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1988-11-08 第113回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月八日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十月三十一日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     小野 清子君  十一月一日     辞任         補欠選任      小野 清子君     林田悠紀夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         堀江 正夫君     理 事                 久世 公堯君                 森山 眞弓君                 矢田部 理君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 松前 達郎君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君    政府委員        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        外務大臣官房長  藤井 宏昭君        外務省アジア局        長        長谷川和年君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済協力        局長       松浦晃一郎君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君    事務局側        常任委員会専門        員        木村 敬三君    説明員        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房外        務参事官     原口 幸市君        外務大臣官房文        化交流部長    田島 高志君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        文部省初等中等        教育局高等学校        課長       森  正直君        資源エネルギー        庁長官官房国際        原子力企画官   田中 伸男君        海上保安庁警備        救難部参事官   小柳 皓正君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (日米日ソ日中外交に関する件)  (プルトニウムの海上輸送問題に関する件)  (米国の対日要求拡大に関する件)  (ナミビア産ウラン輸入問題に関する件)  (外交官の財テク問題に関する件)  (日本対外文化協力に関する件)  (天皇をめぐる外国報道に関する件)  (北朝鮮との関係改善に関する件)     ─────────────
  2. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 久世公堯

    久世公堯君 竹下内閣が昨年十一月に発足をいたしましてからちょうど一年が経過をいたしました。この間の国際情勢は極めて流動的かつ変化に満ちたものであったと認識をいたします。世界の二つの超大国である米ソ関係については、この間二回にわたって首脳会談が開かれ、対話促進をされました。特にINF全廃条約の署名、発効は軍縮の促進を願う我が国としても極めて重要でございます。また、このような東西関係動き背景にしまして、アフガニスタンからのソ連軍撤兵合意があり、実際の撤退も開始をいたしました。欧州でも西独やイタリアの首相がソ連を訪問し、近くミッテラン大統領訪ソをするという動きがございます。世界各地地域問題も、イランイラク紛争停戦合意を初めその他の地域においても解決に向けた動きがございます。しかし、東西関係を含む国際情勢は基本的には依然として厳しい情勢にあるのが現実でございます。このような認識に立ちまして、日本外交の直面する諸問題について、以下幾つかの点について御質問を申し上げたいと思います。  まず第一は、日米関係でございます。本日、アメリカでは大統領選挙一般投票が行われようとし、今から二十四時間もたてば次期大統領が判明していると言われております極めて重要なときでございます。全世界の注目の的となっております。ブッシュ副大統領デュカキス知事のいずれが当選をいたしましても、我が国としては日米関係重要性にかんがみ、次期政権との関係緊密化努力をしなければいけません。レーガン政権アジア・太平洋、特に日本を極めて重視をし、またこの八年間に日米関係発展は目覚ましく、今後の指針となっているかと思います。  この八年間の教訓といたしましては、第一には、日米首脳間の個人的な信頼関係重要性を意識したことでございます。いわゆるロンヤス関係とかロンノボル関係は、両国信頼関係を象徴し、日米関係の円滑な運営に大いに貢献をいたしました。  第二番目は、グローバルな意味における日米協力関係重要性に対する認識の確立です。日米両国は、合わせますとGNPあるいはODAあるいは国連負担金などの重要な指標で全世界の三分の一以上を占めております。両国世界の平和と安定に対する責任役割は非常に大きいものがあると思います。我が国世界に対する貢献が拡大するに伴って、世界の平和と繁栄に関する問題についての日米間の協力協議の幅と深みは増大をいたしております。  第三には、グローバルな協力関係の基盤となるのが日米国間関係の円滑な運営です。過去、特に貿易経済関係におきましていろんな摩擦がございましたが、一つ一つを着実に両国協力共同作業を通じて解決に成功いたしてまいりました。このような実績は、ことわざにもございますように、雨降って地固まる、日米関係の幅を広げ、深さを増加したものだと思います。  最近、米国ではハードンシェアリングが議会を中心に問題化いたしております。世界最大債務国に転落しながらなお西側諸国防衛のための膨大なコストを担い続けていることについて、アメリカ国民には強い不安がございます。このような状況を背景に、経済力に力をつけてまいりました西欧あるいは日本こそが、世界の平和と繁栄のためにおのおのの国力に応じた貢献をすることによって、安全保障防衛分野のみならずより安定した政治的、経済的な国際環境確保のため、より公平に負担を分かち合っていくべきであるという議論が問題の核心と思われます。我が国といたしましては、経済力中心とする国力増大に見合った国際的な責任を積極的に果たしていくべきだと思います。  以上、いろいろ申し上げましたが、私はできる限り早い段階次期政権接触をとり、グローバルな問題を含む日米関係運営あり方について認識を共有し、またハイレベルでの個人的な関係構築に向けて努力を傾けるべきであると考えます。外務大臣米国政権との関係構築の具体的な方法をどのようにお考えでございましょうか。また、バードンシェアリング議論を踏まえての日本国際的貢献についての御所見伺いたいと思います。
  4. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 日米関係に関しましていろいろと過去の事例を挙げ御質問を賜りました。  申すまでもなく、我が国外交基軸日米関係でございまして、確固たる日米関係世界の平和並びに繁栄に大いに貢献すると私たちはかように考えております。したがいまして、今日までも特にロンノボルと言われた関係において日米世界的な視野に立っての協議を続けてまいりましたし、また二国間の問題に関しましても、一つ一つ誠意を傾けて両国解決することに成功してまいったと私は考えております。こういうような関係は、いよいよあす新しい大統領が選出されるわけでございますが、どなたが大統領になられましょうとも、私たちといたしましてはそうした基本方針に変わりはございません。  特に、今申されましたバードンシェアリングの問題に関しましても、どういたしましてもやはり今日アメリカといたしましては、久世委員が申されましたような理由によって、日本を含む同盟国にそれぞれ公正な貢献を求めておられるというふうな、いわゆる負担を分かち合うというバードンシェアリングの声があるということは私たちも聞いております。日本といたしましても、世界貢献する以上は、いろんな問題に関しまして今後自主的に判断をすべきであると、かように考えておる次第でございます。  なお、新しい政権が誕生いたしました暁には、やはり日米関係我が国外交基軸であると、こういう観点からいたしましても、早々に接触をしなければならない。そして今後の問題に関しましてもその応対ぶりを進めていかなければならない、かように考えております。
  5. 久世公堯

    久世公堯君 ただいま外務大臣がおっしゃいましたように、できるだけ早くひとつ新政権との接触をお願いいたしたいと思う次第でございます。日米関係あり方考える上において、私はできるだけ広いレベル日米関係強化をしていただきたいと思います。  私ごとでございますが、私はこの夏全米知事会議出席をいたしまして、その際、十数名のアメリカ州知事と面談をいたしました。各州知事は非常に頻繁に日本にも来ておりますし、日本に大変好意的でございます。日本に対して、政治や経済にかかる問題だけではなくて、社会文化についても関心理解を示しております。また、ここ数年来いろいろと問題化しておりますところの日米経済貿易関係につきましても、連邦政府連邦上下院とは異なった親日的な考え方知事は持っております。日系企業の立地やあるいは企業誘致というような州レベルの問題もありましょうけれども、それを超えた各州知事日本に対する信頼感があると思うわけでございます。それを私は肌で実感をしてまいりました。しかもアメリカ州知事の地位は非常に高く、国政に対しても大きな影響力を持っております。歴代の大統領にも知事出身者が非常に多いし、今回の大統領選挙におきましても知事の果たしている役割は極めて高いことはつとに知られているところでございます。  これから日米間のいろんな問題を解決するに当たりまして、州知事の存在を十分に評価をし、州知事との交流、さらには地方自治レベル草の根レベル交流が必要と考えておりますが、外務大臣いかがお考えでございましょうか。
  6. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 久世委員からただいまみずからの体験による州知事のそうした考え方日米間の考え方に関しまして承りました。  ついこの間も、ミシシッピーの知事中心に三州の知事がそろって来る、やはりそういうような傾向がふえておりますし、さらにはまた、既にアメリカの五十州それぞれ多くの州が日本事務局を持っておるというふうな状態でもございます。まさにおっしゃるとおり、国と国とのおつき合いも大切でございますが、地方同士のおつき合いということも私はこれからますます緊要になるのではないかと思います。特に、やはり外交は国と国とのおつき合いでございますが、それを代表する個人個人がそれぞれ意見を交わし、友情を交わすということが大いにあずかって力があるというように存じますので、今後大いに地方交流ということもあらゆる面において大切である、かように考えております。
  7. 久世公堯

    久世公堯君 次に、対ソ外交あり方についてお伺いをいたしたいと思います。  先般のクラスノヤルスク演説にも見られますように、ソ連は明らかに日本との関係改善に意欲的です。しかし、その主なねらいは、ソ連自身経済活性化、シベリア・極東開発のために、みずからは余りコストを払うことなく、日本経済力なり技術力を利用したいということではなかろうかと思います。  他方におきまして、日ソ間の最大の懸案でございます北方領土問題についてのソ連立場は、かつてのグロムイコ外相のように話し合いのテーブルにも着かないということではなく、一応議論するという姿勢を見せ始めております。しかし、その基本的な立場には変化がないのみならず、極東軍事力を増強し続ける対日政策におきましては、ゴルバチョフの言ういわゆる新しい思考などは片りんも見られないような気がいたします。これはソ連の対日政策真剣味が欠ける証左ではなかろうかと思います。  本年末には、シェワルナゼ外相日本に来ると言われておりますが、これは極めて重要な問題だと思います。政府といたしましては、このような訪日にどのように取り組む所存でございましょうか。訪日機会に北方領土問題に前進があるという期待もございますが、いかがなものでございましょうか。  また、日ソ関係改善のための首脳レベルでの率直な話し合いも重要であると思われますが、過去において我が国総理は四回も訪ソをしているのに対して、ソ連首脳は一回も日本に来ておりません。したがって、まずゴルバチョフ書記長訪日を実現させるということが必要だと私は考えますが、外務大臣いかがお考えでございましょうか。
  8. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) シェワルナゼ外相が十二月の十九、二十、二十一、三日間にわたりまして訪日するということは確定されました。そして日ソ外相会談が開かれるということも確定されました。そうした中におきまして、当然我が国といたしましては北方領土、これの一括返還という重大な問題がある。これの解決によって両国平和条約締結という重大な段階を迎えている。しかし、こうした問題に関しましては、従来ややもすれば両国の見解が大いに異なり、いろいろと未解決のまま今日に至っておるわけでございますが、やはりこうした問題も含めまして、私は当然日ソ問題は大いに改善をしていかなければならない、かように考えております。  今も久世委員お触れになられましたが、確かにゴルバチョフ書記長誕生以来、ペレストロイカであるとか、あるいはグラスノスチであるとか、いろいろ新しいダイナミックな政策の打ち出し、そうしたことは見られます。私たちも、やはりこうしたある程度今までの指導者とは違う人たちの間で諸問題を解決することは必要である、こういうふうに考えておる次第でございますが、確かにペレストロイカそのものが、じゃ日本にどのような今日まで影響を与えたかということになりますと、今のところこれといった見るべきものはございません。  過般来、ゴルバチョフ書記長のブレーンの一人であるという方も来日されておりますし、さらにソ連の主要なる雑誌社の主幹も来ておられまして、それぞれお目にかかっておりますが、確かにそうした方々と話している間には、私たちソ連変化も見せつつあるなということは考えておるわけでございますが、いずれにいたしましてもやはり外相同士で率直にひざを接して話し合うということが大切ではなかろうかと、かように思っております。  特に、この間もクラスノヤルスクにおけるところのゴルバチョフ書記長の声明等々もございまして、その中にはあるいは極東開発等々の問題も含まれており、そうした問題も提案されると思いますが、いずれにいたしましてもあらゆる分野におきまして私はいろいろと話をしていく、そして粘り強く交渉をしていく、そして私たちの従来の方針を貫きたい、かように考えております。
  9. 久世公堯

    久世公堯君 日中関係あるいは日韓関係は、我が国アジアの一国であるだけに極めて重要な問題でございますが、時間の関係質問は割愛をいたしたいと思います。  ただ、本年は日中平和友好条約締結十周年にも当たっておりますので、日中関係について一言だけ意見を表明したいと思います。  本年五月には宇野大臣が訪中され、また八月には竹下総理の訪中が行われました。日中両国指導者の間で緊密な対話があった年でございます。私も本年六月、一週間ではございましたが、中国を訪問する機会を得ました。都市や地域実態を見まして、道路や街路、公園というようなインフラが未整備であること、居住環境が極めて悪いこと、産業、特に第二次、第三次産業が立ちおくれて、雇用条件も悪いことを痛感をいたしました。中国社会主義初級段階を提起し、貧困と立ちおくれから脱却するために約百年にわたって改革、開放を推進する必要があるとしている意味を肌で感じた次第でございます。  このような実態であるだけに、中国は従来のイデオロギー中心方針を転換をいたしまして、経済建設重視の路線を採用いたしております。経済近代化に必要な資金なり技術面での協力我が国を初めとする諸外国期待しているというのが実態でございます。竹下総理にも鄧小平主席我が国経済協力に対して謝意を述べられたということでございますが、私も訪問をいたしました先々で、対中経済協力に対する中国側の感謝の言葉を耳にいたしますとともに、一層の協力をお願いするという声に接しました。  中国が穏便で現実的な近代化政策を維持しながら安定した国づくりを目指すことは、我が国にとりましても、またアジアの平和と安定にとっても好ましいという観点から今後ともひとつ日中共同声明なり、日中平和友好条約あるいは日中関係四原則に基づいて、各分野にわたる協力関係発展をぜひとも図っていただきたいと思う次第でございます。  そこで次に、「世界貢献する日本」の実現について御質問を申し上げたいと思います。  我が国は今や世界GNPの一割を優に超える経済大国です。国際秩序の主要な担い手の一人でもございます。国際社会において果たすべき責任役割は飛躍的に増大をいたしております。これは国際的な期待でもあり、また我が国の平和と繁栄のためにこそこの役割を果たすべきだという認識でございます。  竹下内閣はその発足以来、「世界貢献する日本」の建設というものを最重要課題として掲げております。そして、三つの柱から成る国際協力構想を打ち出しておりますことは時宜を得たものとして高く評価をいたしたいと思う次第でございます。  そこで、この三つ一つずつにつきましてお考えを承りたいと思います。  まず第一は、平和のための協力についてでございます。平和のための協力は、国際の平和と安定に貢献すべく、国連などの平和維持活動に対して、財政面だけでなくて、要員派遣面でも積極的に貢献すること、さらに紛争解決後も平和定着に向けた難民帰還援助あるいは復興援助の人的、財政的貢献を行うことなどを内容とする包括的な協力理解が必要だろうと思います。国際平和のために汗を流す外交というものを積極的に推進することが必要でございます。  既に承るところによりますと、政府は、本年に入りましてから、アフガニスタンあるいはイランイラク紛争に関連する国連平和維持活動にそれぞれ政務官一人ずつを派遣されたそうでございます。従来、日本に対しては、とかく金は出すけれども、人は出さないと言われてまいりました。こういうことに対しては、今回は画期的な第一歩だと思いますけれども、まだまだ不十分でございます。要員派遣面での我が国協力をもっと強化する必要があろうかと思います。  そこで、国連平和維持活動などに対してより多くの人々を参画せしめるような法的な枠組みあるいは予算措置等体制強化についてぜひともお願いをしたいと思いますが、これに関する外務大臣のお考えを承りたいと思います。
  10. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今の御質問の前に、先ほどの日ソ関係首脳に関する御質問がございまして、これは私お答えするのを忘れまして甚だ失礼いたしましたが、やはりまずソビエトの首脳訪日をしていただくというのが建前でございまして、したがいましてそうした面に向けまして努力をいたしたいと、かように思っております。  今の国連等々を通じましての世界の平和に貢献する日本という、この大きな柱を私たちはぜひ実現していかなければならないと思います。もう既に御指摘のとおり、アフガニスタン一名、イランイラク紛争、これには国連の職員も含めまして日本人二名、五名の係官の中で二名が日本人だというふうなことで日本も変わってきたなというような評価を受けておりますし、また事実、そうして日本が金だけでなく人を派遣してくれるということは非常に大切なことだというふうな世界要請にもおこたえいたしておると思います。今後、紛争各地において終結の方向に向かっており、そうした場合にはますますこういう要員は必要ではなかろうか、私はかように考えております。もちろん国家公務員を主軸としなければなりませんが、なかなか手が回りません。そういうふうになってまいりますと、あるいは自治体なりあるいは民間なり、そうした方面からも有能なお方を派遣してもらうように考えいかなければならない。こういうふうに考えますと、御指摘のように新しい体制というものについての検討をしなくちゃならぬ、こういうことでございますから、まずその体制検討をしたい、かように思っておる次第でございます。
  11. 久世公堯

    久世公堯君 第二番目の柱でございますODA拡充について御質問申し上げたいと思います。  本年の六月には第四次中期目標が決定され、今後五年間のODA実績を五百億ドル以上にするよう努めるということを対外的に公約いたしますとともに、今後の我が国援助方向を明確に示して、国際的にもこれは非常に高い評価を受けております。非常に結構なことでございます。ODAの額の増加だけではなくて援助の形態といたしましても、相手開発途上国側の事情を反映しまして、プロジェクト型の援助に加えて、最近におきましては経済政策支援のためのいわゆるプログラム型の援助増大しております。開発途上国経済運営に与える影響も増加していると思われます。ただ、ODA国民の税金を使用して行われる事業でございますから、いかにして効果的かつ効率的に実施していくかということが私の重要関心事でございます。  三点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一は、我が国援助地域的配分の問題です。従来我が国アジア諸国中心援助を実施しておりましたが、今後は国際的責任を果たす見地から他の地域への援助も拡大していただきたいと思います。特に、中南米地域は伝統的に親日的な国が多い地域でございますし、現在日系人在留邦人も百万人移住をいたしております。また、非常に国が多い関係から国際機関等での選挙の際の票も多うございます。さらに中米・カリブ地域に存在するパナマ運河、カリブ海は我が国の重要な貿易ルートであるだけではなくて世界的にも重要な交通路でありますし、その地域の安定というものは我が国にとっても重要だと思われます。これからひとつ我が国としては中南米地域への援助拡充すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。  第二番目は援助実施体制の問題です。我が国は、今明年中には恐らく米国を抜いて世界一の援助供与国になると言われておりますが、援助スタッフとかあるいは専門家の数などの実施体制の面では量の拡充に対応し切れないという話がございます。我が国国際的貢献の重要な柱でございますODAに大きな予算を振り向けながら、スタッフが不十分なために十分な効果が発揮できないということになったら大変でございます。この点についての大臣の御所見伺いたいと思います。  第三番目は、我が国では相手国要請に基づいて経済協力を実施するといういわゆる要請主義方法を採用していると承知いたしております。確かに相手国の自助努力を側面的に支援するために要請主義が採用されているという点は重要でございますけれども、ODAの原資が国民の税金によって賄われているということを考えますと、その資金の効率的使用に努めるべきだと思います。的確なプロジェクトに適量の資金を投入していくということが援助資金の効率的使用につながっていくことは明らかでございます。この点につきましての大臣のお考えを承りたいと思います。
  12. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 三点に関しましてお答え申し上げたいと思います。  第一点の中南米の問題でございますが、仰せのとおり、やはり我が国といたしましては、南北問題、その関係の根底に横たわる相互依存とかあるいはまた人道的な問題、そうしたことでODAというものが年々拡充いたしてまいった次第でございますが、太平洋時代を迎えるということ等々を考えますと、もちろん太平洋に面する面も面しない面もありますが、やはり中南米ということを私たち考えいかなければならない、かように考えております。特に、過般メキシコに参りましたが、もう百年間という間我々は今日まで友好を続けてきたというふうな歴史もございますし、百年前にはそうした中南米にも日本よりすぐれた国があったということ等々も考えますと、やはりそうした意味におきましてもこの関係というものは維持してまいらなければなりません。したがいまして、私たちといたしましても当然アジア、中東あるいはアフリカと同じように中南米のことも考えていきたい、かように思っておる次第でございます。  第二番目には、ODA実施体制をしっかりしないことにはなかなか今後の要請にこたえられないではないかという仰せでございますが、これまた私たちといたしまして今一番頭の痛い問題でございます。しかしながら、いろんな関係方面からの御協力等々もちょうだいいたしまして、今後その内容充実、特に人員等々に関しましてはやはりまあよい人、本当にすばらしい人がその先頭に立っていろいろと貢献をしてもらうようにそういう体制をしきたい、そう思っておりますので、JICA等々におきましても人材の養成なり人材の充実等に私たちは力を込めて、そして実施体制に万遺憾なきを期したいと思います。非常に難しい問題でございますが、今後ともいろいろと、また定員等の問題に関しましても、御声援のほどをお願い申し上げたいと思う次第でございます。  三番目は、特にODA相手国に対するいろんなことに関して今後はどうかというお話でございますが、確かに、要請に従いまして私たちはそれを検討さしていただき、そして実施してきておるわけでございますが、当然オファー方式というやつもございますから、要請を補完するという意味我が国からもこういうふうなことをされてはどうですかというようなことで、オファー方式によりましてODAの充実を期す、内容的な効果を期すということも必要ではないか。だから、政策の提言もいたしたいと思いますし、今後もそうした面におきましては、二国間の関係をさらに充実したものを持っていって、日本といたしましても本当に世界にそうした面で貢献しているんだということの実効を上げたい、かように考えている次第でございます。
  13. 久世公堯

