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1988-10-18 第113回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十八日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  十月十三日     辞任         補欠選任      山口 哲夫君     久保田真苗君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大城 眞順君     理 事                 板垣  正君                 名尾 良孝君                 永野 茂門君                 久保田真苗君     委 員                 岩上 二郎君                 大島 友治君                 大浜 方栄君                 岡田  広君                 亀長 友義君                 古賀雷四郎君                 桧垣徳太郎君                 小野  明君                 野田  哲君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   村田 直昭君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  日吉  章君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  児玉 良雄君        防衛庁経理局長  藤井 一夫君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  池田 久克君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       吉住 愼吾君        外務省アジア局        長        長谷川和年君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  都甲 岳洋君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        文部省学術国際        局長       川村 恒明君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        海上保安庁警備        救難監      邊見 正和君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        海難審判庁海難        審判理事所調査        課長       松下 幸亮君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第百十二回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月十三日、山口哲夫君が委員辞任され、その補欠として久保田真苗君が選任されました。     ─────────────
  3. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  久保田真苗君が一たん委員辞任されたため、現在、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事久保田真苗君を指名いたします。     ─────────────
  5. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 小野明

    小野明君 まず、長官お尋ねをいたしたいと思います。  最近の国際情勢というのは非常に動いているといいますか、大きな変化を見せているように思います。防衛庁長官は、先般の潜水艦事故責任をとりまして辞任をされた瓦前長官の後を引き継がれまして、今回、防衛庁長官に就任をされたわけでございます。したがって、まだ日も浅いわけでございます。しかしながら、横須賀の事故現場、あるいは東部方面の部隊、あるいは航空自衛隊の百里基地などを視察をされるなど精力的に動かれているように感じられます。  そこで、新長官お尋ねをいたしたいのでございますが、我が国防衛政策あり方基本的な問題でありますが、これについてどのような見解をお持ちであるのか、伺っておきたいと思います。
  7. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私は、ただいま御指摘のように、瓦長官の後を受けて防衛庁長官に就任いたしてまだ四十日程度でございます。しかしながら、防衛庁役割というものは、御承知のように、我が国の独立あるいは平和、国の安全を確保するという国家存立基本にかかわる重大な使命を担っておるものでございます。この大任を果たすためには、やはり三十万自衛隊員の先頭に立って誠心誠意努力をしなければならないという決意でただいまおるわけでございます。したがいまして、陸海空のそれぞれの自衛隊を視察いたし、あるいは防衛大学、あるいは研究所等も視察して、できるだけ早い機会防衛行政あり方を把握して、そうして防衛行政に対する動きが停滞しないように努力をしてまいっているわけでございます。  ただいま申し上げましたように、防衛行政については国家存立基本をなす重大な役割でございます。したがいまして、防衛庁としてもこの大任を果たすために積極的に努力をしなければならない。単にこれは防衛庁だけでできるわけではございません。すなわち、平和協力外交、加えて国民信頼によって支えられなければならない、こう思いますので、私たちはやはり自衛官としての誇りを持つと同時に、国民信頼される自衛官になるように努めてもらうということを柱にしながら防衛行政を進めようと、こう思っておるのでございます。
  8. 小野明

    小野明君 かなり勇ましい部分もございましたが、やはり国民から信頼をされる、国民世論の動向をよく見ながら防衛行政を進めるということが基本になければならないと思うんですが、それにはやはり国際情勢について正しい認識、理解、激動する国際情勢に対応しての防衛あり方、これを新しく樹立していくということが私は非常に大事ではないかと思うわけでございます。  そこで、この九月の十六日にソ連ゴルバチョフ書記長アジア太平洋地域の包括的な軍縮日本韓国との関係改善を柱とする新アジア太平洋政策を発表いたしました。この軍縮提案は、フィリピン米軍基地とベトナムのカムラン湾ソ連基地相互撤廃アジア太平洋地域での核兵器現状凍結、これら七項目から成る提案を行ったと、このように伝えられておるわけでございます。  過日、この提案について久保田委員総理質問をしたときでありましたが、竹下総理は、この提案は歓迎をするというふうにお述べになったと記憶をいたしております。ただ、中曽根総理はこれはナンセンスだと、こういうふうにおっしゃっておられるようでありますが、この点は外務省にもお尋ねをしたい。外務省は、大臣は来ておらぬが、だれか答弁できる人がおりますか。アジア問題ですから担当はアジア局長ですかね。アジア局長来ていますか。――来ていない。  それじゃ、後から外務大臣も見えるようでございますから、初めはこのゴルバチョフ提案についての御見解、評価、こういうものを防衛庁長官からお伺いしたいと思います。
  9. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 前段のいわゆるデタントの趨勢にある中で防衛庁国際情勢をどう見るのかということでございますが、確かにINF条約の締結だとかあるいは局地戦争停戦等、いわゆる米ソ間の軍縮あるいは軍備管理交渉が進められているということは、国際社会の平和の面からいっても非常に望ましい姿だと、こう思うのでございますが、世界の軍事情勢は、やはり米ソ中心にして東西軍事的対峙というのは依然としてあるような気がいたします。国際社会の平和あるいは安全というものが、依然として力の均衡による抑止で支えられていると私たちは見ているわけでございます。したがいまして、これに対応するための節度ある防衛力というものを整備していかなければいけない、あるいは日米安保体制信頼性を確保していこう、こういう態勢でおるわけでございます。  また、ゴルバチョフの二回にわたるいわゆる提言アジア太平洋地域における提言でございますが、このこと自体は私たちも大いに望むところでございます。これが将来に成果を上げていただくことを私たちは望むところでございますけれども、ちょうどきのう私、北大西洋評議会会長でございますオランダトン・フリンキングという人とお会いしたのでございますが、この方といろいろ話し合っておりました中で、ただいまのゴルバチョフ提言についてNATOとしてどういう考えを持っているのかというお話をしましたら、確かに提言としては尊重すべきことでございますけれども、しかしゴルバチョフの陰に軍部がある、さらにはまたKGB、いわゆる国家保安委員会があるから、そういう面から考えますというと、そういう点ではなかなか難しい問題をはらんでいるのではないだろうかというお話でございました。今のトン・フリンキングという人でございますが、この方のお話を承りまして、私たちも、望ましい姿でございますけれどもそういう多くの問題があるんだなということを感じたような次第でございます。
  10. 小野明

    小野明君 この点は、後で官房長官も見えますから、その際にもお尋ねすることになろうと思いますが、長官、どうでしょうかね、今のNATOオランダの方ですか、言われるように、ただ単なるこれはソ連平和攻勢である、戦術的なものが入っておりゃせぬかというような見方は、私は、それが全然ないとは言い切れないかと思いますけれども、いささか皮相な見方ではないのか、こういう感じがいたします。  特に、ゴルバチョフ提案の中では核兵器海軍力凍結を呼びかけておる。さらに、ソ連の沿岸、中国日本北朝鮮韓国が接する地域軍事的対立の軽減を検討するため多国間協議を呼びかけておるわけですね。ヨーロッパに比べて軍縮軍備管理の枠組みというものがない太平洋地域では、むしろ核を含めた軍拡というのが進んでいるのが現状ではないのか。そうした中でのこの提案は、アメリカフィリピンのスビック、クラークは放さない、こう言っておるようですが、アジアにおける軍備管理あるいは軍縮というこの提案注目に値するのではないか、こういうふうに考えなけぜばならぬのではないか。特に、米ソ首脳会談以来、東西両陣営がかなり緩んできておるといいますか、対立情勢が緩んできているということを見た場合に、これはやっぱり注目に値する見方を持たなければならぬのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  11. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ゴルバチョフのこれからの進め方を私たち注目しているわけでございますが、その第一は、やはり戦略核兵器、ただいまの核兵器の五〇%削減、これを本当にやっていただけるんだろうかということが一つ。それから、通常兵力に対するいわゆるヨーロッパ均衡が果たして保てるのだろうかどうか、また、通常兵器を含めての軍縮というものの姿勢がどういうような方向で動くのかということが私たちの大きく注目するところなんでございます。
  12. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま大臣からの御答弁の補足をさせていただきます。  クラスノヤルスク演説につきましては後ほど外務省関係者の出席した折にまたさらに御質問もあるかと存じますけれども、クラスノヤルスク演説自身は非常に幅の広い演説でございまして、その中に日本に対して注目している点、それから中国韓国に対して呼びかけている点、いろいろ注目すべき点があるかと存じます。  その中の、七つの安全保障に関連いたします提案につきましては、もちろん我々としてはさらに詳細にその検討をする必要はあるかと存じますけれども、とりあえず見たところでは、どうやら新しい点を含まないと言わざるを得ません。大体、ソ連が過去において何回か既に申していることを多少言い方を変えて繰り返しているというものでございます。そういった観点から、特にゴルバチョフが新しく出してきた提案ではないということかと存じます。  ただいま委員指摘になられた幾つかの点についてとりあえずのコメントとして申し上げれば、核の凍結につきましても、例えば中距離核INF合意ができましたけれども、そのINF交渉の前段階においてソ連は核の凍結提案いたしております。その段階でとまっていれば、恐らくINF交渉というのは成功しなかったということになるのではないかと存じます。  それからさらに、海軍力軍縮提案でございますけれども、極東地域におきましては、海空陸というものが非常に複雑に入り乱れた均衡が成り立っている中で海軍だけを取り出したというのは、これがまた過去からよく問題になっている点でございます。それから、関係国の間の協議という提案が含まれているわけでございますけれども、これもやはり現在その政治的な関係というものが整理されていないアジアにおいて、こういうものがすぐ実現するということはなかなか難しいという点がございます。  こういったように、これらの安全保障に関する提案につきましては、過去に行われたものであると同時に、いずれも積極的に各国において取り上げられていない、そういう性格のものでございます。
  13. 小野明

    小野明君 官房長官がおいでになりましたので、二、三お尋ねをしてみたいと思います。  これは防衛二法の審議とはいささか外れて、質問通告もいたしておりませんが、官房長官、これはあなたの職責上お答えをいただきたいことが一つございます。  今、リクルートコスモスで宮澤大蔵大臣の問題もございます。これに関連しては竹下総理の問題あるいは安倍幹事長渡辺政調会長中曽根前首相と多くの人の名が挙がっておりますが、これらの問題について官房長官はどういう御所見をお持ちであるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  14. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) この問題が提起をされましたときに私、記者会見見解を求められましたのでございますが、そのときに申し上げましたことは、つまるところは、そうした創業者株式を公開する時点において、その利得といいますか、そういうものについて現行の税制がいかにあるべきかというような問題に関することでございますし、またキャピタルゲインの課税の多寡についての判断になることでもございますので、現在、国会におきまして税制抜本改革をめぐっての論議が行われておるところでございますし、また、いわゆる不公平税制というものについての論議の中にキャピタルゲインの問題も指摘をされておられるわけでございますので、せっかくの機会でございますので十分な議会での御判断を仰ぐべきことが当然ではないかというふうに申し述べたところでございまして、本日も同様の気持ちを持っておるところでございます。  しかし、その後の経過の中で、この株式の公開をめぐって庶民的な感覚から申し上げて全幅の理解国民すべてに求めることがなかなか困難であるとすれば、そうしたことについては政治家それぞれがみずから反省をしていくべきことについてはこれは当然のことだというふうに考えております。
  15. 小野明

    小野明君 外務省の高官が大使を含めて財テクをやっておったというような問題もございます。今、政治家反省をしなければならないというふうなお言葉でございますが、今、税制改革の問題が大きな政局の中心に座っておる、そうすると、それを提案されておる与党の首脳あるいは政府責任者、そういった方々国民から疑惑の目で見られておる、こういうことについては著しく倫理性を欠くものであるということで厳しく反省をしなければならぬ問題ではないだろうか。そこで官房長官所見を求めたわけですが、いま一歩歯切れが悪いように思います。もう一回ひとつ御所見を重ねて伺いたいと思います。
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御答弁申し上げましたように、こうした問題が提起されておるわけでございますので、そのよって来るところはいかなるものかということは、たまたま申し上げましたようにリクルート株の配分をめぐって惹起をされておられる問題でありまして、そのつまるところは、要するにそうした手法が一般的、国民的感情になじむものかなじまないものか、あるいはなじまないものであっても法的にはいかなる措置を講ずべきかどうかということは、かかって結局は国民を代表する議会での判断になることではないかというふうに思います。そういった意味で、この問題をめぐっての議論も現在衆議院委員会でも熱心に行われていることでございますので、必ずやよい方向が見出せるものだというふうに考えております。
  17. 小野明

    小野明君 議会判断にゆだねるというようなことは、これは私としては意外な御答弁だと言わざるを得ないわけです。税制改革提案されておるそういった皆さんが、宮澤大蔵大臣を初めそれぞれの閣僚あるいは首脳がきちんと襟を正してこの際国民に対処をしなければならぬ、厳しい反省を持たなければならぬ、このように私は思うんです。そういう御答弁期待しておったんですが、それぞれ大臣関係しておることですが、官房長官の名前は挙がっておりませんけれども、どうも残念な気がいたします。まあ主題と外れておりますから、これはこの辺で次に進みます。  今アメリカ大統領選挙が行われておるんですが、これの大きな一つのテーマといたしましても、ゴルバチョフ体制におけるソ連変化というのは本物かどうか、これが問われているように私は思います。それをどう判断するかということは、日本政府としても、あるいは防衛庁長官としても非常に重大なことではないかと思いますが、長官はまだあと時間ございますから順次お尋ねをしてまいりますが、官房長官はどういった御見解をお持ちでございますか。
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 小野委員のただいまのお尋ねは、米ソ首脳会談後の現ゴルバチョフ政権平和攻勢をどう見るか、こういうことかと思います。  率直に申し上げて、なかなか難しい判断だろうと思います。ただ、種々見られます現在のゴルバチョフ政権が行っておる行動を拝見いたしますと、例えば先般のクラスノヤルスク演説に見られますように、アジア太平洋に対する関心が増大をしているということは看取されるような気がいたしております。しかしながら、この演説の中で対日関係改善意欲というものがうかがわれはいたしますけれども、あの中で七項目挙げて提案をしておるものを一つ一つ精査をいたしますと、率直に申し上げて従来の路線からさほど変化を来しておらない、繰り返しではないかというような気がいたしております。  しかしながら、ゴルバチョフ政権アジアの平和と安定を真に望むのでありましたら、言葉でなく実際の行動によって、特に我が国にとりましては北方領土を初めとする対日政策、あるいはまた極東におけるソ連軍事力削減等につきまして、具体的な行動と実績、こういうものがやはりほの見えてまいりませんと、現在の政権意欲は感じますけれども、さりとて、もろ手を上げてというわけにはいかないというのが、率直な今のソ連に対する受けとめ方でございます。
  19. 小野明

    小野明君 今、防衛庁長官に私はクラスノヤルスク演説の問題についてお尋ねをしたわけです。官房長官にはもう少し包括的な立場からお尋ねをしているつもりなんですが、米ソ首脳会談INF合意、それから戦略核の五〇%削減ソ連においては人事においてもいろんな変化が見られますね。そういう問題あるいは北方領土問題においても従来はそういう問題はないとソ連は言っておりましたが、最近は北方領土問題討議にも柔軟な姿勢をとり始めておるという変化が出てきていると思うんですね。先行きはどうなっていくかは別として、問題あり、こういうふうな見方をしておる。このゴルバチョフ体制における変化というもの、それを冷静に見ておきませんと、かつて米中和解というのが日本頭越しでやられまして日本が置いてきぼりされた、そういう経験がありますね。  それで、ゴルバチョフ体制におけるソ連変化というものが本物であれば、戦後四十年間の国際政治の構造を劇的に変える要因になると思うんです。それをクラスノヤルスク演説だけの小さな観点で見ると大きな過ちを犯すんではないかという気がいたしますが、官房長官ソ連は変わっていないんだというふうな今の御所見でしたが、そのとおりでございましょうか。
  20. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 冒頭御答弁申し上げましたように、また外務大臣外務大臣の御見解があろうかと思いますけれども、私の見るところでは、ソ連ゴルバチョフ書記長、議長も含めて、国内的にペレストロイカとかグラスノスチとか、いろんな意味での変革を求めて対処いたしておるようには見えますけれども、対日政策につきましてそうした為政者判断を下しておるということは、まだ今の時点ではないわけでございます。この十二月にシェワルナゼ外相来日をされるということでございますので、そうした機会にどのような方向が見出し得るかということは、私ども大変な関心も寄せかつ期待も寄せておるわけでございますが、そうしたことが一つ一つ実証されていく過程で、ソ連の対日政策が我が方にとって望ましい方向になるかどうかが実証されていくのではないかというふうに感じております。  今の時点で言いますれば、為政者でないマスコミの関係者とかそれぞれの研究所の所長さんとか、そういう方々が四島問題も含めまして発言をいたしておるということは従来にない変化であるようにも見えますけれども、これがさらに実権者といいますか、最高責任者判断として、また確たる発言として生じてくるということがあるとすればまことに望ましいことであり、我が方としても強く期待をいたしているところでございます。
  21. 小野明

    小野明君 それでは次の問題ですが、大韓航空機事件に関連した北朝鮮に対する制裁措置をオリンピック前に解除されましたですね。これは私は歓迎すべき措置であった、こう思います。  そこで、社会党の、うちの山口書記長北朝鮮に参りましてホ・ダム政治局委員との会談をいたしまして、九月か十月に朝鮮労働党来日、こういうものが約束をされているわけですね。人的交流経済交流の停止というのが制裁措置だったんですが、これを解除した、こういうことによって我が国の懸案である第十八富士山丸の問題に解決の曙光が少し見えたかな、こう思うんですが、なかなか今のところ、労働党の代表団が訪日をするということが明らかでないわけです。日本としても富士山丸の船長、機関長が拘束をされておるという事態もこれあり、政府としても、北朝鮮といろいろアプローチをするといいますかサウンドするといいますか、こういう御努力があってしかるべきではないのか。社会党にその辺はやらしておけ、こういうことでもないと思うんですが、政府自身の御努力はいかがなものでしょうか。
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) かねて北朝鮮との関係改善並びに第十八富士山丸問題につきまして、小野委員にも大変御苦労いただいておることは承知をいたしておるところでございます。  そこで、政府としていかがかということでございますが、政府といたしましても、第十八富士山丸問題はのどに刺さった骨のようなことでございまして、一日も早くこれを取り除かなければならないという気持ちでございますし、同時に朝鮮半島をめぐる平和の問題、広く言えば世界の平和に貢献するためにも関係改善政府としても努力をいたしてきたところでございます。特に、七・七の盧泰愚宣言以降につきましては、クロスでそれぞれ関係の改善を深めていこう、そのことは南北朝鮮のそれぞれの関係の前進にもつながることだということでいたしておりまして、政府といたしましても全力で今、北との関係改善努力をいたしておるところでございます。  そういった意味で、今御指摘のありましたように、この北朝鮮に対する措置解除につきましても、米国はオリンピック後にということでありましたが、我が国といたしましては、オリンピック開会前に解除することによって我が国の誠意を示すと同時に、関係の改善のためのメッセージを実は強く北朝鮮に送っておるわけでございます。残念ながら、現時点におきましてはいまだ十分な御返事をちょうだいすることになっておりませんけれども、政府といたしましてはあらゆるチャンネルを通じまして、具体的には第十八富士山丸問題でございますが、広く北朝鮮との全幅の関係の改善のために鋭意現在努力をいたしておる最中でございます。
  23. 小野明

    小野明君 そうしますと、具体的にはなかなかお答えになりにくい点があろうかと思いますが、やはり北朝鮮へのアプローチというのはおやりになっている、こういうふうに受けとめてよろしいんでしょうか。
  24. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 直接的には外務省かと思いますけれども、あらゆる手段を通じ、あらゆるチャンネルを通じて、全力を挙げて今努力中と承知をいたしております。
  25. 小野明

    小野明君 朝鮮半島における緊張緩和という問題は、南北双方が当事者として自主的に解決される、平和統一へ向けて解決されるということが主な問題でありましょうが、朝鮮半島を取り巻く米、ソ、中、日、こういう四国が側面的に援助をしていくということがなければこの緊張緩和、自主的な平和統一には向かない、こういう感じを持っております。そういった中で第十八富士山丸問題も解決への道を進んでいくのではないか、こういうふうに思うんですが、この点について官房長官のお考えをお聞きしたいんです。
  26. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘の点につきましては私も異を唱えるつもりはありません。米、ソ、中、日それぞれの国々がこの朝鮮半島の緊張緩和に対して十分な心構えを持って対処するということは、必要不可欠なことだろうと思います。  しかし、言うはやすく行うはかたいのは国際情勢の緊張緩和の問題でございまして、要は、半島を同じくしておる両国が十分現状を踏まえて話し合いを進めて、双方とも納得のいく形で結論を得るということが望ましいことでありまして、その点につきましては、オリンピック後、盧泰愚大統領も議会におきまして強力な提案を北に向けてもいたしておるようでございますので、それに対する当然の答えも出てきて、双方が南北の平和的解決のために努力をされることを日本政府としても心から望んでおり、また、いたすべきことがありますれば協力をいたすことはやぶさかでないという立場でございます。
  27. 小野明

    小野明君 官房長官、これであなたには最後の質問になりますが、第十八富士山丸についてそれぞれ政府としても御努力があっておる、こういう御答弁でございますが、残された家族の心情を考えますときに、社会党ももちろん努力をしてまいりたいと思いますが、これまで官房長官も熱心におやりいただいたと思いますが、なお一層の第十八富士山丸問題の解決へ向けて御努力を願いたい、これを要望しておきたいと思うんです。
  28. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 第十八富士山丸問題は人道問題でございます。そういった観点から、私ども政府といたしましても今日まで全力を挙げてきたことでございますし、また社会党を初めとしてそれぞれのお立場で大変御苦労いただいてまいったことでございます。我が国民の、また御家族の心情を思いますと、いっときでも早く解決をいたさなきゃならぬということで一致をいたしておることでございますし、また政府としては措置の解除もオリンピック前にこれを行って、我が国姿勢を改めて示しておるところでございます。  そういったことから率直に申し上げれば、社会党の山口書記長北朝鮮四十周年に参加をして、この問題につきましても一日も早い解決に積極的に御努力をいただき、そのための話し合いもでき得べくんば九月、遅くとも十月、こういうお話も実は私自身も書記長からお伺いをいたしておるところでございますので、率直に言わしていただければ、一日も早く北朝鮮の方から何らかの御返答なり何らかの行動というものをひとつお示しをいただけたらありがたいということでおる次第でございます。  いずれにいたしましても、さらに努力を積み重ねることをお誓いをいたしたいと思います。
  29. 小野明

    小野明君 それでは防衛庁長官質問を続けてまいりますが、昨年の十二月八日に、長官も御承知のように米ソ首脳会談がワシントンで開かれまして、INF中距離核戦力の全廃条約が調印をされました。この条約が本年六月一日に発効をいたしましたのは、米ソ両国が第二次大戦後、核兵器配備競争に乗り出して以来、現存する核兵器を双方の合意によって廃棄される初めてのことだと私は思います。この内容から申し上げて歴史的な意義を持っている、私はこう思います。長官は、このINF全廃条約の発効についてどのように評価をされておられるんでしょうか。
  30. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 今の御質問のとおり、INF全廃条約の署名そして発効、加えてソ連軍のアフガニスタン撤退開始とか、あるいはイラン・イラク戦争の停戦等局地戦争の停止もございまして、したがいまして米ソ間の軍縮交渉が進められているということは望ましい姿であろう、私はこう思うのでございます。したがいまして、将来とも米ソ間の軍縮、それから平和交渉が積極的に進められることを期待いたしているような次第でございます。
  31. 小野明

