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1988-11-09 第113回国会 参議院 科学技術特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月九日(水曜日)    午後二時二十二分開会     ─────────────    委員の異動  九月九日     辞任         補欠選任      吉井 英勝君     橋本  敦君  九月十二日     辞任         補欠選任      橋本  敦君     吉井 英勝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         高桑 栄松君     理 事                 木宮 和彦君                 後藤 正夫君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君     委 員                 岡野  裕君                 岡部 三郎君                 志村 哲良君                 高平 公友君                 出口 廣光君                 長谷川 信君                 林  寛子君                 前島英三郎君                 穐山  篤君                 稲村 稔夫君                 大木 正吾君                 吉井 英勝君                 小西 博行君    政府委員        科学技術政務次        官        竹山  裕君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    参考人        理化学研究所サ        イクロトロン研        究室主任研究員  上坪 宏道君        日本放射光学会        会長       高良 和武君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (放射光技術に関する件)     ─────────────
  2. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  この際、御報告いたします。  前国会において穐山篤君から要求のありました政府統一見解につきましては、去る九月九日の理事会におきまして政府側より回答を得て、了承されました。なお、統一見解回答文につきましては、既に委員皆様方に配付いたしました。  また、同日の理事会において穐山君より要求のありました原子力施設故障等についての資料につきましても、去る十月二十七日に提出され、理事間で協議の結果、委員皆様方に配付いたしました。  以上、御報告いたします。     ─────────────
  3. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、放射光技術に関する件について、本日、理化学研究所サイクロトロン研究室主任研究員上坪宏道君、日本放射光学会会長高良和武君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、放射光技術に関する件を議題といたします。  本日は、本件について参考人方々から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  上坪参考人高良参考人には、御多忙中のところ貴重なお時間をお割きくださり、当委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  当委員会は、科学技術振興対策樹立に関する調査を進めているところでございますが、本日は、放射光技術に関する件につきまして忌憚のない御意見を賜りまして本調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人方々からお一人四十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に答えていただくというように取り運びたいと存じます。なお、その際、質疑されます方は便宜委員長から指名させていただきますので、挙手をお願いいたします。  これより参考人方々から御意見を承ります。  まず、上坪参考人にお願いいたします。上坪参考人
  6. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) 理化学研究所サイクロトロン研究室上坪でございます。  本日は、参議院の科学技術特別委員会におきまして、放射光技術に関する件につきまして意見を述べさしていただくことを大変光栄に存じております。  私の話のまとめはお手元資料として配付さしていただいておりますが、これに基づきまして御説明をさしていただきます。説明の便宜上、まことに申しわけございませんが、オーバーヘッド等を使わしていただきまして御説明さしていただきます。  まず、放射光という話の中で一番最初に必要な若干の定義などがございますので、蛇足とは思いますけれども、まず簡単にその辺のことを御説明さしていただきまして、それから放射光特徴、それから放射光を発生するための技術的な問題、それに現在私どものところで計画しております大型放射光施設加速技術の方の内容につきまして御説明さしていただきます。  最初に、これは本当に蛇足かと思いますが、光とは何かということを簡単にちょっと申し上げますと、ここに書いてございますように、電気を持ったものが振動を起こします。そのときに電磁波が発生いたします。この電磁波は、振動が速ければ波長が短くなるというような性質を持ってございますが、実はこの電磁波は、伝わる速さが光の速さで真空の中では一秒間に三十万キロメートル、地球を七回り半する速さを持っておりまして、一秒間に振動を繰り返す波の数を周波数と申しておりますが、波長が短いものほど周波数が高くなっております。周波数が高くなるということは、波長が短いと同時にエネルギーが高いと申します。きょうの後の話では、光の御説明をいたしますときに、波長が短いとかまた波長が長いとか申し上げると同時に、エネルギーが高いとか低いということがまざってまいりますが、波長が短いものがエネルギーが高いというふうにお考えいただいてよろしいのじゃないかと思います。  ここに、これもお手元にございます資料1ですが、物の大きさと光というものを示していますが、非常に波長の長いものから非常に短いものがございまして、波長に応じて名前がついておりまして、通常ラジオ放送等に使われるラジオ波、それからマイクロ波通信に使われる波、その辺の波長がここに長さで書いてございます。対数目盛りで書いてございまして、ここに普通の呼び名がございますが、だんだん短くなりますと最近いろいろな応用法が広がってまいりました遠赤外線、それから赤外線可視光線紫外線真空紫外線軟エックス線エックス線、こういうふうになっておりまして、原子核の中から出てまいります非常に短い波長電磁波のことをガンマ線と呼んでおります。  