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参考人(
村井了君)
村井でございます。よろしく
お願いします。
最初に、日ごろ当社事業につきましては先生方にいろいろ御理解、御
協力をいただいておりまして、順調に事業を進めておりますことを厚くお礼申し上げます。
本日は、今
富舘さんから今後の
石油を基調とする
エネルギー情勢については御説明ございましたので、短時間でございますので、私はその
代替エネルギーとしてやはり
石炭の利用という問題を、特に当社としては四十八年以来これを手がけてまいりまして、特に海外炭の調達についていろいろな経験をしてまいりましたので、それを御
参考までにいろいろ申し上げたいと思います。それを二十分ほど申し上げて、それから後段において
あと十分ほど、私
どものやはり国内の
電力開発の経験を生かしまして、御案内のように、
発展途上国でかなりの
電力を
中心とするインフラ開発に
協力しておりますので、その経験と
問題点を一言御
参考までに申し上げたいと、こういうふうに予定しております。
まず、
エネルギーの安全保障または安定調達という観点から、ただいま申し上げました
石炭の外国からの調達ということについて、特に当社は過去十年大変な苦労をしてきておりますが、まず国際的に
石炭市場の
現状からちょっと簡単に御紹介いたしますと、お手元に
資料がございますので詳細は省かしていただきますが、統計によりますと、一九八七年に
生産されました
石炭は全体で三十二億トンでございます。その中で国際取引、いわゆる貿易対象になりました
石炭というのは約一割で、三億四千万トンでございます。
石油の
生産量の約四〇%が国際取引を介して利用されている
現状を考えますと、非常に比率が少のうございます。ここが
一つの
特徴だと思います。その三億四千万トンのうちの半分が、約一億六千三百万トン
程度が製鉄におけるコークス利用の
原料炭で占められておりまして、今申し上げました、いわゆる純粋の
石油の
代替エネルギー効果という観点からいう発電用を主体に使用されております一般炭は、通称一般炭と言っておりますが、貿易量は約一億七千七百万トンでございます。本来
石炭の貿易比率が小さい原因は、もう十分御
承知と思いますが、
石炭が本来採炭地を
中心に消費されるという性質を歴史的に持っておりますし、またある
意味で
石炭というのは非常にバルキーなカーゴでございまして、しかも固体で、
石油に比してカロリーが低いということから非常にハンドリングが面倒である。それだけに長距離の輸送をやりますと、どうしても
石油に比較しましていろんな
意味で効率が悪いということから、主として
石炭が
生産される地域において使われてきているという歴史的な経緯がこういう比率として現在出ていることと我々は理解しております。
ただ、今申し上げましたように、第二次オイルショック以降特に
太平洋地域においては、私
どもが海外の豊富にございます
石炭を油のかわりに使う、しかもそれをかなりバルキーで、そういう
燃料の非常に輸送に不利な点を克服して貿易商品として使ってきたということで、まだ歴史的に蓄積の低いのが、
一つはまだ貿易量が小さい原因でございます。
ちなみに、
石炭の輸出国でございますが、第一位はオーストラリアで八千九百万トン、年でございます。オーストラリアの
世界の輸出量に占める比率は約二六%でございます。これに次ぎますのが八千四百万トンで、
アメリカでございます。これは主として大西洋地域における取引と
日本への
原料炭の輸出が大きな大宗を占めております。
あと南アフリカが四千四百万トン、約一三%。それからポーランドが三千六百万トン、これは大体
ヨーロッパの大陸間の陸上輸送に貿易商品として使われております。また、カナダが二千七百万トン、こういうことで、今挙げました五カ国で全体の八三%を占めております。
日本に対する現在の重要な
供給国はオーストラリアでございまして、一九八七年度の輸入量は九千四百三十五万トン、その半分の四千七百二十五万トンをオーストラリアから輸入しております。また、特に一般炭の場合は、
日本全体の現在の輸入量が二千五百万トン強でございますが、そのうち七〇%に相当する約千八百万トンという大きな数量をオーストラリアに依存している
現状でございます。
特に、
石炭の現在の一般炭に限りまして申し上げますと、いわゆるこれは油と違いまして、かなり自由な貿易マーケット商品であるという点に我々も着目したわけでございますが、過去六年間はほぼずっと値下がり傾向を続けてきておりましたが、本年度に入りまして若干需給がタイトになりまして、同時に
日本でも経験しておりますが、豪州の
石炭産業の構造改善に伴うストライキ等の発生がございまして、若干
