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1988-12-21 第113回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月二十一日(水曜日)    午前九時十一分開会     ─────────────    委員の異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     佐藤謙一郎君      斎藤 十朗君     寺内 弘子君      高桑 栄松君     中野 鉄造君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         前島英三郎君     理 事                 佐々木 満君                 宮崎 秀樹君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 佐藤謙一郎君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 寺内 弘子君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 高桑 栄松君                 中野 鉄造君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    衆議院議員        社会労働委員長  稲垣 実男君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君    政府委員        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省薬務局長  北郷 勲夫君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案衆議院提出) ○後天性免疫不全症候群予防に関する法律案(第百八回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群予防に関する法律案の両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 浜本万三

    浜本万三君 まず最初は、エイズ治療法確立しておりません現状から、感染者に対するカウンセリング発症予防治療事業など健康管理のための施策充実強化が特に大切であると思います。カウンセリング体制整備発症予防治療事業の大幅な拡充をどういう方向で実施されようとしておるのか、お伺いいたしたいと思います。特に治療薬ワクチン等研究見通しはどうなっておるでしょうか。  また、既に同僚議員からも指摘がなされているように、我が国エイズ対策予算は諸外国のそれと比べますとけた違いに少ないわけでございます。今申し上げた施策に対し十分な予算をとるべきことが大切であると思いますが、これに対するお考えもあわせてお尋ねいたしたいと思います。
  4. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) カウンセリング発症予防治療研究、これは非常にこれからのエイズ対策を進めていく上で重要な課題であるというふうに考えております。  カウンセリングにつきましては、我が国においては非常にまだこういうことについての経験が浅いわけでございますので、これからどういう手法が非常に有効であるかという手法開発とか、あるいはカウンセラーを養成するというようなことを進めてまいる計画でございます。  また、発症予防あるいは治療研究は、感染者からの要望も大変強いわけでございますので、本年の十一月から全国の主な血友病主治医及び感染症担当医に参加を求めてネットワーク体制をつくって研究を進めておるところでございます。
  5. 北郷勲夫

    政府委員北郷勲夫君) 治療薬ワクチン関係でございますが、昭和六十三年度にエイズ関係医薬品開発事業費といたしまして三億円を計上いたしまして、いろいろ総力を挙げて開発に取り組んでおるところでございます。メーカー三十七社、それから研究機関十四施設、大学十一、こういった多数の施設メーカー関係機関協力によりまして二十五課題選定して進めておるところでございます。  それからワクチンにつきましては、これは治療薬よりかなお難しいわけでございますが、専門家による研究班を組織して研究を進めております。開発見通しでございますが、これは非常に困難な課題で非常に難しいというふうに世界的にされているわけでございますが、世界じゅうで総力を挙げてやっております。日本もそれなりの分担をして努力をしてまいりたいと考えております。
  6. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) ただいま種々申し上げましたいろんなエイズ研究関係の経費でございますけれども、六十三年度予算におきましては十二億を確保し、有効に活用すべく進めておるところでございます。  なお、六十四年度におきましては二十一億予算要求をしておりますが、これを最大限確保するように努力をさせていただきたいと思っておるところでございます。
  7. 浜本万三

    浜本万三君 予算はまだまだ諸外国に比べて少ないようでございますから、一層の努力を要請しておきたいと思います。  それから、本法案審議に当たりまして特に各委員指摘をいたしましたことは、患者プライバシー保護という問題であったと思います。エイズ抗体検査でありますとかカウンセリング実施等に当たりましては、そのプライバシー保護徹底を図ることが必要だと考えますが、匿名方式の具体的な措置考えられておるようでございます。この点につきましてもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  8. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 御指摘のように、エイズという疾病の特性から、できるだけ名前が知られたくないという関係者のお気持ちというのは非常に重要なことだと思うわけでございまして、エイズ対策を進めていく上では、感染心配する人がプライバシー保護に不安を持って検査相談に来なくなるということがないように最大限努力をする必要があるわけでございます。このため、抗体検査カウンセリングを行うに当たりましては、匿名方式ということで安心してそういう施設を利用できるように体制づくりを進めていきたいと考えております。現在におきましても、既 に多くの自治体においてはそういう体制をしいているところもございますので、その徹底を図ってまいりたい、このように考えております。
  9. 浜本万三

    浜本万三君 これはきのう質問通告はしていなかったのですが、これに関連することなんですが、いわゆる人権侵害でありますとかそれからプライバシー保護等の問題に関しまして具体的な問題が起きました場合、これは法務大臣にも関係があると思うんですが、法務大臣厚生大臣を含めまして関係大臣対応というのが大変大切になってくると思うんですが、その決意のほどを伺っておきたいと思います。
  10. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘のようなプライバシーを守る、人権を守るということは、エイズ対策を進めていく上で極めて重要な柱でございまして、今御指摘の点につきましては十分これから検討してまいらなきゃならない、さように考えております。
  11. 浜本万三

    浜本万三君 次は、かつて問題になりました松本、神戸、高知、大阪などといった一連エイズパニックに際しましては、例えば週刊誌実名が出ましたり、また写真週刊誌には葬儀の遺影までが掲載される、これは神戸の例でございますが、そういう事態が相次いだわけでございます。これらのケースでは、本人の実名プライバシーが暴かれる報道がなされておるわけでございます。一体これらのニュースソースというのはどこなんだろうかという疑問を持っております。ある人の説によれば、これは役所から出ておるのではないかという声があるわけでございますが、厚生省はその実態を把握されておるのかどうかということ。また、このような例から見まして、今後プライバシーは本当に守れるんだろうかという不安が依然として消えないわけでございますが、この点につきまして明確な答弁を伺いたいと思います。
  12. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 過去にも厚生省から漏れたのではないかという議論が国会の中でも行われたことがあったわけでありますが、これらの事例につきましては、厚生省並びに都道府県におきましては個人を特定するような情報は一切公表しておりません。この際、はっきり申し上げさせていただきたいと思います。  さらに、こういうような事態が起こったということから考えて、プライバシーが守られるだろうかという御質問でございますけれども、今回のこのエイズ予防法案の中にはそういうことも考えて、プライバシーを守ることの重要性ということから守秘義務規定を非常に強くしておるわけでございますので、そういうことが国民全体の中に広がっていけばプライバシー重要性ということへの認識も高まってくるわけでございまして、そういうことを総合的に考えればプライバシー保護というものはさらに進むのではないか、このように考えるわけでございます。
  13. 浜本万三