実は放射光でカバーできます光の波長領域というのは、こういった赤で書いてある部分でございます。ここに大きさの目安といたしまして日常的ないろいろなものが書いてございますが、ここで大事なことは、私たちの周りのいろいろなものをつくっている非常に重要な基礎になりますもの、その大きさとほとんど同じような光の波長領域が、ちょうどきょうお話しいたします放射光でカバーできているという点が非常に重要な点になっております。  実はこの放射光特徴は、後から申し上げますが、まず第一番に非常に光が強いということでございます。その光の強さを簡単にあらわしたものが資料2でございまして、縦軸は明るさなんでございますが、こちらで見ていただいた方がよろしいのじゃないかと思いますが、十九世紀の終わりにレントゲンがエックス線を発見いたしまして、それからエックス線は非常に多くの利用が行われておりますが、その当時のエックス線の強さは約六十年間ほとんど変わっておりません。ところが、六〇年代の最初回転陰極エックス線ができまして、少しずつ明るさ、強さが上がってまいりましたが、それ以後、放射光が出るようになりまして、その光の強さが急激に上がってまいっております。この横軸のこれだけでちょうど千倍になっておりますので、ちょうど千倍、千倍の千倍ゲームといった感じで輝度がふえていっております。そして現在は、一九八〇年代の真ん中でございますが、さらに明るい光を求めて新しいいろいろな技術的な開発がなされているというのが現状でございます。  こういった強い光が出るということと同時に、次に放射光の大事な点は、ここに先ほど挙げました非常に広い範囲波長の光が同時に出てまいりまして、これの利用有効性も後でいろいろなお話が出ることになると思います。  こういった連続の光をどうやって出すのかということを簡単に御説明いたしますが、まず、こういった放射光のことをシンクロトロン放射光、またはシンクロトロン軌道放射光と呼んでおります。SORまたはSRと申しますが、SORというのはシンクロトロン軌道放射光SRというのはシンクロトロン放射光と言うのですが、それの発生する原理は、先ほど申しましたように、電子が真っすぐ走っているものが振動するとか、力を受けて軌道が曲げられますときに光が発生いたします。ところが、この走っております電子が光の速度にほぼ近いような速さになりますと、普通言われております相対性理論によります現象がまず起こってまいりまして、実際に地上から見ますと、電子が感じるよりも実際に走っている距離が短いという非常に特徴的なことがございまして、そのために波長が短くなってまいります。それと同時に、ドップラー効果もありまして、こちらに出てくる光が非常に波長が短くなってまいりますわけですが、と同時に指向性がよくなってまいりまして、この非常に狭い範囲のところに出てくるわけです。  ここでこういうように磁石で曲げられるといたしますと、この曲げられ始めたところから、こういうふうにサーチライトのように、この広がりが大体千分の一度、現在議論しておりますような六GeVとか八GeVとか、そのくらいの電子から出る光は千分の一度ぐらいの広がりになっております。この千分の一度というのは非常に小さな広がりでございますが、これがずっと曲げられるに従いまして、この明るい部分サーチライトのようにずっと動いていく、こういうふうな出方をいたします。こういった現象は、実は一番初め、原子核とか素粒子研究用につくられました電子シンクロトロンというもので初めて観測されましたので、これをシンクロトロン放射光と呼んでいるわけです。  シンクロトロンというのは、資料3に書いてございますように、磁石を幾つも並べまして、ドーナツ状真空部分電子を入れて、それで電子をぐるぐる回しながらエネルギーを上げていくという原理のものであります。もうちょっと砕いて話させていただきますと、これは後で技術開発に関連いたしますので、漫画のような絵で恐縮ですが、こういうふうになっております。  これは、こちら側の黒いところが先ほどのN、Sと書いてありました磁石でございまして、ここに入りますと電子が力を受けて曲がる。これはこういうふうに曲がるわけであります。それから、さらにこちら側に来て曲がります。こういうふうに曲がるのですが、途中に一カ所こういうふうに中で電圧をかけましてエネルギーを加速する部分がございます。こういうふうにしまして、シンクロトロンの場合にはここで加速しながら電子エネルギーをどんどん上げていくわけでありますが、それと同時に磁石を強めていく、こういったものになりますが、ただ、電子は光と同じで、回っている間にどんどん広がってまいります。その広がるのを防ぐために、こういうところにレンズ働きをする磁石を入れることになります。そのレンズ働きをする磁石は、ここに極が六つございまして、こちら側が四つございまして、これが四極磁石です。これが六極磁石です。こういう真空の非常にいいパイプの中を電子が走っております。そうしますと、この曲がるところで光を発生する。その光をこういうふうに取り出しまして放射光として利用するというのが放射光施設でございますし、この電子エネルギーをどんどん高く上げまして、それをほかの原子核に衝突させたり、ほかのものと衝突させて新しい原子を調べるのが高エネルギー物理学になっているわけであります。  こういった装置を使いまして光を出すわけでございますが、それの特徴を簡単に申し上げますと、こういうふうにこれは挙げることができます。  まず、先ほど申し上げましたように、波長に関して非常に広い範囲連続の光を出しているものです。先ほど申しましたように、光と言っておりますが、波長が短いところではエックス線なり、長いところでは紫外線赤外線というような名前がついておりますが、いずれもひっくるめて光と呼んでおります。そして、その明るさが他の光源に比べて非常に明るい。先ほど申し上げましたように、エックス線管なんかに比較いたしますと、百万倍から十億倍というふうに非常に高い明るさを持っております。それからまた、先ほど絵で御説明いたしましたように、光がサーチライトのように指向性が非常によくて、一定方向に飛んでまいります。それから、これはちょっと後で高良先生の話にございますが、電気的な光の電場というものが、偏ったある特定方向振動を行っているという性質を持っております。それから、時間的に非常に短い光を出しているということであります。それから、これがまた一つ大事なことでございますが、実はこういったことでその明るさとか波長分布というのが非常に計算によく乗ります。それで放射光はある意味標準光源としても使われるわけですが、それは今の学問で十分精度のいいこういったものの計算ができるということがわかっているわけです。  資料4にその例といたしまして、横軸にこれは今度は波長で書いてございます。これは単位は申しわけないのですが、ここが一ミクロン、ここが十ミクロン、こちら側がオングストロームというふうな単位になっております。この絵は、これは一GeV、十億電子ボルト小型SORから出てくる光の波長領域、これは後ろの方はずっと伸びておりますが、前の方の一番高いエネルギーは余り波長が短い方へ行かないわけです。