○新井(彬)
委員 野村総研が九五年の
日本を展望ということで、自由時間とそれから住宅問題、一戸当たりの床面積、それから豊かさの偏差値というものを出しているわけです。今は確かにほとんどの方が、我々は中ぐらいであるというような答え、大体そうではないかと思うのでございますけれ
ども、これから九五年を見渡しましても、GNPでは米国の一・四倍になりますけれ
ども、豊かさというのに比べると、余り豊かにならない。確かにこれから豊かさの率は上がっていくわけでございますけれ
ども、そういうことが発表されているわけです。
さっきの資料の中で、賃金が安いということが第一番に出ていた。しかし国際比較しますと、
日本の賃金というのは最高になっている。どこら辺に問題があるのかということを見ますと、まず今の
日本の
状況では、学校にみんな子供を行かせるわけですね。高等学校あるいは大学、そこまでは親の
責任じゃないか、またそうしておかなければだめじゃないかというようなことで行かす。そうしますと、教育の方の資料をいろいろ見ますと、とにかく公立の高校から公立大学に入った場合が一千二百万円ほど要る。私学の高校から私学の大学に行くのに二千万要るということですね。こういうことで、給料は比較的もらっていても教育費というのは非常に高い。
それからもう一つは、住宅問題です。今約六〇%の方が住宅をお持ちだということを聞いているのですけれ
ども、とにかくこの住宅というのはローンでほとんどがお買いになる。ローンで買うというのは、大体二十五年から三十年で組んでいるわけですね。そうしますと、一生懸命働いてやっているんだけれ
ども、ローンの方にお金が行っちゃって、ゆとりがないということですね。
そういう中で、今度はお年寄りの方が寝たきりになる。これは大変なことです。とにかく幾つも例はありますけれ
ども、極端に言うと、お母さんが病気になった。この方ももう六十近いんですね。そうすると、今度はお父さんが会社を休んで面倒を見ているのですよ。ところがそのお父さんも、こんなに大変なのかと言って倒れちゃった。そうすると、今度は親戚が来た。ところが、とても面倒見られない。仕方がないから、東京に行っている息子、昇く帰ってこいというようなことで、仕事は余りないのですけれ
ども、とにかくこの二人の面倒を見るためには帰らなければいけない。だから、健康であって、ローンを払って、子供を教育してあげた、これは中家庭。言ってみれば、決してそんなに困っていません。頑張っています。ただ、時間的には非常に長く働く、あるいはパートをしなければいけない、こういうようなことになるわけですね。
したがいまして、その豊かさという問題について、外国と
日本とはちょっと違う。私もいろいろなところを見せていただいたのですけれ
ども、ちょっと違うところがある。それとまた問題は、物価が高いんですよ。
世界各国に比べて何が高いかといいますと、自動車とかそういうものではなくて、毎日の
生活の食べ物が高い。それから、さっき言いましたように住宅の家賃が高い。そういうわけですから、今は円がばかに安くなっちゃいまして百四十円を突破したのですか、しかしあの百二十五円ごろですらデータでは一ドル二百十円の
生活を
日本人は強いられているんだという、
世界各国のデータが出ている。そういうわけですから、そういう面においてはこういうデータに出てきているんじゃないかな。
それからもう一つは、
大臣も
世界各国に行かれたと思いますが、イギリスならイギリスに行く、フランスに行く。とにかく緑が多くて公園が多くて、お年寄りが二人ほど、御夫婦が広い公園のところへ座って日なたばっこしたりなんかしている。非常にゆとりがあるわけですね。
日本だったら、今年休をどんどんふやせと言っていますけれ
ども、この前の五月の連休はどうだったんですか。とにかくもう車はいっぱいで、車に乗っていても三時間も五時間も待たされる。それから汽車もいっぱいですから、疲れてほうほうのていで親戚の家、ふるさとへ帰る。それでまた帰りがいっぱいですよ。よかったねあなた、五日間七日間も休みがあったんですか。いやもうえらいです、金も何もなくなってしまった。だからお金の使い方にしましても、例えて言いますと、アメリカのマイアミビーチならマイアミビーチに行きますね。小さいというか、それこそ余り大した建物ではないけれ
