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1989-06-15 第114回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    六月七日  津島雄二委員長辞任につき、その補欠として  丹羽雄哉君が議院において、委員長に選任され  た。     ――――――――――――― 平成元年六月十五日(木曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 丹羽 雄哉君    理事 伊吹 文明君 理事 高橋 辰夫君    理事 戸井田三郎君 理事 野呂 昭彦君    理事 粟山  明君 理事 池端 清一君    理事 田中 慶秋君       粟屋 敏信君    稲垣 実男君       石破  茂君    今井  勇君       尾形 智矩君    加藤 卓二君       木村 義雄君    北村 直人君       古賀  誠君    佐藤 静雄君       笹川  堯君    鈴木 恒夫君       高橋 一郎君    竹内 黎一君       津島 雄二君    中山 成彬君       三原 朝彦君    持永 和見君       川俣健二郎君    永井 孝信君       村山 富市君    渡部 行雄君       新井 彬之君    草川 昭三君       伏屋 修治君    吉井 光照君       塚田 延充君    児玉 健次君       田中美智子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         労 働 大 臣 堀内 光雄君  出席政府委員         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         労働政務次官  宮島  滉君         労働大臣官房長 若林 之矩君         労働省労政局長 岡部 晃三君         労働省労働基準         局長      野崎 和昭君         労働省職業安定         局長      清水 傳雄君         労働省職業安定         局次長     齋藤 邦彦君         労働省職業能力         開発局長    甘粕 啓介君  委員外出席者         労働省労政局労         政課長     山中 秀樹君         社会労働委員会         調査室長    滝口  敦君     ――――――――――――― 委員の異動 六月三日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     藤本 孝雄君   自見庄三郎君     石破  茂君   長野 祐也君     粟山  明君 同月六日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     伊東 正義君 同月七日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     古賀  誠君 同月九日  辞任         補欠選任   尾形 智矩君     山口 敏夫君   古賀  誠君     松本 十郎君 同日  辞任          補欠選任   松本 十郎君     古賀  誠君   山口 敏夫君     尾形 智矩君 同月十四日  辞任         補欠選任   石破  茂君     亀井 静香君   尾形 智矩君     森   清君   古賀  誠君     田原  隆君   川俣健二郎君     関山 信之君   塚田 延充君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     石破  茂君   田原  隆君     古賀  誠君   森   清君     尾形 智矩君   関山 信之君     川俣健二郎君   小沢 貞孝君     塚田 延充君 同月十五日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     北村 直人君   尾形 智矩君     加藤 卓二君   戸沢 政方君     鈴木 恒夫君   田邊  誠君     村山 富市君   吉井 光照君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   加藤 卓二君     尾形 智矩君   北村 直人君     小沢 辰男君   鈴木 恒夫君     戸沢 政方君   村山 富市君     田邊  誠君   草川 昭三君     吉井 光照君 同日  理事長野祐也君同月三日委員辞任につき、その  補欠として野呂昭彦君が理事に当選した。 同日  理事丹羽雄哉君同月七日委員長就任につき、そ  の補欠として粟山明君理事に当選した。     ――――――――――――― 五月二十六日  加工食品の表示の適正化に関する法律案(丸谷  金保君外二名提出参法第二号)(予) 六月五日  民間事業者による老後の保健及び福祉のための  総合的施設の整備の促進に関する法律案内閣  提出第七六号)(予) 同月十二日  療術の制度化促進に関する請願天野光晴君紹  介)(第二三九八号)  看護職員大幅増員労働生活条件改善に関  する請願池端清一紹介)(第二三九九号)  同(安藤巖紹介)(第二五八三号)  同(石井郁子紹介)(第二五八四号)  同(岩佐恵美紹介)(第二五八五号)  同(浦井洋紹介)(第二五八六号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二五八七号)  同(金子満広紹介)(第二五八八号)  同(経塚幸夫紹介)(第二五八九号)  同(工藤晃紹介)(第二五九〇号)  同(児玉健次紹介)(第二五九一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五九二号)  同(柴田睦夫紹介)(第二五九三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二五九四号)  同(田中美智子紹介)(第二五九五号)  同(辻第一君紹介)(第二五九六号)  同(寺前巖紹介)(第二五九七号)  同(中路雅弘紹介)(第二五九八号)  同(中島武敏紹介)(第二五九九号)  同(野間友一紹介)(第二六〇〇号)  同(東中光雄紹介)(第二六〇一号)  同(不破哲三紹介)(第二六〇二号)  同(藤田スミ紹介)(第二六〇三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二六〇四号)  同(正森成二君紹介)(第二六〇五号)  同(松本善明紹介)(第二六〇六号)  同(村上弘紹介)(第二六〇七号)  同(矢島恒夫紹介)(第二六〇八号)  同(山原健二郎紹介)(第二六〇九号)  国立病院療養所看護婦宿舎改善に関する請  願(池端清一紹介)(第二四〇〇号)  国立腎センター設立に関する請願石井一君紹  介)(第二四四一号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願外十  三件(大野潔紹介)(第二四四二号)  同(川俣健二郎紹介)(第二四四三号)  同(竹入義勝紹介)(第二四四四号)  同外六件(塚田延充紹介)(第二四四五号)  同(沼川洋一紹介)(第二四四六号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二四四七号)  同(伏木和雄紹介)(第二四四八号)  同(持永和見紹介)(第二四四九号)  同(矢野絢也君紹介)(第二四五〇号)  同(吉井光照紹介)(第二四五一号)  国民年金等公的年金改悪反対に関する請願  (山花貞夫紹介)(第二四七六号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(中曽根  康弘君紹介)(第二四七七号)  同(麻生太郎紹介)(第二五五一号)  同(川崎二郎紹介)(第二五五二号)  同(谷垣禎一紹介)(第二五五三号)  年金制度改悪反対等に関する請願佐藤観樹  君紹介)(第二四七八号)  同(安藤巖紹介)(第二五八一号)  年金改悪反対に関する請願塚田延充紹介  )(第二四八三号)  年金改善に関する請願安藤巖紹介)(第  二五二三号)  同(石井郁子紹介)(第二五二四号)  同(経塚幸夫紹介)(第二五二五号)  同(児玉健次紹介)(第二五二六号)  同(田中美智子紹介)(第二五二七号)  同(辻第一君紹介)(第二五二八号)  同(東中光雄紹介)(第二五二九号)  同(藤田スミ紹介)(第二五三〇号)  同(正森成二君紹介)(第二五三一号)  同(村上弘紹介)(第二五三二号)  年金健康保険制度改悪反対等に関する請願  (岩佐恵美紹介)(第二五三三号)  同(浦井洋紹介)(第二五三四号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二五三五号)  同(金子満広紹介)(第二五三六号)  同(工藤晃紹介)(第二五三七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五三八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二五三九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二五四〇号)  同(寺前巖紹介)(第二五四一号)  同(中路雅弘紹介)(第二五四二号)  同(中島武敏紹介)(第二五四三号)  同(野間友一紹介)(第二五四四号)  同(不破哲三紹介)(第二五四五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二五四六号)  同(松本善明紹介)(第二五四七号)  同(矢島恒夫紹介)(第二五四八号)  同(山原健二郎紹介)(第二五四九号)  年金改悪反対に関する請願外一件(野口幸一君  紹介)(第二五五〇号)  国民医療改善に関する請願安藤巖紹介)(  第二五五四号)  同(石井郁子紹介)(第二五五五号)  同(岩佐恵美紹介)(第二五五六号)  同(浦井洋紹介)(第二五五七号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二五五八号)  同(金子満広紹介)(第二五五九号)  同(経塚幸夫紹介)(第二五六〇号)  同(工藤晃紹介)(第二五六一号)  同(児玉健次紹介)(第二五六二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五六三号)  同(柴田睦夫紹介)(第二五六四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二五六五号)  同(田中美智子紹介)(第二五六六号)  同(辻第一君紹介)(第二五六七号)  同(寺前巖紹介)(第二五六八号)  同(中路雅弘紹介)(第二五六九号)  同(中島武敏紹介)(第二五七〇号)  同(野間友一紹介)(第二五七一号)  同(東中光雄紹介)(第二五七二号)  同(不破哲三紹介)(第二五七三号)  同(藤田スミ紹介)(第二五七四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二五七五号)  同(正森成二君紹介)(第二五七六号)  同(松本善明紹介)(第二五七七号)  同(村上弘紹介)(第二五七八号)  同(矢島恒夫紹介)(第二五七九号)  同(山原健二郎紹介)(第二五八〇号)  年金制度改悪反対等に関する請願石田幸四郎  君紹介)(第二五八二号) 同月十四日  保育・福祉充実育児休暇及び看護休暇の制  度化に関する請願安藤巖紹介)(第二六五  二号)  同(岩佐恵美紹介)(第二六五三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二六五四号)  同(金子満広紹介)(第二六五五号)  同(工藤晃紹介)(第二六五六号)  同(児玉健次紹介)(第二六五七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二六五八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二六五九号)  同(田中美智子紹介)(第二六六〇号)  同(辻第一君紹介)(第二六六一号)  同(中島武敏紹介)(第二六六二号)  同(不破哲三紹介)(第二六六三号)  同(矢島恒夫紹介)(第二六六四号)  同(山原健二郎紹介)(第二六六五号)  年金健康保険制度改悪反対等に関する請願  (安藤巖紹介)(第二六六六号)  同(石井郁子紹介)(第二六六七号)  同(岩佐恵美紹介)(第二六六八号)  同(浦井洋紹介)(第二六六九号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二六七〇号)  同(金子満広紹介)(第二六七一号)  同(経塚幸夫紹介)(第二六七二号)  同(工藤晃紹介)(第二六七三号)  同(児玉健次紹介)(第二六七四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二六七五号)  同(柴田睦夫紹介)(第二六七六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二六七七号)  同(田中美智子紹介)(第二六七八号)  同(辻第一君紹介)(第二六七九号)  同(寺前巖紹介)(第二六八〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二六八一号)  同(中島武敏紹介)(第二六八二号)  同(野間友一紹介)(第二六八三号)  同(東中光雄紹介)(第二六八四号)  同(不破哲三紹介)(第二六八五号)  同(藤田スミ紹介)(第二六八六号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二六八七号)  同(正森成二君紹介)(第二六八八号)  同(松本善明紹介)(第二六八九号)  同(村上弘紹介)(第二六九〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第二六九一号)  同(山原健二郎紹介)(第二六九二号)  国立腎センター設立に関する請願砂田重民君  紹介)(第二六九三号)  消費生活協同組合育成強化に関する請願(松  前仰君紹介)(第二六九四号)  被爆者援護法制定に関する請願(松前仰君紹  介)(第二六九五号)  国民医療改善に関する請願児玉健次紹介)  (第二六九六号)  同(中島武敏紹介)(第二六九七号)  同(工藤晃紹介)(第二七五七号)  同(田中美智子紹介)(第二七五八号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願(川  俣健二郎紹介)(第二六九八号)  同(古賀誠紹介)(第二六九九号)  同(櫻内義雄紹介)(第二七〇〇号)  同(中西啓介紹介)(第二七〇一号)  同外三件(永井孝信紹介)(第二七〇二号)  同(矢島恒夫紹介)(第二七〇三号)  同(川俣健二郎紹介)(第二七五九号)  同(野間友一紹介)(第二七六〇号)  看護職員大幅増員労働生活条件改善に関  する請願永井孝信紹介)(第二七〇四号)  年金改悪反対に関する請願小渕正義紹介  )(第二七〇五号)  厚生年金制度改悪反対等に関する請願石橋大  吉君紹介)(第二七五〇号)  年金改善に関する請願岩佐恵美紹介)(  第二七五一号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願二田  孝治紹介)(第二七五二号)  難病患者などの医療生活保障に関する請願  (二田孝治紹介)(第二七五三号)  年金健康保険制度改悪反対に関する請願  (田中美智子紹介)(第二七五四号)  同(不破哲三紹介)(第二七五五号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願三原朝  彦君紹介)(第二七五六号) 同月十五日  小規模障害者作業所助成等に関する請願(川  俣健二郎紹介)(第二七八七号)  同(鈴木善幸紹介)(第二七八八号)  同(中路雅弘紹介)(第二七八九号)  同(山口敏夫紹介)(第二七九〇号)  同(浅井美幸紹介)(第二八三一号)  同(新井彬之君紹介)(第二八三二号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二八三三号)  同(石田幸四郎紹介)(第二八三四号)  同(大野潔紹介)(第二八三五号)  同(近江巳記夫紹介)(第二八三六号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第二八三七号  )  同(小谷輝二君紹介)(第二八三八号)  同(坂井弘一紹介)(第二八三九号)  同(竹入義勝紹介)(第二八四〇号)  同(竹内彦君紹介)(第二八四一号)  同(玉城栄一紹介)(第二八四二号)  同(沼川洋一紹介)(第二八四三号)  同(春田重昭紹介)(第二八四四号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二八四五号)  同(伏木和雄紹介)(第二八四六号)  同(冬柴鉄三紹介)(第二八四七号)  同(矢追秀彦君紹介)(第二八四八号)  同(矢野絢也君紹介)(第二八四九号)  同(吉井光照紹介)(第二八五〇号)  国立病院療養所看護婦宿舎改善に関する請  願(戸井田三郎紹介)(第二七九一号)  同(浜田卓二郎紹介)(第二七九二号)  年金改悪反対制度抜本改革に関する請願  (鍛冶清紹介)(第二八三〇号)  看護職員大幅増員労働生活条件改善に関  する請願安藤巖紹介)(第二八五一号)  同(岩佐恵美紹介)(第二八五二号)  同(川俣健二郎紹介)(第二八五三号)  同(田中美智子紹介)(第二八五四号)  同(中路雅弘紹介)(第二八五五号)  同(松本善明紹介)(第二八五六号) は本委員会に付託された。 六月二日  難病患者などの医療生活保障に関する請願  (第九九〇号)及び輸入食品監視体制強化に  関する請願(第二三二七号)は「安井吉典君紹  介」を「池端清一紹介」に、腎疾患総合対策  の早期確立に関する請願(第一三一七号)及び  難病患者などの医療生活保障に関する請願  (第一三一九号)は「池田克也紹介」を「沼  川洋一君外一名紹介」にそれぞれ訂正された。     ――――――――――――― 六月十三日  国民健康保険制度改革に関する陳情書  (  第一六四号)  年金制度改正反対に関する陳情書外四件  (第一六五号)  高齢者福祉対策充実に関する陳情書外一件  (第一六六号)  介護手当制度の創設に関する陳情書外一件  (第一六七号)  育児休業法制定促進に関する陳情書  (  第一六八号)  輸入食品安全性確保対策推進に関する陳情  書  (第一六九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  日本労働協会法の一部を改正する法律案内閣  提出第二六号)  歯科衛生士法の一部を改正する法律案起草の件      ――――◇―――――
  2. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  この際、一言あいさつを申し上げます。  このたび、委員長就任をいたしました丹羽雄哉でございます。  御承知のとおり、高齢化社会が進む中で、医療福祉年金雇用など当委員会に課せられた諸問題につきましては、国民各界各層から強い関心が寄せられており、まことにその任務は重要であると考えているような次第でございます。  何分若輩でございますが、委員各位の御指導を賜りまして、公平、誠実、円満なる委員会の運営に努めたいと思いますので、皆様方の御支援、御鞭撻を何とぞよろしくお願いをいたしたいと思います。(拍手)  前委員長津島雄二君から発言を求められておりますので、これを許します。津島雄二君。
  3. 津島雄二