これは二十五億電子ボルト、二・五GeV放射光でございますが、現在筑波にございます高エネルギー物理学研究所放射光施設で動いております加速器のベンディングマグネット、先ほど偏向磁石の方から出てくる光でございますが、それに対しまして例えば八GeV、八十億電子ボルトになりますと、まず明るさが非常に明るくなると同時に、波長の短い方へ、非常にエネルギーの高いところまでの光を出すことができるということでございます。さらに、それに今から御説明いたしますようなある特殊な光源技術を適用いたしますと非常に高い明るさのものが得られる。現在世界じゅうで目標としております明るさのゴールというのがこの辺にございます。こういった明るさのものがどういったことに使えるかというのは、後で高良先生の方からお話があると思います。  いま一度この前の絵に戻りまして、こういうふうに電子方向を変える偏向磁石のところから発生する光を対象にいたしまして、現実に現在でも筑波の高エネルギー物理学研究所にあります放射光施設では、非常におもしろい研究がたくさんなされております。しかし、それに対しまして最近は新しい挿入光源という技術が確立されまして、より明るくて、またはより特定波長の光だけを強調して明るくするような技術ができてまいりました。それについても簡単に御説明いたします。  これも非常に絵がごちゃごちゃになって恐縮なんですが、資料5に書いてありますように、NSの磁石、これはたまたま馬蹄形磁石にわかりやすいように書いてございますが、これをこういうふうに隣り合わせで逆向きが並ぶようなふうにいたしますと、磁石の磁場の向きがこういうふうになってこちらが上から下になりますから、電子に受ける力がちょうどこれとこれで逆向きになります。そうすると、電子が真っすぐ走ろうとしましたときに、あるときにはこちら側向きの力が働いて曲げられる、逆に今度はこちら側で曲げられるということをしますとちょうど蛇行運動を起こします。ここに書いてございますようなこういう蛇行運動をするわけです。こういう蛇行運動をしますと、この曲げられたところで、先ほども御説明いたしましたように、これが電子運動だと仮定いたしますと、曲がるところで資料6に示すようにサーチライトのような光が出てまいります。これが蛇行運動するたびにこういうふうに振られてくるわけですが、その蛇行運動の大きさによりまして、蛇行運動が非常に小さい場合ですと、実はこのコーン状の形でこういうふうに光が出ていきますと、いつでも出た光は同じ方向に出ておりますが、その強さがこの運動の周期に従って変わっていくというように、ある程度強さの変化がこういうふうに出てまいります。こういうような光というのは、これの波長に合った部分だけが特徴的に強く出てくるような光になります。こういうのをアンジュレーターと呼んでおります。  ところが、この蛇行運動が非常に強くなりますと、サーチライトの光がこういうふうに振っていきますので、ある特定のところで見ておりますと、時々、ちょうど灯台の光を浴びるように、あるところで急に明るくなって、また暗くなって、あるところでまた明るくなる。これは逆向きに出ておりますが、こういうふうに光が強く出てくる部分がございます。そういうふうな場合には、先ほど偏向磁石から出てくるのと同じような連続の光で、非常に強いのが出てくる。なぜ強くなるかと申しますと、ここで出た光とここで出た光がみんな足し合わさってまいりますので、非常に強くなってまいります。  こういった二つの新しい技術ができまして、放射光の強さをさらに一段と強くする技術開発されております。それがここに書いてございますような実は足し合わさる部分で、これをウイグラーと呼んでいますが、それから特定波長部分だけが強調されて出てくるアンジュレーターというようなものが出てきまして、こういった新しい技術開発とともに、より明るい光が得られるようになってきているわけでございます。  こういった技術的な進歩がございまして、ちょっと放射光歴史を書いておりますが、放射光がどんなふうに進んできたかというのが資料7のグラフでございます。これは縦軸特定エックス線波長放射光輝度横軸に年代をとって書いてございます。これは高エネルギー物理学研究所の小早川さんたちがまとめられたもので、主として高エネルギー物理学研究所放射光技術進歩とともに非常に強度がふえてきているというのと、その延長上にさらに新しい加速器計画があるという絵でございます。  ここに簡単にその歴史を振り返りますと、一九四六年、ちょうど昭和二十一年に理論的な予測がなされまして、それからその次の年に、七千万電子ボルト電子シンクロトロンで初めて観測されました。その後、世界で高エネルギー電子加速器が建設されるに従いましてこういった放射光が有用であるということが認識されまして、高エネルギー加速器のパラサイト——寄生的という言い方は余りよくありませんが、高エネルギー加速器が本来の目的で運転しているときに、シンクロトロン放射光というのはいつでも出てくる捨てる光でございますので、それを利用させていただくという意味で寄生的と呼んでおりますが、この寄生的利用が始まったわけであります。こういった時代を通常、第一世代放射光と呼んでおります。世代論をここでやるのはどうかと思いますが、こういった第一世代加速器を使いまして放射光を使った研究が非常におもしろいものを生み出すということが世界の学界に認識されるようになったわけであります。  高エネルギー加速器の場合には、当初はシンクロトロンばかりでございましたが、その後、蓄積用リングというのが開発されるようになりました。これは先ほどシンクロトロンの場合と装置としては同じ装置でございます。資料3を見ていただきますと、ここにこちらから電子を次から次に入れてやりまして、ここのところで電子をぐるぐる回して一周すると光を出しましてエネルギーを失いますけれども、その失った部分だけ電圧で加速してやるということで、何遍も回しながら次から次に入れてやりますと、ここに回っている電流がだんだんふえてまいります。こういうふうにしまして、ここにため込んだ電子の数をどんどんふやすことをしたものを蓄積リングと呼んでおります。この蓄積リングが高エネルギー加速器の主流になりまして、日本でも筑波の高エネルギー物理学研究所で、トリスタンという大きな現在では世界で最も高いエネルギー蓄積リングが建設されまして素粒子研究が進められておりますが、そういった蓄積リングがたくさんできるようになりますと、その蓄積リングのところで磁石から発生する光を利用することが行われております。  後でリストをお目にかけますが、その中でも、現在でも世界の何カ所かの研究所では、蓄積リングを使った放射光研究が行われております。しかし、このパラサイト的な利用と申しますのは、主目的が高エネルギー研究にございますので、どうしてもそちらの方の都合で機械の運転とか停止、それから実験エリア改造等が行われますので、放射光研究が中断されたりすることがございます。そういったことで放射光を主目的にしたようなこういう蓄積リングをつくろうという計画が起こりまして、日本では東京大学の原子核研究所に一九七五年に〇・三GeV、三億電子ボルト蓄積リングが完成しております。  同時に、アメリカヨーロッパでも行われたわけです。ヨーロッパではフランスが最初でございましたが、専用リング開発されていろいろな新しい研究が行われております。これを通常第二世代放射光と呼んでおります。  