○平井卓志君 私は、自由民主党を代表して、ただいま
議題となりました
税制改革関連六
法案につき、
賛成の意見を表明するものであります。
我が国の現行
税制は、
昭和二十四年のシャウプ勧告を原点とするものでありますが、我が国経済はその後の四十年間に驚異的な成長を遂げています。所得水準は飛躍的に上昇し、その平準化が進んでおります。また、
国民生活が豊かになって、
国民の嗜好もさまざまとなり、消費は多様化すると同時に、サービス化をしております。一方、他の先進国が経験してきたように、人口の高齢化が急速に進んでいるところであります。
このように我が国の社会経済は著しく変化してきておりますが、一方、我が国の
税制はその動きに追いつけず、さまざまなゆがみを内包した時代おくれのものとなっております。すなわち、財政事情の悪化等により本格的な所得減税が行われてこなかった等から、税
負担が勤労所得に偏り、また資産所得に対する
課税が不十分なこともあって、サラリーマンを中心とした納税者の重税感、不公平感が高まってきております。
一方、消費
課税は嗜好品等特定の物品にのみ高い税
負担を課する形となっていることなどから、税
負担にアンバランスが目立ち、また税体系全体に占めるウエートが低下しております。こうした個別
消費税制度は先進国に例を見ないものであることから、制度の相違が対外的な摩擦の
原因ともなっております。さらに、国際的に見て高い
負担となっている
法人税や、長期間見直しの行われていない相続税の見直しも必要となっているところであります。こうした
税制の問題点をこのまま放置すれば、
国民の税に対する信頼が失われることは必定であります。
税は国の
根本を支えるものであり、
国民の皆様に税を納めていただくことが不可欠である以上、公平感を持って納めていただくことができるような税の仕組みをつくることは政治の当然の
責務であります。その意味で、私は所得、消費、資産等の間でバランスのとれた税体系を構築しようとする今回の
改革案を高く評価し、全面的に
賛成するものであります。
改革の基本的な考え方につきましては
税制改革法案に示されているとおりでありますので、以下、具体的な内容について
賛成理由を申し上げます。
第一に、所得税、住民税
負担の軽減合理化についてであります。
所得税及び住民税の税率構造につきましては、最高税率を引き下げるとともに、その累進度を一層緩和し、また税率の段階を所得税は五段階に、住民税は三段階にそれぞれ大幅に簡素化することとされております。
また、基礎控除や配偶者控除等の人的控除の
引き上げに加え、十六歳から二十二歳までの扶養親族については、一般の扶養控除にかえて割り増し控除を認めることとされております。
さらに、いわゆる寝たきり老人に係る控除額を
引き上げるとともに、退職所得控除額について、勤続三十年で従来の千万円から千五百万円へと大幅な
引き上げが図られているところであります。これらの措置によって働き盛りの中堅所得者層を中心とした重税感が大幅に緩和されることになり、評価できるものであると考えております。
第二に、
税制に求められる大原則の
一つである
負担の公平の確保のための措置についてであります。
初めに、
株式等のキャピタルゲイン
課税についてでありますが、
株式等の
譲渡益課税については、これまでの原則非
課税を
原則課税に改めることとし、具体的には申告
分離課税方式を原則とし、上場
株式等の譲渡益については、納税者の選択により
源泉分離課税によることができることとされております。ただし、公開前に取得した
株式等を公開後一年以内に譲渡した場合には、
源泉分離課税の選択を認めないこととされております。また、
株式等の
譲渡益課税のあり方につきましては、利子所得
課税のあり方の見直しとあわせて見直しを行うものとされたところであります。
次に、社会保険診療報酬の
課税の特例についてであります。その年の社会保険診療報酬が五千万円を超える者には、この特例を適用しないこととされております。
さらに、
法人の一定の
土地取得に係る借入金利子の
損金算入を、
企業の
土地転がしによる地価高騰を防ぐ意味も含め、制限する措置であります。
これらの措置は、いずれも適正、公平な
課税を実現し、
税制全体に対する
国民の信頼をより強固なものとするために必要な措置であり、極めて有意義なものであると考えます。
第三に、国際的視点に立った
法人税制の
確立であります。
法人税の税率については、基本税率を段階的に三七・五%にまで引き下げ、中小
法人に対する軽減税率等につきましても所要の措置を講ずることとされております。いわゆる経済の空洞化を生じさせないためにも、今回の
法人税率等の引き下げ等はぜひとも必要な措置であります。
第四は、相続税等についてであります。
相続税につきましては、
課税最低限を
引き上げ、税率構造の見直しを行うとともに、配偶者の
負担を軽減する等の
負担の軽減合理化のための措置がとられております。また、不当な税
負担回避行為についても必要な対応策がとられております。
さらに、事業用及び居住用の小規模宅地等についての特例につきましては、事業の継続や居住の安定に配慮し、その減額の割合を
引き上げることとされております。
これらの措置は、
昭和五十年以来の経済情勢の変化及び最近の地価高騰の状況を考慮し、最大限の努力を払った極めて適切な対応であります。
第五に、間接
税制度の抜本的見直しについてであります。
現行間接
税制度のさまざまな問題を
根本的に解決し、安定的でしかも信頼感のある
税制を構築するために、
消費税法案が
提案されるとともに、既存間接税の抜本的見直しを行うこととされております。
この
消費税は、消費に広く薄く
負担を求めるため、非
課税取引を
土地の売買、金融、保険等その性格上対象となり得ないもののほか、
医療、教育、社会
福祉の一部などに限定して、原則としてすべての物品やサービスの売り上げを
課税対象とするとともに、その税率は三%と極めて低い水準とされております。
また、この種の税になじみの薄い我が国の現状にかんがみ、仕入れ税額控除を帳簿等に基づいて行う帳簿方式を採用するとともに、中小事業者の事務
負担に極力配慮する観点から、事業者免税点制度や簡易課
税制度等を設けることとしており、簡素な仕組みとなっております。
これらの
消費税の仕組みについては、今後の定着状況を十分勘案して必要な見直しを図られたいと存じます。
さらに、
消費税の
地方への配分について、その収入額の一定割合を
地方公共
団体に譲与するとともに、
地方交付税の対象税目とする措置を講じ、
地方財政の運営に支障を来さないよう配慮することとされております。
こうした間接
税制度の改革は、所得税、住民税の思い切った減税等と相まって、税体系全体を通ずる税
負担の公平の確保を図るとともに、高齢化、国際化に対応する観点からも今こそ断行すべき必要不可欠な措置であると確信するものであります。
この際、
政府に要望いたしますが、
消費税はその円滑かつ適正な転嫁が極めて重要であります。今般、事業者及び国の転嫁に関する義務が明確化されたところでありますので、
政府においてはこの趣旨をも十分に踏まえ、円滑な転嫁の実現のためには消費者及び事業者の理解と協力が不可欠であることを認識し、
消費税の性格や仕組み等についての十分な広報を行うことはもとより、できる限りの措置を講ずるべきであります。
また、消費者の立場からは、便乗値上げがあってはならないことであり、この点についても
政府として適切に対処する必要があります。
さらに、
消費税導入後半年間は弾力的運営を行うものとする旨の規定が追加されたところでありますので、
政府においてはこの趣旨に即し適切な運営を行うよう要望しておきたいと思います。
以上、今回の
税制改革は、現行
税制が抱えている各種の問題点を
是正しより公平な税体系の
確立を目指すとともに、二十一世紀を展望して
国民福祉の充実に必要な安定的な歳入構造の構築を図るものとして評価できるものであることを申し述べ、私の
賛成討論を終わります。(
拍手)