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1988-12-15 第113回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月十五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十二月七日     辞任         補欠選任      浦田  勝君     梶木 又三君  十二月十日     辞任         補欠選任      梶木 又三君     浦田  勝君  十二月十四日     辞任         補欠選任      橋本  敦君     諫山  博君  十二月十五日     辞任         補欠選任      本村 和喜君     出口 廣光君      一井 淳治君     秋山 長造君      三治 重信君     小西 博行君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         福田 宏一君     理 事                 岡部 三郎君                 鈴木 貞敏君                 水谷  力君                 村沢  牧君                 刈田 貞子君     委 員                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 大塚清次郎君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 高木 正明君                 出口 廣光君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 秋山 長造君                 一井 淳治君                 菅野 久光君                 八百板 正君                 諫山  博君                 下田 京子君                 小西 博行君                 山田耕三郎君    衆議院議員        農林水産委員長  菊池福治郎君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤  隆君    政府委員        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産技術会        議事務局長    谷野  陽君        食糧庁長官    甕   滋君        水産庁長官    田中 宏尚君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡  光君    説明員        総務庁行政監察        局監察官     松田 隆利君        厚生省生活衛生        局乳肉衛生課長  難波  江君    参考人        畜産振興事業団        理事長      今村 宣夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○肉用子牛生産安定等特別措置法案内閣提出衆議院送付) ○遊漁船業適正化に関する法律案衆議院提出)     ─────────────
  2. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十四日、橋本敦君が委員辞任され、その補欠として諫山博君が選任されました。     ─────────────
  3. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案肉用子牛生産安定等特別措置法案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  この際、佐藤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤農林水産大臣
  4. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先般開催されたガットウルグアイ・ラウンド貿易交渉委員会閣僚会議への出席について御報告いたします。  今月の五日から九日まで、カナダのモントリオールで開催されたガットウルグアイ・ラウンド貿易交渉委員会閣僚会議に、会期半ばからではありましたが、宇野外務大臣とともに出席してまいりました。今国会が重要な局面にあり、また本委員会において畜産二法の御審議をお願いしているさなかでありましたが、このモントリオールでの会議の結果が今後の我が国農政の展開に多大な影響を与えるものであることにかんがみ、関係皆様方の格別の御配慮をいただきまして、今月六日に日本を出発し十日に帰国いたしました。  農業問題につきましては、従来から我が国立場を踏まえつつ、農産物貿易の一層の発展に向けてのでき得る限りの貢献、食料安全保障など農業の有する純経済的でない役割への十分な配慮が必要ということを基本として積極的に参加し、最大限の努力をしてまいりました。しかしながら、交渉において目指すべき長期的な目標をめぐり主要国間の考え方に大きな隔たりがあり、議長を初めとする関係者努力にもかかわらず歩み寄りを実現するに至りませんでした。その結果、本件については知的所有権など他の若干の項目とともに、明年四月上旬開催予定貿易交渉委員会に向けてさらに協議を行うこととなりました。  また、モントリオールにおきましては、アメリカリン農務長官と個別の会談を行い、食料安全保障等農業の純経済的でない役割について理解を求めるべく明確な主張をいたしました。この場で日米懸案である米も話題になりましたが、これまでの双方の立場を確認し合っただけで新たな話は出ませんでした。  いずれにしても、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の今後の対応といたしましては、我が国としては従来の基本的立場を踏まえつつ、交渉の進展に向けて引き続き積極的に対処してまいりたいと考えております。  以上で報告を終わります。     ─────────────
  5. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の審査のため、本日の委員会に、参考人として畜 産振興事業団理事長今村宣夫君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 福田宏一

    委員長福田宏一君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 村沢牧

    村沢牧君 大臣モントリオール閣僚会議出席され、大変御苦労さんでした。ウルグアイ・ラウンド中間見直しは、農業問題について米国EC対立によって事実上の決裂をして、日本米市場開放問題はその陰に隠れて論議になることはなかった。しかし、これで米市場開放が免れたと判断することはできない。今後いつどのような場所で米問題が論議されると理解されています か。
  9. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 従来から申し上げてまいりましたとおり、我が方といたしましては、それぞれの国々が抱える困難な問題、そういうものをウルグアイ・ラウンドの場で持ち出して議論をするときには、日本農産物についても米を含む農産物について議論をするにやぶさかではない。そうした議論の場ができた場合は私どもも逃げない、議論をいたしましょう、こういうことを申し上げてきたところでございまして、そのことに何ら変更はございません。
  10. 村沢牧

    村沢牧君 いつごろになるんですか。
  11. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) この十二月の中間レビューが、実質的には四月に延長されたという言い方をしてもいいのではないかと私は思っております。その際、直ちに各国間の困難な問題が俎上に上るかどうか判断いたしかねます。それ以前に出ることはございません。どんなに早くても四月、それ以降。四月は、それじゃ必ずそういうことで話が出るかということを断定的に言うわけにもまいりませんし、四月の中間レビュー、四月上旬行われるべき会合に早ければ皆さんが出てくれば、持ち出せばそこで出てくるということでございましょう、ということで、見通しというか感想を申し上げておきたいと思います。
  12. 村沢牧

    村沢牧君 新聞報道によれば、宇野外務大臣米国リン農務長官との会談で、農務長官は、中間見直し会議農業貿易ルールづくりを行う場であって、日米二国間の問題、個別品目について話し合う場ではないと強調したというふうに言われておりますが、大臣リン農務長官会談したようでありますが、あなたに対してもそのようなことを言っているんですか。
  13. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) そのとおりでございます。  実は、率直に申し上げ過ぎるかもしれませんけれども、私とリン農務長官話し合いをしましたときに、リン農務長官の方から米は二国間で話をすべきことではないと、こう発言があったぐらいでございますから。ただ、今委員おっしゃるように、マスコミの方ではと言われましたが、現地におきましてもマスコミは私の出入りするたびに米はどうだ、どうだという質問も受けたことも事実でございます。それは、従来どおりのことを私は答えておる。まだそんなことを言っているのかということを私は率直に答えたこともここにつけ加えておきたいと思います。
  14. 村沢牧

    村沢牧君 私が聞いていることは、リン農務長官は、このウルグアイ・ラウンド貿易ルールづくりを行う場所であって日米二国間の問題を論議する場ではないと、そういうふうに言われたということが報道されている。そういうことなんですかということを言っているんです。
  15. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 米の問題を例に引き合いに出せば、私が今申し上げたとおりでございまして、ウルグアイ・ラウンドはもともと新しいガットルールづくり、今さらまたこれを申し上げるまでもございません、新たなルールづくりをしようということでございます。しかし、昨年の春以降話し合いをしております経緯からいたしますれば、各国が困難な問題を全部俎上にのせる場合は、その中にあって我が国も米を含む農産物問題について議論することはやぶさかではないと、こう言っているわけですから、まずやっぱりおっしゃるようにルールづくり、しかしその間にみんなが持ち合ってやろうということになればそれは議論しましょうよと、こうなっておるということをつけ加えて申し上げたわけでございます。
  16. 村沢牧

    村沢牧君 日本米市場開放を要求する米国態度は変わることはないというように思います。  そこで、さきにRMAの提訴をヤイター通商代表が却下した際、ウルグアイ・ラウンド中間レビューにおいては前向きな姿勢を示しなさいと言われた。しかし、リン農務長官は、ウルグアイ・ラウンドの場はそういう場ではないと言っている。ウルグアイ・ラウンドの場はルールづくりの場であるとすれば米問題は二国間で話をしましょうということにつながってくるというふうに思うんですが、そういうことなんですか。
  17. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 重ねて申し上げますが、ウルグアイ・ラウンドの場において話題になることについて二国間で話し合うことはない。米は、日米二国間で今後とも話し合うことはないと申し上げておきたいと思います。
  18. 村沢牧

    村沢牧君 それでは、くどいようですけれどもリン農務長官が言われたこと、日米二国間の問題それから個別品目について話し合う場ではない、ウルグアイ・ラウンドはと、リン農務長官は言っている。これと食い違ってくるじゃないですか、あなたの言うことは。だから、リン農務長官がそういうことを言っているということは、米の問題は二国間で話し合いをいたしましょうよということにつながってくると思うんですよ。そういうことはないですか。
  19. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 私の答えるのもまたくどいかもしれませんが、私は、リン農務長官の方から私どもが従来承知をしておることをわざわざ念を押された、米の問題については二国間では扱わない、こう向こうから発言があったということまでつけ加えて今申し上げたところでございます。
  20. 村沢牧

    村沢牧君 ヤイター米通商代表は、中間レビューにおいて日本姿勢評価しておったということが報道されていますが、このことは、米国ECとの対立の中で日本米国側立場に立って行動したので評価をされたのですか、あるいはRMA却下条件を真摯に受けとめて、市場開放についても前向きな姿勢をもって話し合いをしましょう、そういう態度があったから評価をされたのかどうか、その辺の見解を聞きたいというふうに思いますし、ヤイターさんは今度新農務長官に就任をされるということである。そうすると、米の市場開放要求は一層強くなるのではないかというふうに思うのであります。日本に対して十二品目から牛肉オレンジ、米まで市場開放をして丸裸にした、そしてやっぱりウルグアイ・ラウンド交渉EC米国との交渉が主要な対立点になるところですね。日本は、このようにすべてアメリカの言うことを聞いて市場開放をした、世界で一番農産物輸入する日本市場開放したんだと、だからECもしなさい、そういうことに我が国立場が利用されることになってくる懸念もあるというふうに思うんですが、その辺心配ありませんか。
  21. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) おっしゃるような心配はないものと心得ております。  アメリカ側日本協力評価したということは、窓口であります外務大臣、なぜ外務大臣と申し上げるかといえば、農業問題だけではなく知的所有権の問題やらたくさんあるわけでございます。そういうのを全部ひっくるめて、友好国であるアメリカ日本態度について評価をしたということでございましょう。私は、私自身が、米についても逆にアメリカは私ども主張をある程度評価してくれたな、こう思っております。粘り強くやってきたかいはあったな、こう私は思っております。  大体そういうことでございますけれども、けさほどの私もニュースを見ましたが、ヤイターUSTR代表が今度は農務長官になられるというよう な報道は私も見ました。それによって、どのような態度でどのような理屈でどう出てこられるのか、それは予測しがたいところでございますが、私は新しいルールづくりに積極的に対応をしていくという従来の方針、特に米につきましては、これはウルグアイ・ラウンドの場で、再々申し上げますが、各国が抱える困難な問題を持ち出して一緒に議論をするときは議論をすることはやぶさかではない、この態度は貫き通したい、こう申し上げてきたところであり、きょうもまたこの場でそのとおり申し上げる次第でございます。
  22. 村沢牧

    村沢牧君 新しい農務長官が、どういう条件でどういう態度でもって日本に要求してこようとしても、我が国としては日米二国間で米問題について協議することはない、絶体ないともう一回答弁してください。
  23. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) もう一回答えるということで——ちょっと聞き取れなかったものですから失礼いたしました。  私が、今申し上げたとおりでございますので、そのとおり受けとめていただきたい、こう思っております。
  24. 村沢牧

    村沢牧君 日本政府の、また大臣の米問題に対処する姿勢についても今話があったところでありますけれども、私もこの問題について当委員会で、そしてまた本会議におきまして何回か質問もし、要請もして、米は完全自給をするという国会決議を尊重して政府は毅然たる態度をとって今後とも交渉に当たられたいと要請してまいりましたが、このことについてこの席で改めて確認をしておきたいと思いますが、よろしいですね。
  25. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先ほど私が、粘り強くやってきたかいがあったかな、アメリカ我が国の事情を少しでもわかってくれたかな、そういう評価を私は申し上げましたが、私だけが粘り強くやってきたのではなくて、国会決議がもともとあったということ、いろんな方々が私に協力をしてくださったということ、また意見がほとんど一致しておったということ、そのことによってここまで来たなと私は感謝を申し上げておきたい、こう思っております。  しかし依然として、一部報道によれば現地でもそうであったがごとく、そういうことになっておるのに日本の側の方の報道、一部報道関係者から米はいいんだか、いいんだかと聞いておるんですから。ヤイターさんに聞き、リンさんに聞いておるんですから、また私に聞くんですから、もうしつこい以上の話でございまして私はあきれて物が言えない。私がまあ冷静に対応をする、常識的、冷静にといって出かけましたけれども、やや冷静を欠くような私もいら立ちを感じたということもつけ加えておきたいと思います。
  26. 村沢牧

    村沢牧君 次の問題に移りますが、去る十一月二十一日、本院本会議における私の質問に対して竹下総理は、牛肉かんきつ交渉日米間の共同作業で決着したものであるという答弁をしています。共同作業ということはどういうことなんですか、大臣にその真意を聞きたいと思います。
  27. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 真意と言われると、一口で言えば、二国間で話し合ったことは事実でございますから私とヤイター代表との間で、また実務者実務者同士の間で共同作業をやってきた、二国間で共同作業をやってきたということは事実でございます。
  28. 村沢牧

    村沢牧君 私は、共同作業という言葉はそういうときにはあんまり使わないと思うんですね。共同作業ということは、牛肉オレンジ自由化しようという意思があって共同してやったということならば共同作業として受け取れる。大臣は、牛肉オレンジ自由化は困難でありますと国会でたびたび答弁をしてきて、国内でもそういう姿勢を持ってきた。しかし、日米交渉は、言うなればアメリカの圧力に屈して自由化やむなしと判断をして、自由化に向けてどういうプロセスを踏むかという話し合いであった。つまり結果的には、共同作業ではなくて相手国方針協力した協力作業なんですね。共同作業などというきれいな言葉で済ませられる問題じゃないと思うんですよ。  こういうことは今後の米問題にもやがては関係するというふうに私は心配しますので、米国へ行っては先方の言うことを受け入れて、国内へ向けては共同作業でやりました、そんな態度であってはいけないと思うんです。私は、共同作業という言葉牛肉オレンジ交渉については当てはまらないと思うんですが、どうですか。
  29. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 実は私そこまで、何というか詳しく踏み込んで共同作業という言葉を考えておらないわけでございます。そういう点では、基本的に共同作業というのは普通こんなときに使うものじゃないと思っておられるあなたとの意見の違いは、これは率直に認めます。  ことしの一月、竹下レーガン会談において積み残されてきた困難な問題を日米共同で、共同でじゃなくて一つのテーブルを日米でつくって、そして話し合いをいたしましょうというところからまたこの長きにわたる懸案が話し合われることになった。そして、話し合いの結果は、私は自由化困難だということで主張をしいろいろ考えてまいりましたが、外交交渉でございますので、譲るべきは確かに譲りました。しかし、全部譲ったと言われると、私も何かこう言いたいような気持ちもするんですが、それを言っちゃいけないと思って、私はそういう意味では、それらのことも含めて内心じくじたるものはございますけれども、私はまず日本国家主権というものを守るということ、そして後、実務的に話し合った結果がどのようにまとまるか、まとまっても国内畜産業に対する存立を守るためには、外交交渉話し合いの結果だけで満足のいくものができるであろうか、それは当初より懸念をいたしておりました。  しかし、その場合は国内政策によってこれを補完し、そしてあわせてその存立を守るということを絶対にしなければならぬ、そうでなければうそをついたことになると思ったものですから関係大臣の、私を含め八閣僚の署名、これを背景に私は話を進め、そして外交交渉が終わった直後直ちに国内対策に取り組み、そして今また御審議をいただいております畜産二法というものもお願いを申し上げると、こういう結果に相なっておるわけでございます。
  30. 村沢牧

    村沢牧君 牛肉オレンジ交渉共同作業ではなくて協力作業であった、結果的にそういうふうに私は言えると思うんです。  そこで、大臣がいみじくも言ったように、ことしの一月の竹下レーガン会談において、懸案事項について解決しましょうということで話が始まって牛肉オレンジになった。また、心配されることは、来年一月竹下さんが行ってレーガンと話をする。今度は米の問題が懸案だということになりかねないですね。大臣が、そこまで大臣をやっておられるかどうかしりませんけれども、その辺はしっかりやってもらわなきゃ困ると思います。  そこで、その協力作業一つとして緊急輸入制限措置牛肉に講じたと言っておりますけれども米国牛肉制限制度比較してはるかに見劣りのする不平等な内容である、私はこのように指摘をいたしますが、大臣はどういう見解を持っておるのか。また、決定された輸入制限措置実効性についても伺いたい。
  31. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 今回、日米あるいは日豪間で合意をされております中でとられております日本牛肉輸入に関する国境措置と、アメリカ食肉輸入法等を中心にしました国境措置比較の問題でございます。  私どもとしては、法律制度上あるいは合意内容を形式的に比較をしていくという前に、やはり両国における牛肉生産供給構造というものを踏まえて考えていく必要がある。すなわち、アメリカ牛肉生産供給構造を見ますと、外国牛肉よりも品質が高くまた安いコストの牛肉を供給し得る構造基本に持っておりまして、そういう状況下加工用等に必要なものについて一部外国からの輸入を行うという体制になっているわけでございます。これに対して、日本については相当の内外価格差が存在をしており、また国内の需要の増加国内生産だけでは実態的に対応しがたいとい う状況にございまして、必然的に輸入に頼る必要がある、こういう状況にあるわけでございます。  こういった状況下通常時の税率なりあるいは緊急事態における一連の国境措置がとられておるわけでございますが、通常時の国境措置といたしまして、アメリカは御承知のとおり一ポンド当たり二セントという従量税を課しておるわけでございますが、これを従価に換算をいたしますと大体二%強程度低率関税でございます。  これに対しまして、今回私ども合意の中で確保しております通常関税率については、若干の逓減がございますが、初年度七〇%、二年目が六〇%、三年目以降については五〇%という相当高い税率を確保しておる。そしてまた、緊急時の措置としましてアメリカ食肉輸入法が決めております措置というのは、過去の一定時期におきます、安定的な時点におきます輸入量をベースにして、それの一一〇%程度数量というものをめどに必要があれば輸入制限措置をとる、数量制限をするという形を持っておりますが、現実にこの輸入制限措置が発動されたことは、御承知のとおり七六年のたしか第三・四半期の三カ月間というふうに私ども承知をしております。ただ、このような制度背景にして輸入国側に事実上自主規制を求めるというふうな実態があるわけでございます。  一方、今回の合意の中で確保しました我が方の緊急調整措置といたしましては、詳細御承知のとおりでございますが、最近におきます輸入量増加テンポを踏まえまして、それが一定水準を超える場合には相手国側と話をして数量規制をしていく、あるいはまたそれが不可能な場合には、通常税率にさらに二五%を上積みするいわば調整税率を上乗せをするというふうな形で緊急調整措置を確保しておるわけでございます。したがいまして、これらの事情を総合的に考えてみますと、いずれの国の国境措置輸入に対して制限的であるかということは一概になかなか言い切れないというふうに思っておりまして、私どもとしては、確保しましたこの国境調整措置の適切な運用を通じまして、国内の肉用牛生産の環境を十分に確保していけるものというふうに考えておるところでございます。
  32. 村沢牧

    村沢牧君 局長に最初にお願いしておきますが、非常に懇切丁寧に答弁してくださっているのは結構なんですけれども、私の質問の時間もありますから、私も今まで衆議院のあなたたちが答弁した会議録を全部読んでいますから、簡潔にひとつ質問に答えてもらいたいというふうに思うんです。  そこで、今お話があったように関税率がなるほど当初は高い、じゃ六十九年度以降も五〇%なら五〇%関税率を確保していくという自信があるのかどうか。これまた、ウルグアイ・ラウンドの問題でありますが、そのことなくしてその三年間ぐらい高いなんていう、そんなことでもって平等ではないなんて言えたあれではないと思います。さらに、輸入制限措置についても、日本は前年に比べて二〇%増加すれば輸入制限措置を講ずる。アメリカは一〇%増加すれば輸入制限措置を講ずるということであるというふうに思いますが、輸入の実態はどうか。アメリカは六%ぐらいな輸入しかないと思うんですよ、国内生産に対して。それに対して一〇%前年に比べて多くなれば輸入制限措置を講ずる。日本は五〇%も輸入しているんですから、それに対しては二〇%ふえなきゃ輸入制限措置が講じられない、これでもって不平等とは言えないでしょうか。
  33. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 先ほど申し上げましたとおり、それぞれの国の生産構造なり需給事情というもの、さらにまた通常時の関税率等も含めて総合的に判断しまして、私どもどちらの国が輸入に対してより制限的であるかというふうなことは一概に言い切れないということを申し上げておるわけでございます。また、先ほど申し上げました通常関税率通常時の関税率につきましては御指摘のとおりでございます。四年目以降の関税率については三年目の関税水準、つまり五〇%を上限にしてウルグアイ・ラウンド議論をしていくというふうに合意されておるわけでございますが、私ども国内の生産の存立を守っていくという観点で、この交渉に臨んで必要な関税率水準は確保したいというふうに考えておるわけでございます。また、ウルグアイ・ラウンドでは、当然のことながらアメリカ食肉輸入法そのものについても論議の対象になりまして、それに対するアメリカ側対応ということも当然議論の対象になってくるというふうに考えておるところでございます。
  34. 村沢牧

    村沢牧君 だから、六十九年以降の関税率についても絶対こういうふうにいたしますという自信のほどもないと思う。ここで議論したってその結論は出ないと思います。ですから、そういう状態であるのに加えて、先ほど私が申し上げた理由等によって私はこの輸入制限措置については不満足である、しかし合意をしてしまった、直ちにこれを変更することもできないであろう。そうすると大臣自由化日米間にはいろいろな問題が発生するでありましょうけれども輸入制限については合意事項を絶対に堅持して生産者に不安を与えない、このことをひとつ確約していただけませんか。
  35. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先ほど、委員おっしゃいますように、おまえもいつまでやっているかわからぬが、こういう話がございましたが、私が今日の肩書があろうとなかろうと私自身が交渉の責任者として、また国内措置をとった責任者として私がとるべき責任、私が果たすべき役割、いかなる肩書にあろうとも私は責任を負わねばならぬ、かようかたい決意を持っておるところでございます。
  36. 村沢牧

    村沢牧君 そのことをよくお聞きをしておきます。  そこで、政府国境措置国内措置を講ずることによって、牛肉・かんきつ生産の存立を守り得るとの判断に立って決断をしたと言っています。自由化後、牛肉生産は現在と比較してどのような形態で存立するのか、将来展望を示してください。
  37. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 今回の合意あるいはまた御審議を賜っております国内措置を前提にいたしまして国内における牛肉生産の展望を考えますと、この輸入枠の撤廃という事態によりまして、国産牛肉が価格面で一定の低下が起こってくるということは避け得ないと考えております。そういった状況対応できるような国内の経営構造というものを誘導していくために、御審議を賜っております子牛生産者に対する生産者補給交付金、あるいは特定財源を原資にしました肉用牛対策等の実施ということで対応していけると思っておりますが、その結果、形成をすべき国内の肉用牛生産の方向につきましては、本年二月に策定をしましたいわゆる酪肉基本方針においてその方向を示しておるところであります。  基本的には、土地利用をできるだけ充実をいたしまして飼養規模を拡大し生産コストを下げていく……
  38. 村沢牧

    村沢牧君 ちょっと局長発言中ですが、私の質問が理解されておらないようですから。  どういう形態で存立するかということで、私は酪振法のそんなのを聞いているわけじゃないんですよ。今現在、繁殖経営はこうだ、肥育経営はこうだと、自由化になっても今までのとおりやっていけるのかどうか、そういう具体的なことを聞いているんですよ。
  39. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 端的に申し上げまして、先ほど申し上げましたように、輸入枠撤廃に伴いまして国産牛肉についての価格低下が不可避である、それに対応して経営を維持していくためには繁殖経営、肥育経営双方について相当の構造改善、生産性向上、生産コストを引き下げるための構造改善が必要であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、現象としては、経営規模の拡大でありますとかあるいはまた土地利用の向上等々を通じまして生産コストを下げるような経営構造というものをつくっていかなければいけない、またそのために必要な施策とい うものを私どもとしても進めていかなければいけない、かように考えておるところでございます。
  40. 村沢牧

