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金谷最高裁判所長官代理者 先に私、
最高裁の総務局の方からお答えさせていただきます。
毎年この時期に
裁判所職員定員法の改正に関しまして御審議いただきまして、大変御厄介をおかけいたしておりますことを恐縮に思っております。昨年、
委員の方から総定員法の採用について御
指摘いただきまして、私の前任の山口総務
局長が申し上げましたとおり、御
指摘につきましてはまことに傾聴に値すると私
どもは考えている次第でございますと、そしてその後、折に触れ私
どもの方で検討してみました。
確かに行政機関の総定員法の
趣旨というのは、全体としての定
員数を
増加させることなく、一方では数多くある、要するに複数ある各省庁の行政需要の消長、一方が非常に多くの人を必要とすると他方は需要が下がる、そういったいろいろな行政需要の消長に応じました定員の弾力的、合理的再配分を図るという
趣旨で定められているわけでございますが、
裁判所という
一つの省庁に相当するものについての総定員法ということになりますと、その
趣旨、
性質は行政機関の
職員の総定員法とは相当異なるものになろうかと思います。また、
裁判所の
職員につきましては毎年こうして
増員をお認めいただいておりますので、総定員の抑制という
趣旨の行政機関の総定員法とはまた違ったことになろうかと思います。
したがいまして、
裁判所の
職員につきまして総定員法的な制度というものにいたすとなりますと、おっしゃいますように中長期的に数年先の
事件数、それと数年先の一件当たりの
裁判官あるいは
職員の負担量というものを見定めまして、そして必要
裁判官数、
職員数を定める、そしてそれを上限として法律で定める、その枠内で毎年の定員は
最高裁の規則などで段階的にふやしていくといったものになろうかと思います。そういう制度になれば、毎年国会のお手数を煩わせることもなくなりますし、また、私
どもといたしましても仕事の合理化と申しますか、この時期に割いております労力の相当
部分が軽減されるという点で非常にありがたい面もあるわけでございます。そういった
趣旨から、先生の御提案につきましては、各先生方から国会審議の
必要性を軽視するのではないか、そういったことにつきまして御理解が得られるのであれば、最高
裁判所の方としましてもぜひ前向きに検討させていただきたいと考えるものでございます。
ただ、今この時期にその採用に踏み切らせていただくのが妥当かどうかということになりますと、率直に申し上げましてやや疑問もございます。
その
一つの理由といたしましては、現在の
事件数の動向というのが大変流動的でございます。例えば五年という比較的短期の将来予測につきましても、現在それを行うのがかなり難しい時期でございます。
民事訴訟事件の事物管轄が改定になりました五十七年からこちらの
事件数の変動を見ましても、サラ金
事件あるいはクレジット
事件が激増しまして
簡裁の民訴
事件が非常にふえました。地裁の
破産事件あるいは民事
執行事件も大変ふえました。サラ金の調停
事件もふえたかと思いますと、今度は激減いたしました。こういったように大幅な変動をいたしておりますし、刑事の方で見ましても、道路交通法の改正によって略式命令
事件が減少した、こういう状況がございます。現在はこの
事件数の動向に関しまして非常に波の激しい時期でございます。さらに法律制度の改変等もあり得るということを考えますと、ちょっと五年先の
事件数の予測というのはそう容易でないというのが一点ございます。
それから、
裁判官、
職員の適正な
処理件数がどれくらいかということに関しましても、これは
事件の内容とか、あるいは
訴訟の
当事者の協力に負うところの大きい
訴訟手続の改善というものがどの程度進んでいくかということとも
関係がございます。今これを一概に論じるのが難しい状況でございます。さらには、現在のようなOA化の時代におきましては、その利用によって省力化を図るということが可能な面もございますので、この適正
処理件数の予測につきましてもある程度流動的な要素を相当はらんでいるもの、こう考えているわけでございます。
こういったところから、今直ちにその総定員法の採用に踏み切るということについては、まだもう少し検討すべき点があろうと思います。今後、これらの点につきまして、御
指摘の
趣旨を踏まえまして、より一層具体的な検討を加えてまいりたい、このように考えております。