    小野明君 この際の米ソ首脳会談は、当時の報道によりますと、INF問題だけでなくて、今お話がありましたような、それぞれアフガンあるいはカンボジア、朝鮮問題、地域問題にも触れて話し合いがされておったやに理解をしております。そういう報道がされております。朝鮮問題については時間が足りなかったというようなことも報道されております。私は大きな意義を持つものである、こういうふうに評価をしたいと思うんです。  ところで、本年度の防衛白書を見ますとこういうふうに述べられております。   この条約は、既存の核兵器を初めて削減するものとして核軍縮の第一歩であること及び現地査察を含む詳細な検証措置が含まれていることの二点において評価できるものである。わが国は、かねてよりアジアを含むグローバルな全廃を求めてきたものであり、この条約を歓迎している。 こういうふうに書かれております。  しかし、総数が五万発と言われております各種の核弾頭の現状から見ますと、廃絶されるINFはわずか数%である、これをもって新しいデタントの幕あけにはつながらない、こういう見方をされる向きもありますが、長官はどのようにごらんになっておるんでしょうか。
  32. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 確かに米ソ間のいわゆる軍縮、平和交渉が進められていることは先ほど申し上げましたように非常に望ましい状況であろうと思いますが、ただ核戦力の削減だけにとどまらず、これから通常戦力についても積極的に削減の状況になければならないと私は思いますので、そういう点から考えますというと今後に残された課題というのは非常に大きいのじゃないだろうか。  先ほど申し上げましたように、軍事的な背景というのは米ソ中心として東西の軍事的な対峙があるわけでございますので、そういうような中での通常戦力のあり方というものがどう進められていくのか、そういうことを私たちは非常に期待もし、また、米ソ間の交渉がよりよい方向に進められることを期待いたしているような次第でございます。
  33. 小野明

    小野明君 私は、今後の問題はかなり時間はかかると思うんですが、戦略核を五〇%削減する、それへの合意を目指しておるわけですね。さらに地域問題においてもアフガン問題あるいはカンボジア問題、イラン・イラク紛争の停戦、こういうふうな事実を見ても新しいデタントへの幕あげが始まった、こう見るべきだと私は思うんです。  しかし、今、長官は通常戦力の問題にお触れになったんですが、さらに白書では、通常戦力分野でソ連の優位が一層際立つことになる。東西間の軍事的対立は依然として変わらないという分析に立っておるようであります。今日の平和と安定が核兵器を含む力の均衡に基づく抑止によって維持されておる冷厳な事実を忘れてはならぬ、これは長官が今お述べになったんですが、これは従来の認識ですよね。いわば旧態依然であると私は申し上げなければならぬと思うんです。そういう旧態依然たる国際情勢の認識でよろしいのかどうか、それを超えるものがあってしかるべきではないか、こう思いますが、長官は、この白書が示しているように、今御答弁がありましたような御見解を今後もとり続けるおつもりでございましょうか。
  34. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 基本的にはその姿勢をこれからも続けてまいりたいと思いますが、小野先生御指摘のように、国際情勢は非常に大きく変わろうとしている事実については私たちはよく関心と注意を払いながら今後進めてまいらなければならない、かように考えております。
  35. 小野明

    小野明君 そのとおり大きな変化、小さな変化に十分留意しながら防衛政策を進めていかれる必要があろうかと思うんです。  ソ連極東政策については変化をお認めになっていない。先ほどの参事官の御答弁でもそういうお話がございましたが、中国は趙紫陽総書記がゴルバチョフ改革は本物であると一定の評価をしておるわけです。竹下総理の訪中の際にも、李鵬首相が、中ソ関係の全般的な正常化が議事日程に上っておると言っておる。こういう緊張した中ソ関係が、最近は鄧小平もモスクワに行かれるようでございますが、この正常化ということが日程に上っております。  そういったことから、先ほどの参事官の御答弁のような硬直したアジア情勢見方でなくて、デタントへの急激な動きというものを率直にやっぱり認めるべきではないのか、こう思いますが、長官いかがでしょうか。
  36. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ゴルバチョフ発言についての考え方は、参事官の申し上げたとおりでございますし、また、官房長官答弁もそのような答弁でございましたので、私たちとしては、そういう考え方をただいまの時点ではとらざるを得ないと思うのでございます。ただ、中ソ間のいわゆる接近、この問題だとか、あるいは朝鮮半島における動向等を私たちは常に関心を持って見詰めなければならないということは事実でございます。  したがいまして、決してこの今の防衛白書に示したような態度にこだわっているわけではございませんが、常に独立国としての日本を侵害されないためにはどういう防衛力を整備するかということを基本にして考えますというと、現状はただいま申し上げたような状況でございます。
  37. 小野明

    小野明君 長官は就任後間もないので、本年度の防衛白書の作成にはタッチされていないと思います。それから、今の防衛白書は、やはり従来と変わらず抑止・均衡ソ連の軍事力強化、ソ連の脅威論、この二点が主軸になって書かれておるわけですね。しかし、今お話しのように、世界の情勢というのは時々刻々動いておる、いわば激動の時代を迎えておるように思います。防衛白書がこういった事態の深層部分といいますか、底にある部分を見ようとしていないと私には解せられますが、これは問題じゃないのか、こう私は思います。  ことしの五月にイギリスが国防白書を出しておるんですが、それによりますと、ソ連の新しい考え方あるいはペレストロイカ、これを客観的に説明をして、この変化は西側が受けて立つべき一種の挑戦だ、こういう書き方をしておるわけですね。そうすれば、我が国もこういったイギリスの言う西側への挑戦、これに対する答えを我々も書かなきゃいかぬ、こういう見方を学ぶべきではないか、参考にしなければならぬのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  38. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま委員指摘防衛白書における抑止と均衡の考え方に変わりはないという点、御指摘ございましたですけれども、現在進んでおります軍縮軍備管理のいろいろな交渉、これはINFが既に成功したわけでございます。  戦略核それから通常兵器、間もなくヨーロッパ交渉がスタートするかと思いますけれども、これは決して抑止と均衡の考え方を否定するものではなくて、むしろより低いレベルにおいてその均衡を図ることによって戦略的な安定性を確保しようということをねらいとしているわけでございます。そういった意味で、抑止と均衡という考え方が否定されているということでは決してないというふうに我々は認識いたしております。  それから、ただいまイギリスの国防白書の御指摘がございました。そのとおりでございます。イギリスの国防白書は、非常に政治的にペレストロイカというものをとらえて、そのペレストロイカというものがどういうものであるかということをさらに探りつつ、西側として反応すべきであるという政治的な立場から最初に述べているわけでございます。この点、我が防衛白書が純粋に防衛、軍事の面だけに集中して書いているというところで差が出てきているんではないかと思います。  ただ、イギリスの国防白書につきましても、そういうペレストロイカの挑戦を受けて立つべきであるということを言いつつも、軍事面においては全くその変化というものがあらわれていないということを指摘いたしております。ということで、その軍事的な面について結論を出すのは時期尚早であるということを同時に指摘しているわけでございます。  そういう観点から申しますと、我が防衛白書と同じでございまして、我が防衛白書の考え方といたしましても、もちろんそのペレストロイカ等、注目していくべき点はいろいろあるわけでございますけれども、ソ連における軍事、生産、軍事体制、配備の状況、訓練の状況というもの、これがソ連全体においても、また極東においても今のところ変わっていないということを指摘しているわけでございます。
  39. 小野明

    小野明君 白書は、ソ連については一向に変わっていない、こういう見方が今御答弁ございましたが、そうではなくて、INF合意から戦略核五〇%削減と、これは時間がかかるかと思うんですが、これは非常に大きな変化ととらえるべきではないか、こう先ほどから何回も申し上げておるわけです。  こういう変化を新しいデタントの幕あげ、こう受けとめるべきだと言っておるんですが、それをあなたの方ではそうじゃないんだ、何ら変わっていないんだ、こういうことを強調されるわけですか。
  40. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 先ほど大臣から答弁ございましたとおり、INF合意ができたということは非常に我々としても歓迎しているわけでございます。歴史的な協定であるという点、これは我々もそのとおりと考えているわけでございます。それからさらには、その戦略核交渉が現在行われていること、これはいろいろまだ難しい問題があるかと思いますけれども、時間をかければあるいはその成果が得られるものかと思いますけれども、こういうものを我々としては当然注目しているわけでございます。  ただ、ソ連全体が、それによってソ連の軍事体制自身が非常に変わっているかと申しますと、今INFを除きます核兵器というのは依然として非常に高い水準にありますし、また、さらに新しい核兵器がどんどん生産されつつあるわけでございます。  一例を申し上げれば、戦略核の中で鉄道移動型のSS24という多弾頭の核兵器が新たにことしになってから配備が開始されているわけでございます。それから潜水艦発射の巡航ミサイルSSN21というような全く新しい兵器がことしになってから配備が開始されているわけでございます。  そういった観点から、核兵器の分野においても基本的にソ連の政策が変わったという、そういう証拠は見られません。同時に、通常兵力の分野におきましても、陸海空いずれの分野についても新しい兵器がどんどん生産され配備されているというのが現状で、そういう現状を我々としては見逃し得ないということでございます。
  41. 小野明

    小野明君 ところで長官、昨年の防衛白書は防衛計画の大綱あるいは別表の見直し、こういう問題に言及をされておるわけです。ところが、ことしの白書はなぜかそれに触れられていないわけです。たまたまことしは白書が出たのが税制国会の最中である、新たな火種を投じたくないというような判断が働いたのではないか、こういう感じもするわけですが、防衛計画の大綱及び別表の性格について長官はどのようにお考えでしょうか。
  42. 日吉章

    政府委員(日吉章君) まず私からお答えを申し上げたいと思います。  本年度の白書におきまして防衛計画の大綱に関します記述のページ数が少なくなっておりますのは、委員指摘のとおりでございます。防衛白書は、毎年原則的に発行に先立ちます一年間の議論等を踏まえまして、それを新たに書き加えることによりまして一定のページ数の中におさめるという編集方針をとっております。ところが、この一年間を振り返ってみました場合に、一昨年から昨年にかけましての一年間の大綱につきましての国会及びその周辺におきます御議論に比べますとほとんど議論がなされなかったように私どもは理解いたしております。そういう関係がございましたものでございますから、昨年の防衛白書に一昨年のその議論が十分に書き込まれておりますので、本年度は、一定のページ数の中に昨年一年間いろいろ議論がされました別の新しい事柄を盛り込むことによって簡略にさせていただいたわけでございまして、決して防衛計画の大綱をないがしろにするとか、そういうふうな考え方ではございません。
  43. 小野明

    小野明君 防衛局長、この前この委員会での同僚議員の質問の中で、大綱は動かさない、変えないけれども別表は見直すんだというような御答弁があったように新聞で拝見をしましたが、これはそのとおりですか。
  44. 日吉章

    政府委員(日吉章君) そのとき私が申し上げましたのは、当委員会におきまして、大綱につきまして、大綱あるいはその別表の見直しを行うとしますとそれはどういう状況のときに行うのかという御質問をちょうだいいたしましたので、私は、従来から累次御説明を申し上げております大綱の仕組みを前提とした上で、次のようなことを申し上げたわけでございます。  大綱の基本的な考え方の変更を行うのは、その前提といたします国際情勢等に基本的な変化があった場合でございますが、現時点におきましてはそのような変化があるとは考えられないであろう、こういうふうに申し上げました。しかし、大綱の基本的な考え方を踏襲する場合でも、別表等の改定といったことは大綱の仕組みの上からは理論的には可能であるという旨、質問に即して御答弁を申し上げたものでございます。  したがいまして、次期防につきましても、そもそも計画を政府レベルのものとしまして策定するか否かも決まっていない段階でございますので、これらのことにつきましては現在いまだ検討もしていない、防衛庁としてどう考えているということはお答えすることはできないと申し上げたわけでございます。
  45. 小野明

    小野明君 そうすると、別表の見直しに積極的といいますか、見直すんだと、こういう御答弁ではなかったわけですか。
  46. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 重ねてのお尋ねでございますので重ねてお答え申し上げさせていただきますが、私、ただいま申し上げましたように、大綱の基本的な考え方を踏襲する場合にも理論的な可能性としては別表等の改定といったものも考えられる、こういうふうに理論的な可能性を申し上げただけでございまして、政府としまして別表等を改定する、あるいはしない、こういうふうな意図を申し上げたわけではございません。
  47. 小野明

    小野明君 外務大臣、お見えになりまして早速でございますが、時間も限られておるようでございますから、二つばかりお尋ねをしたいと思います。  その一つは、先ほども小渕官房長官お尋ねをいたしたんですが、今ソ連ゴルバチョフ体制の中で起こっておるいろんな変化がありますね。これは一体、本物と言えば言葉が適当であるかどうかわかりませんが、本物と見られるかどうか、どうごらんになっておられるかをお尋ねしたいんです。
  48. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ゴルバチョフ体制になりましてから、国際的にも一連の見るべき成果を挙げた政治イシューがたくさんございました。一つは、INFの全廃調印というような重要なことがあったんですが、アメリカの方の評価を私が聞きましたところでは、かつて何人もの書記長がおれらた。ブレジネフあるいはアンドロポフ、チェルネンコ、そうした方々と話し合いをしたんだがなかなか話が通じなかった、ゴルバチョフ書記長の時代になって初めてINFのグローバル・ゼロという話ができました、こういうふうに評価しておりますから、一応サミットにおきましても、あるいはASEANの拡大外相会議におきましても、ゴルバチョフ書記長の登場ということは大きな変革をもたらしておる、また国内に困難な問題もあるだろうけれども、非常に努力の要ることではあるが、勇気をもって臨んでおるというのが、一応そうした私の出席いたしました国際会議におけるところの評価であると申し上げておきたいと思います。  特にペレストロイカなんかは、中曽根総理がひとつ北方四島問題を含めて私の言うことはノーカットでテレビ放映してくれますかということに関しましても、その約束どおりテレビの放映がなされた、多くのソ連の人たちがそれを聞いたということもじかに伺っておりますし、現に私自身も、去る七月に極東問題に関しまして、あるいは小野委員も御承知かもしれませんが、若手学者とそして官僚との間においていろいろと座談会がなされておりまして、そこにはソ連の外務次官のロガチョフさんも出ております。そうした中において、半日ほどかかって読むほどの膨大な資料でございますが、詳細にわたって読みました。しかしながら、今までのソ連だったらこんなこと許されないというふうな議論がそこでなされておるということは、私は大きな変革がなされつつあるなと。まさに古い衣よさようならと、新しい衣を着ることにおいて何か経済的な困難も克服し、さらにはまた世界の協調の中に入っていきたいという、そうした面を私はうかがうことができるのではないだろうかと思います。  ただ、問題は、やはり社会主義の枠内においてという一つの大きな原則はこれはゆがめられない問題であろうと、かように思いますと、ペレストロイカといい、あるいはまた今申し上げましたようなそうした大胆な座談会が一般に出版されておるわけでございますから、言うならば情報公開、グラスノスチという面からいいましても大変なことだと思いますが、ひとつ外相会談等々におきまして、極東の平和はもちろん世界の平和等につきましても、二国間の問題で本当にそれが実現されるのかどうかということにつきましては、我々といたしましては、やはり直接お出会いすることにおいてその確認をしたい、かように思っておる次第でございます。
  49. 小野明

    小野明君 私も同感の点が多いんですが、米ソ首脳会談で、INF合意、それだけでなくて、いろんなアンゴラあるいはイラン・イラク、カンボジア、朝鮮、こういう地域問題もこういった中で話し合われたやに聞いておるわけですね。それで、それが着々と成果を上げて新しいデタントの時代を迎えつつある。これを我が国も率直に認めて、例えば防衛白書の中にも、そういった変化というものを微妙に受けとめた表現があってしかるべきではないかということを今申し上げておったわけです。  そこで、INF合意ができたが、次は戦略核五〇%という大きな問題があります。アメリカ大統領選挙でもこれらの問題は非常に大きなテーマになっておるようですが、戦略核の五〇%削減ということについての外務大臣の見通しはどうなんでしょうか。
  50. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 非常に難しい問題に両国は取り組んで努力をしておられる、これは私、やはり評価すべきだろうと、こういうふうに思っております。  しかし、我が国自体から申し上げますと、ややもすればINFのグローバル・ゼロということは非常に結構なことだが、これで全部もう緊張緩和されたよと思うのにはまだ早しと。だから、INFの全廃の調印というもの、またお互いに検証するというこのすばらしい出来事は核軍縮の第一歩であるという評価をしておこうと。今後、戦略核五〇%の問題に関しましても、ここにあるところのミサイルは果たして廃止するんですか、存続するんですか、どちらですかというような問題ですから、非常に難しい問題だと思いますが、両国がそうした問題に取り組んで努力をしておられる、これに対しましては私たちはやはり敬意を表したい。  同時にまた、そうしたことが実現することを我々といたしましても望まなければなりませんので、従来のこうした両国の話し合いが実を結びつつあるということは西側陣営が結束した結果であると、私たちはこのように確信をいたしておりますので、今後もひとつ西側陣営が大いにアメリカを応援してあげ、またソ連のそうした努力に対しましても評価を加えつつ、いろんな問題が解決されるように望むのが我が国の一番大切な姿勢ではなかろうか、かように考えております。  なおかつ、地域紛争も同様でございますし、二国の問題もあります。あるいはまた人道上の問題もございます。いろんな問題が広範に話し合われていることは大切なことだと考えております。
  51. 小野明

    小野明君 次の問題ですが、外務大臣にもたびたび私もお会いをいたしまして第十八富士山丸の問題について御要望も申し上げてまいったわけですが、社会党の山口書記長北朝鮮の創建四十周年の式典に参りました。朝鮮労働党の代表が九月か十月に来日する、こういう約束がされておるわけですね。そういうことで、事前に、オリンピックより前に日本北朝鮮への制裁措置を解除したということは非常に結構なことであると思います。最近は、アメリカ北朝鮮に対する制裁措置を解除する方向にあるように思います。そういったことで、今、朝鮮労働党の代表団になるべく早く来てもらいたいと私ども思っているんです。  それで、第十八富士山丸の問題についても我が国の大きな懸案として抱えているわけですから、制裁措置は解除した、これに対する北朝鮮の対応はまだないんです。社会党としてはそれだけの努力をしてきておるんですが、政府として制裁措置を解除した、そうすると人的交流経済交流といった面もあわせてもとに戻していくということになるんでしょうが、北朝鮮との関係改善、これは竹下総理も言われておりますが、積極的にこの際サウンドすべきで、アプローチをすべきではないか、こう思うんですが、それはおやりになっておるんでしょうか。
  52. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 小野委員も非常に第十八富士山丸に関しましては格段の御関心をお持ちで、なおかつ御努力をしておられる点に私は常日ごろから敬意と謝意を表する次第でございます。  社会党の山口書記長がお行きになられまする前に、一応我々といたしましても南北朝鮮の緊張緩和、これに役立つならばと、なおかつオリンピックがむしろそのことにおいて円満に無事故で成功されるためならばということで、政府といたしましてもオリンピック開会式の前日に措置を解除するという思い切った措置をとった次第でございます。  それによりまして、原則として公務員の来日は認めない、また訪朝も認めないという線は解除されたわけでございまして、既にそうした線で一件だけお越しになったわけでございますが、第十八富士山丸に関しましては、残念ながら私たちは正式な手足を持っておりません。したがいまして、あらゆるルートを通じまして、やはり二人の船員の方々のいわれなき北朝鮮におけるところの判決なり、あるいはまたその刑に服しておられるということに対しましては、もう即刻帰国をお願いしたい、釈放願いたいということを終始申し入れておりますが、いずれもこれはいろんなつてを求めてのお話でございます。政府同士が話し合うのが一番いいと思いますが、残念にいたしまして今日ただいまでは未承認国でございます。だから、南北の問題は第一義的には朝鮮半島における南北がひとつ話していただく、そのことがもう一番大切なことである。こういうことで、我々といたしましては、措置の解除に対しましては非常に韓国に対しましてもその理解を深めてもらったことも事実でございます。  なおかつ、韓国自体も、盧泰愚大統領が七月七日でございましたか、声明を発せられまして、非常に胸襟を開いて話し合うという対話を主体とした南北間におけるところの緊張緩和、これに向けて大きく踏み出された、このことも私はやはり評価しなくちゃいけないと思います。  そうしたことから、いろいろ我が国といたしましても、もちろん北朝鮮との関係改善というものは進めたいものである、かように考えておりますし、なかんずく第十八富士山丸のお気の毒な船員の方々の釈放、これは一日も速やかに望みたいものである。ついては、幸いなるかな社会党の使節団が、十月には労働党が日本へ来られる、招待申し上げた、当然政府としてもこれは認めろと。もちろん私たちは認めますと。その際に、社会党の方々にもお願いを申し上げて、この第十八富士山丸の問題はお話し合いを進めていただきたいが、でき得べくんば、向こうにも政府の代表が来ておられたら、我々といたしましても何らかの方法で接触をいたしまして話し合いを進めたいものであると、こういうふうに思って現在お待ちしておるところでございます。  もちろん、それまでには、今申し上げましたようないろんなルートでサウンドはいたしておるのでございますが、ノックはいたしておりますが、そのノックに対しまして現在のところは甚だ残念でございますが何の応答もないというのが現状である、したがいまして、政府といたしましては、ひとつ第十八富士山丸のためにも、労働党の使節が社会党の招待に応じて日本を訪問されることを期待しておる、こういうふうな状態でございます。
  53. 小野明

    小野明君 それで社会党も、労働党の代表団が約束のように早く来てくれるように努力をしようと、こういう話し合いをしておるところなんです。外務省は、大臣が今おっしゃられたことを聞きますと、いろいろサウンドしても音がない、だからじっと待ちの一手しかないんじゃないかというようなことも報道されておりますが、官房長官お話ですと、いろんなチャンネルを通じてやるのはやっているんだ、それは外務省がやっているんだと、こういう御答弁がございました。  そこで、我々も努力をいたします。人道問題として努力をせにゃいかぬと思うんですが、やはり未承認国であっても外交権は政府にあるわけですね。ですから、北朝鮮にいろんな形でアプローチをしていくということが今日望まれるんではないか。せっかく制裁措置を解除して待っているのに、こちらから積極的なアプローチがないというのは、やっぱりこれはどうかなと。北朝鮮としても、今いろんな南からのアプローチもあるものですから、その対応に追われていることはわかるわけですけれども、日本としては制裁措置を解除した、第十八富士山丸という懸案もある、そうすると積極的に動くべきではないのかと、こう思いますが、大臣いかがですか。
  54. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) したがいまして、まず社会党にも再度お願いをいたしまして、せっかく招待しておるんだからお願いしますよということは申し上げなければならないと思いますし、今まではそうでございましたが、しかし今後、政府の今日まで用いてまいりましたいろんなルートによって、ぜひともそのことをやはりこちらからも、社会党さんの御招待があるんだから応じていただいて、来日される場合には、私たちはそれに対しましてお待ちしていますよということは申し上げてもいいと、そういうようなことは言わなければならない、かように考えております。ぜひともこの面におきましては、いろいろとひとつ側面的な、むしろ側面的というよりも正面からもう既に話がどんどんと進んでおるわけでございますから、社会党の先生方の御努力、このことを私は期待を申し上げる次第でございます。
  55. 小野明

