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1988-12-20 第113回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案(衆議院提出) ○後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案(第百八回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付) (会議録情報)

    昭和六十三年十二月二十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十二月七日     辞任         補欠選任      高桑 栄松君     片上 公人君      内藤  功君     宮本 顕治君  十二月九日     辞任         補欠選任      片上 公人君     中野 鉄造君  十二月十日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     内藤  功君  十二月十四日     辞任         補欠選任      中野 鉄造君     高桑 栄松君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         前島英三郎君     理 事                 佐々木 満君                 宮崎 秀樹君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 高桑 栄松君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     末次  彬君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省薬務局長  北郷 勲夫君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案衆議院提出) ○後天性免疫不全症候群予防に関する法律案(第百八回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群予防に関する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 この問題に関しまして、きょう限られた時間でございますが、率直に政府側問題点を明確に、言語明瞭意味不明じゃなくて、言語も意味も明瞭にひとつ答えてもらいたい、冒頭申し上げておきます。  まずその前に私は、ことしの五月十日に当委員会で、藤本厚生大臣がいわゆるWHOOECDを含めての社会保障サミット会議出席をするということがございまして、このとき私は、国際会議に臨むに際しての大臣基本的な姿勢考え方をお伺いをいたしておきました。もちろんエイズ対策を含めてどう臨むのかということをただしております。  そこで、大臣出席をされまして、あなたが大臣として国際会議基本的に何を重点に主張されたのか。また、国際会議におけるある程度合意事項、そしてエイズ問題がどういうふうに取り上げられ、どういう結論になったのか。この点、まず冒頭聞いておきたいと思います。
  4. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) OECDの第一回目の厚生大臣会議がことしの七月にパリで開催されたわけでございまして、私も参加をいたしました。提唱国ということもございまして副議長に選任をされまして、おかげさまで会議で非常に重要な役割を担わさしていただきました。  会議は、社会保障の将来像、それから年金医療、この三つ分野につきましてそれぞれ時間をとりまして、導入演説、それから各国の代表の質疑という形で進められたわけであります。  私は、最初社会保障の将来像ということにつきましてまず最初導入演説をいたしたわけでございますが、この導入演説につきましては三つの点を主張いたしておりまして、まず第一に、今後の活力のある社会をつくっていくためには経済の持続的な成長と雇用の確保が必要であること。それから二番目には、今後の社会保障制度については負担の問題が大きい問題でございまして、社会経済活力を損なわない程度負担は考え、また公的部門民間部門役割も非常に重要でございますから、そういう効率のいい、また安定した社会保障の再構築というものが大事になってくる、それから三番目は、当然平均寿命が延びまして高齢者が多くなるわけでございますから、この方々の社会参加という問題も非常に大きな問題であるということを中心として導入演説を行いました。  これに対しまして各国の反応は、特に社会保障の再構築につきましては個人自助努力尊重、また公的部門民間部門が補完し合って個人選択に任せながら役割分担を進めていかなきゃならぬわけであります。そういう問題について特にいろいろな国の反響がございましたが、自己責任個人自助努力尊重につきましてはアメリカ賛意を表しました。それから北欧の国々の中では、個人自助努力も大事であるけれども社会連帯重要性主張する国もありました。それから高齢者社会参加ということにつきましては、多数の国が賛成をしてくださいました。  それからエイズにつきましては、OECDの方からエイズ現状につきまして報告がございまして、非常な勢いでエイズ患者がふえておる、それからまたそれに対しての医療費、直接間接を含めたそういう費用が増加をしているというような報告がまずございました。それに対して日本といたしましても、エイズ蔓延を防止するために正しい知識の普及、国際協力の推進、それからWHOに対しましてもこれらの活動のために財政的な援助も強力に推進していくというようなことを申し上げた次第でございます。
  5. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 今、一般論的な社会保障制度考え方ということを主張されておりますが、大臣、私は社会保障旬報をちょっと読ませていただきましたが、今あなたがお答えになっているようなことは流れとしては出ていますけれども、どうも大臣主張を見ますと、二十一世紀社会保障のためには個人自助努力民間活力が重要である、この立場を極めて強調されて、そこにウエートを置いて強調されている感が深くします。  それから、社会保障水準がもはや我が国においては国際的な中にあって全く満たされている、こういうことが強調されているんだけれども、どうも私はこれ大臣の思い過ごしじゃないか。それほど社会保障水準が満たされているんであれば、何で年金の改正だとか、来年は医療の一本化だとか、弱者の介護問題等も今なお国会で問題になって特別対策をやろうということになっているわけでしょう。だから、どうもあなたの主張がこのとおりだとすれば、私が持っている社会保障旬報内容のとおりだとすれば、どうもあなたの認識というのは国民と随分乖離しているんじゃないか。  私は日本社会保障水準がそういう水準に達しているとは思っておりませんし、国民世論調査を見ましても、今なお老後への不安そしてこれからの自宅介護の問題、医療の不安というのは一番多いんだよ。そういうときに、国際会議であなたのそういう一定の社会保障水準に達しているという、これによればそういうふうになっているのですが、私はこの考え方については、大臣のそういう意味水準評価はむしろ誤りである、こうはっきり申し上げなきゃなりません。むしろこのことに対しては、これから公的機能公的介入、こういう問題こそ二十一世紀社会保障充実には重要である、こう私は考えておりますので、この点大臣のいま一度の考え方を。認識の違いがあれば別だけれども、私はそういう考え方を堅持すべきである、こう思っています。  それからもう一つは、今確かにアメリカあるいはイギリスはあなたの主張に対しまして賛意を表されたということが言われました。私が今読ませていだいて分析をいたしますと、スウェーデンあたりはこれに対して、今あなたが言ったけれども自助努力だけではなくて公的介入公的機能援助ということがやっぱり大事であると。確かにスウェーデンは全体の社会保障福祉負担というものは国際的には六〇ないし七〇近く行ってるんでありますが、逆に雇用対策を見ますと、これまた国際的には失業率が一・二%ですよ、スウェーデンの場合は私が持っている資料では最近一・二から三だ。こういうことを考えた場合に、確かにそれは国民的な社会保障への負担は高まっておっても、失業その他社会保障制度水準というのはスウェーデンは高い。  きのうも私は税制特別委員会で質問いたしましたが、公明党の同僚議員が質問しておりましたが、やっぱりそれなり水準がこれからの問題だということが指摘をされているわけですね。だから、そういう認識というものはいま一度やっぱりきちっとしておかないと、あなたの認識と私とはやっぱり違いがある、こう思うんですが、いかがですか。
  6. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) これからの福祉を考えますと、やはり個人自立自助社会相互扶助、それから国と地方の公的なサービス、この三つが大きな柱になるわけでございまして、この三つ相互機能しかつ補完し合うというところに立派な内容充実をしている福祉というものの実現が期待されるということであろうと考えまして、そういうことを申し上げておるわけでございます。そういう考え方の中で公的なサービスを後退させよう、それでいいんだという考えは毛頭これはないわけでございまして、その点は私もそのように考えておるわけでございます。  それから、今後の社会保障制度を考えますと、負担がふえてまいることもこれ事実でありまして、この負担国民皆さん方がいろんな形で負担をするわけでありますから、社会保障制度を安定させていくためには負担も十分に可能な範囲で合理的に制度というものも再構築していかなきゃならぬ、そういうことも当然であろうと思います。そういう考え方から申し上げていることは、基本的な分野はこれは国の制度できちっとやりますと。それから社会価値観、ニーズも多様化するわけでございますから、そういう周辺部分選択のできる分野については民間活力も導入して、その両方がうまくこれまた補完し合って充実した社会保障制度を期待していきたいというふうに申し上げておるわけでございます。  それから、社会保障水準につきましてはいろいろな見方があると思うわけでありますが、例えて言えば年金を取り上げましても、我が国年金水準というのは平均報酬の六八%を目指しておるわけでございます、モデル年金におきまして。そういう数字が欧米の今の現状に比べて決して遜色のあるものではなくて、むしろいい水準であるということなどを念頭に置きまして申し上げたわけでございます。
  7. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 前段の方の、社会保障充実あるいは強化対策基本は、やっぱり国が公的になすべきものである。この柱を踏まえて自助努力なりあるいは民間活力というものを十分生かして、そしてあるべき社会保障水準というものを維持していく。こういう今の答弁で、そういうことなら理解するんだけれども、どうもあなたの主張自助努力の方ばかり強調されちゃって、国の負担、国の公的なあり方の問題についてはどうも影が薄い、こういう感を深くしたものですからね、私はこれを今読ませていただいて。そういうことであればそういう認識でひとつやってもらいたい。  これは時間ありませんから、ここでもっと議論したいんだけれども本題の法案に入らなきゃなりませんから、その点しかと踏まえてやってもらいたいとこれは特に申し上げておきます。  そこで、当委員会でそれぞれ専門家立場からもとのエイズ法案に対する取り組み、問題等が議論されています。私は素人ではございますけれども、きちっと性格一つ一つだめ押しをしますので、その点をひとつ答弁を願いたい、こう思うんです。  まず最初に、エイズウイルス性格特徴ということです。これは当委員会でも議論されましたけれども、何かその受けとめ方がどうもやっぱりまだすっきりしていないのではないかというふうに私は考えるわけです。  そこで申し上げたいんですが、まずこのエイズウイルスがどのような性格特徴を持ったウイルスであるのか、正確にこれを理解しないと対策が的確でなくなる、対応を誤る、こう私は思います。そこで、その点ひとつ説明を願いたい。それからどういう感染経路をたどるものなのか、この点についてもひとつはっきりお聞かせ願いたい。まず、これをお伺いします。
  8. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズウイルスは、一九八三年に全く新しくこの世界の中で発見をされたという非常に新しいタイプのものでございます。その感染力でございますけれども、これはよく対比をされるわけでありますが、B型肝炎などと比べましても非常に弱い。そういうことからいって、一般的に性行為以外の日常生活では感染可能性はほとんどない。これが非常に大事な点ではないかと思うわけであります。  なお、血液の中にこのウイルスがあるわけでございますので、血液が直接付着するというようなそういうことによっての感染、もう少し具体的に言いますと、日本では血液凝固因子製剤の中にあったウイルスによって感染をしたというようなことが起こっておるわけであります。  また、ウイルスの特性としましては、非常に熱に弱い。したがって普通の消毒方法が非常に有効である。  それからもう一つ特徴は、これはウイルスが変異というのですが形をどんどん変えていく。そのためにワクチンの開発が非常に難しいというようなことがあります。  それから、非常に弱いタイプウイルスでありますので、感染から発症するまでの期間が非常に長い。しかし、このウイルス血液の中で特にある種のリンパ球、これをTリンパ球と言っておるのでありますが、こういうものに選択的に感染をするわけでございまして、そのために人間の側の免疫機能が落ちてしまう。そのためにいろんな簡単な病気感染をして死に至る。  こういうような特徴を持っておるわけでございます。
  9. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 だから、一般論でいろいろ言われている感染経路、ただいま答弁ございましたけれども、いわゆる我々日常あるいは医療施設での医療行為として考えられる種々の行為がございますね。例えば母乳保育であるとか、あるいはたん、唾液であるとか、あるいは家庭内の日常生活の入浴の介助だとかあるいは食器の共用とか、小昆虫による吸血、こういうものがいろいろ言われている。  しかしそうじゃなくて、今のあなたの答弁をきちっと整理するならば、まず第一は感染者との性行為、異性間あるいは同性間の問題。それから第二は、汚染血液または血液製剤注射。第三は、静脈注射による薬物常用者、つまり精神異常者その他も含めてでありますが、薬物常用者注射針共用。そして母子の胎内感染整理をしてみるとこういうことなんだと、これ以外は感染することはないんだと。国民サイドで、これはそういうことなんだという整理でいいんですか。そういう考え方をきちっと整理をすればこういうことであると、端的に答えてください、その辺。
  10. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 先生が今四つの点を御指摘いただいたわけでありますが、まさしくそのとおりでございまして、それ以外の日常生活の中で感染する可能性はまずない、このように考えてよいと思いますので、私どもも鋭意そのエイズ感染形態について適切な指導をしてまいりたい、このように考えております。
  11. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 そこで私は次に、世界流行の中における日本エイズ対策の現況、あえて言えば位置づけといいますか、これに対する認識をちょっと聞きたいと思います。  今日の世界エイズ患者、キャリアはどの程度になるという推計をしているのか、まずこれをお伺いします。この点どうですか。
  12. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 全世界感染者数でございますけれども、現在約五百万から一千万というふうに推定をされております。将来、これが年々倍増するようなスピードでふえていくのではないかという考え方すらあるわけでございます。
  13. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 我が国現状はどうですか。
  14. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 日本の場合でございますけれども感染者数は現在千四十八名ということでございます。これの将来予測をしておるわけでございますけれども、これから四年後の一九九二年には約三千人になるのではないかというような専門家推定がございます。
  15. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 そこで、私が今なぜ聞いたかといいますと、世界エイズ流行の中で日本位置づけをどう認識判断をするのかということによって、法案を含めてこれからの対策が違ってくる。どういう評価をしているかということが問題なわけです。  私は、いろいろこの法案をめぐってそれなり患者皆さん血友病友の会皆さんにもお会いしています、家族の方にも。聞けば聞くほど、私は非常に矛盾というよりも問題だなという問題意識を深く持っているのであります。  そこで、世界エイズ傾向というのはおおむね次の三つの点が特徴と言われております。  それは、第一は、アメリカヨーロッパのように同性愛者麻薬中毒者を主体として大きな感染流行がある地域、これが一つ特徴として考えられるのではないか。それから第二は、アフリカなどに見られますように異性愛感染による一つの大流行地。第三は、アジア、東欧のようにエイズ患者数というのが極めて少ない地域。おおむね私はこういうふうに考えているのでありますが、この点の認識はどうですか。
  16. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) まさに先生指摘をなされましたように、WHO世界エイズ流行パターンを今御指摘のように三つパターンに分けておるわけでございます。  幸いといいますか、アジア地域においては日本を含めてまだ患者数が非常に少ないという状況にございます。しかし、日本でもそうでございますし、アジアの幾つかの国では既に患者の増大の傾向が見られておるということが指摘をされておるわけでございます。WHOも、将来長期的には性行為感染症としてのエイズの割合が全般的にふえていって、これらのいろんなパターンが違いはあるけれどもやがては均一化されるのではないかというふうに指摘をしておるわけでございまして、我が国エイズ対策もこのことを十分念頭に置いて長い将来のことを考えなければいけないというふうに考えておるわけでございます。
  17. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 認識は一致しているということなんだが、日本の場合は、先ほどもちょっと触れましたが、どうもエイズが大流行になるという予測なり判断ですね。これからどんどんふえていくんだと、先ほど三千人という将来の数字を言われましたけれども成人男子同性愛あるいは麻薬中毒者のような、つまりハイリスクグループ、これはアメリカでは成人男子で二〇%、我が国は〇・五%なんだね、私の調べによると。この点間違いがあれば御指摘願っていいんだが。そうなると、正常な性交渉でのエイズ感染率は非常に我が国の場合は低いと、率直に申し上げて。  だから、そういう世界エイズ傾向に対する我が国位置づけというものを判断した場合に、あえて今日単独立法をもって法律化する必要性というか、そういう条件はむしろ違うんではないのか。あえて私は言いますけれども、どうも厚生省が、かねて神戸の問題だ、高知の問題だとマスコミが騒いだ、マスコミからエイズ患者現象が出てきたと。何か政府としてやらなければどうもならぬというようなパニック的な状況に対して、小手先でとりあえずとにかく何かやらなきゃだめだ、何か手を打たなきゃだめだというような、そういう意識だけがパニック状況にあおられて先行して今日の立法化に至ったんではないか、こういうふうに私は率直に思っておるんだ。その点はどうなんですか。
  18. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 確かに先生指摘のように、ヨーロッパにおける状況あるいはアフリカにおける状況日本エイズ患者の現在の状況相当開きがありますし、それから社会生活の違いということもございます。しかし、WHO専門家指摘しておるわけごでございますけれども、それぞれの地域エイズ患者状況は違う、しかしその伸びるパターンにおいてはすべて同じ傾向をたどっておるということを強く指摘しておるわけでございまして、日本の現在の患者がこのまま横ばいで推移するということはとても考えられない、やはりじりじりとふえていくというふうに私どもは考えておるわけでございます。  そういった意味で、じゃどのくらいふえたらパニックになるのかという問題はありますけれども、今のエイズに対する医学のレベルでは全く的確な治療方法がない、もちろんいろんな延命的な治療はございますけれどもエイズそのものにずばりと有効な治療方法がないというようなことから考えますと、この日本社会の中で患者を一人でもふやさないという基本姿勢が必要であるというふうに考えておるわけでございます。  そのためにいろんな手を打っていくわけでございますが、非常にプライバシーにかかわるタイプ病気である、こういうことからいって、世界各国そうでございますけれども、そういう個人の権利を守るという観点からもきちんとした法的な規制をして、社会がそのルールのもとで予防の体制を組んでいく、これはぜひ必要なことではないかというふうに考えて法案を提案させていただいているわけでございます。
  19. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 その認識は、私はあなたと逆なんです。むしろ日本的な特徴日本的な現象というようなものをきちっと受けとめた場合に、後で申し上げますけれども、むしろサーベイランス委員会機能というものを強化したり、あるいはそれを充実することにおいて対策はとられるべき性格のものである。その認識はあなたと異にします、率直に申し上げまして。むしろ日本的な対策ということがここに求められる必要があるんだということをここで言っておきます。  そこで、問題は、本法案が有効に機能するのかという疑問なんです。私は機能しないんじゃないかと。この間も、渡辺先生もおりますけれども患者皆さんとも会い、家族皆さんとも会いました。私、非常に涙が出るほど感動しました。小学校六年生の方と中学二年生、一家で二人子供を抱えている。この方の訴えは、率直に申し上げますけれども、もう学校に行かないというんだ。友達が誘っても学校に行きませんと。これにはもうほとほと参っちゃって、全くもう精神的にとにかく暗やみの生活をしているというんです。国会で何かあるといったら子供ラジオとかテレビに非常に関心を持って、きょう何か国会エイズ問題があるとなれば、えらい子供が神経を使って、事前にテレビを用意したりラジオを用意して筆記みたいなあれを段取りしている。これは全く子供にとっても親にとってもこんな苦痛はないというんだ。  だから、何でそういうことがわかっていながらこういう法律をつくるんだということが私わからない。勉強すればするほどわからないんだ、正直言えば。患者皆さんなり家族皆さんに会えば会うほどわからない。  ところで、そういうことを私は前提にして申し上げるんですけれども、本案は率直に言ってエイズ蔓延の防止の目的であることから、感染者の関係で第五条です、問題は。第五条の医師の必要な指示、第六条の遵守事項、第七条の指示に従わない者の通報、大体そういうことを規定する意味があるのですか。その点どうですか、どういうふうに理解されているんですか、お伺いします。
  20. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 基本的にエイズがやはりこれからの人類社会にとって非常に大きな脅威であるということは、これは間違いないことだと思うわけであります。その病気をそれぞれの国においてどうやって抑えていくかということに非常に苦慮をしているわけでございますけれども、幸いなことに日本は現段階においてはかなりいろんな手が打てる、またそういう余地がある、こういう前提で私どもはいろいろ考えているわけでございます。  そこで、今先生指摘の第五条でありますけれどもエイズは御承知のように感染症でございますので、どんなルートで、あるいはどんなパターンで広がっていくか、そこを十分に正しく把握をしてそれに対して適切な手を打っていく。そういうことからいって、五条の医師の報告というものはそういうサーベイランスの基本になることでございますので、ぜひ必要であるというふうに考えております。  それから第六条でございますけれども、これは感染者が他の人に感染をさせない。これは非常に重要なことでありますので、これを明確に社会の中で認識をしていただく上でも法によってきちんと規定をすることが必要ではないか。  それから第七条でございますけれども、これは反社会的な行為と我々は言っておるわけでございますけれども、非常に他の大勢の人にそれを知った上で感染をさしておる、そういうことについてはできるだけ抑制をしていく。そういう上でもこういう法的な規制が要るのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  21. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 私のいとこが札幌で医者なんです。この間、この問題でちょっと二、三時間話をしました。それで、やっぱり医者と患者の関係というのは信頼関係だと言うんです。もし私が患者であるとすれば、とてもこの医者は信頼できない、あるいはまた私のそういうものが全部他に漏れていくんではないかとか、あるいは他に知らされるのではないかとか、非常に深く疑念を持つと言うんだ患者というのは。そうでしょう。  私のいとこは医者なんだけれども高桑大先輩おりますけれども、信頼関係がないのに、ただ通報して君行けよと都道府県から指示があった、あるいは通報するから行きなさいと言ってみたって、いや私はあの医者には行けません、どこかほかへ行って適当なところでやりますということになっていったらどういうことになるんだ。つまり医者と患者との、あるいは疑いのある者との信頼関係をどうやって維持するんだということだ。これ何ぼ政府が言ったって、法律があっても、患者なんですから、受ける方が。  私だって成人病ありますけれども、健康診断してもらってどうも悪いものあるんじゃないかなんて、年に一回札幌医大でやってもらっているけれども、何かちょっと疑いがあるようなものがあるらしいぞなんて言ったら、特に政治家なんというのはとにかく入院したといったら、どうもがんらしいぞ、対馬議員も長くないんじゃないかなんて、こういうことになるものです。まともな一般的な病気でさえそうなんだよ。とてもあの医者に捨てられたらおれも困るな、どこかほかの病院へ行くかなと、こういう感じになる、私の経験していることだけれども。  ましてや、こういうエイズという全く他に知られたくない、あるいはもっと人権的な問題、プライバシーの問題、守秘義務だとかでいろんなことを言ったって、そうはならないと言うんです。この間札幌へ帰ったときに話しましたけれども、やっぱりない方がいいと言うんだ、こういう法律をつくらない方がいいと。これは私の個人的ないとこの関係ですけれども、率直に申しています。むしろつくることがかえって地下に潜らして、蔓延化して広めるだけであるということを率直に私、対話の中で聞いたわけであります。  そういうことを聞きますと、大事な原点は何かといえば、基本人権とは何だと。患者と医者との関係というのは信頼であり相互の人権が守られるということなんだ。これが果たして法律をつくることにおいてそうなるのか。そこなんだよ、私聞きたいのは。どうですか、さっきから何回も聞くんだけれども、いやこういうことによって、これは運用ですから運用の仕方においてとか、いやそれはそういう関係をきちっと配慮しながらとかいろんなことを言いますけれども、現実の問題としてはそうならないんだということなんだよ。この点どうですか。
