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1988-10-20 第113回国会 参議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  十月十九日     辞任         補欠選任      杉元 恒雄君     中村 太郎君      久保  亘君     鈴木 和美君  十月二十日     辞任         補欠選任      中村 太郎君     岩本 政光君      山東 昭子君     松浦 孝治君      寺内 弘子君     岩上 二郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         杉山 令肇君     理 事                 仲川 幸男君                 粕谷 照美君                 佐藤 昭夫君     委 員                 岩上 二郎君                 岩本 政光君                 小野 清子君                 木宮 和彦君                 世耕 政隆君                 田沢 智治君                 竹山  裕君                 寺内 弘子君                 松浦 孝治君                 柳川 覺治君                 鈴木 和美君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 高桑 栄松君                 勝木 健司君                 下村  泰君    国務大臣        文 部 大 臣  中島源太郎君    政府委員        文部大臣官房長  加戸 守行君        文部省生涯学習        局長       齋藤 諦淳君        文部省初等中等        教育局長     古村 澄一君        文部省教育助成        局長       倉地 克次君        文部省高等教育        局長       國分 正明君        文部省体育局長  坂元 弘直君        文化庁次長    横瀬 庄次君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君    説明員        厚生省社会局庶        務課長      鏑木 伸一君        郵政省放送行政        局業務課長    團  宏明君    参考人        社団法人日本音        楽著作権協会常        務理事      石本美由起君        社団法人日本芸        能実演家団体協        議会専務理事   小泉  博君        社団法人日本レ        コード協会会長  望月 和夫君        社団法人日本ビ        デオ協会理事   大橋 雄吉君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○著作権法の一部を改正する法律案(第百十二回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  昨十九日、久保亘君及び杉元恒雄君が委員辞任され、その補欠として鈴木和美君及び中村太郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 著作権法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、社団法人日本音楽著作権協会常務理事石本美由起君、社団法人日本芸能実演家団体協議会専務理事小泉博君、社団法人日本レコード協会会長望月和夫君及び社団法人日本ビデオ協会理事大橋雄吉君の四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。本日は、本案について皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  つきましては、議事の進め方でございますが、まず、お手元の名簿の順はお一人十五分程度御意見をお述べいただきます。次いで、論点も限定されており、また時間も限られておりますので、便宜委員長であります私より委員会を代表して質疑をさせていただきます。そして、もし時間が残りますれば他の委員からも若干の補足質疑をさせていただくということで進めてまいりたいと存じます。  それでは、まず石本参考人からお願いいたします。石本参考人
  4. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 日本音楽著作権協会石本でございます。本日この委員会発言機会を与えていただきましたことをありがたく感謝いたします。本来ならば、日本音楽著作権協会理事長であります芥川也寸志参考人として出席させていただくことになっておりましたが、健康を害しておりますので、私がかわって意見を述べさせていただきます。作家でございますので、多少作家立場というものを申し上げたいと思います。  委員会先生方はよく御存じのことと思いますが、私たち作家には月給もボーナスも退職金もございません。言うなれば何の保障もないものです。私たちが歌をつくり、それがレコードとして発売され、ヒット曲になって初めて使用料という果実が権利に対する報酬お金となって入ってくるわけでございます。たかが三分間、五分間の歌謡曲だと思われるかもしれませんが、創作は命がけであり、一つ一つ作品をつくるのにはいろいろと費用等もかかるわけでございます。  私の作品の中に「悲しい酒」という歌がございます。ある日のことです。ディレクターに、石本さん、戦前の大ヒット曲「酒は涙か溜息か」を現代感覚の歌にして書いてくれませんかと私は頼まれました。私はいとも簡単に、いいですよ、やりましょうと引き受けたのですが、だが、いざ机に向かって書こうとしますと過去の名作が頭の中をよぎってまいります。「酒は涙か溜息か」のフレーズが頭の中を遮ってしまうわけです。なかなか自分の納得する詩が書けません。困り果てた私はテーマを求めて夜の新橋や銀座をさまよい、酒場の片隅に落ちている人生の喜怒哀楽を探そうとしたのです。こんな状態が二十日間近くも続き、私は自信を失って苦悩してしまいました。そんなある夜のことです。不遇な中にも負けず嘆かずに生きている女性の身の上話を聞きながら頭の中に浮かんだフレーズが「ひとり酒場で飲む酒は別れ涙の味がする」という言葉だったわけでございます。ああこれだ、これで書けるんだと私は急いで帰宅をし、その夜、一気にこの作品を書き上げました。幸いに古賀政男先生の名曲が生まれ、また美空ひばり歌唱によってこの歌は大ヒットしましたが、もしもこの歌が売れなかったとしたら、酒場請求書だけで首が回らなくなってしまったんじゃないかなと思うわけです。言うなれば無から有を生むという仕事は、どんなプロセスがあっても結果だけが評価の価値観になってしまうわけです。  作家は書斎にこもって想像だけで人の心を打つ作品は書けません。やはりちまたに出て、風が吹けば風の寒さを知り、雨が降れば雨の冷たさを知り、自然な環境の中に厳しく自分の身を置くことが大切だと思います。ヒット曲著作権によって保護され、作家使用料として還元されるのであります。私たち使用料生活をし、そして次の作品づくり創作意欲を燃やすものであります。著作権制度作家生活を守り、作家音楽文化の発展のために情熱を傾け、自分の力を生かすことができるのでございます。また、売れなかった作品はだれからも見放され、一銭の収入にもならず、無に近い存在になってしまうのです。これが作家宿命かもしれませんが、それだけに権利制度のありがたさを私たちは痛いほど感じるのであります。  今回の著作権法の一部改正に対する法案の内容は、著作隣接権保護期間を二十年から三十年に延長することと、海賊版ビデオミュージックテープであることを知りながら頒布する目的を持って所持するだけで罰則の対象にするとのこと、この二点と伺っております。まず、このうち海賊版について述べさせていただきたいと思います。詳しいことはビデオ協会大橋さんからお話があると思いますので、日本音楽著作権協会立場では海賊版への対応についてお話をさせていただきたいと思います。  残念ながら、現在日本国内においてもビデオテープやミュージックテープ海賊版は少なからず製作され頒布をされておるわけでございます。日本音楽著作権協会では、日本ビデオ協会日本レコード協会とも協力をしながら訴訟を提起したりしてその撲滅に努めておる次第でございます。そのためビデオ著作権保護監視機構や、警察庁の肝いりで結成されました不正商品対策協議会の一員として関係団体協力をいたしまして活動をしてまいりました。今回、貸しビデオ業が大変増加しておりますが、この中には海賊版頒布している店も少なくないようでございます。このような状態に対して、今回の改正法案は有効適切に働くものと心から喜んでおります。  次に、隣接権延長についてお話をさせていただきたいと思います。  私は、長い間レコード会社に籍を置きまして作詞家活動をしてまいりました。そこで感じましたことは、一つ作品が世に出るためには作詞家作曲家が一体となって行う創作活動のほかに、作品を歌い、そうして演奏をしてくださる実演家方々や、世の中にこの作品演奏を広めるレコード会社の役割がなければ歌は世に出ることはできないということでございます。今回、このよきパートナーであるこれらの隣接権者権利が二十年から三十年に延長されるということは大変喜ばしいことだと思っております。  以上でございます。
  5. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) どうもありがとうございました。  次に、小泉参考人にお願いいたします。小泉参考人
  6. 小泉博

    参考人小泉博君) 私は芸団協小泉でございます。芸団協といいますのはあらゆるジャンルの芸能人団体五十八団体が集まりました集合体でございまして、したがいまして、きょうは職業芸能人としての立場から今回の法律改正についての意見を述べさせていただきます。  今回の改正案では、まず私どもと最も関係の深い著作隣接権延長という問題がございまして、実はこれは私ども昭和四十五年の新法成立したとき以来常に言い続けてきたことでございます。といいますのは、旧法時代には演奏歌唱というのは著作権がございまして、その実演には死後三十年という保護が与えられていたわけでございます。それが隣接権制度が取り入れられて隣接権者となった途端に、実演を行ったときから二十年の保護ということで、非常に大幅な権利後退があったわけでございます。そのために私どもの先輩が大変驚きまして、なぜこのような権利後退があるのか、非常に不都合であるということで何度も何度も陳情したのでございますけれども、そのまま押し切られて決まってしまったという経緯がございます。  ですから、十八年間私どもが言い続けてきた悲願であると言ってよろしいかと思うんですけれども、この十八年間の機械発達普及というのは、皆様承知のように非常に目覚ましいものがございまして、録音録画機器普及率は世界一でございます。また一方、日本人の平均寿命は伸び続けて世界一という大変にうれしいことにはなったんでございますけれども、この二つを結びつけますと、私ども芸能人といたしましては、余りありがたくない事態が生ずるわけでございます。自分の芸が録音、録画された場合に、たった二十年で保護が切れてしまいますと、二十年前に自分の演じた芸能仕事場を取り合いっこをしなければならないというまことに不思議な問題が生ずるわけでございます。これは特に伝統芸能の世界におきまして、その芸に従事している方にとりましては、伝統芸能というのは昔のものをできるだけ正確に伝えていこうという使命がございますために、特に二十年前の芸とそれほどの差があるというわけではございません。機械発達によりまして正確にそれが伝達されるということになりますと、二十年前の芸とまさに仕事場でぶつかってしまうということが起きるわけでございます。  よく著作権とそれから著作隣接権対比ということが私どもの間で話されるのでございますけれども、この二つ権利には階級性とか、それから従属性といいますか、簡単に言ってしまえば上下の関係があるということではございません。全く自立的な二つ権利の組み合わせであるというふうに私ども理解をしております。したがって、著作権の死後五十年という保護に比べまして、著作隣接権行為後二十年という保護は余りにも差があり過ぎるということが私どもの持論でございました。  ちょっと問題が違うかもしれませんけれども、私ども芸能人の芸というものは、自分の体がその芸を演ずるような場を確保し続けなければならないという宿命がございまして、ですから、芸能の振興に役立つような公正な利用というものを妨げるつもりはございませんけれども、その公正な利用を超えて無制限に自分仕事場を奪うような、あるいは自分だけではございません。他の芸能人仕事場を同時に奪ってしまうような際限のないレコードとか映画利用というものは絶対に避けなければならないというのでございますが、そういう状況にあるにもかかわらず、現実はどんどん広がっていくということでございます。こういうことはぜひ先生方に、すぐれた創造活動を守り育てるという文化的な視点から、私ども著作隣接権制度というものの中で芸能人権利を守ろうという場合にぜひ御理解をいただきたいことでございます。  以上のような理由から、著作者との対比上、実演家の場合は実演後五十年でもいいのではないかというのが正直な気持ちでございますけれども、今回はこの三十年ということで、そのワンステッブと考えて一日も早く成立をさせていただきたいと望んでおります。  実は、実演家の場合には旧法時代のその死後三十年という、失礼いたしました。先ほど五十年と申し上げたかもしれません。旧法時代は死後三十年の保護でございましたけれども旧法時代保護経過措置としてそのまま生かされておりまして、昭和六十五年までは権利の切れるものがほとんどなかったんでございますけれども、六十五年になったら一斉に権利の切れたものが出されるのではないかというので、実ははらはらしておりました。しかし、この隣接権延長が第一小委員会議題になりましてから非常に遠いテンポで進められまして、改正案というものが出されたのでほっとしていたのでございますけれども、前回の国会でまたなぜかスローダウンをいたしましたので、私どもは一喜一憂していたわけでございます。今回の国会ではぜひひとつ成立をするように先生方にお願いをしたいと思います。  次にもう一つ、百十三条関係頒布目的として所持する行為、この取り締まりでございますけれども、これは後ほどビデオ協会大橋さんの方から詳しく御説明があることと思いますが、これはもう私ども日本ではいわゆるビデオ海賊版の横行が余りにも甚だしくて、その取り締まりには非常に手をやいている、しかし不法につくられたものが我が物顔に横行しているということで、これは法治国家としてはまことに情けない状況である、ぜひ改善してほしいものだというふうに考えておりました。御承知のように、日本ビデオ海賊版取り締まりが甘遇ぎるということでアメリカの方からも非常に厳しい非難がございました。また、最近はせっかく国民の間に著作権を大事にしようという思想が徐々に広まりつつあるその風潮に対して、このビデオ海賊版というものは水を差すような非常に困った現象でございます。そういう意味で、今回の改正というのは極めて歓迎すべきことでありまして、また文化国家へのワンステップという意味でも非常に大事な意味を持つものであろうというふうに理解をしております。  今回の改正は以上申し上げましたように、極めて時宜を得た私どもにとりましてはまことにうれしい改正でございますので、どうぞ一日も早い実現をお願いしたいと思います。  せっかく発言機会をいただきましたので、今回の改正とは別に、この機会実演家立場から著作権法に関連して二、三のお話をさせていただきたいと思うのでございますけれども、まずその第一はローマ隣接権条約への加盟という問題でございます。これはもう御承知のように、何回も文教委員会附帯決議のつけられた問題でございまして、そもそも我が国の新法制定に当たってはこの隣接権制度というものを取り入れるということが非常に大きな眼目でございました。私ども隣接権者として位置づけられまして、もう十八年ですか、たつのですが、いつまでたっても、そのもとになる条約隣接権条約加入をしないということでは何とも居心地の悪い話でございまして、この間十八年の間にはこの隣接権制度に従って放送業者との間とかにきちんとした契約の慣行がちゃんと取り決められて守られている、もう定着しているというふうに考えてよろしいかと思っているんですが、いまだに条約加入しないというのは非常に不思議なことだと私どもは考えております。  もちろん、加盟のためのいろいろな条件整備ということが必要であるというのがその理由でございまして、要するにこれは、条件整備というのは外国との間のお金やりとりということになるわけでございますけれども、私ども芸団協としましては既にそういう場合を想定いたしまして、ヨーロッパの各国でロンドン原則ということでお互いのお金やりとりを整理しようという原則がございます。その原則に従って既にヨーロッパとか南米の十三カ国と早くから互恵協定を結んでおります。また、この九月にもスペインそれからイタリー芸団協との間に協定成立いたしました。十五カ国ということになります。  また、新たに貸与権というのが設けられておりまして、これは我が国独特の一つ現象でございますので、貸しレコードに伴う報酬と、それからこの貸与権処理というような問題が発生しましたので、その方面の追加協定もまた結ぶように努力をしているところでございます。既にこの点につきましてはスウェーデンとか、西ドイツ、スイスなどとの間で追加協定も終わっているという状況でございます。あとは日本放送事業者が大量に使用している外国盤レコードに対する二次使用料の額がどのぐらい一気にふえてしまうのかという問題がございます。  まあそれもおくれている理由一つでございますけれども、これは私ども外国権利者との間で代表としてかわりに交渉をするということがこの互恵協定の中で決められておりますし、その処理も大体その国のやり方に従うということになっておりますので、その辺の話し合いは大きな打撃を与えないようなやり方で可能であろうというふうに考えておりますし、また、今の日本の経済的な地位というものを考えますと、この経済の理由というのは余りもう通用しなくなっているのではないかということが考えられます。ですから条約加盟の方向ということがぴしっと決まりましたならば、それを妨げる要因を解消する努力を私どもがすれば自然にそれは解消されていくであろうし、また、私ども実演家団体国内でも国際的にもその実現にできるだけ協力しようという姿勢でございます。ぜひとも次のスケジュールにこれを最優先で取り上げていただきたいというふうに考えております。  それからもう一つ実演家にとって映画的著作物における権利保護の問題がございます。これは現行法では、劇場で上映される映画と、それからテレビ局自分でつくるテレビ映画とを想定して映画著作物権利が決められているのですけれども、その後の録画手段とか、機械などの発達事態は大きく変わっております。今ではその映画劇場どころか、まるでレコードと同じように流通いたしまして、各家庭で手軽に録画できるというような状況でございます。私ども劇場用映画に出演したときにはまるで予想もしなかったようなビデオカセットとか、ビデオディスクとかいうようなもので流通をしているということで、このビデオグラムといいますけれども、総体的に全部を総称してビデオグラム著作権につきましては、実は昭和四十七年と四十八年の著作権審議会の第三小委員会におきまして、今の時点では映画と考えてよかろうではないかというような結論が出ておりまして、そのままになっているわけでございますけれども、先ほど申しましたようにこの十五年間の録画技術、それからテープレコーダーの進歩、普及というのは驚異的でございます。  また、映画権利見直しは、テレビ局テレビ映画というものが現在番組制作の実態が八〇%が下請に出されているという状況がございまして、そのためにこれは映画であるという主張を、我々が放送番組だと思っているものが映画であるという主張が通るというような解釈の違いが生まれてまいりました。あるときには映画扱いになったり、あるときには放送番組扱いになったりということで、実演家権利処理の上で大きな混乱が生じております。大体において、結果としては実演家にとって不利なケースに終わるということでございました。このことは今後のCATVの普及とか、それから放送衛星などのニューメディアの発達によって多様な映画利用が想定されるときに、実演家権利が全く欠落していくというおそれが多分にございます。この点をぜひ今後の重要な問題点として御理解を願いたいと思います。  それから、最後にもう一つ。既に新法成立時にこの参議院の文教委員会附帯決議としてつけていただいた実演家人格権保護という問題がございます。実演家の場合には、著作者と同じように創造的な活動を行っておりまして、ただ機械的に著作物をそのまま大衆に伝達するという役目を果たしているわけではございません。ですから、その人格権というのは著作者と同様に尊重されてしかるべきであろうというふうに考えております。その著作者が第六十条によりまして、死んだまでも人格的利益が守られているのに比べまして、実演家人格権が全く無視されているというのは余りにも公平を欠いているというのが私ども主張でございます。実演家にとりまして、その名誉、声望というのは職業的生命そのものでございまして、著作権法上でその侵害行為を禁ずるようにぜひ配慮をしていただきたい。これは西ドイツでは極めて明確にそのことを決めております、著作権法上で。またイタリー、オーストリア、デンマーク、スウェーデンなどでも実演家人格権について規定がございます。  どうぞそういうようなことを踏まえまして、以上申し上げましたローマ条約早期加入映画における実演家権利見直し、それから実演家人格権保護、以上の三つを今回の改正後の次の問題点として提起をさせていただきまして、私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  7. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) どうもありがとうございました。  次に、望月参考人にお願いいたします。望月参考人
  8. 望月和夫

    参考人望月和夫君) 本日は発言機会を与えていただきまして、厚くお礼申し上げます。日本レコード協会望月でございます。  私ども、長年の悲願でありました著作隣接権保護期間延長につきまして、著作権法の一部を改正することを本文教委員会において御審議いただくということを厚くお礼申し上げますとともに、本臨時国会においてぜひ成立していただくようお願い申し上げます。  以下、数点について御説明をさせていただきたいと思います。  昭和四十五年に終了の旧著作権法において、保護期間は、実演家は死後三十年、レコード製作者は発行後三十年でございました。これは著作権者も当初は三十年であり、同じでございました。現行の四十五年の改正法におきまして、著作権者と著作隣接権者とに分かれまして、著作権者はベルヌ条約の最低限保護期間である五十年に、実演家レコード製作者の著作隣接権は、隣接権条約の最低限である二十年が取り入れられまして、十年間削除される結果になったわけでございます。外国はおきましては、アメリカにおいては七十五年を初め、多数の国々が五十年であり、現行の二十年ということは他の諸外国に比べましても余りにも不均衡ではないかと思います。  このような不均衡な点が昨年来現象面としてあらわれてまいりました。一部新聞紙上をにぎわしましたビートルズの問題でございます。これは外国では保護期間中でございますが、日本では保護期間が切れるということで、日本でそのレコード外国権利者の許諾なく製造販売されるという結果が生まれたわけでございます。日本外国から海賊版の製造基地であるということで大変非難をされた事態となりました。レコード及び実演家の文化的価値は二十年の保護では大変短いのではないか。また、ディジタル録音時代となりましたこの音源というものの財産は半永久的にもなってまいりました。したがいまして、長期間の保護が必要ではないかと思うわけでございます。  例えば、先生方も御存じと思いますが、島倉千代子が歌った「からたち日記」、また若原一郎君が歌いました「おーい中村君」、こういったようなレコードは本年末に保護期間が切れるわけでございます。次に、「南国土佐を後にして」とか「人生劇場」、さらに「東京ナイト・クラブ」というようなものも来年には保護期間が切れるという結果になります。こういったようなことの事態によって国内でもビートルズと同じような関係が生まれるわけでございまして、そういう意味からもこの法案改正を急いで行っていただきたいという点でございます。  また、保護期間は、著作者の死後五十年と比べますと、実演家レコード製作者の録音後二十年というのは余りにも音楽芸能文化の創造的活動をしている者から見ましても不均衡ではないかと思うものでございます。音楽芸能文化は国民の日常生活に不可欠でございまして、音楽芸能文化の創造、普及向上のためには、権利者の意欲の減退を招くことも考えられます。ぜひ保護期間延長をお願いしたいと思います。  また、著作権審議会の答申の中でも、保護期間につきましては「必要に応じて検討を行うことが適当」とされております。これを契機にさらに保護期間の整備促進についてあわせてお願いをいたしたいと思います。  次に、海賊版に対する規定でございますが、我が国ではビデオに比べてレコード海賊版は少ないものの、まだ出回っております。録音する目的を持って所持する行為を侵害する行為とみなす本改正法案は、レコード文化の健全な普及向上に大きな効力がございます。ぜひ成立をお願いしたいと思います。  次に、せっかくの発言機会を与えていただきましたので、多少レコード産業の現状について御説明をさせていただきたいと思います。  まず、生産の規模でございますが、五十五年に二千九百二十八億ということで、この年代がピークでございました。その後四年間低落傾向が続きまして、五十九年からまた上昇のカーブをたどってまいりました。毎年四%ないし六%のアップでございます。そして、昨年度はやっと三千百十六億という三千億の大台に届いたわけでございますが、五十五年のピークのときから何と七年間で六%の成長でございます。決して、ほかの産業と比べていい上昇ムードではないというように思っております。ただ、本年は内需拡大その他の好況も反映いたしまして、一月から八月の生産実績では一三%上昇しておりますので、久しぶりに二けたの伸びは期待できるだろうと思っております。  次に、金額に対しまして数量で見ますと、これは先ほど言いました五十五年の段階で一億七千百万枚、このときがやはりピークでございました。このときはLPとMPを合計した数字でございます。そして、昨年は一億六千七百万枚でございますので、ピークのときから考えましてもまだそれに到達していないということは事実でございます。  この間、コンパクトディスクが五十七年から発売になりました。急速にこのコンパクトディスクが普及することによって、LPは撤退をどんどん余儀なくされまして、現在ではそのピークの時から見ますと、LPは七〇%ダウンでございます。同時に、シングル盤も同じような形で五十五年にピークを迎えておりますが、それから考えますと六〇%。ことしの二月から八センチのコンパクトディスクが発売になっておりまして、恐らくさらに二〇%程度に落ち込むということで、時代は新しい製品に大きく転換をしているということでございます。  ちなみに、五十五年度のシングルとディスク、それにテープ、それを合計いたしますと二億七千五百万枚、それに対しまして六十二年はLP、CD、ミュージックテープ、この三つを足しまして、二億一千三百万枚と、何と二三%ダウンでございます。金額的には過去よりも上がるのは当然でございまして、これは従来のレコード、LPとコンパクトディスクの価格差が二千八百円と三千二百円、約一四%ございますので、そのくらいの伸びがあってもこれは当然かというように思うわけでございます。この原因は、やはり趣味の多様化等々いろいろなことがございます。もちろん、貸しレコードの影響もなしとは言いませんが、いろいろなものが重なってこういう状況になっておると思います。  次に、レコード産業の占める地位と申しますか、これの利用産業、また関連産業というものを考えますと、昨年度はわずかレコード産業は小売ベースで三千五百億でございますが、例えばこれを利用する産業というのは三千六百億ございます。カラオケ業界、これは約二千億ございますけれども、その他レコードを使った有線放送、またFM、AMの音楽番組、それにレンタル業、こういったようなものが音盤を使って商売をされている産業でございます。  次にレコードとの関連産業というのは約二千六百億円ございます。これは映画、テレビの音楽番組とか、映画では音楽映画、さらには興行ではライブハウスとかコンサート、出版では音楽雑誌またキャラクターというようなものが、もろもろなものが加わって、これだけのものがございます。考えてみますと、トータルしますと約一兆円の金額がわずか三分の一程度のこの音盤を中心として、いろいろ産業が構成されておるわけでございます。したがって、このレコード製作の疲弊というものは、当然こういった業界にも多少の影響を受けるということは必定かと思います。  次に、国内の生テープの出荷の状況を申し上げますと、やはり五十五年を一つの起点と考えますと、五十五年が先ほど言いましたようにレコードが一億七千百万枚、それに対して生テープは二億二千万本、一・三倍でございます。ところが六十二年になりますと、一億六千八百万に対して四億本ということで、約二・四倍に膨れ上がっています。これは、やはりハードの普及、当然ラジカセの普及、さらにはヘッドホンラジオの普及というようなものがホームテーピングその他をふやしておるというように考えております。  三番目は、世界のレコード産業の占める構成比でございますが、北米が三八%、ヨーロッパが三二%、アジアは一九%でございます。何とこの三大陸で全世界の八九%を占める、IFPIの一九八六年の一番新しい調査でございます。国別に見ますと、アメリカが三四・四、日本が一四・六、西独が八・九というような順位になっておりまして、日本レコード産業の重要性というものも大変ふえてきておるわけでございます。  こういう中で、我々といたしましては、何といたしましても、第一は著作椎の擁護、二番目は需要の拡大、三番目は貸しレコードとの秩序ある制度の解決、四番目が国際間の連携といったようなものを強調しながら、今後活動を続けてまいりたいと考えております。  特に著作権問題につきましては、やはり私どもの基本的な存在基盤というのは著作隣接権のもとに成り立っておるわけでございます。我々のビジネスというのは、生み出した付加価値、これを金銭にかえ、それを再投資してプロフィットを生むということでございます。ただ、この付加価値というのは無形なものでございますので、そこでやはり法律が必要となってくるわけでございます。個人が生み出した創意工夫とかクリエーティブは、金にかえなければ創造サイクルはとまってしまいます。作家は美しい詩を書き、また作曲家が五線譜に曲を書きます。それが音楽のもとになるわけでございますが、それをレコード会社が音楽にして皆さんに買っていただく、そういうことで創造のサイクルが生まれるわけでございます。やはりこの著作権のもとに成り立っている我々の産業というものを、ぜひ今後ともよろしく御指導を賜りますようお願いをいたしまして御説明にかえさしていただきます。
  9. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) どうもありがとうございました。  次に、大橋参考人にお願いいたします。
  10. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) 御指名をいただきました大橋でございます。私は日本ビデオ協会の理事であり、かつ業務委員長を仰せつかっている立場でございます。  今まで三人の参考人からいろいろとお話がございまして、陳述がございまして、私の申し上げたいこともほぼその中に実は盛り込まれておるわけでございますけれども、私としましては多少別の切り口から御意見を申し上げたいと思っております。  著作権というものは、要するに基本的にはその著作権を尊重するという、そういう立場というものがやっぱり国民の間にそれなりの理解として定着をしていくということが必要であろうかと思われます。そういうものがベースにありませんと、我々著作者ないしは著作権者の立場としまして、言うなればみずからの努力で、自助努力で、言うなれば著作権侵害行為を防止をしていくということがなかなかもって難しいことになるわけでございます。  さて、そういうことになりますと、結局著作権というものを尊重する、そういう風潮、思潮というものは結局はもとへ返りますと教育という問題に立ち返ってくるのではなかろうかというふうに思われます。現在でも、多分高校の課程ぐらいからは著作権というような問題、あるいは工業所有権等も含めてのそういう無体財産権の問題については、恐らくはカリキュラムの中に組み込まれておるだろうと思いますけれども、実は現在はもう本当に、例えば小さいときからファミコンなどに親しみながら、言うならば著作物というものを日常の生活の中で体験をしておるわけでございまして、もっともっとそういうことで言えば早い時期から教育の徹底をお願いできればと、かように考えておるわけでございます。  たしかこれは日本音楽著作権協会さんの調査の中でも出ておったような記憶がございますけれども、例えば現在録音、録画など、いわゆるこれは三十条に関連する問題でありますけれども、いわゆる私的な複製などというものを最も積極的に活発に行っておるのはやはり要するに大学生、高校生の層でございますけれども、この方々のそれなりの意識のようなものを調査いたしますと、自分たちがやっていることというのは、本来著作物という、人が創作をしたものを言うなれば特に便利な手段で複製機器でもって利用さしてもらっておるんだという意識そのものはかなり実は浸透しておるというような状況があるようでございます。ということでございますと、やはりその辺のところをより早い時期から教育を徹底させることによって著作権思想というものを普及させることはさほど困難なことではないのではなかろうか、かように考えております。  著作権は他の工業所有権などとあわせまして、言うならば一種の無体財産権というふうなことを言われておりますけれども、まさに無休財産権ということでありますと、要するに例えば形のあるものを盗むとかというふうなことになりますと、当然ながらこれは時には窃盗になり、時には詐欺になるというふうなことで、これは非常にはっきりしておりますが、これからは恐らく世の中が情報化され、ソフト化されていく、いわゆるソフト化社会、情報化社会というふうに進んでまいりますと、むしろ財産権としてのそういうものというものはますますウエートが大きくなっていくということになろうかと思われます。そういうことで申しますと、非常にこの辺のところをかなり早くからそういうものを尊重する思想を教育の面でひとつぜひとも徹底をお願いいたしたい、かように考えておるわけでございます。  今回の法改正では、百一条に関連いたしまして、つまり要するに著作隣接権保護期間延長、それと要するにいわゆる我々が申します海賊版でございますが、著作権侵害行為、その中でのやっぱり海賊版というものの取り締まりを容易にする百十三条の改正、この二つがメーンの改正であろうかと思っております。  私自身の意見で申しますと、まず百一条に関しましては今までのような二十年ということ自体がまさに短きに失したというふうに考えておりまして、今回の十年間の延長、まことに時宜を得た適切な改正ではなかろうかというふうに考えております。先ほどからの御意見もございますように、まず現在の録音、録画の技術、つまり固定する技術といいますのはディジタル化いたしまして、それによってもうまさに半永久的な、言うならば素材として利用できるわけでございます。その時期に二十年でその権利を断ち切ってしまうということ自体がいかにも実態にそぐわないということがございます。  また一面、先ほどビートルズの例が出ておりましたけれども、例えば映画などで申しまして、仮に黒澤明監督の「七人の侍」という作品があるといたしまして、この作品が時間を経るに従って言うならばその値打ちが摩耗していくのかと申しますと、決してそんなことはございません。むしろ時とともにさらに光と輝きを増していくというふうな状況が当然あるわけでございます。  そのようなことを考えますと、例えば家庭で使われている電気製品みたいなものは十年前の製品と現在の製品と比べますと、十年前のものは明らかに陳腐化しておるわけでございまして、全くそれとは逆の性格を著作物というのは持っておるんだということを前提にお考えいただきたいというふうに考えておりまして、著作隣接権の問題だけではなくて、むしろ著作権そのものの言うならば存続の期間といいますか、保護期間というものが果たして五十年でいいのかというところまで実は本来は議論をされてもよろしいのかというふうに私は考えておるわけでございます。  それから次に、百十三条関連でございますけれども、今回の改正によりましていわゆる所持をすることをもって言うならば侵害行為とみなすということになったわけでございます。これが処罰の対象になることはまことにありがたいことでございます。従来は要するに頒布されたことが立証されなければ我々としては侵害行為ということでそれを摘発することができなかったという、まことに不便なことがございまして、そのことに要する費用、労力は大変なものでございました。これが今回、所持をするということで即我々の方は手が打てるということはまことにありがたいことであります。  大変あれですけれども、実態といたしましてこのような改正作業というものが国会に審議をされておるということ自体で我々のいわゆる自助努力というものはかなり勇気づけられておりまして、また事実そういうものにつきましては、要するにマクロで見ますと鎮静化の方向をたどっておりまして大変にありがたいことだと思っております。一日も早くこの法律というものの成立を望んでおるわけでございます。  簡単でございますけれども、以上、私の意見とさしていただきます。
  11. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終了いたしました。  それでは、これから質疑をさせていただきますが、私の質問に対しまして、中には既に御意見の中で御発言をいただいている向きもありますが、改めて要点として簡潔に御回答いただければ幸いと存じます。  まず最初に、著作権思想の普及につきまして各参考人にお伺いをいたしたいと思います。  著作権保護についてその実を上げるためには国民すべてが正しい著作権思想を持つことが基本と考えております。文化庁や関係団体の御努力等によりまして年々著作権思想の普及が進んでいるように思いますが、まだまだ不十分であろうと思います。そこで、現状についてどのように認識されておりますか、また、今後どのような取り組みが必要と考えておられますか、お伺いをいたしたいと思います。  恐縮でございますが、石本参考人より順次よろしくお願い申し上げます。
  12. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 従来から比べますと次第に一般にも著作権制度理解が広がって浸透しつつあるというふうに思われるわけでございますが、やはり欧米などと比較しますと、まだまだ不足しているのではないかなという気がしてなりません。日常、著作権管理の仕事をしておりまして、著作権制度理解がないための交渉の難航やトラブルが現場からの報告で絶えず耳に入っているわけでございます。これに対応するためにJASRACでは各種各様のPRをいたしておりますが、問題の大きさはその程度のもので対応できるものではないと思われまして、何とか中学校や高校の教育課程に取り組んでもらえないかと、その抜本的なところへの運動もいたしております。先ほど大橋さんからの発言の中にもございましたが、本当に著作権思想につきましては子供のときからはぐくんでいくということが大切じゃないかと思います。ここに御列席の先生方を初め、文部省また文化庁のお力添えをぜひともいただきたいと、この席をかりましてお願いを申し上げる次第でございます。  以上でございます。
  13. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  14. 小泉博

