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1988-12-19 第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月十九日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十二月十七日     辞任         補欠選任      小野 清子君     斎藤 文夫君      野沢 太三君     岩本 政光君      中野  明君     和田 教美君      中野 鉄造君     塩出 啓典君      吉川 春子君     上田耕一郎君      柳澤 錬造君     井上  計君  十二月十九日     辞任         補欠選任      林 健太郎君     谷川 寛三君      大森  昭君     対馬 孝且君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         梶木 又三君     理 事                 斎藤 十朗君                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 吉村 真事君                 志苫  裕君                 安恒 良一君                 峯山 昭範君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 板垣  正君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 大木  浩君                 岡部 三郎君                 加藤 武徳君                 久世 公堯君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 田辺 哲夫君                 谷川 寛三君                 仲川 幸男君                 藤井 孝男君                 松浦 孝治君                 村上 正邦君                 森山 眞弓君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 対馬 孝且君                 福間 知之君                 山口 哲夫君                 山本 正和君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 橋本  敦君                 井上  計君                 秋山  肇君                 下村  泰君    衆議院議員        修正案提出者   野田  毅君    国務大臣        内閣総理大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        通商産業大臣   田村  元君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        自 治 大 臣  梶山 静六君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君    政府委員        内閣官房長官  小沢 一郎君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第三        部長       津野  修君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        糸田 省吾君        総務庁人事局長  勝又 博明君        経済企画庁物価        局長       勝村 坦郎君        法務省刑事局長  根來 泰周君        大蔵省主計局次        長        篠沢 恭助君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        国税庁次長    伊藤 博行君        文部大臣官房長  加戸 守行君        文部省初等中等        教育局長     古村 澄一君        文部省体育局長  坂元 弘直君        厚生大臣官房総        務審議官     末次  彬君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  多田  宏君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   土井  豊君        通商産業省貿易        局長       熊野 英昭君        通商産業省産業        政策局長     児玉 幸治君        工業技術院長   飯塚 幸三君        資源エネルギー        庁長官      鎌田 吉郎君        資源エネルギー        庁石炭部長    長田 英機君        中小企業庁長官  松尾 邦彦君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        郵政省郵務局長  田代  功君        郵政省電気通信        局長       塩谷  稔君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君        常任委員会専門        員        片岡 定彦君        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    参考人        日本電信電話株        式会社代表取締        役副社長     村上  治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○税制改革法案内閣提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費税法案内閣提出衆議院送付) ○地方税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費譲与税法案内閣提出衆議院送付) ○地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ただいまから税制問題等に関する調査特別委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  税制改革法案外案審査のため、本日、日本電信電話株式会社代表取締役社長村上治君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、これより対馬孝且君の質疑を行います。対馬君。
  5. 対馬孝且

    対馬孝且君 時間が五十分という短い時間に限られておりますので、簡明率直に答弁を賜りたいと思っております。  質問に入ります前に、私は最近の新聞報道を見まして、非常に憤慨をいたしています。総理にひとつ申し上げます。今、税制改革審議が緒についたばかりであります。それなのにもう内閣改造、だれが法務大臣、だれが何々大臣とずらりと週刊誌から新聞までをにぎわわしている。そんなに早くやめたければ総辞職をして、私に言わせれば直ちにやめるべきであります。極めて不見識だと言わなければなりません。今、慎重な審議を尽くしているさなかに、こういう態度は、総理に厳しく私は申し上げておきます。  そこで、時間もありませんから、まず私は、消費税導入反対基本の立場に立ちまして、石油税等各論にわたりまして二、三質問申し上げたい、こう思います。  私は、まず今回の税制改正に際しまして、第一は、税はすべて公平、公正であるべきである、第二は、経済行為に対しては中立であるべきである、第三は、国民の理解と合意を得るべきである、第四は、課税対象を明確にすべきである、こういう四点は少なくとも税制改正最低条件としてあらねばならない、こう考えますが、まず総理基本姿勢をお伺いいたします。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 租税に対する原則的考え方、私も等しくしております。
  7. 対馬孝且

    対馬孝且君 今、総理から、私が四点の基本姿勢をお伺いいたしましたところ、等しくするところであります、こういう答弁ですから、基本認識は一致するように考えられます。  そこで、石油税等各論につきましてまず第一にお伺いをいたします。  今回の消費税は導入しなくても税制改正はできる、この基本に私は立っております。しかし、その中にあって消費税を見渡しますとかなり矛盾が多い、こういうふうに私は思います。  具体例を二、三挙げてまいりますと、物品税の中で例をとると、ぜいたく品ですね、つまりダイヤあるいは宝石、貴金属製品、また毛皮製品とございます。例えば毛皮は、現在百万円の毛皮を買ったといたしますならば、現行税制では一五%ですから税金は十五万円ということになります。しかし今度、物品税廃止されますと、三%でございますから、仮に百万円の毛皮を買ったとした場合の税は三万円でございます。したがって、トータルで百三万円ということになります。税の整理の仕方としては、物品税は吸収、廃止という方式になっております。これが第一であります。  第二は、酒税、たばこ税あるいは料理飲食税等の問題であります。仮に私が家族としストランへ行ったと仮定をいたします。今まではレストランで一万円の食事をしたとするならば、税が一〇%でありますから一万一千円になります。今度の税制改正によりますと、消費税三%、それに特別地方消費税、これが三%加算されますので、トータルで一万六百円。今まで一万一千円だったものが一万六百円になります。つまり四百円安くなります。これを称して調整併設方式と、こういうふうに整理をされているわけであります。これが第二であります。  第三の問題は、石油関係諸税、七つございます。この七つの課税を見ますと、つまり大臣、特に通産大臣は御存じのとおり、本年の八月にガソリン重油軽油等従価税から従量税に変えられまして既に八月に増税されております、率直に申し上げまして。これは、総売上高でまいりますと十兆円でございますが、その中の六兆八千億が税抜きだと。ところが、三兆二千億はそのままこれは単純併課として加算される仕組みになっているわけであります。だから、言うならば八月にガソリン税が上がって今度は税制改正でまた三%ですから、結局税金税金をかける、これを称してタックス・オン・タックス、こう言っておるわけでありますが、まさにダブルパンチですね。八月に右手で張られてまた今度の税制改正で左手で張られる。消費税そのものにこういう矛盾があるのでありますが、最大の矛盾はこれではないか、つまり単純併課であります。  こういう矛盾した税制、私に言わせれば、理屈も理論も、全く何の論拠もない。本当にこの税制というものは天下の悪税である、こう私をして言わしめなければなりません。この点について大蔵大臣総理の確たる考え方を求めます。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆるタックス・オン・タックスの問題でございますが、ここで私なりに実はタックス・オン・タックス整理をしてみようと思っております。  タックス・オン・タックスというのはどこから起きた言葉かと申しますと、私が大蔵大臣をしておりました当時、アメリカとのたばこ関税の問題のときでございました。たばこ従価税関税がかかりながら、九〇%でございましたが、それが当時で言えば専売納付金というので国内でまたかかる、したがってタックス・オン・タックスであるからけしからぬ、こういうところから本当は出てきたわけでございます。しかし、本来タックス・オン・タックスというのは、消費税というものが導入されております国は、どこの国も輸入品には関税のかかったものもございますし、その上にさらに消費税がかかっていくというのは本当はあることでございます。  したがって、タックス・オン・タックスという言葉整理しますと、本当に同じ性質の税がタックスの上にタックスがかかるということで、昭和二十三年の取引高税でございますか、あらゆる取引の中で一%ずつかけたわけです。だからタックス・オン・タックスというのは、同じ性格のものの中で乗っかっていくものがタックス・オン・タックスで、一番我々がそれを避けようとしてヨーロッパの前段階控除方式、今度もそうでございますけれども、本当のタックス・オン・タックスという議論は私はそのときの議論ではなかったかと。しかし、感覚的にはよくわかります。単純併課ですから、タックスタックスが乗っていることは間違いないわけですから、消費税があるとすればタックス・オン・タックスというものはあり得る。  そこで、先生が今御指摘なさいましたような吸 収、廃止方向調整併課方向があるにもかかわらず、特定財源であるという特殊なことからして単純併課になっておるということが問題で、タックス・オン・タックスが問題ではなく、単純併課というものが問題だというふうにちょっと整理をいたしてみたわけでございます。  したがって、この問題の御指摘がありましたから、事務的に通産大蔵、今の段階は私と田村さんとが話をすることでございますが、今いわゆる年度税制の中と、それから歳出の中と、どっちでやっていくかということを鋭意詰めておるというのが現段階でございますから、今の御指摘にこたえた作業を継続中である、このように理解いただければ幸いでございます。
  9. 対馬孝且

    対馬孝且君 今、総理からタックス・オン・タックス解説がございましたが、解説の問題でなくて、これは今回の消費税そのものが問題である、これは私は反対です。その中においても矛盾ではないか、今挙げた例は。これ否定しないでしょう、総理、そのとおりだとこう言うんですから。単純併課ということをもちろん私は問題にしておるのでありまして、そこで今結論は、この方法論として年度税、あるいは歳出というようなことが一部新聞にも出ていまして、今総理通産大臣協議中というのでありますが、問題は、この影響というのは大変大きいんですよ、総理。  もうちょっと申し上げなければならぬと思うんです。私は通産当局にこれを調べさせたんです。例えば北海道東北、北陸、北信越、これは冬場は全部灯油をたいています。それで、通産大臣のおひざ元でお調べをしまして、これは公務員の寒冷地標準でいっても九本、北海道東北全体を含めると、消費者協会調べによりますと、ドラム缶二百リッター十二本というのが標準世帯なんです。総理いいですか。そうすると、これを計算して見ますと、六十二年、六十三年十月一年間の消費者協会小売物価指数でまいりますと、リッター三十七円六十銭なんですよ。それを標準世帯十二本でいきますと二千四百リッターですから、これを掛けますとどうなりますかというと、今度の単純併課でいきますと、二千七百七円になるんですよ。これは約三千円の負担増になるんです。これが犠牲でなくて何が犠牲かと私は言うんだ。  こういう問題を含めて考えても、率直に申し上げますけれども、今協議をするということでありますが、協議をするとすれば、私は抜本改正をすべきである。あえてはっきり申し上げますけれども、協議をするという姿勢は、何らかの対応をするという意味に私は理解をしておるんでありますが、具体的に法律改正を含めて対応するという考え方なのかどうか、これはりきりお伺いをいたします。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは専門家のお助けをかりなきゃならぬと思いますが、法律改正というものはいわゆる六十四年度税制における法律改正になるんじゃないかなと。その税制法律改正でいく場合は六十四年度、年度改正における法律改正になるだろうというふうに考えます。  それから、特定財源のいわゆる一千億円分と考えた場合、法律が要るような感じはいずれにしても年度改正等には要ると思いますが、具体的にこうした法律ですということを申し上げるだけの能力が今欠けておりますので、事務当局から経過的なものを簡単につけ加えさすことにいたします。
  11. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま総理から御答弁申し上げましたように、現在関係者で鋭意詰めておるところでございます。その結果によりまして法律改正を要するもの、あるいは予算において措置すべきもの、いろいろあろうかと思います。法律改正を要するべきものについては、当然法律改正を行いましてここで御審議を願う、そういうことになろうかと思いますが、いずれにしましても、先ほど総理から申し上げましたように、六十四年度税制改正、六十四年度予算編成、この中の作業として詰めておりますので、法律改正お願いをするということの場合におきましては、六十四年度税制改正の中で法案審議お願いをすることになろうかと思うわけでございます。
  12. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこが私は理解できないんだ、率直に申し上げて。これはあなた、石油業界約十兆円の売上高に対し三・二兆円、皆さんがこれやってきているんですよ、ガソリン税軽油引取税石油ガス税航空機燃料税石油税原重油関税三兆二千四十七億円と、こういうことをやっているわけでしょう。  それで、今あなたの答弁は、答弁じゃないじゃないか。だから、六十四年度でやるんでなくて、今現在この物品税の問題の中でこの問題を解決をする、これが初めて問題の解決じゃないですか。そういうことですよ。その点では、六十四年度ということは、やらないということと同じではありませんか。
  13. 水野勝

    政府委員水野勝君) 消費税を含みます間接税改正は、六十四年四月一日からの適用をお願いをしておるところでございます。  御指摘物品税廃止あるいは御指摘料理飲食等消費税改正、すべて四月一日からでございますので、それに合わせて一環としてやるという、実態としてはその一環でさせていただくわけでございます。ただ、法律改正としては六十四年四月でございますので、六十四年度税制改正で間に合うことは大丈夫でございます。
  14. 対馬孝且

    対馬孝且君 ちょっとお伺いしますが、どういう具体的な改正になるんだということが問題になるんですよ。だから、ここに六つの石油課税がある。ここから、ガソリン税からちょっと何億持ってくる、また石油ガス税から三億持ってくる。つまりトランプ数合わせみたいなことをやって、そんな改正というのは改正でないんだ、これ。こういうのは合わせわざ方式と、こう言うんだよ。ごまかし方式というんだよ。これは合わせわざ方式というんだ。トランプ数合わせじゃないんだ。これは正式なルートじゃない。  というのは、私が言っているのは、そういうやり方をするというなら常にあなた方が言う抜本改正というのはどこへ行ったんだ、これははっきり言って。抜本改正というのは何だ。だから聞いているんであって、そういう問題についてどういう改正をするんだと、具体的に、はっきり答弁してくださいよ。
  15. 水野勝

    政府委員水野勝君) その点はまさに総理から申し述べましたように、今現在鋭意中身を詰めておるところでございますので、近い機会に早くまとめまして、必要なものは法的手続をとるというふうにしたいと思っております。
  16. 対馬孝且

    対馬孝且君 先ほど総理から一千億という数字が出ましたね、総理言葉から。これはちょっと後でまた申し上げますけれども、確認する意味で申し上げるのでありますが、つまり一千億というのは、三兆二千億ね、つまり十兆円の六兆八千億は税抜きになっています、三兆二千億に先ほど言った八月からガソリン税かかっている、石油税かかっている、だから三兆二千億につまり三%はかけない、税外扱いとする、こうなりますと九百六十億になるんです。ラウンドして一千億と、こうなるんだよ。マスコミで世に言われる一千億、一千億というのはこのことを言っているわけですよ。だから、総理の先ほどの答弁、まず確認しますけれども、一千億は何らかの措置を考えると、こういう理解をしていいですか。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一千億というものが私の念願にあることは今おっしゃったとおりでございます。具体的に言いますと、専門家対馬委員に申し上げますと、税の場合は租税特別措置になるとか、あるいは予算措置になるとかというところを今一生懸命で議論しておりますが、税理論の一つの体系だけは立てなきゃいかぬ。タックス・オン・タックスという問題、私の解釈のようにしてもらうにしましても、単純併課であることは事実でございますから、そういうところに一千億問題というのが念頭にあることは事実でございますが、それそのものを、一千億をこういうふうにして措置しますという答えをするほどちょっと勉強しておりませんので、主税あるいは主計の方からちょっと補足させます。
  18. 水野勝

    政府委員水野勝君) 総理から申し述べており ますように、タックス・オン・タックスそれ自体が問題というよりは、この石油関係諸税については全く単純併課お願いしたという点が問題であるというふうに意識されているところでございますが、その対象となる金額として約一千億あるということは、それは各関係者念頭にあるところでございます。
  19. 対馬孝且

    対馬孝且君 念頭にあることは皆わかっているんだ。今まで当委員会を通して、具体的に大蔵大臣総理である竹下総理大臣から一千億という数字が出たのは初めてなんです。だから私は確認しているのであって、一千億でいいと言っているんじゃないんだ。一千億という数字は何なのかと。例えば私が言ったように、八月に三兆二千億かかった、税金にまた税金をかける、これはけしからぬと私は言っているわけですから、それを三%仮に何らかの標準課税を減免するとか、あるいは削除するとかカットするということになれば、トータルで一千億になりますねという認識を私は言っているわけだ。だから一千億というのは、そういう意味ですかということを私は確認しているわけです。それを念頭にあるとかないとかと言う、そんなことは当たり前の話じゃないか。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 若干アバウトでございましたが、対馬委員認識と一千億については一致しておるわけでございます。
  21. 対馬孝且

    対馬孝且君 その点はわかりました。  そこで問題は、今もちょっとやりとりを主税局長とやりましたけれども、これは現在提案されている法律改正で出てこなければ、これは本当の意味税制改正にはならないと思うんです、私は。そこが今検討中検討中になっているわけだ。先ほどの総理答弁の中にちらっと出ていますが、いわゆる六十四年度の立法措置の中でと、歳出と税措置と二つ今言いましたね。歳出か税措置か、こういうことだ、はっきり言って。これではやっぱり本当の改正にはならぬと私は思うんです。やっぱりやるなら、抜本改正抜本改正というのを総理は言りているんですから、四十年目の税制改正だと、皆さんそういう理解をしてくださいと終始一貫言っているわけだ。そうであるならば、本法の改正をしないで、改正したということにならないでしょう、はっきり言って。こういう問題についての考え方をもう一回お伺いします。
  22. 水野勝

    政府委員水野勝君) ことしの六月の段階で御指摘抜本改正の枠組みを定めました際には、石油関係諸税については単純併課ということで一応方向を打ち出したわけでございます。  ただ、この単純併課のままでいいのかどうか、この点については問題は残っているという関係者の意識でございまして、この点については六十四年度改正なり予算編成の中で必要な調整をするという意識でずっと関係者作業をしてまいったわけでございます。  その改正の具体的な時点といたしましては、先ほど申し上げたように六十四年度改正なり予算編成の中でございますけれども、その手直しの効果としては、これは抜本改正と同時に発揮されるように、その点は大丈夫だと先ほど申し上げたところでございます。
  23. 対馬孝且

    対馬孝且君 ほかの問題がありますから、時間がありませんので。  今の主税局長答弁では抜本改正じゃないです。やっぱり六十四年度の予算その他の措置で何らかの措置をすると、結果はなるでしょう。それは一千億になるでしょう。問題は、私ども社会党が主張しておりますのは、基本的に本則できちっと改正するなら改正をすべきである、このことを明確に申し上げておきます。このことはいいと言っているんじゃないんです。消費税基本的に反対ですから、その中においても最たる矛盾石油税ではないか、こう私は指摘しているのでありまして、今の答弁では納得できません。改めて、消費税は我々は反対でありますので、この基本を踏まえて、やるのであれば本法で、本則で改正をすべきである、当然消費税導入は反対であります、このことを申し上げておきます。これは答弁要りません。  そこで、問題がありますから次の問題に入ります。通産大臣は二期にわたりまして石炭政策をやってまいりました。八次政策で随分大臣も貯炭対策あるいは残った山の縮小交付金対策、需要対策をやってきました。これは総理も長い間石炭については大蔵大臣、官房長官時代からわかっているように、昭和三十七年に初めて第一次石炭エネルギー政策、エネルギー革命と称して答申が相なったわけであります。言うならば、これはエネルギー革命という大きな波によって石炭にしわ寄せしたんですよ。当時は五千五百万トンです。五千五百万トン体制が今日二千万トン体制になって、第八次は一千万トンです。しかも、海外灰は一億一千八百万トン入っているんだ。どこの諸外国にもない。十分の一です、今の一千万トンというのは。  そのときの歴史を私ははっきり申し上げなきゃならぬ。第一次エネルギー石炭政策を答申したときの有沢会長のこれは提言でありますが、答申に書いていますけれども、エネルギー革命によって石炭が犠牲になる、その犠牲を補う政策が必要だと。そこで原重油関税というものから、最初は一〇%程度から出発をして六%あるいは最後はキロワット当たり四百五十円、あるいは五百三十円、六百三十円、七百三十円と上がっていって、また六百三十円に戻った。こういう歴史があるんですよ。  こういう歴史があって、今回の石炭特別会計なるものが何で石油関税の影響によって石炭特別会計に手をつけようとか、切り込むとか、さわるとか、縮小しようとか、廃止しようとか、かりそめにもそういう話が出てくるということは、歴史を知っていないんじゃないか。しかも、答申を無視するものであるということを私は言わなきゃならないわけであります。  その点について、現状は、去年だって三井砂川炭鉱、真谷知炭鉱閉山。さっき言ったように、当時は百三十六の炭鉱があった。今は六つ。炭鉱労働者は三十二万。今は残念ながら一万一千二百であります。何でこうなったか。経済最優先、私に言わせれば経済合理性。経済合理性で山をつぶして、地域を破壊して、政治不在ではありませんか。  あえて私は総理にお伺いしますが、あなたの言う「ふるさと創生論」、それを唱えるのであれば、地域振興ということが重要であります。地域対策。こういう意味からいっても、石炭政策の特別会計というのは独立を厳守すべきものである。ひとつ総理考え方をお伺いしたい。  それから、私が申し上げました石炭の歴史、それから現状の認識について、私のこの認識、判断が誤りなのか、また、かくあるべき石炭政策と石炭特別会計のあり方について、田村通産大臣から最初にお伺いしたい。
  24. 田村元

    国務大臣田村元君) まず、総理にお尋ねではありましたけれども、私が扱っております問題でありますから一言触れたいと思います。  今、石炭対策について、特別会計は絶対に残すべきであるという強い御要請でありました。私は今日まで繰り返し答弁してまいりましたが、特にここで対馬委員に申し上げたいのは、石炭三原則は断じて守り抜きます。石炭勘定の維持、安定的財源の確保、石炭対策に必要な歳出の確保、これは断じて守り抜くつもりでございます。その財源措置法律であるとか、あるいは予算措置であるとかという先ほど御議論がありましたが、それは必要なものは、法律が必要であれば法律予算措置が必要であれば予算措置、それはそのときに応じて対応すべきことでございましょうけれども、私の頭の中には、そういうこともさることながら、とにかく石炭三原則を守り抜きたいというのがもう頭いっぱいでありまして、御支援を願いたいのであります。  それから、石炭の歴史、いわゆる八次策までの歴史、今後の取り組み方等の御意見でございます。  昭和三十八年度にスタートいたしました第一次石炭政策以来今日までの歴史は、対馬委員の政治 生活の歴史と言ってもいい、私はそう思うんです。昭和三十七年に私は労働政務次官をいたしました。それから四十七年に労働大臣をした。そしてまたこのたびはずっと通産大臣。今日まで取り組みました仕事の大きな問題は、通産大臣二回とすれば、四回の大臣、政務次官時代を通じて石炭対策と言ってもよかったかと思います。労働省時代も離職者対策で対馬委員とはいろいろと建設的な相談をし合った。時にはおしかりも受けたわけであります。  そういうことでありまして、今なお私は石炭問題に対する情熱は変わっておりませんが、国内炭というものは、国内資源の有効活用、それから海外炭に比べて相対的に供給の安全性が非常に高い、それから海外炭開発協力のための技術力の涵養などの観点から大きな意味を持っております。そして、総合エネルギー政策を推進する上で、エネルギー供給の安定性を高める役割を果たすものと位置づけられております。また国内炭は、我が国基幹産業の成長と国民生活の向上を支えて戦後経済の急速な発展に著しく貢献したのも事実であります。  こういうことを考えますと、六十二年度から始めました、ちょうど私が手がけました八次策、これを今日進めておりますが、今後とも我が国エネルギー政策上、安全保障確保の観点から相応の役割を担うべきものというふうに確信いたしております。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も歴史的に見ますと、それは対馬委員の石炭との歴史、それとはかなり乖離がございます。私の出身地が石炭に無縁の地方であったということもございましょうが、一番最初石炭問題で記憶しておりますのは、昭和三十五年でございましたか、当時石田労働大臣の、法律は守らなければならない、されど血を流してはならないということから、労働問題のサイドから石炭というものに関心を持ったことがきっかけでございます。それから次が昭和三十八年、通商産業政務次官を拝命いたしまして、わずかの間でありましたが、そのときはその期間中石炭の勉強だけをさせられました。恥ずかしい話でございますが、先輩から、君は石炭と木炭の区別がつくかなどということを言われたぐらいあるいは知識がなかったかもしれません。  したがって原則的には、今、田村通商産業大臣からお話がありましたような三原則というものを堅持しながら、時代の進展に照らし、各般の施策を行うべきものであるという考え方でございます。
  26. 対馬孝且

    対馬孝且君 今、田村通産大臣から詳細に、石炭政策の特別会計という性格、また今日的な八次政策に至りました歴史等の認識は一致をする、こういう答弁でございました。特に大事なことは、田村通産大臣が最後に言った石炭財政三原則ですね、どう言っても。これがないと、大臣御承知のとおり、来年だってこれほどうなるかという問題。通産省の六十四年度石炭特別会計によりますと、閉山見込み数が百四十万トン計上されているわけです。これはあってはならないことなんだけれども、現実に予算に上っている。こういう問題を含めまして、しかも私が一番頭に来たのは、怒り心頭に発しているのは、そういう税制改正という一つの問題の中に、石炭特別会計をしわ寄せあるいは巻き込む、この姿勢そのものが邪道であり政治不在だ。こういうやり方をすると、これは政治じゃない、やっぱりリクルートまがいのことと同じではないかという疑惑を私は持たざるを得なくなるんですよ。だから、石炭特別会計の歴史、そして石炭特別会計はいかなることがあってもこれは歴史的に尊重さるべきものである、それがあって石炭政策は守られる、このことをあえて私は申し上げたわけであります。  したがって、通産大臣から言われた石炭財政三原則の第一の石炭特別会計の維持、それから安定財源の確保、そして歳出の確保という問題についてはまさにそのとおりでございまして、それはいかなることがあってもひとつこれからも堅持をしてやってもらいたい、このことを強く申し上げておきます。よろしゅうございますか、通産大臣
  27. 田村元

    国務大臣田村元君) もちろんでございますが、繰り返し申し上げますならば、石炭特会は断じて守り抜く決意でございます。
  28. 対馬孝且

    対馬孝且君 総理、もう一度答弁してください。
  29. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 通商産業大臣と同じ意見であります。
  30. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは、次の三つ目の問題について質問いたします。  これは、今回の税制改正法の所得税法六十八条の三、「特定の協同組合等の法人税率の特例」条項に関する問題であります。これはどういうことで法律提案になったか、その考え方と背景についてまずお伺いします。
  31. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘は、所得税法等の一部を改正する法律案六十八条の三、「特定の協同組合等の法人税率の特例」の点であらうかと思うわけでございます。  今回御提案しております中で、法人税率の特例といたしまして、協同組合等は現在二七%でございますが、これにつきましては物品供給事業に係る収入金額の割合が五〇%以上、組合員数が五十万人以上、それから店舗において行われます物品供給事業の収入金額、いわゆる売上金額でございますが、一千億円以上である事業年度につきましては、その所得十億円を超える部分につきましては、先ほど申し上げました二七%の法人税率を三〇%にいたしたい、こういう改正の概要でございます。この措置は、店舗を設けて物品供給事業を行っておりますところの大規模な協同組合の事業活動と、その周辺の中小小売業者との間の事業活動の競合度合いはかなり高いと考えられますので、そうした点に配慮をいたしたという点が第一点。  それから第二点といたしましては、この法人税率につきましては、基本税率と協同組合等の軽減税率との間の格差、これはやはりもろもろの配慮はいたすとしても、その格差は極力縮小すべきであるというのが税制調査会の従来の考え方でございますが、そうした観点を踏まえた、こうした二つの観点からのお願いとして御提案を申し上げているものでございます。
  32. 対馬孝且

    対馬孝且君 主税局長、そういうでたらめ言っちゃいかぬよ。これ政府税調の議論の中にこれっぽちも出てないじゃないか。議論も交されてないですよ、この問題については。何でこれが出てきたんだ。そんな理屈にならないじゃないか。これは、私ははっきりこれを歴史的に申し上げなきゃならぬ。  私は生協対策委員をやっているんだ。これは今から四年前、生協規制法の議員立法という問題が自民党内で問題になったんだ。厚生大臣やっておったお隣の斎藤委員もたしか記憶にあると思うんでありますが、これはさかのぼれば四年前から。それはどういうことかといったら、生協規制強化のために、具体的に言うと、員外利用一人であってもだめだ、五百平米以上超えた場合は当該地域商業組合の同意がなきゃだめだ、こういう議員立法が突如として出てきたんだよ、自民党から。ところが、これはある時期が来て、どうも世論の形勢がよくない、これはやっぱり明らかに生協ねらい撃ちの対策であるということになって、一応おさまったわけだ。そこから出発しているんだ、これ。私も全部調べましたよ。ずっとこう見ますと、これは農業協同組合、漁業協同組合、信用保証協会、労働金庫から全部入っている。今、主税局長が言うような規制がどこにあるんですか。どこの農業組合、漁業組合にこういう規定がありますか。こういう基準がどこにあるんだ。私は調べてみたら、今の法律の六十八条三というのは、該当するのは生協だけなんだ、これは。あとの協同組合はどこを調べたってかかるところは一つもないんだ。あったら答弁してください、これ。
  33. 水野勝

    政府委員水野勝君) 税制調査会としては、六十一年十月の抜本答申、あるいはその前からの答申におきまして、法人税率水準につきましては、極力基本税率との格差は縮小すべきであるという 点はしばしば指示されているところでございます。  それから、次の点といたしまして、今回、先ほど申し上げました御提案の内容は、協同組合ということで仕切らしていただいているわけでございまして、先ほど申し上げた基準に該当する協同組合であれば、それは一律に適用されるものでございます。
  34. 対馬孝且

    対馬孝且君 私、法人関係を一時間やろうと思ったけれども、もう時間ないからやめたんだ。公益法人の学校法人、福祉法人、宗教法人だって七五%まで税金かかってないじゃないか。こういう問題をやればたくさんあるんですよ、私は。そういうものはかけずして、このことだけはとらえてかける。税調で何の議論もされない。しかも、今答弁があったように、そういう背景があってなんて、該当するのは生活協同組合だけでないかと私は言うんだ。ほかの農業組合、漁業組合、いわゆる他の組合にそういうことはありますかと私は言うんだ、この基準で。そこを答弁してくれって言っているんだよ。あるかないか答弁してくれよ、あるかないかって聞いているんだから。
  35. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま申し上げました基準に該当するようなものは、農業協同組合等はるかにその規模は小さいわけでございますので、現実に今回の基準に該当するものは消費生活協同組合だけであろうかと思います。
  36. 対馬孝且

    対馬孝且君 今はっきりしたじゃないですか。六十八条の三というのは生活協同組合をねらい撃ちしての税制改正の提案であると、これは極めて明確じゃないですか。  総理、こういうことであっては、これは抜本改正とか、公平中立とか、総理の常に言う八つの懸念とか、簡素にして公正中立であらねばならないなんてしゃべっておって、こんなねらい撃ちした税制改革がこれは公平と言えますか、中立と言えますか、これ。総理どうですか、この点。確たる答弁を求めます。
  37. 水野勝

    政府委員水野勝君) この基準は極めて大きなものでございますので、それはほかの協同組合等にはそこは例はございません。しかし、これだけの大きな規模のものでございますと、そこは中小小売商業とのバランスを考えることがまた公平の確保にも資する面もあるわけでございますので、御理解を賜りたいところでございます。
  38. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは御理解賜れったって賜れないんだよ。公平というから私は聞いているんだよ。  それじゃ、さらにお伺いするが、例えば農業協同組合、漁業協同組合あるいは信用保証協会、労働金庫でもいい、全部当てはめて、これは悪いと言っているんじゃないんだ、私は。生活協同組合のように員外利用の禁止、議決権の一人一票制、出資配当の制限、地域生協事業活動区域の制限、事業目的の制限、こういう制限をした組合がありますか。こういう厳しい規制をした組合がありますか。  しかも、私はちょっと参考までに申し上げますよ。これはその後、厚生省が調べたんだ。厚生省がチェックしたデータが出ていますよ。私は申し上げますよ。当時、員外利用員外利用なんて随分自民党さんが騒いだが、今これは全部データございます。これは厚生省が調べたやつ、いいですか。員外利用率は、生活協同組合の大手の場合で一・七七ですよ。当時自民党は一三とか一五%あるからけしからぬと。農協は何%ありますか、一〇%を超えているじゃないですか。これは厚生省の調べだ。これは私は、書いた資料が皆ある、手元にはちゃんと。大手でもって一・七七。いいですか、大手というのは生活協同組合の大きいAクラスという組合です。それから、全体の生協の員外利用数、これも厚生省の調べ、ちゃんと僕は調べさせた。三・四七じゃないですか、三・四七%。何でこういうことが、私がさっき申しましたように、具体的に員外利用の禁止、議決権の一人一票制、出資配当の制限、こういって片方では規制をしておいて、しかもその後厚生省がチェックしてみた結果、全く何のことはない、極めて今日では員外利用はゼロに等しい程度になっている。  こういう問題を考えた場合ほ、何でこの法案が出てきたか納得できません。これは総理にお伺いします。
  39. 水野勝

    政府委員水野勝君) 確かに御指摘のようないろいろな規制はあるわけでございます。しかし一方、協同組合、生活協同組合も含めまして、員外利用によりますところの剰余金についての事業の利用分量、配当、こういったものがありました場合には、それは損金に算入されるといったようなまた特典もあるわけでございます。そうした規制があり、特典があり、そのような結果として出てまいります所得金額として最終的には利益が出てくる。その利益としては、やはり法人税の観点からすると、本来であれば基本税率でお願いをいたしたいところでございますが、そこは協同組合といったものの特殊性から、従来から格差を設けているところでございます。  その格差を設け始めて後の経緯を見ますと、だんだん拡大をしてきている面がございますので、今回大きな所得につきましては、格差の接近と申しますか、縮小を御提案させていただいたところでございます。
  40. 対馬孝且

    対馬孝且君 それは答弁になってないんだよ。それだったら宗教法人とか学校法人、福祉法人はどうなっているんだ。何でこの協同組合に二段階による特例税率をかけるんだと私は言うんだ。これが私はわからないんだ。協同組合でしょう、協同組合になぜ二段階設けなければならぬのだ。それが農協だ、漁業組合だ、信用保証協会だ、そういうところにはないじゃないか、あんたそう言ったって。なぜこれだけ二段階にするのだと私は言うんだ。これは理屈も何もないんですよ、これは理論も何も。単なる生協をぶっつぶすためのねらい撃ちなんだ、これははっきり言って。そういうことではけしからぬと私は言うんだ。  だから総理、これは明確に答弁してください。何も感情論で言っているのじゃないんです。これは書いてあるんだ。私これを見せますか。総理これを見てください。(資料を手渡す)何も私は感情論で言っているのじゃないんですよ。厚生省が書いているから私は言っているんだ。
  41. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 別に生活協同組合を目のかたきにするというような考えは全くございません。  私ども、六十三年の税制改革の中間答申にいたしましても、本来軽減税率というものは、原則からいえば基本税率一本にする。が、しかし、協同組合の特殊性からして軽減税率があって、それが歴史とともに開いてきたからやはり縮めなければならぬという基本的な考え方からこれに取り組んだわけであって、その中において田舎のちっぽけな農業協同組合と大生協との問題で、大生協というものがけしからぬからこれを目のかたきにという考え方でやったわけではなく、現実、ちっぽけな農業協同組合には、これの基準に合うものはないわけでございますけれども、生協そのものを、何ぼかでございましたか、私も聞いたことはありますが、ここまでは救われるがここまではだめだとか、そんなようなことで征伐——征伐は取り消しますが、目のかたきにするという考えは全くありません。
  42. 対馬孝且

    対馬孝且君 総理、今あなた本音を言ったじゃないか、征伐って。そういうところからスタートしているんだよ。だから同じ協同組合がある、それは農業協同組合も、あるいは漁業協同組合も、例を言えば信用保証協会、労働金庫もありましょう。それなのに、なぜ二段階でそういう制度を設けなきゃならなかったかということは、全く通りません、これは。理屈は合いません。理屈もへ理屈も何もないんだ。あなたも本音を言ったけれども、征伐税制なんだよ、これは。いずれにしても時間が来ましたからあれですけれども、これはやっぱり公平公正、この原則にも反するし、それから抜本改正抜本改正と言うのであれば、もっとほかに、私が言う宗教法人なり学校法人なり福祉法人なりやるべきことはある。あなた、宗教法人は七五%税がかかってないじゃないですか、率直に 申し上げて。こういう根本問題を抜本抜本と言いながらやらずに、ただ目先の憎いやつだけを退治するというのは、これは不公平税制の最たるものです。  したがって、私は冒頭申し上げましたように、総理、ひとつ潔くこの消費税は撤回をして、謙虚に国民の声に耳を傾けて、国家百年の大計を誤ってはならない、このことを強く申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  43. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、和田教美君の質疑を行います。和田君。
  44. 和田教美

    和田教美君 政府はこのほど、リクルートコスモス疑惑に関連して、公務員の綱紀粛正策五項目というのを閣議で決定しました。しかし、マスコミの論評や多くの国民の受けとめ方は、この程度の閣議決定でどれだけの実効が上がるのかと極めて冷ややかな受けとめ方をいたしております。  そこで、まず総理にお聞きしたいんですけれども、この綱紀粛正策は管理監督の地位にある高級公務員などを主たる対象にしているようですけれども、この高級公務員には閣僚や政務次官など特別職公務員が含まれるのかどうか、それは含まれないのか。別の、つまり政治改革という枠の中で解決しようという考え方なのか、それが第一点。  それからもう一つ、官房長官の指示通知というのが出ておりますけれども、最初は、この中で、地位を利用した未公開株の譲り受け禁止が盛り込まれるというふうに伝えられておったんですけれども、実際に通知の内容を見ますと、禁止という文字はございません。そして「特に留意されたい」というふうな注意喚起にとどまっているということでございますが、なぜこんなに内容が後退したのか、その二点についてお伺いしたいと思います。
  45. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第一点の和田委員の御質問でございますが、これは閣僚、政務次官を含む行政府の職員はすべて閣議決定に沿って自粛自戒することが必要だという意味でございます。ただ、閣僚、政務次官というものは国会議員でもありますし、いま一つ、いわゆる国会議員としての倫理綱領、行為規範、こういうものが別にと申しますか、根底にもう一つあるという考え方でございます。  それから二段目の質問についての、ちょっと経過は私定かでございませんので、官房長官はおりませんが、事務当局から重ねてお答えをさせます。
  46. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 先生御質問の件でございますが、閣議決定の第二項におきまして、「職務上利害関係のある業者等との接触に当たっては、国民の疑惑を招くような行為は厳に慎しむこと」と言っておるわけでございますが、この趣旨を具体的にあらわしましたのが官房長官通知でございまして、その中で、関係業者等に係る未公開株式の譲り受けには特に留意してほしいということでございますので、留意するということは、要すれば、閣議決定に戻りますれば「厳に慎しむこと」ということに相なるわけでございます。この趣旨は、官房長官も記者会見で述べておられますように、限りなく禁止に近いという趣旨と御理解願えればと思います。
  47. 和田教美