需給関係が逼迫しまして、本年度は少し値上がり傾向になっておるという
現状でございます。
その他将来の産炭国として注目されますのはコ
ロンビア、それから
インドネシアのカリマンタン等の
石炭が、一九九〇年ごろかなり
太平洋地域に輸出商品として出てくる。同時に
中国の
石炭が、今後
中国の内陸の輸送問題を克服してどれぐらい貿易商品として一九九〇年代に出てくるか、これは特にこの一、二年の動向を注目する必要がある、こんなふうに理解しております。
続きまして、こういう
石炭の、先ほど申し上げました趣旨による我々の調達の基本的な考え方、方針はどういう点にあるかということでございますが、先ほど御案内申し上げましたように、
石炭は、ちょっと
日本の地図を頭に置いていただくとわかりやすいんですが、先ほど御紹介した
石炭の
生産国からの海上の輸送距離がほぼ
日本は等距離にございます。これは偶然のことでございますが、ほぼ等距離にございます。それから、油と違いまして非常に地域に偏在しておりません。したがいまして、我々
日本の国益という、それから企業の
経済性という立場から考えますと、ほぼこの等距離にあるところからなるべく
供給源を分散して、そして大きな船による、いわゆるスケールメリットを生かした輸送を考えて、
日本着ベースで、どこの国から
石炭を買ってもほぼ同じ値段であるという形に持っていくのが企業としての
一つの戦略でもあり、また
石油の
代替エネルギー源として、しかもかなり偏在しない自由な貿易商品を我々が
石油代替エネルギーとして調達する
一つの特色であろう、こんなふうに考えまして、なるべくそういう
方向で調達することを考えております。
ただ、やはり実際には相手企業の経営体制、株主構成、それから相手国
政府の
資源政策、それから労働組合の動向、それから国際市況等の要素をかなり研究いたしまして、分散化と同時に、
経済的な調達を図っていくと同時に、ある国で突然
供給ショートが起きても、すぐそれをほかでカバーできるという体制をしいていくことが最も理想的な方法でございます。そういうつもりでいろいろやっておるわけでございますが、先ほど御紹介いたしましたように、現時点では結果的にいろんな地理、地勢の関係等で一般炭につきましては豪州への依存比率が結果的に非常に高くなっているという
現状でございます。
今度はどういう買い方かということでございますが、なるべく
石炭を年に一回ずつある数量を決めまして買い付ける契約の方法、それから、五年ぐらいある会社から五十万トン引き取るという約束をしまして、
価格を年々マーケットの
状況を見ながら協議して決めていくという方法、こういう方法以外にもう
一つ私
どもが非常に真剣に検討いたしましたのは、やはり
長期契約によって相手の国の炭鉱を我々自身、ユーザーが一緒にリスクをしょって出資をいたしまして、共同開発をやって、その
石炭を
長期的に引き取るという方式でございます。
これは、当委員会の先生にもブレアソール炭鉱というのを見ていただいたようでございまして、このブレアソールに象徴されますのが私
どもが考えました
一つの調達方法でございます。先ほど御案内しました一年ごとに手当て買いをするのと、それから中間的な
長期契約で、五年ぐらいの取り決めで買っていくのと、それからもう
一つは、英語ではキャプティブマインと言っておりますが、もう完全に我々の発電所の使用をはっきり目的とした炭鉱の開発をやっていく。これを大体組み合わせていろいろやっていくということによって
供給源の多様化を図ると同時に、非常なあるリスクに対するヘッジをしていくというのが、
石油に見られない
一つの
代替エネルギーとしての海外からの
石炭調達の
特徴的な方式ではないかと、こんなふうに理解しておるわけでございます。
それで、時間の関係もございますので簡単に申し上げますが、
最後の御案内しましたブレアソールのような開発方式というのは、理屈は非常に簡単なんでございますが、実際にやろうとするとどういう問題が出てくるかということなんでございますが、大体そういう
石炭は、まあブレアソールは、私
どもが着目したのは昭和四十八年でございますが、いろんな変遷がありまして、ここ六年前にようやく
石炭が海へ出るようになったんでございますが、こういうところはいわゆる
日本の地下掘りと違いまして、五百万トンとか一千万トンのスケールで、いわゆるオープンカットで、露天掘りで、大きな機械を入れて
石炭を掘って、同時に、産炭地から港まで三百キロとか五百キロとかいう距離がございますので、そこに専用鉄道を敷きまして、それからさらに海岸に十万トンから二十万トンの船が入る港をつくりまして、それで今度はその大きな船で
日本の発電所にいわゆるサイクル輸送をする。この方式が成り立たないとなかなか
経済性も出ませんし、また