    久世公堯君 「世界貢献する日本」の三番目の柱は国際文化交流強化についてでございます。  これまでの我が国外交政策においては政治、経済面に比べて文化面がないがしろにされてきたという指摘がございます。他方におきまして、近年は我が国との幅広い文化交流を図っていこうという諸外国の要望や期待は非常に増大いたしております。また、国際文化交流促進は、世界文化発展に資するだけではなくて、国際協調や世界平和の精神的土壌の育成にも役立っております。またさらに、国際文化交流我が国自身の国際化にとっても意義が大きいと思います。このような国際文化交流の推進を三本柱の一つといたしましたことは、極めて時宜を得たものとして、ひとつ今後とも積極的に具体的な努力を払っていただきたいと思う次第でございます。  三本柱についての考えあるいは御質問は以上にいたしまして、ひとつ最後に外交政策全般についての要望について申し上げたいと思う次第でございます。  以上、私は日米日ソあるいは日中等に関する外交政策、さらに「世界貢献する日本」の実現のための三本柱につきまして御質問を申し上げました。最後に、これらを通じて政府にぜひとも考慮をお願いしたいという三点について申し上げたいと思います。  その第一は、内政と外交との一体的な展開についてです。よく内政と外交は車の両輪ということが言われておりますが、この言葉どおり最近の外交上の重要問題は同時に内政上の大きな課題でもございます。また、内政上のいろいろの政策を進める上では国際的な配慮や外交上の視点がぜひとも必要だと思います。自動車、半導体あるいは農産物の自由化問題、公共事業参入をめぐる問題、知的所有権あるいは貿易摩擦に関するいろいろな問題あるいは科学技術に関する問題や外国人労働問題等が今いろいろと起こりつつあり、またそれは解決をしてきた問題でもございます。  これからの外交政策を進める上においては、常に内政と外交の一体性を考えて、外務省としても関係各省庁と緊密な連絡のもとに強力な外交政策を展開をしていただきたいと思います。同時に、国内政策分野につきましても外務省は従前以上に大きな関心を持っていただいて、外交政策との関連性を考えることが重要であると思われます。  第二点といたしましては、国際化時代における我が国の対外的な対応には政府と民間、国と地方といった我が国のあらゆる分野、各界を網羅した総合的な努力が必要だと思います。適切な対外的な対応をするためには、外務省や関係各省庁はもとよりのことでございますが、国際的に関連性を持った民間事業あるいは諸団体による民間ベースでの援助活動、NGOなんかもその一つでございましょう。さらに、民間の経済活動、広報文化活動というものが期待されております。  また、全国民的な視点と申しますか、都道府県、市町村という地方自治レベルでの国際文化交流活動の意義も極めて大きいと思われます。最近では地方の国際化とか草の根交流ということが叫ばれておりますけれども、全国民的な視野に立脚をし、幅広く、そして質的にも充実をいたしました政策を強力に展開をしていただきたいと思います。  第三番目には、外交実施体制強化についてでございます。我が国国際社会における地位の向上と影響力増大するに従いまして、各国は我が国の一挙手一投足に大きく注目をいたしております。我が国と諸外国との結びつきは量的にも著しく増大し、強化されております。各国の実情や我が国に対する期待を十分に把握した上で、それぞれの国ごとにきめの細かい外交を展開していくことが肝要かと思われます。加えまして、先ほど申し上げましたように、今や内政と外交は文字どおり車の両輪でございます。絶えず国内政策外交政策を一体として考え、各省庁との間の連絡協調を密にして総合的な政策を展開していただきたいと思います。  現在は行政改革の時期でございます。行政改革を行いながら体制の整備を図るということはいろいろと困難な事情があることはよく承知をいたしております。しかし、我が国国際社会の中でこのような責任を全うするとともに、内政外交一体的な政策を展開する上において外務省の体制をひとつ飛躍的に強化されることをぜひとも期待いたしたいと思う次第でございます。  以上が私の外交政策に関する総括的な意見でございますが、これについて外務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いろいろと総括的なお話をちょうだいしましてありがとうございます。  特に、外務省は現在、定員からいろんな問題におきまして、はっきり申し上げて「世界貢献する日本」と言いながらやはり足りない面がたくさんあるんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。予算、定員等々に関しましては従来からいろいろと御支援を賜っておりますが、今後も私たちは極力やはり名前どおり世界貢献し得る体制をつくらなくちゃいけないということでなお一層の努力をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。  特に、内政外交一体というお話に関しましても全く同感でございまして、特に最近、外務大臣が寄りますとほとんど話は財政経済問題からあるいは税制問題からといったふうに非常に幅広い問題について私たちは話し合っておる次第でございます。ガット一つ考えましても、昔は名前どおり貿易並びに関税に関する一般協定であるけれども、物の動きだけではなくしてその物についてのサービスはどうなったかというふうな問題、さらには知的所有権はどうなっておるんだというふうにどんどんとその範囲は広がっておるというのが今日の国際的な一つの傾向でございます。そういう意味から申し上げましても、内政を担当される各省庁とは外務省は十二分に今後も連絡をとりまして、総覧者としての立場で力強い内政のもとに力強い外交を進める、これが私の考え方でございます。なおかつ、そのためにはやはり一般国民の方々の御理解、さらには地方の方々、さらには団体等々の方々の御理解を仰ぎつつ、なおかつ協力も私は仰がなければならないと、かように考えておる次第であります。  特に、NGOに関しましては諸外国と比べますと非常に低いレベルでございます。そうした点からもこの点はやはり国民の各位の御理解を得まして、我々も「世界貢献する日本」の国民であるという気持ちでいろんな面でひとつ御協力のほどをお願いしたいと、かように思っております。  各地でことしは随分と災害が起こりましたが、非常に各地方住民の方々の御熱意、さらには地方自治体の御協力によりまして、我々といたしましては救援の手を差し伸べることができたということも一つの大きな実績ではなかっただろうかと思っております。したがいまして、外務省はついこの間も新潟県で移動外務省を開きましたが、さような一日外務省であるとかあるいはまた国際化相談キャラバン等々を地方都市に派遣する、そうしたことを通じましてさらに内政外交一体であるということを国民の方々にも広くPRしキャンペーンしていきたいと、かように考えておる次第であります。
  15. 久世公堯

    久世公堯君 以上で私の質問を終えたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、現在は日本外交にとりまして日米問題、日ソ問題、日中問題を初めいろいろと大きな問題が山積をいたしております。  宇野外務大臣は、ただいまの外交内政両面のベテランでいらっしゃいますし、そこにおられます外務省の幹部の陣頭に立ってひとつ強力な外交政策を進められることを祈念をいたしまして、私の質問を終えたいと思います。
  16. 矢田部理

    ○矢田部理君 国際情勢にかかわって、二、三最初に伺っておきたいと思いますが、既にお話がありましたように、アメリカ大統領選挙が投票日を迎えまして、この大統領選挙をめぐる情勢をどう認識しておられるか。これはアメリカ自身が決めるべきことですから余り予想屋的な話をするのはアメリカ立場もありますが、この選挙情勢認識選挙後の対日関係日米関係に与える影響などについてもいろんな角度から分析をしておられると思いますが、この段階外務大臣からお話を伺いたいと思います。
  17. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) アメリカ大統領選挙は、日本時間であすの正午ごろには大勢が判明するのではなかろうかと、かように私たち考えております。したがいまして、日米関係はあくまでも我が国外交基軸であるという立場におきまして、今日まで竹下政権誕生以来もロンノボルというふうな関係で非常に親密な関係が続いております。もちろんその間には矢田部委員御承知のとおり二国間でも随分問題がありました。これは我々としてはお互いに縮小均衡ということであってはいけない。経済すべての面において拡大均衡ということでそれぞれが努力しようという両首脳努力の結果が、一応いろんな問題を解決してきたのではなかろうかと思います。  そうした意味でも、現在米ソ間は非常によい関係に入っておると私は思いますし、この対話関係をやはり持続してほしいと思いますが、その中において、西側陣営における日本も大きな役割を果たす、そのためには今後やはり日米間におきましても世界的視野に立っての協力というものが必要ではなかろうかと思います。  アメリカは、そうした意味合いにおきまして、国民の手によって新しい大統領をお選びになることでございましょうが、日本といたしましてはどちらが大統領になられましょうとも、今申し上げましたような観点において今後も日米関係を確固たるものにしていきたい、これが私の考え方でございます。
  18. 矢田部理

    ○矢田部理君 大統領選挙の結果を待って、対日政策がどんな変化が出てくるのか、様子を見ながらもう少し個別問題についても議論したいと思いますが、例えば貿易防衛政策その他についてもいろんな変化が出てくることが想定もされますが、その議論はいずれ大統領選挙の結果が判明して後、改めてまた議論したいと思います。  もう一つ、ソビエトとの関係であります。  先般、外務大臣もプリマコフ世界経済国際関係研究所長と会われていろいろお話をされたように報道されておりますが、プリマコフ氏の話によりますと、中ソ首脳会談をできるだけ早く行いたい、来年の前半にもというようなことにもなっているようでありますが、この中ソの政治情勢は随分改善動きが出ているようでありますが、この点はまず外務省としてはどんな認識に立っておられるでしょうか。
  19. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私も中ソ関係に関しましては五月訪中のときにお伺いしまして、また竹下総理も八月末に参られましたときに、これは重大な話であるのでいろいろと意見を聞いておられます。  最近の情勢を申し上げますと、私もついこの間大使とも御懇談申し上げました。多分、銭其シン外相が近く訪ソされるであろう、そしてそのリターンとしてシェワルナゼ外相が訪中されるであろう、その結果、明年においてでも恐らく首脳会談が開かれるであろう、その時期、場所等々はまだもちろん未定でございます。そういうような情勢でありまして、従来の関係をひとつ改善したいという気持ちを両国がお持ちになっておるということは、これは明らかなところである、かように考えております。  ただ、しばしば中国の方が私たちに申されるのでありますけれども、一九五〇年代の関係はなかなか難しいですよと、そういうような付言があるということも私たちにとりましては一つの情報でございます。
  20. 矢田部理

    ○矢田部理君 あわせて、中ソ会談が行われれば、その後にゴルバチョフ書記長日本訪問ということが日程に上るであろうということも取りざたをされているわけですが、外務省としてはこのゴルバチョフ書記長訪日問題についてはどんなふうに見ておられますか。
  21. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これは従来から我が国総理がかわるがわる四人訪ソをされた、その間ソ連からは首脳の来日一度もなし、こういうことでございます。ゴルバチョフ書記長は、非常に弾力的な政策を今日展開しておられるし、国内においても私たちの得ておるところの情報では相当思い切って大胆にペレストロイカ路線を進めておられる、努力しておられる、こういうことでございますから、ひとつ従来のニエット外交、つまり何でもかんでもニエット、ニエットということでおさめるのじゃなくして、ぜひともそういうふうに我々としてはお迎えいたしたいと思うということは、来られる方々に申し上げておるような次第でございます。  今、矢田部委員も触れられましたが、プリマコフさんにこの間率直にそういうお話をしました。あなたの方がニエットばかり言うからなかなか関係改善されなかったんだと言いますと、いや、日本にもニエットが多いよと。ニエットというのは、御承知でございましょうが、ソ連語のノーでございます。したがいまして、まあまあそういうこともダーダーと、イエスというふうになろうやと、そのためにはまず外相会談でひとつじっくりと話し合いましょう、そしてその次にはぜひとも訪日をしていただいて、ゴルバチョフ書記長とそして竹下総理との間においていろいろと関係改善のすばらしい話をしてください、レーガンさんとゴルバチョフさんが交互にやっていらっしゃるように、やはり我が国もそういう関係を築きたいと思いますよと、こういうふうに申しておりますから、来る十二月の外相会談においては、そのことも一つの大きな議題として私たちは申し上げなければならないと、かように考えております。
  22. 矢田部理

    ○矢田部理君 あわせて、時間があれば後ほど朝鮮問題、対朝鮮外交等についても議論をしたいと思っておるのでありますが、国際情勢が非常に激しく動く中で、最近の日本の外務省の姿勢は、例の自粛ムードで機能を停止しているのではないかというような見方もあるのでありますが、外務大臣としてはその辺のところはどんなふうにお考えですか。
  23. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ちょっと済みません。北朝鮮問題あるいは朝鮮半島、自粛でございますか、どちらのことですか。
  24. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや、そうじゃない。朝鮮問題も時間があれば後で議論をいろいろしたいと思いますが、含めて、国際情勢が大きく動いているわけですが、国内の自粛ムードが御承知のようにございますね、それが余りにも過剰であるということも今反省をされているわけでありますが、そのような背景もあって日本外交動きがとまっておるのではないかという指摘もあるのですが、外務大臣としていかがお考えかと伺っております。
  25. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これはニューヨークにおける国連総会に私が出席を予定いたしておりまして、そのときには、アメリカ訪問をなし遂げ、続いて国連総会におけるいわゆる国連外交ということで各国の外務大臣とお目にかかるというふうに予定いたしておりました。しかし、その当時は天皇陛下の御病状ただならず、そういうことがございましたので、やはり私は訪米並びに国連総会出席を取りやめたような次第でございます。これはまあいろいろ考えまして、あのときは私一人の考え方でそういうふうにさしていただきました。それを自粛と言ってよいのかどうかはまた別の問題でございましょうが、いわゆる国内の自粛はそれ以来何か非常に極端に走り過ぎたということもございますから、したがいまして、官房長官もあるいは竹下総理も、事あるたびに過度の自粛というものは決して陛下のお気持ちに沿うものではないということを申し上げ、私たちといたしましても過度の自粛は歓迎すべきことではない、整々と普通のなりわいをそれぞれの場所においてすべきであると、こういうふうに考えておる次第でございます。  で、当然諸外国から来られる外務大臣は、その後、後を絶たないような状態でございますが、中には西ドイツのゲンシャー外相等が来られなくなったことも一つ日本外交として寂しい思いをいたしました。これは単に自粛ではなくして、西ドイツの政情等々に関係する問題でございました。そういうようなことでございますから、やむを得ないことである。向こうの方から、シュトラウス元党首が亡くなられたので、それで西ドイツの政界にもいろんな影響が出ておるからということでございましたから、これは残念なことでございました。  また、銭其シン外相が日中平和友好条約十周年記念にお越しになるということも、これも先方からのそうした御配慮等々によりまして一応取りやめと相なりました。さらには、韓国の慮泰愚大統領の御訪日も、宮中に関する行事が多うございますから、こうしたときには遠慮したいというふうなことで、それぞれそうした賓客を迎える回数も予定よりは少なくなったことは事実でございますが、今後十二月の初頭にモントリオールにおきましていわゆるウルグアイ・ラウンド、大臣出席の中間レビュー等々がございます。これは我が国にとりましても非常に重要な会合でございますから、私はぜひとも出席したい、かように考えております。
  26. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどの理事会でプルトニウムの海上輸送問題の報告が外務省からなされました。そこで、これにちなんで若干の質問をしておきたいと思いますが、従前日米原子力協定の論議の際、空中輸送、空輸の問題を焦点にやってきたのですが、そのときの説明では確かに海上輸送そのものを否定されているわけではないということでしたが、余り大きく問題としては取り上げられませんでした。この時期になって海上輸送という問題について日米間で取り決めをしたのは一体どんな背景、事情によるのでしょうか。
  27. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 今、矢田部先生も御指摘のとおり、たしか日米原子力協定では空中輸送は包括同意、しかしながら他方、船による輸送は個別同意の対象になっているわけでございます。その後アメリカの議会で四月二十五日にこの日米原子力協定が承認を受け、他方、日本の国会におきましてはたしか五月二十五日だと思いますけれども、御承認を受けたわけでございますが、その後アメリカから実は海上輸送についても包括同意にすることの交渉をしてもいいという申し出がございまして、それを受けまして、日本としましてもいわゆる輸送の選択肢を広げるという観点からはこれはいい話でございますので、その後たしか七月、八月、九月と三回ばかり交渉いたしましてそれで合意ができまして、したがいまして、たしかアメリカの方の手続も踏まえ、十月の下旬に交換公文によって海上輸送を包括同意の対象にした、こういうことでございます。
  28. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはアメリカ側の申し入れでそうしたんですか。
  29. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 基本的にアメリカ側の申し出というか、やろうじゃないかということでございます。
  30. 矢田部理

    ○矢田部理君 もともと海上輸送は距離が長くてシージャック、核ジャックの危険が高いということでアメリカ筋から空中輸送、空輸論が出されたように承っておったのですが、そのアメリカが今度は海上輸送でもいい、いいと言ったのはともかくとしても、海上輸送を向こうから積極的に持ち出すというのは従来の経過からは考えにくいのですけれども。
  31. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 確かに先生御指摘のとおり、最初に一九八四年にプルトニウムを輸送いたしましたのは晴新丸という船でございまして、その晴新丸の輸送につきましてアメリカ議会でも若干の議論があったわけでございます。  当初アメリカ側としましては、やはり輸送時間を短縮するためにも核ジャックの防止という観点から船よりかは飛行機がいい、こういうことだったわけでございますが、他方、アメリカ議会の審議の過程を通じまして、いわゆる先生御承知のマコウスキー条項というものが出てまいりまして、したがいまして空輸につきましての難しさというか、いろんな条件がつきまして、その条件を充足するためにはかなり難しい状況が出てきたということはそのとおりでございまして、他方、そういうことを踏まえまして船についても何らかの条件が整えば何とかなるんじゃないか、こういうふうなアメリカ側からの話がありまして日本もそれに乗っかっていった、こういうことでございます。
  32. 矢田部理

    ○矢田部理君 空輸についてはアメリカから提案をされながら、アメリカ国内でもいろんな議論があり、問題が出されたりし、私どももこの委員会で幾つかの問題点を指摘したわけでありますが、その指摘された問題点の解決がなかなか容易でない。幾つかの条件もついているわけですね。ということから、もう一度海上輸送に逆戻りしたというか、問題をもとに戻したというのとは違うんですか。
  33. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) もと戻りしたという意味ではなくて、依然としてやはりプルトニウム輸送の第一のオプションというものは空中輸送である、しかしながらこれがどうしてもだめなとき、あるいは非常に難しいようなときには海上輸送にしても可能である、つまり選択肢の拡大、こういうことになったわけでございます。
  34. 矢田部理

    ○矢田部理君 私どもは原子力発電そのものには問題ありきというふうに考えておりますから、したがって使用済み燃料を再処理してプルトニウムを生成すること、この輸送を含めて似たような疑問があるわけでありますので、海上輸送ならいいとか、空輸ならいかぬかとかということではありませんけれども……。  そうしますと、海上輸送の準備と空輸の準備、もろもろの条件の整備を両面で追求するということになるのでしょうか。
  35. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) そのとおりでございます。
  36. 矢田部理

    ○矢田部理君 ということになりますと、輸送する飛行機をどうするか、これは無着陸で直行便でというような議論があるわけですね。それから、飛行機の輸送に伴って幾つかの条件がついていますが、その条件整備をどうするかということが実験や研究も含めてかなりの問題点があるわけですね。  あわせて、船の方も後で少し議論をしますが、武装護衛船をいかがするのか、あるいは輸送船はどうするのかということなどもあるわけですが、両方でこれから準備をするというようなことになると予算上も大変むだが多くなるということになりはしないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  37. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) これは実は私どもが答えますよりは科学技術庁からの方の答弁がいいんじゃないかと思いますが、私、交渉責任者として、実務責任者としてのお答えを申し上げますと、今まだいわゆる準備というか、理論的な可能性探求の段階でございまして、飛行機で運ぶ場合につきましても、一応考えられております747―400というのはまだございませんですし、それの開発状況はどうなっているのか、それから輸送容器につきましてもこれはまだシミュレーション等々の実験が行われていると承知しておりまして、まだ現実に物もあるわけではございません。そういったもろもろの段階の今検討にかかるわけでございまして、ある時点において、それでは具体的にはこれがいいんだ、よりこちらの方が実現性が高いんだという段階にやがて来るのではないかと思っております。
  38. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると、研究段階あるいは実験段階では両にらみで準備をするが、いずれはどちらかに絞って実務のレベルに乗せるというふうに伺ってよろしいわけですか。
  39. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 私、ちょっと立場上確言の話もできないなにでございますけれども、そういうことになろうかと思います。
  40. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、きょう説明をされた船の点でありますが、これは輸送する船はあるわけですか。
  41. 小柳皓正