    和田教美君 限りなく禁止に……。禁止ではないんですね。
  48. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君)  禁止そのものではございません。限りなく禁止に近い措置というふうに御理解願えれば幸いでございます。
  49. 和田教美

    和田教美君 非常に不徹底だということがそれでわかりました。  次に、NTTの副社長さんいらっしゃっておりますが、参考人にお聞きしたいんですけれども、最近新聞で、全国二万人に上るNTTの管理職が毎年ボーナスの一部を五千円から二万円ぐらい拠出して、主として自民党国会議員のパーティー券の購入だとか、選挙での当選祝い金などに充てていたと報道されております。これはいわゆる政界対策費というふうなことで伝えられておるわけですけれども、NTTは、民営化されたといっても政府出資の特殊法人であって、職員の身分は準公務員であります。それが、公務員の場合には一党に対するそういう政治活動というようなものは禁止されているわけです。しかも特殊法人であるから、NTT自体は政治献金は禁止されておるわけですが、それにかわるいわば抜け道としてこういうものをつくっているんではないかというふうに思うわけで、法律的に全く問題がないかどうかという問題と、一体そういうことをNTTとして公認しているのか、あるいは今後これを何らか改めるというふうな考え方がないのか、実態についてまずお聞きしたいと思います。
  50. 村上治

    参考人村上治君) ただいまお尋ねの件は、管理者の有志がボランティア活動として行っておると聞いております。  先生御指摘のように、ボランティア活動といたしまして資金をカンパいたしまして、世の中のおつき合いの一つとして、政治方面とも最小限のおつき合いをせざるを得まいというような考え方から、再三申し上げますように、有志のボランティア活動として出てきたものと聞いております。  なお、会社といたしましては、これは有志のボランティア活動でございますので、かかわりのないことでございます。
  51. 和田教美

    和田教美君 総理はそういうことを知っておられたかどうか。それから、法律的には仮に問題ないとしても、そういうことが今の状況の中で果たして適当かどうか、どういうふうにお考えかという点。  それから郵政大臣にも、この実態を調べられて、郵政大臣としてどういうふうにお考えになっているか。  それから自治大臣に、これは政治資金規正法上は全く問題がないのか、その点をお聞きしたいと思います。
  52. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 今、村上社長から御答弁申し上げましたように、個人として、有志として管理者の中からボランティア活動としての募金をしているということのようでございますので、NTT組織でやっているものではございませんので、NTTから政治団体に対する寄附は禁止をされておりますが、この件に関しましては問題がないのではないか、かように解釈しております。
  53. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) お尋ねの件につきましては、具体的な事実を承知はいたしておりませんけれども、ただいま委員指摘のとおり、NTTについては国からの出資を受けている会社でありますので、政治資金規正法第二十二条の三の「寄附の質的制限」の規定により、国会議員またはその政治団体に対して政治活動に関する寄附をすることはできません。NTTの役職員または役職員の団体の政治活動に関する寄附については、政治資金規正法上特別の規制はなく、同法による一般的な寄附制限の規制を受けるだけでございます。
  54. 和田教美

    和田教美君 もっとこの問題、論じたいんですけれども、次の問題に移ります。  これまで衆参両院でリクルート疑惑に関する証人喚問が行われてまいりました。私も証人喚問のメンバーの一人になったわけですけれども、内容を見てみますと、どうも偽証の疑いのあるケースがかなりあるんじゃないかということで、我々も今専門家などの意見も聞いて調べております。もしそういうことがわかれば当委員会の理事会にもひとつ諮りたいというふうに考えておるわけですが、そういう関連で幾つかの問題をお聞きしたいと思うんです。  リクルートコスモス社の高島、重田両常務と館岡取締役の三人が第三者割り当て先のワールドサービスから合計十万株の還流株を取得しておりますけれども、この株数が有価証券報告書には正確に記載されていない。そしてこの十万株がさらに再々譲渡の形で政治家などに流れたのではないかという疑惑が出ております。そこでこれに関連して大蔵省の証券局長は当委員会で、特別利害関係人への譲渡として証券業協会の内規に触れる可能性もある、そういうふうに答弁されて、第三者割り当て先から特別利害関係人の株還流禁止期間内 にリクルートグループの幹部社員十数人に株が渡っていた、還流されていたということを確認されておるわけですけれども、その幹部十数人からさらに再譲渡、再々譲渡というふうな形で政治家などに株が流れているかどうか、その後調査をされておるか、結果を御報告願いたいと思います。
  55. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 証券業協会からの中間報告によりますと、第三者割り当て先五社から役職員十数名に対して株が還流したといいますか譲渡された事実があるということでございまして、この点につきましては現在事実関係詳細を調査中でございます。  と同時に、今御指摘のように、この戻ってきた株というものが役員の持ち株を記載いたしました有価証券報告書に記載されていないといった事実がございますので、あわせまして、こういった問題に関連いたしまして、大蔵省といたしましても直接現在事実関係を調査中でございます。多くの方につきましては、現在でもなお持っておられるというふうなことを言っておられますけれども、ただ、本人名義ではなくて、いろいろ他人の名義になっているというふうな実情もあるようでございまして、ここら辺につきましては現在いろいろ調査を進めておりますけれども、しかしながら、関係資料等が捜査当局に押収されたということもありまして、実はなかなか全体についてまだ把握するに至っていないことは事実でございます。  それに関連いたしまして、現在までのところ、店頭登録前にこれら役職員の方々から他の第三者に再々譲渡されているといったふうな事実は現在までのところ発見いたしておりません。
  56. 和田教美

    和田教美君 江副リクルート前会長が、当委員会での証人喚問で、第三者割り当て先の中から一たんリクルート側が買い戻して、そして改めて要するに売るというふうな形をとったことはないと。そういう意味では一貫して還流株という考え方を否定しているわけでございます。しかし、贈賄罪で起訴された松原弘前社長室長のケースでは、第三者割り当て先であるエターナルフォーチュンから三万五千株の還流株を取得して、そしてこの中の一万株が加藤元防衛庁長官の実兄夫妻の名義になっていたというふうなことも伝えられております。  そして、今指摘したように、第三者割り当て先から再譲渡を受けたコスモス社役員が政治家などに再々譲渡したのではないかという疑惑については、今、証券局長はそういうことはないと言われておりますけれども、報道などによるとそういう疑惑は依然としてあるわけでございます。しかも、例えば、一たん買い戻してそして再譲渡したということについて、ファイナンスが全部その資金の決済などもやったというふうな報道もありまして、しかも今言ったような再々譲渡のケースというふうなものは、約二十人、約三十万株と大がかりなものだというふうなことも言われておる。  特別利害関係人である役員らが証券業協会の内規違反であることを知りながら全く個人個人の意思でそういう還流株を引き受けるというふうなことはちょっと考えにくいわけでございまして、いわば会社ぐるみ、江副さんの指揮でそういうことをやったというふうに考えるのが至当ではないかと思うわけです。もしそうだとすれば江副氏の証言は、つまり還流を一貫して否定したこの証言は極めて偽証の疑いが強いと私は思うんですけれども、大蔵省及び法務省当局はどういうふうに考えておられますか。
  57. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 六十一年九月に行われました第三者割り当て先五社からの七十六万株の還流につきまして、これにつきましては江副証人の方も、自分たちの、何といいますか、あっせんといいますか、そういったことにつきましてはこれは否定されていないというふうに承知しているわけでございます。  ただ、江副さんのおっしゃっておられるのは、自分がその第三者割り当て先から直接買い戻してそれを再譲渡したというのじゃなくて、どうも割り当て先と再譲渡を受けた人の間で直接契約が結ばれておるので、自分はそれをあっせんあるいは勧誘しただけだということをおっしゃっているんだろうと思うわけでございますが、ここら辺の事実関係につきましてはなお協会等におきまして、江副さんなどの特別利害関係人がどういう形で関与しているか、それがまた協会のルールに触れるものであるかどうか、こういったことを現在事実関係を含めて調査しているところでございまして、いずれにしても、率直に言いましてかなり紛らわしいといいますか、いかがわしいといいますか、そういった行為であったことは事実であったと思いますけれども、協会のルールにどういう形で触れるか触れないかといった点についての事実関係の調査といったことにつきましては、私どもまだ十分な事実を把握するに至っていないというのが現状でございます。
  58. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) いわゆる議院証言法上の偽証罪につきましては、まず委員会なり議院なりで御決定いただくということが前提になっておろうと思います。したがいまして、そういう法制上の問題からいいますと、私どもが今の時点で軽軽に物事を申し上げる段階ではないというのが一つと、それから、いろいろ委員会なり議院なりでその偽証の問題を御検討されるに当たりまして私どもが説明を求められることもあろうかと思います。  そういう意味で、お手伝いをするという意味で意見を申し上げることがあろうかと思いますけれども、それは検察庁において事件の全容を解明した後にいろいろお手伝いできることはすることも可能であろうと思いますが、現時点では、従来から申し上げておりますように、現在検討中でございましてまだその段階でございませんので、この二つの点から答弁を差し控えたいと考えております。
  59. 和田教美

    和田教美君 それではもう一つ刑事局長にお答え願いたいんですけれども、これまで検察が国会の告発を待たずに、いわゆる議院証言法上の偽証の疑いで被疑者を逮捕したということがありますか。  それで、そういうことと関連して、いわゆる議院証言法上の偽証罪の捜査と国会、委員会の告発との関係について、もう少し説明をしていただきたいと思います。
  60. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 第一点の前例でございますけれども、これはロッキード事件の際に、告発を待たずに、議院証言法で逮捕した事案が二件ございます。一つは、既に起訴されました大久保という被疑者の場合でございまして、これは五十一年の六月二十二日に検察庁が逮捕いたしまして、そのときに検事正から予算委員会に御通知申し上げまして、たしか六月二十五日に委員会から告発がありまして、それで捜査を継続したという事例がございます。もう一つは、伊藤という被疑者でございますが、やはり同じように告発を待たずに逮捕いたしまして起訴した事例がございます。  それから第二点目の告発と捜査の関係でございますけれども、先ほど申しましたように法制上はやはり議院なりあるいは委員会なりの御検討を待って、告発を待って捜査をいたすのが前提だろうと思います。しかしながら、これは原則でございまして、ロッキードのときは、当時の稻葉法務大臣も国会で御説明しておりますように、逃亡あるいは証拠隠滅を招来すると今後の捜査に重大な支障が生ずるおそれがあったために、やむを得ず逮捕して、その後に告発を待ったということでございまして、端的に言えば告発を待って捜査をするのが原則でございまして、そのほかは例外というふうに理解していただいて結構だと思います。
  61. 和田教美

    和田教美君 次に、長谷川リクルート国際バン会長が同じように当委員会で証言に立ちましたが、私も質問をいたしました。私の質問の中で、NTTがリクルートに転売したスーパーコンピューターXMP二一六、いわゆる一号機ですね。これの価格について長谷川さんに聞いたんですけれども、長谷川さんは、リクルート社の契約書を見てきたけれども約二十億円強であったと思うと、しかしクレイ社から幾らで買ったかわからない。 また、その上に手数料を幾ら乗っけてリクルートに売ったか、そういうようなことも私の任でなかったからわからないと、こういうふうに答えられました。しかし長谷川氏は、このスーパーコンピューターをリクルート社に売るときの一方の契約担当者、契約書にサインをしておる。そして、その相手は江副氏であるということは証言でも認めておったわけです。そういう立場の人が、クレイ社からの購入価格が幾らであるということもわからない。それからそれに乗っけた手数料が、マージンが幾らであるかということもわからないというふうなことで、どうして契約がサインできますか。全く不可解な答弁だと思うので、これは限りなく偽証に近いと私は思うんですけれども、NTTの参考人の方はどうお考えですか。
  62. 村上治

    参考人村上治君) 先生御指摘のように、リクルート社から御依頼のありましたコンピューターシステムの設計建設費に係ります契約につきましては、当時データ通信事業本部長でございました長谷川氏が行いました。クレイ社から購入いたしました機器の価格に、調達に要した費用あるいは設計建設に要する費用等を加えまして適正な価格でリクルート社からお支払いをいただいたわけでございます。  長谷川氏の当日の証言は、機器の購入価格を問われました後に、引き続きリクルート社への売買価格について御質問があったために、機器の調達部門は国際調達室であるというふうなことから、確かにそれはそうなっておるわけですが、そういうことから先日のような証言になったのではないかと、かように存じております。
  63. 和田教美

    和田教美君 今の答弁、全くわかりません。調達室長が調達、つまりクレイ社との契約書の担当者であることは私も承知しております。しかし、それにどれだけ上乗せしてリクルートに幾らで売ったかというふうなことは、当然長谷川証人は知っているはずですね。これがわからないというのは、その手数料がわからないというのは全く理解できない。その点を説明してください。
  64. 村上治

    参考人村上治君) ただいま前段で御説明いたしましたように、そういうことで契約をいたしておりますので、先生御指摘のようにそういう費用等については十分承知しているはずだというふうに考えております。  ただ、私が後段で申し上げましたのは、そういった機器の調達部門は国際調達室であるというふうなことと勘違いして、私はその任でないというふうなことを言ったのではないか。こういった大変緊張する場でもございますので、勘違いをいたしたのではないかというふうに、かように存じております。
  65. 和田教美

    和田教美君 勘違い論でやられちゃもう言いようがないですね。  それでは、この問題に関連して通産省にお聞きしたいんですけれども、通産省の工業技術院もリクルート社の一号機と同じXMP二一六を買っております。二年後ぐらいに買っているわけです。全体価格は大体四十数億円。リクルートがNTTから譲渡されたのは二十億ちょっとということですから、えらくこの価格に差があるわけですね。それでその点が疑問なんですが、この工業技術院が買った四十数億円というものについては、本体価格は幾らか、また周辺設備費用は幾らか、リクルートの分にはない半導体記憶装置というのがついておりますけれどもこれは幾らか、さらにクレイ社から買ったアプリケーションソフト、これはどの程度で幾らか、そういうものを含めて総体価格は幾らで調達したか、具体的にひとつ御説明願いたいと思います。
  66. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、この種の設備といいますのは大臣決裁まで上がってこないものでございますから、きょう具体的な御質問があるいはおありかと思いましたので、工業技術院長を呼んでございますので、工技院長から詳しく説明をいたさせたいと思います。
  67. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) お答え申し上げます。  私どもが導入いたしましたコンピューターシステムの中にスーパーコンピューターが入っているわけでございます。それで、ただいま御指摘のように、システム全体としては四十六億一千万でございますが、クレイ社のスーパーコンピューターの本体機器部分は二十二億三千万円でございます。この前も御答弁申し上げましたように、この中には半導体記憶装置三億六千万円を含んでおるわけでございます。そのほかに、私どものコンピューターシステムとしては、スーパーコンピューター以外に周辺装置、これは私どもの研究用に使うためにスーパーコンピューターを能率よく働かせるための装置でございまして、十四億六千万円を含んでおります。それからそのほかにアプリケーションソフトウェア、これは全部で四十五本でございまして、その価格は九億三千万円でございます。以上合わせまして四十六億一千万円でございます。
  68. 和田教美

    和田教美君 それでは、NTTの参考人の方にお聞きしたいんですけれども、NTTの方はリクルートに譲渡した価格を、明確なことを一回も言ったことがないんですね。しかし、今のお話でも工業技術院の機種との関係でまだまだ疑問点があるわけです。どうして二十億円以上の差が出たのか。今の御説明ですと、アプリケーションソフト、これが約十億ぐらい工業技術院にはついているわけですね。そうすると、今の計算からいくとアプリケーションソフトというふうなものは、とにかくリクルートの分については全く買わなかったのか。買ったということになれば、長谷川さんが言う二十億強ぐらいではとても売れないと思うんですね。  それともう一つは、どうも聞いてみますと、クレイ社はかなり値引きをしたんではないかと言われておりますね、リクルートに回す分については。NTT関係では前後三機を輸入するということであったので、NTTが調達する分は余り値引きをせずに、リクルート分については特に配慮して値引きをしたというふうなことがないかどうか。幾らで調達したか、それでリクルートに売った中身はどういうことであったか、そういう点をこの際はっきりしていただきたいと思います。
  69. 村上治

    参考人村上治君) リクルート社へお納めいたしましたコンピューターシステムの関係につきましては、スーパーコンピューターの本体あるいは外部記憶装置、基本ソフトウェアでございまして、それが主なものでございます。先生御指摘のアプリケーションソフトや、あるいはフロントエンドプロセッサー等は含まれてございません。また、本体なりあるいは外部記憶装置等につきましても、種類であるとか、あるいは構成台数によりまして価格というのは相当大きく左右されるものと考えております。  なお、私ども、リクルート社向けの二台、あるいは研究所用といたしまして二台購入しておりますけれども、いずれも適正な価格で購入いたしておるというふうに考えております。なお、こういったものにつきましては会計検査院の御調査も受けておりますので、特段そういった不適正であるというふうな御指摘はいただいておりませんので、さように考えております。
  70. 和田教美

    和田教美君 値段を言わなきゃ適正とは言えない。
  71. 村上治

    参考人村上治君) なお、購入価格につきましては、個別の契約内容でございますので、取引先の今後の営業活動に不利益をもたらすおそれもございますので、他の取引と同様に当事者以外には明らかにいたしておりませんので、この点お答えは御容赦いただきたいと存じます。
  72. 和田教美

    和田教美君 郵政大臣にお尋ねしたいんだけれども、通産省は工業技術院の分を全部中身も言った。そして田村通産大臣は前々から別に秘密にする点は何もないと言っておるわけですね。特殊法人であるNTTが価格については一切言わないというのは、これはどういうことですか。そういうことで郵政省は満足しているわけですか。
  73. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 自由化いたしました企業の契約の内容に関しましては、私どももNTTからこの内容については、価格については公表ができないということを言われておりますので、私 どももこの契約、いろいろこれからのこともございますので公表をしないというNTTの報告を受けて、そのとおり私どもも考えております。
  74. 和田教美

    和田教美君 この点総理、どうですかね、今の問題は。特殊法人ですから政府もいろいろ要求することができると思うんですけれども、もうここまで来たら、疑惑の一つの焦点ですからはっきりした方がいいと思いますが。
  75. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の経験からいいますと、私が大蔵大臣でございまして一人株主であったことがございます。今も株主であるわけでございます、国庫大臣が株主になっておりますから。しかし、自由化したからという前提からいうと、法律的根拠を正確に勉強してみたわけじゃございませんが、郵政大臣のお答えが正しいのかな、こんな感じで聞いておりました。
  76. 和田教美

    和田教美君 この点は非常に不満ですけれども、次に、根來刑事局長が公明党の塩出委員に対する答弁の中で、一般論で言うと、金を貸した事実があってもよく調べるとそれが贈与に当たる場合もあると、株式の譲渡といっても客観的事実、当事者の意思を総合するとそれが贈与に当たる場合もあるかと思うというふうな答弁をされておる。それから、総理も十六日の衆議院リクルート問題調査特別委員会答弁で、結果として未公開株の売買は現金の贈与と同じ感じがするというふうなことを認められたということが伝えられてお  政府部内もようやく、このリクルートコスモス株のばらまきというのは実質的には現金贈与と同じだという認識をだんだん持ってこられたんだと思うんですけれども、その点、総理にもう一度、そういうふうにお考えなのか確認をしたいと思います。
  77. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 相対取引であろうと、あるいは市場を経由しようと、株式の譲渡、譲り受け、譲り渡し、これはまさに経済行為でありますと、そのとき申し上げたのは。が、そのとき質問者の方が、結果として一方が、譲り渡しの方がそういう意図があったら結果として現金贈与と同じことになるんではないか、こんな質問でございました、たしか。で、結果として私も、今のお話を聞いておりますと、そういう感じを持ちましたと、法的な断定とかということじゃございませんが、素直に、素朴にそういう感じをお答えの中で申し上げたわけでございます。
  78. 和田教美

    和田教美君 今の答弁のとおり、実質的に現金贈与と同じである、そういうケースが多いということを政府も認められたわけです。  そうなると、国税庁当局に聞きたいんですけれども、国税関係のいわゆる課税問題が起こってこないかどうかということでございます。  土地の譲渡の場合は、個人から個人に不当に安く売ったと認定されると、その部分は贈与とみなされて贈与税が課税されますけれども、株の場合には、確実に値上がりする株を資金まで面倒を見て、そして不当に安く譲渡したとしても単なる商取引ということで、全くそういう課税関係は起こらないのかどうか。通常、個人から個人の場合は、不当に安い分については贈与税が課せられる。また、企業から個人の場合には一時所得で所得税が課せられることになっております。さらに、株式を譲渡した企業には有価証券譲渡益が発生するわけですが、低額譲渡したことを理由に、その分を利益計上されて法人税の課税が行われることになります。これについては、株のこのような譲渡は主に特殊な間柄で行われて、明らかに相手方に利益を与えるという意図に基づいて行われる場合が多いからだというふうに言われておる。  そこで、具体的にお尋ねしたいんですけれども、五十九年十二月のケースあるいは公開直前の六十一年九月に政治家などに再譲渡したケースなどについて、国税庁当局は新しい課税問題が起こる可能性があると判定しているかどうか。最近の新聞報道によると、国税庁も特に六十一年九月の、いわゆる還流株が無利子の融資つきで政官界などにばらまかれたということについて、一時所得としての課税が可能かどうかの検討を始めたというふうな報道もあるんですが、国税庁当局の答弁はいつも一般論一般論と言うのですが、もう一般論では通用いたしません。ここで具体的にこのケースについてひとつお答えを願いたい。
  79. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) リクルートコスモス株に関連しましての一般的な法律関係は、先ほど先生の方からおっしゃったとおり、キャピタルゲインに対する法制の部分と、それから場合によっては一時所得あるいは贈与税云々という関係につきましては、法律上の一般的な関係は先生おっしゃったとおりかと思います。私どもも、このコスモス株関連の問題につきましては、国会での御議論あるいは各種報道等も含めまして関心を持って見ております。  今後の問題につきましても、従来から申し上げておりますように、課税上問題があれば当然必要に応じて調査をするという一般的な原則を、本件についてもそういったスタンスで対応していきたいというふうに考えております。
  80. 和田教美

    和田教美君 既に調査を始めたか、検討を始めたかどうか、その点を確認したい。
  81. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 税金の問題といいますのは、刑法とかそういった問題とちょっと違いまして、いろんな資料収集の結果が、結果として申告されているものとの対比で問題があるかどうかという格好になるものですから、どの時点をもって調査、どの時点をもって収集というか、その辺の限界が非常に区別をつけるのが難しゅうございます。  一般的に申し上げて、常時我々はいろんな資料に関心を持って見ているということでもって御理解を賜ればというふうに思います。
  82. 和田教美

    和田教美君 それじゃ、具体的に伺いますけれども、五十九年十二月に七十六人に譲渡されたケース、それから六十年四月に第三者割り当てをした会社から、さらにいわゆるトンネル会社五社を通じて還流再譲渡されたケース、この二つについて、一つ、申告があった場合、二つ、申告はあったが不正の申告である場合、三、申告のない場合、この三つのケースが考えられるわけですが、それぞれの時効は何年ですか。
  83. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 税務署長が申告所得税、法人税あるいは贈与税等につきまして納付すべき税額を増額させる更正あるいは決定を行うことのできる期間、これは除斥期間と申しておりますけれども、先生、三つの例に分けて御質問でございますが、単純過少申告の場合の更正は法定申告期限から原則として三年を経過する日まで、それから単純無申告の場合の、この場合には更正ではなくて決定という言葉を使っておりますけれども、法定申告期限から五年を経過する日まででございます。それから、偽りその他不正の行為によって税額の全部または一部を免れていた場合の更正または決定は、法定申告期限から七年を経過する日まで行うことができるというふうに通則法で定めております。
  84. 和田教美

    和田教美君 そうすると五十九年十二月のケースは、正しい申告があったものについてはことしの三月で時効になっている、しかし、それ以外はまだ時効まである程度ゆとりがあるということで国税庁はゆっくり構えているということじゃないですか。その点はどうですか。
  85. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 先ほど申し上げましたように、私どもは常にいろんな機会を通じての資料収集に努めておるということで、別にゆっくりとか急いでとかいう意味ではなくて、一生懸命やっております。
  86. 和田教美

    和田教美君 刑事局長にお尋ねしたいんですけれども、刑事局長塩出委員に対する答弁の中で、場合によっては贈収賄罪のわいろの構成要件に該当したり、贈与税の課税の問題が新たに発生する可能性があるということを示唆されたと我々は受け取っておるんですけれども、そのように受けとめていいですか。その点お答え願いたい。
  87. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 従来から御理解いただいておりますように、この具体的な問題についてそれがどうだというふうなことを申し上げることはないわけでございますが、そのときも特にお断 りいたしましたけれども、一般論といたしまして実体と形式が異なる場合があるわけでございます。  したがいまして、我々といたしましても、形式がどうであっても実体はどうかという観点から十分検討すべき問題でございますし、仰せのように、形式と実体がそごしている場合も多々あるわけでございます。そういう意味で株式の譲渡の場合でも、その譲渡差益が現金の贈与という場合もあるし、貸借といったってそれは贈与という場合もあるということを申し上げたわけでございます。
  88. 和田教美

    和田教美君 さっき言いましたワールドサービスからの再譲渡ですけれども、新聞報道などを整理いたしますと、リクルートが売買あっせんをしたというのではなくて、リクルートがトンネル会社に一時売却しておいた二十万株を一括して買い戻して、これを二十四人に分割して再譲渡したということになるわけですね。これはリクルートが勝手にワールドサービスと二十四人の譲り受け人との売買約定書をつくったということだと思うんです。  こういうことは、刑法上私文書偽造ということにならないかどうか、お答えを願いたい。
  89. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) これも問いをもって問いに答えるような話で恐縮でございますけれども、刑法の百五十九条には、「行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書」等を偽造したときには「懲役ニ処ス」と、こういうふうになっておるわけでございます。  これも、あくまでも事実関係でございますけれども、文書偽造というのは非常に難しい問題がございまして、例えば名義人から事前に了解を得ている場合とか、あるいは新聞の投書だとかそういうもののように、仮名を用いて文書を作成したような場合でも、必ずしもその人格がその文書を作成した者と誤信させるおそれがなくて、人格の同一性について欺瞞があったと言えない場合等はこれは文書偽造に当たらないというような解説もございますので、これはやはり事実関係をよく調べないと、仰せのように私文書偽造に当たるかどうか断定できないところだと考えております。
  90. 和田教美

    和田教美君 次に、労働大臣にお尋ねしたいんですけれども、リクルートコスモス株三千株を譲渡されていた加藤前労働事務次官、これとリクルートのいわゆる癒着という問題について、これが疑惑の焦点の一つになっているわけですけれども、五十八年、五十九年と就職情報誌トラブルが多発して、当初労働省は、出版社を届け出制としたり、報告、立ち入り検査、その他法律による規制を強化するということを検討していたという報道がありますね。しかし、業界の反対運動などがあって、規制強化の方針で進められていたこの職業安定法改正が一転して自主規制となったと、こういうことですが、この経過が極めて不明瞭、不透明なんですね。  というのは、職業安定法の改正が六十年六月で、そこで自主規制ということがはっきり確定をしたわけですけれども、東京都の労働経済局の調べによりますと、自主規制のもとで求人広告をめぐる苦情や相談がかえって殺到しているという事実が明らかになりました。六十一年度は五十九件、六十二年度は百二十三件、こういうことから見ても、強引にとにかく加藤さんがそちらの方向に持っていったことについてはいよいよ疑惑が深まると思うんですが、その点はどうお考えですか。
  91. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) ただいまのお尋ねでございますが、求人情報誌に対する対応というのは昭和五十八年夏ごろから事務レベルでの検討が行われたわけでございます。この検討の内容と申しますのは二本立てでございまして、業界による自主的な改善努力によって適正化を図るということと、あわせまして何らかの法規制を検討するということであったわけでございます。  その法的規制の面でございまするけれども、当時他の案件、具体的には労働者派遣法案の調整が極めて難航いたしまして、この求人情報誌についての法的規制の問題につきましては、事務段階では極めて煮詰めが足りなかったというふうなこと、それからまた、ちょうど臨調答申の時期でございまして、許認可の新設は厳に抑制をするという方針が出たころでございます。  それからまた、業界自身自主的規制をやろうという機運が、ばらばらであった業界がようやくまとまりを見せてきた時分でございまして、したがいまして、新聞自身、新聞は求人求職の欄を持っております。そこで誤った広告が出ないようにというのは、新聞業界みずから自主規制を行っている結果、成果が上がっているものでございます。この例を参考として自主的規制を行わせること、あるいはまた職業安定法も改正をいたしまして、募集主の倫理規範的なものを設けさせるというふうなことで方針が出まして、その結果、措置がとられたわけでございます。  お尋ねの、トラブルの件数がふえているのではないかというふうなことでございまするけれども、東京都労政局に寄せられた数字を御引用でございますが、全国求人情報誌協会に寄せられた苦情、相談の件数につきましては、大体千件程度で推移をいたしております。  一方、その間広告の数自身は毎年二割増しのペースで増加をいたしております。  なお、この点につきましては適切な処理に努めたいと考えております。
  92. 和田教美

    和田教美君 五十九年四月十七日の衆議院社会労働委員会、その速記録がここにございますけれども、そこで職業安定局長であった加藤氏が、就職情報誌トラブル問題について、「今、こういう情報誌に対しまして広告掲載基準というものをしっかり自主的につくって、そしてそれを自分自身で守っていただくような指導をしておるわけでございます」というふうな答弁をいたしております。  ところが、これは毎日新聞の十二月五日付の記事ですけれども、この加藤さんの業界自主規制論というのは、まだ労働省内の結論を得ていない、つまり法的規制をやろうというふうな考え方もまだ十分あったそういう段階での突出発言、誘導発言であったというふうなことが書かれておりまして、そういうことを労働省の幹部が証言しているという記事でございました。そしてまた、職業安定局長がこういう誘導発言をしたために局内でも、これはもう法律規制はとても無理だなというふうなことで、漸次自主規制の方向に転換をしていった、そういうふうに傾いていったというふうな報道もあります。  ところが、加藤さんが十一月二十一日の衆議院リクルート問題調査特別委員会の証人喚問で、五十九年段階では私は、雇用保険法、労働者派遣法といった問題法案にかかりっ切りで、職安法の検討は担当課長に一任して、実務的には検討結果を後で局議にかけてもらって了承したと、まるでこの法案には関係がないようなことを証言しているわけです。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕  しかし、今の話によると、加藤さんは最初から自主規制の方向で強引に突出発言までして持っていった、こういうこと。そこにリクルートとの癒着の疑惑というふうなことがますます深まってくるというふうに私は思うんですけれども、その点は労働省としてどういうふうに判断をしておられますか。
  93. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) お尋ねの点でございますが、先ほども若干申し上げましたけれども、五十九年四月の衆議院社労委における答弁、この時点を考えてみますというと、ちょうどその前の月の三月に雇用情報センターというものが業界の出捐によりまして成立を見たときでございます。要するに、非常にばらばらでございました業界がようやくまとまりを見せたというその時点でございまして、最初から二本立ての線でトラブル防止を模索しておった時期でございます。まずこの自主的規制については、この際これをやってしまおうというふうな時点でもございました。加藤さんの 社労委における答弁というのはまさしくそういう自主規制をまずひとつ上げようというときの時点でございましたので、そのことが念頭に強くあって言ったのではなかろうかと思います。その当時、法的規制につきましても何らかの方法はないかということを模索しておるのは、これは先生御指摘のとおりのことでございます。  そこで、その担当課長に一任しておったという加藤さんの証言の問題でございますが、私ども当時の関係者を再三にわたり聴取をいたしました。まさしく当時は、雇用保険法の改正及び労働者派遣法の制定という二大案件を抱えまして、四苦八苦をしておった時代でもございます。したがいまして、この職業安定法の改正につきましては担当課が専ら中心となって作業をしていたということは、私ども聴取した限りにおきまして誤りのないことであろうと存じている次第でございます。
  94. 和田教美

    和田教美君 それでは次に、証券局長にお尋ねしたいんですけれども、証券取引審議会がリクルート疑惑を契機として世の注目を集めている株式公開制度のあり方、これについて不公正取引特別部会で検討を急いできた。その結果、大体部会の最終報告がまとまって、二十一日の証取審総会で答申が正式に決まるという運びになったという報道がございます。答申の内容については既に新聞にその一部がいろいろ伝えられておりますけれども、正確にはどういう方向でまとまってきたのか。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕 もし、まだ報告前だから、正式決定前だからそれが言えないとすれば、そういう報告の線を踏まえて、大蔵省として今後再発防止策について基本的にどういう考え方で臨むつもりなのか、もう大蔵省の考え方も煮詰まってきていると思うので、この際まとめてひとつ御報告を願いたい。  これで、私の午前中の質問は終わりたいと思います。
  95. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 今御指摘のように、リクルート問題等株式の公開制度をめぐるいろんな問題につきまして、これを是正するために証券取引審議会不公正取引特別部会を九月九日から再開いたしましていろいろ議論を行っているところでございます。できれば今週中にでも審議会の結論を出していただきたいということで、今検討しております。  ただ、文章等につきましては、現在いろいろなお修文その他をやっておりますので、明らかにできませんので検討の方向だけ申し上げさしていただきたいと思います。  まず、不公正取引特別部会におきましては、株式公開制度の見直しに当たりましての基本考え方、あるいは公開前の特別利害関係人等への株式移動、あるいは公開前の第三者割り当てとか公開株の価格決定方法、そういったいろんな問題につきまして御審議をいただいたところでございます。  基本的な考え方といたしましては、公開を控えましての株式の取引と公開後の取引との間でバランスをとる、どのようにしてとったらいいか、それによって一般投資家の不公平感というものをどう解消したらいいかということ、そういったことから、これは単なる市場参加者の姿勢の問題として解決するということではなくて、やはり制度の問題としてこれを解決していく必要があるんではないか、こういった基本的な方向について検討が行われたわけでございます。  それから、公開前の特別利害関係人等の株式移動に対する規制に関しましては、店頭登録につきましての禁止期間とか、あるいは株式の移動の状況の公開時におけるディスクロージャーといった方向について検討が行われております。  それから、公開前の第三者割り当て増資に対する規制に関しましては、店頭登録についての規制期間とか、あるいは第三者割り当て先に対する一定期間の保有の義務づけとか、割り当て先の公開時におけるやはりディスクロージャー、そういった問題について検討を行っているわけでございます。  公開株の価格決定方法につきましては、公開株式と初値との乖離が問題となっているわけでございますが、その原因は一体どこにあるのか、やはり改善策といたしましては、一般投資家の需給を反映した形での公開価格決定を行う必要があるんではないか、こういった点について、その入札といったような問題を含めまして検討が行われているわけでございます。なお、これに関連いたしまして、店頭登録に関しますところの証券業協会の審査機能を強化すべきである、こういった方向についても議論が行われているわけでございます。  いずれにいたしましても、大蔵省といたしましては、近くといいますか、今週中にでもその審議結果をお取りまとめいただいて、御報告をいただくというふうな予定になっておりますので、これを踏まえましてその具体化のための措置を早急に講じてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  96. 和田教美

    和田教美君 さっき質問はこれで終えると言いましたけれども、まだ十二時までちょっと時間があるからもう一つやれということで、消費税法案について入ります。  私は、欠陥法案と思うんですけれども、なぜその成立を急ぐのかという点について、総理のひとつ見解をお伺いしたいんです。  参議院の審議が進むにつれて、ますます消費税の持つ根本的な欠陥が露呈されてきたというふうに私は思います。小倉税調会長自身が堕落型の間接税というふうに言ったんですけれども、新聞論調なんかを見ましても、この法案についてはあいまい、粗雑、いいかげんと一刀両断で切りつけられておるような状態でございます。にもかかわらず、政府は法案自体の修正は一切やらない、そういうふうなことで来年の四月実施を強行するということでございます。我々は、この消費税法案はもう論議の対象にすらなり得ない内容の欠陥法案であるということから、これを全面撤回してほしいというふうに要求をしているわけですけれども、なぜ総理はそんなに頑張るのか、改めてその点をお聞かせ願いたい。
  97. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、この問題についていろんな議論がございますのは、一つは幸いに国民が勤勉で、今、自然増収というようなものも出る段階ではないか、だから急ぐべきではないではないか、こんな考え方もあります。しかし、この問題は私どもは土地の高騰とかそうした一時的要因が多い、こういうようなことも申し上げておるわけでございます。  そしてまた、今度は税法を構築いたしましたら、何としても簡易課税方式とか、あるいは免税点問題とかいうようなところは、今、先生おっしゃったあいまい、粗雑といいますか、そうした小倉会長のお言葉にもありましたような指摘を受けておることも事実でございます。特にこの問題の指摘は、本院へ参りましてからたくさんの時間、受けておるわけでございます。これらにつきましては、私どもといたしましては我が国になじみの少ない税金でございますから、若干の精緻さを欠くというのは御理解をいただきたい、こういう線でお願いをしておるところであります。  さらにさかのぼって申しますと、やっぱり税法は十八世紀の税法、十九世紀の税法あるいは二十世紀の税法というような流れを経てまいっておりますが、大体一つのシャウプ以来の傾向からいたしますならば、私はまさにシャウプ以来の税制というものにいろんなゆがみ、ひずみが生じてまいりまして、それがなかんずく稼得を中心とする課税、特に源泉徴収等の対象になられる勤労所得者の皆さんというところに大変な重税感というものがやってきた。これを十年間いろんな議論をしながら、そして経済界も比較的安定している今こそこの新税の導入があるわけでございますから、環境の整った時期と考えておる。そこに和田委員のおっしゃいますところの、公明党はもともと基本法で手順法をお出しになっておりますが、それの手順の結局長い短いの問題と、過去の議論を手順の中に入れるかどうか、ここのところの差であって、本質的には大体物の理解の上に立って御議論 をいただいておるものというふうに私は認識さしていただいております。
  98. 和田教美

    和田教美君 午前中の質疑はこれで終わります。——まだいいですか。
  99. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 理事会で十二時までということで決まっておりますので、もしかありましたら、してください。
  100. 和田教美