    津島委員 お許しを得て、一言あいさつ申し上げます。  昨年の末に委員長就任をいたしましてから、短い間ではございましたが、委員各位の御協力を得て職責を果たすことができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  重要な懸案が幾つか残されたと思いますが、新委員長のもと、委員各位の御協力によりまして、国民の負託にこたえられますように心から念願をいたしまして、ごあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)      ――――◇―――――
  4. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  理事長野祐也君の委員辞任及び私の委員長就任に伴いまして、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事に       野呂昭彦君 及び 粟山  明君を指名いたします。      ――――◇―――――
  6. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 次に、堀内労働大臣宮島労働政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。堀内労働大臣
  7. 堀内光雄

    堀内国務大臣 労働大臣を拝命いたしました堀内光雄でございます。  我が国経済社会は、幾多の困難を乗り越え、今日まで発展してまいりましたが、これを支えてまいりましたのは、働く人たちの一人一人の努力のたまものであります。これらの人たち雇用の安定を図り、豊かな生活を実現することが、今後の我が国の繁栄の基礎となるものでありまして、これからの労働行政課題だと考えております。私は、時代のニーズを的確にとらえまして、これに対応する積極的な労働行政の展開を図るべく全力を傾注する所存でございます。  まず、高齢化進展雇用就業構造変化に対応しまして活力ある社会を築くために、高齢者雇用対策を積極的に推進してまいります。また、地域における雇用機会開発パートタイム労働者雇用の安定のために、総合的な対策を講じてまいります。また、労働時間短縮は、政府全体として取り組むべき課題となっております。私は、週休二日制の普及や週四十時間労働の実現と普及に努めてまいりたいと思っております。さらに、労働者安全衛生確保対策経済社会変化に対応する職業能力開発対策を積極的に推進してまいる所存でございます。  委員長初め委員各位の一層の御指導、御鞭撻を賜りますように心からお願いを申し上げまして、就任のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  8. 丹羽雄哉

  9. 宮島滉

    宮島(滉)政府委員 労働政務次官を再度拝命いたしました宮島滉でございます。  ただいま堀内労働大臣から申し上げましたように、今日の我が国経済社会の発展を支えてきたものは、勤労者一人一人の努力であります。経済構造調整国際化、さらには社会高齢化など大きな変化が進行しつつある今日、働く人たち雇用の安定を図り、豊かな生活を実現するための労働行政は、その重要性を増すとともに、的確かつ迅速な対応が求められています。  私は、労働行政国民生活の安定と向上に果たす役割の大きさにかんがみ、大臣とともに全力を挙げて、積極的な行政推進に取り組んでまいる所存であります。  委員長初め、委員各位の一層の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、ごあいさつにかえる次第でございます。(拍手)      ――――◇―――――
  10. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 内閣提出日本労働協会法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  11. 永井孝信

    永井委員 今議題になっております労働協会法改正案に対して、非常に短い時間ではありますが、ポイントについてのみ質問をしてみたいと思うわけであります。  まず、さきの委員会におきまして、この改正法案提案理由説明をされたわけでありますが、今回あえてこの法律を改正しようとする理由につきまして、いま少し具体的に御説明を願いたいと思います。
  12. 岡部晃三

    岡部政府委員 お答え申し上げます。  協会は、昭和三十三年でございますが、労使間に先鋭な対立が見られたような社会情勢を背景といたしまして、労使及び国民一般労働問題に対する理解を培いまして、近代的な労使関係を形成をするということを企図して設立されたものでございます。この間の活動を通じまして、協会は、労働問題に関する各方面の理解促進あるいは諸外国の労働問題を通じた対日理解促進労働問題研究者の養成というようなことに貢献をしてまいったところでございます。  しかし、御承知のとおり近年の労使関係成熟化安定化労働問題の多様化といった環境変化の中で、協会の果たすべき役割設立当初に比べまして大きく変容を見ているわけでございます。一方におきましては、労使関係成熟化の様相、他方におきまして技術革新あるいは産業構造変化経済活動国際化進展をしたわけでございます。また、労働力高齢化就業形態多様化というふうなことが進行いたしまして、労働市場需給両面にわたっての大幅な構造変化が進んだわけであります。  このような社会経済環境変化にこたえ得るように協会事業の見直しが必要となったわけでございます。     〔委員長退席粟山委員長代理着席労働省におきましては、昭和六十三年の一月から七月にかけまして、日本労働協会のあり方に関する研究会を開催をいたしまして、関係各有識者から意見を徴して検討してきたわけでございます。  その結果に基づきまして、まず労働問題についての総合的調査研究機関としての調査研究事業を拡充する。そのために、日本労働協会雇用職業総合研究所を統合する。それから二番目に、情報収集、提供機能の拡充を行う。三番目に、国際交流事業の拡充を行うということとした今回の改正の原案が形づくられるようになってまいった、こういう経緯でございます。
  13. 永井孝信

    永井委員 今御説明いただいたわけでありますが、この労働協会法というのは本当に非常に特殊な法人なんですね。法律に基づいて設立されている法人はたくさんありますけれども、その中でもまさに特異な性格を持っていると私は思うのであります。この特殊法人は、労使関係を主要なテーマにしているからとりわけ特殊な法人になっていると私は思うのでありますが、それはともかくとして、この日本労働協会法というのは、実は振り返ってみますと、かつて二大政党時代、いわゆる自社という二大政党時代の対決の中で成立した法律であります。その成立の過程では極めて特殊な問題を秘めておったことは、御承知のとおりだと私は思うのであります。  少し当時を振り返ってみたいと思うのでありますが、私は今ここに当時の議事録を持っております。昭和三十三年四月九日の議事録でありますが、当時この衆議院社会労働委員会における討論の中で、前副議長の我が党の多賀谷真稔先輩が反対討論に立っておられますが、その反対討論の骨子というのは、あえて御紹介申し上げておきますと、第一に、政府協会設立しようとした動機とねらい。第二には、政府労働基本権や労働運動に対する態度。第三に、法律的に見た場合の問題として、政府への法人の従属性。つまり、労働大臣がこの協会の人事権を掌握していること、業務上では事業計画の認可及び業務に関する監督命令権を持っていること、さらに予算、決算についても認可権を有しているというように、法律上は協会が全く労働大臣の従属機関となっているわけですね。そして第四に、戦後における歴代の反労働者政策の総仕上げともいうべきものだというふうに、当時、多賀谷前副議長は断定をされているわけでありますが、その中にこういう言葉があります。いわゆる戦前「産業報国会を唯一の労働組織として改変せしめた当時の責任者の一人としての岸さんが、」この法案の制定当時総理大臣として提案されているわけですね。したがって、労働協会が戦前の産業報国会のような役割を果たすようになることへの懸念ということを指摘をされているわけであります。  そこで、お尋ねいたしますけれども、労働省としてはこのような立法経過について現在どのように受けとめていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  14. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生御指摘のとおり、この法律昭和三十三年の制定に際しまして、協会の自主性、中立性につきましていろいろな懸念が表明されたという経緯につきましては、私ども十分に承知をしているところでございます。このため労働省といたしましては、それ以後一貫いたしまして、協会の業務運営についての自主性、中立性の尊重ということにつきましては万般の意を用いてきたところでございまして、その点につきましては今後とも姿勢が変わるところはございません。
  15. 永井孝信

    永井委員 今説明がありましたように、この日本労働協会法においては、他の特殊法人の場合には見られないようないろいろな特別な措置が講じられているわけですね。その柱となるのが第三十五条だと思うのですが、その第一項では「協会は、労働大臣が監督する。」と規定されています。第二項では、労働大臣の監督上の命令権が規定されているものの、それには「特に必要があると認めるとき」という限定がつけられています。その上、第三項において「前項の規定による命令は、協会の業務の運営の自主性に不当に干渉するものであってはならない。」と規定されているわけですね。このように明文をもって自主性の尊重、不当干渉の排除が規定されているのは、まさに異例の措置だと私は思うのです。他に例がありません。  そのほか第四条、つまり独自の財源を確保するため十五億円の基金に関する規定、そして第十三条及び第十五条、つまり協会の中立性を確保するため、役員については「労働問題に関し、公正な判断をすることができ、かつ、深い学識経験を有する者のうちから任命する。」こととして、議員や公務員、政党役員などを排除するという規定、さらには第二十二条におきまして、つまり第十条により設置される理事会のほかに、その理事会の諮問機関として学識経験者で構成する評議員会を置くという規定などが置かれているわけですね。  労働協会発足後の足取りを見ますと、調査研究、教育などの事業においてどうやら大きな問題が生じたということは聞いておりません。全体としては、我が党が当初厳しく指摘してまいりました点に十分に配慮されて運営されてきたものと思っております。しかしだからといって、この法制定の当時の経過やら今具体的に指摘したような条文の趣旨をそのまま忘れてしまっていいというものではないと思うのであります。  ところで、今回の法改正の直接のきっかけというのは、昭和六十一年、総務庁の特殊法人に関する調査結果に基づく勧告であろうと私は思うのですが、この勧告では「社会経済環境変化に即した協会の活性化の観点から、協会の業務内容、要員配置等を全般的に見直す必要がある。」と指摘しているわけですね。提案理由説明でもそのように触れられているわけでありますが、この法律制定当時は、確かに労使関係を含めて激動の時期でありました。その後今日までの間に大きな社会経済環境変化があったことも確かであります。     〔粟山委員長代理退席、委員長着席〕 そして、このような変化があっても法の第三十五条第三項等の規定の意義、重要性というものは全く変わりがないということを確認しておきたいと思うのですが、どうでございましょう。
  16. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生お述べになりました法三十五条三項、すなわち労働大臣の監督上の命令でございますが、これは「協会の業務の運営の自主性に不当に干渉するものであってはならない。」こういう規定でございますが、これは協会の業務運営を協会の自主性にゆだねるということで、協会活動の中立性に対する国民一般の信頼を獲得するということを目的として設けられた規定であると承知をいたしております。  この規定の意義は、まさしく新機構においても変わることはないということでございます。また、同じ意味合いでございますが、自主性、中立性を担保するためのいろいろな措置、例えば役員大事に関する規定あるいは理事会、評議員会に関する規定、これにつきましても、これは新しい法律においても引き継がれているわけでございまして、その意味内容、意義も変わるところはないというふうに考えております。
  17. 永井孝信

    永井委員 今、この労働協会の自主性、中立性の問題につきまして総括的な質問をしたわけでありますが、中身について具体的にちょっと触れてみたいと思うわけであります。  まず、労働大臣の監督権についてでありますが、この労働協会法が審議された当時の議事録を見ますと、第三十五条第三項については、もっともっと具体的なやりとりが行われているわけですね。例えば昭和三十三年四月二十三日に行われました参議院の社会労働委員会そして大蔵委員会の連合審査の記録を見ますと、政府は次のように言っています。第一に、労働大臣協会に対して持っている監督権は、財務、会計及び法違反のある場合に限定される。第二には、したがって、所期の目的、業務の範囲内においては協会は自主的に運営できるのであり、業務の内容は民間人の自主性にゆだねる建前となっている。第三に、協会政府の方針と異なることを行ってもそれはやむを得ないことで、干渉しない。第四に、こういうことをやらなければならないと言い、あるいはやってはならないと言うことは、両方とも自主性に関する不当干渉であるなどと、当時明確に答弁しているわけですね。もちろん、協会法律の趣旨、目的を離れて何をやってもよいというわけではないのでありましょうが、かつて確認したこれらの考え方については、労働協会が新機構に移行したとしても変わりはないものと受けとめてよろしいかどうか、お伺いをしたいと思います。
  18. 岡部晃三

    岡部政府委員 労働大臣協会に対して持っておる監督権についてのお尋ねでございますが、これは過去のもろもろの解釈についてそのような御議論を踏まえて私どもも考えていきたいと思っております。したがいまして、専ら法違反がある場合、それから財政上の問題がある場合にこの監督権が発動されるものである、そういうふうに限定されるものであるというふうに考えているところでございまして、具体的内容につきましては御指摘のとおりと存じます。
  19. 永井孝信

    永井委員 次に、役員の選任についてお伺いをしたいと思いますが、会長については労働大臣が任命することになっているわけですね。協会設立以来の経過を見ますと、初代が元文部大臣前田多門先生、そしてその次が元一橋大学の学長の中山伊知郎先生、その次が元東京女子大学学長の隅谷三喜男先生、そして現在の元慶応大学の産業経済研究所長辻村江太郎先生というふうに、歴代、振り返ってみますと著名な学者が任命されておるわけです。これは、この法律に照らして当然なことだと私は思います。今後もそのような人選が行われなければならないと思うのでありますが、改正案では、理事長ポストというものが新設されることになっています。つまり、労働大臣は、会長のほかに、会長の補佐役としての理事長をも任命することにしているわけです。  そこでお尋ねするのでありますが、この新機構においては、このように理事長ポストを新設することは一体どこに理由があるのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  20. 岡部晃三