    説明員(小柳皓正君) ただいま外務省から御説明ございましたが、プルトニウムの輸送方法についていまだ海上輸送に決まったわけでなくて、今後我が国の輸送船を使用しまして英仏からの回収プルトニウムの海上輸送を行うこととなった場合に、海上保安庁の巡視船を派遣する可能性につきまして政府部内で検討が行われているところでございます。  そして、現在の巡視船でどうかというお話でございますが、少なくとも現有の巡視船では航続距離から見てプルトニウムの海上輸送を英仏から無寄港で護衛することは不可能でございます。
  42. 矢田部理

    ○矢田部理君 今、私は武装護衛船よりもまず輸送船があるのかどうかということを聞いたんですが、そうでない方に話が行っているから両方聞いてもいいんですが、この条件では港に寄港せずに持ってきなさい、運びなさい、こういうことになったわけでしょう。すると、寄港せずに運べる船があるのかどうかということが第一点。二番目には、同時に武装護衛をしなさいというふうになっているわけですから、今ちょっと触れられましたが、そのような武装護衛船が現にあるのかどうか。二点もう一度まとめてお答えください。
  43. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 私の方から先生の第一点につきまして私の承知します限りお答え申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、一九八四年の晴新丸、これはフランスを出まして大西洋を横断いたしましてパナマ運河を通ってずっと日本の東京港まで来た。私も正確には何海里か承知しておりませんけれども、これは無寄港で入ってきているわけでございます。したがいまして、それから類推しますに、輸送船の方は、もっともどういうルートを通るかというのは今後の問題でございますけれども、可能ではないか、そういうふうに思っております。
  44. 矢田部理

    ○矢田部理君 それはそう伺いますが、しかし武装護衛船はないわけですね。これはどうするんですか。どういうことを想定してこういう取り決めに至ったのですか。
  45. 小柳皓正

    説明員(小柳皓正君) 英仏から無寄港で護衛することのできる巡視船で護衛するということが決まった場合でございますけれども、これを整備することが護衛実施の前提でございまして、この問題を含め政府部内で現在検討が行われているところでございます。
  46. 矢田部理

    ○矢田部理君 武装護衛ということが条件になっているわけですが、これは自衛隊が出動して護衛するということはできないし、考えてもおられないと思いますが、その点は明確にできますか。
  47. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 自衛艦を使うことは全く考えておりません。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、海上保安庁の巡視艇というんですか、巡視船というんですか、それが武装して護衛するということですか。まず考え方です。
  49. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 先生の先ほどの第二の質問、私から若干補足してお答えさしていただきたいと思いますけれども、まずどういうふうなルートを通るかによってかなり距離等とも変わってこようかと思います。しかしながら、いずれにしましても問題は二つございます。一つは航続距離の問題と、もう一つは武装の問題でございますけれども、第二番目の武装の点につきましては、もし仮に巡視船を護衛船に使うということになります場合には、現在の海上保安庁の巡視船のいわゆる火器といいますか、武装といいますか、それでもって考えられる脅威、核ジャックの脅威に対して十分対応できるものであるというふうな認識日米両方ともに持っております。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 海上保安庁の巡視船が例えばフランスの港まであるいはイギリスの港まで武装護衛のために迎えに行くんですか、そして全部付き添って武装護衛をするんですか。
  51. 小柳皓正

    説明員(小柳皓正君) 法律的な問題につきましては海上保安庁法の二条というのがございまして、海上保安庁の任務としまして「海上における犯罪の予防及び鎮圧」、これにつきましては海上保安庁の巡視船が護衛を行うことは問題がないということになっております。この海域の範囲についても特に領海に限るというような制限はございません。
  52. 矢田部理

    ○矢田部理君 領海に厳密な意味で限るかどうかということは私も必ずしもそうは思いませんが、輸送船は出発から到着まで武装護衛船で守られなきゃならない。イギリスやフランスの領海まで行って日本の警察権なり武装した船が行動することは、これはまず第一にできないんじゃありませんか。
  53. 小柳皓正

    説明員(小柳皓正君) 先ほどの領海ということは日本の領海に限らないで、公海であれば我が国の周辺海域に限らず制限がない、こういうことを申し上げたのでございます。
  54. 矢田部理

    ○矢田部理君 その申し上げたのはいいんですが、私が聞いているのは、逆にイギリスやフランスの領海、要するに出発から武装護衛しなさいとあるわけでしょう、向こうの。それはできないでしょうと言うんです、相手の国内で日本の警察権を行使することにもなりかねないわけだから。
  55. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 私から若干補足さしていただきますと、イギリスなりフランスの領海は、輸送船でございますが、あるときには第一義的にはイギリスなりフランスなりの官権と申しますか、政府責任であって、したがいまして日本の武装護衛船が関係してまいりますのは、イギリスなりフランスなり領海を出て、それから公海を通り日本の領海に入ってくる、そういうことだろうと理解しております。
  56. 矢田部理

    ○矢田部理君 相手国の領海にまで入って海上保安庁が武装護衛するとか、持っている権限行使をするというのはまずできないことは常識的ですが、同時にまた、日本の領海内でだけ行動をしなきゃならぬとも私は思いませんし、周辺海域について一定の行動ができることも了解できないわけではありませんが、はるばるイギリスやフランスの近くまで行って全面的に武装護衛をして付き添ってくるというのも、海上保安庁の行動半径としては非常に問題があり過ぎはしないかというふうに思うのですが、そこら辺は詰めているんですうに思うのですが、そこら辺は詰めているんですか。
  57. 小柳皓正

    説明員(小柳皓正君) 海上保安庁法の二条によりますと、先ほど申し上げましたように「海上における犯罪の予防及び鎮圧」につきましては、海上保安庁の任務となっております。この点につきましては、公海における海域の限定というのがございませんので可能であると思っております。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 確かに、法文上の限定はありません。ありませんが、大西洋上まで行って武装護衛するというのは、これは政治的に見ても制度的に見ても大問題なんであって、そう簡単な問題ではないんじゃありませんか。これは私ももう少し理屈を整理していずれ議論しますが、そこの問題が一つと、それから飛行機の方の準備もする、場合によっては今武装護衛船で寄港せずに直接護衛できる船がないということになると、これは新しくつくらなきゃならない、これは予算上も大変問題になる。場合によっては二重投資になるというようなことにも、飛行機のことですね、なりかねないのであって、その点は問題がたくさんありはしないかというふうに思うので、きょう先ほど御説明をいただいただけなので、私もさっと見ただけで思いつくままに質問をいたしましたが、少しこれはいろんな点で議論をさせていただきたいということできょうのところはその程度で終わります。  あと時間の関係でもう一点だけ最後になりますが、ナミビア産のウランの輸入問題が最近また議論になっている。これは私も従前問題に供してきたのでありますが、この点、現状の問題点はどんなふうになっているか、まず外務省から伺いましょう。
  59. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) もう先生御承知のとおり、ナミビア産のウランについては、国連ナミビア理事会の一九七四年の天然資源に関する布告でございますけれども、これの政治的な意義を理解し、その趣旨を尊重すべきであるというのが私どもの立場でございます。かつその一九七四年の布告を受けまして、通産省の方からもたしか広報によりまして関係の方々に周知というかお伝えしてあると、こういうことでございまして、日本の電力会社もこの趣旨を尊重しているものと承知しておりますし、今後ともそういうふうな慎重な対応を望みたいというのが私ども外務省の立場でございます。
  60. 矢田部理

    ○矢田部理君 最近問題になりましたのはRTZ、リオ・ティント・ジンクというんですか、イギリスの会社から持ってきているウランにナミビア産のものが含まれているという指摘があるのですが、外務省はその事実を確認しておられますか。
  61. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 先般の新聞報道あるいはテレビの報道等によりまして、そういったようないわゆるアメリカのエネルギー省の内部資料があるのか、あった場合それが公表されているのか云々ということをアメリカ側に照会したわけでございますけれども、アメリカの方の説明によりますと、たしか一年半ぐらい前にこういったような資料を作成して、それをアメリカの下院の外交委員会だったと思いますけれども提出したと。しかし、これは何分にも内部資料であって公表できるものではないし、お渡しできるようなものでもない、こういうことでございました。
  62. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると、確認できないということですか。
  63. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) その意味では確認できておりません。
  64. 矢田部理

    ○矢田部理君 しかしながら、RTZ社のウランのほとんどはナミビア産のものであるという少なくとも疑いは持っているんでしょうか、その点はいかがですか。
  65. 田中伸男

    説明員(田中伸男君) 御説明いたします。  疑いがあるかどうかということは定かではありませんが、私どもが承知し得る限り直接には日本の電力会社がナミビアの山と契約している事実はございませんので、RTZから供給を受けている会社は確かにございますけれども、その中にナミビアの石が入っているかどうか、これは原産国を特定できないというのが私どもの考え方でございます。
  66. 矢田部理

    ○矢田部理君 イギリスではウランは産出しないわけですから、そうしますと、このRTZ社のものはほかから原石を輸入するということになりますわね。その輸入先は少なくとも南アフリカから輸入していることはお認めになるでしょう。
  67. 田中伸男

    説明員(田中伸男君) RTZ社が確かにナミビアのロッシング鉱山の株を持っておりますことは事実でございますが、現にロッシングから入っているかどうか、そこは確認ができません。
  68. 矢田部理

    ○矢田部理君 これだけナミビアの天然資源に関する布告が国連で問題にされ、もう一つ南アフリカの場合には南アに対する経済制裁の問題と二つかぶるわけでしょう、という状況のもとでRTZ社のものを日本で輸入しておるのに、その原石がどこから持ってきたものか、どういうものが含まれているかについても調査ができていないというのは少し怠慢ではありませんか。
  69. 田中伸男

    説明員(田中伸男君) 電力会社が確かにリオ・ティント・ジンク社と契約をしているわけでございますけれども、その商業上の契約につきましてその原産地が特定できない法律的、技術的な問題があるわけでございますので、それを特定させるということを通産省が命じたりすることは私どもの立場ではできないということでございます。  ただし、もちろん南ア制裁につきましては、私どもも六十一年の十一月にアメリカの措置を損なわないようにということで電力会社を指導しておりまして、それ以来、南アからは一切新規の契約は締結されておりませんし、今後ともそういう方針と聞いております。  それからリオ・ティント・ジンク社の件でございますけれども、これは六弗化ウランは購入契約しているわけでございますが、今後仮にRTZ社と契約交渉を行う場合には、各社とも今の国際情勢、ナミビア情勢に大きな変化がない限り極めて慎重に対処すべきだという認識は当然持っておるわけでございまして、今後新たなウラン調達契約を行う場合にはウランの原産国がナミビア以外であることが明らかなような契約をするんだという方針であると聞いておりますので、私どもとしては特に新しい指導なり調査をする必要はないのではないか、こういうふうに考えている次第です。
  70. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも通産省の態度は緩いですな。なるほど関西電力とか中部電力は疑わしきは罰すということからナミビア産のそれについては、特にRTZ社のものについては今後契約をしないという方針を決めたようですが、東京電力はそこに踏み切ってないんでしょう。
  71. 田中伸男

    説明員(田中伸男君) 個別会社の契約についてコメントする立場にございませんが、電力の中には現在の契約につきましてナミビアから入っていないという確認をとっている会社もあるようでございます。ただ、今私申し上げましたように、各社とも現在のナミビア情勢が続く限りは今後原産国がナミビア以外であることが明らかでないような契約はしないと言っておりますので、これには当然東京電力も含まれているというふうに考えております。
  72. 矢田部理

    ○矢田部理君 国連理事会の布告なんですね。ですから、各社の自主性に任せるとか通産省が直接指導をしないというのは少しまずいんじゃありませんか。とりわけ日本の南ア貿易とか南アとの経済関係については基本的には自粛の方向づけを出しているわけでしょう。それも我々から見ると大変弱い、緩いとアメリカですらそう言っているわけですね。したがって、各社の自主性に任せるとかそういうことを期待するということではなくて、この種の問題は国際関係を律する上で非常に重要な問題ですから、やっぱりきちっとした行政指導、政府方針を企業各社に伝えて、その方針に沿うようにやってもらうということが日本外交を展開する上でも非常に大事なのではないか考えておりますが、時間が参りましたのでその点宇野外務大臣に一言お願いをして私の質問を終わりたいと思います。
  73. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ナミビア問題は、これはもう私が常に委員会で申し上げておりまするとおり、南アフリカのアパルトヘイト反対というそうしたかたい政策からも厳重に今後対処していかなければならない問題である、こういうふうに思っております。したがいまして、今通産あるいは我が省それぞれ担当官の御答弁がありましたが、なお一層厳重にこれが守られるように注意をしたいと思っております。
  74. 松前達郎

    ○松前達郎君 もう既に質問の中にも出てまいったわけですが、米国大統領選挙が間もなく結果が出てくるわけですが、その結果どちらが大統領になるということの予測、これはもうするべきではないし、しても余り意味がない。しかし問題は、アメリカの対日政策といいますか、こういう展開がどちらがなるにしても変わりつつあるんじゃないかということについて、これは前にも私はこの委員会で申し上げたと思うんですが、大ざっぱに言えば軍事力強化という問題ですね、日本に対する軍事力強化の要求という問題と、それからもう一つは、金持ちの国だから、現に金を持っているかどうかというのはいろいろ論議があるんですけれども、外国からはそう見られている、そういう国ですから対外援助をさらに強化するべきである、こういうふうな二つの線が今まで言われてきていると思います。  軍事力強化という点については、もうこの辺で余り圧力をかけると日本は攻撃力まで持つんじゃないかという心配があるというそういう発言をしている人もありますし、それよりも日本ができるのは対外援助ODAを含めた対外援助をさらに拡大していく必要があるんだ、こういうふうなことで、要求の内容を多少変えてくるという予測もつくわけなんですが、その点について、外務省の見解として今後の展開というものは一体どうなるであろう、これは予測かもしれませんが、見解がございましたらひとつお教えいただきたいと思います。
  75. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 確かに、松前委員おっしゃるとおり、アメリカ政府におきましてもまた議会におきましても二つの考え方があると思います。しかし私は、軍事力強化という趣旨の向こうからの話に関しましては、実はこの間もシュローダーさん、女性の委員長でございますが、いわゆるバードンシェアリングアメリカ委員長、この方がお越しになられましたときにも、それは我が国は憲法の制約がございます、はっきり申し上げましょうと。したがいまして、今我々としては節度ある防衛力の充実ということをやっておりますと。二番目には、やはり近隣諸国に与えるいろんな問題がございますから、したがいまして経済大国日本といえども軍事大国ならずというのが戦後変わらざる私たちの主張でございますと。そうした点から考えましても、そうした幾つもの制約があるということもよく御承知賜りたいということを常に申し上げておるわけでございます。  したがいまして、バードンシェアリングは、さような意味合いにおきまして我々といたしましても立派な国家になったわけでございますから、世界貢献するということは常に念頭に置いておかなければなりませんし、またアメリカといたしましても、日本を含む同盟国に対しましてそれぞれ貢献してほしいという御相談がもしあるならば、そのときは私たち世界貢献はしなければならないというそうした理念のもとにいろいろと考えなければならないと思いますが、あくまでも私は自主的に判断をすべき問題である、かように考えておる次第でございます。
  76. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、軍事力のことは別にいたしまして、例えば対外援助の拡大という面について触れますと、その中で一番中心となるのはODAというものが恐らく対象になるんじゃないかと思うんです。  ODAを拡大していこうというときに、これも前から私は申し上げているんですが、ODAの内容、これについて、どうもただ物質的援助とか金銭的援助とかそういうふうなものだけではなくて、もっと人的なもの、あるいはもっとソフトのもの、そういったような部分にまでの援助を拡大していかないと、せっかくお金を出す、あるいはそういった援助をしてもその当時国が自分自身で力をつけていかなければ経済的な発展期待できない、そういうことが考えられるわけなんです。ですから、ODAの対象といいますか、対象国じゃなくて、対象内容をさらにもっと融通性を持ったものにしていかれた方がいいんじゃないか、こういうことを申し上げたんですが、その点はどうお考えでしょうか。
  77. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 大ざっぱに分けましてODAは有償、無償と二つあるわけでございますが、現在は無償の面において日本は各国と比較すると非常に少ないではないか、だから一口にして言えば、無償の面をふやしなさいということも私は大切なことであろう、かように考えております。また、有償という面におきましても、やはり条件緩和ということも私は必要ではなかろうかと思います。  特に途上国に関しましては、いつまでも途上国であっていただいてはこれは世界じゅうがやはり今後大きな負担を背負わなければならないので、私たちのそうしたODA等々の援助によってひとつ途上国は中進国となり、中進国は先進国となるように、その例は、例えばNIES諸国が非常に努力されて今日大変な発展を遂げておられるという一つのそうしたケースもあるんだから、そうした意味で私たちもその内容充実を図っていきましょう、もちろん相手国要請も大切でございますが、こちらから時と場合によりましてはやはりオファーによりましていろいろと考えさしていただきましょう、もし何だったら政策の御相談にもあずかりましょうというふうなことが大切ではなかろうか。もちろんそのためには量ということも考えなくちゃなりませんが、現在DAC諸国の中では大体一七%程度が日本レベルじゃないかと思いますが、せめて二〇%ぐらいまでそれが伸びるように考えていきたい、こういうふうなことも念頭に置きながら努力をしたいと思います。
  78. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、最近私は非常に痛感しているんですが、例えば相手国の、対象国の力をつけるということを考えますと、ただ物だけではないとさっき申し上げたんですが、やはり教育とかそういう面で、教育の主体は本質的にはその国がやるべきなんですが、それに付随して要望があった場合、やはり教育的な援助というものもやらなければいけないんじゃないか、こう考えているんです。まず、外国に対して出したときにODAの内容としてそういうものを考える、これが一つ。それからもう一つは、日本に来ている留学生問題がありますね。これも円高ですから非常に生活に困ったりしているのが多いので、そういったようなまじめな留学生に対する何らかのサパートというんですか、これもやはり考えなければいけない。こういった教育面を対象にしてということを考えるべきだと私は思っているんです。  というのは、例えばアメリカ日本に対してかつて行ってきた教育援助というのは、政府が直接やったわけではありませんけれども、いわゆるミッションという形で教会が日本の教育に対して相当の力を入れた。これはもう今でも学院大学とかいう形で数多く残っておりますね。これによって日本一つの民主的国家というものに対する基盤づくりというものに相当大きく貢献した、プラスになったんじゃないか、こういうふうに私は思っているんです。ですから、それと同じやり方である必要は一つもありませんが、やはりこういった面も考えODAの内容をさらに拡大していったらどうか、こういうふうに申し上げたんですが、その点いかがでしょう。
  79. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生の今の御指摘の点に関しましては、先ほど大臣からお話がございましたように、二国間の援助は無償と有償がございますが、その無償の中にさらに無償資金協力と技術協力というのがございまして、先生御指摘の人の育成というのはまさに技術協力役割でございまして、その中でも私ども特に人づくり関係を伸ばしていきたいと思って努力しておりますが、先生御指摘のように、世界的なレベルで見ますと日本の技術協力はまだまだ残念ながら十分ではございませんで、これをさらに伸ばしていきたいと思っております。  その関連で、先生御指摘の教育に対する協力でございますが、教育関係援助もそれなりに私どもは伸ばしてきておりまして、教育も大ざっぱに申し上げますと、私の了解しますところ社会教育と学校教育がございますが、どちらかといえば日本の技術協力の中で従来社会教育の方に力を入れてきたかと思っておりますけれども、最近では学校教育に関しましてもかなり力を入れてきております。その学校教育も、例えば小学校なんかは国によっては小学校を建ててそこに青年協力隊の方を教師として派遣するというようなことも含めまして努力はしてきておりますが、先生御指摘のようにまだまだ十分ではございませんので、教育に関する協力は今後さらに強化してまいりたい、こういうふうに考えております。
  80. 松前達郎