    和田教美君 それじゃもう一つ。  今の環境が熟してきたということについて、僕は環境は全然熟していないと思うんですね。与野党の対立が激しくて、野党は全部反対しているわけです。国民にも強い反対運動がある。そして総理は、粛々と対話し論議できる環境が整ったというような趣旨のことも今まで答えられておる。しかし、そういう状況にも全くないと思うんですね。  それから、さっきちょっとお触れになりましたけれども、自然増収の追い風ですね、これがあるということは財源的には何も急ぐ要素は全くなくなってきているということですが、その点についてもう一度御見解を願いたいと思います。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 十二時を見詰めながらお答えをさしていただきます。  今の前段の答弁の中でも申し上げましたように、私は、確かにニュアンスの相違はございましょうとも、野党の皆さん方が反対なすって我が党が賛成をしておる、こういう状態にあることは熟知いたしております。  したがって、こうして議論を重ねながら反対と賛成の間の修正部分等についての御議論もいただき、本来国会は、原案反対、修正部分賛成ということについては、これは議決の仕方に長い間議論のあったところでありますが、そうした形で送られておる法律でございますだけに、そしてまた、こうして和田さんと議論しておるわけでございますから、粛々たる環境は整っておるんじゃないかなというふうに思っております。  それから追い風論。これは確かに私どもも承知しております。そういうときにこそ、財源論として議論するのではなく公平論として議論できる絶好の機会ではないかなと。ここに見解の相違と言ってしまえばそれまででございますけれども、実際貴党の基本法というのは、読んでみますと手順法として私もそれは認めます。が、重税感部分、不公平感部分ということについては大体基本認識は一致しておるんじゃないかな、もうそういうふうに受けとめさしていただいておる。  十二時になりましたので、以上でお答えを終わります。
  102. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に委員会を再開することとして、これにて休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  103. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制問題等に関する調査特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、各案について質疑を行います。和田君。
  104. 和田教美

    和田教美君 午前中に引き続きまして、消費税法案についての質問を続行いたします。  午前中の総理答弁で、少なくとも財源問題については消費税を早く導入する必然性はないということをお認めになりました。  そこで、私は論点を少し進めて、私の試算によると、消費税は撤回をして、そしてそれ以外のつまり所得税、法人税、その他の、今衆議院修正を受けて回ってきている関係法案は全部通す。そうしても今のこのどんどん伸びておる自然増収で賄うことができるんではないかという問題をひとつ提起したいと思います。  それで、これは非常にラフな計算ですけれども、私はこういうふうに見ておるわけです。最近の新聞報道によりますと、今年度の税収は極めて好調で、当初予算の税収見積もり四十五兆九百億円を三兆円前後上回る見通しになったというふうに言っております。しかしこれは今年度分の所得税減税と、それからことし一月にさかのぼって実施予定の相続税減税、こういうものを合わせた減税額約二兆円をのみ込んだ上での計算であって、六十三年度の当初予算比の自然増収は実力では五兆円あるいはそれ以上になるということだと思うんですね。このような税収好調が六十四年度も続くとすれば、六十四年度の税収増加額は、私の推計では五兆円程度になると思います。  そこで、消費税の導入を取りやめて、現行間接税はそのかわりそのまま据え置く、そういうふうに仮定をいたしまして、その他は、衆院修正どおり税制改革を実施したとしても、増収、減収分を差し引き計算して約三兆八千億円の減税財源があれば足りるという計算になります。  ですから、現在の税収動向が続く限りは、衆院修正程度の所得税、法人税などの減税は消費税抜きで十分可能だというふうに思うんですけれども、総理大蔵省の見解をお聞きしたいわけでございます。
  105. 水野勝

    政府委員水野勝君) 六十三年度の税収は、現時点におきましては比較的好調でございますので、ある程度の金額の自然増収額が出るということは仰せのとおりかと思うわけでございます。また、そうした見込み等も踏まえたところであろうかと思いますけれども、六十三年度、既に減税が御指摘のように所得税で行われておりますし、また、御提案している税制改革案では相続税を一月にさかのぼって適用するということもいたしておるわけでございます。しかしながら、今回はまさに最初からの御議論もございますように、今回は税収を確保するということを念頭に置いての抜本改革というのではございませんで、税体系、所得、消費、資産の均衡のとれた御負担をいただくような改革をお願いをするということでございます。  そういうことの中で、消費につきましても適切な御負担をいただけるということを前提にした場合に、所得税なり法人住民税なりの減税も恒久的な税制として可能になる。そうした間接税なり資産課税の面での全体的な見直しの中で、まさにそれを前提としての減税でございます。減税だけということでございますと、やはり税収的な面はもちろんございませんけれども、基本は均衡のとれた税体系ということでございます。  それから、確かに六十一、六十二、六十三年度と税収は好調でございますが、こうした税収はあくまでなおかなりな国債を発行し、また残高が百五十兆、百六十兆円という国債を発行している中での増収でございますので、税収がある、だから即減税ということには結びつかないのではないか。やはり所得、消費、資産、その均衡のとれた税体系を御審議お願いする、その中で初めて減税の問題も議論できる問題ではないかと思うわけでございます。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、主税局長が申し上げたことと差があるわけじゃございませんが、やっぱり所得、消費、資産というもののいわゆるバランスのとれたという、それがまず基本にありますので、これは一年待ってもその財源の問題は別に心配することないじゃないかと、こういう理論、そういたしましょうとは言えない。  それから、私は長年いわゆる財政再建路線の大蔵大臣をやっておりましたから、自然増収があれば財政再建路線の方へ、すなわち今は納税者でない子や孫へのツケを回すことに充てょうというのが基本的な考え方になりがちな性格になっております。
  107. 和田教美

    和田教美君 中曽根前総理税制改革案はいわゆるレべニュー・ニュートラル、増減税差し引きゼロということでございました。ところが、これに対して竹下内閣が提出しました税革案、修正前の税制改革案ですけれども、これは二兆四千億円の純減税というふうになっていました。この政府案を法人課税の減税と個人課税の減税という観点から見ますと、法人課税は、法人税減税一兆八千億円と法人課税の適正化による増税六千億円で、差し引き一兆二千億円の減税ということになっております。そうすると、全体で二兆四千億円の純 減税のうちで、その半額、つまり一兆二千億円が法人課税の減税に回っているわけです。本来法人税の基本税率の引き下げは法人税自体の課税ベースの拡大によって行うべきであるというふうに私は思う。  また、一九八六年の米国の税制改革では、千二百億ドルの所得税減税の財源をすべて法人税の増税で賄っております。ところが、今回の改正案は、政府案は法人税の課税ベースの拡大が非常に不徹底のために、結果的に消費税という個人課税によってその財源を賄うことになってしまっていると、こう思います。これは家計への負担増によって法人税減税を行うというものであって、税のあり方として筋が違うんじゃないかというふうに思うんですが、その点いかがでございますか。
  108. 水野勝

    政府委員水野勝君) 法人税につきましては、昭和五十年代に入りましてからは所得税減税ということはだんだん行われなくなりましたが、一方、財政需要にこたえるということから五十六年、五十九年と二回にわたって税率引き上げが行われました。その税率引き上げを行う場合には、まず税率引き上げを行う前に企業関係の租税特別措置なり引当金、準備金等を見直して極力課税ベースの拡大を図る必要がある。それでどうしてもなかなか対処できないときには税率の引き上げをということで、その税率引き上げを二回お願いをしました。そういうことでございますから、昭和五十年代に入りましてからは、租税特別措置につきましてはもう極力縮減をお願いをする、新設は御遠慮いただくということでやってまいったところでございます。  したがいまして、昭和四十年代あたりでございますと、租税特別措置による減収額というのは八%、九%、法人税収の九%程度ぐらいにまでふえておったところでございますけれども、現在は法人税収に占めます割合は三%程度でございます。したがいまして、これは法人税率というベースに直してみますと、一%程度のものであろうかと思うわけでございます。  また、そのように五十年代に入りまして租税特別措置を極力見直しをさせていただいてきたところでございますので、残っておりますのは科学技術の振興でございますとか、住宅対策でございますとか、公害対策でございますとか、かなりもう絞られてきておりますので、こうしたものをさらに基本的に廃止するなり見直しをして税率引き下げに回すということはかなり限界があろうかと思うわけでございます。  確かにアメリカの場合は、レーガン改革におきましては、五年間ではございますけれども、千二百億ドルぐらいの増収を講じたところでございますが、これはまさにレーガン税制の、今回のレーガン税制はそうでございますけれども、その何年か前をさかのぼりますと、思い切って企業の優遇措置を講じた、それがかなりな規模のものとなってございました。その代表は投資税額控除でございます。それだけ大規模な租税特別措置を講じていろいろ政策を進めてきた。それがかえってゆがみを生じてきているという指摘もあって、これを税率引き下げとともに廃止した。まさにそれだけ大きな特別措置が思い切って大胆に講じられていたそのまた反映であろうかと思うわけでございます。
  109. 和田教美

    和田教美君 総理は、かねがね消費税の導入について逆進的な税体系になるなどの八つの懸念を提示されております。そして、しかしこれらの懸念は税制以外の予算措置などによって中和することが可能だということを委員会でもしばしばおっしゃっております。  しかし、先週の本委員会における公聴会で、税の専門家の意見の多くは、このような八つの懸念の多くは消費税という制度そのものから生まれるものであって、これを工夫によってある程度薄めることはできても、欠陥そのものを完全になくすることは不可能だ、中和することは不可能だという意見でございました。例えば逆進性の問題一つ取り上げても、政府は低所得層に対して生活保護基準の引き上げとか、あるいは老齢福祉年金を多少増額するとか、あるいは一時金を出すとか、いろいろ苦労されておるようでございますし、それはそれで結構なんですけれども、しかし公聴会ではある御婦人の税理士の人が母子世帯の問題を取り上げられまして、これらの母子世帯の大半は生活保護を受けることを潔しとせず自己の勤労によって生活しているから、生活保護という社会保障ではカバーできないというふうなことを主張されたわけです。  私は、本質的には税制のゆがみ、欠陥というものは税制で直すべきだというふうに考えるんですが、その点についての総理の御見解をお聞きしたいわけです。
  110. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますとおり、間接税の本来持つ逆進性、これは私も否定しておりません。可能な限りこれらが税制の中で是正さるべきだと、この考えも正しいと思います。したがって、課税最低限の引き上げ、各種控除、なかんずく中堅層に対する控除、中堅層に効く控除と、こういうふうなことで一つは中和していくのが本筋だと思います。  それで、税外の財政支出の中で中和しようというのが、今御指摘なさったとおり、今度は生活保言水準の引き上げ、それでやっぱり生活保護水準と課税最低限の間の方に対するもろもろの措置というものを今いみじくもおっしゃった一時金、まだ決まったわけじゃございませんが、そういうことで手を当てていこうということで、今まさに詰めの最中であるとでも申しましょうか、そういう考え方でございます。
  111. 和田教美

    和田教美君 ここに持ってまいりました昭和六十二年九月十一日の参議院の大蔵委員会で、吉牟田さんという参考人の方がカナダの付加価値税の例について述べているのがございます。それによりますと、逆進性の緩和という問題について、レスター・サローという学者がいますけれども、その人が「財政赤字」という本の中でこのカナダの税制の問題を取り上げているわけですが、逆進性を緩和するために付加価値税の定額を、一定額ですね、大体この記録によると「四人家族で千五百ドル」と書いてありますが、それを所得税額から控除すると、そういうふうな制度をカナダはとっているということでございましたが、さらにアメリカでもフリードマンだとか、そういう学者がこれに類似するような考え方、いわゆる逆所得税といいますか、負の所得税、マイナス所得税というふうな考え方を主張しております。  そこで、総理の言われる懸念を中和する方法として、日本の場合もこういう低所得者層に対して、そういう制度というようなものを導入するお考えがないのかどうか、その点をお聞きしたい。
  112. 水野勝

    政府委員水野勝君) 税と社会保障とを一体として負の所得税ということで対処しようという学説なり考え方があることは承知をいたしてございます。我が国においても時々議論はされることはございます。  ただ、この負の所得税制度でございますと、これを社会保障制度の柱にするわけでございますから、現在の我が国の社会保障制度は、お年寄りとか身体障害者、今お話しの母子家庭、そうした方々の態様、個別の事情に応じまして適切な給付を行うようにしているという体系でございますので、これを負の所得税体系に統一いたしますと、もうその方の所得の水準だけによってすべてを律しようということでございますので、現在の我が国の社会保障制度体系といったものを基本的に見直すことになろうかと思いますので、なかなか大問題ではないかと思うわけでございます。  まさに総理から申し述べておりますように、我が国におきましては、所得税の課税されている世帯におきましては所得税の面で所要の措置を講ずる、それ以下の低所得者については歳出を含めた体系できめ細かく配慮をする、これが従来から我が国がとってきたところでございますし、これがまた実情に応じた対処方法ではないかと思うわけでございます。  御指摘のように、カナダにおきましては最近そのような制度が導入されたということはお聞きし ておるところでございます。ただ、これもカナダの場合でございますと、百六十万円程度の所得の世帯についての措置でございます。我が国におきましては、かなり課税最低限も高くなっておりますので、この水準の程度の所得者につきましての措置でございますと、これはもう歳出面と申しますか、社会保障面で対処されるべき問題に、我が国におきましてはそういうものに当たるのではないかなと思うところでございます。
  113. 和田教美

    和田教美君 総理の言う八つの懸念の中に、税率の安易な引き上げが行われて歯どめがかからないという懸念があるということもおっしゃっておる。ところが、総理はこの点について、国会の議決が大きいハードルになってこれが歯どめになるんだということを繰り返しておっしゃっております。しかし、私はヨーロッパ諸国の例から見て、この説をうのみにすることはできないわけです。  なぜかといえば、付加価値税が実施されているOECD加盟十八カ国ですね、この例を見ても、国会の承認というハードルが立派にあるわけですけれども、当初低率で導入したどの国も数年のうちには二けたの税率にアップして、今一けたの税率というところはないですね。そういう現実から見ても、国会がハードルというのは必ずしも歯どめにならないんではないか。特に、この消費税に非常に執着される自民党が絶対多数というふうな状況の中では、余計どうも危いんじゃないかというふうに考えるわけです。  とにかく、そういう点でもう一つの問題は、税率三%は安い安いということをおっしゃるけれども、しかし必ずしも低いと言い切れないんではないか。というのは、日本の今度の消費税ほど課税ベースというか課税対象が広い例はありませんね。そうすると、課税ベースが広いと税率が低くても要するに税収は相当な税収になるわけでございまして、そういうものも勘案をしてこの税率の問題というのは論じなければいけないと思うんですが、その点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  114. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、国会が歯どめでございますというのは、何言ってんだ、当たり前のことじゃないか、租税法定主義がありゃそのとおりじゃないか、こういう議論があり得ることを私も十分承知しております。しかしながら、こうして国会で議論しておりますと、下げる問題なら別として、税率を上げる問題がそんなにすんなり通るわけもないという感じを強くします、この十年間の反省の上に立って。  それから、与党内で三%ということを決めるためには物すごい議論があって決定したものであります。そのことを知っておりますから、言葉の上では、私が申しますのは、上げるような環境にあろうはずがありませんと、こんなことを申し上げておるわけでございます。  ただ、私も申し、今も御指摘がありましたように、ヨーロッパの場合は仕組みが違います。いわゆる基準税率があって、税率にゼロ税率があったりといういろんな段階がございますが、総じて三%というのはそれから見れば低い税率であることは事実でございます。しかし、ヨーロッパは上げてきたではないかと言われますと、それは歴史的には絶えず結局勤労所得減税というものをやりながら上げたという、むやみに上げたわけじゃございません。しかし、ヨーロッパの方々も、それでいつの間にか国民負担率全体あるいは租税負担率全体で見るとこんなに高くなっておった、したがって、早目に社会保障の中にお世話になった方がいいというようなことから、ヨーロッパ病なりいわゆる勤労意欲の停滞をもたらしたわけでございますから、そのことも大いに反省になることだと思うのでございます。  ただ、私が最小限最後にいつもお許しいただいておるのは、税制というのは、最終的にはそのときに生きとし生ける国民が受益と負担ということで判断するものだから、未来永劫にこれを縛ることだけは、やっぱり歴史の一こまの中に存在した私たちがそれを未来永劫までのことをしてはならぬ。少なくとも私の内閣においては、というようなところにその限界を求めながらお答えをしておるところでございます。  それからなお、先ほどのことでちょっと落としましたが、母子家庭の云々がございましたが、私ども念頭にありますのは、母子家庭のうち児童扶養手当を受けていらっしゃる百八万世帯というようなものも念頭に置いて今最後の詰めをやらしていただいております。
  115. 和田教美

    和田教美君 政府は、消費税法案が成立すれば来年四月一日から実施する、延期はしないということを言っております。しかし、四月から実施ということになるとあと三カ月、しかも正月休みをとると三カ月もないわけですね。そんなことで新鋭の準備だとか税務職員の学習、教育、納税者への周知徹底というふうなことは到底無理だと私は思うんです。例えば納税義務者である事業者にしても、新たにレジの取っかえだとか、あるいはコンピューターあるいはコンピューターソフトも手直しするとか、いろんな新しい要するに機材の購入もしなければいけない。そういうことは、全国一斉に注文されてくるというふうなことになるとこれはお手上げ状態になって、三月末までにそういう準備は到底整わないというふうな可能性だってあり得るんではないかというふうに私は思うんですね。  そこで、通産大臣にお聞きしたいんですけれども、そういう準備はできるのか。やってみてできなかったというんではこれは大混乱になると思うので、私は恐らく相当な混乱が起こるだろうというふうに思うんですが、その点が一つ。  それから、これは大蔵省にお聞きしたいんですけれども、例の弾力的運用ですね、衆議院で修正としてつきました、半年間は弾力的運用というものですね。この内容について大蔵省はさっぱり具体的にお答えにならない。なるほど与党と野党の間で取り結んだんだからおまえらで勝手に考えろというふうな態度のように見えてしようがないんですが、少なくとも修正として衆議院を通ってきているんであれば、行政当局として、もうこの辺でどういうふうなことだということを具体的に責任のある答弁をすべきだと思うんですが、その二点についてひとつお伺いいたします。
  116. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、私も今の問題で一体これ大丈夫なのかなと思って事務方に十分の検討を命じました。その報告を聴取いたしました。まあ専門にしております通産官僚の説明によりますと、売上税をめぐる議論や我が国の生産、流通の実態を十分に踏まえて、帳簿方式、簡易課税方式等の採用、また非課税取引の削減などを通じて消費税の仕組みの簡素化が図られておるのであって、各種プログラム、ソフトの改編も比較的小規模で済むなど、事業者の納税事務負担は相当程度軽減されるものと考えておるということでございました。またレジスターの買いかえを行う場合につきましても、電子レジスターの買いかえ需要見込み、生産規模などを考え合わせますと、少なくとも初めての納税時点までの買いかえには問題は生じないと思われるという報告でございました。  しかしながら、産業界におきましては消費税の四月一日導入に対応できるのかという懸念があることも確かでございます。今後、消費税法案の修正によりまして明示されました消費税の今おっしゃいました弾力的運営が検討されております中で、このような産業界の懸念に対しましても十分配慮がなされるよう目下大蔵省とも連絡をとりつつございますし、その対応に遺憾なきを期したい。今、大蔵通産が非常に集中的にこの問題等について意見交換を交わしておるところでございます。
  117. 水野勝

    政府委員水野勝君) 衆議院におきましてこのような条文をいただいたところでございますので、もう事務的にもこれは最大限に尊重し、その趣旨が実のあるように生かされるよう目下検討中でございます。ただいま通産大臣からも御説明がございました。まさに私ども関係者と現在大いに詰めているところでございまして、決して国会で入ったものだからというようなことはございません。そういう御指摘なりをいただく前に、むしろ 私どもとしても委員から御指摘のように円滑にとにかく実施ができるということが私どもとしての最大の務めでございますので、そこへこのような条文をいただいたということは、まさに重く受けとめて鋭意詰めているところでございます。
  118. 和田教美

    和田教美君 大型間接税を導入している諸国の例を見ましても、日本の消費税のように課税範囲、課税ベースが極端に広い国はほとんどございません。売上税法案で失敗したというので非課税品目を極端に絞った結果、基本的な生活必需品である食料あるいは水道の水にまで税金がかかる。この間の公述人も、水道は命の水ということで盛んにその点を主張されておりましたけれども、そういうことから見ても、この税制はおよそ人間味のない税制ではないかということがよく言われるわけでございます。ヨーロッパを見ましても、食品や水道、衣料などは非課税ないしゼロ税率あるいは軽減税率で配慮いたしております。大蔵省は日本に似た例としてニュージーランドを挙げておりましたけれども、これが唯一の類似国ではないかというふうに思うんです。  それからまた、日本の場合には一律三%の単一税率。これも標準税率のほかに軽減税率あるいは割り増し税率で複数税率制をとっているフランス、西ドイツなどと比べて非常に違っている点でございます。  また、これは既に何回も論議になっておりますように、EC型付加価値税のように伝票方式、インボイス方式をとらずに、所得の捕捉が非常にいいかげんな帳簿方式をただ納税義務者の反対を和らげるというふうなことだけで導入をしている。こういうことなんですが、一体この帳簿方式をとっている国が世界じゅうでほかにあるのかどうか、それをひとつお聞かせを願いたいと思います。
  119. 水野勝

    政府委員水野勝君) ヨーロッパの国々にはこの種の税はかなり古くから実施されているところでございます。そうした時代的な背景を考えますと、もろもろの消費の態様に応じて複数税率等を考えるということもあったかと思うわけでございますが、比較的と申しますか、最近のように消費が全体として高度化する中で、その内容が多様化するとともに平準化しておりますこのような現在の社会におきましては、所得とともに消費につきましても広く薄く課税お願いするというこのような税の考え方からいたしますと、薄い税率で、しかしできるだけ例外のないようにお願いをするというのが、現時点での経済社会情勢により即応した消費税とも言えるのではないかと思うわけでございます。  それから第二点の帳簿方式といったものにつきましては、古くからございますヨーロッパには余り例はございませんが、フィンランドにおきますところのこのような税は帳簿方式であるというふうに承っております。
  120. 和田教美

    和田教美君 今度の法案は消費者を無視した消費税というふうに言われておる。一番の問題点というのは、消費税は最終的には消費者が負担する税であるにもかかわらず、実際に払った税金が国庫に果たして完全に納められているのかどうか、それがわからない。また、税額が物の価格の中に潜り込んでいる場合には自分の負担する税額さえはっきり知ることができない。こういうのが消費者の不満ということではないかと思うので、そういう不透明性というのは、私はやっぱりもっともな批判だと思います。そして、そういう不透明性が生ずる原因として、この消費税の仕組み自体、つまり簡易課税制度とか三千万円以下という他の国に比べて高い免税点、さらに帳簿方式などがあるということは、既にこの委員会の論議でも何回も指摘されているところでございます。  そこで、私の考え方ですけれども、せめて消費者が自分の負担する税額をはっきり知ることができるように、本体価格とは別に消費税分を幾らであるかということを必ず別枠表示するというふうに統一したらどうか。税額表示を一律に義務づければ、事業者がそれを懐に入れるのもためらうというふうなこともありますから、効果はあると思うんですけれども、その点についての御見解を承りたい。
  121. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘のようなお考え方、御議論はあり得るところであろうと思います。そういう趣旨も踏まえまして、この税制改革法案の中では事業者は、必要と認めるときは、相手方、事業者なり消費者なりにその消費税の額が明らかとなる措置を講ずるものとする、という規定を置いているところでございます。  ただ、いろいろな業種、いろいろな業態によりまして常にその税額を区分表示するように義務づけるということは、これまたなかなかコストを招く場合あるいはその業種、業態の取引として適当でない場合というものもあるわけでございますので、したがいまして、ここには「必要と認めるときは」ということで限定をしているところでございます。  今後のこの新税下におきますところの取引の中で、おのずとそういった方向はこの条文の方向で定着することも予想されるところでございますが、これを税制として強制をするということはいかがかということでございます。現在の物品税法の中にも、必ずこれは区分して表示することとするという規定はあるのでございますけれども、なかなか実施というか、余りその例はないわけでございまして、そこのところはやはり取引の実態にある程度はお任せするのが適当ではないかと思うわけでございます。
  122. 和田教美

    和田教美君 政府は、消費税の導入に伴う物価の上昇率を一・一%というふうに言っております。しかし、民間の調査機関の予測上昇率は大方この予測を上回っております。しかも、政府の予測は物価全体を平均したものだというふうに私は思うんですが、国民の日常生活に直接影響する消費者物価を中心に考えてみますと、とても一・一%程度にはとどまらないと私は思います。  例えば、日本経済新聞が七月十三日付で掲載した消費者物価上昇率の記事ですけれども、それによりますと、全体の消費者物価上昇率は一・九五%だけれども、そのうち食料についてみれば二・三四%、住居は二・八三%、被服・履物二・四二%、教育費二・八二%と日常生活に直結したものほど上昇率が高いわけです。  また、物価上昇は一回限りだということも政府はよくおっしゃるんだけれども、例えば韓国では、事前に十分準備したと言っているのに実際に大型間接税を導入してみると売り惜しみ、便乗値上げなどもあってかなりの物価上昇があったというふうに聞いておりますし、ヨーロッパでも大体一年ぐらい便乗値上げが続いたというふうな話も聞きました。この点についてひとつ経済企画庁の見解をお聞かせ願いたい。
  123. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 委員御案内のとおり、私もその日経の記事は読ましていただいたことがございましたが、経済は御案内のとおり生き物でございますから、景気が非常に順調に今日のように上昇期にございますようなときには私どももそれなりの反応もできますし、また冷え込んでおりますときにはこれまたそのような予測が立ちにくい点もございます。  例えば、先ほどからヨーロッパの問題等が大変に出ておりますので、ヨーロッパの例を引くまでもなく、イギリスは一九七三年かと思いましたが導入されたわけでございますけれども、そのときには大体〇・七%ぐらいの上昇率の読みを踏んでおったわけでございますし、またドイツあたりでは御案内のとおり一九六七年ころに取り上げたわけでございますが、このころには御承知のように〇・五%から一・五%ぐらいの弾力的な読みをやったわけでございます。ただ、私どもといたしましては、あくまでも、先ほども御議論になりましたけれども、まず第一に、消費税そのものの税額分が価格というものに完全に転嫁されるということが一つの条件でございます。第二に、税負担以外の要因による何といいますか、価格の変化というものは考慮しない。この前提のもとに物品税廃止というマイナス点なども考えましてこれは計算したわけでございまして、その点をひとつ御承 知おき願いたい、こう思うわけでございます。  ただ、国民生活に好ましくないと言われておりまする影響を最も与え得る価格の便乗値上げでございますが、この点の発生などの事態が起こることが一番懸念されますので、この点は既存のモニターといいますか、あるいは地方公共団体等を通じました価格動向の調査、あるいはまた監視体制を強化していくことは極めて大事な要諦である、このように考えておりますので、よろしく御了承を願います。
  124. 和田教美

    和田教美君 次に、転嫁・表示カルテルについてお尋ねいたします。  総理は、懸念の一つとして税の転嫁が確実に行われないのじゃないかということをおっしゃった。そのために、独禁法の適用除外として転嫁の方法、表示に関するカルテルを一定の条件のもとで認めるということにしているわけですが、そしてその運用に当たってのガイドラインを公取委で今つくっているということでございます。  そこでお聞きしたいのは、例えばカルテル構成員として三分の二以上は中小企業者を入れることを法的に義務づけておるのですけれども、しかしもともと中小企業者の転嫁を容易にするという本来の目的から離れて、実際はほとんどの大企業がカルテルに参加するということを認めることになるのじゃないか。そうして、結果的には三分の一以内の大企業が事実上価格決定のイニシアチブをとって、そして転嫁力のある大企業はますます有利になる、過剰転嫁、つまり便乗値上げが起きるというふうなことが起こらないかどうか、その点を公取委員会通産省にお聞きしたいわけです。  それともう一つ、公取委員会はどういうガイドラインにするかということをまだ発表されていないのですが、もうそろそろやらないととても間に合わないのじゃないかとこれまた思うのですけれども、その点についてもひとつお答え願いたい。
  125. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 今回のカルテルの制度でございますけれども、転嫁カルテルにつきましては、今委員がおっしゃいましたように、構成員が中小企業が三分の二以上を占めている場合に共同行為が認められるということでございます。これは裏を返しますと、おっしゃいましたように、いわゆる大企業が三分の一以下含まれている場合も適法なカルテルであれば認められるということであります。  この制度の趣旨は、私ども理解いたしますところでは、本来、価格形成力の弱い中小企業者の転嫁を容易ならしめるためにというのが転嫁カルテルの趣旨でございます。そういたしますと、業種によりましては、中小企業のほかにいわゆる大企業が混在しているといった場合に、中小企業だけに限定したカルテルでございますと、かえって転嫁の実効性を期しがたい、そういう観点から認められたものでございます。  大企業が入っているのはけしからぬじゃないかという御議論でございますけれども、その前提といたしまして、このカルテルが価格カルテルであるとすれば、それは大企業が有利なような価格カルテル方式に誘導するということは理論的には考えられるわけでございますけれども、これはあくまで本体価格のカルテルは認めていないわけでございます。消費税相当分に対するいわば本体価格に上乗せする部分についての共同行為でございますから、その意味では大企業が支配力を持って中小企業の利益を圧迫するという形にはならない。  ただ、委員がおっしゃいましたように、ただいま私も申し上げましたように、それが本来違法な価格カルテルということになりますと、ひいては便乗値上げ等を通じて消費者の利益を害するということにもなります。こういった行為は今度の政策カルテルでも違法カルテルとして構成されております。そういうことがないように公正取引委員会としては事前、事後を通じまして監視並びに指導をしていかなければならない立場であると理解をいたしております。  なお、ガイドラインにつきましては、法律が仮に成立いたしました場合になるべく早く公表するということで、ただいま国会で出ました議論等も整理をしながら関係省庁と事務局で鋭意詰めております。中身は、今回の共同行為に対する手引きのほかに、本来景品表示法等で禁止されております表示の具体的なケースにつきましてどういうものが問題になるのか、あるいは下請事業者等が親事業者から不当にしわ寄せを受けないように、親事業者のどういった取引行為が問題になるのかといった点も含めましてただいま作業をいたしておりまして、なるべく早く公表をいたしたいと考えております。
  126. 和田教美

    和田教美君 消費税は免税点を課税売上高三千万円に設定をしておりますが、この水準以下の事業者数は全事業者の六八%でございます。免税事業者であっても仕入れには消費税相当額が含まれているわけですから、仕入れに際して支払った税額分を取り戻すためにその分は商品価格に転嫁しなければならないと思います。しかし、丸々三%転嫁を認めるのも合理的ではありません。政府は免税業者にも三%を認めると言うんですが、その理由はどういうことなのか。  しかし同時に、この問題については別の側面のあることも見逃がせないと思います。売り上げの八割が仕入れだというふうにみなせば、転嫁すべき額は売り上げの二・四%となるわけですが、もちろん免税業者は余り大きい規模でないわけですから、かえって値上げによる転嫁が課税業者より困難になるというケースも十分想定できるわけでございます。例えばEC諸国の付価価値税の免税点は数十万円ないし数百万円程度ということで、一般に事業と呼ばれる程度の売り上げを有する者はすべて課税する仕組みをとっております。  そこで、課税売上高を三千万円と高目に設定したことによって、かえってより多くの業者に価格転嫁の困難性を強いるというふうな結果にならないかどうか、その点についての御見解をお聞きしたい。
  127. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘のように、売上税のときは一億円でございましたのを三千万にいたしてございます。この三千万円の水準でもヨーロッパ諸国に比べればかなり高いところにあるわけでございます。しかし、御指摘数字がございました免税事業者でございましても、八割の仕入れがあれば二・四%は上がるはずでございます。そしてまた、こうした税が初めての我が国の社会でございますので、そうした事業者が最小限度二・四%は転嫁をしていただく。しかし、そうした方方が他の課税事業者と同じように三%の転嫁をされるとしても、その部分の差は〇・六%でございまして、全体の中で見れば、経済取引の中でそれほど大きなものを占めるわけでもない。  転嫁のために非常に御苦心をされる、コストもかかるということからいたしますと、仮に他の事業者と同じように三%を価格上昇されたとしても、その部分につきましてはあえて国に納めていただくことはないのではないか、それは便乗値上げで不当であるというところまで申し上げることはないのではないかということから、その点につきましては二・四%から三%の範囲内では事業者の御自身の価格政策なりにお任せをしているわけでございます。そうした点は議論がございますので、三千万円という数字につきましては高いという議論もあり、低いという議論もあるわけでございます。売上税の経緯からしますと、やはり一億円というのはやや高い水準にあり過ぎたかと思うわけでございます。  また、第二の御指摘の点につきましては、このような結果として三%までは上げられる、しかしぎりぎり二・四%を上げていただければ仕入れについての税額は転嫁され、回収されているわけでございます。したがって、そこはその方々からすれば、三%丸々かかっている事業者に比べれば、割合にその分御判断の余地がある。そういう意味からいたしますと、三千万円以下の方々にとって、転嫁が免税事業者だからと言われて二・四%をも上げることを、世の中から拒否されるということがなければ、そこはむしろ転嫁はされやすい環境にあるとも言えるわけでございます。  免税事業者でございましても、その仕入れ税額 についてはそうしたものがあるといったことも含めて、今後税の執行に当たってはPR、指導、そういった点につきまして、両方の方向でございますけれども、よく配慮をしてまいりたいと思うわけでございます。
  128. 和田教美

    和田教美君 簡易課税制度あるいは限界控除制度、こういうものについては非常に重要な問題点で、既に当委員会でもかなり論議がされておりますが、私も聞きたかったんですが、時間がなくなりました。  そこで一つだけ、簡易課税制度と限界控除制度が併用された場合にどうなるかという問題をお聞きしたい。  簡易課税制度と限界控除制度を併用することによって、本来納めるべき税額は大幅に節税できると言われている。しかも、これは単純な節税ではなくて、消費税の名のもとに、消費者から事業者への所得移転が行われるということであります。このことは、最終的に税を負担する消費者から見れば、どうも納得できないという問題ですけれども、しかし一見、得をしたように見える事業者にとっても、これは実は大きな問題ではないかというふうに思うのです。  つまり、付加価値額を確保した上で消費税を節税するためには、多くの企業は自前の仕入れを行うことをやめて、委託加工に切りかえる可能性がないかどうかということです。もし仮にこのような傾向が高まるということになると、中小零細企業は大手の取引企業の傘下に入って、ますます系列下に組み込まれてしまう。これが中小企業の経営基盤の弱体化に結びつくことになると思うのですが、その心配はございませんか、お聞きしたいと思います。
  129. 水野勝

    政府委員水野勝君) いろいろな計算事例に基づきまして、世の中に御議論がされていることは承知をいたしておるわけでございます。その中で、そうした下請加工、材料支給に転換する場合でございますとか、統合でございますとか、分割でございますとか、いろいろ御議論がございます。  ただ、御指摘のような場合でございますと、材料支給に転換するとすれば、その材料の問題自体については瑕疵担保責任の問題も起こってまいります。いろいろまたこれに伴う問題もあるわけでございますので、この簡易課税という税の仕組みからだけで、大きく取引形態が変化するということは、我が国の取引形態に大きな影響が出てくるほどの大きな可能性があるとも考えていないところでございます。
  130. 和田教美

    和田教美君 あと一分ありますから、もう一つ。  税制調査会の納税者番号制に関する小委員会の報告が出ました。内容についてはいろいろ論議する時間ございませんけれども、ただ、一つ聞きたいのは、これを受けて一体いつ、とにかく始めるのか。四年後というふうなことを主税局長はおっしゃっておったけれども、四年後に検討を開始するということなのか、四年後には実施するということなのか、あるいは四年後には利子課税だとか、あるいはキャピタルゲイン課税というようなものも総合課税化するためにこの制度はもっと前に実施するということなのか、その辺を明確にしていただきたいと思います。
  131. 水野勝

    政府委員水野勝君) 四年後と申しますのは、去年の利子課税の見直しのときに、五年後に見直しを行うことという修正をいただきました。また、ことしの改正におきましては、衆議院段階で利子課税にあわせてキャピタルゲイン課税の見直しを行うものとするという修正をいただいてございます。四年後には、いずれにいたしましてもこの利子課税、キャピタルゲイン課税の見直しを行うことが必要となるわけでございます。  一方、納税者番号制度につきましては、十三日の総会に小委員会から報告がございました。この小委員会の報告を受けまして、税制調査会としていずれ早い機会にすぐ六十四年度税制改正の問題を御検討いただくわけでございますので、税制調査会として御議論がされて、その中で扱いが決められることになろうかと思います。そのときには、ただいまの御指摘の四年後という点も頭に置いてその扱いをお決めになるものと思っております。
  132. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、山本正和君の質疑を行います。山本君。
  133. 山本正和

    ○山本正和君 私は、たくさんの内容がございますので、本当は一人で五時間でも十時間でも質疑をしたいのでございますけれども、恐らく委員長の御判断で慎重審議を尽くされると思いますから、後に残す分も含めて、きょうはまずさしあたりの問題から質問をしていきたいと思うわけであります。  今までの審議の中で、総理の、また大蔵大臣としても御発言がございますが、随分もう長い間この問題は議論してきたんだ、十年間やってきたんだ、そして政府税調でも自民党の税調でもしっかり議論してきたんだと、しかも情勢は経済的にも極めて落ちついておって、一番いいチャンスである、こういうことをたびたびおっしゃるわけです。私は、それを聞いておりまして、総理の政治姿勢竹下総理のお顔を拝見しておりますと、大変民主的で優しく、国民の皆さんにいつもほほ笑むような感じがするんですけれども、実は中身は違うという感じがしてならないわけです。  というのは、政府税調で随分時間をかけて出された答申をもとにして与党の中で随分かんかんがくがく議論をされた、これは国民が皆承知していることです。しかし、その議論の内容というのが、テレビや新聞を通じて国民の前に明らかにされたかといえば全然されていないわけであります。要するに、衆議院で本法案が提案されて、そしてわずかに、本当に数日しか消費税法案そのものについては議論されていない。そして参議院でも、私は質問をするのはきょう初めてであります。この前はほとんどリクルートで質問したわけですから、きょう初めて質問をするわけです。  ですから、国民の前に開かれた審議というのはこんなに少ない。与党の中ではしっかり議論されたかもしれない。しかし、与党の中でも議論が完全であったかということについては、与党の皆さんの中から出てくる声でも、もっと議論したかった、直したかったというお声もあるわけです。ところが、わずかこれだけの審議の中で、これで国民にこたえ得るものというふうにお考えなのかどうなのか、まずこの点を伺いたいと思うんです。
  134. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、山本委員指摘なさいましたが、確かに十年議論はやってまいりました。しかし、私も反省しております。私がその間にその衝に当たっておったから、私自身がそれを思い込み過ぎているんじゃないか、こういう感じは私自身が日常、反省の中に基礎にしておかなきゃならぬと思っております。  しかし、幸いにして各地へ参りましても、国会で議論された問題点等が質問の形になって出てまいりましたり、国民の皆さん方には審議しつつ理解が進み、理解が求められつつきょうまた審議をいただく、こういう形で行き渡りつつあるのではなかろうかというふうに私は思っております。
  135. 山本正和

