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1989-03-23 第114回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年三月二十三日(木曜日)     午前十時十分開議 出席委員   委員長 玉生 孝久君    理事 熊川 次男君 理事 斉藤斗志二君    理事 近岡理一郎君 理事 戸塚 進也君    理事 宮里 松正君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 塚田 延充君       天野 公義君    有馬 元治君       井出 正一君    江藤 隆美君       大石 正光君    佐藤 一郎君       鈴木 恒夫君    竹中 修一君       月原 茂皓君    長谷川 峻君       森下 元晴君    五十嵐広三君       角屋堅次郎君    広瀬 秀吉君       前島 秀行君    井上 和久君       鈴切 康雄君    岡田 正勝君       浦井  洋君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)小渕 恵三君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務大臣官房外         務報道官    渡辺 泰造君         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中南米局         長       坂本重太郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 福田  博君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         文部省初等中等         教育局長    古村 澄一君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         文部省学術国際         局留学生課長  三村 満夫君         文化庁文化部著         作権課長    雨宮  忠君         厚生省援護局庶         務課長     新飯田 昇君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      片山登喜男君         通商産業省通商         政策局経済協力         部経済協力企画         官       松永 和夫君         資源エネルギー         庁石油部石油企         画官      斉藤 茂樹君         特許庁総務部国         際課長     清水 啓助君         海上保安庁警備         救難部長    赤澤 壽男君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   近衛 忠煇君         内閣委員会調査         室長      林  昌茂君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   鈴切 康雄君     伏木 和雄君 同日  辞任         補欠選任   伏木 和雄君     鈴切 康雄君 同月二十三日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     鈴木 恒夫君   河本 敏夫君     井出 正一君   古屋  亨君     月原 茂皓君   武藤 嘉文君     大石 正光君   大出  俊君     前島 秀行君   吉田 之久君     岡田 正勝君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     河本 敏夫君   大石 正光君     武藤 嘉文君   鈴木 恒夫君     大村 襄治君   月原 茂皓君     古屋  亨君   前島 秀行君     大出  俊君   岡田 正勝君     吉田 之久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一六号)      ――――◇―――――
  2. 玉生孝久

    玉生委員長 これより会議を開きます。内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。宇野外務大臣。     ―――――――――――――  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは、政府代表部一、大使館二の計三館であります。政府代表部は、ウィーンに設置するものであります。ウィーンには、国際原子力機関国連工業開発機関を初め約十の国際機関があり、政府代表部はこれら国際機関に対応するものであります。大使館は、我が国が昨年十二月外交関係を開設いたしました中部太平洋にあるマーシャル及びミクロネシアの二国に設置するものであり、いずれも他の国に駐在する我が方大使をして兼轄させるものであります。  改正の第二は、これら新設在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当基準額を定めるものであります。  改正の第三は、在外職員に支給する子女教育手当の支給の要件を改定することであります。  改正の第四は、在外職員に支給する住居手当についての改定であります。これは、事故または職員の死亡のため配偶者が旧在勤地に残留する必要がある場合に、引き続き支給することができる住居手当の額を改定することであります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 玉生孝久

    玉生委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
  5. 玉生孝久

    玉生委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本赤十字社外事部長近衛忠煇君出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 玉生孝久

    玉生委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
  7. 玉生孝久

    玉生委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸塚進也君。
  8. 戸塚進也

    戸塚委員 まず、外務大臣に総括的にお伺いいたします。  先般はラオスでああいう日本人の商社の人の誘拐事件、これは解決してうれしかったわけですけれども、その後また中国におけるあの旅行事故、それからまた、きのうはタイにおきまして何か新婚の方がああいう事故に遭い、また、きょう私がお尋ねしたいと思う、韓国でも今日本中小企業社長拉致されている。このように外国旅行されたり取引が非常に多くなっておりますから無理もないことではございますが、大変憂慮される事態がございます。  そこで、まず中国に起こりましたようなああいう事故、これは、旅行するなと言うことは無理だと思うし、また相手の国を見て回ることは日本人にとっていいことだと思いますから、私は結構だと思うのですが、問題は、その安全対策ということは十分講じていかなければいけない、こう思うのです。  この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  9. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 卑近な例といたしましてラオスの浅尾さんの事件は、この種の事件といたしましてはあっという間の解決でございまして、私は心からタイ当局並びにラオス当局両国に対しまして感謝の意を表した次第でございます。  にもかかわりませず、今御指摘のようなことが相次いで起こっております。在留邦人五十二万、さらには渡航者八百万、我が国国力が充実するにつれまして、そうした面における在外におられる方々の数はふえると思います。また同時に、我が国国力、そうしたものに対する一つの目標が定められた犯罪、そうしたことも今後もあるいはあるかもしれません。したがいまして、我々といたしましては、今申し上げました邦人の生命、財産、これを守ることに今後も全力を挙げていきたいと存じます。  だから、過般の事件等々をよき参考といたしまして、さらにマニュアルの改定等いろいろなことをしろ、こういうふうに当局に命じてございますので、これもまた在外にお行きになる方個人個人がひとつ十二分に御注意なすっていただくことも必要でございますが、十分いろいろな国々の調査在外公館を通じまして情報を得て、正しい情報渡航者あるいは在留者にお与えする、これが必要かと考えられます。
  10. 戸塚進也

    戸塚委員 それでは、今現在発生いたしております韓国におきましての日本大沢プレス製作所社長大沢得男さんの拉致事件のことにつきまして、少々お尋ねしたいと思います。  私は、この件につきまして、本年一月三十一日に田辺哲夫参議院議員の御紹介で御本人のお兄さんとかごきょうだい等お話を伺いまして、ちょうど日韓議連で二月二日、三日と訪韓しましたので、韓日議員連盟鄭幹事長あるいはまた申外務次官、あるいは日本大使館方々等にもお会いいたしまして、そして切実にその解決をお願いいたしました。同時にまた、大沢得男社長も、その際はあるホテルに隠れておりました関係で、私と二月二日の夜会いまして、弁護士さんも一緒におりましたが、よく事情も伺いました。  この事件相手様が、日本企業が悪い機械を売った、こういうことについては、それは本当に悪かったか悪くないかは私はわかりません。しかし、どのようなことがありましても、この二月から約一カ月間二回目の拉致をされて、そして御本人からはファックスで命が危ないというようなことを言ってこられる、こういうことは私は大変ゆゆしいことではないか。そしてまた、外務省も挙げて韓国外務省にいろいろ協力方をお願いし、今韓国の官憲の方も一生懸命になってこの解決に向かっていただいているということは私は大変感謝しております。けれども、もう余りにも長く、本当に命の危険も何かあるような気がいたしますので、これは本当に、将来の日韓友好考えたりあるいはまた邦人保護考えましても、外務省もこれは本気でひとつ今以上に、もちろん今までもやっていただいたことは十分わかりますが、さらに取り組んでいただきたい。  そこで、まずきょう現在事実関係がどうなっているかだけ簡単に外務省からお尋ねしたいと思います。
  11. 黒河内久美

    黒河内政府委員 今先生御指摘のとおり、政府といたしましては、在韓大使館を通じまして、大使以下あらゆるレベルで韓国当局にこの問題の解決につき働きかけを行っているところでございますが、三月十五日に至りまして、大沢関係者から我が方に対して、商取引先大沢社長の解放につき合意すべく折衝中であるという通報を受けるに至りました。一般論として、商取引上のトラブルを当事者間で解決することにつきましては、政府として関与する問題ではございませんけれども、海外における邦人拉致事件という非常に重大な事件でございますので、この事件解決の責任を持つ当該国政府の主権を尊重しつつ、我が国政府としても邦人保護の観点から早期安全救出のために必要な措置を引き続き講じているところでございます。
  12. 戸塚進也

    戸塚委員 大臣にお尋ねしたいのでございますが、この件についてはいろいろ問題があると思うのですが、第一は、何といってもこの大沢社長の安全というものを最優先していただきたい。一刻も早く拉致から解放されて、そして日本にとりあえず帰してほしい。今韓国法律では、疑いがある人を法律で外へ出さないという制度がありまして、なるがために社長相手から追われていても韓国から出られなかったという理由があるわけです。しかし、それは相手方の法律があるから無理もないといたしましても、こういう問題が起こっている以上は、やはり一刻も早く一度日本に帰国をさせていただいて、身の安全の後に、その民事上の話を進めていただくようにお願いしたい。  二番目は、社長ではないけれども、その会社の総務部長さんが高速道路の路上で日本大使館の車から引きずり出されてまた連れていかれた。これは私は外国でお勤めなさる日本外交官にとっては大変大きな問題だと思うのです。そういうことが二度と再び起こらないように、この二点について大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  13. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今申されました御趣旨に沿いまして全力を挙げたい、かように考えております。
  14. 戸塚進也

    戸塚委員 それでは、在外公館の問題につきまして、当委員会に小委員会がございまして、もう数年審議を重ねております。これにつきまして、今年度平成元年度の予算も今、国会審議中でございますが、大臣はこの小委員長所見に出ました問題について、どのように取り組まれたか、簡単に御所見を伺いたいと思います。
  15. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 簡単に御報告申し上げます。  在外公館小委員長所見をいただきまして、外務省としても、その趣旨を体しまして予算折衝をいたしました結果、在外職員の定員につきましては百六名という増員が認められました。  また、在外公館の施設の整備拡充の面では、在西独大使館の事務所ほか十三公館新設、設計、それから不健康地対策につきましては、官費借り上げ宿舎拡充などが計上されました。  また、全体といたしまして、外交実施体制の強化のための足腰予算につきましては、前年度比九億一千四百万円増の百三十一億円が計上されております。  さらに、緊急時の邦人保護在外日本人学校拡充等についてもいろいろな手当てがなされております。拡充につきましては、アガナの新設のための予算が計上されております。  最後に、旅券制度改善合理化について御所見をいただきましたが、これにつきましては、旅券法改正案を今国会での成立を期して提出をしているところでございます。  以上、外務省といたしましては、在外公館小委員長所見に深く感謝を申し上げるとともに、このラインに沿いまして、できるだけこれを実行していくように努力しておるところでございまして、今後とも御支援、御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  16. 戸塚進也

    戸塚委員 ただいま官房長から丁重なお話がございましたが、大臣として今後この内閣委員会に設置された在外公館小委員会に対する期待等を含めて御所見がありましたら伺いたいと思います。
  17. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 戸塚さんを長といたします在外公館小委員会のいろいろのアドバイス、また御支援を賜りましたし、また広くは当内閣委員会の各党挙げての御支援をちょうだいいたしまして、今官房長が申しましたように、いろいろと措置をとることができましたことに対し、私は深く感謝を申し上げる次第でございます。  もう既に日本は大変な国家になっておりますので、より一層外交活動というものを活発に展開いたしまして、竹下総理のおっしゃっておられますとおり、世界の平和に貢献する日本の実態というものをなお一層固めていかなければならない、かように考えております。  その意味で、総理も特にことしの施政方針においてそうした趣旨のことを述べられました。これは初めてのことでございますが、そうした総理の意気込みもございますが、いずれにいたしましても、今後ともども当委員会並びに小委員会アドバイス、また御支援のほどを衷心よりお願いいたしたいと思います。
  18. 戸塚進也

    戸塚委員 四月、五月とお隣組元首なり総理がいらっしゃると伺っております。四月には李鵬中国総理、そしてまた五月には盧泰愚大統領、それぞれ私たち日本にとっては非常に大事な隣国お客様ではないか。これはもちろん国賓そのほかの御待遇でお迎えすると思いますので、万々抜かりはないと思いますけれども、十分今後の日中友好日韓友好あるいは世界平和のために役立つ御来日になっていただきたいと期待しているところでございます。  その点について、大臣としてどういうお心構えでこの二人の国賓なり、あるいはその他大事なお客様をお迎えになるおつもりであるか。  それからまた、李鵬首相については私、詳しいことは知りませんが、盧泰愚大統領については国会演説を御希望なさっているようにも伺っております。私は、やはり隣国元首がお見えになって、そういう御希望があった場合には、ぜひ実現をしてあげて、今ちょうど朝鮮半島の問題も南北対話と非常に大事な時期に来ているわけでございますので、そういうことも含めてぜひ実現していただきたいと思っておりますが、そんなことの現状も含めてお考えを伺っておきたいと思います。
  19. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 韓国並び中国から首脳が訪日をされますということは、我が国といたしましても心からこれを歓迎申し上げたいと思う次第でございます。このことは官民挙げて御歓迎申し上げます、こういうふうに私は表現をいたしております。  韓国に関しましては、盧泰愚大統領みずからお越しになる、そうした本当によいチャンスでございますから、今日も民間の関係は非常によい関係でございますが、さらにその関係を深めていかなければならないと考えておりますし、そのためには、やはり民主主義という基盤を同じくする両国の間におきましても、当然国会間におきましても、さらに意思の疎通ということが必要であろうと思います。  最近、日韓議員連盟等の活発な御活躍が両国間の友好親善に大きな貢献を果たしていただいておることも、我々といたしましては感謝いたしております。  盧泰愚大統領国会演説、ひとつそうしたことも大切な旧題と思いますが、ぜひともこれは院の問題でございますので、院におきまして十二分に御検討賜りますように、そのことをお願いする次第でございます。  中国とは、昨年、日中平和友好条約締結十周年を迎えました。したがいまして、総理みずからもお行きになられました。また、ことしは中国建国四十周年でございます。そうした意味で、李鵬総理お越しになられるということも、これまた両国間の国交をさらに大きくするものであると思っておりますので、同様のことでございますが、官民挙げて我々は歓迎いたします、そして将来にわたって両国ががっちりとした隣国の間のきずなを固めていきたい、こういう気持ちでおるような次第でございます。  かくして、日本韓国日本中国、さらには将来韓国中国、さらには朝鮮半島南北問題等々が平和の方向友好方向をたどりますことは、単にアジアの安定のみではなく、世界の安定に通ずるものである、こういう気持ちで私たちは今後対処していきたい、かように考えます。
  20. 戸塚進也

    戸塚委員 先週の土曜日に、日韓議員連盟韓日議員連盟両国の合同の法的地位の向上の委員会がソウルで開かれまして、その際に共同声明といいますか、合意文が出され、新聞にも報道されました。それによりますと、いわゆるサハリン残留韓国人問題等人道的解決等も含めまして、日本韓国国会議員一緒に訪ソしてこの問題の前進的な解決を図りたい、こういうふうなことを決められたように聞いておりますけれども、大臣、そういうことについて、また議員連盟等から協力方の要望があったときには、ぜひその実現を図るように努力していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  21. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 在サハリン朝鮮人方々の問題に関しましては、戦争中における我が国一つ政策のいわば犠牲者であると申し上げても私は過言でないと思います。それだけに、人道上の問題として、我が国はさらにこの方々の身分なり、また希望に対処する、そうしたことに対しましても積極的でなければならない、かように思っております。  既にいたしまして、我が国におきましても、与党野党を問わず、そうした議員連盟ができまして本当に努力をしていただいていることに政府感謝をいたしておるものでございますが、さような意味で、本年度予算も百万円台ではなくして五千万円台と、一挙にそうした御努力に報い、また遠く故郷を後にされた方々を何とかして人道上の問題としてやはり希望をかなえてあげたい、こういう気持ち予算も計上いたしておるところでございます。  いずれ御審議を願うことになるでございましょうが、今戸塚委員が申されました日韓両国議員によるところのサハリン訪問ということも、私はこれまた大切な問題であろう、かように考えておりますので、外務省といたしましても、そうしたことに関しましては、外交の面でできるだけお手伝いができる問題はお手伝いをしなければならない、かように考えております。
  22. 戸塚進也

    戸塚委員 大臣が今予算のことについてお触れになりましたが、先日新聞報道によりますと、せっかくサハリンから日本に来られ、そして肉親とめぐり会うというようなことがありましても、六畳か八畳のところで何人もごろごろ寝て、インスタントラーメンを食べて生活をしているということでは余りにもお気の毒でございます。せっかく日本においでいただく期間ぐらいはある程度気持ちよく、せめて日本国内旅行ぐらいできるような、そんなことをしてもらいたいなと思っておりますが、今はちょっと余りにもひどいので、そういった多少の財政的協力をしていただきたいが、いかがでしょう。
  23. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろと成員連盟からも承っておりますので、そうした環境改善と申しましょうか、それに対しましても今後努力をしなければならない、かように思います。
  24. 戸塚進也

    戸塚委員 今私ども日韓韓日議員連盟等で話し合っている中で、南北問題も大変明るい兆しが見えております。これを大事にしていかなければならない。  そこで、その一つの方法として、中国、アメリカ、ソ連、そして日本、そして南北国会議員さん、そういう人たちがこの東京あたりで集まって議員同士の平和の会議を開いたらどうかというような話もあります。これはまだ、ただ話であって、いつ実現するとはわかりませんが、大臣、そういうことがありました場合には、大臣も前向きに骨を折っていただけるでしょうか。
  25. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 朝鮮半島における南北問題で、今おっしゃいました米、ソ、日本中国、この四カ国が会議をして、そして南北いろいろ話をしたらどうかということは、何人かの方々から具体的に提案をされておりますが、関係者の中には、それに当初から賛成だという意向を持っておらない方もいらっしゃるわけであります。したがいまして、そうした問題には、我々といたしましておのずから非常に慎重でなければならない。特に、日本が過去三十六年間朝鮮半島に関しましては反省すべき歴史を持っておりますから、私たちがしゃしゃり出るのではなく、あくまでも朝鮮半島の問題は南北方々の話し合いということが第一義である。だから、それらの方々から日本もひとつ参加してはという声がかかった場合には、我々といたしましても喜んで参加して、今後の平和のため、また繁栄のために努力をすべきである、かように考えておりますので、そういう考え方で今戸塚さんのおっしゃいました問題に関しましても、今後いろいろと対処してまいりたいと思います。
  26. 戸塚進也

    戸塚委員 御大喪が無事に事故もなく終了し、百六十四カ国からお出かけくださった元首初め関係方々がつつがなく御帰国いただいたことは、私は日本の特に国会議員として本当にうれしいことであり、また外務大臣初め外務省のあのときにとられた大変な御苦労と御努力とに心から敬意を表し、また感謝をしたいと思っておるわけでございます。  その国際的な評価というものは、大臣のところへ入る情報が一番多いと思いますので、簡単にそのことについてもお触れいただき、同時に、今度は、来年はしかるべき時期にいわゆる即位礼そのほかの行事が行われるわけでございますが、先般は何せああいうことでございましたので、お出かけいただいても外出もお控えなさる、皆さん非常につつましく喪に服していただいたわけでございます。しかし、即位礼にお出かけのときは、せめて日本のいいところを見ていただいたり、やはり本当に心の触れ合いを、日本の国民と外国のお出かけいただいたそうした元首を初め立派な指導者の方々と触れ合うとか、いろいろなことをまたみんなで国民挙げて考えてさしあげたら、さらに日本と国際的な友好が深まるのではないかと思っておりますが、その辺のことについても含めて御答弁をいただきたいと思います。
  27. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今おっしゃいましたとおり、古今未曾有の参加国のそうした友情によりまして、昭和天皇の御大喪の礼は盛大かつ厳かに終了することができました。このことは、私たちは国民はもとより世界の各国の方々に御礼を申し上げているところでございます。  どういうふうな評価を得たかということに関しましては、まあまちまちではございましょうけれども、おおむねの線を申し上げますと、輝ける伝統、古き伝統、厳かなる儀式、こうしたことが参加者の脳裏に強く焼きつけられておるということは事実でございます。ある放送局の実況中継では、今私たちは歴史の特等席におります、この一言で私は参加者の方々がどのように日本を見ていただいたかということについて、本当に心温まる話を聞いたという思いでいっぱいでございます。また、天皇陛下、皇后陛下がそれぞれみずからこうもりを差してお歩きになった姿を評価している国が非常に多い。やはり日本民主主義が徹底しておる、新しい天皇はみずからアンブレラを持ってお歩きになった、そうした評価もございまして、我々といたしましても、象徴天皇の姿をそうした国々が新しい思いで見詰めていただいたことに対して、また心温まる思いを抱いている次第でございます。  二番目は、あれだけの大きな規模を実によくやりましたねということでございますので、この点は、ほとんど徹夜で頑張ってくれました関係の方方に我々といたしましても心から御礼を申し上げたい、かように思っておる次第でございます。  引き続きまして即位の大礼も当然あるわけでございますが、いろいろ今戸塚委員から申されましたようなことも私は大切なことだなと思ってお伺いいたしておりました。しかし、この問題はいずれ内閣におきまして具体的に検討することでございますので、今から私から申し上げるということはまだまだできない段階であるということを御理解賜りたいと思います。
  28. 戸塚進也

    戸塚委員 外務大臣、ブッシュ政権についての評価なり見通しなり、そういうことについて大臣がどうお考えになっていらっしゃるかをちょっと一言だけ伺いたいと思うのです。  といいますのは、ブッシュ政権が発足しまして、確かに議会との間には国防長官の承認の問題ではございました。けれども、その後の新長官を承認される場合は、あのようなまたすばらしい姿で承認されるというような姿もありました。ブッシュさんが大統領になられてから、場合によるとレーガンさん以上に議会とは協調していく、こういうような姿勢になっておられるのじゃないか。ということはまた、いい面と、ある面では対日のいろいろな問題について、大統領と議会が一緒になっていろいろまた経済問題等について何かのアクションがないか、こういうことも私は感ずるのでございますが、大臣としてのブッシュ政権の、発足何カ月でございますが、その評価について伺いたいと思います。
  29. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も、去年の暮れにはまだ次期大統領であった当時のブッシュ副大統領ともお目にかかりお話もしましたし、ことしは総理のお供をいたしまして会談にも立ち会わさせていただきました。いずれにいたしましても、アメリカにおける輝かしき伝統のもとに新しい大統領が新しい政策をとることに大いに意義あることがもう脈々と私たちには伝わってまいりました。  しかし、大まかに考えれば、やはりレーガン大統領の八年間副大統領をお務めになった方である、また同じ政党であるということから申しますと、その基盤が大きく動くということはあり得ないであろうと思います。しかしながら、やはり新大統領には新大統領としての御見識なり御抱負も当然あるわけでございますから、私たちはそうしたことを今後見守っていきたいと思いますが、とりあえず両国首脳の間におきましては、日本といたしましては、日米関係我が国外交の基軸である、また同時に、日本の立場は常に西側陣営にあること、アジア・太平洋の一員であること、これは揺るぎなきものであること、また日米安保体制等々によって我々は本当に緊密な関係にあること、したがって、また貿易面においてもいろいろ問題はあろうけれども、ひとつグローバルな視点に立って共同政策、共同作業――共同政策というのはなんですが、共同作業、そして協力によってぜひともいろんな問題を処理していきたい、こういうふうなことを申しまして、これにつきましては、両国首脳が同意をされておる。特にブッシュ大統領は議会出身の方でございますから、そうした今お尋ねの面におきましては、あるいはさらに議会との緊密な連絡を重要視されるのではないか、このことは想像してもいいのではないか、私はこういうふうに考えております。
  30. 戸塚進也

    戸塚委員 最後に、対ソ関係のことについて大臣の御所見を伺いたいと思います。  北方領土が返ってくるのじゃないかという淡いながらも期待を持ちつつ、また日ソ間の平和友好を深めるために努力をされるということは、私は外務大臣の御努力を高く評価をしております。しかし、最近ではまた北方領土問題は遠のいたという新聞記事もありますし、またゴルバチョフ書記長の訪日も何か遠のいたというようなけさの新聞等も拝見いたしました。これは、国際政治は時々刻々変わっていくわけでございますから一喜一憂する必要はございませんが、やはり対ソ政策についても、北方領土問題を粘り強く御主張いただきながら平和的友好に向けて努力をされることは、私は、これはしかるべき対ソ政策かな、このように思っておるわけでございますが、今のゴルバチョフ書記長訪日が遠のいたとか、そういった問題が本当にそうなのか、あるいはまた北方領土問題について大臣がどんなことをお考えになっていらっしゃるか、そのことを伺って質問を終わりたいと思います。
  31. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、ゴルバチョフ書記長の訪日でございますが、遠のいたと断定するのは尚早である、まだそのような段階でも何でもありません。私といたしましては、シェワルナゼさんとお話をしまして、我が国は四名の総理大臣が貴国を訪問されておる、やはり日ソ親善、本当の親善ならば、首脳同士が話してほしい、今度はひとつ来ていただきたいものである、それは極力早い方がいいのではなかろうか、だからことしにでも来ていただいたらどうか、こういうふうに私は表現いたしておりますので、それがだめになったとか遠のいたとかいうような感じは私は今日抱いておりません。当然そうしたことを一つの目標としながら、我々の間におきましては、まず平和条約を結ぶことに全力を挙げたいと思います。その平和条約を結ぶためには、北方四島問題を解決しておかなければならぬ、こういうふうに申し上げておるわけで、シェワルナゼ外相との間におきましても、今までモスクワで一回、東京で一回というふうな交互に訪問した外相会談が、今度は何回も会おうやと、そういうふうに私からも申し、シェワルナゼさんからも申されまして、既にパリで一回出会ったということでございますから、今度は五月に参ります。その後も顔を合わす国際会議等々がございますから、極力そういう機会をとらえまして、今私が申し上げましたような方針のもとに日ソ間の関係改善をいたしたい、かように考えております。
  32. 戸塚進也