    岡部政府委員 新しい機構は、七十一名の常勤的な研究員、それから七名の非常勤研究員を擁して、労働問題に関しまして総合的な調査研究を行うことにしているわけでございます。その成果というものは、広く労使あるいは国民一般に提供されるわけでございます。したがいまして、御指摘のように機構の会長にはこの多数の研究員を統括いたしまして研究活動をやっていただく、そしてまた、国民の信頼を得るに足る高い学識経験を有する方を広く求めて任命を行っていくという必要があることは当然のことでございます。  そこで、お尋ねの理事長ポストでございますが、この役職員が従来の日本労働協会に比べまして倍増するわけでございます。予算額も大幅に増になるわけでございます。そういうような拡大が行われるわけでございますので、このような非常に大きい機構を扱ういわばマネジメントを適切に図るという観点から新たに理事長職を設けたわけでございまして、それによりまして機構の事業遂行に遺漏なきを期したい、こういう考え方でございます。
  21. 永井孝信

    永井委員 おおむね理解できるわけでありますが、この理事長の任命についても、従来会長について取り扱われてきたと同様の慎重な人選が当然なされるべきものだと考えますが、それはどうでございますか。
  22. 岡部晃三

    岡部政府委員 理事長につきましては、労働問題に関しまして公正な判断をすることができて、かつ深い学識経験を有する者の中から機構のマネジメントを担当するにふさわしい、そのような力量を持った経験者を充てていきたいというふうに考えております。
  23. 永井孝信

    永井委員 今の御答弁からいきますと、実務の統括者として理事長を置くということに受けとれるわけですが、会長及び理事長の人選では、実務の統括者たる理事長が、新機構の運営におきまして、会長の補佐役という立場を超えて独走することのないよう十分配慮するように、私は重ねて強く要望しておきたいと思うわけであります。  さて、従来、会長は別として、他の役員、つまり監事及び理事については、その大部分が、調査をしてみますと労働省の出身官僚になっているわけです。特殊法人への天下りは、それ自体が大きな政治的問題になりました。社会的にも問題になってまいりました。そういうことがありますだけに、これは是正していかなくてはならないと私は思うのであります。  ところで、特殊法人の役員の選考については、昭和五十二年十二月二十三日の閣議決定というものがございます。この閣議決定におきましては、「公庫公団等特殊法人の役員の選考に当っては、広く各界有識者の中から適任者を人選するとの見地から、今後、特に次の事項に留意するものとする。」というふうにして幾つかの事項が挙げられているわけでありますが、そのうちの一つに「特殊法人の業務内容を勘案し、民間からの登用を積極的に推進すること。」というものがございます。また、これを受けて政府昭和五十四年十二月十八日、その運用方針について閣議了解をいたしていますが、その中では、「全特殊法人の常勤役員については、国家公務員からの直接の就任者及びこれに準ずる者をその半数以内にとどめることを目標とする。この目標を達成するため、主管省庁及び各特殊法人においては、法人の業務内容等に応じ、民間人等の起用について一層努力するものとする。」とされているわけです。特に、この労働協会の場合には、たとえ雇用職業総合研究所と合併し新機構に移行したといたしましても、先ほど確認しましたように、その自主性、中立性が十分尊重される中で事業運営が行われていかなければならないことは当然であります。  そこで、今後の役員の登用に当たっては、中立、公正な人に就任してもらうこと、あるいは中立、公正を確保できるような役員構成に十分配慮するということが必要であって、幅広く人材を求めていくべきではないかと思うのですが、これについては具体的にどうお考えか、お尋ねをしてみたいと思います。
  24. 岡部晃三

    岡部政府委員 この機構の役員の問題でございますが、労働問題に関しまして公正な判断をすることができ、かつ、深い学識経験を有する者の中から任命することとしているわけでございます。従来から、学界、民間を含めまして、幅広い分野から人材を登用してきたところでございますが、新機構においても当然この方針に変わりはないというふうに考えております。  なお、労使を初めといたしまして、各界の御意見の反映でございますが、評議員会制度が活発に動いておりまして、機構の事業の運営に反映をさせていきたいというふうに考えております。
  25. 永井孝信

    永井委員 私の質問に対して、求めている内容についてそれなりに答弁をいただきました。それについては評価をしておきたいと思います。  さて、これに関連しましてもう一点、意見も交えて質問しておきたいと思うわけであります。  臨調の第三次答申では、「役員の選考については、既往の閣議了解に基づく措置を徹底し、特に組織の活性化を図るため、内部からの登用を推進する。また、部課長等中間管理職についても、法人の人事運用の実態に応じて内部登用を推進する。」こういうふうにされているわけですね。また、臨調最終答申におきましても、「職員からの管理職等への登用を一層推進する。」とうたわれています。  私も、組織の活性化あるいは職員の士気の高揚という観点から内部登用を推進することは極めて大切なことだと考えていまして、臨調答申のこの部分に限って言えば私は賛成であります。しかし、臨調答申そのものが政治的にも大きな問題になってきましたように、臨調答申の中身について全体的に言えば国民の批判を受けるようなものが非常に多うございまして、そのいい部分については実行を必ずしもしないで、国民から批判を受けるような面については強引に推し進めてきたのではないかと私は思うのですね。これは今度の労働協会法関係だけではなくて、民活を含めていろいろな問題がありますが、そういうことは許せないことだと私は思います。  そこで、新機構に移行することを契機にして、役員について職員からの内部登用が積極的に検討されてしかるべきだと思うのでありますが、これはひとつ労働大臣としての認識をお尋ねしてみたいと思うわけであります。
  26. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先ほどから労政局長が御答弁申し上げているように、この設立の経緯その他から考えてまいりましても、委員からのいろいろの御指摘、ごもっともな面が非常に多いと思っております。そういう意味で、先ほど労政局長から御答弁申し上げたように、機構の役員は幅広く人材を登用していくことにいたしておりまして、御指摘の内部登用も十分念頭に置きつつ検討してまいりたいと思っております。
  27. 永井孝信

    永井委員 とりわけ労働大臣は、この社会労働委員会委員長もされた豊かな経験をお持ちになっているわけでありますから、ひとつそういう経験をフルに生かして厳正に、そして所期の目的が達成できるようにお願いしておきたいと思うわけであります。  さて、その次でありますが、協会の自主性、中立性ということを保障するための問題でありまして、役員に人材を得るというだけではなくて、いわゆるひもつきではない財源が必要だと私は思うのです。昭和三十三年の法の制定当時、これまた過去の経過を振り返って恐縮ですが、衆議院社会労働委員会における審議の中で当時の石田労働大臣が、基金設定方式をとった理由について次のように言われています。   この仕事をやって参ります場合におきましては、公正な、そして同時に労働問題について十分の知識と経験を持っておる人を得ることが一番大切であります。そのよい人を得るということのためには、その団体の安定性を確保しなければなりません。今までの補助金方式で参りますると、そのときの政府の考え方によって補助金に増減がある、ひいてはそれが全廃されることもあり得る、そういう不安定な状態のもとにおいて、すぐれた人は得にくいのでありますから、事業の安定性を確保いたしまするために、最小限度の費用は捻出される基金制度をとった  次第であります。このように当時石田労働大臣は答弁されているわけです。加えて、このような観点から協会独自の財源を確保するために十五億円の基金が設けられているわけですね。  また、この十五億円の基金については、当時衆議院の社会労働委員会における同じ討論の中におきまして、当時の自由民主党を代表して賛成討論に立たれた田中正巳議員がこう言われています。「本協会のごとき重要かつ多方面なる任務を持つ協会がその基金として有するところが若干少な過ぎることを思い、今後政府はこの基金の増額につき予算的措置を逐次おとりになることを希求」する、こう言われているわけです。私は、これは非常に重要な指摘だったと思うわけであります。  ところが、そういう経過があるにもかかわらず、この十五億円の基金というものはその後一向に増額されていないのであります。現在も十五億円のままであります。このため昭和三十七年度から事業委託費が導入されまして、さらに昭和四十一年度から一般会計、さらに昭和六十一年度から特別会計からの補助金が導入されたわけです。なぜ十五億円の基金が増額されてこなかったのか。そのためにこういう補助金が導入されることになったわけでありますが、その間の事情について具体的に詳しく説明を願いたいと思うわけであります。
  28. 岡部晃三

    岡部政府委員 協会設立に当たりまして、十五億円から成る基金を設けまして、その運用収入によって事業に必要な財源を賄うことにして安定的な事業の運営に当たりたい、このような念願のもとに当初十五億円の基金ということで出発したわけでございます。しかしながら、御承知のとおりその後インフレと申しますか、貨幣価値に非常に変動があったわけでございまして、それからまた政府における財政難というふうな事情も相重なりまして、昭和三十七年度から事業委託費を導入し、また昭和四十一年度から国庫補助金を導入するということで協会のやりくりを行うに至ったわけでございます。政府といたしましては、このような財政の方式は当初の基金構想ということから若干ずれてまいったわけでございますが、その当時の財政状況としてやむを得なかったものではないかというふうに考えていることでございます。  なお、具体的なこの金額等につきましては、関係課長の方から申し述べます。
  29. 山中秀樹

    ○山中説明員 昭和三十七年、受託事業収入は五百二十万二千円を当初導入しております。国庫補助金収入につきましては、昭和四十一年当初、六千万円の補助金を受けております。  以上でございます。
  30. 永井孝信

    永井委員 私は、この法律制定した当時の経過からいきまして、あえて当時の石田労働大臣の答弁を読み上げたわけでありますが、もう一回言いますよ。この仕事をやってまいります場合におきましては公正でなければいかぬ、そして労働問題について十分な知識と経験を持つ人材を集めなければいかぬ、しかし、それが具体的に実現するためには補助金方式ではだめなんだ、補助金方式でいくとそれがふえたり減ったり、あるいは時の経済状況によって全廃されることもあり得る、そういう不安定な状態では人が集まってこないではないか、このことを当時の石田労働大臣は強く懸念をされて、この基金という制度を設けることの必要性を説かれているわけですね。ところが、昭和三十三年から現在平成元年まで、もう三十年たっているわけですね。三十年間の貨幣価値は一体どうなったか、事業の内容はどのように拡大していったか、あるいはどのように深化していったか、こう考えていったときに、今局長からも課長からも答弁がありましたけれども、当時の十五億円という基金が一銭もふえずに、やむを得ず業務委託費を導入してみたり、あるいは補助金を導入してみたりということでは、法の制定当時の趣旨からいって、当時の石田労働大臣が非常に厳しい認識のもとに提起をされました内容からいって、少しゆがんできたのではないか、こういう心配があるからあえて尋ねているわけでありまして、補助金が悪いということだけじゃなくて、本来は大蔵省ももっと積極的な対応をすべきではなかったか、こういうふうに思うのですが、これはどうでございましょう。
  31. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生が引用をされました石田労働大臣の答弁にもございますように、補助金というのはふえたり減ったり、あるいは全廃されたりするようないろいろ不安定なものである、したがってそのようなことでは優秀な人材を集めていい研究ができないじゃないか、こういうふうなことが骨子であろうかと思うのでございます。その点私どもも、補助金がそのときの状況でふえたり減ったりするということはあくまでも避けねばならぬことであるというふうに考えております。その点、その方式の別はございまするけれども、協会の、あるいはまた新機構の業務運営に支障を来さないように、そのような補助金の増減が恣意的に行われるというふうなことがないように、その点は万般の注意を払ってまいりたいということはここでお答え申し上げておきたいと思います。
  32. 永井孝信

    永井委員 大臣、よろしいですか。総務庁が行政監察しまして、労働協会の広報事業について指摘をしているわけです。この指摘事項はたくさんあるのですが、その中で、「OA時代のパソコン・オフコン入門」という本を例に挙げまして、「最近における出版物の中には、労働問題との関連が低いものも発行されているなど協会設立目的に即応していないおそれのあるものが認められる。」こう言っているわけです。「したがって、労働省は、協会に対し、出版事業については、協会設立目的及び協会に国庫補助金が交付されていることに照らし出版しなければならないものに限定する等の合理化を図るよう指導する必要がある。」とも注文をつけてきているわけです。確かに「OA時代のパソコン・オフコン入門」というような本は必ずしも労働協会の出版すべきものではないのかもしれません。しかし、この行政監察報告の中でも「出版の方針として、協会では、①協会の調査研究の成果、②民間企業では採算のとれにくい労働問題に関する学術書並びに③労使及び国民一般労働問題に関する理解と良識を培うために必要な図書を発行することとしている。」とあるとおりでございます。したがって、この総務庁の指摘をそのまま素直に私は受け取ることはできないのですよ。歯にきぬ着せずに言いますと、政府国民から見れば一つであって、その各省庁にそれぞれの任務、権限からいって縄張りがあるのでございましょうけれども、とにもかくにも行政監察をした以上は何かひっかかっていかなければいかぬというふうに私は受け取れるわけです。これはひとつ労働大臣としてしっかり受けとめておいてもらいたいと思うのであります。  ところで、その労働協会の収入の内訳の推移を見ますと、当初はほとんどが基金運用収入だったわけです。間もなくして事業収入の拡大に迫られてきたわけですね。そして、その後それでも事業運営が困難になってきた。これは基金がふえてこなかったからです。そして、昭和四十年代に入ると国庫補助金が導入された。これらの収入のうち基金運用収入と事業収入とを比較しました場合に、昭和四十四年ごろには事業収入の方が基金運用収入を上回ることになって、昭和六十二年度では基金運用収入は国庫補助金を含む収入全体のわずか六・七%を占めるにすぎなくなってしまっているわけです。事業収入の五分の一程度にまで落ち込んでしまっているわけですね。つまり、この総務庁が指摘しました出版事業の問題点というのは、基金の増額という措置がとられずに、国庫補助金の導入があったものの、労働協会が収益事業に力を入れざるを得ないように追い込まれた結果ではないかと思うのです。そのことの一番根源を見ず、一つ一つの問題、枝葉末梢の問題について行政監察の指摘ということだけで受けとめるわけに私はいかないと思うのです。  しかも、協会法の第二十七条によりますと、労働大臣は毎事業年度労働協会が作成した予算及び事業計画について認可することになっているわけですね。それだけではなくて、この認可に際しては第三十七条により「大蔵大臣と協議しなければならない。」こういうことになっているわけです。したがって、この事業の内容あるいは事業推進ということについても財源措置についても、労働省だけではなくて大蔵省も承知の上の話であって、それどころか、総務庁もこういう事情を知らないはずはないと私は思うのです。基本的には基金運用収入で経費を賄っていくべきものとして設立された労働協会ではありますけれども、その後この法律の趣旨が多少ゆがめられてきた。そのことによって労働協会の自主性、中立性が大きく損なわれてしまったとは思いませんけれども、確かに問題は抱えていると思うのですね。この点については大変遺憾だと思うのでありますが、この際、政府関係当局に私は厳しく反省を促しておきたいと思うわけであります。  さて今回、いわば一般の特殊法人である雇用促進事業団、その附属機関である雇用職業総合研究所との合併を契機にいたしまして国庫補助金が大幅にふえるということになると思うのでございますが、これを契機に労働協会法制定当時の精神あるいは当初基金を設けたときの精神が否定されてしまうのでは、承服ができないわけであります。  そこで、重ねて質問するわけでありますが、新機構への移行に伴い財政基盤に変化が生じるといたしましても、これによって労働協会発足当初の精神が損なわれることのないように引き続き十分配慮がされなければならないと思うのでありますが、その点についてはひとつ大臣から明確にお答えをいただきたいと思うわけであります。
  33. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答えいたします。  先生のおっしゃるとおり、基金運用による運営が一番理想的であることは申すまでもございませんが、実情は補助金の支給ということによって変化を来しております。この機構に対しましても、そういう意味でその運営に必要な経費の一部に充てるために補助金が交付されることになっておりますが、機構の業務内容自体については機構自体において自主的に決定をされまして、政府はこれに不当な干渉をしないということにされております。法第三十五条第三項、先生がおっしゃるとおりでございます。そういう意味で、中立性を損なうことがないようなものにしっかりいたしてまいります。また、御指摘の趣旨は十分に念頭に置きまして、機構の活動を支援してまいりたいと思っております。
  34. 永井孝信