    ○山本正和君 実は、私は高等学校の化学の教員が本職です。総理は英語の教員を中学校でしておられた。何で化学の教員がこんな税金の問題を勉強するのかといって随分頭を痛めて勉強したんですけれども、なかなか大蔵省にお願いしても資料は出てこなかった。きょう初めてきちんとしたこういう立派な冊子をいただきました。私ども質問に当たっていろいろ資料を集めるのでも大変なんです。しかし、私が国会議員になって三年たとうとするわけですから、責任でもって勉強しなきゃいけない。勉強します。  しかし、恐らく商売をおやりになっている方やあるいは消費者の中で税金に関心を持っている方は本当に勉強したいと思っていると思うんですね。その資料というものは、それじゃ政府がどれだけ提示したかといったら、要するに与党から出されたパンフレットあるいはさまざまな非常に簡単な、しかも中身をかなりぼかした抽象的なものは随分出ていますけれども、こういうふうにきち っと具体的に我々の税金がどうなっているんだという立場からの資料は出ていないわけです。国民の皆さんが本当に消費税の問題あるいは今我が国の税制についてどこに問題があって、どうやったらよりよい我が国の税制ができるかということについての議論が浸透しているというふうに総理はお考えでございますか。
  136. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは山本先生、それこそ化学の先生でございますから、私も今どきっとしましたのは、私がよく中和をするという言葉を使いますが、あの中和というのを化学的に説明しろと言われたら大変だなと実は思ったわけでございます。事ほどさように、私自身と先生との化学の差があるように、国民の皆さん方の税に対する理解度の差は確かにございます。各種政策の中で税ぐらい段差のある、あるいはこれは国会議員の中でも段差がありましょうし、国民の皆さん方に段差がある問題はないと思います。したがって、これはある意味において理解を求めつつ審議し、今度は実施しつつ理解を求めていくという性格のものが税にはどうしても残るなという印象は私自身持っております。
  137. 山本正和

    ○山本正和君 いや、国民が現在十分な審議をし得る状況にあるとお考えかどうか。ですから、今のお話は理解しつつ審議するという手法が大事だと、こうおっしゃっているんですけれども、現在国民がどういうふうにお考えになっておられるか。有権者、主権者はこの税制改革についてどの程度まで浸透しているというふうにお考えでございましょうか。そこのところについての見解を承りたいわけです。
  138. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一億二千万はかり知ることはなかなか難しい問題でございますけれども、私は税制改革が必要だなと思っておる国民の皆さん方は、なかんずく税を納めていらっしゃる方は大体そこまでは行っているなと。さて今度は、消費一般にかかる税制の是か否かということになりますと、まず基本的な問題での疑念というのはあろうかと思います。その疑念をこうして国民の皆様方にわかるように、国民の皆様方を代表される国会の中で議論をしておるんだなと。そこでいつも感じますのは、それこそ古い学者でございますけれども、カナールさんが言ったように、新税はすべて悪税なり、こういう感じが税というものにはあるなということは私も否定できない。それがしかし習熟することによって、新税また良税となる、というこの学説も心から期待をいたしておるところでございます。
  139. 山本正和

    ○山本正和君 この議論をしておったら時間がかかってしまいますからいたしませんが、恐らく総理も心の中では、まだまだ国民の間に消費税というものについては十分に行き渡っていないし、審議も極めて不十分であるということは御承知だと私は思うんです。やらざるを得ぬから、どうしてもひとつ何としても今国会でと、こうおっしゃっておられるように思えてなりません。  これはまた後ほど申し上げることにいたしまして、まず今度の税制改革六法案を私も提案された段階からずっと見てまいりました。大変読みにくい法案でございますし、それから実体がなかなかつかめない法案である。  私は、今までいろんな人と話しておるときに、この前与党の斎藤先生からお話がございましたが、税金というのは、原則はわかりやすくなけりゃいけない、こういうことをおっしゃっておられた。私もいつもそんなことを話してきておったつもりでございます。それで、国会議員としていろいろと有権者の方から、なかなかわかりにくい、実はおれの納める税金はこうだというような話を聞いて、読んでみますけれどもなかなか難しいんです。難しいけれども、よく読めばそこにきちんとした体系なり筋の通ったものが中に流れておると私は思うのであります。  ところが、今度の税革法を初めとする六法案は、どう見ても読みにくい。それで、その中に税金というものについての法律上の基本的な考え方というのはきちっと決まっている。しかも、これは明治憲法以来ずっと租税法律については決まっている原則があるんです。そういう原則からいってもどうかしらと大変不思議に思うところもあるわけであります。ところが、そこへもってきて今度は衆議院の方で修正をされました。これは、少なくとも院の決議というのは大変重たいものでございますから、決議をもって修正をされた。その修正法案を見てみますと、これまたさらにわかりにくくなってきたわけです。  そんなことで、きょう衆議院の方の提案者の先生においでいただきまして、衆議院の修正部分について見解を承りたいと思うわけであります。ひとつまず、きょうは野田先生おいででございますが、御厄介おかけします。  「弾力的運営」という言葉がございます。この「弾力的運営」ということの意味をまず先生からお伺いしたいと思います。
  140. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) ただいま御指摘のありました「弾力的運営」でありますが、これは少なくともこの消費税という税の仕組みが我が国の税として初めて導入をされようとするわけでありまして大変なじみが薄い。そこで、衆議院における審議の状況あるいは公党間の政策協議等を通じまして、やはりこれが円滑な導入が行われるためには、少なくともそのために混乱が生じないような配慮をしていかなければいけない。そこで、来年の九月三十日までの間においては、国税当局がその執行に当たって十分その執行のあり方として、広報あるいは指導あるいは相談、そういった事柄に重点を置いて税の執行のあり方を弾力的に行ってもらいたい、こういうふうに修正をいたしたわけであります。
  141. 山本正和

    ○山本正和君 横から不規則発言がありまして、大臣答弁の練習だ、こういう御発言がございました。私も、ひとつもし大臣におなりになったら立派なわかりやすい答弁をしていただきたいと思いますけれども。  ただ、今のお話は租税法の問題でございますから、租税法における弾力的運営という意味は一体どういう意味なんだと。ですから、要するにこれはきちっと法律の中でいつから実施するというのは決まっております。その決まっておることについて、しかもこれは新聞紙上で報道されまして、ここへ持ってきておりますけれども、与党の責任者の安倍幹事長は、これは事実上半年間引き延ばしたと同じ効果を生むようにすることなんだ、こう安倍幹事長はおっしゃっておられるわけですね。恐らくこれは公党間のいろんな議論の中から生まれて、そしてそれを代表して野田先生も提案者の一人として提案されたわけですから、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  142. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) これは民社党との公党間の幹部同士のあれでありますが、私どもの安倍幹事長が申し上げておりますのは、昭和六十四年九月三十日までの弾力的運営とは、制度導入的初のふなれによる混乱を防止し、円滑に新制度に移行し得るように配慮するための趣旨のものである。具体的内容については、合意の趣旨に沿った実のあるものをお示しし得るよう、参議院での御審議も踏まえつつ、大蔵省、国税庁において積極的に検討を進めさせることとしたい。  これが安倍幹事長の趣旨でございまして、先ほど申し上げたところを簡潔に幹事長が申し上げておる、こういうことだと思っております。
  143. 山本正和

    ○山本正和君 そうすると、もう一遍念を押してお伺いしますが、具体的運営というものについては、今から参議院等の審議も踏まえて十分に議論をして決めていってくれ、こういう中身である、これでよろしゅうございますか。
  144. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) この点は政府・与党一体でございますし、実際には執行に関する話でございますから、特に政党だけでどうのということではできません。  そこで、これは既に総理あるいは大蔵大臣の方からもこの問題に関連する御質問がございました折に、政府においてもこのことを念頭に置いて十分実のある中身となるような検討を現在鋭意進めていただいておる、こういうふうに承っておる次第でございます。
  145. 山本正和

    ○山本正和君 ひとつ答弁を明快にお願いしたいのでございますが、要するに、現在弾力的運営の中身は決まっていないけれども、これから参議院等の議論も含めて決めてください、こういう趣旨でございますね。
  146. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) 参議院の審議を十分踏まえた上で、政府においてこれの具体的な弾力的運営についての基準をつくってもらわなければいけない、このように考えております。
  147. 山本正和

    ○山本正和君 ということは、要するに税革法においては十七条二項の趣旨は明定されていない、こういうことだというふうに、これは恐らくきょうこの特別委員会に御出席の議員の皆さん、また総理もお聞きになったことだ、こういうふうに思います。  そこで、ちょっと内閣法制局長官にお伺いいたします。  租税というものについて幾つかの原則がある。私も長い間税金をサラリーマンとして納めてまいりましたし、株の配当収入からの税金も納めました、これは父親からの遺産でございますけれども、いろいろ税金を納めてまいりました。しかし、そんなことで一体税金というものは、これは日本国民である以上納めなきゃいけない義務がある。そして、これは強制的に納付を求めることのできる強制権を持ったもの、これが税というものだと思うんですね。したがって、税については極めてはっきりした原則がある。これは憲法でも定めてありますが、憲法の解釈に基づいて言われていることの中に租税法律主義という言葉がございます。その租税法律主義が言っている中に租税法というのは明確でなくちゃいけない、きちっとしたものがなくちゃいけない、こういうふうに言われているとお聞きしているんですけれども、それについての法制局長官の御見解を承りたい。
  148. 味村治

    政府委員(味村治君) 租税法律主義は、租税が公権力によって強制的に国民から徴収されるというものでございますので、その賦課徴収につきまして、必ず国民の代表たる国会の議決する法律の定めによらなければならないとする原則でありまして、これによりまして単に租税の種類及び根拠を法律で定めるだけではなくて、納税義務者、課税物件、課税標準及び税率といったような課税要件につきまして法律で定めることを要するということになっておるわけでございます。  したがいまして、先生の御指摘のようにそのような法律、もちろんすべて法律で定めなければならないということではございませんで、一定の場合には政令に委任するといったようなことも行われるわけでございますが、そういった限りにおきまして、国民がどのような租税を納めなければならないかということを明確にする必要があろうかと存じます。
  149. 山本正和

    ○山本正和君 法制局長官のおっしゃったとおりだと私も思います。  そこで、これは先日の税制六法案に関する公述人の意見聴取。そのときに自民党の御推薦で出られました金子先生、この人は税制の大家でございますが、その人の書かれた論文も読んでみたんです。はっきりと書いてあるわけですね。租税法律主義ということから出てくる中身として、いわゆる租税法というものは、今法制局長官が言われましたけれども、四つの原則がなくちゃいけない。課税要件法定主義、課税要件明確主義、合法性原則、合法性原則というのは執行する場合のさまざまな定めについての合法性の問題、納税者の問題も含めた手続的保障原則であります。こういう四つの原則がなくちゃならないと書いてあるわけです、租税法というのは。  となりますと、もともと提案されたこの消費税法案の中には、何といいましょうか、全然税金を納めなくてもいい事業者あるいは減免する事業者、しかも消費者が税金を納めるわけですね、その消費者が税金を納めた場合にどういう手続をとって国にそれが納付されるのかということ、こういうものがさっぱりわからない極めて不明確な法案なんです。問題があるんです。その問題のある上にさらに六カ月間、今から検討していろんなことを考えてやっていきましょうというものが出ているんですね。これについてひとつ大蔵大臣、どうお考えでございますか。
  150. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先生の御意見は私に理解できます。  国税当局が執行に当たって広報、相談及び指導を中心として弾力的運営を行う旨の規定が置かれたわけでございます。これは新税でございます。したがって、なじみの薄い我が国でございます。だから広報、相談及び指導というのは、執行に当たって当然のことながらなおこれを弾力的な運営を行ってこれに対応しろ、こういう強い御意思であるというふうに考えておるところでございます。  しかし、参議院というものはそもそも一つの権能として衆議院の足らざるを補うという権能もございます。したがって、こうして参議院での御議論等を聞きながら、私どもにもいろんなことが率直に浮かんでおります。それらの問題につきまして、この趣旨に沿うように対応することができるというふうに考えておるところでございます。
  151. 山本正和

    ○山本正和君 いや、総理、どうやったらできるとかできぬとかいう話ではないんです。租税法というものはどうなければならないかというのが憲法上明確になっている。しかも、憲法上明確になったことに基づいて、これの解釈も学問的には確立しておる。さらに裁判所の判例もございます。そういう中で今度の税革六法案というものが、果たして憲法上示すところの租税法たり得るか、たり得ないかの問題を私は言っているんです。それについてひとつ総理の明確な御見解を伺いたいと思います。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 憲法に規定されておりますところの納税の義務それからまた租税法定主義ということからいたしまして、租税法として学説にもたえ得る仕組みができておる、今般提出した法律案についてはそのようなものであるという確信を持っております。
  153. 山本正和

    ○山本正和君 判例ではっきりと、要するに租税法の中に明確なさまざまな要件がない場合にはこれは無効であると出ているんですよ、裁判所でね。ですから、法の理屈からいったらこの法案が出た瞬間に、具体的な事実が四月一日以降出た瞬間に訴訟を起こすことができるんですよ、税金を納めないと言ってね。そういう初めから疑問のあるような法案になっているというこの問題、私は大変重要な問題だと思うんです。しかし、まだ修正部分がつくまではひょっとしたら議論ができるんじゃないかと思ったんですね。修正部分がついたらこれは論外ですよ、こんなものは。弾力的運営というのは、今、野田先生がおっしゃったように、今からの審議に任せてやっていくんだと。ですからここで、参議院で法案修正すれば別ですよ。運営というままで通ったといたしましょう。そうすると、法律にはそれを定めないままに法律が通ったことになる。一体そんな租税法というのは憲法上許されるのか。憲法はそういう租税法を想定していないんですよね。それについて、これは総理総理じゃなしに大蔵大臣にここで今質問しているんですが、総理は最後に質問いたしますから、今、大蔵大臣としての御答弁ですけれども、私はそういう意味で大変これは大きな問題だというふうに思うんです。  法制局長官にもう一遍お尋ねいたしますけれども、租税法というものの出し得る原則、もう一遍ひとつお答え願いたい。
  154. 味村治

    政府委員(味村治君) 租税法につきましての原則は先ほど申し上げたとおりでございます。私どもは、内閣法制局といたしまして今回提案いたしました租税関係六法案が憲法に違反することはないという確信を得て、その上で御提案を申し上げた次第でございます。
  155. 山本正和

    ○山本正和君 修正案の話です。
  156. 味村治

    政府委員(味村治君) 修正案につきましては、実は先日も安恒委員の御質問に対しまして、これは衆議院でお決めになったことでございますので、法制局としてお答え申し上げるのは必ずしも適当ではないということで申し上げたわけでござ いますが、衆議院としてもそれは十分御審議の上、このような修正案をつくられたものと考えておる次第でございます。
  157. 志苫裕

    志苫裕君 関連。
  158. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 関連質疑を許します。志苫君。
  159. 志苫裕

    志苫裕君 野田先生、きょうはありがとうございました。  一院で行った修正ですから、我々もできるだけ二院として尊重したいと考えるんですが、ただ御存じのように、課税物件を初め課税要件などの選択は立法者の自由裁量でばかりできるものじゃございませんね。おのずから税法の本質からの制約がございます。我々はそういうものを踏まえて実は一院の修正を審議いたしておるわけでありますが、御存じのように、改革法案はここでの審議でも、いわば理念法です、宣言法ですというふうに租税当局も答えているわけですよね。したがって、それ自体は個別の税法、実体法に対して直接的な拘束力は持っていない。これは主税局長のお話もそういう意味だった。すなわち個別の税法に対して別の定めをしたものでもない。  ということになりますと、今度の、言いかえれば消費税法は、国税通則法、国税徴収法、犯則法の適用は除かれておるようですね、この法案は。とすれば、そういう幾つかの、これにかかわる法律の効力には何らの影響を持っていないんです、これね。何らの影響を持っていないわけだ。としますと、弾力的運営条項、運用条項でと言っても割に抽象的なものでありまして、個別の税法の、いついつまで税金納めろとか、これこれ計算した額は幾らでなきゃならぬよとか、それを持ってこいとかいういろいろな細かい規定がありますね。それで、ごまかしたときにはこうだよというようないろんな仕組みもあるわけですね。そういうものに何ら効力を及ぼしていない法律なんですから、これができていても余り意味がない。  それで、弾力的条項なるものに基づいて、例えば国税当局が、しゃあねえやこれは国会で修正したんで、与党の幹事長と一部の野党の書記長が何か有権解釈をしておるようだが、それを尊重してほどほどに税金が脱税されていても見逃そうかと、例えばですよ。こういうことになれば、国税当局の不作為ですね、これは。不作為、紛れもない事実だ。その不作為をとがめる方法は、告発するとたくさんある。ここまでお考えになったんですか。
  160. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) 私どもは、国税当局のいろんな税務に関する仕事にはいろんな姿があると思っておりますが、そういった中で、何分にも初めての税でありますからなかなかスタート当初においては容易でないなと。したがって、いかにこの消費税という税の仕組みが円滑に実施がなされるかという、これが一番大事である。  そこで、四月一日に実施がなされた途端にもうちゃんとこれが執行されておるものであるという、しかも納税者もそれらの点について、あるいは事務的その他の面においても十分な対応がもう既にできておるんだと、完全無欠、完璧な形でできるんだということを想定するにはややつらいのではないか。そこで、税務行政の執行の中で少なくともギリギリ調査を重点にしたようなやり方をするよりも、むしろ広報、指導、相談、こういった姿に重点を置いた運営をやってもらいたい、こう考えておるわけであります。
  161. 志苫裕

    志苫裕君 まあお互いさま政治家ですから、政治の世界とか永田町のつき合いにはグレーゾーンというのがあっていいんですよね、グレーゾーン。総理もそうだけれども、時々何を言っているんだかわからないという、意味不明というのがあるんですが、法律の世界ではそれはだめですよ。永田町から出て沖縄から北海道まで全部適用になるんです、これは。だから、永田町の話は法律の世界に持ち込んじゃだめですよ。  意味としてわからぬわけじゃないですね。意味としてわからぬわけじゃないですが、法律には、先ほど山本委員からお話がありましたように、やはり租税法律主義の一つの要件に明確主義というものがあるわけだ。課税要件があると同時に非課税要件、減額要件というようなものも明示をしなきゃならぬ。半年間待てと言うんなら待てというふうに法律を直せばいいじゃないですか。まけると言うんなら減額要件を書けばいいじゃないですか。あるいは免除するんなら非課税要件を書けばいいじゃないですか。法律の手法としてそういうものがあるのに、私はせっかくやがて大臣にもなろうかという人がこういう政治だか法律だかわけのわからぬことをやられてもらっちゃ大迷惑だということを言っているわけですね。この点はどうも法律の体としてはなじまない。せっかく一院の権威にかけた修正でありましょうが、我々としては容認しがたいということだけ申し上げておきます。
  162. 山本正和

    ○山本正和君 それで、ひとつここで今度は大蔵大臣に、やはり実際に税を執行する、あるいはこの税革法案も含めて六法案が仮に通過した場合には、これは法律に基づいてきちんとさまざまな業務を執行されなければいけない立場ですから、大蔵省としては一体この弾力的運営というものを具体的にどうしようとするのか。今までの答弁では何かこうだああだというふうなことを言って明確な事柄は何も出ていないわけですね。少なくともこれを租税法としての資格のあるものとするならば、せめてこの段階で、大蔵省としてはかくかくしかじかでございますという明確なるものを出してもらわぬことにはこれは審議できないわけです。  要するに、私どもは租税法を審議しているんですね。租税法の運営について云々というようなことを審議するのは、これ国会じゃないんです。法律で決められたことに基づいて、恐らく主税局長は政令、省令の部分がありますと、こうおっしゃるだろうと思うんだけれども、政令、省令というのは、つくれるものとつくれないものがあることはあなた御承知のはずなんですよね。だから、これは政令、省令でつくれるものとつくれないものがある。つくれないものに相当する舞台です、この舞台は。それについて一体どう考えているのか、はっきりひとつ言ってください。
  163. 水野勝

    政府委員水野勝君) 法律関係におきましては、これはもう消費税法におきまして課税要件はすべて法律で明確に規定されているところでございます。衆議院におきましていただきました修正は、その運営に当たっては、国税当局としては広報、相談、指導を中心として弾力的に運営を行うことというのが趣旨でございます。したがいまして、あくまで明確に、いただきますところの消費税法の法律の範囲の中で、国税当局がこの趣旨に即して対処するものでございます。その対処するものでございましても、これだけのものをいただいたからには、やはり運営でもって対処する中身についても納税者には明確にお示しすることは必要であろうかと思うわけでございます。  その中身につきましては、先ほど野田議員から申し上げましたように、参議院での御審議も踏まえてまとめるように現在検討中でございます。
  164. 山本正和

    ○山本正和君 いや、後のことを言うからややこしくなるんですよ。法案どおりやりますと言うのか言わないのかということなんですよね。法案どおりやるのなら、四月一日から我々は納税しなきゃいけないんですね。当然これを納めなきゃいけないんですね。納めたものは国庫に入れなくちゃいけないんですよ。それは間違いないなということを聞いているんですよ。そういう話なんだ。
  165. 水野勝

    政府委員水野勝君) その点につきましては、委員の仰せのとおり、法律をいただくわけですから法律のとおりに施行するわけでございますが、この法律には先ほどお話のございましたように政令もございますし、省令もございます。それからすべての税法は法律、政令、省令だけで動くわけではございません。通達もございます。したがいまして、そうした全体の体系の中におきまして、この趣旨に即して対処するわけでございますが、この消費税法それ自体としては四月一日に法律として施行されることをお願いをしているわけでございますから、その範囲の中での処理でございま す。
  166. 山本正和

    ○山本正和君 余りぐだぐだ言わぬでいいんです。難しいことを言うと、お役所というのは正確に言おうとしてかえってわからなくなるので、簡単に言えば四月一日に三%の消費税を消費者は納めるんですねと、そしてそれは国庫に納付されるんですねと、それだけ聞かしてください。要するに、この法案が修正されようと、この修正されたのはそのことには関係ありませんと、それだけ言ってくれればいいんですよ。
  167. 水野勝

    政府委員水野勝君) 四月一日に適用をお願いするわけですので、四月一日から三%を消費者に御負担をいただけるように対処をしていただくということでございます。
  168. 山本正和

    ○山本正和君 いただけるように対処するとかせぬとかというふうなことは役所としてやるのは当然な話で、そんなことを聞いているんじゃないんですよ。大蔵省としては、この法案の解釈はこのとおりでございますよと言えと言っているんですよ。四月一日に消費者は三%の消費税を払います。国庫に納めます。そして、納税義務者はこれを必ず国庫に納めます。この部分は変わりませんねと聞いているんですよ。それだけはっきりしてください。
  169. 水野勝

    政府委員水野勝君) 四月一日から適用になります四月一日からの売り上げにつきましては、その三%を納付していただきます。その法律関係は仰せのとおりでございます。
  170. 山本正和

    ○山本正和君 それで少しはっきりしました。ただ、ここで総理に今度は自民党総裁として申し上げておきますけれども、かくも重大な問題が六カ月間事実上延長と一緒であるというようなことを党の幹事長がおっしゃった。このことから生まれる国民の誤解、そしてまた私どもの友党である民社党の書記長に対して大変誤解を招くような形でもってこの問題が処理されたという政治的責任がおありになる。これだけ私ははっきり申し上げておきたい。  次に移ります。実は、今度の税法改正に当たってべースになっておるのは何かというのをいろいろ勉強してまいりますと、政府の税制調査会の答申がございます。確かに政府の税制調査会は、これは公文さんとかいろいろなリクルートからもらった人もいますけれどもそれは別にいたしまして、随分真剣な論議がされておられる。これは私もいろいろと記録を見まして大変感心した部分もあるわけです。  したがって、政府の税制調査会が随分いろいろと議論をしてでき上がったものと今度の法案との関連、これはどうもわからないところがたくさんあるわけです。特に難しいのが法人税関係。法人税関係については政府の税調答申というのは、かなりシビアにさまざまな今日の抱えている問題、税制指摘をしているんです。ところが、その法人税制指摘のうち、一体どことどこを取り上げたのか、幾つ提案があって幾つ取り上げたか、まずこれをひとつ大蔵省に聞きます。
  171. 水野勝

    政府委員水野勝君) 法人税につきましては、その税率水準の問題それから課税ベースの問題、これが大きなポイントであろうかと思います。そのほか赤字法人課税、公益法人課税等々につきましてもいろいろ御議論はございました。
  172. 山本正和

    ○山本正和君 どうも主税局長はそういう答弁をするのが習い性となったかどうかわかりませんけれども、私がお尋ねしているのは、政府税調から、こういうものについては見直すべきである、あるいはこれはこうしたらどうかというふうな趣旨の議論と、それから報告がされているわけですね。そのうち一体どれだけを直して、直さなかったのはどれかというのを聞こうとしたんですけれども、時間がなくなりますからいいです、こちらがわかってますから。  まず、賞与引当金については、これは全廃すべきである、やがて廃止方向に持っていくべきである、こういう提言があったんです。この賞与引当金の問題について全然議論しなかったのは一体なぜですか。
  173. 水野勝

    政府委員水野勝君) 賞与引当金につきましては「課税ベースの拡大を図る見地から、段階的に廃止してもよいのではないかと考えられる」という御指摘がございました。その点に関連しては、しかし一方、「その廃止は、業種、業態によっては一時的にしろ大きな負担増をもたらす面もあることなどから、慎重に対処すべきではないかとの意見もあった」ということで、いわば両方の考え方が記述されているところでございます。  しかしながら、この前の抜本答申におきましては、この前半に申し上げた議論で集約をされておりましたので、昨年度の御提案におきましては、これを段階的に廃止するということを御提案はしておりました。  今回も基本的な方向としてはそういう議論が強かったわけでございますが、それにつきましての慎重論もまたございましたので、今回抜本改革六法案として具体的に御提案をしております中にはこの点のものは含まれていないわけでございます。
  174. 山本正和

    ○山本正和君 政府税調が、本答申あるいは中間答申等で随分議論をされてやられた経過が、これはもちろん党税調でさまざまな議論があったとは想像つきます。しかし、少なくとも行政府の責任省庁として、たとえどうあろうとこれは筋が通ります、筋が通りませんということはあったはずなんです。しかし、先ほど対馬委員からの指摘もありましたように、全然答申にも触れていないような大規模生協に対する突然の増税がぽこんと出てきているんです。そうして、政府税調が一生懸命になって苦労して議論された賞与引当金の問題なんかは、もう黙ってしまっている。  まだいろいろあります。租税特別措置法というのは、この昭和の我々が戦争に負けた直後にできて、随分長い間たっているんです。租税特別措置法の中で、今日まだなお、随分昔からつくられっ放しになって、一向にこれが是正されないものがたくさんある。これは主税局長、御存じですね。
  175. 水野勝

    政府委員水野勝君) 租税特別措置の中には、いろいろ御要望があって創設をいたしましたけれども、まだ実際に適用される環境と申しますか、具体的事情が熟成しておりませんために、制度がつくられたままで利用されていないというものがあることは御指摘のとおりでございます。
  176. 山本正和

    ○山本正和君 ちょっと今、初め二つほど問題を順番にやっていきますが、その一番初めの総論の部分を、大変大事な部分を、これは大蔵大臣にお尋ねしなければいけないと思うので、順序を逆にしていましたから、元に戻ります。  大蔵大臣が、というよりも総理の、当時から盛んにおっしゃっておった言葉、御説明の中に、法人税がとにかく高過ぎるから、これを下げなければ日本の企業が国際競争力の中でどうしてもやっていけなくなって外国へ出ていく、そういうことがあるので法人税率を引き下げたんだ、こういうお話をあちらこちらでされておりたし、たしか本委員会でもそういう旨の御発言があったと記憶しているわけですが、その御認識は間違いございませんか。
  177. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実効税率の問題で種々議論を重ねましたが、最終的には今御指摘いただいた認識そのものに間違いはないと思っております。
  178. 山本正和

    ○山本正和君 大蔵省が、一九八七年ですから去年ですね。去年のちょうど今時分です、「財政金融総計月報」というのを出しております。そこで、四十年代後半からまた最近に至るまで、外国へいろいろと我が国の企業が進出している、あるいは投資をしている、その理由が書いてあるんですね。理由がちゃんと分析してある。これは大蔵大臣の所管する大蔵省の文章です。そこには税率が高いからという言葉は一つも載ってないんです。外国へ行く原因ですね、何が書いてあるかといったら、これは四十年代と六十年代と違いますよ、四十年代には国際的な資源需給の関係とか、あるいは日本における賃金や原材料のコストの上昇とかいろんなことが書いてあります。しかし、最近の我が国の対外進出、その増加要因として挙げられているのは、一つは「企業活動および金融の国 際化を背景として、中南米、欧州、北米向けを中心に、金融・保険業向け投資が大幅に増加したこと」「貿易摩擦、円高等を背景として、北米、アジア、欧州等向けの電機、機械、輸送機等の製造業向け投資がかなり増加したこと」そして「円高、米国の税制改正等を背景として、北米向けを中心に不動産業向け投資が大幅に増加したこと」こういうことで、我が国の企業が外国へ逃げていったというようなことは何もないんです。進出はしているんですね。しかし、その進出の原因は税金じゃないんです。ただ、これ名前は挙げてもいいですけれども、大手商社のようにあれだけの立派なビルを東京のど真ん中に持って、大変な資産を持っている商社が法人税を一銭も払ってないという企業が今日もある。これは御承知だと思うんですね。そういう大企業の法人税率を何と三七・五%まで四・五ですか、下げた。中小企業の方はたった二%しか下げてないんですよね、中小企業の方は。大企業が税金を納めてない。税金を納めてないというのはもうからないから納めてないんじゃないんですよね。上がった利益をどんどん海外投資しているんですよね。投資するならいいけれども、そのお金をバックにもっとも使ってないんですよね。  私は、去年でしたかおととしでしたか、パリへ参りまして、OECDの若い職員、大蔵省や通産省の優秀な職員といろいろ話しておったときにびっくりしたんですよ。十八世紀、十九世紀のヨーロッパの歴史を調べたら、あの大英帝国の時代、あるいは光栄あるフランスの時代に企業がみんな外国で稼いでそれを自分の国へ持ってきて、社会資本として投下して立派な公園や学校や博物館や美術館をつくっているんですよ。そうしたら税金をまけてくれるんです、その当時。それぐらい税金を厳しく取ったんです、海外で活動しても。ところが、我が国の政府のやっていることは一体何だろうか。大企業に対してはどんどん保障して、一銭も法人税払わぬでもいい。もうかって仕方がない。そのもうかった企業は海外投資しているんですよ。またタックスヘーブンやっているんですよ。そんなことはとっくに大蔵大臣は私は御承知だと思うんですよ。そういう問題についてどうお考えでございますか。
  179. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 専門家の助けをかりることになるかもしれませんが、まず大企業と中小企業の税率格差というのは、従来から税制調査会で、本当は高度経済成長期にずっと広まったものを可能な限り縮めていく方向でこれは努力すべきであるという、毎年のようにちょうだいしております税調答申に基づいてそういう方向で経過してきたところでございます。  それから十八世紀、十九世紀の御議論ございましたが、いわゆる逃避じゃなく、投資しましたその国における税制の仕組みというのが今ほど国際化していなかったことは事実だというふうに一つは御理解をいただきたいと思います。ただ、今おっしゃいましたように、本来レーガン税制改正のときにも租税特別措置廃止して、いわゆる租税特別措置、引当金ももとよりでございますが、そうしたものを含めて、それらを廃止することによってこの法人税というのを構築していくかと、我が方は確かにそうしたものを総合してみて、実効税率の中でやっぱり比較して今白の結論を出していったということであります。  それから、私も年が一緒ごろでございますから、逃げるというのは本当は反対でございます。これは、投資はそれなりにその国の雇用も増すでございましょうし、円高という環境ももちろんそれに利したわけでございましょうが、結構でございますけれども、逃避は反対でございます。したがって、今おっしゃいました中でも、恐らく国際課税制度というようなものとの調和もきちんとしなきゃならぬということも承知をいたしております。  それからタックスへーブンというのを、これは私の恥話をするようですが、最初は税金天国というふうに私はへブンかと思いましたら、これは随分前の話でございますが、大蔵大臣になってからそんなことを言ってはいけませんけれども、まさに税の逃避地ということで、タックスヘーブンは、eとaが入っておるだけ違いますけれども、タックスへーブンというものを過度に活用してそれこそ逃避するという考え方は、厳正なやはり私は指導が必要であるという考え方においては変わりございません。
  180. 山本正和

    ○山本正和君 総理も非常に精神的にはそういうことは大事だと、こういうことで一致する部分があるんですけれども、ただ具体的な施策になると、こういうことをやれというふうに御指示をなさっていただけるかいただけないか、その辺が私は実は大変心配するわけなんです。  例えば外国税額控除制度、これ現在ありますね。こんなもの一体今時分必要なんだろうか。NICSと言われるぐらい、今台湾でも韓国でもどんどん伸びてきている。そういう中で一体こういうものを今まで置いていいんだろうかと、こんな話がありますし、それからもっと言えば、恐らく国税庁は御承知だろうと思うんですけれども、タックスヘーブンの実態はちょっと調べたら幾らでも出てくる。ちょっとこれは困るなというのは幾らでも出てくると思うんですよね。ですから、そういうふうなことについて本当にお取り組みになる予定があるのかどうなのか。要するに、政府税調で議論された——先ほどの主税局長のお話では、これは廃止すべき方向だけれども、一部にこういう考え方がある、こういうことについてやめたんだと、こういう話です。ところが、検討しなきゃいけないという表現に全部するわけですね。  そういう中で、流れとして、この税調答申をずっと読んでいったら、賞与引当金なんというものはこれはもう一番強く廃止の文面が出ているんですよね。他の部分についてはいろんな表現がありますよ。しかし、他の引当金と比べてどこが一番厳しく出ているかといえば、これはもう賞与引当金がはっきり出ているんですよ。ほかのものに比べたら、比較して読んだらわかる。だれが読んでも、普通の中学生の子供ならわかる。それは全然ほっておかれるんですね。そういうふうなこの問題ですね。  そこで、私はちょっと国税庁は恐らく御承知だろうと思うからお尋ねしたいんですけれども、日本の大手企業ですね、赤字法人の大手企業、いわゆる有名な名前のやつをひとつ五つか六つぐらいで結構ですからちょっと教えていただけますか。
  181. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 山本先生、先刻御案内のように、個別企業名を挙げろというのはいささか問題でございますので、便宜たまたま先生から資料をちょうだいしました富岡先生がお書きになっておられる文春の記事、あの中で法人税額ゼロという欄の企業がございます。あの数字が既申告ベースではございませんけれども、ああいった表に示されるようにゼロという企業があるというのは事実かと思います。
  182. 山本正和

    ○山本正和君 名前を言えないと、こうおっしゃるのがそこが私はおかしいと思うんでね。大蔵省というのは、国民の前に税制の中身、現状についていろいろと言わなきゃいけない義務が今あると思うんです、特にこういう税制改革段階ではね。私の方から言ってもいいですけれども、そんなこと私も時間がないからもうこれ——これ出すのにちょっと時間がかかりますから。  それで、要するに法人税制については大変な矛盾がある。そしてその引当金というものが六つある中で、貸倒引当金にしても賞与引当金にしても、これ随分問題がある。これはもう政府税調の答申に出ているわけですから。そういう引当金というものについて、これは見直すつもりがあるのかないのか。そして、この税制抜本改正という中にはこういう法人税制改正というのは該当するのかしないのか、その辺は一体大蔵省どうですか。税制抜本改正という場合にですよ。これは日本の国ばかりじゃない。一般に国家というものをつくっているその単位で税制抜本改正ということを言う場合に、法人税制というものについては触れるのか触れないのか、それだけちょっと聞かせてください。
  183. 水野勝

    政府委員水野勝君) 法人税につきましても抜本改正の一還として取り上げたところでございます。  税率水準につきましては、昭和五十年代にかけまして何回か引き上げを行ってまいりましたが、これはやはり国際的な観点から地方税を合わせて最高限五〇%までとするという原則を打ち出して、三七・五で御提案をしたところでございます。  課税ベースにつきましては、長年やってまいりました配当に対しますところの軽課措置、それから配当の益金不算入、これはいわば法人税の基本的な仕組みに関連する問題でございますが、この点につきましては所要の範囲で見直しを行うということで、これも基本的な観点からの改正でございます。  引当金につきましても、御指摘のようにいろいろ議論をいたしましたが、この点につきましては今回は具体的な御提案はいたしておりません。しかしこの点につきましては、先般の衆議院段階での与野党協議の場におきましても、この引当金制度がどうあるべきか、こういった点は二、三年内を目途にさらに検討するということが与党側から回答されておるところでございまして、政府サイドといたしましても、この趣旨に即して引き続き引当金につきましては検討してまいりたいと思っております。
  184. 山本正和

