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高桑栄松君 あの中でやっぱり売春防止法とのかかわり、麻薬常習者とのかかわりがあるわけだ。質問をしたり命令したりするのはそれが対象ですよ、今説明として承っておりますからね。私は売春防止法あるいは麻薬常用者に一般の人をそのために巻き込んでもらいたくないんだな。そのために一緒くたにされるということの屈辱もありますからね。だから、売防法があるからには売春防止法の応用範囲で
エイズをちゃんと盛り込むことができるはずだ。立法府なんだからやればいい。今のがだめだったらやり直せばいいんだから。麻薬も同じです。麻薬取締法があるんだから、この中で応用範囲でやっていったらいいんじゃないか。一般の人を巻き込むことはありません。そうすると、あの二番目の命令とか質問とかということが落ちさえすれば私はこの
法律は
それなりに
意味があると思うんです。だから
法律ではないんだ。そういうものでないかなと思うんですよ。
ですから、私は
エイズ予防法案に反対です。血友病
患者で
感染をした方々は大変お気の毒ですが、この
法律とは全く別問題です。さっき申し上げたような第一責任、第二責任があっての話であって、これはいわゆる
感染症
予防の範疇とは別ですね。したがいまして、この方々の救済というのは全く
予防法とは無関係であります。当たり前のことを責任をとってもらいたいというだけの話である。
それで、参考人の意見がこの間聴取されました。学者の中で論争があったように受け取られた方もあるようであります。しかし私が推薦を申し上げた芦澤教授は、
我が国の
性行為感染症研究の第一人者なんです。この方が自分の学問の上から反対をなさっているわけです。芦澤
先生はサーベイランスは重要である、サーベイランス
基本法と取りかえた方がいいんじゃないかと。私は卓見だと思うんです、
感染症
予防の
基本ですから。ですから、
エイズ単独立法というのがおかしいのでありまして、
エイズはやっぱりエデュケーションでなきゃだめなんです。
それから、学会の反対はどなたかもおっしゃっていましたが、私のところへ来ているだけでも、
日本輸血学会、
日本衛生学会、これは私が衛生学会長も務めた学会であります。
日本血栓止血学会、これは極めて関連の深い学会が反対表明をしております。それから、
エイズ研究のドクターたちも
個人個人は反対の意見を持っておられるというふうに聞いております。それから
患者を診ているドクター、この人たちはもう反対なんですね。そうだと思うんだ。さっき医師の苦しみというのをお話しいたしました。ですから、そういう問題をよく考えてもらいたいと思うのです。
もう一度繰り返しますと、
エイズは
性行為感染というのが一番大きな
感染経路であるわけです。ヘモフィリアの方々は本当にお気の毒だと思いますが、この方々はドクターの監督下にあると考えていいわけだ。いつも相談に乗っていただいているわけです。その
先生方は、
法律がどうあろうと私は届けませんと言っている方がおられますから、信頼していただいていいと思うんですね。
しかし、それは別でありまして、今度は
性行為感染症のコンタクトをしたかどうかという人たちは、それだけでオープンにはしたくない。行政が関与すればプライバシーが侵されるのではないかという不安、これは侵されると言っているんじゃないんです。侵されるかもしれないという不安を言っているんです、不安なんですから。届け出によるメリットがあるのか、ないんですよ。一〇〇%ないんだから、マイナスだけだ。だからそういう明らかに不安な人たち、ヘモフィリアの方もその中に入ってくると思うんです。不安な人がいっぱいおられるわけだ。まだ告知をされないでおられる人がいるわけですからね。その人たちが真剣に反対しているじゃありませんか。だから、
法律が適用される人たちの不安だとか心配だとか、そういうことをなぜ立法者は考えないのかと私は言いたいわけです。
ある内科の教授方が集まったそうです。この話が出た。全員が立法に反対したと言っています。教授から聞いたんです。たった一人賛成した教授がいたというんだ。しかしコメントがつきましたよ。あの人変わっているんですよと言った。それくらいの
評価なんですよね。一〇〇%学者だって同じ意見じゃないと思います。しかし、やっぱりその道のオーソリティーの話は聞いてもらいたいし、私もその道のオーソリティーとまで申し上げるほどじゃないですけれ
ども、私も疫学者の一人です。それで、私が毎度申し上げた
予測はほぼ当たってきているわけです。だから、私の話ぐらいは聞いてもらいたいんだな。これは政策論争じゃないんだから。政策論争でないものをNHKが報道したように衆議院では
エイズ法案は強行採決された。私は学問をやる人間として悲しかったです。そんなばかな話がありますか。NHKがそう報道したんですよ。
そして、私はきのうゆっくりあれを見たんです。ことしの五月二十七日、NHKの「ワールドTVスペシャル・全米
エイズ討論」というのがあったんです。ロサンゼルスから市民討論会というABC放送です。私はきのうも家でもう一度そのビデオを回して見ました。この中で私がやっぱりきょうお伝えをしたいと思う言葉が語られていますよ。
これはロサンゼルス出身の共和党下院議員ウィリアム・ダンネマイヤーという人がこう発言しているんです。カリフォルニア州で一九五七年、性病
予防法がある、性病
予防法は性病によって
感染することを
法律で禁止している、取り締まるということですね、そう言った。質問があったわけです、その
法律は適用されていますかと。議員は答えたんですね。適用されているかどうかが問題ではない、
法律があることが重要なんだと。多元放送でありますから、ニューヨークからハーベイ・ファイアシュテインという劇作家がこう言っています。だれも使わない
法律をつくる、それが議員の仕事なんでしょう、全くばかげていると。拍手が起きていましたよ。
性病
予防法と
内容は違うと幾ら
主張しても、
性行為感染症という枠の中では同じなんですよ。
日本でも性病
予防法はざる法だと
厚生省も知っている。我々も知っている。すべての人が知っている。さっき何か常識だと言っていた、それですよ。そのざる法の中で罰則がないというのは大ざる法じゃありませんか。なぜそういうのをつくって人間の行動心理を縛ろうとするのか。私はこれで先進国なんだろうかと。私は自分の学問の
立場から申し上げておるわけですけれ
ども、これだけのデータがそろっているのになぜ
法律を強行しようとするんだろうか。もう一度言いたいですよね、強行採決をするような問題じゃないんだ、これは。政策論争じゃないんだから。受益者は
国民のだれかなんでありまして、どのグループではないんだ。だから、そういう問題をなぜ強行採決という形をとるのか、私はそう思いますね。
この大ざる法が提出されておった昨年の五月九日に、私は変幻自在法ということを
主張したんですよ、変幻自在に考えたいと。
エイズはまだ研究の進展によってどう変わるかわからない。だから
法律にしてしまっていいのか。そして、それが即効性があるとは思われませんよ。即効性があるのは、私の言った輸血の検査、カウンセリング、そして職場
感染予防、これは即効性があるんです。
法律は即効性がないから、そんなもの一日を争うことはありませんよ。変幻自在立法という
意味は、もう少し様子を見たらどうだ、変幻自在に変えようではないか、こういうつもりで私は言ったんですけれ
ども、
法律知らないものですから、そんな立法ないと思いますけれ
ども、変幻自在に対応した方がいい、そういうふうに私は思ったんです。
ですから私の結論は、この際もっと慎重審議をするために継続にしてもらえないかと、厚生
大臣にひとつこれに対するお考えを述べていただきたいと思います。