    永井委員 次に、この新機構の今後の事業内容について質問を申し上げたいと思うわけであります。  日本労働協会事業内容を見直し、雇用促進事業雇用職業総合研究所との再編・統合を行うことにより、労働問題に関する総合的調査研究機関とし、あわせて情報提供機能及び国際交流機能の拡充を図るというふうになっているわけですね。その情報機能の拡充についてはどのように考えられているのか、これがまず一つ。私は、この新機構の調査研究の成果や収集した情報というものは、労使関係者は言うまでもなく、広く国民一般に還元すべきものだと思うのでありますが、労働省としては一体どのような形、どのような方法で国民に提供されることを期待しておられるのか、この点について考えを聞きたいと思います。
  35. 岡部晃三

    岡部政府委員 近年の技術革新あるいはまた産業構造変化経済活動国際化あるいはまた労働力高齢化就業形態多様化、さまざまな問題が生じているわけでございます。こういう労働問題を解決していくためには、労使初め国民全体に労働問題に関する的確な理解をちょうだいすることが肝要でございます。したがいまして、新機構に蓄積されました研究成果、情報、資料というふうなものは、広範かつ即時に提供されるべきものであると考えております。  具体的には、各種出版あるいはビデオ、オンラインシステムの構築、多様なメディアを駆使いたしまして、情報提供が積極的に行われますよう、私どもこれに配慮してまいりたいと考えております。
  36. 永井孝信

    永井委員 次に、国際交流についての問題でありますが、国際化進展は非常にテンポが速い、変化の激しさというものは目をみはるものがあります。国際比較の複雑化ということについても、最近の情報の中でいろいろなことが出てまいっておりますが、今日のこの状況からしまして、海外労働事情の調査の拡充はだからこそより必要だと私は思うのでありますけれども、これはどうでございましょうか。  さらに、先ほど触れました総務庁の行政監察報告の中でも、「出版の方針として、協会では、①協会の調査研究の成果、②民間企業では採算のとれにくい労働問題に関する学術書並びに③労使及び国民一般労働問題に関する理解と良識を培うために必要な図書を発行することとしている。」と指摘されているわけですね。私は、この海外労働事情についてはこれこそ採算のとれにくい問題だと思うのです。この海外労働事情について採算をとるようなことが当初から期待できないことは当然のことだと思うのでありますが、だからこそそのことがより求められているのだと思うのですね。そのことを前提にして広く国民に提供できるようにすべきだと私は思うのでありますが、これについて考え方をお聞きしておきたいと思います。
  37. 山中秀樹

    ○山中説明員 近年、経済の国際的な相互依存関係が高まっており、国際化は著しく進展をしております。これに伴いまして、海外労働事情に関する需要というのは一段と高まってきております。新機構におきましては、こうした要望に十分こたえ、海外労働事情を的確に把握するための調査研究を一段と充実させることといたしております。  具体的には、先進国あるいはASEAN諸国等に海外委託調査員というのを委嘱いたしまして海外労働情報などを収集しておりますし、労働問題の研究者あるいは労働関係者を招聘したり派遣したりしておりますし、国際的なシンポジウムの開催などの事業を実施しております。これに基づきまして、現在「海外労働時報」という本を発行しておりますが、そういう海外労働情報の充実あるいはデータベースの活用などを通しまして、労使を初め関係者に迅速かつ的確な情報が提供できるように努力いたしたいと思います。
  38. 永井孝信

    永井委員 国際交流ということを推進するに当たっての問題であります。  私は、今の複雑な世界状況、各国の状況から注意しなければならない面が多いと思うのですね。相手国の実情というのは、それぞれの国によって当然異なっているわけでありまして、とりわけ労使関係というのは非常に微妙な問題を持っているわけでありますから、扱い方をひとつ間違えますと内政干渉のそしりを免れない、こういうことになってまいります。したがって、国際交流、海外援助というものは、積極的な中にも慎重な配慮が必要だと私は思うのですね。それはODAにおける海外協力についても従来から指摘されてきた問題と同じような根源を持っていると思うのでありますが、これについてどう考えておられるか、お考えを聞いておきたいと思います。
  39. 山中秀樹

    ○山中説明員 労働関係者の招聘等につきましては、まず始めます前に、各国の労働事情に関する資料なり情報を十分収集いたしまして、それに従いまして対象地域の実情に詳しい学識経験者あるいは労使関係者、現地の大使館等から意見や事情を聴取いたしまして、先生の御指摘のようにトラブルを招くことのないように慎重に対処していきたいというふうに考えております。また招聘の実施に当たりましては、相手方の要望なども十分聞きまして、この事業が円滑に実施できるように努力いたしたいというふうに考えております。
  40. 永井孝信

    永井委員 海外交流として日本が受け入れる場合のことについても同じことが言えるわけでありますが、特定の団体であるとか特定の個人に偏ることがあってはならぬと思うのであります。当然、幅広くそういう面を配慮しながら交流を進めるように特段の対処を図ってもらいたいと思うのですが、これについていま一度御答弁を願います。
  41. 山中秀樹

    ○山中説明員 労組指導者あるいは研究者の労働関係者招聘の目的の一つには、まさに相互理解を図るということがございます。その意味で、我が国労使を初めとする国内関係者と交流を深めるということが大きな目的の一つであります。その意味で関係各方面と連携を十分密にいたしまして、滞在スケジュールの許す限り、幅広く国内関係者との交流を進めていきたいというふうに考えております。
  42. 永井孝信

    永井委員 大分時間もなくなってまいりましたからあと走りたいと思うのでありますが、職員の雇用労働条件の問題について、私はこの際ぜひとも明確にしておいていただきたいと思うわけであります。  労働協会雇用職業総合研究所と統合するということになるわけでありますから、当然両団体の職員の雇用労働条件に悪影響を及ぼしてはなりませんし、従来からの労働協会の職員と雇用職業総合研究所に勤務していた職員との労働条件上のいろいろな意味での差別があってもいかぬと思うのであります。また、新しくスタートし直して目的も大きくなっていくのですから、それにふさわしいものとして職員の労働条件の維持あるいは向上が当然図られなければならないと思うのであります。せっかくの新機構の事業でありますから、そういうことを裏づけにして初めて私は活性化が図られると思うのであります。この改正案では、雇用について一応承継措置が講じられておりますが、統合の実施に当たっては職員の労働条件面でどのように配慮するお考えか、具体的に示してもらいたいと思います。
  43. 岡部晃三

    岡部政府委員 労働省といたしましては、職員の身分といいますか雇用はもとよりのことでございまして、今回の改正によって賃金あるいは福利厚生等の職員の勤務条件の低下ということがないように機構に対しまして指導をいたしますとともに、必要な予算の確保に努める考えでございます。また、今回の改正に当たりまして、協会それから雇用促進事業団のそれぞれの労働組合、すなわち日本労働協会労働組合それから雇用促進事業労働組合とございますが、それぞれに対しまして、改正の内容等につきましてそれぞれの団体の当局側から説明を行ってきたところでございます。今後とも十分な話し合いが労使でなされるように環境の整備に努めてまいりたいと考えております。
  44. 永井孝信

    永井委員 重ねてお伺いしますが、双方にもそれぞれ労働組合が存在しておりますので、新機構の発足までに十分な時間をかけて労使間で話し合いといいますか交渉といいますか、そういうことをきちっとやって、お互いに、よしこれでもってスタートするんだ、そこに勤めている労働者も一緒に新たな決意で臨めるようにしてもらいたいと思うのですが、どうでございますか。
  45. 岡部晃三

    岡部政府委員 御指摘の趣旨、十分に肝に銘じまして運営に努めてまいりたいと思います。
  46. 永井孝信

    永井委員 内容的に非常に複雑な問題も抱えておりまして、過去の制定当時の経過からいきまして、まだもっと具体的な問題について詰めてみたいところもありますが、短い時間でありますから十分なことになりませんでした。いずれにいたしましても、今大臣を初めとして政府委員の皆さんが答弁されました内容が十分に実践されるように、特に御要望申し上げておきたいと思います。  最後に、大臣に決意をお伺いしたいと思うのでありますが、この法律の当初の目的はもとより、今回の法改正の趣旨からして、日本は今経済大国と言われているわけでありますから、経済大国と言われるにふさわしい労使関係労働条件というものが日本の国内においてはより確保されますように、そしてそのことが二十一世紀に向けてまさに世界に貢献できる日本であれるように、私はそのように政府に一層の努力を求めていきたいと思うのです。  ついでのことに、労働協会法の改正と直接関係はないのですが、労働協会法の改正についての趣旨説明の中にこう触れられております。「労使間に尖鋭な対立の見られた昭和三十年前半期の社会情勢を背景に、労使及び国民一般労働問題に関する理解を培い、近代的な労使関係を確立することを企図して」設立された云々と書いてあります。私は当然そのことはすばらしいことだと思うのであります。日本が戦後四十数年、民主主義という看板のもとに労使関係というものを新たな角度で築いてきた。じゃ今、全体が日本の国内においてそのようになっているだろうかということは、私はこの法案の審議に際してもやはり視点を当ててみなくてはいけないと思うのです。  例えば、この前の当委員会で同僚の池端議員から例のJRの不当労働行為問題について質問がありました。そのJR不当労働行為問題を私があえてもう一回おさらいをいたしますと、地労委でどんどん救済命令が出ている。公平な第三者機関である地労委がどんどん救済命令を出さざるを得ないというのが、今のJRの労使の実態だと私は思っているわけです。どんなに抗弁してみても、そのことを否定できないだろう。そのことの内容について私はここで多くの論争を挑むつもりはありませんけれども、この前のこの委員会で、その実情に照らして労働省がもっともっと強い指導をしてもらいたい、労働大臣がもっと厳しく指導してもらいたいという強い意思から、JRの各社の社長を労働大臣が一堂に集めて、不当労働行為の起きないように、あるいは第三者機関によって出された救済命令が中労委に持っていかれ、あるいは法廷にまた改めて持ち出されして十年、十五年とかかってしまったのでは、いかにすばらしい結論が出たって労働者の不利益をこうむった分については返ることがないのですから、取り返すことができないわけでありますから、そういう意味で第三者機関の権威をより高らしめるためにも、ひとつ労働大臣がそういう第三者機関の裁定については素直にそれをそこで受け入れて問題の処理を図るように指導すべきだ、池端議員からそういう趣旨の要望がございました。  そのときの大臣と、きょうの堀内大臣とは大臣がかわられたわけでありますが、これは大臣がだれにかわろうとそのことは承継されるべきものであって、当時労働大臣は、そのように検討してまいる、そのことを実現できるように検討してまいりたいという答弁をされておりますが、聞くところによると、どうやらまだそういうことがなされていないというようなことであります。そういうことがきちっとされていかないと、いかにこういうものが法律改正されてすばらしい目的を持って取り組まれていこうとしても、足元ではそうなっていないということになってまいりますので、この関係も含めて、大臣からひとつ決意を伺っておきたいと思うわけであります。
  47. 堀内光雄

    堀内国務大臣 JR各社の不当労働行為事件の救済命令につきましては、当局側がこれを不服といたしまして争っているところでありまして、このような係争中の事案について行政がとかく見解を表明することは適当でないと考えております。  ただ、JR各社の事業が円滑に行われるために労使関係の安定が重要なことは当然でありまして、今後とも一般的な行政指導は行ってまいる考えでございますが、いずれにいたしましても、全国にわたり複雑、微妙な問題を抱えておる現状でございまして、時間をかしていただき検討してまいりたいと思っております。
  48. 永井孝信

