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永井委員 大臣、よろしいですか。総務庁が
行政監察しまして、
労働協会の広報
事業について指摘をしているわけです。この指摘事項はたくさんあるのですが、その中で、「OA時代のパソコン・オフコン入門」という本を例に挙げまして、「最近における出版物の中には、
労働問題との関連が低いものも発行されているなど
協会の
設立目的に即応していないおそれのあるものが認められる。」こう言っているわけです。「したがって、
労働省は、
協会に対し、出版
事業については、
協会の
設立目的及び
協会に国庫補助金が交付されていることに照らし出版しなければならないものに限定する等の合理化を図るよう
指導する必要がある。」とも注文をつけてきているわけです。確かに「OA時代のパソコン・オフコン入門」というような本は必ずしも
労働協会の出版すべきものではないのかもしれません。しかし、この
行政監察報告の中でも「出版の方針として、
協会では、①
協会の調査研究の成果、②民間企業では採算のとれにくい
労働問題に関する学術書並びに③
労使及び
国民一般に
労働問題に関する
理解と良識を培うために必要な図書を発行することとしている。」とあるとおりでございます。したがって、この総務庁の指摘をそのまま素直に私は受け取ることはできないのですよ。歯にきぬ着せずに言いますと、
政府は
国民から見れば一つであって、その各省庁にそれぞれの任務、権限からいって縄張りがあるのでございましょうけれども、とにもかくにも
行政監察をした以上は何かひっかかっていかなければいかぬというふうに私は受け取れるわけです。これはひとつ
労働大臣としてしっかり受けとめておいてもらいたいと思うのであります。
ところで、その
労働協会の収入の内訳の推移を見ますと、当初はほとんどが基金運用収入だったわけです。間もなくして
事業収入の拡大に迫られてきたわけですね。そして、その後それでも
事業運営が困難になってきた。これは基金がふえてこなかったからです。そして、
昭和四十年代に入ると国庫補助金が導入された。これらの収入のうち基金運用収入と
事業収入とを比較しました場合に、
昭和四十四年ごろには
事業収入の方が基金運用収入を上回ることになって、
昭和六十二年度では基金運用収入は国庫補助金を含む収入全体のわずか六・七%を占めるにすぎなくなってしまっているわけです。
事業収入の五分の一程度にまで落ち込んでしまっているわけですね。つまり、この総務庁が指摘しました出版
事業の問題点というのは、基金の増額という措置がとられずに、国庫補助金の導入があったものの、
労働協会が収益
事業に力を入れざるを得ないように追い込まれた結果ではないかと思うのです。そのことの一番根源を見ず、一つ一つの問題、枝葉末梢の問題について
行政監察の指摘ということだけで受けとめるわけに私はいかないと思うのです。
しかも、
協会法の第二十七条によりますと、
労働大臣は毎
事業年度
労働協会が作成した予算及び
事業計画について認可することになっているわけですね。それだけではなくて、この認可に際しては第三十七条により「大蔵
大臣と協議しなければならない。」こういうことになっているわけです。したがって、この
事業の内容あるいは
事業の
推進ということについても財源措置についても、
労働省だけではなくて大蔵省も
承知の上の話であって、それどころか、総務庁もこういう事情を知らないはずはないと私は思うのです。基本的には基金運用収入で経費を賄っていくべきものとして
設立された
労働協会ではありますけれども、その後この
法律の趣旨が多少ゆがめられてきた。そのことによって
労働協会の自主性、中立性が大きく損なわれてしまったとは思いませんけれども、確かに問題は抱えていると思うのですね。この点については大変遺憾だと思うのでありますが、この際、
政府関係当局に私は厳しく反省を促しておきたいと思うわけであります。
さて今回、いわば一般の特殊法人である
雇用促進事業団、その附属機関である
雇用職業総合研究所との合併を契機にいたしまして国庫補助金が大幅にふえるということになると思うのでございますが、これを契機に
労働協会法制定当時の精神あるいは当初基金を設けたときの精神が否定されてしまうのでは、承服ができないわけであります。
そこで、重ねて質問するわけでありますが、新機構への移行に伴い財政基盤に
変化が生じるといたしましても、これによって
労働協会発足当初の精神が損なわれることのないように引き続き十分配慮がされなければならないと思うのでありますが、その点についてはひとつ
大臣から明確にお答えをいただきたいと思うわけであります。