    小野明君 我々もやりますけれども、大臣もひとつしっかり、従来もおやりいただいたと思いますが、なお早急な解決を目指して御努力をいただきたいと思います。大臣、結構でございます。  次に、防衛費の問題についてお尋ねをしたいと思います。  防衛白書によりますと、一九八五年時点の数字で我が国防衛費は世界第八位と、こうなっておりますが、アーミテージ国防次官補は八八年度では世界第三位に近づいていると、こういうふうな見方をされておるようであります。我が国防衛費がGNPの一%を超えてアジア諸国から軍事大国になるのではないかと懸念され、警戒をされておる。私も中国に参りましたが、中国も非常にGNP一%突破、こういった日本防衛費の点については懸念の声がございました。  長官は、我が国防衛費のあり方について基本的にどういった御見解をお持ちでございましょうか。
  56. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 昭和五十一年三木内閣時代に、ちょうど坂田防衛庁長官時代に防衛大綱ができたわけでございまして、これを受けて十年間、いわゆる約十年で一%程度なら当時の経済情勢からいってこれが達成されるだろうということで進められてまいったわけでございまして、その柱は、何回も申し上げておりますが、局限、限定的ないわゆる小規模の侵略に対して原則的に日本が単独でそれに対応する必要最小限度の防衛力の整備という、節度ある防衛力を整備しようということなのでございます。  したがいまして、十年間見てまいりましたが、やはりそれがどうも達成されていない、国際情勢から見ても達成されていない。それを受けて六十一年から中期防衛力整備計画というものを立てまして、それにのっとってただいま防衛力の整備を進めているわけでございます。そういう意味で、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないということを常に柱としながら私たちは整備を進めているのであるということを御理解いただきたい、こう思うのでございます。
  57. 小野明

    小野明君 これは何回も言われてきておることなんですが、中期防で十八兆四千億、こういうことよりも毎年のGNP比を一%枠以内におさめるということが非常にわかりやすいわけですね。国民世論を見てみましても、現在以上の防衛力の増は望まないという声が圧倒的に多いように思います。ところが六十二年からこの歯どめを突破する。六十二年度で一・〇〇四%、六十三年では一・〇一三%というふうに拡大をさせてきておりまして、いずれも一%枠を突破している。しかし、本年六月に経企庁から発表されたGNPの実績速報値で試算をいたしますと、六十二年度防衛費は〇・九九二%と一%枠にはまったということになっておりますが、現時点における数字を防衛庁はどのように見ておられるんでしょうか。
  58. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) 六十二年度の防衛関係費の対GNP比の関係でございますが、ただいま先生おっしゃいましたように、当初予算の段階では一・〇〇四%ということでございました。しかしその後、六十二年度の決算というものが出まして、実はそこでかなりの不用額が出ました。この不用額といいますのは、かつて円安の時代に契約をいたしました契約が、その後、円高になりまして為替によります差が不用という形でかなり出ましたものですから、決算が当初予算額に比べましてかなり低いものになりました。それと本年六月のGNP比を対比いたしますと、先ほど先生のおっしゃったような数字になります。その後、さらにGNP比の速報が六十三年の九月に出ておりますが、これで対比いたしましても〇・九八五、こういう数字になっております。
  59. 小野明

    小野明君 GNPの見通しが若干見込み違いがあるということはやむを得ないとしても、六十二年度の防衛費の決算見込み額、当初のGNP見通しから見ても〇・九八六%で一%におさまることになるわけですね。こう見てくると、六十二年度の予算編成時では防衛費は一%の枠におさまることはわかっていた、しかし意図的に一%を突破させたのではないか、こう思われます。初めに一%突破ということが目的であって、従来続いてきた一%枠を破ることに目的があったのではないんですか。
  60. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) 六十二年度の予算の編成に当たりましては、累次申し上げておりますように、厳しい財政事情にございますので経費の節約に極力努めました。しかし、その一方において中期防衛力整備計画を着実に達成していかなければいけないという事情がございまして、この関係のぎりぎりの調整をしました結果、当初予算におきましては名目の対GNP比が一%をやや上回るという状況になったわけでございまして、決して初めに一%枠突破ありきということではございませんでした。  なお、きょう現在におきまして一%以下になっておりますのは、この予算を執行いたしました後におきまして精算余剰が出たということでございまして、このような余剰金が幾ら出るのかということにつきましては決算の段階にならないとわかりませんし、あるいは出ないケースもあるかもしれませんし、額がもっと小さくなるかもわからないわけでございます。したがいまして、あらかじめ決算段階で対GNP比がどうなるかということを予見することは大変難しい事情にあったということを御理解いただきたいと思います。
  61. 小野明

    小野明君 一%枠を突破するということは非常に大きな意味があるわけです。ですから、なお私はこの点をやかましく言っておるんですが、六十二年度の当初予算と決算額の見込み額では約六百二十四億円の差ですね。確かに円高というような原因もありましてこういった差が生じたのではないだろうかと思いますけれども、円高による分と節約による分、内訳はどうなっておりましょうか。これは概要を今説明をいただいて、後で詳細な資料を私のところにお届けいただければそれでいいと思います。今、概要をひとつ話してみてください。
  62. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) 決算段階で出ました不用額は総額で四百七十五億円でございます。そのうち、これは例えば人件費の関係で誤差が生じたとかいろいろございますが、為替差で決算段階で生じました差額は百八十五億円でございます。
  63. 小野明

    小野明君 六十二年度でGNP一%枠を超過した額は百三十四億円ですね。六十三年度では四百八十三億円ですね。一体これらの額は当初予算の額の何%に当たるんでしょうか。私の方の調べた数字では、六十二年度では〇・三八%、六十三年度では一・三%ではないか、こう思うんですが、この程度の額は幾らでも節約できる、抑制できる額ではないのか。そうすることによって専守防衛姿勢、GNP一%を守っているんだ、こういう姿勢日本防衛費に対する懸念を持つ周辺諸国、アジア諸国に示すことができると思うんですが、長官、この点はどうでしょうか。
  64. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) まず事実関係を私から御説明させていただきますが、ただいまるる申し上げましたように、決算段階に出ます不用額といいますのは、為替の問題とかあるいは契約の残だとかそういうものでございまして、結果として見ないとわからないものでございます。それに対しまして当初予算の段階におきましては、厳しい財政事情も十分考慮をいたしまして諸事業に要する経費を積み上げた結果、今先生がおっしゃいましたような金額になっておるわけでございまして、決算段階で一%を割るということをあらかじめ予見して当初段階の経費を抑制するということは極めて難しいという事情を御理解いただきたいと思います。
  65. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 六十二年に一%を予算面でオーバーした折に、六十二年の閣議決定において五十一年のいわゆる閣議決定の精神というものを尊重していかなければいかぬ、いわゆる節度ある防衛力の整備というものを旗印に予算編成を進めているわけでございます。したがいまして、あらゆる面で私たちもただいま御指摘のような形で抑制しながら進めてまいるわけでございますが、国際情勢等も勘案しながら節度ある防衛力の整備を図るとすれば今申し上げたような状況になるということでございますので、私たちは、節度ある防衛力の整備ということと、それからいわゆる五十一年の閣議決定の精神は尊重するという姿勢で今後臨みたい、かように考えております。
  66. 小野明

    小野明君 そうしますと、GNP比一%枠というものは田澤長官としては尊重をしていきたい、これを守っていきたいというお気持ちでしょうか。
  67. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ただいまも申し上げましたように、その精神を尊重してまいりたい、こういうことでございます。
  68. 小野明

    小野明君 円高とか節約によって防衛費が一%以内におさまったとしても、装備は抑制されたわけではないんですね。防衛費は、アーミテージ次官補が言うように、本年度中にはアメリカソ連に次いで世界第三位、軍事大国あるいは軍事費大国といいますかになることは確実だと思いますね。先ほど来質問申し上げておりますように、世界が今やデタントの時代に流れておる、これはもう間違いのない事実である。外務大臣もいろいろおっしゃったけれども、その方向は肯定をされたように私は思います。こういったときですから、せめて防衛費を一%枠にするということを復活さして、国民の不安、それから周辺諸国の警戒心、こういうものを解くことを改めて考え直さなければならぬときだと思いますが、重ねてのお尋ねだと思いますが、長官、いかがでしょうか。
  69. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 国家存立基本をなす防衛でございますので、したがいまして、GNP比で常に見るということは必ずしも望ましい姿ではない。あくまでも国際情勢を見きわめながら防衛費の節度ある整備をしていかなければならない。確かに国際情勢はデタントの趨勢にございますが、現状は、先ほど来申し上げましたように、やはり軍事的な対峙というものは依然として存在する状況にございますので、そういうことを踏まえながら、私たちは節度ある防衛力の整備を図っていかなければならないという認識にただいまあるわけでございます。
  70. 小野明

    小野明君 いつまでたってもこの問題は水かけ論になるようですが、GNP比一%枠内におさめるということは非常に重要な、周辺諸国への何といいますか、大きな目安といいますか、ということになるわけです。ぜひひとつ一%枠におさめるということは厳守をしていただきたい、こういうふうに要望しておきたいと思うんです。  そこで、時間もないようですから、最後に、防衛施設庁来ていますか。長官は来ておりますか。――私の地元の問題で一問お尋ねをしておきたいと思うんです。  航空自衛隊の築城の基地ですね、福岡県椎田町にありますが、来年F15J十八機を配備する、それに伴うサイレンサーの設置工事を行うということで地元住民との間にトラブルがございます。それで、こういった航空自衛隊の基地があること自体がやはり周辺住民に不安を与えておる。事故が多いものですから、非常な危険も感じる、こういう事実をお知りをいただきたいし、今度F15を十八機配備するということから、周辺の一市三町、行橋市、それから椎田町、築城町、豊津町、一市三町ございますが、これらのいわば自治体といいますかは納得をしていない、こういうことが地元の新聞で報じられております。これをどうおとりになっておるんでしょうか。
  71. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) お答え申し上げます。  築城基地に配備しておりますF4型機をF15型機に更新するということにつきまして、これは法的には必ずしも地元の了解を必要とするものではございませんけれども、防衛施設庁といたしましては、施設の安定的な使用を図るために地元の御理解と御協力を得ることが必要であると考えておりまして、このために本年七月十六日に地元一市三町の市長さん、町長さんに正式に申し入れまして理解を求めているところでございます。  この十月八日に一市三町の市長さん、町長さんから、F15型機を配備することに伴います地元の要望につきましては今後さらに協議していくということにするが、関連します施設整備の工事の着手についてはやむを得ないという旨の意向が示されたところでございます。この配備に伴います地元要望につきましては、今後も鋭意協議して、理解が得られるよう努力してまいりたいと考えております。
  72. 小野明

    小野明君 一市三町の首長はゴーサインを出したというのですか。
  73. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) この配備に伴いまして地元にいろいろ御要望がある、この御要望につきましては今後もさらに協議していきたい。しかしながら、配備に伴います施設整備工事の着手についてはやむを得ないという意向が示されたということでございます。
  74. 小野明

    小野明君 法的に、例えば米軍の配備の変更というような問題ではないんですが、防衛の施策について周辺住民の合意を得る、これが趣旨であるならば、一市三町の首長だけに了解を得るというのではなくて、首長を含めてやはり市議会、町議会、これらの合意、同意も得るように努力をすべきではないのか。地元の新聞では「「F15」施設”見切り”着工へ」、こういう見出しで出ているんです。何で強引にこういうことをする必要があるのか。特にこの町議会の基地対策特別委員会の丸山という副委員長は、「個人的にF―15J機の配備はあくまで反対。防衛庁としては、地元の同意を得て施設整備を実行することが一番いいが、賛成を得て実施しても順調に進まないとみて、強行しようということではないか。怒りを感じる」、こういうふうに話している。また、椎田町の同じく議会の特別委員会の高島という委員長は、「自治体が同意をしていないのに、施設局が(施設整備を)やることは解せない」、こういう報道がされております。こういう議会筋については、見切り発車ということなんでしょうか。
  75. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 防衛施設庁としましては、関係の一市三町、これを代表されております市長、町長にお話ししたわけでございますけれども、これらの首長さんは、必要に応じまして議会の全員協議会であるとか基地対策特別委員会であるとか、それからまた関係の町内会等にも御説明をされまして、例えば執行部一任を取りつける、そういうふうな努力を行っておられるというふうに承知しております。
  76. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 築城基地でございますけれども、現在飛行隊が二つございまして、そのうちの一つが現在F4でございまして、それをF15にかえさしていただく、こういうお願いをしておるわけでございます。先ほど飛行機の事故等にもお触れになられましたけれども、我々も大変困ったことだと思います。事故がないように今後とも努力してまいるわけでございますけれども、今申し上げましたように二つしかない飛行隊の一つがなくなるということでございまして、そういう関係で地元の皆様にいろいろお願いをしておるところでございます。  施設関係につきましては、ちょっと時間のかかるものでございますので今の段階で整備に着手しなければいけない、こういう事情もございまして、議会筋の点につきましても、我々もいろいろ配慮を当然いたしております。各市町の首長の方々も同じように配慮してくださっていると思います。  なお、配備に伴いまして今後地元の要望もいろいろございますので、引き続き努力をしてまいりたいと存じております。よろしく御協力のほどをお願いいたします。
  77. 小野明

    小野明君 施設周辺整備交付金で、金でばっと抑え込むということではなくて、やはり首長、議会筋、そういったところも同意を得るようにさらに努力をいただきたいと思いますが、長官、いかがですか。
  78. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 先ほど申し上げましたように我々も極力努力をしてまいったところでございますが、今後とも御趣旨も体しまして、各首長の皆様とも御相談しながら、できるだけ円満に事を処するように努力をしてまいりたいと存じます。
  79. 小野明

    小野明君 まだ質問がございますけれども、きょうは時間が来ましたので、これで終わります。
  80. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  81. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 永野茂門

    ○永野茂門君 最初に、防衛二法の関連で防衛庁にお伺いいたしたいと思います。  午前中の御答弁で、現在のデタントのムードの中、あるいはソ連平和攻勢といいますか、その中においてソ連変化の兆候を認めつつも、なおその戦略的あるいは戦術的な変化については本質を見きわめなければならないということ、特に軍事力につきましては、またさらにアジア正面においてはほとんど変化のないということについて触れられましたけれども、私も全くそのとおりに思います。  さらに最近、ゴルバチョフクラスノヤルスクで発表いたしました七提案等につきまして検討いたしますと、この正面における、つまりアジア太平洋正面における米国の力の影響力を削減するとか、あるいはまた日米間の離間を図る、さらには自由陣営間の離間を図る、あるいはさらには国境の現状ないしは軍事力の現状を固定、凍結することによってソ連の優位な状態を維持するということ、そういうねらいがあるおそれを感じさせるものでありまして、必ずしもそうではないかもしれませんけれども、我々はそれについて十分な対応をしていかなければならないと思います。  そういう観点から、現に我々が整備しつつありますところの中期防衛力整備計画は着々と遂行すべきでありますし、また、それに次ぐ防衛力整備についていろいろと現在の情勢を勘案しつつ考究し、そしてまた所要の戦力を整えていかなければならないと考えるものであります。  そこで、まず第一に、例年のごとく本年も予備自衛官の増員について提案をされております。ところがその予備自衛官について、これはいわゆる予備戦力の中核でありまして、その予備戦力の構成をどういうふうにしていくかということは、大変に我が国防衛あるいはさらに我が国の抑止力を有効に働かせるかどうかということについて極めて重要なファクターになるものでありまして、平時、戦力を低レベルに維持し、そして有事所要の期間に所望の戦力レベルを構成するというために、非常に効率的に平時の戦力を定め、そしてそれを戦時に急速に必要なレベルに拡大するというための基礎になるものが予備戦力であると考えられます。  その観点からいきますと、一般的には戦時の戦闘部隊の拡充でありますとか、あるいは後方支援部隊の新たなる作成でありますとか、あるいは後方警備部隊の増強ないしは新たなる作成でありますとか、あるいはさらに戦闘損耗の補充でありますとか、こういうことを考えて予備自衛官あるいは予備戦力の所要を決め、そしてそれに基づいて毎年定数を確保していくということが必要であると考えるわけであります。  したがいまして、一般に、列国では、通常平時において所有しておるところの現役戦力と同等以上の予備戦力を常時確保して有事所要に間に合うようにしてある、それが即応態勢を維持することであり、その即応態勢によって抑止力を強く行使するということになっておるわけであります。  そういう見方からしますと、我が防衛庁でやっておりますところの予備自衛官の定数の決め方あるいはそれの訓練招集のやり方というものは、定数は極めて少数であり、そしてまた訓練招集も年間極めて短い期間二回に分けたりしてやっておりますが、これでは即応戦力として直ちには役に立たない、なかなか難しい状態にあるんじゃないか、こういうふうに考えますので、まず第一に、予備戦力の整備についてどういう基本的な考え方をお持ちになっておられるか、そしてまた、それは現状において適切であるとお考えになっておるのかどうか、それから現在の訓練体系、招集訓練体系についても改善するような考え方はないのかどうかということを承りたいと思います。
  83. 日吉章

    政府委員(日吉章君) お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘になられましたように、予備戦力といいますか、予備兵力につきましては諸外国いろいろな考え方がございまして、私どもとしましても今後いろいろと検討していかなければならない問題点の一つだというふうに考えております。ところが、現状におきましては、諸外国が一般にとっております予備兵力に対します考え方あるいは制度と、我が防衛庁自衛隊がとっております現行の予備自衛官制度とは若干趣を異にしている点があることを、まず御理解を賜りたいと思います。  諸外国の予備役制度は、ただいま先生も御指摘になられましたように、有事におきますいわゆる正面兵力を何倍にも増強させる、何倍にもということの表現が正しいかどうかは別といたしまして、現実には平時に持っております兵力と軍人の数と同等もしくはそれ以上の員数を保有するという例がほとんどだと思いますが、それはその国の防衛構想とか兵役制度等に応じた形になっているわけでございます。ところが、我が国のように志願制のもとでの予備自衛官制度といいますのは、これからもちょっと申し上げますように、これら諸外国の制度と直ちに比較をいたしまして、多いあるいは少ないと論ずることが必ずしもできないのではないかと考えております。  私どもといたしましては、まず具体的に申し上げますと、例えば陸上自衛隊でございますと、師団等の主動部隊が主作戦方面に転用された後に軽普通科連隊を編成配置しまして後方地域等におきます警備等に当たらせるとか、あるいは有事におきます後方支援業務、輸送とか補給等というようなことになるんだと思いますが、それの増加に応じるために兵たん支援部隊等に充当するとか、こういうようなことを考えておりまして、いわゆる後方警備等の要員、後方支援等の要員、基地防空部隊等の要員、こういうふうなものに充てることを考えているわけでございます。  これは戦後ゼロから出発いたしました自衛隊の歴史にも関係あるところかと思いますが、今後、先生が御指摘のような点も踏まえまして、種々検討していく必要があろうかと思っておりますけれども、現時点におきましては、私どもの考えております予備自衛官制度と申しますのは、今申しましたように、現在の自衛隊の実力を有事において有効に機能させるための後方支援的性格を持ったものと、こういうふうに御認識いただきたいと思います。  ただ、陸上防衛態勢研究会というのを防衛庁の中に設けておりまして、陸上防衛についてのいろいろな研究をしていきたいと思いますが、その際、予備自衛官制度はいかにあるべきかということも一つの大きな問題意識としておりまして、その研究結果が出ますれば、それを踏まえまして海空両自衛隊におきましてもどのような予備自衛官制度がよろしいか考えてみたいと思っております。  これにつきましては、まさに防衛構想の基本にかかるような点もあろうかと思いますので、慎重に今後いろいろな御意見も参酌しながら研究をさしていただきたいと思っております。
  84. 永野茂門

    ○永野茂門君 従来からの考え方は私も承知しておったところでありますけれども、この考え方が修正されてない、現在検討中だということでございますが、御承知のように、例えば志願兵制であるから云々ということを今おっしゃいましたけれども、志願兵制であるということでいえばイギリスも全く一〇〇%志願兵制であって、そしてまた、所要の戦力をどういうふうに整えるかということについては大変な先輩であるわけでありますけれども、いずれにしろ、これは何らかの有事に追い込まれた場合に一体どれだけの戦力を必要とするかという基本的な考え方、その戦力をいかにして増勢していくかという基本的な考え方にわたるものであると思いますので、よく今後検討していただきたいと思います。  次は、自衛官の募集に関して話を進めたいと思います。  御承知のように、自衛官の募集の状況というのは年度によって非常に違うわけですが、一般隊員の募集について特に申し上げますと、御承知のように経済的に好況なときには非常に募集が難しくなる、それから不況のときには募集が比較的容易になる。したがって、比較的容易なときには良質な隊員が確保される。こういうような状況でありますけれども、経済の好況は一般的に恒常的になりつつありますし、それから六十六年ごろから先について考えますと、いわゆる採用適齢の人口というものがうんと減少してくるということが予測されておるわけであります。その上に今のような環境で、大変なデタントムードといいますか、これが世の中に充満しておるときに隊員を募集するということは、大変に難しいといいますか、困難を伴う事業であると思うわけであります。それを今のような体制で、今のような社会的な環境で自衛官の募集を続けるということは果たして可能なのであろうかと、私は大変危惧するものであります。  この際、何らかの募集組織に関する基本的な考え方を変えるとか、あるいはまた国民全体あるいは政治において、国防というものに対してどういうふうに考えるのか、国防に対する国民の自覚を促して、そしていかにしてそういうものを支えてもらうのかというようなことでありますとか、あるいは自衛官の地位等について改めて抜本的な対策が必要なんじゃないか、こういうふうに考えるものでありますけれども、これについて防衛庁の御見解はいかがでありますか。
  85. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) 自衛官の募集につきましては、最近の雇用情勢から見ますと、民間企業等におきます新規採用計画の大幅な増加を初めといたしまして極めて顕著なさま変わりの様相を示しております。自衛官の募集につきましても、このような動向を踏まえましていろいろな施策を講じていかなければならないと思っておりますけれども、中長期的に申し上げますれば、今御指摘のように、二士男子の募集の対象の年齢であります十五歳から二十五歳末満までの人口数を見ますと、六十八年度の七百万ちょっとがピークで、以後毎年減っていくというような傾向にあるというふうに見積もっておることは今先生御指摘のとおりであります。  このような状況にかんがみまして、人的基盤を強化していくために、今後自衛官の募集であるとか教育であるとかというものをどういうふうにしていくべきかということにつきまして、防衛庁の中におきましても研究会をつくりまして、今後検討していくべき施策についていろいろ検討課題がまとまったところでございます。例えば二年とか三年とかいう短期間を任用期間とする今の任用制度、これがそのままでいいのか、定年制までを考えた生涯管理としての方向を考えながら任用制度あるいは人事管理について考えていくべきじゃないかとか、あるいは自衛隊に入隊してくる人たちにとって魅力のある職場とするための営外居住であるとかの部隊運用との関係で隊員の扱いをどうするかというようなものもございますが、さらには国民自衛隊防衛に対する理解を得ながら、こういうような募集全体の中において募集体制をどういうふうにしていくかというようなことがいろいろ指摘されております。  今、この指摘事項につきまして関係の部局におきまして検討しておるところでございまして、これらの施策を総合いたしまして、今後自衛官の募集の安定あるいは安定的な環境の確立を図っていきたいというふうに考えております。
  86. 永野茂門