    戸塚委員 終わります。
  33. 玉生孝久

  34. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 戸塚委員の質問に引き続きまして、私の方からも、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案、この改正の問題も含めまして、当面の内外情勢の幾つかの問題も俎上にのせながら宇野外務大臣にお尋ねをいたしたいというふうに考えております。  御案内のとおり、国会はリクルートの徹底究明問題あるいは四月から予定をされております消費税の導入をめぐる議論の問題等異常な状態が現実に続いておるわけでありますけれども、私はかつて中曽根内閣当時、売上税問題で非常に紛糾したときにも党内国対で申し上げたのでありますけれども、あの激しいベトナム戦争のときもテト休戦というのが実際に実施された。国会は戦争の場でありませんけれども、しかし与野党対決して異常な姿になることがある。しかし、国家国民の立場から見て、国政上四月の新しいスタートに備えた法律案あるいは場合によっては暫定予算というものは整々として処理すべきものである、こういう立場を当時主張したのであります。これは今も私は基本的に変わりがございません。  今回のこの外務省関係の法案についても、私国対でお願いをしましたときに、これは日切れ法案というのにはいささかどうかという意見もございました。しかし、対外的な外交関係の問題は、御案内のとおり、今回ウィーン国際機関日本政府代表部をつくる、あるいはマーシャル日本大使館あるいはミクロネシアの日本大使館新設する、これはやはり対外的な外交関係の問題でございますし、同時にまた、在外公館で大変苦労して外交関係の国政の推進に当たっておられる外務公務員給与、こういうものが子女教育手当住居手当の問題で若干改正される。早く決めて国会で処理すれば安心して仕事にも従事できるだろう、こういうことを考えまして、他の野党の皆さんも同じような気持ちで日切れ法案として取り扱う、こういうことに御案内のとおりなったわけでございます。  逆に、そうなりますと、質疑時間が制約をされちゃって、本来なら私も二時間やりたいところを一時間で済まさなければならぬ。あと広瀬さん、五十嵐さんが引き続き我が党で質問がある。それが何をテーマにするかも念頭に置きながら質問をしなければならぬ。私もちょうど数日来風邪を引いておりまして、コンディションが余りよくないのでありますけれども、そういう点で若干の質問をいたしたいと思っております。  まず、今回の在ウィーン国際機関日本政府代表部の設置問題は、これは三年前でしたか、当時内閣委員長でありました石川さんを中心にして、私も含めて内閣委員会の海外の国会派遣の調査が行われまして、バハレーンに参りまして、ここの大使館をつくる、我々もそれは推進しよう、これは事実上実現を見たり、あるいは在ウィーン国際機関政府代表部ウィーンに参りましたときにはそういう強い要請を受けまして、この問題については我々も内閣委員会でバックアップしようということ等もあって、我々の内閣委員会でやってきた、そういうかねてのものが今回改正案として出てくる、約束に基づいてこれは早く片づけてやりたいという気持ちももちろんあるわけであります。  それから、子女教育手当についても、年少子女の十八歳に達した日以後のいわゆる支給要件を少しく弾力的に考える、あるいは住居手当についてもその手当の支給を改める、こういった改正については、私どもも基本的に賛成でございまして、何ら異議がないわけでございます。  過般、マーシャルの方からもまた、ミクロネシアの方からも代表が大喪の儀に参列される。大使館が双方に設置されるということを歓迎して一日も早く準備しなければならぬ、そういう状況にあるとも伝えられております。ただ、日本の首都の地価の高騰の中で、人口十万に達するかどうかというそういう国々がうまく大使館外交活動ができるんだろうか、そんな懸念も率直にしないわけではありません。それは、数年前に日本にある外国大使館の身売り問題というようなことが出て、これは外務省あるいは外務大臣だけの問題ではありませんけれども、内閣として、外国から日本大使館を置いて活動する場合に、日本の国内政治の欠陥のために、異常な地価の高騰で、とてもじゃないが大使館の運営ができないということであってはいけないのであって、そういう問題についてもかつて指摘をしたことがございますが、今回の改正問題あるいは今申し上げたような問題等について、まず外務大臣から少しくお答え願いたいと思います。
  35. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいまお話がありましたとおり、特に今回の在外公館の法案提出に際しましては、角屋委員を初め野党の先生方にも格段の御高配をちょうだいして審議をしていただくことになった、これに対しまして、私はまず冒頭お礼を申し上げておきたいと存じます。長年の体験によりまして、また海外視察等を通じまして、我が国在外公館の強化充実に関しましては、ただいま御卓見を承りまして、我々といたしましても非常にうれしく存ずる次第でございます。  過般の御大喪には、既に御承知のとおり百六十四カ国が参加されましたが、我が国が承認している国家は百六十九カ国で、この中に日本も入っておりますので、百六十八のうち百六十四参加をしていただいた。他の国もいろんな事情で参加できなくて、決して日本をいろいろ批判されたわけではない、かように思いますと、ますます我が国の国際的責任というものは重大であるということを我々みずからも考えなければなりません。特に、経済面におきましては、もう既に実質世界一であると評価されるに至りました日本といたしましては、当然それだけのお返しをしていく時代を今迎えておると申し上げても過言でないと私は思っております。  さような意味でも、在外公館の活動を活発化する、充実するということは、我々の一番願うところでございます。しかしながら苦しい財政下にもございます。そうした中にありましても、いろいろと議会の御支援を得まして今回の設置を見たことは、非常に私はとうといことであると存じております。特にマーシャル及び在ミクロネシアの各大使館、仰せのとおり、かつては我が国とも非常に親密な関係にあった太平洋の諸島でございまして、こうした方々が新しく独立をされ、我が国も喜んで承認をさせていただいた、そのためには当然市外公館を設置いたしましてもっと交流を深めたい、こういう気持ちでございます。  現在、在外公館は全部で百七十三ございます。それで大使館が百七、総領事館が五十九、領事館が二、政府代表部が五、こういうことでございまして、非常に全世界にわたって設置はされておりますが、まだまだ先ほど申し上げましたような各国の関心、日本に対する期待から申しますと、さらに今後も一段と努力をしなければならない、かように思っております。なお一層のアドバイス、またよき御支援のほどを衷心よりお願い申し上げる次第であります。
  36. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 戸塚委員からもお触れになりましたが、我が国外交を展開する場合に、やはり一番外交相手国として基軸になるのは日米であるということについては、私は異議がないところであります。ただしかし、日米安保体制という問題になりますと、御案内のとおり議論は難しい。しかし、日本側が国際外交を展開する場合に、いわば西側のリーダーであるアメリカとの関係というものは極めて重要である、これをやはり整々円滑に運営を配慮していくということは非常に重要なことだと思います。まあ日米の貿易関係というものを見て、四割近い日本の輸出の比重をアメリカとの関係で占めておるというのが正常であるか異常であるかというようなことに内容的になりますと、これは議論が存在する。もっとEC諸国なり東南アジアなりあるいはまたソ連、中国との関係における貿易の拡大を通じて、もっと日本の対外貿易というものをバランスのとれた形に改善をしていくということも必要であろうと思いますが、それはさておいて、我が国外交を進めるに当たって日米関係我が国外交の基軸になるということについては、私は異議のないところであります。  そこで、きょうは実は小渕官房長官にもお見えいただいて、例の次期支援戦闘機、FSXの問題がアメリカの議会筋の一部の強い意見等もあって、ブッシュ大統領がいわゆるF16をベースにした日米の共同開発という基本方針は守りながらも、内容面についてやはり注文が出てきておる。西廣防衛事務次官が急遽訪米するという事態を今日迎えているわけでありますが、かつて私は防衛二法の議論をしたときに、いわゆる防衛に対する党の基本的な立場というのは立場としながらも、重要な兵器について国産でやるかあるいは共同開発でやるかという問題は極めて基本的な問題だ、FSXの問題を議論したときに、日米の共同開発ではなしに自主開発、国産で本来やるべきものではないかということを強く申し上げました。今回の経緯の細部は別として、先ほどの戸塚委員との質疑ではありませんけれども、連邦議会の関係では残念ながら共和党は多数政党ではない。そういうところに配慮をし過ぎるというと、本来二国間関係において既に話し合ったことにさらに変更を迫られるということになってまいりますと、一体それならば、そのことに対してどう対応するかという問題にぶつからざるを得ない。  外務大臣がすべてを御答弁願う立場にないと思いますけれども、しかし、今回の次期支援戦闘機、FSXをめぐる問題で、場合によっては日米間の話し合いのあれを白紙に還元をして、根本的にどうするかを考えるという立場もあっていいと私は思うぐらいでありますけれども、この問題について外務大臣として情勢をどう把握しながら御判断されておるのか、このことについて御答弁願いたいと思います。
  37. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般、松永大使がベーカー国務長官より会見を申し込まれまして会っておりますが、そのときには、今申されましたFSXに関しましての大統領の考え方を大使が聞いたわけでございます。どういう内容かということは、これは外交上のことでございますから公にするわけにはまいりませんが、私の感触から申しますと、日本がボールを投げられたんじゃないかという一般的な質問をなさる方もありますが、決してボールは投げられておらないと私は思う。考え方を聞くまでである。もう既にこのことは両国で御指摘のとおり決まった問題であって、あとは米政府が議会に対しまして通告をしていただく、私たちはそのことの一日も早いことを期待しておりますよ、こう申し上げた段階のままでございますので、私といたしましては、米政府がそうした意味で大統領を中心といたされまして非常に苦労なさって、また努力をしておられるということは重々承知しております。また議会にもいろいろな話があるということも承知いたじておりますが、今申し上げましたような段階でございますので、我々といたしましては、ひたすら米政府の今後の御努力を期待するという段階であります。  西廣防衛庁事務次官を派遣せしめるということは、当然大統領のお考えを聞いたわけでございますから、それに対しましても、やはり防衛庁として、また日本政府としての考え方を申し述べる機会があってしかるべきではないか、こういうことでございますので、そうした意味で参りまして、恐らくそうした意図は松永大使に伝えられるであろう。その後米政府とはどうするか、これはまだ決まっておりませんが、そういうふうな段階でございます。それが現状でございますので、それ以上私からコメント申し上げることはないと申し上げてもいいのではないかと思います。
  38. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間が限定されておりますから、先ほど私のこの問題に対する基本的な考え方を申し上げましたけれども、小渕官房長官もきょうは首相官邸で在外公館大使、大洋州関係あるいは東アジア関係といいますか、そういう方がちょうどおいでになっておりまして、本来、法案の審議がなければ外務大臣もそちらへ出席をされる。であるとすれば、総理も御出席のようでありますけれども、この問題は外務大臣から大詰めのところの若干の点をお聞きする程度にとどめざるを得ない、こういうふうに考えたわけでございますが、やはり日本の次期戦闘機をつくるわけでございまして、アメリカの戦闘機をつくるのを共同開発するわけではないのであって、したがって、日本の主体的立場というものが、やはりこれから折衝の結果が明らかになる場合に、我々の厳しい批判を受けるということのない形でこの問題に対応するということが基本的に重要であるということだけ申し上げておきたいと思うのであります。  それから、レーガン時代に引き続いて新しくブッシュ大統領の登場ということになったのですけれども、これは副大統領もやっておられましたから、外交関係についても十分レーガン時代の外交政策、その政策の中でみずからもそれを継承するもの、あるいは新しく新大統領としていわゆるブッシュ大統領色というものを打ち出していくところ、これは今の段階では必ずしも定かではございませんけれども、ただ、私の感じからいたしますと、レーガン時代は、ソ連に対して当初は悪魔の帝王と言って厳しく対決姿勢を示しておりましたけれども、二期目になりましたら、今度は戦略核の問題あるいはINFの全廃問題、いわゆる国民が望んでおるし、世界も強く求めておる核兵器の廃絶への一歩一歩を進める。こういう点についてINFの条約の締結、それの実施というものを通じて中距離核戦力というものを全廃する。次は戦略核の五〇%削減である。このコースについては、テンポは別としてレーガン大統領の政策を継承するだろう。しかし、このテンポは慎重な姿勢でこれを進めていくだろう。  対外政策関係は、NATOでも中距離核戦力全廃後の小規模の核兵器というものをどうするのか、あるいは通常兵器の削減交渉が始まっておりますけれども、それをどう考えていくのか。これはNATO対ワルシャワ双方の、やはり関係国の平和と安全に関する基本問題でございますから、その点についてはNATO加盟国にも不協和音が必ずしもなしとしない。それをやはりブッシュ大統領としてはまとめながら、ヨーロッパにおける西側の体制をとらなきゃならぬという点で、これからどういうふうにそれらの点の調整あるいはまとめをやっていくのかという点も注目されるところだと思うのであります。  アジアにおいては、御案内のとおり、中国とソ連、長い間ある意味における一つの社会主義国といいますか、共産主義国といいますか、そういうところの不団結、対立というものが続いておりましたけれども、中国のいわば三大障害条件、カンボジア問題がある、アフガン問題がある、あるいは中ソ国境問題があるといったような点について、アフガンはいろいろ問題はございますけれども、ソ連軍が撤兵をする、そういったことで一つの障害は取り除かれる。カンボジアのベトナムの撤兵問題についても話が進んでおる。ベトナムの方から外務省サイドで中国に久方ぶりに訪問するというふうな事態等もあって、これが進んできておる。中ソ国境の問題についても、珍宝島その他の問題についていろいろ具体的な裁きが出てきておる。  まだ詰めの段階は少し残っておる問題はあると思いますけれども、そういうふうなこと等を通じて、やはりブッシュ大統領は、一方ではヨーロッパをにらみながら、他方では中国、ソ連のいわゆる両国間の関係改善というものの状況を見ながら、この間大喪の儀に参列をされまして、直ちに中国へと、韓国へと行かれる。中国では、中ソの関係改善というのは歓迎するところである、私は内心そう思っているかどうかにはちょっといささか疑問があるのですけれども、いわば中国カードというものを今まで有効にアメリカは使ってきたのじゃないか。ところが中ソの関係改善によってチャイナカードというのは必ずしも有効にソ連に対して使えるという立場が薄まるという点は間違いない。そういう点はいろいろあると思いますが、いずれにしても、新しいブッシュ大統領の登場、核兵器の問題についてはテンポは少し慎重になるけれども、これは進めるだろう。対アジア関係あるいは対ヨーロッパの関係、もちろんアフリカや中近東あるいは中南米問題もございます。これらの問題について、宇野外務大臣として、アメリカの対外政策というものは、日本も含めて、簡潔に言うならばどういうふうな方向で進むのか、私は若干のことを申し上げましたけれども、それらを含めてひとつ御答弁願いたいと思います。
  39. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今角屋委員から広範な世界におけるいろいろな事象をお述べになって、それに関する認識とあわせて今後の成り行き等々に関しましても格別の関心をお示しなされました。おおむね私もそうした事態を歓迎するものでございます。  特に、アメリカは強力なリーダーシップを発揮いたしまして、レーガン大統領の残されました米ソ間の問題に関しましても、やはり対話の継続はなさると思いますし、といいながらも抑止とバランスということにも十分配慮されて、今後世界戦略をねらうのではないかと考えております。特に、NATO方面もさようでございますが、やはり我々といたしましては、アジアというものを中心に考えてまいらなければなりませんが、米国とそうして中国、またソ連と中国関係改善は大いに歓迎するところでございます。中国側に言わせますと、中ソの関係改善はやりますが、五〇年代には戻れません、こういっただし書きをつけておられることも、私たちといたしましては認識をしておかなければなりません。  特に、中国が三つの障害のうち、アフガンはソ連の撤兵によりまして一応また新しい段階を迎えておりますが、中ソ国境の問題は両国間の問題にあるにいたしましても、我々の足元のカンボジア紛争の速やかなる終えんを迎えるということは、私は大切なことだと思いますし、このことに関しましても、銭其深外相とも十分お話をいたしておりますし、また中ソ間におきましても真剣な討議がなされておるということは歓迎すべきであります。もちろん、まだ話はそう具体的に一致点というところまではいっておりません。しかし、世界じゅうが現在は新しい立場で新しい対話の時代を迎えておるということだけは歓迎していいのではないか、私はかように存じております。  もちろん、常に申しますが、INFのグローバル・ゼロがこれでもう完全に万歳なんだということは申し上げるわけにはまいりませんから、それは一つの核軍縮の第一歩として我々は歓迎する。依然として対決が残っている部分があらば、我々も努力いたしまして、そうした対決がないような時代を築くべく大いに日本日本としての役割を果たすべきだ、かように思います。
  40. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 アメリカとの対外政策という問題は非常に大切なことだというふうに申し上げましたが、他面、日ソ関係の改善ということも、世界の平和と安全あるいはアジアにおける日本の平和と安全のために極めて重要な相手国であるということは間違いのないところだと思います。  私は、十数年来、たまたま日ソ友好議員連盟の事務局長というのを亡くなった辻原さんからバトンタッチを受けて、役目柄円卓会議あるいは櫻内代表団の訪ソというようなことも含めて少なくとも十五回になりますか六回になりますか、単独でもソ連を訪問しました。そして、最初就任した当時は、日ソ両国国会議員団の代表の相互交換というのが行き詰まった段階でございました。そこで、私はソ連を訪問して、日本国会にソ連国会代表団を迎えるということで奔走した時期がございました。その後、ソ連の方と日本国会の両院議長が御招待される、今は引かれましたけれども、クナエフ政治局員を中心とした国会代表団が日本に来るといったようなことで、冬の時代から若干明るい日差しがほのかに見える、そういう対話が開かれているという時代になったと思うのであります。  そういう時代の中で、数日来日ソの事務レベル協議、それから宇野外務大臣とシェワルナゼ外務大臣との会談を通じて、平和条約の問題、日本から言えば北方領土を解決して平和条約を締結するという基方方針のもとにおいての平和条約の話し合いをしよう、これが数日来行われたわけでありまして、五月には宇野外務大臣が訪ソされてシェワルナゼ外務大臣とのいわゆる定期外相協議といいますか、そこでボールを投げられた平和条約に対するソ連側の考え方の基本というものを踏まえながら、両国の外相会談を通じて、さらにゴルバチョフ書記長、これは最高会議幹部会の議長も今度は兼任されることになりましたけれども、それの訪日問題という点に焦点を合わせながら話し合いが持たれる、これは非常に注目されるところだと思うのであります。  だから、マスコミの報道では、領土問題進展なし、領土問題に微妙な変化とかいろいろ書いているわけであります。私も十数年来これに携わってきた立場から一定のこれに対するコメントをすべき立場にございますけれども、しかし、いずれにしても、北方領土問題については、六〇年安保のあの激動の中で、ソ連側が不当にもそれを契機にして、領土問題は解決済みあるいは存在しないということを言ってきたわけであります。私はソ述との会合等を通じて厳しくその点は今日までも日本の立場で主張し続けてきたつもりであります。その点では従来の方針に、到着点ではどうかということは別にして、ソ連側の対応に変化の兆しが出ておるということは間違いない。  それは一つには、二十一世紀に向けて、アジア・太平洋というのは世界の新しいかなめの時代を迎えようとしておる。それに対してソ連側とすれば、アジアというものを考える場合に、経済的な面でも大きな足がかりを持たない。NIESの台頭、あるいは日本を中心にしたアジア諸国の経済的地位がどんどんASEAN諸国も含めて高まっている。そういう時代に立ちおくれておるというのがむしろソ連側の状態であろうと思う。だとするならば、グローバルな意味において、日本の経済的な力、政治的な比重というものをかりながら、そういう対応を考えていくという気持ちがソ連側にもあるだろう。  また、そのためには、日ソ間に非常に大きく立ちはだかっておる領土問題を従来の既定方針で押し切る場合は、政経不可分の関係から、日本との関係改善というのは極めて時間を要する状態に追い込まれてしまう。今最高の政治判断ということでないけれども、そこに領土問題についても何らかの活路を見出すというソ連側自身の努力もしなければならぬという気持ちが動いているのであろうというふうに思うわけであります。これから五月にシェワルナゼ外務大臣と話されるあるいはゴルバチョフ書記長の訪日というものを強く求めていくという立場での外務大臣の基本的な認識と御方針を承りたいと思うわけであります。  その場合に、かねてソ連の方々と話をするときに、良好な条件のもとでしかゴルバチョフ書記長は訪問しないというふうな言い方を私は絶えずされたのであります。外交における樽俎折衝というのは、厳しい条件のもとでも、必要な場合にはお互いに出かけていく、出かけてくるということが基本ではないのか。したがって、良好な条件というものができなければとか、あるいは今出しております経済の長期協定問題あるいは観光、向こうから出してきておるものはいろいろありますね。そういう問題の幾つかについては対応できるだろうと思います。しかし、良好であるとか良好でないとかということでなしに、日ソ間において解決しなければならぬ問題については、早い機会にソ連側も最大限の努力の中で解決するという姿勢が基本であろうというふうに私は言ってきておるのでありますけれども、それらの問題を含めて外務大臣から御答弁を願いたい。
  41. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ソ連関係におきましては、いつも角屋委員が率先して国交関係改善のために御努力していただいておるということは私も重々承知いたしておりまして、ただいまのお話にも私は全面的にそのとおりであると申し上げたいと思うのでございます。  しかし、日本といたしましては、平和条約を結んでこそ初めて隣人としての関係がより強化されるのであり、また甚だ残念だが、領土問題があるから、我々としては四島一括返還、そうした問題を解決してこそ平和条約を結ぶ意義があるのである、この主張には依然として変わりはないと思います。どこかに弾力的な問題があればいいなあというお方も多々いらっしゃるわけでございますが、原則は原則としてこれは貫いていかなければならないと思います。そのような問題につきましても、過般事務次官レベルの作業部会が始動した、動き出したということは、これは両国ともに一つの前進として評価をしつつ、今回は一回目であるからなかなか実を上げ得なかったかもしれませんが、本当にこの両者間で腹をぶち割ってしゃべったということは事実でございますし、いろいろとその間のエピソードもあったと思いますので、そうしたものを通じまして、粘り強くこの問題の解決のために我々は努力をしなくちゃいけないと思います。  ついては、こういう重大な問題は、今お説のとおりに、首脳同士がしゃべっていただく、このことを忘れてはならないと私は思います。かつて鳩山総理が非常に不自由な肢体を引きずって、つえ一本に任せて行かれた。あのとき以来、我が国は熱意を持って訪ソを続けてまいったと思いますから、ひとつゴルバチョフさん、今度はあなたが来なさいよと、今おっしゃったように、満足すべき状態で来られるかどうかは別といたしまして、やはりいろいろな問題を首脳間で話し合ってもらって、それを作業部会なり外相会談でやっていこう、こういうことが必要である、そのことがアジアにおける安定、世界の安定につながる、我々二人の一挙手一投足を世界が見詰めておるよ、こう言って私はシェワルナゼと話した次第でございますが、今申されましたような大筋において私は全く意を同じくするところも多々ございますので、今後とも熱意を持って粘り強く、隣の隣人と本当によき関係を結ぶよう努力をいたしたい、かように思います。
  42. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 対ソ関係の問題で、若干農林水産省の水産庁の関係から簡単にお答えを願っておきたいと思います。  今、日ソのサケ・マス交渉をやっておるやさきに、ソ連の二百海里内におきます日本の北転船の違反問題が出てきたりしておるわけであります。これは三月十七日付のソ連沿海地方漁業規制局の日本に対する連絡、要請に基づいて全船帰還を命じて、今そういうことの調査をやっておる段階でございます。  私はソ連を訪ねる場合にはほとんど大抵漁業省を訪ねて、大臣に会ったり漁業次官に会ったりして言うことは、やはり日本とソ連との平和のきずなというのは北洋における漁業。これは二百海里時代で太平洋にソ連側の漁船も伸びてきてもいいわけだし、日本海にソ連の漁船が伸びてきてもいいわけだし、日本も同様に北洋に出かける。いわば日ソ間における平和のあかしというのは、やはり日ソの漁業関係が、双方の互譲の精神等も含めて平和裏に行われていくということが基本である。また、そういうことで、例のサケ・マスについての母川国の主張というようなものがございますけれども、長い間、百有余年にわたる苦労の末に築き上げてきた伝統の漁業、やはりそういうものも十分配慮しながら対応してもらいたいといったようなことを言ってまいりました。  そういう中で、日ソのサケ・マス交渉が行われておるやさきに北転船の違反問題ということが出てきたこと自身まことに残念だと思うわけでありますが、その辺のところについて水産庁の方から簡単に御答弁願いたいと思います。
  43. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ただいまお話がありましたように、最初に三月九日、それから引き続きまして三月十七日にソ連沿海地方漁業規制局からソ連水域内での北転船の操業問題につきまして通報があったわけでございます。それによりますと、不幸なことに西カムチャツカ等の複数の水域で日本とおぼしき北転船が船名なり登録番号を隠ぺいするとかあるいは抹消するという形で操業なり航行しているという通報があったわけでございます。ソ連側といたしましても、現在北転船でソ連水域に入っておるといいますか許可を持っておるのが二十七隻あるわけでございますけれども、これにつきましてソ連側の許可を取り消しまして、三月二十日までにソ連水域から撤退するようにという通報があったわけでございます。  現在、我々といたしましては、外交ルートを通じまして、その事実確認なりということを行っているわけでございますけれども、これと並行いたしまして、疑いを持たれたという不幸なことでございますので、全船に対しまして二十日までに日本の港に帰港するようにという命令を出しまして、現在全船が帰港しております。これに追っかけまして、三月二十日から十日間の検査のための停船命令というものも出しまして、現在厳正に調査を行っているところでございます。
  44. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の北洋におきます日ソのお互いの話し合いあるいは互譲の精神による従来からございますサケ・マス漁業交渉の日本側の主張も織り込んだ問題の解決、さらに今出てまいりました北転船二十七隻のソ連二百海里内の操業問題というのは、本来ならば十二月まで操業できる。それを今の段階で二十七隻許可を取り消してきた。すべてが皆だめだという状態にはないので、遺憾ながらある程度のものが本来ソ連との話し合いでやる操業の区域から越えて一あれは上から飛行機で写真を撮ったというふうなことも報道されているわけです。今、日ソの事務レベル協議やあるいは本格的な平和条約交渉への問題について日本がかたくなに政経不可分を言っておる。この漁業問題でという気持ちはソ連側には恐らくなかろうと思うのでありますが、やはり平和産業の問題は平和産業として整々に処理するという基本方針で、外務省の対ソ問題でも、今言った北転船の違反問題は違反問題として、ある程度厳しく処断すべき点のものは日本の国内の処断としてやるけれども、十二月まで操業できるものが準備万端整えてやっていく過程で二十七隻ともにもうだめだと言われたのでは困るわけであります。操業許可の問題については、実態の調査の上に立って、そうでないものについては操業許可を得るという努力については、外交ルートを通じて外務大臣の御協力を賜りたいというふうに考えるところでございます。  時間の関係もありますので、次に進ませていただきます。  御案内のとおり、朝鮮半島の平和的な環境あるいは南北対話の進展、それらを通じて朝鮮民族として自主的、平和的統一の国家をつくり上げていく、日本に可能なことがあれば、日本隣国としてサポートをしていく、こういうことが必要だと思うのでありますけれども、月末には我が党の田邊前書記長を団長とする代表団も行かれる。率直に言って、条約を通じての韓国に対する日本政府の対応、北朝鮮は未承認国という名において取り扱ってきた数々の差別的な取り扱いというものは、国際情勢全般が今までの東側、西側ということを乗り越えて、例えばインドの首相が中国へ出かける、従来であればソ連の影響が強いのじゃないかと言っておるところでもそうでありましょうし、あるいはインドネシアと中国の間も久方ぶりにひとつ仲ようやろうじゃないかというふうに垣根を越えた対話がそれぞれの間で進んでおる。韓国が東欧諸国あるいはソ連、中国との間の貿易ルートを通じてまず始めていこうというふうな時代でありますから、従来自民党政府がとってきた北朝鮮に対する態度というのを大きく転換する時代を迎えておるというふうに思うのであります。  私は、田邊君らの行く場合に、代議士会で、第十八富士山丸が返ってくる人道上の問題については、社会党も何回か行って、本来は外交のチャンネルの問題も含めて解決すべきことではあるけれども、これはめどをつけてきてもらいたいという注文もつけたのでありますが、朝鮮民主主義人民共和国に対する従来の日本政府としての対応というものを、戦前、戦時中を通じての反省も含めてどういうふうに外務大臣として対応されるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  45. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 朝鮮半島の問題は、最近とみに韓国の方から、やはり同じ民族が二つに分かれておることは甚だ残念な話である、さらに対話を続けましょうという話し合いが盧泰愚大統領の談話として発表されましたし、また北朝鮮側も、それに呼応すべく既に国会議員間におきましては三十八度線で会合が持たれた。私たちは非常にこれは歓迎すべき事態が起こっておる、かように存じておる次第でございます。角屋委員も当然御承知のとおりの経緯によりまして、現在は我々は韓国政府だけと基本条約を結ぶことにおいて唯一合法の政府であるという見解を示しておりますが、いずれこの不幸な事態は南北双方において解決されることを我々といたしましては心からこいねがっておる次第であります。  過去の三十六年間の不幸な歴史がございますだけに、私たちが先走って声をかけるということは、また日本がしゃしゃり出たというような面もございましょうから、私たちは、その問題はいわゆる日本語で一番、私はしゃしゃり出ないよ、しかしその関係改善に対しましては強い関心を持って、私たちもお声がかりがあるのならば、大いに今後の問題に対してお話しし、また御協力申し上げることはやぶさかでない、そのためには、ぜひとも我々としても、特に北朝鮮とは関係をいたしたいので、できたならば政府間の接触があってしかるべし、我々は何ら前提条件を用いずひとつ出会ってもよろしいということは、総理もまた私も、本会議場の答弁等を通じ、また施政方針あるいは外交演説等を通じましてお話し申し上げている段階でございます。だから、田邊前書記長を中心とする訪朝団がお行きになったことに私たちも非常に心から成果を期待いたしておる。私たち気持ちも、今申したようなこともお伝え申し上げておる。そうしたことで、第十八富士山丸の問題、当然これは速やかに人道上の問題として解決をいたしたく存じております。そのためには政党間の交流も必要でございましょうが、我々政府としては一日も速やかに政府間の接触、これをやってしかるべし、いずれも我々は門を開きましょうという態勢におるのが現在でございます。
  46. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今外務大臣からも御答弁ございましたけれども、いずれにしても、朝鮮半島全体の安定的な状態が確立されていく、南北対話も進んでいく、そして早い機会に民族の統一国家というものが自主的、平和的に形成されていく、その過程において、日本政府が従来とってきた北側に対する差別的な問題というのは速やかにこれを改善する。その前提として、やはり日本統治時代を含めた厳しい反省というものを朝鮮民主主義人民共和国側にも誠意を持って示していく、それらを通じて、当面緊急、人道上の問題としての第十八富士山丸の二人の方々を速やかに日本に返してもらう、こういうことのためにさらに努力をしてもらいたいというふうに思います。  そこで、もう時間が十分ございませんが、対中国関係というのは、私はやはりアメリカとの関係というのが極めて大切であるということを申し上げましたけれども、そのことは同時に、日本は言うまでもなくアジアの一員である。そしてお隣の中国とは同文同種と言われたり、いろいろなことも含めて非常に長いつき合いの歴史がある。かつては日本中国に学んできたとも申してもいい。不幸な事態が第二次世界大戦を通じて、さらにさかのぼれば満州事変以来の十五年戦争を通じてあるわけでありますけれども、しかし今、日中間の関係は日中平和友好条約の締結を契機にして大きく進展してきておる、幾つかの問題はありますけれども。これを子々孫々に至るまで継承発展をさせていくということは、我々の側、これは党派を超えて非常に重要な課題であると私は思うのでありますが、その中で、私自身従来からの関係もございまして、中国残留孤児の問題というのは心を痛めておる一人でありまして、今までも何回か本委員会を通じて取り上げてまいりました。  私、宇野外務大臣の詩集をいただいて、「宇野犂子集 自註現代俳句シリーズ・V期63」社団法人俳人協会の名において宇野先生の俳句が出ております。私の地元の油屋お紺の俳句が出ておったり、櫻内さんからも、宇野外務大臣はなかなか才人だよ、俳句もやるし、いろいろな面で多趣多芸だと言っておりましたが、これを見て感服をいたしたわけでありますけれども、シベリアに抑留された経験も持っておられる。ここに「捕虜の顔喜怒失せ白き息かよふ」という、シベリアに抑留されておる当時の俳句を書いておられます。もう一句ございますけれども。だから、そういう辛味では、中国残留孤児問題というのは外務大臣も、外務大臣ということを乗り越えて心を痛めておる従来からの問題の一つだと思うのであります。  たまたま私は、十九年の二月に召集されて中支に行くというときに、情勢判断をいたしまして、家内に荷物はそのままにして帰るようにというふうに申し上げている。したがって、帰国の苦労をせずに、亡くなった母親が迎えに行って帰ってくるということはございましたけれども、いずれにしても、中国残留孤児問題というのは、今後とも希望のある限り、日本として中国政府の了解も得ながら進めていくということであろうかと思います。過般、中国残留孤児がおいでになって、判明率が極めて低かった。しかし、来年もやはりまた四月以降やらなければならぬ、こういうことだろうと思います。厚生省からおいでいただいておりますので、若干その辺のところについて御答弁を願います。
  47. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  中国残留孤児の訪日調査についてでございますけれども、平成元年度におきましても引き続き集団での訪日調査を行うことにつきまして、中国政府の基本的同意を得ているところでございますので、今後具体的な実施時期などにつきまして中国政府と協議してまいりたいと考えております。
  48. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これまでの国会の議論あるいは厚生省自身実際に担当してまいりました実態に基づいて、受け入れ態勢あるいは自立を基本にしたいろいろな施策についても、新年度予算その他で改善の方途を出されておるということは、大変適切なことだと思っております。  最後に、宇野外務大臣にウルグアイ・ラウンドのこれからの対応という問題も含めてお答えを願いたいと思います。  去年の暮れに宇野外務大臣が、カナダのモントリオールで行われましたウルグアイ・ラウンドの中間レビューといいますか、そこで、日本側とすれば米の問題で非常に厳しい問題を他国から言われるという空気になるのじゃないかとここで懸念をしておりましたが、アメリカとECをめぐる他の重要な問題が焦点になりまして、持ち越されたと申しますか、宇野外務大臣がモントリオールにおいていわゆる食糧の安全保障問題ということに基本を置いて日本の立場を強調されたということは、私どもとしても考えを同じゅうする立場で大変御苦労さんだったと申し上げたいのであります。いずれにしても、最近の農村の選挙等を通じてのあらわれ方を見ても、政府・自民党が対外的に、外圧を通じて自由化を要請される、十二品目問題について十品目について譲歩する、牛肉・オレンジについても譲歩する、一体農村にあすがあるのか、そういう若い世代の認識も含めて、やはり非常に重要な、与野党を通じて問題の展開をどうするかという、そういう難問題だと思うのです。  そういう形の中でウルグアイ・ラウンドが展開されていくわけでありますけれども、竹下総理ともこの問題でやはり議論をいたしたことがございますし、中曽根前総理とも防衛二法なりなんなりを通じてこの問題で議論したことがございます。それは、三十一年国政に籍を置いておる私としては、そういう問題について、農政上日本の守るべき城というものはきちっと対外的にも主張し、それを守らなければならぬというみずからの政治信念に基づくわけであります。これからのウルグアイ・ラウンドの展開について、特に農業サイドの問題で、外務大臣として農林水産大臣とともにどういう基本姿勢で臨まれるのか、最後に御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  49. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ウルグアイ・ラウンドの話し合いが昨年の暮れ実を結ばずして一応凍結、あるいは四分野に関してはジュネーブで再度話し合おうということになりまして、近くその話し合いがなされます。  農業に関して申し上げますると、ECとアメリカの立場が極端に違っておりまして、ECは短期措置、アメリカは長期目標、一言にして言えばその対決である。また、ECは短期措置、これも削減である、アメリカは撤廃である、こういう差もございます。我が国といたしましては、農業問題としてはECとほぼ同じような歩調で進んでおります。これが四月にどのような形で妥結を見るのか。ダンケル事務局長も懸命の努力をしておられますが、現状で私からこうなるでしょうと言う段階ではないということだけは申し上げておきたいと思います。  特に、日米間におきまして今日まで農業問題が種々議論され、またそれが大きな摩擦になりましたことは、これは我が国の農村にも大変な不信感を与えるということも事実でございましょうし、大きく日米関係そのものを阻害するようなことがあってはいけない、かように思いましたので、ちょうど牛肉並びにかんきつの問題に関しまして一段落いたしましたところで、シュルツ国務長官と私との関係で、今後農業問題はもう両国の問題にしない、これは日米間を悪くしますよ、いつまでもアメリカがこういろいろとおっしゃって日本をいじめておるというふうな印象しか日本にはないから、これはともどもにマルチ、ガットの場等において議論すべきものであって、もう両国間でやるとこの点は非常にまずい、こういうことでございましたので、七月に国務長官がお越しになられましたときに、米の問題は両国間でもう議論しない、これはマルチの場に任せましょうということでございます。  したがいまして、ガットの場でこれが議論されることになりますが、また我々といたしましては、米は基礎食糧であるということと、日本の農業の特殊事情から申し上げまして、やはり安全保障ということからもこれを議論しなければならないということと、また参加九十五カ国がそれぞれ農業に問題を抱えておるから、この農業問題を一つのテーブルにお出しになるときには、私たちも当然そのことを議題に供しまして、そしてマルチの場の議論をいたしましょうということが今日ただいままでの日本の姿勢であり、今後もそういうような姿勢で臨んでいきたい、かように思っておる次第でございます。  以上でございます。
  50. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私の持ち時間が十一時四十四分まで、宇野外務大臣の答弁でちょうど時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  51. 玉生孝久

