。  それから、次の肥料費、それからオに書いてございます農業薬剤費、これらはいずれも単価減少がございまして低下をいたしておりますが、特に肥料費の場合、冷害の結果追肥を手控えるというようなこともございまして八・三%の減少を示しております。  それから賃借料及び料金では、ライスセンターカントリーエレベーター利用量は増加しておりますけれども、もみすり委託量減少ということでわずかながら前年を下回るという結果になっております。  三ページへまいりまして、作付規模別生産費でございますが、十アール当たりで見ましても、六十キログラム当たりで見ましても作付規模が大きくなるにつれて逓減をいたしております。生産費の最も高い層を一〇〇とした場合、これに対してそれぞれ各層で七三、七二、六七、六一というふうに逓減をいたしております。これは規模の大きい階層ほど機械効率的利用等が行われて、労働費農器具費等が低減をしているということによるものでございます。  それから収益性につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、一日当たり所得を見ていただきますと十アール当たりでは五・五%下回っておりますが、先ほど申しましたように労働時間が減少しておりますので、一日当たり所得になりますとわずか一・一%の減少ということでございます。  四ページ以下に規模別統計表が載っておりますので、御参照いただければ幸いと存じます。
  7. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより本件に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 一井淳治

    一井淳治君 本日は米価算定の問題が中心でございますけれども、米価算定の背景となる重要な事情だと思いまして質問するわけでございます。  水田稲作農業というものは、お米を生産するという大切な役割以外に自然環境を保全する、国土を保全するという重要な意味があると思いますけれども、こういう経済外的な水田稲作農業の貢献というものについてどのようにお考えなのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  9. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 先生も御案内のとおりでありますが、水田は、米を初めとする我が国主要食料を安定的に供給するという重要な役割を果たしているばかりではなく、水田の保水、貯水機能を通じて水資源の涵養あるいは洪水調整土壌浸食防止等機能を果たしておりますとともに、緑豊かな景観との触れ合いを通じた快適な環境提供等の多面的な機能を有しております。  今後とも生産基盤の整備を初めとする各般の施策を通じまして、これら水田の持つ機能が十分発揮されるよう努めてまいる所存でございます。
  10. 一井淳治

    一井淳治君 特に我が国の場合、いわゆる中山間地域というものがございますけれども、その地域はえてして急峻な立地が多いわけです。そういうところでは畑作に転換すると土砂の流出が多くなるとかいろんな問題点があると思います。中山間地域の農業の保全というものは、同時に我が国の国土を守るということと非常に関係が深いと思いますので、そういった点と、それから今回の米価算定当たりまして、やはり我が国稲作の健全な発展を図るということを中心にしていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、そういった点について重ねて質問いたしたいと思います。
  11. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 中山間地帯の水田が、水資源涵養やあるいはまた洪水調整土壌浸食防止等という機能を果たしておることはもう十分我々も理解をいたしておる次第でございます。したがって、これからの中山間地帯の振興という問題につきましては従来からもいろいろ取り組んでまいりましたが、山村振興法や過疎法あるいは新林業構造改善事業などによりまして各般の施策を講じておるところであります。また、このような地域にありましては、付加価値の高い農産物の振興など多様な農業の展開あるいはレクリエーション農園、森林の総合利用による交流の促進等、また農産加工等による就業機会の確保などを進めることが重要であります。各地においてもこのような取り組みが見られておるところであります。  今後ともこの中山間地帯の振興につきましては、政府としても最大の努力を傾けていきたいと存じております。
  12. 一井淳治

    一井淳治君 これは農民の間からよく言われることでございまして、特にお願いしたい気持ちも込めて申し上げるわけでございますけれども、農業や農村の問題については、これまでの農業政策を見ますと将来展望といいますか、将来農業政策がどのように展開されていくのかはっきりした見通しが立たない、そのために農家の方々も自分の耕作をどのように将来やっていっていいかはっきりした計画が立てられないというふうな声を聞くわけでございます。稲作農家につきますと、将来の稲作の問題についてどのように農政が行われ、また米価等々がどのようになっていくのかということが非常に不安なわけでございます。そのために、政府の方ではコスト低減とか規模拡大などについて旗を振っておられるんですけれども、農民自身が不安がって本気で取り組めないということがあると思います。  そういうことで、米価について長期的にはどのように展開していくのか、米価の将来の問題ですね。それからまた、もっと重要な問題といたしますと、米の輸入自由化の問題、食管制度の問題とあると思いますけれども、お米の問題について農政は将来どのように展開していくのかという点について御説明をいただきたいと思います。
  13. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいま一井先生の御質問は、非常に幅広くなったような気もいたしますが、稲作の将来展望と米価の長期見通し、あるいはまた米の自由化と、三つかなと思ったわけであります。  稲作の将来の展望につきましては、現在稲作をめぐる情勢は米の潜在的需給の不均衡が拡大する傾向にございます。そして、内外格差の縮小が強く求められていることなど、大変厳しい情勢にあることはもう御案内のとおりであります。こうした情勢の中で我が国稲作農業の将来を切り開いていくためには、昭和六十一年十一月の農政審議会報告「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」にも示されているように、米の需給均衡化対策を推進するとともに、水田というすぐれて我が国の風土になじんだ生産資源を生かすとの観点から、稲作転作作物等を組み合わせた水田の有効利用によりまして、水田農業の総合的な生産性向上を図ることが必要であると思います。このためには、土地基盤整備、担い手の育成あるいは規模拡大生産組織の育成、中核的施設の整備、技術の開発、普及等により二十一世紀に向けて生産性の高い水田農業を実現してまいる所存であります。  米価の長期見通しでありますが、米については中長期的にも過剰基調が見込まれておる今日であります。需給調整の努力が引き続き必要であると考えております。また、現在大幅な内外格差等があることから、米の需給方針について国民の理解と支持を得るために国民の理解し得る価格での安定供給に努めることが必要であります。したがって、将来の米価水準については具体的に申し上げることはできませんが、このような観点を踏まえますと、政府買い入れ価格については、本年六月の農政審議会報告にもありますように、構造政策の推進にも配慮しつつ、生産性の高い稲作担い手層に焦点を置きながら、稲作生産性向上とコスト低減を価格に的確に反映させることが需給調整とあわせて大事であると、かように考えております。
  14. 一井淳治

    一井淳治君 ただいま質問したことは、もう一つ食管制度の基幹部分を堅持していただく決意があるのかどうかという問題と、もう一つはお米の輸入自由化の問題でございますけれども、これまで農産物については自由化をしない自由化をしないと言われながら、最後は自由化をしていくという経過があったわけでございますけれども、お米については輸入の自由化はしないという決意をかたくお持ちなのかどうかという点についてお尋ねしたいと思います。
  15. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) これまでも米の問題につきましては、当委員会で何回か私の決意のほどは申し上げておるつもりでありますが、米は日本国民の主食であり、かつまた稲作農業というものが日本農業の根幹をなすという特殊性がございます。そして、水田稲作は国土や自然環境の保全、地域経済上の不可欠な役割を果たしていることはもう御案内のとおりであります。このような米及び稲作の重要性にかんがみまして、さらに国会における決議等の趣旨を十分体しながら、今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいりたいと存じております。  ただいま先生の御指摘のように、ほかの農産物では自由化しないと言って自由化したじゃないかと、こういう御指摘でございますが、ほかの産物等におきましては御案内のとおり、昨年ガット等でガット違反という裁定が行われました。したがって、我が国政府としてはぎりぎりの選択としてあのような措置をとらしていただいた次第でございます。しかし、米はただいま申し上げましたような条件から考えましても、また国民全体の私はコンセンサスは得られると、こういうように思っております。したがって、これからも米の自由化は一切行っていかないという強い決意のもとに今後とも進んでまいりたいと存じております。  食糧管理制度につきましては、米の我が国の食生活及び農業に占める格別の重要性を踏まえまして、米の需給及び価格の安定を図るという制度の基本的な役割は維持しつつ、本年六月の農政審議会の報告の方向に沿って、国民各界各層の理解と支持が得られるように制度運営の改善を図ってまいりたいと思っております。
  16. 一井淳治

    一井淳治君 もう一点、ただいまの大きな質問の中には入っておりまして、これは私は特に大臣の答弁をいただきたいということで、前もって質問事項をファックスでお送りしておったわけでございますけれども、長期的に米価はどうなっていくのかという問題でございます。  これはもう、農民は土地の改良にいたしましても一年で土地の改良ができるというわけでなくて、数年間かかって苦労に苦労を重ねて土地の改良、改善をやる。相当先が読めないと米の規模拡大等もできないということが言えると思うわけでございます。言葉がきついかもしれませんが、毎年毎年場当たり的と言っては悪いかもしれませんが一その場その場で米価が決定されていくということでは農民も長期的に米づくりに本気で取り組むことができない。やはり長期的な展望というものが必要ではないかというふうに思うわけでございます。その点、これは極めて難しい問題であることはよく認識しておりますけれども、やはりそういう努力、農民の期待にこたえるという努力が必要じゃないかと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
  17. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 先ほどもちょっと申し上げたつもりでございましたが、今後とも基盤整備等を強力に進めまして、そして構造政策を展開いたしまして、あるいは地域の営農集団あるいはまた受委託作業等の規模拡大等をやりまして、そして内外格差をなるべく縮めていく、こういうことは我々農水省としても最大の努力を傾けていかなきゃならぬと存じております。  そしてまた、国民が非常に良質米志向、こういう方向に変わりつつありますので、私どもはどうしてもそうした国民のニーズにこたえるべく良質米生産志向の方向に今後とも指導、誘導をしていくべきだと、こういうように考えております。したがって、その時代の経済の状況あるいは需給状況、そうしたものを勘案して価格は決定されると思いますが、しかし冒頭申し上げましたような構造政策、基盤整備事業あるいはそういう稲作集団の育成、そういうものをやっていきますればおのずとそうした米の生産性向上あるいはコストダウンというのは図られると、こういうふうに思いますので、それを即また価格に全部反映ということでは、意欲ある農家の希望にも沿えないところもありますので、今後の米価というものはその時代によって検討を進めていかなきゃならぬと、かように考えております。
  18. 一井淳治

    一井淳治君 ただいまの大臣の最後の御発言の、時代によって米価を決めていかなきゃならないという御発言の意味でございますけれども、その場その場で決めていくというのではやはりぐあいが悪いので、これは米価に限らず乳価の問題でも同じでございます。農民が計画生産ができるように将来的な見通しが立つ農政をやっていただきたいという、これは農民の強い要望でございますけれども、この点についてはどういう御認識でしょうか。
  19. 近長武治

    説明員近長武治君) 私から若干補足さしていただきたいと思いますが、今一井委員の御指摘はやはり農業関係者から強いわけでございます。したがいまして、米価算定当たりましても、やはり一定期間余り大きく変わらないような算定方式が必要であるというようなことで、従来も一定期間に適用されるべき算定方式米価審議会等にあらかじめ御検討いただいて決めていく、それからなるべく算定要素もそれぞれの時点でそう変わらないように努めていく、これが私たち今まで事務的に米価運営をやってきた考え方でございます。  先般も、やはりこういうような論議がございまして、米価算定方式基本については一定期間、後ほどまた御議論が出る新たな算定方式も、大体三年間はこの方式でやろうというような考え方で決めてきたことでございますので、基本的な考え方はなるべく価格算定の仕方はある期間安定するようにと、そういうことがひいては農家の方の米価についての信頼でございますとか、ある程度生産性向上の目安のよすがにもなるというようなふうに考えておりますので、事務的に若干補足させていただきました。
  20. 一井淳治

    一井淳治君 次に、生産者米価の額の問題でございますけれども、これは農家の方々が何か口を開くと言われることでございますけれども、昨年までの米価水準の低下によって五十一年の水準に落ち込んでいると。この間に物価の方は四六%、賃金の方は七四%上昇しているではないかということがよく言われております。理屈の問題は、これはもういろいろつけられるわけですけれども、現実の問題として、農業以外の企業に雇用されている労働者の賃金に相応するだけの収益が米づくりから確保されないと、稲作規模拡大の意欲が持てないということになってくるのじゃないか。  やはり農業を守ろうとすればそれ相応の賃金を、それ相応というとこれはもう労働者の平均賃金と比較する以外ないと思います。それが現在確保されていないために稲作農家の意欲が非常に低下しているのじゃないか、規模拡大も期待し得ない状態ではないかというふうに思いますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  21. 近長武治

    説明員近長武治君) 生産者米価というのは、稲作農家の方の収入としては収入の点では大変重要なことであろうかと思います。御案内のように、生産者米価につきましては生産費所得補償方式に基づいて米生産費基礎といたしまして、特に労賃評価につきましては、家族労働費につきまして農村賃金よりも高い都市均衡労賃評価がえをする、こういうようなことで算定をしてきているわけでございます。ただ、現在の日本の稲作構造というのは相当多様なものになっているわけでございます。したがって、ひとしく稲作農家とはいい、相当規模の大きい方あるいは集団組織、あるいは営農組織というようなことで高い生産性を上げておられる方、しかし必ずしも稲作に対して十分な時間をとらず、どちらかというと農業以外のところに中心の置かれている方、こういうようなのが現状ではないかなと思っております。  したがって、生産費及び所得補償方式を運用していく際に、この算定方式について、どういうふうにすれば幅広い国民の理解と支持が得られるかというようなことにも配慮しなければならないわけです。そういうことを配慮しつつ、本格的に稲作に取り組んでおられる個別経営あるいは営農集団等については、やはり生産費及び所得を補償しなければいけない、こういうような考え方で運用していくということが今後の米政策の重要な点ではないかなと思います。  もちろん現在の稲作状況については、背景といたしまして米についての過剰基調ということもございますので、米価算定する際にはそういう過剰基調に対応した需給調整機能というところも無視できない、かように思うわけでございます。  なお、当然のことながら将来の稲作担い手を育成していくということは、価格政策といいますか、農家一定所得を付与するということが価格政策としては大事な点でございますが、それだけではなかなか進みにくい。先ほど大臣からも答弁申し上げましたように、やはり構造政策、生産対策、こういうようなことを展開して、これと相まって並行して進んでいくというようなことではないか、かように考えております。
  22. 一井淳治

    一井淳治君 理屈を言えば切りがありませんし、また現在の農家稲作の収入に対する依存率が低いではないかということまで言えば、これはもうほかの作物なりほかの兼業収入で頑張って稲作は余り頑張らなくてもいいんじゃないかというふうなことにもなってくると思いますけれども、そういった議論に逃げないで、本当にお米をつくることを専業にやった場合に賄っていけるんだという説明が農民の方々に対してつかないと、米作の規模拡大というものはとてもできないのじゃないかというふうに思います。現実に農民の方々が不満をお持ちである、これは否定できないと思います。不満の原因はやはり労働賃金に比べて統計数字から見ましても半分近くという状態でございますけれども、この辺に一番の問題点があるのじゃないかというふうに思います。それで、理屈の問題は度外視して、現実の問題についてこれでは規模拡大ができないと思うんですけれども、現実の問題について御見解をお伺いしたいと思います。
  23. 近長武治

    説明員近長武治君) 米価算定する際に、先ほど申し上げましたように生産費基礎にしてきている、これが現実の所得生産費あるいは所得を補償するという点では大変に重要な点ではないかなと思います。算定をする際には現実に実現した生産コストを基礎にいたしまして、そしてそれを一定のルールで評価がえ等も加えながら米価算定方式という形で積み上げてやってきているわけでございます。  先ほどやや家族労働費等について御説明申し上げましたが、全般的に申し上げれば、やはり従来から算定しております算定方式というのは、算定要素に該当するそういうところの農家の方、つまりまさに算定対象農家でございますが、そういう方の現実に実現しているコストを基礎にして持ってきているという点でございますので、米価水準が下がるという点については生産農家の方の  一般的な御不満はあるということは私たち承知しておりますが、やはり価格自身はこれからの稲作の方向等も考えますと適切なものであろうかと思います。  やはりすべての規模のすべての稲作農家生産費及び所得補償をするということでは、生産費所得補償方式自身についての論議が出てくる。やはり先ほど申し上げましたように、担い手層を中心にするというような考え方で今私たちの方は米価算定をして諮問しているわけでございますが、この中身というのは、担い手層については十分に生産費及び所得を補償し得る、そういうような内容になっていると、かように承知しております。これを中軸にしながらそれぞれ生産コストの低下のために例えば規模拡大していく、これはいろんな道があろうかと思います。個別経営としての規模拡大だけでなくて、営農集団あるいは稲作の作業の受委託、こういう流れが各地では出ているわけでございますので、そういう動向を踏まえながら対処していく、こういうふうに考えているわけでございます。
  24. 一井淳治

    一井淳治君 このたびの諮問では、いわゆる一・五ヘクタール層以上の方々を基準に置く新算定方式による諮問がなされておるわけでございますけれども、一・五ヘクタール以上層ということになりましても、現実に平均的には二・六ヘクタールというふうになりまして、現在の農民の方々の大半をつかんでいない算定方法になるのじゃないか、これが恐らく現在の農村部の方々の一番の疑問ではないかというふうに思います。これについてはいろいろ長い理屈がつくと思うんですが、それを全部おっしゃったら私の質問時間なくなってしまうのでできるだけ簡明にお願いしたいと思います。
  25. 近長武治

    説明員近長武治君) 最初に二・六ヘクタールという数字の持っている問題点について申し上げておきたいと思います。  この二・六ヘクタールというのは農業団体等が主張している数字だと承知しておりますが、一・五ヘクタール以上層を平均すると二・六ヘクタールになる、こういうことのようでございます。ただ米価算定の場合には一定農家層の生産費平均して計算すると、過去三年間のそれぞれの生産費を積み上げる際にも、その算定対象の中に入る農家の方の生産費平均するということでございますから、平均ということから伴いますと当然その中の下限のところに比べると高くなる、こういうようなことでございます。したがって、一・五ヘクタール以上層であるから二・六ヘクタール以下は生産費及び所得が補償されないという論理は、実は米価算定の一番ベースのところについて若干誤解があるように思われるわけでございます。それを若干冒頭に申し上げたいと思います。  それから、今回一・五ヘクタール以上層で算定いたしますと、当然のことながらその階層に該当する農家の方は算定対象になるわけでございます。なおかつ一・五ヘクタール未満であっても、それに匹敵する生産あるいはそれ以上の生産性を上げている農家の方がかなりございます。したがって、そういうことを総合いたしますと、この算定方式対象になる長家というのは日本の稲作農家の優に大半を占めている、かように理解しております。  数字的には、また御質問があれば申し上げたいと思います。
  26. 一井淳治