    ○永野茂門君 極めて抽象的に、現在いろいろな委員会で検討中であるという、そしてその検討成果に基づいて前進を図りたい、こういうことでございますけれども、私は、例えば今度の「なだしお」事故に見られましたような、もちろん自衛隊の中に大変に反省しなければいけないことがあったことはもちろんでありますけれども、しかし同時に、マスコミの、一般に自衛隊たたきに見えるがごときそういう報道姿勢といいますか、姿勢がそうであったのか、事実集めた情報がそうであったのか、どちらかよくわかりませんけれども、とにかくそういうような状況で推移したというようなことに見られるように、やはりこういうような環境で国を守る人が喜んで自衛隊に参加してくるということはなかなか確保しにくいのではないか、こういうふうに思うわけです。  したがいまして、自衛隊国民から信頼される状況、再び不信を取り払って信頼を回復するという努力、これはもちろん極めて自衛隊側として大事なことでありますけれども、やはり防衛庁あるいは政治側として一体どういうふうに国民の御理解を得るかということについて、国防の重要性でありますとか、必要性でありますとか、あるいは国防の任務に携わることの崇高性でありますとか、そういうことについて文教の部面においても何らかの手を打っていただくように、ぜひ防衛庁側においても政府部内においてしっかりと努力していただきたいと思うのであります。  防衛二法についてはこの二つだけで質問を終わらせていただきますけれども、この二つを通じて、このような状況下で自衛官をして発奮して任務につかせ、そして募集も比較的やわらかく容易になってくるように、また、よき自衛官、よき予備自衛官が集まってくるように、そしてその訓練が即応性が保たれるようにやっていただくことについて長官の御所信を承りたいと思います。
  87. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 防衛庁役割というものを、私は国民理解していただくということが一番じゃないだろうかと思うのでございます。やはりよき自衛官であると同時に、よき社会人であるという意識を自衛官自体も持っていかなければいかぬ。また、私たちはやはり我が国の独立あるいは平和という非常に重要な課題を処理していく、そういう大任を担っているんだというこの意識、これは私は非常に重要だと思うのでございまして、したがいましてその大任を果たすためには、自衛隊が単にみずからの力だけではこれはできませんので、国民理解が必要であるということでございますので、国民に本当に理解を得る自衛隊にしていかなければならないと思うのでございます。  考えてみまして、戦後四十年、我が国はいわゆる独立国として他国から侵略を受けない、いわゆる平和の四十年であったわけでございまして、このことが我が国の今日の繁栄をもたらしていると私は思うのでございますので、そういう点をもっと私たち国民理解をしていただく、そして将来ともやはり自衛力のあり方というものを国民に認識していただく。そして、国の繁栄というものは自衛意識がなければいけないのだという考え方、自分の国は自分の手で守るんだという意識をやはり国民に持っていただく。また、私たちもそういう意識の中で自衛隊を育てていくというような相関関係をつくり上げていくことが、よき健全な、いわゆる精強な防衛力の整備につながるし、将来とも自衛隊あり方というものが、先生御期待のような自衛隊になるのじゃないだろうかと思いますので、将来ともそういう形で私も努力をしてまいりたいと、かように考えております。
  88. 永野茂門

    ○永野茂門君 長官の御決意、まことに頼もしいことだと思います。防衛庁において、あるいは広く政府部内において、その具体化についてぜひ推進をしていただきたいと思います。  次に、沖縄での銃弾事故について承りたいと思います。  新聞報道によりますと、沖縄の訓練場の近くでライフルの弾が発見されたということでありますが、事件の概要を簡単に御説明を願いたい。また、米軍が訓練練度を向上して即応性を維持するということは、日米安保体制を有効ならしめ、そしてその地域における抑止力を十分に機能させるために極めて重要なことでありますけれども、同時に、周辺住民に危険が及ばないようによく配慮していろいろと演習をするということ、訓練を実行するということが極めてまたこれは重大なことであると思います。この事件に対する政府の対応はどうなっておるか、伺います。
  89. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 御指摘の事件でございますが、十月の十五日土曜日、九時から十時前後にわたりまして、キャンプ・ハンセンの場外給油所、酒屋の倉庫、公衆便所等から米軍のものと思われる五・五ミリの弾薬が発見されました。それに関連して物音を聞いたという人も出ております。現在までのところ確認されたものは三発でございます。そのほかにあるかどうか現在調査中でございます。損害といたしましては、この公衆便所の入り口の上部のガラスが一枚破損したということでございまして、人身被害はございません。  いずれにしましても、大変重大な事故であると考えております。場外に弾が飛んでいったということでございまして、私も大変重視しております。早速施設庁の幹部を現地に派遣いたしまして現在米側の責任者と会わせまして、また現場を米側と一緒に検査をさせておる状況でございます。  米側からの話では、十五日八時五十五分から十二時三十分までの間、第九海兵連隊第二大隊G中隊がキャンプ・ハンセンのレンジ6でM16ライフルの射撃を実施した事実がございまして、米軍はその演習の詳細、どういう格好で射撃をしたのかということについて現在調査を行っております。沖縄の県警も、押収した銃弾を米側と一緒に現在調査をしている段階でございます。  防衛施設庁といたしましては、早速、那覇防衛施設局長から海兵隊の責任者にあてて口頭で即刻事実調査を申し入れました。さらに、沖縄県の局次長をもって、当該基地の海兵隊参謀長に事故原因の究明と安全対策の確立を申し入れているところでございます。米側からは、この調査が終わるまでこのレンジ6の射撃を中止するということの確約を得ております。現在派遣しております調停官、これは施設庁の庁議メンバーの一人でございますけれども、随時情報を入れさせるようにいたしております。  私といたしましては、今後米軍がこの演習場で効果的な演習を継続していくためにもこういう事故があってはいけないと思いますので、米側も一緒になりまして誠心誠意原因を究明し、必要な対策を講じてまいりたいと存じます。大変御心配をおかけして申しわけないと存じている次第であります。
  90. 永野茂門

    ○永野茂門君 私もこの種の射撃演習、練度の各種レベルあるいは各種距離、各種部隊の大きさ、こういうものを指導したり指揮したことがあります。一般的に今回の事故のようなことは考えにくいんですけれども、少なくもしかしその発生しておるものとこの弾とが極めて関連がありそうな気がいたしますので、一体抜本的な対策というのは何か取り得るんだろうかどうかということを承りたいと思います。何かうまい抜本的な方策がありますか。
  91. 池田久克

    政府委員(池田久克君) これはどちらかといいますと、外務省の方のお考えもあろうと思いますけれども、最近米側の沖縄での演習は従来と比べましていろんな意味で激しさが増していると考えられます。もちろん本件につきましてはいろいろな角度で米側にも指摘をし、米側自身も既に改めたものも幾つかございます。そういう意味で、米側も非常に現地の事情だとか安全対策には細心の注意を払っていると認められます。しかしながら、海兵隊とか陸軍のグリーンベレー部隊とか、その他空軍のパラシュートの部隊とかいろいろ訓練上の所望がございまして、その所望と比べますと、やはり演習場が狭いとかそういう問題もあろうと思います。  ただいま抜本的な対策と言われましたけれども、これはもう米軍だけではございませんけれども、そういう適切な措置はなかなか見出しがたいのが実情でございます。
  92. 永野茂門

    ○永野茂門君 時間が大分迫ってまいりますので、次は「なだしお」の事故について防衛庁、運輸省並びに官房長官に逐次お伺いしたいと思います。  まず最初に、安全対策に関して最初に防衛庁にお伺いいたします。  前の長官の指示で船舶等の事故再発防止策というものが出されております。これは多数の人命を一瞬にしてああいう状態にした大変に痛ましい事故でありまして、絶対にこういう事故は再発を防止しなければならないことはもちろんでありますが、その一方の当事者として防衛庁側においていろいろと措置されていること、これは極めて重要なことであると思います。  ただ、この事故対策を読みまして、観察いたしましてちょっと心配されることがありますので、これは十分検討されたことと思いますが、検討されたかどうかということだけについて、十分検討したのならばそれで結構ですから、十分検討してやったということをお聞きしたいんですけれども、潜水艦の戦闘機能を妨げるかもしれないような、潜水艦としては不要でありあるいは不急であるようなそういう例えばレーダー反射体、これはもう潜水艦としては取りつけちゃいけないようなものですね。しかし、これは自己の存在をはっきり管制レーダーに見せるために必要ですからこれは安全管理上必要だと思いますけれども、レーダー反射体あるいは探照灯、こんな大きいものをつけることも極めて重大な障害になるわけですけれども、あるいは余計な電話等を整備することになっております。それはいろいろと検討されてこういうことになったんだと思いますが、十分戦闘機能その他について差し支えない、あるいは所要のときにはこれを取り外すとかそういうことを検討されたということでしょうか。防衛局長にお願いします。
  93. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 結論を端的に申し上げますと、ただいま委員から御指摘いただきました点を種々検討した上での決断でございます。  一例を挙げますと、レーダー反射体につきましてはそれほど大きなものではございませんで、使用いたしますときにのみ取りつける、取り外しましたときにもその保管にそれほどのスペースを要さない、こういう検討結果でございます。
  94. 永野茂門

    ○永野茂門君 わかりました。結構です。  次は、運輸省にお伺いいたします。  政府は、十月十四日に第一富士丸事故対策本部で「船舶航行の安全に関する対策要綱」、こういうものを決められました。重要な範囲は全部カバーしており、まことに結構であると思いますけれども、長年継続的な指導を徹底したり、あるいは海上交通センター等の機能の充実強化でありますとか、あるいは第三海堡の撤去でありますとか、あるいは浅瀬のしゅんせつでありますとか、あるいはさらに各種の検討、研究など、予算措置を伴ったり、あるいは継年的な長期にわたる事業で、運輸省みずから大変な努力を必要とし、また他省庁との間で十分な調整、協力を今後も必要とするものが多いように思いますが、再発防止は極めて重要であって、これをしっかりとやっていただくようにお願いしたいと思いますけれども、これに対する運輸省側の御決意をお伺いしたいと思います。
  95. 塩田澄夫

    政府委員(塩田澄夫君) ただいま委員が御指摘になりました内容の「船舶航行の安全に関する対策要綱」、御指摘のとおり十月十四日の政府の第一富士丸事故対策本部で決定をいたしました。後は、この対策を関係各省庁が協力をいたしまして速やかに実行していくということでございます。運輸省といたしましても、直ちにこの趣旨を関係部局に通達をいたしまして万全を期してまいりたいと思います。
  96. 永野茂門

    ○永野茂門君 次は、防衛庁並びに官房長官あるいは安全保障室長の御答弁でも結構でございますが、本事案発生当時、あるいは発生以後のいわゆる危機管理的なことについて承りたいと思います。  まず、総理長官に対する通信連絡、報告が新聞報道によりますと必ずしも適切あるいは十分には行われてなかったような印象を受けるわけでありますが、この種の今回のような事故案件について、とりあえずそれを指揮しコントロールするということにつきましては、特別な緊急事案ではないので今回程度の反応でよかったんじゃないかと思います。したがいまして、第一にいろんな体制は、類似のいろんな今までの御巣鷹山でありますとか雫石でありますとか、あるいは地震でありますとか、その他の教訓に基づいて比較的よく通信連絡は第一次的にはとれた、こういうふうに私は思っておりますが、果たしていかがだったでしょうかということが第一点です。  第二点は、これは特に防衛庁にお願いしたいんですけれども、通信連絡が適時適切、かつ十分に長官あるいは海上幕僚長等必要な管理者のところに行われておったならば、恐らく今回のようなマスコミの激しい自衛隊たたき、結果的にですよ、自衛隊たたき的になるような報道は行われなかったんじゃないか。つまり、適時適切に救助はこういうふうに行われたんだと、「なだしお」においてですね。その他いろんなことが適時適切に入っていれば、その都度防衛庁側からもっとしっかりした記者に対する説明、これができたんじゃないか。そうすればこのような大変な自衛隊不信を招くような結果、今少しは修正されていると私は思いますけれども、こういう結果を招かなくて済んだんじゃないか。その意味においては必ずしも通信連絡、報告が適時適切に、そして十分に行われたとは思えないんじゃないか、こういうふうに私は観察するわけでありますが、これについてまず官房長官、全般の御観察を承りたい。
  97. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  総理秘書官に対する第一報は、七月二十三日の午後四時二十五分ごろ防衛庁から電話で第一報がもたらされました。大変混乱した情報でございまして、釣り舟、訂正、観光船、訂正、遊漁船と状況がよくわかりませんでございましたが、総理に対しましてのこの報告は、これらの情報を整理の上、午後五時二十分過ぎに総理秘書官から自動車に乗られた総理に対して電話で通報がなされております。その意味では、報告、連絡はそういう形で行われ、また指揮命令でございますけれども、総理及び官房長官よりとりあえず安保室において情報を収集し対処せよという任務付与もございまして、与えられた条件の中では何とか適切に処理できたと考えております。  しかしながら、先生御指摘のように、緊急時における迅速な報告連絡及び的確な指示の伝達というのは危機管理の要諦でございまして、官邸としてはこの体制の確保に常に心がけてきたところでございますけれども、このほど通信機材をもう少し近代的なものに取りかえる、さらに日進月歩の通信技術の進歩におくれないように今後とも最新の通信手段、これは非常に重要であると考えておりまして、これの確保に十分努めたい、かように考えております。
  98. 永野茂門

    ○永野茂門君 防衛庁がお答えになる前に、一つだけ安全保障室ないしは官房長官にお願いしたいんですけれども、この程度の緊急必要度に対する対応としては今のような体制で一応間に合ったと、私はそのとおりに思います。何もこれはいわゆる一分一秒を争うというそういうようなものではなかったと思いますけれども、その他のもっと極めて緊急な事態を考えますと、今のような通信連絡体制あるいは指揮通報体制あるいは統制体制、今の移動用の通信から、あるいは総理官邸における指揮施設、その他情報表示、まことに寂しい状況にあると思います。大いに今後努力して、この際、そういう極めて緊急な事態においてはどうであったろうかということを、もう時間がありませんので御答弁は必要ありませんけれども、十分御検討になって、その推進を図っていただきたいと思います。  以上で安全保障室、官房長官は終わりますが、防衛庁の方はいかがですか。
  99. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 今回の痛ましい事故につきましては、緊急連絡体制がどうであったかということでございますが、私どもは反省すべきことが多々ございますことは事実でございます。  ただ、基本的な点につきましては、適時に的確に法定連絡がなされていたのではないかと思います。といいますのは、何時何分ごろ潜水艦「なだしお」がどの地点において民間船と衝突をし、かつ民間船は沈没し遭難者が出たということにつきましては直ちに通報があったわけでございますが、その後の救助活動及びその他もろもろ周辺の情勢につきましては、混乱した状態の中で必ずしも適時的確にその後フォローアップができていなかった点はございます。  そういう点で、いろいろ多方面の方々に御迷惑をかけ御心配をおかけしたことは深く反省をいたしておりまして、非常に高い代償を払っての結果でございますけれども、今後の反省の材料にさせていただきたいと考えております。
  100. 永野茂門

    ○永野茂門君 最後に一つだけ防衛庁にお伺いいたしますが、自衛艦あるいは護衛艦を軍艦と同等に取り扱うということは国内法では大変無理だと思うわけでありますけれども、少なくも緊急任務を持っているとき、あるいはいわゆる有事、防衛出動あるいは防衛出動準備が下令されておる時期ないしはその地域においては、特別な優先的な航行に関する規定ないしは運輸省との協定が必要であると思いますが、これはどういうふうになっておりますか。これを最後にお聞きしたいと思います。
  101. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 有事に際して、自衛艦が緊急に移動し輸送する必要があるということは先生御指摘のとおりでございますが、港則法、海上交通安全法、海上衝突予防法等は民間船舶と同様に適用される建前になっております。  そこで、五十六年の四月、第一分類の有事法制を発表した以後、他省庁所管に係る事項ということで第二分類を検討し、五十九年十月に公表させていただきました。そのときにこの関係を詳細に検討いたしまして、例えば港則法等では夜間入港の際の港長の許可というものを迅速にやれるようにすれば差し支えない、それから緊急用務船ということで自衛艦を指定していただけば、航路等を適宜必要によって変更できるということで差し支えない、その他現状の法体制の中で運用さえ的確に行えば、こういう点については自衛艦の行動に差し支えないという実は結論が出ておりまして、そのように公表させていただいているところでございます。
  102. 永野茂門

