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1988-12-06 第113回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月六日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         福田 宏一君     理 事                 岡部 三郎君                 鈴木 貞敏君                 水谷  力君                 村沢  牧君                 刈田 貞子君     委 員                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 大塚清次郎君                 熊谷太三郎君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 一井 淳治君                 八百板 正君                 下田 京子君                 喜屋武眞榮君                 山田耕三郎君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤  隆君    政府委員        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        食糧庁長官    甕   滋君        林野庁長官    松田  堯君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡  光君    参考人        岩手経済農業        協同組合連合会        専務理事     佐々木國雄君        島根佐田町町        長        土岩  勲君        社団法人北海道        畜産物価格安定        基金協会会長理        事        高橋 節郎君        日本大学農獣医        学部教授     島津  正君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○肉用子牛生産安定等特別措置法案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案並びに肉用子牛生産安定等特別措置法案、以上両案を便宜一括議題といたします。  本日は、両案につきまして、お手元の名簿にございます参考人方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいましてまことにありがとうございます。  本日は、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の本委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、これより御意見をお述べいただきたいと存じますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。  御意見をお述べいただく時間は、議事の都合上、お一人十五分以内とし、その順序は、佐々木参考人土岩参考人高橋参考人島津参考人の順といたします。参考人方々の御意見の開陳が一応済みました後に、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、佐々木参考人からお願いいたします。佐々木参考人
  3. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) 私は、岩手経済農業協同組合連合会専務理事でございます。  本日は、かような機会意見を述べるという光栄に浴しまして本当にありがとうございました。  私からは、ただいま委員長さんおっしゃいました肉用子牛生産安定等特別措置法案、そのうちの肉用子牛生産者補給金制度につきまして若干の意見を申し述べさしていただきます。  まず、意見を述べます前に、岩手県の肉用牛生産の概要について極めて簡単に御報告申し上げます。  岩手県は、先生方案内のように、四国四県に匹敵する広袤を有しております。そういたしまして草資源には恵まれておる。おかげさまをもちまして、御案内北上山系開発という大規模事業をやらしていただきました。本当にありがとうございます。したがいまして、さような意味合いでは、私の県は畜産には極めて好条件だというように私どもは自負をいたしておる次第でございます。従前から岩手県は畜産県でございましたが、ただいまは開発されました資源を活用いたしまして肉牛生産はもちろんでございますが、酪農あるいは肉用馬の一部というような形でございまして、ただいま国内有数畜産県でありますことはそのとおりでございます。  さような中で、肉用牛規模でございますが、総頭数は十四万九千頭ございまして全国第四位の位置にあるという次第でございます。なお、農業生産額は三千四百五十七億円でございますが、そのうち肉用牛生産額は三百二十九億という次第でございまして、九・五%に及んでおる次第でございます。かような中で私ども岩手県には、御案内の方もあろうと思いますけれども、新岩手農業確立計画という計画を樹立いたしておりまして、昭和六十五年度までに肉用牛の総頭数を二十万九千頭、少なくとも二十万台に乗せる、かような考え方で私ども団体と一緒になりましてその増頭に懸命に今頑張っておる、こういう事態でございます。  さらに、岩手畜産一端を御披瀝申し上げますと、先生方案内の昨年開催されました全国和牛共進会におきましては、優秀な成果をおさめたという次第でございます。また同時に、肉質等におきましては、先生方案内の方あろうと思いますが、前沢牛というただいま全国に冠たる声価を得ておる肉用牛生産いたしておるという次第でもございます。また、酪農について申し上げますというと、本年開催されました東北六県の乳牛共進会におきまして各部の最高位を獲得した、こういう成果をおさめておるということもそのとおりでございます。  かような実績の上に立ちまして、実は私ども岩手県は、自由化いわゆる農業国際化に備えまして、肉用牛生産酪農を大きな農業振興の柱に位置づけておるということもそのとおりでございます。  しかしながら、御案内のように、肉用牛繁殖あるいは肥育経営ともに紆余曲折がございましたし、また価格乱高下が大きかったということもそのとおりでございます。特に、御案内枠拡大が言われました昭和五十七年から六十年代におきましては、極めて憂慮にたえない状態にあったということもそのとおりでございます。 したがいまして、岩手県の畜産物価格安定基金協会交付をいたしました生産者補給金は、この年度内で三十六億九千万という膨大な交付金をいたしておるという次第でございます。もしこの事業がなかったならば、私ども考えますに、既にこの繁殖経営は壊滅しておったのではないかというように考えておる次第でございまして、この際畜産農家ともども先生方には深甚なる敬意を表する次第でございます。ありがとうございました。  この際また、あわせまして御報告申し上げておきたいことは、私ども岩手県では、子牛安定価格制度とあわせまして肥育牛の実は価格安定事業を県単事業として実施をいたしておる次第でございます。御案内のとおり、子牛あるいは肥育牛とも需給事情によって価格乱高下が出るという反面、えさ事情というものがあるという、そういう配慮から私ども肥育牛安定事業もいたしておるという次第でございますが、ひとつ将来の課題としてぜひ御検討を賜りたいと存ずる次第でございます。  さて、法案に対する基本的な評価という次第でございますが、申し上げなくても先生方には本当に御苦労賜りまして、この自由化対策として国の責任におきまして、それこそ今回新しい法律の制定をするあるいは価格安定基金制度強化をしていただくという次第でございますが、このことに関しましては、生産者立場からあるいはまた、私ども団体といたしましても極めて時宜を得た施策でございまして、ぜひとも早期実現お願い申し上げておく次第でございます。  さて次に、意見、要望について若干申し上げてみたいと思います。  まず保証基準価格設定でございますが、この保証基準価格は、実は経過措置いわゆる二カ年になりますけれども経過措置を含めまして自由化により肥育牛価格は低落するだろう。関連いたしまして子牛価格も大きく引き下がる、そういうような必然的な経過を経るだろうという心配をいたしておる次第でございます。そのこと自体に対しまして不足払いという法律を制定する、そして自由化による急激な価格の低下を救済するあるいは国内肉用牛生産を守るためにかような法律をつくるんだということに関しましては、今まで私ども先生方から機会あるたびに御説明をいただいてまいりました。ぜひさような法律をつくっていただきたいということで、大きな期待を持って実は臨んでまいった次第でございます。  過日の、衆議院農林水産委員会質疑応答を実は一読してまいりましたが、その中で保証価格水準は現在検討中であって六十五年までに定めますと、かような政府答弁がなされております。さらに、生産費所得補償方式ならどうだという先生方の御質問に対しまして、それはなじまないというような御答弁が出ておるようでございますが、ただいままでも標準というものを、一つ標準を決めまして実は安定制度を運用してきたという、そういう経過から申し上げますというと、生産費所得補償方式が不可能だとは言い切れない、かような考え方でおる次第でございます。  仮にこの際、私ども岩手県の例をとりながらお願い申し上げたいことは、和牛に例をとって申し上げますというと、先生方案内のとおり、六十二年の生産費は四十八万だ。そして、六十二年の全国指定市場和牛売買価格は四十一万一千七百四十三円であるということはそのとおりでございます。私ども岩手県におきましては、指定市場の六十二年の平均価格は四十三万九千百八円でございました。そして、ただいま現行価格安定制度によります保証基準価格は、御案内のとおり二十九万二千円となっておる次第でございますが、これも先生方案内のように、五十八年の四月から六十二年三月に至る四カ年の指定市場平均価格基本として算出をする、試算をする、こういうことになっておる次第でございますが、その場合、私ども岩手県で算定いたした数値によりますというと、実は三十二万四千七百九十一円に相なりますことはそのとおりでございます。  それに対しまして、これは政府あるいは農水御当局は、肉用牛を取り巻きます内外の諸情勢を総合的に勘案をいたしまして、あるいはその当該県において仮に二十九万二千円を上回った場合でも二十九万二千円と据え置くものとする、こういう御指導のもとに、実は二十九万二千円が保証基準価格になっておるという次第でございます。したがいまして、私どもはこの二十九万二千円というものは、ある意味合いにおきましては、今回の新しい法案のあるいは合理化目標価格というものになるのではないかというような考え方も持っておるという一端を御披瀝申し上げます。  なおまた、肉用牛子牛安定事業による保証基準価格の算定に関しては、御案内のとおりかつては七年間指定市場平均をとった、そして六十三年は四年間になった、こういう次第でございますが、輸入自由化時点がなかった次第でございますから、少なくとも国内需給事情によって保証基準価格が決まるものということから私ども理解をしてまいった、そういう経過にある次第でございます。  今回は、輸入自由化という極めて異常事態であるというような考え方を持っておる次第でございまして、したがいまして、創設されようといたします新しい法律、それから従前子牛安定基金、このことの保証基準価格に対しましては、少なくとも生産費基本として現状実勢価格に準拠して決定をしていただきたいというお願いを申し上げる次第でございます。  さらに乳用種について申し上げますというと、御案内のとおり乳用種は、現行価格安定制度におきましては保証水準が極めて低い。御案内のとおり二百十キロで十三万四千円と相なっておりますが、これは現状実勢価格に大きな乖離がある、かように思う次第でございます。そのために実は加入率が低いと、かように思う次第でございますので、この点に関しましても申し上げましたように、生産費基本とし、実勢価格配慮して保証基準価格設定お願いしたい、かように思う次第でございます。  次に、合理化目標価格についてでございますが、実は合理化目標価格設定に関しては必ずしも反対はいたしません。将来の展望の中ではあるいはかような考え方は当然かなという理解はいたしております。  そこでお願いを申し上げたいことは、少なくとも政策誘導が優先すべきである。政策誘導を柱として、生産者体質改善と並行して合理化目標価格取り扱いをいたすべきであり、これは少なくとも長期を要する、かように考えておる次第でございますので、特段の御配慮をいただきたいというように思う次第でございます。  それから、この事業の新しい法律に伴います契約等が出てくる次第でございます。この新制度によりますそれこそ対象子牛拡大をしたということに関しましては、実は衷心からお礼を申し上げますし、私ども評価をいたしておるというのはそのとおりでございます。しかしながら、取り扱い事務におきまして、例えば確認の行為であるあるいは交付金の支払いだ、そういうようなことから見ますというと実に膨大な事務量になる、かように考えておる次第でございます。したがいまして、私ども農業協同組合系統組織でございますが、生産指導事業はもちろんでございますけれども、御案内のとおり金融等総合事業を行っておるというそういう立場から、この契約事務等に関しましては何とか農協なり系統組織を御活用いただきたいものだと、かようにお願いを申し上げる次第でございます。  次に、加入率引き上げ等でございますが、特にこの乳用牛は、御案内のとおりぬれ子の取引がただいまのところ主体であるという次第でございますが、これも実は乳用牛の、この保証基準価格が低いということのハンディがあるということは一言申し上げておくと同時に、私どもやはりこの対策として乳肉複合経営の問題なり、あるいは哺育・育成対策あるいはセンターの設置等に現実的な課題として取り組んでまいらなければならない、かように覚悟をいたしあるいは検討をいたしておる次第でございますが、何とかさような施設、施策に対します特段の御支援奨励措置お願い申し上げたい、かようにお願いを申し上げておく次第でございます。  さらにまた、加入率等の問題に関しましては、一口に申し上げますと酪農家が喜んで加入のできるような制度にしていただけば加入はいたしますよということはそのとおりでございますが、さらにこの啓蒙宣伝が必要でございますので、私どもも本格的に啓蒙宣伝はいたしますが、国におきましても特段の御配慮をいただきたい、かようにお願いを申し上げる次第でございます。  さらに財源の確保でございますが、ただいま現在の基金制度におきましても財源の枯渇、特に確認払い制度という制度があるわけでございますが、それがもう今や効をなしていない、機能をなしていないという現状にあることもそのとおりでございます。したがいまして、全国協会融資等準備財産に対する十分な配慮をいただきますと同時に、自由化後におきましては大幅な価格低落が懸念されるというような立場から、この新制度における牛肉の関税を活用するという御方針は承っておりますけれども、ぜひともこの昭和六十九年以降におきまして六十八年時点関税率は低くしていただきたい。その関税率を確保すると同時に、ただいままでやってまいりました調整措置緊急調整措置も継続していただきたいというお願いを申し上げる次第でございます。  最後になりますが、お願いを申し上げたいことは、一つ生産対策でございます。生産対策コスト低減対策に関連すると思いますが、さような意味合いでは一つ受精卵移植事業、これはひとつぜひ普及推進体制確立あるいは御支援を賜りたい、かように考える次第でございます。  なお、この際岩手県をということに相なるかもしれませんが、牧野整備に関しまして再度お願いを申し上げたいことがございます。それは、北上山系開発による牧野開発は膨大な面積開発いたしました。しかし、それを私ども今後和牛放牧にも活用したい、さように考えておる次第でございまして、さような面では牧区が余りにも大き過ぎる。ただいまつくってまいりました牧区は大きいということもそのとおりでございますから、ひとつこれを和牛放牧に適するような再整備をいたしたいと考えておる次第でございます。何とぞひとつさような点の御配慮も賜りたい。  さらに、放牧事業主体にした繁殖経営、子牛生産をいたしたいと考えておる次第でございますが、ただいま現在も放牧事業に対する奨励施策はちょうだいいたしております。さらに、これを強化していただきますことをこの機会お願い申し上げたいと思う次第でございます。  さらに、これはまるで小さいことになりますけれども、実は私ども長いこと畜産をやってまいりまして、どうも日本国内に適するマメ科牧草がないという次第でございます。御案内のとおり、日本牧草はほとんどがアメリカその他から輸入した牧草でございますが、その中にございまして、例えばルーサーン等日本気象条件に合わないという、そういう情勢があることも確かでございます。したがいまして、草地試験場等主体としながら何とか日本の気候に適しますマメ科牧草開発お願いを申し上げたい次第でございます。  次に、第二点としては負債対策についてでございます。  御案内のとおり、ただいま現在も私ども農家長期負債対策に取り組んでおることはそのとおりでございます。 さような中にございまして、実は肉用牛負債農家が半数近い比率を占めておるという次第でございます。そこで、これは自由化以前でもさような事態でございましたが、今後自由化されますとこの負債問題がもっと大きな課題になるのではないかという心配をいたしております。したがいまして、ぜひともこの肉用子牛生産安定等特別措置法並びに肉用子牛安定事業強化充実に対しましては、さような点も配慮しながら特段の御配慮を賜りたい、かように思う次第でございます。  ただいま時間になりましたからという御指摘がございましたので、以上をもって終わらせていただきますが、以上、意見、要請を申し上げまして私の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  4. 福田宏一

    委員長福田宏一君) どうもありがとうございました。  次に、土岩参考人お願いをいたします。土岩参考人
  5. 土岩勲

    参考人土岩勲君) 御紹介をいただきました島根県の佐田町長土岩でございます。  参議院の農林水産委員会におかれましては、かねて畜産振興に対しまして格段の御配慮を賜っておりますことに対しまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。また、本日は当委員会に付託されておりますところの肉用子牛生産安定等特別措置法案及び畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案の御審議に関連をいたしまして、私の意見を述べる機会をお与えいただきましたことにつきまして深く感謝を申し上げる次第でございます。  まず、意見を申し上げます前に、私の町であります佐田町の概況を簡単に御報告申し上げたいと思います。  島根佐田町は、県の中央よりやや東部に位置をいたしておりまして、出雲市と大田市の間に隣接をいたしております中山間地帯でございます。面積は約百八・四平方キロでございまして、県下の五十九市町村の中では中ほどの三十番目の位にある広さを持った町でございますが、山林がそのうち八五・六%を占めておりまして耕地はわずか五・八%にすぎません。年間平均気温が十三・四度でございまして、年間降雨量も二千ミリ前後ということでございますが、真冬は、年にもよりますけれども、大体三十センチぐらいの積雪がございます。  人口は、現在五千四百三十二名でございますが、最も多かった昭和三十年代には八千六百人余りでございまして、それから見ますと現在約六三%ぐらいに減っておりましていわゆる過疎の町でございます。六十五歳以上の占める割合も非常に高うございまして一九%を超えております。老齢化もだんだん進んでおるところでございます。また、就業の人口別では、全体の三三%が第一次産業でございまして、全戸数が千三百十八戸でございましてそのうちの九百六十戸が農家でございます。その中で約八%ぐらいが専業農家と言われておりますが、あとの九二%は第一種、第二種兼業農家という形態でございます。  このような山村の佐田町の農業生産額でございますが、わずか約十三億ぐらいでございます。この中で畜産が六億八千万円でございまして、全体の五二%を占めておりますいわゆる畜産の町でございます。その畜産の中でも肉用牛主体でございまして、六億八千万円のうちの四億円、全体の五九%を占めておるわけでございます。また、そのほかには酪農とかあるいは養豚とございますが、その酪農の関係では県内でも高い品質の地帯でございまして、その乳が東京へも航空便を使って送られており、出雲牛乳として高い評価を得ておるような状況でございます。  また、肉用牛につきましては大部分が黒毛和種でございましていわゆる「しまね和牛」でございます。中でも子牛生産経営がほとんどでございまして、この子牛生産する繁殖雌牛でございますが、飼養規模は大変低うございまして一戸当たり二頭余りということでございます。その生産基盤は本当に極めて脆弱なものでございますが、しかしながら最近では比較的高値に支えられまして、十頭なり十五頭という多頭飼育農家もようやく出始めて畜産熱が上がりつつあるような現況でございます。  このような当佐田町で、地形なりあるいは地域性から見まして、先ほど申し上げましたように、畜産が主産業で今日に及んでおりまして、これにかわる産業も乏しい現況でございます。 その畜産の中でも肉用子牛生産主体の私どもの町でございますが、県内でもこのような経営形態のところはたくさんございますし、あるいは他県においても規模の大小はございましょうけれども子牛生産地帯では子牛価格動向いかん地域経済に大きな影響を及ぼすものでございます。  子牛価格が上がりますと、やはり経済的にも好影響をもたらしておりまして、集落におきましても農業に対する意欲が高まりまして活気が出てくるような幅広い効果があるというように思っております。したがいまして、肉用牛生産振興を図ることがいわゆる国土の保全なり自然環境の維持・保全のみならず、町の大きな活性化対策でもございますし、発展につながるものだと私どもは全力を挙げて取り組んでおるところでございます。  さて、私の町に限らず大きな価格変動の中におきまして、なお肉用牛経営が存続してこられましたのは、先ほどのお話にもございますように、国で実施をいただいております肉用子牛価格安定事業に負うところが、本当に極めて大きいものがあると申し上げたいと思います。昭和四十三年にこの制度ができまして、島根県においても過去三回この保証基準価格を割り込むような低価格を体験いたしました。特に、昭和五十七年から六十年までの間において、県内でも平均二十五万円を切るような厳しい状況に置かれたわけでございます。このときに、この価格安定制度によりまして生産者補給金交付されまして、子牛生産経営の先行きに強い不安を抱いておりました生産者はもとより、行政の最前線におります私ども大変ありがたみを感じまして、歯を食いしばって経営の継続をしてまいった次第でございます。  ちなみに、私の町ではこの四年間に千六百頭余り子牛を出荷いたしておりますが、これに対して約五千万円の補給金を交付していただいたわけでございます。このことが、現在子牛生産経営存続のバックボーンとなっておりまして、畜産農家の大きな励みとなっているのでございます。幸いにして、島根県では基金に不足を生ずる事態には至りませんでしたが、今後とも、この制度の存続と財源の確保には十分ひとつ御留意をいただきたいとお願いをするものでございます。  そこで、特に肉用子牛生産安定等の特別措置法案につきまして、私の意見を四点申し述べたいと存じます。  そのまず第一点は、肉用子牛保証基準価格なりあるいは合理化目標価格についてでございますが、申し上げるまでもございません、この新しい制度が実効あるものになるためには、保証基準価格水準が大きくかかわるものであろうと思います。今後の自由化を控えまして生産者は本当に動揺しております。生産者の意欲を醸成して生産拡大に結びつけるためには、この保証基準価格は少なくとも現行水準を上回る水準にしていただきたい。また、私の島根県では現在三十一万円となっておりますので、ぜひともこの水準以上に設定していただくことをお願い申し上げたいと思います。  また、合理化目標価格についてでございますが、これは生産者の自助努力目標とでもいう意味合いを持っておると思います。島根県の和牛子牛生産費は約四十五万円、全国では約四十八万円というように承っておりますが、そういったことも御勘案の上で、適切な水準を定めていただきますようにお願いを申し上げたいと思うのでございます。  次、第二点でございますが、肉用子牛価格安定制度の存続についてでございます。特別措置法ということである以上は、未来永劫ということではないと理解はいたしておりますが、再生産に至るまでの長い期間を要します肉用牛におきましては、自由化による衝撃をできるだけ軽減して足腰の強い肉用牛経営を育成できるよう、生産者自身も努力をすることは当然であろうと思いますが、私の町の概況の中でも申し述べましたとおり、肉用牛経営は非常に零細でありまして、価格の変動も大きくて極めて不安定であることをお酌み取りいただきまして、今せっかく多頭化の方向にありますこの肉用子牛生産について、どうか長い目でこの価格安定制度を運用していただきたいことをお願い申し上げる次第でございます。  第三点は、生産対策でございますが、先ほどから申し述べておりますように、山間地帯においての畜産を主産業として、それ以外の産業が極めて困難な地域の私どもにおきましては、肉用牛生産基盤は非常に零細でありましていろいろともろい面を持っておることは事実でございます。このためにも、従来から補助事業などによりまして、各種の対策実施していただいておるところでございますが、今後とも引き続いて低コスト対策とかあるいは規模拡大対策、後継者対策あるいは経営技術指導対策など、特段の御配慮お願いいたしたいと思うのでございます。  第四点は、関税率についてでございますが、自由化に伴いまして、昭和六十六年に関税率が引き上げられて国内生産の保護が行われるというように承っておりますが、前にも申し上げましたように、肉用牛生産は大変息の長いものでございますので、価格安定対策並びに生産対策などを講ずるための財源は、関税等の特定財源が十分確保されますように、また六十九年以降の関税率は、六十八年の水準を堅持していただきたいことを強く御要請申し上げるところでございます。  この法案は、肉用牛生産に携わる者にとって大きな支えとなるものでございます。特に、山間地域にあります他産業がなかなか難しい地域の活性化に大きな力添えになるものだと思って、全面的に賛同の意を表したいと思います。と同時に、これに対しまして深く敬意を表する次第でございます。どうか速やかに御決定をいただきますことをお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  6. 福田宏一