    玉生委員長 竹内勝彦君。
  52. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 外務大臣を中心に、最近の重要諸問題、外交問題、そのほか若干の質問をさせていただきます。  まず、外務大臣は昨年の第百十二通常国会におきまして、我が党の大久保書記長に対しましての答弁の中で、いわゆる米軍への思いやり予算に関連した中でございますけれども、なかなか思いやりあふれたお言葉がございます。それは、米軍の少佐の給料よりも日本の労務者の給料の方が高いのだということ、あるいは久しぶりに我が家に帰ってきた米軍人さんがビール一本飲めない状態だ。この状況に関して、在日米軍の問題に関して大臣は精通されておる、そういう思いやりあふれたことに関して、その面に関しては私も多とするものでございます。このいわゆる米軍に対する思いやり予算は年々増加傾向にございます。そういうことに関しての歯どめないし限界、こういうものも設けていかなければならない。そういうものに関してはこの米軍の思いやり予算がそのままどんどん増加していくということであってはいけないと私は思います。  そういう中で特に、また同じ委員会竹下総理も抽象的に述べておりますが、国民の理解のもとで、こういうようにその表現をされております。国民の理解ということは、これはもう日米安保条約の施行運営に当たりましてもすべて国民の理解のもとで実行が必要であろうかと思います。あるいはまた、今この日本の基地におきましての国土の提供、そういった面に関しましても同じく国民の理解というものが必要でございます。かつて我が党は米軍基地総点検を全国に展開いたしまして、終戦直後そのままであった米軍基地の整理縮小の口火を切った、そういうような闘いも行いましたが、こういう現在の米軍基地が集約化という時期を持ってきておるのではないと思うわけでございまして、その意味におきまして、まず最初に、国民の理解のもとと竹下総理が言われたと同じように、その国民の理解というものに関して安保条約あるいはこの国土提供といった面に関しての宇野外務大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  53. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もう何度も国会お話しいたしておりまするが、安保条約が今日まで実に有効的に運用されてまいったことは今さらお話しするまでもないと思いますし、同時にまた、日米間のかたい信頼関係を確立し、そのもとに今日の日本の安全がある、よって我々国民の生命、財産も守られておるということは今さら申すまでもないことであろうと思います。  大久保書記長が御質問なさいましたときも、そうしたスタンスで私にいろいろとお話がございましたので、より一層この問題を円満に円滑に運営するためには、もちろん基地等の問題に関しては特に住民の御理解というものを常に考えなければならない、いささかもその住民の感情を害するようなことがあってはいけない、こういう気持ちで私たちもおりますし、またアメリカのそれぞれ最高責任者とお目にかかりましたときにも私ははっきり口を酸っぱくしてそのことをまず申し上げて、お互いに日本とアメリカとのより一店大きな責任をこうした安全面においても果たしていきたいものである、こういうふうに申し上げておる次第でございます。したがいまして、在日米軍の効果的な活動というものを今後も確保しなくてはなりませんが、そのためには、限られた財政下にあることも事実でございましょうし、また経済的、社会的な影響を考えなければならない。このことも怠ってはなりませんし、そのほか施設、区域、この問題に関しましても、その提供に関しては在日米軍の負担、これに関しましても我々としてできる限り努力をしてあげなければならない、こういう気持ちでやっておるわけでございまして、いざというときに命を捨てて我が国を守ってくださるアメリカの将兵の人たちが平素不平不満を持って暮らされてはいけない。快適に、休むときには休んでください、そして訓練するときには思い切って訓練してください、これが私たちの期待でございますので、そういう意味で思いやり予算というものも先ほど申し上げましたような環境の中においても我々は組んできたような次第でございます。  確かに、おっしゃるとおり、そういつまでもぼんぼんとふえる一方では困りますよということにつきましても、やはり我々はそのことは財政的な制約、こういう問題もございますし、先ほど言いました社会経済的な影響というものも考えなくてはいけません。こうした頭を持っておりますので、ひとつ自主的判断によりましてこの問題はさらに円滑に運営されるように努力をいたしたい、かように思います。
  54. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、限られた時間ですので、幾つかございますので簡潔に御答弁のほどをよろしくお願いします。  そこで、その問題に関連してお伺いいたします。  去る二月でございますが、沖縄県の宮城副知事が沖縄米軍ジョンソン司令官に会って、沖縄県読谷村所在の提供基地読谷補助飛行場につきまして落下傘降下訓練という機能を嘉手納米軍弾薬庫用地に移設してもよい旨の意思表示を米軍司令官がした、こういうような報道がございましたが、在日米軍について折衝されておる外務大臣、どのようにこの問題を受けとめられておるかお伺いしておきたいと思います。
  55. 有馬龍夫

    有馬政府委員 今先生が御指摘されましたようなやりとりがあったということが報じられております。そのような配慮をしようとしているということ自体まことに結構なことだと存じます。     〔委員長退席、戸塚委員長代理着席〕
  56. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 大臣に私御所見を、どのように受けとめておるかということを聞いておるのでございます。
  57. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題は常に大切な問題でございまして、米軍といたしましてもそのような住民との関係、いろいろな意味で極力効果的な運用という面で考えておられることだろうと思います。したがいまして、私たちといたしましては、そうしたお話は当然歓迎すべき話である、かように心得ております。
  58. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、大臣、米軍司令官は最近は落下傘訓練も読谷飛行場は余り使わず伊江高の基地を使ってきた、こういうようにもその報道の中にございました。そして、嘉手納米軍弾薬庫用地を落下傘の降下訓練用地としてもよいという結論まで出しているわけです。つまり、米軍は日本国土を広々と気ままに使うという無神経さはやめて、複合というか重複というか、国民の理解を得る上で基地集約化の方向を示していると思うわけです。  そういう意味で、外務大臣は今歓迎する、こういうことでございますが、一県の副知事に外交権があるとは思わないわけでございますし、しかし、県下で広大な基地の占有面積が、空くのしかかる沖縄県として寸土たりともこの米軍提供を少なくしたいとの気持ちから訴えたものであろうか、こういうように思います。しかもこの読谷飛行場は、戦後、旧地主の返還要求が一貫して続いておりますね。そして、かつて三原元防衛庁長官あるいは竹下元大蔵大臣のときも、地元の要望に沿って問題の解決をしたい、こう国会で言明しております。地元では、一大農業団地として利用して、沖縄振興法にのっとり緻密な利用一画を策定していきたい。地元議会の議決を経ながら米中の使用解除を望んできたわけでございますので、外務大臣、国民の理解のもとでと今同じように大臣の表明がございました。この読谷飛行場の解放実現に英断を下されることを希望しますので、どうかもう一度大臣の御決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  59. 有馬龍夫

    有馬政府委員 御提示の趣旨が経緯と関係がございますので、私から説明させていただきます。  先生よく御承知のとおり、昭和五十一年七月の第十六回日米安保協議委員会におきまして死谷補助飛行場の一部の返還が合意されまして、五十二年、五十三年に当時のほぼ三分の一が返還されております。その後、この読谷補助飛行場の使用の態様の一つでございましたパラシュートの降下訓練の機能についてこの代替地を探そうということにはなっておったわけでございます。それは五十五年に提起されたのでございますが、この移設の可能性は、施設分科委員会というのがございますけれども、そこの特別作業班によりまして検討されて、現在、先ほど御指摘のジョンソン司令官も申しております嘉手納弾薬庫地域の二カ所を含めまして、伊江島補助飛行場も含まれておりますが、検討が続いているということでございます。  ただ、この読谷飛行場は、現在パラシュート降下訓練の訓練場として使用されておりますほかに、この飛行場に隣接しております電波障害緩衝地帯及び米軍の一般訓練場としての機能も果たしておりまして、パラシュート降下訓練機能の移設がたとえ実現したといたしましても、ほかの機能を含めこの施設、区域は安保条約の目的達成上必要なものである。したがいまして、この返還というものはまことに難しい、非現実的ではないかというのが私どもの考えでございます。
  60. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 先ほど私申し上げましたが、限られた時間でございますので、私、経緯を聞いたり、あるいはこの読谷飛行場全部をどうせいとかという、今そんな質問はしていません。今大臣が歓迎する、こう言ったのでございますから、ぜひこの読谷飛行場の解放実現へ向かって、あるいはそのほかの基地に関しても、国民の理解のもとでと今大臣も御説明がございましたので、そのものを踏まえて今後基地に関しましても、いろいろ地元民からの要望はもう全部あるわけでございまして、その辺を大臣はよく理解しておるわけでございますので、御決意をお伺いしたい、こう言ったわけでございます。聞かないことを余り答えないでくださいよ、時間がないのだから。
  61. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、地元住民への配慮というものをいつも私たちも米軍当局に申し上げております。そうしたことを考慮しての米軍としての考え方、こうしたことは我我といたしましても歓迎する、こういうことでございます。
  62. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、FSXに関して、今同僚委員からもございました。できるだけ重複を避けてやはり簡潔に御答弁いただきたいと思います。  まず、このFSXは、共同開発について昨年十一月二十九日交換公文並びに了解覚書が締結されておるわけでございますけれども、それ以降の経緯を概略で結構です。それと、今も御質問にございましたが西廣次官が訪米する、この直接の理由は一体何なのか。それからタイムリミット。いろいろと三菱重工との設計契約等もございますので、そういったものも踏まえて、同じく簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  63. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 まず第一の昨年十一月末の締結後の経過でございますが、十一月に締結いたしました交換公文及び覚書に基づきまして実は企業間でいろいろ話し合いをしておりまして、その結果ことしの一月十二日に三菱重工業とゼネラル・ダイナミックスの間で技術援助等契約というのが結ばれました。その後は、その技術援助等契約に基づきましてそれぞれの国内手続を進めるということになっております。日本の国内手続は既に了しておりまして、アメリカにおきましてはこの契約の承認に絡みまして議会に通告するという手続が残っております。したがいまして、その手続を米国内でどうとっていくかというのが一月末以降の動きでございます。  それから、それでは今回西廣次官が、けさ成田を立ったわけでございますが、その目的は、米国内のいろいろの検討状況で、先ほども外務大臣から御答弁がございましたように、アメリカ側から幾つかの点について説明を求めたいというような話があったわけでございまして、そういう点を含めましてこちらからの説明をするということで行ったわけでございます。たまたま新政権になりまして初めての会合でございますから、具体的にこちらの考え方なり、向こうからの質問に答えようというのが趣旨でございます。  それから、三番目のタイムリミットでございますが、これは実はある意味では純粋に国内の問題でございまして、私どもといたしましてはお認めいただきました六十三年度予算を誠実に実行しようということで、この三月末までの間に防衛庁と主契約企業に予定しております三菱重工業との間に総額百七億円に上ります設計のその一の段階の契約を進めたいというのが現在の状況でございます。
  64. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこでお伺いしますが、ジェームズ・ベーカー国務長官が松永駐米大使と会っていろいろな条件を述べていますね。その条件の中身とそれに対する対応、それからもしもこの問題に関して、既に昨年十一月二十九日に覚書を交わしておる、交換公文を交わしておる、そういうものに変化があるのか。あるいは三菱重工との設計契約に関して、そういったものへの変更がある可能性はあるのか、そういった面もあわせて御答弁ください。
  65. 有馬龍夫

    有馬政府委員 先ほど大臣がおっしゃられましたように、ベーカー長官の求めによりまして松永大使は大統領の立場と申しますか考え方を聞いてこられたわけであります。そして、今度西廣次官が行かれまして松永大使と我が方の考え方を説明するということで、これに尽きるわけでございます。
  66. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 防衛庁、今の私の質問どおり答えてください。
  67. 有馬龍夫

    有馬政府委員 したがいまして、条件でありますとかどっちに何がありますとかということではございませんし、やりとりそのものは外交のことでございますので、何とぞ御容赦いただきたいと思います。
  68. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 先生のお尋ねの、それではこの結果、三菱重工業と私どもの契約に変化があるのかということでございますが、これは実は今具体的に非常に細かいことを詰めている段階でございます。したがいまして、契約をする段階で正式に私どもの態度を決めるわけでございますが、私の現在の判断といたしましては、今やっているものによりまして直接契約そのものを変えるとか、今の検討の条項をそれぞれ変えるとかいうことはないと考えております。
  69. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、そのことに関してはわかりましたが、これはF16を考えておるわけですが、これのゼネラル・ダイナミックス社と三菱重工業との契約というものがあるかと思いますが、そういうものに関しての変化というのはあるのでしょうか、修正なりそういったものが考えられるのでしょうか、それを御答弁ください。
  70. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 形式的で非常に恐縮でございますが、実は両者の間で契約が締結されましたけれども、その中には両国政府の承認を得て発効するという形になっております。したがいまして、契約自体はまだ発効していないというのが現在の状況でございます。したがいまして、契約を変えるか変えないかというのは実は発効した後の問題になるわけでございまして、それをどう変えるかということも含めまして、これは契約当事者の問題でございまして、今私どもはそういう内容あるいはそういう事態について予想していない状況でございます。
  71. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 契約が発効するのはいつなのでしょうか。
  72. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 これは両国政府の手続を了してということになっておりまして、現在私どもの手続はもう了しております。あとはアメリカの政府部内というかアメリカの国内の手続でございますから、手続的には議会にこの契約の内容を通告いたしまして、その三十日経過後でないと発効しないといいますか、契約に基づいて要するに政府は許可をおろさない、こういう形になるかと思います。したがいまして、端的に申しますと、通告後三十日後ということになると思います。
  73. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、もうちょっと具体的に御説明いただきたいのですが、このベーカー国務長官の言っておる中で、これは報道されておる中でございますけれども、「FSX開発のベースになるF16戦闘機の飛行・火器管制コンピューター・ソフトウエア(ソース・コーズ)の対日提供の一部制限」、いわゆる他の航空機に移させないといった旨、こういったものがあるようでございます。そういった対応は当然ではないかと思いますが、その対応はどうなるのでしょうか。
  74. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 今先生御指摘の点は、新聞報道等ではそういうことがあるというように伝えられておりますが、私どもはアメリカの当局者からはその内容について一切話を聞いておらないというのが実情でございます。
  75. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それではもう一度、このFSX共同開発について米国における反対論が幾つも出ました。そういう中でブッシュ大統領はいろいろと御苦労されたやに伺っておるわけでございますけれども、そのF16に決まった後、あるいは防衛了解覚書あるいは交換公文、そういったものを交わしておりながら、その後何人かの議員からこれに関しての反対論が出てきた。それを整理していただいて、この問題とこの問題とこの問題がどうも問題があるのだということをもう一度御説明ください。そうでないと西廣次官が行った意味がわからないことになるんだね、何のために行ったのか。
  76. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 この反対論というのは確かにいろいろ報道されておりまして、アメリカ国内の動きでございますから私ども直接先方から聞いておらないという制約はございますが、私どもなりに向こうの国内の動きを整理いたしますと次の三点に要約されるのではないかと考えられます。  第一点は、FSX共同開発のためにアメリカ側は非常に多額の資金を投入した技術を日本側に与える、それに対して、日本側からの見返りといいますかアメリカに行く見返りが少ないから不利な取引ではないかという基本的な考え方が第一点でございます。  第二点は、FSXに使うF16の技術が日本に参りますと、日本はそれを利用して、いわゆるFSXだけではなくて民間航空機にも転用して、将来そういう民間航空機産業の競争力が日本が強くなってしまうのではないかという懸念が第二点でございます。  それから第三点は、そもそもこういうFSXというものを新しく開発するんじゃなくて、非常にいい航空機がアメリカにあるのだから、こういう貿易インバランスのときでもあるから製品を買うべきではないか、あるいはアメリカ側からは製品を売るべきではないかという声がある。  こういう三点が、あといろいろあるかと思いますが、整理してみると向こうの国内における議論ではないかと承知しております。
  77. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、FSX論議に関してもう一度振り返ってみたいと思うのです。  これは当初、国内開発を考えておった。それが日米共同開発に変わっていった。さらにまた、F15、F18、F16等々、そういう中でどこに持っていこうかという形にあっては、これは最後までF15にするかあるいはF16にするかというような形になっていったわけでございますが、最終的に防衛庁が判断されてF16の共同開発でいこう、こういうように持っていった理由と、それからそういう経緯を御説明いただきたいと思います。
  78. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  支援戦闘機、現在ございますF1の後継機としてのFSXに関しましては、昭和六十年九月に閣議決定されております中期防の中に「別途検討の上、必要な措置を講ずる。」旨決定されております。それに基づきまして、防衛庁といたしましてはFSXの具体的な検討作業を開始いたしまして、当初は国内開発、現有機の転用、それから外国機の導入という三つの選択肢につきまして検討を進めてきたわけでございますが、この過程で、私ども関係各国等からも資料等を入手したりしておりました関係で、米国からは共同開発というような選択肢もあり得るのではないかという提案といいますかサゼスチョンがございまして、私どもといたしましてもこれも十分検討に値するものだというふうに考えましたので、これまで国内開発、現有機の転用、外国機の導入というこの三つの選択肢の中の国内開発を、必ずしも国内開発と限定する必要はなく、共同開発も含めました開発という広い概念で検討してみたらいいのではないかというようなことで、具体的には当面やはりそれは米国との共同開発ということが現実的でございますので、米国を念頭に置いた共同開発もその選択肢の中に入れまして検討を進めてきたところでございます。  そういたしまして、その過程で、いろいろな検討経緯があったわけでございますが、一つの大きな契機になりましたのは昭和六十二年十月二日の日米防衛首脳会談でございますが、そこでかなり突っ込んだ議論がございまして、その結果、我が国といたしましては、我が国特有の支援戦闘機の運用構想がある、また我が国特有の地理的特性があるというようなことを考えますと、FSXというものを採用するに当たりましては既存の戦闘戦というものではとてもそういうふうな我が国特有の要請には対応できないということで、既存の航空機を採用するということはまずできないというような考え方で意見が一致いたしまして、その際に、国内で開発することあるいは共同開発をすること、どちらがいいかといういろいろな議論をしたわけでございますが、取得の確実性とか、あるいは費用対効果、あるいはインターオペラビリティーの確保、こういうような点を総合的に勘案いたしますと、日米のすぐれた技術を結集いたしまして共同で開発するのが適当であろう、その際にF15JあるいはF16というものをベースにいたしまして開発するのが今私が申し上げました三つの観点からよろしいのではないかということになったわけでございます。  なお、その過程におきましてはF18という航空機を改造する案も考えたわけでございますが、これは御案内のようにそもそも艦載機でございますから、私どもは艦載機として支援戦闘機を運用する構想はございませんので、艦載機であるということからくるいろいろなデメリットがございまして、まずこのF18改造というものは選択肢から落ちていったということでございます。それでF15JとF16、二つの比較をいたしましたところ、運用、要求性能等はそれぞれ満たし得るような改造はできるわけでございますけれども、費用対効象の点につきましてF16の方がはるかにすぐれているという結果が出たものでございますから、F16をベースにいたしまして、それぞれ持てる日米双方のすぐれた技術を結集いたしまして改造開発をしようというふうに決定し一わけでございます。  こういうふうに決定いたしました時期及び手続でございますが、これにつきましては昭和六十二年十月二十三日に開催されました安全保障会議に報告いたしまして逐次審議を行っていただきまして、同年十二月二十八日、昭和六十三年度防衛力整備内容の主要事項といたしまして、FSX開発の着手をF16をベースにして日米共同で行うということが決定されたわけでございます。  なお、安保会議に報告するに先立ちまして、防衛庁内部といたしましては、その年、六十二年十月二十一日にF16の改造開発案が最も適切だという結論を得ております。  以上でございます。
  79. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、F15Jは双発エンジンですよね。それからF16は単発エンジンであります。そういう中で、一九六九年二月八日でございますが、F104Jジェット戦闘機が金沢で墜落いたしました。そのときは市民が巻き添えを食い、死亡四名、重軽傷二十三名という大惨事がありました。これはF16と同じように単発エンジンである、こう伺っておりますが、そういったものが原因にあったのではないかというようなことも考えられると思いますけれども、私はこのF15JとF16、性能面でF16がもう一歩こういった面ですぐれておるんだという、あるいは今のような単発エンジンでも問題ないんだという、そういったものがちょっと理解できないわけですが、その辺の御説明をもう一度いただけませんか。
  80. 日吉章

    ○日吉政府委員 航空機と申しますものはといいますか、物事一般的に、ある面をとらえますとあるものがすぐれているという点があろうかと思いますが、それそのものをやはり総合的に評価をいたしまして、総合的な装備としてどちらがすぐれているかというふうな形で検討しないといけないかと思います。  その際に、単発か双発かということのみで検討するということではなくして、単発にすれば先生おっしゃられたような問題もあろうかと思いますけれども、必ずしも単発である航空機が安全性が低いというわけでもありませんし、双発にすれば双発にしただけのいろいろなまた別の面でのデメリットもあるわけでございます。例えば経費面等で言いますれば、双発にすれば単純に費用対効果が悪くなるというようなことがございます。  したがいまして、そういう点で私どもといたしましては、FSXは要撃性も備えた、しかしながら、主として支援戦闘機として用いたいというふうな観点から費用対効果をはじきますと、単発機のF16をベースにするということが最も費用対効果の点でよろしいのではないかと判断をしたわけでございます。  なお、ちなみに申し上げますと、今回のベースになりますF16は、単発機の中ではそういう事故率の低い計数が米国の実績として出ておりますことを参考までに申し上げておきます。
  81. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで外務大臣、今お聞きいただきましたように、また先ほど御答弁いただきましたように、これは外務大臣が担当されておる外交の中で最も重要なものでございます。そして事務次官が急遽きょう立たれた、非常に重要な段階を迎えております。それからタイムリミットも今御説明があったとおりでございますし、大臣、現在の御所見をこのFSXに関してもう一度御答弁いただきたいと思います。
  82. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 FSXは、今防衛庁からも説明がありましたようなことで、既に日米間の合意を得た問題でございます。あとは米国政府が議会に通告される、そうした段階が残っておることでございますので、私は、現在は大統領も国務長官もあるいは国防長官もそれぞれ御努力なさっておる、その努力を高く評価しながら、速やかにそうした手続がとられることを期待する、これが私の現在の気持ちであります。
  83. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、次の問題に移らせていただきます。防衛庁、結構でございます。  それでは、まず外務大臣もう一度、重要ないろんな会議がございますが、一番最初にお伺いしておきたいのは、有害廃棄物の問題に関して、スイス・バーゼルで開かれた外交会議、ここにおきまして国連環境計画が中心になってまとめた有害廃・棄物の国境を越える移動とその処分に関する条約、これは参加百十六カ国の全会一致で採択しておりますね。日本は、その採択には加わっております。その中で、この条文の検討をするため、この日の署名には加わらなかった、こういうように報道がございますが、どういった点が問題とされておるのか、あるいは今後どういうようにこの有害廃棄物の国際移動監視、こういった面に関して御所見を持っておられるのか、大臣、最初に御答弁ください。
  84. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細は政府委員から説明をいたさせますが、今の有害廃棄物の国境を越える移動についての国際的規制、こうした本条約の趣旨に関しましては、我が国といたしましても基本的に賛成でございます。  そこで、今後本条約の義務履行をするための国内、実施体制、こうしたことを整備をいたさなければなりませんが、そうした整備を慎重に検討した上で対処いたしたいというのが基本的な姿勢であります。
  85. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、この条約の趣旨については基本的に賛成でございます。ただ、これからこの条文をいかに国内的に実施していくかということにつきましては、国内法の整備もあるいは必要になるかもしれませんし、例えば移出する場合通報する体制であるとか、そのほかいろんな細かい条文に則しまして国内体制の整備が必要になってくるわけでございます。  したがいまして、その観点からこの条約上の検討をとりあえずこれから急いでいこう、こういう趣旨でございまして、そのために採択には加わりましたけれども、署名は当面差し控えているということでございます。
  86. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 では、日ソ事務レベル協議が行われました。今も御論議がございましたが、まずこの問題に関してもう一度、日ソ首脳会談、ゴルバチョフさんの訪日問題、こういった問題の展望と、それから外相会談が五月の初めには予定されております。それ以外に外相会談はどういうふうに考えておるのか、そういうものも踏まえて外務大臣、御答弁いただきたいと思います。
  87. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ゴルバチョフ書記長の来日に関しましては、これを一つの重要な契機としてさらに一段と日ソ間の関係改善をなすのが必要だ、これにつきましてはもう日ソ外相会談におきましてもお互いに合意をいたしております。私といたしましては、ことしじゅうにでもお越しください、早ければ早いほどいいでしょう、こういうように申し上げておりますが、そのためには両国外務大臣がやはりそれだけのおぜん立てをすることが必要ではなかろうか、この認識も一致しております。  そうしたことで、従来は一年に一回ずつ出会っておったというようなことをやめて、しはしば出会わなければならぬ。十二月の東京の会談に続いてパリでやったこともその一つでございますし、五月には私が参りまして、その他にもいろいろと国際的な会議がございます。そうした都度集まろうではないか、寄ろうではないか、会談しようではないか、こういうふうに申し上げておりますので、その後のことは具体的にまだ明示はできませんが、そうした姿勢で今日日ソ間の外相会談をどんどんと進めることに合意いたしておるということでございます。
  88. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 重ねて北方領土問題に関して大悟にお伺いしておきます。  この会議の中で、日ソ平和条約に絡み国境線確定論、こういったものが出てきたやに報道の中で私は知っておるわけでございますけれども、こういう問題が出てくるということは、どうも北方領土を後回しにしていこうというねらいがあるのではないか。あるいはまた、この四島というものは日本の固有の領土であるということははっきりしておるわけでございますし、大臣も何回も答弁されておるわけでございますが、この北方領土返還について大臣の御決意を伺っておきたいと思います。
  89. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 北方領土一括返還、それを解決して平和条約を結び、その後、日ソ間のいろんな問題に当たりたい、これが私の変わらざる方針でございます。
  90. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そうすると、もう一度はっきりと確認しておくのは、日ソ平和条約の締結よりも北方領土返還が先だ。そういうことでは、この北方領土がもしもがたがたがたがた延びていくというような形になった場合でも、これはとにかく北方領土返還というものが最優先、こういうことでよろしいのでしょうか。
  91. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 さようでございます。
  92. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、ちょっと具体的にお伺いしていきたいと思います。  まず、この日ソ事務レベル協議の中で都甲局長が、北方領土のうちまだ墓参が認められていない国後、択捉、あるいはソ連本土のウラジオストク、アルチョム、ザビタヤなどへの墓参地拡大についての配慮を要請しておりますが、その辺の御説明をしていただきたいと思います。
  93. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  この件につきましては、従来から歯舞、色丹には認められておりますけれども、国後、択捉については認められておりませんので、昨年の十二月に大臣からシェワルナゼ大臣にぜひ配慮をお願いしたいということを言いましたところ、シェワルナゼ大臣の方から、これは自分が責任を持って考慮するということを言われた経緯がございます。  それを受けまして、今回の事務レベル協議に際しまして、私とチジョフ局長との間でこの問題を取り上げまして、シェワルナゼ大臣の前向きな姿勢を踏まえてぜひ検討してほしいということを申し入れましたところ、先方としましても、シェワルナゼ大臣との話し合いを基礎として、この地域は閉鎖地域であるけれども検討していきたいという回答を得ております。
  94. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それから、同じくもう一点は、この北方四島に挟まれたいわゆる三角水域での日本漁船の操業を禁止している問題を取り上げて、これは禁止から四年たっている、そういう意味でも弾力的に対応してほしいというような報道がございますが、この点はどうでしょう。
  95. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この点につきましても、この地域の漁業というものは根室地域の漁民の方々の非常に重大な関心事であるということを踏まえまして、今回も事務レベル協議に際しまして私から強く局長に、一九八五年以来認められていないこの問題についてぜひ前向きな配慮をお願いしたいということを申し入れたわけでございますけれども、先方はこれにつきまして、関係方面に伝えるということで特に具体的な反応はございませんでした。  政府といたしましては、この問題につきましてはなお粘り強くソ連側に善処を要請してまいりたいと思いますし、現在モスクワでサケ・マス交渉が行われておりますので、その場でも代表の方からこの問題についてソ連側に粘り強く働きかけることになるというふうに承知しております。
  96. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それで、今大臣も北方領土に関して力強い御決意がございましたが、もう一度、この日ソ事務レベル協議においての、特にその中で日ソ平和条約締結交渉に関しての作業グループの会合も行われたわけでございますので、その中身、それから今後の見通し、これをできるだけ詳しく、この問題は大事なことでございますので御説明ください。
  97. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  今回の会談は、前半に事務レベル協議をいたしまして、後半、二十一日の一日使いまして、十二月に設置されました平和条約常設作業グループの第一回会合を行ったわけでございます。そして、その作業グループにおきましては、我が方から再び領土問題につきまして、ソ連側からの主張が十二月に行われたことを踏まえまして、歴史にさかのぼって種々反論をいたしました。それに対しまして、ソ連側もこの領土問題につきまして個々の論点につきましてかなり詳細な反論をいたしましたが、その内容は極めて厳しいものがあったということでございます。  他方、ソ連側が考えております平和条約の内容として、政治、経済、地理ということを言っておりましたけれども、それぞれの問題につきまして、ソ連側の考えている内容の開陳があったわけでございます。そういうことで一応ソ連側の考えも概要が明らかになったわけでございますが、今後これをどのようにして話し合いを続けていくかということにつきましては、十分にその内容をも踏まえつつ、我々としては次の、大臣が五月に訪ソされるときに平和条約作業グループが多分行われることになると思いますので、その際にお互いの立場を縮めるためにどのように考えていくかということを今後検討していく段階に至っております。
  98. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで重ねて、クリル諸島より南にある島々についてのソ連軍の戦力が日本に対して脅威を与える旨の主張を日本側はされましたね。この真意は何ですか。
  99. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件は、事務レベル協議で取り上げたわけでございますけれども、ソ連側からクリル諸島にあるソ連軍は日本側に脅威を与えるものではないという発言がございましたことを受けまして、栗山外務審議官の方から、我々としてはこれを脅威を与えないものというふうには理解できないということで反論をしたわけでございます。  その背後には、昨年の防衛白書にもございますように、ソ連側が我が国固有の領土である北方領土の国後、択捉両島と色丹島に師団規模の地上軍部隊を配備しておりまして、これらの地域にはソ連の師団が通常保有する戦車、装甲車、それから各種火砲や対空ミサイル、対地攻撃用武装ヘリコプターというようなもののほかに、さらにソ連の師団が通常保有していない長距離の百三十ミリ加農砲というようなものも配備され、訓練も活発に行われているということを承知しております。それからさらに、択捉島の天寧飛行場には、ミグ23戦闘機が約四十機配属されておる。このような状況を踏まえまして、私どもとしましては、やはり我我の北方領土、すなわちソ連側の言うクリル諸島より南にある島々におけるソ連の軍事力を見ますと、これが日本側に対する潜在的な脅威になっているというふうに認識せざるを得ないというふうに考えたものでございますから、先ほどのような経緯の中におきまして栗山外務審議官の方からソ連側に反論をしたわけでございます。
  100. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今の説明では、私にわかに――事改めて現在ここにおいてその脅威であるということを言われたのは、向こうがそういう発言をされたからなのか、それとも何か殊さら、今の説明では今までのことで当たり前のことでございまして、問題ないのではないかと思いますが、もう一度その辺、もうちょっと違うことがあるのじゃないですか。御答弁ください。
  101. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件につきましては、先方の発言を踏まえての当方からの対応でございました。一般的な流れといたしましては、ソ連側が極東においていろいろな措置をとっていることを日本側が十分に考慮していないということを述べまして、そしてその中においてソ連側の、クリル諸島におけるソ連軍というものは日本側に脅威を与えるものではないという発言があったものでございますから、私どもとしてはそういう認識を共有できないという前提から、先ほどのような事実も踏まえましてこれに対応した次第でございます。
  102. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、次の問題へ移らせてもらいます。  最近問題になっておる知的所有権問題。知的所有権というのは、独創的な技術や知識などソフトな知的財の所有権を認め、他人が勝手に使用することを禁止できる権利でございます。大きく言っては、特許や商標を中心とする工業所有権、それから文学、音楽、美術作品などの芸術的所有権の二つに分けられておるのは御承知のとおりでございますが、知的所有権に関して日米の間で交渉が持たれておりますね。まず、三月二十一日に行う予定であった日米貿易委員会知的所有権作業部会、これはどうやら何か延びたようで三月二十七日、何日間行うのか知りませんが、そういうような形で行われていく。それから四月十九日には第二回目のクラブ15、重要会議が行われていくわけでございますけれども、この交渉、世界各国が注目されるところでございますので、今後のこの知的所有権に関しての交渉の進め方など概略を御説明いただきたいと思います。
  103. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりましたとおり、日米間で知的所有権の問題について話し合いの場があることはそのとおりでございます。先生のお言葉で交渉ということがありましたのですが、お互いに交渉するということではなくて、本来制度の違っているものもございましたりいたしますから日米間で少し協議をしよう、こういうことで昨年の夏以来貿易委員会の作業部会として発足をしたものでございます。それで今回、二十七日から三十一日にかけまして東京でこの日米間の協議を行うことにいたしております。その際、私どもといたしましては、著作権の問題、特許の制度の問題あるいは商標権の問題といった幅広い問題を取り扱うつもりでございますが、アメリカ側が指摘しております例えば一つの問題といたしまして、特許につきまして日本の審査の状況がなかなか円滑に進まない、日数が大変かかっているというようなことについて問題点を提起いたしております。そういうような問題を広範囲にわたりまして協議をする、相談をするということにいたしております。  今後どうするかというお尋ねでございますが、特許の制度の問題でございますとか、あるいは著作権でもどういう範囲の著作権を保護の対象とするか、いろんな考え方がございます。そういうことを踏まえまして、頻繁な協議を重ねたいというふうに思っております。一回の会議でけりがっくという性質のものでないことを先生も御理解いただいていると思いますが、日米間で科学技術の発展あるいは産業技術の開発といったことが頻繁に行われるわけでございますから、日米の経済問題を円滑に進める上で知的所有権の問題について日米間の理解をきちんとしておく、そして国際的なルールづくりにも貢献をしていきたい、こういうことが適切な対応ではなかろうかというふうに忍っております。  クラブ15の方の件につきましては、担当省からの御答弁があると思います。
  104. 清水啓助