    ○山本正和君 それから租税特別措置については、これは私の方から言うまでもなしに、今までもいろいろ議論されている中身でありますから、これもひとつあわせてぜひ検討していただきたいし、大体抜本改正ということを言うなら、特別措置なんというものの法律の趣旨からいっても、一遍特別措置を全部消しておいて、全部ゼロにしておいて、そして真に特別措置が現在の段階で必要なものを改めて考えるというのが私は抜本改正だろうと思うんですね。従来からあるのを、全部圧力団体からひとつこれだけは置いてくれといって五年の年限でもって決めた特別措置を、知らぬ顔して次から次へ延長しているということが今日の法人税制の中における一番おかしな問題だと私は思うんですね。  ですから、総理が言われるように、今まさに二十一世紀を迎えて我々が税制改革をしようというなら、法人税制の改革については少なくとも、引当金問題については今局長が言いましたが、特別措置についてはこれはまさに政治家がつくったものが今までたくさんあるんですよ、私どもの先輩も含めて。それを一遍ゼロにしましょう、そして改めてそれじゃどれをつくるかということを現実に合わせてつくっていこう、そういうものも含めて提案されるなら、今度の税制改革法案の一番基本の部分で言っていることは少しはわかるんです。それを全然してないものだから、余計国民はわけがわからなくなってくるんですね。何でいきなり消費税消費税、力の弱い者から召し上げるようなことをしなくちゃならないのか、それはちょっと私そういうふうに指摘しておきたいわけです。  それから、まだ大変国民の間で、この前から新聞紙上でも取り上げておりますけれども、こんなばかなことがあるかと言っている税制の問題に公益法人の税制の問題があります。公益法人が——余りもう時間がありませんから私の方で勝手にしゃべりますけれども、二十四万からある公益法人のうち何と七五%が宗教法人ですよ。宗教法人というのは確かに大変大切な役割を世の中に果たしていると思うんですね。憲法で言うまさに宗教の自由、信教の自由という立場から非常にこれは大切にしなきゃいけない法人です。しかし、その宗教法人に名をかりて不動産屋が宗教法人になってしまっている。もういろんなことをやっている。なぜなっているかという法人税制、公益法人の中において、宗教法人も、例えば本当にいわゆるボランティアのためにつくっている、本当に奉仕団体であるところの法人も何もかも全部同じように税制が今扱われている。若干の違いは少しありますけれども、基本的な部分はほとんど一緒である。そういう中で、一番みんながこんなばかなことがあるかと言っている問題の一つに、金融資産に対する非課税の問題がありますね、金融資産に対する非課税の問題。これは一体どういう根拠でもってこの金融資産の非課税ということを理由づけているんですか。大蔵省、ひとつ見解を言ってください。
  185. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御承知のように宗教法人は公益法人の大半を占めておりますが、その公益法人につきましては積極的に収益事業を行っておるという場合に課税お願いする、そういうことで三十三項目の収益事業の範囲を決めさせていただいているところでございます。その中には、例えば駐車場業とか物品販売業とかというのはございますが、御指摘のように、例えばたまたまお布施がある時期たまって、それを駐車場なり小売業なりそういったものに運用されれば課税になる。しかし、それをそのままいろいろ金融資産として運用されている部分については、そこまではまだ積極的に収益事業と申しますか、事業を行っているわけではないということから三十三項目の中に入れてないわけでございます。その点につきましては、確かに、単にそれを財テクに運用している場合でも、収益が上がるのであれば課税すべきであるという御議論はおっしゃるとおりあるわけでございます。  しかしながら、一方におきまして、公益事業法人につきましてはある一定の基金をためてその基金の運用益でもって本来の公益事業を行うという場合があるわけでございまして、宗教法人の場合におきましても一定の期間のお布施なり収入をためてそれを将来の大きな宗教活動に使うという場合もある。それはその公益事業本体に響くという点はやはり否定できない。 そういうことから、金融資産につきまして何らかの課税を行うことはいかがかという議論はかなり前から私どもも承知しており、内部で議論をしているわけでございますが、そうした公益事業の本体のそのもの議論にも、あり方の問題にも結びつく問題でございますので、なかなか明確な結論は得ないでいるところでございます。
  186. 山本正和

    ○山本正和君 これは大変国税庁に御苦労願って、「マルサの女」という映画にあったように第一線の職員の方が大変な御苦労願っているわけですけれども、宗教法人に対する税務調査ですね、これをやったらどういうものが出るかというのはもう国税庁御存じのとおりです。それぐらい宗教法人に名をかりた脱税行為が世の中にきちっと出ているんですね。そういう問題をみんな庶民が知っているんですよね。何であんなところから税金を取らないんだ、脱税しているじゃないかと。あのお寺の和尚さんは、お布施を知らん顔して猫ばばして車買った。あるいは知らない間に町中でクラブつくって、クラブのいつの間にやら経営者になっていた。そんな問題が新聞紙上に盛んに出るでしょう。そういう問題を少しもいじらずにやる。なぜそういうことができるかというのは、私は税制の仕組みがまずいからだと思うんですよね。  要するに、公益法人というものについても宗教法人や学校法人、財団法人、社団法人いろいろありますよね。そういうそれぞれの法人に合わせてその法人の運営の実態というものから、これを見ながら税制というものを考えていくんじゃなかったら、これは世の中は不公平だらけになるんですよね。学校法人なら収益事業から五〇%寄附できるんですよね。宗教法人なら三〇%利益の中から寄附できるんですよね。いろいろありますよ。だから、そういう税制の仕組みを含めてこれはやっていかなきゃいけない。ところが、ほとんど税制の仕組みという観点から大蔵省としてはなかなかやってないので、ちょっと調べてみたら、これは総理の責任だということがわかった。  というのは、例えば文化庁とか都道府県とかそれぞれ監督する認可団体が違うわけですよね。しかし、アメリカでは宗教法人の認可については税務署と言ったらしかられますけれども、要するに税務当局との連絡をちゃんととりながら認可というものを行うんですよね。要するに国民がすべて この小さな国で生きていく中で、お互いに何とか平等に国のいろんなものをつくっていかなきゃいけない、そういう観点から税が一番根本にあるわけですよ。税務の方が何にも知らないで、どんどこどんどこ勝手に認可しちまって、そしてこっちは別ですと。税制法の何というか規制のときになると、それぞれの利益団体がわっさわっさやって取り合いするから、こんなものどんなにしてもよくなるはずないんです。税制の抜本改革というのは、総理、私はそういうことだと思うんです。税があって国があるんですよ。国家そのものなんです、税金というものは。ところが、税が今みたいに圧力団体によってああでもされる、こうでもされるというふうな実態の中で、庶民が本当に税制改革ということを信用するかという問題、私はそれを非常に心配するわけなんです。総理、その辺一体どうお考えでございますか。
  187. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、最初の考え方で、私どもも経験したことがございますのは、法人税などをやるにはまず租税特別措置をゼロにしてから必要なものは新しくくみ上げてくればいいじゃないか。手法としてその考え、私どもも持たないわけではございませんでした。しかし、現実問題として租税特別措置というのは、そのときどきの時代のニーズに応じてできたものであり、もとより廃止、改廃したものもございますけれども、したがって、これからも先ほど答えがあっておりました引当金の問題も含め、絶えず注視していかなきゃならぬことであると思います。  それから、次のいわゆる公益法人課税の問題でございます。これは今もおっしゃいましたように、最終的には総理大臣と指定していただいたのもそこにあろうかと思うんでありますが、主管官庁において公益法人の実態調査等をも踏まえ適切な指導監督に努めるとともに、引き続き適正な税務執行に努めるというのが私どもがいろいろ議論して書いた一つの結論でございました。確かに新聞紙上等で私どもも拝見さしていただいております。が、問題はどこにあるかというと、やっぱり基本的には心には税金がかからないということだと思うのでございます。そこから心の範囲がどこにあるか、ここに問題が生じてまいります。  それから、金融資産の運用の問題につきましても、例えば正月とかある偏ったときにたくさんのおさい銭が入る場合もございます。これらの問題について、それを経常経費として見る場合、その間に金融資産の運用等が出てまいるわけでございますが、御指摘のありました三十三項目をも含めまして、この問題につきましてはこれからも、率直に申しまして、税の面からも十分注意してまいります。しかし、実態は、大事なことは、御指摘もありましたように、公益法人の実態調査から始まる所管官庁の姿勢にこれから大いに活を入れなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  188. 山本正和

    ○山本正和君 私は、学校法人は別でありますけれども、一般の公益法人三〇%の繰り入れということについては、これは検討さるべき中身じゃないかと。要するに、それがあると、どうしても脱税の手段としてやっぱり悪知恵の働く人はそういうことを考えるのは当たり前ですから、その辺は税務当局でも御検討願いたいと思うんです。  あわせて大変気になるのは、衆議院でいろいろと議論されたときに、引当金については圧縮の方向で検討したいと、こういうことをたしか大蔵省、大臣答弁だったかちょっと記憶ありませんが、言っておられた。そうしたら、この十二日の日に大蔵省の新聞発表で、引当金の圧縮は来年度はいたしませんと、こういうことをおっしゃったと聞いておるんですけれども、これは本当ですか。
  189. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほど申し上げましたように、衆議院段階で与野党協議で、与党から、二、三年内を目途に引当金制度についてどうあるべきか、さらに検討するという回答がなされております。この方向に従って検討を進めるというのが今後政府としての考え方でもございます。  ただ、これは六十四年度税制改正、まだ全く着手しておりませんので、今後どうするか、これにつきましてはまだ何ら決まっているものはございません。
  190. 山本正和

    ○山本正和君 この記事を見ると、今の局長の言っておられるのと大分感じが違うんですよね。「大蔵省が圧縮を予定していたのは賞与引当金のほか、貸倒引当金、退職給与引当金。これらの引当金が必要以上に利益の内部留保に使われていたり、損金への繰り入れ限度が利用実態とかけ離れていることなどを理由に、引当限度額の制限などの増税措置をとる考えだった」と。にもかかわらず、「税制改革による平年度の増減税額の枠組みでは課税ベースの拡大で三千億円の増収を確保することにしており」これも大変厳しいと。にもかかわらず、「法人税を中心に税収が好調で、六十三年度は二兆円の減税分を差し引いても三兆円規模の自然増収が出る見通し」であると。したがって、引当金の圧縮は見送ると、こういうふうな記事になっているんですね。これは日経ですよね。  そうすると、大蔵省というのは一体税制改正方向というのを何を考えているんだろうかと。政府税調の方針も出ているんですよね。そして、大蔵省当局が一番この法人税制のゆがみについては御承知なはずなんです。ところが、これをなるべくこのままおきますよと。国民はどう思うかというんですよ。  引当金でどこがもうかっているかというのは、これは百億円以上の企業、十億円以上の企業、一億円以上の企業、中小企業、零細企業、全部調べると、引当金を本当に使ってそれによって財テクもできる、いろいろと企業経営にプラスになるというのは大企業ばかりなんですよ。百億円以上の企業は何とたしか三割か四割、引当金の留保をしていいでしょう。そういうふうな中で、引当金の圧縮を見送ると言ったらだれが喜ぶんですか。中小企業はちっともこんなもの喜ばぬですよ、見送ってもらっても。  こんな発想というのは、私は国会でいろいろと大蔵省が答弁したり、政府が税制改革で趣旨説明していることと全然根本が違っていると思うんですよ。これ、どうですか。これ読めますか、「引当金圧縮見送り」というのは。これはしませんね。
  191. 水野勝

    政府委員水野勝君) 企業規模別の適用状況等につきましては、御指摘の点もあることは確かでございます。ただ、御指摘新聞の記事は、これは私どもまだ六十四年度改正につきまして具体的な議論は全くいたしておりませんので、新聞としての御見識なり何なりによって書かれたものではないか、私どもとしては関知してないところでございます。  ただ、引当金につきましては、私ども企業経理上あるいは税制上の措置の観点からいろいろ議論しますが、純粋の理論的な観点からは別として、退職給与引当金を縮減すると退職金そのものの水準が切り下げられるのではないか、賞与引当金を縮減すると賞与自体の支給が影響するのではないかという、もろもろのいろんな御心配やら御懸念も多々出てくるところでございまして、なかなか私どもとして、税制調査会の御指摘はあり、いろいろ検討はするところでございますが、かなり複雑な要素も含んでいることは確かでございます。
  192. 山本正和

    ○山本正和君 局長は、この税特の委員会の中で時々そういう御答弁をされておられるわけですけれども、これは実際は局長御承知だと思うんですよ。実際に退職給与引当金はかつては積み立てていたわけですよね。しかし、今は積み立てても、毎年毎年繰り返しても構わぬということになっているんですよね。どっちを選んでもいいようになっている。そうしたらどうなるかといったら、中小企業で仮に倒産したところを見たら、退職給与引当金何もないんですよ。みんな退職金もらえずに解散してしまう。そんな制度の実態にあることはもう御承知のはずなんですよね。今言われるような趣旨なら、もとへ戻して、退職引当金はちゃんと積み立てなさい、何なら政府が預かりましょうというのなら私は賛成だ、これはね。そうじゃないんですよ、現実は。しかも、そんな三井、三 菱、住友みたいな大企業がつぶれますか。何でそれがみずから希望して、退職する職員の退職金の四割までは引当金で損金で落としてもよろしいと、そんなたわけた話がありますか、これ本当の話。だれが一体三井、三菱、住友のような大企業の職員がやめますか、四割も。そのときは日本の国家も破産しているときですよ。そんなべらぼうな制度があるということは国民皆知っているんですよ。だから丸紅を初め大手商社が三社、建設業社が五社、全部あなた納めてないじゃないですか、大手が法人税を。そういう中で、何で国民に消費税を払えというんだということになってくるんですよ。  だから総理大臣、ここでは大蔵大臣ですが、総理大臣として私は呼びますよ。大蔵省が何を言ってこようと総理としては、君たちちゃんとこういうことしているかねと指揮監督する私は責任があると思うんですよ、国民の期待に対して。そういう意味からいえば、大蔵大臣は何としても今度の税制改革法案は通してほしいと言うだろうと思う、総理大臣に。しかし総理大臣は、待てよ、私は行政府の長としていろいろ聞いてみると、これはまだまだ議論しなければいけない部分があるよとかなんとかいうのを判断されるのが私は総理大臣の仕事だろうと思う。私は本当の話、大蔵大臣総理大臣兼任というのは極めて遺憾でございますけれども、これはもうしかし人格が違うわけですから、人格が違う中で御判断願いたいと思います。  今のように、いろんな税制についての矛盾があることを一番よく知っているのは大蔵省なんです。しかしそうかといって、国の財源を確保するために、税制改革の中で消費税法案を通してもらわなくては困るという立場をとるのも大蔵省だと思うんですよね。そういう中で、しかし総理としては、今までのこの税制改革法案のいろんな議論をお聞きになったと思いますし、特にそれから当参議院において土曜日のお昼過ぎまでも有権者の皆さんにおいでいただいて、参考人の御意見を間きました。私も本当に国会議員の一人として恥ずかしい思いをした部分もあります。  もうとにかく昔の話ですけれども、我々が貧しくて、私どもが昭和二十四年に高校の教員になったときに一カ月の月給は二千九百円ですよ。やみ米三日分買ったらもうだめだった。その時分からいろいろ税制審議が始まっていて、給与所得控除は何を基礎にできたかといったら、その昭和二十年代の発想がそのまま残っているわけですよね。そういうことについて、これはこの前、公述人から話がありました。あるいは民社党推薦の中村弁護士からまたいろいろお話があった。これは総理に読んでおいていただきたいということをお願いしたんですけれども、総理大臣として今そういう国民の声に対してどういうふうにお考えでございますか。
  193. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただ、山本先生に若干頼まなきゃいかぬのは、私は確かにここのところ二年三カ月ぐらい大蔵大臣でございませんでしたけれども、少し大蔵大臣が長過ぎて、とかくそっちへ頭が行きがちな習癖がありますのは、これは御容赦をいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕  確かに、今おっしゃいました二千五百円、私が教師になりましたときには初任給千六百円でございました。昭和二十二年でございます。それから私が代議士に出ました昭和三十三年が、公務員が九千二百円でございます。そういう時代を振り返ってみますと、やっぱりいろんな法人税等の問題で、なかんずく租税特別措置というのが考えられたのは、高度経済成長というものがその背景にあったではないかというふうに私は思っておるわけであります。何が何でも外貨を獲得しなきゃいかぬとか、そういう情勢下にあったことは事実でございます。しかし、そうした法人そのものは、これは山本委員も私も法人が果たしておる役割というものは、大企業であれ中小企業であれ国家経済の大きな支え手であるというふうに思っておるところでございます。  したがって、今おっしゃったもろもろの問題、先生がちょうど昭和二十四年でございますか、そのお話をなさいましたが、そのときからの、言ってみれば一九四〇年代後半の食うに精いっぱいのときから一九五〇年代のある種の成長期、それから一九六〇年代に至る高度経済成長。しかし、その基本はやっぱり、昭和二十五年の、すなわち一九五〇年のシャウプ税制というのが基本になって、そこにいろんなゆがみ、ひずみができた。したがって、国民の皆様方にも、情緒的な意味においても、あるいは実態的な意味においても、一つ一つの不公平感もそれはございましょう。しかし、それを大きく是正していくというのが今度の税制改正基本でありますから御理解をいただきたいという姿勢で、大蔵大臣経験者総理大臣といたしましてそういう感じでもってこれからもお願いをしてまいりたい、このように思っておる次第でございます。
  194. 山本正和

    ○山本正和君 総理は、話がいつの間にやら、お聞きしているうちに質問申し上げたことと違うところへ行ってしまうので、どうもやりにくいんですがね。恐らく総理も勤労所得者、いわゆる給与所得控除を受けている者が大変な不満を持っているということは御承知と思うんですよね。だから税制抜本改正という中でやっぱりしなきゃいけないのは、法人税にもありますし、所得税にもありますし、私も法人の役割を無視するものじゃないんです。企業活動を本気になってやっておられるから今日の日本があるわけですからね。しかし、それが外国と比較してどうなんだ、他の国民の各層と比較してどうなんだという意味で問題がありはしないかということを言っているわけなんです。その辺はもうよく御承知と思うんですね。  そして、今もう一つ庶民が大変けしからぬと今度の税制で思っているのは、私のところの同僚議員で丸谷先生という十勝ワインの大先生が言われるのは、一体こんなもので、しょうちゅうの税金を上げておいて高級酒の税金を下げて何が消費税だと。みんなだれでもこの話をしたら一番よくわかるよと言うんです、消費税反対の話を。これがまさに今度の私は税制改革六法案というものの中身を示していると思うんですよ。しょうちゅうを上げて高級酒を下げるんだ、これが消費税法案だと、こう言ってもいいと思うんです、極端な言い方。それぐらい庶民の間には大変な不満が出ている。何でこんなことをしなきゃいけないんだ、どこからの圧力だというふうなことにしかならないんです。  要するに、今の日本の国がそれぞれの利益団体によってさまざまな政治的な力を国政に与える、その長い間の、何十年かのひずみが今日の税制にも出てきている。これをみんな思っているんですよ。私は、リクルートの江副さんなんて、本当の話かわいそうな人だと思うんですよ。あの人ひょっとしたら、戦国時代なら政府をとっていたかもしれない。今だからああいう形でもってお金をばらまくことしかできなかったと私は思うんです。しかし、総理、今私が申し上げました、税制改正しようということで政府が一生懸命で提案されたその中身が国民の間にはなかなかわかっていないという、その部分に絞ってきょう私はいろいろと御質問申し上げたつもりであります。そのことをひとつくれぐれも忘れていただきたくないということですね。  それから、総理自身も、これは私からも申し上げておきますけれども、青木伊平さんの問題あるいは御親族の問題、これは総理が、私はこのとおり、国民の皆さん安心してください、こうでございますと言ってやっぱり明らかにされて、そして税金の問題で国民の皆さん一緒に考えましょうと、こういうことを言っていただかなければ、やっぱり国民の中での本当の税に対する真剣な論議というものは出てこないだろうということを私は心配するわけです。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕 ひとつそういう意味で、これからまだ二十八日まで国会の会期はあるわけで、私もまだあと二回も三回も質問したいことがたくさんありますから、 審議を十分に尽くすと、そういうことをひとつ特にこれは委員長に要望いたしまして、私の質問時間が参りましたので終わりたいと思います。(拍手)
  195. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  196. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、消費税の問題について二、三御質問したいと思います。  公約違反の消費税を合理化しようとして政府はさまざまな議論、あえて言えば欺瞞的宣伝を並べてこられました。例えばその中で、所得平準化の問題とか高齢化社会論など、衆議院でも参議院でも我々論破してまいりました。きょうはもう一つ、いわゆる国際化論をまず取り上げておきたいと思います。  要するに、今、日本の税制は非常に国際的に立ちおくれているというようなことを言い、ヨーロッパのEC型付加価値税のことばかり言う。これは、アメリカは州税は別として連邦税では付加価値税をやっておりません。レーガン税制でも否定したところです。いつもアメリカのことばかり言うのに、この間接税問題になりますとアメリカのことは言わないというところにも、宣伝が意図的なものだということを示されておりますけれども、もう一つ、法人税が非常に高いのでこのままにしておくと企業が外国に逃げてしまうという宣伝があります。  ここに政府のパンフレットがありますけれども、「企業が法人税の安い国へ流出して、産業が「空洞化」すると、雇用が減ってしまうおそれもあります」と言って、西ドイツに次いで実効税率が高いという周知のグラフがありますし、政府の提出した資料にもそれが載っています。日本の法人税が本当に高いのなら、外国企業が日本へ進出するに当たって摩擦が生まれますし抗議してくるはずなんですけれども、そういう抗議が今まであったことがありますか。大蔵省、お聞きします。
  197. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昭和五十年代半ばぐらいまでは、ほとんど諸外国は皆、大体そろっていた、その中で我が国がまだある程度法人税率を上げていただく余裕があるということで議論をしてまいりました。それで、昭和四十九年、五十六年、五十九年と引き上げをお願いしてきたわけでございますが、一方、この間、諸外国は急速に法人税率を下げてきたわけでございます。しかもそれはごく最近のことでございます。アメリカは昭和六十二年改正で四六から三四にする、イギリスは五十九年に五〇を四五にし、六十年に四五を四〇にし、六十一年にはさらに三五にするということで、三年間に五〇%のものを三五%に急速に下げてまいったわけでございます。フランスも五〇のものを六十一年に四五にし、さらにことし六十三年度は四二にしておる。この両三年の間に大幅に下げてきたところでございます。  したがいまして、こうした格段の格差というものは昭和五十年代から六十年代に入るまではまだなかったわけでございまして、ごく最近のことでございます。これだけの格差が生じますということを前提にすると、やはり法人税率というのは国際並みにある程度そろえることは当然必要になってこようかと思うわけでございます。
  198. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 政府のデータもこのパンフレットも今のお話も、実効税率の比較だけ言うわけですね。しかし、実際の税負担というのは課税ベースに実効税率を掛けて法人の税負担が決まるわけです。  ここに私は、「国際税務」の八四年九月号に、大蔵省主税局調査課が書いた「企業税制をめぐる最近のいくつかの論点について」という論考を持ってきていますが、これにも日米の税負担比較の話が出ていまして、課税ベースは我が国の方が狭いということで、だから日米間の格差は非常にわずかなものだということを言っているんですね。課税ベース、これはやっぱり日本は非常に国際的に比べても低いと思いますけれども、大蔵省いかがでしょうか。
  199. 水野勝

    政府委員水野勝君) 確かに御指摘の五十九年九月、このあれにはそのような記述がございますが、課税ベースはまさに個々の企業によっても違いますし、その国の経理体系、これによりましてもまた違うものでございます。ある国におきましては当然課税ベースに入るべきものが、ある国では特別措置として観念されているものもございますので、課税ベースにつきまして一律に狭い、広いということはなかなか言いにくい点ではないかと思うわけでございます。
  200. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、とんでもない話で、今、山本議員も引当金、準備金などの問題で、いかに日本の大企業が優遇されているかということを具体的に取り上げました。これはもう世界で有名な事実で、超高度成長の時期、税制面からも日本の政府は重化学工業、金融その他を中心に強蓄積、集中を進めるために、税制面からもさまざまな制度をつくり上げていったわけです。二つ方法があって、一つは利潤を費用にかえてしまって、企業に内部留保をふやさせるやり方です。加速償却、特別償却、引当金、準備金制度等々、物すごくたくさんなものをつくりました。二番目は投資優遇の税制です。これも我々は衆議院でも取り上げてまいりましたが、有名な法人の受取配当の益金不算入制度、外国税額控除制度等々、そういうことで投資優遇税制を物すごくつくり上げてきた。これが世界がびっくりした日本のあの超高度成長、これを税制面から保証したものだった。だから、日本の大企業の課税ベースは先進資本主義諸国と比べても特別に狭いという状況になっているんです。  今、水野さんは幾つか外国のことを言いましたが、あなた方が何でもまねしようとしておられるアメリカ、これは八六年のレーガン税制改革で法人の税率は四六%から三四%に下げた。しかし、今私が言った加速度償却、こういうものの整理を行って課税ベースを大きくしたんです。  ここにデータを持ってきていますけれども、五年間で個人所得税は千二百十九億ドル減らした、全部で。法人所得税はほぼ同額、千二百三億ドルふやしているんですよ。これは百二十円で計算しても十四兆超しますよ。十四兆を超す法人所得税の増税、年平均二百四十億ドル。当時の法人税収は約六百億ドルでしたから、四割増税をレーガン税制はやっているんです。日本はどうかというと、今も議論がありました各種引当金、準備金、課税ベースにはほとんど手をつけない、それで八七年以降法人税率を四三・三%から四二%に下げて、またやろうというわけなんですね。  だから私は、実効税率のことばかり言いますけれども、課税ベース掛ける実効税率という実際の大企業、法人の負担を比べますと、アメリカよりも日本の方が低くなっていると思うんですけれども、いかがですか。
  201. 水野勝

    政府委員水野勝君) レーガン税制が五年間で千二百億ドル、この増収措置拡大、課税ベースの拡大を行ったということは御指摘のとおりでございまして、まさにこれはほとんど投資税額控除でございました。これはまさにアメリカが巨大な税収を投じて大きな租税特別措置を行い、投資促進措置を講じておったところでございます。しかし、それが逆にアメリカの投資につきましてのゆがみをもたらすということで、これだけのものを廃止したということでございます。千二百億ドル、一年間でございますと約二百四、五十億ドル、これは我が国のベースでいけば二、三兆円のもの、これだけ廃止して課税ベースを拡大して税率を下げる、それだけ大きな特別措置がそれまではあったということではないかと思うわけでございます。  我が国の場合につきまして、先ほどの御議論で引当金等の御議論がございます。課税ベースを比較するときにこれがやっぱり一番大きい、約二十兆円近い現在積み立てがあるわけでございまして、これが大きなポイントであることは確かでございますが、この引当金につきましては、これはやはり端的には租税政策上の措置と申しますよりは、企業経理と申しますか、法人の所得を合理的に計算するための当然の要請であるということからいたしましてこれが制度化されているわけでご ざいます。したがいまして、この引当金をもって課税ベースの議論をするということは私どもなかなかどうもいかがかと思うわけでございます。  受取配当、配当軽課、これらの点につきましては今回見直しを御提案さしていただいております。外国税額控除のお話もあるわけでございますが、これだけ国際化いたしますと、どこか事業活動をすればその国で法人税は課税される。それがまた、我が国は全世界所得に対して課税をいたしますのでどうしても二重課税になる。どちらの国におきましても納めることをお願いするのはやはりいかがか、その調整はやはり必要かと思いますので、外税控除制度、それが合理的なものである限りにおきましては、これも課税ベースの問題として取り上げるということはいかがかと考えるわけでございます。
  202. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もうこの外国税額控除制度などは衆議院で工藤議員が相当詳細にやりまして、私一々申し上げませんけれども、実際に外国に払っている税金じゃなくて、単なる形式的な、それをいきなり引く等々さまざまな矛盾が既に指摘されていて、大蔵省も是正を表明せざるを得なかった問題。そこで私どもは、そういうことを言うのなら実際に日米の主要大企業について課税ベース掛ける実効税率で実際の税負担、このデータを出してほしいということを先日から要求し続けている。  ところが、大蔵省の回答は、企業の行動が違って技術的に困難だと。例えばアメリカでは退職金がないので引当金の比較はできないなどなどというようなことで資料を出してくれない。それで、私は、比較が技術的に困難だと、そういうことを言うんだが、一体企業は、実効税率の比較だけで企業が外国に行くかとかいうことを決めるわけはないですよ。実際の税負担の比較をしてやるわけなので、こういうことの資料提出が技術的に困難だというようなのは全くの逃げ口上だということを言っておきたいと思いますね。  ですから、このパンフに「経済の活性化を図るために、法人税率を引き下げること」として、「法人税の安い国へ流出」してしまうというような宣伝は今後一切やめていただきたいということを要望して、次に独禁法の骨抜き問題に移りたいと思います。  この独禁法の骨抜き問題というのは、転嫁問題に絡んで出てきたものですね。竹下首相、今度蔵相兼任ですけれども、六つの懸念の七つ目に転嫁問題を入れられました。私は、通常国会でも転嫁の懸念を入れるべきではないかということを言ったんですけれども、そのときは入れられませんでした、後から入れられた。  それで、私ここに持ってきた本は、小倉政府税調会長の「三間人 税政問答」という本、いろいろおもしろいことがあるんですけれども、私一つ非常におもしろいなと思ったのは、一般売上税を検討すべきだということを述べた昭和四十六年の長期答申、この引用が七十九ページから八十ページにあるんです。これには、一々読み上げませんが、今度の消費税と同じ帳簿方式(アカウント方式)、これについて叙述があります。答申そのものじゃなくて別冊の方にあるんです。そこの引用があります。この帳簿方式(アカウント方式)というのはこの答申の別冊にどう書いてあるかというと、これは複数税率や免税制度を設けることはできない、つまり単一の税率しか設けられないからということです。それで、「この方式では課税期間終了後しか税額が確定しないので、個々の取引においては税負担が確定せず、個々の取引における税負担が必ずしも明確とはならない。したがって前段階税額控除方式と異なり、制度上当然に転嫁を前提とすることができず、消費税の建前からみて適当でないという問題があろう」と。  四十六年の政府税調答申そのものが長期答申で、制度上当然に転嫁を前提とすることはできないとはっきり言っているんだから、これはどうですか。当然できないものを、公約違反の問題があるんだが、転嫁できないものを、懸念どころじゃありませんよ、できないと書いてある。大蔵大臣、いかがですか。
  203. 水野勝