    一井淳治君 いろいろ申し上げたい点ございますけれども、私の質問時間の関係がありますので、午後の質問に譲らせていただきます。  ただ、大臣がいらっしゃるうちに一点だけ、重要なことでございますので、要望さしていただきますけれども、最終的な米価の決定に当たりましては現行価格を維持する、そしてこれに消費税を加算した金額、これだけは下らないような米価決定をいただきたいということを要望申し上げまして、私の質問時間が参りましたので、午後の質問に譲りたいと思います。
  27. 上杉光弘

    上杉光弘君 午前と午後に分かれて質問がありますから、午前は大臣に基本的なものをお伺いしたいと思います。  このたびの米価は一・五ヘクタール以上を算定の中に織り込んだということで、従来の価格政策から一歩構造政策に踏み込んで、我が国の農業の方向をも示した価格決定の算定方式ではないか、そのように私は受けとめておるわけでございます。したがって、まず本年度米価の決定に対する大臣の基本的な考え方をお聞きいたしたいと考えるわけでございます。  これまで農政の中では、総合農政論というのがその基本をなしてきたわけでございまして、風船の一方が引っ込めば一方が膨れるというような総合農政論だけでは私は対応できない時代になった、こう思っておるわけでありますが、具体的なものは午後に渡るといたしまして、例えばであります、食糧管理費の割合が、五十年は農林予算の中の四一・七%を占めていた、六十年にはこれが二一・一%、約半分になった、そして六十三年には一四・一%という割合まで食糧管理費は下がってきたわけでございます。  それは、政府が全体の予算を膨らましてこの割合が減ったというものだけではなくて、農家の減反調整価格の引き下げ政策という農家の犠牲の上に成り立つ私は割合の減少であった、こう思うわけでございますが、そのようなものも含めて、わずかに一一%ぐらいしか占めない一・五ヘクタール以上の農家、それらを踏まえて、大多数はそれ以下の農家という我が国農業経営規模というものも十分考えながら、一・五ヘクタール以上というものを算定の中に織り込んだというのにはそれなりの政府の決意と、農政に対する取り組みの考え方があってのことだと、こう私は受けとめておるわけでございまして、本年度米価決定の基本的な考えをまず大臣にお聞きしたい。
  28. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 本年度米価決定の基本的な考えについてのお尋ねでありますが、上杉委員も御案内のとおり、昨年来新算定方式につきましては党内でも相当議論が行われた段階でありましたが、昨年、党と政府の申し合わせ事項によりまして、平成元年から新算定方式を採用する、こういう決定がなされておったわけであります。したがって、今年度米価算定当たりましては、この新しい算定方式を採用させていただくことにいたしました。  これは、ただいま委員からいろいろとお話もありましたが、需給が依然として過剰基調にございまして、そしてまた、あわせて相当の内外格差があるという状況のもとで、米の需給方針について国民の理解と支持を得ていくためにも、稲作の一層の生産性向上を図りながら農業経営の安定を確保して、国民の理解し得る価格での安定供給を行う必要があると存ずるわけであります。したがって、今年の生産者米価につきましては、このような観点を踏まえまして、また稲作の将来展望に立って生産性の高い稲作担い手層を焦点に置きまして、需給調整機能を十分強化した新しい算定方式に基づいて算定を行ったところであります。また、市場評価等を踏まえました品質格差拡大も行うことといたした次第でございます。
  29. 上杉光弘

    上杉光弘君 ただいまの考え方は了とする点と、もう一歩積極的にそれなりの考え方をお示しいただきたいという考え方があるわけでございますが、例えば農政論でいきますと、私は価格政策で我が国の政策を誘導するやり方というのは若干問題を感じておるわけであります。まず、構造政策をしっかりしたものとして我が国の農業というものを方向づけし、しかる後に農家の暮らしを安定かつ向上させるような形でこれは誘導させなければならない、こう思っておるわけでございます。  そのような視点から私は農業政策を見ると、どうも最近の国民世論あるいは政府のあり方というものは農業軽視ではないか、そのように言わなければならない点が数字からうかがえるのであります。例えば、我が国の農業予算が国の予算に占める割合は今年度で四%であります。欧米諸国に比べますと農業の予算配分が低いだけでなく、その割合を急速に低下させておるというのは厳然たる事実であります。しかも、日本の予算で農業予算の比重が最も高かったのは昭和四十一年度の一〇・九%、五十七年度以降は財政赤字削減を理由に実額でも農業予算をねらい打ちにして大幅にこれは減らしておるわけでございまして、農業総産出額に対する農業予算の割合、これらを欧米諸国に比べますとどういうふうになっているかがうかがい知れるわけでありまして、我が国の税収等を中心にした歳入で確保した財源を何に使うかというのは、国としてのこれは何を重視しておるかのあらわれにある、こう私は言っても差し支えないと思うわけでございます。  御存じのとおりでございますが、予算から見た我が国の農業というものを見ると、例えばであります、国家予算に占める農業予算は、日本の場合  一九八六年度で四・七%、アメリカは五・七、フランスは一〇・二、西ドイツは六%というように高いわけであります。例えば、農業総産出額に対する農業予算の割合は、我が国は二二%、アメリカは実に三五・三%、フランスは五八・一%、イギリスは二六・五%、西ドイツ二七・四%でありますから相当にまだ高い。また、農家二戸当たりの農業予算額は日本が五十八万円、アメリカは四百三十万円、フランスは二百六十六万円、イギリス二百五十八万円、西ドイツ百六十六万円でありますから、財政論的な農業政策という、大蔵主導と我々は受けとめておるわけでありますが、この点からいっても、今財政的にどうだと言われるような意味で、農業予算というものが果たして国民批判に値するだけの政策というものが十分とられておるかというと、ここに私は大きな問題意識すら持っておるわけでございます。  さような意味で、財政論的視点からの農政あるいは経済論的視点からの農政、例えば経済論、経済的な視点からの農政ということになれば、財界が提言した五年間で今の米のコストを半額にして、あとの三年で国際価格並みにするという現実を無視したような提言すら出てくる。私どもは憤りすら考えるわけでございまして、このような意味から、大臣はどのようにお受け取りになっておるのか、これをまずお聞きしたいと思います。
  30. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいま上杉委員から予算面、財政面からの農政に対する御指摘がございましたが、このことは私も全く同感でございまして、今まで何回か記者会見等で申し上げてまいりました。したがって、私は財界が提言するように、日本の農業は過保護であるということには全く当たらないということをこの前からたびたび記者会見なり、その他各委員会でも申し上げておる次第でございます。したがって、私どもも農業予算の拡大、諸外国との比較というものも十分部内でも承知をいたしておりますので、これから十分財政当局と交渉はしてまいりますが、ただいまのこの比較に当たりましては、我が国の場合は予算シーリングという厳しい枠がありますので、当初予算で比較いたしますとそのような結果が生まれるわけですが、例えば大体菜種、大豆とかあるいは水田確立対策費の補助金とか、あるいは生産者団体に対するいろんな補助金というものは補正予算で相当追加をいたしておるわけであります。  したがって、今後ともこうしたシーリングの枠というのは政府・与党の一致した今日の力強い大きな政策でありますから、この点は一気にこれを打ち破るということはなかなか問題等あるといたしましても、昨年度等におきましても補正予算で大幅な予算を認められておる次第でございます。したがって、これからも私どもはそういう面で、やはり守るべき農政につきましては当初予算ではできなくても自後の補正において十分な処置はしてまいりたい、こういうように考えております。  ちなみに昨年度等におきましても、補正後の農林水産予算のシェアは一〇%まで伸びておるわけであります。したがって、これからもそうした方向で最大の努力をしていきますが、ぜひまた委員各位におかれましても、国民の中にも相当日本農業は過保養だということで非常に誤った報道がなされておりますので、この点私どもは今後ともいろんな資料を通じて日本農政が適正な助成策をやっておる、こういうことを国民にもPRしてまいりたいと思っておるわけであります。
  31. 上杉光弘

    上杉光弘君 大臣から、今後の方向としては補正予算で農民の要求にこたえる、すなわち一・五ヘクタール以上というものを米の算定基礎の中に導入したことはそれらの中に対応するというふうに受けとめまして、午後の論議に私はこれは持ち越しておきたい、こう思うわけでございます。  そこで、農政論を論ずる場合に、これまで我が国の農政を基本的に進めてきた総合農政論というのには今日の国際状況のもと、また新たな農政展開、自由化後の国内対策等の対応、これでは総合農政論だけでは対応できないと私は受けとめておるわけでございまして、さような意味では財政論的視点からの農政あるいは経済的視点からの農政、もう一つ考えられるのが国土保全的視点からの農政論というのは、当然明確に現場を知り、また農政通をもって任じられる堀之内農林水産大臣でありますから、方向づけを私はぜひしていただきたいと、こう思うわけでございます。  さような意味で、平成元年度の予算の中に農林業あるいは農村が持つ多面的な機能役割、これを正しく評価するための調査費が二億一千万程度ついておるわけでございます。これは新しい農政の方向を目指すものであり、国土保全的視点からの農政の確立を目指したものだと言って私は差し支えないと思うわけでございます。さような意味で、農林業が持つ機能役割が定性的評価から定量的評価に、たびたび私は委員会でも質問をいたしておりますが、そのためには計量化政策というのが当然必要でございまして、この点についての大臣の見解をお聞きいたしたいと、こう思います。  午後の論議に譲ることにいたしますが、農林予算を切り詰めてみましても、例えば治山治水事業、第七次でいきますと治山事業で一兆四千百億、治水事業で八兆円という九兆四千百億円もかけなければ我が国の国土保全はできない、あるいは治山治水事業はできない、災等を未然に防ぐことはできない、こういうことに結論がなるわけでありますが、五、六年の差を比べてみましても、例えば土石流危険渓流というのが五十六、五十七年の時点で六万二千二百七十二カ所でございました。それが六十一、六十二の時点では七万四百三十四カ所、二二・一%伸びております用地すべりの危険箇所が五千七百七十七カ所が一万二百八十八カ所、七八・一%の増、急傾斜地崩壊危険箇所が五万七千九百三十五カ所が六万二千五百七十カ所、八%増、山腹の崩壊危険地区が六万四千二百十一カ所が八万四千二百五十七カ所、三一・二%の増、崩壊土砂流出危険区域が六万三千五百七カ所が八万六千二百四十四カ所、三五・八%、このように急激に危険箇所が増加しております。  これらは農林業の持つ国土保全のベースとしての治山治水事業を初め、その機能が低下しておるということにほかなりません。したがって、農林予算を今のような形で切り詰めてみても、一方で財政負担を圧迫するような多額の財政負担のものを要しなければならないという今日の日本の国の実情は、好ましい近代国家のあり方ではないと私は断じて差し支えないと、こう思うわけであります。  さような意味で、大臣は今後の一・五ヘクタールという規模拡大の方向を目指されました。同時に、自由化後の国内対策あるいは我が国の農業を守るという意味からも、そのようなものについての考え方をお聞きいたしたいと思うわけであります。さきの中間レビューでアメリカとヨーロッパと日本の意見が対立をいたしました。補助金等カットして、我が国の農業の保護をアメリカは強く批判いたしたのでありますが、ヨーロッパ、我が国はそのような立場を拒否し、特にヨーロッパは社会政策まで踏み込んだ論議をいたしておるわけでございます。そのようなものも踏まえて、大臣の基本的な決意と考え方をお聞きいたしまして質問を終わりたいと思います。
  32. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいま上杉委員から農林水産業の多面的な機能等につきまして御指摘がございましたが、私も考えは全く同感であります。したがって、これから農業林業が国土保全あるいはまた自然環境の保護、そしてまた国民の緑豊かな憩いの場所の提供、こういう公益的な面というものについて、私は一部理解というのが少なかったのではないか、こういうように私も理解をいたしております。  したがって、大臣就任以来、私は農林水産業というものは国民に安定的な食料供給を行うとともに、もちろん安定的に良質でそして安全、衛生的な食料を提供すると同時に、このような公益的な面というもの、これは金銭やその他で計算できるものではありません。多大な役割を持つわけでありますから、こうしたことを十分国民の皆さんに御理解をいただけるような方向でこれからも十分努力していきたいと存ずるわけであります。  したがって、これからの予算面でありますが、そうした意味で私は今財政当局にも、でき得れば農林水産省に限りシーリングを外してほしいというようなことも要望いたしておるところでありますが、なかなかそこまでは理解がいかないようであります。特に、今後中山間地帯の振興というものは極めてこれは意義が大きいわけであります。先ほど、この川上の対策というのは治山治水という両面からもちましても大変重要な役割であります。農業林業が相当そうした面で大きな役割を果たしておりますから、災害が起こってこれを復旧するという面におきましては多大な財政負担を要するわけでありますので、そういう面も十分説明申し上げながらこれから予算の獲得には努力していきたい、こういうように思っておるわけであります。  今後また、いよいよシーリングの時期に入りますけれども、委員各位のまた力強い御支援等もいただきながらこの予算の確保、何といっても予算を確保せずしていろいろの施策はできませんので、この点最大の努力を傾けてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  33. 及川順郎

    及川順郎君 きょうのマスコミ報道、テレビの放映等を見ておりますと米価据え置きは何か既定事実のような報道がなされておりまして、けさの解説では一万六千三百十六円、これは一日限りの価格なんというような解説もなされております。  この据え置きの要求というのは、農業団体各団体の生産者の人たちの気持ちというのは、全く一〇〇%私は受け入れるわけでございますが、これに対応する米価の決め方についてはいささか不純な感じがしないでもない。というのは、引き下げでは参議院選挙は戦えないという、こういう政府・自民党の思惑が働いているのではないか。選挙のないときにはたやられるんじゃないかという、こういう疑念が農業団体や生産者の中に根深くするという、こういうことになりはしないか。これは大型間接税やらないと言ってやられて、しかも現在の状況に至って消費税に対する国民の高い批判があるのとオーバーラップいたしまして、大変このことを考えるわけでございますが、この米価算定をめぐる攻防戦に対する背景、動機といいますか、この点に対して政府閣僚としまして、大臣はどのような認識を持っておられるか、まずその点を伺いたい。
  34. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 今回の米価の新算定方式についてのお尋ねかと存じますが、米につきましては需給過剰基調にあり、相当の内外格差があるという状況のもとで、直面する諸問題を克服いたしまして稲作の将来展望を切り開いていくとともに、米の需給方針について国民の理解と支持を得ていくことが重要であると考えております。このため、稲作の一層の生産性向上を図り、農業経営の安定を確保しながら、国民の理解し得る価格での安定供給を行うことが必要であると考えております。したがって、新しい米価算定方式はこの観点に立ちまして、生産性の高い農家らしい農家の育成と米の過剰基調への対応という観点に立ちまして、生産性の高い担い手層に焦点を置きまして、そして需給調整機能を強化した米価算定を行ったものであります。  したがって、今回の政府諮問は冒頭に指摘されましたような、政治米価とか政治価格によってこれを諮問したということには当たらないと思っております。
  35. 及川順郎

    及川順郎君 それでは米価審議会諮問して、その諮問に基づいて米価審議会が一つの結論を出す、それがその後、米価を決定する与党・自民党との話し合いの中でその価格が動いていく、こういう現実の中での米価審議会の存在意義をどのようにお考えになっておられますか。
  36. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 本日遅くなるとは思いますが、米価審議会から答申をいただくものと、かように期待をいたしておるわけであります。答申後におきまして与党との調整はありますが、農林水産省といたしましてはこの諮問によることが最も妥当であると考えております。
  37. 及川順郎

    及川順郎君 私は、新算定方式、この問題点については後ほどまた午後に議論さしていただきたいと思いますが、総括いたしまして稲作農家規模拡大を急ぐ、先ほども自民党委員の方からも出ておりましたけれども、一・五ヘクタールあるいは価格政策に引きずられてやはり規模そのものが軽視されている、危険視されているという、こういう危険視の指摘もございましたが、やはり稲作農家規模拡大を急ぐ政府による小零細農家の切り捨てに通ずるものだという、こういう総括した印象はどうしても免れないわけですが、大臣この点に対してはどのようにお考えになっておられますか。
  38. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 一・五ヘクタール層によって価格政策を重点に置いて、構造政策が後になるのじゃないか、そして小農切り捨てになるのじゃないか、こういう御指摘でありますが、私どもは価格政策とあわせて構造政策を強力に進めて、そして営農集団あるいはまた受委託作業等も積極的に今後取り組んでいきたいと思っておるわけであります。したがって、そういう小さな農業の受委託作業というものは、これからそういう小農のやはりコストダウンにも非常につながってくるわけです。御案内のとおり、機械の過剰投資というものもよく指摘されておる今日でありますので、我々はこのような構造政策をさらに価格政策と同時に一緒に進めていく、そして基盤整備等も十分今後ともさらに強力に進めていくというのが政府の方針であります。したがって、今後これが小農の切り捨て、こういうことに直接はつながらない、こういうように考えております。
  39. 及川順郎

