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1989-03-24 第114回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年三月二十四日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 友納 武人君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 井上 喜一君 理事 白川 勝彦君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君 理事 河村  勝君       赤城 宗徳君    稻葉  修君       上村千一郎君    木部 佳昭君       塩川正十郎君    塩崎  潤君       戸沢 政方君    二田 孝治君       松野 幸泰君    宮里 松正君       稲葉 誠一君    清水  勇君       山花 貞夫君    冬柴 鐵三君       山田 英介君    滝沢 幸助君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高辻 正己君  出席政府委員         法務大臣官房長 井嶋 一友君         法務大臣官房司         法法制調査部長 則定  衛君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君 委員外出席者         最高裁判所事務         総局総務局長  金谷 利廣君         最高裁判所事務         総局人事局長  櫻井 文夫君         最高裁判所事務         総局民事局長  泉  徳治君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ――――――――――――― 委員異動 三月一日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     木村 義雄君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     上村千一郎君 同月三日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     河村  勝君   塚本 三郎君     滝沢 幸助君 同月二十二日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     田村 良平君   清水  勇君     木間  章君   滝沢 幸助君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   田村 良平君     上村千一郎君   木間  章君     清水  勇君   小沢 貞孝君     滝沢 幸助君 同月二十四日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     二田 孝治君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君 同日  辞任         補欠選任   二田 孝治君     加藤 紘一君   冬柴 鉄三君     大久保直彦君 同日  理事安倍基雄君同月三日委員辞任につき、その  補欠として河村勝君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月十日  法例の一部を改正する法律案内閣提出第四一  号)(予) 同月二十三日  民事保全法案内閣提出第四〇号) 同月七日  刑事施設法制定反対に関する請願山花貞夫君  紹介)(第四号)  刑事施設法案廃案に関する請願安藤巖君紹  介)(第七五号)  同(石井郁子紹介)(第七六号)  同(岩佐恵美紹介)(第七七号)  同(浦井洋紹介)(第七八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第七九号)  同(金子満広紹介)(第八〇号)  同(経塚幸夫紹介)(第八一号)  同(工藤晃紹介)(第八二号)  同(児玉健次紹介)(第八三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第八四号)  同(柴田睦夫紹介)(第八五号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第八六号)  同(田中美智子紹介)(第八七号)  同(辻第一君紹介)(第八八号)  同(寺前巖紹介)(第八九号)  同(中路雅弘紹介)(第九〇号)  同(中島武敏紹介)(第九一号)  同(野間友一紹介)(第九二号)  同(東中光雄紹介)(第九三号)  同(不破哲三紹介)(第九四号)  同(藤田スミ紹介)(第九五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第九六号)  同(正森成二君紹介)(第九七号)  同(松本善明紹介)(第九八号)  同(村上弘紹介)(第九九号)  同(矢島恒夫紹介)(第一〇〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇一号)  同(伊藤茂紹介)(第一〇二号)  同(清水勇紹介)(第一〇三号)  同(山花貞夫紹介)(第一〇四号)  同(稲葉誠一紹介)(第一一三号)  同(坂上富男紹介)(第一一四号)  同(金子満広紹介)(第一二七号)  同(工藤晃紹介)(第一二八号)  同(辻第一君紹介)(第一二九号)  同(寺前巖紹介)(第一三〇号)  刑事施設法案反対に関する請願寺前巖紹介  )(第一二六号) 同月二十三日  刑事施設法案廃案に関する請願安藤巖君紹  介)(第二一二号)  同(石井郁子紹介)(第二一三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二一四号)  同外二件(清水勇紹介)(第二一五号)  同(辻第一君紹介)(第二一六号)  同(中路雅弘紹介)(第二一七号)  同(稲葉誠一紹介)(第二三二号)  同(伊藤茂紹介)(第二四五号)  同(山花貞夫紹介)(第二五五号)  同(石井郁子紹介)(第三二一号)  同(岩佐恵美紹介)(第三二二号)  同(浦井洋紹介)(第三二三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三二四号)  同(経塚幸夫紹介)(第三二五号)  同(工藤晃紹介)(第三二六号)  同(児玉健次紹介)(第三二七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三二八号)  同(柴田睦夫紹介)(第三二九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三三〇号)  同(辻第一君紹介)(第三三一号)  同(寺前巖紹介)(第三三二号)  同(中路雅弘紹介)(第三三三号)  同(中島武敏紹介)(第三三四号)  同(野間友一紹介)(第三三五号)  同(東中光雄紹介)(第三三六号)  同(不破哲三紹介)(第三三七号)  同(藤田スミ紹介)(第三三八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三三九号)  同(正森成二君紹介)(第三四〇号)  同(松本善明紹介)(第三四一号)  同(村上弘紹介)(第三四二号)  同(矢島恒夫紹介)(第三四三号)  同(山原健二郎紹介)(第三四四号)  刑事施設法案反対に関する請願安藤巖紹介  )(第三四五号)  同(金子満広紹介)(第三四六号)  同(田中美智子紹介)(第三四七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一五号)      ――――◇―――――
  2. 友納武人

    友納委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 友納武人

    友納委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長河村勝君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 友納武人

    友納委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所金谷総務局長櫻井人事局長泉民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 友納武人

    友納委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ――――◇―――――
  6. 友納武人

    友納委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。高辻法務大臣。     ―――――――――――――  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  7. 高辻正己

    高辻国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図りますため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、簡易裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図りますため、簡易裁判所判事員数を五人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、一方において地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件並びに簡易裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図りますため、裁判官以外の裁判所職員を六十二人増員するとともに、他方において、裁判所司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い、裁判官以外の裁判所職員を三十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所職員員数を二十五人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  8. 友納武人

