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池田参考人 それでは、田中先生の御質問に対するお答えを申し上げたいと思います。
今御指摘になりました
食品産業の中小零細性でございますが、これは確かに御指摘のとおり、大体販売ベースにおきまして半分以上が
中小企業であるという実態がございます。しかし、実はこの
食品企業の零細性というものは、本来あるべくして零細性である面もあるわけでございます。特に、現地における原材料に特徴を持たせながら加工して、非常にキャラクターのある品物をつくっていく、これは物が
食品でございますので、すべて同じものを大量に
生産するということだけでは需要側は満足しないわけでございます。特に最近のように指向性が非常に多角化してまいりますと、単に安いということだけではだめ、同じ
品質ということだけでもだめ。特に自分が食べることについて、自分に適合したものであるかどうかを個人個人が自分で選ぶという形が非常に強くなってまいっております。したがって、私
どもの調査でも、大
企業が従来のように大量画一
生産ということでなくて、
生産ラインを幾つも分けまして、そして、いわば
中小企業の合体した大
企業というような形に大きく申しますと転化しつつある面もあるわけでございます。したがって、中小で零細であること、即
食品企業にとってマイナスだけであるということにはならないわけでございますけれ
ども、しかし、全般的に見て
生産性が劣るということは確かでございます。
したがって、やはりそこで中心になりますのは、新しい技術というもの、情報というものをこれらの
中小企業の中に早く入れていく、そして、いわばベンチャービジネスとしての対応ができるような能力を養っていく、つまり人材をこの中に養成していくということが必要であろうと思います。私
ども食品産業センターといたしましても、これらの
中小企業の方々の中の中堅の方々、あるいは初めてのもう少し若い方々を入れまして、国公立の研究機関等に長期、短期の研修をさせるというふうな形で、これらの技術の核になる人々を養成するということをもう十年来やっておりますけれ
ども、こういうことが
一つあろうかと思います。
それからもう
一つは、やはり技術の基礎を底上げをするということが必要でございます。特に新しい技術が日進月歩でございますので、したがって、農林省も中心になりまして技術研究
組合を続続発生させまして、テーマ別にこの技術研究
組合の中にいろいろの
組合が入って、そして個々の技術を各会社が全部独占するのではなくて、一定の段階まで底上げをするところまでは、いわばオープンラボラトリーと申しますか、そういう形で技術の
水準を分け合えるようなそういう仕組みをつくる、こういうこともやっております。単に
企業の側を大きくするということだけではこれからは対応できないのではないかと考えております。
それから、二つ目は研究体制の問題でございますが、御
案内のように最近では、後から後から新しい技術が発展をいたしまして、膜の技術だとか、あるいはエクストルージョンの技術だとかサイクロデキストリンだとか、いろいろな問題点が出てきて、それぞれについて関心を持つ
企業が合体していろいろと技術を研究いたしております。新しい開発体制もとっておりますが、私
ども食品産業センターといたしましても、新技術の開発について
中小企業、大
企業の別なくそれに関心のあるものにつきまして、毎年六テーマないし十テーマ
程度のものを取り上げまして、そして、これに国の補助金を一部投入をいたしまして、実は新しい新技術開発の研究をする手助けをいたしておるわけでございまして、これらを突破口にいたしましていろいろな問題点が
食品業界でも出てきておるわけでございます。また同時に、
業界自身も自主的にみずからの蓄積の中から新しい新技術開発のための再投資というのを、これは昨年度でも一般の
産業界の平均
水準を上回って新投資するところまできております。特にバイオテクノロジーを中心とすることは、御
案内のように昔から酵素を使いつけてきているという
一つの実績が
食品業界にございます。したがって、バイオ部門について割合に取っかかりが早かったということもございまして、これら
業界が自主的にやる。また、
政府
がつくりました生研機構、この生研機構なんかからの
融資を受けまして、そして新しいものに取り組むというようなこともやっております。
それから、安全性の問題につきましては、御
案内のように最近特に原材料が
海外からたくさん入りてきております。したがって、入ってきておりますものの中身がよくわからないということが
一つあることはあるのであります。したがって、各会社はそれぞれ自分のところでつくります
製品の原材料に供します
農産物についてはかなり神経質に分析をいたしておりまして、少なくとも外に出回ってから問題が起こることのないように、これは一遍出ますと会社にとっては致命傷でございますので、非常に神経を使っております。いずれにいたしましても、国際性が非常に出てまいりますと原材料に対する安全性というものについてはやはり共通の尺度というものが必要になってくるだろうと思います。したがって、
政府としては早急に国際間で話し合いをして、安全度についての共通の
認識を話し合って決めていただくということが大事な時期に来ているのではないかと思うわけでございます。特に、そのための表示
制度につきましても、でき得ますれば個々の国の表示方式ではなくて国際的に決められた
一つの標準で表示が決められるということでありますと使う方も極めて使いやすい、それからそれをつくった結果についてのギャランティーもしやすい、こういうことになろうかと思うわけでございます。したがって、私
どもとしては、特に
日本の場合には御
案内のように生鮮
食品に対する指向性が極めて強いわけでございまして、
日本のエンゲル係数の高さの中にはかなりの生鮮指向というものに対する金の支払いも入っているように思うわけでございますが、したがって加工度が低くて生鮮度の高い原材料を使うという
日本の特殊の現象のもとで考えますというと、特に安全性
確保のための表示問題については厳格を期する必要があるだろうというふうに考えております。ただ、生鮮の場合には非常に物によって格差がございますから、簡単には一律の表示はできないと思いますけれ
ども、そういうふうに考えておる次第でございます。