    永井委員 大臣、それはそれとして、私が求めましたのは、二十一世紀に向けて日本の政府、あるいは国、国民がすべてにおいて世界に貢献できるように、そういうことについてもこの法改正との関連で大臣の決意を伺いたいと私は申し上げた。その決意は伺っておりません。  もう一つは、私は、何回も労働者の権利の問題について当委員会発言をしてまいりました。そのたびに、今大臣が言われたように、例えばこの不当労働行為の問題についていえば、第三者機関にかかっている問題については行政の立場からコメントはできませんという答弁が返ってくるのです。しかし大臣大臣社会労働委員長をされてきた経験を持っていらっしゃるわけですから私はあえて言うのですけれども、不当労働行為事件として提訴されて、それが救済命令として形の上できちっと出てくる、一件や二件ではなくて、同じその企業の中で二十八件も三十件も救済命令が既に出ている、同じようなケースがもう百何十件というふうに救済の申し立てがなされているということは、これはどう考えたって異常でしょう。しかも、その不当労働行為の裁定を求める申請に対して一件もそれを却下したものはないのです。それぞれの地域の地労委が違っておっても、全部それには救済命令が出ているのです。その事実一つ見ても、不当労働行為問題があったことは明らかだし、そういうことがあえて公然と行われてきたことも明らかなんです。  だとすると、そのことに対して単にコメントできないという問題ではなくて、そういうことが起きてきた根源をなくするようにするのが労働省の仕事だと私は思うのです。だから、起きてきた現象だけをとらえて今コメントできないじゃなくて、そういう地労委の救済命令が出たら、十年も十五年もかかって最終的な結論を導くのではなくて、的確に迅速にそのことについて処理ができるように会社側に求めるということも大事なことだし、また、そういうことが起きてこないように日常の労使関係というものをきちっとつくっていくように強力に指導しないと、こんなことはもう三年も五年も僕はやってきておるんだから、三年も五年もやってきて同じことが繰り返されているんだから、そこに労働行政のあえて言うなら怠慢と言わざるを得ないような問題があるわけです。そのことを私はあえて申し上げておるのです。  今の現象だけで答えるのじゃなくて、労働大臣として今度は信任されたわけだから、労働大臣としての決意を私は重ねてお伺いしたいと思います。
  49. 堀内光雄

    堀内国務大臣 非常に重大な時期に労働大臣を拝命をいたしました。一生懸命頑張ってまいりたいと思っておりますが、労働省といたしましては、先ほどの二十一世紀を展望してという御質問に対しまして、社会経済構造の変化及び情報化、国際化というものが非常に急速に進展する激動の時代でございます。これから二十一世紀を展望しつつ全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。また、先生のお話も大いに体しまして、参考といたしまして取り組んでまいりたいと思っております。  また、JR各社の問題につきましては、先ほども申し上げましたように非常に複雑、微妙な問題を抱えておる現状でございますので、時間をかしていただいて検討させていただきたいというふうにお願いを申し上げます。
  50. 永井孝信

    永井委員 時間が来ましたのでこれでおきますが、この前の委員会で我が党の池端議員から提起しました、JRの各社長を呼んで労働省が強く指導してほしいという要望に対して、当時の丹羽労働大臣は、そのような御要望については積極的に受け入れて検討しますという答弁をされているわけです。これはどうなんですか。やる意思がおありなんですか。
  51. 堀内光雄

    堀内国務大臣 その問題につきましても今検討させていただいているところでございまして、注意深く取り組んでまいりたいと思っております。
  52. 永井孝信

    永井委員 以上で質問を終わります。
  53. 丹羽雄哉

  54. 草川昭三

    草川委員 草川であります。  堀内大臣、大変御苦労さまでございますが、法案審議の前に若干リクルート問題についての取り組みについて質問させていただきたいと思います。  就職情報誌の発行などに関する法規制の検討や行政指導などでリクルート社に便宜を計らったということで、元次官、元課長が起訴されたことはもう繰り返し議論になっておるところであります。当時の私どもが知り得た情報等によりますと、労働省の方は、法的な規制ではなくて業界の自主規制あるいは規制の緩和というのは時の流れなのでリクルート事件とは関係がないというようなことを言っておみえになったようであります。また、小粥前労働次官が退任のときにも、職業安定法改正問題については、省内の調査で、法案の中身を殊さらねじ曲げたことはない、こう確信しているというようなことを言っておみえになります。この見解は今でも、新大臣になられても同じ  かどうか、お伺いをしたいと思います。
  55. 堀内光雄

    堀内国務大臣 ただいまの委員からの御質問でございますが、いろいろと経過については問題点もあったようでございますが、殊さらこの働きかけに対して労働省として対応をねじ曲げたようなものはないというのは、現状も同じでございます。
  56. 草川昭三

    草川委員 ということになりますと、例えば本事件は今後法廷の場に移るわけでありますけれども、加藤元次官あるいは鹿野元課長が裁判で今のような趣旨のことを述べた場合に、労働省側としてもし証人喚問の場で今のような見解が求められたとするならば、労働省としては出廷をされることはあるのかないのか、お伺いをしたいと思います。
  57. 若林之矩

    ○若林(之)政府委員 いろいろの面での準備が関係者の間で進められていると存ずるのでございますけれども、まだそういう段階でございまして、御質問のような点について今私ども申し上げる用意はいたしておりません。
  58. 草川昭三

    草川委員 私が聞きたいのは、一つは、これは労働省の名誉にも関することですから、非常に重要な問題です。例えば前次官の御発言に、前次官というよりも小粥さんの話ですけれども、やめられたときの少なくとも見解なり、今の大臣の見解というものは公式の場で御発言なすったわけですから、当然、法廷の場に出席を求められたら労働省としては発言をするのではないか、こう思うのですが、仮定の議論としてもあり得るのかないのか。あった場合にどうするのか、お伺いをしたいと思います。
  59. 若林之矩

    ○若林(之)政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、私ども今回の問題につきましてはいささかも行政の筋を曲げてないと考えておるわけでございますけれども、ただいま先生御指摘の裁判の問題につきましては、これは関係当事者の間で進められることでございまして、今の段階で私どもがそれについてどのようにかかわっているかということにつきましては、申し上げることはちょっと難しいのではないかと存じます。
  60. 草川昭三

    草川委員 先の話ですから、そういう答弁になると思うのでありますけれども……。  その問題は、労働省のいわゆるけじめ問題なのでございますけれども、このリクルート問題に関して、労働省幹部が高級料亭での接待及び安比高原へのゴルフの招待を受けるなどが報道されておるところであります。一方、文部省の幹部の場合も、リクルート問題に関しては、飲食及びゴルフの招待などを受けておるわけでありますけれども、本件のけじめとして本省及び県の教育長などが六人辞職をしております。監督上の責任として戒告二人、厳重処分九人を行っているわけであります。またさらに、服務規律委員会等を設置をいたしまして、再発防止に努めているわけです。これに対して労働省のけじめは、今きちっとした労働省としての態度が出ておるわけでありますけれども、省内のけじめというものについては手ぬるいのではないだろうかという考えがあるのですが、その点労働省としてどういう見解を持っておるのか、お答えを願いたいと思います。
  61. 堀内光雄

    堀内国務大臣 まず最初に、今回の問題によって労働行政への信頼が損なわれましたことは、まことに残念なことでございまして、国民の皆様に対してまことに申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。そして、事件の発生以来事実関係の解明に努力をしてまいったわけでございまして、その結果、遺憾ながら企業との接触において一部に適切を欠く行為があったことは事実でございました。  このために、先ほども先生の方から御指摘をいただいたような関係幹部に対して厳重注意等の措置を行ったところでございます。今回のような問題を二度と起こさないということが、労働省にとって一番の基本になる問題ではないかと考えまして、幹部職員等に対しまして綱紀の粛正についてたびたび指示をいたしております。さらに、綱紀の保持に関する委員会を設置をいたしまして、綱紀の厳正な保持の徹底を行ってまいったところでございます。  同時に、労働行政の信頼を回復するためには、国民のニーズにこたえて積極果敢に労働行政を展開していく、今までの枠にとらわれずに積極的な労働行政を展開していくことが必要であると考えまして、その点に全力を尽くして取り組んでまいりたいと思っております。
  62. 草川昭三

    草川委員 それから、これも当時の三月の中旬の情報でございますけれども、東京地検の特捜部が労働省の強制捜査をした際に、たくさんの押収資料があったわけですけれども、その中にリクルート側の内部文書の写しが見つかったというようなことが三月十三日の新聞で報道されています。いわゆるリクルート社の労働省工作に対する検事の質問と、それに対する供述内容である。こういうのがその内容でありますけれども、強制捜査に備えて情報交換をしていた疑いがあると当時の報道は言っておるわけであります。これはどこの部署にそういうものがあったのか、だれがそういうものを調べていたのか、当時多くの国民の間に大変不信感を持たれたわけであります。この件についてどのような考えを持っておみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  63. 若林之矩

    ○若林(之)政府委員 ただいま先生御指摘のようなことが報道されたことは事実でございまして、私どももその報道を受けましてよく調査をいたしてみましたけれども、私どもそのような事実は承知をいたしておりません。そのような事実はつかんでいないわけでございます。
  64. 草川昭三

    草川委員 では、その問題はさておいて、実は過日、法務省の方は予算委員会でリクルート事件の捜査に対する報告を出しておるわけでありますけれども、就職情報誌に対する法規制問題に限っていえば、職務権限外あるいは職務権限はあっても対価関係がない、そういう言葉があるわけであります。私どもはここでぜひお聞きしたいわけでありますけれども、本件の推移の中で、いわゆる労働省OBの議員の方々の名前が随分報道をされております。いわゆるOBの役割というもの、OBと労働省関係ということをこの際改めてお伺いしたいわけであります。  現在、職務関連行為というのですか、範囲というのを裁判所も検察庁も非常に幅広くとらえているということが言われております。ですから、本件の場合もいわゆる灰色というのでしょうか、疑わしいという言い方を精いっぱい検察の方は言っておるわけでありまして、その灰色は議会で決めてくださいよ、そうすれば私の方はいつでも言うよ、こういうことを言っておられます。ですから、労働省と私どもとの関係も、随分いろいろな方の名前が出たのだけれども、一体OBというものの影響力というのは労働行政にどの程度あるのか、全くないのか。この際のことでございますから、あるのかないのか、明確にお答えを願いたいと思います。
  65. 若林之矩

    ○若林(之)政府委員 私ども行政推進いたしますに際しまして、国会議員の先生方の御指導等を仰ぎながら行政を進めているわけでございまして、それは与野党を問わず、OB、OBじゃないを問わず、広く御指導をいただいて行政推進しているわけでございまして、特別OBというようなことは私どもは考えておりません。
  66. 草川昭三

    草川委員 この問題をやれば議論が深まる一方でありますので、きょうは時間の関係で終わりたいと思いますが、この件については、いわゆる就職情報誌のあり方について法的規制を含めて研究したい、従来と態度が違うわけでございますが、これは労働省としての公式な見解になるのかどうか、最後に大臣にお伺いをしたいと思います。
  67. 堀内光雄

    堀内国務大臣 まだその点についてしっかりと取りまとめて対応を決めているわけではございませんが、そもそものリクルート問題が労働省に襲ってきたスタートがこの就職情報誌でございますので、この問題はやはりもう一度検討し直す必要があるのではないか。その際には、法的規制というものを除外して考えるのではなくて、それも含めて検討してみようということを私が発言をしただけでございます。
  68. 草川昭三

    草川委員 発言をしただけだとおっしゃいますが、これは省としても、一番最初に申し上げましたように、時の流れということからこの就職情報問題というのは随分議論になっておるところでございますが、それはとりようによっては、やはりリクルート社側からの介入ということを是認をした上で反省をしておみえになるというようにもとれるわけでありまして、非常にそこは重要だと思うのですが、もう一度それでいいのかどうか、見解を賜りたいと思います。
  69. 堀内光雄

    堀内国務大臣 そこまで踏み込んだ話ではございませんので、私も新任として労働大臣就任いたしましたので、私の考えとして取り組んでみたいと思っているということでございます。
  70. 草川昭三

    草川委員 じゃ、今の大臣の見解で取り組みたいということを受けとめて、本問題は終わりたい、こう思います。  では、続いて労働協会法の改正でございますけれども、現在の労働協会法の三十五条の三項、これは新しい方も言葉は同じなんでございますが、「協会」と「機構」をかえればいいのですが、「労働大臣が監督する。」という項でありますけれども、「協会の業務の運営の自主性に不当に干渉するものであってはならない。」という項があるわけであります。これは他の法律に比べますと非常に珍しい規定でございまして、いわゆる大臣が監督をするのだけれども、その中立性というのですか、それを侵してはならないという歴史的な経緯があるわけでありますが、その点はどうか、お伺いをしたいと思います。
  71. 岡部晃三

    岡部政府委員 この三十五条三項の規定は、他の特殊法人にない極めてユニークな規定でございます。これといいますのも、昭和三十三年の法制定当初における労働協会というものの位置づけにつきまして非常な議論がございまして、その中立性、公正性というものが強く求められた、そういう議論の結果であると承知いたしております。
  72. 草川昭三

    草川委員 それで、今度の新しい機構になった場合に、いわゆる事業団の特別会計の方から、従来の金の三倍になると思うのでございますが約四十五億ですか、この金がこの機構の中に入るわけでありますけれども、当然、労働省の考え方あるいは影響力というのは資金面からいうと従来より非常に大きいものになるのではないかと思うのですが、その点はどうか、お伺いをしたいと思います。
  73. 岡部晃三

    岡部政府委員 機構に対しまして、その運営に要する経費としての補助金が交付されるわけでございますが、しかしながらこれにつきましては、機構の業務内容自体につきましては機構自身において自主的に決定し、運営をされるということで、私ども一貫してその考え方を貫いてまいりたいと考えております。政府は、これに不当に干渉はしないという法律の規定そのままを守ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。これを担保するもろもろの手段と申しますか仕組み、例えば評議員会の制度でございますとか、あるいは役員への有識者の登用あるいは政党役員の排除等々の仕組みも維持されるわけでございまして、今回の改正によって中立性が損なわれることのないように万般の意を用いてまいりたいと思っております。
  74. 草川昭三

    草川委員 具体的に国際交流の事業についてお伺いしたいと思うのですけれども、従来も労働協会としては国際交流をやっておるわけでありますが、たまたま今度労働組合の方も連合という大きな組織ができ、財団をつくりまして、たしか名前は国際労働財団でございますか、そのような名前で国際交流を大いにやりたい、こう言っておみえになるようでありますが、その労働組合の方、連合の方がつくった財団と本件の国際交流事業の関連はどういうことになるのか、お伺いします。
  75. 岡部晃三

    岡部政府委員 国際交流事業、これは非常に各般にわたりまして、また実務的な手足の要る事業でございます。今回の国際交流事業、機構において行われるべき事業、これを公益法人であります財団法人国際労働財団に一部委託をすることとしているわけでございます。これは事業実施に当たりましては、機構に設置しております学識経験者それから政労使で構成いたします企画会議等で事業計画が練られまして、これが委託されるわけでございます。この公正性、中立性の確保ということにつきましては、この点につきましても十分に配慮されることであろうと考えております。
  76. 草川昭三