    浜本万三君 昨日来の質問の中にもありましたように、一たんプライバシーが暴かれますと社会生活も送れない、こういう状態になっておるわけでございます。氏名を通報されるのは多数の者に感染させるおそれのある場合に限られておるわけでございますが、それでもプライバシーの漏れるのを心配する人は医療機関に行くことをためらうことになると思います。先般も都立駒込病院専門外来受診者法案審議報道によって減少したということが述べられておりましたが、最近は受診状況はどうなっておるんでしょうか。心配ですからお尋ねしておきたいと思います。
  14. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 法案趣旨は、今後エイズに関する対応ルールというものを明確にしておるわけでございますので、こういうルールに従って医師が届け出をする、通報をするというように、きちんとすることになるわけでございますから、そういうことからすれば、現在何もそういうルールがないということから医療現場でいろんな混乱がむしろ生じておるというようなことともあわせて考えますと、むしろこの法案が通ることによってプライバシー保護はきちんとしていくというふうに考えているわけでございます。そういった意味で、業務上知り得た個人秘密を不必要に外部に漏らすというような場合には強い守秘義務規定があるわけでございますので、そういった意味からもむしろ前進をするというふうに考えるわけであります。  なお、どうもこの法案に対する間違った理解から、法案審議が進むと検査を受ける人たちの数が減っておるというような御心配も出ておるわけでございますが、私どもが把握をしております都立病院エイズ関係者受診者あるいは受検者の数は、多少の変動はございますけれども、大きく減っているというような状況にはございません。
  15. 浜本万三

    浜本万三君 この法律が仮に施行されますと、ニュースソースが執拗にせんさくされることにならないだろうかという疑問がございます。また、これまでの事例で県や市の衛生部長などが記者会見をしておりますが、こういうことは今後どのようになるのでしょうか。  さらに、マスコミ関係者がさまざまな手法感染者秘密に近づいて、その裏づけというよりも確認を公務員に求めた場合はどうなるのでしょうか。全般的にマスコミ関係者が法第十五条の対象になることはないのでしょうか。  これら一連の問題について明確なお答えをいただきたいと思います。
  16. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 法律が施行されるとニュースソースをせんさくするのではないかという御心配でございますけれども、この法案プライバシー保護を図るために特に守秘義務強化を図っているわけであります。これによってプライバシーの確保が従来よりはさらに確実になるわけでございます。取材があっても、むしろしゃべらないという後ろ盾になると考えておるわけでございます。  それから、行政がいろんな公衆衛生上の事件についてニュースを発表するというようなことがあるわけでございますが、これまで個人を特定しない方法で行ってきているところでございます。今後もこのことは当然守られていくというふうに考えております。  エイズについての正しい知識を普及するために、必要な範囲でいろんな情報を一般に提供するということは今後も必要であるというふうに考えております。  そこで、新聞記者が記事の裏づけのために公務員取材をする場合に守秘義務の問題はどうかというお尋ねでございますけれども公務員記者取材に応じる場合にも個人秘密の保持ということには最大限留意をしなければならないということは当然であります。そこで、マスコミ報道関係者が十五条の「業務上知り得た者」になるのかと、こういうお尋ねでございますけれども、この法案業務上知り得る者といいますのは、秘密を知り得る業務、それに携わっている者で当然に知り得る機会を持っているというふうに考えておるわけでございます。したがって、マスコミ関係者にとって取材行為業務ではございますが、マスコミ関係者業務を行っている上でたまたま個人秘密に触れるかもしれないということであって、業務上当然知り得る機会を有しているということにはなりませんので、したがって十五条の「業務上知り得た者」には該当しないと考えております。
  17. 浜本万三

    浜本万三君 いずれにしましても、プライバシー保護のためには、行政機関担当者マスコミ方々対応する対応の仕方は十分ひとつ注意をしていただきたいというふうに思っております。  それから、これも昨日来の各議員さんの御質問にあったわけですが、血友病感染者である保育園児について主治医保育所の園長に、その園児扱いにつき注意するよう連絡いたしましたところ、その子供は退園せざるを得なくなったということが述べられておりました。また、これに類似するような差別実態が家族の方から私ども伺ったことを考えますと、これは大変重要なことであろうと思います。  血友病患者の約半数の方は未成年者で、子供感染者も多いわけでございます。子供を持つ親の 方々は、法案の成立によって学校とか保育所とか幼稚園で子供への差別が助長されるのではないか、また差別が定着してしまうんではないか、こういう心配を繰り返し述べられておるわけでございますが、この問題をどう解決するかということは非常に大切なことだと思います。この点につきましてしっかりした決意のほどを伺っておきたいと思います。
  18. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 差別偏見の問題につきましては、これはやはりこのエイズにつきまして社会が正しい理解をすることによってエイズ感染者患者に対して社会差別偏見を持たない、温かく受け入れられるような、そういう社会をつくっていくということが最も基本的に大事な問題であると考えております。  今、御指摘子供あるいは乳幼児の問題は、本当に私どもも心痛む問題でございまして、これは今お話しのように、血友病方々の中でエイズ感染者方々の過半数が子供である、年少者である、こういう実態からいたしますと、極めて私ども重大な問題だと受けとめております。  そこで、正しい理解をしていただくためにも、医師向けのガイドラインを作成いたしまして関係者に通知をいたしておりますが、さらに教育現場につきましては、文部省ともよく相談をいたしまして、血友病園児、児童の扱い方につきまして、関係者研修等正しい知識教育、普及を積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。
  19. 浜本万三

    浜本万三君 今回の法案審議を通じまして、患者潜在化でありますとか、また蔓延防止に関する法律の効果など、この法案問題点が各委員から指摘をされたところでございます。こういった事柄につきまして、今後一定期間を目途に、例えば患者等発生状況その他の事情を勘案されまして、法律規定検討を加える必要があるのではないかという気がいたします。  本日も、朝日新聞だったと思いますが、新聞報道するところによりますと、東京都の抗体検査につきましては、陽性のものが一つもなかったというような報道もなされておるようでございまして、鎮静化方向にも来ておるのではないかというように考えられます。この点につきましてはいかにお考えでございましょうか。
  20. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 私どもとしては、現在の状況でどうしても必要であるという観点から法案提案をさせていただいておるわけでございます。  しかし今後とも、病気の問題でございますから医療技術の進展とかあるいは患者発生の問題とか、いろいろと変化をする要因は非常にたくさんあるわけでございます。そういった意味で、今後のそういうものの動きというものも十分考慮しながら対応していくということは当然あってしかるべきかというふうに考えます。
  21. 浜本万三

    浜本万三君 ぜひ全体の状況を勘案していただきまして、特に犠牲者になられました血友病患者方々が非常に心配をされておるようでございますので、早急に見直すように検討をしていただきたい、かように強く要望しておきたいと思います。  それから、血液行政の問題についてお尋ねするんですが、我が国血液行政考えます場合、血液製剤国内自給確立は喫緊の課題であるというふうに思います。  政府血液自給体制をどのように進めていくおつもりなのか、一点お伺いをいたしますと同時に、血液製剤国内自給を促進させるためには、各省庁とも緊密な連携をとりながら成分献血を含む新たな献血体制整備が極めて重要であるというふうに考えます。その点どういうふうなお考えでしょうか。  また、特に血友病皆さん使用する凝固因子製剤につきましては、一刻も早い自給体制確立が望まれるわけでございますが、この具体的方法につきましてもあわせて伺っておきたいと思います。
  22. 北郷勲夫