    ○松前達郎君 その点は努力をしておられると思いますけれども、ヨーロッパあたりはもっと努力しているんですね、日本よりもはるかに。例えばタイ国あたりへ行っても西ドイツというのは相当人材を送り込んできているし、教育に相当の加勢をしているというか援助をしている。そういうところもあるので、これから国づくりは人づくりと、一言で言えばそういうことを言われているわけですが、やはり国づくりというその国の基盤的な力といいますか、それはやはり人づくりだと思うので、これに対する何らかの協力をしていくというのも我々としてやるべきである。そういうふうな観点から今後もそういった面でODAの内容の検討を十分していただければと思います。これは要望です。  それからもう一つは、今度はやはり協力体制の中でもさっき最初に申し上げました軍事的な協力というのがもう一つあるわけですね。かつてこれは日米地位協定の改定問題というのが新聞で報道されたのですが、これは思いやり予算とかいろいろありましたね。しかしその当時の議論の中でも、人件費を持つとかいう話のときに、余りこれを拡大していくと地位協定の改定まで持っていかなければこれはだめなんじゃないか、こういうふうな議論もあったわけですね。これはカールーチ国防長官の表明だというふうに報道されておりますが、日米地位協定の改定に関して「日本がもっと負担するために改定が必要であるならば、われわれはどんな変更が必要なのか調べることになろう」こいういう発言をしているという報道があったんですが、この点は事実でしょうか。
  81. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 従来から申し上げておりますけれども、我が国といたしましては、我が国安全保障にとって不可欠な安保体制の効果的運用を確保していくということから、従来より在日米軍経費につきましてできる限りの努力はいたしておるところでございますけれども、この負担について新たな措置を検討しておりますとか、今先生がおっしゃられましたような地位協定の改定を検討しているということはございません。
  82. 松前達郎

    ○松前達郎君 もし日本側からそういうことが言われたときには、そういうふうに考慮するという発言だったんですがね。逆にアメリカ側からもっと負担してくれ、アメリカ経済も余り調子よくないから、日本の地位協定はあるかもしれないけれども、さらに人件費、労務費等の負担を拡大してくれというふうな要望があった場合に、日本側としてはどういうふうに対応されますか、そういうことがあった場合。
  83. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 仮定の御質問でございますけれども、今私どもは米側からそのような申し入れがあるであろうとは考えておりません。
  84. 松前達郎

    ○松前達郎君 その辺でやめておきます。これは水かけ論になりますから。  ODAについてはそのぐらいにしておきまして、先ほどからお話が出ておりました日ソ関係についてですが、新しい展開の兆しがどうも見え始めたような気がしてならないわけであります。そしてまた、十二月に入れば日ソ外相協議、これが行われるということになったので、その際にも恐らく新しい問題にソ連側として対応できるような姿勢を少しはつくってくるんじゃないかというふうに期待をいたしておるわけでありますが、この会談に臨むに当たって、外務大臣としましては一体どういうことを中心課題としたいとお考えでしょうか。
  85. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) もちろん相手からのいろんな要請もあるかもしれません。しかし、我が国といたしましては、やはり北方問題が日ソ間に横たわっている以上は、なかなか国民的感情から申し上げても、思い切った改善とかあるいは思い切った経済協力とかそちらだけが先行してしまって、肝心な問題が全然解決されないというような状態は好ましい状態ではない、こういうふうに私は常にソ連関係者がお越しになると申し上げているような次第でございます。  したがいまして、従来言い続けておりますが、北方領土問題、四島一括返還は大切なことでございますし、これに対しましても従来の相手国指導者によりまして随分と見解が違っていたということも事実でございます。アメリカの例から申しますと、INFのグローバルゼロを結ぶあの第一回目の米ソ首脳会談を開くに際しても、アメリカは実に粘り強く、ソ連の四人の指導者の交代を得てやっと弾力性のあるゴルバチョフ書記長の時代にこうした協定を結び得ることができた。だから、やはり粘り強いということも必要だし、相手の国内事情もあろう、現在ペレストロイカは非常な勢いで進んでおると私は思いますが、これに反対する勢力もまたかなりある。こういうふうに考えてまいりますると、やはり物事はお互いに相手のことも尊重しながら、我々は我々といたしましての主張を貫いていきたいというのが私の考え方でございます。
  86. 松前達郎

    ○松前達郎君 ということは、北方四島一括返還論ということで臨もうというお考えだと思うんですが、ソ連側の方は二島返還というのをどうもにおわせてきている。これはいろいろな歴史的経過を彼らは言いながら二島返還というのを言っているわけですが、情勢からいきますと、私はどうも北方領土そのものの戦略的価値というのがだんだん薄くなってきたような気がするんですね。ウラジオストクそのものの写真も最近どんどん出てまいりましたし、また前にも申し上げましたように、船でウラジオストクへ入る問題をソ連側に提案しましたら、ちょっと待ってくれ、まだ軍隊の移動が終わっていない、こういうふうなことも言っておりましたし、同時にいわゆる海軍力といいますか、水上艦艇はこのウラジオストクからちょっと北の方に移動をする、それから戦略潜水艦系、いわゆる潜水艦隊についてはペトロパブロフスクに次々と移動させたい、こういうやはり一つの流れがどうもソ連側にある。  そうしますと、特にINFの全廃が合意されて以来、中距離核ミサイルについては将来の希望が出てきたわけですね。ただ、ICBMについてはそれぞれあるところはもうはっきりしていますから、これはお互いに同数維持して抑止力的に使っていくというので合意はしているんじゃないかと思うんですが、一番問題なのはやはり所在不明の核ですね。特に潜水艦に積まれた核ミサイルあるいは巡航ミサイル等を含めて、こういったようなものがまだ全然話題に上ってきていない。上ろうとしているんでしょうが、それについてはまだ話し合いが行われていない。そういう現状ですから、どうも今後の戦略的な面から見た主力というのは潜水艦になっていくんじゃないか。  そうなると、やはり北方四島というものが、今までウラジオストクが潜水艦の基地であるとすれば、非常に重要な戦略的な場所であったということはこれは当然だと思うんですね。しかも北海道と国後の間の水路がありますが、ここはもう十六メーターしか深さがないですから、いわゆる大型艦船は通過できない。ところが、国後、択捉の間になりますと三百メーター以上の水深がありますので、これは戦略潜水艦が通過できる。もちろんウルップと択捉の間は、これは六百メーター以上ありますから通過できるわけですから、そういう意味じゃ水路的な意味、特に日本が三海峡封鎖なんて言いますから、そこが非常に重要になってきていたわけなんですが、これが移動して基地が変わっていくとなると、この四島の戦略的な地位といいますか、意味というのが割と薄らいでくるだろう、こういうことも裏にはあるんじゃないか、私はそう思っているんです。ですから、ソ連側としてもそういうことを考えているかどうかわかりませんが、恐らくそういうことも少しは考えて今後の返還についての議論に臨もうとしているんじゃないか、こう思うんですね。  私が聞いている範囲では、これは正式なところへ出していいかどうかわかりませんが、いろんな共同管理論ですとか、国境線の画定というのは前に申し上げましたけれども、そういうふうな扱い方とかあるいは共同管理とかいろんなことをそれぞれの人が言っているわけですね、ちょうど大臣が言われたように一貫していない点がありますけれども。しかし、何となく北方領土へ触れてくるという時期になってきたわけなんで、その点をひとつ十分踏まえていただいて、多少ダイナミックに話をつないでいってもらわないと、ここでまたさっきのニエットじゃありませんが、そういうことでお別れになってしまったんじゃ、これはまたもとへ戻ってしまう可能性があるので、その辺どういうふうにされるか言われる必要はありませんけれども、私の希望としてはそういうふうなことを希望しておきたいと思います。  そこでもう一つ、ちょっとこれもややこしい話なんですが、中国との問題の中に尖閣列島という問題があったですね。これも実はソ連の方も発言しているんです。この尖閣列島の領有に関しては今どういうふうに合意されたり、あるいはどういうふうな状態でお互いに認識しているのか、これをちょっとお聞かせいただきたいんです。
  87. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問は、尖閣列島の状況に関しまして日本ソ連がどのように認識しているかという御質問ではなくて……
  88. 松前達郎

    ○松前達郎君 日中間。
  89. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 日本中国がという御質問だとすれば、尖閣列島は我が国固有の領土でございまして、我が国が実効的に支配をしております。したがいまして、尖閣列島というのは、我が国にとりましては領土問題でも何でもなく、我が国が有効に支配している我が国の領土の一部ということになるわけでございます。中国がどのように認識しているかという点につきましては、特段の発言も最近ございませんので必ずしも明確にそこを推しはかるわけにはまいりませんけれども、一時期におきましては、もちろん中国は尖閣列島は中国の領土の一部だという主張をしておりますけれども、これは日中間では棚上げをしておこうというようなことを言ったこともございます。
  90. 松前達郎

    ○松前達郎君 日本固有の領土であると日本側としてはそういうふうに考えている。中国は一時期中国の領土であると言ったことがあるとおっしゃいましたけれども、そうじゃないとは言ってないんですね。ですから、恐らく外交的にはこれは一応棚上げしておこうということで合意をされているんじゃないかと思いますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  91. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま申し上げましたとおり、中国側は棚上げしておこうという考えを述べたことはございますけれども、我が国にとりましては尖閣列島は我が国が実効的な支配を及ぼしております我が国の領土の一部でございますので、棚上げというようなことは全く考えられないことでございます。したがいまして、棚上げするということについて日中間で合意があったということは全くございません。
  92. 松前達郎

    ○松前達郎君 いや、そういうことじゃなくて、尖閣列島の領有に関しての議論ですね、これをすることについて現時点では差し控えておこうと、そういう棚上げで、領土を放棄するとかそういう意味じゃなくて、そういう合意はされましたか、これは表面的な合意じゃないかもしれませんが。
  93. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、我が国にとりましては尖閣列島につきまして中国側と話すべき何の問題もないわけでございます。したがいまして、これを話すのをやめておこうというような合意もこれまた日中間ではないという状況でございます。
  94. 松前達郎

    ○松前達郎君 もう一つあるんですが、今度は日本と韓国の問題で竹島ですね。この竹島の領有権についてはどうなっていますか。
  95. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 竹島につきましては、歴史的事実に照らしても、また国際法上も我が国固有の領土でございまして、これはもう明白でございます。現在、韓国が各種の施設を構築して不法占拠を継続しております。こういったことは我が方から見ますとまことに遺憾でありまして、我が方は数次の機会をとらえて韓国側に我が方の考えを伝達しまして遺憾の意を表明しております。
  96. 松前達郎

    ○松前達郎君 それ以上結構です。そういったいろんな問題があるわけですけれども、その辺、恐らくそういうふうなことも頭に置いてくるんじゃないかと思うんですね。そういう事実があるじゃないかとかいう問題を引き合いに出してくる可能性がある。その点も一つ十分心にしまいながら交渉していただければと思います。  北方領土の問題はそのぐらいにしまして、次は、先ほど来プルトニウムの話が出ておったわけですが、核持ち込み問題です。この委員会でももう何回も事前協議については大分やりましたから、これはまた蒸し返しになって結果は同じようになることがわかっていますので余り事前協議のことには触れない、特にイントロダクションとトランジットの問題は。これは私自身の解釈ではイントロダクションという意味の解釈について日米間の相違があるというふうにしか思っていませんので、これについてはもうこれ以上触れないことにしたいと思うんですが、特に最近、トマホーク積載の米国の艦船が日本の港に入ってきていますね。トマホークそのものは巡航ミサイルといいながらもそう数多く積んでいるわけではありませんが、当然弾頭として核弾頭を積む能力があるわけですから、そういうものも恐らく積まれるであろう。積んでいるかどうかはアメリカははっきり言わないはずです。そういうふうなことから見ますと、どうも日本は非核三原則じゃなくて非核二原則になったんじゃないかというふうなことを言っている向きもあるようでありますけれども、それと関連するかどうかわかりませんが、こういう報道があったんです。これは案外重要な報道だと思ったのできょうここで取り上げたい。  これはことしの七月の十三日のワシントンからのロイターの報道ですが、アメリカ空軍はがんの原因とされているラドンガスが海外九カ国十七カ所の基地の建物内で検出されたことを明らかにしたという報道であります。特にその中でも沖縄の嘉手納とイタリアのアビアノの基地では危険なレベルにある、こういう報道があったんですね。この点は外務省としては御承知でしょうか。
  97. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 私どもそのような報道があったことは承知いたしておりますが、私どもはラドンガスというのは天然現象であるというふうに承知いたしております。
  98. 松前達郎

    ○松前達郎君 それはちょっとおかしいんじゃないんですか。ラドンというのはどこにでもあるものじゃないんですね、放射能のある物質があったところにしかできない、ラドンガスは。どうしてかというと、これは半減期が非常に短いのです。ラドンには二種類ありますが、一つの半減期は非常に短くて秒のオーダーです。もう一つでも分のオーダーですね。ですから、それが高い濃度があるということは、常に生産されているということじゃない限り、そういうことは言えないわけですね。どうでしょうか。
  99. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 申しわけございません。私、ここにラドンガスそのものについての資料を持っておりませんけれども、私どもがその資料を読んだ限りでは、これは放射能物質が存在していたところにそのようなガスが発生するということではなくて、特定の地理と申しますか、地殻状況のもとで発生するところの自然現象だというふうに記載されていたと思いました。
  100. 松前達郎

    ○松前達郎君 それは間違いですね。特定の地殻内に発生するので、自然と発生するんじゃないんです。やはり刺激を受けて発生する。その刺激になる母体というのは何かというと、放射線なんです。しかも、さっき私は間違えました、ラドンに二種類あって、一つの種類では三・八二五日ですから非常に短い、約四日近い周期で半減していくわけですから、ほっておけばなくなっちゃうんですね。なくなるというか、非常に放射能は小さくなる。ですから、何らかの原因があって常に生産されないと高濃度のものがそこに発見されることはないんですよ。たまたまそこに放射性物質があっても、それをのけることができれば、ラドンは何日かたったら半減しちゃうんですから、だからそう問題はないんですけれども、高濃度のものが発見されたということは、これは何らかの放射性物質が保存されているんじゃないかと私は見ているんですけれども、これは研究してください。  そうなると大変なことになるんですね、これは。ただ、それが核兵器であるかどうかということは私申し上げませんよ。それは申し上げませんが、非常にこれは大きな問題じゃないかと思うんです。とりわけ嘉手納ですね。そのほかにもたくさんあるんですよ。嘉手納だけじゃなくて英国ですとかポルトガル、トルコ、日本で言うと横田基地ですね、ここでも発見されている。これは非常に危険な域に達している。これはがんの原因になるということで米軍としても調査を始めたという記事なんです。  これは、余り問題にされなかったかもしれませんが、こういうことになると、私自身も研究してみますけれども、あるいは核の持ち込みにつながる証拠が出るのではないかというふうな気もしないではないので、ちょっと今ここで問題点として取り上げさしていただいたんですけれども、これはどうでしょうか。
  101. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのような報道がされました際に、先生が今言われましたようなことが論じられるであろうということを念頭に置きながら調べましたところ、一般の家屋の地下室のようなところにも発生するところがあるといったようなことでございますが、今先生は、例えばラドンガスには二つのタイプがある等々、ここで私が資料を持たないままにお答えするには難しい御質問をしておられますので、改めて調べさせていただきたいと思いますけれども、我が国に対する核持ち込みがあったということはございませんので、それは心配しているところではございません。
  102. 松前達郎

    ○松前達郎君 核を持ち込んだとかそういうふうな問題を言っているのじゃなくて、そういう発生するのがもしかすると、放射性物質と私はあえて言っているんです、そういうものが保存されているところにラドンが発生するということになれば、やはりこれは特別の建物の中だけなんですから、その建物の中に放射性物質が保存されている可能性があるというふうに私は思うわけです。この辺、十分調査をしていただきたいと思うんです。これは化学的なラドンガス発生のメカニズムというものも十分検討しなければいけないと思いますけれども、そういった疑いが持てないわけでもないので、今申し上げたようなことでこれは調査に値することじゃないか、こういうふうに思ったものですから今申し上げたわけです。放射性物質の議論をここで余り続ける必要はないと思いますが、私の方も勉強してみます。  それから次に、外国人の日本留学あるいは就学といいますか、最近いろいろ問題になっている点が非常に多いわけなんですが、とりわけどうも労働ビザというんですか、要するに正規の手続を経ないで、例えば観光ビザあたりで入国をして日本で働いているという人が大分ふえてきているんじゃないか、こういうふうに思うんですね。それから、日本語学校とかそういうところに籍を置いてほとんど学校へ行ってないというのは、これは私自身も確認したわけですが、学校へ行くよりも専ら働いて、お金がある程度たまったら国へ帰っていく。ただ、就学というか、日本語学校に入っていればビザがおりますから、そういうふうなことで来ていてお金もうけをやっているというような例もあるわけです。これらについてどういうふうに今後対応していくのか。勉強したい人をシャットアウトする必要はありません。留学生をシャットアウトする必要はないんですが、そういった点で留学生というものの制度といいますか、あるいは就学生という制度が巧妙に使われている場合もあるんじゃないかと思うんです。この辺、どういうふうにお考えでしょうか。これはビザの発行等も含めて、ビザは外務省は関係あるわけですから、ひとつ説明していただきたいと思うんです。
  103. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 今、先生御指摘の問題につきましては、私どもその重大性につきまして十分念頭に置きまして検討を重ねているところでございます。  不法就労、先生御指摘のようにいろんな形がございまして、一つには観光目的ということで日本に来てそのまま不法残留してしまうというケース、あるいは今先生の御指摘のような日本語等の習得のために勉学に来るということで来ているものの、実際には不法就労しているというケースがふえておりまして、私どもこのための対策として、まず第一には現地での私どもの大使館なり総領事館での査証申請のときにきちんとした審査体制をとるということで実質的に厳しい審査をしております。そのために入国拒否あるいは事前に防止できたケースもかなりあるというふうに考えております。  他方、日本がこれだけ豊かになったために、そういう多数の外国人が日本に就労を求めてくるというのもこれは事実でございまして、この大きな日本における外国人労働をどうするかということにつきましては、先生御案内のとおり、関係各省も多いことでございますので、緊密に連絡をとりながら今どういう方法が一番いいか、私ども勉強しているところでございます。
  104. 松前達郎

    ○松前達郎君 この問題、今からすぐ取り組んでおかないといろんな問題が出てくるんじゃないかと思うので、早速取り組んでいただいて明確な態度といいますか内容を決定しておいていただく必要があると思う。査証審査の人手不足というのも聞いているんですね。これも何とか解決していただきながら十分な審査が行われるような体制もつくっていただかなければいけない。これは外務省の所管でないかもしれません。入国審査の面も大変らしいですから、その辺はまたひとつサゼスチョンをしていただいて、いわゆる出入国――出国はいいですけれども、入国に関してはどんどんふえるということを前提にして、その対応が十分できるように体制を整えていただきたい。これは要望いたします。  私の質問はこれで終わります。
  105. 黒柳明

    ○黒柳明君 和田元理事官のいわゆる財テク問題ですが、いろいろ新聞をにぎわしましたけれども、今御調査されて、調査結果はいつごろ発表できるんですかな、藤井官房長。
  106. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま和田氏と同時期に大使館等に在勤していた人々、合わせて百人ぐらいになりますけれども、につきまして調査をしておるところでございます。何分にも、日本におる人、海外におる人いろいろございまして、若干の時間がかかっておりますけれども、かなりの進展がございまして、近々、非常に近い将来に外務省として調査した結果について御報告ができるというふうに考えております。
  107. 黒柳明

    ○黒柳明君 来週あたり、近々、近い将来とは来週あたりですか。
  108. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) できますれば今週中には何とかまとめるようにしたいというふうに考えております。
  109. 黒柳明