    友納委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 友納武人

    友納委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  10. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは裁判所職員定員法ですから、法案について質問させていただきたいと思うのですが、これは簡裁判事を、民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため五名増員するというわけですね。今簡裁刑事事件というのはほとんどないわけです。民事事件増加しているというふうにもとれないのですけれどもね。簡裁判事を五名増員する根拠というのはどこにあるのですか。
  11. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事増員をお願いいたしました理由、目的は、大きく申し上げますと二つございます。  一つは、簡易裁判所民事事件、激増を続けていたわけでございますが、最近ようやく落ちつきを示したわけでございます。しかしなお、民事訴訟事件について申しますと十九万件あるいは二十万件前後という異常な高原状態事件数がございます。さらに、簡易裁判所適正配置を契機といたしまして、残っている簡易裁判所において民事訴訟事件を適正迅速に処理しなければならないという必要性は強まっております。そういったところから、都市部の忙しい簡易裁判所に対しまして裁判官配置数をふやして手当てしたい、それが第一点でございます。  もう一つは、独立簡易裁判所裁判官の常駐しておりませんいわゆる非常駐庁につきまして、少しでもこれを解消したいと考えている点でございます。簡易裁判所適正配置前には百四十一庁あったわけでございますが、簡易裁判所適配を実現させていただき、また、昨年一部の庁につきまして非常駐庁を解消するということをさせていただきましたおかげで、現在四十四庁が非常駐庁として残されております。これらの非常駐庁は非常に事件数が少ないわけでございまして、なかなか常駐をさせるということは難しいところが大半ではございますが、かけ持ちの仕方をいろいろ工夫するなどして少しでも非常駐庁の解消を図りたい。  この二点から増員をお願いしたわけでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 簡裁事件で、私どもが一番事件が長くなっているのは境界確定訴えですね。これは不動産の所有権確認訴えとの関連が非常によくわからない点があるわけです。これはまた後から出てまいりますが、境界確定訴えというのは、これはまず形成訴えだということが一つありますね。それからこれは、境界がはっきりしない、わからない場合に起こすんだ、こういうことになっているわけでしょう。まず、そうすると、その訴額はどうやって算定するのですか。
  13. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 確かに境界確定訴訟形式的形成訴訟と言われております。お尋ねはその場合の訴額でございますが、境界を確定することを求めているわけでございますが、おのずと当事者間に争いのある土地部分というのがございますので、その部分土地価額によって訴額算定している次第でございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、それはおのずからわかるといったって、わからないから訴えを起こしているんじゃないですか。だから、最高裁判例にもありますように、甲は一番地を所有している、乙、被告ですね、乙は二番地を所有している、境界がわからない、裁判所で決めてくれ、これだけでいいわけでしょう、訴えは。
  15. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおりでございますが、当事者たち主張しております自分たち土地所有権がここの部分であるという主張が当然背景にございますので、訴額算定につきましては、当事者主張しております土地部分でもって、争いのある土地部分がおのずと形成されてきていますので、その土地価額によって訴額算定しております。  請求趣旨はおっしゃるとおりのことでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、甲地と乙地境界がわからないから、だから裁判所によって決めてくれと、それだけでいいんじゃないですか。だから、裁判所の方で立証しろといったって、わからないから訴えを起こしているんだからこれは裁判所の方でやってください、こういうことになるんじゃないですか。
  17. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 境界確定訴訟におきましては、おっしゃるとおり、当事者たちが、自分たちはこの線をもって境界とするという主張をする必要は全くございませんで、その点はおっしゃるとおりでございますが、訴額算定に当たりましては、やはりその背景にあります争い土地部分でもって便宜行っている、こういう次第でございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 訴額に拘泥しないでください。私、最初訴額のことを聞いちゃったからあれなんですが、そういう意味ではなくて、今言ったような形でいったときに、立証しろ立証しろといったって立証できませんよ、わからないから訴えを起こしているので、裁判所形成訴えで確定してくれるというのですから、裁判所によってお決めください、こう言われて立証しなかったら一体どうするんですか、裁判所は。これは請求棄却するわけにいかないわけでしょう。確認訴訟なら請求棄却でいいかもわからぬけれども裁判所はどうするんですか。本人に立証を促したら立証しないとき、どうするんですか。  だから、これはもう当事者訴訟じゃないんじゃないですか。だから自白もないわけでしょう。和解もできないというんでしょう。これは、あなた、通常の民事訴訟当事者主義でしょう。当事者主義じゃないんだから、これは。そうでしょう。だから、これは非訟事件なんじゃないですか。そこら辺のところをどう考えたらいいんですか。
  19. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 境界確定訴訟は、委員指摘のとおりこれは性質は非訟事件でございます。しかしながら当事者所有権に非常に密接に関連いたしますために、当事者側双方弁論の機会を与えて、いわゆる口頭弁論にのせて処理するのが相当であるということで、これを形式的に形成訴訟という形でもって口頭弁論にのせている次第でございまして、性質そのものは、おっしゃるとおり非訟事件でございます。したがって、裁判所境界がわからないということで請求を棄却するということはできませんで、従来の経過、関係書類等をつぶさに審査いたしまして、合理的な裁量でもって線を引く、こういうことに最後はなるわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、境界確定訴え所有権確認訴えと併合して訴えを起こして、併合して審理していいわけですか。人事訴訟の場合は普通の民事訴訟とは併合できませんわね。違うわけでしょう。今はどういうふうになっているんですか。
  21. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 私どもは、その二つの訴訟は併合して審理することができるというふうに理解しております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、いろんな問題が出てくるわけですよ。そうすると相隣関係でいけば普通は所有権所有権ですね。だけれども、そうじゃなくて地上権の場合もいいわけでしょう。いいわけですね。そうすると賃借権の場合でもこれは準用できる、こういうような大体、学者の見解ですね。そういう形によってそれが形成訴訟で対世的効力が出るということになってくると、地主の方は困っちゃうんじゃないですか、本当の所有者は。決まっちゃうんでしょう。地主関係なくて決まっちゃうんじゃないですか、借地権者の方の相手方との争いの中で。だから、どこまで……。  それからもう一つ問題は、そうすると、これはちょっと変な質問なんですけれども、甲が一番地を所有している。乙も二番地を所有している。だけれども、二番地を売りたいと思うのだけれども一番地と二番地の境界がわからないからということで、甲が甲を相手にして訴えを起こすこともこれはできるのですか。変な質問だと断ったんですよ、僕は。
  23. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 自分自分に対して境界確定訴訟を起こすということはできないというふうに理解しております。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは訴え利益がないからという意味でしょう。そういう意味ですか。だけれども、これは片方の方は第三者に売る予定ならば訴え利益があるじゃないですか。それが一つでしょう。  前の話はどうなっているんです。所有権同士じゃないでしょう。地上権の場合、相隣関係でいいわけでしょう。賃借権でもいいわけです。判例-判例はそこまで言ってないかな。賃借権で僕はやったことがありますがね。裁判所は困っちゃいまして、片方賃借権片方所有権で、それで境界確定というのはできるんだ、できないんだということで随分長引きましたけれどもね。延期ばかりになっていたんです。まあそれはいいですけれども。  和解ができないということもあるわけでしょう。できないというのでしょう、最高裁判例では。どうして和解ができないのですか。  今の質問ごちゃごちゃしちゃったけれども最初質問は、甲が甲を訴えるとしても、確認利益があればいいんじゃないですか。これも変な質問なんですよ。後の質問は、賃借権でもいいかということになれば、対世的効力地主の方まで影響されちゃってはかなわないんじゃないですか、所有権者が。そういうような問題いろいろあるわけですね。非常に難しいのですよ、これ。わざと質問難しくしているわけじゃないのですけれども。  それから訴訟費用なんかも問題なんじゃないですか。裁判所が決めるというのでしょう。勝ち負けがない裁判ですね。勝ち負けがないというのに訴訟費用をどっちが負担するのか、どういうふうに負担させるのか、ここら辺も非常に争いが出てくるんじゃないでしょうか。今のは非常に皮肉った変な質問ですから後でゆっくり答えてください。
  25. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 境界確定訴訟訴訟でございまして、対立当事者というものを前提といたしておりますので、一番の土地所有者と二番の土地所有者が別の人である、そういう別の権利者との間で土地を相接している場合に、その地番境界を確定するという目的で行われるものでございますから、甲と甲との間の土地境界訴訟で確定するということは論理的にあり得ないことでございまして、その場合は同じ所有者同士でございますから、当事者たる適格を有しないことになるというふうに考えられます。  訴訟費用の問題でございますけれども、この境界確定訴訟紛争の存在を前提といたしまして、それを訴訟の上にのせるわけでございますので、お互い主張をしている線というものが当然異なっているということが紛争前提となっております。でありますから、それぞれの主張している範囲というものから考えますと、その裁判の結論はどちらに有利な判定がなされたのかということが出てまいりますので、その意味におきましては、やはり勝ち負けがある。したがって、それに基づいて訴訟費用の分担を決めればよろしいんじゃないかというふうに考えます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今のお話の中で所有権所有権という話がありましたよね。所有権だけでなくて、一体どこまでが認められるのかということ、これは一つ争いがあるところですね。  それから当事者主張があるというけれども、これはわからないからやってくれというので、主張しなくたっていいんじゃないですか。主張しなくちゃいかぬのでしょうかね、これ。わからないんだから決めてくれというんだから、わかりませんと言われたらどうなんですか。主張しろといったって主張できませんと言ったら……。
  27. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 地番地番境界争いということを非訟事件的に純化してまいりますと、あるいはそれを極端に申しますと今委員の御指摘のようなことになるかもしれませんけれども、こういう紛争訴訟になりますには必ずその背後に所有権所有権との争いが控えているわけでございますので、紛争訴訟におけるあらわれ方としましては、当事者自分主張する範囲につきましての主張があるのが自然でございます。それが主張できないような当事者のその主張というのは首尾一貫性がないと申しますか、説得力がないと申しますか、非常に力に欠けるものではなかろうか。紛争の実態からしますと、これはもう改めて私から申し上げるまでもなく、当事者主張する範囲というものはあるはずではなかろうかと思います。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりなんですけれども主張しなかったらどうするのかと聞いている。職権主義でやらざるを得ないじゃないですか。ということになれば、いわゆる普通の民事訴訟じゃなくなってくるので、これを簡易裁判所民事訴訟として扱うこと自身がおかしいのではなかろうか、私はこういう疑問を持っているということを申し上げたい、時間の関係で舌足らずになってきておりますけれども。だから、これは非訟事件なら非訟事件として、そして地裁でちゃんと非訟事件として職権主義でやるということをはっきりした方がいいのじゃなかろうか、こういうのが私の今のところの考え方なんですね。まだはっきりしないんですよ。と思っている、疑問を呈している、こういうだけです。  ちょっと別な話になりますけれども、司法研修所で所長の講話というのがあるんですね。そのときに修習生質問したというのですよ。先生、アララギ派の歌人で落合京太郎という人がいますけれども、あの人の短歌はどうなんですかと質問をした人がいるんですね。そうしたら、その講話をしていた人があいつの短歌はつまらないと言ったという、こういう話があるのですが、さあその人だれだかちょっと忘れましたけれども……。その方の意見によるというと、これは非訟事件だという、非訟事件のことに非常に詳しい方ですね、その方は。だから、その方がもう境界確定訴えを非訟事件だと言っているかどうか、私もそこまでのあれはちょっと足りないんですが、非訟事件の勉強をされている方はその方ですね。「橡の並木」という随筆があります。非常にいい随筆ですが、いろいろな座談会が出ています、それにはそれは書いてはありませんけれども。だから、これはどうも簡易裁判所でやっても無理じゃないかと思うのですよ。それで皆事件が長くなってしまうのですよ。それで一生懸命和解を勧めるんですよ。  ところが、最高裁の判決じゃ境界確定訴えには和解効力ないと言っているんでしょう。それにもかかわらず和解を勧めるわけですよ。それでこれは事件が長く延びてしまっているんですよ。それが一番多いんじゃないですか。だから十年くらいかかっているのが相当あるんじゃないですか。十年までかからないかな。そういう点があるので、これはどこかに問題があるので、よく整理する必要があるのじゃなかろうか、私はこういうふうに思っております。これはまたいろいろな、特によくお互いに勉強さしていただきたいと思うのですが、一体非訟事件とは何かということからまた入ってくるわけですね。これもよくわからないのですけれども……。  それからもう一つ、これはちょっと別な話になりますが、私はこれは国際私法の方で問題になってくると思うのです。そのときに質問したいと思うのですが、民法の七百八十七条のただし書きがありますね。認知の訴えでしょう。これも形成訴訟だというのですね。これはできたのは昭和十七年ですよね。戦争中です。このただし書き、これを見ると、「父又は母の死亡の日から三年」以内と書いてあるでしょう、出訴期間が。ところが、これはよくわかりませんけれども、子供が父親を訴える場合だけにこれは適用になるんだ、こういうのですか。子供が母親を訴える場合も、これも七百八十七条の適用があるのですか。これはどういうふうに理解したらいいんですか。ということは、子供が母親を訴える場合は、これは形成訴えでなくなって確認訴えになってしまうのですか。この条文でいくのでなくて別のことでいくのですか。別の条文でいくというと、どの条文でいくのですか。これはきょうでなくてもいいですよ。これは例の離婚の準拠法が出てきますが、そのときにゆっくり聞きますけれども、問題提起という形で聞いておきます。
  29. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 我が国の民法は認知主義をとっておりますが、母子関係につきましては、これは原則といたしまして母の認知を待たないで、分娩という自然的事実によって当然に母子という法律上の親子関係が発生するというのが現在の通説であり、判例のとっている立場でございます。したがいまして、そういう意味合いから申しますと、母子の関係におきましては認知あるいは認知の訴えということは必要でないというふうに考えられます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはただし書きに「父又は母の死亡の日から」と書いてありますね。これはどうして母の死亡の日も入るのですか。これはよくわからないのですが、私の勉強の不十分なところかもわかりませんけれども、これは元来昭和十七年にできたときの説明は、坂野千里さんだとか大森洪太さんが説明していますね。これは出征した軍人との間の子の関係のあれをやっているんだから、父との関係ですね。これを何で「母の死亡の日から三年」というのが入ってくるのですか。
  31. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 我が国の民法では、まず任意認知を定めました七百七十九条におきましても「父又は母がこれを認知する」と定めておりまして、強制認知を定めました七百八十七条におきましても、やはり「父又は母」というふうに同じような規定になっているわけでございますけれども、母の関係につきましては、ただいま申し上げましたような当然発生主義とでもいうような考え方がとられておりまして、その限りにおきましては母の認知ということはいわば空文に帰しているというふうに言えようかと思います。  ただ、これを強いて生かす解釈をとるといたしますと、例えば捨て子をしまして、その後母と子との共回生活関係が長く途絶えていた後に、母がこの子は私の子であるという認識を表明するという場合に母の認知というものがあり得るという考え方、そういう見解があるわけでございまして、そういう考え方をとりますならばなお母の認知というものはあり得るということになるのじゃなかろうかと思います。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、いわゆる母子関係確認訴えというのは、母親が死んでしまってからでも何年たったって構わないというのでしょう、最高裁判例は。ありますね。父親が亡くなった場合だけ三年という出訴期間でやっていくというのはおかしいのじゃないですか。浦和地裁の川越支部の判決がありますね。これは、私はあるいは間違いだったかもわからない。というのは、間違いか、あるいは検事の方でこの条文ということをよくわからないというか、争わないからああいう判決になってしまったのかもわかりませんけれども、あれはどうなんですか。間違いだというのですか、間違いじゃないということなんですか。  それで、じゃこの条文は、今の「父又は母」の方の「母の死亡の日から」というのは、これは削除してもいいのですか。これは別の確認関係でいけるのならば、三年間に関係なくいいと最高裁は言うのですよ。それでいけるのですか。父と母との間で区別ができてくるのではないですか。どうもそこのところはよくわからないのです。これは準拠法のときに少しくやりたいと思うのですね。だから、こういう戦争中にできた法律というのが相当無理があるんじゃないですかね。これは無理して急につくった法律でしょう。だから、そこら辺のところをどういうふうに考えたらいいんでしょうね。
  33. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 母子関係の存在あるいは不存在の訴訟における立証の対象は、分娩という事実があったかなかったかということでございまして、それに対しまして父子関係の存在、不存在における立証の対象はそれほど明確でない、いわば微妙な事柄でございます。そういう意味合いにおきましては、母の場合と父の場合とではやはり質的な相違がある。そういう観点から取り扱いを違えているものでございまして、これはこれなりに合理性があるのではなかろうかというふうに考えられます。  死後認知三年という規定が設けられましたのは、確かに御指摘のように昭和十七年、戦時中に戦地に赴いて戦死をするという人が出た際の救済策として立法されたものでございまして、そこで主として考えておるのはもちろん父子関係であろうかと思います。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはまた別のときに質問したいと思うのですが、私は実は三月二十日の判例タイムズを見まして驚いたのですが、医療過誤の訴訟がこんなに多いとは私も思わなかったのです。  これを見ると、新受件数は年間四百件近い。それで係属件数も千五百件近くだ、こう書いてあるのですね。これは西村宏一さんが言われているのですから間違いないと思うのですが、そこら辺のところから、医療過誤の訴訟について、これは非常に難しいですね、難しいのですけれども、これを、交通部というのは正式な名前じゃないかもわかりませんけれども、そういうような形である程度、司法権独立ですからそれを統一するというわけにはいきませんからそれはいかないけれども、いろいろな関係で勉強していく必要があるのではないか、こう思うわけですね。それで、いろいろな類型的なものもある程度はできると思うのですが、それについて、まず第一に、現実に医療過誤の関係はこんなにあるのですかね。  それと、一体これは不法行為でいったら大変ですね、立証が。なかなかできないですね。それだから委任関係でいくということになると、不完全履行ということになれば立証責任は転換されるのですか。必ずしもそうでもないと言う人もいるのです。そこら辺のところは、最高裁の場合は下から事実が上がってこなければ判決できないわけですけれども、はっきりとした考え方は判決の中で出ているのですか。
  35. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 今のところ、その立証責任がどちらにあるかについて明確な最高裁の判決はございません。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だからこれは難しいのですよね。これは今後どんどんふえていきますね。  それで、出す出さないは別にして、カルテ一つ取り寄せたって、乱暴な字で書いてあってなかなかわからないというようなところがありますし、これは今後ふえてくるから、これに対する司法権の独立を害さない範囲での研究といいますか協議というものを、対処をしていく必要があるのじゃないか、こういうふうに私は思っておるわけで、問題提起を一つしておく次第です。  それから、ここにあります賀集さんの論文、なかなかいい論文ですからよく読んでおいていただきたいと思う。もっと詳しく書いていただけるともっとよかった、こういうふうに私は思っているのですけれども。  それから、人事局長来ておられるので、ちょっとこれは裁判官以外の職員の中で、この前行ってみたら廷吏さんの筆記試験をあるところでやっていたのですね。そうすると、今は廷吏さんが随分たくさん来るのですか。そして、それが書記官になるまでどういう経路を経ていくのかということが一つと、それから書記官研修所が今白山にあるのですかね、そこで、あれは一年間の場合と二年間の場合とあるでしょう。そうすると、それは研究は非常に、なかなか厳しいようですね。それで、東京に近いところの人は帰れるわけですよ。ところが遠いところの人はとても帰れないわけですね。だから、そこで非常にハンディがついていてなかなか大変らしいので、そこら辺のところをどういうふうに配慮しているのか、こういうことを人事局長からお伺いして、時間が来たものですから答弁いただいてきょうは終わりにします。
  37. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 まず廷吏になるための試験の問題でございますけれども、廷吏は現在、その廷吏の仕事の重要性ということも考えまして、あるいは将来書記官等の道に進むという人材に来てもらう必要もあるということから、全国一斉に実施する裁判所職員採用Ⅲ種試験というもので原則的に採用しているわけでございます。それ以外に各地で、そういう試験合格者がいないというような場合に、廷吏の試験を別途行うという場合もございます。両様の道からとにかく試験によって廷吏を採用するわけでございます。  そうやってなった人が、もちろんまだ若いわけでございますので、今度は部内でいろいろ勉強いたしまして、そうして書記官研修所の入所試験を受けるわけでございます。廷吏から書記官研修所に入っていく者、これも相当数、年間ございます。今仰せのとおり、一年のコースのもの、これは大学の法学部を出たものでございますが、そのほかに二年のコースのものもございます。それで東京の書記官研修所に入所いたしまして、そこの寮に入って勉強するわけでございます。厳しいといえば確かに厳しい研修でございまして、とにかく一年または二年の間に相当のものを教え込むということをやっておりますが、しかし若い人たちでありますし、またそういう時期にいろいろといい勉強をさせてもらえるということから、みんな張り切ってやっておるものというふうに考えております。
  38. 友納武人