    参考人小泉博君) お答えいたします。  最近は国会が開かれるたびに著作権の問題が必ず取り上げられているというような状況になっておりますし、それから新聞などでも非常にその問題が取り上げられて国民の間にも普及しているということが感じられて、権利者である我々にとりましては大変心強く感じているわけでございますけれども、一国の文化のバロメーターとして著作権思想の普及ということが言われておりますので、先ほどから各参考人がおっしゃられるように、教育の場でこれをどういうふうに取り上げるかということは非常に大きな問題だろうと思います。  若人の頭脳というのは非常に柔軟でございまして、今までのいろいろな調査の例では若い人の方が逆にそういうものをよく理解しているようだというような調査結果も出ているようでございます。ですから、こういう便利さはそのもとを逆に破壊してしまうおそれがあるんだというようなことを子供のうちから自然に覚えていけば、大事にしようという思想はひとりでに生まれてくるんではないかというふうに思います。そういう意味では貸しレコードの問題というのは非常に大きな役割を果たしたのではないか、若い人たちの間に。それから、なおこれから先、もしホームテーピングの問題が何らかの形で制度化されて、報酬を払うというようなシステムが生まれますと、これはもう各家庭全部やっていることでございますので、国民の間にはその思想は一気に広がるので、これを解決するのが一番早道ではないかというふうに、実践で覚えていくということがやっぱり有効な手段ではなかろうかというふうに思います。私ども団体でも、著作権思想の普及というのは非常に力を入れているつもりでございまして、いろいろポスターをつくろうとか、キャッチフレーズをつくろうとかということで、今一生懸命努力しているところでございます。  以上でございます。
  15. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  16. 望月和夫

    参考人望月和夫君) 著作権思想の普及は緊急の課題ではないかと思います。  二つございますが、一つ権利者がみずから行うということと、もう一つは行政的にいろいろお願いしたいということでございます。私どもがみずから啓発活動権利侵害行為の排除ということを行わなければならないということはよく理解をいたしております。  そこで、二つ実施いたしておりますのは、当協会もJAS RACさん、または芸団協さんとともに著隣協、また著作権資料協会事業としてこの著作権思想普及の事業を行ってまいりました。例えば、「まんが著作権入門 悟空大冒険」とか、またビデオにおける「健太君は編集長」というようなものをつくりまして、中学、高校を中心にして配付いたしております。二番目は、レコード制作者といたしましても、レーベル、またジャケット、歌詞カード等に無断複製、無断レンタルについての注意を表示して一般の啓蒙も行っております。  次に、行政的に適切な施策を推進していただきたいということにつきましては、まず第一は、やはり先ほど来お話がございましたように、義務教育の課程において著作権についての基礎的な知識を付与するカリキュラムを整備していただきたいということでございます。それから二番目は、著作者に対する講習会、研修会、また全国的に継続的にこれらを実施いたしまして指導者を養成していただきたい。三番目は、著作権に関する資料、情報、また収集、保管、提供に対する著作権センターというようなものを設立されまして、日常的な研究活動普及活動を行っていただきたいというように思います。  以上でございます。
  17. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  18. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) この著作権思想の普及につきましては、先ほど私の意見として申し上げております。  具体的に今いろいろな活動をいたしておりますけれども、その中で、最近行いまして非常に効果的であったと思われました事例でございますが、日本ビデオ協会日本音楽著作権協会さんあるいは日本商品化権協会さん等々集まりまして、実はこれは警察庁の方の御管轄でございますが、不正商品対策協議会というふうなものを実は結成をいたしました。ここで不正商品の発生を防ぐためのPR活動、あるいは不正商品が発生した場合のそれに対する法的な対応についてお互いに協力をしながらやっていく。こういう活動をしておるわけでございますけれども、実はことしの六月でございますけれども、その一環といたしまして、漫画本でございますが、題しまして「鍵のない宝石箱」という題の漫画本をつくりました。実はこれは中学の一年生を対象にいたしました学習雑誌にそのまま掲載をいたしますとともに、別冊にいたしましてこれを大量に配付をいたしました。大変にいろいろと学校の教材等でもお使いをいただいたという実例がございます。今後ともそのような地道な活動を継続していくことによりまして著作権思想を普及させていきたい、そういう自助努力を重ねてまいりたいと思いますが、先ほどもお願いいたしましたように、教育の課程の中でひとつぜひともこの問題を積極的にお取り上げいただきたい、かように考える次第でございます。
  19. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。  それでは二番目に、今回の法改正につきましては一応の評価をしていただいているようでありますが、今後隣接権保護期間の一層の延長を初めといたしまして、著作権問題については、それぞれの立場から御意見、御要望があるかと思います。法改正が必要なもの、行政に望まれることなど諸課題につきまして各参考人の御意見を伺いたいと思います。
  20. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 法改正が必要なもの、行政に望まれる諸問題についてでございますが、時間的な関係もございますので、簡単に要点を申し上げることにいたしたいと思います。  著作権問題としまして非常に大切な問題として考えておりますのは、私的録音録画に対する報酬請求権制度の導入でございまして、これを早急に確立していただきたいと切望しておるわけでございます。著作者にとりましては、海賊版とある意味では同じものでありまして、自分たち権利が安易に多量に侵され続けていると見られるものでございます。ぜひともこの問題に対する報酬請求権制度の導入について先生方のお力添えで実現していただくようお願いを申し上げる次第でございます。  以上でございます。
  21. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  22. 小泉博

    参考人小泉博君) 先ほど私が、もう私の陳述の中で三つも関連して申し上げてしまいましたので、あとつけ足すことというのは、今石本参考人の言われた私的録音録画の問題があるのでございますけれども、これはまた後ほど御質問があろうかと思いますので、ちょっと最近の私どもの間でビデオグラム処理についてありました事例をちょっとお話ししたいと思います。  最近私ども芸団協加盟団体一つであります日本俳優連合というのがございます。森繁久弥さんが理事長なんですが、この日本俳優連合と、それからカラオケビデオというのがございますね。これは劇場用映画がそのままカラオケビデオに使われておりまして、これは本来私どもが考えた演技とは全く違った使われ方をしているのだということで、これは一体どういうふうに解釈したらいいのか、映画的著作物の上における実演家権利というものが認められていないために、これが映画制作者の全く自由に使われているという事態がございまして、これは私ども人格権にもかかわる問題ではないだろうかということで、映画制作者の皆さんとの間に話し合いの機会を持たせていただきました。二年ぐらいかかりましたのですけれども、結局はその交渉でやっと何らかの報酬を払おうということで決着がついたということでございます。本来でいえば、まずどんな俳優でも、自分の演技をああいう形で使うということはぜひやめてもらいたいというのが本心でございますけれども、そう言っていてもどんどん使われて、現に出回ってしまっているという状況がございます。これが法律上どうしても、闘った上で一体勝つのか負けるのかよくわからないというような問題がございまして、そういうことが非常に残念な結果ではございますけれども、それでも映画制作者の皆さんとすれば精いっぱいの好意を示していただいたということで、そういう解決がつけられたという問題がございました。  それから、テレビでごらんになったことがあるかもしれませんが、NG特集というのがございます。このNGというのは、本来使われなかった部分ということで、こういうものが残っていること自体がおかしいのでございまして、これも事映像ということに関しますと、実演家権利が全く認められていないということで、この映像の上での権利実演家人格権の問題というのは非常に密接にかかわり合っているということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
  23. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  24. 望月和夫

    参考人望月和夫君) 二つに分けまして、著作権法改正を要するものとして五点ばかり、あと行政指導をお願いしたいものを一点申し上げたいと思います。  まず一つは、レコードの二次使用権というものが及ぶ範囲内を少し拡大していただきたい。現在は放送に権利が及んでおるだけでございます。このほかレコードを営業に使用している業種というのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれどもたくさんございます。そういったような業種に対して著作権者と同じような扱いをしていただきたいということがまず第一点でございます。  それから二番目の、私的録音録画について何らかの規制、報酬請求権制度の導入を早急に実施と、これはまあ後ほどお話しいたしますけれども、新しい技術革新というのはどんどん進んでまいります。それに伴って新しい製品が出てまいりますので、それとあわせてなかなか解決が困難となってまいりますので、早期制度化についてお願いをしたい。  三番目は、図書館においてレコードの館外貸し出しにつきましては多少規制を加えていただきたいということでございます。  四番目は、先ほど来の保護期間の整備をさらに進めていただきたい。  五番目は、隣接権条約にぜひ早く加入していただきたいということでございます。  次に、行政指導をお願いしたいというのは、やはり貸しレコード業との秩序の確立についていろいろと指導をしていただきたいということでございます。  以上でございます。
  25. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  26. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) 私がお願い申し上げたいのは、まず何と申しましても三十条の私的複製関連の問題であります。現にいろいろと審議をされております。つまり録音録画機器等に対する賦課の制度、第十小委員会でいろいろと議論が展開しておるようでございますけれども、何と申しましても三十条は著作者権利というものがその部分でつまり制限をされておるわけでありますが、ただし、これとてもやはり著作権者のその権利というのが不当に害されない範囲の中でのみ私、複製というのが認められておる、かようにやっぱり解釈するのが本筋であろうかと思われますが、じゃ、現状はいかがかと言えば、何と申しましてもこの録音録画機器というものが、あるいは例えばその図書、印刷物におけるゼロックス等のものも含めてでございますけれども、まさにこのコピーというものがこれだけ大きく広がっております。これを著作権者の立場から申しますと、まさにコピー公害とでも言うべきものであろうかと思われます。  これに対して、何らかの言うなら著作者に対する手当てというのは、これは当然のことでございまして、あとはこれを一体だれがどういう形で負担をするのかということでございますけれども、先ほどちょっと触れましたように、こういうコピー等を最も積極的、活発に行っておる実は高校生、大学生あたりの意識の調査の中では、むしろこれらのものはそういう著作者というものの創作活動その他について、それらを実は自分たちがかなり便宜的に要するに利用しておるのだということ、そういう意識は底流にかなり実は定着しておるようでございまして、そういうことで申しますと、仮にそのことがその利用者にとって若干の負担増というふうなことに仮になろうとも、それはそれなりに社会的なコンセンサスを得る下地はあるのではなかろうかというふうに考えております。  ただ、手段といたしまして、じゃどういう手段が一番要するに適切であるかと言えば、例えば録音あるいは録画機器あるいはその録音録画のためのテープ等にある種の賦課金をつけるというようなことは確かにヨーロッパ等においても具体的にそれが行われている国がありまして、それによって格別の不都合が生じておるというふうには聞いておりません。そういうことになりますと、この問題につきましてはいろいろとまだ問題点は若干あるようでございますけれども、なるべくその方向で問題を早く御解決をいただきたい、かように考えるわけでございます。  それから引き続きまして、いわゆる海賊版の問題でございますけれども海賊版に関しましてはおかげさまで、言うなれば我々自身の自助努力というようなこともいろいろとやっておりますけれども、それによりまして例えば仮に、一昨年で申しますと我々の推定ではむしろ四〇%に近いくらい、ビデオソフトの出荷本数で申しますと四〇%に近いぐらいの海賊版があったのかというふうに実は我々は推定をしております。それが昨年には三〇%ぐらいまで多分それは下がっているんだろうというふうに思います。ことしはと申しますとこれももう二〇%ぐらいまで下がってきたのかなというふうに実は推定しております。いい方向に向かっておるというふうに考えております。ただしこれを、じゃ、ほかの欧米諸国と比べますとアメリカにおいてはまずせいぜい五%程度だろうというふうなことも言われておりますし、イギリスにおきましてもかなりそれに近い数字まで落ち込んでおるというふうなことも言われております。これらに関しましてはアメリカにおける例えば罰則の強化、かなり厳しい罰則が適用されておるというようなことがあったり、あるいは例えば海賊版であるや否やというものの例えば立証の責任を、海賊版のつまり要するにそれを持っておる方に立証責任を負わせるというような立法も実は行っておるところがあるというふうなことを聞いておりますが、つまりそんなふうなことがさらに今後とも御検討いただくことによって方向が出てきますと、さらに我々の方の活動はしやすくなるという状況が考えられますので、その辺も今後を含めて御検討いただきたいと思います。
  27. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。  次に、隣接権条約加入についてお伺いをいたします。  我が国の国際的な地位や同条約に既に三十二カ国が加入している現状にかんがみまして、我が国の加入の機は熟しているのではないかと考えます。そこで各参考人方々に同条約加入に際して国内条件整備状況加入後の対応策について見解をお伺いいたしたいと思います。時間がございませんので恐縮でございますが、簡潔にお願いいたします。
  28. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 長年の懸案である隣接権問題でございますが、隣接権条約加入やそのための条件整備の問題につきましては本日出席をされている隣接権者方々から述べられるものと思います。私どもにとりましては自分たち作品を大衆に伝えてくださる存在が大切でありますので、そのような方々の要望されるところを応援するとともに、国際的な地位を保つためにもぜひとも早急な加盟を望みたいと思います。  以上でございます。
  29. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  30. 小泉博

    参考人小泉博君) 先ほどローマ隣接権条約への加入については私相当詳しくお話をいたしましたのでちょっとつけ加えさしていただきたいと思いますけれども、世界の各国ではもう私どもが十五カ国とも加入した場合の処理についてお互いの権利お金処理ですね。それに関する互恵協定を結んでいるんでございますけれども、これがもう三年も四年も前というような事態もありまして、一体日本は何をぐずぐずしているのかということで、各国が非常に協力的なだけに一体どうしたんだというようなことで国際的なおつき合いの上で非常に困っているというのが状況でございます。  実は先ほど申し上げました映画における実演家権利というような問題も、一つはその権利が確保されない理由といたしまして、隣接権条約の中でそういうふうに取り扱われている。ですから国際的にもそういうふうになっているので、日本だけがそういう実演家権利を認めるのはどうでしょうかというようなことにすぐなってしまうんですが、実はこのことに関しましては今から三、四年前ですか、WIPO、世界知的所有権機関というのがございまして、それの広報著作権部長をやっていらしたクロード・マズイエさんという方が尋ねて来たことがございます。この隣接権条約に関しては非常な権威なんですが、この中におけるこの映画権利の取り扱いを正確に各国で守るのは問題があるというふうに考えている、ですから日本のような大国が早く隣接権条約に入ってそういう主張をしてその悪いところをできるだけ早く直していくようにというような努力をしてほしんだということをおっしゃっていました。そういうことがあったということをつけ加えさしていただきます。
  31. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  32. 望月和夫

    参考人望月和夫君) 隣接権条約への加入につきましては、著作権審議会の報告におきましてもその必要性は明確に述べられております。  以下三点申し上げますと、一つは、私どもも本当に長い間の要望でございましてもう二十年間も切望してまいりました。それについて加入に当たっての問題点ということは、やはり放送業者との問題がございます。放送業者とは十分協議をいたし、円滑な秩序形成に努力する所存でございます。三番目は、世界的な情勢といたしまして、先ほどお話がございましたように三十二カ国も加盟している。日本が私がお話ししました世界第二位の地位を持つこのレコード産業の中で、やはり文化国家として早く加入するということが必要ではないかというように思うわけでございます。  以上でございます。
  33. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  34. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) 確かに三十二カ国も加入しておって日本加入をしてない、何たることだというふうなことになるわけでございますけれども、一方で、とにかく例えばまだアメリカやソ連などという大国が加入してないではないか、こんなふうなお話も折に触れて出てまいります。  ただ、私が考えておりますのに、ソ連のことはわかりませんけれども、アメリカというのは著作権法に関しましてはかなり特殊な国であるというふうに考えておりまして、例えば、要するに、いわゆる著作権というものに絡んだ商品というものが、商品という形をとって所有権が移転しますと、そこで著作者権利というのがその時点で断ち切られてしまうというふうな、つまり通常ファースト・セール・ドクトリンなどというようなことが実はあるわけでございますけれども、この辺のところがつまりアメリカにある、そういう仕組みになっておるということで、つまり日本著作権法に基づいた我々の例えばビデオの流通などとかなり実は食い違ってきて、非常に不便を感じるというようなことも間々あるわけでございます。  そういうことも含めまして、例えばアメリカやソ連というのが仮にこれに加入をしてないということとはかかわりなく、いずれにしましても、やはり著作隣接権というものをお互いに尊重していくというのは当然やるべきことでもありますので、したがいまして、この隣接権条約に関しましてはなるべく早期にこれは加入する方向で進めていくべきではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  以上でございます。
  35. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。  次に、録音録画機器等に対する賦課金制度の導入についてお伺いをいたしたいと思います。  この問題につきましては、本文教委員会でもたびたび附帯決議を行うなど、従来から検討が行われているところでありますが、いまだに実現を見ておりません。そこで、制度実現の必要性や問題点などについて各参考人から御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  36. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 私どもJASRACと芸団協、そしてレコード協会とが昭和五十八年に共同で実施した調査によりますと、全国で年間八十億曲を超える音楽著作物が個人的にコピーをされております。先ほど申し上げましたように、これだけの音楽の録音が行われながら、音楽の著作者たちには一円の代償も支払われておらないわけでございます。今月十二日の衆議院で、この問題について「抜本的解決のための制度的対応について検討を進めること。」とする趣旨の附帯決議をしていただき、著作者団体としては大変感謝をしている次第でございます。が、今第十小委員会での審議が進められているとはいえ、この問題について要望を文化庁にいたしまして以来十年以上が経過しているわけでございます。先生方の御助力によりまして、何とか一日も早く賦課金請求制度の導入を実現していただきますようお願いを申し上げる次第でございます。
  37. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  38. 小泉博

    参考人小泉博君) 私どももJASRAC、それからレコード協会と一緒になって、この問題は何度も何度も立法府それから行政府の皆さんにお願いをしているところでございますけれども、とにかく第五小委員会、それからそれを受けての懇談会ということで、十年近い話し合いがいろいろな学者の先生も交えて行われているわけでございまして、この間にはもうヨーロッパでそれを導入している国の法律も研究し尽くされているわけでございます。ですから、もう理屈は出尽くしているのであろうというふうに私は思います。今、第十小委員会で検討が進められているんでございますけれども、また最近は海外を調査に参りまして、恐らく外国ではまた調査に来たのかということで大変驚いているんじゃないかと思いますが、とにかくこれはもうどういうふうに私ども解釈したらいいのか。多分これは産業と文化との兼ね合いの問題ではないだろうかというふうに解釈するしかないんでございます。  西ドイツなどは二十年も前からこの制度を導入しておりまして、それから次々とそれを導入した国、その国の著作者とか音楽産業あるいはミュージシャンというのは、そういう国々に比べますと、大変なハンディをしょって仕事をしているということになるわけでございます。殊に日本が全く世界一の録音機器の普及率を誇っているわけでございますけれども、それから生産輸出国であるということを考えますと、この問題に関しましては実は西ドイツ方式などというのは非常に恥ずかしいというふうに考えていかなければいけないんじゃないかというような気さえいたします。今後の日本の政治の行き方といいますか、優先順位をどういうふうに切りかえていくかという問題につながると私は考えております。
  39. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  40. 望月和夫

    参考人望月和夫君) 現在、著作権審議会の第十小委員会において報酬請求権制度を導入した場合に、その具体的な事項について審議中でございます。私もその委員の一人といたしまして出席いたしておりますが、審議のスピードアップと速やかな制度実現をお願いしたいというように思います。  以下、三点について御説明いたしますと、まず我が国の電機業界の技術開発能力というのは大変スピードを増しておりまして、新しい製品が続々と世の中に登場しておるわけでございます。ディジタル・オーディオ・テープ、また最近では書き込み専用のコンパクトディスク、生ディスクといいましょうか、そういったような製品も来年には登場するというようなことになってまいりますと、そういった製品が出て普及してしまいますと、この解決はさらに困難となることは必至でございます。したがいまして、ぜひ早期の制度化をお願いしたいというように思います。  次に、西独、オーストリア、フランス等も既に実施をいたしておりますので、そういう国から考えますと日本の方がさらにこの状況は早くしなければならないというように考えるわけでございま  それから三番目に、先ほど申し上げましたように、ディジタル・オーディオ・テープの新しい開商品が出た。これが世界的に見まして、ソフトのメーカーからやはり反対もあり、まだソフトが売されていない。かつてCDがハード、ソフトが一体となって五十七年にスタートいたしました。現在の普及率は大変なものでございます。先ほど御説明したとおりでございます。そういう点から考えますと、早くこういった面を解決するのにも、産業の機会、また輸出の機会を損なわないようにこの制度をスピードアップしていただいて、こういったようなものがひとつ日の目を見るような形にすべきではないかというように思います。  実は、私的でございますが、私どもの会社はハードメーカーでございまして、またテープも自家で製造しております。今、ソフトの方の会長を務めさしていただいておりますけれども、ソフトではお金を取りたい、しかしハードは払いたくない、これが現在の制度で一番長引いている問題ではないかと今身にしみて感じておりますけれども、やはりこれは産業の育成、また文化のために著作権制度をきちっとするためにも、私はこの報酬請求権制度の導入について賛成をしておるわけでございます。
  41. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  42. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) この録音録画問題といいますのは、これまでのところ、主として録音というところでデータもそろえてきましたし、また議論もされてまいりました。ただ、実は録画の問題というのはこれからでございます。VTRの普及はますます非常に広がってまいりました。恐らくは近い将来はまさに一家一台というふうな状況が目に見えるという状況になっております。そういう状況になってまいりますと、当然ながら、これは録音だけではなくて録画の問題が俎上に上ってもしかるべきかというふうに考えております。  一つ事例を申しますと、現在実は、我々ソフトの供給者の大部分は、例外がたまにありますけれども、大部分はビデオテープのリリースとビデオディスクのリリースとをかなり時間をあげております。なぜかと申しますと、ビデオディスクは御承知のとおり、特にレーザーの場合はそういうことになりますけれども、要するに基本的には、あのビデオディスクは幾らそれを使用いたしましても、つまり利用いたしましても摩耗いたしません。非常に完璧な状態で常に保存をされるわけでありまして、かつクオリティーは非常によろしい。こういうことになりますと、例えば現在、我我の市販のソフト、つまりテープで出しておりますソフトから、ソフト・ツー・ソフトというものでコピーした場合、ビデオディスクというものを言うなればマザーないしはマスターにして、それからコピーした場合とは明らかに実はクオリティーが違ってまいります。そうなってまいりますと、一方でビデオテープのソフトを出しながら、一方でビデオディスクで同じものを出していくということになりますと、当然非常にいいコピーが市中に出回っていく。要するにこれまた海賊版の温床になっていく。こんなふうなことも含めまして、実は大部分は現在ビデオテープとビデオディスクのリリースの時期をずらしておるというふうな実情がございます。  恐らくはこれからますます録音録画の機器、テープ、ソフトすべて含めましてディジタル化してまいりますと、当然ながら、要するに質の低下ということは全く考えられないというのが、そういう方向で進んでいくものと思われますので、したがいまして、この録音録画機器等に関しましての賦課金の制度というようなものは、これは多年議論をされてきておりますので、むしろ早期に実現をする方向で御検討いただければというふうに考えております。  先ほどもちょっと触れましたように、今望月参考人から、例えばハードメーカーの立場としては自分の方は払いたくないんだというお気持ちは当然これ実はある。これはビジネスとしましては当然でございますけれども、ただ、先ほど私が触れましたのは、実は意外と国民の間でこういう著作物をコピーして利用することについては何がしかの対価を払うべきではないのかというふうな、要するに底流のようなものが実は意識として定着をしつつあるのではなかろうかというふうに思われますので、そういうふうなことも含めて御検討いただければというふうに思います。  以上でございます。
  43. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。  実はこれから個々的に参考人の御意見を伺うという予定でおりましたが、時間の関係もございまして、私からの質問はこれから申し上げることを最後といたしまして、あと委員先生方の御質疑に入りたいと思います。  最後にお聞きしておきたいことは、世界の国々との交流がこれほど活発になった今日におきまして、知的所有権の保護につきましても国内問題として処理できる限界を超えておりますし、国際的観点に立った対応が求められていると思います。国際的協力体制のあり方、我が国が果たすべき役割等の問題につきまして、お考えなり御要望といったものがおありでしたらぜひお伺いをしておきたいと思います。  申しわけございませんが、石本参考人、お願いいたします。
  44. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 御承知のように音楽には国境がありません。放送や通信が発達したこの時代の音楽は瞬時に世界をかけめぐるという可能性を持っておりますところから見ました場合、特に隣接するアジア一帯の制度のおくれが大変重要な課題と考えられるわけでございます。ぜひこれらの国に対して指導的な立場で働いていただきたいと考えますとともに、広く国際条約発達加盟の推進に力を尽くしていただきたいと考えるものでございます。  以上でございます。
  45. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  46. 小泉博