先ほど申し上げましたように、これはエネルギーを高くしていきますと波長が短くなりますので、さらにこれを大きくした中型の専用リングがつくられるようになりまして、有名なものは先ほど説明いたしました日本では高エネルギー物理学研究所放射光施設通称フォトンファクトリーと言っているものが二十五億電子ボルト、二・五GeVです。それから、アメリカはブルックヘブンのナショナルラボラトリーに二十五億電子ボルトがありまして、それからイギリスではダルスベリーに二十億電子ボルトのもの、その他が建設されて、今やこういったものを使った新しい研究が非常に多く出てまいっております。その辺のおもしろい話は、後の高良先生お話で御紹介いただけるのではないかと思っております。  ところが、後で述べますように、こういったものが波長領域軟エックス線どまりである、それから明るさがまだ足りないということで、さらにこの延長上により明るくより短い波長光源をつくりたいという話が出てまいりました。そのためにいろいろな技術的な問題がはっきりしてまいりまして、これからつくるものをこれよりもさらに高性能のものという意味で第三世代と呼んでおります。  ここでは、私のレジュメの方には第三世代加速器というふうに書いてございますが、主として申し上げておりますことは、非常に明るくて指向性のいい光をということ、エネルギーも比較的高い方をねらっているというふうに考えていただいていいのではないかと思います。  これも後で高良先生お話がございますので簡単にさせていただきますけれども、こういった施設がなぜ必要かということを簡単にまとめたのがここにございますが、まずエネルギーが上がれば上がるほど実はこの光の広がりが小さくなってまいります。それが第一点。もう一つは、回っております電子ビームの細さをどんどん小さくしていきますと光源が小さくなるものですからますます指向性がよくなるということで、指向性の非常にいい光を得て、大変小さな試料、それから非常に高圧とか非常な低温だとか、そういった非常に極端な条件下の測定とか、それから強いものですから非常に短い時間の間に起こる現象説明、それから非常にローカルな部分の構造を見ようとかというようなことができるようになってまいります。  それから、エックス線ですから、こういった今までなかなかかからないけれども物質研究の上では非常に重要な新しい希土類元素とか、そういった重元素を含む分析が自由にできるようになる。それから、強度が高いために、例えばここに書いてございますように、特定波長エックス線だけを選んで元素別の分析とか画像が得られる。例えばエックス線を当てた写真を撮りますと、ある特定の元素だけがどういうふうに分布しているかというようなものを調べることができるようになる。そういったいろいろな利用ができるようになりますが、そのときに必要なことは、まず短波長であるということと大強度である、指向性がいい、こういったことが必要になってまいります。  こういったものを実現する光源リングはどんなものがあるのかというのが世界各国で検討され始めたわけです。現在のところ、そういった検討の結果が集約されまして、そういったものを建設する計画が世界に幾つかございます。  現在、一番先に進んでおりますのが、ここに書いてございますようなヨーロッパのESRF、ヨーロッパ放射光施設、ヨーロピアン・シンクロトロン・ラジエーション・ファシリティー、これは六GeV、六十億電子ボルトでリングの周長が八百メートル、これはヨーロッパの約十カ国が協力いたしまして、グルノーブルの現在ラウエ・ランジュバン研究所という非常に大きな強力な原子炉を持った中性子の研究所がございますが、その横につくることが決まっております。ただこれは、二つの川の合流地点になっておりまして、土地が狭いために土地の制約から八百メートルということで、それからサイズもこれに決まっております。先ほど申しましたような挿入光源が二十四本。ここらはちょっと技術的なんですが、どのくらいビームが細くなるかというふうなことがここに書いてございます。大体〇・四一ミリメートルぐらいで、広がりがこんなものであるというふうに考えていただいていいのですが、偏向磁石からの光源挿入光源とが同じ数だけとれるような施設になっております。  その次に検討が進みましたのがアメリカでございまして、アメリカは、これはAPS、アドバンスド・フォトン・ソース、先端光源と言うのでしょうか、こういった研究所がシカゴの郊外にありますアルゴンヌ研究所にできることが決まっております。これは、先ほど申しましたような議論がユーザーの中で進められまして、結局エネルギーが七GeV、七十億電子ボルトなのですが、必要に応じてこれを七・五まで上げることができるというふうな設計になっております。周長は、したがいまして約一キロの大きさです。一キロの周長と申しますと、ちょうど先ほど申し上げました高エネルギー物理学研究所トリスタンの三分の一の大きさになっております。エネルギーはずっと低いのですが、挿入光源が入れられるこういう長い部分が三十も四十も、非常にたくさんあるということから全体に大きくなるわけです。そして挿、入光源が三十数本あるということは、挿入光源偏向磁石を一対ずつ組みにいたしまして、こちら側でテストしてこちら側で実験するというようになっておりまして、偏向磁石光源が同じ数だけ一応計画されております。  一昨年から科学技術庁の方でもこういった計画が、科学技術会議の答申それから航電審の答申をベースに検討が進められてまいりまして、現在理化学研究所日本原子力研究所の共同でRアンドDに当たつております。一応ここでは便宜上RIKEN—JAERI、理研と日本原子力研究所の計画としてですが、後で高良先生お話もございますと思いますが、一応目標エネルギーを八GeVにセットいたしまして検討が進められております。エネルギーが高くなるに従いまして磁石の数がふえてまいりますので利用できる光源の数がふえてくるわけでございます。そのかわり周長が伸びてまいりまして、大体一・四キロ、これは先ほど申しましたトリスタンの約半分の大きさになっております。こういったものが検討が進められているわけでございます。  これはなぜこういったエネルギーが必要かということでございますが、これは余りにも専門的ですが、資料9に示しますように、それぞれの物質から出る一番基本的な特性エックス線エネルギー縦軸にとってありまして、鉄ですと十キロ電子ボルトぐらい、正確には七キロなんですが、モリブデンの辺で大体二十キロ、それから希土類で六十キロぐらい、それから鉛で八十キロぐらい、ウランで百キロちょっと超すというようになっておりまして、その次の波長の長い特性エックス線がここに書いてございます。こういったもので、二種類の特性エックス線を非常に強い部分で十分カバーできるエネルギーということで検討が進められたわけです。このエネルギーをどこに持っていくかというのは加速器を設計する上で非常に重要な要素になりますので、こういったもので検討が進められたわけです。こちら側に、これは八十億電子ボルトの場合の、先ほど申しました挿入光源アンジュレーターを入れたときの波長分布が書いてございますが、こういったものが検討の対象になっております。こういったことでエネルギーを決め、それから性能を決めまして加速器の設計が進められてきたわけでございます。  