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1988-10-11 第113回国会 参議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十一日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大城 眞順君     理 事                 板垣  正君                 名尾 良孝君                 久保田真苗君     委 員                 岩上 二郎君                 大浜 方栄君                 岡田  広君                 亀長 友義君                 古賀雷四郎君                 桧垣徳太郎君                 野田  哲君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君    国務大臣        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   村田 直昭君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  日吉  章君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  児玉 良雄君        防衛庁経理局長  藤井 一夫君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  池田 久克君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        外務大臣官房長  藤井 宏昭君        外務大臣官房外        務報道官     松田 慶文君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省中南米局        長        坂本重太郎君        外務省経済協力        局長       松浦晃一郎君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        海上保安庁長官  山田 隆英君        海上保安庁次長  野尻  豊君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        外務省アジア局        審議官      鈴木 勝也君        外務省経済協力        局外務参事官   茂田  宏君        文化庁文化財保        護部記念物課長  大澤 幸夫君        水産庁振興部沿        岸課長      本儀  隆君        運輸省海上技術        安全局首席船舶        検査官      戸田 邦司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第百十二回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 板垣正

    板垣正君 私は、先般の「なだしお」の事故中心にしていろいろお伺いしてまいりたいと思います。  初めに、防衛庁長官見解をお伺いいたしたいと思います。  去る七月二十三日、横須賀港沖において海上自衛隊潜水艦なだしお」と大型遊漁船一富士丸衝突し、多数の犠牲者を出したことは、まことに痛ましい不幸な出来事でございました。  去る九月二日には横浜地方海難審判理事所より横浜地方海難審判庁に対し審判開始の申し立てがなされ、十月三日には第一回審判が行われ、引き続いて行われる運びであります。  一方、事件捜査に当たってきた第三管区海上保安部横須賀海上保安部は、九月二十九日、「なだしお」の山下前艦長と第一富士丸の近藤前船長横浜地検に書類送検し、事件は司直の手で事故原因及び責任究明が行われる段階に入っております。  私は、あくまで公正な審理によって真相が明らかにされることを期待するものであります。したがって、審理中の事柄にあえて介入する意図はありませんが、事柄海上自衛隊発足以来の不祥事と言われ、その影響するところは極めて大きなものがあります。あえて幾つかの問題点について政府見解をただし、また要望したいと思う次第であります。  さきに瓦前防衛庁長官は、去る八月二十四日、事件政治的責任を負って辞任されました。就任以来熱意を持って職責を果たされ、広く信頼と期待を集めてこられた瓦長官の辞任は大変残念であります。その御心情を深くお察し申し上げる次第であります。田澤長官統率のもとに自衛隊が一日も早く立ち直っていただくことを心から念願するものであります。  このたびの事件はまことに遺憾であり、再び繰り返してならないことは申すまでもありません。そのため、再発防止対策も重要であります。しかし、事件後の経過を顧みるとき、その直後から、なお原因責任の所在が明確でないにかかわらず、ほとんど一方的に自衛隊側に非があるとするマスコミ報道や言論が非常に多く見られたことは甚だ遺憾であります。まさに自衛隊たたき、「なだしお」たたきと言われたとおりであります。これによって長年にわたって培われてきた自衛隊に対する国民信頼が傷つけられ、自衛隊不信や懸念を抱き、あるいは自衛隊の士気に影響がもたらされたとすれば大変憂慮すべきことであります。  防衛は、国家存立基本であります。その任に直接当たるべき自衛隊は、あくまで精強でなければなりません。このたびの事件によって、有事に対処すべき訓練が消極的になったり、練度を低下させたり、安全第一主義、事なかれ主義に陥ってはならないと思うわけであります。  これらの点につきまして、長官基本的な見解をお伺いいたしたいと思います。
  4. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ただいまのお話にもありましたように、潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突事故は、一方の当事者である私たちとしてはまことに遺憾に考える次第でございます。できるだけ早い機会にその事故原因究明が行われますことをこいねごう次第でございます。  ただいまお話にありましたように、今、海難審判あるいは検察当局捜査段階でございます。したがいまして、正しい事実関係、そうして事故原因が速やかにしかも公正に究明されることを私たちは期待いたしているような次第でございます。そして多くの人命を失ったこの痛ましい事故が再び起きてはならない。したがいまして、自衛隊防衛庁といたしましても、再発防止対策を早急につくりまして、これが対策に万全を期す覚悟でございます。また、亡くなられました方々に対しましては衷心より御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族に対して心からなる弔意を表する次第でございます。  また、賠償金の問題につきましては、この負担割合につきましては、これは原因調査と大きな関係がございますので別にいたしましても、賠償金積算作業は進めてまいらなければなりません。その原則は、やはりあくまでも御遺族を第一義的に考えるという立場に立って積算作業を進めょう、こういうことで作業を進めておるわけでございまして、富士商事との間の了解を得るために何回か交渉をいたしましたが、富士商事としては支払う能力がない、また支払う責任はないということで回避されました。したがいまして、そのことに時間をかけてもいけませんものですから、このことは法的な争いを後にするといたしましても、私たちは、まずこの賠償金積算作業を進めょうということで御遺族方々にいろいろ資料をお願いしてございます。幸いにして御協力をいただいておりますので、できるだけ早い機会賠償金の問題は処理してまいりたい、将来とも御遺族に温かい御援助をささげたいと、かように考えているような次第でございます。  今御質問のありましたように、防衛庁は、御承知のように国家存立基本をなす大きな使命を担っているものでございますので、これを果たすためには、何としても国民理解、御援助をいただかなければなりません。したがいまして、私たちは、常に国民信頼される自衛隊にならなければならないということを主張し、またその姿勢で今日に至っているわけでございまして、いわゆる浦賀水道のような過密な地域に対しては海上衝突予防法だとかあるいは海上交通安全法等理解しながらできるだけ編隊を組まない形で航行を進めて、注意注意をしながらこれまでも進めてきているところでございますけれども、今日の衝突という事実を生んだことは本当に遺憾なことでございます。  ただ、私たちは、この報道の中で一番残念に思うのは、自衛隊軍事優先で目の前でおぼれている者があるのに救う人情のない集団だというように報道されていることは本当に遺憾だと、こう思うのでございます。自衛隊の者も日本人であり、そして人の子であり、人の親でございます。日本人としてのいわゆる赤い血が流れているのでございます。したがいまして、おぼれている者を目の前に見てそれを救わないなどという、そういう人間性は決して持っていないということを私はあえて申し上げたいのでございます。  いずれにしましても、私たちは、これを教訓に、一層自衛隊任務、それから自衛隊は単によき自衛官であるとともにょき社会人であれということを隊員に申し上げて、そういう正しい道を歩むということを私は主張し国民理解を得たい、かように考えているわけでございますので御理解をいただきたい、こう思います。
  5. 板垣正

    板垣正君 今長官も触れられましたが、人命救助の問題について申し上げたいと思います。  「なだしお」と第一富士丸衝突事故をめぐって「なだしお」たたき、自衛隊たたきの決定的、致命的な打撃となったのは、事故直後第一富士丸乗組員から出たという、おぼれている人を助けもしないで見殺しにした等の一言であります。それが新聞テレビを通じ、全国的にまさにあらしを巻き起こしました。  以下は当時の新聞の見出しの一例であります。   「助けて!」の叫び黙殺 「なだしお乗組員批判次々 「何人も沈んでいった」   救助遅れた潜水艦怒り 「助けて」叫んだのに 艦員何もしなかった   腕組みして眺めるだけ 救命ボート投げ入れず 目前で二人力尽き沈む 衝突直後潜水艦上波間叫び見殺し   「十数人、見てるだけ」   潜水艦救助後回し助けて…乗組員無視」 等々であります。  また、救助が終わった後の潜水艦艦上乗組員の写真、これが掲載されあるいはヘリコプターで写されてテレビで放映され、あたかも船員傍観をしておったというふうなイメージを与えたわけであります。ある外国の特派員が、これは報道ではなくドラマの手法であると指摘したと言われております。  しかし、この報道は、自衛隊員は非人間的で冷血漢でひきょう者で無責任で、自衛隊は有害な存在であるという誤解すら国民に与える結果となり、まだ犠牲者の遺体の上がらない段階で心痛と不安に沈む遭難家族が激高したと伝えられるのも当然であります。また、事故直後から連日連夜、文字どおり不眠不休救難捜索作業に挺身した延べ千名を超す自衛隊潜水隊員らの必死の行動等についてはほとんど無視されたわけであります。  この自衛隊たたきあらしは、権威あるべき国会審議の場にも吹き荒れたわけであります。七月二十八日、衆参両院において第一富士丸事故に関する緊急の連合審査が行われました。  衆議院側議事録を見ると、次のような発言が記録されております。  その一。   沈没する第一富士丸から投げ出された乗客が必死で救助を求めているにもかかわらず、「なだしお」の乗組員がデッキでただ茫然と眺めているだけで即座に救助を行わなかったということが報道されております。(中略)被害者家族関係者からは、海の男として恥ずかしくないのか、なぜすぐ飛び込んで救い出してはくれなかったのか、だれのための自衛隊なのか、こういう強い怒り自衛隊に対する不信の声が上がっていることも事実であります、救助がおくれたというよりも、手をこまねいていたというのが適切な表現であるかのような今回の状況について、その理由をお伺いしたい  その二。   とりわけ許しがたいのは人命軽視の問題、ここに今国民的な感情怒りも集中していると思うのです。多くの証言もお聞きをしましたが、海中にほうり出された、そして必死に救助を求める人々に対してこれを放置する。新聞でも報道されていましたが、余り反応がないので、アメリカ潜水艦かと思ってへルプミーと声をかけたという証言報道されています。  その三。   救助された人々証言新聞テレビ報道されています。子供が助けてくれと言って声を限りに叫んでいる、しかし、それに手をかしてくれなかった、あるいは何とかしてくれと言っても、見ていながら何の行動もなかったというようなことも言われています。生々しい証言です。これは新聞で見たのだから、私は事実かどうかわかりません。しかし、そういう人たちが自分の生命が本当に危なくなるときに思っている気持ちというのは、私は誇張がそれほどあるとは思われない。  その四。   助けを求めておるのにかかわらず、十数名潜水艦の上から傍観をしておったという。一、二名何か飛び込んで助けられたようでございますが、こういった、目の前に溺者助けを求めておるあるいは悲鳴を上げておるというのに、民間人だって見ておれば飛び込んで助けようという気になるんだ、少なくとも海上自衛隊自衛官と称される皆さんが、一般民間人がまさにおぼれる寸前の悲鳴を上げておるのに、なぜ飛び 込んで助けるぐらいの機転をきかさないのか。今回は海上自衛隊でございますが、自衛隊皆さんはそんな度胸のないことでよくもまあしゃあしゃあと自衛官でございますと言って、私は国民の血税をもらっておると思うのです。精神的な訓練は一体どういう訓練が日常やられておるのか、  以上が例であります。  以上によってもこの影響がいかに大きかったかがうかがえるわけであります。  冷静に考えるならば、見殺しにするなどあり得べからざることであります。発言者は第一富士丸のアルバイトの女子ということですけれども、マスコミが事実の裏づけもなしに飛びついたとすればアンフェアであり、不見識のそしりを免れないと思います。  このことについて、全く事実無根であったことが既に防衛庁側から、また一部月刊誌週刊誌等々で明らかにされております。海に投げ出された人々は全員救助されたし、「なだしお」は潜水艦のいろんな特殊の制約下救助に当たり、三名を救助しております。  しかし、事柄自衛隊の名誉と信頼にかかわる、その体質すら問われる重大問題であります。一度植えつけられた国民の疑念はなかなか消えない。  そこで、今回この事故調査原因究明に当たられてきた海上保安庁長官、この件について記者会見でも具体的に触れておられるようですけれども、率直に御見解を伺いたいと思います。
  6. 山田隆英

    政府委員山田隆英君) 海上保安庁といたしましては、今回の事故直後、ただいま先生からお話ございましたような海上自衛隊救助状況についていろいろ新聞紙上等批判がございましたので、それらの事実について捜査を行ったわけでございます。  まず、船員法十三条では、船長人命救助義務があるわけでございまして、その義務に違反しているんではないかということが再々言われまして、その点につきましてまず捜査を行ったところでございます。  捜査の結果によりますと、「なだしお艦長衝突直後溺者救助部署を発動いたしまして、ゴムボートを降下し、また泳者を派遣するなどいたしまして、同鑑付近漂流中の遭難者三名を救助しておりまして、当時の状況に応じまして人命救助を行ったものというふうに承知をしているわけでございます。  それからさらに、新聞報道で非常に大きな影響を与えましたのが、今申し述べられましたような溺者――溺者というか、おぼれる者を目の前にして海上自衛隊は何もしなかったんではないかというような報道がなされたわけでございまして、これにつきましても私どもとしては関係者からの事情聴取等を行ったわけでございます。  その結果によりますと、第一富士丸女性乗組員報道関係者発言をいたしましたのは七月二十五日の夕方、自衛隊横須賀病院での記者会見時のみとのことでございます。そのときの発言ぶりと、それから報道関係の事実関係について本人に確認いたしましたところ、潜水艦と私との間の距離は十メートルほどであった。と言いますのは、衝突直後のことでございまして、海に投げ出され海面に出た際に見たときの距離で、その後、潜水艦に向かって助けてくれと叫びましたのはそれから三十秒もたってからということでございます。また叫んだ回数も、当時は興奮しておりましたのではっきり覚えていないということでございました。  投げ出されてから三十秒ぐらいたちますと、そのころ「なだしお」は機関を後進としておりましたので、衝突直後から足しますとその間に相当距離が離れているということになりまして、「なだしお」側が女性乗組員の声や姿を確認することは困難であったというふうに考えられるところでございます。  また、何人もの人が助けてくれと言いながら海の中に沈んでいったという証言がございますが、これにつきましては、衝突海面に浮いている人が二、三人海中に沈んでいったのを見たと言ったことを報道されたものと思われるわけでございます。それに対しまして、当女性乗組員が言っておりますのは、今思えば漂流者の人の頭が波間に入ったり出たりしていたものを、当時は事故後日が浅かったので、また興奮していて、次々に沈んでいったように感じて言ったもので、私の言ったことは間違っていたと思う旨を述べておりまして、当時本人が興奮しておりましたための誤解によることであったことが判明したわけでございます。  このように、目の前でおぼれている者がいるのに自衛隊側が何ら救助をしなかったというような報道は事実ではなかったというふうに承知しております。
  7. 板垣正

    板垣正君 では次の問題にいきます。  関連して、西廣防衛事務次官並びに東山海幕長発言について伺います。  不幸な突発的事故の直後、なお救難作業捜査が続けられ、情報も混乱しがちな状況下であったと思いますが、七月二十五日の記者会見において西廣防衛事務次官が次のごとく述べたと報道されました。   いざというとき命をかけて国民の命と財産を守るのが自衛隊だ。救命胴衣をつけて飛び込むぐらいの気概が欲しかった気がする。  この発言は、前後の経緯抜き報道されたと思いますけれども、事務次官救難活動が不十分だった潜水艦の手落ちを認めたとして大きく報道され、また各方面で論議を招いたことは周知のとおりであります。  また、東山海上幕僚長事故直後の七月二十四日防衛庁記者会見し、「なだしお」と第一富士丸衝突事故について、「なだしお鑑長、副長、哨戒長報告に基づき状況説明し、   艦長は、規則にのっとってなし得る範囲で最善の努力をしたと思う。 と述べたと言われます。  この発言は、一部マスコミから海幕長居直りとして攻撃を浴び、遺族感情を逆なでするものと非難され、国会でも内局と制服の言うことが食い違っておるとかシビリアンコントロールのもとで不穏当である、そういう批判を浴びた経緯があります。  まず、発言の事実関係について防衛庁説明を承りたいと思います。
  8. 日吉章

    政府委員日吉章君) 発言の事実関係でございますが、正確な議事録等はここに持ち合わせておりませんけれども、委員がただいま御指摘いただきましたような内容の発言防衛事務次官及び海幕長がいたしたことは事実でございます。
  9. 板垣正

    板垣正君 私は、ここで特に自衛隊統率ということについて申し上げたいと思います。  防衛庁長官中心とし内局と各幕僚監部が真に一体の体制にあることが肝要であることは申すまでもありません。同時に、防衛庁自衛隊の特質上さらに重要なのは、三十万の自衛隊員に対しかたい信頼関係に立った統率確立であります。国の平和と安全を守るため、有事に際しては危険を顧みず任務を果たすべき自衛隊にとって、統率確立こそ命であります。  したがって、最高幹部の言動は常にそのことに留意しなければならない。特に今回のごとき異常事態における発言は、影響も大きく極めて重要であります。その点、苦しい立場に立たされたことは理解されますけれども、防衛次官発言は、いささか軽率であり、誤解を与えるものであったと言わざるを得ない。同時に、海幕長発言は、立場上当然であり、統率の本旨を貫いたものとして私は高く評価するものであります。  もとよりシビリアンコントロール確立は重視しなければなりません。しかし、シビリアンコントロールは、政治に対する信頼こそが根幹にあると思います。それはまさに政治責任であります。アメリカの国軍は、困難なときには必ず大統領が来てくれるという絶対的な信頼関係があると言われます。  以上の点について長官の御所見があればお伺い したいと思います。
  10. 日吉章

    政府委員日吉章君) 大臣がお答えになられます前に、事実関係について補足をさしていただきたいと思います。  西廣防衛事務次官及び東山海幕長発言は、委員ただいま御指摘のように、事故直後の混乱した状態におきまして報道関係者からの求めに応じて答弁をいたしたものでございまして、そのうちの一部分がそれぞれ報道されたというのが事実でございます。それから、海幕長につきましては、ただいま委員も御指摘のように、事故原因につきましての意見を求められまして、部下であります艦長等報告に基づきましてその報告の事実関係海幕長が申し述べたものでございます。  ところが、防衛事務次官につきましては、救助活動状況につきまして感想を求められたわけでございまして、当時はまだ事故直後の混乱状態にございましたので、防衛事務次官には何名救助したという報告はいたしておりましたが、どのようなやり方で救助したかということまで報告をいたしておりませんでした。したがいまして、関係者の方から自衛官は何もしなかったというような前提のもとでいろいろと質問をされたものでございますから、防衛事務次官は、一般論、個人的な見解といたしまして、自衛隊というものは、今先生おっしゃられましたように、いざというときに身命を賭して国民国家、国土を守るのが任務でありますから、そういった飛び込んでくれるということがあらまほしきものと思っておりますということでございまして、次官は、ここは非常に慎重に、飛び込まなかったということではなくして、一般論としてそういう場合には飛び込んでくれるということがあらまほしきものだと思いますと。さらに最後に、これは私の個人的な感じですとまで述べております。  その後、これが報道されましていろいろな反響を呼びました関係上、次官は再度記者会見をいたしまして、救助の事実関係を知ったが、その結果我が自衛隊も飛び込んで二名を救助しているという事実がわかった、士道いまだ衰えずという感を持っておりますとその後の記者会見で述べております。  したがいまして、内幕不一致とかそういうふうな観点は全くございませんで、それぞれの場所、それぞれの状況に応じまして、それぞれの責任者がそれぞれの事実関係あるいはそれぞれの考えを述べたものと理解いたしております。
  11. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 今事実関係防衛局長から説明さしたのでございますが、先ほど来お話がありますように、防衛庁は国の独立、平和、そして国の安全を確保するという国家存立の大きな役割を果たしているものでございます。したがいまして、これを果たすためには、防衛庁長官自衛隊員三十万の先頭に立ってこの責任を果たすという使命を与えられているので、何としてもそういう形で意思の統一を図っていかなければならない、こう思うのでございます。  私は、ちょうど文藝春秋で山下艦長の「全告白」というのを読みましたら、あの中で「なだしお潜水艦隊員方々が、私たちは精いっぱいやったんだ、しかし随分怠った作業をしているという批判を聞きまして涙を流した連中が非常に多かった、それで艦長がそのうちわかるよという発言よりできなかったという記事を読みまして、こういう隊員の考え方というものを私たちが表現してやらなければならない。一隊員の考え方、一隊員の苦労というものをそれぞれ理解し合って自衛隊全体、防衛庁全体が進むことが将来有事の折に役に立つ自衛隊になるものと思いますので、そういう意味では、今防衛局長から御説明があったように、いろんな前後の関係誤解を招くようにも思われますけれども、常に防衛庁は一貫した考え方で進めておりますので、その点御理解いただきたい、こう思うのでございます。
  12. 板垣正

    板垣正君 御心情はよく理解できました。  次に、マスコミ報道姿勢と当局の対応について申し上げたいと思います。  このたびの事件に対する一部マスコミ報道姿勢について、さきに挙げた見殺し発言の取り上げ方を初め、そのすべてとは言えないにせよ、余りにも一方的な自衛隊たたき、「なだしお」たたきに偏したのではないか、ミスリードがあったのではないか。記事の中には、「なだしお艦長が虚偽の発言をした、「なだしお艦長発言は虚偽と断定というふうな、そういう記事もございました。また、報道記事にとどまらず、社説とか論説にまで断定的な論評がしばしば見られた。テレビのニュース報道についても同じであります。  もとより言論は自由であり、報道、言論の自由は民主主義社会の命でありましょう。しかし、第四権力と言われるほどそれだけ大きな影響力のある報道の姿勢において、もっと良識と節度が必要とされるのではないか。率直な感想であります。  関連して、当局の対応についても疑問を覚えます。  特に、調査に当たった海上保安庁筋は、しばしば潜水艦側にこの事案についてより重大な責任があると予断を与えるような海上保安庁筋の情報あるいはその筋の相当確度の高い意向というような形で報道された事実があったと思います。  そういう点についてお尋ねいたしたい。  ここで想起されるのは昭和四十六年の雫石事故のことであります。四十六年七月三十日、岩手県雫石町上空におきまして全日空B727と自衛隊F86Fの空中接触によりまして百六十二名のとうとい犠牲を出した大惨事がございました。当時マスコミは、自衛隊の飛行機が全日空の旅客機を爆撃機に仕立てて訓練をしていたというふうな、まさに自衛隊攻撃の大合唱が行われたことはなお記憶にあります。しかし、その後、裁判の過程を経て、むしろ旧式で速度の遅い自衛隊の飛行機に速度の速い旅客機が後ろから行って追突したという事実が明らかにされたわけであります。しかし、こうした報道によって裁判そのものが影響されなかったかどうか。こういう懸念に立って、この問題について海上保安庁長官の御見解を承りたい。
  13. 山田隆英

    政府委員山田隆英君) 私どもは、今回の事故に関連いたしましては何よりも厳正公正に捜査を進めるという方針のもとに行ってきたわけでございます。  マスコミ報道に関連いたしまして、「なだしお」側の責任が重いのではないかというような報道がたびたびなされたわけでございますが、海上保安庁といたしましては、捜査の途中の段階で、どちらが責任が重い、どういう原因によるんだというような捜査の結果に予断を与えるようなそういう発表というものは一切いたしておりません。  推測いたしまするに、このような報道がなされたにつきましては、報道関係者が個々に捜査関係者等に接触して取材をする、これは何としてもとめるわけにはいきません。また、そういう段階で個々の取材を通じて報道側がそれをどういう解釈をされたか、それは私どもの承知していないところでございまして、それに基づく報道がなされたというふうに考えておりますわけで、私どもとしては、決して予断を与えるようなそういう発表ないしはそういう事実関係の情報を漏らすというようなことはしておりませんので、それは御了解願いたいと存じます。
  14. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) なお補足させていただきますが、板垣委員指摘のように、確かに捜査の最中に保安庁筋ということでたびたび記事が出ました。私、長官を通じて現場にそういうことがないように強く要請いたしましたが、実態は今長官説明申し上げたとおりでございます。  しかし、背後に非常に過剰なセンセーショナリズムを背負った、これは記者それぞれの個性、見識の違いによると思いますけれども、つまり予断あるいは想定に基づいて質問をされる、これを肯定も否定もしなければ沈黙すなわちそれはイエスという解釈で記事になるという、そういう行き過ぎというものはあったと私は思います。また、それが今日のジャーナリズムのまた一つの大きな問題であると改めて認識しております。
  15. 板垣正

    板垣正君 次は、第一富士丸に関する問題点についてお伺いしたいと思います。  このたびの事故衝突という不幸が始まりではございますけれども、ほとんどあっという間にあの第一富士丸が沈没をしてしまった。しかも、乗客がほとんど逃れるすべもなく、三十名亡くなったうち二十八名はまさにあの船と運命をともにしたわけです。私は、今度の悲惨な事故の最も重大な本質はここにあると信ずる次第であります。  問題は、この船の構造上の問題が、これは国会の審議の中でも安全基準には合っていたんだというふうな答弁はなされていますけれども、果たしてそういうことで本当に納得できるかどうか。この船の改造の経緯とかいろいろあるようでございますが、運輸大臣、この問題は重大な問題だと思いますけれども、構造上の問題についてどういうふうに今お考えでしょうか。
  16. 戸田邦司