    及川順郎君 やはり青年層の農業生産従事者がだんだん少なくなった、農業に対して後継者が希望を持てなくなってきた。大臣も、農政に対して農業の後継者、青年から大変な不信を受けているということを感じている、このように日農新聞でコメントされておられますね。  この原因というのはいろんな角度で議論されると思うんですが、やはり農業に対する将来展望が明確じゃない、これは非常に大きい問題だと思うんです。将来展望に連動する状況の中では、農産物の国際摩擦の中における自由化の問題です。結局牛肉・オレンジ等はやらないやらないと言っていたけれども、最後は自由化した、次は米だと、こういうやっぱり潜在的なものがあるわけですね。この米の自由化はしないという確たる保証について、大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  40. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) これはもうたびたび申し上げておるわけでありますが、農産物十二品目はガットの場でクロと裁定が出てしまったわけであります。現在の自由化主義陣営の一員として自由貿易を進める日本としては、これをのまざるを得なかったというぎりぎりの選択をいたしたわけであります。その後また、牛肉・かんきつに当たりましては、いずれガットに提訴されればやはりこのことはクロの裁定が出ることはもう確実だと、したがって、アメリカとの二国間協議によって条件をよりよくかち取ることによって、これをする方がベターであるという方向であのような決着を見ました。  したがって我々は、この十二品目及び牛肉・かんきつに対しましては、もう御案内のとおり、昨年来先生方の御協力で畜産二法を初めそれぞれの対策を十分講じてまいったところであります。このことがまだ、畜産地帯の農家の方々はある程度の御理解を得ておると私は思いますが、畜産地帯あるいはかんきつ地帯でない地域農家の皆さんには不十分であったろうと存じます。したがって、そのような結果が農政不信という形につながり、あるいは米という問題に将来の不安を感じておられる、このことは我々も十分承知をいたしておる段階であります。  そこで、これからの米問題はいつも申し上げておりますように、現在ウルグアイ・ラウンドで進行中ではありますが、アメリカが約十八品目か十九品目の農産物の制限をやっておりますし、あるいはまたEC諸国が約八十品目に近い農産物の制限をやっております。我が国はわずかに十三品目でありますから、こうしたものがウルグアイ・ラウンドで幾ら協議されましても、日本の立場というものは十分貫ける、こういうように考えております。これは各国が抱えるそうした問題というのは多いわけでありますから、どの国もこれを一気に自由化に踏み切るということは到底考えられません。また、特に米の問題は国民全体のコンセンサスを得られる、あるいは稲作農業が国土保全や自然環境という立場で公益的な機能相当発揮しておることも御案内のとおりでありますから、こういうものも十分国民に御説明申し上げれば、また公益機能性という立場から、私は稲作というものに国民全体のコンセンサスを得られると、かように確信をいたしております。  そのような観点に立ちますときに、今後ともほかの農産物とは特殊な立場にあります稲作でありますから、そして日本の農業の基幹をなすわけでありますので、そうした意味で私は、この米の自由化という問題は絶対にこれはいたさない、また十分そうしたことで対処できると、かように確信をいたしておる次第でございます。
  41. 及川順郎

    及川順郎君 将来を考えますと、ガット十一条のもとで、米の輸入制限は国内の状況がございましても正当化することができるだろうか、押し切れるだろうか、こういう問題はどうしても残ります。これは大臣、国際社会の中で生きるものとしまして、この点のところを十分これは今後用心に用心を持って臨んでいただきたい。これは答弁は要りません。今後の状況として、ぜひこの点に対するガードの固めをしっかりしておいていただきたいということを要望しておきます。  大臣、今お話がございましたけれども、私は最後にやはりこの米、米価につきましても米生産農家の人たちの主張というもの、そしてまたその置かれている立場というものを理解する、これはやはり国内における消費者側の人たちの理解と信頼がなければ、これは相互理解の、相互信頼の上に立ってなければこの存続というものは、そして将来にかけて希望の持てる農政の確立ということは非常に難しい問題になってくるわけです。  私はたびたび申し上げておりますけれども、そういう意味で、生産農家消費者の相互理解、相互信頼を深める場づくりというものに対する取り組みがまだまだ弱いのではないか、こんなぐあいに考えております。生産農家の人たちの状況を理解してもらうあるいは消費者の人たちの気持ちも酌み取ってもらう、こういう場づくりに対して、政府、行政当局としましてもっともっと取り組むべきではないか、このように強く感じておるわけでございますが、大臣のこの点に対する見解を承りまして、大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  42. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいま及川委員の言われましたことは最も大事なことであります。したがって、我々農林水産省としても、いわゆる農業サイドにおきましても、生産コストの引き下げとかあるいは合理化努力というものは、これは最大限にしていかなければなりませんが、やはり日本の置かれておる狭隘な国土という中における農家の立場、こういうものを十分消費者にも理解をしていただく、このような機会をつくっていき、そしてまた、やはり国産の食料というものを安定的に、しかもまた良質でそして消費者が最も要望します安全、衛生なものを我々は提供していく、価格においてはある程度諸外国に負けるかもしれませんが、安全、衛生、良質と、この三つから申せば十分安心して消費者が食べられる、こういうものを提供することによって消費者の理解も得られると、こういうように私は思っておるわけであります。  したがって、最近の米の動向を考えましても、標準米より良質米が圧倒的に愛用されておるという事実を見ますときに、我々はそのような国民消費者のニーズにこたえていかなきゃならぬと存じております。あわせて、将来の問題として私は、やはり国産証明、産地証明というものを今後強力に展開してまいります。ということは、やはり国民が国産で安全であるかどうかというものを確認する必要がある。ところが、そういう消費者サービスというのは今大変まだ立ちおくれをいたしておりますから国産のそうした安全、衛生ということを考えるときに、やっぱり産地証明というものをぜひ生産者並びに団体もこれを強力に進めていただく方向を行政的に誘導し、また指導してまいりたい、このことがまた消費者の信頼回復にもつながる、こういうように思っておる次第でございます。
  43. 下田京子

    ○下田京子君 まず、数字の確認をいただきたいと思いますけれども、よく国民に納得を得る米価という言葉を言われます。これはどういうことでしょうか。私は食管制度の原則を守ることだと思うんです。生産者米価に当たっては、再生産を確保する、農家の暮らしを守る、消費者に対しては家計の安定を旨とする、これが国民の納得を得る米価の原則だと思います。それを崩してきている今の政府・自民党農政に問題があると私はまず指摘しておきたい。  そこで、具体的に申し上げたいのは、五・一%の引き下げ、それを激変緩和で二・五五%引き下げで、またあした政治折衝で据え置きと、こういうお話でございますが、さて昨年の米価なるものがどんなものかという点で第一に確認していただきたいんですけれども、昨年の米価は、第二次生産費調査によってその生産費をカバーする農家戸数は二二%、販売数量でカバーできるのは二六%と承知していますが、間違いないですね。
  44. 近長武治

    説明員近長武治君) 数字は先生のおおむねおっしゃったとおりであろうかと思います。  ただ、一点だけ申し上げておきたいのは、米価と第二次生産費を直接比較するということは下田先生十分御承知だと思いますが、私からも一言あらかじめ申し上げておきたいと思います。
  45. 下田京子

    ○下田京子君 しかし、第二次生産費というのは、これは調査結果ですからね、結果を言っている。さらに数字の確認なんですが、この生産費調査によれば昨年の家族労働費、一日当たり四千三百四十一円、時間当たりにすれば五百四十三円ということになると思うんですが、間違いないですね。
  46. 近長武治

    説明員近長武治君) 数字的にはそのとおりだと思います。
  47. 下田京子

    ○下田京子君 ところで、五十二年までとられてきた方式で五人以上の全国製造業の平均賃金を使われていたと思うんです。その全国平均賃金で昨年は幾らだったかといえば、これは実に一時間当たり千六百五十三円三十三銭になります。ですから、結果として昨年の生産費で出てきたのはまさに全国製造業平均賃金の三分の一だ、こういう状況であります。  また、確認したいんですが、五十二年方式でいけば、米価ですね、生産者米価二万一千円になると思いますが、間違いないですね。
  48. 近長武治

    説明員近長武治君) 米価算定家族労働評価がえをどういうふうにするかということ。それから、全国労賃によることの問題点は下田委員十分御承知の上の御質問だと思いますが、数字としてはおおむね今おっしゃったとおりだと思います。
  49. 下田京子

    ○下田京子君 数字としてというのが大事なんです。つまり、公務員の給与の平均を言っているんじゃないんですよ。全国の製造業の平均で計算して言っているわけです。それを地方労賃にかえた。なぜかえたのかという御説明がいまだないんです。大臣、国民がだれが見ても納得できるというのはかかった資材とそれから労賃をきちっと償うということをやはり保証する、それこそがあすの農業をしっかり守っていく礎ではなかろうか、私は思うんですけれども、違いますか。いや、時間がないから大臣ですよ。
  50. 近長武治

    説明員近長武治君) 一点だけ申し上げておきたいと思います。  地方労賃を使うことについて、これまでも使った時点でも御説明申し上げてまいりましたし、ということだけ申し上げておきたいと思います。
  51. 下田京子

    ○下田京子君 大臣に聞いている、新大臣に聞いているの。
  52. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいま近長次長から答弁申し上げたとおりでありますが、米価算定家族労働評価がえに用いる都市均衡労賃を、東京や大阪等米生産にほとんど関係ない大都市地域賃金水準が強く影響する全国賃金をそのままとなると、生産地の地域実態が反映されないことになると想像できるわけであります。したがってこのことは、大幅な過剰基調のもとでは生産刺激的になり問題であると考えております。
  53. 下田京子

    ○下田京子君 つまりは、労働賃金をきちんと見ると生産を刺激するからできないんだという論理になるわけですね。それじゃ日本の国民の食料に責任を持ってないわけですよ。生産刺激的と言ったって、お米を中心にしながら他の農産物も含めて全体的に自給率を高めていこうと思うならば、労働費をきちっと償うというのは、これはもう当然じゃないですかということを申し上げまして、そもそも今回の諮問の中身というのは、農政審報告に基づいて一・五ヘクタール以上規模ということでもって、まさにさっき数字的にも明らかになりましたが、一部の大規模農家だけを見てあとはもう切り捨てるという方向であり大変問題だと思います。  そこで大臣、ちょっと農政審の報告との関係で聞きたいんですが、実にさらに突っ込んで今度は米市場を現物で開設するという方向が打ち出されております。これはますます今言う二重米価制度を崩して、食管を崩して国民の主食であるお米の生産にも流通にも価格にも責任を持たない結果になるのじゃないか、断じてそういうことがないと言えますでしょうか。
  54. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 今後の米管理におきましては、需要動向や品質評価が流通業者、生産者に明らかにされましてその自主性が発揮されるとともに、需要に対応した生産が行われるようにしていくことが重要であると考えております。このため、農政審議会報告においては、米の需給実勢、市場価格価格に的確に反映させるための価格形成の場を設置することが必要であるとされております。この価格形成の場においては、一定の要件を備えた集荷業者と卸売業者等が参加し、入札等の方法により集荷業者と販売業者の間の取引や流通業者間の過不足の調整を行うことが考えられます。いずれにせよ、価格形成の場につきましては、今後本報告の趣旨を踏まえまして関係者の意見を聞きながら、その具体的なあり方について速やかに検討していくことといたしております。
  55. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、急に何かメモをしきりに読み出しちゃったわけですが、私はお米の乱高下なんというものは起きないのかと、起きないと断定できますか、断言できますか。
  56. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 今日の米の需給状況から申し上げますと、国民の、消費者のニーズというものは良質米志向であります。今米価を協議いただいておるわけでありますが、私はこれからもそうした米の潜在的生産能力からいたしましても、委員が心配されるような乱高下ということにはならない。そのためには、我々が十分こうした価格設定を行うことによって下支えというものも十分確保され、また良質米においてはそれなりに消費者が評価をいたして消費をいただくものと、かように考えております。
  57. 下田京子

    ○下田京子君 大臣はそのようにお考えなんでしょうけれども、八年前ですね、農水省は食管改正法のときに想定問答集のところで何と言っていたかといえば、米の商品特性から見て大企業の投機的動きが入りやすい、国民に与える影響は極めて大きいということで、いわゆる市場開設なるものは問題だということを指摘しているんです。ですから、現物市場を開設したということは、次には先物にいき、そして大企業、大商社のまさに投機的商品という格好になっていき大変問題であるということを指摘しておきます。  ところで、限られた時間なので大臣、基本的なところを聞きたいと思うんです。大臣は中曽根元総理の際に有力な、現在もそうですが、農水関係議員としていろいろと御活躍されておられたんでしょう。その中曽根元総理が八六年の十月二十八日の七夕会でこう述べているんです。米問題では米国の圧力を利用すべきだというふうにお述べになっております。大臣は、今一粒たりとも入れない、大変勇ましいことを言われておりますけれども、中曽根派の所属議員としてこの中曽根元総理の発言にどういう態度をおとりになったんですか。また、どう思っていらっしゃいますか。
  58. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 中曽根元総理がどのような発言をされたかは承知いたしておりません。しかし、基本的に我々農政をずっと一緒に勉強してきた者として、そのような自由化とかあるいは一部自由、そうしたことは一切議論に弔応ずるわけにはまいらないということは、一つの派閥じゃなくて党全体の意見として我々は進めてきておりますので、元総理の発言がどこにあったかは承知いたしておりませんが、これからも一切一部の自由化も認めないという考えでいきます。
  59. 下田京子

    ○下田京子君 元総理は一派閥じゃないんですよ、中曽根元総理、総理当時にそういうお話をされているんです。それを知らなかったということは余りに不勉強じゃないでしょうか。ですから、それで大問題になっているわけですから、それはまずいよということで何か御進言されますかというのが一点。それとあわせて、松永駐米大使が昨年です、やはり十一月に竹下総理などに、日本も加工原料米ぐらいは輸入してはどうだろうか、一トンも輸入しないというんじゃ乗り切れない、柔軟な対応が必要だと、こういうことを進言しておられるわけですね。それに対してはやっぱり知らないんですか。何か物を申されましたか、どうお考えですか。
  60. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 先般松永大使が大臣室に、こちらに帰朝報告のときにお立ち寄りされました。私は、松永大使にも米という問題は軽々に大使発言してもらっては困る、米というものはあなた方外交でできる問題ではないということを強く指示申し上げておきました。まあ大使も了承されたと思っております。これからも今日までのいかなる経過があったにしましても、今責任者は私であります。したがって、これからの米政策というのは、私がなりまして相当いろいろな修正をするところもありましょう、あったかもしれませんが、しかし、党全体としても私どもは米は一部たりとも自由化しない、この基本方針に変わりはありません。
  61. 下田京子

    ○下田京子君 いやところが、大臣がかわるたびに、それから選挙の前と後ろと変わってきているわけですよ。  大臣ね、そうおっしゃるなら具体的にお聞きしたいんですけれども、さっきも自民党の議員さんから勇ましい発言がありました、農業予算が削られてけしからぬと。私と同じ意見です、その点は。  そこで申し上げたいんです。国民の税金がどこに使われているかによってその国の重点施策が見えると申し上げたいんですが、今NTT資金分除きますと三兆円割っているのが農林予算ですね。一方、逆に軍事費が三兆九千百九十八億円という格好になっておりまして、これまたシーリング抜きでまた来年も伸びていくというような状況であります。大臣、もう来年度の予算要求はいろいろ出ておりますけれども、農業予算、本当にしっかりやると言うならなぜにこの米価を引き下げる、据え置きは引き下げと同じですからね、消費税分等も含めれば。五十二年方式でいったって二万一千円になるわけでしょう。五十五年方式でいったって二万円になるわけですから、なぜこんなこと引き下げるんですか。政治は具体的じゃなきゃならないんですよ。言葉じゃないんですよ。具体的にどうやるかということをしっかりお示しいただける今答弁を求めて、私の質問を終わります。
  62. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 先ほどから、米価決定に当たりましては生産費及び所得補償を旨としてやっていく、そしてあわせて需給調整も兼ね備えながら決定されるということが今の米価算定基本方向でございます。したがって、最近の米の需給状況を考えますときに、潜在生産能力約千四百万トンというすばらしい大きな能力を持っておるわけであります。したがって、今後の米価生産を刺激するのではなくて、消費者がまた御理解をいただけるような価格、こういう方向でこの両方を兼ね備えた価格決定が極めて妥当だと思っておるわけであります。  御承知のとおり、もう現実には自主流通米が五四%を超える、こういう状況にあります。自主流通米は、御承知のとおり二万三千四、五百円が平均でございます。したがって、こうした消費者と生産者の合意によっては、今我々が検討いただいております生産者米価よりはるかに高い、六千ないし七千円という高い米価というものがやっぱり消費者の理解を得られておる、こういう実態を考えますときに、私は、今日の米価決定方式というのは極めて妥当な方向だと、かように考えておる次第であります。
  63. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私は、今日の農政運営がいかに困難であることかを十分承知をいたしながらも、あえて農林水産大臣に次の一点をお尋ねいたします。  我が国は、農産物輸入大国であるにもかかわらず、工業製品輸出大国のゆえをもって貿易摩擦が絶えません。その結果、常に農業が犠牲にされておるのが現状であります。工業化に力を入れる我が国と同じ道を歩んでおる隣の韓国においても、独身のまま農業で年をとっていく将来に絶望し、死を選ぶ農村青年が驚くほど多いと聞きます。相隣接する工業先進国のこの現状は、我が国の産業経済政策に何らかの是正を要するものがあるのではないか、このようにも思っております。  私はさきに、我が国の米の生産者原価が国際価格に比較して高いから引き下げるというのでは余りにも思想の単純さを指摘せざるを得ないことを申し上げてきました。本年度生産者米価も早くより政治加算で据え置きと言われております。生産者米価算定手法として、生産費のうち家族労働費は直近の都市均衡労賃、農業資材費など物財費も直近の農村物価指数でそれぞれ評価がえをするようになっておりますので、我が国物価が高ければ高いで既に織り込み済みのようでありますが、反面毎年の米価決定はまず結果としての数字が優先をされ、算定要素とり方などはそこで決まった答えに合わせるのが常識、結局政治に左右されるとマスコミも伝えておりますし、私もそのように理解をしておりますし、生産農民の多くの方々も米価など数字の魔術としか思っておいでにならないのではないか。それは何よりも、生産農民が自分自身の生活実感から値下げを可能にするほどの豊かさはどこにも残っていないことを十分承知しているからであると私は思います。  我が国物価は先進国の中でも最高の水準にあります。また、生産コストにかかわります社会資本の整備も経済大国の割には意外に低く、この両面からコストを押し上げる要因は幾らもございます。このことをそのままにしておいて米価だけを引き下げる政策は、結局は農業破壊につながるものではないか。さらには、我が国の農政が極めて重要な段階を迎えております中で、巷間伝えられますように、引き下げ諮問、答申、政治加算、結局は据え置きという中途半端な対応で果たしてよろしいのかどうか。農林水産大臣の所信をお尋ねいたします。
  64. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいまの山田委員の御指摘、私ももっともだと思っております。日本と韓国が置かれている立場本当資源のない国でありますからお互いに貿易立国でいかない限り、日本あるいは韓国の経済は成り立たない、こういうように私どもも理解をいたしております。  したがって、自由貿易というそのものには我々も全面賛成でございますが、そのことが貿易、大幅な黒字が農林水産物に大幅にしわ寄せされておるというのも今日の状況であります。したがって、私はこれまで何回か記者会見でも申し上げておりますように、今輸入総額の約四分の一が農林水産物であります。したがって、これ以上貿易黒字の解消に農林水産省が果たすことはできないということを強く閣議でも申し上げ、あるいは今度行われるパリ・サミットにおきましてもそうしたことを強く総理から言ってもらうように進言を申し上げておる実態であります。したがって、今おっしゃるように、米価そのものだけを取り上げるということは私も反対であります。  というのは、最近のまた記者会見でも申し上げておりましたが、やはり農村も国民みんなと同じような生活を楽しまなければなりません。そのためには、やはりそれなりの収入を得るということがこれは極めて大事であります。私は一つの例を申し上げますが、例えばアメリカと比較するならば、我々が一番基本になりますのは石油、油類であります。これが日本はアメリカの約三・三倍であります。米の末端消費は日本が三倍。ということになると、油が三・三倍であってこれだけを下げろといってもこれは無理であります。あるいは電気料やその他いろいろなもののもろもろの全体の物価というものを比較しながら我が農産物も比較をしてもらわないと、これは農村は立ち行かないということを強く申し上げておる次第でございます。  しかし、それはそれといたしましても、やはり現実に農産物価格が高いということは、これはもう国土の全体からいってやむを得ない状況である。したがって、それで十倍も七倍もやってもいいというわけではありませんが、我々はなるべくそうしたものを近づけていく努力はしていかなければこれは国民全体の理解を得られない、こういうことであります。したがって、今回こうした五・一%という計算上は出ましたが、これは激変緩和という形で半分戻しまして諮問を申し上げたと。この辺もある程度農村も消費者という立場も考えなきゃなりませんので、その面で引き下げの方向を打ち出したわけであります。  基本的には山田先生のおっしゃるように、これからも国民全体が理解をしてくれなければ、我々農林水産に携わる者だけでこれはできるものではありません。米価審議会消費者代表者もたくさんいらっしゃることでありますから、そういう方々の御意見というものも拝聴しながら最終的には私の責任で決定をいたしますが、ともあれ先ほど御指摘のように、今後私は全体的な物価というもの、こういうものを比較検討をしていただくように事務当局にも資料の作成を命じておるところであります。いずれまた、こうしたものも御披露申し上げて、そしてまた農民の皆さん方にも将来希望と夢が持てるような方向を必ず出してまいりたいと存じております。
  65. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私も、生産農民としての生産性向上への努力は肯定をいたします。ただ、ただいまの大臣の御答弁の全体の流れとして私は敬意を表します。実現に向かってせっかく御努力くださいますことを期待いたしまして、私の質問を終わります。
  66. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩をいたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  67. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査のうち、平成元年産米の生産者米価に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  68. 一井淳治