    草川委員 それで、その委託をされる予算はどの程度のことを考えておみえになりますか。
  77. 山中秀樹

    ○山中説明員 現在のところ、約二億二千万余を予定いたしております。
  78. 草川昭三

    草川委員 かつて、これは昭和六十年時代だと思うのですけれども、労働協会も国際交流をやったわけでありますし、労働組合の方も国際交流をやっておるわけでありますが、特にアメリカの若手の労働組合の指導者、特にこの場合はローカルの方々を招待をしよう、こういうことで鉄鋼だとか電機だとか繊維等産別のローカルの若手の招待を計画をしたことがあります。     〔委員長退席野呂委員長代理着席〕 たしか二週間なり三週間、一チーム五、六人で計画をしたことがあるわけでありますけれども、当初協会の性格について相手側から疑問が投げられまして、いわゆる日米貿易摩擦のその摩擦を解消するための政府のあめではないだろうかというような議論が随分あったやに私どもは承知をしておるわけであります。そういう経験があることを踏まえて、労働組合の交流計画というのを連合という組織が中心になった財団に委任をしたのか、そこらあたりの考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  79. 岡部晃三

    岡部政府委員 この時代は国際化の時代でございます。各国々におきます労働問題についての経験交流は一層必要な時代でございます。これは私ども、具体的に御指摘された摩擦問題というふうな問題が出る前からこの事業は発足しているわけでございまして、各国々における労組指導者の交流事業ということは、それはそのまま文字どおり経験交流ということが中心をなすものと考えております。
  80. 草川昭三

    草川委員 ですから、相手側の労働組合がどういう考え方を持っておるかということなんだけれども、招待者が労働組合のまとまりである連合なのか、労働協会なのか、あるいは労働協会というのは政府の予算が入る事業活動なのか、いろいろな受けとめ方によって、今私が申し上げましたように変に勘ぐられると、貿易摩擦の頭をなぜるための交流ではないだろうかというふうに片をつけられるとするならば、せっかくの交流計画というのは意味がないわけでありますので、そのあたりの疑問をどうクリアするか、どう相手側に説明するのか、それを聞かしていただきたい、こう言っておるわけです。
  81. 岡部晃三

    岡部政府委員 この国際交流事業は貿易摩擦国、相手国との交流も含まれておりますが、しかし非常に多くの部分は後進国と申しますか、開発途上国の労組交流でございます。したがいまして、交流事業の全体をお眺めいただければそのようなことはおそれはないと申しますか、そのような考え方に基づくものではないということは各国にも御理解をいただけるものと考えております。
  82. 草川昭三

    草川委員 私は、それについてはかなり疑問があるのです。  例えばフィリピンの例を挙げてみたいと思うのです。フィリピンの、特にミンダナオ島を中心としてバナナをたくさん生産している労働者というのは大変大きな数を占めております。フィリピンのバナナ労働者労働条件というのは非常に劣悪でございまして、私どもも繰り返しこの問題を取り上げ、過日の決算委員会でもバナナ労働者労働災害の問題について発言をしたことがありますけれども、その多くの影響力というのは実は日本の商社のバナナの買い付け、その意図に従って大きな地主がバナナを育成している。そこに劣悪な労働条件の中でバナナ労働者が働く。彼らの要求というのは、手袋をよこせ、ゴム長靴が欲しい、こういう非常に初歩的な要求をしておるわけです。彼らはバナナ労働者だけの労働組合をつくり、いろいろな要求をしておりますけれども、三年ほど前に私のところに代表者がやってきました。私の方も公明新聞という新聞があるので、その新聞にあなたの顔写真を載せてほしいと言ったら、実は顔写真が写ると我々は大変な迫害を受けるからやめてくれというような、そういう状況の中でフィリピンの労働組合の委員長が来ておるわけです。その委員長というのは、残念ですけれども昨年虐殺をされました。  そういうような状況の労働組合と日本は一番交流をしなければいかぬけれども、そういうお話を労働省にお話をしても、全然フィリピンのバナナ労働者というのは対象外なのです。一応非常に大きな、もう社会的に安定している労働組合との交流なので、今日本が一番必要なのは、日本が大量のバナナを買う、その生産に従事をしている劣悪なバナナの労働者に対して我々が援助をするとか労働条件の引き上げをする、こういう行動によって初めて日本の労働行政というのは、今お話がありました低開発国の方々に評価されるわけでしょう。そういうところに金を向けるべきではないだろうか。あるいは労働省の中の労働行政で、安全衛生の方の行政があるわけですけれども、安全衛生の行政がそういうところにももっとノーハウなり手を差し伸べていく必要があるのではないだろうか。ここに私はこの新しい機構の仕事のあり方もあると思うのです。  日本の労使関係は、今非常に安定しておりますね。ですから、その安定した姿だけを外国の労使関係に置きかえてみても無理だと思うのです。だから、非常に初歩的な労使関係の対立の激しいところに対して、我々は一体どういうことができるのかどうか、これを労働省は真剣に考えていただかないと、せっかくの機構の国際交流というのも生きてこないのではないか、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  83. 岡部晃三

    岡部政府委員 ただいまの先生の御意見、非常に示唆に富む御助言と私ども受けとめて、これをどのようにこなしていけるか、これから検討を進めてまいりたいと思います。
  84. 草川昭三

    草川委員 もう時間がありませんので……。要するに、人手不足と外国人労働の問題を少しやりたいのですが、概要だけ労働省の方からお聞かせ願いたいのです。  今、人手不足の現状というのは大変な状況になっております。これは中小企業だけではなくて、大企業にも及んでおるわけでありますけれども、景気が一体どこまで続くかどうか、こういう展望もありますけれども、とりあえず大変な不足をしている職業に対して、労働省はどのような職業訓練を与えてそれを補充するのか、あるいは全国的に見ると、地域的な人手不足というアンバランスがあるわけですが、いわゆるそういうミスマッチというものをどのように解決をしていくのか、その点について労働省の見解を賜りたい、こう思います。
  85. 清水傳雄

    ○清水(傅)政府委員 非常に大変な人手不足感の広がりを見せてきておるわけでございます。私どもこれに対する対策といたしましては、人手不足感の広がりの中でも高齢者問題あるいは地域問題なり、今御指摘のような大きなミスマッチ現象を伴いながらの逼迫感の広がり、こういう状況であるわけでございます。  基本は、やはり需給調整についての機能をさらに格段に強化をしていくということが、まず一番べーシックな対策として考えていかなければならないことだというふうに考えておりまして、そういった意味合いで安定所の雇用総合情報システム、これが今大変に効果を発揮しつつございますが、これをベースにしつつマクロ的な情報、ミクロ的な情報、こうしたものを積極的に提供するということもやりながら、かつ地域地域の地場的な企業あるいは事業主団体、そうしたところを対象にいたしまして、いわゆる雇用管理の改善についての自主的な取り組みを促進しつつ、そうしたところも対応できるような新たな事業平成元年度から実施することにいたしておりまして、そういう手法等を我々の雇用対策分野で講じつつ対応してまいりたいというふうに考えております。
  86. 草川昭三

    草川委員 時間が来たようなので、これは私の最後の要望ですけれども、労働省全体としての方針は今の清水局長の方針をぜひ進めていただきたいと思うのでございますが、実際上の現場では手っ取り早く外国人労働で補っていこうということになっておりまして、外国人の不法労働というのがどんどんふえてきております。  過日、外国人労働の問題についての中間報告も出ておりますけれども、ひとつ長期展望をしっかりと腰を据えて考えていきませんと――今なぜ外国人労働なり不法労働が多くなってきているかと言えば、結局賃金が安いということでしょう。手っ取り早く彼らに汚い仕事を与えることができるということから、非常に滞留というのですか不法残留の不法労働というのがふえてきておる。しかし、もしこれを何らかの形で現状追認ということで認めるとするならば、やがて彼らは同一労働、同一賃金でもっと賃金を高くしろという要求が出てきます。あるいは日本の安定した労使関係ではなくて、海外の非常に厳しい労働組合、ユニオンに入って使用者側に労働条件の要求というのが出てくる可能性があります。日本の国内において労働問題というのが非常に新しい事態というのが来るということは目の前にわかっておるわけですよ。  だから、今非常に不足している労働力に外国人労働が安易に入っておるということを使用者側あるいは役所も認めておるということは、将来大変なことになりますよ、いざ帰ってくださいというときには帰らないような状況が生まれますよというようなことも含めて、私どもは対応を立てていかなければいけない、ぜひ真剣に外国人労働の問題については対応を立てていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたい、こう思います。どうもありがとうございました。
  87. 野呂昭彦

    野呂委員長代理 田中慶秋君。
  88. 田中慶秋

    田中(慶)委員 このたびの日本労働協会法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。  まず、日本労働協会雇用職業総合研究所を統合するという一つの積極的な理由、行革の考え方であるとかいろいろなことを言われておりますし、この辺について冒頭に見解をお伺いしたいと思います。
  89. 岡部晃三

    岡部政府委員 現在、労働省関係の人文系の研究機関といたしまして、労使関係問題につきましては日本労働協会がございますし、また雇用職業問題につきましては雇用職業総合研究所がありまして、それぞれ研究活動を行ってきたわけでございます。なお、このほかに職業訓練関係の研究機構もございましたが、これは雇用職業総合研究所に昨年来吸収されているわけでございます。  最近、労働をめぐっての経済社会環境というものが非常に変わってきているわけでございまして、大幅な構造変革があると言っても過言ではないわけでございます。産業構造が変わり、技術革新が進み、また経済活動国際化の時代でございます。一方において、高齢化あるいは就業形態変化、さまざまの大幅な構造変化が進んでいるわけでございますが、この中で生じる多様な労働問題を総合的に研究する必要を私ども常日ごろ痛感をしておったわけでございます。この両団体の統合によりまして、さらにまた新しい国際交流につきましての新分野をつけ加える、拡大するというふうな今日的なニーズにこたえるということが、この両研究所を統合する積極的な理由と私ども考えているところでございます。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  90. 田中慶秋

    田中(慶)委員 基本的な考え方を聞かせていただきましたけれども、説明によりますと、機構が一つになっても設置される場所が従来どおり二つになっている、こういう話であります。基本的に二つの場所で一元的な運営というのは非常に難しくなってくるのではないかな、こんなふうにも考えておりますし、しかも雇用職業総合研究所の新庁舎は一昨年の四月にオープンしたばかりであります。当時、今回のような統合の方向性は全くなかったのかどうか。二つに分かれた機構の一元的な運営というのはよほど努力や配慮をしない限り非常に危険性がある、こんなふうに感じられますけれども、この辺はどうお考えになっているのか。
  91. 岡部晃三

    岡部政府委員 現在の事務所の所在でございますが、日本労働協会は港区の芝にございます。そしてまた雇用職業総合研究所は、御指摘のように練馬区の石神井にあるということで、別々の場所にあるわけでございます。この二つの統合話と申しますのは、これは約五年ぐらい前から私どもいろいろと検討を進めておった歴史的な経緯があるわけでございます。しかしながら、なかなかその実現が難しい。理屈の上では統合するのはいいけれども、財政面においてなかなか困難な問題があるというふうなこともございまして、具体的な案ができましたのがつい一昨年というような段階でございます。  そこで、この二つの機構が統合いたしまして、これはやはり一カ所に集約することが望ましいことは御指摘のとおりでございます。しかしながら、現在のところいずれにも片寄せるということはスペース上困難な実情でございます。当面この芝と上石神井の二つの事務所体制で発足せざるを得ないわけでございますが、できるだけ早い時期にこの事務所の一本化につきましては実現できるように努力をしてまいりたいというふうに考えますし、またそれまでの間も機構の一元的な運営が図られますように、連絡体制の整備につきましては万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  92. 田中慶秋

    田中(慶)委員 距離的にも相当離れているわけだし、よほど運営も配慮しなければいけない。行政改革の意思からすると、逆に今回のただ単純に統一するということは相当問題があるだろうと思いますが、これから今お話があったように努力されるということでありますし、一元化に向けて頑張るということであります。そういう点ではより一層ロスのないように努力していただきたい、こんなふうに要請しておきたいと思います。  次に、今回の改正で、雇用促進事業団の雇用職業総合研究所を新機構へ引き継ぐことが眼目の一つになっているわけであります。  これに関連して、労働力の需給あるいは最近の好景気を反映して、企業の人材確保が困難になってきている現状にかんがみ、ミスマッチ問題というものが大変社会的に大きな問題になっておりますが、現状これにどのような認識をし、これにどのように対応されているのか、大臣にお伺いしたいと思います。
  93. 堀内光雄

    堀内国務大臣 最近の労働力需給の状況を見ますと、景気拡大の局面の中で、有効求人倍率は一倍を超えるとともに、企業の人手不足感は非常に広がりを見せてまいっております。しかしながら、先生おっしゃいましたとおり、特定の地域や中高年齢層の改善というのはなお緩やかでありまして、地域間あるいは年齢間の格差、いわゆるミスマッチ、これが依然大きい状況にございます。  こうした状況の中で労働力不足を解消するために、いわゆる労働力需給の不適合を解消するということが肝要であると考えております。そのために、公共職業安定所をオンラインで結ぶ総合的雇用情報システムを活用した雇用情報の積極的な提供、きめ細かな職業相談の実施等によりまして、職業紹介機能の強化を図ってまいりたいと思っています。また、労働条件の向上等によりまして、魅力のある職場とするように、企業の雇用管理の改善というものに対する指導及び援助の充実強化、こういうものも図ってまいりたいと思っています。また、不足している技術者の養成等、職業訓練体制を整備すること、こういうような問題について努力をしてまいりたいと考えております。
  94. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ積極的に取り組んでいただきたい、こんなふうに思っております。特にミスマッチの解消のためには、政府の積極的な対策が求められていることはもちろんでありますけれども、今度の新機構においてもこの問題を重要な研究課題として取り組むことが望まれているわけであります。その際には、雇用職業総合研究所で行ってきた職業研究の手法だけにとどまらず、能力開発労働条件の問題等多面的な総合的研究が必要であろう、こういう形が新機構に求められている重要な役割だ、こんなふうに思っております。  特に個別的、専門的な研究を幅広く行うだけではなくして、現状どのような形を今の社会に望まれているのか。例えばミスマッチの問題についてもさまざまな分野の研究者が知恵を寄せ合ってその解決をされることが望ましいであろうということを言われているわけでありますので、これらに対する今回の新体制について、その意気込み等について考え方を聞かせていただきたいと思います。
  95. 岡部晃三