    政府委員北郷勲夫君) 血液対策でございますが、私は三つに分けて今考えておるところでございます。  第一は、今おっしゃいましたように一つ献血の問題でございます。献血につきましては、現在の需給関係を眺めますと、赤血球部分というよりも血漿部分が非常に必要とされているわけでございまして、今御指摘のように血漿部分献血していただく成分採血、これを普及していくということが肝心だと考えております。今のまま全血だけで進めますと赤血球が不要になるというような問題も生じますので、臓器という性格を考えますと、必要かつ十分な材料を確保するということから見ますと、成分採血をぜひとも進めていかなければならないというふうに考えております。  それから第二点目は、使用適正化であります。献血していただくためには、それなりの合意を十分に得なきゃなりません。これは仮にもむだに使われているとかいうようなことでございますと国民協力は得られないと考えますので、使用適正化につきましては各界、医療関係者も含めまして御協力をいただきまして、本当に必要なところに使われているというようなことにいたしたい。  それから第三点目は、あとは技術的な問題でございます。製造技術開発でございますとか、供給のあり方とか価格、こういった問題についてもきちんとしていかなきゃならないと考えております。いずれにしましても、その三つに分けて進めてまいりたい。  それから、お話の各省庁協力ということでございますが、献血の推進に当たりましていろいろやりやすいような環境づくりには各省の協力も必要でございますので、何らかの機関協議機関というものも設けたいというふうに現在検討中でございます。
  23. 浜本万三

    浜本万三君 早急にこの血液事業全体の対策強化を強く要望しておきたいと思います。  それから、血液製剤によるエイズ患者等のための救済事業というのが一応合意されております。昨日その中身について説明をいただいたわけでございますが、その中でエイズ関連疾病により入院した人に対する医療手当支給一定期間、例えば十五日以上入院した者というふうに定められておるようでございます。十五日ということになりますと、ほとんどもう発病いたしまして相当疾病状態が悪いというふうに理解をされるわけでございまして、これでは少し厳し過ぎるんじゃないかという気がいたします。そこで、これを五日とか他の法令のように一週間とかいうように緩和する必要があると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  24. 北郷勲夫

    政府委員北郷勲夫君) この問題につきましては、専門家先生方の御意見も伺っておおむねこんな線かなということにいたしておるわけでございますが、現行副作用被害救済基金での仕組みの中で、入院期間が八日以上という一つの線も幾つかの中でございますので、よくまた先生方とも御相談をしてみたいと考えております。
  25. 浜本万三

    浜本万三君 ぜひひとつ緩和措置を講じるように強く希望しておきたいと思います。  それから、これは大臣お尋ねをいたしたいんですが、各方面から指摘されておりますように、今回の法案提出の過程は拙速であるというふうに私も思います。例えば、主なよりどころというべき性病予防法の現在の社会における適合性、それから実施条件につきましても検討を十分行って提案されたものとは考えられません。一昨年来、国民の側にも相当の知識ができておるのではないかと思いますので、当分は予算措置であるとか行政措置対応してもらいまして、感染症対策全体、公衆衛生行政全体の見地から現行各法の体系を根本的に見直しまして、そういうものを総合した新法提出の方がよろしいのではないか、こう思います。この点につきましては患者皆さんも強く要望されておるところでございますので、ぜひひとつ包括的な新法提案に踏み切っていただくように希望するわけなんですが、大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  26. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) その御答弁の前に、救済策医療手当、この支給要件緩和の御指摘がございました。私といたしましては、御指摘趣旨に沿いまして再検討をいたすことをお約束いたします。  それから、ただいまの法案の取り扱いの問題でございますが、エイズという大変難しい病気が世界で現在も急速に拡大しているわけでございまして、先般のWHOの発表でもことしじゅうに患者が十万人になる、こういう状況でございまして、我々としては今こそ患者の少ないこの時点で十分に対応策を講じる必要があると考えておるわけであります。また、この法案は、伝染病予防法性病予防法等の既存の公衆衛生法規の内容も検討した上で、さらに人権への強い配慮も加えて構成をしておるものでございまして、このエイズ対策を進めていく上に、また感染者患者人権プライバシーを守る上からもぜひとも御理解賜りまして、この法案の御審議をぜひお願いいたしたいと思う次第でございます。
  27. 浜本万三

    浜本万三君 これはとにかくお医者さんも、また弁護士の先生方も、それから患者皆さんも包括的な法案提出というのを非常に希望しておりますから、ぜひひとつ休むことなく検討を続けていただきたい、こう思います。  それから、時間が参りましたので最後にお尋ねするんですが、先般まとめられました医薬品副作用被害救済研究振興基金による救済事業は、先ほど少し修正すべきところがあるというふうにおっしゃいました。それはぜひやっていただきたいんですが、当面、血液製剤によりエイズ感染された方々を速やかに救済するため、国、製薬会社責任とは切り離してまとめられたわけでございます。血液製剤被害を受けた血友病患者に対する国の法的社会的責任というものをやはり明らかにすべきではないかという気持ちがどうしても強いわけでございます。この点があいまいにされたまま救済事業を行いましても、血液製剤を利用しましてエイズにかかられた患者方々気持ちはいえない、こう思います。  したがいまして、昨日に続いて重ねてお尋ねをしますが、国の法的社会的責任を明らかにする必要があるのではないか、こう思いますが、これに対するお答えを再度厚生大臣からいただきたいと思います。
  28. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 血友病患者方々の中でエイズ感染された方々、まことに不可抗力であったわけでございまして、お気の毒だと思っておるわけでございます。こういう状況考えてみますと、これは法的な国の責任の有無にかかわらず、救済対策というものはこれを誠心誠意実施していかなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。これは総理からも予算委員会におきまして、その責任の有無にかかわらず政治的に対応すべき非常に重大な課題であるというようなお答えもあったわけでございまして、そういう考え方で今後とも誠意を持って対処してまいりたいと考えております。  また、国の責任についてでございますが、厚生省といたしましてもそのときそのときの科学的な知見に照らしまして誠心誠意といいますか、必要な措置を講じてきたものと私はそう確信しておるわけでございまして、その点につきましては御理解をいただければ幸いであろうかと思います。
  29. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 暫時休憩いたします。    午前九時四十七分休憩      ─────・─────    午前十時三十六分開会
  30. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、岩崎純三君及び斎藤十朗君が委員を辞任され、その補欠として佐藤謙一郎君及び寺内弘子君が選任されました。     ─────────────
  31. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 休憩前に引き続きまして、医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群予防に関する法律案の両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  32. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、質問させていただきます。  ついきのう、おとついかな、私たち——たちだと思いますが、厚生省製作の大変スマートなポスターが届けられました。そのポスターの文言に、「STOP AIDS」と書いてありまして、「エイズ予防可能な病気です。」と書いてありましたので、私はこれは法律によって予防という意味なのかどうか伺いたいと思います。
  33. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 最初にお答えから申し上げますと、法律によってということではございません。  先生よく御存じのように、エイズ感染の経路というのが非常に限定されているわけでございますから、そういうものに個人個人が十分認識を持っておれば、一人一人が気をつけておればエイズ被害を受けることはない、こういう意味予防可能とこういうことを言っているわけでございまして、法律ができたから直ちに予防と、そういう趣旨ではございません。
  34. 高桑栄松

    高桑栄松君 局長のお考えは私ども一〇〇%一緒ですけれども、しかしあの文言を見ていると、今自信を持って法を提出しておられるんで、法律によって予防可能とすぐ頭がそこへ行きまして、それでそういうことかと思ったんですが、今のお話だと結局エデュケーションということですね。そうすると、これはやっぱりあのポスターは、予防可能を期待し願望し、確信まではいかないんだな、これは。確信までいきますか、どうですか。
  35. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 世の中には実際一〇〇%ということはございませんという前提で言えば、確信までいけると思います。
  36. 高桑栄松

