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1989-05-25 第114回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年五月二十五日(木曜日)     午前十時開議    出席委員   委員長 堀之内久男君    理事 高村 正彦君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 柳沢 伯夫君 理事 安井 吉典君    理事 水谷  弘君 理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    大石 千八君       川崎 二郎君    北口  博君       小坂善太郎君    杉浦 正健君       田邉 國男君    武部  勤君       中島  衛君    二田 孝治君      三ッ林弥太郎君    谷津 義男君       石橋 大吉君    串原 義直君       沢藤礼次郎君    武田 一夫君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         食糧庁長官   甕   滋君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農用地利用増進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五七号)  特定農地付けに関する農地法等特例に関す  る法律案内閣提出第五八号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農用地利用増進法の一部を改正する法律案及び特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案の両案を議題とし、審査に入ります。  順次趣旨説明を聴取いたします。羽田農林水産大臣。     —————————————  農用地利用増進法の一部を改正する法律案  特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 羽田孜

    羽田国務大臣 農用地利用増進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農用地利用増進法は、昭和五十五年に制定され、農用地利用増進事業実施を通じ農用地流動化有効利用促進に成果を挙げてきたところであります。  しかしながら、最近における農業及びこれをめぐる諸情勢の推移にかんがみ、農業構造改善を一層促進するため、農用地利用増進事業の円滑かつ効率的な推進を図ることが必要となっております。  また、近年増加傾向にある遊休農地につきまして、その利用増進を通じ地域農業振興を図る必要があります。  このため、本法律案は、地域農業あり方についての合意形成を図りつつ、関係機関団体による農用地利用調整活動を活発化するとともに、遊休農地利用増進するための仕組みを新たに整備することを目的とするものであります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、実施方針に定める事項の追加であります。  市町村農用地利用増進事業を行おうとするときに定める実施方針に、農用地利用増進事業実施を通じて促進すべき農業構造改善に関する目標等を追加することとしております。  第二に、農用地利用関係調整推進であります。  農業委員会は、農業経営規模拡大を図るための計画について市町村認定を受けた者からの申し出に基づき農用地利用関係調整に努め、利用権設定等促進事業実施市町村要請することとしております。  また、農業協同組合は、組合員のために農用地利用関係調整を行い、農用地利用増進計画を定めるべきことを市町村申し出ることができることとしており、また、農作業受委託あっせん受託農業者組織化等に努めることとしております。  第三に、遊休農地に関する措置であります。  遊休農地について、その農業上の利用増進を図るため、農業委員会による指導市町村長による勧告農地保有合理化法人による買い入れ等協議ができることとしております。  以上のほか、農業委員会農業協同組合及び農地保有合理化法人は、農用地利用増進事業の円滑な推進に資することとなるよう、相互連携を図りながら協力するように努めることとしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  続きまして、特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  近年、国民の余暇の増大や価値観多様化等に伴い、農業者以外の者の中には、野菜や花等を栽培し、自然に触れ合いたいという要請が高まっております。このような要請にこたえていくことは、農業農村をめぐる厳しい情勢の中で、国民農業農村に対する理解を深めるとともに、地域活性化増加傾向にある遊休農地利用増進を図る上で極めて有意義なものと考えられます。  このため、政府といたしましては、地方公共団体または農業協同組合が行う特定農地貸し付けについては、農地法制限を緩和する等所要特例措置を講ずることとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、特定農地貸し付けとは、地方公共団体または農業協同組合が行う農地貸し付けで、小面積農地につき相当数相手方対象として定型的な条件で行うものであることその他の要件に該当するものをいうこととしております。  第二に、地方公共団体または農業協同組合は、 特定農地貸し付けを行おうとするときは、申請書貸付規程を添えて、農業委員会に提出して、その承認を求めることができることとしております。  第三に、農業委員会承認を受けた特定農地貸し付け及びそのための農地権利取得につきましては、農地法権利移動許可を不要とするとともに、耕作権保護等に関する規定適用除外とすることとしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  以上であります。
  4. 堀之内久男

    堀之内委員長 次に、補足説明を聴取いたします。松山構造改善局長
  5. 松山光治

    松山政府委員 農用地利用増進法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。  第一に、農用地利用増進事業実施を通じて促進すべき農業構造改善に関する目標であります。  この目標は、農用地利用増進事業実施を通じ、農業構造改善を一層促進するためには、その地域実情に応じ地域農業あり方についての合意形成推進することが重要であるとの観点から、実施方針において新たに定めることとしております。  第二に、農用地利用関係調整推進であります。  まず、農業委員会は、農業経営規模拡大を図るための計画について市町村認定を受けた者から農用地について利用権設定等を受けたい旨の申し出があった場合には、農地保有合理化法人協力を得つつ、必要な場合には勧奨を行って、農用地利用関係調整に努めることとしております。  農業委員会は、この調整が調ったときは、市町村利用権設定等促進事業実施要請することとし、市町村がこの要請内容と一致する農用地利用増進計画を策定する場合には農業委員会の決定を経ることを要しないこととしております。  また、広域的な農用地利用関係調整が必要なときは、都道府県農業会議は、関係農業委員会に対し、資料及び情報の提供等を行うよう努めることとしております。  次に、農業協同組合は、その組合員に係る農用地利用関係改善を図るため、農用地利用関係調整を行い、農用地利用増進計画を定めるべきことを市町村申し出ることができることとし、市町村は、その申し出を勘案して農用地利用増進計画を定めることとしております。また、農業協同組合は、農作業受委託あっせん受託農業者組織化等に努めることとしております。  以上のほか、農用地利用関係の円滑な調整等に資するよう、農業生産法人利用権設定等を行うため、その構成員農用地取得等を行う場合についても、農用地利用増進計画対象とすること等の措置を講ずることとしております。  第三に、遊休農地に関する措置であります。  近年増加している遊休農地の解消とその有効利用を図るため、正当な理由なく耕作放棄している者に対する農業委員会による指導市町村長による勧告ができることとしております。また、遊休農地所有者等がこの勧告に従わないときは、農地保有合理化法人買い入れ等協議を行い、その結果買い入れ等を行った農地農業経営規模拡大を図るための計画について市町村認定を受けた者へ売り渡し等を行うこととしております。  第四に、農業関係機関団体協力であります。  以上申し上げましたように、本法律案では農業委員会農業協同組合及び農地保有合理化法人について農用地利用関係調整等に関し新たな役割を規定することとしており、これらの機関団体が、農用地利用増進事業の円滑な推進に資することとなるよう、相互連携を図りながら協力するように努めることとしております。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明を終わります。  次に、特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。  第一に、特定農地貸し付けの定義であります。  特定農地貸し付けとは、地方公共団体または農業協同組合が行う農地貸し付けで、政令で定める面積未満農地につき相当数相手方対象として定型的な条件で行うもの、営利を目的としない農作物の栽培の用に供するためのもの、政令で定める期間を超えないものという要件に該当するものをいうこととしております。  第二に、農業委員会による特定農地貸し付け承認であります。  農業委員会は、地方公共団体または農業協同組合特定農地貸し付けの用に供する農地所在等を記載した貸付規程を添付して承認申請をした場合において、その申請が、周辺の地域における農用地農業上の効率的かつ総合的な利用を確保する見地から見て農地が適切な位置にあり、かつ、妥当な規模を超えないものであることその他の要件に該当すると認めるときは、承認をすることとしております。  第三に、農業委員会承認を受けた特定農地貸し付け及びそのための農地権利取得についての農地法特例であります。  農業委員会承認を受けた特定農地貸し付けによって農地使用収益権が設定される場合及び特定農地貸し付けの用に供するため所有権または使用収益権取得する場合には、農地法許可を不要とすることとしております。  このほか、特定農地貸し付けの用に供されている農地等につきましては、農地法耕作権保護等に関する規定適用除外とすることとしております。  第四に、農業協同組合事業特例であります。  農業協同組合は、農業委員会承認を受けたときは、農業協同組合法規定にかかわらず、組合員所有に係る農地について特定農地貸し付けを行うことができることとしております。  第五に、土地改良事業参加資格特例であります。  農業委員会承認を受けた地方公共団体または農業協同組合をその農地につき権原に基づき耕作の業務を営む者とみなし、土地改良事業に参加する資格を有する者とする旨の土地改良法特例を設けることとしております。  以上のほか、市町村または市町村長に関する規定につきまして特別区等の特例を設ける等所要規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 堀之内久男

    堀之内委員長 以上で両案の趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 堀之内久男

    堀之内委員長 次に、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋大吉君。
  8. 石橋大吉

    石橋(大)委員 間もなく内閣総辞職あるいは退陣間近かもしれない農林水産大臣に質問をするのはいささか張り合いが欠けないこともないのですが、しかし、留任をされる可能性もあるかもしれませんし、退任をされても、自民党内きっての農政通ということですから、今後も大きな影響力を持って日本農政を動かされる、こういう立場でもあろうかと思いますので、そういう観点で、まず最初に羽田農政基本方針農相の就任当時の 新聞を見ますと、党内きっての国際通、しかし自民党内にも、片足をアメリカに置いてあるのじゃないかという評価もあるというような、これは新聞記事ですよ、こういう評価もあって、米などについても大胆に見直しの姿勢、こういうような大見出しもあるわけでありまして、非常に国際的に厳しい状況の中に置かれておる日本農政を考えたときに、大きな期待と同時に、そういう意味では果たしてどうなるのかな、こういう不安も率直に言ってないことはないわけでありまして、農相立場からいえば、日本農業をしっかり守るのだ、こういうことも一面では強調されておるようですが、念のためにこの際、そういう国際通羽田農相基本的な方針原理原則みたいなものをひとつ簡単に明らかにしていただきたいと思います。
  9. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  大変基本的な問題で、簡単にと言われますと大変難しいのでございますけれども、お答え申し上げたいと思います。  まず、農政通ということでありますけれども、決して私は別に農政通じゃございません。ただ、日本における農業林業水産、こういったものはやはり国の基本であるという考え方を持っておる人間であるということを申し上げたいと思います。それと同時に、確かに国際化の波というのは、今、農業林業水産も寄せられておりますけれども、しかし、今申し上げましたように農、林、水とも国の基本であるという、これは普遍の原理であろうということを信じながら農政を担当しておるということをまず申し上げておきたいと思います。  そして、今御指摘がございましたように、確かに農業というものが今、内外、非常に難しい、厳しい環境の中にあるということを私自身もそのように感じております。ただ、では農業というものはこのまま本当に廃れていっていいのかということを考えますと、今申し上げたように、農業というものがおかしくなったときにやはり国というものは基本が狂ってしまうということが言えるであろうということを思っております。その意味で、この厳しい中にあって、厳しいと言ってそのまま過ごしておったのじゃ、このまままただめになっていってしまうという話でありますから、やはり一つの大きな波のうねりあるいはこういった転機、こういったものを活用しながら、さらに飛躍させるために私どもは努力していかなければいけないと思っております。  そして、そういう中で私どもは今、農業を取り巻きますいろいろな環境を見ますと、厳しい反面、一方ではバイオテクノロジーというような技術開発ども今着実に進んでおるということもありますし、そういったものを含めた技術革新が進んでおります。  また、農地につきましても非常に価格が高い、これは国全体の問題でありますけれども土地が高いということでなかなか手に入らないということがありますけれども、今、提案理由を申し上げたような中でこういった売買による規模拡大も進めると同時に、賃貸借あるいは作業の受委託、こんなものも今着実に動きつつあるということでございまして、こういう中で私どもはまずその基盤というものをきちんと確保し、また整備していく、これが重要なことであろうと思っております。  なお、そういったものを基盤にしながら、果物ですとかあるいはキノコ類ですとか、そういったものを輸出するような動きも出てきておるということでございまして、私どもはそういうものをやはり助長していく、そんなものも今必要なときであろう。輸入が怖いというだけではなくて、むしろ我が方からも攻勢をかけるということも大事なことじゃないかなというふうに思っております。  いずれにいたしましても技術進歩やあるいは農業者創意工夫、そして地域の特性を生かしつつ、農業を魅力のある産業とする、このことは私は決して否定されるものじゃない、希望のあるものであるというふうに考えておるところであります。このような状況も踏まえまして、産業として自立し得る農業、これの確立を図り、国民のまた納得のできるような価格などで物事を提供していくようなコストの低減、こういったものも図っていかなければいけないであろうというふうに思っております。  いずれにいたしましても、農業者が将来に希望を持って営農にいそしめるような農業構造改善ですとかあるいは農村地域活性化技術開発普及等、諸般の支援策を私どもも一層強力に進めてまいりたいというふうに思っておるところであります。  また、農業者皆さん方が現在、農業の将来についての不安を実は持っておるというのは現状でありましょう。これは自由化などの問題も含めてそうでありましょう。そういった中で現行の長期見通し、これにかえまして新たな農産物の需要と生産長期見通し、これをつくりかえていく必要があろうということでございまして、私どもは二〇〇〇年、平成十二年を目標としてそういった方向を打ち出しながら、そういう中で農業生産する方々が一つ方向を見つめながら生産にいそしめるような、そういった体制をつくり上げていきたいというふうに考えております。
  10. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、ガットウルグアイ・ラウンドの後半二年間がこれから本格化をするわけですが、このガットにおいて日本政府主張しようとしておられる食糧安保の具体的な中身といいますか、構想といいますか、そういうことをちょっとお伺いをしたいと思うのです。  御承知のとおり四月五日から八日までジュネーブでガット貿易交渉委員会が開催されまして、四月八日の最終合意に、日本の顔を立てて、長期目標を達成するための交渉においては、食糧安全保障のような参加国関心事に取り組むことを目的とする提案に考慮が払われる、こういう文言が書き込まれた。しかし、これは交渉に参加した上野国際部長の報告を聞きましても、あえて言えば辛うじて入った文言である。そして、検討の素材にしようということで入ったわけでありまして、これがガットの場で認められたわけではない、こういう状況になっているわけですが、ともあれ、粘りに粘ってやっと入った食糧安全保障文言ですが、牛肉・オレンジの自由化の次は米の全面自由化で、最後のとりでを崩されるんじゃないか、こういう意味で農家の皆さん農業関係者皆さんの不安が非常に高まっておる中でもありまして、これからのガットの場における交渉について非常な期待もあるわけでありますが、そういう意味で、この食糧安保論なるものは一体どういう具体的な内容を持っているものか、ぜひひとつこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  11. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  今、先生の方からお話がございましたように、ウルグアイ・ラウンドの四月初旬に行われました中間レビューで、今後の残された期間内に農産物交渉を行う場合の基本的な枠組みにつきまして合意がなされ、長期と短期の二つの要素があるわけでございますが、長期枠組みといたしましては、ただいまお話がございました食糧安保考え方合意の中に一つ要素として盛り込まれたわけでございます。  御承知のように、今回のウルグアイ・ラウンド農産物交渉は大変幅広い取り上げ方をすることになっておりまして、従来のように単に関税でございますとか国境措置に限定した取り上げ方ではございませんで、農産物については各国とも何らかの形で国内農業政策を展開し、それがやはり貿易にいろいろな意味での影響を与えているということから、輸出面輸入面影響を持ってあろう措置を広範に取り上げるということになっておるわけでございます。かつまた、単に具体的な保護措置についての交渉だけにとどまらず、ガットの規律なりあるいは規則についてさらに強化し、効果的なものにする、ガット規則そのもの交渉対象にしようという動きになっているわけでございまして、今回の中間レビューでもそのことが明確に長期要素として盛り込まれたわけでござい ます。それだけに、今後のこの交渉の展開は各国農業政策に非常に大きな影響を及ぼす可能性を持ってきているというふうに認識をいたしているわけでございます。  特に、我が国の場合、再三申し上げておりますように、世界最大農産物の純輸入国、その裏腹として国内自給率の著しい低下という農業の実態がございます。国民食糧安定供給を図る上で、我が国農業維持発展を図る上で事が極めて重要でございまして、ウルグアイ・ラウンド交渉においても、我が国農業実情というものを十分理解をしていただいて、国民の安定的な食糧供給にそごのないような農業生産維持を確保していく必要があるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に幅広い交渉が行われるわけでございますので、とりわけ我が国のような農産物輸入国にとっての帰趨が憂慮されるわけでございます。そこで、今回の交渉におきます一つの足がかりといたしまして、食糧安保その他の必ずしも経済的な論理だけでは律し切れない要素というものを農産物交渉に当たっては配慮していく必要があるという主張を、我が国だけではございませんで、主として輸入国の方から主張を行い、そういう考え方が盛り込まれたわけでございます。  この食糧安保考え方に具体的にどういう内容を盛り込むかというのは、今後の交渉の各ステージにおいてさらに詰めていく必要があるわけでございますが、一般的には、食糧安保の確保のためには国内生産維持、それから輸入すべき農産物についての輸入の安定、それからまた備蓄といった政策手段があるわけでございまして、そういった三つの政策手段のバランスを確保していくことが極めて重要でございますが、我が国のような食糧自給率の著しく低い輸入国にとっては、とりわけ効率的な国内生産維持発展を図ることが特に重要であるというふうに認識をいたしておるわけでございます。  そういう考え方に立ちまして、今後の交渉具体化の段階におきまして、せっかく確保されました食糧安保という考え方十分我が国農業に有効に機能するように、私どもとしてはさらにこの概念の内容具体化に向けて努力をいたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  12. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今、経済局長から答弁がありましたが、余り具体的なことは言われませんでしたけれども、かつて塩飽さんが農政ジャーナリスト会編の「農業新時代へのプログラム」の中で、食糧安保論の具体的な内容ではないかと思われるようなことを言っておられますね。  簡単にいいますと、基本食糧についても輸入制限実施するには十一条二項の例外要件を満たしていなければならないというのでは、将来にわたって日本の米などの輸入制度の国際的位置づけとしては十分でないとの判断に立って、今日のウルグアイ・ラウンドにおける日本政府提案にはそれに先手を打つようなものが含まれている。それは食糧自給率の低い国が基本食糧国内生産の安定確保を図る等の観点に立ち適切な改善を図るということだ。具体的には食糧自給率が非常に低い国には特別のルールを設けるべきだ。食糧自給率の低い国は交渉によって決める。食糧自給率の低さを一定の指標でとらえ、これを下回る国を特別のルールの対象にしていく。また該当する国にとって基礎的食糧の定義も交渉で決めていく。基礎的食糧として合意ができた品目については、国内生産維持安定を図るために必要な場合は輸入制限を認めていく。現行の第十一条二項を変更すべきだと提案をしている、こういうふうに言われておるわけですが、現在もそのとおりかどうか知りませんが、恐らくこういう具体的な中身が食糧安保論内容ではないか、こういうふうにも思うわけです。  もしこうだとすると、私は、先進国の中では我が国ほど農業を極小化した国はないと思っておりますが、せいぜい現状維持が精いっぱいではないか、こういうふうに思うわけです。やはりもう少し自給率も上げて日本農業の再建をする、こういう観点に立てば、少しこの主張では弱いのではないか、こういう感じもするわけですが、いかがでしょうか。
  13. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  我が国農産物自給率が非常に低下している現状にかんがみての先生の今の御質問だというふうに理解をいたしたわけでございます。  今後の世界的な食糧需給の事情につきまして考えますと、我が国食糧安定供給を図っていく上で国内生産の一層の効率化を図りつつ、我が国自給率のこれ以上の低下を阻止し維持をしていくということは極めて重要な政策課題でございます。これをガットの場でどのように確保していくかということが今後の非常に大きな問題になるわけでございますが、御承知のように、一方ではウルグアイ・ラウンドの大きな方向、流れというものは、農産物についても一層の自由化を求めていくのだ、実現をしていくのだということになっておりまして、そういった大きな流れの中で、いかにして我が国のような自給率の低い国の農業生産維持発展のために交渉を展開していくかということが今後の非常に難しい課題になってくるわけでございます。今の先生の言われたようなことを十分頭に置きまして、私どもとしてはこの食糧安保考え方の有効的確な活用をさらに努力をしていきたいというふうに考えるわけでございます。
  14. 石橋大吉

