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国務大臣(
宇野宗佑君) ただいま
議題となりました
旅券法の一部を改正する
法律案について
提案理由を御
説明いたします。
我が国の旅券発給件数は、
昭和二十六年の
旅券法施行以来増加の一途をたどってきましたが、特に最近においては
円高傾向の定着と相まって急激な伸びを示しており、
昭和四十七年に約百万件であった発給件数が
昭和五十七年には二百万件台、
昭和六十二年には初めて三百万件台を超えて三百三十八万件に達し、今や
我が国は米国に次ぐ最大規模の旅券発給国となるに至りました。
従来はごく一部の
国民を対象としていた旅券の発給がこのように急激に一般化するに伴い、旅券発給窓口の混雑、旅券事務量の膨張、旅券管理の複雑化等の諸問題が生じており、その改善が急がれております。
他方、大量渡航時代における旅券事務及び出入国手続の合理化及び管理強化の必要性から国際的に機械読み取り旅券(MRP)の導入が開始されておりますが、
我が国としても早急に機械読み取り旅券を導入することが望まれます。
現行
旅券法は
昭和四十五年に改正して以来二十年を経過しており、このままでは、右のような現在の内外の諸
状況に対応し切れなくなっております。このため、
旅券法の一部を改正することにより、手続の簡素化、事務の整理、合理化を行い、
国民の一層の便宜及び行政効率の向上を図るとともに、内外における旅券
制度の適正な運用を図ろうとするものであります。
以下、この
法律案の主な
内容につき御
説明申し上げます。
第一は、一般旅券の原則数次旅券化であります。
旅券を国際的な標準旅券に統一し、事務の合理化を図るため、一般旅券は、有効期間五年の数次往復用旅券とすることを原則としました。ただし、二重に旅券を発給する場合及び発給を受けようとする者が長期二年以上の刑で訴追中である場合等においては、渡航先を個別に特定し、有効期間を五年未満とすることができることといたしました。一往復用の一般旅券につきましては、外務
大臣が指定する地域へ渡航する場合を除き廃止することとしました。
第二は、有効期間の満了時点を明確化したことであります。
機械読み取り旅券の導入に備えまして、すべての旅券は有効期間満了の具体的な日付を旅券面に記載することとし、同日を経過したときに失効することといたしました。
第三は、提出書類の簡略化等であります。
一般旅券の発給申請のために必要な提出書類のうち、渡航費用の支払い能力を立証する書類を削除することとしました。また、申請書、請求書等の通数及び写真のサイズ等詳細については、技術の進歩に伴って簡略化を弾力的に
実施し得るよう、省令で
規定することとしました。
第四は、本人出頭義務の緩和であります。
本人出頭義務を原則として交付時一回とし、申請時は幅広く代理申請を認めることといたしました。また、病気、身体障害、交通至難の
事情等真にやむを得ない
理由があるときは、
例外的に本人の出頭を免除し得るような救済
措置を設けることとしました。
第五は、記載事項の訂正の原則廃止であります。
機械読み取り旅券の導入に備えて、旅券の記載事項の訂正を原則として廃止し、新規発給にてかえることとしました。ただし、渡航者の便宜のため、一般旅券については、名義人の氏名、子の併記に係る事項等に関して、変更が生じた場合には、別ページに訂正を追記することを認めることとしております。
第六は、切りかえ発給の
規定化と再発給
制度の一部廃止であります。
残存有効期間が一年未満になった場合等における切りかえ発給を明文で
規定することとしました。また、査証欄に余白がなくなった場合についても切りかえ発給により新規旅券を発給することとしました。
第七は、合冊の廃止であります。
事務の簡素化の観点より、現在では諸
外国にほとんど例を見ない合冊
制度を廃止することとしました。
第八は、手数料の一部の都道府県への分納化であります。
都道府県における旅券事務の財政基盤を改善するため、これまでの委託費方式を改め、手数料の一部を実費を勘案して政令で定めるところにより都道府県へ分納することとしました。
次に、施行期日等であります。
この
法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、手数料の都道府県への分納に係る
規定につきましては、
平成元年六月一日から施行することといたしております。
以上がこの
法律案の
提案理由及びその
内容の概要であります。
何とぞ、慎重御
審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。