    村沢牧君 委員長にお願いしますけれども、法案を提出して、与党の議員がこんなことじゃ質問できませんよ。やめますわ、責任があるよ。定数ないじゃないか。
  41. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 今電話をかけて集めておりますから。
  42. 村沢牧

    村沢牧君 冗談じゃない、政権政党が法案を提案して、何ですかこれ。
  43. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 質疑の途中でございますが、暫時休憩をいたします。    午前十時四十一分休憩      ─────・─────    午前十時五十八分開会
  44. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 休憩前に引き続きまして、質疑を行います。
  45. 村沢牧

    村沢牧君 自由化後、牛肉存立がどのような形態で残っていくかということについては、今局長が言われたような酪肉振興法の指導、生産条件等を整えていかなければなかなか現在のような情勢では残っていかない、そのことを私は言えるというふうに思うんです。  そこで、農基法の第八条には、重要農産物の長期見通しを立てて公表しなければならない、こういうことを規定しているわけなんです。自由化になっても牛肉生産が存立し得るという判断に立つとするならば、需給の中長期見通しを明らかにしそれを達成するための政策を展開する責任が政府にはあると思う。牛肉需給の長期見通しはどうなっていますか。
  46. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) ただいま村沢先生からの御指摘の点でございますが、農産物の需給と生産の長期見通しにつきましては、現在五十五年十一月に閣議決定されました六十五年度を目標年次といたします見通しがございますが、ただいま先生のお話ございました点に関連いたしまして、農業者が将来を見通しつつ営農を展開することができるよう、大臣からの指示に基づきまして、農林水産省事務当局といたしまして改定の検討に着手したところでございます。それに関連をいたしまして農政審議会の企画部会に小委員会を設けていただきまして、本年八月から御議論をしていただいております。できるだけ早期にこの改定作業ができるよう事務当局あわせて現在検討に入ったところでございます。
  47. 村沢牧

    村沢牧君 六十五年度までの長期見通しはある。それはもううんと狂っていますね。だから、この見通しは改定しなければならないということは当委員会でも何回か指摘をしてきたところなんですよ。しかし、一向に政府はこの見通しを立てることができない。牛肉自由化になっても存立し得るというならばその見通しを明らかにすべきだと思うんですね。それすらできなくて存立し得るなんて大きなことは言えるわけがないと思うんです。大臣、この長期見通しというのは大事でありまして、単なる見通しではなくて、見通しを立ててそれを達成するように誘導していく政府の責任があるんですよ。だからこそ、農業基本法にははっきり見通しを立てて公表しなさいということが規定をされておるんです。ところが、この長期見通しが策定できないことは、日本農業の将来をどのように方向づけていくかという自信がないからそういうことになるのじゃないかと思うんです。私はそんなことじゃいけないと思うんです。  今農業が重大な時期になっておるときに、今こそやっぱり中長期の見通しを立てて守るべきものは守っていくんだ、その方針をはっきりしなければいけないと思うんです。長期見通しを立てなさい、見通しなさいということはもう何回も言っているけれども、やっとその作業に着手したとか、農政審の答申を受けるとか一体こんなことでいいのかどうか。大臣は、そういう見通しを立てなさいということを指示しているんですか、どうですか。
  48. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 決して気張って言うわけではございませんけれども、おっしゃるように長期見通しというものを立てることは極めて重要なことでございます。そして、バックグラウンドとして国際化のテンポが非常に速く進んでおる。その点だけを考えても、当然のこととしてその需給見通しというものを改定するということで、当院におきましてもまた衆議院におきましても、国会のいろんな場で私がお答えを申し上げてまいりましたことは、今着手したという言葉がちょっと言葉足らずであったのではないかと思いますが、私自身が御答弁を申し上げ、年をまたがることがどうも予想される。年はまたがりますがということはことしはなかなか無理、作業上無理。年はまたがるけれども、長期見通しを立ててちゃんとしなければならない、そのことについて審議会の企画部会にお願いをしている、そして各層の方々の御意見を聞いておる、そして御勉強をいただいておる。  それを受けて、それを参考として私どもの、農林水産省としてのちゃんとしたものを決めたい、こういうことを申し上げてきたところでございまして、重ねて申し上げますが、年をまたがるということについてひとつ御理解を賜りたい、こう思っております。
  49. 村沢牧

    村沢牧君 牛肉に限らず、すべての重要農産物の見通しを立てる責任がある。これは法律で決められておるんですよ。そのことを出してこそ初めて自由化になっても牛肉存立があるんだ、そういうことが言えるわけですね。そういうことを国民の前に、農民の前に明らかにせずして、ただただ自由化になっても牛肉は将来とも存立していくんだと。それは、こればかりの小さい規模なら存立するかもしれませんよ。産業として、日本農業として存立していく、そのことに政府は責任ある態度をとらなきゃいけないと思うんです。これは時間がありませんから答弁は要りません。  そこで、肉用子牛生産安定措置法が有効に機能するかどうかということは保証基準価格の水準いかんにある、その算定方法いかんにあるわけですね。局長は、今までの答弁で保証基準価格については、算出方法についても現時点では固定的な認識を念頭に置いていない、今後検討していく、現在の価格安定制度の水準が一つの目安になるのではないかというようなことを繰り返し答弁しておりますが、私はこの程度答弁では納得することができないんです。ですから、自由化になったけれどもこのように保証基準価格はつくりますから安心をしてください、そのことが言えるような答弁でなくてはこの法律を承認してくれといったって無理なんですよ。  そこで、この保証基準価格というのは、今まで政府の出している農産物の行政価格を見ても、生産条件及び需給事情その他の経済事情をしんしゃくして再生産を確保することを旨として定める、これは必定の形になっております。しかし、米価その他を見ても今まで政府の算定方法は、需給その他の経済事情を重要視して、生産条件を考慮して再生産を確保する価格をというのは二の次になっている。せっかくこういう法律を出し、政府の責任において自由化を決定したのでありますから、この保証基準をつくる基本的な考え方は、肉牛生産の生産条件を考慮して再生産が確保できる水準、そのことを第一義的に考えるべきだ、このことに対して見解を承りたいし、強く私はそのことを求めたいと思うんです。
  50. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 先生御指摘のとおり、ただいま御審議をいただいております法案の中に織り込まれておる肉用子牛の価格安定制度の運用に当たりまして、保証基準価格というものをどう設定していくかというのは大変バイタルな要素であるということを私ども考えております。  その決め方につきましては、先生ただいま御指摘のございましたように、私ども、現時点では具体的な算定方式なりそれに基づく算定値がいかなるものになるかということを固定的にまだ持っておるわけではございません。繰り返しで恐縮でございますが、畜産振興審議会の御意見等も踏まえて適切な方式、適切な水準が決められるように検討をしていきたいというふうに考えておるわけで ございます。  この問題をめぐりまして、先生御指摘ありますような御議論はいろいろ関係者の中でもございます。それらを今後畜産振興審議会の場等を通じて十分に御議論を願い、しんしゃくをして適切な制度運営に当たりたい、かように考える次第でございます。
  51. 村沢牧

    村沢牧君 だから、その程度答弁はさっきも申し上げたように、私は今までの会議録を見て全部承知しているんですよ。それでは納得できない。これは、畜産審議会だといったって原案を出すのはあなた方でしょう、あなた方が出すんだから。まず、この保証基準価格は再生産が成り立つように生産条件を考慮して決める、そのことを第一義的に考えるべきだ。もう一回答弁してください。
  52. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御審議いただいております法案で、この保証基準価格の決め方について他の価格安定制度の例に倣った法文が予定をされておるわけでございます。この運用に当たりまして、先生の御指摘のような御意見というものも十分そんたくをしながら関係者意見を集約し、適切な運用に当たりたい、かように考える次第でございます。
  53. 村沢牧

    村沢牧君 委員会答弁では、局長がそれ以上出すことはなかなかできないと思うんだけれども、しかし私の言わんとする趣旨はわかっていますね。政府自由化を決定したんだから政府がそのぐらいな措置を講じなきゃいけない。  もう一つ。現在の水準が一つの目安になるのではないか、こういうことを考えていますということをたびたび答弁されておりますが、目安になるということは、自由化に耐え得るような生産性の向上が図れるまで少なくとも現在の水準は下回らない、このことの決意を明らかにしてもらいたいと思うんです。
  54. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 今回の措置をとるに至った経過なりあるいはまた、肉用子牛の生産の実情というものも当然踏まえて検討を進めていくつもりでございます。なかなか絶対水準について、私ども固定的なレベルが現在頭にあるわけではございませんが、いろんな場で具体的なレベルについてのお話ございました際に、現在の価格安定制度で設定をしております保証基準価格というものが現実にあるわけでございまして、これにつきましても私ども、乳用牛につきましては現在の価格水準を少し改定をする必要があるだろうということで、緊急対策の中で現行制度の運営の改善を図るべく検討をしておるわけでございますが、いずれにしましても、現行制度で決めております絶対水準というものが議論のスタート台として一つあるという意味で申し上げておる次第でございます。いずれにしましても、御指摘の点も踏まえ関係者議論を十分尽くした上で適正な制度運営に当たり、所期の目的が達成されるように努力をしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  55. 村沢牧

    村沢牧君 国会答弁ということ、あるいは国会用語ということは大変に難しいことで皆さんも答弁しにくいというふうに思いますが、いずれにしても、現在の水準が目安になるということは現在の水準より低くならない、そういうことを皆さん方はおっしゃるんだ、そういうふうに私は理解しますが、よろしいですね。
  56. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) この制度を法案で規定しておりますように、昭和六十五年度からスタートさせるつもりでございます。その時点におきまして、私ども、現行の価格安定制度で決めております保証基準価格を引き下げるというふうな意味での実態の変化というものは予想しがたいというふうに考えております。
  57. 村沢牧

    村沢牧君 だから、私は現在の水準は下がらないと理解しておきますから、反論があったら言ってください。——いいですね。  次に、繁殖農家については子牛の不足払い制度である程度対応できますけれども、肥育については何らかの対策を講じなければ肉用牛生産農家の経営安定ができないというように思うんです。今高い子牛を買って肥育している農家は、自由化ないし自由化直前に肉の値段が下がることになれば肥育農家は大きな赤字を背負わざるを得なくなりますが、この救済対策をどのように考えていますか。
  58. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 牛肉輸入枠撤廃等に伴いまして、先ほど申し上げましたように、国産牛肉の価格が一定の影響を受ける、そのことを通じて直接的には肥育経営に影響を及ぼすことは御指摘のとおりでございます。中長期的には、ただいま御審議をいただいております子牛価格安定制度等を通じまして、子牛価格の適正化を通じて肥育経営の安定を図ることが可能であると考えておりますが、そういった状況になる前に、御指摘のとおり高い子牛価格を負担した肥育経営が、その生産物の価格低下によって大変経営が難しくなるという現象が起こり得ることは私どもも認識をしております。  これに対処いたしましていかなる手を打っていくかということにつきましては、私ども、この輸入枠撤廃の時期以前にも起こり得ることでございますので、肥育経営が一定の所得水準を下回るような事態が生じた場合には、経営の継続維持が確保されるように、所要の措置をとるようなことが必要ではないかということで現在検討を進めておりまして、緊急対策の中でそういった措置についても具体化を図りたいと思っておりまするし、またそれがもっと不足するという、将来的にそういった事態に対応するための施策がさらに必要であるということになりますれば、今回の法案で御審議を願っております関税収入相当額の特定財源化が予定されておりますので、それらをもとにしました対策としても将来的に検討していく余地があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  59. 村沢牧

    村沢牧君 局長、非常にいろいろと細かく説明していただきました。もっと単刀直入に、そういう場合には補正予算を考えています、しかるべく補正予算を講じて、例えば利子はどうするんだとか、そういうことを端的に答弁した方がすっきりいくんですから。何か対策を考えるんだと言ったって補正予算を出すんでしょう、今度。その中でやるんでしょう。例えば無利子だとか低利だとか、そういうふうにやって救済するんでしょう。——いいですね。答弁要りませんわ、もっとはっきり答弁しなさいよ。  そこで、肥育についても一定水準以下に牛肉価格がなった場合には不足払いをすべきではないかということがよく言われる。我が党もそういう立場に立って政府に要求していますが、こういうことを検討したことがございますか。  時間がありませんからもう一点だけ同じ問題について申し上げますが、こういう肥育についての補てん対策を県段階あるいは団体がやっていますね。昨日農林水産省で調べてもらったんですが、全国で十五の団体、県がやっているわけですよ、県が全部やっているわけじゃありませんが。これだって県がやっているところもあるんですから、団体がやっているんですから、不足払い制度は直ちにできぬとしてもこれに対して何らかの国が助成をするあるいは援助をする、そのくらいのことがあってもしかるべきだと思うんです。政府の責任で自由化は決定したんですから、こういうことはできませんか。
  60. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) お話しのとおり、肥育牛に対する不足払いの問題というのは私どもも実は従来からいろいろ検討した経過がございます。ただ、御承知のとおり肥育牛ということになりますと、結局枝肉についての価格補てんというふうなことになるわけでございますけれども、全国的なレベルでこれをやっていくことになりますと品質格差が子牛に比べて大変大きい、あるいは流通経路も大変錯綜しておりまして政府効果を浸透さしていくのに大変難しい問題がある、技術的に対応困難であるということで、全国ベースでこのような方法をとるということは不可能であるということで、子牛に対する不足払い制度と肥育の最終生産物であります牛肉そのものについての、枝肉 についての価格安定制度基本的に従来どおり維持するということで対応をしたいと考えておるわけでございます。  御指摘のございました県段階で、確かに十五県ほどで自主的な形で肥育牛と申しますか、結果的には枝肉になっておりますが、それについての一定の価格補てん制度を持っておる県ございますけれども、これはその対象が特定の流通経路に限定をしておるとか、その地域の特産物的なものをサポートしていくということで行っておるものでございまして、これを全国レベルで統一的な制度として仕組むということは、私どもどうしても難しいと言わざるを得ないところでございます。
  61. 村沢牧

    村沢牧君 難しいことは理解ができないわけでもないけれども、しかしこれは農協が中心となってやっているわけです。農協も肉用牛生産に力を入れているんですよ。ですから、こういう制度があって県でもやっているんだから、それに対してお手伝いをするぐらいな誠意は示してもらいたいと強く要請しておきましょう。  あと時間がわずかですから、畜産事業団の理事長も見えておりますので質問したいというふうに思います。  畜産事業団の輸入牛肉売買業務をめぐっていろいろ批判をされてきて新聞でも報道されてきた。特に、この談合問題については、事業団の理事長は商社による談合があったとは考えない、こういう明言を今までずっとしておるわけですが、現在でもそのように思っているんですか。大臣は本会議の中にあって、こういうことが起きたことはまことに遺憾だ、今後は綱紀粛正をしていきますと言っているんですが、事業団理事長としては現在をもってもそういう指摘をされるような事実はなかったかどうか、端的にひとつ答えてください。
  62. 今村宣夫

    参考人今村宣夫君) 去る八月三十日に一部新聞でお話しのような報道がなされまして、大臣から直ちに真偽のほどを調査しろという御指示がございました。そこで、私たちは鋭意調査を進めているところでございますが、その後の新聞報道を要約しますと問題は二つあると思います。  一つは、個々の入札におきまして輸入商社が価格数量を談合して、そして事業団の予定価格よりもできるだけ近い価格で落札をした、そしてもうけた、こういう指摘が一つです。それから第二は、六十年から六十二年にかけまして商社のシェアが固定化しておる、これは談合してシェアを固定化したのであるという指摘でございます。  第一点のことにつきまして、私たちは過去数年にさかのぼりまして個々の入札におきます応札の状況、落札の状況、それから応札価格の状況、落札価格の状況を調査いたしました。あわせて関係者からの事情の聴取をいたしましたが、個々の入札の場合におきます談合ということは、談合しておったとは考えられないと思っております。第二点の、個々の商社のシェアが固定化しておるといいますが、これは変動が少ないことは確かでございますが、変動をいたしております。したがいまして、その変動幅が小さいことをもって直ちに談合があったということに断定することはできないと思っております。したがいまして、それを要約しまして談合があったとは考えられないという結論を得たわけでございます。  しかしながら、そういう談合疑惑の問題を提起されましたことは、私たちとしてもまことに遺憾でございます。したがいまして、改善策を具して大臣に御報告を申し上げたところでございまして、今後事業団の業務の適正なる執行につきましては十分な留意を用いて行ってまいりたいと考えておる次第であります。
  63. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、総務庁おりますね。——総務庁は、畜産事業団について行政監察を行っていると聞いていますが、今理事長答弁のあったようなことを我々がそのとおりでございますということで受けとめていいのかどうか。今まで調査した段階ではまだ結論は出ておらないというふうに思いますけれども、中間報告等ができればやってください。
  64. 松田隆利

    説明員(松田隆利君) お答え申し上げます。  総務庁におきましては、牛肉輸入自由化という事態を踏まえまして現在、この十月から十二月の間にかけましてでございますが、畜産に関する行政監察ということで全国的な調査を今実施中でございます。主たる観点は、やはり輸入牛肉に対抗し得るような肉用牛生産を確立するとかあるいは牛肉流通の近代化、合理化という、そういう観点で行っております。  先生御指摘の畜産振興事業団の問題につきましては、既に農林水産大臣の御指示がございますし、そのもとで事業団におかれましていろいろ調査等をなされております。そして、公正取引委員会等におきましても対応が進められていると聞いております。  私どもの観点は、行政運営に制度的なあるいは運営上の問題があるかどうかということでございまして、先ほどの畜産に関する行政監察の一環として現在、目下あわせて問題があるかどうかという調査をしているところでございます。現段階はまさに調査の実施中でございますので、結果はまだ今後の問題でございます。できるだけ早期に取りまとめていきたいと、こう考えております。
  65. 村沢牧

    村沢牧君 いつまでにその結果が出ますか。
  66. 松田隆利

    説明員(松田隆利君) お答え申し上げます。  全国ベースの調査の結果が、私どもの各出先機関から報告されますのは来年一月になってからでございます。その後、農林省等々と事実関係その他につきまして御相談申し上げる、そして結果報告を取りまとめていくということでございまして、時期を確定的に申し上げることはできませんが、できるだけ早期に取りまとめてまいりたい、こう考えております。
  67. 村沢牧

    村沢牧君 もう一問だけお聞きしますが、畜産事業団の業務を整理するということで、これから業務内容が変わってくるわけでありますけれども、職員の雇用不安や労働条件等の悪化は絶対に来してはならないというふうに思いますが、理事長は、そんなことはいたしませんということを衆議院でも答弁しておりますが、いいですね。
  68. 今村宣夫

    参考人今村宣夫君) そのように考えております。
  69. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、大臣に最後に一点お伺いしたいんですが、事業団は法の規定によって農林水産大臣が監督することになっている。今度は法律改正によって事業団の事業の範囲も変わってくるわけでありますが、今私が申し上げたように、そのことによって職員の雇用なんぞに不安を与えてはいけないと私は思います。  そこで、指導監督の権限を持つ農林水産大臣としても、この点について配慮すべきであると思う。理事長はそんなことは絶対にいたしませんというふうに言っておりますが、大臣も指導監督の権限がありますから、そのようにさせない、そういう指導をいたします、監督いたします、そういうことについて大臣見解を伺いたいと思います。
  70. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 私は、日米日豪が終わった段階で、特に日豪の終わった段階でシドニーで畜産事業団の出先の方にも申し上げました。また、成田空港に着きましたとき前理事長から出迎えを受けました。そのときも雇用問題という言葉をあえて使って、私自身は労働問題、雇用問題に関心を持っておる一人だと任じておりますので、いささかもそういうことがあってはならない、既に申し上げてきたことをここでお答えをいたしておきます。     ─────────────
  71. 福田宏一

    委員長福田宏一君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま本村和喜君が委員辞任されその補欠として出口廣光君が選任されました。     ─────────────
  72. 菅野久光

    ○菅野久光君 今畜産事業団の職員の雇用の問題が出ましたから、そのことにかかわって畜産事業団が非常に有名になりまして、テレビなんかでもたびたび放映されて子供でも畜産事業団という名称がわかっているということで、いい方で覚えられているのであればいいんですけれども、非常に 悪いイメージで覚えられているんですね。汚職だとか疑惑だとかということで、疑惑の点はそうじゃなかったということではありますが、しかしあれだけ報道されるとそういうことであります。  それで、今回の改正に当たってもこの名称は変えない。考えてみると、畜産振興事業団というのはどう考えてみてもそれより変えようがないのかな、この際事業内容を変えていくということからいけば、何とかここを変えることができなかったのかと私もあれこれちょっと考えてみたんですが、やっぱりいい名前がないですね。余り初めにいい名前をつけ過ぎちゃったんですね、これ。そんなことで一生懸命仕事をしている方々は、本当にごく一部の汚職をするあるいは疑惑を持たれるようなことをされておる、そこに勤めているということで本当に何というんですか、肩身の狭い思いをしながらしかし与えられた仕事を一生懸命やらなきゃならぬ、こういうことで、仕事をされている方々には本当に私は気の毒だなというふうに思っておるわけです。  先ほど、村沢委員の御質問に答えて大臣も、いささかも雇用の問題について今後不安を与えるようなことがあってはならないということを答弁していただきましたので、そのことを踏まえてひとつ事業団の方も、組合もあるようでありますから十分ひとつそれに対応してもらいたいというふうに思います。どこの省庁あるいはこういう団体でも、汚職だとか疑惑だとか何かそういうことがあったときには、あった時点から幾らかの期間はみんな真剣なんです。時間がたつとまたこれもたがが緩んでくるというようなことがありますので、ひとつたがを緩めないように締めていってもらいたいというふうに思います。  今回の日米及び日豪合意によって畜産振興事業団輸入牛肉の売り渡しのうち、同時売買入札方式、SBSの比率を三年間で六〇%にまで引き上げることにしたわけですね。SBS方式は、これは輸入するに当たって実需者が好きな部位を入手できるということから、チルド並びに低価格の豪州産高級部位の比率が高まることが当然予想されます。このように、今後乳用種牛肉と競合する度合いが高い輸入牛肉がふえることによって国産牛肉への影響が、輸入数量の増大という量的拡大とともに質的な拡大が大変心配されるわけです。  そこで、このSBS方式の拡大に当たっては、その適切な運用を行わなければ大変なことになりますので、畜産物価格安定法の趣旨に基づいて、国産牛肉価格に打撃を与えないように事業団の適正な牛肉の放出を行うべきだというふうに思うんですけれども、その辺についてのお考えを伺っておきたいと思います。
  73. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御指摘のとおり、今回の日米合意におきまして、当面三カ年間の経過措置としまして同時売買入札方式、いわゆるSBS方式による輸入量増加を図ることにしております。従来、事業団取扱量の一〇%であったものを今後、ことしからでございますが、三〇、四五、六〇というテンポでウエートアップをしていくということにしております。このことによりまして国内牛肉に対する影響も考えられるところでございますが、私ども基本的には国内の市場状況に応じた部位の選択なり品種の選択が行われるので、現在拡大を続けております国内の市場状況から見ますとそう大きな危惧はないと思っておるわけでございます。  ただ、先生御指摘のような問題につきましては、残りの部分については依然として事業団がみずからの判断によって操作をする余地が残されております。したがいまして、その操作については、御指摘の点を踏まえて適切な操作をしていく。さらにまた、御承知のとおり国産牛肉そのものについての価格安定制度は従来どおり保持をしていくということになっておりますので、本当に異常な事態が発生するということになれば、この国産牛肉についての価格安定制度を発動していくということも十分念頭に置いて対処をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  74. 菅野久光