    一井淳治君 午前中に、新算定方式のことに関連して多少質問をさしていただいたわけでございますけれども、具体的に今回の諮問を見ますと、「需給事情にも配慮しつつ」という文章がこの諮問の最初に入ってまいりますし、それからまた諮問の文章の中に、米価需給調整機能ということを重視して米価を決定すべきであるという箇所が何カ所もあるわけであります。そういったところを見ますと、要するに米価を下げれば農民が米をつくらなくなる、それで米の需給調整をやるんだという姿がちらほらしまして、かえってそれが本音ではないかと。要するに、米の値段を下げれば農民が米をつくらなくなるというふうな諮問ではないかという感じが非常に強いわけでございます。  そして、小規模零細の農民を切るのではないと言われるんですけれども、結果としてそこをねらっているのではないかという嫌いが非常に強いわけでございます。そのあたりについての御説明をお願いしたいと思います。
  69. 近長武治

    説明員近長武治君) 現在の生産者米価は、生産費所得補償方式という算定方式で計算をしているわけでございます。ただ、食糧管理法の規定におきましても「経済事情ヲ参酌シ」というくだりがございまして、やはり価格でございますので、需給事情を全く考えないというわけにはまいらないというふうに思われるわけでございます。現にこれまで、昨年まで適用しておりました算定方式というのは、潜在的な過剰状況の中でございますので、そういう需給ギャップを反映した必要量、つまり生産を必要とする必要量と、それから潜在的な生産量との比率をもとにいたしました算定方式をとってきているというようなことでございます。  ただ、そういうようなふうな算定方式でございますが、基本はあくまでやはり一定対象になります農家生産費及び所得を補償する、そういうような考え方でこれを基本にしながらいろんな状況を考えるときに需給事情を考えてきている。今回の新しい算定方式に基づきます算定当たりましても、これは米価審議会の小委員会の報告書にも書いてございますが、やはり潜在的な需給ギャップを拡大しないように、それを縮小するような方向についてきちっとしたチェックも必要である、こういうふうなことになっております。基本は、新しい算定方式におきましても、そういう担い手層に焦点を置いた生産費所得というふうに計算しておりますが、同時にそういうようなチェックをしてきているというようなことが御質問の第一点のお答えでございます。  それから第二点の、小規模切り捨てではないかという点でございますが、今回の算定につきましても、先ほど御説明申し上げましたように、生産組織あるいは生産集団というようなところについても、算定当たりまして十分に念頭に置いた上で算定しているということでございます。それからもう一つは、規模が小さい農家の方も、現実に各地で行われておりますいろんな生産性の高いそういう事例が数多くありますが、そういう事例を拝見いたしますと、規模が小さい方は地域の中でいろんな営農集団に参画するとか、あるいは作業受委託というような形でやはり小規模は小規模の現状を踏まえながら、それぞれ創意工夫などをしながら、生産性の高い稲作農業を目指しておりますので、やはりそういう方向は助長していかなきゃいけない、かように考えている次第でございます。
  70. 一井淳治

    一井淳治君 きょうは資料をお配りいただいておりますけれども、昭和六十三年産米生産費の七ページを見ますと、六十キログラム当たり生産費調査されて記載されておりますけれども、第二次生産費の方を見ますと、きょうの諮問に出ております一万六千幾らという金額で生産費を償えるのは三・五ヘクタール以上というふうになっておるわけです。そうしますと、三・五ヘクタール以下の層はただいまの再生産が不可能になるのじゃないかというふうに思いますけれども、いかがですか。
  71. 近長武治

    説明員近長武治君) 先生御案内のように、生産費調査は第一次生産費及び第二次生産費をそれぞれ具体的に全国の統計情報部の組織で調査しておりますが、米価算定するに際しましてはやはり米価算定のルールというのがございます。したがって、生産費調査等のデータをもとにいたしまして一定のルールに基づいて計算をしている、そういうようなことでございますので、第二次生産費とそれから米価とを単純に比較する、こういうわけにはまいらないというふうに思うわけでございます。  現実に、今回の算定当たりましても、そういうようなところを配慮しながら一定のルールで、特に例えば生産費調査の中では農村の賃金家族労働などを評価しておりますが、具体的な米価算定当たりましては、そういう費用は都市均衡労賃評価がえするとか、そういうような配慮をしながら一定の階層の農家については、あるいは一定のそういう生産形態については生産費及び所得が補償できる、こういうふうな考え方でやっておりますので、御指摘のような懸念は比較的少ないのではないかなと、かように考えております。
  72. 一井淳治

    一井淳治君 現実にコスト割れを起こしているというわけでございまして、また離農についての統計数値は、稲作農家についての離農された方々の耕作反別別の数値はないんですが、一般の農家の方々の離農された数字というものは統計上確保されておりますけれども、そういうものを見ますと大農経営の方は相当高度に離農されていっているというふうな状況もございます。いわゆるコスト割れをさせないということをしないと規模拡大はできない。大規模農家は大体稲作専業で大規模にやっておられる方も相当多いと思うんですけれども、そういった方々が育っていかないというふうに思うわけでございます。重ねての質問でございますけれども、いかがでございましょうか。
  73. 近長武治

    説明員近長武治君) 日本の稲作農家のかなりの部分は、稲作以外の所得の道を持っておるというのが実は現実であろうかと思います。稲作以外の所得の道というのは、例えば施設園芸あるいは酪農というような、あるいは野菜作というような場合もございますし、それから農業以外の所得形態というのがあろうかと思います。したがいまして、どういうような理由で農業をおやめになったかというのはそれぞれ区々ではないかなというふうに考えるわけでございます。ただ、基本的に現下の米を売る状況からいたしますと、米価のみをもって相当大部分の農家所得を保障するというわけにはなかなかいきづらい面もあろうかと思います。そういうようなところを考慮いたしまして、米価審議会等でもどういうようなやり方で米価算定をするのが妥当であるか、そういう論議を尽くした上でのこの米価算定であると、そういう事情もお酌み取りいただきたいというふうに思うわけでございます。
  74. 一井淳治

    一井淳治君 次に、地代算定でございますけれども、今回の米価算定当たりましても固定資産税評価額を一つの基準にしておられるわけでございます。この固定資産税評価額というのは、俗に言えばただっこに近いような数字でありまして、現実の売買価格に比べると本当に取るにも足らないような低い額でありますけれども、この固定資産税評価額を基準にすることは今後やめていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  75. 近長武治

    説明員近長武治君) 今の御指摘は、自作地地代についてどういう評価をするかということであろうかと思います。自作地地代というのは、元来農家の現実の支出ではないわけでございまして、これをどういうふうに評価するかというのはある意味では所得付与的な要素があるわけでございます。  そこで、従来から固定資産税評価額に国債の応募者利回りの直近一年の平均を乗じて算定しておりまして、今回もこの考え方にのっとって行ったわけでございます。それからなお、この点についても米価算定の上では大変大事な要素であるというふうに考えまして、米価算定算定方式を検討していただく米価算定委員会報告においても御検討いただいたわけでございますが、その御意見は現行評価の方法、つまり固定資産税評価額に最近の利子率を乗じて算出する方法、これが基本的には適当であると考えられる。こういう御意見でもあったということでございましたので、そういうことを踏まえて今回自作地地代につきましても、先ほど申し上げたような方法で算定したわけでございます。
  76. 一井淳治

    一井淳治君 圃場整備をする、最近はかなり九十万円代でもありますけれども、大体百万円近くですね、平均資本投下されておるわけでございます。そうすると、百万円の資本投下をして改良した田畑が、固定資産税評価額は全国平均で八万以下でございますけれども、こんなもので評価されるというのはおかしいんじゃないか。特に農村地域の安い田んぼででも、いろいろあると思いますけれども、全国平均で見ますと田でも反当たり百七十一万幾らしているというのが統計でございまして、八万少々の非常に捨て値のような固定資産税評価額を基準とすることは当を得ていないと思います。重ねての質問ですけれども、その点のお考え直しをいただくわけにはいかないでしょうか。
  77. 近長武治

    説明員近長武治君) 米価の中に、圃場整備等の土地改良事業についての農家の負担をどういうふうに取り入れていくかということは、従来から論議のあるところではございます。これは、やはり基本的には水利費でございますとかあるいは維持管理費、それから小さな規模土地改良工事、こういうようなところは米生産費の上でも生産費として織り込むべきではないかというようなふうに考えておりまして、従来からもこういう考え方で織り込んでおりますし、今回もそういう考え方で入れております。ただし大きな事業、特に土地造成的な費用というのは、実はその効果が半永久的なものになるわけでございます。つまり、生産手段でございます土地自体の価値を高めるというふうになるものでございますので、直接的な生産コストとしてとらえるということは理論的にも難しいのではないかなというふうに考えまして、そういうような経費は米価算定の上ではコストとして算入しておりません。  なお、ちなみに私たちの試算ではいわゆる土地改良関係農家負担の大部分、押しなべて四分の三程度になろうかと思いますが、これは米生産費算定上も生産費として織り込まれていると、かように考えております。したがって、そういう理論的なこともございますので、やはり今の算定の仕方が妥当である、かように考えております。
  78. 一井淳治

    一井淳治君 それから地代の方ですけれども、現実に農家の方々が支払っている地代というものは平均三万円ぐらいであるというふうに思います。ところが、本日の諮問では六ページに出ておりますけれども、一万一千五十四円という計算です。これまた三分の一というふうな価格ですけれども、このあたりにも問題点があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  79. 近長武治

    説明員近長武治君) 地代にはいわゆる小作地地代、他人の農地を借りましてそれに対して賃借料として支払う地代と、それから自作地についての地代と、こう二つに分けられると思います。前者の小作地地代については実績値を算入しております。自作地地代については、先ほど申し上げました状況もございまして、これは固定資産税評価額に最近の利子率を乗じて算出すると、こういう考え方でやっておりまして、理由につきましても、先ほど申し上げましたところと重複いたしますが、そういうようなやり方が妥当であるというふうに考えております。
  80. 一井淳治

    一井淳治君 我が国の農業は、米価算定の場合について言うとただっこみたいな土地を使って、通常の労働者の半分ぐらいの労賃算定されているとよく言われるわけです。  次に、家族労働の問題について質問いたします。いろいろ詳しい理論を言えば切りがないんですけれども、現実の問題として結果的に、都市部の労働者の賃金に比べたら非常に安い額になっているみたいに思いますけれども、そのあたりの問題はいかがでしょうか。
  81. 近長武治

    説明員近長武治君) 家族労働費につきましては、現実には都市均衡労賃によって評価がえをしているわけでございます。どうして都市均衡労賃によるかということは、午前中大臣が他の委員の御質問にお答えしたような理由でございますので省略させていただきますが、本年産におきましては従来と同様、県別の米販売数量によりまして加重平均した事業所規模五人以上千人未満事業所製造業賃金を採用している、こういう次第でございます。
  82. 一井淳治

    一井淳治君 結果として、通常の労働者の平均賃金の六、七割ぐらいの額になっておるのじゃないですか。
  83. 近長武治

    説明員近長武治君) 御指摘のような試算の資料を私は手元に今持っておりませんので、数字的なことについては御容赦いただきたいと思いますが、米について申し上げますと、例えば米の生産がほとんどないような東京でございますとか大阪でございますとか、そういう大きな都市の賃金、これを全部平均したような金額で入れるということは、やはり稲作を現実に行っているところのウエートとはかなり違っておりますので、そういう意味合いからも全国平均でやる、製造業の平均でやるということについては妥当でないという考え方で従来算定してきておりますし、現在の時点においてもやはりそういうような考え方でいくということが妥当ではないかなと思います。  ただ、具体的な金額についてどのくらいであるのかという試算をした数字を私は今持ち合わせておりませんので、その数字の点については御容赦いただきたいと思っております。
  84. 一井淳治

    一井淳治君 農民の労賃と、通常働いている労働者の労賃とが同一になるように御努力をお願いしたいと思いますし、また次の企画管理労働費につきましても、昨年の〇・七時間から今年度は一・三時間に前進しておりますけれども、一・五時間にふやしていただくように要望いたしまして、次の質問に移らしていただきます。  米の消費拡大の問題でございますけれども、今回の諮問を見ましても需給需給ということで、上から需給を理由に抑えつけられるというふうな雰囲気が非常に強くなっておるわけでございますけれども、やはり米の消費拡大に本腰を入れていただく必要があるというふうに思います。いろんな側面があると思いますけれども、今までの通常の概念を打ち破ってかなり本格的なといいますか、今までの考え方を一歩も二歩も前進したようなそういう米の消費拡大が必要ではないかと思いますけれども、米の消費拡大の方策についてお尋ねをいたします。
  85. 近長武治

    説明員近長武治君) 米の消費拡大というのは、日本の風土、資源に適した米を中心とする日本型食生活を維持し、定着させ、さらに発展さしていくというようなことが私たち基本的な考え方でございます。これまで米について一部誤った知識などもございましたので、そういう点を直していただくための米についての正しい知識の普及、啓発、それから地域の特性を生かしたような米消費拡大対策、あるいは学校給食でございますとか米の加工食品、こういうことをやってきたわけでございます。おかげさまでそういうことについてはかなり普及、啓発が進んできたと思いますが、なお私たちこれからまだ相当な問題を抱えているというふうに思うわけでございます。  その一つは、やはり学校給食の問題があろうかと思います。  学校給食のみをもって量的に米を拡大するということは、数量的な限界はあるにしてもやはり学齢期の方が米を中心とする、児童生徒が米を中心とする食生活に早くから親しむということが大事だと思いますので、一つは大都市での米飯給食の推進というところに焦点を置きたいと思っております。  それからもう一つは、やはり学校給食に提供するお米の内容というのが、給食をするサイドの考え方とある程度一致していくような必要があるのじゃないか。例えばその地域の米を的確に学校給食に提供するという場合には、政府のお米だけでなくて自主流通米も学校給食の道にすることができないかということでございまして、平成元年度からの新規対策といたしましては、米飯学校給食に供給される自主流通米についての政府助成を行うというふうにしたところでございます。  そのほかお米については、中心はやはり家庭食だと思いますけれども、もっと若い方がいろんなアイデアがないものかという考えで、昨年ヤングレディ・ライスクッキング・コンテストというのを料理学校の方に我々の方でお願いをして実施していただきました。これは出てきたライスクッキングの中身というのは、今まで考えられなかったいろんなタイプのものが出てきまして、一部はこれが毎日食べられるのかなというような御意見もあったようでございますが、やはり若い方が米についていろんな角度から取り組むという点では大変大きな成果があったのではないかなと思います。これからも、食糧庁の中でもなるべく若い人の斬新なアイデアを取り入れながら、また食糧庁以外にも農業団体の方あるいは消費者団体の方、あるいは料理その他栄養関係を専門にする方の御意見を聞きまして、新しいアィデアがあればどしどし取り入れる、そういうような考え方で取り組んでいきたいと思っております。
  86. 一井淳治

    一井淳治君 一つは学校給食の問題ですけれども、どうも最近テンポが鈍っておる。特におっしゃいましたように、都市部の学校給食の普及のテンポが鈍っておるので、テンポを速めるような一層の御努力が必要ではないかと思います。それからもう一つはアルコール等の工業原料とかあるいは私ども言っておりますが、えさ用ですね。そういったものにも使途を拡大すべきであるというふうに言っているんですけれども、そういったふうな思い切った消費拡大というのはどうなんでしょうか。
  87. 近長武治