  39. 坂上富男

    坂上委員 まず裁判所にお聞きをいたしますが、大変増員は結構なことでございますが、現場の声を聞いてみますると、やはり書記官だけで約一千名ぐらい欲しいというのが率直な声のようでございます。  さらにまた今問題になっております地方裁判所支部の廃止の問題でございますが、これがまた大変たくさんの支部の廃止案が最高裁から出たわけでございます。一体どの程度進捗をしているのか。特に私は要請したいのでありますが、簡裁の廃止の際には、地元の首長さんらが必ずしも同意をしていないのに理解を得たというような形でほとんど方針どおり廃止を受けたといういきさつがあるわけでございます。最初簡裁を廃止をする、その次支部を廃止をする、そしてまた支部と一緒になっております簡裁をまた廃止をする、こういう方向で動こうとしているのじゃなかろうか、こう思っておるわけでございますが、そういう意味におきまして今の支部廃止の問題がどのような状況になっているか、そしてまたこれをいつまでに方針を完成されようとしているのか、簡単で結構でございますがお聞きをいたしたいと思います。
  40. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 地方裁判所と家庭裁判所の支部の適正配置の問題につきましては、経過を申し上げますと、昭和五十九年に裁判所適正配置の問題ということで、法務省、日本弁護士連合会そして最高裁判所の三者で構成しております三者協議会というところへ問題を提起いたしまして、作業の検討の順序として、まず簡易裁判所適正配置について御検討いただいたわけでございます。そして、昨年その簡裁適配を実施させていただいたということでございます。  それに続きまして、昨年の六月からやはり三者協議会で月一回のペースで地方裁判所、家庭裁判所の支部の適正配置の問題について御協議いただきました。  その時点ではまだ総論的と申しますか、見直しの基本的な方向といったものについて御協議いただいていたわけでございますが、昨年の十二月に開かれました三者協議会で最高裁判所の方から地家裁の支部の廃止を検討する範囲はこの範囲にしたいということで、いわゆる相関表というものに線を引いたものを出させていただきました。そしてその線の外は廃止を検討しない、線の中に挙がっている支部につきまして廃止するかどうかをこれから検討する対象としたいということで、そこで乙号支部について申しますと、五十八の支部を出させていただいたわけです。廃止したいということで五十八を出したのでございませんで、廃止するかどうかをこれから検討する対象として五十八というのを出させていただきました。もちろんその中には二つの支部のうちどちらか一つといったものもございますので、そういう意味での廃止候補庁と申しますか、廃止対象庁という意味ではございませんで、あくまでも検討対象庁ということで出させていただきました。それに基づきましてさらに現在協議を続けているということでございます。     〔委員長退席、井出委員長代理着席〕  これはいつまでかというお尋ねでございますが、今後の手順といたしまして、三者協議会の協議をしていただき、さらには規則の改正という形で行うことになりますので、一般規則制定諮問委員会というところに諮問いたしまして答申を得るという作業がございます。そして、その上でさらに最高裁の方で規則改正するということになります。何分、三者協議も相手のあることでございます。また、それまでの作業の節目節目あるいはいろんな段階で地元、自治体等関係機関の御意見を聞いて、その管内の特殊な事情、個別の事情といったところをよく把握しなければなりません。そういう作業がございますので、いつまでということは今の段階では申し上げられないのですが、この問題を提起いたしました私ども最高裁判所の立場としては、できるだけ早く御理解を得て実現をいたしたい、こう考えておるところでございます。
  41. 坂上富男

    坂上委員 また別の機会に要請をいたしたいと思いますが、どうぞひとつ拙速にならないように、十分地元民の了解がない限りにおいて強行しないように特に要望いたしておきたいと思います。  関連としてお聞きをいたしますが、三月二十八日、検察庁の異動だそうでございますが、今大変問題になっております東京特捜部、捜査検事あるいはこれを補佐する事務官の皆様方、大変御苦労さんでございます。この異動はあるのでございますか。
  42. 根來泰周

    根來政府委員 毎年三月末に定例の人事異動がございます。ことしもその予定になっております。
  43. 坂上富男

    坂上委員 特捜部関係もやはり異動の対象になるのでございますか。
  44. 根來泰周

    根來政府委員 異動を予定している者がおります。
  45. 坂上富男

    坂上委員 ひとつ大事な時期でございますから、そのことの異動がいろいろまたうわさを生まないように、またせっかくの捜査が弱まったなどというような声の出ないことを期待をいたしたいと思っております。  さて、証券取引法の違反で間宮被疑者らが逮捕されて釈放されたそうでございまして、きょうの報道によりますと、政治家の秘書諸君が全部、調べが一応終わったというふうに報道もなされておるわけでございますが、政治家本人の調べというのはこれから検討に入る、こう言われておりますが、この捜査状況どんなになっているのでございますか。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 根來泰周

    根來政府委員 繰り返し申し上げておりますけれども、どういう者を調べたかということについては従来から申し上げていないことでございますので、ひとつ御了解願いたいと思います。
  47. 坂上富男

    坂上委員 それでは法務大臣にお聞きをいたしたいのでありますが、法務大臣は、大体どの程度の割合によってリクルート事件の捜査報告を受けておるのでしょうか。例えば毎日とかあるいは一週間に一遍とかあるいは重大な事態が発生した場合とか、いろいろあると思うのでございますが、御就任以来どのような頻度で報告を受け、どのような濃度で報告を受けておられたのか、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  48. 高辻正己

    高辻国務大臣 どのような頻度で何回というようなことを具体的に申し上げるわけにまいりませんが、お尋ねの点につきましては、国会答弁等の必要とか、それから組織の運営上とか、そういう必要に応じまして事務当局を通じて適宜適切な報告を受けておりますと申し上げるにとどめておかしていただきます。
  49. 坂上富男

    坂上委員 これは検察庁法十四条の職務の範囲なんだろうと思うのでございます。  総理大臣への報告は法務大臣からなされているのですか。これはやはりどの程度の頻度で報告をなされておるのですか。
  50. 高辻正己

    高辻国務大臣 これまた必要に応じまして、事務当局を通じて総理の関係の必要な方面に必要があれば適宜適切な報告をするということでございます。
  51. 坂上富男

    坂上委員 別にこれは捜査の秘密でもございません。また、検察庁法十四条に書いてあることでございますから、いわば検察行政の一環でございますから、大体一週間に一遍ばかりずっとか、あるいは毎日定例的に連絡を、報告をしているのでございますというようなことは捜査の秘密に属さないのだろうと思うのですが、明確にやはりお話しになった方がいいんじゃないかと思っていますが、いかがでしょうか。
  52. 高辻正己

    高辻国務大臣 実際のことを申し上げまして、先ほど申し上げましたように、毎日報告をするとか、あるいは一週間に定期を決めて何曜日に報告をするとかいうようなことは全然ございません。やはり必要に応じ適時適切ということになってしまいますけれども、何の事項について、例えば一週間のうちの何曜日とかいうふうな決めた仕組みに従って報告をしているわけではございません。やはり抽象的ではございますが、適宜適切な報告をするということになるわけでございます。
  53. 坂上富男

    坂上委員 もう一点お聞きしましょうか。具体的には大臣が官邸に行って報告するのでございますか、あるいは事務次官が報告するのですか。それはどういうやり方です。
  54. 高辻正己

    高辻国務大臣 それはいろいろ方法がございます。電話で連絡することもありますし、いろいろな方法がございますが、私が総理に会って直接に報告をするというようなことは、これはまずないと言っていいと思います。事務的な報告の形式をとって報告をいたしております。
  55. 坂上富男

    坂上委員 それでは、これに関連をいたしまして、指揮権との関係でお聞きをいたしたいと思うのでありますが、検察庁法十四条によりますと、法務大臣は、具体的な事件については、検事総長のみを指揮をする、こうあるわけでございます。  まず大臣、総理の方から指揮権が来た場合は、大臣としてはどうされる腹づもりでございますか。
  56. 高辻正己

    高辻国務大臣 総理大臣から指揮権を行使せよということがあったらでございますか。――これは、内閣総理大臣は閣議にかけて決定した方針に基づいて国務大臣を指揮することができるわけでございますから、指揮するということはあり得るわけでございますが、検察庁法の十四条は法務大臣に固有の権限でございますので、内閣総理大臣から今申し上げましたような内閣法の規定に基づく指揮がありますれば、それは法の定めるところに従って行動することが法の定めるところであると思っております。
  57. 坂上富男

    坂上委員 ちょっと私の耳は、必ずしも大臣の答弁、歯切れがいいとは聞こえないのでございますが、ずばりお聞きをしたいのです。法務大臣が法務大臣の権限において検事総長に具体的事件について指揮をすることはあり得る。それから行政庁の最高の長として総理大臣が法務大臣に指揮をすることはあり得るわけでございます。いわば造船疑獄がまさに、逮捕してはならない、こういうのが総理から法務大臣にあった、法務大臣から検事総長にあった、こう聞いておるわけでございます。でありますから、総理から指揮があった場合、法務大臣とされましてはこれに従うというつもりなのか、あるいは、殊に検察の意向が違っている場合、その指揮と検察が考えていることと相反するという場合において、法務大臣として総理大臣の命令に従われるつもりがあるのかどうなのかということをお聞きをしているわけでございますから、ずばりで結構です。
  58. 高辻正己

    高辻国務大臣 内閣総理大臣が行政各部に対し指揮権を持っているというのは内閣法が規定していることでございますが、その内閣法に基づく内閣総理大臣の指揮があれば、行政各部としての主任の大臣である法務大臣はそれに従う義務があると思っております。その場合に検察庁がそれと反対の意向、反対と申しますか、検察庁の意向は別の話でありまして、意向がどうであろうと、指揮をするという点においては検察庁の意向というものは別に考慮に入れる余地はない。ただし、そういうことが起こる前に、恐らくは内閣総理大臣と法務大臣は相互に意見の交換をすることがありましょうし、あるいはまた検察庁と法務大臣とが意見の交換をすることもありましょうし、そういう事実関係はあると思いますが、それを抜きにして法律の筋一本だけお尋ねになれば、今お答えしたようなことでございます。
  59. 坂上富男

    坂上委員 今度は検察庁にお聞きをすることになりますが、私はまた法務大臣から、さらにこの問題にももう少し腹をくくった御答弁をいただきたいと思っているわけでございますが、今法務大臣がおっしゃった前提に立って検察、検事総長に指揮権が発せられた、こういう場合、検察としてはこの指揮権は不相当である、こういうような場合については今の検察はどういう対応をするつもりでおられるのでありましょうか。いかがですか。
  60. 根來泰周

    根來政府委員 こういう質問を受けますと大変困惑するわけでございます。といいますのは、先生の御質問の御趣旨はやはり政治的なお話を基本にして御質問になっていると思うわけでございます。ですから、政治的なお話と純法律的なお話とごちゃまぜに答弁いたしますと非常に誤解を生むわけでございます。ですから、今の御質問の御趣旨からいたしますと、仮に法務大臣が不相当な指揮権を発動した場合に検察当局はどういう腹づもりで対応するかという御質問でございますので、これは全く法律的な問題とは別の問題になるわけでございます。したがいまして、そういう仮定の問題について私どもがお答えする立場でございませんし、そういう時期でもないと考えております。
  61. 坂上富男

    坂上委員 私は実は重要な時期に入ったと思っているわけでございます。というのは、国会は中曽根前総理を証人喚問の要請をいたしておるわけでございます。しかしながら、自民党の安倍幹事長さんはその必要なしとおっしゃっておるわけでございます。竹下さんは、国会の決議に従う、こうおっしゃっておるわけでございます。この発言は大変重要なことを含むと私は思うのでございますが、まずそれを前提に置きまして、いかがでしょうか、真藤さん、小林さん、長谷川さん、村田さん、これはスーパーコンピューター調達の謝礼、今後便宜を図ってもらうところのお礼、こういうことで株の譲渡を受けたということで贈収賄で逮捕されておるわけでございます。いずれこれは起訴になるのだろうと思うのでございます。  そこで、今問題になっているのはスーパーコンピューターが一体何台目なのかというようなこと、そして前首相と真藤さんらとどの程度話があったのかどうか。法律的に言いますれば共謀と言われる問題だろう、こう思っておるわけでございます。そうだといたしますと、私は相当指揮権的なものが、いわばそろそろここできちっと腹をくくって対応をしないと、証人喚問する必要ないんだ、しかも検察の捜査が終わってから参考人にでも出ることについてはやぶさかでないというような示唆がなされたというふうにも言っておるわけでございます。でございますから、このことは検察の捜査の態度といたしまして極めて重要な段階になってきたのだろうと私は実は見ているわけでございます。したがいまして、法務大臣としての腹、そして検察としての腹、こういうことを私たちは実は心配をするわけでございます。もちろん社会正義の実現を私たちは期待をしてこういう質問をするわけでございます。  でありまするから、まず刑事局長にお聞きをいたしますが、スーパーコンピューター購入に関しますこの問題に対する捜査は今、鋭意なされていると思うのでございますが、まだまだ共犯者が出ると思うのですが、いかがですか。
  62. 根來泰周