    ○菅野久光君 その運用を誤ればまた大変な事態になると思いますので、運用を誤らないように特段ひとつ要望しておきたいというふうに思います。  次に、今回の日米及び日豪合意によって三年後に牛肉自由化が行われれば、国内肉用牛生産に大きな影響を与えて価格の低落が当然これは予想されるわけです。自由化後の国産牛肉の価格については、これは各種予想が立てられておりますけれども政府はどのように予想されておるのか、ひとつ見解をお聞かせいただきたいと思います。  特に、国内生産の約三分の二を占める乳用種は、輸入牛肉と肉質が競合関係にあって影響が一番心配されております。乳用種肥育農家の中には、高級化による輸入牛肉との差別化を図るために和牛への転換を図る動きもあるわけです。今後の乳用種の肥育は、輸入牛肉との差別化を図るために高級化を志向するという方向にいくのか、あるいは低コスト生産を志向するという方向にいくのか、どちらを一体やったらいいのか、その将来展望、それをどのように考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  75. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御指摘のとおり、牛肉輸入枠撤廃に伴いまして国産牛肉に対する価格への影響が生じること、私どもも予測をしております。それに対応して一連の国内対策も講じていく、あるいはまた所要の関税等による国境措置を実施していくことにしておるわけでございますけれども、そういった中で、やはり国内の伝統的な牛肉需要としまして外国牛肉ではなかなか充足をできない高級品質についての需要があることも事実でございます。  お話ございましたように、そういったマーケットを念頭に置いて国産牛肉生産の高級化による差別化という動きがございますが、それにつきましてもやはり市場条件から見て一定の限度がございます。基本的には低コスト化による対応ということがどうしても必要になってくると考えておるわけでございます。特に、従来から外国牛肉との競合の度合いの強いいわゆる乳用種の牛肉について、お話のように、影響に対応して国内生産を維持していくために低コスト化ということが非常に強く要請をされてくると思いますが、一部には乳用種の雌牛を利用しまして、これに国内産の伝統的な和牛をかけたF1生産というふうな形で若干高級化への対応を進める経営も最近出てきております。具体的にそれらの割合、数量がどういうふうになっていくあるいはどうしていくべきかということについては私ども十分検討をいたしまして、十分国内需要へ対応すると同時に、輸入品にも対抗できていくような条件づくりに努力をしていきたいというふうに考える次第でございます。
  76. 菅野久光

    ○菅野久光君 農水省で、いろいろ将来のことを考えてやるときにはやるでしょうが、いろいろな状況の中で全く計画したことがそのとおりにならずに、農水省の指導を信じてやったがゆえに大変な苦しみを受けている農家があることも、これもまた事実なんです。そういう意味では慎重に、将来展望を見越した政策というものを打ち立ててもらうように特段のひとつ要望をしておきたいと思います。  次に、不足払い制度の問題でありますけれども、この子牛価格の不足払いの制度は、政府案によりますと六十五年度から実施されることになっておりますが、私はこれでは遅過ぎるのではないか。今回の合意に対する生産者の不安は大変高まっております。肉用種雌牛の頭数が減少している、また子牛価格の変動など影響が広まりつつあります。このような状況対応するために、法案が成立次第不足払い制度を実施する必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、制度の実施時期について見解をひとつお聞かせいただきたい。
  77. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) お話ございましたとおり、現在御審議をいただいておりますこの特別措置法による子牛価格安定制度、昭和六十五年度からの発足を予定して御審議を賜っておるわけでございます。一つには、こういった時期が一定の準備期間が必要と考えておりますのは、この制度の 運用に当たりまして末端の制度運用の任に当たります県段階の組織が、必ずしも全国的にまだ網羅されている状況ではございません。かつまた、制度の運用の具体的内容について、そういった末端の方々にもよく理解をしてもらうために十分啓蒙、普及をしていく必要がある。また、先ほど申し上げましたように、組織体制づくりもしていただくということがございます。  そういうこともございまして、それまでの間に現行の価格安定制度が的確に機能をして、それが六十五年度の新制度に円滑につながっていくということをすることが一番現実的であるということで、このようなタイムスケジュールを考えておるわけでございます。実態的に、最近におきます牛肉価格の状況、子牛価格の状況を逆に心配するような問題もあるわけでございますけれども、私どもの予定をしておりますタイムスケジュールで、十分国内生産に不安を与えるようなことにはならないという印象を私どもとしては強めておるところでございます。
  78. 菅野久光

    ○菅野久光君 ちょっと局長の認識は、私は甘いのではないかというふうに思うんですよ。今、もう現実的に価格が上がっているんです、自由化前に既に影響を受けている。実際生産農家に行きますと、もう六十五年度と言わずに早くやってくれというのが本当の声なんですよ。ですから、何というんですか、何かをやるにしても非常に時間がかかり過ぎるんじゃないか。もう一日一日が勝負のお仕事なんですね。だからそういう意味で、例えば六十五年度と言わず、六十四年度の年度の途中でも何かとにかく手を打ってもらいたいというのが、これが実際の生産農家の声だということを受けとめて、一年間もかかってじっくりじっくりやらないで、もう少し早くひとつやってもらいたいというふうに、これは本当に農家の人の声ですからそのことを申し上げておきたいと思いますので、ひとつそういうことを踏まえてやっていただきたいと思います。  それから、不足払いの対象となる子牛の範囲についてでありますけれども、法案では政令で定めることとなっておるんですね。乳用種の雄子牛の場合、ぬれ子で取引するのがほとんどであるにもかかわらず、聞くところによればぬれ子については対象外となるということなんです。これでは、酪農家はこの法案の恩恵を受けることができない。何か衆議院のところでもこの問題が取り上げられて、災害補償法の八十四条ですか、特定の地域については主務大臣が別の定めをする場合には云々というようなことがあるようですけれども、ぬれ子を対象としない理由とか、この不足払いの対象となる子牛の範囲についてぜひ見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  79. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御審議いただいております法案で予定をしております生産者補給金の対象になる子牛の範囲につきましては、大変端的に申し上げますと搾乳用に使われることになる雌の子牛以外のものについては、これはもう少し詳しく申し上げますと、肥育素牛として使われることがはっきりしておるもの、それからこれは肉専用種に限りますけれども、繁殖用の素牛になることがはっきりしている子牛、こういうものを対象にしていこうと。具体的には、それを把握するために月齢を生後四カ月ないし十二カ月というところでとらえていこうと。これは政令で決めるつもりでございますけれども、私ども念頭に置いております子牛の対象というのはそういうところでございます。  それでその結果、先生御指摘のとおりいわゆるぬれ子、生後数週間ないし一カ月程度のいわゆる酪農部門から出てくる子牛でございますが、これが直接制度の対象にならないということについていろいろ御議論があることは私どももよく承知をしておりますけれども、やはり肉用素牛として確実に使われるあるいは繁殖用の素畜として確実に育成されているということを確認していくためには、やはり一定の月齢の経過というものがどうしても必要であるというふうに考えるわけでございます。  ただ、今回予定をしております価格安定制度が直接ぬれ子を対象にしないとしても、ただいま申し上げました四カ月齢ないし十二カ月齢のものが一定の価格支持を受けるということになりますと、ぬれ子との間に一定の相関関係があるわけでございます。したがいまして、そういった対象になる子牛の価格水準というものをベースにして、あるいは適正なぬれ子の価格水準というものが形成をされるはずであるということが一つ。それからもう一つは、このぬれ子をこの制度によって生産者補給金の交付対象になるまでに育成をするという段階がどうしても必要でございます。  私どもとしては、酪肉複合経営というふうな形でそういった育成過程を担う経営というものを育成していく必要があるということを考えております。そのための奨励措置等も私ども従来から進めておるわけでございまして、そのことを通じましてぬれ子を育成して肥育素牛で使われる段階まで育成をした後で十分この制度の対象になり得るわけでございますので、ぬれ子を直接対象にしなくても十分酪農家の経営安定には心配のない状況が、この制度の運用を通じて確保されるというふうに考えておるところでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  80. 菅野久光

    ○菅野久光君 ぬれ子を直接の対象にしなくても、育成段階まで何らかの何というんですか、対策を立てておるから直接酪農家にとっての収入が減るようなことにはならない、そういうことですか。何だかどうも局長、あれこれあれこれ言っておりますけれども、もっと端的にわかりやすく言ってもらいたいと思うんです。  何といってもぬれ子で九〇%のものが取引されているんです。例えば一番影響を受けるこの乳用種については、この不足払いの関係ではもう何らのメリットはないということなんですね。それで衆議院の方でもいろいろこのことについて話がありましたが、何か実情に合わせて月齢を六カ月未満でも、一ないし二カ月若齢のものも対象にする道が開かれておるわけだというふうに言われているんですが、このこととのかかわりは今の答弁とどういうことになりますか。
  81. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 大変私の答弁がわかりにくくて恐縮でございますけれども、要するに私ども今回の生産者補給金制度の対象範囲については、先ほども申し上げましたように、肥育素牛あるいは繁殖用素牛として確実に飼育されるという子牛ですね、そういうものを掌握、対象にしていこうと。それで、その際にぬれ子段階ではそういう判断が非常にしにくい。したがって、月齢が四カ月程度に達するまで育成したものを対象にしていこうというふうに考えておるわけでございます。  そうしますと、この生産者補給金を現実の取引価格なりあるいはまた生産者補給金を加算したいわゆる育成牛素牛の全体としての価格水準というものができますから、その原料になるいわばぬれ子というものが、一定の相関関係で適正な価格で確保されるであろうということが一つです。  それからもう一つは、ぬれ子取引という形では資源の摩耗にもつながりやすいこともございますので、でき得れば酪農家がぬれ子を育成しまして、この制度の対象になるところまで自分の経営で一緒に育成をしていただくわけにはいかぬだろうか、あるいはまた酪農に関係する協同組合等が、そういうものを一括して育成過程を担うというふうなシステムをつくり出し、現実にそういう形態というのは出てきておりますけれども、そういうものを、一定の育成段階を踏んだものについてこの価格安定制度を運用していけばぬれ子についての御懸念というものはなくなるのではないか、そういうふうに私ども考えております。これは実は、私どもも酪農関係者ともいろいろ御議論をしました。いろいろまたこれからも議論をしていきたいと思いますけれども、そういった私どもの考え方について一定の理解は得られておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  82. 菅野久光

    ○菅野久光君 適正な価格で取引されるであろうという推定といいますか、推測といいますか、そ ういうことに基づいてのことだというふうに思いますが、それが外れないように生産者の人たちと十分話し合ってということでありますから、これが外れるような事態になったときには、即やっぱり別な対応をきちっとしてもらう、していかなければいけないのじゃないかというふうに思うんです。  このようなぬれ子の問題とかあるいは乳廃牛ですね、この問題なんかについて、私直接の所得補償の措置というものが行われないのじゃないかというふうに思うんです。そうしますと、自由化による牛肉価格の低下によって酪農家の所得が大幅に低下することが当然予想されるわけであります。近年、加工原料乳保証価格の引き下げが行われて、もう酪農家が、何とか経営を維持しているのも副産物であるぬれ子価格が大変高いということですね。それから円高で飼料の値下げ、こういったような言えば乳価以外の要素が支えになってきたから何とかやってこれているということになっているのだと思うんです。この輸入自由化によってぬれ子価格の低落などこの副産物収入が低下したり、飼料価格の上昇があった場合は、加工原料乳保証価格の引き上げなど、酪農政策によって酪農家の所得を補償すべきであるというふうに考えるわけですが、その辺は確約できるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  83. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御指摘のとおり、現在の酪農経営の収支を総合的に見た場合に、酪農部門の副産物収入でありますぬれ子等の収入がそれなりに好調である、あるいはまた牛乳の生産コストの相当部分を占める購入飼料について価格が比較的低位安定をしてきているということは事実でございます。ただ、牛乳生産そのものの、酪農経営そのものの生産性向上というものも、規模拡大なりいろいろな技術革新等によりまして相当程度生産性が上がってきておるということが、やはり中心的な役割を果たしておるというふうに私ども考えておるわけでございます。  確かに、この牛肉輸入枠撤廃等に伴う牛肉価格の影響というものが、酪農経営の収入に一定の影響を与えるということは私ども懸念をしておりますけれども、子牛価格についての、ただいま現在御審議をいただいております生産者交付金による価格補てんでありますとか、あるいはまた肥育部門そのものの生産性向上による素牛に対する支払い能力の付与というふうなことを通じまして、その影響をできるだけ軽減していくということが必要であると思います。また、酪農本来の生産性向上も大変顕著に進んでおるわけでございます。それらを総合して、御指摘になりました加工原料乳について行っております、不足払いの前提になります行政価格の決め方においても、総合的にそういった要素を勘案して適切に支持価格水準というものを決めていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  84. 菅野久光

    ○菅野久光君 酪農家にとって、何とか所得をきちんと確保しなきゃならぬということになると、やっぱり搾る牛乳の問題ですね。飲用乳の消費は引き続き堅調だと、このために乳製品の需給が逼迫した時点があるわけです、何回か。この堅調だあるいは非常に伸びているという理由をどのようにお考えでしょうか。
  85. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御指摘のとおり、昨年ことしにかけまして飲用牛乳の需要が大変堅調に推移をしております。それ以前の四、五年の状況と大変さま変わりの状態になっておるわけでございますが、こういった需要の伸びがどういう理由に基づくものかということを私どもも、関係者ともどもにいろいろ分析検討しておるわけでございますが、なかなか断定的な理由を見出しがたい状況でございます。  その中でいろいろ言われておることを申し上げますと、一つには牛乳が大変おいしくなったというふうな評価が定着をしてきている。御承知のとおりいろいろ御議論あったわけでございますが、昨年の四月からこれは飲用乳、加工乳含めてでございますけれども、取引の基準になります脂肪率を若干引き上げて、その効果というものも飲用牛乳に反映をさしていくというふうな意味での品質改善が行われております。それからまた、牛乳そのものの持つ例えばカルシウムでありますとか、この成分についての見直しというものが消費者の間に大変定着をしてきておるということ、それからまた他の飲料といろいろ競合している問題はあるんですが、ファッション的な意味で牛乳を飲むということが大変若い方々の間に定着をしておる、ファッション性もそう悪いものではないというふうな意味での評価が定着しておるというふうな議論が、現在私ども関係者と話をしている中で言われております。  将来に向けて、こういった状況が本当に定着をしていくことが望ましいと考えておりますので、そういった要因を十分検討しできるだけ長くこの状況が保持されていくように、私ども必要な努力をしていく必要があるなというふうに考えておるところでございます。
  86. 菅野久光

    ○菅野久光君 前は、天候によって伸びたり停滞したりするというようなことを言われておったんですね。もう健康のためにとかなんとかということは一切言われなかった。今回は天候のことは一つもその理由に言われなかった。そういうことで完全にこれは変わってきているということが言えると思うんです。そういう状況が去年から出てきているわけですね。そういう状況があるのに、この乳製品の需給が逼迫して緊急輸入、しかも何か三度にわたって脱粉、バターを緊急輸入したと、そういうことですね。緊急輸入状況について簡単にひとつお聞かせください。
  87. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 飲用牛乳の需要が、大変堅調に伸びておるところを申し上げたとおりでございます。この定着の度合いについては手放しで楽観はできないわけでございますけれども、私どもやはりできるだけ定着をさしていかなければいけないという認識を持っております。その上で、全体の計画生産のもとで飲用牛乳へ生産された生乳を充当していくという対応をしております結果、乳製品の国内生産に使う原料乳への仕向けが若干停滞をしておる、こういう問題がございまして、現実問題として本年度に入りましてから乳製品についての需給が逼迫をいたしまして、御指摘のとおり脱脂粉乳については二万二千トン、バターについては二万一千トンに上る輸入を決定し、実行しておると、こういう実情にあるわけでございます。
  88. 菅野久光

    ○菅野久光君 最初の輸入は、多分五月に決められたと思うんですが、五月に、この緊急輸入をしなければならないというふうな状況になったというか、考えられたのは、大体いつごろの時点でもう五月に入れなきゃならぬというふうに思われたのか聞かせてください。
  89. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 今年度行っております特定乳製品の輸入について、私ども第一回目のアナウンスをしたのが五月二日であったと記憶をしております。こういう判断をしました時期というものは、いろんな内部での検討もございましたけれども、四月中旬以降の検討によりましてこういった判断をしたというふうに記憶をしております。
  90. 菅野久光

    ○菅野久光君 何というんですか、適正在庫ということがよく言われるんですが、適正在庫というのはどの程度のものを適正在庫というわけですか。
  91. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 全体の需要量の状況等によってあるいは国内の生産事情によって、その適正在庫水準をいかに考えるかというのは、変動するものでありますからなかなか一概に言い切れないと思いますが、当時私ども考えておりました適正な在庫水準というのは大体一・五カ月から二カ月分程度かなと、こういう判断のもとで物を考えてきたという経過はございます。
  92. 菅野久光

    ○菅野久光君 私は、三月二十四日の畜産価格の決定のときに、ちょうど畜産審議会が開かれていたのでたしか大臣局長もいらっしゃらないで、政務次官と濱田審議官が答弁をしたんですが、この加工原料乳の問題をめぐって、適正在庫水準の問題などを含めて何とか加工原料乳の限度数量を 引き上げてくれという要望が強くありまして、一応答申は前年度に比べて十五万トン増をしたけれども、もっとふやせないかということをやったんですよ。  そのときに、これは生産者団体からも強い要望がありましたが、脱粉だとかバターなどを輸入しないでほしい、我々はそういう生産能力といいますか、そういうものはあるんだ、だからそうさせてくれというような要望が強くありまして、私もそのことで質問をしたんです。三月二十四日に皆さん方の急務もあったから私は皆さん方の要望を入れた。そのときに「私どもは、需給動向の分析をいたしまして、過去の統計等を踏まえまして今申し上げましたような数字として把握しておりまして、ほぼ適正水準に近い状況であるというふうに認識をしております。」、これ三月二十四日の段階ですよ。わずか一月ちょっとの間に緊急輸入をしなきゃならぬという事態、決めたのは今四月中旬ぐらいだ、こう言いましたけれども、一月ちょっとぐらいのこういうときに、こういうような答弁をしてそして緊急輸入だなんということは、全く委員会で私が言っていることに対してそのときそのとき何とかそれは過ぎりゃいいんじゃというようなことになるのではないかというふうに思うんですよ。「ただいま申し上げましたような在庫の状況でございますので、当面私どもはそういう需給計画の中で対応してまいっておるわけでございます。」、こう言っているんです。  そして三度にわたって、いや私もまた大体三回ぐらい念を押したんですが、御丁寧に念を押した回数分ぐらい緊急輸入をしているんです。こんなふざけた話というのは私はあるのかと、本当に。おまえは委員会へ行って何を質問しておるんじゃ、そういうことになるんですよ。全く私は本当に五月の二日それが決められたときにおやっと思ったんですね。これが八月とか九月ごろになってもう予想外に需給動向が逼迫してきたというのであれば、それでもあれだけ言ったのになという気持ちにはなりますけれども、わずか一月ちょっとでこんなふざけた話というのがあるのか。私は本当に何というのですか、はらわたの煮えくり返るような思いでいっぱいなんですよ。片方では生産農民の要求を抑えておいてそしてすぐこういうようなことをやる、一体何だと、そんないいかげんな答弁なのか。そうであれば、そういうことがあったのだから、この緊急輸入をしたのは生乳換算にして大体どのくらいのトン数になりますか。
  93. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 本年に入りましてから行っております特定乳製品の輸入問題につきましては、率直に申し上げまして、私ども飲用牛乳の需要の増加が実績値として、現在掌握をしておりますようなレベルに達するとは全く予想もしておらなかったわけでございます。実は、本年度の保証乳価等を決める際に提出をしました需給見通しにおいても、そういった飲用牛乳の需要増加というものは私ども予見し得なかったことでございますので、ややかた目の需給見通しを持ったことは事実でございます。  ただ、それが新年度に入りましてさらに念押しをしましたところ、夏場に向けての需要が非常に強そうだというふうな議論が大変強く出てきておりまして、特にそれが期末において持っております在庫では少し心配があるというふうなことで、当初予備的に輸入方針を固めた経過がございます。ただ、そういうことが何といいますか、直接に本年度決めております加工原料乳不足払いの限度数量二百二十五万トンを少なくするために、そういうふうなことをわかっていながらやっておるというふうなことは決して当たらないと思います。  私ども、二百二十五万トンというものは国内における生産能力なり、あるいはまたその当時若干かたきに過ぎた面はありますけれども、その当時考えた需給見通しのもとで設定をしたものでございまして、現在の状況を見ますと、飲用牛乳の伸びが非常に堅調であるということを背景にいたしまして、今年度の保証限度数量二百二十五万トンというのは十分なものであったというふうに私ども、現時点では認識をしておるわけでございます。
  94. 菅野久光

    ○菅野久光君 畜産審議会もあるから、大臣局長もそちらの方に行くということについて我々も了承をして、そして政務次官と審議官とでやっているわけだ。それであなた、私が質問して一月たつかたたないかぐらいでこういうことをやって、私がさらっと流したんならまだいいんですけれども、本当に三回ぐらい念を押したんですから、緊急輸入なんてことはないなということを念を押したんですよ。そうであれば、あのときの答弁はそういう答弁でしたけれども、その後の状況からこういうことをやらざるを得なかったとかなんとかという、ちょっとやっぱり一言ぐらいあってもいいんじゃないかなと思うんですよ。全く無視した態度じゃないか。私はめったに怒らないんですけれども、本当にこのことだけは我慢ができない。おまえは国会へ行ってなめられているんじゃないかと、そうでしょう。そんないいかげんな答弁をするんだったら本当に許せないというふうに思うんですよ。  今回の三次にわたる製品の輸入量は、これは生乳換算で四十四万トン、六十三年度の加工原料乳限度数量の約二〇%に相当するというふうに生産者の方々の試算で言われているんですが、そういう数量の計算をしていますが、間違いないでしょうか。
  95. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) まず、三月末におきます政府側としての先生に対する御答弁のしぶりと、その後の私どものこの輸入問題に対する対応の仕方について相当ギャップがあったのではないか、またその経過について十分御連絡を申し上げなかったのではないかというお話でございますが、私の責任下で部下であります審議官が対応したことでございますが、挙げて私の責任でございます。あるいは御指摘のような点について、私ども不手際があったのではないかということは、私どももお話をお伺いしまして大変遺憾でございます。十分私ども部下を含めまして対応のしぶりについて心していかなければいけないということを痛感する次第でございます。  それから、お尋ねのございました今年度に予定をしております製品ベースでの特定乳製品輸入量、生乳に換算しまして私どもも約四十万トン程度というふうに認識をしておりまして、先生の御指摘、ほぼそのとおりであろうかと考えております。
  96. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 御指名はございませんが、私自身が実務的には畜産局長以下に任しているとはいいながらも、その責任は私にございます。温厚な菅野委員のただいまのような問答を私も初めてお聞きいたしまして、恐縮痛み入っております。反省すべき点はいろいろございます。その糧の一つとして十分気をつけなければならぬことだと思っております。理屈を言えばそれなりの理屈はあるでしょう。生産者のことも実需者の要望いろいろございます。ございますけれども、それは言いわけ、そういう意味で反省の糧の一つといたしたい、こう思っております。
  97. 菅野久光