    参考人小泉博君) 今の著作権制度のいろいろ改正というようなことを通じまして、今日本は何とかこういう知的所有権保護のあり方では世界のあるレベルには達しているというふうに考えられるのでございますけれども、これからこの著作権の問題という範囲を超えて技術革新というのがこれだけ進んでまいりますと、技術開発の上でも日本はトップグループにいるということを考えあわせていくと、その開発に伴う責任ということも当然考えてしかるべきであろうと思います。ですから、著作物が非常に技術性の強いものに移っていくということが考えられるのではないか。したがいまして、著作権法と工業所有権法というその二つの調整の問題がこれから世界の大きな問題になっていくのではないかなというふうに考えております。  そのためには、結局新しい知的所有権の保護の上では今までの著作権法という枠を超えた新しい何か考え方が必要であろう。そのためには日本国内のいろいろな省庁間の連絡も密にして、日本国内だけの狭い考えでの対立のようなことは絶対に避けていかなければいけないでしょうし、まさに日本文化国家としてこれから進んでいく以上、そういう面での国際的な責任をきちんと果たしていくという姿勢を世界に示していかなければいけないのではないか、そういうふうに私は考えております。  お答えになるかどうかわかりませんけれども、以上でございます。
  47. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  48. 望月和夫

    参考人望月和夫君) 国際的に知的所有権問題につきましては、ガットの貿易協定その他の中で最近大変論議が進んでおるものでございます。その際にどうも日本の場合にまだ協調体制といいますか、世界の各国との話し合いがなかなかうまくいかないという問題もございます。これはやはり国際条約加入をしていないということもございますし、そういう面での世界各国の利用団体との協調ということがまず第一必要ではないかというように思います。そういう面で国際的な責任を果たしていかなければならないというように思うわけでございます。知的所有権制度についてはやはり理解し、尊重し合う機運とか条件を整える必要があろうかというように思います。  以上でございます。
  49. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。
  50. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) 先ほど石本参考人から、つまり東南アジアにおける例えばそういう海賊版の横行というようなことについていろいろと御指摘がございましたけれども、あの地区に関しましては、実は香港というものは除きまして、おおむね映像に関しましても言うなれば不正商品の巣窟、非常に表現が悪うございますが、大変にひどい状況がございます。そういうことで申しますと、このアジアの一画において指導的な立場を果たしております我が国におきまして、ひとつぜひともそういう著作権問題に関しましてのアジアの連携と申しますか、そういうものをお進めいただきたいと、かように考えております。近くは韓国におきましても万国著作権条約に最近加盟をしたというふうなこともございまして、いい方向に今後向かうことが期待されておりますが、さらに一層の御努力をお願いしたい、かように考えております。  さらに、先ほど触れましたように、実はアメリカの著作権法制度日本制度との間に若干の食い違いがあるというふうなことで、我々の映像ビジネスにおきましてもいろいろの不便があるというふうなことが実は実態として出ております。ただし最近アメリカの、例えばこれは映画界の方々が主となっておるようでございますけれども、いわゆるファースト・セール・ドクトリンによります頒布権というものの言うなら放棄といいますか、頒布権の中断といいますか、そんなふうなものが果たして実はいいのかどうかというようなことにつきましてのある種の反省が出ておるというふうなことも実は聞いております。そういう時期でもございますので、すべてこれらは国際的に解決すべき問題であろうかと思われますので、今後とも、我々も努力をしてまいりますけれども、一層それなりの御対応をお願いいたしたいと、かように考えております。
  51. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ありがとうございました。  私よりの質疑は以上でございます。  引き続きまして、他の委員から補充質疑の申し出がございますので、これを許します。  御質疑のあります方は順次御発言を願います。
  52. 安永英雄

    ○安永英雄君 望月参考人にお尋ねをいたします。  隣接権条約加入の問題でございますが、各委員方々、これは早急に加入しなければならないという意見が出ました。これは当委員会でも何回も何回も審議をしておるわけでありますが、その都度、なぜ加入できないかというネックになっているところが、レコード制作者、ここのところにあるんだというふうに私は感じるんですよ。だから、あなたの方も長い間要望されてきた、あるいは文化国家云々の話もありましたけれども、やっぱり早急に加入するとすればレコード業界といいますか、ここらあたりが早くいわゆる地ならしといいますか、条件整備というものを仕上げなければなかなかこれは実現しないんじゃないかというふうな私は感じを持っているわけです。  あなたからはたしか今放送業者の話もちょっと出ましたけれども、ここもネックがあることはあるんです。それは私も知っています。知っていますが、相対的にやっぱりレコード会社そのものが早く踏み切らないと、それからみずからもやはり条件整備努力しないとこれは進まないわけでありまして、だれに頼んだって、文化庁やれるわけじゃありませんし、先ほどの小泉さんの発言は、芸能実演家立場からおっしゃったんだろうと思うけれども、これあたりは外国に出ていったら恥ずかしいというくらいに、そして、はっきりは申されませんでしたけれども、いわゆるもう加入してしまって、そしてこの条件整備に入ってもいいんじゃないかというふうな意味にもちょっととれたんですけれども、今の状態加入を直ちにやって、レコード製作者関係のところでそういった形で後でこの条件あたりが整備できるというふうなところまでいっているかどうか、あるいはみずからどういうふうにしてこの条件整備努力をされておるのか、そこらあたりをお聞きしたい。
  53. 望月和夫

    参考人望月和夫君) お答えします。  今放送業者といろいろ話し合いをしているというだけではだめだというような御指摘を受けました。確かにそのとおりでございます。しかし、私どもとしてはやはりこの隣接権条約加入ということについては、世界の各国から最近大変その面について要望もございますし、今後の展開といたしましては、それぞれネックとなっておるところを一つ一つ排除していきまして、自分からこういった方向について解決策をしていきたいというように思っております。
  54. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 芸団協小泉参考人にお尋ねいたします。  この著作権問題を含めまして、我が国の文化政策の国際的なおくれがしばしば指摘をされてきたところでありますけれども、そうした中で、劇団や音楽団体などの運営で何かと大変なことがあったと思いますし、その上もし今問題の消費税が導入をされるということになったらどういうことが起こるか、内部での検討されておる状況がありましたら、この機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  55. 小泉博

    参考人小泉博君) もちろん今回の消費税の導入という問題も、私どもの機関でもいろいろと話し合いが行われております。私ども団体は五十八団体が所属をしておりまして、その団体の性格は千差万別でございます。ですから財団法人あり、社団法人あり、任意法人あり、協同組合あり、労働組合ありということでございまして、この各団体の今回の消費税に対する姿勢というものは必ずしも一様ではないという事情がございます。そのために私ども芸能人の間では、鑑賞団体も含めまして、前から入場税の撤廃運動ということを非常に強力に推し進めておりまして、入場税対策連絡会議という団体を別にこしらえてありまして、そこのメンバーとして芸団協も参加しているということでございます。ですから、消費税の問題はその入場税対策連絡会議の中での方針に従っていこうということで推進しているわけでございます。  今回の消費税の問題はとにかくどういうふうに解釈したらいいかというと、文化とか芸術、芸能に関しての消費税、何にせよそういうものに対する税金は御免ですという考え方でございます。ですから、できるだけやめてほしいということですね。今まで不当に、そういう芸術、芸能というものに対して、国の税制のあり方というものは過酷であったということが言えると思います。ですから、そういう面を考えまして、今後日本がどういう方向に進むかということをはっきりと理念として持っていけば、その中で文化というものを大事にしようという姿勢があれば、どこかの時点でそういうものに対して特別な措置を講じようということがあってしかるべきではないだろうかというのが私どもの基本的な姿勢でございます。
  56. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 賦課金制度についてのことをちょっとお伺いしたいんですが、賦課金制度は今の時点で大変いいかなと思いながら伺ってきたんですが、ただ、賦課金制度の場合に、例えばレコードでもビデオでもいいんですが、どのレコードがどれくらい使われたかというふうな割合、そういうことはちょっとつかみ切れないんじゃないかと思うんですが、賦課金制度をもし採用するとすれば、その入ってきたものの著作権者に対するバック、そういうのはどういうふうにお考えでしょうか。どなただろうかな、これは。大橋参考人でしょうか。あるいはほかにお考えがあればどなたでもよろしいですが。
  57. 石本美由起

    参考人石本美由起君) 賦課金制度の問題に対しまして、これはやっぱりどういうふうにデータを集め、どういうふうに対応していくかということは、いろいろ問題もあるかと思いますが、やっぱりそれぞれのデータを集めまして、その中から作家個々に対する一つ使用料ですか、それを算出していくということになると思うんです。例えば現在カラオケにしても、それから一般の社交場にしても、それぞれの一つの店の規模だとか、使用頻度だとか、そういうものをリサーチしまして、そしてその中から契約をいたしまして、それをブランケットとして徴収したものを、今度は使用頻度というものをサンプリングしまして、その中から作家のそれぞれの人の額というものを算出していくという、そういうことの一つの考え方というものを持っております。
  58. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 大橋参考人にお伺いをいたします。  耳の不自由な方がビデオを見るときに、全然聞こえないわけです。私も中国へ行ったときに、テレビをつけましてアメリカ映画を見たんですが、何が何だか全然わからないんですね。ちょうどそんな状況ではないのかと思うのですけれども、こういう方々が、ぜひビデオテープの中に手話が入ったり、あるいは字幕で入るようなものを出してほしいという要望があるわけですね。またテレビ放送などを自分たちでコピーしまして、それを大変な時間をかけて作業をしてつくっているというような障害者の団体もあるわけですけれども、アメリカなんかでは内蔵されているようですね、字幕が出てくるんだそうですね、アダプターを通しますと。それがもう当たり前なんだそうですね。日本の人たちはアメリカ映画ビデオテープで見るときに、そのアダプターをわざわざ買いまして、それで入れますと英語が出てくる。そうすると、余り耳で聞くのは得意じゃないけれども、ちょうど目は画面を見、字幕を見る、そしてまた耳で英語を聞いているという、こういう勉強に使えますよというようなことが出ているわけですけれども、障害者の権利を守るというような立場で、私はやっぱり、ビデオなんかにもそういう条件をつくってやることは非常に大事なんじゃないんだろうか、こんなことを考えますけれどもビデオ協会としてこういうことを検討されたことがありますかどうかというようなことをひとつお伺いしたい。  そして石本参考人にお伺いするのは、衆議院で芥川参考人お話しになったことを私議事銀を読みまして思ったんですけれども、韓国に著作権団体ができた、大変うれしいことです。そして万国著作権条約加入をした、これも大変うれしいことでありますが、日本と韓国との間に相互協約というんですか、何かそういうものを結ぶに当たっては大変難しい問題がある。日本の音楽が向こうに行った場合に日本語で歌ってはいけない、あるいは作詞家の名前がかわるとか、こういうことがいろいろあるんだという話をなさって、これはもう政治的に解決をしてもらわなければならないんだとおっしゃっているわけです。少し具体的にお話をしていただくとありがたいと思います。  以上です。
  59. 大橋雄吉

    参考人大橋雄吉君) 私の方からまずお答えを申し上げます。  今先生が御指摘された事実というのは、実は私どもの方も、そういうふうなことについての御協力の申し入れを受けたことがございまして、それに関して検討をしたことがございます。実は現在も検討中というのが正しかろうと思います。  いわゆる障害をお持ちの方についての我々の方の言うならソフトの提供でございますけれども、いわゆる視力について問題のある方には例えば点字その他というような手段がございまして、これは非常にどう申しますか、大変に使われ方として特殊でございますので、したがって、いわゆる著作者権利というものがそれによって侵害されるおそれはほとんどないということで、これに関しましてはまず問題なくそれなりの手段がとられておる、こういうことでございます。  問題は聴力の障害をお持ちの方でございますけれども、今おっしゃいましたようにいろいろな方法があるのかと思われます。それは、いわゆる我我の映画なら映画というもののせりふを、言うなればスーパーインポーズで出していくというふうなことが当然考えられるわけでありますし、また手話でということもあるいはあろうかと思います。  ただ問題は、それらの仮にソフトと申しますのは、映像としましては、つまりビジュアル的にはこれは完璧なものでございまして、したがってそのソフトというのは、いわゆる健常者と申しますか、通常ハンディキャップを背負っておられない方、その方がお使いになって十分に言うなれば商品として通用する商品になる、こういうことが一面ございます。そういうことになりますと、その範囲というものをかなり限定をして、どういうふうな形でお使いいただくことが最も言うなれば著作者権利も侵害されず、かつ要するに障害をお持ちの方の御要望にもこたえられるのか、こういうところで一つの兼ね合いのようなものを考えなければいけないということで、何にしましても、我々の方としましては、そういう御要望にどういう形で沿うのが一番よろしいのかということで現在検討中、こういうことでございますので、なるべく早急にそれに関しては結論を出しておこたえをする方向で考えてまいりたいと思っております。
  60. 石本美由起

    参考人石本美由起君) この問題に関しましては、我々JAS RACの人たちも韓国に伺っているわけでございますが、実際に韓国を旅行した人たちお話も聞きましても、酒場とかそういう隅では非常に日本の歌が人々に歌われ、また演奏されているということでございますが、公には日本の歌というものを放送したり演奏したりしてはいけない。例えば日本の歌を歌う場合でも今度は韓国の言葉にかえて歌ってしまうとかという、そういうことでございまして、これは国家としてそれは禁止しているのではなくて、そういうものを何か決める政治的な組織みたいなものがございまして、そこから圧力がかかっているんではないかということでございます。実際に韓国の著作権協会であるKOMCAという団体があるわけでございます。このKOMCAと日本のJASRACというのは非常に友好関係を保っておりまして、実際に現在も、管理契約を相互に結ぼうではないかという話まで進めていまして、KOMCAとJASRACの往来というのは非常に今緊密にやっているわけでございます。  ただ、そういうことで、KOMCAとかそれから韓国の作家方々がどういうふうな動きをしましても、なかなか日本作品が公に演奏されるということが解除されないというのが現実でございまして、これはぜひ政治家の先生方にお願いをいたしまして、政治的な解決を図っていただければ大変ありがたいなと思いますし、戦後四十何年もたつ時代ですので、もう日本の歌が大手を振って韓国で歌われてもいい時代ではないかなという気がしてならないわけでございます。  以上です。
  61. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお聞かせくださいましてまことにありがとうございました。委員会を代表し厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  午前の審査はこの程度とし、午後二時二十分まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ─────・─────    午後二時二十分開会
  62. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。本日、中村太郎君が委員辞任され、その補欠として岩本政光君が選任されました。     ─────────────
  63. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 休憩前に引き続き、著作権法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 安永英雄

    ○安永英雄君 午前中の当委員会におきまして、著作権法の一部を改正する法律案についてそれぞれ参考人方々から御意見をいただいたわけでありますが、その中で総じておっしゃることは、やはり実演家レコード製作者及び放送事業者保護に関する条約、いわゆる隣接権条約加入の問題が皆さんから一様に出たわけで、早急に加入をするようにやってもらいたいという意向でした。したがいまして、私はこの点についてもう少し掘り下げて質問をしたいと思います。  これはもう毎回の委員会質疑をし、そして附帯決議等で出てくる問題なんですけれども、現在のこの条約加入をしておる国というのはどこか、正確にお答え願いたいと思います。
  65. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいまの実演家レコード製作者及び放送事業者保護に関する条約、これはいわゆる隣接権条約でございますが、そこへの加盟国は現在三十二カ国でございます。
  66. 安永英雄

    ○安永英雄君 我が国の立場なんですけれども、他の国が入っていないから入らない、あるいは邦盤の保護はするけれども洋盤は自由に使える、こういうのではなくて、やはり日本自身がレコード生産額が、参考人からもお話がありましたが、アメリカに次いで世界第二位というふうな国際的な地位になっているわけですが、まず日本がやっぱり加入を早くする、そしてアメリカあたりはまだ入っていないんですけれども、これは条件等がよく似ておるわけですから、一緒にこの条約の批准をするような働きを日本自身がすべきでないか、こんなふうに思うわけですが、午前中の参考人発言等を聞きますというと、もう外国に出ていくと恥ずかしくてたまらないというふうなことまで発言が午前中ございました。この点どういうふうにお考えか、大ざっぱな立場で結構ですからおっしゃってください。
  67. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 隣接権条約への我が国の加入の問題は、もう委員承知のとおり、本年の一月に私の方の著作権審議会の第一小委員会で報告がございまして、そこで一定の秩序、準備が整えば速やかに加入すべきであるという御答申をいただいたわけでございます。  それで、その条件整備と申しますのは、これは今安永先生御指摘のように、レコード保護につきましてはレコード保護条約というのに別に五十三年に加入いたしておりまして、その条約において大体保護はされている。それからレコード保護条約保護されていない国につきましても、著作権法の百二十一条の規定でもって、いわゆる外国盤レコードにつきまして国内レコード業者が許諾を得て複製したものについては無断では複製できない、複製すれば処罰をするという規定がございまして、レコードについてはそういった二つの規定、条約によりましてほぼ保護されているわけでございますが、問題なのは、外国レコードを放送で使ったときに、その放送の二次使用料、商業用レコードの放送における二次使用料の問題が一番大きな問題になるわけでございます。そこで、その二次使用料の徴収、分配の仕組みというものをあらかじめ隣接権条約加入する前に整備をしておくと、こういう指摘でございました。  それで、午前中の参考人先生方からもいろいろお話がございましたように三つの手順があるわけでございますが、一つは、実演家団体につきまして、芸団協外国実演家団体との間でいわゆるお互いに権利を委託し合うという関係、それはレコードの場合も、外国レコード会社と我が国のレコード製作者との間で、いわゆる契約の中でそういう委託をし合うという、そういう関係をまずつくりまして、それで外国のその隣接権者を代表するような形で我が国の実演家団体並びにレコード協会が放送会社と二次使用料の交渉をする、こういう関係を全部つくり上げれば条件整備ができる、こういう関係にあるわけでございますが、最も問題なのは、この二次使用料の額の決定といいますか、そのあたりでございまして、権利者団体と放送局、放送事業者との間の交渉というのが、これができるかできないかがほとんどその全体の成否にかかっているというところでございます。  私どもといたしましては、この点につきましてぜひ煮詰めていただきたいということで、両方の側に強くお願いをいたしまして、現在その交渉につきまして両方でテーブルに着いて交渉が始まったという段階でございまして、私どもとしてはぜひこれを早くめどをつけまして、この隣接権条約加入について実務的な手順を踏んでいきたいというふうに考えている次第でございます。
  68. 安永英雄

    ○安永英雄君 方向はわかりますけれども、具体的に国内放送事業者が使っております洋盤、それから外国放送事業者が使う邦盤、この使用料を比較したらどんなふうになっているか、およそのことはわかるような気もするんですけれども、その使用料はどんなふうになっていますか。
  69. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 隣接権制度を有します外国において放送事業者が払っております二次使用料の額の現状でございますが、一九八五年のデータで申しますと、これはその当時、一九八五年の一ドルのレートが二百円でございましたのでそれで換算してございますが、イギリスで約二十一億円、それから西ドイツでも二十七億円でございますが、その年における我が国での二次使用料は六億六千五百万円という程度のものでございます。
  70. 安永英雄

    ○安永英雄君 きょうの参考人の中に放送事業の方はいらっしゃらなかったと思うんですけれども、問題は、レコード会社関係の代表は見えている。余り深くは聞かなかったんですけれども、その間の問題があるというふうなことも言われておったんですけれども、その言葉の中に、文化国家としてとか、そしてもうとにかく前々からこれは望んでおったんだというふうなことをおっしゃる反面、自分のところの、今あなたの方向を示されたようなことの努力は私は足らないというふうな気もするわけです。  そこで、やっぱり我が国の著作権法目的もはっきりしておるわけですし、そこにどうして今日まで、焦点ははっきりしているわけですね、今おっしゃったところは。これがどうして進まないのか、その点のネックは何かということについてもう少し説明してください。
  71. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 隣接権条約加入する問題というのは、そもそもは現在の著作権法ができました昭和四十五年当時にもう既に国会附帯決議がついてございますように、当時から問題であったわけでございますが、最もその点で消極的であったのは、やはり二次使用料を払う側の放送事業者側にあったんだというふうに思います。しかしだんだんに国際関係というものの進展もございますし、我が国の国際的な地位というものも向上してまいりまして、放送事業者の御理解もだんだん進んできたわけでございます。大変長くかかっておるようでございまして、まことに恐縮でございますけれども、本年になりましての進展といたしまして、先ほど申しました一月に著作権審議会の第一小委員会で、条件が整い次第、速やかに加入すべしという答申が出たというのは、これはその関係するその権利者、あるいは放送事業者の側での合意がだんだんに整いつつあるということの事態を反映しているんだと思いまして、この答申自体が一つの大きな前進であるというふうに私は考えておりまして、せっかく答申が出たわけでございますので、できるだけ早くこの現実に、先ほど申しました条件整備を整えまして、そして実務的、実際的に条約加入するという方向をたどっていきたい、現在そういう事態の進行中であるというふうに理解をしておるわけでございます。  現実に芸団協及びレコード協会は先ほどもちょっと申しましたように、放送事業者との二次使用料の交渉の中、これは国内の二次使用料の交渉の中でもあるわけですが、その中で条約加入後の二次使用料の取り扱いについての話し合いも始まったところでございますので、ぜひこれを結実させて条約加入という方向に向かわせたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  72. 安永英雄

    ○安永英雄君 私もきょうの参考人の方のあれに賛成なんですけれども、とにかく加入する、そしてそういった条件はその中で後で整備していっても間に合うというふうな意見もあったわけですけれども、今おっしゃったようなところで推進をしていっていらっしゃるけれども、私もやっぱりこれは毎年毎年出てきて、次々にもう各国が入っていっておる。そしてそのネックというのを見てみると、日本内部の問題ですから、この問題は一応加入して、そしてそういった問題を促進していくという方が、私は結果としてよろしいような気もするんですけれども、この点この考え方どうですか。
  73. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 先ほど申しました第一小委員会の報告は、条件整備にまず努力をせよと、そしてそれが見通しが立った段階で加入を速やかに進めるべきだというような御趣旨でございました。これは、まずはその権利者とその放送事業者との間での交渉といいますか、話し合いをまとめるということがまず先決であると私は思います。したがいまして、それは私ども必要に応じて話し合いについて促進をしたり、指導したりしていく所存でございますけれども、まずはその当事者同士の話し合いがまとまるように、これはまだもう少し時間があるわけでございますので、ぜひ精力的にそういった方向に進めていただくように努力をしていきたいというふうに思っております。
  74. 安永英雄

    ○安永英雄君 この審議会の小委員会からの報告書も私読ませていただいたわけですけれども、もうこれあたりは、やっぱりこの制度というのは我が国においてはもう定着したというふうな結論を出しているんですね。そして国際的にも定着しておる、ただ残ったのはということで毎回質問をすると、この条件の整備というふうに努力していますと、こういうことなんですけれども、今おっしゃったネックということで私ひとつ尋ねてみましたが、もうおっしゃったんですけれども、これはもう少し項目別にいったらこの加入の条件というのが整わない理由というのは、今さっきおっしゃった以外にあるんじゃないかと思うんですけれど、もう少し整理しておっしゃっていただけませんか。
  75. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 先ほど概括的には申し上げた次第でございますけれども、細かく申し上げますと、四つの事項に分けられるんだと思います。  まず一つ実演家団体同士の話でございますが、外国実演家団体と我が国の実演家団体、これは芸団協が代表するわけですが、その両方でお互いの権利を、それぞれの国の中で使われる自分の国の権利というものをその相手の団体に委託なするといいますか委任をする、行使についての権利を委任するという委任関係をお互いぽっくり上げるということが一つでございます。それからもう一つは、それと同じことがレコードについてあるわけでございますが、レコードにつきましてはそのレコードの原盤を供給する契約が個々にあるわけですので、その契約の中にお互いの権利関係の委任の部分を盛り込んでおくということでございます。そしてレコードの場合には、第三番目でございますが、これは各社ばらばらでございますので、それを各社の持っている外国から預かった権利というものを日本レコード協会という一つ団体にもう一回委任をいたします。これが三番目。そして最後に放送事業者と、それから芸団協レコード協会という二つ団体が二次使用料の額を決める。この四つの関係が見通しがつけばそれでいいことになるわけでございます。  それで、先ほどの参考人方々の中でもそういうことに言及された方がおられましたけれども、その第一番目の関係あるいは第二番目の関係、つまり実演家団体同士の委任の関係とか、あるいはレコードの原盤供給契約の中における条項の設定とか、そういうものについて、ほぼ主要国についてはかなり進捗しているというふうに思いますので、この辺は条件整備上は余り問題がないんじゃないかというふうに思っておりまして、やはり残っておりますのはその二次使用料の額の決定、ここにほぼ尽きるのじゃないだろうかというふうに私どもは考えております。
  76. 安永英雄

    ○安永英雄君 焦点はほとんどもう今わかりましたが、そこが解決しなければ、やっぱり踏み切れませんか。その点は踏み切らないからあれでしょうけれども、これはやっぱり促進しなければだめですよ。毎たびその条件というのを聞いてみますと、今のところにまず絞られてきていますということですから、これはやっぱり当事者も当然のこと努力をしなければならぬと思いますけれども、これはやっぱり文化庁あたりもう相当促進をしなきゃ、とても、毎年やったって同じことなんですよ。  そこで、時間がありませんから、レコードの問題で、やはり一つの間接的なネックになっているということも感じられますが、外国レコードの貸与に関する問題、この問題はもうこれは貸しレコードの貸与に関する権利を認めるといいましてもこの条約の中では義務になっていないわけですから、そうするとこれは貸与という問題を国際的に考えていった場合も、これは義務になっていないのを義務という形にしないと、この問題は解決しないような気もするわけですから、この点の、この貸しレコードというのは日本独得のものでして、これもやっぱり条約加入するのに多少ひっかかっておる点が私はあると見ておる。そういった点でもう少し説明してください。
  77. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 先生御指摘のとおり、著作権審議会の第一小委員会の審議経過の中では、隣接権条約加入に当たっての附帯的なといいますか付随的な事項といたしまして、これは隣接権条約の中には入ってはいないけれども、そのいわゆるレコードの貸与についての権利をそのときに合わせてといいますか、その際に外国にも認めるべきではないかという提言がありまして、そして大変これは先ほどの二次使用料よりももっと難しい条件整備がございますわけですが、それについてその条件整備ができた段階で速やかにそういうものについても、レコードの貸与の権利についても外国に認めるべきではないか、そういう御提言、それに即しまして私どもといたしましても、この貸しレコード条件整備についても進めているわけでございますが、これはまあ同じようなことでございますけれども外国実演家とかあるいはレコード製作者に我が国のレコード製作者との間で権利行使に関する、その委任に関する契約を結びまして、そして今度外国レコードなり実演家を代表する我が国のレコード製作者が貸しレコードの組合との間でもってそのレコードの貸与に関する権利の行使について相談をする、こういう関係になるわけでございます。  この問題で貸与に係る権利が、その報酬請求権になっている部分の報酬の額というのも一つの問題でございますが、もっと難しいのは、これは発売後一年以内の許諾権の問題でございまして、これが外国レコードの発売後一年以内の新譜について許諾がされないということになりますと、貸しレコードの業界の方は大変痛手をこうむるということになりますので、ここら辺の部分について両者が満足できるような円満な秩序の見通しというのはなかなか立たないというのが難しいところでございます。これについてもぜひ報告にもございますものですから、こういう条件整備についての話し合いを進めるように現在これも関係者を促しているところでございますけれども、これが先生おっしゃいましたようにどうしても隣接権条約加入に絶対に必要かどうかということになりますと、これは隣接権条約そのものではございませんので、場合によったらこれは別々に解決をするということはあり得ることだと思います。
  78. 安永英雄

