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1988-12-09 第113回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月九日(金曜日)    午後一時三分開会     ─────────────    委員異動  十一月二日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     高平 公友君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     吉川 春子君  十二月一日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     小笠原貞子君  十二月六日     辞任         補欠選任     高平 公友君     大河原太一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         松前 達郎君     理 事                 沢田 一精君                 宮島  滉君                 及川 一夫君                 飯田 忠雄君                 橋本孝一郎君     委 員                 沓掛 哲男君                 山東 昭子君                 鈴木 省吾君                 田沢 智治君                 田辺 哲夫君                 森山 眞弓君                 対馬 孝且君                 小笠原貞子君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    参考人        財団法人電気通        信科学財団理事        長        白根 禮吉君        財団法人都市化        研究公室専務理        事        吉田 達男君        法政大学経営学        部教授      清成 忠男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (派遣委員報告)  (地域経済社会の均衡ある発展を図るための方策に関する件)     ─────────────
  2. 松前達郎

    会長松前達郎君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  去る十一月二日、大河原太一郎君が、十一月二十二日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として高平公友君、吉川春子君が選任されました。  また、去る一日、吉川春子君が、六日、高平公友君が委員辞任され、その補欠として小笠原貞子君、大河原太一郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 松前達郎

    会長松前達郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、本日の調査会財団法人電気通信科学財団理事長白根禮吉君財団法人都市化研究公室専務理事吉田達男君及び法政大学経営学部教授清成忠男君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松前達郎

    会長松前達郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 松前達郎

    会長松前達郎君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題といたします。  まず、派遣委員報告を聴取いたします。及川一夫君。
  6. 及川一夫

    及川一夫君 お手元にお配りをいたしておりますが、一、二文言の意味がはっきりしないところがございますので、読み上げる際に訂正をいたしますので御了承をお願いしたいと存じます。  それでは報告を行います。  先般行いました委員派遣について、その概要を御報告いたします。  本調査会では去る十一月二十五日、富山県を訪れ、地域経済社会活性化とその均衡ある発展を図るための課題に関して実情調査をするとともに、富山市において、一昨年度の広島市、昨年度の名古屋市に引き続き、地方公聴会を開会いたしました。  派遣委員は、松前会長飯田橋本理事山東田沢田辺高平吉川委員、それに私及川の九名であります。  以下その概要を御報告いたします。  まず、富山空港ビル会議室において名古屋通商産業局から管内経済概況を、次いで富山県当局から県勢概要を聴取いたしました。  管内経済動向については、個人消費が堅調で、設備投資も増勢を強める等内需は引き続き好調に推移している。こうした中、鉱工業生産が一段と水準を高め、労働需給逼迫基調が強まる等管内景気は順調に拡大を続けているとの説明黒田通商産業局長より聴取いたしました。  次に、県内経済動向については、六十一年の工業出荷額は二兆八千八百九十二億円で全国のほぼ一%を占めており、物価は引き続き安定し、個人消費は堅調に推移している。鉱工業生産国内需要拡大に伴い増加基調にあり、雇用情勢は一段と改善が進んでおり、景気は順調に拡大しているとの説明田中商工労働部長より聴取いたしました。  午後一時からは富山産業展示館におきまして、「地域経済社会の均衡ある発展を図るための課題」というテーマ富山地方公聴会を開会いたしました。公述人は、中沖豊富山県知事原谷敬吾北陸経済連合会会長金岡幸二株式会社インテック代表取締役社長大井信一富山大学学長の四名で、一人十五分程度それぞれの立場から率直な意見が述べられました。  まず、中沖公述人意見概要は次のとおりであります。  東京圏一極集中と多極分散型国土形成について、現在地方が必要としているものは、一、機能地方分散権限地方分権、二、魅力ある地域づくり、三、地方人づくりへの投資、四、交流ネットワーク形成の四点であり、魅力ある地域づくりなどは、地方自助努力を根本とするものの、地方分散地方分権地方への財源措置及び整備新幹線等の大プロジェクトについては、これらに取り組む国の強い決意が必要である。  富山県における地域活性化の方向としては、富山県民総合計画を策定し、日本一の健康・スポーツ県、花と緑の県、科学文化県という日本のモデルとなる県づくり努力をしており、また、富山テクノポリスの建設、頭脳立地構想等推進し、ハイテクハイタッチの調和のとれた産業高度化活性化を目指している。地域活性化を図り、地域間競争を生き抜いていくためには、地方の個性や特性を生かした魅力ある地域づくりが大切であり、その主役は住民であることから、まさに人づくり施策基本としているとのことでありました。  次に、原谷公述人意見概要は次のとおりであります。  北陸経済連合会北陸三県にまたがり、約六百社が加盟する経済団体であり、北陸地域開発において、総合対策産業開発基盤整備等委員会を設置し、調査研究を行い、結果を広く公表している。また、昨年十一月に設立した北陸産業活性化センターにおいても、地域産業活性化に関する調査研究等に対する助成等に精力的に取り組んでいる。  従来までの国土開発は、太平洋側に重点が置かれたため日本海側と大幅な格差が生じているが、北陸は豊かな自然、高い産業技術集積、さらに過密による弊害も少なく、多くのすぐれた地域特性があり、国土の均衡ある発展のためには、それらを十分生かす施策が必要となる。  活性化方策として、第一に北陸新幹線早期着工、高規格幹線道路網整備国際空港設置等高速交通網整備がある。第二に中央官庁の許認可、事前協議等地方自立的発展を阻害していることにかんがみ、自主的かつ効果的な施策の立案、実施のために権限財源地方委譲がある。このことに関しては、先般西日本経済協議会において決議し、近々政府、関係方面要望する予定であるとのことでありました。  次に、金岡公述人意見概要は次のとおりであります。  富山県は昔から教育熱心な土地柄であり、売薬業に見られるように新しいものを取り入れ、積極的に外へ出ていく気風を持っている。富山においては、売薬が大きな産業として成長したことの理由として、第一に、先用後利という消費者のニーズを的確にとらえ、それにこたえていく販売哲学があり、第二に、日本全国で商売できるように、藩から手形を出す等の行政側からの支援があったことである。明治以降になると、売薬により培われたノーハウ、蓄積された資本等北陸銀行、北陸電力の設立運営に生かされ、これら金融資本電力資本に支えられ、日本海側随一重化学工業地帯形成されるに至った。これらは今後、内陸型組み立て工業、すなわち、メカトロニクスを中心とする分野転換していく見込みであり、そのためには地域における教育研究の機会、機関施設等整備が必要であり、これらが富山産業課題である。  国に対する要望としては、権限委譲セクト主義解消等がある。さらに日本海沿岸の県として、中国、ソ連との貿易問題には配慮してほしい。特にインテックココム規制影響を大きく受ける企業であり、留学生招聘に関しても規制される状況であり、再度検討を望むとのことでありました。  次に、大井公述人意見概要は次のとおりであります。  富山テクノポリス計画においては、第一に、富山技術開発財団による債務保証事業技術研究助成事業実施技術交流センター及びインダストリアル・デザインセンターによる研修、指導事業実施等民間企業に対する技術開発等支援。等二に、高等教育機関公設試験研究機関充実等による研究開発機能の強化、人材育成事業実施。第三に、中央データベースとのオンライン化による技術情報提供体制整備高度情報システムに関する人材育成。第四に、産学官連携プロジェクト等が進められている。しかし、県内試験研究機能は、電子応用技術バイオ分野等において実績と集積が少なく、特にバイオ関係については、研究者技術者の不足、研究を刺激する環境、協力体制等課題となっている。また、産学官共同研究中心とする異業種交流に対する産業界の取り組み方にも問題を抱えている。  以上のような富山テクノポリス産業ハイテク化地域経済活性化、人口の定住化を促し、母体となる都市の再開発による都市機能の向上、新たな文化の創造にも大きく貢献し、これにより県全体のバランスある発展が期待されるとのことでありました。  以上の公述人意見陳述に対して派遣委員からは、規制緩和に関する富山県の具体的要望テクノポリス構想推進における問題点富山県における産業構造の将来展望、アジアNIESの追い上げへの対応と組み立て加工型産業への転換における課題北陸新幹線経済効果地元負担の問題、富山県の観光事業プラン等について、それぞれ質疑が行われました。  次いで、市内の株式会社インテック富山事業所を視察し、同社事業概要及び情報化社会現状等について説明を聴取いたしました。同社は、コンピューターによる情報の処理、ソフトウエア開発及び販売コンピューターシステム製造販売、リース及び賃貸を行っており、昭和三十九年の会社設立以来情報化社会の進展とともに急成長した企業であります。特に不況時においては各企業機械化合理化等必要性により、同社への需要が高まるとのことでありました。  以上で報告を終わりますが、今回の調査を通じて感じましたことを若干申し上げます。  我が国経済内需主導型成長に変わりつつあり、これを富山地方に当てはめれば、地域経済も全般的に好調であるとの印象を受けたのであります。しかし、一方で東京圏地方との格差は依然として縮小せず、むしろ拡大しつつあることに留意せねばなりません。したがって各地方自治体による地域特性に合ったきめ細かい施策、あわせて国による頭脳立地法の活用等適切な政策運営を行うなど、各レベル間での整合性のとれたかつ有機的な施策推進国土の均衡ある発展には不可欠であり、その重要性につき再確認した次第であります。  最後に、調査地富山県においては、地域活性化のため自助努力基本に懸命な努力をされ、地域発展に尽力されていることに対して深く敬意を表し、同時に、調査に当たり御協力をいただいた現地の関係各位に厚く御礼を申し上げます。  以上で終わります。
  7. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  以上で派遣委員報告は終わりました。     ─────────────
  8. 松前達郎

    会長松前達郎君) 次に、地域経済社会の均衡ある発展を図るための方策に関する件について、参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず三十分程度それぞれ御意見をお述べいただきまして、その後一時間三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは、まず白根参考人からお願いいたします。よろしくどうぞ。
  9. 白根禮吉