    ○永野茂門君 終わります。
  103. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどからお伺いしておりますと、防衛庁長官大臣に就任されてまだ四十日ほどだそうですね。本当に御苦労さまです。そこで、四十日が長いのか短いのかわかりませんが、いずれにしましても大事なお役目をお引き受けでございますので、きょうは初めに基本的な問題を幾つかお伺いしておきたいと思います。  我が国の平和と安全を守る、これは非常に大事な問題であります。先ほどから大臣答弁をいろいろと聞いておりました。それで、そういうふうな意味で、日本自衛隊役割というのは、やはり日本の安全と平和を守る、これはそういうふうにも言われておりますし、そういう言葉大臣の口からも出てまいりました。そういうような意味で、これをもう少し具体的に言いますと何を守るのか、ここら辺のところは大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  104. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 今、我が国は、東京一極集中を排除して多極分散型国土形成というものを目標にしながら、狭い国土を有効に活用するためにその他域の特性を生かす、竹下総理の「ふるさと創生論」のように、地域の特性を生かし均衡ある発展を図って、日本列島どこに住まっても、またどういう職能についても、いい国だな、日本人に生まれてよかったなという、そういう日本列島をつくることだと思うのでござます。  そのためには、何としても国が安全でなければならない。国が他国から侵略されるような国であってはいけません。幸いにして、私たちは戦後四十年、平和を維持してまいりましたことが日本の今日の繁栄を見ているわけでございますので、そういうあり方、そういう積み上げをしていかなければならないのじゃないだろうか、こう思っております。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣おっしゃるとおりだろうと思うんです。  そこで、やっぱり平和と安全を確保するためのいわゆる国家としての政策というのが私は必要じゃないかと思うんですね。当然その中には防衛力という問題も入ってくると思いますが、その防衛力の位置づけ、これはどういうふうにお考えですか。
  106. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) もちろん国の安全あるいは独立国としての権威を保つためには平和協力外交、外交政策というものが最も重要だと思うのでございす。  いま一つは、やはり国民の自衛意識の高揚といいましょうか、自分の国は自分の国で守るというこの意識が私は非常に重要だと思うのでございます。それに支えられて初めて自衛隊防衛庁というものの位置づけが非常に高まってまいるのじゃないだろうかと思いますので、そういう点では自衛隊みずからがやはり自分の大任を果たすと同時に、そういういろんな環境の理解あるいはまた環境の整備が必要である、こう思うのでございます。
  107. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 政策的には総合安全保障というふうな外交も含めました考え方、当然そういうふうな問題が必要だろうと私は思うんです。  そこで、大臣にお伺いしたいのは、防衛力というのは、最近のいろんな防衛力の整備の状況を見ておりますと、だんだん意識が変わってきたように私は思っております。そういうふうな意味で端的に、全部は申し上げませんが、大臣防衛力というのはできるだけ大きい方がいいと思っていらっしゃるのか、できたら小さい方がいい、うんと小さい方がいいとお考えなのか、そこら辺のところはどうでしょうか。
  108. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私は、大きいとか小さいとかというよりも精強であるということだと思うんですね。ですから、防衛力国民の財産ですよ。私はそういう意味で、大きいとか小さいとかという比較論よりも、日本我が国にとって精強な自衛力である、いかなる場合にでも後退しないすばらしい防衛力でなければならない、こう思うのでございます。
  109. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、非常に問題でありまして、精強という点を追求いたしますとお金は何ぼあっても足らぬわけです、実際のところ。だから、そういうふうな意味での精強というのには、どうも私も一〇〇%賛成しかねる点があるわけです。できたらもうできるだけ小さくて、その上精強というふうな意味の精強なら、私もそれなりに賛成できる点があるわけです。  そこで、我が国防衛力を整備、運用するに当たって、大臣としてこういう点とこういう点には特に留意をしたいという点があると思うんですが、その点についてはどうお考えでございましょうか。
  110. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) まず、平和憲法を守るということですね。それから他国に脅威を与えるような軍事大国にならないということ。それから非核三原則は守るということ。それにシビリアンコントロール、これを確立していくということだと思うのでございます。
  111. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣は今、平和憲法、それから他国に脅威を与えない、非核三原則、シビリアンコントロール、こうおっしゃいました。確かにこれは私たちの党も特にこの点については強調している点であります。と同時に、先ほどから大臣が何回もおっしゃっておりますように、国民理解と協力というふうな問題が大事になってきましょうし、その上で初めて信頼される自衛隊ということになるのではないかと私は思うんです。  しかし大臣国民の間には非常に心配な点がたくさんあるわけです。それは例えば、「防衛ハンドブック」というこの小さな冊子に、あえてこれを引用すると、そのほかにもあるわけですが、最近の自衛隊の問題につきまして、これは後でも引用いたしますが、この「防衛力の増減について」というところと、それから「防衛予算について」という二つのところでの世論調査の結果で、要するにいずれも防衛力を「増強した方がよい」、「今の程度でよい」、「今より少なくてよい」、「わからない」と四つあるわけです。両方とも同じでありますが、いずれにしましても、そのいずれの結果でも、防衛予算と防衛力の両方について、要するに「今の程度でよい」、「今より少なくてよい」、この二つを足しますと七〇%近くになります。今より増強してもらいたいというのは大体一割以上でありますね。  ですから、これは非常に大事な問題でありまして、最近の我が内閣委員会での防衛力増強、いわゆる大綱水準達成という問題等でここで議論をいたしますと、大綱水準を達成するという名目のもとに内容的に防衛予算、防衛費、そういうようなものがどんどんふえていっているわけです。それじゃこの大綱の水準というのは達成をされるのかと、こういう議論をいたしますと、相手の能力によってこちらの能力も上げていかないといけないからなかなか達成できないわけですよね。ということは、達成できない目標に向かって達成達成ということで議論をされたのじゃ本当に私たちは困るわけでございまして、そういう点ではだんだん枠が広がっていっているような感じがするわけです。  そういうような意味で、特に最近は洋上防空、シーレーン防衛ということで、大綱の基本的な考え方であるところの、大臣ももう御存じだと思いますが、基盤的防衛力構想というのがあったわけですが、こういうふうな基盤的防衛力構想というのはもう逸脱してしまったんじゃないかということで、そこら辺に対する歯どめもなくなってしまったんじゃないかということで国民もやっぱり心配をしておるわけです、最近は。こういう心配が事実あるわけですが、この点についてはどうお考えでございましょうか。
  112. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 防衛大綱を実現するということは、私はアメリカでもソ連でも、あるいは他の国々においてもその大綱目標を達成するということは、これはいわゆる国際情勢が流動的でございますので、それを今で達成したんだという結論を得るということはなかなか難しいのじゃないだろうかと、こう思います。しかし、私たちは常に防衛大綱の、いわゆる節度ある防衛力の整備というものを目標にしながら年々防衛力の整備をしてまいっているわけでございます。  したがいまして、何回も申し上げますけれども、私たちは常に防衛大綱に従ってこれまで進めてきた一つの歩みを将来とも進めてまいりたい、こう思うのでございますから、私はそういう意味では防衛大綱というのは非常によくできた一つの大綱だと思いまして、限定的な、あるいは小規模ないわゆる侵略に対して原則的に独自に日本が対応する、いわゆる小規模の防衛力を整備する、この目標を私たちは掲げながら、しかも大国にならないという一つの考え方を自分で持ちながらこれから進めていくことが一番必要じゃないだろうか。具体的なことには触れるわけにまいりませんけれども、そう申し上げたいと思います。
  113. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、先日の委員会でこの防衛予算の問題について大臣は昭和三十年と昭和六十三年と比較されました。昭和三十年の福祉予算と現在の福祉予算を比較いたしますと百倍になっている、防衛予算は二十七倍である、こうおっしゃいました。    〔委員長退席、理事永野茂門君着席〕 それで、私は大臣に、これは三十年というのは長過ぎると、そういう比較は。この間は時間がございませんでしたから詳しくやりませんでしたが、詳しく比較するのは別にいたしましても、中曽根内閣以来本当にこの十年来、最近のことを十年ぐらい考えてみますと、行政改革とかいろんな問題で、大臣も御存じのとおり、福祉、文教政策あるいは公共事業等、ほとんどゼロシーリングで来ているわけですね。非常に厳しい、何というか、国民生活に密接にかかわり合いのあるものは相当少なくとも絞られてきたのはもう大臣御存じのとおりです。  そういうふうな中にありまして、私は防衛予算を全部絞れという意味じゃなしに、よそが絞っているときにはやはり防衛予算も絞る、そういうような感じなら国民もこういうふうなものに対する世論調査なんかの考えもわかるしみんなも理解が深まる。要するに、よそがゼロシーリングで来ているときに防衛予算をふやすから自衛隊に対する理解がまた薄れていく。今度の「なだしお」みたいな事件が起きると、ああいうようなことになってしまうわけですね。そこら辺のところにも私は大きな原因があるんじゃないかと思って心配をしているわけです。  そういうふうな意味で、こういうふうな中で最近のいろんな要素を見ておりますと、政府国民生活よりも対米関係の配慮だとかあるいは軍事優先路線とか、そういうようなものに路線をとっているんじゃないか、そういうふうな不安があるわけですよ。ですから、これは事実そうだと私は思うんですけれども、大臣はここら辺のところについてはどうお考えですか。
  114. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 前の御質問に対して、三十年と六十三年とを比較したときには防衛費は二十七倍で、それで社会保障関係が百倍で、それで文教費が三十七倍ということでございますが、五十一年予算と比較しますと防衛費は二・四倍、それから社会保障関係費は二・二倍という状況にございます。  それと、シーリング時代に入りまして依然として防衛費は突出しているじゃないかということでございますが、確かに事務的な経費につきましてはシーリングの枠内でずうっと抑えられているわけでございますので、ただ防衛費の場合は中期防衛力整備計画というものが五カ年計画でできていまして、総額明示方式で十八兆四千億というものを一つの五年間の目標にしているわけでございまして、そういう中での中長期的な防衛費を確保する、整備するということでございますので、したがいまして他よりも突出しているというよりも、中期防衛力整備計画を進めていくにはこの程度の費用が必要ですよという意味での予算編成が行われているわけでございます。  それでは、他の社会保障制度あるいはまた文教費においてはどうか、あるいはまた農林水産業のそれぞれの部門においてどうかといえば、いずれも五カ年計画あるいは三カ年計画を立ててその目標に向かって進んでいるわけでございますので、そういう点では特に防衛費が突出しているというように私たちは受けとめないわけでございますけれども、そういう点は意見の分かれるところでございますが、私たちの考え方もまた御理解いただきたいと、こう思います。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 とにかく都合のいいところだけ大臣に報告しておるわけだ。この間も五十一年からのその比較、たまたま私の部屋へお見えになりましたからそのことを言いました。しかし実際問題、大臣、これは表を見てもらえばわかりますけれども、突出しておるんですよ、これは。一年一年詳細は言いませんけれども、特に最近の昭和五十七年以降少なくともゼロシーリングが始まった年から見ますと、もう突出しているんです。これはもうどう考えたって、やっぱり国民の不安というのは大きくなっていると、これは私そう思うんです。  しかも、最近の防衛のいろんな体制は、我が党は領土、領空、領海に任務限定をしてぴしっとやれと、こう言っているわけですけれども、それが最近はだんだんOTHレーダーとかシーレーンだとか千海里とか、そういうようなものがどんどん出てまいりまして、前方へ前方へ出ていっているわけです。それで、結局防衛能力というのができるだけ大きくなって、遠方でそういうような脅威のもととなるところをがっちり押さえる、そういう形にだんだんなってきまして、いわゆる専守防衛というふうな政策が、最近はいわゆる攻撃は最大の防御なりという感じで、先にやっちゃおう、そういうふうな考えが、大臣は首を振っておられますけれども、だんだん出てきたんじゃないか。口に出して言わなくたって、そういうふうな方向になってきているんじゃないかと私は心配をしておるわけです。それで違えばいいんですがね。  それからもう一つは、先ほどもちょっと言いましたように、自衛隊防衛行動の地理的範囲というのがだんだん広がってきている。それはこの専守防衛という政策を初めて内閣で発表した当時と現在とでは大分違ってきているんじゃないか、これがあるわけです。  と同時に、もう一点、これは防衛局長からでも結構ですが、集団的自衛権の問題ですね、最近の日米防衛協力という問題の深化、これが重なるに従っていろんな面で心配されているわけです。特に最近の米軍との情報交換、共同演習、あるいはFSXの研究、共同開発、そういうふうないろんな問題から、何といいましょうか、我々が知らない間に集団的自衛権の行使というふうなところまで踏み込んでいるんじゃないか、こういう心配があるわけですけれども、この二点についてのお答えをいただきたいと思います。
  116. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) この二、三日前に私は防衛庁の技術研究所というのを見学に行ったわけでございますが、日本も随分技術的に高度の研究を進めております。そのことは何かといえば、やはり諸外国の技術水準がどんどん上がっているということなんですね。したがいまして、私たちはあくまでも専守防衛の旗印のもとに防衛力の整備を進めているわけでございますが、世界の趨勢あるいは世界の技術的な進歩等に対応していかなければいわゆる精強な自衛力とは言えませんものですから、そういう点で私たちは常に専守防衛という旗印のもとに進めているということだけは御理解いただきたいと、こう思います。
  117. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 幾つかの点のお尋ねがあったかと思いますが、一つずつお答えを申し上げていきたいと思います。  まず、防衛関係費の伸びにつきましてのお尋ねといいますか、御指摘がございました。これは決め手になることではございませんが、一つの考慮していただくべき考えとして考慮いただければと思いますが、大臣からいつも申し上げておりますように、防衛といいますものは国の存立の基本にかかわるものでございます。したがいまして、それに要する防衛力の整備といいますのは、ある意味ではコンスタントに整備を図るべき性格を持っているのではないかと思います。  そういう意味で、経済成長率等の高い時期におきましては相対的に伸び率は低く、経済成長率等が低くなりましたときには相対的に伸び率が高くなるというふうな性格を、国際情勢等が非常に流動的に動けば別でございますが、それを一定と考えますと、そういう性格を本来的に持っているのではないかと思います。したがいまして、三十年をとった場合あるいは十年をとった場合というところで出てまいります変化というのは、私が今申し上げましたような性格がある程度反映している面があるのではないか、こういうふうな感じがいたします。  二番目は、防衛力整備が専守防衛基本的な性格を逸脱してきている点があるのではないかというお話をなさいました。一つの例といたしまして洋上防空、シーレーン防衛等を例示されまして御指摘をされたわけでございますが、あくまでも私どもは洋上防空、シーレーン防衛いずれも専守防衛でございまして、我が国船舶の海上交通の安全を確保する観点からどういうふうに防衛力を整備するかという私どもの考え方は全く変わっておりませんで、例えば航路帯を設けます場合にはおおむね千海里程度あるいは我が国周辺の場合は数百海里において海上交通の安全を確保し得るための防衛力整備を図るという考え方は大綱策定以前から、三次防とかそういう計画を立てておりましたころからたしか申し上げていたことだと思いまして、基本的に変わっていないと思います。  ただ、諸外国の軍事技術の水準が非常に発達してまいりましたので、非常に航続距離の長い航空機あるいは長射程のミサイルあるいは非常にスピードの速い航空機とかそういうふうなものが出てまいりましたので、専守防衛に徹すれば徹するほど、比喩は適切かどうかわかりませんが、専守防衛に徹します動物はキリンにいたしましてもウサギにいたしましても、長い耳、長い首を持たないといけない、こういうふうな性格がありまして、私どもは専守防衛に徹するがゆえに、このような諸外国の軍事技術水準の動向に敏感に対応する形でいろいろな装備を、防御的装備を備えなければならないのではないかと、かように考えている次第でございます。  それから三番目のお尋ねは集団的自衛権につきましてのお尋ねでございましたが、我が国は原則的には小規模限定侵略には独力で対処する防衛力を整備いたしているわけでございますが、それを上回ります侵攻等に対しましては、日米安保体制のもと米側の支援を受けて我が国を守る体制をとっております。そういう意味におきまして、日米間におきましては緊密なる、あるいは技術なりあるいは情報なりの交換等が行われてもそれは一向に差し支えない話ではないかと考えております。  ただ、あくまでも私どもは集団的自衛権に抵触いたしますような武力の行使を、我が国みずからが侵略を受けないにもかかわらず、同盟関係にあります米国のみが侵略を受けた場合、侵害を受けた場合に、我が国がそれに支援をするというふうな考え方は毛頭持っていないことは、もう委員も先刻御承知のことと思いますが、そういうふうな集団的自衛権は行使しないという基本的考え方は堅持しつつ、日米安保体制のもとで米側との緊密な連携体制を整えていけるということでございます。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは大臣、ちょっと方角を変えて質問したいと思います。  大臣国民自衛隊日本防衛理解を持つという根幹は、やっぱりある程度防衛予算なりそういうふうなものに歯どめがかかっている、昔のようにならない、そういうふうな安心感というのが私はあると思うんですね。そういうふうな意味で、防衛力整備に当たっていわゆる財政上の一定の制約を設けるということに対して、これは大臣どうお考えですか。それは当然防衛費に対する歯どめという問題を私は言っておるわけでありますが、その歯どめとしてどういうふうなものが有効であるとお考えなのか。前段は、要するにそういう歯どめが必要であるかどうかという問題。もし必要であるとすればどういうふうなものがいいとお考えなのか、お伺いしておきたいと思います。
  119. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ちょうど五十一年の閣議決定で一%を超えないことをめどとするというものが歯どめとして今日まで来ているわけでございますが、六十二年の閣議決定でその精神は尊重していかなきゃならないという一つの歯どめですね、それと節度ある防衛力を整備しましょう、こういう形で今歯どめとして進められて閣議決定されているわけでございますので、予算のいわゆる編成時というのは非常に弾力的に調整してまいらなきゃならぬものでございますから、一%を引いてすべてを律するということは、先ほど防衛局長からも話がありましたように、国家存立基本にかかわる重大な使命を果たすためにはやはりその調整というものが必要になってくるんじゃないだろうかと、こう思いますから、したがいまして六十二年の一月の閣議決定のように、五十一年の閣議の精神は尊重する、そして節度ある防衛力の整備を図ろうという形の取り決めが私はむしろ必要なのじゃないだろうか、こう思います。
  120. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣防衛予算に対する歯どめとしては抽象的なものと具体的なものと二つあるわけですね。それで、今おっしゃいましたように、抽象的なものとしましては節度ある防衛力とか、あるいは軍事大国にならないとか、そういうふうなものだろうと私は思いますね。それから具体的なものとしては一%とか総額明示方式とか、そういうふうなものだろうと私は思うんです。その一%の問題もやはり大臣はその精神は尊重すると、こういうふうにおっしゃっておりますから、それはそれとして受けとめておきたいと思います。  そこで、昭和三十二年に閣議決定をされました「国防の基本方針」というのがあるんですけれども、これによりますと、「国力国情に応じ」と、こうあるわけですね。そして、五十一年の大綱の中には、今度は「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ」、こうあるわけです。こういうふうないわゆる防衛力に対する防衛予算の考え方をうたっているわけでありますが、こういうふうな問題について、特に「国力国情に応じ」という問題と、その後の「他の諸施策との調和を図りつつ」とありますね。こういう点については、防衛庁としては最近のこの五、六年は、そこら辺のところの配慮というのは十分なされているのかどうか、調和がとられているのかどうか。そこら辺のところのお考えはどうでございますか。
  121. 日吉章

    政府委員(日吉章君) まさに政府部内におきますいろいろな政策の調整の問題でございますから、私ども防衛庁からお答えを申し上げるのが果たして適当かどうかわかりませんが、ただいま先生が御指摘になられました「国防の基本方針」にございます「国力国情に応じ」、あるいはまた、防衛計画の大綱にございます「経済財政事情等を勘案し」云々、同じような文言が中期防にもあったかと思いますが、これらの精神は十分踏まえつつ、政府部内におきまして十分の調整をなされた結果が毎年度の予算になっていると、かように信じております。    〔理事永野茂門君退席、委員長着席〕
  122. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣外務大臣がお見えになりましたので、そのほかのことも質問したいので、もう簡単に申し上げます。  他の政策との調和とかいろんな問題がいっぱい出てまいりますが、防衛関係予算の伸びは国の存立の基本にかかわる問題だと、こういうふうに言われてしまうとそれこそ身もふたもないので、これはほかのこと言われへんですよ、そんなこと言われると。だから、私がさっきから何回も言っておりますように、国がゼロシーリングで非常に財政状態も厳しい、そういうときには防衛予算も多少絞る、そういうような感じにならないのか、なれないのかと。  これは大臣の手元にもあると思いますが、先ほど社会保障関係費を大臣は五十一年と現在とで比較になりましたが、例えば五十七年以降のことを言ってみますと、防衛予算は七・八、六・五、六・六、六・九、六・六、五・二、五・二というふうに全部伸びてきているわけですね。社会保障関係費の伸び率を言いますと、二・八、〇・六、二・〇、二・七、二・七、二・六、二・九です。文教・科学振興費でいきますと、二・五、マイナス一・一、〇・七、〇・二、〇・一、〇・一、〇・二です。  こういうふうに、そのほかの諸施策と調和を図る、こう言いながら、実際はやっぱり防衛予算が突出していると言われてもしようがないわけです。これはしようがないと思いませんか。ちょっとおかしいんじゃないですか、やっぱりこれ。大臣が先ほどおっしゃったこととはちょっと違うんじゃないかなと思うんです。だから、先ほど一番初めに申し上げましたように、防衛予算に対する、防衛庁もかかわり合いのある世論調査でしょう、これ。この世論調査でも、一番初めに申し上げましたように、現在の防衛予算は「今より少なくてよい」、「今の程度でよい」というのが過半数を占めておる。これは、こういうふうないろんなところから国民がやっぱり冷静に見ていると、私はこう思うんですよ、大臣。  ですから、そういうふうな意味では、先ほど大臣は一%の問題をちょっと御答弁ございましたが、私どももやっぱりこのGNP一%という問題は非常に大事な問題でもありますし、また決算の段階で昨年度の予算も一%以内に入りましたし、そういうようなことを考えてみますと、先般の一%のあの枠を撤廃した閣議決定というのは、やはり一%以内におさめようという努力じゃなしに、初めに一%突破ありきという感じに私どもは受け取るわけです。そう受け取らざるを得ないような状態になってきているわけですね。  そういうような意味で、この防衛予算のあり方、考え方、そしてこれからの対応等、いろいろ申し上げましたが、御答弁いただきたいと思います。
  123. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 先ほど申し上げましたように、節度ある防衛力の整備、いわゆる五十一年のその精神は尊重するというこの歯どめをつくりながらも、先ほど来申し上げましたように、国家存立基本をなす防衛でございますので、したがいまして経済情勢ももちろん十分配慮してまいらなければなりませんけれども、その基本をなす政策を十分考えた上で進めないというと国の繁栄がない。先ほど申し上げましたように、戦後四十年のこの繁栄は、何としても防衛力の整備、日米安保体制信頼性にある、私はこう思いますので、そういう意味で私たちは、常に防衛力の整備というものを考えていかなければならない、また防衛費の問題もそういう観点からも眺めていかなければならない、かように考えます。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣のおっしゃることを全面的に否定するわけじゃありませんが、やはりもうぼちぼち防衛予算についても考えなくちゃいけない時期に来ているんじゃないか、この点は申し上げておきたいと思います。  それから、大臣から今御答弁ございませんでしたが、この一%の問題、これは我が国防衛予算を考える場合に、もちろん三十年代からずっといろんな問題がいっぱいあるわけですけれども、少なくとも昭和四十二、三年ごろからずっとこの一%以内という問題が国会でも取り上げられまして、実際に五十一年、先ほどお話しございましたように閣議であの大綱が決まり一%枠が決まりました。それは長い間の一つの不文律になってきたと私思うんですね。ということは、逆に言えば、国民の立場からすると、防衛予算はこの一%以内に入っているという一つの安心感があったわけですね。政府としても、やっぱり防衛予算をGNP一%以内におさめるという、少なくともそれが大きな歯どめになってきたのも事実だと私は思うんです。そういうふうに考えてみますと、この一%枠という問題、一%枠が果たしてきた役割、意義というのは非常に大きなものがある、そういうふうに私は判断をしているわけです。  それは一つは、この毎年の防衛予算に、具体的な額ですから、やはり直接的に歯どめをかけることによって効率的な防衛力の整備を行わざるを得なかったということも言えましょう。それから二つ目には、やっぱり間接的な効果として、先ほどから申し上げておりますように、国民防衛自衛隊に対する理解の促進になってきている。自衛隊理解する、これ以上大きくならないとか、いろんな意味でこの一%というのが自衛隊理解するための大きな役割を果たしてきた、そういうように言っても私は過言でないと思うんです。また、対外的に見ましても、一%というのがあるために、日本は、経済大国は必ずしも軍事大国にはならない、そういうふうな意味でのいわゆる一つの大きな証拠としても、近隣アジア諸国の皆さんにも日本防衛政策に対する理解を促進したと私は思うんです。  こういうふうに私は思うんですけれども、大臣のこの一%枠に対するお考えをお伺いしておきたいと思います。
  125. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 確かに、この一%の枠というものは、いわゆる他国から脅威を受けない、大国に脅威を受けない、軍事大国にならないということだとか、国民防衛に対する、防衛費に対する理解等もございます。しかし同時に、やはりそういう意味で、私は先ほど来申し上げておりました五十一年の精神はこれは尊重していきましょう、そして節度ある防衛力を整備していきましょうという考え方を、もちろんこれは抽象的でございますけれども、そういう精神を今後貫いてまいりたい、こう考えているのでございます。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 本当は、大臣、先ほどもちょっと言いましたが、一%枠の果たしてきた役割というのは非常に大きいでしょう。これはもう認めていただけますね。それで、今度の一%枠突破という問題については、やはり私は大きな問題があると思っております。  そこで、次に次期防ですね、次期防の問題についても先般の質問のとき入り口のところだけちょっとお伺いしましたので、大臣として次期防作成に当たっての構想とか指示というのはお考えの中にありますでしょうか。またはいつごろとお考えなんでしょうか。
  127. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) まだ考えておりません。最近の国際情勢だとか、あるいはまた財政事情等を勘案した上で中長期的なやはり考え方で進めなきゃならないと思いますので、ただいまの時点はまだ考えておりません。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで大臣、これは事務当局からでも最終的には結構ですが、まず四点ほど見解をお伺いしておきたいと思います。これは事務当局の方から、最終的には大臣のお考えもあわせてお伺いしたいのですが、次期防を作成するに当たって、やっぱり少なくとも次の四点は配慮してもらいたいなと思っているわけです。  一つは、大綱の問題ですね。大綱の基本的構想のみならず別表についても、やはり別表とか大綱の基本的な考え方は変更しない、それはそういうふうな方針でやってもらいたいという思いで私どもはおります。  それから二番目に、正面重視の、正面偏重のと言ったらおかしいですかね、そういう考え方ではなくて、やはり後方をしっかり重視した、均衡のとれた防衛体制の構築に努めてもらいたい。  それから三番目に、経済情勢、財政情勢を十分に考慮をしまして、その際、先ほどから私どもが申し上げておりますように、GNP一%という問題をやはり念頭に置いて作業を進めていただきたいというのが三番目であります。  それから四番目に、これは私も先般の委員会で申し上げましたが、最近の国際情勢の分析、これは防衛庁のいろんな答弁を聞いておりますと、非常に硬直していると私は申し上げているんですけれども、やはり最近の平和への潮流というのはもうとうとうとした流れになりつつある、なってないかもしれませんが。やはり平和という問題を日本だけではなしに世界じゅうの人たちが望んでいるし、そういう方向にあるんじゃないかと私は思っているわけです。世界のいろんな国々がいわゆる軍事費の重圧の中であえいでおる。これはもう新聞報道によりましても、カナダとかフランスとかアメリカとかソ連とか、そういう国々のいろんな軍事予算の削減だとか計画したものをやめるとかいろんな動きが出ておりますね。そういうような点から見ましても、当然私はそういう点も十分配慮をして、世界の流れにおくれないような次期防の作成に当たっていただきたいと、こう思っているわけです。  この四点について、具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  129. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 大臣から御答弁いただきます前に、私から事務的に御答弁申し上げさせていただきたいと思います。  御案内のように、次期防を策定するという政府の方針が決まっているわけではない現段階でございますので、そういう前提におきましてお聞き取りをいただきたいと思います。  まず、大綱との関係でございますが、大綱の前提といたします国際情勢等に基本的な変化がない限り、大綱の基本的な枠組みを見直す必要はないのではないかと考えております。  それから、計画の中身の正面と後方の均衡の問題でございますが、これにつきましては、私どもは今後の国際軍事情勢や諸外国の技術的水準の動向等に十分対応し得るような効率的な防衛力あり方を追求していくことが重要だと考えておりますけれども、その際には、委員ただいま御指摘のように、後方分野にも十分な意を払いまして、正面と後方の均衡のとれた真に有効な防衛力の整備を図っていくことが重要だと、かように考えております。  それから、経費枠につきましてのGNP一%との関係でございますが、これにつきましては、先ほど来大臣からるる御説明申し上げておりますように、GNP一%枠を決定いたしました五十一年の閣議決定の精神、すなわち節度ある防衛力の整備という精神は今後も引き続き確保していきたいと、かように考えております。  ただ、ここで先ほど来先生から幾つかの御指摘がございましたが、実はGNP一%につきましては、先生ただいまおっしゃられましたように、三十九年の東京オリンピック以降の四十年代の高度成長期におきましては、我が国防衛関係費は一%以内にありまして、かつ、防衛計画の大綱ができました五十一年当時の政府の経済見通しも名目成長率が一三・四%と、こういうふうな状況でございましたので、そういう状況を念頭に置きまして、当面のめどとして、当面といいますのは当時の国会等では三、四年とか四、五年と言われておりますが、そういうめどとしまして一%の枠を設けたという経緯。三十年代におきましては、私の記憶によればたしか一・七%程度までに達していた時期があろうかと思います。そういうようなことをお考えいただきたいと思いますが、私どもはまず防衛計画の中身というものを考えまして、その中身とリンクした形で金額がどうなるか、その金額が経済、財政情勢との間でバランスがとれたものであるかどうか、こういう形で検討がなされていくことがよろしいのではないかと考えておりますが、このあたりは今後政府部内で十分検討をしていかなければならないことではないかと、かように考えております。  それから最後に、最近の国際軍事情勢を十分反映させるようにというお言葉でございましたが、私どももその点は十分に検討いたしまして、今後二年間かけまして十年先あるいは十五年先の国際軍事情勢等もできるだけ見通した形で計画を立てたい、つくりたいと、かように考えております。
  130. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 今、防衛局長から説明させましたように、防衛大綱あるいは正面装備と後方部門あるいはGNP一%問題あるいは国際情勢等について今答弁したとおりでございますが、今後、先生の御意見等も踏まえながら十分慎重に対応してまいりたいと、こう考えております。
  131. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。  もう一言。そういうふうな世界の軍事情勢あるいは世界の情勢の中で、先ほどもちょっと申し上げましたが、これは事実かどうかわかりません。新聞報道による私のキャッチしたニュースですから、新聞報道が間違っておれば全部間違いということになるわけでございますが、その新聞報道によりますと、例えばカナダは原潜部隊の創設を無期限に延期した、そういうふうな報道、それからフランスも武器開発計画の実施を延期した、そのほかアメリカソ連の動きにつきましても詳細に記述があります。そういうふうな中で、我が国だけが大きなプロジェクトをどんどん進めておるわけです。例えばFSXそれからイージス艦、そして新しい戦車、こういうふうな大きなプロジェクトをどんどん進めて、そのままでいいのか、我が国が平和国家として進むべき道なのかどうか、もう一回考え直してもいいんじゃないかという思いがあるわけですね。だから、そういう点も含めまして、十分世界のいろんな動きの中でチェックすべきことではないかということでございますので、この点は頭に入れておいていただきたいと思います。  お忙しいところを官房長官外務大臣においでいただきましたので、そっちの方へ質問を切りかえたいと思います。  まず、これは外務省にお伺いしたいのでありますが、対日防衛問題の防衛負担に関して、大臣も御存じだと思いますが、先日の新聞で、米上下両院は三十日の本会議で、日本に空母ミッドウェーの修理費用の肩がわりなどの防衛負担を求める条項を盛り込んだ八九年度の総額二千八百二十四億ドルの国防予算を可決したと、こういうふうに報道されておりますが、これは事実かどうかわかりません。中身を私は読んでおりません。これは実際、事実としてこういうようなことがあるのかどうか、その経緯と内容についてどうなっているのか、おわかりでございましたら教えていただきたいと思います。
  132. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これは要請ということではございませんで、米国の八九会計年度国防歳出法において、まず明年の八月十五日以降に今般歳出予算として配賦されることになった金額のうち、四千万ドルを空母USSミッドウェーの船腹修理のために使用しなければならないと記されております。そして、もしもこのミッドウェーの船腹修理が日本によってなされる場合には、ということで一定の条件が書いてございます。  これは他国の法律でございますから、全くの仮訳で御説明いたしますと、先ほど申し上げましたように、この四千万ドルが使用されなければならないといたしまして、「但し、空母USSミッドウェーの船腹修理は、当該修理費が日本政府によって支払われる場合に限って、又は、日本政府日本国の会計年度において、米国の労務費もしくは運用費に係る負担を四千万ドル以上増額することに同意し、かつかかる増加が同法の成立の時点で日米両政府間で既に合意されたものへの追加である場合に限って、日本国内の造船所において、これを実施することができる。」、このように記してあるわけでございます。
  133. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大体新聞の報道のとおりでございますね。
  134. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 要請ということではないと存じます。
  135. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要請ではないにしても、要するに今局長がおっしゃいましたように、日本国内で修理する場合は日本が費用を負担する、または日本が在日米軍基地経費の負担を四千万ドル以上増加すると、要請ではないにしても、こう書いてあるわけですね。
  136. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 日本で四千万ドルを使って修理するのであればということで、その要件がそこに記されているということである、繰り返しになりますけれども、他国の法律でございますので有権的には申せませんけれども、記されているということであります。
  137. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 有権的解釈は別にいたしましても、防衛庁、これは施設庁長官ですか、例の思いやり予算でこういうようなものを処理するということになったら、これはどういうことになりますか、これ。こんなことはできますか。
  138. 弘法堂忠