    説明員近長武治君) まず、米飯学校給食につきましては、昭和五十一年度から政府米の値引き売却を行う、そういうことで週当たり三回程度の実施を目標として計画的に推進してきたわけでございます。昨年の実績を見ますと週平均実施回数が二・三回ということでございます。なお、米飯給食を実施している学校は、文部省の調査によりますと完全給食実施校の九八%ということで、普及度はそこまで来ているわけでございます。ただ、今委員御指摘のように地域別に見ますと、大都市におきます普及がおくれているというようなこともございますので、そういう点を中心にしながら働きかけをしていかなければならない、かように考えております。この問題というのは、それぞれ学校給食実施校におきますいろんな経緯などもございますので、やはり十分日本の食生活についての御理解を得るようなそういうことを進めながらやっていかなきゃいけないというふうに思うわけでございます。  それから第二点の、米のいわば主食として以外の需要についてのお話だと思います。工業用アルコールだとかえさというのは価格的にいきまして大変開きがございますので、これを大きく進めていくということは大変難しい点があろうかと思います。  最近注目されておりますのはお酒についてのお米の利用でございます。最近は、純米酒でございますとかいろんな新しい酒の、本当のお酒の味が出るようなそういう動きがお酒屋さんの方でも出てきております。やはりそういう動きに合ったような原料の供給というのが生産者サイドあるいは食糧庁サイドとしても重要であろうということでございます。ただ、この場合には値段の問題が大きな課題になるわけでございます。  そこで、一定の方法を決めまして、そういう方法に合った場合には一般の主食用よりも低廉である他用途利用米の道も開いていく、こういうような形でお酒の方面におきますお米の消費がふえていく。つまり、お酒自身はアルコール添加ということで、米以外のものを原料にしたアルコールをこうじに添加してお酒にしている、こういう製造法もあるようでございますので、なるべくその場合には米を原料とするように方向としてはもっていっていただきたい、かように考えております。これがもし順調にいけばかなりの数量になるのではないかなというふうに思うわいけでございます。
  88. 一井淳治

    一井淳治君 消費拡大のための一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、圃場整備についてお尋ねしたいんです。  米価のコストを下げるためには合理化、圃場整備が必要であると思いますけれども、他方農民にとりましては、米価が下がっていくと自己負担分の支払いが非常に苦しくなるということで悩みがあるわけでございます。そういったことで圃場整備はぜひとも進めてもらいたい、しかし、進めるについては国や地方公共団体の負担率を高めるなど、農家の負担を軽減していただくようにしていかなくちゃいけないと思うんですけれども、そのあたりのことについての御説明をいただきたいと思います。
  89. 松山光治

    説明員(松山光治君) 委員御指摘がございましたように、生産性の高い農業構造をつくり上げていく上で圃場整備、そのための基礎的な条件の一つを整備するものとして非常に重要な役割を果たしておると、このように認識をいたしておるところでございます。  圃場整備は御案内のように、県営圃場整備を初めいろんな事業の中でも複合的にやられているということでございますけれども、予算面から申しまして、一番代表的な県営の圃場整備につきましても、平成元年度予算では私どもの最重点の項目の一つとして取り上げまして、NTT資金の活用も含めまして千四百億近い予算を計上してその計画的な推進に当たっておるわけであります。  ただ、今委員から御指摘がございましたように、この圃場整備事業の事業費、労務費なり資材費なりがやはり上がってくる、あるいは整備水準がどうしても向上してくる、山間地のような難しいところでの事業がふえてくる等々の事情もございまして、年々増高してくる傾向にあったわけでございます。そこで、できるだけやはり事業費を少なくして農家の負担を減らしていくということが基本であろうと、このような考え方のもとに、例えばどの程度の事業をやるかによりましてかなり事業費の水準が違ってまいるというような、そういう実情にもございますので、言ってみれば複数の整備水準、複数の事業費といったようなオールタナティブを示しながら地元の皆さんに選んでもらうというようなやり方を徹底いたしますとか、あるいはできるだけ地域の実情に即した経済的な工法を工夫するとか、あるいは予算の重点配分を行いまして工期の短縮を図るとか、そういう意味での努力をここ何年か行ってきておるわけでございます。  その結果、これまでずっと増高してまいりました圃場整備の事業費でございましたが、六十一年度の九十五万円をピークにいたしましてその後少しずつではございますけれども、低下する方向に向かっております。平成元年度に採択いたしました新規地区の平均といたしましては、十アール当たりで九十万ちょっとというところまでまいっております。この間の費用の増高ということを考えますと、かなりの現地の努力があったのじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、私どもこの線をさらに追求していきたいと、このように考えておるわけであります。  農家負担の軽減という点からいたしますれば、公的負担をどう考えるかといったような問題もあるわけでございますけれども、国もそれなりの補助をやっておるところでもございますし、そういう意味では補助率の見直しというのはおのずから限界がある話。そこで、私どもやはり負担金の償還の円滑化を図るという観点から何が必要かというようなことでいろいろとこれまでも努力をいたしてきております。今度の平成元年度予算におきましても、六十三年度から実施してまいりました土地改良区が、土地改良事業の償還金の一部を系統資金から借り入れた場合に、その利子補給を行うという事業を拡充いたしましたほか、改たにいわゆるリリーフ資金と申します、その年の償還に充て得る分を農家が自作農維持資金として借りられるようにするといったような新しい措置も講じたところでございます。  なかなか難しい事情があるわけではございますけれども、私ども、今申し上げましたようなことを中心といたしまして、これからも関係農家の意向を尊重しながら的確な事業の推進に努めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  90. 一井淳治

    一井淳治君 昨年の米審の答申の附帯意見の中にも、稲作生産コストを引き下げることを促進するための構造改善政策の充実強化を図ることというのがあるわけでございます。  これは私の地元の岡山県の関係で、ある農家の方にちょっと試算をしてもらったわけですが、この試算は非常に大ざっぱでございまして、数字も正しくないかもしれませんが、一応御参考までに申し上げますと、圃場整備について、これは全部反当たりでございますけれども、百三十万円ぐらい山間地帯ではかかる。岡山県の場合大体平均耕作面積が五十六・九アールというふうになっておりまして、農家の負担金額三十二万五千円に、ただいまの五十六・九アールを掛けますと百八十五万円ということになりますが、この八割が長期の償還になるというので十五年の償還というふうにして計算いたしますと、大体一戸当たり平均で年間十八万八千円ぐらい償還していかなくちゃならないというふうな計算になってまいります。  ところで、どれくらいのお米をつくって利益があるかということでございますけれども、岡山県の場合は八・二俵、十アール当たり収量がそれくらいになっておりまして、五十六・九アールの所得は二十二万三千二百八十一円ということで、二十二万少々稼ぐのに毎年十八万余りの償還をしていかなくちゃいけないというふうな計算になりまして、現実の問題として農民の方々が圃場整備をした場合あっぷあっぷしている。そして、そういったふうな状況があるものですから、高齢者の人たちはもう次の息子たちが果たして継いでくれるかどうかわかないというので、圃場整備に対しては非常に消極的になって地域の意見もまとまらないというふうな状況もあるわけでございます。  そこで、圃場整備もいろんな場面があると思いますけれども、例えば水路とか道路のような公共的なものについてはもう一〇〇%公共団体等が出すとか、その他やはり国や地方公共団体の負担率を高めるというふうにしていただかないと、とてもとても圃場整備が円滑に進展しないのじゃないかという気持ちが強いわけでございます。そういう意味で国、地方公共団体の負担率を高めるという御努力を一層お願いしたいんですけれども、いかがでございましょうか。
  91. 松山光治

    説明員(松山光治君) 今具体的な事例に即してのお話があったわけでございますが、その事例の場合どの程度の整備が予定されておるのかということがはっきりいたしませんので、ちょっと何とも申し上げにくいのでありますが、恐らく中山間ということでかなり高い目の数字にならざるを得ないという事情があるのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、かなり整備水準によりまして圃場整備の事業費が異なってくるということも事実でございます。  ちなみに、最近の事例としてちょっと御報告させていただきたいと思うんですが、ある地区の例でございますけれども、耕区の形を例えば基準的には三十アール、三十メートルと百メートルというそういう形の耕区でありますが、しかし地域事情によってその耕区の大きさ、長い辺、短い辺のありようをいろいろと工夫するとか、それからパイプラインにするかあるいは開水路にするかといったような違いによりまして、十アール当たり事業費を八十五万のタイプから六十三万までのタイプといったような四タイプをつくりまして、一体どうするかねというようなのを各地元で相談してもらった。そうすると、ある地区では高い方から三番目の七十四万という、そういう水準のものを選んで事業に入っておるという報告を聞いておるわけであります。  したがいまして、先ほども申しましたように、できるだけ地域の実情に即した形で安上がりになるような工法を採用すると同時に、金のかかりぐあいということも考えながら、整備水準を選択していっていただくというふうな方向をひとつどうしても考えてもらわざるを得ないだろうというふうにも思うわけでございます。  今お話のございました圃場整備と一緒にやります農道でございますとか、あるいは排水路的なものにつきましては、実際問題といたしましては、県なりあるいは市町村の段階である程度負担していただくという現実も生じてきております。なお、なかなか高齢者等につきまして話がまとまりにくいんだという話もあったわけでございますが、私どももそういう実態は認識をしてございまして、平成元年度の予算におきましては、そういう実態も頭に置きながら圃場整備の際に貸し借りをあわせて進めていく。その際に、小作料を一括前払いするという手法を使いまして、一言で言えば、貸し手農家については特段大きな借金なしに圃場整備を進め得るというようなそういう新しい事業手法も取り入れまして、今これを進めているというところでございます。
  92. 上杉光弘

    上杉光弘君 午前中は、大臣に基本的なものをお伺いしましたから、具体的に当局にお尋ねをいたしたいと思います。  まず、農水省にお尋ねしますが、一・五ヘクタールが算定基礎の中に入りましたね。中山間地帯の農地あるいは小規模農地、これが荒れないという見通しを持ってそうされたと思うんですが、そのことについてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  93. 近長武治

    説明員近長武治君) 御案内のように、価格自身を検討する際にはいろんな角度から検討し、かつそれがそれぞれのところにどういうような影響を及ぼすかということは、当然のことながらそういうことも視野に置きながら検討していくわけでございますが、最終的にはお米の値段というふうになるものでございますので、六十キログラム当たりの値段になるわけです。したがいまして、それが平地農村で生産されるお米なのか、山間地で生産されるお米なのかというふうにはなかなか値段の差がつけにくいというような点がございます。したがいまして、やはりこれからいろんな形での規模拡大、個別経営で行われる場合もございますでしょうし、営農組織というようなこともあろうかと思いますが、特に今先生御指摘のような立地条件として大変厳しいところの価格というのは、私たちこの価格算定をやりながらもこれは単に価格政策という視点以外にも、地域についてのいろんな方法を考えておかなきゃいけないというようなことを随分念頭に置いております。  またもう一つは、お米の流れ方についても、最近は政府が買い上げます政府米、それから指定法人、ほとんど全農及び経済連、農協の段階でございますが、そういう自主流通米のほかに特別自主流通米という、特別栽培米というようなものがございまして、やはりそれぞれの地域の立地条件を生かしたまた別の流れもあるわけです。しかし、そういうふうな形で付加価値がつくにしても、中山間地かなり各地にございますので、こういうようなところの稲作というのはこれからどういうふうに進んでいくのか、価格政策も進めながら生産対策、構造政策を当然のことながら並行して考えていかなきゃいけない、そういうふうに思っております。
  94. 上杉光弘

    上杉光弘君 今の説明では納得できないんですよ。考えていかなきゃならぬじゃなくて、もう一・五ヘクタール以上というのを算定基礎に入れたわけですから、一・五ヘクタール以下の農家経営をどうするのか、あるいは小規模経営農家、一・五ヘクタールというのは我が国農家戸数の一一%程度しかないわけですからね。そこへ基準を置いたというのはある意味では中山間地帯の農地というのが荒れてくる可能性がある。農業を放置して、皆さんがねらっておられる一・五ヘクタールというのは担い手の育成なんだと。我が国の農業の向かうべき方向というのは、規模拡大をして生産コストを切り下げて、そして国際的な農産物の価格並みにしていくというのは、これは認める方向だとしてもそれは非常に限界が僕はあると思うんですね、限界がある。  その限界がある中で一体小規模農家というのはどうするのか。中山間地の農業経営というか、農地保全と農家の暮らしを守ってやらにゃいかぬ。その二つの問題をどうするかというのは、一・五ヘクタールを導入した時点で政府は国家たるものの責任として当然僕はしておかなきゃいかぬと思うんですよ。だから、考えなきゃならぬなどというものでは納得しない。もう一回ひとつ。
  95. 近長武治

    説明員近長武治君) では、価格にかかわるところを私から再度御答弁申し上げたいと思います。  一・五ヘクタール以上層は全国で約二十六万戸ございます。戸数のシェアは二%ございます。それからこの一・五ヘクタール以上層で販売されます米は三百三万トンでございまして、全国の販売量の中で四二%になります。それから一・五ヘクタール未満で一・五ヘクタール以上層に匹敵する農家というのが約三十二万戸ございまして、シェアで一三%、それから販売量は約八十万トンでございますので一一%、これを合計いたしますと販売量のシェアで五三%程度でございますので、まさに先生御指摘のように、こういう形で言えば全体的には優に過半を占める、こういうことだと思います。そこで、こういうような階層以外のところの農地は荒れるに任せるというふうに考えているのか、こういう御質問でございます。  現実には、こういう中山間の中でもそれぞれの工夫で、相当いろんな形での営農組織が育ってきているのも事実でございます。したがって、価格政策と並行しながらそういう中山間地の特色を十分に生かしたような稲作、あるいは稲作も含めた多様な農業、さらには農業以外の分野も含めたそういうようなことが現実にも今進みつつございますので、これからやるという意味ではございませんが、そういうような考え方の施策を価格政策として並行して進めていく、こういうような考え方で今私たちも今回の新算定方式に踏み切っている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  96. 上杉光弘

    上杉光弘君 まだ納得はできないわけでありますが、例えば現地の農業の現場からいきますと、一・五ヘクタール以上の経営の農地、それは集団で固まっていればいいんですよ。やはり飛び地であちこちあるんですよ、農家土地改良全部終わっていないところの方が多いわけですから。そうしますと、一・五ヘクタール以上の農地だけを水は行かない。水はもう高いところから低いところへ全部利水というものは流れていくわけです。それから害虫、病気、これもそういう形で広がっていくわけです。  ですから、皆さんが一・五ヘクタールで区別をされるような形で現実の、現場での農政というものは進むものではありません。小規模農家も取り込んだ形で、現に農協の組織だってそうです、あるいは現場の実行組合の組織、生産組織だって皆そうなんです。そこにまた、混住社会を含めた難しさがあるわけでありますが、そのことを含めて今後の対応というものを考えていかれませんと、具体性に欠ける政策論ではどうにもならない点がある。そのことを私は申し上げたかったわけでございます。  皆さんが言われるように、生産組織が育成ができていない、中山間地に米生産だけじゃなくてほかの作物に転換するといったって、中山間地の農地というのはほかのものをつくれといったってつくれるところはほとんどありませんよ。非常に生産コストが手間暇かかって大変な事態でございますから、その点が一つ。  それからもう一つ、私が懸念をしております、心配しておりますのは、担い手を育成するといっても担い手がいなくなってしまえば、これは規模をなくしていなくなってしまえば育てようがないでしょう。そんなものは全部出ていけというと、私は我が国の国土保全にゆゆしき問題を醸し出してくる、その可能性が非常になきにしもあらずでありますから、その点をどういうふうに営農指導、中山間地帯の農家経営というのをお考えになっておるのか。構造改善局長でもいいし、それはどちらからでもいいですからひとつ。
  97. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) ただいま先生の方から中山間地域についての今後の考え方をお尋ねでございます。この点につきましては既に食糧庁の次長からも申し上げましたけれども、まず現在におきまして山村振興法あるいは過疎法等に基づきまして、さらに中山間におきます林業の重要性というようなことから、新林業構造改善事業等によりまして各般の施策を現在既にとらしていただいているところでございます。一方この地域におきましては、既に上杉先生からの御指摘もございますが、付加価値の高い特産物の振興等、多様な対応というものが考えられるわけでございますし、こういったものについての各地域における農家の方々の英知と努力というものが傾けられているわけでございます。  先ほど食糧庁の次長からもお答え申し上げましたが、山間地域における厳しい条件を逆手にとりまして、その中におきます有機農法あるいは特別の栽培の稲作というものも試みられておりますし、あるいは花であるとかあるいは高冷地の地域差を生かした園芸の作物を実際に実行しておられる方も見受けられるわけでございます。さらに、レクリエーション農園あるいは森林の総合利用といったようなことも試みられております。また、農産加工による就業機会の確保というものも、各地域でそれぞれ努力が傾けられていることを我々は聞いているわけでございます。農業白書におきましてもその点について記述させていただいております。  こういった点を受けまして、先ほど上杉先生から前後の順序といったようなものが問題ではないか、もう少し先に手を打つべきではないかというお話がございましたが、こういう山村振興法といつたような施策、そういったものを前提にいたしまして、農林水産省におきまして各局からの若手のメンバーも集め、特別政策対策室を先月の十六日に発足をさせているところでございます。農業、農村をめぐります近年の厳しい実情というものの中で、各地域におきます農家の方々の鋭意の努力、あるいは英知を傾けられた努力といったようなものを基礎にいたしまして、私ども農政の展開に上杉先生の御指摘の方向に向かって対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  98. 上杉光弘

    上杉光弘君 農水省に、特別政策の対策室を設置されたことは高く評価をいたしますし、また前向きでそういう方向を出されるというのは、当然今回の米価算定等の問題とも連動しておると思いますから、それは当局の努力を多としたいと思います。  ここに、私の手元に国民生活センターの桝潟俊子研究員がこう言っております、ある新聞に。   欧州共同体すなわちEC諸国などでは、農業は自然環境保全につながるもの、食料も自給すべきものというのが国の政策になっている。こうしたことから、粗放的農業を進めたり、条件不利地域での居住対策などを幅広く進めている。まさに農業の多面的役割を政策の中に位置づけているという基本がある。政治にそうした基本となる哲学のようなものがあるかないかが、予算とか自給率とかの構造政策とか価格政策にあらわれてくるものだと、 こう言っておるわけです、端的に。  私が言いたいことは、農政の哲学というものをもっと明確に、農民だけではなくて都市勤労者やあるいは財界を含めてそういうものが理解されて、やっぱり納得いくようなものにならにゃいかぬと、こう思うわけであります。私は大臣に聞きたかったけれども、午前中が限られた時間でありましたからそれが聞けなかった。そういうものがこの特別対策室の中でも考えられておる、視野の中に入っておるのかどうか、’それをちょっと。
  99. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) ただいま上杉先生が外国の事例等を引用されまして、今後の対策室におきます考え方について問われたところでございます。  大臣がかねてから申しておりますとおり、農業の多面性といったものをこの際私どもしっかり確立しなければならないというふうに考えております。確かに農業は生命産業であります意味合いにおきまして、人間の根源であります食料の安定的供給というものを第一義にしているわけでございます。  現在米価等の議論におきまして、上杉先生初め御指摘のこの稲作におきまして、我が国古来の水田という場におきまして実施をされておりますこの水田につきまして、第一の目標であります米の、食料の基本的な場を二千年来充実したという意味も考えなければいけませんし、あるいは農法等におきますいや地現象のないという点も強調されねばなりませんが、それとあわせまして、これまた上杉先生が御指摘のとおり水の涵養の問題、農業用水のみならず下流の地域を潤しております水の保全といったものもあわせて、森林資源とあわせて重要視されねばならないというふうに考えているところでございます。  さらにまた、この水田をめぐりまして我が国の文化といったようなものもこれに依拠してできているわけでございます。そういった水田の持つといいますか、あるいは農業の持つもろもろの側面につきまして、この点を十分認識してこれから対策室の企画、立案といったものを展開していかなければならないというふうに考えているところでございます。
  100. 上杉光弘