    委員長福田宏一君) どうもありがとうございました。  次に、高橋参考人お願いをいたします。高橋参考人
  7. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) ただいま御紹介いただきました社団法人北海道畜産物価格安定基金協会会長の高橋節郎でございます。  参議院農林水産委員会におかれましては、日本農業振興につきまして特段の御配慮を賜り、衷心より感謝とお礼を申し上げる次第でございます。  本日は、貴委員会で審議されております牛肉の輸入自由化関連二法案につきまして、意見を申し述べる機会を与えていただきまことにありがとうございます。  まず最初に、北海道における肉用牛生産の概況について申し上げたいと存じます。  昭和六十二年度の北海道の農業生産額は一兆三百七十三億円で、このうち畜産は四千三百九十七億円と全体の四二%を占めるに至っておりますが、肉用牛の粗生産額は四百五十六億円でありまして、畜産のうちの一〇%にすぎません。しかし、乳用雌牛を加えた枝肉生産量は六万二千五百トンと国内生産量の一一%を占め、全国一の主産地となっております。  肉用牛の飼養頭数は、昭和六十三年二月一日現在で二十五万八千三百頭と全国の約一〇%を占めておりますが、このうちの大部分、七二%に相当する十八万六千三百頭が乳用種でございまして、本道の肉用牛生産酪農と密接な関連のもとに発展していることが特徴となっております。また、飼養戸数は四千八百十戸と年々減少傾向をたどっておりまして、一戸当たりの飼養頭数は五十四頭と全国平均の約五倍となっておりますが、昭和六十二年二月一日現在では飼養戸数の一二%、五百九十戸の生産者が一戸平均約三百頭と全頭数の約七〇%を占める十八万八百頭を飼養しており、乳用雄牛の肥育経営を中心に規模拡大が進んでおります。  次に、肉用牛農家経営形態でありますが、水田や畑作、酪農との複合経営が八六%を占め、専業は一四%にすぎません。複合経営の多くは肉専用種の繁殖経営であり、専業経営乳用種の哺育成と一貫経営に多く見られる傾向があります。また、本道は府県に対する肥育用素牛の供給基地として重要な役割を果たしておりますが、その割合は道内で生産される肉用子牛の約六〇%に達しておりまして、今後道内で最終肥育仕上げまで行う比率を高めていくことにより、この割合は徐々に減少していくものと思われます。  本道における肉用牛生産の最近の特徴としては、経営収支が好転しているにもかかわらず飼養頭数の伸び率が鈍化していることであり、特に昭和六十年以降三カ年の平均伸び率は一・八%にすぎず、昭和五十年以降六十年までの年平均伸び率である六・九%を大きく下回っております。このことは、酪農計画生産の影響による乳用種の伸び悩みに主たる原因がありますが、これまで順調に向上してきた肥育用素牛の道内における肥育仕向け率が、素牛価格の高騰等による肥育経営の先行き不安を反映して伸び悩む傾向を示していることも一因と考えられます。しかし、アンガス、ヘレフォードを中心とする外国種は、円高を背景に肥育素牛の輸入が増大し、またその肥育成果から繁殖牛の輸入も増加しており、順調に飼養頭数を伸ばしておりますことは注目すべきであります。  ともあれ、本道における肉用牛生産酪農と表裏一体の関係にありますことから、牛肉の輸入自由化は、肉用牛経営のみならず酪農経営にも大きな影響を及ぼすものと思われますので、関連国内対策の中身に重大な関心を寄せているところでございます。  次に、北海道畜産物価格安定基金協会の概要について申し上げます。  現在、肉用子牛価格安定事業のほかに北海道単独事業として、肥育牛、肉豚、鶏卵の価格安定事業実施しております。肉用子牛価格安定事業につきましては、昭和六十二年度末の契約頭数が肉専用種で二万二千頭、乳用雄子牛で二万五千頭となっており、加入率は肉専用種が約七三%、乳用雄子牛が約一一%となっております。また、昭和五十六年下期から昭和六十年上期まで子牛価格長期にわたり低落いたしましたが、この期間に当協会が交付いたしました生産者補給金は、肉専用種で十一億一千六百万円、乳用雄子牛で二千二百万円となっており、肉用牛経営の安定と雌牛資源の維持に大きく貢献したものと認識いたしております。  つきましては、肉用子牛生産安定等特別措置法案並びに畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、私の意見を申し上げます。  まず第一点は、保証基準価格水準についてであります。これは酪農肉用牛生産近代化計画基本方針、すなわち肉用子牛生産の近代化を図りつつその再生産を図ることを旨として設定することとなっておりますが、現行平均水準一つの目安とする政府見解が示されておりますものの、いま一つ具体性に欠けておりますので、貴委員会におきましてぜひ掘り下げた審議をお願いしたいのであります。私どもといたしましては、先ほども申し上げましたとおり、乳用種の場合、価格水準いかんによっては酪農経営にも大きな影響を及ぼしますので、乳価算定時における副産物価格との整合性を考慮し、初生犢の適正な価格が維持されるよう、また肉専用種については繁殖経営の安定を基本に、子牛の再生産の確保が図られるよう価格設定を強く希望いたします。  また、保証基準価格は、将来的には合理化目標価格に近づけるという方向のようでありますが、子牛生産の合理化には生産者も懸命の努力をいたしますが、なお相当の日時を必要とすることが考えられますので、事を急ぎ肉用牛生産の将来に禍根を残すことのないよう適切に対処していただきたいと存じます。特に、将来にわたってこの新しい制度への生産者の期待は非常に大きいものがありますので、実施期間を限定することのないよう特段配慮お願いしたいのであります。  また、新しい制度の発足を控え、乳用種加入率向上が課題となっておりますが、加入推進の際ポイントとなるのが保証基準価格の決め方であろうと思います。全頭加入が実現し、不足払い制度が真に自由化国内対策の柱としての役割を果たし得るか否かは、一に保証基準価格水準がどの程度に決まるかということにかかっていると思います。少なくとも、乳用種については現行水準以上に設定していただきたいのであります。  第二点は、合理化目標価格についてであります。これは肉用牛経営の動向並びに輸入牛肉の価格動向等を考慮し、牛肉の価格形成の合理化を図ることを旨として設定することとなっておりますが、酪肉近の方針にもありますとおり、近い将来二〇ないし三〇%のコスト引き下げが求められていることなどを考慮の上、適正な目標価格設定する必要があるように思います。  具体的に申し上げますと、輸入牛肉に対抗し得る枝肉価格から肥育に必要な経費を差し引いて肥育農家が支払い得る子牛価格水準とするということであります。  第三点は、自由化関連対策として現在検討されております諸対策の中の肥育経営等安定対策についてであります。  現在、異常な子牛の高値が続いておりますが、輸入牛肉の大量出回りにより早晩枝肉価格の低落が予想されております。特に輸入牛肉との競合が心配されている乳用種につきましては避けることのできない問題でありまして、結果として肥育経営が真っ先に打撃を受けるものと思われます。肥育経営が悪化することにより、経営を縮小、中止する等かなりの農家が脱落することが想定されますので、思い切った実効ある対策お願いしたいのであります。  すなわち、自由化前の三年間に十八万トンもの輸入牛肉の増枠が行われるわけでありますが、これはあくまでも数量の割り当て枠でありますから、国内における枝肉価格の安定を第一に、慎重かつ適正な割り当てによる需給操作を行っていただきたいのであります。特に、SBS枠の大幅な拡大畜産振興事業団による需給操作を従来よりも難しくする要素を持っているのではないかと危惧するものであります。また、自由化後は、豚肉のケースのように差額関税制度ならともかく、定率関税下においては国際市況の影響をもろに受け、国内市況が乱高下する事態も予想されますので、価格低落時における事業団の買い入れ保管機能の充実強化が強く望まれるところであります。  第四点は、新しい制度実施団体として位置づけられている都道府県の肉用子牛価格安定基金協会の体制強化についてであります。新制度は、対象子牛拡大、すなわち一貫経営における自家保留牛及び肉用仕向けの乳雌子牛を新たに加え、また農協委託販売以外に市場に出荷した子牛も対象とするなど間口を大きく広げておりますので、乳用種主体として加入頭数の増大が予想されます。したがいまして、協会の業務も量、質ともに大幅に増加いたしますので、その機能が十分果たせるよう協会の体制強化はもとより、事務負担の軽減措置について特段配慮お願いしたいのであります。  第五点は、交付金財源についてであります。新制度のもとでは一たび価格低落事態を迎えますと膨大な財源が必要となりますが、輸入牛肉関税の特定財源化はもとより、六十九年度以降の国境措置については、六十八年度の関税率水準を堅持して財源の確保を図るとともに、緊急調整措置を継続されるよう強く希望するものであります。  第六点は、現在行われている肉用子牛価格安定制度についてであります。法案によりますと、自由化一年前の昭和六十五年より新制度実施するとなっておりますが、今年度より三カ年間SBS枠の大幅拡大等、実質的には自由化に等しい状況が逐次発生してまいります。したがいまして、枝肉価格及び子牛価格があすにも急落するおそれが強いことを考えますと新制度実施までの間、現行制度強化と有効な運用により不測の事態に対処すべきであると思います。  以上、いろいろ申し上げましたが、要は牛肉の輸入自由化のスケジュールが決定した以上は、一日も早く万全の国内対策を講じて、生産者の不安を一掃していただきたいのであります。 特に本道は、国の酪肉近の基本方針を受けて、現在昭和七十年度を目標とする第二次道酪農肉用牛生産近代化計画におきましては、現在道農業振興審議会において検討中でございますが、肉用牛の飼養頭数は、現在の約二・二倍の五十七万五千頭を目標とする内容となっております。  具体的な施策、道筋を明らかにしなければ生産者に対し説得力を持たないことは言うまでもありませんが、その裏づけとなるものは、肉用牛生産振興に関する国のより積極的な対応であらうと思います。  その意味におきまして、自由化関連二法案に対しましては全面的に賛意を表するものでありますが、国会における今日までの論議の過程で感じますことは、自由化への受け身論が多い印象が強いのであります。全国一律に論議する限りやむを得ないことかと思いますが、地方の時代と言われております今日、その地方の特色を生かした独自の政策なり制度があってもよいのではないでしょうか。自由化に負けない積極的な施策の提案がそれぞれの地方にあろうと思いますが、願わくは財政の乏しい地方でございますので、国の全面的なバックアップを期待いたしまして私の意見陳述を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  8. 福田宏一

    委員長福田宏一君) どうもありがとうございました。  次に、島津参考人お願いいたします。島津参考人
  9. 島津正

    参考人島津正君) ただいま御紹介をいただきました日本大学農獣医学部の教授の島津でございます。  私は、畜産経営学を専門に研究しております立場から二点について申し上げたいと思います。  まず第一点は、牛肉の自由化に対応し得る、十分に対抗し得る肉用牛経営の育成というものをどうしていくか、これがまず第一点でございます。  第二点は、当然のことでございますけれども酪農も現在はホルスタインを中心とした牛肉生産を行っております関係で、どちらかといえば私の考え方では酪農の方がより大きな影響を受けるであろうというふうに考えておりますので、酪農自由化に対抗する酪農経営はどうあるべきかというような問題についてお話させていただきたいと思います。  まず第一に、肉用牛経営でございますけれども、これはもう御承知のように、外国の価格とそれから国内価格との格差というものの要因というものがどこにあるか、もうこれを考えます場合に一番大きな問題は肥育素牛である子牛の値段が高いというところにあるかと存じます。したがって、まず最初に日本におきます繁殖肉用牛経営というものがどうあるべきかというような点について、ちょっとお話し申し上げたいと思います。  それも二つの形があるというふうに私は考えております。まず一つの形は、酪肉基本方針に即しまして繁殖経営規模拡大、特に経営能力にすぐれた意欲的な経営者をつくり上げていくというような問題でございます。そういたしましてある程度の規模の大きな経営をつくっていきませんと、とても国際競争力のある低コストの生産というものは難しいであろうというふうに考えております。  現実に、今年度の農林水産祭の総理大臣杯をお受けになりました沖縄県の石垣の、さらに南の黒島で経営をやっていらっしゃいます方の実態を申し上げますと、現在農林水産省が発表していらっしゃいます子牛一頭当たりの生産費は四十七万円ということに対しまして、何とわずかの七万六千円で上がっているというすばらしい経営をやっていらっしゃいます。また、それに準ずる経営といたしまして、鹿児島県の大隅町の経営者は、これも子牛一頭当たり約十五万というすばらしい経営も生まれております。さらに東北関係でも、秋田県の鳥海町あたりでの事例でも見てまいりましたけれども、ここでも大体十五、六万ないし二十万弱という形でやっていらっしゃいます。  ただ問題は、そういった経営というのは御承知だと思いますけれども、現在の繁殖経営の中では、日本の中では全く局部的な一部の存在としか言えないでしょう。すなわち一つの村の中においても数軒あるということであると思います。そこで、問題になりますのは、そういった今申しましたようなすばらしい経営というものをひとつしっかりと紹介いたしまして、これから後を継いでいく若い青年層が、こういう魅力ある経営というものに追いつき追い越していこうというようなことをひとつ考えていくということが、まず今後の自由化に対応する一つのポイントであろうというふうに考えます。  そこで問題になりますのは、今度の法案との関連で申し上げますと、肉用牛の場合はたまたま今子牛が非常に値が高うございます。私は、こういった経営学の立場から申し上げますならば、やはり肉用牛経営の場合も、価格が平準化している段階でも経常所得、言うならば我々の毎月の月給的な経常所得というものを維持するための価格保証というものがひとつ必要だろう。そして、非常に好況になり価格が高くなった段階におきまして、あるいは技術が向上した段階においてボーナス所得が入る、ここにやっぱり生産意欲を増していく一つのポイントがあるだろうというふうに考えております。そういった面で、これからの肉用牛経営というものは酪近法で出しましたように、やはり最低十五頭から二十頭、三十頭ぐらいの規模というものを考えていくということで、しかしそれも決して肉用牛を単一経営で行うのではなくて、私は肉用牛プラス米あるいは肉用牛プラス蔬菜と、こういった複合経営をしっかり確立することによって本当に足腰の強い経営というものが生まれるであろうというふうに考えます。  ただ問題は、現在五、六頭ぐらいから今私が申しました十五頭あるいは二十頭に拡大化していく過程というのが非常に難しいのでございます。酪農の場合には乳代金というものが入ってまいりますから、いい子牛を自分の経営の中に残すということが可能でございますけれども繁殖経営の場合に五、六頭段階でやはり子牛を売ってしまったら経営には牛が残らない、売らなければ金が入らない、こういった問題が一つあるわけでございます。そこに、一つの今の価格保証もしていただくと同時に、こういった経営を、もう三年後には自由化でございますから、この五、六頭段階のものをいかにして早く十頭段階に引き上げていくかというこの施策を、貸付金制度その他の問題をひとつお考えいただきたいというのが私の一つの提案でございます。  さて問題は、そうは申しましても今申しますように、肉用牛経営というのは非常に規模の小さい経営がたくさんございます。現実に一、二頭ないし三、四頭という経営がもう大半を占めていることは御承知のとおりだと思います。私は、その連中を無理やりにさらに一頭伸ばしなさい、二頭伸ばしなさいということは賛成いたしません。なぜならば、こうしたような方々の中心は、日本で今一つの問題になっております高齢者対策ないし婦人対策一つといたしまして、非常にこれが立派な位置づけを持っていると。この方々が現在の三、四頭ぐらいまでですから、あぜ草から野草を取ってくるということに対しても、労働的にもそう矛盾がなくて非常にコストも安く上がっています。  具体的に申しますと、先ほどの労働費から減価償却費から全部加算してまいりますと四十何万という生産費になりますけれども、私なりに生産費の中を、計算を洗い直しまして現金的な生産費だけを計算出してみますと、大体十五万から二十万弱ぐらいで上がっております。したがって、この経営というものも現在の子牛生産については極めて大事な戦力であるというようなことで、この人たちがやっぱり生き残っていくような保証価格というものは最低限保証していくことを考えていただきたい。また、この地域というものが大体山村におきます過疎地域でもございます。そういった過疎地域におきまして、この人たちが頑張っていくことによって過疎対策にも大きな貢献をしているということも御承知のとおりだと思います。そういう意味からいきまして、こういった人たちも考えていただきたい。  特に、肉用牛生産の場合には改良をアメリカやカナダから求めることはできなくて、日本国内で改良しなきゃいけない。こういった経験を持った高齢者の中に立派なブリーダー的な方がおられまして、この方々が改良にも努力しておられる。それで、さらにいい肉質の牛をつくり上げていくというようなことが一つの大事な問題だと思いまして、その辺の問題から考えましてそうした経営も立派に、これはもう日本の国土、資源から考えまして、すべてがそんなに規模拡大というものがこれは不可能なことは先生方も御承知のとおりだと思いますので、そういう経営も成り立つような保証価格というものをひとつお考えいただきたいと思いますし、また規模拡大化をしていこうという若い青年層、後継者が魅力ある経営に到達するための施策をどう進めていくかということが大事だと思います。  さて、肥育経営につきましては、現在もうこういった生産の方が幾らされましても、御承知のとおり流通の過程での手数料というものが非常に大きいという問題が一つございます。したがって、繁殖と肥育の一貫経営というような問題を今後育成していくことが非常に大事だと。たまたま現在子牛が高うございますから、ちょっと今すぐに一貫経営を進めるということは難しいかと存じますけれども、こういった問題をやはり考えていかなきゃいけないと思います。新制度では、現制度でこれを除外しております経営内一貫経営についても制度の対象となるというお話でございますので、これを契機に関連いたします施策を充実していただきたいというのがお願いでございます。  以上、肉用牛について申し上げましたけれども、もう時間がございませんが、簡単に酪農について申し上げたいと思います。  現在、御承知のように酪農の場合には、もう先ほどもお話ございましたように、国内の牛肉生産の約七割近くが乳用種から出ているということでございますし、また肉質から考えまして、輸入されています牛肉と一番競合するのは乳肉、酪農からの肉であるということが言われております。  さて、そこで現在のところ牛乳もちょっと現在はもう緩んでおりますけれども、やはり生産調整というものは厳しい状態にある。したがって、乳価につきましてはここ三年約十二、三万値下げされました。ストレートにこれを計算いたしますと、三十頭規模ぐらいのものを対象に計算いたしますと約百五十万の収入ダウンでございます。しかしながら、幸いにしてと申しますか、現在雄子牛が十万、十四万というような非常に高値でございますし、また搾り終わった老廃牛と申しますか、乳廃牛も比較的高値に売れております。これが輸入牛肉の影響を受けますのが、三産、四産、五産以上の老廃牛はストレートに輸入牛肉の影響を受けるであろうということを私なりに予想しております。  そしてまた、雄子牛も枝肉価格が下がることによって、これも今の十万、十四万なんという値段はとても維持できないと思います。昔のように三万—七万円ぐらいに落ちるという問題が予想されます。今のような子牛価格の低落、あるいは老廃牛を肥育してやっていくという乳肉複合で何とかこの乳価の値下がりというものをカバーいたしまして十分に経営が成り立っておりますが、もし今申しますような子牛価格の低落あるいは老廃牛の価格の低落というものがありますと、やはり三十頭規模を想定いたしまして私なりの経営的な面で計算いたしますと、百五十万から約二百万ぐらいの収入ダウンということがさらに予想されるということでございます。  したがって、今回乳雄につきましても保証という枠を広げていただいたということは、非常にありがたいことでございまして、現行では十万—十四万している段階では、これに加入するというのはないのは当たり前だと思います。やはりこれが下がってきた段階におきまして、そうしたものをどう進めていくかというような問題を一つ課題として考えていただかなければいけない問題だと思います。  日本酪農家は一番多いときは約三十五万戸もあったものが、現在わずか七万戸を割ってしまいました。現在生き残っている酪農家は、私が回ってみます限り非常にこれはしっかりした経営者でございます。日本人の優秀性と申しますか、厳しい条件に置かれれば、置かれるほど経営技術の改善、発展は目覚ましい。すなわち、私がちょうど生産調整の段階で調査さしていただいた経営と、今年あたり調査さしていただいた優秀経営とでは格段の差がございます。平均乳量一つとってみましても六千キロから八千キロに上がっておりますし、牛乳の生産コストも、その当時では一キロ当たり八十円していた生産コストが約六十円—六十五円というふうにすばらしい経営も生まれているということで、十分に酪農も乗り切ってくれるものと思います。  今酪農で与えられました課題と申しますと、やはり牛乳の生産コストの低減ということと良質牛乳の生産、それからもう一つ大事な問題は、需要期の生産というようなことにおきましてそれを行うことによって、幸いにして昨年、ことしは牛乳の伸びが順調にいっておりますが、そういった消費の増大がいくことによりまして、牛乳の生産もふやすことができるということが問題であると思います。  いずれにいたしましても、酪農という牛乳生産本来の問題も十分考えなければいけませんけれども、同時にやはり乳肉複合経営というものをいかにうまく育てていくか、こういうヨーロッパスタイルと申しますか、そういった乳肉複合経営というものをいかに進めていくかということのためにも、今回上程されました法案に対して私は全面的に賛成の意を表する次第でございます。  以上、ちょっと時間もございませんので、簡単に申し上げましたが、あと御質問でお答えしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  10. 福田宏一

    委員長福田宏一君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。  それでは、これより参考人方々に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いします。
  11. 村沢牧

    ○村沢牧君 参考人の皆さん方には、お忙しいところ、きょうは当委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を承りましてありがとうございました。  私は、社会党の村沢牧でございます。これからいろいろと御質問申し上げたいのでありますけれども、私の質問時間も三十二分ということで、お答えも含めて三十二分でございますので、その点お含みの上よろしくお願いしたいというふうに思うのであります。  最初に、参考人四人の皆さん方にお伺いしたいのですけれども、牛肉の自由化繁殖農家や肥育農家に対する影響だけでなくて、今島津先生がおっしゃいましたように、酪農なんかに対しても重大な影響を及ぼすし、またその他の食肉に対しても影響もあるというふうに思うのであります。 この牛肉自由化に伴う我が国畜産に及ぼす影響について、それぞれどのように御判断を願っているでしょうかということ。なおまた、政府はこうした対策を講ずることによって我が国の、畜産、牛肉は存立し得ると、そういう判断に立って自由化の決定したんだということを総理も言ったんですけれども、この程度のことで本当に心配ないのかどうかということについて、私も懸念を持つものでありますが、今お話があった以外にこうすべきだというようなことがあったらまずお聞かせを願いたいというふうに思います。  それから、まず最初に佐々木参考人にお伺いしたいのであります。牛肉・オレンジの自由化については当委員会もいろいろ論議をし、また委員会の決議をもって政府は適切に対処せよ、その中身は自由化反対である、そういう決議もいたしております。また、国会議員も超党派の立場でそれぞれ牛肉の自由化は反対である、こういう署名をもって政府にも要求しておったわけであります。また農協、農業団体、生産者はもちろん自由化は反対であるということの運動を起こしたのですけれども、結果的にこういったことになった。  こうしたことについて、畜産農家は一体どういう感じを持っているのかどうか。 このことと、それから政府の農産物外交交渉の姿勢は極めて弱い。十二品目にしても、牛肉・オレンジにしても最初は自由化は困難だ、やらないと言っておっても結果的には受け入れてしまう。つまり私どもはいつも政府に対して追及しているんですけれども、米国に足元を見られ過ぎている。だから、米だってこういう要求を突きつけられておるんだと。農業団体としてはこういう政府の外交姿勢に対してどのように感じていらっしゃるのかどうか。これはひとつ佐々木参考人土岩参考人、お二人にこのことはお伺いしたいと思います。  それから佐々木参考人には、やはり子牛の安定とともにお話がありましたように肥育牛の安定、これについてもやっぱり何らかの措置を講じてもらいたい、講じなければならないというふうに私も思っているんですけれども、これについてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか、そのことをお聞きいたしたいというふうに思っておるところでございます。  まず佐々木参考人の方からお答えをいただきたいというふうに思うんです。
  12. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) それでは、ただいま先生の御質問に対しまして率直に私のお答えを申し上げたいと思います。  まず、自由化に対して畜産農家はどう考えているかということでございますが、自由化に対しまして畜産農家は、これはもう一口に申し上げますと大憤慨をいたしておりますということに尽きると思います。それこそ先生方おっしゃってまいりましたし、また国会でも自由化をしないという、そういう姿勢で対応していただいたということを信じ切っておった。それが結果的に自由化になったということは、これはもう農家立場から言いましては、それこそふんまんやる方ないという、そういう情勢にあることは確かでございます。  それから、政府の外交交渉の姿勢でございますが、一口で申し上げまして遺憾ながら私どもは、それこそ自動車その他農業以外のものの犠牲を農業に強いられるということは、これはどうも現在あるいは将来とも大変な事態だと、そういう意味合いでは、今までの農業以外のそれこそ貿易関連が農業に大きくしわ寄せをするということはもうたくさんです、これ以上もうたくさんですという姿勢でございます。したがいまして、県連におきましては農業というものをいかに守るかということに、それこそ国の産業基盤として必死に守っていただきたいという、そういう考え方を率直に申し上げたいと思います。  それから、肥育牛の例をということでございますが、これは岩手県でやっております例をそのまま申し上げますというと、実は国内にないようでございますけれども、県市町村にも積み立てをいただきまして、生産者、農協、県市町村一体となってこの制度を進めておる次第でございます。したがって、私どもの県がただいまやっております制度は素牛価格スライド制という制度でございます。素牛が高かった場合には肥育牛保証価格も高くする、そういう制度でやっております。  ただし、正直申し上げますと、財源の問題でえらい運営は苦労いたしておるというのが現実でございます。そこで私どもは、県、市町村、農協、農家一体となってもっと積立金をふやそうじゃないか、やっぱり畜産農家にも自助努力を求めるという意味で、もっとふやそうじゃないかという姿勢でこの制度をもっと拡大する、そういう考え方でございます。したがって、私なりには従前から御要請申し上げてまいりました、ぜひとも子牛だけではだめですよと。申し上げましたように、需給事情なりえさの価格の問題が乱高下がございますので、ぜひこれも考えていただきたい、さように思っております。
  13. 村沢牧

    ○村沢牧君 四人の先生方にお伺いしたいんですが、自由化によって単なる牛肉だけじゃなくて他の畜産物、食肉に及ぼす影響もいろいろ考えられると思うんですが、その辺は実際こういう農家指導しておられましてどういうふうに感ずるのか。  それから、政府も従来いろいろな対策を講じており、今回も法律改正あるいは制定によって講じようとしておるんですが、政府の方ではこれでもって我が国の畜産は存立し得ると胸張っておるわけですけれども、皆さんそういうふうに大丈夫だとお思いになりますかね。そのことについて最初に御質問申し上げたんですが。
  14. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) 牛肉自由化は、畜産全体に対して絶大なる影響を及ぼすだろう、さように考えております。したがいまして、そういう意味合いにおきましては、先ほど申し上げましたとおり、牛肉自由化は私どもも反対をいたしてまいりましたし、これはぜひとも実は自由化をしていただきたくなかったというのはそのとおりでございます。  しかし、今自由化されたという段階でございますが、そこで先生この程度でよいかということでございます。そこで、私お願い申し上げましたことは、何といいましても保証基準価格設定だろう、そう思っておる次第でございます。したがいまして、保証基準価格現行肉用子牛基金制度のような二十九万二千円という、そういうものではだめだよということを先ほども申し上げました。少なくとも生産費基本としてそして現状価格に準拠して考えていただきたい、そういうことも申し上げた次第でございます。特に合理化目標価格におきましては政策誘導が優先する、政策誘導によって体質改善が進む、それに並行して考えていただかないとだめですよというお願いを申し上げたつもりでございます。
  15. 村沢牧

    ○村沢牧君 よくわかりました。保証基準価格が一番重要だということは私たちも認識をしておりまして、四人の参考人の皆さんから強調されたところでありまして、十分承ったところでございますので、国会の審議で私もそういう問題について取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。  そこで次に、土岩参考人にお伺いしたいんですが、先ほど私が申し上げました自由化によって他の畜産物に対する影響、そしてまた今法律や諸制度をやっておるけれども、これ以外にこういうことをやるべきではないかというようなことがありましたらお話を願いたいというふうに思います。  それからお話がありましたように、島根県でも繁殖牛は一戸当たり二頭くらい、全国平均で言っても二・何頭ですか、これが、こういう安定制度をつくってこの安定制度なら十分やっていけるかどうかということですね。やっぱり二頭くらいだったら第一次生産費をカバーする程度のものではないかと私は思うんです。したがって、将来は多頭化を目指していかなければならないこともお考えになるというふうに思いますけれども、果たして多頭化というのがそんなに急速にできるものかどうか、そのことについてお考えをお聞きいたしたいというふうに思うのであります。
  16. 土岩勲