    説明員(戸田邦司君) お答えいたします。  まず、先生からお話ございました第一富士丸の建造経緯について簡単に触れたいと思いますが、本船は昭和四十五年の四月に漁船として建造されております。それを昭和五十八年十二月に遊漁船に改造いたしまして、その時点で行われました定期検査におきまして船舶安全法上旅客船として構造、復原性、諸設備基準に合致していることが確認されておりまして、その後毎年の定期検査が行われまして、最後の定期検査は昨年の十二月に行われておりまして、これに合格しております。  急激に沈んだという点につきましては幾つかの問題があろうかと思いますが、今回の事故潜水艦という特殊な形状のものに乗り上げるという極めてまれな事故でありまして、前後方向の船の沈みぐあいでありますトリムの状態などが特に問題となっているとは考えられないのじゃないかと思っておりますが、なお現在海難審判庁におきまして審理が進められておりますので、その結果によりまして必要があるということでありましたらそれらの点についてさらにどういう対応をしなければならないかということを検討してまいりたいと思っております。
  17. 板垣正

    板垣正君 この問題についてはさらに掘り下げて十分検討していただきたいし、またそれは国民の大きな疑問であろうと思います。  さらに、営業の認可等の問題であります。  営業の監督の指導は一体どうなっていたのか。この船が、富士商事なり持ち主が転々とかわる、あるいはこの営業についても一匹オオカミ的な営業体制にあった、こうしたものに対する指導監督、そういう面において果たして手落ちがなかったのか、当局から伺いたいと思います。
  18. 本儀隆

    説明員(本儀隆君) お答え申し上げます。  遊漁船の営業に関しまして、登録制度であるとか許可制度あるいは届け出制度、そうした業としての規制というものはございませんので、私どもとしてもその実態の把握等をしかねておるということでございます。
  19. 板垣正

    板垣正君 その問題はまた後から触れます。  さらに、航海中の態勢ですね。  衝突の問題等は現在いろいろお調べ中でございますけれども、どうも航海中の態勢、例えば救命胴衣なり救命設備あるいはそうしたものの装備、あるいは旅客に対する趣旨の徹底、定員過剰でしかもこの救命ボートも実際何の役にも立たなかった。あれで救われたのは船長と機関長、もう一人ですね。乗客はことごとく海に投げ出されるか、船とともに運命をともにする。こういう面におきまして、この態勢というものにも非常な問題がある。  あるいは、衝突の問題についても、これはまさに焦点の問題でございましょうけれども、今まで我々の察知し得た範囲では、とにかくエンジンをとめておらなかったのではないか。ぶつかる瞬間までエンジンはとめていないがゆえに七ノットの速度でほとんど停止状態にあった潜水艦にぶつかった。まさに山に登るような格好で上って、それがまた後ろのハッチがあけっ放しになっていた、そういうことで沈んだ。このかじを左に切ったという問題がまさに焦点。我々は素人でございますけれども、やはり専門家の話を聞きますと、いわゆる保持船が左にかじを切るなどというのはもう九割九分九厘危ないことなんだ、あり得ないことだというふうなことも実際聞く次第でございます。こういう点についても今後さらに明らかにしていただきたい。  その辺の第一富士丸の問題について、我々が抱き多くの国民が抱いている疑問というようなものが今までどうも余り触れられておらないんではないか。そういう点で、あの船がしかも構造上の問題に大きな疑問を持ちながらいともあっさり解体されてしまった。これはどういう理由なのか、重大な証拠物件ではないのか。それをいとも簡単に解体してしまったという点にも非常に割り切れない思いをするわけですが、その経緯はどうなんでしょうか。
  20. 藤井一夫

    政府委員藤井一夫君) 第一富士丸につきましては、御案内のように、長浦港の沖の船台の上にしばらくの期間係留されておったわけでございますが、この点につきまして、八月の初めに政府事故対策本部において各省庁これ以上係留する必要があるかどうかということを議論していただきました。その結果、捜査上も必要がないということに相なりましたものですから、所有者でございます富士商事に対しまして国としては係留の必要がなくなったということを通告いたしました。  その後相当の時日を経過したわけでございますが、富士商事といたしましては、これ以上係留しておいても費用がかさむばかりであるということでスクラップ業者と契約をいたしまして解体をした、このような経緯であると承知しております。
  21. 板垣正

    板垣正君 この問題は保留します。  次に、運輸大臣に伺いますが、事故後、政府には第一富士丸事故対策本部が運輸大臣を本部長として発足しました。そして、早速船舶航行の安全に対する当面の対策が発表された、また措置されたわけであります。一方、防衛庁においても、八月二十四日に艦船等の事故再発防止対策等について発表され、措置されつつあるわけであります。  そうであるならば、当然運輸省の方もこの第一富士丸事故対策本部として民間の船を含めた対策を御検討中であろうと思うし、発表の時期はもう既に過ぎているんじゃないかぐらいに思いますけれども、その点大臣にお伺いします。
  22. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 今後こうした事故を再発させないための対策につきましては、現在関係各省庁において調整中でございまして、ごく最近のうちに対策本部として成案を得て発表をするつもりでございます。  概略について申し上げますと、何といいましてもこの二つの海上交通安全法と海上衝突予防法は、万国共通の非常によくできた、またある意味で単純な法律でございまして、これを遵守すればこうした事故は起こらないわけでございますから、これを徹底的に遵守するための指導教育をこれからもさらに行う。  それから、事故の起こりました東京湾は非常に交通量の多い水域でございますが、これを管理しております海上交通センターの機能の充実など、ふくそう水域での安全航行の支援の強化を図りたいと思っております。  また、事故の起こりましたこの水道は、御存じのように第一、第二、第三海堡という非常識な障害物が人工的に置かれているわけでございまして、これが撤去されれば水路は今の倍近くなる。まあ漁業権の問題その他あるようでありますけれども、何といっても人命に関することでございまして、さらに大きな事故が起これば東京湾全体が壊滅する可能性もなきにしもあらずでありますから、こういったものの撤去など、船舶航行環境の整備をいたします。  また、遊漁船に関して、旅客脱出のための出入口の改善あるいは船舶間及び船舶、陸上間の連絡の方法の拡充充実について検討中でございますが、繰り返して申しますけれども、最近日中に基本的な対策について発表するつもりでございます。
  23. 板垣正

    板垣正君 ぜひ御検討の上お示しをいただきたいと思います。  次に、今の問題に関連しますけれども、レジャー船の規制の問題について当局の見解を伺いた い。  海上保安白書が出されたということで、私まだ拝見しておりません、新聞報道を見た程度でございますけれども、海上保安庁が二十三年に発足して四十周年ということで、今回初めて「海洋レジャー時代への対応」ということでいろいろ白書に載せておられるということが報道されております。海洋レジャーがどんどん発達し多様化し、同時に海難救助の対象として昨年一年間でも四百九十七隻、全体の一八%を占め、二十六名の死者を出しているというようなこと、さらにこの安全確保について安全指導の徹底、小型船安全協会など関係団体の充実とか、いろいろな対策についても載せられているようでございます。これはまさに時宜を得たことであろうと思います。  同時に、レジャーの位置づけであります。私は、あくまでレジャーはレジャーではないのか、レジャーを楽しんでいる船と仕事をしている船、これはやはり別でございましょう。だから、レジャーを楽しんでいる船は仕事をしている船には迷惑をかけない。シーマンシップということがこの間の緊急対策にも改めて言われる。石原運輸大臣はこういう海洋面においても非常に明るい詳しい方ですけれども、私は、そうした意味のマナー、相手が心配するような航路には近づかない、いわゆる船と船が見合いの関係になればまさに法律によってこれは対等の権利を持つ、見合いに入った場合も法律に従って行動するというのは常識でしょう。しかし、見合いに入る前に、軍艦に限らず公共的な仕事に従事している船を避けるというふうな、言ってみればこれは海上だけには限らない、陸上においても社会公共的なマナーであり、ある意味における思いやりの心である。そういうことで、このレジャーのあり方についてはそういうマナーの徹底ということ、あるいは規制、海域を指定するとか、要するに、今お話しのとおり大変込み合った海域でございます。そういうところで例えば相模湾はクルーザーのような大きな船の基地にするとか、ヨットについても水域を定めるとかそういう規制をし、かつやはりマナーということについてもっと徹底していく必要があるんじゃないかと思いますけれども、運輸大臣、専門家のお立場でいかがですか。
  24. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) いささかお言葉を返すようになるかもしれませんが、海というのは仕事の場でもあり、またレジャーの場でもございます。レジャーというのは、遊びかもしれませんけれども、働く人間にとっていろいろな意味で自分をリフレッシュする大事な方法でありまして、どちらがどちらにまさるということは私は決してないと思います。  ただ、私たちヨット協会も、あそこは交通の非常にふくそうしたところなので、かつては東京湾をフィニッシュラインにするような国際レースも組んでおりましたが、これは自粛いたしました。しかし、幾つかのマリーナが東京湾にございますから、これは、やはり自衛艦を含めて、仕事のための船であろうと遊びの船であろうと、互いに海上交通のルールを守ればよろしいことであります。  ちなみに、私たち相模湾でレースをしておりまして、あるとき葉山の港からスタートしまして三崎の口にかかりましたら自衛艦が隊を連ねてやってまいりました。私の船はたまたま先頭を走っておりまして、非常に操作のしにくい帆を張っておりましたら、ちゃんと自衛艦はルールを守って旗艦が私たちと見合いの関係になったときに転進をしてくれました。二番艇がまた二番艦と接触するようになったら二番艦も回避してくれました。気の毒なことでありますけれども、堂々たる陣容がそこで乱れまして、昔なら帰ってきたら憲兵に引っ張っていかれてぶち込まれるかもしらぬと苦笑いしたんですが、私は、そのときに、海でレジャーをする、小さな船に帆を張って走っている私たちのシーマンシップを自衛艦が評価し敬意を表してくれたんだろうということで答礼の旗を上げて過ぎましたが、そういう関係が十分あり得るわけでありますから、自粛ということも結構でありますけれども、基本的に私はレジャー船であろうと実用船であろうと仕事船であろうと対等な関係にあると思いますし、またそれを認めなければ運輸省の大きな行政の眼目でありますこれからの海洋レジャーの開発もおぼつかないわけでありまして、繰り返して申しますけれども、この二つの海上交通法は極めて単純なわかりやすい法律でありますから、どんな立場にある人間であろうとこれをしっかり守るということがもう眼目でありまして、それが守られれば海洋レジャーも海上における仕事もともに栄え得ると私は思います。
  25. 板垣正

    板垣正君 まあ御見解として承っておきます。  官房長官にもおいでいただきましたので、私は、自衛艦の位置づけということについて、基本的な点について承りたい。  一九八五年に我が国も加盟しました公海に関する条約、これによりまして、自衛隊の船は国際法上は軍艦としての地位を認められ、自衛艦の国際法上の性格に関する長官指示も出されておる。外国におきましては、自衛艦はまさに軍艦として不可侵権を持ち、治外法権を持ち、自衛隊員は海軍軍人として遇せられると思います。  今運輸大臣お話しございましたが、海上衝突予防法あるいは船員法、これらにおきましても、いわゆる船舶の定義というものが定められております。水上輸送の用に供する船舟類という定義がなされているようでございますが、果たしてこれが自衛艦なりあるいは特に潜水艦等がそのまま該当するのかどうか。あるいは、船員法において船長義務が明記されておる。この船長義務というのに自衛隊艦長義務は一体準用されているのかいないのか。船長任務は、積み荷もしくは乗客の安全を図ること、まさにそうでございましょう。艦長は戦闘機能の維持、まさに自衛隊の艦艇は戦闘機能の維持こそが最大の艦長のまた務めでございましょう。  そういうふうに考えますときに、公海に関する条約を認めながらこれに見合う国内立法的な措置がとられておらない。これは、日本以外の外国におきましては一般商船と軍艦との間の権利義務の区別をしていないところはないと専門家が言っております。こうした問題について、やはり重大な検討課題として政府においても検討される必要があるんではなかろうか。  この点について官房長官見解を伺います。
  26. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 我が国といたしましては、当然のことながら法治国家でございまして、現行法の中で対処しておるわけでございますが、ただ先生御指摘のように諸外国におきましては、いわゆる軍艦と民間船との間には法的にも明確な差異があって法律が定められているという御指摘でございます。  我が国におきましては、現在施行しておりまする法律によりましてともどもに国民のための任務を遂行しておるという立場でございますので、現時点においては現行法によって事を処することが当然だろうと思いますが、さりながら、日本を除く他の国々においてさような立法がなされておるということについてはやはり勉強をしておいてもよろしいのではないかと、このように考えております。
  27. 山田隆英

    政府委員山田隆英君) ちょっとただいまの軍艦の通航優先権について事実関係を補足させていただきたいと思うんですが、私ども今回の事故にかんがみまして国際的に軍艦というものがどういう位置づけにあるかということを調べてみたわけでございますが、少なくとも交通ルールに関しましては、国際的に見ましてもまた歴史的に見ましても、軍艦が単艦で他船に対して通航優先権を持つというルールは存在いたさないわけでございます。  また、地域的に限定した形でのルールも存在していないというふうに承知をいたしております。
  28. 板垣正

    板垣正君 その程度私も勉強しましたけれども、なおかつ、例えば緊急事態における海上自衛隊の港湾出入の優先権、こうしたものは平時においても準備されなければならない、検討されなければならない問題であります。  最後に、やはり根底にありますのは、自衛隊の位置づけが不明確である。今なおかつ、いわゆる戦力なき軍隊、戦力なき存在、軍人でもない、軍艦でもない、あいまいであります。そしてまた、自衛隊に対する名誉の扱いにおいて、処遇において私は決して十分なものではないと思っています。こうした位置づけの中で自衛隊皆さん方がまさに使命感をかき立てて黙々と努力を重ねておられるわけであります。  承りますと、現在までの自衛隊の殉職者、まさに国を守るための公務に殉ぜられたわけでありますが、千五百二十名の方が自衛隊発足以来殉職しておられる。一体これらに対する霊の弔いということを、どれだけ国として、またお互いが関心を持っているであろうか。まさに自衛隊の内輪の中で、防衛庁関係の中だけでささやかな慰霊祭が毎年行われているということは聞いております。あるいは、災害救援につきましても実に四百十七万一千五百二十三名が、これは伊勢湾台風等の例もございますけれども現在まで一万九千二百二十八件の災害救援に自衛隊の方が出られた。過般の日航機の災害の際のあの涙ぐましい救援作業にはまさに感銘を受けたわけでございます。こうして黙々と努力を重ねている自衛隊、しかし事あらば今度のようにまさに袋だたきに遭って弁明も許されないというふうな、さっき長官言われたように、潜水艦のあの船乗りの人たちは皆自衛隊では最も優秀な選ばれた人たちである、しかも極めて恵まれない環境の中で厳しい訓練に何カ月も耐えておるこういう人たちに、自分たちが一生懸命やっても一方的に悪者にされたんではたまらない、こんな思いをさせておいていいんでしょうか。  その根底にはやはり自衛隊の位置づけの問題がある。自衛権行使の唯一の存在たる自衛隊にはそれにふさわしい憲法の解釈を確立して、国民の合意を形成しながら自衛隊のあり方についてもより抜本的に確立を図っていくことが国家としての基本であろう、私はこのように信じております。  このことについて官房長官の御見解を承って私の質問を終わりたいと思います。
  29. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 憲法九条は独立国として我が国が自衛権を持つことを認めておりまして、したがって自衛隊のような自衛のための任務を有しかつその目的のため必要相当な範囲の実力部隊を設けることは、何ら憲法に反するものでない、このように従来から国会でも表明いたしてきたところでございます。  そこで、先生御指摘自衛官の社会的地位の問題等でございますが、これはまことに重要な問題でありますが、やはり防衛問題につきましては、国民理解を深め、自衛隊と社会と極めて幅広いかかわり合いの中で考慮せられる問題であり、歴史的、社会的条件が異なる諸外国の軍人等と一概に比較することは困難であると思われます。  いずれにせよ、我が国防衛という目的を全うするために国民自衛隊に対する幅広い理解と支持が不可欠であるとともに、これを基盤として真に精強な自衛隊を維持育成することが何よりも重要なことと認識しており、御指摘のような点も十分踏まえながら今後ともこの観点に立ってより一層の努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  30. 板垣正

    板垣正君 終わります。  ありがとうございました。
  31. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私は、防衛庁長官にこのたびの防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案説明書を読みまして疑問に思いました点を御質問申し上げます。  まず、先般の本会議におきまして同僚議員の御質問に対しまして国務大臣の方から御答弁がございました中に、自衛官の定数増につきましては   具体的には、艦艇、航空機の就役等に伴い新たに二千三百二十四人を配置し、その他の要員として新たに三百七十七人を配置するとともに、艦艇、航空機の除籍等に伴い要員二千百七十八人を減じ、その差し引きの五百二十三人の定員増をお願いしているのでございます。 とございます。  そこでお尋ねをいたしたいんですが、増員から減員を引きますと百四十六という数字が出てまいります。それで五百二十三人の定員増ということになりますと三百七十七という数がございますが、これはその他の要員と、こうなっております。  その他の要員の内訳はどのようなものでございますか、御説明を願います。
  32. 日吉章

    政府委員日吉章君) 計数の問題でございますので私の方からお答え申し上げたいと思います。  委員ただいま御指摘のように、定数増の内訳といたしましては、艦艇、航空機の就役等に伴う要員の増と艦艇、航空機の除籍等に伴う要員の減を差し引いたものが百四十六人ございますが、その他の要員として三百七十七人あるわけでございます。  この内訳でございますが、これにつきましては海上自衛官が百八十八人、航空自衛官百八十五人、統合幕僚会議に所属する自衛官四名でございますが、これらはいずれも装備品等の運用に伴うものあるいは部隊等の新改編に伴うもの等でございます。  なお、もう少し詳細に申し上げますと、例えば装備品等の運用のもので代表的なものを申し上げますと、マーク46魚雷の整備のためとかあるいはASWOC管制ターミナル運用体制を確立するためとか、これは海上自衛隊でございますが、そういうふうなものがございます。  また、航空自衛隊では基地防空火器関連あるいは移動警戒隊の充実に伴うもの、さようなものがいろいろございまして三百七十七人というふうになってございます。
  33. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 実は航空機、艦艇を増強なさいまして、純増は百四十六名程度のものでございますが、そのためにこの艦艇と航空機を処理するための後方勤務あるいは司令要員というものを五百二十三名も増員しなければならないという点に具体的に納得することができないものがあるように思われます。これはもちろん御説明がよくわかるようにしてくだされば納得できると思いますが、ただいま承りました程度のことではどうも明確にならないと思いますが、いかがですか。
  34. 日吉章

    政府委員日吉章君) 委員指摘のように、艦艇、航空機の就役等に伴いますものにつきましては、艦艇、航空機にそれぞれ定数というものがございますので極めて単純明快、算術的に出てまいるわけでございますが、それを支援いたします後方支援体制等につきましてはしかく簡単ではございませんのでそういうふうな御疑問がおありかと思いますが、ただ、私どもはできるだけ効率化を図っているつもりでございまして、もう少し子細に申し上げますと、装備品等の運用で三百五十八名でございますが、部隊等の新改編でこれは逆に三十二名の減を立ててございます。その他といたしまして五十一名、三百七十七名でございますが、装備品等の運用等につきましては私ただいま例示を申し上げましたけれども、なお詳しくということでございますればそれぞれ十項目ぐらいずつに分かれておりますが御説明させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  35. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 本日は細かい点は特にお尋ねをするのを控えまして、もっと暇なときにお願いをいたします。  次に、予備自衛官につきましての問題でございますが、予備自衛官につきまして将来構想をどのように立てておられましょうか、お尋ねします。
  36. 日吉章

    政府委員日吉章君) 予備自衛官につきましては、諸外国のこれに相当いたします予備役等の問題、あるいは我が国の自衛官そのものの定数の問題等々考えました場合に、いろいろ検討を進めないといけないことがございまして、予備自衛官制度のあり方も我々の問題意識といたしましてはその検討対象の一つといたしているわけでございますけれども、いまだ検討中のものもございまして、予備自衛官の将来の構想そのものを具体的に申し上げるというふうな段階には至っていないことをお許しいただきたいと思います。
  37. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 防衛体制上予備自衛官が要るかどうかという問題は今後の世界情勢の変化というも のも見なければならぬと思いますが、我が国の憲法の建前は国民主権でございまして、国家主権を求めてはいないわけですね。従来は、国家主権ということが言われまして、国家が最高であった。主権ということは最高ということでしょう。国家が最高でしたが、今度の憲法には国民主権、国民が最高と、こうなっております。国連の方におきましてはまだその辺が明確ではございませんが、人類主権ということがまだ確立されておりません。国連では国家主権、こう言って国を最高として議論をしております。そういうずれがあるわけですね。  今日、人類としては、趨勢としましては将来は人類主権、人間が最高なんだということに持っていきたいんだけれども、現実のところではまだ国民主権の程度でとどまっておる国が相当多いし、なおまだ国家主権でとどまっておる国も相当多いという問題でございまして、そのところが正確に意識されていないために防衛構想を立てられる上にその点は大変に困難になると思います。しかし、少なくとも現在の方向は、国民主権から人類主権、人間主権という方向へ持っていくための努力がなされなければ人類の将来はないということは明らかで、これは学者皆そう言うております。先般、昔の最高裁の長官をやっておられた横田さんが演説をしておられるのを聞きましたが、あの人も、専ら人類主権に持っていかなければ人類の将来はないということを言うております。この問題はいいかげんに考えないで、やはり腹を決めて考えて将来の世界の軍事的なあり方、政治のあり方というものを決めていただかないと、せっかく武力はたくさん持ったけれども何の役にも立たないでむしろそれが害をなしたということでは困るというふうに思います。  そこで、現実の問題として、やはり脅威があるから防衛はやむを得ぬということはわかります。それはわかりますが、予備自衛官ということになりますと、これは、この思想は別に悪いとは申しませんが、はっきりと限度を決めて目標を決めてやっていただかないと困るのではないか。例えば、我が国において予備自衛官を設けなければならないような方面というのは何だろうかということがまずございますね。一体陸上自衛隊なのか、海上自衛隊なのか、あるいは航空自衛隊なのかという問題であろうと思います。航空要員が大変不足しておるという点につきまして、また航空要員は急速には充足できないという点におきましては航空自衛隊の予備自衛官を設けるということも私は政策的には現段階では意味があると考えます。  そういう点で、防衛庁ではどの程度のどの方面の予備自衛官というものを本腰を入れてやろうとしておられるのかという点をお伺いしたいわけです。これはいいかげんなことをされておったんでは、将来不安でしょう。防衛上不安ですよ。またむだ遣いになる。だから、やることはやっていただくんだが、その辺のところの腹はどうなっているんだということはやはり国民の前に明確にしておかなければならぬのではないかと思います。  この点についてどうでしょうか、お尋ねいたします。
  38. 日吉章