    石橋(大)委員 農家の皆さん、大変心配して見ていますから、ひとつ日本農業をこれ以上崩壊させないように頑張っていただきますようにここではお願いをして、次に移りたいと思います。  次に、二十一世紀に向けての日本農業の具体的な構想について、もし明らかにできれば明らかにしていただきたいと思うわけであります。  御承知のように、我が国農業構造政策の変化をざっと振り返ってみますと、まず基本農政の当初の目標は、農地改革によって創設をされた六百万の零細自作農から経営規模の幾分大きい一ないし二ヘクタールのエリート的な独立自営農の育成を目指す、これが最初の出発点。そして、基本農政の第三期と言われる一九七四年から八一年ごろにかけて、一九七三年の農業白書で初めて中核農家という言葉が登場するわけですが、これは御承知のように基幹男子専従者のいる農家、ここへ農地を集積して規模拡大をする、そのときの目標は大体二・五ヘクタール以上を目標にする、こういうことになりました。  さらに、「「八〇年代の農政基本方向」の推進について」、昭和五十七年、一九八二年、この中では土地利用型部門における経営規模の大きい中核農家三十万戸程度を目指すということで、その平均規模は稲作主業経営で都府県五ヘクタール程度、北海道十ヘクタール程度、酪農、肉用牛は省略しますが。そして、耕地面積に占める中核農家のシェアは六割程度、昭和六十五年ごろにそういう状況農地の集積がうまくいけばなるんじゃないか、こういう報告が出されました。  さらに「二十一世紀へ向けての農政基本方向」、昭和六十一年、一九八六年の農政審答申では、御承知のとおり産業として自立し得る農家、国際化に対応し得る農業の確立、こういう大目標を立てまして、個別経営の拡大と集団等を活用した規模拡大、高水準水田農業の確立、目標とするかどうかは少し具体的ではありませんが、目安として、大型機械化作業体系として三十三ヘクタールから四十ヘクタール、中型機械化作業体系として十二ヘクタールから二十四ヘクタール、こういうものが明示をされておるわけであります。  昭和六十三年時点での経営耕地規模別の農家の現状を見ますと、北海道を除いた都府県だけですが、総農家数四百十三万戸のうち、一ヘクタール以下の農家が二百七十七万一尺六九・五%、五ヘクタール以上層は二万三正月〇・五七%、こういう現状にあるわけであります。  問題なのは、いつの場合でも農家が目標に到達しない間に次々と目標がかさ上げされる。多くの農家は息が切れて情熱を失って農業を投げ出していく。結局は我が国農業の荒廃に結びついておる のではないか、こういうふうに考えられるわけでありまして、そろそろそうそう変化をしないようなしっかりした目標を立てて、そしてこれだけは何としても政府として守りますよ、こういう観点に立って農家の皆さんにある程度安心して農業経営をしてもらうような、そういう具体的な二十一世紀に向けての目標をはっきりすべきだ、こういうふうに考えますが、この点いかがでしょうか。
  15. 松山光治

    松山政府委員 日本農業あり方をどう考えていくかという点につきましては、我が国の経済社会の変化の実情を踏まえながら、そのときどきにおいていろいろな形でのイメージアップ、イメージの作成が行われてきておるというふうに認識をしておるわけでございます。昨今の農業をめぐる状況を踏まえながら今後の土地利用農業の構造についてどういうふうなものを考えていくか、これはやはり日本農業の将来にかかわる、それだけになかなか画一的な言い方の難しい、合意形成の急がれておる重要な問題である、このように私は認識をいたしておるわけでございます。  日本土地利用農業の基幹の重要な部分をなしております稲作農業についての私なりのイメージを申し上げますれば、やはり国民皆さんに納得していただけるだけの効率的な生産単位と申しますか担い手によりまして、生産の、特に流通する生産の大宗が担われる。しかし、日本農業の現状あるいは農村の現状、また一つながりの中で耕作が営まれるという水田農業の特色といったようなことも頭に置きますと、かなり広範な自給的な生産農家というものがやはり残存する、こういう構造を考えることになるのではないだろうかというふうに思っておるわけであります。  問題は、そういうふうに考えましたときの中核的な担い手のイメージでございますけれども、今先生からも御指摘ございましたように、一つには個別経営体としてしっかりした経営体が育つということもございましょうし、それから、そういった層を中核にしながら集団的な生産組織の形で対応を考えていくという地区もあろうかと思います。要は与えられた技術水準のもとで、これをフルに活用しながら国民に安定的な形で、しかも御理解のいただける形での供給を行っていく、かつまた社会的に妥当と認められるようなそういう所得の確保が可能な、そういう生産単位をどのようにして形成していくか、こういうことではなかろうかと思っておるわけでございます。  そういうものとしてどういう規模を想定するのか。これはやはり経営の作目の問題もございます。土地条件の問題もございます。また、どのような機械体系を採用していくのかというようなこともありましょうし、労働力の保有状態にもかかわってくるというようなことで、地域地域条件がございますから、いろいろな試算は可能だと思いますけれども、これを画一的に考えていくということはやはり適当ではないのではないか。私どもといたしましては、そういう意味で、地域条件を踏まえながら、かつまた、あちこちに先進的なモデル的なものも出ておるわけでございますから、そういうものも踏まえて各地域で現実的な経営指標といったようなものを考えていただく、そういう事業を昨年から全国的に展開をしておるわけでございます。  私どもとしては、そういう各地域での、どのような形でこれからの状況に対応していこうとするかという自主的な努力をできるだけ支援するという考え方のもとに今後の施策推進に当たってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  16. 石橋大吉

    石橋(大)委員 さっきも言いましたように、五ヘクタール以上層が〇・五%程度の水準、こういうようなことからいいましても、二十ヘクタールから四十ヘクタールもの耕地面積を持った、集団にしろ個別農家にしろ農家が点としては存在しても、果たして面として将来の日本農業の具体的な姿になるのかどうか、極めて大きな疑問があるわけでありまして、そういう意味で、ぜひひとつもう少し現実的に実現可能な絵をかいて農家の皆さん希望を持たせるような措置をとっていただきますように、この機会にお願いしておきたいと思います。  次に進みますが、米価の決定と中核農家の育成策について、この際伺っておきたいと思います。  御承知のように、臨調の答申や農政審の答申の方向に沿いまして米価は抑制的に決めることが農政基本方針になっているわけでありまして、それに基づいて、昭和六十二年には五・九五%の引き下げ、昭和六十三年には四・六%の引き下げ、ことしはどうなるか。巷間、参議院選挙を前に米価を引き下げるのはやばいから、まあせいぜい据え置きくらいしようじゃないか、こういう話も流れていますが、その真偽のほどはわかりません。  いずれにしましても、こういうふうに連続的に米価を大幅に引き下げるということは、一番問題なのは、将来にわたって日本農業の担い手になるべき中核農家や専業農家に一番大きな打撃を与えるわけでありまして、兼業農家はへとも思いませんけれども、そこらに非常に大きな打撃を与える、そのことが土地利用農業の荒廃に結びついていく、こういう形になっているわけであります。私は、そうさせないためには、もし価格政策の面でそういう方向を追求するとすれば、将来の中核的な担い手になるような人たちがそのことによって情熱を失ったり失望したりしないように、別の例えば所得政策だとか社会政策的な面で何らかの配慮をしておかないと農業は全面的につぶれてしまう、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  17. 甕滋

    ○甕政府委員 ことしの米価の具体的な取り扱いにつきましては、まだ何も決めておりません。したがいまして、米価政策の基本的な考え方といったお尋ねかと思いますが、現在米の需給が大幅な過剰基調にあるわけでございます。その中で、内外価格差も拡大しているというような指摘が行われているわけでございますが、米の自給方針につきまして国民理解あるいは支持を得ていくためにも、需要に対応した生産あるいは生産性の向上とコスト低減、こういった点に努めまして、国民の納得のいく価格での供給を図っていく必要があると考えられるわけでございます。米価につきましては、こういった課題に対処をいたしまして、稲作の将来展望を切り開いていくといった観点で、生産費所得補償方式に基づきまして、生産性の高い稲作の担い手層に焦点を置いていこう、また需給調整機能を強化した運用をやっていこう、こういう考え方をとっておるところでございます。  今お話ございました、担い手のやる気をなくさないようにしなければならないといった点についてでございますが、現在の米価の算定方式、いわゆる生産費所得補償方式でございますが、担い手の農家につきまして、構造政策あるいは生産対策によりまして生産性の向上を図るということをベースにいたしまして、それを的確に価格に反映をさせていくという考え方に立っておるものでございます。このやり方の技術的な点になって恐縮ですけれども、過去三年間の生産費を基礎にして、生産性の向上が進展しているというもとではその成果が生産者に帰属する、こういうことになるわけでございますし、また平均生産費を基礎にしておりますから、生産性向上に努力した曲屋家につきましてはその分、高い生産性を実現している分が報われる、こういうことにもなっておると考えております。  したがいまして、今後、国民の主食でございます米の安定供給を担う者として、やはり稲作の農家らしい農家がそれを担っていくということを主眼に考えていくことが、将来の日本の稲作をどうするかといった点にもこたえ、かつ、国民の納得、支援が得られるゆえんではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  18. 石橋大吉

    石橋(大)委員 農水省の方の考え方はそういう考え方でしょうが、しかし、まず米価の引き下げこういう大前提があって、それに合わせていろいろと数字がつくられるわけですから、必ずしも農家の立場からいえば今の長官の説明では納得できない、こういうふうに思いますが、時間がありま せんからこれくらいにしておきます。  次に、時間がありませんから二つほど続けて質問をします。  一つは、新規学卒者の就農実態と青年就農者の確保策について。  農林統計によりますと、御承知のように、中学校、高校新規学卒者の農林水産業への就業状況、昭和六十三年、新規就業者六十五万五千九百四人中農業への就職者数は三千九百八十二、男三千四百四十五、女五百三十七。林業への就職者数二百、男百五十五、女四十五。漁業への就職者数千百九十五、男千六十一、女百三十四。惨たんたる状況であります。特に、国土の七割を山林が占めているわけですが、わずか全国で二百。定年になってから農林水産業にuターンする人がある程度あるとはいいながら、若い人々が意欲を持って農林水産業に参加をしないということは、やはりこの面で農林水産業が急速に崩壊をしていく、こういうことにつながっているわけであります。そろそろ青年就農者の確保策について何かやはり具体的に対策をすべきではないか、こういう時期に来ておると思います。この辺をまずひとつ。  それから二つ目、過疎対策と農山村の活性化対策についてこの際伺いたいと思います。  御承知のように過疎法が来年で切れる。過疎法を延長するかどうかということでいろいろな議論があります。これはこれとして、これからの過疎問題の最大の焦点は何か。過疎法二十年の中で農山村地帯の道路もよくなりましたし、建物も整備されました。問題はやはり地域に自活をする活力がないということであります。現状のまま推移をしますと、今までの過疎化の中で残った年寄り、中高年の人たちがこれからいよいよ年をとって消えていく、第二次の過疎化が始まる。そして、この第二次の過疎化の最大の問題点は集落の崩壊だ、私はこういうふうに思っているわけであります。  御承知のように農業集落は全国で約十四万あります。この集落が急速に崩壊をしていく。だとすれば、これは農地の保全、農業あり方、国土の保全、そういう観点でもゆゆしい問題を引き起こすことは必至であります。ですから、十四万の集落を全部守ることができるかどうかは別にして、ある程度農林水産省としても、農業の発達や国土の保全という観点からせめてこれぐらいの集落は何としても守ろうじゃないか、こういう政策のもとに農業集落を維持していくための、農業政策ももちろん必要ですが、何らかの特別な対策が必要ではないか、こういうふうに私は思っているわけであります。  できれば今の二つの問題については大臣の方から答弁をいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  19. 吉國隆

    吉國政府委員 私から、青年就農者の問題について、まず実態をお話をさせていただきたいと思います。  ただいま先生お話しのように、新規学卒就農者が減っていることは事実でございます。私ども基本的にはやはり農業を魅力ある産業として育てるということが大切であるというふうに思っておりますけれども、若い農業者の確保という観点からいろいろ施策も強化は図ってまいっているところでございまして、例えば普及所におきまして就農希望者に対する相談活動を強化していくということとか、あるいは学校教育との連携によりまして農業者大学校で高校生の農業の体験実習をやるというような施策でございますとか、あるいは今先生もお触れになりましたが、Uターン青年それから農外からの新規参入者、こういった方々への技術指導というようなものも新たに取り組んでまいっているところでございます。そういった個々の努力と同時に、先生もお話ございましたが、やはり若い方々にここが自分の男子一生の仕事だと思ってもらえるような働く場というものをつくっていくことも大切であるというふうに思っているわけでございまして、今年度からの事業でございますけれども、集落営農というような形で各構成員の方々の土地を集めて、それの効率的な機械化営農を進めていく、その専任的な管理者としての位置づけというような形での、若い人たちが意欲を持って取り組めるような場づくりというようなことにも力を入れてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  20. 松山光治