    参考人土岩勲君) お答えを申し上げます。  多分に私の個人的な考え方でございますが、先ほど先生のおっしゃいますように、こうした畜産農家というのは大変大きな動揺といいますか、不安を抱いておることは事実でございます。ただ、私は最近になりましてからいろいろ今回の制度改正の法案の内容等を若干勉強した限りにおきましては、これは今までよりもかなり幅を広くいろいろお考えをいただいておるようでございますので、これが一般畜産農家に浸透いたしますならば、ある程度安定した感じで受けとめてくれはせぬだろうかという大きな期待をかけておるものでございます。  さらに、今後の対策といたしまして、御案内のように私ども県内での繁殖牛は非常に零細経営でございますが、御承知のようにこれを一たんやめますと再び新たに畜産を育て、あるいはまた畜産農家を育成するということは大変困難でございます。したがいまして、私、行政の立場からもぜひこれはやめずに今後逐次増頭の方向に持っていかなきゃいけない。これは先ほど島津先生もおっしゃいましたように、なかなか容易なことではないと思っておりますが、先生の御指摘のように、私どものところにも多分に老人が、高齢者がそういった飼養管理をしておるという実態でもございます。でありますので、これからの多頭化に対しては当然いろいろな諸施策が必要でございましょうが、特に青年層のこれに対する魅力を、また安心を与えるような形でのいわゆる経営の安定化のためのいろいろな施策が特に必要であろう、こういうように思うわけでございます。  私どものところでも、いわゆる中核農家と言っております五頭以上の農家に対するいろいろ県なりあるいは町なりの施策も考えており、また実施をいたしておるところでございまして、せっかくの今好景気のような状況の中でございますので、これがひとつ継続していくようにさらに努力をしていきたい、こういうように思っております。  また、自由化そのものについての政府のお考え方については、これは一般的には大変残念なような気もいたしますけれども、自由経済社会においてはどうもやむを得ないという理解がだんだん畜産農家の方にも浸透しつつあるように私は理解をいたしております。ただ、これからの法案のいろいろ今後の運用いかんによって、これが右にも左にも行くのじゃないかというように思っております。また、一層の諸先生方の御高配をよろしくお願い申し上げたいと思います。終わります。
  17. 村沢牧

    ○村沢牧君 ありがとうございました。  高橋参考人にお伺いいたしますが、制度加入率が低いものもあるわけですね。特に肉用牛については、これが低いのは、一番原因は何であろうというふうにお思いになりますか、加入率が低いということは。それから、特に北海道は畜産に対する負債対策、これが重要になってくると思いますが、現地におられましてどのような対策を講じたらよろしいのか、それから政府に対してどのようにお考えになっておられますか。こうしたことについてお伺いいたしたいとともに、これから基金協会がやはりお話がありましたように、事業分野もふえてくるんですが、この体質強化というお話があったのですけれども、どういうふうなことをすべきだというようなことについてお考えをお聞きしたいと思うんです。
  18. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 北海道の乳用雄子牛の基金に対する加入率が極めて悪い、どういう理由かというような御質問でございますが、まず一つ保証基準価格水準が極めて低かった。この制度ができたのが昭和四十八年と記憶しておるわけでありますが、四十九年、あの暴落期に相当の基金の発動が行なわれて以来、五十七年と五十九年にほんのわずか、北海道全部で二万五千頭の牛で二千万程度でありますが、発動されて以来、基金の積み立てだけが行われてほとんど発動されていなかった。こういうようなことは、問題は基準価格よりも常に、昭和五十年以降現在までそうでありますが、実勢取引価格の方が高かった。ですから、加入者にとって非常に魅力のないものになってしまった。  私どもは、この基準価格の引き上げを強く政府に要請したところでございますが、この子牛価格の基準価格を引き上げることによってぬれ子の価格も引き上げてしまうというようなことが、起こり得るというようなことが理由となりまして、今まで基準価格の引き上げが行われていなかったというところに大きな原因がございまして、現在肉専用種は相当の発動率がございましたので、相当の加入になっておりますが、乳用子牛については一〇%程度の加入しか現在なっていないというのが実態でございます。  しかし、これから基準価格が引き上げられ不足払いに対する今後の安定性といいますか、そういうことを考えていった場合に、この基準価格の持つ意味合いというものは極めて大きくなるというようなことで、これが引き上げられることによって加入率が急速に高まる、また不足払いを受けるためには加入しなければならないということもございまして、現在積極的に加入奨励に当たっているところでございます。  次に、負債対策でございますが、現在北海道の専業経営で二千数百万、それから乳用雄子牛経営では八千万以上の負債があるわけでございますが、今までの価格低落側に蓄積された負債といいますか、返せなかった負債の影響を今かなり大きく経営の中で抱えておるということでございまして、これらについては長期にすることにあるいは利息の低減措置等によって安心して経営ができるような、そういう積極的な対策お願いいたしたいと思います。現在もいろんな意味でその対策をやっていただいておるわけでありますが、さらに積極的な対策お願いいたしたい、このように考えるわけであります。  それから、畜産基金の体質強化の問題については今申し上げましたように、基金の加入頭数が、特に北海道としては少なくとも今の加入頭数の乳用雄については約十倍ぐらいになってまいりますし、専用種についても一〇〇%加入するということになりますと相当の頭数の増加が予定されますので、この点については基金の持つ何といいますか、その力といいますかこれが今のところ非常に弱い、このために人数もふやさなければなりませんしあるいはそれに伴ってコンピューター等の導入も必要になってくるというようなことを考えてまいりますと、どうしてもこの点については積極的な国のてこ入れをお願いして、安定的に基金協会が維持できるよう、そういう対策お願いいたしたい、このように考えるわけであります。ありがとうございました。
  19. 村沢牧

    ○村沢牧君 島津参考人にお伺いしたいんですが、まず一つは、先生のお話の中で感ずることは、やはり生産コストの低減が必要になってくるというふうに思うんです。私は、生産コストの低減のためには、特に多頭化でありあるいは飼料費の軽減が重要な問題になってくるというふうに思うんです。多頭化については今までお話がありましたように、そんなに簡単にできるものではありません。そこで、二、三頭でも生産がやっていけるんだというようなことも先生からお話があったわけですけれども、しかし多頭化はやはり必要になってくるというふうに思います。多頭化に対してどのようにお考えになっていらっしゃるのか。  それから飼料費、えさですけれども、自給飼料の拡大を図っていく、これは一般的に言われることでありますが、反面、購入飼料の方が安くていいんだよと言う人もあるんです。これは将来の経営としてどういうふうにしたらいいかということ。  それから、先生からお話がありましたように、流通マージン、牛肉の価格を下げるためには流通段階におけるマージンを、手数料をいかに減らすかということも重大になってくるというふうに思います。流通コストの削減のためにどうすべきだというふうにお考えになられますか。とりあえずそのことをお聞きしたいんです。
  20. 島津正

    参考人島津正君) まず、第一点の生産コストの低減でございますけれども、これは先ほども申しましたように、ある程度の規模、すなわち繁殖経営の場合では十五頭、二十頭というような規模になりますと、これは酪農がやっておりますように自給飼料もつくりまして、サイロをつくり乾草をつくるというような行動が出てきております。そういう形をとりますことによって初めて飼料費も安くなってきて、やはり今後は繁殖肉用牛経営といえども酪農経営等と提携をいたしまして、粗飼料生産の共同化等を図るというようなことによって飼料費の低減ということが十分にできるというふうに思います。  さて、今お話しのとおり、確かに円高によりまして輸入飼料は安うございますけれども、これは価格に非常に影響を受けるというような問題でございます。畜産というものは、土づくり、草づくり、牛づくりというその基本原則ということであるならば、やはり自給飼料を徹底的に行うということが基本であって、足りない分の補給飼料として少数のそういった購入飼料を扱うということは、日本畜産の場合にはやむを得ないと思いますけれども、基礎飼料としては自給飼料でいくというのが基本の進め方だというふうに考えております。  そういうことを行いまして、やはりコスト低減というのは、先ほど申しましたように、最優秀経営におきましてはすばらしいコストの低減を実現しております。これは、でもトップのトップでございましてすべてがそうというわけではございません。したがって、今のような対策をしていくためには、少なくとも三年、五年の猶予というものが必要だということを申し上げたつもりでございます。  さて、先ほど申しましたように、高齢者対策の二、三頭あるいは三、四頭経営というようなものが、コストがどうなのかという御指摘がございましたけれども、これは先ほど申しましたように、現金的な、例えば畜舎だって昔の納屋を使ったような畜舎でやっておりますわね。それからまた機械もほとんど使っておりません。労働力が非常に高くかかわってきているというのがコストを上げているわけでございまして、自家労働あるいは減価償却費を除きました現金的な生産費だけでいくならば、安い人はもう先ほども言いましたように、十五万ぐらいで上がっているというようなことでございます。そして、そのためにはどうしても必要なのが価格保証というものがありませんと、やはり一頭当たりの所得というのものは保証してあげませんと続けられないということで申し上げたつもりでございます。したがって、そういった高齢者対策あるいは各地域で行われておりますママさん牧場というようなグループ、こういうものをしっかり育てていくということが大切だということを申し上げたつもりでございます。  さて、次の流通マージンの低減の問題でございますけれども、これはまず、先ほど申しましたように、やはり肉用牛の場合には経営の一貫化あるいは地域一貫というような形で、その部分だけでもマージンを少しでも排除していくというような方法がとられている。 例えば鹿児島県その他の場合もそうでございます。 今たまたま子牛の値段が高うございますから、ちょっと一貫をやるよりも子牛で売った方が有利だというような条件がございますけれども、これが子牛価格が安定化した段階においては、そういった経営内一貫及び地域一貫というものが進められるだろうというふうに考えております。  そうしてもう一つは、組織が、今度も農協さんあたりもやっていただきましたように、ペーパーマージン等というものを少しでも排除していくというようなことをやっていただくならば、流通経費も多少は下がるというふうに考えております。  以上でございます。
  21. 村沢牧

    ○村沢牧君 もう一点だけ島津参考人にお伺いしたいんです。  私は、最初佐々木参考人に肥育に対して何かもっといい措置がとれないのか、生産者団体もぜひそういうことをやってもらいたいというお話があるんですけれども、そういう際に、例えば肥育に対して不足払い制度等を設ける場合においては流通が非常に複雑である、いろいろ肉の種類が入っていますからこれは大変困難でございますということが、政府から答弁がはね返ってくるわけですね。  今先生が、この流通段階を見ておりまして、今のような流通段階の中で、肥育に対してそういう措置をとることは非常に困難だというふうにお思いになるか、やり方によればできるというふうにお考えになりますか。どうでしょう。
  22. 島津正

    参考人島津正君) 確かに、おっしゃるとおりでございまして、これはやはり流通の段階ではごく量が限られているものですから、それぞれのところでのマージンというものを取らないと、それぞれのタッチしている担当の人たちが食べていけないというような問題等がありまして、ちょっと複雑になっているという問題がございますけれども、これに相当の私は時間がかかるということで考えております。ですから、部分的に地域一貫等で排除できる部分と、最終的な流通段階の複雑性というものを排除していくという問題は、やはり系統をもうひとつ整理していただくということを進めながらやっていけば、漸次流通マージンというのは減っていくだろうというふうに考えております。ですから、結論的に言いますと、なかなかこれは政府がおっしゃっているとおり難しいというふうに私も考えております。
  23. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 私は、自由民主党を代表いたしまして、参考人の方にお尋ねをいたします。  本日は、お忙しいところ、貴重な御意見をお聞かせいただきましてまことにありがとうございます。  牛肉の輸入枠の撤廃が我が国の肉用牛生産に及ぼす影響については、これは重大なものであるとの認識をいたしておるわけでございますが、その影響を緩和し、我が国肉用牛生産の存立を守るため、我々自由民主党が政府と一体となった取り組みを行いまして、その成果が今回の法案にあらわれておると御理解をいただいたものと思っておるわけでございます。ただいま各参考人から、この法案につきまして高い評価並びに御理解をいただいておりますことに大変意を強くいたした次第でございます。大方の参考人の皆さんの御意見をお聞きいたしますと、保証基準価格については現行以上でという意見が圧倒的に多いわけでありますが、またさらに、そのあり方については固定化しないで実勢価格で流動的に幅を持って行え、こういう御意見があったことを、私そう受けとめました。  それから、合理化の目標価格につきましては、長期的にある程度の体質改善等も含めて政策誘導等を図りながらひとつ考えてはどうか、こういうことであったと思うのであります。  さらにまた、財源の確保については、同じように六十八年以降の関税率五〇%を堅持せよと、こういうことであったと思うのでありますが、我が国の肉用牛生産につきましては、今後ともなお一層の振興を図ってまいることはもとよりのことでありまして、そのためには今回の肉用子牛に対する生産者補給金交付に加えまして、さらに各般の施策を積極的に進めてまいることが必要でございますし、今回の法案においても牛肉関税をそのような施策にも十分充てる、このような措置をされておるわけでございます。  ここで、各参考人の皆様にお伺いをいたしますが、今後の肉用牛生産振興を図る上でどのように国は取り組めばいいのか、その点に留意しまして、どこに重点を置いて政策の展開を図っていくべきでありますか、率直にひとつ一言だけお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 島津正

    参考人島津正君) 今非常に難しい問題でございますけれども、私が述べましたように、やはり総まとめでこれをやっていくというようなことは非常に難しいということを申し上げたつもりでございます。やはり政府が出しましたように、一つの上部構造としましては、経営能力にすぐれた意欲のある人たちというものに対してこれはやっていくという問題、この面に対しましては、それでもなお貸付牛制度と申しまして、一たんこれを農協へ売った形にしてまた農家へ貸してあげるとかというようなそういった貸付牛制度も、今まではどちらかというと零細な経営に対して重点が置かれたというふうに私は見ておりますけれども、それをもう一つこれから伸ばそうというような人たちに対してどう保護していくかというような点が、私なりに大事だというふうに考えております。そして、一定の水準になりませんと、コストの低減というものは図れないということでございまして、そういうことをひとつ考えていただきたいということでございます。  それからもう一つは、高齢者対策なりママさん牧場等、婦人対策というような面についても忘れないでしっかりと重点的に価格保証あるいはその他の施策を講じていただくということが大事だというふうに私は考えております。  以上でございます。
  25. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 将来にわたって安定的にやっていくためには、どのようなことを期待するかということの御質問のようでございますが、私は今先生がおっしゃいました保証基準価格、ここがどの水準で決まるかということが、今畜産農家が一番関心を持っているところだろうというふうに考えますし、それが現状実勢価格以上で決まるということには非常に大きな生産者の期待が寄せられておるわけでございまして、これが一番大きなポイントになるだろう。  それから、合理化目標価格については長期的な計画の中で、少なくともこの制度の仕組みから海外と競争でき、しかも国内価格安定が図られるような具体的な方式を立てていただくことが、その水準で決めていただくことが必要であると思います。特に、その財源の確保につきましては、現行の方針を堅持いただきまして、将来にわたって財源的にも安心できるという印象をぜひ生産者の方に与えていただきたいというふうに考えるわけでございます。  さらに、先ほども申し上げましたが、畜産農家の負債整理でありますが、これは予想以上のいわゆる償還圧といいますか、先ほども申し上げたのでありますが、価格低落時に大きなダメージを受けたそのときの負債が、これからの経営拡大のために多大なネックになっておるわけでございまして、この点について十分配慮お願いしたいわけでございます。  また、北海道といたしましては、特に気象条件からいっていわゆる畜舎等がかなり大きな投資を必要とするというようなことでもございまして、こういう投資については、例えば国のリース事業実施していただくとか、そういうような新しい発想も取り入れながら政策的な対応をしていただくことによって、私は海外の価格と競争できるかどうかということは、今はっきり申し上げることはできませんけれども、かなり価格競争力に近づけていける、こういうことが言えるのではないかと考えるわけであります。
  26. 土岩勲

    参考人土岩勲君) 先生の御質問にお答え申し上げたいと思いますが、先ほど私の意見として四点を申し上げた次第でございまして、若干その点と重複するかと存じますが、やはり何としても生産コストを下げるようないろいろな施策も必要であろうと思いますし、またさらに多頭化育成ということのいろいろな政策も特に必要だと思います。これらにつきましては、先ほど来お話が出ております御質問なりあるいはお答えの中にもございますように、簡単になかなか多頭化ということが実際問題としては難しい面がございます。一つは、それに対する飼料対策あるいはそれともう一つは資金対策、また施設の問題等でございます。  御案内のように、例えば子牛を購入してからそれの育成、分娩、またその子を販売というところまでの、ようやく現金収入を得るまでの間が早くて大体二カ年半ぐらいかかります。そこで二産目が一年半ぐらいまたかかるというように、大変息の長い経営でございます。したがいまして、よくいって一年に一頭産むということでございます。こうした畜産の関係で、やはりそれに対する長い目といわゆる資金の対策というようなことも特に必要ではなかろうか、こういうように思っているわけでございます。  もちろん、先ほど来御審議をいただいております今回の法案の改正の、やはり安定価格保証ということの是非が今後の畜産に大きに影響することだと思いますし、それからさらにまた、いろいろ技術面あるいは先ほど来お話しに出ております経営技術のいろいろな御指導の面、そういったようなことにも幅広い今後の政策をひとつ御勘案をいただきたい、こういうように思います。もちろん私どもとしては、当然そういったようなことについての行政の面からも十分また呼応して、一緒になって地域ぐるみで取り組まなきゃいけないというように考えておるところでございます。  以上でございます。
  27. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) 私からは、それでは、制度的な形では先ほど来申し上げてまいりました肉用子牛の今回の新しい法律の制定であり、肉用牛子牛安定基金強化であり、そしてもう一本は配合飼料基金対策、この三つは制度なり体制としてより強化していただきたい。やっぱりえさというものは重要な生産費の部面を占めるものですから、そういう意味では配合飼料基金対策というものも今後重要な課題として取り組んでいただきたいというお願いを申し上げます。  それから、生産対策は、先ほど来申し上げておりましたように、特にこれは私の県になるかどうかわかりませんが、草地基盤の問題なり、放牧の問題あるいは受精卵移植の問題なり登録事業、衛生指導といったような、ただいま現在も御支援いただいておりますそういう生産対策をもっと強化していただきたいということでございます。  それから三点目、先ほども申し上げましたが、実は今後の輸入に対しまする注文をつけておきたいと思う次第でございます。  御案内のとおり、もし輸入が多過ぎた場合は歯どめをかけることができるというような内容になっておることは、先生方案内のとおりでございますが、そこでこの輸入量は五〇%を超えてはならないというお願いを申し上げたい次第でございます。もし輸入量が五〇%を超えますと、国内市場支配をされるというような点から、輸入量の限度は五〇%以下に抑えていただきたいというお願いを申し上げる次第でございます。  以上で終わらせていただきます。
  28. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 ありがとうございました。それぞれ貴重な御意見をさらにお聞かせいただいたわけですが、佐々木参考人にいま一度お伺いいたします。  肉用牛生産農家のみならず、畜産農家は大変な負債を抱えておるわけでございまして、特に肉用牛の場合には、これが大型化して固定化しておるという傾向にあることは御案内のとおりでございます。したがいまして、生産農家の多額の負債を抱えた返済に苦しむ状況を十分踏まえた上で、その負債の処理問題あるいはその地域全体の畜産振興に係る問題等を含めて一体現状がどうなっておるのか、このことをもひとつ御説明をいただくと同時に、その解決策を系統として、農協としてはどのように対応されておるのか、その点をお聞かせいただきたいと、こう思うのであります。  また、経営指導を当然直接行っておられるわけでありますから、農協としてのお考えもあわせて畜産農家経営指導あるいは対策を含めてこの負債問題についての見解、特に固定化負債の問題について承りたいと思います。
  29. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) まず、それでは先ほど多少申し上げたつもりでございますが、岩手県の実態を申し上げますというと千二百五十三戸の負債農家がございますが、その中の約四〇%近いものが大規模畜産農家でございます。そういたしまして、平均額でいいますというと二千万台でございますけれども畜産農家の中には七千万、八千万という、あるいは最も多いのは一億という農家もございますけれども、そういう実態でございます。  そこで、なぜこういう負債を抱えたかということを私ども調査分析をし、そして将来の対応をどうするかというようなことを実は考えながら対処いたしておる次第でございます。岩手県は一昨年来、県、市町村、私ども団体一体となりまして農家経済更生対策実施要領というものを策定いたしました。そういたしまして、農家に対して実は何といいますか、規模別あるいは負債額によって違いますけれども、最長は三十年から十年の間で長期の低利の負債対策資金を供給いたしておるということが第一点でございます。そのことによって実は三年経過いたしましたが、どうやら順調に現在は推移してきた。ただし先生おっしゃいますように、実は経営管理は農協が管理するというような姿勢で対応いたしております。  正直申し上げまして、例えば私の県では、その負債対策をグループにして指導職員を張りつけしておるというようなそういう対策をとりながら、一面は畜産経営対策、一面は負債対策いわゆる金銭の出納管理というようなところまで実は突っ込んだ指導をいたしております。 全く乱暴なことを申し上げますというと、その更生対策の中では、自動車は買ってはならないよあるいは農機具もこれ以上はだめだよというようなことまで実は指示をいたしながら管理をし、その再建を図っておるというのが実態でございます。  ただ、ここでお願い申し上げたいことは、実は先生方の御配慮を賜りまして大規模畜産の今回融資が出たという次第でございますが、この大規模畜産の融資は極めて本当に私どもからいいますと時宜を得た措置であった、こう思っておりますけれども、もっとこれを実は何といいますか、大型畜産農家に対して、大型負債の農家に対してはもっと長期にしてほしかったなということが第一点でございます。  それから、もう一つは金利の問題でございますが、金利は実は、これは国の制度として考える次第ではございますけれども、私ども農業団体も一体となって考えてよかったので金利は可能なだけ引き下げていただきたかった。例えば三%なり、できるならば二%台というようところまでねらっていただきたかったなと、そう考えておるという次第でございます。ただし、申し上げたいことは甘やかしてはならない。農家といえどもやはり甘やかしてはならないという姿勢で、私ども生産経営管理をしながら対応いたしておりますが、今回の大規模農家に対する資金を十二分に活用させていただきまして、負債はぜひとも解消したいものだというように考えております。
  30. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 もう一点お伺いをいたしますが、岩手県では山間地域において地域特性に適した牛として日本短角種が飼養され、山村振興という観点からも大きな役割を果たしておると聞いております。この牛は生産コストも安く、また近年では産直等の努力によりまして消費者の評価も大変上がっておると、こう聞いておるわけでございまして、岩手県のみならず山村地域では全国でその生産振興を図る必要があると思うのでありますが、その生産振興を図る上でどのような点に留意をすればいいのか、その基本的なものだけでもお聞かせをいただければありがたいと思います。
  31. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) これは、ただいま先生から御指導賜りましてどうもありがとうございました。  今先生おっしゃいましたように、私ども日本短角種という牛は、従来の南部牛にショートホーンを配合いたしまして、岩手県の私どもの先覚者がそれこそ開発した牛でございます。この牛の特徴は先生申し上げましたとおり、極めて放牧に強いということでございます。いわゆる放牧だけで簡単に申し上げますと子牛の育成ができます。そういう本当にいい長所を持っております。ただし、最大の欠点は何だかといいますというと、実は人工授精ができないということでございます。自然交配だということでございます。したがいまして、放牧には強いし生産費は安いんですけれども放牧で牧牛で交配するものですから生産時期が一斉にそろうわけでございます。春放牧いたしますと五月から六月に受精してしまいまして、翌年の三月ぐらいに一斉に分娩してしまうということでございまして、最大の欠点は流通上周年出荷ができないという問題を抱えております。  そこで、私ども県にも注文をいたしながら、あるいは県の試験場も設置をさせていただいておりますので試験場にも注文しながら、何とかこの解決策はないかということを今までやってまいっておりますが、御案内岩手畜産肉牛生産公社というのがございまして、この肉牛生産公社が実はモデル的にその解決策を今模索中でございます。ただ、なかなかどうもそれこそ周年、春から冬までいつでも受精できるという、人工授精できるという代物でないところにこの牛の欠点があります。それだけ放牧に強いという、そのためにそういう面では何といいますか、これは変な表現をいたしますけれども、極めてこれは鈍感なのかなということを考えておる次第でございます。牛そのものはいいんですが、周年出荷にうんと苦労しているというのが実態でございます。  そこで、私ども先生おっしゃいましたように生協等に対する、それこそ産直事業を、短角を中心にいたしておることはそのとおりでございます。そのとおりでございますが、周年出荷をするために青森、秋田等からまで素牛を集めまして交配いたしまして、そして出荷時期をそろえることにうんと苦労しておりますということが実態でございます。それで何とかこの牛の欠点をもしも解決するとすれば、できるとすれば将来輸入肉に対応する極めて有力な肉牛になると、こうは考えておりますが、どうも周年出荷できないということの欠点は持っておるということを申し上げまして、お許しをいただきたいと思います。
  32. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 時間があと十分足らずしかありませんので、できるだけ短く御答弁いただきたいと思いますが、高橋参考人にお伺いいたします。  北海道の肉用牛生産乳用種が中心であるわけでございますが、現行制度加入率が低いのは実情に合わない保証価格のためだという、先ほど説明がございました。加入率を今後促進するということになれば当然目標が必要だと、こう思うのであります。例えば八〇%とか九〇%あるいは一〇○%にするんだというものでなければ、我々も取り組みによって今後の具体的な方向をどうすればいいのか判断が一つあるわけでございまして、重要なポイントでありますから、一体目標的にはどういう加入率ぐらいまでに引き上げる御自信があるのか、その点を明快にひとつお答えをいただきたい。
  33. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 加入率の低い理由については先ほど申し上げたとおりでございますが、今の法律制度が成立して今後運営していくということになりますと、これは不足払いをもらうのが全頭加入というか条件になってまいる。加入しない者は不足払いの対象にならない、こういうことのようでございますから、そういう意味では、少なくとも向こう三年間の間には全頭加入にならなければならない。本年、私どもは北海道におきまして約六万頭の加入を見込んだわけでございますが、事実的には申し上げましたように、保証基準価格が低かったというようなことから、現在ではその魅力に乏しいという理由で二万三千頭程度の加入計画されております。しかし、今後その制度の運用の中で制度の恩恵を受けるという意味からも、私どもは全頭加入に向かって現在努力をしている最中でございます。
  34. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 最後に、それぞれ皆さんが御説明いただきました中で、保証基準価格現行以上でという御意見がございました。ただ、島津参考人が、我が国が国際化の競争に勝つためには今の子牛価格は高過ぎるというお話がございました。供給と需要の問題は裏腹の問題がございまして、素牛が確保できなければ肥育は日本で成り立ちません。さりとて、素牛価格が高ければ肥育が採算に合わないという極めて矛盾した問題が経営上あるわけでございます。  そこで、皆様にお尋ねをしたいのは、現行以上の価格で基準価格をと言われたわけでありますが、一体どれくらいをお考えになっておるのか。例えば、私の手元の数字で言いますと、黒牛が二十九万二千円、その他が二十万円、乳雄が十三万四千円でございます。さらにまた、全国的な地域の格差でいけば、全国平均は黒牛の場合二十九万二千、鹿児島、宮崎が三十万、島根、兵庫、京都が三十一万、地域的なばらつきもあるわけでございまして、率直に現行以上と言われたその基準価格というものは幾らくらいならいいのか。 また、経営学的に島津参考人としては、国際競争に太刀打ちできるためには、高いと言われた現行価格でありますから基準価格とは別でありますが、それらが今後の肉牛振興のために、我が国の畜産を守るために一体どれくらいの価格が妥当と御判断になっておるのか。それぞれお示しをいただければありがたいと思います。
  35. 島津正