    参考人白根禮吉君) 白根でございます。  私に与えられましたテーマは、情報化地域経済社会活性化といったようなテーマでございます。お手元にレジュメがございます。三十分の時間でございますので、非常にはしょった説明になるかと思いますが、後で御質問でさらに論旨を深めさしていただければありがたいと思っております。  情報化というものの、特に日本における情報化でございますけれども、背景というのはやっぱり大事だと思うのでございますが、三つほど最初に挙げてございます。八〇年代日本転換というふうに言っております。  最初の問題ですが、技術大国という言葉が最近よく使われるようになりました。御存じのように繊維鉄鋼自動車あるいは家庭電器といったよ うなものから始まりまして、今日マイクロエレクトロニクス世界で、日本世界のナンバーワンというふうに言われております。マイクロエレクトロニクスを構成する一番大事な半導体でございますけれども、今や世界ベストテンの一、二、三位を占め、さらにあと三社が入りますから六社、ベストテンのうちの六が日本が占めるというような状況が起こっております。  こういう状況というのは、実はこの繊維鉄鋼自動車家電と言われた時代とちょっと違いますのは、特にアメリカでございますけれども、アメリカが待ち構えているといいますか、同じ土俵で勝負をしたという面で見ますと、マイクロエレクトロニクスという段階になって初めてといっていいと思うのです。今まではすき間論という言葉がございまして、向こうが既に成熟した段階で、後から追いかけて、そして日本特徴を発揮して、向こうが少し油断しているところをこちらがついたという感じが確かにあると思うのです。しかし、この半導体という段階になりますと、そういう成熟産業ではなしに、いわゆるハイテク先端産業と言われる部分で日本がリードしたという点が、一つ大変大事な点だろうと思います。つまり向こうが待ち構えて勝負しようというところで勝負して勝ったということでございます。  また、高度成長期に達成したのではなしに、既に安定成長に移ってから、そういうマイクロエレクトロニクス開発が急速に日本では進んだという点が、従来の繊維鉄鋼自動車家電といった系列とは違った非常に大事な視点だろうと私は思っております。そういう中で技術大国という言葉が出てまいりまして、それによってまた経済もゆとりが出てきたという点が大変大事なことだと思っております。  二番目に、これはもう先生方に申し上げるまでもないことでございますけれども、今や世界最大債権国と言われる国になったわけでございますから、金融大国という言葉も、ずばり日本には言えると思います。一九八七年末の海外の純資産二千四百七億ドルという、つまり三十兆円という大変な額でございまして、アメリカが一九八五年以来、つまり七十一年ぶりと言っていますけれども、債務国に転落したわけでございまして、日本がかわって債権国の一番大きいものになったという点は、大変大きな転換だと思っております。  大変身近の例でございますけれども、例えば、五年ほど前に海外証券会社日本駐在員の数が数十名と言われておりました。ところが今日五千名を超えて、今や一万名に近い海外証券会社駐在員日本にいるという点から申し上げましても、この金融大国というのは、名実とも日本がなったという言い方もできるかと思います。  さて、三番目に貿易構造成熟化という項目を挙げてございます。この点は何を言っているかといいますと、日本という国は、要するに資源のない国だから、原材料輸入して、それにある付加価値をつけて、そして高度な工業製品海外に出して、その付加価値でもって我々は、日本の国が成り立っているんだと。つまり垂直分業という格好日本世界にあったんだけれども、実はこの数年でございますが、今や製品輸入輸入の面で見ますと、原材料輸入ではなしに製品輸入というものが急激にふえてまいりました。昨年一年をとりますと、実は四四%の製品輸入、またことしの三月の一カ月をとらえますと、既に五〇%は日本輸入の中で、原材料ではなしに製品輸入の国になっていると。ちなみにアメリカ、ヨーロッパの先進諸国は、いずれも六〇%の製品輸入というのが普通の状況でございますから、そういう意味でいきますと、日本もようやく垂直分業時代から水平分業時代に移ったと。日本特徴を発揮して、日本ならではという工業製品海外に対する輸出と、そしてまた、海外からもいろんなものを輸入するという時代に入ってきたと。これを成熟化という言葉で表現をさしていただきました。  そこで、産業空洞化という問題がよく議論になるわけでございますけれども、アメリカに比べますと、空洞化のおそれは余りないというふうに私は実は思っているわけでございます。その一つの理由は、日本における中小企業の非常に強い技術力でございます。つまり価格競争ではなしに、非価格競争分野として、さまざまの特徴のある会社があるという点が一つ指摘されるかと思います。  一例を挙げますと、DISCOという会社がございます。これは呉から始まった会社でございますけれども、第一製砥所、この名前にもありますように、物を切削するというのがこの会社技術でございます。この会社社長に言わせますと、人間の髪の毛を縦に三等分できるというぐらいの精密度を持っているということを言われております。これが例えば半導体のLSIとか、ああいうもののチップを正確に切るという技術になるわけでございまして、世界の七〇%、日本国内の九〇%のシェアを占めるという会社でございます。この例はたくさんございます。例えば京都の村田製作所とか福井の松浦機械製作所のように、世界の七〇%のシェアを占めるといったような会社がたくさんあるということも一つ大変注目すべきことだろうと思います。まだまだ日本は、そういう意味産業構造の面でも、またマーケットや金融のコントロールの面でも空洞化を防ぐという体質を十分に持っているということが言えると思います。  それから、もう一つ大変重要なことは、いわゆる重厚長大と言われる製造メーカーから軽薄短小という、私余り好きな言葉じゃございませんけれども、そういうことをよく言われます。重厚長大から軽薄短小まで全体を網羅した技術バランスよく持っているのは既に世界日本だけであるという点が、いかにこれから強みとして発揮できるかという点がこの八〇年代から九〇年代にかけての日本の非常に重要な視点だろうと思います。単にマイクロエレクトロニクスとかオプトエレクトロニクス、また後へ控えておりますバイオテクノロジーといったようなハイテクだけではなしに、やはり重厚長大から軽薄短小まで、あるいは成熟産業からハイテク産業までバランスよく持っているということが、世界産業技術に対する日本の寄与という点が大変重要な視点になろうかと思います。  さて、これが前置きでございますけれども、私の専門の情報化の問題を次に申し上げたいと思います。  情報化には二面性があるということをここでうたってございます。御存じのように、情報というのは受信をする立場発信をする立場と二つあるわけでございます。そういう意味でいきますと、今、首都圏一点集中という問題がよく議論になるわけでございまして、この点で申し上げますと、首都圏であろうと、あるいは地方地域であろうと、受信の量とか受信能力という点では日本の国はそう差がございません。これは海外との非常に大きな差でございます。それを受信する能力という面では大変強いわけでございまして、大阪市立大の宮本憲一教授が計算したところによりますと、東京首都圏受信量として一〇〇というふうにいたしますと、大阪が七二、そして私が生まれた秋田県とか、そういうまあいわゆる弱小県と言われる県でも四三という数字が出ております。  ところが、発信能力とか発信量という点でとらえますと、東京を一〇〇にいたしますと、大阪が一三、名古屋が三・四、秋田その他の県の小さい県になりますと、東京首都圏を一〇〇にいたしまして、〇・五という数字が出てまいります。つまり、それだけ大きな格差があると。ですから、この情報格差と言われる問題、すなわち、これはまたある意味では文化格差という言い方もできるかと思うのでございますけれども、そういう発信能力なりという点で言いますと、首都圏地方との格差は大変大きい。実はそれは日本世界という局面でも同じことが言えるわけでございます。  残念ながら、日本にも共同通信という大きなエージェントがございますけれども、やはり昔からのロイターとかAPとか、UPIとかタス通信とか、あるいはフランスのAFPといったような 巨大な通信社がほとんど世界発信源になっているという点は事実でございまして、だから首都圏地方の問題というのは、残念ながら日本世界という、先進国という点は、いまだに余り差がない。今、次第にそれが改善されつつあるという認識が正しいように私は思っております。  そういう点を考えますと、実は情報発信力というのは、すなわち、文化発信力というふうにも言えるわけでございます。明治維新以来と言っていいと思うのですけれども、やはり工業化というものを推進する過程の中で、ややハードウエア生産というものに非常にウエートがかかりまして、効率化を盛んにやってきたわけです。そしてまた、中央集権という格好でそれを進めてきたわけでございますけれども、どうもソフトウエアなり文化の面では、いささか日本はこれまで立ちおくれがあったんではないかという視点も一つ出てまいります。そこら辺につきましては、また後で御質疑の際にもっと敷衍してみたいと思います。  それから二番目に、ネットワーキングパッケージングという、ちょっと新しい言葉が出ております。これは何を申し上げているかといいますと、新しい情報のインフラストラクチャーとして、御存じのように来年の春には二つの民間衛星が上がるとか、あるいはISDNというディジタルの光ファイバーの幹線日本列島に大きく広がってくるとか、そのほかにも具体的にはファクシミリのネットワークがどんどん今広がっているとか、パソコン通信が今まだ数は少ないですけれども、若い人々に大きな影響を与えるとか、そういうものが、言ってみれば、ネットワークの持っている情報機能というものを高める能力がそこに出てくるわけでございます。  地域なり個人なりの情報のやはり受発信能力というものが大変拡大されるということが言えると思うのですけれども、一方、そういうものに対してパッケージングと言っておりますのは、例えばビデオでございます。レンタルビデオの世界が急激に今広がってきておりまして、日本の三千八百万世帯の五〇%を既にVTRの保有台数が超えております。つまり、二千万台というような数字になってまいります。ビデオレンタルマーケットというものが大変な勢いで今拡大しているわけでございます。こういうものは、ネットワークというよりも情報をパッケージにして、自分で好きな情報をとるという形になるわけでございまして、この形が特にヤング層を中心に大変拡大を今しているという点を御指摘さしていただきたいと思うのです。  ですから、例えばことし映像の国際フェアというのを日本でもやっておりますけれども、ハイテク映像という分野で入賞しました中に、岩波書店と大日本印刷の共同でやった広辞苑のビデオディスク化というのがございます。見事に広辞苑が一枚のディスクに入っているわけでございまして、しかも大変注目すべきことは、例えば小鳥でございますね。ウグイスとかいろんな鳥がいるわけですけれども、カラーでこう出てまいりまして、鳴き声が入っている。五十種類の見事な鳴き声がディスクから出てくる。これは従来の広辞苑、印刷物ではとてもできなかったことでございまして、これもやはりパッケージという、パッケージング機能というものの拡大の一つの大きなことだと思います。  医療分野で今大変困っておりますのは、CTスキャナーとかいろんなものが出てまいりまして、健康情報も画像化されてきております。たくさんの超音波なりあるいはトモグラフィーで撮ったものが出てくるわけでございますけれども、そういうものを蓄えるという問題は、病院でも大変大きな問題になっているわけでございます。そして、ある場所に、そういう病歴管理みたいな情報が大きくデータベースで蓄えられますと、御存じのようなプライバシーの問題ということがよく言われるわけでございます。それが別の、自分が望まない相手がそれをもし引き出したとしますと、これは大変な問題になるわけでございますけれども、しかし、このパッケージング機能というものが高まってまいりますと、例えばICカードとかCDーROMとかいうようなものがいろいろございまして、そういうものに自分の病歴管理を全部入れ込んでおきまして、それを自分が所有して、必要に応じて病院でそれをやってもらうというようなことになりますと、これはプライバシーの問題がなくなるわけでございます。  一カ所に情報集中することによって、むしろそういう問題は起こるけれども、パッケージにして持てば、これは自分の意思で診断を受けるためにその情報を医者に示すということになるわけでございますから、そういうことで、要するに集中すべき情報と分散でやるべき情報というものが再編成の時代に来ているという点が、この二面性の二番目の大変重要な問題でございます。  時間がございませんからはしょりますけれども、高度情報社会とは何かというのが次にございます。  これは例えて申し上げますと、来年あたりから民間の通信衛星も上がるとか、いろんなことになってまいりますと、例えばサテライト・ニュース・ギャザリングという言葉がございます。SNGと言っております。これは時間とか場所にかかわらず、日本じゅうどこでも、あるいは世界じゅうどこでもと言っていいのかもしれませんが、衛星を使ってそういう情報がとれるわけですし、またそれを放送系で流せるということになります。そうなってまいりますと、ネットワークの方でございますけれども、従来の地上の電波を使ったといいますか、マイクロで中継をした放送に対して、サテライトから、空から降ってくるということになりまして、恐らくリアルタイムの必要性のあるニュースとか、あるいはスポーツ番組とか、そういうものが非常に大きくさま変わりしてくるということになろうかと思うのです。  そして同時に、地域でも、つまり首都圏ではなしに地域でも直接そういう格好日本全国情報を流すという手段も非常に上がるわけでございますから、これはいい情報さえとれれば、地域でも全国を相手に、そこからSNGという格好情報が伝えられるという手段が上がってくる。つまり、今中継がどうもへんぴな場所ですと、なかなか厄介だということになるわけですけれども、そういう点の自由度が保証されますと、これは地域情報発進能力というものを高めるということにもなろうかと思うのです。  つまり、高度情報社会と言われているものは、例えば地域とか、あるいは個人を含めてそれぞれの地域、それぞれの個人が自分の自主性を持って、また自分の個性を発揮することができるという形、そして、しかも全体の社会的容量がパンクしないという、そういう形がもしできたとしますと、極めて柔軟で、生き生きとした社会システムというのができてくるというのが、実は高度情報社会と言われるものの到達すべき姿でございます。残念ながら今は、非常にそういう点では集中化が進んでいるんでございますけれども、ある段階でそういうふうな地域の主体性なりあるいは個人の主体性というものが発揮できるということになりますと、これは日本型の極めてすばらしい情報社会に到達できるといったような言い方ができるかと思います。この点につきましても、また後で補足さしていただきたいと思います。  さて三番目に、情報化地域活性化の条件、これが実は一番大事な問題なんでございますけれども、ここで一つ最初に申し上げておりますのは、企業立地の条件変化でございます。  従来の企業立地あるいは工場立地ということになりますと、いわゆる工場団地型でございます。テクノポリスといったような言葉がございまして、例えば工業用水とか電力とか、労働力とかあるいは土地の値段であるとか、交通の便といったようなものが、こういう工場団地というものを地方に展開する場合に非常に重要だったわけでございますけれども、それが情報産業が非常に主導する時代になってまいりますと、インフラが変わってくるということでございます。  どう変わるかということでございますけれど も、私は生活環境型に変わる、工業団地型から生活環境型に変わるという表現をさしていただいております。つまり、その場所の自然環境ももちろんでございますけれども、文化水準とか教育水準というのも非常に重要なファクターになってまいります。つまり、人が集まりたくなるような環境でなければ、私は情報産業の立地は無理だということになるかと思うのです。ただ従来と違いまして、ある地域集中しなくても、ソフトウエアの性質として分割発注ということができますので、どこに立地するかという自由度は高まるわけです。高まるんですけれども、それにしても文化水準とか教育水準というものが高い地域でないと、これはなかなか厄介である。  そういう点で申し上げますと、札幌のSTEP、あそこにはハイテクのエレクトロニクスのセンターがございますけれども、札幌の都市機能つまりは今申し上げた文化水準、教育水準というものをフルに近くで使えるし、かつ土地が非常に安くて、自然環境の豊富な場所に立地して成功しているということになるわけでございまして、この点も地方分散という面で非常に重要な視点になってくるかと思います。さらには雇用吸収力という面でも、例えば、いわゆる半導体の工場みたいなものは、雇用吸収力には余りならないわけでございます。地元の吸収力にはならないわけでございますけれども、ソフトウエアという面になってまいりますと、地元の雇用吸収力というものも非常に大きいということになります。これは企業立地あるいは工場立地の問題だけではなしに、このごろはやりのリゾート開発といったようなものにも全部つながるわけでございまして、ここで一つ重要な点は、国内における立地の競争ではなくて、日本海外との立地の競争になるという点を特に申し上げたいと思います。  例えば、レジャー関係にしても、北海道旅行をするのか、あるいは香港へ行くのか、台湾へ行くのか、あるいはシンガポールへ行くのか、さらにはオーストラリアへ行くのかということが余り経済的な意味では差がないわけでございまして、その意味では大変な国際的な競争に今さらされているし、企業立地にしましても、私の郷里の例えば秋田に、秋田出身の社長さんの会社が工場立地するというふうにもう九〇%決まっていたんですけれども、それがアメリカに立地することになり、またバンコクに立地することに変わってしまったというケースが、私自身がそれに携わっておりまして、知事に頼まれて立地を進めまして、そういう苦い経験を持っております。つまり世界のどこに立地するかというのが日本の今日の経済力、あるいは産業の構造からいってそういう時代に入ったし、また消費サイドでも、レジャーの問題でもそういう時代に入ってきたという点は大変注目すべきことだろうと思います。  時間がもうございませんので、あとの二項目は大変簡単に申し上げます。  地域先行中央追随は可能かというテーマでございます。  実は今まで地域で先行したものがあったのかという点でございますけれども、岩手県に沢内村という村がございます。ここで老人医療の無料化というのを日本で先駆けてやったということは御存じのとおりでございまして、これはまさしくそれから全国に広がった。また、旭川が歩行者天国を最初にやった場所でございまして、これが日本じゅうに広まった。あるいは新潟県の長岡市でございますけれども、これは職、住。そしてさっき申し上げた、教育という面での学ぶという機能をも付加したニュータウンの醸成は、テクノポリスと言われる前から既にやっているわけでございまして、もしやる気があれば、地方は既にそういうことをやってきている、可能性は決してないわけではないんだ。そのためにもやはり人という問題は大変重要だということになると思います。もちろんそのリーダーシップを発揮する人も必要ですし、また、そういうものを享受する一つの、そういう地元の享受能力というものも大変重要だということになろうかと思います。私ども専門ではございませんけれども、とにかく中央集権という形からいかに地方分権をこれから進めていくかといったような問題を考える場合も、決して地方もそういう能力はないという決めつけ方は非常に問題があるんじゃないかという点だけを御指摘しておきます。  それから、働く、住む、憩う、学ぶという、憩うというのは遊ぶと言ってもいいのかもしれませんが、この四つの機能がやはり都市機能を考える場合に極めて重要であるという点でございます。  従来百二十年にわたる明治維新以来、工業化の中でどうしても企業城下町といったような感じの状況日本じゅうに起こっているわけでございます。つまり都市機能が、企業の営業空間とか、あるいは企業の事業所空間というものが中心になり過ぎておりまして、そして、市民の生活空間としての都市というものにやや重点が今まで置かれなかったのではないかという点でございます。その結果何が起こったかといいますと、下町というものがどんどん衰退したのではないか。そのために何とか下町を復活させようという動きは、地方首都圏を問わずあるわけでございまして、首都圏におけるウォーターフロント開発というものも、やや私はそういう期待を一つ持っておりますし、また大阪という町をとらえてみましても、中之島祭りというのを学生のボランティア活動で始めたわけでございます。中之島には御存じのように、非常に古い建物があって、危うく撤去の憂き目に遭いそうだったんですけれども、この学生たちの中之島祭りというボランティア活動によって救われたという面が一つございます。  そういう格好で、今都市機能というものをもう一遍見直す必要があるんじゃないだろうか、あるいは原点にもう一遍戻って考える必要があるんじゃないだろうかというのが、私のきょうのこの情報化という問題の結論にもなるわけでございます。そして、その原点といった場合には、やはり明治維新以来失ったものと私申し上げたんですけれども、江戸時代というものをもう一遍考え直してみるということも大変重要なんではないか。江戸文化というものが非常に花開いた時代というのは実は新田開発つまり、新しい田んぼの開発の終わった元禄とか享保年間、これが江戸文化の栄えた時代、花盛りの時代でございます。  ようやく日本も今、安定成長時代を迎えまして、改めて日本文化というものをもう一遍世界発信できる形で育てるということが、すなわち情報発信能力というものを高めることになるし、また地域を含む活性化、あるいは個人活性化を含めまして、この高齢社会の中で何とかやっていかなきゃいけないことじゃないかというのがきょうの結論でございます。  どうもありがとうございました。
  10. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  続きまして、吉田参考人にお願いします。
  11. 吉田達男