    ○菅野久光君 大臣からそういうお話がありました。やはりそういうところをきちっとすることが、役所と議員、それから農水省と農民と、そういうところの信頼関係を保っていくということに私はなっていくと思う。今やっぱり政治に信頼がないというのが、リクルートの問題を含めていろいろあるわけですから、やっぱりどうやって信頼を取り戻すのかということは、お互いに真剣に政治にかかわっている者としてやっていかなければならぬことだということで私は申し上げました。大臣からそういう答弁をいただきましたので、今後は我々もまた真剣にこれは取り組んでいかなきゃならない問題だと思いますので、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。  生産者の方々は、このような状況になって何か足りないからもっと出せ出せというようなことをいろいろ言われているようでありますが、休んでいる工場が急に動き出して、すぐさっと製品ができるようなことじゃなくて、やっぱり牛が乳を搾 れるようになるまでには何カ月かかかるわけです。そんなことなども含めて、やはり将来的な見通しを持った政策ということをきちっとやっていかなければなりませんし、農民の人たちは四十万トンも緊急輸入するのだから、来年の限度数量はそこのところをよく見てもっと上げるようにやれ、そういう強い要望があることもこの機会に申し上げておきたいと思います。  時間が大分たちましたので、大事なこと、全部大事なんですけれども輸入食肉がこれからどんどんふえてくる。そうした中でいろんなチェルノブイリの問題からあるいはホルモンの問題からいろいろあるわけです。輸入食肉についてオーストラリア産の牛肉、台湾産の豚肉、ブラジル産鶏肉等からの残留農薬等の検出が問題となってきました。今の検査体制で三年後の自由化に対処できるのかどうかですね。  輸入食品の安全性を検査する食品衛生監視員は、全国に七十八名しかいないということです。私が食品安全の問題を取り上げた五十九年ごろは、たしか六十人くらいしかいなかったんですが、一年にそれでも二人か三人ぐらいずつはふやしているようであります。しかし、全国で七十八名しかいないということで大丈夫なのかどうか。また、輸入量の増大に民間の指定検査機関の活用を検討しているようでありますけれども、国民の命と健康に直接影響する食品の安全性を民間機関に任せていいものなのかどうか、そこのところ。  さらにECは、ホルモン剤を使用した牛肉輸入規制を検討しているようでありますが、日本は牛へのホルモン剤使用についてどのように対処する方針なのか、また安全性の面で問題はないのか。特に、アメリカ等で使用されている合成型ホルモン剤の安全性についてお伺いをいたしたいと思います。
  98. 難波江

    説明員(難波江君) 最初に、輸入食品の安全確保の問題でございますが、輸入食肉の残留物質等につきましては、先生御指摘のような事例があったわけでございます。  厚生省といたしましても、輸入の際検疫所におきまして、必要に応じまして動物用医薬品でございますとか農薬の検査を実施し、我が国の基準を超えるようなものについては輸入の禁止措置を講じているところでございます。しかしながら、この種の問題は、輸出国側における対策も極めて重要であるというふうに考えているところでございますし、今後とも輸出国における物質の使用状況等の情報の入手に努めるとともに、残留防止対策について輸出国と十分な協議を行い、輸出国に安全な食肉の輸出を求めるような方策をとってまいりたい。  また、輸入時におきましては、先生御指摘のように監視員の増員でございますとか、機器の整備等を図りながら監視を強化する等により、食品衛生上問題になるような食肉が輸入されることがないよう、今後も引き続き努力をしてまいりたいと考えるところでございます。  それからもう一点、御指摘の雄牛に使いますホルモンの問題でございますが、肥育用のホルモンにつきまして、安全性の観点から私どもとして検討しなければならない事項といたしましては、食品として流通する食肉にこれらの物質が残留するかどうかということが第一点でございます。仮に残留した場合に、当該物質が人体に対して何らかの影響を与えるかどうかという点にあるというふうに考えておるところでございます。  このため、私ども国産及び輸入牛肉につきまして、合成型を含めて一部のホルモンについて残留検査を実施いたしましたが、いずれも不検出でございました。合成型ホルモンが仮に食肉に残留した場合の安全性の評価につきましては、現在FAO・WHO合同食品規格計画の中で残留動物用医薬品規格部会というようなものが設けられて、ここで国際的な検討が進められているところでございます。私どもといたしましてもこれらの動向を見きわめながら残留許容基準の設定等、所要の措置を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
  99. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 日本国内におきます肉牛の肥育のための合成型ホルモンの使用問題につきましては、御承知のとおり一般的には薬事法による製造承認を経なければ、これをつくり販売してはならないということになっておりますが、現実に国内での需要がないためにそのような申請は現在までのところ出ておりません。したがいまして、国内では現在のところ合成ホルモン剤は使われておらない、こういう実情にございます。
  100. 菅野久光

    ○菅野久光君 食肉を含めた食品の安全性の問題については、非常に関心が高まっていることは御存じのとおりです。前にも、大臣にもこのことについて、国民が安心して安全な食料を安定的に供給するのが農林水産省の大事な任務だということを私も申し上げ、大臣もまたそのことのために努力をするということを申されております。  私はこのことについては、一つはやはり食品衛生監視員、これをもっとふやす。一年に二人か三人、これは国民の健康を守るという意味では何というんですか、別な意味の防衛なんですね。ドンパチドンパチやるのだけが防衛だと思っていたらとんでもない間違いで、やはり国を守るというのは国土もありますけれども、国民の健康を守るということも大事な私は防衛だと思うんですが、残念ながら大砲だとか鉄砲だとか飛行機だとかというところばかり、あるいは自衛隊員をふやすということには非常に積極的に予算も使うけれども、肝心の一億二千万の国民の健康を守るという、その方に対する予算というのは何というんですか、少ないといいますか、それで本当に国民の健康を守れるのか、日本の国を守るなんと言っているうちに国民の健康が損なわれてしまったんじゃ、一体何を守るのかということにもなってしまうんじゃないかと思うんです。  しかも、毎日食べる物でありますし、食べた者が一度に毒が回ってざざっと倒れるような毒物じゃなくて、長い間蓄積していく中で、例えば発がん性だとかあるいは催奇性だとか、そういうことによって民族の存立にもかかわってくるほど将来的に長い目で見ればあるのじゃないか。日本人は一年で一人約一キロぐらいの食品添加物だとか、そういうものを何かとっているというような計算もあるようでありますが、そういう意味からいえば、日本は食品添加物の実験国だというようなことを世界のある国から言われているというような話も聞いたりしております。そういう点で、本当に安全かどうかということを調べてもらうために国内における衛生監視員の数をふやすということですね。  それからもう一つは、輸出国の大使館なりなんなりに厚生省あるいは農水省、農薬の関係もいろいろありますので、農水省の要員をそれぞれ省庁で派遣しています。それをもっとふやして、実際に輸出するところでどんな農薬、どんな添加物が使われているのかということをやるということも、水際で守るということと同時に、向こうからそういうものを出させないということをやるということも大変私は大事ではないかというふうに思いますし、また国民の多くもそういうことを私は願っているというふうに思うんですが、その辺はひとつ大臣、私が言っていることについての感想でもよろしいですから、ひとつお答えいただきたいと思います。
  101. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 前にも申し上げたことでございますけれども、厚生省と我が省と縦割りであってはいけない、特にこの安全対策については両方常時話し合いながら進めていかなければならない。そうでなければ安全対策は全うし得ることができない、こう思っておるところでございます。  特に、国際化に伴う安全対策ということを考えますと、特にまたその中でも食品衛生ということを考えますと、私は直接の所管でなくても横並びで当然考えるべきことでありまして、国際化に伴う安全対策については行政実務者の配置等も含めやはり考え直していく時期である。しかし、それがおくれているではないか、おくれていると私は思っております。おくれていると思っておるだけ に、また国際化というものが実務がついていけないぐらい速く進んでおるという実態、決してこれは言いわけをするわけではございませんが、しかしそれにできるだけ追いついていくように常日ごろ心がけるべきことである、かように思っております。
  102. 菅野久光

    ○菅野久光君 これは、思想信条の問題を越えて日本民族の将来にかかわる問題ですので、ひとつお互いにこれは真剣な取り組みをしていかなければならない問題だというふうに思って申し上げました。  次に、農家負債の問題についてはいろんなところで言われておりますが、本来ならば、今までいろんな形であるその負債が全くきれいになれば十分ECあるいはアメリカあたりとも、価格の面などでも競争でき得るそういうような状況になるというふうに思いますので、この点については超長期超低利の資金をという要望も強くありますので、ひとつ検討していただきたいというふうに思います。  今後における畜産行政に対する期待、何に期待するかということのアンケートをとったところがあるのですが、その中ではやはり価格の安定ということが一番多い。この統計では七一・九%が価格の安定、それから二番目に品種改良ということが今後の畜産行政で強く望まれておるわけです。  そこで、この輸入牛肉に対抗するには生産条件の制約など非常に厳しいものがあるわけです。そのためにバイオテクノロジー等の新しい生産技術による生産コストの削減が私は不可欠だというふうに思います。そこで、バイオテクノロジー等の研究の現状だとか研究体制、これはそれなりにやっておられると思います。時間がありませんので、本当は説明を受けたいというふうに思っておりましたけれども、私もそれなりに本を読んだりあるいは新聞等でも見たりしておりますので、かなり一生懸命やっておられるようですが、どうも日本の国は基礎的な研究ということについてはなかなかお金を出さないという批判が非常に研究者の間からは強いわけでありますが、特に輸入自由化を控えてこの点について、人員の増加だとか体制の拡充強化、そういうことについて一層ひとつ努力してもらいたいと思いますが、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  103. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 御指摘のように、最近の技術開発の動向といたしましては、基礎的な研究の分野が極めて重要になってきておるわけでございます。いわゆるバイオテクノロジーに代表されるようなものでございますが、例えば畜産の分野で申しますと、受精卵移植の技術につきましても、その一番基礎になります体外受精でございますとかあるいは最近進んでおります屠畜の卵巣から未成熱の卵を取り出しまして、これを培養して体外受精をする、そういうような極めて基礎的、先導的な研究が基礎になりまして受精卵移植等が進む、こういうことになっておるわけでございます。私ども畜産試験場その他を中心といたしまして、現在までもそのような分野の試験研究の体制、予算等を充実してきておるわけでございますが、さらにこのような受精卵ベースの試験研究、さらに進みましていわゆる遺伝子ベースの研究を進めなければならないというふうに考えております。  今までもこの面につきましての予算、人員につきまして特に配慮するように努力をしてきておりますが、今後も一層努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  104. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ただいま御答弁事務方から申し上げているとおりでございますが、財政当局にもしかるべき認識をされる旨私からも申し伝えたいと思いますし、既に概算要求でも相当な検討をして盛り込んでおるところでもございます。来るべき予算編成に向けて、ただいまの御発言はまた財政当局にも当然聞いてもらわなければならない点でございますので、私からしかと伝えておきたい、こう思っております。
  105. 菅野久光

    ○菅野久光君 最後に、飼料基盤の整備の問題でありますが、特に公共牧場、公共の育成牧場がどうもうまく活用されていないのではないかというふうに思いますので、せっかくある土地ですから、例えば国有林野なども含めてこの点の活用方、何とかうまくやって低コストで生産ができるような方策をひとつ考えていただきたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  106. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩をいたします。    午後零時三十三分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  107. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、一井淳治君及び三治重信君が委員辞任され、その補欠として秋山長造君及び小西博行君が選任されました。     ─────────────
  108. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 休憩前に引き続き、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案肉用子牛生産安定等特別措置法案、以上両案を便宜一括議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  109. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 午前中に引き続き、大臣お疲れのところ恐縮でございますが、質疑をさせていただきます。  私はまず一番最初に、きょう厚生省からおいでいただいておりますものですから、同僚の菅野委員の方からもお話がございましたが、これから外国産の牛肉等海外からの輸入食品がふえることによって、国内に及ぼす影響等をずっと見てまいりましたけれども、いろいろ心配になる点がございますので、とりあえずその安全性のチェックの問題からまずお伺いをしたいというふうに思うんです。  これは、厚生省の方にも差し上げておきましたけれども、米環境保護庁が確認した発がん性農薬五十五農薬の一覧表を差し上げてあります。その中で実は、先ほど同僚の委員質問に対しては、厚生省はそのチェックに対して万全を期すというような御答弁をしておられたんですけれども、私は、万全を期すという以前に今回アメリカ輸入牛肉あるいはオーストラリアの輸入牛肉を私ども手にするわけですが、相手国の実情というものをよく知っていただかなければならないんじゃないかなということをまず御指摘申し上げたいわけでございます。  そこにも差し上げてありますように、我が国牛肉に含まれている農薬を検査するのは、DDTとディルドリンとへプタクロルである、こういうことになっていますね。ところがアメリカでは、牛肉に含まれている農薬が、一番問題の除草剤リニュロンとか、あるいはまたオキサジアゾンです。これも除草剤の一つですよね。それからアラクロール、これも除草剤だと思います、というような種類のものを含めて、アメリカで使われてそして牛肉に含有されているというふうに環境保護庁が確認しているものを日本では水際でチェックしていない、こういうことになっているわけでしょう。だから検出ゼロ。基準もないんだし、調べてないんだから検出ゼロということになるんだろうと思うんですけれども、この辺のアメリカ及び相手国状況の把握というのはどういうぐあいになっているのか、まず伺いたい。
  110. 難波江

    説明員(難波江君) 輸入食肉の残留物質の検査に当たりましては、先生御指摘のように輸出国におけるこれらの物質の使用状況等を踏まえて、輸入時に効率的な検査を行う必要があるということでございまして、従来から輸出国の情報の入手に努めてきておるところでございますが、今後はさらに使用状況、規制の状況等、情報の入手に一層努力をいたしまして、効果的、効率的な検査をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。先生御指摘のような物質につきましても本年度モニタリングで実施をすることを予定しております。
  111. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 一番語尾の大事なところがよく聞こえないんだけれども、実施しますんですか。私が伺ったところでは、八九年四月から相手国の事情を調査してそしてこれから基準づくりをするということで、チェックの段階という話ではなくてまだ基準づくりをする、そのために四千二百万円の対策費がついたと聞いたんですけれども、これはどうですか。
  112. 難波江

    説明員(難波江君) 先生御指摘のような点も踏まえまして、新年度におきましては、相手国との二国間協議に要する費用でございますとかいろんな輸出国の状況を把握するための費用、さらにそれを踏まえて輸入時におけるモニタリングシステムのあり方について検討し、さらに実施するための予算要求を予定しているところでございます。  なお、先ほど実施すると申し上げましたのは、従来からやっておりますモニタリング計画を本年度も一月から三月にかけて実施をする予定をしておりますが、その中で、先生御指摘のような物質の一部も含まれているということを申し上げたわけでございます。
  113. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 食品化学課の方では少し読んでおられるようなんですが、このデラニーパラドックスの研究報告書をやっぱり目を通す必要があると思うんです。これは大変恐縮だけれども、かなり膨大なもののようですね。それで、農薬はCFRの四十巻にある、それから添加物はCFR二十一巻にある、それからポストハーベストもCFR四十巻にあります。こういうことになって私も聞いてきましたので、これかなり膨大な資料だと。でも、やっぱりそれ読んでいただいて実情を把握しないとこれは大変だなと私は思っています。しかも、これは連邦における研究会議の報告書でしょう。そのほかに、あと州法でできているものもたくさんあるやに私聞いているんですね。そうすると、やっぱりアメリカ状況というのは、私たちが把握し得ないかなりのものがあるんじゃないかなというふうに思います。  この研究報告書の中で、発がんリスクの高い十五食品のナンバーツーにビーフが来ている。これ私、この講演をなさった方の言い分を信ずるよりは、この発がんリスクの食品のデータを出してあるこの報告書を私は信用してみたいというふうに思うんです。そうすると、ビーフは一万人に六・四九の発がん率ですか、というふうな数字を差し上げてあるでしょう。書いてありますね。だから、これ余りやすく考えていただいては困るというふうに思うんです。  この辺のところが、今言った四千二百万ぐらいの予算で、今度万全の体制を我が国の水際でつくるようなことが果たしてできるのかどうなんだろうかということを私は大変危危惧している者の一人なんですけれども、作業としては実に大変な作業だと思います。ここに挙がっているだけでも五十五農薬ですよね。その五十五農薬が単品の食品の中に何種類含まれているかによって一つ一つ検体を調べていかなければいけないという膨大な作業だと思うんだけれども、これ厚生省、本格的にやっていける自信がありますか。
  114. 難波江