    高桑栄松君 確信までいくかどうか、私は非常に興味津々なんですよね。そういうデータがいつか出てくると思いますから、これはちゃんと見守っていきたいと思います。  次は、私の知っている範囲のドクター、それからいろんな文献を見ても、それから今社会労働委員会での質疑応答、その辺を見ても、それから局長答弁の中にもありましたが、性病予防法がざる法であるというのはもうだれでも知っていることである。同じ意味エイズ予防法も、通ればの話ですが、大ざる法だ、性病予防法以上にざる法だ、こういうことをみんな認めているわけです。私は、ざる法でも性病予防法ほっておくのと同じにほっておくということかなと思うんだけれども、大きな違いは、何遍も申し上げましたけれども、このような性行為感染症というだけではなくて、非常に致命率が高い、届け出ることによってメリットが何にもない。むしろプライバシーを侵されるという危険がある。不安ですね、危険というよりも不安だと思うんです。侵されないと厚生省は保証するわけだが、侵されるかもしれないという不安は持つんだから、持つ人が持つんですからこれはしようがないことなんですね。  そうすると、昨日も私も大分主張いたしましたが、サーベイランスということに逆効果になるのではないか。つまり不安な人、そういう人が受診に来ない。受診に来なければ陽性、陰性がわからない。わからないということは実態把握に対して障害になるわけで、私は非常に感染症予防にとって重要な情報がそこで妨害されるということを恐れるんです。これについてはどう考えますか。
  37. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) エイズ予防法があるから非常に不安を持つということの問題をまず解決しなきゃいけないわけでありますけれども、これまで何回も御議論をいただいてきたように、エイズ予防法は、これから日本の社会の中に侵入してくるであろうエイズ、非常に困難な病気、これを何とか食いとめていきたい、そのための社会ルールをつくっていくということのためにどうしても法律が必要だということで御提案をしているわけでございまして、決して個人プライバシー を守らないということを言っているわけではないわけでございますから、法律が正しく社会の中で理解をされるようになれば、そういう心配は当然なくなるわけでございます。  また一方、じゃ法律がなければ一般的に届け出が十分にいくようになるかというと、これはまた保証のない話ではないかというふうに考えるわけであります。そういった意味からすると、法律とそのサーベイランスの有効性ということについては別の問題として扱った方がいいのではないか。したがって法律法律、それから法律に対する社会理解を深めあるいはエイズ予防の全般的な理解国民の間で深めていただく、そういう努力をしながらサーベイランスの水準が下がらないように努力をしていきたい、このように考えるわけでございます。
  38. 高桑栄松

    高桑栄松君 今の局長答弁で、私と基本的に違うところがあるんですね。法律によって潜るとは限らない、片方は法律がなければ出てくるという保証はない。両方同じようなことを言っているわけですが、決定的に違うのは、法律があるということでプライバシーが侵されるかもしれないという不安を持つことを私は言ったんです。不安を持つのは当たり前のことなんですから。持たないというのだったらこれは話は別だ、それなら告知なんか何にも恐れることないんじゃないですか。不安を持つんですよ、やっぱり持つんです。  ですから、そこで今度エデュケーション。ポスターがそう言っているんでしょう、エデュケーションだと言っているわけだ。あれは法律じゃないと言っているわけだ。つまり、あれはポスターに関する限り法律はないということですよ。ですから、あれには法律のこと書いてないんだから、それは大変おかしな話でないかと思うんですね。法律を頼らない、そして予防をしようと考えているわけだ。エデュケーションなんです。エデュケーションというのは人間の考えをある意味では変えることができるんですよ。法律は変えられません。そういうことを私は申し上げたつもりなんです。  それで、今の問題に絡んでもう一度伺いたいのは、きのうも申し上げましたが、法が人間の行動心理を左右できるのか。これは余りにも法万能主義だと思うんです。法律こそ権威だと思っている人たち考えなんですね。それは途上国はそうでしょう。日本は少なくとも敗戦以来やっぱり民主主義国家になったんだから、そして先進国の仲間入りをさしてもろうたわけだ。さしてもろうたというのは、まだ私は同じではないという意味で言っているんです。いろんな考え方において、国際化という中で全く日本は国際的ではないんですから。ヨーロッパ、アメリカ的な考えの中では日本は国際的ではありません。それはもうみんながそう思っていると思いますよ。  そういう中で、日本が法律によって性行為感染症がチェックできる、そういうことを考えるということは、きのうもカリフォルニア州のロサンゼルスからの全米エイズ討論のところで申し上げましたけれども、役に立たない、あるいはだれも使わないような法律をつくることが議員の仕事なんでしょうと、これは議員に対して言っているわけです。たまたまきょう渡辺先生からもらったものに、ここにウイリアム・ダンネマイヤーが出てまいります。アメリカのカリフォルニアで出された第一〇二号法案というのが敗北をしたというのが載っています。これを読んでみると、やっぱりリポートを強制する。要するに届け出にするということですね。それからコンタクト・トレーシングをする。それから従業員、それからインシュアーだから保険ですね、そういうことのときに検査をするということを提案をして全部敗れているというのが載っているわけです。それは当たり前のことなんで、これにはエイズ研究者が反対していると書いてあります。エイズ・リサーチ・サイエンテスト、これはちゃんと書いてあります。それからアメリカン・メディカル・アソーシエーション、これも反対しているわけだ。  私が見ている範囲でやっぱりほとんどの医師が、まずよほどの人でない限り、よほど変わった人と言いたいですけれども法律が効果があるとは思っていないと思います。つまり、国際的な物笑いになるのではないか。私も国会に議席を置く疫学者として、甚だ残念だと思っているんです。どう思いますか。
  39. 北川定謙

    政府委員北川定謙君) 一口に法といいましてもその内容はいろいろあるわけでございまして、エイズに関する法すべてがいけない、こういうことではなくて、エイズのどこをどう規制する法律であるかというところが問題になろうかと思うわけであります。  私どもも幾つかの諸外国の動向を調べておりますけれども患者の届け出、こういうものについては多くの先進国で法によってルールを決めております。そういう意味からいって、現在御提案をしておるエイズ予防法案は、エイズを規制する、こういうことではなくて、エイズ予防にどう対応するか、その仕方にルールをつくる、こういうことでございます。その結果として、いろいろ総合的に対策を進めていく上でエイズ蔓延防止を図る、こういうことでございますので、御理解賜りたいと思います。
  40. 高桑栄松