    松山政府委員 過疎地域を含みます農山村の問題につきまして、大臣の御答弁の前に事務的に状況の御説明をさせていただきたいと思います。  これら地域は、言うまでもなく食糧生産の場でありますとともに、国民の生活の場でもございます。同時に、豊富な自然環境に囲まれました国土空間として非常に重要な位置を占めておるというように考えているわけでございます。ただ、過疎地域を中心といたしまして、これらの地域で人口の減少傾向には歯どめがかかって、やや鈍化しているというふうには認識はいたしておりますけれども、これまでの若者の流出のもとで高齢化がかなり進んでおるわけでございます。したがいまして、地域社会機能の低下でございますとか、農地の保全の問題あるいは農林業の担い手の問題、国土保全の問題等々、そういったことが懸念される地域がかなりあるというふうには認識をいたしておるわけでございます。  私どもといたしましては、こういう基本的な認識に立ちまして、地域条件に即して、農林漁業の振興基本になることはもとよりでございますけれども、しかしそれにとどまらず、農林漁業にプラスされるような、あるいはまた地域の資源を幅広く活用し得るような分野まで視野に入れながら、若い人が残り得るような就業機会の確保に努める、あるいは生活環境の整備その他の定住条件の整備に努める、こういう考え方で、御案内のようにこれまでも山村振興対策でございますとか、あるいは過疎対策その他の非公共の補助事業実施をいたしてきておりますし、あるいはまた公共事業の面におきましても採択基準の緩和を行っておる、農村工業導入制度の活用を図っておる等々の施策の展開を図っておるわけでございます。私どもとしては、引き続き今申し上げましたような問題認識のもとに関係方面とも相談しながらこれからも施策推進に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  21. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お二人の局長の方からお答えを申し上げたわけでありますけれども基本的に先生が今お話しになったのは単なる批判とかなんとかというより、今の現状の中でこれは大変だぞという、本当にもう烈々たる気持ちというのを私自身も実は感じたわけでありますけれども、これにこたえていくには、まず何といっても日本にあって農業林業水産業というものはやはり大事なものなんだということをみんなが思うと同時に、そこに就業することに誇りと自信を持つということ、持たせること、それが重要なことであろうと思っております。そして今、日本だけではなくて世界の農業も大きく展開し、動いているわけですね。そういう中で、私ども日本の個別のいろいろな事例を見ましても、先端的に農業をやる人たちがどんどん出てきた。そしてバイオですとかそういったことだけではなくて、農業技術そのものにエレクトロニクスの技術なんかを導入しているような人たちもあるということでありまして、ということになりますと、本当に選び抜かれた人が農業の中に残っていくんじゃなかろうかなと思います。  そして実際に生産されるものなんかも、実に市場のニーズをよくとらまえて生産している方もいらっしゃいますし、また私は、将来輸出するぐらいの気持ちを持てということを数年前から言い続けてきたのですけれども、実際に今それが現場で行われるようになり、ナシなんかも一割ぐらいは輸出されるようになってきておるということです。結局、日本でつくる農産物というのは、例えばリンゴなんかにしましても、同じアップルでも似て非なるものをつくり出すということで、そんなに大きなものを日本から輸出することはできないでしょうけれども、値段が高くても似て非なるものをつくることによって、そういうものを要請する各国あるいは各階層があるというふうに私は 思っております。ということになりますと、ひとつ農業というものと取り組んでみたいという人たちも出てくるであろう。私はそんなものにしていかなければいけないと思っております。  また、今過疎対策の問題についてのお話があったわけでございますけれども、今そういったものをあれしますと農業をやろうという人が出てくると思います。また、農業から離れながらも、しかし地方で生活したいという人たちがあると思う。今何よりもかによりも日本の国で一番大事な問題は、やはり一極集中してしまっているという現状だと思うのです。これを多極に分散していかなければならない。これは政治の大きな命題であり、課題であろうと思っております。そのためには農村地域、地方に人に定住してもらうということが大事である。そのためには定住の条件というものを整えていくことが必要であろうということで、今局長の方からもお話がありましたように、農村における工業の導入促進法、こういったものを活用しながらやっていく。それと同時に、やはりああいう機関と場所というものを活用することによって研究所なんかも大きく発展していくと思っております。そして今リゾート開発などということも言われておりますけれども、ただ軽薄なリゾートではなくて、やはりそこの地域の歴史とか環境といったものをうまく生かしながらリゾートの開発をしていく、そうしますと、今諸外国の例なんかを見ましても、そういうものを開発した地域にいろいろな研究機関なんかが出てきますし、また、何もわざわざ小さな工場を持ってくるだけじゃなくて、むしろ本社機能ぐらい持ってくることをしたっていいだろう、そのくらいのことも考えてみなさいよということを言っておるわけであります。いずれにいたしましても、そういったことのためのアクセスの改善ですとか場の改革といったものを進めることが今非常に重要な問題であろうというふうに考えておるところであります。  私どもは、一番初めに御指摘がありましたように、御地元の竹下総理ともども退陣するということになっておるわけでありますけれども、しかし竹下総理のときに投げかけたふるさと創生、非常に少女趣味みたいに聞こえますけれども、その地域を将来どのように持っていくのかということのために国がお金の使い方について余計な指図をせずにやろうということを打ち出したことは非常に大きいし、またちょうど御地元からもこの間も知事さん以下東京に来られて、そして東京に向かって、今私たちの地域はこういうものがありますよということを訴えられた。私は非常に意欲的なものを島根は持っておると思います。この間の菓子の博覧会なんかへ行ってあちこち見ましたときにもそのことを感じたものです。非常に山の中であるかもしれないが、しかし山の中の特性を生かしながらやっていくこと、これが私は単なる過疎対策というよりは、それをやらなかったら日本の国そのものがこれから新たな発展ということを見ることもできないだろう。そのぐらいのことまで考えながらやっていかなければならない。私は就任のときにも農林水産省の皆さん方に、そういった問題について本当に農林水の面からそういった皆さん方の相談相手になるようにということを実は申し上げておるところであります。この場を離れましても、これからも一緒に勉強させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  22. 石橋大吉

    石橋(大)委員 時間が来ましたが、もう二つだけ地元のことについて伺っておきたいと思います。  一つは、日本海の沖にある竹島の問題についてです。これは別途また外務省ともやろうと思っておりますけれども、小さい岩の島でそれ自体大したことはないのですが、この島を日本の領土にして二百海里の漁業水域を設定したときには関西から下関までの陸地面積に相当するぐらいの漁場になる。非常に狭まる漁場の中でこの島を一日も早く韓国から返還をしてもらいたいということは、知事が行ったときにも恐らく大臣に要請しておると思いますが、島根県や鳥取県の漁民にとっては非常に切実な問題なのであります。  加えて、この間北方領土の返還問題に関連をして、ソ連は長年竹島問題なんか持ち出したことはないのですが、竹島は韓国との間で棚上げをして当面解決をしておるのではないか、北方領土も竹島方式で処理をしてほしい、こういうことをソ連が言っている、こういう話も聞くわけであります。そうなってくると、北方領土問題を解決するという観点からいっても、竹島問題を現状のまま放置することはできない、こういうふうに思うのですね。この点はちょっと農林水産大臣としては答えにくいところかもしれませんが、しかし閣僚として外務省に物を言う立場にはあると思います。そういう意味で、漁業問題と領土返還問題について努力をしていただきたいと思いますので、この点どうかということが一つ。  もう一つは、例の中海・宍道湖の淡水化問題に関連をしまして、本庄工区、干拓面積の約七割を占める、これがここに残っているわけです。そして、この土地利用をどうするかということで、先般検討委員会が発足をしました。中四国農政局長説明では、新聞報道ですが、農地利用にこだわらない、こういう話もあるわけで、幅広く検討したいということのようですが、それにしては、これからわずか四回ぐらいの審議回数しかない。メンバーを見ても幅広く検討するという点から言うと、やはりちょっと弱いような気が私はするわけです。特に、もし農地として造成する、農地があくまでも前提だ、こういうことが農水省の立場かもしれませんが、しかし既に完工したところの農地の売れ行き状況を見ても非常に惨たんたる状況ですから、なかなかそうはいかないわけですね。  そういう意味で、もし本格的に耕地以外に利用するなら、もう少し県民からアンケートをとるなりなんなり幅広い観点で、効果のある、実効の上がる土地利用方向を検討していただきたいと思いますが、その二つの点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  23. 羽田孜

    羽田国務大臣 竹島につきましては、我が国の領土であるにもかかわりませず、韓国が不法に占拠しておるということでございまして、日韓両国の間の問題となっております。日本海漁業の振興にとりましても、この問題の解決が重要であるというふうに認識しております。ただ、領有権にかかわるという事柄の性格上、外交ルートを中心に努力していくべきであると考えておりますけれども、今御指摘がございましたとおりでございまして、私ども外務省と十分連絡をとりながらこの問題に対処していきたいと思っております。  なお、本庄工区のこれからの土地利用の問題につきましては、構造改善局長の方から申し上げます。
  24. 堀之内久男

    堀之内委員長 時間がきておりますから、簡潔に答弁願います。
  25. 松山光治

    松山政府委員 お尋ねの土地利用検討委員会の問題は、昨年の中海・宍道湖問題の解決の取り扱いの際に県の知事の方から、ひとつ多面的な利用方法を検討してほしい、こういうことがございましたのを受けて、この際開催することにしたものでございます。  農地利用がもともと基本ではございますけれども、できるだけ多面的な形で考えたいという要望を踏まえまして、メンバーにつきましても可能な限り幅広い形で、県とも相談の上お集まりいただいたつもりでございます。また、県民の意向の反映が非常に重要だというふうに思っております。そういう意味では、私どもといたしましても、島根県におきまして県民の意向を踏まえた検討が十分行われることを期待している、こういう考え方でございます。
  26. 石橋大吉

    石橋(大)委員 終わります。
  27. 堀之内久男

    堀之内委員長 次に、武田一夫君。
  28. 武田一夫

    ○武田委員 羽田農林水産大臣の所信表明に対しまして質問いたします。  大臣は所信表明の中で、「農林水産業は、国民生活にとって最も基礎的な物資である食料等を安定的に供給するという重大な使命を担っているほ か、活力ある地域社会の維持、生きがいの充足、国土・自然環境の保全など、我が国の経済社会と国民生活の土台を支える重要な役割を果たしております。」こう明言をされているわけでございます。私もまことにそのとおりだと思うわけでございまして、この信念を農業の、政治の土台として、ひとつしっかりと各般の施策に全力を尽くしてほしいと希望するわけでございます。  そこで、大臣の所信表明に出ております「食料等を安定的に供給する」という点についてお尋ねをいたしたいと思います。  食糧安定供給のためには供給力、供給源の確保が万全でなければならない、これは当然のことでございます。しかし、今の日本農業の中で、これから二十一世紀を迎えるに当たりまして、今後本当に国民に安定的な供給ができるのかということにつきましては、心配やら不安を抱いている国民が多いというのも事実でございます。特に穀物の自給率が三〇%と先進国中最低の状況で、しかも相次ぐ農産物輸入自由化攻勢、そして今や日本農業の最後のとりでと言われる米にも激しい風圧が及ぼされていること等を考えますと、非常に心配な状況が多くあるわけであります。  私はこのときに当たりまして、我々国民にとりましていわゆる生命産業として最も大事な、言うなれば国の発展、繁栄を支える最大のエネルギー源であるともいうべき農業を今後国としてどう取り扱っていくかという問題が何よりも重要な課題だ、こういうふうに思うわけであります。特に、国の食糧政策の原点というものをこの際、もう一度しかと明確に再認識をしていかなければならないと思うのでありますが、大臣、この点につきましてはどういうふうなお考えか、まずその点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  29. 羽田孜

    羽田国務大臣 武田先生から御指摘のございました我が国食糧政策の原点ということでありますけれども食糧はまさに国民生活にとりまして最も基礎的な物資であろうと思います。特に我が国のように一億二千万に及ぶ国民食糧安定供給を図っていくこと、これはまさに農政基本であろうというふうに考えます。  日本人の食生活というのは、戦後のまさに我々がちょうど育った時代でありますけれども食糧難あるいは栄養失調、実はこんな時代だったわけでありますけれども、今日ではむしろ飽食、これが語られるほど著しい変化を遂げておるというふうに考えております。しかし、実際に日本の今、国内における食糧供給という観点からいきますと、総合的な自給率からいきますと、七〇%というものがございますけれども、しかし、カロリーの自給率からいきますと四九%であり、また穀物の自給率ということになりますと三〇%になってしまっておるというのが現状であるわけであります。  ただ、私どもの食生活というものは戦後、世界に例を見ないような大きな変化を遂げたということで、この変化にこたえるためにはどうしても、国内生産をしている豚ですとか鶏ですとか牛ですとかこういったもののえさ、あるいは食生活が変わった中には油というようなものも多くとるようになった、こういった油脂のための種子、油糧種子といいますかこういったものについては国内生産するということになりますとともかくむちゃくちゃな価格になってしまうということで、こういったものを輸入せざるを得なかったというのが、特に穀物自給率というのを今日ここまで下げてしまったことになろうと思っております。  そういったことを考えたときに、私たちはやはり国民食糧を安定して供給するという観点から申し上げますと、先ほど議論がございましたガットでの食糧安全保障というような観点、こういった中におきましてもやはり世界最大のまさに輸入国である日本立場に対して、輸出国はみずからの勝手な事情によってコーン、トウモロコシを売るのをやめますよ、あるいはマイロを売るのをやめますよ、大豆を売るのをやめますよというようなことをやられてしまったのではかなわぬという意味で、これはきちんと歯どめをかけておくということは一点あるであろうと思っております。しかし、基本的には国内で自給する体制というものをやはりつくらなければならないわけでございます。  と申しますのは、世界から今度はそのほかの食べる食物を多く輸入しておりますけれども、こういったものの現状を見ますと、最近の気象の変化ですとか、あるいは大生産国の生産手段といいますか、そのためにかんがいを非常に進めてきた、特に水を吸い上げる、そういう中で塩害なんというものも実際に起こって、あるいは表土の流出なんというものが起こってきておりまして、その国においても生産というものが非常に厳しくなってきて、ついこの間までは穀物も史上最高の在庫率というものがあったわけでありますけれども、この一、二年の干ばつあるいは多雨——実は私がこの間訪ねました地域なんかにおきましても、二年間干ばつで参ったのですね。そこへもってきてことしは洪水で、私たちが見た農場はその日の夜また竜巻が起こったり、あるいは集中豪雨が起こるというようなことで、私たちが見た圃場なんかは完全に洗われてしまって、もう一度植え直さなければならないのではないかなと思いますけれども、また干ばつの地域なんかにおいてはことしはまたゼロになるかもしれないなんということを農業団体の代表の方が言っておるということを考えたときに、国内の不測の事態に対応するためにも、国内における自給力というものにきちんと対応しておかなければならないであろうと思っております。  この自給力というのは、まず土地利用型の場合には、何といっても土地を確保しておく、農用地をきちんと整備し、確保するということであろうと思いますし、あるいはこれを生産する人たちを本当に足腰の強いものにするために規模というものを大きな規模にしていくことの努力をしなければいけないと思いますし、あるいはそういったものを耕作する皆さん方技術、こういったものを高めるために普及活動なんかも活発にやっておく必要があろうと思いますし、それともう一つは、新しいバイオテクノロジー、そういったものなんかについても開発のための努力が必要であろうというふうに思っております。  いずれにいたしましても、国としてこういった食糧供給するために、特に基本的な食糧供給するために私どもは考えていかなければならぬと思うのです。そして、幸い私どもの場合に、日本型食生活というものを考えたときには、米は潜在的な過剰を考えることができるぐらい生産力を持っておるということ、そして日本農地においては、そのほかに果物ですとか野菜というものも豊富に生産をされる力を今持っておるわけであります。そして、日本は幸い四方を海に囲まれておるということでございますから、魚介類についても確保できる、そして塩もそこから確保することができるということでありますから、これを考えますと、日本型食生活でいくのだということであれば、私は今日でも日本の国は食糧供給というものはでき得るのだということであろうと思っております。  そういう意味で、農業もあるいは林業水産も、足腰あるいは基盤というものを整備しておくこと、これが食糧を安定して供給するという意味で一番大事な問題であろうということを私は申し上げたいと存じます。
  30. 武田一夫

