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梶山国務大臣 まず第一の、中小
企業者が困っている、そういう
実情の見聞をしたことがあるかということでございますが、まだ
大臣に就任をして以来表に出る
機会がございませんので、
大臣就任後はそういう
機会を持っておりません。しかし、税制が昨年末に国会を通過いたして以来、何遍か私も地元で座談会を開き、あるいは納税の専門の税理士の方やその他との話し合いをし、各業界の方々とも話し合いをいたしました。私も実は零細
企業を営んだことのある体験者の一人でもございます。ですから、この四月以降何遍か町に出あるいは業界の方々とも話し合いをしたことがございます。
今ここで申せますことは、
通産大臣としてでございますから、きょうは格別税制全般のお話を反論として申し上げようとはいたしておりませんが、長い目で大きなことを考えますと、私はそれぞれの税制に対する御意見はあろうかと思います。ですから、その中で、消費者の理論もあれば勤労者の意見もあれば、あるいは経営者の意見もあれば、もろもろの意見があると思います。それは、それぞれ正しいとか正しくないとかという基準を設けることは、なかなかできないと私は思います。税はまさに、自分に降りかかって、どちらが損か得かということが心の中では一番大きい物差しがもしれません。
ただ、考えますことは、よく国際化とか高齢化とか言われますけれ
ども、私もどちらかというと商工に関心の深かった人間でございます。ですから、例えば我々の輸出が大変盛んになって、いわば
日本の経済運営というのは世界に冠たるものだといって欧米先進国から大変うらやましがられもし、また、私も、自動車の交渉などでアメリカに参りまして、安くてよい物をアメリカに売ることがなぜ悪いんだと言って胸を張ったことを何遍か覚えております。しかし、その当時のアメリカあるいはヨーロッパの
企業税制を見てみますと、確かに課税ベースがアメリカの方が広いとかヨーロッパが広いとか
日本は狭いとかということがありますが、税本体から見ますと、
日本はかつて法人税四一、二%、それから減税の財源あるいはその他もろもろの
政策財源のために、必ずといっていいほど、景気がいいからということで、法人税の値上げをいたしてまいりました。そして最終には
地方税をひっくるめて五二%強、超過税率を採用しているところは約五三%
程度のいわば法人税になったわけであります。それに引きかえ、アメリカを見ましてもヨーロッパを見ましても、やはり
日本の
企業税制というものに着目したのかどうかわかりませんが、
国内の景気振興はもうちょっと
企業を活発にしなきゃいけない、
企業活動を活発にするためには税制で誘導をしなきゃならないということで、彼らの法人税制は大体四〇%前後、場所によっては三〇%台というものがございます。私は、税はどちらが正しいか正しくないかということは言えませんが、近傍類似、そう大きく世界の中で違いますと経済のスタンスが違ってしまいます。ですから、私は、やはり
一つの
企業経営というか
事業経営、商工的な感覚によれば、少なくとも諸外国の法人税が安くて
日本の法人税が高いということは決していい
状況ではない。そして、この
貿易摩擦の激化に伴いまして、
日本の
企業は、いわば
貿易摩擦の解消のためということで、現地に法人をつくり、現地に
企業を持っていき、そこで活動することによって
貿易のカウントから逃れる。逃れると言うと悪いけれ
ども、そういう
措置をとったわけでありますが、最近になって聞いてみますと、やはりそれは
貿易摩擦の解消のためはもちろん一理がございますが、行ってみてよかったということがございます。
一つはやはり法人税が安いために内部留保ができる、内部留保は再
投資ができる。それから、行った優秀な
技術者その他の、いわば累進税率が向こうは安いわけでございますから、所得税が安い。そういうことで、行った高給取りの方々は大変よろしい。
そういう
状況を考えますと、私は、
大臣という以前の政治家として考えますことは、政治というのは大体あるところからいただいてないところへ配るのが政治だ。そういうことを考えますと、いい
企業がどんどん働いてくれるから税金がたくさん入るのだ、累進税率を納めるような高い所得者がいるから税金が入るのだ。それを、例えば私は
地方に住んでいるものでございますから、国税で入ったものの三二%が原資になって交付税になって
地方の財政が潤っている。あるいは中小赤字法人があっても税金を納めないで済むゆえんのものはどういうものか。ですから、ある者から取れる環境があるからこそ、ない者が納めないでも納める以上の行政水準、行政サービスを受けることができるわけでございますから、そういう観点からしても、やはり
国内の空洞化を防ぐためにも、
企業税制においては少なくとも外国並みに
努力をしなければならない。それから、累進税率も諸外国に例を見ないほど高い。それが本人の
努力以外のもので得たものであれば、それは当然社会に還元をすべきものでありますが、そういうもろもろの条件を考えれば、少なくとも外国とそれほど大きく違った税制でない方が望ましいという
感じを私は持っているわけでございますから、特に法人税や所得税、これに大幅な減税の厚みを加えていかなければならない。
こういうことを考えますと、それじゃ諸外国は何でやっているかというと間接税だ。アメリカは直接税
中心だといいますが、それは連邦税でありまして、州税はほとんどが間接税
中心でございます。こういうもろもろのことを考えますと、間接税に外国とそれほど大きい違いのない税制を志向していくという
努力の経過が国民にわかるような態勢をとっていくことは大勢としては間違いがない、私はこういう
考え方を持っておりますから、この税制改正全般に関して、私は、理解と、むしろ推進論者の一人でもございます。
ただ、今の消費税の問題は、初めて導入された問題でございますから、頭の中で考えたもの自体が全部よろしいものとして出ているかどうかは確かに問題がございます。ただ、申し上げられますことは、今中小
企業を
中心とする点でこの消費税はいかがかという議論でございますが、やはり転嫁を十二分にして第二法人税にするな、それから下請いじめをやってはいけない、便乗値上げをしないという、この三つの原則のもとに行った税制改正において、中小
企業等においては特にいろいろな配慮がなされることによって、あるいは公平だとかなんとかというものが損なわれたと言われるかもしれませんが、中小
企業に対する配慮はおおよそなされるものはなされて今日を迎えているという気がいたします。
ただ、言えることは、我々の視点が、政府は
事業者から税を納めてもらうという立場でございます、最終的には消費者が負担をするわけでありますが、私の個人的な感触でございますが、どちらかというと消費者的な視点にやや欠けたことがあるのではないかなという反省を今いたしております。私の立場として、今それ以上申し上げる立場でございませんので、御理解をちょうだいしたいと思います。