  22. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 先生が御指摘なされましたように信頼関係である、こういうことでありますが、法の第二条の三項に、「国及び地方公共団体は、前二項の施策を講ずるに当たっては、エイズ患者等の人権の保護に留意」する、こういうことを言っておるわけでございまして、基本的には患者の人権を守る、それはとりもなおさず医師と患者の信頼関係の上に立ってすべての予防対策を進めていく、こういうことになるわけでございます。  そこで、法律があるから世の中がエイズに注目をするから、それは差別につながるという考え方と、法律の手続をいろいろと心配をして、直ちに自分の氏名が行政に通報されるのではないかというような間違った理解から法律に対して懸念を持つ、二つの場合がこれは一般的な話でございますがあるわけでございまして、この点については、やはりエイズ感染症でありますから何とか防がなきゃいかぬ、そのためにきちんと手続をしていく上で法律が必要だ、そこのところは、まず法律に対する正しい理解を深めていただくということはやっぱりやらなければいけないと思うわけであります。  それから、法の中身の手続のことで心配をしているケースについて、これは先ほど先生指摘がございましたけれども、その第七条も、これは普通の医師と患者との信頼関係が成り立っているケースについては七条は働かないわけであります。そこのところをよく御理解いただくように今後とも私ども社会に対しても十分説明してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  23. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 実は、この前も参考人がここにおいでになって私も意見を聞きました。衆議院でも参考人を呼んだときに、駒込病院の根岸先生の資料がここに出されていますね。この資料は、私は何よりも今局長が言うようなことと現実が違っているんですよ。これは患者意識、実態というのはこういうものだということは、これはやっぱりまず厚生省認識すべきだと思うんだ、私は。  これは私が調べた中で、この法案が報道された時期、内容が発表された時点、あるいは国会へ提出された時点、こういう状況などを見ますと、かなり高いキャンセル率が示されているんですよ。これは数字はうそ言わないと思うんだ。私が持っている数字はこういう数字です。  専門外来予約キャンセル率の変化ということで、一九八六年十月五日予約者百二。キャンセルが二十一、キャンセル率が二〇・六、予約外が二十三、これは十月二十二日に松本にエイズ感染したじゃぱゆきさんありとの報道があったときの数字でございます。この数字がうそだったら指摘してもらっていい。ところが、一九八七年の一月十七日、この前も当委員会で同僚の渡辺委員が質問しましたが神戸の女性患者の報道、二月十二日に予防法案の報道が伝えられますと、何と二〇・六のキャンセル率がどんどん上がって、三七・六%までキャンセル率が高まる数字が出ているわけです。それからもう一つ予防法案国会に提出をされました時点、これは何と四三・七%、四月一日から十四日の間です。こういう数字がきちっと出ているんだ。  これは局長、何ぼ答弁されようとこれがやっぱり実態なんだよ。こういうことをきちっとやっぱり受けとめて、どう法律機能するのか。法律がその目的を達成することができるのかといったら、ならないと私は思うんだ。その点どうですか。
  24. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 確かに先生が御指摘のような現象というのは一部で起こっておるということは事実だと思います。世の中の一般の方々というのは確かにエイズに対して必ずしも完全な知識を持っているわけではない。したがって、新聞報道等によって非常に心配をしたり、あるいはチェックをされるんではないかという心配、あるいは病気に対する心配、いろんな葛藤の中で行動をされるわけでございますので、今先生から御指摘がありましたようないろんなエピソードがあったときに数字の上で減少するとかあるいは増加をするとか、そういうことはあるというふうに考えております。  しかし、私ども持っておる数字もあるわけでございますけれども、これは東京都の都立病院全体でエイズ患者さんの受診の毎月の数字があるわけでございますが、確かにおっしゃるように、ある時期にぽんと減るとかということがございますけれども、長い目で見てみますと、非常にここ数カ月の間はほぼ横ばいで推移をしておるというようなこともございます。  そういうことから見ましても、確かになるべく自分のそういうエイズとのかかわりというものを外に知られたくないという気持ちが働くということは事実だと思いますけれどもエイズについての正しい理解が深まり、しかもエイズに対して社会が非常にプライバシーを守るということへの信頼が高まってくれば、そこのところは回復をしていくんではないかと私どもは考えておるわけでございます。これは法律があるから潜るということではなくて、その潜ることに対するいろんな教育なりPRということをやっぱり進めていく必要があると我々は考えているわけでございます。
  25. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 これはこの前もちょっと当委員会でどなたか触れましたけれども、イギリスでは梅毒の問題で、百年の歴史になりますが、完全に失敗したわけでしょう。それはあなた法律だからと言うけれども法律こそ守らなきゃならないでしょう、法治国家の国民として。それが国民基本問題なんだよ。そこをしっかりと踏まえないで、法律ができたけれどもそれは運用の問題として、運用いかんによってはどうにでもなるみたいな式の答弁だけれども、そういうものではないと思うんだね。法治国家である限り、国民がこれを守らなきゃいかぬというのは当然のことであってね。  そこで、私はことし六月二十六日に参議院の国会調査団で実はアメリカへ行ってきました。ニューヨークで私このエイズ問題の話を聞いたんです、実を言うと。やっぱりエイズ患者を調べる場合に記名と無記名では全く違うという話がございました。したがって、個人的な意見でありますけれども必ずしも法律は望ましくないと。これは六月にニューヨークで関係者に意見を聞いたんだ。  したがって、私はこれも問題ですけれどもアメリカの各州において手軽にエイズ検査を受けられるという体制はしいていますけれども、その中に二つの方式があります。一つは、プライバシーを守るという守秘義務、これを前提にしながらの、つまり名前の登録を義務づけていること。もう一つは無記名方式がある。ある州では前者から後者へ移行したら受診する数の方が三倍になった、こういうことが報告されているんでありますが、こういう実態などを考えていった場合に、やっぱりこれは諸外国でもアメリカでも実態は、そういうエイズに対する意識あるいは感覚というものは、基本人権は大事にすべきものなんだと、やっぱり人間としての恐怖感というものは変わってないんだよ。それとやっぱり知られたくない、自分の人権を守らなきゃいかぬ、ここだけはいかなる民族であってもきちっと強弱の違いはあっても基本的にはスタンスは一致している。  そこで私は申し上げたいんだけれども、現在、サーベイランス委員会というものがございますね。これはどういう構成と組織になっているんですか。まずこれをお伺いします。
  26. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 現在厚生省が持っておりますサーベイランス委員会は、昭和五十九年九月に、我が国エイズ感染状況を把握することを目的にエイズ調査検討委員会ということで発足をしたものでございます。その後、昭和六十一年十二月にエイズサーベイランス委員会と名称も変え、機能も強化をして今日に至っておるわけでございます。委員会の組織は、これは局長名による依頼、こういうことになっておるわけでございますけれどもエイズに関する臨床及び基礎疫学等の専門家八名で構成をされております。この委員会は大体二カ月から三カ月に一度開催をしておりまして、全国約二千カ所のサーベイランス協力医療機関、ここの医師からエイズ症例及びHIVつまりエイズウイルス感染症例についての報告を受け、これを一つ一つ確認をし、エイズであるのかエイズの疑いがないのか、そういうことを確認をしてこれを疫学的に解析をする、こういうことをやっておるわけでございます。
  27. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 そこで、今簡潔な報告があったんですが、このサーベイランス委員会の今日までの運営、実態の御報告がございましたが、それは一定の前進なり成果を挙げているんでしょう、どう思いますか。
  28. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 御指摘のように一定の成果を挙げております。
  29. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 そこで、私は、このエイズへの的確な対応を図るためにまず厚生省がなすべきことは、今現実に行われているサーベイランス委員会が設置をされ、協力医療機関というものが今報告がありましたようになされている、それで感染者の実態なりあるいは予防というものについて一定の成果を挙げているんだ、こういう結果に今の答弁はなっておるわけです。そうだとすれば、このサーベイランス委員会の管理機能というものを強化をするという考え方にどうして立たないんですか。  本来これは行政がやるべきものを、例えば私は率直に言うんだけれども、これは名前は避けます、北海道ですけれども私はこれ聞いてみたんです、実際の問題として。私の素人的考えだが、エイズという独立立法をつくるよりも、このサーベイランス委員会という機能を行政の立場から言うなれば第三者的な機関に体制を確立して、そこでこのエイズ対策というものはできないのか。いやそれが一番いいんですよ、そういう機能なり権限なりあるいは予算にもなれば、そういうものがきちっとでき上がれば、これはあえて法律をつくるよりも現行のサーベイランス委員会機能、体制強化をすることこそ今一番大事なことだと、こういう率直な御意見があるんですよ。  むしろ厚生省が考えるならば、政府が考えるならば、現行あるこのサーベイランス委員会というものの機能強化をして、そこにおいて対策を立てるということがなぜできないんですか。そういう考え方にどうして発想を持たないんですか。私はそう思うんですが、いかがですか、この点について。
  30. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) サーベイランス委員会機能強化ということで今先生指摘いただいたわけでありますが、サーベイランスの一番基本になるのは、それぞれの医療機関で患者を診断した場合のその報告かきちんと上がってくる、これが一番基礎になるわけでございます。現在、先ほども申し上げましたように二千の協力医療機関にお願いをしてデータをとっておる。しかし、これは非常にごく限られた医療機関であるわけでございます。これを全国の医療機関にきちんと報告体制をとっていただく、これがエイズのこれからの蔓延状況を的確につかんでいく上でぜひ必要なことであるというふうに考えておるわけでありまして、そういうことを義務づけをさしていただくためにはどうしても法律が必要であるという立場で、今回の法案の第五条でそのことを規定させていただいておるわけであります。  そのほか、このエイズ予防していく上では、そのサーベイランスの機能基本としながらいろんな体制を組んでいかなきゃいけない。その場合に、個人のプライバシーにかかわる点が非常に多いというようなことからも総合的な法体系が必要である、そういう考え方をとっておるわけでございます。
  31. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 これは大臣に聞きますけれども大臣、今局長と私のやりとりを聞いておって、つまり言うならばサーベイランス委員会なるものの機能が強化されれば都道府県なり地方なりというものはチェックできるんだよ。チェック機能を強化すればいいんだよ。今現在やられている内容をチェック機能を強化して、そういうものに専門的なお医者さんなりあるいはそういう人々も参加させるという機能を都道府県で持てばいいんですよ、はっきり言って。それはもちろん予算を伴いますよ。そういうことがどうしてできないのか。大臣、そのことをやることが当面一番大事なことではないのか。それが悪者の実態把握なんだ。  患者がどういう状態にあるか、あるいは地下に潜るのか、あるいは蔓延するのか、あるいはどういう環境にあるのかというとりあえず実態把握をきちっとすることが大事じゃないですか、問題は。それに立ってどういう対策がそれじゃ今必要なんだ、根本対策は何やるんだと、こういう手だてを政府が一番先に考えるべきことだと私は思いますよ。大臣、この点についてどうですか。むしろサーベイランス委員会の現在ある機能をそういう行政からいま一歩機能強化をして体制をつくれば、あえて法律をつくらなくてもできる。将来的に法律をつくるんであれば、この前も参考人もおっしゃっておりましたが、性病予防法とかそういう法律によってこれを扱うというんならそれも一つ考え方。こういう対策について大臣はどう考えるかお伺いします。
  32. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) 問題は、エイズ蔓延を防ぐためにどういうやり方が効果があるかと、こういうことになると思うわけでございまして、一方におきましてはサーベイランス体制の機能強化をすればいいじゃないかと、こういう御意見も今承ったわけでございますが、やはりこの法律をつくった方がより効果があると思います根拠としては幾つかあろうかと思うわけでございます。  患者の人権、プライバシーの保護という観点からすると、これはやはり法律で守秘義務を課するということも有効であろうと思うわけでありますし、また蔓延防止のために、医師の指導に対して指導を聞かないでといいますか反社会的な行為をする人がある場合には、これはそういうことに対してチェックをするということも、法律でないとこれはできないわけでございます。また、先ほど政府委員からの答弁にございましたように、やはり現状を把握するということにつきましては、より広範囲にしかも報告を義務化させるということもサーベイランス委員会の体制の強化だけではできない。そういうことでございますから、総合的に見ますとエイズ蔓延の防止を図るためには法律をつくった方がより有効であろうと、そういうふうに考えておる次第でございます。
  33. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 時間も参りましたからあれですが、二つ大臣に聞きます。  衆議院段階は御案内のとおり血友病患者の救済法を先行議決をして、そしてエイズ法案を後から審議をした、こう二段論争で来ましたね。だから、今率直に私が申し上げたいのは、この第一点は、まず血友病患者の救済措置だけは本委員会で決める、それから本法案については十分に審議を尽くすべきである、そういう整理の仕方を政府として、もちろんこれは委員会がやることであるが、大臣の所見としてどう考えているか。これはもちろん委員会が決めることでありますけれども、これが一つ。  それから、さっきから何回も言うけれども法律の目的どおりに機能しないんだ、機能するよりも災いになるんだよ、これ。私はこれやったってやがて見直しをしなきゃならない時期が来ると思いますよ、はっきり申し上げて。法律で言えば見直し条項ということになるんだけれども、この法律通したって、結果的には患者が潜って蔓延をさして、そして人権が守られない。守秘義務、かなり大きな人権上の社会問題が必ず起こる。私はこれを予言しておきますよ。そうなったときに見直しをしなきゃならぬということになる可能性もあるんだ、通してみたって、こんなものは。  ただ、私が言いたいのは、そういうことを考えた場合に今大事なことは、まず血友病の患者に対する救済法については衆議院同様に切り離す、これだけは先行的に解決する。あとの本問題については、時間をかけて慎重な審議を継続してする、こういう考え方についての、これはもちろん我々が決めることでありますけれども、はっきり申し上げますよ。なぜ私こういうことを言うかというと、極めて日程的な、今国会は二十八日で終わるわけですから、二十八日を今目前にしているだけにこの段階で私は大臣の所見だけ聞いておきたいと思います。
  34. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) 法案をつくるということは時期尚早じゃないか、こういう御指摘が第一。これは、英国の四年前の状況と今の我が国状況は非常によく似ておるわけでございます。患者数、それから法案の制定につきましての議論、よく似ておるわけでございますが、それから四年後の昨年、英国はついに患者数が四年前よりも十倍にふえまして、結果として法律をつくったわけでございます。私は火事によく例えるわけでございますが、大火事になる前に消火をするということが何よりも大事なわけでございまして、日本の場合は幸い火事に例えればじゅうたんが焦げておる程度で、ヨーロッパの場合には家具が燃えている程度アメリカの場合には家じゅうが燃えている、そういう状況であるという例え話を申し上げるわけでございます。このじゅうたんが焦げている程度で消すということが私は何よりも大事であるというふうに思っておるわけでございまして、法案をつくることが時期尚早だということは、私どもはそうではない。かかれば致命率が非常に高い、しかもその治療方法が確立できてない、こういう病気から国民を守るために今の段階で法律はつくるべきであるという考え方に立っておるわけでございます。  それから、法律機能しないではないかという御指摘につきましては、私はそういう御意見もあることは承知しておりますが、やはり根本的にはこの法律を正しく御理解していただくということがまず大事であろうと思うわけでございまして、ある有力な新聞でさえもこの法律の中身を誤解いたしまして、法律ができれば、医者に診てもらうとその段階ですべての人が氏名、住所が通報される、そういう誤った記事を出しておったことも事実でございます。そういうことから考えますと、一般の人が誤解されることもこれはやむを得ないことだと思うわけでございますが、そういう点については正しく御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、やはり偏見、差別があるということはこれは事実でありますけれども、これをなくする。エイズというのは特殊な人がかかる病気ではなくて一般の人がかかる病気である。その病気についての偏見、差別を社会がなくして、そしてそういう人たちを温かく社会の中で迎え入れるようなそういう状況をつくることが最も大事であるわけでございまして、法律の制定と関係なく偏見、差別をなくする、こういうことに努力をすることが私は根本的な対策であろうというふうに考えておるわけでございます。
  35. 対馬孝且君(対馬孝且)

    対馬孝且君 大臣、あなたは大事な誤りを犯していますね。基本的にやっぱり感染者患者側、家族という、こういうものの原点を踏まえてあなたは答弁してない、はっきり言って。何か客観論みたいなことを言っているけれども、まず原点は人間の人権、生命。それは患者あるいは家族、この側に立って法律というものはどうあるべきものかという、まず人間の基本原点ですよ。そのことをしかとあなたは押さえてない。だからそういう法律が必要だ法律が必要だと。しかし、法律をつくったってしようがないんだ、こんなものは、私に言わせれば。だから、そういうことをもう一度真剣に検討――もちろん政府側は検討した上に立っての結論であるけれども。  特定の新聞て、朝日のことを言っているんでしょう。一九八八年十一月九日の朝日新聞にきちっと、エイズを広める予防法、この中には基本的人権の問題から全部触れている。  つまり私が言いたいのは、この法律をつくるということは、エイズ患者はもちろん、感染され、これからも起こるであろう感染者家族を含めて、むしろそれをどのように差別のないように、恐怖感のないように人間として温かく守らなければならないかという、この基本に立って法律がどうあるべきか、この原点にあなたの答弁を聞いていると立っていませんよ、私は率直に言うけれども。その基本を踏まえた場合においては、今私が言っているように、当面この法案の扱う内容というのはもっと時間を要して慎重審議を尽くすべきではないのかという、これはそうあってしかるべきなんだよ。それは提案者だから通してもらいたいというのはわかるけれども、私は今の厚生大臣答弁は全く不満であります。そういう点ではこの問題について了解することはできません。  なお、この問題については同僚の浜本議員がこれからやりますから、あとの問題をやりますと時間がなくなりますから一応私の質問はこれで終わりますけれども、その点はもっと基本的な、言葉では人権を言っていますけれども、体でそのことを受けとめていないということについて強く私は不満を申し上げまして、私の質問を終わります。
  36. 渡辺四郎君(渡辺四郎)

    渡辺四郎君 ちょっと委員長、関連で。  突然の質問で大変恐縮ですが、今対馬委員も言いましたけれども大臣答弁の中で、国民を守る立場でこの法律が必要だというふうにおっしゃいましたね。そうすれば、エイズ患者皆さんあるいは感染者皆さんというのは国民のために犠牲になれというふうに言うのか。(「それは違うよ」と呼ぶ者あり)いや、傍聴に見えておる方はそうとる、患者皆さん家族皆さんですから。そういうふうな受け取り方をすると思うんです。私は大臣の真意はそうでなかったと思いますけれども、そこはひとつ明確にしておいてください。  それと、今までずっと質問と答弁をお聞きしておりましたけれども、やはり日本の場合の特殊な、いわゆる感染の経路の違い、いわゆる医師の手によって血友病の患者皆さんたちが感染をしたわけですから、だからいわば薬害じゃないかという意見だってあるわけでしょう。その責任をやっぱり感じて、そしてこの法律案をつくるべきではないか。  きのうあるお母さんが見えまして、私のところに訴えました。あの六十二年のパニック状態のころ、その子供さんが三年生だった。小学校のトイレを使ったそうです。ところが子供がかかって、もうそのトイレは閉めてしまえ、一切使うなと。その後お母さんと先生の努力でかなり直ってきたようですが、また近々になって、おまえがおるから学校にいろいろ問題が起きるんだと。子供さんは中学にも行きたくない、塾もやめてしまう、こういうことで実は涙ながらにお母さんが訴えておったわけです。  ですから、私は発想の違いとは言いませんけれどもアメリカヨーロッパ感染の経路と日本の場合の感染経路の違い、特に血友病の患者皆さん方感染した部分については、その方たちの意見を最大限に尊重してやるべきではないか。だから、対馬委員も言いましたけれども、やはり今度の段階では少なくとももう少し慎重審議すべきではないか。  いろいろ法律案の問題も言われました。五条の問題で衆議院の方でただし書きがつきました。私は法律は弱いわけですけれども、この法律を読んでみますと、わざわざ「血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、」と、いわゆる血友病で感染した人たちがエイズであるということを法律で示しておるわけです。だから、法律の中に何でこういうことをうたうのかという意見だって皆さんにあるわけです。  ですから、そこを基本として、日本の場合の感染の経路は違う、行政の責任だという観点も私はなければいかぬと思うんです。どうでしょうか大臣、それについて。
  37. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) まず第一番目の御質問に対してでございますが、これは法律の目的を私は素直に申し上げたわけでございまして、決して感染もしくは患者になっておられる方は関係ないという趣旨のことを申し上げたわけではございません。法律は、一方で蔓延の防止を目的としながら、一方では患者感染者のプライバシー、人権を守ることは車の両輪であるというふうに心得ておるわけでございます。  それから、血液製剤が原因で感染もしくは患者になった方々に対しましては、これはもとより大変お気の毒なことでございますから、そういう方々に対しては、国の責任であるかないかは別として十分に配慮すべき問題だというふうに考え、そのように対策を現在進めておるわけでございます。  また、法律の第三条でも、御承知のように、「国民の責務」として「国民は、エイズに関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払う」云々と書いてあるわけでございまして、やはり根底にはエイズという病気は恐ろしい、しかもかかれば治療方法がない、そういうことが根底にありまして、それであたかも血友病の方々が全員エイズ患者であるかのことき誤解がまずあったと思うわけでございます。こういう誤解は国会等の議論を通じてなくなっておるわけでございますし、また感染経路につきましてもだんだんと国民の間で正しい理解、知識ができてきておる。そういう中でエイズに対する、エイズ感染患者に対する偏見、差別というものがだんだん私は薄れていく、またそういうふうに我々は努力をしていかなきゃならない、さように考えておる次第でございます。
  38. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 私は、対馬議員が申しましたように方向づけしてもらうことを期待をしておるんですが、どうもまだ頭がかたいようでございますので、次のような点について質問をさしてもらいたいと思います。  まず、このエイズ法案については性病予防法と対比しながら内容について質問をすること。それから血友病患者皆さんの救済措置について。それから血液事業について。それから衆議院の修正部分、特に第五条関係について、あるいはプライバシーの問題について。時間が少ないのでどこまでいけるかわかりませんが、順次質問をさしてもらいたい、かように思います。  まず最初は、今回のエイズ法案の下敷きになっておるのは性病予防法であるというふうに言われておりますので、エイズと性病とは相当異なる疾病ではないか、その異なる疾病の下敷きに性病予防法をしておるということから、一体大臣はどういう認識でこの法案をおつくりになったのか、その点についてお尋ねをいたしたいと思うわけです。
  39. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) エイズがその主な感染経路において性行為であるという点で、性病予防法の対象疾患と共通しておるということでございます。しかし、エイズは極めて新しい感染症である、また世界じゅうで急速に蔓延しており、今後我が国でも患者の増加が予想される、さらに確実な治療方法がない、その上致命率が高い、こういう点が性病予防法の対象疾患とは異なっておるわけでございまして、そういう考え方に立ってこの法案をつくり御提案申し上げておる次第でございます。
  40. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 ただ、法律ができますときにはそのときの背景というものがあるわけなんでございますね。性病予防法というのは終戦後の一般国民への性病の蔓延に対処するために、国民に対する伝染病として性病から国民を保護する、そういう目的と、さらにまた性病の徹底的な撲滅と治療を目的といたしまして昭和二十三年の七月に公布されたというふうに理解をいたしております。  当時の性病患者の数を調べてみますと、梅毒は約二十一万七千人、りん病が約二十二万人、そういう状況であって非常に蔓延しておったというふうに思います。このような全国的に危機的な状況のもとに、患者に対する届け出でありますとか、感染の疑いのある者に対する健康診断の受診命令であるとか入院命令等の措置が定められたわけでございます。  そうして考えてみますと、エイズ予防法案の背景というものと性病予防法案提出時の背景というものは非常に異なっておるんではないか、こう思いますがいかがでございましょうか。
  41. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 先生が今るる御指摘をいただきましたように、昭和二十三年当時の性病の蔓延というのは確かに非常に大変なものであったというふうに考えております。そういう背景で生まれてきた性病予防法ということになるわけでございますけれども、それと比べて現在のエイズの状態はどうであろうか、こういうことになるわけでございます。  先ほど大臣からの御説明にもございましたように、エイズ病気というものは性病と違いまして、ごく最近十年くらいの間に急速に世界の中に出てきた病気である、またその治療方法が的確なものがない、あるいは致命率が非常に高い、こういうことで世界は非常にこのエイズ予防に努力をしているわけであります。我が国においては幸いその感染状況というのはまだまだそんなにひどい状態ではないんでありますが、これからこういう非常に国際交流が頻繁な社会でございますので、そういう病気日本に広がっていく可能性は非常に高いわけでございまして、そういうことから考えると今の時点で適切な対策をする必要がある、そのガイドラインである法律をぜひつくりたい、これが政府基本的な考え方でございます。  しかし、先生もごらんになっていただけますように、このエイズ予防法案は性病予防法と比べまして非常に、国の責務あるいは社会の正しい認識を進める条項、あるいはエイズ感染者に対する人権上の配慮等、性病予防法とは違った新しい側面を持っているわけでございます。