    ○武田委員 るる御所見をちょうだいいたしました。  食糧政策の中で非常に重要でしかと守らなければならない方向というのは、今大臣もおっしゃいましたように、基本的な国民食糧はきちっと自国で自給するというのが原則。外国の農産物の無原則な輸入というのはとめなければならないというのが一番重要な課題だろう。これをしかと守っていくことによって、まず一つに農家に対する、国内農業に対する大きな保障というか安心感を与えるのではないか、国民も消費者もそれを期待しているのではないか、こう思うわけであります。  そこで、そういうことをしかとやるためには、 国内食糧自給率の向上というのに力をこれから入れていくということが大きな課題。特に主要農産物自給率の向上については、特にこれは米以外の、例えば麦にせよ、大豆あるいは飼料作物等、これは一番我が国にとっては対外依存の多いところでございますから、この問題に相当力を入れていかなければならない。中には、例えば飼料作物等はそのことによって対外的な摩擦も出てくる心配もあるのであります。それは別の考えで対処するとしても、現時点として、やはりこうしたものに対する自給率を高める対応というのをこれから考えるというのが大きな問題ではないか。もちろん米の自由化の問題については、絶対しないという強い決意もございますが、そういうことを含めまして、こうした主要食糧自給率の向上というものについて今後、二十一世紀という一つの区切りがございますが、その辺あたりまでに努力をどの程度までして、どのような形でやっていくかという、そういう基本方向というか姿勢というものを私はお聞きしたい、こう思うのでありますが、いかがでしょうか。
  31. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 武田先生御指摘の自給率の向上の問題でございますが、既に大臣から基本的な方向についてお話し申し上げておりますので、私から補足的にお話し申し上げたいと思います。  我が国食糧の国際的な構造というのを見てみますと、先生御指摘のように、ことしの白書においても書かせていただいておりますが、農産物供給における二重構造というような極端な形になっているわけでございます。それは一方におきまして米を中心にいたします一〇〇%前後のグループというものと、逆に二〇%以下のグループというふうに分極化しておるわけでございまして、その低い部分につきましては、小麦において、六十二年の概算ではございますけれども、一四%、豆類に至りましては、大豆は六%、総体の豆類として九%という状況でございます。  さらに、食生活の高度化といいますか変更の中に出てまいっております畜産物の需要に応じました原料といたしましての飼料でございますけれども、これは極端に、二%といったような状況になっておるわけでございます。  そういった中で、先ほど武田先生御指摘のような基本的な自給率の向上といったようなもので、戦略的な分野といたしましては、自給率の低いものをできる限り我が国の国土条件の制約のもとの中でも向上していかなければいけないという問題があるわけでございます。なお一方では、全体としての供給力というようなことから、国内供給力の充実のほかに、輸入の安定的な確保ということもあわせて行われなければいけないとは考えておりますが、今申し上げましたような自給率の点から考えますれば、大豆であるとかその他のえさの問題というものがあるわけでございます。こういうものにつきましては、現在農林省が行っております水田農業確立対策の中で、米の生産性の向上を行うと同時にその転作作物の定着等々を図っておりまして、一つの戦略的なものが、今までのあぜ大豆といったようなことから、大豆の生産性の向上を図りましてやっていくというようなことに象徴的にあらわれているような自給率の向上につながる施策を展開しているところでございます。  今後とも、先生御指摘のように、この自給率という点につきましては、いろいろな意味において数字上の変動がございますが、自給力あるいは供給力という総合的な観点に立ちまして、その強化を図っていくことをしていかなければいけないというふうに我々は考えているところでございます。
  32. 武田一夫

    ○武田委員 それでは次に大臣にお尋ねしますが、ここで私は改めて日本農業には豊かな未来があるのかというテーマを投げかけて、大臣に御所見やらお考えをお聞かせいただきたい。もしそういうものがあるとすれば、それを政策の中で大きく推進、実行していけばいいわけでございますから、これは国の内外を問わずそうしたものを模索しながら、またお互いに考えながらこれから協力し合っていかなければならないというのが日本農業だというふうに考え、改めてこの問題を取り上げたいと思ったわけでございます。大臣から御意見、御感想、御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど来お話し申し上げておりますように、食糧供給する、これは非常に基本であるということを申し上げたわけでありますけれども、二十一世紀に向けて農政というものを本当に堅実な間違いのないものにしていくためには、やはりそこで働く人たちが、農業におれは従事しているんだということに一つの理想といいますかあるいは誇りですとか、そういったものを持つことが非常に重要なんじゃないかなというふうに思っております。そして私は、その可能性というのは非常に大きなものがあろうと思っております。それはどういうことかといいますと、確かに日本農業、これから規模拡大するといっても、それはアメリカの農業ですとかブラジルの農業ですとかそんなもののように大きな、広大な農業をやるといったって、実際に無理だと思うのです。しかし、今新しいバイオテクノロジーですとかそのほかいろいろな技術というものがどんどん進展しておるということを考えたときに、こういったものを駆使して本当に質のいいものをつくり出していくということ、あるいは今、食の変化というものも非常に大きく起こっているわけですけれども、この多様な変化にこたえていく、そういうことが大事であろうと思っています。  ということになりますと、そのためには大変な大きな技術農業者自身がやはり持たなければならないことになっていくであろうと思っておりますし、あるいは市場のニーズなんかもきちんとっかまえてそれにこたえていかなければいけないということになろうと思います。そういうことのためには相当高度な技術を持った優秀な人たちが必要なんだということになってきますと、やはり選び抜かれた人たちであるということになろうと思います。それから海外に市場を求めるなんていうこともこれからやっていくし、今でも、武田先生なんかともアメリカであるいはオーストラリアで、中国で、南米でそういったことを語り合ったことがありますけれども、こんなでかい農業は無理だな、しかし日本でつくられる農産物と違うな、こういうものだったらおれたちだつて輸出できるじゃないかなんていう話をしたことがありますけれども、今既にそういったものがだんだん萌芽してきておりますし、日本の各地においてもそういった芽が生まれてきておるというふうに思っております。  ですから、私どもは将来、そういう農業が営めるような基盤というものをこれからつくっていくことが大事であろうと思っております。ですから、そのためには何といっても基盤を大きくしていくための基本的なものとして、やはり少しでも大きくする。日本土地条件というものに許される範囲において大きくしていくということのために、非常に細々しい話でありますけれども、作業の受委託ですとかあるいは賃貸によるいわゆる農地の集積ですとかそういったものも行っていくとか、あるいはそういった人たちが集団を組んでいくというような、今農業団体もその問題と取り組んでおるわけでありますけれども、こういったものを助長していくことが大事であろうし、そして先ほど申し上げたような技術開発、研究の整備というものもしていく必要があろうと思いますし、そしてそれを普及する活動も重要な地位を占めてくるであろうと思っております。そういう中で二十一世紀に向けて基本的な食糧というものをやはり国内で確保できる、そしてそういったものに対して対応する人たちが本当に誇りを持ってやれるようなものにしていかなければいけないと思っております。  それからもう一点だけ申し上げることは、先ほどからずっと議論があったのですけれども、確かに価格の問題ですとかいろいろな問題で、いかにも何か無理して価格を下げているんだというふうにとらえられてしまっておることは非常に残念なことなんですね。価格を下げるということは、例 えば米価を二年間振り返ってみましても、ここに至るまでの間コストを下げるために国もいろんな支援をしてきておるわけであります。そしてその結果として、従来の計算方式でやったときに引き下げの幅というものが出てきた、しかし、それも全部引き下げているのじゅなくてそれを調整して縮小して引き下げを行っておるというのが現状なんです。これは、実は二十一世紀の農業の中でこういうことを申し上げるのはおかしいのですけれども、どういうことかといいますと、二十一世紀の農業をやっていくためには、生食で使われる農産物ということも非常に重要でありますけれども、これをきのう法律を通していただいた加工に回していかなければならない部分もある、こういったものにもきちんとこたえられるようでないと加工業そのものがやはり成り立たないということになってしまいますと、せっかく日本の農民が一生懸命つくったこの農産物というものの引き取り手の大宗の部分がどこかに行ってしまうということになったら大変なことになるであろうと思います。そういうことを考えたときに、二十一世紀の農業というものを展望したときに、やはりそういったものにもこたえられるような足腰の強いものをつくり上げていかなければいけないのじゃないかなということを思っておることを率直に申し上げます。
  34. 武田一夫

    ○武田委員 私も大臣のお考えに似たように思っているのです。日本農業あるいは日本の農家の皆さん方は、日本国民が一番期待している新鮮な安全な、それと安定、こういう国民の食料の基本的部分に対する対応というのには大体一致した考えがあるわけです。それにもう一つは安くこういうものがつくれればさらにいい、それから豊かに供給できればさらにいい、こういったような条件というのは生産者も消費者もみんな一様に思っていることでございます。そういうものに対応できる条件というのは今言ったように確かにあると思います。  私が学者や生産現場の方々の話を聞くときに一番最初に出てくるのは、我が国は世界的にも豊かな恵まれた自然というのがある、風土的諸条件が非常にすばらしい、田んぼなんかその最たるものである、変化に富む気象条件を持って多種多様の農産物生産できるという国は日本をおいてないという、ここがまず一つ大きな財産じゃないか。それからもう一つは、やはり農業生産の形成と発展に有利な客観的な条件の二番目は、高度に発達した我が国の工業生産力と先ほど話があったバイテク等の活用などのできる科学技術水準が非常に高い、またこれも今後さらに向上発展する可能性を持っている、これができる国である、これを大いに農業に活用するというのが大きな夢として期待できる。それからもう一つは、大臣もおっしゃいました担い手の農業者、これは優秀ですぐれた資質と高い労働能力といいますか、それを備え持っている、こういう人材がいる。残念ながら少なくなってきているけれども、厳然として今田畑を守っている人にはそういう人たちがいまだにいる。水田とか稲作技術が向上してきたというのもそういう方々の知恵と勤勉と、そして農村にある一つの大きな伝統というものがあってできたんだ。こういうことを考えますと、これを大きく花咲かせていくというか、これをもっともっと力を入れて日本農業の未来を謳歌できるような体制に持っていくことが間違いなくできる、これは国の一つの大きな仕事であり、またそれと一致協力して農家自身もお互いに懸命にまた厳しい中を乗り越えていくという両輪の動きが必要だ、こう思っているわけであります。  いずれにしましても、これから大事なのは、そうしたすばらしい条件をさらに大きく力あるものにしていくための国の施策をさらにきめ細かに、特に先ほど大臣がおっしゃった、農業に誇りを持って参与できるという方々が間違いなくいるし、またつくらなければならないわけでありますから、そういう方々にその能力が十分に発揮できるような社会的、経済的諸条件をきちっと与えてあげられるような施策をとってほしい、これがこれからの農業に課せられた最大の課題ではないか、私はこう思っているのでありますが、大臣、もう一度その件につきましてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  35. 羽田孜

    羽田国務大臣 今武田先生から御指摘のあったとおりでありまして、やはり食糧というものは二十一世紀になろうとどうしても確保しなければならないわけでありますし、そして国民のニーズというのは、御指摘のとおり安全であるということ、そしてこれはうまいものであるということ、そしてこれが安定して供給されることでき得れば価格も少し安い方がいいなという希望であろうと思っております。  そして、置かれた日本条件は、確かに国土は狭いということはありますけれども、しかし、こんな四季に恵まれた国、あるいは生物が生育していく条件というものは世界の中でも一番恵まれている国でもあろうと思っております。ですから、そういった国土条件をうまく活用し、しかも、沖縄から北海道までと言ったらいいのですか、ここまで非常に違った気象条件といいますか、こういうものも持っているところでありますから、それぞれ地域の特性を生かし、そこに創意工夫というものを生かしたら、私は必ずそういったものが達成できると思います。また農業に従事する人たちも、日本ぐらい、どんな地域に行っても情報がきちんと伝達されている国はないと思っておるのです。そしてそこにいる人たちが、会社の名前を挙げるのはどうかと思いますけれども、本田とかトヨタとかソニーとか、そういったものをつくる人たちと全く同じ血を持った人たちがそこに従事しているわけです。しかも、工業が盛んだ盛んだと言うのですけれども、エネルギーも日本にはないのですね。しかも原料もない。これは全部よそから輸入して、加工して、そしてよそへ売っているわけです。日本農業の場合には、少なくとも生産する基盤はここにあるわけですね。そして水もある、気象もある、そこに人材もあるということですから、そういう意味で、これをただだめだと言って、今のこういう国際化の大きな波の中で、揺れ動いている中でだめだと言って萎縮してしまったら、これは本当にだめなものでどんどん行ってしまう。そうじゃなくて、おれたちはそういうものを持っているんだということをみんなが認識したときに、そこから新しい農政あるいは農業というものは展開されるであろうし、二十一世紀に向かって確固たる農業を確立することができるという確信を私は持っております。そんな意味でまた御指導いただきたいと思います。ありがとうございます。
  36. 武田一夫

    ○武田委員 ある人は、二十一世紀は農業の時代だと言う人もおります。それだけに大臣に課せられた期待は大きいのだと私は思います。ひとつそういう方向への取り組みをお願い申し上げたいと思います。  時間も限られていますので、最後に米の問題について、間もなく熱い米価の季節がやってくるわけでありますが、お尋ねをしておきたいと思うのであります。  今、米は三つの苦しみを背負っている、こう言われております。その第一は米価の引き下げ、そして第二は減反の強化、そして第三は消費の減退でございます。この三つの苦しみを抱えている米は、もし一般の産業でありますともう斜陽、衰退産業で、やがて整理されるような状況産業だと言っても過言でないわけでありますけれども、これを下から辛うじて支えているのが食管制度であると私は思っております。しかし、この食管制度も土台が大分ぐらぐらしておりまして、大変な状況です。そこに、外国からの自由化攻勢、最近は少なくなったけれども過保護農政の内圧、こういういろいろな厳しい、大変な状況の中に日本農業、特に米が置かれているわけであります。  この三重苦をはね返すことが、米づくりの希望農業の大事な方向への一つの励みとなるのじゃないか。この三つをこうすればはね返していけるし、こうやっていきましょう、国もやりましょう、農家の皆さん方もやりましょう、一般の国民の皆 さん方もその点に御理解をいただきたいというものがあって、それが明示できて、そのとおりやって、これから米の厳しい中を突破していこうということになるのじゃないか、こういうわけであります。  この三重苦をはねのけるために、国や農家の皆さん方はどうしていくべきかというようなことについて、大臣の感想、御意見をお聞きしたいと思うわけであります。
  37. 羽田孜

    羽田国務大臣 現在、まさに三重苦であろうと思います。  ただ、先ほどちょっとお答えの中で申し上げましたように、価格引き下げというのは、この二年間やられたものは、従来の算定方式によって行われてきたものであるということでございます。そういう中で国の方も、基盤整備とかその他農業に従事する皆さん方協力をしながらコストが下がるような方向をあれしてきた。そういう中で相当大幅に下げることが可能じゃないかと言われたわけですけれども、しかし農民が意欲を失ってはいけない、失わせてはいけないという中で、これを圧縮して五・幾つ、四・幾つというものがなされたということであるわけです。ですから、その点についてコストを引き下げながら、消費者の皆さんやそれを加工している皆さん方あるいは自由化の中で戦っている実需者の皆さん方にも、我々生産者としても原料供給の場でこたえていかなければいけない、この点だけはぜひ御認識をいただきたいと思うわけです。ですから、ただ何でも下げればいいんだ、そして国際相場に近づけてしまえばいいんだということでやっているのじゃないんだということです。  そして、消費者の皆さん方がそういう中にあっても、例えばアメリカの米なんかと比べて、結構アメリカの米はうまいようだ、しかしそれでも国内の国土保全とかそういった機能をあれしたときに、多少高くてもいいなということで我慢していただきながらも、しかし少しでも安くしてもらえぬかなという希望に対してこたえていかなければいけない。この努力は私たちは農業者の人にもしていただくと同時に、私ども政府としましても、農業団体あるいは各自治体、皆さん方と一緒に協力しながらこれに対して支援をしていく、いろいろなことでコストを低減できる支援をしていかなければいけないと思っております。  なお、減反の問題についても、どうも何か政府から押しつけられてしまったという感じがみんなにあるのですけれども、これはいつもお話し申し上げるように、消費が減退しておって、ともかく過去にこれが過剰になってしまったものを吐くためにどんな苦労をしたか、どんな財政負担をしたかということを考えたときに、みずからのものとして減反をしていただきながら、でき得ればその地域に合ったもの、あるいはそれに創意工夫を足していただいて、そこで何とか新しいものを生み出すことに苦労していただきたい。また、国としてもそれに対して支援をしていかなければいけないと考えておるところであります。  そして、何といっても一番大事なことは、消費があれだけ十何年間やってきたにもかかわらずいまだに減退してしまっておるという現状を私たちはもう一度見詰め直して、米は私たち人間が生きていくのにどんなにいいものかということ、そしてよその国の人も最近米のよさをみんな認めるようになってきた。私もこの間、アメリカあるいはカナダあたりのレストランに入りましても、みんな米を食べているのですね。ですから、そういうものを私たちはもう一度日本国民に知ってもらうと同時に、その人たちが喜んで食べるような米づくりをやってもらう。そして、全然発想を転換して、かつて絹を着物から洋装に変えたように、そんなものも私たちが考えながら、ただ米粒で食べるだけじゃなくて、ほかの方法でも食べる方法はないのか、あるいはほかのものに何か開発することはできないのか。薬品その他なんかもあわせて考えて需要の拡大というものをたゆまずこれからやっていく、そういう中に農業者たちが、やはり米づくりというのはこれからもいいんだぞというものを持っていただけるように、特に中核農家の方にそう思っていただけるような施策というものを展開していきたいというふうに考えております。
  38. 武田一夫

    ○武田委員 農協も「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」の中で、例えば米は三割、麦、大豆は四割ないし五割程度のコスト低減を実現させる、これを二十一世紀の大きな課題として挙げている。基本的には国の考えに合うようになってきているわけでありますから、そういう中で、恐らく今後はお互いに意見の交換、現実との対応をよく調整しながらよき方向にいくのではないかというふうに私は期待もしているわけでございます。そのためには上りもなおさず、何をさておいても、そういうことを一生懸命やろうとする農家あるいは農業者、あるいは農業団体等の意欲がきちっと成果として、答えとして返ってくるようなバックアップが国に間違いなくしっかりとしてあるんだ、こういうことを、予算の面を含めましてこれから農政を担当する方々にしかとお願いをしたいと私は思うわけであります。  先ほど大臣は、私は今度はおりるんだと言われましたが、また再度登場していただきまして、そして日本農業の再建のために、内外ともに確固たる影響力を持っている大臣のお力によって二十一世紀の農業が花咲くように期待をしたいと思うわけであります。私も恐らく大臣に質問するのはこれが最後だと思うわけでありますが、野に下っても農業を守るために一生懸命頑張りたいという決意を申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  39. 堀之内久男