ども、そこには
年金生活者が御夫婦で一月ぐらいいるわけですね。大体一人当たりが三千七百円か四千円でしょう。大体リゾート地帯でそういうような余暇のとり方をやっているわけですね。
この前も一つの逸話がございまして、フランス人が釣りをしておった。そこヘアメリカ人が通りかかって、一体何匹釣ったか。いや大して釣れない。何でそんな暇なことをやっているのだ。それだったら網でざあっと底から引いたら魚がとれるから、やった方がいいじゃないか。何のためにそんなことをするんだ。魚がたくさんとれるじゃないか。たくさんとってどうするんだ。たくさんとったら売れるじゃないか。売ってどうするんだ。金がもうかるじゃないか。今度は、金がもうかったらどうするんだ。別荘を買ったらいいじゃないか。別荘を買ってどうするんだ。ゆっくり釣りをすればいいじゃないか。それくらいフランス人の余暇の過ごし方とアメリカ人とは違いがある。
そういうようなことでございまして、やはりいろいろな意識革命というものを大分しなければいけない。例えて言いますと、外国はそうですよ、みんな
家族ぐるみです。だから会社は五時まで。それが終わりますと、家へ飛んで帰って
家族ぐるみで食事をしたりして楽しんでいます。
日本はそうじゃないでしょう。仕事が終わっても残業をしている人がいたら、早く帰ったら罪悪感にさいなまれる。幾ら有給休暇があっても、休むと言うと何かあいつだけさぼっているように思う。そうして、それじゃ夜中の八時でも十時でも帰って、ああゆっくりした、今はプライベートの時間だ、そうじゃないでしょう。ある人は一生懸命やっている。それで仕事をしてあしたはどうしたらいいのか、こうしたらいいのか、二十四時間
体制で仕手のことしか考えられない。こういうようなもろもろの
日本の習慣と、それから遊びに行くことにしてもリゾート地帯もないし、だからアンケート調査をとってそれならディズニーランドに行ったらいいじゃないか。あれは一回行くと一万幾らかかりますよ。乗り物が高いですし、食べ物が高いし、そんな金はどうしたらいいんだ。そしてまたゆとりということになりますと、時短という問題がある。時短すれば必ずしも給料だってそう上がるわけはないのです。そうすると、そういう時短をもらって休みがふえたらどこで自分をリフレッシュして、どこでどうしたらいいのか。特に、お年寄りで一人の寝た方、これは時間があったらどんどん言いたいのですけれ
ども、とにかく寝たきり老人というのは
日本だけなんですね。
世界各国、まずそういう言葉がありません。スウェーデンにしたってノルウェーにしたって、フランスだって寝たきり老人なんていない。それは
日本では住宅同題とかいろいろな中にあって、またそういう地域もないために家で寝ていなければしようがないわけです。寝ていれば寝ていたで、だんだん悪くなって足なんかが動かなくなるのは当たり前じゃありませんか。そういうようないろいろなことがあるわけです。ただありがたいことに、今回の厚生白書を見ますと、今までは厚生白書というのは年間においてこうだということしか書かなかったけれ
ども、これからはこうあるべきだというようなことまで非常に踏み込んでお書きになっている。そして英語とかいろいろ使っているのを見ますと、ああこれは大分
世界各国のそういう
生活とか
福祉という問題について本当に研究されているな、こういうことが非常に感じられるわけです。
厚生省も意識が非常に変わってこられたな。それがなければ、今までどおりの休み時間をふやしただけでもだめです。賃金を上げただけでもだめです。いろいろな問題をトータルにしてやっていったところに初めて豊かさというものができてくるのではないか、このように私は思うわけでございますが、
大臣、このことに対して何かお考えがありましたらお答え願いたいと思います。