    根來政府委員 現在、元NTT会長であった真藤氏とその他の者を勾留して取り調べ中でございます。したがいまして、目下その証拠の収集に検察庁は精力を費やしていることでございますし、また被疑事実の中には御指摘のような事実も含んでいるわけでございます。これはもう十分御理解いただいていることと思いますけれども、検察庁はそういう政治的なお話とは別に、要するに証拠を固めて適正な手続によって証拠能力のある証拠によって事実を認定していくわけでございまして、その行方というのは要するにそれにかかっているわけでございます。したがいまして、現在そういう政治家に至るとか至らないとかという段階ではございませんし、また大臣がいつも仰せになっているように、相手方がどういう方であろうともそういう遠慮なくやるであろうという期待をされているわけでございますから、そういう見地からは全く頭が回らずに、要するに証拠を固めるという一点に集中してやっているということでございますので、今の御質問に対して適切なお答えをできない立場にございます。
  63. 坂上富男

    坂上委員 これは全くうわさと言ってもいいのでございますが、いわゆる官邸筋から四月十五日ぐらいまでに捜査完了するように催促がなされている、こういうようなお話が、まあうわさかもわかりませんが、耳に入ってきておるわけでございます。まさにこれなどは指揮権そのものでございます。しかもこれには名前が挙がっております、私たちの方の調べでは。こういうようなことはあるのでございますか。四月十五日ぐらいまでに捜査がまだもたもたしているのじゃなかろうかという、どうもいろいろの背景を見てみますと、できるだけ早く検察庁の方から捜査終了宣言で、もうそれ以外の者は関係ないというようなことを明確にしたい、こんなようなことがあるのだろうとは思います。しかし、やはり検察は検察独自の認識でもって捜査をなさっているわけでございますから、このような指揮権まがいのことがうわさされるということに大変な心配をいたしております。この点、いかがですか。
  64. 高辻正己

    高辻国務大臣 もしそういうことがあるとすれば、法務大臣が知らないはずはございません。そういうことは絶対にございません。
  65. 坂上富男

    坂上委員 一体この事件はどの程度、まだまだ見通しは全くわからないのでしょうか。
  66. 根來泰周

    根來政府委員 先生も弁護士でいらっしゃいますから捜査の実情はよく御存じだと思いますけれども、とにかく捜査というのは一寸先が真っ暗でございます。その真っ暗な話を一歩一歩明るくしていくというのが捜査の手続でございます。だから、その一歩一歩手続した結果がどうなるかは私どもは全然見当もつかない状況にございます。
  67. 坂上富男

    坂上委員 今度はロッキード事件のときのあの中間報告と最終報告についてお聞きをいたしたいと思います。  ロッキード事件の場合に二回にわたりまして国会に報告がありました。一つは、全日空ルートと丸紅ルートはほぼ捜査を完了したからということで報告がありました。そして児玉ルートは、本人の病気等もあってこれはまだ捜査が完了していないということで後からの報告になったわけでございます。NTTルートあるいは文部省ルート、労働省ルート、こう言われて、ロッキードと非常に似たようなルートの立て方になっておるわけでございますが、まだまだ中間報告をするような状況には立ち至っていないのでございましょうか、いかがですか。
  68. 高辻正己

    高辻国務大臣 一般的に申しまして、いわゆるリクルート事件の捜査に関する中間報告につきましては、これはほかの委員会でも申し上げたことでありますけれども、国会からの御要請があれば十分検討させていただくつもりでございますが、東京地検は現在なお捜査を継続中でありますので、今の時点で今後どのような報告ができるかについて確定的なことを申し上げることはできませんので、その点は御了承いただきたいと思います。
  69. 坂上富男

    坂上委員 これはまだまだ検察に大変御苦労してもらわなければならぬと思っています。ようよう私は本物に近づきつつあると思っておるわけでございます。  それ以上になると捜査の中に入るものですから御答弁もありませんでしょうから、政治的な問題の立場でお聞きをいたしますが、これはロッキードの中間報告の際の最終結論でございますが、これはどうなったのですか。「政府としては、この不幸な事件を契機として、この種不正事犯の再発を防止するため、関係各分野において立法措置を含む所要の方策につき積極的な検討がなされるべきものと考える。」こういう提言がありながら、今回のリクルート事件でまさに再びこのような膨大もない疑獄が起きたわけでございますが、一体この中間報告の中身は実行されるのでございましょうか。私の聞くところによりますと、ただ収賄罪で三年が五年になったというような理解しかしていないのでございますが、このほか一体どんなことを予想されたのでございましょうか、いかがでございますか。
  70. 根來泰周

    根來政府委員 私どもの所管の中で実行できることというのは非常に狭いわけでございます。したがいまして、例えばただいま仰せのように収賄罪の法定刑を引き上げるとか、あるいはこれは大蔵当局でございますが脱税の場合の法定刑を引き上げるとか、国外犯の規定を整備するとか、外国との関係について犯罪人引き渡し条約の締結国の拡大あるいは捜査司法共助法制の整備ということで、私どもとしてできることについてはこの委員会にもお願いいたしまして順次立法を行ってきたわけでございます。これは、こういう問題につきまして私どもだけですべて解決できる問題ではございませんし、むしろその範囲は狭いわけでございますが、私どもとしてはできる限りやってきたつもりでおります。
  71. 坂上富男

    坂上委員 検察は一生懸命になさったろうと思うのです。だけれども、浜の何とかと何とかは尽きぬという言葉がありますが、本当にこういう体裁のいいことを言いながら、事件が起きると政治改革だ、いや何だ、こう言いながら、また数年いたしますとこういう事件が勃発しておるわけであります。国民を愚弄するも甚だしいと思っておるわけであります。この改善を一体、ロッキードの教訓の中から検察はどの程度のことを学んで、これについて法務として国会に提起をなさったのか、次回までにも明確にしていただきたいなと実は思っておるわけでございます。  いま一つ、リクルート事件の発覚したのは去年の六月、そして楢崎先生の事件が九月に発表になったのでございましょうか、そういう時期にリクルートから政治家諸君約十五人に四千万近い金が政治献金の名のもとに贈与されたと聞いておるわけでございます。これはもうこの事件の国会審議に対する典型的な違法なわいろの政治献金じゃなかろうかと思っておりますが、この点検察はどのような理解をされておるのですか。
  72. 根來泰周

    根來政府委員 お答えをすることが決まり切っておりまして恐縮でございますけれども、この件も、検察庁はそれはいろいろ御指摘がございますから当然十分知っていることと思いますが、どういう対応をするかということは私どもが申し上げる立場でなくて、抽象的に申しますと、適時適切に対応するとしか申し上げられないわけでございます。
  73. 坂上富男

    坂上委員 もう時間が参りますが、まず法務大臣に要望を兼ねてしておきたいと思います。いずれまた機会があったら総理にもお聞きをいたしますが、今言ったような指揮権の発動、まず造船疑獄では当時の法務大臣にあったわけでございます。当時の法務大臣はこれを検事総長に、二、三行のメモで逮捕してはならないという指揮権発動がなされて検察は涙をのんだと言われておるわけでございます。  そこで問題は、法務大臣がたとえ竹下総理から任命をされたといたしましても、また、職務上その下に立っておる立場といたされましても、間違ったあるいは不相当な指揮権が、あるいは必要以上に、事実の有無は別といたしまして、さっき言ったような、国民が心配しておるようなことがあった場合、法務大臣とされましてはまさに身を賭して、あるいは総理と意見が食い違う、対決して受けないというようなことの決意はございませんか。
  74. 高辻正己

    高辻国務大臣 実はさきの答弁で補足をさせていただこうと思っていたぐらいのことについて御質問いただきました。その御質問について感謝をいたしますが、元来検察庁法の十四条の規定そのものは、いわゆる検察事務を主管しております法務大臣の行政責任と司法権と非常に密接な関係のある検察庁の独立ということとの関連、調和を図るための見地からできた条文であろうと私は思っております。したがって、法務大臣がそのような指揮権を発動する場合というのは、検察権が不偏不党、厳正公平の立場を逸脱して、あるいはその他検察事務を所掌し遂行する法務大臣がその責任を全うし得る限度を超えて運営されるというような特殊例外的な場合に限られるものであろうと私は思っております。したがって、そういうような例外的な場合には、法務大臣はその行政責任を全うするために、検察庁法十四条のただし書きに基づいてその指揮権を行使して、正すべきものは正さなければならぬということは考えております。しかし、その他の場合については、これはみだりに指揮権を発動すべきものではないというふうに私は思っております。  先ほど申し上げたことでありますけれども、内閣法の六条の関係からいいますと、法律論の筋としては、指揮があれば行政各部の主任の大臣はこれに従うというのが法律上の建前であることを申しましたが、それと同時に、そういう場合には、総理の内閣を代表しての指揮というものがいきなり出るということは考えられない。行政の実務に携わってまいりました私どもとしてはそういう場面は考えられない。必ず総理大臣と法務大臣と話をする機会があることは間違いないと思っております。そういう際に、今申しましたようなことは十分に総理と法務大臣との間で意思の統一が図られると思いますので、御心配のようなことは万々ないと私は考えております。
  75. 坂上富男

    坂上委員 どうもありがとうございました。  検察、大変御苦労さまでございますが、社会正義実現のために、まさに国民の怒りは頂点に達していると思うのでありますが、これについてきちっとひとつ厳正な法の適用を期待をいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  76. 友納武人

  77. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴でございます。  まず、刑事局長に一言お尋ねしたいと思うのですが、きょうの朝刊に、政治家の周辺、いわゆる秘書その他らの取り調べはほとんど終わっているというようなことが記事にありますけれども、大変難しい質問だと思いますが、刑事局長の見解を伺いたい、このように思います。
  78. 根來泰周

    根來政府委員 御指摘の記事は私も拝見いたしましたけれども、どういう根拠でそういう報道がなされたか論評する立場にございませんが、私どもとしては、個々の取り調べについて一々報告が来るという性格ではございませんし、報告が来ましてもこういう公開の立場で申し上げることはないわけでございます。  しかしながら、証券取引法違反というのは、七十数人の者に株を譲渡したという話でございますから、そういうことからいうとそういうことも、そういうことというか、証券を受け取った者を調べるということもあり得るのかなという印象でその記事を読みました。
  79. 冬柴鐵三

    冬柴委員 一問と言いましたけれども、もう一つだけ聞かせていただきたいと思います。  今、刑事局長が、証券取引法いわゆる四条違反ということで調べることもあり得る、私もまさにそのように思います。不特定多数の者に対する売り出し行為ということで逮捕者も出ているわけでございますから、それの参考人ということで調べる場合には、これは一般論として聞いてほしいのですけれども、例えば秘書が参考人として呼ばれる、こういうことが一つあると思います。そのときの捜査の内容というのは、いわゆる株を取得したかどうかということを聞けばわかるのであって、その背後にある人との関係とか、あるいはその資金の行方とかいうことは聞く必要がないと私は考えるのですけれども、そう理解してよろしゅうございますか。
  80. 根來泰周

    根來政府委員 検察庁の方は、当然、証券取引法の売り出しの相手方ということになりますと参考人ということで御協力をいただくということになろうかと思います。しかし、どういうことを取り調べるのかということについては私どもも聞いておりませんし、報告も受けていないことですし、またそういうことを申し上げる立場ではございませんので、御了解願いたいと思います。
  81. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうしますと、その参考人に、例えばそれが秘書ということになった場合、政治家との関係とか、その政治家がその取得を知っていたかとか、あるいはその資金の処分は政治家も使ったか、こういうようなことをそのような秘書に参考人として聞くということは越権になりますし、もし聞くとすれば、これは村田幸蔵被疑者のようにいわゆる収賄の被疑者、共謀共同正犯あるいはその後ろに、背後にいる実体、いわゆる政治家、そういう人たちの被疑事件の参考人として聞く、こういうような意味を持ってくると思って非常に重大な問題だと見ているわけでございますけれども、このような参考人がどのような取り調べを受けているか、内容はどうかということがもしマスコミで流れた場合、そういう評価が専門家ではできるわけです。要するに、呼ばれた人の取り調べ内容が背後の政治家まで及んでいるのかどうか、ターゲットは政治家まで行っているのではないかというところまでいってしまうわけでございます。  新聞を見ていますと、十分注意してお調べになっていると思うのですが、ほとんど毎日のように、どうしてこういうことがわかるのだろうかなということが随分記事になっております。これはあり得べからざることだと思いますけれども、検察側のリークではないかというような話まで出ます。しかし、こういうところへ来ますと、こういうことは絶対貝のように口をつぐまれるわけでありまして、国民にとっては、そういう検察庁から流れることがあるのかな、しかも流れた場合に、今言うように、専門家には、その聞かれた内容が単に株を取得したことの事実だけを聞いているのか、それともその背後まで聞いているのかということで、何を調べているかということが全部わかってしまうわけでございまして、そういう点について、最近の報道とこの事件との関係での刑事局長の御所見というものをお伺いしたい、このように思います。
  82. 根來泰周