    参考人吉田達男君) 吉田でございます。  私に与えられましたテーマは、地域振興における社会資本整備の役割ということでございます。お手元にメモを一枚と六枚の表をお配りいたしておりますので、それに基づきながらお話しさしていただきたいと思いますが、話の順序としましては、現在の激しい地域経済の変動というものをどういうふうに評価するかというのを第一点、それから第二点に、社会資本の流れと現在の問題点、最後に両者の接点の問題を述べさせていただきたいと思っております。  まず、地域経済の激しい変化が生じているわけですが、私の見解では、ここは二つの大きな転機があったというふうに思っております。  第一の転機は昭和五十四年で、これは事務的ないろんな統計から追跡いたしますと、やはり五十四年が一つの大きなポイントであった。この年は、実は全国四十七都道府県の人口の中で減少したのは東京都だけでございまして、四十六道府県はすべて人口増という形になっております。それは一表並びに二表を見ていただきたいと思いますが、一人当たりの県民所得につきましても、この年が一番地域間所得格差が縮小した時期でござい まして、東京都の一人当たり県民所得を一〇〇といたしまして、六〇以下の県が六県にまで縮まったという時代でございます。  ところがこの年、イラン革命に基づく第二次石油危機が生じまして、その後いわば財政が非常な緊縮に入るということから、それに伴う低成長、それから公共投資の抑制、さらに重化学工業の低迷というのを受けまして、この五十四年以降次第に地方圏の人口増加が鈍化し、さらに減少する人口減少県があらわれてまいります。さらに地域間所得格差が次第に拡大したということでございます。第一表によりますと、五十九年には人口減少が六県に広がる。さらに第二表によりますと、一人当たり所得で六〇以下の県が、ここに書いてございますように非常に広がってまいるということでございます。  ところが、第二のもう一つの転機が昭和六十年に訪れました。これは白根先生のお話にもございましたが、この年、ニューヨークでG5がございまして、世界的ないわゆる経済調整が始まる。突如として二百四十円の為替レートが百四、五十円まで上がる、原油価格が三十ドルから十ドル台までに下がるという形で世界経済の大変動がございます。その結果として、我が国が非常な巨額な債権国になる。世界金融市場の動きとして、それ以前は、せめて二〇〇〇年になれば東京金融市場はニューヨーク、ロンドンに迫るのではないかという予測が一般的でございましたが、三年の間に両国際資本市場を上回るような動きになるということでございます。そういう世界経済の変動の過程におきまして、国内的には内需拡大、さらに経済構造の調整を進めます。経済構造の調整は、古い地域経済構造から新しい経済構造への移行を意味しますが、その移行の場合に新しい機能集積を招く事業、産業は、やはり東京圏に圧倒的に立地条件が有利だという形になりまして、実は東京圏の人口がさらに増加する傾向になっております。  第三表を見ていただきたいと思いますが、これは去年の六月に閣議決定になりました四全総が、将来の国土像をどういうふうに描いたかというのを人口で示しております。  これを簡単に申しますと、六十年から七十五年の間の十五年間に日本の人口が約一千万人ふえる。ところが放置状況ですと、東京圏の人口は三千万から三千五百万になる可能性がある。それを多極分散型国土形成のための施策をやることによって、二百万人を何とか地方に持ってもらう。それで七十五年の東京圏の人口は三千三百万に押さえたいということでございます。これを比率で申しますと、この期間の全国人口増の二七・九%を東京に定住させたい。逆を言えばそれにとどめたいということでありますが、この右の方に、これは統計的には住民基本台帳人口でございますが、三年間の増加を書いてございますが、この間、東京圏に実は百万人の人口増が三年間に実現しておりまして、これは全国人口増の五三%に当たるということでございます。つまり、現在は四全総の願望にかかわらず、東京一極集中が加速をしているというのが今の状況であろうかと思います。  そういう状況のもとに、今現在の日本地域構造は一体どういうふうになっているかと申しますと、東京五十キロ圏というのが、三千百万の世界最大都市圏になっております。その周りの影響が出てまいりまして、よく通常東京三百キロ圏と言われます仙台から新潟、豊橋に至るあたりの地域が非常に活性化が進んでまいる。関西圏も千七百万の、現在、所得で申しますと世界第二の都市圏になっておりますが、これも最近はやや活性化の傾向がある。ただし、この本州中央部を除くところの北海道及び北東北並びに中四国、九州、沖縄という地域は人口も減少し、所得の増加もままならない。去年の緊急経済対策以降の内需拡大によりまして、北海道も九州もやや活気を取り戻しておりますが、構造的に見ますと、この地域の停滞というのは相当激しいものがございます。  以上のような状況のもとで、これにどういうふうに対応するかということでございますが、国は一極集中是正を非常に強く叫んでおりますが、実態はその後、集中は加速しているという状況でございます。  しかし、それに対してやっぱり二重の問題が起ころうかと思います。一つは、やはり国土の均衡発展ということで、人口の七五%は東京圏以外にいるわけでございますから、この振興を図らなければならないということと、もう一つは、三千万都市東京におきまして、最近の発展が非常に著しいものでございますから、かつて危惧された東京圏の限界というのが、やはり現実の問題になろうかということでございます。一つは御存じのように、神奈川県を除いて東京圏はすべて利根川に依存しておりますが、利根川の水というのが非常に問題が多いということ、さらにこの二年間で約二百万キロワットの電力需要の増加が実現しておりますが、これは原子力発電所二基分が二年間にふえたというようなことで、かつて電力の限界というのが言われましたが、これもまた非常に大きな問題であろうかと思います。  そのほか交通難、通勤難はさらに激化の様相もございますし、さらに地震の可能性というのは一日一日近づいているということでございます。そういう意味から申しますと、実際、現実には東京集中のエネルギーは非常に強いけれども、何とかあらゆる意味で知恵を出して、この多極分散を図る、その知恵はどこにあるかというのが今の課題であろうかというふうに思います。  続いて、社会資本の整備の問題に移らしていただきます。  日本は、世界でもまれに社会資本整備を重点的にやってきた国でございます。まずその契機は、昭和三十五年の国民所得倍増計画でございまして、第四表を見ていただきたいと思いますが、それ以前はIG、これは政府の固定資本形成でございます。GNPに対する比率がせいぜい五、六%であったわけでございますけれども、倍増計画の冒頭、計画の目的の一つが社会資本の整備であったということもありまして、この時期から社会資本の投資が非常にふえまして、高度成長期には七・五から九%台という形になっております。恐らく世界先進国のどの歴史でも、これだけの期間にGNPの八%ないし九%を社会資本に投入した国はございませんから、そういう意味では非常に特徴的な政策を進めてきたということであろうかと思います。  最初は、倍増計画の目的でありました高度成長実現のために社会資本が既に隘路になっているということから、何よりもまず産業発展の隘路是正ということで、道路、港湾、工業用地、工業用水というのが重視されました。四十年代になりますと、産業開発から社会開発だという声が高まりまして、住宅、上下水道、厚生福祉、下水道というのが徐々にふえ始めました。四十五年の環境国会以降は下水道が飛躍的にふえるという形になっております。  それと同時に、日本の社会資本整備の一つの特徴であります大規模プロジェクトというのが昭和四十四年の新全総というのを契機に始まりました。もとより同じタイプの事業が三十年代になかったわけではございません。三十九年に完成いたしました東海道新幹線並びに名神、東名の高速道路というのは、それぞれ後から考えますと非常に大規模な事業であったわけですが、当時着工の時点では、むしろ現東海道線、在来線の隘路是正とか、あるいは国道一号線の隘路是正とかということで着工されたわけですが、その営業開始とともにその効果が著しく高いということが注目を浴びまして、この大規模プロジェクトを駆使して、新しい国土開発を進めるべきではないかというのが新全総でございましたわけですが、しかしその後、列島改造あるいは第一次石油危機が起きまして、大規模プロジェクトの促進ということが非常に経済のアンバランスを招くということから、第一次石油ショックは抑制という形になりました。一方、福田内閣によりまして、五十三年にさらに経済成長促進のためにやはり大規模プロジェクトを再開すべきだということで、現瀬戸大橋なんか が再開されたわけでございます。  さらに五十四年第二次石油危機が起きましてからは、財政削減の過程で大規模プロジェクトの抑制ということが行われまして、約五、六年は新しい大規模プロジェクトの着工はなかったわけでございますけれども、五十九年から再び拡大基調になりまして、東京湾横断道路なりあるいは関西国際空港、それから明石架橋、関西の学術文化都市というのが選択的に推進されるという形になったわけでございます。  以上が大ざっぱな経過でございますし、また現在の公共投資が一体どういう配分になっているかというのは第五表を見ていただければわかると思いますが、現在約二十四兆の、現在と申しましても一番新しい数字で六十年度ぐらいしかないのですが、二十四兆の公共投資のうち六兆八千が道路、これが約二七%、やはり四分の一以上を占めるということでございます。それから鉄道は、この年新幹線の一段落、その他国鉄の改革なんかがございまして五・八%と、かつての比重から見ますと非常に下がっております。その次に大きいのは環境衛生、なかんずく下水道でございまして、これが二兆九千八百、下水道が一兆五千、その他文教、国土保全、農林漁業というのがそれぞれ八%台で続いているというのが状況でございます。  こういう社会資本の流れと地域開発との関係で何かいい理屈がないかということでございますが、ここに社会資本ABC論の立場からというのがございます。この社会資本ABC論というのは実は大分古く、昭和三十九年の地域経済問題調査会という、法律に基づく調査会がございまして、そこの審議の過程の中で、国土開発と社会資本の関係を考える場合の一つの分類として用いられたわけでございます。その後実際の関係者の間では、このABC論でいろんな議論が行われているということでございますが、その内容は、大ざっぱに申しますと、第六表でございますが、同じ道路整備五カ年計画何十兆という場合も、非常に大規模な高速道路から私どもの家の前の市町村道まで入っている。それが全部合わさって道路といっても、やっぱり論理的にははっきりしない。これをさらに分けてみるとどういうことかということで、まず社会資本Aというのに属するのは、その整備の効果が全国に及ぶようなプロジェクトである。事業タイプで言えば高速道路網、新幹線網、国際空港、国際港湾、大型架橋、大規模な新都市建設といったようなたぐいの、その影響全国に及ぶようなプロジェクトでありまして、この経済効果というのは、はかる時間としては、例えば二十年とかいった非常に長期の展望のもとに計画し推進されるべきである、あるいはこの経済効果が測定されるべきであろう。  それから、社会資本Bというのは、例えば北海道地方とか、あるいは九州地方、あるいは首都圏といった地域における社会資本の整備に属するタイプでありまして、例えば一般の国道とか主要地方道、在来の鉄道幹線、それから重要港湾、地方空港、それから大規模な水資源開発、あるいは大規模な工業開発といったタイプの社会資本整備がBに入る。最後は社会資本Cで、それぞれの生活圏なり農村の社会資本である。これは、例えば五年ぐらいの期間で考えていいんじゃないか。そのタイプには市町村道とか、通勤鉄道とか、地方港湾、住宅、上下水道、教育施設、厚生施設、文化施設が入るということでございます。  このABC論というのは、さらにもう少しねらいがこもっておりまして、本来国が責任を持ってやるのはやはりこの社会資本Aではないか。それで、社会資本Cというのは本来生活圏の社会資本でありますから、市町村あるいは広域市町村圏というものの責任で整備をすべきではないか。中間の社会資本Bというのは、あるものは国でありあるいは県であるというふうな形で整備を進めていく、県が協議して進めていくという必要もあろうかと思います。当時はこの補助金を通じまして、社会資本ABC全部が中央のお役所の計画の枠の中に入っている。やがて経済が成長していけば、なるべくこの社会資本Cというのは地域特性に合った形で、地域の選択と責任において進めるべきではないかという意向が含まれていたわけであります。  この社会資本ABC論の立場から、じゃ一応今の日本の社会資本整備の現段階というのはどう評価したらいいかということでございますけれども、社会資本Aを大規模プロジェクトとして推進してきた過程、既に私が申し上げましたように、ストップ・アンド・ゴーの繰り返しでございましたけれども、ともあれ相当の整備が進んだ。ただし、これはまだ中途半端でありまして、この整備が進んだ地域、例えば新幹線地方空港、高速道路がそろった地域、しかも東京から近距離にある地域は、東京三百キロ圏ということで、もう本当に日帰り圏になりました。そういう意味での三百キロ圏の活性化というのは、この社会資本のAの整備の成果であると同時に、逆を言えば、それより先の地域に及んでいないのは、まだ十分この社会資本Aの整備が進んでいないからだという点が言えるのではないかと思います。  それから、Bは地方圏でございますが、Bは地方並びに大都市圏の社会資本整備でございますが、これは一般的にいいまして、地方では随分整備が進んだ、ますます進んだ。しかし大都市圏は、これはとても未整備である。御存じのように、東京の場合に環状七号が昭和二年、完成したのが去年でございますから六十何年かかっておりますし、今環八もなかなかできそうもない、そういうことから申しますと、大都市圏のBというのは非常におくれております。ただし、地方は相当進んだということは言っていいと思います。  それから、Cにつきましては、割に細かい需要が多いものですから、相当生活圏の社会資本整備が進んだと言えます。ただ、残っておるのが下水道でございます。この下水道というのは非常に金がかかる上に工事が難しいということもございまして、やはりこのCの段階では、下水道整備中心とした施設がおくれているのではないかというふうに評価しております。  それでは、今後の社会資本整備課題は何かということでございますが、一応この間決定されました新経済計画では四つの課題を挙げております。  まず、冒頭に多極分散のための高速交通ネットワーク整備、続いて豊かさを実感できる国民生活基盤の整備、それから三として、産業構造調整の円滑化のための基盤整備、四に次代に向けた新しい発展基盤の整備ということになっております。この四つは、いろいろ議論をしたら大体こんなことじゃないかと思いますが、現在の地域問題の深刻化から申しますと、この一に多極分散のための高速交通ネットワーク整備を挙げたということは、この新経済計画の一つの特徴であろうかというふうに思います。  そういう目標はともかくとして、それでは現在の社会資本整備で強いて問題点を挙げるとすればどういうことかということなんですが、これはやはり数十年にわたって社会資本整備を続けてきた結果として、社会資本整備のシステムができ上がっておりまして、その配分が非常に硬直化しているということが言えるのじゃないかと思います。  特に、五十四年から財政再建のために公共投資を抑制しましたために、いわゆるシーリングというか、前年度比をふやさないという形をとりましたが、この前年度に比してふやさないということは、五十四年度のシェアを固定したという形になります。したがって、ある省では各科別の投資額の配分比も七年間変わらなかったというようなことがございまして、そういう意味では新しい時代の変化に対応するということについては弾力性が欠ける。そういう意味では何らかの形での配分の再検討ということが必要ではないかというふうに思っております。  それと関連するわけですが、昭和二十八年の道路整備五カ年計画の発足に始まりまして、それぞれ五カ年計画を閣議で決定するという形が一つの 各省庁の目標になりまして、現在十五の事業について五カ年計画が閣議決定されております。したがって、これも個別の縦割りで事業が決定されるものですから、その総合性とか横の事業との関連性というのは何ら配慮されていないということです。  それから、特にそのCの段階、市町村圏、市町村の事業につきましても、事業がなかなか補助金なんかの関係で縦割りになっておりますので、各省の調整がなかなか大変だ。今話題になっておりますウォーターフロントなんかが一番特徴でございまして、港湾区域は運輸省の所管である。それからそれより内陸は都市計画、建設省の所管である。その間に入った市町村というのは大変に苦慮をしておるということもございまして、この辺の調整をどうするかというのも都市整備の事業を進めるためには非常に重要じゃないかと思います。  最後に、東京一極集中という形の基調が高まれば高まるほど、地方振興のためのプロジェクトの採算性が非常によろしくない。整備五線が一番いい例だと思うのですけれども、要するに軽井沢までは採算が合うけれども、青森までは採算が合わないという矛盾が出てまいります。これをどう、つまり社会資本の整備のプログラムの中でこの採算性のリスクをだれが負担するか。例えば有料道路ですと、日本道路公団の中のプール制によりまして、東名、名神の利益が東北縦貫その他の赤字路線の補てんに充てられているという形ができますが、新幹線につきましては分割してしまったものですから、プール制ができないということがございまして、それもまた整備幹線の進まない一つの理由ではないかというふうに思います。  時間が参りましたので、最後に三点だけ特に気になると申しますか、私がポイントだと思っていることを申し上げます。  一つは、いわゆる今後の重点課題として挙げられております高速交通ネットワーク整備に伴ういろんな効果ですが、当然ながら地方へのいろんな機能の分散効果をねらって整備をする。ところが整備してみると、実はここによく言われる逆流効果ということで、地方から東京への集中を非常に促すという二つの面がございます。この二つの面を今後どういうふうに評価していくかということでございますが、例えば本四架橋で申しますと、高松の人たちが大阪に買い物に来るようになったということは、これはある意味での逆流効果でございます。ところが、四国のホテルが全部土日は満室で、我々が電話をかけても取れないという状況は、これは分散効果であるということになります。大体初期の段階で逆流効果が出まして、やがて時間がたつにつれて分散効果が出てくるというふうに考えてよろしいんじゃないか。現に仙台とか新潟の状況を見ますと、確かに逆流効果もありますが、やはりいろんな機能地方への分散を考えますと、高速道路、新幹線の分散効果というのは評価してよろしいんじゃないか。したがって、今後もその方向に従って、やはり高速交通体系の整備を進めてよろしいんじゃないかと思います。  それから第二は、プロジェクトベースからプログラムベースへという非常にわけのわからない言い方になっておりますが、これはやはり実は新全総以来、大規模プロジェクト中心として地域発展を図っていくという発想でございましたが、このように白根先生のお話しになる情報化とか、いろんな地域経済高度化されますと、単にプロジェクトだけを必死になって進めるということじゃなくて、それに伴ういろんな要素を全部含めた一つのプログラムとして開発を進めていく必要があろう。例えば、今リニアモーターなんかが非常に話題になっておりますけれども、技術革新、超電導の技術開発とりニアモーターというものの配慮を非常に進めていくということとか、あるいは一つのプロジェクトについては別のプロジェクトの関連を考えてやるとか、高速道路をつくるときには、必ず次に高速道路の先に企業を誘致するような何かのプロジェクトを考えてやるとか、全体としてのそのプログラム、時間の要素を入れたプログラムとして進めていく必要があろうかと思います。  それから最後に、これは私の専門ではございませんが、今までの社会資本整備の過程を見ますと、もろもろの技術開発がそこで生まれ、その技術開発が次のプロジェクトを生むと。例えば、下水道の工事によるシールド工法の進歩が東京湾横断道路のトンネルの掘削を可能にさせた、こういうようなことがございますし、あるいは今話題のリニアモーターも、単に交通手段として見るのではなくて、世界に先駆けて超電導技術を促進していくという立場からそのプロジェクトを評価するとか、そういうのが今後の社会資本に大きな課題として残されているのではないかと思います。  以上で終わります。
  12. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  続きまして、清成参考人にお願いします。
  13. 清成忠男