    参考人島津正君) 確かに、繁殖農家にとりましては高いにこしたことはないのでございますけれども、肥育農家にとっては私は現行の二十九万というのが大体トップと、頭と考えております。将来、やはりこれはもう少し二十五万から三十万ぐらいの間というふうな形で定着すべきであろうというふうに考えておりますが、当面は現在の二十九万二千円というものは、私は妥当だというふうに考えております。
  36. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 私は、今後の海外との競争における取引価格を想定に入れて、なおかつ北海道の乳雄につきましては安定的な水準を、安定的な経営を確保する、こういう意味からいきますと、十三万四千円の基準価格は十六万以上になるということを期待いたします。
  37. 土岩勲

    参考人土岩勲君) 私の県では、先ほど先生のおっしゃいましたように、三十一万ということで全国平均より若干上回った基準価格でございますが、欲を申しますとそれ以上ということでございますけれども、最低線現在の価格を維持していただきたい、こういうことでございます。  ただし、今後いろいろ自助努力をいたしましたり、あるいは生産コストの低減を図ったりしてその推移をまた見守っていただきまして、また適正な価格を御決定いただくというようにお考えをいただけば大変いいことだと思っております。  以上です。
  38. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) 私は、肉用子牛生産安定等特別措置法案という、私ども、実は先生方従前おっしゃってまいりました不足払い法をつくるんだということからいけば、印象が変わったなというような感じがいたしますが、合理化目標価格というものを設定するということの関連におきまして、保証基準価格はあくまで現状生産費を基準としながら現状価格をベースにして配慮いただきたい、さようにお願い申し上げます。
  39. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 ありがとうございました。  最後に、島津参考人にもう一点お伺いして終わりたいと思いますが、牛肉の輸入量の増加は、先ほど五〇%以上はないようにというお話がありましたが、我が国の肉用牛生産のみならず、流通、消費にも大きな影響を与えるのではないか、こう思うわけでございます。特に、我が国の円が強含みで百円時代にもなるのではないかということが予測されておるわけでございまして、円高の問題等も含めて先生はこの点をどのようにお考えか、最後にお尋ねをいたしたいと思います。
  40. 島津正

    参考人島津正君) 輸入量の問題も確かに御指摘のとおりでございまして、私はこれから毎年六万トンずつふえていくということで、三年後にはそれ以上の消費が果たして伸びるだろうかというようなことも懸念しておりまして、やはりこの量というものは抑えていかなければいかぬと思いますし、国産の牛肉の増産というような問題をこれからも三年ぐらいの間に大いに考えていくということで、進めていくということでやっておりまして、やはり輸入量というものはきちっと抑えていただきたいというのが希望でございます。
  41. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 時間が来ましたからこれで終わりますが、先ほど土岩参考人からございましたように、過疎地、山間部の国土保全のために畜産振興は必要である、特に谷合いの田畑を守るために、日本農業のみならず山間部の土地が荒れておることは事実でございまして、そのことが勢い治山治水事業に大きな財政負担を強いておるのもまた事実でございます。財政的視点あるいは経済的視点だけからとらえていい日本農業かという、我々は大変な疑問をそこに持っておるわけでございまして、国土保全的視点からの農林業の振興は我々も十分理解するところでありますから、今後さらにお願いをいたしたいと思うわけでございます。  さらに、事務量が増大をいたすわけでございまして、各県の協会の財政的な問題等も心配される点でございます。それらの点について十分お聞きすることができなかったことが残念でございますが、それらの点も自民党としては、我々は考えていかなければならない点ではないか、私はそう思っておるわけでございます。  ただ、最後に申し上げたいことは、我が国の外交交渉、自由化が決して弱腰だけではないということを私は最後に御理解いただきたい、こう思うのであります。ガット条文の二十二条、二国間協議、二十三条の多国間協議、我々が抗することのできない手段にアメリカが訴えてきた。 さらにもっと御理解いただきたいのは、我が国の牛肉が不足しておるというこの厳然たる事実が、そういう形にならざるを得なかったという苦しい状況下における選択であったことを御理解いただきたいと思いますし、それだけに、我々自民党としても、政府と一体となって皆さんの意向は酌まなければならないし、また自民党としての気持ちもそのようなことで今後の畜産振側に十分頑張っていきたいと思います。最後に申し上げまして終わります。
  42. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 公明党の刈田でございます。  きょうは参考人の皆様、お忙しいところを大変ありがとうございました。  私は十六分しか時間がございませんので、自分の演説をやっている暇がありませんものですから大変恐縮でございますが、最初に全部の先生に御質問をさせていただいて、後お一人お一人から回答をいただきたいというふうに思います。いろいろ用意してあったのですけれども、同僚委員方々がいろいろ聞いてくださいましたものですから重複しない形で伺います。  まず、佐々木参考人にお伺いいたしますんですが、先ほどの日本短角種の放牧の問題について、実は私も大変関心を持っておるものの一人なものでございますからお伺いしようと思っておりましたら、さっき詳しい御説明をいただきましたので、一般論として私は伺いたいんですが、今後コスト低減を図るためには、先ほど来からお話が出ておりますように、対多額化あるいはまた飼料費の軽減というようなことが大変に重要な要因になってくるわけですけれども、そうした場合に、畜舎の中における飼養という形態から、やっぱり御当地でもなさっておられるような、山間への放牧というようなことが非常に大事な一つの方向だろうというふうに思います。濃厚飼料中心の飼養形態というものの見直しがやっぱり考えられていかなければならないんだろうと思うんです。  そうすると、先ほど出てきた日本短角なんというのは、先ほど御説明がありましたように、非常にいい種類になるわけですね。だけれども、それが先ほど言われたような一つのネックを持っていることを私も知っております。ですけれども、そうした問題をクリアしながら、一般論として日本各地において、今後こうした牧牛生産というんでしょうか、こういうふうなことが行われていくべきではなかろうかというふうに思いますけれども、そうした抜本的改革の必要についてどういうお考えをお持ちになるのか、このことについてお伺いいたします。  そしてあわせて、先ほど北海道の負債の状況の御説明がございましたが、岩手県における負債状況についてはどんな状況にあるのかをお聞かせいただければ大変ありがたいというふうに思います。  それから、土岩参考人にお伺いいたしますが、これも今のコスト低減にかかわる問題として多頭化への話が先ほど来からずっと出ておりますけれども、先ほど御説明の中で、平均一戸当たり二頭ないし三頭という形のところから、最近になって十頭、十五頭へとふえつつある現象も出てきておるということを意見開陳の中でお述べになりました。そこで、私はお伺いをしたいのは、その多頭化が御当地において進みつつあるということは、どんな条件を満たしてきているからそういう現象が見えてきておるのかということをぜひ教えていただきたいというふうに思います。  それから、高橋参考人にお伺いをいたしますけれども、先ほど北海道の場合は、この肉用牛生産酪農との関係が非常に深いんだというお話がございました。そのとおりだというふうに思いますが、その中で自由化が実現すると一番競合する乳雄の問題をお取り上げになっておりましたけれども、十八万トンの規模拡大を進めていく中で、自由化前のこの三年の期間においてどんなことが対策として望まれるのかということ、このことを伺いたいというふうに思います。  それから島津参考人にお伺いしたいのは、先ほど来から子牛価格のことが出ておりますが、これは農林省がお出しになった資料の速報値によりますと、六十二年の肉用子牛雄四十三万五千四百円というのが出ております。これが、やがて枝肉になって市場に出る時期、その時期はどんな時期かというのはおのずとわかってくるわけですね。そのときに、生産現場にどんな現象が起きるだろうかということを私どもは大変心配いたしますけれども、そうしたことについてお伺いをしたい。  以上でございます。
  43. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) それではお答えをいたします。  短角のことに関しましては申し上げましたから省略いたしますが、私ども岩手県の、この和牛短角を含めまして肉用牛振興対策の柱は放牧という一つの視点でとらえております。御案内のように、申し上げましたように、北上山系開発をいただきまして、それを十二分に活用するという意味合い放牧事業というものを主体に考えておるという次第でございます。ただ、申し上げましたように和牛放牧は、この短角のようにはまいらないという欠点を持っております。そういう意味で、実は牧場の再整備というものをお考えいただきたいものだという、そういうお願いを申し上げた次第でございます。いずれにしても、私どもは将来岩手の肉牛の振興のために、頭数拡大のためにも放牧主体にしたものにする、こういう決意で対処したい、そう思っております。  それから、岩手負債対策でございますけれども、現時点で申し上げますというと、大型負債農家が千二百五十三戸ございます。それに対しまして、私ども特別な融資をいたしましたいわゆる農家経済更生対策実施要領というものの中で、融資をいたしましたものが百三十億五千八百万でございます。それに対して、実は今から三年前でございますから、農協の基準金利七%を原資として末端三%にしたいということで対応してまいりまして、県、市町村、農協合わせまして利子補給をしてまいっておるという次第でございます。  それから、協同組合連合会の中にこの更生農家に対する経営指導員、簡単に申し上げますと資金の管理運営でございますが、それを専門に指導するために全県に十八名の指導員を実は抱え込んでおります。そうしましてこの千二百五十三戸に張りつきまして、それこそ毎日のように経営管理の指導をいたしておるという次第でございます。  それから、生産指導は先ほど申し上げましたとおりでございますが、通常の形のほかに県の普及事業等と一体となって進めてまいっておるという次第でございます。そして、ただいま三年後の経過は一応順調に推移いたしておりますという次第でございます。
  44. 土岩勲

    参考人土岩勲君) お答え申し上げます。  多頭化の進みつつありますその現象なり理由でございますけれども、これはいろいろな理由が介在しておると私は思っております。例えて言いますと、やはり我々の地域が山間地でございまして、いろいろ他の産業がなかなか育ちにくい、そういうことから、昔からのそういう畜産、特に繁殖牛の飼養農家がいろいろなことをやってみたけれども、やはり長年なれたそうした繁殖牛の畜産経営というものに目覚めつつあるのじゃないか。その上に、そうした価格安定の対策もありますが、最近では特に高値で推移をいたしております、子牛価格は。したがいまして、そういうことに対しての非常に大きな魅力を感じております。  そういうやさき輸入問題が出まして、ちょっと頭打ちのような感じがしましたけれども、いろいろ御審議をいただいております今回の法案改正のいろいろな事情が逐次わかりますことによって、またこれに対する大きな支えがあるということから、だんだんそういった傾向が出つつあるわけでございます。一頭、二頭というのもやはり老人畜産、高齢者対策ということも必要でございますけれども、本当の意味で何とか経営をやっていくためには、所得を得るためには多頭でなきゃいけないという意欲がわいてきたと、こういうことです。それには、先ほど申しますように、長年の経験もございますし、また県の方でも高齢者対策として月三千円ずつ、一頭に対して月三千円、もっともその半分、二分の一は関係市町村でも持ちますが、そういった老人対策というような施策がだんだん定着をして畜産に対する目がだんだん向いてきた、こういうようないろいろ積み重ねがあって今日の多頭飼育の方向に向かっておると、こういうように思っておるところでございます。  いま一つは、飼料対策につきまして、実は私どものところは中山間地といいましても非常に急唆な山でございまして、放牧団地あるいは牧草地ということがなかなか造成が難しいところに対して、いわゆる水田の転作ということに対しての牧草転作というようなことが、私のところの転作の中で一番ウエートが高うございます。それが畜産農家とタイアップして、そういった牧草栽培ということに結びついたということが大きな支えになっておるように私は感じております。  以上でございます。
  45. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 北海道の乳雄から生産された牛肉が、アメリカ、オーストラリアの牛肉ともろに競争するということは御案内のとおりでございますが、自由化前の三年間どのような対策があり要望するのかという点でございますが、私ども生産者自体といたしましても、少なくともアメリカ、オーストラリアから輸入する牛肉よりも質のいいものを生産をすることによって、国内における消費者ニーズにこたえると同時に、その販売上の優位性を確保したいということで、現在少なくとも規格ではB3以上のものをつくるような努力を展開中でございます。  また、コスト低減によってこの難局を切り抜けたいということで、大変なコスト低減への努力をしておりますが、その第一点は北海道のやっぱり広い土地を生かしての大規模化。現況におきましても、乳雄についてはその一一%の農家で三百頭以上の生産農家が多いわけでございますが、それが全体の七〇%を占めるということになってまいりますと、今後といえども北海道においては規模拡大によるコストの低減、生産性の向上ということを最大の目標にしていかなければならない、このためにいろんな問題はありますが、そのように考えております。そして、この三年の間特にお願いしたいことは、今の事業団が持っている機能を十分に果たしていただくことだと。このことによってこの三年間を切り抜け、その間に自由化に向かっての体質をつくっていきたい、このように考えております。
  46. 島津正

    参考人島津正君) 先生の御指摘のとおり、確かにもう六十二年の四十三万円の子牛をもって一年半後、二年後に合うかという御指摘、私も懸念している一人でございます。それが、今現在では御承知のとおり、円高によりまして飼料価格が非常に下がってきていたというような問題で辛うじて支えられているということが考えられますけれども。ですから、私が回って見ます限りにおきまして、そういう経営の場合には必ずしも四十三万というような高い和牛子牛ばかりじゃなくて、最近御承知のとおり、ホルスタインに黒牛をつけましたF1等が大分出回っております。ほとんど我々外見から見ますと、もう全く見分けがつかないような真っ黒な牛で、斑点もほとんど出ないようなものも出ておりまして、そういうものを巧みに利用するとかあるいは乳雄を含めるとか、そういう形をとりまして肥育経営全体における素牛価格を少し下げながら考えているという、上手な経営はそういう対応をしているということでございます。  幸いにいたしまして、現状では余り卸売価格が、和牛の場合はそう下がってないものですから、それがどこまで続くかということでございまして、輸入の実際の自由化の六万トンというのが入ってきた段階の影響というものを私も先生と同じように心配している一人でございます。  以上でございます。
  47. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 結構でございます。
  48. 下田京子

    ○下田京子君 参考人の皆さん御苦労さまです。共産党の下田でございます。  四参考人方々からお話を伺っておりまして、本当に私はこれで、この法律日本酪農畜産等が発展し農業に希望が持てるんだろうか。改めて心配しております。  まず、佐々木参考人に二点お聞きしたいと思うんですけれども、先ほど今回の自由化について農家の皆さんはどういうふうに受けとめておられるかというのに対して、まさか自由化はしないと信じ切っていた。にもかかわらず、いかがだと大憤慨をされているというお話がありました。私は全くその気持ちをそっくり受けて、とすればアメリカ、ECも含めて自分の国の酪農畜産等はしっかり保護しているわけです。にもかかわらず、日本の場合には自由化に合わせた今回の法改正というのは、まさに後ろ向き対策ではないかと私は言わざるを得ません。そういう観点で大事な点は、肥育農家繁殖農家も消費者にとっても本当にいい制度というのは考えられないんだろうか。自由化ということについて、日米の二国間で政府同士が決めたからやむを得ないという立場で本当にいいんだろうかということなんです。  その点で、佐々木参考人に二点聞きたいんですけれども一つ繁殖農家生産費を償う水準というものをきちっと考えてくれ、こういう御要請がありました。とすれば、そういう法律の内容にすべきではないでしょうか、法案修正もできるわけですから。特に心配なのは、参考人が合理化目標の問題については、これは長期的な言ってみれば目標というふうに受けとめている、将来展望と理解していると、こういうふうにおっしゃられましたけれども法律事項で言えば合理化目標価格は牛肉の国際価格の動向を見てと、こうなっているわけですね、決めるとなっている。しかも、酪農等の基本方針では昭和七十年までに二、三割のコストダウンを図るんだ。だから、そういうところに張りついていくわけです。それを基準にした保証基準価格というもので一体繁殖農家はやれるんだろうかということなんです。  それから肥育農家についても、法律上肥育農家子牛合理化目標価格水準で買えるというような保証はどこにも明記がされていないんです。私ども共産党は修正案を準備して、衆議院等の会議録もお読みいただいていると思うので、既に御理解いたたけておるというふうに承知しているんですが、本当に繁殖農家のことを考えれば一定の生産費に見合うということになれば、少なくとも現在私どもが考えるにはざっと和牛で三十五万、それから乳牛で十七万程度必要ではないか、いかがかという。  それからさらに、肥育農家の場合なんですけれども、肥育農家のやっぱり現時点ですからね、将来の話じゃないんです。現時点で言って、どの程度の価格なら肉牛の生産コストを安くして消費者においしくていい肉をやれるかということを考えますと、和牛で二十万程度、乳牛で十万程度。ですから、合理化目標価格というのではなくて、子牛安定供給価格というようなものを考えてしかるべきだ。財源はといえばそれぞれの生産者の補給金積み立てもありますでしょう、関税の特定財源化の問題もありますけれども、一般会計からの繰り入れということはあってしかるべきじゃないか。そういう点で繁殖・肥育農家の今後の価格水準について聞きたいと思います。その点です。繁殖農家の問題と肥育農家の問題、佐々木参考人に。  それから次に、高橋参考人ですけれども、今回の政府案については乳雄のぬれ子が対象に入っていません。ぬれ子が買いたたかれるおそれはないんでしょうかと思うんですね。 政府は買いたたかれるのが嫌だったら酪農家が肥育、乳肉一貫経営をやればいいんだと、こういうことを言われておりますけれども、先ほどは保証乳価の際に考えろとかいろいろございました。この乳肉一貫経営ということが、今現在酪農家の家族労働力の現況だとか、負債の現況からいって普遍的に実現が可能なんだろうか。これが一つです。  それから、二つ目には負債対策問題です。本当に先ほど数字を挙げてお話しになりました。もう長期低利で、先ほど佐々木参考人の方からは金利の引き下げを思い切ってできれば二%程度というお話ございましたけれども、そういう金利の引き下げと長期化ということとあわせて、北海道はもう本当に規模拡大してきているわけですね。ですから、現在の規模拡大の中でも負債がもうどうにもならないわけです。そういう状況の中で本当に今の国際価格と太刀打ちしていくという点でやれるんだろうか。北海道という、今既に規模拡大をずっとやってきた中での新たな負債対策というものをもうちょっと率直に聞かせていただきたい。これが高橋参考人佐々木参考人です。  時間がどうも危ないから四人御一緒に聞きます。  それで、次に土岩参考人にお聞きしたいんですが、確かにいろいろ御苦労されておること、よくわかりましたが、それでもなおかつ過疎と高齢化が進んでいる。そうしますと、しかもその畜産経営が町の中心産業でしょう。そういう中で、問題は輸入牛肉と本当に太刀打ちしていくことが将来的に可能かどうかという点で注目すべきは、私は商社や食肉加工、流通企業、こういった企業が企業経営でもってニュージー、豪州、アメリカそれぞれのところで青い目の和牛の逆輸入、長期間の肥育も含めてやっているというのが現実だと思うんです。そういうことについてどうするのかという意見を聞かせていただきたい。  同時に、やはり財源の確保の問題で、三年後の六十八年時点関税程度は維持してくれなんとこう言っておりますけれども、わからないわけですよ。維持されなかったらどうするんだという質問に対して、政府はもうそのとき考えるみたいな答弁も出ているわけで、とんでもないことで、法律をつくるときにはきちっとしたそういう財源確保がなかったら、特に過疎の町ではやっていけないと思います。だから、やっぱり一般財源からの繰り入れ等を思い切ってやっていただくということが必要ではないか。いかがでしょう。  それから、島津参考人にやはり二点なんですが、先生の本を少し読ませていただきました。大規模経営と零細な生産経営と二極分化が現実に起きているから両方とも大事にしていけ、こういうお話です。そこでしかし、その大規模層も含めて農民的経営をどうやって守るかというときに、今も申しましたが、牛肉の自由化とかあるいは日本企業の海外生産の動き、これをどういうふうに見るのか。これを抜きにして考えられるのか、これが一点です。  それから二点目が、負債整理の問題ですけれども、現在農用地開発公団等がおやりになっているのは、畜産基地の事業もサイロは百年だとかあるいは畜舎が五十年といった調子でかなり高くつくわけですね。ですから、事業費を軽くさせるとかいうふうなことは先生の御提言からいえば、例えば古材を使うとかなんとかという点から全く違うので、現行制度についての御提言等ももうちょっと突っ込んでお聞かせいただきたい。  以上、よろしくお願いいたします。
  49. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 時間の関係上、簡略に答弁お願いします。
  50. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) それでは、先生の御質問にお答え申し上げます。  繁殖農家がどう考えているかという部分でありますが、先生の御質問の中にもありましたように、生産者と消費者がありますと同様に、この牛肉関連にも繁殖農家と肥育農家があるという、そういう私どもは実は内部矛盾を含みながら対応しておるというのはそのとおりでございますが、そういう中で私どもは、今回制定されようとする法案に対しまして再三お願い申し上げましたように、それこそ保証基準価格に対しましても「再生産を」という言葉が使われておりますが、これを厳密な意味でひとつ対応していただきたいというお願いを申し上げます。それから、合理化目標価格でございますが、この中には生産費配慮するという字句がございますので、これもそのとおりひとつ御検討を賜りたい、かように思う次第でございます。  それから、負債対策に関しましては再三申し上げましたから、ひとつお許しを賜りたいと思います。  以上、終わらしていただきます。
  51. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) ぬれ子が、今度の不足払いに入っていない点についてはどうかということでございますが、それは私どもは少なくとも酪農家立場では、ぬれ子も不足払いの対象にしていただきたいということで強い要請をした過程がございまして、むしろ酪農家は一貫してぬれ子を対象にしてほしいという要請を続けて、結果的にならなかったわけでございます。  乳肉一貫経営が可能かどうかということについては、これは私は、私営身も酪農家でございますが、乳肉一貫経営をやっていく上での一番大きなネックは、現在の子牛価格が育成期間中に低落しないかというようなことが極めて心配なために、しかもぬれ子の価格は高ければ高いほど一貫経営になり得なかった要素がございますが、今回は一貫経営の中で不足払い実施される、酪農家の中でもその不足払いがもらえるということになってまいりますと、一貫経営がやりやすくなったあるいは乳肉複合経営がやりやすくなったということは言えるだろう、そのように考えております。  負債整理については先ほど申し上げましたが、長期、低利、このように考えておりますし、少なくとも北海道の大規模経営に対しては、新しい資金政策の中で私どもは無利子あるいは無利子に近いものが融資されることを期待いたします。
  52. 土岩勲

    参考人土岩勲君) 大変何といいますか、高度な御質問でございまして、私どもの現段階の頭ではなかなか適切なお答えにならぬかと思いますけれども、やはり今後の自由貿易関係は、畜産のみならず一般的なことにもどんどん押し寄せてくることだろうと思っております。ただ、畜産だけが孤立するようなことでは、やはり世界の中の日本ということにはならないという大きな立場で考えなければいけないと思います。  また、ミクロ的な考え方かもしれませんけれども、私どもの地域社会の経済を守っていかなきゃいけないということの、いろいろこう板挟みになって考えておるところでございまして、これらにつきましては私は十分わかりませんが、先ほど上杉先生のおっしゃいました最後の言葉の中に、やはり自由民主党並びに政府は、今後の畜産に対しては十分配慮していくんだというお言葉がございまして、これはただ単に畜産価格安定のみならず、普通の一般的に言えば国土保全のためにも大きな支えになっているという観点から大いにやっていくんだという力強いお言葉を、私どもまた信じていかなきゃいけないとこういうように思います。  それから、関税の関係等につきましては、これは特定財源ということのようでございますので、私ども特に特定財源をこれのみに使っていただくようにひとつぜひお願いしたいという考え方でございます。  以上でございます。
  53. 島津正