ここで資料8をごらんいただきますが、これは非常に見取り図的な絵でございますが、十五億電子ボルト、一・五GeV電子線型加速器でまず予備的に電子を加速いたします。そのときに、実は先ほどお話しいたしませんでしたが、電子にはプラスの電気を持った、ちょうど普通のマイナスの電気を持った電子と反対の粒子、反粒子と呼んでおりますが、一緒に合わさりますと、エネルギーを出して消えてしまうというような電子がございます。陽電子と申しますが、実はその陽電子をつくって陽電子をため込むことも可能なような計画になっております。いずれにいたしましても、十五億電子ボルト電子を加速いたしまして、それを八十億電子ボルトまでシンクロトロンで加速いたしまして、それをこの蓄積リングに入れていきます。この蓄積リングは、先ほど申しましたように、蓄積リング周りに挿入装置からは四十本の光を取り出すことができます。蓄積リングには全部で四十八個直線部分があるのですが、加速管かなんかが取りつく部分がありまして、挿入装置としては約四十個のビームラインが出てまいります。その中で研究するものによりましては非常に長いものが必要でございますので、数百メートルのビームラインと、あとはこの中にひげのように大体七十メートルぐらいの実験をやる部分ができるようなものを考えています。  これの技術的な点に非常にいろいろな問題がございまして、私どもはいろいろな技術的な検討を現在進めています。一部分だけ取り出しますと資料10のようになりますが、これには曲げる磁石、偏向電磁石とその間にレンズの役目をする二種類の四極電磁石、六極電磁石が入っています。蓄積リングにはこの偏向電磁石が全部で九十六個入っております。そして、その間にこういうふうに六極とか四極が入っております。約三百五十個、約五百個というように非常に多くの数のこういった磁石が間に入ります。これはどういう役目をしているかといいますと、先ほど申しましたように、中に走っております電子をなるべく細くする。細くするためにはレンズをうんと重ねまして、細く絞ってやる必要がございますので、こういうレンズをずっとたくさん入れるわけです。そうしまして、その後この直線部分も六メートルとか七メートルとりまして、そこに挿入光源を入れる。こういったものを繰り返してやっていきます。この磁石が実は非常に精度よくつくる必要がございまして、この九十六個の偏向磁石だけではなくて数百、三百とか四百ありますこういったレンズのような電磁石のつくり方も、それからその並べ方も非常に精度よく並べる必要がございます。これを一・五キロの周長に並べまして、例えばこれの軸をコンマ一ミリの精度で並べる必要があるというような非常に厳しい条件が課されているわけですが、それと同時に真空が非常に大変になっておりまして、この中の真空も非常によくする必要がございます。こういったいろいろな技術的な問題がございまして、私どもの方では現在設計と同時にRアンドDを進めているわけでございます。  もう時間が参りましたが、あと簡単にどういった点が問題になるかということをいろいろ文章で書いたものがこれなんです。ここで全般的なことが書いてございまして、今私たちのところで、第三世代放射光施設で特に必要なのは、資料11で説明しますと、一番の短波長と二番と三番、それから五番、六番、七番、こういったようなことが必要になっておりますが、特にこういったものを行うための技術的な開発が現在進められているわけでございます。  最後に、こういったものを進める上でもちろん技術的な開発は必要でございまして、もう少し時間がございますともう少し丁寧にお話しできるんですが、省略させていただいて、最後に私がぜひここでお願いしたいことがございます。そのためにはここにございますようなこういったものをつくる上において十分な研究者、技術者が今後とも育っていくことが必要ではないか、それからこういった最先端のものを十分皆が使えるようなことが十分行われるような施設の整備というものがやはり日本にとって必要なのではないかということと同時に、こういった装置がインターナショナルな面で開いているというようなことが必要なのではないかというふうに考えております。  いろいろな問題がございますけれども、特に我が国日本では、先ほど今回の放射光が理研と原研の共同チームでもって開発研究それから設計が進められていると申しましたが、従来は一つの組織を単位にして非常に強力な仕事をするということが行われてまいりましたが、今後はこういった違った組織、いろいろな組織の枠を超えた研究協力とか運営が必要になる。そういった組織づくりも十分今後必要な問題であるというふうに私どもは考えております。それからこの装置は、産官学と言われているような国公立の研究所、それから大学なり産業界の方が非常に積極的に使っていただくことが必要でありますし、可能になるようにしなければなりませんので、そのための共同利用経費というものの充実等も必要なのではないかと思っております。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。(拍手)
  7. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) どうもありがとうございました。  それでは次に、高良参考人にお願いいたします。高良参考人
  8. 高良和武

    参考人高良和武君) 高良でございます。皆様の前で御説明する機会を与えられましたことを大変光栄に思います。  私は上坪さんの後を受けまして、どういうことに使われるか、また現在どういうふうな使い方をしているかということを主として私どもの経験を例にしてお話ししたいと思います。(OHP映写)  放射光特徴は、今上坪さんがおっしゃったとおりでございまして、特に申し上げることもございませんが、もう少し補足させていただきますと、資料2にございますように、放射光の明るさがどんどん明るくなってきているということがあります。私どもが一九七二、三年にこの計算をしたときは、一オングストロームの波長のところで在来のエックス線管の一万倍ぐらいの明るさでびっくりしたわけでございますが、それが現在はさらに一万倍、全体として一億倍ぐらい強くなっております。今計画されています大型放射光になりますとさらに一万倍、全体として一兆倍になりまして、さらにいろいろ新しい技術を使いますとまた千倍ぐらい強くなるという、まことに驚くほど強くなる可能性を持っているわけでございます。科学技術の社会で、ある手段の性能が千倍ぐらい変わりますと世の中が革命的に変わると言われておりますが、例えば我々の歩くスピードは四キロぐらいだとしまして、それに対して光は三十万キロぐらいでございまして、一億倍にもならないわけでございます。新幹線が速くなったといっても、在来線の二、三倍にすぎませんが、それでも大騒ぎです。放射光の場合けた違いに強くなるわけで、このような例はほかにちょっと例がないと思います。  このようなけた違いの明るさの向上のために、後でいろいろお話ししますけれども、最初想像もつかなかったようなことがいろいろできるようになりましたが、それと同時に、先ほどお話しありましたけれども、これを使いこなすための検出器とか記録装置などがまた非常に大きな問題になってきております。それから、後で時間があったらお話ししますけれども、研究体制とか運営体制とか、そういうことも大きな問題になってきております。  