    高桑栄松君 どうも法律をつくる人は、法律を見てここにはこう書いてあると、何か質問するとここにこう書いてありますとよく言います。しかし一般市民は、何か行動を起こすときに六法全書を開きながら行動している人はいません。だから、あなたの言っているのはつくった人の考え方です。適用される人は適用されるときに初めてわかるわけだ。  だから、私に言わせれば、この法律を一番と二番に分けて、一番は氏名、住所は言わない、サーベイランスだけの届け出、これは私は必要だと思っています。ただし法律でやるべきかどうか。法律でなくたってドクターは協力すると私は思います。しかし、二番目の必要に応じて質問をし命令する、こういうところが、そこだけを見ると必要に応じて何だと。よく読んだら麻薬中毒者と売春婦だ。そういうのをよく読めばの話で、読まなきゃ売春とフリーセックスの区別なんかできっこないんだから。それを、できないものをやるように書いてあるわけだ。そして、役に立たない、だれも使わない法律をつくるのが立法府の仕事かと。アメリカの討論会でございます、私が言っているわけじゃない。そういうばかげた話だと言っていますよ。  だから、これは議論をしてもしようがないので、きのう質問いたしました中の一つで、カウンセリング体制整備強化するということを大臣も約束してくださったと思いますが、これについて時間が余りないのでできるだけ簡単に、どういうふうに考えるか、具体的にちょっと示してもらいたい。
  41. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) カウンセリング体制整備でございますが、これはエイズ対策におきますカウンセリングの役割が非常に重要であるわけでございまして、我々といたしましても、我が国の実情に合った方法で実施していくことができるように、カウンセリング手法開発、また関係者にお願いをいたしましてカウンセラーの養成、その体制整備努力をしてまいりたいと考えております。
  42. 高桑栄松

    高桑栄松君 本当はいつからどんなふうにと思ったんですが、時間も少ないので、もし時間があるようだったら伺います。  私は、エイズに関する研究というものは、基本的なものはHIVというエイズウイルスが発見されたというか同定されたというか、一九八三年、四年、あのころから基本的な考え方は余り大きく変わっていないんです。しかし、エイズウイルスの解明、ウイルス自体の解明は非常に進歩しつつあると思うんです。ワクチン開発にしてもそうです。それから延命薬の開発にしても希望を抱かせるようなデータが出てきていますよね。それがいつになるのかわかりませんけれども、私ももちろんそれは期待しております。そういう意味で、私は極端なことを言うと、治療薬開発されれ ば、つまり梅毒やりん病のように確実に治療ができるのであれば私はこの法律に対する考え方を私自身も変えてもいいと思うぐらい、これは決定的な要因なんだから。  ですから、ほかのとエイズが違う、この決定的な要因は、やっぱり致命率が極めて高いということなんですね。STD、性行為感染症であると同時に致命率が非常に高い。だからメリットが何もない。そういうことですから、プライバシーにしてもほかの性行為感染症とは違うんです。ですから、これが決定的に私は法律をつくる上のマイナス要因だと言っているんです。  ですから、今法律をここに上げようとしておられることは、私はエイズ研究開発に対してむしろ妨害要因になるんじゃないかと恐れるぐらいです。だから、法律というものを今急いで上げることはよくないことであろう。私は今幾つか挙げましたが、そういった例えばカウンセリング体制もできていないではないか。だから、血友病方々の中で感染をした人の救済、これは全然別なんだから、予防とはこれは別です、もうはっきり医師のコントロール下にあるんですから。そういう意味で、私は法律というものを今出すことはいかにも拙速ではないかと思うんです。これは大臣にお答えをいただければと思いますけれども
  43. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘の問題につきましては、御承知のようにこの法律血友病患者は分離しておるわけでございまして、そのような考え方でいるわけでございます。  さらに、この法案につきましては、やはり患者感染者人権プライバシー保護と同時に、二次感染を防いでいくというために、将来相当な勢いでふえるであろうこのエイズ感染者患者を今の段階で食いとめるという意味から考えましてもこの法案提案し、御審議いただいておるわけでございまして、どうぞ御理解賜るようにお願い申し上げたいと思います。
  44. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、最後にもう一つ大臣にお願いをしたいと思いますが、先ほどちょっと私が渡辺委員からいただいたこれをお話しいたしましたけれども、今のカリフォルニア提案エイズ届け出制が住民投票の結果拒否された、否決されたということでありますが、これは地元医師会も反対をしているという部分なんですけれども、これに関連するんですが、それからきのうも申し上げましたが、輸血感染がもう間違いなくありますから、昭和六十年度、六十一年度、もうきのうの答弁の中でもはっきり輸血によるエイズ感染が十数名か二十数名か知りませんが、数字は予測だけの話ですが、十数名以上間違いなくあるわけです、六十年度、六十一年度だけでも。五十九年度もあるはずです。  ですから、そういう人たちに出てもらって、そして検査をして安全であることを、ほとんどの人が安全なんですから、その該当者は出てもらう必要が僕はあると思うんです。この検査は匿名であることはもちろんですが、無料でなければならぬと思うんです。だって輸血の保証をしてくれなかったんだから、それでかかってしまったとすれば大変なんだから。だからマイナスであることを保証してもらうためにもこれは無料でなければならぬと思うんです。ですから、これは匿名、無料、そういう検査体制を全国的に早急に整備して、そして輸血感染の人の数少ないにしても、これは社会防衛という言葉というのは少数者を除外するということじゃないんですから、匿名、無料、その検査体制は輸血感染方々に進んで出ていただくというためにも必要であると私は思います。このことについての大臣のお考えを承りたい。
  45. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) エイズ対策を進めていく上では、感染心配する人がプライバシー保護に不安を持ちまして検査を受けに来なくなる、そういうことがないようにしなければならない、それは全く御指摘のとおりだと思います。このために匿名の検査体制、この整備は急がなきゃならぬわけでございまして、そのような体制整備を進めてまいることにいたしております。さらに、この点につきましては地方自治体等関係者がいるわけでございますので、そういう関係者協力を求めてまいりたい、かように考えております。  それから、無料の点につきましては、現在そういうことは考えておらないわけでございますので御理解いただきたいと思います。
  46. 高桑栄松