    政府委員日吉章君) お答え申し上げます。  現在、自衛官として私どもが採用いたしており準備いたしております者は、防衛計画の大綱に基づきましてまさに基盤的防衛力を整備する要員として確保しているわけでございます。したがいまして、不幸にして一朝有事になりました場合に、持久戦になりましてもこれでもって国土を完全に守り得るかどうかという点はこれまた別の問題でございます。そのときには、委員ただいま御指摘のように、まさに国民主権の考え方に立ちまして国民全体が外敵に対して当たるという気概とシステムが必要なのではないかと思います。そういう意味で、平時におきまして基盤的に整備しておりますものは、自衛官といたしましても、不幸にして有事になりました場合に国民挙げてそれに対応し得るような基盤整備をしておくという意味で予備自衛官制度というものが有用なものではないかと、かように考えているわけであります。  しかしながら、先生もただいまおっしゃられましたように、まさに国家主権と先生おっしゃられた意味が必ずしも私正確にわかりませんが、先生のお言葉に従いますれば、国家主権ではなくして国民主権というような意味におきまして、自衛官そのものも現実には徴兵制ではありませんで志願制になっているわけでございますので、予備自衛官においておやということでございます。  それでは予備自衛官にはどのようなものを予定しているのかということでございますが、委員ただいま御指摘になられましたような例えば航空自衛隊のジェットパイロットというようなものは直ちに予備自衛官をもって充て得るというふうなものではございません。したがいまして、こういうふうな特殊、高度な技術、技能、能力を要する者はやはり常時自衛官として養成しておく必要があろうかと思います。ところが、それらの本来の自衛官が第一線に出ました後の後方警備要員とかあるいはそれを支援いたします要員とかあるいは基地を防空するための要員、これらも後方警備要員に広い意味では該当するのかと思いますが、こういう種類の、どちらかといいますと後方におきまして警備をするあるいは支援をする、こういうふうな要員として予備自衛官制度というものを活用していくことがよろしいのではないかと、かように考えている次第でございます。
  39. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいまの御答弁を拝聴いたしておりまして、私の申し上げました言葉の意味が大変間違った方向に御理解を願ったということで、これは私の言い方が悪かったかなと思っております。  私が申しました国民主権ということは、国民が最高なんだ、つまり国家よりも国民が上にある。あるいは、こういう例を申し上げて悪いですが、国の総理大臣とかあるいは象徴であられる天皇とか、そういう国のどの機関よりも国民は上なんだという意味で国民主権です。その国民主権の国民を代表するのが国会議員と、こうなっておりますので、それは国会議員よりも国民の方が偉い。主権といったら最高で、これ以上のものがない。昔は神様が一番最高でしたが、今はもう神様じゃなくて国民が最高だと、そういう意味の主権なんです。  従来国際法あたりで国家主権と言われておりますのは、国家が最高なんだと。つまり国連であろうと何であろうと、あれは国家よりも下だという考えですね。ですから、国家の投票で国連の議事は進めます。多数決でやっておるわけでございます。どんな小さい国でも一票を持っておりまして、それが反対すれば反対なんです。それが最高なんですね。アメリカ合衆国とあるいは日本と比べてどっちが上かといったら、日本の立場からは日本が最高なんです。アメリカは下なんです。それが国家主権です。  そういう国家主権的な考え方では世の中がうまくいきませんので、したがいまして人間主権ということに国連は持っていくべきだという考え方が、今、学者の間で行われておるわけでございますね。国連が国家主権でやっておる限り、これは話がつかない、世界はよくならない。だから、人間が最高だということで、国連に参加しておる国家は人間の幸せを願うためにはすべてを犠牲にしても人間の幸せを願うようにやるんだという考え方、これが人間主権という考え方でございまして、そういう考え方の方向に今世界の大勢を何とかして持っていこうという努力がなされておるわけでございます。それは実現しておりませんが、そういうような将来の世界の向かっていく動向というものをしっかり見きわめて、その上での国の政府のあり方、その中での防衛のあり方というものが検討いたされませんと国民が納得する防衛というものはできてこないわけでございますね。  それで、この予備自衛官というものを私は頭から否定するものではございませんが、置くなら置くで国民が納得する部面に置くということが必要ではないかということです。例えば、考え方としまして防衛庁のお考えと私と少し食い違いましたのは、ただいまの御答弁では、パイロットのよう なものは専門的だからこれは自衛隊の方で持って予備自衛官にはしない、こういう御見解でございました。  それも一つの考え方かもしれませんが、せっかく予備自衛官制度を設けるなら、そしてそこへ国家予算を組むということでありまするならば、やはりパイロットというものの養成もやりまして、そのパイロットを予備自衛官として保存するということの方が本筋ではないか、こういうことを申し上げたんです。  そして訓練の問題ですからなんですが、これからの本当の専守防衛、先ほどもおっしゃいましたが、専守防衛というもののあり方というものは、決して大部隊を組んで日本の国内で戦うことではないのです。これは日本の近海において戦うとしましても、大部隊でやるということはまずないだろう。一つの戦闘機で相手の戦闘機一つを倒す一対一の戦い、敵が上陸しまして国内で戦う場合も一人が一人を倒す、百万人上陸したら百万人の軍隊でもって一対一で相手を殺す、そういう形の防衛がこれからの凄惨な防衛の態勢なんですよ。行われるのは、空想じゃなくて本当の起こってくる防衛はそういうものになります。殊に専守防衛の形で怖いのは、国民を巻き込んだ戦いになりますから、そういう点をよく御理解願って防衛訓練なり防衛体制を考えておいていただかないと大変なことになると思います。ちょうど沖縄戦における沖縄の状態がそうであるし、前の戦争の末期における満州の状態がそうです。あれは専守防衛なんです。あの結果というものはどんなに悲惨であったかということを頭に置いた上での御検討を願いたい。それで、予備自衛官を設けられるなら、そういうときに役立つ予備自衛官でないと困るではないかということを申し上げたわけでございます。  こういう点についてどのようにお考えでしょうか。
  40. 日吉章

    政府委員日吉章君) 委員の御見識は一つの御見識として承らしていただきたいと思います。  ただ、私どもといたしましては、絶対的にパイロットは予備自衛官として採用しないというような意味ではありませんで、相対的な比較の問題として御理解賜りたいと思うのでございますが、現在の高度に技術化されておりますパイロットの練度を常時維持しておくというためにはやはり常時訓練をしておかないといけないというような、その技量を維持するためのコストというものはかなりかかるのではないかと思います。そういう意味では、事柄の性質上、予備自衛官をもってこれに直ちに充てるというようなことには、相対的比較の問題としてはなじみがたいのではないかというような感じがいたしております。したがいまして、例えばでございますが、パイロットのようなものにつきましては自衛官として充足しておきまして、それらのパイロットが平時におきましては後方部隊におりましても有事におきましては第一線に出ていきました場合に、その後を埋める意味での後方警備あるいは後方支援というような要員を予備自衛官をもって充当するというふうなやり方の方が相対的比較の問題としてはよりなじみやすい、近づきやすい手法ではないか、かように考えているわけでございます。  それから、専守防衛についての御意見をちょうだいいたしましたが、私どもは、日本のような非常に狭隘な国土におきまして、なおかつある一定の都市にいろいろな機能が集中しております地理的条件にあります我が国土におきまして、着上陸侵攻がなされた場合の防衛というものが極めて困難であり、かつ委員のただいまのお言葉をかりますれば悲惨な状態を招きかねないという点は非常に危惧しているところでございます。  したがいまして、若干論点は離れるかもしれませんが、私どもの防衛構想といたしましては、とにかく着上陸侵攻をさせない、それを阻止するということに第一義的な目的を置いて防衛力の整備、防衛構想を図っているところでございます。
  41. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題は見解の相違ですから、これ以上申しません。  それで次に、自衛隊の部隊設置の問題ですが、これは法律で決められておる部隊、それから政令で決められておる部隊、いろいろあると思いますが、いろいろ防衛庁の方でお出しになったこの資料を見ますと、よく「その他の直轄部隊」という名前が出てまいります。部隊設置につきまして長官がお決めになる規定はよくございますが、これは白紙委任をされておるというものになりますとちょっと困ることになるのではないかと思われます。  それで、長官に白紙委任をされているというふうに誤解を受けるような部隊、これにつきましてはどのようになっておるんでしょうか。
  42. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 自衛隊の部隊の組織編成につきましては、非常に基幹的な部隊というのは自衛隊法自体に規定してございます。陸上で言うならば、十条以下に陸上の組織、十五条以下に海上自衛隊の組織、二十条以下、今回御提出いたしております航空自衛隊の組織、その中に直轄部隊というのがございますが、さらにこれに規定していないものについては二十三条で政令に委任されておるわけでございます。また、この規定を受けまして、直轄部隊を構成する部隊及び直轄部隊じゃないけれどもいわゆる重要な基幹的な部隊、それに準ずる部隊を政令で規定しまして、さらに政令の三十二条で長官に設置を委任されておるということでございます。  そんなことでございまして、部隊編成につきましては、各省の組織も同様でございますが、特に自衛隊につきましては、こういう自衛隊という性格上むしろ詳細に法律並びに政令で規定し、さらにそれで政令に基づいて長官に委任しておるということでございまして、また長官が委任に基づいて設置する部隊も、いろいろ運用上むしろ弾力的というか、そういう面もございますので、ただ法律に基づくだけでなくて、大綱とか国防の基本方針とかいろいろありますから、そういうものに基づいて長官責任において設置しておるということでございまして、決して白紙委任というような状態ではないというように理解しておるところでございます。
  43. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これも一つの言葉の理解の仕方かと思いますが、シビリアンコントロールという言葉がございますが、シビリアンコントロールというのは、これは国民主権の我が国の憲法上からいいますと主権者である国民の代表がコントロールする、こういう意味ではないか。シビリアンといいましても何のことか本当はわからぬのですね、この言葉自体は。それをどう理解するかの問題ですが、その場合に、国民主権制の憲法下においてはシビリアンコントロールというのは主権者である国民の代表、少なくとも国会議員で、大臣であられる方はもちろん含みますが、そういう人たちのコントロールがきくようになっておるという意味だろうと思います。  そこで、防衛庁の部隊の組織で「その他の直轄部隊」というように「その他」という言葉で表現されておりますと、どこまで伸びていくやらどうもわからぬのですね。「その他」というのはどの範囲なのか。ある一つのことは決めてあって、あと「その他」でしょう。例えば保安管制気象団というのがございますが、それに保安管制気象団司令部、保安管制群と、こうあります。それから、気象群というのもございますね。その次に「その他の直轄部隊」とありまして、「その他の直轄部隊」ということで決めておきますと、この内容が常に変わる可能性があるということになります。長官の思いつきでぐるぐる変わっていく。ということは、自衛隊の中に相当の知恵者の人がおられると長官の名前で変えてしまうこともできる。こういうふうになるとシビリアンコントロールというものが怪しくなるのではないかという疑いを持つ人があるんですね。  この点はいかがでしょうか。
  44. 依田智治

    政府委員(依田智治君) シビリアンコントロールにつきましては、私どもは、やはり国権の最高機関たる国会というもののコントロールを得るということは大変重要なことでありますし、しかし憲法上は国会のみならずさらに行政権というか内閣、そういう面からもいろいろ規定がある、そういうのを総合して昔のような軍部独走というような形にならないようなコントロールというのが総体的に現在におけるシビリアンコントロールではないか、こう考えておるわけでございます。  それで、長官に委任しておるということになるとぐるぐる変わるじゃないかということでございます。  組織というのはそんなにぐるぐる変わっていたら、これは、実際上、運用上困るわけでございまして、そうかといってすべてを法律なり政令で規定するということになると非常に硬直する傾向があるわけでございます。一定の安定性を持ちつつも運用上ある程度の柔軟性を確保するということで、組織というのは法律事項、政令事項、その他規則事項、訓令事項等に分かれておるわけでございまして、私どもの現在やっておるこのやり方というのはシビリアンコントロールに非常にもとるというようには考えておりません。  例えば、直轄部隊等では、陸の場合ですと第一ヘリコプター団とか通信団、警務隊、中央資料隊、中央調査隊、こういうのが直轄部隊として長官が定めておるわけでございますし、その他長官の定める部隊として師団の偵察隊とか補給隊、こういうようなものは必要に応じてそれぞれの部隊に置くというような形になっておるわけでございまして、全体として十分国会なり内閣、政府等のコントロールはきいておるというように解釈しておるわけでございます。
  45. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これもちょっと誤解があるかもしれませんけれどもお尋ねをいたしますと、現在の組織では保安管制気象団というものの下にやはり「その他の直轄部隊」、こうなっております。もちろん、直接の直轄部隊としましては、航空救難団とか航空実験団とか航空教育隊とかその他の直轄部隊とかいったようなものは、法律で決められた部隊と並んで長官のものとして決められておりますね。これは長官が直接決められたということでわかりますわね。ところが、保安管制気象団という団のその下の組織として「その他の直轄部隊」、こういうふうに書いてありますと、それはもちろん長官まで最後は決裁をとる場合は行くんですけれども、決裁をとるから全部いいんだということであるなら、なぜ「その他の」というのを並べて書かれなかったのかという疑いが生ずるんですが、この「その他の直轄部隊」というのは今度の改正案では飛行点検隊という名前に変わるわけですが、その辺のところがどうも明確でないわけです。政令で委任して命令で決めた、それに並べて長官の直轄部隊という、また政令よりも別のものとして長官がつくるということを意味するんではないかと思われますね。どうもそうなると「長官直轄部隊」というふうに法律で書いてあるもののほかに、法律で決めた団体の下の直轄部隊というものは長官がまた決めることができるということになりますと、なぜそんな複雑なことにしなければならぬかという疑いが生ずるでしょう。下に持っていかぬでも上に出せばいいことですからね。  そういう点はいかがですか。
  46. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 現在直轄部隊だけで二十三だったと思いますがあるわけでございますが、そのすべてを法律なり上の方の法律等で決めるということになりますと非常に硬直的になるということで、それで法律等ではごく中心的なもの、政令ではそれに準ずるもの、こうなっておるわけでございまして、例えば保安管制気象団という中に「保安管制気象団司令部及び保安管制群、気象群その他の直轄部隊」、こうなっていたものを、今度は航空支援集団の中では主なものとして「航空保安管制群、航空気象群その他の直轄部隊」、こういうように一括して規定しまして、その細部は下の方に任せた、こういうことでございまして、そのあたりのところは全部をこの直轄部隊は法律で規制するなりなんなり、規制するやり方というのがあるのかどうかあれですが、現状においては現在のように基幹的なものだけを特定してその他は長官に委任する、それで十分シビリアンコントロールは全うできるのではないか、こんな判断をして現在の規定体系になっておるわけでございます。  この点につきましては、法案等を出す段階におきまして内閣法制局等とも十分詰めまして、現状の規定方式をおおむね踏襲してやることで十分シビリアンコントロールの機能も確保できる、こういうようなことで私ども出しておるわけでございまして、御了解いただければありがたいと思います。
  47. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ちょっとくどいことになって申しわけないですが、法律で自衛隊の組織を決めてあります。法律で決められないような変動的なものは政令に法律が委任する、こうなっておりますから、その政令に委任したことを国会の方で報告を聴取すればいいことですからそれはいいですが、そのほかになぜ、法律にもよらない、政令にもよらない長官の直轄部隊というものを置けるような組織にしてしまったんだろうかというところに一つの疑念が生じますのは、長官の直轄部隊という名目で幾らでも部隊はふやせるではないかという疑念が生ずる。それに対して国会は何ら干渉できない。法律でもって長官の直轄部隊ができるというふうにしてしまったからいいではないか、こういうことになりまして、法律に書くとどうもちょっと国会を通りそうもないというものは全部直轄部隊ということでやってしまおう、そういう疑いが生ずるでしょう。  そういう点についてはどのようにお考えになるでしょうか。
  48. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 直轄部隊と一言で言いましても非常に大きいものから小さいものまであるわけでございますが、長官ができるから非常にどでかいものを勝手につくれるなんというようなことはございません。  組織を新たにつくる場合は、私どもは、厳重にまず内部で審査し、これを内閣法制局、さらに大蔵省等とも徹底的に議論した上で、全体の中で、そういう位置づけでつくられるものは妥当かどうかという判断がされるわけでございまして、防衛庁独自の判断で勝手に自由に大きなものをやるというようなことはございません。全体の体系の中でやはり長官がつくるのにふさわしいというものしか実際にはそういう中で規定していないという自信を私どもは持っております。  そんな仕組みでございますので、全く自由につくれるということはございませんので御安心いただきたいと思うわけでございます。
  49. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私、この改正案というものはまだ詳しくは拝見しておりませんが、航空総隊、航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団、こういうふうに四つものが出ておりまして、従来の長官直轄部隊というものもその中へ吸収されるように組織が編成されるように書いてある図を見たんですが、これは全部法律事項にされるという意味でしょうか。
  50. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 法律では二十条に規定してございますが、航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団というようなものをまとめてその主なものを規定してございます。したがいまして、今、基幹的なものは法律で規定しておるということでございます。これまで二十三ございましたが、二十三が十五になっていますが、この十五が全部法律に規定してあるわけではないというように考えております。
  51. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私が御質問申し上げましたのは、現行組織で航空救難団というのがございますが、この航空救難団は今度の改正案によりますと航空支援集団の中に設けられることになりますね。それから、航空実験団というのは航空開発実験集団の中に設けられる。こういうふうに類別されていくわけですが、その場合に、航空総隊とか航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団、この四つのものは従来の現行組織にはないものもありますので、こういうものについては法律改正を行って公布されるのか、こういう質問をしたんです。
  52. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 法律改正の中で、これまで航空総隊、飛行教育集団、輸送航空団、術科教育本部、補給本部、保安管制気象団、こういうのが法律事項として規定してありましたものを、今回の改編によりまして、航空総隊はそのままでございますが、航空支援集団、航空教育集団、補給本部、航空開発実験集団、この五つを法律事項として固めて改正案として出さしていただいたということでございます。
  53. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今度の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案の中にこれを書いておられるわけですね。
  54. 依田智治

    政府委員(依田智治君) そのとおりでございます。
  55. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 航空自衛隊につきましては改正案を拝見しまして大体理解をできたわけですが、海上自衛隊とか陸上自衛隊につきましては改編をなさる法律改正をされる御意思はないのでしょうか、お尋ねします。
  56. 日吉章

    政府委員日吉章君) 航空自衛隊につきましては、ただいま私どもの方で御提案申し上げておりますように法律改正をいたしまして、骨幹組織の再編整備を図ろうとしているわけでございますが、それ以外の陸上自衛隊海上自衛隊でございますが、いずれも我々は効率化を絶えず図っていかなければいけないという考え方を持ってございます。  例えば、陸上自衛隊につきましては、現在庁内で陸上防衛体制研究会というのが設けられておりまして、そこで部隊編成のあり方等につきましても検討を行っておりますので、その検討結果次第によりましてはあるいは組織の改編を必要とするような事態になるかとも考えられます。  海上自衛隊につきましては、現在のところそれほど明確な問題意識は持っておりませんが、いずれにいたしましても合理化の目は絶えず持っていなければならない、かように考えております。  今回航空自衛隊の改編をお願いいたしましたのは、航空自衛隊の装備等が著しく高度化複雑化いたしましたのに対応するのと、もう一つは、ただいま官房長からの御答弁でもおわかりいただけたかと思いますが、従来の航空自衛隊の骨幹組織には相対的に長官直轄組織が多うございまして、なおそれらが相互に関連し合うものがそれぞれ独立した組織になっております。そういうふうな問題点がございましたので、この際調整を行いまして組織の合理化効率化に資するとともに、新たなる装備等の高度化複雑化に対応し得るような組織をつくり上げたい、かように考えた結果でございます。
  57. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 現在の陸上自衛隊の方の改編、海上自衛隊も改編は余り必要でないような御意見だそうですけれども、陸上自衛隊の現在の組織で我が国の専守防衛が本当にできるのかという点につきまして、戦争が起こらなければ私は結構だと思いますが、これから本気になって起こる戦争というものになりますと、本気の戦争に対応するためにはどうも戦術、戦略的に古いのではないかという気がしますがね。  大部隊で、部隊と部隊との戦いというのはこれは大陸における戦いで、外国へ攻めていってやるならいいですよ。日本の国へ外国が入ってきて我が国が分断されてしまったという状況においての戦いですからね。まあ仮想敵国としてどこを考えておられるかわかりませんが、仮想敵国が北海道だけを占領したり九州だけを占領したりといったようなそんな戦争は考えられないんです。本気になって相手の国が戦争をするというときは世界最終戦です。もちろん世界じゅうを巻き込んだ戦争でございまして、我が国を占領しなければ戦争に負けるということがあるから戦略上、戦術上占領するんですから、そのときは全部占領しなかったら意味がないんです。例えば、現在アメリカと安全保障条約を結んでいますから、アメリカが来れないようにするという目的で占領するなら話はわかりますよ。そうでないなら占領する意味がない。占領する意味がないような占領の仕方は、これは私はやらないと考えるべきだと思います。  そうすると、陸上自衛隊において防衛するという以上は、我が国が四方八方から上陸されて分断された、その場合にどう対処するかという考え方での自衛隊というものが構想され、訓練され、編成されていなきゃならぬ。そうでなければ遊びにすぎないと私は考えるんです。  それから、海上自衛隊につきましても、我が国の領海を守るという形の海上自衛隊であるなら、海上自衛隊と我が国の沿岸防備というものとは一体をなしたものとして編成をされていなきゃならぬと思います。太平洋の真ん中で戦う防衛戦争というものはまずないと考えていいわけですね。アメリカが我が国を攻めない限り、太平洋の真ん中での戦争はない。ありますのはアメリカ以外の国が我が国を攻める場合ですから、おのずからどの海が戦場になるかは想像がつくわけです。そういうところに即応する海上自衛隊であるのかどうか。我が国を守るという専守防衛的な海上自衛隊の組織、艦艇、訓練であるのかどうか。そういう点は私は反省をすることが必要だと思います。  アメリカは外国に出ていって戦う部隊です。アメリカの海軍は、太平洋も通って世界じゅうの海へ行って戦う部隊でありますから、そういう部隊と我が国の海上自衛隊は一緒にならない。我が方は部隊、海軍ではないのです。我が海上自衛隊は海軍ではなくて、我が国の海に入ってくる敵を撃破するだけの、本当の純粋の意味の防衛隊でございますね。防衛隊の装備とそれから海軍の装備は、そういう意味においては違ってくるし、訓練も違ってくると思います。航空自衛隊にしても、これはもう敵の飛行機を排除するということに重点を置いたものになってしまいますからね。この場合も、沿岸防備と空の防備というものは一体のものであって、戦う以上は一体のもので切り離せない。私は、将来、二十一世紀は人の主権、人類主権というものが必ず確立されると確信します。したがいまして、余り神経質にはなりませんけれども、それまでの間に侵略されるということが本当にあるならばそのときの侵略というものも具体的に頭に描いて訓練しておく必要があると思います。  この間テレビで見ておりましたら、中国の人民解放軍のを放映しておりました。あそこの陸軍は体当たりです。一人が一人にぶつかっていってやっつけるという訓練を毎日やる。中国は外に出ていく軍隊ではありませんので、自分の国を守る軍隊、国内で戦う軍隊だからそういう訓練をしておるわけであります。  そういう点におきまして、自衛隊というものは外に出ていく軍隊じゃなくて我が国の中で守る。それこそ中国で言う人民解放軍、これは軍と言うても侵略用の軍隊じゃない。そういう観点からの組織、訓練ということを私はもう少し真剣に考える必要があると思う。しかしながら、そんなに神経質にならないで将来を見通した朗らかなものにしていくということも必要であろうと思う。  以前、私は、オリンピックで全部金メダルを取れるように自衛隊員訓練しろということを申し上げました。そういう自衛隊員であって初めて日本の国内戦争を戦える、そういうふうに考えるわけです。こういう余分なことを言いまして申しわけないですが、そういう観点からきょうは実は質問したんです。御了解ください。  それから、一つ御質問を申し上げるのを忘れていました。  それは、予備自衛官で民間委託をなさるということをちょっと聞いたんですが、民間委託はどういうふうな形でおやりになるのでしょうか、お尋ねします。
  58. 日吉章

    政府委員日吉章君) 先ほども御答弁申し上げましたように、予備自衛官制度の再検討につきましてはまだ緒についたばかりでございまして、具体的な構想をお話しする段階ではございませんが、委員ただいま御指摘のような問題意識がないことはございません。  その問題意識を一つの例で申し上げますと、例えば、私どもの装備の修理等を自隊で行っている部分と民間企業に発注をいたしまして行っているようなものとがございますが、それが、平時の態勢として民間に発注している部分が多くなればそれの方が合理的だというようなことになりました ような場合に、もし有事の場合にそれらの民間企業あるいは民間企業に従事している職員の方々がそのまま有事態勢におきます防衛庁の装備の修理等に対応してくれるような仕組みというようなものがあれば一つのあり方ではないか、こういうふうな問題意識はございます。  したがいまして、今申しましたのは一つの例でございますが、そういうような問題意識等も頭に置きながら今後検討を進めていきたい、かように考えております。
  59. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 では、最後に一つ御質問申し上げますが、「日本の防衛」というのをいただきまして拝読いたしました。それで、「日本の防衛」という本の中に「防衛改革委員会」という項が設けてありまして書いてあります。  それで、防衛改革の内容の中で、洋上防空の研究またはその検討もなされるように思われますが、これはどういう方法でどの程度の研究をおやりになるのでしょうか。
  60. 日吉章

    政府委員日吉章君) 本研究会ではこれまで海上交通の安全確保を図る場合の洋上防空のあり方について検討を行ってきておりますが、それらにつきましては、近年の航空機の性能が向上したり射程の長いミサイルが出現したりしましたことを考慮いたしまして、各種の装備を組み合わせることによりましてこういう状況に対しまして効率的に対応していける洋上防空のあり方を検討しているわけでございます。  現在までの検討の経緯を申し上げますと、幾つかのフェーズに分けて検討いたしておりますが、早期警戒監視機能という面ではOTHレーダー、あるいはまたミサイル発射母機対処機能というような観点からは要撃機と早期警戒機を組み合わせることが、またミサイル対処機能につきましては護衛艦の対空ミサイルシステムのイージスシステムクラスへの性能向上、そういうようなものがそれぞれ効率的ではないか、かような検討成果が得られております。  これらの検討成果の途中経緯を踏まえまして、あるものにつきましては予算化を図っているところでございます。
  61. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この防衛改革委員会というものとこのたびの組織改編との関係はございましょうか。つまり、防衛改革委員会で御研究になったその結果の組織改編なのか、また将来そういうことも起こってくるのかということですが、どうでしょうか。
  62. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 防衛改革委員会は六十一年五月以来ずっと研究をやっているわけでございますが、業務監査小委員会、洋上防空体制研究会、それに陸上防衛態勢研究会と自衛官人材育成・確保研究会という四つの委員会でやっておりまして、直に法律改正等と結びつくわけではございませんが、そういう中でどうしても必要とされるものが出てくればそれは法律改正に持っていくこともございます。  ただ、今回の航空自衛隊の骨幹組織の改編というのは、必ずしもこの防衛改革委員会の成果と直に結びついたものではないというように理解しております。
  63. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 時間が来ましたから終わります。
  64. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  65. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 久保田真苗