    政府委員水野勝君) 四十六年のころは、まだ全く我が国でもこうしたものを手探りで検討をしておるという段階でございます。そうした場合におきましては、当然、当時まだ昭和四十三年に初めてドイツ、フランスにおきまして現在の付加価値税制度が実施されたばかりでございますので、そうしたものに目が行くわけでございます。そうした国はそれまでに長い累積税の歴史等がありまして、そうした最後の姿になったわけでございます。勉強するとすれば、そうしたものを当然頭に置いて勉強をし、そうした国等に調査等に行きまして勉強して教えてもらってきておったと、そういう段階でございます。  御指摘のあれは答申そのものでございませんで、その答申をまとめるに当たりましてのいろいろその過程での議論の経過といったものをまとめたものでございまして、そうした時点におきましてはそうした議論があったことは確かでございます。  ただ、今回の消費税でございますと、すべての場合につきましてとにかく三%お願いをするんですと、それは全体の売り上げでも三%でございますし、個々のそれぞれの個別の取引でも三%でございますから、それはそれぞれの取引段階におきまして三%を上乗せしていただくということは決して不可能ではございませんので、現在の仕組みについて申し上げれば、その当時の、四十六年の審議経過の取りまとめは、心配のし過ぎをしていたのかなという感じがするわけでございます。
  204. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 四十六年は心配のし過ぎで今度は楽観のし過ぎで大変だと思う。  特に、中小業者、小さな商店が、競争の激しいところでは大変なんですよ。例えば百円の物を九十八円という細かな値段をつけて売っているところが多いですよね、スーパーでも何でも。これは三%掛けると百一円になる。これは一円つけられないというので百円にする。競争上九十九円ということになりますと、たった一円ですよ。そうすると、小さな商店の場合には何と三分の一あるいは三分の二自分で負担しなきゃいけなくなる。だから商店の方々は第三の所得税、第三の事業税、こういう直接税になる、転嫁ができないというので大変な心配をしているわけです。  そこで政府は、今度独禁法の除外例をつくって世界に例のないことをやろうとしている。付加価値税を導入している国は四十二カ国あるんですけれども、便乗値上げを取り締まるために独占禁止政策を強化した国はいろいろあります。けれども、独禁法の効力の一部を三年にしろ停止する、そういう国はほかにありますか。
  205. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 新しい間接税の導入に当たりまして、独占禁止制度について何らかの特別の政策選択を行ったのは我が国が初めてだろうと思います。
  206. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ほかにはないんです。  公取が七月の初めにこれに反対していたころ、「転嫁カルテル弊害の見解」というのを発表した。その最後のところに「転嫁についての適用除外カルテルを認めた例は見られない」と。日本だけなんですよ、こういうことをやっているのはね。  それで、公取にもう一つお伺いしたい。  私ども、大蔵省にこの転嫁カルテルについていろいろお聞きしました。結局何をやるかというと、三つだというんですね。附則には二つ書いてあるんだけれども、もう一つあるそうです。一つは三%分の上乗せ、これはみんなでまとまって商店街だとか事業者団体で決める、上乗せをみんなでやろうということ。二番目は、税額相当分、量目を減らそうと、自動販売機なんかでね。二百ccのを、じゃ百九十ccにしようとか、値段は同じにしてとか、こういうやり方。三番目は、端数処理、このやり方を合理的にしようと。こう三つだけだというんですけれども、しかし、実際には本体価格があってこういうことが初めて問題になるわけなので、公取はこの見解のときには、こういう除外カルテルをやると「実際には統一的販売価 格の決定といった適用除外の範囲を超えた価格カルテルが行われるおそれがある」と、こう公取は七月初めに言っていた。  どうなんですか、この適用除外カルテルを認めて、実際上は本体価格のカルテルを認める結果になるおそれはもう今はないと思っているんですか。
  207. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 競争政策の立場から申し上げますと、本件に限りませず、なるべく政策カルテルが設けられない方がいいというのがこれまでの公正取引委員会の立場でございますし、今後ともそうであるわけでございます。  ただ、現実には各種の政策目的を持って、今の現状を申し上げますと、中小企業等を中心にいたしまして幾つかの政策カルテルがある。基本は今御指摘のありましたように、転嫁カルテルの場合に、それが本来の価格カルテルに転嫁するということを競争当局としては懸念をするということでございまして、結局のところ、御承知のとおり、現在政府から提案されております共同行為、特に転嫁カルテルにつきましては、消費者に対する便乗値上げ等に通ずるような価格カルテルは本来の違法カルテルとして構成されておるわけでございます。  したがいまして、我々は今後この法律ができ上がりました段階におきましては、この法が期待をいたしております適正な共同行為が行われるように、事前事後を通じまして、厳正かつ適正な行政運用を図ってまいらなければならないと、そういうふうに考えておるわけであります。
  208. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 政府は、このカルテルの違反者に対してはある程度の罰則を認めると言っているんですね。罰則を認めるということは、このカルテルにやはり意味があるということですよ。意味というのは裏カルテル、つまり本体価格は下げないようにしようとか、あるいは本体価格を幾らにしようとか、そういう裏カルテルをつくることが暗黙の前提になっているんじゃないかと思いますけれども、公取、その危険はありませんか。
  209. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) その罰則というのは、誤解を招くという場合もございまして、罰則といいますと何か政府が、政府と申しますか、国家が一定のルール違反に対して制裁を加えるということになるわけでございますけれども、先般御議論にございましたのは、カルテル共同体が自主的な決定としていわば仲間うちでルール違反に対して制裁規定を設けるということでございます。そこはひとつ誤解のないようにお願いしたいのでございますが、その場合にカルテルという共同行為が行われるためには、それの実効性を期する意味で、これは従来の政策カルテルについても同じ取り扱いになっておりますけれども、共同行為を達成するための、その目的の合理的な範囲内においてそのカルテル共同体が制裁規定を設けるということは認められる。  ただし、そのルール違反に対しまして、従来属しておりました事業者団体から除名してしまう、あるいはそれに匹敵するような過大な金銭上の例えばペナルティーを設けるとか、そういったものは認められない。これは独禁法に規定いたします不公正取引の類型に抵触するわけでございます。その範囲で御理解を願いたいと思います。
  210. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大変苦しい答弁をなさっておられます。  総理にこの問題で最後にお伺いしたい。  先日、慶応大学の正田教授を初め独禁法の専門学者たちが、消費税の転嫁、いわゆる転嫁カルテルについてというものを発表されました。これは結局、今度の転嫁の方法に係るカルテルなるものは値上げに連なるカルテルにならざるを得ないということを数十名の専門学者が非常に心配しているんですよ。こういう諸外国に例のないような独禁法の除外カルテルを転嫁を理由に認めて、結局独禁法の骨抜きになるんですよ、一番本体の価格カルテル。皆さん、結局カルテルマインド、カルテル体質、こういうものが日本に広がってしまうじゃないかというのを心配している。  総理、こういうものをやっていきますと、しかも三分の一がいわゆる大企業が入る。そうすると、本当に現実に起こることは中小企業、下請は実質的に転嫁できないで、市場に圧倒的なシェアと支配力を持つ大企業が、独禁法で禁止していたはずの価格カルテルを結んで便乗値上げのやり放題ということになる危険があると思いますけれども、どうやってそれを抑えるおつもりですか。
  211. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいまお触れになりました先般発表されました独禁法学者のいわば御提言、御批判でございますが、これについては公正取引委員会といたしましての見解をまとめまして、既に公表をいたしております。  先ほどと同じような議論になるわけでございますけれども、あの学者の指摘されておるこのカルテルの実効性についてのいわば疑問点あるいは懸念というのは、二つぐらいあると思うのでございます。  一つは、今お触れになりましたように、こういう共同行為をやるというのは値上げ率のカルテルである、そういうものは機能しないんじゃないかという御指摘であります。これは、転嫁部分を実は価格政策に反映させるというのは、今回の共同行為の目的でありますから、いわば価格引き上げ率カルテルに非常に似たようなものであるというのはこれは確かであります。ただ、その場合の学者の御立論は、その根っこにある価格をそろえないとそういうカルテルというのは機能しないのではないか、したがってこういう共同行為を認めると全体の価格カルテルになってしまうという疑問なり問題点の御提起であります。  この点につきましては、私どもいささか事実の問題としては見解を異にするわけでございまして、過去公正取引委員会が摘発をいたしましたいろんなカルテルの類型を見ますると、価格をそのまま据え置くといったようなカルテルあるいは全体の価格を統一してしまうというカルテルのほかに、カルテルの参加者のそれぞれの価格はめいめい違うわけでございますけれども、一定の割合で価格を引き上げようという、いわゆる値上げカルテルというのは幾らでもあるわけでございます。幾らでもあるということは、そういう値上げ率カルテルあるいは価格引き上げ率カルテルというものは機能しないというのはやや事実の認識に問題があって、私どもはそうではないんだろうと。  ただ大事なことは、先ほども申し上げておりますし委員もおっしゃっているわけでありますけれども、それが今回の立法措置が予定していないような本来の違法カルテルに結びつかない厳正な運用をやる。それを競争当局として今後の一つの大きな任務として取り組むということでございます。
  212. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、今お話しになりました経済学者の方のことは読ましていただきました。具体的には今、梅澤公取委員長からお答えしたとおりでございますが、私どもはきちっとしたガイドラインをつくり、そうしてしかも時限を限ってということで厳正な運営をしていくことによって、今おっしゃった懸念は中和できるものであるというふうに考えます。
  213. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 また懸念の中和が出ましたけれども、転嫁カルテルは認めるが本体価格のカルテルは認めないというのは、本体価格のカルテルを認めないと、形式上消費税三%上乗せするけれども値段はもとのままだと。そうすると、競争の中で起こり得るんですよ、現実に。これはもしこういうことにしたら、本当に我々が懸念していることが実際のことになって、中小企業者、小さな零細商工業者、下請業者は非常に大変な新たな重税に苦しむことになると思いますが、この問題はここで一応とどめまして、次に竹下首相のリクルートコスモス株の、首相周辺のと言っておきますが、問題を取り上げたいと思います。  これまで総理は、この問題に関する答弁を重要な問題で三回既に訂正されました。まず第一、当初十月二十日、社会党の坂上議員に対し衆議院で、青木秘書二千株だけだという答弁、これが社会党の十一月九日のビッグウェイリスト発表で福田勝之氏が出てきて、一万株が出てきた。訂正せ ざるを得ませんでした。第一回です。二回目、社会党矢田部議員への十二月一日の答弁、これを我が党の橋本議員の追及で重大な箇所で訂正されました。さらに、総理が見た記憶があるという福田勝之氏名義の通帳の額、当初二千二百万円と言っていた。それが五千二百万円と訂正された。まだ宮澤前蔵相の七回八回には及ばないけれども、三回まで来たんです。答弁は混然としている。整理した整理したと言われるけれども混然としている。今後重要な訂正はないと断言できますか。
  214. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私はうそをつきません。ただ、今御指摘ありましたように、時に訂正をさしていただきます。
  215. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それではまず聞くことは、十三日、橋本議員の質問にこう答えられた。幹事長の私のところに持ってきたという意味ではない、だれか適当な人はいないかということで、私に相談することではないから信頼関係のある方に取り次ぎをした、こう答えられた。これは、小沢さん見えられていますけれども、十一月九日夜の青木秘書と小沢さんの記者会見での話とも違います。あのとき、お二人は竹下幹事長あてに一万株、青木氏に二千株の譲渡話が持ち込まれて、竹下幹事長に予定された分を福田氏に回したと述べました。大体適当な方はいないかって、リクルートはそんなことはしてないですよ。江副証言で、譲渡先リストを作成して私が選定して中心になってやったと言っているんですからね。今まで明らかになった例で、どなたか適当な方になんて持ってきた例はないんだから。  小沢さん、どうですか。あのとき青木さんと一緒にそういう記者会見をされたでしょう。
  216. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) そういうような経緯については私、記者に申し上げておりません。青木伊平氏が述べたことでございます。
  217. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 小沢さん同席されておられたんだから、青木伊平氏はどう言いましたか。竹下幹事長あてに持ち込まれたものを、これじゃまずいと思って福田さんにというふうに言ったのか、それともどちらかだれか適当な方にと言ったから福田さんをと言ったのか、どうですか。
  218. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) あのときの記者団に対する話は、うちを出てから門前で、おられました記者団に話をしたわけでございまして、私はこうこうこういう経緯で今晩一緒に来たと、委細経過については青木伊平氏にお聞きくださいということを言っただけでございまして、後は、隣というわけではありませんが傍らで青木伊平氏が話しておられましたので、そのことを直接その場で聞いておりません。
  219. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは耳があるんですから、真夜中の午前零時半ですよ。近くで、門の前ですからね、部屋が別なんじゃない。聞こえたはずですよ。どうですか、青木さんは何と言っていましたか。
  220. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 私ももちろん耳はありますけれども、御承知のように記者団がわっと囲んでそちらでやっておりましたので、私には、そのとき人垣の中でしゃべっておりましたので、聞こえなかったということを申し上げておるわけであります。
  221. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これはやっぱり青木元秘書に直接聞かないと真実がわからない。首相の答弁が非常に重要な、だれか適当な人にと、竹下幹事長あてであった事実を覆い隠す重大な疑惑がありますので、青木さんに聞かないといかぬと思うんです。  それでは、首相に聞きます。  首相は、青木秘書からこの問題で何度も聞いておられると思うんだが、そのリクルート関係者、この名前もあなたおっしゃらない、特別利害関係者じゃないということだけは私に言ったけれども。その関係者が一万株と二千株の二つの話を別別の日に持ってきたのか、それとも同じ日に持ってきたのか、これはどうですか。
  222. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは存じません。わかりません。
  223. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 非常に大事なところでわからないという答弁です。二千株は青木秘書あてと、一万株は竹下幹事長あてということを青木さんは述べました。東京新聞もはっきり、その他もはっきりそう書いてある。  それで、ここにも一つ大きな疑惑がありますが、じゃその次の問題。それで、竹下幹事長は取るわけにいかないと思って、小沢さんの縁戚で竹下幹事長の縁戚でもある福田正氏に取り次いだと言うんですね。それで福田さんは、十日午前十時半の新潟での記者会見でどう述べているかというと、竹下事務所で九月三十日購入と。まあ株式約定書はたしか三十日ですわね。そう述べている。これでこの一万株、我々は竹下幹事長あての非常に重要な株だと思うんだが、その株の購入の契約が成立した日は約定書に署名した日なんですよね。じゃ、その青木さんが取り次がれた福田正社長は一体いつリクルート社のだれと会って株式約定書に署名したのか。これは契約成立の行為で極めて重要ですよ。宮澤大蔵大臣も、私がそのことを聞いて、三十日はアメリカに行っている、じゃその日はどこだと。結局答えられなかった。福田正氏のケースもやはりいつかと、契約成立の日は。新潟から来て話されて事務所でやったと答えられた。青木さんはどう言っていますか、首相。
  224. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 存じておりません。
  225. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは全く無責任です。これはあなたが問題の重要性を感じてないか、感じてないふりをしようとしているかだと思うんですね。一国の首相の周辺にかかわる一万株のリクルートコスモス株の譲渡の疑惑なんです。今までもう二十人、さまざまな形で辞任された方がいるんですよ。あなたの地位にもかかわる大問題なんですよ。それをこれだけ国会で我々が追及してきて一番肝心なところを、存じません、わかりませんと。  じゃ、小沢さんにお聞きします。  私ども新潟にも行ってこの問題を調査しました。福田正社長はお婿さんの小沢さんと大変仲がいい、上京するたんびにあなたの家に泊まられるということを聞きました。それで福田正社長は当然の商行為をしただけだと言われた。そうしますと、今までの話をもし信ずるとして、青木伊平氏から取り次がれた、当然の商行為で竹下事務所で一万株したと。そうすると、あなたの家に泊まったときに、大変仲のいい、信用している、信頼しているお婿さんの小沢さんに、当然の商行為で一万株譲渡されたよという話をされたはずですよ。聞いていますか。
  226. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 仲がいいかどうかはそれはわかりませんけれども、人それぞれ見ていただいて判断してもらう以外ありませんが、いまだかつて福田正の娘をもらってから福田正社長は私の家に一度も泊まったことはありません。
  227. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも私どもの調査にも、そういう話を幾つも聞いたんですけれども、あなたに確かめなかったから、じゃこの事実は訂正しておきます。しかし、泊まってなくても聞いていませんか。
  228. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 私はこの間、橋本委員の質問にも答えたと思いますけれども、社会党の、十一月九日ですか、あのときの発表で福田勝之なる名前を知り、その後青木伊平さんの話で経過を知ったということでございます。
  229. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これについても私ども非常に重要な疑問を持っています。  五社リストが国会にリクルート社から提出されたのは十六日でしたね。それで検察は十一月九日よりずっと以前の時点でもうビッグウエイの配付先も全部知っていたはずです。社会党がビッグウエイリストを公表するという情報が流れた時点で、官邸がその中に福田勝之名義が含まれているということを知るのは容易なことです。矢田部議員を事務局長とする社会党のチームが福田勝之氏の自宅を訪問したのは九日の発表の前の八日の夜です。新聞でも報道されていますが、福田氏は株譲渡は知らぬと言ったけれども、東京地検特捜部の事情聴取を受けたかという問いには、覚えていないという答えで、恐らく受けたのだろうと思う んですね。そうしますと、福田勝之氏が東京地検の事情聴取を覚えていないという言い方で否定しなかったんですから、もし受けていて、しかも社会党のチームが夜来ているわけですから、これは御親戚の小沢さんなり竹下首相の弟の亘さんなりに問い合わせをしたり報告したりすることもあるんじゃないか。ありませんでしたか。
  230. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 何度も申し上げているとおり、十一月九日の晩にその事実を知ったということでございます。
  231. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やはり小沢さんも真実を隠しておられる。首相も、真夜中に小沢さんと青木さんの訪問を受けて初めて聞いたと国会で答弁されました。新潟で調査したところによりますと、九日の夕方から、例えば竹下派の参議院議員の長谷川信議員、この事務所は一人も人がいなくなりました。後で、なぜいなくなったのかと新聞記者に聞かれて、福田勝之問題で重大なのでマスコミに会うのを避けたんだということを事務所の方が言っています。それから福田正社長も、夕方から、もう各新聞記者が捜し始め、自宅にも行き張り込んでも、いなくなりました。これは、竹下派の参議院議員の方の事務所が、もう福田勝之、福田正さんの息子の名義だというので一斉に事務所はいなくなっちゃう、福田正さんは雲隠れしてしまう。知っているんですよ。首相がそれを知らないなんていうはずはありませんよ。考えられない。こんなことで危機管理なんかできっこないです。新潟で知っているのに東京で知らなかったなんてあり得ない、首相がね。この問題も、これは水かけ論になるかもしれませんけれども、私は、事実が示している。  ですから、午前十時半の福田正社長の記者会見、わずか十分という制限つきだったそうです。それで、制限つきだったけれども、新聞記者から、この話が表ざたになるのを知ったのは一体だれからかと。一郎から。あなたのこと。仲がいいから、一郎から、そう答えた。続いて、いつかと聞いたら、午後二時だと。つまり九日の午後二時ですよ。小沢官房副長官から、東京から電話で午後二時に、表ざたになるぞということを知らされた、そう言っている。ですから、新潟日報だけでなくて、例えば読売の新潟版も、「事実、社会党リスト公表の第一報も、同社長が「一郎が……」と呼ぶ小沢副長官から九日午後二時ごろに入ったという」。新潟で聞いてみますと、新聞記者は全部、当然、午後二時だったんだなとみんな思っている。各紙が午後二時と書いても、福田組あるいは福田さん自身からの、これを訂正してくれという申し入れも一切ないんです。小沢さんはこの間の答弁で「多分午前二時だと思いますけれども」、午後二時じゃない、午前二時だというふうに直された。その前にも何度か連絡をとっており、本人は、そのごろの時間ということで言っていると思う——その前にも連絡をとったと言っておられる。一番最初の連絡は午後二時だったんじゃないですか。
  232. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 橋本委員にも御説明いたしましたが、私が社会党のその手になるリストを知りましたのはその晩の、八時か九時だったか時間は定かではありませんが、それで知りまして、そして福田勝之あるいは新潟等にも連絡いたしましたが、連絡はその時点ではつかなかった。そうこうしているうちに青木伊平さんから何度も言うような相談があって、そうして一連の経過になったということであります。確か二時かどうか、これまた私も日常行動で時計を見てやっているわけではありませんのでわかりませんが、多分夜中の二時ではないかというふうに橋本委員にもお答えしたところでありまして、このぐらいの、午前午後の勘違いぐらいは、それは言う方が間違えたか聞く方が間違えたか別といたしまして、そのぐらいは日常あることでないかと思いますし、私は、間違いなく夜中の、連絡がついたのはその時間のころだったと思います。
  233. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今、社会党のリスト発表で、午後八時ごろ知ったという答弁をされました。今の答弁が事実とすると午後八時ですね、あなたが、この問題で福田勝之の名前がある、これは福田正の息子だと、自分の義弟ですね、義弟に当たる人がいるということを御存じになったのは。当日の新聞の首相の動静欄を見ますと、首相は午後六時三十八分以後私邸とあります。私邸におられた。午後八時に知ったのに首相には電話もしなかったんですか。午前零時まで行かなかったんですか。電話もしない、知らせもしない。官房副長官の任務がそれで務まりますか。
  234. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) その義弟のいわゆる福田勝之という名前がわかったものですから、普通の常識ではまず本人に連絡してみるのが常識ではないでしょうか。そういう連絡をしている間に青木さんが来て、そして事実を知った、経過を知ったと、こういうことであります。したがって、その前に総理に連絡はとっておりません。
  235. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いろいろ申し開きをなさいますけれども、この申し開きにも重大な疑惑があります。私ども新潟に行って調べたんですからね。夕方から新潟の新聞記者も福田正さんもその周りの人たちも、また長谷川信参議院議員の事務所もこの問題を知って一斉に行動し、それぞれ追及する側と逃げる側の行動をしていたんです。その事実を首相も官房副長官も青木さんが来て初めて知ったとか、首相自身は午前零時に訪ねられて初めて知った、こういうことはあり得ません。しかし私は、そういう大きな疑惑があるということを指摘して次に移ります。  首相は、十五日の橋本質問、十六日の松本質問、社会党の村山質問に対して、福田勝之名義の五千二百万円の銀行口座を見たと答弁されました。議事録を起こしたものがここにあります。もう一々引用しませんが、そう答弁された。それで松本議員は、これは福田勝之名義なんだけれども、福田正氏は、自分が全部預金してポケットマネーとして随時利用しているという記者会見なんですから、通帳を自分で持っているということですよ、新潟で。じゃ首相は一体どこで見たのかと。松本議員は、じゃ新潟で見たのか東京で見たのかということを聞いたけれども、答えられなかった。五千二百万円の預金のあるあなたが見た銀行通帳、どこで見たんですか。新潟か東京か、あるいはあなたの周辺か、これも大事な問題なので、あなた自身が見たことだから、今度は人様では済まない。人様では済まないあなた自身のことだからお答えいただきたい。
  236. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 速記を起こして一つ一つの質問でございますが、私も速記を起こしてみましたら、「○上田耕一郎君 割に正直なお人柄で、つい真実が少しずつぽろぽろと漏れているんだろうと思うんですね」云々というのが八月三十一日にございました。考えてみますと、できるだけサービスしようと思って、丁寧に物を答えてきたのだなと。それで、それが今度は速記録になって、ここが違うじゃないかと。だからこれは考えなきゃいかぬなと思いました。これは今の心境でございます。  今の御質問につきましては、見たような気がしますと、それにとどめます。
  237. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 新聞によりますと、首相は、宮澤前蔵相の大問題になっているときに、あなたはしゃべり過ぎるといって注意したというように書いてあるんですね。御自分のこともこれはどうもしゃべり過ぎだ、追及されるのでということで、記憶がない、見たことがある、覚えていないという程度の答弁に今後しようとお決めになったのかもしれないけれども、しかし首相、ちょっと考えてください。これは、二千二百万円というのは、検察もそれからリクルート社側も、実際上現金贈与の性格を持っているということはだんだん認めてきた問題ですよ。  それで、七月二十日の最高裁決定が、値上がり確実な非公開の株を一般の人が手に入らないのに特定の人が手に入ったとするとわいろの性格を持っているという判断を示した問題で、それがあなたの幹事長時代、今あなたは首相なんですからね。リクルート疑惑の解明について、朝日の世論調査では八六%の国民がまだ未解明だと言っている問 題なんですからね。国会でこの全容解明についてあなたは何度も決意を表明された。そのあなた自身にかかわる疑惑なんですからね。NTTの真藤会長は、やっぱり秘書の村田さんのと、知らぬ知らぬと言っていて、結局明らかになってやめたんです。今度も青木秘書あるいは御親戚の福田正社長のことだと、人様のことだでは済まないんです、これは。  そこで、首相にお伺いしたい。あなたは最初は二千二百万円と言う、次に五千二百万円と言われた。見た記憶があるとおっしゃるけれども、じゃ五千二百万円の通帳、この金額は確かにそうだったんですか。
  238. 竹下登

    国務大臣竹下登君) きょうはちゃんと書いておりますから。たしか五千二百万円の入金を福田勝之氏名義の口座で見たような気がすると答弁をしたとおりであります。十二月十五日の参議院税特委で橋本先生から、売却して二千百万円以上の利益が出ているはずなんです、そうですね、これは御存じですねとの質問があり、私は、たしか売却代金の入金を勝之氏名義の口座で見たような気がしたので、そのことは知っておりますと答弁したものであります。
  239. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この金額も事実と食い違ってくるんです。というのは、福田正社長は十日午前十時半の記者会見で、十一月初めこの株を売って売却高は五千二百万円、こう説明した。ところが福田正さんは、いきなり仕込んだ話なので事実と狂ってきちゃう。あの株が登録された日、十月三十一日、この日は安値五千二百七十円、四千六十円の三割増しの値がついたんです。この日に出来高二百九万株です。翌日が十一月一日です。高値五千四百二十円、安値五千四百円。ここに株価のリストを調べました。十一月初めと福田社長は言ったけれども、十一月一日から十二日まで安値は五千四百円です。一番の安値が五千四百円。だから、福田正社長が十一月初めに売った、売却高五千二百万円というのは事実と違うんです。少なくとも五千四百万円でなきゃならぬのです、十一月なら。  前大蔵大臣の宮澤さんは十月三十一日に売ったから五千二百七十万円。有取税と手数料が六十七万円引かれて五千二百三万円という答弁なんです。だから十一月初めに福田正社長が福田名義の株を一万株売ったとしたら最低五千四百万円、有取税、手数料引いても五千三百三十数万円入っているはずです。どうですか、角谷さん、局長、どうですか。
  240. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) ちょっと今手元にリクルートコスモス株の価格状況を持ってきておりませんが、売買した日から四日目に送金が行われますので私も何とも言えませんけれども、その売却の時期というものと売買報告書が実際手に入った時期というのは、若干四日か五日のずれがありますので、そこら辺をどう考えるか、そこら辺は私どもちょっと判断しかねる状況でございます。
  241. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 多くは十月三十一日、二百九万株、それから十一月四日、三十九万八千株、十一月五日、六十三万六千株、十一月六日、三十三万四千株。これは、これまでの報道では、ファーストファイナンス、リクルート側が一括して大体この十月三十一日あるいは十一月の四、五、六、ここらあたりで売ったという報道があります。  それで、私が今指摘をずっとしたように、大体一万株だと、そうか五千二百万円かと、新聞報道その他その他多くそういう例がありますからそういうふうにするんでしょうけれども、これはそういうことを知ってぱっと言うでしょう。作り話だと狂っちゃうんですよ。真実の話ならいつ何を言ってもどう聞かれても訂正の必要はないんです、真実のことを言えばいいんだから。ところが、作り話ですと、くるくるこれは変わらざるを得ないんです、人間のやっていることなので、幾ら首相が精緻な頭脳をお持ちでもどこかぼろが出るんです。福田正社長もそうです。この金額、名義もそうです。大体そういう問題が次々に起きてくる。首相は、社会党の村山議員に対する答弁で、確かに売買約定書、これは福田勝之名義のですよ、売買約定書を青木君が保管しているのを見たことがございますと言った。  私は首相に対して重大な疑問を提示しているんですけれども、私どもの疑惑、疑問が真実なのか、あるいは首相のこれまでの国会での答弁が真実なのか。これはやっぱり物証があればわかるんです。アリバイも物証もない無実の主張をただここで述べられても、これはだれも信じることができない。ですから、宮澤前大蔵大臣にも三点リストという要望がありましたけれども、あなたも福田勝之名義の約定書あるいは入金の通帳、これが福田勝之名義と言われているんですが、福田正氏が本当に持っているのかどうか、あるいはあなたの近辺の青木元秘書が、名前は福田勝之かもしれないけれども、使える形で首相の近辺に、首相の見ることのできるところにあったのではないか。これらの問題で、それらの我々が要求している通帳をここに提出していただきたい。人様のことではなくて、あなた自身のことであります。一般庶民の場合には、前にも言いましたけれども、何か借金したり、いろいろしたり、借金があると調べられて調べられて、税務署は、反面調査といって銀行から人様まで全部調べるんですから。首相・大蔵大臣がこれらの疑惑に対して物証として、約定書あるいは売買通知書、売買報告書、あるいは口座、これらを提出することを強く首相に要望します。
  242. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この関係書類などを見せてくれないか、詳細に説明してくれないかと言えない間柄ではありませんが、青木秘書を通じて大筋をつかんだ私自身が納得しております以上、国会での質問に答えるために、必要だからといってそこまでやる考えは私にはございません。これはいつも言っているとおりでございます。  ただ、国会が相談される問題であると、それは十分承知しております。
  243. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、先ほど首相の説明を信じることのできる物証がないということを指摘しました。福田正氏の十日午前十時半からの新潟での十分間の説明、新聞記者に対する答え、きのうの午後二時だという答え、それから十一月初めに売ったと、五千二百万円、これらも事実と違うことを指摘しました。こういうところから生まれる私の客観的に提起される疑問は、ちょうど宮澤前大蔵大臣のケースで、服部さんは河合さんがやったと言って、河合氏なる人物を、SE総合設計社長の河合さんを、彼がやったんだということで、いわばダミーとして話をつくられた。これがくるくる話が違っていくことになり、実際上はそうでないことが明らかになった。  私は、首相のケースも、リクルートから青木秘書に一万株、竹下幹事長あてにと来た。青木秘書が幹事長と相談したかどうかはまだ証明できませんけれども、福田勝之名義で、いわば仮名取引、借名取引竹下幹事長の名ではまずいということで行っていたのではないかと。そして、それが社会党のビッグウェイリストの発表で公然化したとき、福田勝之氏の名前を青木さんが使うのはおかしいですからね。そうすると、福田勝之なる名義を使ったのに、何とか説明のつく人物としてお父さんの福田正氏、いわば河合さんの役割ですね、彼にやってもらおうという作り話がつくられたのではないかという疑問が当然出てきます。そうでないと言うのなら物証を全部出していただきたい。  それで、あなたは福田正氏に電話連絡をして、非常に矛盾の多い記者会見だったと。我々新潟へ行って福田組にいろいろ話してほしいと言っても、福田組は口をつぐんで何も言いません。本当のことなら何も隠す必要はないんですよ。だから確認できる説明と資料を出さなきゃいかぬ。勝之名義の約定書はいつ、だれがだれと会って書いたのか。株の代金はだれか、いつどのようにして払い込んだのか。その際、宮澤さんのケースのように、ファーストファイナンスの一時立てかえがあったのか。あるいは他の人のようにファーストファイナンスの融資を受けたのかどうか。売却報告書はだれのところに届いたのか。福田正氏か、 福田勝之氏か、あるいは青木氏か。ところが、福田勝之氏は何も知らないと言うんですからね。彼のところに金も払い込まれていない、売買通知書も来ていないんです。だれのところに行ったのか、その通知書は。入金の銀行口座はだれの名義なのか。福田正氏は、随時引き出してポケットマネーで使っていると言う。じゃ自分の近辺にあるはずでしょう。それを竹下首相が新潟にも行かないで見た記憶があると。首相の近辺、身辺にあるはずですよ。何でこんなことになるのか。  これは、私が宮澤前大蔵大臣のケースでも指摘したように、やはり首相の、当時幹事長の政治資金とかかわりがあった株取引であったと、あったのではないかという疑問が当然出てきます。だから国民は、首相にかかわるこういうリクルートコスモス株の疑惑というので重大な疑問を提示しているわけです。秘書が秘書がだとか、妻が妻がが出てきたけれども、今度は弟の妻の父、つまり義父、いろいろなケースになってくるという疑問が出てくるじゃありませんか。  ですから、私はどうしても青木伊平元秘書、福田正福田組社長、これは実際に扱っておると言われているんだから、こういう方々の証人喚問と我我が要求している資料の提出がどうしても必要だと思うんです。首相自身はそのお考えないと言うので、委員長、我々の要請している証人と、それから資料の提出をお取り計らいいただきたいと思います。
  244. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 理事会で協議します。
  245. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さて、首相の政治資金とのかかわりという点で、先日決算委員会で佐藤昭夫議員が首相にお伺いした山梨県の湖畔の別荘の問題、これにも我々はつながりがあるのではないかと思います。建設費だけでも一億円は超したと言われている。当初、建築工事届はあなた自身の、竹下登の名義で出された。完成後の名義は、青木伊平氏が社長という新樹企画という法人名になりました。佐藤議員に対する答弁で首相は、御心配いただいてありがとうございます、いろいろやりくりして暮らしております、そういう問題はこの場でやめることにしてもらいたいと、はぐらかしの答弁をされました。  そこで、この別荘、去年の七月に完成したんですけれども、当時の山梨日日新聞などでは、竹下首相の側は新樹企画に二千万円の敷金を払って借りているということを明らかにしています。この敷金二千万円は、首相はいつ新樹企画に支払いましたか。
  246. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 存じません。
  247. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 御自分が二千万円敷金払って、存じないと言う。  我々調べました。新樹企画は、この別荘賃借の保証金として二千万円を六十二年の二月二日受け入れている。竹下登氏が二月二日に新樹企画に敷金を支払ったんです。二月九日、一週間後に建設会社に対して二千万円を支払っています。思い出しましたか。
  248. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 思い出しません。
  249. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 竹下さん、アメリカではやっぱり首相、政治家、議員の資産その他その他非常に厳しいんですよね。日本でもこういう問題、厳しくしようというので、閣僚の資産公開その他始めていますよね。それで、そういうことを覚えてもいない、二千万円敷金払ったのを。税務署の発表によりますと、六十二年の所得は四千三百万円である。資産公開を見ますと、借入金、貸付金なしということに首相はおやりになっています。そうすると、じゃこの二千万円はどこから支出をされましたか。
  250. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 存じません。
  251. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こんなこともどうして存じないんですか。問題ですよ、もう全然。  六十一年の十一月に約二千三百万円余の入金があなたの関連の福田勝之名義でリクルートコスモス株で入っているんですよ。翌年の二月二日に、あなたは竹下登名義の工事届を出したその別荘の、名義の変わった青木伊平社長の新横企画に二千万円払っているんですよ。日付も金額もなかなかどんぴしゃりというふうに感じませんか。
  252. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 感じません。
  253. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 何にも存じません、感じません、二千万円の支出もどこから来たかわからないで済みますか。本当にあなた、税務署がどんなに庶民の一つ一つの、前にも言いましたけれども、十万円、五十万円の、家を買った場合五千万円、六千万円、マンションを買った場合もどれだけ調べるか。商店が借金した場合、銀行から知人から本当にどれだけ調べるか。首相がこれだけ資産公開をして明らかにしているときに、この二千万円の資金がどこから出たか。青木さんに任しているんですか、自分が知らないというのは。
  254. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は上田委員を信頼いたしております。しかし、そうした問題はこの場で申し上げることではないと思っております。
  255. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、借入金、貸付金なしというのですから、銀行からの金融ではないんです。それから、あなたの政治資金の報告は、あの年は指定政治団体の新産業経済研究会に四千八百三十九万二千円寄附をされた。もし残りを個人でお使いになったら、これは申告しなきゃいかぬ。しかし、申告はありませんから政治資金を回したものではありません。そうすると、考えられるのは預金からおろしたということ、もう一つは、当時五十回、三十万株以下ならば税金を払わないでいい、そういう株の取引の利益が充てられたということになる以外にないと思うんですが、それでも思い出しませんか。
  256. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 福田さんは立派な経済人でありますし、私もまた今おっしゃるようなことをしようなどと思ったこともございません。
  257. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題で、あなたは六十一年十一月十九日に鳴沢村役場に建築工事届を出している、竹下登名義で。佐藤昭夫議員が十二月十六日、決算委員会で質問したとき、急いで許可をとる必要があったので設計屋さんが私の名義にしたと答えられた。これもうそです。というのは、この地区は都市計画区域外、私は建設委員ですが、五百平米以下の木造建築物の場合は建築確認は要らないんです。許可は要らないんです。建築基準法第十五条で、建築統計をとるための届け出だけでいいんです。だから、竹下登名義で建築工事届を出したのは建設会社が許可をとるために急いだからだ、この説明も全く成り立たない。答弁を訂正されますか。
  258. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、鳴沢村がそういう都市計画を受けているかどうか知りませんが、急いでやる場合そういうことはあるだろうなと思っただけの話でございます。
  259. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全く話になりませんね。急いでやる必要はないんですから何も竹下登名義を使う必要ないですよ。青木伊平社長の新樹企画が届けを出せばいいんですよ、許可は何も要らないんだから。そうすると、地元では竹下別荘だと言っているけれども、やっぱりあなた自身の別荘なんでしょう、工事届を出したんだから。それで、新樹企画ということにして月額八十万円の借財ということになった。  もう一つ問題がある。二千万円の敷金をお払いになったことは認められた、いつだか覚えてないけれども。敷金というのはこれは戻ってくるんですから、そうすると竹下首相の債権になるんです、敷金は。資産になるんです。新樹企画は負債になるんです。そうしますと、あなたの資産公開に権利金として計上しなきゃならぬ。ところが、あなたの六十二年十二月の資産公開の中にはそれがありません。二千万円の脱漏はお認めになりますか。
  260. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 存じておりません。
  261. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 時間が参りました。
  262. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、時間が参っても、さっき公明党の方は全部一分でおやりになったんだから、差別しないで、もう一言。
  263. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 一言。
  264. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さて、首相はまことに無責任な態度をおとりになった。どんな問題でも、知りません、存じません、覚えておりませんと、ロッキ ード事件のときのだれかに似ているじゃありませんか。そして、私は三つのあなたの訂正を指摘しましたが、今度きょう私が出しただけでもさらに四つも五つもの重大な疑惑が出てくる。それに対して答えられない。即刻辞任すべきだということを要求して、質問を終わります。
  265. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、井上計君の質疑を行います。井上君。
  266. 井上計

    井上計君 けさほどから「弾力的運営」ということについていろいろと質疑が行われておりますが、私は最初に総理にひとつお伺いいたしたいと思いますけれども、弾力的という定義はどのようにお考えでありますか、まず冒頭お伺いいたします。
  267. 水野勝

    政府委員水野勝君) この条文は、御承知のとおり衆議院の修正でいただいた条文でございますので、積極的に私どもがこれを定義するという立場にはございませんが、政府サイドといたしましては、このような修正をいただいたことを重く受けとめて対処しているところでございます。  まさに「広報、相談及び指導を中心として弾力的運営を行うものとする」という、この文字どおりにとにかく解釈し、その趣旨に即して対処いたしたいと考えているところでございます。
  268. 井上計

    井上計君 主税局長から、他の同僚委員等に対する答弁と同じであります。実は、弾力とは何ぞやということでありますが、私もよくわかりませんので広辞苑を引いてみました。二つ書いてあります。まず一つは、「はずむ力。弾性体が変形に抗して、原形に復しようとする力」。いま一つは、「転じて、心や事物が圧迫などをはねかえして復旧しようとする力」と、こうあるんですね。だから、言いかえますと、その人の主観あるいは置かれておる立場等々でどうでも、どちらにでも解釈してよろしいと、こうしかとれないわけですよ。  だから、去る十一月十五日の、徹夜で安倍幹事長と我が党の大内書記長との交渉の中で出てきた弾力的運用とは、それぞれの立場が違いますから、その後いろんな形で説明がされておりますけれども、我々としては、実質的な六カ月の実施延期であると、こういう受けとめ方をしておったとしてもこれは間違いなかろう、現在でも実はこのように思っている。まずこのことを前提として申し上げて、後、ひとつ質問に入ります。  そこで、その後、修正案の中で、消費税の転嫁に関する規定の修正が行われました。消費税の円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務を明確化するとともに、国は、事業者が取引に際し課せられる消費税の額が明らかとなる措置を講ずる場合を踏まえ、必要な施策を講ずるものとする等、国の義務を明確化すると、こう修正をされました。  ここで私はお伺いしたいのでありますけれども、国の義務の明確化というのは具体的に何をお考えになっておるのか、お伺いをいたします。
  269. 水野勝

    政府委員水野勝君) これも議院での修正でございますので、その文字どおりにお読みをするわけでございますが、この十一条の条文に則して申し上げれば、原案は「消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう努めるものとし」——「事業者は」「努めるものとし」とあったわけでございますが、それが「円滑かつ適正に転嫁するものとする」というふうに改められたところでございまして、「努めるものとし」という言葉が落ちて、「転嫁するものとする」というふうになっておるところでございます。  また、その第二項におきまして、「国は、消費税の円滑かつ適正な転嫁に寄与するため」という原文に対しまして、「前項の規定を踏まえ」という言葉が挿入され——「前項の規定」と申しますのは、事業者は円滑適正な転嫁をするものとするというところでございます。そうした規定を踏まえておるところでございます。それで、「前項の規定を踏まえ」という言葉が入りました。それから、「消費税の仕組み等の周知徹底を図る等必要な施策を講ずるよう努めるものとする」というのが、「努める」という言葉が落ちて、「講ずるものとする」というふうに修正をいただいたわけでございます。  端的に、委員指摘の点でございますれば、事業者としてのお立場としては、「転嫁が行われるよう努めるものとし」というところが、「転嫁するものとする」と。このところが、転嫁につきましてのお立場が明確にされたということではないかと思うわけでございます。
  270. 井上計

    井上計君 水野局長、恐縮ですが、私は与えられている時間が少ないので、もう法文の訂正等々はわかっていますから、余分なことは抜きにして、お尋ねすることだけにお答えください。  今の御答弁では、実は、国の義務というものは全く明確化されていないんですね。後でまた伺います。  私は、これは総理に申し上げますけれども、これから具体的ないろんな消費税導入に当たっての起きる問題点、あるいは既に多く言われておりますところの不安あるいは不満、反対、いろんな人たちからいろんな形でいろんな場所で聞いております。失礼ですけれども、総理のお耳に入らないようなことまで実は私たちは聞いておるわけであります。そこで、率直に申し上げて、そのような意見を聞いておりますと、現在、世論調査等で、消費税反対六五%あるいは七〇%等と発表されていますが、それらの反対が絶対的に反対なのかどうか、実は疑問を持ってきたわけですね。私のいろんな聞いた、あるいは接した範囲内で考えますと、将来的に考えて、消費税あるいは間接税の導入はやむを得ない、しかし、今すぐここで消費税を導入されることについては大変な不安があると。しかも準備に相当時間がかかる。あるいは、細かい点についてわからぬことがいっぱいある。果たして転嫁ができるであろうか。そういうふうな不安等々、あるいは不満が多くあって、そういう人たちがみんな反対に回っておるんですね。だから、それらのものを明確にすれば、私は、言われておる反対論というのはかなり減るのではなかろうかと、こう考えるんです。  私自身も、今急いで消費税を導入する必要はないと、こう思っております。しかし、言えば議会制民主主義の建前からいって、竹下総理を初め政府・与党が、言えば体を張って、この機会をおいて税革六法案の成立はないと、こういうふうな非常に強い決意を持っておられますから、それらを考えますときに、議会制民主主義の建前からいって残念ながらやむを得ないかなという感じはするんです。  しかし、だからといって、このままで導入された場合の混乱がどうなるであろうか。それによってどのような不満が、さらにどのような大きな政治に対する不満、不信が起きるであろうか、高まるであろうかということを考えるときに、できるだけやはり明確にして、そういう人たちの不安や不満を少なくしていく、これが私どもに与えられた使命だと考えるのでいろいろとお尋ねをしたいと、こう思っておりますので、政府委員にもお願いしますけれども、できるだけ明快に、余り言葉を飾って言う必要ないんです、お互いにわかっていることばかりなんですから、ただ疑問点について明快にお答えをいただきたい。まず、このことをひとついま一度要望して、次に入ります。  国の義務については、今、主税局長もはっきりとお答えになりません。じゃ国の義務とは何ぞやという疑問が残っている、ここでそのように申し上げます。  そこで、大蔵省は総体的にお考えになるんですが、一番問題になっている、今多くの人が不安を持っている転嫁が十分可能かどうか、どうお考えであるのか。これは端的にひとつお答えをいただきたいと、こう思います。
  271. 水野勝

    政府委員水野勝君) 今回は、三%で薄く一律にお願いをするわけでございます。経済環境としてはいろいろな環境がございますけれども、現在の経済環境の中での一応の取引秩序といったものが成立している。その経済関係の中で三%という、業種業態いろいろの方がございますけれども、とにかくほかの業者と横並び、すべて三%でひとつお願いをしたいということでございますので、それだけ転嫁という点につきましては、個別にお願いをいたします場合に比べれば容易ではな いかと思うわけでございます。  しかし、転嫁につきましてはいろいろ御苦心もあろうかと思いますので、先ほど御指摘の転嫁のための政府の義務としては、いろんな局面から最大限の努力をして御支援をするつもりでございます。
  272. 井上計

    井上計君 大蔵省としては当然そういうお考え、また御答弁もわかります。ただ、具体的に言いますと、どう考えても転嫁——まあ不可能だとは言いません、しかし、九〇%以上困難だ。実は事実上不可能に近いというものがいっぱいあるんですね。大蔵省が「自動販売機と消費税」という、何かそんなふうなものの資料をお出しになっていますけれども、ここにも今局長答弁されたと同じようなことが書いてあるんですね。「合理的な端数調整や距離の調整で対応可能か」という、自動販売機の総売り上げの約四分の一はそのような問題がある。しかし逆に今度は物品税等々の廃止で値下がりするものがあるからそれらを調整すれば可能だ、こう言われていますが、実際に自動販売機は現在百円のものを百三円で売る方法なんて不可能ですよ。だから、じゃ百円をどうするのか。中身を減らして、あるいは容器を小さくして百円にするのか、あるいはこれを若干加えて、便乗値上げじゃありませんけれども、実質的に百十円にするのか。百十円というのも、今の経済構造の中でそんなもの自動販売機で消費者は買いはしませんよ。これはやっぱり百円という一つの単位が基準になっているわけですから、百円に合わすためにどうするかというのは、これは大変な問題だと思うんですよ。だからそういうふうなものを、それはやってできないことはないと言われるけれども、やるためには大変なやはり時間と努力が必要だと。そういうふうな人たちの不安がいっぱいあるということですね。このことはもうおわかりだと思いますけれども、そういうふうなこと等、言い出せば切りがないほど転嫁に困難な問題があるいうことなんです。  そこで次に、公取委員長、御苦労様です。お伺いをいたします。  取引上弱い立場の中小企業は、転嫁を行うためには容易なことではありません。そのためには転嫁カルテルを要するに認めるという方向でいろいろと御検討いただいているようであります。ところが、中小企業にわかりやすいガイドラインを早くつくっていただかないと、果たしてそれで転嫁が可能なのかどうかということについて大変不安があるわけです。もちろん法案が成立しておりませんから、公取としてはそう以前にガイドラインを発表することはできぬでしょうけれども、仮に成立したらどれぐらいの間にガイドラインを発表されるというふうなお考えであるのかどうか。  それからいま一つ重ねて申し上げておきますけれども、今まで公取にカルテル行為を行う場合に申請する書類なんというのは普通ではできない、大変厄介ですね。しかも申請して何カ月もかかる。ものによっては半年以上もかかっているわけです。そのようなことでは実際に効果がないと思うんですけれども、負担がかからないように、できるだけ簡素に簡便にそのような申請受理というものをしていただきたいと思いますけれども、この点についてひとつお考えを承りたい。
  273. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) まず手引の公表の時期でございますが、法案が成立いたしましたらそれこそ可急的速やかに公表すべく今事務局で鋭意作業をいたしております。  それから二番目の届け出の問題でございますけれども、これもなるべく事業者に負担がかからないように様式化できるものはきちんと様式化いたします。それから用紙も都道府県なり商工会議所にもお願いをいたしまして窓口に置いて、またその記載方法等についてもわかりやすく丁寧に周知徹底を図るべく、これも今準備をいたしております。
  274. 井上計