    ○清水説明員 お答えいたします。  日米の問題につきましては今佐藤経済局長がお答えされたとおりでございます。この問題につきましてはちょっとバックグラウンドがございまして、先生御案内のように特許制度と申しますのは技術開発を支えるものでございまして、産業発展のインフラとなるものでございます。最近の技術開発の活発化、経済活動、企業活動のグロバリゼーションに伴いまして、国際的に調和された制度、これが非常に求められてきております。  このような国際的に調和された制度を追求するためには、二国間で交渉していくという手もあるわけでございますが、二国間の交渉ですと往々にいたしまして政治、貿易、こういう問題が絡みまして、本来合理的であるべき工業所有権制度が多少歪曲されるというおそれもございます。さらに、二国間で取りまとめましても第三の国にとりましてこれが非常に合わないという不都合も生じます。したがいまして、特許庁といたしましては、特許制度の調和、我々はハーモナイゼーションと呼んでおりますが、これを多国間の場で進めていきたい、かように考えております。  この中で一番大きな力を持ちますのは日本と米国、合わせまして世界の出願の大体五割を占めます。したがいまして、日米が一致して協力いたしましてハーモナイゼーショソを引っ張っていく必要があるというのが我々の基本的認識でございます。先ほど来ちょっと御説明があったのですが、三月の下旬に予定されております日米貿易委員会知的所有権作業部会におきましては、主として運用問題について議論をいたすつもりでおります。日米双方がそのお互いのシステムについて十分理解いたしまして相互認識を深めるとともに、多国間でのハーモナイゼーションの議論をリードしていくための基礎、基盤、これを固めていきたいと考えております。  それからクラブ15の方ですが、これはさっき御指摘のとおり四月十九日から委員会が行われます。クラブ15におきましては、この日米の共通認識を踏まえまして、世界知的所有権機構、WIPOと呼んでおりますが、今そこで進められておりますハーモナイゼーション条約、この議論を積極的に推めるべく先進国の間で共通基盤を形成していきたいと考えております。特に、このクラブ15の会合におきましては特許庁の吉田長官が議長をすることになっております。したがいまして、先進国間でコンセンサスを得るべく特許庁といたしましても最大限の努力を払っていく所存でございます。
  105. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、今のそのハーモナイゼーションの焦点の一つとしては、これは米国とフィリピンだけですかね、先発明主義ですね。あとは先願主義。こういう形で行われておるわけですが、これに関して米国の動きはどういうふうになっておるのか。特に、日本、EC合わせて四億四千万人、米国で二億四千万人、そういう中で外国出願の多い巨大企業、これは先願主義への移行を望んでおるのではないかと思います。しかし中小企業関係は、この百年以上も続いた先発明主義、こういったものをそう簡単に外すことを考えられるかどうか。そういう意味で、今後、今のクラブ15でもあるいは知的所有権作業部会におきましても、いろいろとそういった統一特許制度というものが非常に重要になってきますね。そういう意味で、この先発明主義と先願主義との違いの折り合いというものをどう考えておるのか、御答弁いただきたいと思います。
  106. 清水啓助

    ○清水説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、現在世界で先発明主義をとっておりますのは、米国とフィリピン、この二カ国でございます。ところが、最近になりまして、フィリピンは今特許法の改正をいろいろ検討しておるようでございます。議会にも幾つかの法案が上がっております。その中では、フィリピンは先願主義に移行するという方向を出しております。したがいまして、まだフィリピンの検討がどうなるかよくわかりませんが、ことしの終わりぐらいにはアメリカーカ国のみになるという可能性もございます。  実は、先発明主義にするか、先願主義にするかということは、アメリカ国内でも非常に議論されております。先ほど申し上げました世界知的所有権機関、WIPOですが、この場におきましても、アメリカは先発明主義から先願主義に変わってもいいというようなことを実は言っております。ただし、これはいろいろ条件がございまして、アメリカはこれだけ譲歩するわけですから、したがいまして、特許の期間、特許の期間というのはいろいろ国によって違っているところがございます、それから特許の保護対象、こういうものをほかの国が譲歩すれば、パッケージとしてならば先発明主義から先願主義に変えること、これは可能だということをWIPOで何回か申しております。  したがいまして、このハーモナイゼーションに関します検討が進みさえずれば、アメリカも先発明主義から脱皮するという可能性は大いにあると思います。我が方といたしましても、そういう方向に向けて、ハーモナイゼーションをぜひとも確立すべく最大限に努力していく所存でございます。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一点知的所有権に関してお伺いしておきますが、特にその中で、コンピュータープログラムの保護強化という問題が重要であります。  ガットの知的所有権グループの最重要テーマの一つでもございますが、その中で、米国がリバースエンジニアリング、いわゆるプログラムの分解、調査、これにも規制を加えようとねらっているのではないか、このようにうかがわれますけれども、そうなってくると、日本の互換機のメーカー、そういったものに対しての技術開発というものが相当不利になってくるのではないか、こう考えられます。このリバースエンジニアリングに対する政府考え方を御答弁いただきたいと思います。
  108. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 先生御指摘のように、著作権制度とのかかわりでいろいろ論じられている項目の中に、コンピュータープログラムのリバースエンジニアリングの問題があるわけでございます。  我が国の著作権法におきましては、昭和六十年の改正で、コンピュータープログラムを著作権制度のもとで保護されるべき著作物だというように位置づける著作権法の改正を行っておりまして、これにつきましては、アメリカを含めまして、先進国の多くが著作権制度のもとで保護するのだということで並んでおるわけでございまして、これ自体については問題があるわけではないわけでございます。  ただ、リバースエンジニアリング、一般には、既存の製品を調査、解析することによりまして、そこで使われております製造方法でありますとか技術水準でありますとかノーハウでありますとか、そういうものの評価を行いまして、みずから新たにこしらえようとするものの技術水準の向上に役立たせよう、こういうのが一般にリバースエンジニアリングと呼ばれるものであるわけでございますが、コンピュータープログラムのリバースエンジニアリング、こうなってまいりますと、問題点といたしましては、一つには、著作権制度というのは基本的にアイデアではなくて、要するに頭の中で思い浮かべたものではなくて、それを現実のものに表現したもの、それを保護するんだというのが著作権例度の基本になっておるわけでございます。コンピュータープログラムを調査、解析していく過程におきまして、当然そのプログラムを構成するに至ったアイデアというものに到達するわけでございますが、そこの扱いを一体著作権制度上どう考えるのか。それは保護されるべきものなのか、それとも保護されるべきものとは必ずしも考えなくていいのか、この辺については大変難しい問題でございます。  先生御指摘のように、アメリカは基本的には、コンピューターのプログラムについては幅広く、できるだけ手厚く権利保護を及ぼすべきだという傾向にあるわけでございますが、この点について、一体リバースエンジニアリングのうちのどのものを保護するのか、あるいはもっと逆に解しますと、どういう行為をしたらそれが侵害行為になるのか、この辺については、実は国内的にもそれから国際的にもまだ確定した考え方が定まっているというようには到底言えないわけでございまして、先ほど特許庁の方から特許のお話がございましたけれども、基本的には、著作権につきましてもやはりWIPOとかいわゆるマルチの場でいろいろ議論が行われてしかるべきだと思うわけでございますけれども、私ども、日米のワーキンググループの場におきましても双方意見を交換いたしまして、見解をそれぞれ深めていきたいな、こういうように考えておるわけでございます。
  109. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この知的所有権に関してはそのほかおいでいただいておりますが、ちょっと時間の関係ではしょらせていただきます。  残り時間が少なくなりましたので、大臣お戻りですので何項目か大臣にお伺いしておきます。  まず、きょう午前中も質問がございましたサハリン残留朝鮮人の肉親再会が、この発端は日本の超党派の国会議員による議員懇談会の働きによって前進してきたわけでございます。サハリンから出国を許され、韓国から渡日した家族と日本で再会する朝鮮人の数はだんだんふえてきました。  そういう中で、例えばサハリンからの一人の渡航者につき平均三人前後の家族が韓国から渡日し、平均二週間前後滞在し、約四十五年ぶりの再会を果たして帰るわけですよね。先ほども戸塚委員からございましたとおり、この滞在費など、あるいは世話をしていくそういった問題、また細心の心遣い、愛情を持って行っていかなければならない点、予算面その他含めて非常に重要な問題でございますので、大臣もう一度この問題に関して御見解を述べていただければありがたいと思います。
  110. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 在サハリン韓国朝鮮人問題は我が国といたしましても道義的責任のある人道問題である、こういうふうに私たち考えております。したがいまして、国会におきましても超党派でこの問題に当たっていただいておりますが、その動きに対しましては深井の敬意を表し、また政府といたしましても、ソビエト連邦に対しまして、やはりこうした問題につきまして好意的な高配をしてくれるよう常に依頼をいたしておるというところでございますが、もちろん政府といたしましてもそれ相応の予算措置をとらなければならない、かようなことで、本年度は前年に対比いたしまして画期的な予算を私たちといたしましては編成をし、御審議を願う段取りになっております。  いずれいろいろな、個別的な環境問題等々もございますが、そうしたことに当たりましても細部にわたりまして我々といたしましては注意を怠ってはならない、そしてお気の毒な方々の心をいやすことに全力を挙げなくてはならない、かように考えております。
  111. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一点大臣にお伺いしておきます。  これは、昨年十一月でしたか、中国上海市で日本への入国ビザを求める若者たちが総領事館に押しかける騒ぎがございました。これは御承知かと思いますが、日本語学校を開設予定だったわけですね。それはその後不適格校となったため開校できなくなった。ところが、入学希望者が相当数おった。その中に、入学許可書を乱発し、入学金など集めた、それの返金とかそのほかの問題もいろいろあったわけでございます。それはもう新聞でも御承知のとおりですね。それからこの中国に関連しては、先ほどもございました、中国旅行する人というものがかなり多くなってきた。そういう中で、まず一つは昭和六十三年、昨年でございますが、三月二十四日、私立高知学芸高校が中国へ修学旅行に行った。大列車事故が起こりました。二十八名の人が死亡、四十数名が負傷するという惨事。それからつい最近の、先ほどもありましたが、去る三月十六日、聖心女子大の教授以下学生が中国四川省北部剣閣県でバスが道路から二十メートルの下の谷底に落ちるという悲惨な事故、学生一人が死亡、その他十数名が重軽傷、こういうこと。  この日本語学校の問題もそうでございますが、こういうような国際化の中、あるいはまたこれだけ交流が激しくなってくる、特にお隣の中国に関していろいろと問題が起きておる、こういう中で外務大臣として、さきの高知学芸高校の賠償問題などいろいろその国柄のこういった問題もございまして、いろいろな経緯がございました。今後のそういう賠償問題あるいは日本語学校のそういったものを、今後どうしてもこれは必要なものでどんどん伸びていくのではないか、このようにも思われますし、そういった問題に関しての御所見、これを最初にお伺いしておきたいと思います。
  112. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、上海の列車事故という不幸な事故がございましたが、学校当局中国上海市当局との間におきまして先般めでたく一応すべてのことが調印されました。外務省といたしましても、国家として直接タッチする問題ではございませんが、しかし、やはり民間の一高等学校対国家ということでございますから、我々といたしましても極力いろいろな面でお手伝いも申し上げ、こうした問題が日中間の今日のよい状態を破壊してはいけない、そういう思いでおりましたが、両当事者の合意が成ったことは喜ばしいことであると存じております。近く李鵬総理お越しのときに、その中の随員の方が改めて高知を訪問するというお話までも私たちは承っておりますから、日本中国との関係を大切にし、また中国日本との関係を非常に大切にしていらっしゃる、こうしたことは今後お互いにさらに認識を深めていかなければならないと思うのでございます。  また、中国の就学生でございますが、既に来日したのは二万八千、上海に待機中というのが三万八千人おられる、これが大きな問題を引き起こしました。だから、当然我々といたしましても、いろいろなことがございますが、関係省庁相寄りまして、ただいまこの事態に対処すべく検討中でございます。個人的には法務大臣が非常に心配しておられる。私もその意を法務大臣お話ししておるということもございましたが、幾つもの関係省庁でこれはやっていかなければなりません。なおかつ、日本語学校そのもののあり方、これに対しましても、やはり今後かかることが起こらないように十二分に考えていかなければならないのではないか、かように存じております。  いずれも、幾つものそうした問題に対処いたしましては、事故が発生してからでは遅うございますから、旅行業者、あっせん業者、そうした方々に対しましても、外務省としてはできるだけ在外公館との連絡を密にし、なおかつかかる場合はこのようなというふうなマニュアルも準備いたしておるということも、私からこの際申し上げておきます。
  113. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 時間ですのでもう一問だけ、恐縮でございます。文部省に来ていただいておりますので、お伺いしておきます。一点だけです。  それは、今も日本語学校のお話もございました。そういう中で特に私、提案しておきたいのですが、留学生の問題です。留学生に関して、私費留学生と国費留学生の実態というものは大変な差がございます。例えば、中国政府からの派遣留学生であっても、これは私費留学生という形であるならば月額七千五百円、それが日本政府が正式に受け入れておる国費留学生、この場合は月額十七万五千円の奨学金、こういうような大変な差がございます。そのほかにも国の状況もございますけれども、特に私は京都におるわけですが、例えば京都大で、中国から来られた留学生が大勢いらっしゃいます。そこで、私も何人かの教授とこういう問題で話し合いました。  例えばこんなことがあるのですね。あるアメリカ女性留学生から教授のところへ電話が入って、中国人留学生の女性が栄養失調のために今にも死にそうで倒れかけております、何とかしてくださいというような状況。こういう円高の厳しい状況の中で留学生が日本へ来て、ああ日本で学んでよかったと言えるようなものをつくり上げていかなければ、これからの国際化の中にあって本当に重要な問題ではないか、こう思いますので、ひとつ関係省庁あわせて御答弁いただければいいのですが、現在も確かに昨年よりは、また今回のこの措置というものはいろいろと御努力が見られております。しかし、この問題でもっともっと努力していかなければならない幾つかの重要なものがございますので、この留学生問題に関して予算面あるいはその対応という面を含めまして御答弁をいただきまして、私の質問を終わりといたします。
  114. 三村満夫

    ○三村説明員 お答え申し上げます。  我が国に留学生が大変たくさんふえてきておりまして、昭和六十三年の五月現在で約二万五千名を超えるという形になっております。このうち二万名を超える留学生がいわゆる私費留学生という人たちでございますが、その生活実態は大変多様なものがあるということでございます。この人たちはひとしく我が国で学ぶ留学生でして、先生御指摘のとおり、我が国で学んで本当によかったということで帰国していただくことを私どもも心から望んでおるところでございまして、我が国で学ぶ留学生が安定した勉学生活を送れるような必要な諸条件を整えていくということは、大変大切なことであると考えております。  文部省といたしましては、そのような基本的な見地から、近年の円高等によります私費留学生の生活実態等も踏まえまして、現在学習奨励費制度を抜本的に充実させていくとか、あるいは授業料減免措置拡充していくとかいうことで私費留学生に対する援助施策の充実に努めておるところでございます。また、住宅問題も我が国では相当難しい問題になっておりまして、この点もいろいろな工夫を行いまして、多面的な努力を通じまして何とか解決に努めてまいりたいということでございます。
  115. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ありがとうございました。
  116. 玉生孝久

  117. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 きょうもいろいろ御意見があったようでありますが、どうも最近海外における邦人のさまざまな災害あるいは被害等が相次いでいるようでありますので、ぜひ在外公館のこれらに対する、邦人の生命あるいは身体や財産の安全について十分な対応をとれるように、それぞれ強化を図っていただきたいと思います。あるいはまた、在外公館でお働きになる方々自身もそうでありますし、御家族も含めて、それらの安全な勤務や活動についてどうか政府としても万全を期していただきたい、このことを御要望申し上げておきたい。  さて、三月十四日に北方領土視察のために北海道根室市を訪れました古川外務省特命全権大使、いわゆる北海道担当の大使でありますが、根室のホテルで開かれた時局講演会で、日本は単一民族国家というような発言をして、アイヌの皆さんはもとより、道民の非常な怒りを買って、これが問題化いたしました。その後、北海道ウタリ協会からの強い抗議に陳謝をするようなことがあった。ウタリ協会ではなお人権国際感覚が欠如した許しがたい発言だと強い抗議を続けていることは大臣も御承知のとおり。ことしの八月にジュネーブで開かれる世界先住民族会議で改めて問題を提起するというようなことも検討しているようであります。これは引き続いて三月十七日北海道議会で問題になって、横路知事はこの大使の発言は適切を欠くものだというような趣旨の答弁をしているようであります。  三年ぐらい前でしたか、当時の中曽根総理がやはり同様趣旨の発言をしまして、これはもう国の内外を問わず大変な批判が巻き起こったというようなことも皆まだ印象には強く残っていると思うのでありますが、こういう中でのこの発言は、まことに外交官としての常識を疑われるものだと思うのであります。当時、中曽根発言をめぐって後藤田官房長官の御答弁なんかがあった。これは私の質問だったのでありますが、日本には少数民族が存在する、アイヌ民族はいるというようなお話がありまして、その後竹下総理も同様の見解を表明なされているわけであります。そういうことなども十分な勉強もなしにこういうお話というのは、まことに困ったものだというふうに思うわけであります。  この際、外務省の最高責任者である宇野外務大臣からのこれに対する明確な見解、それからアイヌの皆さんや道民に対する謝意を要請申し上げたいと思いますが、いかがですか。
  118. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今仰せの古川大使の発言に関しましては、直ちに本人関係者各位を回りまして陳謝をしたという報告を受けました。すなわち、ウタリ協会の理事長、さらには横路知事そのほかの方々にも、発言が適切を欠いた、誤りであったということをはっきりと陳謝に回っております。  同時に、私に対しましても、心から陳謝申し上げるという話がございましたから、私自身といたしましてはしかっておきました。そして、この発言は極めて遺憾な発言であったと私は存じております。
  119. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大臣としては、遺憾な発言としてこういうような発言について大臣の立場からもお取り消しになり、そして最高責任者としておわびをする、こういうことであろうというふうに思うのでありますが、遺憾であるということだけではいかがかと思いますので、もうちょっとお話しいただきたい。  同時に、外務大臣としては、アイヌ民族は存在する、こういう御見解なのかどうか、それもこの際明確にしていただきたい。
  120. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 政府といたしましては、過般古川大使が申しましたような少数民族等々に関しまして、我が国は単一民族国家である、そのような論は政府は主張したことはございません。私もそうしたものではないとはっきり考えておる次第でございます。だから、今後、最高責任者といたしましても、この問題は外務省内に徹底していかなければならない、かように存じております。  なおかつ、アイヌ民族のことに関しまして言い及びでございましたが、私の方は次のように考えております。  一般論として、アイヌの人々が少数民族であるかについて申し上げる立場に外務省はない、これが第一点であります。しかし、アイヌの人々が独自の言語及び宗教を有し、文化の独自性を保持しているとされていること等より、アイヌの人々が国際人権規約B規約第二十七条に言う少数民族であると申し上げて差し支えないと考える。これはもう五十嵐委員も御承知のとおり、ずっと従来からの外務大臣、また外務省の見解でございますので、私もその見解をここにもう一度繰り返させていただく、それが我々としての認識でございます。
  121. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今のは国連の人権専門委員会に対するいわゆる人権報告の政府の態度なんですが、そういう難しいことを聞いているのではないので、もっと素朴に、基本的に、余りそういう義務的なことではなくて、外務大臣として、アイヌ民族という少数民族は我が国に存在しているのだ、単一民族ではない、こうおっしゃっているのだからそうだろうと思いますが、そこのところを明快に、率直に、素朴に御意見をいただきたい、こういうことなんです。
  122. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 その点は、北海道の一地域におられるということは十分承知しております。
  123. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっとよくわからなかったので、もう二通言ってください。
  124. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今御質問のとおり、アイヌの人たちがおられるということは私も十分承知いたしております。
  125. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 アイヌの人たちと言っても、大臣、私の聞いているのは、少数民族であるアイヌ民族というのが我が国に存在しているのだということなんですよ。これは大臣なんかの場合にはもっと明快にお話しいただけるのではないかと思って僕は御質問しているのですが、それを国連にやるときにはどうだとかこうだとかいう技術的なことではなくて、もっと基本的な、率直な御意見をもうちょっとはっきりいただけないのですか。人人ということでなくて、私の聞いているのは民族ということなんですがね。
  126. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 五十嵐さんにはこの間も社会党の代表の方といろいろお話をしているときに私の見解も申し述べておりますが、私もその後いろいろと勉強もさせていただきましたが、先ほど申し上げたとおり、少数民族というふうに言うかどうかということに関しましては、まだ外務省自体のそうした見解を下す立場にないということでございますから、これは外務大臣としてここでお話しする以上は、いやしくも外務大臣でございますから、従来のそうしたことを私が途中において解釈を変えるわけにはまいりません。しかしながら、アイヌの人たちがおるということはもうはっきりしておりまするし、その人たちが我々は単一民族ではないのだという主張を持っておられることも当然のことである、こう私は認識しておるということであります。
  127. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 単一民族ではないのだ、北海道にはアイヌの人たちがいて、そしてアイヌ民族という考え方でおられる、それはアイヌの人たちがそう思っておる、こういう意味なんですか、今のお話は。  非常に明快さを欠くということで極めて遺憾でありますが、そういう意味でも私は、きょうは恐縮ですが小渕官房長官にもおいでいただいたのですが、官房長官にお伺いしたい。  北海道知事の諮問機関であるウタリ問題懇話会が、長い審議の上で、去年の三月二十二日に最終報告書をまとめて知事に提出をいたしました。また、この報告を検討した上で、道議会は昨年の七月二十五日の本会議で、「アイヌ民族に関する法律制定についての要望意見書」というのを正式に満場一致で議決して、政府にこれを提出しているわけであります。さらに引き続いて、横路知事自身も、八月一日、これら道民の意思決定に立って、政府に同様趣旨の要望書を提出しているわけであります。  その内容は、詳しいことは省略いたしますが、一つは「「北海道旧土人保護法」及び「旭川市旧土人保護地処分法」の廃止」、二つは「アイヌ民族に関する新たな法律の制定」であって、その内容としては、「日本国民の中において、アイヌの人たちの人権が重んぜられ、先住民族としての権利を尊重するという基本理念のもとに、次の内容を含む新たな法律を制定されたい」。その(1)は「アイヌの人たちの権利を尊重するための宣言」、(2)は「人権擁護活動の強化」、(3)は「アイヌ文化の振興」、(4)は「自立化基金の創設」、(5)は「審議機関の新設」というようなことで、政府に要望書が出ていることは御承知のとおりであります。  去年のちょうど今ごろ、三月の二十四日でありますが、私はこの委員会で小渕官房長官に当時の状況に立ってこのことについて御質問申し上げ、長官は、道の検討が終わって知事から正式な要望が行われたときには誠意を持って検討したいというようなお答えをなさっておられたわけでありますが、既に知事の申し入れがあってから八カ月ぐらいたったわけでありますから、いろいろ御検討なさっているのではないかというふうに思うのでありますが、どうであるかということと、それから検討の窓口は一体どこになるか。これはさまざまにこれからも御要望を申し上げたりなんなりしていかなくてはいけないわけでありますから、そういう窓口をぜひひとつ明確にしていただきたい、こういうことであります。
  128. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 御案内のように、ウタリ問題は教育、文化、生活、産業、就労等広範多岐にわたる事柄であり、関係省庁の緊密な連携、協力のもとで対応し、施策の充実を図ってきたところでございます。  そこで、今お尋ねの新法問題につきましては、お説のように、八月に横路北海道知事から要望書を私自身もちょうだいいたしたところでございます。したがいまして、この問題につきましては、冒頭申し上げましたように、広範多岐にわたる事柄であり、かつ各省にまたがることでもございますので、それぞれ関係省庁にこれをおろしまして、現在それぞれの立場で慎重に検討を進めていただいておるところでございます。  政府といたしましては、この新法問題につきまして結論を得るということにつきましては、それぞれの役所の考え方も取りまとめなければならぬと思いますが、それにも増して現在の状況をいかに改善するかということもこれまた重要でございますので、実態的にその改善の努力について予算の中にも種々盛り込みながら諸施策の充実を図ってきておるところでございます。  さらに、しからばどこかの省庁を決めるべきではないかというお尋ねでございますが、これまた今御答弁申し上げましたように、広範多岐にわたる、すべての人間生活にかかわる諸問題にかかわることでございますので、この問題については現在どの省庁がどういうふうにまとめていくかということにつきましても、現在この結論を残念ながら得ておらないところでございます。  いずれにいたしましても、緊密な連携と協力のもとでウタリ問題についてよりよい方向が定められるように努力をいたして、その施策を推進していくことが何より肝要ではないか、このように考えておるところでございます。
  129. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それでは長官、今はどこが、各省にまたがってさまざま議論していただかなければいかぬ、それでそこにおろしてやってもらっているというのは、長官のところでおろしているわけですか。この新法の問題は今はどこでまとめておられるのですか。開発庁でやっているのは具体的な諸施策、予算の問題についてでありますが、新法の問題は全く別な問題でありますから、それはどういうことになっているのか。
  130. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 私が八月一日に北海道知事さんから要望書をちょうだいをいたしましたので、私の責任で各省庁にその要望書をおろしまして、それぞれの省庁におきまして、一体このウタリ問題についてどのように対応すべきかということについて現在勉強をお願いをしておるということでございまして、大変申しわけありませんが、その結論を現段階では得られておらないということでございます。
  131. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうしますと、それは決まるまでは官房長官の手元ということで確認してよろしゅうございますね。
  132. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 いずれにしても、これを取りまとめるところの省庁というものは定まっておりませんので、政府といたしまして北海道知事から正式な道議会の決議を経ての要望書をちょうだいいたしております以上は、政府としても、これをお預かりした立場で真剣に誠実に検討いたしてまいりたいと思っております。
  133. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっと答えになっていないのですがね。
  134. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 再度のお尋ねでございますが、現在新法が制定いたされておるわけではないことは申すまでもありません。したがいまして、その所管する役所というものはもちろんございません。しかし、昨年先生の御質問もございまして、その段階では、北海道におきまして北海道としての知事さんの要望書が出ましたらどう対応しますかということでございましたので、私といたしましても、それを拝見した上で対応いたしますという御答弁を申し上げたつもりでございます。その後、夏になりまして正式に要望書が参りましたので、私預かりました以上は、政府としてどう対応すべきかということについて現在それぞれの関連する省庁にこれをおろしまして検討を命じておる、こういうことでございますので、特定の省庁がこれを今専任して責任を持つという立場には相なっておらないということにつきまして、御了承いただきたいと思います。
  135. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、そうやって各省庁におろしたのを例えばいつまでにまとめるとか、それをどうするとかいうことはどこかがやらなきゃいけないわけでしょう、まとめるところが何か言わなければ……。しかし、これはやはり長官のところでそれまでは、まあ暫定的というのですかおやりになるというのは、それは長官のところ以外にはないのではないですか。あるいは総務庁なんですか。どこかが取りまとめなければ、それから。プログラムを立てなければいけないでしょう、内容についてどうこうというよりはね。今長官のおっしゃるように各省におろしたのですから、おろしたものをどうするかということ。  それから、そうすると大体いつごろまでにおまとめになるというような御予定ですか。
  136. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 事柄も大変重要な問題でございますので、慎重に現在検討をそれぞれされておるものであると思いますので、その結論を得る時期につきましては、大変申しわけないことでございますが、ここで確定して申し上げることについてはお許しをいただきたいと思います。
  137. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 非常に不満だ。これは、いつでもアイヌ問題については、僕は質問するたびに思うのでありますが、誠意がない。どうしてアイヌ関関を真剣に受けとめて検討しようとしないのか。私だけでない。毎回それぞれ議員がこのことについていろんな立場から御質問申し上げているのは御承知のとおりであります。もうそろそろ、知事や道議会からの正式な要請が出たのですから、まともにこれを受けとめて論議をしてほしい。そうでないからいつまでたったってアイヌの皆さんの非常な不満が残っていく。これは決していいことではないと僕は思います。ぜひこの際、なるべく早く誠意を持ってこの問題の検討に着手してほしい。それから、それを担当する場は一体どこなんだということ等はもうとにかく早くお示しをいただくように、そのことを強く要望を申し上げておきたいと思います。  官房長官もお忙しいと思いますから、どうぞ。  さて、大きく分けて二つ御質問申し上げたいというふうに思いますが、それは、大変お骨折りをいただいているサハリン残留韓国朝鮮人問題、それからもう一つは在韓被爆者の問題、この二点についてお伺いをしたいというふうに思います。  大臣は、今韓国内で世論調査をいたしますと、一体あなたはどこの国が一番好きで、嫌いですか、あるいはどこの国民が一番好きで、嫌いですかというような問いが出た場合に、残念ながら日本が嫌いな方の一番に出てくるというような状況になっていることは御存じでしょうか。
  138. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 甚だ残念ながら、そのような傾向であるということは承知しております。
  139. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大臣日韓の間ですから、相当な行き来はあるし、むしろ今一番日本に観光等でおいでになっている外国人は韓国がアメリカを抜いて一番だというような報道もこの間あったところなのです。そうなのになぜ一体そうなのかということについて大臣はどうお考えになりますか。
  140. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはり過去三十六年間の我が国の植民地化という問題、さらにはそうした中において創氏改名までさせた。金さんは金さんであってはいけない、何とか金山とか金村に変えろ、こういうことまでさせた。いろんなことを私は韓国国会議員を初め関係者方々から聞いております。だから私といたしましては、そうしたことが一番大きな問題として残っておるのではなかろうか、我々としては、異民族が異民族を統治することはできないし、またしてはいけない、こういう反省に今日立たなければならない、かように思っております。
  141. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 お話のように、日本の今までの過去における侵略的あるいは植民地支配的な歴史的経過というようなものがやはり抜きがたい朝鮮半島の人々の深刻な反日感情というものを生んできたというふうに我々は深く反省をしなければならぬというふうに思う次第であります。そういう深層の、民衆の真の信頼回復というものなしには本当の意味日韓友好というものはないのじゃないかというふうに僕は思うわけなんです。  そこで、そういう中で盧泰愚大統領が五月下旬、公式訪日される。これはいろんな意味で、例えば民主化された韓国の大統領としていわば初めて訪日がなされる、あるいはこちら側としては、新天皇が初めて迎える国賓でもある。しかもまた、最近某新聞にも出ていましたが、新天皇の訪韓説なども伝えられていること等もあって非常に注目されるところであります。あるいは竹下総理のこの前の好ましからざる発言等の余波もあるわけでありますから、そういう中で盧泰愚大統領がお見えになる、この日本公式訪問の重要な意義というものが日韓の過去の歴史から生ずる諸問題に大きな区切りをつけるということと思われるのでありますが、これについて大臣の御見解をまずお伺いしたいと思います。
  142. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 既に全大統領の時代に訪日がございました。率直に申しまして、韓国の国民の感情から申し上げますとこれも勇気の要ったことであると私たち考えておりますし、それだけに韓国の大統領の訪日を我々は官民挙げて御歓迎申し上げたという経緯もございます。  今回は、盧泰愚大統領は新しい民主主義によって選ばれた大統領である、一段と韓国が大きくなれた、そうしたもとでの大統領でございますから、さらに我々といたしましてもそうした意味を十二分にかみしめて、官民挙げて御歓迎申し上げる。そうして、やはり過去のいろいろな反省の上に私たちも立ちまして、今後はそれぞれが新しい時代のために新しい親善関係を結んでいく。そういう意味で私は大切な御訪問ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  143. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そういう意味では、具体的に両国間の歴史的な経過の中から一つの懸案として存在している問題で言えば、一つは在日韓国人の、特に三世などの法的地位の問題がありますし、それからサハリン残留の韓国朝鮮人問題、あるいは在韓被爆者対策などがその主要なものとしてあろうというふうに思うのでありますが、これらの懸案について盧泰愚大統領訪日の折にかなり抜本的な話し合いをすることになるのか、まあなろうと思うのでありますが、その折に日本政府の誠意ある対応の用意はもちろんあると思うのでありますが、この辺の見解についてお伺いしておきたいと思います。
  144. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 幸いなるかな、両国には既に基本条約締結、そのときに過去の歴史に反省をいたし、また私たちが宗主国として植民地を支配したということについても遺憾であった、そういうような表明がなされておりますが、私はやはりそういう心は常に忘れてはならない、そのときだけで終わりだと思ってはいけないので、常にそういう気持ち隣国とは本当に打ち解けた関係を結ぶことが必要であろう、私はこう考えております。  そこで、今御指摘の在サハリン韓国並び朝鮮人問題も、五十嵐委員いつも先頭に立っていただいて頑張っていただいていることに私は深甚の敬意を表し、また謝意も表したいと思っておりますが、先ほども私は申し上げたと存じますが、これは道義的責任を我が国が持たなければならない人道問題だ、我々としてはこういう責任で今後も対処していきたいと思います。また、今御指摘になられました原爆被爆者の問題に関しましても、人道的な問題として私たちはそれらの犠牲者に対しましても格段の配慮を払わなければならない。同時にまた、法的地位の問題に関しましても、基本条約を結ぶときにいろいろと問題がございましたが、ただいま仰せの、では第三世代に対してどうするかという問題は我々といたしましても今真剣に検討中である。そうした問題を含めまして、極力過去の忌まわしき、韓国人たちからいいますと幻影を、また実績を払拭しなければならぬ、これには日本方々の協力と格段の理解が必要である、こういう言葉に対しましても、私たちは謙虚に耳を傾けて両国親善を図らなければならぬ、こういうふうに思っております。
  145. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 外務省側の御努力もあって、あるいはソ連政府側の近年の深い理解というものもあって、サハリン残留の韓国朝鮮人問題が私どもが思っていたよりずっとテンポの速い速度で進展を見ていますことは大変うれしいことだと思うのであります。殊に再会の数が非常にふえてきている。ふえてきているだけでなくて、日本に来て再会する人たちが今度は韓国に、故郷への一時訪問というようなことも昨年来、殊に今年は非常にふえてきている。こう言ってはどうかと思いますが、ややそれが一般化しつつあるということは、我々としては非常に好ましいことだと思っているわけであります。  しかし同時に、再会の数がうんとふえてきているというようなこと、あるいはまた日本経由で韓国側に訪問しているというような事態は、そうなってきますとまたそれなりの新しい問題をいろいろ抱えることにもなってきている。従前はボランティアの皆さんが一生懸命苦労なされて、最近は政府側で若干の予算もお組みいただいておるわけでありますが、それまでは本当に我々が見ても頭の下がる思いがする御苦労を続けて世話をしていただいてきたわけであります。しかし、こうふえてまいりますと、なかなかボランティアだけの力ではどうにもならぬということになっていると思うのです。それでこの際、そういうものをきちっと対応できるような新しいシステムにしていこうということでさまざまに御検討いただいて、平成元年予算につきましてもそういうことを背景にしながらさまざまな内容の予算をお組みになったようであります。時間がありませんので余り詳しいことに触れるわけにはまいらないと思いますが、今度の予算を進める上で、今言うようなボランテイアに頼っていた状況からこの際赤十字にこの事業をしっかりと受け持ってもらおうでないか、昨年一年ぐらい実務者会議で日赤等の非常な御協力もいただいて、ややそういう方向が出てまいったわけでありますが、これらの実施の方向等についてこの機会に御説明を賜りたいと思います。
  146. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 予算のお尋ねでございましたので簡単に御説明いたしたいと思いますが、仰せのように、先生の御指導、御意見等もちょうだいいたしまして、これから国会に御審議をお願いいたします平成元年予算におきまして、この面での予算を抜本的に拡充させていただくことになっております。具体的な数字は五千八百万円をお願いしてございますが、これを在サハリン韓国支援等特別基金拠出金というふうな形にいたしまして、ただいま先生仰せのように、日本赤十字社と、それから韓国側は大韓赤十字社、この間の共同事業としてこれを実施していきたいということで日赤の方にもただいまお話を進めているところでございます。
  147. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 日赤と大韓赤十字社の共同事業体でこの仕事を進めていくということは画期的な対応の仕方で、私ども非常に期待をしていきたいというふうに思うわけであります。  そこで、お聞きしますと、この日韓の両赤十字社による共同事業体へ政府側から基金を拠出するということでの活動になってくるようでありますが、日本赤十字社としてはこれが受け入れについてもちろん御検討いただいていると思うのでありますが、それにつきましてはどのようにお考えになっておられるか、きょうは近衛外事部長さんにおいでいただいていますので、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  148. 近衛忠煇