    堀之内委員長 水谷弘君。
  40. 水谷弘

    ○水谷委員 順番をお願いして変えさせていただきまして恐れ入ります。御了解をいただきましてありがとうございました。  羽田農林水産大臣、先ほど来からいろいろお話がございますとおり、現在の政治情勢の中で間もなく内閣総辞職、大臣の交代、そういう状況ではありますけれども、行政の連続性という観点から、本日お尋ねをする件につきましては当然今後の農政に反映されることと確信をいたしまして何点か御質問をさせていただきたいと思います。  冒頭、我が国食糧自給率の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  農政審の報告等の表現が自給力、供給力という形でその表現が大きく変遷をしてきておりますけれども国民の側にとってみればこの自給力というものがあくまでも基本であり、それが確立されていなければまことに心配が大きいわけであります。我が国自給率について昨年末の農水省から発表された数字によりますと、六十二年度ついに供給熱量の自給率が五割を割りまして四九%に落ち込んでしまっております。このことは世界の先進諸国の中でもまことに異例であり、我が国農業がどこまで縮小再生産に追い込まれるのか、大変なことをこの数字は物語っておると私は思うわけであります。  食糧の安全保障、この問題は国際社会の場で我が国主張し続けるほど重要な問題であり、このことについては、政府国民もともに重大な意識を持って取り組まなければならない問題であります。よく言われますけれども食糧安全保障という考え方はある面では生命保険と同じような考え方である。通常、人は豊かになれば、万一のときの安心料として保険にも高い負担を払う。しかるに、日本は一人当たりの国民所得は世界の最高水準に高められておりますけれども食糧の安全保障機能というのがこのように年々低下してしまったのでは大変に問題があるわけであります。  先般のある報道によりますと、「米国、ソ連、中国などの世界の主要な穀物生産国が、昨年来の異常気象によって軒並み大幅減収に追い込まれている。今年二月の米国務省の推定では、六月の世界の期末在庫率は小麦が二〇・七%、粗粒穀物が一六%に低下する見込みであるという。国連食糧農業機関(FAO)によると安全在庫水準は小麦で二五%、粗粒穀物は一五%程度とされているから、世界の穀物在庫に注意信号がともった。」米国 の干ばつの模様、またソ連も一昨年、昨年と異常気象によって大幅な減産、中国においてもこの現象が見られている、こういう状況が世界的にあるわけであります。また、このほど農林中金センターが取りまとめた報告書によりますと、十三人の米国の科学者グループが米国議会において大変ショッキングな証言を行っております。それは「近年、地球を取り巻く温室効果ガスにより地球が温暖化しており、二〇三〇年には、”世界のパン篭”となっている米国のコーンベルト地帯でトウモロコシが二二ないし二七%減収する。そうした結果、米国による「農産物の対外輸出力は激減する」」というものであります。このように世界の食糧事情はいつどういうふうになるかわからないという、全く不安定要因の多い状況であります。  先般のガットにおける高級事務レベル協議の中間報告の最終取りまとめの作業の中でも、その終盤において我が国主張が全面的ではないにしろ非貿易関心事ということで、そのような表現のもとにその決定の中に組み込まれる見通しができてきた。食糧安全保障という考え方を国際社会の場で強く主張する我が国政府としては、また我が国としては国内における自給率をいかにして高めるかという真剣な議論とそれに対する取り組みがなければ、それらの議論は国際社会においてはまことに説得力の乏しい議論になっていくと考えられるわけであります。  そういう意味で、政府食糧の自給力の維持向上を図るという基本的な考え方に立っておられるわけでありますが、自給力ではいざというときの安全性は確立されない、やはりその裏打ちとして自給率の向上がどうしても必要になってくるわけでありますし、その食糧自給率についてどういう一定の目標を掲げて、そしてそれに向かってどのように努力するか、その展望を、我が国農政の中で今一番大事なものとしてその指標を差し示されるべきである、そのように私は考えるわけでありますが、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、柳沢委員長代理着席〕
  41. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  我が国の食用農産物総合自給率あるいは主食用の穀物自給率、これは七割程度を維持しておりますけれども、いわゆるカロリーの自給率は四九%、そして飼料を含めた穀物自給率、これは三〇%になってしまっておるというのが現状であります。これは、今、武田先生の問いに対してお答えを申し上げた中でも申し上げたわけでありますけれども、この事態は、米の消費量が減少傾向で推移する一方で、畜産物の消費量の増加に伴いまして、国土条件の制約の大きい我が国では、その生産に要する飼料穀物の大部分を安価な輸入に依存しなければならないということによるところであろうと思っております。こうした輸入と多面的な国内生産とによって、我が国では世界に例を見ない豊かな食生活というものを今享受し得るようになっておると思っております。  一方、我が国は、国民の主食でございます米の自給体制を確立しておりますとともに、先ほども申し上げましたように、大変豊富な野菜と果物を生産しておりますし、また、四方を海に囲まれておるということで優良な漁場を持っております。そういうことで、米、野菜あるいは果物、魚介類、こういった我が国の伝統的な食生活の中心をなす食品につきましては高い自給率維持しておるというふうに思っております。ですから、古くからの日本型食生活というものを私たちが広めていくということになりますと、この部分だけでも実は自給率が上がってくるということにもなろうかと思いますし、そして、最近はいろいろな医学者の方ですとか、これは日本だけではなくて、日本型の食生活というものが案外人間の健康のためにいいのだということも言われるようになってきておりますから、こういったことについて私ども農林水産省が余りこれをあれしますと、また農業生産のためだけだということでありましょうけれども、やはり国民の広い理解を得ながらこういったものも進めていかなければいけないというふうに思っております。ですから、そういったものが確保されておるということで、穀物の自給率が低い水準にございましても国民は割合と食糧に対して安心といいますか、そういったものを持っているのではなかろうかなと思っております。  通常における豊かな食生活の保障という観点からは、国内生産輸入の適切な組み合わせによる供給の確保というものを図っていくことがやはり重要であろうと思っております。その意味でも、今先生から御指摘がありましたいわゆる食糧安全保障、こういった中における日本立場というものはやはり堂々と披瀝していく必要があり、そしてまた、世界の理解というものを求めていく必要があろうと思っております。  そして、今御指摘がございましたように、それで先ほど私からもお話し申し上げましたように、そういった中で農産物の国際需給が、ともかくやはり天候の状況によったりあるいは温暖効果といいますか、温室効果といいますか、こういった中で、中長期にわたって食糧について非常に危ぶまれるところがございます。そして、皆さんと一緒に出かけました南米ですとか中国の三江平原なんという新しく生産の場が開発されておりますけれども、こういったところは生産性がやはりどうしても低いという現状にもあります。そして、農地なんかがだんだん減っている現象というものもあるわけでございますから、こういうものを考えたときに、中長期的にはなかなか難しいぞということを私たちは念頭に置いて、今まで安定して供給をされているものについてはやはりきちんと供給させなければならぬと同時に、何といっても基本的には、我が国条件の制約された中にあっても可能な限り生産性の高い農業というものを展開するとともに、一たん緩急がある場合においても必要な熱量というものを国内供給し得るよう、国内での基本的な食糧供給力を図っておくことがやはり必要であろうと思っております。  そういう中で農業にいそしむ皆さん方も、一体これからどうなっていくのかなという心配はありますから、需要と供給、こういったものについての長期的な見通しというものについて私たちも今作業を進めながら、西暦二〇〇〇年に向かっての、こういったものは国内でこれだけ必要なのじゃないかということについて長期見通しというものを改定するように今作業を進めておるということであります。
  42. 水谷弘

    ○水谷委員 今、大臣の答弁の中にもございましたとおり、やはり不足しておるのはえさ、いわゆる飼料でございます。これの自給率をどこまで目標として高めていけるか、その辺が取り組む場所だということであります。  米の稲作等の問題についてこの後触れますけれども、これまで大規模な転作、いわゆる減反が余儀なくされてきました。しかし、この傾向というのは、米の需要減退や土地生産性の向上により当面強まりこそすれ、この減反というものについては弱まるようなことはない、これは共通の認識だろうと思います。しかしながら、水田というのは不測の事態にも対処できるように平素から十分その機能は維持しておかなければならない。そういうことを考えますと、大規模な水田が遊休状況のままに放置されるような現象を起こしたのではならない。では、おのずからそこで一体何をつくる、その水田でどういうものをつくるのかという水田の有効利用というのがこれからの大事なポイントになるはずであります。  そこで、我が党は、もう前々からいろいろ提言をしたり主張をしてまいりました。自給飼料をいわゆる転作作物の主要な作物として位置づけをし、それが本当に水田農業、そして農業全体にしっかりした地位が確保できるような取り組みを政府が本気になって取り組むべきである、こういう主張をずっと同僚も先輩も我が党の提言として今まで提案をしてまいりました。私も、この自給飼料についてこれまでいろいろ研究をしてまいりましたし、一部の試験研究機関や先駆的な農家の方々の努力でこの飼料作物も相当程度低コストで 生産されるようになっており、そのための研究は今後とも進んでいくと思います。  そこで、私が申し上げたいのは、国や農業団体の取り組みがもう少し本気になっていただいたらもっと大きな成果が短期間において実現するのではないかな、こんなふうに考えているわけであります。この自給飼料の生産拡大、これは農地有効利用や農家経営の安定だけではなくて、畜産の生態にとっても自給飼料が豊富に提供されるという形態は非常に好ましいという研究も出ておりますし、特に消費者が求める安全性の高い畜産物を生産してほしいという要望にもこれはおのずからかなってくるわけであります。また、そのほかにも、先ほど私が申し上げた、自給率がそれによって高まることによって食糧の安全保障機能を高めることにもなる。さらには、自然の循環を無視した、今、特にアメリカから安い飼料を購入をしてきている。これは安いから、安心して数量も確保できるという観点からその供給先を米国に求めております。しかしながら、アメリカのえさで日本の畜産をやるという形態というのは自然の循環を無視した形態と言わざるを得ません。ですから、現在アメリカの場合は、我が国のためにアメリカの農地の地方が減退をし、日本はアメリカの地方を収奪をしていると言っても過言ではないわけであります。また、我が国においては、逆に今度、それが畜産そのものの体質を強化できずに、また農業全体の発展の一つの阻害要因にもなっている。  そういうことを考えますと、いわゆる低コストで、コストも安く、そして農家の収益もそれなりに確保できる飼料作物、自給飼料の作物を本当に定着させていく。米をつくれない水田には本格的にこういう方向で取り組んでいきますという、そういう方向性が出てきませんと、今農家へ行っていろいろなお話をしても、米をつくれないわけですから、消費拡大、消費拡大と言っていますけれども、これはわずかなものです。そうなってきますと、現実にどうするかということになってくれば、ここに衆知を結集して、そして何とかそこでそれが発展できるような、拡大できるような、自給飼料の国内生産拡大できるような体制づくり、こういうものに本気になって取り組むべきである。これは大臣にも何度も申し上げてきたことでございますから御理解をいただいていると思いますが、改めて、二十一世紀の我が国農業を展望したとき、どうしても大事な視点として申し上げておきたいと思いますが、今後のお取り組みについてお伺いをいたします。
  43. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生からお話のございました、いろいろな観点から自給飼料の生産拡大ということの必要性につきましては、かねてから私どもも先生のお話をお伺いし、また私どもなりの努力を続けてきておるわけでございます。  特に畜産の観点から申し上げますと、酪農あるいは肉用牛生産といった大家畜生産経営にとりまして、飼料自給を高めていくということは大変重要な課題であると私どもも考えており、御承知のとおり未利用地の開発でありますとか、あるいはお話の中にありました水田農業確立対策の中で、転作作物として飼料作物の作付拡充をしていく、あるいはまた新しい品種の開発普及あるいは利用技術開発普及といったような広範な自給飼料対策を講じておるところでございます。酪農あるいは肉用牛生産におきます自給飼料率は漸次高まってきておりまして、今日約百五万ヘクタールの飼料作物栽培面積規模になっておりますが、実はまたいろいろな隘路が生じておりまして、この作付面積、やや頭打ちの状況になっております。  私ども当面しております問題といたしまして二、三あるわけでございますが、一つは、やはり他の耕種作物と同じように、この飼料作物の作付拡大をしていく場合に、この栽培の基盤になります土地利用の集積といった問題、これは土地所有権でありますとか地価水準といったような問題がございまして、そういった障害を乗り越えて、土地利用集積をどのように円滑にし、栽培を進めて、畜産関係者による飼料栽培を拡大していけるか。あるいはまた、御承知のとおり、この自給飼料作物は我が国におきましては比較的歴史の浅い作物でございます。品種なり栽培技術が各地域の自然条件に合った形で定着をしていく、まだその途上にございまして、これからの開発努力というものがなお必要である。さらにまた、先生のお話にもございましたように、比較的安い水準で輸入をされます飼料原料をもとにしまして、相当量の配合飼料、いわゆる流通飼料があるわけでございますが、これとのコスト面での競合が結構ございまして、畜産物のコスト低減という観点からしますと、そういった輸入飼料と対抗できるさらに低コストの生産技術というものが確立されていかなければいけない、こういう諸問題があるわけでございます。  いずれにいたしましても、これらの問題を克服するための知恵、工夫というものを私ども今後とも続けてまいりまして、土地利用面から見ても、また畜産経営の面から見ても、有効な方策として考えられますこの自給飼料の生産強化といった方向に沿った努力を今後とも着実に続けてまいりたいと考えておるわけでございます。
  44. 水谷弘

    ○水谷委員 どうか今畜産局長がおっしゃったとおり、現状の水田のまま、それをそのまま使える地域もあれば、そこにかなり手を入れなければならない、そういう状況も出てくると思いますけれども、いずれにしても主要な優等生の一人としてずっと育てていっていただきたい、くれぐれも申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、次に移らしていただきます。  先ほど来、食管改革に関する農政審議会企画部会第一小委員会の報告が出されたわけであります。大臣、この報告をお受け取りになりまして所感を一言お尋ねしたいと思います。
  45. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の報告は、農政審の小委員会におきまして、昭和六十二年の二月以降二年余にわたりまして検討をいただきましたものを報告されたものであります。  この報告は、現在米の生産、流通、消費をめぐる状況が大きく変化をいたしております、こういった当面する諸問題に的確に対処するためには、制度の基本的役割は維持しつつ、生産者の声といいますか、そういったものが反映されるような市場原理がより生かされる仕組みとするように、今後の米政策及び米の管理についての方向づけをされたものであるというふうに私ども受けとめておるわけであります。  政府といたしましては、今後食管制度の基本的な役割を踏まえまして、この報告の方向に沿いながら、現状等十分調査あるいは検討の上、条件整備を図りつつ、逐次具体的な施策を展開してまいりたいというふうに今考えておるところであります。
  46. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣、この見通しとして大体いつごろぐらいまでに、これは三年とか五年とか、そういうふうにお考えになりますか。大臣のお考えでいいのです。長官はまた後でお聞きします。そういうことは、三年、五年という答えをいただきたいのではなくて、これは拙速は避けなければならぬという考えを私は持っておるものですから、そのお考えを……。
  47. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま申し上げましたように、一つは、方向というのはこの答申の中で示されておるわけでありますから、私どもはこういったものを踏まえながら、実際に過去の例ですとかいろいろな現状というものをよく検討いたしながら、まさに何年間というより逐次、一つずつやっていこうということであるということで御理解をいただきたいと思います。
  48. 水谷弘