    上杉光弘君 構造改善局長に次に聞きますが、中山間地帯の土地改良事業、それから平場の土地改良事業は当然経費が違いますね。違うということも前提に置いて申し上げたいんですが、我が国の諸制度、農業政策に関する諸制度はほとんどが平場を中心にして法律や制度ができておると私は思うのであります。そういう場合に、今後一・五ヘクタールというのが米価の中に導入された。この機会に中山間地帯の基盤整備、土地改良事業等の負担区分のあり方、なかんずく全体の生産基盤確立のための農家負担金のあり方等は当然検討してしかるべきであるし、またそうなくてはならぬと私は思っておるわけでございます。さような意味でその点が第一点。  それからもう一点は、今の土地改良というか、基盤整備のボリュームというのは八万ヘクタール程度でありますか、私の記憶が間違っていなければ。一年間にそれくらいのものではどうにもならない。全体の中で農水省は着実に進んでおるというような言い方をしますが、私はそんなものではなかろうと、こう思うんです、比率からいえば。大体、今のこの取り巻く状況のもとで我々が考えまするに、一体いつごろになったら日本全体の利水とか生産基盤の確立というものは完了するのか、そういうものは当然早く農家の皆さんに示すべきである。自由化にもなった国内対策もその基本としてあるわけでありますから、当然それらは明らかにしてまた国民にも理解を求めていかなきゃならぬ、こう思うわけでありますが、その点を一つ二つお聞きいたします。
  101. 松山光治

    説明員(松山光治君) 現実に、基盤整備事業がこれまでのところ平場の方でより多く行われてきているということは、先生まさに御指摘のとおりでございますが、御案内のように、中山間の問題をめぐりましては先ほど官房長からもお答え申し上げましたように、山村振興法なり過疎法なりという制度的な枠組みがあり、そういう枠組みの中で山村過疎地域の基盤整備事業のありようにつきましては、例えば採択基準の面であるいは若干の補助率の面で配慮できるところはこれまでもしてきておるところでございます。ただ、これからそういう意味での今まで基盤整備のおくれておる中山間の地域で事業をさらに進めていくということに相なりますれば、それだけ平場に比べれば条件が悪いことは事実でございますから、これまでもそういう形で採択基準の面でもいろいろと配慮はしてきておるところではございますけれども、さらなる工夫の仕方がないのかどうかということは、先ほど来の官房長の方の特別室の問題とも絡みまして、私ども真剣に考えていかなければいかぬことである、このようにまず考えておるところでございます。  それから、土地改良の全体の展望の問題でございますが、御案内のように土地改良長期計画という計画を立てまして、現在第三次の土地改良長期計画を立ててございますが、それによって計画的な整備を進めようと。今の整備水準の目標、圃場整備でいいますと七〇%という一応目標を立てておるわけでありますけれども、そういう目標を立てまして今進めておるわけであります。ただ、御案内のようなもろもろの諸事情の中で、特に第三次長期計画の対象年次のこれまでのところでは、かなり厳しい財政事情が一つあったものですから、かなりおくれてきておるということは申し上げざるを得ない事情にございます。  ただ私ども、やはりできるだけ計画的にかつ着実な事業の推進に努めますことが、これからの農業展開を図る上で基礎的に重要なことだということは強く認識をいたしておるわけでございまして、これからも先生方の御支援をいただきながら必要な予算の確保という問題に取り組んでいきたい、このように考えておる次第でございます。
  102. 上杉光弘

    上杉光弘君 私は、午前の農水大臣に対して我が国の農業政策は予算で見る限り軽視である、そう言ったんですが、それは繰り返して申し上げますと、国家予算に占める農業予算のシェアが我が国は四・七%、アメリカは五・七%、フランスは  一〇・二%、イギリスは二・二で低うございますが、西ドイツは六・〇。ヨーロッパの先進諸国、アメリカと比べて国家予算に占める農業予算のシェアというのは極めて低いと言わなければなりません。同時に、農業総産出額に対する農業予算額の割合も日本は二二%、アメリカは三五・三%、フランス五八・一%、イギリス二六・五%、西ドイツ二七・四%でありますから、これまた割合が低い。同時に、農家二戸当たりの農業予算額も一戸当たり五十八万円。アメリカは四百三十万、フランスは二百六十六万、イギリスは二百五十八万、西ドイツ百六十六万でありますから、これまた一戸当たりに直すと低い。  こういう考え方に立てば、国土保全的視点といいますか、そういう考え方で特に土地改良、生産基盤の確立あたりは、その投資は国土保全的投資だということになれば農水省だけの予算じゃなくて、当然それは各省庁も含めた形で中山間地帯のそういう国土保全的な意味合いを持ったこの投資というものは、そういう形で考えられないものなのか。例えば、財政投融資あたりも財源として当然これは大幅に取り組んでいいはずでありまして、そういうものが段取りとしてできないところに我が国の農政ば軽視だと言われても仕方ないものが、数字で言えば、財界が言っているようなものではないあるいは勤労世帯が言っているようなものではない、もっと財政投融資あたりも大幅に財源として措置できる筋合いのものではないか。私はそういうことを申し上げたいわけでございます。  あと、国土庁もお呼びいただいておりますから、いかに国土保全的機能が低下をして一方では財政負担になっておるかということもお伺いしておるわけでありますから、そういう財源措置あるいは農業の構造政策や生産投資というものが、国土保全的視点からということになれば、もっと幅を広げた意味での予算というものが対応できていいはずでありまして、その点もひとつお尋ねをしたい点であります。
  103. 松山光治

    説明員(松山光治君) とりあえず基盤整備事業費の関係で、私の方からお答えさせていただきたいと思います。  ここのところ基盤整備事業の関係の予算は、公共事業全体に占めるウエート約一四%というシェアを実は維持しておるわけでございます。巷間農業生産規模が縮小するんだから、農業の基盤整備費のウエートは落ちていってもいいのじゃないかというふうなことをおっしゃる方も間々あるわけでございますけれども、私ども今関係方面にもいろいろと事情を話し説明いたしております基本線は、農業基盤の整備事業というのは農業生産のための基礎条件を整備するものであると同時に、それにとどまらず、農村社会の基盤整備でもあるし、かつまた先生から今御指摘のございましたような国土保全等多面にわたる機能を農業、農村が果たしていく上で必要な基盤整備を行う事業なんだと。だから、一定のシェアは維持しなきゃならぬのだということで御理解を求め続けておるつもりでございます。今後ともそういう考え方で頑張っていきたい、このように考えています。
  104. 上杉光弘

    上杉光弘君 そのような意味で頑張られても、国民的な理解、合意がなければボリュームを拡大することも農林業政策を大いに振興するための予算獲得もできない。財政が苦しいというのでねらい撃ちされた農林予算というものに、これは拡大していかなきゃならぬといってもできるわざではない。  そうなると、やっぱり農林業が持っておる多面的な機能役割というものが、国民に正しく理解されて評価されるというための政策確立というものは緊急の課題である。我が国の農業を守るのみならず、国家存立の基盤としての国土保全を盤石のものにしていくためには、その多面的役割機能というものがやっぱり定性的評価から定量的評価にならなければならない。そうなると、当然計量政策の導入というのはこれからの農業振興のために、私は時代の求める方向として欠くべからざる政策的課題である、こう認識しておるわけでございまして、官房長の考え方をひとつお聞かせをいただきたい。
  105. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) ただいま上杉先生御提起のとおり、農業におきます我が国における明確な位置づけといったものが国民的な合意を得なければ、ひとり農林水産業だけの展開というのは難しいわけでございます。これも上杉先生かねてからの御指摘のとおりでございまして、そういう意味におきまして試行的ではございましたけれども「我が国の農村地域の持つ基本的な役割というようなものにつきまして、水源涵養であるとかあるいは土砂流出防止であるとか、あるいは保健的な機能であるとかさらにまた酸素供給、大気浄化というようなことで、かなり旧聞に属しますけれども、三十六兆円といったようなものの数量的な評価をしたことはございます。  この点につきましては、たたしかなり時期が古うございますので、これからのさらなる国民的な合意を得るためには先生おっしゃるところの、質的なものよりもさらに一歩進めまして量的なものへ展開をしていかなければならないということでございまして、平成元年度の予算におきまして農林業あるいは農山村の有する公益的機能評価等の関連対策というものを発足すべく、農林水産省の予算の中から予算を集めまして総額二兆円の予算を計上したところでございます。この予算は、林野庁あるいは構造改善局さらには技術会議、さらには官房といったようなところにわたっておりますけれども、農林業における水保全の高度化に関する総合研究であるとか、あるいは治山におきますところの森林の整備水準、あるいは機能の計量調査といったようなものに向けまして予算を計上させていただいたところでございます。  今後、この予算をさらに充実させあるいはその予算によります成果を国民の皆さんに公表いたしまして、その支持の上で農林業の立派な政策というものを展開させていくつもりでございます。
  106. 上杉光弘

    上杉光弘君 そういう方向が着々と出ておることは好ましいことでありますから、さらにそれらを充実強化していくということでありますから、よろしくその点はさらなる努力をお願いしたいと思うんです。  国土庁に、次にお尋ねしますが、私はびっくりしておるわけです。土砂災害危険箇所の現状というのを五年前と今の時点の比較で、これ資料見ますと土石流危険渓流、危ないという川が日本全国に二一丁一%あります。一三・一%ふえておるわけです、五年前と比べて。それから地すべりの危険箇所が何と驚くなかれ七八・一%ふえているわけです。それから急傾斜地崩壊危険箇所というのが八%ふえております。山腹の崩壊危険地区というのが三一・一%ふえておる。崩壊土砂流出危険地区というのが三五・八%ふえておる。たった五年でですよ。  そして、第七次治山治水事業計画では治山事業に一兆四千百億、治水事業に八兆円もつぎ込まなければ、この治山治水のみならず我が国の国土保全は全く守れないというところまで来ている。それでも守られない。そして、この数字からうかがい知れることは、やはり国土保全のベースをなす農林業の衰退というものが特に山間部、過疎地や辺地だといって荒れてきた、山の荒れ、農地が荒れてきた、ここにつながっておると言っても私は決して間違った見方ではないと、こう思っておるわけであります。  そのような意味で、我が国の国土保全に対する国土庁の責任官庁としての認識と、今後の対応というものを農林業との関連においてお答えいただきたいと思います。
  107. 杉谷洸大

    説明員(杉谷洸大君) いろいろな意味での災害というものが現にあるわけでございますけれども、そういう災害から国土を保全いたしましたり、あるいはまた国民の生命、財産を守る、そういうような必要のためには治山事業あるいは治水事業などのいろいろな国土保全事業、こういうものあるいはそのほかの各般の防災関連の事業がございますが、そういうものの促進を図っていく必要があるというような基本的な認識でおります。  と同時に、第四次全国総合開発計画においても述べておりますが、農林業の基盤となっております森林とか水田など、そういうものの持つ国土保全機能、こういうものの活用ということも重要ではないかというふうに考えているところでございます。
  108. 上杉光弘

    上杉光弘君 私が言っているのは、それだと議論になりますが、機能がはっきり低下しておると思うのか、農林業との関係においてそのことをもっと具体的に国土庁としての認識をひとつお聞かせをいただきたい。今のような説明ではだめなんですよ。
  109. 杉谷洸大

    説明員(杉谷洸大君) ただいま申し上げましたように、先ほど資料の中で先生から危険渓流の数がふえているとかそういうような御指摘がありまして、そういうものの統計につきましては、私どもの方で各省庁から御報告をいただきまして整理等をいたしております。  そういう中で、どういうような状況のもとで、こういう地区数等がふえているかというようなことにつきまして御質問がありましたので、ちょっとお尋ねしてまいりましたけれども、それにつきましてはいろいろな要因があって、例えば対象地域調査地域をふやしたとかあるいは人口の増加、住宅の開発等で要件等に合致するようなところが出てきたとか、そういうようなことが、いろいろな面が多面的に要素となりましてそういう地域等の増加といいますか、そういうものが起きているのではないかというようなお話がございましたが、これにつきましてはもう少しいろいろな面で、各省庁の分析とかそういうものを待ちませんと、なかなか的確なこれというようなことはつかみづらい。いろいろな面からの要素が加わってそういうことになっているのではないかと、このように考えております。
  110. 上杉光弘

    上杉光弘君 ここで議論しても始まりませんから私の見解を申し上げておきたいと思うんですが、我が国は特殊な自然的環境、地理的条件にあります。島国で狭い国です。八割は山でございます。しかもその山は火山国ですから急峻です。山が急峻でありますから谷がいっぱいあってその谷は多くの川の流れに広がっておる。しかも覆っておる土質というのは、表土は火山灰土であります。しかも亜熱帯地域でありますから雨が多い、いつでも災害が起こり得る可能性がある。したがって、アメリカやヨーロッパ等と比べて農林業の持つ役割と国土保全と、そして治山治水やそういったものに対する国民生活との関連はより密接だという、私は私なりの認識を持っておるわけであります。  したがって、農林業のこれ以上の衰退、後退というものは国土保全という視点から許されない。そういう意味で私は国土庁にもおいでをいただいてお聞きをしたわけであります。もっと基本的なものを私お聞きしたがったわけでありますが、時間がありませんので次に進みます。  米価をことし決めるという、一・五ヘクタールの新しい事態が起こりましたが、私が心配いたしておりますのは米の消費拡大、これは二つの側面があると思うんです。  消費拡大の予算を見ますと、消費拡大で使っておる予算の九〇%は学校給食であります。なぜ一般の消費拡大にもっと予算をつぎ込まないのか、これが第一点。我が国の日本食の食文化というのはむしろアメリカやヨーロッパで高く評価をされて見直されておるという現状は御承知のとおりであります。消費拡大、つくる者があれば食う者がおるわけですから、そこに農業が成り立つわけでありますが、消費拡大我が国の日本食文化、食文化というものをもう少し考えた消費拡大政策というものを打ち出すべきであろう。  それからもう一つは、米調製品の輸入が急増しておるわけです。例えばことし一月から三月合計で三百四十トン入っていますよ。もうとにかく伸びておる。米調製品は御飯に具を重量比で二〇%以上含んだものというのはもう御案内のとおりでありますが、一種のこれは法の盲点をついた潜り輸入であります。こういうものをもう少し政府としてやらなければ、米は輸入しないと言っても調製品が入ってきて、あるいはピラフをつくったもので入ってきたり、エビピラフだとかそういうものでどんどん入ってくればこれはどうにもならない。政府はかたくなに輸入しないと言っているけれども、こんなもので、調製品で入ってくればこれは何にもならない。ですから農水省は、当初輸入量を月百トンぐらい見ていたけれども、今のペースで行くとこれは一割以上上回って大変なことになる。今後ふえる可能性もある。そういうものを最後にお聞きをいたしたいと、こう思うわけでございます。  それからもう一つは、時間が二十二分まででありますから、農水省にもう一点お聞きをしたいと思うんですが、私は何としても国土保全的視点からの農林業の振興、これは避けて通れない課題だという認識でおるわけでありますが、計量政策の導入についていかようなお考えで今後お取り組みになるのか、その点をお聞きいたしたいと思います。
  111. 近長武治

    説明員近長武治君) では、時間の制約がございますので、なるべく短くお答え申し上げたいと思います。  消費拡大については、予算の上では、学校給食は結局大きなる差額を補てんするということで金額的に大変大きくなっておりまして、私たちとしては学校給食以外の米の消費拡大対策というのは大変重要であろうと思っております。従来いろんな知恵を中で絞りながらやってきておりましたが、また今先生の御指摘を少し激励と受けとめまして、これからいろんな点について努力していきたいと思っております。それで、予算が本当に必要なものはまた頑張って取っていく、こういうような考え方でいきたいと思っております。  それから米については、もうなるべく私たちとしては輸入を防圧したいわけでございますが、国際関係でございますので、新たに輸入をとめるのは非常に難しい面がございます。特に、今のピラフはお米も入ってございますが、いろんな品物が入ってきておりまして、いろんな角度から見てもどうしてもお米にあるいは御飯になりにくいという点がございます。  そこでもう一つは、なぜ輸入ピラフが入ってくるのかというようなところに思いをいたしますと、やはり米についての内外価格差が、ピラフという形ではるばる外国から来るのでも引き合うようなことになっている、この辺にもやはり思いをいたさなければならないというふうに思うわけでございます。内外価格差というのは、単純なる比較はもう私たちはしないつもりでございますが、こういう点でやりますと、やはり米価政策について内外価格差ということもどうしても現実の問題として意識しておかなきゃいけないというのが第一点でございます。  それから第二点は、それならば国内で外国から入ってくるのに負けないようなピラフを製造するような、そういう方向も考えたらどうだというような点に着目いたしまして、これは他用途利用米の中で、このピラフ用にするというのは若干論議があったわけでございますが、一定のルールを決めまして、それに該当するものについてはピラフ用の他用途利用米という道も先般開いたわけでございます。  そういうような形で、私たちとしてはなるべく国産のお米で日本人の米についての需要は満たしていく、こういう基本線で対処してまいりたい、かように考えております。
  112. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 国土保全的な計量問題について、さらに取り組めという先化のお話でございます。  先ほどもお答えいたしましたように、平成元年度から農業あるいは林業におきます水保全あるいは管理機能の高度化に関する総合研究というものをことしから発足をさせるわけでございます。さらに、森林の整備水準の計量調査本森林資源基本計画の目標に向けまして、森林の有する各種の機能を高度に発揮させるべく、森林の整備を効率的に行うためのものとして本年度を初年度として実施するわけでございます。ただいまの先生の御提起でございますので、農林水産省におきましても国土庁等々と相談をいたしまして、さらに国土保全的な視点に立った計量的な道というものを探るべく努力する所存でございます。
  113. 及川順郎