    近衛参考人 日赤といたしましては、この問題の人道的性格にかんがみまして、かねてより非常に強い関心を持ってまいりました。そして、その解決努力してもらうべくジュネーブの国際赤十字委員会及びソ連赤十字に積極的に働きかけてまいりました。こういった背景がございますので、最近日本であるいは韓国での再会が徐々に実現しておるという傾向を大変うれしく存じております。また、先生を初めとして関係者方々の御努力によりましてこの再会を支援すべく予算化の措置がとられておるということにつきましても、大変うれしく存じております。  私どもといたしましては、この予算の成立を待って政府の方から正式に事業の委託を受けるというふうに理解をいたしておりますけれども、実際にこの予算が成立する前でありましても、この委託をされる事業の内容がはっきりいたしますれば、同様にこの事業の委託を受けます韓国の赤十字、また場合によりましてはソ連の赤十字とも十分協議をいたしまして、この実施の細目について詰めてまいりたい、かように考えております。また、実施をするに当たりましては、これまでこの再会の中心的な役割を果たしてこられましたボランティアの方々にも十分お知恵を拝借して、また今後の協力をお願いしてまいりたい、かように考えております。
  149. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 御説明を聞いて大変安心をいたしまして、うれしく存ずる次第であります。ぜひボランティアの皆さんの御協力を得ながら、日赤さんの御尽力を心から御要請申し上げたいと思う次第であります。  ちょっとお伺いしますと、近衛部長さんは先般訪ソの折にソ赤にお寄りになられて向こうともお話をなされたということで、この点も大変敬意を表したいというふうに思うのであります。なかんずく、その折に日韓ソ三赤十字社のサハリン残留韓国朝鮮人問題に関する協議というようなものをしようではないかということのお申し入れをなされたというふうにお伺いをしているわけであります。この点はかねがね我々が大変期待をしているところでありましたので、その点につきましても若干様子をお知らせいただければありがたいと思います。
  150. 近衛忠煇

    近衛参考人 この三社間で実務的な協議を持とうという提案につきましては、先生の御指摘のとおり、私どもから韓国の赤十字に対しましてもソ連の赤十字に対してもいたしております。韓国については、問題がない、いつでもこれに応じようということでございますけれども、ソ連の赤十字に関しましては、最近では十一月四日付で返事をもらっておりまして、従来どおり出入国の問題に関しては政府の権限であるということで、はっきりした回答は得ておらないのが現状でございます。ただ、今回委託の事業の内容がもう少し具体的になりますれば、こういう内容で私ども仕事をやっていきたい、その上でどういう協力が得られるかということを改めて打診できるのではなかろうかというふうに考えております。
  151. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私もおととしと去年モスクワに参りまして、ソ連赤十字社のベネトクトフ社長とお目にかかって要請を申し上げた折に、この三赤十字社の点についてもお話をしたのでありますが、社長はいいのだけれども、しかし幹部が必ずしもそうということにはなっておらないようで、これはぜひひとつ力を合わせて進めてまいりたいというふうにも思うのですが、たまたまきのう、日ソ事務レベル協議でこの問題について日本側から御提案をいただいた、ソ連側からもこれについての一応の御見解が出されたようで、私はこれも非常にうれしく思うのでありますけれども、きのうの模様を簡単にお知らせいただきたいと思います。
  152. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この点につきましては五十嵐先生に日ごろお世話になっておりますけれども、私どもといたしましても非常に重視しておりまして、昨日、事務レベル協議の一環として私と外務省のチジョフ太平洋・南東アジア諸国局長との間で会談いたしました際に、この問題を取り上げまして、私の方から、ソ連側が一般的にこの問題について前向きになってきておることを非常に高く評価すると申し上げたと同時に、具体的に三つの点を要請した次第でございます。  一つは、日韓の赤十字が通じて現地調査をしたい、これについて協力してほしい、特にソ連側の赤十字の協力を得たいということ。それから、訪問のいろいろな手続等を円滑にするために日ソ韓の三赤十字の間で実務的な話し合いを持ちたいと考えておるのでぜひ協力してほしいということ。さらに、ソ連に親族を有する韓国人が観光旅行として訪ソして現地で親族に会えるということになれば、この解決の一方法として非常に有利であるということを向こうに申し入れまして、善処を申し入れた次第でございます。  それに対しましてチジョフ局長の方から、第一点につきましては、これは赤十字同士で話し合ってもらったらいいのではないかということを言っておりました。第二の点につきましては、具体的な問題があれば、そのときに三社で話し合うということにしたらどうかと思うという回答をしておりました。それから第三の点につきましては、韓国人が観光旅行として訪ソするということは、現在特に閉鎖地域ということでなければ問題なく実施できると思うということを述べておりましたので、全体として前向きな対応があったと私は理解しております。
  153. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まず、その前段の日韓ソ三赤十字社の会談につきまして、どうか今後とも促進についてよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。  近衛日赤外事部長さん、どうもありがとうございました。どうぞ、お忙しいところを恐縮でございました。  今の都甲局長さんのお話の中に出てまいりましたが、きのうの日ソ事務レベル協議で、サハリンに親族を訪ねて韓国人が行こうというようなことは観光ビザであればそう問題はないのではないだろうかというチジョフ局長の話があったということは、これは私はもう本当にびっくりするくらいうれしい感じで受けとめたわけであります。これは長い間まさにそういう自由な相互交流というものこそ我々の念願していたところであって、最近ようやく日本経由でありますが韓国にやや一般的にサハリン残留韓国人の皆さんが行けるようになってきたというような上に、今度は離散家族の皆さんが、これはまたサハリンに訪ねていけるというような交流ができるということになりますと、一年前に我々も本当に何年かかるかと思っていたことでありまして、この点については非常に高く評価をいたしたいというふうに思う次第であります。  ただ、少し懸念されるのは、まあ問題ないとは思いますが、韓国側は出国のときにビザか何かが要るのでしょうかな。これらについては問題ないと思いますが、この辺はいかがですか。
  154. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  一般的に、ソ連の方におきましても、人道問題につきまして最近かなり柔軟な対応をしてきているという背景がございます。それから、韓国とソ連の間でも経済関係を中心としてかなりの実務関係が樹立されておりまして、その中で査証の問題等につきましてもかなり円滑な処理が最近はされているという乙とを伺っておりますので、私は本件が今後とも問題なく処理されていくのではないかという強い期待を抱いている次第でございます。
  155. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひ一層の御協力をお願い申し上げたいというふうに思います。  ただ、そういうことになってまいりますと、予算の動かし方もさてどうなるのかということなどの新しい課題も出てまいりますので、これらはまたこれからいろいろひとつ御検討いただいて、新しい状況に対応して積極的にまた予算化してほしいというふうに思います。  さて、同時に私は、そういうところまで非常に進展をしてきたのだけれども、そうなればなるように、もうここまでそういう問題が来たのだから、ひとつこれについてもちゃんと着目してやっていかなければだめだなというふうに思うのが、長い間、四十何年間待ちぼうけになっている、残されてきたひとりぼっちのおばあさん方です。暮らしも大変だ、しかもああいう儒教の強いところですから、ひとりぽっちで結局四十何年待ってきたというような方も少なからずあるわけです。そういう留守家族の実態については、去年、おととしですか、大韓弁護士協会の第二次報告でかなり詳細に出ておりまして、ごらんになっていると思いますが、もしあれでしたらまたお届けしたいと思いますが、それはやはり大変悲惨な実態がそこにあるというふうに思うわけであります。これについて何か方法はないかということが実は我々のいつも感ずるところなのであります。  例えば、そういうおばあさん方について老人ホームのようなものを韓国側で計画をするというようなことになり、その計画について日本側の協力要請等があるというような場合、まあなかなか簡単にいかないことはよくわかるのでありますが、しかしいろいろ工夫を凝らして、例えば今のような日韓赤十字の共同事業というようなこともあるわけでありますから、そういうこと等も含めてさまざまな検討をしてみる、もしそういうことがあればということも適当でないかというふうに私は思うのでありますが、いかがですか。
  156. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 先ほど御説明いたしましたように、親族の再会の支援のためにとりあえず五千八百万円の拠出金をお願いしてございます。したがいまして、当面は、この予算をお認めいただきますれば着実に実施していくことにしたいと思っておりますが、他方、ただいま先生から御提案のございました老人ホームの問題、これにつきまして韓国側の意向がそのようであるということでございますれば、それに対しまして日本側としてどういうことができるのか、検討させていただきたいと思います。
  157. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大臣、本当に残されている方は大変でして、それはなかなか、お話のような一九六五年の経過がありますから簡単にいかないのはわかるのでありますが、しかし、これも大臣の言うような人道的立場といいますか、私なんかはやはり歴史的責任という言葉を一つつけたいところなんでありますが、そういう意味から、もし今言うような老人ホーム等の計画があれば、せめてそういうものについての援助というようなことについて検討をぜひしていただきたい。これはもちろん韓国側の要請があってのことだろうというふうに思いますが、そのことをぜひ御要望を申し上げたいと思いますが、一言あれば……。
  158. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどからずっと日赤を初め関係政府職員の御答弁がございました。私も、テレビでも最近しばしば現状が報告されて、本当に同じ人間に生まれてこうしたことがあるのだろうかと思うほどお気の毒なことでございます。だから、ひとしお私も心を痛めておる一人である、そういうことでございますから、今申されたような面におきましても、我々といたしましては、できることは誠心誠意尽くさなければならない、かように思います。
  159. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。  あと、そう大した時間がないのでありますが、残された時間で在韓被爆者の問題をお願い申し上げたいと思います。  よく我々は、日本人というのは世界で唯一の被爆国民である、こういうぐあいに言うのでありますが、しかし、実はそうでないわけで、広島、長崎で被爆をしたのは、我々とあわせて韓国朝鮮人方々、あるいはその他の国々の方もいたわけであります。そこで、いわゆる被爆した韓国人の状況というものについて政府側でどう把握しておられるのか。話す時間がそうありませんから、長い経過等については省略をしていただいて、特に現状といいますか、そういうようなことについての御報告を簡潔にいただきたいと思います。
  160. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 被爆者の方の実数につきましては、韓国政府の推定あるいは直接の被爆者の協会の方々の推定等いろいろございますが、いずれにいたしましても、先生、経緯につきましては先刻御承知のとおりでございますのでごく簡単に御説明するにとどめたいと思いますが、過去におきまして八一年から五年間、渡日治療、日本に来ていただいて治療してさしあげるということで三百四十九人の被爆者の方を治療いたしました経緯がございます。ところがその後、韓国側は国内での治療も十分可能である等の理由でもう必要がない、一たんそういう段階、状況になりましたけれども、その後、新政権ができた等のことがございまして、新政権のもとで改めて先方から、直接の被爆者の方々の御意向も受けて、日本側にこの面での誠意ある姿勢をぜひ見せてほしいというお申し出がございまして、仄聞いたしますところによりますと、大統領御自身も大変この問題で御熱心であるというふうに伺っております。そういうことで、ただいま国会で御審議をお願いしております平成元年予算におきまして、在韓被爆者支援のために四千二百万円の予算の計上をお願いしておる次第でございます。
  161. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 もう少しいろいろ詳しく聞きたいような気もいたしますけれども、時間がないから……。  これはおたくの方になるのかどこになるのかわからないけれども、当時広島、長崎で被爆した韓国朝鮮人はどのぐらいいたか。それから、今いわゆる在韓被爆者はどのぐらいの人数なのか。これは登録している数、未登録、それから被爆者協会が言っている数、かなり差があるようでありますが、その数字だけでよろしいのでございます。
  162. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 先生お説のとおりいろいろな数字が実はございます。手元の資料によりますと、在韓被爆者として韓国政府に登録されている者が千二百九十四名、韓国政府の推定では未登録者を含めて約三千名というふうな数字がございます。他方、在韓被爆者協会、こちらの方の推定では約二万名の方がおられるのではないかという数字がございまして、いずれにいたしましても、その多くの方が非常に老齢でいらっしゃるということが大変人道的な問題となっております。
  163. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これはどうなんでしょう、私さっき先に聞いた方で、被爆した状況は、当時広島在住の朝鮮人で広島で被爆した方々が五万人、うち死亡者三万人、それから長崎では二万人、うち死亡者約一万人、生き残った方々のうち二万三千人ぐらいが韓国に帰国した。現在、韓国原爆被害者協会、これは本部ソウルで辛泳洙さんが会長でありますが、約一万人の登録という数字もあるのでありますが、広島における原爆の被害の状況等はややこんなところと考えていいのですか。
  164. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 厚生省の方でもう少し正確な数字を把握しておられると思いますが、申しわけございませんが、私の方ではとりあえずの手持ちの資料にそこまではございませんので、御容赦いただきたいと思います。
  165. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 はい、わかりました。そういうような数字になっているようであります。  しかし、いずれにいたしましても、今年四千二百万円の予算を組んでもらったということは大変喜ばしいことだというふうに思います。ただ、そのほかにODAの医療技術協力による別枠援助というのが言われているわけでありますが、これについてもちょっと触れておいてほしいと思います。
  166. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 日本政府としてどういうような御援助ができるかということはいま少しく詰めて、四月二日に両国外務大臣会議がございますので、その場で一つの大きな話題になろうかと思っておりますが、ただいま御指摘のODAといいますのは、恐らく日本からの医療協力を御念頭に置いてのことだと思いますが、この面につきましての韓国政府の具体的な考え方は現状ではいま一つはっきりしておりません。もし外務大臣会議等でその点につきまして具体的なお話がございますれば、またそれに沿った対応も可能かと考えます。
  167. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ、当初から言われているODAの技術協力につきましても積極的な御配慮をお願い申し上げたいというふうに思います。  実は、盧泰愚大統領がこの前の大統領選挙の折に、在韓被爆者協会の陳情を受けられた。そして、報道によりますと、「大統領になれば、この問題を必ず解決する。日本との間で、被害補償問題を必ずただしていく。」こういうぐあいに答えて約束をしたと言われているわけであります。韓国国内の非常に重要な問題でありますから、大統領選挙等でも重要なテーマになるのは当然であろうというふうに思うわけでありますが、これは御承知ですね。
  168. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 失礼いたしました。先ほど両国外務大臣会議を四月二日と申し上げましたが、四月一日の誤りでございます。訂正させていただきます。  それから、ただいまの先生のお話の点につきましては、そのような報道があることは私ども承知しておりますし、先ほど申し上げましたように、大統領御自身がこの問題に強い関心を寄せておられるということにつきましては韓国政府から内内伺っておるところでございます。
  169. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私は、やはりこの機会に、近く大統領がおいでになる折当然重要な討議の課題になると思うのでありますが、それこそ我が国の歴史的な責任の立場で積極的な問題解決への姿勢が望ましいというふうに要望を申し上げておきたいと思います。  それから、一昨年の十一月、在韓被爆者協会から梁井大使に補償要求と原爆病院の建設についての要求があった。それから去年二月、竹下総理が訪韓の折にも協会の代表は総理に面会を要望いたしまして、この折にはアジア局長が対応しているようでありますが、これらの折の協会の要求内容、今私が若干触れたところでありますが、これらに対する日本政府の見解というと大げさになりますが、これらについてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  170. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 お話のとおり、八七年の十一月に韓国原爆被爆者協会の方々大使館にお見えになりまして、梁井大使に対しまして在韓被爆者の損害補償として二十三億ドルという数字をお話しになりました。これはそもそも論を申し上げるつもりはございませんけれども、この問題についての基本的な日本政府の立場というのは、この問題は法的には六五年の請求権協定によって解決済みであるというのが一応法的な立場でございます。しかしながら、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、これにはすぐれて人道的な性格、その側面があるわけでございますから、在韓被爆者の方々の治療援助等の面でどのような御協力が可能かということで、先ほど来お話ししておりまするような予算をお願いしておるところでございます。
  171. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 例えば、これも韓国政府側の要望があればといいますか、要望によるものでなくてはならぬわけでありますが、韓国内で在韓被爆者のための医療的なあるいは福祉的な政策について、それこそまた日韓赤十字の共同事業体ではないが、その種の工夫をしながら基金を拠出する等の援助の方法を考えるということもあろうというふうに思うのであります。そういうようなことの検討も含めて積極的に対応してほしいと思いますが、例えばそういうようなことというのは検討に値しますか。
  172. 谷野作太郎

    ○谷野(作)政府委員 先方政府からそのような御提案がありますれば積極的に検討させていただきたいと思っております。
  173. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いよいよ時間のようでありますから、幾つか聞きたいことが残りましたが、また次の機会に申し上げたいと思います。  そこで、サハリンの問題もそうでありますし、被爆者の問題もそうでありますが、大臣、いずれもことしは従前から見るとかなり多い予算をつけていただいておる、大変これは我々も感謝関係者とともにいたしているところであります。しかし、それはいずれも入り口といいますか、と考えたいというふうに思うのですね。サハリンの場合は五千八百万、在韓被爆者の場合は四千二百万でありますから、そういうものを一つの土台にしながらひとつ一層の御尽力をそれぞれお願い申し上げたいというふうに思います。  特に、今触れた在韓被爆者の出題について、これは御承知のように外務省と厚生省が一緒に去年の三月ですか、調査団を組織して韓国に行って、調査団の名前は在韓被爆者問題調査団というのですね、これの調査報告が出ている。その調査報告の最初の方に「本件問題の本質」というところがある。そこにこう書いてある。   今回の調査における韓国関係者との意見交換等を通じて明らかになったのは本件問題は韓国側にとり「心の問題」であるということである。即ち、   (イ)在韓被爆者は在韓被爆者問題を日韓間の不幸な歴史を象徴する「戦後処理問題」の一つとしてとらえ、我が国の誠意ある姿勢を求めている。即ち、このような在韓被爆者の姿勢を一言でいえば、一九六五年の共同声明において明らかにされた「過去の歴史は遺憾であって深く反省している」との我が国立場が、本件問題においてどのように具体化されるのかを注目しているということである。   (ロ)法的には日韓間の請求権問題は一九六五年の日韓請求権協定において解決済みである。在韓被爆者の多くも、そのような法的議論は承知しているがへ全くの人道的立場から日本政府政策として自発的に援助をすることは可能ではないかとの心情を持っている。 こういうぐあいに「本質」というところに書いてありまして、それに続いて「ありうべき対応」というのがずっと書いてあるのであります。それは省略いたします。  大臣の御見解を伺いたいのはまさにここのところです。それは、やはり調査団はいろいろ調査をした、これは政府調査団でありますから。それがこういう「本件問題の本質」について率直に基本的な考え方を述べている。私は在韓被爆者の代表者の皆さんとも何遍か会っているが、私の印象ではもっと激しく、厳しく追及しているというふうに受けるのでありますが、少なくともこの政府調査団の報告においてもこのような心情というものについて報告書は語っているわけです。大臣としてもこの心情というものを報告書の中からもお酌み取りいただいて、この在韓被爆者の問題は非常に大事な時点を間もなく迎えるということになろうと思いますので、ぜひひとつ積極的に解決の御努力をいただきたいと思います。最後の御見解をいただいて、質問を終えたいと思います。
  174. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 るるお述べになられました被爆者問題は確かに人道上の問題であり、また五十嵐委員先ほど申されましたが、歴史的な責任はないのかということになりますと、やはり我が国の統治にかかわる問題でもある、かように私たちは認識いたしております。ただ、請求権問題も既に解決でございますから、我々といたしましては今申された趣旨にのっとって、ひとつ心の問題としてこの問題を十分今後も心がけていかなければならないと思っております。いずれ崔長官も四月一日にお越してございまして、私との間においてまたこの問題が出ると思います。したがいまして、十分腹蔵なく意見を交わしたいと思いますし、そうしたことは盧泰愚大統領御来日ということも頭の中に描きながらお互いがいろいろの問題を語り合いたい、こういうことでございますので、まだ具体策がどうのこうのという段階ではございませんが、本日の御質問なり、また御指摘の点に関しましては私もまた誠意を持って対処いたしたい、かように思います。
  175. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  176. 玉生孝久

    玉生委員長 塚田延充君。
  177. 塚田延充

    ○塚田委員 ただいま審議しております法律案一つの大きな骨子として、マーシャル諸島共和国及びミクロネシアに大使館を置くことということがあるわけでございますけれども、このマーシャル及びミクロネシアと外交関係を結んだ国は現在どの程度になっているのか、お答えいただきたいと思います。
  178. 有馬龍夫

    有馬政府委員 お答え申し上げます。  マーシャル諸島共和国及びミクロネシア連邦は、それぞれ十カ国と外交関係を有しております。すなわち、両国ともに外交関係を開設しておりますのは我が国、米国、豪州、ニュージーランド、イスラエル、パプアニューギニア、フィジー、キリバスの八カ国でございます。このほかマーシャル諸島共和国はフィリピンと、ミクロネシア連邦はナウルと外交関係を有しておりまして、マーシャル諸島共和国とミクロネシア連邦は相互に外交関係を開設しております。
  179. 塚田延充