    ○水谷委員 この報告、私もいただきまして、今いろいろ勉強させていただいている最中でございます。我が党も、昨年の党大会におきまして食管の制度改革に関する党の政策を実は決定いたしております。そういう立場に立ちながら改めてこの報告をいろいろ勉強させていただいておりますけれども、我が党のこの制度改革へ至るプロセスは大変厳しい縛りをかけておりまして、仮称ではあ りますが、臨時食糧管理制度審議会、生産者、消費者、学識経験者等新たな構成の審議会を国の、いわゆる政府で正式に法によってこれを設置する。そういう審議会の議を経て、国民合意が形成された、と同時にもう一つは、制度改革を行うにふさわしい環境が整備をされた、そういう認識のもとに制度改革へ手をつけよう。実はこんな政策を昨年の党大会で確定いたしたわけでありますが、その時期は、早くても二十一世紀の初頭であろう、そこまでは構造政策や、さらには米の一番大きな問題になってきますのは、先ほども申し上げました生産調整の問題やら、そして、米以外の農産物がどのような形で地域農業経営の中で定着をしていくか、あらゆるそういう環境が整備されないことには、現在の食管の根幹、これに手をつけることは許されない、こんな認識で実は政策を決定をしたわけであります。  そのような観点から、私は先ほども大臣に申し上げましたけれども、この方向性が大きくやはり今後の方向として、その概要は私は評価をいたすわけでありますけれども、この実施に当たっては大変これは問題が多うございまして、それらのことがクリアできない限り、軽々にこれらの施策が現場にもし拙速におりてきた場合には大混乱を起こす、こういうことを心配しておるわけでございまして、まず冒頭、そのことを申し上げておきたいと思います。  問題は、価格形成の場づくりとこの報告の中に出てまいりまして、より一層市場原理が生かされる仕組み、またそして、米流通は民間流通を主体とする仕組みを今後検討をされていく、このように言われておるわけであります。  こういう報告が出た時点で、農業者また農業団体皆さん方の中にはいろいろな御心配等がもう既に起きております。このような方向性が果たして実現できるのか、価格が混乱を生じないのか、または、強大な資本が四兆円産業とも言われているこの米市場に参入してくる心配はないのか、さらには、いわゆる高品質、安全性、うまい米、そういう強い地域は生き残れるかもしれないけれども、そうではない地域はこれによって崩壊をしていくのではないか、大変な御心配が出てきているわけであります。  価格の場の設定、市場の導入、そういう方向に至るまでにはクリアしなければならない問題点だらけでありますが、長官、この点についての現在におけるお考え、どのようなことをこれで推定できるのか、どういう方向性を求められているのか。その辺についての所見がありましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  49. 甕滋

    ○甕政府委員 今回の農政審小委員会の報告で示されました方向に沿って、ただいま大臣から申し上げましたように、十分その内容を検討の上で、条件整備も図りながら逐次その実施に移していきたいと考えておるところでございまして、その中におきましても御指摘の価格形成の場というものが、米の需給動向あるいは市場評価価格に的確に反映されるような、市場原理が生かされるような仕組みにしていくといった全体の方向づけの中で重要な位置づけが与えられているように私どもも受け取っております。  そこで、この価格形成の場につきましては、報告書の中におきましても一定の考え方が示された部分がございます。それは、今申し上げましたように、需給動向あるいは市場評価価格に的確に反映されるようにするために、「一定の資格を有する集荷業者と卸売業者等との間の価格形成を図る機能」、それから「流通業者間の過不足を調整する機能」、こういった両面の機能を果たすものとする、そのあり方については速やかに検討を行う必要がある、こういうことが示されております。  ただいまどういうイメージでこれを進めるのかといったお尋ねもあったわけでございますが、御指摘にもございますように、これが本当に現実の米経済の中でうまく機能し、かつ混乱を生じせしめないように円滑に位置づけていくといった観点からいたしますと、私どもやはり十分かつ慎重な検討を要するものと考えております。しかしながら、この報告全体の中でも一つのポイントとなる重要な事柄でもございますから、早速その具体的なあり方については検討に着手をしなければならないと考えておりまして、これから専門家あるいは実務者等も含めて一定の検討組織のようなものをつくりまして、早急に検討していきたいと考えております。
  50. 水谷弘

    ○水谷委員 続いて、政府米についての位置づけをされておるわけでございますけれども、「政府米の数量は、当面、主食用の流通量の四割程度を目途とし、その水準が達成されていく中で、持越在庫の水準、民間流通する米の需給動向等を踏まえて見直しを行う。」こういう報告内容でございますが、私も、今ここで基本的に政府米の位置づけについて軽々に考え方を申し上げるほど考えを固めておりませんけれども、ただ申し上げたいのは、やはりここで今後の食糧の安全保障、また米に対する、国民安定供給をするという上から、どのような状況があっても耐え得るいわゆる備蓄という基本的な考え方も明確に位置づけながら、価格形成等に適切な影響を与えることもできるような、安定的な価格形成もできるような必要数量、そういうものをしっかり確保していきませんと、ただ、まず四割程度を目途としてあとは自主流通に任せるんだと数字が先に飛んできますと、将来思わぬ不測の事態が起きるのではないか、その点について申し上げておきたいと思うわけであります。  時間が差し迫っておりますので御答弁は結構でございますが、生産調整についても、その生産調整の主流は、「生産者・生産団体が組織的対応を強化し、主体的に取り組んでいくことを基本とする。」このようになっております。これも、生産調整にやはり一番問題なのは、私冒頭申し上げたいわゆる転作田、この転作田に何をつくれるか、そういうものが明確になってこない限り、生産者、生産団体がどんなに組織的に対応を強化しても、それだけで生産調整が進むなどということは考えられません。そういう意味では、もっとこの米政策の周辺にある農政全体の周辺整備、環境整備を整えることができた上でないと、この報告に見られるような方向に移行することは私は反対である、そのように申し上げざるを得ないのであります。これはもう少し議論を詰めながら、今後間違いのない米政策並びに米管理の方向ができますように私どもも真剣に取り組んでいきたいと思います。  最後に、先ほども触れましたけれども、四月の高級事務レベルによる農業交渉委員会、この決定内容については既に報告を受けておりますので、それについてはおおむね了解しておりますけれども、その中で特に、いよいよニューラウンドの後半の本格交渉がこれから詰まっていくわけですけれども、先ほど議論いたしました食糧安全保障というこの考え方、これを明確に決定内容にうたいとげていく必要があるのはもちろんであります。ただ、そこまでには相当の努力をしていかなければなりません。大臣、その決意と、それに対してどういう取り組みをしていかれるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  51. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましては、このたびのウルグアイ・ラウンド、これの農業交渉におきましては、ウエーバー等により例外的に認められておりますものを含めまして、農業貿易影響を及ぼすすべての措置、これを対象とした新しいガット規則及び規律の策定を通じ、新たな農産物貿易秩序の形成、これを図ることが最も重要な課題であるというふうに考えております。その際、四月の貿易交渉委員会合意食糧安保を含みますところの貿易政策以外の要因、こういったものが論議の対象となることが盛り込まれたことを踏まえまして、食糧安定供給の確保、国土環境保全等といった農業が果たす多様な役割、こういったものを私たちはガットの場で十分説明し、主張していきたいというふうに考えておるところであります。
  52. 水谷弘

    ○水谷委員 大変厳しい状況が私どもも予測できるわけでありますが、どうか農水省だけではなく て政府が一体となって、国民が強く求めているこのことについて国際的な理解が得られますように、合意が形成されますように特段の御努力をお願いをして、質問を終わります。
  53. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員長代理 藤原房雄君。
  54. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 過日の大臣の所信表明の中にも漁業問題について触れられておりましたが、農林水産を取り巻く諸情勢、非常に厳しい中にありますが、過日、十六日ですか、北海道の全道の漁業協同組合長会がございまして、そこでは非常に厳しい提起や、また論議があったわけであります。そういうことを踏まえまして、打ち続く減船に苦悩いたしておりますサケ・マス漁業、特にこの母船式サケ・マス漁業の問題についていろいろ御質問をしたい、こう思う次第であります。  戦前戦後のいろいろな経過につきましては申し上げるまでもないと思うのでありますが、母船式サケ・マス漁業を見てまいりますと、一九五九年昭和三十四年の十六船団、四百六十独航船をピークに縮減を続けてまいりました。特に、二百海里時代に突入しまして、昭和五十二年を境にして十船団、三百三十二独航船から四船団、百七十二独航船へと半減したわけであります。昨年の出漁は一船団、四十三そうということになりました。もう風前のともしびといいますか、非常に後がないというような状況に迫ったわけであります。なぜこのような状態になったかということや、また今後関係者の窮状を打開するにはどうしなきゃならないかということにつきまして、順次御質問を申し上げたい、こう思うわけであります。  最初に、対米漁業外交、このことについてでございますが、母船式サケ・マス漁業がこのような状態になった最大の原因は、アメリカの極めて自国本位の漁業外交政策にあったと思うのでありますが、一方、加えまして政府の見通しの悪さや対米姿勢の弱さ、これが大きな原因の一つだったと言わざるを得ないと思うのであります。  一九八五年、昭和六十年に、アメリカ側から北米系サケ・マスを日本が混獲しているという主張がありまして、それに対して我が国は、日米加漁業条約で操業海域で保障されているにもかかわらず、アメリカのパックウッド・マグナソン法におどされながら約半年間にわたりましてこの非公式協議が続いたわけであります。翌年の三月に協議が調いまして、日本側は漁場の縮小を約束し、一方米国はアメリカ二百海里内で日本側漁船の操業隻、日数をふやしていくことを約束しました。しかるに、翌年の一九八七年、昭和六十二年に、アメリカの海産哺乳動物保護法に基づく我が国サケ・マス漁業へのオットセイ等の混獲許可が米国で裁判の結果違法となり、米国二百海里内での操業はできないことになったわけであります。その後アメリカでは海産哺乳動物保護法が改正されましたけれども、自国の漁民を救うということだけで日本主張というものは何ら反映されていないという現状にあるわけであります。長官も対米折衝等に当たって今日までこられたと思うのでありますが、このサケ・マス漁業の操業が認められる兆しというのは全くないのではないか、逆に公海での流し網全体の規制を求めるなど、その状況はますますエスカレートするばかりで極めて理不尽であると言わなければなりません。同じ加盟国のカナダも日本側の主張理解を示しているというふうに聞いてもおるわけでありますが、今後アメリカの二百海里内でサケ・マス漁業を再開できるような見通しがあるのかどうか、私は、米国の姿勢から見て日本側が思い切ったことをしない限り再開の見通しはないのではないか、こんな考えがしてならないのでありますが、政府のこの間のことについての見通し等についてお伺いしておきたいと思います。
  55. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ただいまお話がありましたように、我が国の母船式サケ・マス漁業が日米加漁業条約でアメリカ二百海里内での操業というものが許容されてきたわけでありますけれども、不幸にいたしまして、海産哺乳類に係る訴訟で二百海里内での操業が去年からできないという事態になったわけでございます。このような事態に対処いたしまして、政府といたしましては、昨年来七回にわたりまして日米加で協議を重ね、ただいまもお話がありましたけれども、私自身も三たびアメリカを訪問いたしまして折衝したわけでございます。そして、この中で我々といたしましては、一つは、米国二百海里内水域で操業できるようにするための訴訟対策ということと、もう一つは、何らかの米国内での国内立法を行わせるというこの二つでずっと折衝を重ねてきたわけでございます。しかし、残念ながら、訴訟の方につきましては、本年の一月の米国最高裁訴訟、あの判決によりまして司法的な救済の道というものは断たれてしまいました。それから、もう一つの道は、立法救済でございますけれども、これにつきましては、アメリカ政府側といいますか、特に国務省が日本立場というものに相当理解を示しまして、去る四月の十日に所要の法改正というものを連邦議会に対して提出したところでございます。  そのいろいろな米国内動きがございますけれども、残念ながら現在の感触といたしましては、政府側が出してくれました法律につきましても、米国内での反発というものは非常に強うございまして、早期に成立するという見通しはなかなか我々としても立てがたいという状況にございます。しかし、せっかくアメリカ政府自体がそういう動きをしてくれておりますし、我々といたしましては、厳しい情勢ではございますけれども、これからもいろいろな機会をとらえまして、せっかく提案されている法律の早期成立というものに向けて全力を傾けてまいりたいというふうに考えております。
  56. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 ある漁民の方がこういうようないきさつにつきまして、アメリカにだまされた、たった一頭のオットセイのためにサケ・マス漁業はなくなる、こういう感想を漏らしておりましたが、今も御答弁がございましたが、アメリカ政府もいろいろ対策を講じておるようでありますが、いずれにしましても再開の見通しが非常に薄い、こういうことだろうと思います。  こういう現状の中で、これはきのう、きょう始まったことではございませんし、差し迫った問題でもございます。今日まで交渉の場に臨まれた大臣には私は敬意を表しますが、厳しく見ますと、日米加の漁業条約から脱退すべきではないか、私はこのような考えを持つわけであります。  アメリカは条約の義務は実行せずに権利だけを主張しておる、日本の漁民はこの条約に加盟しているメリットを全く受けていない、こういう現状です。むしろこの条約があるために伝統ある母船式サケ・マス漁業がなくなろうとしている。関係者の日米加漁業条約脱退の声は非常に強いものがある。政府としても条約にとどまる利益があると考えているのかどうか、またこの脱退ということに対しての考え方はどうなのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  57. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ただいまもお話がありましたように、昭和二十七年以来長い間の歴史の上でこの漁業の仕組みというものが運営されてきたわけでございますけれども、ここ数年、残念ながらいろいろな形で追い出されてきておるわけでございます。ここのところ私自身いろいろな接触に参加してみまして、アメリカ側の非常に理不尽な態度というものも随所に見られまして、率直に申し上げまして、日米加漁業条約からの脱退という多くの漁民の方々の声というものに対しましても、私自身誘惑に負けかねないときも今までも再三あったわけでございます。  ただ、考えてみますと、今やサケ・マスにつきましては母川国主義というものが定着しておりまして、一定の国際的枠組みでなければ他の国で産まれましたサケを公海上たりともとれないというような体制ができてきているわけでございます。それから、我が国自身の国際社会に占めます地位なり役割から考えましても、いろいろと日米加漁業条約にとどまっていることの問題なり不合理性ということは十分認識はしておりますけれども、こういう条約の中で、その条約の所期の目的が達せられるべく、もうしばらく最善の努力を重ねま して事態の推移を見守ってまいりたいと考えております。     〔柳沢委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 長官の真情の吐露がございましたが、条約ということになりますと農林水産省だけでできることではないわけであります。外務省その他、さらにまた諸外国に対する、漁業白書の中にも諸外国の資源調査日本立場を訴えるということもうたわれておりますけれども、そういうようなことで強烈に訴えてそれなりの効果をあらしめるようにする、また各所管庁との話し合い、調整、こういうようなことをいたしませんと、対米交渉、対米関係また漁業という枠の中だけの話ですと、どうしてもこの打開の道は出てこないのじゃないか、こんな気がしてならないのであります。  我々野党は一致して、いわゆる水産対抗法、本邦漁業者の漁業生産活動の確保に関する法律案を国会に提出いたしまして、当委員会でも継続審議になっておるわけでありますが、我々がこの法案を起草しましたのは捕鯨問題が契機でありました。その後、その成立を見ないまま米国二百海里内の対日漁獲割り当て量がとうとうゼロとなるという状態になりました。そればかりではなくて、米国の漁獲割り当て量削減のおどしのために商業捕鯨は禁止され、サケ・マスは先ほど述べたとおりの状況であります。さらに、ペリー法による水産輸入禁止のおどしのために公海漁業さえ規制されようとしています。  関係者の素朴な疑問として、米国のパックウッド・マグナソン法やペリー法と同じものがなぜ独立国家日本の国会でつくれないのか、こういう話をよく聞くわけでありますが、対抗法制定についても真剣に考えるべきときだろうと思うのであります。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  59. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 従来から、漁業交渉一つの手段なりてことして対抗法的なものを持つべきではないかということが各方面から強く要望され、それから特に野党から提出されまして現在継続審議になっているということも我々としては十分承知しております。それから、交渉の当事者である私といたしましても、そういう何らかの手段があるということは、確かに交渉進展のために役立つということも過去の交渉の経緯からして感覚的に十分知っておるところでございます。  しかしながら、現在アメリカがちらつかせておりますペリー修正法について、我が国といたしましては、明らかにガットに抵触するということでペリー修正法の発動を今までずっと抑止できてきたわけでございます。  それから、現在継続審議になっております対抗法につきましても、漁業者が伝統的に行った漁業生産活動につき、不当な規制が行われた場合に水産物の輸入を規制するという仕組みは、残念ながら現行ガットのいろいろな規定に該当するということでもございます。それから、こういうものの諸外国に対するいろいろな影響等を考えますれば、正直言いましてのどから手の出るほど欲しい法律ではございますけれども、現在のいろいろな情勢から考えますと、こういうものを国際的に通用させる、あるいは定着させるということはなかなか難しかろうと思っております。
  60. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 対抗法制定のネックは今日までもいろいろ議論になっております。それはガットにあるということですが、アメリカがガットに違反するようなペリー法というものを持っていて、これが極めて有効に働いておる。一方、我が国ガット上の制約があるから同様の法律はできない、こういうことだそうですね。  それぞれの国には国内法制度の違いがあるとしても、ウエーバー条項以上に不公平な状況にあると言わなければなりません。現在ウルグアイ・ラウンドが進行中でありまして、このような問題とか資源の利用とか通商問題とか、バランスについても議論される必要があるのではないかと思うのでありますが、政府としてこのようなニューラウンドの場で、議題としてこういうことを議論するという考えはないかどうか、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  61. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ニューラウンドの場でいろいろなことが議論されているわけでございますけれども、そもそもウルグアイ・ラウンドは先生も御承知のとおり世界貿易のより一層の自由化なり拡大を目指すということが基本的スタンスとしてございます。そういう枠組み、そういう方向づけの中で議論がされているわけでございまして、ただいま議論になっておりますような何らかの輸入制限をする、あるいは対抗処置を講ずるということは、残念ながらこういうウルグアイ・ラウンドの場には必ずしもそぐわないものではないかという感じがいたしております。
  62. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 大臣、今一連のお話、提起をしましたが、日米加漁業条約の脱退の問題、さらにまた対抗法について自民党の政調会長預かりということになっておるようでありますけれども、この対抗法についてのお考え、さらにまたこのウルグアイ・ラウンド等において、国内法の違いはあるとしても、余りにも急激なこういう対応を迫られておる現状について、日本の国としてもそれに対して何らかの対処をしなければならないのではないかと思うのですが、大臣はどうお考えでしょうか。
  63. 羽田孜