    参考人島津正君) 時間がないので十分答えられないと思います。  私も先生と同じように、やはり産業として確立し得るような経営をどう育成するかというようなことで、そこで私もコストの低減というようなこと、そしてそれも先ほど先生おっしゃった子牛三十五万というものも、これ一貫するとそうなると思いますけれども、二極に分けて考えますと、本当にコストダウンができるような経営もあり得るというふうに考えておりまして、そのためには、それはやはりその地域においては局部的な存在でしかないというふうに思います。しかし、そういうものもやっぱり育てながら国産牛肉というものをふやしていくということを考えるということでは、今後進めなければならない点だというふうに思っております。  それから、負債問題につきましては、御指摘のとおり私もあっちこっち回っておりますけれども、いろいろ制度資金あるいは補助金等もらった場合には、枠があってここは鉄骨にしなきゃいけないとかなんとかというような問題がございますので、それが非常に大きな負担になっていることは事実でございます。先生のおっしゃるとおり優秀な農家は、そういった補助金なしで融資を受けて自分の思うとおり古材等を使ってやっていくというような経営を積極的に進めている経営は、これはもう本当に私がよく申します負債限界なり、投資限界というものをしっかり押さえながらやっていくというようなことでやっております。  北海道の若い青年でございましたけれども、生活費も切り詰めながら据置期間も積み立てをしてというようなことをやりながら、私がびっくりしましたのは、五年間に約三千万返したという青年があったということも非常に勉強させられた点だと思います。  お答えになったかどうか、ちょっと時間がございませんので簡単にいたしました。
  54. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 参考人の皆様、大変ありがとうございました。  今までいろいろ質疑を交わされましたし、持ち時間も少のうございますので、落ちこぼれを拾って御四名に次のことをお尋ねいたしたいと思います。  まず、その前に自由化の問題を、まあみんなが動揺しておられるという前提に立ってそれを仕方がないとするのか、そこには問題があるのですが、ただいまはその問題は触れません。  それで、佐々木参考人に次のことをお尋ねしたい。  畜産農家老齢化の問題と後継者の問題、これはあらゆる職種でも後継者の問題は問題になっておるわけでありますが、特に畜産農家立場からの問題をお尋ねしたい。  それから土岩参考人に、特に自由化に動揺しておるというお言葉がございましたが、畜産公社の運営状況との関係はどうなっておられるでしょうか。  次に、高橋参考人にお尋ねしたいことは、北海道の酪農現状と今後の見通しについてはよく承りましたが、特にお尋ねしたいことは、円高とドル安がどのように影響しておるのであるか、もし具体的なことがお聞きできましたらお願いいたしたい。  次に、島津参考人に対しては、一つ日本畜産のお医者さん、獣医ですね、獣医の数と畜産の需給関係の現状がどうあるべきか。また、どうなっておるか。  第二点は、沖縄の畜産に対する御見解を、特に沖縄は今熱を上げておりますので、先生の御専門のお立場からの御見解を承りたい。  以上でございます。
  55. 土岩勲

    参考人土岩勲君) 畜産公社の関係についてというお尋ねだったと思いますが、これは開発事業団ということではないかと理解をいたしております。これらについては公社自体、開発事業団等もいろいろ御協力いただいておられるようでございますけれども、現在時点においてはいろいろ経営苦心等もなさって現状の方ではやや状態がいいように承っておりますので、私どもとしては、これらについては今後もやはり大いに事業団としての御活躍をお願いいたしたいというように思っております。  以上でございます。
  56. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 端的にお答えいたします。  今の円高ドル安では、酪農あるいは肉牛経営のかなりのコストの部分を占めます穀物が非常に安く入ってくることによってかなりのコスト低減につながっていることは事実であります。しかし、また一方では、海外から輸入されております乳製品がその分だけ安くなるわけでありますから、この点については乳製品の価格競争力がかなり弱くなっている、こういうことも事実でございます。  以上です。
  57. 島津正

    参考人島津正君) 私の大学の関係から、まず最初の第一点の獣医の問題でございますけれども、大体三万人くらいだそうでございます。そして、最近の獣医の学生の就職先等を見ますと、地方の県等では獣医さんが足りないというようなことで要望がございますけれども、大体において不足していないというような傾向にあるということでございます。どっちかというと、獣医の卒業生の場合には、いろいろの薬品会社等々の就職の方が最近は希望が多いというような傾向でございます。  次の問題、私もたまたまここ数年、沖縄を集中的にいろいろ調査させていただきました。はっきり申しまして、沖縄の場合砂糖もパインもだめという中で肉牛という問題に対する要望というか、希望は非常に高いわけでございます。その意味で、石垣島あるいは黒島その他いろんな地域を回らしていただきましたけれども、あそこの場合には、幸いにして周年放牧というようなことが可能でございます。それで、暑い中でもきめ細かく発情の発見等をやって生産率を何と九八%も上げていらっしゃるという経営もございまして、その成果が、子牛一頭の生産費が七万六千円、その他の方も十万円、十五万ぐらいで上がっていらっしゃるということで、これを続けるならば決してオーストラリア、ニュージーランドに負けないような足腰の強い肉用牛繁殖経営ができる。また同時に、石垣島においてもパナリー牧場で繁殖・肥育の一貫経営もやっております。そういった経営も今後十分に育てていってもらえば、沖縄の肉牛を中心にして沖縄の活性化というものが図れるということで、今後も私も研究を続けたいと考えております。  以上でございます。
  58. 佐々木國雄

    参考人佐々木國雄君) 先生おっしゃいました高齢化と後継者の問題でございますが、これは確かにただいま私ども農業内部の最大の課題でございます。ただし、ストレートに申し上げますと、肉用牛なり酪農なりを本当に若い者が喜んでやれるような産業に育成していただきませんと、後継者は育ちませんという一言を申し上げます。
  59. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 まず最初に、持ち時間の関係で全部の参考人の方に御質問さしていただくことができませんのでお断りをいたします。  土岩参考人高橋参考人にお尋ねをいたします。  肉用子牛の異常高値が指摘されております。私は、この夏から秋にかけて但馬牛の産地の一地域で調査をいたしました。九日の中の平均価格は一頭四十七万円でした。再び十一月の市の前日にある生産者の家庭を訪ねました。三匹の子牛がきれいにされて前庭につながれておりました。幾らぐらいを御希望なさっているんですかということを御主人にお尋ねいたしましたら、五十万円くらいでとのことでした。後日、結果を確認いたしましたところ、一頭は六十万円、一頭は五十五万円、一頭は五十二万円、そしてその日の市の平均価格は五十二万円であったということで生産者も驚かれるような異常高値でした。  高橋参考人は、いつ急落があっても不思議ではない旨の不安の御表明がございましたが、自由化による先行き不安の中で、なぜこのような異常高値が出てまいりますのか、御見解をお教えいただきたいと思いますのと、さらに生産者は、これでは肥育農家がもうからない、肥育農家があっての生産農家である。したがって、例えば四十万円でもよいから安定して長続きしてほしいとの願いでありましたが、大変難しいことだとは思います。政策的にこんなことができるのかどうか、よいお考え方がありましたらあわせてお答えをいただきたいと思います。  以上です。
  60. 土岩勲

    参考人土岩勲君) 先ほどの御意見のように、私どものところも、ごく最近の市場の、私の佐田町での子牛の出荷の平均価格は五十五万円余りでございます。非常に高値で本当にびっくりしております。ですが、その反面、これがいつまで続くだろうかという大きなまた不安もございます。  これの原因が、私は本当はわかりませんけれども、私見的な考え方から申しますと一つには、輸入牛肉はまあ三年先だといいますが、もう間近に迫っておりますけれども、やはり良質の志向というものが非常に一般的に行き渡っておるのじゃないか。やはりいいものが高いんだ、こういうことで、良質の肉の今後非常に需要が伸びるということからその購買客が非常に多いのじゃないか、こういうように思います。  もう一つは、今回のこうした価格安定対策についてのいろいろな施策の片りんがだんだんわかりつつあって、何かひとつ不安もありますけれども、また一つはそういうことが一つの気持ちの支えになっておるのじゃないか。  そういう二つの理由から、非常に異常高値ですけれども、この価格が果たして今後維持できるというような理解は一般的には余り持っていないのじゃないか。これを警戒しながらも、非常に喜びながら今市場管理をしておるというのが実態だと思っております。  以上でございます。
  61. 高橋節郎

    参考人高橋節郎君) 先生から御指摘のように、かなり高い肉牛の価格で推移しているわけであります。北海道の乳用牛について申し上げますと、基準価格が現在十三万四千円でありますが、取引価格は約二十万円でございまして、乳雄の場合にはそう極端な値開きがないということでございます。ただ、ぬれ子の価格が三年後、自由化決定後、ことしの八日ごろに十三、四万のものが八万五千円程度まで一回下がりました。さらにまた、今十一万円ぐらいまで戻っているといいますか、私どももこれがどういう原因なのかということについてはなかなか定かでないと思っているわけでございますが、四年前にあの日米の自由化があるのではないかという風評の中で価格が暴落したことを考えますと、今回の三年後自由化に向かいましては大丈夫だ、心配するなというようなことと、そういう政府あるいは先生方の大変な御支援があったことと、日米交渉の結果かなり政府としても突っ張って相当の成果を上げているというようなことや、あるいは今度の二つの法律、新しい法律の制定やあるいは畜安法の改正等によってそういう作業を現在進められておることによりまして、酪農家あるいは畜産農家が、肉牛農家がこれから安心してやれるのではないか、こういうような気持ちのあらわれで現在の高値水準が続いているものと、このように理解しております。
  62. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 終わります。
  63. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑は終わりました。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただき、有意義な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  どうもありがとうございました。    午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  64. 福田宏一

    委員長福田宏一君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案肉用子牛生産安定等特別措置法案、以上両案を便宜一括議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  65. 一井淳治

    ○一井淳治君 ウルグアイ・ラウンドの中間レビューで、農林水産大臣もこの後御苦労いただくというふうに聞いておるわけで、私どもも頑張っていただきたいという気持ちでいっぱいでございますけれども、この中間レビューの中で、日本の米の輸入の問題あるいは日本農業に直接強い影響を及ぼすような問題がアメリカその他の外国の方から議論のテーマとして出されるような見通しがあるのかどうか、その見通しについてまずお尋ねいたしたいと思います。
  66. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 何かと当委員会には御心配をかけておりまして申しわけございません。  ただいまお尋ねの、モントリオールでは農業を含めた三つの分科会というか、グループに分かれての詰めがある程度行われるように聞いております。しかし、米についてということもお尋ねでございますけれども、再々申し上げておりますように、去年の四月以来、我が方で申し上げていることは、米を含む農産物について各国が抱える困難な問題を俎上にのせて、そして議論するときにはその議論から逃げるようなことはない、整々たる議論をいたしましょうと、こういうことで言っておるわけでございます。特に、おっしゃられるように米は重要な我が国の農産物でございますから、従来の国会答弁あるいは我が方の主張、これを整々と主張すべきときには主張するという考え方には変更はございません。
  67. 一井淳治

    ○一井淳治君 アメリカその他の外国から、お米の問題について何か具体的な議論として出してくる見通しがあるのかどうか、その辺はいかがでございましょうか。
  68. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 私どもの申し上げていることが極めて常識的であるかどうか、どういう評価を受けているか、さまざまであろうかと思います、国外におきまして。しかし、私は極めて常識的に物を考えそして丁寧に運んできたつもりでございます。今のところ、今おっしゃるようなことで具体的に相談をかけられていることはございません。
  69. 一井淳治

    ○一井淳治君 もし、大臣が米の問題について御発言なさるという場合でございますけれども、米の自由化はしないという国会決議もあることでございますので、整々とか粛々というのではなくて、最後は国の主権を発動してでも日本の米を輸入から守り抜くという強い態度で発言をお願いしたいというふうに思うわけでございます。特に、米の自由化の問題につきましては、米の部分輸入は自由化反対決議とは矛盾しないんだという理解もごく一部にはなきにしもあらずだと思いますけれども、私はそういったふうな考えは違うと思いますが、米の部分輸入についての御見解も含めまして、これは従来、例えば沖縄あたりでは、あれはお酒の原料としてごく少量外国のお米が入っております。そういったこれまでの少額の輸入は別といたしまして、米の部分輸入も含めて自由化反対の方向で、強い態度で臨むということをひとつ大臣の方からお聞かせをいただきたいというふうに思う次第でございます。
  70. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 米の重要性はもうここで申し上げるまでもございません。私どもといたしますと、まず国権の最高機関で決議をされた、それを十二分にそんたくをするということで、私がかつては政府を代表して所信を申し上げ、お答えを申し上げたとおりでございます。米を自給する方針には変わりございません。  そういう意味で、国内には一部報道されるところによればいろんな意見があることは承知をしながらも、国会におけるその御決議、それから我々が取り組んできたその方向、これは曲げないというつもりで私は整々たる論議をするときにはいたしますと、こういうことを申し上げているわけでございまして、米だけ抜いて議論しようと言われてもそういうわけにはまいりません。
  71. 一井淳治

    ○一井淳治君 大臣に、この点ひとつ念を押してお尋ねしたいんですけれども、最後は主権の、国には主権がある、この主権を発動してでも日本の米を守るというお考えなのかどうか。私はそういうお考えで大臣おられるというふうに確信しておるんですけれども、そのあたりのことについてお聞きしたいというふうに思います。
  72. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 私、従来もこの場でお答えをしたかと思いますけれども、私が牛肉・かんきつの交渉を進める中におきまして、主権とは何ぞやと自分自身が考えさせられた場面もございました。私は、そういう意味においては、事務レベルで交互に、相互主義にのっとって懸案の処理に当たってきた。閣僚折衝になると必ず出かけていくということはいかがなものであろうかなということも私自身考えさせられた具体的な内容でございます。しかし、そうあってはいけない。国家主権というものはやはりはっきりさせなければならぬ。こういうことで、その姿勢において国家主権を守るために私なりにやってきたつもりでございます。  米の自由化要請というか、そういうことにつきましては甘過ぎると言われるかもしれませんけれども、主権論議までに触れて申し上げなくても、先ほど来私が冒頭お答えしておりますように、どう評価するかは、海外での評価はいろいろあろうかと思いますけれども、私自身としては極めて常識的に、丁寧に運んできたつもりでございますから、それはだんだんと理解が深まっておるものと期待をいたしておるところでございます。
  73. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、立木の相続税の問題についてお尋ねをしたいと思います。  農家方々が所有しておられる農地に対する相続税でございますけれども、こちらの方は遺産の評価を非常に低額に見積もるということが法制上可能となっておりまして、優遇されておるわけでございます。ところが、この立木の方は、これまでいろいろ特例をお考えいただく努力をしてくださっておるわけでございますけれども、なかなかそうはいかない。林業は木材の輸入が自由であるために大部分が赤字経営でございます。しかも、木が大きくなって処分が可能になるまでに五十年も六十年もかかって、相続が二回も行われるというふうな状況であるにもかかわらず、相当高額な相続税の支払いをしなきゃいけない。そのために、山林を処分したりあるいは山林の細分化が行われまして、林業経営上も非常に好ましくない状態が起こっておるというふうに思います。  農地と比べまして森林の公共性、公益性というものは非常に大きいと思いますので、立木に対する相続税について大幅な優遇措置を御検討願わねばならないというふうに思いますけれども、この点いかがでございましょうか。
  74. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 林業の相続税につきましては、御指摘がございましたように、森林の生育期間には大変長期間を必要とする、あるいは林業が支えております森林につきましては国土保全を初めとする各種の公益効用があるということで、これまでも相続に当たりまして立木の評価をその時価の八五%とする。また、森林施業計画に基づきます計画的な施業の場合におきましては、立木につきまして二十年以内で延納ができる、さらには保安林につきましては、伐採制限の程度に応じまして二割から七割の評価の軽減がなされるといったような形での軽減措置が講じられてきているところでございます。  六十二年度の税制改正におきましても、立木の評価の基準を改めまして二割程度軽減をすることにいたしております。また、森林施業計画に基づきます延納の場合の延納の利子税につきましても、それまでの年四・八%から年四・二%に行う等の措置を講じまして、相続税の軽減を図ってきているところでございます。  これも、先生御指摘がございましたように、伐期が八十年とか百年に及びますと相続税を二回支払わなければいけない、こういったような事態にもなるわけでございまして、それらに対する森林所有者からの要望も非常に強くなってきておりますので、それらを踏まえた中で軽減措置につきまして今後とも検討してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  75. 一井淳治

    ○一井淳治君 延納にいたしましても、また来年度の税制改革に向けて、二回払う相続税を一回で済ませるといういろんな御配慮があることはわかっておりますけれども、しかし納めるということは変わりないわけで、やはり納める額を大幅に低減していただく、二回目の相続税でなくて一回目の相続税の方を大幅に低減していただくための御努力をさらにお願いしたいというふうに思います。  それからもう一つ、最近刈り払い機とかチェーンソーなどの林業の機械におきまして使用説明書を見ますと、精神病の者は機械作業に従事しないこととかあるいは精神病の人は作業に従事しないこととか、そういうふうなことを使用説明書に堂々と書いているというふうなことが少なからずあるように私見聞しているわけでございます。これについては、やはり是正していただかなければならないと思います。御指導いただきたいわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  76. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 林業労働は、非常に過酷な条件の中で機械等を使うわけでございますので、その安全性につきましては十分意を払わなければならないところでございます。メーカー等で、それぞれの機械につきまして取扱説明書等を出しているところでございますけれども、作業上の注意事項として、若年者、当該機械の知識のない人には使用させないでくださいといったような方向で指導するということを聞いているところでございます。林業機械そのものにつきましても、一部メーカー等にそのような表現があるとするならば適切を欠くということが考えられますので、それらにつきましては注意をするように今後とも指導をしてまいりたい、このように考えております。
  77. 一井淳治

    ○一井淳治君 それからもう一つ、障害者の雇用でございますけれども、御承知のとおり法律上、障害者の雇用の促進等に関する法律によりまして雇用率が法定されておるわけでございます。ことしの五月二十四日のこの委員会でも私お願いをしたわけでございますが、全国の農協の平均的な雇用率が法定の雇用率より相当低いわけでございます。現在、内外ともに農協は非常に厳しい状況下で御苦労なさっているということはわかるわけでございますけれども、しかし農協が地域で果たしている公共的な役割というものも決して忘れてはいけないというふうに思うわけで、やはり農協におかれましては、身体障害者の法定雇用率を守るという御努力が必要ではないかというふうに思うわけです。  五月二十四日のこの委員会では、労働省とも連携をとりながら農協を指導するという答弁をいただいたんですが、恐らく御多忙だからなかなか指導ができないんじゃないかという気がしますけれども、できておればできておるということを聞かせていただきたいし、できてなければ年内にはひとつ強力な指導お願いしたいと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  78. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 今お話がございましたように、ことしの五月の当委員会の場で、先生の方から農協における身体障害者の雇用の促進についての御質問がございまして、そのときにもお答え申し上げたわけでございますが、六十二年の六月一日現在で身体障害者の雇用率は、一般の民間企業では一・二五%でございますが、農協の場合は一・〇七%ということで平均を下回っていたわけでございます。  御質問がございましたこともございまして、私どもは国会の質問のございました春以降、各地方農政局ごとの県農協指導担当者会議を開いているわけでございますが、そういった場を活用いたしまして、身体障害者の農協における雇用の促進に一段と努力をする必要があるということで指導を行ってきております。また、全国農協中央会を通じまして、直接農協にその協力方を呼びかけて指導に努めているところでございます。それらの指導成果を現時点できちっと数字でまだ把握をいたしておりません。先ほど申し上げた昨年の六月一日現在の数字しか現在、私どもは把握をいたしておりませんが、できるだけ早く一番最近時点での数字を把握して、さらに必要があれば指導に努めるということで取り組んでいきたいと思っております。
  79. 一井淳治

    ○一井淳治君 どうも失礼な質問をいたしまして申しわけなかったと思います。引き続きそういうことで御努力をお願いしたいというふうに思います。  それから、場外馬券売り場に関連してお尋ねをさせていただきますが、岡山市の新福で株式会社日隈という会社が、日本中央競馬会の場外馬券売り場を設置するという目的で建築工事が現に進行しているわけでございます。そういったふうな状況が出てきておりますので、農林省の御見解が変更があったのではないかという心配の声もあるわけで、これは改めて確認の意味で御質問をするわけでございますけれども、競馬会の場外馬券売り場の新設の要件とすれば吉国答申がございまして、その中で「地域社会との調整を十分に行うこと。」、すなわち地元の同意が必要だということが新設の要件となっておるわけでございます。そしてまた、岡山市新福での日隈の企画につきましては、承認申請が出てくる状態にあるとは考えないという御認識をたびたび農水省の方からお聞きしておるわけでございますけれども、これについて変更があるのかどうか、その点をまず質問いたしたいと思います。
  80. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) この問題については、たびたび先生からお尋ねをちょうだいしておるわけでございますが、最近時では、先々月の十八日の本委員会におきまして私ども考え方を申し上げておるところでございます。その私ども考え方については、現時点においても何ら変更をしておりません。
  81. 一井淳治

    ○一井淳治君 仮にも、このような不幸なことは考えたくないわけでございますけれども、仮に建築工事が完了してしまって建物の外郭が完成してしまう、そういったことがないことを私は祈っておりますけれども、そういう場合にも馬券売り場の新設の要件が整わない限りは場外馬券売り場の新設は許可されない、幾ら既成事実をごり押ししてつくっても、新設の要件が整わない限りは許可はされないというふうにお聞きしていいでしょうか、どうでしょうか。
  82. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のとおり、中央競馬会が場外馬券売り場を設置する場合には、農林水産大臣の承認を受けなければいけないことになっております。また、承認の申請に当たりましては、先ほど先生の御指摘にもございますように、地元社会との調整が十分に行われたという条件が整えられていなければいけないという要件がございますので、今日の状態のもとでは建物がどうなるかということとは別に、地域社会との調整が完了しなければ申請が出てこないというふうに私ども再三申し上げておるとおり認識をしておりますし、中央競馬会もそのような問題については十分認識をしておるというふうに理解をしておるところでございます。
  83. 一井淳治

    ○一井淳治君 地元では、日隈の役員さん方が新設の許可がおりなかった場合には、建築中の建物でうどん屋でもするかというふうなことを言うなど、非常に正常を欠く状態になっているわけでございます。競馬会の方に、本当に建築をしないように指導をしているのかということをお尋ねいたしますと、競馬会のお話では工事の強行などしないように指導していると。念を押しているんだけれども、日隈は聞いてくれない。日隈があくまで自分の責任でやるんだということを言うので、強制ができないので物別れになっている、そういう趣旨の回答をいただいたわけでございますけれども、それが実際なのでしょうか、どうなのでしょうか。そしてまた、こういうむちゃなことがないように適切な指導をしていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  84. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 現地の状況といたしまして、先生お話しのような状況がありますことを私どもも仄聞をいたしております。残念ながら建設工事そのものにつきましては、農林省あるいは中央競馬会として強制的にこれを差しとめるという権限を有していないところでございます。  ただ、場外馬券売り場設置の、必要欠くべからざる要件として予定をされております地域社会との調整という問題が解決されない限り、そういった目的が実現されないという状況にもかかわらず、既成事実が積み重ねられるということについて地元側として大変悪印象を持っておられる、あるいはまた事態が混乱をするという懸念を抱いておられること、いろいろな機会に私どもも伺っております。  したがいまして、そういう私ども考え方というものを十分中央競馬会に伝えまして、地元におきまして無用の混乱を生ずることのないよう、関係業者に対する指導も行うよう中央競馬会に指示をしておるところでございます。中央競馬会としても、この関係業者に対しまして慎重な対応をすべく再三にわたって要請をしておるという報告を聞いておりますけれども、今後引き続き事態の推移を見、適切な状況というものが確保されるように、私どもも中央競馬会に督励をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  85. 一井淳治

    ○一井淳治君 今後とも、建築の強行ということをとめていただくように御指導お願いしたいというふうに思います。  次に、質問を変えさせていただきますけれども、今後輸入牛肉が毎年大幅に増加していくという中で、日本人の牛肉の消費がふえていくことが当然予想されます。厚生省の考え方などを聞きますと、現在の日本人の食生活のバランスは相当よく調和がとれている。そこで、動物性脂肪についてはこれ以上増加しないことが望ましいというふうなことも聞いております。農業政策、食料政策につきましては、基本的には国民の摂取すべき栄養とそれに必要とする食料をまず考えて不足するものは食べてもらう、とり過ぎの物は控えてもらうという立場に立つ必要があるものと思います。  そして、牛肉の摂取が今後増加すると思いますけれども、牛肉の消費拡大のPRに当たりましては、例えば赤身を薦めるとか、動物性脂肪のとり過ぎの弊害については率直に栄養指導をするとかあるいはお米の消費拡大、水産物の消費拡大も忘れずに、強力に進めるなど、バランスのとれた栄養をとって国民の健康が確保されるような方向で指導をいただくということが必要ではないかと思いますけれども、そのあたりのことはいかがでございましょうか。
  86. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) お話ございましたように、牛肉につきましては最近大変国内需要が伸びてきておりまして、好みの問題でありますとか、栄養上の問題等も踏まえて、消費者サイドにおいて適切な選択が行われていくであろうというふうに私ども基本的には考えておるわけでございます。  ただ、伝統的に見ますと、牛肉に限らず食肉の消費の我が国における歴史というものは、西欧諸国に比べますと大変短うございます。部位別の料理方法でありますとかあるいは他の食品とのバランスのとり方等について、いろいろまたこれから啓蒙あるいは指導をしていくべき点も多々あろうかと考えております。そういった中で、他の食品と牛肉その他の食肉を含めた全体としての食品構成というものが、健康保持の上で適切な状態で発展をしていくということが必要であることは申し上げるまでもないわけでございますけれども、これが具体的に、個々の消費者にとってどういう形であるべきかということを行政的に云々していくということは、大変難しい問題がございます。  食品別の、何といいますか、特徴はいろいろあるわけでございますので、正しい商品知識をお持ちいただくようないろいろな啓蒙、指導、さらにはまた個人別のいろいろな好みの問題等々もございます。そういった中で、総体として適正な構成を持った食品構成が保持をされていくということが必要であると思います。  ただ今日、牛肉を含めました食肉全体、動物性たんぱく質なり、脂肪の摂取量の絶対量自体というものは、諸外国に比べますとまだかなりの低水準である。体位の違いもございますので、すべて西欧並みというわけにはいきませんけれども、歴史的、伝統的に形成をされてきております各消費者の嗜好、そしてまた健康上の問題に対する配慮、そういった要素を踏まえて、消費者、国民一般の皆さん方が適正な食品の選択をしていけるような、いろいろな指標なりあるいは知識の普及について関係部局ともよく相談をし、適切な消費を誘導していくように心がけてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  87. 一井淳治