    ○塚田委員 そのうち、この両国大使館もしくは領事館を置いている国はどういう国でございましょうか。
  180. 有馬龍夫

    有馬政府委員 実館を置いておりますのはアメリカだけでございます。
  181. 塚田延充

    ○塚田委員 この両国と同様な状態にありますパラオにおかれましても、やはりアメリカと自由連合に移行していくのではないかと推測されるわけですけれども、その見通し、それから、もしもそのようなことになった場合には、やはりこのマーシャル及びミクロネシアと同様に我が国としては大使館を置くことになるのかどうか、見通しをお知らせいただきたいと思います。
  182. 有馬龍夫

    有馬政府委員 仰せのとおり、現在パラオは国連信託統治地域終了後、米国との自由連合を選択して米国との間で自由連合盟約に調印はしておりますけれども、この盟約の成立に必要な住民投票による承認、七五%の賛成が必要となっておりますけれども、これと、米国議会による承認が得られておりませんで、この盟約はまだ発効するに至っておりません。したがいまして、パラオは引き続き国連の信託統治下にございます。パラオ及び米国において上記手続がいっとられるかは今のところ明らかではございませんけれども、今後これがこのような関係に移りました際には、その段階でお示しの御質問等検討することといたしております。
  183. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、外務省はこれまでも在外公館の警備の強化についてうたっておりますけれども、その具体的な内容について御説明いただきたいと思います。
  184. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 在外公館の警備の強化には二つの面がございます。人的、物的側面でございます。  まず人的側面でございますけれども、一部の特定公館には本省から警備官を派遣しておりますし、公館職員として現地で採用した警備員とか、あるいは現地の民間警備会社との契約による警備員の派遣を受けているというようなことが人的な措置でございます。  それから物的な措置といたしましては、外壁の強化とかあるいは防弾ガラス、防弾強化の扉、モニタテレビ、警報装置等々ございます。さらに無線機、それから防弾車の配備、窓ガラスの飛散防止措置などを公館によりまして実施しておるわけでございます。
  185. 塚田延充

    ○塚田委員 ただいまは一般的な警備のあり方、確かに力を入れているということについて御説明いただきましたけれども、昨年度の当委員会の附帯決議においても、わざわざ在外公館の警備対策をきちんとやりなさいという決議をしているわけでございますが、その決議に基づいて特別に今まで以上にこういうことを始めたとか、今検討中であるとかいうようなことがございますでしょうか。
  186. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 この警備の強化に関しまして附帯決議もございます。さらに、一般的に在外公館に対する脅威の件数もふえておりますので、その附帯決議にのっとりましていろいろな施策を講じております。  例えば、在外公館の警備員の増員が一つでございます。それから警備施設の強化、特に警備機器、装備品の充実等でございます。さらに、爆弾テロの新たな脅威に対処するために、爆弾探知器の配備などの対策を強化しております。
  187. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほどの御答弁の中で、警備という場合には人的な面と物的面と両面ある、こういう話でございますが、確かにそのとおりだと思います。しかしまた、別な見方をしますと、在外公館の警備という場合、いわゆるテロであるとかなんとかいうような騒擾状態に備えるための、言葉どおりの対外的な警備と、もう一つ内部機密などを漏えいしないようにという意味での内部機密の保持、こういう二つの面もあると思います。  そして今の御説明は、どちらかというと外からのものに対する一般的な意味での警備について御報告を受けたわけでございますけれども、内部機密の漏えいなど内部犯罪、こういうものに備える処置についてどのようなことをやっておられるでしょうか。
  188. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 御指摘のとおり、内部機密の漏えい防止ということにつきましては、特に近年、これが非常に大事であるという認識を持っておりまして、いろいろな措置を講じております。いろいろなところからのノーハウなどを仕入れて、特に今公館によっていろいろな措置をしておりますけれども、事の性質上、どういう措置をしているかということについて具体的に述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
  189. 塚田延充

    ○塚田委員 今では日本の民間会社もそういう外からの警備問題及び内部の問題、これらに対処するために警備保障事業というのが大変量的というよりは質的に発達していると私は思うのです、今の最新のエレクトロニクス技術などを使ったりして集中管理体制であるとか。そういう意味から、我が国の民間の警備保障会社の最先端技術もしくはそのシステム、これらを含めてそういう警備のためのノーハウと総称した場合、そういうノーハウを外務省としては在外公館に適用させるために御検討いただくとか、またはずばり適用を考えるとか、この面での検討は進んでおるでしょうか。
  190. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 内部機密の漏えい防止ということと、一般的なテロ等に対する防御、これの館あるいは公邸内部の警備ということ、二つあろうかと思いますけれども、内部機密の防衛につきましても民間のノーハウをいろいろ仕入れているところでございます。  特にいわゆる警備一般、それの内部のテレビ等含めまして、こういうことにつきましてはもちろん民間の大変に発達したノーハウをできるだけ仕入れるようにしておりますけれども、同時に、先ほど冒頭に申し述べましたように、民間の警備員を十二名ほどでございますけれども海外に契約いたしまして配備しておるというようなことで、その警備員の持つノーハウも利用させていただいているという次第でございます。
  191. 塚田延充

    ○塚田委員 在外公館の果たすべき役割として一般国民から見た場合、非常に大きなものとしては旅行者を含めましての在留邦人保護があると思います。そうした場合、私自身も海外に在留していたことがあるのですけれども、その国で突如軍事クーデターが起きた。これは運悪く休日に起きたんですね。某大国の大使館などは、そのとき夜になってもこうこうと電気がついて、いろいろな業務に当たっていることが外部からのぞかれたわけです。これはもう十数年前のことではございますけれども、我が国大使館は、いかに電話をコールすれども何の応答もなし、真っ暗やみのビルの状況であった、これは私の実感でございました。  それから最近のことでございますが、これはアメリカにおいて私の友人が旅行しておりまして、これもまた連悪く休日に身ぐるみ全部に近い形で盗難に遭ってしまった。パスポートも航空切符もすべてなくなってしまった。さあどうしたらいいんだということで領事館に駆け込もうとしたけれども、領事館はノーアンサー、行きようがない。このような事例がありまして、わざわざアメリカ合衆国から私のところに助けてくれというような電話が入ったけれども、日本でも外務省はお休みでございましたからどうにもならない、こういう事例があります。  としますと、いわゆる在留邦人を含む旅行者の保護という重大な業務に対しまして、いわゆる休館日、これは当然休館日があっていいと思うのです。だけれども、何とか駆け込める、いわゆる緊急一一〇番に近い何らかの処置を我が国民がわかるような形で道を開いておくということが大切だと思いますけれども、この辺のことにつきまして、私の述べたことに対する感想も含め、対応策について御説明いただきたいと思います。
  192. 黒河内久美

    黒河内政府委員 今日、在留邦人約五十二万人、そしてまた海外に渡航する日本人が昨年も八百四十万人を超えるということから、私ども在外公館における行政サービスの向上につきましては常に心を用いているつもりでございます。  今御指摘のような事例が最近あったとすればまことに遺憾でございますが、私ども邦人保護を担当する立場といたしましては、何か事が起これば二十四時間体制で対応できるような備えをしているつもりでございます。外務本省におきましても宿直がございますし、それから邦人保護に当たる者は輪番制で必ず電話連絡があればそれに応ずるようになっておりますし、また在外公館におきましても、それぞれ現地の状況におきまして最善と思われる方法でそういった緊急事態の連絡が可能なように準備をいたしておるはずでございます。例えば、当直者を定めるとか留守番電話を設置するとかいろいろな方法でやっておりますが、なおまだ万全を期していないところがあったとすれば大変残念でございますので、今後ともその点は改善すべく引き続き努力してまいりたいと思います。
  193. 塚田延充

    ○塚田委員 確かに本省としてはそのような御指導をされておるかもしれませんけれども、呼べど答えずというような公館が私は多いはずだというふうににらんでおりますので、そのような留守番電話がどうなっておるのか、もしくは宿円みたいなのがおるのかどうか、もう一度調べ直していただきたいなと思います。  そして、お答えの中に、例えば公邸とかなんかだりたら電話は通ずるよ、これは私用みたいな形になっておりますからそれは電話は通ずるかもしれませんけれども、一般の旅行者などにとってはいわゆる外にアウトプットされておる在外公館の代表電話番号ぐらいしかどうにもならないのです。それで通ずる、もしくはその玄関口に行って何とかなるというような体制について、一部留守番電話も含めても結構ですけれども、一一〇番的に通ずるようにぜひきちんとした処置を再点検していただきたいことを強調いたしまして、次の質問に移ります。  在外公館、特に公邸などに参りますと、これは私の個人的な見方でございますけれども、非常に立派な絵画などを中心とする美術品があるのですね。すばらしいな、中にはこんな先生がというような大作と思われるものも有力大使館の公邸などにはあるわけでございます。それらのものにつきまして、本省といたしましては、どこの公館のオフィスにはどういうものがあり、もしくは公邸、私は公邸みたいなのが多いと思うのですけれども、どういうような作品があるのか、これらについて当然これは備品台帳みたいな形で把握されていると思うのですが、その実際の把握の状況、体制がどうなっているか御答弁いただきたいと思います。
  194. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 各在外公館にございます美術品等の備品につきましては、各在外公館に、またそれを集中して本省にも写真、作者などを記入しました台帳を整備しております。それは、我が本省では在外公館課というところにあるわけでございます。
  195. 塚田延充

    ○塚田委員 私もそう数多く公邸を回ったわけではございませんけれども、実感としてそういうような気持ちになったわけですので、多分日本の美術愛好家もしくは研究家にとって、知られざる、もしくはそういうのがあるのだということがわかったら垂涎の的となるようなものもあるやもしらず。それを確かに本省の方ではチェックはされて台帳には載せたかもしらぬけれども、美術品としての価値をわからずにと言ったら失礼ですけれども、物品的な備品的なものとしての把握ということとあくまでも美術品としての把握とは大分違うのじゃないかという気がします。ということで、これにつきましては、ひとつ在外公館課で、単純なる備品チェックとは違って、美術専門家を使って一回美術的な価値とかなんかについて再チェックを行って、そしてコレクター外務省として、どのくらいの値打ちがあるものやら再整理してみたらいかがかと私は個人的に考えております。  そして、このような感じになりました一つのきっかけとしては、JRが旧国鉄時代、有名な絵かきさんが貧乏時代に運賃を払えないで、どこそこの駅に持っていって勘弁してもらったとかというエピソードもあるくらいでございますけれども、調べてみたらかなりのものが死蔵みたいな形であったということでそれを洗い直して、今東京駅などでは常設ギャラリーみたいな形で手を変え品を変え、利用者サービスということでもって展示をしておるわけでございますけれども、そのように美術調査として一回やり直すおつもりがあるかどうか。私はぜひやってほしいと思うのですが、いかがでしょう。
  196. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先生の御指摘は非常に考慮すべき御指摘だと思います。ただ、御理解いただきたいのは、在外公館はその地における日本の象徴でございます。そこにその国のいろいろな人が集まってきまして、日本の文化を含めてそれを体得していく場でございます。在外公館にはそういうことがございますので、日本のいろいろな高名な画家の方々もぜひ自分の絵をそこへ飾ってほしいというお気持ちから、比較的市価よりは安くと申しますか国が買い上げることを許していただけるわけでございます。そういうお気持ちにこたえまして、在外公館におきましてはそういう絵をできるだけ目立つところにということでやっておりまして、実際問題といたしまして死蔵されているというような絵は非常に少のうございます。実は絵が足りなくて、大抵の大使は、しようがないので、私もそういう経験が個人的にもございますけれども、いろいろなプリントのようなものをいっぱい、日本では飾るところがございませんけれども、それを持って外国行きましていろいろなところに飾っているというのが実情でございます。  そういうこともございますけれども、同時に先生のせっかくの御指摘でございますので、死蔵されているような絵があるかどうか、もう一度検討してみたいと思います。
  197. 塚田延充

    ○塚田委員 死蔵というのはJRのケースを言ったわけでありまして、在外公館の場合は確かにこれはもう海外のお、客さんのために本当に生きた展示といいましょうか、活用の仕方をしていることを私も認めております。私の指摘しておりますのは、美術品として価値のあるものが多いはずだから、美術品としての見方で専門家によってもう一度再チェックして、リストみたいなものを再整備したらどうか、備品的なチェックではなくて、こういう意味でございます。  それでは、次に移らしていただきます。  今度は外交一般についてお伺いしたいと思うのですけれども、まず、我が国外交の基軸は対米関係にあること、各委員指摘したとおりでございますが、アメリカが我が国に求めております責任分担ということは具体的には何をどうしてくれということなのか、外務省としての解釈。それから、そのうち特に最近ベーカー国務長官が創造的な責任分担という言葉遣いをしておりますけれども、これは具体的に何を指すのか、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  198. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 総理が行かれましたときに、ベーカー国務長官から創造的分担というお話がございました。今まではややもいたしますとバーゲンシェアリングというふうな言葉を使われまして、その言葉は言うならば防衛費を肩がわりせよというふうに解釈されがちであった。これに対しまして私たちは、そうであってはなりません、日本には憲法上の制約これあり、また近隣諸国の懸念これあり、またいろんな制約があるからそう簡単にバーゲンシェアリング、勝手に決めて勝手に押しつけるなんてことはお断りです、こういうふうにしばしばあらゆる会合において申し述べてまいりました。そうしたことがベーカーさんにもうつったのではないかと私思いますが、創造的分担ということでございまして、これはあくまでも画一的な一つの問題についての分担ではなくして、日本とアメリカというものは非常に今や世界における経済的地位も高いのだし、またECも同様であろうし、いろんな問題につきましてひとつ幅広くお話をしようではございませんか、そういう意味であると私たちは解釈しております。
  199. 塚田延充

    ○塚田委員 竹下総理は、日米首脳会談の後の会見におきまして、この責任分野問題に対処するために我が国としての原則五つの分野を明示されております。  この五つの分野、まず第一が日米安保条約の効率的な機能、二に内需中心の安定成長、三に国連中心の平和への協力、四として文化交流、五番目に経済協力と政府開発援助の拡充というわけで、まことにごもっともというふうに受けとめておるわけでございますが、これは総理の御発言でございましたが、外務省としてももう全く竹下総理のこの五つの分野こそが責任分担の解釈と申しましょうか中身である、このようにオーソライズ、総理のことを外務省がオーソライズするのはおかしいのですが、そごはないでしょうか。
  200. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そのうち外交方針としては、もう既に御承知のとおり平和に貢献すること、また文化交流、そしてODAの拡充、これはもう既に竹下外交の三本柱として申し述べてまいりました。これは世界各国に対しましての私たちのいわば外交方針の公約と申し上げてもよいと考えております。  日米間におきましては、やはり今安保体制というものがございますから、これはもう堅持しますよ。さらにはまた、アメリカと日本というものが今日もう世界のGNPの三七%を占めておる。こんな大きなことはあり得ないことである。そうなってまいりますと、それぞれがやはりそうした面におきましてもお互いに努力をしなくちゃならないが、なかんずく日本としては国内の内需振興というものを常に考えて頑張っていきたいものである。当然そのためには構造調整なんか必要ですよ、今まで以上に頑張りましょう、こういう総理としてのお気持ちでございますから、我々といたしましては全く同感である、こういうふうに考えております。
  201. 塚田延充

    ○塚田委員 今の五つの分野の第一番目に挙げられております日米安保条約の効率的な機能ということでございますが、これは具体的にはどういうことを意味するのでしょうか。そして、これがもしも在日米軍に対します費用負担をさらに拡大することを意味するものでもあるということになれば、これは日米地位協定そのものも改定せざるを得なくなるのではないかと心配もされるわけですが、いかがでしょう。
  202. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 防衛費全般といたしましては、御承知のとおりに、これは実質的に節度ある防衛費を今日私たちは議会の御審議にゆだねておる、そして、そのもとにおいて御承認賜ったときには幾つかの防衛問題をそれによって対処しておるが、なかんずく、安保体制というものは、我々の間の安全保障につきましてはもう本当にすばらしい効果を発揮してまいりました。さらに効率的な運用ということになれば、やはり多々ますます弁ずというふうなことではなくして、今日は既に財政的な制約もあるし、あるいは社会経済的な影響もあるし、そうしたことを万般考えながらやっておりますということが効率的な運用、こうお考え賜ればよいと思います。
  203. 塚田延充

    ○塚田委員 竹下総理は同時に、この首脳会談におきまして、中東や中南米の平和と繁栄にも協力すると言っておられますけれども、中東につきましては我が国との関係からしまして当然のような気もいたしますものの、中南米諸国ということになりますとこれはUSAの全くのエリアみたいなことになりますので、となると我が国からの援助ということは戦略的な援助になってしまうのかどうか、どんな援助を考えておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  204. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 援助ということになりますと一応政府開発援助、ODA、これはあくまでも南北間の相互信頼であります。同時にまた人道的考慮を必要とする、これが一つの定義でございます。だから主として足元のアジア、私たちはこれに対しまして援助を多く注いでまいりましたが、けさほどもいろいろお話をいたしましたとおり、加盟国はもちろんのこと、それ以外の世界の国からも日本に対しましていろいろと経済協力さらに円借款等々の問題が今日期待されております。特に我々といたしましては、戦後アメリカの二十分の一のGNPが今やアメリカと三七%という時代ですから、当然我々は平和に貢献する日本としてその国々の自主的ないろいろな問題をお手伝いする、そういう意味の援助を志さなければなりません。  そうなってまいりますと、中東等は資源を非常に提供してもらった、そうしたことに対しても考えなくちゃならないね、アフリカは遠いところであるけれども、アフリカ自体は日本は手が汚れておらないんだからひとつそれらしい援助を頼む、こういう新しい期待もあるね、こう考えてまいりますと、中南米は特に我が国の移民の人たちを歴史的にも非常に多く面倒を見てもらったということもございますし、またやはり資源問題もございますし、そうしたことから、別に戦略云々ということではなくして、我が国としてなすべきことをなす、こういうことでございますから、さようにひとつお考え賜りたいと思います。
  205. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、急展開を告げておりますFSXの日米共同開発問題についてお尋ねをいたします。   一問だけずばりお附きしたいのですが、きのう、きょうと大変な急展開の模様でございますけれども、このポイントは、ずばり米国政府がいっきちんとした態度を決定して議会へ通告するのかということがポイントになると思います。その通告はいつごろになる見通しなのか、それから、この政府から議会への通告が三月末までにできなかった場合、我が国として六十二年度予算に百七億円の設計費が計上されておりますけれども、これはどうなるのか、これについてお答えいただきたいと思います。
  206. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 FSX問題につきましては、今先生御指摘のように、アメリカの国内における議会への通告という手続が残っておるわけでございます。私どもといたしましては、基本的にはこの問題は日米間では既に交換公文とか覚書が終わっております。したがいまして、アメリカの国内での議論がまとまりまして、一日も早く適切な手続がとられるということを期待しているのが現状でございます。いつ通告されるかということにつきましては、何せアメリカの国内の状況でございますから、現在確たることは私ども承知していないのが実情でございます。  なお、先生お尋ねの第二点の、三月末までに通告がなかった場合にどうかということでございますが、私どもといたしましては、既に政府間の手続は終わっておりますから、三月末までの間に全体的な状況をその時点で判断いたしまして適切に対処してまいりたいということで、現在準備を進めているというのが実情でございます。
  207. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、対ソ関係に話を移してまいります。  一月十八日、ゴルバチョフ書記長はいわゆる五十万人軍縮計画の概要を明らかにいたしましたけれども、その中でアジア部については二十万人だと表明されておりますが、政府としてはその具体的な内容、例えばこの二十万の中には、極東であるとか沿海州とかいうような我が国として関心の深い地域がどうなるのか、そしてもっとずばり言えば、北方領土の軍事基地がどうなるのか、このゴルバチョフのアジア二十万人削減計画に絡んでの我が国との関連について御説明いただきたいと存じます。
  208. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ゴルバチョフ書記長の五十万人兵力削減、これは一方的なスピーチによって世界に公約されたものでありまして、私は一方的な削減というものは評価しましょうということはシェワルナゼ外相にも申し上げました。ただ、では極東についてはどうかということになりますと、モンゴルに駐屯しているそうしたソ連軍に関してはまあ二十万人ぐらい、こういうことだけでございまして、なお詳細を知り得ないものであります。  特に私は、昨年シェワルナゼ外相と北方四島問題を議論いたしましたときに、やはり北方に一個師団おられる、これはすぐに撤兵しなさい、私の領土である、そんなところにのこのこ来てもらっては困る、撤兵しなさいと私は実ははっきり彼に申し上げております。なおかつグローバル・ゼロ、つまりINFの世界的な全廃、こうした問題は非常に歓迎するけれども、極東の方面について今後どのような傾向が出てくるかということになれば、やはりもう少しくソ連の太平洋艦隊に関しましても我々懸念するところ多し、ここまで申し上げております。それに関しましてシェワルナゼさんの方は、日本考えておられるようなものではないので、その内容につきましても一応私とあなたの間でしゃべってもいいと言いますから、私は、日米双方の兵力の配置等々に関しましては常に公にしておるのである、ソ連もひとつ公にしてほしい、こういうことを申し述べまして、来る五月の会談ではそうした問題も議論する用意あり、私はそう心得ております。
  209. 塚田延充

    ○塚田委員 ヨーロッパでは三月六日から欧州通常戦力交渉が開始されておりますが、ソ連はこれに先立ちまして一月三十日にヨーロッパ方面における兵力のデータを公表したことは御存じのとおりです。これがどの程度正しいのかいろいろ疑問点もなきにしもあらずでございますけれども、アジア方面についてはソ連は全然データを公表していないのです。やはりこれの公表を求めるべきだと思うのですが、そのような交渉をされているのか、また今後されるつもりなのか。それから、我が国で言わずともソ連の方が自発的にヨーロッパと同様にアジアの兵力データを公表する見通しがあるのかどうかについてお答えいただきます。
  210. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほど大臣がちょっとお触れになられましたけれども、昨年の十二月の外相会談におきましてこの問題を大臣から出されたときに、シェワルナゼ外務大臣がこれをソ連側においても公表する用意ありということで、五月にこの公表が行われるかどうか私どもは注目しているわけでございますが、その後本年一月に、中曽根前総理が参加されまして三極委員会方々がモスクワでゴルバチョフ書記長と会いましたときにも、ゴルバチョフ書記長の方から近く公表する予定であるということを言っておりました。そういうことで現在作業が行われているというふうに私どもは考えておりますけれども、しかし、いついかなる形で具体的に公表されるかということについてはまだ承知していない次第でございます。
  211. 塚田延充

    ○塚田委員 最後に、朝鮮民主主義人民共和国との関係について一問だけお尋ねいたします。  政府は、朝鮮民主主義人民共和国との関係を打開するためでございましょうか、今月の二十七日、場合によっては三十日、本会議もしくは予算委員会の場を通じての答弁という形で何らかの反省を行うという形で進展をさせよう、このように考えておられるようでございますけれども、その中身がどのようなものになり、朝鮮民主主義人民共和国としてはそれをどのように評価するかという見通しがあらかじめあるのか。これは見通しですから難しいでしょうけれども、しかし政府の誠意、竹下総理の誠意は内容によっては相手に伝わると思います。その効果の予測と同時に、我が国のこのような動きに対しまして韓国はどのような反応を既に示されておるか、それとも今後予想されるか。これらのものにつきまして、との総理の答弁がなされない前に予想を言うのはおかしいですが、外務大臣として総理との打ち合わせなどにおいて承知している範囲内においてこの朝鮮民主主義人民共和国に対する問題の解決方法について御答弁いただきたいと思います。
  212. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 本年度総理施政方針演説また私の外交演説で北朝鮮との関係改善に関しましてははっきりと申し述べております。すなわち、政府間でいつでも対応いたしましょう、またそれを我々は望む、そういうことでございますが、そうした声は伝わっておると思います。  このたび社会党の前書記長の田邊さんを初め訪朝団がお行きになられます。これも私非常に大切なことである、かように考えておりますし、既に私たちは北朝鮮に対しましていわゆる先方がおっしゃる敵視政策というものはとっておりません。そうした意味で我々といたしましても、十八富士山丸の二人の船員のこともございますし、また朝鮮半島における南北の融和ということはアジアの安定のためにも大切なことでございますから、ぜひとも我々としてはそうした意味のことを申し述べてもいいのではないだろうか、かように思っております。  ただ、盧泰愚大統領お越してございまして、盧泰愚大統領は既に昨年の七月七日の声明においてはっきりした立場も表明しておられます。しかし、今日といたしましてはお越しになる前にもし余り感情を阻害したり、あるいはまた政策に大きな差異を来すということがあってはいけませんが、やはり私たちは過去三十六年間というものを静かに考えた場合に、今日日本は何を考えておるかというようなことも当然意思表示をした方がいいのではないか、かように私は考えております。だから、その準備はいたしておりますが、こういうことを言うのだということはまだ少しく時をかしていただきたい、いずれこうした重要な問題でございますから、でき得たならば議運等で取り扱っていただきまして、そして本会議場で公式の答弁として申し上げた方がいいのではないかな、こういう考え方でおりますが、これもまた国会の方のお考えもいろいろとありましょうから、そうした意味政府は持っておるのだということをひとつ議会側も御認識賜れば結構ではないだろうか、かように思っております。
  213. 塚田延充