    政府委員弘法堂忠君) 防衛施設庁としましては、ただいまのような記事につきましては、現在負担することになっておりませんので、検討したことはございません。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは検討したことはないと。ないでしょう、あるかもわかりません、これは。こういうような問題は、検討するもしないも、既にもうこういうようなことがうたわれているわけですから、もしこういうことで、思いやり予算なりそういうところでこういうことをやるということになれば、地位協定の改定というところまで私はいくんじゃないかと思うんですが、これはどうですか。
  140. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今、施設庁から答弁がございましたように、これは要請を受けているわけでもございませんし、我が国として修理費を負担することを検討しているわけでもございませんので、そのような仮定の御質問にお答えするのは差し控えさしていただければと存じます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いやいや、こういうふうな要求があっても応じない、当然地位協定も改定しない、そしてこういうことについてはやっぱり少なくとも理不尽な要求であると、そういうふうにお考えになりますか。
  142. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先ほどお読みいたしましたように、これはどうも要求されているというふうに読めないものですから、断る断らないというところまで立ち至ってないということでございます。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、それはそんなことを言っていていいんですか、本当に。要求していない、全く。日本関係ないですな、全く。これははっきりしておいてくださいよ。
  144. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 日本関係ないということではないと思います。それは、日本でもしも修理されるのであれば、これら二つの要件がいずれか一方が充足されなければならないと書いてあるわけでございますが、しかし、これは主文におきまして来年の八月十五日以降に四千万ドル船腹修理のために使わなければならないということがあって、それの副次的なものとしてと申しますか、記されているのであって、現段階においては直接我が国関係がないと申せばそういうことになるのかもしれません。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは日本で修理するかアメリカで修理するかは向こうで決定することでしょう、当然。しかし、日本で修理をお願いしたいという申し出がもしあったとしたら日本はどうなるんです。これはやっぱり受けることになるんでしょう。そうすると、当然またこれはお金の問題がかかってくるわけでしょう。
  146. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 申しわけございませんけれども、まだその要請がないものですから、どのようなふうにそれを判断してよろしいのか今はまだ考えておりませんです。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃこういう要請があったら、これは外務大臣、今いろいろ御答弁あったとおりでございますが、こういう法案の中にそういう言葉が出てくるわけですね。それで、修理をお願いしたいという要請があるかどうかわからぬわけですが、もしあったらこれはどういうふうにされますか。
  148. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 局長が累次お話ししましたとおり、現在といたしましてはそういう条項が入っておりましても、有権的にはっきりこれを解釈しなければならないという立場にはございませんから、私自身が今日要請もなければまた検討もしておらないことをコメントすることはいかがかと思います。それはひとつぜひとも、こうしたことでございますから、御理解賜りたいと思います。  広い意味でバードンシェアリングということがよく使われます。先般もバードンシェアリングにつきまして、シュローダーという女性の委員長でございますがお越しになられました。いろいろ私お話を伺いましたが、やはり防衛というものは自主的にするものである、私はまずこのことを申し上げております。先ほど来防衛庁長官といろいろ問答がございましたが、その中におきましても、やはり私たちは節度ある防衛費というものの算出をいたしておきませんと、戦後四十三年たったとは申せ、いろいろな日本に対する疑惑の念はまだ完全に払拭されたと申し上げることはできません。したがいまして、そういう面におきましても、やはり防衛費として計上される何がしかのお金というものは、東南アジア初め近隣諸国にいろいろと誤解を与える、そうしたこともございますから、私はシュローダー委員長に対しましても、そうしたことであくまでも私たちの自主的判断でやる、何か更正決定もらってそのとおりにしなくちゃならぬというようなものではありませんよと、そこまで私は申し上げたことがございますから、このミッドウェーの修理に関しましても、今日ただいまといたしましては私はそういう気持ちで今後も臨んでいきたい、かように思っている次第であります。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題はこれから何らかのところでまた出てくるんじゃないかと思いますが、いずれにしましても、そこまでなし崩しに、例えば思いやりというような関係で負担するということになれば、やっぱり地位協定の改定ということまでいくんだろうと私は思います。そういうような意味で非常に関心も深いし、私ども重大な関心を持って見詰めているということであります。こういうことにならないようにしていただきたいと思っております。  それから次に、これは官房長官にもお伺いしたいのでありますが、竹下総理、「世界に貢献する日本」ということでいろいろなところで演説をされまして、特に国際交流という問題が重要な一つのテーマにもなっております。そんな中で、特にアジア諸国の対日イメージ、これが非常に悪い、これは本当に何とかしなければいけないというふうに私どもも思います。実は、私の手元にあります世論調査によりましても、例えば中国人で日本を大いに信頼できるというふうな人は二・九%であります。日本人の中国に対するそれは一五%、多少は信頼できる、そういう人が四五・六%、こういうふうにしまして、ちなみに、中国人で日本を脅威と感じる人、これは一八・九%でありますね。そのほかASEAN諸国の皆さん方のいろんな問題を見てみますと、いわゆる日本がASEAN諸国に何ができるか、どういう貢献をしたらいいのかという問題は、ただ単に貿易とか今問題になっております問題だけではなしに、あらゆる問題であらゆる角度から対応していかなくてはいけないのではないかというふうに考えております。  特に、そんな中で、官房長官、外国人労働者の問題とそれから留学生にかかわる問題、少なくともこの二つは緊急にこれはもう政府としても対応していかなくてはいけない問題ではないかなと思うわけです。きょうの朝刊でも、京都で、あれはマレーシアだったですかね、日本語学校の問題が報道されておりました。そういうような意味も含めまして、政府として、特にこの東南アジアの皆さん方の日本に対する信頼回復のためのいわゆる政策、いろいろなあれがあると思うんですが、その問題について官房長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  150. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 峯山委員指摘のように、昨今、東南アジアばかりではありませんが、対日感情は必ずしも芳しからざる各種の調査が出ておりますことについては、大変憂慮しなければならないことだと思っております。竹下内閣としては、言うまでもありませんが、「世界に貢献する日本」ということで、平和のための協力、政府開発援助の拡充、そして今御指摘ありました国際文化交流、この三つの柱を中心に、全力を挙げて、世界の中の日本として、また「世界に貢献する日本」として今後とも努力をしていかなきゃならないというふうに思っております。  そこで、御指摘にありましたように、外国人労働者の問題と留学生問題ということは、最近この数も極めて増加の一途をたどっておる中で、今までは日本に対しましても、物の本とかあるいは現地における日本人を通じて日本との接触がありましたものが、みずからが日本に参りまして日本人それぞれと個々の接触を保ち、生活を、起居をともにしてくるという状況の中で、身近に日本を体験し得る方が多くなってきておる状況でありまして、そうした方々の中で、一部、日本の生活が極めて困難な状況にかんがみまして、そのことがまた対日感情を悪くしておるというような面も見られるわけでございます。  したがいまして、今後とも、この外国人労働者の問題につきましても、現下、内閣官房内政審議室で、関係十七省庁によりまして外国人労働者問題関係省庁連絡会議を設けまして、現在鋭意、その抜本的対策をいかになすべきか、そしてひいては、外国人が日本に対する感情をよいものにしていくために何をなすべきかということについて対処をいたしておるところでございますし、また、留学生問題も竹下内閣発足以来国会でもしばしば御指摘いただいておりますので、これまた関係閣僚会議を設けまして、現在鋭意具体的対策を講じつつあるわけでございます。  こうした努力をベースにいたしまして、御指摘にありましたような対日感情の悪化というものを払拭しつつ、よりよい感情を持っていただくように努力をしていくべく現在努力中、こういうことでございます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいまの問題、外務大臣いかがでしょうか。
  152. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 将来を考えますと、私は次のようなことが言えるんじゃないかと思います。  現に、去る八月十日アジアの人口は三十億を突破という、もう世界五十億のうちの六割を占めておる、しかもその中に八割貧困者がいる、これをどうするかという問題もございます。したがいまして、「世界に貢献する日本」でございますからアジアだけではございませんが、そうした国々に対してODA等を通じ今いろいろと技術協力、経済協力をやっておりますが、そうした中から、ひとつ後進国が中進国となり、中進国が先進国となってほしいという願いを込めて現在やっておるわけでございます。  その中に留学生問題、将来の人材を養わなければならぬ、さらにはまた、現在の職なき人たちをどうするかという問題でございます。したがいまして、特にそうした外国人労働者の問題に関しましては、労働省と法務省が鋭意検討されておりますし、私たちもやはり出入りのときにはそのことを心配しなければならぬ。今のところは単純労働者は原則としてだめである、こういうふうな方針でやっております。これをもうちょっと緩めろという意見もございますが、では緩めた場合にどうなるかという問題もまだまだございますから、非常に大切な問題でございますので、我々といたしましては、政府におきましても既にそういう機関をつくりまして関係省庁相寄って努力をいたしておりますが、御指摘のとおり、やはりこうした問題に関しましても可及的速やかな答えを出さないことには日本として責任は果たせないのではないかと、かような考え方を持っております。したがいまして、両省の意見も極力合致してもらうように私たち努力をしたいと、かように思っております。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 次に、朝鮮半島の安定の問題についてお伺いしておきたいと思います。  これは特にお隣の国でございますし、南北双方が国際社会に窓を開くということは大変大事なことでございますし、半島の緊張緩和のためにもぜひともそうしていただきたいと思っているわけでございます。  そんな中にありまして、御存じのとおり、オリンピック後、特に韓国の対共産圏外交といいましょうか、そういうようなものが活発化しているように新聞でも報道されております。ハンガリーとの代表部の交換とか、ユーゴとの間の貿易事務所の交換とか、いろいろ報道されておりますが、こういういろんな問題に対しまして、外務大臣も在日韓国大使に対しましてこうした韓国の対共産圏外交を側面から応援するというふうに述べたというふうに報道されております。大変結構なことだと思いますが、具体的に今後日本としてはどういうことを考えていらっしゃるのか、またどういうことが可能なのか、ここら辺の点についてお伺いしておきたいと思います。
  154. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 朝鮮半島の緊張緩和というものは、第一義的にはやはり南北が話し合っていただく、それが一番大切なことであると考えております。  二番目に、私たちも朝鮮半島の平和、それを通じての東アジアの平和、ひいては世界の平和、こうやって考えてまいりました場合に、当然我々も何らかの面で努力をしたい気持ちはやまやまでございますが、やはり過去の日本と朝鮮半島との歴史的な経緯等々を踏まえました場合に、私はしゃしゃり出るという言葉を使っておるわけですが、しゃしゃり出るということは、いろんな民族感情もございまするから、そうしたことはしたくはないが、しかし無関心であり得ない、こういうふうに私は申し上げておるわけでございます。したがいまして、中国にも、あるいはまたソ連にも、それぞれ独力で韓国そのものが今接触を深めておられるということは非常に結構なことではなかろうかと、こういうふうなことで我々も今韓国姿勢を高く評価いたしておるわけでございます。  特に、ハンガリーあるいはユーゴスラビア、チェコスロバキア等々は、ペレストロイカと東欧との関係も私たちは十分検討し分析いたしておりまするが、そういう面からも進んで韓国と窓口を開こうというふうな姿勢になっておられることは我々としても評価すべきである。だから、そうした意味合いにおきましては、私たちはいろんな面でしゃしゃり出ることなく支援を惜しんではいけない、無関心であってはいけない、これが姿勢でございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もうこれで終わります。もう一点、南北朝鮮の問題についてお伺いしておきたいと思います。  朝鮮民主主義人民共和国が国際社会で孤立をし、かつ南北が意思の疎通を欠いておるということは、これはもう決して好ましいことではないと私は思います。そういうような意味で、最近の盧泰愚大統領のいろんな動きとか、あるいは日米が北朝鮮と接するということを容認するというようなことをおっしゃっておりますので、そういう点から私は少しは前進してきたかなと思っているわけであります。  そんな中にありまして、特にオリンピックの前に北朝鮮に対する制裁措置を解除したところでありますけれども、その後具体的な反応というのをお伺いしていないわけでありますが、特に第十八富士山丸問題の解決という問題ですね、これは現在どういうふうになっているのかということを、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  156. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 第十八富士山丸に関しましては、これは不法なる監禁である、だから速やかなる釈放を望むと、政府といたしましては、ありとあらゆるルートを通じまして常にそのことを要請いたしております。残念ながら未承認国でございますから、直接交渉は今日まではございません。しかし、社会党を初めいろんな方々がこれに努力をしていただいておりまして、これにも私たちは感謝をいたしておりますが、特に最近行かれました山口書記長御一行はこのことにも触れて帰ってこられました。そして、そうしたことを頭に描きながら朝鮮労働党の招請ということをしていただきました。我々も措置を解除したわけでございますから、そうした方々がお越しになられますときには、あらゆる機会をつかまえまして政府としてのお話し合いを進めることも私は今後大切なことではないかと、かように思っておりますので、そのチャンスをつかまえるためにただいまはもうあらゆる努力をしておるというのが今日の立場でございます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 終わります。
  158. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは質問いたします。  在日米軍駐留経費の日本側負担の問題について、外務大臣も御出席いただきましたので、これを最初に伺うことにします。  最初にフィリピン問題についてですが、きのうの新聞報道、けさのテレビ報道によれば、在比米軍基地交渉合意されて、アメリカフィリピンに対する現行一億八千万ドルの経済、軍事援助が四億八千百万ドルに大幅アップした、こういう報道です。在日米軍に思いやりなど多額な援助をしている日本とはかなり違っているという感を強くしましたが、アメリカには、このフィリピンへの基地使用料増加に関連して、日本政府にその一部を肩がわりさせようという動きがあります。報道でも、これは二国間協議ではあるけれども、日本政府と緊密な連絡をとりながら行ったというふうにも言われていますが、アメリカから何らかの相談があったんでしょうか。
  159. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 日本時間のけさ午前一時、そうした調印がなされまして、私たちも従来のアメリカフィリピン関係、これがこじれることなくスムーズに話がついたということを、やはりASEANの一員としてフィリピンの立場を考えました場合に、日本といたしましても歓迎をいたしておるところでございます。  従来、国会で随分とこの問題ございましたが、スビック、クラーク両基地におけるフィリピンアメリカ交渉は、これはもう両国の話であって、日本がそれにくちばしを入れる問題じゃございません、これはあくまで両国ですということは、私も口を酸っぱくして申してまいりました。したがいまして、両国でその間の話ができたことは非常に結構なことであると思っておる次第でございます。  なおかつ、バードンシェアリング等々の問題に関しまして、フィリピンが今日、非常に財政的にも苦しい、だから日本がそうした面でも面倒を見てやるんじゃないかという話にすぐ飛んでしまうわけでございますが、我々はあくまでも、基地の問題はこれはフィリピンと米国の話でございます。したがいまして、総理を初め、私たちがASEAN等々において、あるいはまたトロントでもこのフィリピンの問題は議論されましたが、これはあくまでも経済問題として議論をしておるわけでございまして、この基地問題と混同されますと非常にそこに過ちが出るわけでございまして、基地問題に関しましてはこうするああすると、四億八千万ドルとか聞いておりますが、こうしますからというようなことは一切連絡はございません。
  160. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは続けて伺いますが、三月三日、米上院予算委員会でカールーチ米国防長官は、在比米軍の存在が日本シーレーン防衛に重要な役割を果たしている。日本政府フィリピンのスビック、クラーク両米軍基地貸与料の全部または一部の肩がわりをしてもらうのが可能だと、こういうふうに証言しています。しかし、もし日本がこういうことを行えば、これはフィリピンへの軍事援助に当たり、こういう他国への軍事援助というのは憲法上できないと考えますが、その点は確認していただいてよろしいですか。
  161. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 私は、資料そのものを手元に持っておりませんけれども、今先生が言及されましたカールーチ国防長官発言なるものは、記録の誤りで、長官自身が発言したのではなくて、質問者の方が発言していたものが誤ってこちら側に伝えられてきたということでございます。
  162. 吉川春子

    ○吉川春子君 その場合、フィリピンの在比米軍基地の使用料の肩がわりなどということを日本がやることは憲法上絶対に認められないと、そういうことですか。
  163. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) もう全く話が別の話でございまして、私たちはあくまでも基地の問題はアメリカフィリピンの問題で、日本がいささかもそれに対して肩入れするとか、ほかの方法を用いるとか、そういうことはないということをしばしば申し上げておりますから、今の御質問に対しましてもそのようにお答えいたしておきます。  なおかつ、先ほどちょっと触れておきましたが、トロントにおきましても政治と経済という二つのカテゴリーでお互いに議論をしたわけでございますが、フィリピンは政治じゃなくして経済というところに入れて、そこで議論をしたということもございまして、これは全く次元の違う話でございますから、その点も御理解賜りたいと思います。  また、カールーチさんと私もしばしば出会っておりますが、一切カールーチさんからそのようなお話を聞いたこともなければ、また相談を受けたこともございません。むしろカールーチさんは、アメリカにおきましても、これ以上日本にいわゆるバードンシェアリングをと言って防衛上の負担をふやすということは余り感心したことではないのではないかと、そういう立場で今日まで発言をなさっておる、こういうふうに私たちもかたく信じておりますから、今の話はひとつ分けてお考え賜りたいと思います。
  164. 吉川春子