  42. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 私は、エイズという疾病につきましては、先ほどから話があったようなこともございますから慎重に対処すべき疾病であるとは思います。しかし一方では、先ほど答弁がありましたように、エイズは普通の生活をしておれば大丈夫なんだと言われておることもございまするし、したがってそんなに心配することはないじゃないかという気持ちもあるわけでございます。そういう中で、性病予防法と同様な強権的な措置を法律で定める必要があるんだろうかという疑問に駆られるわけなんでございます。  そこで、そういう考え方について重ねてお尋ねをするんですが、あわせてそれを明らかにするために、今回の法案と性病予防法とはどういう共通点があり、またどういう相違点があるかということを簡単にお答えいただきたいと思います。
  43. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズ予防法案は、エイズという非常に新しい、しかも致命率の高い、治療方法の確立されてないこういう感染症の蔓延を防ぐために、国の責務として正しい知識の普及あるいは研究の推進、それから人権の保護、こういうものを定め、またプライバシーの保護が極めて重要であるというところから守秘義務を強化するというようなことを盛り込んでおりまして、エイズ対策上ぜひとも必要な条項を盛り込んだ法案であるというふうに考えております。  性病予防法と比べまして、報告ですとかあるいは通報の方法に類似した点があるわけでございますけれども、疾病の特質、それから現在の社会のいろんな状況等も踏まえまして、守秘義務の強化ということ、あるいは人権の保護ということに格段の配慮を払っておるわけでございまして、性病予防法とはその点において格段の差を持つものだと私どもは考えておるわけでございます。
  44. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 今答弁をしていただきましたように、エイズという疾病の特性というものを考えまして、下敷きにはしたけれども性病予防法を丸写しにしてない、必要なところだけをとっておるという説明がございました。そういう点は私も法律を見まして理解する点はあるわけです。しかし問題は、この性病予防法に倣った規定の効果というものがどれだけあるかというところに大きな疑問を持っておるわけです。  どういう疑問があるかというと、二つほど申し上げますが、まず第一の点は医師の通報についての問題であります。この規定のこれは七条だったと思いますが、第一項におきましては、感染者指示に従わないだけでなく、多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがあると認めたときという要件がつけられております。なぜこのような要件をつける必要があったのか、またこれはどういう場合のことを指すのかという点についてお答えをいただきたいというふうに思います。  また、この第七条二項におきましては、「感染者エイズの病原体を感染させたと認められる者が更に多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがあることを知り得たとき」という条件が付されております。これはどういう場合のことか、あわせてお尋ねをいたしたいと思います。
  45. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) まず第七条第一項の、指示に従わず、かつ多数の者に感染をさせるおそれということでございますが、先ほど来申し上げておりますようにこの法案基本的な考え方は、医師と感染者患者さんの信頼関係に基づいて医師の指導によって他への感染防止を図るというところに非常に私ども意味を持たせておるわけでございまして、患者さんが医師の指示どおり的確な生活をしておる限り通報の対象となることは全くないわけでございます。しかし、社会の中にはやはりいろんな形で感染を拡大するということが実際にあるわけでございまして、そういう場合には放置ができないということで、これに対してさらに強い指導をしていく、あるいは指示をしていくというようなことで七条の一項の規定を設けておるわけでございます。  そこで、多数の者に感染をさせるおそれとは二つのことを想定しておるわけでございまして、第一は、売春行為のように配偶者またはこれに準ずる者以外の二人以上の者を相手として、感染防止の手段を講じないで性交渉を常習的に行っておって、さらにまたそれを続けるおそれがある場合、文章で書くと大変かたいことになるわけでございますけれども、要するに売春行為のようなことを考えておるわけでございます。また第二のケースとしては、薬物中毒者などが薬の回し打ちというようなことをやっておる場合があるわけでございますが、そういうことによって注射針だとかを共用する、そういう静脈注射をやっておる。そういう行為も非常に今のいろいろな国々の状況においても、あるいはまた我が国においても、これがエイズ感染を拡大させる大きな根源になっておるというようなことから、そういう事例があった場合には都道府県知事に通報をするという規定を設けておるわけでございます。  また、第七条の二項でございますが、医師が直接対応をしておる患者さんの背後にある今申し上げました二つのような事例、こういうケースが当然出てくる場合が想定されるわけでこざいますけれども、相当の確度でもってそういうことが想定された場合には第七条の二項に該当するというふうに考えておるわけでございます。
  46. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 この間、患者皆さんからちょっと御意見を伺うことがあったわけなんですが、現在の患者皆さんのお気持ちとしてはお医者さんの立場を非常に考えておられる節がございます。つまり、医師との信頼関係が強化された中で自分たちは治療を受けているんだと、こういう気持ちが非常に強いわけであります。したがって、お医者さんが困るような法律をつくるということについては大変困るというお気持ちが強いわけでございます。  そこで伺うわけなんですが、第七条一項にせよ第七条二項にせよ、「多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがある」、この認定が必要なわけでございます。これまで政府側答弁を伺いますと、医師と患者との対話によってこの認定が可能であるという説明が行われておりましたが、衆議院の審議でも当委員会の審議でも同僚委員がその点について随分質問をしたわけでありますが、大変問題視してこられておるわけでございます。  特に、売淫常習者の認定でありますとか、売淫にならない行為を行うグループ等の認定でありますとか、今言われた回し打ちの問題であるとか、こういう認定を医師が行えるという考え方はそもそも厚生省には無理があるんではないかというお気持ちが患者皆さん非常に強いわけなんです。そういう点はどのようにお考えですか。
  47. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 今先生が御指摘いただきましたように、患者さんたちが心配をしておりますように、このエイズ予防を図る上で患者が医師を信頼する、あるいは医師が患者を保護する、この関係は非常に重要なことになるわけでございまして、いろいろなケースのほとんどの場合がそういう医師のクリニックの中で問題は解決をするわけでございます。医師がエイズ感染の危険性あるいは社会に対する影響の大きさ、そういうことを十分患者に説明をするという場面が当然あるわけでございますから、そういう環境の中で患者は適切な生活パターンを守っていくということが当然行われるわけでございまして、その範囲においては全く問題はクリニックから外へ出るということがないわけでございます。  しかし、実際にいろいろな事例を社会の中で見るにつけ、どうしてもそういう関係をはみ出してしまうことが起こっておるということも現実にあるわけでございまして、そういう場合に第七条一項、二項が働くことになるわけでございます。  先生の御質問でございますが、医師は感染者との間で非常に人間関係をつくりながら粘り強く対話をしておるわけでございます。そういう中で、患者がどういう生活をしておるのか、あるいはどういう心理状態にあるのかというようなことがわかってまいるわけでございますので、そういう過程を経て、他に感染させるおそれのないケースはきちんと自分のクリニックの中において指導をしていく、そういうことから外れた場合にやむを得ずそれは行政の力をかりるということになるわけでございます。  したがって、医師がそういうことで都道府県知事に通報をした場合に直ちにそれが氏名がオープンになるというようなことではなくて、行政が持っておるいろんな機能でそういうケースの方々に対していろいろ相談をし、あるいは指導をしていくという過程を経ていくわけでございますから、この法律の体系が的確に守られれば患者のプライバシーが侵される、あるいは医師と患者の信頼関係が崩れるというようなことには発展をしていかないのではないかと私どもは考えておるわけであります。
  48. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 そこで、性病予防法との関係にもう一回返ってくるわけなんですが、この第七条第二項の規定というのは性病予防法第七条後段の考え方と同じ考え方に基づいたわけでございます。性病予防法のこの部分というのは同法制定の当初にはなかったわけです。しかし、四十一年に性病予防法はそういうふうに改正をされておるわけです。性病予防法がこのように改正されましたのはそれなりに理由があったわけでございますが、そういう点の経緯について御答弁をいただきたいと思います。
  49. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 御質問の性病予防法第七条後段の規定でございますが、当時早期顕症梅毒の患者が非常にふえていくという非常に危険な状況があったわけでございまして、何とかこれを早く抑えたい。こういうことから、その濃厚な感染源となる者に対して社会防衛上の観点から健康診断の命令あるいは調査質問、さらには治療、入院、または入所の命令というような総合的な措置を講ずる必要があったところから、まず患者に性病をうつしたと見られる背後にあるものが濃厚感染源であるというおそれがある者であるということがわかった場合に届けをするという規定を入れたわけでございます。
  50. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 だから、今お答えのように、大変心配されて危険な状態であったということがあったわけですね。そこでそういう法律改正が行われたわけであります。この問題について私どもが過去の経緯を調べてみますと、梅毒患者が約百万人を超える状態であったという数字も出ておるわけでありまして、今日のエイズの状態よりもはるかに深刻な状態であったわけでございます。  私は、今日のエイズ感染者状況を見まして考えますと、いわゆる性病予防法に言う法律改正という問題と相当状況が違う。状況が違うのにこういう法律をつくるということについて大変危惧の念を持つものでありますが、そういう点はいかがですか。
  51. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 確かに患者の数という観点から見ますと、現在の我が国におけるエイズはまだまだ非常に少ない、感染者総数で見ても千人余りという状況ではございます。しかし、これはまだ人類が今まで遭遇したことがないという非常に新しいタイプ病気である、しかも現段階で有効な治療法がない、あるいは致命率が高いというようなこと、さらにはアメリカあるいはヨーロッパ社会における病気の広がりの状況ということを見ておりますと、先ほど大臣のお答えにもありましたが、今こそきちんとした対応をしておく必要があるというところから、そういう非常に重要な感染源が見つかった場合には何とかそれをきちんと把握をしていく必要があるというところからこういう条項を考えているわけでございます。  しかもこの条項が機能する場合に、決してその人を社会から排除していくということではなくて、適切に相談をし、他への感染防止を図っていくというためにいろんな対応をしよう、こういうことでございますので、決してこういうケースを社会から排除するあるいは隔離をする、そういう考え方ではないということを御理解賜りたいと思います。
  52. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 これは性病予防法でも、エイズ法案に示されておる条文にいたしましても、いわゆるさらに多数の者に病毒をうつすおそれのある者の届け出ということなんですが、これは性病予防法ではじゃ直近五年にどれだけの届け出があったか、非常に少ないと思うんですが、ちょっと答えてください。
  53. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 最近の性病予防現状ということは当時と比べると格段に進歩しておる、医療の方法も非常に確立をしておる、こういうことでございまして、当時の状況とはかなり違っておるわけでございますが、最近五年間の届け出の状況を集めてみますと、昭和五十七年から六十一年までにかけて六十七件の報告がございます。  なお、参考のために申し上げさせていただきますが、こういう届け出の規定がある場合に医師がどういう病気に対してはどの程度強く届け出の規定に従うかというようなことについて諸外国でもいろんな意見があるわけでございますが、イエズについて、アメリカの例でございますけれども、届け出の例は九〇%を超えるというように非常に高い、しかし性病等についてはその届け出の割合が非常に低いというようなことがございまして、この差はどこの国においても医師の常識といいますか常識的な判断がその基礎で働いておるというようなことが言われておるわけでございます。
  54. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 正確な答えではないんですが、要するに直近五年というのは私の資料では二十四人、確かに四十八年から五十年にかけては多いという資料が出ております。しかし都道府県別に見ましても、先般も同僚議員から質問がございましたが、四十七都道府県中三十七県は一件も届け出がないということですね。それから特別の場合を除いてほとんど届け出がないということでございます。  つまり、このような状況を見ますと、多数の者に感染させるおそれのある者という届け出が性病予防法の場合にいかに困難であったかということがわかるわけでございます。したがって、この種届け出義務というものがエイズ法案において容易に行われるということは考えられない。患者皆さんやお医者さんが言われるように下に潜るとか届け出にくいとかいうような話がやっぱりあるわけなんでございます。  したがって、さらにお尋ねをいたしますが、エイズの場合にこの届け出制というものが有効に活用されるという論拠、これをお示しいただきたいと思います。
  55. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズの二次感染防止対策を進めていく上では、どうしてもそういう疫学的な情報が必要なわけでございます。どのような感染原因で、感染がどの程度まで広がっておるかということを把握するということはどうしても必要なわけであります。このために現行のサーベイランスを拡大して状況の把握に当たろうというわけでございますが、その重要性からも、またプライバシーにかかわる個人を特定した情報はなるべく外に出ないようにする、そういういろんな配慮をしながらこの届け出というものを有効なものにしていく必要があると考えておるわけでございます。  そこで、先ほど先生が性病予防法上の届け出が非常に効率が悪いのではないか、こういう御指摘がありました点につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、今日において性病が既に非常に治療可能性が高くなっておる。こういうことからいって医師が医師の判断で十分性病の拡大防止が図れるという前提に立って届け出が低くなっているのではないかというふうに考えるわけでございまして、この傾向世界各国に共通した点があるというふうに考えております。  なお、エイズについては現段階においては非常に厳しい病気であるという観点からすると、性病予防法の届け出とは違って十分に実効ある形を維持することができるのではないかというふうに考えております。
  56. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 今お答えはなかったんですが、私はやっぱりエイズの場合にも先ほど駒込の病院の例が報告されましたように空文化するおそれなしと言わないわけでございます。これはなぜかといえば、名前を知られることについての心配というものがあると思います。特に行政がタッチするところに大変抵抗があるんではないかということを思うわけでございます。サーベイランスといいましてもやっぱり都道府県を通じてサーベイランスの方に報告が参るわけでございますから、いわゆる行政がタッチされるということについて患者皆さんは抵抗があるのではないかというふうに思います。その間の事情というものはエイズの場合にもちっとも変わらないというふうに思うわけでございまして、ますます規定の空文化という心配があるわけでありますが、いかがでしょうか。
  57. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズの届け出に関しましては、現在も任意に特定の医療機関の御協力によってサーベイランス事業が進められておるわけでございますけれども、これから見ても届け出の割合は非常に高いのではないか。また法律で的確に規定をし、全国的にきちんとPRが行き届く、その場合に当然患者さんのプライバシーも十分に守られるための罰則規定までも用意をされておるというようなことからしても、エイズについての届け出の制度を維持するということは可能であると私どもは考えております。
  58. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 これまでいろんな質疑答弁を繰り返してまいりましたんですが、現行性病予防法の規定の実施状況を吟味いたしまして今回の法案が提出されたものとは、先ほどの御答弁を総括いたしましてもどうしても思えないわけでございます。もともと性病予防法に限らず感染症に感する法律、すなわち伝染病予防法、結核予防法等において、医師による患者の氏名の届け出の義務等患者のプライバシー等にかかわる制約が課せられておるわけでございます。このような制約が今後もなお必要かどうか、政府とされましては全般的な討議を行った後にエイズ予防法案を提出されるべきでなかったか、こう思いますが、先ほど答弁をいただいたようでありますが、重ねてお答えをいただきたいと思います。
  59. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 感染症の対策を進めていく上で、その広がりの状況を把握する上での届け出というのはどうしても基本的な要件になるわけでございます。そういうことからそれぞれの法律によって届け出が義務づけをされておるわけでございますが、しかしこれもその時代時代の状況によって届け出の数字が非常に高かったりあるいは場合によっては低くなっていくというようなことがあるわけでこざいますが、それは法律でございますから的確に守っていただくということが基本ではあるわけでございますけれども、医師のサイドにおいて自主的な判断がなされておる。つまり、感染拡大の上で心配がないという判断をされた上でそういう状況になっておるというふうに考えておるわけでございます。  今回のエイズ予防法案の作成の過程におきましても、そういう点については十分に検討を加えた上で、しかもなおエイズという新しい病気日本社会でふやさない、そういうことに的確に対応していくためにはどうしても届け出の規定が必要であるということを考え、患者さんの人権を守るという点については十二分に配慮した上で法案を御提案させていただいているわけでございます。
  60. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 ちょっと話題を変えるんですが、我が国における感染症、なかんずく性行為に関連する感染症の現状特徴はどのようなものでありましょうか、お答えをいただきたいと思います。
  61. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 性行為感染する感染症というのは基本的には性病予防法に規定をされておる疾病でございますが、最近は性行為に関連しましていろんな副次的な感染が起こっておる病気が幾つかあるわけでございます。こういうものを最近は総体的にとらえて性行為感染症というように言っておるわけでございますが、現在私どもが的確に数字をつかんでおるということからいいますと性病予防法に基づく疾患、こういうことになるわけでございます。  我が国の性病は、戦後昭和二十年代から三十年代の初期にかけては十万人を超えるというような数字でございますが、その後だんだんと減少してまいりまして、昭和五十年代の中ごろまではずっと減少してきた。しかし、最近はまた性生活の多様化というようなことから、昭和六十二年の届け出患者数は約九千五百人というふうにやや増加をしてきておるというような傾向がございます。  性病予防法の四つの疾患のうち、その大部分が梅毒とりん病でございまして、梅毒が約三〇%、あるいはりん病が約七〇%というようなことでございます。この二つが非常に大きな部分を占めておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、これらの疾患のほかに最近はヘルペスですとかあるいはクラミジア、あるいは特に男性同性愛者の間で広がっているB型肝炎あるいはさらにはエイズというようなことがだんだんと大きな社会問題になりつつあるという状況にございます。
  62. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 最近注目されております性行為感染症という概念の中に、お答えがございましたように、B型肝炎のように、エイズウイルス感染経路は似ておるが感染力の強いウイルスが原因である疾病ということになっておりますね、これがある。またATLのように、エイズ感染経路が似ており発症後数年以内に患者のほぼ一〇〇%が死亡するという疾病が注目をされておるように聞いております。これらはエイズと比較にならないほど多くの感染者の存在する疾病でございます。エイズ対策というのはこうした性行為感染症対策の一環として位置づけられるならば、今回の法案提出に当たってそういう配慮が見られなくてはなならないんではないかと思います。  私は、法案の提出の仕方といたしましては、申し上げましたような性行為感染症全体を包括する法案が提出さるべきではなかったのか、かように思いますが、その点についてはいかようにお考えか、またその考え方があるか、お尋ねいたしたいと思います。
  63. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 確かに、先生から御指摘いただきましたように、いろんな感染症を総合して対策を立てていけばいいではないかという御意見もあるわけでございますが、ただいま先生が二つの疾病を例に挙げて御説明になりました。すなわちATLでございますけれども、これは確かに同じような感染をする経路をとっているわけでございますけれども、しかしATLはもう人類の歴史の上でかなり古い経過を持っておりまして、しかも感染してから発症するまで数十年の潜伏期間があるとか、非常にエイズ感染形態とは違っておるわけであります。また、もう一つ指摘になられましたB型肝炎でございますけれども、これはもう治療方法が非常にはっきりしておる、あるいはこれからの感染の拡大ということへの心配ももうほぼなくなってきておるということからすると、こういうものを法的に規制していくのはいかがなものであろうか。  そこで、エイズでございますけれども我が国においては現在はまだ数が非常に少ない。しかし、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、イギリスが日本に非常に近い例になるのではないかと思うのですけれども、そこで議論をされておった時期から比べて、五年くらいの間にあっという間に患者がふえてしまった。それは対策がおくれたというふうに言われておるわけでございまして、そういう観点からすると、エイズについてはやはり現段階で総合的な対策を立てる必要がある。その上で、社会エイズに対していろんな心配あるいは偏見を持っておるわけでございますから、そういうものを的確に抑えていくということがどうしても必要なわけでございます。私これがどもが言っておる人権の保護あるいはプライバシーの保護ということでございまして、そこのところを柱にした法律体系でエイズ予防基本路線を示していきたい、こういう観点からエイズ予防法案を御提案しているわけでございます。
  64. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 これはいずれ考え直す時期が来るんじゃないかと思うので、今から用意をしておいてもらいたいと希望をしておきたいと思います。  あと五条関係は、質問の順序から申しましてちょっと後にさせてもらいまして、次は血液製剤による感染者対策についてお伺いいたしたいと思います。  我が国エイズの現況を顧みますときに、どうしても血液製剤によるエイズ感染者を抜きにして語ることはもうできない、かように思います。そして血液製剤によるエイズ感染がなぜ起きたのかということをまず我々は考えます。同時に、アメリカに比べて加熱製剤の承認がなぜ一年半もおくれたのだろうかということを第二に考えるわけでございます。したがって、厚生省がどのように答弁されようとも、血液製剤によるエイズ感染に対する国の責任は明確であると思います。  先般まとめられました医薬品副作用被害救済・研究振興基金による救済策というのがありますが、これは当面、血液製剤によりエイズ感染した血友病患者の方々を迅速に救済するため、国や製薬会社の責任とは切り離して講ぜられたわけでございます。国や製薬会社の責任はしたがってまだ果たされていないわけでございます。血液製剤によるエイズ感染者に対して、国として法的、社会的に責任を明確にする必要があると思うのでございますが、この点はこれはひとつ大臣にお答えをいただくようにしたいと思います。  次に、血液製剤によるエイズ患者感染者の方々への救済事業の内容の中に、厚生省エイズ予防財団及び関係企業等が協議して定める実施要綱によると示されておりますが、この実施要綱の策定の時期、内容はどのようなものであるか。  以上、二つについてお伺いいたしたいと思います。
  65. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 救済対策内容でございますが、今先生おっしゃいましたように、医薬品副作用被害救済制度に準じて行おうとするものでございます。  具体的に申しますと、エイズの関連疾病に感染しました場合に月額二万九千五百円の医療手当を支給する、これが第一点でございます。  それから第二点目、エイズ発症しました場合、患者でございますが、特別手当を支給する。これは二つに分かれておりまして、十八歳以上の方につきましては月額二十万八千九百円、十八歳未満の方につきましては月額八万五千六百円の支給を行うというものでございます。  それから第三点目、不幸にして亡くなられた場合でございますが、生計を維持されている方の場合月額十五万六千九百円、それから生計維持者以外の場合でございますが、これは一時金でございますが、五百六十四万八千四百円の支給を行うということでございます。  それから第四点目でございますが、葬祭料でございます。これはなべて十一万九千円の支給を行うということでございます。  それから、いわゆる配偶者の方あるいは母子感染により感染された子供さんにつきましても、医療手当、特別手当及び葬祭料を支給するということにいたしております。  それから対象人員でございますが、現実にどの程度の方が請求を行われるかというようなことで不確定の要素がございますが、一応の目安としまして厚生省の研究班の推計を参考にしまして、これは六十四年度べースで申しますと、エイズの関連症候群の方に支給いたします特別手当、これが二十人程度、それから遺族見舞い金それから遺族一時金、これを合わせまして三十人程度を見込んでおります。  それからこの制度の開始の時期でございますが、現在事務的な作業を進めておりまして、当委員会で審議をお願いしております医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部改正案が成立しましたら直ちに救済事業を開始したいと考えております。
