○村山喜一君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま上程されました
平成元年度の
財政運営に必要な財源の確保を図るための
特別措置に関する
法律案に対し、反対の
討論を行います。
私たちの反対にもかかわらず
昭和四十年度補正予算で国債を発行してから、今日まで二十四年の歳月が流れました。
昭和四十一年度から建設国債の発行へ、そして、十年後には財政法が禁止している赤字国債の発行まで踏み込んでしまい、
平成元年度においては国債依存度一一・八%、GNPに対する長期
政府債務残高比四九・六%、利払い費比率一八・四%という、主要国の中で最も悪い財政事情まで転落をいたしています。これはまさに歴代の自民党
政府の
財政運営の結果として、その責任を厳しく追及をしなければなりません。
平成元年度末では、国債の発行残高は百六十二兆円、隠れ借金二十六兆円を含めると百八十八兆円という巨額な赤字になろうとしております。もう通常の手段では財政再建はできないところまで来ております。まさに国債に抱かれた財政であります。
反対の第一の理由は、本
法案は、自民党単独でごり押しをした
平成元年度予算の一部をなすものであり、
特例公債は一兆三千三百十億円発行にとどめ、そのかわり、国債定率繰り入れ等二兆犬千八十一億円を停止しようとするものであります。そもそも本年度予算は、不公平税制を温存しながら弱い者いじめの消費税創設を織り込んだものであり、防衛費を突出させ聖域化しているもので、基本的に容認できないものであります。
第二に、
政府は、
特例公債依存体質から脱却すべく財政再建に努力した結果一定の成果を上げてきたと
自己評価をしておりますが、本年度の財政は、表面上は財政赤字を七兆一千億に圧縮をしているものの、実質は十四兆七千億の赤字であります。
政府は、来年度は
特例公債は発行しなくてもやっていけるとしながらも、財政再建のための中長期の展望を示すことができず、財政
制度審議会にげたを預けて、困難な問題はすべて先送りをしようとして、責任をとろうといたしておりません。
第三は、今、日本国民は極めて不安定な状態に直面をしております。
昭和六十二年の国民経済計算によれば、六十二年一年間にGNPは十四兆円しか増加していないのに、金融資産は三百八十二兆円、実物資産は四百二十二兆円増加し、国民資産は八百四兆円も大激増をしているのであります。
その結果、日本の六十二年度末の土地資産評価額は一千六百三十七兆に対しまして、GNPで日本の一六倍もあります。アメリカの評価額は四百三兆円にとどまり、単位面積比ではアメリカの百倍の額になっております。私たちは、その高い土地の上に家を建て、生活をなし、
事業を営み、
農業を展開をしております。今日の円安・ドル高の根源もここにありと言わなければなりません。
六十二年一年間に百六兆円の株価の値上がり益を生み出し、世界一の株価を形成をしたその株の八割は法人が所有をしております。土地インフレは一年間に三百七十一兆円の増価を生み出しましたが、土地なき民は都心から五十キロ圏へ、さらに百キロ圏へ、そして百五十キロ圏に追い立てられております。会社、法人は国内のすべての土地資産評価額の二八%を占有しております。税法上も、土地は償却資産ではないとして再評価益課税もされず、低い簿価のままで評価をされております。相続税の発生をしない法人は、国民資産五千三百三十八兆円の大部分を保有し、世界最大の債権国日本の代表となっております。個人の資産形成についても、総務庁の貯蓄動向調査によると、所得上位二〇%の第五分位の階層が株の五割以上を保有しているとしているものであります。
「増税なき財政再建」のもとで、資産の格差は恐ろしい勢いで
拡大をしております。今やらなければならないのは、資産課税の強化であり、消費税で水平的公平を国民に強制することではありません。
第四として、現行の
制度を前提として、予算編成の仕組みを固定し、そして財政再建を軌道に乗せることは、もはや不可能であることを指摘しなければなりません。財政改革は、財政投融資まで含めて
制度改革を進めなければなりません。
将来展望を明らかにされず、その易しのぎのこの
法案に反対をし、私の反対
討論を終わります。(
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