あとは先ほどお話があったとおりでございますが、もう少し強調させていただきますと、我々が筑波でつくったフォトンファクトリーは、七八年にスタートして八三年にでき上がったものでございますが、七二、三年ごろから、こういう計画をぜひつくりたいというので、学術会議で勧告をしていただいたわけでございますが、これは伏見先生に大変興味を持っていただき、御助言や御援助をいただきました。学術会議で勧告していただいてから数年たってようやく建設が始まり、ここまで来たわけでございます。このころ、核研に小さいリングがございました。これは七二年ごろからつくり始め、七六年ぐらいにできました。  放射光は光あるいは電磁波ですが、非常に広い波長領域にわたっております。資料12で御説明いたしたいと思いますが、この辺のところが目に見える光です。この辺が紫外線で、この辺は真空中でなければ通らないというので真空紫外線と言います。それからこの辺が軟エックス線、それからエックス線です。この辺は在来の線源では飛び飛びに強いところがありますけれども、この辺は今までほとんど線源がなかったところです。それが放射光により一挙に強い光が出てきたわけで、ゼロからいきなり飛んだわけです。エックス線の領域では、一九〇〇年ぐらいから現在まで、いろいろな方面で使われてきました。お医者さんたちが診断用に使うエックス線管では、タングステンのターゲットから出るこのような連続エックス線が使われておりまして、それから工業用あるいは研究用では特性エックス線を用います。このようにところどころ強いところがあるわけでございます。  在来のエックス線では、よく銅に電子をぶっつけて出てくる特性エックス線を使いますが、強力エックス線管としては普通二百ミリぐらいですが、一アンペアぐらいが最高です。二百ミリの発生装置は二千万円ぐらいしますが、一アンペアだったら一億円近くすると思います。フォトンファクトリーの放射光を在来のエックス線管と比較しますと、特性エックス線の場合、二百アンペアぐらい、連続エックス線の場合、二万アンペアぐらいに相当します。先ほど上坪さんの話されました偏向磁石からの放射光でもこれだけの強さになるわけです。初めて計算したときは、余り強いので計算を間違えているのではないかとさえ思ったぐらいですが、もちろん間違いではなく、我々はこれを確信して計画の推進を始めたわけですが、しばらくの間、七二年から七三、四年は、本当にそんなに強いのかなという意見が多かった時代でございます。  資料2にございますように、放射光の強さはどんどん強くなり、今はこのあたりまで来ておりますが、さらに強くなるわけです。それから、この辺の波長のもっと短いところがもっと強くなればというのが、最近の研究者皆さんの願いであります。フォトンファクトリーなどでは、この辺の波長になると強度がすとんと落ちるものですから、どうしても蓄積リング電子エネルギーを上げたいわけです。それから、この辺の波長の長い、真空紫外と呼ばれるところが、一方では非常に大事なところでございます。我々日常の生活では赤い光がものを暖めるのによいということになっていますが、このごろはさらに波長の長い赤外線がよいというので、暖房や調理などいろいろに使われるようになってきました。一方、紫外線のように波長が短くなりますと、いろいろな化学作用を起こしまして皮膚がやけたり色があせたりするなど、いろんな反応が起こるわけです。もう少し波長が短くなると物質との相互作用がさらに強くなり、物質との相互作用が大きいということは、物質にすぐ吸収されるということで、この辺の光は皮膚に当たりますと、皮膚の表面で全部吸収されてしまいますから、障害も大きいわけです。宇宙から、特に太陽から多量に来ておりますけれども、幸いに、このあたりの光は酸素と窒素で全部吸収されますのでほとんど地上には到達しないわけです。ただし、宇宙ロケットや衛星などで成層圏の外へ出ますと、真空紫外や軟エックス線がじゃんじゃん降ってきているわけで、これをもろに浴びたら、もちろん真空ですから実際にはできませんけれども、そういう放射線の対策も非常に重要になるわけです。  この辺の光が、物質の表面ではなく、内部の電子との相互作用が一番大きいところです。物質は原子からできていますが、原子はさらに原子核とその周りを取り巻く電子からできております。この原子を取り巻いております電子との相互作用、それを高いエネルギー状態にたたき上げたり外へたたき出したりするような作用は、ほとんどこの領域で起こります。それでこの辺を調べますと、物質の中の電子の振る舞いがわかり、また電子の状態を変えることにより、物質の性質を変えたり物質の微妙な性質を使うというようなことができるわけです。もうちょっと波長が短くなりますと、原子の大きさと同じぐらいになり、このあたりの光、エックス線を用いますと物質の中の原子の配列がわかります。原子レベルで物質の内部を見ることができるわけです。こういうわけで、放射光で用いられる光は材料あるいは物質を分子レベルあるいは原子レベルで見たり処理したりするのに一番大事なところになります。  温度で申しますと、太陽の表面の温度が六千度ぐらいというのはこの辺になりまして我々の目に見えるわけですが、実際の太陽の内部だとこの辺になります。それから、宇宙で爆発を起こしたりいろいろするというのはもっと波長の短いところになるわけです。それから核融合炉で起こっている温度というのは大体この辺でして、何千万度とか何億度ぐらいになりますが、核融合とかあるいは太陽の内部や宇宙の果てで起こっているいろいろな現象、このごろ天文学ではエックス線天文学などと呼びますが、この辺のところになります。こういうわけで、放射光はこういう領域の強度をはかるための標準の線源として非常に大事だと言われております。これが資料12です。  これは先ほど出てきたとおりでございまして、強度が十倍か数十倍上がるのに数十年かかったわけですが、原理的に新しい放射光ができて、一挙に十の八乗から十の十二乗ぐらいまで飛んだわけです。偏向磁石で一万倍に飛びまして、それからアンジュレーターができましてさらにまた一万倍飛んで、それから今度はエネルギーを上げることによってここまで飛ぶというわけです。第三世代施設は、九二、三年から九四、五年にできて、この辺で大体一兆倍ぐらい強くなって、その後さらに千倍ぐらいは確実にいくだろうと思われます。こういうふうにちょっと想像がつかないぐらい、私どももこんなに強くなるとは初めは思わなかったのですが、そういうふうな非常にスリリングな時代に来ていると思います。  それから、今度はそれをどういうふうに使うかということをここに少しまとめてみました。  目で物を見るときにはその形とか色とか言うわけですが、形というのは、エックス線で見る場合には、原子レベルですから、原子の並び方とかあるいは電子が原子の大きさよりもっと小さいところでどういうふうに分布しているかとか、それから電子運動状態を調べるわけです。運動状態というのは、我々の目に見えるところで言えば色みたいなものでございまして、白色光が来た場合物が赤くなったり青くなったり見えるのは、光が電子の適当な状態に共鳴してそういう光を出したり吸収したりしますので起こるわけです。