    根來政府委員 いろいろ報道がなされておりまして、その中には検察庁しか知らない事柄もあるのではないかという御指摘も私の方にも来ることは事実でございます。  これについていろいろ弁解いたしますと、報道機関の批判にもつながることでございますし、若干端摩憶測の域を出ないということもございます。しかしながら、私どもその報道をされていることと実態とをいろいろ比較しますと、これは全く違うな、見当外れだなというような報道もされているわけでございます。そういうことからいうと、これは検察庁からリークされたものではないという立証も可能でございますけれども、そういうことになりますと、むしろ捜査の内容も開示しなければならないという非常にジレンマに陥るわけでございます。  ただ、私どもはそういう批判は十分批判として受けとめまして、検察庁にもそういう御意見のあることを伝えまして、万が一にもそういう御批判を受けないように十分慎むように、私もまた検察庁の方も自戒するように連絡しておりますので、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  83. 冬柴鐵三

    冬柴委員 国民の関心はまさにこの事件に集中いたしておりまして、検察庁頑張ってほしい、このように思います。  それでは、本日の法案審議に移らせていただきたいと思います。  平成元年度の判事補の任官予定者は何名になっていますか。
  84. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 ことし司法修習を終えまして判事補に任官する者、これから手続が始まるわけでございますが、現在願書を提出している者は五十八名でございます。
  85. 冬柴鐵三

    冬柴委員 一昨年の三十八期は七十名台、それから昨年が六十名台、ことしは、今伺うと全部採用しても五十八名、どうも三年連続でオーダーが下がってきているように思うわけでございます。  そうしますと、全部任官されても判事補のいわゆる定員割れということになるのではないか、こういうふうに思うわけですけれども裁判所はこの現状をこれでもいいと考えていられるのか、少なくとも定員は確保するほどもっと採用したい、このように考えていられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  86. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 これまでの採用数でございますが、三十八期生、これが昭和六十一年の判事補採用でございまして、七十名でございます。その次が一昨年の三十九期で六十二名でございます。昨年は四十期で七十一名でございます。それでことしの五十八名の希望者、こういうことになるわけでございまして、五十八名という数は今までの中ではもちろん少ない方ではございます。ただ、ここ数年も今申し上げましたように七十名台あるいは六十名台というふうにでこぼこがございまして、それぞれの年度の特殊性というものもあろうかと思っているわけでございます。  もちろん、最高裁としてはいい方にできるだけたくさん来ていただきたいというふうに考えているわけでございますし、五十八名というのは、今まで大体平均すれば六十名を超える数が来ていたと思いますので、それとの関係ではもう少しあってもいいとは考えているのですが、これはそういう漸減傾向であるかどうか、そこらについては必ずしも十分な確信は得ていない、あるいは来年はまた例えば七十名ぐらいに回復するということもあり得るのではないかと期待しているわけでございます。
  87. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、簡易裁判所判事への任官予定者について伺いたいのですが、これは、例年八月一日任命ということになっているようでありますので現在確定的なことは言えないと思いますけれども、何名ぐらい任命される予定なのか。その前日、七月末で結構ですけれども、その欠員数は何名になっているのか。その点について伺いたいと思います。
  88. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 一番近い時期の数字が昨年の十二月一日現在の欠員でございます。これが、簡易裁判所判事の欠員二十六名ということになっております。その後さらに退官者がこの後ございます。今までも若干ございましたし、これから夏にかけてもございます。それから、御審議いただいておりますこの法律案を可決していただきました場合には五名の増員ということになるわけでございます。そういった増減を経まして大体四十名程度の欠員ができるはずのものなんでございますが、ただ、例えば判事の退官者あるいは判事の定年退官者、あるいは弁護士からの任官希望者等がありまして、それで数名の採用ができる予定でございます。そうしますと、大体七月末の欠員でございますが、三十名程度であろうかというふうに思っております。なるべくその程度の数の採用をいたしたいというふうに思っております。
  89. 冬柴鐵三

    冬柴委員 一方、判事判事補が簡易裁判所判事を兼任をされまして、そして現に特定の裁判所に補職をされている、こういう方は何名ぐらいいらっしゃるわけですか。
  90. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事あるいは判事補で簡易裁判所判事も兼ねている者でございますが、大体千名程度でございます。非常に多いようにお感じになるかと思いますが、その多くは例えば令状事務とかそういったものを地裁事務の傍らやっている場合、それから例えば支部などに勤務している場合にその所在地の簡裁の仕事も同時に行っている場合、そういう場合が多いわけでございまして、この人数が示すほどの何といいますか勢力を割いているというわけではないわけでございます。
  91. 冬柴鐵三

    冬柴委員 以上お聞きしたことを要約しますと、要するに、今国民の間で、民事の事件、特に対席判決を経た事件の解決が長過ぎるのではないか、いわゆる憲法の保障する迅速な裁判というものを達成するためにもう少し努力をしてもらわなければならないのではないか、そのような感じがあると思うのです。そういうためには裁判官員数がもっとふえてほしい。弁護士会の司法シンポ等でも、二百名程度は地方裁判所判事をふやしてもいいのではないかという提言等もございます。しかしながら、司法修習生を終えた者からの任官志望者というものを今急激にふやすということは望むことができないような現状にありますから、私は、この簡易裁判所の兼任をしていられるそういう判事判事補という人をむしろ地家裁あるいは高裁へ純粋に専念をしていただく。そうすると簡易裁判所が手薄になります。簡易裁判所に対してはもっとたくさんいわゆる選任する、任命する方法はあるのではないか。  簡易裁判所判事を採用する、任命するには二つのルートがあるようです。選考委員会による選考を経て任命されるルートが一つと、それから、有資格者といいますか、いわゆる法曹資格者から任命するものが一つというふうにあると思うのです。ですから、その両方を、例えば選考委員会による分については、単に裁判所職員だけではなしに、一般法務行政に携わっている職員についても門戸を開いてもっとたくさん採用することはできないのかなというのが一つです。  それからもう一つは、有資格者ですけれども、弁護士で二十五年、少なくともそれ以上の経験のある五十五歳か六十歳ぐらいの弁護士、各地にいられるわけでありまして、そういう人の中から簡易裁判所判事に任命をできるような環境整備とかいろいろなことがあると思いますけれども、そういう方向をとられてはどうかというふうに思うわけです。そうすれば少なくとも修習生を経た千名の判事判事補が、簡易裁判所の全部ではありませんけれども一部仕事をしていられるのを、全部地裁なり高裁の方に専念していただければ随分変わるのではないかというふうに思うわけですけれども、その点についての所見を伺いたいと思います。
  92. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事裁判所部外の識見を生かしていくと申しますか、そういったところから人材を得ていくというお考え、まことにごもっともでございますし、私どももこれはそのようにぜひやっていきたいと思います。  現在、毎年の簡易裁判所判事の任命、夏に任命しておりますいわゆる選考採用の方たちでございますが、この中に法務行政と申しますか、例えば副検事の仕事をやっていた人とかあるいは副検事でなくとも法務行政に携わっていた人が入っている場合が毎年一、二名はあるわけでございますが、法務行政のみならずそれ以外のところから来ている場合もございますし、この点はそれをさらに続けていきたいというふうに思っております。それから、弁護士からの採用でございますが、これもそう多くはございませんけれども一、二名の採用ということは時折ございますし、この点もできるだけ来ていただけるような措置は講じたいというふうに思います。  ただ、先ほど少し申し上げましたように、兼務をしている簡易裁判所判事の仕事を、これはもちろん全国の分集計いたしますと相当の数になるのかもしれませんが、ただ執務の形態が先ほど申しましたような、例えば地裁の仕事の傍ら簡裁の例えば保全事件であるとかあるいは令状事件であるとかそういったものを片手間と申すとなんでございますが、地裁の仕事の傍らやっているというのが通常の形態でございますので、これを集めて地裁のあるいは高裁の戦力にしていくというのにはなかなか難しいところがあるということも御理解いただきたいと思うわけでございます。
  93. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これも昨年三月二十二日の当委員会で私、提言したのですけれども、一般の行政庁の職員の方については総定員法という形で約十年ぐらい先を見越した行政事務というものと人員の配置というものを実質的にとらえて上限を決めて、そしてその範囲でいろいろな行政事務の簡素化とかあるいは重点配分とかいうことはやられていると思うのですけれども、司法の場合にはこういうふうにして毎年毎年この法律を出してこられる。しかも、大体時期的に見て日切れ法案、本日もそうですけれども、こういう形でやるというのは何か日切れというよりもその日暮らしという感じが私はするのですね。  もっと、例えば一人の裁判官が持つべき理想的な事件数というのはどれくらいなのか、それから憲法の要請する迅速な裁判というのはどんなことを要請しているのか、そのためには裁判官判事は何人ぐらい要るのか、判事補はどれぐらいがいいのか、そして簡易裁判所判事はどの程度要るのかというものをもっと長期的に、少なくとも五年くらいを見越して、そしてむしろ裁判所なり法務省はその定員を確保するためにいろいろな努力なり工夫をしていただくということでなければならない。ことしは修習生がこれくらいしか採用できないから、それに合わせてことしはこういうふうに改正しましょうとか、これはちょっといかがなものかというふうに思います。  昨年は林田法務大臣がそれについて賛意を表されまして、検討を約束していただいたように思うわけでございますけれども、その後何らかの進展があったのかどうか、それをまず説明いただき、法務大臣おかわりになりましたので、できれば法務大臣からも一言御答弁をいただきたい。このように思います。
  94. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 先に私、最高裁の総務局の方からお答えさせていただきます。  毎年この時期に裁判所職員定員法の改正に関しまして御審議いただきまして、大変御厄介をおかけいたしておりますことを恐縮に思っております。昨年、委員の方から総定員法の採用について御指摘いただきまして、私の前任の山口総務局長が申し上げましたとおり、御指摘につきましてはまことに傾聴に値すると私どもは考えている次第でございますと、そしてその後、折に触れ私どもの方で検討してみました。  確かに行政機関の総定員法の趣旨というのは、全体としての定員数増加させることなく、一方では数多くある、要するに複数ある各省庁の行政需要の消長、一方が非常に多くの人を必要とすると他方は需要が下がる、そういったいろいろな行政需要の消長に応じました定員の弾力的、合理的再配分を図るという趣旨で定められているわけでございますが、裁判所という一つの省庁に相当するものについての総定員法ということになりますと、その趣旨性質は行政機関の職員の総定員法とは相当異なるものになろうかと思います。また、裁判所職員につきましては毎年こうして増員をお認めいただいておりますので、総定員の抑制という趣旨の行政機関の総定員法とはまた違ったことになろうかと思います。  したがいまして、裁判所職員につきまして総定員法的な制度というものにいたすとなりますと、おっしゃいますように中長期的に数年先の事件数、それと数年先の一件当たりの裁判官あるいは職員の負担量というものを見定めまして、そして必要裁判官数、職員数を定める、そしてそれを上限として法律で定める、その枠内で毎年の定員は最高裁の規則などで段階的にふやしていくといったものになろうかと思います。そういう制度になれば、毎年国会のお手数を煩わせることもなくなりますし、また、私どもといたしましても仕事の合理化と申しますか、この時期に割いております労力の相当部分が軽減されるという点で非常にありがたい面もあるわけでございます。そういった趣旨から、先生の御提案につきましては、各先生方から国会審議の必要性を軽視するのではないか、そういったことにつきまして御理解が得られるのであれば、最高裁判所の方としましてもぜひ前向きに検討させていただきたいと考えるものでございます。  ただ、今この時期にその採用に踏み切らせていただくのが妥当かどうかということになりますと、率直に申し上げましてやや疑問もございます。  その一つの理由といたしましては、現在の事件数の動向というのが大変流動的でございます。例えば五年という比較的短期の将来予測につきましても、現在それを行うのがかなり難しい時期でございます。民事訴訟事件の事物管轄が改定になりました五十七年からこちらの事件数の変動を見ましても、サラ金事件あるいはクレジット事件が激増しまして簡裁の民訴事件が非常にふえました。地裁の破産事件あるいは民事執行事件も大変ふえました。サラ金の調停事件もふえたかと思いますと、今度は激減いたしました。こういったように大幅な変動をいたしておりますし、刑事の方で見ましても、道路交通法の改正によって略式命令事件が減少した、こういう状況がございます。現在はこの事件数の動向に関しまして非常に波の激しい時期でございます。さらに法律制度の改変等もあり得るということを考えますと、ちょっと五年先の事件数の予測というのはそう容易でないというのが一点ございます。  それから、裁判官職員の適正な処理件数がどれくらいかということに関しましても、これは事件の内容とか、あるいは訴訟当事者の協力に負うところの大きい訴訟手続の改善というものがどの程度進んでいくかということとも関係がございます。今これを一概に論じるのが難しい状況でございます。さらには、現在のようなOA化の時代におきましては、その利用によって省力化を図るということが可能な面もございますので、この適正処理件数の予測につきましてもある程度流動的な要素を相当はらんでいるもの、こう考えているわけでございます。  こういったところから、今直ちにその総定員法の採用に踏み切るということについては、まだもう少し検討すべき点があろうと思います。今後、これらの点につきまして、御指摘趣旨を踏まえまして、より一層具体的な検討を加えてまいりたい、このように考えております。
  95. 高辻正己