    参考人清成忠男君) 清成でございます。  私に与えられましたテーマは、地域経済社会における地域産業の果たす役割ということでございまして、地域産業をどのように強化するかということであろうかと思います。  最初に、事実といたしまして、地域間の格差拡大しておるということでございますが、これは周知の事実でございますので、この格差拡大ということが具体的にいかなる意味を持つかということを少し申し上げたいわけでございます。  先ほどさまざまな統計から、昭和五十四年を転機として地域間の格差拡大しておると。これはさまざまな官庁統計を分析してみますと、大体一致してこういう傾向がございます。しかし、この地域間の格差拡大といいますのは、東京圏とそれ以外の地域との格差拡大、こういう特徴を持っているわけでございます。  ただ問題になりますのが、それでは一体東京圏とは何かということであります。東京圏は、ごく常識的に言えば東京三百キロ圏であるというふうに考えられますし、それからまた部分的には東京四百キロ圏、場合によってはそれ以上というふうに考えていいわけでございます。例えば、現在産業ハイテク化ということが進んでおりますけれども、そうなりますと当然情報機能が必要になる、創造活動が必要になるということになるわけであります。そうしますと、企業の場合に東京に本社機能、なかんずく情報機能が重要でございますけれども、情報機能があると。この情報機能とつかず離れずということで、大体東京三十キロ圏から五十キロ圏のところに研究所が張りつくということになるわけでございます。  昨今、この研究所の増設ブームが大変活発でございます。大体昭和五十年代の末から研究所の設立ブームが起こっておるわけでございますけれども、この大体四分の三ぐらいが東京三十キロ圏から五十キロ圏ということになるわけであります。川崎市に大体百、横浜市に百、神奈川県全体ですと研究所が三百を超えるということになります。埼玉県でももう既に百五十ぐらいの集積がございます。筑波もそれを上回るといったような状況でございまして、研究所が圧倒的に東京圏に集まる。こうなりますと、関西の大企業研究所は東京圏に持ってくる、あるいは広島のマツダは、広島の研究所を廃止して横浜の港北区に持ってくる、あるいは新日鐵は千葉に全部研究所を結集するということになるわけであります。  こういうぐあいに情報拠点と連動しながら研究開発拠点が集積されてくる。そしてまた、研究開発ということと試作、あるいは製造工程というのは、またこれがつかず離れずでございますから、したがってその外側に生産機能が張りつくということになるわけでございます。こうなりますと、東京を基点とします高速道路沿いに工場が張りついていくということになるわけでございます。したがって、東北自動車道あるいは関越、中央高速道、二四六、東名といったところにこのハイテクの工場が張りつくということになるわけでございます。  したがって、東京圏一極集中というのは、こういった生産機能まで含めますと、もはや既に岩手 県から東京生産圏に入ってしまうということになってまいりますし、場合によっては青森の県南部も東京生産圏であるということが可能になっているわけであります。例えば、注文はファクシミリで注文する。そして図面であるとか、あるいは材料等は宅配便で送る、製品もまた宅配便で入るといったようなことになるわけであります。大変生産単位が小さくなっておるということと、それから敏速性が要求されますから、こういった高速交通手段の発達ということが東京圏の一極集中を促しているわけです。したがって、情報化あるいは新幹線、高速道路、こういったようなものが使える地域に新しい産業が張りつくという、こういう現象になるわけであります。したがって、東京圏一極集中の持つ意味というのは、一般に想像されていることよりもはるかに重いということであります。こういったことに国際機能がこれに加わって張りつくということになるわけであります。  他方では不況地域が大変拡大し、また多様化しているということでございます。これも内需拡大ということで若干問題が先送りになった感じがございますけれども、やはり構造的には問題は一向解決していないわけでございます。    〔会長退席、理事及川一夫君着席〕 この不況地域といいましても、重厚長大型の産業企業城下町、造船、鉄鋼等でありますし、それからまた、輸出特化型地場産業の産地、例えば北陸繊維等がございますけれども、あるいは新潟の燕等これも大変多様でございます。このほか遠洋漁業の基地、例えば釧路、八戸、気仙沼あるいは銚子、三浦、こういったところも二百海里問題で、遠洋漁場は、むしろ二百海里とそれから円高ということで、この遠洋漁業が輸入産業化しつつあるということになるわけでございます。そういうことで遠洋漁場の水産基地、これも不況地域化が進んでおるわけでございます。このほか産炭地、これも第八次の合理化、それから従来から存在しております過疎地域があるわけでございます。こういうぐあいに不況地域拡大しております。  こういう不況地域の問題は、一言で申しますと生産機能が低下をしているということでございます。したがって域際収支、ちょうど貿易の考え方を導入してみますと、ある地域と、それからそのほかの地域の収支状況を見てみますと、こういった域際収支というのは問題地域においてはマイナスになる。これは傾向的に第一次産業の比率は高い、そして第二次産業の比率が低いということになるわけです。こうなりますと、付加価値の低い農産物を地域から輸出をする、そして付加価値の高い工業製品輸入するということになりますから、当然域際収支は大幅なマイナスになるわけでございます。このマイナスは、従来財政資金で支えてきているわけでございます。    〔理事及川一夫君退席、会長着席〕  むろん観光等第三次産業が存在すれば、こういった域際収支のマイナス幅というのはその分だけ減るということになるわけでございますけれども、どちらにしましてもこうした問題地域においては生産機能が非常に弱くなっている、なかんずくこの製造業の生産機能が低下しているというところが問題になるわけでございます。しかも、こうした問題地域というところには大体工場誘致の政策をとってもそこには工場が張りつかないということになるわけです。したがいまして、きょうのテーマからしますと、こういう地域においてこそ、地域製造業を強化するといった、こういった必要性が出てくるわけでございます。  次に、それでは一体地域振興についてどういう枠組みで考えていくべきかということでございますけれども、これもここに来て大きく枠組みが変化しているというふうに理解できるわけであります。つまり、グローバライゼーションの進展あるいは情報化の進展、この二つが相乗的に作用し合って東京圏一極集中が起こっているというぐあいに理解できるわけであります。そうだとしますと、放置しておきますと、この東京圏一極集中というのは、進みこそすれなかなか地方への分散は進まないということになるわけでございます。  そうして、こういった経済のグローバライゼーションというのは従来から進んでおるわけでございますけれども、これが円高が加速していると、なかんずく、八五年九月以降の急速な円高がこうしたグローバライゼーションを加速化するということになるわけでございます。八五年九月までの大体六、七年間というのは、一ドルが二百四十円台あるいはその前後であったわけでありますけれども、今年度上半期を見ますとこれが大体百三十円、多分今年度平均でとってみますと百二十円台であろうと思います。そうしますと、たかだかこの三年の間に円レートが倍になってしまうということでありまして、こうなりますと、当然日本に立地をするということは、例えば工業の場合にコスト高になるということになるわけでございまして、したがって円高が日本経済を外に開くということになるわけであります。したがって、グローバライゼーションが急速に進むということになるわけであります。  つまり、一方では製品の輸入がふえると、部品あるいは完成品の開発輸入という形で、日本日本企業が企画開発したものを特にアジアNIESにつくってもらうということにもなるわけでございますけれども、品質管理等の指導まで含めて大変良質の部品が入るという傾向になっているわけであります。こうしたことで急速に輸入がふえると。しかも輸入商品の種類というのも非常に幅が広くなる、多様化してくるということになるわけです。  他方ではこの円高、コスト高ということになってまいりますから、追加的に設備投資を行う、工場を新設するといったような場合にはどうしても海外立地サイクルということになってまいります。したがって海外への直接投資がふえるというようなことになり、こうしてますます経済のグローバライゼーションが進むということになるわけであります。こうなりますと、先ほど申しましたように、一方では不況地域が広がっていると。したがって、現在マクロ経済という点から見れば大変景気はいいわけでありますけれども、どうもツケが東京圏以外、広域東京圏以外の地域にツケが回ると、こういう構造になっているんではないかということであります。  さて、こうなりますと、地域経済の振興ということが、従来とどうも違った手法が必要になるだろうと、つまり新しい切り口が必要になるのではないかということであります。一つはグローバルな視点を導入するということであります。もはや日本の各地域というのは、単純に日本地域というわけではなくてグローバルの中での地域という、こういう視点が必要になるわけであります。例えば北海道でありますとか、あるいは九州は、日本の九州とかあるいは日本の北海道という視点ではもはやとらえ切れないということが起こっておるわけであります。つまり、環太平洋の中の北海道でありますとか、あるいは環太平洋の中の九州といったような視点が必要になるわけであります。あるいはもっと広くグローバルな中での地域という、こういう視点が必要になるわけであります。したがって、クローズドな日本というものを前提にして地域振興を考えてみても、もはや始まらないということであります。  それからもう一つは、なぜ東京圏一極集中が進むかということで、これが先ほどから申しておりますように、グローバライゼーションということと情報化の進展ということが大都市への集中を実はもたらしているわけであります。したがって、大都市集中という問題は日本だけではございません。例えば、ヨーロッパにおきましてもEC統合ということで、九二年の市場統合に向けてボーダーレス化が進む、国境がなくなるということでございますから、したがって、政策的にも従来の拠点都市を見直すということが起こっているわけであります。  例えばロンドンでありますとか、あるいはパリ、こういったところを見直すということが起 こっている。イギリスでもフランスでも、従来は地方分散という政策が採用されていたわけであります。なかんずく中央集権的なフランスにおきましては、さまざまな機能がパリ及びその周辺に集まっておりますから、これを地方に分散するということは、この四半世紀の政策であったわけでありますけれども、しかし、ここにきてEC統合をにらみながら、むしろパリの見直しということが起こっているわけであります。これはやはり情報化の進展あるいはボーダーレス化ということで、ECの拠点としてのパリの整備ということが問題になるわけであります。どうも昨今の客観的な情勢をよく考えますと、どうやらこの情報化でありますとか、あるいはグローバライゼーションの進展ということは大都市集中ということを加速化すると、こういうことになるのではないか。したがって、そうだとするならば、地域振興の枠組みとしましては、大都市とこういう地域とのネットワーク化あるいは連動ということをどう考えていくのかということになろうかと思います。  そこで、もう少しこの点を具体的に申しますと、三番目に、したがって、この既存の地域振興政策がもはや限界に来ているんではないかということであります。例えば、一村一品運動を支援するような政策の有効性が今大きく低下しているんではないかということであります。一村一品運動という、こういう表現は大分から発したわけでありますけれども、小さな町村を単位として地域資源を活用しながら、マイナス的に地域産業を興していくといったような動きを仮に一村一品運動というふうに呼んでみますと、こういうものを支援する政策の有効性が今大きく低下しているんではないかということであります。  例えば、こういった動きの先駆けとして、あの有名な十勝ワインというのがございます。しかしながら、ワインといったようなものは、今グローバライゼーションが進む中で国際商品になっているわけであります。こうなりますと、例えば十勝ワインで、ECあるいはカリフォルニアのワインに対抗できるような品質のもの、中級程度のものをとってみますと、十勝ワインですと大体一本二千円ぐらいということになるわけであります。これが現在、既にECワイン等でほぼ同質のものであれば六百円から七百円で輸入されている。これが市場開放ということで関税、酒税が下がってくれば、多分もう五、六百円であろうと思いますね。五、六百円対二千円では、もういかんともしがたいということであります。したがって、一村一品運動ということでワインをつくってみても始まらないとか、あるいはブランデーをつくってみても始まらないということになってまいりますし、それから農産物の市場開放ということになってまいりますと、今度は農産物を加工したような一・五次産業というものもいろんな意味影響を受けてくるということであります。  こうなりますと、当然どこに産業をつくり上げるにしましても、国際的に見たら比較優位産業でなければならない。つまり日本は大変もうコストが高いということでありますから、したがって、高いコストを吸収して国際的に競争力を持ち得る、つまり比較優位産業をつくっていかざるを得ないということになるわけでございます。このことは産業の高付加価値化ということでございますけれども、どうやって高付加価値化するかということになりますと、当然そこでは創造活動が必要になります。この創造活動の前提としては、当然情報が必要になる。例えば技術情報も重要でありますけれども、それ以上に市場情報が必要であるということになるわけであります。昨今ではもはや物は、需要は一巡しております。したがいまして、既にもう顕在化しております需要を満たすということで産業をつくりましても、競争は激しくなるだけで成功はほとんど期待できないということになるわけであります。こうなりますと、当然潜在的に消費者が持っている意向をどうやって掘り起こすか、それをどう商品化するかということになりますと、大都市と連動しない限りこういう新しい産業をつくるということはほとんど不可能であるということで、この面から一村一品運動支援政策が限界に来ているということであります。  したがって、この一村一品運動を展開した大分県におきましても先月、一村一品株式会社というのをつくり、しかもこれを東京につくるといったようなことになっておるわけであります。あるいは熊本県も商品計画化センターというのを、これは県の出資でつくりまして、この支社を東京に置くというようなことになっておりまして、いかに東京をうまく使うかということであります。このほか、最近では各県で地場産品のアンテナショップを東京につくろうと、こういったようなことがしきりに言われているわけでありまして、大都市と運動しながら比較優位産業地方につくるということになるわけでございます。この比較優位産業ということになってまいりますと、当然国際的な視点が入ってくる。結局、アジアNIESとどのように競争できるかという問題が出てくるわけでございます。したがいまして、こういう政策にしましても、先ほど申しましたように、やはりグローバルな視点ということが極めて重要になるというわけであります。  そこで最後に、こうなりますと、新しい地域産業政策が必要になるということであります。つまり産業政策の切り口を変えていくということであります。ここで、地域産業政策という表現は従来余り使われていなかったわけでございます。多分国の計画において地域産業政策という表現が出てきましたのは、ことしの新経済計画が初めてではないかというふうに思うわけであります。しかしながら、昨年来、経済審議会の地域産業部会で議論をしております中で、地域産業政策ということが話題になり、またこういう概念が報告書の中にも登場するわけであります。しかしながら、地域産業政策ということについて何らの定義もないということでありまして、大変不明瞭なまま経済計画の方にのってしまったという感じがどうもするわけであります。  地域産業政策といいます場合に、政策主体として二つあるんではないか。国が政策主体となるような地域産業政策、それからもう一つは、地方自治体が政策主体となる地域産業政策、この二つは類型を全く異にしているんではないかというぐあいに考えられるわけであります。通常、地域産業政策と申しますと、もう国は手を出す必要がないという意見地方自治体からは相当に強いわけであります。しかし、これは間違いでありまして、国が政策主体となる地域産業政策といいますのは、地域間で資源配分の変更を加えるということ、つまりマーケットメカニズム、市場経済によって資源を配分するということになってまいりますと当然偏りが出てくるということで、そのツケが地域に回るということになってまいりますから、当然国が計画的にそれに介入するということが必要になってまいります。  したがって、資源地域間でどのように配分するのかということは現在極めて重要になっているというふうに考えてもいいわけでありますし、それから、こうした国が主体となるような地域産業政策のインフラ面ということになりますと、先ほどの吉田参考人の社会資本のAのところが極めて重要になるということになってまいります。なかんずく、広域首都圏とそれ以外の地域との間で資源をどう配分するかということは極めて重要であろう。こういう意味では、先ほども御指摘がありましたけれども、プロジェクト先行型から一たんプログラムに戻る必要があるんではないかということでありますけれども、もう少し細かい地域を見ておりますと、どうやら私はもう少し前に戻った方がいいんではないか。例えば日本国土をどうするかというグランドデザイン、このグランドデザインからプラン、それからプログラム、プロジェクトという形で具体化されるわけで、どうも場合によっては、どうやらグランドデザインが必要なんではないかという感じがするわけであります。  この四全総を見ておりましても、もはや四全総がグローバライゼーションによって乗り越えられ たんではないだろうか。多極分散といいましても、このグローバライゼーションの中で一体地域はどうなのかと、こういう視点余りまだ四全総にはなかったということであって、こういった新しい問題がもう既に出始めているんではないかということであります。こうした点から見ても、やはり国が政策主体となる地域産業政策は非常に重要であるというぐあいに判断するわけであります。この場合に縦割りの是正ということが当然問題になってくるわけであります。これは先ほども白根参考人が御指摘になったように、やはり生活環境重視型が産業立地の上で非常に重要になるということから、したがって地域を単位にさまざまな政策を統合していくといったようなことが当然必要になるということであります。  それから、地方自治体が政策主体になるという場合には、当然地域内で産業間に資源配分の変更を加えるとか、あるいはターゲットとする産業地域に持っていくものを決めるということで地域振興を行う。この場合に当然グローバルな視点が必要になってくるだろうということであります。そして、国が政策主体になる場合でも、あるいは地方自治体が政策主体になる場合であっても、どうやらグローバライゼーションということを前提にしますと、実は政策手段も従来とは違ったものが非常に効いてくるということなんです。  例えば関税政策といったようなことでありますけれども、大蔵省の関税政策といいますと、従来は地域振興と何の関係もないだろうということになるわけです。しかしながら、関税政策によってフリーゾーンをつくる、このフリーゾーンによって地域振興を図るということが効くわけであります。つまり現在、環太平洋地域の中で、特に日本アジアNIESとの間で大変国際分業が錯綜しております。こうなりますと、例えば九州というものを見た場合に、環太平洋地域における九州ということになりますと、アジアNIESと例えば東京をつなぐ大変重要な戦略拠点に九州はなるということであります。こうなりますと、九州でフリーゾーンの政策をどういうぐあいに使っていくかということが重要になってくるわけであります。しかし、フリーゾーンと申しましても、既に現在の制度で、例えば保税通関といったような制度を使いますと相当に効果があるということがわかっておりますから、さしあたりは既存の関税政策をうまく使っていくといったようなことを国も地方自治体も運動しながら考えていくということが必要になるわけです。  それから、地域産業政策で地方自治体が政策主体になると申しましても、実は広域行政の必要性が強まっている。つまり、先ほど申しましたように、東京圏というのが、もはや東京三百キロ圏から四百キロ圏であるということになってまいりますと、実は大阪の場合でも、政策次第では大阪三百キロ圏の浮上ということは考えられるわけであります。あるいは福岡三百キロ圏とか札幌三百キロ圏ということは当然考えられるわけです。これはインフラの整備次第でそうなるわけでありますけれども、しかし、現行のインフラを前提にしましても、もはや経済圏というのは、各県という単位を越えてしまっているということが言えるわけであります。  こういう点から、地域産業政策の場合には広域行政が必要である。その場合に、やはり国の縦割りを広域的にうまく統合していくということが必要であろうということと、それからもう一方では、地域分権化が必要であるということであろうと思います。大変中央集権的なフランスが、EC統合を前にして大変に今地域分権化を進めているわけであります。つまり地域分権化を図り、地域が主体となって地域産業政策を展開していくという、こういう要素がございませんと、地域が劣化するというおそれがあるわけであります。したがって、フランスでも地域の単位をやや広域化しながら分権化を進めているということになるわけであります。日本の場合でも、地域分権化を進める必要があるわけでありますけれども、これも先ほどの広域行政とのかかわりで、やはり新しい仕組みを考えていかざるを得ないんだろうというふうに思うわけであります。これは一つは国の省庁の内部での地域分権化、例えば通産省でいいますと、地方通産局に権限委譲するということがあろうかと思います。  しかし、こうなりますと、当然縦割りという問題が生じてまいりますから、各省庁の地方の出先を統合して、そして、そこに分権化を進めていくといったようなこと、そして、県の意向をそこに一体どれだけ反映させるかといったような、こういったような形になるんではないかというふうに思うわけでありますけれども、既存の行政制度を前提にしますと、なかなかこういった地域分権化が進みにくいということでありますから、これはやはり時間をかけて、試行錯誤で修正をしていくということになるんではないかというふうに思うわけであります。  大体時間が参りましたので、以上で終わりにしたいと思います。
  14. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は、会長の許可を得て順次御発言を願います。
  15. 及川一夫