    ○黒柳明君 今まで大使クラスの人もわかっている数が七、八名ですか、さらに関係した人が四、五人いらっしゃるとかいうふうなあれがありますけれども。
  110. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 本件で大使が関係しておりましたのは二名でございまして、この点については既に新聞等で明らかになっている次第でございます。それ以外の全部で七名新聞で名前――名前と申しますか何と申しますか、名前が出ていないけれども指摘されておる方がございますけれども、それ以外について今調査をしておりまして、若干名ということでございますが、おおむねその地位は高いものではございません。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 七名プラス、そうすると大体二けたにはなるわけですね。
  112. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 大体そういう感じだと思います。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 十一名なんてこう出ていましたけれども、大体そんな感じですか。
  114. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) そのあたりとそう遠くない数字だと思いますけれども、さらに現在検討しておるところでございます。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 何か受益者もいたなんというような報道がされていましたけれども、そこらあたりは調査の中で事実関係おつかみの人もいらっしゃるわけですか。
  116. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 本件についていろいろ調査しております過程で、事の性質が、知人あるいは友人にお金を運用してあげるからという話で、それではひとつお願いしますということでございまして、ほとんどの人はこれがかなり大がかりなファンドというようなものではないというふうに認識しておるわけでございます。したがいまして、契約書とかそういうものを取り交わしていないということでございますので、当然のことでございますが記憶でございます。ということで、その記憶には若干の不正確さがあるかと思いますけれども、ほとんどの人は全部これは損をしておるかあるいはすぐ引き揚げたということでございますけれども、若干名については若干の利益があるということもあるのかもしれません。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ今リクルートの問題がありますから外務省の問題が非常に矮小化されているような感じで、やっぱり何か言い分が違うような感じなのね。向こうはおれが損したんだとか、こっちの方が訴える方だとか、天下の日本外務省が、清潔な清廉な外務省が何かたった一人のために、もしかすると悪い人であるのかあるいは外務省の人が悪かったのかこれはわかりませんが、天下の外務省が振り回されているような感じがする。  これはもう非常にその人の名誉のために、あるいは当人が外交官として好ましからざる行為をしたということも当然あるんだと思うんですけれども、若干名の人が利益を得た人がいるということになると、やっぱり向こうの言い分も正当化されてくる余地もある。何か今までは全部損したんだというようなことで、だから金返せ、訴えたんだなんという感じが出ておりました。しかし調べの中で、利益を得た人もいると、しかもそれは記憶だと、こういうことになりますとちょっとそこらあたり、当然利益を得るために投資したんですから、そういう人があってもいたし方ないと思いますけれども――和田元理事官には直接お会いにはならないんですね。何でお会いにならないんですか。努力してないんですか。
  118. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 和田氏にはいろいろなルートで会いたいという意思表示は伝えてございますけれども、先方の方でそれにこたえていないということでございます。  なお、ただいまの黒柳先生のお話で、黒柳先生のことでございますので御理解いただけると思いますが、我々公務員といえども自分のお金をだれかに預けましてあるいは何か株を買いまして運営するということは何ら公務員法に違反するものでもないし、まして道義的にやましいことでもございません。したがいまして本件の問題は、和田氏がジュネーブに在勤中すなわち外交官であった際に、若干名と申しますか、かなり多数の他人のお金を預かってそれを運用しておったと。外交官は、あるいは公務員もそうでございますけれども、商業的行為を禁止されておるということでございまして、それに触れるかどうかというところに問題の核心があるわけでございまして、その省員が和田氏と友人である知人であるということでお金を預けたということで、それ自体は、それを大使のような高い地位にある者が反復をして預けて、和田氏のそういう望ましからざる行為を結果的に助長したということの責任はあるかと思いますけれども、一般の省員が知人に頼んで資金を運用したということ自体に、さっきリクルートという言葉を黒柳先生おっしゃったので若干言わしていただいているわけでございますけれども、それとは性質が違うということは御理解いただきたく存じます。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 何回ぐらい和田さんには会いたいという意思表示をどのルートからやられたんですか。電話でですか。内容証明か出して。
  120. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 弁護士等を通じまして何回も意思表示をしております。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 先方の弁護士。
  122. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先生の弁護士さんを含めましてでございます。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、向こうは絶対会いたくないという意思表示をしているわけですか。
  124. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 少なくとも我々の方に会ってもいいという意思表示は来てないということでございます。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 会いたくないという意思表示も来てなきゃ、会ってもいいという、要するにサイレント。弁護士を通じてノーと来ているわけじゃないんですか。
  126. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 要するに、サイレントということでございます。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 何回ですか。済みませんね、藤井さん、突っ込んで。私だから理解しているんですけれども、何回ぐらいですか、それは。
  128. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 随時意思表示をしておりますので何回というふうにちょっと数えるわけにはまいりませんけれども、我々としてはできる限り会いたいということで、できる限りと申しますか、何としてでも会いたいということを意思表示をしております。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは政府の行為ですから、マスコミの取材とか私たち調査とか次元が違うとは思うんですけれども、居どころもわかっているんですし、弁護士さんもちゃんとわかっているんですし、随時意思表示している。向こうがノーとは来てないんでしょう。音さたなしということは、余り会いたくない、あるいは拒否の姿勢かもわかりませんけれども、いろんなルートから聞いたりなんかしますと、ちょっとやっぱり外務省のやり方も余りにも何かこう、余り会っていろんなことを言われちゃうとかえってみずからのぼろを出しちゃうんじゃなかろうかと、余り教えない方がいいのかもわからないというようなことから――これは私だから理解しているんですよ、理解しているんですけれども、いい言葉で言うと外務省の消極性というか、悪い言葉で言うと、何かみずから隠した方がいい、会わなきゃいいんだ、こんなことじゃないか。要するに、熱意さが足りないというような感じを受けるんですが、そんなことはありませんか。もっと方法は別にないですか、別の方法
  130. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいまの先生の御指摘はいささか我々の考えと違います。我々は本件について何かを隠そうとか、そういうことを思っているわけではございませんし、決して消極的ではございません。和田氏にぜひともお会いしたいということでございますが、我々としてできる方法というものは、その意思表示をいろいろな、例えば弁護士さんなどを通じて行う以外に方法はないわけでございます。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。もう努力はされている。  大臣、やっぱりこれはお互いに今活字になると、当然一方的な主張ですから食い違いが出てくるわけですよ。これは公表するでしょう。そうすると、またそれに対してそんなことはないと、こう出てくるわけでしょうな。結局は持ち込むところに持ち込んで裁かれる、こういうことになるんでしょうけれども、余りにもやっぱり日本外交官として、外務省として当然だから処分したんでしょうけれども、好ましくないこれからの発展方向なわけですよ。個人の財産だからこれは外務省で管理してないと、あくまでも大使級といったって自分の金の問題だから、しかも商業的行為は別にあったっておかしくないとなりながら、当然のことながらこれからの推移は発表になる。それに対してまた先方の方から、そんなばかなことがあるか。そうなるとまたそれが活字になる。それで持ち込むところに持ち込む。そうすると、幾ら厳重注意したってやっぱり大大使だったわけですからね、そういう人たちがまた活字になってくる、報道される、この推移というのは非常に好ましくない方向に行くわけです。  だれがいいとかだれが悪いとか、これは私今ここで言うあれはないですけれどもね。ですから、好ましくないなら好ましくないで――済みません、もう一回藤井さん。リクルートじゃないですけれども、みずからやっぱり名のり出た方がいいわけですよ。早いうちに処理した方がいいわけですよ、だらだらとこうするより。そういう意味も含めて一生懸命やっていることはわかるんですけれども、私の考えでは、私が官房長だったらもう一カ月前に接触して話を聞いちゃっている。その中で処理をしているという感じはしているんです。ですから、そういうことで、外務省のやり方はやり方であると思いますよ、ですけれども、出るものは早く出して、食い違いは食い違いで早く処理していった方がいいと、だらだらだらだら続くと私はうまくないんじゃないかなと、こういうような感じもいろんな方面からの間接の間接の間接あたりの情報を聞きますと感じるんです。  ですから、官房長側も一生懸命やっている、早く処理する、今週中には発表する、こんなことも非常によくわかります。ですけれども、やっぱり外務省だけでやっているわけじゃない、相手がいることですから。しかし、そのとおりに処理されるかどうかわかりません。ぜひ外務大臣、外務省の調査は近々発表になる、今週中に、とともにやっぱりいろんな食い違いやなんかも早くすっきりさせて、早く誤りは誤りで外務省の人も誤りがあったら誤りですぐ謝る、こういうような処置をとった方がいいんじゃないかと感じます。これだけで別に外務大臣はその……。  それから、先ほどのナミビアの問題ですけれども、遠藤さんね、マスコミでも一部報道されましたね、資料ね。あれについての真偽をエネルギー省に聞いたんですか。それともあの資料をもらいたいと、いや、これは一年半ぐらい前に議会筋に出したものであるけれどもこれは出せない、こういうことだったんですか。あの内容についてお聞きになったんですか。内容についてはお聞きにならないんですか。
  132. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) まず先生、最初にあの新聞報道及びテレビ報道がございましてから、もしそういう内部資料があるのかどうか、あったらそれを見せてくれるのかどうかということを聞いたわけでございます。  それに対しますエネルギー省の答えは、内部資料を十八カ月前につくった、それをアメリカ下院の外交委員会に渡した、これは内部資料として渡したものだ、したがいまして日本には見せられない、見せるような種類のものではないと、こういうふうな、これは第一段階というか、とりあえずやりました私どもの作業と申しますかはそれでございます。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、そうすると、一部報道されましたその事実についての真偽を確かめる以前にひとつ内部資料を見せてもらいたいという要求をしたら拒否されたと、こういうことですね。  これは今一部マスコミも報道されました一九八七年三月十日、この資料ですけど、これを私はエネルギー省に問い合わせました。それは遠藤さんほど力ありませんけれども、いろいろ知っている人がおりますので、政府でありませんが、野党です。そうしたらこういうコメントが返ってきたんです。これをつくったのは我が方じゃありません、ただし、日本のマスコミで指摘された事実、この材料については私たちが提供したものですと、はっきりこういうコメントがついてきたんですよ。だから、私が言ったように、この内容につきましてエネルギー省の方に事実関係はどうなんですかと、やっぱり当然外務省ですから、政府機関ですから資料をもらって、それについてきちっとした見解を出さなきゃならないとこう思います。  エネルギー省の方は、私たちそれほど力がありませんものですから、その資料の内容、これはどうかと言ったら、これは間違いない、一年七カ月ぐらい前になりますか、十八カ月ぐらい前に出したものだと、資料の内容については間違いないと。大臣、ここには東電と中部電力のいろんなこと書いてありますけれども、私は英語が余りうまくないのでちょっとわかりませんけれども、広中先生に後で訳していただいて、中部電力と東京電力がナミビア、これは南アも含んでだと思うんですけれども、ナミビア産だとここにはっきり指摘されている。この内容についてはエネルギー省は、この事実関係は間違いありません、この資料についてはですよ、ペーパーはつくったものじゃない、こう言っているんですが、これもう一回事実関係をはっきりさせていただけませんか。
  134. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 先生御指摘のとおり、どうも私どもこれを確認したわけじゃないのでございますけれども、エネルギー省の内部資料と称される――称されるというのは確認していませんから――称されるものは、アメリカの原子力関係のニュークリアフューエルという雑誌でございますけれども、それの去年の七月十三日号の数字とどうもほぼ同じではないかなという、これは確認じゃございませんけれども、大体そういう感じを持っております。  したがいまして、今先生の御指摘もあり、実はこのニュークリアフューエルの数字自身が私自身はかなり理解できないところもあるわけでございます。したがって、このエネルギー省の内部資料とこれとはかなり状況証拠と申しますか、非常に同じようなあれがありますものでございますから、一体この数字はどういうところから出てきているのか、それらにつきましては秘密資料でございますから、果たしてどこまで説明してくれるかどうかというのは必ずしも自信がないのでございますけれども、エネルギー省には照会をいたしたい。これは第二段階の作業として照会をいたしたいと思っております。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 資料そのものをもらえなければ、既にマスコミで出ているわけですから、今度は内容についての真偽。  ただ問題は、ここに台湾なんて出ているんですね。ここらあたりが東電に言わせると、台湾なんか本来ここから輸入すべきものじゃないから、ちょっとこの資料の内容はおかしいんじゃないかというようなコメントがついているんですよ。ですから、エネルギー省の方もちゃんと指摘された部分については間違いがないという指摘をされた。台湾なんか余り関係ないわけです。指摘しているのはやっぱりジャパンだけなわけです、マスコミで指摘しているのは。当然ここで取り上げたいのもジャパンだけですよ。ここに六つ出ているわけですけれども、この六だけ。だから、台湾についてはもうこちらは関知するべきことじゃないんです。  東電あたりはこの資料については、エネルギー省という政府機関の資料にしては何かおかしいと、台湾なんかおかしいんじゃないかという指摘があるんです。エネルギー省の方もこちらの問い合わせに対して、今申しましたように、これをつくったのは我が方じゃないと、ペーパーは。しかしその内容については、これは我が方が出した内容と同じである、ただ、指摘された分についてはということだけ言っている。だから、もしかすると若干内容の間違いがある、あるいはどこから、今言ったように雑誌からとったものがあるのか、これをつくったのは政府機関じゃありませんからね、そういうことも示唆しているんです。それを今度は私なりにお確かめいただくということが前提ですけれども、今ここの場ではまだ確かめてないわけです。それこそ矢田部先生だったら、なぜ確かめないかと怒るんですけれども、私は理解していますものですから、おしかりをしないわけですけれども、調べていただく。  ただし、大臣、やっぱりこれだけの問題で、これは何も私が今さら取り上げるものじゃない、この前も衆議院で、それから衆議院だけじゃないので何回も大臣もこの関係というのは御存じなわけですし、それから東電を除いてはもう既にRTZと契約を終わった時点、これは幸か不幸か東電だけが九六年で、あとは八九年、九〇年なものですから、東電だけが言いにくいのか――言いにくいとか言いやすいとか問題じゃないわけです。  原発については我が党でも非常にシビアになっているわけですよ。いろんな問題がありまして、これについても根本から見直した論議をしようじゃないかと。当然国民の中でも非常にいろんな疑問が提起されている、行動が起こされているわけですから、ましてその最中なものですから。従来からこの問題が提起されてきましたけれども、実際に濃縮を担当しているエネルギー省は、もしこんなことになってナミビアからのものが来なくなったらもうけが少なくなる、こんな冗談話もしているわけですが、これは確かにそれだけ差益が少なくなるわけですね。ですけれども、我が国としては、こういうものがどこから来ているのか――だから私は通産省を呼んでないんですよ。通産省の田中さんはいませんね、田中さんがいてもしようがないわけ。田中さんは目白台の方に一人いりゃ結構なわけですからね、呼んだってしようがないもの。この前のときだってそうでしょう、大臣。あんなもの、ナミビアなんか入ってない、入ってない、岩垂さんのときも最後になったら、いや入ってないと言ったって、知り得ない立場にあるから、だから知り得ないんですと。岩垂さんも、それじゃ入ってるか入ってないかわからないんじゃないかと言ったら、そのとおりです、なんというようなことで。  通産省は、当然のことながら電力会社に直接の行政指導をしている官庁ですし、いろんな関係も当然あるんでしょう。ですから外務省、外務大臣、七四年の布告もこれあることですし、それから南アフリカとの貿易の問題でも、国際的にいろいろ批判を受けたわけです。私は東電だけと言いませんよ、幸か不幸か東電だけがコメントできないわけですよ、今。本当は東電も六つの中に入りたかった、こう思います、私は。ですけれども、要するに九六年まで長期契約結んじゃったから、もううちだけがどうも割り食っちゃったんだと、こういう心境だと思いますよ。ですから、この次の契約時においてはやっぱりナミビアということについては考慮する、輸入先がはっきりしないものについては輸入しない、こういうことは当然過ぎるぐらい当然。ですけれども、当事者のアメリカでも下院で、そうですね遠藤さん、もう通過したんですね、あのナミビアからのウランはアメリカでは処理しないと。上院では今大統領選だから廃案になったんでしょう。アメリカだって議会筋で最大関心を持っているわけですよ。政府機関には任せられない、議会筋でチェックしていこうということで、下院でもうこれはナミビア産ウランは禁止する、こういうことでしょう。大統領選が終わったらまた上院で問題になってくると思いますよ。可能性は一〇〇%あると思います。  そうすると、日本は通産省リードで外務省は、外務大臣宇野さんとしちゃもう思い切って言いたいんですけれども、何か通産の関係もある、田村さんおっかないから、うるさいからなんというようなことで言いそびれていますと――やっぱりアメリカでもシビアでニューヨーク・タイムズなんか連日すごいですよ、連日とは言えませんな、藤井さんに怒られちゃう、連日じゃない、随時ですか、すごいですよ、イギリスだって今問題になっていますよ、そういう中で当事者の日本だけが東電を気にしながら、通産を気にしながら、外務省は国連の布告を支持しながら、やっぱりあのとき思い切って言っておけばよかった、東電に対して九六年の契約までも含めて自粛すればよかったとこれは言いたかったのだが、通産に気兼ねしながら言いそびれたと、こんなことじゃ非常にやっぱりうまくない。国際世論からまたたたかれる原因をつくっちゃう。  まさか外務大臣はそんなお気持ちないと思うんですけれども、どうですか。この資料を調べていただく、これはもう私やってもらいたいんですよ。ですけれども、どうも客観的に見ましてこれはアメリカのエネルギー省の資料で間違いないと思います。遠藤さんは何回もうなずいているもの。間違いないですよ。だから、ほかの五電力も自粛すると出たんですから。東電だけなんですよ。今ここであと八年間そのままにしておいて袋だたきになって、また東電じゃない日本のことになっちゃいますから、うまくないんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  136. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この報道がされましたとき、私もやはりこれには非常に驚き、なおかつこれは重要な問題になるといけないから速やかにそうした問題についてもけりをつけなくちゃいかぬと、こう思った一人でございます。したがいまして、審議官にもそのことを伝えまして、十二分に検討さしたわけでございますが、さらに確実を期すために検討もする、それが必要だろうと思います。  なおかつ、南アに対しましては、先駆けて外務省が経済界を呼びまして、御承知のような忠告をし、アドバイスをしたわけでございますので、この問題に関しましても当然九電力に今後さらにいわゆる天然資源布告等々十分尊重しておるかどうか、尊重してほしいということを強く申すことも必要であると、私はかように考えます。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 五電力は、何回も言うように、契約時期が来年、再来年だからこれはラッキーだったんです。東電なんですよ、問題は。東電は、まだイギリスがナミビアを使ってないと言ったから使ってないんだと、こんなことを今もってコメントしているわけでしょう。ここに問題があるからニューヨーク・タイムズもそれを取り上げて、マスコミの報道を踏まえて言っているわけでしょう、アメリカ議会筋も厳しい態度で出ているわけですよ。だから、日本の通産だけが非常に消極的なんですよね、東電の何か肩に乗っちゃっているのかわからないけれども。だけれども外務省の立場は、そんなことに遠慮することはないんじゃないでしょうかね。その布告を重んじてとかなんとか言わないで、これだけの事実がはっきりしているんですから、もう一回厳しく調べたらどうですか。あるいは東電にも追跡調査させたらどうですか。ただ単に、向こうが入ってないと言うから入ってないんだとオウム返しのようなことを言ったらだめだぞと、もっと厳しくもとまで行って調べなさいと、これぐらいのことを通産と相談して言ったらどうでしょうか。それじゃないと、必ず国際的にまたたたかれるときが近々来ますよ。近々来ますよ。どうですか。
  138. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) さような措置を私といたしましてもとりたいと申し上げているところでございます。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 さようなというと、黒柳の発言と外務大臣の発言じゃ重きが違うもの。さようなだけでごまかさないで、それじゃもう一回それを繰り返してくださいよ。
  140. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) はっきり申し上げますと、私たちといたしましてはナミビア天然資源の布告は尊重してほしいということを従来申し上げておるわけですから、それに触れるようなことがあって東電が現在もたもたしておるということが事実であるというふうな今御解釈であり、私たちもそれが事実ならばこれは大変なことになると思いますから、したがいまして東京電力に対しましても、この原産国を初めいろいろ懸念を持たれていることに対し、やはり身の潔白をあかしてほしい、こういうことは申し上げることが必要だろう、こう思います。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 すぐ言ってくださいよ。
  142. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) はい。
  143. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 午前の調査はこの程度にとどめ、午後四時十分に再開することとし、休憩をいたします。    午後零時二十五分休憩      ─────・─────    午後四時十六分開会
  144. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
  145. 広中和歌子

    広中和歌子君 海外におきまして日本語熱が大変に高まっているということを聞いております。それは、日本から技術を学びたいという発展途上国だけではなくて先進諸国にも広がっている。私自身の体験といたしましてもアメリカの友人などがそのように申しておりましたし、外交官の方なども広くそのような感触を得ているというふうなことなんでございますけれども、外務省の御認識いかがなものでございましょうか。
  146. 田島高志

    説明員(田島高志君) 現在、諸外国我が国に対する関心が非常に高まっておりますが、特にそのような高い関心を反映いたしまして日本語学習者の数あるいは日本研究者の数が大変にふえております。アメリカ、ヨーロッパ、東南アジア各地でそのような状況が見られることを私どもも強く認識いたしております。
  147. 広中和歌子

    広中和歌子君 それと同時に、日本語を教える質の高い教師が求められている。そのようなことを聞くんでございますけれども、いかがでございましょうか、その点につきまして。
  148. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生おっしゃるとおり、諸外国からは日本語教育につきまして、日本語教師の派遣を求めたり、あるいは日本語教材の送付を求めたり、それに対する協力要請が非常にふえております。
  149. 広中和歌子

    広中和歌子君 十月三十日の新聞報道によりますと、日米文化教育交流会議、そこでも「日本語教員の派米を」そのような要請がなされたと伺っておりますけれども、外務省としてはどのような具体的な対応をなさっていらっしゃるおつもりなのか。このことは文化交流の視点からも、そして文化の面での日本からの貢献、これは竹下内閣の打ち出されていることでございますし、外務省のお立場だと存じますけれども、そのような立場からどのような具体的な対応がおできになるのか、お伺いいたします。
  150. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生おっしゃいましたとおり、先般ワシントンで日米文化教育交流会議、カルコンと略称いたしておりますが、その会議が開かれました。その会議は幾つかの分科会に分かれておるわけでございますけれども、それらの分科会でアメリカ側から、アメリカの国内で日本語学習者数が研究者のレベルあるいは大学生、高校生の各レベルにおいて急増しているという報告がございました。そのような状況の中で、特に高等学校レベルにおける日本語教師の需要が非常に増加している、したがってそれに対応するために日本側からも日本語の教師を派遣するという問題について日米双方で検討していけないだろうかという発言がございまして、私どもも、日本側もそれに対応いたしまして検討をお約束してまいりました。  その場ではアメリカ側からは、州によっていろいろ事情も違うと思う、現在ある教授がその関連の調査をしているという状況もあるという御報告がございましたので、そのような調査の結果も私どもに知らせていただきたいというお願いをしまして、それらの実際の状況を把握しながら、先ほど申し上げました問題について日米双方で検討していこうということになったわけでございます。
  151. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほど同僚委員からも御指摘がございましたように、日本文化予算というのは非常に少ないわけでございますけれども、ODA予算、これは発展途上国に限られてしか使ってはいけないんでしょうか。つまり文化面での日本貢献、それはもう最近の状況では先進国、発展途上国といったようなカテゴリーなしにそういったODA予算の一部が使えるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  152. 田島高志