    高辻国務大臣 御提案は確かに一つのお考えだろうと思いますが、ただいま最高裁判所の方からお話がありましたとおりに、なお検討の余地があるようでございます。そのような時間をかしていただきたいと思います。     〔委員長退席、井上(喜)委員長代理着席〕
  96. 冬柴鐵三

    冬柴委員 久しく一般質疑の機会を得ることができませんでしたので、法案に関する質疑はこの程度で終わりとさせていただきまして、法律扶助の問題について残りの時間を伺いたいと思います。  私は、機会あるごとに当法務委員会または予算委員会において法律扶助の問題を取り上げまして、政府に対しその充実と、進んで基本法制定の必要を今日まで訴えてまいりました。その理由は、申すまでもなく今日のように法による支配の意識が国民の間に浸透いたしまして、国民の権利意識が高まっている時代において、権利を侵害され、被害を受けた国民がその回復を裁判所に求めたい、あるいはゆえなく訴えられた国民が正当な権利を十分に主張して応訴し、その訴えの排斥を求めていきたい、このように考えるのは当然のことでございます。  しかし、我が国の民事訴訟は各審級において弁護士強制の制度をとっておりませんので、素人である本人が訴えを提起し、また各審級において応訴できるということにはなっていますけれども、先ほどもちょっと出ました、例えば医療過誤に基づく損害賠償を求める医事訴訟あるいは隣接地との境界権や境界線の位置の確定を求める境界確定訴えは言うに及ばず、金銭支払いを求める訴訟においてすら利息制限法上の抗弁が伴う訴訟等を遂行し、応訴するということは、法律専門家である弁護士が代理して行う場合でありましても、その主張立証は大変困難が伴うものでございます。いわんや、本案に先立ちまして、仮差し押さえ、仮処分等の保全手続を必要とする場合には、事実上本人がこれを行うことは著しく困難または不能であると言っても過言ではない実情があると思います。このような実情を知る者といたしまして、私は資力に欠けるがゆえに弁護士に依頼することができずに、侵害された権利についても守ることができずに泣き寝入りになっている国民がいるはずだ、このように今考えるときに、じっとしていられない焦燥感を覚えるわけでございます。  このようなときに、平成元年度一般会計において、法律扶助に関する補助金を一千五百万円増額をして、従来七千二百万円だったものを八千七百万円に増額を求められたということに対して、法務大臣を初め担当の部局に対して感謝を申し上げ、また敬意を表したい、このように思うわけでございます。この補助金が七千万円になったのが昭和四十二年のことであり、そして七千二百万円に増額されたのは四十八年であるということを顧みますと、今回の一千五百万円の増額という本格的な増額は実に二十年ぶりと言っても過言ではありません。法務省のこのたびの取り組みを高く評価するゆえんでございます。     〔井上(喜)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、お尋ねしたいのですが、今回二十年ぶりに増額をされた目的、理由、そしてまた今後この法律扶助の補助に対してどのような展望を我々は持ったらいいのか、その点について御答弁をいただきたい、このように思います。
  97. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 ただいま委員指摘のとおり、平成元年度予算におきまして、政府原案において増額が入れられたわけでございます。  この目的という御質問でございますが、法律扶助制度はただいま御指摘のとおり、貧困者に対する訴訟援助というものは憲法で定められた裁判を受ける権利を保障するための重要な制度であるというふうに我々も受けとめておりますので、かねてからその制度の充実に努めてきたつもりでございます。その結果と申しましょうか、関係御当局あるいは関係各位の御理解によりまして、今回の増額の政府予算原案となったわけでございます。  私どもといたしましては、今後もこの制度の重要性にかんがみまして、さらに補助金の増額と制度の充実、安定に努めていきたいというふうに考えております。
  98. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法務大臣に一言。今、この法律扶助というのは、憲法、いわゆる三十二条ですか、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」これに由来するものだという非常に注目すべき答弁をいただいたのですが、法務大臣もそのようにお考えか、一言で結構ですがお尋ねしたいと思います。
  99. 高辻正己

    高辻国務大臣 仰せのとおりに存じております。
  100. 冬柴鐵三

    冬柴委員 従来、法務省はこれをお認めになってないのです。それで非常に心強く思います。憲法に由来する非常に必要なものである、このような認識に我々は立っていたわけですけれども、今後もこれの充実のためにぜひ頑張っていただきたい、私もこの審議を通じてですけれども、応援させていただきたい、このように思います。  しかし、その補助金を増額することによって、法律扶助は望ましいあるべき姿として定着することができるのかなということを考えてみますと、必ずしもそうではないという実態があります。  周知のとおり、この法律扶助を行うためには、単に貧困者のために貸し付ける金さえあればできるものではありませんで、この事件は勝訴の見込みがあるのかどうか、そしてその人がいわゆる訴訟費用を支弁できない程度の資力なのかどうかという審査が伴います。これは法律扶助審査ということで今たくさんの弁護士がやっておりまして、まずその審査でふるいをかけまして、そしてそのためには事務局も要ります。そして、担当していただく弁護士を選任して依頼をし、そしてその弁護士から毎回どのような進行かということを報告を受け、そして法律扶助の目的に沿った処理がされているかどうかという監督をしつつ、その事件が所期の目的を達せられるように頑張っていく。終われば、貸し付けた金、国のお金ですからこれを回収しなければならない。  これがまた大変な事務でありまして、こういうお金を借りた人たちが転々と転居します。亡くなったら相続が開始します。こういう一件当たりの貸付金もそう大きな金額ではありません。そういうものを長期にわたって回収しなければならないという費用もかかります。これを昭和六十二年度、つい先ほど公表されていますけれども、財団法人法律扶助協会、これは全国レベルで唯一の団体でございますけれども、これの昭和六十二年度決算書を見てみますと、総額が九億六千六百九十八万九千円という支出のうち、扶助費、すなわち貧困者に対して貸し付けたお金は四億一千四百五十一万六千円でありまして、全体の中の四二%、言いかえればあと五八%は運営費用として使われているという実態がわかるわけでございます。  では、この国から出る補助費というのは何になるかといいますと、その使途ははっきり決められておりまして、運営費には使ってはいけない、調査費とかそういうものに使ってはいけない、要するに資力に欠ける人に訴訟費用を立てかえるというように使途が限定されています。したがいまして、その運営費は財団法人法律扶助協会が他から独自で調達をしなければ運営できないわけでございます。どういうところから調達しているかといいますと、日本弁護士連合会からの寄附金、各単位弁護士会からの寄附金、それから個々の法律扶助事件を扱った弁護士の報酬金からの寄附金、それから個々の弁護士が紹介する篤志家からの寄附金、犯罪を犯した人の贖罪寄附、こういうものを資源にして数億円を毎年毎年捻出をしているという実態があります。  一万数千人の弁護士がこういうことをやってきたということは大変なことでありまして、まさに石にかじりつきながらここまで来たという感を深めるわけです。しかし、もうこれ以上この運営費を調達するというのは非常に困難だと私は思います。そうしますと、このストックである扶助費というものが国の協力によって大きくなってきても、フローであるその運営費というものが十分に調達できないと、トータルとしての法律扶助は十分にできないということはおわかりいただけると思うのですね。  そこで、法務省に伺いたいのですけれども、運営費の方の、全部とは言えないのですけれども、一部でも助成をしていただく、そういう考え方はとれないものか。とれないとすれば、過去、昭和三十三年以降今日までそういう思想はなかったのですが、それを取り入れることについていろいろな支障があるとするならばどういうところにあるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  101. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 この制度の運営費に国から補助ができるのかどうかということにつきまして、現在一部でありますけれども、調査委託謝金というものが若干あるわけでございます。前にも当委員会でお答えしたかと思いますが、法務省といたしましても、現在、法律扶助制度のあり方がどうあるべきかについては検討してきたところでありますし、今後も検討を重ねていきたいと思っておりますが、その運営費を補助すべきかどうかあるいはどのようにしていくべきかということも検討すべき問題点の一つと考えておりまして、なお検討を重ねていくつもりでございます。ただ、当面は現行方式を維持しながら、事業の充実発展を図っていきたいと考えております。
  102. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それは、非常に困難な問題点があると私は思います。というのは、財団法人法律扶助協会自体が公の支配に属する団体、いわゆる法務大臣が人事の任命権を持っているとかあるいは経理の監督権を持っているとかいうことが、若干難しい点があるのではないかと思われるわけです。そういうことを考えますと、これを抜本的に解決するためには、先進国のすべてが持っているような法律扶助に関する基本法を持たなければならないのではないか。これは我が国だけでございます、先進国の中で持ってないというのは。先進国どころか、中進国、発展途上国においても法律扶助に対する基本法は持っているわけでございます。  そういう意味で、いろいろな問題点はあると思いますが、国とそして法律扶助協会というような財団あるいは弁護士会との間に一つの公の特殊法人、基金、法律扶助基金というものをつくって、そして万全を期したらどうか、こういうことも私は考えているわけでございますが、そういうことを含めてなお一層前進していただくためにどのようなお考えを持っているのか、法務大臣の所感を伺って、私の時間も来るようでございますので、終わりたいと思います。
  103. 高辻正己

    高辻国務大臣 冬柴議員が法律扶助制度について従前から非常に御熱心にいろいろなお考えを示してくださっていることを私よく承知しております。  お話がありましたように、私も弁護士の端くれでございますが、弁護士会の今までの法律扶助制度についてのいろいろな熱意ある御努力並びにいろいろな資金的なやり繰りの御苦心等を伺うにつけ、弁護士の皆さん、弁護士会の方々、弁護士会そのものに対して大変深い感謝の意を表したく存じております。  今お話がありましたように、いろいろな基金の創設であるとか基本法の制定の問題であるとかいろいろ御提案がございますようでありますが、これらについてはなお時間をかしていただいて、さらに御趣旨を体して検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  104. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私の質問を終わります。
  105. 友納武人

  106. 河村勝

    河村委員 まず法務大臣に、行政改革ということに関連をしてお尋ねをいたします。  行政改革というのは、行政事務の簡素化、能率化であります。これはもうよく御承知のように、役所というところはほっておきますと絶えず機構が膨張して人もふえるという万国共通の法則がありますから、行政改革というのは常に行っていかなければならない。最近特に強調されていろいろやられておるけれども、決して十分とは言えない。行政改革という言葉からいえば、司法行政、特に裁判所は直接にはその中には入らないわけですけれども、官庁の仕事の簡素化、能率化ということについては共通の責任がやはりあるのだと思います。  しかし、さっきから話を聞いていますと、毎年人をふやすのが当たり前みたいな最高裁の答弁があったりしておりまして、どうも司法に関する限り行政改革ということに余り熱心ではないのではないかという印象を受けました。法務省としては一体どういうふうに官庁の仕事の合理化というものを考え、これまで対処してこられたか。またこれからどうされるのか、それをまず伺いたいと思います。
  107. 高辻正己

    高辻国務大臣 お説のとおりに、行政機構というものはほっておけば、これはだんだんふえるばかりで減ることはまずない。そういうことで、政府の行政機構改革という問題はいつもあるわけでございますが、御承知のとおりに今、政府は行政改革に努力をしておる。それで、行政改革の問題も実は今まだ改革のさなかであると私は思っております。行政府においては、御承知のとおりに臨調というものが始まってまだ改革の過程にあると言っていいと思いますし、行政部内における行政改革はさらに進展していくものだと私は思っております。  最高裁判所の方につきましても、最高裁判所はどうしてほしいという具体的なことは無論申せませんが、行政府における行政改革について、こういうことをするというようなことを参考にお知らせしながら、ということはごく大まかなことでありますけれども、その方針についてお知らせしながら御協力を得たいと考えております。  最高裁判所のことにつきましては、最高裁判所の方からお答えいただくのが至当だと思いますので、よろしくお願いします。
  108. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 行政機関について言われております行政改革の考えにつきましては、私ども裁判所の方についてもやはりこれを尊重して御協力しなければならないということで、各種の事務の取り扱いのいろいろな合理化等で努力いたしております。  例えば、今回の定員法の関係で申し上げますれば、司法行政事務に関します人員につきましては、定員削減計画に御協力という趣旨で三十七人の削減を立てている。一例でございますが、そういった面で同趣旨の努力は我々もしなければならない。ぜひむだを省いて、できるだけ税金のむだ遣いにならないようないい制度の運用をしなければならないということで努力させていただいているところでございます。
  109. 河村勝