  66. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 この救済事業の中にエイズ関連の疾病による入院者にも医療手当を支給することとされておりますが、エイズ関連の疾病の範囲とかそれから対象基準、これはどういうことになりますか。
  67. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) これまでのところ二つあるのでございますが、一つは病状でございます。病状につきましては、エイズに関連して起こってまいります肺炎、それから帯状ヘルペス等、HIV感染に密接な関係がある症状のある方、それからそのために一カ月に十五日以上入院した場合というようなことで考えておりまして、現在医学の専門家から成ります判定委員会におきまして具体的内容について御相談申し上げているところでございます。
  68. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 いつごろできますか。
  69. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 先ほど申し上げましたように、法案が成立する時期までにははっきり具体的に決めまして公表いたしたいと考えております。
  70. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 それからこの五条の修正関係について、次は法律に返りましてお尋ねするんですが、衆議院におきまして血友病患者を医師の報告から外す修正が行われました。この修正のねらいと効果についてどのようにお考えかということ、また今後、現在把握されていない血液製剤によるエイズ感染者患者がどのくらい出てくると予想されておるのか、またこうした新たな感染者患者の把握はどのように行おうとしておられるのか、以上三点についてお尋ねをいたします。
  71. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) まず第一に、五条の報告から血液凝固因子製剤による感染者を除外するという修正が衆議院段階でなされた点でございますけれども血液凝固因子製剤による感染者につきましては、その全体的な状況、すなわち約五千人の分母があると考えられているわけでございますが、その四割が感染したということがいろんな研究班の報告でわかっておるわけでございまして、今後新規の発生もないというところから、今後の蔓延防止を図る上からも五条の報告がなされないとしても支障は生じないというところからこの報告を不要にされたわけでございまして、こういうことによって少しでも対象者を限定するという効果があるのではないかというふうに考えております。  また、今後の感染者の増大の問題でございますけれども血液凝固因子製剤によって感染されたケースというのは、もうこれから新たな感染はないと考えておるわけでございますので、今の数字がそのまま継続をするのではないか。ただ問題は、その中からどのくらい発症をしていくのかという点についてはこれからの問題が残されておるわけでございます。  そこで、今後の患者さんたちの状況把握をどうするかという問題でございますけれども、現在この法律案とは別個に、血液製剤によって感染をされた方については、本年の十一月から全国の血友病の主治医の先生方の協力を得まして、すべての患者さんを対象として発症予防、それから治療のための研究班を組織しておるものでございまして、この研究班の活動を通じまして疫学的な状況は把握をされるということになっております。
  72. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 ちょっと話を変えましてお尋ねをするんですが、全体のエイズ患者皆さんはもともと医師の管理下で治療をされておるということをさっき局長答弁あったと思うんですが、そういう状態であるならば、例えば不幸にして注射針医療従事者が誤って刺しまして、医療従事者が感染するような事例が出てきた場合とどう違うんだろうかという疑問があります。こうした場合でも都道府県知事を通じて報告する必要があるかどうかという問題なんですが、その点どうでしょうか。
  73. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 当然五条の報告はなされるものと考えております。
  74. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 私思いますのに、もともと医師の報告を都道府県知事にしなければならない必然性というものはないんじゃないかという気がしておるんですよ。と申しますのは、感染源の把握のためならば、医師は直接サーベイランス委員会報告すれば事が済むのではないか、こういう気がいたします。その点はどうお考えか。都道府県知事を通さずともサーベイランス委員会に直接報告するような組織にすればいいんじゃないかということでございますが、どうでしょうか。
  75. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 確かに、なるべく身近なところで情報が漏れないようにという心配という観点からすると先生のようなお考えも成り立とうかとは思うわけでございますけれども、この五条の報告は、先ほど来何度も申し上げておりますように、個人の名前は出ないわけでございますから、そういう点で今のような御心配はない。  その一方で、その場合、医師が自分の事故で刺した場合には、他への感染の心配がないということにはなるわけでございますけれども、五条の報告の対象はいるんなケースが考えられるわけでございまして、それは当然国が全体として予防対策を立てる上でのデータにもなりますが、各都道府県において具体的に予防対策を進めていく上で非常に重要な資料になるわけでございます。そういう観点からすると、一般的には都道府県知事を通して御報告をいただく、その流れの中に今先生指摘のケースも一緒にしていただくということの方が素直ではないかというふうに考えるわけでございます。
  76. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 それで、血液製剤によるエイズ感染者は、現在の制度でいいますと、現在はサーベイランス委員会報告されることになっておるわけなんですが、患者及びエイズの疑いのある者は必ず都道府県知事に調査票が提出されることになっておるわけですね。この取り扱いは、衆議院で修正後の第五条の報告の規定の趣旨にどうも反するんじゃないかという気がいたします。したがって、当然法律が施行された後は、血液製剤によるエイズ患者につきましてはその取り扱いが改められるんではないかと思うんですが、どういうふうになりましょうか。
  77. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 現行のサーベイランスのシステムは、患者については県を経て国へ報告される、また感染者については原則として県を経て国へ報告されておるわけでございますが、直接国への報告をいただく場合もあるわけでございます。法律の施行によって、血液凝固因子製剤による感染者については第五条の報告を要しないということになるわけでございますから、現行の報告ルートはなくなるというふうに考えていただいていいと思います。血液凝固因子製剤以外による感染者につきましては、第五条により県知事に対して報告をされ、県で集計されたものが厚生省報告をされてくる、こういう形になろうかと思います。
  78. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 そうすると、血液凝固因子製剤による感染者の方は今までのエイズサーベイランス体制から外れまして別な方向へ行くというんですが、それはどういう方向へ行きますか。  この前いただきました資料によりますと、血液製剤によるエイズ感染者患者のための対策実施体制という、何か十一月に厚生省でお決めになった表をもらったんですが、これによりますと、その方々は全国の主治医約八百人とこれは深い関係を持って治療されておると。その上に各ブロックの研究班というのがありまして、そして最後は、これはエイズ研究事業というのがあるんですか、そこに行くわけですか。ちょっとそこのところを順序を経て報告してください。
  79. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 血液凝固因子製剤によって感染した事例につきましては、今後新しい感染はないというところから、先ほど来御説明申し上げましておるように、第五条の報告対象から除外をされるわけでございます。  しかし一方、血液製剤によって感染をされた方々が発症する心配を持っておられる、あるいは発症された場合もあるわけでこざいますが、これらの方々に対しては何としても発症を予防する、あるいは治療をするということが緊急に必要なことであるわけでございますが、残念なことに現段階ではまだその治療方法が確立をしていないという側面があるわけです。  そういうことから、この研究班を組織して専門家の最新の知識で治療あるいは発症予防をやっていきたい。しかもそれが全国津々浦々に至るまで同じレベルで普及をしていきたい。そういうところから、今申し上げました発症予防治療研究事業というものが進められておるわけでございまして、その仕事を進めていく上で当然どういう治療をしたケースについてはどのくらいその発症が予防されたとか、いろんな医学的なデータの蓄積が起こってくるわけでございます。そういう仕事が進められていく過程で、血液凝固因子製剤によって感染をされた方々の状況が把握をされておるということでございまして、行政上、このエイズ感染が拡大をしていくとかそういう心配は全くないわけでございますから、法律の第五条の届け出の目的のためにそういうデータが集められる必要はないというところから、それぞれ目的は違っておるわけでございますが、状況はつかんでおる、こういうことになろうかと思うわけでございます。
  80. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 ちょっとよくわからないんですが、結局要するに血友病の方でエイズ感染された方は今のような方向で研究班の方にいろいろ報告される。そのサーベイランス委員会とこの研究班との関係はどうなるんですか。これは直接関係はあるんですかないんですか。
  81. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 端的に申し上げれば直接は関係がございません。ただ、専門家同士でございますから、日本エイズ状況がどうなっておるかというようなことを総合的に把握する上ではいろんな情報交換がなされると思います。
  82. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 もう一つ伺いますが、一般のエイズ感染者の方は医師から都道府県知事、それからサーベイランス委員会、こういう経路で報告が上がってくる。それから血友病患者感染者の方はこの研究班の方に報告が上げられる。そして、このサーベイランス委員会とも研究の成果を交流し合って有効な措置を講じられるんだろうと思うんですが、そこで、そのサーベイランス委員会というものには両方からつながってくるわけですね。そういう点で、この患者さんの事情が行政機関にわかるとかいうような心配がまた起きるんですが、それはございませんか。
  83. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 一般的に医学の研究の中で個々の患者さんのプライバシーを守るということについては、医師は非常に強い配慮を払っているわけでございまして、一般的な研究報告をされる場合などにおいても決して個人の名前は出さないという習慣があるわけでございます。そういう観点からすると、この研究班の研究報告の中で個人のプライバシーが外に出るというようなことは全く考えられないというふうに考えていいのではないかと思っております。
  84. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 もう一回国の責任問題に返ってお尋ねをするんですが、厚生省血液製剤によるエイズ感染者に対して国としての責任を率直に認めてはいないんですが、仮に百歩譲りまして加熱処理に対する厚生省の対応がその当時としてはやむを得なかったものといたしましても、やはりこうした不幸の原因はもともと原料血漿のほとんどを外国に依存してきた我が国血液事業にその責任があると、かように思うわけでございます。したがって、過去のことを振り返ってみて、もう一遍責任を感じてもらいたい、こう思うんです。  献血の推進についての閣議決定がなされましたのが昭和三十九年、当時はWHO国際輸血学会でも国内での献血による自給自足が提案をされておった時期でございます。そういう中で、我が国の原料血漿の外国依存度というものは拡大をしていっておるわけでございます。こうした我が国血液自給体制の立ちおくれが、血液製剤によるエイズ禍のそもそもの原因になっておるというふうに思いますから、行政の責任は明確になっておるのではないかと思います。  また、政府血液の自給体制のおくれについて、血漿分画製剤の使用量の急増が原因だというふうに答弁をされておったこともあるんですが、この点につきましては既に昭和五十年当時、厚生大臣の諮問機関であります血液問題研究会が、公共機関による分画製剤の一日も早い製造とか、あるいは売血や輸入血漿に頼らないように分画製剤製造を提言されておるわけでございます。またこの問題については、昭和五十年代に社会党の片山議員が再三再四にわたって取り上げて質問をしておる点も残っておるわけでございます。  しかも五十四年当時、輸入血液の増加が国際的に批判を招かないのかという質問をいたしましたときに、厚生省の当時の薬務局の審議官は、外国からの特別な批判はないと答弁をされております。外国からの特別な批判がないから野放しにしておったということも言えるのではないかと思います。この点も責任追及されてもいいのではないかと思います。また、そのことが世界の生産量の三分の一をも使用することになりまして、国際的にも批判をされるということになったわけでございます。そういう状況の経過の中で、政府の方では慌てて血液事業検討会を設けて、使用適正化のガイドラインをつくりましたのが昭和六十一年ということになっておるわけでございます。  だから、一般の被害者の方や患者の方や、また国民の多くの皆さんは、厚生省は一体何をしておったのかという強い非難の声が出ておるわけでございます。そういうことを考えますと、厚生省の怠慢であるということも明確に言えると思うわけでございます。  また、対馬委員から今私の方に申し送りがあったわけなんでございますが、米国の輸入血液の問題について厚生省の郡司さんという元課長が、私が問題を提起したんだけれども取り上げられなくてまことに残念だという新聞報道がされておるわけでございます。だから、厚生省の中でも問題がはっきりしておったという事例等を考えますと、厚生省の責任は免れることができない。一体どういう責任をおとりになるのか。従来の経過から翻って、大臣の率直な反省の弁を聞きたい、こう思います。
  85. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 前段の血液事業対策でございますが、経過は先生の大体言われたような流れでございますが、さらにさかのぼりますと、いわゆるまくら元輸血から始まりまして、東大分院での梅毒の感染事件、ライシャワー事件というようなことがございまして、売血制度から献血制度へ、しかもその献血は日赤が担当するというふうなことでおおむね順調に進んできたところでございますが、今おっしゃいましたように五十年代の半ばぐらいからいわゆる分面製剤を中心に非常に需要が伸びてまいったわけでありまして、献血が追いつかなかったというような状況でございました。しかし、だからといって血液対策が万全だったということを私は申し上げるつもりはございませんが、こういった需要増に対します対応というのは、これは片方は献血でございますので、非常に献血が伸びにくかった、一遍に医療の変化に対応していくことができなかったということは、これはそういう状況は確かにあったと私は考えます。  今後、献血を積極的に進めてまいります場合に、どうしても需要の適正化というようなことを片方でやりませんと納得の得られる献血が進められませんので、片方で需要の適正化を図りながら献血の推進を進めていくというようなことが肝心だというふうに考えておるわけでございます。  それから郡司先生のお話でございますが、私どもも郡司先生のお話も伺っております。当時のいろんな知見の中でそういう問題の提起もされたというようなことは事実のようでございますが、その当時その危険性が全く明らかということではございませんで、一つの問題として研究会の専門家の間にそういう問題も申し上げたいということのようでございます。研究会の報告としては、当面その安全性を確かめながら当時の血液凝固因子製剤を引き続き使用せざるを得ない、こういうような結論であったというふうに承知いたしております。  いずれにしましても、血液対策につきまして、こういった現状を踏まえましてできるだけ自給自足の体制へ進むというようなことで進めるべきことは当然のことと考えます。具体的な策を現在各方面と相談しながら進めておるところでございます。
  86. 浜本万三君(浜本万三)

    ○浜本万三君 答弁は非常に不満でございます。  プライバシーその他、全部まだ質問できないんですが、時間が少し超過いたしましたので、お許しをいただきまして、私、一応質問を終わりたいと思います。
  87. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  88. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続きまして、医薬品副作用被害救済研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群予防に関する法律案の両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  89. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 それでは質問をさせていただきますが、質問の前に、委員会が終わって食事の時間が三十分ぐらいしかなかったというのは大変衛生学的にうまくなかったのではないか、これ一言、衛生学を専攻している者といたしまして、ちょっと感想を述べさせていただきます。  それでは質問に入りますが、去る十二月三日にNHKが衛星放送で「メディカル情報」というのを放送いたしました。    〔委員長退席、理事宮崎秀樹君着席〕 これは「患者の悩み・医師の悩み―エイズ」、こういう放映があったわけですが、これ私、見てびっくりしたのは、私が年来、もう二年半ぐらいですか前から言ってきていたそのことをほとんど新しくまた言われておったということであります。これについて、持ち時間の都合上、私はきょう随分たくさん質問したい部分が残っていますので、若干私の意見を先にお話をしながら多分質問をさせていただくことになろうかと思います。  前から申し上げましたが、感染予防というのは、まず感染している陽性者をキャッチして、そこからの感染を防ぐということになるわけです。そこで、エイズの場合に重要なことは、陽性者本人に告知しなければ、これは潜伏期が二年または八年という、その間は健康生活を普通に行えるということですから、感染の機会が非常に多いということでありますので、これは告知をすることから感染予防はスタートする、こう思います。それについて厚生省はどう思いますか。
  90. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 今先生指摘のように感染症でございますから、病気治療する、あるいは他への感染を防止する、そういう観点から病人御本人が自分の病態がどうであるかということを知っておるということが基本であろうかと思います。したがって、厚生省におきましても、このエイズ予防の体系の中で告知というものは基本的には必要なものである、こう考えておるわけでございますが、ただ患者の置かれている状況等がいろいろございますので、告知の仕方、する時期等については医師が総合的に判断するものと考えております。
  91. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 本当はこれ厚生省に聞きたかったんですが、告知をするときの必要な条件というのがあるんですよね。今まで厚生省は、医者が患者に言えばいいという体制であったと思いますが、そんな単純なことで考えられて法律ができているんじゃたまらないのでありまして、しかも法的な規制をしようというのですから、この告知のための条件をきっちり整備してからでないと法はスタートできないはずなんです。  面倒ですから、私から条件をお話しいたします。  これは「がん告知に目安表」というのがついこの間新聞に載りました。がんの告知とエイズの告知というのは持っている病気の性質上非常に似ている。しかし、がんはがんであることを周りが知れば同情する。エイズの場合は周りは拒否する、拒絶する、差別する。これは大きな違いであります。したがいまして、がん告知の目安が六カ条ありますけれども、これが全部エイズには当てはまらないと思います。  まず一つ患者の意思、希望。二番目、告知した場合本人が病状を受け入れられるか。三番、患者を支える家族、友人の有無。四番、告知で手術などの医療に協力が得られるか。五番、告知後、家での生活ができるか。六番、告知に伴う経済社会的問題が起こるか。これだけであります。非常に問題が似ておりますが、エイズについて問題になる点を二、三挙げますと、告知によって本人が病状を受け入れられるか、これは非常に悩むわけです、つまり治療法がないんですから。そして致命率が非常に高い。次は、告知後家で生活ができるか、同情が受けられるか、受けられないというのが本音だと思います。アンケートによれば、だんながエイズになったら奥さんは半分以上は離婚または離別すると言っています。告知による社会経済的問題、言う必要ないでしょう、もう当然これは深刻であります。  こういう体制を整えないで法律だけが先行するということは、それだけでも法令をつくることについて私は反対であります。つまり、衛星放送の話をいたしましたが、このときの先生方は南谷先生、三鷹保健所長ですね、それから松田先生、帝京大学の内科の助教授、深澤さん、聖マリアンナのカウンセラーというお方です。MSWというんですか、メディカルのソーシャルワーカーですね、そういうことですが、告知という体制を整えないで、つまり告知が前提であってその予防ができると。いや、できるんじゃないけれども予防の第一段階が告知に始まるわけですから、その告知体制ができないで予防を論ずるのは大変困難が伴うのではないか。まして法律でありますから、法律は完璧に周辺整備をしなければならぬと私は思います。深澤さんは、今申し上げた聖マリアンナの先生は、告知を前提として接したときからカウンセリングが始まると言っています。私はそのとおりだと思います。なぜかといえば、相手の身になってカウンセリングをする。時間が非常にかかるんです。  別なNHKの「おはようジャーナル」が十一月二十八日ありました。私も出勤直前で見ました。「あたりまえに生きたい」というテレビでした。赤瀬さんとおっしゃった。メモですからはっきりいたしません。自分がエイズと知ってから覚悟が定まるまで半年かかったと言っています。つまり、カウンセリングは同じ時間をかけなければいけないということです。そのカウンセリング体制は我が国にできているのか。この衛星放送に出られた南谷先生は、西欧にはあるが我が国にはないと言っています。  我が国でことし八月二十二日から二十六日の間カウンセリング国際会議が開催されました。どういういきさつで開催されたかお話を願いたいと思います。
  92. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) WHOはこのエイズ対策を重要な課題として掲げておるわけでございますが、その中で、これから世界各国においてエイズの問題に対処していく上でカウンセリングが非常に重要である。そういうことからWHOがその専門家会議を開こうということを計画しておったわけでありますが、たまたま我が国におきましてもエイズの問題が非常に重要な課題として社会問題化しておる。そういう環境の中で我が国におきましてもぜひそういうカウンセリングの問題を勉強したい、こういう意図を持っておりまして、両者の間で話し合いが進んで、実はことしの五月、総会の席で急遽日本でカウンセリングの専門家会議を開催することが決められたわけでございます。
  93. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 一年半前私は、あれは総括質問でしたかね、国会で質問をいたしました。    〔理事宮崎秀樹君退席、委員長着席〕 カウンセリングは重要だからカウンセリング体制を整えると言った。医者ではだめだということをそのとき言ったんです。医者はできませんということを言いました。この衛星放送でも医者はだめだとやっぱりちゃんと言っています。医者はトレーニングを受けていない、そんなことはできない、時間もない。それはそうだと思うんです。だからカウンセラーを置けということを言ったら厚生省はどういう返事をしたと思いますか。MSWからの告知は制度としては考えていないと、一年半前であります。答えてもらう必要はないから言ったんですけれども、議事録に載ったとおり僕は言っています。  その後で私は、ぜひ急いでやれということを言っているんです。知らぬ顔した、厚生省は。そうして、ことしの初めに今言われたようにWHOがやれと言ったからやったんじゃないですか。恥ずかしかったんじゃないでしょうかね。我が国にはカウンセリング体制はない。私に半年前には制度としては考えていないと言ったんです。カウンセラーは現在いないんですよ。それを国際会議をやるというのは、私はやはり少しずうずうしいと思った。そういうことを私は踏まえてもらいたいということなんです。私は欠点をついて厚生省に文句を言っているんじゃないんです。私が六十一年に質問したときも六十二年に質問したときも、少なくとも国家が動きそうな体制の一年、二年前に物を言っているんです。そのことをどんどんやったかということを僕は言っているんです。だんだんそうなっているじゃありませんか。  私が昭和六十一年三月に質問したときに、三つのことを言っているんです。はっきり言っているのは、一つは輸血による感染を防止しろ、厚生省は何もしていなかった。もう一つは職場感染予防しろ、これはすぐできることだ、しかも急いでやれ。この間の関口委員の質問に何と答えていますか。歯科医師の予防のマニュアルはこれからだ、やっていない。法律だけなぜ急ぐのか。法律の前にやるべき重要な、すぐやれば即効性のあるものがあるんですよ。血液の検査がそうですね。輸血感染を防ぐことができた。大変大きな私は行政的な効果であると思います。唯一の最大の効果じゃないですか。  そしてカウンセラーのことを僕は言ったんだ。何もしていないじゃないですか。カウンセリングはなぜ必要か。――どうも時計見ていると早くやめろと聞こえるものですから、私が説明します。カウンセリングはなぜ必要か。これは衛星放送の三人のゲストが、山口大学の山本教授、松本順天堂大の内科の先生と坊さんです。お坊さんがおられた。名前は私覚えていません、メモしただけですから。この内容がカウンセリングはなぜ必要かということに尽きるんですね。私の言っていることを全部もう一度言ってもらったように思うんです。  一つ、ワクチンはない。治療法はない。十年ないし二十年するとほとんど全員が発病する。そして治療法がないということ。致命率が非常に高いということであります。したがって研究を急げと。研究をすることが生きる希望を与えるんだ、私はこれを主張しました。研究費はどんどんふえているけれどもアメリカに比べれば百分の一ぐらいです。問題にならない。二番目、性的行為による感染症。これは本人にとって負い目である。だれにも言えないということです。そして法律によって潜行する可能性があるということが指摘されるわけです。三番目、死の不安です。坊さんが言っていました。一人ではこの不安は負い切れない。聞いてくれる人が要るんだ。聞いてもらうだけで安らぎが与えられる。カウンセラー以外ありますか。心の問題が大切だと坊さんが言っていました。法律というのは心に対応するそういうことができるんですか。四番目、アンケートでドクターの八五%は告知が必要であると言っています。私は一〇〇%必要であると言っているんです。しかし医者はできない。だから医者にもカウンセリングの方法論を教育する必要はないかと言っていますよ。これが衛星放送の内容です。つまり、カウンセリングがどんなに重要であるかということを言ったんですよ。  ここで大臣に質問をさせてもらいます。  カウンセリング体制は私が申し上げたようにもう一年半以上前に私が主張しておりますけれどもWHOの勧告も踏まえて我が国も早急にカウンセリング体制を確立していかなければならないのではないかと思いますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  94. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) エイズ対策におきますカウンセリングの役割という問題でございますが、御指摘のように私も極めて重要な問題だと思います。この体制の整備につきましては、私ども早急に図っていく必要があると考えておりまして、その場合、我が国の実情に合った方法で実施していくことができるように、まずカウンセリングの手法の開発、二番目には養成、この二つの問題について体制の整備を急いで図ってまいりたい、かように考えております。