    ○安永英雄君 時間がありませんから、次に複写の問題について質問をいたします。  今度複写権センターというのが発足をする、十七日に発足のための準備会が終わって、五月にはこれが発足するというふうなことで、これも本委員会でたびたび複写の問題でこういった著作権の集中処理機構というものをつくらなきゃならぬということで私どももたびたび進言したわけでありますが、これは文化庁の方で随分努力されたんでしょう。これは既に日の目を見ようというところまで来ておるわけです。したがって、ここまでの複写権センター設立発起人会までの、簡単で結構ですけれども、経過についてお聞きしたいと思うんです。
  79. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいま先生御指摘のとおり、複写に係る著作権の集中的な管理という問題でございまして、これは広範にわたります複写について利用者は個々の権利者に対して許諾を求めるということは事実上不可能に近いことでございますし、また反対に権利者の側も個々に複写されている実態を一々自分権利として管理していく、許諾を与えていくということも不可能でございますので、そこら辺を集中的に管理いたしまして、利用者はセンター、その集中的処理機構の許諾を受ければ、一定の使用料を支払いさえすれば、個々の権利者の許諾がなくても利用ができるというようにするための機関でございまして、これはたびたび当委員会附帯決議でも早く促進するようにという御指導があったわけでございます。  それで文化庁では、これは昭和五十五年にその著作権の集中的処理に関する調査研究協力者会議、専門家会議を設けまして検討を始めまして昭和五十九年にその結果を公表したわけでございますが、そのとき以来社団法人の日本書籍出版協会という出版を担当する、出版者を束ねている協会でございますが、それと、それから学協会の代表的な存在でございます社団法人日本工学会というこの二つ団体が出版者団体著作者団体として中心になりまして、そして関係のある団体に呼びかけて精力的、継続的はその準備を進めてきたわけでございます。それで、本年のつい数日前でございますが、十月十七日に社団法人日本複写権センターという名前にいたしまして、それの設立発起人会が開かれるまでに至ったわけでございます。  この発起人会には、発起人といたしまして学協会の関係者、それから著作権団体関係者、それから出版者団体関係者百六十人以上の方が参加しておりまして、そこでこれから実行委員会を設けましてさらにこの検討結果を具体的に検討していきまして、その上で利用者との間で使用料についての交渉も行っていく、そして来年の春ごろには設立をしたいと、こういうような方向で動いているということでございます。
  80. 安永英雄

    ○安永英雄君 そこで、私どももこういうセンターをつくって、そして海賊版退治を大いにやってもらいたいということは言いましたけれども、ようやく現実的にこういうことにセンターができて、そして来年の五月あたりからということになりますと、反面本を買う方とかコピーする方とかいった場合にやはり心配になってきて、えらい本の値段が上がるんじゃないかとかコピー代が上がるんじゃないかとか、こう心配になってくるんですよ。実際センターができて、そこからどんどん第二次使用のための徴収をやるというんですからね。  そこで、このセンターの構想として、使用料基準あたりはどういうところに置いてやるのか、それから書籍全般にわたってのことになるのか、あるいは限定していくのか。例えば科学書とか医学書とかいろいろ学術に関する問題とか、そういったふうに範囲はどこまでなのか。使用料徴収の対象になる書籍、こういったものがどういうふうな範囲になるのか。それから、コピー枚数でやっていったり、複写機台数で大まかに金額を出していったりしてやる方式があるわけですが、そういったものの構想はこれはつくって、そして今度は身構える方になるわけですが、この点の指導はどんなふうにされておりますか。
  81. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この集中的処理機構の考え方の最初のころは、まさに先生がおっしゃいましたように、最もその複写をされて被害が大きいといいますか、影響の大きいそういう出版の種類といいますと、やはり学術関係、工学、理工学関係、あるいは医学関係の学術文献、あるいは楽譜の出版ですね。そういうものが一番大きいのではないかということで、そういうものにかなり重点を置いて議論をしてきたことは事実でございますが、現在この日本複写権センターの設立を目指しておられる関係者の方々は、そういう学術文献だけでなくて可能な限り広い範囲の著作物を取り扱いたいと、そういう御意向でございます。これは方向としては結局著作権について個々の複写というものが、会社とかあるいは大学といった研究関係のものに使われている場合にはこれは事実上著作権の侵害でございますから、侵害の事実が現実にあるわけでございますから、それをできるだけ正常な関係にするという意味において望ましいことであるというふうに考えております。  ただ、今のお話のその使用料でございますが、これはまだ基準というほどに明確に決まってないようでございます。基本的にはその複写権センターとそれから利用者側といいますのは個々の企業とかそういう大学とか研究所とか、そういうものとの間の話し合いによって決められることになるというふうに思います。ですから、この使用料の基準というものをどういうふうにしていくかということはまだ煮詰まっていないというふうに考えておりまして、これから来年の春に向けてこれは煮詰められるものだというふうに考えております。  ただ、例えばどういうものを基準にするかということでございますと、複写の単価の設定をする、そしてそれぞれの企業等でもって実際に行われている複写の実態というものを調べて勘案をいたしまして、包括的に使用料を取るというような方法が最も現実的ではないかというような話はされているようでございますが、これもまだ決定的なものではないというふうに思っております。私どもとしては、やはりこれは、まず自主的に権利者側と利用者側の間の話し合いの中で円満に決められることが最もいいことでございますので、そうした話し合いを期待しているところでございます。
  82. 安永英雄

    ○安永英雄君 たくさん聞きたいことがあるし、例えばとにかく外国の例等でこれの徴収の金額というのはどれぐらいかお聞きしたいところですけれども、今のところ皆目わかりませんが、しかしそれはまあいいとして、私がちょっとけげんに思うのは、このセンターで、これはもちろん著作者の複製権、これを守るというのに加えて、出版者の版面権、これもこれで一緒にして、ここで団体あるいは大学と契約を交わして著作権使用料を徴収するというふうな構想だと、こう聞きますが、版面権ということになれば、これはたしか著作権改正をやらなきゃできる話じゃないんですが、これもたびたび出てきた問題でしてね。 五月発足というのに、文化庁としては間に合わせるつもりなんですか。版面権の問題は、場合によっては次期国会で提案するというふうなことまで聞いたこともあるんですけれども、版面権の問題についての現在の進行ぐあいはどうですか。
  83. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 出版物が、複写機器の急速な発達によりまして、出版物の複写ということから生ずるいろいろな影響というものは、権利者著作権者だけではございませんで、出版者にも随分影響されているということでございまして、その点で当委員会附帯決議におかれましても、先生今御指摘のように、一方では集中的処理機構の設置ということ、もう一方では、そういった複写から出版者を保護するということ、新しい権利を含めて保護するという方策について検討する、この二つのことが宿題になっているわけでございます。  それで、今先生の、出版者の権利の方でございますが、著作権審議会の第八小委員会というところで昭和六十年から検討を進めてまいりました。それで、これは三年間の検討をごく近々といいますか、あしたでございます、あしたを予定しているわけでございますが、中間報告をまとめまして、そして著作権審議会の総会の了承を得てまとめるという段階にまで来ているわけでございます。これはまた中間報告でございますので、著作権審議会といたしましては、それが出た後で各団体意見を聴取いたしまして、権利者、出版者、それから利用者、こういった各方面の団体意見を聴取いたしまして、さらに検討を加えた上でできるだけ早く最終報告をまとめたいという意向を持っております。  それで、この辺は今の関係団体意見聴取、それからそれに伴ういろいろな検討のありようによって、いつごろになるかということが決まっていくわけでございまして、私としてはまだ確たる時期を申し上げるわけにいかないわけでございますが、そうした方向でまいりまして、それを待って、文化庁として必要な制度改正が間に合えば、それは出版者の権利とそれから著作権者の権利とをあわせて処理をするというのが最も望ましい姿でございますので、そういうことができればそうしていきたいというような気持ちを持っております。
  84. 安永英雄

    ○安永英雄君 望ましいかどうかは私もわからないんですけれどもね。出版権の方の金払ってるのに版面権もまたもう一つ加わった、第二使用料なんというものはどのぐらいになるのか私もわかりませんけれども、少なくとも今の話では間に合わないんじゃないかというふうに私も思います。しかし、版面権それ自体はやっぱり検討する必要がある。ただ、出版者あたりのおっしゃっておるのを私聞きますというと、直ちに著作権そのものを与えよというふうなお考えを言われる方もおりますし、あるいはレコード会社と同じようないわゆる隣接権あたりの主張をされる方もおりますが、少なくとも私月身は隣接権関係で進めていくべきだというふうに考えます。  そこで、やはり版の大きさとか、活字の選択とか、あるいは割り符、それから編集活動創作能力、こういうことを随分検討されておると思うんですけれども、要するに、やっぱり二条一項一号の著作物というものはどうだということからいきますと、思想、感情が外部から感知できるような具体的な表現が果たして表紙とか装丁、その中から生まれてくるものかどうか。そしてそこにやっぱり著作者独自の創作性というものがなけりゃならない。こういうことになってきますと、いわゆる版面権、活字、それから装丁、そういったものの中からそういった芸術性といいますか、あるいは著作物というふうにこれが見られるかどうか、そこらのところが非常に問題だろうと私も思うんですけれども、この点は私は余り急いではならないんじゃないかと思いますが、簡単に、急ぐのか、五月までに間に合わせるのか、そこらあたりをちょっと考えをお聞きしたいと思います。
  85. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 今のお話は、出版者の権利といいますか、新しく考えられる権利というものについてのお話だと思いますが、これは、先生も今おっしゃいましたように、著作権ではございませんで、どちらかといえば著作隣接権に類するものだと思います。著作隣接権の場合には、レコード製作についての場合が典型的なように、一つ著作物を公衆に伝達するというそういう機能、もう一つは、それにしても伝達するというその作業の中に知的な内容があるという、この二つが必要だということになっておりまして、その出版という行為の場合には、明らかに伝達するという行為があるわけでございますけれども、知的な内容があるかどうかというのは、今先生ちょっと例をお挙げになりましたけれども、そういう議論がいろいろございまして、その辺を吟味をしてきたのが第八小委員会の検討の一つでございます。  これは先ほど申しましたように中間報告を近々出しまして、そこでいろいろ議論をいただくわけでございますので、私どもといたしましては、それをいつどうするということは今方針として申し上げるわけにはなかなかいかないところがございますけれども、スケジュールとしてはことしじゅうに意見聴取を終わって、そして来年早々には最終まとめに入っていくということはしていきたいと思いますが、そこから先、まとまるかまとまらないか、それはいろいろ御意見によって変わってきますので、そういうことで全く素直にいけば、それは先ほどおっしゃられたように五月といいますか、来年の春以降に間に合うかどうかという、可能性も全くないわけではございませんけれども、今ちょっとそういうふうなことをはっきり申し上げるわけにいかないというふうな状態でございます。
  86. 安永英雄

    ○安永英雄君 時間もありませんので、多少本題と外れることと思いますけれども、お聞きしたいと思います。  文化庁の予算の問題でございますが、非常に少ないというのはもう定説でありまして、それに聞くところによりますと、六十四年度から第二国立劇場が六十八年度の完成に向けて着工をされるというふうなことを聞いております。道路などの代金を一応除いても約五百億というふうな報道もなされておりますが、この着工から、いわゆる来年からこの第二国立劇場の予算というのは素人考えでいきますと、五年ですから一年に百億程度の予算が文化庁の予算に上積みされて執行されていくというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  87. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 第二国立劇場につきましては、これは昭和五十五年に敷地を一応内定をいたしましてから随分時間がかかっているわけでございますが、いよいよ六十四年度の予算要求におきましては建設工事費を要求いたしたわけでございます。ただ、その要求額は六十四年度の分は全体で三十億弱でございますので、ですから六十八年度までの間に約五百億という建設費を賄っていくためには、これはだんだん工事の進捗状況に応じてふやしていくという必要があるわけでございます。この部分につきましては、これは文化庁は予算的に文部省の中にあるわけでございますので、文部省全体の最重点項目の一つに取り上げていただきまして、それでその文部省全体の枠の中でぜひこの建築の部分の予算を枠取りをしていきたい、こういう方向で考えていくことになると思います。
  88. 安永英雄

    ○安永英雄君 私が、今の第二国立劇場の問題についてじゃなくて、いわゆる今おっしゃるように文部省予算、しかも文化庁予算、この中で大きな仕事といえば当面第二国立劇場ということで、次次に大きなこういった施設その他についてはずっと続けてこられたわけですから、これが大体五年間でできるとなれば、今のうちから次の文化庁としてあるいは文部省として文化政策の目玉といいますか、国立劇場をつくり、第二国立劇場をつくる、あるいは次々に文化施設をつくっていくというスケジュールで今日来ておるものですから、予算の面ではほかのことを言いたいところもありますけれども、今までの慣習から従えば、第二国立劇場ができれば、次の文部省なり文化庁の目玉といいますか、重点を置いて文化施設をつくっていくという、こういった時期に来ておると思いますが、そういった検討に入られておるかどうかをお聞きしたい。
  89. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 私どもといたしましては、国立の文化施設といいますか、文化庁の所管しております文化施設の充実ということはぜひさらに発展さしていきたいというものは随分あるわけでございますが、しかし、現下のような厳しい財政状況の中では、これは目下のところ第二国立劇場の設置を実現していくということが最大の問題でございまして、これをまず仕上げるということで文部省を挙げて、文部省全体の御理解を得ながらやっているところでございますので、その後の施設の新設というようなところまではまだとても具体的に検討するような状況に至っていないというのが率直なところでございます。
  90. 安永英雄

    ○安永英雄君 私がきょういろいろ申し上げることは、現在福岡県の太宰府市、ここで九州国立博物館を設置したいという地元の要望も非常に高まっておりますし、九州各県もぜひひとつここに国立博物館を設置していただきたいという熱意が非常に強いわけでございます。これはもう文化庁も御存じのとおりと思いますけれども、奈良、平安時代から大陸それから朝鮮半島、こういったところは、いわば九州北部が窓口であったわけでございまして、遣唐使あるいは遣隋使、それあたりの出発も博多を中心としたところから出ておりますし、またその出るときの準備その他もあすこで全部果たしておるようですし、帰ってきてもあすこでやっぱり整理をし、そしてその部分が地元に文化、文明として落ちていく、こういう私ども認識を持っているわけです。  最近でも、福岡県の小郡あたりでは津古生掛遺跡、これは貴重なものが出ておりますし、それから福岡市の平和台球場、これからやっぱり鴻臚館の遺跡、これが出てきて今も調査をして、球場も他の方に移すという方針も決まって、この遺跡の保存に全力を挙げる、こういった状態でございます。  そういったことで、ぜひ地元に国立の博物館を設置していただきたいという背景があるわけです。特に、これはもう釈迦に説法かと思いますけれども、現在の文化遺産に対する研究、こういったことは、これは現地で保管をし展示そして研究するといういわゆる現地集中主義の方向に世界的に行っておる。かつての大英博物館のようなああいった形ではなくて、それぞれの自然あるいは風土あるいは民俗、こういったものが一体となって研究に入らなければ効果がないという方向に行っているということでございますし、全国的に見ましても東京それから近畿――奈良、京都、こういったところで、次の博物館というのは、やはりそういう趣旨からいけば九州にどうしてもつくっていくのが至当ではないのか、こういう考えを持っておりますが、そういう認識について文化庁のあるいは大臣のお考えをここでお聞きしたいと思うんです。
  91. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) まず私の方からお答えいたしますが、文化財がその守り伝えてきた地域で保存活用が図れるということが、その価値が生かされる上で非常に重要なことだということは、先生のお話のとおりだと思います。  そういう観点から最近は、地方公共団体、都道府県立とか市町村立の博物館あるいは歴史民俗資料館というようなものが大変ふえてまいりまして、例えば昭和五十九年までの十年間で約二倍という、三百二十四館というのがこれ統計で出ておりますけれども、そのように非常にそういった意味で公立の博物館がふえてきているということは大変結構なことであるというふうに思っておるわけでございますが、ただ、そういう地域の文化財の保存活用の上で今度は国立の博物館をどう考えていくかということについては、若干議論のあるところだというふうにも思います。この辺については、先ほども申し上げましたように、まだ私どもとしては第二国立劇場という重要な問題を抱えているものでございますから、まだ具体的にそれをどうするかというところまでは検討が至っていないというのが現状であるというわけでございます。
  92. 安永英雄

    ○安永英雄君 九州に国立博物館誘致という運動は、私も国会に来てからも安達さんあたりと随分検討をしたものなんですけれども、これはもう明治時代からずっと誘致にかかって随分努力をし、またお願いもしたわけですが、現在では博物館等建設推進九州会議というものも結成をしまして、九州各県の知事はもちろん知事部局あるいは各界、財界も産業界もあらゆる方々が集まって、国会議員ももちろんそうでありますが、ぜひひとつ早急につくってもらいたいという熱意に燃えておるわけです。  そこで、やっぱり太宰府天満宮の近くに十七万平方メートル、博物館の用地として、これはいいことかどうか知りませんが、もうぴしゃっと用意をしておるわけです。そして場所は太宰府のすぐ近くでございまして、太宰府天満宮のあそこのところでありますから、あそこは現地にも史跡、文化財、これは豊富でありまして、ぜひひとつという気持ちはひとつ酌んでいただきたいと思うし、早まったと言われればあれですけれども、もう既にいつでも建てられる土地は確保をいたしておるという状態でございます。したがいまして、今この文化庁の方のお話聞きますと、とりあえず当面の第二国立劇場の問題でいっぱいなんで、その後どうするかという問題は皆目まだあれはないというふうにおっしゃいますけれども、やっぱり熱意というのは確かに上がっておりますし、また地元で国立の博物館ができるということになれば、これはもう総勢挙げて協力をするという体制は私はできているというふうに自信を持っておるわけですが、この点どうだろうかと思って申し上げるわけです。  特にうらやましいのは、この前総理が敦煌に行かれて、そしてぱっと十億円出してあそこで研究センターつくるというふうなことで、予算を聞いてみたら外務省だということなんですけれども、これは結構なことで、日中の交流にとりましてはこれは私ども何もこの点不足はないのでありますけれども、博多中心のあそこあたりは、シルクロードの問題で敦煌というものを挙げられたら直接関係のあるのは博多なんですよ。こういった点で、やっぱり敦煌に十億特ってこられるんなら、それもやっぱり今度帰ってきて研究するとすれば、どうしても博多のところに博物館つくって研究組織つくらなければこれは画竜点睛でしてね。  外国の方が先だったというのも文句はないんですけれども、あんなふうにエジプトにもたしかそういった形で金ぽんと出しておられるし、これは外交上、国策上必要だと思いますけれども、これだけ総理なり大臣あたりの施政方針その他見ますと、日本の文化という問題で大きく取り上げられておりますけれども、ずっと予算の執行から見ますと、順送りに次々に五年から随分かかるものをやりながら先を追っていかれておるという、こういう私はだからその現状を打破してくれとかなんとか、そういうことじゃなくて、私は第二国立劇場ができれば、私は選考の順位としてはすぐにやっぱり九州の方の要望にこたえてかかってもらうような気持ち、あるいはまた調査費あたりはちょっと少しでもいいから組んでみて、そしてその調査にも五年後ですからかかってみようかというふうな具体的な動きも示していただけぬものかというふうな気持ちで申し上げたわけですが、大臣のこの点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  93. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 先生の御熱意はよくわかります。また、九州関係方々が、国会の方方それから財界、産業界の方々、挙げて九州、特に太宰府を中心に博物館をという御熱意は私のところまでいろいろな形で伝わっておりますので、改めて御熱意にはよく傾聴をいたすことでございます。  一方でお礼を申し上げなきゃいけないのは、いよいよ第二国立劇場にようやくかからせていただくわけで、文化庁予算が四百億弱のところをこれから数年間で五百億とにかく上積みをいたしまして、注入をいたしまして、そして国民の文化の振興にこたえていきたいというところでございます。確かにそれで頭がいっぱいだと言ってしまえばそれだけでございますけれども、実際先生がおっしゃいましたように、一つの文化の保存研究はその土地の風土あるいは歴史、それから離れて余り考えられないのでやはりその土地でやったらどうか、これもまたよくわかります。ただ、そういう点からいたしますと、まだ九州は九州で大変御熱意でございますが、各地で御熱意のあるところもはっきり言ってございます。だから、そういうところを取捨選択して突き詰められないというんではなくて、これから御趣旨に沿って第二国立劇場の次の問題を、今までの既存の博物館の整備その他を含めまして日を追うて着実に進めていく段階であろうと思います。その中にもちろん先生のおっしゃる御熱意も十分含まれてくると思いますが、しかし、全国には幅広い御熱意と御要望があるものでございますから、そういうものを徐々に勘案しながら進めていく段階に入っていくであろう。現在、その程度にしかお答えできませんが、御発言の御熱意はよくわかります。
  94. 安永英雄