    ○一井淳治君 農林省と厚生省の立場の違いということもあるかと思いますけれども、農林省とすればややもすると輸入牛肉については消費拡大と、そして国内の牛肉生産業者を守るためにやはり牛肉の消費拡大ということに力が余りにも集中し過ぎる。そうなってはいけないので、もちろんおいしい牛肉を国民に食べてもらうということは、国民の希望でもありますからいいことなんですけれども、その結果例えば心臓病が多くなるとか、動脈硬化の人たちがふえて、医療費の赤字がますます拡大するというようなことになっては非常に不幸ではないかというふうに思います。 やはり国民の健康ということを考えていただきまして、また参議院の予算委員会で、古いことですけれども、五十九年三月二十二日の議事録を見ますと、十代、二十代の若い人たちのコレステロール値が米国よりも高い値になっているということで、首相が、今後よく啓蒙していかなくちゃならないということも発言をしておられます。つくるだけではなくて国民の栄養、国民の健康という立場もあわせ考えながら農政を推進していただきたいというふうに思います。  次に、牛肉の輸入拡大、そして自由化が進むという中で一番影響が大きいのは肥育農家の人たち、特に乳牛を飼っておられる農家ではないかというふうに思うわけでございますけれども、そういった人たちの保護育成、あるいはコスト低下対策はどのように進められるのかということについてお尋ねしたいと思います。  特に、肥育農家につきましては、やはり頭数拡大ということがコスト低下のためには一番大事ではないかというふうに思います。 牛を実際に大きくして売るまでには相当の時間がかかる、一年数カ月もかかるわけでございますけれども、その間の資金繰りができないために、どうしても牛の頭数拡大は難しいという現実があるというふうに思います。そういうことで、運転資金等の問題も含めましてコスト低下対策、肥育農家の保護育成の方針についてお尋ねをしたいと思います。
  88. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 牛肉についての国内需要、御承知のとおり相当のテンポで増加をしておるわけでございますが、そういった状況も踏まえて、国内対策あるいは所要の国境措置もとることを前提にして、牛肉輸入の輸入枠撤廃というスケジュールを現在私どもとして考えておるわけでございます。  その中で、輸入量の増加あるいは輸入価格の低下ということを通じて直接的な影響を受けるのは、肥育段階、御承知のとおり肉用牛生産繁殖段階と肥育段階に分かれて進められておるわけでございますが、基本的に直接的な影響をまず受けるこの肥育段階についての対応、やはり基本生産コストの低下と低減ということであると考えておるわけでございます。その場合に、私ども肥育コストの多くを占めますのは肥育素牛価格の負担が大変大きいということもございまして、今回御提案を申し上げております法案等を通じまして、より安い価格で肥育素牛が肥育農家に供給をされ、肥育過程そのものの合理化とあわせて、より低コストかつ良品質の国内牛肉生産ということで対抗条件をつけていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。  そしてまた、そういった対応の中で、国産牛肉価格が過度に低下をする場合に備えまして、従来から持っております国産牛肉の価格安定制度基本はこれを維持していく。畜産振興事業団を通じた国産牛肉の需給調整措置というものを保持をしていきたいというふうに考えて、この繁殖部門に対する対策とあわせて肥育農家への配慮を払っていこうという考え方でございます。  また、肥育過程そのものの合理化につきましては、やはり経営規模拡大あるいはまた飼料基盤の、飼料供給条件の整備あるいは肥育期間の短縮等といった肥育管理技術の改善というふうな各般の施策を進めておるわけでございますが、今後引き続き、これらの肥育段階におきます生産性向上のための対策を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  特に、肥育経営規模拡大を進めます際に、いろいろな資金需要が生ずるわけでございますが、投資的な経費については、御承知のとおり財政資金を原資にしました、農林漁業金融公庫を通じた規模拡大に伴う各般の資金需要にこたえるための資金制度、あるいはまた近代化資金による補完という措置もとっておるわけでございます。 また、肥育期間におきます運転資金につきましても、農業近代化資金等あるいはごく限られたケースでございますけれども、秦牛の導入について低利の資金を供給するというふうな対策を講じながら、肥育段階における生産性向上に結びつく飼養規模拡大を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  89. 一井淳治

    ○一井淳治君 いろいろと多様な方面での補助を実施しておられるわけですけれども、この補助の対象につきまして、例えば農業機械につきましては、これは作業専用機械とか家畜ふん尿処理利用機械に限られまして、汎用作業機械は補助されないという原則があるわけでございます。  そういうふうな原則がございますので、農家の方とすれば、あの補助金を使って機械を購入したいというふうな考え方から、特殊な汎用性のない機械を購入するというふうになりまして全体とすればむだな投資をする、そういうふうな結果もあるように私は思うわけです。この際、思い切って機械機具類につきましては汎用機械を推奨する。トラックにいたしましても干し草を運ぶ専用な機械、干し草を運ぶ専用のトラックではなくて、例えば肥料も運べる。複合経営であれば種もみも運べるし、いろいろのほかのものも運べるというふうな汎用作業機械を推奨するというふうに方向転換をしていただくことが、コスト低下につながるというふうに私は思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  90. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 汎用性機械等に対する補助の問題でございます。これは畜産に限ったわけではございませんけれども、一般的に各種の農業活動に対する補助政策のあり方といたしまして、やはり農家の自主性と創意工夫を生かしながら、財政資金を効率的に利用をしていくという観点から、数次にわたる臨時行政調査会での論議もあったわけでございます。その結果、個別利用に比較的なじみやすい汎用性機械については、極力補助から融資へ切りかえていくという方針が昭和五十七年度に決まりまして、以来その方向に沿いまして補助事業内容の再整備が行われてきておるところでございます。  私ども、こういった農業補助政策の見直しという方向に沿いまして、汎用性機械といったような個別利用になじみやすい機械施設につきましては、そういった方向に沿う一つ形態としまして昭和六十年度から農業改良資金の中に、つまり無利子の資金でございますけれども畜産振興資金という形で、畜産の場合でございますと畜産用の汎用性の機械を対象にするというふうな措置で対応しておりますので、ひとつそういった全体としての補助政策の流れの中で、私ども適切に対応していくのが適当ではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  91. 一井淳治

    ○一井淳治君 補助制度の流れ、そしてまた汎用機械が当を欠くというこれまでの経過というものは、私どもよくわかるわけでございます。しかし、現在外国の安い肉と死に物狂いの太刀打ちをしなくちゃいけない。今までの既成概念は投げ捨ててしまって、本当に一円でも二円でも安いものを取り入れて必死の競争をしないと生き残れないという状況の中では、やはり思い切ってそのあたりについても考え直して、特に複合経営によって基盤を強化する必要があるということも重ねて言われているわけでございます。汎用性にもいろいろ限界があるかもしれませんけれども、もう少し融通がきくような運用の方向にお進めいただきまして、運搬機械にしても二台買わずに一台で済むという方向に、しかも中古でも済むような方向にこの補助体系を変えていただくことを要望いたしたいというふうに思います。  それから次に、やはり補助の問題でございますけれども、畜舎、サイロ、その他の畜産関係施設についても補助対象となっております。その場合に、今申し上げましたように、コスト低下という観点からいたしまして、補助の要件を余り規格を厳重にされますとどうしてもそういったもののコストが高くなってしまう。やはり規格もできるだけ緩めていただきまして、特に建築基準法の基準との関係で、かなり厳重になっているということもあるようでございますけれども、建設省とも交渉いただきまして、建築基準法も、牛舎なんかについては別な基準でもお許しいただくようにして、とにかく農家の方が一生懸命工夫をして極力コスト低下を図れるように、そういう方向に持っていっていただくような御指導お願いしたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  92. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のとおり、畜産物生産コストの低減を図っていく場合に、固定資本投資をできるだけ節減をしていくというのは大変有効な手段であると私ども考えております。  ただ、御指摘にございましたように、建築基準法あるいは消防法によりまして、畜舎を中心にいたしました畜産関係の建造物についての必要最小限度の安全性確保ということが要請をされておるわけでございます。ただ、畜産が当面しております生産性向上という大変重い課題に対応するために、その基準をできるだけ緩和し、固定資本投下に伴う負担というものをできるだけ軽減していくということのために、この建築基準法あるいは消防法上の基準の運営に当たりましては、できるだけこれを緩和して適用していくというふうなことを強く要請しております。 若干改善をされている点がございまして、最近の補助事業等におきましては、古材の利用がだんだんふえていきますとか、あるいは木材利用といった形態も生じておるというふうなことがあるわけでございまして、そういった固定資本投下負担の軽減に資するような、できるだけ低コストの施設投資という状況をつくり出すべく、さらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  93. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、繁殖農家の関係でお尋ねするわけですけれども、減少傾向がずっと続いておるわけでございます。 そういう中で保護育成、コスト低下にどのように取り組んでいくのかということをまず質問いたしたいと思います。  特に、繁殖農家の場合には、二、三頭とか四、五頭ぐらいの頭数から、十教頭から二十頭にふやしていくということが非常に大事だと思います。その場合にも、やはり子牛をそのまま大きくすれば頭数がふえていくわけですけれども、いわゆる子牛を売らねばならない。そのための資金繰りというふうなことも必要になりまして、その資金繰りを思い切って何とか対策を講じなければならないという点に一つの問題点があるというふうに思います。  それからまた、繁殖農家の現場におきましては婦人の力をかりているとか、あるいは老人が現実に労働に当たっているということが非常に多いように思います。婦人の方々がうんと力を出して頑張れるように、例えば婦人のグループで牛を何頭か飼うとかあるいは婦人の方が、牛が売れたらある程度自分の貯金を持たしてもらうとか、最近は、現実には婦人の方はお米の値段も余り知らないようなことで、経営についても十分な理解がないまま働いているというふうな状況で、婦人の認識を高めて、婦人の意欲を高めていけば、非常に繁殖農家頭数の拡張にも影響が出てくるんじゃないかというふうな気がするわけでございます。そのあたりの繁殖農家のコスト低下、保護育成について御説明をいただきたいと思います。
  94. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 今回の牛肉の輸入枠の撤廃問題とも関連をいたしまして、国内肉用牛生産の存立を確保する上で、ただいま御指摘のございました繁殖部門の育成強化という問題が、実は大変重要な課題であると私ども考えておるわけでございます。かねてから、私どもこの肉用牛生産の中で、いわば最も後進的な状況にあります繁殖部門の合理化に努めておるわけでございますけれども、最近におきましては、繁殖雌牛規模が五頭以上になっております比較的大きな階層の状況を見ますと、戸数では全体の約一六%、頭数では約五〇%を占める状況になってきておるわけでございます。この十年ぐらいの間で見ますと、かなり経営規模拡大が進んでおると考えておりますが、実はより中長期的な将来展望を考えますと、この経営規模拡大テンポというものは、もう少し加速をしていかなければいけないというふうに私ども考えております。  そのことを通じまして、土地利用と結びついた肉用牛繁殖経営というものも成立をしていけるというふうに考えておりますが、この過程でいろいろ御意見ございますように、肉用牛繁殖部門だけで特化するということではなかなか無理がある。恐らく稲作あるいはその他の畑作部門と複合した形態で、相応の規模を持った繁殖経営というものを育成していかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。 これを実現していくのには、やはりある程度の期間がかかるというふうに考えておりまして、その間に、そういった目標を達成していくまでの間のいわばギャップを埋める手段として、今回の御審議をいただいております肉用子牛生産安定等特別措置法によります子牛生産者に対する補給金制度というものを考えておるわけでございます。  さらにまた、ただいま申し上げましたように、経営規模拡大、あるいはまたそのために必要になります資金の供給あるいは施設の整備というふうな問題につきましても、各種の助成措置を通じましてそれが進められていくようにプロモートをしていかにゃいかぬということで、今回の特別措置法の中で、繁殖経営も含めました肉用牛生産の合理化のための施策経費としまして、昭和六十六年度から引き上げられます牛肉の関税収入相当額を特定財源として、これに注入をしていくというふうな特別措置も予定をしておる次第でございます。具体的な施策内容につきましては、具体的にその制度を発足する過程で、私ども施策内容を実情に合わして検討をし、具体化をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  95. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、保証基準価格の算定方法でございますけれども、これが何といいましてもこの法律の一番基本で重要な点だというふうに思いますが、これをどれくらいの額として定められていくのか。特に、最近までは二十九万二千円というのが全国的な平均であったわけでございますけれども、これでもかなり低いんじゃないかという意見もありまして、現実に五十数万とか六十万ぐらいの最近の高値の中でも繁殖農家は減っていっているというふうな状況がありまして、最低二十九万二千円で、これよりはかなり高くないといけぬのじゃないかというふうな考えもあるわけでございます。この保証基準価格の算定についてはどういう計画なんでございましょうか。
  96. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 今回御審議をいただいております肉用子牛生産安定等特別措置法の中で、創設を予定しております肉用子牛生産者に対する補給金制度の大変大きな要素といたしまして、御指摘ございました保証基準価格の問題があるわけでございます。法文上は「肉用子牛生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、肉用子牛の再生産を確保することを旨として、」定めるということにしておりますが、具体的な算定方式につきまして、私ども時点でまだ具体的な結論を持っておりません。  率直に申し上げましていろいろな意見がございますが、畜産振興審議会での専門家の御意見等も承った上で、制度が発足をいたします昭和六十五年度までに、この具体的な方針というものを決めていきたいというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、六十五年度にスタートをします本制度におきます保証基準価格の絶対値がどのようなレベルのものになるかということについて、大変申し上げかねるわけでございますが、いろいろな御意見があるわけでございますけれども、私どもの目安といいますか念頭に、現行肉用子牛価格安定制度で決められております保証基準価格水準、そういうものが一つの目安としてあり得るのではないかということが率直に申し上げまして念頭にあります。  いずれにしましても、この問題については、先ほども申し上げましたとおりいろんな御議論もあるわけでございますので、このような問題について、専門家、生産者、消費者あるいは学識経験者のお知恵も拝借をいたしながら、よく検討して適切な結論を得てまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  97. 一井淳治

    ○一井淳治君 この法律で最も重要な問題でございますので、私どもは相当の価格設定されるということを期待しておりますので、十分な検討お願いしたいというふうに思います。  それから、この保証基準価格がやはりその場その場で決められているのでは、繁殖農家の人たちも、自分のこれから飼おうとする牛が幾らで売れるか見通しがつかないと。やはりこれは経済、経営ですから、自分の牛が幾らで最低売れるかという経済の見通しが立つことが、繁殖農家の発展のために必要ではないかというふうに思うわけです。そういう意味で、親牛を買ってきて、これを妊娠させて実際に子牛を出荷するまでには二年以上、三年近くの日にちがたつと思いますけれども、その間の猶予を置いて三年とか四年とか五年先の保証基準価格がわかるというふうにしていただくと、繁殖農家の人たちも安心して規模拡大ができるということではないかと思いますので、できる限り先の方の保証価格も決めていただく。そのかわり決めた以上は、もう赤字になろうが黒字になろうが、とにかくそれを守り抜いて繁殖農家の人たちに対する約束を守っていただくということが、農家の地位の安定のために必要ではないかというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、「当分の間、」というのが法律の一条に入っておりますけれども、簡単に、短期間にやめてしまわれては困ると思いますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  98. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) まず、保証基準価格を決める頻度の問題でございますが、ただいま御審議をいただいておりますこの法案で予定をしておりますところは、保証基準価格については、生産者生産条件なり需給事情等を考慮しながら毎年度決めていくことにしたいと考えております。  ただ、経営に当たる生産農家の一定のめどをつけていくという誘導的な効果を考える意味では、御承知のとおり、この保証基準価格とあわせて合理化目標価格というものを決めることにしております。これにつきましては、五年程度先の目標価格という形で、経営合理化の一つのガイドラインになるような価格水準というものを決めていきたいというふうに考えておるところでございます。  それから、今回御審議いただいております肉用子牛生産安定等特別措置法の中で予定をしております特別措置というのは、ただいま申し上げましたように、保証基準価格あるいは合理化目標価格といった指標をもとにしまして、子牛生産者に対して生産者補給金交付していく制度を六十五年度以降発足をさせるということと、それからもう一つ先ほど申し上げましたが、昭和六十六年度から引き上げられる牛肉に関する関税収入相当額を肉用牛その他食肉の生産合理化、流通の改善のための経費の特定の財源として確保していくという措置、この二つを特別措置として予定をしておるわけでございます。  この特別措置を実行していく期間について「当分の間、」ということで、未来永劫の措置ではないということを明示しておるわけでございますが、具体的にこの「当分の間、」という期間を現在私ども考えておるわけではございません。国内におきます生産合理化の進展状況あるいは内外の牛肉価格差というものをにらみながら、この特別措置が任務を完了する、こういう特別措置なしでも対応していけるような状況が来ているかどうかということを検討した上で、この具体的な期間というものは区切られていくべきものであるという意味では将来の課題になっておるところでございます。
  99. 村沢牧