    羽田国務大臣 今、田中水産庁長官からお答えを申し上げたとおりでありまして、確かに私たちもアメリカのまさに理不尽と思われるような行為あるいは行動に対しましては、今お話がありましたようなガットからの脱退なんということについても、そんな思いに駆られることがあります。  しかし、かつての国連からの脱退なんということを考えたときにも、今日本の国がここまで来た立場の中で、これをすることはなかなか難しいであろう。そのためには、難しい中にあっても粘り強い交渉を続けていかなければならぬと思っております。  また、この対抗法につきましても我が党の中でも大変強い、今御指摘のとおり政調会長が預かるという中で、漁業関係議員の皆さんからも非常に強いあれがあるわけでありますけれども、今まさに新しいルールづくり、こういったものがガットの中で議論されているときに、日本がこれを新たに提出するということについてはなかなか理解されないものであろう、非常に難しい状況であろうということであります。ただし、もしアメリカがペリー修正法なんというもので実際にそれが動くというようなことがあるとすれば、我々としてはきちんとして対応していかなければならぬと思っております。
  64. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 粘り強くという言葉は非常にいい言葉なんですが、粘り強くだんだん押し切られる、こういうことでは今日までの伝統的な  伝統的漁業というのは国際的にだんだん通用しない概念になってきたのかもしれませんが、しかし今日まで守り育ててきた父祖以来のこういう漁業というものに対してもう少し毅然とすべきだということを申し上げておきたいと思うのです。  次に、対ソ関係についてですが、今年のサケ・マス漁獲割り当ては一万五千トン、前年比で一五%減となっておりまして、母船式のサケ・マスだけに限って言いますと、一昨年が九千二百七トン、昨年は三千二百七十六トン、ことしは二千八百三十四トン、この二年間で三分の一という現況ですね。現在あります百二十九そうの独航船のうち、昨年は四十三そうだけが出漁し、残りは休漁いたしました。ことしは五十六そうが公海漁業に、また二十二そうが新たにソ連の二百海里内の合弁事業に出漁するという予定になっていると言われています。残る五十一そうは当面休漁するということであり、減船は避けられない、このような状況であります。  そこで、休漁者に対しては昨年と同様の融資措置を考えているのかどうか。その必要に迫られていると思うのですが、このことについてはどうでしょうか。
  65. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ただいま話ありましたように、去年に比べまして公海上の割り当てがかな り減ったわけでございます。その結果、母船式に限定して言いますと、ただいまも御指摘ありましたように五十六そうというものが公海上に出て、それから、これからの協議でございますけれども、ソビエト二百海里内で総体として五千トンの割り当てがございましたので、このうち従来から母船式で行っていた方々へもそれ相応の数量というものが参りますので、今先生から二十二そうというような話がございましたけれども、これに近い数字というものが恐らく出漁可能ということになろうかと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、全体で百二十九そうある中で目いっぱい行きましても七十何そうという船でございますので、その残りにつきましては、ことし現実の問題として出漁できないという事態になっているわけでございます。これに対しましては、団体も含めまして、今せっかく出漁して漁業の最盛期を迎えておるところでございますので、一たん漁業が終わりましたところでいろいろな事後対策、基本対策というものを考えようということに相なっているわけでございます。したがいまして、当方といたしましても、当面休漁いたします方々につきましての救済対策につきましては、減船を含めました基本対策と並行いたしまして、当面の対策をどうするかということを関係省庁なりあるいは関係団体と十分協議しながら検討を進めてまいりたいと思っております。
  66. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 休漁者に対する問題と、次は減船に対する問題ですね。  今回予想されております減船はこれまでとは異なる、こういう認識を持たなければならないと思うのでありますが、その理由一つは、残念なことでありますが、ソ連は一九九二年までの沖取り禁止を主張しております。今後の漁獲割り当て量は現状を維持することが極めて困難であり、来年以降も減船が予想される、こういう状況の中にあるということであります。  それから第二番目には、これまで政府交付金に加えて残存者の共補償によって減船が行われてまいりましたが、今後は残存者の超過利益に期待することはできない。共補償による減船は困難であるということですね。  三つ目には、現在の百二十九そうはそれぞれ過去の減船の際の共補償のための一そう当たり約一億二千万もの債務を抱えている。  こういう諸条件を総合しますと、今後減船を実施するならば大きな財源を確保しなければならない、こういうことになろうかと思います。私は、こういうことからしまして、全部政府が見れればいいのですけれども、財源ということになりますと非常に難しいことになろうかと思います。これもまた水産庁だけでできることじゃないのかもしれませんが、当分の間、水産物、特にアメリカからのサケなんかの輸入関税、こういうものを財源に充てるという考えがある。何かこういう危機的な、危機的といいますか、三つの条件がそろった中でどうしてもしなければならぬということになりますと、財源を求めて対処をするということが必要になってくるのじゃないか、こんな気がしてならないのです。これは一つ考え方ということであって、これが最良であるかどうか、皆さん方また御検討をいただきたいと思うのですが、何らかの財源措置をしなければならない、こんな気持ちがしてならないのですが、政府考え方をお聞きしておきたいと思います。
  67. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 こういう厳しい状況になってきたわけでございますけれども、できるだけ減船が少ないにこしたことがないわけでございまして、こういうクォータの中でも今後とも共同事業でございますとかあるいは合弁事業でございますとか、こういうものを通じまして、できるだけ入漁の機会というものを確保したいということで一つの努力は積み重ねてまいりたいと思っております。  しかし、いずれにいたしましても相当隻数につきましての減船というものはことし覚悟せざるを得ないわけでございますけれども、この財源につきまして、ただいま御提案ございましたような関税収入をもって特定財源化したらどうかという話がここのところ各方面から出てきているわけでございます。ただしかし、残念ながら、減船による効果というものとそれから関税の収入増というものとの間の相関関係なりあるいは特定性というものが非常に薄うございますし、それから、ここのところよく特定財源化せよという御希望の中には、先般の牛肉に伴う関連措置というものが前提になりまして御意見を開陳される方々が多いわけでございますけれども、牛肉の場合には自由化というドラスチックな方途が一つとられた代償ということがございますし、それから牛肉につきましては、従来からも輸入差益という形で自由化後の関税に見合うものを実質畜産振興のために特定財源的に使ってきたという経緯もあるわけでございます。そういうことに比べますと、クォータの削減に伴う減船というものがそういう経緯には残念ながらございませんので、魚の関税にかかわります収入というものを特定財源として減船対策を講ずるということは仕組みとしてなかなか難しいのじゃないかという感じはいたしておりますけれども、いずれにいたしましても、減船に必要となります金額というものは、何とか全力を挙げて所要のものを確保したいというふうに考えております。
  68. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 大臣、これは事務レベルではいろいろ検討なさっているようですが、過去の歴史を考えてみますと、決して唐突に思い浮かんだことではなくして、当然財源確保の上から、今までの経緯からしまして理不尽なことではない。ひとつぜひ決断をしなければならない問題だろうと思いますし、またこれは内閣、国務大臣という立場からしまして、各省庁、特に大蔵との関係もあるのだろうと思いますけれども、十分な財源確保をしまして諸手当てをいたしませんと、こういう危機的状況の中にありまして、これは放置するわけにはいかぬ。こういうことの中で積極的なお取り組みをいただきたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  69. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま水産庁長官からお答えをしたわけでありますけれども、私どもも、この日ソの協定といいますか、これが成立いたしましたときに、閣議におきましてもこの点について報告を申し上げ、そしてこの現状に対して対応するための措置について各省の協力要請いたしたところでありまして、これは単に水産庁というだけではなくて、私ども政府全体としてこういった問題と取り組んでいきたいというふうに考えております。
  70. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 さらに、昨年からピレンが合同ということで、ソ連の二百海里内での日ソ合同事業が始まったところであります。さっき長官からもいろいろなお話ございました。ことしは五千トンの枠が確保されたということですが、この事業はソ連の川にふ化放流施設をつくる漁業協力をも行うということで、漁業関係者の負担は極めて大きいということであります。このような相互に経済的利益で結びついた形での入漁というのはこれからも進み、将来的、長期的に安定していくものと考えられますが、しかしながらこれは大変に大きな負担増を招くということで、政府としましても何らかの援助をすべきであるというように考えるわけでありますが、この点についてソ連に対する漁業協力あり方ということも含めまして、これらの問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしておきたいと思います。
  71. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ここのところソ連が非常に諸外国との合弁企業の設立というものに熱心になってきておりまして、水産の分野におきましても日ソ合弁企業の設立というものについてソビエト自身が積極的な姿勢を示しておりますし、それから二百海里時代が定着し、あるいはサケ・マスについての母川国主義というものが定着してくるとなりますれば、日本側といたしましてもソ連二百海里内での漁獲あるいは合弁ということが今後関係者の生きていく一つの道というふうに考えて いるわけでございます。そういう観点から、政府といたしましても、サケ・マスのふ化放流を行います合弁事業につきましては、特に我が国の中小漁業者の操業の場を確保するという観点もございますので、これに対しては従来から積極的に対処してきているつもりでございます。例えば、これまでも政府の専門家を現地に派遣いたしまして、事前調査でございますとか立地調査というものを精細に行ってきているわけでございます。  水産庁といたしましては、今後ともソ連との合弁事業を通じて漁場の確保を図っていくということから、実は平成元年度の新しい予算におきましても、ソ連における合弁に関する情報の収集でございますとか、あるいは合弁プロジェクトの実地調査調整、こういうものを行うための新しい予算というものを計上しているわけでございまして、今後とも関係漁業者の意向というものも十分踏まえながら、こういう合弁事業というものが円滑に進みますよう政府としても十分対応してまいりたいと思っております。
  72. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 ソ連もアメリカもそれぞれ期限を切りまして、いろんな規制を受ける。そういう中で、進むも地獄といいますか、また残って漁業を進めるということも非常に厳しい中で進めなきゃならぬ。何から何まで国が面倒見ろということを言っているわけじゃありませんが、やはり新しい時代に即応した形で、政府のなすべきこととして、大きな転換期ですから、それなりに政府も最大の努力をしてその転換期に即応した対策を講じていくということが必要なことだろうと思うわけであります。ぜひひとつ、財源問題ということになりますと非常に厳しいいろんなことがあろうかと思いますけれども、大臣もひとつ十分に現状を踏まえまして対処をお願いしたい、こう思うのであります。  次に、ソ連は一方的に一九九二年までに沖取りを禁止する、こういう主張をいたしましたが、一方、アメリカとの間では一九九四年には第四水域からの撤退を約束したところであります。両国とも自国で産まれたサケ・マスは自国でとる、値段の高い日本に輸出するという基本政策をとっておるわけでありますが、このような国際環境の中で日本の伝統産業であり、また今なお地域の重要な産業でありますサケ・マス漁業、これをいかに確保していくかという非常に重要な問題なんでありますが、これは先ほど来のお話に全部つながってくることだと思うのでありますけれども政府の見通しと基本的な対処方針、こういうものをしかとお伺いしておきたい、こう思うのであります。
  73. 羽田孜

    羽田国務大臣 サケ・マス漁業につきましては母川国主義の定着及び母川国の漁獲能力の向上とともに米国、ソ連などの規制が一段と強まって、漁獲割り当て量の縮減など厳しい状況に置かれておりますけれども、なお多くの漁業者がこの漁業に依存しておるということであり、また地域経済に対しましても大きな地位を占めておるということであります。そういう意味で、厳しい環境でありますけれどもその存続のために最大の努力を払うべきであろうというふうに私どもは考えております。  また、特に最近におきましては、今御指摘ありました一九九二年までにソ連が沖取りを禁止するとの方針を再三にわたり言明する一方、アメリカにおいても二百海里内の操業見通しが立っていないなど、一層厳しい状況にありますけれども、今後とも関係国との話し合いを粘り強く行っていくと同時に、安定的な操業の確保に努めていきたいというふうに考えております。また、ソ連との間ではサケ・マス再生産の合弁事業などの関連でソ連二百海里内操業が検討されており、長期的なサケ・マス漁業の確保の観点からこれらの問題に対して積極的に取り組むことを含めまして、サケ・マス漁業の確保への努力をさらに続けていきたいというふうに考えております。
  74. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 漁業白書の中にも最近の情勢についてはいろいろ分析されておりますし、過日、大臣の所信表明の中にも言われておりますが、「粘り強い漁業交渉による海外漁場の確保に努めるとともに、対外交渉に向けての資源調査を充実させてまいる考えであります。」こうおっしゃっております。所信表明では具体的なことを一々申し述べる場がありませんから、この中に大臣のお考えが集約されているのだろうと思いますが、漁業対外交渉というのは非常に厳しい状況にあるということ、これを何とか打開しようということで資源調査とか日本の現状を訴える、こんなこともなさっているようでありますが、現状についてお伺いしておきたい。  もう一つは、全道の漁協組合長会議がございましたときに、サケ・マス沖取り禁止を主張するソ連提案撤回ということも強く主張されておりました。それからまた資源管理型漁業を志向した北海道の漁業の再構築、こういうことも大きな旗印として訴えられておったのであります。  こういうことを考えますと、対外的な折衝につきましては、当然今日までの経緯もこれあり、そして今日までの伝統的なものを守るという最大の努力をしていかなければならないということと、それから日本周辺の海域を大事にするということでは資源管理型漁業も緒についたといいますか、いろいろな予算づけをしておるようでありますが、これはそれぞれの間での話し合いを初めとしまして、ただお金がつけば物事が進むということじゃございませんから難しい面もあるのかもしれませんが、日本近海の漁場というものを活性化する方途というものに早急に取り組まなければならぬ、こう思うわけでありますが、これらのことにつきまして最後にお尋ねをいたしまして終わりたいと思います。
  75. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ただいま資源問題について国際的な問題とそれから日本近海、両方含めてお尋ねになったわけでございますけれども、国際的に二百海里時代が定着してまいりました中で、日本漁業としてなすべき道として、一つは何といいましても日本は世界で第一の漁業国であり一番の蓄積なり技術というものを持っている国でございます。こういう国としての当然の責務として国際的な海洋における漁業資源というものを的確に把握し、これを各国に情報として提供し、お互いに漁場を守りながら永続的に漁業のために使っていくということが何といっても必要かと思っております。従来はともしますと、国際的な資源問題というものは日本を追い出すんじゃないかというような感じで消極的に対応してきた点もあるわけでございますけれども、これだけの漁業大国でございますので、むしろ日本自身がイニシアチブをとった形で積極的に資源の分析なり、あるいは資源の共同管理というものに一歩前に進むということが必要かと思っておりまして、平成元年度の新しい予算にもいろいろな調査なり資源管理のための会議の開備等々につきましても、予算的な手当てというものを行ったつもりでございます。  それから、国内的といいますか、日本近海の資源管理でございますけれども、従来は二百海里の定着というものが、いわば日本の漁業というものが被害者だったわけでございますけれども、踏みとどまって考えてみますと、日本自体がおかげさまで広大な、しかもかつては豊かであったはずの二百海里というものを日本の二百海里として国際的に認知されたわけでございます。この二百海里をどうやってもう一度豊かな漁場に再構築していくかということが、何といいましても漁業政策の基本になるわけでございます。そのためには、物理的に資源をふやすと同時に上手に資源を使っていく。今お話がありましたように、資源管理型漁業というものをどうやって定着させていくかということかと思っております。おかげさまで総論といたしましては、資源管理型漁業の必要性というものがそれぞれの方々に御認識いただいてまいりましたので、これからは各論の時代、具体論の時代ということで、ここ一、二年それぞれの地域につきましてシミュレーションモデルをつくってみたりもしてきたわけでございますけれども、そういう流れの予算といたしましても、資源管理型漁業を推進するためのいろいろな具体的な予算というものを昨年、ことしと続けまして拡充いたして きているわけでございます。  今後とも、何とか世界一の魚食民族、しかも世界一の漁業大国の日本として、日本自身が持っている二百海里をもう一度豊かな漁場にするということにつきまして、官民挙げまして全力を傾注してまいりたいと思っております。
  76. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどからずっとお話がありましたように、ともかく二百海里時代というのが完全に定着したということ、それから魚たんぱくというものが各国で認められるようになってきたということ、それから母川国主義というものがやはり定着してしまったということ、それから漁業というものはやはり商売になるのだということ、こういったことを各国が位置づけられるようになってきたということ、そういう中で日本の遠洋における漁業というもの、あるいは他国の二百海里内における漁業というものが非常に難しくなってきたということを、私たちは現実をきちんと認識しなければいけないと思っております。  そういう中で、私は前回の大臣在任中にも申し上げたことでありますけれども日本というのは今長官からお話がありましたように、世界一の魚食民族であると同時に、漁業についてもやはり高いノーハウを持っております。魚について日本であるということでありますから、その意味で国際的に世界の漁場についての資源というものをきちんと把握しなければいけないし、またこの情報というものを各国にも伝達し、そしてお互いに話し合う場というものをつくっていかなければいけないと思っております。  そして振り返ったときに、今お話がありましたように、我が周辺の海をもう一度見直す必要があろうと思っております。ここでも資源問題が起きておりまして、かつては相当大量にとれた魚がだんだんとれなくなってきたという地域もありまして、これは乱獲に遭ったというようなことも実は言われております。そういう意味で、資源管理をするということについて私たちはきちんと自覚すると同時に、そこでつくり育てる漁業というものをやっていかなければならない。それと同時に、とった魚を有効に利用していくということ、国民の食生活の中にうまく食べられるような方向についてもこの二百海里内でとれる魚をもっと有効に活用していく、こんな面にも目を向けなければいけないのだというふうに思っております。  いずれにいたしましても、漁業に携わっていらっしゃる方もおられるわけでありますから、こういった皆さん方あるいは関連の産業皆さん方も漁業という中できちんと生きていけるような、そういうものをつくり上げ、そしてそこから供給されるたんぱくというものを大切にしていきたい、かように考えておるところであります。
  77. 堀之内久男