    高桑栄松君 どうもありがとうございました。
  47. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 十二時三十分再開することとし、休憩いたします。    午前十時五十九分休憩      ─────・─────    午後零時三十六分開会
  48. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、高桑栄松君が委員を辞任され、その補欠として中野鉄造君が選任されました。     ─────────────
  49. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 休憩前に引き続き、医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群予防に関する法律案の両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  50. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、本題に先立って委員長に申し上げておきたいと思います。  大体、本日の委員会は委員長職権で開かれたとはいいながらわずか二時間足らず、それを早朝から三回にわたって細切れにするような運営、本委員会といたしましては全く前例のない無定見な運営であると思うのです。こういうことは認めるわけにはいかないわけですから、強く抗議をしておきたいと思います。  本題に入りますが、私は、まずエイズ予防法案は、患者皆さん方、そして医師研究者の皆さん方、関係者の納得が得られるところまでこれは審議を尽くすべきであると思っておりました。ところが、不十分な審議のままで結論を急ぐという委員会運営、こういうやり方に対しても強い不満を表明しておきたいと思うのです。  日本のエイズ問題を論ずるときに、血友病患者感染者対策を抜きにしては語れないということは私も繰り返し主張してきたところでございます。本人に何の責任もない血友病患者を恐るべき犠牲者にしたのは、まさに国と製薬企業の責任である、このことが明日ではないかという立場で追及をしてまいったのであります。  それで、大変短い時間でございますから、私は国の責任に属するところを二、三明らかにしておきたいと思うのです。  既に昨日の論議の中でも明らかにいたしましたように、医薬品の有効性、安全性の確保のために与えられている薬事法の監督権限を、この血液製剤に関しては何一つ有効な法的対策をやってこなかったということはお認めのとおりでございます。きのうの質問の中で薬務局長はこう言われました。予見ができなかったのかという質問に対して、当時予見ができなくて大変残念であったという意味の御答弁をなさいました。けさまた大臣が、不可抗力とはいえというお言葉をお述べになりました。果たしてそうなんだろうか。私はこんな言葉を使われるということであれば黙っているわけにはいかないと思うわけでございます。  私どもの手元にある文献、資料等を見ましても、予見はできたはずであります。ミドリ十字では、現須山社長は研究部長のころ、五十七年にその問題点を既に知っておったということさえも言われているではありませんか。私たちは、予見ができなかったとか不可抗力だ、こんなことは黙って認めるわけにはまいらない。  既に昭和五十七年七月の時点にアメリカ防疫センターの週報では、血友病患者に三人のエイズ患者が出たこと、血液製剤による伝播を示唆するということが提起されて、そうしてアメリカではFDA、NHFが合同会議を開いて血液製剤の安全性に関する検討を開始してきているのは御承知のとおりではありませんか。そして、FDAやNH Fの合同会議を開いてこの安全性に関する検討を開始した結果、八三年の三月二十四日にはアメリカのFDAでは勧告まで出している。感染性の伝播の危険があるとわかっている製剤に分画してはならないということで製剤メーカーに対してこういう勧告をしておったわけであります。  したがって、当然我が国のように九〇%以上アメリカからの輸入血液を使っているという国では、エイズが血液によって伝播するということを予見したら直ちに輸入血の禁止をやることが必要であったわけであります。ところが、国内ではそういうことはおやりにならないで、五十八年の八月になってメーカーに加熱処理の開発を要請する、そして片やハイリスクグループからとった血液でないという証明書を添付させるなどということしかやってこなかったわけであります。したがって、アメリカからの原料血の輸入を禁止して、既に輸入されている危険とされる血液から製造された非加熱製剤の販売を禁止することができていたら、今日血友病患者にとってはこれほど大勢の皆さん方が残酷な犠牲をこうむらなくても済んだわけでございます。  そういう事態が明らかであるにもかかわらず、大臣、不可抗力だったなどと絶対に言ってもらったら困る。薬務局長も、予見できなくて残念であったなどということ、これは認めるわけにはまいらないと思いますよ。その点について簡潔にひとつ御答弁をいただきたい。
  51. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 私の発言についての御指摘がございましたので申し上げたいと思いますが、不可抗力という言葉は確かに使いましたけれども、これは血友病患者にとって不可抗力であった、こういう意味で申し上げたわけでございますので、ぜひ御了解いただきたいと思います。
  52. 北郷勲夫

    政府委員北郷勲夫君) 昨日来いろいろ御答弁申し上げているわけでございますが、エイズの経過を振り返ってみますと、昭和五十六年にカリフォルニア大学のあるお医者さんが、ロサンゼルス市内の三つの病院で五人の同性愛の肺炎の患者が出ているというようなところから発見の端緒があったわけでございまして、それ以後、同性愛者の生活習慣から来るものではないかとか、あるいは特定の地域の風土から来るものではないかとか、いろんな学説が揺れ動きまして、最終的にウイルスの確定が行われましたのが、一九八四年、昭和五十九年の四月、これはフランスでございます。それからアメリカでは五月であったわけでございます。  その間に、一方血友病患者治療薬として凝固因子製剤ができまして自己注射が可能になるというようなことが昭和五十八年の二月でございました。こういった非常に患者さんに福音をもたらした薬が結果的に非常にまた感染というような事態を伴ったわけでございますが、こういった患者さんにとって非常に大きな福音であったものでございますだけに、この薬をやめるとか緊急に薬の製造を中止するとかということにつきましては、非常に明確かつ科学的な一つのデータに基づくことが必要だったわけでございます。そういった点から申しまして、当時そこまでのいわば科学的な証拠というものが得られなかった、したがってできるだけの予防措置を講じつつ薬の使用を続けた、これが実情でございまして、当時、私申し上げましたように正確に予見することはできなかったという点は私は事実だと考えております。
  53. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 短時間ですからやりとりはやめます。しかし、予見できなかったとか不可抗力だったというようなことはこれは撤回をしていただかなくちゃなりません。  例えば、厚生省提出をしていただいた血液凝固因子製剤エイズ対策という一覧をいただいたわけですが、これによりますと、五十八年六月に我が国ではエイズ実態把握に関する研究班を設置しているんです。五十八年の七月、翌月七月にはエイズのハイリスクグループに属する者より採血されたものではないという旨の証明書の添付をするように指示した。五十八年の七月には上記研究班会合において血液製剤の安全対策を検討した結果、輸入禁止等の必要はないとされ、できるだけ早く加熱処理した製剤の開発をするように指導した、こういうふうに言われておる。私は当然研究班検討の結果だろうと思って研究班の報告書、それからさらに小委員会があるんだというので小委員会の意見というものを克明に拝見いたしましたけれども、安全対策を検討した結果輸入禁止等の必要はないなどという文言は一つも述べられていない。  一体どうしたんだ、どこに書いているんだということで私どもお聞きをいたしましたら、これは何と恐れ入ったことに、いや実は記録もない、会議録もないんだと。新聞報道にこういうふうにありますと言って新聞の切り抜き持ってきてくれた。こんな重要なことが会議録もない、きちんと報告もできないというようなこと、こんなことは認めるわけにいかぬじゃないですか。そうしたら、研究班だとかあるいは小委員会で出した結論をねじ曲げて政府がそういうことをやったとしか考えられない。こういうことだって非常に問題点だと思いますが、コメントがあれば若干伺っておきましょう。
  54. 北郷勲夫