    ○塚田委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  214. 玉生孝久

    玉生委員長 広瀬秀吉君。
  215. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 ただいま議題になっております在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に関連をいたしまして、質問をいたしたいと思います。  法案の内容それ自体については、私は特別質問申し上げるような点はございません。在ウィーン国際機関日本政府代表部並びに在マーシャル日本大使館及びミクロネシア日本大使館を設置するとともに、これらの在外公館に勤務する外務公務員在勤基本手当基準額を定めるというようなことや、子女教育手当の問題あるいは住居手当の問題など、時宜に適した問題であるし、特に在ウィーン国際機関日本政府代表部なんというのは、これはもうむしろ遅きに失したという感すらいたすわけでありまして、今回こういうものを設けるということは、大変国際化時代において遅きに失した感はあるけれども、極めて適切なことである、そのように思っております。私どももウィーンを諮れたことも何回かあるわけでありますが、もうウィーン大使館、このような国際機関がたくさんあるものですから、応接にいとまなしというような状況を見ておった観点からしましても、大変結構なことであるというように思います。  大臣がトイレに行かれたようでございますが、これはやむを得ません。  私は、日本外交問題で一番取り残された問題を前向この法律案がかかったときにもこれに関連して質問をしたわけであります。今、民社の塚田議員からもお話があったわけでありますが、朝鮮民主主義人民共和国、この関係というのがまことに対応がおくれて、むしろこれは日本外交にとって恥ずべき部分ではないか、それは申し上げたわけでありますが、今回もその点について幾つかの質問をいたしたい、このように思っておるわけでございます。  大正がお戻りになりましたから、質問をいたしたいと思うのですが、朝鮮民主主義人民共和国との外交関係をこれからどう進めるか、こういう点につきまして、ことしは総理大臣施政方針演説の中にも、極めて短い言葉ではありましたけれども、「私は、朝鮮半島をめぐる動きを注視しつつ、日朝関係の改善に努力をいたします。」と明確に言っておられる。そしてまた、外務大臣外交演説でも、朝鮮民主主義人民共和国との関係改善は朝鮮半島をめぐる国際政治の均衡に配慮しつつ進めたい、可及的速やかに日朝政府の接触が実現し、第十八富士山丸問題の解決が図られることを希望する、このように述べておられます。これは少なくとも昨年より、前の皆さんの態度からはかなり前進したといいますか、日本政府の態度がやはり朝鮮との関係に積極的に取り組もうという姿勢を示したものだというように考えておるわけでありまして、これはそれなりに評価したいと思うのです。  ただ、平成元年一月二十日、社会党の招待した朝鮮労働党代表団がおいでになる直前に、「我が国朝鮮半島政策について」という政府見解が発表されました。これをここに今持っているわけでありますが、「分断固定化という考えに与する意図は全くなく、南北間の話合いにより平和的統一が実現されることを希望している。」これは、私はそのような態度で間違いないだろう、こういうように思います。その後「南北夫々と周辺諸国をはじめとする国際社会との間に正常な接触・交流が維持されることは、むしろ南北対話にとり望ましい環境を醸成するのではないかと考えている。」ここで言っていることがまた非常に後退したような感じを抱くわけです。「正常な接触・交流」、これだけなんですね。もう一歩この点を関係の正常化とか、これは南北の分断固定化ということにつながりかねない面はありますけれども、そういうものはそういうものとして確認をしておきながら、とりあえず国と国との関係正常化ということを樹立するのだという、そこまでやはり私は言ってほしい、そういう考えをもう示すべき段階にことしは来たのではないか。  平成元年、昭和も改まった今日において、昭和にはいろいろな思い出、それは不幸な思い出も、侵略戦争と言われるそういう不幸な時代もあったわけですけれども、ことし天皇崩御に伴って平成元年を迎えたこの歴史的な平成元年において、昭和とは全く違った新しい日本平成外交、平和外交がやはり着実に前進するものにしなければならないときだ。そんなことも、これは私の個人的な見解も感触も含めまして、その辺のところをひとつ外務大臣、いかようにお考えになっておられるのか、まずその辺をお聞きしたいと思います。
  216. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 北朝鮮に対しましては、ただいま広瀬委員がお読みになられましたとおり総理も私も発言いたしておりまして、その関係改善に努力をいたしたいと今日も思っております。  なおかつ、非常に重要なお話でございますが、平成時代を迎えたのだから平成時代としての新しいステップが必要だ、私も同感でございます。この間八十八人の弔問外交団の方々とお目にかかりましたときにも、日本といたしましては、これで昭和は終わりました、今私たちは新しい象徴天皇をいただきまして平成という新しい年で出発をいたしますから、どうぞ今後ともそうした意味のおつき合いのほどをよろしく、こういうふうに平たく私は申し述べまして、いろいろ日本に対する複雑な思いを持っておられました国々といえども、そうでございます、新しい時代を迎えてお互いに頑張りましょうという意気投合した話もできたということを私非常に喜んでおる次第でございます。  したがいまして、我々といたしましても、特に朝鮮半島に関しましては三十六年間の暗い歴史を持っております。これはもう反省しなければいけません。そうした意味で、今お読みになられましたとおりに南北の平和的統一ということは私たち考えておりまするけれども、日本から先にああせい、こうせいと言うことは慎むべきである。私も非常に韓国人たちとも深くおつき合いをしておりまするが、やはり何か日本がしゃしゃり出るということに対しましては相当異議を唱える面もたくさんあるわけでございます。したがいまして、まず南北問題は、朝鮮半島南北それぞれがお話し合いをしていただいて、努力が実ることを我々といたしましても期待いたしましょう。そうして、中岡もソ連もアメリカも大変な関心を寄せているわけでございましょうが、日本といたしましても、もしそうした国々とともどもに今後のことを語ろうというのならば喜んで参上いたしましょう。しかし、日本だけが何か隣国だというので一方的に措置をとるということについては果たして韓国はどういうふうに思われるであろうか。確かに七・七の声明はあったにいたしましても、中国あるいはソ連、従来北朝鮮と親しい方々韓国に対してもいろいろな新しい考え方をお持ちになる。私たちも当然そのようなことを考えながら北朝鮮に対して新しい関係を持つ。そうした点も非常にデリケートな面がございます。  だから、今広瀬委員がおっしゃいましたような段階まで突き進むということに対しては今日我々はもう少し慎重であらねばならない。しかし、日本がまず過去のいろいろな歴史、そうした上に立ちまして、ひとつ関係改善をいたしましょう、私たちはもう本当に心から皆さん方との政府的な接触を期待するのですよ、これが今私たちの第一段階ではなかろうか、かように思っておりますので、今いろいろお話しなさいましたことを私は決して無視いたしません。非常に大切な御意見である、かように考えておりますが、現在といたしましては、とにかく、久しきにわたってごぶさたいたしておったが、ひとつぜひともお互いに政府間の接触を持っていろいろ語り合いましょう、この段階に私たち全力を挙げたい、こういうことでございます。
  217. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 ワンステップということで、現在の段階ではという御説明がありました。なるほど昨年盧泰愚韓国大統領が七月七日に新しい政治宣言を出されました。今までは北の脅威というようなことを中心に韓国の政治もある程度は動いておった、これは無視することのできない事実だと思いますが、それを今度は民族的共同体、北と南はそうなのだ、したがってこれはもう将来一緒にならなければいかぬのだ、そういうまさに革命的とも言うべき極めてすかっとした、朝鮮民族としてはだれしもが望んでいる、韓国調査でもいつでも、民族は統一すべきだという世論調査の結果が八〇%以上を超える状況にもあるということをしっかり踏まえて、民主化を標榜された盧泰愚大統領がそう言われたことは、南北朝鮮を不当な三十八度線によって分けられ、国際政治のはざまで苦しんでいる、分断されている両国にとって、一つの大変大きなステップを踏み出した、こういうように評価することができると私は思うのです。  そういうものを受けて、これは外務大臣のお気にさわるかもしれぬけれども、今まで余りにも朝鮮との関係韓国に配慮し過ぎというようなことを私、前にも指摘したのですが、そういう一種の呪縛というか、縛られておったものから解き放たれたように日本政府が次々に対北との関係において、例の大韓航空機事件に伴う制裁措置等もいち早く撤廃されたとか、あるいはまた竹下総理自身も、日朝関係改善をまさに積極的に進めるべき時期にあるというような答弁を、これは昨年の九月に税制問題特別委員会でやられた。十月には、在日朝鮮人の政治目的の渡航には再入国を認めないというような原則をかなり長い間持っておったわけですが、それも、朝鮮の自主的平和統一支持第四回国際会議ウィーンで開かれた際にちゃんとパスポートを出しておられる。これも余り難しいことを言わずに出されたというようなこともあったり、また政府見解としても、「日朝間の懸案の全ての側面について前提条件なく、また、いかなる態様ででも話合いを行う用意がある。」というような、幾つかの問題点で今までにない非常に前向きの姿勢が見られるわけであります。我々は、日朝の国家間の関係改善を早期に図って、正式な外交ルートが政府同士で持てるような状態に早くしたいという気持ちを持って今日まで来たわけでありますが、そういう立場からしてそういう措置については率直に敬意を表するわけなんです。  ただ、それにもかかわらず、ことし一月二十二日に朝鮮労働党代表団がおいでになった。我が党も、できればこの機会に政府当局とも会ってみてはどうかというような話を率直に代表団の皆さんにも申し上げましたけれども、それについては、現在我々は日本政府と会って前進するというようなものが何も予想できない、会ってもむだであろうというような、割合かたくなな態度をとられました。そういうことを考えますと、やはりまだ日本考え方が少し甘いところがあるのではないのかなと感ぜざるを得ないわけです。  と申しますのも、私はこの前も随分詳しく、三十六年間にわたる植民地的支配というようなものをやって、あらゆる被害を朝鮮民族に対して及ぼした。これは韓国の場合も朝鮮民主主義人民共和国の場合も同様である。朝鮮民族全体に対して大変な民族的抑圧というものをやったわけであります。そして太平洋戦争、大東亜戦争にも軍人として駆り出す、あるいはまた炭鉱だとかそういう地下の重労働というようなところに徴用として多くの、百万あるいはそれ以上の人たちを強制連行して労役に従事させるというようなことまでしたわけであります。そういうようなものに対して、いまだに戦後処理すら済んでいない、しかももう半世紀近くもたとうとしているんだということを、随分口をきわめて大臣の前でも言ったわけであります。  そういうものに対して日本がどういう態度を示すのかということが、ここまで大きな一歩を踏み出したと私は思うのですが、そこでまだとまっているというのは、もう一歩、そこまで行かなければならぬ。これを竹下総理は、少なくともそういうものに対する遺憾の表明、反省の表明というものをやられる、こういうところまでは来たのかなという感じで、これもまた結構なことである、そういう評価をしているわけでありますが、先ほど塚田委員の質問に対してもその辺のところがまだ明確ではないのですけれども、外務大臣自身としてそのことをおっしゃる、そういうことも一つの段階としてあっていいのではないか。こういう場において外務大臣として、総理総理としてこれはやられるかもしれないけれども、その点についてはどういうお考えなのか、ひとつ率直に聞かせていただきたいと思います。
  218. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もう今ほとんど広瀬委員がおっしゃったような見解に立ちまして、やはり私たち関係改善を促進したい、かように思っております。  特に、盧泰愚大統領の七・七声明というものを当然頭の中に入れておかなければなりません。これはすばらしい声明でございますから、北朝鮮といえども真っ向から反対はなさらずに、既に議員間の交流が休戦ラインで始まったということでございます。それと同じように私たちも、かつて韓国政府との間において日韓基本条約を結びましたときに、過去の日本の三十六年間にわたるところのそうした政治的な地位というものについての深い反省と、そしてここに改めて我々は遺憾としながら新しい関係を望みます、こういうふうに申し上げておるわけでございますから、私はやはりこうした言葉は、今回は南北といわず全朝鮮半島におられるもと日本の植民地化のもとで苦しまれた方々に対する一つの私たちの言葉でなければならない、こういうふうに思っております。だから、それをどのように今後総理も私も申し上げるかということが残っておるわけでございますが、心はどうかと言われたら今の心で私は臨みたい、こういうわけであります。
  219. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 結構でございます。そういう気持ちをしっかり基本に持つ、腹の底にそれをしっかり踏まえて対朝鮮問題は考えていかなければならない、そういうように思いますので、その気持ちをひとつ大事にしていただきたい、このことを要望いたします。  それと同時に、今日、朝鮮民主主義人民共和国と韓国とが三十八度線で分断されておるわけでありますが、韓国の方からも盧泰愚大統領の七・七宣言、こう我々は申しておるのですが、声明でも宣言でもいいのです。あれを契機にして、鄭周永さん、現代グループの総帥が向こうに行かれて、金剛山の観光開発事業というようなもの、あるいはその他の問題についてひとつ一緒にやろうではないかということについて極めて友好裏に合意に達しているということなども踏まえるわけでありますが、今日、韓国の経済の発展、そして国民生活の状況、韓国にもいろいろ問題はあるでしょうけれども、北朝鮮の場合は金日成、キム・イルソン主席のチュチェ思想に導かれた哲学で国づくりをずっとやってきたということで、外の協力というようなものに依存をしながら経済発展を遂げていくという点がやや少なかったと私は見ています。そういうことが現実の国民生活の面にも、あるいは経済発展、特に一人当たりGNPなり国民所得というものの統計など、これは正式に北が発表する数字と自由世界、西側で発表する数字とかなり違いがありますけれども、やはりかなりの格差があるようにも見えます。  そういうような点で、やはりこれだけ日本が経済大国になっておる、もう世界一の対外債権国、二千四億ドル、円に換算して百三十円で計算してみますと、二十一兆円資産超の世界の経済大国、かつてのアメリカに近いような対外債権を持つ、資産を持つというような状態になっている。こういうような日本が、先ほど大臣もお認めになったような気持ちを根底にするならば、やはり朝鮮民主主義人民共和国に対して、古い時代を清算をする、戦後処理を行う、戦争中にあるいは三十六年間に与えた国民に対する被害、損害、こういうものの賠償というか、やはりそういう経済的な側面にまで触れた態度というものをこの機会に出していくべきではないか。  そういうものを出すことによって、先ほど大臣お話しになったような基本的な認識と、その上に立ってそういう問題にも一歩踏み込んだような態度を表明することが、真に反省をした立場における国の態度として朝鮮民主主義人民共和国の政府に対しても、向こうでも日本との関係の正常化を図りたいという表明をしているわけですから、そういうものを出すことによって政府間の公的な接触というものが、いろいろジグザグな段階はあるかもしれぬけれども、もう既にアメリカでも十二月と一月に外交官同士が北京で朝鮮との接触をしているということもあるわけですから、それはそれとして、それに倣うとかなんとかということでは全くないのですけれども、日本政府としてやはり政府間接触を急がなければいかぬ。いろんな道のりはあるかもしれぬけれども、政府間接触というものがやはり仕上げにならなければならぬだろうと思うのです。それを早めるためにもやはりそういう態度をこの際表明すべき段階ではないのかということをお伺いいたしたいと思います。
  220. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 広瀬委員、北朝鮮に対しましては平素から熱心に、今日まで一貫してその接触を図ってこられました。これに対して私も常日ごろ敬意を表しております。  やはり、今おっしゃいましたとおり、何と申し上げましても政府間の接触ということがまず第一歩でありまして、そしてお互いの意見というものが交わされてくる。北朝鮮から日本に対してどういうふうな期待があるのか、またそれは韓国と今日そうした関係においても両方の統一というすばらしい機運を守り立てるのに役立つのかとか、いろいろ私あるだろうと思います。したがいまして、すぐに外相がどうのこうのとかいろいろな問題に飛び込むのじゃなくして、やはり一つの段階というものがお互いにあるのじゃなかろうか。今日までいろいろと手を尽くしましたが、それすらも話し得なかった中だけに大切な問題だ、私はこう思っておりまして、特に十八富士山丸に関しましても、これは私らは人道上の問題であるから、こういうふうに申し上げておるわけですが、そうした問題も含めましてとりあえず政府間が接触をする。  この間も社会党の御招待で労働党の方が来られたときに、今おっしゃいましたとおり社会党の方も努力をしていただいて、何とか政府とやったらどうですかといろいろアドバイスをしていただいたことは、十分私たちもかたじけなく存じております。あのときも、もしそういうふうな声がかかったならばひとつアジア局の責任者を出そうというぐらいのことまで私といたしましても考えておったのでございますが、お越しになった方が、私の独断ではできない、これもまた無理からぬことであろう、かように私たちは理解をして、そうしたすべての問題を理解をしながら、ではひとつ改めて政府間の接触、こういうふうに申しておりますので、でき得ましたならばそうした面におきましても今後御協力のほどをお願いいたしたいと思います。
  221. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 時間もそうあるわけじゃありませんのでこれ以上進めようとは思いませんが、私が申し上げた問題点、これはやはり朝鮮民主主義人民共和国との外交関係をというか、関係正常化を図る上で忘れてはならない一つの非常に重要な問題点でもあろうと思うわけであります。特に、貿易などの関係で、朝鮮との決済問題で六百億からの滞りがあったというようなことで幾たびか交渉を重ねた結果、日本の輸出保険を適用して、これはあなたが通産大臣をやっておられた前でしたか、そのころだったと思いますが、三百億はその方から出していただいて日本の貿易業者に支払いをしていただいた、代理支払いを保険でやっていただいたというようなこともあるのですが、その後やはり貿易関係は八六年ぐらいのところで、八五年までですか、輸出、輸入両者を合わせて一千億ぐらいの貿易規模であったわけですが、それがどんどん今減ってしまっている、六百億円ないし七百二、三十億円という程度で低迷を続けております。  それで、それぞれやはり関心品目はよく検討すれば、もっともっと貿易を拡大して、まさに拡大されれば両国のためになる、両国の国民の幸せにもつながる問題である、こういう基本認識を持ちながら、やはりこの辺のところもかなり重点を置いて考えていかなければならないだろうと思うのです。対朝鮮貿易について、これは大臣でなくて結構ですが、通産省からも来ておると思いますので、まだ根本的に国交がない状態ではあるけれども、大臣から表明があったような点でここまで進展が見られている両国関係の中で、やはり貿易関係も、経済的な一つの裏づけといいますか、そういうような立場からもこれを拡大していく、輸出入とも拡大をしていくということについて、一衣帯水の非常に近いところなんですから、そういう点も含めて通産省としてはどういうようにお考えになっておられるか、そのことを伺いたいと思います。
  222. 片山登喜男

    ○片山説明員 先生御指摘になりました北朝鮮との貿易につきましては、私どもといたしましては、北朝鮮だけを対象としました特別の制限を課しているということではございません。したがいまして、民間の企業といたしましては自主的な判断によって貿易取引を行うことができることになっております。確かに八六年ころ貿易の減少は見られましたけれども、最近特に輸入を中心といたしましてかなりの増加が見られておりまして、昨年の貿易総額は五億六千万ドルとなっております。輸出につきましても、先生御指摘になりました拡大を阻害している要因の改善が見られますと、輸出の拡大ということも十分期待できるのではないかと考えております。
  223. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 そういう不幸な、決済がうまくいかなかったというような問題なんかも一つのネックになっているのじゃないかと思いますが、いずれにしても近隣の国である。北の方でも日本にどんどん輸出をしたい物もある。日本でもまた買いたい物もある。こういうことで一九八八年では五・六億ドル、今のベースで考えても七百二、三十億円である、こういう停滞した状況にあるわけです。それというのも、輸出保険に頼らないというような人たちが、あるいは輸出入銀行の融資に頼らないというような貿易業者が、これは在日の業者ではあるけれども、朝鮮総連系の商社だけが――だけとは言えないけれども、その人たちが今盛んにやるようになってきて幾らか、一昨年よりも昨年は百億円ぐらい余計な貿易ができたというような状況にあるようであります。  したがって、今、北アジア課長ですか、はっきりしたことは申しませんでしたけれども、これは大臣にちょっと聞いてみますが、中国との関係も、国交が回復する前にLT貿易というような民間ベースの貿易が盛んに行われてどんどん発展をしたわけですね。それがまた中国との国交回復を早める結果にもなったというようにも見て差し支えないのだろうと思いますが、そういう点で、隣の近いところなんですから、この貿易を一層拡大していきたいという気持ち日本政府にあるのかどうか、これは閣僚としてひとつ外務大臣からお答え願いたいと思います。
  224. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど広瀬委員みずから申されましたとおり、かつて貿易決済支払い不能というような不幸な経緯もありました。そうした経緯がございますが、今後本当に北朝鮮と日本政府との接触ができましたならば、やはりそうした面でも民間は一つの安心感を得られるのではないだろうか、かように思います。したがいまして、今申されました面におきましても、私たちは、将来は当然アジアの貿易、その拡大のためにもその中に北朝鮮ありというふうな考え方が我々の一つ考えの中にあってしかるべきである。具体的にどうするかという問題はいろいろございましょう。また、本当に輸出があるか、輸入があるか、両国の供給、需要の関係もございます。いっぱい難しい問題があると思いますが、それらを克服していくという努力がまず必要ではなかろうか。これこそまさにお互いの、商売というものは信頼関係でございますから、かたい信頼を樹立するということに全力を挙げていって、そうした信頼のもとに北朝鮮も努力をしていただきたい、私はそういう気持ちでございます。だからきょうは、まだ具体的にこうするああすると言う段階ではございませんから、我々としてはこういう気持ちを持って臨むのだよということでいいのではなかろうか、かように思っておりますから、御理解願います。
  225. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 当然そういうことであらなければならないと思うわけですが、とりあえずこういう状態の中でも貿易の面では、これはまさに物と金の交換の場ですから、経済的に両方にとってプラスになる、そういうものだけに、これをひとつぜひ発展をさせていっていただきたいなというように思います。  そのためには通産省としても、そういう事態があったものですから、いわゆる輸出保険あるいは貿易保険全体、それから輸銀の融資等もストップ状態にある、あるいは投資等に対する危険を保険する、そういうようなものについて前向きに検討をされる、そういうストップ状態から輸銀融資なりあるいは保険なりというようなものについてどういう前向きの対応を考えられるか、その辺のところをひとつ伺いたいと思います。
  226. 片山登喜男

    ○片山説明員 先生御指摘になりましたように、多額の保険金を貿易保険から支払いをいたしておりまして、現在その回収のめどが立ってないという状況でございます。貿易保険の再開につきましては、やはりこの代金の支払いについての見通しが立つということが非常に大きな要素にならざるを得ないのではないかというふうに考えております。  ただ我々としては、民間の御努力によりまして何とか支払いの見通しを立てたいという努力をしていただいているということを承知しておりまして、この努力がいい結果をもたらすということを期待しております。
  227. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 今の段階でなかなか言いにくいかもしれないけれども、なるほど三百億を保険から立てかえ払いをしたという立場になっておるから、それでまた将来同じことの繰り返しになるであろうという想定のもとにそういう態度をとられるのもあるいはやむを得ないかとも存じますが、国と国との関係が不正常な状態にある、そういう中から、向こうの立場に立てば日本政府が我々に敵視政策をとっているんだというようなこともあり、それからまた関係正常化のための基礎条件というか、そういうものに対して少なくとも今日まで先ほどの大臣の答弁のようなところまでも全然いっていなかったというような中で起きた事件でありまして、これがちゃんと国交が改善され、関係正常化が図られるというような段階において、先ほどまだ詰めた話ではございませんけれども、日本政府が経済的に何らかの無償援助なり有償援助なりというようなところに踏み込んでいくという段階も当然考えられる。そういうような場合ならばそのくらいの金はもうどうにでもなるようなという楽観主義だって成り立つわけですよ。そういうような点も踏まえて前向きに考えていくべきであろう、こういうように思います。  これ以上触れませんけれども、それと同じように、民間の業者の団体に日朝貿易会というものもあるわけでありますが、そういうところの人たちも向こうに年に三回も四回もいらっしゃる。こういうときに、今度の旅券法の改正大臣は非常に前向きの姿勢をとられて改正もされている。一次旅券主義から数次旅券主義への転換、そして特定の者については大臣の許可にかからしめるといいますか、そういうようなところまで前進をされる。これは大臣の胸一つで、今まで朝鮮を除くと書かれておったパスポートを、こういうようなものも朝鮮に対して余りにも、少なくとも外交的な儀礼において非礼に当たる面でなかったかと思います。そういうような面もあった。そういうようなことも改めていただき、そしてまた、向こうの業者との間に団体同士で話し合いをする、何回も行ったり来たりしなければならない、そういうような中で問題を解決するためには、簡易な手続で数次旅券を利用して何回でも行けるというような方向に朝鮮の場合につきましても、これは大臣の腹一つといいますか、許可にかからしめておるようでありますが、その辺のところについて大臣から、朝鮮との旅券の問題、往復の問題についての煩瑣な手続をその都度やるというようなことから今私が申し上げたような改善の方向にやられる気持ちがあるのかどうか、ひとつ確かめておきたいと思うのです。よろしくお願いいたします。
  228. 黒河内久美

    黒河内政府委員 若干旅券法改正の技術的に関することかと思いますので、私から御説明させていただきたいと思います。  先生御案内のとおり、我が国と北朝鮮との間に国交がないということから北朝鮮には我が国公館がございません。こういうことから、北朝鮮における邦人保護には極めて大きな制約があるわけでございます。こういうことから、従来とも渡航者保護の観点からその渡航目的、日程等を事前に承知しておく必要があることから、北朝鮮に行かれる方につきましては北朝鮮を渡航先とする一往復用旅券を発給しておるわけでございます。この前提が変わりません限り、今後ともこのような一往復用旅券を発給せざるを得ない状況でございます。  それで、改正の中にはこれまでよりもやや弾力的な条項を盛り込んでおりまして、数次旅券発給の可能性についての条項の案を盛り込ませていただいておりますけれども、今後とも日朝関係をめぐる諸般の情勢を考慮して、どういう場合に数次旅券を発給することができるかということは検討していくこととしておるわけでございます。
  229. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 国交未回復の国、国交のない国に数次旅券を発給したという例はいまだ全くありませんか、黒河内さん。名前は忘れましたけれども、何か二カ国くらいそういう例があるということに私は聞いております。
  230. 黒河内久美

    黒河内政府委員 私どもが現在理解しております限り、北朝鮮への渡航者に対して数次旅券を発給したことはないと存じます。
  231. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 北朝鮮以外の国交のない国に渡航する場合にそういう例があったということを聞いておりますが。北朝鮮の場合は出したことはありません、それはわかっています。
  232. 黒河内久美

    黒河内政府委員 御案内のとおり、今まで北朝鮮のみが未承認国であるということで現在のような取り扱いになっておるわけでございますので、未承認国に関する限りは同様の取り扱いを従来してきております。
  233. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 具体的に言いますと、今思い出しましたが、アルバニアそれから台湾、これはかつては台湾国という立場で国交があった。中国との関係において今国交がなくなったわけですけれども、台湾は国交のない国という、少なくとも国際法上はそうなっているはずだと思うのですが、台湾には数次旅券を出しているでしょう。その辺のところは外務大臣の裁量というのが働いてしかるべきだと思いますが。
  234. 黒河内久美

    黒河内政府委員 アルバニアにつきましては、国交回復後数次旅券という取り扱いをいたしたわけでございます。他方、台湾につきましては、交流協会の事務所というものがございまして、先ほど申し述べたような邦人保護の観点からは心配がない状況であるということから、数次旅券を発給しているところでございます。
  235. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 ここで押し問答をこれ以上繰り返してもやむを得ませんが、朝鮮との関係友好裏に関係改善を図っていこうという方向が出た以上は、やはりこの旅券の問題等につきましても、はかの国交のある国等に準じてそういう弾力的な措置がとられるように希望をいたして、次に進みたいと思います。  累積債務国といいますか、この国際的な対策について、これは大変な事態だろうと思うのです。最近ベネズエラで大変な暴動が起きた。新岡の報ずるところによりますと、二百六十何人が死んで二千人以上が発砲されてけがをしたというようなことがある。その暴動の原因が何かというと、やはりベネズエラも相当な、何百億という累積債務国であった。それぞれ累積債務に対する債権国の、IMFやあるいはその他日本やアメリカやそういうところが債務の繰り延べをしてあげる、あるいは金利を少しでも下げてあげるというようなことなんかをやる場合に、経済の健全化を図るようなことをその国に要求をする。特に労働者の賃金についても自粛すべきであるというようなことで、ベネズエラの場合には二年間で三八%も賃金が下がるという結果を生んだ。それから逆に三〇%も物価が上昇するというような結果を、累積債務国に対する債権国側の要求に従って、あるいはまたIMFの要求に従って、世銀の要求に従ってそういうものを押しつけた。それに対する国民の反撃が出て、そういう悲劇を招いたというようなことが報道されているのですね。  これについては、四月二日にG7があると言われておりますが、このG7に、そういう問題も含めてこれは累積債務問題が主たる議題になるようでありますが、外務大臣も御出席になるのではないかと思います。これについて新聞の報ずるところによりますと、アメリカの財務長官のブレイディ氏が世銀はどうしろ、IMFはどうしろ、日米はどうしろ、それから債務国側はどうするべきだというようなことを非常に事細かな提案を出しておられますね。また、かつては宮澤前大蔵大臣が債務国に対する債務救済といいますか、そういうものについて日本の案も提案されて、国際的にも評価がかなり高かったというようなことも聞いているわけでありますが、日本政府としてこれは非常に重大な問題だと思うんですね。  メキシコもそうだし、ブラジルもそうだし、そのほかにもあるわけでありますが、そういう累積債務国に対して日本としてどういう対策を講じていくのか、債務の重圧からどういう救済を図っていくのか。もろにその国の国民にばかりやると、おれたちの責任じゃない、政府の責任なんだ、そういうようなことで国民の暴動にまで発展するような危険すら含んでいるという問題を、最も合理的に、協力の精神の中でどういうことをすべきなのかという日本政府としての対策をこの際伺っておきたいと思います。
  236. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 第一義的にはもちろんこれは財政当局の所管でございます。しかし、外務大臣外交一般の総攪者といたしまして、当然外務大臣同士の会談の中におきましても当事国はこれを重要な問題として日本に対しいろいろと救済策を期待されております。それで、今おっしゃったとおりアメリカの財務長官の案も一つございますし、特に日本といたしましては、先ほどの御質問にもありましたが、中南米に対しまして、私たちは独自の判断のもとにこれらの問題に関しましても積極的に取り組み、なおかつODAの面、さらには還流資金の面におきましても自主的自助努力を大いに助けるという方策はとってまいらなければなりません。  例えばでございますが、メキシコもそういう意味におきまして国際的枠組みの中における再建、私たちはそのことを高く評価しましょう、だから、日本がどうじゃなくて、国際的に債権国がこれをどうするかという問題に関していろいろと具体策を練りましょう、こういうふうなことでやっております。昨年、LLDCは五十五億ドル棒引きしましょう、こういうふうな大胆な挙に出まして非常に高く評価されておりますが、今問題は、広瀬委員指摘のとおりに中所得国であります。これがもし本当に破綻を来したならば、単に一国のみならず、その地域はもちろん、世界的にも相当な影響を与える、こういうふうな考え方で速やかに私たちはその対策を講じなければならぬ。したがいまして、みずからも国際的枠組みの中で努力をしている国々はたくさんいらっしゃる、これに対して手をかすのは当然である。アメリカと日本の立場は今日までいろいろ違った面がありましたが、また新しい観点で恐らくG7は話し合われるであろう。こういうことで期待をしながら、外務省といたしましても総攬者としての努力は怠ってはならない、かように考えております。
  237. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 もう時間がないものですから、次に移りたいと思います。  イラン・ジャパン石油化学の問題で、新聞の報ずるところによりますと清算段階に入ったということなんですが、イラン・イラク戦争、イラ・イラ戦争が随分長く続いているので、せっかく日本があれだけ投資をして、石油生産国で石油化学製品という付加価値をつけて輸出できる、我々はこれは大変結構なものだなと思っておったわけでありますが、そういうものが戦争の結果中断をしてしまったというようなことでそれがどうにもならないことになったのかなということであります。  そういうことで、今どれだけあそこへつぎ込んでどういうことになっているのかということを、これは通産省にお聞きしたいわけです。  それと同時に、時間もないものですからあれですが、石油のNYMEXあるいはWTIのところで、五月先物では一バレル二十ドルというような相場が立ったというようなことで、これはもう大変なのではないか。OPEC諸国が減産体制をとっているとか、あるいは北海油田で事故がノルウェーあたりも含めて起きているというようなことやら、いろいろな要因はあるようですけれども、そういうことになったら日本の経済成長にも、今まで原油安、円高というようなことで日本の景気が支えられ、経済発展も支えられてきたというようなこともあるわけでありますが、そういうことに関してこれからそういう事態になっていくのか、あるいは国際石油市場がどういう見通しで価格の上昇が推移するであろうか。これはやはり日本経済のファンダメンタルにも非常に大きな影響を及ぼすのではないかと思いますが、その辺のところの見通しを聞いて、もう時間がありませんから私の質問を終わりたいと思うのです。
  238. 松永和夫

    ○松永説明員 まず、御指摘のIJPCプロジェクトでございますが、これまで日本から三千二百十一億円投資がなされております。このうち政府関係のものといたしましては、海外経済協力基金からの出資という形態で五十四億円、また日本輸出入銀行の融資でございますけれども、これが合わせまして千九百六億円投入されております。
  239. 斉藤茂樹

    斉藤説明員 原油の関係についてお答えをいたしたいと思います。  最近の国際石油情勢につきましては、昨年十一月に開催されましたOPECの通常総会におきまして、世界的な需給緩和状況による原油価格低迷に対応するために、本年上半期のOPECの生産上限を日量千八百五十万バレルとする等新たな合意が達成されたわけでございます。本年一月以降、一部の例外はあるものの、この国別の生産枠はおおむね守られている模様でございまして、また、需要も一応堅調であること等から、原油価格は総会前に比してある程度の上昇を示し、堅調に推移しております。すなわち、例えばスポット市場では、我が国原油輸入の大半を占める中東原油の指標油種でありますドバイにつきましても、バレル当たり船積みベースで十五ドルから十六ドル台で推移しておるところでございます。  今後の原油価格の見通しにつきましては、当面、現在の基調に急激な変化はないと考えられまして、引き続き堅調に推移すると思われますものの、OPEC加盟国の新生産枠の遵守状況や非OPEC産油国の動向、消費国の需要などが影響してこようかと思われます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては石油市場の安定が重要だと考えておりまして、引き続きOPECや非OPEC産油国の動向及び市場の動向などを注視してまいりたいと考えております。
  240. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 終わります。
  241. 玉生孝久

    玉生委員長 浦井洋君。
  242. 浦井洋

    ○浦井委員 法案に直接関係をした問題についてお尋ねしたいのですが、今度大使館を置くマーシャルとミクロネシアの二つの国というのは、アメリカと自由連合盟約を八六年に結んで独立をした、それを機会にして昨年十二月、日本両国外交関係を設けて、そして大使館を設置することになった、こういうことになるわけであります。  自由連合盟約というのはどういうものかといいますと、結局この両国の場合には安全保障とか国防権というものをアメリカにゆだねるということで、私いささか危惧するのは、これで完全な自治であるとか完全な独立が保障されるのかというふうに危惧をするわけです。  例えば、この二つの国がアメリカと自由連合盟約を結んだときに当時の倉成外務大臣は、これは一昨年の一月でありますけれども、フィジーで演説をして、自由連合のもとで自治を促進する措置がとられてまいったことは真に喜ばしく、我が国としてはこれを心から歓迎するというふうに言っておられる。自治を促進する措置がとられたとは言っておられるけれども、独立という言葉は避けておられるというふうに読み取れるわけでありますが、この両国の場合に、真にやはり独立をしたんだということが言えるのかどうか、まず最初にお尋ねしたい。
  243. 福田博