  78. 山原健二郎

    ○山原委員 私も、漁業問題について最初に伺いたいと思います。  今会期中の最後の質問で、少し遅くなっておりますが、お答えいただきたいと思うのです。  八九年、本年度の水産年鑑を見ますと、カツオ・マグロ漁業についてこう書いております。「カツオ・マグロ漁業は、我が国の漁業のなかでも最も重要な漁業の一つであり、指定漁業別の生産金額は、約三千四百十八億円と指定漁業の中で最大の水揚げとなっている。」ということですね。しかもこれは今お話がありました「遠洋漁業、特に北洋漁業が米・ソの強硬な締出し政策により大きな転換をせまられるなかにあって、カツオ・マグロ漁業は主に公海を漁場としていることもあって、漁場確保は現在までのところ比較的恵まれている。  しかしながら、」ということで、「円高の進行によるカツオの輸出不振、マグロ類の輸入の増加、魚価の低迷等による漁業経営の窮迫等厳しい現状にある。」ということが書かれております。  私の県もマグロ生産県でありますけれども、県の方へ調べてみますと、現在七十二隻が遠洋マグロ漁業に携わっております。しかし、これもひどころに比べますと半分に減っているわけでございまして、高知県の場合はいわゆるミナミマグロをとっておりますから、タスマン、大西洋へ進出しまして、非常に良質なマグロをとっておるということもありまして、比較的緊迫度は少ないように思っているわけですけれども、しかし、他の地域から上がっております問題をお聞きしますと、いろいろ重要な問題があるわけです。  その中の一つに中古漁船の輸出の問題が絡んでおりまして、この点について最初に伺いたいのですが、漁船の輸出は輸出貿易管理令などに基づきまして政府の輸出承認を受けることになっております。したがって、漁船輸出の実態について把握されておると思いますが、最近二年間の漁船の輸出実績について、我が国国内で稼働の際の漁業種類別に明らかにしてもらいたいと思いますが、その点、お答えできますでしょうか。
  79. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ここ三、四年の趨勢を申し上げますと、昭和六十年から三年ということで見ますと、総トータルではほとんど横ばいないし若干減っております。具体的に申し上げますと、昭和六十年度百六十五そう、それから六十一年度百五十八そう、それから昭和六十二年度百四十九そうでございます。  そしてこの中で、ただいまお話がありましたカツオ・マグロにつきましては、全体が微減傾向の中で若干ふえております。昭和六十年にカツオ・マグロ全体で三十四そう、六十一年に四十六そう、それから六十二年に五十三そうという形に相なっております。
  80. 山原健二郎

    ○山原委員 最近二年間の承認を受けた輸出漁船は、総計で今お話しのとおり三百七隻に上ります。  そこで、輸出漁船の目的別及び主な輸出先個々別の数字についても、最近二年間について報告いただきたいのです。
  81. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 目的別で申し上げますと、昭和六十一年度が漁船としてが百十七、漁船以外三十六、スクラップ五、それから六十二年度が漁船九十六、漁船以外四十七、スクラップ六という数字になっております。  それから主要な国別でございますけれども、六十一年度、中国十八、韓国十二、台湾三、フィリピン四十二、パナマ十七、ホンジュラス十四、それから六十二年度で中国四、韓国七、台湾十七、フィリピン三十二、パナマ十八、ホンジュラス十七、以上でございます。
  82. 山原健二郎

    ○山原委員 今の御報告にありますように、目的別で見ますと漁船としての目的が二百十三隻、漁船以外、水産加工船やあるいは運搬船が中心でございますが、それが八十三隻、スクラップ目的が十一隻、圧倒的に漁船や漁業関連の目的で輸出をされているという実態だと思います。輸出先国ではフィリピン、台湾、南朝鮮いわゆる韓国などのほかにパナマ、ホンジュラスも多いわけですが、これは書類上だけの便宜置籍国などの操作によりまして、輸出漁船が実際には台湾や韓国で稼働しているケースが多く含まれているのではないかと思うのでございますが、その点はどう把握されておりますか。
  83. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 いわゆる便宜置籍船といいますか、我が国から輸出されました中古の船が輸出先の旗は掲げながら違う国が実質運営しているというものが若干あるようでございまして、これにつきましては先般も、具体的例といたしまして地中海で大西洋まぐろ類保存国際委員会というものがいろいろな規制を実施しているわけでございますけれども、これを無視して操業を行った船に、日本から中古船として輸出されたものがあったようでございます。
  84. 山原健二郎

    ○山原委員 商社とか水産大手が漁船を輸出をして、その上でマグロ、イカなどを輸入しているケースもあると聞いておりますが、そうした実態は把握されておりますか。
  85. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 輸出されたそれぞれの国でどういう運営をやっているかということについては必ずしも当方として的確に把握しておりませんけれども、ただいまお話ありましたように水産大手であるとか何かがそういう船を活用しているという事例については、報告に接しておりません。
  86. 山原健二郎

    ○山原委員 輸出された漁船が外国で操業されておりまして、その漁獲物が日本輸入されて水産輸入の激増に拍車をかけ、魚価の低迷を招く、こうして我が国漁民、中小漁業者の生活と経営を圧迫している。特に影響の大きいマグロやイカなどの漁業者の間から、大変怒りを込めた対策の要請が寄せられておるわけでございます。  先ほど私申し上げました本年度の水産年鑑の中でも、「マグロ類の輸入は、昭和三十六年に自由化された後徐々に増加してきたが、円高、ドル安によりさらに拍車がかかった。また、最近では、韓国、台湾ばかりでなく、パナマ、ホンジュラス、ベネズエラ等のいわゆる便宜置籍国からの輸入が増加しており、我が国のマグロ漁業経営を圧迫しているばかりでなく、漁業資源の保存の面でも憂慮される事態となっている。」と指摘されているわけですね。マグロ資源の保護を踏まえまして、減船措置を今までとってきているわけですが、そうした漁業者にとっていわば血の出るような苦労があるわけですが、この苦労で乗り切っていこうとしているわけですが、この努力の枠を外れて全ぐそれに縛られることなく乱獲をしていく、こういう事態が起こるとなりますと大変な問題でありますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  87. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ここのところはマグロにつきましては、特に円高等の影響もございまして海外からの輸入圧力というものが相当強かったわけでございますけれども、ここ一年ぐらいのところは、特に高級マグロを主体にいたしまして資源問題等がございまして、輸入圧力というのもひところほどではございませんし、それから全体としては需給が若干逼迫ということで、高級マグロを中心にいたしまして値段が若干高水準に推移しているという状況に現状ではあるわけでございます。しかしながら、潜在的にはただいま先生からお話ありましたように外国勢の漁獲努力量の拡大というものは確かでございますけれども、やはり日本が世界で唯一の刺身市場ということでございますので、日本側の需給調整なり計画的な消費の誘導ということで世界をリードできるわけでございまして、そういう観点から四月に国内的に生産者、流通業者、輸入業者、消費者、こういう関係者を一同に集めましたまぐろ需給協議会というものもつくりまして、計画的な消費、計画的な輸入というものに相努める体制というものもスタートさせたところでございます。
  88. 山原健二郎

    ○山原委員 今長官おっしゃったように、私も先ほどちょっと申し上げましたが、私の県の場合を考えてみますと、ひところよりは少し好況といいますか、そういう状態のようですが、申し上げましたようにもう半分に減っているという減船ですね。そういう事態。しかも高知県の場合は室戸を中心にしていくわけですけれども、非常に苦労して、しかも豊富な経験も持っておりますし、そういう意味でいわゆる輸入物と競合するよりもさらに高品質のものをとっておるという面もあります。しかし、全体として私どものところへ出てきておりますさまざまな要請は、今私が申し上げましたように便宜置籍船を通じて輸入してくるものが圧迫をしておるということが各地で出ております。  したがって、農林水産省としまして、我が国の漁業と漁業者の経営を守る立場から、また国際的な漁業資源の適切な保存、また活用という漁業秩序を尊重していくという立場からも、輸出規制などきちんとした対応をとるべきだというふうに考えるわけでございますけれども、その点についてはどのようなお答えをいただけるのでしょうか。
  89. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 この問題は非常に難しい両面を抱えておりまして、漁場が小さくなって漁船が不要になる、そうしますとこの漁船の処分先として外国を選択したいという漁民の方も多いわけでございます。しかし、一方でそういう漁船が無秩序に外国に出てまいりますと、漁業秩序なり漁業の競合というものが起きてくるということで、いろいろと各省との間では、非常に問題のあるシステムではございますけれども、おかげさまで運輸省なり通産省とも同意を取りつけまして、船齢なり隻数、こういうものにつきましての輸出規制というものを現行の法令の枠内で最大限のものを行っているつもりでございます。  しかし、この中で先ほど来お話が出ております便宜置籍船というような問題も国際的にも出てまいりましたし、それから国内漁業者との関係でも問題がございましたので、先般、特にそういう便宜置籍船が多いと目されますパナマ、ホンジュラス、シエラレオネ、ベネズエラ、こういう国につきましては、マグロ漁船及びマグロ漁船を改造した運搬船の輸出というものは原則として認めないというふうに運用方針も変更させていただいたわけでございます。
  90. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったように難しい問題もあると思いますけれども、これらの要請が出ておることは間違いありませんし、今後とも努力のほどをお願い申し上げたいと思います。  次に、昨日、米の問題について農政審の報告書についての質問をいたしたわけでございますが、減反率の高いところ、この問題についてちょっと具体的な例を挙げて質問をしておきたいと思います。  減反率の高いところといえば、北海道、東京、私の高知県なんかも減反率の一番高いところでございます。これは北海道の上川支庁だと思いますが、たまたま士別の私どもの党の者が要請を受けましてちょっと調べてみたのですが、全国平均が二七%の減反率でございますが、北海道は非常に高くて四八・九%でございます。ところが、その中で上川管内が五三・五%です。そのうち士別市の場合が六四・八%という状況が出ているわけでございます。この点について、これは士別の問題だけでなくて各地で起こっているのですが、転作面積の配分を変えてほしいという声があるわけでございます。これほど高い減反あるいは転作率ではどうにもならないというのが率直な声ですね。この市の場合を調べてみますと、市の方針として農業を基幹産業として位置づけております。基幹作物としては稲作、畑作、酪農でございますが、稲作を基幹として土地改良あるいは基盤整備を進めてまいりまして、低コストで米を生産するというふうに努力をしてきたわけでございます。ところが、過重な転作を背負ってまいりまして、六四・八%の減反率で随分重荷になっているわけですね。転作できる条件を整えることが必要でありますけれども、一方では牛肉あるいは農産物自由化の問題がありますから、ますます困難になっていくという声ですね。これはこの市の問題だけではないわけでございまして、ここのところをどう考えていくかということがこのような市にとっては重大な死活問題になっているということです。この点について、しばしばここで論議されたことではありますけれども、あえてもう一度お伺いしたいのですが、どのような御返答をいただけますでしょうか。
  91. 吉國隆

    吉國政府委員 北海道上川支庁の士別市についてのお尋ねでございます。先生よく御承知のように、この転作目標面積の配分につきましては、地域のいろいろな条件というものを考え、今後とも農業、稲作生産というものを担っていただく地域なり担い手ということを考え、また一方で土地利用計画、線引き政策、そういったものとの整合性というようなことを考えながら配分をしていくという基本的な考え方になっているわけでございます。そういった考え方に立ちまして、中央段階で行政と生産団体との調整を経ましていろいろな要素を勘案した配分が行われまして、また各都道府県の中におきます市町村別の配分につきましては、知事さんと県レベルの生産団体とで協議調整をしていただいて配分をしていただく、こういうルールになっているところでございます。  お話のございました士別市は、旭川の北の方、上川支庁の最北端になると承知しております。先生がおっしゃいました数字は私の手元に持っておりますものと若干のずれはございますが、ほぼ先生がおっしゃいましたようなかなり重い転作率になっておることは事実でございます。北海道の中 での配分は、転作率一〇〇%のところから二〇%台のところまで、かなりの傾斜配分が行われておると承知いたしておりまして、この士別市の場合、特にウルチ米については、気象条件等から限界地と申しますか、そういう性格を持っておるところというふうに判断されておるようでございまして、モチ米については、需要との関係でまだ問題が少ないというようなことからモチ米の生産団地にも力を入れてやっておられるというふうに承知いたしておりますが、こういった転作率のもとで畑作、畜産を組み合わせた営農をつくっていこうということで取り組みが行われておりまして、道庁の方でもこういった転作案件を整備していくための事業についてはかなり優先的な考慮を払っておられる、また転作の進め方についても団地化比率が非常に高い、また地域営農加算というものがもらえるようなまとまった地域単位の取り組みがかなり行われておる、そういうような取り組み状況になっておるわけでございまして、私どもとしては、そういった地域条件にマッチした営農というものが確立され農業経営が安定していくようにいろいろな面から援助を申し上げ、そういった方向に進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  92. 山原健二郎

    ○山原委員 私はこの北海道の士別の問題を例として取り上げましたけれども、明治の中後期に随分たくさん、私の県からも北海道開発に、当時は移民と呼ばれておりますが、行っております。坂本竜馬のおいに当たる坂本直寛というのがおりますが、彼と私の町の出身の前田駒次というのが、あの原野を馬で越して、羅臼から北見へ入って、北見で初めていわゆる水田をやるわけですね。これは稲作の北限だと言われるところで、歴史を見ますと、当時の屯田兵と相前後してこれらの移民農民が大変な苦労をして水田をつくっていく歴史が今も残っておりますので、私はこの歴史を非常に感動的に見ておるわけでございますが、恐らく士別も北限に近いところだと思います。そういう先祖伝来大変な苦心惨たんをして出てきたこの稲作がこういう状況に置かれておるという意味で、私は一つの感慨を持ってこの士別の例を申し上げたわけでございます。  最後に、いわゆる農地拡大とか基盤整備とか施設の近代化とか随分苦労して投資もしておりますけれども、いわゆる過大な転作で負債の償還がままならないというのが、これは大体どこも似たような要請になっているわけです。いわゆるリリーフ資金を創設されたわけでございまして、これは利率が四・二%、償還期間が二十年以内となっておりまして、この制度で助かっている面もないとは言えません。しかし、この水準だとリリーフ資金も受けられないという人たちもたくさんおるわけでございまして、具体的な要請としましては制度資金の借入期間を三十年以上、利率三%以下にしてもらいたいというふうな要請もあるわけです。  これ以上質問しませんけれども、ぜひこういうことについて御検討いただきたいと思いますが、この点についてのお答えを聞きまして私の質問を終わりたいと思います。
  93. 松山光治

    松山政府委員 今先生から御指摘ございましたように、北海道における負債問題、そういうことを背景といたしました関係者からの強い要望を踏まえまして、ことしの二月から自作農維持資金の中に償還円滑化資金、いわゆるリリーフ資金を設けるという措置を講じたところでございます。私どもとしてはこれの条件の設定の問題、種々検討はいたしたわけでございますが、ほかの制度資金との横並びの問題、そもそも自作農維持資金、四・二%というかなり低利でかつまた財政的な援助もした上の資金でございますので、なかなかそこのところは限界がある、この資金をつくるために精いっぱいの努力をしたというのが現実でございまして、ひとつこの資金を有効に活用して営農に努力していただきたい、このように考えておる次第でございます。
  94. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  95. 堀之内久男

    堀之内委員長 これにて農林水産大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十一分散会      ————◇—————