供給の安定性も出てこないという面がございます。
ところが一方で、そういうために、我々もブレアソールにつきましては、五百万トンの
生産量のうち三百万トン我々が引き取るという契約を担保にいたしまして国際的にテンダーをかけて、この契約を担保にいわゆる
プロジェクトファイナンスということでお金を集める、同時に我々の参加しております、資本の比率に応じて
日本の輸出入銀行から融資をしてもらいまして、ファイナンスをつくりまして、そして約三年ぐらいでございますが、三年ぐらいで炭鉱と鉄道と港を開発するというような方式をとるわけでございます。ところが、これは大変リスクがございまして、その時期にこちら側でそれだけの引き取り得る発電所ができておりませんと、
石炭は
生産したが、契約どおりに
石炭が引き取れないと。そうなりますと、今申し上げましたような形で大変な資本を投下しておりますので、
石炭の輸出量が減るということは、それだけ資本費が
石炭に、少ない
石炭にかかってきて
コストは上がる、それから
石炭を開発した企業としては、
プロジェクトファイナンスで契約を担保に金を借りておりますので、そのお金を返済条件どおり返せないというようなリスクが起きます。これはあらゆる
プロジェクトで必ず起きるリスクでございますが、ここいらのやりくりについては、私
どもとしては大変苦労いたしました。
それから、もう
一つは、そのリスクを避けるために
日本の資本比率を高くいたしまして、なるべく
日本のお金を余計持っていって、
日本の理由、我々の理由で若干
石炭の引き取りが、発電所の遅延とか
電力需給の関係で当初の予定より下がった場合は、
日本の我々の企業の担保で、
日本の銀行に若干融資の繰り延べサイクルをつくり直してもらって、なるべく向こうの企業にしわが寄らないように持っていくということによって、相手国
政府との間も政治問題化しない、また地元の企業にもいろいろと迷惑をかけないという方式をとりたいわけで、これにかなり私
どもも苦労したんでございますが、ここにまた
一つ資源の安定
供給という面からオーストラリアの、今度は、
日本でもいろいろございますが、我々が持つ資本の比率についてどうしても制限がございまして、ある
程度今申し上げたようなファイナンスを成立させるだけのシェアが取れない。
一方で、当時オイルダラー等がかなり余っているときでございますので、外国の巨大な
石油資本とか、いろんな資本がそういう契約の有利性を見て、そのエクイティーを選好して買い集めに入ってくるというようなものと、実際に使う我々とのコンフリクトが現地において起きるというようなことで、ブレアソールについても当初我々は二〇%の資本比率で今のようなサイクルを完成さしたかったんですが、結果的に豪州のいわゆる資本政策にひっかかりまして、一〇%しか取れない。残りは
アメリカの
石油資本とシェアを分かち合うようなことになって、それを
日本側がふやそうとすると豪州のガイドラインにひっかかるというような問題がございまして、やむを得ずそういう低い比率で我々もこれをスタートさしたんでございますが、その後心配したとおり、若干
日本側の
電力需要の
影響で当初の引き取りが下がりまして、非常に割高な
石炭を我々が買わないと向こうの返済サイクルが回らないというような事態に逢着するというような経験をしております。
同時に、これが
余り企業間でエキサイトしますと、どうしても今度は政治問題化いたしまして、
資源の安定
供給ということが、向こうから見ると
資源への侵略であり、買い付け企業のわがままであるというようなことにとかく問題がすりかえられる場面もありますし、流れがちになってなかなかうまくいかないというような苦労も経験いたしました。
今後は、なるべくこの
石炭産業といいますのは、やはり油とか原子力の
産業と違って、かなり労働集約型の
産業でございますし、海外において非常に雇用力の多い
産業でもございますし、そこにまた
意味がございますので、なるべく雇用の問題とか、それから相手国の
資源政策とか資本政策に抵触しないで何とかお互いに協調しながらやっていける方法というのをそれぞれ国の
事情、それから我々の買い付けの規模等によっていろいろさまざまケースはあると思いますが、今後とも
石炭の
需要は御案内のようにふえていくわけでございますので、我々はそういう点について今後ともいろいろ緻密な策を立てて、いわゆる産炭国との間の協調関係、それから
資源外交等に貢献するように努めていきたいと考えているわけでございますが、なかなか発想と現実のサイクルが非常に合わない、ある経過過程を我慢すればうまくいくんですが、トラブるとすぐ問題化するという中で、こういう問題を今後どう運んでいくかというのは常に
資源調達といいますか、
燃料調達の大変苦労するところでございます。