  95. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 大臣、これは本当に大事なことですから、しっかり部下に命じてください。  次に、私は先ほど申し上げましたが、献血血液のチェックを私が申し上げて、あのときに後藤田さんが、予防は重大であって銭金を惜しんではいられない、政治決断で予算はつけますとおっしゃった。事実、実費で千円としますと九百万件の献血検査は九十億かかりますから、大変な決断であったと私は思います。そして、私は自分の学問が政治に反映できたと感激したものです、ああよかったなと。私が言わなかったらというほどの言い方はしたくありませんけれども、今は若干言わしてもらいますよ。私はよかったと思うんです。  そこで血液検査、厚生省からもらったデータで申し上げますと、昭和六十一年十二月まで検体実施数が三百十四万六千九百四十件、別なやつは昭和六十一年、献血者数八百五十九万七千百人、この差五百四十万、これは検査しなかったんですか、どうなんですか。
  96. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 検査しておりません。
  97. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 非常に明快です。していないんですよ。そう書いてあるんだ。  三百十五万の検査、昭和六十一年度、陽性者十一件です。しかし、もう一つの献血者数八百六十万で十一名です。つまり、この差を見ますと、五百四十万については検査しなかった。これはどうしたかというのが問題ですね。どうしました、使ったんですか、使わなかったんですか。
  98. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 使っております。
  99. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 そうしたら、それによる感染者がいたかもしれませんね。返答は要らない。もう間違いなくいたわけだ。  そして厚生省は、六十一年度十一名、六十二年度も陽性者は十一名と言っているんだ。うそであることははっきりしたわけです。しかも私が言わなかったら、この十一名の人は少なくとも感染させたんですよ、六十一年度十一名、厚生省数字だけもらえば。六十二年度十一名、六十三年度八月まで六名、計二十八名。もし私が献血検査を言わなかったら厚生省は何もしなかったわけだ。  この前質問をしたときの数字を訂正させてもらいます。六十一年三月十四日の私の質問のときに、厚生省は二年間にわたって献血者、私が四万五千人を見たのだったかなと言ったんですが、議事録を調べました。厚生省は、二年間で二万四千人を調べて検査した結果ゼロであったと言っています。おわかりでしょう。八百万で十一名というんだから、二万四千名ぐらいでゼロなのは当たり前でありまして、あれは答弁になっていないんです。ああいう答弁を期待して言っているわけじゃないんだから。たかが二万四千人を二年間でやってマイナスであったって、何を言おうとしたのかと私は思う。  そこで、皆さんも御承知だと思いますが、昭和六十一年三月に私が初めてこの問題を国会で質問をして、国会における一つのセンセーションがあったと思うんです。しかし、去年の十月にアメリカ会議がありまして、私はたまたまエイズ関係の座長を仰せつかってしてきたんですが、読売新聞の記者に教えられて初めてわかったんです。昭和六十一年三月に都内で三十歳の女性が手術で輸血をした。この血液は大丈夫でしょうかと問い合わせた。医者が答えられるわけはないんですから、十万人に一人とかなんかなら大丈夫でしょうと言ったと思うんだ。しかし、確率の問題とかかった人とは違うんですからね。かかった人は一〇〇%です。そして彼女は今不安におののいているに違いない。この責任をどうするのか。時間がだんだんなくなりますので、データを申し上げましょう。  これは、一つは十二月三日の新聞に載っておるんです。サクラメントで子供エイズで発病したのは輸血用血液エイズ検査を怠ったためである。心臓手術を受けたのは一九八三年二月です。しかし、アメリカの国立防疫センターが週報で血友病患者エイズ感染血液製剤が原因であると指摘したのが一九八三年の三月なんです。しかし、今お話をしているのは一九八三年二月の手術です。それに対して、一九八七年九月に発病いたしました。残り数カ月の命と診断をされたそうです。サンフランシスコ地方裁判所は、このブラッド、血液を提供した血液銀行に対し、補償金、治療費合わせて七十五万ドル、九千万円の支払いを命じた。十二月三日の新聞です。  同じく十二月十二日の新聞と十二月十一日のNHKのニュースで放送されました。ミシガン州ミルウォーキー巡回裁判所は、三年前に心臓手術を受けて輸血感染をしたその人に対して、血液銀行に三百九十万ドル、四億八千万円を支払うことを命じた。三年前の一九八五年の手術です。  厚生省は、私が今指摘をした昭和六十一年は少なくとも十一名、しかも五百四十万人を無視した、検査をしないで使ったということは、何倍になりますか。大変な人数になると思います。しかし、少なくとも報告を受けた二十八名、この人たちはもし検査しなかったら感染させたわけだ。しかし、六十一年以前に同じように十数名以上あったと私は思うんです。これに対する賠償、補償をする考えはありますか。
  100. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 今数字を挙げてのお話でございますが、経過をちょっと申し上げますと、今大体おっしゃったとおり、五十九年、六十年にサンプルで二万四千検体をやったわけでございます。それから六十一年一月に抗体検査キット、検査の器具が承認されておりまして、二月から、いわばハイリスクグループの多いと思われる地域、東京、大阪というところから抗体検査を始めまして、大都市圏に拡大をしてまいったわけでございます。それで、おっしゃるとおり十一月から全献血血液について検査を実施した、こういう経過でございまして、同じ割合で陽性にあらわれるかどうか、ここら辺は申しわけございませんが議論のあるところだというふうに私は考えます。だからといってどうということではございません、数字の問題でございます。  それから、おっしゃいましたように、後藤田前官房長官の名前も出ましたが、国会で非常に御議論がありまして、こういったことも参考にさせていただいて全面献血実施に踏み切ったということもおっしゃるとおりでございます。当時アメリカで非常にはやっておったわけでございまして、国内での患者の発生はアメリカとは事情が違う状況にはございましたが、非常にいわばいいことであったというふうに私どもも考えております。
  101. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 同じ割合だなんて僕は言っていない、議論のあるところだと。だから以上と言ったんです。以上であることは間違いないですよ。以上なんだからゼロではないですよ。それは僕はちゃんと言葉の中で言っていますよ。  後藤田さんと議論をされたかどうか知りませんが、新聞によりますと、私が質問したのは三月十四日で、終わったのが五時ごろだったと思います。しかしその日の夕方の記者会見で言っているんだから、一時間ぐらいですよ。議論する暇なんかないはずだ。僕は後藤田さんがどんなに受け答えがサイエンティフィックであったか、科学的であったかと僕は感心したんだ。厚生省と相談をしている暇がなかったと思う、百億に上る話ですから、だから政治決断でという言葉が非常に大きかったと思います。一時間後ぐらいにお話をなさったんじゃないですか。  もう一つ言いますか。次の国会委員会のときに、橋本龍太郎先生が僕が質問を全部終わったときにわざわざやってきて、先生ちょっと来てくれと。後藤田さんが待っていた。そして私の言ったとおり補正予算で、いや補正予算じゃない、何とか予算。何か後藤田さんの持っているお金だな、臨時何とか費だ。それを出すと言ってくれたんです。これは相談じゃないんだ。一分後ぐらいだ。それが僕は政治だと思っているんです。それは厚生省に期待できませんよ。政治家ですよ、政治家だから決断できたんです。だから、それはもうしようがない。  さっきの衛星放送に戻ります。感染させたのは治療のためにしたんだ。しかしそれを知ったとき、ドクターはびっくり驚いて、そして無念で、申しわけなかった、非常につらい思いをしている。国はこの人たちと同じつらい思いをするのか。いや、しなければならぬのだと思います。行政責任というのはきついよ、それは。僕はそうだと思いますよ。この温かい気持ちというのは、やっぱり知ったときの驚き、無念、申しわけなさ。私のところへ来たそのドクターには、先生の責任じゃないんじゃないか、加熱製剤を出さない、それを承認しない、進めてくれなかった行政責任なんじゃないんですかと言っても、それでも申しわけないと言っていた。  その次に行きましょう。血液製剤の加熱処理。アメリカは、さっき申し上げました一九八三年三月、国立防疫センターは血友病患者エイズ感染血液製剤が原因だということを週報で述べた。そして八三年五月開発を指導し、八四年二月、九カ月後には承認しています。我が国アメリカにおくれること三カ月、一九八三年八月に開発指導をし、一年十一カ月後、一九八五年七月、アメリカにおくれること、厚生省数字ですよ、一年五カ月となっています。この間、加熱をしない製剤が輸血されてきた。これは、血友病患者の方々は本当に残念な思いをしてこれを訴えてきたことは御承知のとおりであります。  私は、第一責任は行政にあると思っています。なぜこんなにおくれたのか。言いわけを聞こうと思ったけれども時間がないから。もうこれは第一責任は行政ですよ。だって行政が指導し、行政が開発するのに、アメリカさまさまのこの国――エイズに関しては特にですよ、アメリカしか情報ないんじゃないですか。さっき局長の話だと、我が国ではこんなことはないはずだと言っていた。それを未来予測のない政策だと言っているんです。政治というものは未来予測に立たなきゃだめなんです。  私の話をしたいと思います。私は、大阪大学で講演を頼まれて行ったときに、先生はどうしてエイズのことを気がついたのかと言われましたよ。私は未来予測したんですよ。十五世紀末にはやった梅毒のことを思い浮かべた。これは大変な病気になるだろう。しかも、梅毒と違うのは治療法がない、致命率が非常に高い。こんな病気はもうどうしようもないじゃないか。未来予測ですよ。私の予測のとおり動いてきたことは皆さん御承知のとおりだ。だから、私が言うのも、私は予測に立って物を言っているんです。  献血検査をしなかった責任というのは行政にあると思う。開発指導は三カ月アメリカにおくれなから、許可が一年五カ月おくれたということの責任も私は行政にあると思う。第一責任は行政であると思います。第二責任は製薬業界だと思います。それは、今情報はアメリカへ行ったりヨーロッパへ行ったりしなければならないような時代じゃないんだ。これはもう即座に情報が入ってきています。ファックスを使えばすぐわかるし、それから文献を索引すれば世界じゅう至るところの文献が即座に入ってきます。私が質問したのは、週刊誌を見て質問したんじゃないですよ。私は私なりに文献調べたんだから。私なりに自信を待って質問をしたんです。全部きっちりした数字で物を言ったはずだ。厚生省はそれに対して何にもしていなかったと言っているわけだ。  私は、製薬業界も、世界の製薬のあり方というものは常に自由競争の世界なんだから、もう情報の方が先走っていると思うんだ。それを知っていて業界はそれを厚生省に進言をしなかったのか。そうだとすれば、いや多分そうだと思う。思うから、この辺は厚生省を少しかばっておきますけれども、第二責任は業界だと思います。だって論理だもの。アメリカのやっていることを、日本はそれをもう一遍全部追試しなければならぬのですか。サイエンスというのは、アメリカでやろうがヨーロッパでやろうが、北海道でやろうが東京でやろうが同じなんだ。同じでないものは科学じゃない。だから、同じ情報をもらっていながら何にもしなかった厚生省の責任、私ははっきりそう思っている。  輸血感染について、過去にいるはずですね。どうします、厚生省。それだけ聞きましょう。
  102. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 凝固因子製剤とは別の、いわば輸血の、こういう今言われた事例についても私は承知いたしております。
  103. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 責任はどうとるか言いにくいんでしょう。  アメリカでは最初の例が九千万、三つの子。あとの例は四億八千万ですよ。たった二例出ています。しかし我が国では、これを訴えますと個人の名前が出ます。だから、そういうことを訴えようとする患者はそこまでにどんなに迷うかということです。私はこれはきつい話だと思うな。だから医師患者関係というのは大事なんだわ。法律じゃないです。どんなに温かい気持ちで医師が患者に接するかということじゃないんですか。  そこで、厚生大臣にやっぱり聞かなきゃならないんだな。お伺いいたしますが、厚生大臣昭和六十一年度にしても検査しない五百四十万の輸血がされたわけだ。局長は割合はどうとかって。割合のこと言っているんじゃないんです。一例でもかかった人は一〇〇%だ。何遍も言ったんだから。何人かの人がいる、そして六十年はゼロだと書いてある、抗体陽性者ゼロ。献血者八百六十九万七千百人。こういう情報を出されればいなかったと思いますが、違いますよ、間違いなくいたんだから。だって昭和六十一年三月に発生しているんですからね、います。同じ割合前後いるはずだ。少なくとも厚生省がつかんだ十一名以上はいると思う、六十年度、五十九年度、五十八年度います。  厚生大臣に聞きたいのは、本人が出てくるの嫌がると思いますけれども、過去三年、六十年度以前の三年ぐらいに少なくとも輸血をした人たちには検査をすることをしてもらって、マイナスであることを確認をしてあげた方がいいんじゃないかなという気がするんですよ。だから、以前の輸血者を、チェックするのはそれこそプライバシーに関係するので私も自信がありませんけれども、検査をしてあげます、匿名です、全くこれは法律と関係ございません、だから輸血を受けた人は完全に匿名でやりますから出てください、無料でいたしますと。この方式をとってもらいたいと思います。大臣いかがでしょう。
  104. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) 検討さしていただきたいと思います。
  105. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 だんだんどうも追及型になってまいりましたけれども。  私が昨年の七月、予算委員会総括で質問をしたときに、時の厚生大臣は斎藤さんですよね。血液製剤のところだったと思うんですけれども我が国は未知か既知か無知かと言ったら、まあ未知の状態であったと思うという答弁でした。私はそのときには黙っていたんです。しかし数字をごらんなさい。さっき申し上げましたよ。既知だったんです。一九八三年三月に少なくともアメリカの国立CDCがヘモフィリアのエイズ感染の原因は血液製剤だ、そういうことを報告している。それを受けているんだから未知じゃないんだな、既知なんだ、知っていたんです。知っていたけれども先ほど局長答弁のように大したことはない、日本には大したことはないとたかをくくったに違いない。  これは本当は聞きたいと思ったけれども時間もありませんので、つまり伝染病予防は何でも同じなんですけれども現状対応をすることは災害処理なんですね、一種の。私がさっき申し上げた未来予測に立たなきゃいけないんです。だから、未来予測予測の仕方によって対応が違ってくるわけだ。私は公衆衛生学をやってきた人間といたしまして、私は私なりの自信を持って物を申し上げているんです。たまたま私の言っているとおりに我が国エイズの動きがあるということがいいと思っているんです。いいというのはおかしいけれども、自信があるということですよ。  患者はじりじりふえると言ったけれども、僕はあのときに倍々ゲームですよと申し上げた。事実、昭和六十一年三月時点で患者十四、ことしの八月で九十ですよ。倍々どころじゃありませんね。半年に一回倍々ぐらいになっている、そういう状況なんですよね。だから、私が申し上げたように、もう一度くどく言いますけれども血液検査はした。しかし、私が申し上げたあと二つはやっていない。職場感染予防を早急に具体的に指示をせよと。文書はだめです、現場の人は何もしないから文書はだめです。それからカウンセリング、これをすぐやってもらいたい。  法的措置について申し上げたいと思います。  私はほかのときにも申し上げましたけれども、立法する人は権力の座にあると思っていい気になってもらっちゃいけないんでありまして、それを適用される相手の身になって法律をつくらなければいけない。これが為政者の心ですと私は竹下さんが出られた委員会で申し上げました。その心がなければ法律をつくっちゃいけないんじゃないか、こう思います。つまりこの問題は、陽性者の問題をどう取り扱っていくかというのが感染予防なんだから、患者じゃありませんからね、皆さんお間違いにならないでください。患者はもう入院するんです。入院して数カ月後に亡くなる運命にあるわけだ。陽性者が一番問題なんです。どのようにして感染予防し、どのようにして延命を図るかということなんですから。だから相手の身になってというのは、皆さん例えば突如保健所の人が来て、あなたは感染しているかもしれない、検査いたしましょうと。どういうことになります、どこでその話をされると思いますか。それがこの法的措置の中には極めてあいまいで、すべてが医師の責任になっていますよ。  この間もドクターの委員からの質問もあった。性病予防法、罰則もあるけれども届け出たことはない。法の運用、自主的申告に期待する、善意に期待する、そんなことを言ったって本人が自主的に申告することは絶対にない。ちゃんとドクター委員がおっしゃっておったんですよ。私だってもうそのとおり一〇〇%そうだと思います。そんな善意に期待する法律なんというのはやっぱりないみたいなものであります。善意が期待できるんだったら法律要りませんからね。善意がないから法律が要るのじゃないのかなと、そう思います。  まず受診ですね。最初に受診をするのは医者なわけですが、そのときの医者の立場なんですけれども、医者はその人にだれからうつされたかという調査をしないとだめなわけです、意味がないんだから。だれにうつしたのかうつされたのかわからぬわけです。全然わからぬ。だれと接触をしようと、あの人から先にうつされてこっちへうつしたなんということはわからない。うつしたと思っている方がうつされたかもしらぬ。  だからそういうことで、つまり接触感染調査なんですよね。接触感染調査は、これもやっぱりドクター議員がおっしゃっていた。我々には警察権なんかないんだから、調査権なんかないんだから調査機能ありません、そんなのはできないですよと。これも一〇〇%私と同じです。しかも、問診というのは虚偽の申告があると思います。その調査機能のない医師がコンタクト・トレーシングをやれるんですか。それができなかったら予防法の意味ないんだからね。コンタクト・トレーシングは可能なのか不可能なのか、だれがやるのか、局長答弁してください。
  106. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 今先生が御指摘なされましたように、このエイズの問題というのはこれからの我が国社会にとって大変重要な問題になると思うわけであります。その点については、私ども認識よりもむしろ先生の御認識の方が非常に強いように承っておるわけであります。  そこで、私どもとしては何とかしてこれを防ぎたい、そういうことでこの法案を御提案申し上げ、あるいはそれ以外のいろんな対策を総合的に進めていくということをやっておるわけでございますが、ただいまの先生のお話で、一〇〇%把握できなければ法律意味がないというような御趣旨でおっしゃられたのではないのかなというように承ったわけでございますけれども、現実の問題として現在のようなこういう社会現状の中で一〇〇%を期待することは実際にはなかなか難しいというふうに思います。個人の人権あるいはプライバシーをいかに守るかということを考えた上で、できる限りの努力をしていくということであろうかと思うわけでございます。  そういう点からすると、先ほど先生が御指摘なされたような警察権のない医師がどこまでコンタクト・トレーシングができるかと、こういうお話もございましたのでありますが、医師は患者と人間関係のもとにいろんな対話が成り立つわけでございまして、その過程で患者がどのような経路で感染を受けたのか、あるいは他にも感染を及ぼしているんだろうかということを情報としてつかみ、それに対して予防のための必要な指導をするということが普通の状態であろうと思うわけであります。  しかし、現実の社会の中では実際に売春行為だとかあるいはいろんな麻薬の回し打ちだとか、そういうことでこの感染が非常に広がっておる。これは日本のことだけではなくて欧米の諸国においては既にそういうことが起こっておるわけでございまして、そういう情報を得た場合にその医師はなかなかその次までフォローすることはできませんので、今度は行政の力を活用しながら感染防止に努めるという構造になっておるわけでございます。そういう意味で、近い将来あるいはワクチンの開発が可能になるとかあるいは治療方法が開発をされていくとか、そういう時間との勝負であろうというふうに思うわけでございまして、一年でも二年でも感染の拡大が防げればそれは国民福祉につながるというように考えるものでございます。
  107. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 一〇〇%のデータ捕集は不可能なことは、私、さっき申し上げた中で出てくるんですよね。だから、一〇〇%のサーベイランスができるわけないです。一〇〇%ということは国民全検査ですよ。それ以外ないじゃないですか。あり得ないんです。症状が出ない病気ですから、出たときはもう既に数年経ているんだからだめなんです。予防という意味からいえばだめなんだから、それはできません。したがって、法律があった方がサーベイランスがより有効か、ない方が有効かという議論になるわけだ。私はそう思う私はそう思わないということであれば、これは議論になりませんよね。数字だけが頼りなわけだ。  先ほど対馬委員だったかお話しになっていました、数字がちゃんと出ているんだからと。何かあるごとに下がっていったと。何かあるごとに届け出者が上がってきたというのはあるけれども、下がっていったんだな。もとへ戻って横ばいだと言っているけれども、あの横ばいはうそですよ。数字見るとやっぱり下がって横ばいなんです、下がっていますよ。ことしの四月ごろは六十名とか八十名、九十名ぐらいだったのが、九月だったかな、五十名ぐらいでずっときているんですよ。これは横ばいというけれども、その間に下がっていますよ。  私が言っているのは、できる限り不安な人、まず陽性であるかないかわからないんだ、不安な人が医者のところへ来てまず受診をすることからスタートするわけです。そして、その人が不安だ不安だと思ったのがマイナスだったときにどんなにうれしいだろうか。その時点を法律が阻害するんではないかと言っているんです。プラスだったら、ひょっとしたら行政にのるんじゃないか、保健所の人がわかるんじゃないかと。そのときにどうするんですか。法律はそうじゃない、守秘義務がどうとかとおっしゃった。守秘義務のデータを今申し上げます。  林田法務大臣がこの十一月八日、ついこの間こういうことをおっしゃっているんだね。ある問題で法相は、人権保護のため外部に漏れないという秘密会を設定したことが前例にあったが、結果としてすぐに漏れた、法務省としては慎重にやらねばならないと。何ですか、これ一体。プライバシーは守られないということを、守秘義務は守られないということを法務大臣が率直に認めた発言であります。守秘義務というのを改めて法律に入れたのは私大変おかしいと思います。再々ドクターはおっしゃっているし、皆さん御承知のとおりだ。公務員もそうです。もともと職務上知り得たものは漏らしてはならない。そんなのは当たり前のことです。医者はそんな義務があろうがなかろうが言わないことになっていますよ、それはもう医の倫理なんだから。やっぱり病気を持っている人というのは弱者なんですよね、ある意味で弱者なんです。それによっていろんな評価をされますから、そういうことがあり得るから。だから、守秘義務を事改めて書くということは守秘が守られていないということです。そういうことが証明されているようなものじゃないかと思うんです。  したがって、私が言っているのは唯一のサーベイランス、データを集めるルートは受診をした医者なんですよね、何といっても医者なんだ。まず氏名、住所を言わないで届ける、データだけですね。その後で今度氏名等々が出てくる条件があるわけだ。したがいまして、もし不安な人がまず行かなければ、もうそこでサーベイランスのデータが遮断されるんですよ。ですから、先ほど厚生省サイドも委員先生方も、データを集めることは非常に重要だと言っています。もちろん疫学者としてもデータがなくて論ずることはできません。信ずるとか信じないなんていうのはデータじゃないんだから。だからデータが欲しい、そのためにはどういう体制が一番データを提供してもらえるかということです。  もう一つ法律はエデュケーション、理解をと言っていました、局長は理解を求めてと。理解とは何ですか。エデュケーションでしょう、教育ですよね。ここで論理の矛盾があると思うんだな。理解を求められるんなら法律なしだっていいんです。法律なくて結構です、医者のところへ行くわけだから。あればこそ、ひょっとしたら行政にのるんじゃないかと。  面倒だからお話ししますが、後で質問だの命令だの出てくるけれども、みんな代行するのは保健所でしょう、保健所長、保健婦です。行政の人がタッチします。医者はかいらいだ、操り人形だ。医者はみんな承知しています、私も話しましたから。私の話した医師は全員私と同じ意見です。反対する人は変わっている人だと言われるぐらいです、法律をつくれと言うドクターは。みんな、医師患者関係を損ねるということと、法律によって潜るでしょうということを言っていますよ。これはアンケートで出てきているのは一つのデータですが、アンケートもそういうふうになっているわけだ。  ですから、法律がなければ、医者のところへ行きたくないと言っていた人がエデュケーション、情報が提供されて、ああそういう病気かと、それじゃお医者さんのところに行って私も検査してもらわなければと思い出させる、そう考えさせるのが教育なんですよね。しかし法律がありますと、いやそう思っても行政にのったらプライバシーはなくなる、こう思った人は出てこないわけだ。  最初の届け出というところはサーベイランスだから私は要ると思っていますから、これは要ります。その後の処罰、命令等々はおかしいんだな、命令をするとかというのは。それはコンタクト・トレーシングをがっちりやらなければだめです。不特定多数の人にうつす行為をしたかしないか医者が通報することになっている。全くばかげた話じゃありませんか。医者がそんなものどうしてわかるんですか。警察だって売防法なんかでするのに、何かおとりになってひっかかってみるんじゃなかったんですか。そうでなかったら実行行為の証明はできないものだものね。麻薬取締官なんかもそうでしょう。自分が何かおとりになるんじゃないですか。そういうおとり戦術でやっと見つけるのですか。そんなのは医者がやれるわけないじゃありませんか。  時間がありませんが、私は厚生省からも何遍も説明は聞いた。しかし再度言えば、医者のところに行かなければ通報される機会はないんだから行かない方がいいという人を恐れているんです。それを潜ると言っているんです。数字の問題を言っているんじゃないんだ。  社会防衛という言葉が何遍か使われた。社会防衛というのは何ですか。多数の人のために少数は犠牲にするというニュアンスですか。民主主義の人権とはほど遠い話だ。しかも性行為感染症ですから、そういうものは人間行動心理に深くかかわってくるんだ。人間行動心理を法が左右できると思うんですか。何だか戦前の嫌なことを思い出すじゃありませんか。人間の行動心理ですよ。しかもこれほどの先進国なんだから、我々は自由なんです。それを法律によって左右しようとするのかということであります。  結論的に一、二申し上げて、次に移ります。  大臣、やっぱりプライバシーを守るために匿名無料検査の全国的体制を可及的速やかに確立してもらいたい、こう思います。