    久保田真苗君 まず、けさの新聞に出てました「外交特権使い財テク」というのを私も伺ってみたいと思うんです。  一部の新聞に、外交官が外交特権を利用して財テクに走った、こういう記事が非常に大きく出ておるわけです。何かこれは大変込み入ったお話のように拝見するんですけれども、この事実関係を外務省からお聞きしたいと思います。
  67. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の点につきましては、外務省といたしまして本日早朝から事実関係究明に当たっております。したがいまして、現段階におきまして詳細なる事実関係を申し上げる段階ではございませんけれども、昨年の三月に外務省を退官いたしました和田元理事官が、ジュネーブ代表部に在勤中から、他人の資金を集めて私設のファンドを開設して資金を運用していた、その勧誘を受けまして外務省の二人の大使を含め若干名がそれに資金の運用を頼んでいたということは事実のようでございます。
  68. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、先日の本会議でも竹下総理に質問したんですが、今政治家、公務員関係の不祥事が非常にたくさん続発しておりますね。それはここにおいでの防衛庁長官のおひざ元でも起こっておりますし、また外務省、国際協力事業団でもこういうことがまだ忘れられていないという、そういう段階なんですが、これは事業団の職員がコンサルタント会社とちょっと癒着していたというような問題から一気に域を抜いて外交官、しかも特命全権大使といったような方が絡んでいるということになりますと、これはいよいよ今の政治というものが大変な金権政治で、そのもとで公務員も非常に安易にこういった公務員にあるまじき行為に走っているのではないかということを本当に心痛する次第でございます。  それで、財テクそのものにつきましては、確かに公務員も財テクを禁じられているとは思わないんです。財テクそのものがすべて悪だということではないんですけれども、どうもこの場合のファンド、私設の投資ファンドというふうに新聞には書かれているんですが、こういうものは公務員が副業しているというよりもむしろ営利事業的なものを在職中に手がけたというふうに見れるわけですね。  そこで、その理事官という職は一体どのような職で、どういう位置づけを持っているんでしょうか。
  69. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 理事官と申しますのは外交官の名称の一つでございまして、通常、書記官等を補佐する方が多いわけでございます。  当該の和田氏について言いますれば、電信を担当していたというふうに聞いております。
  70. 久保田真苗

    久保田真苗君 公務員にはいろいろな職があると思いますが、それによっていろいろな情報を得るということもまた可能なわけでございます。  この和田さんという方につきましては、外交官であると今おっしゃられました。つまり、国家公務員法の対象になるものだと思いますね。そういたしますと、国家公務員法の中で例えばどういう条項に対する違反の疑いがあるのか、それをおっしゃっていただけますか。
  71. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま先生御指摘のように、自分のお金で例えば株を買うというようなことは国家公務員にも禁じられているわけではございません。ただ、この和田氏の場合には、昨年の三月までの外務省に在職している期間について言いますれば、他人の資金を集めてそれを運用していたということのようでございます。  といたしますると、先ほど冒頭に申し述べましたように、私ども事実関係究明中でございますので断定的なことは遺憾ながら申し上げられませんが、国家公務員法に言う例えば百一条「(職務に専念する義務)」、それから百三条「(私企業からの隔離)」等に抵触する可能性が大きいのではないかというふうに思います。
  72. 久保田真苗

    久保田真苗君 もしそういうことでございますと、例えば九十九条「(信用失墜行為の禁止)」というのもあるわけでございまして、こういうものにも該当する可能性があるわけでございますか。
  73. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 確かに九十九条には「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」 ということがございます。この解釈について、外務省として現段階で和田氏の行為につきまして具体的な、何と申しますか、嫌疑と申しますか、そういうことを云々する段階ではないと思いますが、少なくとも職務専念義務には抵触する可能性が強いというふうに感じており、まことに遺憾であるというふうに存じております。
  74. 久保田真苗

    久保田真苗君 さっきお二人の大使もこれに絡んでいるというお話がございましたんですけれども、この理事官の行為を例えばただ傍観していたというだけではどうもなさそうなんです、この報道によりますと。それに便乗していたということですから、その中身を御存じないはずがないわけですね。そして国家公務員法の職務専念義務あるいは私企業からの隔離ということについても十分に御存じのはずの方がどうしてこういうものに絡まれたのか、私はその辺が本当に不可解なんですが、官房長はどういうふうにごらんになるんでしょうか。
  75. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 二人の大使は、お一人は当時アルジェリア、もう一人はザンビアにおったわけでございますけれども、ジュネーブにおきまして和田氏がこのファンドを運用するということで勧誘を受けまして、その運用を依頼しておったということでございまして、したがいましてこのファンドを運用しておったわけではございませんで、和田氏の直接あるいは間接の依頼によってファンドを預けたということでございます。そういう意味におきまして和田氏の行為とこの二人の行為では、行為に相当の開きがあります。  他方、お二人から今日と申しますか、けさ聴取したところによりますと、二人とも、少なくとも当初におきましては小人数かつ内輪、極めて小人数の知人同士で私があなたにかわって運用してあげましょうという話であったというふうに印象を受けてそれで資金の運用をお願いしたというふうに申しております。  そういうことでございましても、我々といたしましては、いかにもうかつであり、これは極めて残念であるというふうに考えております。
  76. 久保田真苗

    久保田真苗君 遺憾で残念だということでございますからそれはもうわかっていただいているとは思うんですが、今おっしゃった中に、和田氏の行為とお二人の大使の行為とはかなり差があるとおっしゃられたんです。  私は、このお二人の大使はただ自分のお金を預けたということ以外に和田氏に対して上司としての監督責任があったんじゃないんでしょうか。
  77. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 上司としての監督責任ということ自体、非常に厳密な意味でこれを解釈いたしますと、このお二人は和田氏の上司ではない。すなわち、位においてははるかに上でございますけれども、和田氏はジュネーブの国際機関代表部に所属する理事官である、二人の大使はアルジェリアの大使でありザンビアの大使であるということでございますから、指揮監督責任あるいはその権限等を持たないということは明確であると思います。  しかしながら、外務省におきますと大使として、はるか後輩の和田氏に対する一般的な意味での指導と申しますか、そういうものがあり得たかどうか、これは今後さらに事実関係究明の中で検討していきたいというふうに存じます。
  78. 久保田真苗

    久保田真苗君 外国への投資というのは、一般の人には制限されているのではありませんか。
  79. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいまの先生の御指摘につきまして、これはただいま外務省だけで有権的に解釈できませんので、関係のところに法律解釈を照会しておるところでございます。
  80. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは御照会の結果を教えていただけますね。  それから、ウィーン条約というのがあるんですが、これはウィーン条約の厳しい決まりに反する、精神的に反するだけではなく道義的にも非常に問題があると私は思うんですが、ウィーン条約のどういうところとこの事件関係が出ますでしょうか。
  81. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 先生御存じのとおり、ウィーン条約は、接受国におきまして外交官に対して一定の特権あるいは義務の免除を与えておるわけでございます。その義務の免除、これを外交特権と一般に申しておりますけれども、それにかわりまして外交官にある種の義務を課しておるわけでございます。例えば四十一条「特権及び免除を害することなく、接受国の法令を尊重することは、特権及び免除を享有するすべての者の義務である。」。それから、本件に特に関連があると思いますのは四十二条で「外交官は、接受国内で、個人的な利得を目的とするいかなる職業活動又は商業活動をも行なってはならない。」という規定がございます。  本件とこのウィーン条約四十二条との関連を申し述べますれば、ジュネーブにおきまして当時の和田理事官は外交官として一定の外交特権を享受しておった。それの見返りと申しますか、ウィーン条約上の四十二条によりまして「いかなる職業活動又は商業活動をも行なってはならない。」という義務を負っておるわけでございます。  この「商業活動」というものは何かということについては、いろいろな学説、議論があるところでございます。例えば、自分自身で株を買っていわゆる財テクをするということはこれに入らない。それから、講演などをして妥当な講演料をいただくということもそれには入らないということでございますが、この和田氏のケースにおきましては、知人の間ではあれ他人の資金を集めて、一つのサークルということでございますけれども、それを運用したということにおいてこの「商業活動」というものに触れるのではなかろうかという疑いもあるかと存じます。
  82. 久保田真苗

    久保田真苗君 この御本人は、もう六十二年の三月に辞職されたとおっしゃいましたですね。  そのときにこれはもう外務省ではおわかりになっていてこういう結果になったのか、そしてこの辞職の仕方はどういう取り扱いになったのか、その辺を聞かせていただけますか。
  83. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 和田氏は六十二年三月七日付をもって辞職したわけでございますけれども、辞職願は三月一日に出ております。その理由は民間企業へ就職するためということでございまして、自発的退職ということでございます。  なお、本件の和田氏がこのようなファンドを運用しているということが外務省側にとってこの辞職の理由ということでは全くございませんで、当時の、私の前任の官房長あるいは人事課長等々関係者は本件について知らなかったのではないかというふうに思います。私どもは、最近と申しますか、本日の朝、初めて本件について報告を受けたということでございます。
  84. 久保田真苗

    久保田真苗君 けさといいますと、新聞で初めて御承知になったわけですか。
  85. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) そういうことでございます。記者の方から、このような記事を書くかもしれないという話は、昨夜遅く聞きました。
  86. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、例えば、これがウィーン条約に違反である、あるいは国家公務員法に違反である。国家公務員法の方は大体想像がつきますけれども、ウィーン条約に違反しているということは、この条約の所轄のところに対して何らかの手続とかあるいは報告とかそういったことが必要なんでございますか。それともそういうことは関係がないのか、その辺わかりませんので、一体、条約にこれが違反した場合にどうするのか、お聞かせください。
  87. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) このウィーン条約は、他国に派遣されます外交官の種々の権利義務、それからそれを受け入れております接受国の権利義務を定めているものでございまして、それに違反したときに具体的な手続が定められていて、例えば一定の期間に報告するとか、何らかの措置がこの条約上考えられているということではございませんので、この条約に従って何か直接の措置がとられるということにはならないと存じます。
  88. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、けさ御承知になったばかりですからこれからいろいろお考えになると思うんですが、これの調査の仕方、あるいは参加した外交官に対してどういうふうな手だてでこの御調査をなさるおつもりでしょうか、それを最後にお聞きしたいと思います。
  89. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいまの御質問にお答えする前に一言申し上げたいのでございますけれども、先生よく御存じのとおり、外交官というのは華やかな職業のように見えますけれども現実には大変に厳しい職務でございます。特に在外におきまして戦乱とかテロとかあるいは健康に対する脅威というようなものと日々闘いながら、在留邦人の身を守るということを目的としながら職務に専念しておるわけでございます。そのような多くの在外外交官の名誉に対しましてこの事件が大変に残念な影響を与えているのではないかというふうに心配されるわけでございます。そういう意味におきましてこの事件は非常に残念でございますし、外務省といたしましては在外全外交官に対しまして襟を正していくように指導を徹底していきたいというふうに思っております。  御質問の、調査のやり方でございますけれども、東京におります関係者につきましては直接いろいろ話を聞いておるところでございますし、在外にいらっしゃいます大使につきましては電話等で聴取しておるところでございます。  その調査の結果をまちまして、外務省といたしましては本件について厳正な対処をしていきたいというふうに思っております。
  90. 久保田真苗

    久保田真苗君 次に、天皇に関連しまして、言論界への飛び火の問題について官房長官にお伺いしたいと思うんです。  天皇の御病気に関連しまして、英国のサンとそれからデーリー・スターですか、その記事が出まして、それについて九月二十二日に駐英の千葉大使が抗議文をお出しになっているわけですね。この中で、自民党の幹部の方がこれに関連して、例えば、言論の自由といっても程度問題だとか、それから報道の自由は理解しているけれどもそれも限界がある、そういう特派員がいるのなら国外退去を求めてはどうかというような発言をしておられまして、それがまたまたいろいろな形ではね返りがあるわけでございます。  この件につきましては、官房長官はどういうふうな御感想でこれをごらんになっていらっしゃるんでしょうか。
  91. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) ただいまの先生の御質問が十分真意を受けとめられなかったらお許しをいただきたいと思いますが、一つは、英国の新聞のサンなりスターなりの天皇に関しての報道ぶりについてどうかというお尋ねとも聞こえたわけですが、もう一方、その報道に対する自民党の政調会長の発言で、言論の自由はあるが物には限度があるとの発言の趣旨についてどうかというふうにも聞こえたわけでございます。  前段の方から申し上げれば、私もその新聞を拝見いたしました。率直に申し上げて、日本人の一人としてまことに不快の念強いものがありました。しかしながら、そのことに関しましては、先生お話しのように、千葉大使からその新聞社に対して我が国の立場を申し上げて反省を求めておるところでございまして、私はそれは一通りのなすべきことではなかったかというように率直に思っております。  それから、後段の方について言えば、これは、発言のすべてを承知いたしておりませんし、またどういう状況の中で発言されておったかということも重要なことだと思いますが、一般論的に言えば、言論の自由も憲法二十一条で保障されておりますが、言論の自由といえども無制約ではあり得ず、公共の福祉のため制約を受けることがあり得ることは憲法十二条及び十三条の規定からも明らかであると考えております。  しかし、いずれにしても前段、後段のことをあわせ考えますれば、我が国の憲法にかかわることでございまして、そのスターあるいはサンなる新聞はこれは英国国内の出版物でございますので、我が国憲法とは直接のかかわり合いはないというふうに考えております。
  92. 久保田真苗

    久保田真苗君 これはいろいろに受け取る方があると思います。ただ、官房長官が今言われました言論の自由にもおのずから公共の福祉という観点から限度があるんだということでございますならば、飛び火するようなんですけれども、私ども常々部落差別問題につきまして、なかなか政府が人種差別撤廃条約を批准なさらない、その理由が我が国は言論の自由というものを尊重しなければならないというふうな御回答でもって、ここ数年の間遅々として進まないという状況にあるわけです。そういたしますと、今おっしゃるような公共の福祉、つまり少なくとも他人の人権を侵害するに至るようなそういう人権と人権との考量の上からしまして、言論の自由に対して何らかの人の人権を大きく侵害するようなものはやはりこれは政府としても考えなきゃならないんじゃないかというふうに私思うわけです。  人種差別撤廃条約の批准の問題は今どんなふうに進んでいらっしゃるのか、ちょうど外務省もいらっしゃることですから、もし今その後の進捗状況を聞かしていただければありがたいと思うんです。
  93. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 政府といたしましては、人種差別撤廃条約の趣旨にかんがみましてできるだけ早期にこれを締結したいという基本的な考え方を持っております。  しかしながら、この条約の中には我が国の憲法の基本原則の一つでございます思想の自由、表現の自由とかかわる規定がございますので、その規定との関連をどういうふうに取り扱うかという点につきまして関係省庁間で現在検討中の段階でございます。
  94. 久保田真苗

    久保田真苗君 それで、千葉大使の抗議文につきましては、この中で、天皇について「アワ ソブリン ヒズ マジェスティー ジ エンペラー オブ ジャパン」という表現をしていらっしゃるんですね。元首という言葉の政府の解釈なんですけれども、この「ソブリン」の政府の解釈をもう一度お聞かせいただけますか。
  95. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまの御質問は、天皇は元首であるかどうかということに関連しての御質問かと思いますが、現行憲法上におきましては元首とは何かを定めた規定はないわけであります。元首の概念につきましては、学問上法学上はいろいろな考え方があるようでございます。したがいまして、天皇が元首であるかどうかということは、要するに元首の定義いかんに帰する問題であるというふうに考えておるわけであります。  かつてのように元首とは内治、外交のすべてを通じて国を代表し行政権を掌握をしている、そういう存在であるという定義によりますならば、現行憲法のもとにおきましては天皇は元首ではないということになろうと思います。  しかし、今日では、実質的な国家統治の大権を持たれなくても国家におけるいわゆるヘッドの地位にある者を元首と見るなどのそういう見解もあるわけでありまして、このような定義によりますならば、天皇は国の象徴であり、さらにごく一部ではございますが外交関係において国を代表する面を持っておられるわけでありますから、現行憲法のもとにおきましてもそういうような考え方をもとにして元首であるというふうに言っても差し支えないというふうに考えておるわけであります。  このような趣旨につきましては、昭和四十八年六月十三日の参議院本会議におきまして田中内閣総理大臣が答弁され、また昭和四十八年六月二十八日の参議院内閣委員会におきまして当時の内閣法制局長官がそれぞれ答弁をしているところであります。
  96. 久保田真苗

    久保田真苗君 憲法七条の中に国事行為というのがございますね。  それでは、さっきおっしゃった内政、外交を通じて国を代表し行政権を掌握する存在という意味からいえば、この憲法七条の国事行為のうち、一部に天皇が元首であるという、元首である天皇がするという事柄があるわけでございますか。
  97. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 先ほども申し上げましたように、内治、外交のすべてを通じて国を代表し行政権を掌握している存在である、こういう定義によりますならば、現行憲法のもとにおきまして天皇は元首ではないというふうに申し上げたわけであります。  と同時に、先ほど元首に関連をして、天皇はごく一部ではございますけれども外交関係において国を代表する面を有するということを申し上げたわけでございますが、憲法七条におきましてはその第九号におきまして「外国の大使及び公使を接受すること。」と規定されておるわけであります。天皇はこの規定により、したがいまして内閣の助言と承認に基づいてでございますが、国事行為として、我が国に駐在するために派遣される外国の大使、公使の接受をされているのでございますが、これは、外交面において形式的儀礼的にではございますけれども国を代表する面を有しているというふうに解されるわけであります。
  98. 久保田真苗

    久保田真苗君 七条のうち九号が形式的儀礼的な意味でそれに当たる、こういう御説明なんですけれども、ほかの国事行為についてはそういうことは言われないわけですね。
  99. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 憲法七条の国事行為の中には、主として外交関係に関する国事行為として掲げられておりますのはただいま申し上げました第九号の「外国の大使及び公使を接受すること。」ということのほかに、全権委任状とか我が国の大使、公使の信任状の認証、それから批准書、その他の外交文書の認証というようなことを掲げておるわけであります。  このうち、憲法七条九号の「外国の大使及び公使を接受すること。」というのは、国事行為として、先ほども申し上げましたように、我が国に駐在するために派遣される外国の大使、公使を接受をされるのでございますから、この点は、形式的儀礼的にではございますけれども天皇がこの点において国を代表する面を有しておられる、こういうことであろうかと思います。  それに対しまして、全権委任状あるいは我が国の大使、公使の信任状の発出というのは、これはもともと内閣の権限に属することでございます。天皇はこれを認証されるだけでございます。また、批准書、その他の外交文書の作成も、これは内閣の権限に属することでございます。天皇はこれを認証されるだけでございます。そういう意味におきましては、先ほど申し上げましたような意味での外交関係において国を代表する面を有しているとは言いにくいのではないかというふうに理解をいたしております。
  100. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。  そうしますと、千葉大使がお出しになった抗議文のうち「アワ ソブリン」というのは、どういう意味なんでしょうか。今のような御説明の意味と見てよろしいんでしょうか。
  101. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御説明のありました元首という意味において使われているものと考えております。
  102. 久保田真苗

    久保田真苗君 「ソブリン」という言葉をお使いになりますと主権ということになるわけでしてね。日本国憲法ではもちろん主権は国民にあるということがはっきりと書かれているわけです。  ですから、これはサンあるいはスターにあてられた千葉大使の抗議文でありますけれども、大使がお出しになるからにはこれは公文書としてお出しになっていらっしゃると思うんですがね。そういう意味で、簡単に「アワ ソブリン」などという表現をお使いになるのは、この日本国憲法の明記している文言からして少し不適当なんじゃないでしょうか。
  103. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 天皇が一定の意味におきまして元首であるということは、先ほど内閣法制局の方から御説明があったとおりでございます。今度のこの英国紙の記事というのは著しく悪意ある表現で天皇を誹謗中傷しているものでございます。これは久保田委員もお読みになったかと思いますが、それこそ口にするのもはばかるようなひどい表現で、これは相手が天皇陛下であろうがなかろうが、とにかく人間に対して使うべきでないとまで考えられるような表現で誹謗中傷を加えているわけでございますけれども、天皇はまさに我が国の象徴でございますし一部ではありますが外交関係において国を代表するという立場にあることにかんがみまして、極めて遺憾なことであると考えざるを得ないわけでございます。このように今回の事件は日本国の象徴でかつ一部ではございますが外交関係において我が国を代表しているという立場にある天皇に対するものでございますので、申し入れにおきましても天皇のこういう立場をとらえまして元首という表現を使ったわけでございます。  この元首に当たる言葉として「ソブリン」という英語が使われております点につきましても御質問があったかと思いますけれども、元首に相当する訳語としていかなる言葉を当てるかにつきましては、これは国によりそれぞれの慣行に従って行われているわけでございますけれども、今回の書簡におきましては通常英国において用いられている「ソブリン」という語を使用したものでございます。
  104. 久保田真苗

    久保田真苗君 英国にいらっしゃるからといって日本国憲法に合わないような言葉をお使いになってまで向こうの流儀でやることはないわけでございますね。ましてそういう内容の記事が書かれたことに対する反論なわけでしょうから。  このような報道に対するものについて、私はこの「ソブリン」という言葉などをわざわざ引き合いにお出しになる必要はなかったと思いますし、それから、それがだんだんだんだんなし崩しに天皇をあたかも元首であるかのごとく広い意味で元首としてだんだん使っていきたいというような、そういう憲法上許さるべきでない方向へ持っていく。特に、外国に対しては、外国の方が日本の政治体制を十分に御存じであるかどうか疑問でありまして、そういうところへ天皇は元首だというような、部分的にせよそういう誤解を非常に招くような言葉を安易にお使いにならない方が私はいいと思うんです。  それからもう一つは、これからもこういう記事が出る可能性はあると思いますね。そういうときに、それぞれの大使が民間の一新聞に対してこういう抗議文をこういう内容でお出しになるのかどうか、それが適当とお思いなのかどうか、その辺はどうお考えですか。
  105. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 前段について私の方からお答えいたします。  元首に当たります表現を使った理由というのは先ほど御説明したとおりでございますけれども、我々といたしましては、このことによりまして憲法上の天皇に与えられております権限を広げようとかあるいは外国におけるそれらの考え方を変えようとかいう意図は全くございません。先ほど御説明いたしましたような理由によりまして、今回のケースにおきましては元首に当たる言葉を使って抗議をするのが適当であると考えたからこれを使ったということにすぎないわけでございます。
  106. 松田慶文

    政府委員(松田慶文君) 外国の諸般の報道に対します我が国の反論につきましては、ケースに従いまして一様に申し上げることはできないのでありますけれども、従来からも、我が国、我が国民に対する侮辱あるいは事実無根なる報道等につきましては外務省の報道担当者として私どもはその時宜に応じた抗議ないしは訂正の申し込みをつとにやってまいってきております。  今回の陛下の御病気に関する諸外国の報道につきましては、いろいろ事実関係、論評、多々ございましたけれども、この九月二十一日のロンドンの二つのタブロイド紙の報道ほど悪意に満ち、我々を侮辱し、陛下を誹謗中傷するものは他に例を見ない次第であります。私どもは、この扱い方、表現、内容、そのすべてを見まして、このまま放置することは日本の名誉にかけてできないと判断して抗議した次第でございますが、これによって広く英国国民に対し我が国の意図を伝えることができましたので、抗議は一回だけでその目的を達したと判断しております。  申し上げましたとおり、ほかの国の報道にはかようなものはございませんので、私ども、現在の時点ではこのような抗議、反論を加えるという必要を感じておりませんが、今後もしこれと同程度の同内容のものがございますれば断固としてやはり抗議はいたしたいと考えております。
  107. 久保田真苗

