○前田勲男君 沖縄県における
産業活動等の実情に関する
調査のため、去る一月二十五日から一月二十七日まで三日間にわたって行われた
委員派遣について御報告申し上げます。
派遣委員は、
宮澤委員長、中曽根理事、
福間理事、市川理事、伏見
委員、井上
委員、木本
委員と私、前田の八名であります。
派遣の
日程は、一月二十五日、まず那覇市の沖縄自由貿易地域を視察した後、沖縄総合事務局から管内概況説明、沖縄県から県内
経済概況説明を聴取いたしました。午後は県南部の糸満市にあります糸満工業団地、琉球ガラス村を視察いたしました。
翌二十六日は、県北部に赴き、浦添市で沖縄電力株式会社、石川市で電源開発株式会社を視察した後、沖縄県の開発したリゾート施設である沖縄海中公園、名護市のオリオンビール株式会社、本部町の国営沖縄記念公園を順次視察いたしました。
二十七日は、県内の伝統
産業として琉球かすり工場、泡盛工場を視察後、
記者会見を行いました。
以下、
日程の順序に従って視察先の概要について申し上げます。
沖縄自由貿易地域は、沖縄振興開発特別
措置法に基づき、沖縄県における企業立地を促進するとともに、貿易の振興を図るため、沖縄県知事の申請に基づき沖縄開発
庁長官が指定する地域であります。
自由貿易地域は、原材料を
輸入し、地域内で加工、製造する、また貿易品の中継、備蓄、展示、取引などの機能を有するもので、
各種税制、金融面の優遇
措置が講じられております。将来は県下各地に自由貿易地域を拡大していきたいという説明でありました。
次に沖縄総合事務局の管内概況は、最近五年間の平均
経済成長率は実質で全国平均の三・八%を上回る四・二%に上っています。この結果、全国との所得格差は急速に縮小し、復帰時の
昭和四十七年度の五九・五%から六十一年度には七五・二%となっているものの、依然として大きな格差が見られ、さらに完全失業率は
昭和六十二年平均で五・二%と全国平均二・八%の倍近くになっています。
沖縄
経済は、第二次
産業のウエートが低く、第三次
産業、特にサービス業のウエートが高い、財政への依存度が県民総支出の約三三%と全国の一六・五%と比べ極めて高い、観光収入、基地収入の依存度が高い、本土への移出品は農産物が
中心で多くの品目を県外に依存しているなどの特色があります。
今後の課題としては、石油依存度が高いため、エネルギー源の多様化、国際ビジネスの拠点として物と
情報の交流基地としての機能を強化するため、自由貿易地域などの強化、鉱業、
中小企業、
情報産業、伝統
産業などの振興、リゾート・観光
産業の振興、工業用地、工業用水道などの
産業基盤の
整備などが必要であるという説明がありました。
次に、沖縄県の説明によりますと、沖縄県の商工業の振興については、第三次
産業、特に小規模零細企業が多い
現状にかんがみ、伝統
産業を含めた地場
産業の振興を図るとともに、頭脳立地構想を推進する、またカルシウムの塊であるコーラルサンドなど地場資源活用型企業、ソフト
関連企業など新規企業の
立場を促進する、自由貿易地域を充実させる、さらに国際的なリゾートを形成するとともに受け入れ
体制の
整備を図るなどの
政策課題があり、特に自由貿易地域、
情報産業の育成、リゾート開発が県
経済の三本の柱であるということでありました。さらに、商工観光の振興に当たって、現在の航空運賃が一つの大きなネックになっているとの説明がありました。
次に、糸満工業団地は、那覇市の南部に位置し、
昭和四十七年に策定された沖縄振興開発
計画に基づいて
整備された新糸満漁港の後背地に糸満市が埋立てて造成したもので、水産食品開運用地、
中小企業用地などを
中心に面積は約二百六十七ヘクタールであります。
市の説明によれば、
中小企業用地は好調でありますが、六割は市内の既存の企業の移転であること、新糸満漁港の水揚げがやや不調なため、水産食品関運用地の売れ行きがいま一つであることなどが問題であり、企業誘致を強力に推進しているとのことでありました。
次に、琉球ガラスは、実用品製造の伝統の上に、戦後のアメリカの影響を強く受け、美しい手づくりの吹きガラスとして成長著しい
産業であります。特に
中小企業近代化促進法による
高度化事業により、共同工場とともに共同販売店を有する琉球ガラス村が設立され、
昭和六十年度には琉球ガラス工芸協業組合に
発展をいたしております。
ここでは、ガラス製品の製造工程を実際に見ることができました。
次に、沖縄電力は、沖縄県
最大の企業であり、去る第百十二
国会で
成立した沖縄振興開発特別
措置法の改正案に基づき昨年十月に民営化され、先日の株式一般放出が行われ、ブームを呼んだ企業であります。
沖縄は離島が多く、また河川が少ないなどの地理的条件があるため、小規模発電所が多く、電源は化石燃料だけであり、また
産業がないために、夏と冬、昼と夜の電力の使用量が極端に違うなど、電力会社としては幾多の困難な
状況下に置かれております。
しかしながら、沖縄電力の説明によれば、電源開発の石川石炭火力の完成により石油依存度は六〇%に低下したこと、発電所と
