○
松村参考人 お許しをいただきました、
群馬県勢多郡
粕川村の
村長を務めさせていただいております
松村慶作でございます。農政問題で大変御苦労賜り、御活躍くださっておられます
先生方の御苦労に、まずもって
感謝を申し上げさせていただきます。
大変貴重なお時間をいただき、私ごとき者の御
意見を聞いてくださるお時間をいただくことができましたことを厚くお礼を申し上げる次第でございます。大変光栄に存じて深く
感謝をしております。駆け出しの
村長にて大変不勉強のためにうまく表現できず、また失礼多いことと存じますが、お許しいただきたいと思います。
恐れ恐れ参りましたところ、大変日ごろ尊敬しており、また
お世話になっておる
谷津義 先生もお見えでございますので、千人の味方を迎えたような強い勇気に燃えてまいりました。私もこの二
法案に対しましては大
賛成であり、何とかこれを通させていただきたいという事柄から、現場を預かる者として、幼稚な御
意見になろうかと思いますが率直に申し上げさせていただきたいと思います。
まず最初に、
農用地利用増進法の一部を改正する
法律案でございますが、一番目に、
地域の実情に即した
合意形成促進、
目標の
策定はどうしても必要であり、急がなければならないものと考えております。昔、
子供心にお聞きいたしますと、大工さんの一日の手間代がお米三升、
商工業者の一日の活動が四里四万の道のり、
小作百姓の
小作料が
一反米三俵から四俵。自作農の
実現とともに人力の時代は去って、電話一本でどこからでも何でも間に合うような
近代社会になって、だれもがすべてのものがどこでもできるだけに、遠い方によいものがないかと目を向けがちでございまするけれ
ども,一番大切なことが足元にあることを忘れているのではないかと思うわけでございます。そんなときに、国でお考えの
ふるさと創生一億円は大きな
役割を果たすものと考え、大変ありがたく考えております。
私の村でも五十歳以下の
農業の
担い手が少なく、
高齢者が多く、
若年層の他
産業への流出は引き続き行われるものと考えております。その原因は、一つは、
農作物の
育成期間が長く、年に一度または二期作くらいのものであるということ。
農作物中で特に米、麦、養蚕の
経営農家の収益がごく少ないということ。また、
農家の
家族形成が昔のままにたえられないこと。
自分の家の嫁は
農家からもらいたいが、娘は
農家にくれたくないという
方々、また、
子供が高校に入ってもなお
小遣い銭や学費を
自分がままにならないという家庭もありますが、
農家経済の貧しさからきているものと考えます。
週休二日制と裏腹の
農業に、
農業構造改善で、
市町村がこの法の
実現によって大きな
地帯、小さな
地帯それぞれの
地域で
目標を
策定して、
農家の
不安感を除くための
指導が必要と考えます。よき
指導には
農家の
方々はきっとついてくると
自信を持っている次第でございます。
二番目に、
農用地利用増進計画策定の
農業関係団体の
役割分担でございますが、
農業委員会、
農業協同組合、
市町村行政が一体となって
協力体制を一層強めていかなければならないとき、この法ができたときは
市町村が
自分たちの
地域をまとめ、よりよい
地域づくりを進める上に、
農業離れ、
農協離れ、深刻な事態を増すばかりで
農協の占める
役割は大変大きいものがあり、
共存共栄の実を上げるために
市町村分野の
責任は重くなりますが、大変よい
政策と考え、高く評価をしておる次第でございます。
私の村の事例を申し上げますと、西に前橋十四キロ、東に桐生十二キロ、南に伊勢崎十一キロ、北に赤城山十五キロの谷間にありますので、比較的
土地の価額が安い、手に入りやすいということで、経済的に困っている
農家に、
村外、遠くは
東京等の個人、
不動産屋から売買の話を詰められて村へ持ってまいりますが、法的その他で適切であるか否かを
指導する
立場に立って幾つも重なる問題が多いので、
農業委員会の
代表者、
農業協同組合の
代表者、議会の
代表者等から成る
粕川村
土地利用対策協議会をつくり対応しているところでございますが、単に村での仮の方法でございますので、その
指導性に
理解度が薄く苦労しているところでございます。この法ができれば、一層力強く
自分たちの
地域は
自分たちみんなでよい