    ○安永英雄君 終わります。
  95. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 大臣が大変障害者の教育問題あるいは福祉の問題について深い御理解を持っていらっしゃるということは、文教委員会のいろいろな御答弁の中で私はよく伺いました。特に大臣が映画関係で御造詣が深いということと絡めまして、最初に著作権の問題について質問をいたします。  大臣の時代映画をみんなに見せるというときに、耳の聞こえない人に見せるということをお考えになったことがあったんだろうか。こういう疑問から始まるわけでございますが、今著作権著作者権利を守るということと、その法律ができておりますが、障害者もやっぱり健常者と一緒に文化を享受したい、目の見えない人もやっぱり本を読みたい。目の見えない人が本を読むためにはいろいろなことが考えられなければならないという要望があります。それから耳の不自由な方々、こういう方々も健常者と一緒に映画やテレビで何をしゃべっているのかということを聞きたいと、こういう願望を強く持っていらっしゃると思うのでございます。昔はそういうことについて余り気にもとめないでいましたけれども、例えば国連婦人の十年という国際的な動きの中で女性が女性の問題についていろいろ考えるようになったように、障害を持っていらっしゃる方々も国連の障害者年、このことをきっかけに随分大きな運動を展開してきて、また、幾つかの権利を獲得してきているというふうに思うわけでございますが、最初の質問はその著作権と障害者の知りたいという、知る権利ですね。この権利について大臣がどのようなお考えを持っていらっしゃるかということでございます。
  96. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 私の経歴の一端に触れていただいて恐縮でございます。私がかつて手がけましたのは、映像文化の一端でございますが、しかしそういう映像、映画というのはあらゆる総合的なものととらえたものでございますから、映像であり音楽でありということでございます。しかし、おっしゃられますように、あの中には健常者と同時にまた聴覚の御不自由な方、あるいは視力の御不自由な方がいらっしゃるわけでございますから、そういう方に何とか健常者と同じようにそういう文化あるいは娯楽というものを享受していただきたいという気持ちは、私はだれにも負けないつもりでございます。ただ、いろいろな意味でこれから取り組まなければならない点は多々残されておるという点はまたよくわかるわけでございます。  たまたま、ことしの第百十二国会終了後にスウェーデンへ参りましたことがありまして、そこのジョーランソン初等中等教育大臣、これはストックホルムの聾学校の理事長をやられた大変その面で御造詣の深い方でございますが、スウェーデンのいわゆる一般の本屋さんの中で数十%はやはり録音のテープを本屋さんで市販をしておるということにつきましての御苦労話も伺いまして、我が国でもそのような、少なくとも映画、映像をごらんになって、そして聴覚の御不自由な方には、何と申しましょうか、私どもはスーパーインポーズと申しまして字幕を入れさしていただくとか、あるいはまた本を読みたいけれども視力が御不自由な方には音で幅広くお届けすることができないものであろうか、これは先生もお考えであろうと思いますが、私も考えるところでございます。  ただ、さあ著作権とそれが非常にスムーズにいくかどうかということにつきましては、例えば著作者方々とそれからいわゆる字幕にする場合の同一性の問題その他が、それが当然残ることと思いますし、また著作権者の方はやはりその部分を守りたいというお気持ちはおありでございましょう。その著作権者の権利と、それからそういう御不自由な方々へ幅広くお見せしたいというこの一致点をどこで見定めるか。私はその一致点を早く見定めることが必要であるのと同時に、これを処理機関として何とか中間的と申しますか、そういうものができないものであろうか。つまりそういう著作権者の御理解を得るのに、時間的にもそれから事務的にもより簡便な方法で集中的な処理機構というものがそれぞれの間にできないものであろうか。伺いますと、それぞれ御努力はなさって、あと一歩だということは伺っておるのでございますけれども、その点を詰めながら、また事務処理と同時に著作権の残された問題についても鋭意取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。
  97. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 著作権法の直接管轄者であります文部大臣がそういうお考えを持っていらっしゃることに私は大変強いうれしさといいますか、喜びを感じているものでありまして、それだけのお力をまた持っていらっしゃるわけですから、ぜひ御指示を具体的に、しかもなるべく早くやっていただきたいという要望を込めながら、次の質問に入ります。  ことしの八月十五日でございますけれども、毎日新聞に吉川英治の全作品をテープ録音する、そして活字離れの今の人たちや、あるいは目の不自由な人たち作品のすべてを味わってもらいたいという御遺族のお気持ちが実を結んで、NHKが十五年もかけてテープ録音をするということを約束されたという記事が載っておりました。そしてそれができ上がり次第全国二十カ所の視力障害者の施設に無料で贈呈をされるというようなことも記事に載っておりましたし、またNHKはラジオでこれを放送するのだということでございます。大変こういうことをやられた御遺族には私は心からの敬意を表するものでございますけれども、まあ施設に無料で贈呈というのは予算の関係もありましょうから二十カ所ということになりましょうが、ぜひこのテープを借りたいという人たちはそんな二十カ所では足りないわけでありまして、これからそういう話し合いが出るのでありましょうし、そのテープが幾らで売り出されるのか、売り出されないのかというようなこともこれからの問題だというふうに思うのですが、私などはテレビのない時代に育ちましたので、いろいろな仕事をしながら徳川夢声の「宮本武蔵」を聞かせていただいたりしたことを思い出しまして、ぜひああいう文学は本当にすべての人たちに、希望する人たちは接してもらいたいと、こういうふうに思っているわけでございます。  また、もう一つ。今のは目の不自由な方々でございますけれども、ちょっと耳の不自由な方々と関連をするのですが、ことしの六月九日の東京新聞に「英語字幕で見る主な輸入ビデオ」というのでたくさんの何といいますか目録が出ているわけです。そしてアダプター、これは五万八千円ですよ、問い合わせはどこどこですよと、こんな記事になっているんですけれども、アメリカの映画を輸入ビデオで見る、そしてアメリカではそのビデオには全部何というんですか、クローズド・キャプションといいまして字幕が入っているんだそうですね。日本の私たちから見れば、ビデオの中に、映画の中に字幕が入るということは耳の不自由な人のためにとつい考えがちですけれども、またアメリカは多民族国家ですから、出てくる英語についていかれない人たちは、字幕を読みながら映画を鑑賞するというのだと思いますけれども、これが当たり前になっているんですね。ただ、目の不自由でない人たちはそんな字幕が出てくれば邪魔だと思うかもしれませんから、必要な人にだけその字幕が見えるようなシステム、その見えるようなシステムというのは日本から輸出をされているアダプターなんだそうですね。  こういうふうにいろいろな人たちにたくさんのいい文化を与えようという、このアメリカあたりの態度を見まして、さっき午前中にビデオ協会の方が参考人にいらっしゃったので、どういうふうにお考えですかと言いましたら、我々もそういうふうに考えています、今一生懸命に研究中ですと言われましたので、ぜひこういうものがたくさん出るようになってほしいと、こう念願をしながらも、やっぱりそこにはたくさんの隘路がある、我が国においては隘路がある、こういうふうに思わざるを得ません。  それで、著作権に入るわけですけれども著作権法は、著作物並びに実演レコード、放送及び有線放送に関して著作者権利及びこれに隣接する権利を定めたものであります。基本は、著作物録音する場合も、番組に字幕を入れる場合もすべて著作権者やその隣接権者の許可がなければならないということになっています。ただし、例外規定が二つありまして、その一つは点訳についてであります。「公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。」となっておりますが、それはいつだれでも著作権者の許可がなくできるわけであります。もう一つ録音について「点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もつぱら盲人向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物録音することができる。」と、こうなっているわけですが、この「政令で定めるもの」、すなわち録音できるという施設は今全国的にどのくらいありますでしょうか。
  98. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 現在、点字図書館でありますとか、あるいは聾学校の図書館や盲学校に設置された図書館でありますとか、そういうものが指定されているわけでございますが、その全体の数は約二百四十でございます。
  99. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 これ多いというふうにお考えですか。まあ大体これで間に合うだろうと、こういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  100. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) まあこの辺はいろいろ御意見があろうと思いますけれども、全体の図書館の数が千六百ぐらいございますので、二百四十という数字はそれほど極端に少ないという数ではないというふうに私は認識しております。
  101. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 しかし、目の不自由な方々というのは日本全国に散らばっているわけでありまして、二百四十がそう少ない数ではないという私は文化庁の判断というのは若干異議があるんですけれども、いかがですか。
  102. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この辺は視覚障害者専用の図書館であるということで視覚障害者にだけ必ず渡る、それ以外の転用のおそれが非常に少ないというものに限って認めようというのがこの法律の三十七条第二項の趣旨でございますので、そういった意味から権利者権利利用者側、目の不自由な方々の福祉という、その両方の接点ということで現在のような定め方をしているわけでございますので、ただ数としてどうかという問題はあろうかと思いますが、私どもとしてはその一つの調和がとれたあり方ではないだろうかというふうに考えている次第でございます。
  103. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 文化庁がそれで調和がとれているというふうにお考えになると私は大変な問題があると思いますね。視覚障害の方々というのはそれでは困るんだというふうに言っていらっしゃるわけであります。  七月二十二日に、著作物録音は点字図書館などの限られた施設にしか許されていない、テレビ放送やビデオカセットには吹きかえなしの外国物しか字幕が入っていない、このような実情では、視覚聴覚に障害を持つ者から読書権や学習権を奪うものであるという、こういう障害者の団体の方方と私と文化庁が一緒になってお話し合いをしたことがございます。そのときに、具体的に視覚聴覚障害者が図書館を利用しやすいようにするためには、一つには盲人用の録音テープの作成、貸し出しがどの図書館でもできるようにしてほしい、自分たちの住んでいる近くの図書館、公共図書館でそれができるようにしてほしいと、こういうふうに言われました。また、聴覚障害者の字幕入りまたは手話入りのビデオの貸し出しについても同様にしてほしい、こういう強い要望があるということは、それで十分な数字ではない、大変不自由をしているということだというふうに思いますが、それはいかがですか。
  104. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいま申し上げましたお尋ねの数字というものは、著作権法の三十七条第二項の「点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設」の数の問題でございました。これは、この施設においては三十七条二項の規定によりまして、著作権の上では著作者権利者に対して自由に利用ができるというものでございます。  一方、通常の公共図書館においてこれができないということじゃ決してございませんで、これは現在でも権利者の許諾を得て録音を行うということは当然できるわけでございますし、そういうことをやっておられる図書館も随分あるわけでございます。問題は、したがいまして、個々の権利者側との間の権利所有のルールづくりに問題があるということであると思うんでございますが、これができるだけ簡易迅速な手続によってできるような体制を充実させるということが現在一番必要であり、また現実的な解決の方法ではないかというふうに思っておりまして、私どもはその点について、権利者側にはそういうことについての話し合いの受け入れ体制をとるように指導をしておるところでもございますし、権利者側はそういう態度を十分示しているところでもございますので、ぜひ障害者側の団体意見を聞きながらそういう話し合いを進めていただくというのが一番よいことではないかというふうに考えておりまして、文化庁もそういう話し合いが促進されるように側面から援助をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  105. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 確かに三十七条の二項、ここで自由に「録音することができる。」というのは、四項目七施設、そして数字で挙げればこれは幾つぐらいになるんですか、一項が二十六施設、二項目が十三、七十三と結構あるわけでございますけれども、それではその他の、三十七条二項以外のそういう今おっしゃったような図書館というのはどのくらいの蔵書あるいはテープ、点字本、これを持っているものですか。
  106. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この点について調べてみたわけでございますが、データが大変古くて申しわけないのでございますけれども日本図書館協会が昭和五十六年の三月末で調査をしたものがございまして、これによりますと約一四%が障害者用の録音テープの貸し出しを行っているというふうに出ております。この一四%という数字は恐らくその後はもう少し上がっていると思いますが、何分この五十六年の数字しかございませんのでこれでお答えさしていただきます。
  107. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ちょっと質問いたしますけれども、これ貸し出しを行っているんですか。所蔵しているというデータはあるけれども貸し出しをしているというデータはないと思いますけれども
  108. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 失礼いたしました。これは正確性を欠いておりまして、私貸し出しと申し上げたのは誤りでございまして、所蔵しているという調査でございます。
  109. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 権利者の許可を得ればいい、こういうふうに軽くおっしゃいましたけれども、この権利者の許可を得るのが問題で、大変に難しくて大変だからもっと簡易なことをやってほしい、こういう要望だというふうに私は思っておりますけれども、いかがですか。
  110. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) まさにそういうことでございまして、私も先ほど御説明申し上げましたときに、許諾のシステムというものの簡易迅速化を図ることが最も現実的有効な方法であろうというふうに申し上げたわけでございます。  ただ、その点についてのルールづくりというのはまだ十分に話し合いがなされていない現状にもございますので、これをさらに積極的に両者で話し合いが進められるように、文化庁といたしましてもぜひ御協力を申し上げていきたいというふうに考えている次第でございます。
  111. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 このルールづくりということも一つの解決法であろうと思いますけれども、根本的には私はやっぱり法律というものを変えていく必要があるんじゃないんだろうか、こういうふうに考えるわけです。例えば盲人用の録音テープの作成、貸し出しがどの図書館にもできるようになるためには著作権法施行令の改正が必要になると思いますね。聴覚障害者の字幕入りあるいは手話入りビデオの貸し出しについても新たなる規定づくりが必要だというふうに思いますけれども、この辺については文化庁としてはどうお考えになっていますか。
  112. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 視覚障害者のための録音テープについて、今先生が御指摘のようなある程度自由にするという方向についてどうかということについては、実は昭和五十六年に著作権審議会の第五小委員会で検討したことがあるわけでございます。ただ、この第五小委員会は主題はいわゆる家庭内録音、録画問題でございましたから、その中の一つのその他の権利制限というところで議論があったわけでございますが、このときの議論といたしまして、やはり権利者が一番恐れておりますのは、録音物が視覚障害者の方々だけの範囲にとどまらなくて、晴眼者などに流用されるおそれが一層高まるということが非常に著作権利者としては恐れているところでございまして、そういった議論が非常に強かった。慎重論でございますが強かったために、このときには具体的な制度改正の提言にまでは至っていなかったわけでございます。  この点についてやはり権利者団体と障害者団体が詰めてまいりますと、権利者団体はもちろん障害者の福祉ということについて思いをいたすという点では非常に強いところがあるわけでございますが、権利を制限するというところにまでまいりますと、両者の意見の隔たりというのは相当まだ大きいと私どもは感じざるを得ないわけでございます。  それから、聴覚障害者に対する字幕ビデオ化といいますか、字幕を映画に入れるというその問題についての権利制限の問題につきましても、これは録音テープよりももっと字幕を入れるときに翻案権が働くということはもちろんなんでございますが、その音声の内容を要約したり省略したりしなければなりませんので、その意味著作者人格権の中の同一性保持権と影響してしまうということがございます。それからもう一つは、やはり聴覚障害者用という特定の用途を越えまして、どうしても一般に出回ってしまう可能性がある。この二つのことから、これも著作権を制限するという制度改正については権利者側も非常に強い、これも聴覚障害者への福祉の必要性ということは十分感じながらも、権利の制限というところまでまいりますと強い拒否反応が出てくるんじゃないかというような感じを持っております。したがいまして、やはりこれは今制度改正というところまではちょっと私どもとしては困難であると言わざるを得ないものでございますから、先ほど申しましたようになるべく簡易、迅速な権利処理ができるような、そういう手続面でのルールづくりを進めるのが適切ではないかというふうに考えている次第でございます。  それで、字幕ビデオの方の権利処理につきましては、実際に関係団体が非常に積極的に話し合いを進めておりまして、かなりの利用秩序がつくられつつあるわけでございますので、これをさらに一層徹底するというところまでぜひ進めてまいりたいと私どもも考えている次第でございます。
  113. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この聴覚障害者の団体が社会福祉法人をつくって放映されたテレビドラマに手話や字幕を入れて聴覚障害者用にビデオカセットをつくって貸し出す事業をしているということですが、この実情御存じでしたらお話をいただき、なおこの運動について何か問題点が起きているようでしたらその点についても御報告いただきたい。
  114. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これにつきましては幾つかの団体があるように聞いております。私どもの入手しております資料では全国で八団体の字幕ビデオライブラリーをつくっている機関というのがあるというふうに伺っておりますが、その中で一番大きなものと考えられますのは、社会福祉法人の聴力障害者情報文化センターという機関でございます。ここはかなり先ほど申しましたように、権利者側の団体と許諾を得る手続についての話し合い、ルールづくりについての話し合いを進めているところでございまして、これがぜひ完成できればというふうに思っている次第でございます。  それからこの聴力障害者情報文化センターについての問題点というのは、私どもはその団体活動についての問題点というのは特に私どもはお聞きしておらないところでございます。
  115. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この視覚障害者が本の点訳をしたりテープに録音して利用する場合に、著作権法の三十七条では例外として許諾が不要になっていますね。ところが、聴覚になりますとこれが法律に入ってないわけです。視覚は入っているけれども、聴覚の人は入ってない。これなぜでしょう。
  116. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは先ほどちょっと申しましたように、点訳でありますとか、あるいは録音テープの場合には、著作物全体が全く修正なしにそのまま入っていくわけでございますが、字幕ということになりますと、そこで内容の要約とか、あるいは省略がどうしても行わざるを得ない。そうしますと、それは著作権法上で言いますと翻案権ということになるわけで、翻案ということになりますし、また一番問題がありますのは、著作者人格権の中の同一性保持権というものの侵害に当たるということになってしまうわけでございまして、その点でそういうことが行われる際に著作者側の了解を一切とらなくてもいいというようにすることは、ちょっとこれは国際的に申しましても、なかなかまだそういう了解が得られていないような状況にあると言わざるを得ない。  それからもう一つは、ビデオテープの性質から見まして、これは録音テープもありますけれども、それ以上にやはり障害者用という特定の用途を越えて一般に出回ってしまう可能性がある、この二つが一番大きな要素であろうというふうに思っております。
  117. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この著作物の朗読や録音は、ビデオの字幕、そして手話などは著作者のニュアンスを正確に伝えられない。だから著作権者の同意を得られないだろう、こういうのですが、今そこで手話もやっていらっしゃるけれども、どうしても簡略にある程度するということでなければついていかれないことがあるわけですね。そういうようなことは今までも了解をされていたと思います。もしそういうことがどうしても了解できないという主権者が、主権者といいますか、著作権者がいるとしたら、自分で通訳をするとか、あるいは信じられる人に頼めばよろしいわけで、通訳の著しい誤りは、両方理解できる者が少なからずいて、その人々の指摘はよって修正をされて、不正確は許容限度の中におさまるように今までなっているのではないか、またしていかなければならないというふうに考えているわけであります。そういう意味も込めてぜひ著作権者に障害者についての御理解を一層深めるように、具体的に文化庁としては御努力をいただきたいと思います。  それから、先ほどからどうもやっぱり聴覚障害者だけでなくて、一般の人たちのところに出回るのではないか、そういうおそれがある、こういうふうに言われましたけれども、でもビデオを見たり映画を見たりする人たちは、手話なんというのはわざわざ入っていなくてもいいわけですから、何も入っているものを買うとか、それをコピーするというようなことは私は余り考えられないと思いますよ。字幕が入っていて何となしに邪魔だなあと、こう思いながらそのビデオをコピーするなんという人はいないと思いますね、健常者だったら。やっぱり不自由だから、それに頼る以外ないから字幕入り、手話入りを頼むんだというふうに考えますけれども、逆言って、もし一般に出回るおそれがあると著作権者が思うのであれば、図書館の人が貸し出すときに障害者の手帳を見せて、そして貸し出していただければ、それは悪用されるなんというものではないと思うわけです。文化庁の方で図書館の人たちを信用することができない、こういうのであればこれはまた別ですね。  例えば、マル優の三百万円の銀行がもう仮名みたいなものでどんどこどんどこ貸し出したりなんかしているなんて、そういうことを考えればもうこれはできませんね。だけど、障害を持っている方々というのはわかるわけですから、それは私はちょっと言い逃れにすぎないように思いますけれども、いかがですか。
  118. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この辺がその権利者関係者間の取りよう、認識の問題だと思うんでございますけれども、今の著作権法の三十七条の二項ができましたときの制限の仕方というものは、その一つの有力な枠決めというのは、やはり乱用、利用、ほかに流用されないようにする、おそれがあるかどうかという点で判断されたということでございまして、このビデオテープの場合も先生今そういうふうにおっしゃいまして、そういう面もあろうかとも思いますけれども、やはりその権利者にすればそういった点を最も心配しているということがこれは認識の現状として事実でございますので、その辺を申し上げた次第でございます。
  119. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 もう私の時間が終わりますから、最後に一つ。文化庁は日本文芸著作権保護同盟に対してこの問題、つまり著作権者の同意に関して、特に障害者に配慮をすることについて具体的にお話し合いをなさってこられた。これからまた積極的におやりになるらしいですけれども、誠意を持って話を進めていく、あるいは障害者団体著作権者との間に、両者合わせて話し合いをする中に文化庁が入るとか、そういうようなことをやっていただけるかどうか、私はお約束していただきたいというふうに思いまして、最後にそれで質問を終わります。
  120. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいまの日本文芸著作権保護同盟に対する指導につきましては、私どもも従来からやってきたつもりでございますが、今後も具体的に障害者のことについての検討をするようにぜひ具体的に指導していきたいと思っております。
  121. 高木健太郎

    高木健太郎君 最初に、大臣にちょっと御感想をお聞きしたいと思うんです。私の感想を申し上げまして、お答えいただければありがたいと思います。  著作権法というのをいろいろ聞いておりまして、これは大変難しい問題だなと思います。一つは、文化というものは我が国民だけではなくて広く世界にその文化を享受してもらう、あるいは受ける方から言いますと、それを享受する権利があると言ってもいいものだと思うわけです。しかし一方で、この文化をつくり出した人の権利も守らなければならないという、こういうはざまに立ったお互い矛盾するようなものを最初から含んでいるんじゃないかなと、こう思います。  例えば一般市民といたしましては、あらゆる文化が安く自分の手に入る、しかもそれを身近に置いておきたい、いつでもそれが利用できる、こういう形になるのが享受する者側あるいは使用する者の側としてはそれを大変希望しているのではないかと思います。しかしこれをつくり出した人の方から言いますと、それをつくり出すことによって自分が利益を受ける、自分がそれで守られているという権利も私は与えなければならないと思うわけですから、ここにどうしても矛盾がある。これをこういう法律によってどちらにも利益があるように調和を図っていくというのがこの著作権法一つの精神ではないかなと思います。安く海賊版とかそういう模造品を買うという市民は、生産者側から言いますと、それは反社会的あるいは反道徳的な行為と認めるでしょうけれども、そう言いたいのでしょうけれども、しかし一方から言えば、私は広い立場から立てば、これは安価にたやすく手に入るようにしてあげるべきじゃないかなと思っているわけです。  振り返ってみますと、昔はいろいろな思想あるいは絵というようなもの、音というものはなかったですが、絵にかいたものあるいは字で書いたものはそれはそのものだけでありまして、それにグーテンベルクというような人が印刷術を見出す、あるいはまた木版画とか、あるいはリトグラフとか、そういうものがありまして、それが大量につくられるようになってきたということは、そういう科学技術の進歩がありまして、人々はそれをかなり安く手に入れることができるようになったということでありますが、しかしその木版画あるいは印刷をする人の労苦もありますので、それに対してはある程度の工賃を与えておったということになろうかと思いますけれども、何といってもそのもともとのものの方が何か価値があるように思われておったわけです。  しかし科学技術が非常に発達をしまして肉声と同じもの、あるいはもとの原音楽と同じもの、あるいはそれよりもいいというようなものがたやすく各人ができるようになってしまった。いわば各人が印刷所を持ち、各人が録音の工場を持った、そういう世の中になってしまったんじゃないかと思うわけです。これを、この機械を持つことを禁じることはもちろんできないわけですから、参考人もおっしゃいましたように、そういう機械に対して賦課金をかけるというようなことで、機械を持つことを禁じるわけじゃないですけれども、それに対してある程度のおまえは何か賦課をこうむるべきであるというような方策がどこからか生まれてきているように思うんですね。  これについて、例えば我々のお札というようなものも、あれは印刷技術によってできたものですけれども、もしもあのようなお札ができる非常に精巧な機械を各人が持つとしますと、今の紙幣というものはもう幾らでも贋造できるというようなことになるわけです、これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども。そういうふうに一般の今のビデオであるとかレコードであるものが簡単に我々の手に入るようになっている。これは私は非常にいいことじゃないかと思うわけですね。何とかして今のいいところは残してやって、しかも原作者を守っていくというようなことをしなければならぬのですが、何か基本的にはこういう思想でいかなければいけないというようなことを大臣はお考えかどうか。こういうふうに自分はやりたいと、先ほどもちょっと御披露がございましたが、そのようなこと。それからまた、それには一方著作権思想というものをいかに普及したい、それしか方法がないとお考えならば、具体的にはどのようにしたらば一番いいんだろうか。  よくある悪い傾向をとめようとする場合には、講演会だとか講習会だとか、いろいろなことを開きまして、その人たちを啓蒙しよう、あるいは教育をしよう、そしていろいろな催しをやるわけですけれども、実際にそういう悪いことをする人がそれは講習会、講演会には出てこないわけですね。これが非常に困った傾向でございますので、著作権思想を普及しようといっていろいろのことをおやりになりましても、知っている人の方がおいでになって、もうあなたは来ないでもいいという人はおいでになり、聞いてもらいたいという人間はそこには来ない。こういうこともございますので、どうやったらばこの思想を普及することができるのか。これは国民の協力が得られなければ幾ら法律だけつくっても幾らでも抜け穴がありまして、また法律がそれを追っかけるというようなことになるんじゃないか。特に無形的なものですからそこに現物があるわけではないこともあろうと思うんですね。そういう非常に取り締まりの難しいものを法律によってどのようにこれをやっていこうか、教育によってそれをやるのが一番いいが、それにはどうしたらいいか、その基本的なことを大臣からまずお伺いしておきたいと思います。
  122. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 今先生から基本的な御指摘をいただきました。確かに、国民全般が文化を享受する、できればできるだけ幅広く、できるだけ簡便にそれを享受するということは好ましいことだと思います。また、一方におきまして著作権者の権利保護するということも必要だと。その接点というのは私はこう考えておりまして、既存の文化、これを尊重することは当然でありますが、新たな創作の意欲、創作活動というのは常々その振興を私どもは支え、進めなければならない。そのためには著作者権利保護することによりまして、新しい文化に対する創造性を生まれさせる、これが私は著作者権利保護することの一つ目的であると思うわけであります。  そうなりますと、あと二つ申し上げたいんですが、そうなれば著作権者とそれを享受する者とのやはり基本的な著作権思想の普及というものはもちろん必要でありますし、また著作権者の権利を守りながらそれができるだけ簡便に利用できるということになりますと、やはり当面やらなければならないのは処理機構の問題であろうと思います。先生おっしゃるように、賦課金の制度の問題もございましょうし、報酬請求権制度と申しますか、こういうものも当然考えられます。また一方では、集中処理機構によりまして、享受する方は手続は簡便に、しかも一方の権利者権利は十分守る、そういうあたりが一つの接点ではないのだろうか。しかし、これは法律で一方の著作権を制限するという方向で考えるということは当然慎重に考えなければならぬ問題でありますからその辺かなと。  ただ一方で、法律でいかにこれを規定いたしましても、それを遵守する精神がなければならぬわけでありますので、たまたま著作権という名前のもとに学校教育で教えておりますのは高等学校教育でございますけれども、しかし、小学校、中学校におきましても、他人の権利を尊重するという意味におきましては、公民科あるいは道徳の時間にそういうものを小さいうちから植えつけていく、こういうやはり学校教育の一つの方向の定着が一方では必要であろうと。それが相まちまして、先生がおっしゃるように著作権者の権利を守りつつ文化の享受を幅広くするということに向かっていくのか至当であろうかな、私はそのように今考えております。
  123. 高木健太郎

    高木健太郎君 私もそれに賛成でございます。物をもらったという場合にはその恩恵を感じますけれども、無形のものをもらったという場合には余りそれに対して恩義を感じない。あるいはまたそれに対して何か報いるというような気持ちが少ない。それが私日本人に一つあるんじゃないかなと思うわけですね。  もう一つ権利意識というものが日本では弱い。この著作権法という著作権は、恐らくこういう権利意識は外国から入ってきたものだと思うわけですよ。権利をまた与えるとそれを振り回すというようなことでも困るんじゃないか。だからそこら辺が教育としてどういうふうにやっていくかということは今後十分考えなければならないことだと思いますけれども、無形のそういう生産物をもらったということに対しても恩義を感ずる、ありがたいと思う、そういうこと、あるいは物を大事にするというような気持ちもやっぱりそこら辺から教えていかなければ決してこの著作権思想というものを普及さすことはできないだろうというふうに思いますので、その点の教育ということについてぜひひとつお力を入れていただきたい、こう思います。  もう一つは、我々が従事しているようないわゆる科学技術あるいは文化というものは、文章とか声とかそういうものじゃなくて、その中に含まれている思想そのものが一つの価値を持っているわけでございまして、私がある物を例えば発見したとしましても、それはできるだけ多くの人に使っていただきたいということですけれども、時にそれを特許という形でその権利を守ることがあるわけですね。しかしノーベル賞をもらったような仕事でありますと特許なんというようなことはないわけでして、しかもそれは世界の人々がそれによって恩恵を受けている。しかし特許というものは確かにあるわけですが、その特許の期間と、それから著作権の期間というものはどんなふうになっておるでしょうか。これは質問の申告には出しませんでしたけれども、おわかりだったらひとつお教え願いたいと思います。
  124. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 今の各それぞれの権利保護期間の長さでございます。著作権は御存じのとおり原則的には死後五十年でございますが、特許権は出願後十五年、そのぐらいの違いでございます。
  125. 高木健太郎

    高木健太郎君 著作権は死後五十年ということでございますが、著作家が死亡した場合、それはそれの遺族の方にその著作権は譲られるわけでございましょうか。
  126. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 著作権は無体財産権の一つと言われますように財産的価値を持っておりますので、当然相続されるものでございます。
  127. 高木健太郎

    高木健太郎君 とすると、それは無形の財産権であるとすると、相続税ということはどうなるんでしょうか。
  128. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 当然財産的価値を持っておりますから、原則といいますか、一般的にはかかる対象になる、相続税がかかる対象であると思います。  ただ、現実には評価がいろいろ問題になるわけでございまして、私の聞いたところでは、普通の場合は残っている残存期間でありますとか、あるいはそれまでの利用状態でありますとか、そういうものを遺族と税務署、相続者と税務署が協議をして決めているというのが実際的なやり方のようでございますが、どっちにしても相続税の対象になるものでございます。
  129. 高木健太郎

    高木健太郎君 相続税の対象になるので、余り、相続税の対象になるというのは何だかおかしいような気がしますけれども、売れるかお蔵か、どっちか相談をしてと言っても、税務署の人が知っているわけではないですし、どうやって決めるのか私困難だと思いますけれども、先ほどの吉川英治さんじゃありませんけれども、遺族の方がそういうものを大勢の方に使っていただきたいと、こういうふうにする方がいいと私は思うんですね。だからいろいろな発見をされましたことでも、世の中のお役に立てばできるだけ大勢の人にそれを上げていただきたいという気持ちの方が私は本当はいいと思うんです。  先ほど視覚障害者の方のお話がございましたけれども、私の本なんかでもやっぱり点字になったやつがあるわけですが、それは何ら報酬はいただかないわけですが、その点字にする方の報酬はどうなっているのか。先ほど字幕のお話もございました。聴覚不自由者の方の字幕のお話もございましたが、これはこういうことは国家で少しお金をその人たちにお出しいただいてでも、そういう字幕なりあるいは点字なりにしていただくというのが私はいいと思います。  もう時間がなくなりましたが、もう一つ、字幕とかそういうことにつきまして、これは著作権関係がございませんけれども、中国で京劇か何かを見ましたときに、横に大きく字で出てくるわけですね。それ非常に中身がよくわかるわけですけれども日本で私は京都なんかで能を見せていただきますけれども、本がないんですね。大体の粗筋は書いてあるんですけれども、しゃべっていることは何をしゃべっているかよくわからない。外国人は何かその文句が書いてあるのを持っておられるかもしれませんが、どうも能だとか浄瑠璃だとか清元とか、そういう日本の伝統的芸術が、文句がわからないものですから、あるいは歌舞伎もちょっとわかりにくいところがあるんですけれども、ああいうものが何か字幕といえばおかしいですけれども、何かの方法で、やっていることがわかるようにならないものでしょうか。それをちょっと、著作権関係ないんですけれども、工夫をされていると思いますが、もしされておりましたら、ひとつお聞かせ願いたいし、もしも余りされていないようでしたら、ひとつ今後それはお考えいただきたいと、こう思うのですが、いかがですか。
  130. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) その辺の御事情については、余りつまびらかにしてないのでございますが、ただオペラなんかでは、東京文化会館でやられるオペラなどにつきましては、イタリヤ語でやるとすれば、ちょうど幕の上のところに字幕を置きまして、そこに出てくる、字幕が出てくるというようなやり方をしております。その点、歌舞伎等々、その古典的な言葉が余りよく完全にはわからないようなものについても、そういう工夫は当然あってしかるべきだと思います。国立劇場ではそういうことについて研究をしているようでございますが、それと同時に耳で解説をするというようなのがございますね。ああいうのもやっておりますが、いろいろ理解が容易になるような工夫をすべきだとも思いますので、ぜひ研究させていただきたいと思います。
  131. 高木健太郎

    高木健太郎君 能の、能楽堂があそこにありますけれども、ああいうところでも外人の方がよく能のことを知っているんですね。日本人の方が余りよくわからない。それでも困るんじゃないか。だから何か能を理解させるような、そういう古典芸能日本人それぞれにわかるようにしていただきたいと、こういうふうに思います。  最後に、保護期間を二十年から三十年ということになっているようでございますが、どういう計算で三十年になったんでしょうか。外国で七十五年、五十年、いろいろありまして、そして平均が三十三年というから三十年にされたのか、あるいは放送関係の方からは短い方がいいというような要求があって、五十年にしたいところを三十年にしたのか、何かその根拠はどういうことでしょうか。それをお聞きして高桑先生にお譲りします。
  132. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは著作権審議会の第一小委員会のことしの一月の報告に基づいて御提案を申し上げているわけでございますが、その中の審議におきましては、著作隣接権というのはやはり著作物著作権そのものではない、著作物の公衆への伝達をする役割の重要性のゆえに、隣接する権利が認められているということでございまして、現行著作隣接権が二十年、それから著作権が五十年と、そういう違いがあるところに、その著作権そのものではないのだから、やはりその著作権と同じにするということについては、非常に消極論が多かったということでございまして、そこが、これは学者の先生たちが主体の議論でございますが、その中間の三十年という延長にしたわけでございます。  それから、外国の例につきましても、今先生おっしゃいましたようにいろいろな例がございまして、西ドイツやイタリアなんかにつきましては、二十五年とか三十年、イタリアではレコードが三十年、実演が二十年でございます。そういうふうに短いものもございますし、フランス、スウェーデンは五十年というようなもの、それからアメリカでは著作隣接権制度がないというような国もございまして、これは著作隣接権についてはいろいろございますので、それはやはりその国の実情というものを考えて決めるべきではないのかというような議論もございまして、三十年というのが大体皆さんの御同意ができる線であるということもございまして、三十年というところに落ちついたわけでございます。
  133. 高木健太郎