    及川一夫君 三人の先生に大変広範囲にわたりまして我が国が抱えている中心的な課題について御意見をいただきました。大変参考になったというふうに思っております。  そこで、それぞれの先生に一、二ぐらいになりますか、御質問申し上げますので、お答えをいただきたいというふうに思います。  まず白根先生にですが、お伺いしたいのは、情報化という問題と地域活性化に関する問題なんですが、かなり論議としては手広く行われているんですが、地域という前提ですね、東京というよりも地域の方にという意味情報化という問題がどのぐらい活用、利用されているのかなと、現状ですね、そういうことでお伺いしたいのであります。  それは、一つは町づくり、都市づくりですね、過疎地帯にぜひもっとビッグな、あるいは文化度の高いという、そういう意味情報化という課題が利活用されているところがいろいろあると思うのですけれども、そういったところでは一体どんなものを情報化問題として導入し、また地域活性化に役立てているかという問題と、もう一つは農業という問題をとらえたときに、結論的に農業に対する情報化の活用というのが一番おくれているんじゃないかと。また、おくれているというよりは、どういうふうに利用すればそれこそ農業の活性化というか、あるいはまた充実強化というか、今日的な課題になっている自由化に対応するために、それを補うことが情報産業とか情報化というものを取り入れることによってできないのかどうか。そういう問題もかなり検討しているところがあるということを聞いたりなんかするんですが、農業という問題を考えたときに、情報化問題をどう利活用を図るべきかということについて、何か一つの構想なりあるいはお考えになっていることがあったら御紹介いただきたいと思います。  それからもう一つ、最近コンピューターウイルスということをよく聞くんですけれども、コンピューターの病気というふうにとるのか、きのうも何かちょっとやっていましたですね、要するに何か犯罪、あるいはコンピューターそのものを混乱させるというか、いたずらというか、そういうふうにもとれるんですが、このコンピューターウイルスという問題について、何が一体問題の焦点になっているのか、それおわかりでしたらお知らせいただきたい。  それからもう一つ、白根さんの立場から見て、これからの情報化社会の問題を考えたときに政治への要請といいますか、問題提起というか、こういったことは考えなきゃいかぬというようなことがございましたら、これまた教えていただきたいというふうに思います。  それから、吉田先生にお伺いしたいのでありま すけれども、東京一極集中というのは極めて問題だということは、もう私は各党通して問題意識持っておられると思うんですね。ですから、その点ではもう確実に意見の一致を見るんですが、じゃ具体的にどう分散するかということになってまいりますと、これはまた大変な問題なんですね。政府自体が行政機能を分散しようと、こう思っても、かけ声は一生懸命やるんだけれども、なかなか応じてくれない、こういう状況がありますね。  そうしますと、当然そういうところならおれが行きたいという、そういう環境をつくることがどうしても先ではないのかと。過疎地帯に行けなんて言ってみたって、気持ちの上でまずお断りというのが先になる。ところがそうじゃないと。ここは過疎地帯と言われているが、こんな条件のいいところで、こんなすばらしい生活を営むことができるよと、将来的に未来的に見ても、交通機関を見てもという条件をつくるのが要するに先ではないか。あるいは人間の習性として、やっぱり仕事ということになれば、やりがいとか、あるいは懸命にやればもっと生活水準がよくなるとか、そういう産業とか設備とかというものがあるかないかということも、どうしても人間の習性ですから、それを計算をしておれは行くという気持ちになっていくんじゃないかというふうに思っているんですが、そういう角度から、いかにしたら一極集中というものの地方分散ということが実現をするか。これは清成先生にも共通した問題なんですけれども、ぜひこれまでの御体験の中で示唆するものがありましたら教えていただきたいというふうに思います。  それから、分権ということがよく言われるんですが、その分権の中身なんですね、いつでも問題になりますのは。これはもう単に権限をよこせというだけじゃなしに、いろんな仕組みを変えなければ分権しても分権にならないというような問題もあるように思うんですが、もし具体的にこれとこれぐらいはぜひとも地方分権をしなければいかぬという問題がありましたら教えていただきたいというふうに思います。  吉田先生に対する三点目として、公共投資といってもいろんなものがあるんですけれども、確かに御指摘のような高速交通施設整備の分散効果と逆流効果という問題のとらえ方、非常におもしろいなというふうに思ったんですけれども、一極集中との関係で、地方に参りますと、多少乱暴だがという前提で、東京都に対する公共投資はもうやめてしまえと、しばらくの間。それで、むしろ地方というものに焦点を当てて、集中的にそれこそお金を使え、公共投資集中させるべきだと、こういう御意見があるんですが、先生の立場から見た場合に、これは政治が考えることかもしれませんけれども、お伺いしておきたいというふうに思います。  それから、清成先生に先ほどの問題に追加をいたしまして、一つは、公共投資とか一極集中を分散していろんなものを持っていく。したがって町づくり、都市づくりもしていかなきゃいかぬ。そのために金がかかっていくんだが、問題はその金のかけ方が、地域には持っていったけれども、その地域の地場の産業に金が落ちないと、こういうお話がよくあるわけですね。この前、奄美大島に行きましたら、まさにそのお話なんですよ。これは北海道とかあるいは過疎地帯なんというようなところでも共通した問題かもしれませんけれども、要するに地場には、例えば一級建築士あるいは二級建築士、三級建築士というのがあるそうですが、やはり一級建築、要するに一級の会社でなければできないような、そういう技術を必要とするようないろんな公共投資がある、あるいは地場でそういう産業の掘り起こしをしなきゃいかぬと、こういう問題が出たときに、技術力がないために結果的に都市の大手産業を連れていって、そうしてそこで仕事をやる。したがって、地場では全くの下請の下請、したがって金がおりない。これを何とかしなきゃいかぬのだということを今言われるわけですが、こういう問題なども一極集中から分散型にしていく場合に決して見落としてはならない点ではないかというふうに思うんですけれども、そういった点をひとつお伺いしたいと思います。  それから、先ほど一村一品運動は限界に来ているのではないかという御指摘、そして、それの具体的な事例として東京に支社を置くというお話があったんですけれども、これもこの前民放でしたが、大分の知事さんといろいろ討論をしていたんですね。その話の内容を言いますと、大分ではますます自信を持った、したがってこれに力を入れていくんだと、こういうお話の展開をされていまして、それで問題は販売だというわけですね。できた生産品を大分だけで飲んだり食ったりしているんじゃ余り大分の経済にプラスにならない。したがって他県に売っていかにゃいかぬ、他県にそれこそ利用してもらわにゃいかぬと。こういう意味で、やはり一番何となくやりやすいのは人間が集中している都市部ということで、東京に支社を置くことにしたというようなお話も実はあったんですが、そういう表向きの議論からいうと、成功してますます販路を広げようとしている、その販路が広がればますます繁栄するんだというふうに聞こえてくるんですけれども、こういったことについて、先ほど先生のお話との兼ね合いで、どういう御判断を持っておられるか、お聞かせ願いた  以上でございます。
  16. 松前達郎

    会長松前達郎君) 質問が一括した質問でございましたが、参考人の皆さん、ひとつ順次お返事をいただければと思います。  まず最初白根参考人からお願いします。
  17. 白根禮吉

    参考人白根禮吉君) 三つほど御質問いただいたのですけれども、いずれも大変手に余るような難しい質問でございまして、及川さんの専門度と私の専門度はそんなに変わりませんので、ちょっと大変答えにくい問題ばかりでございます。  情報化地域でどんなふうに利用されているかということでございまして、これについては私も幾つかの県で御相談を受けたりなんかしてやっておりますし、そういう経験からいって、なかなか決め手にはならないけれども、いろんな面でサポートにはなるというか、そういうとらえ方が正しいのじゃないかと思うのです。ただ、要するに情報化の進展で地域活性化に役立つという、今のところは、その問題では企業誘致とかそういう面で、やっぱりソフトウエアの関係の企業が来てくれたので非常に雇用吸収力ができて、今までの半導体工場とかそういうハイテク型よりも、むしろソフトウエア企業が来てくれた方が非常に有効であるという御意見は、あちらこちらからいただいております。それができるのも結局は、情報ネットワークが非常に進歩いたしましたので、安くそこでつくったソフトウエアをほかの場所に伝えるということができますので、したがって、さっきも申し上げましたけれども、分割発注というのが非常に易しいと。物の生産と違って情報生産の場合には、そういう点が大変地域性を乗り越えるのに有効であるといったような言い方ができるかと思います。  それから、同時に農業という問題が出てまいりましたけれども、私も実は農林水産省の情報化委員会に入っているわけでございますけれども、一番の基本は、私に言わせますと、やはり農業に経営とかビジネスのマインドが入らないと、結局、情報化のいろんな手段を使ってもそれほど大きな効果は上げ得ないのじゃないかという感じがします。まだまだ農業が経営になっていないという言い方をすると大変失礼でございますけれども、そういう点でいきますと、もちろん牧畜の面でもあるいは漁業の面でも、含めましてさまざまの助けにはなりますけれども、本質的にはやっぱりそういう意味でややビジネスというマインドが欠けているという点は、私一番感ずる点でございます。  それからまた、コンピューターウイルスという問題が出ましたけれども、これは要するに、一種のデータベースの破壊にもつながるわけでござい ます。そこに侵入する、コードを盗んでといいますか、そういう格好で入ってきて中を破壊してしまうというような、つまりちょうど人間の体をウイルスが物すごい増殖をして破壊するのと同じでございます。つまり、がんみたいなウイルスでございます。これにつきましては、実は私がここでるる解説するよりは、「ボイス」という雑誌がございますけれども、あすこに一番わかりやすい那野比古さんという、これはもじったペンネームですけれども、那野比古さんという人が書いたコンピューターウイルスの問題は国際的な問題、国内は余りまだ起こっておりませんけれども、起こる可能性のある問題ですね、そういう点について非常に詳しく解説してございます。それをぜひごらん——たしか一番新しい号、一つ前の号だったかもしれませんが、私の手元にもございますので、お届けさせていただきたいと思います。  それから、政治の情報化というのはこれは難しい問題でございまして、私も政治音痴でございますからよくわからないんですけれども、ただ一つ言えることは、情報化によってやはり何というのでしょうか、クロスオーバーという言葉を我々よく使います。つまり、先ほど清成先生のお話にも出てまいりましたけれども、例えば省庁を越えてこのインターミニストリーの動きとか、あるいは業種を越えてインターオキュペーショナルな方向に今どんどん進んでいるという点がございまして、政治の世界での情報化というのは、そういう面でいけば、そういうクロスオーバーになってきたときに中央政府の政治あるいは自治体の政治、いろんなレベルがあると思いますけれども、そこら辺でやはりそういうクロスオーバーの効果というものをやっぱり出す必要があるんじゃないだろうか、そんな感じが私は一つしております。  コンピューターを使って何か投票するとかなんとかというような、そんなような問題は全然これは枝葉の問題でございまして、情報化影響というのは本当に今あらゆる分野にこれから浸透していく。そして、ただここで申し上げたいのは、今全体の問題で申し上げたいのですけれども、どの問題も先行指標がほとんどなくなりました。つまりアメリカでこんなうまいことやっているぞとか、ヨーロッパでうまくやっているぞというものがほとんどないということになりました。これを海図のない航海とこの間表現したのは、これは郵政事務次官でしたか、なかなかうまい言葉言っているなと思ったのですけれども。本当にこの分野はそういうふうになってきておりますので、いろんな専門家が、インターディシプリナリーに今度は集まっていろんな検討をしないと、つまり試行錯誤を含む検討をしないといけない時代に入ったなというふうに私は思います。  ただ、きょうもウオーターフロントなんという話が出ておりますけれども、ああいう問題につきましては、さすがにアメリカのウオーターフロントというのは一九六〇年ぐらいから始まっておりまして、いろんな面で向こうに先行指標がございます。残念ながらこの情報の問題でいきますと、今はやりのISDNの問題にしても、あるいはハイビジョンの問題にしても先行指標がございません。  ただ一つ、私がきょう強調した問題の中で、御質問とちょっと離れて申しわけありませんが、ソフトはどうも日本がなかなかうまくいかないというお話は、これは決してコンピューターのソフトということではございませんで、例えば、ハイビジョンというのはせっかくNHKが世界に先駆けて開発をしたわけですけれども、ハイビジョン方式でのソフトづくりといいますか、番組づくりといいますか、そういうものは何とイタリアとかアメリカとかカナダが日本方式のハイビジョンを使ってさまざまの実験番組をつくっている。それにはいろんなお金の出どころもあるようでございますけれども、どうもそういう意味では文化予算が日本では非常にないという点もあって、企業に任せられておりますけれども、先ほど中央集権の国のフランスの話がございましたが、日本文化庁の予算が四百億ぐらいだとしますと、大体その五倍とか十倍とかいう予算が向こうには同じベースであるわけでございまして、しかも日本文化庁の予算というのは、文化財の修理とか保護というのに非常に使われていて、そういう意味では今みたいないい意味でのソフトウエアをつくるようなお金というのはなかなか政府から出てこないという問題は、私、政治の情報化の問題としてぜひ提起させていただきたい。せっかくハードの面で先行しても、それを使って何をやるかという面では残念ながら後進国的な、あるいは情報小国、文化小国という点が非常にクローズアップされてきているということを申し上げたいと思います。  大変答えにならないんですけれども……。
  18. 吉田達男

    参考人吉田達男君) 三点の御質問で、いずれもお答えできるかどうかよくわかりませんが、まず東京一極集中是正の具体的な方策いかんということでございますが、お答えの前に私の若干の経験を申し上げますと、東京は、明治以来工業都市として成長してきた面が非常に強うございます。工業統計表が発表されましたのが明治何年かでございますけれども、昭和四十三年まで全国の都道府県の中の工業出荷額の一位は東京でございました。この都市発展機能としての工業をどう評価するかということなんですが、昭和三十二年に工業学校の増設の制限法が施行されております。二十三区並びに横浜、川崎。この発想はやはり工業の立地を抑制することによって、大都市発展を抑制しようという発想だったと思うのですが、実質的にはいろんないわゆる法の網をくぐりまして、四十二、三年までは工業数がふえておりました。  ところが、四十二、三年を契機といたしまして工業数が、大規模な工場でございますけれども、減り始める、工業従業者も減り始める。つまり、制限という立法措置、制限措置よりも、その間の東京の地価の上昇が土地利用の変更を促し始める。それで、いわば非常に地価の高いところで工場を経営して赤字を出しているという場合には、株主とか銀行からもう早く地方へ移転しろというような声が出てまいります。私は工業再配置公団ができましたときに、初代の工業再配置部長として就任いたしまして、何とか私もと思いまして、当時東京都内で一万坪以上の装置工業が約三十五ほどございました。現在、今残っているのは五工場ぐらいしかありません。つまり、その約十何年の過程の中で装置系の大規模工業は東京から地方へ分散したか、あるいはスクラップ・アンド・ビルドで別なものができたか、つまり、工業機能はもはや今東京の主導的な機能ではない。もちろん清成先生のお話にありましたように、非常に力強い中小企業が底を支えていることは確かですが、装置系の重化学工業は東京から姿を消しつつあると、こう言ってよろしいかと思うのです。したがって、時代の変化とともに、現在東京集積している機能が、法的な措置は別として、自立的な形で地方移転が促進されるかどうかということが次の課題でございまして、一部余りにも高い地価のところは、既にコンピューターの部門は郊外に、あるいは安全性のために一部の部門を大阪に、そういう形で移転する動きが出ておりますので、こういう形をどう促進していくかということ。  それから第二は、新しい機能がどんどん国際化の過程の中で東京に要請されてくる。国連大学だとか、そういうもの全部そうです。今まで政府はみんな東京に置いておりましたのですけれども、今のを移すよりも、これから要請のある機能は極力地方に配置していくということがあれば大分違うんじゃないか。  三番目に、住宅に絡む問題なんですが、私の方の研究室に来ておりますことし就職した大学の連中に聞きますと、地方の出身なんですけれども、自分たちはもう東京に家を持てるということは全然考えられない、したがって、とにかく寮か何かに入って頑張るけれども、三十代になったら地方に一戸建てを買って、それで通うということをしきりに言っております。そういう意味で、ある程度住居の方も、ファクシミリだとかそういういろ んな白根先生の方のうまくシステムができ上がりますと、相当地方へ定住を求める傾向が出てくるかもしれない。そういう自立的な動きに、例えば通勤定期を思い切って安くしていただくとか、それから電話代は物すごく安くしていただくとか、そういったようなことをポリシーとしてやっていただければ、ある程度機能の分散は可能じゃないかというふうに思います。しかし、楽観ができないのは、東京の魅力というのはまたすごいものがございまして、外国人でさえも東京にいたくて地方に行きたくないと、こう言っているわけでございますので、そこをちゃんと正当に評価した上で、自立的な動きを促進していくということに努力する必要があるんじゃないかというふうに思います。  それから、二番目の国から地方への権限委譲に関しましては、既に地方制度調査会ないし臨時行政制度調査会で審議中でございます。ただ、この間地方制度調査会から出た答申を内々聞きますと、自治省では各省の反対に遭って、とっても実現できそうもないと、こういうふうに言っておりますので、これはなかなか難しい課題じゃないかと横で見ております。  しかし、同時に二つほど私申し上げたいのは、一つは形式的な国の権限地方への委譲というのは、これは実は相当まやかしが多いということです。例えば都市計画法は、読めば、都市計画の権限は市町村長にあります。より大きなものは各県知事にあるんですけれども、同時に事前協議——沓掛さんおられるのですが、あれがありまして、実質的には相談してOKとらなきゃできないのですよ、それはお金の問題もありますから。そういう意味では形式上の権限委譲よりも、実質的な問題をどう攻めていくかということが一つ問題だと思いますし、今回何か私も新聞でしか知りませんけれども、三千数百の市町村に一億ずつ交付金がいただける。いただけるというのは変ですが、これの使い方が私は非常におもしろいと思いますですね。これはどういう知恵を出すか、恐らく知恵を求めて交通機関がもういっぱいなんじゃないかと思うぐらいなかなか大変なことで、あのことで初めて市町村が、地方が自分で配分を決めなきゃいけないという課題に当面すると思います。その成り行きをぜひ見てみたいというふうに思います。  最後に公共投資東京都の公共投資はやめた方がいいんじゃないかというお話でございますが、例えば現実に街路予算で見ますと、美濃部時代に一遍東京都が使い切れなくて都市局に返上した例がありますが、その返上した部分の比率はずっと鈴木知事になっても回復できないんですね。今の東京都の道路の整備余り進まないのはそのせいもあるというふうに思いますけれども、同時に東京都の道路整備は非常におくれております。それに対して、東京都民が払っております国税というのは相当なものでございますので、それを全部地方へ回してもらうとやっぱりちょっと困るというふうに思いますので、そこのところはやはり適当に。ただ、東京都の自然増収が非常に巨額であるということははっきりしておりますので、都自身が始めておられますように、国の補助金なしの道路整備東京都の財源でどんどん進めていくということが必要じゃないかというふうに思います。  以上でございます。
  19. 清成忠男