    説明員(難波江君) 御指摘も踏まえましてでき得る限り検討させていただき、輸出国における状況を把握した上で効率的な検査、監視をすることによって安全な食肉が輸入されるよう引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  115. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 牛肉の話なのでオレンジ関係ないんですが、アメリカから輸入するオレンジにも、この報告書によれば十六種類の農薬が認められているということになっていますね。これ全部名前差し上げてあります。その中で我が国がチェックするのは六種類だけ、あとはフリーパスで通ってしまう、こういう状況になっている。だから、私は相手国状況をよく把握してみてくださいというのはそういうことなんです。  それから、ことし非常にたくさん輸入されたサクランボの残留農薬の許容値の問題なんかにしても、これは非常にアメリカの許容値というのは大きいわけです。私の友人で五月から十一月までの間輸入されたカリフォルニアのイチゴをずっと半年間追った人がグループでいます。それ見ていると、キャプタンが災いをしているんだろうと思うけれども、三十三日、一カ月を過ぎてもなおかつ経時変化が起きない、こういうイチゴをそのまま写真にずっと撮って経時変化を追ってきた、そういう記録をつくっているグループがあります。これはやはりポストハーベストのキャプタンが私は恐らく功を奏しているんだというふうに思うけれども、こういうものも含めましてやはり厳重調査をしていただきたいなというふうに思います。  そこで、大臣にお伺いするわけですが、我が国の検査体制というのは、さっきも申し上げているように、今のイチゴもそうですし、それからサクランボもそうなんですけれどもアメリカで使われているものが我が国に入ってくるとき、こちらに基準値がないためにチェックをしないという農薬が実はたくさんある。その基準値づくりを早急にしていかなければならないのではないかなというふうに私は思っているんです。ぜひこれを進めていただきたい、こんなふうに思っています。これはもちろん仕事は厚生省の仕事ですけれども輸入方扱う農水省としてもそういうものに関心をやはり持たなきゃいけないというふうに思いますので、その辺いかがでしょうか。
  116. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 恐縮でございますが、私、余りどころか全然専門的でないものでありますから、適切な答弁ができないわけでございますけれども、今もちょっとここで私語をいたしておったんですけれども、厚生省でそのような基準がないとするならばやはり基準は早目につくってもらわなければならない、こう思っております。特に、消費者が安全という問題について相当深く広く熱心になっておられるということは、この国際化の中でいよいよそれがまた増幅されておるという中にあって私どもも真剣でなければならない、こう思っております。  そこで、委員御関心の我が省では、余り金をかけないように、しかし徹底するようにということで、アジるのではなくて真実を伝えるという漫画をこの間来御意見もいただいたところでございますけれども、来年におきましては安全そのものについて相当あの漫画での解説の中に真実は伝わるように、またより一層の関心をお持ちいただくように、健康という問題とも関連をして、決して厚生省の上前をはねるなんていうつもりはございませんが、一緒になってやっていくという意味で十分ひとつ安全性に重点を置いて考えてくれということを官房長にも命じたところでございます。
  117. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 農水省の食品流通局の消費経済課に食料品モニター千人いますね。あの方々がとられたアンケートの中で、食に対する関心事、ニーズというのをとったアンケート調査がありますけれども、その中でやはりダントツが安全性です、質及び安全性、五四・九%かなんかです。価格というのは三番目ぐらいに来るのであって、やはり食品に関しての今国民のニーズというのは安全性の問題が一番高いということがアンケートでもわかるというふうに思いますので、ぜひこういう問題についても農水省はしっかり取り組んでいただきたい。厚生省さん、よろしくお願いします。おたくだけの責任じゃないんですけれども、食品化学課とよく連絡をとってお願いします。ありがとうございました。  本論の牛肉の問題にかかわってお伺いをいたしますが、余り時間も持っておりませんので、単品で一つずつ伺っていきたいというふうに思います。後先になりますけれどもお許しください。  ことしの夏、筑波に行くついでがありました。そこで、自由化後の対策について研究所ではどんなことを対策しておられるのかということを御通告いたしておきまして畜産試験場をお訪ねいたしました。そこでいろいろ用意をしておいていただきまして、先ほど午前中にも話が出た牛の体外受精の技術の問題あるいは飼料開発で、例の木材の飼料化ですか、何回行ってもあれ見せられるんですが、飼料化技術の問題、それとあと超音波による肉質調査測定器ですね、この問題を三つまとめ て教えていただきました。大変高度な技術だとは思うんですが、これが今後我が国がいろんな形でしわ寄せを受けていくであろう生産現場に、どのような時期にどんな形で実用化がなされるのかということを大変疑問に思ったわけですが、これをお教えいただきたいと思います。
  118. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) ただいま先生からお話しのございました肉用牛につきましての体外受精技術あるいは木材の飼料化技術、超音波によります肉質測定技術等の問題でございますが、畜産試験場等におきまして基礎的な研究を進める課題がまだたくさんございますけれども、順次実用化できるものにつきまして、こういった新しい技術をもって対応できる現場というものをつくっていかなければいけないわけでございます。研究の成果を踏まえながら、順次私ども行政面の方で現場におろすための普及活動も進めておるところでございまして、例えば体外受精技術につきましては、県段階におきましてそういった技術を関係の人々に持ってもらう、あるいは木材の飼料化として開発された技術の一部を実用に適するものかどうかということで、現場におろしたいろいろな活動を国も助成をして行ってもらうというふうな試みに着手をしております。  ただ、大変新しい技術でありますだけに、さらに解明すべき問題、試験研究機関においてさらに探求を進めるべき問題も少なくございません。私どもとしても技術会議の方と連絡をとりまして、そういった基礎的な技術の開発状況というものを常時情報交換をする、そしてまた実用化のための普及活動に入れるものを私ども受け取りまして、それを各県を通じて生産現場におろしていくための努力をしておりますが、今後とも基礎研究の成果を踏まえてそういった努力を進めていく必要があるというふうに考えておるところでございます。
  119. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、そこでこの体外受精の技術というのも顕微鏡をわざわざセットしておいていただいて見てきまして、大変興味があったのだけれども、これはコストがまだまだ追いつかないと思います。それから材木ね、あれは材木の種類が大分ふえたと言っておられましたが、果たしてどうなのかなと思う。  一番関心を持ったのは、超音波による肉用牛の肉質測定法の問題なんですが、これは私は大変関心を持ったんです。生体のままで皮下脂肪層あるいはそれから脂肪の交差の状況、あるいはロース身の面積、こんなものが要するに非破壊測定できるということになりますと、これはことし二月に畜産振興審議会から家畜改良増殖目標で、短期肥育による効率的な牛肉生産を目標としてというようなことでやっぱり打ち出しておられますね。例えば二十カ月で出すところを十八カ月で状況どうなっているのかというようなことが体外から十分観測できるという、こういうふうなところを今後濃厚飼料の多給の状況の今のような状況、そんな中で私はやっぱりコストダウンをねらう一つの大事な技術じゃないかな、こんなふうに思っているわけです。幾らしますかと聞いたら五百万ほどだと言っておられた。農水省が全部五百万配るわけにもいかないだろうけれども、あの手のものがやっぱり技術的にどんどん普及していくというのは非常に私はいいんじゃないかなと思うんですけれども、これ可能性どうでしょうか。
  120. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) お話しございましたエレクトロニクス技術、大変最近進歩が著しいわけでございまして、それを利用した肉質の測定技術といいますか、そういうものの研究も進んでおります。現実にこれは外国産でありますけれども、そういった測定機器もごく一部でございますが、試作をされたということも私ども承知をしております。こういう技術が確立をされますと、お話しございましたように、生産サイドで出荷時期の的確な判定、あるいはまた生産物の品質の格付け判定の上でも大変スピードアップされる、あるいは的確な格付けが行われるというふうな利点があることを私ども承知をしておりますけれども、実はこれまでに開発された機器を使いまして実際に屠殺した後の状態との比較をしますと、必ずしもまだ現場で一般的に普及をしていくというふうなレベルの技術としては確立されていないのではないかというふうな状況でございます。  そういった試み、開発された技術というものを現場と合わせながら、本当に使えるものかどうかというふうなことを私ども研究部門とも相談をしながら繰り返しまして、できるだけ早くそういった技術が具体化し定着をしていくことが望ましいと考えておりますが、率直に申し上げまして、なかなかこの技術的な能力については限度がございます。試験研究機関の皆さん方のお力なり、あるいはまたそれの実用化のための多少のトライ・アンド・エラーについてある程度の時間はかかるのではないかというふうにかんがえておるところでございます。
  121. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 自由化後の対策としてどんな研究をされていますかという私の宿題に対して、あの研究試験所はこの三点セットを出されたので、私はこれにかなり期待をしているわけでございますけれども、果たしてその実用化ということがどんなふうになっていくのかなということを思います。  それから、次は牛肉の価格の問題なんですけれども、先ほど来午前中から話が出ておりますが、自由化後消費者も期待しておるわけです。牛肉自由化後は物すごく安くなる、そういう話が出ておるわけです。だけれども、安くなられると今度生産者にとってはかなり厳しい状況も出てくるというようなことから、この法案が今いろいろ論議されているわけですね。それで、私端的に伺いますけれども、消費者サイドに安い牛肉が提供できますか。
  122. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 牛肉の消費者価格につきましては、従来からもいろいろ御論議ございまして、消費者の御関心も大変高いという状況を私ども承知しております。牛肉輸入枠の撤廃に伴いまして輸入数量についての制限というものがなくなるということで、基本的には消費者価格が低減をする方向に動くということを私ども当然のこととして予想しております。ただ、国境調整措置のために関税負担をお願いするという状況でございますので、その中でそういう制度を前提にした範囲で価格の低減が進むであろう。また、国内牛肉につきましても御審議いただいております制度等を通じまして、あるいはまた生産者の御努力を通じた生産性の向上、生産コストの低減によりまして国内牛肉そのものの生産コストも引き下げられ、流通の合理化と相まって消費者価格が下がるような方向で政策誘導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  123. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 農業総合研究所のシミュレーション、一つのモデルなんだと思うんですけれども、これでいくと和牛卸売価格、これは西暦二〇〇〇年でキロ当たり千三百十四円、乳用種が七百六十円、こんなふうになっているんですね。こういう試算があります。  私は、一つ今消費者サイドの方から話を持ち出したのはこういう試算もあるわけなんです。これは中心のB2、B3ぐらいの標準で考えているものなんですよね。大体中心価格で関税五〇%で計算しても枝肉一キロで二百円から三百円の価格ダウンが出てくるという計算になっているわけです。枝肉でキロ二百円から三百円のダウンということは肥育農家にとっては一頭当たり十万円のコストダウンを強いられるということがここに書いてあります。しかし、消費者サイドから見ると、枝肉が三百円値下がりするということは生肉スライスでグラム五十円程度だと、こういうことが書いてあって、自由化自由化と騒がれている割には小売価格がそんなに安くならないのではないか、これは一つの試算なんですよ、あくまでも。そういうことがあるんですが、これはどういうふうに読んだらいいんでしょうか。
  124. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) ただいま先生からお話のございました数値、将来の消費者価格なりあるいは生産コストの低減についての絶対値について逐一申し上げることは、私どももいろんなシミュ レーションをやっておりますけれども、なかなか的確な絶対値を固定的に設定するのは難しいという問題がございます。  御指摘ございましたように、私ども農業総合研究所のこれは必ずしも研究所の公式の研究ではございませんけれども、御承知のように大賀君という専門家がございまして、個人的な見地でいろんなシミュレーション作業をして公表しておるという状況がございますが、基本的に私ども国内生産のコストダウンについては、ことしの二月に発表いたしました酪肉基本方針におきまして、二、三〇%程度の生産コストの低減というものを早急に進める必要があるということを目標に立てております。このレベルを考えますと、現在のB2、B3の肉質の国産牛肉についての中心価格から、やはりキログラム当たり千円強でございますので、その低下額というのは二、三割ということになりますと二百円ないし三百円というところが私どもの念頭にもあるわけでございます。  一方、輸入牛肉につきましても、若干アバウトで恐縮でございますが、現在の小売価格水準、通常の品質のもので百グラム当たり百五十円弱程度になっておろうかと思いますが、これも関税とのかかわりで、その低下の度合いというのは一定の制約を受けますけれども、二、三割下がるというふうなことになりますと、お話のように四、五十円程度ということが一つの数値としてあり得る水準であるなというふうな感じは持っております。ただ、これは将来にわたって輸入品については、現実のCIF価格がどうなるかあるいはフレートがどうなるか、また為替がどうなるかというふうな変動要因が多数ございまして、なかなか固定的に絶対値を見通していくということは、率直に言って大変難しい問題であるというふうに考えておるところでございます。
  125. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで、牛肉の価格安定制度の仕組みのことでお伺いいたしますが、今までの事例でいくと、牛肉の価格が安定基準価格を下回るということはなかったわけでしょう。だけれども、今後はそのことが考えられるわけです。その場合に、牛肉の価格安定制度というのはまず自由化前の三年ではどういう働きをするのか、この制度が。それから、今度自由化後の場においてはどういう機能になるのか。この点について分けてお話しください。
  126. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) お話のとおり、国産牛肉について現在畜産物価格安定法に基づきます牛肉価格安定制度があるわけでございまして、私ども牛肉輸入についての数量制限が撤廃された後におきましても、この価格安定制度基本的な仕組みは維持をしたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、運用面で申し上げますと、先生のお話にございますように、輸入枠撤廃前と後ということよりも、むしろ現在御審議をいただいております子牛に対する価格安定制度が発足をする前と後というところで、少し運用の仕方が変わってくるのではなかろうかというふうに考えております。  と申しますのは、今回御審議をいただいております子牛価格安定制度によって新たな生産者交付金制度が定着をしていくということになりますと、牛肉の価格安定水準を決める肥育牛自体の生産コストがかなり下がっていく、その実態に合わせて、法律に基づいて決める牛肉そのものの安定水準を合理的に下げていくというような運用が行われることを私ども予測をしておるわけでございます。ただ、その際に牛肉に対する輸入制限が残っている間は、こういう価格安定制度リンクをした形で畜産振興事業団の一元的な輸入措置は残っておるわけでございます。したがいまして、直接この価格安定制度によって国内牛肉の価格支持をしていくという手段とあわせて、畜産振興事業団の売買操作でコントロールをするという機能が残っておるわけでございます。それと連動をさせて国産牛肉の価格低下に対応する、こういうことになろうかと思います。  それからまた、新たな子牛価格安定制度が発足し、その一年後に輸入枠も撤廃されるわけでございますが、輸入枠撤廃後におきましては、畜産振興事業団の一元的輸入ということはないわけでございますが、私どもやはり価格安定制度で用意をしております、価格低落時におきます生産者団体による自主的な調整補完に対する助成措置、あるいはまた畜産振興事業団みずからの買い出動というふうな、現在の価格安定制度にビルトインされております措置を運用することによりまして対応をしていくということになろうかと思いますが、私ども国内の需給事情の推移いかんにもよりますけれども、現在確保しております国境措置なり国内での生産コスト低下の努力というものと相まちまして、そういった急激な国産牛肉の価格低落事態というのは、そう簡単に起こるものではないというふうに考えておるところでございます。
  127. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 この間、参考人の方が見られたときに、完全自由化が進むまでの三年間にどんなことをしてもらいたいかという質問を私がしたときに、その間、現在の事業団の機能をフルに生かして、そして万全の体制をつくるための地盤強化にぜひ協力してもらいたいものだという話をしていました。これはどういうふうに考えればよろしいんですか。つまり、あわせてこれまでの事業団のやってきた事業あるいは事業団の存在意義、こういうものを実は伺っておきたいわけです。
  128. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 畜産振興事業団の機能、実は牛肉に限らず指定乳製品あるいは牛肉以外の指定食肉、つまり豚肉でございますが、そういう面について広範な機能を持っております。一応肉用牛に限定をして申し上げますと、先ほど申し上げました国内牛肉の価格安定制度を運用していく、それとリンクをした形で輸入牛肉の一元的な輸入操作を行う。さらにもう一つの機能といたしまして、これは他の畜種についても共通をする部分がございますが、御承知のとおり指定助成事業という形で、国の施策を補完するような形で独自の財源等をもとにしまして生産性の向上でありますとか、流通の改善でありますとか、そういった広範な畜産施策について補完的な施策を実施するという機能を持っておるわけでございます。  これらの機能のうち、今回の牛肉輸入枠撤廃でなくなるのは一元的な輸入操作の部分でございます。これは今後三年間、枠撤廃まで当然適切に運用をしていくつもりでございますが、その他の業務につきましても、所要の財源措置を確保しながら従来の機能というものが発揮されていくように体制の整備をしていきたい、かように考えておるところでございます。
  129. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、さっき私が言いましたキロ二百円ないし三百円価格がダウンすることによって生産農家、特に肥育農家に十万円ぐらいのコストダウンが強いられるというこのこと、一方で、消費者サイドでは四十円か五十円の安い肉しか提供できないというような感じ。このことを考えるんですが、消費者サイドの方の話は別として一頭当たり十万円のコストダウンをねらうということ。つまりコスト低減を本当に、真剣に政策として打ち出していかなかったら大変だなという思いはだれでも持っているわけです。そのために飼料の問題であるとかあるいは特に子牛の問題である素牛の問題ですか、先ほど来あるいはまた先般から出ているわけです。  これは、私も時間がないので私どもの言い分だけを申し上げますと、衆議院でも私どもの党の議員が申し上げたと思いますけれども、この素牛の輸入ということ、これを考えていったらいいんじゃないかという話があるわけです。この点については現在どう考えておられるか、あるいは将来的にはどういう立場をとらえるか、あわせて伺わせてください。
  130. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 牛肉価格の低減を図るためには生産コストを引き下げる。その際に、現在の生産コストの内容を見ますと、お話ございますように素畜費それから飼料費が大変大きなウエートを占めております。素畜費の部分につきましては、ただいま御審議をいただいております子牛生産農家に対する生産者補給金制度というものを確立して、肥育段階における素畜費負担の相当の 軽減が図られるものというふうにまず考えております。  それから、その素畜費の節減の一つの手段として外国からの肥育素牛の購入問題、先生から御指摘ございました。私どもも大変この素牛の輸入に対する肥育サイドからの需要が多いことを承知しておりますけれども一つには国内の子牛生産の継続という問題、バランスというものをどう考えていくかという大変難しい問題がございます。  それからもう一つは、生きた牛を輸入する場合には、御承知のとおり外国からの伝染病の侵入を絶対に防止をする必要がある、そのために検疫を厳格にしていかなければいけない、こういう問題がございます。そのために私ども検疫施設の整備を進めておりますが、率直に申し上げまして施設面、人員面で限界がございますので、どうしても制約を受けざるを得ない現状である。もし国内の子牛生産と調和がとれた上で相当量の外国からの素牛輸入という問題があるとすれば、その状況に合わせてその体制整備を図る必要があると思いますけれども牛肉が相当のテンポで入ってくることになりますと、恐らく外国からの子牛輸入という需要も現在とはかなり様相が変わってくるのではないかという考え方もございます。  とりあえず、私ども当面の輸入枠拡大あるいは輸入枠の撤廃という事態に応じて、現在言われております輸入素牛に対する需要がどうなっていくのかということをもう少し見きわめたいと思っております。  ただ、当面の問題としてそういう需要がありますことをよく承知しておりますので、国内における検疫体制の能力の範囲内で的確にこの輸入が確保されますように、御承知のとおり子牛の輸入については関税免除を伴う関税割り当て制度がございますので、当面この制度の的確な運用を図って対応していきたい。長期的には牛肉そのものの輸入動向と輸入素牛に対する需要動向がどういうふうになっていくのかということをもう少し見きわめて、長期的な対応というものを検討していきたいというふうに考えておるところでございます。
  131. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 四万五千円の関税、これはやっぱり大きい。それでいて一方関税割り当て枠、つまり無関税のもの二万五千頭でしたか、これふやして二万五千頭ですよね。これは今の検疫能力の限界を見た上で二万五千頭という数字が出てきているのですか。
  132. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 検疫施設を通じて生きた家畜を日本は受け入れておるわけでございますが、これは各畜種にまたがっております。牛、豚、馬、その他家畜各種のものがございまして、それらの状況を踏まえて関税割り当てによる無税の輸入需要をできるだけ優先をさせるというふうな観点で、この枠を具体化しておるところでございまして、少なくとも昨年、ことしの状況で見る限り二万五千頭という規模が適切な水準であったというふうに考えておるわけでございます。
  133. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私どもの党では、関税割り当ての枠を撤廃する、それから四万五千円の関税も安くするないしはなくすというような方向でできるだけ子牛の輸入ということを考えております。けれども、これは一方で、考え方によっては繁殖農家への影響というものもあるわけですけれども、繁殖農家といっても肥育農家が健全な経営をできない限りは繁殖農家の存在もあり得ないわけですから、そういう関係からいくと、どうしても肥育農家の健全経営ということをまず考えていかなければならないというふうに思います。  将来的には、ただ単に子牛を輸入するというだけでなく、その子牛を使ってF1等の一貫肥育にしていくというようなことを考えていけば、決してこの子牛の輸入ということが、考え方がおかしいということには私はならないんじゃないかなというふうに思いますので、御検討いただきたいのと、今はニュージーランド、オーストラリアあたりが主だと思うんですが、隣の中国に安い子牛があるということで、既に民間、西武系ではどんどん輸入を来年の二月ごろから始めるんだと、こういうふうな情報もたくさんあるわけです。そういう中で国、つまり農水省もそれをこまねいて見ていていいのかというようなこともありますし、その辺のところの指導をどういうふうになさるのか、方向性を教えていただければと思います。
  134. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 肥育秦牛の輸入をめぐりまして、一つには関税制度について全部無税とすべきじゃないかというふうなお話がございました。私どもとしては、先ほど申し上げましたように、当面の流動的な状況というものを踏まえて適切な輸入誘導をしていく、あるいは家畜の衛生条件を確保するという意味では、現在の関税割り当て制度の適切な運用で対応していくことがベストではないかというふうに当面の措置としては考えておるわけでございます。  それから、この関税制り当て制度のもとでどの国からどういう素牛を入れてくるかということについては、基本的には民間ベースでの自由な判断にゆだねておるつもりでございます。国別にいろいろ供給条件に差がございまして、価格でありますとか牛の品種でありますとか系統でありますとか、そういうふうなことがコマーシャルベースで判断されて選択をされておると思います。その結果、御指摘のように現時点では豪州産の物が大変大きなウエートを占めておる実情であろうかと思います。  また、そういった一連の選択の中で、お話しございましたように、中国のものについて関心が持たれているという面がございます。これもまたその品種、品質等をめぐっていろんな考え方があるようですが、私ども仄聞しておりますところでは、やはり品質的に見て全面的にこれに依存をしていいのかどうかということについては、関係者の中でもいろんな御議論があるようでございます。  それから、家畜衛生面につきまして、実は他の諸国に比べまして輸出のための検疫体制というものが必ずしもまだ十分に整備をされていないのではないかという問題があるようでございます。私どもも先方の要請に応じて必要な技術指導をするとか、あるいはまた必要な衛生条件のすり合わせをするという作業を繰り返しておりますけれども、率直に申し上げまして、なかなか輸出を円滑化させるような検疫体制がまだ十分に整っていない面があるような気もいたします。いずれにしましても、仮にこの素牛輸入というものが日本畜産にとって必要であるとすれば、できるだけ有利な条件で、かつまたいいものが確保されるように輸入元の多元化というふうなことが必要でありますれば、そういう方向で私どもも心がけていきたいというふうに思っております。
  135. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それからもう一つ、コスト低減を図るもう一つの課題である飼料の問題でございますけれども、配合飼料の工場認証制度を取り外すというような記事を読みました。こういう作業が今後この飼料価格にどういう影響を及ぼすのか、コスト低減にどうつながっていくのかお伺いします。
  136. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 私ども畜産物の生産コストの低減という問題が大変焦眉の課題であるということで、畜産物の生産コストの中でかなりのウエートを持っております購入飼料、いわゆる配合飼料を中心としました購入飼料の農家負担というものをできるだけ低減する方策を考えていく必要があるというふうに考えておりまして、その具体策について検討をしております。  ただいま私ども考えておりますことを申し上げますと、まず現在配合飼料の原料に充てるためのトウモロコシ等については免税措置がとられております。ただ、この免税措置、ほかのものは有税になっておりますので、横流れ防止というふうな問題もございまして配合飼料の原料になるものだけに限定をする。そしてまた、その横流れができないような条件下で物流をコントロールしていくために、税関長がこの原料を使った、免税されたトウモロコシを使った工場を承認していく、個別に承認をしていく、その承認をする際に農林水産省が推薦をする、こういう仕組みを一つ持っておるわけでございますが、この推薦がやや配合飼料 の製造、流通について自由な競争を妨げているのではないかというふうな御議論もいろいろあります。したがいまして、私どもとしては、この免税措置のために必要な承認工場制そのものはどうしても必要であるけれども、農林水産省サイドからの推薦制というものは、この際大蔵省との間で横流れ防止等を図るための客観的な基準をつくって、個別具体的に当方から推薦をするという制度は廃止をしてはどうかというふうなことで、現在具体的な調整を進めておるところでございます。  それからもう一点としまして、この配合飼料の原料として使うトウモロコシが免税措置をとられておりますけれども、最近経営規模の拡大等に伴いまして自家配合飼料をつくってやっていくという農家サイドの、生産者サイドの御要望が大変強くなってきております。横流れ防止ということもございまして、それについてはなかなか手がないということで今日まで推移をしてきておりますけれども、いよいよ畜産物価格の生産コスト引き下げということが必要であるということになりますと、やはりこの自家配合のために使うものについても必要な横流れ防止策を講じながら免税措置を適用していくということが必要ではないかということで、これもまだ最終的な結論を得ているわけではございませんけれども、関税法上の手当てをしてそういう自家配合用飼料に使われるものについても免税措置を講ずる方途ができないかということで、端的に申し上げますと、関税割り当てによる無税物というふうなものができないかという方向で現在検討を進めておるという状況でございます。  これらの二つの方向で現在検討を進めまして、成案を得ますれば所要の時期にこれを実現すべく努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  137. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 生産農家が、飼料を単体で買い込んで自家配合をするというようなことが非常に生産コストの低減につながるというようなことになるということであれば、そういう制度をどんどん私は進めていかなきゃならないと思うんです。そこで、今度は配合飼料、飼料配合の技術ですか、こういう種類の指導というものもやはり伴って必要になってくると思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  138. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 確かに、自家配合による飼料コストの低減という場合に、配合技術の問題というのは一つの課題であること御指摘のとおりだと思います。ただ、大規模化された農家のその点に関する能力というものは、率直に申し上げまして大変高いものであろうというふうに考えております。私ども、技術指導の必要がある面については十分対応していきたいと考えておりますが、恐らくそういう意欲のある農家はみずからの工夫で十分対処していくのではないかという予想も持っております。
  139. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、濃厚飼料一辺倒の使用でない生産方式ということで、粗飼料の扱いというようなことも私ども提案してきております。この前、衆議院の方でも申し上げました例のスイートソルガムについては余り積極的な研究、あるいはまた何というのかな、意向というものを持っておられなかったように私は思っておりますけれども、私は東北大の星川先生にも何回もお会いいたしました。星川教授のスイートソルガムに関する見解を非常に高く評価をしている私は一人でございますが、これは今後の飼料の問題としてどのようにお考えになっていらっしゃいますか、改めて伺います。
  140. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 飼料コストの低減を図る場合に自給飼料の作付強化という課題があること、お話のとおりでございます。いろんな飼料作物があるわけでございますが、最近御指摘のようなスイートソルガムという作物が一つの課題として言われておること、私ども承知をしております。  ただ、現場の状況を聞きますと、青刈り用のトウモロコシ等に比べましてTDNの含量が比較的低い、それからまた家畜そのものが食べなれてないという問題もあるかもしれませんけれども、家畜の方の嗜好性が若干劣るというふうな問題もございまして、スイートソルガムの持っております特徴といいますか、特性であります栽培上湿気に非常に強いとか、それから倒伏性が少ないとか、そういう利点に着目して栽培面積が飛躍的に伸びるという状況にはなっておらないのが実情でございます。それぞれの作物について利害得失があるわけでございますし、地域によって、地域の条件によってそういった選択というものは生産者が的確にやっていくということがやはり基本であると思いますが、それぞれの作物、種類ごとに持つ特性というものがよく理解されて、何といいますか、地域の実情に合った組み合わせで粗飼料生産が定着、拡大をしていくという方向で私ども対処してまいりたいというふうに思っておるわけであります。
  141. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから一番最後に、先ほど同僚の委員からも地方自治体、地方団体における自由化後の各種対策についての質問が出ました。私もこのことについて大変関心を持っておりまして、各地を回るごとに各県のあるいは団体のオリジナルな対策についていろいろ聞いてまいりましたけれども、先ほど申しました超音波による体外からの肉質調査の技術ですね、これは実は静岡県で牛肉自由化対策試験研究事業一千五百万を充てて、外から特殊な機械で牛の肉質を判定し、それによって長期間肥育する牛と、それから早目に出荷する牛とを選別する技術を開発しこれを県内にこれから進める。肥育コスト低減に向けてのこの機械を使ったマニュアルづくりも行いますと、こういうことがあるわけです。  県段階でその手のものを県内に普及したいと言っているんですから、やっぱり農水省でもそういう技術のようなものを多少補助を出しますとか、そういうことでもうちょっと全体的に見て、今回の自由化後の対策、頼りないところがあると私は思うんですよね。仕方がないから各地方自治団体でこういう各種本当にさまざまな対策を講じておりますし、来年度に向けてもその予算を組んでおるようでございます。したがいまして、こうした他方自治体の動きに対しての農水省の見解と、それから我が方もできるところまではやるという考え、抱負を大臣から伺って私の質問を終わります。
  142. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 地域農政ということが言われてからある程度の時間はたっておるわけでございますが、それぞれの地域における特性、これを生かしてそして地域の活力を出していく。そしてその農政上の活力というものがその地域の経済の発展につながる、それがもとであるという一つの自負心を持って地域それぞれの地域の味つけをしていくべきである。そのことについて積極的な指導、役割というものがやはり農林水産本省が果たしていかなければならぬ、さよう心得ておるところでございます。
  143. 下田京子

    ○下田京子君 私は、法案の質問に先だちまして、冒頭大臣ね、申し上げたいのは、大臣ちょっとこちらをごらんくださいませ。  昭和五十八年です。当時の中曽根内閣総理大臣あてに私は牛肉自由化をするなという質問を文書で提出しております。その答弁によりますと、国内にあって牛肉は唯一拡大できるやつだし、いろんな事情があるから自由化しませんと、こう述べられまして、さらに「牛肉輸入に関しては、国内生産で不足する部分について需給の動向に十分配慮した計画的な輸入を行っていく」というふうに答弁されている。こういう形でずっと竹下内閣のもとでも言われてきた。それを国民の願いに背を向けて自由化した。この自由化したことを前提にして今回の法案が提出されている、そこに最大の問題があると思うんです。  特に、肉用子牛生産安定等特別措置法、これは政府案、端的に申し上げますとまず自由化する。そうしますと、牛肉の市場価格が下がる、それに対抗できるように国産の牛肉価格も下げていこう。そのためには子牛の価格も下げなきゃならない。そうしていって不足払いという格好でめんど う見ようと。しかし、将来的には不足払いが不要になるような形で、保証基準価格そのものを輸入牛肉価格の水準に見合う形の合理化目標価格に限りなく近づけていくんだということで出された法案だと思います。  そこで、自由化を前提にしないで、消費者に安くておいしい牛肉を供給できる方法はないんでしょうか、あるんです。それが共産党修正案です。中身は何かと言いますと、牛肉コストの多くの部分を抱えているのが子牛の生産だと。ですから、子牛の生産が安定的にということで私どもは子牛安定供給価格というものを設けました。そうして肥育農家を守り消費者にも安い牛肉を、同時に繁殖農家に対して生産費を償う形での真の意味での保証基準価格を設けよう、こういうことを申し上げております。  私は、具体的に政府のその中身がどんなものなのかを法律論で、法律の仕組み上で伺っていきたいと思います。  まず、第一に保証基準価格です。現行の保証基準価格に今提案されている保証基準価格は一つの目安にするんだと、こう言われておりますね。しかし、現行の保証基準価格とは何でしょうか。これは再生産を保証するものではないと私は理解しているんです。衆議院の答弁等を聞いておりますと、再生産を確保することを旨として定める、こう言っておりますけれども、現在の子牛価格そのものが、異常な低落が生産者の経営に及ぼす影響を緩和するためのものであって生産費を保証するものではない、こういうふうに従来から言われてきたと思うんです。とすれば、現在出されている政府案、この保証基準価格も生産費を償うものではないということになりますですね。
  144. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 現在御審議をいただいております子牛価格安定制度の中の保証基準価格につきましては、法文上明記されておりますように、子牛の生産条件、需給事情その他の経済事情を勘案して再生産を確保することを旨として決めるということが定められておるわけでございます。生産費を保証するという意味がいかなる意味かよくわかりませんけれども、再生産の確保が図られるというこの御提案の規定の趣旨にのっとって私ども運用をしてまいりたいという考えでございます。
  145. 下田京子