    ○吉川春子君 分けてお伺いすることにします。  仮に、フィリピンの存比米軍の基地の使用料を日本が肩がわりしてくれ、こういうふうに言われた場合は、これは憲法上できないと、解釈論として、そのようでよろしゅうございますか。
  165. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) これはもうはっきりと、我が国防衛費に関しましては憲法上の制約、これを私たちはあくまで守っていかなくてはなりません。したがいまして、今申し上げましたように、我が国防衛はあくまでも自主的な判断に基づいて自主防衛をやっておるわけでございます、専守防衛でございますから。したがいまして、そのようなことはあり得ないと私は申し上げておきます。
  166. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛二法の審議が参議院の本会議で行われましたときに、竹下総理が、米国の強い要求であるこのバードンシェアリングについて積極的にこたえていく姿勢を示して、次のようにおっしゃいました。  「我が国としては、世界の平和及び繁栄に貢献するため、増大した国力にふさわしい役割をみずから積極的に果たしていくということは当然の責務と考えておるところであります。」。  そこで、また外務大臣にお伺いしますが、ことしの六月の初めに、日米防衛首脳協議のためにカールーチ米国防長官来日いたしましたけれども、日本に四点について求めたと言われています。防衛力整備の継続的な推進、在日米軍駐留経費の一部負担、それから経済協力援助の拡充、さらに技術交流の一層の拡大ということですけれども、日本政府としてもこういう要望にこたえる方針で臨んでいくんでしょうか。基本的な考え方をお伺いします。
  167. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 日米安保条約は、もう今朝来、防衛庁長官みずからもいろいろお答えになっていらっしゃると思いますが、大切な条約でございまして、我々国民の生命、財産はこれによって守られておる、こう申し上げても決してこれは過言ではありません。したがいまして四十三年間の平和も保たれておる。もちろん、その半面におきましては国民みずからの平和希求と御努力、そうしたものがあることを私たちは決して忘れてはなりませんが、そうした大切な関係は今日までお互いにきちっとした立場で守り、なおかつ、お互いがなすべきことと、そしてその分担に関しましても、はっきりした線を引きましてやってまいりましたもので、現在、日米両国はそうした意味では、この問題に関しましても非常にお互いが信頼し合うという、そのかたい盟約のもとにすべてがうまく運営されておると、私はこう思います。  だから、今後も安保条約の運営というものは円滑かつ友好的なものでなければならぬ、そのために全力を挙げることが必要だと、こういうことでございますから、今お話しになられました面におきましても、当然我々といたしましては、お互いに話し合うこと、また協力できるものは協力していってよいと考えております。  しかし、先ほどもお答えいたしましたように、憲法上の制約があり、これは私たち忘れるわけにいきません。大切な憲法でございますから守っていかなければなりません。同時にまた、防衛には防衛といたしましての節度ある防衛というものを私たちは考えていかなければなりません。それらにつきましては、もうはっきりと防衛に関しましては基本的な政策があるわけでございますから、この基本的な政策にのっとって今後も日米間におきましての話をすればよいと私は考えております。  同時にまた、節度を失いますと、先ほども前委員の先生からの御質問がありましたとおり、やはり近隣諸国、特にアジア諸国につきましては、今なおかつ日本に対する幾つもの懸念がございますから、そのような懸念を持たれたままの外交であってはなりません。やはり信頼、そうしたことを中心としての外交を推し進めるべきである。だから、私たちはもうどこに出ましても、非軍事的なことならばいかなることでも御協力申し上げましょうと、こういうことを言っておるわけです。  だから、アフガンでございましても、イラ・イラ戦争、イラン、イラクでございましても、あるいは将来のカンボジア問題でございましても、さらには遠くアフリカのナミビアの問題に関しましても、非軍事的な面ならば、日本は経済大国と言われている以上は御協力申し上げましょう、それが私たちの外交方針である。これを総理から実践をなさっておるというのが今日の外交でございます。  以上であります。
  168. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは軍事面についてお伺いいたしますが、昨年後半からことしにかけて、西側共同防衛に関する役割責任分担をより公平にと、こういう米政府議会の大々的なキャンペーンが行われております。報道によれば、五月の三日からハワイのホノルルで開かれた十八回日米安保事務レベル協議の際に、アメリカ政府は、在日米軍基地労働者の本給の肩がわりを念頭に置いて日米地位協定の改定を打診してきたと言われています。さらにまた十月の十三日、米下院外交委アジア太平洋問題小委員会の日米関係聴聞会で、米国務省東アジア担当のクラーク副次官補が、在日米軍駐留経費問題で米国政府の対応について次のように述べています。在日米軍経費のうち、施設費と日本人基地従業員費用の全額負担を日本に求めていきたい。  そこでお伺いしたいんですが、アメリカからこういう要請が実際に来ているんですか。
  169. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 参っておりません。
  170. 吉川春子

    ○吉川春子君 将来必ず来ると思いますけれども、こういう日本が在日米軍基地労働者の本給を負担するなどということが可能なんでしょうか。
  171. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 繰り返し申し上げておりますけれども、今具体的に何も要請のない段階で、何も検討しているわけではございません。そして、在日米軍経費負担について新たな措置をとることを現在考えておりません。
  172. 吉川春子

    ○吉川春子君 九月の二十七日、米下院軍事委員会防衛分担特別部会公聴会で東アジア太平洋担当のジャクソン米国防次官補代理が、年間数十億円と言われている在日米軍の光熱費、水道費の日本側負担の希望を表明しています。このことについてはアメリカから要請が来ていますか。
  173. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 参っておりません。
  174. 吉川春子

    ○吉川春子君 仮に、在日米軍基地の光熱費、水道費、これを負担してほしいと言われた場合、法的に負担できますか。
  175. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) ここでユーティリティーズコストという表現が使われておりまして、それが何を正確に意味するかわかりません。それから、ジャクソン次官補代理の表現も漠然としておりまして、今これを我が方に要求してきているというふうには考えておりません。したがいまして、まさに仮定の問題についてここでお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  176. 吉川春子

    ○吉川春子君 仮定の問題ではなくて、解釈論として伺いますが、米軍の光熱・水道費というようなもの、そういうものを日本は負担できるんですか。
  177. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 繰り返して申し上げますけれども、光熱費であるとか水道費であるとかいうことを向こうは申しておるわけではございませんで、向こうが具体的に何も申しておりません段階で、それは法的に可能であるかどうかということをここで申し上げることは難しゅうございます。
  178. 吉川春子

    ○吉川春子君 ミッドウェーの修繕費についてもお伺いしようと思っていたわけですけれども、これは先ほど峯山委員質問されました。アメリカから言ってきていないと。でも新聞はお読みになっているから、ニュースとしてはお聞きになっているわけですね。そういうときに、やっぱりこれが安保条約、地位協定その他狭義の条約も含めて、そういうものを動員してもできるのかどうか、こういうことはきっと検討されているんじゃないんですか。そういうことを伺っているのに、全然答えられないというのもちょっと不思議だと思うんです。例えばミッドウェーの修繕費などということは、もう言われるまでもなく、これはもし言ってきても即座にお断りする、こういう性格のものじゃないですか。
  179. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 申し越しのございませんことを即座に断るということもあれでございますけれども、先ほど私が御説明申し上げようといたしましたのは、新聞報道に加えまして法律の当該部分そのものであって、その部分では我が方に対しての要請が行われているというふうには読めない。そこの主文というのは、明年の八月十五日以降に四千万ドル使って船腹の修復をミッドウェーについて行うということでございまして、それに、もしも日本で行うならばこれこれしかじかの条件が充足されなければならないということが記されているのであって、要求がなされておりません段階で、それに加えて私どもは、繰り返しになりますけれども、これは外国の法律でございますので有権的に解釈できないということでございますが、要求されていない段階でこれを向こう側がどのように考えているかということはわからないわけでございますから、いまひとつ的確に法的な性格をどのように考えるかということをお答えするのは大変難しゅうございます。
  180. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、防衛庁長官外務大臣と二人に伺いたいんですが、アメリカが次々とこういうような在日米軍経費の負担を日本に要求してきている。正式には来ていない、新聞報道だけだとおっしゃるんですけれども、そういうようなアメリカの動きに対して、どのようにお考えになられるんでしょうか。  さらに、七月三日には渡辺自民党政調会長が宇都宮の講演で、在日米軍で働く日本人従業員の給与について次のようにおっしゃっておられます。日本に負担してほしいというアメリカの要求は当たり前の話だし、手当だけでなくて、将来は日本人の月給ぐらい日本で負担しないと世界で通用しなくなる、こういう重大な発言をされているんですけれども、政治家としてこういう御発言に対する見解をお伺いしたいと思います。
  181. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今の渡辺発言そのものを私たちはコメントする立場にはございません。政調会長は政調会長のことを言われたと思いますが、私たちは今日申し上げておりまするとおりに、従業員の雇用のためということで手当だけをひとつ我々としても出していこうと。これも限定的な問題である、そういう対象だけを決めた、あるいはまた時期も決めておりますから暫定的な問題である、しかもこれは地位協定の特例であるということで先般の通常国会でお願いいたしたということでございますから、そこはひとつ御理解賜りたいと思いますし、政府といたしましてはそうした姿勢で今後も臨んでいきたい、かように思っておるものであります。
  182. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 渡辺政調会長発言については、それは政治家として、政治家渡辺美智雄としての判断発言されたことでございますので、私たちがこれをどうこう申し上げる段階ではございません。また、ただいまの外務大臣お話のように、地位協定の範囲内で私たちはこれを進めてまいりまするのでございますから、その点御理解をいただきたい、こう思います。
  183. 吉川春子

    ○吉川春子君 地位協定二十四条二項にあります日本側の在日米軍駐留経費負担は、俗称思いやり予算が実行されるまでは米軍が使用している区域の土地借用、それから買収、漁業補償、提供施設の整備、同じく移転、整備、この費用に限られていたと思うんですけれども、どうですか。
  184. 弘法堂忠

    政府委員弘法堂忠君) 地位協定二十四条に基づきますところの日米間の経費負担につきましては、日本政府は施設を米側に提供します場合に、アメリカ側に負担をかけないで日本政府の負担において行うということになっておりますので、その範囲内において日本側が負担をしていくということでございます。
  185. 吉川春子

    ○吉川春子君 ですから、具体的に言うと今の四つじゃないんですか。
  186. 弘法堂忠

    政府委員弘法堂忠君) 周辺対策の費用とかあるいは施設の借料、リロケーション、あるいは漁業補償等の費用でございます。
  187. 吉川春子

    ○吉川春子君 五月に来日したカールーチ国防長官日本の記者との会見で、直接労務費肩がわりのために、地位協定の改定に対して、日本がもっと負担するために改定が必要であるならば我々はどんな変更が必要なのかを調べることになろう、こういうふうに述べておりますが、もしアメリカ側からそういう要求が来たときには、それに応じてやっぱり地位協定を改定する、そういう準備ということも一応考えなきゃならないんじゃないですか。
  188. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今、考えておりません。
  189. 吉川春子

    ○吉川春子君 ですから、今の私が申し上げました三つの問題については、地位協定を改定しないで今のままだったらば負担できないのじゃないかということなんです。どうですか。
  190. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今お取り上げになられたというのは、一番最後におっしゃられたカールーチが言ったという労務費のことでございますか。
  191. 吉川春子

    ○吉川春子君 そのことも含めてですね。
  192. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 含めてと申しますと、申しわけございませんが……。
  193. 吉川春子

    ○吉川春子君 ミッドウェーとか、あるいは光熱・水道費。
  194. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 繰り返しになって申しわけございませんけれども、要請のないときに、それも具体的に何が考えられているかもわからないときに地位協定云々ということで考えるということは難しゅうございます。
  195. 吉川春子

    ○吉川春子君 私、今具体的にお伺いしましたが、答弁が得られませんでした。  しかし、アメリカは、今まで日本の憲法の立場あるいは地位協定の立場から、とても無理じゃないかという、私たちは地位協定を認めていませんが、そういうようなことでも次々と要求してきて、そして特別協定とかそういう形で具体化していっているわけです。外務省からもらった資料によりますと、在日米軍経費の内訳が三十三億ドルで、そして軍人軍属関係は二十一億ドルとか、物すごい費用ですね。こういうものも含めて、今の在日米軍経費を日本が一対二ではなくて半々ずつ負担するんだという論議も自民党内にあると聞いておりますが、もしそういうことになると、さらに軍事費の増強という大変なことにつながるということを私は指摘したわけなんです。  この質問はお答えが得られませんので、もうこれで終わりにいたしますが、仮に安保条約を認める、そういう立場からいっても、地位協定を改定しなければもうこれ以上負担はできない、こういうところに来ていると思うんです。しかも、現行の地位協定二十四条を改定すれば、合衆国軍隊を維持することに伴う経費、これを日本が負担することになり、合衆国軍隊への財政援助になるんじゃないか、こういう重要な問題が含まれているということを私は指摘して、こういうアメリカの要求を認めるべきじゃないし、地位協定の改悪をやるべきではない、こういうことを強く指摘して、この問題についての質問は終わりたいと思います。  では、外務大臣結構です。どうもありがとうございました。  潜水艦衝突事故についてお伺いいたします。  七月二十三日に起きました海上自衛隊の潜水艦「なだしお」、第一富士丸の衝突事故は、九月二日に横浜地方海難審判理事所が横浜地方海難審判庁に審判開始の申し立てを行いました。そして、十月三日には海難審判が横浜地方海難審判庁の審判廷で始まり、三日、五日には口頭弁論等が行われています。また、九月二十九日に第三管区海上保安本部と横須賀海上保安部は、「なだしお」の山下艦長ら二人を業務上過失致死傷と業務上過失往来妨害容疑で横浜地検に書類送検をしました。  こういう経過の前提に立って伺いますが、まず最初に海上保安庁にお伺いします。  送致書類では山下艦長の容疑事実はどうなっているんですか。
  196. 邊見正和

    政府委員(邊見正和君) 潜水艦「なだしお」、それから第一富士丸衝突事件につきましては、横須賀海上保安部におきまして約二カ月にわたって捜査をいたしました結果、九月二十九日に船長、艦長両者を業務上の過失往来妨害及び業務上の過失致死傷容疑で横浜地方検察庁へ書類送致をしております。  それで、「なだしお」側の容疑事実でございますが、当時の「なだしお」艦長が早期に大幅な避航をせず、また十分な見張りをしなかった。さらに、不適切な情勢判断のもとに安易に進行して避航時期を失した過失が認められたということでございます。
  197. 吉川春子

    ○吉川春子君 その今おっしゃった、早期に大幅な避航をせずのところですね、それ以下のところをもうちょっと具体的におっしゃっていただけますか。
  198. 邊見正和

    政府委員(邊見正和君) 繰り返して申し上げますと、早期に大幅な避航をせず、また十分な見張りをなさず、さらに不適切な情勢判断のもとに安易に進行して避航時期を失したということでございます。
  199. 吉川春子

    ○吉川春子君 それはそこに書いてあることなんで、その中身を具体的にお伺いしたかったのです。  それでは、横浜地方海難審判理事所の申し立ての要旨を見ますと、「なだしお」の過失が一層明らかになっています。  そこでお伺いしますが、申立書には、七月二十三日午後三時三十五分ごろ「なだしおは第一富士丸と互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあった」とあります。このときの「なだしお」と第一富士丸の距離は二千メートル、三十六分にはその距離は千五百メートルであったということも衆議院内閣委員会で明らかになっています。これは、この事件において避航船である「なだしお」は直進してはならない、直進したら衝突する、したがって、この三十五分から三十六分間には「なだしお」は回避措置をとらなければならなかった、こういうことだと思うんですが、理事段階の認定についてお伺いしたいんですけれども、理事所の方、いらしていますか。
  200. 松下幸亮

    説明員(松下幸亮君) 今先生御指摘のとおりでございまして、今横浜で審判が始まっておりまして、ここで理事官サイドの判断とか、これ以上細かいことはちょっと申し上げられないと思うんですが、ひとつそれで御勘弁願いたいと思います。
  201. 吉川春子

    ○吉川春子君 まだちょっと座っていてください。まだ聞きます。  つまり、浦賀水道を南下する第一富士丸の前を横切ろうとした潜水艦「なだしお」が海難審判理事所の申し立てにある地点、双方の距離二千から千五百メートルの地点で海上衝突予防法により大幅な回避措置をとるべきであった。それで、右にかじをとったということが第一富士丸にはっきりわかるように意思表示をすべきであった。これをせずに、衝突直前まで回避措置をとらずにあくまで第一富士丸の前を横切ろうとして直進したところにこの事故の直接の原因があったと、こういうことですか。
  202. 松下幸亮

    説明員(松下幸亮君) 先ほども申しましたように、審判が開廷されて、今審理の途中でございまして、理事官の調査段階においては先生のおっしゃるような意味合いも含んでいたと御理解いただきたいと思います。
  203. 吉川春子

    ○吉川春子君 海難審判理事所の申し立てと、それから海上保安庁の送致書類、この二つを見ても、今回の事故は「なだしお」が早期に大幅な回避措置をとらなかったことが衝突を招いた最大の原因であるということは明らかになっています。  そこで防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、この段階で海上自衛隊責任ということについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。また、海上自衛隊第二潜水隊群が指定海難関係人ということで、海難審判で自衛隊の組織としての責任指摘されようとしている、そういうことについてもどういうふうにお考えなのか、お伺いします。
  204. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 「なだしお」と第一富士丸の衝突事故についての原因究明につきましては、ただいま海難審判あるいは検察当局の審査を進めている段階でございます。したがいまして、その結果を受けて私たち責任問題を考えていかなければならない、慎重に対応していかなければならない、かように考えております。
  205. 吉川春子

    ○吉川春子君 「なだしお」の救助活動についてお伺いします。  事故後に「なだしお」の救助活動に対して厳しい国民の批判が巻き起こりました。これに対して防衛庁はいろいろおっしゃっておりますが、例えば七月二十八日の衆議院連合審査におきまして日吉防衛局長は、次のように答弁で言っておられます。  事故が発生いたします前にこの「なだしお」は、事故を避けんがために機関停止、面かじいっぱいの後、後進いっぱいという形をとっておりまして、おおむね停止したような状態で衝突をしたわけでございます。直ちに機関を停止いたしましたけれども、後進いっぱいの惰力が働いておりまして、それで二、三百メートル後ろに後退してしまった、事故発生現場から後退してしまった こういうふうに答弁しておりますが、これはもうちょっと具体的に言うと、どういうことですか。
  206. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 私どもは、「なだしお」の艦長から私どもの方に報告なされてきましたことを御紹介申し上げたわけでございますが、もう少し詳しく申しますと、衝突をいたします前に回避行動をとっておりまして、その場合に、ただいま先生がお読みになられましたように「なだしお」は面かじいっぱい、それで後進いっぱいをとっております。したがいまして、衝突いたしましたときには、艦長の供述によりますと、ほとんど行き足がとまっていたというふうに供述いたしております。これは海難審判理事所及び海上保安部のそれぞれの申立書で若干の違いはございますが、片方はおおむね行き足がとまっていたような形で申立書が書かれていたように思いますが、艦長はそのように申しております。  それで、衝突をいたしたわけでございますが、艦長の証言は特段、衝突いたしました後の第一富士丸について述べておりませんが、その後、理事所あるいは海上保安部の申立書等を読ましていただきますと、沈没いたしました第一富士丸は、衝突現場から約百メートル程度進みましたところで沈没をしたように書かれているのを承知いたしております。  なお、衝突いたしました「なだしお」の方は、私が衆議院で御説明申し上げましたように、ほとんど行き足がとまっておりましたものでございますから、結局機関停止をかけましたときに、潜水艦の構造上、後進いっぱいのスクリューの逆回転がそのままききまして、約二百メートル程度後ろに下がったというふうに聞いております。したがいまして、後ろに下がりました潜水艦と、前に進みまして沈没いたしました第一富士丸の沈没地点との間にはかなりの距離が生じておったのではないか、かように考えられます。
  207. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛庁は、ぶつかったときほとんど静止状態だったと、それから海難審判理事所の認定では、前進、行き足三ノットと、こういうふうに言っています。しかも潜水艦は二千二百五十トン、それで第一富士丸が百五十トンですから、ちょうどお相撲でいえば小錦関に三歳児か四歳児の子供がぶつかった、こういう大きさのあれになりますね。そうすると、今の御説明では十六キロぐらいの子供が二百五十キロの小錦関を二、三百メートルはね飛ばした、こういうことになるわけですけれども、そんなことはあり得ないじゃないですか。どうですか。
  208. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 私は技術担当でございませんので正確なことは申し上げられませんし、なおかつ、こういう場合に比喩を用いまして御答弁申し上げますことはいかがかと思いますが、比喩を用いての御質問でございましたので、立ちどまっている小錦に向こうから子供が走ってまいりましてはね飛ばされた、おおむね、こういうふうなことにもあるいはなるのかと思います。あえて先生が比喩を用いられましたのでそれにお答えを申し上げましたけれども、必ずしも適当かどうか私にはわかりません。
  209. 吉川春子

    ○吉川春子君 全く適当じゃないですよ。だれがそんなことを信じますか、幼稚園の子供が小錦をはね飛ばしたなんて。そんなことはあり得ないでしょう。でも私は、厳密にトン数に基づいて割り出してそういうふうに言っているんですよ、単なる比喩じゃなくて。  それで、八月一日の新聞にこういう記事があります。「「なだしお」が、第一富士丸と衝突した直後のしばらくの間、同艦は事故を避けるためその前に行った「後進いっぱい」の状態のままで、本来とるべき「機関停止」の処置を直ちにとっていなかった」、そういうことじゃなかったんですか。
  210. 日吉章

    政府委員(日吉章君) その点も実は技術担当の政府委員の方からお答え申し上げるのが正確かと思いますが、若干私が素人なりに理解しておりますものを申し上げますと、船といいますものは自動車のようにブレーキをかけますと直ちに車輪がとまるというふうな性格のものになってございませんで、スクリューはそのまま回り続けることになります。したがいまして、ブレーキをかけますときにはスクリューを逆回転させるわけでございます。ですから、後進いっぱいといいますのは、全速力で逆回転をさせながらそれまで前進してきておりました惰力でもって前に進んでいるわけでございます。  そして、艦長の証言によりますと、そういう状態で衝突いたしましたときにはようやく後進いっぱいがきいてきておりまして、おおむね停止の状態になったと。そこで機関を停止いたしましてもやはり空回りといって正確なのかどうかわかりませんが、逆回転の後進がきいておりまして、その後進でもって、その惰力でもって二百メートルばかりバックしてしまった、こういうふうに理解いたしております。
  211. 吉川春子