    及川順郎君 米価の新算定方式に関して、午前の大臣に質問したのを導入部分として具体的な問題を伺いたいと思います。  新算定方式規模を一・五ヘクタールで線引きをした論拠をまず伺います。
  114. 近長武治

    説明員近長武治君) 新算定方式につきましては、若干経過を簡潔にお話をしておきたいと思います。  実は、従来の算定方式昭和五十九年から六十一年の産米と、大体そういうことを適用期間にして米価審議会の論議を経て算定してきたわけでございます。それが、六十一年産米が終わった後もなかなか新しい算定方式の御検討をお願いするというふうになりませんで、六十二年産米は、最終的には従来の算定方式で決めさせていただいたわけでございます。その際、米価審議会だけではなくて各方面から論議がございましたのは、やはり安定的な算定方式というのが必要ではないかと。例えば三年なら三年ぐらいの期間は所定の算定方式をきちっとした論議に基づいて定めて、その間はその算定方式に従って米価を的確に算定するというのが米価について幅広い信頼を得ることではないか、こういうようなことでございます。  したがいまして、六十二年産米の決定の後に米価審議会米価算定方式を決定していただくための小委員会をつくっていただきまして、そこで検討していただいたわけです。その際に、そもそも生産費所得補償方式というのはなぜ要るのか。これはいろんな幅広い議論でございますので、例えば今の稲作農家の中には米の収入に依存しない農家もいるのではないか、例えば生計費は農業以外の収入で賄い、稲作に生計を依存していない農家がいるのではないかとか、日ごろ当委員会では余り御議論のないような角度もあろうかと思うんですが、そういう角度からございまして、このままでいけば新算定方式そのもの自身についての御論議にいきかねないというようなことで、やはり稲作担い手層というような考え方をある程度明確にして、こういう稲作担い手層についての生産費及び所得を補償する、こういう考え方で米価算定したらどうだと、こういうことでございます。  そこで、若干長くなって恐縮でございますが、当初五ヘクタールぐらいというような検討の流れになってきたわけでございますが、なかなか現実には五ヘクタールというわけにはいかないだろう。そこで、やはり将来の担い手層への発展の可能性を高く持っているというような見地からいろんなデータを整理いたしますと、一・五ヘクタールというのが当面は妥当である。そのときの視点を簡潔に申し上げますと、一つは、生産性が比較的高く規模拡大の意欲がある、それから相当労働時間を稲作に投入している、それから農家経済面においても相当程度稲作収入に依存している、それから機械利用の観点からも経済性を実現している、こういうようなことでございます。  しかし、稲作を現実に担うのは個別経営だけではございませんで、生産組織集団というのが日本の場合は必要でございます。御案内のように、日本の稲作農業というのは農場制農業ではございませんで、いろんな方々がある一定地域の中で農地を持っているわけです。平たく言えば分散錯圃の状態になっているわけです。したがいまして、水管理あるいは土地利用調整の上からいっても生産組織集団というのが大変大事でございますので、そういう生産組織集団というのも加味しながら担い手層というのを考えたらどうだと。かような経過を経まして当面一・五ヘクタール、かようになったわけでございます。  ちょっと時間が長くなりましたが、そういうような経過でございます。
  115. 及川順郎

    及川順郎君 では、五十七年、六十二年、それぞれ生産者数、構成比の数字でここに資料をいただいておりますけれども、一・五ヘクタール以上、それから一・五ヘクタール以下、これで数字はどういう数字になりますか。あわせて一・五ヘクタールを境にしたのと一ヘクタールを境にしたのと二つデータがありましたら述べていただきたい。
  116. 近長武治

    説明員近長武治君) 最初に、六十二年について一・五ヘクタール以上層の階層別の構成比を申し上げます。  六十二年の生産者の作付、生産者数で申し上げますと、一・五から二ヘクタールで三・六%、それから二ヘクタールから三ヘクタールで二・七%、それから三ヘクタール以上で一・六%、これは生産者の数でございます。構成比です。それから五十七年について申し上げますと、一・五ヘクタールから二ヘクタールの間で三・五%、それから二ヘクタールから三ヘクタールで二・六%、三ヘクタール以上層で一・四%でございます。  なお、一ヘクタールから一・五ヘクタールの間は六十二年の生産者の構成比では八・四%、五十七年も生産者の数は違いますが構成比では八・四%、こういうような現状でございます。
  117. 及川順郎

    及川順郎君 生産者の構成数、ここに〇・〇五から〇・三ヘクタール、それから〇・三ヘクタールから〇・五ヘクタール、〇・五ヘクタールから一ヘクタールまでそれぞれ見ておりますが、生産者数は圧倒的にこれは小さい方が少ない、戸数としまして。これは当然だろうと思いますが、非常に集中しておるのが一ヘクタールまでの各階の構成数が非常に多いということですね。それでは、〇・〇五とか〇・三というのは除きまして〇・五から一・〇まで、例えば先ほどの答弁でありました稲作で生計を必要としない人、それから一・〇から一・五ヘクタールまでの中で稲作で生計を必要としない人はどのぐらいおりますか。
  118. 近長武治

    説明員近長武治君) 私たちの理解で申し上げますと、稲作以外のところで生計費が賄えたとしても、やはりその方にとっては稲作収入というのは大変重要な部分である、こういうふうな認識を持っております。  ただ、今の御質問に即して申し上げますと、つまり家計費と農外所得との比率がどの辺で分かれてくるかというようなことでございまして、分母に家計費を置きまして分子に農外所得を置いた、これを六十二年度でデータ的に都府県について申し上げますと、一ないし一・五ヘクタール層ではその数字が一〇五%になります。つまり農外所得が家計費よりも五%多いことになっている、こういうようなことでございます。それから〇・五から一ヘクタールでは一一七%でございます。それから〇・五ヘクタール未満では一一六%になっております。  なお、ちなみに一・五ヘクタールから二ヘクタールでは八七%、それから二ヘクタールから二・五ヘクタールでは八二%、それから規模が大きくなりますと依存度が上がりまして二・五から三ヘクタールでは六九%、それから三ヘクタールから五ヘクタールでは約半分、こんなような状況でございます。五ヘクタール以上になりますと、もう三分の二ぐらいしか農外所得への依存はない、したがって三分の二以上が農業所得によって依存されている、三分の二程度が農業所得だ、大体数字的にはこういう感じでございます。
  119. 及川順郎

    及川順郎君 構成比で見ますと、大体生計費の依存度で見ますと、私たちの感触としてはやはりこの一・五ヘクタールの部分のところで切るというのはいささかまだ難点があるのではないか、こういう感じを強くいたしますね。  それからもう一つは、今回の価格算定をするに当たりまして売り渡し数量構成比、これが重要な役割を果たしているわけでございますが、一・五以上の販売数量シェア、売り渡し数量構成比という数値で示されております。これの合計はどのぐらいになりますか。それから、それを一・〇以上にした場合にはどのぐらいになりますか。二つをちょっと述べていただきたい。
  120. 近長武治

    説明員近長武治君) 販売量のシェアを、先ほど六十二年産生産者数について申し上げましたので、販売数量についても六十二年産で申し上げますと、一・五ヘクタール以上層は個別農家だけで見た場合になりますが、約四二%になります。それから、一から一・五ヘクタール層が一九%でございます。したがいまして、六十二年産の構成比で見ますと、両者を合計して約六割というふうになるのではないかなと思っております。なお、ちなみに今回担い手層について私たち算定をしたわけでございますが、大体戸数的には一・五ヘクタール以上層は先ほど申し上げましたのと余り違っておりません。戸数では二十六万戸、一一%のシェア、それから販売量は三百三万トン、シェアで四二%というようなことでございます。  このほかに関連して申し上げますと、一・五ヘクタール未満ではございますが、その生産性が一・五ヘクタール以上層に匹敵する農家というのが生産費調査を調べていきますと出てくるわけでございます。戸数ではそういう方が約三十二万戸ございます。これは比率で一三%ぐらい。ただ、販売量では八十万トン程度でございますので、シェアで一一%、両者合わせると五三%ぐらいになってくる。個別経営だけのデータでいきましてそんなような状況でございます。
  121. 及川順郎

    及川順郎君 今ちなみに食糧庁でまとめましたデータで、〇・五ヘクタール以上の売り渡し数量構成比をずっとトータルしてみますと八六・九%ぐらいになるんですね、先ほど一ヘクタール以上ですと六〇・七%ぐらい。この販売数量シェアで見ますと、私は今の農業の農業生産を営んでおります人たちの心情を思いますときに、やはり売り渡し数量構成比で少なくとも八割以上、このぐらいのところを望む声が非常に強い。そうしますと、基準というのは〇・五ヘクタール以上ぐらいのところは入っていいのではないか。多少両方案分したとしても一ヘクタール以上の六〇・七%、この辺のところから算定方式の裏づけを見ませんと、農家の方々の気持ちとかなり乖離した米価算定の基準になってくるのではないだろうか、こういう感じを強くするわけです。したがって、全体的に言えることは一・五で線引きをしたということ。  午前中私は、中小、まあ小零細農家の切り捨てになるというぐあいに所見を述べましたけれども、米価価格政策に引っ張られて、生産構造がそれに追いついていかない間にこのような急激な算定方式をばっとやりますと、このやはり中間や小農家、零細農家にとりましては大変な打撃になる、あわせてこのようなことを考えるときには、生産構造の構造政策がきちっと追いつくような方向性を示して、そして生産農家の人たちが納得のいく線でこの算定方式というものを決めていかなければ、どうしても農家の人たちの意見を尊重すると言いながらも、官庁の計算が先行して農業生産者の気持ちとは乖離のある政策になってしまうのではないか。その辺に現在の政府農政に対する農民の根深い不信感がある。私は率直にこう思います。この点については、政府当局としてはどのような見解をお持ちですか。
  122. 近長武治

    説明員近長武治君) 実は、ただいまのような御指摘を私たちかなり農業団体の関係者の方からは、数字的な面は別として聞かされてきております。先ほど新しい算定方式を検討する経過について申し上げましたが、その中の大事な点は、現在の食管法に基づく生産費所得補償方式を継続することについて、生産者だけでなくて幅広い国民の理解が必要である、こういう点でございます。そこのところは非常にわかりやすく申し上げますと、安定兼業農家までなぜ生産費だけでなくて所得まで保障しなければならないのか、こういう論議についてはなかなか今のようなお話では、私たち幅広い納得を得られるようにはできないのではないかなと、かように考えたわけです。  しかしでは、生産費所得補償方式以外にどういう算定方式があるのか。これは一部の議論ではございますが、むしろ需要と供給がバランスできるような価格にしたらどうだろう、かような論議が実はなかったわけではないんです。しかし、それは今まで私たちやったことのない価格でございまして、需要と供給が一致する、国境調整措置を完全にしたとしても今の過剰基調でいきますと、どういうような米価になるかというのは大変怖いわけです。  したがって、やはり生産費所得補償方式というふうに考えていけば、日本の稲作についての担い手層と、こういうところに焦点を置いた米価算定方式にいたしまして、そしてそれをベースにしてこの新しい算定方式について理解を得ていかなきゃいけない。現在の稲作生産のシェアの大部分ということになればどうしても現状固定的になり、かつどうしても安定兼業農家、別な言葉で言えばいろんな農業形態ございますが、土曜日と日曜日だけで稲作をしている、そういう農家に対してまでなぜ所得を保障しなければならないのかというふうに問われると、私たちは答えに窮してしまうわけです。  したがって、そういうようなもろもろの議論を踏まえて、米価審議会に十回ほど検討していただきました。相当フリーなディスカッションも内部でしていただいた上で、最終的には稲作担い手層とそれから今の需給についての過剰基調と、こういうことを踏まえた新しい算定方式にいこう、かようなことでございます。したがいまして、せっかくの御示唆ではございますが、一・五ヘクタールはおろか〇・五ヘクタール以上、こういうような算定方式では到底生産費所得補償方式について幅広い国民の理解を得るための論陣を私たちも大変張りにくくなってくる、こういう客観的な状況についても御理解を賜りたいと、かように思うわけでございます。
  123. 及川順郎

    及川順郎君 時間が参りましたので、今の論拠は私は多分に異論があるんですけれども、これはまた別の機会にやります。しかし今の農業者の実態を考えますと、一・五線引きでもって切られたということに対しては根深いこれは不満を持っているということを明確に私はつけ加えまして、私の質問を終わります。
  124. 下田京子

    ○下田京子君 私は、午前中大臣に御質問をしまして幾つかの問題点を明らかにしたと思うんです。  昨年米価並みに据え置きだと。あした政府と自民党がお決めになるようなお話です。その昨年並みの米価そのものの問題点を指措したわけですが、第一に六十三年産米生産費調査、それによる稲作農家家族労働報酬、これが一時間当たりわずかに五百四十二円です。高校生のパートの、アルバイトの賃金より安いんです。労働賃金をきちっと償うかどうかということが本当に米づくり農業、農村の将来を保障するポイントなんだと私はもうずっと申し上げているんです。  だからこそ、五十二年方式でいけば五俵以上の稲作農家から買いましたし、全国の製造業の平均労賃で五人以上九百九十九人未満でとったわけでしょう。その計算でいけば二万一千円の米価になるということがはっきりしたでしょう。だから、農民運動全国連合会の方々も二万円以上の米価ということを要求しておりますけれども、非常に妥当だということが午前中明らかになったと思うんですよ。それをなぜに地方労賃に変えてしまったのか。さらには必要量であるとか、一・五ヘクタール以上であるとか、やがては五ヘクタールだとかという格好で変えるんだろうという点で問題を指摘しましたらいみじくも言いましたね、生産抑制のためだと。はっきり言って米いじめじゃありませんか、農家いじめじゃありませんか。これで農業が成り立つというふうに本気になってお感じなのかどうか。私はあえて次長さん申し上げたいんです。答弁はここのところです。五十五年から五十六年に地方労賃評価がえしたときに二〇%も賃金カットになっているんです。御自分の身に置きかえて考えたことがありますか、ないですか。
  125. 近長武治

    説明員近長武治君) 具体的に生産者米価をどういうふうな形で算定していくかということは、その時点におきます米をめぐる生産事情もございます。それから需給事情もございます。これまで毎年米価算定してきておりますが、その時点で我々の方としては、基本的には一定算定方式について米価審議会等であらかじめ御論議いただいて、そのときの需給事情あるいは米をめぐる生産事情について的確に算定してきたと、こういうつもりでございますので、例えば労賃とり方について私たちと下田先生と意見を異にする点があろうかと思いますが、我々としては米をめぐる状況を総合的に勘案して決めた米価でございますから、それぞれの時点において妥当な米価であったと、かように考えております。
  126. 下田京子

    ○下田京子君 あくまでもお米をつくる人たちの暮らしが成り立たなかったら、これはもう米作はなくなっちゃうんですよ。ですから、米をめぐる事情があれこれだと言っても、とにかく労働賃金を保障すること。コスト低減とおっしゃるならお米の生産の約五割をも占めるなぜ資材を半分にしないんだと。そうしたら、もう二五%も米価引き下げになるじゃないか。資材の引き下げと、あるいはこれからまた質問しますけれども、土地改良事業等々農民負担を軽くしないで専ら農民にだけしわ寄せがいくんですから、手取りがないんですから、やっていけないわけですから、後継者育たないんで嫁さんも来ないんです。この一時間当たり五百四十三円で本当に農家にお嫁さんが行くというふうに確信して言えますか。はっきり答えてください。
  127. 近長武治

    説明員近長武治君) 生産費所得補償方式に基づきます米価というのは、過去三年において現実に実現したコストをもとにして計算しておりますので、生産費対象になっているそういう経営については十分経費及び適正なる所得が実現する、そういうものであろうと思っております。
  128. 下田京子

    ○下田京子君 とんでもないですよ。労賃のところだけ変えただけだって幾らになりますか。いろいろ議論はあるにしても、全中が要求している一ヘクタールから三ヘクタール層の生産費、これも生産費所得補償方式で、言ってみれば労賃部分だけ見ただけでも六十キロ当たり一万七千三百五十八円になるはずです。御確認ください。
  129. 近長武治

    説明員近長武治君) 一ないし三ヘクタール層の生産費をもとにいたしまして本年産米価を試算いたしますと、基本米価で一万七千三百五十八円、六十キログラム当たりでございます。
  130. 下田京子

    ○下田京子君 ということなんですよ。ですから、昨年の米価一万六千七百四十三円、基本米価六十キロ当たりでもって据え置いたなんて言ったってどんなにごまかしかということなんです。しかも、一・五ヘクタール以上層を考えたということは、農政審の路線に沿っていくわけですから、これはもう午前中に議論をいたしましたけれども、結果としては日本国内において米つぶしの方向になって輸入への道を開いていくことになるのじゃないかということを申し上げておきます。  そこで、先ほど申し上げました土地改良事業関係なんですが、構造改善局長御確認ください。  米算定の中には、原則的には整地、客土であるとか農道整備などは土地造成的な費用だということで、半永久的に個人の財産になるから結果的には地代に反映されているんだと、こういう言い方で現実には六十三年産の場合ですけれども、水利費の中で土地改良区費が十アール当たり四千五百五十五円、そしてさらにもう一つは、小規模な工事費という格好で土地改良設備費、これが六百七十五円で合計五千二百三十円。これしか見ていないと思うんですが、間違いないですね。
  131. 海野研一

    説明員海野研一君) 生産費調査における数字は、今先生がおっしゃったとおりでございます。
  132. 下田京子

    ○下田京子君 ですから現実には、十アール当たりこれだけしか土地改良事業費と見ていないんです。  ところが実態はどうか。構造改善局長いいですか。都道府県の圃場整備事業、これが一番土地改良事業費のわかりやすいところだというのでお聞きしたいんですが、十アール当たりの事業費の平均額は幾らか、それからその事業費の中で農家負担額が幾らになるかお教えください。
  133. 松山光治