それをもっと短い波長のところでやりますと、物質に固有ないわゆるスペクトルがございまして、こういうものによって物質の中で一電子エネルギー状態、あるいはそれが動き回っている状態などを調べることができます。ここにそういう例といたしましてスペクトルでこういうものが書いてございます。  それから、吸収されたりするだけじゃなくて、電子をたたき上げますと、そのお返しに中から光が出てくるとか、あるいは電子自体が飛び出すというようなことがございまして、こういう情報をいろいろ調べまして材料の定量分析とか、あるいは結合状態を調べるとか、電子の詰まりぐあいを見るとか、表面や界面がどうなっているかとか、そういうことをいろいろ調べるわけです。  もう一つ、後になりましたが、回折・散乱という作用があります。エックス線領域の放射光がやってきますと、原子核の周りの電子及び原子核ではじき飛ばされるわけですが、そのとき適当な方向では息をそろえて強い光が出てきます。そういうときを回折と申します。その状態を調べますと、後でも少しお話しいたしますが、物質の中での原子の配列の模様がわかります。このような研究は、一九一五年ごろからアルミとか鉄とか食塩とか簡単なものから始まったのですが、現在ではウイルスぐらいの大きさまで、分子量が何万から何十万という大きさまでのものが調べられるようになりました。このような複雑なものは放射光じゃないとちょっとやれないわけです。  それからもう一つ、波長が短くなりますと、先ほど申しましたように、紫外線などは我々の皮膚をやいたり、染色の物質の色をあせさせたりしますが、これは、放射光が中の電子をたたき上げますと、原子と原子の結びつきが変わるわけです。この性質はいろんな方向に使うことができるわけで、材料の性質を変えたり、新しいものをつくり出したり、特に半導体の最近の超LSIの微細加工の焼きつけなどにはよく使うわけです。一方、原子炉などでは材料をもろくしたり、それから生体ですと死んでしまったり、あるいは突然変異を起こしたり、いろいろなことが起こるわけです。こういうものの性質をよく知った上で制御して使うというのも一つの役割になります。これが資料13です。  今言ったことを、どのような作用がどのような波長のところで起こるか、それからそれでどういうような情報が得られるか、またどういうことに使えるかというようなことが資料14に書いてございます。  今まで申し上げたことでございますが、放射線の効果というのは、この辺ではほとんどないわけですが、紫外線あたりからだんだん起こってきます。これを光化学反応と呼びますが、さらに短くなれば、これは名前だけですけれども、放射線効果と呼んで、生体の場合には損傷ということになります。  それから光電吸収というのは、光が物質の中の電子と相互作用して吸収されたり反射したり、あるいは蛍光が出てきたり、それから光電子が出てきたりするわけです。  それから散乱というのは、先ほど申しましたような回折を起こして、これで原子の配列の模様とか構造の欠陥とか、いろいろ見るわけです。  それから最近問題になってきたのは、イメージング、像を撮るということで、エックス線は内部までよく入っていきますから、後でも申し上げますが、心臓の血管の像などを割に手軽に撮るとか、それから電子顕微鏡と光の顕微鏡の間ぐらいのもの、細胞レベルの像を見るのに用います。特に水を含んだものにはエックス線顕微鏡がよろしい。それから一九九五年ぐらいに市場に出る超LSIの素子の焼きつけには、もうこのあたりは十オングストロームぐらいのエックス線が使われるだろうということで、企業の人たちが今非常に真剣にリングをつくり始めているところです。  それからもう一つ、CTといいまして、脳の写真などを撮るコンピュータートモグラフィーでございますが、最近は材料の内部を見るために放射光を使ったコンピューター・トモグラフィーの研究が精力的に始まっております。  この辺が一オングストロームで、原子の大きさですが、これから、この辺のもっと波長の短いところが非常におもしろくなるわけです。しかし、今までのリングでは強度がすとんと落ちて使えないものですから、この辺をできるだけ強くするためにいろいろな努力が行われているわけです。アンジュレーターでこの辺のところを今の一万倍とか百万倍ぐらいにしたい。この辺はベンディングマグネットかウイグラーを使っても、出てまいります。  資料15は、上坪さんが前にお使いになったものですが、どういうふうに利用するかということを別な立場から見ますとこのようになります。新しい材料や物質をつくるということがあります。ニューマテリアルズとかニューセラミックス、ファインセラミックスとかいろいろ申しますが、そういうようなものは原子がどういう配列をしているかとか、温度を上げたら、非常に低温にしたら、超高圧でどうなるかとか、いろいろ研究するわけです。特に、多くの材料では全部をつくる必要はなくて、表面だけが非常にきくので表面だけ変えればよいというようなことが多いわけです。触媒とか半導体などでは表面の効果が非常に大きいわけですが、そういう状態を調べるのには放射光は非常にいいというわけです。特に少し長い方の波長がいいこともあります。  微量分析について申しますと、普通、微量分析をするときは化学分析や放射化分析などいろいろ用いられますけれども、放射光を使いますと、ほとんどあらゆる元素が非破壊法でやれるという特徴がございまして、今後スタンダードになるだろうと言われております。例えば、髪の毛の中のわずかな物質を調べることができ、これにより環境汚染などの問題もわかるとか、最近はがんなどとも関係があるとか言われております。  それから半導体などでは、一億分の一とか十億分の一、百億分の一ぐらいの不純物が問題になりますが、そういう分析もこういう方法でやります。それから最近は、放射光を使いまして、筑波のフォトンファクトリーでも行われておりますが、光を当てておいて半導体の表面に膜をつけますと非常に性能のよいものができるなど、新しい材料をつくる研究も行われています。  このようにいろんな分野に使えるわけでございまして、特にこのあたりの利用は半導体の人たちが興味を持ってやっているところで、後でまた少しお見せします。  何にでも使えるものですから、本当かなと言いたくなるぐらいですが、バイオサイエンスあるいはバイオテクノロジーなども今後重要になってきます。最近は生体物質でも、分子量が百万ぐらいの巨大たんぱくの原子配列が問題になってき始めたわけでございますけれども、これもまた後でスライドを使ってお話しします。この辺はいろんな応用があるわけです。  こういうようにいろいろな応用がありますが、別な立場、相互作用あるいは測定法で分類をしました。一つのテーマだけでも実際にはすぐ三十とか五十ぐらいの具体的なテーマが上がるわけですが、その小さいテーマ自体についても、また物質を変えますとすぐ十や二十のテーマが出てくるわけで、すぐ百や千ぐらいのテーマが出てくるわけです。そういうテーマで皆が使いたいときにどういう装置をつくったらいいかということが問題でありまして、私どももフォトンファクトリーをつくるときには、そういう観点から、物理とか化学とかの学科別ではなく、また文部省所属だとか電総研、工技院、民間関係だとか、そういう組織の違いを抜きにいたしまして、どういう情報を得たいのか、それにはどういうような方法があるか、どういう装置を何台つくったらいいか、またどういう特色の装置をつくったらいいかというような立場から計画を進めました。