    高木健太郎君 よくこういう法律を決めるときに、まあ真ん中をとっておけとか、そういうことで余り基本理念がはっきりしない。そうするとまた変えちゃわなきゃならぬ。だから、ある意味で基本的な概念をはっきりつかんで、そして決めないと、またこれじゃぐあいが悪いからもうちょっと延ばそうとか、そういうことになりがちである。それから、外国ではこうだからこうしようというような考え方はもうやめてもいいんじゃないか。私は、脳死とか臓器移植やっていますけれども、脳死、臓器移植なども日本とデンマークとイスラエルだけやってないんですね。ほかの国は全部やっている。日本だけやってない。そのときにはばかに抵抗する、いやとてもだめだと。こういうときにはあすこはこうこう、あすこは幾らだからこれくらいにしようと、そういう一貫性が全然ないんですね。だから、法律つくるときに日本でよく論議をして、将来はもう変えない。変えるなら変えるできっちりした理由のもとに変える。外国の例は一つの例として、それはそれとして参考にするのはいいですけれども、あれがこうだからこうするというならほかのものもそうしなきゃならぬようになっちゃう。そういう点は今後ひとつお考えになっていただきたい。私は三十年に反対する者じゃありませんけれども、そういう意味お話しを申し上げたわけです。  それから戦前、戦後もそうだったと思いますけれども外国の図書が入らないときに、よく上海版だとか、あるいは香港版であるとか、中国あるいは香港あたりで海賊版というのがやっぱり出まして、我々は非常に安く洋書を買えたわけです。あれはどうでしょうか。もう向こうの著作権に支払ってやっていたものでしょうか。あるいは初めは払わなかったけれども後では払うようになったんでしょうか。  それからもう一つ、今後中国なんかの本は、私の本でも中国語にどんどん翻訳して向こうで使っているわけですね。また、中国の文献もこちらでどんどん翻訳してみんなやっているわけです。中国は何もないと思いますがそうでしょうかと思いますが、そうすると今度こういう海賊版日本で使ってはいけないという場合に、中国でつくって持ってくるというようなこともあると思うんですけれども、それはどういうふうにしてチェックされるおつもりでしょうか。
  134. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 今のお話は、海外でつくられた海賊版が輸入される場合であろうと思いますが、これは著作権法の百十三条という規定がございまして、我が国に輸入された時点において作成されたものとみなす、著作権侵害行為で作成されたものにみなすという規定がございまして、したがいまして、そういうものが海外でつくられている分には、これ仕方がないわけでございますけれども、それが我が国に入ってきた段階で海賊版と同じ扱いになる、こういうことでございまして、それに対しても当然著作権法上の罰則があるわけでございますし、それから関税定率法では、二十一条という規定で輸入禁製品に指定されているわけでございますので、これは税関において水際で廃棄をする、没収して廃棄をするということを命ずることができるようなことになっております。  そういうふうな、制度的にはそういうことになっておりまして、これをぜひ有効に働かせて、海賊版がやたらに輸入されることのないようにしているわけでございますが、これは権利者団体でも調査活動をいろいろやっておりまして、税関等々と連携の上で必要な体制をとっているわけでもございますし、さらに強化をする必要がある、こういうふうに考えております。
  135. 高木健太郎

    高木健太郎君 そんなものがあっても恐らく一回じゃつかまらないですね。何回か繰り返している間にこれはおかしいというようなことになるのかもしれぬと思いますけれども、なかなかこの水際作戦は難しいんじゃないか。税関の人がよほどよく知ってないとわからないんじゃないかなという気もします。そういう意味では今後もこれはやっぱり研究問題になるんだろうと、どこかそういうところに逃げていくんじゃないかという気がするものですから。  もう一つは、何か海賊版をつくっているということをどうやってこれ調査するのか。調査するとすれば、その会社なら会社に相当の人間が要るわけですが、人件費も要るでしょう。あるいはまた裁判になればその裁判の費用、弁護士料、そういうものが要る。それから摘発するとすればそれはしょっちゅうパトロールしていなきゃいかぬとか、そういうこともあるだろうと思うんですね。それに対する費用と実際に損をする費用とどんなものでしょうか。罰金は何か百万円だとか三百万というのがありましたけれども、あるいは実刑が一年とか三年というのがございましたけれども、そんなものなら一遍にやってしまって、少しもうけておいた方が、罰金三百万ぐらいならいいんじゃないかというような悪い人が出てくるんじゃないか。これはどういうふうなバランスになっておるんでしょうか。
  136. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 海賊版に対する監視機構なんでございますが、例を一番多いビデオソフトについてとってみますと、我が国では主に二つの系統がございまして、一つ日本ビデオ協会、もう一つがアメリカの映画につきましてアメリカ映画協会の日本支社というのがございまして、この二つの系統でそれぞれ監視員を置きまして、ビデオレンタル店を回りまして、具体的に海賊版のあるのを調査いたしまして、それを警告し、そして言うことを聞かなければ摘発をするというように、告訴をするというような、そういう段取りでそれぞれの団体におきまして監視をしているわけでございます。  どのぐらいの費用がかかるのかということをちょっと聞いてみましたらば、例えば日本ビデオ協会の監視機構について見ますと、一年間の必要な経費というのは、直接経費、例えば人件費とかあるいは海賊版と真正のものとを識別するためのホログラムによるシールを張っているわけでございますが、そういう貼付関係費なども含めまして、年間で一億八千万円程度だというふうに言っておりました。もちろんそのほかにもいろいろ間接費がかかっておりますので、もっとこれよりは多い費用が実際にはかかっているんだと思いますけれども、その程度の費用の実態であるというふうにお聞きをしております。  一方、海賊版の全体の数量はだんだん減ってまいりましたけれども、それでも現在市場に出回っている海賊版、これはビデオソフトでございますけれども、数量は大体今の両団体の推定によりますと四百万本ぐらいだということでございますので、これは金額はすれば四百億円ぐらいのもの、これをなくしていくという方向をとっていけば、これだけの費用をかけて監視機構としては十分やりがいのある話ということだと思います。ただ、海賊版の数量というものは先ほどの午前中の参考人の御意見にもございましたように、ここで急速に減っておりまして、この一年間でもって約一〇%ぐらいの率で減ってきているということですので、かなりこういった監視機構の活動というものは効果をあらわしているんだろうというふうにも考えております。
  137. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう終わりますけれども、私はイタチごっこになるんじゃないかなと。余りやって、みんな挙げられちゃって海賊版がなくなれば余り買わなくなる。安いから買うけれども、高けりゃ買わぬとか、そういうことになりがちなんですね。結局思想がないから、安いものなら買うけれども、高いものは買わぬ。だから、金をかけても結局は実入りが少なくなっちゃいやせぬかなという心配があるのでお聞きしたわけです。  私は、それで著作権が守られれば、それで結構だと思いますけれども、やはり最初に申し上げましたように、国民一人一人がこれを守っていこうとしなければ、幾ら人間をふやしてそんな監視ばかりしていたんでは、私はうまくいかないんじゃないか。そういうことが私の根底にあるものですから、そういう意味できょうの質問は申し上げたわけでございます。そういう意味で大臣にもぜひ、最初にお話しいただきましたように、いわゆる著作権権利というものと、それから文化というものを、いかにしてこれをバランスをとっていくかということにひとつ御尽力をいただければまことにありがたいと思います。  質問を終わります。
  138. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、質問をさせていただきますが、最初に大臣のお考えを伺っておきたいなと今思いましたので、それは著作権の思想というものの中の一番大事なポイントは、やはり知的生産物を尊重するという思想と同じものだ、ですから、つまり知的生産物というのは日本人に欠けていると言われる創造性を尊重する思想である、こう思うんです。したがいまして、今回の法律一部改正に当たりましても、どうもいわゆる欧米先進国と比べて我が国はおくれておくれて仕方がなくて追随しているという感じを否めないのでありまして、そういうここの部分が一番ポイントではないのかな、つまり創造性を尊重する。我が国はどうも頭を使うと、何かアイデアを聞くとただである、何か物をやると幾らだ、こうなるんですね。  私が三十年前にアメリカへ留学したときの話でありますけれども、私の友人の、ピッツバーグですが、そこで研究をしておった日本人ですけれども、夜中に子供が病気になって、私が大学院学生であすの朝も早いと思って、大変気の毒だと思って彼は子供のぐあいの悪いのを夜中に小児科の先生に電話した。そしたら先生は話を聞いて、いやほうっておけばあすの朝は大丈夫だ、だからあすの朝ぐあいが悪かったらひとつまた電話下さい、こう言った。朝になったら何ともなくなったのでよかったなと思ったら、しばらくしたら電話診察料十ドル来たと言うんです。十ドルと申しますと、当時は一ドル三百六十円でございました。私の月給が三万円でございましたのでドル換算で八十ドルです。そのときに十ドルの電話診察料を取る。日本で風邪を引いたがどうでしょうという電話が来た。医者がああ卵酒飲んで寝ればいいです、これはただですね。これは非常に大きな違いなんです。  だから、日本の医療費というのが現物支給というのはそこなんですね。電話で大丈夫だという安心感を与えてもただなんです。やっぱり注射をし、薬をやらないとだめだ。ですからそれはすべてのところに我が国に出ているんじゃないか。それが今エコノミックアニマルと言われて非難を受けているのにもつながっているんじゃないか。その意味で、私はやっぱり著作権というのは条約に早く入るのが本当じゃないのかなと思ってはいるんです。  もとへ戻りまして、知的生産物を尊重する思想、それが我が国に欠けてはいないか。そういう点で、教育とすればやっぱり文部省一つの役割を果たすのじゃないか、こう思うんです。大臣いかがでしょうか。
  139. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) おっしゃるとおりでございまして、私自身も振り返りまして、おっしゃるところに欠けておらないかと言われますと、やはり日本人というのはどうしても形の見えるものの授受には感謝をいたしますけれども、知的なものについてはつい感謝はすれども見過ごすということがあるかもしれない、こう思います。そういう意味で、先生は医学の面から御造詣が深いわけですけれども、そういう面で日常多々あることだと思いますですね。そういう知的生産物あるいは知的サービスと申しますか、また一方では知的創造性と申しますか、こういうものはやはり根底から守らなければならない。これはやはり文化の基盤を守るという意味におきましても、著作権を、著作者権利保護する、守るということは非常に必要だと思いますね。  これについて、それをやるのはまさに文部省の学校教育ではないかとおっしゃられるわけでありまして、先ほども高木先生にずっとお答えをしたのでありますが、著作権というような文言で教えるということになりますと、やはり高等学校教育でございまして、例えば商業、工業の面におきまして、商業ですと「商業法規」、あるいは工業の「工業経営」というところでようやく無体財産権というものが出てくるわけでございまして、無体財産権の一つ著作権がありますし、あるいは一方には工業所有権の問題、こういうものがようやく出てまいります。  ただ、この思想を植えつけるには、法律そのものを植えつけるという前に先ほど申しましたように他人の権利を尊重する、また社会的な公民的分野で中学校分野でも教えることができます。また小学校の道徳、社会の時間に、これを他人の権利を尊重するという思想は日々教え定着させるということができるはずでございまして、こういう点は現在もやっておりますが、今後もこの著作権法の改定を進めるに当たりまして、さらに日常の学校教育の中で権利の尊重というものはより定着さしていくように努力すべきである、このように考えております。
  140. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 この間送られてきた「学士会報」に、安西浩さんが亡くなられた黒川利雄先生の追悼文を書いておられまして、それをひょっと見て思い出しましたので、ちょっと手前みそみたいになりますけれども、若干知的生産物尊重の事例を申し上げたいと思います。これは予算委員会で申し上げたんで多分何人かの先生は私の質問を聞かれたと思いますが、大臣は多分違われたかと思いますので、もっと前の話です。  それは、私今アメリカ留学の話をいたしましたが、三十年前にアメリカへ留学して戻ってきたわけです。帰ってきたとき大気汚染が非常に問題になっておりまして、アメリカ留学の自分の知識から、重油をたけと言っていたのを私はやめろと言ったわけです。そのとき何を使うかということがあったわけですね。白黒論争というのになりまして、そして、天然ガスを使えば、それはCH4ですから、これを燃やしますとCO2プラスH2OでSの化合物は出てこないわけです。三十年前に亜硫酸ガスが問題だと思った日本人はほとんどいなかった。文献上私の文献が日本で初めて天然ガスを主張したと思います。「日本医事新報」、昭和三十九年三月七日に載っているんです。我が国が亜硫酸ガスを環境基準に決めたのはもっと後です。四十一年か二年です。  それで、そこが問題なんですけれども、いや、知的生産物で直接これを著作権主張しているわけじゃありませんけれども、安西浩さんが北海道瓦斯の社長をしておりまして、私に聞いたんです、わざわざ。先生の言う白黒論争教えてくれと言うから、これは中学一年生の化学方程式です。天然ガスはCH4です。プラスO2でCO2プラスH2O、不完全燃焼してCOが出る。これは軽いから空気よりも上へ上がるから害はない。SはSO2になるから重い。しかし天然ガスにはSは入っていないからSO2は出ません。中学一年生の化学方程式だ。彼感心したわけだ。そして、ついに彼は東京瓦斯社長になりまして、そして新宿副都心をつくるときに美濃部知事と契約をしまして、東京瓦斯が新宿の大気汚染対策は引き受けた。どうしたかというと、帝石から、新潟から天然ガスをわざわざパイプを、別にしたかどうか知りませんが、つくりまして天然ガスであそこをやったんです。それで、あれだけの大新宿副都心が大気汚染についてはSO2はないわけです。  そういうことがございまして、そこで私が申し上げたかったのは、安西さん、それ新聞にも出ていまして、ただしかし、その著作権者である私に一言の著作権料は払われていない。一杯ごちそうになってもと、まあこれは冗談でございますけれども、何らかの敬意を払ってもらってもいいと思うんですね。私はもうけたいと思ったわけじゃなくて、オリジナリティーは高桑教授だったということを一言言ってほしかったんですね。御承知と思いますが、安西浩さんはここ十年間ぐらい日本のLNGの窓口でございます。そのもとは昭和三十年来の私のレクチャーにあったわけです。それはちょっと知的生産物というのを、そういう意味で私なんかある意味でやっぱりそう思っているわけです。敬意を払ってもらいたかったですね、私はそれは経済的価値でどうこうと言っているつもりはありませんけれども。ですから、著作権というのはそれと同じだろうと、私も今小さいけれども著作的な意味で申し上げたわけですね。  そこで、著作権思想にもう一度戻りまして、教育現場で、これ新聞なんかで出ておったので申し上げるんですが、小中高に送られてきた見本をもったいないからコピーとって児童生徒に配った。そういうことが書かれておったんで、そういうことは学校教育の場では教材だから送られてきた見本をコピーしたというだけじゃなくて、大学だって同じなんですが、いろんなのがあるとついこれコピーとって配るとやるわけです。ですから、そういうときに著作権に対してはどの程度まで許容があるのかないのかということをちょっと伺いたい。
  141. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは学校でドリル等の教材をコピーしてそれで利用するという場合の問題でございますが、著作権法の第三十五条に著作権の制限の規定がございまして、そこには学校の授業で使うために担任の教員が公表された著作物の一部をガリ版で刷ったりあるいは複写機で複製するということはできるようになっております。ですから、授業に使うというためにその必要な部数だけ複製を、複写をするということは自由にできることになっているわけでございますが、ただ、ただし書きがございまして、著作物の種類や用途、複製の部数や態様に照らして著作権者の利益を不当に害することになる場合は自由に複製できないことになっているわけでございます。したがいまして、授業に使うためといいましても、主として学校向けに販売をされております個々の児童生徒用として作成されたドリルの教材を大量に複製をするというような場合には、これは一般的には著作権者の経済的な利益を著しく害する場合に当たるとも考えられますので、そういった場合は著作権上問題があると言わざるを得ないということでございます。
  142. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今よくわかりました。使えるんだということがあったわけですね。私なんかどういうことかと思ってちょっと疑問に思ったものですから。  それで、複写機器ができたのでと、先ほど高木先生が大変昔懐かしい言葉を言ってくださいました。私たちのときには上海版と言ったんですね。海賊版というのは何だかエレガントでありませんけれども、上海版というと何だか非常に文明開化のにおいがしたわけです。しかし、ドイツ語の内科診断書というのが、クレンペレルというのがありまして、これは専ら上海版なんですね。ですから、考えてみますと、我が国にそのころは著作権思想なんか今よりもはるかにないころだと思いますので、印刷技術さえあれば、コピー技術さえあれば上海版は要らなかったんじゃないか。だから上海版、海賊版ができるというのは極めて発展途上国であって、技術的にすぐれていないところがそうやっているんじゃないかなと初め思っていたわけです。ところが、今はコピー機が発達したのでかえってそこの国が現物よりもいいかもしらないようなコピーをつくるようになったということがあろうかと思うんですね。  また私の留学に戻りますと、当時はコピー機はもちろんありませんので、文献を読むときには必死になってタイプを打つしかなかった。字で書いたら後で自分の字でも読めないですものね。ですから全部タイプです。おかげでタイプ打てないでアメリカに行った私が、タイプを一ページ全然見ないで大体十分ぐらいあれば間違いなく打てるようになりました。そして、打つということは読んでいるわけです。今は自分で思いますと、ちらっと見て、あ、コピーと言われますね。大抵読まないで積んでおくんですね。あれ学生もそうでないかと思うんですね。ですから、これは知的生産物を自分のものにするという過程でコピーをするということは非常によくないんじゃないかと思うんです。ですから、これは教育上やっぱり私はコピー機の発達は勉強しなくなる、読まなくなるというおそれがあるのではないか。自分ビデオテープを思い出しますと、定年退職したらあの懐かしい名画を見ようと思って、もう二百本ぐらい私持っていると思います。取り出して見たっていう記憶がないんですね、これ。だからいつ見れるかと思うんですが、まあそういうもので、コピーというものはある意味では非常に安心感を覚えて勉強しなくなるというおそれがある。この点が私やっぱり大学なんか困るんじゃないかと思うんですね。そういうことについての御感想何かございましたら伺いたいと思います。
  143. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) ある意味では、社会生活の中で利便さが先に立ちまして、それをみずからの記憶にとどめるということが希薄になるということがあるであろうと思うんですね。私もお話を伺っておりましても、勉強ではありませんけれども、日常連絡をいたしますのにコピーあるいはファクスで連絡をし合うんですけれども、それは手元に届いたとか、手元に届いたのをコピーして人に渡したということが主になりまして、その内容をつい頭にとどめておりませんで、あのときファクスで送りましたよと言われて改めて読み返してみると、確かにそういうものが来ておったか・なというのは日常よくありますので、この辺は私自身気をつけないといかぬなと、お話伺ってそう思ったわけでございますが、そういう意味で社会の生活のあり方が、利便さを増すということに感謝をいたしつつ、もう少しやはり自分の頭脳で考える、あるいは体を動かす、そういったものを一緒にやらなければいかぬなと、率直に今伺っておりまして反省をしつつ拝聴しておりました。
  144. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで、私もよく複写を頼むのが国会図書館でございますけれども国会図書館は一体複写についてはどういう方針を持っておられるのか、その著作権使用料については何かアイデアがそこに入っているのか、今後どうするのか。それは恐らく国会図書館以下右へ倣えで公共図書館も同じようなことになるんじゃないかと思うんですが、それについてどういうふうになっているんでしょうか。
  145. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 図書館等におきます複製につきましては著作権法の三十一条という規定がございまして、ここで権利の制限の一つの規定があるわけでございまして、その内容は、図書館等が所蔵する資料を用いまして著作物を複製することができる、これは自由にできる場合というのの条件でございますけれども一つは図書館の利用者の求めに応ずること。そして、その調査研究の用に供されるために、公表された著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供するという場合には著作権者の許諾がなく行うことができるようにされております。それからもう一つ、第二号という規定がございまして、これは図書館の自分自身の資料の保存のために必要がある場合。それから第三号がございまして、これは他の図書館の求めに応じまして、絶版等によって一般には入手が困難な図書館資料の複製物を提供する場合。この場合には著作者の許諾なく行うことができるということで三つの場合が規定されておりまして、それについては図書館の場合には、これは国会図書館も公共図書館も同じでございますけれども、自由にできるという規定になっておりまして、国会図書館はこの規定に従って運営されているというふうに考えております。  それから、先ほどの授業の副教材の複製について、ちょっと補足さしていただきたいと思います。これは、先ほどのお答えは間違いなかったと思うんでございますが、ただニュアンスとしてちょっとお受け取りなりかねたのかなと思いまして補足する次第でございますが、授業の副教材としての利用目的として販売されているワークブックやドリルがあるわけでございまして、これも複写が一番問題になっておるわけでございますが、これは授業の副教材として利用されることを目的としているわけでございますので、それを複写されてしまいますとその出版社は非常に大きな被害を受ける。これは先ほどのまさにただし書きを申し上げましたけれども著作権者の利益が不当に害されるという場合にまさに当たるのではないかというふうに考えられますので、学校の先生が授業の教材としてクラスの担任の分を複製する場合に許される場合もありますけれども、わざわざ副教材として出版されているものについてはその複製は問題があるというふうに御理解いただきたいと思います。
  146. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今度は複写権センターのことについてちょっと伺いたいと思いますけれども、発起人会が開かれて、来年の五月でしたか、発足を予定しているというお話だったわけですが、これは昭和六十年、六十一年の衆参の文教委員会で決議をされて促進することになっているように、私はそう思って見たんですけれども、そうですね。それが今まで発足に至らなかった何かわけがあったんでしょうか、どうでしょうか。
  147. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは先ほど経過を申し述べましたけれども、文化庁で昭和五十九年の四月に、著作権の集中的処理に関する調査研究会議、専門家から成る具体的なあり方を審議する会の報告がございました。この報告が出た時点から、書籍出版協会という出版社の団体と、それから学協会の代表的なものであります日本工学会が中心になりまして、出版団体著作者団体に対していろいろ呼びかけをしていたわけでございます。  それで、この集中的処理機構というものを設けますためには、多くの権利を集中的に管理をしなければ意味がないわけでございますので、そういうふうなことから申しますと、非常に多数の人の御理解を得ないとこれができないという事情がございまして、五十九年からずっと継続的にそういう設立のための準備をしてきた、努力をしてきたわけでございますが、それだけ時間がかかったのは非常に多数の方の賛同を得るためであったというふうに御理解いただきたいわけでございまして、現実に十月十七日に集まりました設立発起人会のメンバーというのは百六十人を超しているわけでございますので、それだけのものを集めるための必要な期間であったというふうに御理解いただきたいと思います。
  148. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これは、著作権料を集中的に徴収するという機関なわけですね、目的は、結局。著作権料ですね。要するに、集中的にそこで集めるという機関なわけですね。これができましたら国会図書館もこれに加入するわけですか。
  149. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 先ほど申しましたように、国会図書館、まあ図書館の場合には特別に著作権法の三十一条という規定でもって、自由に許諾なく、つまり使用料を払う必要なく利用できる場合があるわけでございますね。ただ、図書館は全部そればかりであるかどうかは問題があるかもしれません。ですから、図書館のやっている複写業務の中でもその規定に当たらないような分野のものがあれば、これはセンターと契約をしてそれなりの使用料を払うということが必要になってくる場合もあると思います。そういう場合はこれの適用を受けるということになると思います。
  150. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 賦課金制度のことですけれども、午前中の参考人お話のところで私も質問をしたんですけれども、賦課金制度ができてコピー機すべてに賦課金が課せられたと。後で配分するのはやり方はいろいろあるんでしょうからそれはそれとしまして、もしそういうところで集めてくれるのであれば、すべての著作権料のコピーが皆入るとすれば、複写権センターというのは要らないことになりませんか。どうでしょうね。
  151. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは賦課金制度と午前中の参考人との御質疑の中で言われておりましたのは、これは私的録音録画問題でございまして、主にその点でございまして、現在議論をされておりますのは、特に西ドイツ等で行われている賦課金制度といいますのは、録音録画の機器でございますから、デッキとかあるいはテープ、ブランクテープでございますが、そういうものに賦課金をかけまして、それを管理団体が徴収をして分配する、こういう仕組みでございます。  複写機器の方ですが、これは文献の複写の方でございますが、これは今の賦課金制度というものを適用しようという話ではむしろございませんで、これは個々に、使われた分量に従って、これは包括的にやる場合ももちろんあるわけでございますけれども、要するに何回複写されたかということを基礎にして料金を利用者からこの管理団体がいただく、こういう仕組みでございますので、賦課金制度ではないわけでございます。これはもちろん複写機についても賦課金制度を設けたらどうかという議論はございますけれども、今の行き方はそうではございませんで、個々に利用者が直接管理団体との間で支払いをする、こういう関係で今話は詰められているところでございます。
  152. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ちょうど時間ですので、もう一つだけ伺って終わりにしたいと思いますけれども、けさの参考人の中に放送事業者が入っておられなかったので、放送事業者の御意見というのが出てこなかったので、放送事業者著作権料を徴収しようとする側とは利害相反するのではないかといううわさをちらほら聞くものですから、やっぱり放送事業者側の意見というのは、例えばどんな意見が出ているのか。それが、高木先生が同じようなことを聞かれたのですが、結局足して二で割って三十年になったのではないかというふうな話だったかと思いますが、これについて何か小耳にはさんでおられたらひとつ聞きたいと思います。
  153. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 放送事業者と、それからその他の隣接権者といいますと実演家レコード製作者ということになりますが、そこで利害が相反しますのは、いろいろございますでしょうけれども、一般的に一番代表的なものは、先ほどの御議論の中で出ておりましたのは商業用レコードの放送使用における二次使用料の問題でございます。これは片方は、実演家団体レコード製作者の団体は受け取る方でございます。それから放送事業者の方は支払う方でございますので、当然ここでは利害が反するわけでございまして、したがいまして、その点について見解を異にしがちなものというのは、先ほどの御議論で申しますと隣接権条約加入についてでございます。どうしても放送事業者側は、先ほどもるる申し上げましたように、二次使用料を現実に払うという側になりますので、入るのには時期尚早であるというような御意見になりがちなわけでございますが、そこはいろいろ、十七年でございますか、新法ができてから十七年にわたる経過の中で、国際関係とか、我が国の国際関係における地位というものが随分変わってきたわけでございますので、いろいろと御理解が進んできてはおりますけれども、基本的にはそういう違いがある、立場があるということでございます。
  154. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 終わります。
  155. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 先ほど粕谷委員が視聴覚障害者の著作物利用の問題についていろいろ質問されておりましたが、私も京都の関係者からいろいろ状況を聞いておりますので、ひとつ質問をいたしたいと思います。  まず、視聴覚障害者の著作権問題に関して、ユネスコとWIPO、世界知的所有権機関、この共催で作業部会が一九八二年の十月、パリのユネスコ本部で開かれた。視聴覚障害者の著作物利用についてモデル規定が採択をされています。どういうモデル規定が採択をされたのか、そして日本から大山文化庁著作権調査官が参加をしておられますが、どういう態度をとったのか、まず御説明ください。
  156. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは一九八二年に開催されました障害者の著作権問題に関する作業部会のお尋ねだと思いますが、これはその前の年に万国著作権条約政府間委員会及びベルヌ同盟執行委員会の合同会議というようなのがございまして、その勧告に従って開催されたものでございます。それで、視聴覚障害者による著作物利用に関しまして、国際条約の例外的規定を利用することの可能性を検討するとともに国内立法のためのモデル規定を作成することを主な目的としていたということでございまして、先ほどの御指摘のモデル規定についての議論が行われたわけでございます。  この採択されたモデル規定と申しますのは、点字による複製と、それから大きな活字や録音による複製及び朗読サービスによる放送というふうなものに分けて規定されておりまして、A案とB案がございます。それで、A案の方は、無許諾、無報酬原則とする案、それからB案の方は、法定許諾による報酬の支払いを原則とする案でございました。それで、著作物録音等につきましては、いずれも著作物がもっぱら視覚障害者の必要のために使用されるという適切な保証があることを条件といたしまして、一定の保持または団体による利用を認めるという方向が出されております。それからなお、聴覚障害者のための映画の字幕の作成につきましては、これは翻案権が働くということでございまして、これらの翻案権の強制許諾を適用することは、国際条約が多数の国の国内法に適合しないというような考え方が示されているものでございます。  我が国の立場と申しますか、そのときの動きというのは、我が国の現状、特に視覚障害者につきましては、著作権法の三十七条の点訳の問題あるいは点字図書館等の問題についての現状を説明した、それから我が国の国内における当事者間の話し合いに基づく集中的処理機構の採用が有効であるというようなことについての状況を紹介したというのが我が国のとったそのときの態度であったというふうに聞いております。
  157. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 結局、視覚障害者の著作物利用に関してA案、B案という二つの案が採択をされた。日本としては原則としてA案の方を支持をしたのだけれども、最終的にB案も一部修正の上でこれを採択された。こういうことになっているということなんですね。  そこで、まだ議論並びに諸条件が成熟をしていないということで、聴覚障害者の問題については、一定の一致点を見るに至ってないというようなことですけれども、どうなんでしょうか。日本政府側というか文化庁としては、聴覚障害者の著作物利用の問題について、そういう国際的な場でも一致点をつくり出すべく今後努力をされますか。
  158. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 聴覚障害者のための字幕入りビデオの問題でございますけれども、これは先ほどもるる御説明申し上げましたけれども、やはり音声内容の要約とか省略というものは行われざるを得ないものでございまして、翻案権が働くということ、それから著作者人格権の点からいいましても、著作者に了解をとらない全く自由な制度にするというような制度改正というものは、なかなか権利者の了解というものは非常にとりにくいのではないかというふうに考える次第でございまして、それが国際的な大勢にもなっているのじゃないだろうか。そんなふうに考える次第でございます。これはやはり何と申しましても、我が国のこれに対する見解というものをまとめていくためには、両者のそれぞれの納得できる線というものが一致できなければなかなか難しいわけでございまして、したがいまして、先ほども申しましたように、まずは字幕入りビデオを作成するに当たっての許諾を得るための簡便な迅速な仕組みをつくるということが最も適切であるというふうに考えております。
  159. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろと難しい点を挙げられるわけでありますけれども、仮にそうであるにしても、一定の前提をつけ、一定の条件を付した上で、しかし視覚障害者であろうと聴覚障害者であろうと、基本的に同等の、障害者も同じ一人の人間として健康で文化的な生活を享受できる、そういう方向に努力すべきだという、いろいろ条件や前提をつけながらも、難しい点はあるけれども、そういう努力をするという、このことを否定されるわけじゃないでしょうね。
  160. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この聴覚障害者の問題につきましては、各権利者団体も非常にその点についての認識は深めているところでございまして、これが聴覚障害者の福祉のためにできるだけ協力をする、自分立場の範囲外ではあってもとにかく協力をするという、そういう姿勢をとっていただくように、私どもとしては極力努力をしているところでもございますし、権利者団体もそういう態度をとっているわけでございます。そういう私どもとしては基本的な認識に立って、できるだけ簡便な仕組みをつくる努力を図っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  161. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 郵政省、おいでになっていますか。  現在、NHKで「聴力障害者の時間」というのが週一回約二十分放送されていますが、その他字 幕入りで現在一週間七時間分ぐらいですか、放映されている。しかし、約三十五万人の聴覚障害者の放送利用という点に照らしてみた場合に、もっと民放も含めて指導の充実を図る必要があるんじゃないかというふうに思うが、その点についての郵政省の指導方針。我が国の現状に照らして、アメリカやイギリス、スウェーデンなどではそういう字幕サービスの公共放送などもっと進んでいると聞くわけでありますけれども、例えばアメリカを例にした場合にどういうことになっているか。どうでしょうか。
  162. 團宏明