地域をつくり、よい
農業形態をつくるということから
意欲と
自信を得るものであって、大変ありがたいと考えている次第でございます。
農業協同組合の
農作業委託と
農用地利用増進計画、また
農業生産法人の
構成員の
農用地の貸し
付けまたは取得については、
農業構造改善上大きく有効化するものと考えます。
私の村ではいろいろな
事業で国に
お世話になってまいりましたが、大きなものを挙げてみますと、
昭和五十三年から
昭和六十二年の十カ年に村の九五%、七百九十一ヘクタールの
土地基盤整備事業の完成を見ることができました。
昭和五十三年から十七億の総
事業費をいただき、高能率生産団地
育成事業、
昭和五十五年から新
農業構造改善事業等の
お世話になりました。おかげさまで六十二年度には
農林水産大臣よりお褒めをいただくことができました。また、
農業構造改善普及用の映画等を撮っていただきましたが、並木
先生ほか農政審議会の
先生方をお迎えし御
指導いただく
機会もございました。
村に十一大字がございますが、機械化集団連絡協議会に七百七十四名の参加者、十カ所の機械仕組合がございますが、八十五名の
農作業受託のオペレーターが対応しておりますので、
遊休農地の対応と
農用地利用増進事業利用権設定等も
平成元年三月末で
群馬県平均と同じぐらいで、
利用権設定率は四・八八となっております。
また、水田対策には、大豆栽培集団連絡協議会があって、三年に一度ずつ地区を定めて村の三割
程度、六十二年度は国の百三十七ヘクタール割り当てに対し百三十七・二ヘクタール大豆をつくり、六十三年が百四十三ヘクタール割り当てのところ百四十六・七ヘクタールと、一〇〇%を超すところの大豆等栽培しておるところでございます。また畑作営農
推進協議会がございますが、今後さらにこの会の活用が必要となっております。
村平均一戸当たりの耕地面積が一ヘクタールで、畑が四十アール、田が六十アールでございますので、養蚕が主軸でございましたが、これは
高齢者の対応で、
後継者がごく少ないために大きく変わってくるものと考えておりますときに、この
法案も
先生方のお力で何とか成立させていただきたいことを
お願いする次第でございます。
三番目として、
遊休農地の
有効利用を図るために、
農業委員会の
指導、
市町村長の勧告、
農地保有合理化法人の買い入れ等協議
制度につきましても、どうしても必要と考えます。
なぜ
遊休農地になってしまうかを考えてみますというと、人に貸してしまうと戻ってこなくなるという点、取られてしまうという点、安く買われてしまうという点など、旧
制度の小作
制度時代の観念がまだ抜け切れないということ。二番目に、持っていればどうにかなる、今に高く売れるなど、
土地への愛着心は、農民であればだれも思う土は農民の魂であるということが抜け切れない等が考えられるかもしれません。
農地は耕作して初めて価値観が生まれ、放棄しては何の価値もございませんが、今放置されているものを考えてみますと、雑草の害、スズメなどの鳥の害、虫の害等、青少年の非行の場等となっておりまして、周囲に大変御迷惑をかけており、及ぼす影響は大変大きいものがございます。
農地の保護、環境の
整備からも、よく
農家の
方々を
指導する上でもこの
法案が大変貴重なものになろうかと考えておりますので、これもぜひ
お願い申し上げたいと考えます。
次に、
特定農地貸
付けに関する
農地法等の
特例に関する
法律案でございますが、地方公共
団体と
農業協同組合に、貸付規程を定め
農業委員会の承認を受けてお許しいただけるということができるならば、大変前進してありがたいものと考えております。
遊休農地の利用活用と
農地への愛着、農耕の
意欲に燃え、
行政の仕組みから考えてもありがたいことと考えております。
今私の村では、
土地の
基盤整備をしたところは比較的少ないのでございますが、まだ四十ヘクタールほど
土地改良していないところがございますが、その三分の一ほどが
遊休農地となって、周囲に大変迷惑をかけております。そこで、村の
産業課の発想で
農業委員会の特別の御協議で、村の中学校の生徒に
農業の体験実習の場として二十アールを六十二年米作をいたしましたところ、田舎の
子供でも、靴下をはいたり足袋をはいたり買い物のビニール袋をはいたりしての田植えでございましたが、収穫の喜びは大変なものでございました。生産したお米を使ってのもちつき