    河村委員 三十七人減員したけれども、結局増員が六十二人だから二十五人ふえるということでしょう。ですから、決して減らしただけではなくてふやす方が多いということなんですから、その点は後でもう少し伺いましょう。  簡易裁判所の統廃合が昨年行われたようでありますが、私は裁判所、司法行政については全くのずぶの素人でありますから暴論を言うかもしれませんが、簡易裁判所にしましても地裁、家裁の支部にいたしましても、いずれも昭和二十二年にできたものですね。戦争直後の混乱期です。行政官庁でも、古くからある役所というのは比較的むだが少ない。ところが、戦争中ないしは戦後の混乱期に新しくできた役所、各省の地方出先機関なんというのはあらかたそうなんですよね。もとからあったのは、現業機関の出先を除いたら幾らもなかったのですね。それが、各省みんな出先機関を持つようになってしまった。戦後の混乱期にも同様のことがあったのですね。昭和二十二年というのは混乱期ですから交通も不便だし、ばらばら役所を置かないとぐあいの悪いところもあったわけですね。  だけれども、その後交通事情は全く一変をしてしまって、それで都市集中がどんどん進んで人口は偏在をしてきております。ですから、二十二年につくったものは一応みんななくしてしまうという前提に立ってやらないと、ただ統廃合とかなんとかいうことをやるのは、私は非常にこそくなやり方だという印象を強く受けています。いかがでしょうか。
  110. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 昨年実施させていただきました簡易裁判所の統廃合の問題、あるいは今回問題を提起しております地家裁支部の適正配置の検討というものも、先生のおっしゃるような趣旨でいたしておるものでございます。日本の地家裁支部の位置というものは、戦後できたものでございますが、むしろこれは戦前の地裁の支部あるいは区裁判所を引き継いでずっと裁判所がそこにあるということでございます。  明治時代から第二次大戦あるいは戦後この地家裁の支部ができましてから今日までの交通事情というものは随分好転いたしております。一方では、御指摘のとおり日本の産業構造が変化いたしまして、いわゆる人口の偏在化現象というものも顕著になっております。そんなところから、支部によっては事件数が非常に減っている、裁判官も置けない、検事もいない、弁護士もいないというところがある。そういう一方では交通事情が好転している、そういったところから、一部の支部をなくしまして、そして少し足を運んでいただきますが、こういう交通事情がよくなったもとではそんなに大きい御不便をおかけすることはないのではないかということで、一部の支部を廃して隣接の支部または本庁の方へ行っていただこう、そういった考えから今回の支部の適正配置も検討させていただいておるものでございます。  ただ、全部廃止してとおっしゃるのですが、現に全国的には事件が非常にたくさんございますものですからなかなかそうもいかないので、先生のおっしゃるような方向で可能な限りの検討をしたいというのが私どもの考えでございます。
  111. 河村勝

    河村委員 全部なくせというのは暴論かもしれませんけれども、一応全部なくすというところからスタートして、どうしても置かなければならぬところに改めて置くんだ、そういう発想でありませんと、今のものを一割減らすとか一割五分減らすとかいう発想でやったのでは、私は本当ではないと思うのですね。私の言っているのはそういうことなんです。  ですから、簡易裁判所を統廃合されて、それの統合による簡素化の効果といいますか、一体どういう結果が出ているのですか。
  112. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 まず前提といたしまして、簡易裁判所事件が一時に比べますと非常にふえております。例えば五十年と最近のところを比べますと、四倍ないしは三・数倍というところに非常にふえておる状況がございます。そういう状況でございますので、簡易裁判所を百以上も統廃合させていただきまして、そこで浮きました職員等を残ります簡易裁判所の充実ということに充てさせていただいたわけでございます。また、他方では、国民に一番身近な簡易裁判所を非常に国民に利用のしやすいものにしなければならないということも適正配置の作業の過程でいろいろな方面から言われていることでございますし、私どももそれももっともなところと考えているわけでございます。  そういったところで簡易裁判所を統廃合して人の効率的な使い方ということができるようになったわけでございますが、今申し上げましたとおり、事件の急増ということと、さらに簡易裁判所を充実させるといった方面で今回も増員をお願いしているということでございます。
  113. 河村勝

    河村委員 簡易裁判所事件が急増しているとおっしゃるけれども、私が法務省からいただいた資料は六十年からしか書いてないけれども、六十年を起点として見れば、毎年だんだん減っているのですよね。ですから、ふえているという数字は一つも出ていない。それをどう考えるのですか。
  114. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 おっしゃいますとおり、六十年からで見ますと、簡易裁判所の例えば民事訴訟事件で申し上げますと、六十年が二十三万二千件ほどございました。六十一年が二十一万四千、六十二年が約十九万、こう減っておるわけでございますが、六十年が一番のピークでございます。昭和五十年を申しますと約五万七千件でございます。それから非常にふえまして、そしてそういう高原状態が現在も尾を引いている、こういう状況でございます。資料で六十年からというものだけでごらんいただきましたためにそのように受け取られたのも当然だとは思いますが、それ以前の数字を見ますと四倍近い数字に達し、そして六十年以降ちょっと減ったけれどもなお事件数は非常に高い状態にある、こういうことでございます。
  115. 河村勝

    河村委員 もしそうなら、法務省が我々に下さった資料のつくり方が大変ずさんであるということに相なるのだけれども、それにしても大体六十年をピークにして少しずつでも減りつつある傾向にあるのは確かです。ですから、この時点で毎年増員をしてほぼ充足しているとすれば、もうこれ以上ふやさなくたってやっていける、そういう勘定になるのじゃないですか。
  116. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 一挙に必要な数を全部増員してしまうということがある年にできますとすれば、翌年は事件が減ったから増員しなくてもいいではないかということになるわけでございます。しかし、給源等の関係もございまして、現実に増員を行う場合にはそうもまいりません。簡易裁判所判事につきましては昨年五人ということでさせていただいたわけでございます。  そんなことでございますので、事件が減っているとは申しますものの、先ほど来申し上げておりますとおり一昔前に比べれば非常にたくさんの事件がある。しかも中身の複雑化している事件がふえている。一方では、簡易裁判所を国民に利用されやすいものにするために、いろいろ受け付け相談だとか口頭の受理をするとかそういった面、その他訴訟手続の面でいろいろ充実を図らなければならないという点がございます。そのあたりをぜひ御理解いただきたいと思う次第でございます。
  117. 河村勝

    河村委員 それにしても疑問を持ちますのは、昨年の十二月の時点で、さっきの答弁で、簡易裁判所判事の欠員が二十六。それが、ことしの七月末では大体三十人程度であろう、こういう説明がありましたね。そういうことになると年間を通じて三十前後の欠員を持っているということに相なる。そうであれば、何も定員を五名ふやさなくたって欠員を充足すれば済むわけであって、欠員を三十前後持ちながらなおかつ増員を要求するというのは理屈に合わないんじゃありませんか。
  118. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の採用といいますのは、それぞれ採用の時期がございまして、簡易裁判所判事の場合は夏の採用が中心と申しますか、でもって大体一年分の採用数を満たすことになっているわけでございます。この法務省の方で作成された資料では、昨年の十二月一日で二十六名の欠員ということになっておりまして、さらにその欠員数はふえてきております。これを大体ことしの八月の採用でもって埋めて、また一年かかって減っていくというのが通常のパターンでございまして、これは裁判官以外の職員の場合には、年度の途中で随時の採用ということをやるわけでございますけれども裁判官の場合は、そのような形がとれないものですから、どうしても年度のある時点を切りますとある程度の欠員があるということになっているわけでございます。
  119. 河村勝

    河村委員 しかし、さっきの説明では、十二月で二十六人、それから減ったりふえたりして結局七月は三十人ぐらいの欠員という説明だったのですよ。十二月時点と七月時点を押さえて欠員がほぼ同数なら、年間ならせば大体そのぐらいの欠員があって仕事がされておるということになるのは当然じゃないのですか、どうなんです。では八月ごろにその三十人の欠員を充足させて、それで十二月までにまた減ってきた、こういうことなんですか。
  120. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 この御審議いただいております裁判所職員定員法で定めております裁判官の数、これは裁判官以外の職員の場合も同様でございますが、これは上限が定められているわけでございます。私どもの理解といいますか、通常の理解では、この数を超えることができないことになっておりますので、一番ピークに達したときにこの数になるという、そのような数が定められているものと理解しております。今説明いたしましたように、夏に大体そのピークに達して欠員もない状態になるけれども、また年度の途中で随時減っていくということが繰り返されていく、そういう性質のものなのでございます。
  121. 河村勝

    河村委員 定員は上限を定めたというのは、そんなのは当たり前のことですよ、それだけ持たなければならぬということは一つもないので。だけれども、私が言っているのは、常時二十から三十の欠員があって仕事をしていうんなら、何もその上限をさらに押し上げる必要は全くないじゃないか、こういう意味だったのですよ。
  122. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 欠員という面でおっしゃいますとそういうことも一応言えようかと思うのですが、むしろ現在例えば書記官につきましてどれだけの書記官の数が要るかという観点でごらんいただきますと、定員増をしていただきませんと現在員がふえないわけでございます。もとのままの定員のもとでは、年度途中のある時期には一定数の欠員があって、現在員は例えば六千数百なら六千数百ということになります。それを少しふやしていただきますと、その現在員が欠員が出てきても少しふえる、そういうことで戦力アップになるということでございます。  一番端的に申し上げますれば、例えば書記官について申し上げますと、四月一日時点での戦力のアップを図るには増員をお願いしなければならない、こういうことでございます。書記官につきましては、書記官研修所というところで養成しまして、そこで修了した人などを主体に採用して、年度当初の戦力の強化を図るわけでございます。その強化の程度を今までどおりよりももう少しふやしていただきたいというのが今回の定員法改正をお願いした趣旨でございます。
  123. 河村勝

    河村委員 事務官についてだけは現在でも三十七人の過員を持っておるようですから、一応つじつまは理屈としては合うわけですね。これ以上時間がないから、返事はいいでしょう。  それにしましても、判事は一応別にしましても、裁判所職員については、さっき最高裁の方からの答弁の中にもありましたように、オフィスオートメーションがどんどん進んできている時代ですから、今医師の診断ですらコンピューターによって大体の答えが出てくるという時代ですね。ですから、コンピューターを使った情報処理が進みますと、裁判を進めるに当たって、裁判官の仕事であっても、今までとは違った、過去のデータをいつでも一つボタンを押せば引き出せるという状態が出てくれば、私は随分時間が減ってくるんだろうと思うのですね、いわんや事務職員についてはそれ以上に有効に働かせられるのだから。だから、この数字を見たって訴訟事件はふえてないのですよ。さっきは簡易裁判所のことでお聞きをしたけれども、地裁の訴訟事件だって、これで見ると地裁も簡易裁判所も両方とも減っていますね。それにもかかわらず、コンピューター時代に入ってなお増員が必要だというのは、私は全然理屈が合わないと思うのです。その点はどう考えるのですか。
  124. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 裁判所で取り扱っております裁判事務あるいは司法行政事務、そういったものにつきまして、OA化の採用によってかなり省力化のできる面のあることは御指摘のとおりでございます。そういったところから、私どもの方でも各種のパソコン、ワープロというそういう単体のOA機器のほかに、例えば統計関係では相当大型のコンピューターを入れたりとか、あるいは裁判事務の面でも、裁判事務につきましてはやはり裁判官の判断にかかる面がありますのでOA化に親しまないところも多いわけではございますが、取り入れられるところはどこがあるかということで種々検討して、具体的な作業もいたしておるところでございます。そういった面でOA化によって相当省力化のできるところがございます。現に、そうしたOA機器を採用した部門につきましては、定員の配置等につきましても十分見直しを図っております。  ただ、今回の定員法の改正でお願いいたしておりますのは、先ほど来申し上げておりますとおり、事件高原状態にある、あるいは執行事件が非常にふえている、あるいは破産事件で大型の破産事件がある、訴訟事件も非常に難しい事件がある、あるいは簡易裁判所をより親しまれるものに充実しなければならない、そういった別の面からの要請がございまして、それがOA化で省力化できる程度をさらに超えてあるということでこういうお願いをしているものでございます。御理解いただきたいとお願いいたします。
  125. 河村勝

    河村委員 時間が来ましたのでやめますが、裁判所といえども聖域ではありませんから、なお一層努力をしてください。終わります。
  126. 友納武人

    友納委員長 安藤厳君。
  127. 安藤巖

    安藤委員 これまでいろいろころこの裁判所職員定員法の改正法案について議論がなされましたが、この提案理由の説明、全くそのとおりで、私どもは賛成であります。  今いろいろ議論があったのですが、簡易裁判所裁判官現在二十六名、それがさらに三十名になるというお話があったんですね。そして、中心的に簡易裁判所裁判官を採用する時期、八月一日ですか、そのときにはそれを充足するというお話があったのですが、これは間違いなく定員いっぱいに簡易裁判所裁判官が充足されることに毎年なっておるのですか。
  128. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官は、判事判事補、簡易裁判所判事、それぞれ採用の時期が違うわけでございますが、簡易裁判所判事はここのところずっと、これも相当長い間の慣行でございますけれども、八月一日の採用が中心になっております。もちろんその欠員は刻々と生じていく場合もございます。それから採用の方は、これはかなり長い期間をかけまして試験をやったりして、そして採用手続をとっていきます。そのために、結果的には完全に埋まらないという場合もあるいはあるかと思いますけれども、その仕事を担当する者といたしましては八月時の欠員は全部埋めるというつもりで採用事務の方をやっているわけでございます。
  129. 安藤巖