    説明員(團宏明君) お答えいたします。  放送の関係の聴力障害者向けの番組でございますが、現在、我が国におきましては聴覚障害者のための放送としましては、先生おっしゃったとおり、NHKにおきましては教育放送で週一番組の手話放送、それから総合放送で週四番組の字幕放送を実施しております。また、東京の例でございますが、在京の民間放送のテレビ社でございますが、これにおきましては五社のうち四社が週一番組から六番組の手話放送を行っています。また、五社全社が週一番組の字幕放送をそれぞれ実施しておりまして、聴覚障害者の利便に寄与しているという状況でございます。  こういう放送番組の制作ということにつきましては、放送法三条というものがございまして、放送番組編集の自由というものが保障されておりますので、放送事業者がみずから行っているというところでございますけれども、この文字放送等は五十七年の法改正で新しく始めた放送でございますが、特に聴覚障害者の方の利便にも寄与するということでこれをより拡大していくようにという要望をしているところでございます。  なお、外国状況、ちょっと詳細は把握していない面がございますけれども、ほぼ我が国と同様の状況ではないかというふうに考えております。アメリカの関係でございますが、これはすべて商業放送でございますが、ABCというネットワークがございますが、こういうところで宗教番組等に手話をつけた放送をしているというところでございます。なお詳細は十分承知しておりませんが、他の欧米諸国におきましても、大体日本と同様の状態ではないかというふうに把握しております。
  163. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 欧米と比べて日本がそれほど引けをとってないという認識については、そこが問題ということで後から具体例で指摘をしたいというふうに思うわけでありますけれども、どうでしょうか。それでNHK、民放含めて郵政省の今後の指導方向ですね。さっき確認があったような状況にあるわけですけれども、一層現在これをさらに前進をさせる、そういう指導方向で臨む気持ちはあるんですか。
  164. 團宏明

    説明員(團宏明君)特に先ほど申しました文字放送でございますが、五十七年に法改正をやりまして六十年以降導入をしております。NHKにおきましては全国で実施しておりますが、民放は経営的なこともございましてまだ普及が十分ではないという状況でございますので、一層これを普及してもらいたいというふうな要望をしているところでございます。
  165. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、粕谷委員も指摘をされたわけでありますけれども、今日のそういうような現状を前進させる上で必要な第一の問題が著作権法改正だと。二つ目に著作権者の権利保護と聴覚障害者の著作物の公正な利用というこの要望との調整をどううまく図るか、そのために国が指導的役割をどういうふうに発揮するか。そして第三に、そのために国や自治体がどういう助成ができるかという、この三つの問題が三位一体として進められていく必要が私はあると思うんですね。  そこで、先ほども国際的な場における聴覚障害者の著作物利用のことにかかわっていろいろと難しさばかり挙げられた。粕谷委員の質問に対しても難しさばかり挙げられて著作権法改正というのはそんな並み大抵でできるものじゃないと。しかし、現にアメリカではアメリカ合衆国著作権法、この法律で、一定の条件を付しながらですけれども、聴覚障害者についてかくかくかくかくの条件、前提のもとで著作物のそういう利用を認めていくという法律があるということを御存じですね。その法律と内容を簡潔に言ってください。
  166. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいまのお尋ねは、現在アメリカにおける法改正の中で、字幕入りのビデオといいますか映画に関しての権利の制限に関する規定が盛り込まれているというようなお話のように受けとれましたが、私どもはそういう条件があることは現在知っておりません。理解しておりませんでございました。
  167. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はちょっと、この法案は賛成するつもりだったけれども、今のような答弁が出てくるとどうしようかなと思ってしまう。知っていてもとぼけているのか、本当に知らなくて不勉強なのか。  アメリカ合衆国著作権法、一九七六年十月十九日の法律、その法律の第百十条、その第八項、そこに、関係のある部分だけ読みますよ。「聴覚信号を聞くことができない聾者その他の身体障害者を特に対象とし、」云々と、こうあって、「非演劇的な文芸の著作物実演する」、その「実演が直接又は間接の商業的利益を目的とすることなく行われ、かつ、その送信が次の施設を通じて行われることを条件とする。」ということで四つ挙げて、その条件、そういう目的が、商業的利益を得るというそういう目的じゃないと。次の四つの機関、一、政府機関、二、非商業的教育放送局、三、ラジオ・サブキャリア・オーソリゼーション、四、有線放送施設、この施設を通じて行われる場合には、その場合には認めると、こういうのが第百十条第八項にある。それからもう一つ、第七百十条、だからこれ相当膨大な法律です。七百十条、そこに「著作権局長は、議会図書館の盲人身体障害者部長その他の適当な職員と協議の後、」以下云々と、こうありまして、「著作物の朗読のレコードへの固定により又はこの両者によって複製し、」、この両者というのはその前に点字その他についてこうやるという、そのことが触れてあるわけですけれども、それで「朗読のレコードへの固定により又はこの両者によって複製し、」それをこの身体障害者の使用のために供するという、その「許諾を、任意に議会図書館に与えることができる」と、要するに議会図書館が商業用のそういう目的のためにやるわけじゃないというふうに判断をすれば、したがって、そこの権限を図書館側に任せて、聴覚障害者にも利用に供することができるんだ、こういう法律があるということを知りませんか。
  168. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 大変失礼いたしました。先ほどの御質問は現在そういう法改正を盛り込んだ法案が提出されているというふうにちょっと理解をいたしましたものですから、それは存じておらないということを御返事申し上げたんですが、ただいまの御指摘はこれは現行のアメリカ合衆国の連邦法でございます。それはおっしゃいますように百十条の八項に障害者に対する規定がある、これはただその字幕に関しては規定してしていないというふうに私は考えますけれども、視聴覚者あるいは身体障害者に対しての規定があることは事実でございます。それから七百十条に視覚障害者と身体障害者についての複製の手続に関する規定があるというのは存じておる次第でございます。
  169. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 先ほど来私はその一定の前提を置き、幾つかの条件のもとでという工夫をすれば、聴覚障害者に対しても著作物利用の道を開くことは決して不可能ではない、それをよくよく工夫をすべきだということをいろいろ言うてきて、現にアメリカではこういうことが、法律ができているんじゃないかという例を示してるんですからね。これ大臣、著作権審議会というのがあるわけですけれども、その中のしかるべき、何といいますか作業グループといいますか、小委員会のようなものもあるわけでしょう。そういうところで我が国の場合にはどういうやり方があるのかということをぜひ検討をしてもらいたい、研究してもらいたいというふうに思いますが、どうでしょうか。
  170. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) こういう文化的な面を、たとえ視覚障害者の方々といえども健常者と同じようにできるだけ享受していただくということは全力で努めるべきだと私は思います。私というよりは私どもは思っております。一方で、先ほどから申したように、著作権者の権利保護することはもちろん必要でありますので、その点で最初に結論を申し上げるようですが、これからも諸外国の例をよく参考にしながら独自にその道を開いていきたい、そのために努力をいたすことをこの際お約束をいたしたいと思うんです。  ただ、今の現状を申しますと隘路ばかりを申し上げているわけではなくて、その中で一番早くできるのはその著作者権利保護し、かつ享受する方ができるだけ利便性を持って享受できる方法というのはやはり事務的に処理をいち早く考えることであろうかなと、そういう点で視聴覚障害者の方々のそういった統一した動きが今盛んに出ておりまして、もう一息というところまで来ておるというふうに伺っておりますので、その点の例えば集中的な処理機構ですとか、そういう面でいち早くその道が開かれるということも一つの改善であろうと、このように考えて先ほど御答弁をいたしたわけでありますが、根本的なことにつきましてもさらに努力をいたしていきたいと思っております。
  171. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 諸外国の事情なんかもよく調べて我が国としてはどういう方策があり得るかということをよく検討したいというふうにおっしゃっていますので、それで結構でありますから、ぜひ鋭意その検討の作業を、テンポを早めていただきたいというふうに重ねて要望をしておきたいと思います。  そこで一方、聴覚障害者の団体などが個別の著作権者との話し合いを通して了解を得て映画などのビデオづくりをやっているわけですね。これに対して地方自治体が一定の補助をするということが今幾つかの自治体で始まっているんですけれども、残念ながらまだ国として補助をする、こういうことになっていない。もちろん言われてますように、著作権者の側と、それから利用者としての障害者団体の側と、こことどう一致点、合意点をつくり出していくかという全体としてのそこの努力のあっせんというか、指導というか、この仕事も一つありますけれども、個々の了承ということで了解を与えているような著作権者、その了解の上に立って障害者団体がそういう字幕入りビデオなんかをつくる、そういうようなことなんかがやり得るところはどんどんやったって構わないわけですね。地方自治体は援助を始めているところもあるということであるので、国としてもこの際一定の援助を考えるべきではないかというふうに思うんですが、この管轄は厚生省かと思いますので、厚生省の考えを伺いたい。
  172. 鏑木伸一

    説明員(鏑木伸一君) 聴覚障害者のための字幕入りビデオカセットライブラリー事業につきましては厚生省といたしましては、昭和五十六年度からその製作、貸し出しを国の委託事業といたしまして実施してきております。今後この事業を国の委託事業のほかに、都道府県などに対します補助事業でございます障害者社会参加促進事業の中にも新たな事業として加わるように努めるなど、聴覚障害者に対します情報提供の充実には引き続き努力してまいりたいと考えております。
  173. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 厚生省としても補助事業としてひとつ前向きに取り組んでいきたいということで、ぜひ御努力願いたいというふうに思うわけでありますが、この個々の著作者との間での許諾を得る際の費用というもの、実際はばかにならぬ費用らしいんですね、聞いてみると。それで障害者団体というのは決してお金持ちの裕福な団体じゃありませんから、そういう団体にとってはなかなか高価につくということで、こここそ国や自治体が一定の財政的援助をやっていく必要があるんじゃないか。例えばビデオテープ一本、字幕入りの、これつくるにもその製作費が最低千円はかかるというふうに聞きました。だから何本かつくればその本数だけかかる、こういうことにもなるわけですし、それから当然字幕を入れる、吹き込むための機械が要りますね、これはかなり膨大な費用が要る。ということでありますので、図書館などで進んでいる、現にやられているところのビデオライブラリー、これは文部省の管轄かと思いますので、文部省としてもこの際この分野にもひとつ一段と力を入れるということで努力をしてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  174. 齋藤諦淳

    政府委員(齋藤諦淳君) 現在公立の図書館でビデオテープを持っているところは約一一%強でありますけれども、その中には障害者用の字幕等を持っているところも非常に少ない。そのほか、聴覚障害者だけでなしに視覚障害者を含めまして、図書館の中での障害者の利便の活用というのも必ずしも十分でありません。長く開いていなかった図書館長会議を、ちょうど来週、私どもこういう問題も含めて開くことにいたしておるわけでございます。本日のこの審議等についても十分配慮をして検討もするようにしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  175. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 最後に大臣の、聴覚障害者対策の問題について一層強化を図るということは、他の省庁と関係するところもありますので、閣僚の一員としてのひとつ努力の、決意のほどをお尋ねして終わります。
  176. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) いろいろ御指摘をいただきまして、これは大事な点だと思います。聴覚障害者の方々あるいは視覚障害者の方々、それ以外の障害を持つ方々が押しなべてこういう一般健常者が受けられる文化の享受を幅広く受けられるように、あらゆる面で御指摘を旨にしながら、関係省庁とも打ち合わせをいたしつつ、諸外国の例も勉強して進めてまいりたい、このように考えております。
  177. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。
  178. 勝木健司

    ○勝木健司君 今回の法案の第一の眼目は、現在の著作隣接権保護期間というものを現在の二十年から三十年へと延長していく、そして演奏家、実演家などの権利を一層保護していこうというふうに理解をいたしておるわけでありますが、この十年間の延長というものは文化庁におきます著作権審議会でも提言されたということでありますけれども、そこへ至った背景というものを簡単にお伺いをしたいというふうに思います。また、三十年という保護期間というものは国際的に見てもまだ短いという意見も多々あるわけでありまして、そこら辺も踏まえてどうお考えかお聞きをしたいというふうに思います。
  179. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 著作権審議会の第一小委員会の審議につきましては、この著作隣接権保護期間延長を行うことにつきまして一致をしたわけでございますけれども、その保護期間著作権と同じ五十年にするということは、これは著作隣接権者がその著作物の公衆への伝達の役割の重要性のゆえに認められたものであって、著作権そのものではないということから、専門家の間には非常に消極論が強かったわけでございまして、その議論の中から三十年という結論が出たわけでございますが、一方国際的な状況につきましても、ベルヌ条約では著作権保護期間が五十年になっておりますのに、隣接権条約上では隣接権保護期間の最低は二十年と、こういうふうに国際的な条約の上でも著作権隣接権では保護期間が異なって決められているという点。それから、主要国における著作隣接権保護期間状況が非常にまちまちでございまして、先進国でも西ドイツは二十五年、イタリアではしコードについて三十年、実演について二十年というようなものがある一方で、フランスなどでは五十年というようなものもあるというような、著作隣接権に関しては非常にまちまちであるというようなこともありまして、そういう外国状況等も考え合わせますと、我が国の実情に即した決め方がよいのではないかというようなことで三十年とされたわけでございます。  それからもう一つは、先ほどの午前中の参考人質疑にもございましたように、この延長をするという非常に強い機運が出てまいりましたのは、新法、現在の著作権法が制定されたときに、そのときに残っていた旧法ではレコード著作権として保護されておりまして、三十年という期間の保護期間があった。それが新法に切りかわったときに隣接権になりまして、そして残存期間は最長で二十年ということになったということがございました。その二十年が、ことしが十七年目でございまして、もうそろそろ昭和六十五年末には残ったものが一斉に切れてしまうというような非常に強い危機感がございました。その点も今回の改正でもって三十年に延ばすようにお願いをしているわけでございますが、それとの兼ね合いというのも非常に大きな要素であったというふうに考えております。
  180. 勝木健司

    ○勝木健司君 そういうことであれば、三十年という保護期間というものは固定的ではないというふうに理解していいんじゃないかというふうにも思われるわけであります。さらに延長する方向で検討するつもりというものがあるのかどうか。少なくとも現行の隣接権が切れる六十五年末ということでありますけれども、までには再検討すべきであるというふうに思うわけでありますけれども、これについて御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  181. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 今回の第一小委員会の審議結果というものは三十年に延長することが適当だというはっきりした結論は出しているわけでございますけれども、なお今後についての記述がございまして、それはこういうふうになっております。「今後とも著作物等の利用手段の発達利用実態の推移や著作権保護の国際的な状況の変化等、 著作権制度をめぐる環境の変化が予測されるところであり、著作権制度の体系の中における実演レコード等の保護期間の在り方については、これらの動向を踏まえ、必要に応じて検討を行うことが適当である」というような附帯条項がついておりまして、文化庁といたしましてはこうした提言につきましてそれをよく踏まえまして、著作隣接権保護期間のあり方について今後も必要に応じて検討を行うこととしていきたいと考えております。
  182. 勝木健司

    ○勝木健司君 保護期間については仮に三十年に延長されたということにいたしましても、著作者保護期間というものが死後五十年間であるのに比べてやはり短過ぎるように思われるわけであります。例えば二十五歳で行った実演については五十六歳の時点で実演家としての権利を失うことになるということでございまして、平均寿命の延び、あるいは録音録画物の使用というものが半永久的に可能だということを考えますと、やはり五十年ぐらいは目標にすべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、その点お伺いしたいというふうに思います。
  183. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) そういった五十年ぐらいにすべきであるという声は、これは先ほどの参考人方々隣接権者関係方々はそういう御希望を持っておられることは重々承知しております。したがいまして、先ほど申しましたように、今後も著作権をめぐる環境の変化というものが起こってきた場合に、それの動向を踏まえた適切なあり方というものを検討していく必要があると思いますので、そうしたときに必要に応じて検討してまいりたいというふうに考えております。
  184. 勝木健司

    ○勝木健司君 著作隣接権延長問題というものは、いわゆるローマ条約への加入の問題とも大きな関連があるように思われます。加入への時期は既に熟しているというふうに思われるわけでありますけれども、その条約への加入、批准というものは条件整備の段階だというふうに先ほどからお伺いしておるわけでありますけれども、具体的にいつやるつもりなのかお聞きしたいというふうに思います。
  185. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 著作隣接権加入問題につきましては、著作権審議会の第一小委員会におきまして、その条件整備の見通しがついた時点で速やかに加入すべきだという御答申をいただいているわけでございまして、その条件整備について鋭意その詰めを関係者にお願いをし、指導をしているところでございます。それで、その一番の重点は外国権利者に対する放送におけるレコードの二次使用料の問題でございますので、これについてその関係者間での話し合いがようやくテーブルに着いて議論を始めたところでございます。したがいまして、これの円満な解決ができるかどうかにかかっているわけでございますが、私どもとしてはぜひその話し合いがスムーズに進んで、できるだけ早い時期に、できれば次の国会に間に合うような、そういうテンポで話し合いが進められることを強く期待しているところでございます。
  186. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、芸能実演家あるいは演奏家等の権利保護全般について若干質問をしたいというふうに思います。  実演家権利というものは、本法案で問題となっておりますように、著作隣接権ということになっておるわけでありますけれども、これは決して著作権に従属する二次的な権利ではない、また独自の自立的な権利だという考え方があるように聞いておるわけでありまして、そういった意味著作隣接権権利としての基本的性格について文化庁として一体どう考えておられるのか、お聞きをしたいというふうに思います。
  187. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 著作権制度はその著作権法の一条で隣接権を含めて規定をしておりまして、著作権制度著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしているものについて、その役割の重要性と、それからその伝達者としての活動の中に、著作者著作物創作する場合の創作的な行為に準ずる知的な行為が存在するということを評価して、その文化的な役割が十分に果たせるように著作隣接権を定めて保護を図っているわけでございます。したがいまして、著作物の公衆への伝達という機能と、それから創作著作物創作する際の創作行為に準ずる知的行為が存在する、その二つの評価から隣接権というものが基本的にでき上がっているというふうに理解をしております。
  188. 勝木健司

    ○勝木健司君 実演家は、一度契約によって例えば映画出演などした場合にビデオに複製されたと、また予期せぬところで利用されても、いわゆる許諾権がないというふうに言われております。これについて実演家というものは許諾権を有するようにしてほしいという要求もあるわけでありますけれども、これに対してどういうふうに考えられておるのかお聞きをしたいというふうに思います。
  189. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 実演家が行った実演が収録された映画につきましては、実演家がその最初の出演料は受けますけれども、一般的にはその後の映画利用については、著作権法の九十一条にその後の利用については、実演家権利が認められていないということになっているわけでございますが、これはこの規定の趣旨というものは、やはり映画については多数の権利者が関与するわけでございまして、その映画著作物についての円滑な流通、利用を図ることが必要である、そういう趣旨から世界諸国においても行われているわけでございますし、それから、そうした規定が国際的にも行われているというその一つのあらわれは、隣接権条約の上でも実演家の一たん許諾した映画のその後の利用については、その権利を認める必要がないというような規定を置いているところからも国際的なあり方になっているわけでございます。しかし、映画に出演されたその実演家権利に関しましては、その後の利用についての何らかの権利を認めてほしいという非常に強い実演家団体の要望もございますことは重々承知をしているところでございます。  それで、この点についても一つの考え方として、その映画の再利用とかあるいはビデオソフト化する場合の転用のときには実演家も一定の報酬を受けることができるという方式も一つの考え方ではございますけれども、これについては単にその実演家の問題だけではございませんで、映画の制作について関与をしたいわゆるその映画著作者権利というものも実は同じ関係にあるわけでございまして、そういった意味でこれを論ずる場合には映画著作物権利関係全体に関係する問題でもございます。そういたしますと、関係者間での利害の一致というものを見るにはまだまだ時間がかかるということから申しまして、もう少し関係者間の議論が積み重ねられる必要があるのではないかというのが現状ではないかと考えております。  したがいまして、実演家のこういった面での解決の一つの現実的な方法といたしましては、午前中に参考人の方から一部お話がございましたように、例えば実演家ビデオカラオケ化をめぐります日本俳優連合と製作者との話し合いがございまして、これはそうしたビデオカラオケ化する際には一定の報酬が支払われるというようなお話がございましたが、そういった方向で解決するのが現在のところは最も現実的な、有効な方法ではないだろうかというふうに考えておるところでございます。
  190. 勝木健司

    ○勝木健司君 現在、著作者については著作権法六十条で死後も人格的な利益が保護されておるということで、これに対して実演家は人格的保護については著作権法上は全く顧みられておらないということであります。実演家にとって名誉、声望というものは極めて重大な価値があろうというふうに思います。人格的利益の侵害というものは、場合によっては致命的になろうというふうに思われます。これについて、著作権審議会等々では、実演の棄損あるいは変更が実演家の名誉を害する場合には民法の不法行為として救済され得るということ、あるいは具体的に実演に棄損、変更を加えて利用し、実演家の名誉が害される事例は乏しいと考えられるというふうに報告をされて理由が挙げられておりますが、この問題についての文化庁の見解をお聞きしたいというふうに思います。
  191. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 現在の著作権審議会におけるいろいろな議論とかいうようなものにつきましては、今先生がおっしゃったような、この現行の著作権法が制定されましたときにそういう議論がございまして、実際に問題になるのは、実演実演家の意に反して改変されたとき、あるいは実演家の名誉を害するようなときというような場合が一番問題になるということで、その場合には民法等の不法行為等の規定によって保護され得るという考え方によったということは明らかでございます。まあそういった議論で現在のところ続いているわけでございますけれども、国際的に申しますと、先ほども御紹介がありましたように、実演家人格権についてのあり方について検討がなされている方向もございまして、こういった国際的な検討の動向というものも非常に重要なものとして私どもは注意深く見守っているわけでございますが、そういった動向を考えながら今後検討をしていかなければならない問題であるというふうに考えております。
  192. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、ビデオ海賊版取り締まりについてお尋ねをいたしたいというふうに思います。ビデオ海賊版の実態というものはどうなっておるのか、またビデオレンタル店の実態というものはどうなっておるのかということをあわせてお尋ねいたしたいというふうに思います。あわせて、今回の改正によりまして、このビデオ海賊版を情を知って頒布する目的で保持することも罰則の対象とするということでありますが、これは具体的な取り締まりの際の運用の仕方というものはどうなるのか、具体的な取り締まりの方法についてもお伺いをしたいというふうに思います。
  193. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) まず、ビデオ海賊版の実態でございますけれども、これは日本ビデオ協会加盟各社及びアメリカ映画協会関係会社での推定でございますけれどもビデオソフト全体の一年間の売り上げというものは大体約一千七百万本でございますが、そのほかにビデオ海賊版として出回っているものというのが、現在六十三年の九月時点の推計でございますが、四百万本前後というふうに言われておりますので、まとめて申し上げますと全体が約二千百万本、そのうち海賊版が四百万本ということで、全体の占める割合は二〇%程度ということでございまして、先ほどの参考人質疑の中でもその数字があらわれていたと思います。この数字は、最近の傾向から見ますと非常に減ってきている、しかしなお二〇%という数字になっている、こういう現状でございます。  それから、今回の改正によって海賊版対策にどのような効果が生ずるかという問題でございますが、最も大きな効果といたしましては、これは情を知って「頒布目的をもつて」という要件が必要でございますけれども、所持行為、所持するという行為が違法行為になるわけでございますので、刑事手続の上でその犯罪の立証行為が非常に容易になったということでございます。これは従来は頒布ということがその取り締まりの中心でございました。この頒布行為について、どういうときにだれがだれにその頒布をしたかという立証が必要だったわけでございますが、今回の改正案によりますと、所持ということだけでよろしいわけでございますので、店に海賊版承知して置いてあったということが立証できれば、それはそれで、それだけでいいということで、非常にその点の立証が簡単になるということでございます。  それからもう一つは、犯罪を組成したものについての措置の問題でございますけれども、犯罪を組成したもの、つまり海賊版、取り締まられた対象の海賊版というものは強制捜査の段階で押収したりあるいは没収したりすることができるわけでございますが、これまでは頒布する行為というものだけが処罰の対象だったために、頒布された現物だけが対象になるということになるわけでございますが、今度は所持しているもの全部が押収あるいは没収の対象になるということで、これが非常に海賊版壊滅の大きな武器になるだろうというふうに考えられているわけでございます。  この二つの点が大きな点でございますが、こうしたことにより、海賊版を置くレンタル店に対する権利者による告訴とか、あるいは警察当局による捜査が非常に容易になる、それで一層の取り締まりの強化が期待できるということでございます。
  194. 勝木健司

    ○勝木健司君 著作権侵害の防止あるいは監視のために、諸外国のような監視のための機構というものをつくってはどうかという意見もあるようでありますけれども、今後の著作権侵害の防止体制をどのようにつくっていくつもりなのか、お伺いをしたいというふうに思います。
  195. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これは我が国の現在の海賊版の監視機構というものは主に二つございまして、一つ日本ビデオ協会の持っております監視機構でございます。それからもう一つはアメリカ映画協会の日本支社が持っておりますものでございまして、これはアメリカのメジャー系の映画についての監視機構でございます。この両者における監視体制というものを、今後この法律の改正を契機にいたしまして、さらに海賊ビデオの摘発について努力をしていくということで、ビデオの公正な使用を振興していくという方向にぜひ努力をしていただかなければならないというふうに考えております。
  196. 勝木健司