    参考人清成忠男君) 第一点でございますけれども、北海道でございますとか鹿児島、沖縄の場合に県民総支出に占めます財政の割合が四〇%、あるいはそれに近い比率になっているわけでございます。これは先ほど申しましたように、生産機能が弱いということから域際収支が大幅赤字になる、それを財政で補てんするという構造ですね。この財政で補てんするという場合、公共投資が含まれるわけでありますけれども、この公共投資をいたしましても、先ほど先生御指摘のように生産機能がありませんので、その工事の面だけじゃなくて、素材の購入まで含めてもう一回投入された資金が還流してしまうという、東京周辺に還流してしまうということで、ざる経済なんですね。したがって、公共投資をやりましても、その波及効果が意外に小さいということがあるわけであります。  ただ、大事なことは、先ほども吉田さんが御説明のように、このプログラムをもう一回つくり直すという作業ですね、これはやはりどこの地域においても必要なんだろうと思うのです。一体今、公共投資という場合に、どういう種類の公共投資が本当に必要なのかということをもう一回洗い直す必要があるんではないだろうか。生活基盤あるいは生産基盤等にしましても、どうも企業の立地条件が大きく変わってしまっているということでありますので、そこのところをもう一回見詰め直すということと、それからもう一つは、こういうハードなものに対する投資に対応する投資の使い方というのでしょうかね、つまり、その投資効果の問題になるわけでありますけれども、その知恵、ソフトですね、それがどうも要るんではないだろうかということなんですね。  例えば、農業で土地改良を行ったり基盤整備を行っても、今度は農業経営の方のソフトがない限りその投資は全く生きてこない。あるいは立派な公民館をつくりましても、それをどう使うかというソフトウエアがないと、もうこれランニングコストでもって破綻してしまうというようなことが非常に多いんですね。したがって、最近リゾートでありますとか、あるいはコンベンションシティーでありますとか、そういうことでまた新しいタイプへの投資がいろいろ言われるわけでありますけれども、これにしてもそういうものを活用するだけのソフトが地域にないと結局はむだになってしまうと。むしろ、そのことが大変今懸念されるという感じがするわけであります。  それから、そのことと関連してなんですが、そうだとすると、地域でそういうふうに物的な施設を使うソフトということになりますと、結局人材の問題になる。あるいは自治体が政策を策定するといいましても、策定能力が問題になるという人材の問題が出てくるわけですね。ここのところがしっかりしておりませんと、行財政の地域分権化といっても効果が余り出てこないということになりますので、そこのところが今一番問題になるんじゃないだろうか。しかし、幸いにして最近では、やはり地方自治体の方にだんだん政策策定能力がついてきている、徐々についてきていると言ってもいいわけでありますけれども、こういったことは政策の策定権限の範囲が広がればなおさら策定能力がつくということでありますので、分権化とこれは連動させながら人の育成ということを考えていく必要があるということだろうと思います。しかし、これも従来のように、先ほど申しましたけれども、狭い視点地域を振興するということではなくて、どんな地域においても大変グローバルな状況を見ないと今や地域振興ができないということで、以前よりかもうはるかに強力なソフトというものが地方には要求されてくる。その仕組みを地方だけで、そういうソフトが一体できるかどうかということがやはり問題になりますので、それで先ほど大都市との連動ということも申し上げたわけであります。  それから、これと関連するんですが、第二点で、例えば大分の一村一品等の場合でありますけれども、確かに精神的効果は非常に大きかったというふうに思いますし、それから一部の産業においては大変成功しております。例えば麦しょうちゅうというのは、ついにしょうちゅう産地では日本一になってしまったんですね。鹿児島を抜いてしまって、もう三百億円産業になってしまったということで、こういうふうに成功したものももちろんございますし、そのほか成功したものが少なくないことは確かであります。  ただ、この大分の例に限定しませんで、全国的に見ますと、よく一村一品運動で物はつくったけれども、流通がネックであるということがしばしば言われるんですが、しかし実際調べてまいりますと、実は売れる物を一体つくっているのかどうかということが非常に問題になりまして、よく一村一品運動の三種の神器ということが言われるん ですね。例えば、しょうちゅうと漬物とみそだというんですね。大体地域資源というのは、これは一次産品ですから、それで何か加工すると、大体今の三つのところにいくということになるわけですね。こうなりますと、一村一品運動でつくったから、理念がいいから、じゃ物がいいかということになりますと、決してそうではなくて、結局は市場に出すという場合にはそれなりのノーハウが必要になる。どうやら今大変重要なことは、いかに売れる物をつくっていくかということで、流通の問題ではどうもないんではないだろうか。  したがって、大分の一村一品株式会社の場合でも、東京消費者のニーズをどうやって探っていくかという、こういう側面が大変強いということなんですね。したがいまして、こうした点から見ますと、どうも今一村一品的に、ある点としてどこかの市町村が頑張るということには大変大きく限界があり、それは県でさまざまな情報インフラを整備するとか、それを大都市とつなぐとか、そういうことが大事なんであって、単に販売の問題とか、あるいは流通の問題というそこだけの問題ではないと、こんな感じがするわけであります。  それからもう一点ですが、分権化とのかかわりでございますが、どうも国の省庁の政策というのは、最近片仮名名前が大変多いんですね。アイデアを出し、そして補助金をつけて、そして申請をしてもらって、審査をして、指定すると。しかし、その割には余りインセンティブが働かないという、つまり財政的な援助であるとか、あるいは税制上の何か優遇措置とか、こういうものは余りないわけなんですね。しかし、それでも地方が飛びつくというのは、やはりイメージアップであるとか、あるいは地方でなかなか独自の政策が策定しにくいということからであろうと思うのですね。したがって、分権化になかなか問題があるというのは、そういう点からしますと地方の側にも問題があるんですね。つまり、中央の省庁が提案したようなものに簡単に飛びついてしまうというようなところにも非常に問題があるということなんですね。  しかもまた、中央省庁のこういった政策というのは全国画一的なものなんですね。したがって、例えば北海道らしい政策であるとか、あるいは九州らしい政策を国が提案するわけではないということがあるわけですね。こうなりますと、当然テクノポリス等を見ましても非常に頑張ってよくやっているところもあるわけですが、そういうところを見ますと、自治体の側で国の政策を統合して、自分なりのコンセプトをつくるとか、あるいは国の政策にプラスアルファをしてしまう、それで立派な政策に仕上げるとかいったようなこと、あるいは県単独の政策であるとか、こういったような新しい政策策定の試みが進んでおりますので、私は、だから徐々にこういう地方における政策策定能力が向上していくということを待ちながら、分権化をやはり徐々に進めていくということが大事ではないかというふうに思う次第でございます。  以上でございます。
  20. 田辺哲夫

    田辺哲夫君 私は東京圏、主として東京、この一極集中の進展と地域経済社会、すなわち国土の均衡ある発展との関連につきましてお尋ねいたしますが、総論的な質問でございまして、三人の先生それぞれ関係あるわけでございますが、主として吉田先生と清成先生に、どちらがどうということでなくお尋ねしたいと思います。  私にとりましても、国土の均衡ある発展、こういうことが今国政上の重要課題であり、四全総とか竹下総理の言うふるさと創生論、これはその目的に奉仕するものであって極めて大切な問題である、こういうことは自覚しておるわけでございますが、それをひとつ御理解の上にお尋ねしたいと思います。  私、最近のこの問題で、風潮が非常に不可解であり理念的に納得いかない点があるわけでございます。と申しますのは、東京圏、すなわち東京の一極集中国土の均衡ある発展を阻害しておる、現実的にはそういうことがあるかもしれませんが、理念としておかしい、これを裏返しますと、東京が悪くなれば地方がよくなる、こういう論理が風潮としてあるわけでございまして、これは私は間違いではないか、こういう考えでございます。二律背反的な考えでございまして、これはちょっとおかしい、このような考えを持っておるものでございます。  東京、また首都圏がよくなりましたことは、外的要因があることはこれはもう間違いございません。しかしながら、内的要因というものも当然あるわけでございまして、通常言う時の利、地の利、人の利、この三つのうち時の利、地の利というものが非常に有利に働いておるという現実はございますが、また人の利というのもございまして、東京というものがマイタウン東京構想ということで非常に努力してきた、そして今の東京発展を来したという大きな要因もあるわけでございます。ですから、一極集中国土の均衡ある発展と相反するという現実的な要因のあることはもう認めますが、これは少し消極的な考えじゃないか。東京、すなわち東京圏もよくしながら国土の均衡ある発展を遂げる、こういう政策であり、また理念として当然そうあるべきである、このように考えておるのでございます。  そこで、今この問題を契機といたしまして、特に東京の土地問題を契機といたしまして、遷都論または首都機能の移転、こういう論議が国会または日本の社会におきまして起きている、こういう現実がございます。  そこで、きょうの論議とはちょっと逸脱いたしますが、まず遷都とは何か。この定義がはっきりしておりません。人によりますと、宮城が移るのが遷都である。また人によりますと、首都機能が移るのが遷都である。首都機能といいますと三権分立、国会と最高裁判所と内閣を初めとする行政官庁、この首都機能が移るのが遷都である。こういう定義もはっきりとないわけでございまして、私は、遷都とはあくまでも憲法一条である。天皇が日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であるから、天皇が移ることが遷都である、こういう観念でございますが、この一極集中国土の均衡ある発展につきまして、遷都という問題が絡んでまいりますので、まず遷都の意義、これをお尋ねしたいと思います。  そこで、現実問題として、東京は今世界都市でございます。これは国際的にも認知されておるわけでございまして、参考人も先ほどから、金融市場または情報社会、ここにおける世界東京の優位性ということをお話しになりましたが、まさにそのとおりでございまして、今この東京世界における立場というものは、日本経済を助長するために相当貢献してきたのではないか。今までもしてきた、今後も日本経済発展のために、この立場というものは大きな貢献をするのではないか、私はこのような確信と見通しを持っておるわけでございます。  そこで、仮に遷都または首都機能の移転、こういうことが実行されました場合、東京は果たしてどうなるか。それによって東京は疲弊するのか、または現状維持であるのか、この見通しにつきましてお尋ねしたい。  もし東京が疲弊いたしますと、世界東京というものの姿がだんだん後退するわけでございまして、これは私は、東京にかわるべき都市というものが日本に果たしてできるのかできないのか、世界に認知されました。こういうものができないといたしますと、東京の疲弊というものは、即日本経済の疲弊につながる、こんな考えもあるわけでございまして、この遷都問題または首都機能の移転問題、これは日本経済、将来、こういうものを見通しまして、軽々しく論ずべきではない。私の個人的見解といたしますと、現在のままでおいて、そして国土の均衡ある発展を遂げる政策を打ち出すべきではないか、そしてそれを実行するのが最もいい政策である、これがまあ世界的に見て日本のとるべき立場ではないか、このように考えるのでございますが、まずそこら辺につきましてもひとつ御見解を承りたいと思います。  そして国土の均衡ある発展、これはまあ地方独自の知恵と自主的な政策、努力、情熱、こういうものも根底に必要だと思います。また、それに加味するのに国の政策というものも当然必要でございます。  そこで、先ほど江戸時代の話が出ました。江戸時代におきましては各藩がそれぞれの独自の文化と伝統、地域産業、こういうものを打ち立てまして非常に特色ある地方というものがつくられたと、こういうお話でございますが、私もまさにそのとおり。もちろん封建時代に逆戻りしろということではございませんが、地方分権のあるべき姿として地方独自の文化と伝統または産業の確立、こういうことが必要であろうかと思うのでございます。  そこで、大分昔に返りますが、田中内閣の時代日本列島改造論、これは結果としていいか悪いか私論じませんが、理念としてはまあよかったんじゃないか、理念としては。あれは結果は、政策的には余り出なかったんですが、理念としてはよかったのではないか。これが今の地域振興という考えとイコールではなかったかと、このように考えるのでございます。  それで今の四全総、この裏づけ、それの理念といたしまして、ふるさと創生論、これも私は地域振興のための基本的理念として正しいのではないか。そこら辺を理念的にひとつお答えをいただきたいと思います。  そこで問題は、地方で自主的に産業発展させろ、それで地方独自の振興策をとれと、こう言いましても問題は財源なんです、財源。裏づけなんです。幾ら立派な政策が打ち立てられましても、財源がなければこれは成り立たぬと。そこで、終戦後の地方自治法が出たときの各都道府県の交付税という基準から考えますと、その当時は不交付団体というのが相当あったんです、不交付団体。ところが現時点では、都道府県で不交付団体は、東京は大体ずっと不交付団体ですが、そのほか一県あるかないか、いつも。大阪がなったりならなかったり、愛知県がなったりならなかったりで、ほとんど交付団体だと。交付団体ということは国のひもつきである、金がですな。こういう問題までを考えなければ財源の本質的な私は解決ができない。  そして、どうしても中央官庁におきましては、いわば自分の権限の擁護といいますか、守備範囲の擁護といいますか、なかなかこれが難しい問題でございまして、やはり地方分権を助長させるためには、結論的には国と地方財源分配の見直しというものが解決しなければなかなか難しい問題だと。さっき都市計画のお話が出ましたが、これは事前協議だけでもそれだけの制限がございますが、特に財源の問題につきましては、もっともっと根本的な問題があるわけでございまして、やっぱりそこら辺を考えていかなければ本当の地域振興はできない、このように考えますが、そこら辺につきましてひとつ御見解を承りたいと存じます。  次に、広域行政というお話が出ました。  地方の進展のためには広域行政が必要である。この広域行政というものは、お話では関東地方とか中部地方とかのことだと思いますが、この広域行政の中身として、ここに道州制でも打ち立てて議会をつくってやるのか、それとも行政機関の何となくブロックでまとまりをつくってやるのか、どのような内容がよろしいのか、そこら辺につきまして御見解を承りたい。  なお、参議院の問題でございますが、参議院に比例区というのがございます。昔は全国区。全国区は選挙が大変だというので比例区が出たと。また比例区も大変だということでいろいろ論議があるところでございますが、この道州広域行政というものを考えました場合に、広域行政を代表する議員というものは現在一人もいない、都道府県の代表議員はおりますが。そして、比例区というのは全国ということでございますから、広域行政を、ブロックを代表する議員はいない。これは私の本当の私見でございますが、むしろ比例区を道州広域行政の代表として改めたらどうか。そうすると、その広域行政の代表の議員というものが国会に出てくる。そうしますと広域行政というものも推進されるんじゃないか、こんな考えも持っておるわけでございますが、そこら辺につきまして、極めて総論的な問題でございますが、御質問申し上げたいと思います。
  21. 吉田達男

    参考人吉田達男君) まず東京問題の認識でございますけれども、私は田辺先生の御意見基本的には認識を一にしているのではないかと思います。  と申しますのは、やや細かく申しますと、昭和六十年から世界都市東京という大きな動きが、うねりが始まったわけですが、それに先立つ状況つまり昭和六十年の段階東京圏は三千万の人口を擁し、アンケートによりますと、特にその生活環境に不満が強いという人は比較的少なく、しかも都市の装置ですね、上下水道、通勤交通、こういうのは、例えば通勤輸送にしても秒刻みで運営されている、こういう都市はちょっと世界に類例がないわけでございまして、その意味では、この都市を成立させた条件、地理的な条件でもこの地形、関東平野、その水を支えた利根川、多摩川、相模川、さらに東京湾というのを抱えました立地条件が非常にすぐれたものであることは間違いないわけでございます。  それに加えて世界経済の変動の結果、非常に大きな国際的な機能東京に立地し始めたというわけでございますから、今恐らく世界のGNPの一四、五%が日本列島で展開され、その三割が東京圏で行われている。この東京圏のしたがって経済活動は西ドイツをはるかに上回るということでございますので、東京圏の活動が日本をリードする、あるいは世界をリードする、これはもう否定すべき余地はないほど大変重要な論点であろうかと思います。したがって、これからこの日本列島の将来を考える場合に、この東京圏の存在というものを肯定的に認識した上で次の問題を考えるということでなければ、もう世界経済日本経済の関係は成り立たない、それはもうはっきりしているわけでございます。  ただし、申しましたように、その発展余りにも激し過ぎる、本来なら大体東京圏の人口というのは二五%ぐらいでございますから、その比率ぐらいでゆっくり伸びていただければ心配すべき問題につきましても対応が可能である、水にしても電力にしても交通問題にしてもあるいは可能かもしれない。ただし、それが余りにも速いわけですから、そういう意味では三千万都市を云々するのではなくて、例えばこれからふえそうな二百万を、これをどうするかというふうに最初のリポートではそれを問題にしたわけでございます。  それを問題にいたしますと、一般に言われる遷都問題というのに移りますが、この遷都問題も私の感じでいえば、例えば昭和三十年代の後半、河野大臣が遷都論を言われたときあたりの東京機能ですと、いわば三権を一括して移すということも一つのアイデアではあつたと思います。ところが、今既に国際都市として、あるいは三千万、三千三百万に近い都市として、世界経済の中にウエートを占めた現在としては、この首都機能を移転する場合に非常に大きな問題点が幾つかあろうかと思います。  その一つは、前に国土庁で算定したような面積では新しい首都はとてもつくれないということです。この面積を日本列島の適地に探しましても、そんな用地買収が可能な場所がございませんですね。それが第一点です。  それから第二点は、仮にその遷都の場所が決まったとして、一億二千万の国民が喜ぶかということになりますと、例えば平松大分県知事は、遷都は全く関心がない、転んでも大分に来ることはないんだから、したがって私は東京に行く方が便利でよろしいと、こういうふうに言っておりますので、その新しい遷都の用地になった周辺の地域は非常に歓迎するでありましょうけれども、その他の地域は交通体系その他からいって非常に不便になるわけでございまして、逆を言えば支持が得 られないということが言えるのではないか。  特に、これは場所にもよりますけれども、現在国際的な活動、非常に外交面でもありますが、例えばアメリカ大使館、ソ連大使館、英国大使館というのを見てますと、日本政府が遷都を決定したから、おまえたち全部新首都に行けといっても、それはキャンベラぐらいなら行きますけれども、とても東京機能はついていけそうもありません。そういう意味で、私は遷都は余り議論しない方がいいんじゃないかと思っております。むしろこれから、先ほど申しましたように、国際的な機能がいっぱい日本東京に要請があるはずですが、そういう新しい機能を現在の関西圏とかあるいは仙台とか広島とか、そういうところに分散配置することが非常に素直なんですね。いわば首都機能の一部移転であるというふうに思っておりまして、現在の立地している機能を積極的に動かすということは、例えば首都圏内の大宮移転なんかは、何か私もあれが何の意味で行われるのかよくわからないんですけれども、均衡のある発展とは余り関係がないというふうに思っております。  それから、二番目に御質問をいただきました列島改造論、その他理念としてどうなんだということですが、やはり一貫して今の国土計画が考えておりましたのは大都市抑制、地方振興であったと思います。これは先ほど申しました、世界生産の一四%近くをこの狭い日本列島で働いているわけです。その国土というのは、本当に世界の陸地面積のわずか〇・二七%しかございません。それをさらに一極に集中するようなことは避けた方がいい。そういう意味で、列島改造も含め地方振興にやや重点を置いた国土政策、これは肯定的であっていいんじゃないかというふうに思っております。  それから、最後の広域行政、地方制度につきましては私の専門でございませんので、余り的確なことは言えないわけなんですが、まあ道州制ということになりますと当然府県制の廃止というか、それにつながってまいるというふうに思います。つまり、現在の府県の行政の相当部分を市町村に移管し、そして府県の相当部分を道州制、道州の機能に持っていくということかと思いますが、私どもの立場から言えば、制度の議論は現実の変化とスピードが違う。だから、したがって、道州制の議論に精力的に集中するよりも、現実の変化に現在の制度で対応した方がなおいいのではないかというふうに思っておりまして、もし参議院にそういう御意見があるとすれば、私はちょっと専門外なので、賛成ないし肯定ということは申し上げられない。  以上でございます。
  22. 清成忠男