    説明員(田島高志君) ODAは、先生御案内のとおり、開発途上国に対する協力を目的とした予算でございますので、先進国に対する協力には使用することができません。  したがいまして、この米国の場合のように、今回の要請に対しまして協力をすると申す場合には、経費の問題もどのように日米間で分かち合うかという問題も含めて検討をしてまいりたいというふうに考えまして、アメリカ側ともそのように話し合ってまいったところでございます。アメリカ側もその点につきましては事情を理解しておりまして、経費等の分担については今後検討してまいりたいということは申しておりました。
  153. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は数カ月前、一つの提案をさせていただきましたのですけれども、仮称逆ジェットプログラムと申しまして、これは竹下総理宇野外務大臣、文部大臣そのほか各関係大臣に御提案申し上げたわけですけれども、日本の学校の先生、中学校、高等学校の先生方に日本語の先生として海外に行っていただいて、そして一年なり二年なり滞在し、向こうで貢献をしていただく。そして貢献をしていただくだけではなくて、先生御自身にとって幅広く外国の実体験をしていただく、そしてその体験をお持ちになって、また日本にお帰りになり、再び学校の先生として生徒に接していただく、これは国際化に非常に資するのではないか。これは我田引水の言い方で大変おこがましいとは思いますけれども、そのような提案をさせていただいているわけでございます。この点につきまして外務省のお立場をお伺いできればと、さらに外務大臣の御感想、御意見などをおっしゃっていただければ大変ありがたいのですが。
  154. 田島高志

    説明員(田島高志君) 日本語教師を派遣するような事業は、アメリカにおける日本語教育の促進に資するということだけでなく、日米間の草の根レベルの相互理解の増進にも資するものというふうに考えます。  しかしながら、実際には実施上の問題もいろいろあると思われます。どの程度の学校でどのようなレベルの先生が要るのか、あるいは学習者数はどの程度なのか、レベルはどの程度なのか、それから州によっても事情が違うかもしれません。それから、そのような先生をもし派遣します場合には、やはり日本語の教授法について訓練をした上で派遣する必要があろうかと存じます。  そういうような事情を考えますと、日本での英語の先生を派遣することが英語の研修も兼ねて一番適当な方法であるのか、あるいはまた別の方法考えられるのか、いろいろな側面から検討をしていく必要があると存じております。したがいまして、この問題につきましては、外務省といたしましても関係省庁とこれから御相談をしてまいりたいというふうに存じております。
  155. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 広中委員からは、今おっしゃいましたとおり逆ジェットプログラムというのでいろいろとお話を伺っております。非常に構想としては一つの構想ではないかと私考えておりますが、やはり需要と供給というような問題もございましょう。さらにはまた、例えば音年協力隊等におきましても既に日本語を教える人たちもふえてきておりますし、現在の協力隊は二十五歳で年齢制限がございますが、私たちは、第一線を退かれた人たちでもなおかつおれはひとつ世界のために頑張りたいというお方も私は多分いらっしゃるのではないかとこう思いますと、いわゆるシルバー協力隊でございますが、そうした方々にもやはり昔とったきねづかとして日本語を十二分に教えていただく資格がある方がいられるのではないだろうか、そういうことを思っております。したがいまして、今、田島部長からお話がございましたが、そうしたことをすべて包含しながら、大切な問題として検討いたしたいと思います。
  156. 広中和歌子

    広中和歌子君 大変前向きなお答えをいただいてうれしいのでございますが、JICAの海外協力隊に関しましてはたしか発展途上国しか派遣できないという制限があるのじゃないかと思いますが、文部省のお考えをお聞かせいただけたらと思うわけでございます。  情けは人のためならずという言葉がございますけれども、学校の先生に、長い教員の期間で特に若い間に外国を見ていただく、それも、見学する、研究するというお立場だけでなく、日本語を教える、貢献するというお立場で現地の方に触れていただく、そして広い視野と国際的な視点で学校に戻られ生徒に接していただくというようなことで、文部省としてはそういう先生を派遣なさるということで幾つかの問題もおありかと思いますけれども、御意見をお伺いしたいのでございます。
  157. 森正直

    説明員(森正直君) 御説明申し上げます。  ただいま先生おっしゃいました逆ジェット構想につきましては、私どももよく承知いたしておりまして、文部省といたしましても、中学校、高校の例えば英語の先生が、おっしゃるような形で傍ら日本語教師として活躍しながらみずからも語学力あるいは語学指導力を広げていくということは大変有意義なことだというふうに私ども認識いたしております。  ただ、先ほどからもちょっとお話がございますように、若干検討すべき課題もございます。例えば現在文部省の方で既に二カ月ないし六カ月間、中学、高校の英語教員を海外、アメリカ、イギリス等に派遣しておりまして、こういった既存の事業との調整の問題、それから国際交流基金が日本語教育専門家派遣事業をおやりになっておられますが、そういった事業との調整、つまりいろいろ似たようなことが競合いたしますと財政の枠の問題というようなことも絡んでまいりますので、そういった点が一つございます。それから、教員を半年、一年という長期に派遣いたしますと、教員の後補充、臨時教員の問題がございまして、これは具体的には自治省との関連が出てくるわけでございます。  そういったことがございまして、現在私どもは、文部省内としては既存の事業のそういったものとの調整ですとか、それから対外的には自治省との連絡、話し合いというようなことで、こういった非常に有意義なことですので、できればやってみたいということで検討中でございます。
  158. 広中和歌子

    広中和歌子君 今の文部省の御答弁を受けまして、外務省そしてまた自治省などをお誘いいただいた上で何かプロジェクトチームなどをつくっていただくことができないだろうか。私は、ジェット計画をモデルにしてといったよう意味で、その逆の立場、つまり日本の先生に海外に行っていただくということで逆ジェットという言葉を使いましたけれども、小規模から始めていただいて結構なわけでございまして、様子を見るという意味でもパイロットプログラムの実現をできるだけ早い時期にしていただきたい。さしあたって、まずプロジェクトチームみたいなのをつくっていただけないだろうか、そのための予算措置などを御検討いただけないか、そのことについてお伺いいたします。
  159. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生まさにただいまおっしゃいましたように、実はジェットプログラムとしては昨年から開始されたわけでございますけれども、その前に小規模の英語指導教師の招致事業というような形で昭和五十二年あるいは五十三年からアメリカないしイギリスからの招致事業が始まったわけでございます。初めは九人とか十人とか、そういう規模で始まりました。その経験のもとにジェットプログラムという形に発展したわけでございますので、今回、先生がまさにおっしゃいますように、日本側から日本語の教師を派遣するという場合にも小規模のものから考えていくということが現実的なやり方ではないかということで、カルコンにおきましてもパイロットプログラムを検討していくということで話し合いが行われたわけでございます。したがいまして、先生がおっしゃいましたように、文部省、自治省等の関係省庁とも相談をこれから鋭意行ってまいりたいというふうに存じます。
  160. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。次のテーマに移らせていただきます。  南ア連邦の日本への入国ビザ申請の現状についてお伺いさせていただきます。  現在何人ぐらい入っているのか。ビジネスの場合、そしてノンビジネス、つまり観光とかスポーツ、文化交流それらに分けてどのくらいの人々が日本に入国ビザを申請し、そしてまた日本にいらしているか、その点についてお伺いいたします。
  161. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 南アからの日本への入国者数でございますが、査証の発給数は六十二年の実績で二千足らず、約二千でございます。内訳を申し上げますと、商用目的が約千七百、その他駐在等が六等となっております。
  162. 広中和歌子

    広中和歌子君 そうすると、文化交流に関しましてはいかがなのでございましょうか。
  163. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 文化を目的とする入国につきましては、我が国は関連の国連諸決議を尊重いたしまして従来からこれを制限するという立場でございますので、原則としてそういうものは入っておりません。
  164. 広中和歌子

    広中和歌子君 今まで文化交流または例えば国際会議出席するといった理由で南アからはお入りになっていないんですか。
  165. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 学術目的につきましては、例外的に個別に審査した結果、例えば六十二年につきましては二十一名の入国が認められております。
  166. 広中和歌子

    広中和歌子君 学術目的は一部例外としていらっしゃるということでございますけれども、観光、文化交流その制限している理由についてもうちょっと詳しくお話しいただければと思います。
  167. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 先生御案内のとおり、我が国は従来からアパルトヘイトに反対するという立場をとっておりまして、国連におきまして幾つかの関連の決議が採択されております。その中で南アとのスポーツ、文化、教育及び学術分野交流等につきましてこれを制限すべきであるという趣旨がございますので、それを尊重して、原則的にはこういう目的のための来日は認めないという立場をとっているわけでございます。
  168. 広中和歌子

    広中和歌子君 学術目的のためには例外として二十一名入れていらっしゃるということですけれども、例外としての条件をつけていらっしゃるというふうに伺っているわけですけれども、それはどのような条件でございましょうか。
  169. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) ただいま御説明申し上げたような原則に立っているわけでございますけれども、あわせて学術分野国際交流も重要だということから、特に入国を認めるべき特別な事情があると判断されるときには査証の申請を受理いたしまして、我が国の対南ア政策に反しない範囲で査証発給の可否を検討することとしております。したがいまして、南ア人の科学者の査証申請受理に際しましては、国連決議の趣旨を可能な限り尊重するとの観点から、申請者が人種的偏見を有せず、また人種差別組織に所属していないということを条件といたしております。
  170. 広中和歌子

    広中和歌子君 こちらに私がいただいた「ビザ・アプリケーション・フォーム・ツー・エンター・ジャパン」というようなのがあるのでございます。日本語の訳としては、私は人種差別主義者ではなく、人種差別団体に属していない、そういうことを誓ってサインをすればビザを申請できる、そして受け付けるということでございますけれども、英語ですと「アイ ドゥー ノット ホールド エニ レーシャル プレジュディス」これが最初の項です。人種差別主義者ではないというのが「アイ ドゥー ノット ホールド エニ レーシャル プレジュディス」になっているんですね。日本語ですと、人種差別主義者ではないと。あなたは人種差別主義者かと言われますと、私はそうじゃございませんよというふうに言える人は当然大勢いると思うんですけれども、「アイ ドゥー ノット ホールド エニ レーシャル プレジュディス」これですと、例えばそういう場合、私は人種差別主義者じゃないけれども、人間である以上差別というのはだれでも多少は持っているものではないかと思うんですね、この英語の文章でございますけれども、余りにも一般的で、そしてこういう書類を突きつけられてサインをしろと言われたときにちょっと戸惑うんじゃないかなというふうな気がするのでございますが、いかがでございましょうか、御意見をお伺いしたいと思います。
  171. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 先生御指摘の点は私もそれなりに理解いたしますので、この点につきましては私なりに勉強してみたいと思います。
  172. 広中和歌子

    広中和歌子君 国連決議に参加した国々は何カ国ぐらいあるんでしょうか。そして、これらの国々では日本と同様な制限あるいは禁止、ビザ・アプリケーションを受け付けない、そういう例があるのでございましょうか。
  173. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) この学術、文化あるいはスポーツ交流の停止を求めるという国連決議は、実は毎年いろんな形で行われておりまして、必ずしも一つの決議ではございません。したがいまして、ちょっと国の数等につきましてはつまびらかにいたしませんけれども、各国で若干この運用面におきまして違いがある可能性はございます。  といいますのは、この決議は勧告でございます。したがいまして、そういった意味で若干の運用上の違いがあるかもしれませんけれども、日本の場合にはこの決議に常に賛成をしてきている、そういうことからこの決議について厳格に守っている、こういうことであろうと思っております。
  174. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 時間をオーバーしておりますので、もう一問ぐらいでひとつおやめいただきたいと思います。
  175. 広中和歌子