    政府委員北郷勲夫君) 新聞と申しますよりも報告書自体でございますが、報告書のところを簡単でございますがちょっと読ませていただきますと、クリオの適用を拡大することには限界があり、補充療法の主体としての濃縮第VIII因子製剤の地位は動かしがたい、こういうふうに明記されているわけでございまして、これは輸入禁止とかこういうものには触れてない、当然のことでございますが、そういうことの必要はないというふうに読むのは当然だと私ども考えております。
  55. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大変重大な政策上の問題でありますので、その点は私ども克明に見ました。今読まれた部分のところも私存じ上げております。しかし、輸入禁止をするかどうかというのは、薬事法に基づく権限を行使するかどうかという境目の問題なんです。したがって、極めて重要なのでその点については指摘をしておきます。  時間がありませんので、最後に私、大臣に一、二お聞きしておきたいと思うんです。  血友病感染者というのはどう考えてもやはり血液行政の最大の犠牲者でしょう、いろいろ言われても。あなたは、昨日も私お聞きして、お気の毒ですとしか表現なさらない。私は、本法案審議の前提として、いわゆる血友病患者感染者が非常に多いというこの我が国の特徴というものを踏まえた上で、国にも大きな責任があって申しわけなかったぐらいの一言はぜひ述べてほしかったですよ、本当は。仮にこの法案が成立しようがしまいが、血友病方々は発病の恐怖と闘いながら生きていかなきゃならないんです。これは冷厳な事実ですよ。  そこで大臣血友病患者感染者には、これは繰り返し各委員からも言われておりますけれども発症予防治療研究、そしてワクチン開発、それから保健福祉の相談事業、生活の補償ということなど、可能な限り万全を尽くす努力をするべきであると私は思うんです。患者の要望をよく聞いて、これは全力を尽くす努力をぜひお約束をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  56. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 血液製剤を使うことによりましてエイズ感染また患者になられた方々、これは先ほど申し上げましたように、全くその製剤を使うということが不可抗力であったわけでございまして、そういう点では避けられなかったという意味でこれは大変御同情申し上げておるわけでもありますし、お気の毒なことだというふうに私は率直に申し上げまして心からそう思っております。  エイズ対策を進めていくためにも、この血友病患者の中で感染もしくは患者になられた方々に対する支援といいますか救済といいますか、また今後の問題については、これはまずそれを行わなきゃならぬ、それからエイズ対策に取り組むべきであるということをしばしば申し上げておるわけでございまして、御意見のことにつきましては私も 全く同感でございます。ですから、今後とも誠意をもってこれらの方々に対する対応は可能な限りしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで最後にもう一つ、時間がもうありませんので、お伺いをしたいのは、血友病患者方々の大きな心配一つあるわけです。これは論議の中でも明らかになりましたように、キャリア全体の九二%が血友病患者の方だということでもありますから、今後当然患者が増加することもあります。次々出てくるのは血友病患者方々の発病ということに残念ながらなってくる可能性はあるわけです。そういう中で誤解や曲解に基づくものから、あるいはいろいろな偏見も含めて、今後血友病患者人権侵害の事案というのが発生する可能性というのが心配されるわけです。  そこで大臣、私はこんなことが起こるようなことを許してはならないと思うんですよね。まず、人権侵害が起こらないように配慮と理解国民に求めるという点、これはエイズについての正しい理解、そういうことを十分やる。そして一方、万一そういう中で人権侵害等が発生した場合には、あらゆる手だてを尽くして血友病患者を守るという、あるいは全力を挙げて人権擁護のために努力をするというお約束をしておいていただきたいと思うんです。患者さんはこの点を一番御心配になっておると思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  58. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) エイズ対策を進めていく上で、今御指摘がございましたような患者感染者、この方々に対する社会としての差別偏見、この問題をなくしていくということは極めて重要な課題であると思います。そのためにはやはりエイズに対する正しい知識を持ってもらう。それで、この病気は特殊な病気ではなくて、だれもがかかり得る病気であるということでもあるわけでございまして、社会全体として温かく受け入れられるようなそういう社会をつくっていくためにこれは全力を挙げていかなきゃならぬと思うわけでございます。  また、今御指摘のような問題については、可能な限りどういう対策がとれるものか、十分に考えてみたいと思っております。
  59. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。  これより両案の討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  60. 山本正和