    岡部政府委員 新機構におきましては、労使関係労働経済雇用管理、労働条件、能力開発労働問題に関する大半の領域をカバーする研究体制をしきたいと考えているわけでございます。御指摘のミスマッチ問題、これは各般の問題が絡むわけでございますが、多様な問題に対しまして機動的に対処するようにいたしてまいりたいと思っております。  この各研究員は、一定のセクションにそれぞれ配置されるわけでございます。それぞれの担当分野ごとに専門的な研究を掘り下げていただくということでございますが、しかしそれだけではなくて、各セクションの間でプロジェクトチームなどをつくっていただきまして、外部の研究者も含めまして、各般のテーマ、先生御指摘のようなテーマにつきましても学際的な研究も進めるというふうな、縦横十文字と申しますか、さまざまな形におきまして研究を深めていただきたいと期待をしているところでございます。
  96. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、今回の改正は研究体制の強化に主眼を置かれているようでありますけれども、特に中小企業の労務管理改善労使関係の安定を図る上で、従来まで日本労働協会で行ってまいりました労働教育の重要性というものは、大変大きな役割を果たしてきた、こんなふうに思っております。新機構において、この労働教育にかかる取り組みをどのように考えられているのか、お伺いをしたいと思います。
  97. 山中秀樹

    ○山中説明員 ただいま先生御指摘のとおり、労働教育については、本協会が、労使及び国民一般労働問題に関する正しい知識を身につけ、合理的な労使関係の形成を促進することを目的として設置されております。その意味で労働教育について従来から力を注いできたわけですが、御指摘のとおり中小零細企業における労使関係のルールが確立してないことなどによりまして、トラブルも依然見受けられております。その意味で、労働教育事業の意義は御指摘のとおり薄れていないと認識いたしております。  しかしながら、現在、都道府県の労働教育講座あるいは民間の労働教育専門団体も非常に成長してきております。そういうことからいたしまして、これらの団体に対して適切な指導、援助を行うという方向で、労働教育をより効率的、かつ効果的に実施していきたいと考えております。  そういうことから、新機構におきましては、都道府県やこれら労働教育専門団体が行います労働教育について援助を行っていくということで、その援助について、例えば援助金の大幅アップとか単価アップなどを図って、むしろこれらの専門団体の中で新機構が中核となるような形での労働教育ネットワークを確立していくという方向で対応いたしたいと考えております。
  98. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ、余り重複しないで、それぞれ役割分担を明確にして、努力をしていただきたいと思います。  最近、御承知のように円高基調を背景として、中小企業も含めて我が国の企業の海外進出が盛んになっているわけであります。現地での労務管理上のトラブルを起こす事例も少なくありません。こうした問題解決には、日本労働協会から新機構に引き継がれ、研究成果あるいは情報、それぞれ有効的な活用をしていただけるものと思いますけれども、これらについての考え方を明らかにしていただきたいと思います。  もう一つは、国際交流活動が今後より一層活発化されることが予想されるわけであります。今国会の改正においても、新たな研究者あるいは知識者の招聘等々がうたわれておりますし、新機構における労働分野での国際交流を進める上でお互いの役割をどのように果たそうとしているのか、これについてお伺いしたいと思います。
  99. 山中秀樹

    ○山中説明員 ただいま御指摘がございましたように、最近、海外へ進出していく企業が非常に増加いたしております。これに伴いまして労働問題のトラブルも発生していると私ども聞いております。このトラブルの生ずる原因は、相手国の労働法制なり労働慣行などを十分理解していないことから生じているのじゃないかと考えられます。そういう意味で、海外労働に関する研究、最近の情報等を広く関係者に提供していくことが極めて重要であると私どもも認識しております。そういうことからいいまして、今後、新機構におきましては、専門的な立場から海外労働に関する研究を深めまして、海外労働情報の収集、整理を進め、迅速かつ的確な情報が提供できるように努力いたしたいと思っておりますし、労働分野での新機構が今後国際交流の面で果たす役割は非常に重要であると私ども認識しております。そういう意味で、国際社会において日本がそれにふさわしい貢献ができるように努力いたしてまいりたいと考えております。
  100. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、労働問題というのはこれからも日本の重要な政策課題として取り組んでいかなければいけませんし、あるいはまた日本が今日世界の中におけるGNPナンバーワンとかナンバーツーという、それもこの労働問題と切り離して考えるわけにはいかないわけでありますから、そういう点でより積極的にこういう問題を幅広く検討されることをぜひ望んでおきたいと思います。  時間がありませんが、最後になりますけれども、新機構を十分活用する意味で、その機能が十二分に発揮するにはどうしても財政面の問題が出てくると思います。そういう点では、財政面において強力な支援が当然――盛りだくさんの今新機構に与えられている重要な役割あるいは期待ということを考えてまいりますと、これらの問題についても大変重要だと思いますので、これについては労働大臣からその決意を述べていただきたいと思います。
  101. 堀内光雄

    堀内国務大臣 私といたしましては、社会経済構造の変化及び情報化、国際化というものが急速に進展する激動の時代にあって、新機構が二十一世紀を展望しつつ、調査研究、情報提供あるいは国際交流、こういうことを行うことは非常に重要なことであると思っております。時代の要請にこたえていくことができますように、必要な援助に努めてまいる所存でございます。
  102. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先ほど大臣の所信でも述べられているように、労働問題というのは時間短縮の問題、あるいはこれからの定年制の問題、あるいは安全衛生の問題、さらには国際化という形の中での多くの問題を抱えるわけでありますから、こういう問題を含めて、これからの大臣の大いなる活躍を期待し、私の質問を終わらしていただきます。
  103. 丹羽雄哉

  104. 児玉健次

    児玉委員 今度の日本労働協会法改正案について、まず質問します。  日本労働協会雇用職業総合研究所を統合して日本労働研究機構とするという内容ですが、ここ数年の日本労働協会活動を見てみると、一九八一年から八七年までの間、調査テーマ三十九のうち十七テーマ、四三・五%ですが、それが受託研究という形になっております。調査研究予算は、一九七九年が千七百四十万円、全体の予算の一九%。それが一九八七年には二千四十八万円、絶対額は若干上がっていますが、予算全体に占める比率は下五%、予算における比率が激減している。そして、常勤の研究員は七六年から定数一名。ところが八五、八六の両年は欠員でゼロであった。今回の法改正でこのような状況がどうなるのか、まず伺います。
  105. 山中秀樹

    ○山中説明員 御指摘のように、協会が財政面から調査研究活動を必ずしも十分行ってきたとは言いがたいと私どもも考えております。  今回の改正におきましては、事業の必要性に応じまして補助金額の確保に努めました。その結果、平成二年一月から発足で三カ月予算でございますが、調査研究費といたしましては一億八千万円程度の金額を確保いたしております。そういう意味で、財政面から調査研究事業が格段に飛躍するよう措置いたしておりますし、また研究員の人的な面におきましても、従来とは異なりまして、新機構では常勤の研究員七十二名、非常勤研究員七名ということで充実を図ることといたしております。
  106. 児玉健次

    児玉委員 今後の事業について、例示的に述べたいと思うのです。もちろん、研究調査活動の自主性は確保されなければいけない。けさからの議論にもありましたけれども、行政的な支配、監督は厳しく排すべきであると私たちは考えております。  それを前提にした上で、現在深刻な社会問題になっている、例えば過労死の問題についてどのように機構が接近していくのかというのが一つの問題になるだろうと思います。過密労働、残業過多、深夜労働、不規則勤務、単身赴任、大変いびつな労使関係等、これらの要因が複合的に重なって労働者を抑圧し、四十代、五十代の働き盛りをさようならを告げるいとまもなく亡くしていく、こういう問題が今大きくクローズアップされております。一九八八年十月にストレス症患者労災研究会は、各地の弁護士、医師等と連携して、全国七地域に過労死一一〇番を開設し、そこに寄せられている相談件数は既に一千件に達しようとしています。  そこで、これは私の期待なんですが、過労死の問題は、従来ともすれば医学的な側面からだけそこにアプローチするという傾向がありましたが、社会科学の方法を全面的に駆使して原因を探求していく、全体として予防措置を見出していく、こういった努力については国民ひとしく望んでいるところだ、文字どおり国民合意がその分野では完全に成立するだろうと思うのです。そういったところで日本労働研究機構が総合的、積極的な役割を果たすべきだと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  107. 岡部晃三

    岡部政府委員 過労死の問題は、先生も御指摘のとおり非常に医学的な問題でもございますので、まずもってこれは労働衛生研究所あるいはまた労働省の産業医科大学あたりの医学的な所見ということが非常に中心的な研究の場であろうかと存ずるのでございますが、この問題は非常に重要な問題でございますので、労働省としてもその調査研究は喫緊の課題であるとは考えているわけでございます。  この雇用職業総合研究所は、人文系の研究所でございますが、従来、ストレス問題、職務の満足度の問題についての研究を昭和六十三年に実施をいたしまして、現在そのとりまとめ中でございます。新機構におきましても、そのような角度からの研究が一層進められまして、その成果が過労死の問題解決に寄与するということを期待しているわけでございます。いずれにいたしましても、新機構は労働関係の総合的な調査研究機関、人文系でございますが、そういう意味合いでございますので、従来扱うことが難しかったいろいろな分野につきましても総合的なアプローチができるような、そういうふうな積極的な取り組みの方向に向けまして活動を支援してまいりたいと考えております。
  108. 児玉健次

    児玉委員 次に、五月二十三日、この委員会質疑をいたしました労働委員会が果たすべき役割について、この機会にお伺いいたしたいと思います。  先日の論議の中で、労働委員会が果たすべき役割の一つに不当労働行為の迅速な救済がある、昭和二十四年の法改正の眼目が迅速な原状回復主義にあった、これらの点が明らかにされました。まず伺いたいのは、北海道における国労、全勤労等組合別の不採用者数、不採用率、これはJR発足時、あえて言えば二月の時点ですが、それについて答えていただきたいと思います。
  109. 岡部晃三

    岡部政府委員 北海道の旧国鉄職員のうち、管理職を除きまして昭和六十二年四月一日に清算事業団に移行した職員の数は四千六十六名というふうに清算事業団から聞いております。この中には、JR各社に希望しても採用されなかった者、それからそもそもJR各社に就職を希望しなかった、その他の民間への移行を希望された方、さまざまな方が含まれていると存ずるのでございます。  なお、お尋ねの不採用率と申しますか、組合別の不採用者数につきましては、私ども承知いたしておりません。
  110. 児玉健次

    児玉委員 承知していないのは、全く不十分だと思います。例えばここに北海道地労委のこの案件についての命令書がありますが、その中で明白に、不採用率について言えば国労は五二・〇%、全勤労が七一・九%、鉄産労が二〇・九%、鉄道労連は〇・六%、この率については地労委の審議の中で双方争いがなかったはずなんですけれども、それを承知していないというのはどういうことなんでしょうか。
  111. 岡部晃三

    岡部政府委員 その地労委の数字につきましては、地労委の審問の中でそのような資料が労働側から提出されまして、記憶にとどめられておるということは承知いたしておるわけでございますが、清算事業団からの正式の報告を私どもいまだ受け取っておりません。
  112. 児玉健次

    児玉委員 今言った不採用の実態について、どのように認識されておりますか。
  113. 岡部晃三

    岡部政府委員 JRが発足する際におきまして、設立委員が国鉄が作成した名簿によりまして新会社の採用を通告したわけでございます。その際に、旧国鉄が行いました名簿作成の作業の内容にかかわるお尋ねでございますが、それはもろもろの適格性という観点からこの名簿が作成される建前になっておるというふうに承知いたしております。
  114. 児玉健次

    児玉委員 私が聞いているのは、そのことでないのです。その論議は別の機会にやればいいのです。国鉄労働組合については採用を希望した部分の中で四八%しか採用されていない。全勤労については不採用率が七一・九%ですから、採用された数は百人のうちの三十人を切る。これは一つの事実です。  先日、私は百七国会における平井労働大臣の答弁を改めて紹介しました。「特定の労働組合の組合員であるとか、また労働組合の正当な行為をしたこと等を理由に新会社への採用を拒否されるというようなことは絶対にあってはならぬと考えております」。当時、大臣は明言されている。ところがふたをあけてみると、ある組合についてはほとんどの希望者が採用され、他の組合については多数の労働者が採用されてない。あってはならないことがあったのじゃないですか。  そこで、労働省に聞きたいのですが、今中労委に申し立てがされておりますが、北海道旅客鉄道・日本貨物鉄道不当労働行為事件で、JR北海道と日本貨物鉄道が中労委に提出した申し立て補充書の内容において不当労働行為の存在の有無について争うものとなっているかどうか、そのことについてお尋ねします。
  115. 岡部晃三

    岡部政府委員 その案件につきましては、中身について争っているとは聞いておりません。
  116. 児玉健次

    児玉委員 まさにそのとおりなんです。  私は、ここに昭和六十三年三月十一日、北海道議会の本会議において北海道地労委の二宮会長が行った発言を持ってまいりました。そこで何と言っているか。「現在審問中の国鉄労働組合からの申し立て事件につきましては、これまで、調査を八回、審問を九回行いましたが、北海道旅客鉄道株式会社など、非申立人側は、証人につきましても、呼び出しに応じておりません。」そう述べて、「遺憾なことと存じております。」こう北海道議会で地労委の会長が述べております。  それから、ここに労働省に所属する中央労働委員会の第千五十五回総会議事録、ことしの四月十九日のものですが、それを私は持っておりますが、この総会において中労委の平澤委員は、   JR関係事件が多数係属しているが、私の参与しているJR西日本事件においては、JR当局は地労委段階では一切審問等に出席していないにもかかわらず、中労委段階では証人を多数申請して、争う姿勢をみせている。本来なら、地労委での審査において、証拠の提出、証人の出頭等により争点を明確化して地労委の判断を仰ぎ、中労委では、初審命令のうち不服のある部分に絞って争うべきであり、JR西日本の現在の対応は、労働委員会制度を軽視するものと判断せざるを得ない。このように述べております。  私はそこで言いたいのですが、会社は初審において、審理の途中から審理廷への出席を拒否する、そして初審の職権発動による立証の促進に対してもこれを拒否してきた。ところが、中労委の段階になると申立補充書を出し、先ほど労働省がお述べになったように、そこでは不当労働行為の事実の有無については一切争う内容となっていない。そして証人尋問等を申請している。これらは中労委の命令を遅延させることのみを目的としたものであって、初審での対応からして、たとえ審級を異にしたからといって、このような会社の態度は明白な信義則違反ではないかと考えますが、労働省の見解を聞きます。
  117. 岡部晃三