    ○下田京子君 再生産を確保することを旨としてということが、生産費を償う形での農家の再生産が保証されるというものでないということは政府の今までの答弁からして明確じゃないですか。生産費補償方式に基づく再生産確保ができるんですか、それは違うでしょう。はっきりしてください、できるのかできないのか。
  146. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 私ども今度の制度で予定をしております保証基準価格の考え方は先ほど申し上げたとおりでございます。具体的にこの法文の規定に沿ってどのような方式で基準価格を算定し、どのようなレベルにするかということにつきましては、たびたびお話しを申し上げておりますように、今後畜産振興審議会での御論議等各般の御意見をいただいて方式なり、またその方式に基づく価格算定という作業を行って、法律の趣旨にのっとった方式なりあるいはレベルというものを具体化してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  147. 下田京子

    ○下田京子君 紛れがないようにはっきりさせておきたいんですけれども、「再生産を確保することを旨として、」と。しかし、それは再生産を確保するものではないんだ、というのはこれはやっぱり政府答弁なんです。現在の保証基準そのものが、ここに書いてありますけれども、「異常な低落が生産者の経営に及ぼす影響を緩和するために実施しているものであって、生産費を保証する趣旨のものではない。」というふうに、これは政府答弁書で言っているんです。だから、今の水準を目安にして保証基準価格を決めますよ、こういうわけですからね。もうどだいこれは再生産を保証する水準じゃない、これが一つです。  同時に、局長自身がこの本の中でお述べになっていますよね。農政ジャーナリストの会編で「牛肉自由化と今後の展望」というのを見せていただきました。その中にこう書いてあります。現在の水準というのは、輸入枠撤廃後には二度と再現されないだろう。ですから、つまり子牛価格が今までは高いときもあったが何とかやってこれたけれども、これから決める保証基準価格というものは最低の下支えなんだ、そういう内容だということは明確になっているわけです。あたかも保証するような格好でごまかしたんじゃいけませんね。  次にはっきりさせたいのは、繁殖農家にとって保証基準価格そのものも低く抑えられるのに、さらに問題なのは、将来的には限りなく合理化目標価格に近づけていく、こう言っているわけです。そうですね、局長
  148. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 保証基準価格の考え方をめぐるいろんな御論議ありましたが、私どもとしては、現在御提案を申し上げております法律の定めるところに従って的確な算定方式あるいはレベルというものを決めていくつもりであることを再度申し上げておきます。  また、この保証基準価格につきましても、生産コストの低減努力がこれから必要になってくるわけでございますが、その努力が実現をされる状況に沿って変動をしていくということは、この御提案申し上げております法案の中にも明示をしておるところでございます。そのめどとしましてお話しございました合理化目標価格というものを定めることにしておりますが、この合理化目標価格に生産農家がたえられる状況ができるのには相当の時間がかかるというふうに私ども考えております。大変大きな課題ではございますけれども、そういう目標を持って努力をしていくんだということを法律上明らかにしておくことが必要であるということで、このような仕組みにしておるわけでございまして、短期間のうちにそのような状況ができるというふうには思っておりません。
  149. 下田京子

    ○下田京子君 短期間にはそういうふうにできないと今おっしゃっていますが、一方で合理化目標価格とはいつごろまでに実現を図る価格なのかという点では、酪肉基本方針等によれば昭和七十年に現在よりも二、三割のコストダウンと。この法律に仕組む合理化目標価格というのはそれよりもさらに低い水準、こういうことを言っていますね。現行の保証基準価格そのものが二十九万二千円でしょう、全国。それよりさらにということになりますと、ざっと二十万近くになるんじゃなかろうかと思うんです。単なる何か目標のように今のお話で言われていますけれども局長、やはりこのお話の中でこう言っているんです。  価格引き下げものんびり行っていてはだめだ。しかも、引き下げのゴールとして具体的に、和牛で二十万円、乳牛雄で十万円、水準もお示しになっています。さらに、繁殖経営で二十頭、三十頭の経営規模にならないと二十万円程度の素牛価格を供給する実力はつかない。ここまでお述べになっております。私たちは、当然それはコスト軽減ということに反対しませんし、従来からずっと言ってきたんですよ。しかし、今のようなことで言われますと、現に二十頭以上の繁殖経営というのは全繁殖農家のうちの一・九%にしか満たないんです。つまり、先ほどから言っている保証基準価格という、その保証という基準価格はどのクラスの価格を保証するのかというのは、局長の頭でいえば二、三十頭以上、二十万ぐらい、そういうところは償いますよという論ではないですか。  だから逆に言うと、それ以外の残り九八%近い繁殖農家はおやめなさい、こういうふうに法律では読めるというふうに私は思います。それは法律事項にしてあるということなんです。そうでしょう、違いますか。
  150. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) いろいろなお話をお伺いしたわけでございますが、私ども合理化目標価格を何といいますか、時間的ラグをもって決め、どういう水準にするかということについてはまだ確定的な考え方を持っておるわけではございませんが、私ども現在考えております合理化目標価格というのは、三年ないし五年ぐらいのタームでの目標値をしかるべきタイミングで決めていくこと が妥当ではなかろうか。もちろんそれは国内の合理化の状況、あるいはまた輸入牛肉状況等に対応した対抗条件というものの整備の状況に応じて見直しをしていくことになろうかと思いますが、そういう目標価格を持ちながら毎年適切な保証基準価格を決めていく、こういう仕組みを考えておるわけでございます。  また、この運用に当たりまして長期的なゴールとして何を考えるかというふうなお話が、私が農政ジャーナリストの会で関係する記者の皆さんと論議をした際の発言を引用しての御発言でございますが、私は、そういった場での論議をする際に、問題をできるだけ明確化するために多少誇張的に表現をしている部分もないわけではないわけであります。具体的な制度の運営に当たりましては、現実に即して、関係者の大方の御了解を得られるような手順を踏んで適切に制度の運営に当たるつもりでございます。  私、先ほど先生がお話しにございました輸入牛肉に対抗できる素牛価格につきまして、国境措置なりあるいは品質格差というものを頭に置いて、大変大胆な形で対抗条件として考えると二十万、十万ということを申したことは事実でございますが、現在御審議をいただいております制度の運営に当たりまして、直ちにそういったものを押しつけていくというふうなことは全く考えておりません。
  151. 下田京子

    ○下田京子君 否定しなかったわけです。そして私も、直ちに今こういうことをなんということは質問もしてないわけですし、問題は法律の仕組みで私が指摘してきたとおりだということなんです。事運用という面はまた別な話なんです。  さらに申し上げたいことは、自由化によって輸入牛肉が下がるということを前提にこの法律を仕組んでおられますね。そうしますと、安い子牛の輸入をという圧力がもっと強まってくるのじゃないか。そのことについては他の委員に対してもうそれは承知していると、コマーシャルベースでそれも進めているというお話がございました。私はそのことが何をもたらすかということを申し上げたいんです。  現に、六十年にオーストラリアから子牛が二千八百八十九頭でした。それが異常円高もあってでしょう、六十一年一万九千二百八十頭にふえました。そして、六十二年には何と二万四千九百九十頭にふえております。そして、今後さらにこの子牛輸入はふえるでしょう。なぜならば、現に日商岩井がバックについておりましてマリーグレイという日本牛肉生産の約半分ぐらいで仕上がる、その輸入現地で仕立てておる畜産会社があります。御存じだと思います、神明畜産です。そして、この神明畜産は現在日本に二十カ所の牧場を持っていますが、新たにことしの六月十日、北海道は白糠町で町と協定を結びました。肥育専門の牧場です。八千六百四十頭ここで肥育をして牛肉に仕上げる。片やその素牛は、この神明畜産がやっているオーストラリアからの素牛で行う。こういう格好になりましてまさに繁殖農家は大打撃を受けるんじゃないか、そういう心配は全くしておりませんか。
  152. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 子牛の輸入の問題でございますが、たびたび申し上げておりますとおり、私ども国内牛肉需給状況を反映しまして国内における肥育需要が増加をし、国内でその素牛を十分に供給できないという条件下で、輸入子牛に対する需要が大変増加をしておるということを申し上げております。  ただ、この子牛の輸入問題については、私ども国内における子牛生産の維持発展との調整の問題、それから生きたものを入れるためには、家畜防疫上の観点から一定条件を確保する必要があるために厳正な検疫を通過させることにしておる。その検疫施設の能力に限度があるから、そういった需要には一定の限度があるということを繰り返し申し上げておるところでございます。  私どもとしてはそういった考え方で、長期的には牛肉の防疫関係とこの子牛輸入についての因果関係が、どういうふうに動いていくかということをもう少し見きわめる必要があると思いますけれども、現行、当面の状況下では事態の推移を眺めるということもありますし、あるいはまた検疫上の限界もあるということで、やや制限的にこの問題には対応していくということを申し上げたとおりでございます。今度は、そしてこの子牛の輸入に当たりましてどういうふうな国から入ってくるかということについては、国内における肥育生産者の判断の問題でございまして、それがいかなるものであるかということは最終生産物の品質なりそういうことともかかわりがありますので、コマーシャルに任せておるということでございます。
  153. 下田京子

    ○下田京子君 ですから、その結果がいわゆる繁殖農家経営とかそれから肥育農家経営にかわって、一定子牛の輸入についても限度があるよといっても、神明畜産など後ろに日商岩井もついて企業畜産という形で入ってくる。現に入ってきているということを考えるときに、結局この法律は繁殖農家つぶしにつながるんじゃないかということなんですよ。その心配をしていないかと私は質問したんです。  さらに、次に申し上げたいのはその肥育農家です。ここで聞きたいことなんですけれども法律的に肥育農家が合理化目標価格で、つまり安い子牛を手にできるという制度上仕組みがございますか。
  154. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) ただいまのお話の中で、今回の私ども制度が繁殖農家つぶしではないかというふうな御指摘がございましたが、全くさようなものではないことを再度御理解をいただきたいと思います。  それから、肥育農家が購入をする子牛価格の水準について、私ども基本的には肥育農家が取得する子牛価格は自由な取引を前提にした市場価格で現在も入手しておりますし、将来ともそういった構造を前提にしておりまして、制度上も実態上も合理化目標価格水準で、固定的に肥育農家が、そういう水準で子牛価格を購入するということは全く予定をしておりません。
  155. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、消費者にとっては絶対安い牛肉がちゃんといけるという制度上の仕組みになってないんです。国内牛肉価格を下げていくということになれば、やっぱり国内生産の生産費の四割、五割近くを占める子牛を下げなきゃならぬ。ですから、肥育農家が合理化目標価格見合いで安定して買えるというところの保証がなかったら、これはやっていけないんです。それは、今お話聞きましたが、制度上も考えてないし運用面でも考えていないというのは、まさにこれは肥育農家にとっても重大だ。さっき申しましたように、企業畜産がだあっと入ってくるということになりまして、これは制度上欠陥法ですね。もう子牛供給価格安定をちゃんとつくらなきゃならないと思います。共産党は、そこのところを修正案で出しているんですよ。  さらに、問題として指摘したいのは、牛肉自由化されれば価格はもう下がる、下げ一方だというふうに見ておられるんですが、上がるということは断じてないんですか。
  156. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 一般的に輸入枠撤廃等によりまして輸入量増加をしますれば、他の条件に変化がない限り価格は低下傾向をたどるという一般論を私どもかねてから申し上げておるところでございます。通常の需給原則でもそういうことが言われるわけでございます。  ただ、現実の価格の形成に当たりましては、例えば輸入牛肉についてはいろいろな変動があるわけでございます。国際的な需給あるいはフレートの状況、さらには特に、国内で流通する場合には為替の状況、そういったことで一たん下がったものがある時点ではまた若干上がるというふうな事態は、観念論としては考えられるところであります。
  157. 下田京子

    ○下田京子君 一般的には価格が下がるんだと、あとはないみたいなお話しているけれども、随分変われば変わるものですね。  今までずっと政府が何と言っていたかといったら、確認したいんですけれども一つは、牛肉と いうのは今の生産形態からいって、一頭肉牛を育てるのにはおおむね三年ぐらいかかるんです。一定のビーフサイクルというのがあるんですね。そのビーフサイクルも日本は七年ということですが、アメリカあたりですと十年。このビーフサイクルで、現実的には一九八五年にアメリカの場合に一億四千万頭を超えるはずだったのに、それが逆に八八年で九千九百万頭、二十五年前にダウンしちゃった。ビーフサイクルそのものも、今まではだんだんふえていったけれども、下がりの傾向になってきているというようなことで需給が逼迫するというふうに今まで説明されていませんでしたか。
  158. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 価格変動をめぐりまして、一方的な下げではなくて、やや厳密に言うと短期的には上下の振幅があるということを先ほど私がお答え申し上げたつもりでございます。傾向的に低下の方向をたどるであろうということについてひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、ただいまお話のございましたビーフサイクル、これは各国で生産条件が違いますので、若干その読み方に差がございますけれども、御指摘のとおり日本の場合ですと、生産量なり価格について七年を単位とするような変動、アメリカ、豪州についても若干の類似の現象があること御指摘のとおりでございます。その際に、外国のビーフサイクルの影響というものが国際需給にも一定の影響を与える場合があり得るということは、従来からも申し上げてきておりますけれども、国際的な需給の逼迫もあり得るということについて、さほど短期的に危機的な状況が起こるというふうな考え方は私ども申し上げたことはございません。
  159. 下田京子

    ○下田京子君 私は、短期的だとか長期的だとかとも言ってないんです。国際的に牛肉というものの需給は逼迫している、あなた方もそう言ってきたわけです。「牛肉をめぐる事情」、なぜ牛肉自由化できないか。昭和五十九年二月、農林水産省が出した文書にちゃんと言っているじゃありませんか。私が今指摘してきたことは、ここで皆さんが言っていたことを言っているんです。そこで、明確に申し上げますと、牛肉の国際的貿易市場はお米よりも狭いと言っているんです。そうでしょう。「世界の牛肉需給は、量・価格の面で不安定で、長期的にはひっ迫基調にある。」、こう述べているんです。だから、確かに短期的にとは言ってないです。しかし長期とはいつかということになると、ビーフサイクルですから七年とかなっていくわけですよね。  現実にどうかといいますと、今口蹄疫の非汚染地区からの輸出量というのは国際的に百五十三万トン、そして世界の牛肉輸出量に占める日本輸入量はどうかといえば、これから三年間六万トンずつふやすということになると、現在の二十二万トンに十八万トンですから約三十九万四千トンになるわけです。そうしますと、何と全体の二六%を日本輸入してくる、こういう事情になるわけですね。国際的に出回っている量も逼迫傾向にある、その中で日本はもっと輸入量をふやすということになりますから、本当に限られた分での引っ張り合いになります。国際的に牛肉が高くならないという保証は逆に言ったらどこにもない、こういうことが言えるんじゃありませんでしょうか。長期だの短期だの、ごまかさないでください。
  160. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 我が国が、貿易対象として選択をできる牛肉の輸出国は、御指摘のとおり我が国畜産の安全確保ということで口蹄疫の非汚染地域に限定をしております。その中で、生産量が一九八六年のデータで約百五十万トン強であることは御指摘のとおりでございます。そういう状況下で今後我が国輸入量増加した場合に、生産量がこの水準でとまっていれば一定のインパクトを与えること、そのことによって国際需給にあるいは国際価格に一定の何といいますか、上昇効果を持つことは事実でございますが、この口蹄疫非汚染地域の生産量を支えるあるいは貿易量を支える主要な国は、アメリカ、オーストラリア、それからカナダ等でございます。その数量が今後にわたって現在の百五十三万トンにとどまるという見通しもないわけでございまして、大変潜在的な、大きな生産力を持っておるということでございますので、日本が考えております輸入増加に伴うインパクトは十分に吸収し得る可能性も持っておるというふうにも私ども考えておるわけでございます。  仮に、インパクトを与えて価格が高くなるということになりますと、国内畜産業との調和はよりやりやすくなるということもありますので、少なくとも、供給面について輸出国の制約が大変大きく働くというふうには私ども現実問題としては考えておらないところであります。
  161. 下田京子

    ○下田京子君 いずれにいたしましても、国際的に牛肉が市場に出回る量というのは限られている。長期的に見れば、大体この牛肉生産というのは長期的に見なきゃいけないわけですから、だからビーフサイクルというのがあるわけですからね。そうなると、かなり不安定要因があるということを否定はできないわけです。  そういう中で、制度として今回仕組んだものは何かといえば自由化したら値段が下がる、そしてそれに見合う形で繁殖農家をもっと下げていただくというわけで、繁殖農家にもダメージが与えられ、肥育農家にとっては合理化目標価格で安い物が買えるという保証がない中で、畜産企業などの形が進出してくる。なおかつ、さっきも申されておりましたが、消費者に確実に安いしかも安全な牛肉が渡るという保証もない。まさにこれは大変な法律だと思います。  ずっと言っておられますけれども国内でも自由化を前提にしてコストを引き下げしなきゃならないんだ、こう言われております。コスト引き下げ問題は大事なことです。私たちも従来から指摘してまいりました。そこで、まずはっきり申し上げたいところなんですが、コスト引き下げのためには、アメリカ、豪州等は土地条件等も違うので無理、できたらECと同じような形に近づけていきたい、こういうふうにお述べになっていたと思いますけれども、これは今も変わりございませんね。
  162. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 牛肉に限らず、一般的に畜産物の生産コストの低減が従来から大きな課題であったわけでございます。その生産コスト低減の目標としまして昭和五十七年に策定をしました酪肉基本方針の中におきまして、一つのめどとして、日本比較条件の似ておりますEC並みの生産コストということを標榜いたしまして努力目標を設定したことは事実でございます。  そういう目標につきましては、それなりに国内生産者の御努力もございまして目標に近づいたと私ども思っておるわけでございますけれども、これを価格面で比較をします場合に、実は私ども予想をしなかった為替レートの大きな変動があるわけでございます。円高の進行でございます。その結果、私ども五十七年当時に考えたECとの格差是正ということが相当大幅に実現しつつあったわけでございますが、為替変動を織り込みますと、むしろECとの格差は逆に広がるというふうな状況に相なっておるわけでございます。  この問題は、なかなか農業だけでは対応し切れない面もあるわけでございますけれども、現実の為替レートの状況に応じた努力というものも私どもやっていく必要があるであろうということで、ことしの二月に策定をいたしました酪肉基本方針におきましては、五十七年の当時と違いまして、コスト引き下げの目標というものをむしろ円建ての絶対値という形で示すことがよかろうということで、御承知のとおりできるだけ早く二〇%ないし三〇%程度の生産コストの引き下げ努力をしていこうと、こういう目標を掲げておるところでございます。
  163. 下田京子

    ○下田京子君 土地条件からいったらEC並みにということがやっぱりこれは最大限考えられるところで、それ以上に規模を拡大しろなんというのは考えられないですよね。今お話がありましたように、もうEC並みになったんです。そのことを証明するために数字確認しましょうよ、局長さ ん。  一九八〇年、キログラム枝肉で日本は千二百十二円でした。その当時のEC価格はキログラム八百五十円でした。ですから、日本が一〇〇とするとECは七〇%ですね、それが一九八七年です。これを八〇年為替レートと同じで見れば幾らになるかといえば日本は千百五十九円です。ところが同じ為替レートで見ればECの価格も枝肉キログラム当たり千八十五円で、そして日本が一〇〇とすればEC九四、こういう価格になっていると思うんですが、間違いございませんね、数字は。
  164. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御指摘のような考え方での計算をいたしますと、お話のような数値になることそのとおりでございます。
  165. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、これは今の価格差がなぜ広がっているかというのは、農家の責任じゃないということがはっきりしたわけです、そうですね。経済全体のいわゆる異常円高の中で出てきていることなんです。そういう中で、農家が苦しんでいるのにさらに追い打ちをかけようというんですかと、こう申し上げたいわけです。とにかく政府がずっと言っております規模拡大、この規模拡大でそしてコスト軽減をとずっとおっしゃっているんですが、規模拡大で本当にコスト問題解決できるんだろうか。一番いい例が、農用地開発公団が進められてきた畜産開発基地やなんかだと思うんです。  具体的に聞きます。福島県の場合には公団事業が七地区ございます。その七地区の農用地開発公団事業が果たしてすべてうまくいっているというふうな御認識ですか、どうですか。
  166. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 福島県だけではなくて、全国各地で公団事業が行われておるわけでございますが、一部には経営上の困難を抱えている経緯もあるわけでございますけれども、全体として見ますれば、未墾地を開発いたしまして大規模な畜産基地を形成し、畜産物の安定供給を図っていくという政策のねらいは達成しつつあるのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  167. 下田京子

    ○下田京子君 まさかすべて間違っていたとは言いにくいでしょう。ただし、私は全国ベースに言うと紛れが多いから福島県で七公団事業の中ですべてそこに限定してきているんです。物事がわかりやすい。だから、うまく全部いっているというふうに認識しているかと聞いたんです。福島県の七地区公団、これはすべてうまくいってないんです。具体的に言います。これは南部地区の話です、阿武隈南部です。ここには鮫川村と塙町の農家が入植しています。そして鮫川村で三戸の共同牧場が神明畜産に売却されたということを御存じです
  168. 松山光治

    政府委員(松山光治君) お尋ねの事例は増反農家の例だと思いますが、御指摘のございました鮫川村で草地十七ヘクタールの造成、それを増反で取得いたしまして肉用牛の共同経営を行っておりました三戸の農家があるわけでありますが、これがその後の後継者がいないとか、それから四年続きの冷害に見舞われたとかといったような事情がございまして、そういった個別の事情から草地等の一部を売却したという事実があることは承知をいたしております。
  169. 下田京子

    ○下田京子君 さらに聞きますけれども、同じく阿武隈南部の塙町です。十二名中の農家の中で四名の農家が五十七年以来から償還未払いに至っている、その償還未払い金額が六十三年九月時点で二千二百二十八万円、これは今言われたような災害云々だとかということもあるでしょうが、それらに起因するものではないというふうなことも踏まえて、県、町からも伺っておりますし、私も調査に行ってまいりましたが、このことは御存じですか。
  170. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 今、手元にその塙町の具体的な数字を持っておらぬわけですが、六十二年度の場合五戸の農家が八百六十万ちょっとの未納を出しておるという事実は、私も今承知をいたしておるところでございます。
  171. 下田京子