    久保田真苗君 それによって二度目の電話による回答がまた行われた、いわゆる電話あるいは情報合戦のような形になったわけでございますけれども、私は、政調会長の御発言からしましても、日本がいろいろな意味でのいわゆる言論の自由が抑えられている国だ、また報道の対象者に対しておどかしをかけるのだ、少なくともそういう印象を外国に与えるというようなそういうお取り計らいは十分慎重にお願いしたい、こう思うわけです。なぜならば、これによってますますその内容が広がっていく。そしてこれは一つの、何といいますか、争いのようなものでございますから、そういう効果ということも十分ありますし、また日本が現に言論の自由を制限していないはずの国でございますから、そういう誤解を招かないような処置をお願いしたいと思うわけです。  次に、経済協力問題についてお伺いしたいと思います。  今回、世界に協力する日本というかけ声でもって、その大きな柱として政府がODAの大幅の増加を試みていらっしゃるということなんですね。従来のODAの中期計画が一九八六年―一九九二年の七年間でもって総額四百億ドル以上であった。そういう中期計画が存在したわけです。竹下総理がトロント・サミットにおいでになりまして公約をなすった。一九八八年から一九九二年までの五年間でもって五百億ドルというふうに実に倍増に近い大幅増額を約束していらっしゃるんですね。今まで年平均にしますと約五十七億ドルぐらいだったものが、今度これで年平均百億ドルぐらいのものになったというふうに私は見ておるんですが、今、それにもかかわらず他の予算措置というものが相変わらず相当な圧縮をされているときに、国民にとってはこれは相当の負担になるわけでございます。  私がまずお伺いしたいのは、これだけ総理大臣や外務大臣が外国へいらっしゃるたびにいろいろとお土産をお持ちになって、いろいろな約束をしていらっしゃる。それは国際公約という意味からいって誠実に実行しなければならないわけでございますけれども、それで日本の援助の評判が非常に上がっているかといいますとどうも必ずしもそうではないという側面が見られるわけでして、最近、例えばビルマなどで反政府勢力の方たちから日本の援助はやめてもらいたいんだというような声が上がったりする。国民立場からしますと、これは、相当の負担をしているのにまたこれからもしなければならないのに、一体経済協力のやり方が問題なんじゃないかということが考えられるわけです。  幸い行政管理庁がこれに対するかなり分厚い監察結果を出していらっしゃいますので、それに沿って少し御質問をしてまいりたいと思います。  日本の経済協力の目的、基本理念というものがはっきりしないという声をよく聞くのでございますが、この辺ははっきりしているのでしょうか。外務省としては、その辺の目的をまずどういうふうに押さえていらっしゃるか。外務省だけではないんでしょうが、窓口が外務省ですから外務省に伺ってみたいと思います。
  108. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  日本の経済協力に関しましてはどういう考え方でそれを行うかという理念の問題がまず第一にあるわけですけれども、我々は、まず最初に人道的な考慮、すなわち富める国は貧しい国を援助すべきであるという人道的な考慮に基づきまして、第二番目には日本と被援助国との間の相互依存関係、南と北との相互依存関係、その認識に基づいて行っております。したがいまして、人道主義的考慮と相互依存の認識というものが二つの理念でございます。
  109. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務省の御見解はわかったんですけれども、最近、アメリカからも、戦略的に重要な地域に重点的に経済援助をする、いわゆる戦略援助というものに対して要求が出てきているわけです。  そうなりますと、非軍事の日本の体制からしますと、戦略的な援助は我が国の経済協力としては適当なものではないんじゃないかと思いますが、この辺の御見解はいかがですか。
  110. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  戦略援助という言葉が新聞等で言及されることがありますけれども、我々は、援助に関しては戦略的とか戦略的でないとかという性格づけをしたことはございません。これは、援助をする結果といたしまして、低開発国における民生の向上が図られる、その結果としてその開発途上国の政治経済が安定する、そのことがひいてはその国及びその国の周辺の地域の安定に貢献するということは、これは事実としてあると思います。  したがいまして、我々としては、そういう民生の向上、社会の安定というものを通じて、経済援助を通じて国際の平和と安定に貢献していくということは頭に置いております。  しかし、それを戦略的という形で外務省として性格づけをしたことはございません。
  111. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうすると、外務省としては、戦略援助というのは非常によく使われる言葉なんですが、これはどういうものだというふうに考えていらっしゃるんですか。
  112. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 戦略援助というのは、米国で使われる場合等は主として東西関係のコンテクストにおきまして西側の安全保障に重要な地域に対して重点的な援助をするということだというふうに理解しております。  この戦略援助の一態様といたしましては、米国におきましてはいわゆる経済支援援助というのがございます。これは米国の場合にはかなり多くの部分がイスラエル、エジプト等に回されておりますけれども、そういうたぐいの援助を通常、戦略援助と言っているというふうに理解しております。
  113. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、今言われましたような米国で使っている意味の戦略援助ということについては、それは、日本の援助の目的からするとその目的に沿っているものではないというふうに解釈なさるわけですか。
  114. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  日本の援助の中におきましても、その地域の安定が国際の平和と安定のために重要であるという地域に関してはそのような考慮をして、そのようなことが結果として出てくる援助があることはそのとおりであります。したがいまして、戦略援助という形ではありませんけれども、国際の平和と安定の強化という点ではダブる面もあるというふうに結果としてなることがあると思います。
  115. 久保田真苗

    久保田真苗君 何か余りよくわかりませんけれども、民生を考えるということが目的であるが結果としてそういう地域にいく場合もある、こういうことなんですね。  それで、金額が非常にふえているわけなんですけれどもね。  総務庁がことしの七月、ODAに関する行政監察をやっていらっしゃいます。これは第一次のもので、無償資金協力と技術協力報告書をお出しになっています。総務庁は、特にこういう面のODAの行政監察をなさったのはどういう視点からなさったわけでしょうか。
  116. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) お尋ねの経済協力行政監察でございますが、ODAは国際社会への積極的貢献を目標とします我が国にとりまして重要な政策分野の一つでございまして、国民理解協力を得ながら国際的責務を果たしてまいりますためにはODAが適正でかつ効果的、効率的に実施されることが極めて重要でございます。  この監察は、これに役立てます趣旨から、ODA監察の第一次分といたしまして無償資金協力と技術協力を対象といたしまして外務省、事業団の行う業務を中心として調査いたしまして、本年七月に外務省、大蔵省、通産省に勧告をいたしたわけでございます。  どういう観点かということはただいま申し上げましたが、その勧告の概要を簡単に申し上げますと御理解いただけると思いますが、まず無償資金協力事業の効果的、効率的実施ということにつきましては、無償資金協力予算の事業団交付金化、それから小規模無償資金協力制度の創設、それから援助終了案件の定期的把握。また、技術協力事業の効果的効率的実施につきましては、研修員受け入れ専業における集団コースの定期的な見直し、専門家派遣事業における行政内容の的確な把握。また、三番目の援助事業の総合的計画的な実施につきましては、国別援助計画の策定整備の推進、それから無償資金協力と技術協力との連携強化。最後に、国際協力事業団の実施体制の見直しにつきましては、事業団本部の分野別事業実施体制の見直し、それから本部から在外事務所への権限の委譲の推進。そういった適正、効果、効率、こういう観点から行政監察を実施した次第でございます。
  117. 久保田真苗

    久保田真苗君 今回第一次として今おっしゃった無償資金協力、技術協力報告をされておりますけれども、第二次、三次としてはどういう面の行政監察をお考えですか。
  118. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) 有償資金協力につきましてただいま第二次の行政監察を実施中でございますが、これにつきましても適正かつ効果的、効率的に行われることが重要である、こういう観点から先ほどと同じような趣旨で行政監察調査を実施中でございます。
  119. 久保田真苗

    久保田真苗君 官房長官のお時間がありますので、今の中身は続けてやることにしまして、官房長官、実は私どもの参議院外交・総合安全保障に関する調査会というのがことしの五月にこういう中間報告を出しております。  この中に、日本のODAが大幅に量的な拡大を図ってきたということを言いまして、既に一般会計ベースで七千十億円、この段階でですね。事業予算ベースで一兆三千四百八十七億円という規模にまで達している、と。そしてその後、なおかつこれからもっと大きい援助をお約束されていらっしゃるわけです。近々、米国を抜いて量的にも世界第一位になろうとしている、こういうふうに分析をしております。  ところが、日本には、他国と違いまして経済協力の理念とか目的とか諸原則を規定した経済協力基本法がないということをここで言っているわけなんですね。そして、援助行政が多省庁にまたがっていて一元化されていないということを指摘しています。それから、援助計画の策定から実施に至るまでの情報が非常に不十分だということも指摘しております。したがって、ODAが主として行政の自由裁量にゆだねられてしまっていて、国会の関与が少ない。内容的にもODAの質的、量的な改善が望まれていることなど、非常に大きい問題があるわけでございます。  これからますます大きくなっていくODAのあり方について、内閣官房には外政審議室といったような各省庁にまたがる外務問題を一元化されるような総合調整機能を強化されたところがございます。この経済協力関係基本的な法律がないということは、私は、やはりさまざまの不祥事が、このODAを利権化するそういう公的、私的な誘惑が常にあると思うんですね。そういう悪いことばかりではなくてもっと積極的に、今外務省から述べられています民生の向上、社会の安定といったような観点からも、もう一つ何かODAの与えらるべき優先順位あるいは目標といったものをここでひとつしっかりとみんなが合意しておくことが非常に必要じゃないかと常々私は考えているんですが、国会でたびたびこの質問が出ましても、木で鼻をくくったような御答弁しかないわけでございます。  で、この際、官房長官に、その外交調整面で御責任をお持ちでございますので、こういう事態を将来建設的な方向に向けてどういうふうに見ていらっしゃるのか、ひとつそういった基本的な合意をつくっていくということについてどういうふうにお考えなのか、私は伺いたいと思います。
  120. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 先ほど来それぞれ御答弁申し上げておりますように、ODA、海外援助につきましては、特に竹下内閣にとりましてもトロント・サミットで一つの柱として強く主張もし、またそれを前進さしていく努力をいたしておるわけでございます。第四次の計画を遂行いたしていきたいということであります。  先生御指摘のように、ODAは量も世界のトップレベルになってまいりましたことでもございますし、またそれは国民皆さんの税によって賄われているわけでございますから、いやしくもこの海外援助が所期の目的を達成しないようなことがあってはいけませんし、またいろいろ批判されることが起こってはならないことであります。そういった意味で政府としては、常々、この量の拡大、質の向上とともに、万般にわたりまして留意をいたしておるところでございます。  現時点におきましては、四省庁を中心にいたしましてそれぞれ関係省庁と緊密な連絡をとりつつ目的を達しておるわけでございますが、今御指摘のように、内閣は外政審議室で調整機能を有しておるではないかというお話もございます。もし必要とあらばそうした権限を行使いたしまして十二分にこれが発揮できるようにいたしていかなければならないかと思いますが、現段階におきましては、国会の厳しい御指摘もいただきつつ行政としては万全を期して努力をいたしておるところでございますので、なお注意を喚起しながらこのODAがそれこそ世界のそれぞれの皆さんに大きな役割を果たすとともに、翻って我が国のためにもなっていくために万全を期していきたいと、このように考えております。
  121. 久保田真苗

    久保田真苗君 これからも、特に野党の側から、この経済協力に関する基本的な法律をつくって、援助というものが相手国にもいいし、それから日本の国民にも十分納得のいくそういう制度をつくっていただきたいということをこの際お願いしておきます。  そしてもう一点。  ともかく問題は金額が急激にふえていくということなんですね。そして現実の問題として、それが本当に相手の国民の民生の向上というところに役立っているのかということになりますと、そこまでとても知恵や技術が追いついていかないというのが現状だろうと私は思うんです。このように急激にふえていくものがますます公的、私的に利権の対象になる、あるいは日本ばかりじゃなく相手国の中でもそういう対象になる、そういうことは厳に避けなければならないと思いますので、私は、今は例えばこういった面での専門家、それから現地に長く滞在して援助の活動に身をささげている方とか国際機関への拠出をふやしていくことが一つ大事なことではないかと思うんでございます。しかし、マルチのパーセントは決して高くございません。  外務省、どんなふうな状況になっているか、お聞かせください。
  122. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  一国の援助の額のうちどのくらいの部分をマルチに振り分け、どのくらいの部分をバイで行うかということについては、日本は約三割をマルチでやっておりますけれども、これは国際的な横並びで見た場合には妥当な形だというふうに我々は考えております。マルチの援助にはマルチの援助の利点があります。これはその援助国の政治的な思惑等が入らないということ、それから中立的な機関ですから思い切った政策助言を被援助国に対して行えるというような利点があります。他方、バイの援助に関しましても、その国が持っている技術の移転等に関してはいろいろな利点がございます。そういう点で、我々としてはただいま現在の割り振りというものはそれなりに妥当なものではないかというように考えております。
  123. 久保田真苗

    久保田真苗君 諸外国がどうかはよくは存じませんが、聞くところによりますと、海外援助機関、例えばアメリカでは国務省の附属機関である援助専門官庁の国際開発庁というのがあるそうですけれども、職員が五千人ぐらいいるという話でございます。JICAの方はどういう状況でございますか。職員あるいは海外に在駐して海外で働いている職員はどのくらいいるんでしょうか。
  124. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 私、突然の質問なんで資料を今持っていないんですけれども、JICAの人数は、先生がおっしゃったアメリカ援助機関と比べますと約五分の一、千人足らずの人員でございます。
  125. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうもおっしゃるとおりらしいですね。全部合わせても千三百人までいかないらしいですね。そして、JICAの在外事務所というのは四十七カ所しかないんだそうですね。それに対して、アメリカの国際開発庁というようなところは百二十二カ国、つまり途上国のほとんどにそういうものを持っているという状況です。これは行監のお調べでもこういう点が多分問題として指摘されていることだと思いますけれども、人材というものが本当に日本には少ないんですね。  そういう意味で私は、援助の充実をしようと思ったらば、お金をふやすということだけではかえって悪い面が出てくるんじゃないかということを心配します。ですから、マルチをふやすということは、当面、海外で途上国のことを十分知り世界で働ける人が十分に養成されるまでは、日本は国際機関を通じていろいろな疑問の起こらない援助をふやすということ、そして国際諸機関への特に若い方の派遣をたくさんしてそこで人材を養成するということを私はぜひ考えていただきたいと思うんですが、外務省、それから官房長官などは、これは何も外務省の方に限る話じゃございませんので、そういうお考えはないか、伺ってみたいと思います。
  126. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 御指摘のように、マルチにしろバイにしろ援助いたした場合にその援助が適切にその国のためになっておるかどうかということのためには、やはり日本人の人材もそうしたフォローアップのために適切に対応しなきゃならぬと思いますが、残念ながらその人材は現在まことに多いものとは言えない状況でありまして、昨今も国際協力大学のいろいろ構想がございますが、その誘致の御陳情を私、各県からちょうだいをしながらようやくそういう人材養成に本格的に取り組んでおるという時点でありまして、率直に申し上げれば、ファンドを出す資金の量に比べましてその使い方等についてフォローアップすべき我が国の人材が極めてわずかだということについては早急に体制を整える必要があるんじゃないかというふうに思っております。  しかし、先生おっしゃるように、マルチで援助をして、そしてそれぞれの機関に人材を派遣しながら養成したらどうかというお考えも、私、賛成でございますが、そうした人材が残念ながらなかなか見つかりにくいという状況をまずは解消するという努力に今専念しておるというのが現状ではないかと思っております。  御指摘のように、国際社会の中で大いにこれから活躍する人材を養成しつつ、また海外援助と相呼応しながら適切にそうした資金が活用されていくことでなければ本来の目的は達し得ないんだというお考えは私も賛成でございます。また、努力をいたしていきたいと思っております。
  127. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  先生御指摘の実施体制の問題というのは、これは我々も常々非常に大きい問題であるというふうに認識しております。援助の額がどんどんふえるのに比較しましてJICA、それからOECFという実施機関の定員増というのは余り行われておりません。したがいまして、一人で処理しなければならない援助量というのが年々ふえてきているということでございます。何とかこの実施体制を整備していくという形、それから外部のいろんな知識、経験をも取り入れていくということで、そういう実施体制の整備のおくれはありますけれども適正な援助の執行に心がけていきたいと思います。  国際化に対する日本からの職員の派遣ですけれども、これにつきましては、外務省内に国際機関人事センターというものを設けまして、割に若い方を出しましてそういう国際的な場で活躍できる人をできるだけ育てていきたいというように努力をしておる次第でございます。
  128. 久保田真苗

    久保田真苗君 人事センターで一生懸命おやりになって幾らかふえてきていることは確かに認めるんですが、この程度のふえ方でございますと非常に微々たるものだと言わざるを得ませんし、また特にいろいろな途上国の地域に散らばってそこの現地で何年もそこを知り、そこの人とつき合い、そこでやるという人が極めて少ない。例えば、日本は円借款の比率が多くて、円借款を主体とする企業による輸出侵攻といったそしりを受けているのも、そういう人々がいなくて、ただ短期的に自分で高度の製品をつくり高度の設備をつくり、相手国がそれを使いこなせるかこなせないかというようなこともなしにただそこへ、はい、こんないい物をつくってあげました、お使いなさいと言って置いてくるやり方が何にも使われないという結果を招いているんじゃないかと、こう思うわけです。  ですから、人事センターは確かに役に立ってはいただいているんですけれども、もう一つ抜本的に国際機関を通じてプロジェクト援助する。それへの人材を、何もそんな専門家を学校で養成して送り出すというようなことを待っていられない状態だろうと思うんですね。でも、国際機関へ出せば、こちらが資金を供与しようとどうしようとそれは給料をもらいながら現地で本当に泥にまみれて勉強ができるわけでして、何か私はそういう方法を、官房長官のおいでになるところでお願いしておきたいと思います。  それでは、これについてちょっと具体的なことをお伺いいたします。  行政監察をなさった中で小規模無償資金協力の創設を勧告していらっしゃるんですが、外務省はこれについてどういう対応をお考えですか。
  129. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 行政監察の勧告におきまして、今先生が御指摘のように緊急、多様な要請に対しまして適宜効果的な援助を実施する、そのために緊急かつ比較的小規模な援助要請に対応していくための仕組みとして小規模無償資金協力制度を創設すべしという勧告をいただいておりますけれども、これを受けまして今外務省では官房長をヘッドにいたしますタスクフォースを設けまして検討を行っている段階でございます。  したがいまして、現段階では結論めいたことを申し上げることはできませんけれども、私どもとしましては、具体的にこの勧告を受けましてどういうことが可能か、できるだけ早く結論を得たい、こういうふうに考えております。
  130. 久保田真苗

    久保田真苗君 これについて、ここではこういうことを言っているわけですね。「被援助国の要請から援助の決定、実施までに閣議決定、交換公文の署名等の手続を経なければ」ならないから時間がかかると言っているんですよ。そして、規模が今までは比較的大きい案件だったから調査、設計、積算にも時間を要している。しかし、割合に小型の援助要請があったときに、そのために適切な対応が非常におくれているということを言っていまして、だからこういう小さいものについて無償資金協力制度をつくって一括して決定するあるいは簡素化するといったようなことを言っているんですが、これは全くこのとおりだというふうに思って進めておいでになるような状態ですか。
  131. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 今、先生から御紹介ございましたような小規模無償資金協力に関しまして行政監察で勧告を受けているのは、私ども重々承知しております。それを踏まえまして現在検討しておりまして、そもそもどういう形の無償資金協力制度を導入するか、それから導入するとすればどういうメカニズムで動かしていくのが最も適切であるか等々、今検討しております。  先生御質問の個々のメカニズムに関しましては、残念ながらちょっと今結論を得ておりませんのでお答えしかねますけれども、全体といたしましては私どもは何とかこの機会に小規模無償資金協力制度を何らかの形でぜひ導入したいということで鋭意検討をしているところでございます。
  132. 久保田真苗

    久保田真苗君 それから次に、もう一つ勧告がございまして、一般及び水産無償資金協力等の本体予算、これが今はそうなっていないんだけれども事業団交付金に計上してはどうかというのがございますね。この勧告については、事業団の方で契約認証とか支払い業務が実施できるように、それを検討してほしいということなんです。  外務省は、この勧告はどういうふうに検討なさいましたでしょうか。
  133. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 今、先生御指摘の点は、現在の無償資金協力は外務省が一元的に政策を担当しておりますけれども、国際協力事業団に対しましては一括して実施を移しておりませんで、国際協力事業団が実施の促進を担当するという形になっております。今先生が御披露されました行政監察ではそういう実施の促進だけではなくて実施全体を一括して国際協力事業団に移してはどうかという勧告をいただいておりまして、これにつきましても、先ほど申し上げました小規模無償資金協力と同じでございますけれども、現在鋭意どういうふうにこの勧告を受けて外務省として対応するべきか検討しておる段階で、まだ残念ながら結論を得ておりません。
  134. 久保田真苗

    久保田真苗君 何か問題がありますか、これについて。
  135. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) この問題に関しましても今検討している段階でございますので、ちょっと具体的な点に関しまして触れるのは控えさせていただきたいと思いますが、繰り返しになりますけれども、私どもとしては、できるだけこの勧告を前向きに受けとめて、できるだけ援助実施体制の効率化という見地から私どもの考えをまとめていきたい、こういうふうに考えております。
  136. 久保田真苗

    久保田真苗君 じゃ、その点についてはまた検討の結果等を教えていただくことにしましょう。  それから次に、本当にこういう状態だったのかなと思いますのが研修員の受け入れ業務と個別専門家の派遣事業なんですね。これはまさに技術協力中の技術協力でして、これこそは今後日本が考えるべき核になる援助の方法だろうと思いますけれども、ここでは順次事業団の在外事務所に仕事を委譲することが勧告されていますね。  外務省はこれについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  137. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生御指摘のように、技術協力の柱は研修員の受け入れと専門家の派遣でございまして、技術協力に関しましても、先生御承知のように、外務省が政府ベースの技術協力を一元的に担当しております。その枠の中で外務省が政策を担当、それからこれに関しまして実施は一括して国際協力事業団に頼んでおりますけれども、具体的な外務省と国際協力事業団の業務の分担に関しましては、境界線の問題に関しましては従来からいろいろございまして、外務省としても全体としてはできるだけ具体的な業務は国際協力専業団に移管する方針で対応しております。例えば、今先生御指摘の行政監察の勧告をいただく前ですけれども、昭和五十九年にかなり抜本的な措置をとっておりまして、研修員の受け入れに関しましても、それから専門家の派遣に関しましてもかなりの実施業務を国際協力事業団に移しております。  にもかかわらず、先生御披露されましたような勧告を今回いただきましたので、さらに外務省としてどういう具体的な業務を移すことが可能かどうか、今鋭意検討中でございます。
  138. 久保田真苗

    久保田真苗君 もしさっき私が挙げた数字が間違いでなければ、事業団の在外事務所というのは四十七カ所ですか、あると伺っているんですが、五十九年から外務省が事業団へ業務委譲していらっしゃるとおっしゃる。これは二十五カ所なんですね。  そうすると、在外事務所のあるところは大体委譲なすったということなんでしょうか、それともそのうち一部に委譲しておる、こういうことなんでしょうかね。
  139. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生御指摘のように、昭和五十九年は二十五カ国について業務を移しましたけれども、確かに現在国際協力事業団の在外事務所は全部で先生御指摘の四十七カ所だと思いますが、実はそのうち一人事務所というのが非常にたくさんございまして、国際協力事業団の事務所という看板を掲げておりますけれども、なかなか実質的な業務ができる体制にまだなっていないところが残念ながらかなりございます。  したがいまして、私どもとしては、建前としてどれだけ業務を国際協力事業団に移すべきかどうかということに加えまして、実際に国際協力事業団としてそれを受け取る体制ができているかどうかという点も勘案して検討しておりまして、今申し上げたような一人事務所では実質的な業務を外務省から引き受けてやるだけの体制に残念ながら至っておりませんので、まずそういう国際協力事業団の在外事務所の体制拡充という点を私どもとしてはぜひ実現さしてその上で業務を移していきたい、こういうふうに考えております。
  140. 久保田真苗

    久保田真苗君 体制確立とおっしゃるんですが、そうしますと、一人事務所というようなものが一体幾つあって、この在外事務所全部合わせて何人くらいの職員がいらっしゃるんですか。
  141. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先ほど国際協力事業団の全体の職員についてはお話が出たかと思いますけれども、今大体千人弱で対応しておりますが、そのうち在外に配置されておりますのは五分の一以下、私の手元の資料によりますと二百名弱、百七十八名になっております。いずれにしましても、先ほど先生も御指摘の四十七カ所の事務所に今申し上げました百八十名弱の者が配置になっておりまして、一人事務所もかなりその中にあるのが現状でございます。
  142. 久保田真苗

    久保田真苗君 全体として千人弱で、そのうち在外事務所が二百人、一人事務所がある、そういう状態なんですね。私は何も必ずしもJICAの実績、やり方にも満足しているわけではないんですけれども、これでは経済協力の事業団というものがあって実際に開発途上国への援助を行うそれだけの体制は全くありませんね。海外に二百人しかいない、そういう状態でございますから外務省が業務委譲を渋っていらっしゃるのもわからないではないんですけれども、それじゃこの状態で果たしてどうなのかということなんですね。  在外事務所への人員増というようなものは要求なすっているんでしょうか。どのくらい、どういうふうにしていらっしゃるんでしょうか。
  143. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生非常に申しわけございません、今、来年度の予算の概算要求の資料をちょっと持ってきておりませんですが、私の記憶では、来年度、国際協力事業団の定員増を四十三名お願いしておりまして、そのうち半分前後だと記憶しておりますけれども在外事務所関係でございます。
  144. 久保田真苗