    ○村沢牧君 我が党の持ち時間があとわずかですから、大臣に、この際一言要請しておきたいと思います。  ウルグアイ・ラウンドの閣僚会議に出席されること、大変に御苦労さまでございます。そこで私は、十月十八日の当委員会並びに十一月二十一日の本会議質問で、米問題について政府が毅然たる態度で対応することを強く要請したところであり、本日我が党も大臣のところへ申し入れしたところでありますが、改めて本委員会を通じて要請しておきたいと思います。  大臣は、本院の米は国内生産によって完全自給をする、この決議を絶対に尊重して交渉に当たってもらいたい。それから、農産物貿易の現在の交渉は、米国、EC、ケアンズ・グループ、発展途上国が対立して、日本の米は米国とECの対立の陰に隠れているというようなことがけさも報道されたようですが、いろいろとこの解説の漫画なんかを見ると、我が国は米国の後押しをしてまさに米国とひもでつながれておると、こんなような解説をされておるんですね。これではいけないと思うんですよ。米国に対しても毅然たる態度をとるべきである。  それからもう一つ、先日レーガン大統領から竹下総理に対して親書が届いた。これも親書が届いてからしばらく後になって発表されたんですね。大臣は、この親書の中身を知っていると思うんですが、一体どんな親書が来ているのか。ですから、こうしたことも今後の日米間の交渉にも関係してくるし、二国間協議なんかすべきではないと思いますが、そのような点について大臣の決意と内容についてお聞かせを願いたい。日本社会党を代表して、この委員会を通じて要請します。
  100. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) おっしゃいますように、貴党よりきょうお昼前に強い御要請を相いただきました。  前々から私も主張しておりますように、本院の決議というものを十分そんたくをいたしまして、遺漏のないように対処してまいりたいと、こういう固い決意を持っておる、それには変わりないのでございますので、ひとつそういう意味で信頼をしていただければありがたい、こう思っております。  米国のひもで何かつながっているのではないかというお話でございましたが、おっしゃるような意味での、ちょっと的確であるかどうかはわかりませんけれども、おっしゃられるような意味でのひもでつなげられて、まさに先ほど御議論のありました主権国家としての価値というものを放棄するようなことは断じてございません。  それから、レーガン・竹下総理の間での親書でございますが、親書はもともと公表されるべきものではございませんが、今までの例もございますし、またそのことは事務的にも的確にそういう問題は答えた方がいいと思いますので、簡潔に経済局長からお答えをさせたいと思います。
  101. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) レーガン大統領から竹下総理に親書が来たわけですが、その要旨を申し上げますと、これは例の我が国の米の制度についての三〇一条提訴をアメリカ政府USTRが却下する。その却下したときの条件は却下の際につけられたわけでございますが、その趣旨を改めて親書の形で伝えるということであったと理解をいたします。  すなわち親書の中では、これは日米間の非常に密接な関係というものを尊重して、かつまた従来米の問題は二国間では取り上げない。ウルグアイ・ラウンドの多角的な場で我が国は議論する用意ありきということを踏まえて、アメリカとしては三〇一条の提訴は却下をする。しかしながら、却下するからといってそのことが日本の米の制度の妥当性あるいは合法性についてアメリカ政府がそれを支持しているというものではない。 アメリカとしてはウルグアイ・ラウンドの交渉の中で、日本がこの米の問題を議論するという前提に立ってそれを積極的に農産物交渉全体を進めてほしいし、また米の市場の開放についても中間レビューの際に、日本側から提案をしてほしいという趣旨のくだりがございます。  そういった内容の親書が参ったわけでございますが、これに対しては総理の方からこれまでの我が国の立場、先ほどから大臣がお答え申し上げておりますような米の問題の今後の取り扱いについての我が国の立場、すなわちこれは二国間では取り上げない。ウルグアイ・ラウンドの全体の交渉の中で、アメリカのウエーバーつきの輸入制限でございますとか、ECの可変課徴金ですとか、同様のその他の農業問題について議論が行われる場合に、我が国も米の問題の議論を回避するものではないという立場を再度明らかにした返書を総理の方からお出しいただいているわけでございます。  したがって、先ほど申し上げたようなレーガンさんの親書はございますが、我が国の立場は再度総理からの親書によって明確に先方に伝えているということでございます。
  102. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私も、この後大変御苦労でございますけれども、大臣、七時ですか、お立ちになるそうで御苦労さまでございます。  一九八八年は二月に十二品目の問題、それから六月が牛肉・オレンジの問題、そして今またここで米の問題がこれが懸案として浮上しています。それを佐藤農水大臣は歴代の大臣の中でも、これまでの農産物交渉の集約を一人でしておられるような感じがいたしまして、大変御苦労だとは思います。けれども、非常に大切な時期に当たっておりますので、頑張っていただかなければならないというふうに思います。  私も公明党を代表いたしまして、今同僚委員、社会党から要望がございましたように、我が党でも米問題については一歩なりとも譲歩は相許されない、こういう立場をぜひ貫いていただきたい、このように思う次第でございますが、御決意のほどを伺わせてください。
  103. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 従来から答弁申し上げておりますように、米についてはその重要性を今さら申し上げるまでもございません。国会での決議またその趣旨を体して生産性の向上を図り、国内産で自給をするという方針で対処してまいる考えでございます。  米の貿易問題につきましては、ウルグアイ・ラウンドにおいて各国の農業問題、それから制度について議論を行う段階になれば米を含めて農産物全体として議論することはやぶさかではない、議論をいたしましょう、そうなればということでございます。もちろん各国が抱えてきた困難な問題も一緒にテーブルにのせて、何か日本の米だけを引き出して、そしてこれがこれがという議論はいかがなものか。そういうことに相なってはならぬのではないか。みんなそれぞれの国の事情がございますから、また立地条件もございます。そういう重要性については正しく、今さら申し上げませんけれども、そういう意味で対応をいたしたい、こう思っております。極めて常識的に、私なりに言わせれば常識的に私は丁寧に運んできたつもりでございます。それが徐々に理解を得られるもの、得られてきたものと私は期待をいたしております。  しかし、先行き現場におきまして、ウルグアイ・ラウンドにおいてどのようなことがあるか、私自身はこの問題についての具体的な責任者でございますので、外務省は窓口ではございますけれども、私自身現地に参る、こういうことでございまして、ただいまそのことについてまた御激励も賜りました。心から感謝を申し上げ十分おっしゃる意味を認識して参りたい、こう思っております。
  104. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これまでの農産物交渉でも、大臣は今まで一度もいよいよ自由化に踏み切らざるを得ないというような言葉を使われたり、そういう立場をとられたことは今までもないわけです。でも結果的にそうならざるを得なかったという結果があるわけです。それで、私ども初め国民のみんなが心配しているのはいよいよ米だけれども米は大丈夫かいねと、こういうやっぱり心配、思いがあるんだというふうに思うんです。これから行って農産物に関する会議の方に大臣参加なさる中で、これからどんなことが展開してくるかわかりませんけれども、恐らく日本が主張する立場は、外務省あるいは宇野外務大臣の発言等にもありますように、日本の米というのはいわゆる基礎的食料だという立場を主張なさるんであろうというふうに私は思うわけです。  そこで、お伺いをするんですが、基礎的食料という考え方の問題ですけれども、この基礎的食料という考え方は私どもはすごく理解できます、米は我が国の基礎的食料だ。けれども、基礎的食料という概念がよその国に当てはめたときに、ではアメリカの基礎的食料は何か、ASEAN諸国における基礎的食料は何か、こういう問題を考えたときに基礎的食料というものが果たして武器になるか、オールマイティーでそれを駆使できるかという私は問題意識を持っているんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  105. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 我が国は農産物の大輸入国の立場、逆に申すと自給率が非常に低下してカロリーベースでは五十数%、穀物だけをとりますと三〇%という非常に先進国でかつこれだけの人口を抱えた国としては著しく自給率が低いわけでございます。したがって、今回のウルグアイ・ラウンド交渉でも、少なくとも農産物交渉の分野では、今申し上げたような我が国独自の地位というものを基礎的な前提として交渉に取り組む必要があるという考え方をとっているわけでございますが、その場合農産物交渉のあらゆる分野でその考え方を貫いていく必要があるわけでございます。  その一つの手段といたしまして基礎的食料という概念を提示いたしまして、今回のガットの交渉の中で農産物の分野で新しいガットの規則、規律を現在のガット規則をベースにしつつつくり上げていくことになっているわけでございますが、その新しい規則の中で基礎的食料という概念を導入して、今後のルールの中で特別な扱いが与えられるようなことを期待しつつ提示しているわけでございます。  その基礎的食料は今委員の方からお話がございましたように、それぞれの国によりまして基礎的食料と一口に言っても、具体的な品目の選定ということになりますといろいろな問題が出てくることは確かにそうだろうと思いますが、いずれの国も食料を消費者に対して確保していく場合に、いわゆるカロリーの摂取あるいは生存の維持という観点から見て、まさしく基礎的な位置づけを与えられるべき農産物、とりわけ食料農産物があるであろうという前提に立って提案をいたしているわけでございまして、具体的に基礎的食料という概念を取り入れた場合に、それぞれの国にこれをどういうふうにどういう品目として取り上げていくかということになりますと、それはいろいろな議論が出てくる可能性は大いにあると思いますが、抽象的な、概念的な考え方としては、当然いずれの国も基礎的食料なるものが当然あるはずであるという前提で主張をいたしております。
  106. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 まあ当然あるということなんですけれども、EC、アメリカあるいはケアンズ・グループ、NIESそれからASEAN等みんなそれぞれ食料あるいは食というものに対する考え方、それから慣習、慣行全部違うわけですからね。その中で我が国の基礎的食料を米だということでその特別な扱いを認知させるということが非常に私は難しいのではないか、こんな危惧を持っておりますので、お伺いいたした次第でございます。  それからもう一つは、全体会議で宇野外務大臣は日本政府代表として演説なさる中で、今回の新ラウンド成功のために我が国は積極的な役割を果たす決意だということを表明なさるわけですね。ですけれども、私はこうした積極的な立場をとって今後のガットルールをつくっていく、その指針づくりをするということが今後の我が国のいわゆる交渉に足かぜをはめていくことになるのではないかという、やっぱりもう一つ心配を持っているわけです。今のレーガン大統領の親書ですか、中にも述べられているように、我が国は当然そういう役を果たしていかなければならない立場にあるだろうと思いますけれども、その積極的姿勢が逆に我が国みずからをも縛るということにはつながらないのだろうかどうなんだろうか、こういう問題を持つわけなんですけれども、これはいかがでしょうか。
  107. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 我が国が、ウルグアイ・ラウンドの中で積極的な役割を果たすという基本的な立場があるわけでございます。これは、今回の交渉が農産物以外に約十四分野を含んでおります。そのそれぞれの交渉の分野において我が国がどういうかかわり合いを持つかということにもかかわってくるわけでございますが、全般的には我が国の貿易国家としての立場からいいましても、それからまたいわゆる三極の一角を占めるということの我が国の国際的な責任からいっても、積極的な役割を果たすという基本的な立場は当然あるというふうに私ども承知をいたすわけでございますが、農産物の分限に限りました場合に、今先生の方からお話があったような問題が特に問題になってくるわけでございます。  農産物についてはそれぞれの国の主張があるわけでございますが、主要国であるEC、アメリカ、日本というふうに限定して申し上げますと、アメリカは御存じのように、農産物の最大の輸出国としてその輸出のシェアを今後さらに伸ばすために、非常に徹底した自由主義の考え方を主張する。片やECは、輸入国としての側面を残しつつも非常に輸出国としての地位が高まってきておりますが、一方では共通農業政策をしっかり守っていかにゃいかぬという独自の立場もとっておるわけでございまして、先ほど申し上げたような輸入依存度の高い、自給率の低い国の立場から申しますとなかなか我が国は農産物の分野については独自の立場にございまして、交渉の中での我が国の対応は極めて困難な状態が想定されるわけでございます。  我が国としては一般的な、積極的に交渉の中で貢献していくという立場は維持しつつも、農産物については、先ほど申し上げたような我が国の大輸入国としての立場、自給率の低い我が国の農業という実態がございますので、そういった我が国の立場が積極的な役割ということの中に埋没しないように努力をしていく必要があるということで対処をいたしておるわけでございます。
  108. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 東京ラウンドとか、ケネディ・ラウンドとかいうころの時期と違いまして、やっぱりこのウルグアイ・ラウンドの特徴というのは、すべての要件が皆さっき大臣言われたように、テーブルに全部のってしまう、これは非常に我が国にとってもかつてない厳しい状況に置かれるのだろうと思うんです。しかも、多国間でこれを協議していく、私は考えただけでも大変な状況になるんじゃないかなという思いがいたします。ぜひ大臣に頑張ってきていただきたい、こんなふうに思う次第でございます。  牛肉の輸入自由化の問題にひっかけてその問題をさらにお話しするならば、牛肉等の通常関税なんかについても、今の二五%から九一年七〇%、六〇%、五〇%と漸次減らしてきますわね。そして、三年の期間をつくりますね。午前中の参考人方々の御希望の中に、その後も引き続きこの関税率を維持していかなきゃならない、こういうことを言っておられたわけですけれども、今回の法律では、そのところが余り定かになってないようなんだけれども、こういう問題も我が国の法律で決めておいてもその九三年ですか、以降九〇年代の農業の貿易のあり方を討議する中で、こんなものはとてもじゃないけれども論外だというお話でも出てくれば、これはもう当然法案でうたいたくてもあるいはそれはもう実行できない、こんな条件だって出てこないとも限らないわけですね。この辺のところをどういうふうに一体考えるのか。  ウルグアイ・ラウンドでは、今回の中間レビューでは牛肉の問題は出ないと伺っておりますけれども、それは基本考え方が全部連動していくわけですから、その辺のところはどういうふうに考えればよろしいでしょうか。
  109. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 現在進められておりますウルグアイ・ラウンドとの関係で、牛肉について先般の対米、対豪交渉で合意されました関税率あるいは緊急調整措置についてどう扱われていくかという問題提起でございます。  対米、対豪合意におきまして具体的に決められておりますのは、御指摘のとおり通常税率で申しますと輸入枠撤廃初年度、一九九一年七〇%、以後六〇、五〇、さらにまた緊急調整措置として一定の要件下において数量制限もしくは通常税率にプラス二五%の緊急関税という具体的内容が合意を見ておるわけでございます。  さらに、四年目以降の問題については、通常税率については一九九三年度の状態を上限にしてウルグアイ・ラウンドで論議していこう、それで結論を出そう、そしてまた緊急調整措置についてはウルグアイ・ラウンドにおいて確立をされるであろうセーフガードといいますか、緊急措置についての一般ルールあるいはまた農産物についてそういうルールができるのであればそういうルール、それに整合性のとれた対応をすべく協議をしていこう、こういうことで分かれておるわけでございます。  今回、大臣出られるモントリオールにおける中間レビューにおきましては、こういった個別品目についての問題、恐らく話題にならないのではないかというふうに今先生御指摘されておるような観測を私どもとしても持っております。恐らく、関税率問題については、中間レビューが終わったウルグアイ・ラウンドの後半戦の課題として残るであろう。それで問題は、この後半戦におきます農産物についての関税率あるいはセーフガードについての論議は、どのようなルールで交渉を進めていくかということもまだ具体的に論議をされておらない状況であります。  御承知のとおり、前回の東京ラウンドあるいはケネディ・ラウンドの状況を見ますと、主要輸出国からのリクエスト、注文を聞いてそれに対して主要輸入国がどう対応するかという議論をしていくという方式をとっておりますが、ウルグアイ・ラウンドでの農産物関税交渉がどういうふうに進むかということについては、恐らく具体的な関税交渉の前提になる交渉のルールの議論がまず行われようかと思います。そのルールに乗った議論を進める中で四年目以降の問題も議論をしていくというふうに私ども予測をしております。  具体的には、決まったルールあるいは我々も参画をして決めます関税交渉のルールにのっとって論議をするつもりでございますが、私どもとしては現在の、今般の牛肉輸入枠撤廃に関連をして確保した関税率あるいは緊急調整措置というものは、私どもとしても国内の牛肉生産の存立を守るという観点で確保したものでございますので、同じような考え方でウルグアイ・ラウンドにおける具体的な関税交渉に臨んでいきたい。その機能というのは国境調整措置として一定の輸入調整効果というものもございますし、また今回の特別措置におきまして、国内における牛肉関連対策財源としてもこれを特定化していくという二つの機能を持っておりますので、その機能が一九九四年度以降においても、その時点における我が国の肉用牛生産の状況を踏まえて、予定をしております機能が十分に果たされていくという観点を十分踏まえて、ウルグアイ・ラウンド後半における関税交渉へ臨んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  110. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 時間が、私はあと十分ほどしかないので今回の法案の中身については、また次の機会に譲らしていただくといたしまして、牛肉自由化にかかわる基礎的と申しましょうか、基本的環境について時間の範囲内でお伺いをしておきたいんでございますけれども、我が国のいわゆる牛肉の需要量の問題について、今後これはどんなふうに推移していくのかという問題でございます。それが今度自由化によって、現在保たれている牛肉の自給率七〇%を推移していると言われておりますけれども、それが恐らくは大幅に自給率が一時低下するだろうとこんなふうに思うんです。この自給と輸入とでその需要をどういうふうにカバーしていくのかという問題を伺っておかなければならないと思います。  私、ちょっとこれは教えてほしいんですが、そういうのを自分で数字で拾ってみようと思って、いただいたのを一生懸命見るんです。よく書いてあるんですが、私どものような素人には、この数量が枝肉ベースで出てくる分とそれから部位別ベースで出てくる、部分肉ですか、部分肉ベースで出てくるのと両方あるわけですよ。これとこれをドッキングさせて比べようと思うんだけれども、いかんせん素人はなかなかそれがややこしい、難しいという感じがありまして、ことし四月から枝肉の規格の改正をやったでしょう。そしてもう流通の段階では部分別流通が六三%ぐらいいっているんだから、これは部分肉ベースでやっているのは大蔵省の統計なんです。それで、農水省の統計はやっぱり枝肉ベースで出てくるのね。私、これどういうふうに比較して、比べて計算してみようかなと思いつつ苦労しておるところでございますので、この辺のところも御配慮いただいて、今後私どものような素人が比較的見やすいデータがいただけたらなというふうに思うんでございますけれども、これなかなか読みにくいんですわ。それで需給状況等お願いします。
  111. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) まず最初に、今私どもの需給見通し等で使っております単位のとり方について大変私ども理解不足もございまして、多少不親切になっている部分あろうかと思います。輸入牛肉が枝をとった部分肉で通常言われておりますので、部分肉ベースで表示をしていくのが一番わかりやすいかと思います。なかなか、長年私どもも枝肉ベースでいろいろ統計等もございますので、あるいは気のつかない点はあろうかと思いますが、できるだけ部分肉ベースで輸入も含めてごらんいただいているような資料作成に心がけてまいりたいと思います。  それから、牛肉の需給見通しの問題でございますが、御承知のとおり本年二月に酪肉基本方針を私ども公表いたしまして、その中で昭和七十年度をめどにした需給見通しも一定の前提条件づきで行っておるわけでございます。ここで述べております需給見通しというのは、昭和七十年度の状態といたしまして牛肉の需要量は大ざっぱに申しますと、大体基準年に当たります昭和六十年度に対して一・五倍程度に伸びるであろう、一・五倍程度になるであろう。絶対量で申しますと、これは部分肉で大体八十万トンから九十万トン程度のところではなかろうか、こういう予測を示しております。  それから国内生産につきましては、同じく六十年度を基準にいたしまして国内資源状況なかなか困難な問題もあるわけでございますが、生産増加のある種の上限的な見通しとして基準年に比べて一・二倍程度、部分肉で申しますと五十万トン弱という規模を一応見通しておるわけでございます。この中で私ども需要についてはいろいろと変動要素も大きいので、その変動状況に応じて相当の振幅があるということも申し上げておるわけでございますが、この中で、ただいま申し上げました需要なり生産の見込みの中で自給率は大体六〇%程度というふうな見通しを明らかにしておるわけでございますが、牛肉の輸入枠撤廃に伴いまして、恐らく全体としての牛肉の供給価格というものは若干弱含みで推移をするのではないか。 そういう状況を考えますと、ただいま申し上げました需要量の増加量というものがもう少し大きくなるのではないかという、何といいますか見通しが常識的ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  また、国内生産につきましては、先ほども申し上げましたとおり、昭和五十七年度以降の価格低落時におきます特に肉専用種の資源が非常に劣弱化しました。またその後御承知のとおり、我が国の肉用牛生産の大きな部分を占めております酪農部門におきまして、牛乳・乳製品の需給が非常に緩和をしたということで計画生産が行われております。その結果、肉資源に回る酪農部門からの素牛供給量というのが相当の制約を受けておるという状況もございまして、先ほど申し上げました一・二倍、基準年に比べて一・二倍というふうな生産増加というものはなかなか大変な課題であるというふうな感じております。  したがいまして、総体として見ますと、先般の酪肉基本方針で示した自給率六〇%程度というレベルは若干低下を余儀なくされるのではないか、そういう予測を現時点では私ども持っております。ただ、この需給問題については、私ども牛肉に限らず農業基本法に基づきます農産物全体の長期需給見通しを現在改定すべく作業をしております。その中におきまして、ただいま私の申し上げましたような状況変化も踏まえて、見直しをして検討をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  112. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 あわせて、これも後の資料に使いたいのでお伺いしておきたいんですけれども、国際需給量の事情の関係からいくと、今のような推移が国際市場にどういう影響を与えるとお思いになりますか。
  113. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御承知のとおり我が国が輸入できる牛肉というのは、国内に悪性伝染病が入ってこないようにするために偶蹄類についてございます口蹄疫によって汚染されていない地域に限定をしております。この我が国が輸入可能な口蹄疫非汚染地域の生産量というのは、これも部分肉でございますけれども、部分肉ベースで年間まあまあ変動はございますけれども、一千万トンないし一千二百万トンという生産量になっております。  この中で輸入貿易量として登場するものが大体百五十万トン程度でございます。その中で日本の輸入量がふえるということになりますれば、全体としては国際需給に若干の何といいますか刺激を加える、価格あるいは数量面で刺激を加えるという効果が出てこようかと思います。ただ、これも御承知のとおりアメリカ、オーストラリアで若干時期のずれはございますけれども、七年ないし八年のいわゆるビーフサイクルという変動がございまして、その変動とどういうふうにかみ合っていくかということによりまして、日本の輸入量増加が国際貿易に与える影響というのはある程度誤差が出てくるであろうというふうに考えております。  ただ、数量的に申しますと、これまでの状況でも明らかなように、口蹄疫の非汚染地域の中で日本が主たる輸入先にしておりますアメリカ、オーストラリアの生産量というのは相当スケールが大きゅうございまして、数万頭程度の輸入増加というものについて国際需給が非常に緊迫をしていくというふうな状況は近い将来ではあり得ないのではないかと思います。ただ長期的には、恐らく発展途上国における所得水準の向上等々の事態を考えますと、そちらにおける国内牛肉消費量の増加ということもございますので、そういった事態によって口蹄疫非汚染地域における需給関係がさらに逼迫に働くというふうな要素は十分見守っていく必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  114. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 終わります。
  115. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、本日午前中牛肉自由化の仕上げ法とも言われていますが、畜安法等二法についての参考人からの御意見を伺いました。その際に、参考人の中で牛肉自由化ということはもうないと信じていた、それで政府・自民党を信頼していたと。こんな異常事態になって農家の皆さんはもう大憤慨だというふうなお話をされました。 問題はお米の方も牛肉と同じようになるのじゃないかと皆さん心配されております。  そこで聞きたいことなんですが、今晩七時にお出かけになる中間レビュー等に対してどういう対応ということなんですけれども、特にお米の問題で質問をします。  アメリカの要求なんですけれども、御承知のように三〇一条を提訴却下の条件として幾らかなりとも前向きの対応と、こう言われたと思いますね。同時に当面お米の輸入自由化は無理だろうけれども、一定枠の輸入、つまりお米の一部市場開放これをやってくれ、こういう要求であると思うんです。それに対して日本はどうかといえば今までもそうでありましたけれども、特に東北地方大冷害の中で来年も同じような七十七万へクタールの減反というのはどうなんだろう、何とかしてくれという要望がある。でもそれでいくんだという厳しい状態です。  そういうことを説明されつつ、特に国際的な農産物貿易市場悪化の原因は輸出国にある。具体的に言えばダンピング輸出であるとか補助金輸出にあるんだと、こういうことを主張してきたと思います。これらの主張に加えて、今回は特に国民生活に不可欠な基礎的食料ということでお米を位置づけて新ルールづくりにも臨んでいる、こういうのが現況だと思うんですけれども、大臣、しっかりと御答弁いただきたいのは、先ほども主権国家としての立場をきちっと維持する、こう言われました。とすれば、お米の市場開放拒否、つまり結果として自由化を守った、しかし一定枠の米市場開放はやむを得なかったというような結果にならない、そういう立場で対応されますでしょうね。
  116. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) そうならないようにしたいと強く念願をしておるところでございます。
  117. 下田京子

    ○下田京子君 そうならないようにということでございますけれども、現実的にはアメリカが基礎的食料の概念については受け入れがたい、こう言っています、はっきり。しかし一方でどうかといえば、ECあるいは韓国、それから特に北欧、スイス、メキシコ、ジャマイカなどが日本の提案についてより積極的に賛同を示しておると思うんです。ですから、よく今まで言われてきました、農産物貿易交渉でも日本は貿易自由化で最大の利益を上げているんだ、だから国際的に孤立しないように、こう言ってまいりましたが、このお米の問題、基礎的食料品云々の関係では孤立していないということが言えると思うんです。そういう点で大事なことは各国の事情に応じた対応、これを認めさせる、あくまでも国家主権、経済主権を貫くという点で韓国等と一体になって今後対応に臨まれていただきたいんですが、どうでしょう。
  118. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 牛・かん交渉と一緒にした御議論でございますので、私の方で整理をして簡潔にお答えをいたしておきたいと思います。  長きにわたる牛・かん交渉二十年にも及ぶその中で、牛肉・かんきつの存立を守るということで、足らざるところを国内措置によってその存立を守る、こういうことで進めてきたわけでございます。まさに交渉してきたわけでございます。その結果がもう御存じのようなことでございます。私といたしましてぎりぎりの選択を、また決断をいたしたところでございまするけれども国内措置によってこれは必ず補完をできるという信念に燃えそして一応のフレームづくりは終わっております。そのことによって存立は守れるものと私は強く期待をいたしておりますし、そう信じておるわけでございます。  一方、ウルグアイ・ラウンドにおきましては、新しいルールづくりということで八六年から始まっておるわけでございまして、この中間レビューにおいて米だけを抜き出して議論するのはいかがなものかと。いかがなものかというのはちょっとやわらかい言い方かもしれませんけれども、品よく言っておきます。いかがなものかということで私どもといたしましては、この米の問題というのは日本日本の特殊な事情があるわけでございますから、それぞれの事情はみんなそれぞれの国にあるわけでございますから、先ほど御質問もほかの委員からあったとおりでございまして、そういうものを考えてみますと、私自身は極めて常識的に物を考えそして慎重に取り運んできた、こう思っておりますので、どうもそのこととまた牛・かんと、私が信頼されていないという意味のことはあなたなりにおっしゃることはわかりますけれども、信頼をしてくださっておる方もおるわけでございまして、その信頼にこたえて私は毅然たる態度で臨みたい、こう申し上げておるところでございます。
  119. 下田京子

    ○下田京子君 牛肉の二の舞が米にはないようにということだと思うんです。 私は一緒にして聞いてはいませんからね。特に、そうおっしゃっていますが、具体的にアメリカのあるいはケアンズ・グループ等がどう言っているか。繰り返しますけれども、一定枠をお米輸入してしかるべきだ、こう言っていますね。それから国内では経済同友会も三十万トン程度どうだと、それと符合するような格好で新行革審も言われている。新聞報道によれば松永大使もそのようなニュアンスのことを言われたとか。いずれにしても、具体的に三十万トン程度お米の輸入をやれというふうなことが今言われているわけですね、一方で。だけれども、今の大臣のお立場からいけば本当にこれは今言うように一定枠を設定したお米の輸入、お米に関しての市場開放はあり得ない、こういう立場なんだなというふうに理解してよろしいんですね。
  120. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 先ほど、社会党の委員の方にも公明党の委員の方にも申し上げたとおりでございます。
  121. 下田京子

    ○下田京子君 問題は、その際に自給率向上の立場でお米もその中心に据えて日本農業を発展させるのか、日本農業を後ろ向きにしていくのかという観点が大事なんです。  今の問題なんですけれども、全中はさっきも言いましたけれども、日韓共同でやったらどうかとかあるいは国会ではお米の自由化反対決議をやったが、アメリカは自由化要求してないで一定枠でも譲れと言っているのだからちょっと違うのじゃないかということで、市場開放阻止、枠設定もだめ、こういう形で、全国は四十一道府県、それから八百三十二市町村自治体、さらにもうここにありますけれども、モントリオールで開かれているウルグアイ・ラウンドの中間見直しの場で我が政府がどういう対応をとるかということできちっと言っています。アメリカの一方的な譲歩内容、こんなものを受け入れちゃいかぬよ、そして自給率を向上させよというようなことをお述べになって、福島県でも県南、私の地元の石川や棚倉、白河などありますけれども、それだけにとどまらず、会津から、全県下から、県内各地から来ているんですよ。おととい、きのう、きょうとずっと毎日続いて来ている。  そういうことでおやりになると、この人たちの信頼を絶対裏切らないんだと理解してよろしいですね。
  122. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) どこに落ちがあるのかと思って静かに聞いておりましたが、先ほど来お答えしているとおりでございます。
  123. 下田京子

    ○下田京子君 そこで、より具体的に聞きますけれども日本が提案しております基礎的食料という考え方、これは昨年の十月に出していると思います。基礎的食料というのは何かという点では、各国の置かれた事情のもとでそれぞれ異なる食料について広く適用される概念であること、例えばとして伝統的に国民の主たる栄養源である食品を指すんだ、こういうふうに補足説明もされておりますね。  それで、もっと具体的に聞きたいんです。この基礎的食料という中にはお米だけですか、米以外含んでいますか。
  124. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 今先生の方から我が国が提案をいたしております基礎的食料について、その基礎的食料というのは各国においてその国民生活の維持にとり不可欠な基礎的なものであり、例えば伝統的にそれぞれの国民の主たる栄養源とされておるようなものだというふうにお述べになった。まさにそういうとらえ方をして私どもは基礎的食料というものをガットのルールの中に認めさせるべく提示をいたしているわけでございますが、その基礎的食料というのはあくまで我が国だけに適用されるべきものではなく、ガットのすべての国にとってのいわば横断的なルールとして導入を主張しているものでございます。  したがって、国によって同じ定義に当てはまるものも具体的な品目ということになりますと当然異なってくるわけでございます。かつ、それを、我が国の場合に当然米がその中心になることは間違いないわけでございますが、そのほかに具体的にどういう品目を対象として考えていくかということは、今後の基礎的食料の概念を認めさせることを大前提にしながら議論すべきことでございまして、具体的にどの品目ということを目下決めているわけではございませんけれども、何も米に限定をするというふうに決めているわけでもないわけでございます。
  125. 下田京子

    ○下田京子君 各国によって違うということは私言っていて、日本における基礎的食料とはお米以外に何があるのですかと聞いているんですから、もう少し的確にお答えいただきたいと思うんですが、米以外にも含むというふうに受けとめます、否定していませんからね。  とすると、私はあえて引き合いに出したいんですけれども昭和六十一年四月二十四日のことでした、私行革特別委員会で当時の羽田孜農林水産大臣に質問した。経済対策閣僚会議の決定いわゆる経構研と言われておりますが、「経済構造調整の推進について」というのがございますね。その中で、基幹的な農作物を除いて今後輸入の拡大を図るんだと言っているんです。だから、基幹的農作物以外はみんな輸入自由化するんだよということなんです。そこで、私は基幹的な農作物とは何なんですかと聞きました。お米以外牛肉は入りますかと聞いた。そしたらいろいろやりとりあって、最後に羽田農相は牛肉も含む、畜産は我が国農業の中の基本である、だから基幹的作物に入ると答弁された。ところが、その基幹的作物は守ると言ったのに自由化したという経緯があるんです。  それはそれとしてそういう経過があるので、お米含むということは事実だから、きょうはとりあえずお米だけに限定して聞きましょう。お米の中でもいろいろありますね。加工用と主食と区別しているんですか、一体なんですか。
  126. 甕滋

    政府委員(甕滋君) 私ども米について論議をしてまいっておる中におきましては、主食用ということは当然でありますけれども、それ以外に加工用は別であるとか部分的には違うものがあるんだとか、そういう論議をしてまいった経過はございません。
  127. 下田京子

    ○下田京子君 過去に加工用と主食用とは分けない、米全体だとおっしゃられた。これからの問題として当然だと思うんですよ。つまり他用途米も加工用だという格好で一万円以下で買い上げておきながら主食用に転化しているわけですから、お米に色目はないわけです。しかし、現実には用途別になっていて加工用と主食に分かれている。主食だけを基礎的食料というふうに位置づけたら加工用も輸入が入ってくるんです。いいですか、そこを心配しているんですよ。  しかも、私が申し上げたいのは、日米諮問委員会の中で何と言っているかと言ったら、米麦、大豆、それから牛の放牧やめなさい、野菜、果物、豚、鶏飼っていればいいよということで当時中曽根さんとレーガン大総領が合意をして両手を挙げて絶賛しているんです。そういう観点からいったら、今回の主張と矛盾しないんだろうかと言われかねませんよ。私は、去年の三月アメリカに行ってそう言われたんですから。日本は日米諮問委員会に出しているじゃないか、それから前川リポートも見てごらんなさい、こういうことを逆手にとってアメリカは押してくるんです。だから、大事なことはそこでなんです、私はあくまでも日本のお米を守るんだという立場が大事だと思うんです。  そこで、これから聞きたいところです。国家貿易の条項の見直しは新ルールづくりの中に入れておるんですかどうですか、これが質問です。つまり国家貿易の条項見直しとは何かといえば、ことしの十二品目のガットパネルの裁定の際、国家貿易は今のガットの十一条の一項、原則輸入禁止等々の議論があったときに日本立場というのは、国家貿易というのはこの十一条と違う概念だと。そして、歴史的にガットの経緯から見て、ハバナ憲章の時代から見まして民間貿易、国家貿易の体系は違い、その十一条一項、二項にも別規定であって、むしろ二十条の観点からいって国家貿易品目というものは一定輸入制限措置を認められているんだ、こういう立場を主張したと思うんです。ところが、結果としてアメリカはいや違うと言った。そして、それに留保したわけですね、日本は。だから、そのときの留保した考え方で今後のお米交渉等を進めるおつもりか、あるいは新ルールづくりの中にもそれを持ち込むのか、二点お聞かせください。
  128. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 国家貿易に関する議論、ウルグアイ・ラウンドの中でもいろんな角度から取り上げられることになるであろうというふうに見ております。  一つは、ガットのウルグアイ・ラウンドの交渉の一つの分野といたしましてガットの条文を見直しするグループが既にできております。その中で国家貿易に関するガットの条文の一つでございます十七条について、十七条の抱えている問題点を指摘するような主張が幾つかの国から、条文を議論するグループの中で既に提示をされておるわけでございます。しかし、率直に言いまして、この条文交渉グループは事の性格上、実質的な問題を議論するその他の交渉グループで実質的な議論が収れんをしてきて、それをガットの条文の中にどのように反映をしていくかということで議論すべき性格の濃い分野でございますので、これまでの経過では一通りの議論は行ってはおりますけれども、率直に申し上げてその他のグループの議論に比べますと、十七条の国家貿易に関する条文も含めまして議論はそれほど深く行われてない状況でございます。  一方、国家貿易は必ずしも農産物貿易にのみかかわるものではございませんが、すぐれて農産物貿易に関係の深い貿易の制度でございます。したがって、かつまた我が国の農産物の中に国家貿易品目があるわけでございますから、農業交渉グループの中での議論において、我が国としては当然国家貿易についての、今後のあるべきガットのルールというものをどう考えるかという立場からアプローチすべきものというふうに考えておりますが、具体的に国家貿易をそのものとして議論するという段階にまだ至っておりませんので、今までの経過で申し上げますと、必ずしもその国家貿易そのものとして議論をするという状況ではないわけでございますが、今後議論が具体化していく場合には、御指摘のありましたような点も踏まえて、我が国としては当然対応すべきものと考えておるわけでございます。
  129. 下田京子