    説明員(松山光治君) 圃場整備事業の事業費なり、また農家負担額ということに相なりますれば、年によってあるいは地区によって、あるいは国の補助だけではございませんで、県の補助、地区によりましては市町村も補助しておる、そういうようなことでさまざまでございまして、ある意味ではなかなか一概に言うことが困難なわけでございます。そこで、ちなみに昭和六十三年度に完了いたしました地区、約八土地区近い地区があるわけですが、その都道府県営圃場整備事業の地区についてどの程度になっておるのか試算した数字を持っておりますので、それで申し上げたいと思いますが、十アール当たりの事業費の平均値が七十二万九千円。この事業費のうち、国なり県なり市町村の負担を除きました平均的な農家の負担率で推算したものでございますが、大体二二%強の農家負担率になっているようでございますけれども、十アール当たりにいたしまして十六万三千円、こういう数字がございます。
  134. 下田京子

    ○下田京子君 その際のピーク時に年償還額は幾らになりますか。
  135. 松山光治

    説明員(松山光治君) この農家負担率については一般の場合、土地改良区が農林漁業金融公庫から金を借りまして、それで長期的に返していくという仕組みになっておるわけでありますが、そのときの条件の設定をどうするかということで変わってまいりますので、若干仮定を置いた試算をいたしたわけでございますけれども、一応昨年完了した地区だということからいたしますと、約二年前ぐらいまでの公庫の金利水準六・五%というのを一つ置きまして、それから公庫の償還は二十五年の償還、そのうち十年以内の据え置きということでなってございますので、一応十年据え置いて十五年で返す、その場合の返し方を元利均等償還でやる、このように一応置きましたときのピーク時の農家の年当たりの負担額でありますが、十アール当たり一万七千円、こういう試算に相なっております。
  136. 下田京子

    ○下田京子君 それは、本当に平均的な形でも十アール当たり一万七千円を農家が年間返していかなきゃならないわけです。ところが、米生産費調査結果によれば五千二百三十円しか見ていないというわけですね。米価は下げられる、土地改良の負担金、これらも返せない。そういう中でもう泣きの涙で、安い値段で土地を手放しているというのが今の農家実態です。  そういう中で、私はこの数年来ずっと土地改良事業の農家負担の軽減対策を言ってまいりましたが、去る六月二十一日のときにも質問したんですが、時間がなくて御答弁いただけなかったのでこれまた簡潔に二点お願いしたいんです。  土地改良事業の中での償還円滑化対策事業というのをやっておりますよね。しかし、これは計算してみると余り効果がないんです。私の福島県なんかは手を挙げてくるところがなかなか出てこないんです。そういう中で全額借りかえという措置を考えられないか。これが一点。それから二つ目に、これはかんがい排水審議会の報告にも出ておりまして、基幹水利施設など、言ってみれば面工事以外国営が責任を持ってやろうやというような方向にいっていると聞いているんですけれども、現実にこれはいつからやれるんでしょうか。これからの事業に該当なんですか。
  137. 松山光治

    説明員(松山光治君) かつて借りた金の利率が比較的高いものですから、最近の低金利の中で全額借りかえられないだろうか、こういう御要望のあることは重々よく承知をいたしておるわけでございますが、特に問題になりますのが、財投資金を使いながらやっておるということで、財投資金の方は財投資金の方でやはり一般の預金者からかなり高い利率で借りているという実態がございますので、ここで借りかえをされると全体の財投資金制度の運営がおかしくなってしまうのだということで、なかなか実現を見ない問題でございます。  そこで、私どもといたしましてはできるだけ早く返したいという、そういう関係者の要望も踏まえ、かつ財投の論理との間の調和をとる形で、御案内のように平成元年度の予算からいわゆる工種別完了という仕組み、それからこれまでやってまいりました計画償還制度の償還方法を弾力化するといったようなことも行っておるわけでございまして、そういうものをこれは国営事業の場合でございますけれども、うまく活用いただきたいと思っておるわけであります。  それから、基幹水利施設についての扱いの問題でございますが、これは主としてこの種の大きなやつでございますので、国営事業の扱いの話になります。私ども平成元年度の予算編成におきましては、国営事業全体についてかなり大きな見直しを行いました。これまでかんがい排水事業については一律六割の補助体系になっておったのでありますが、基幹水利施設を対象にいたしましたものを別建てにいたしましてこれについては補助率を高目のものに決める、こういう形で対応しておるわけでありますけれども、事柄の性格上、既に行っておるところについてまでその事業を適用できないという事情にございます。
  138. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、これはもう食糧庁の次長に聞いてもしようがないことですけれども、明確なんですよ。いいですか、一万七千円からの土地改良の農民負担が平均的にも出ているのに、五千円ちょっとしか見てないんですから、もう農民負担を下げるか、あるいはかかった分だけ米価算定の中にきちっと入れるか、そういうことをしないでは、本当に国土保全であるだとか、いや農業守るだとか言ったって皆さん言っているのは農民を愛するんじゃなくて農民の票を愛して、選挙のときだけ小手先やっているんじゃないかというような批判が出ていますけれども、それはそれとして、本当にことしの米価決定というのは非常に問題であるということを申し上げておきます。  さらに、前回も質問いたしましたけれども、輸入がどんどんふえている中でポスト八一ベスト、収穫後の農薬残留問題が大変世間を騒がせておりますが、厚生省に御確認いただきたいんです。  前回イチゴの問題とサクランボと小麦の問題聞いたんですが、私イチゴに限って聞きます。  アメリカではイチゴにポストハーベストに臭素を使っていますが、これら基準が六〇ppmだと思います。ところがFAO、WHOは三〇ppmだと思います。厚生省は、国内で基準がないけれども、昨年自主的に輸入件数千八百七十、うち検査をされたのが四百六十一件、そのうち臭素が検出されたのが三百九十五件、その基準が五から五七ppmで、FAO、WHOを超えているものも多々出ているというふうな資料をいただいているんですが、間違いないですね。
  139. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) 先生の御指摘のとおりでございます。
  140. 下田京子

    ○下田京子君 ところが、大変問題なのは臭素については発ガン性の疑いもあると言われているわけで、そういった実態について日本政府が現地に行ってきちっと調査をしてきたのかこないのか、この前の質問に答弁した吉國さん。
  141. 吉國隆

    説明員吉國隆君) アメリカにおけるイチゴのポスト八一ベストの使用について調査しているかというお尋ねだと思いますが、私どもとしては、ポスト八一ベスト農薬全般につきまして先般も御答弁を申し上げましたように、各国の農薬の制度で安全な使用ということが確保されているというふうに一応考えておりますが、私どもとして網羅的な調査を行っているわけではございません。
  142. 下田京子

    ○下田京子君 この前どう答弁しているかというと、今おっしゃったようにアメリカの農薬使用実態、農薬使用基準、これもよく調べてもいないで、使用基準に基づき適正な使用が行われているというふうに理解しているところでありますと答弁しているんです。実態知らないでこういうことが言えるんだろうか。私は非常にこれ問題だと思って、きょうなぜまたそれを取り上げたかといいますと、実は小麦については米国では臭素の基準がないんです。厚生省、基準ないですね。
  143. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) 米国におきましては、先生御指摘のとおり基準値はございません。
  144. 下田京子

    ○下田京子君 ところがあの臭素、古米問題があって日本が急速五〇ppmの基準をつくったわけです。しかし、現地を見てきた学者先生方おっしゃるには、本当に驚くような形でもって日本輸出向けの穀物それから果物、野菜などにこの臭素が、臭化メチルですけれども、どんどん薫蒸剤として使われているということなんです。ですから、この使用基準を一体どうするのかというのは問題なんです。少なくとも水際チェックは厚生省でしょうけれども、輸入してくるのは農水省なんですよ。相手国の使用状況もさっぱり知らないでおいて、それでもって基準どおりにちゃんとやられているというふうに理解していますなんというのは無責任きわまりないと、私は申し上げたいんです。  それで厚生省にお聞きしたいんですが、国内で今後一定の基準をつくろうと、小麦以外何の基準もないわけですよね。現在米製品の輸入量がふえているわけです。米粉、米菓、米粉調製品等含めますと六十三年で二万六千七百二十五トンでしょう。これらについては厚生省に聞けば自主的チェックもしてないというわけでしょう。そうしますと、実際に船積みの段階でどんな状況でどんなものが使用されているかもつかんでもいないんですよ。厚生省は、今後そういう基準づくりのために、穀物は三年、あと野菜等は十年ぐらいかかるかというお話なんですが、そんなにかかるんですね。
  145. 内山壽紀

    説明員(内山壽紀君) 厚生省としましては平成元年度から、ポストハーベスト農薬対策といたしまして、輸入農産物におきます残留調査等を実施いたしまして安全性に関する情報の収集等を行いまして、輸出相手先国とも十分協議してポストハーベスト残留基準を整備していくと考えておりまして、今先生がおっしゃられましたように、主要穀類につきましては三年を目途に、その他の農産物につきましては年次計画によって順次整備していきたいと考えております。
  146. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 時間です。
  147. 下田京子

    ○下田京子君 一言。そういうわけで吉國局長、個人がどうのこうのでなくてそういう実態ですよ。あなたそのときだけの答弁しないでくださいよね。ですから、少なくともアメリカでの使用実態を速やかに調査して御報告いただきたいと思います。そして、問題があるものについては、今や代替物の開発、研究等にも力を入れられているぐらいですから、国民の食料と健康に責任を持って、国内農業を守るというのは国民の圧倒的な皆さんの声ですよ。そういう点で、これは大臣答弁というところなんでしょうけれども、ひとつ御答弁いただいて、私の質問を終わります。
  148. 吉國隆

    説明員吉國隆君) 輸入農産物の安全性問題は、本来食品衛生行政の分野に属するというふうに考えておりますが、関係省庁とも連絡をとりつつ、農林水産省としても農薬行政の観点から可能な範囲内での情報の収集等には努めてまいりたいと思っております。
  149. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 既に答弁もありましたが、ことしの米価算定方式は、確かに個人差はあるにしても理論的には小農切り捨て方策であります。そのねらいは、小規模零細農家の離農の促進によりまして上ずる余剰農地を中核専業農家規模拡大に充当、競争力のある専業農家の育成をとの論理でありますけれども、机上の計画どおりに果たして進みますのかどうか。今日の農業社会において小農こそ兼業収入により経済力はむしろ強く、しかも営農を継続しておるその理由は、経済的な理由よりもむしろ資産の保全とか食料の安全対策面からであって、米価の引き下げが離農に直結する論理は通用しない。むしろ低米価政策は、育成をせなければならない中核専業農家の経営を直撃し、経営破壊を誘発するのではないか。中核専業農家の破壊は我が国農業の崩壊を意味することになることは当然だと思うのでありますけれども、その心配をお持ちにならないのかどうか、当局の御所見を承りたいと存じます。
  150. 近長武治

    説明員近長武治君) 農家についての現状認識は委員御指摘のとおりであろうかと思います。私たちも現状についてはかなりそれに近い認識を持っております。  特に、日本の稲作というのは、先ほど申し上げましたが、農場制農業ではございませんので、やはり水管理でございますとか、土地の利用調整ということで一定地域の中で相互に結びつき合いながら行われている、こういう実態であろうかと思います。したがいまして、これから生産性を上げていくときに、小規模農家の離農、大規模農家への権利の集中というような道筋だけではない、さまざまな道筋を考えておかなきゃいけないというふうに思っております。私たちの方も、各地の優良なる先駆的な事例を見てみますと決してそういうような単線的ではございません。いろんな経営がその中で行われながら全体の中で地域内の話し合いを進めて、そしてなるべくコストが下がるように、そして地域としては全体の農業が安定していくようにというような工夫が行われておりますので、米価で離農を促進するというような考えは持っておりません。  今回の新算定方式は、先ほど申し上げましたように、生産費所得補償方式について幅広い支持を得たい、こういうような考え方でございますので、価格政策以外の運用に当たっては、今委員御指摘のような点にも十分留意しながら進めてまいりたいと、かように考えております。
  151. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 午前中の農林水産大臣からの答弁もいただいておりますけれども、重ねてお尋ねをいたします。  米価が出ますと、常に国際価格と比較して日本の米価は非常に高い、こういうことであります。しかし、国際価格に比較して高いのは米価だけではございません。今日の日本ではすべての物価が国際価格に比べて余りにも高過ぎると思っております。それは政治の対応のまずさから円高のメリットを生かし切れておらない、こういうように思います。低米価政策を算定方式の変更だけで対応しようとすることについては余りにも簡単過ぎるように思います。もちろん、今朝来の答弁の中でそれぞれのお考え方があるようではありますが、私もやっぱり農用資材の価格の低減でありますとか、生活物資の価格の低下でありますとか、さらには公共料金の低減のための社会資本の整備等、総合的に勘案をした施策が必要であるということを訴えてまいりました。  以上を前提として、次の二点に関する施策についてお尋ねをいたします。  一つは、物価高をそのままにしておいて一方的に低米価政策を強行するようなことでは、到底農業の活性化は期待できないのではないか。  もう一つの問題は、先ほどの質問にもありましたように、例えば土地改良におきましても大変な負担を農家は強いられております。やっぱりそれは農家自体の負担が大き過ぎるからであると私は思っております。よく農民は補助金によって過保護されておると言われてはおりますけれども、この土地改良の経費などは国の補助に加えて地方自治体も上積みをしております。けれども、生産農家は受益者負担として多額の自己負担もし、長期にわたっての償還にたえていかなければなりません。兼業農家であれば、現役の時代にやった仕事が年金生活になってからもなお支払っていかなければならぬ。これはやっぱり家計への重圧として残ることになります。  そういったことからして我が国の行政は、今日的なシステムでは余りにも利用者の負担を大きくしておるのではないか。こういったことが社会資本の整備のおくれを取り戻すことを急ぐからだと思っておりますけれども、公共投資をさらに大きくして、受益者負担の軽減を図っていく等のことをあわせ行うことが必要だと思いますが、以上のように、物価高をそのまま放置しておいてよいのかどうか。公共資本の充実については、やっぱり国費の投入をもっと考えてあわせ行っていかなければと思いますのですけれども、その点に対する御所見を承りたいと思います。
  152. 近長武治

    説明員近長武治君) 物価高の問題、それから土地改良の負担の軽減、方向としては委員御指摘のとおりだと思います。したがいまして、特に米価との関連で申し上げますと、肥料、農薬あるいは農業機械、円高のメリットの問題もございますし、それから例えば先般、肥料についての法律を廃止する法律を通していただいたわけでございますが、そういうことを通じながら、なるべく資材の価格の低下につながるように努力していかなければいけない。それから土地改良の負担の軽減は、先ほど構造改善局長からるる他の委員に御説明申し上げましたように、なかなか難しい問題もございますが、やはりそういう方向での努力を私たち積み重ねていかなければいけないと思っております。  それからもう一点、米についての国際価格との比較についての御指摘があったわけでございます。例えば、米価について国際的に比較する場合に、日本と諸外国との間の社会経済条件の違いでございますとか、国土条件の違い、それから例えば食生活の中におきます位置づけ、これは非常に違っているわけです。したがいまして、それを機械的に比較して、そしてさらに機械的に国際価格水準に近づけていくというのは現実的ではないというふうに私たちは考えております。  ただ、この問題が大変重要でございますのは、これだけ国際化がいたしますと、余り大きなる内外価格差があったときには、私たちの予想もしないようなところで弊害が出てくる。先ほど他の委員のお話のように、例えばピラフが輸入規制の目をくぐって輸入されるというのも、あるいは大幅なる価格差があるということであるのかもしれない。その辺にも意を用いていかなければいけないと思います。  もう一点は、やはり私たちもこれから十分にいろんな方面に説明しなきゃいけないと思うんですが、例えば米価算定の仕方について農家の方の御不満はきょういろいろお聞きいたしましたが、他の分野の方からもいろんな御不満がございます。やはり価格政策をきちんとやっていくためには幅広い国民的な理解も必要ではないかな、かように思っておりますので、ただいまの御指摘を旨としながらこれからも政策を進めさせていただきたい、かように考えております。
  153. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 時間ですから終わります。
  154. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。
  155. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 一井君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。一井君。
  156. 一井淳治

    一井淳治君 私は、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、二院クラブ・革新共闘の各派及び各派に属しない議員山田耕三郎君の共同提案に係る平成元年生産者米価決定等に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     平成元年生産者米価決定等に関する決議(案)   政府は、米価審議会に対し、平成元年生産者米価について、二・五五パーセントの引き下げ諮問を行った。   生産者米価は、昭和六十二・六十三年と二年連続して合計一〇パーセント強の引き下げが強行されたところであり、本年さらにその引き下げを行うことは、将来展望が開けないまま減反政策の強化等に苦しんでいる稲作農家の経営を一層窮地に追い込むこと必至である。加えて、牛肉・オレンジ等の自由化決定に引き続く米の市場開放要請は、農村社会にかつてない大きな不安と動揺をもたらし、これが農政不信を惹起していることは誠に遺憾な事態と言わざるを得ない。   農業・農村が我が国経済社会の健全な維持発展に果たしている役割機能を重視し、これに基づき、農業の将来展望を切り開く新農政を展開することは、国政の喫緊課題である。   よって政府は、平成元年生産者米価の決定等に当たっては、次の事項の実現に努め、稲作農業の健全な発展と農村社会の活性化に必要な施策の推進に万遺憾なきを期すべきである。  一 平成元年生産者米価の決定に当たっては、労賃及び地代評価算定要素に改善を加え、再生産所得を確保できる価格の実現を図ることとし、少なくとも実質的な引き下げが行われることのないよう措置すること。   また、作付面積一・五ヘクタール以上層の生産費のみを対象とする新算定方式の採用は、米の販売シェアの大半を担っている農家層のコストを償うものでなく、これを撤回すること。  二 米の市場開放要請については、国内での完全自給を図ることを旨とした衆・参両院の本会議決議等を体し、断固としてこれを阻止すること。  三 今後の米穀管理政策の運営に当たっては、食管制度の堅持と秩序ある流通の実現を図り、需給及び価格の安定にいささかの不安も生ずることのないよう万全を期すること。  四 水田農業確立後期対策については、転作目標面積を現状以上に拡大せず、かつ、期間中固定することとし、あわせて、その円滑な実施に必要な転作助成補助金等各種奨励措置を継続実施するとともに、米の需要拡大のための諸施策を積極的に推進すること。  五 稲作コストの低減と所得の安定的確保に資するよう、農家負担の軽減に配慮した農業基盤整備事業の推進、経営規模拡大等による中核農家の確保、稲作生産組織集団の育成、生産資材価格の引き下げ、中山間地域の活性化等に必要な各種施策を積極的に展開すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  157. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまの一井君提出の決議案につきましては、その取り扱いを改めて理事会で協議いたします。  暫時休憩をいたします。    午後三時二十三分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