    久保田真苗君 そもそも千人と二百人というのは逆じゃないんでしょうかね。むしろ外に八百人いてこちらに二百人ぐらいいるという、そういう状態でなくて、それが逆立ちして極端な頭でっかちだということは、結局、事業団が本気で技術援助に取り組むという体制づくりに全く熱意を持っていないということじゃないかと思うんです。したがいまして、在外の方たちも、要するにコンサルタント会社とか受注事業所とかそういうところのお世話係になり終わっているという、そういう状態なんじゃないでしょうか。  外務省は権限委譲なさらない。これじゃできない。体制が整うまでだとおっしゃるけれども、非常に辛らつな見方をすれば、御自分の手に余るような仕事を外務省が抱えながら、事業団が本来の目的を達成するだけの体制づくりに少しも熱がない、そういうふうに見ざるを得ないんでございますけれども、どうお思いですか。
  145. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 私どもも、これは技術協力のみならず経済協力全般についてではございますが、ぜひ実施体制を強化拡充したい、こういうふうに考えておりまして第四次中期目標におきましてもODAの実施体制を強化拡充していくということが盛り込まれている次第でございます。  そして、技術協力に関しましては、確かに先生御指摘のように、在外をもっと強化する必要があるのはそのとおりでございまして、実は、これは技術協力だけでなくてODA全体について言えることでございますが、私どもとしては、ODAの実施体制の強化拡充というときには在外の公館及び国際協力事業団の事務所等を中心にぜひ拡充していきたい、こういうふうに考えております。  ただ、先生、念のために申し上げておきたいのでございますけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、技術協力に関しましては、この場合は在外公館も含めてでございますけれども、全体の政策決定は外務省が担当しておりまして、具体的な方針が決まりましたらそれを踏まえて実施を国際協力事業団に担当してもらっているのでございます。今御質問の研修員の受け入れに関しましても、それから専門家派遣に関しましても同じでございますけれども、国際協力事業団の事務所は今申し上げましたように当然外務省としてぜひ強化拡充していきたいと思っておりますけれども、そこで全部最初から担当するんではございませんで、例えば具体的に相手国政府がどういう分野の研修を受けたいのか、そしてどういう人を派遣したいと考えているのかというふうな研修員受け入れの最初の打ち合わせは在外公館が当然担当いたします。それで、具体的な業務がその後出てまいります。例えば集団研修の場合につきましては、応募要領の送付とかそれから候補者の推薦書の受理とかそれから選考結果の通報だとか研修員の渡航手続とかそういうようなこと、これは個別研修についても同じでございますけれども、こういうものは国際協力事業団の在外事務所が担当するということでございます。したがいまして、私どもは、在外公館と国際協力事業団の在外事務所がよく連携プレーで対応してほしい、こういうふうに思っている次第でございます。
  146. 久保田真苗

    久保田真苗君 連携プレーというと言葉がきれいなんですが、今おっしゃったように、研修員受け入れの相手国の要望調査をするわけですね。それから年度の計画を通報する。そこに至るまでの、要するに企画面の取引はみんな外務省がおやりになって、事業団の方は、応募要領の送付、候補者推薦書の受理、選考結果の通報でしょう、で、研修員の渡航手続、個別研修にかかわる研修受け入れ要請書の受理、受け入れ可否決定の通報、そして研修員の渡航手続。これじゃまるで交通公社じゃありませんか。これじゃ仕事がおもしろいわけもございませんし、事業団の中から創意工夫が出るわけもないと思うんですね。  行政監察局長さんおいでになりますね。――ここで勧告していらっしゃるようなこういう内容のことが、どうも今お聞きになった限りでは当分行われそうもないというふうな印象を受けるんですけれども、こういうことでよろしいんでしょうか。
  147. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) ただいまの御指摘の点でございますが、先ほど外務省の経済協力局長から御答弁がございましたように、外務省といたしましても在外事務所に対する権限委譲あるいは体制整備等に御努力をされておられるところでございますが、私ども御指摘申し上げました中におきまして、やはり、在外事務所が多様かつ増大する業務に適切かつ迅速に対処いたしまして現地の実情を直接把握している機関として機能を果たしていきますためには、事業団本部の機能の見直しとあわせまして、一つは、一人事務所の解消等必要に応じ在外事務所の体制整備を図る、これと同時に、在外事務所長に対する案件形成あるいはフォローアップ調査等の実施権限の一部付与、それからローカルコスト支援及び現地業務費等、予算執行権限の一部付与の検討など、在外事務所への権限・業務委譲の推進について事業団を指導する必要がある、このように申しております。そしてまた、事業団本部の実施体制につきましても、分野別の事業実施体制の見直しを含めて組織運営の全般にわたる見直しが必要でございますし、また、各部門ごとの業務量と要員配置というものは必ずしもバランスがとれていない面もいろいろございますので、そういう点についても要員配置の適正化を計画的に行う必要がある、そのような総合的な指摘を行っております。
  148. 久保田真苗

    久保田真苗君 大変やわらかい言葉でおっしゃるんですけれども。  次に、全く同じような内容で専門家の派遣事業についても勧告がなされているわけです。その理由は全く同じことでございます。  こういったいわゆる経済協力の中でも、技術協力というのはアジアの地域におきましては特に強く要望をされているものでございまして、これを本当に本気で行おうと思えばその体制がまずなければならないと思うわけですけれども、どう考えても、在外公館の外交官などの方々が、こういう研修員受け入れとか個別の専門家の派遣とかこういったことについて、専門的な分野にいらっしゃるというふうには余り思えないわけでして、それはもちはもち屋にということで人員配置も少し熱を入れてやっていただけないものだろうかと思うわけです。  したがいまして、例えば、仮に今の定員の枠内でも、もっと在外勤務をふやすというようなことは不可能なんでしょうか。これでは実施ができないだろうと私は思うわけです。
  149. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生御指摘の、もう少し本部を減らして在外の方に人を回してはどうかという点につきましては、私どもも十分問題意織を持って検討をしておりますが、本部は本部でも相当また忙しくやっておりまして、私ども決して本部で過剰の職員を抱えているとは思っておりませんので、やはり、望むらくは拡大均衡の形で、どんどん新しい定員を在外に重点的に振り分けるというような形で私どもとしては在外事務所を拡充していきたいと思っております。  ただ、先生御指摘のように、現行の体制の中でもう少し検討する余地がないかという点に関しましては、私どもも問題意識として持っておりますのでさらに検討してまいりたい、こういうふうに考えます。
  150. 久保田真苗

    久保田真苗君 行政監察局の方は、これに対してどういう実施報告なり履行状況なりをお求めになりますか。  また、その実施状況の評価等について、そのフォローアップをなさいますか。
  151. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) 行政監察の結果、勧告いたしました後のフォローアップの問題でございますが、一般的には私ども三カ月後に勧告に対する回答を聴取いたしておりまして、さらに基本的には六カ月後のその後の改善状況報告もいただいておるところでございます。  また、必要に応じまして、その必要がございますればさらにその報告等によりまして推進監察を行うようなケースもございます。
  152. 久保田真苗

    久保田真苗君 せっかくいい勧告をしておられるわけですから、これが線香花火ですぐに忘れ去られてしまって何も改善がされないということではこれは大変残念なことですから、ひとつ中間のフォローアップもよろしくお願いしたい、こう思います。そして、どんなふうに結果が改められるのか、それを人員配置あるいは業務の施行の中でひとつ御報告願いたい、こう思うわけでございます。  今回、総務庁の勧告の中でも触れられていない問題点というのもあるように思うんですね。その第一が、先ほど経済協力基本法というようなことを申しましたけれども、いわゆる四省庁体制の問題なんです。  これは、外務、大蔵、通産、経企という四省庁体制というものが確固としてあって、ほかに経済協力をやっている官庁はたくさんございます。もちろん建設しかり、農水しかり、厚生しかり、労働しかり、そのほかにもたくさんあると思います。こういった四省庁体制の中で他の省庁がやっている仕事というのは、これはどういうふうに取り扱われるわけなんでしょうか。他の省庁はこの体制で満足しているというふうに窓口になっていらっしゃる外務省はお考えなのか、その辺の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  153. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生御指摘のように、現在、二国間のODAのうち、円借款に関しましては四省庁体制ということで外務省が対外的に窓口になって対応しておりますけれども、先ほど来話題になっております技術協力、それから無償資金協力というのはまたそれぞれ別な体制になっておりまして、無償資金協力については、予算は外務、大蔵両省に計上されておりますが、外務省が中心に対応している。それから、技術協力に関しましては、今先生御指摘のように、多くの省庁にわたっておりまして、外務省を含めまして十六省庁が予算を計上しておりますが、その大半は外務省が計上し、政府べースの技術協力については外務省が一元的に関係各省に相談して対応するという形になっておりまして、先生御指摘のようにかなり複雑にはなっておりますが、各省庁のかみ方がいろいろでこぼこは確かにございますけれども、私どもといたしましては、全体としていえば複雑ではございますけれどもそれなりにきちんと機能している、こういうふうに考えております。  ただ、改善すべき点があればこれはできるだけ現行体制の枠内で改善を図っていきたいと思っておりますけれども、基本的には現行体制で十分対応できるんではないか、こういうふうに外務省としては考えております。
  154. 久保田真苗

    久保田真苗君 現行体制でということをいつも強くおっしゃるんですけれども、これだけODAの金額がふえてまいりますと、これはやっぱりよりしっかりした体制が必要じゃないかというふうに思いますし、また十六省庁にもわたるというものを、必ずしもどこが責任を持って統括して全体の総合調整をやっているということでもないと思いますし、現にこの経済協力関係についてさまざまの汚職なども発生しておりますので、私は、ぜひ四省庁体制を含んで体制の問題をもう一回検討すべきだろうと、こう思っております。  そこで、一番象徴的なのが前のマルコス疑惑なんです。随分一生懸命野党も頑張っていろいろとやってまいりましたけれども、その結果として、その当時、予算委員会などで外務省がなかなか受注企業名などを公表なさらなかったんですが、これはその後改善されているわけですね。  どんな形でどのくらいの定期的にやられているのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  155. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生今御質問の具体的な援助案件に関します企業名の公表につきましては、国会でいろいろ御議論いただきましたところを踏まえまして、私どもとしましては、新規の資金協力案件にかかわりまして一部の企業名を海外経済協力基金、これは御承知のように円借款の実施機関でございますが、海外経済協力基金の年報、それから国際協力特別情報と申しまして外務省が所管しております公益法人、国際協力推進協会が出しております雑誌に載せております。  その他、全般の問題に関しましては、私どもとしてできるだけODAにつきましては透明性を確保したい、こういうことで対応してきておりますし今後も対応していきたい、こういうふうに考えております。
  156. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひこの際ガラス張りの透明な経済強力をお願いしたいんですけれども、受注企業名を一部お出しになっているということですが、お伺いしたいのは、どういう企業名をお出しになって、どういう企業名はお出しにならないのか。  そして、今後、出していない企業名についてもお出しになるのかどうか、それをお聞かせください。
  157. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 私どもといたしましては、資金協力案件は、特に円借款はそうでございますが、無償資金協力についても同じことが言えますけれども、相手国政府が実施しておりますのでよく相手国政府と協議の上対応する必要がございますけれども、関係企業名につきましてはできるだけ公表していきたい、こういうふうに考えております。
  158. 久保田真苗

    久保田真苗君 例えば、この前JICAとの間で問題のありましたコンサルタント会社、こういうものもお出しになりますか。
  159. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 今の先生の御指摘は国際協力事業団で実施しております開発調査につきまして関係しております企業名を公表するかどうかという御質問かと思いますけれども、先ほど私がちょっと申し上げましたように、今後相手国と協議する必要がございますけれども、そういう前提でできるだけコンサルタントについても公表してまいりたいと考えております。
  160. 久保田真苗

    久保田真苗君 相手国との協議なんですが、日本では相手国の要請にのっとるという要請主義の方法を大体支持しておられるというふうに伺っているんですよ。ですけれども、相手国や企業のことも大事かもしれないけれども、これは日本国民のお金ですよね。無償援助はもちろん、有償の方もいろいろ間接的に国民のお金を使っていらっしゃるわけでして、大部分が国民の直接の税金等から賄われるわけですから、外務省が一義的にお考えいただきたいのは、そこのところが適正に使われているかどうかということを常に日本国民の側に明らかにしていただかなきゃならないだろうと、こう思うわけです。一部の国では日本からのお金の使途を確認することとか評価の実施について拒否することがあるということを聞くんですが、それは事実なのか。  経済協力の成約に際して、日本からの相当巨額のお金でございますから、アフターケア、フォローアップの実施を私は条件にしていただきたい、こう思うわけです。そうじゃございませんと、例えばこの間のビルマなんかに行っているお金でもバイの八割が日本からですか、そういったようなまさに援助国第一位になっている相手国がかなり多くなっていますし、こういうところできちんとしていくのが何といっても経済協力基本である。それ以外には経済協力をしてかえって非難を受けるということがあり得るわけですから、そういうアフターケア、これを条件にしていただきたいと思うんですけれども、この点はいかがですか。
  161. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) アフターケアに対しましてはまさに先生御指摘のとおりで、私どもも、援助を実施するに当たりましてその結果それがどうなっていくか、それから手当てがさらに必要かどうかという点を定期的にチェックするということは非常に重要だと考えております。  したがいまして、私ども、円借款、それから無償資金協力を供与するに当たりましては交換公文を締結いたしますが、交換公文の中に協議条項等も入れてございますように、それから先生が先ほどちょっとお触れになりました、きちんとこちらが提供したお金を使うという意味で適正使用条項というのも入れておりますし、それから情報提供義務というようなことで、私どもがこのアフターケアと申しますか、フォローアップと申しますか、そういう後でチェックする上で手がかりになるようなものは交換公文にきちんと入れておりまして、そういうものを踏まえまして私どもは実際に援助を実施しましたプロジェクトなどにつきまして追跡調査を行っております。具体的には先生ちょっとお触れになりました評価という形で、私どもかなり力を入れてこの数年やってきております。  ただ、注意しないといけませんのは、評価は、必ずしも私どもが申し入れて相手が断るということはございませんけれども、相手国にとりまして日本の援助というのは、特に例えば円借款がそうでございます、無償資金協力についても同じことが言えますけれども、相手側としては、日本からお金を借りたりあるいはいただいたりして、相手国政府責任で相手国政府の監督のもとにおいて実施しているという自負を持っております。したがいまして、あくまでも個々のプロジェクトは相手国政府の事業でございますので、そういう事業を私どもが後でフォローアップということでチェックしますのは、それなりに相手側とよく打ち合わせをした上で相手側が認める範囲内でするということが重要でございます。そういう意味で、今おっしゃいました交換公文上、手がかりは置いてございますけれども、実際に評価に当たりましては、相手国政府とよく連絡をとっていわば協力するような形で実施して、個々のプロジェクトが所期の効果を上げるように努力しているところでございます。
  162. 久保田真苗

    久保田真苗君 相手方が欲するところを相手国のやりたいようにやるということは、それはまことに結構なことなんです。ただ、それによって効果が上がり、しかも汚職とかそういうことに国民のお金がむだに使われることがないかということについては、日本政府は当然それを審査するのが国民に対する義務なんじゃないでしょうか。ぜひやっていただきたいと思います。どうぞ。
  163. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 今の先生御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、したがいまして、先ほどちょっと私御披露しましたように、円借款にしろ無償資金協力にしろ、交換公文には必ず適正使用条項と申しまして私どもが提供する資金が適正に使用されることを担保する条項を入れてございます。単に交換公文にそれを入れるのみならず、実際におきましても、先ほど来繰り返しておりますように、評価その他の形で私どもとして可能な限りチェックすることにしております。
  164. 久保田真苗

    久保田真苗君 条項を入れてもお飾り物ではしようがないわけです。よろしくお願いします。  ところで、ビルマの話をちょっと出しましたけれども、ビルマは、今、反政府運動が非常に高まっていまして、それに対して国防相が軍事クーデターを起こしたというような事態になっています。  外務省はこのビルマ情勢をどういうふうに認識していらっしゃるか、まずそれを伺いたいと思います。
  165. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  ビルマにおきましては、御案内のとおり、本年七月末ごろから国内民主化をめぐり混乱が継続しております。九月十八日に至りまして国軍が全権を掌握したと。その後、治安情勢は小康状態を保ち、行政機能も徐々に回復しつつございますけれども、国民和解は依然未達成でございます。また、混乱の長期化によりまして経済困難が深刻化いたしておりまして、引き続き懸念すべき状況にあるということでございます。  ビルマの国内の安定が真に回復するためには、国民の総意を反映した民主的な政治解決が達成されることが重要であると。また、これに関連いたしまして、最近国内各勢力が政党を結成し複数政党制のもとでの総選挙に備える動きが見られておりますので、政治情勢はいまだ不透明なところも多く、今後の事態の推移を慎重に見守っていく必要があるというふうに考えております。
  166. 久保田真苗

    久保田真苗君 少なくとも現在のソー・マウン国防相がクーデターを起こしたということにおいて政権としての合法性がなく、また向こうの市民に対する無差別発砲というような事態から見ても非常に残念なことだと思うわけです。  ところで、こういった政権とそれから経済協力関係なんですけれども、ビルマに対する経済協力は日本はかなりやっていたと思いますが、その実績と、現在どういう方針をとっておられるか、それをお聞かせください。
  167. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 私ども、ビルマは重点国の一つといたしまして、従来から円借款、無償資金協力、技術協力の三本柱でかなりの規模の援助をしてまいりましたけれども、先ほどアジア局の鈴木審議官から御説明ありましたような状況でございますので、現在におきましてはビルマに対します援助は事実上停止の状態でございます。
  168. 久保田真苗

    久保田真苗君 報道によりますと、例えばお米の緊急援助というようなことを考えておられるわけですか。
  169. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) しかしながら、今先生御指摘のように、例外的な措置といたしまして、ビルマの方々の主食は御承知のようにお米ですが、それに加えまして食用油も非常に不足するということで、ビルマの本当に困っている人たち約一万二千世帯を対象にいたしまして四十五万ドルの食糧の緊急援助、これは米を中心に食用油も入っておりますけれども、ユニセフという国際機関を通じて援助することを決定いたしました。これは、先ほど私が申し上げました政府ベースの経済協力を今ビルマに対しまして事実上停止しているということの例外的な措置といたしまして、ユニセフという国際機関を通じてビルマの困っている人に直接援助の手を差し伸べるという措置でございます。
  170. 久保田真苗

    久保田真苗君 その政権のあり方、それが独裁政権であったり軍事政権であったりするという状況と経済協力の問題というのは非常に難しい微妙な問題だとは思いますけれども、こういう点につきまして、経済協力は非常に慎重であってほしいということを希望しておきます。  次に、バングラデシュの問題なんですが、バングラデシュでこの八月末ごろ大洪水があったというふうに聞いております。国土の半分あるいは三分の二が水につかるという被害を受けたということであります。そうしますと、これは非常に大きい人口に影響を及ぼした被害だったと思われるんですが、日本はこの災害援助についてどういう内容の援助を行っていますか。
  171. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  おっしゃられましたとおり、バングラデシュにおきましては本年の八月中旬ごろから非常に大規模な洪水が起こりまして、人的災害のみならず農業生産、それから道路、鉄道、通信網と広範な被害をもたらしております。  我が国政府は、バングラデシュ政府の要請にこたえまして、九月の七日に国際協力事業団を通じまして総額三千八百万円相当の医薬品、浄水剤、それから物資運搬用のボート、それからテント等の救援物資を緊急援助として供給することを決定いたしました。なお、これは輸送費等を含みますと約五千万円になります。それからまた、九月の九日に被災地救援復旧のために五十万ドルの緊急援助を行うことを決定いたしております。さらに、我が国政府はバングラデシュ政府に対しまして十九億円を限度とする額の食糧援助を行うことといたしまして、このための書簡の交換はちょうど本日でございますが、ダッカにおいて我が方大使と先方政府との間で行われております。最後に、マルチの方でございますが、我が国政府は、WFP、世界食糧計画でございますが、このWFPがバングラデシュの洪水災害に関連いたしまして実施検討中の緊急食糧援助計画、これに対しましても百万ドルの拠出を行うことを予定いたしております。
  172. 久保田真苗

    久保田真苗君 緊急援助は大変必要なんですが、どうもバングラデシュという国を見ますと、この国は水の国とも言われるそうでございますね。地形的に見ますと、いわば非常に大きい川の中の三角州の上に国があるというようなものですから、いつでも洪水、それから高潮といったものの危険が恒常的にあるということでございます。ところが、ここは大陸で地続きですから、お隣のネパール、ブータン、インドといったような国との関係でなかなか根本的な対策がとりにくいというふうに聞いているんです。  これはどうなんでしょうか。例えば、今度の大洪水も決して一過性のものじゃなくて、上流の方でいろいろなダムあるいは堤防といったものをつくるとかそれから治水で木が切られてそこで保水性がうんと低下したとか、そういうことがどうもあるらしい。ですから、一過性のものでおさまらないんじゃないか。大変気の毒な国だと思いますけれども、その辺はどういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。
  173. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) 今おっしゃられましたように、バングラデシュというのは大きな川が三本、具体的にはガンジス川、ブラマプトラ川、それからメグナ川と大きな川が三本デルタ地域に流れ込んでいるという特殊な地形の国でございまして、平均標高も八メートル程度という非常に平たんな国でございます。したがいまして、先生おっしゃられましたように、バングラデシュにおいては毎年大なり小なり大体洪水はございます。ございますけれども、しかし本年起こりました洪水というのはそれにしても非常に規模の大きなものであったということでございまして、その原因についてはもちろんいろんな要因がございますし、これが決定的だというようなものはまだ明確化されていないと思いますけれども、確かに上流地域におきます焼き畑農業とかあるいはまきにするための樹木の乱伐とかそういったものも大いに影響があるのではないかということでございます。  それからもう一つは、やはりバングラデシュは先ほど申し上げましたように一番下流に面している国でございますので、根本的な対策ということになりますと、上流を占めておりますインドですとかネパールですとかあるいはブータン、さらにはもう一番上までさかのぼれば中国まであるわけでございまして、中国は別といたしましても上流域に関係のある国々を巻き込む形で何か関係国間の協力のための意思統一、それから基盤づくりというようなことを行わなければならないのだろうと思います。それじゃそれをやればいいではないかということになりますが、御承知のとおり、なかなかこの地域につきましては関係国間の意思統一というのも容易ではない面がございまして、今後そういう可能性をも含めて考えていくということじゃないかと思いますが、抜本的な対策をしませんと毎年毎年同じようなことが起こる可能性があるというわけでございますから、先生のおっしゃられたことはまことに貴重な御指摘だと存じますので私どもも念頭に置いて検討させていただきたいと存じます。
  174. 久保田真苗

    久保田真苗君 と申しますのは、日本の外務省が要請主義によっている。これは一長一短なんです。必ずしも悪いとは申し上げないんですけれども、こういう状況の国の場合に、バングラデシュからの要請によってやることというのは実に限界があるんだろうと思うんですね。  そうなりますと、この地域全体の治水とかあるいは必要なダムをつくる、かんがいをする、植林をする、こういうことが一体だれができるんでしょうか。どういうところがやるのがこれは適当なんでしょうか。
  175. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生御指摘の、一般論に関しましては要請主義というのを私ども基本にはしておりますけれども、私どもも、状況によってはオファー方式、つまり私どもが協力可能な分野を事前に詰めまして相手国に提示をするということも考えたいと思っております。  今の先生御質問のバングラデシュに関しましては、近く私どもの局の課長を団長にした事務的なミッションを派遣しまして、先ほどから御指摘ございます洪水問題につきましても、そもそも論にさかのぼって打ち合わせをしたい、こういうふうに考えております。単に受け身でバングラデシュが日本に要請してくるものだけを受けとめるのではなくて、私どもは私どもなりにいろいろ分析をしておりますので、そういうものを踏まえて相手側、バングラデシュ政府と今回のミッションで打ち合わせをしてまいりたいと思っております。
  176. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、必然的に近隣国との間の話し合いあるいは折衝、調整、取り持ち、そういうことをなさるということにもなってくるんでしょうね。どうなんでしょうか。
  177. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先ほど鈴木審議官から御指摘ございました三大河川はいずれもインドから流れ込んでおりますし、一番中心はやはりインドとどういう話し合いをしていくかということでございますけれども、歴史的に見ましてなかなか国際的な意味のある河川というのは政治的にも微妙な問題をはらんでおりますので、私どもも現段階でこれをどういうふうに取り上げていくかということに関しましてまだ最終的な結論は得ておりません。けれども、先生御指摘のように、そもそもさかのぼれば当然のことながらインド政府と話し合いをするということが必要になってこようか、こういうふうに考えております。
  178. 久保田真苗

    久保田真苗君 例えば、国際機関を使うというようなことが有効だというふうにはお考えになりますか。
  179. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 国際機関の問題もあわせて検討しておりますが、その場合どの国際機関かということになります。私ども、繰り返しになりますけれども、まだちょっと暗中模索の段階でございます。問題意識は十分持っておりますけれども、対応策になりますとまだ暗中模索でございまして、いわば御質問の国際機関に関しましても、例えば世銀などを含めて一緒に話し合っていくということも一案かと思いますけれども、まだ明確な対応策に突き当たっておりません。
  180. 久保田真苗