  108. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) このエイズ対策を進めていく場合に極めて大事なことは、先ほどからいろいろと御意見の中にございました潜るという問題、これはつまりは感染者が病院へ行くことによって自分が特定をされる、こういう心配だと思うわけでございます。法律上この点については御承知のようなことで、我々が問題にしているのはエイズという病気でありまして、感染者ではないわけでございます。病気の実態把握のためにその状況、実態を調べるということでありまして、住所、氏名、その他につきましては、患者を特定できるようなことについては一切病院では聞かない、また報告もしない、こういうことで守秘義務も課しているわけでございます。  そういう考え方の中で匿名で検査をすべきではないかということは私も賛成でございまして、そういうふうに早急に体制の整備をしていかなければならない。それにつきましては、全国の自治体等との関係もございますので、そういう関係機関ともよく相談して、また私ども指導をいたしまして、そういう体制の整備を早急に図ってまいりたい、かように考えております。
  109. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 あの中でやっぱり売春防止法とのかかわり、麻薬常習者とのかかわりがあるわけだ。質問をしたり命令したりするのはそれが対象ですよ、今説明として承っておりますからね。私は売春防止法あるいは麻薬常用者に一般の人をそのために巻き込んでもらいたくないんだな。そのために一緒くたにされるということの屈辱もありますからね。だから、売防法があるからには売春防止法の応用範囲でエイズをちゃんと盛り込むことができるはずだ。立法府なんだからやればいい。今のがだめだったらやり直せばいいんだから。麻薬も同じです。麻薬取締法があるんだから、この中で応用範囲でやっていったらいいんじゃないか。一般の人を巻き込むことはありません。そうすると、あの二番目の命令とか質問とかということが落ちさえすれば私はこの法律それなり意味があると思うんです。だから法律ではないんだ。そういうものでないかなと思うんですよ。  ですから、私はエイズ予防法案に反対です。血友病患者感染をした方々は大変お気の毒ですが、この法律とは全く別問題です。さっき申し上げたような第一責任、第二責任があっての話であって、これはいわゆる感染予防の範疇とは別ですね。したがいまして、この方々の救済というのは全く予防法とは無関係であります。当たり前のことを責任をとってもらいたいというだけの話である。  それで、参考人の意見がこの間聴取されました。学者の中で論争があったように受け取られた方もあるようであります。しかし私が推薦を申し上げた芦澤教授は、我が国性行為感染症研究の第一人者なんです。この方が自分の学問の上から反対をなさっているわけです。芦澤先生はサーベイランスは重要である、サーベイランス基本法と取りかえた方がいいんじゃないかと。私は卓見だと思うんです、感染予防基本ですから。ですから、エイズ単独立法というのがおかしいのでありまして、エイズはやっぱりエデュケーションでなきゃだめなんです。  それから、学会の反対はどなたかもおっしゃっていましたが、私のところへ来ているだけでも、日本輸血学会、日本衛生学会、これは私が衛生学会長も務めた学会であります。日本血栓止血学会、これは極めて関連の深い学会が反対表明をしております。それから、エイズ研究のドクターたちも個人個人は反対の意見を持っておられるというふうに聞いております。それから患者を診ているドクター、この人たちはもう反対なんですね。そうだと思うんだ。さっき医師の苦しみというのをお話しいたしました。ですから、そういう問題をよく考えてもらいたいと思うのです。  もう一度繰り返しますと、エイズ性行為感染というのが一番大きな感染経路であるわけです。ヘモフィリアの方々は本当にお気の毒だと思いますが、この方々はドクターの監督下にあると考えていいわけだ。いつも相談に乗っていただいているわけです。その先生方は、法律がどうあろうと私は届けませんと言っている方がおられますから、信頼していただいていいと思うんですね。  しかし、それは別でありまして、今度は性行為感染症のコンタクトをしたかどうかという人たちは、それだけでオープンにはしたくない。行政が関与すればプライバシーが侵されるのではないかという不安、これは侵されると言っているんじゃないんです。侵されるかもしれないという不安を言っているんです、不安なんですから。届け出によるメリットがあるのか、ないんですよ。一〇〇%ないんだから、マイナスだけだ。だからそういう明らかに不安な人たち、ヘモフィリアの方もその中に入ってくると思うんです。不安な人がいっぱいおられるわけだ。まだ告知をされないでおられる人がいるわけですからね。その人たちが真剣に反対しているじゃありませんか。だから、法律が適用される人たちの不安だとか心配だとか、そういうことをなぜ立法者は考えないのかと私は言いたいわけです。  ある内科の教授方が集まったそうです。この話が出た。全員が立法に反対したと言っています。教授から聞いたんです。たった一人賛成した教授がいたというんだ。しかしコメントがつきましたよ。あの人変わっているんですよと言った。それくらいの評価なんですよね。一〇〇%学者だって同じ意見じゃないと思います。しかし、やっぱりその道のオーソリティーの話は聞いてもらいたいし、私もその道のオーソリティーとまで申し上げるほどじゃないですけれども、私も疫学者の一人です。それで、私が毎度申し上げた予測はほぼ当たってきているわけです。だから、私の話ぐらいは聞いてもらいたいんだな。これは政策論争じゃないんだから。政策論争でないものをNHKが報道したように衆議院ではエイズ法案は強行採決された。私は学問をやる人間として悲しかったです。そんなばかな話がありますか。NHKがそう報道したんですよ。  そして、私はきのうゆっくりあれを見たんです。ことしの五月二十七日、NHKの「ワールドTVスペシャル・全米エイズ討論」というのがあったんです。ロサンゼルスから市民討論会というABC放送です。私はきのうも家でもう一度そのビデオを回して見ました。この中で私がやっぱりきょうお伝えをしたいと思う言葉が語られていますよ。  これはロサンゼルス出身の共和党下院議員ウィリアム・ダンネマイヤーという人がこう発言しているんです。カリフォルニア州で一九五七年、性病予防法がある、性病予防法は性病によって感染することを法律で禁止している、取り締まるということですね、そう言った。質問があったわけです、その法律は適用されていますかと。議員は答えたんですね。適用されているかどうかが問題ではない、法律があることが重要なんだと。多元放送でありますから、ニューヨークからハーベイ・ファイアシュテインという劇作家がこう言っています。だれも使わない法律をつくる、それが議員の仕事なんでしょう、全くばかげていると。拍手が起きていましたよ。  性病予防法と内容は違うと幾ら主張しても、性行為感染症という枠の中では同じなんですよ。日本でも性病予防法はざる法だと厚生省も知っている。我々も知っている。すべての人が知っている。さっき何か常識だと言っていた、それですよ。そのざる法の中で罰則がないというのは大ざる法じゃありませんか。なぜそういうのをつくって人間の行動心理を縛ろうとするのか。私はこれで先進国なんだろうかと。私は自分の学問の立場から申し上げておるわけですけれども、これだけのデータがそろっているのになぜ法律を強行しようとするんだろうか。もう一度言いたいですよね、強行採決をするような問題じゃないんだ、これは。政策論争じゃないんだから。受益者は国民のだれかなんでありまして、どのグループではないんだ。だから、そういう問題をなぜ強行採決という形をとるのか、私はそう思いますね。  この大ざる法が提出されておった昨年の五月九日に、私は変幻自在法ということを主張したんですよ、変幻自在に考えたいと。エイズはまだ研究の進展によってどう変わるかわからない。だから法律にしてしまっていいのか。そして、それが即効性があるとは思われませんよ。即効性があるのは、私の言った輸血の検査、カウンセリング、そして職場感染予防、これは即効性があるんです。法律は即効性がないから、そんなもの一日を争うことはありませんよ。変幻自在立法という意味は、もう少し様子を見たらどうだ、変幻自在に変えようではないか、こういうつもりで私は言ったんですけれども法律知らないものですから、そんな立法ないと思いますけれども、変幻自在に対応した方がいい、そういうふうに私は思ったんです。  ですから私の結論は、この際もっと慎重審議をするために継続にしてもらえないかと、厚生大臣にひとつこれに対するお考えを述べていただきたいと思います。
  110. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) 私ども考え方は、しばしば申し上げておりますように、この病気はまだ治療方法が確立しておりませんし、一たんこの病気になりますと致命率が高い。そういう病気から国民を守るという立場でございまして、そういう立場からこの法律が有効であろうというふうに考えて御提案を申し上げているわけでございます。  内容等につきましては十分御審議いただきまして、ぜひとも御理解いただければ幸いだと思います。
  111. 高桑栄松君(高桑栄松)

    高桑栄松君 それじゃ三十秒ぐらい。  私は再度申し上げます。この法律は逆効果がある、予防に逆効果をもたらすであろうということを、私は自分の疫学的な過去の知識、経験に基づきましてそう思っております。私の最終意見はそうでございますので、私はもっと慎重審議をしていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  112. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) それでは、午後二時四十分再開することとし、休憩いたします。    午後二時十三分休憩      ─────・─────    午後二時五十二分開会
  113. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続きまして質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  114. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 私は、エイズ対策としては四つの大きなポイントがあると考えているのです。  一つは、一般国民に対するエイズの正しい知識を普及するということです。それから二番目は、エイズ患者及び感染者の二次感染の防止策を公衆衛生的に講ずるということ。三番目は、エイズ予防ワクチンの開発と治療法の確立のための研究を国際的にも推進するということ。そして四番目に、非常に大事なことですが、感染者生活補償対策、そしてプライバシーの権利などの基本的人権の尊重擁護、差別を絶対にしない。こういう四つが私は今非常に大事だというふうに思っているんですが、大臣の御見解を伺いたい。
  115. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) そのとおりだと思います。
  116. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 そこで法案なんですが、非常に欠陥の多い法案だと私は法律の運用解釈の面から指摘をせざるを得ない。  第一条ですが、「目的」として、エイズの「予防に関し必要な措置を定めることにより、エイズのまん延の防止を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。」と、こう書いてあるんですが、これでは全く社会防衛、こういう観点だけですね。第一条というのは目的条項ですから非常に大事なんですが、目的条項自体に患者感染者生活補償あるいは人権の最大限尊重、差別を許さないということが明記されていないのは大変大きな欠陥だと思います。そうしてこの第一条は、こういうふうに社会防衛の観点だけから書くことによりまして、エイズ患者感染者社会にとって有害な存在だという、こういう面の認識だけを国民に植えつけて、患者感染者に対する差別と偏見というものを助長する危険性がありはしないか。これでは人権保障になりません。患者感染者に対する手厚い看護と治療と励ましというものによって社会的救済を必要とする人たちなんだ、こういう観点が、私第一条をまず読みまして、目的条項という法律の本当の顔、また法律の精神というものの中から抜けているのは大変重大な欠陥だと思いますが、今の点について厚生省はどういうふうにお考えですか。
  117. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 確かにこの法律は、目的のところをごらんいただきますと、そういう感染防止ということが掲げられているわけでございますが、その後の第二条及び第三条をごらんいただきますと、そこに具体的に「国及び地方公共団体の責務」あるいは「国民の責務」ということで、単にと申しますか、その目的のところだけではなくて具体的な条項としてそれぞれエイズ患者等の人権の保護あるいはエイズ患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならないというように具体的に規定をしておるわけでございます。
  118. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 大体二条、三条というのは、法律の運用を書くんですね。法律の目的というのは一条なんですよ。これは単に二条に書いたからいいということじゃないんです。一条という目的自体にこういう人権の擁護、生活の保護というのをうたってないのは、私はやはり重大な欠陥だと言わざるを得ないです。こういう二条とか三条というのは、これは単なる運用の留意事項にすぎない。もっと第一条の中に重きを置いて書くべきだというのが私の第一点の重大な指摘であります。  そこで、法案の中身に入りますが、五条の医師が知事に報告する事項で「その他厚生省令で定める事項」と、これは具体的に今どういうことをお考えか、お示しいただきたい。
  119. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 第五条に基づく医師から知事への報告事項としては、法に定められております感染者の年齢、性別、感染原因のほか、「省令で定める事項」といたしましては、患者の臨床所見、患者感染者か等の区別であります。あるいは感染者であると診断した年月等を考えているところでございます。
  120. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 第六条ですが、第一項に「エイズの病原体を感染させるおそれが著しい行為」、こういうのがあります。これは範囲が非常に広いですね。特に患者感染者の妊娠、出産の規制につながらないか、こういう危惧が各方面からなされております。これは優生思想につながらないかと批判する方もいます。北川局長が前に委員会答弁された中で、患者の意思を最大限に尊重する、医学的には十分説明をして理解を求める、最後の判断は本人がするんだと、こういう趣旨の答弁をしていましたが、これは結局、医学的に十分説明して理解を求める、しかし最後の判断は本人がするというのですが、事実上のこれは強要につながるおそれはないかと非常に危惧されるわけですが、いかがですか。
  121. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 第六条の「感染させるおそれが著しい行為」の解釈でございますが、これは感染者が他の者に感染させることをなるべく避けるために、一般的な注意事項を抽象的に述べたものでありまして、これに基づいて具体的な法的な義務が生ずるというようなことはないわけでございます。具体的には血液の提供とかあるいは感染の危険度が非常に高い形での不特定多数者との性交渉が含まれるというふうに考えております。法案は公衆衛生上の見地から感染の拡大を防ぐということを目的としておりますので、不特定多数の者への感染防止を念頭に置いているものでございまして、今先生御心配の妊娠、出産といったような家庭内の問題にまで立ち入ることは考えていないところでございます。  ただ、やはり現実は非常に厳しいものがあるわけでございまして、妊娠、出産を通して母から子への感染あるいは母体の病状の進行というようなことも考えられるわけでございますので、その点については医師が医師としての立場から患者にアドバイスをしていく、こういうことでこざいまして、行政がそのところまで関与をするというようなことはないというふうに考えております。
  122. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 先日の当委員会での参考人の中で、弁護士連合会の人権第四部会長の加藤良夫弁護士の発言の中にも、「著しい行為」というふうに読む余地が全くないわけではない、こういう危惧が日弁連の代表からも述べられているのです。この点は私は特に非常な危惧の念を持って今御質問したわけであります。  次に法案の七条の一項ですが、これはほかの法律にも間々あるんですが、よく問題になるんですが、この第七条の一項に「第五条の規定による指示に従わず」という、日本語で言うと何げなく読むんですが、法律の解釈からいきますと、「従わず」という状態はどの時点になったときにこの「従わず」になるかということが大きな問題になることがあるんですね。例えば医師の指示があってからこの場合はどのくらいの時間が経過した場合を言うのか、あるいはその患者感染者が従うかどうかを迷っている、考慮している場合もこれに当たるのか、こういうような問題があります。これはどういうふうにお考えになりますか。
  123. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) これは「指示に従わず」ということよりも、その後段の「かつ、多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがあると認める」わけでございますから、ここに重点があるわけでございまして、知らないでそういうことをやったという場合にはこの条項の対象にはならないけれども、医師からの指示があった上でそういう行為を行っておる場合にこの条項の対象になる、このように考えているわけであります。
  124. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 そこのところなんですが、もう一つ私くどいようですが聞いておきたいんですが、医師の指示からどのくらいの時間が経過した場合を言うのか。もう一つは、医師の指示に従うかどうかを迷っている、考慮している場合はどういうふうにこれに当たるのか、こういう点ですね、難しいですか。
  125. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 抽象的にこういう議論をしておりますとただいま先生が御指摘のようなことが起こるかと思いますが、実際に第一回の来診で医師が指示をして直ちにそれが行為に移されるかどうかというようなことについてはかなりの幅がある、こう考えていただいていいと思うのでございます。医師が一定の時間をかけて本人が納得をする状態で指示をして、その上で、時間が何時間と、こう言うわけにはいきませんが、ある一定のしかるべき経過を見ながらその人が従来の行為を変える、そういうことを待つということは当然考えられるわけでございまして、それは常識的な範囲で判断がされるものと考えております。
  126. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 先ほどからも同僚議員のお話もございましたが、結局今の程度答弁であって、結局は当該医師の判断、裁量に任されるというところが非常に大きなこの法案問題点だと思います。  それじゃ聞きますけれども、この七条の一項、二項の「多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがある」、この基準は何で示されますか。省令ですか、あるいは通達、通知でお示しになるんですか。どういう法的根拠でお示しになるつもりですか。
  127. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 多数の者に感染させるおそれの具体的な例につきましては、通知によって示す予定でございます。  なお、先ほどの七条一項の「指示に従わず」というのは時間的な経過ではどうかという御質問でございましたが、この七条一項で知事に通報された後の対応のことをお考えいただきたいと思うわけでありますけれども、都道府県知事はこれに罰則を加えるとか強制をするとかそういうことではなくて、医師と協力してその方が他の多数に感染をさせないような行動をとるように指導をしてまいるわけでございますから、決して強権的にそういうことを進めていこう、あるいは強権的に抑えていこう、そういう趣旨でないことを御理解賜りたいというふうに思います。
  128. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 今の点は後で八条のところでお聞きしたいと思うんですが、もう一つ、この七条で前回の当委員会同僚議員から御質問があったんですが、答えが必ずしも明確でない。しかし、非常にこれも解釈上問題になるというのは「多数」という言葉なんですね。この「多数の者」というこの点の厚生省の御見解はどういう見解か、確認をしておきたい。
  129. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) この法案は家庭内の範囲を超えてこの病気が広く広がっていくことを防ぐということを念頭に置いておるわけでございまして、「多数」という語もそういう考え方のもとに理解をすべきものと考えております。したがいまして、配偶者やこれに準ずる者を超えて複数の者と性交渉を行う場合に「多数」に当たるというふうに考えております。
  130. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 だんだん質問をしていけばいくほど私の恐れていた問題が出てきているというふうに思うんですが、法案の今の八条の一項、二項ですね、先走ってお答えになったわけですけれども、八条の一項、二項につきまして、これは知事のいわゆる健康診断の勧告あるいは命令についての条項でございます。  局長は衆議院の委員会でこのように答弁しております。  実際には非常に公権力を伴ったような形で行われるのではなくて、これは保健相談というような形で行われるわけでございますので、あくまでも患者がそれを拒むというようなことが起これば、そこのところまでこの法律は追跡をすることはできないというふうに考えております。  またその後のところで、法文をこのまま見れば非常に強圧的に見える点があるが、実の際現場はそうならない、こういう御答弁ですね。これはこれとして考え方としては一つあり得る。ただ、今ここで法案の審議でありますから私は厳格に聞くんですが、私はあいまいな答弁嫌いなもんですからここのところを厳格に聞くんですが、八条の二項というのは受診命令を決めているわけです、命令を決めているわけです。そして十六条の一号では命令違反は十万円以下の罰金だ、こういう罰則を決めてるんですよ。しかし、さきに引用した北川局長答弁によりますと、法文はそうなんだけれども実際はそうではないように運用しますよ、八条二項の命令というふうに条文に書いてあるけれども、それは保健相談のような意味なんだ、こうおっしゃるんですか。
  131. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 第八条でいきなり命令を出すということではなくて、まず勧告というようなソフトな方式で自発的に受診をするよう説得する、こういう法の構成になっておるわけでございます。どうしてもこの勧告に従わない場合に命令を行うこととしているのもそのような考え方に立つわけでございます。今委員指摘のように、私が、実際には非常に公権力を伴ったような格好で行われるのではなくて保健相談のような形で行われると答弁いたしましたのは、行政による対応だからといって一方的に押しつける、言うことを聞け、こういう格好でやるということではなくて、感染者の不安や疑問に対していろいろと相談に乗り、あるいは病気の状態等も説明をして自発的に行動ができるように対応する、こういうことでございまして、まず相談に乗りながら健康診断を受けるようにしていくという趣旨であることを申し上げたわけでございます。  しかし、最終的に非常にそのケースがどうしても社会的に重大な影響が起こってくるというようなことが考えられる最後の一つのけじめとして罰則が用意をされておるということでございまして、あくまでもこれは医師と患者の合意のもとにエイズ社会への蔓延を防ぐということが基本的な目標でございますから、何でもかんでもすぐに引っ張っていくとか強制的に対応するとか、そういうことでないということをよく御理解を賜りたいというふうに思います。
  132. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 患者があくまでそのことを拒んでも、十六条一号の罰則は一切適用しないということじゃないですね、今のお話では。
  133. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) そのとおりでございます。
  134. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 局長の今の答弁というのは、結局私は法案を通すためのやはり一時的な言い逃がれ、方便、こういう感じがしてならないんですよ。今あなたがそう言ったところで、その罰則を適用する機関にそれは何の拘束力もないんですね。法律というのは一たんできればこれはひとり歩きするんですよ。局長答弁というのはここでの答弁だけなんだね。  いかがでございましょう。法律の条文と余りにもかけ離れているんですよ、答弁が。こういうことは時々ありますよ。ありますが、これは余りにもかけ離れていますね、罰則の適用について。そう思われませんか。
  135. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 先ほど来申し上げておりますように、これはあくまでも患者本人の健康の問題でもあるわけでございますので、そういう事態が起こらないように医師は十分説得ができるというふうに考えるものでございます。
  136. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 九条ですけれども、今のことに関係しますけれども、第九条には、知事は感染者または保護者に対して「エイズの伝染の防止に関し必要な指示を行うことができる。」と、こうありますですね。しかし、知事の指示内容には何らの限定もここにございません。省令等をおつくりになる考えもないようです。そうすると、指示の対象も感染者及びその保護者の方に及ぶことになっている。そうすると、これは医療行為以外、医療行為をさらに超えて日常生活全般、私生活全般への指示がなされて、大変な私生活への介入ということが危惧される。弁護士会、弁護士連合会などの報告書や法律家の中ではこういう危惧が非常に多いわけです。これについてのお考えを伺いたい。
  137. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 九条による指示内容は、基本的には五条の医師による指示内容と共通しておるというふうに考えておるわけでございます。しかし、その対象となりますのは、医師の指示に従わずまたは医師への受診を拒んだまま多数の者に感染をさせるおそれのあるという行為を繰り返す人であるというところから、そのような多数の者に感染をさせる行為をやめること、あるいは一定の医師のもとでその指導に従うこと、これが指示の中心的な事項となるわけでございます。