    井上計君 その点は特に留意をしていただいて、中小企業がカルテルを結ぶ場合、申請した場合の処理についてはぜひひとつ親切にやっていただきたい、こう思います。  次に、公取委員長にお伺いしますけれども、当委員会で公取委員長は、当店の売り上げは免税点の三千万円以下という店頭表示については、これは斎藤先生の御質問に対するお答えなのでありますが、消費税の転嫁に関しては、当店の価格は安くなっているという表示は誤解を招くので認められない、こういう答弁をされております。  もう一つ、これは続いて申し上げますと、再販商品については商品が消費者の手元に来たときに税額がはっきり示されているという方法になるようきちんと指導する、このようにお話しになっておられるわけでありますけれども、そこで実際にカルテルを結ぶ場合に税込み価格でありますというカルテルを結ぶ場合と、それから外枠表示でカルテルを結ぶ場合と二つあると思うんです。その場合、税込みカルテルをということになってくると、税込み表示ということになってくると随分と複雑でまた矛盾が起きてくるという、私はそういう心配をするんですが、公取委員長、どうお考えでしょうか。
  275. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 表示の方法については、基本的に事業者の自由な判断にゆだねる。つまり、その商品の業界の特殊性とかあるいは取引慣行というのがあるわけでございますから、今おっしゃいましたように外書きに表示する、それから内書きの表示で税額分を明示するという方法もあり得るわけでございます。  問題は、税込みで、これは税込み価格ですということでお互いに表示しようということでありますれば、消費者にとって非常に混乱を招く、あるいは誤認を生じさせることのない限りにおいては、そういった表示もその業界で決めれば必ずしも一概に適当でないというふうには言えないと思います。
  276. 井上計

    井上計君 具体的な例を挙げて、私も頭の中で具体的に描きながらいろいろと考えてみたんですが、今、委員長言われるようにそう簡単なものではない。まず例を申し上げますと、一定地域の商店街で税込み価格でカルテルを結んだとしますね。その場合に、三千万円以上の売り上げの店と三千万円以下の売り上げの店とは同じ価格でないと混乱が起きますよ、同じ表示でないと。うちは三千万以下ですから、したがってこれは税はいただきませんという表示をすることは、既に先ほどの委員長の当委員会での答弁で、そういう表示はだめだというふうな御答弁をされていますね。そうすると、先ほどもやはり他の同僚委員からの質問で水野局長お答えがありましたが、三千万以下の企業がいわば税金分まで自分のところの所得になるわけです。それは金額的に大したことじゃない、こういうお話がありました。確かに、金額的には大したものじゃないと思います。しかし、それが消費者から見るとやはりおもしろくない、けしからぬという不満の一つであるんですね。だから、その場合、いろんなカルテルの場合、カルテルを結ぶ結ばないにかかわらず、やはり税というのはむしろ外枠表示ではっきりした方がかえって公平ではなかろうか、こういう感じがする。  百貨店でも、日本橋通りにずっと幾つかあります。仮にAという百貨店は外枠表示です、Bという百貨店は税込み表示ですとなった場合、消費者は全く迷うと思うんです。だから、法律からいうと、どちらでもよろしい、カルテルもどちらでもよろしいということでありますけれども、むしろ政府の指導は、やはり特別なものを除いては、特別なものというのは何があるかちょっと今すぐ思い出せませんが、原則としては外枠表示だと、このような指導をすべきだ、その方が混乱がなくて消費者の不満が少ないし不平が少ないんじゃないか、矛盾も減るんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  277. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘の点はあろうかと思いますけれども、今回の消費税と申しますのは、とにかく原則として物につきましては三%ということで一律にお願いをしておりますので、外枠で別に税がこれだけですという表示をしなくても、とにかく消費者がお払いになる分につきましては三%は税であるということを御理解いただけ るわけでございますので、特に表示をしたからしないから消費者がその点につきまして認識が異なるということは直接的にはないだろうと思います。しかし、分けて書いて御指導申し上げるということの方が転嫁の面あるいは消費者の理解の面から望ましいという面はあるわけでございます。  したがいまして、税制改革法案におきましては「消費税の額が明らかとなる措置を講ずるものとする」といたしておりますが、あくまでこれは「必要と認めるときは」ということで、一律にすべての場合についてこれを強制するということにはしていないわけでございます。
  278. 井上計

    井上計君 局長、失礼ですが、率直に申し上げますが、あなたのような説明の仕方をしているからもう不平や不満がいっぱい広がってくるんですよ。消費税反対意見の大多数は、大蔵省の言うこと、国の言うことはさっぱりわからぬ。私だって今あなたの答弁を聞いていると、全くいい方向に、いわば当初税革法案の基本方針であるところの公正な、公平な、しかも消費と資産と所得と三つに税を配分した形を将来に向かって云々というふうな理念から全く外れますよ。だから、できるだけできることは実施して不満が少ないようにするというのがやはり最大の目的でなくちゃいかぬわけです。  消費税あるいは消費税でなくてもどの税でも、一〇〇%すべての人がこれは公平ないい税ですというものはありゃしませんよ。必ずどこかに矛盾なり欠陥があります。しかし、ある程度の矛盾があり欠陥があっても仕方がないなと国民の大多数が認めるような、そういう許容値はやっぱりあると思うんです。その許容値を超えたものを、それをこうこうですからそれは構いませんとか、いたし方がありませんとかどうとかという説明をしておっても、それは通りませんよ。  私は、何も詰問したり反対するために言っているんじゃないんです、さっきお断りしたように。いわば個人的には、今回この国会で成立をすれば、いささか自分でもいろんな問題あるいは抵抗もあるなとわかっていますけれども、成立するという前提に立って考えた場合には、成立した後いかに国民が、まあ仕方がないという、納得しないまでも消費税という税を育てていこう、そうして将来的に見て、いろいろ財政的に考えて、この消費税を混乱のないように国民の協力を得るためにどうするかという、そのことについて大蔵省、お考えですか。私はこんなことを言うつもりは全くありませんでしたが、局長答弁を聞いていると、つい言いたくなりますよ。どうですか。  今、あなたのおっしゃることは、結局通り一遍の答弁でしょう。私は、外枠表示を指導した方がいろんな意味矛盾も少なくなりますよ、消費者もはっきりわかりますよと。それはあなたの言われるように、物を買うなりした場合には全部三%の消費税がついているというのは国民が承知しているから構わぬとおっしゃるが、承知しておっても値切る人があるわけです、わからぬぞと。一万円の場合、これは税込みだとすると何ぼの税金が入っているかわからぬ。じゃ、一万円でこの中に本当に何ぼの税、三%と言われても、消費者はなかなかそれは理解しませんよ。だから、やはり定価一万円、消費税三百円、こういう表示があれば消費者も納得できますよ。  どうもあなたの答弁、ちょっと私よくわからないのだが、どうですか、明確にすることはできませんか。外枠表示を法律で決めろと言っているんじゃないんです。そういうふうな行政指導をできるだけしたらどうですかという提案だけれども、それもできませんか。
  279. 水野勝

    政府委員水野勝君) お気持ちはわかるわけでございますが、それぞれやはり各業種の御都合があるようでございます。例えばスーパーとかこういった店におきましては、お客さんがいろんな物を一遍に集めてお買いになる。そうすると、それを全部そこのレジで合計したところで三%を乗せる、おおむねこの方向で今御議論は詰まりつつあるようでございますが、一方、例えば大きな百貨店でございますと、やっぱりお客さんは一つの物を買いに来るということもある、そうした百貨店としてどちらがいいか、まだ百貨店の方は最終的にこうだというふうに決めかねておるようでございます。  私ども、やはり事業者にそれだけの事務をお願いする、転嫁の御苦労をおかけするということでございますので、事業者の面の御都合もやはり考える必要があるかと思っておるわけでございますので、お気持ちのことはよくわかります。また、そういうことでいろいろな関係者とお話はしているわけでございますが、すべての場合に全部それでやれというところまで、まだちょっと自信がないわけでございます。
  280. 井上計

    井上計君 何もすべて全部と言っているんじゃないでしょう。どうも局長、私の言うことはわかりませんかな。すべて全部と言っているんじゃないんです。できるだけそういう方向に指導したらどうですかということです。  今、あなたがおっしゃるように、百貨店はいろんな問題、わかります。スーパーはしかしレジで云々、要するに外枠表示じゃないですか、そうでしょう。当店は合計金額に三%いただきますという表示をするんでしょう。外枠表示じゃないですか。何も別に業種によって、それは全然問題がないとは言いませんけれども、そういう問題の業種もあるかもしれませんけれども、総体的に言えば外枠表示の方が消費者は理解しやすい、納得しやすいと、こういうことを言っているんです。  だから、全部にそういうふうなことを言っているんじゃなくて、できるだけそういうふうな表示をするように指導したらどうですかと、こういう提案ですけれども、全くお答えにならぬのだが、どうなんですか、いま一度簡単でいいです。
  281. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘の点を念頭に置きまして関係者と話をするようにいたします。
  282. 井上計

    井上計君 公取委員長、もう一つお聞きしますが、再販商品、これについての価格というか表示、大変これまた心配するんですね。化粧品等については、悪いですが、かなりやっぱりダンピング、安売りがありますから、これは消費税を込みというふうなものとかいろいろあると思いますが、書籍の場合は明らかにこれは表示によって三千万円以下の書店と三千万円以上の売り上げの書店とかなりこれは違ってくるわけですね。そういうことについて消費者がやはり不安を持つと思うんです。これについては再販商品の税額を明記ということでありますけれども、お考えとしては、仮に本が定価千円、消費税三十円、こういうふうな表示を指導すると、こういうことですか。
  283. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 再販商品につきましては、まず化粧品については、今、委員がおっしゃいましたように、内枠にするか外書きにするかは別といたしまして、別といたしましてという意味は、それはそれぞれメーカー等の判断にゆだねるわけでございますけれども、消費税額分が幾らであるかということを明確に表示するように指導をいたします。  ただ、再販商品のうち法定再販商品と言われる著作物でございます、今特に例を挙げられました書籍、そのほかに雑誌、新聞等があるわけであります。これについての考え方は、これももちろん基本的にはメーカーなり出版社の判断にゆだねられるわけでありますけれども、まず消費税込みの再販価格を決めますと、それは末端に参りまして、納税義務者であろうと免税義務者であろうと、一つの同じ本は全国至るところで同じ価格で売られるということは、従来も再販価格というものはそういうものでございますから、公正取引委員会といたしまして、消費者の利益を不当に害することにはならぬだろうということで、再販価格をもし統一するというのが出版業界の意思であればそれは認めると。  ただ、例えば新聞をとりましても、一々一部ごとに値段が書いてあるわけじゃございませんし、それから出版物になりますと、大体は書店でいろいろな雑誌とか書籍、新聞をずっと並べられるわけでありますから、私どもは、これから法案が通りましたら、出版社等と具体的に再販価格の運営 につきまして指導なり相談に乗りたいと思っておりますけれども、やはり価格改定をする際に、消費者なり読者に、消費税分が含まれることによってこれだけ価格が上がりますということははっきりやってもらいたい。その場合に、例えば三百円の週刊誌があって、その内書きに何十円というところまで書く必要があるのかどうか、これはやっぱり実態を見て考えたらいいと思います。  要するに、消費者に消費税分が含まれることによって価格改定が行われたということが公正に明示されれば私はいいと考えております。
  284. 井上計

    井上計君 はい、今の公取委員長の御説明、大変明確ですからわかりました。  ただ、そこで一つ希望しておきます。書籍だけではありませんけれども、消費者サイドに立って消費税を転嫁した価格の改定を常に考えられると、これは物価抑制という問題もありますから当然便乗値上げを許すべきじゃありませんけれども、余りにも消費者の立場だけをそんたくしたことで指導されると、逆にそれによって事業者が非常に不利になるという面も起き得るわけです。その点のバランスは十分お考えをいただきたい。そのことを一つ特に希望しておきます。  次に、大蔵省に伺います。  簡易課税方式の場合に、卸と小売というそういう表現があります。ところで、産業分類からいって製造業はどちらの方に入れるんですか、それから自由業ほどららに入れるんですか。
  285. 水野勝

    政府委員水野勝君) 製造業、自由業、これは卸の方でない一般の税率区分と申しますか、控除率区分の方になろうかと思います。
  286. 井上計

    井上計君 一般のということは小売ということですか。卸と小売という分類しかないでしょう、今のところ発表は。だから一般というのは、製造業は卸でなければ一般ということは小売ということですか。
  287. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現在、区分は原則は八〇%、その中で卸だけが九〇といたしておるわけで、別に小売とかそういう区分はございません。
  288. 井上計

    井上計君 わかりました。そうすると九〇と八〇との区分ですから、製造業というのは全部八〇%の区分に入ると、こういうことですね、自由業も。  その場合、これは具体的な細かいことになりますけれども、産業分類では製造業の範疇に入っていますが、実際には中間業者、卸売一〇%程度の付加価値しかない、マージンしかない中間製造業者というのは実は随分あるんですね。    〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕  この点について、今後この施行令の案では五十七条で、「卸売業を主として営む事業者として政令で定める者は」云々ということでありますから、今後政令で定める場合に、かなり具体的にこれを検討していただく必要があると思うんですが、そのことについて、そういうふうな中間の製造業者、下請もそうですね、決められた材料を決められた価格で買って、それに工賃を加えてそして納入するという製造業がいっぱいありますね。それから、特に繊維製品なんかは繊維の縫製、加工、もう完全な要するに工賃の卸です。ところが製造業です、分類は。そんなのがたくさんあるんですよ。そういうものについて十分政令で定めるときに、それこそ公正なまた実態に即した決め方をしていただかないと大変なことになると、こう思うんです。  これは、今度政令で定める場合にどういう決め方をするのか、お考えをお聞かせください。
  289. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現在の法人税におきましても、貸倒引当金の適用でございますとか、もろもろの特別措置の場合は、卸とその他に分けている場合がございます。そうしたものをも先例としつつ分類をすることになろうと思いますが、今までの分類によりますと、御指摘のような製造問屋的な行為、これはやはり製造の方に分類されるのではなかろうか。  卸と申しますのは、やはり物の形状、そういったものについて加工とかなんとかという手を加えるものでなくて、購入したものをそのままの形で次に売る、まさに卸すということでございますので、従来からの法人税の取り扱いからいきますと、そうしたものは製造業かなと思っております。
  290. 井上計

    井上計君 技術的に大変困難な問題ですから、今どうとか言っても仕方がありませんが、しかし、そういう配慮も今後の政令で定める場合に必要だということを申し上げておきます。  ところで、さっき若干申し上げた自由業というのは最近多いんですね。しかも、言えば仕入れの全く要らない自由業が最近特にふえている。はっきり言うと、コンピューターのソフトを売るといいますかね、仕入れが全くないわけですよ。弁護士さんもそうでしょう、弁理士さんも税理士さんもそうでしょう、それから設計の請負だとか、あるいはいろんなコンサルタント、そういうふうな人たちはこれはもう八〇%、五億円以下で、ほとんどそうでしょうから、この場合八〇ですから二〇%に対する三%。五億円以下の人はまだいいですよ。ところが五億円以上の人は極端なことを言うと売り上げが丸々付加価値になってしまうんですね、帳簿方式でやると。  そういう場合の矛盾と言っていいのか不公平と言っていいのかわかりませんが、それらについて何らかの方法は、これは税法上それは無理ではありますけれども、やはり今後考えていく必要があるんではなかろうかという感じがするんですが、どうお考えでしょうか。
  291. 水野勝

    政府委員水野勝君) そうした方は、個人で自由業をやっておられる方はまず五億円以下ということであろうかと思うわけでございます。  ただ、その境目につきましては御指摘のようなそこに変化がございます。そうした点はやや問題であるということは衆議院の段階でもいろいろ御指摘をいただきました。ただ、現行制度ではそれにつきまして特段のその限界部分につきまして措置をしているということはございません。こうした点を踏まえて衆議院では、この制度につきましては、他の制度等も含めましてその定着状況等を見て見直すことが必要だという趣旨の修正をいただいたところでございます。
  292. 井上計

    井上計君 これは、きょう特にどうとかということじゃありませんが、そういうこともあり得るということです。  それからついでにお伺いしますけれども、実は私、ドラゴンズの郭源治の後援会の顧問ということでずっとやっておるんですが、彼おかげで今度一億円プレーヤーになったわけです。実はこれは消費税対象になるわけですね、事業主ですから。プロ野球の選手でも三千万円以上の者がかなりおりますね。五億円以上の者はいないから、大体二〇%掛ける三%だと思います。プロゴルファー、それから競輪あるいは競艇等々の選手、みんなこれ事業主でしょう。  そういう人たちの三千万円以上の者に対する課税ですね。これは確かに井上というプロ野球の選手が球団に売るわけですから、当然のこと、とにかく球団が払ってくれればいいんですけれども、そうはいかぬ場合がある。だから球団が私を一億円で買ったときにその三%を球団が納めてくれぬといかぬわけですが、こんなふうなことは随分方方にありますよ。そういう指導はどう考えておられますか。
  293. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘の点等も含めまして、法案がその時期になりましたら極力PR、指導等をいたしたいと思っております。
  294. 井上計

    井上計君 通産省、局長はお見えになっていますね。——大臣、結構ですから。  伺いますけれども、通産省として、このような状態の中で転嫁が可能な業種あるいは不可能な業種、いろいろと御研究であろうと思うんです。特に分類はされていないかと思いますけれども、総体的に見て通産省は、そう簡単に転嫁ができぬと、あるいは、なに簡単だ、転嫁できるんだと、どのようにお考えかお聞かせください。
  295. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 消費税法の成立に備えまして、通産省では所管の業種につきまして、どういうような形で転嫁がうまく進んでいくかどう かというふうなことについて、いろいろ調査をいたしているわけでございます。  ただいま先生も仰せになりましたように、これは大丈夫でこれはだめとか、そういったものがはっきりあるわけではないわけでございますけれども、やはり全体を通観してみますと、中小企業性が高くて非常に競争が激しいとか、あるいは下請性の企業でございますとか、いずれにいたしましても、かなり競争の厳しいところ、あるいはNIES等からの輸入等がございまして、そういった厳しい競争にさらされているようなところというのは難しい問題があるように承知いたしております。
  296. 井上計

    井上計君 先日、私ども党としては、繊維対策の委員会で愛知県のニットの生産工場を視察に行って、ニット業者と懇談しました。最近のNIESから特に韓国からの輸入激増によってもう倒産の危機に瀕していますね。そういう業者が本当に消費税を導入できるか。消費税を言ったら必ず仕入れを断られます、だから我々は消費税はもう入ったらかぶる以外にありません、ますます赤字がふえますと悲痛な叫びを聞いてきたわけですね。特に繊維産業にはかなりそういうふうな業種が多い。繊維産業以外にもそのような業種が多いと思うんですね、競争が非常に激しいですから。  だから、消費税を別にいただきますという要求をすれば、お得意から、じゃいいよ、おまえのところは要らぬよ、消費税を請求しないところから買うよということに必ずなる、力関係でもそれが非常に多いわけですから。  それらの点について、これは通産省も特にこれから御指導をお願いしなくちゃいけませんが、非常に難しい問題であります。大蔵省がお考えになっているような生易しいものでないということは十分ひとつ認識をしていただきたいと、こう思います。時間の関係でこれは御答弁要りません。  それからもう一つ、今度は大蔵省に伺いますけれども、郵便切手の取り扱いですね。法案の非課税の中に国が行う郵便切手類または印紙の譲渡云云というのは非課税になっていますね。これは間違いありませんね。  郵政大臣にお越しいただきました。郵政省は、新聞報道ですけれども、消費税が導入されたらはがきは四十一円、封書は六十二円というふうな案をお考えになっているかの報道がなされていますけれども、それはどういう理由なのかお答えいただきます。
  297. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 郵便事業、大体一兆三千億ぐらいでございますから、三%というと三百九十億ぐらいになるわけでございまして、もしこれは転嫁いたしませんと持ち出しになるわけでございます。せっかく赤字を解消いたしましたところでございまして、今お話しのありましたように、郵便切手としては課税はされないんですけれども、サービスの方に課税されて、それを転嫁しますとはがきが四十一円、それから封書が六十二円というような形のイメージ、それはまだどのくらい増加するか、費用の負担分というのは増加分がまだ確定しておりませんのでどのくらいになるかわかりませんが、イメージとしてはそんなものになるのではないかなと。  三十一万、公務員の三分の一は郵政省におられますし、二万三千八百四十九の郵便局の現場で働いていらっしゃる方の御苦労が水の泡にならないように、この際広く浅くという消費税の趣旨に沿って転嫁させていただきたいと、かように思っております。
  298. 井上計

    井上計君 サービス等の役務に対して消費税対象になりますから、したがって郵便料に消費税がかかるということはこれは私はわかるんです。だが一般国民はわからぬですね。はがきというのは、四十円払うことによって、書いてポストへ入れれば先方まで届けてくれるんだという、その認識しかないわけですね。だから、全部ひっくるめたものが四十円ということです。  そこで、郵便切手は非課税なのに、郵便切手を使ったら課税されるといっても、じゃ、郵便切手を郵便以外何に使うのかということですよ。一般国民からいえばそうなんですね。収入印紙は別ですよ。郵便切手を郵便以外に使うことはないとは言いませんけれども、恐らくないですね。私は、これは消費税を導入して公共料金の引き上げをしたという批判、不満の一つの材料になると、こう思うんです。  だから、ただ単純に、今、大臣がおっしゃいました三百何十億円の負担になるからそれをかぶったんでは赤字になって云々というととじゃなくて、言えば一円あるいは封書の二円に相当するものを生み出すことをひとつお考えになったらいかがであろうかと思うんですね。はがきを小さくするといっても、そんなことは簡単なことじゃありません。  そこで、若干これは、商売ですから民業圧迫で問題があるんだけれども、エコーはがきの売れ行きが随分いいですね。これは、余り私が言うと後で業界から怒られるんだが、郵政省から仮に封筒を売り出して、料額印面つきの封筒、切手じゃなくて。それは六十円であると。そのかわり、どこか下にスポンサー名ないしは広告を入れるとか、そういうことで四十円、六十円でできるような方法をひとつ研究されたらいかがかと、こう思うんですけれども、どうでしょうか、ほかにもたくさんあると思いますが。
  299. 田代功

    政府委員(田代功君) 大変ありがたいアイデアでございますが、三百九十億円の消費税負担分を賄うには、今の経営努力でいきますとやはり転嫁をせざるを得ないと、こういうことでございますので、ぜひ採用はさせていただきますが、なかなか難しいということでございます。
  300. 井上計

    井上計君 もう最初からだめだという発想で考てはだめなんですよ。何か方法はないか。というのは、一般の民間業者は、消費税が入ったらどうしようか、もう大変なことなんですから。だから、大蔵省もそうですが、郵政省も何か値上げをしないでもやっていける方法はないかと、あらゆる角度から考えてもらわないとね。
  301. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) この附則の中で一年以内に郵政審議会の議を経て一回に限り転嫁させていただく、料金の値上げをさせていただくということになっておりますが、今の御意見を体しまして審議会その他でまた議論をしていただく材料にさせていただきたいと思います。
  302. 井上計

    井上計君 大蔵省の局長伺います。  大蔵省が出しておられる「消費税って何でしょう。 Q&A こんな疑問にお答えします。」という中に、「法律の公布前に契約が締結されているなど一定の要件に該当する場合には、昭和六十四年四月一日以降の引渡しやリース料金についても課税されないなどの経過措置がとられています」ということがあります。  そこでお伺いしたいんですけれども、実施日以前に契約したものあるいは受注したものというのは相当あるわけですね。もうことしの夏ごろ契約した機械が来年の秋とか再来年というのがたくさんありますよ、大型機械。それから建築もそうでしょう。そういうふうなものを実施日以前の契約というふうにどこでどういうふうに処理するのか、まことに不明確なんですね。それが一つ。  それからもう一つ、関連しますけれども、実施日前日、私はまだ賛成していませんが、仮に四月一日実施とした場合、三月三十一日現在の在庫、これについては証明とか取り扱いをどういうふうにしますか。それをお聞かせください。
  303. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘の点を条文に則して申し上げますれば、例えば工事の請負、こういった場合におきましてはこの法律の公布の日でございます。成立後の公布の日前、まだこの法律が世の中に出ていない時点、それを公布日でもって整理しているわけでございますが、に締結した工事の請負に関する契約、こうした契約に基づいてこの税が実施された、今の予定は四月一日後でございますが、その四月一日後に引き渡された、こういう場合につきましてはこれは消費税を課さないとなっておるわけでございまして、その公布日前にその工事の請負の契約が締結されたかどうか、こうしたことで整理をさせていただいており ます。これは売上税のときにいろいろ議論がございまして、その時点での解決の方法にはいろいろ問題もございましたものを整理した書き方でございます。  それから、三月三十一日前の時点での在庫といったものはつきましては、それは特段のものはございませんで、あくまで四月一日以後に仕入れたものが仕入れ控除の対象になり、売り上げのあったものは新税が課されるということでございます。  もし、委員指摘の、今、物品税がかかっているものにつきましての在庫という問題でございましたら、それはまた別でございます。
  304. 井上計

    井上計君 ではもう一度確認します。  だから実施日以前の契約ですね、工事というお話をしましたが、これは工事あるいは物品納入契約、いろいろあるわけですよ。では、実施日以前の、実施日前日までの契約は、納入取引が、代金の決済等々が四月一日以降であってもそれは消費税がかからぬと、こういう理解でいいんですね。
  305. 水野勝

    政府委員水野勝君) 委員のお話の実施日というのがこの法律を施行する日という意味でございましたらそのとおりでございます。この法律が適用されますのは四月一日以後の取引でございます。それは適用日と法律では言っておるわけでございます。この法律が施行されるのは、この法律、ここで御成立いただければ公布をする、その公布の日がこの法律の実施日と申しますか施行日でございます。その公布の日前の契約でございましたら、それはもうこの法律がまだ世の中に出ていない、公布されていないときの契約ですから、それに基づきます引き渡し、受け渡し等が四月一日以後でございましてもこの消費税は課さない、こういう考え方でございます。
  306. 井上計

    井上計君 では、もう一度確認します。仮に四月一日から消費税が実施されると、こういうことですね、仮にこうします。しかし、この法律の成立はいつかは知りません、今国会二十八日まで、二十八日ぎりぎりに成立したとしますね。そうすると、二十八日に成立しても公布は何日になるか知りませんが、即日公布と仮にしましょう。そうすると、二十七日までに契約したものについては、その納入あるいは取引代金決済が四月一日以降であっても消費税はかからぬと、これでいいんですね、これ大事なことですから。
  307. 水野勝

    政府委員水野勝君) 時間関係はそのとおりでございます。  ただそれは、個々には工事、製造の請負またはこれに類するもので政令で定めるものを含むということで、すべてのものの受け渡し契約といったものではございませんで、中心は工事請負、こういったものが中心でございまして、それに類するものもこれに入るということでございます。
  308. 井上計

    井上計君 時間がなくなったから余り多くは言いませんが、これはしかし重大な問題ですよ。大変な問題ですよ。そんな答弁ではこれは大変な混乱が起きますよ。それはもう不公平だと、大変な問題が起きますよ。言っておきます。今あなたが言われるように、ここに書いてある工事契約云々類するものと言われるが、要するに契約は全部そうなんですから。いろんな受注契約等々みんなそうなんですよ。そんなあいまいな抽象的な表現では大変な問題が起きますよ、明確にしてもらわぬと。これひとつ、もう時間ありませんから、お答えを聞いておっても同じようなことですから、要望しておきます。  それからもう一つは、これも簡単にお答えください。いろんな方法を考えても転嫁ができないという業種があるんですね、現実に。さっき申し上げた繊維産業なんかそうなんです。そのような業種、業者等については消費税を事実上値切られるわけですから、経理上の処理を値引き勘定で認めてやるというふうな、そういうことはできませんか、局長。簡単にしてください。
  309. 水野勝

    政府委員水野勝君) 消費税課税標準が、実際に仮に今のお言葉で値切られたとすれば、その値切られた金額が消費税課税標準になる。そういう意味では仰せのとおりでございますが、その値切られた金額の三%が事業者としては御納付をいただく税額になるということかと思います。
  310. 井上計

    井上計君 私が冒頭お聞きした転嫁することについて、国の義務というのは当然、それを具体的にとお聞きしたんだが、お答えがないわけですね。こういう場合に転嫁する、絶対転嫁できるようにするのが国の義務なんですよ。それができないんだから、したがって消費税分、値切られた分については値引き勘定で認めてやってもいいではないかと、こういう提案なんです。御研究ください。もういいです、お答えは。税法上局長の立場では同じことしか言われませんけれども。だから義務とは何ぞやということをもう一度お考えをいただく。法文にはっきり書いてあるわけですよ。これをお願いします。  それから、時間がなくなりましたから簡単に申し上げます。法人税率の問題です。  先ほど上田委員は、法人税を安くする必要はないというふうな、こういう質問が大分行われていました。私は逆で、現在の日本の法人税税率は非常に高いと。資料をきょうちょっと政府委員の方にお渡ししておきました。間違っていないということですが、現在の四二%が四〇%になった場合、実効税率五一%。三七・五になっても四九・九八ですよ。政府の法人税率を云々というパンフレットからいっても五〇%以下。確かに五〇%以下ですけど四九・九八ですよ。何も大して安くなっていません。ところが、過去において実効税率が四三・七九という時代があったんですね、昭和三十五年。当時は法人税率三五%です。これは相当期間続いているんです。  だから、今すぐとは言いませんが、三七・五でなしに三五%まで法人税率を下げるべきだと、このように考える。これは要望というか提案をしておきます。これは総理もひとつお聞きをいただきたいと、こう思います。  そこで、時間がなくなりましたから、最後に、これは総理にもひとつぜひお聞きをいただきたいんですけれども、今私が申し上げました、またいろいろ主税局長から御答弁を聞きましたけれども、私でさえわからぬ問題がいっぱいあります。一般の人たちがわからぬというのは当たり前だと思うんですね。  だから、冒頭言いましたように、現在消費税について反対か賛成かと聞かれれば、反対だという人があるのは当たり前ですよ。七〇%の反対が出てくるのは、これは当然だと思うんです。しかし、この七〇%の反対の中に、私なんか個人的にいろんな説明をし、話をすると、それならやはり必要だなあと、将来に向かって。だから、それなら必要だというそういう理解をもっとできるようにしてくれと。それにしても転嫁できぬではないか、転嫁が難しいではないか、転嫁がもっとできるようにしてくれと。それから、そういう矛盾はどうするんだと、こういうふうな質問がいっぱいあるわけですよ。だから、そういう人たちにこたえる努力を、政府がと申し上げていいと思いますが、されれば、絶対反対というのはもっと減りますよ。  同時に、導入された以上は国民が、できるだけ多くの人に協力をしてもらって、いわば消費税という新しい税が育つようにしていかなくちゃいかぬ。もし混乱が起きたらもう取り返しがつきませんよ。もし混乱が起きて、日本のあらゆる分野で、こんなことはけしからぬという声が大きくなって、売上税と同じような形になって、これはまだ廃案にも持っていけるわけですからね、実際上。そうなったら、未来永劫我が国には消費税に類するような間接税の導入はできなくなりますよ。それをもっと大蔵省はお考えにならぬと、ただ決めたんだ、通すんだ、通ったら実施するんだ、弾力的運営というのは広報とか指導でどうとか、そんな抽象的なことでは国民はなかなか納得しないということを大蔵省は十分お考えいただきたい。総理もそれのことをお考えいただきながら、私はやはりここに政治的な高度な判断をぜひ総理に求めたい。  それは、少なくとも今申し上げたようなこと が、成立した後に施行令等々が出ても、コンピューターのプログラムを変更するとか、いろんな準備のために最低八カ月から九カ月はかかりますよ。だから、半年間事実上実施を延期するようなことを高度な政治判断でお考えいただく必要がある、このように最後に要望して、御答弁いただければ大変ありがたいですけれども、私の質問を終わります。
  311. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 井上さん、いわゆる具体的なこの消費税の問題点、全部お話しいただいたと思います。自分では駆け足だったと思いますが、何回もその世界で議論をしておりますと、全部をお話しなすったと思っております。したがって、それらの問題を全部整理整とんしまして、それで私もつじ立ちなんていうのをやっておりましたが、私は、これは法律がむしろ成立した後つじ立ちが必要じゃないかというぐらいに思っております。
  312. 井上計

    井上計君 終わります。(拍手)
  313. 平井卓志

    ○理事(平井卓志君) 次に、下村泰君の質疑を行います。下村君。
  314. 下村泰

    ○下村泰君 私は、障害児問題に絞っていろいろとお伺いしたいと思いますが、具体的な質問に入る前にひとつお伺いしたいことがあります。  それは、高齢化社会における子供たちのことなんですが、文部省は言うに及ばず、厚生省の児童家庭局もそれなりに認識を持って積極的な対応をされようとしていることは承知いたしております。  そうした中で、先日、科学技術庁の資源調査会、ここが「乳幼児期の人間形成と環境に関する調査報告」というのをまとめられました。その中にこういうことが書いてあります。   高齢社会を豊かに、活力あるものとするためには、高齢者が、心身ともにすこやかであることが重要である。それと同時に、高齢社会をになう世代が、生産性向上による扶養力を強化し、高齢期の人生を自分の将来の姿ととらえつつ思いやりをもって高齢社会への対応にとりくむことが重要となろう。このためには、創造性、思いやりが求められるであろう。   さらに、これからの子どもたちは、長寿の時代、つまり八十年という長い人生を歩んでいくわけであるが、その中ではいろいろ急激な社会変化に直面することになるであろう。   今までの多くの人々を、視界のきくグラウンドで前に走る人をモデルとして走った短距離ランナーにたとえると、これからの子どもたちは、霧のかかったグラウンドに立ってモデルのない長距離を走るランナーといえるかも知れない。しかも、その途中で、いつどのようなハードルがあらわれるか、まったくわからない競技にいどむようなランナーとも考えられる。   したがって、そこで求められる人間的知性は、新しい環境に適応することのできる柔軟性、それに果敢に挑戦する強い意志などであろう。 これもまた、科学技術庁の資源調査会というところがよくもまあこれだけのすばらしい、私、文章を書いたと思うんですね。殊に、「霧のかかったグラウンドに立ってモデルのない長距離を走るランナー」、これは私なんかでもこんなうまい文句は考えられません。大変すばらしい。これは文部省が考えないところにいわくがあるんですよ。  そこで、総理、文部大臣、厚生大臣に高齢化社会をどうとらえ、さらにそれに向かう子供たちの環境をどう認識されるのか。今また、我々が議論している税制や社会保障のことがそのまま子供たちに降りかかる問題なわけですから、そういう面での教育や備えを考える必要があると思います。例えば税の教育であるとか、福祉教育であるとかあるいは社会保障教育であるとか、健康教育であるとか、それぞれあると思います。ですから、そのあたりのお考えを順次お聞かせ願いたいと思います。
  315. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) まず、高齢化社会のイメージ、どういうふうに考えているかということにつきまして申し上げますが、御承知のように、平均寿命がどんどんと延びてきまして大変な高齢化社会になるわけであります。  そういうことから考えますと、どういう社会を建設していくかということは大変大事な課題でございまして、私は、せっかく人類の夢であります長命、長生きを獲得したわけでございますから、今度は長生きを喜べる長寿社会、それをつくっていく必要があると思うわけです。長生きをしてよかったなあと、そういうふうに言える社会、そういう社会を目指して明るくて健康で生きがいのある長寿福祉社会、これの建設が目標で、社会保障制度それから福祉の関係、また、他の省庁になりますけれども、雇用の問題とか教育とか住宅とか、安心して生活のできる町づくりとかいろいろありますけれども、そういう中で厚生省が受け持つ社会保障制度、福祉の問題については、先般の福祉ビジョン、あの中身に沿いまして十分にやってまいりたいと思います。  それから二番目の、確かに高齢化社会で大事なことは、その高齢化社会を支える人たちに対して、特に子供に対しての心身ともな健全育成、これは従来にも増して非常に大事な問題になってくるわけであります。その場合に、特に高齢化社会の影響、それからその前に、社会現象がいろいろ変わってきておりますから、そういうことが子供に対して環境を非常に厳しくしておるわけでございまして、私もいろいろそういうことを考えてみまして、これはこれからの家庭、それから子育てということについてひとつ根本的に考えてみる必要があるというふうに考えました。  先般、その審議会もスタートいたしまして、二年がかりで学術経験者に何回も御議論をいただいておるわけでございまして、その結果を見て、ひとつ十分に高齢化社会を支える心身ともに健全な子供を育成する、また家庭環境もよくしていくということについて全力を挙げていきたいと考えております。
  316. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) お尋ねの高齢化社会については二つ申し上げたいと思うんです。  一つは、高齢者に対しまして生涯学習の点からいきますと、やはりすべての方々がきのうよりはきょう、きょうよりはあすに向かって心の豊かさを求めて学んでいくわけであります。そういう意味では高齢者というのは、人生、社会の中の先輩でありリーダーである、その高齢者の方々からいただくべき知恵はたくさんあるということで、高齢者の方々にもうゆっくりお休みいただくというよりは、一方で社会のリーダーとしてお元気な間は活躍をしていただき後輩を指導していただく。そういう意味では、最近幼い方々と高齢者の方々が同居して生活をなさるということが、核家族化でだんだん少なくなっているんではないかということが心配でございまして、これからまさに高齢者と幼児、少年少女諸君が接触する機会をむしろ多くしていきたい、これが一つであります。  もう一つは、高齢者の方々を、一方では大変弱っていらっしゃる方、それからお動きになれない方もいらっしゃるわけですから、そういう方をいたわるという心が必要でありまして、そういう面では、小学生の道徳の時間に弱い人や不幸な人をいたわるということを教え始めております。中学の社会あるいは高校の現代社会では、そういう福祉社会と社会保障の問題、こういうものを教えているわけであります。  そういう中で、ただ活字から教えていたのではいかぬであろうということで、体験学習と申しますか、そういうお年寄りのところをみずから慰問をする、あるいはお世話をするという体験を通じまして、社会福祉の重要さということを一緒に学んでいただくように指導をしておるところでございます。
  317. 竹下登

    国務大臣竹下登君) さすが厚生大臣といい文部大臣といい、いいことを考えておられるなと思っておりました。  私が、私の書物に、書きおろしの書物でございますが、好老社会というのを申しました。これは老を嫌うというのと老を好むという意味で、嫌老に対する好老という言葉を申しました。ちょっと わかりにくいというので使うことをやめておりましたが、委員の話をずっと聞きながら好老社会、すなわち究極の福祉と言われるノーマライゼーションの中で好老社会というようなものが実現していくことが好ましいな、こういう感じを持ちました。  一方、青少年、幼児等の問題でございますが、よく財政論で行いますときに、今の稼得、いわゆる所得のある層、そして高齢者、そして青少年、青少年の方が減ってこっちが多くなると稼得者が負担する、財政的にはおおむねとんとんじゃないかという議論がよくあるわけであります。しかし、そうではなくして、高齢化社会に対する稼得者の負担というのを消費税その他安定財源でもって賄うのはもとより、こちらの方の児童生徒、こういう者に対してあるいは遊び場でございますとか、そういうような別途の施策というのを一層やっていかなきゃならぬなということを絶えず感じておるところでございます。
  318. 下村泰

