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山田耕三郎君 私は、まず肉用子牛の生産補給金
制度の運用についてお尋ねをいたします。本朝来、本件については
質問が集中をいたしておりますので、視点を変えて
質問をいたします。
今回の
日米合意に伴い三年後に
牛肉の
輸入自由化が行われました場合には、まず
輸入量の急激な増大が予想をされ、その影響は子牛価格の急落という形であらわれると予想されております。確かに、
輸入牛肉と和牛との肉質の相違や
日本人の嗜好、わけても最近における高級品志向等を理由に、若干の考え方の相違はありますが、大幅な価格の下落が予想されるとの
意見が大勢を占めております。最近では、
日米牛肉交渉の経過の段階においてさえが先行きの不安に駆られた生産者の動揺等もあって、昭和五十七年から五十九年において子牛価格の急落が生じ、昭和五十八年度は今日の価格の半値以下という
状況でありました。
自由化による値下がりは当然それを上回る可能性があることから、現行の肉用子牛価格安定
制度では財政的にも立ち行かなくなることが予想されるため、新たに
政府主導のもとで肉用子牛の生産者補給金
制度を導入されようとしておるものであり、しかも肥育一貫経営農家や肥育に向けられる肉用雌子牛にまでその対象が拡大をされようと意図されておりますことは、現情勢下においては適切な
対応と賛意を表します。
その財源対策としては、現行関税と引き上げ関税分を特定財源として充当することとし、その規模は五百億円とのことでありますが、もちろん現行
制度の適切な運用とあわせての
対応ではありますが、若干不安に感じる点もありますので、その代表的なものについてお尋ねをいたします。
第一点は、新しく提案をされております生産者補給金算出の基礎となります保証基準価格及び合理化目標価格の決定についてであります。この両価格の決定は、肉用子牛生産事業の安定はもちろん、ひいては
畜産事業の振興を左右する極めて重要な要素になります。それは肉用子牛の再生産を確保することができるかどうかの分かれ目になるからであります。
私は最近、但馬牛の産地のある集落を調査いたしました。この地域では、九月の市における子牛の価格は平均四十七万円とのことでありました。十一月の市の前日ある生産農家を訪ねました。美しく手入れされた三頭の子牛が畜舎の前につながれており、御主人に幾らくらいを希望しておられますかと尋ねました。五十万円くらいとの返事でしたが、後日確認をいたしましたところ、一頭は六十万円、一頭は五十五万円、残りの一頭は五十二万円とのことで、その平均は五十五万七千円、約五十六万円でありましたが、ちなみにその日の市の平均価格は五十二万円とのことでありました。この繁殖農家はこの地域でも
比較的優良農家と思われます。九月の市に比べ約一割強の高値であり、異常高値との表現が適切かと思います。
自由化を控えて先行き不安の多いときに、なぜこのような異常高値が続くのか。確かに不思議な現象であり、先日ここでの
参考人の皆さん方の
意見や産地での
意見を総合いたしますと、大体次のようなことが考えられます。
一つは、
日本人の嗜好が例の霜降り肉で代表されます肉質にあること。二つ目は、消費者の高級肉の志向は依然衰えておらない。以上のこともあり、国土保全の
立場からも国産
牛肉の供給体制は保護されなければならないという期待感を生産者が持っておいでになる。四番目は、繁殖母牛の減少等にあるようであります。
したがって、産地においても但馬牛の将来ということで次のように指導をしておいでになります。おいしい
牛肉を食べたい消費者意識は強く、高いけれ
どもよい品質の
牛肉は
評価され需要もあります。このおいしい
牛肉をさらに安く生産をし、社会的経済的情勢に左右されないような優良な子牛が生産されなければなりませんと生産者に呼びかけており、また生産者もこれにこたえ、さきに申し上げました生産農家も、その日の総収入百六十七万円のうちからさらに肉質の改良を目指して百二十五万円を優良繁殖牛の導入に投資をしておいでになります。肉質改良もこの一頭だけでは済まされず、引き続き投資が必要になってくると思いますが、このような生産農家が中途で挫折するようなことなく、そこそこ肉質改良の目鼻がつくまでの支えは行政としても留意をしていく必要があると思います。
繁殖農家もこのような異常高値の続くことにはむしろ不安を感じており、もう少し安くてもよいから長続きすることを望んでおり、一頭四十万円くらいまでだったら耐えられるのではないかと私なりの推量をいたしました。
ここで留意していただかなければならないのは、確かに名目価格だけに目を奪われることなく手数料や賦課金、共済金等の間接経費もかなり必要とすることも十分認識をしていただく必要がありますが、価格は今申し上げましたような状態でした。
一方、対照的に検討するために肥育地域も調べてまいりました。この調べた地域での肥育頭数は約六千頭、うち和牛が千頭であとは乳用の雄牛主体の地域でありますが、今のところ和牛については成牛価格が堅調なため救われておりますが、生体七百キログラム、七十五万円くらいで売れると計算すると、但馬牛のような優良子牛は別として素牛価格四十万円が限界でありますとのことでもありました。繁殖農家、肥育農家のいずれに採算割れがあっても円満な
畜産事業の発展は望めませんことは御
承知のとおりであります。
ここで、農林水産省とされましては、次の点についていかように考えておいでになるのか、御
見解をお尋ねいたします。
一つは、保証基準価格の設定についてはどの
程度を予定しておいでになりますのか。二つは、さきの
局長の御
答弁で高級化の動きもあるけれ
ども、低コスト化が肝要との御
意見を表明されました。しかし、肉質改良は既に始まっておるのでございます。そういうように、肉質改良のための投資の必要性についてはどう考えておいでになりますのか。必要だとお考えになっておいでになりますなれば基準価格の決定においてこのことを十分
配慮されるべきと思いますが、いかがでございますか。 以上をまずお尋ねいたします。