  138. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 既にこれは衆議院、参議院の委員会を通して大きな問題になりました質問権の問題ですね、第十条で質問権を規定し、十六条の二号で虚偽の答弁をした者に対する十万円以下の罰金の罰則を決めております。  そこで伺いますが、行政職員の質問に対して何も答えない、黙秘をするということはこの虚偽の答弁には当たらないですね、確認の意味で伺いますが。
  139. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 御見解のとおりでございまして、何も答えない場合には第十六条に規定する虚偽の答弁には当たらないわけでございます。
  140. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 そうだとすれば、黙秘権を行使してもよいという告知を質問に先立ちなすべきではないかと思いますが、そういう行政上の配慮の御用意はありますか。
  141. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) この点は、決して本人の不利益というようなことではなくて、御本人の健康を守る、あるいは御本人の周辺にある感染の拡大を防ぐ、こういうことが基本でございますから、あくまでも医師と患者の間の人間関係あるいは都道府県知事との間の人間関係、こういうことが基本になりますので、そこまでは考えていないわけであります。なおこの場合は、都道府県知事というのは行政にある医師が対応することになると考えております。
  142. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 次が十四条ですが、罰則の中に、正当な理由なく漏らした場合、こういう構成要件ですね。この場合は通常正当な理由というのは何を言うのか、これが大きな問題ですが、例えば法案の五条による医師の報告だとか、法案七条による通報だとか、こういう場合はこの十四条の正当な理由に当たりますか。正当な理由により漏らしたことになりますか。
  143. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) それはそのとおりでございます。  なお、正当な理由とは、秘密を知り得た者がこれを他の者に告げることについて正当な理由がある場合ということでございまして、ただいま御指摘のあった点も含めて具体的に申しますと、法律の規定に基づき知事へ通報する場合、あるいは裁判所で証言する場合、あるいは病院職員が病名を付して診療報酬請求書を提出する場合、あるいは医師が医療スタッフの感染防止のために必要な指示を行う場合等がこれに相当するものと考えております。
  144. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 そこで聞きたいのは、例えばマスコミの取材に答える場合とか講演や講義の一つの資料として話す場合、これは正当な理由になりますか。
  145. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 個人のプライバシーにかかわる点については、そういう場面で表現することは正当な理由には当たらないと思います。
  146. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 十四条で守秘義務、罰則がついたということを、特に藤本大臣答弁を拝見しますと、守秘義務の強化を十分に貫くように配慮しているのでプライバシーの保護について遺漏がないようになる、こういうことを盛んに言っておられるわけです。  そこで伺うんですけれども、これは本法案の罰則は一年以下三十万円以下なんですね。これは決して重いものじゃありません。軽罪ですね、マイナーな罪です。そして、従来の国家公務員法、地方公務員法は、一年以下三万円以下なんです。刑法の医師の秘密を漏らす罪は六カ月以下二万円以下なんです。大して変わらないです。この十四条ができたからプライバシーが一層保護されるというふうには思われないですね。それとも何かほかの理由でこの十四条の罰則が非常に効き目があるとでもおっしゃるのか。私はどうしてもこれがプライバシー保護に役立つとは思えませんが、いかがですか。
  147. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 法文上は、ただいま先生が御指摘をいただいたように、罰則を強化しておるわけでございます。しかし、それですべてのプライバシーが守られるかということになりますと、その点についてはそうですと言うわけにはなかなかまいらない点もあろうかと思います。何分にもエイズがこれから日本社会に及ぼしていくいろんな影響、そういうものを考え、しかもそれをなるべく防いでいくと、こういう流れの中でこのプライバシーの問題は非常に重要な問題である、こういうことをこの法律の中で強く認識をするというところも大きな意味があると考えておるわけでございまして、そういうものを総体的に運用していくことによってプライバシーの保護を守る、そういう社会の体制をつくっていく必要があると、このように考えております。
  148. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 法案についての法文自体の疑問点を私一応お聞きしたわけですが、当委員会では参考人として日弁連の加藤良夫人権四部会長、それから鈴木利廣、保田行雄両弁護士がやはり法律家の立場から非常な危慎を指摘しておられます。特にこの法案では差別の禁止についての条項そのものがないと。アメリカでは連邦法あるいは州や地方の法律、条例で非常に厳格に雇用の面、教育の面、居住の面、健康保険等の面で差別が起きないようにという法規制をやっているというものに比べますと、非常に多くの欠陥を持っている法案だと言わざるを得ません。多くの団体から言われておりますように、このような法案内容、経過から見て、私は抜本的にやっぱり白紙に戻して再考する、出直すということが必要であるということを申し述べておきたいと思います。  最後に、時間が来ましたので最後の一問になりますけれども厚生省国立予防衛生研究所の問題であります。  去る十三日に警官の多数の動員のもとに、新宿区戸山の戸山研究庁舎の建設工事が強行されたわけでありますが、これにつきましては地元の新宿区議会が全会一致で八月二十四日に、この移転計画については、当該地の周辺住民を中心に強い反対の声がある。たび重なる説明にもかかわらず、理解と合意を得られていない。工事が一方的に強行されることは、住民との間に一層不安と反発を招く。引き続き住民との話し合いに、誠意を持って当たることを要望するということを全会一致で決定をして、厚生大臣及び予研所長あてに提出されておるところであります。  特に予研の建設は、この周辺が過密都市でありまして、しかも住宅密集地であると、こういう戸山地区でありますので、住民の不安は私はもっともなことだと思うんです。このようなもとで、私は予研そのものの重要性は認めますけれども、この工事の一方的強行、住民との合意を得てやると、新宿区議会その他の要望を無視してはならぬと。特に地元では住民の会を八割組織していますよ。それから大学として早稲田大学、これが反対の意向を表明しているわけですから、一方的強行は決してやるべきじゃない。得策じゃないし、また住民自治を踏みにじるものだと思いますので、これについては大臣ひとつ話し合いですべてやっていく、合意でいくと、こういうことをもう一回ここで確認していただきたいと思うんですね。ああいうことをやりますと、これはもっともっと反対の世論というのは逆に広がっていく。得策じゃないと思います。この点についての御答弁を求めたいと思います。
  149. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 国立予防衛生研究所の移転の問題につきましては、大変長い経緯があるわけでございますが、いずれにいたしましても、この研究所の業務の安全対策につきましては、WHO世界保健機関と言っているわけでございますが、その国際的な指針を十二分に満たすものでございまして、その安全性には確信を持っているわけでございます。これは非常に人口の密集した地域においても何ら問題がないとされております。  そこで、これまで近隣の住民あるいは関係者の方々に対しましては、安全対策等について繰り返し繰り返し御説明を行う等、工事の再開への合意を得るよういろんな努力を続けてまいってきておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、もう既に一年九カ月の間工事を中断いたしまして、住民の説明会あるいは学術討論会あるいは予研施設の見学会等、延べ三十七回にわたって実施をしてまいっております。また、住民の要望も踏まえまして設計の一部変更等も行ってまいったわけでございます。諸般の情勢から今回再開に踏み切ったわけでございますが、今後とも住民へのいろんな説明、説得の努力、理解を求める努力、これは誠心続けてまいることとしておりますので、どうぞ御理解賜りたい、このように思います。
  150. 内藤功君(内藤功)

    内藤功君 合意を原則としてやってもらいたい。あくまでやっぱり合意でいかなくちゃいかぬということを最後に強調しておきたいと思います。
  151. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それでは前回に引き続いて質問をしたいと思うのですが、日本エイズ特徴というのはもう前回にも私も触れましたし、各委員からも御指摘のとおりでございます。何しろ欧米諸国や諸外国と違いまして、患者の九十人のうち五十一人が血友病患者の方であり、あるいはHIV感染者の千四十八名中九二%が血友病の方々であり、しかもその中の約半分は未成年者、幼い子供たちもたくさんおるというのが我が国エイズ特徴であります。血友病患者の方々が病気治療のために使った血液製剤のおかげで、現在ではなお治療法未確立のために不治の病とされているエイズ感染をしているわけでございます。全く本人にとっては何の責任もない、罪もとがもない、実に残酷きわまる話だと思うわけでございます。同僚委員からもいろいろと御披露がございましたが、血友病のお子さんを持つお母さんたちのお話を私もたびたび聞いております。  先日もお聞きした話では、学校エイズの話があったと。その話を聞いて血友病が危険だから血友病捜しをやろうかということが子供たちの中で話し合われた。そのお子さんは本当に身のすくむような思いをして家へ帰った。今でもこんな目に遭っている。それが法律ができたら一体どんなことになるかわからない。だからお母さん国会へ行って法律を通さないように頼みに行ってこいと子供が言うというお話を聞いて胸が詰まる思いがいたしました。血友病患者約五千人のうち感染者が二千人と言われるわけですが、日本エイズを論ずるときに、この実態を生んだ責任、これを明確にする必要がどうしてもあるわけでございます。そういった中で国と製薬企業の責任が問われているわけでございます。  私は前回ミドリ十字の内部文書をお示しし、この文書では社内では危険を知りながら医療機関や患者には大丈夫だと言って売りまくっていたものだと。こんなことをやるのはもう明らかに薬事法五十六条違反だと。しかも治療としてのモラルが問われるような反社会的な行為だという点を前回御指摘を申し上げました。  そこでお聞きしたいんですが、この文書を御調査いたしましたか。調査してくださいとお願いしたんだけれども、いかがですか。
  152. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 前回御質問ございました件につきましては調査をいたしました。内容を申し上げますと、十一月二十九日に須山代表取締役社長を呼びまして事情を聞いたところでございます。  その内容でございますが、先回先生がお示しになりました資料は、作成者は須山現社長、当時副社長でございます。それから作成されました年月日は、五十八年の七月でございました。それから配付されましたのは、五十八年八月でございます。それから配付先でございますが、支店長に各一部ずつ計二十部、それから支店学術課長各一部、計五十部、合わせまして七十部ということでございます。  それから使用の目的でございますが、病院からのいろいろ当時問い合わせがあったようでございますが、そういった問い合わせに役立てるための社員教育用、こういう目的でございました。  調査しました結果は以上でございます。
  153. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 だから、そういう文書をつくって出していたということは確認されたわけですね。  もう一つは、あのときに私お示しいたしましたのは、雑誌財界の一九八八年九月二十七日号をお示しして、その対談の中で須山社長が、五十七年ごろから知っていた、社内的にもその危険性を流していた、書類にして出していたということを述べておるということを御指摘申し上げましたが、この点についても御調査いただきましたか。
  154. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) その点につきましても事情を聴取いたしました。御指摘のとおり、財界の九月二十七日号、五十六ページに須山氏の、エイズ感染の危険性があるということをすぐ社内的に流していた、こういう記事があるわけでございます。この点につきましては、当時、同氏によりますと、手元にありました海外の文献をもとに、須山氏は医師でございますが、医師の立場エイズに関する知見をまとめたものであって、警告書的なものではなかったというふうに述べておられます。
  155. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 いや、危険性は、研究所長の立場だから、五十七年ごろから御存じであったというのは当然だと思うんですが、ミドリ十字もこういうふうに対処しなければいけないということは書類にして出しましたと言っておられるんですね。これは書類にして出したと言っているんですから、その書類はあると思いますよ。私どもの調査ではあるようです。御調査になりましたか。
  156. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 警告書的なものではないというふうにおっしゃっていますので、恐らく先生が提示された文書あるいはそれに類似のものを考えておられるというふうに私どもは受け取っております。
  157. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 社内的に危険性を指摘する文書にして出した、書類にして出したというお話だったわけで、その書類があるようなんですね。私どもの調査ではどうやらあるようなんです。そのことは御承知ないですか。
  158. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 五月の時点で出したものが一部ございますが、この八月に配布されましたものとほぼ似たような内容の文書でございまして、会社あてに危険ですというふうな、注意を喚起するというようなものとは私どもは受け取れませんでした。
  159. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それはやっぱり大事な点だから調べていただいて、文書が私どもの調査ではあるようですから、ひとつ取り寄せていただいて御提出をいただきたいと思うんですが、よろしいですか。
  160. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) その点は、私、特に会社あてに警告書というもので出したものがあるのかについては確かめましたが、ない、こういうことでございました。ただ一つございますのは、五月にもう一つ文書が出ております。この点だけだというふうに私どもが調べた結果ではそうなっております。
  161. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それじゃあれですか、その五月はいつの五月ですか。
  162. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 八月に配布されます前に、五月にやや似たような前段階の文書がございますが、この五月につくられたものと七月につくられたものと二種類というふうに聞いております。
  163. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 何かちょっとようわからぬな。五十七年ごろの話ですよ。五十七年ごろ須山さんが研究部長をおやりになっているときに、この雑誌財界で御自分がおっしゃっている部分では、「その時は私はまだ研究所におりましたし、」すぐそういう文献が五十七年ごろ入ってきましたので、「エイズ感染の危険性があるということをすぐ社内的に流したんです。ミドリ十字もこういうふうに対処しなければいけないということは、書類にして出しました。」と。
  164. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 五十七年の時点と申しますと、まだ患者が初めて発見されたというふうな時期でございますと考えられませんが、なお念のためにもう一度須山社長に確認をしてみたいと存じます。
  165. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 これはこの間の質問をまともに聞いてくれてない証拠なんですがね。それじゃもう一遍確認をしてもらって、私どもの調査ではその書類はあるそうですから、これはぜひその書類をひとつ見せていただきたいと思います。御提出いただきたいと思います。よろしいか。
  166. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 先般聞きましたときには、そういうものはないというふうに聞いておりますが、調べまして確認いたしまして、もしもあれば本人から出してもらうように求めてみたいと思います。
  167. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 非常に大事な点なんですね。社内的には危険性があるということを知っていて、そして片方では大丈夫だ大丈夫だという文書で医療機関やあるいは患者さんに説得をし説明をして売りまくってきたというふうなことになりますと、これは前回も指摘いたしましたように薬事法五十六条違反に問われる、その非常に大事な点なんですね。だから正確にしていただきたいと思います。  さらに、ミドリ十字以外にもこういう文書を出しているところはありませんでしょうか。製薬企業だとかあるいは輸入業者等を含めて、いかがですか。
  168. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) ミドリ十字の問題もございまして、五十八年当時の社内資料の有無につきまして関係の企業に問い合わせましたところ、一部の企業におきまして、やはり社内教育用として資料を作成しておるところがございました。その提出を受けております。
  169. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 その資料は御提出いただけますか、どうせもう集めたものなんだから。私どもも幾つかの資料は拝見しているんです。それはそっちも集められたんでしょう。
  170. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 会社の方にまた了解を得まして提出をするようにいたしたいと存じます。
  171. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 当然出してもらわないといけないと思うんですね。  これは、アメリカから原料血漿や濃縮製剤を輸入していたというのは、トラベノールとカッタージャパン、ミドリ十字、化血研、日本臓器の五社ですかね、そういうところですね。それで、この薬務局で調べられた点で、ミドリ十字のような安心だ安心だといって書いているのはほかにありましたか。
  172. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 実は、私どものところに提出を受けておりますのは二社でございますが、その内容は、当時の米国におきますエイズの発生状況でございますとか、それからCDCの報告の概要でございますとか、それからFDAにおきます血漿提供者に対する問診勧告の概要でございますとか、こういった安全対策を主体として作成されておりまして、先般先生のお示しになりましたあの文書は私はやや断定している感じを与えるというふうに思っておりますが、そういったものとはやや性格、趣の違うものというふうに判断しております。
  173. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 私どもが入手をしているのでも、これはやはり血友病患者を安心させたいという立場での文言がいろいろ出ておるわけです。これはひどいなと思うんだけれども、例えばエイズパニックと考えたり、あるいは血友病患者治療法を変える理由とみなしてはいけないとか、たとえ可能性はあるにしてもクリオや濃縮製剤によって、感染されるということを示す証拠はどこにもないとか、血友病患者を安心させたい、そういう立場でいろいろとお書きになっております。時間の都合があってきょうはゆっくりできませんので、お手元にあるならばひとつそれはぜひ出していただきたいと思うんです。  ただ、私は問題と思いますのは、例えばさっきのミドリ十字にいたしましても、あるいはその他の会社でも、そういう状況というのは極めて反社会的だと思うんですよ。だってアメリカのFDAでは一九八三年の三月二十四日付で勧告を出しているのはもう御承知のとおりです。感染症伝播の危険があるとわかっている製剤は製剤に分画してはならないという勧告を出しているんですね。その時期に、いや大丈夫です大丈夫ですと言うて売っているということは極めてぐあいが悪いです。そのおかげで患者さんたちがひどい目に遭っている状況が出ているわけですからね。それはぜひ資料としてお出しいただきたいと思います。  これらの文書が示しますように、企業の社会的責任というのは厳しく問われなければならない。これは前回も先ほど指摘をしたとおりです。そこで、国の責任は一体どうなのかという点について若干お聞きしておきたい。  薬事法は、前回も確認をいたしましたが、その「目的」の一条には、有効性と安全性の確保、これがうたわれているわけですね。そのために企業に対しては厳しい基準、それから国に対しては監督責任を定めてきているわけですね。そうですね。
  174. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) そのとおりでございます。
  175. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 第九章の「監督」というところにはわざわざ一章が設けられて条文が十三あるんですね。例えば六十九条の立入検査権、六十九条の二の緊急命令権、あるいは七十条の廃棄処分、七十一条の検査命令権、それから七十二条の改繕命令権等々、十三条にわたる監督権限が定められているように思います。  例えば七十一条の検査命令権、こういうものを発動したことがありますか、エイズが問題になってから。
  176. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) ございません。
  177. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それじゃ六十九条の立入検査権、これは発動したことありますか。
  178. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) エイズに関連してということでございますか。
  179. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 そうですよ。
  180. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) これはございません。
  181. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 エイズに関連してです、今お聞きしていますのは。六十九条の二の緊急命令、これはスモンの薬害の教訓を酌んで新たに加えられた条文でありますが、厚生大臣は被害の発生や拡大ありと認めるときは応急の措置を命ずることができるということになっております。これは発動したことがあるんでしょうか。だから、やろうと思えば危険な輸入血の輸入の禁止なんというのはすぐやれるわけですね。これは発動したことがありますか。
  182. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) この規定も五十四年の改正で入ったものでございますが、発動されたことはございません。
  183. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、国がとった措置というのは五十八年の七月に、もう聞いたら時間かかりますから私申し上げますが、ハイリスクグループに属する者から採血されたものではないという旨の証明書を添付するということにしたと、こういうことですね。それ以外は監督条項を発動したことはないわけですね。
  184. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 今おっしゃいましたハイリスクグループの排除証明、これは五十八年の七月に実施したものでございます。それから、六十年の七月には抗体検査証明済みの証明書の添付を求めております。
  185. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 抗体検査証明がつけられるということになった段階でやっと安心になったんだろうと思いますが、ハイリスクグループに属する者から採血したんではないという証明書といったって何の保証もないわけですね、早く言うたら。  前回も言うたように、一番ハイリスクグループのおる地域に売血所があってそこから買うているわけで、違いますと言われてもこれは検査しなかったら何の保証もない。私はこういうところが問題だと思うんですよ。法的な措置は、せっかく監督権限を与えられていても何も発動してない。当時の科学水準でこれが一体わからなかったのか。製薬メーカーは大体警告されている危険を知っておりながら、いや大丈夫ですと言うて片方でどんどん売る。これを厚生省は黙って野放しにしておるということ、そういう結果が五千人中約二千人の患者さんたちをHIVの感染者にさせてしまうということになっているわけですからね。これが私、患者さんがもう本当に我慢ができない怒りになっていると思うのです。  ある時期に必要な手を打てば、例えば血液輸入を禁止する、そういう危険が言われたときには血液の輸入を禁止するというふうなこと、そういうことが手を打たれていたらどうだっただろうか。あるいは危険だから高濃縮をやめて、むしろクリオにでもかえたらどうか、こういうふうなことが言われていたら患者さんたちは今日までのひどい惨状にならなかったのではないか。こういったことは何にもやっておられないんですね。いかがですか。
  186. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 先生のおっしゃるような、ひとつこういうことをやっておればということはそのとおりだと思います。それは確かにそのとおりだと思いますが、幾つかの点を挙げられております。緊急命令を発動しなかった、あるいはクリオを利用しなかった、幾つかの点を挙げられておるわけでございますが、血友病患者さんに対して凝固因子製剤を供給する責任というのもまた片方であるわけでございまして、これは供給をとめるわけにはまいらないわけであります。  それから、当時、先回もまた議論になったかと存じますが、新しい凝固因子製剤というものが、患者さんの活動範囲を広げるという意味で非常に便利なと申しましょうか、患者さんにとって非常に有利な薬として新しく登場してまいったわけでございまして、エイズの研究班におきましてもこの凝固因子製剤の優位性、これは認めざるを得ないというような御意見でございまして、その薬の改善のためにできるだけ検討を加え努力しなさいと、こういうようなお話で進んでまいったわけでございます。しかし、そうは申しながら危険性も、エイズ感染の経路になり得るという可能性も否定し得ないということから、できるだけハイリスクの排除証明でございますとか抗体検査証明とか、こういうようなことで片方で努力しつつ、またその後にさらに加熱製剤の開発と、こういうふうに進んでまいったわけでございます。