    久保田真苗君 じゃぜひミッションでそもそも論から出発して有効な対策をお考えいただいて、毎年毎年というような状態を、何とか日本がその一助を担って脱却できるように御努力いただきたいと思います。  次に、これは外務省の所見をちょっと聞かしていただきたいんですが、チリのピノチェット軍事政権に対する国民投票が不信任という結果になったわけであります。この結果に対してどういうふうに外務省はごらんになるか、お聞かせください。
  181. 坂本重太郎

    政府委員坂本重太郎君) 御案内のとおり、十月の五日、チリにおきましてピノチェット大統領に対する信任、不信任を問う国民投票が行われました。その結果、信任が四三%、約三百十一万票、不信任が五四・七%、約三百九十五万票、白票、無効票が二・三%、約十六万票という結果になりました。  我が国政府といたしましては、基本立場としまして次の四点ほど申し述べることができるかと思います。  第一点は、今回の国民投票がチリの憲法の規定に従いまして民主的かつ平穏裏に実施されたことを日本政府としては評価したいという点。  それから第二は、ピノチェット大統領みずから今回の国民の意思は尊重したいという発言をしておりますのでこれを歓迎したい、こう思っております。  それから第三番目は、我が国としてはチリの国民が憲法の規定に従って民主的に表明したその意思は大いに尊重してまいりたい。  最後に第四点といたしましては、今回のこの国民投票の結果、チリの政情、経済情勢が流動化しないことを望みたい。むしろ安定化、民主化の方向にいくことを期待したい。  これが我が国の基本的な立場でございます。
  182. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは次に、防衛施設庁、それから文化庁に対しまして質問があります。  池子住宅建設予定地にかかる問題でございます。  文化財関係についてまず伺います。  提供区域内の米軍住宅建設予定地について、文化財の分布調査及びそれに引き続く試掘調査が実施されているわけです。しかし、計画区域以外の地域は空白地域としてまだ何もそういった分布調査も行われていないわけです。この建設予定地以外のところにも当然相当量の文化財が埋蔵されていると考えますけれども、その調査をする必要性について文化庁、それから防衛施設庁はどういう認識をお持ちでしょうか。
  183. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 御説明をいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、池子の米軍住宅建設予定地につきましては、本年四月からこの地域のいわゆる埋蔵文化財に関します試掘の調査を実施しておるところでございますけれども、ただいまお尋ねのございましたいわゆる米軍住宅の建設予定地外の地域につきましては、これまでの経緯等もございまして現時点では神奈川県教育委員会としては直ちに調査を行う計画は有していないというふうに聞いておるところでございます。
  184. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) 計画区域内の文化財の調査につきましては、先ほどから先生がおっしゃられたとおり、分布調査をいたしまして、それから試掘調査の実施方法などについて同県と調整してまいりまして、現在その試掘調査が実施されているところでございます。  御質問の計画区域外の調査でございますけれども、昨年の末に神奈川県から、計画区域外の調査を行うための立ち入りにつきまして米軍との調整方依頼がございまして米軍に照会いたしましたところ、現に米軍が管理しそして使用している土地であるということ、それから現状を変える計画はない、こういうことから米軍の同意が得られなかったわけでございます。その後再度米軍に照会いたしましたところ、前回と同様の回答を得ているという状況でございます。
  185. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは、結局、米軍がそれを断っていると、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  186. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) 私どもといたしましては米軍に意向を照会しましたところ、米軍の方で同意を得られないということでございます。
  187. 久保田真苗

    久保田真苗君 この分布調査がまだ行われていない空白地域について、逗子市の方からは分布調査の要請を受けていらっしゃいますか。
  188. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 御指摘の事業計画区域外の施設内の文化財調査につきまして、ことしの三月二十四日に逗子市長より文書で、また九月五日付で同市の教育長より申し入れがあったことは承知しております。
  189. 久保田真苗

    久保田真苗君 それは、発信者名はどこで、どういう形でお出しになっていますか。
  190. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 先ほど申し上げました三月の申し入れにつきましては、発信者が逗子市長富野暉一郎、横浜防衛施設局長あてに要請という形で、提供区域全域の調査を要請していたにもかかわらず、その後不許可の方向を伝えられておるが、空白地の調査が実施できるよう改めて要請するといった内容のものでございます。  それから、九月のものは、逗子市教育委員会教育長からやはり横浜防衛施設局長あて、地元の教育委員会として所掌業務の一環としてその状況を把握したいため、職員の地域への立ち入りについて御配慮されたいという内容のものでございます。
  191. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういういろいろな要請がこれは施設局長あてということであるということですが、これに対して今後どういう方針で臨まれるのか、それを伺いたいと思います。
  192. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) まずお断りしておかなきゃならないことは、提供施設区域への立ち入りという問題につきましては、一般的に立ち入りを要望する方が現地の米軍に申し出るというのがこれが普通の形でございます。  この池子の文化財調査につきましては、防衛施設庁が、ここに住宅を建設するという計画がある、いわば土地の形質を変更する原因者としてこの調査にお手伝い、協力をしているという立場で、それと関連があるということで先ほど申し上げました逗子市ないしは教育委員会の申し出も米側に取り次いだということでございますが、これはそれぞれ米軍の意向を確認してお断りを申し上げたということでございます。  今後またどういう申し入れがあるか私ども存じませんが、それは何かそういう申し出があった時点で対処したいと考えております。
  193. 久保田真苗

    久保田真苗君 現在行われている試掘調査で古墳時代から奈良、平安時代にかけての構造物の遺構とか遺物が出土しているわけです。  で、その後の調査結果について文化庁に伺いたいと思います。
  194. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 御説明いたします。  御案内のとおり、昨年の暮れから本年の春にかけまして神奈川県教育委員会によりまして埋蔵文化財の分布調査が行われ、またその結果、埋蔵文化財が包蔵されている可能性が高いと想定されております区域につきまして、今年度に入りまして、具体的には神奈川県の埋蔵文化財センターによりまして試掘調査が実施されておるところでございます。  神奈川県からの報告によりますと、現在までに調査予定区域を十四区域ばかり想定いたしておるわけでございますけれども、そのうちの一部につきましては既に調査を終了し、残りの区域につきまして引き続き調査を実施しておる途上にあるわけでございます。  なお、まだ途上でございますけれども、これまでの試掘調査の結果によりますと、いわゆる埋蔵文化財包蔵地ではないということが明らかな区域になったところもございますけれども、全般的には古墳時代から奈良、平安時代にかけましてのいわゆる住居跡あるいはそれらの時代を主体といたします土器など、さらには中世の陶器なり磁器などの遺構や遺物が確認されておるというふうに聞き及んでございます。
  195. 久保田真苗

    久保田真苗君 大変古い時代のものが出土しているんですけれども、まだ途上におありになる部分もあるわけですけれども、今後のスケジュールとして、試掘調査のスケジュールはどうなっていますか。
  196. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 神奈川県教育委員会からの報告によりますと、試掘調査は本年度いっぱいを目途に進めていきたい、こういう予定であるというふうに聞き及んでございます。
  197. 久保田真苗

    久保田真苗君 今年度、三月まで続けて、それで大体終了できる、こういうことでございますか。
  198. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 試掘調査の計画といたしましては今年度中を目途にということで進めてございますけれども、今後の推移の中で、例えば本年度は御案内のとおり大変雨の時期が多いわけでございますけれども、そういう予想できない事情等が出てまいりますとまた時間的な変動も出てこようかと存じますけれども、現時点では今年度中という計画で進めてまいりたい、こういうふうに報告をちょうだいしておるところでございます。
  199. 久保田真苗

    久保田真苗君 調査結果というのは、この三月時点までのところで一応報告がなされるわけですか。
  200. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 調査が終わりました段階で一定の調査の結果について取りまとめを行うというのが通常の例でございます。
  201. 久保田真苗

    久保田真苗君 これまでのその試掘調査の結果を見てみますと、これは試掘ということなんですが、もっと本格的にこれは調査する必要性があると思いますけれども、今後その本格調査などについてはどういう方針で対処なさいますでしょうか。
  202. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 先ほど来申し上げておりますように、第一義的には神奈川県教育委員会の方で取り組んでおるわけでございますけれども、現在行われております確認調査は、いわゆる埋蔵文化財の範囲なり性格などを把握するという趣旨で行っておるわけでございます。  お尋ねがございましたその後本格的な調査を実施するかどうかということでございますけれども、これは、現在進行中でございます確認調査の結果等を踏まえまして、神奈川県教育委員会の方におきまして所要の手順を経て決めていくことになろうかと承知をいたしてございます。
  203. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうすると、今おっしゃる今年度中というのが大体こういう確認を終えるという時期、そういうめどですね。
  204. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 先ほども御説明いたしましたように、現在進めてございます確認調査、いわゆる試掘調査でございますが、これは現時点では今年度いっぱいを目途に進めてまいりたい、このように報告をちょうだいしてございます。
  205. 久保田真苗

    久保田真苗君 確認調査の結果、ぜひ本格調査へ進んでいただくように希望しておきたいと思います。  それで、施設庁の方はいかがでしょうか。試掘調査の今後のスケジュール、それは施設庁の方はどうなんでしょうか。
  206. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) 試掘調査のスケジュールでございますけれども、現在ほぼ四〇%程度できているんじゃないかというふうに報告を受けているわけでございます。これは県の方が実施されております試掘調査を我々防衛施設庁としてお手伝いさせていただいているという立場からそういった報告が入っているわけでございますが、先ほど文化庁から答弁ございましたように、三月末を目途に試掘調査を終えたい、このように考えておるところでございます。
  207. 久保田真苗

    久保田真苗君 施設庁の方は、この試掘の結果、本格調査の必要性についてはどうお考えでしょうか。必要があるというふうに思いますけれども、これからの御方針はどういうことでしょうか。
  208. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) 文化財の取り扱いにつきましては環境アセス条例の手続の中でいろいろと言われているところでございまして、私どもといたしましては神奈川県と今後ともよく調整をしてまいりたいというふうに考えております。
  209. 久保田真苗

    久保田真苗君 文化庁に伺いますけれども、シロウリガイ化石調査国会でも前に質問が出ていますけれども、シロウリガイの化石調査状況はその後どうなっていますでしょうか。
  210. 大澤幸夫

    説明員(大澤幸夫君) 私どもにお尋ねでございますけれども、これまでの経緯なりもございますので、あるいは防衛施設庁さんのサイドからお答えをいただいた方が適当かと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  211. 久保田真苗

    久保田真苗君 はい。
  212. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) お尋ねのシロウリガイの化石の調査でございますが、このシロウリガイの化石につきましては計画区域内で西側のブロックの丘陵でその露頭が発見されておりまして、この調査につきましては、環境影響評価書の中で「シロウリガイ化石については、関係機関と調整をし適切な措置をとることとする。」、こう書かれているわけでございまして、これに基づきまして私どもは神奈川県と調整をいたしました。その結果、現地調査等を実施することといたしておりまして、現在、その調査のための準備を行っている段階でございます。
  213. 久保田真苗

    久保田真苗君 実施をする方向で準備中と。  これ、例えば調査員なんかは決まりましたんですか。どういう方が調査をされますか。
  214. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) 調査をする方々でございますが、一応専門家の方々にお願いをしているところでございまして、海洋の専門家、それから古生物、それから地質、こういった専門家の方々にお願いをしているところでございます。
  215. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、この調査の目的はどういうことを明らかにするということでございますか。
  216. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) この西側の丘陵地で発見されましたシロウリガイの化石につきましては、環境影響評価書でも申し上げておりますように、その保存方法などの資料を得るというのが目的でございます。
  217. 久保田真苗

    久保田真苗君 もうこの調査員は全部決まっておりますですね。
  218. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) ほぼ定まっております。お願いしてございます。
  219. 久保田真苗

    久保田真苗君 それじゃ、いつごろからどのくらいの期間かけて何回ぐらい立ち入りをやって調査なさる御予定でしょうか。
  220. 田原敬造

    政府委員(田原敬造君) ただいま先生方にお願いをした段階でございまして、まだそういった具体的な計画はこれからいろいろと御相談させていただいて決めていきたいと思っております。
  221. 久保田真苗

    久保田真苗君 施設庁にお伺いします。  河川協議の問題なんです。これは、新聞報道を拝見したんですけれども、報道されたように池子川のつけかえを行わない、ただ調整池だけを設置するという、そういう工事の検討をしていらっしゃるんですか。
  222. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 池子川の調整池を設置することに伴います河川協議につきましては、昭和六十二年の十二月末に協議書を逗子市長に提出いたしまして、その後再三にわたりまして横浜防衛施設局長が逗子市長と会談するなど、協議に応ずるように要請しているところでございます。しかし、逗子市長が、池子川の管理は国から機関委任されているということ及び当然のこととして河川協議に応じなければならないということ、こういうことを再三にわたって公に発言されているのでございますけれども、住宅建設の可否を含めた事前の調整がなされていないという理由で現在まで協議に応じていないというのが実情でございます。  調整池の設置につきましては、逗子市から要望のあった施設外の洪水対策、こういうことにも十分配慮をしておりますし、またこの調整池の規模を決める過程におきましても、環境影響評価の手続を通じまして逗子市の意見を聞きまた神奈川県の指導も受け、また県知事の調停に際しましては逗子市長の意見も取り入れて調整池を開放型にするなど、事前の調整は逗子市等と十分行っているところでございます。  防衛施設庁といたしましては、河川協議が滞っている現在の状況におきまして池子川の調整池を設置する工事をどう進めていくかということについて苦慮しているところでございます。工事の進め方についていろいろの検討をしているということは事実でございます。
  223. 久保田真苗

    久保田真苗君 苦慮して、そしていろいろな方法を検討ということなんですが、この新聞で見ますと「横浜防衛施設局は十日、建設の前提になる池子川改修のための河川協議が、富野市長の反対で始められないことや工事入札が終わっていることを理由に「とりあえず、建設予定地内だけの治水工事を先行させる検討を始めた」ことを明らかにした。」。  そうしますと、この意味は、とりあえず米軍住宅建設の開発に伴う洪水対策だけに絞って小規模な調整池で洪水調整をして、当初のように池子川のつけかえ工事なしに今の池子川に流す、こういうふうに新聞報道で読めるんですけれども、それを想定して計画の変更を考えていらっしゃるというふうに出ているんです。  これ、そうなんでしょうか。
  224. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 先ほど申し上げましたように、河川協議が滞っている状態でどういう工事を進めていけばいいかと種々検討しているということでございますけれども、これは現在検討中の問題でありまして、まだどういうことを考えているかと申し上げる段階ではございません。
  225. 久保田真苗

    久保田真苗君 逗子市から横浜防衛施設局へ照会をしているんです。でも、その返事が全くないということなんですけれども、これはお返事がまだ決まらないから出さないのか、それとも何か別の理由でお出しにならないのか、それはどういうことでしょうか。
  226. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 新聞記事をもとに御照会をいただいているという状況で、これにお答えしなきゃならぬかどうかという問題もありますけれども、先ほど申し上げましたように、まだ検討中の状況で答えられない状態であるということは事実でございます。
  227. 久保田真苗

    久保田真苗君 施設局は、照会があって一カ月も二カ月も返事なしにほうっておかれるのでしょうか。例えば、検討中なら検討中だというお返事とか、何かそういう応答があってもよろしいのではないかと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  228. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 先ほども申し上げましたように、回答すべきものかどうかという問題もございます。必ずしも返事をしなきゃならぬというふうに考えておるわけではございません。
  229. 久保田真苗

    久保田真苗君 困りましたですね。  検討をしていらっしゃる。今検討中なんです。ずっと検討中なんです。で、その検討の内容ですね、何を検討していらっしゃるのでしょうか。結論はまだ出ていないということ、それは結構ですけれども、何を、どういうポイントを検討していらっしゃるのでしょうか。
  230. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 河川協議が滞っているという現状においてどういう工事の進め方があるか、また進められるかということでございます。
  231. 久保田真苗

    久保田真苗君 つまり、幾つかの案と申しますか、幾つかの方法があるというふうにお考えですか。
  232. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) 複数の案はあり得ると思います。
  233. 久保田真苗

    久保田真苗君 その複数の中に、池子川のつけかえはやらない、やらないで調整池だけ設置する、それもございますか。
  234. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 防衛施設庁といたしましては、先ほど担当部長からるる御説明いたしましたように、昨年から河川協議に応じてほしいと逗子市に何回もお願いをしております。また、現在の逗子市長は、この案をつくる過程でもみずから参加されて、調整池をつくるということについても参加されたわけだし、そのつくり方について も御意見を言われたわけであります。そして、そういう前提でございますから、調整池をつくるためには河川を改修しなきゃできないわけでございますから、河川改修は当然認めるという前提に立っているはずであります。しかし、昨年の十二月以来礼を尽くしてお願いしておりますけれども、返答がございません。また、河川改修そのものとは直結しない池子に住宅をつくることがいいか悪いかという点を議論しなければ、非常に技術的な河川協議であるものに応じてくださっておらない。しかも河川協議については、市長は、これは国の機関委任事務でもあり河川協議には応じなきゃいけないということを公式に何回も言っておられたにもかかわらず、現実にはなかなか回答をいただいていないし、協議にも入ってこられない。  我々は、今でも原則としてこの協議に応じていただくことを現在考えております。しかし、今言った前提でやってきました河川改修、調整池の設置の契約が、もう昨年度末に契約して一部進んでいるわけであります。文化財の調査もその一環で行われているわけであります。我々の願望は、なるべく早く逗子市において協議に応じていただくことが願望でございまして、その他の検討についてはすべてそれを実施していただくことが前提でございますから、あくまでも内部でいろいろ考えている、そういう状況でございますので、どうかもう既に認められた予算に基づき、しかも逗子市長側も積極的に参加してここまできた河川協議について応じていただくことを強くお願いする次第でございます。  どうかよろしくお願いいたします。
  235. 久保田真苗

    久保田真苗君 それは両者のお話し合いによるものなんですけれども、逗子市長のお出しになった提案というものもあって、いろいろ今防衛施設庁がお考えになっていないような提案もあったかと思うんですが、そういうものが余り取り上げられていなかったということじゃないかと思うんですね。  ただ、そのお話し合いをなさいましたときに、神奈川県知事の調停案に基づいたアセス評価書、これがあるわけですね。まあいろいろな方法をお考えになったとしまして、例えば池子川のつけかえをどうするかということについても、これは評価書の中にあるわけなんですね。  私、聞くところによりますと、防衛施設庁は今までも知事の調停案を尊重していく、いつもそう言っていただいているわけなんですけれども、仮に、こういう知事の調停案に基づいたアセス評価書の変更になるような事態が発生したとしたらば、それは調停案の破棄になるんでしょうか。それともそういう場合はどういう手続がとられるのか、参考のために聞かしていただきたいんです。
  236. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 我々は、先ほど来申し上げましたように、逗子市においてなるべく早く河川協議に応じていただくことをこいねがっておるわけであります。そうしますと知事の調停案はスムーズに実施されることになります。したがいまして、我々はあくまでも知事の調停案を守りながら前進したいと念願しているところであります。
  237. 久保田真苗

    久保田真苗君 このことを一応離れまして、例えば知事のアセス評価書にそれと違う案があってそれで実行したいというときは、それはどういう手続が必要になりますか、一般的に言って。
  238. 池田久克

    政府委員(池田久克君) もちろんその場合、仮にそうだとしても、最終的なターゲットは知事の調停案を実施するということでございますけれども、その過程でちょっと寄り道するとか足踏みするとかというようなことが状況によっては出てくると思います。それはよく県側とも相談しなきゃいかぬ事態になろうかと思いますけれども、現在の段階では具体的に今どういうふうにするかというしかとした案が定まっているわけではございませんので、今の段階では具体的な手続等はちょっと説明できかねる状況でございます。
  239. 久保田真苗

    久保田真苗君 調整池につきまして、私いろいろな角度から物を申し上げるんですけれども、逗子市に池子米軍家族住宅建設計画を提起する以前に逗子市から調整池の必要性について要望があったんではありませんか。
  240. 鈴木杲

    政府委員鈴木杲君) この住宅の建設計画を逗子市に御相談した際に調整池の問題が市側からの要望として出されたということは承知しておりますが、それ以前のことはちょっと突然の御質問ですのでよくわかりません。承知しておりません。
  241. 久保田真苗

    久保田真苗君 伝えられていますように、このアセス評価書に基づいて調整池をつくるということになっていたわけですけれども、例えばその調整池の規模を小さくするとか、全体を対象とするものじゃなくて住宅建設予定地だけを対象にするとか、そういったかなり大きい変更がある場合には、例えば施設庁が三島氏と以前お交わしになったそういう地元の要望から見ると、これは地元の要望が無視されるということになると思うんですけれども、それについてはどういうふうな対処を考えられますか。
  242. 池田久克

    政府委員(池田久克君) これは知事の調停が出ます前、現在の市長の前の市長の段階で地元が受け入れるという際の条件として幾つか示された中に入ってございます。で、我々は、これを基本にして、さらに現市長の意見も取り入れてそして調整池をつくることにしております。この考え方はいささかも変えておりません。  そのためには、現市長も認めてみずから発言しておられるように、河川の改修ができなければこの調整池の設置ができないのであります。そしてこの調整池をつくるということは、住宅をつくるためだけじゃなくて、洪水対策にも貢献しようという地元の要請を受けて我々はやっておるわけであります。その分高くついていることは事実であります。どうかこの河川の改修の方を認めていただきたい。我々は、この調整池の設置についていささかも最終的に変える意思は毛頭ございません。地元の皆様の御要請にも従うべく現在考えております。ただ、それが、肝心のその河川の改修ができないということになれば少し待たなければいけない、そういう状況なんであります。決して変える意思はございません。
  243. 久保田真苗

    久保田真苗君 調整池についての池子川とのつけかえ工事、この初期の計画をお変えになるということではなくて、あくまで逗子市長との河川協議を推していかれるという御方針と承りました。  それでは、私、本会議の質問でちょっと申し上げて、余りはっきりしたお答えをいただいていないんです。  それは、アメリカ国防省の公式報告である「ソ連の軍事力」という報告書がございます。その中で、アメリカのとる前方展開戦略というのがあるんですね。それを読んでみますと、ヨーロッパでもってソ連と戦争が起こった場合に、極東のソ連軍をヨーロッパに移動させないために極東で戦火を開くといったようなことがはっきり書いてある。これは、私は何としてもちょっといただけない考えだと思いますが、こういうことが明らかに書かれていることについて防衛庁長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  244. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 米国の基本的な戦略は抑止戦略でございまして、この点は委員指摘の国防報告その他アメリカの各報告書に詳しく説明してございます。その関連で米国といたしましては、ソ連が自己に有利な地点それから時期において戦争を遂行するということを防ぐこと、それがその抑止の非常に重要な部分であるというふうに考えている次第でございます。そういう思想に基づいてただいまの御指摘の部分が叙述されているというふうに我々は見ております。
  245. 久保田真苗

    久保田真苗君 抑止にしても何にしても、こういうのは決して専門誌ではなくて一般の情報誌によく引用もされているんですけれども、もしこれが逆で、アジアで戦争が起こった場合、ヨーロッパのソ連軍をアジアに移動させないためにヨーロッパで戦火を開くとこれが逆になっていたら、とてもヨーロッパの国はこれが出ただけで黙っていないだろう、どうして日本はこんなにおとなしいんだろうという声がよく聞かれるんです。さっき天皇に関してのサンとスターの記事に対して抗議文が現地の大使から出ているということなんですが、これに対してはもっとそれ以上に抗議すべきことじゃないかと私は思うんですね。それはもう政府が、問題だ、こんなことじゃとても一緒に共同はできないと。これは、アジア人を犠牲にしてヨーロッパを助けよう、はっきりそういう考え方になるんだろうと思うんですけれども、その点はどうお考えでしょうか。
  246. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま申し上げましたとおり、アメリカのねらっておりますところは世界的な規模において戦争を抑止するということでございまして、この点は我々としても異議を挟むべき性質のものではないと思います。アメリカのこういう叙述につきましては、我々もアメリカと協議を通じましていろいろどういうことを意図しているかということを聞いております。そういう過程において、アメリカ側ははっきりとアメリカの政策はあくまで抑止の戦略であってそれをグローバルな規模で抑止しようというものであるという、そういう確認を得ております。
  247. 久保田真苗

    久保田真苗君 アメリカはあくまで抑止というけれども、幾ら抑止であってもこれは余りにも穏やかじゃないですね。一体、アジアのどの国がアメリカに対して、これについて一言言うべきなのか。  外務省はアメリカとはお話し合いはなすったんですか。なすったんですよね、今の御発言だと。
  248. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 私は防衛庁でございまして、いろいろなところで米国と協議する機会がございまして、そういう協議の場においてこういうことも話題になっております。そういうところで我々としてもそのアメリカの意図というものを確認するということはいたしております。
  249. 久保田真苗

