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藤井(正)政府
委員 法例は、御指摘のように第一条、第二条は法の適用に関する通則を定めているものでございまして、第三条以下もやはり適用に関する通則でございますが、これは主として渉外的法律関係における適用関係、すなわち国際私法でございます。
そこで、このうち第三条以下の国際私法部分を全部取りまとめて抜き出して、国際私法という単一の法制にするということが一つ考えられるわけでございますけれども、今回はこのうち財産法的規定あるいは総則的規定の検討が全部は行われていないわけでございまして、特に財産関係における国際商取引を規律する準拠法の決定などは極めて重要な部分でございますけれども、そのような点について関係諸団体の意見を聞いて全部を取りまとめるという作業を行うためには相当の期間が必要でございまして、そこまでやる余裕がございませんでした。
特に、両性の平等を実現するための婚姻及び親子に関する準拠法部分の改正が急務でございまして、これを非常に急いだということがございまして今回のような改正の形式となったわけでございます。将来、国際私法全体について検討を加えまして、これを単行法として抜き出して規定するということは考えられてしかるべきであろうというふうに思っております。
それから第二点でございますけれども、渉外的身分関係あるいは渉井戸籍の現状でございますが、お手元に差し上げております関係資料のうち六の
法律案参考資料というものの三十四ページをごらんいただきますと、「渉外婚姻数調べ」というのがございます。これは人口動態調査結果によるものでありますが、「日本人と外国人との婚姻届出数」を見てみますと、昭和六十二年におきましては、「夫日本人・妻外国人の場合」が一万百七十六件、「妻日本人・夫外国人の場合」が四千四百八件、合計一万四千五百八十四件でございます。これを五年前の昭和五十七年と比較してみますと、五十七年は八千九百五十六件でございますので、六割以上の伸びを示しておるわけでございます。また、裁判所の司法統計によりますと、昭和五十七年と六十二年の渉外養子縁組の許可件数は百七十二件から五百五十二件へと三倍強の増加が見られておりまして、非常に渉外的身分関係の増加が顕著であると言えると思われます。
今回の
法律案の中では、属人法の連結点としまして常居所という概念を用いております。これはハーグの国際私法会議でもってなるべく統一的な連結点を用いることとしたいという考えからこういう概念を採用したものでございますが、これは世界各国で住所というものの中身がかなりまちまちであるところからこのような概念を採用したわけでございますけれども、この認定は、居住年数であるとか、それから居住の目的が永住目的であるのか観光目的であるのかといったようなこととか、あるいは実際に居住をしております状況などによって認定をすることになります。我が国で申しますと、民法で住所というものを定めておりまして、生活の本拠であるということになっておりますが、これとほとんど同一のものであると考えてよろしいかと思います。
ただ、実際に離婚届など届け出を受ける市町村役場の窓口において取り扱いに戸惑うとか、あるいは不統一が来されても困りますので、法務省といたしましては、この点につきまして通達を発出いたしまして一定の基準をお示しし、できるだけ実務の統一を図りたいと思っております。もちろん具体的な事案に応じまして、この認定に困難を来すような場合には、監督
法務局に対する受否伺いをしていただくというようなことも考えられるかと思います。
それから三番目の国際私法会議でございますが、これは明治二十六年、一八九三年にオランダ政府の発議によりまして、国際私法の分野における統一を目的としましてこの会議が始まっております。ヨーロッパの十三カ国が当初これに参集したわけでございますが、この中にはドイツ、オーストリア、ハンガリーなどのほかに、スペインであるとかフランス、イタリア、オランダ、ポルトガル等々の国が含まれております。
我が国は一九〇四年にこれに参加をいたしまして、それ以来主要な構成国としてこの活動に加わっております。現在遺言などについての国際的統一が図られる、そういう活動がなされております。