    岡部政府委員 その内容の価値判断と申しますか論評は避けたいと思いますが、客観的な事実だけ私把握している限りで申し述べさせていただきますならば、この問題につきまして国鉄改革法二十三条をめぐる法律問題重点の地労委段階における争い方、それからこの不当労働行為事案そのものについての争い方、いろいろ訴訟技術上のやり方に変化があったというふうにも聞いているところでございます。  いずれにいたしましても労働省におきましては、委員会が求めるすべての事柄につきまして関係当事者がそれぞれ十分な主張を述べるということは、必要な委員会維持の方法であろうかと思います。
  118. 児玉健次

    児玉委員 私が言っているのは、こういう争いにおいて係争中であるという点については、労働省も私も双方共通の認識を持っております。先日も私は、争うのであれば君子の争いをやるべきだというふうに述べた。初審の段階の対応と中労委の対応が全く違う。これは裁判における一つのルールである禁反言の原則に反しておる。そして、初審段階で立証の権利を全面的に放棄しておいて、審級を異にしたからといってその行使を要求する。明らかに信義則違反ではないか。それが労働委員会の舞台で極めて公然と行われている。この事態についてどう思うのか聞いているのです。そのことについてお答えいただきたい。
  119. 岡部晃三

    岡部政府委員 その点につきまして、私、客観的な訴訟技術上の問題があるかもしれないということをコメントさせていただくにとどめまして、そのやり方の価値判断ということにつきましては論評を避けたいというふうに考える次第でございます。
  120. 児玉健次

    児玉委員 価値判断といいますか、係争中だから云々というように先ほどから言われるのですけれども、この六月九日、北海道の札幌で道国鉄職員再就職促進連絡会議が行われました。そこに参加された労働省の幹部は、質問に答える形で「国鉄職員をJRに復帰させる地労委の救済命令について「行政として予測できず一般的には」という前提で、「中労委では平均的には千日前後かかり、さらに裁判所に行った場合は再び千数百日かかる。不当労働行為事件はこのくらいの日数がかかる」」そう言って民間企業への再就職を促進する、こういうふうに発言をされている。係争中と言われますが、これは明らかに係争中の事案でJRにくみする発言ではないのか。どうですか。
  121. 岡部晃三

    岡部政府委員 その職員は、国鉄清算事業団職員の雇用促進することを職務としている国鉄対策室の職員であろうと存ずるのでございますが、中労委は最近の所要日数は平均千五十日くらいでございまして、裁判所も平均千日を超えるというふうな状況の中におきまして、雇用促進を切に願う余りそういうふうな客観的な数字まで挙げたと思うのでございますが、真意は、できるだけいい職場を紹介するので御就職いただきたい、こういう熱意のあらわれというふうにひとつ御理解賜りたいと存じます。
  122. 児玉健次

    児玉委員 そろそろ時間ですから、私は端的に申したいのですが、国鉄が分割・民営化されたときの法の解釈をめぐっての争いを中労委で会社がやるのはそれは自由でしょう。しかし、そのとき前提になるべきものは、初審の地労委命令を遵守する。それがたとえ行政義務であっても一定の公法上の義務を課していることは明白なんですから、行われている不当労働行為を速やかにもとに返した上で争えばいいのですよ、なぜそうしないのか。そのことについて労働省は、労働委員会の設置者として指導性発揮の義務があると私は思うのです。  この点で最後に堀内労働大臣に、労働委員会社会的な役割を十分に発揚させる、この点で大臣がどのような決意を持っていらっしゃるのか、承りたいと思います。
  123. 堀内光雄

    堀内国務大臣 労働委員会は、不当労働行為の救済機関として、これまでも我が国労使関係安定化に重要な役割を果たしてまいっております。ただ、地方労働委員会の命令に不服のある当事者は再審査やあるいは裁判により争い得ることも制度上認めているところでございまして、これらの制度を通じまして問題の解決が図られることを期待いたしておるわけでございます。
  124. 児玉健次

    児玉委員 再審査のために申し立てをすることは完全に保障されています。しかし明白に、申し立てをしたとしても命令の効力は停止されないと書いてあるのですが、設置者として、その点での労働省の特段の努力を強く重ねて求めて、私の質問を終わります。
  125. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  126. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  日本労働協会法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  127. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  129. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。  歯科衛生士法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来各会派間において御協議いただき、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配布いたしてございます。  その起草案の趣旨及び内容について、委員長から簡単に御説明申し上げます。  近年の我が国における急激な高齢化社会への移行は、歯科医療をめぐる環境を大きく変化させ、国民の歯科医療に対する関心は急速に高まってきております。  本案は、このような状況にかんがみ、歯科衛生士の資質の向上と業務内容の拡充を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、歯科衛生士は、歯科衛生士の名称を用いて、歯科保健指導をなすことを業とすることができること。  第二に、歯科衛生士の免許を与える者を、都道府県知事から厚生大臣に改めるとともに、国家試験の実施に関する事務等については、厚生大臣の指定する者に行わせることができること。  第三に、歯科衛生士でない者は、歯科衛生士またはこれに紛らわしい名称を使用してはならないこと。  以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。     ―――――――――――――  歯科衛生士法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  130. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。川俣健二郎君。
  131. 川俣健二郎

    ○川俣委員 委員長提案の歯科衛生士法一部改正の発言の機会を与えていただきまして、委員長を初め、理事の皆さんにお礼を申し上げる次第でございます。たとえ二十分でもどうしても伺っておきたいので、行政側から参考までに知らしていただきたいと思います。  歯科衛生士、実に国会の議事録には四十年ぶりだそうでございますが、こういう職種があったのかなという、しかし、私たちはお互いに歯医者さんにお世話になる年代の人方がたくさんおられるようですから、これをどうしても私は、皆さん方のお手元にもあるでしょうが、つとに「社団法人日本歯科衛生士会会長金沢紀子」ということで、「一、歯科衛生士の免許権者を厚生大臣に改正していただきたい。二、歯科衛生士の行う業務として、歯科保健指導業務を追加していただきたい。」こういう非常に簡潔明瞭なお願いを何で今までほっておいたんだろうか。国会の問題は別としても、これは立派に政府提案であるべきだ。いろいろな事情で委員長提案になったと伺っておりますが、しかしこれは結局、行政指導をやるのは厚生大臣。本当はそこへ厚生大臣が座って、委員長提案でみんなで決めたものをどうするかという所見を述べるぐらいの気持ちがなければ、これは本当に血の通った歯科衛生士の皆さん方に対する改正案とは言えないような気がします。後ほど大臣がお見えになるようでございますから、質問を続けさせていただきたいと思います。  大体、歯科衛生課長という課長さんがいるそうだが、たしか歯科技工士のときも会期末のどさくさ紛れにさっと出した記憶が私、理事をやっているときにあるのですが、こういうことはどうもいいことじゃないなというように思うのでございます。そこで、後でいいですから、このように保健医療関係に携わる各職種の一覧表、どういう資格要件があるのか、一覧表を出していただきたいと思います。  そこで、時間がありませんから、私の方から申し上げたものを局長の方から答弁していただきたいと思います。  一つは、歯科衛生士の就業形態はどのようになっているのか。  二つは、現行の歯科衛生士法があるわけですが、これによると、歯科衛生士は歯科疾患の診断を行うことができるのかどうか。また、今国会で委員長提案で改正されると、歯科保健指導業務が追加されれば、歯科保健指導にあわせて歯科疾患の診断や治療を行うことが認められることになるのかどうか。一般の人方も非常に伺いたいところだと思うので、あえて聞きます。  三つ目は、歯科衛生士が今後歯科疾患を持っている方などに対して歯科保健指導を行うに際し、どのようなことに留意すべきと考えているのか。  四つ目、現在保健所で歯科衛生に関する指導事業を行っているわけですが、どのように行われているのか。特に歯科保健指導についてどうなのか。  そこで、五つ目がこれに関連するのですが、保健婦はどのような業務を行うこととされているのか。そして、保健婦は歯科保健指導業務を行うことは可能なのか。それとも、歯科衛生士というのは保健婦の免許を――保健婦は、歯科衛生の仕事はできるんだね。そうすると、いわゆる衛生士の業務独占なのか。ここをぜひ聞かせていただきたいと思います。  それから、歯科衛生士の資質向上のため、歯科衛生士の養成年限の延長についてはこれまでどのように対応してきたのか。こういうところをまず簡潔に答弁してもらいたいと思います。
  132. 仲村英一

    ○仲村政府委員 第一のお尋ねでございますが、歯科衛生士の就業形態でございます。六十一年末の数字で申し上げますと、現在歯科衛生士の総数三万二千六百六十六人でございまして、どういうところで働いておられるかということを見ますと、保健所に四百十七人、病院に二千四百十五人、それから診療所、これが一番多いわけですが二万八千八百八十九人、学校が四百六十五人、その他四百八十人となっておるわけでございます。  それから、二番目の歯科衛生士法によって歯科衛生士が歯科診断できるかというお尋ねでございますが、これは現行の歯科医師法上、歯科医師でなければ歯科疾患の診断等の歯科医業を行うことができないということになっておりますので、歯科衛生士が歯科疾患の診断そのものを行うことはできないということでございますし、今回御提案なさっておられる改正後も、歯科疾患の診断そのもの、あるいは治療につきましては歯科医師が行うということで決められておるところでございますので、そこについては改正前後で変更ないわけでございます。  それから、第三番目の歯科保健指導を行うに際してどのようなことに留意すべきかというお尋ねでございますが、当然のことながら、その患者さんの主治医である歯科医師の指示を受けた上で歯科保健指導を行うのが必要だということでございまして、今回の歯科衛生士法改正案におきましても、その趣旨が条文に盛り込まれておるわけだと考えております。  なお、一般の方々、健康な方々に対して歯科保健指導を行う際にはどうかということでございますが、そういう場合でも適宜やはり地元の歯科医師さんでございますとか学校歯科医師等とも十分連携をとって、その指導の効果が十分上がるように体制づくりを図ることが望ましいと考えておるところでございます。  それから、保健所の歯科保健でございますが、具体的に申し上げますと、保健所では現在妊産婦、乳幼児等を中心といたしまして、歯科検診でございますとか保健指導が行われておりますが、昭和六十二年の数字で申し上げますと、歯科検診、保健指導の集団の検診、指導回数が約五万八千回でございまして、受診者数延べ二百四十一万人に及んでおります。個別の検診、指導でございますが、六十三万五千人ということで非常に活発に行われておると私どもも考えておるところでございます。先ほど申し上げましたように、現在保健所に四百七十一人の歯科衛生士が置かれておりますが、保健所全体が八百五十ぐらいございますので、まだその置かれ方は少ないということで今後私どもその配置にもいろいろ気を配っていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。  それから、保健婦との関係でございますが、保健婦は御承知のように保健婦助産婦看護婦法で「保健指導に従事することを業とする」というふうに決められておりまして、具体的に妊娠、出産、育児に対する保健指導とか精神衛生に関する相談指導あるいは寝たきり老人等に対します訪問指導等を中心にいろいろ幅広く保健指導を行っておりまして、歯科保健指導を行うことも条文上可能でございますが、先ほど申し上げましたように保健所に歯科衛生士が置かれておるところでは、集団歯科保健指導等につきましては歯科衛生士が担当するということで、やはり業務は分担されることになろうかと考えております。  それから、最後の歯科衛生士の養成年限の延長の問題でございますけれども、修業年限につきましては五十八年に省令が改正されまして、従来の高卒一年以上ということから高卒二年以上に改正をされたわけでございます。この改正は猶予期間がございまして、五年間の猶予期間を設けられておりまして、昭和六十三年四月以降猶予期間を経過いたしまして、すべての歯科衛生士の養成施設においては高卒二年以上の教育が行われているというのが実態でございます。
  133. 川俣健二郎

    ○川俣委員 仲村局長説明でわかりました。  保険局長、もう一つだけ。こういう角度から伺いたいのですが、いわゆる診療報酬はどうなるのだろうかな。歯科医院に勤務する歯科衛生士が歯科保健に関する指導を行った場合、診療報酬上どのような取り扱いとなるのだろうか。それから、出張で衛生指導に行く、その場合には、その歯医者さんの連携というか指示というか、そういうことになるのかね。その辺とのかみ合いで診療報酬を聞きたいのでございます。  これだけで質問は終わるのですけれども、せっかく大臣が見えたから、本当はこれ――それはわかっています。大臣には質問しないということだそうだが、本来なら委員長提案で決まった法律に対する所見として何か言いたいのじゃないのかなと思うだけでございますので、あえて質問しません。じゃ、局長から。
  134. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 健康保険法におきましては、疾病または治療につきまして療養の給付を行うということになっておるわけでございまして、ただいまお尋ねのように、歯科保健に関する指導というのが仮に疾病の予防のために行うものであるということであった場合には、その保健指導は療養の給付の対象にはならないということでございます。しかしながら、保険医療機関である歯科医療機関におきまして、歯科衛生士が例えば虫歯に罹患している患者等に対して主治医の指示に基づきまして療養上必要な指導等を行ったというような場合につきましては、従来から例えば歯科口腔衛生指導料といったような診療報酬の点数が設けられておるところでございまして、それによって診療報酬が支払われるということになるわけでございます。  また、歯科衛生士が出張等によって患者に対する保健指導を行ったというケースの場合には、保険医療機関である歯科医療機関としての療養上必要な指導という形に現在の診療報酬上はならないということになりますので、その場合には診療報酬の支払い対象にならない、こういうことになるわけでございます。
  135. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ありがとうございました。結構です。
  136. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 これより採決いたします。  お手元に配付いたしております草案を歯科衛生士法の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 起立総員。よって、そのように決しました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 丹羽雄哉

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る二十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十九分散会      ――――◇―――――