    ○下田京子君 さらに麓山畜産基地です、第一、第二とございます。ここの農家はいずれももう破産寸前という中で、県当局が独自に酪農家等に当たって、末端金利一%の低金利の金でもって負債の実態に合わせた形での償還計画等をお立てになっている事実は御存じですか。
  172. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 麓山区域は、御案内のように福島県内の他の地区とは異なりまして完全入植と申しましょうか、そういう形の大規模農家が多いわけでございますが、そういった農家につきましてかなりの経営困難を生じておるものもございまして、そういう農家を対象といたしまして県が特別の対策を講じておるという事情は承知いたしております。
  173. 下田京子

    ○下田京子君 さらに、阿武隈の中部の問題について聞きます。ここでは二市二村が参加していますが、特に乾草供給センターのある平田村にあってことしついに離農が出る、その競売等にかけられて六百九十万円と農民の償還金額を村が肩がわり負担をしているという実態、さらにその乾草供給センターが赤字で村の財政を非常に圧迫しているという事実は御存じですか。
  174. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 突然のお尋ねでもございまして、私その事実を承知いたしておりませんので、よく事実を調べてみたいと思います。
  175. 下田京子

    ○下田京子君 今、七地区のうち四地区まで言いました。事実を調査してないのにうまくいっているなどということを言えるような状態じゃないんじゃないですか。  そこで大臣、お話伺ってくださいましたね。ぜひ御検討いただきたいことがあるんです。つまり当時の金利はどのくらいかというと、農機具等購入費が六・八七、さらに土地基盤整備等は七・〇四%、農業用施設整備は七%です。この高金利のためにもう大変な事態になっているんです。ですから一つは、これは参考人等もお述べになっておりましたが、岩手県経済連の佐々木専務さんは二%程度の金利のものをと言っておりました。北海道の方は高橋会長ですか、基金の、無利子の要求をしておりました。つまり、思い切った金利の引き下げというようなことを対応しなければならないのではないでしょうか。ぜひ再検討いただきたいということです。
  176. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 多少事務的な状況について、まず私の方からお答え申し上げたいと思います。  ちょっとお言葉を返すようでございますけれども、私最初のお答えのときに、一部に経営上問題の生じておる農家があるというふうに申し上げた次第でございまして、福島の各地区につきましても、地区により、経営によりまして経営内容に相当大きな違いがございます。したがいまして、今御指摘のございましたような状態が福島県全域のものではないという点はひとつ御理解をいただきたい。農家によって相当の違いがあるということはひとつ御理解をいただかなきゃいかぬだろうと思っております。  それから、そういう状況の中での農家対策の問題でございますけれども、私どもといたしましては、今の厳しい状況の中で、やはりせっかくの投資でございますからそれを有効に生かしていくためにも、ここは飼養管理技術なりあるいは経営管理能力の向上を通じました経営対策、経営指導が非常に重要な問題であろう。現に福島県におきましても、各地区別に県の関係機関なり市町村、農協が参加いたしました特別指導班が編成されまして鋭意経営指導に当たっておるわけでございます。そういうことで、経営自体をよくしていくというのが基本になろうかと思っております。  大体、今御指摘のございましたような金利は五十年代の前後の金利かと思いますが、当時としてみれば割安の財投金利ということでございますけれども、今の段階になってみれば確かにある程度の割高感がある、こういう状況の中の話ではあるわけでございますけれども、草地造成について申しますれば七五%という高率の国庫補助をした上のことでもございますから、今ここで既に貸しておるものについての金利の引き下げということは率直に言ってなかなか難しい問題を伴っておる。  そこで、私どもとしては個別農家の事情に応じまして償還の円滑化を図っていくという、そういう観点で、例えば自作農維持資金の活用を図っていただくとか、さらには公団におきますやむを得ない農家に対する償還猶予の措置も講じてございます。さらに、御案内のように六十三年度からは公団の事業の償還円滑化特別対策事業ということで、その年の償還に充てます足らずについての一定の額のものにつきましては、農協等から借り入れましてそれを国、県で利子補給をするというふうな措置も講じたところでございますし、かつまた六十三年度の畜産物価格の安定、畜産物価格対策の一環といたしまして大家畜経営の体質強化を図るための特別融資も予定されておる。そういうことをいろいろと有効活用していただきながらせっかくのひとつ経営展開を図ってもらいたい、このように考えておる次第でございます。
  177. 下田京子

    ○下田京子君 大臣
  178. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 有能な局長連中が答えておるとおりでございます。あなたの言われることは承りました。
  179. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、今最後に言われた、私の言ったこと承ったと、そこ大事ですからね。  つまり低金利です。私は、いろいろ努力している方々に今度の自由化法は大変な打撃を与えるのじゃないかと思うんですよ。大臣これ後で写真差し上げますからごらんください。  これはことし大臣表彰を受けた私が住んでいる石川町の酪農青年なんです。この彼は北海道で四年、アメリカで三年、そして今酪農を中心に肥育も含めてやっております。搾乳牛が二十四頭です。それに昨年から乳雄十頭を実験的に肥育しておりますが、その乳量たるやすごいんですよ。よい牛で一万六千キログラムですか、出すんです。県平均が六千三百五十キログラムですから県の約倍。そういうことで頑張っている青年に、今言ったように牛肉は下がるわ、それから乳価は下げるわ、資材は上がるわ、高金利はさっぱり面倒を見ないわなんてことになったら、今までEC並みにといって規模拡大で努力してきたこういう青年たちを本当に嘆かすような事態に追い込むことになるわけです。だから、そこをきっちり踏まえて対策をとっていただきたいと思うわけです。重ねて低金利問題あるいはその経営指導の話はようわかります。わかるんだけれども、七五%もの国庫補助の中でやっても、なおかつこういうことで経営に行き詰まっちゃっているんですから、何らか救済しなきゃならないでしょうから、その救済策のためにいろいろとお骨折りいただきたい、農水大臣賞を受けられた青年を再び塗炭の苦しみに追いやることはないという大臣答弁をいただきたいんです。
  180. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 写真はあなたも一緒に写っている写真でありますが、よくできておりました。  農林水産大臣賞をもらった若い経営者が、畜産農家が落ち込むことのないよう努力いたしたいと思っております。
  181. 下田京子

    ○下田京子君 そもそも今回の自由化というのはだれのためのものなんだろうかということです。前回のときには、大臣資料ごらんになったら、すぐだから何とも言えぬよ、しかし現地のために役に立っておると思うし、秩序ある輸入をするように言うよ、こういうことを言われたんですが、考えてみますと自由化しちゃってから秩序ある輸入なんてあるんだろうかなというふうな疑問も持っていますが、いずれ改めて資料をごらんいただきたいんですけれども、その前に指摘しておきたいのは、今回ウルグアイ・ラウンドに行ってモントリオールで御協議されてきたと思うんですが、アメリカ提案というのは農業補助金、それから輸入障壁、十年後完全撤廃、こういう提案ですね。それで、途中具体的に考えることもよしと言われておるわけですが、このアメリカ提案の背後には一体だれがついていらっしゃるか御存じでしょうか。
  182. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) あなたに対するお答えは非常に難しいんでございまして、ああ言えばまたこう言われるし、こう言えばまたああ言われるし非常に苦労の存するところでございますか、私が至らざるところでございましょうか、米国米国の一連の関係があるんだろうなという程度にいたしておきます。
  183. 下田京子

    ○下田京子君 そうなんです。米国米国の一連の関係なんです。つまり、米国内でアメリカ提案の背後にいるのは穀物メジャーなんです。  これは米国のミネソタ州農務省のマーク・リッチー氏がこう述べております。「アメリカ案は、元カーギル社上級重役で、今はガット交渉農産物貿易担当のアメリカ代表であるダニエル・アムスタッツ氏が起草・提案したものである」、そういうことだそうです。そして、「穀物業者は、輸入障壁を禁止せよという、アメリカ政府の要求を支持している。」、「食糧自給にどんな影響があれ、穀物業者は世界のすべての消費者に制約を受けることなく、アクセスしたいのである。」、こういうふうにも述べられているんです。つまり、どういうことかというと、自由化というものは国内における弱肉強食を国際的に広げていくということを意味しているわけです。つまり、その背後にある穀物メジャーなど多国籍企業間の対立をさらに激化させていくということを一つ物語っているのではないだろうかと思うんですが、違うと言い切れますか。
  184. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 違うとも違わないとも答えるわけにはまいりません。あえて答えるとするならば、アメリカ人の中でもいろんな人がいるだろう、その一人の人がそういう考え方を持ったかな、そう言ったかなという程度の感想にとどめておきます。
  185. 下田京子

    ○下田京子君 いずれにしても多国籍企業、つまり無国籍企業とも呼ばれていますが、どこの国の国民にも責任を持たずひたすらそれぞれの企業の利益を優先させる、こういう人々が自由化の背後で大きな利益をねらっているんです。日本で言えば言わずとしれた大手商社であります。  そのうちの丸紅の問題なんです。資料をごらんいただければわかると思うんですが、この丸紅の有価証券報告書によりますと三百八十五億円農林中金から融資されております。そして、この丸紅はことし十数億円というお金をもってオーストラリアの四千ヘクタールの牧場を買い取り、六千頭の牛の生産、来年から二万四千頭の牛の生産ということを考えておられるそうでありますけれども、短期資金は無担保だというわけであります。こういうことが果たして本当に喜ばしいことなんだというふうにお感じでしょうか。
  186. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 丸紅その他の商社と農林中金の融資の関連についての御質問でございますが、農林中金は系統の最上部の金融機関として、農業に必要な資金の融通を中心的な役割として果たしているわけでございますが、いわゆる関連産業法人貸し出しということで、中金法に基づきまして、今お話のございました商社等も含めた農林漁業と関連の深い一定条件を満たした法人に対する貸し出しを行う権能が与えられているわけでございまして、現にその業務の一環といたしましていわゆる産業関連貸し出しを行っておりまして、残高では約五兆円ぐらいになろうかと思いますが、その一環として今お話しのあったような商社に対する短期のいわゆる運転資金の貸し出しを行っているわけでございます。  しかし、これはあくまで国内の農林業あるいは水産業等の活動展開と密接な関連を持った法人の活動に着目した融資でございまして、先ほどからお話が出ておりますような商社等の海外に進出した現場での生産活動に対する融資活動ではないわけでございます。
  187. 下田京子

    ○下田京子君 いずれにしても、国内向けだと言いますが、一たん借りたお金は色がついていないんです。ですから、丸紅のことで言えば三百八十五億円というのは、これは今回豪州で買い取った牧場のあれからいえば三十近くも買える、そういうことなんです。それをもって国内の肥育繁殖酪農家に大きな影響が懸念されるというわけです。  さらに、三菱商事等はひどいですよ。丸紅の二 倍です。資料に書いてありますが七百十九億円です、農林中金から借りている。これも短期は無担保です。そして、三菱商事と言えば何度でも申し上げますが、DDT入り等の牛肉輸入するなどいつでも安全性問題で物議を醸している有名なところでもあります。  さらに問題なのは、これは低利融資だということです。金利は具体的に幾ら言ってもお述べになっていないようですが、国内にあっては農林中金を原資とする例えば近代化資金などどうかと言えば、今度の冷害で借りに行く、そうすれば保証人どうだ、担保どうだ、みんなが借金しています。借金してない農家を探してくるのは容易じゃないです。ですから現実に借りられないです。どんなに苦労しているか御存じだと思いますよ。これは非常に問題だと思います。  それで、さらに問題なことを申し上げたいんですけれども、資料の一番最後をごらんください。時間がないから私はまず資料の説明を申し上げたいんですけれども、新しく資料をつけ加えておきました。つまり、アメリカにおけるパッカーの動きであります。資料をみんなには配ってないんだけれども大臣のところには届いていると思うんです。  大臣よくごらんになっていてください。
  188. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 見ていましたよ。
  189. 下田京子

    ○下田京子君 はい。それじゃいいですか。  アメリカにおける巨大食肉企業の動きなんですが、アメリカの四大牛肉パッカー、これは特にIBPというのはオクシデンタル石油が親会社です。エクセルというのはかの有名なカーギルであります。それでもってそのほかスイフト、モンフォート、四社計でもって実に、備考のところをごらんいただけばわかりますが、一九八七年で実はこれらパッカーがかなりのところを買い占めておりまして、アメリカ国内牛肉の生産の約七割のシェアを握っております。そして、これらの四大パッカーが日本に進出してきているという実態であります。  こういう状況を考えましたときに、まさにこれらの動きに目を配らないでいいのだろうか、畜産事業団の今度の業務の変更によりまして一元輸入しない、買い付けしない。ですから、それにかわって情報収集するということをシドニー、デンバー等でおやりになる、こういうわけですけれども、今までだって情報は収集できるわけなんです。それらの状態をつかまずして本当に自由化対応しこれら巨大パッカーあるいは穀物メジャー、日本の商社と太刀打ちして日本の小さな肥育繁殖農家が本当に農業をやっていけるというふうにお感じなんですか。私は、資料を要求したけれども全然出さないんです。調べようがないと言うんです、個別企業について調べることなんてできません、こういうことを言われてきました。だから私は今怒りなんです、怒っているんですよ。それであの資料をお配りしました。私はこういう危険を指摘します。そういう重大な問題だということです。  そこで、全く視点を変えて質問申し上げたいのは学校給食の問題です。  端的にお答えいただきたいんです。現在の指定助成事業等、これらは今の牛肉輸入の差益でやっていたと思うんですが、今度は関税が特定財源で肉の方に行っちゃいます。そうすると、乳の方はどうするんだろうかということで金の問題が心配であります。    〔委員長退席、理事岡部三郎君着席〕 いろいろありますが、ずばり学校給食の問題についてのみ聞きたいんですけれども、昭和四十五年、学校給食は百八十ccの牛乳を二百ccにしました。そのときに、子供たちの教育それから体力などを考えてこれだけ飲ませてください、ついては父兄負担を軽くしてくださいということで五円八十銭の補助金をつけて百四十億円予算化したと思うんです。それが、年々削られて五円八十銭が今や何と一般会計からお出しになっている部分はわずかに二円六十銭、そして畜産振興事業団から出ているのが六十銭、そして国の予算も六十八億三千五百万ということでかなり削られております。  実際に、これが自由化と相まって財政的な理由で切り捨てられるのではないか。もう一つ、臨調、財政審等から見直しを迫られているというのもある中で、学校給食のこれら補助金を削るというようなことがないように大臣の決意を聞かせていただいて質問を終わりたいと思うんです。
  190. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) お話しございました学校給食の一環で行われております飲用牛乳につきまして、御指摘のような経過で児童生徒の体位、体力の向上、あるいはまた牛乳の飲用習慣の定着というマーケット対策を合わせた意図で学校給食に対する補助を行ってきておること、御指摘のとおりでございます。  この問題についてはお話にもありましたように、臨時行政調査会あるいは財政制度審議会におきまして、その助成の仕方については大変少額なものであり、一律補助といったような非効率性を持っておる、むしろ受益者負担の原則等の観点から見直していく必要があるのではないかということを提言されておりまして、そういった提言の趣旨と、私どもの従来学校給食牛乳事業に対する助成が果たしてきた役割を調和させながら、六十三年度まで御指摘のような金額に縮小しておりますけれども対応しておるわけでございます。恐らく六十四年度予算編成におきましても、いろんな議論をこれからまた財政当局との間で行うことになると思いますが、このような臨調なりあるいは財政制度審議会の指摘を無視するわけにもいかないわけでございます。関係者意見も聞きながら、今後そのあり方について私どもも適切な対応をしていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。
  191. 下田京子

    ○下田京子君 大臣から一言。    〔理事岡部三郎君退席、委員長着席〕
  192. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) それでは一言申し上げます。  一連の共産党修正案のお言葉に始まりまして、何か本当に怒られているような感じがいたしましたが、いや怒っているんだということでございました。しかし私は、何かと御激励をいただいているような感じもいたしました。商社等の資料も、この間私がモントリオールに立つ前にちょうだいをいたしました。今また改めて目を通しておりました。何か商社のために農水省があるんだかみたいな感じを受けるような言い方をされておりますが、日本共産党のためでもなければ、私どもは国民のためにやっておると一言申し上げておきます。
  193. 下田京子

    ○下田京子君 牛乳、牛乳。牛乳を答えなければだめじゃない。
  194. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 牛乳も含まれています。
  195. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私は、まず肉用子牛の生産補給金制度の運用についてお尋ねをいたします。本朝来、本件については質問が集中をいたしておりますので、視点を変えて質問をいたします。  今回の日米合意に伴い三年後に牛肉輸入自由化が行われました場合には、まず輸入量の急激な増大が予想をされ、その影響は子牛価格の急落という形であらわれると予想されております。確かに、輸入牛肉と和牛との肉質の相違や日本人の嗜好、わけても最近における高級品志向等を理由に、若干の考え方の相違はありますが、大幅な価格の下落が予想されるとの意見が大勢を占めております。最近では、日米牛肉交渉の経過の段階においてさえが先行きの不安に駆られた生産者の動揺等もあって、昭和五十七年から五十九年において子牛価格の急落が生じ、昭和五十八年度は今日の価格の半値以下という状況でありました。自由化による値下がりは当然それを上回る可能性があることから、現行の肉用子牛価格安定制度では財政的にも立ち行かなくなることが予想されるため、新たに政府主導のもとで肉用子牛の生産者補給金制度を導入されようとしておるものであり、しかも肥育一貫経営農家や肥育に向けられる肉用雌子牛にまでその対象が拡大をされようと意図されておりますことは、現情勢下においては適切な対応と賛意を表します。  その財源対策としては、現行関税と引き上げ関税分を特定財源として充当することとし、その規模は五百億円とのことでありますが、もちろん現行制度の適切な運用とあわせての対応ではありますが、若干不安に感じる点もありますので、その代表的なものについてお尋ねをいたします。  第一点は、新しく提案をされております生産者補給金算出の基礎となります保証基準価格及び合理化目標価格の決定についてであります。この両価格の決定は、肉用子牛生産事業の安定はもちろん、ひいては畜産事業の振興を左右する極めて重要な要素になります。それは肉用子牛の再生産を確保することができるかどうかの分かれ目になるからであります。  私は最近、但馬牛の産地のある集落を調査いたしました。この地域では、九月の市における子牛の価格は平均四十七万円とのことでありました。十一月の市の前日ある生産農家を訪ねました。美しく手入れされた三頭の子牛が畜舎の前につながれており、御主人に幾らくらいを希望しておられますかと尋ねました。五十万円くらいとの返事でしたが、後日確認をいたしましたところ、一頭は六十万円、一頭は五十五万円、残りの一頭は五十二万円とのことで、その平均は五十五万七千円、約五十六万円でありましたが、ちなみにその日の市の平均価格は五十二万円とのことでありました。この繁殖農家はこの地域でも比較的優良農家と思われます。九月の市に比べ約一割強の高値であり、異常高値との表現が適切かと思います。  自由化を控えて先行き不安の多いときに、なぜこのような異常高値が続くのか。確かに不思議な現象であり、先日ここでの参考人の皆さん方の意見や産地での意見を総合いたしますと、大体次のようなことが考えられます。一つは、日本人の嗜好が例の霜降り肉で代表されます肉質にあること。二つ目は、消費者の高級肉の志向は依然衰えておらない。以上のこともあり、国土保全の立場からも国産牛肉の供給体制は保護されなければならないという期待感を生産者が持っておいでになる。四番目は、繁殖母牛の減少等にあるようであります。  したがって、産地においても但馬牛の将来ということで次のように指導をしておいでになります。おいしい牛肉を食べたい消費者意識は強く、高いけれどもよい品質の牛肉評価され需要もあります。このおいしい牛肉をさらに安く生産をし、社会的経済的情勢に左右されないような優良な子牛が生産されなければなりませんと生産者に呼びかけており、また生産者もこれにこたえ、さきに申し上げました生産農家も、その日の総収入百六十七万円のうちからさらに肉質の改良を目指して百二十五万円を優良繁殖牛の導入に投資をしておいでになります。肉質改良もこの一頭だけでは済まされず、引き続き投資が必要になってくると思いますが、このような生産農家が中途で挫折するようなことなく、そこそこ肉質改良の目鼻がつくまでの支えは行政としても留意をしていく必要があると思います。  繁殖農家もこのような異常高値の続くことにはむしろ不安を感じており、もう少し安くてもよいから長続きすることを望んでおり、一頭四十万円くらいまでだったら耐えられるのではないかと私なりの推量をいたしました。  ここで留意していただかなければならないのは、確かに名目価格だけに目を奪われることなく手数料や賦課金、共済金等の間接経費もかなり必要とすることも十分認識をしていただく必要がありますが、価格は今申し上げましたような状態でした。  一方、対照的に検討するために肥育地域も調べてまいりました。この調べた地域での肥育頭数は約六千頭、うち和牛が千頭であとは乳用の雄牛主体の地域でありますが、今のところ和牛については成牛価格が堅調なため救われておりますが、生体七百キログラム、七十五万円くらいで売れると計算すると、但馬牛のような優良子牛は別として素牛価格四十万円が限界でありますとのことでもありました。繁殖農家、肥育農家のいずれに採算割れがあっても円満な畜産事業の発展は望めませんことは御承知のとおりであります。  ここで、農林水産省とされましては、次の点についていかように考えておいでになるのか、御見解をお尋ねいたします。  一つは、保証基準価格の設定についてはどの程度を予定しておいでになりますのか。二つは、さきの局長の御答弁で高級化の動きもあるけれども、低コスト化が肝要との御意見を表明されました。しかし、肉質改良は既に始まっておるのでございます。そういうように、肉質改良のための投資の必要性についてはどう考えておいでになりますのか。必要だとお考えになっておいでになりますなれば基準価格の決定においてこのことを十分配慮されるべきと思いますが、いかがでございますか。 以上をまずお尋ねいたします。
  196. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 但馬地域、あるいはその他の地域で繁殖経営なりあるいは肥育経営の実情をお調べになり、最近の状況をお聞き取りの上でのお尋ねでございます。  まず保証基準価格、肉用子牛に対する、御審議いただいております生産者補給金制度の非常に根幹的な部分になります保証基準価格の問題でございますが、たびたび御答弁申し上げておりますとおり、私どもとしては法案に明記されておりますように、子牛の生産条件、需給事情、その他の経済事情を考慮して、その再生産を確保することを旨として定めるということにしております。  具体的には、その算定方式はいかにあるべきか、またその方式によって算定された額がいかにあるべきかということを決めていかなければいけないと思いますが、まだ私ども固定的な方式なり水準というものを考えておる状況ではございません。制度発足までの期間、畜産振興審議会等を通じまして関係者の御意見を十分にお伺いし、御審議を経て適正な方式あるいは水準の策定に努力をしてまいりたいと思うわけでございます。  それから、肉質改良のための努力が特に繁殖地域の但馬等で行われておるというお話でございます。私どもも生産者の中で、あるいはマーケットの状況から見て、いわゆる霜降り肉と言われるような高級牛肉についてのマーケットがなかなか輸入牛肉では代替し得ないというふうな分野がありますことを承知しておりますが、この点についての評価が余り過大に行われますとコスト競争という面で大変問題が残ると考えております。  ただ、先生御指摘のとおり、但馬の場合には大変良質な肉質のものを伝統的に生産している地域でございまして、なかなかこの例を一般論として申し上げるのは大変難しいと思いますが、和牛、伝統的に国産の肉専用種でございます黒毛和種につきましては、脂肪交雑等の肉質面において大変すぐれた遺伝的形質を持っておりまして、この特徴を生かしていくということがある限られた条件下で十分可能ではないかと思っておるわけでございますが、やや個体別に肉質が、そういう品質面が個体別に非常にばらつきが多いという問題がございます。群としてそういう特徴を発揮できるような品種改良、あるいはまた繁殖資源の造成ということが大変重要な課題であろうと思うわけでございます。非常に個別的に大変高い、何といいますか、繁殖用素牛の導入に高い投資を行うということになっていきますとリスクが多くなりますので、群として、全体として、平均レベルとしての肉質が確保されるような改良努力というものが大変重要であろうかというふうに考えるわけでございます。  そういった投資につきましても、生産条件一つとして、今後の保証基準価格の算定の上で考慮していくことは当然ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  197. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 今日の肉用子牛の異常高値と、その対応についてお尋ねをいたします。  今日までも、肉用子牛は大体六年くらいの周期で上下の変動を繰り返しており、近年では昭和五十五年が高値の天で昭和五十八年が安値の底でございました。しかし、今日の高値はその昭和五十 五年のそれよりもはるかに高く、全く異常であり、それが牛肉自由化を昭和六十六年に控えた今日であるだけになぜなのか、疑問は絶えません。  別の話ではありますけれども、過去一年間好況に推移してまいりましたちりめん業界のことを考えてみたいと思います。ちりめんの生産量がこの十一月には一年ぶりに対前年同月比マイナスに転じ、好況から一転して減産に迫られております。好況の引き金は投機が主因と言われる生糸相場の急騰にありましたようです。生糸は、昨年秋から一本調子に上昇、ことしの六月にはついに一・八倍にもなり、素材製品ちりめんにも先高・品薄感が広がり、十年ぶりの活況となったのですが、しかし肝心の最終消費財の着物はそうは伸びませんでした。いわばダムに水が満杯になるように、製造、流通の各段階にちりめんがあふれ出したのであります。加えて九月の生糸の急落、受注減という逆流が産地を襲う結果となっております。しかし、このような状態の中にあっても、だれかはどこかでもうけておるに違いないと思います。  この一年間を振り返ると、経済の主役が金(かね)や相場に移り、生産者には厳しい時代になったと感じないわけにはまいりません。  今年九月、京都市内である閣僚の方が経済界と懇談をされました席上、西陣の代表者が物つくりの立場から、経済は本来生活を豊かにするもの、しかし今は財テクと称して投機的に動いている、まことに嘆かわしい、金融、税制でこの行き過ぎを食いとめてほしいと切々と訴えられました。これに対し出席閣僚は、私も物をつくらない財テクのような経済は本当ではないと思っているとうなずかれましたが、何の施策もなさるいとまもないままに業界は不況の波にのまれようとしております。この挿話と今日の素牛の高値とを同一次元で論じるのには理論の飛躍がありますから適当ではないと思います。けれども、この高値の素牛が牛肉になるころには、輸入自由化対応するための新制度による生産者補給金制度は実施をされ、保証基準価格も決定されておるはずであります。今でさえ肥育農家は採算割れを言うのでありますけれども、この異常高値の現実をどのように認識しておいでになりますのか。さらには、何らかの対策を考えておられますのか、あわせて御所見をお尋ねいたします。
  198. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 御指摘のとおり肉用子牛、特に和牛に顕著に見られるわけでございますが、昨今牛肉に関する輸入枠撤廃の方向が明確になった状況下におきましても、比較的高水準の価格形成がなお継続をしておるわけでございます。  先生御指摘のように、この要因について私どももいろいろ検討しておるわけでございますが、基本的には、この和牛種からとれる牛肉価格については輸入牛肉に対する対抗力がある程度ある、あるいはまた少なくとも現在の高値で購入されたものについては輸入枠撤廃前に採算のとれるような形で処分され得るのではないかというふうな期待感がいろいろ重なりまして、今日のような高値水準を形成しているというふうにも思うわけでございます。私ども、安易にそのような考えにのっとって高価格をつけていくということは、長期的な繁殖農家にとっても、肥育農家にとってもいろいろ後顧の憂いがあるというふうなことで大変苦慮をしておりますが、私どもとしてはできるだけ早く、本法案の成立を待って、長期的な見方等について関係者に十分警告あるいは指導をしていく必要があると考えておるわけでございます。  いずれにしましても、御審議をいただいております新制度の運用を通じまして、繁殖農家にとっても対応できる仕組みのもとで子牛価格が鎮静化をしていく、そのもとで肥育経営の継続発展が可能な条件づくりをするということをしていくことが基本であろうかと思います。  ただ、その状態が実現されるまでの間、先生御指摘にございますように、高い子牛を購入した肥育農家がいろいろ価格変動によって、最終生産物である牛肉の価格変動によっていろいろ問題が生ずる、こういう懸念も否定できないわけでございまして、私どもそういった事態に対処しまして経過的な措置になろうかと思いますけれども、肥育農家の所得水準が一定のレベルを下がるような事態については、肥育農家に対する措置を講じ得るような対策を、今回の緊急対策、補正措置を伴うと思いますが、その中で実現するように検討をしていきたいと、かように考えておるところでございます。
  199. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 次は、肥育農家に対する所得保障施策並びに緊急時の対応策についてお尋ねをいたします。  畜産事業における繁殖農家と肥育農家とはいわば車の両輪の関係にあり、いずれかの輪が機能をしなくなってしまえば全体の事業の崩壊を意味することになります。今回の法改正においては、繁殖農家に対しては補給金制度の創設により一応の手だてが講ぜられようといたしておりますが、肥育農家に対しては既存制度の活用にまつだけのようでございます。肥育農家では、今までは行政主導型で畜産農家とともに畜産振興に努めてきた。それが三年後の自由化とのことではありますが、生産者補給金制度等は、先ほども申し上げましたとおり、自由化の一年前よりの実施でありますことから、もう来年と言ってもよいところに来ておりますのです。こんなに急激に自由化されますこととは思いませんでした。三年後と言っても実質一年半では到底対応ができないとの意見もございます。  また、従前は約六カ年周期で価格の変動がありました。最近はその周期が若干延びており、その上価格の変動幅が大きくなっている関係で安値に備えることが困難になってきてはおりますけれども、それでも心がけ次第では価格調整も可能でありましたが、今後は直接輸入牛肉との競争でありますので、その価格調整機能はごくごく限定されると思われます上に、不可抗力によるつまずきもあり、そのつまずきは経営全体に連動をいたします。また、緊急時の対策も考えておかなければなりません。  また、別の肥育者の話によれば、私たち経営者は石油ショックを初めとして何回かの危機に見舞われてまいりました。そのたびに零細畜産農家の脱落はありました。そういったところから零細農切り捨て政策との声も聞かれましたのですけれども、しかしまた、反面その都度実施をされる緊急融資等のおかげで生き残ることのできてきたのも事実であります。今後は自助努力しかないとの覚悟をしておりますものの、自由化に対する体質の整備ができるまでくらいは肥育農家にも所得を保障する柱となる制度が欲しいものだと思っており、緊急の場合には緊急融資等の措置はとってくださるだろうとは思っているが、融資の場合には償還年限を長期にするよう配慮をしてほしいとのことでありました。特に農外収入を見込めない専業農家には必要なことだと私自身も思いました。  以上申し述べまして、次のことをお尋ねいたします。  一つは、肥育農家の所得保障に対する施策はこのほかに考えられないのかどうか。二つ目は、緊急融資等で経営を支援する場合の償還期限については十分配慮をなさるべきだと思いますけれども、この点はいかがか。二つの点についてお尋ねをいたします。
  200. 京谷昭夫