    ○勝木健司君 著作権思想の啓蒙活動についてお伺いいたしますけれども、まだまだこの著作権の問題については国民の間に十分な理解が浸透しているとは言い得ないように思います。著作権が守られるべき権利であるということを国民の間に啓蒙していこう、啓蒙し、またこの思想というものを普及するために具体的な施策というものをどのように考えられておるのか。特に学校教育の場で著作権思想の教育というものを進める考え方というものがとられるべきじゃないかというふうに、参考人方々からのお話聞いてもお伺いしたわけでありますけれども、大臣にお伺いをしたいというふうに思います。
  197. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 委員からはいろいろな諸点を伺いまして、隣接権保護期間の問題、あるいは隣接権条約加入の時期の問題、あるいは実演家権利の問題、海賊版ビデオの問題、監視機構の問題、いろいろ拝聴いたしておりまして、いろいろな法改正その他をいたしましても、おっしゃるようにその思想の普及、定着がなければいかぬわけでありまして、この点では、先ほどもお答えをいたしましたけれども著作権という文言の中で教える教育、学校教育としては高等学校教育でありまして、商業関係、工業関係で、例えば「商業法規」の問題あるいは「工業経営」の問題、そこで初めて無体財産権というものが出てまいりまして、その中で著作権の意義、あり方というものも教えておるわけであります。  しかし、著作権の思想というものは日常の中で、やはり他人の権利を尊重しましょうということから始まるわけでありますので、したがって高等学校教育だけでなく、中学校におきましても公民の分野におきましても、また小学校で申し上げれば、これは道徳あるいは社会の分野で、そういう意味での他人の権利を尊重するという意味から著作権思想の普及に、定着に努めておるところでございます。今後とも努力をいたしてまいりたいと思っております。
  198. 勝木健司

    ○勝木健司君 もう著作権の問題はここまでにして、あと時間がちょっとあるようですので若干最近の教育問題、文化問題等々で質問をいたしたいというふうに思いますが、まず新テストの実施時期について、従来文部省は実施時期の繰り下げについてはかたくなな態度を文教委員会でも維持してこられたように思います。しかし、報道によりますと一月繰り下げに踏み切ったということが載っておりましたけれども、事実かどうかお伺いをいたしたいというふうに思います。
  199. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 大学入試センター試験の実施時期の問題でございますが、ただいまお話にございましたように、ことしの二月にまとめられました大学入試改革協議会の最終報告におきましては、十二月下旬にするのが適当である、こういう御報告を私どもちょうだいいたしまして、私どもそれらを念頭に置きまして諸般の準備を進め、一方でまた関係者の御意見も伺い、そしてまた、やはり試験問題の輸送、保管、什分けあるいは成績の提供ということについて一定の物理的な時間が必要でございますので、それらについて詰めて最終決定しよう、しかし入試改革協議会から十二月下旬ということがございましたので、それを念頭に置いて準備をしてきた、こういう段階でございます。  その後、全国の高校長協会の方から高等学校教育という立場からこれを一月下旬ないしはそれに近い時期に繰り下げてほしいというような要請も出されてきた。背景には私立大学の参加状況ということもあるわけでございますが、そういうことで私どもと入試センターにおきまして、私学のサイドでは一月末までには成績提供をしてほしいという一種のタイムリミットを設けられておりますので、逆算してどこまで可能かというような詰めを行ってまいりました。その詰め、技術的な検討をもとに国公私立大学関係者で構成されております大学入試センター試験協議会において御検討いただきました結果、六十五年度の入試におきます入試センター試験の実施時期につきましては六十五年の一月十三、十四の両日に実施するということで意見の一致を見たわけでございます。私どもこれに基づきまして入試改善会議にお諮りした上で、実施大綱でただいま申し上げました一月十三、十四ということで決定さしていただいたというのが経緯でございます。
  200. 勝木健司

    ○勝木健司君 時間もありませんので、もう一つ。  先国会成立した初任者研修につきましても、文部省は研修日数の短期化というものを検討しておるというふうに報道があるわけでありますけれども、これも事実かどうか、経過等含めて御説明いただきたいというふうに思います。
  201. 倉地克次

    政府委員(倉地克次君) 初任者研修の研修日数でございますけれども、これは昭和六十二年と六十三年度の試行におきまして、校内においては研修を七十日程度、それから校外におきます研修につきましては三十五日程度実施するということで実施した次第でございます。それで、その後この日数につきまして、六十二年度についてでございますけれども、初任者研修の試行に関するアンケート調査を実施したわけでございますが、その結果によりますと、もっと短縮すべきであるとする意見と、それから適当な期間であるとする意見がちょうど相半ばしているということでございます。それから、試行を行った都道府県、指定都市教育委員会からもいろいろヒアリングを行っている次第でございますけれども、研修日数の短縮について検討の必要があるというふうに指摘されているところでございます。  初任者研修の本格実施におきましては、このような意見を踏まえると同時に、他方におきましては、初任者研修に本当に必要な事項を確実に初任者に身につけていただくためにはどの程度の日数が必要かという観点からいろいろ今後検討を進めたいというふうに考えておりまして、十分今後検討を進めていきたいと思っている次第でございます。
  202. 勝木健司

    ○勝木健司君 終わります。
  203. 下村泰

    ○下村泰君 この著作権法に入ります前に一つ大臣にお伺いしておきたいんですが、去る八月十二日、富山県高岡市で次のような事件がありました。  高岡市の市営プールがあるんですが、開設以来五十万人目に当たる利用者に記念品を贈った。「たまたま五十万人目が県立高岡養護学校高等部二年生の知恵おくれの少年だったため、職員は、その後ろにいた小学校六年生に記念品を渡した。「知恵おくれだと五十万人目の意味がわかってもらえない。もっと喜んでくれる子に」というのが理由」、これが報道されますと、これはもう高岡市は大変な抗議の電話あるいは文書でいっぱいになりました。このときのここの教育長の方がいらっしゃるんですが、篠島さんとおっしゃるんですかね。「現場の職員たちに差別意識はなかったはずだ」と発言をしたんですが、市議会まで開かれまして、そして、その市議会ではこの教育長は「職員の人権意識の低さを認めざるを得ない。人間の尊厳にかかわることで弁明の余地はありません」、こういうふうに頭を下げているわけですがね。こういう事件が起きました。これはもう差別以外の何物でもないと思います。富山地方法務局も調査に乗り出したと聞いておりますけれども、その後の経過と対応、そして大臣の恐れ入りますが見解を伺わせてください。
  204. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) この前後の措置につきましては政府委員からお答えをいたしますが、今おっしゃられました富山県高岡市の事例は、私は新聞でまず目にいたしまして、実はその新聞を見たときに目を疑ったわけでございます、こういうことがあっていいんだろうかと。実際にその五十万人目の方がたとえお子さんであれ御老人であれ、それはわかりませんけれども、その人格を尊重するということにつきましては、人権の問題は平等でございまして、そこにその時点でどのような状況であったにいたしましても、起こってはならないことが起こったなという感じをその瞬間に持ちました。大変不幸なことだと思っておりますし、また、反省面といたしましては、たまたまこの方が肢体不自由なお方であったということでありますので、そういう方々に対する啓蒙、教育が徹底していなかったかなという点で反省を持ったことは事実でございます。  以後それに対してどのような指導をしたか、処理をしたかということにつきましては、お尋ねがあれば政府委員から補足させていただきます。
  205. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) ちょっと細かい経緯でございますので、私の方から御説明申し上げますが、私ども、富山県の教育委員会を通じまして調べたところ、先生が今御指摘されたような大体の経緯であったようでございます。  この担当の市職員は、当該生徒は必ずしも五十万人目であるということで記念品を渡しても余り意味理解してくれないんじゃないかということをおそれて、その次の小学生に渡してしまったということのようでございます。が、その日の夕刻にその市営プールの所長から市の教育長に報告をしたようでございますが、市の教育長は早速その日に適切な処置じゃないとかなり厳しく所長に注意をいたしまして、翌十三日に教育次長、それから体育保健課長、プールの所長の三名が当該生徒の宅へ行き、親御さんに謝罪するとともに、改めて五十万人目として用意しておった記念品をお渡しした。それから同時に、養護学校の高等部の二年生だそうですが、養護学校長にも教育長から謝罪を行ったそうでございます。  それで、十五日に臨時教育委員会を開催しまして、そのことを報告し、十七日に社会体育施設を含む課長会議を部内で開きまして、二度とこのようなことがないようにという趣旨の指導を行ったようでございます。その後、先生御指摘の市議会も開かれて問題にもなり、新聞等でも相当多く話題になって世論の反撃に遭ったということを真剣に受けとめまして、二十二日に市長から全市の職員に対して、市民と接する場合には基本的人権を尊重するとともに真心を持った態度で公平に接すること旨の説諭を行ったようでございますし、翌二十三日に教育委員会としては関係職員の処分を行ったようでございます。  私どもとして日ごろ住民のスポーツの振興に当たるべき社会体育関係職員が本件のような事例を起こしたということはまことに遺憾なことだというふうに思っておりますし、私どもとしましては、従来から心身障害者についての理解を深めるべく各都道府県教育委員会等に指導をしてきたところでございますが、今後ともこのようなことのないよう一層の努力を続けると同時に、改めて保健体育関係の課長、担当者等については、ぜひ二度とこのような、この事例を紹介いたしまして、このようなことが起こらないように指導を徹底してまいりたいと、今考えているところでございます。
  206. 下村泰

    ○下村泰君 どうも丁寧にありがとうございました。  後から同じ記念品を贈ったそうですけれども、後から贈ったのとそのときに贈ったのとではえらい意味が違うと思うんですね。私こんなことは言いたくはないんですけれども、例えば地方でそういう事象がございますね。これはやっぱり中央と同じ意識じゃないかと思うんですよ。昔から上正しからざれば下必ず乱れるなんていいますからね。上の方がしっかりして、中央がしっかりしてそういう感覚がきちんと浸透していけば、幾ら地方自治なんなりだってそういうことはないと思うんです。ですから、中央がそういう障害者に対する考え方がある程度やはりないがしろであるからそういう形が出てくるんじゃないか、こんな気がするんです。  きょうも著作権の問題でございますし、私余り同じことを聞きたくない性格なんですけれども、多少きょうは重ならなきゃならないところがございますので、これお許し願いたいと思います。  ただ、活字にしても、それから音符にしても著作権というものが得られる方はいいですね。ただしゃべるだけの仕事の人、これ著演権てないんでしょうね。それから著講権もない。それをつまり活字に残しましても時によって漫才という職種からいきますれば、そのときそのときの世相を取り上げて話をしますから、もう一月たてば時によっては古くなるわけですね。ですから、活字にして残してもそれに著作権をつけるなんということはこれちょっとおこがましくてできない。けれども、本人が考えて、本人の創作によれば、これは当然著作権があってもしかるべきですね。ところがこれ、しゃべくっただけでおしまいですからね。著演権とか著講権があってもいいんじゃないかなとは思いますけれども、こういった著作権にかかわる方々はむしろ私に言わせりゃ幸せだなと思いますけれども。  さて大臣、いつか私が大臣に障害があるから障害者なのではないというお話をいたしました。耳が聞こえないから、また話せないから、あるいは目が見えないからというので、健聴者といいましょうか、お耳の聞こえる方あるいは晴眼者と同じような生活ができないから障害者と呼ばれる。これはもう大臣も衆議院の文教委員会にも引用なさっていらっしゃるようでございますけれども、この方たちの、つまり障害を一つ一つなくしていくという行為がノーマライゼーションの考え方だろうと私は思うんです。国際障害年でうたわれました完全参加平等の理念だとこれは思うんですけれども、この考えに大臣はいささかも間違いはございませんね。
  207. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 全く間違いはございません。特に、今下村委員がおっしゃった言葉は私は大変感銘深く伺った言葉でございまして、まさに障害があるから障害者ではない、あればそれを私ども全員が一つ一つ取り除いていくということに全力を尽くさなければならない、そう思いまして、つい感銘深かったものですから、ほかの席でも引用さしていただいた次第でございます。
  208. 下村泰

    ○下村泰君 どんどん引用してください。引用しても大臣のお口からそういうことが浸透していくことによって、少しでもそういう方たち理解を深める方がふえればこんなにすばらしいことはないと思う。  それで、お耳の不自由な方、耳の聞こえない方、これ何が障害か。一番困ったことにはコミュニケーションの障害ですね。情報が得にくい、得られない。これがこの方たちの一番の私は悩みだと思うんですね。これ人権侵害にさえなりかねない。例えば政権放送の問題がございますけれども、これは参政権にかかわりますわね、この方たちは。それから、病院で病状がうまく伝わらないとすると命にかかわってきます。まさにこうした点についての権利の回復それから保障は最優先課題だと思います。  それで、厚生省の調査によりますと、現在は聴覚に障害を持つ成人の方は全国で約三十五万、確実にこれはふえています。と申しますのは、高齢者社会になります。高齢者は老人性で聴覚を失ってきます。私もことしの二月ですか、国立病院で精密検査を受けました。そうしましたら、高音のいわゆるピアニッシモの小さい音になりますと、それが若干聞こえなかったらしいんで、老人性でかかりまして、一瞬がくっときたんですけれども、これが要するに増幅されていけばやはり難聴者になる。そして、今度は老人性からくる目の方もございますわね。こういう方たち、これから先天的な障害を持っている方だけでなくて、こういう後天的な方々もふえてくるわけです。そうしますと、今申し上げましたように一つ一つの解決方法を見出していかなければならないんではないかと思うんですね。  これについてのお答えは別といたしまして、「聴力障害者情報文化センター様」というのでこういうものが来ているんですね。聴覚障害者の方からですね。聴覚障害を持っている人たちだって皆さん御一緒にテレビを見ながら家族団らんをしたいですわね。ところが口が動いているだけで何を言っているかちっともわからぬわけです。それで文化センターにこういう手紙が来ています。   ビデオテープ借し出しお願い致します。ずい分本数が増えてうれしいです。色々大変だったと思います。御努力感謝致します。我が家の子供は中学二年生です。昨年秋、再放送されましたフジテレビの「北の国から 87初恋」に字幕が付いていたらなーと言っていました。字幕をつけてライブラリの中に入れて下さい。お願いします。   フジテレビの「サザエさん」は、字幕放送をしているようですが、私どもの地方では見られませんので、ビデオにして借し出してほしいと思います。 これはほんの一例です。こういうふうに子供さんにとったってこれは大変な何といいますか、情報ということになって、これはこのお子さんが育っていく上で将来大変必要なことになるわけです。ですから、技術的な難しさは私も十分承知しておりますけれども、こうあるべきだというお考えがあればそれに向かってやはりみんなが知恵を集めていかなくちゃならないと思うんです。  今聴覚障害の方々の置かれている状況について何とかしなければならないと思いますが、そういうお考えはございますか。
  209. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 先生のお話のような聴覚障害者に対する情報の手段の充実といいますか、そういった面についての必要性というものは私ども十分わかるわけでございます。先ほど大臣申し上げてもおりますように、それを直接著作権権利者の制限にするということについて大変難しさを申し上げているわけでございまして、最も有効な方法として、権利処理についての方法を非常に簡素化し迅速化するということについても促進を図るべきだということは申し上げてきたつもりでございます。  それで、今お話しの聴覚障害者の情報文化センターというところは、特にビデオのライブラリーを盛んに作製をするというようなことで活動をしているところでございますけれども、これにつきまして、権利者との間の許諾を求める手続についてできるだけ簡素化するように、これは権利者団体の方にも指導をいたしまして、ルールをつくっていただくべく努力をしているところでございまして、そういったルールはかなりできているように伺っております。  放送番組利用についてのNHKと民放と、それから実演家団体等の六団体と通常呼んでおりますけれども、音楽著作権協会とかあるいは文芸関係保護同盟、それから放送作家組合、それからシナリオ作家協会、レコード協会、こういった権利者の六団体というものが普通その番組のコピーをする場合の許諾の相手方になるものですから、これらの六団体が一括して契約ができるように、芸団協を窓口にしてその契約ができるような方向にまとめつつあるわけでございます。それから、放送番組は実際には下請で行われている例が非常に多いわけでございますが、そうしたものについても現在、一括した許諾の手続がとれるように話し合いは行われているところでもございます。  それから、劇映画につきましても、映画会社との関係原則として実費のみの負担で作品を提供するというルールができつつございまして、現実に手続の簡素化をめぐるいろいろな努力というものがかなり実を結びつつあるように思っておりまして、これをぜひさらに促進してまいりたい、このように思います。     ─────────────
  210. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、山東昭子君及び寺内弘子君が委員辞任され、その補欠として松浦孝治君及び岩上二郎君が選任されました。     ─────────────
  211. 下村泰

    ○下村泰君 十月十七日の毎日新聞にこういう記事があります。「見たぞ 見ました一年間に映画百八十九本」、これは「映画を追いかけて」というタイトルで、自分の見た映画の内容、それに批評を加えているんです。この方が実は文部省にいらっしゃるんです。この方は文部省の生涯学習振興課長補佐、三十六歳。とにかく、まあ土曜日と日曜日だけでしょう。よく見たものですね、百八十九本というのは。お仕事は立派にしているんですよ、別にこの人がいい悪いじゃないですよ。この人がこういった本をまとめて出していらっしゃる。  この方は、だけどこれは見れるからようござんすわな、百八十九本。御存じのごとく、これ晴眼者だからこれができる。ところが、聴覚障害で耳の不自由な方は何もわからない。そこで、この方は洋画を見に行くんです。要するに外国映画を見に行く。これはもうかつての名プロデューサーはおわかりでしょう。スーパーインポーズで字が出ますわね。あるいは亡くなりました松田春翠が主宰していた昔の映画、言葉が出ます。これでしたら聴覚の障害の方はいいわけです。だけどこの方は百八十九本も見たという、こういう記事が出たら、これを読んだ聴覚障害の方は残念だと思いますよ、こういうものを見た場合には。もしそこに、日本映画でも字幕が出たらなという、私はこれは大変何といいましょうか、希望というのは大きいものだと思うんです。すべての番組、映画に字幕をつけるというのは、これは現実的な話じゃございませんけれども、郵政省に話を聞いてみると、お金と人と手間を、民放ならスポンサーの理解があれば可能は可能だと言う。でも、実際問題としては無理なんですよというお答え。ではどうすればいいのか。たとえ時間差が生じても、放映されたものをビデオに撮り、字幕や手話をつけて貸し出すしかない、こういうことになる。  そうすると、大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほどから大臣は大変温かいお言葉が多いんですけれども、こうなると聴覚障害の方はテレビも映画も、おまえらは見なくたっていいんだよ、こういうことになりかねないんですよ。ですから、先ほどから申し上げているように、こういう方たちのためにも温かい方法を何とかとっていただきたい。そして、私の手元にはこういうものがございます。「文字放送総合番組表」、これは関東版というものです。これを見ても、まず手話だとか文字の出るというのはほとんどがもうニュース番組と、あとはその地方テレビ局の地方版ですね。そういうものにはつきますわね。せいぜいやるのが、これは文部省の方にもあるでしょうけれども、「水戸黄門」漫遊記ですな。これ月曜の二十時から二十時五十六分。それから「火曜ロードショー」、年間十本程度。これは字幕の放送がついているというふうに出ています。それからここに地方局の全部データが私の手元にあるんです。これを見ましても、ほとんど娯楽番組ありませんね。今申し上げましたように地方のPR版、そういうものだけしかないんです。  それで、こういうものを基礎にしまして、どうしてこういう方たちのためのこういうものができないのか、また何とかならないのか。いろいろな記事やなんかを拝見していますと、中にはこういうふうな書き方をされている方もおるんですね。著作権法に三十七条というのがある。それは点字図書館のような盲人用の公共施設に限り、公表された著作物は自由に録音し貸し出しすることができると定めている。盲人のためを思った温情あふれる条文のようだが、この条文がかえって盲人用カセット本の利用を閉ざす壁となっている。盲人用の公共施設は全国に数えるほどしかない。なぜ公共図書館ではいけないのか。こういうことが書いてございます。  この条文があるために、各図書館では著者に対して一々録音の許可をとる煩わしい作業を余儀なくされている。これはもう先ほどから各委員がいろいろと申し上げている中に含まれていることでございますね。そして著者の中には、自由に録音を許せば本が売れなくなるという心配がある、こういうことを言っている方がいるそうです。  それで、ある新聞記事を拝見しますと、例えばある図書館で、池波正太郎さんという方がおります。この方の書いた鬼平犯科帳というのがあります。この一冊を取り上げてこれを何とかしようとお願いしたら断りのお手紙が来たそうです。そしてこのことに関して読売新聞の方がお電話して聞いたそうです。そうしましたら「お役所仕事的な手紙を一方的に送りつけられても……。」と、こういうふうに点々となっておりまして、で、「私の小説は読むために書いたもの。どんな人がどういう形でテープに吹き込むのかもわからないし、作品の味わいが薄れてしまう心配もあります」と、こういうふうに話しています。それから亡くなりました川端康成さんも、日本文ですね、日本の文章、「日本文の持つ美しさを視覚的に表現しようとする作者の意図が、音声化によって失われてしまう」、それから松本清張さんは「承諾を求める図書館からの手紙の文面が、公文書的で情感が伝わってこない」、こういうふうにお断りになる作家というのは全体の五%程度だそうです。  そうしますと、この行間から感ぜられることは、じゃ、どういうことかといいますと、それでは懇切丁寧にお願いすれば結構許諾が得られるんじゃないかなということですね、お役所的な一方的な押しつけということは。そうすると、だれそれに声を入れてもらいます、そしてこういうふうにしますがいかがでございましょうかというような私は許可を求めるならば、あるいは著者の方がオーケーを出してくれるのではないか。どうもそこのところの手が抜かれているんじゃないか、こういう気がするんですが、いかがですか。
  212. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 実は私もそういう経験がございまして、私のごく雑文でございますけれども、許諾をしてほしいという点字図書館からの通知といいますか依頼文がございましたが、確かにあれは拝見いたしますと、どちらを丸つけるかとか、そういうふうになっておりまして、かなり何といいますか作家方々、特に高名な方々にとってみますと、役所的じゃないかなという感じを持つんじゃないかと思います。ですから、おっしゃいますように、それは一つのその表現の仕方で随分変わってくる要素もあるのではないかと、私も感想的にそういうふうな考えを持ったことがございます。
  213. 下村泰

    ○下村泰君 そこで文化庁にお願いしたいんですよ。先ほどからもいろいろと文化庁もこういったことに関して何か労をとろうというようなお答えがしばしばございましたけれども、ここで何とか文化庁が時の氏神になって、許諾を求めた場合に断れないようなシステムというのはつくれませんか、相手に。そんなようなものができれば大変ありがたいなと思うんですがね。どうも三十七条の第二項というのか、同じようなこれを聴覚の方にもそっくり持ってきてもらうとまことにありがたいんですが、何かできそうもありませんわな。ですから、文化庁でそういった時の氏神的な労のとり方が考えられるか考えられないか、いかがですか。
  214. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 先ほど来御質問がございまして、その手続の迅速化、円滑化についてのいろいろな指導とかあるいは要請とかを文化庁が各関係団体に精力的にする努力をしているわけでございますけれども、その中の一つとして今のようなお話について一つの方法であろう、そういう点が確かに一つの注意事項じゃないだろうかとも思いますので、それも含めて指導してまいりたいと思います。
  215. 下村泰

    ○下村泰君 この視聴覚の障害者の方々は今のこの一点に物すごく期待をかけているんですよ。ですから、文部省の方のお答えに一喜一憂するわけですよ。  私が申し上げているのは、余りはっきりしたお約束は出てこないでしょうけれども、何とかしてある程度視聴覚障害の方々に希望の持てるような答えというのは出てきませんか。いかがですか。
  216. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 私どもの調整機能というのはそんなに強力なものではないかもしれませんけれども関係団体に対して誠心誠意指導してまいりたいと思います。
  217. 下村泰

    ○下村泰君 これ以上どうやっても無理でしょうからお尋ねしませんけれども、聴力障害者情報文化センターの運営規定というのがあるんですよ。これはなかなかしっかりしておるんですよ。   字幕ビデオライブラリーの運営について  1 目的    この事業は、テレビ等の映像情報を一般健聴者のように享受することができない聴力障害者のために音声情報を字幕または手話に変換したビデオテープを制作し、これを貸し出しまたは閲覧する事業を行って、その生活文化の向上を図り、聴力障害者の社会参加と自立の促進に資することを目的とする。  2 貸出対象     ビデオの貸出しは、次に掲げるものに限って行う。    ア 身体障害者手帳を保持する聴力障害者(児)及びその保護者    イ 聴力障害者団体、聾学校及び聴力障害者(児)施設  3 登録制     ライブラリー利用は登録制とし、登録申込書によって資格登録した個人又は団体のみが利用できるものであること。  4 利用料     ライブラリーの利用は無料とする。ただし、ビデオの送料(実費)は徴収することができること。  5 複製、また貸しの禁止    利用者が借り受けたビデオを複製すること、またはまた貸しすること、若しくは上映に当たって会費を徴収することは固く禁止されるものであること。 こういうふうにはっきりしていますね。  ですから、健常者のために例えば公共図書館があって、その図書館では健常者がよく見られる。しかし、そこへ来て障害者のある方がそれを利用し、あるいはそのビデオあるいはカセットをとった場合に、これはいけない、決められた場所以外はだめだ。ここのところが私は納得できない。この人たちが何でほかへ持っていって流用するんだろうか。健常者と比較してこういう方たちの人口はどのくらいですか。悪いことをするやつはどんな法律をつくってもやりますよ。だけれども、この人たちは障害を持っているんだ。障害を持っている方がそんな、ほかの今の社会的にいろいろな起きている現象を見ればわかるでしょう、リクルートにしても何にしても、この方たちはそんな部類に入る人じゃないんですよ。ですから、もう少しあそこのところの条文が何とかならないか、これが私の最後のお願いで、質問を終わらせていただきます。大臣からもひとつお答えを願いたいと思います。
  218. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 御熱意ある御指摘をいただいて本当に拝聴をいたしておりました。  特に聴覚障害者のことにつきましては、繰り返すようでございますが、健常者が受ける文化の享受は身体に御不自由な点がおありの方も押しなべて何とか受けられるようにしなければいけない。文化庁長官からお答えをいたしましたように、聴覚障害あるいは視覚障害の方々一つ著作物を幅広く受け取っていただくためには、ある意味では無許諾の部分をふやせばいいわけですけれども、そのために三十七条の二のように許諾なしにという部分では一方でまた制限がつくわけでありまして、場所の制限、それからまた著作者に対しましては著作者権利を制限するということになりますので、これはやはり慎重に考えなければならない。その両方を考えながら一番スムーズにやる方法ということになりますと、今おっしゃったような情報文化センター、そのようなしっかりしたところが、むしろ著作権者と集中的にお話し合いをされまして、そういう許諾がスムーズにとれるような方法というものを進めていく必要があるんではないか。そういう動きと同時に、そういう集中的な許諾の許可を得る、そういうものに対してスムーズに進むようなサイドからの指導を私ども文化庁を通じてでも促進していける道は残っていはしないかという感じがいたしながら拝聴いたしておりました。  それから、先ほどちょっとあれしたんですが、視覚障害の方々について、先ほどのストックホルムの、スウェーデンの文化初等教育大臣にお会いしたときに、私は手帳をちょっと見ておったんですが、その方のお話ですと、町中の書店の中の二五%はカセットテープを置いてある。私が聞きましたのは書店の中のシェアだというふうに伺ったんです。それだと随分一般の方が本屋さんへ入れるように、ある程度の、つまり視覚障害の方々が音から文学を聞くということの機会が非常に多いな、これはやはりそういう点も含めますと、場所を限らなくても考えられる範囲があるんではないか、そのようなことも含めまして、また隘路ばかりを挙げるよりはそれを一つずつ切り開いていくことに努力を重ねたい、このように考えました。
  219. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。
  220. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、直ちに採決に入ります。  著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  222. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、粕谷君から発言を求められておりますので、これを許します。粕谷君。
  223. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び二院クラブ・革新共闘の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、文化の発展に寄与する著作権保護の重要性にかんがみ、著作権思想の一層の普及に努めるとともに、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一 著作隣接権保護の徹底を図るため、「実演家レコード製作者及び放送事業者保護に関する条約」への加入について適切に対応すること。  二 私的録音・録画問題については、国際的動向にかんがみ、録音・録画の機器・機材に対する賦課金制度の導入など抜本的解決のための制度的対応について検討を進めること。  三 ビデオディスク発達等により録音・録画された実演利用が多様化している等の実態を勘案して、実演家権利の適切な保護等について検討すること。  四 複写複製問題については、文献複写に関する著作権の集中的処理体制の確立に努めるとともに、出版者を保護するため出版物の版面の利用に関する出版者の権利の創設について検討を進めること。  五 コンピュータ創作物に係る著作権問題については、今後における技術の発達普及に十分対応できるよう配慮しつつ、検討を進めること。  六 視聴覚障害等の障害者が、公表された著作物を適切公正に利用することができる方途を検討すること。   右決議する。  以上であります。
  224. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) ただいま粕谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  225. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 全会一致と認めます。よって、粕谷君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中島文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中島文部大臣。
  226. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) ただいまの御決議につきましては、御趣旨を体しまして今後努力をいたしたいと考えております。
  227. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  228. 杉山令肇

    委員長杉山令肇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十七分散会