需要家が近く、またメーンの送電線に沿って人口が分布していることなどの沖縄の利点を生かし、堅実な経営を行っていく、離島の電源については燃料電池の研究が完成間近であり、また太陽光などの代替エネルギーの研究開発も行われているとのことでありました。
次に、電源開発石川石炭火力発電所でありますが、電源開発は、資本金七百六億円、発電所五十九カ所、従業員三千五百人の卸電気
事業者であります。同社の石川石炭火力発電所は出力三十一万キロワットの石炭火力発電所であり、沖縄県の電力
需要量の約四〇%を発電いたしております。さらに同社の説明によれば、石川石炭火力発電所は、沖縄の遠浅の海に対処するため、海中に一キロの揚炭桟橋を設け、炭じんが飛散しないようベルトコンベヤーを密閉式にしている、硫黄酸化物を石こう化して取り出す脱硫装置、ばいじんを九九%取り除く除去装置を取りつける、石炭の灰は三割程度を有効利用し、残りは隣の埋め立てに使用しているなど、
環境対策にも配慮をしているとのことでありました。
次は、沖縄海中公園でありますが、同公園は沖縄県観光開発公社によって
昭和四十五年に名護湾一帯に設立された施設であり、海洋生物の研究、海洋レジャー振興などを目的としています。公園にはサンゴ礁の海中を見ることができる海中展望塔などがあり、今後県
経済の大きな柱となるべき観光
行政の中で重要な位置づけがなされておりました。
次に、オリオンビール株式会社でありますが、同社は
昭和三十二年に設立され、資本金三億六千万円、年商二百一億七千万円で沖縄県のビール消費量の八割を超えるシェアを持つ県内
最大のメーカーであります。現在の取扱商品はビール、清涼飲料などですが、特にビールにつきましては、水質、気温などの点で無理であると言われてきた亜熱帯の沖縄においてビールの
生産に成功し、気候風土に合ったマイルドで口当たりのよいビールを開発、
生産しているとの説明でありました。
次に、国営沖縄記念公園、海洋博覧会地区は、
昭和五十年に開催された沖縄国際海洋博覧会を記念し、その跡地に建設された
我が国唯一の熱帯・亜熱帯公園であります。公園は面積約七十七ヘクタールで、熱帯ドリームセンター、エメラルドビーチ、水族館などの施設があります。公園への入場者は
昭和六十二年度で約百七十五万人に上り、全国の国営公園では飛び抜けた成績であります。さらに沖縄県の観光客の多数がこの公園を訪れていることから、本公園は沖縄の観光施設として、さらに従来、やんばる、山と草原しかないと言われた沖縄県北部の振興に重要な役割を果たしているとのことでありました。
次に、琉球がすりでありますが、琉球がすりは沖縄の代表的な織物の一つで、四百年近い歴史があり、生活に密着したかすり柄を特徴としています。
生産高は年間六億円、
昭和五十八年度には伝統的工芸品
産業の振興に関する
法律に基づく
通産大臣の指定を受けております。また、従事者は、
昭和六十一年で約四百六十名であります。今回は、那覇市近郊の大城織物株式会社を訪問し、伝統的な工法でかすりが織られている様子を視察いたしましたが、会社の説明では、工場で働いている人々は技術の習得が目的であり、
中心は家庭内で製作されているとのことであります。
最後に、琉球泡盛は那覇市の瑞泉酒造株式会社を視察いたしました。泡盛は、十四、十五世紀ころの南方渡来の酒に由来すると言われる歴史ある蒸溜酒であり、タイ産の米を原料としています。
昭和五十一年に各製造業者の
生産する泡盛を仕入れ、長期保存し、古酒として県外に販売するとともに、原料米及びその他物資の共同購入を行い、
業界の安定と
経済的な地位の向上を図るため、沖縄県酒造協同組合が設立されております。視察先の瑞泉酒造は、県
最大手のメーカーであり、十五度から四十三度までの
各種製品を製造、販売しているとのことであります。
視察先の概要は以上でありますが、今回の現地
調査を通じての印象としては、沖縄県の今後の
方向は、自由貿易、企業誘致、観光開発の三つが
中心であります。まず自由貿易については、自由貿易地域は地理的条件からいっても沖縄県に最適な制度であり、現在は狭いので、今後の拡充が必要であろうということであります。次に、企業誘致については、従来のような形の重厚長大型の誘致ではなく、ハードよりソフト、具体的にはリゾート
産業、
情報産業等を
中心としたものを
考えることが必要であります。また、観光開発に関しては、確かに重要でありますが、
現状では、空港に到着し、観光バスに乗り、ホテルに入ったら、一歩も町に出ないというスタイルが多く、地元に対する
経済効果を初め、地元の人々、歴史、自然との触れ合いが少ないなど、またその他プロ野球の積極的なキャンプ誘致など、地元への波及効果の高いものを今後検討すべきである。また、リゾート開発が県内の至るところで
計画されていることに関して、いずれ収益性に疑問が出る、かえって沖縄県
経済に悪影響も与える結果にならないかといった感想が各
委員から述べられたことを紹介をいたしておきます。また、琉球王家の尚家の文化財の県外譲渡について、観光開発の
観点から危惧する意見もあったことを付加しておきます。
最後に、今回の現地
調査に当たり御協力をいただきました沖縄開発庁沖縄総合事務局を初めとして、沖縄県、糸満市及び各企業の
関係者の皆様に厚く御礼申し上げて報告を終わります。
ありがとうございました。