  187. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 血友病の方々には治療のためにどうしても必要だという問題はありますよね。しかし、エイズ感染の危険性が少しでも感じられた場合に、それをほかにかえる方法がないわけではないんですね。確かに便利が悪くなる、時間もかかる、しかし昔は新鮮血の輸血だってして治療していたんです。不治の病に突き落とされるよりは、安全な治療に切りかえるということの方を指導ができなかったか。これはそれまでに間に合わなかった政府血液行政の責任もありますよ。しかし、いよいよ大事だというときにそれができなかったのかどうかという点は、これはやっぱり厚生省、薬務行政の極めて大きな責任があると思うんです。  大臣、これはここで大臣に聞くとは申し上げていなかったかもわからぬですけれども、私患者さんたちの話を聞いていて、たった一遍だけの投与で感染をした人がいます。わかっていたら自分はクリオでも新鮮血でもよかったんだ、危険だということを知らないから高濃縮を使っていて、ついに発病して亡くなったという方がいますよ。こんなことになるんなら教えてくれていたらということを悲痛な思いでその言葉を残して亡くなった被害者がいるんです。血液製剤が危険ではないかと言ってお聞きをしたら、大丈夫だと医師から言われて、大丈夫なのかなと思って先生を信頼して感染した、いろんなケースがありますけれどもね。そのことをお聞きしたら、一体厚生省何していたんだということになりますよ。  そういう点では極めて重大な問題点が含まれている。患者さんたちの怒りというのは当然だと思います。少なくともこういう患者さんたちに、補償だとか何だとかというのは後の話です、本当に申しわけなかったと言うて頭を垂れる必要があると思うんですけれども大臣どうですか。
  188. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) 血液製剤を使うことによりまして結果としてエイズ感染した、しかも発病した、こういう一連の問題につきましては非常にお気の毒だ、患者にとりましてはまさに不可抗力であったわけでございますから、大変お気の毒なことだと私も率直に思います。  この法案を提出いたしましてからしばしば申し上げておりますように、エイズ蔓延を防止するという問題と、それから感染者患者の中で血友病の関係者の皆さん方に対する救済措置というのはこれはまさに車の両輪であって、まずそれを行ってからエイズの防止対策というものは進めていかなきゃならぬというふうに私は申し上げてきたわけでございます。総理も予算委員会におきまして、この問題の責任問題は別として、政治的にこれらのお気の毒な方々に対しましては十分に配慮すべき問題だ、こう言われておるわけでございまして、これからも救済対策につきましては誠心誠意取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  189. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 私はこれに関する問題ではいろいろお聞きしたいことがあるんですけれども、もう時間が余りありませんので、あと若干お聞きをしたいと思います。  大臣、それは確かにお気の毒だとおっしゃるけれども、本当に予見できなかったのか。私は日本の医学、科学の水準だって世界的に見たら高いんだし、その気にさえなっていたらここまで被害者を広げなくて済んだんではないかと思いますよ。あの必要な時期にきちっと輸入血の輸入をストップさせるとか、思い切った措置をとっていたらここまで来なかったと思うんです。その辺のところはいろいろ聞きたいんですけれども、時間がありません。  それでは、予見ができなかったのかどうかという問題、これはちょっと時間かかるんだけれども、薬務局長のお立場厚生省のお立場では、そうは言うても気の毒なことになってしまったけれどもあの当時は予見ができなかったと思われるのかどうか、その辺だけ簡潔に聞いておきます。
  190. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 結論的に申しますと、私は正確な予見はできなかったと存じます。予見できればよかったというふうにもちろんそれはそう思うわけでございますが、当時の、先ほど高桑先生のお話もございました、未来予測でございますか、そういうことがもちろん当時可能であったとすればそれはよかったと思いますが、当時の状況をずっと振り返って私も詳細に見てみましたが、当時の状況から見て、凝固因子製剤による病気の拡大を正確に予測することは非常に難しかったんではないかというふうに考えております。
  191. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 これについての論議をたくさん申し上げたいんですけれども一つだけ言うておきたいのは、厚生省はもう世界じゅうの情報をちゃんと集められる機能を確立しているはずですよ。一番早く情報を持つはずです。企業は当然企業の競争の立場からいいましても一番早く情報を握れる立場にあります。両方とも情報を握っている。今、そのときに予見されたらよかったんだけれども局長率直におっしゃっているように見えますけれども、あらゆる情報が集結しておる厚生省で果たして予見ができなかったか、そうではないと私は思っております。きょうはそれを御指摘申し上げる時間がありません。ですから、この点は預けておきますけれども、ここのところがはっきりしないとやはり非常に大事な点での責任の問題というのが明確にならないと思うんですよ。  さっきも大臣は、救済対策がとにかく早くやられて、そしてその後エイズ対策をと考えたとおっしゃっておられます。救済対策が衆議院で成立をしてこちらへ送られてきております。私はあの救済対策を見て思った。救済対策をするべき人たちじゃない、むしろ製薬企業も厚生省も国もこれは救済どころか完全補償しなきゃならない立場じゃないかと、私は今度のエイズ問題をめぐっての調査あるいは質問を通じて痛感をしているところなんですね。この点は恐らく今後もいろいろと質疑をしなければならないと思いますが、そういう点はどうですか、義務があると思いませんか。
  192. 政府委員(北郷勲夫君)(北郷勲夫)

    政府委員(北郷勲夫君) 大臣がたびたび申し上げることでございますが、法的な責任はともかくとして、私ども救済対策に誠心誠意努力すべき立場にあるというふうに認識いたしております。
  193. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 もう残された時間わずかでございますが、法案についてのところでごく若干聞いておきたいと思います。  五条が衆議院修正でいわゆる血友病患者を除くとされております。本来修正をされるというときには、該当する方々が御満足をされるとか喜ばれるということが普通なんですけれども、今回の修正に対して患者さんは、迷惑だ、こんな修正をされたらかえって迷惑だというふうに御主張になっておられますが、政府患者さんがなぜ迷惑だというふうにおっしゃっておるのかということの御理解はどうですか。
  194. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 言葉の上にあらわれた場合とそうでない場合とでいろいろと受け取り方が違ってまいるわけでございますけれども、その点については、患者さんの中でもいろんな意見があったやに承っております。その議論の過程を十分踏まえて衆議院で修正をされた、このように考えておるわけでございます。
  195. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 患者さんの御主張をいろいろな角度で私も聞いてまいりましたけれども、このエイズ予防法ができたら、そして血友病患者を除くということをわざわざ書かれたら、これは一体どうなるか。将来治療法が確立されてエイズという病気が解決ができておっても、百年、二百年後までも血友病がエイズのハイリスクグループだという位置づけをされるということになったらたまらない、こういうふうに言っておられます。  冒頭にもちょっと申し上げましたけれども、これは千葉県の例ですが、小学校の中でちゃんと学校エイズの教育をしておられるんです。ところが、エイズの教育が、私がこの前にも御指摘を申し上げたようにやっぱり危険だというのは、男性同性愛や異性間性交渉や、凝固因子製剤という、結局血友病が一番多いということの内容が教えられているわけですよ。そうすると、子供たちの中で、血友病は危険だというんだったら血友病捜ししようかというふうなことになってきている。  考えてみたら、血友病という患者さんたちというのはやっぱり病人で、弱者ですよ。血友病というだけで、やはり社会生活をしていく上で一定のハンディを背負いながらやっているんです。その上にさらに法律ができてエイズのハイリスクグループなんだという烙印を押されたら、これは社会的な差別が今でもいろいろな問題が起こっているのに、これではもうたまらないと。だから絶対に廃案にしてほしいというのはそこなんです。おわかりになりますか、そこなんですよ。ですから、そういう点を御理解になったら、こんな法律つくったって、さっきからの御論議の中で出ているように、本当にエイズ感染予防の実が上がるかというたら、上がらぬという話がたくさん出ていました、私もその意見ですけれども。  こんな法律つくっても、血友病患者感染者を痛めつける、あるいはハイリスクグループだとして浮き上がらせるだけの意味しかないですよ。デメリットだけだ。しかも弱者である血友病患者感染者になっている。九三%も感染者がおるんですからね、血友病の方々の中に。これから発病する人たちというのは圧倒的に血友病患者の方々だ。そのことを考えたら、エイズ予防法案というのは血友病患者対策かと言いたくなるわけです。だからこの辺ははっきりと御理解になって、こういう血友病患者捜しというような、血友病害みたいなことまで言われるようなことにならないような行政が大事なんです。  最後に、私もう時間がありませんので、エイズ予防法をつくったって実が上がらないというお話が同僚委員のたくさんの皆さん方から出てきました。私もそう思うんです。プライバシーの保護と盛んに言われます。匿名検査。治療費はどうするんですか。私は、やっぱり匿名検査であって、治療費が心配なくて、そしてちゃんと相談に乗ってもらえるというふうな、安心して自分が相談できるような保証、そういう環境がなかったら本当に患者さんは救われないと思うんですよ。  これはちょっと聞きたいんですけれども社会保険使うんですか、医療費は。
  196. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 社会保険の適用を受けるわけでございます。
  197. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 社会保険使うたらこんなもの何がプライバシー守れますか。それは健康保険も国民健康保険も、これは扱う人が守秘義務を持っていると言うかもしれません。組合健保は守秘義務持っていませんよ。こんなものどうして守れますか。参考人の方がこの前もおっしゃっていました、芦澤先生が。だから、本当にプライバシーを守るのなら、守るらしい体制というのを言います。匿名検査、それから検査を無料にする、そして医療費を公費で負担する、そしてちゃんとカウンセリングをやれるというふうにやるべきであって、法律で何ぼ通報したって、こんなものあかんです。  もう一つは、私もう時間が来たそうですから、この点もあわせて言うておきたいんですけれどもエイズについての正しい知識を国民の中にやはり正しく普及させるということにもっと意を用いるべきです。この前、厚生省のリーフレットがあれではあかんということを申し上げましたが、研究をしてもらいたい。ですから、これだけではあかん、予防ができない。ある男の人が、治りもせぬのに恥を忍んで医者へは行かぬと言うていますよ。治療法があるんだったら病院へも行くけれども、恥を忍んでも行くけれども、恥を忍んで医療機関へ行って検査をしてもらっても、そのことでプライバシーが漏れたら一生が台なしにされるんだと、それだったら、もうどうせ治らぬのなら発病するまで頑張りますよ、ないしょで頑張ります、こういうことをおっしゃるのを私直接聞きました。
  198. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) 沓脱君、五分ほど経過しておりますから。
  199. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 そういうところが潜るというふうに言われているゆえんなんです。ですから、この法律をつくるということはデメリットだけがあってメリットはほとんど見られない。こういうものはこれは絶対に廃案にするべきだということを申し上げて、終わります。
  200. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) 午後四時三十分再開することとし、休憩いたします。    午後四時八分休憩      ─────・─────    午後四時三十四分開会
  201. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  202. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 もう既に多くの方があらゆる角度から質疑を行われておりますので、なるべく重複するところを避けて数点お伺いいたしたいと思います。多少重なるところがあるかもわかりませんが、確認の意味でお聞きいたします。    〔委員長退席、理事宮崎秀樹君着席〕  言うまでもないことですが、エイズ対策法律をつくれば事足りるというものではなくて、正しい知識を普及することや研究を推進することが最も大切であると思うのでありますが、エイズ対策全体のあり方とその中での法律位置づけについて、なぜ法律が必要なのか、これは参考人からもいろいろ意見をお聞きして意見が二つに分かれているところであるし、ここでも意見が分かれているところなんです。  具体的には、エイズについての単独の法律だから、差別を助長するのではないかという指摘があります。伝染病予防法や性病予防法といったこれまでの法律とは別に、なぜ法律をあえてつくらなければいけないのか。また、B型肝炎や成人T細胞白血病といった感染経路の似た他の疾病はおいておいて、エイズだけを独立した形で立法するということについてなぜなんだと、こういったことが意見の大きく分かれる根幹であろうと私は思うのであります。  この点についての厚生省のお考えをまずお聞きしておきたい。
  203. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 先生が御指摘なされますように、エイズを実際に撲滅していく、このためには総合的な対策が必要になるわけでございます。  エイズ基本的には感染症である。しかし、その感染形態は非常に特異な形をとるので、一般社会の中では実際に問題でない。しかし、一方では治療方法がないから、そこの点についての研究を深めなければならない。いろんな対応があるわけでございます。そういう総合的なエイズ対策を進めていく上で、感染の拡大を抑えるという意味でどうしても疫学的なデータが必要である。その資料を集める根拠。あるいは感染を拡大する危険が大きいケースについては医師が指導をする。指導に従わない場合にさらに行政に協力を求める。これらのいろんな個人の権利にかかわる問題等につきましては、どうしても法的な根拠があった方がよい。こういう立場からこの法律が全体の対策の中で位置づけられておるわけでございますが、そういうことを踏まえまして総合的にこの対策を進めていく必要がある、このように考えておるわけでございます。  また、エイズ単独立法であるということによっていろんな新しい差別の問題等が出てくるのではないかという御指摘もあるわけでございますけれども政府といたしましては、従来の伝染病予防法やあるいは性病予防法等も十分に勘案をしまして、現代の時代におけるエイズという新しい病気に対応するために、特に人権に配慮した形で法律を考える、こういうことでございますので、いろんな側面は持っておるわけでございますけれども法律はやはり必要である。その上で、この法律のねらっておるところ、あるいは法律の構成、その運用に当たっての問題点等について、今後とも十分に国民の皆様に理解をいただくよう努力をしていく必要がある、このように考えております。
  204. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 また、この法律ができると心配な人は地下に潜ってしまうのではないかという議論があります。これも参考人の方が述べていたことでありますが、多くの人がお医者さんのところへ行かなくなってしまうのではこれは困るわけでありまして、潜ってしまうから法律はない方がいいんだという議論もきょうもいろいろと出ていたわけでありますが、この点についてどういうふうに考え、またどう対応するのか。
  205. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 我が国エイズ感染が広がっている、こういう状況の中でなるべく心配な方々は安心をして検査を受ける、あるいは場合によっては医師の診療を受けると、こういうことになるわけでございますが、御指摘のように、法律があることによってそういうことが妨げられるということが危惧されておるわけでございます。  しかし、よくこの法律をごらんいただければ、この法律自体は非常に基本的なことを定めておるわけでございまして、しかもその内容個人の人権への配慮ということへ最大な配慮をしながら構成をしておるわけでございますので、その点についての理解をさらに深めていただくように、今後とも政府としても、その法律内容、あるいはそのねらっておるところ、そういう問題について十分理解を深めていただく、こういう努力を進めていく必要があると思います。    〔理事宮崎秀樹君退席、委員長着席〕  また同時に、法律法律としていろんな検査の体制の整備、相談体制の整備、こういうことが非常に重要なことになるわけでございまして、心配な方が安心して検査を受けることができるように、実際問題としてまだ我が国社会においてはエイズ感染というのは非常に限局をされておるわけでございますので、実際に検査をされてマイナスであるということを確認されるケースが多いわけでございます。そういった意味からも匿名検査の体制づくりというようなことは非常に有効な手段であると考えておりまして、さらにその拡大について努力をしてまいりたい、このように考えております。
  206. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 さらに、エイズは怖い病気であるという認識については、正しい知識の普及などによって感染力が弱いとか感染経路が限られているといったことを広めていかなければならないわけでありますが、この法案についても怖い取り締まりの法案だという認識が非常に強いんじゃないかというふうに私は思います。こうした点についても厚生省はもっときちんと説明を要することじゃないだろうかと思うわけでありますが、その点についてどのようにお考えであるか。
  207. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 先生の御指摘のように、この法律は怖いというようなことをしばしば聞かされておるわけでございますが、実際にその構成を見てみますと、まず第一に疫学的な情報を得るための医師の報告。でございますけれども、この点につきましては、氏名とか住所とか、個人を特定することのできるような情報は一切報告の対象としないというような格好になっておるわけでございます。また、感染者あるいは患者が医師の指導下にある場合には全く行政は関与しないわけでございますので、そういった意味からも通常の社会の中においては全く問題がないというふうに考えておるわけであります。さらに、関係をする人々の守秘義務の強化というようなことについても特段の配慮をしておるわけでございます。これらの点については、先生の御指摘のように、関係者あるいは国民の皆様の理解をいただくように今後ともさらに努力を重ねてまいりたいと思います。
  208. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 この法律ができると、行政が患者と医師の間に介入してくるのではないかということがしばしば言われているわけであります。血友病の患者家族の方々はそのような心配を持っていらっしゃるようでございますが、血友病患者がこれまでと同じように安心してこの医療を受けられるということをもっと積極的な形で表明すべきじゃないかというふうに思うわけでありますが、この辺についてはどう考えておられますか。
  209. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズ対策は、基本的には医師と患者の信頼関係に基づいて進めていくという考え方をとっておるわけでございまして、先生が御指摘なされますように、血友病の患者さんたちは安心して医師の管理下にあって生活を続けることができるように考えておるわけでございます。血友病の患者さん方は、生涯その医療の対象として医師の管理のもとにある、こういうことであるわけでございますので、エイズウイルス感染をしている場合でありましても、医師の指示に従っておる限り行政の関与を受けることはないということを申し上げたいと思います。  また、全体の疫学情報を得るために必要な報告を求めておる五条におきましても、血友病の患者さんで血液凝固因子製剤によって感染をした方々についてはこの報告の対象にならないということを明記さしていただいたわけでございます。これは衆議院の段階で修正があったわけでございますが、そういう点からも血友病の関係の皆さん方は通常の社会生活の中にある限り全く問題がない、この法律の監視を受けることはないということを申し上げたいと思います。
  210. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 これまでの質疑の中でしばしばエイズについては治療法が確立していないということが説明されているわけでありますが、国民としては、また国としても画期的な治療法の開発が待たれるわけです。  そこで、この研究開発についてはどのような予算によってどのように取り組んでいるのか、具体的に説明していただきたいと思います。
  211. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズは現段階においてはどうも的確な治療方法がない、あるいは予防のためのワクチンもまだできていないというような状況にあるわけでございまして、世界各国は挙げてその研究に力を注いでおるところであります。我が国におきましても既にこの研究に関する対応ということは手をつけておるわけでございまして、HIV感染者の発症予防の研究を初めとしまして、七つの重点研究課題を設けて進めておる段階でございます。  昭和六十三年度におきます厚生省エイズ関連予算は十二億四千四百万円でございますが、このうち研究開発の費用は八億四千七百万円ということになっております。この研究の問題というのは、お金を投入さえすれば成功するかというと決してそういうわけにもまいらないわけでございまして、優秀な研究者、そういう人材の育成ということが非常に重要になってまいりますので、そういう点と両面相まちまして適切な水準で研究が進展していきますように万全の努力を図りたい、このように思っております。
  212. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 エイズ対策の中でカウンセリングが重要であるということは先ほど質疑の中でしばしば述べておられました。厚生省でもカウセリングについて検討会を設けて取り組んでいるということを聞いているんですが、現在、検討会ではどういうことが検討されているのか、その概要を御説明いただきたいと思います。
  213. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 御指摘のように、カウンセリングは非常にこのエイズ対策を進めていく上で重要な機能になるということでございますが、現段階で、我が国におきましてはまだこのカウンセリングに対する実績というものが非常に弱いわけでございまして、そういった意味で、早急にそういう体制づくりをしていきたいと、こういうことでございます。  厚生省では現在、血友病の関連のエイズ感染者等に対する発症予防治療研究の体制が進められているわけでございますが、この体制の中でもカウンセリングの機能をあわせて整備をしていこうと考えております。  これは一つは体制整備の問題でございますが、一方では、カウンセリングの質の問題ということが非常に重要になってまいりますので、カウンセラーの養成というようなことにも力を入れていかなければいけないということで、六十四年度予算にも、これはまだ予算要求の段階でございますけれども、そういう予定をしておるわけでございます。
  214. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 私は素人でございますからよくわからないんだけれども、これからの問題のようでございますが、カウンセラーを養成し検討を加えられた暁には、これはマニュアルみたいなものができるんですか。その点どうでしょうか。
  215. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) エイズの問題というのはいろんな側面を持っておるわけでございますけれども、そういうものを総合的に取りまとめて一つのガイドラインをきちんとするというようなことは大変重要なことであり、また有効ではないかというふうに考えておるわけでございます。御指摘のように、カウンセリングのマニュアルというようなものも取りまとめて、都道府県やいろんな医師、関係者等にもそういうものを配付することによって一定の水準のカウンセリング機能というものを高めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  216. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 これは、やはり医師に対してもそういった時点になれば研修というようなことを普及していくお考えですか。
  217. 政府委員(北川定謙君)(北川定謙)

    政府委員北川定謙君) 従来、患者さんと対応する医師というのは、患者さんの病気を治すだけではなくて、その人の全体を見、全体の生活を考えながら医療をし相談にあずかっていくという機能を持っているというふうに思いますが、しかし最近の社会のように非常に複雑、分化をしておりますし、非常に多忙であるというようなことからすると、なかなか十分なことができない、あるいは医師はカウンセリングに対する専門的な技術を持ってないというような意見も多々あるわけでございます。そういう観点からして、保健福祉相談事業ということを考えて厚生省としては企画をしておるわけでございますが、そういう機能を高めていく仕事を進める上で、御指摘の医師に対する研修会なども積極的に進めてまいろうと思っておるわけでございます。
  218. 藤井恒男君(藤井恒男)

    ○藤井恒男君 五十五分までという連絡が来ておりますので、もうこれで終わらねばならないわけですが、大臣エイズ対策は、大臣もずっと座ってお聞きのように、さまざまな角度から多角的かつ総合的に取り組まねばならない課題であろうと思うんです。教育を初め関係各省との連携も密にしていかなければならない。そういった意味で厚生大臣のリーダーシップというものが大変重要になってくるわけでありますが、大臣として、このエイズ問題に対する今後の取り組みについての御抱負なり御決意を聞かしていただいて質問を終わりたいと思います。
  219. 国務大臣(藤本孝雄君)(藤本孝雄)

    国務大臣藤本孝雄君) ただいま御指摘のように、エイズ対策は、単に疾病の予防というだけではなくて、人権への配慮など各方面にわたる総合的な対策が必要でございます。このために、昨年、御承知のようにエイズ問題関係閣僚会議が設置されまして対策大綱というものがまとめられておるわけでございまして、これに基づきまして関係各省とも連携をとりながら施策を進めておるわけでございます。  今後のことにつきましては、教育の問題であるとか職場の問題等、各省庁の協力を必要とする問題もたくさんあるわけでございますので、この協力を得ながらエイズ対策が総合的に進められてまいりますように、徴力でございますけれども、積極的に取り組んでまいる決意でございます。
  220. 委員長(前島英三郎君)(前島英三郎)

    委員長前島英三郎君) 暫時休憩いたします。    午後四時五十七分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