大会、試食会、またかかしをつくってのコンクール等までして、六十三年は、全校生徒の高い要求がございましたので六十アールに発展となって、
地域の老人会及び各施設等へのその米の提供で大変好評なものも得ておるわけでございます。これは役場の
産業課の職員が
農業委員会の特別の計らいを得るにおいては大変な御苦労があったわけでございますが、ここに
実現したわけでございます。
また、家庭菜園、レクリエーション農園を一区画一アール年二千円で貸し
付けを始めたところ、近所の団地に住む若い
方々、老人の
方々からの
申し出があり、二十アールがすぐ開始することができました。東京から田舎に戻った人、もともと
農家の出の人、また遠く十四キロも離れた前橋からの四世帯もおりますが、朝早く五時ごろから来て、なれない手つきながらも村で用意した手くわ、浅くわ、シャベル等を使って、老人の経験者からの手ほどきを得て、専業
農家を超すほどのよいものをつくり、
自分で食べ、友人に分け合って喜んでいるところでございます。長生きは食生活からの合い言葉で、一生懸命頑張っておるところでございます。または、家庭に出てくるところの生ごみを堆肥化して有機農法に生かすこと、新鮮な野菜が
自分の手でつくれる喜び、また退職者が、何もすることがなくしてぼんやりしている人がその農園によって人々との交際の場ができ、体も心も健康で実益を得たところのレクリエーションとして大変喜んでいるところでございます。農は国のもとなりと昔から申しておりますが、土なくして生きることはできませんので、みんなで国土を守る意味からも大勢の
方々の利用ができるように考えてまいりたいと思っておりますので、一層の御
指導を賜りたいと考えております。
最後にひとつ、これは本題から外れますけれ
ども、
お願いをさせていただきます。
まず一点に、
農業者年金受給者が長年御苦労して掛金をして経営移譲を
後継者にしてほっとしたところ、
後継者が耕作し切れず、
規模拡大しようとする者に
利用権設定をしようとすると年金の支給が停止されるので、やむを得ず
遊休農地または放棄せざるを得ないというのが現状でございますので、長年の御苦労の恩給と考えるとするならば、この停止をしない方法がないのか、ぜひこれを考えていただきたいと考えます。また、生前一括贈与についても同じことが言えると思いますので、
お願い申し上げたいと思います。
二番目に、若い青年層が農耕に志し、
規模拡大または施設的な仕事を考えようとするときに多額の資金が必要となりますが、成功か失敗かわからない悩みの中で
推進するわけでございます。そのとき多額のお金を借りようとしても、裏づけのない者にお金を貸すはずがございませんけれ
ども、その
事業遂行のためにはどうしても資金が入り用でございます。先ほど申し上げました村等の
認定を受けた者に、優良農民または有望な
方々に、きつい
指導のもとに保証
制度等ができて、この
推進ができればありがたいと考えておりますので、この点も
お願い申し上げたいと思います。
三点は、現在の社会の
情勢下、国際化の中では大変御無理を承知で申し上げたいと思いますけれ
ども、
農家の
立場から申し上げますと、若者に
農業をやれというようなことが今言えないような状況下でございますので、進んで
農業をやれと言えるような
農業の仕組みにしていただきたいと思うわけでございます。特に、米、麦、養蚕複合
農家につきましては大変厳しいものがございます。売るものと買い入れるところの資材とのバランスが大変崩れているのではないかと考える点でございます。
この二法は適地適作、
地域に適合したところの
政策で、だれよりも
自分たちの
地域を一番よくしようとみんなが頑張っておりますので、特に山間部、中山間部の
方々の
地域の改善と
整備、
農業の
振興には、どんな時代が来ようとも、昔の供出
制度の時代が来ても皆さんが喜んで
協力できるような
体制づくりの保持こそ大切であろうかと考えますので、大変御苦労いただく
先生方には生意気なことを申し上げて失礼でございましたけれ
ども、農民を救っていただきたいという
立場からも重ねて
お願いを申し上げ、私のお話を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。