    ○吉川春子君 技術担当じゃないとおっしゃりながらいろいろおっしゃいましたけれども、私はその説明は国民を納得させないと思うんですね。やはり現場にいて、本来だったらば溺者を救助しなければならない潜水艦が二、三百メートル現場を離れた、そういうことになるわけですね。その原因は、あるいは動転して機関停止をしなかったとかいろいろ言われておりますけれども、そういう状態であって事実上現場から離脱したと、私はそういうふうにしか言いようがないと思うんです。  山下艦長が文芸春秋のインタビューで「「なだしお」は衝突前に後進一杯をかけ、衝突後、およそ百五十メートルほど後ろに下がって停止したわけですね。」と、こういう質問に対して、「いや、二百メートルくらいかもしれません。そのあとすぐに後進を止めて前進をかけ」たと、こういうふうに言っているわけですね。だから二、三百メートル離れたそのときに初めてとめたわけですね。それは御本人のインタビューの記事ですけれども、そういうこととあわせますと、私はやはり現場にとどまって救助すべきだった「なだしお」が現場離脱とも言えるような状態に陥った、こういうふうに指摘しているわけですが、防衛庁長官にお伺いいたします。  衝突直後、後進いっぱいをかけていなければ二百メートルも三百メートルも後退することの説明がつかないわけですけれども、いずれにしても、これでは人命救助に全力を尽くさなければならないのに尽くさなかった、そういうふうに私は思うんですけれども、その点について長官いかがでしょうか。
  212. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 衝突の事故原因について、またいろんな問題を今海難審判で審理をしているわけですよ。したがいまして、ただいまずっと問答を聞いておりますというと、すべて私は海難審判の内容にわたるものだ、こう思うのでございまして、私たちはやはり海難審判の審理の中で、私は何としても事実関係が正しく明らかになること、それから事故の原因が速やかに、しかも公正に究明されることを期待しているものでございますので、これ以上申し上げる必要はないと、こう思います。
  213. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう時間がなくなりましたのでやめますが、私が指摘しているのは、海難審判を通じて明らかになるのじゃなくて、自衛隊は自分たちがやった当事者なんですから、その事実を国民の前に隠したり、事実と反するような答弁国会でしてはまずいんじゃないか、こういうことを指摘したわけなんです。これはまた引き続き、次の機会にやりたいと思います。  終わります。
  214. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 最初に前回、十三日の日にいろいろ御質問いたしまして御答弁いただいたんですが、後で調べましたら五点ほど答弁をいただいていないのがありますから、その点をまず、この機会に聞いておきたいと思うんです。  一つは、防衛庁総理府の外局として置いておくことでよろしいんですか、そんな国が世界のどこにありますかと聞いたんです。その御返事がなかったのですが、その点からお聞きします。
  215. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 防衛庁が現在、国家行政組織法等によりまして総理府の外局として位置づけられているというのは先生御指摘のとおりでございますが、現在は防衛という特性を踏まえまして、自衛隊法等で所要の任務が与えられ整備されておるわけでございまして、これを防衛省とか国防省とかという諸外国のようにするかどうかという問題は、これは国民世論の動向とか、その他を踏まえて検討すべき問題でございますが、現在防衛庁として防衛力整備とか我が国防衛政策を進める上で、特に支障があるというようには考えておらないところでございます。
  216. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もうちょっと聞いたことに答えていただかないと、それはわかっていることなんだからね。  二番目には、統合幕僚会議議長の任務の点で、これは具体的な説明がなかったんです。具体的にそういう点でお聞きしますと、大平総理の葬儀のときに統幕議長の席はどこに設けられましたかと。私は、それが政府の統合幕僚会議議長というものについての一つの評価といいますか、価値判断の物差しだと思うんです。だから、そういう点であの葬儀のときの統合幕僚会議議長の席はどこだったんですか。
  217. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 故大平総理の葬儀は五十五年七月九日、日本武道館で行われたわけでございますが、その際には防衛庁関係者、これは大臣、次官等は一階のアリーナ席というところでございましたが、その他の防衛庁関係者は各省庁と同様に二階に割り当てられておりまして、統幕議長もこの二階席に着いていたというように記録にございます。
  218. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 統合幕僚会議の議長の任務というものは、外国で言うならば三軍の長でしょう。各省庁のなんというのとはわけが違うわけですな。その各省庁のなにと一緒に二階の席になどというところに私は今の政府の、統合幕僚会議議長というものが外国ではどのくらいの地位にいるかということに比べて日本政府は極めて軽視をしているということのあらわれですよ。それ以上のことは求めようとは思いませんけれども、この点は官房長もよく含んでおいていただきたい。こんな国も世界じゅうどこにもありません。  それから三点目は、これは板垣先生、御迷惑をかけてあれだけれども、具体的になにせぬとね。あのときの答弁の軍国主義者、何を称して軍国主義者というのか。シビリアンコントロールに関係して板垣先生は内閣総理大臣になれますかと言ったのは、そういう判断の基準を具体的に聞かないとお答えが出てこないから聞いたわけです。これも答えがなかったんですからお答えいただきたいんです。
  219. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 憲法の六十六条二項に文民という言葉が出てまいるわけでありますが、この文民の意味について、憲法の立場からこの前申し上げさせていただいたわけであります。そこで、憲法六十六条二項に言うところの文民というのはどういう内容のものであるかということにつきまして、この前申し上げたとおりでございますが、次に掲げる者以外の者をいうというふうに……。
  220. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや、具体的に答えてくれればいいんだ。そんなことは読めばわかるんだよ。しかし、具体的に名前を言わないとお答えをされないから、申しわけないけれども板垣先生といって名前を挙げたんだ。なれるのか、なれないのかと言えばいいんです。
  221. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) そこで、六十六条二項、文民との関係につきましては、この前申し上げましたように現職自衛官の職にある者、それから旧職業軍人の経歴を有する者であって軍国主義的思想に深く染まっていると考えられる者、この二つの場合というのは文民には当たらないというふうにこの前申し上げたわけであります。  具体的な事例に当てはめて私の方から言うのは法制局の立場として申し上げにくいと思いますけれども、現職の自衛官でないということ、それから旧職業軍人の経歴を有する者でありましても、ただそれだけで文民ではないということではなくて、さらに軍国主義的思想に深く染まっていると考えられる者、そういう者が文民ではないということでありますから、これらをもとにいたしまして御判断をいただくべき問題であるというふうに考えております。
  222. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間がもったいない、そういう答弁をしておるのでは。今の答弁をそれじゃ、ここにどなたか解説できる人は私はしてほしいと思う。委員長だってわからぬと思う。  そういうわからぬことを言っておるから、板垣先生には申しわけないけれども、板垣先生は内閣総理大臣になれるんですかと言った。だから、なれるのか、なれないのかということでお答えになればいいことであって、官房長官、このシビリアンコントロールについては統一見解をいただくことになっているから、そのときに、その辺も含めてきちんとしたお答えをいただくことにして、今のような答弁では答弁ではございません。  次には、昔の階級で言うならば大将というのが今の自衛官の中にはない。大将に相当する地位というものがないんだけれども、それで防衛庁はよろしいんですかと聞いた。これも返事がなかった。
  223. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) お尋ねのように、現在の自衛官の将官の階級は将と将補の二つに分かれておりまして、大将、中将、少将というふうには呼称しておりませんが、将、将補というのと三階級以上に分かれている将官のそれぞれの関係を横並びで一概に比較することは大変難しい問題ではないかと思っておりますけれども、現在のところ、この階級制度で三十年来経過しておりまして、定着をしておりますし、また指揮、統率、部隊の組織、編成その他の面からも特段の支障が生じているとは思っておらない、こういうことでございます。
  224. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 何言っているの、あなた。防衛庁長官はわかったですか。
  225. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) わからないです。
  226. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ほら、わからないでしょう。そういう防衛庁の一番の親分の大臣ですらもわからないようなことを答弁しておる。そんな答弁をするなら、そこへ出てきて物を言わぬでいいよ。答弁できませんと言った方がまだ私は、何といいましょうか、いろいろ私たちも失礼なことを言うかもわからぬけれども、例えば、きょう午前のときの小野議員の質問の、一%の問題のときもそうですよ。私はそんなことを言っていていいんですかとここで横から言ったのもそうですけれども、これは大臣、昭和六十年度の予算の審議の過程の中でいわゆる一%を突破したんですから。それで一%突破ありきかないかでいろいろ議論したとき、私は一%は突破しないでしょうと、私の計算からいくならば。だから何も無理して突破する突破すると言わぬでいいじゃないか。一%を突破しないだけの枠の中でやれるように努力をする。結果的にははみ出すかわからぬけれども、何もはみ出すことが目的ではないですということで、ちゃんとしたら、何もそんなにやることないじゃないかと。私が計算したらね。  ところが、きょう小野先生の質問のときは、黙って聞いていると、一%の枠の中にはまったのは経費を節約したとか何だとか、こういうことを盛んに言うから、そんな答弁していていいんですかと。一%の枠の中に入った最大のなには売上税がなくなったことですよ。あれで九十三億浮いたんだから、売上税がなくなって。それから円高になったのも、あの金額も大きかった。そんな経費を節約したとかどうとかいういうふうな、いろいろ言いにくいこともあるだろうけれども、やっぱり正直に、素直に答弁することはしてくださいよ。  それからもう一つの点はFSXの問題で、昨年の十二月八日、竹下総理に私が聞いたときは、まだ閣議決定はしておりませんという答弁だけれども、防衛白書の中にはもう十二月には決めて云々と、こう書いてある。そうしてくると、防衛庁としては長官決定に反したことをやったことになるんですが、それでよろしいんですかと聞いた。そこのところ、このFSXの問題に入ると長いから、長官決定に反したことをやることになるんですよという、その点だけ答えてください。
  227. 山本雅司

    政府委員(山本雅司君) これは経緯だけお答え申し上げますと、確かに昨年の十二月八日、竹下総理の柳澤先生への答弁では、まだ政府としては決定していないという答弁があったのは事実でございます。  その後の動きといたしましては、実は十二月の二十八日に政府予算案を決めます直前に安全保障会議を開いていただきまして、その場でFSXのこういう形での共同開発を行うという決定を見たというのがその後の事実でございます。
  228. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや、私が聞いているのは、防衛庁には防衛庁長官決定というものがあるでしょう。その長官決定に反したことをこのFSXではしたんですよ、それでよろしいんですかというのが私の質問なんです。
  229. 山本雅司

    政府委員(山本雅司君) この点はやはり昨年の十二月に柳澤先生からいろいろ御指摘をいただきまして、私どもも答弁申し上げておるわけでございます。  そこで、基本的には今も御指摘のように四十五年の長官決定は現在も生きております。そこでは開発、生産等できるだけ国情に適したものをやりたい、国内生産も重視していきたいというような趣旨で書いてあることは事実でございます。ただ、具体的な装備の開発あるいは決定に当たりましては、そういう基本原則を踏まえながらも、具体的なものが費用対効果の観点とか、あるいは国情に適したものをどうしたらいいとか、入手の可能性の早い時期の問題とか、いろいろやりまして、国内開発とか輸入とかあるいはライセンス国産とか、いろいろの最適の方式をやっているというのが事実でございます。  したがいまして、このFSXにつきましても先生御指摘基本線は確かに生きておりまして、それを踏まえながらも、具体的なこの案件は先ほど申し上げましたようないろいろの経緯を踏まえまして政府として十二月の二十八日に決定をいただいた、こういうのが実態でございます。
  230. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 だから、長官決定は生きているけれども、その決定を破ってこういうことをいたしましたと。そうでなかったらつじつまが合わないじゃないですか。  それから次には有事法制の問題で、これはもう数年前のときに第一分類、第二分類は結論が出て、第三分類が検討中ですという答えをいただいておったわけですけれども、何のかの言ってもこれは十年になるわけです。その第三分類はどうなったんですか。
  231. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 第二分類に引き続きまして第三分類につきましては、これは政府全体が取り組むべき問題であるという観点に立ちまして内閣安全保障室の方でやってございます。防衛庁もこれまで、いろいろ自衛隊行動に係る問題ということで内々勉強した点がございますので、この春までこれまでの経過等について安全保障室の方に御説明したというのが防衛庁の立場でございまして、あとは安全保障室の方から答えます。
  232. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  ただいま防衛庁官房長の御答弁に引き続きまして、第三分類はどうなっておるか、現状況を御説明申し上げますと、この四月に防衛庁側から、防衛庁なりに検討したいわゆる第三分類なるもの、これは中身は代表的なものを白書に書いてございますので一々挙げませんが、それを私どもブリーフィングを受けました。国防会議の時代にはいわゆる有事法制は任務に入っておりませんで、安全保障会議設置法によりまして私どもの方になりましたので、内閣安全保障室としては今回初めてでございましたので、一分類、二分類の勉強から始めておりまして、四月から三分類、これを現在勉強中でございます。そうして各省庁の基本法等を、設置法等を調べまして、どの省庁にふさわしいか、これの割り当てをするのが私どもの仕事だと思いますが、まだ割り当てまで至っておりません。
  233. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これも具体的になんですけれども、四トン以上の大型トラックとか、そういう少し図体の大きいものは知事なり市町村長なりの許可がなけりゃ通れないというあれがありましたでしょう。それは改正したんですか、しないでそのままになっているんですか、どっちですか。
  234. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 自衛隊の車両が一般道路を通行する際には、道路法等の関係法令が適用されることになっております。法令上は、車両の大きさとか重量等が基準限度を超えるものにつきましては原則として通行が禁止され、特別の事情がある場合においては、ただいま先生が御指摘になりましたように、道路管理者に許可を求めなければならないということになっております。  ただ、緊急自動車等につきましては、道路構造の保全のために必要な措置を講じて通行するものについては適用除外ということになっておりまして、自衛隊の場合、自衛隊法第七十六条等に規定する自衛隊行動のため使用される車両等はこの適用除外対象となっておりまして、御指摘のようなことは生じていないのではないか、かように考えております。
  235. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、有事ということは、どういうことを考えて有事と言ったんですか。そして、いろいろ問題を研究しなきゃいけないと言ってやってきて、十年たってもその答えがまだ出ないというのが現実の姿でしょう。それで、今お話しになっている現実の問題としては、そういうふうな大型トラックなんかをとめられたら動けない。そんなことで、そんな有事の事態なんか起きてもらっちゃ困るからあれだけれども、そういう状態のまま十年間も放置をしておくなんて、こんな国もありませんでしょう。  だから、この辺の有事法制の問題についてどう扱われるのか。これはもう大臣の方から一言締めくくりの言葉を言っていただかないとおさまらないと思うんですが、いかがですか。
  236. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) これまで有事法制についていろいろ検討してまいりましたが、先生御指摘のようなまだ多くの問題点が残されているわけでございまして、この点については私たちもさらに積極的にこれの研究に努めまして、有事の際にあらゆる装備が有効に活用できるようにしてまいりたい、かように考えております。
  237. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それから、大分装備が充実していったから改善されたと思うんですけれども、現在、その帳面に載っている兵器というものは皆使い物になるんですか。ひところは何十年も前の、あの前大戦時代のものが、大砲が何門あります、何がありますとみんな載っかっていたわけだけれども、そんなものは使い物になりゃせぬわけです。今あるのは、もうそういうものがなくなって使えるものだけになったのかどうか、その辺はどうなんですか。  それから、ことしに入っても、あれは広島県ですか、あそこへ視察に行ったときなんか七四式戦車は一台もないんです、六一式ばかりで。そこで、そんなことでどうするんですかと言ったら、みんな北海道の方に行っちゃって、こっちにはまだ配給が来ないんですと。じゃ、そこの兵隊さんはいざというとき、それは七四式がたとえ何台かでもあれば、かわりばんこで訓練していれば、それというときだって役に立つけれども、六一式のあの小さいのばかりでなにしておったら何にもなりゃせぬわけです。  そういうふうな兵器の配備状態なんかで、今いろいろと白書や何かに載っている兵器はそれでもみんな使い物になるものなんですか、どうなんですか。
  238. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 先生がただいま御指摘になられましたように、装備の進歩というのは非常に速いものでございまして、日進月歩でございまして、私どもといたしましてはできるだけ新しい装備を装備したい、こういう考え方を持ってございますけれども、何分にも装備には相当の金額がかさみますし、それ相応の耐用年数等もございますので、国家財政その他の政策等のバランスを考えますと、やはり与えられた金額の中で、また与えられた装備を最も有効に使っていくということが、また一方、私どもに課せられた使命ではないかと思っております。したがいまして、私どもはできる限り新しい装備に更新はしていきますけれども、古い装備もいろいろ改良、改善等を加えることによりまして効率的に使うべく努力をしていきたい、かように考えております。
  239. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これも大臣、落第答弁ですね。兵器というのは、今おっしゃったとおり、それは日進月歩変わっていく。そうしたときに、今仮にあの昔の三八歩兵銃を持ってきたって、あんなものが幾らあったって何の役にも立たないわけですよ。だから、そういうふうに少し古いのでも使っていくんです、それはどうですなんということを言っていたのでは、最新兵器ができたその前では古いものは全然無価値になっちゃう。だからといって、どんどん防衛費に金をつぎ込んでやれなんて私は言っているのじゃないんです。けれども、兵器というものは何もしないで置いておいたって、これはもう捨てなくちゃならぬようになるんです。だから、むだなことはやっちゃいかぬ。なるべく防衛費は節約しなきゃいかぬけれども、そういう性格を持っているものなんだから、そういう認識を持って取り組んでいただかなければ、今のようなことだったら別に聞かなくたっていいことなんです。  次には防大の卒業生、これを過去三年ぐらいさかのぼって、毎年任官しないのが結構いるわけだから、過去三年間任官しないのが卒業生何名のうちに何名おって、さらに今度は任官はしたものの一年以内に退職してやめていってしまうのがまたそこにいるわけですが、それの過去三年間ぐらいの数字を挙げてくれませんか。
  240. 長谷川宏

    政府委員長谷川宏君) 非任官者数でございますが、六十一年三月の卒業者のうち二十二名……
  241. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 卒業生は何名。
  242. 長谷川宏

    政府委員長谷川宏君) 卒業生は四百十名であります。  それから、六十二年三月の卒業者四百三十名のうち三十七名、それから六十三年三月の四百四名中四十名、こういうことであります。  それぞれにつきまして一年以内に退職した者は、六十一年三月卒業の三十期の者ですけれども、これにつきましては二十二名であります。それから六十二年三月卒業の者につきましては十九名、それからこの十月十七日までで、六十三年三月卒業の者の中の四十三名が退職いたしました。
  243. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは大臣、税金使って教育をしてやって、大学卒業の免状を与えて、それでどこかへ行っちゃうわけでしょう。私は、いささかこれは税金のむだ使いだと思う。ちゃんと防大に入るときにそれなりの約束を、約束と言っちゃあれだけれども、して入ってきて、それで税金を使って勉強をして大卒の資格を得るわけです。それで任官しないでどこかへ行くというなら、それも人間の自由で、仕方がない。そのかわりに、四年間国の税金を使って勉強したんだから、その人の金はちゃんとお返しをいただきますということぐらい何かやらないと、それこそ国民の税金のむだ遣いであって、これはそういう意味で具体的な対策をおとりいただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
  244. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 二、三日前に私は防衛大学校を視察しまして、全学生に対してもお会いいたしまして、昼の時間、懇談もいたしました。防衛大学校の学生は何が希望だと、こう言いますと、やはり約五百名が卒業する中で、在学中に海外へ出てみたいという意向、それからやはりもっとスポーツに情熱を燃やす期間が必要だと。例えばアメリカの防大、いわゆる海軍大学なんというのは、サッカーでもう全校生徒が海軍大学のチームの応援のために情熱を燃やす、こういう感激を私たちは欲しいというようなこと等がございました。それともう一つは、やはり施設が非常に古い。それと、いまだに上下ベッドに寝ておったりする。新しいのをことしからつくるそうでございますが、これは二人になりまして、それぞれの勉強の場をつくるというような、非常に環境を整備しておるようでございます。  そういう点を考えますというと、私はまず防衛大学校そのものをもっと魅力ある大学にしなければいかぬ、こう思います。一たん入った以上は、今御指摘のように、それは全部を拘束するわけにはまいりませんけれども、大部分が自衛隊員になる、そして幹部自衛官になるというような形にしていかなければならないと思います。防衛大学校あるいは防衛医科大学校あるいはまた少年工科学校等を私は見てまいりましたが、そういうもっと環境整備をすると同時に、将来に少し希望を与えてやるというようなことをしてさしあげなければいかぬ、こう思います。そうでないと、やはり今御指摘のように税金のむだ遣いになってはいかぬ、こう思いますので、今後も注意をしてまいりたいと思います。
  245. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは本当にぜひやっていただかなきゃいかぬです。  それから、大臣、今度行かれたらあれだと思うんだけれども、総理大臣と校長と三人が訓示をするんだけれども、その三人の訓示の時間だって、ものの三十分あるわけじゃない。その三十分の間も立っていられないでばたんとひっくり返る者もいるわけです。だからこのごろはもう立たせないで、休めと言ってみんな腰かけて、総理やなんかが演説しているけれども、あれはどういうことだと言って私は聞いたことがあるんです。  普通の大学だったら頭のいい順からとっていくから、体の弱い者もいるだろうけれども、防大に合格させるというからには、単に頭がいいか悪いかだけではなくて健康状態も調べて、それで本当に頑健な者を選ばなければ使い物にならないのに、わずか二十分かそこらの間も立っていられなくてひっくり返るような、そういう者をなにしておったら困るじゃないか。そして今聞いておれば、だんだんこういうのがふえているんですよ。どうしてこれがと言うと、いや体が悪くて、病弱で、どうですこうですと言うんだけれども、そんなことは理由にならないし、それはちゃんと入学のときに健康診断をきちんとやっていただかなければならぬことなんです。  ですから、これはどういう方法が一番よろしいかはあれだけれども、ぜひ対策をとってほしい。資格だけ取って、一般の民間会社へ行って、その連中がもうけたというようなことであってはならないのであって、そういう人たちはきちんと使った税金を返してくださいと、そのくらいのことをしてくださいよ。  それから次に、時間がなくなってきたけれども、アメリカは今はなんですけれども、アポロをよく飛ばしましたが、あのアポロ一機は幾らかかっていますか。お月さんまで飛ばして、行って帰ってくるまでの費用は幾らかかっているんですか。およそのところで把握しているのをお聞かせいただきたい。
  246. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) アポロ計画は、一九六一年五月にスタートいたしまして、一九六九年七月三十一日に月への最初の着陸を終えた段階までに二百十三億四千九百万ドル使っております。その後しばらく一九七一年まで続いておりまして、アポロ計画全体といたしましては恐らく大体二百五十億ドル使ったというふうに見られております。  その中で、アポロ一機分が幾らかというのは非常に計算としては難しいわけでございますけれども、アポロの宇宙船全体に使った費用というのが六十九億三千九百万ドル、それからアポロ宇宙船を打ち上げるために用いましたサターンロケットの開発及び生産の費用というものが大体七十九億四千万ドル、このような数字を我々は把握いたしております。
  247. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは大臣にお答えいただかなくて結構ですが、今のようなことを私は聞いたわけではないのであって、さっき言ったように、一機幾らかかったか。  それで、これは全然知らないで私は聞いているわけではないのであって、先ほど大臣が技術研究所お話をなさって、ごらんになったと。いいことをなさっていただいたと思うんだけれども、いわゆるアポロ計画というのは、お月さんに生物がいるのか、空気があるのか、それを調べるために何も金をかけてあそこへ飛ばしているわけじゃないのです。結局、アポロ計画でそれを飛ばすためにどれだけの新しい技術が開発されているかわからない。  それで、あれは全部設計図は秘密じゃないんです。公開して、そしてある特定の会社一社にはやらせない、みんなこれを分担して、分けて。どこか一社にやらせれば、もうこんなに安くてはできません、幾らでなければやれませんと言われたらどうにもならなくなるから、みんな分けて、そして設計も公開でもって、それで発注してつくらせたんです。そうやって技術開発をして新しいものをしながら、とうとう飛ばして成功して、その開発された技術が今度は民間にどれだけ波及効果を及ぼしていったかということ。それが現実には日本の中にも入ってきているくらいなんです。  だから私が知りたいのは、本当を言って、これだけのお金をかけて、全体でいけばさっき言ったように二百五十億ドルくらいのお金をかけました。それであれだけの計画を成功させました。しかし、そこから生まれた新しい技術が民間のところへ及んでいって、どれだけの波及効果を及ぼしたか。結局、そういうところを考えてみたら、アポロ計画はメリットがあったという結論になるのか。いや、そこまではいかない、デメリットの方が大きかったという結論になるのか。  そういう意味に立って、日本でもアロポ計画とまでいかなくても、もう少しそういう技術開発のことを考えてのことをやらなきゃいかぬと思うんです。  時間も参りましたので、一応私が聞いたのはそういう意味でお聞きしたんですから、また機会を見まして民間への波及効果がどのくらいで、将来やはりそういう意味に立っての研究開発を何かお考えいただきたいと思いますので、そのことの要望だけ申し上げて、終わりたいと思います。
  248. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 本案に対する本日の審査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時二十分散会