    政府委員京谷昭夫君) 肥育部門の経営安定についての問題でございますが、先ほども若干触れましたが、私ども現在御審議をいただいております肉用子牛の価格安定制度は、単に繁殖部門だけではなく、肥育経営の支払う子牛価格負担というものも軽減をされることになりまして、この子牛価格安定制度によって肥育経営の安定にも裨益をするものであるというふうに考えておるわけでございます。  さらに、肥育経営の最終生産物であります牛肉価格の安定のためには、従来から申し上げておりますとおり、現行の牛肉価格安定制度基本をさらに継続をいたしまして適切な運用をしていきたいと考えております。  また、これから牛肉輸入枠撤廃に対応する経 過の中で、肥育経営についてもいろいろな事態も懸念をされるわけでございます。それに備えまして、当面緊急対策の一環といたしまして現在検討しております補正措置の中で、肥育経営安定のための措置を具体化したいと思っておりますし、また御審議をいただいております特別措置法の中で関税収入相当額を特定財源にすることとしておりますが、その使途については肥育経営に関する対策を含めて肉用牛生産の合理化、経営の安定等について必要な施策の財源にも使うことにしておりますので、そういった手法によりまして対応を考えて、実際に起こる事態に対応して必要な措置を講じたいと思っておるわけでございます。  その一環として緊急融資というふうな手法もあり得るわけでございますが、現実問題として、ことしから肥育経営も含めまして大家畜経営の体質強化のための特別融資を発足させております。負債整理の意図を持ったものでございますが、ここにおきましても、一般的には十五年あるいは特認の場合には二十年といったような償還期間を設定して、実情に沿った運営をすべく当面準備をしております。将来の問題についてはまた具体的な実情に応じて論議、検討をしていくことにしたいと思っておるわけでございます。
  201. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 最後に、佐藤農林水産大臣にお尋ねをいたします。  自由化後の素牛の値段がどうなっていくのか、肉牛の価格はどう変化をしますのか、いずれもこれから未知の世界へ入っていくことになります。常識的な変化の場合にはそれなりの対応も可能です。あるいはまた、高値安定の場合にも対応比較的しやすいと思います。しかし、予想外の安値に見舞われたような場合にはどうなっていくのか。これは生産畜産農家の存続をかけた問題でもあります。そういった事態を迎えた場合には、大臣としてはどのように対応しようとする御決意を持っておいでになりますのか、お尋ねをいたしまして私の質問を終わります。
  202. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) いろんな事態が予想をされるのではないか、そういうときにどうするかということでございますけれども、もともと私が御答弁申し上げておりますように、畜産農家の存立畜産経営が存続するように、こういうことで外交交渉にかかり、そして外交交渉で足らざるところを国境措置国内措置等を含めてそしてあわせて、その目的が果たせるよう努力してきた経緯にもございますので、さようなことでいろいろこれからの手当ての財源等を考えますと不足するのではないかというまた心配もあろうかと思いますけれども、私どもはその心配は要らないのではないか。今まで申し上げたことで粛々とひとつ進めてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  203. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 御異議ないと認めます。  ただいま議題となっております両案のうち、まず畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べください。
  205. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、畜産物価格安定法改正案に対する反対の討論を行います。  反対する最大の理由は、本法案が、牛肉自由化の障害となっている牛肉の国家貿易を廃止する牛肉自由化仕上げ法案と言うべきものだからです。  政府は、広範な農民と消費者の反対の声を無視して牛肉オレンジ自由化を決定しました。しかし、これは、我が国の経済主権を放棄し日本農業に重大な打撃を与えるものです。  しかも、審議の中で明らかにしてきたように、牛肉を初め農産物輸入自由化は、アメリカ日本の巨大資本、多国籍企業の利益本位に仕組まれたものです。特に日本の大企業は、工業製品の輸出による大幅な貿易黒字に対する風当たりを農産物に転嫁するとともに、牛肉自由化を当て込んで牛肉の海外生産、開発輸入を進めています。これは、安全な食糧は日本の大地からという消費者や農民の願いに全く背を向けるものです。  アメリカECを初め、牛肉輸入自由化している国は全くありません。しかるに、すでに牛肉の自給率が六九%と主要国中最低になっている日本が、牛肉市場開放を迫られるいわれはどこにもありません。しかも、従来から政府は、牛肉輸入に関しては国内生産で不足する部分について需給の動向に十分配慮した計画的な輸入を行っていくこととしているとしてきました。ところが不当にも米側の一方的圧力に屈して自由化を受け入れたのです。  政府米国政府あて書簡で、国会の承認を含む所要の国内手続きに従うことを条件として自由化を行うことを約束しましたが、この約束に沿って提出されたのが本法案です。したがって、本法案を認めるか否かは、牛肉自由化を認めるか否かの問題と直結している重大な選択であり、我が党は本法案を廃案にし、牛肉自由化を撤回させることを強く要求するものです。  さらに、本法案による国家貿易条項の削除は、ガット上認められている国家貿易の権利をみずから放棄するに等しいものであり、米、乳製品の自由化にまで波及するおそれがあることを指摘しないわけにはまいりません。  ガット条文及びガット設立の経緯に照らして、国家貿易品目には輸入、輸出数量制限の一般的廃止義務が及ばず、国家貿易品目輸入数量制限ガット上合法的であるというのが日本政府見解であったはずです。農産物十二品目に対するガットパネルの裁定に対してもこの立場から異議を唱え、態度を留保したはずです。しかし、牛肉自由化は、国家貿易に関する権利をみずから放棄したものとの国際的評価を招き、ひいては乳製品、米の市場開放自由化に道を開くものであり、到底認められるものではありません。  以上のように、本法案は、牛肉自由化を初め日本農業に大きな損失を残すものであることを強く指摘し、反対討論を終わります。(拍手)
  206. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について採決に入ります。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  208. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、肉用子牛生産安定等特別措置法案の修正について諫山君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。諫山君。
  209. 諫山博

    諫山博君 私は、日本共産党を代表して、肉用子牛生産安定等特別措置法案に対し、修正の動議を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されている案文のとおりであります。  これより、その趣旨について御説明いたします。  政府が、広範な農民の反対を無視して決定した牛肉オレンジ輸入自由化は、農産物品目自由化受け入れとともに、我が国の経済主権を放棄し、我が国農業に重大な打撃を与えるものであります。各国が自立的な経済基盤を確立するため農業を保護し、食糧の自給を目指すことは当然の権利です。これは、既に世界最大の農産物輸入国であり、食糧自給率も最低水準にある我が国にとってとりわけ大事なことであります。しかも、日本牛肉輸入自由化を追っているアメリカは、みずからは牛肉などの厳しい輸入制限を行っているのであります。こういう理不尽な要求に全面的に屈服した牛肉オレンジなどの輸入自由化方針を撤回し、我が国農業と食糧を守ることを改めて 要求するものであります。  もとより、我が党は、肉牛生産農家の経営を守り、消費者に安い牛肉を供給するために、牛肉生産コストの中で大きなウエートを占める肉用子牛の価格安定対策の抜本的改善を要求してまいりました。本法案は、こういう要求に部分的にこたえる形をとって自由化に対する農民の反発を和らげることをねらったものであります。  しかし、本法案は、牛肉自由化を前提とした制度であり、そこに起因する大きな欠陥、問題点を持っております。本法案では自由化による打撃はカバーできないばかりか、自由化によって予想される牛肉・子牛価格の下落を逆手にとって生産者価格の保証水準の引き下げを誘導し、国内生産の縮小をもたらすものであります。  我が党の修正案は、この矛盾、欠陥を抜本的に是正し、国内の肉牛生産を発展させ、国民に安い牛肉を供給することを保障するものであります。  その概要は、第一に、牛肉輸入自由化を法的に追認する条項を削除することであります。・  第二は、子牛価格安定制度を抜本的に改善し、繁殖農家と肥育農家の双方を不足払いの対象とし、牛肉生産の発展、消費者価格の引き下げに役立つものとすることであります。また、乳牛雄牛の初生牛、つまりぬれ子も子牛価格安定制度の対象とし、酪農家の経営を守ることとしております。  第三は、生産コストの中で大きなウエートを占める子牛価格の引き下げを牛肉の消費者価格の引き下げに結びつけるため、畜産物価格安定法に基づく牛肉安定価格の決定方法を改めることであります。  第四に、子牛価格安定対策の財源は、輸入牛肉の差益と関税のほか、必要に応じて一般会計からも支出することとし、子牛価格暴落時、暴騰時に肥育農家、繁殖農家が拠出する積立金も財源とすることであります。  第五に、施行期日は公布の日からとし、本制度を来年四月一日からスタートさせることであります。  以上が本修正案の概要であります。委員各位の御賛同を賜りますようお願いいたしまして、提案理由の説明を終わります。(拍手)
  210. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまの諫山君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。佐藤農林水産大臣
  211. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ただいまの修正案につきましては、政府としては反対であります。
  212. 福田宏一

    委員長福田宏一君) これより肉用子牛生産安定等特別措置法案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  213. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、肉用子牛生産安定等特別措置法案に対し、我が党修正案に賛成、政府案に反対の立場から討論を行います。  政府案に対する反対の第一の理由は、本法案が繁殖農家の経営安定につながるどころか、零細経営の切り捨てにつながる可能性が強いことであります。  現行の子牛価格安定制度の保証基準価格は暴落時の下支えのためのものであって、生産費を保証するためのものではありません。繁殖農家は子牛の販売価格がこれを上回るときもあるからこそ、経営を辛うじて維持しているのが実態であります。しかし、本法案が施行されれば、子牛価格が保証基準価格以下の水準に頭打ちにされることは確実であり、たとえ保証基準価格と販売価格との差額が補てんされるとしても、再生産を確保することはできないことは明らかです。  さらに、保証基準価格は、将来的には国内価格よりもはるかに低い輸入牛肉の価格に見合う水準、つまり合理化目標価格にまで引き下げられることが法制化されております。これは、零細経営が圧倒的多数を占める繁殖農家の生産実態や生産コストを無視して切り捨てるものであり、我が国の肉牛資源を掘り崩すものであると言わなければなりません。  また、乳用種初生牛いわゆるぬれ子が依然として価格安定制度の対象外とされ、価格暴落の危険にさらされようとしているのも重大な問題です。牛乳価格の引き下げや牛乳の生産調整のもとで、酪農家にとって子牛の販売収入は副産物以上の位置を占めているのが実態であり、この措置は酪農家に重大な打撃となることは必至であります。  第二に、本法案は、自由化によって牛肉価格が下げ一方になり、子牛価格も下げ一方になることだけを前提にしていますが、これはビーフサイクルや国際的な牛肉の需給関係の不安定さなどの要因を無視したものです。世界の牛肉需給は、量、価格の面で不安定で、長期的には逼迫基調にあることは政府自身が認めてきたことであり、牛肉が将来にわたって安く供給される保証は何もありません。  輸入牛肉価格が上がり、子牛価格も高騰した場合、肥育農家が子牛を合理化目標価格で購入できる確実な保証は本法案には何ら規定されていません。それにもかかわらず、牛肉の生産者価格は確実に合理化目標価格に見合う水準に引き下げられるのですから、肥育農家は赤字経営を押しつけられる可能性が強いと言わなければなりません。  また、消費者にとっても牛内が安く買える保証は何もありません。  以上のように、本法案は、生産の存立を守るためとの宣伝とは裏腹に、輸入自由化によって存立が脅かされている我が国牛肉生産農家を守るものとなり得ないことは明らかであり、安全な食糧の安定的な供給を望む消費者の願いにも反するものです。  肉牛生産農家と経営を守り、消費者に安い牛肉を供給するためには、牛肉輸入自由化を撤回するとともに、我が党の修正案のように、保証基準価格は繁殖農家の生産費を償うことを基準に定めるとともに、肥育農家の経営安定と消費者価格の引き下げに役立つ子牛安定供給価格を定めることによって、国内の肉牛生産の発展に役立つ制度にする以外にないことを申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)
  214. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより肉用子牛生産安定等特別措置法案について採決に入ります。  まず、諫山君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  216. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 少数と認めます。よって、諫山君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  217. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  村沢君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。村沢君。
  218. 村沢牧

    村沢牧君 私は、ただいま可決されました畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案並びに肉用子牛生産安定等特別措置法案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、二院クラブ・革新共闘の各派及び各派に属しない議員山田耕三郎君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、牛肉輸入自由化に対処し、国民の要請する良質かつ安全な畜産物の供給について適切に配慮するとともに、牛肉需給の中長期的見通し等を踏まえて、次の事項の実現に努め、 我が国肉用牛生産の安定的発展に遺憾なきを期すべきである。  一 保証基準価格については、我が国肉用牛生産の振興に資するよう、肉用子牛の再生産の確保が十分図られる水準に決定するとともに、生産者補給交付金の交付に要する経費その他の肉用子牛等対策費については、特定財源化した牛肉等の関税収入相当額から所要額を十分確保すること。  二 ウルグアイ・ラウンドに委ねられている一九九四年度以降における牛肉等にかかる関税率等の国境措置については、国内生産に悪影響を及ぼすことのないよう遺憾なきを期すること。  三 新たに導入される肉用子牛の生産者補給金交付事業が円滑に実施されるよう、現行の肉用子牛価格安定事業の拡充・強化に必要な予算の確保、基金財源の充実その他体制の整備に努めること。  四 肥育経営の体質強化に必要な施策の拡充と予算の確保を図るとともに、地域格差や個々の経営実態に応じた指導助言の徹底に努めること。また、繁殖肥育一貫経営を推進すること。  併せて、国産牛肉の価格安定を図るため、畜産物価格安定等に関する法律の適切な運用を図ること。  五 素畜費とあわせ生産費の大宗を占める飼料費の低減に資するため、飼料生産基盤の整備拡充を図るとともに配合飼料の生産及び流通の合理化等について指導を行うこと。  六 肉用牛等大家畜経営農家の負債等の実態を踏まえ、経営の安定に必要な融資・補助施策を拡充・強化すること。  七 肉用牛経営農家の経営努力が消費者価格に反映されるよう牛肉の流通体制の改善・合理化を図ること。  八 肉用子牛の生産者補給金交付業務をはじめ、畜産振興事業団の各種業務が円滑かつ適切に実施できる体制を早急に整備するとともに、業務に従事する職員の雇用の安定を図ること。  九 肉用牛の改良増殖の推進とその資源の拡大を図るため、受精卵移植等の技術の開発・普及に努めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  219. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまの村沢君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  220. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 多数とみとめます。よって、村沢君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、佐藤農林水産大臣から発言をもとめられておりますので、この際、これを許します。佐藤農林水産大臣
  221. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  222. 福田宏一

    委員長福田宏一君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  224. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 次に、遊漁船業適正化に関する法律案を議題といたします。  まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院農林水産委員長菊池福治郎君。
  225. 菊池福治郎

    衆議院議員菊池福治郎君) ただいま議題となりました遊漁船業適正化に関する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、近年、国民の余暇時間の増加等に伴い、遊漁・プレジャーボート等海洋性レクリエーション活動の機会が増大しております。これらの活動は、漁家の所得向上と漁村の活性化に貢献している面もありますものの、一方においては、漁場利用等をめぐり漁業とのトラブルも発生しており、早急な対応が望まれてきたところであります。  加えて最近、遊漁船と海上自衛隊の潜水艦との衝突事故を機に、三万四千人に達すると言われる遊漁船業者の実態把握とその業務内容の向上が求められているのであります。  本案は、こうした要請にこたえるため、遊漁船業を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進し遊漁船業の健全な発達を図るため必要な措置を定めることにより、遊漁船の利用者の安全の確保及び利便の増進並びに漁場の安定的な利用関係の確保に資することを目的とするものであります。  本法は、国及び地方を通じ、遊漁船関係団体に対する指導監督及び適正な漁場利用関係の確立等によって、水産資源の維持増大、生業である漁業の存続、発展に資するよう運用されることが必要であります。  次に、本案の主な内容について申し上げます。  第一に、遊漁船業を営もうとする者は、あらかじめ、その営業所ごとに、都道府県知事に届け出なければならないこととしております。  第二に、遊漁船業者は、気象情報を収集し、営業所ごとに利用者名簿を備え置かなければならないこととするとともに、都道府県知事は、農林水産省令で定める遊漁船業者の遵守事項を遵守していない者に対して改善命令を出すことができることとしております。  第三に、農林水産大臣は、遊漁船業の健全な発達を図ることを目的として設立された公益法人を全国遊漁船業協会として指定するとともに、同協会が定める適正営業規程に従って営業する遊漁船業者は、その登録を受け、一定の様式の標示を行うこととしております。  第四に、都道府県知事は、遊漁船業者等を構成員とする営利を目的としない法人であって、遊漁船業者に対する指導等を適切かつ確実に行うことができると認められるものを、遊漁船業団体として指定することができることとしております。  このほか、立入検査、政府の援助、罰則等について所要の規定を設けることとしております。  以上が本案提出の趣旨及び内容であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  226. 福田宏一

    委員長福田宏一君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。——別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もないようですから、これより採決に入ります。  遊漁船業適正化に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  227. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  228. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会