それから、時間の関係もございますので、先ほど申し上げました国際事業の方に一言言及さしていただきたいと思いますが、今当社がいろいろ国内の開発で経験してまいりました発電所の開発及び基幹送電線、変電所の開発等の経験を生かしまして、お手元に
資料を差し上げておりますように、あらゆる
発展途上国で我々の
技術役務の提供ということを長い間やってまいりました。その中には向こうの国の
電力会社のコンサルタントをやる仕事とか、それから向こうの国の
政府の要請を受けて、JICAと組んで、こちらから専門家を派遣してプランをつくっていく方法とかいろいろございます。それらにつきましてはお手元の
資料で、また後ほど御
参考いただければ大変ありがたいんでございますが、最近は
中国が
日本のプラントを買って、大連でございますが、発電所をつくりました。その発電所の運転のために当社から火力発電所の経験のある所長を出しまして、
中国側
政府の要請で。
中国の服務規律では非常に
経済性が上がらないので、一遍所長を出して
日本式のやり方で、人事権も渡すから思い切ってやってみてもらいたいというような御要請もございまして、人事権まで我々がリスクをしょうのは難しいので、こういうやり方でやりますというようなことで、発電所の所長を出してみるとかいうような方式をほかの国でもいろいろやっております。
ただ、これらの仕事は、好意的にある
程度人を出して、その人件費と若干のオーバーヘッドを我々は
協力費としてちょうだいする、もしくは無償
援助の中からそういう追加を
日本の
政府からちょうだいするというようなことで事業をやっておりますんですが、
発展途上国の実際の
電力化問題、
エネルギーのインフラ問題というのは、もう少し大きな問題がございまして、御案内のように、なかなかその国が外貨不足で債務をしょえない、しかし膨大な資金が要るという中で、こういう問題をどうしていくかということは
一つ問題がございまして、それらについて我々も大変苦慮したのでございますが、三年前にトルコ
政府が一種のBOT方式というのを持ち出しまして、これは、従来はある国から
政府借款を与えて、その
政府借款をベースにその国が発電機を買い、発電所の工事をして、それに我々が
技術協力をする、それから
日本のメーカーなり外国のメーカーはプラントを売っていくというやり方だったのでございますが、この方式は、ある
一つの企業グループが自分で発電所をつくり、発電機を持ち込む金を全部調達して、トルコへ来て発電所をつくってくれ。つくったら、トルコに十年か十五年後に渡してもらいたいが、それまでの間は、つくった人が自分で発電所を運営して電気を卸売してほしい。
その電気料金をある定額で決めた量だけ払うから、そのお金で調達してきたお金の返済に充ててほしい。それがゼロになったら、トルコ
政府なりトルコの
電力会社に発電所ごと引き渡してほしい。その間にその国の、もしくはその企業グループの発電所の建設、運転経験、経営組織というものをトルコの人に伝授して、そこで切りかえてほしい。これをBOT、ビルド・アンド・オペレーション・トランスファー方式と言っておりますが、こういう方式をトルコのオザール首相が四年前に提案いたしまして、今べクテルとかいろいろな外国のグループが応札しておりますが、私
どももこのグループと入札みたいな形をとっておりますが、競争して何とかこれを実現して、今国際事業の拡大ということが国家としても問題になっておりますので、こういう形でひとつ事業を拡大する。そして我々の事業方式というものを向こうにトランスファーしていく。同時に我々も事業のリスクをしょって、ある
程度のリターンはもらうという形でやってみたい、こんなふうに考えまして、現在これに我々も一生懸命取り組んでいるわけでございます。
こういう方式が今後それぞれの国の
事情によりまして、東側社会、西側社会によっていろいろまたファイナンスの問題等も内容が変わりますが、こういうものがもう少し広がってまいりますと、大型の
プロジェクトではございますが、
発展途上国のいわゆる
電力化というものに対して非常にうまくいく
一つの方式ではないかということで、こういう事業の関係者は、国際的にこの帰趨に大変注目しているところでございます。
そういうような仕事も今後我々はやっていきたいと思っておりますが、二点、今後の
燃料の調達について、国際的に理論的に安定する方式をどうやるかということでブレアソールの一例を申し上げましたし、今後の
発展途上国の
電力化問題についてどういう方式があるかということについて、もちろん
政府間の
協力も必要でございますが、同時に若干民間的な創意工夫というものを相互に生かす方式として、今のような問題もテーマとして顕在化してきているという
現状を御
参考までに申し上げた次第でございます。
どうも御清聴ありがとうございました。