    安藤委員 いや、私がお尋ねしておるのは、欠員を八月一日時点で埋めるというつもりでやっておるんだというお話はいいのですが、現実にそれは毎年毎年八月一日時点で欠員はなくなるという状態があるのかどうか、それをお尋ねしておるのです。
  130. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 過去の充員の資料を全部今持っているわけではございませんが、完全に埋まったという時期もあったと思いますが、一、二名の欠員が残ったという場合もあったと思います。大体は埋まるというふうに理解いたしております。
  131. 安藤巖

    安藤委員 現実問題として、八月一日に充足したとしても九月になっておやめになる方もあるかもしれませんし、あるいは十月、十二月という方もあるだろうと思うのですね。しかしこれだけ一年間にやはり、昨年の十二月で二十六人、そして一月には三十人、こういう欠員が常態化しておるということになると、現実の問題としてはやむを得ない事情もわかるのですがね。そして簡易裁判所裁判官の数が不足しているから、ほかにも事件数が少ないとかどうのこうのという理由ももちろんありましたけれども簡易裁判所裁判官の数が少ないからというのも一つの大きな理由になっておったのではないかと私は思うのですが、昨年の五月一日から簡裁の統廃合が実施されたのですね。だからどうも鶏が先か卵が先かという議論にもなるかとも思うのですが、やはり簡易裁判所裁判官ちゃんと定員どおり充足をさせて、足らなければさらに今回のように定員増をして、そして簡易裁判所を充実させる。国民の裁判を受ける、しかも駆け込み的なげた履きで行ける簡易裁判所というのは非常に大事なところなものですから、それを充足させるということこそが私は必要だと思っておるのですよ。  先ほどのお話と違って、私はこの点では裁判所の味方なんですからね。しかしこういう状況だ。だから今回、簡易裁判所裁判官五名増という法案が出ているのですが、やっとこすっとこ何とか八月一日に充足、一、二名足らぬときもあるということなんですが、五名定員増して、これは上限だというお話もありましたけれども、これは充足する見通しがおありなのかどうか、これをお伺いしたいのです。
  132. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事の採用、既に現在採用の一番最初の段階に入っております。これからずっと夏までかけて採用手続をしていくわけでございますが、もちろん夏にできます欠員を全部埋めるというつもりで現在やっております。
  133. 安藤巖

    安藤委員 しっかり御努力をお願いしたいと思うのですがね。この法案通ってもやはりそれに満たなかったというのじゃ何のためにこの法案出されて国会が認めたことになるのか、問題だと思うのですね。そこでいろいろ御努力をされておられると思うのです、簡易裁判所裁判官の問題ですよ。  それから、採用するためのコースといいますか、選考委員会でいろいろ議論をされるということなんですが、何か私、制度的に問題があるのかなという気もするのですけれども、もう少し例えばPR、根回し、これももちろん必要だと思うのですが、そういうような御努力をしっかりやっておられるんだろうかなと。あるいはしっかり努力をしておっても、先ほどの話で一、二名充足できない年もあった。そうすると、何か制度的にこれは欠陥があるのかなという気がするのですけれども、そんなことないですかね。
  134. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 まず、簡易裁判所判事の候補者でございますが、これはPRということまではいたしてはおりませんけれども裁判所簡易裁判所判事を採用することが毎年行われているということは十分全国的に周知されているというふうに思っております。裁判所部内者のみならず部外者からも多数応募がございまして、そこから採用しているわけでございます。  先ほど、夏の欠員時が満たない場合があるということを申しましたのは、例えば三十名採用という予定でずっと作業を進めていても、不測の退官等がぎりぎりになって出てくるような場合がございます。そうすると、当初の予定では三十名で埋まると思っていたものがどうしても埋まり切らない、そういうふうな事態があるということを申し上げたわけでございます。結局それは、定員というものは最上限が決まっていることであるがために余計目に採っておくということができないという、そこらに問題があるだろうと思っているわけでございます。
  135. 安藤巖

    安藤委員 それから、裁判官以外の職員、主として書記官、事務官ということになりますが、この人たちについても、法務省からいただいた本法律案関係資料によりますと、書記官の場合、昨年の十二月一日現在で五十二名欠員というふうになっております。事務官の方は、これは中にはタイピストの方も入っておってこういう状態になっておるというようなことですが、書記官、事務官の人たちもやはり欠員が生じておるというふうに私どもは理解しておるのですが、これもやはり欠員のままでおる、あるいは欠員がだんだん生じてきて五十二名十二月一日現在でなっておるという状況は、やはり好ましくないと思うのですね。だからこれはやはり欠員を充足するというような御努力もしておられると思うのですが、これは具体的にはどういうような御努力をしておられるわけですか。
  136. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 この法務省の方で作成されました資料の裁判官以外の職員の定員・現在員欄をごらんいただきますと、それぞれの職種で欠員がございます。事務官についてのみある程度の過員があるわけでございますが、最終トータルとしてはやはり一番下の欄で百二十名の欠員ということになっております。  これは例えば書記官をとってみますと、書記官の場合任命が、ちょうどやはり裁判官と同じように、部内での研修を施しまして、そして春に卒業していくわけでございます。そうしますと、春の時点では大体いっぱいいっぱいの書記官がいるわけでございますが、やはり年度の途中では欠けていくということはどうしても起きるわけでございます。  ただ、裁判官以外の職員、一まとめの法律上の定めになっておりますので、その中での動きというものはあるわけでございますが、しかしこれもやはり上限が決まっているわけでございますので、年末をとってみると百二十名程度の欠員ができてくるというわけでございます。これが三月末でさらに減少いたしまして、四月にその前年度の試験でもって合格した中から数百名の職員の採用をする、そういうことの繰り返しをしているわけでございます。
  137. 安藤巖

    安藤委員 そこでこの繰り返しを何とか食いとめる方法はないのかなといろいろ考えておるのですが、例えば一九八九年度の一般会計予算、その中の裁判所所管、「裁判所職員算定員及び俸給額表」というのがあるのですね。厚い予算書です。その中の行政職俸給表(一)、いわゆる行(一)と言われておる人たち、この人たちはまず書記官、事務官の方だというふうに思うのですが、この人の関係で見ますと、予算定員六十二名とあって、そして括弧して(六箇月)とあるのです。ということは六十二名の人については六カ月分しか給料払いませんよ、予算措置してありません、こういう格好になっているのですね。ということは先ほどのお話で、だんだんやめていく人がいて少なくなっていくんだ、だからその分を六十二名と見て六カ月、これだと、まさに今おっしゃったようなことで欠員が生じていくんだ、それを前提にした話ですね。だから欠員が生じてやむを得ないんだという前提で、私はやはり年度の途中であっても事務に支障がないように欠員を何とか埋めるように努力をしていただきたいと思うのですね。  ところが、こういうような予算定員六十二名を六カ月分しか給料を払わないというのでは、欠員が生ずるのはやむを得ないという前提に立って欠員を埋める努力を放棄しておられるのではないか、こういう気もするのですね。これは定員で枠は決まっておりますから、定員を超えて四月一日の年度当初にいわゆる過員の状態をつくるわけにはいかぬと思うのですが、例えばこれは六十二名ですから、仮に半分として三十一名くらい定員外職員ということで確保しておいて、やめていかれるわけですから、そして欠員というのは生じない、事務に支障はない、こういうような体制をとることはできないのかなと思う。一遍そういうようなことは勘考していただく必要があるのじゃないかなと思うのですが、どうなんでしょうかね。
  138. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 十分御理解いただいておりますので、あえて私の方から御説明申し上げることもないわけでございますが、裁判所職員につきましては、裁判官にしましてもそうでございます。書記官にしましても家裁調査官、速記官にしましても全部希望してすぐなれるというものでございませんで、一定の研修期間と申しますか、養成期間が必要である、そこから、結局年度途中の欠員を適宜適切な時期にすぐ埋めるということができない仕組みになっております。そういったところで先生のおっしゃるように、ある程度定員外人員みたいなのが置ければそれは非常にいいわけですが、先ほど定員法で上限が決めてあるというところから、年度当初におきまして定員以上の人数を置いておくというわけにもまいりません。いろいろおっしゃいますとおり、途中で欠員が生じ、それが速やかに補充できないというのは裁判所の各種職務の性質上やむを得ないことであろう、こう考えておる次第でございます。先生の御指摘の点もまた研究はさせていただきますが、現時点ではそんなところでございます。御理解いただきたいと思います。
  139. 安藤巖

    安藤委員 やはりこれは研究していただいてもいいのじゃないかなと思うのです。やむを得ない、やむを得ないばかりでは済まされないのじゃないかという気がします。  そこで私、大臣にお尋ねしたいのですが、これはまさに制度上の問題ですし、広げていけば一般行政職にも全部いくのですが、さしあたって最高裁判所職員関係でお話を申し上げておるのですが、そういうような方向で欠員が生じない手当てというのを、もともとこれは先ほど言いましたように六十二名については給料の関係は六カ月分しか予算を入れていないのですから、そういうことでなくて満額入れて、そして例えば三十一名、半分定員外という人たちを入れたって、一年間ならせば定員内の予算でいけるわけなんですから、一遍御検討いただいて知恵を出していただいてもいいのじゃないのか。これは最高裁判所だけではちょっと難しそうですから、閣僚の一員として法務大臣、一遍知恵を絞っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  140. 高辻正己

    高辻国務大臣 裁判所に対する同情の念に根差したいろいろな御質疑がございまして、それぞれ最高裁判所の方からお答えがございました。その中に制度的な問題に触れる問題がございまして私の意見はどうかということでございますが、制度的な問題について法務省として検討すべき問題があれば最高裁と連絡をとりながら検討に努めたいと思います。いずれにしましても、裁判所の人的、物的施設の充実について法務大臣としてお手伝いすることがあるとすれば、これはできるだけ最高裁判所と協力をしてまいりたいと考えております。
  141. 安藤巖

    安藤委員 最後に、地家裁支部の統廃合の問題についてちょっとだけお尋ねしたいと思うのですが、実は私、この前岩手県盛岡地裁管内へ行きましていろいろ事情を聞いたのですが、水沢支部、これは乙号支部です。ここには裁判官はいないのですね。非常駐。そして一関支部、これは甲号支部。甲号支部というのは申し上げるまでもなく合議の裁判ができることになっておるはずなんです。ところが二人しか裁判官が見えないからできない。どうするかというと、盛岡の本庁から、これはてん補というのですか、裁判官を派遣して、そうして合議体を形成する、こういう話を聞いてきたのですけれども、今水沢支部を統廃合の対象にして検討をしておられるという話を聞いたものですから、これは話は全く逆なんで、水沢支部に常駐の裁判官を置いて、そして一関支部、甲号支部の二人と水沢支部とで合議体が構成できるようにすべきだ、そういうふうに裁判官をふやして、そうして支部の体制を充実することこそ必要だ、私はこういうふうに思うのです。  時間が来ましたから、この問題は今後ともしっかり、そう裁判所の味方ばかりしているわけではありませんから、いろいろ質問もさせていただきたいと思うのです。先ほどもお話がありましたけれども、今三者協議でいろいろ検討していただいているという話を聞きました。しかし、やはり裁判を受けるのは国民の方ですから、そして国民の要求をどういうふうに受けとめてそれを実現していくかというその最先端はやはり地方自治体だと思うのですね。だからそういう地方自治体の意向というものは、簡裁のときにも申し上げたのですが、地家裁支部の統廃合の問題についてはなおさらしっかり聞いていただく必要があると思うのですが、それについてはどういうような手だてをとっておられるのか、そういう構えがあるのかどうか、それをお伺いして終わりたいと思います。
  142. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 地家裁支部の適正配置につきまして、地元自治体初め地元の関係機関の御意見を聞かせていただくということは私ども十分考えております。先般、各地家裁の所長に地元自治体等の関係機関に回っていただきましたのは、昨年十二月に初めて相関表というものを出して具体的な庁名を、裁判所の支部名を出さしていただいて検討対象庁にしたということでございますので、そのあたりの客観的な状況、私ども問題提起した趣旨、三者協議会等の経過等を御説明に回らせていただいたわけでございます。それは第一回の一斉の地元の説明でございます。  今後、節目節目に地元からの御意見を徴し、その管内の事情をよく把握させていただいて作業を進めてまいりたい、このように考えております。それ以外にも随時各種の陳情等が各地家裁の方になされておりますし、また、私どもの方にも来られます。そういった機会にいろいろ御意見を聞かしていただいているところではございますが、今後また節目節目に地元に回らせていただいて、よく意見を吸収し、管内の事情をよく把握させていただきたい、こう考えております。
  143. 安藤巖

    安藤委員 時間ですので終わります。
  144. 友納武人

    友納委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  145. 友納武人

    友納委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  146. 友納武人

    友納委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 友納武人

    友納委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  148. 友納武人

    友納委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十二分散会      ――――◇―――――