    ○福田(博)政府委員 自由連合というのは、非自治地域が完全な自治を達成する場合の一形態として国連総会決議により認められたものであって、民主的な方法で自由かつ自主的に選択される独立国の政治的連合のことをいいます。ただし、それが実際上具体的に独立国に相当するかということについては、それぞれの形態を、この場合についてはマーシャルとミクロネシアでございますが、それを見て決めていく。この国については独立国として我々が国家承認をしたということでございます。
  244. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、我が国としては独立国と見るということだと思う。  そこで、大臣にひとつお尋ねしたいのですけれども、国連憲章によると、国際信託統治制度というのは、「信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩を促進すること。」こういうことなどが目的であって、同時に、将来の「自治又は独立に向っての住民の漸進的発達を促進する」ものである、こういうことなんです。そして、そのための援助をするのが国連加盟国の義務であるというふうに私も思うわけなんです。  こういう文言から当然言えることは、民族自決権を踏まえたものであるはずであるということ。だから、今独立国だというふうに見るということでありますから、やはりこの民族自決権というのを少しでもあいまいにしてはならぬというふうに私は思うわけであります。ましてこの両国というのは、敗戦まではこの国を日本が支配をし、被害をもたらした国であるし、そういう点でも非常に責任があるわけでありますから、これからこの両国外交関係を進めていく上で政府としての基本的な考え方をひとつ大臣からお示しを願いたいと思います。
  245. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今歴史的に申しますればそうした経緯におきまして日本と極めて近い関係にあった国でございますが、第二次世界大戦というものの終戦を契機としてアメリカがその責任を国連から委任されておった、そうした関係の中において自由連合、ただいま福田条約局長が申しましたような国連において認められた一つの形態として独立をされたわけでございます。したがいまして、我々といたしましても、太平洋諸国の一員である日本アジアの一員である日本という立場に立ちますと、これは進んでこれら二つの国を承認することは当然の私たちの義務ではなかろうか、こういうふうな立場において承認をし、なおかつ大使館を設けることにおいてそれらの住民の方々の福祉の安定、経済の発展を図りたい、これが私たち考え方でございます。
  246. 浦井洋

    ○浦井委員 独立国として認め、承認をし、大使館を置くに至ったんだということでありますが、先ほど私がちょっと触れました一昨年のフィジーでの当時の倉成外務大臣の演説は、仮訳でありますけれども「「太平洋未来社会」を目指して」ということで、南太平洋地域に対する我が国外交政策を示したものだというふうに言われておるようであります。その中で、「それら諸国との二国間関係を深めて行くに当たりその独立性、自主性をいささかも損うことのないよう配慮したい」こういうふうに言われておる。この自主性という点で特に私が強調したいのは非核という問題、ノンニュークリアといいますか、この願いが両国の国民の中でも非常に強いわけでありますから、その両国国民の気持ちを尊重して交流を進めていくことが我が国として非常に大事ではないかと思うわけです。  特にミクロネシアの場合には、非核条項を盛り込んだ憲法を制定しておるというふうに聞いておりますし、マーシャルでは、ビキニがあるせいもあって住民が被爆の後遺症に今も苦しんでおると聞いておるわけです。現に、去年我が国を訪問したマーシャルの国会議員は、放射能禍で苦しむのはいつも私たちのような少数者で力を持たない者だ、その中でただ一つの例外が日本なのです、日本が被害者としてみずからの体験を語り続けるだけでなく、他の被害者を理解しようとすることがどれほど私たちを勇気づけることになるかを知ってほしい、こういうふうに切々として訴えておられるわけであります。  私は、日本の為政者としてこの言葉に耳を傾けて、例えば、なかなか被爆の実態がはっきりしないわけでありますけれども、この両国あるいはもっと広く南太平洋地域で被爆の実態を調査しようという試みがあるならば進んでその調査に協力をするとか、あるいは住民が希望しておられるように、この地域の非核化が一層前進するために日本政府としては力を尽くすべきではないかと私は思うわけであります。重大な問題でありますから、ひとつ大臣の御所見をお伺いしたい。
  247. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 特に非核化の問題に関しましては、これはその地域の国々の自主的判断に基づいてなさることでございますから、私たちがコメントすることは非常に難しい場合があります。特にこうした場合には、やはり実験をしておるフランスがどう思っておるのか、あるいは米国がどう思っておるのか、いろいろな問題も加味して考えられなければなりません。  私は、そうした意味合いにおきましては、この地方において大使館も設けるわけでございますから、今後そうした在外公館等を通じてさらに両国との関係が深まる、そうした中においていろいろと私たちも耳を傾けなければならぬ問題があるであろう、かように思いますので、今すぐに非核化に関しまして私はコメントすることを少しく今日の場合は避けておきたいと思います。すべては今後いろいろと語り合って、その中において考えたい、かように考えます。
  248. 浦井洋

    ○浦井委員 非常に歯切れのよい宇野外務大臣でありますが、今のお答えは歯切れが悪いのではないかと思います。極端に言えば、非核化という問題は、その両国のこれからの自主的な判断である、言うたら我関せずえんだ、日本としては。しかし、そういうようなことはこれから耳を傾けたいというようなことを言われたわけでありますけれども、言うまでもなく我が国は、核を持たず、つくらず、持ち込ませないという非核三原則が国是であります。そして原子爆弾の被害をこうむった世界でただ一つの国であります。だからその国の外務大臣として、この両国と交流を進めていく上で、今の宇野さんのお答えというのは私はちょっとなまぬるいのではないかというふうに思わざるを得ないわけでありますけれども、特にこの非核化という問題について、そこに重点を置いた我が国外務大臣としての基本的な姿勢をもう一度改めてお伺いしておきたい。
  249. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 国連で非核地帯の決議案というものがございました。このときには、一般的に適切な条件がそろっておる地域において、その地域の国々の提唱によって非核地帯が設置される、そのことは核拡散防止の目的、これに大いに資し得るとの考えを私たちは当然持っております。その認識に基づきまして、国連総会においての非核地帯関係の決議に日本は賛成いたしております。  したがいまして、先ほどコメントすべきではないと申しましたが、かかる観点から賛成したという、そういう観点から南太平洋非核地帯条約が域内諸国のイニシアチブを基礎として発効するということに対しましては、私たちも関心を有しておる、こういうふうに申し上げてよいと思います。
  250. 浦井洋

    ○浦井委員 その南太平洋非核地帯設置の条約についてでありますけれども、南太平洋地域の国々あるいは人々の間ではこれを希望する人が多いわけであります。やはり非核化ということがその人たちの心の中に非常に大きなウエートを占めておりまして、そこで具体的にあらわれてきたのが南太平洋非核地帯設置条約というものだと思うのですが、これについてひとつ外務省のごく簡単な説明をお願いしたい。
  251. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本条約は、何せ第三国間の条約でございますので、余り責任を持って内容を詳しく私どもとして解説する立場にないわけでございますが、簡単に私どもが知っておる限りの中で内容を申し上げますと、これはこの域内の参加国が核爆発装置の製造、取得、保持または管理の禁止ということを定めておりますし、核爆発装置の配備の禁止というものを定めております。それから実験の禁止もその内容となっております。さらに、他国の船舶や航空機の自国訪問を許可するか否かについては、各締約国が主権を行使し、自由に決定できるというような規定も入っておるというように承知いたしております。  それで、この条約には三つの議定書がついておりまして、第一の議定書は、米、英、仏に対しまして、この条約の主な条項を自国の責任の有する南太平洋の地域についてこれを適用するようにということを求めております。第二の議定書は、米、ソ、仏、英、中の五核兵器国に対しまして、この締約国に対して、あるいはこの締約国が非核地帯内に有する領域に対する核爆発装置の使用または使用の威嚇を行わないということを求めております。それから第三議定書におきましては、この五カ国が核爆発装置の実験を行わないようにということを求めております。  この条約は、現在、批准国は十カ国でございまして、フィジー、タッグ諸島、ツバル、ニウエ、キリバス、サモア、ニュージーランド、豪、ナウル、ソロモン諸島ということになっております。  それから、その議定書につきましては、ソ連及び中国のみが第二及び第三議定書を批准しております。米英等は署名をしないことを決定しておりますし、フランスはこの条約に反対の立場をとっておる、このように承知いたしております。
  252. 浦井洋

    ○浦井委員 今も言われたように、この条約にはいろいろ定められておって、締約国の核所有、核実験、放射性物質投棄の禁止を定めておるということもあるわけであり、長い間核保有大国の核実験に苦しめられてきた地域の方たちの願いを結集したその反映だと思うわけでございます。これは、今から外交関係を結ぶわけでありますけれども、我が国としても大いに歓迎すべき性質のものだと私は思うのですけれども、大臣はどうですか。
  253. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほど大臣からも御言及がございましたけれども、この条約につきましては一般的に、先ほど御説明ございましたように、従来から適切な条件がそろっている地域において、その地域の国々の提唱により非核地帯が設置されることについては、核拡散防止の見地からこれに貢献し得るという考えを持っておりまして、こういう認識で国連総会で関連の決議に賛成してきているわけでございます。そういう観点から、この域内地域のイニシアチブをもととしてこの条約が成立していることに対しては、我が国としても関心を持っておるという状況でございます。
  254. 浦井洋

    ○浦井委員 関心を持つ以上に、原子爆弾の被害を受けた、しかも現在国民の努力によって経済的な非常に強力な国になった日本として、少々イニシアチブをとるぐらいやってもよいのではないかと思うわけであります。  そこで、アメリカが今もこれに署名をしておらないというお話が出ましたが、例えばこのアメリカが署名していないことについて、アメリカとのANZUSの同盟国のオーストラリアがおととしの二月ごろに、米国の決定は南太平洋諸国の願望と懸念を無視するものだと批判する声明を発表したわけなのです。だから、今までのお話を総合して私は心配するのは、核政策で確かに南太平洋諸国とアメリカとは意見が対立というか、かなり大きなそごを来しておる。そこで、そのアメリカが自由連合盟約で軍事権を持つことになりますと、マーシャル、ミクロネシアの住民の非核の意思が踏みにじられるのではないか、こういう危惧を持たざるを得ぬわけであります。アメリカがじゅうりんすることははっきり言ったら目に見えておるわけなのであります。  だから、現にその隣のベラウ共和国では、せっかく非核の憲法を持ちながら、八二年にアメリカとの核協定も含めた自由連合盟約を結んだために住民同士が対立するという事態が生まれ、いまだに正式に発足しておらぬという事態があるわけです。この道を繰り返すのではないか。逆に言えばこういう不幸を繰り返させてはならぬと思うわけで、そのためにも日本として、今私が言っておりますように南太平洋非核地帯設置条約を積極的に評価をして、この地域の非核化に協力をすべきではないかと私は思うのですが、これはひとつ大臣にぜひお答えを願いたいと思うのです。
  255. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私たちは国連で、そうした決議に対しましてははっきり意思表示をしております。この地域における条約に、先ほど私はその意味でちょっと触れたのですが、核保有国が全部参加していることがあるいは望ましいことであるかもしれませんが、現在のところは中国だけで、そのほかの核保有国はこれに参加しておらないということでございます。それぞれの核政策があるであろうから、私たちといたしましても、コメントは避けて、しかし十二分に関心を持っておる、簡単に言えば。そういうふうに私が御答弁申し上げているゆえんもそこにある、こういうふうに御理解賜りたいと思います。  今お話しになられました、せっかく誕生した独立国がアメリカに安保体制をゆだねておるが大丈夫か。これはそれぞれの自治連合という意味合いの自由連合という中のお話であるから、私からとやかく申し上げることもまたこれは避けねばならない、かように考えます。  いずれにいたしましても、日本といたしましては国際場裏において自分たちの立場を明らかにいたしておるわけでございますから、個々の問題に関しては、先ほど申し上げたような経緯に基づいて私たち考え方もおのずから既に定着しておる、こうお考えになっていただいた方がいいのではないかと思います。
  256. 浦井洋

    ○浦井委員 なかなか本音が……。あえてコメントを避けて、しかし重大な関心を持っておるということなんですが、こういう報道もあるわけなんです。  これは一昨年の二月ごろでありますけれども、アメリカが南太平洋非核地帯設置条約に署名しないのは、ニュージーランドによる核積載艦船香港拒否の動きが日本を初めとする関係国に拡大するのを防止するのが主目的であるとの見方もある、こういう報道もあるわけです。そうだとすればこのアメリカの態度は、関係する各国の主権にかかわる重大問題であるわけですが、こういう事実はあるのですか。
  257. 有馬龍夫

    有馬政府委員 そのような報道があったことは承知いたしておりません。
  258. 浦井洋

    ○浦井委員 報道があったことは間違いないわけなんで、私はこれは事実だと思うわけであります。  そこで、これは私的なことでありますけれども、大臣は学生時代、神戸で過ごされたようでございます。ニュージーランドの核積載艦船寄港拒否というのは、今神戸市がやっておる非核神戸方式というのを国レベルに発展させて、それを具体的に実行しておる好適例だと思うわけであります。私はこの方式が世界各国に広がることを願っておるわけでありますが、神戸をよく御存じの宇野外務大臣も、我が国は非核三原則が国是でありますから、この非核神戸方式をぜひ評価していただきたい。むしろこの際、積極的にイニシアチブをとって、非核三原則を法制化するような方向政府を引っ張っていっていただきたい。こういう努力をすることがひいては南太平洋地域の住民にも希望の光を与えることになるのではないかと私は思いますので、その辺についての大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  259. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 核に関しましては既に米ソ間で、保有のわずか四%でございましてもINFのグローバル・ゼロということが実現しました。だから、私たちは核軍縮の第一歩として評価しております。  それで、我が国としては、軍縮の面におきましても低レベルでお互いのバランスあるいは抑止力は保たれるのであるからということは、もう既に総理もしばしば明言をし、また国連の軍縮会議においても演説をされました。それはそれといたします。しかし、我が国に関する限り、御承知のとおり、非核三原則というものはこれはこれで我々は守っていかなければなりません。  その点、神戸におきましては、神戸方式で非核の証明言がなければ入っちゃいかぬよというのが今浦井さん申された一つの神戸方式でございましょうけれども、我々といたしましては、今日、アメリカとの間におきまして御承知のとおり安保条約を結んでおります。したがいまして、外国軍艦の本邦の得港に関しましては、単に神戸に限らず、やはりそこには港湾管理者である地方自治体、これもかかわることにはなります。かかわることにはなるが、寄港自体は国がその判断をするということになりますので、地方自治体においては、そうした非核証明書の提出を求め、その結果、国として同意を与えた軍艦の寄港、私らが同意を与えた、非核三原則に触れないから同意を与えたその軍船の寄港が実際上妨げられるようなことがあってはならない、こういうふうに思いますから、私も神戸は第二のふるさとであるかもしれませんが、今浦井さんの期待されるような答弁ができないことを笹だ残念に思いながら、今の私の外務大臣としての答弁といたしたいと思います。
  260. 浦井洋

    ○浦井委員 私は一つ数字を引っ張り出しますけれども、四年前の世論調査会の調査によると、非核三原則のうち本邦について核兵器を持ち込ませないという部分は守られていないと答えた人が七八・九%ある。核兵器を積むことができるアメリカの軍艦は入港を拒否すべきだと答えた人が五七%ある。だから、国民の多くは非核三原則に基づいて適切な処置を求めておるというふうに私は思うわけなんです。だから、歴代自民党政府のとってきた方式というのは、やはり非核三原則の空洞化だというふうに私は思うわけなんですが、そういう点で、神戸市の行っておる証明を求める方式というのは、市民の安全であるとか市民の不安に対して十分にこたえるものであるし、大臣は安保条約に基づいてと言われたのですけれども、逆に憲法に基づく地方自治法に基づいて港湾管理者の立場として神戸市長はやっているわけなんで、これは当然のことだと思うのです。だから、こういう点は十分に認識をしていただいて、これからの施策をそういうような方向で進めていっていただきたいということを、これは質問でなしに要望しておきたいと思うわけであります。  それで次に、タワーズの発砲事件について質問をしたいのですけれども、海上保安庁、来ておられますか。
  261. 玉生孝久

    玉生委員長 おります。
  262. 浦井洋

    ○浦井委員 去年の十一月九日に、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦タワーズが東京湾の入り口に当たる房総半島沖で射撃訓練をした事件について、アメリカ側は、ことしの一月十三日に米駆逐艦タワーズ事件に関する調査報告を出したわけです。この報告というのは非常に簡単なもので、事件を解明するのには全くほど遠いというふうに思うわけです。だから私は、これに理解を示した外務省のあり方も非常に問題だと思うし、特に海上保安庁は、一月十三日に次長がいち早く調査終結の記者会見をしたのも問題だと思う。だから、外務省も海上保安庁も、再発防止の上からも事件の真相をもっと徹底的に究明をすべきだというふうに私は思うわけなんです。  そこで、大臣に総論的にお尋ねをしたいのですけれども、この事件が発生した海域というのは日本の領海であって、訓練区域外であって、しかも交通の要衝で船舶交通量の多いところである。だから、タワーズの行動はこれは国際法上も地位協定上も許されないものだというふうに思うわけですが、大臣の御所見をお伺いしたい。
  263. 有馬龍夫

    有馬政府委員 ほぼ仰せのとおりだと思います。
  264. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、もう一遍。
  265. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私が答えようと思っておったことを局長が答えた、こういうことであります。
  266. 浦井洋

    ○浦井委員 海上保安庁が来ておられるそうですからお尋ねしますが、この事件でアメリカの調査報告が外務省に届いてから約三時間後に記者会見を行って、先ほど申し上げたように調査終結の結論を出しておる。お役所にしては非常にスピーディーだというふうに思うわけですが、常識的に考えて、果たして十分な検討がされた上での結論とは言いがたいのではないか。だから、報道によっても、なぜ幕引きを急ぐのかというように厳しく批判をしておる新聞もあるわけなんです。私もそのとおりだと思うのですが、何でこんなことをやったのですか。
  267. 赤澤壽男

    赤澤説明員 御説明します。  事件が発生しまして、米国側に事実関係を含めまして詳細な調査を申し入れますとともに、あわせまして、私どもの方では、現に視界内にありました漁船等につきまして目撃の調査をいたしたところであります。  今先生からお話がございましたように、本年一月十三日に米側から最終の調査報告書が参っております。その主要な内容としましては、一つは、現行の米国海軍の通達に違反して、日本の領海内で艦尾の砲の試験を行うために二回にわたって訓練弾を発射した、そしてタワーズの艦長は安全上の配慮を条件にこの水域で射撃訓練を実施し得るものと誤信していた。そして、二点目でございますが、再発防止対策としまして、西太平洋に展開されております米軍の艦船等に対して、射撃訓練は日本の領海内、十二海里でございますが、ここにおいては禁止されておることを注意喚起する旨と、射撃訓練に当たっての適切な手続を強調する旨の指示を行ったことを報告いたしております。  この事件につきましては、実は最終報告書は海上保安庁の照会しましたすべての項目に回答しておりますし、また、内容的には今申し上げましたように、海上保安庁が現認しました一回の事実だけではなくて二回実施したということなどを回答してきておりますところ、また他方、米側が遺憾の意を表明し、艦長を解職し、また、今申し上げたような再発防止対策をとっているといったことなどを総合的に勘案しまして、私ども十三日の最終調査報告をもって調査を打ち切った次第でございます。
  268. 浦井洋

    ○浦井委員 それは弁解であって答弁になっておらぬわけなんですよ。  だから、海上保安庁の見解とアメリカ軍の報告とはいろいろな点で非常に食い違っておる。これは全部言いよると時間がないので簡単に申し上げますけれども、タワーズが訓練弾を発射した位置が違っておる。どう違っておるかというのをひとつ保安庁に私、納得のいくように説明してほしいと思う。  それから、海上保安庁の調査では、「うらが」の後方約三百メートルの海上で三ないし五メートルの水柱が四ないし六本立って、音響から水柱が射撃によるものと判断しておる。しかしアメリカ側の報告では、距離が千九百メートルとなっておって、これは余りにも違い過ぎておる。これでよく海上保安庁は納得したなと思う。これも疑問に答えてほしい。  それから報告書によると、タワーズのレーダーが故障しておる。それで果たして自分の艦の位置がどこにあって、あるいは千九百メートルというような距離が正確に出せるのかどうかという素朴な疑問が出てくる。これも答えてほしい。  それから、発煙筒の問題ですよ。海上保安庁の巡視船「うらが」が十三時三十五分ごろに野島崎南方の海上を北上中、右前方に発煙筒を確認しておる。そして海上保安庁も、それから自衛隊も漁船もこういう発煙筒は使用していないということを確認しておるわけなんです。それで、近くの海面に砲弾が落ちてきておる。だから発煙筒とタワーズの訓練はだれが見ても一体のものであるということはわかるわけなんです。アメリカの報告書によると、タワーズは海上に発煙筒を設置していないというふうに書いておるわけでしょう。それならだれが一体設置したのか。タワーズが設置しなくてもアメリカ軍のヘリコプターが設置するとか、他の手段で設置することは可能なんです。だから、だれが一体発煙筒を設置したのかということも私は尋ねたいと思う。  それから、ちゃんと水上射撃訓練を行っていることを示す旗旒信号を掲げておった。だから試射をすることをタワーズは示しておった。タワーズは「うらが」が近くにおることも知っておった。しかも発砲しておる。巡視船を標的にして撃ったという見方も出てくるのは私は当然だと思う。しかしアメリカ側の報告では、いかなる船舶や物体も目標として使用しなかったという報告になっているわけです。そうすると、なぜ「うらが」のごく近所に訓練弾が飛んできたのかというこれも素朴な疑問が出てくるわけです。  最大の問題は、なぜ領海内で射撃訓練をしたのか。アメリカ側の報告書によると、タワーズは安全上の配慮を条件に当該水域において射撃訓練をし得ると誤信していたというのですね。米軍内では領海内の射撃訓練を禁ずる通達を出し徹底していたにもかかわらず、なぜそういうふうに誤信したのか。仮に誤信だとしたら何で誤信が起こったのか。こういう肝心の点に全く触れられておらぬというふうに思うわけなんです。だから、そういうふうになってまいりますと、なぜ、これは関西弁で言いますと何でということになるのですが、何で訓練海域外であることがタワーズにわからなかったのか。それから、領海十二海里内では地位協定上も射撃訓練は禁止されているということをなぜ知らなかったのか。この海域内ではタワーズの艦長は安全上の配慮を条件に射撃訓練をできるとなぜ思っていたのか。艦長たる者がこういう極めて単純な誤信を起こすというようなことは到底考えられない。だから、私はその点についても納得のいく御説明を願いたいと思うわけであります。  そこで、私の推理でありますけれども、一つは、領海内で禁止されておるにもかかわらずあえて射撃訓練を行ったのではないか、それから二番目には、アメリカ軍の中で領海内であっても安全を確保すれば行えるということになっておるのではないか、それからアメリカ軍の中では三海里を領海と考えているのではないか、こういうふうに思わざるを得ないわけでありますが、以上の点についてひとつ保安庁なり外務省の方から簡単に、簡単にといっても私、三分までしか時間がないので、まだ質問がありますから……。
  269. 赤澤壽男

    赤澤説明員 御説明します。  まず、先生御指摘調査結果の中で訓練弾を発射した位置、それから水柱と「うらが」との距離等の問題についてございましたが、私どもが調査しましたところと米国側の最終調査報告では、まず第一点のタワーズの訓練弾の発射位置、これにつきましては、巡視船「うらが」がタワーズの位置を認めたところを見ますと房総半島の布良鼻から西南西約七・六海里、米側の最終調査報告によりますと、これはタワーズが発射しました二回目の訓練弾発射の機会になるわけですが、この位置は房総半島の南方約四・五海里であります。  それから、砲弾による水柱と「うらが」の距離についてでございますが、巡視船「うらが」の乗組員が飛行甲板の後方で作業中に水柱の立った瞬間的なタイミングに視認しました距離は、三百ないし五百メートルであろうと目視で言っております。米国側の最終報告書では約千九百メートルです。  まず、このタワーズの位置でございますが、米国側の基準の点が必ずしも明確に表示されておりませんので細部については整合しにくいところがございますが、その状況としましては、まず一つは、我が国の領海内でありまして、そして訓練弾発射当時の状況としましては、巡視船「うらが」を南方に認めて訓練弾を発射した、そういったことでございまして、この関係で見ますと両船の相対的な位置関係はほぼ狂いはないというふうに評価しております。そして、水柱と「うらが」の距離関係につきましては、今申し上げましたように「うらが」の乗組員の目視によるものでございまして、差異があってもやむを得ないものではなかろうかと考えております。  それから、本件の発生位置付近で視認されました発煙筒でございますが、この発煙筒につきまして米国側の回答は、最終報告書によりますと、タワーズもこの位置付近で発煙筒を視認していた、その発煙筒の設置を行った者及び目的はわからない、二点目は、タワーズは発煙筒を設置していないといったことが最終報告書の内容になっておるところであります。他方、私ども、巡視船「うらが」が視認しましたところをもとにして国内の販売業者といったものを調査しましたが、同一様の品の特定には至っておりません。また、目撃漁船につきましては、茨城県から千葉、東京、神奈川、静岡の漁業協同組合あるいは漁船等から調査を実施いたしたところでございますが、この中からは発煙筒の煙らしきものを目撃したという漁船が一隻ございました。しかしこの漁船も、発煙筒そのものは目撃をいたしておりませんで、煙らしきものを目撃した。そういったところで、可能な限りの調査を行ったところでございますが、解明には至っておりません。  それから先生、ちょっと回収の点について触れられたところがございますが、巡視船「うらが」が発煙筒に向かって接近中に後方で水柱が上がったということで周囲の状況を調査する作業を行っております。その過程で発煙筒そのものは燃え尽きたものと思われるのですが、発見に至っておりません。現場付近の状況から見まして海没したものと思われるところですが、現場付近は御案内かと思いますが、大変海潮流の強いところであります。また水深が、七、八百メーターから急激に深くなる海域でございます。そういったことで、発煙筒程度のものを海底から探索し、引き揚げるというような作業は極めて困難であろう、こういうふうに思っております。
  270. 浦井洋

    ○浦井委員 文字どおり弁解に過ぎないわけなんで、大臣に最後にお尋ねするのですけれども、要するに日本の領海内で射撃訓練をすること自体重大な問題ですね。しかも人の乗っておる船の近くといいますか、そのものに当てようと思ったわけではないかもわかりませんよ、船に近いところに向けて、威嚇であるのか標的であるのか知りませんけれども、ねらい撃ちするのは言語道断だということで、これは国際法上も地位協定上も許されない行為だというふうに思うわけで、これは国の主権に関する問題だ。だから、こういう格好で簡単に終結宣言を了とするというような外務省の態度を改めていただきたい。海上保安庁も同じであります。  それと、もう一つ大臣に申し上げたいのは、三十時間たってこの事件を国民が知った。これはもういろいろこれまで議論されているようでありますけれども、しかし大臣、こんなこと言うとあるいは御立腹かもわかりません。当時の運輸大臣の石原慎太郎氏が、最近「「NO」と言える日本」という著書を出しました。そこで、タワーズの訓練事件でも、外務省は当初発表を抑えようとした。アメリカは爆発しない射撃訓練用だったと釈明しているが、それでも当たれば仮想標的にされた「うらが」でも重大な損害を受けてしまう。それを外務省は、よくあることだからしばらく発表を待ってほしいと抑えてきた。一体何を考えておるのか。腹が立ってきて、いずれにせよわかることだから私の責任で発表すると抗議させた。こういうふうに「「NO」と言える日本」の中ではっきり石原氏は言っているわけですね。だから、こういう事実から見て、国民は、やはり外務省は隠したんではないかというふうに思わざるを得ないわけなんです。  そういう点で、最後に大臣の釈明と、それからこれからももっと徹底的にこの事件について究明をしていくんだという決意をお聞きして、私、質問を終わりたいと思います。
  271. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 タワーズ事件に関しまして、当時の発表の模様に関しましてはいろいろと議論がされました。そのとき外務省といたしましても、はっきりした立場を申し上げてあります。  特に、艦長に関しましては、その後軍事裁判におきまして艦長職を解かれ、なおかつ処罰されております。そして、この事件の直後に米軍の海軍最高責任者が外務省を訪問して、私に遺憾の意を表しに来られました。これは私といたしましても、そのときに本当に遺憾千万だということを申し述べまして、なおかつ、やはり米軍は安保条約によって日本を守っていてもらうんだから、我々としても米軍に極力、できるだけのことはしておった、それに対して米軍もまた規律が弛緩することなきよう、このことを私は厳重にあなたに申し上げましょう、こうしたこともきちっとして申し上げてあります。その後米軍は直ちに、日本の領海内において射撃訓練をするがごときはもってのほかであるという通達もいたしております。  そうした経緯によりまして、我々といたしましても、この事件に対しましては毅然たる態度をもって臨んだということを私は申し上げておきます。
  272. 浦井洋

    ○浦井委員 おしまいなんですけれども、毅然たる態度で臨まれるのはいいのですけれども、これで終わりだということでなしに、もっと徹底的に真相を究明する努力をこれからも続けていくんだという決意を私は聞いているわけなんです。遺憾の意を表したんだから、アメリカに世話になっているからそれでよいんだということでは済まぬ問題だと。
  273. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 その点私から申し落としたかもしれませんが、調査報告は本年一月十三日、在京米国大使館から外務省提出がありまして、私たちも十二分にその内容を検討し、なおかつ米軍からのいろんな話も聴取いたしまして、その全内容は既に公表いたしました。だから、そうしたことにおいて、こうしたことのないようにという対処は我々としてもいたしておるつもりでございます。
  274. 浦井洋

    ○浦井委員 終わります。
  275. 玉生孝久

    玉生委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  276. 玉生孝久

    玉生委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  277. 玉生孝久

    玉生委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  278. 玉生孝久

    玉生委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、近岡理一郎君外三名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。近岡理一郎君。
  279. 近岡理一郎

    ○近岡委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党、国民会議及び民社党・民主連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について引き続き検討の上、適切な措置を講ずべきである。  一 世界の平和と繁栄のために、我が国がその国力にふさわしい国際的責任を果たし、積極的な外交を展開するため、外交実施体制、特に在外公館の基盤の整備・強化に努めること。  一 在外職員、特に自然環境等勤務環境の厳しい地域に在勤する職員が、活発な外交活動を展開しうるよう、健康管理のための対策を含め勤務環境の整備・処遇の改善等に努めること。  一 我が国外交の第一線拠点にふさわしいものとなるよう、在外公館事務所及び公邸の整備・拡充を進めるとともにその国有化の推進に努め、併せて在外職員宿舎の整備に努めること。  一 在外公館における外交活動の能率促進のために通信体制の強化・事務機器等の近代化に努めること。  一 世界的に治安状況が不安定となる傾向にかんがみ、在外職員が安全にその職務を遂行しうるよう警備対策の強化に努めること。  一 海外での事件事故及び戦乱、クーデター等の緊急事態に際しての邦人の救援保護を含む邦人の安全確保に努めること。また、在外邦人の医療対策に一層配慮すること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため、在外日本人学校及び補習授業校の拡充強化、父兄の子女教育費の負担軽減に努め、帰国子女教育制度の改善及び施設の整備等の対策を総合的に推進すること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明を省略させていただきます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  280. 玉生孝久

    玉生委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  281. 玉生孝久

    玉生委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宇野外務大臣
  282. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。  また、本法案の御審議の過程においては、外交活動の基盤強化につき深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。まことにありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  283. 玉生孝久

    玉生委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 玉生孝久

    玉生委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  285. 玉生孝久

    玉生委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会      ――――◇―――――