    ○下田京子君 今後将来、国家貿易の輸入制限は合法的だというその立場は主張し続けていく、具体的な場にも提案していくというお話がありました。  とすれば、どうして——今度は牛肉の方です。どうしてその主張を牛肉交渉のときにやらなかったんですか。二国間交渉に持ち込むのでなくてガットの場に持ち込んでいって主張しなかったのか。つまり、この国家貿易の輸入制限は合法的だと言いつつも、同じようにガットに持っていけば負けると思ったんですか。それともアメリカに配慮して自由化されたんですか、どちらですか。
  130. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 牛肉についての交渉経緯をめぐりまして、国家貿易の問題をお尋ねでございます。  実は、この国家貿易のガット上における位置づけについては、国際的な確立された定説というものは必ずしも明確になっているわけではございませんけれども、御承知のとおり農産物十二品目に関連をいたしまして、本論ではございませんけれども、傍論的な論理構成の一環としまして、国家貿易がガット十一条の数量制限等の禁止措置と別建てで主張ができるのではないかという考え方で対処したことは事実でございます。その点につきまして、御承知のとおりガットに設置されましたパネルの結論は、十一条の条項は国家貿易もかぶり込むというふうな解釈が提示をされたわけでございますが、私どもとしては、その点については農産物十二品目についての輸入数量制限正当化の傍論的な部分であるということもございまして、別途勧告内容を受諾しつつも、ガットパネルの裁定、ただいま申し上げましたガットパネルの裁定部分については留保をしておくということで、勧告自体は受諾をしたという経過があるわけでございます。
  131. 下田京子

    ○下田京子君 その点はわかっている。
  132. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 一方牛肉について、国家貿易に該当するものとして、私どもがガット上の手続を一昨年の十一月に行っておるわけでございますが、私どもとしてはこの日本の国家貿易としての構成、つまり畜産物価格安定法第七条に決めております畜産振興事業団による牛肉輸入の一元的な輸入体制というものは、輸入数量制限というものをやるということを前提にした際の輸入システムとして決められておるものでございますけれども、対米、対豪交渉の経過の中で、輸入割り当てそのものを撤廃しようという判断をしたわけでございますので、そのことと整合性のとれた国内制度をつくるという意味で、従来の畜産物価格安定法七条による、畜産振興事業団による一元輸入をあわせて撤廃するという国内措置を今回の法案の中に織り込んで御提案、御審議をいただいておるつもりでございます。
  133. 下田京子

    ○下田京子君 結果として負けるという判断したんじゃないの。で、今後ろの答弁というのは、これは全くすりかえですよ。  そこで大臣、時間がないので簡潔にお願いしたいんですが、衆議院での答弁から、今の答弁から含めると、京谷局長は何と言っているかというと、牛肉については日米の政府、行政府同士の一定の約束したんだと、だから約束先にありき。そして、手続的に貿管令に基づく通産省告示の改正措置で輸入割り当て制度を六十六年度で廃止するというふうになったので、事業団の輸入牛肉一元化というこの文も空文化したからよって今回の畜安法第七条削減と相なったんだと、こう言うわけです。それは法律上の手続論なんです、今言ったのは。だからそれを聞いたんじゃなくて、たとえそのことにしたって私はやはり二国間交渉となれば行政権が優先されるのは知っていますよ。しかし、だったらなぜこの牛肉問題というのは条約化して国会の承認を得るという手続をきちっととることをしなかったのかと申し上げたいんです。  問題は、政治的に言えば、国民が反対だと言ってるんです。国会でもやるなと言ってるんです。そういう点から言えばまさに日米両国の約束先にありき、そして国内法の手続をとった、こういう格好じゃありませんか。それは問題なんです。ですから、大臣、二つの問題を踏まえて対応していただきたい。  一つは、今の議論でおわかりのように、ガットの自由貿易原則の中でも国家貿易は、これは輸入制限は合法的だという主張を日本は言っているわけですから、そういう立場から最大の国家貿易であるお米の交渉に臨むということ。もう一つは何度も言いますけれども、ヤイター代表でさえ主権国家として今のガットの問題も含めて、ガットで何と裁定が下ろうと拒否することは日本でやろうと思ったらできるんだとヤイターさん言ってるんですからね。ですから、やっぱり主権国家としての日本立場なんです。そういう点で対応していただきたいと思います。 大臣。
  134. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 主権国家としての論議は、先ほど来当委員会で、私自身の立場で主権を守ったと自分ではそう思っております。いろいろな御批判はございましょうけれども、主権は守ったというふうにも思います。しかし、それではまだ守り切れないではないかという御心配があればどうぞ御心配なさらずに。  なおまた、米の問題も触れられましたが、米の問題は先ほど来申し上げておるとおりでございます。  なお、畜産局長答弁も長いかもしれませんけれども、丁寧に答えている、丁寧過ぎる方でございますので、それは怒らずに許してやってください。  なおまた、最後に一言私からも付言をしておきたいと思いますが、先ほどの御質問、御意見の中に日米諮問委員会というお言葉がございました。私不敏にしてどこの場であったか、この国会であることは間違いございませんが、どこの場であったかその御議論を貴党の委員が言っておられることをお聞きしたことを思い出しました。この日米諮問委員会は民間の諮問委員会でございます。ただ、聞き方によっては誤解があってはなりませんので、誤解というのは政府間同士の諮問委員会というふうに誤解をされては困りますので一言申し上げておきます。
  135. 下田京子

    ○下田京子君 もう時間がなくなってきたんですが、要は牛肉の問題ですけれども、もう資料ずばりごらんください。    〔資料配付〕
  136. 下田京子

    ○下田京子君 「牛肉生産・食肉加工の海外進出の実態」です。  これを新聞報道であるとかあるいは有価証券報告であるとかその他もろもろの資料を集めて整理をいたしました。大臣、ちょっとごらんになってください、今お配りの。実は、今デンバーとシドニーに畜産事業団の事業所はあるんですよね。しかし、当然いろいろなそういう海外における日本商社、企業の動きわかるだろうということで要求したんです。余り恥ずかしいからこれは出しません、一体何だろうと、ぺら一枚ありますけれども、それは後でどうぞお聞きになってください。で、私どもが調べたのをごらんいただきたいんですが、これは二点について聞きます。  総合商社、オーストラリアで丸紅が既に四千ヘクタール、六千頭肥育で、来年以降は二万四千頭やるというライセンスも取得されております。そして、特に今井畜産部長という丸紅の方が日本式肥育方法を導入して日本市場向けの高級牛肉を生産したい、こういうふうに言われております。これはうちの新聞や朝日等にも報道されておりますが、実際の内容等もここにお持ちしております。さらに三菱商事、これもキララ牧場とともに肥育から処理、加工までの一貫体制です。推定買収額が四、五億円だと言われておりますけれども年間の処理頭数は十二万頭、去年の七月買収されております。などなどこれは大変なものなのです。このことについて、海外におけるこうした日本企業の言ってみれば開発輸入的動きについて、大臣としてどのように考えられているか。  もう一点です。資料の最後を見てください、一番最後にあります。これら「総合商社にたいする農林中央金庫の貸付状況」であります。  この貸付状況の中で、特に商社十社がありますけれども、三菱商事の場合にあのDDT入りの牛肉問題で大騒ぎさせたところです。ここが七百十八億八千八百万円、長短期合わせて農林中金から借り入れています。丸紅はといえば長短合わせて三百八十四億七千九百万というものを借り入れております。そして、一番下をごらんいただきたいと思うんですけれども、農林中金のことし三月末の貸出金残高はどうかといえば合計が十兆六千二百七十七億四千九百万、そういう中で実に系統以外の関連産業、つまりこれら大手商社を含む関連産業五兆八千二百九十一億円と、何と五四%を超える系統以外の貸し付けです。今から三年、四年前は関連産業貸付割合は二〇%程度でありました。  まさに農林中金は農民から零細な資金を集めて商社に貸し付けている。なおかつ、その商社への利息なんですけれども、利息は幾ら言っても調べられない、ただし融資条件ですが、担保なしです、担保なし。担保なしで金借りられます。 しかも金利は五%以下、こういう状況にあって本当にいいんだろうか。どういうお考えなのか、この二点について端的に大臣の感想も含めて御答弁を求めて質問を終わります。
  137. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 一般論として簡潔に申し上げたいと思います。
  138. 下田京子

    ○下田京子君 一般論じゃない、丁寧に。
  139. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 今資料をもらったばかりですから、あなたはそんな調べてきてそれでやりなさるけれども、私らは今もらったばかりなんですから、それで答えろと言ったって私は……。
  140. 下田京子

    ○下田京子君 農水省に調べておけと言ったの。
  141. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 私への質問でございますから、私はこれをまだ見ておりませんで、ここで初めて見ましたので一般論として申し上げますが、海外進出に当たっては一定の秩序というものが必要だな、感想を申し上げておきます。  それから、やはり当該進出国の利益になるということを忘れてはならぬ、かように思っております。  金融の問題についても御指摘がございましたが、農林中金のアグリビジネスに対する融資については、これはまた経済局で調べてもらっていずれの機会かにあるいは直接的にでもお答えをする、こういうことにさせたいと思います。  以上です。
  142. 下田京子

    ○下田京子君 次の質問でやりましょう。
  143. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、大臣に対してお尋ねいたします。  長年にわたって懸案でありました日米牛肉・オレンジ交渉が農産物十二品目に続いて去る六月二十日に決着がついた。その間大臣には日本農業を守るんだ、いかなることがあっても守るんだ、米を初め基幹作物である日本農業を守るんだ、職を賭して奮闘しておられることを私は認めます。  けれども、国民の声は、また午前のお話し合いでも非常に農産物の自由化に対して大きな不安を持っておることも事実であります。このことに対して、決着はついたけれども米国の強引な要求に対して我が国が一方的に譲歩する形で決着をしたんだ、こういう声は十分大臣のお耳にも入っておると私は思います。ならば、職を賭して日本農業を守るという悲壮な決意で奮闘されたことに対して、国民はこのような不安とそして一方的な押し切りだと、こういう世論があるということも事実でありますが、これに対してどうこたえていこうと思っておられるか、まずお聞きしたい。
  144. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) いろいろ御批判もあろうかと思います。急速な国際化に伴って対応し切れていない部分もあるということは私自身、自分でそう思っております。実務的にはちゃんとしてやっておっても、私は政治的立場にもあるものといたしましてそう思っております。先行き不安の声が非常に多いということでございます。であればこそ私も去る九月、この十二品目問題、牛・かん交渉を経験した後検討を命じまして、そして国際化に伴う農業、農村の活性化に関する基本的方向、これを実は省内でまとめさせたのでございます。このことについて、またいろいろ御批判もいただきながらその線に沿ってひとつ努力をいたしたい、こう思っております。  一方的に牛・かん交渉等で譲歩したのではないか、こういうことでございます。ございますが、沖縄のパインにも見られるがごとく譲歩はしてもその存立を守るということ、あわせてひとつ御判断を、また御評価をいただければありがたい、こう思っております。ことしの四月一日から牛・かんにつきましては完全自由化ということでございまして、そうはならぬ、そういうことはできない、こういうことで随分時間もかかりました。そういうことをあわせ考えますと、もちろん国家主権を主張するという部分もつけ加えまして、決して一方的に譲歩したとは思っておりません。しかし、何ら不満のない形で解決したとも思っておりません。率直に批判はあろうかと思いますけれども、しかし私としてはぎりぎりの決断をしてあのようなことになりましたので、この後の推移というものを十二分に見守りながら、この結果というものが将来の我が国農業にやはり禍根は残さなかったと、むしろより積極的な農政展開のまた一つのキックにもなったという評価を受けるように努力を続けたい、かように思っておるところでございます。
  145. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、具体的にもう一つ大臣にお聞きします。  昨年の売上税のときには食料品が非課税品目でありましたが、今回の消費税の場合は原則として例外品目を認めないという基本的な原則から、食料品は課税品目となっておりますね。ただし、売上高が三千万円以下であれば免税業者となるが、生産資材等には税額分が上乗せされるため、特に大規模化を進めてきた畜産農家にとって消費税導入は、当然コストアップにつながり経営を圧迫するのではないかと思われます。今コスト低減が必要な時代に消費税導入はこれに水を差すものではないかと思うわけですが、このように消費税導入が畜産農家に与える影響について政府はどのように考えておられるのか、御見解を承りたい。
  146. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 消費税は、御案内のように、基本的には消費者に転嫁することを予定した税でございます。そういう意味で、消費税額の円滑な転嫁が行われれば農業者がその負担をすることにはならないと考えております。しかしながら、農畜産物については、行政価格や卸売市場における競り取引の対象となるものが多いことなどの事情もございますので、その円滑な転嫁を図るため関係省庁と調整を進めているところでございます。いずれにしても、消費税の円滑な転嫁が行われるようその環境整備について適切にひとつ対応、対処してまいりたい、こう考えております。
  147. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、農水省にお尋ねしたいことがあります。  牛肉については、二年半後の昭和六十六年四月から自由化されることになっておるわけですが、自由化までの間にも六十二年度に二十一万四千トンであった輸入割当数量が、六十五年度には三十九万四千トンと約二倍に拡大されるため、今後大量の輸入牛肉が国内に入ってくることは避けられない見通しであると思います。そうした場合に、今後大量の輸入牛肉が国内に入ってくるために、牛肉の価格が大幅に低下することが予想されます。また、牛肉の価格が下落し牛肉の消費が大幅に伸びた場合に、その側圧を受けてその分豚肉や鶏肉等の食肉の消費が落ち込んで養豚、養鶏農家が打撃を受けることが考えられます。  そこで、牛肉の輸入自由化決定が牛肉以外の食肉、特に豚肉に与える影響について政府の見解を承りたいと思います。
  148. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) お話しございましたとおり、昭和六十六年四月から輸入枠は撤廃されるわけでございます。また、その時期に至りますまでの間一応の輸入枠として、毎年、本年度から六万トンずつの輸入量増加を予定しておるわけでございます。まず、この経過期間中における輸入枠増加でございますが、これに御承知のとおり畜産物価格安定法に基づきます畜産振興事業団の一元的輸入を踏まえて行われますので、もし需給事情について特段の状況変化がありますれば畜産振興事業団による保管等、あるいはまた輸入増加に伴う国内産牛肉への影響が大きく出るとすれば、また畜産物価格安定法に基づく価格安定制度の発動等を通じまして対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  また、輸入枠撤廃後の対応につきましては、現在御審議をいただいております二法案あるいはまた、これに基づきます各般の所要の施策実施について具体化を図り、国内産牛肉の円滑な生産維持に重大な支障の生じないような対応策をとっていきたいと考えておるわけでございます。ただ、基本的には最近におきます牛肉の消費動向から見ますと、現在経過期間中に予定をしております程度の輸入量増加は、日本国内マーケットにおいて十分吸収をできる数量であるというふうに私どもは予想をしておるわけでございます。  また、牛肉の輸入量増加あるいは輸入枠撤廃等に伴いまして、他の食肉との競合が生じまして養豚なり養鶏に大きな影響を与えるのではないかという御心配でございます。私どもとしましてもその影響についていろいろ検討しておるわけでございますが、率直に申し上げまして、現在の牛肉の消費動向から見ましてそれほど大きな影響が直ちに生じてくるというふうには思いませんけれども、やはり注目をしていく必要があると考えております。特に豚肉の場合におきましては、現在全体の消費量の約六割近くが加工原料として利用されておりまして、その豚肉加工品についての需要もかなり定着をしておるという実情から見ますと、そう急激かつ大幅な影響が出てくるというふうには考えておりませんが、いずれにしましても慎重に事の推移を見、その状況に応じて的確な対策を講じていく必要があろうかと考える次第でございます。  また、鳥肉につきましても、全体として、これも鳥肉自体の輸入事情もございまして比較的需給が緩和基調にございますけれども、健康食品として独自のマーケットが確保されておるという状況を考えますと、これも直ちに当面の輸入量増加によってさほど大きな影響を受けるとは考えておりませんけれども、慎重に影響の推移というものを見て所要の対策の要否を十分検討してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  149. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後に、当地沖縄にとりまして重大な問題でありますので、大急ぎで申し上げます。  この牛肉の輸入割り当てとしては、畜産振興事業団及び民間貿易による一般枠のほかに、流通消費が地域的に限られている特別枠がございますね。この特別枠の中に、沖縄の本土復帰に伴う輸入制度の変更による県民生活等への影響を緩和するためにとられた特別措置に基づく沖縄特別枠がございます。昭和六十二年度には六千二百五十トンの割り当て数量であったが、ことし六月の牛肉・オレンジ交渉の結果、六十三年度に八千トンに、その後六十五年度まで毎年二千トンずつ割り当て量を増加さしていくことになっております。沖縄特別枠の牛肉は畜産振興専業団を通さないために関税現行二五%のみが課されており、また畜産振興事業団の取り扱う輸入牛肉のように、売買差益分が上積みされてないためその分安い牛肉が入ってきております。  ところが、六十六年度の牛肉の輸入自由化後は、関税が七〇%に引き上げられるために沖縄における輸入牛肉の価格は、自由化後高くなるのではないかと当然思われます。  そこで結論、沖縄における輸入牛肉の価格の見通しを明らかにしていただきたい、  以上、お尋ねして質問を終わります。
  150. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 牛肉の現行輸入割り当て制度の中で、御指摘のとおり沖縄の特別の事情に基づきまして沖縄特別枠が配分をされておるわけでございます。輸入数量制限の撤廃と同時に、この制度もなくなるものと考えておりますが、これがなくなった後の関税につきましては、基本的には私ども本土と同じような関税が適用される、適用していくということが適当であろうかと考えておるわけでございます。現在の沖縄における特別枠の輸入に当たりましては、二五%の関税のほかに、御承知のとおり沖縄の畜産公社が一定の調整金を取るというふうな仕組みが割り当て条件の上で設けられておるわけでございますが、これも当然なくなるわけでございます。輸入枠撤廃後の競争条件が整備されるあるいは沖縄県の畜産公社の調整金がなくなるということを考えますと、沖縄の輸入枠撤廃後における牛肉価格につきましても、現状と大変大きな価格変動が起こるというふうには私ども考えておらないところでございます。  いずれにしましても、沖縄の県内における需給の安定あるいは県内生産の安定のために必要な施策として何が必要であるかということにつきまして、また関係者間でよく相談をして対処してまいりたいと考える次第でございます。
  151. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 さきに、全米精米業者協会の提訴に対し、米通商代表部は、十二月五日から七日にかけてカナダモントリオールで開かれるガットの閣僚会議で日本が進展を示さない場合には、直ちに提訴の再提出を求めるとの条件を付した上で、とりあえずRMAの提訴を却下しました。そういったことで、日本側の対応が注目される重要な会議に御出席のために、佐藤農林水産大臣は、本委員会終了後旅立たれるという慌ただしい中での委員会であり、しかも私の持ち時間も短時間でございますので、十分意は尽くせませんが、アメリカが強要する農産物の自由化要求に対する日本の対応策について、既に賢明な佐藤農林水産大臣のスタッフの皆さんは十分織り込んで検討済みだとは思いますけれども、私見を申し述べて大臣の所見を承りたいと存じます。  最近における国内状況を見てみましても、さきに経済同友会が規模拡大により五年後には米の生産コストを二分の一に引き下げること、食料管理制度を部分管理に改め、米流通の自由化を推し進め、米価格の決定を市場メカニズムにゆだねること、以上の二点を骨子とした提言を発表されました。  この提言に関連をし、同友会の副代表幹事諸井氏と全国農協中央会専務の山口氏が対談をされておりますが、その中で山口氏は、五年後のコスト半減は不可能な要求で、二〇〇〇年までにコスト三〇%減が精いっぱいであること及び水資源と国土の保全、環境浄化など稲作の多面的機能への配慮を欠いた提言には承服しかねるとの前提で、地域営農集団構想による規模拡大によりコストダウンを図るとする農協の方策を説明しておいでになります。この両者の提言は多少の数字の相違と規模拡大の手法、さらには生産調整についてはそれなりの相違は感じられますものの、大筋においては生産性の向上を図り、価格面から国際的対応を図ろうとする論理であることには変わりはございません。  一方、今日農産物貿易に関する世界の状況は、アメリカが中心となり、オーストラリア、ニュージーランドなどの農産物輸出国グループが同調して、農産物貿易に対する保護を撤廃する自由貿易論を展開して、これを世界に押しつけようとしており、特に工業製品の貿易で大きな利益を稼いでおります我が国に対し厳しいものがあり、佐藤農林水産大臣の御努力にもかかわらず、既にほとんどの農産物の自由化を約束せざるを得なくなってしまっております。  自由貿易とは、基本的には貿易を拡大することにより、経済的な進歩と繁栄がもたらされるというように彼らは説明をしておりますが、しかし実際には、途上国を中心として経済的な搾取が既に推し進められていることも事実であり、現実の世界では弱い国の側に債務の累積や経済的不平等という事態が引き起こされております。また、世界銀行もその指針として、各国の政府は自国の食料自給率を高めるのではなく、むしろ外国からの安い食料を輸入すべきであると明言をしております。  もろもろの原因が複合しておりますが、以上のような結果も深くかかわってアフリカにおいては食料自給体制が崩壊をし、農民の生産意欲は減退をし、人口の都市集中が急速に進む中で砂漠化の進行など、天災の一因が形づくられていることも指摘をされておりますとおりです。  他方、七〇年代半ばごろより、アメリカの食料生産が輸出重視になっていくにつれて、以前の家族経営農家が衰退をし、企業が経営する効率重視の大農場が主流となって土地収奪型大量生産農業が限りなく進行をし、化学肥料や農薬の多量使用となり、環境保護団体から使用制限を求める声も各地で上がり、土壌の流出や地下水の問題等で土地生産性の低下を招き、楽観視できない事態を迎えておりますことは早くから警告をされ、我が国においてもその実態は茶の間にまで放映されております。このまま自由貿易に任せておいてよいのだろうかと思われる問題が余りにも多発をしております。結局これは、自由貿易が工業生産には適しておることは間違いないとしても、地球を相手にした農業生産にも果たして適しているのであろうかどうか疑わしいと思われ、最近とみにこの面からの意見が出ており、現地の関係者からも生々しい、しかも手厳しい報告が絶えません。  本日、審議対象の畜産二法にいたしましても、佐藤農林水産大臣の努力にもかかわらず、アメリカの自由貿易主義理論の土俵の上での交渉であるがために何だか押し切られてしまったような気がいたします。その結果の国内整備ではないかとも思っております。農産物自由化の交渉をこのままの土俵、すなわち自由貿易至上主義の論理で対応する限り米とても同じ結果を招きかねないことを心配いたしております。  さきに申し上げた座談会で全中の山口氏は、稲作は日本文化の根源であり、日本の原点である。だから日本の稲作を守り抜かなければならないと力説しておいでになりますが、それでは理詰めの論議にはならない。それよりも、農業生産物は自由貿易にはなじまない立場、すなわち地球上の食料による利益を最大限にしようとしてより低い価格で世界市場に優位を占めるためには、環境や長期生産性、さらには人間社会への影響など構っておれないと思っておるのではないかとさえ思われる穀物商社等の恣意に任しておかないで、すなわち農業生産を単に経済学的視点からだけでなく、環境問題、長期的な土地生産性、生産者と流通業者との利害関係、南北問題、さらには真の人間の幸福や食料安保等、非経済学的問題も含め各界の識者による米問題への多面的取り組みを提起している学者もおいでになりますが、私はこれに賛意を表しておる一人であります。  だから、広く農産物全体を含め自由貿易主義に対抗可能な論理をまとめ、世界をリードすることが我が国の責務であると同時に、日本農業を守る道であるとさえ考えておるのでありますけれども、これから旅立たれます農林水産大臣、草々の間ではありますけれども、所信をお聞かせいただくことにして私の質問を終わります。
  152. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 御意見いろいろお聞かせいただいてありがとうございました。  現在、農産物自由化問題についてはガットのウルグアイ・ラウンドで公平かつ現実的にその貿易ルールの策定を目指して積極的な努力をいたしておるところでございます。その際、我が国は食料輸入国として食料安保、農業の社会的役割、環境、国土保全上の役割など非経済的な、委員のお話にも出てまいりましたように、非経済的な要素についても配慮することを主張してきたところでございますし、これからも主張し続けてまいりたい、かように考えております。
  153. 福田宏一

    委員長福田宏一君) 両案についての本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会