    ○下村泰君 大変皆さん御丁寧にいろいろとお答えくださってありがとうございました。  私は、かつて社労委員会のときにこんなことを申し上げたことがあるんです。保育所とか幼稚園の隣に老人ホームをつくってみたらどうだと。中には足腰の丈夫なお年寄りは、自分のひ孫みたいなのが遊んでいます、その姿を見て生きがいを感じて、中にはお手伝いする方も出てくるんじゃないか。そうした方が、かえって老人の生きがいもあるし、子供たちも子供たちで、保母さんたちの数も少なくて済むしというような一挙両得な方法があるのではないか。やたらに老人ホームを町外れに建てたりすることもないじゃないか。こういうことをしたら、かえって子供たちと老人との密接な関係ができて、むしろ生きがいを感じるんじゃなかろうか。こんなようなことは、日本が世界に先駆けて日本独得の形をつくって世界じゅうにまねさせたらどうだなんということを言うたことがあるんですけれども、まだそこまではいきませんね、今のところ。まあ話として聞いておいてください。  障害者や高齢者、特に福祉ニーズの高い高齢者の立場から、消費税及び税控除についてちょっとお伺いをいたします。  今回の物品税の撤廃は全体に物価を下げる、こういうふうに言われておりまするけれども、障害者の使用する自動車や盲人用のテープレコーダーあるいは盲人用の時計などは、これまで免除措置があったわけですね。それがなくなるわけです。で、物品税の撤廃によって増税に逆になる。これらの障害者にとっては生活必需品なんです、これは。要らないものじゃないんです。しかも決して安いものじゃない。三%から、これは自動車の場合は六%になります、もっとも自動車の場合には前は二十何%かかっているんですけれども。普通の方々にとってはいいでしょうけれども、障害者にとっては六%というのは相当の負担増しになるんです。これはどうなんでしょうか、このまま放置されるものなんでしょうか、それとも何か措置ができるものなんでしょうかね。
  319. 水野勝

    政府委員水野勝君) 従来の物品税は、その課税対象そのものにつきましてもいろいろな観点からきめ細かく分類されていたところでございますが、御指摘のような障害者につきましての措置もございました。今回はそうしたものは、個別消費税はすべて三%の薄い消費税に置きかえさせていただくということでございます。  しかし、別途障害者対策といたしましては、障害者控除あるいは障害者と同居される方の控除を拡大するということで、それによりますところの部分につきまして、所得税の納税者でございましたらそちらの面で配慮をさしていただく、また一方、所得税の税金のかからない低所得者層に属される方々につきましてはそちらの方の面で配慮をさしていただくということで、この間接税の面では三%の薄い消費税でございますので、そこは消費一般を薄く課税させていただくという趣旨から、今回そのような方向に踏み切らしていただくことを御提案いたしております。
  320. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、こういう障害者の方方の税控除というのは全然お考えになっていらっしゃらないわけですか、三%は薄く広くということだからということで。
  321. 水野勝

    政府委員水野勝君) 物の面では今回は例外なくお願いをした。ただ、福祉事業、第一種社会福祉事業等につきましては、そちらの方の面では、サービスの面では非課税にいたしております。
  322. 下村泰

    ○下村泰君 例えば税の面で還付するとか、そういうような方法でできるだけそういう方々に何か手厚く保護をするというような形のものはありますか。    〔理事平井卓志君退席、委員長着席〕
  323. 水野勝

    政府委員水野勝君) 消費税につきましてはそうしたものは現在ございません。  一方、障害者対策につきましては、先ほど申し上げた所得税の面で、それから歳出の面で対処させていただいているということでございます。
  324. 下村泰

    ○下村泰君 総理にちょっとお伺いしたいんですけれども、内部障害者への運賃割引の問題、これはしばしば私取り上げておるんです。消費税導入になりますれば運賃は上乗せになります、運輸大臣もそういうふうにお答えになっておるようですけれども、そうするとますます内部障害の人たちは利用できなくなる。  前回お尋ねしたときに、総理はこういうことをおっしゃってくださっているんですよ。いろいろおっしゃっていますけれども、最後に、「やっぱり全体の福祉政策の中で考えるべきことではなかろうかという感じで今承っておりました」、こうお答えくださった。今いらっしゃらないんですけれども、宮澤さんは、「しかし、これは、私どもの中でおっつけ合いしておってはいけませんので、またよくみんなで相談をさせていただきます」。このおっつけ合っているというのは、まるでキャッチボールみたいに運輸省にボールが飛んでいったり厚生省に飛んでいったり、どこが管轄するのかわけがわからなくなってきておるんです。それじゃちょっとぐあいが悪いので、何ですかこの総理のお答えのぐあいからいくと、「全体の福祉政策の中で」というと、これはやっぱり福祉政策ですから厚生省の方へボールを投げたという感じがするんですけれども、どういうふうに受け取ってよろしいんでしょうか。どっちがやるべきことなんでしょうか。
  325. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる今日言われる社会的弱者の方々に対する対策というのはなかなか難しいから、税制とかいう問題の別の世界で、すなわち財政支出等の世界で考えなければいけないという、総括的にそのようなことを申し上げたわけでございます。  やや、具体的な問題に対するずばりの答弁ではなかったなと、今お話を聞きながらそのように感じました。
  326. 下村泰

    ○下村泰君 運輸省の方のお返事では、この方たちに利用していただく場合には、じゃ国民がどのぐらい負担すればいいんだといったら、一人一円負担すればいい、こういうお答えでございました。そうしますと、今度消費税として上乗せするときにそのくらいの考慮があっても私は国民全体が、例えば行われるとしても、そんなに怒り心頭に発するということはないと思うんですね。日本人というのは意外と心の温かい民族ですから、自分たちがそれだけのわずかの負担によってそういう方たちに恩恵が施されるならば喜んでやろうじゃないかという方が多いと思うんです。それは中には反対する方もいらっしゃいましょう。  ですから、はっきり厚生省がこれやるべきなのか、そこのところをひとつ厚生大臣、ちょっと考えてみていただけませんか、この内部疾患の方々の運賃割引の問題。どっちかが決めていただかないと困るんです、これは。
  327. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 整理をいたしますと、交通機関の関係ではやはり厚生省ではないと思います。それから、今、総理がお答えになられました一般的な福祉対策ということになりますと厚生省の所管でございますから、所得保障、それから障害者の皆様方にとって社会参加促進であると か、それから住みよい町づくりとか、そういう点は厚生省で対応できるわけでございますが、ずばり移動に関して交通機関の関係ということになりますと、これは残念ながら我が省ではございません。
  328. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますとやっぱり運輸省、こういうことになりますね。ここだけはひとつはっきりしておきませんと、どちらにお願いしていいんだかわからないんですね。これ運輸省でよろしいんですね、総理総理にこんなことを聞いたらいけないですかね、管轄がどこだかわからない。厚生省の方では、移動だからこれはどうも私どもの所轄ではないといいますと、やはりこれは運輸省、こういうふうにこちらが思い込んでというか決めてよろしいわけでしょうかね。いかがなものでしょう。
  329. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、宮澤前大蔵大臣答弁もお読みになりましたが、そういう形をしておっては物事がおさまらないから、それらのことはそれこそ内閣が調整すべきものであろうというあるいは意図で申されたかもしれません。その意味におきましては、財政当局はもとよりのことでございますが、内閣そのものがそれに対する意図を持って調整すべき課題であるのかな、こんな感じで今承っておりました。
  330. 下村泰

    ○下村泰君 次は、在宅福祉を進め在宅サービスを充実させるのは大変これは結構なことなんですが、どうもビジョンからは具体的でないというよりは、理念そのものが欠けているんじゃないかなというような気がするんです。すなわち、ノーマライゼーションやリハビリテーションをうたっていても、それを推進するための政府全体の姿勢ですね、これが何となくないように思えるんです。在宅サービスにも影響が出るわけですが、その辺どう対応をするのか、これをひとつ伺わせていただきたいと思います。
  331. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 今後本格的な高齢化社会に到達するわけでございまして、福祉の最も基本的といいますか、重要な問題として在宅福祉という問題がございます。今までは保険の問題、医療の問題、福祉の問題、各分野でそれぞれ力を入れてきたわけでございますが、これからはこれを総合的に、保険、医療、福祉の三分野をまとめまして在宅福祉対策を進めていかなきゃならぬというふうに今考えておるわけでございまして、今後の事業の進め方といたしましては、先般の福祉ビジョンの精神、考え方にのっとりまして推進してまいりたいというふうに考えております。  それから、消費税導入に伴う関係では、真に手を差し伸べるべき人たちに対しましては十分に配慮をしていかなきゃならぬ課題であるというふうに考えております。
  332. 下村泰

    ○下村泰君 寝たきり老人の方々が利用するホームヘルパーの費用ですとか、それから在宅の療養に必要な床ずれ予防のパット、それからギャッチベッドというんですか、こういうものを医療費控除に含めてもいいんじゃないかなというような感じがするんですけれども、これはいかがでしょうかね。これは大蔵省の方ですか。
  333. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現在、病院、医院等で行われております付き添いの看護あるいは介護の費用、こうしたものはこれは医療費控除の対象になってございます。これはやはり医院、病院等におきまして行われるそうした介護等におきましては、そこで一体として医療として行われているということが明らかでございますので、そこは医療費控除の対象理解できるわけでございます。  これが在宅の場合でございますと、そこは病院、医院等におきますところのそうした医療と切り離されて行われるわけでございますし、その支出の内容の確認というものもなかなか難しい面がございますので、やっぱりこれを医療費控除の対象とするということはなかなか難しい問題があるということで従来きているわけでございます。  今後の検討課題ではございますが、さしあたりはなかなか難しい。その点につきましては、今回、寝たきりのお年寄りを在宅で介護されておられる方については八十万円の控除を百二十万円に引き上げることでもって御提案をしておる、こちらの方向で当面解決お願いできればと思うわけでございます。
  334. 下村泰

    ○下村泰君 当面ということは当面で結構ですけれども、これから先、この税法が実施されるようになれば、この問題は徐々にいろんな形で出てくるんじゃないかと思うんです。そして、そういう要求もどんどん多くなってくると思いますよ。ですから、やはりある程度それに対する検討の方法というのは考えておいてもいいんじゃないかなというような気がするんですけれども、いかがでしょうか。何か主税局長は朝からずっといじめられていますからね、頭の中がおかしくなっているかもわからぬけれども、ちょっと落ちついて人間的な情感で判断してみてくれませんか。かっかかっか来ているかと思うが、少し冷静になって、おたくが患ったことを考えてみてください。
  335. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現時点におきましては、これは医療費控除の対象とするということは難しいということでございますが、今後の検討課題ではあろうかと思います。
  336. 下村泰

    ○下村泰君 そうおっしゃっていただければ助かるんです。  それから、いろいろと社会福祉関係の税制でもって控除されている方もいらっしゃいますけれども、精神障害者への所得控除の適用、これはどういうふうになりましたかな。具体的に決まりましたでしょうか。精神障害者のいわゆるマル優、この適用も考えていただきたいと思います。  とにかく、日本という国は精神障害者に対する手当てというのが非常におくれています。そして、精神障害者に対する考え方が日本という国は非常におくれていると言っていいんでしょうか、誤解をしていると言っていいんでしょうか、ですから、障害者の方がたまに犯罪なんかを起こしますと、もう全部が全部精神障害者は犯罪を犯しているようにお考えになるかもわかりませんけれども、本当にパーセンテージからいくとごく一部なんですね。その方が犯罪を犯すと大きな問題に取り上げて、だから見ろ、この連中はと、すぐこういう見方をするんですが、いかがでございましょうか。そういったようなこと、ほんのささやかな彼らの望みなんですが、どういうふうになりましょうか。
  337. 水野勝

    政府委員水野勝君) 今回の改正一環として、精神障害者につきましても障害者に含めるということで現在検討をしているところでございます。  それに関連して、じゃ、マル優ということでございますが、マル優はやはり非常に大量に処理されるものでございますので、その認定あるいは確認、そうしたものが形式的に明白に行われる場合に限られておるわけでございます。例えば、現在、身体障害者でございますと身体障害者手帳、高齢者でございましたらこれは住民票で簡単にわかる。こういう大量の金融事案を扱う金融機関等の窓口で容易に簡単に確認できるということを、いわば技術的な面で原則といたしております。  したがいまして、今度精神障害者につきまして、これを障害者のグループに含めることにした上で、ではこのマル優のことは今の技術的な点をどうするか、これは現在関係当局と検討しておるところでございます。
  338. 下村泰

    ○下村泰君 よろしくお願いします。  そうしまして、この寝たきり老人とほとんど同じような状態ですが、こちらの方がむしろ介護者の場合には取り扱いにくいと思うんですけれども、いわゆる痴呆性老人。この痴呆性老人は今の所得控除の対象になりますか。
  339. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘の痴呆性のお年寄り、こうしたお年寄りにつきましては、現在の障害者の範囲の認定に当たりましても、精神または身体に障害のある年齢六十五歳以上の方で、その障害の程度が通常の障害者控除に当たる方々に準ずるものとして福祉事務所の所長さんの認定がございますれば、現在でも障害者控除の対象には含められておるところでございます。
  340. 下村泰

    ○下村泰君 それから、精神障害者同様、福祉制 度のおくれが目立つ難病や長期の慢性疾患、この方々への障害者控除の適用を考えていただきたいと思いますが、いかがでしょう。  つまり、いろいろな制度がありますけれども、その制度の網にかからない人たちがおるんですね、難病にしてもそれから長期の慢性疾患にしても。で、今までできている制度にひっかかる方はいいんですけれども、そうでない方々が意外と多いわけなんです。ですから、そういう方々に対する控除も考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  341. 水野勝

    政府委員水野勝君) これは私どもももちろん関係するわけでございますが、基本的に福祉政策の観点からこうした難病患者というのが障害者というグループに入るものなのかどうか。そこらの点について、税の立場がまず飛び出て、そうした方もそうでございますというふうにはちょっと私どもも自信のないところでございまして、あくまでそうした方が身体障害者として認定され、身体障害者手帳の交付を受けられるということでございますれば障害者控除の適用対象ともなるわけでございますが、そこらあたりの福祉政策上の観点につきまして、なお整理、検討が進められ、障害者手帳をお受けになるとか、そうした方の位置づけが明確になることがまず先決かなと考えておるところでございます。
  342. 下村泰

    ○下村泰君 前回も申し上げましたんですが、今後、年金支給がおくれます。十年かけて六十五になります。退職後の生活に備えてさまざまな準備が必要となってくると思うんですが、例えば個人年金としての生命保険料控除額、これを引き上げる措置があってもいいと思うんです、本来の公的年金への信頼度が今だんだん下がっていますからね。ですから、中には国民年金なんか、この間もちょっと私申し上げました、やめた方がいいんじゃないかと。こういういいのがあるよなんて勧誘するところがあるというふうに聞いておりますけれども、それだけにこういった生命保険料の控除額というのを引き上げるというのも一つの手だてじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  343. 水野勝

    政府委員水野勝君) この点につきましては先般も御議論があったところでございますが、生命保険もいわば貯蓄の一つの形態とも言えるものでございます。こうした貯蓄課税につきましては、昨年は利子課税の見直しを行わせていただきました。それから、今回はキャピタルゲイン課税につきましての見直しをお願いしているところでございまして、いわば一種の資産、広い意味では資産課税的な意味合いを持つものでございます。  そうした観点からすると、生命保険料控除につきましてこれを拡大していくということは、やや逆の方向の見直しになるのではないかという気がするわけでございます。この生命保険料控除につきましては、累次の税制調査会の答申にもございますように、加入率も相当な水準でございますし、減収額も、所得税の特別措置の減収額の規模としてはかなり大きなものとなってございますので、なかなか難しい問題でございます。  むしろ、毎年私どもとしては利子課税の見直しに合わせてこれを見直せないかということも議論をさしていただいているところでございます。
  344. 下村泰

    ○下村泰君 わかったような、わからないような。  いつも申し上げておりますが、作業所や高齢者の方々の事業をしているところで、これ数は少ないんです。数は少ないんですが、事業収入が三千万円を超えるところがあるんです。こういうところは善意で支えられていて簡単に転嫁もできないですね、こういうところというのは。事業規模が大きくても、一人当たりの給料というのは二万円か三万円なんです、こういうところで作業をしている方々の給料というのは。ですから、事業収入というのが三千万円あっても中身はこういうことなんです。このあたりのことが大変心配なんですが、これはどういうふうになりましょうか。  それからもう一つは、規模の大小は別にしまして、そこに通う障害者の交通費や弁当代、それに仕入れる材料費、諸経費のほとんどに消費税がかかってきます。さきに厚生大臣も言われたように、自粛の影響が相当大きく出ておるんですね。この間大臣の肝いりで、幸いなことに六カ所でしたか八カ所でしたか、あの方たちはもう本当にバザーもできなければ何にもできないために、そこで働いているボランティアの方々も生活ができなくなった。そんなような状態で居酒屋のチェーンの方にお願いをしてああいうふうになってきました。これは本当にありがたかったんですけれども、こうした点への配慮についてどういうふうに考えていらっしゃいますか。大臣、何かありますか。
  345. 小林功典

    政府委員(小林功典君) いわゆる身体障害者の小規模作業所でございますが、先生のお言葉にもありましたように、その大部分は免税点以下でございます。私どもが調査いたしました結果では、約三百ある作業所の中でたった一つだけ三千万を超えるということでございました。  それから、例えば仕入れ材料等が消費税の導入によっていわば物価上昇というような形であらわれてまいります。その点につきましては、先生よく御承知の、小規模作業所について六十二年度から予算補助をやっておるわけでありますけれども、来年度予算におきまして我々は、補助対象の拡大と補助額の増額、これを要求しておりますので、予算編成の過程におきまして、消費税導入に伴う物価上昇分も頭に入れて折衝をしたい、こういうふうに思っております。
  346. 下村泰

    ○下村泰君 この機会にもう一つお願いをしたいんですが、例えば無認可の共同作業所をつくるときに、父兄や関係者がいわば出資し合うわけですね。お父さんやお母さんとか、あるいはその周りで携わっている方々がお金を出し合うわけです。そして草の根の福祉活動における出資をやっておるわけですけれども、負担金についての税控除のあり方を研究してもらえないかということなんです。諸種の事情や困難などはよくわかります。いわばこれは補助金と同様の意味を持つと思うんです。  殊に、こう言ってはなにかもわかりませんけれども、政府の手の届かない福祉を、親御さんであるとかあるいはそういった熱意のある方々がかわってやっているというふうに私は見ています。ですから、そういう方々たちに対する控除というのがあってもしかるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  347. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現在でも、学校への入学のときの寄附金というのは、やっぱり父兄なりが自分の御家族をそこに入学させていただくという、その寄附とその特定の人の利害関係というのが結びつくわけでございますので、そうした場合には寄附金控除というものは適用されないことになってございます。したがいまして、御家族の方が入っておられるところへ拠出されるというのも、そうした意味からいたしますと寄附金控除にはなじまないのではないかと思うわけでございます。  ただ、こうした作業所が社会福祉法人として事業を行っておられるということでございますれば、それは寄附金控除の対象になり得るかと思います。やはり寄附金でございましても、その分だけその方の所得税を免除する、いわば国にかわってそこへ直接補助金を出すようなものでございますので、その寄附する相手の団体というのは、そうした法人格等につきましてきちんとしておられることが必要であるということで、寄附金として扱ってございます。  そうした意味からしまして、任意団体や企業でございますと難しいわけですが、社会福祉法人等である場合には、それはなり得る場合もあるわけでございます。
  348. 下村泰

    ○下村泰君 実際のことを言いまして、今、日本全国にある小規模作業所というのは三千カ所あるんです。三千カ所以上だと思います。そういうところというのは、今、主税局長がおっしゃったような法人組織になっているところはそう数はないわけですね。ですからお願いをしておるわけなん ですけれども、何らかの方法をこれから考えていただきたいと思います。  障害者の所得保障について伺います。  前回の年金法の改正で障害基礎年金が導入されました。障害福祉年金受給者は確かに所得もふえました。制度的にも一つの区切りになったとは思います。しかし、なお難病や長期慢性の疾患によって就労が困難であったり、働けても長時間は無理などの理由で収入も少ない人がいるんです。そういう人たちの中に、障害認定の疾患について大変抽象的であるために対象外になっている人も多いんですね。見た目にはなかなか理解されずに、生活保護さえ受給できずに苦しんでいる人たちもいるということは事実なんです。  ですから、認定基準全体の見直しが必要だと思うんですが、これについてはいかがでございましょうかね、厚生省は。
  349. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 障害基礎年金の認定基準の問題でございますが、現在、日常生活におきまして相当の障害があるということが基本的な考え方でございまして、具体的には施行通知によりまして明確にその程度を認定するような基準をつくってあります。その基準につきましてそれぞれ専門のお医者さんが障害認定医という形で指定をしておりまして、その専門的な立場で該当するかどうかということを点検いたしまして、その結果に基づいて認定を行うかどうかということを判定しているという形のものでございます。
  350. 下村泰

    ○下村泰君 今、その認定の方法が抽象的であるがために、つまり認定されない方がおるということなんですよ。おたくの方ではそういうきちんとしたものがあるとおっしゃっているんですが、実はなかなかそうではない。これは、たしか社労委員会でも私一回取り上げたことがあるんですが、なかなかそこははっきりしていないんですよ。ですから、認定外になる人がいる。だから生活補助も受けられないという人も出てくるわけです。そこのところをもうちょっとはっきりしていただけませんかな。
  351. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 増岡元大臣のときからしばしば議論していただいておる問題でございまして、確かにそういうことがあろうかと思います。ですから、基準の認定という問題については、的確にやはりやっていかなきゃならぬわけでございまして、そういうふうに努力してみたいと思います。
  352. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 補足して御説明を申し上げますと、例えば腎疾患の場合の認定の一例を申し上げますと、具体的な表がございまして、A表、B表というふうに分かれております。  A表では一、二、三の区分がございまして、例えて言うならば、尿毒症性心包炎とかそういう三つの具体的な基準がございます。そういう基準について医者の所見が該当するかしないかということが一つ要件としてございます。  それからもう一つB表というのがございまして、ここでは内因性クレアチニンクリアランス値というような一定の分析値を出しまして、その分析値が異常であるか、それも軽度、中度、高度というふうな基準で数値を示しておりまして、これらのものを具体的にそれぞれの該当する本人から診断書等で出していただきまして、それについて専門の医者が該当するかしないかというような基準でもって適用関係をやっておるということでございますので、私どもこの認定の基準については明確な基準があるというふうに考えております。
  353. 下村泰

    ○下村泰君 せっかく厚生大臣がお答えくださっているんですから、私はそれでいいと思いますけれども、とにかく障害を持って所得の低さに苦しんでいる人たちがいるということは事実なんですから、そういう方たちをどうやったら国家として救えるのか、そういう方法を考えていただきたいということを要求しておきます。よろしくどうぞ。  それからもう一つです。障害基礎年金の件で伺いますけれども、いわゆる子の加算ですね、受給発生時に子供さんがいるとその子供さんにも加算される、あるいは妊娠していても加算される。ところが、そのときに子供さんがいない、後から子供さんができるとこの子供さんに対する加算がないんですね。ここのところ私はずっとはっきりしないんだ。  いつかちょっとこのことに関して伺ったことがあるんだ。そうしましたら、加算金が欲しいために養子にするとかという、障害者の場合そこまで考えて物をやる人はいないと思うんですがね。ですから、そこのところをどういうふうにお考えなのか、保険の論理でなくて、理解できるようなお話をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  354. 水田努

    政府委員(水田努君) 年金問題についてはベテランの先生に釈迦に説法で大変恐縮でございますけれど、年金制度は、御案内のとおり、老齢、障害、死亡という保険事故が発生したときに権利関係を確定させるということにいたしておりまして、権利が発生したときの生活の実態に即して給付をする、こういう建前をとっております関係上から、障害事故が発生したときに子または胎児であった方以外は、これは障害年金に限らず他の給付についても対象にしない、こういうことにいたしているわけでございます。
  355. 下村泰

    ○下村泰君 わからない。  つまり、ノーマライゼーションとかリハビリテーションを基本理念にしてうたっているということは、障害者の結婚、出産などについても十分な施策としての援護を考えるということではないのかと思うんですよ。総理もよくノーマライゼーションという言葉をお使いになりまするけれども、今のような状態でいくと、何か障害者は子供を産んじゃいけないみたいな感じ。つまり、後からできる子供に対しては加算もしない、面倒見てやらないということは、おまえら産まないでもいいんだよというような感じを受けるんですね、私は今話を聞いていますと。  実際にこれは、もう総理も恐らく耳にされたかもわかりませんが、東京の中野の方で、小児麻痺同士の方が結婚した。ところが、産まれた赤ちゃんはもう健常の子供なんです。困ったことに、小児麻痺ですから、御自分の体が好むと好まざるとにかかわらず動きますわね、そうすると、授乳するときに赤ちゃんがおっぱいに吸いつけないわけですよ、母親が揺れるから。そうすると、赤ちゃんの方が必死でお母さんの乳房にそれこそ食らいつくという表現ですね、かんだら放さない。そのために傷がつく。そのくらいにしても、子供というのはやっぱり本能的にお乳を飲んで育とうという意思がある。そのお子さんはすくすくと育って、もうたしか中学生ぐらいになっているはずです。  それから、いつも申し上げるんですけれども、仙台に、筋ジストロフィーで、御兄弟三人で二人とも亡くなっていますが、山田富也君というのが、この方の奥さんは健常者で、その富也君も結婚して子供が二人産まれました。二人とも健常なんです。これは医学的にこういった筋ジストロフィーの染色体、染色するもとというのは女性の方の体内に多くあって、それが、産まれた子供が男の方には出るけれども、女性の方には出ないというふうなあれもございます。そんなことを言っていると話が長くなりますけれども。  そういったようなことで、しかも、その山田富也君の御両親というのは健常者でどこも悪くない。ところが、産まれた子供は三人とも筋ジスト。筋ジストのその山田富也君が健常者と結婚して産まれた子供が健常者、こういうことなんです。ですから、小児麻痺であろうが何であろうが、身体障害者である人たちが子供を産んじゃいけないという理屈はない。しかも、その子供が産まれたとして、その子供が健常者であったならばこんな喜びはないと思うんですよ、御本人たちにとって。それをまた国が認めて、ああ、よくぞ丈夫な赤ちゃんをおつくりになりましたと言って加算金を出したら、これは本人たちにとっては物すごい喜びじゃないかと思うんですがね。こういうふうな考え方に立ったらいかがでございましょうか。それでもまだだめだとおっしゃいますか。
  356. 水田努

    政府委員(水田努君) 先生から具体的な例を出されますと大変身につまされるものがあるわけでございますが、保険制度という画一的な制度を運営いたしております以上、他の保険事故あるいは他保に対する影響等を考えますと、今後の研究課題とさしていただきたいと思いますが、今直ちにそれを採用いたしますということについてはやはり十分時間をいただかないとどうしても無理ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  357. 下村泰

    ○下村泰君 こういう問題ですからすぐにとはもう申しません。申しませんけれども、こういうことを僕は国会というところで論じて、しかも国会で為政者の皆様方がそういうことに姿勢を、顔を向けていろんな施策をなさる、そのことが本当にきめ細かい国民に対する政治のあり方ではないかと思うんです、私は。厚生大臣
  358. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) この問題、私もさんざん議論を実はさせていただきました。つまるところは、やはり他の制度に波及をするという点が非常なネックになっておるわけでございまして、これまさに今後の私どものきめ細かな厚生行政、福祉政策を進めていく上で検討すべき問題だと心得ております。
  359. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。  次に、特別障害手当の対象範囲拡大について、ぜひこの際断行していただきたいんです。前回の年金改正のときから訴えていることですが、法改正後、経過措置対象にもならない障害者もふえているんです。これは重要な検討課題だと考えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  360. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 特別障害者手当は、先生もよく御承知のように、昭和六十一年の四月から施行されました障害基礎年金の導入と同時に、従来の福祉手当を再編しまして創設をしたものでございます。  この経緯を申し上げないとお答えにならないんですけれども、この制度改正時には、従来一級の障害福祉年金と福祉手当の合計額が四万九千二百円でございました。これを制度改正によりまして、障害基礎年金として六万二千五百円というふうに思い切って大幅な増額を図ったわけでございます。  そういうことから、従前の福祉手当というものは、もう使命は終わったんじゃないかという意見すらあったわけでございます。しかし、そうは申しましても、特に重度の方につきましては、障害基礎年金ができたからもう要らないというわけにもいくまいということで、常時特別な介護を要するような重度障害者に対しては、障害者所得保障の一環としまして、その負担の軽減を図るという意味でこの特別障害者手当が創設されたと、こういうことです。  したがいまして、そういう経緯を考えますと、この際その障害基礎年金をそのままにしておいて、さらにまた福祉障害手当、特別障害者手当、これを広げては、ここではなかなか、はいと申し上げるわけにはいかぬのでございます。
  361. 下村泰

    ○下村泰君 それはもう無理でしょう。今、私はすぐにはいと言ってくれとは頼んでおりませんが、よく言われるところの検討の対象にはなりますか、小林さん。
  362. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 六十一年四月にスタートしたわけでございますから、まだ二年ちょっとでございます。今、この段階で検討課題でございますと言うのは、ちょっと遠慮さしていただきたいと思います。
  363. 下村泰

    ○下村泰君 残念ながら仕方がないですね。もっとも、この件についてやり合った斎藤十朗先生が横でごちょごちょ言うもんだから。  今度は、介護手当のことでちょっと伺いたいんですけれども、介護手当の、どうでしょうか、導入の意思はおありでございましょうか。これを一つ伺わさしていただきたいと思います。
  364. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 介護手当の問題でございますが、いろいろな御意見もございますし、また難しい問題もございます。今、公党間で協議中でございますので、その協議を見守りながら政府部内で慎重に検討をしてまいりたいと考えております。
  365. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、将来にちょっと望みを持っていいと、こういうことになりましょうか。
  366. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 予算編成の過程の中で検討してまいりたいと考えております。
  367. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、その額とか範囲とか、障害者を含むのかとか、実施時期はというのは今無理ですね。  さて、労働大臣伺います。  こういった介護手当は別といたしまして、今、介護する方々の、例えば介護休暇あるいは看護休暇、こういった制度の充実というのが求められてくると思うんです、これから先もどんどん寝たきり老人もふえますから。こういうことについてはどういうふうに労働省の方はお考えでございましょうか。
  368. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 現在、介護休暇制度を取り入れている企業におきましては、大体全企業の一一・四%ぐらいこの制度を持っております。これは、六十年の労働省が行いました女子の保護協定ですか、そういう調査の結果あらわれておるんですけれども、言うならば全体のやっぱり一割程度ということであります。  しかし、御案内のように、一方におきましては高齢化あるいは核家族化を背景としまして、老親の介護の負担が勤労者家族に大きな問題としてかかっておるということも事実でございます。したがいまして、労働省としましては、今行われている制度の中身あるいはその効果、さらには問題点等々につきまして十分な把握をいたしたい。その上で行政としてどう対応すべきかということも検討してまいりたいと思っておるわけでございます。  この問題は、長寿社会における婦人労働者の福祉という点からも大事な問題でありますので、これからは真剣に取り組んでまいりたい、研究を続けてまいりたい、このように考えております。
  369. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。  次は、福祉ビジョンについてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、次の数字をひとつ教えていただきたいんです。現在の六十五歳以上の高齢者数と二〇〇〇年、昭和七十五年の推計。それから、現在の要介護老人数と二〇〇〇年、七十五年の推計。それから、現在の老人ホームヘルパー数と同じく二〇〇〇年の目標老人ホームのヘルパー数。これをひとつお教え願いたいんです。
  370. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 寝たきりの方の数は現在六十万人で、二十一世紀、昭和七十五年で約百万人と見込まれております。  それから家庭奉仕員、現在二万七千人でございまして、昭和七十五年にこれを五万人にふやしていくという目標でございます。
  371. 下村泰

    ○下村泰君 もう少し事細かに私の方は調べてございますが、まあ調べているんだから本当は聞く必要ないんですけれどもね。昭和六十一年、一九八六年、これは調査によりますと高齢者数が千二百八十七万人、これが七十五年になりますると二千百三十三万八千人なんです。これはあくまでも推定です。現在これは大臣のおっしゃっているように六十二万人ですね、寝たきり老人。この推定が大体一番多くとって百十九万人にはなるであろう、昭和七十五年。現在ヘルパー全部で二万三千五百五十五人ですね。実働しているのが二万一千三百八十一人。この方たちで現在のあれを割っていきますと、現在千人に対して一・八三人ということになるんですよ、そのヘルパーの受け持ちが。一・八三人、千人ですよ。だから、百人にすると〇・一八になっちゃうんです。  こちらに「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本考え方と目標について」、これは十月二十五日、厚生省と労働省が出していますね。これによれば、「昭和七十五年度を目途に、ねたきり老人等を短期間保護するショートステイについては五万床」、そしてここでは、ホームヘルパーについては「五万人程度確保する」。これでいきまして、推定の二千百三十三万八千人で五万という ことになりますと二・三四。現在からわずか〇・五%アップしただけなんですよ、率からいきますと。  つまり、労働省と厚生省が大変夢のあるようにうたい上げたんですけれども、それっぱかりしか用をなさないということですね。ですから、こんなことで果たして夢あるビジョンと言えるのだろうか、こういうことになるんです。とにかく千人当たり〇・五ですから、現在からそれしかふえていないんですから、これが果たしてビジョンと言えるだろうか。  これも、よく言われるスウェーデンですけれども、もちろんそんなスウェーデンのような高福祉政策をとるとなると、これはえらいことになりまするけれども、ちょっと話として聞いていただきたいんです。カウントの方法や社会事情の違いはあります。一九八一年の数字で言いますと、人口約八百三十万に対して七万一千人強いるんですね、ヘルパーの方たちが。一九八一年のスウェーデンの高齢人口比を高めに見て一六・五%とすると約百三十七万人、すなわち高齢者千人当たりに約五一・八人のヘルパーがいるということになる。これはとてもじゃないけれども日本とは比較になりません。間違いなく言えることは、将来も今も日本が高福祉とは言えないということなんです。もちろんこういうスウェーデンのような体制にするとなったら、これは大変な、それこそもう消費税どころの騒ぎじゃなくなると思いますけれども。  社会保障研究所がかつて行った試算では、週二回、一回半日でヘルパー一人当たり七・四ケース、というのは七世帯です。ケースとして計算しますと二〇〇〇年には、昭和七十五年には八・八万人ですから八万八千人のヘルパーが必要ということになる。そうすると、今現在こちらで書いているのは五万人ですね。これはまるで数が違うんです。これはいかにも水準の低い現行を前提としての今は計算なんですから、これが完璧というともっと大変なことになります。そうすると、今のこのビジョンという目標に対してさえこれは目標とは言えない、こういうことになるんですね。  そこで、在宅サービスを担うマンパワー、すなわちヘルパー、それから作業療法士、理学療法士、看護婦、保健婦の整備目標計画、それに今年度モデル事業として行われている家庭医について今後どう対応するのか、同わしていただきたいと思います。  寝たきりにさせないためにはマンパワーの充実が不可欠だと思うんです。スウェーデンでは寝かせないんですね。寝かせるよりもむしろ車いすに乗せたりいろんな方法をして屋外に出す、そしていつでも寝かせる状態から起こす状態、これに努めてスウェーデンは一生懸命やっていると聞いております。ですから、日本もそういう状態にするのは大変だと思いますが、今申し上げたようなことがどういうふうになりましょうか。
  372. 多田宏

    政府委員(多田宏君) ホームヘルパーの件で大変日本は低い水準であり、また目標も低過ぎるではないかというお話でございます。  確かに、数字だけを比べますとそういう感じがいたしますけれども、日本の高齢者の子供との同居率というのが、日本ではまだ過半が同居というような状況でございまして、スウェーデンの場合は一〇%以下というような状況でございます。非常に家族構造等も違っておりまして、また日本では多少、他の人間が家庭の中に入ってくるということに対しての抵抗感というようなものもございまして、必ずしも一律に並べて比べて考えるということは適当ではないのではないかというふうに私ども考えているわけでございます。  また、私どもの対策といたしましては、ホームヘルパーだけが在宅対策ということで考えておりませんで、デイサービスといったようなことで昼間お預かりをして、そこで訓練なり楽しんでいただくというような対策もあわせやっていきますし、ショートステイというようなことで一週間なり十日間なりお預かりをするというようなことで、介護者の負担の軽減も図るというようないろんな対策をあわせて考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。  また、特別養護老人ホームの数の整備もさらに進めてまいりますし、そのほかに、老人保健施設という施設を今度新たにまた制度化いたしまして、これについても七十五年までに三十万床近くの整備を進めたいというようなことを考えておりまして、総合的に考えて在宅援護対策というものをひとつ充実さしていきたいというふうに考えているところでございます。
  373. 下村泰

    ○下村泰君 委員長、時間ですが一言お願いします。
  374. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 一言、上田さんにも許したからあなたにも許しましょう。
  375. 下村泰

    ○下村泰君 総理、綱紀粛正とか政治倫理とか新聞の活字に総理のお言葉が大変出ているんです。けれども、皆さんそうおっしゃっているんですけれども、実際にそれを信用している国民というのは数少ない。そういう国民に信用させるには何だと言ったら、今一番やらなきゃならない思い切ったこと、いわゆる竹下登総理大臣が自民党総裁として二つの顔を持っています。その二つの顔を持っている総裁・総理がいまだ断行したことがないのが選挙の定数是正だと思うんです、議員の。ですから、これ本当に第三者機関をつくって、もう議員がやったんじゃあきません。議員がやったんではもう利害関係が伴いますからだめです。あくまでも第三者機関でして、ばちっとやるだけのお気持ちがおありになるかどうか、これを伺わせてください。
  376. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 定数是正問題を第三者機関をもってやれ、こういうことでございます。衆議院において特に決議がございますので、国会の中の話し合いを度外視してやるわけにはまいらないと私自身思っております。  したがって、当面は党内において政治改革の問題の大きな柱の一つとして検討し、それから、これは各党相談事もしなきゃならぬ課題でございますので、慎重に進めてみようと思っております。
  377. 下村泰

    ○下村泰君 終わります。
  378. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時四十六分散会