    参考人清成忠男君) 東京一極集中の問題でございますけれども、やはりグローバルな中での東京という位置づけが今必要であるということでありますから、東京発展地方発展がトレードオフであるということではないというふうに私も思っております。  例えば、先月ちょっと学会でソウルに行きましてやや驚いたんですが、大変立派なコンベンション施設ができている。東京をはるかに上回るような立派な施設ができているということでありますし、シンガポールはそれ以上であるということであります。環太平洋の中における東京の役割ということを考えますと、やはり東京発展ということ、あるいは東京整備ということは、かなり重要であるということは当然だろうというふうに思います。  これとの関連で遷都の意義でありますが、先ほど御指摘のように、遷都が天皇の移転を、つまり皇居の移転を指すのか、あるいは首都機能の移転を指すのかということになりますと、実際上最も効果を想定した場合に議論の対象になるのは、やはり首都機能の移転ということであろうというふうに思うわけですが、この場合にやはり首都を一括して移転するか、分散して移転するか、あるいは回りに広げる、展都ということでしょうか、それだけの選択幅があろうかというふうに思いますが、一括移転というのはこれは現実に困難であるというだけじゃなくて、先ほどの吉田さんの御指摘のとおり、まあその首都機能が移ってこない、移ってくることが想定されない地域というのはほとんど無関心であろうということは全くそのとおりであろうという感じがするわけであります。  そうなりますと、今度は分割移転ということになりますと、これはモデルとしては西ドイツ型だろうと思いますね。例えば、首都がボンにあっても中央銀行はフランクフルトにあるとか、あるいは統計局はビースバーデンにある。あるいは公取に相当するカルテル庁がベルリンにあるとかということになりますし、それからボンのありますノルトライン・ウエストファーレン州の首都はボンではなくてジュッセルドルフであるとか、こういうぐあいに分散しているわけでありますが、しかし、ファンクショナルには非常にこれは不便であるということであります。必ずしもこれが望ましいかどうかはにわかに断定できないというぐあいに思うわけであります。  それからもう一つの、広げていく、これは四全総の業務核都市構想ということでありますが、例えば大宮・浦和でありますとか、立川・八王子、横浜・川崎、千葉・筑波、こういうところに中枢機能を分散するということでありますが、これは下手をしますと首都機能をなおさら強めるだけだということになるわけであります。つまり、職住近接で大変合理的な住まい方ができるということになりますと、人口増加ということが一層加速化される可能性がある。むろん、その場合にやはりインフラ面で上下水道でありますとか、あるいはごみ処理でありますとか、あるいは電力の問題、こういう物理的な制約というものが当然あるわけでありますけれども、しかし、業務核都市構想というのは人口増加を加速化するだろうというふうに思うわけです。仮に大宮でありますとか浦和に分散する機能であるならば、これはもっと遠方に持っていくべきであろうという感じがするわけでありますけれども、実際にはなかなか遠くに持っていくようなものは余りないのではないだろうかというぐあいにも考えるわけで、業務核都市構想というのは、私は極めて非現実的ではないだろうかというふうに思うわけであります。  それから、第三点で多極分散、ふるさと創生の理念の意義ということでございますが、多極分散型の国土構造の実現そのものが決して悪いわけではございませんけれども、多極分散の意味内容がもう少し明確でないとぐあいが悪いのではないかというふうに思うわけです。つまり、極といいましても、極にはさまざまな次元があるのではないだろうかということであります。私は、経済審議会の地域産業部会におきましては、四極構造という問題提起をしたわけであります。大体今日の情報手段あるいは交通手段ですね、インフラ面を考えますと三百キロ圏、四百キロ圏で一つの単位を構成するというぐあいに考えられますと、それに向けてインフラを整備すると同時に、中枢都市というのは、せいぜい日本列島の中に四つあればカバーできるのではないだろうかという、少し乱暴な意見でありますけれども、そしてこの中枢都市を補完する中核都市がその周辺にあり、さらにその周辺に一般の市町村がある、こういう構造を考えるべきではないだろうか。  したがいまして、例えば大阪圏がよくなれば、中国あるいは四国がよくなる。本四架橋の効果も出てくるということになるんではないかということなんです。したがって、多極分散といいましても、東京圏を妙にいじってつぶすという考え方ではなくて、無論東京圏に必要でないものはどんどん地方に出すということは必要でありますけれども、それ以外に、東京圏以外のところを強める。例えば大阪圏を強めるとか、つまり広域大阪圏を強めるとか、あるいは広域福岡圏を強めるとか、あるいは広域札幌圏を強めるといったような構造とそれのネットワーク化、しかもその場合に、例えば広域札幌圏といいましても、その傘下にある市町村まで含めて、札幌を頂点としたピラミッド型の構造をつくるという意味ではなくて、先ほど白根さんが御指摘になりましたような、むしろ情 報インフラという問題を考えますと、やはり今度は各県際の、つまり県域と県域を結ぶようなネットワーク化、それを各地域が同時に考えられる、こういう立体的構造でやはり多極分散型ということを考えるべきだろうし、恐らくそれとの関連でふるさと創生という問題提起をすれば、大変私は結構な考え方ではないかというふうに思うわけであります。  それから、最後に道州制の問題でございますが、これは制度的に大きな変革であろうということで、ある意味では革命的といったようなことになるかもしれない。道州制ということになりますと、当然広域化と同時に、連邦化とかそういったことも多分含まざるを得ないだろう。国会議員の配置ということまでそれに運動してみますと、多分連邦化という、こういう構造にもなるんじゃないだろうか。これはやはり一挙にそこまでいくというのは、かなり難しいことなんではないだろうか。やはり現行制度のもとで、例えば中央官庁の内部での分権化ということが、まだまだ私はかなり可能ではないだろうか。例えば通産局でありますとか、あるいは農水局でありますとか、あるいは建設局でありますとか、こういう中央官庁の内部での分権化ということが一つは可能であろうと。しかし、こうなりますと、都道府県サイドから見ますと、中央集権が末端までくるというようなことで大変ぐあいが悪いということにも実はなりかねないわけであります。  したがいまして、中央官庁の内部での地域分権化というのは、やはり地方の実情を反映した政策策定、あるいは政策の運営を行うというその限りにおいて進めるべきであり、この場合に中央官庁の内部での分権化を進めるとするならば、やはり自治体の自主制というものと連動さしていくということ、これはもちろん対応する議員ということになってまいりますから、例えば大分の平松知事などは、九州議会を想定するということでありますから、現行の制度を若干修正しながら対応していく、一歩前進させるということだろうと思うのですが、少なくともそういう過程が多分現実的であろうと。一挙に大変革命的とも言えるような制度変革というのは、これはもう相当難しいのではないかというぐあいに思う次第でございます。  以上でございます。
  23. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それぞれの参考人先生方にお伺いをいたします。  まず最初は、白根参考人に対する質問でございますが、先端技術産業の活動を支えております研究開発機構とか情報機能というものにつきまして、これは東京に置いて工場だけを地方へ移した方がいいという考え方と、それからこうしたものを一カ所に集中しておくということは、戦災その他でこれが滅びるおそれがあるので、それは危険だから、こうした研究開発機構とか情報機能はやはり地方に分散をして、工場とともに分散した方がいいと、こういう考え方とございますが、こういう問題につきまして、掘り下げた先生の御見解をお願いいたします。  それから次は、吉田参考人に対する質問でございますが、金融情報文化等の拠点への一極集中傾向というものは世界的な傾向であると思われますので、その代表的なニューヨーク、ロンドンの現状と、それに対しますところの対応につきまして御紹介をお願いいたしたいのであります。また、それに関連しまして、円高に伴いまして、世界的規模における海外への生産手段の進出が行われておりますが、このような傾向、特に最近ささやかれておりますところの世界的な産業分業につきまして御見解をお聞かせ賜りたいと思います。  次に、清成参考人に対する質問の内容は次のとおりでございます。  経済審議会の経済計画では、東京圏の地位、機能を落とさずに地域経済活性化を図るというねらいを持っております。ところで、最近政府は、一方では大深度地下の利用、高度空間の利用というものにつきまして指導をいたしております。それとともに他方では、首都圏機能地方分散などによりまして地域経済活性化を図る、こういう施策をも講じております。しかし、東京圏の地位、機能を落とさずに地域経済活性化を図るといったようなことは、現実の地域経済を見た場合うまくいくと考えることができるかどうかという問題がございます。特に最近における円高の影響からの生産手段の国外への移転ということが進んでおります段階において、反面、国内の地方に移すということが鈍ってきておりますこの現状において、この問題はどのように理解したらよろしいでしょうか、お尋ねをいたします。  以上でございます。
  24. 白根禮吉

    参考人白根禮吉君) ただいまの先生の御質問は、研究開発機能ないしはその情報蓄積、つまり情報のセンターみたいなものでございますけれども、そういうものの集中と分散の問題だろうと思います。  実は日本における研究開発機能並びに情報センターの特質として、極めて企業ベースといいますか、民間企業研究開発とか、あるいは情報の蓄積能力といったようなものが非常に主流になっているわけでございまして、その意味で、既に企業ベースでも一カ所に集中するということは非常に危険であるということ、それは災害の問題もあるでしょうし、いろんな面でデュアルな基地を持つという形を、例えばデータベースとか、そういうものについては既にそういう格好で進められております。ただ、一つこれから大変大事だと思いますのは、日本における企業だけではなしに官庁ないしは大学、そういうものがもっともっと研究開発機能なり情報の蓄積機能というものを高めるという必要があると思うのです。  国際的に見て日本の大学というのは、非常にそういう意味では、清成先生がおられますので少し語弊があるかもしれませんが、どうも社会化されていないという言い方が一つできるような気がするわけでございます。アメリカにおける地域開発あるいは都市開発というのは、まず大学を中心に考えられているというのは大変注目すべき状況だろうと思います。  例えば、ヒューストンにおけるウッドランズという大変広大な、また長期的な開発がございますけれども、ヒューストン大学をまずそこに誘致するというのを最初にやりまして、それから町づくりをしていくというようなこともやっております。あるいはノースカロライナ州、これももともとは農業州でございますけれども、この州にリサーチ・トライアングル・パークという大変有名な開発がございます。これも三つの大学をトライアングルというふうにとらえまして、その真ん中に先端産業、これはIBMとかモンサントとかいうような大企業を含めて、そして日本からも住友電工が研究所をそこに置くというような国際的な大変な研究集積の場所をノースカロライナ州がつくるといったようなことが進められておりまして、実は千葉県がそのトライアングル計画という形に範をとって、幕張、成田といったようなあたりの計画をいろいろ進めているわけでございます。そのいずれもアメリカの場合には研究開発中心が大学になっているし、また、人づくりという点が大変重要視されているわけでございます。  ですから、その大学を中心にしますと、そこで人材も、企業もまた人材の養成を大学にしてもらえるし、卒業生を確保することもできるし、それから地場産業になりますので、卒業生が今までは例えばノースカロライナから全部ニューヨークだ、ワシントンだという方向へ向いていたものが、そこに定着するというような形にできるわけでございます。日本においても今長男長女社会でございまして、地元志向というものは随分出てきているわけでございます。たまたまその地元に自分のやりたい仕事がないということで首都圏に集まるわけでございまして、その意味でいきますと、地域活性化のためにも先生のおっしゃる研究開発機能であるとか、情報の蓄積機能といったようなもの、これの地方分散というのは大変大事な意味を持ってくると思います。物の生産ずばりではなしに、研究開発とかあるいは情報機能といったようなことになってまいりますと、その点 ではある程度の分散が可能でございます。  ただ、その場合に先ほど申し上げましたように生活環境型といいますか、そこに人が集まって、最後に私言いましたような四つの、働く、住む、憩う、学ぶという、ここら辺が、四つの機能が満たされないとなかなか有為な人材を集めることができない。筑波の研究学園都市が始まって大変な年数がたっているわけでございますけれども、都市機能というものがあそこには大変半端な格好になっておりまして、なかなか定着ができない。首都圏からそれほどの距離ではないんですけれども、なかなかあそこですら、そういったものの成立が望めないといったようなことを考えますと、そういうインフラの考え方が従来と非常に変わってきて生活型といいますか、あるいは環境にしても自然環境だけじゃなくて、文化水準とか教育水準とかいったようなものが、そこに人を集める非常に重要な意味になってまいります。  それからもう一つ、最近いわゆる物の生産工場だけじゃなくて、ソフトが中心会社あるいはエンジニアリングの会社でございますけれども、その会社が町づくりに非常に協力をして、そのソフトウエアの工場が来たために町全体が非常にアメニティーが高まったといったような例が幾つか出てきております。日本経済新聞が毎年オフィスオートメーションとか、そういうものの優秀事業所賞というものを出しているわけでございますが、その審査を私ずっと過去六年ほどやってまいりまして、そういう例が非常に出てきております。企業も意識的に工場をつくるんですけれども、その環境を町というものと非常に一体化してそれをやっていこうと、自分の工場が来たんで、町全体のアメニティーが高まるといったような方向に今展開が始まっております。そういったことを考え合わせますと、日本の場合でも、この研究開発機能あるいは情報機能というものが次第に多極分散の可能性が出てきたということは言えるかと思います。  ただ、大学が御存じのように昭和六十七年をピークにして急激に十八歳人口が減りますので、そこら辺でまた一つ大学の危機が日本の場合には来るわけでございまして、その場合に積極的に大学がやはり特徴を持つとか、いい学生を集めるというような意味での社会化といいますか、あるいはそういう経営的なセンスがそこに入ってまいりますと、日本の大学も活性化するんではないかというふうな感じがしております。反面、日本の大学の一つのいい点も、あるいは非常にメリットもあったわけでございまして、入学は難しいけれども卒業は大体できると。逆に言いますと、言葉は悪いんですけれども、大学のレジャーセンター化という言い方すら出てくるわけでございますが、しかし、そのことによって、例えば日本におけるサービス産業とか、そういうものに大学生を含むアルバイトというものが、サービス産業の供給面でカバーしてきた。  海外からの労働者の受け入れという問題が今非常に大きくなってきましたけれども、今まで学生がそういう役割を果たしていたという面が非常にあるわけです。しかも東京の場合、サービス産業の提供型だけじゃなくて、それを消費する面でも学生の役割というのは非常に高いわけでございますね。そういう点でいきますと、必ずしも日本の大学のあり方がアメリカと違うというのが全部デメリットということでもないわけでして、つまり時間がある程度使えて、かつ文化水準、教育水準の高い人間というのが町づくりの面では非常に大きな役割を果たしているような気がしております。  東京大阪の町を比べて真っ先に思いますのは、やはりそういう町における大学生を大阪の場合にはほとんど追い出してしまったと。そして、ビジネスの空間が中心になってしまったというあたりがどうも大阪の町の魅力というものを非常に減らしてしまったのではないか。これはちょっと余計な話でございますけれども、そういう意味では松前会長も大学をやっておられますので、ちょっと差しさわりもあったかもしれませんが、日本の大学というものが好むと好まざるとにかかわらずこれから変わっていかざるを得ない。これは研究開発機能とか情報蓄積機能というものを考えた場合にも非常に大きな私は意味を持っているような気がしております。
  25. 吉田達男