    久保田真苗君 防衛庁長官、どうでしょうか。前方展開戦略という、いわゆる東洋で日本の周辺で第二戦線を開くという、そういう構想があって、その構想に乗っけられて幾ら抑止とはいえ自衛隊が日米共同作戦を展開するようなこと、防衛庁長官、こんなの本当に受け入れられますか。
  250. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 御承知のように、今、INFの条約の批准あるいはまたイラン・イラク戦争等、非常にデタントの傾向にございますけれども、現実はやはり米ソを中心とした東西の軍事対峙というものが依然として存在するわけでございます。したがいまして、国際社会の平和だとか安全だとかというものは依然としてやはり力の均衡による抑止というものによって支えられているという考え方に立って抑止というものをアメリカは強く主張し、また今後もそういうことを中心にして世界の平和、安定を図ろう、こういう考え方でございますので、私たちとしましては、こういう一つの世界の軍事的な状況を背景にしながら節度ある防衛力の整備を図る、また日米の安保体制の信頼性を確保するという立場からこれを眺めているということを御理解いただきたいと、こう思うのでございます。
  251. 久保田真苗

    久保田真苗君 抑止とおっしゃるんですけれども、これはヨーロッパにとっての抑止ではあってもアジアにとってちっとも抑止じゃないんですね。極東で戦線を開くということが抑止だというふうにごらんになるのかもわからないけれども、実際にはこういった第二戦線構想というのがひとり歩きして、今回の防衛白書なんかで見ましても自衛隊任務というものが何かこういうアメリカの作戦にもう一つリンクされている、そういう感じを受けざるを得ないんですね。  さっきサンとスターのことを言いましたときに、余りにも侮辱している、余りにもひどい、そういう表現を使って答えておられます。もちろん、それは外務省の方が。でも、これは余りにもひどい言い方じゃないでしょうか。つまり、よそのところのためにここに戦火を開く、これは憲法の言っている平和主義にももちろん反しますし、それから政府がおっしゃっている専守防衛とかそれを守っていくというようなこととは全く相入れない考えですよね。こういうことが言われているときに、私は黙っている手はないと思うんですね。これはやっぱり一言報いていただきたいと思うんです。どうかぜひ新しい防衛庁長官にそれだけの勇気をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  252. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 世界的な規模でのいわゆる戦争に対する抑止という意味でのアメリカの考え方、主張でございましょうが、このアメリカの出過ぎに対しては、私たち防衛庁として節度ある防衛力の整備というこの目標に向かってただすべきはただしていくということにいたしたいと、こう考えております。
  253. 久保田真苗

    久保田真苗君 せっかくこういう「ソ連の軍事力」とか米国防白書というようなものは翻訳までして非常に皆さん勉強なさるんですが、肝心のところで、余りにもひどい、余りにも侮辱しているというようなものはひとつぜひおたしなめ願いたい、それで撤回していただきたい、こう思います。  次に、世論調査の件なんです。  自衛隊防衛問題に関する世論調査の結果が公表されておりますね。これにつきましては、防衛予算については「増額した方がよい」と考える人が一一・二%、「今の程度でよい」と考える人が五八・〇%、「今より少なくてよい」と考える人が一九・二%というふうに出ていまして、いずれにしましても、これの分析をする方たちの分析はこんなふうな感じで言われているんです。「今の程度」と「少なくてよい」と合計で七七・二%の人が自衛隊の増強なんて望んでいないんだ、そういうふうな結果だったと私は思うんですね。  長官はどういうふうにごらんになりますか。
  254. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 防衛白書にも一月の世論調査の結果を載せさせていただきました。今回総理府で調査いたしますときには、いろいろカード等を示しまして、諸外国の防衛の比、我が国の場合は一・一%ちょっと超えたという数字等もお示しして、それら全体的なものを見た上でこのアンケートに応じていただいておるというものでございまして、今回、先生先ほどありましたように「今の程度でよい」というのが五八%というのを記録したわけでございます。  私どもとしましては、この「今の程度でよい」という考え方は、これは現在政府が中期防衛力整備計画に基づいて五カ年計画、本年三年目でございますが、でやっておるいわゆるモダレートなというか、節度を持った防衛力の整備という方針については大方了解していただいている。この「増額した方がよい」と合わせますと大体七〇%でございますが、他の調査の方で、例えば「わが国の防衛のあり方」の日米安保と自衛隊というものの二つの組み合わせで我が国を守るという考え方もおおむね同じ程度の数字を示しておるわけでございまして、現在の基本的な私どもの防衛力整備の姿勢、防衛のあり方というものについては国民の大方の方々に了解いただいているというように解釈しておるわけでございます。その旨を本年版の白書にも記載さしていただいたという状況でございます。
  255. 久保田真苗

    久保田真苗君 確かに私は、自衛隊に反対だ、そういう結果だとは申し上げていないんですよ。防衛予算は「今の程度」あるいは「少なくてよい」、そういう人が八割近いですよ、そういう結果が出ています、こう申し上げているんですね。  官房長のおっしゃるそのことは、中期防、それが支持されているんだと言うなら、それならばそういうふうに質問すべきなのであって、一体どれだけの国民が、私たちこの内閣委員会にいたって内容をつかむのにああでもないこうでもないと質問しなきゃ何もわからないような、そんな中期防なんてものを理解しているんでしょうか。ただ自衛隊防衛庁の予算が毎年聖域のように突出してふえている、増額に次ぐ増額だ、ことしも六%以上の増を予定しているというような、そういう非常にわかりやすい形で国民は受けとめているのでして、つまり防衛費は聖域じゃないんです。普通の予算を上回って大きく毎年毎年伸びていくようなそういうことに国民は共感をしていない、そういう結論だろうと思いますよ。それはもっと単純に考えるべきなので、中期防がどうかということだったら、その中身を詳しく出して質問をなさらなければとても一般国民理解されるような代物じゃないと思うんですね。  同様に、防衛力の規模について、つまり三つの自衛隊について増強を望む者、確かにそれはいますよ。一〇%ないし一五・二%ですね。でも、増強ではなく、現状維持あるいは少なくてよいというのがやはり七割から八割という比率を占めているわけでして、これは増強を望んでいないという結果だろうと私は思うんです。これは総理府がやった調査でございますから、私は決して防衛庁に悪い目が出るような意図でやったものじゃないと思うんだけれどもこういう結果になっておるんですね。  ところが、官房長のおっしゃったような非常に我田引水と言っては失礼なんですけれども、現在の体制や防衛基本的あり方を国民は支持していると防衛白書にもそういうふうに書いていますね。どういう理由で官房長のおっしゃるところまでのそういう結論になるのか、私にはとても理解できないんですけれども。例えば、予算額は毎年六、七%ずつ増額されている。防衛力の規模についても毎年毎年の増員なんです。兵器を最新兵器と買いかえる。そういう形の防衛力の増強について、私は、国民は共感をしていないと思うんですけれども。  こういった政府機関の世論調査をねじ曲げて解釈するといいますか、こういう結果になってしまったからどうしようもないんでしょうけれども、これは余り私は感心しないんですね。ちゃんと受けとめていただきたい、こう思うんです。そして、いろいろな問題のある兵器についての購入などということはやっぱりちょっと考え直していただきたい、こう思うわけなんですけれどもどうなんでしょうか。もうちょっとこの世論調査についても納得のいく解釈をしてみせていただけないものでしょうか。
  256. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 防衛庁のこれまでの歩みについてちょっとお話し申し上げますというと、平和憲法が制定されて、その後昭和二十五年に警察予備隊ができて、二十七年に保安庁・保安隊というものになりまして、それから二十九年に初めて防衛庁自衛隊というものが誕生したわけでございます。  それから三十年間、歴代総理あるいは防衛庁長官並びに国民信頼を得て、今日自衛力の整備というものに対して国民がある程度理解を示してきていると私は思うのでございます。したがいまして、そういう考え方の基本は、やはり新しい憲法を尊重する、それで専守防衛でいきましょう、さらには他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないようにしましょう、非核三原則は守りましょう、シビリアンコントロール確立しましょう、日米安保体制の必要性を強調いたしましょうというこの基本の線に従いまして、いわゆる防衛大綱というものが五十一年につくられたんです、三木内閣時代でございますね。それを受けて現在のいわゆる中期防衛力整備計画が立てられて、これはGNP一%で十カ年間やれるだろうということで来ていましたが、それができませんのでさらに五カ年計画を立てたわけでございます。  そういう一つの歩みを考えてみますというと、私は、国民がやはり防衛庁というものはある程度のいわゆる節度ある自衛力というものを積み上げるための一つの歩みを進めてきているんだなという考え方、あるいはまた、中期防衛力整備計画というのは総額明示方式で十八兆四千億というものをこの五カ年計画の中に明示してそうして進めておるような一つの計画でございますから、そういう面でも防衛予算というものは他の国際情勢だとかあるいはいろんな面から考えてこういうような状況にならざるを得ないのだろうなという認識が私はだんだん高まってきているという考え方、見方をしているわけでございます。  したがいまして、私たちは、これからもやはり国際情勢のあり方をよく見きわめながら節度ある防衛力を整備していきたい、こういうように考えているわけでございます。御指摘のように、全く防衛庁というのは何をしているんだ、あるいは、予算も余りにも突出しているじゃないかという考え方の人ばかりじゃない。国民の中には、そうじゃない、防衛庁もようやっているという見方もあるということを御理解いただきたい、こう思うのでございます。
  257. 久保田真苗

    久保田真苗君 このことに長くかかずらわるつもりはありませんけれども、国民の中にそういう方もあるということと国民の大多数がそんなに防衛費や自衛隊の増強が突出することを望んでいないということとはまた別のことだと思います。要するに、世論調査というのは数量的に大まかな国民の意向を調査するものですから、私は、この世論調査の結果を素直に読むとどう読めるのかという観点から、もう一度ぜひ国民のおよその意思のありどころ、そんな軍事大国困りますというそういう感じを受けとめていただけたらと、こう思うわけでございます。  それから次に、ことしも自衛官の増員というものが要求されているんですけれども、これはもう常になし崩しに行われていまして、防衛庁も大変だし、私どもも、各省庁の定員要求の査定というものがあれほど微に入り細にわたってなされる中でなぜこんな相当の数があっさりと年中行事のように認められるのか、本当に不思議でしようがないんですね。今度も法案が出ていますけれども、法案が認められた回数だけ見ても実際に今回で十八回目ですよね。人数も今回増員が認められますと二十七万三千八百一人となるということなんですね。昭和二十九年当時から見ると倍近いんですよね。一般の行政職員の場合は、職員の定員に関する法律とか行政機関職員定員令とかいうので非常に厳しく削減されておりますね。防衛庁の場合も、内局についていえばこれによってなされるんだろうと思うんです。ところが、不つり合いに自衛隊だけが、必要だから増員要求する、そういう出し方をしてきますね。  私が伺いたいのは、方々の官庁が皆人員削減というものの努力を要求されているわけなんですけれども、自衛隊は、一体人員削減の努力をしたことがあるのか、もし努力したとおっしゃるのなら二、三具体例を挙げてみていただきたい、こう思います。
  258. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 各省庁では定員削減の努力をやっているのに年々増員はどうかということでございますが、防衛庁といたしましても、一般職、事務官等につきましては各省と同様行政改革等にも努め、また定員削減も、四十三年の第一次削減以来、現在第七次の削減計画をやっておりますが、去年二百九十五人、ことしも二百九十五人の削減ということで、トータルしますと八千名を超える削減をやっておる、涙ぐましい努力をやっておるところでございます。また、行政の運営全般につきましても、午前中の委員会で出ておりましたが、防衛改革委員会というのを自主的につくりまして自主的な面でいろいろ合理化に努めるという努力をやっておるわけでございます。  そういうことで努力しておるわけでございますが、自衛官につきましては後ほど防衛局長から詳しく御説明申し上げますが、大綱に基づき中期防ということで三年目の整備をし、そして限定・小規模な侵略に対しては原則として独力で対処できるような体制を早くつくろうということで計画的な整備をやっておるということでございまして、その中でも涙ぐましいスクラップ・アンド・ビルドの努力をやった結果五百二十三人というのをことしお願いしておるという状況でございまして、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  259. 日吉章

    政府委員日吉章君) 内局のシビリアン等につきましてはただいま官房長の方から御説明を申し上げましたので、ユニホームといいますか、自衛官につきまして私の方から説明をさせていただきたいと思います。  他の政策官庁とは異なりまして防衛庁という役所は、その業務上、一種の実力集団でございますので、その装備等にリンクいたしましてその装備を有効に活用するためにはどうしても必要な人員というものが必要になってまいります。なおか つ、防衛庁は、戦後、無から逐次整備をしてまいりまして、大綱水準にもおおむね達してはおりますけれどもいまだ達せずして逐次整備を続けている、その途中の段階にあるということを御理解いただきたいと思います。  したがいまして、毎年お願いしております自衛官の定数増でございますが、既に予算化されております艦艇、航空機の就役等に伴います要員を確保するものが中心でございますけれども、その際、自衛隊においてもやはり業務の省力化や合理化によって人員の削減に努めることは当然のことでございまして、そのような合理化にも努めているところでございます。その結果がただいまお願いを申しております五百二十三人の増員になってございますが、幾つか具体的にその省力化、合理化の具体例を申し上げたいと思います。  例えば、艦艇、航空機の就役等に伴うものにつきましても、単純に隻数の増加等に伴いまして増加をするということではございませんで、例えば本年度の内訳にございます五十九年度DD艦、これは三千四百トン型のガスタービン式のものでございます。これにつきましては、従来の三千百トン型よりトン数はふえておるわけでございますが、それよりも機関科定員の削減を行っておりまして、これは四十三名の削減になっております。  また、魚雷員等の省力化に伴います潜水艦定員の削減もいたしておりまして、ことしお願いしておりますものは六十年度SS「ゆうしお」型という潜水艦、トン数は二千二百五十トンでございます。従来の千八百五十トン型に比べまして四百トンのトン数の増加でございますけれども、定員は八十名から七十五名というふうに五名の減を立てております。  こういうふうなことで我々なりに努力をいたしておりまして、機械的に装備等が近代化されるに伴いまして定員も増加させるというようなことのないようにしているつもりでございます。  なお、今年度は、特に自衛隊法の改正によりまして航空自衛隊の骨幹組織の整備をいたしたいと考えておりますが、このところでは約五十名、正確には五十一名の減を立ててございまして、こういうふうなものが増加あるいは減少させました結果が五百二十三名でございまして、この点御理解を賜りたいと思います。私どもといたしましても、なお今後とも厳しい合理化、省力化の努力を続けていきたいと考えております。
  260. 久保田真苗

    久保田真苗君 これに関連して具体的に伺っていきたいと思うんですが、それとの関連で二、三ちょっと概略を説明していただきたいことがあるんです。  それは、航空自衛隊の組織を大幅に改編されるということなんですが、どういう内容のものなんですか。
  261. 日吉章

    政府委員日吉章君) 今回の航空自衛隊の骨幹組織の整備でございますが、これは三つの柱から成ってございます。  一つは、航空輸送、救難、保安管制、それから気象を担当しております作戦支援組織の一元化を図ることでございまして、そのために輸送航空団と保安管制気象団を廃止いたしまして新たに航空支援集団というものを編成することにいたしております。二番目の柱は、一般教育と技術教育を担当しております各種教育組織の一元化を図るということで、飛行教育集団と術科教育本部を廃止いたしまして航空教育集団にまとめて新編することにいたしております。三つ目の柱は、装備品の開発実験と航空医学等、等と言いますのは人間工学のようなものでございますが、を担当しております開発実験組織の一元化を図るということで、航空開発実験集団を新編する、こういう三つの柱でございます。  この三つの柱を立てまして、従来ございます航空総隊、補給本部と合わせまして航空自衛隊の五つの骨幹組織に単純化し、合理化、省力化を図ったものでございまして、この結果、先ほど申し上げましたように五十一名の減員となってございます。
  262. 久保田真苗

    久保田真苗君 五十一名の減員ですか、これによって。  そうしますと、これをこういうふうにされたということについて、一体どこが増でどこが減になっているのか伺いたいんですけれども。
  263. 日吉章

    政府委員日吉章君) 今、私が三つの新編集団を申し上げました。航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団でございます。このうち、省力化といいますか、人数の削減が図られましたのが航空教育集団でございまして、ここでは百五名の減員となってございます。  なお、航空支援集団、航空開発実験集団は統合化することに伴います充実等も図りまして、それぞれ、航空支援集団は十九名でございますが、航空開発実験集団は三十五名の増になってございまして、都合差し引きいたしまして五十一名の減となってございます。
  264. 久保田真苗

    久保田真苗君 航空開発実験集団が新編されるということですが、ここで三十五名増になるんですが、その新しく編成することに対する目的なりねらいに対してなぜ増員が必要なのか、それをお聞かせください。
  265. 日吉章

    政府委員日吉章君) 航空自衛隊の開発実験組織につきましては、現在装備品の開発実験を担当しております航空実験団と航空医学等を担当しております航空医学実験隊とが二つ分かれて存在しております。  しかしながら、最近では、一つには、装備品の高度化、複雑化等に対応いたしまして、継続的な技術的改善をする必要性が高まってきております。さらに二つ目には、装備品の開発実験と航空医学なり人間工学研究と一体化する必要性も生じてきております。さらに三番目には、装備品の延命化を図るためにはその改善、改造を実施するという必要性が増大してきております。したがいまして、このような技術の進歩に対応いたしましてより効率的な隊務運営を図るという必要性から、開発実験組織について、航空医学実験隊を含めましてこれを一元化しようとしたものでございます。  この結果、この航空開発実験集団そのものでとりますと三十五名の増加になってございますが、それは、今回新編をする理由といたしまして私が三つの柱を申し上げましたが、これらの三つの必要性が生じてきた関係から増加をいたしたわけでございます。
  266. 久保田真苗

    久保田真苗君 支援集団として二つの司令部を廃止するんですね。そうですね。そして航空支援集団を新しくつくる。つまり、航空支援集団の司令部ができるわけですね。  そうすると、これは縦系列の組織が整備されるということになるわけですか。つまり、こういうふうにあったものが一つに統合されて、ここに幾つかのものがある。そういうことになって、例えば情報の伝達等におくれを生じるというようなことはないのかどうか。その辺のことはどうなんでしょうか。
  267. 日吉章

    政府委員日吉章君) 航空支援集団新編の理由に係ることでございますが、これにつきましては、大きく分けまして航空支援集団と相対峙といいますか、それと深くかかわり合いをいたします作戦組織との関係を有機的に連携しようとするところを目的としたものでございます。  と申しますのは、現在、航空自衛隊の作戦組織といたしましては航空総隊というもので一元化されているわけでございますが、これを支援いたします作戦支援組織というものにつきましては、あるものは長官直轄というような形で、航空輸送を担当しております例えば輸送航空団とかあるいは航空保安管制と航空気象を担当しております保安管制気象団とか、主として航空救難を担当しております航空救難団とか、こういうふうな形で支援組織はそれぞれ独立した形になっております。  ところが、これらは有機的にやはり作戦組織を支援する必要がございますので、私どもは、作戦組織たる航空総隊とそれから今もろもろの業務を統合的に一貫して調整しながら有効に機能させる必要があります作戦支援組織との非効率な点を解消していこうということで考えたものでございまして、今回の組織の新編の最大の理由は、もう一度繰り返しになりますけれども、作戦組織を支援する作戦支援組織の効率化を図ろうというところに目的がございます。
  268. 久保田真苗

    久保田真苗君 もう一つ伺いたいことがあるんですが、今回統合幕僚会議が四人増員を要求していますのでしょう。そのうち一人が軍縮関係ということになっているのでこれはミスプリじゃないかと思ったんですけれども、統幕の中で軍縮関係の要員といいますと一体どういう役割なのか、どういう趣旨でこういうものをお入れになっているのか、それを聞かしていただけますか。
  269. 日吉章

    政府委員日吉章君) ただいま委員がお示しになられました軍縮関係という資料はどこでどういう形で書かれているのか、私、つまびらかにいたしておりませんけれども、それが軍縮担当の新しいポストを設けるというような意味で御理解いただいているとしますと、現在そのような具体的な計画はないと申し上げざるを得ないと思います。  しかしながら、我が国は国連やジュネーブ軍縮会議などの場を通じまして公平かつ検証可能で実効性のある軍縮・軍備管理のために努力しているところは委員も御案内のとおりでございまして、これにつきましては、防衛庁といたしましても外務省と緊密な連絡協議を行いながら軍縮関係の国際会議や作業グループに専門家を既に派遣するなどいたしまして、外務省との協力体制をとっているところでございます。本改正案におきましては、かかる業務を円滑かつ効果的に推進するためには現在の国際情勢等を考えますと非常に重要なことだと考えまして、統合幕僚会議事務局に自衛官一人の定数増をお願いしているところでございまして、この自衛官一人は私がただいま申し上げましたような業務を主として行っていただくことを考えております。
  270. 久保田真苗

    久保田真苗君 大変魅力的な名前なんですけれども、どうもおっしゃることがよくわからないんですね。  文字どおりの今考えるような軍縮、そういうことは今計画にないと。だけれども、ジュネーブの軍縮会議等、つまりこれはアタッシェになるんですか。そういうところへ出していく人の卵みたいなものをつくる、こういうわけですか。
  271. 日吉章

    政府委員日吉章君) 私の御答弁が若干誤解を招くようなことでございますれば誤解を解いていただきたいのでございますが、仕事の内容といたしましては私がただいま御説明申し上げたような仕事でございまして、ただそのポストといたしまして軍縮担当というようなポストは予定をしていないということでございます。  なお、ただいま委員の方からこれはアタッシェ要員ですかというお尋ねがございましたが、そういうことではございませんで、まさに防衛庁独自の業務を遂行することを予定しております。
  272. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、防衛庁独自の業務として軍縮・軍備管理。  そうしますと、それは実際に所掌事項、そして職務の内容、どういう目的を持ったものなんですか。
  273. 日吉章

    政府委員日吉章君) 繰り返しになりますけれども、防衛庁といたしましてはこれまでも外務省と緊密な連絡協議を行いまして軍縮の国際会議や作業グループに専門家を派遣するというふうなことをいたしておるわけでございまして、これからますますそのような必要性が高まってくるのではないか、かように考えまして増員一名をお願いしているわけでございます。  具体的には、国際人道法会議とか特定兵器使用禁止条約専門家会合とか海洋法会議とか赤十字国際会議等々がございまして、私が今申し上げました会議はいずれも防衛庁がこれまでに派遣した軍備管理・軍縮関連の国際会議等でございます。
  274. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、外務省にたしか軍縮課というのがあるんですが、そこの用務とこの軍縮担当の官とはどういう関係になりますか。何といいますか、どういう用務の分担があったり、あるいはどちらがどういう関係になるのか。
  275. 日吉章

    政府委員日吉章君) 委員既に御存じと思いますが、外交交渉の場に出ます場合には、外交一元化等の観点から、私ども外務省以外の他官庁の公務員がその場に出ますときには外務事務官に併任して派遣をされるという例が通常ではないかと思います。その場合には、それぞれの会議の性格によりましてそれぞれその省庁の専門的知識を必要といたしますので、その専門的知識を持っておりますその省庁の職員が外務事務官に併任発令されまして派遣を受けるというのが通例ではないかと思います。  したがいまして、私がただいま申し上げましたような国際会議等に出席いたします場合には、外務省からの派遣要請に基づきまして派遣官は外務事務官に併任して派遣されるということになろうかと思います。
  276. 久保田真苗

    久保田真苗君 新しい制度について若干伺いましたけれどもこれはまた続けることにしまして、最後に、先ほど「なだしお」の件について板垣委員からいろいろと御発言、御質問がございました。  八月二十四日に瓦前長官が、長官のみが辞任されている。そしてその後については、これは審判の機関によって事が進められているというふうに私は考えております。けれども、私どもの理解では、あのとき一義的に衝突を回避する義務は当然に自衛艦の方にあったというそのことは曲げられないことだと思いますし、それに伴って救助の問題等がいろいろ出ております。私は、その細かいことについては専門の方がいろいろな実験を重ねてお出しになる結論に期待したいと思っておりますけれども、しかし私どもが事実として知りました中でもあのとき大部分の人を救助したのは一キロ離れていた民間のタンカーがなしたのであって、もちろん自衛艦も三名救助し、そのうち一名が亡くなったということなんでございますが、何らかの理由でやはり救助活動が鈍いという印象を与えたことは事実だと思っております。また、同じ潜水艦の中でこの「なだしお」に続いて「せとしお」というのがございましたのですが、その「せとしお」は必ずしもこの救助活動に参加しないで「なだしお」を通り過ぎて先に横須賀港へ帰投しているということもございます。  私はこの件について今多く質問をする余裕がございませんけれども、しかしこれらのことが適切な機関によって事実が十分確認された上で、長官のみがスケープゴートになるというようなことではなくて、それぞれの任にある方たちのそれぞれの事実はやはりはっきりと究明されるべきだ、そしてその責任はとられるべきだ、公務員としてこのようなことに関する責任をはっきりととっていく、適切な責任をとっていくということが最も有効な抑止策であると私は思っております。  どうもありがとうございました。
  277. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 本案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時散会