    広中和歌子君 では、肝心なことを伺わせていただきます。  国際学術連合という機関がございます。ICSUという機関でございますけれども、その機関が日本での総会の開催を断った。それはこのICSUが建前として持っておりますところの学術交流の自由、それに反するということで日本での総会の開催を断ったわけでございます。  このことなんでございますけれども、国連決議を配慮するということも大変大切なんでございますけれども、我が国として学術会議日本で開催されることは国際貢献立場からも、また日本の科学発展のためにも非常に重大なことだろうという国内事情があるのではないかと思います。そういう国内事情を配慮いたしまして、国連決議の解釈、それをどのように扱うかということで各国に差があるということでございますけれども、もう少しゆとりというんでしょうか、流動性のあるお取り扱いをしていただけないか宇野外務大臣に最後にお伺いして質問を終わります。
  176. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いろいろ難しい問題も中にはありますが、私たちといたしましては既定方針どおり進んでいきたいと思います。今御指摘の面に関しましては十分に検討させていただきます。
  177. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 大臣にお伺いしますけれども、きょうは十一月八日でして、ちょうど一カ月後に十二月八日という日を迎えます。日本の真珠湾の奇襲攻撃に始まって、そして宣戦布告、太平洋戦争を開始した日です。私はこの十二月八日を前にして、我々がかつて行った戦争をめぐって世界からとかく言われるようなことが絶対にあってはならない、疑惑を受けることさえもあってはならない、そういう立場を我々はとるべきだと思っています。このことはこの委員会で私何回か述べてきたところです。  私、最近もある西ドイツの人と話しする中で、戦後の西ドイツの生き方ということを聞きまして大変感心しました。というのは、二度も世界に戦争をしかけたドイツが、戦後、世界からいかなる疑いも持たれないで生きていくためには、我々が戦争にどういう態度をとっているかということを厳しく態度を表明し続けること、これが大事であると、幾らそういってもなお二度も戦争をやった国に疑いを向けられる余地は常にあると、しかしそれを避けるために、ドイツは少なくともナチに対する態度は常に厳格な態度をとっている、私人は別として、連邦議会に席を置く者、あるいは政府関係者等でニュルンベルグ裁判を批判するような者や、ナチに幾らかでも寛容な態度をとる者は絶対ないと私は断言しますと、そういうふうな話でした。  最近も報道で、西ドイツのワイツゼッカー大統領が、西ドイツでもアウシュビッツのようなことは他の国にもあったとして、ナチの戦争犯罪を相対化しようとする動きが歴史学者の一部に生まれているのに対して、ナチの戦犯を風化させてはならないという警告を発したと。これは十月十二日に行われた西ドイツの歴史研究所大会での講演の話ですが、「歴史学が明らかにしていく事実は、ナチの犯罪を少しも緩和するものではない」「ナチズムのもとでドイツ国民とその隣国に生じたことは、他の人々の責任にすることはできない」こう発言したということを聞きまして、ワイツゼッカー大統領の解放四十周年の世界的に話題を呼びました演説とあわせて、同じ戦争をドイツと同盟を組んで行った国として、これは非常に傾聴すべき発言ではないかというように受けとめました。大臣所見をまずお伺いしたいと思います。
  178. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 西独大統領の御発言は、アウシュビッツを初めとするユダヤ人虐殺、これに対しましての罪の意識を率直に申し述べられたことであります。同時にまた、私たちがいろいろ承っておるところによりますと、それとスターリン治政下における犠牲者はどうだろうか、同日に談ずることができるのだろうか。いろいろな話があった中での一つの決断でございますが、私はやはりナチの虐殺に対する反省と、そして歴史に対する深い洞察の一つの大きなスピーチであったと、かように評価したいと思います。
  179. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、大臣も同感だとおっしゃったワイツゼッカー大統領の発言と比較してみた場合に、日本における過去の戦争に対する態度については非常に軽率というかあるいは本音を出したものというべきか、これはまあ評価のしようがあると思いますけれども、しかし西ドイツの人から見ればまことに無神経ともとれるものがしばしばあると思います。  それは、この間この委員会でもいろいろ私も含めて論議になった経過もあるものですけれども、ちょうど十二月八日を前にしてのことですから、これは二年前の新聞ですけれども、自民党の機関紙である自由新報に源田実さんの長い大きい手記が載っておりまして、これは「世紀の奇襲成功せり」というので、国際的にもう既に審判の下っている真珠湾への奇襲成功の戦果を誇る手記が堂々と載っている。  ことしの四月、私はワシントンのよく知っている記者が東京へやって来ましたときにいろいろな話の中でちょっとこの話に言及したところ、それはアメリカでそういう新聞が知られていないか日本は助かっているけれども、そういうものがアメリカで公開でもされればこれは大変な論議を呼ぶに違いないということを言っておりました。どこか民間の取るに足らない新聞なら別ですけれども、政府・与党の機関紙にこういう真珠湾奇襲攻撃の戦果を大々的に誇る記事が出るというふうなことは、さっき言いました西ドイツがとっている態度とも違うもの、やはり政府・与党というのは公的な日本を代表する立場ですから、いささかこういうのが出るのは日本が疑われるということの一つになるのじゃないかと私は思いますけれども、いや、そういうのは構わないという意見かどうか、大臣伺いします。
  180. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 自民党員である以上は、まあすべてそういう党の機関紙に目を通しておくべきでございましょうが、実は私まだ目を通しておらなかったものでございます。したがいまして内容がどのように書かれておるか、まだ不明の点が多うございますが、しかし我々といたしましては常に申し上げておるのは、経済大国日本は決して軍事大国になりませんということが戦後四十三年間変わらざる日本の気持ちではないだろうか、そうした誓いがあってこそ初めて私たち世界の平和に貢献できる民族であり、国家であるということが言えるのではないかと、私はさように思っております。竹下総理もそのような気持ちでおられます。したがいまして、そうした内容に立ち入ることは私はコメントできない立場でございますが、もしかりそめにも過去の真珠湾攻撃を褒めたたえるような記事ならば、これはけしからぬ記事であると申さなければなりません。
  181. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この手記は、結びが「いずれも飛行機乗り冥利につきる忘れがたきことである。」と結ばれておりまして、これは本当にこのごろリクルート問題で町を歩くのが恥ずかしいという言葉が自民党の会合でも出たそうですけれども、私はこういう新聞が出るのは外国の人と会う場合にまことに恥ずかしい思いをせざるを得ないものですので、今の大臣の見解ですからそのようにお願いしたいと思います。  ついでですから、やっぱり自由民主党の機関紙である自由新報、これは十一月一日付ですけれども、天皇をめぐる東京都議会の出来事の報道記事ですから、私はこの記事の中身全体をここであれこれ言おうとしませんけれども、同じ趣旨で気になる表現がありますので、この点についても言明をお願いしたいと思います。  問題の箇所というのは、「野坂参三名誉議長が戦時中、わが国と交戦した八路軍の手先きとなった事実が示すように、共産党員の中には旧日本帝国を敵国としたものが多く含まれている。」そういう表現です。この表現ですと、この箇所に関する限り、自由民主党はやはり中国に侵略戦争を行った旧日本帝国を支持する立場、擁護する立場に立ち、この日本中国への侵略戦争に反対した者を敵対者とみなす立場が表明されていると思います。  この春の委員会で、外務大臣中国に対する戦争というのはやっぱり侵略的な戦争だったということをお認めになりましたので、外務大臣が旧日本帝国を擁護する立場だとは私は思いませんけれども、同じようにこういうことが、さっきも言いましたように、どこか民間の新聞の取るに足らないものに出るのなら、これは私もあえてここで取り上げませんけれども、やはり政府・与党の新聞にこういう表現が出るということは、西ドイツでならあり得ないことではないかという気がして読めましたので、これもお読みになっているかどうかわかりませんけれども、一言言明しておいていただきたいと思います。
  182. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私としてはしばしばこの委員会におきましても言明いたしておりますが、ことしは日中友好平和条約締結十周年で、そのときの共同宣言において、私たちは戦争を通じて中国の民衆に多大の迷惑をかけたことを深く反省し遺憾とする、そうした趣旨を述べておりますから、やはりそのことは我々はきちっと守っていかなければならない、かように考えております。
  183. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この点は、今の大臣の答弁が今後こういう出版物でも貫かれることを期待して、次に進みます。  今、話題にもしました天皇をめぐる日本のいわゆる自粛の動き、これは国際的にも御存じのように大きな話題になっております。私のところにも外国の特派員が相当たくさん取材に来ます。その取材に来る外国特派員の私らに対する質問の要点は、天皇をめぐって日本国民が一糸乱れず動いているこの異様な状況を見ると日本は全体主義の国だという感じを受ける、ファシズムになるのじゃないか、軍国主義になるのじゃないか、そういう心配を持つけれどもどうなのかと。中には、日本共産党は近く非合法になるのじゃないかという心配をしてくれる特派員もおりましたけれども、私はそういう人に、そうではないんだと、共産党が非合法になる心配ももちろんないんだということを言っておりますけれども、そういう印象を与えている。ル・モンドは、マスコミが日々の行為と健康状態のあらましを報ずる天皇の脈拍のリズムで生きているかのようであると、こういう皮肉った記事を載せております。  こういう日本の天皇をめぐる事態の中で、外国のマスコミ報道の中では天皇の戦争責任を含む非常に多くの論議が行われている。この事実は外務省も御存じになっており、お認めになると思いますけれども、いかがでしょうか。
  184. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 去る九月末に天皇陛下の御容体が悪化して以来、外国の新聞は一斉に関連記事を掲載しております。  右記事の中には、陛下の御容体そのものにかかわるものとともに、我が国の戦争責任問題や、右に対する陛下のかかわり合いについて述べているものも相当見られております。右の中には、陛下に戦争の責任があるとするものもありますが、同時に、これを否定して、終戦の際の御決断を例にとりつつ、陛下のお立場を擁護するものも多く見られております。
  185. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 ですから、私が戦争責任をめぐる論議というふうに言いましたのは、いろいろな意見があることを念頭に置いてそういうふうに言ったわけです。  そういうマスコミ論議の中でフランスのル・モンドは、そういう論争に火をつけたのは日本外務省だと、こういうふうに書いております。それは、イギリスの新聞サン及びデーリー・スターへの抗議によって、外務省は皮肉にも、この抗議で憲法で国の象徴としている天皇を国家元首とすることによってこの問題の論争に火をつけたと、こういう皮肉を書いております。これは九月二十五日付のル・モンドです。  そこで、お尋ねしたいと思いますが、こういう皮肉を込めた論評を受けたイギリスの二つの新聞への抗議、これはどの段階責任で行われたのか。これは文章によると、日本政府の名による抗議ですけれども、総理まで御存じになってのものなのか、あるいは外務大臣は御存じなのか、どの段階責任で行われたのか、これをまずお伺いします。
  186. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 先生御指摘の抗議文は、外務省が所管事項として対応したものでございます。
  187. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 外務省のどの段階かです。局長なのか、大臣なのか。
  188. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 相談を受けましたので、私が決裁をいたしました。
  189. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 わかりました。  今、言いましたように、この抗議というのは国際的に天皇の戦争責任を含む論争に火をつけたという論議もあるほどであり、国内でもさまざまな論議を呼んでいるわけです。この抗議は非常に適切、有効なものだったと今日の時点でもお考えになっているかどうか。  私は外務省ともかかわりがあると判断できる国際関係の仕事をなさっている人に聞いたところ、あれはつまらぬことをやったものだなと、恐らく大臣らも御存じの人だろうと思いますけれども、会ったときにそういう話をなさっておりました。今の時点でどういうふうに判断なさっていますか。
  190. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはり我が国の天皇に対する大変な侮辱でありました。記事をお読みになるとおわかりだろうと思いますが、これを黙視することはできません。また、相手雑誌社がどの程度のものであるかということも十分私たちは承知しております。内容的にはいろいろ議論のある雑誌社であるというふうな評価を受けているらしゅうございますが、何分にも発行部数が非常に多い。  そういうことから考えますと、やはり我々日本といたしましても、各国との友好のきずなを今日固めているときに、こうしたことが喧伝されるということは決してよいことではないというので私は抗議をすることを命じたという経緯でございます。
  191. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今の大臣の答弁の中に一つ気になることがあるんです。それは雑誌がいわば程度の低い雑誌だという趣旨の発言ですけれども、新聞、雑誌の評価はいろいろあると思いますけれども、イギリスで最大の発行部数を持つ新聞だと私は聞いております。そうすると、そういう問題のある雑誌が一番多く読まれるということになると、イギリスの国民というのはこれまた程度が低くてそういう新聞に飛びつくのかなということにもなりかねないので、私はそういう点では今の大臣の発言、その箇所については、そこまで言われなくてもよかったんじゃないかと思います。  それはそれとしまして、抗議文で言うところの誹謗中傷の中身、これはどういう点が誹謗中傷だというように判断なさったのですか。
  192. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 新聞の中には、例えばサンのケースでございますけれども、「地獄が真に邪悪なる天皇を待っている」とか「沈みつつある悪魔の息子」とか、それからデーリー・スターでは、「ヒロヒトは血の帝国を支配した」とか、この種の非常に醜悪、どぎつい表現がありまして、こういう表現自体極めて遺憾であると考えた次第でございます。
  193. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この新聞の個々の表現の中に、今おっしゃったような抗議をしなくちゃならないとお考えになったということですけれども、十一日の内閣委員会での松田報道官の答弁では、表現、内容、そのすべてを見まして、放置することができないものだ、こういうふうに答弁なさっていますね。そうすると、表現が適切だったかどうかという問題と違って、表現も内容も全部だめだということになりますね。私も長く新聞記者の生活をやりましたから、私が記事を書けばああいう記事じゃなくてもうちょっと別の書き方をするだろうと思いますけれども、それは別としまして、表現、内容ということになると、あの記事は、記事の書き方、表現はいろいろ議論があるとしても、内容の中心テーマは、やはり日本と天皇の戦争責任ということをテーマにしたものであって、その日本と天皇の戦争責任の報道の仕方が日本政府から見て云々だったということでなく、内容、表現ともという十一日の答弁どおりだとすると、これは今の答弁とも違って、ちょっと私は一言言わなくちゃならないことになるんですけれども、もう一度答弁をお願いします。
  194. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 私は、特に目立った点を今申し上げたわけですけれども、もちろん論調そのものが中身も含めまして問題があると考えた次第でございます。
  195. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 ということになると、天皇の戦争責任を批判し、論評していること自体が抗議の対象になるということですか。
  196. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 先ほどから御説明しているところでございますけれども、この記事は内容、表現双方におきまして、我が国の憲法におきまして「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と決められております天皇陛下に対する侮辱だというふうに我々判断いたしましたので抗議をした次第でございます。その記事の中に戦争責任ということに触れた部分もございますけれども、その点があったから抗議したということではございません。
  197. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、例えばフランスの新聞のリべラシオン、これにも「ヒロヒトは日本がナチス・ドイツの側について戦った第二次世界大戦の”立て役者”である」こういう報道をしておりますが、こういうのは非礼でない、誹謗中傷でなくて抗議の対象にはならないということですか。
  198. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 具体的にどのような記事に抗議をして、どのような記事に抗議をしないかというのは我々外務省で判断しているところでございますけれども、先ほど御説明いたしましたとおり、海外の新聞の中には天皇の戦争責任を論じている新聞も幾つかあるわけでございます。  我々といたしましては、これらをもちろん全部検討したわけでございますけれども、現在までのところ、抗議をするべきだという判断に到達いたしましたのは、ただいまのサンとデーリー・スターの二紙のみでございます。
  199. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 オランダの新聞のフォルクスラントというのでも「第二次世界大戦中、何千人もの東インドのオランダ人が文字どおり天皇の名の下に首をはねられた」こういうことを書いた新聞もあるわけですね。だから、天皇の戦争責任について論ずること自体は問題にしないんだということだと受け取って構いませんか。
  200. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 問題にしないという表現がいいかどうか別にいたしまして、現在までのところ、天皇の戦争責任を論じました外国新聞の記事につきまして、抗議をすべきだという判断を我々がしたものはなかったということでございます。
  201. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本政府日本及び天皇の戦争責任を批判し論評すること自体を問題にしているということになると、これは大変な国際的な批判を受けると思いましたので、この点はきちっとしておきたかったわけです。  イギリスの二つの新聞についても、基本は、そこで言おうとしているのは、日本と天皇の戦争責任の問題をあの新聞はあの新聞のああいう表現でやったものであって、表現、内容というふうに言われると、私はそれに異論があるということはさっきも言ったとおりですけれども、多くの新聞で日本の天皇の戦争責任を論議しているけれども、それ自体についてはとかく言っていないことが示すとおりというのが日本外務省の態度なんだ、こういう了解の仕方で結構ですか。
  202. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 申しわけございませんが、ただいまの御質問の趣旨ちょっとわかりかねますので。
  203. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 要するに、いろいろな外国の新聞が天皇の戦争責任を論評しているけれども、そのこと自体をやり玉に上げて抗議することはしないというのは、日本政府がそういう新聞すべてに抗議していないところに日本の外務省の態度があらわれている、そうとっていいのかということなんです。
  204. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 外務省といたしまして、戦争責任を論じている外国の新聞の論調に対しては抗議をしないという決定をしたわけではございません。  ただ、先ほど来御説明しておりますとおり、現在までにも幾つかの外国の新聞が天皇の戦争責任を論じておりますけれども、これらのいずれにもつきまして我々としては抗議をすべきだという判断をしてこなかったということでございます。
  205. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その次に、この抗議文の中身の問題に入りますけれども、これは内閣委員会でも論議が行われた問題ですけれども、この抗議文の中にある元首という表現の問題に関連してです。この抗議文では、用語としては主権者、支配者の意味をも持つ「ソブリン」という言葉を使ってあるということも論議になっております。  私は、まず法制局にお尋ねしますけれども、現行憲法には天皇を元首とする規定はない、こういうふうに、わかり切ったことのようですが、確認してよろしいでしょうか。
  206. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 現行の日本国憲法に元首に関する規定はないということであります。
  207. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 明治憲法ではあったというふうに、これも明らかなことですけれども、念のために、どういう形になっていたか。
  208. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 大日本帝国憲法第四条でございますが、ここでは「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ」というふうに規定をいたしておったわけであります。
  209. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうしますと、今の法制局の答弁でも明らかなように、戦前の憲法では明確に元首という規定があった、しかし主権在民をうたった現在の憲法では元首規定がなくなっている、このことがはっきりと言えると思います。この憲法制定過程では、貴族院の憲法論議の中で天皇に元首の資格を与えよという提案があったが、賛成が得られなくて今のような憲法になった、こういうことをお書きになっている憲法学者もありますが、こういう経過があったことは事実でしょうか。
  210. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまおっしゃいましたような議論があったということを学者の方々が本に書いておられるということは承知いたしております。
  211. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 天皇が元首かどうかということをめぐって憲法解釈としてはいろいろな議論があります。しかし、天皇が憲法上元首と明記されてない、規定されてない存在であるということは明確になり、しかも明記した方がいいではないかという意見があったにもかかわらずそれは明記されなかった、こういうのが現行憲法の天皇についての規定です。  私は思うに、天皇がかわったわけでもない。同じ天皇が戦前、戦後と続いていて、その戦前の憲法では元首という規定が明確にあり、同じ天皇のもとでの戦後の新憲法では、その元首という規定が論議を経てなくなったということになると、これは天皇を元首というふうに言わない方が普通の受け取り方ではないかと、こういうふうに私は思います。その議論をここでやろうというわけではありませんけれども、そういう経過がありますから、政府のこれまでの天皇についての見解というのは元首説をとられるにしても非常に慎重に複雑な言い回しで、限定をつけた言い方がなされております。今度の外務省の文書はそういう限定もなしに、無限定に我が国の元首と、こういうふうなことになっているわけですね。  外務省にお伺いしますけれども、従来もこういう形で天皇を元首というふうに無限定に明記した外交文書というものを出された例がありますか。
  212. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 私の承知しております限り、ございません。
  213. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、天皇の病気を機会外交文書に初めて元首という文書があらわれたということになると、マスコミ論評でもある、外国の新聞の指摘にもある天皇の病気を利用して天皇の権限の拡大を図るんだというふうな、そういう受けとめ方が出てくる余地があるわけですね。その議論も、私はここで外務省がそういう意図があったというふうに論議をふっかけようとは思いません。そういうことがないようにということが私の言いたい点ですけれども。  ここでもうちょっと憲法問題をきちっとしておきたいと思いますので、法制局にお尋ねしますけれども、元首ということをめぐっては憲法学者の中にはさまざまの議論があり、私が読みました本では「天皇が元首であることを否定する見解が有力である」というように書かれておりました。法制局の天皇についての見解でなく、学者の中にさまざまな説があり、天皇元首を否定する見解が有力だと、これは伊藤正己さんの「憲法」という本なんですが、大体法制局からごらんになってもそうでしょうか、どうでしょうか。
  214. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) いわゆる元首の問題につきましては、憲法学者の間においてもいろんな考え方があるということでありまして、私どもといたしましてはどの学説が有力であり、どの学説が有力でないということを独断的にちょっと判断をして申し上げるというのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  215. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それでは、代表的な日本の憲法の学者の本でどのように書かれているかということを明らかにしていただきたいと思いますが、法学協会の「註解日本国憲法」は元首問題についてどういう学説でしょうか。簡潔な結論だけで結構ですから。
  216. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 「註解日本国憲法」でございますけれども、ちょっと文章が長くなりますので、ここでは要点だけ申し上げさせていただきたいと思います。  国内的には行政の首長であるとともに、国際的には国家を代表し外交使節と同様の特権を有するというようなことをポイントといたしまして、日本国憲法のもとにおける天皇は元首ではないという考え方を披瀝されておるようであります。    〔委員長退席、理事森山眞弓君着席〕
  217. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この「註解日本国憲法」というのは決して進歩的な立場の本というわけではありませんが、そういうふうになっていると。  同じく代表的な憲法学者である宮沢さん、清宮さん、こういうような人の本ではどういうようになっていますか。
  218. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 宮沢俊義元東大教授でございますが、その著書の中では「国家を外にむかって代表する機能をもつ国家機関は、通常元首と呼ばれる。したがって、そういう機能をもつ内閣は、日本国憲法のもとで、元首の性格をもつものといわなくてはならない」、途中をちょっと省略いたしますが「元首の意味を右のように解するならば、そういう意味の元首は、行政権の主体である内閣がその地位を有すると見るべきである」というような趣旨のことを書かれております。
  219. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 清宮さんは。
  220. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 清宮元東北大学教授でございますが、その著書の中では「国の元首という言葉は、いろいろの意味に使われているが、ここで問題にするのは、外に向って一般的に国家を代表する資格をもつ最高国家機関という意味の元首である」「現行憲法のもとでは、元首的役割が内閣と天皇とに分け与えられていて、どちらも、その限りでは国を代表するが、元首と呼ぶのは無理である。したがって、現在の日本には元首の名に値する者はいないというべきであろう」というような趣旨のことを書かれております。    〔理事森山眞弓君退席、委員長着席〕
  221. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本の代表的な憲法学者の学説を紹介していただいたわけです。  私は、政府のこの問題についての見解は、これはこれまでもしばしば述べられておりますし、この問題をめぐっての論議でも述べられておりますし、それは速記録で読ませていただきましたので、これはここで詳しく述べていただかなくてもいいんですが、政府と同じ学説の学者にはどういう例があるか。
  222. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 政府は、従来から天皇が元首であるかどうかは、要するに元首の定義いかんに帰する問題であるというふうに考えており、今日では実質的な国家統治の大権を持たなくても、国家におけるいわゆるヘッドの地位にある者を元首と見るなどのそういう見解もございました。このような定義によりますならば、天皇は国の象徴であり、さらに、ごく一部ではあるが、外交関係において国を代表する面を有するのであるから、現行憲法においても元首であると言って差し支えないと考えていると、これが政府の従来から申し上げておる見解でございます。  これに近い考え方をする学者といたしましては、例えば伊藤正己元東大教授でございますが、その著書の中で、「天皇は、儀礼的・形式的な権能であるが、批准書や外交文書の認証、条約の公布、全権委任状や信任状の認証を行い、また外国の大・公使の接受を行うのであるから、表見的な代表権をもつといえる。したがって、天皇を元首と解することもできなくはない」というふうにその著書の中で述べられております。
  223. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その日本政府の見解に近い学説をとられる伊藤正己さん、この人は、今紹介がありましたことと同時に、次のようにもおっしゃっていますね。「天皇が元首であることを否定する見解が有力である」これは先ほども言ったとおりですね。それから「天皇は、条約の締結、外交使節の任免など実質的な外交上の代表権をもたないから、これを元首と呼ぶことはできないとするのも十分な理由がある」と、こういうふうにもおっしゃっているわけですね。同時に、「表見的な代表権をもつといえる」ということの結論として「天皇を元首と解することもできなくはない」という、まことに限定した「できなくはない」という表現でしかないわけなんですね。政府に近い人の学説でもそういうことであり、私は政府の学説というのは、この伊藤正己さん、政府に近い伊藤正己さんの本によっても憲法学者の中の少数意見の学説をとっておられると、こういうふうに思います。  そして、元首の定義いかんだと、定義を変えればどうにでも言えるんだということですけれども、しかしその議論は、私は従来からの政府の見解ですからここで出そうとは思いませんけれども、その政府の見解によっても、繰り返すようですけれども、非常に限定的な解釈になっておりまして、無限定に天皇は元首だというのは、憲法学説としても従来日本政府が述べられた見解の中にもないというふうに私は受けとっておりますけれども、無限定に元首だという説ないし政府の従来の見解というのはありますか。
  224. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) これは繰り返し申し上げるような形になりますけれども、日本国憲法のもとにおいては、元首ということを規定したものはないわけであります。したがいまして、いわゆる学説上の問題としていろいろな学説が唱えられているということであります。  我々の方は、そういう学説というものをいろいろ見比べながらでありますけれども、要するに元首かどうかというのは定義の仕方いかんの問題である、こういうふうに従来から考えてきておるわけであります。そしてその定義は、学説の中にもいろいろな定義があるということで、この点につきましては、先生既に十分御承知いただいているところであろうというふうに思うわけでございます。  ただいまの御質問の点で無限定にというふうにおっしゃいましたが、その点御質問の趣旨を必ずしも的確に私が理解をいたしておるかどうかわかりませんが、正確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、したがいまして元首というのは何かという定義をすることなしに、天皇が元首であるというふうに述べる学者がいるかという御趣旨でございますならば、学説を網羅的に私ども調査したわけではございませんけれども、そういう意味の定義を置かずにという意味のことでありますならば、そういう意味の無限定にということでございますならば、そういう学説があるかということについては承知をいたしておらないところであります。
  225. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今の法制局の答弁にもありましたとおりで、元首ということはさまざまの議論がある問題ですし、これは国会の議事録を私も今回調べてみましたけれども、いろいろ論議が繰り返されてきたものなんですね。それを外務省は、抗議文の中でわざわざ天皇は国民の象徴であるということだけでなく、極めて端的に元首というふうになぜ書かなくちゃならなかったのか。ル・モンドが言うように、天皇論争に火をつけたいという意図があってなら別ですけれども、私はそうも思いません。場合によっては筆が走っての表現だったということかもしれません。いずれにせよ、あれを取り消せと言ったって、それは外務省はもう既に執行した文書ですから取り消すわけにはいかないでしょうけれども、国際的にも国内的にもこういう論議があるし、起こる問題ですから、やはり今後外交文書の中では一語一語に慎重に慎重を期していただきたいというこの私の要望だったら大いに考慮していただけるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  226. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 英国の二紙に対する元首という用語を用いましたゆえんは、先ほど来政府委員がるる申し述べましたとおり、従来の政府見解そのままを用いたことでございます。したがいまして、その点に関しましては御理解を賜りたいと思います。  また、象徴天皇という我々の現在の憲法上の言葉もございます。したがいまして、そうしたことが誤解を招かないようにということにつきましては、我々といたしましても十二分に考えいかなければなりませんが、現在の天皇の地位に関しまして元首の面もあるというこうした私たち考え方は、我々といたしましても従来どおり一つの定義であるとして考えております。  なおかつ、先ほど私の英国の二紙に対しましてお話をしました際に、購読者数が多いということも一つのまた我々としての考え方の材料であったと申しましたことについて吉岡委員からの、多くの人が読んでいるその新聞がレベルが低ければ、レベルの低い人がたくさんいるというふうなことを私は申しておるわけじゃございません。その点は、甚だ失礼でございますが、そうしたことをお考えにならないように、私はそういう考えで申し述べたのではないということをここではっきり申し上げておきたいと思います。
  227. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私はそういうふうに大臣がお考えになっているということを言わんとしたんじゃなしに、こういうときですと、そういうふうにとられてもぐあいが悪いから、今の抗議文の文章の一語一語と同じように、大いに慎重を期していくことを考えていただきたいという以上のことではございません。  今、誤解の余地がないようにしていこうという答弁はありましたので、過去の文書を、これは直す、直さないというふうなことではできるものじゃありませんから話は進めていきますけれども、この十三日の内閣委員会で条約局長が天皇に関する答弁の中で「国の象徴であり一部ではございますけれども対外関係において我が国を代表する権限を持っておられる天皇」という言葉があるように私は速記録で読みました。これは、十一日の答弁では「一部ではございますが外交関係において我が国を代表している」という面がある、こういうふうに答弁なさっており、この十一日の答弁というのは従来の政府の答弁を踏襲したものだというふうに私は思います。しかし、その「一部」という限定はありますが、「対外関係において我が国を代表する権限を持っておられる」ということになると、これは憲法四条で、天皇は「国政に関する権能を有しない」と明記していることと矛盾して、何らか天皇が権限を持っているというようにとられる答弁になっております。  私は、先ほど引用しました伊藤正己氏の「憲法」の本でも「外交上の代表権をもたない」ということも述べられている点からいっても、天皇はいかなる意味でも外交上独自の判断で処理できる、そういう意味の権限というものは持っていない、つまり裁量権を持つ代表権というふうなものは持っていない、こういうふうに解釈しているわけです。法制局にお伺いしますけれども、私の解釈でよろしいでしょうか。
  228. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) まず、伊藤正己元東大教授の書かれた本でございますが、私ども承知しているところでは、先ほどちょっと読ましていただきましたように、「また外国の大・公使の接受を行うのであるから、表見的な代表権をもつといえる」というような記述があるということをまず申し上げさしていただきたいというふうに思います。  そこで、ただいまの御質問でございますけれども、天皇は日本国憲法の定める国事に関する行為を行う権能を有しているところでありまして、その第七条の第九号の規定がございますが、その規定に基づいて国事行為として外国の大使、公使の接受をされるわけであります。この点は、天皇は形式的、儀礼的ではございますけれども、一部において我が国を代表する面を有しているというふうに我々は考えてきておるところであります。このように形式的、儀礼的にではございますけれども、天皇が一部において我が国を代表して国事行為を行う権能を有するという趣旨で、条約局長が「対外関係において我が国を代表する権限を持っておられる」という表現をされたのでありますれば、「権限」という言葉を使ったといたしましても、必ずしも不適切であるということにはならないというふうに考えます。
  229. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私が質問したのは、斉藤条約局長の答弁についてではなく、天皇が裁量権を持つ権限を持っているかどうかというのが私の質問点です。もう一度そこに限定して答えてください。
  230. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 先ほど申し上げましたように、憲法第七条第九号の規定に基づいて、外国の大使、公使の接受をされるわけであります。これは国事行為でございますから、内閣の助言と承認を必要とする、具体的に言えば内閣の決定に従ってこれを行われると、こういうことであります。  そういう意味いからいたしますれば、裁量、いわゆる裁量権という意味のものは含まれていない。形式的、儀礼的に行われる、こういうことであろうかと思います。
  231. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間が来ましたけれども、もう一問。  これは条約局長にも答弁権を与えなくてはいけませんから、結論的に言いますけれども、伊藤正己さんの本も「実質的な外交上の代表権をもたない」ということも一方では言ってあるわけですね。裁量権を持った権限は持たないということは、これはもう憲法上非常に明確なんですね。  条約局長は同じ日の答弁の中で、天皇の権限を広げようとするとか、これまでの考えを変えようとする意図は全くございません、というふうにも答弁しておられるわけで、これは従来の政府の解釈を変えようというものでなく、政府の従来の解釈というのは、さっきも言いましたように「権限」という言葉じゃなくて、代表する面とかあるいは代表する立場とかいうふうなのが従来の答弁だったと思いますけれども、それと同じ意味のことを言う場合に表現がこういう用語になったということなのかどうなのか、この点は条約局長にも答弁権を保障しないと不公平になりますから。
  232. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま吉岡委員指摘のとおり、私がこういう答弁をいたしましたのは、全く従来の政府の見解を変えようという意図のもとでしたわけではございません。先ほど法制局から御説明がございましたような意味で使った用語ということでございます。
  233. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私、繰り返すようですけれども、こういう論議をしたのも、国際的に非常に多くの論議があるときに、我々は一語一語について大いに慎重を期して、天皇の病気というのを利用して日本がまた新たな軍国主義へ向かうんじゃないかという、これは本当に私のところに来る新聞記者が共通して質問していく点なんです。そういう疑惑を持たれたり、不安を与えることがないようにあらゆる面で大いに慎重を期してやっていただきたいということが私の言いたい点ですので、そういう趣旨で、大臣、よろしくお願いしたいと思います。
  234. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 天皇並びに我が国の現在の憲法等々に関しまして、やはり曲解をされる向きがあってはこれは大変でございますから、あくまでも私たちは平和国家であり、また憲法に定める民主主義あるいは基本的人権等々を守る国家であり、さらに経済大国にはなっても軍事大国にはならぬ、これはもう常に私は申し上げておるところでございますから、そうした意味合いにおきまして、今後も外交面では十二分に注意をして、我々の真意を広く世界の方々に知ってもらうように、さらに一段の努力をいたしたい、かように考えております。
  235. 田英夫