    参考人吉田達男君) 二点御質問を受けました。  第一点、金融情報文化機能はやはり一点集中を避けがたいのではないか、そういう意味でニューヨーク、ロンドンとの対比はどうだという御質問でございますが、私は金融はどうしても一点集中にならざるを得ない。しかし、情報は今、白根参考人がおっしゃいましたように将来分散可能である。また、文化というのは、言葉の使いようによりますけれども、これは地方文化が非常にすぐれている面が日本にございます。ノーベル賞は京都大学だけで、東京大学は一人ももらっていないわけですから、そういう意味では地方的な文化というものを非常に尊重する必要があろうし、文化は今後ますます東京集中するというふうには理解しておりません。  次に、したがって金融ということなんでございますけれども、十九世紀の後半から二十世紀の初めにかけて世界金融はまさしくロンドン、しかもシティーの活動にゆだねられてまいりました。一九一〇年代の第一次大戦後、その中心地はニューヨークに移り、ウォール街が非常に大きな発展をいたしまして、いわゆるウォール街がロンドンのシティーと並んで世界の二つの拠点という形だったわけでございます。ところが、日本はそういう意識が余りにもなかったということと大蔵省のいろんな指導もございまして、結局、昭和六十年前後までいわゆる国際金融の自由化が進まなかったわけですが、その辺を契機にして、一つは国内の制度的な対応が進んだということ、もう一つは、御存じのように突如として大変な世界最大債権国になったということで、突然東京市場が三年の間に飛躍的に国際化が進んだ。先ほど申しましたように、以前の想定では恐らく十数年かかると思われていた東京市場の国際化が、今物によってはニューヨーク、ロンドンを抜いているという形になっておりますが、さて、この立地につきまして実は対応が非常に十分でなかったために、いろいろ問題が起きているというふうに理解しております。と申しますのは、国際金融業務というのは、瞬間的な情報に対する瞬間的な対応であるということでございますので、非常に情報集中集積が問題でございます。  したがって日本では、本石町・日本銀行、兜町・証券取引所、それに大蔵省を結ぶ悪名高き三角形というのがございまして、その三角形の真ん中が東京駅なんですが、最初段階はいわゆる丸の内、大手町に集中していたわけですが、その後の機能集中に対して丸の内、大手町が対応できないということで、御存じのように例えば赤坂、六本木のアークヒルズとか、あるいは隅田川河畔の新川というところにディーリングルーム、外国銀行の展開があるわけですけれども、いろいろ聞いてみますと、もうアークヒルズに行った連中が疎外感に悩まされている、一日も早く丸の内に帰りたいということを言っているようでございますので、これはなぜかということになりますと、風評とかうわさとか、情報とかというものの瞬間的な対比と、隣の人が何やっているかということを知らなきゃいけませんので、離れていると非常に困るということでございます。したがって、金融だけは私はやはりシティーないしウォール街と同じように一つの国際業務センター、丸の内、大手町を育成すべきであるというふうに思っております。  それから第二点の質問、円高に伴って空洞化が進むのじゃないかという話ですが、これは既に白根参考人が申されましたように、この急激な円高、これはドルで評価しますと、この三年ぐらいの日本経済成長は二・一倍、年率で三〇%以上になっております。そういうものに対応するのは結局、技術革新を中心とした対応しかないわけでございますので、そういう努力は結局国内で行わ れる。したがって部分的に製造機能海外進出は非常に進みますけれども、それが日本空洞化になるということは、まずないんじゃないかというふうに思っております。  以上でございます。
  26. 清成忠男

    参考人清成忠男君) 時間がございませんので簡潔に申しますけれども、私は、東京圏一極集中をのろっていただけでは地域は振興できないという考え方を持っております。  例えば、沖縄は日本の辺境であります。これは地理的に辺境の位置にあるということでありますけれども、しかし、グローバライゼーションでボーダーレス化ということになりますと、辺境は一転して中枢の位置になるということでございます。したがって、東京一極集中をのろうよりも、むしろ有利になった以上、生かすことを考えるべきだということで、これは法的にも認められておりますけれども、フリー・トレード・ゾーンをこれからも活用しようということになるわけです。九州にしても全く同様でありまして、例えば福岡なり熊本は、東京に比べてソウルの方がはるかに近い、あるいは台北が近いということになるわけです。こうなりますと、国際分業の中で、やはり九州の位置というのは非常によくなってまいります。  そういうふうな位置の変化を認めた上で、地域になじむ政策を展開するということが大事なんではないだろうか、単に東京機能を低下させればそれで問題が済むということではどうもないんではないだろうか、それですと地方はいつになってもよくならないという、そんな感じがするわけであります。したがって、例えば沖縄ですと、気候、風土をうまく使うような例えばバイオマスの産業であるとか、あるいは鳥取でありますと、鳥取の砂丘を使った鳥取大学の研究施設が砂漠での植物栽培の研究をやっております。これは世界的な水準になっておりますので、こういったものをどんどん伸ばすとか、あるいは冨山の医科薬科大学には和漢薬研究所があります。これなどは漢方の研究では、国立の研究所は日本に一つしかない。研究開発機能にしましても、マイクロエレクトロニクスとバイオと新素材というふうに金太郎あめ的に考えるのではなくて、やはり地域特性を生かした研究開発、そして先ほど白根さんも御指摘になったわけですけれども、こういった研究開発において特に基礎研究を重視する。基礎研究を展開しますのは大学でありますので、国家予算としても基礎研究支出をふやし、それを大学につける。しかもそれを地方の大学に傾斜的にマークをつけていくといったようなことが、時間はかかるわけでありますけれども、ソフトな機能地方分散になる、それが地方に新しい産業を展開させていくということになるんではないかと思います。  以上でございます。
  27. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 白根参考人にお伺いをしたいと思います。  本当に日々に進んでいく情報化社会やそれから先端技術発展なんというのは、特に私なんかの立場だと、毎日目をみはるばっかりで驚くわけです。特に外国なんかに出て調査いたしますと、外から日本を見た場合に、この点が非常に目立ちますですね。そういう中で先生お書きになりました「新コミュニケーション革命」というのを、全然難しくてわからなかったんだけれども、私なりにそこだと思ったところがあるんですね。こういう本当にすばらしい日本発展というものが、なぜ日本で可能になったかという点で、この中に書いてございました。   もうひとつ日本技術開発の大きな特徴としては、軍事用の予算がほとんどないということである。日本では、民生用すなわち、われわれの生活に必要なもののために、技術開発が三〇年以上も続けられてきた。これは近代の科学技術の歴史でも、きわめて稀な例なのである。 という点は私もかねがねそう思っていたものだから、本当にこれが大事だなと痛感して読ませていただいたわけなんです。  そういう立場に立って、今の政治というものを見ますと、SDIの問題が出てまいりますし、軍事予算というものの物すごい伸びと福祉予算が伸びないというような点から、今のそういう情勢で見ますと、先端技術なんというのはもろ刃の剣でございますね。どっちにも使えるというようなことになると、このSDIの今の問題から考えて、一つ大変私は心配になるわけで、私たちといたしましては、すばらしいその開発された技術が本当に国民、全人類を生かす幸せのためにこそ使われるべきであるということを考えますと、今のSDI、軍事傾斜の顕著な状況の中で先生としてはどういうふうに感想をお持ちになっていらっしゃるかというのを伺いたいということなんです。  聞きたいことはいっぱいあるんだけれども、時間がないということなので申しわけありません、一つずつに絞ります。  それで、それを先生に伺いまして、その次は吉田先生になるわけですけれども、吉田先生の場合はこれの座談会に出ておりました。「ESP」の七月号、この座談会読ませていただいたんだけれども、まことにテーマが大きくて、しかも非常に困難な問題を抱えての中なので、私は早急に今どういう結論でということは出せないと当然思うし、これからも検討されるべき問題だと思うんですが、きょうの先生のお話を伺っておりまして、例えば社会資本のABCということの中で、Aが中途半端だということをおっしゃった。これがもっと進めば地域にも影響があるというふうにおっしゃったようにお聞きしたわけですけれども、私の素人なりの今まで持っていた考え方としては、日本技術というのは物すごいですよね、先ほどから言っているように。  私は北海道ですけれども、トンネルができちゃう、四国の大橋ができちゃう、まあ日本技術って本当に世界一だと思うんですよ。しかし、これが果たして国民そのものに、全国民的な生活レベルアップにどういうふうに使われるかということになると、先ほど四国の橋で経済が、香川は潤ったというふうなお話がありましたけれども、これが本当にA型が大きくなれば地域に進むということになるのか。私としてはやっぱりここのところで、分散と逆流という点をお話になりましたが、私は分散の前に逆流の方が強くなるのではないかというふうに考えるわけなんです。  これは清成先生にも後でお伺いしなきゃなと思ってたんですけれども、例えば岩手から東京へ来るまでのあの高速道路沿いに全部部品を集めて、東京へ到着するまでにハイテク製品が完成されるというような、こういうふうになってくると、分散じゃなくて逆にまた東京中心というようなことになっていくということになると、これは非常に分散の前に逆流というような心配が私はあります。やっぱり本当に東京とかの大きなところとの格差を減らすというときには、それぞれの地域の本当に生活に密着したそういう経済産業ということが主になって、こっちが主になっていかないと、格差は広がって逆流ということが強くなっていくのではないかなと、そういうふうな心配を素人なりにしておりますので、その点についてお考えを伺わせていただきたいと思います。  それから、清成先生の二つの本の中で、私も地方へ行きますと、テクノポリスというのには物すごく幻想を持っているわけですよね。何かテクノポリスに指定されれば、ばあっと来るようで、あっちへ行ってもこっちへ行ってもテクノポリス、こんなことでどうなんだなと思っていたら、先生の本の中に書いてありました。これが指定されたからといって、工場が誘致されるものではない、そういう甘い考えでは失敗する、今のままでは恐らくほとんど失敗するであろうと、こういうふうに書かれているわけなんですね。そうしますと、先生の指摘をされたその方向で、今までの現状の中から成功、また成功とはいえないまでも成功するであろうという萌芽の見えるようなテクノポリスというようなものがどこかにあるんでしょうかということを具体的にお伺いしたいということと、それから、これも私はわからなかったのでお伺いしたいんですけれども、地域経済の活力、 中小企業、地場産業発展のためにベンチャービジネスの重要性ということを盛んにおっしゃっておりました。これは具体的にはどういうことなのか、わかりやすく御説明いただければと思います。  以上でございます。
  28. 白根禮吉

    参考人白根禮吉君) 簡潔に申し上げます。  おっしゃるように日本技術特徴、これはまさしく民需を牽引力にしてやってきた、過去の技術開発の歴史でも非常にまれな例と私も申し上げておるわけでございます。今半導体日本アメリカを追い越したと言われておりますのも実はそれでございます。徹底的に低電力といいますか、電力を食わないタイプの、専門語ではCMOSと言っておりますけれども、そういうものに徹底的に開発を進めまして、したがって電池でも相当長くもつような、つまり、我々が個人的に使えるような形のものができた。アメリカ型の技術の一つの問題点としては、そういう点ではどんどんスクリーニングをかけまして、金に糸目をつけないで、いいものだけを選んで物を組み立てていくという、そういう形が非常にあって、日本の場合にはコストパフォーマンスというのが非常に大事でございます。非常に安くて性能のいいものでないと一般の人にはとても使えないですね。そういう点で日本の競争力というのが断然リードしたと。  実はヨーロッパもややアメリカ型の、例えばアポロ計画みたいなものとか、あるいは要するに、宇宙開発だけじゃなくて海洋開発ですね、そういう巨大プロジェクトが先端技術だという形で進んだものですから、その意味では日本は、全く生活に密着した技術ということで専らやれたということですね。非常に日本にとっても幸いであったし、また、そういう技術をやるのに日本人の資質が非常に合っていたというふうに私は理解しております。先生のSDIとか、そういうのは私もよくわかりませんのであれですけれども、ともかくその日本特徴というのは大事にしていかなきゃいけない。しかし同時に、やはり橋をつくるとかなんとかという巨大な技術バランスよく持って、そして世界のためのプロジェクト、これは軍事ではなくて、我々の生活のために必要な技術プロジェクト日本が受け持っていくという形が非常に正しいんじゃないかと思っております。
  29. 吉田達男

    参考人吉田達男君) 日本昭和三十年代からこれだけの社会資本投資ができたというのは、私も率直に軍備が少なかったから、国防費の負担が少なかったから世界にもまれな大規模プロジェクト推進がともあれ可能だったというふうに思いまして、私の立場からいえば本当にそれはありがたいことだというふうに思っております。  それから二番目に、社会資本Aが中途半端だというのは、この社会資本のAの範囲がやはり採算とか、あるいはいろんな地理的な条件から北東部は盛岡ぐらいまで、南西は瀬戸大橋ぐらいまでしか及んでいない。したがって、それ以降をどうするかというのは、これからの課題だという意味で中途半端だと申し上げました。  それで、北海道の件に関しては、先生をおいて申しわけありませんが、青函トンネルができて、その逆流効果で北海道にマイナスの影響が起きているというふうには理解しておりませんで、この国際経済の変動に伴う産業構造の大きな変動が北海道の人口減少を招いている。しかも北海道の人口動態を見ていますと、その流出先の最大は東京になっているんですね。そうしますと、やはり北海道の開発は、清成先生もおっしゃいましたけれども、何とか世界都市東京との関連において北海道の開発促進を図るということが基本ではないか。それはいろんなこともありますが、さしあたり千歳空港という大規模プロジェクトの周辺部は、この影響を受けて非常に発展をしているというふうに思いますので、さらに高速道路の点、あるいは本来は新幹線を通す予定だった青函トンネル、こういった点にさらに知恵を加えて、高速交通体系をなるべく早く北海道に入れる。その結果としてやはり逆流効果は起きると思います。しかし、長い目で見ればある時期から逆転していく、やはり波及効果というものが交流を促進して北海道の開発につながる、以上のように思っております。
  30. 清成忠男

    参考人清成忠男君) 地域振興というのは、私は二つの方法があるように思います。一つは工場を誘致するということがあるだろうと思います。それからもう一つは、自前で地元に新しい産業を興すという二つ方法があると思います。  工場誘致は、これは非常に短期的に効果が出るということで、雇用がふえる、所得が上がるということで地域の商業、サービス業にも波及効果があるということでありますから、これは一概に否定すべきものではないと思いますが、ただ、地元の側に進出してきた工場と何かうまい連関ができるというようなことをしませんと、なかなか波及効果が広がっていかないということですね。  それで、今、北関東、南東北、長野、こういうところでは高速道路沿いに確かに大企業の工場も進出しましたし、あるいは関東地方から中小企業も進出したわけでありますけれども、しかし地元にやはりどんどん新しい中小企業が生まれている。したがって、長野なら長野の内部で、あるいは長野と群馬とか、そういうところで企業の取引関係が非常に今錯綜しているというふうな状況で、大変大きな集積ができてしまっている。したがいまして、こういうことを前提にしますと、日本経済空洞化というのは、そう簡単には進まないということにもなってまいりますので、一つは、こういう進出してきた工場を起爆剤にして地域振興を行うという方法はあると思いますが、しかし、これからはどうしても海外立地選択ということになりますので、工場誘致に期待をするというのはなかなか難しいと。  こうなりますと、もう一つのやり方がある。地域の中で産業を興していく。例えばサンフランシスコの南の方のシリコンバレー——俗称シリコンバレーでありますけれども、サンタクララカウンティーという一つの郡を見ますと、四、五十年前には人口が二十万から三十万でしたが、今百六十万ぐらいになっています。企業数もどんどんふえました。しかし、ここは大企業の誘致ではなかったということなんですね。中小企業が地元に生まれ、そしてそれが成長し、またその企業から中小企業が飛び出すということで、一人前の企業家がどんどんつくり出されてくる。企業家活動が企業家活動を育成する。こういう効果があるということで、私どもはジャパニーズイングリッシュなんですけれども、そういう新しい企業家が興すような革新的な企業をベンチャービジネスというふうに呼んだわけであります。  それで、今アメリカそれからヨーロッパに第二のシリコンバレーをつくろうと、つまり地方で既存の産業が劣化をして、失業者が非常に多いと。こういったようなところで、先ほど白根さんも御指摘になりましたように、技術の種は大学からとって、そしてそれを製品開発に結びつけていくというようなことを育成しようということで、決して企業誘致ではなくて、自前で地元に新しい産業を興していこう。こういうような動きは大体地域にしますと、イギリスで四十ぐらい、フランスで六十、それからドイツでももう六十ぐらいになっております。それから、アメリカ全体ですと二百以上になるんじゃないかということで、どうも内発的なというんでしょうか、自分たちの自力でやろうということだろうと思うんですね。  純粋にこういう形ではございませんけれども、これに非常に近い形を模索しておりますのが、札幌市でやっております札幌ベンチャーランドというのがそうでありまして、これはもちろん東京とのリンケージというのは当然あるんですけれども、しかし、地元の若い人たちが会社を興す、この人たちを一カ所に集めるということがあるわけでございます。今こういう動きが、例えば、富山でも県と市の政策で田んぼをつぶしまして、そこに五十坪ぐらいの工場を十五ばかりつくりまして、それで県内の自分でこれから新しい企業を始めるという人を募集するわけですね。その中から技術水準の高い人たちを入れている。これはもう いっぱいになりまして、近くこれをまた二倍の規模にしようということがあるわけです。ですから、富山なんかはテクノポリスの事業の一環として、やはりこういう政策もとっている。これは地方独自の政策であると言ってもいいわけです。  それからテクノポリスも、私が成功してないと申しましたのは、所期の目的は達成されてない、つまり研究開発機能が一向つかないということを言っているわけでありまして、工場進出という点だけに限定しますと、大分等は当初の期待をはるかに上回るような工場進出がありまして、一面的に見れば成功はしている。しかし、研究開発機能中心とした新しい町づくりという所期の目的はなかなか達成されない。しかし、これも時間のかかる問題でございまして、やはり先ほどのリサーチ・トライアングル・パークにしても二十五年ぐらいかかっておりまして、したがってこれも十年、十五年という長い年月でやはり評価すべきものだというふうに思います。
  31. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人に一言お礼を申し上げます。  本日は、お忙しい中を本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました貴重な御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  なお、本日、参考人から御提出いただきました参考資料のうち、発言内容把握のため必要と思われるものにつきましては本日の会議録の末尾に掲載させていただきたく存じますので、御了承をいただきたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会