    ○山本正和君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっている両案のうち、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に反対の立場から討論を行うものであります。  反対する最大の理由は、本案の必要性自体が全く理解できないばかりか、逆にエイズ蔓延法として機能するのではないかという疑念が一層深まったことであります。  政府は、本法案提出の目的を、プライバシー人権保護に配慮しつつ、エイズの伝染の防止、予防に資するものであると説明していますが、本法律案については、患者感染者医師の診断から遠ざかりエイズ自体が潜在化すること、医師患者の信頼関係が損なわれること、プライバシー人権を侵害し患者感染者への差別を助長すること、医師公務員の主観的判断によって誤った判断や人権侵害のケースが生じること、さらには、外国人に対する上陸拒否の認定方法も極めてあいまいであること等々多くの問題点指摘されたにもかかわらず、このいずれについても政府側より納得いく答弁が得られなかったのであります。  衆議院修正によって、血友病患者は法の対象から除外されたと説明されていますが、そもそも血友病患者皆さんは別途厚生省研究班によって報告、集約されているため、医師による報告自体が不必要であります。また、都道府県知事の健診勧告等の措置医師から通報された者に限る修正も行われていますが、もともと医師受診している血友病患者にとっては何らの実質的な意味はないのであります。  すなわち、修正自体全く無意味であるばかりか、法文そのものに血液凝固因子製剤の投与により感染した者を除外すると規定したことにより、逆に特殊な存在、危険な存在として社会に刻印されるマイナスの方が大きいことは、患者団体の皆さん指摘によっても明らかであると思うのです。  エイズ予防のためには、何よりもエイズに関する正しい知識の周知徹底感染者という弱い立場の個人が自発的に受診する体制確立することが急務と思われるにもかかわらず、法案は、社会防衛的観点から多数の者にエイズ感染させるおそれのある者を医師にピックアップさせ、行政によるチェックの対象とする構成となっており、このような形では、エイズ予防法ではなく、逆に感染者潜在化させ、結果的にエイズ蔓延法として機能してしまうのではないかということは、法案提出以来受診件数が激減している事実、さらには、かつてのイギリスにおける梅毒の強権的取り締まりが失敗した歴史等々が何よりも雄弁に物語っていると言わざるを得ません。  また、医師に報告義務を課することも、医師患者との信頼関係が損なわれ、結果的にエイズ予防治療にマイナス効果をもたらすことは必至であります。  政府が真にエイズ予防蔓延防止のための立法措置が必要と考えるならば、いたずらに行政による管理と規制を強化するのではなく、プライバシー保護を全うしつつ疾病サーベイランスができる仕組みを制度化すること、さらには、エイズだけを特殊の疾病として単独立法をし差別感をあおるのではなく、性行為感染症全体を対象とした施策を講ずることとし、時代おくれの性病予防法はこの際廃止する等の措置が必要であります。  エイズ予防法案については、昨年の三月に提案されて以来、血友病患者団体を初め学者、医師法律家等から多くの疑念、不安が表明され、国会での審議においても、幾つもの疑問点、問題点質疑や参考人の意見陳述の中などで明らかにされた事実に政府は率直に耳を傾けるべきであります。  私は、政府に、いたずらにメンツを優先させる形で法案の成立を急ぐのではなく、今こそ再検討をする勇気を持つべきであることを強く求め、大臣の再考を促し、反対討論を終わります。
  61. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております後天性免疫不全症候群予防に関する法律案につきまして、賛成の意を表するものであります。  後天性免疫不全症候群すなわちエイズの蔓延は欧米を初めとして世界的に深刻な状況にあり、その患者数は、WHOの集計によると世界で十二万人を超え、感染者の数は五百万ないし一千万人と推計されております。幸い我が国エイズ患者はなお少数にとどまっておりますが、欧米諸国での経験にかんがみ、患者数が少ない今のうちに緊急に総合的な対策を講じ、エイズの蔓延を防止することが必要であります。そのためには、国民に対する正しい知識の普及を初めとして、感染情報の把握、二次感染防止対策の強化、国際協力及び研究の推進等の施策を総合的に進めることが必要であります。  本案は、人権保護に特段の配慮を行いつつ、エイズ予防に関し、法律上の措置が必要な事項について定めることにより、エイズの蔓延の防止を図ろうとするものであります。また、衆議院での修正により一層の内容の改善が図られたものと考えます。  したがいまして、私どもといたしましては、この本案に賛意を表するものであります。  これをもちまして私の討論を終わります。
  62. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に対する反対討論を行います。  この法案は、大変問題の多い法案で、もっと時間をかけて審議を尽くす必要があるのに、委員長 職権で質疑終局し、採決に持ち込まれますことは非常に遺憾であります。  この法案に私どもが反対する第一の理由は、この法案は、その目的とするエイズ蔓延防止に役立たない、むしろ逆効果になるのではないかということであります。  法案は、感染源の把握のため、医師による都道府県知事に対する第五条の報告や、また第七条の氏名等の通報の規定を設けておりますが、これはエイズに対する治療薬もない、治療法確立していない現在、エイズ感染の不安を持つ者がプライバシーの侵害をおそれて医療機関から遠ざかることになり、感染者潜在化を招くことは明らかであります。  このことについては、同僚議員もしばしば指摘し、また参考人として本委員会に来られた性行為感染症研究の第一人者である芦澤正見教授も指摘されたことであります。また、法案提出以来、都立駒込病院受診者数が大幅に減少している事実、さらにまた大井玄教授のアンケート調査などによっても明らかであります。その他多くの学者、医師法律家が反対表明している理由もこの点にあります。  反対の第二の理由は、この法案は、基本的人権プライバシー保護に欠けているということであります。  この法案においては、確かに人権保護に関する規定を置いており、またプライバシー保護のため、医師公務員には守秘義務が課されているわけでありますが、感染者患者は、神戸などの例を見ても、人権プライバシーの守られる保障は何もないと言っておられます。この法案が第八条で都道府県知事に勧告権、命令権、また第十条で知事の指示により公務員質問権を与えていることは、強権的、取り締まり法的色彩の濃いものであり、感染者患者プライバシー人権の侵害につながるおそれがあります。そもそもエイズ予防法案を単独立法として制定すること自体が、感染者患者に対して差別となるおそれがあると考えます。  反対の第三の理由は、このエイズ予防法案血友病患者に対する偏見を強めることになるのではないかということであります。  我が国エイズ問題の特徴は、血液凝固因子製剤投与によるエイズ感染者が大きな比重を占めていることであります。血液製剤によりエイズ感染被害を受けられた方々救済事業は、不十分ながら一応その具体案がまとめられましたが、国と製薬会社責任は明らかになっていません。救済事業実施のために準用する法律の改正案は、問題の多いエイズ予防法案とは別個に速やかに採決し、救済事業の内容の一層の充実を図るべきと思います。エイズ予防法案の採決を急ぐことはない、もっと審議を尽くすべきであると考えます。要するに、このエイズ予防法案エイズ患者感染者保護、弱い立場にある人々に対する配慮が欠けております。  また、この法案は、医師に過大な責任を押しつけ、医師患者の信頼関係を損ない、患者潜在化させる、感染者潜在化させるおそれの多い法案であり、エイズ蔓延防止に役立つとは思えません。  今、我々のなすべきことは、サーベイランス機能を強化し、匿名無料検査体制、診療体制カウンセリング体制確立を急ぐことであります。さらにまた、緊急の課題である治療薬研究開発のため、予算の大幅な充実などを実現することであります。  ここに後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に対する反対を強く表明し、討論を終えます。
  63. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に反対の討論を行います。  エイズ対策は、本来、性感梁症と位置づけられ、国民への正しい知識の普及、プライバシーの厳格な保護のもとに検査相談治療体制確立することが基本であります。  ところが、本法案は、取り締まり法的性格が強く、実効あるエイズ蔓延防止策にならないばかりか、病気と闘っている患者感染者プライバシー人権を侵害するものとなっています。また、本法案は、患者感染者潜在化を招き、エイズ対策上マイナスの効果を果たすものと言わなければなりません。その上、医師に報告義務を課すことによる医師患者の信頼関係の破壊を行い、予防治療の上で重大な障害となるでありましょう。我が党は、このような法律は必要ないと考えます。また、人権を守る立場から本法案には絶対に反対であります。  本法案の第五条が修正をされ、血友病患者があたかも本法案の適用を除外されるがごとき宣伝がなされています。全くの誤解であります。この修正の問題点は二つです。第一に、修正なるものを血友病患者は全然望んでいないということ。第二に、「血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、」としたことにより、かえって血友病患者エイズ感染した恐怖の集団として国民に印象づけられることになり、この修正にも反対であります。  そもそも我が国エイズ問題の特徴は、血友病患者こそが最大の犠牲者であることです。我が国HIV感染者の九二%が血友病患者であり、その半数が子供たちではありませんか。この悲劇の最大の責任が国と製薬企業にあることは既に明らかであります。国はみずから決めた血液自給の方針に責任を持たず、無制限な売血を含む輸入血液製剤使用を追認してまいりました。この血液行政の失政が今日の悲劇の根源であります。国はまた、安全な血液製剤開発等が国の内外で指摘されても、例えば輸入の一時停止などを含め、迅速、適切な対応をとらなかった責任は大変大きいわけです。この国の姿勢と歩調を合わせるがごとき製薬メーカーの無責任さは、先日の当委員会で私がミドリ十字の内部文書を示したところであります。私は、国と製薬企業は血友病患者に対して当然賠償の義務があると確信するものです。  私は、国に対して、血友病患者感染者に十分な補償をするべきこと、安全、厳格な薬務行政を進めることを重ねて要求し、反対の討論を終わります。
  64. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより順次採決に入ります。  まず、医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  65. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に賛成の方の挙手を求めます。    〔賛成者挙手〕
  66. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、宮崎秀樹君から発言を求められておりますので、これを許します。宮崎君。
  67. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 私は、ただいま可決されました両案のうち、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に対する附滞決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一、エイズウイルス感染者のために、カウンセリング体制整備発症予防治療事業の大幅な拡充等健康管理のための施策充実強化に特段の努力を払うこと。特に、エイズの特性にかんがみ、治療薬ワクチン等研究開発充実強化すること。  二、法に基づく医師の通報により把握された感染者等について、都道府県等関係行政機関 は、秘密の保持に格別の注意を払うこと。  三、エイズウイルスに関する抗体検査カウンセリング実施等に当たっては、匿名方式を採用する等、そのプライバシー保護徹底を図ること。  四、治療法の進歩、新たなタイプの感染症の出現等に対応して、伝染病予防、性病予防その他の感染症に関する現行制度につき、今後、総合的な検討を進めること。  五、血液製剤国内自給を促進するため、各省庁の緊密な連携のもとに、成分献血を含む新たな献血推進への幅広い国民各層の協力を求める体制整備すること。    特に、血友病患者使用する凝固因子製剤献血血液により完全に供給できる体制を早急に確立すること。    なお、血液製剤によるエイズ感染者に対する医療手当については、今後ともその内容改善に努めること。  六、法施行後、三年を目途に、患者感染者発生状況治療法研究開発状況等を勘案し、必要に応じ、法の規定検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。   右決議する。  以上でございます。
  68. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) ただいま宮崎君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  69. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 全会一致と認めます。よって、宮崎君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、藤本厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣
  70. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。
  71. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) なお、両案に対する審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 前島英三郎

    委員長前島英三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会