    ○田英夫君 先週の十一月一日、二日の二日間、東京で朝鮮政策の変更を求めるという趣旨のシンポジウムがありました。私も出席をしたんですけれども、日本で著名な国際政治学者あるいは自民党を含む国会議員、いろいろな方が出られて議論をしたわけですが、きょうはそのことを踏まえまして、外務省のこの朝鮮政策という点についてまた伺ってみたいと思います。  最初に一つ確認をしたいのは、日本政府の対朝鮮政策というのは基本的に朝鮮は一つだということ、つまり統一ということですね。朝鮮は一つだということを望んでおられるのか。もちろんそのことは南北の朝鮮民族自身がお決めになることでしょうけれども、日本政府としては一つということを望むのか、現在のように二つの状態でもやむを得ないと考えておられるのか。
  236. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 朝鮮半島を見てみますと、現在南には大韓民国政府がありまして、休戦ラインの北には事実上の政権が存在する、こういうことにつきましては、従来から国会の御論議の際に、当時の総理大臣あるいは外務大臣がお答えしているところでございます。
  237. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、いわゆる七・七盧泰愚宣言という盧泰愚大統領が北との関係について述べられた。内容はもう申し上げなくともおわかりのとおりであります。これに対する政府の態度、評価いかがですか。
  238. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) この特別宣言というのは、従来の韓国の北に対する政策と比較してみますと、非常に内容が建設的で、かつ柔軟なものであるというのが私たち日本政府評価、分析でございまして、この内容を支持、歓迎しているわけでございます。
  239. 田英夫

    ○田英夫君 さっきの一つかどうかという私の問いに対しては、実はずばり一つが望ましいというようなお答えになってこないところに日本政府の従来からの姿勢の問題があると私は思うんですね。  私は南北両方に多くの友人を持っております。私の認識では、二つであった方が望ましいと考えている人は極めて少ないという認識を持っているんですけれども、今アジア局長が言われたとおり、二つの政権があるということは事実でありますが、一つになりたいと朝鮮民族が南北ともに望んでいるにもかかわらず、統一がなかなかできないというその阻害要因というのは、一体政府は何だとお考えになっていますか。
  240. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 他国の内政に関する種々の問題につきまして第三国である日本としていろいろコメントないし分析をすることは控えた方がいいと思いますが、やはり長い間の歴史、政治、いろんな面での違いがございまして、こういったものの相乗的な効果というか、相乗的な原因がそれぞれ従来は阻害要因であったと思います。  ただ、先ほど申しましたように、七月七日に盧泰愚大統領が特別宣言を行いまして、北朝鮮に対して大変建設的、前向きに呼びかけている。これは申しましたように、日本政府としても支持、歓迎しているところでございます。
  241. 田英夫

    ○田英夫君 そういうお答えだとちょっとずばりという感じでわからないのですけれども、いわゆるイデオロギーの違い、東西と言われる状態、別の言葉で言えば資本主義か社会主義かという対立、そういうものがまさに朝鮮半島で際立っていたこういう状態の中で、それを乗り越えるために金日成主席は、それぞれの体制のままで高麗民主連邦共和国をつくろうじゃないかということを大変苦しい選択といいましょうか、提案をされたんだと思います。  しかし今、世界的にそうしたイデオロギー対立というものが次第に緩くなってきている、米ソ関係が最も象徴的でありますけれども。同時にまた、社会主義国家も今ペレストロイカであるとか開放政策であるとかいう名前のもとに変化しつつある。こういう状況になってくると、最も大きな阻害要因であったイデオロギー対立というものが次第に薄くなってきて統一へ向かって進み得る状況というものが出てきているのじゃないか、こう思うわけで、これは私の考えです。  そこで、最近日本政府は北朝鮮に対する姿勢を変えられつつあるように感じております。これはオリンピックが終わってから制裁措置を解除するというような状況の中で動きつつあるわけですが、ずばりお聞きしたいのは、盧泰愚大統領のいわゆる七・七宣言がその一つの要因でしょうか。
  242. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 今、委員指摘の盧泰愚大統領の七・七宣言、これも一つの新しい情勢の中に入るかと思います。また、朝鮮半島に関しましては、重要なことは、南北双方のみならず朝鮮半島をめぐる種々の関係国、すなわち日、米あるいは中、ソ等々の関係国がございます、こういった国の動きも全部勘案しまして考えてみます場合に、朝鮮半島に関しては新たな情勢が生まれつつあるという認識が生まれてくると考えております。
  243. 田英夫

    ○田英夫君 具体的にいわゆる六カ国の会談という、これについては日本政府は賛成ですか。
  244. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 国連総会で盧泰愚大統領が提案されました六カ国の会談でございますが、日本政府政策態度としましては、朝鮮半島に関しましてまず南北双方、南と北でもってまず話し合う、その上で関係国が南と北の動きを考慮していろいろ考えていくということで、まず南と北が話し合うことが重要であるというのが政府考え方でございます。
  245. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、南北は国会議員会談をやろうというようなことで既に予備的に話し合いが事実進んでおり、そういう方向で今アジア局長が言われたようなことが既に行われつつあるわけですが、日本政府として北朝鮮に対する態度で、具体的には制裁措置が解除されたということに続いて一体何をされるのか、極めて具体的にお考えになっていることがあればお答えいただきたいと思います。
  246. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 北朝鮮につきましては政府としましても広い意味での日朝関係改善ということを考えているわけでございますが、まず北朝鮮と日本との間の懸案でございます富士山丸の問題、この問題の解決がまず重要であると、こういった問題の解決を通じまして日本と北朝鮮の間のいろいろな懸案のすべての側面について北朝鮮側と話し合いを行うというのが政府方針でございます。  特定してどれがと、どれが基本的な条件というわけではございませんけれども、先ほど申しました全般的な国際情勢、朝鮮半島をめぐる流れを考えまして考慮しつつ、ただいま申しました富士山丸の問題とか、こういった懸案のすべての側面について話し合う用意があるというのが政府立場でございます。
  247. 田英夫

    ○田英夫君 例えば日ソ間の関係改善しようという、あるいは平和条約を締結しようということまで考えますと、政府は従来からいわゆる北方領土の問題が解決されなければ前進がないという、つまり北方領土の問題が日ソ関係改善の前提条件といいますか、第一の条件だというふうに受け取れる姿勢をとっておられるのですが、北朝鮮の場合、今言われた第十八富士山丸の問題がそういう要因になりますか。
  248. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 私どもは所管ではございませんが、北方領土の問題というのは、歴史的にも法的にも日本古来の領土であった北方領土、この返還を求めるという日本対ソ外交の基本の問題でございます。  一方、この富士山丸の問題、これは大変重要な問題でございますが、恐らくこの問題と北方領土の一括返還の問題、双方重要でございますが、これを同じ次元で取り上げることはできないのではないかと思う次第でございます。
  249. 田英夫

    ○田英夫君 おっしゃるとおりだと思うんですが、先週のシンポジウムの中である学者の方が、北朝鮮との関係改善に関して、第十八富士山丸の問題は確かに人道的に大変重要な問題であるし日本政府として重要視されることは理解できるけれども、これを関係改善の第一の条件、これが解決されなければ先へ進めないというふうに考えているとすれば、それは間違いじゃないかという指摘がありました。それについてはどうお考えですか。
  250. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 私そのシンポジウムに出ておりませんので、申しわけないのですが、いろいろな学者の方がおられてそれぞれ御意見をお持ちかと思います。特定の学者の方の特定の議論に関して私は論評する立場にございませんが、政府としましては先ほど私が申しましたような考え方をとっているわけでございます。
  251. 田英夫

    ○田英夫君 関係改善をしようということを真剣に考えているならば、まず相手側がこちら側に対して一体何をしてほしいのかという発想をすることが必要じゃないかなと。つまり、北朝鮮が日本に対して何を求めているか、そういう意味から考えると何だと思いますか。
  252. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 今ちょっと特定してこれというのは思いつきませんが、ただ、日本と北朝鮮とは正常なる国交はございませんが、経済関係とかあるいは限られた範囲の中の人事交流というのはあるわけでございまして、こういった面での交流というのは従来から続けられているわけでございます。  そこで、何かこれ一つとただいま委員指摘のことでございますけれども、何がこれ一つと言われても、ちょっと私としては現在御返答しかねるということでございます。
  253. 田英夫

    ○田英夫君 やはり率直に言って、北朝鮮は今経済的に大変困難な状況にある。韓国と比べまして工業を中心にして経済的に非常に格差が大きくなってしまっている。特に、一時大変誇りにしていた食糧といいますか、農業もかなり苦しい状況にあるというふうに聞いているわけですね。したがって、これは率直に言って、金日成主席自身もかつて言っておりましたが、日本との経済交流ということを非常に望んでいると思いますね。ただ、負債の問題があるとかいろいろ困難な条件があることは事実でしょうけれども、私は、経済協力と広く言ってしまってもいいと思いますが、盧泰愚大統領の七・七宣言もある中で、従来とは違った環境があるわけですから、国交はありませんけれども、経済協力という観点から考えられることがあるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  254. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 朝鮮半島をめぐります現在の国際情勢にかんがみますれば、我が国としては、先ほど申しましたとおり、今のところ北朝鮮との間で国交を結ぶ状況にはなくて、現段階において北朝鮮に対して政府経済協力を行う考えはしたがってございません。  また、一般の経済交流でございますが、現状では経済交流、通常の貿易がございますが、委員御高承のとおり、北朝鮮は日本に対して約六百億円程度と言われる債務を抱えておりまして、日本はこういった民間の通商に関しましては自由でございますから、これにつきましても民間の方から見ますれば、こういった債務の問題の円滑なる解決ないし解決に関する合意というのが重要ではないかと思う次第でございます。
  255. 田英夫

    ○田英夫君 具体的に今北朝鮮側が望んでいることの一つで、気象衛星を受信する装置を日本の企業に頼んで北朝鮮につくりたいという動きが在日朝鮮人の北朝鮮籍の人を通じてあります。しかしながら、制裁措置というふうな雰囲気の中でこれが実現をしていない。その日本の企業、名前は挙げませんけれども、その企業はことしの春の段階で前向きに検討していたのを突然中止してしまったというようなことがあります。この辺のところは一つの勘どころじゃないかなという気がいたします。これはお答え要りません。  そこで、どうでしょうか、こういう状況の中で、韓国も着々と民主化を進めようとしておられる、雰囲気が大変変わってきている。日本政府が、この際、北朝鮮の政府と直接接触をするというようなことは考えられませんか。
  256. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 国会の御審議の場におきまして、外務大臣総理等からも既に御答弁いただいておりますが、先ほど私も申しましたとおり、日本政府としては北朝鮮との間の懸案のすべての側面について話し合いを行う用意があるということは宣明しております。これに対して、北朝鮮からは全然前向きあるいは積極的な反応がございません。このような状況のもとにおいては、ただいま委員が御示唆になっておるような話し合いとか、こういうことはなかなか難しいのではないかと思う次第でございます。
  257. 田英夫

    ○田英夫君 第十八富士山丸の問題については、制裁措置がとられる以前は海外でしかるべき場所で接触があったということを御答弁で承知しておりますが、今こういう状況の中で北京にしろジュネーブにしろ、北朝鮮側の在外公館のあるところで、もちろん非公式であっても接触することは可能だと思いますし、またその場合には、第十八富士山丸の問題を解決するというようなことだけではなくて、もっと大きく朝鮮半島全体の問題について話し合うというようなことがそろそろあっていいのではないか、こう思うわけですが、その点はいかがでしょうか。
  258. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 北朝鮮と我が国との間の懸案のすべての側面につきましては、北朝鮮側と話し合いを行う用意があると先ほど来私が申し上げていることでございますが、これが日本政府立場でございまして、こういった我が方の考え方につきましては、種々のルートを通じまして北朝鮮側に伝える努力を行ってきているところでございます。
  259. 田英夫

    ○田英夫君 そういう意味でいうと、一つ日本政府が極めて具体的にとっておられる姿勢で、我々がいただく旅券、これには北朝鮮を除く、こう書いてあるわけですが、この際このことをもうやめてしまう、こういう文字を旅券から削除するということは考えられませんか。
  260. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 先生御指摘のとおり、旅券の渡航先を地域名をもって包括記載する場合には北朝鮮が渡航先から除外されていることは事実でございますが、もとより同地域の渡航が禁じられているわけではなく、北朝鮮へ渡航する者については別途北朝鮮を渡航先とする一往復の旅券を発給しております。  これは北朝鮮が我が国と国交のない地域であり、我が国としては邦人保護の見地から渡航者の実態を把握する必要があるため、同地域へ渡航しようとする者については、あらかじめ渡航目的、渡航期間、北朝鮮側の招請団体等につき説明をした渡航趣意書に北朝鮮へ入域できることを証明する書類、例えば招請状、会議の通知状等を添付して提出させ、個別に審査し、その都度一往復用旅券を発給することが必要と考えているためでございます。
  261. 田英夫

    ○田英夫君 御参考までに、先週のそのシンポジウムでやはり学者の方から、イクセプトと書くならば、北朝鮮はやめて南アフリカと書く方がいいんじゃないかというような発言があったことを御紹介しておきますが、今までのこの話をお聞きになって、最後に外務大臣から感想をお聞かせいただきたいと思います。
  262. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 朝鮮半島、南北のあることで民族が二つに分かれていることとしてまことに悲劇である、私は常にかように思っておりますし、また南北それぞれにおいてやはり一つになるべきだという強烈な意見があるということもしばしば耳にいたしております。  先ほど田委員の方からは、資本主義並びに社会主義のそうした例えばネックがあるんじゃないかというお話もございますが、私といたしましては、日本もいろいろと考えてみたいと思いますが、過去三十六年間、やはり我々があの国を治めていたということにつきましては、それぞれの南北の人たちは特異な感情を持っておるんじゃなかろうか。だから私たちが、よく私は使う言葉ですが、余りにもしゃしゃり出ますと、また日本が何か我々に支配権を持とうとしておるのではないか、こういうような疑いを持たれる方も、まだ独立をされて四十年しかたっておらない国々におきましては、やはり我々としても考えておかなくてはならない重要な問題である、こう思っております。  したがいまして、六者会談等々ということもそれも一つ考え方だなと私個人としては思いますが、やはりその前提は、第一義的には南北の話し合い、これによってひとつアメリカソ連中国日本もやって来てください、お互いに話しましょうというのならば喜んで私たちは参じたいというのが私たちの気持ちでございます。  なお、北朝鮮につきましては、盧泰愚大統領の七・七宣言やあるいは国連総会の演説にも相当思い切った発言がなされております。また、北朝鮮の代表が国連でスピーチされました。私たちもその内容をずっと改めさせていただいておりますが、従来と違って日本、韓国、米国を非難しなかったということは、これはやはり大きな変わりようを今考えておられるのではなかろうかと、こういうこともございます。  したがいまして、先ほど田委員が申されましたとおり、我々から推測するのならば、北朝鮮といたしましては現状ではやはり経済を何とか再建したいものであると、そういうお気持ちを持っていらっしゃるものだろうとは推測できます。では、それがどういうルートにおいて我々に伝わってくるのであろうかということも一つの問題点でございまして、今日までは、例えば社会党の書記長の代表団が行っていただいて、そして十月ないし十一月には北朝鮮の労働党の代表が来られる、招待したと。私たち、実はこれは社会党さんのそういう御伝言でございますから、はっきり申し上げまして、来られたならばそれ相応の対応をしなくちゃいけないし、またそうしたムードにありますから、そのときにこそ政府といたしましてもいろんな話の糸口が見つかるのではないだろうかと、こう思って、我々としてはそういう気持ちで現在おります。  また、海外におきましても、接触でき得る場所におきましては極力いろいろと接触を試みておりまするが、先ほどアジア局長が申しましたように、現在のところは全く反応がないというような次第でございます。もちろん第十八富士山丸のことも重大でございますが、そうしたことを含めまして、我々としてはまず北朝鮮側のお話も十分聞く、それだけの今日は気持ちを持っておるということだけは申し上げてもいいんじゃなかろうかと、かように思います。
  263. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。
  264. 堀江正夫

    委員長堀江正夫君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時散会