そういう戦略を立てるときには今お話ししたような方法論による分類が必要でございまして、こういうものをいろいろ眺めたり、皆さんと議論してやってきたわけでございます。  特に、明るいということが放射光の非常に大きな特色で、これにはいろんな御利益があるわけです。ともかく測定時間が非常に短くなるわけで、このラウエ写真というのは、先ほど申しましたように、白色エックス線、いろいろな波長のまざったエックス線を物質に当てますと、物質の中の原子の配列に応じていろいろなパターンが出てきます。昔は十時間ぐらいかかったのですが、今では一秒ぐらいで写真で簡単に撮れるのですが、最近の方法ではマイクロ秒にまでなってきたわけです。  それから原子の配列を調べる構造解析では、ごく簡単な無機材料ですと昔は一日ぐらいでデータがとれたのですが、最近はミリ秒かマイクロ秒という非常に早く変わる現象がつかまえられるようになりました。  それから、たんぱく質の方は、昔は一年ぐらいとか数カ月かかっていたのですが、最近は一時間ぐらい、それからごく最近は二十分ぐらいで撮れるようになりました。後の解析にむしろ時間がかかります。ともかく、原理的にはそういうことができるようになったわけです。  それから、テレビなどで動的な観察ができまして、テレビで見ておりますとシリコンが溶けていくところとかまた再結晶するところがわかりまして、欠陥のないものをつくるにはどういうふうにしたらいいかというようなことがわかるようになりました。  それから、原子の単位で物質が動くというようなことを見るときに、時間が一日も二日もかかりますと、温度を一定にしたり、機械的に安定にすることは難しいのですが、一、二秒か十秒ぐらいとかでしたら割に簡単ですので、原子レベルの超精密測定にも非常にいいわけです。  それから、測定にいろいろな種類の分解能、精度の画期的な向上が可能になるわけですけれども、時間についていいますと、刻々変わる現象も今では一億分の一秒ぐらいはできる。ビームパルスがそのくらいで来ますから、それをうまく細工をしますともっと短いことまでわかる。これは、実際化学反応が起こる前に電子がどう移動するかということに使われます。  それから場所的にも、一ミリが百ミクロン、今では一ミクロンあるいは一ミクロン以下ぐらいの領域のことを調べるということもできるようになってきているのです。先ほどの回折は結晶を使わなければできませんが、それには昔は大きい結晶が少なくとも〇・一ミリぐらいは必要だったのですけれども、今では〇・五ミクロンぐらいあればできるというので、ちょっと材料を純粋にしたら大抵そういうものになっているということになっています。  それから、エネルギー幅あるいは波長広がりを小さくしたいということもありますが、昔は我々が研究室なんかで使うカッパーの特性エックス線というのは単色で、波長は一色だと思っていたのですが、実際には波長広がりがあり、広がりの割合は十のマイナス四乗ぐらいでして、強度が強ければ、波長広がりをどんどん狭めることができるわけで、今私どもは十のマイナス八乗の辺のところを使っています。  メスバウアーという原子核の中での反応を使いますと、これはまた一挙に上がるわけで、これを用いますと非常に微妙な原子核の状態がわかるわけですが、放射光を当てて、人工的にこのメスバウアーの光源をつくろうということをこの数年ドイツ、アメリカ日本で競争してやっているわけですが、我々の方はお金がいただけなかったというのは言いわけになるかもしれませんけれども、お金がなかったために試料がつくれなくて切歯扼腕していたような状態があります。それともう一つ、このためには電子エネルギーは八GeVぐらいが非常に使いいいところで、こういうものを使うためにも、蓄積リングエネルギーはその辺にぜひしていただきたいわけです。このくらいの幅は〇・一ミリエレクトロンボルトですが、この辺が原子のいろいろ振動しているときのエネルギーです。それで、この辺の原子の振動のモードを調べることは今までのエックス線では到底できなかったのですが、ここまで来ればできる。ニュートロンはこの辺が得意だったのですが、エックス線は非常に小さい物質でも、表面でも可能になり、それからこの辺もまたおもしろいことがたくさんありまして、今後基礎的な学問として非常におもしろいところです。  それから、強度が強いと平行性も非常によくできるわけで、先ほど上坪さんから放射光は非常に指向性がいいと言われたのですが、あれは千分の一度、何十秒ぐらいですけれども、大体レーザーもそのくらいです。しかし、エックス線波長が短いのでもっともっと平行度を上げることができます。我々が昔考えた方法で、今ではもうみんな使っておりますが、例えばこれが原子面で、これを斜めに切ってやりますと、十秒が一秒と、一回やるたびに十分の一ずつ角度広がりが減っていって、千分の一秒ぐらいができるわけです。ここで特に〇・二秒にしたのは、十のマイナス六乗ラジアンというのが〇・二秒になるわけです。今我々はこのくらいのビーム、最近はもう一けた下までつくっておりますけれども、これは地球から月へ行くときにこれだと四百メートルぐらい広がって、この辺ですと四メートルになります。今は一メートルぐらいのビームもできるようになったわけです。今、人工的につくれる一番いい、あるいは宇宙で一番いい結晶というようなものでも、格子間隔がちょっぴり違うとかちょっと傾いているというようなことがわかるようになってきております。そういう微小な変化が実際の材料の機能や性能に非常にきくわけです。  これも大分細かい話ですが、強度が強くなりますといろんな情報が非常に確かになるわけで、光が弱いと光の粒子がぱらぱらと来てデータがばらつき、雑音と本物の信号が区別つかなくなります。それから全体にバックグラウンドがあるわけですが、非常に強度が強くなってデータが例えば一万倍になると百倍ぐらいの精度でこのシグナルとノイズの比を改善できまして、こういうピークがよくわかるようになる。それからこういうところでも非常にわずかな、なだらかな起伏があって、これが非常に意味があるというようなことが自然現象でたくさんあるわけですが、こういうようなばらつきがあるときには、よくわからないわけです。  それから、光というのは大体電子やイオンに比べましたら物質の相互作用が非常に穏やかで、それだけに物質を破壊しないわけですが、そのかわりその相互作用の確率が非常に小さいわけです。それが放射光で強くなったので随分よくなってきたわけです。さらに物質の中の電子に当たってそれをはじき飛ばしてそれから電子が出てくるとか、それからまたその電子が物質の電子と作用して回折を起こすとか、こういう二次効果はさらに非常に弱くなるわけですが、そのインプットの放射光が強くなりましたのでこういう二次効果の研究がやりやすくなってきたというわけです。  特に、この光電子分光というのは表面を調べるために非常によく使いまして、どのくらいのエネルギーでどの方向に、いつ、どこから、また最近はこのスピン、電子の回転の向きなどを調べますと、いろんな性質、特にマグネティックな性質、特にごく表面の研究がやれるようになってきたわけで、またいろんなことがやりたくなってきているわけです。  表面を調べるのに非常に向いていますが、ガスのように希薄な物質の回折というのはこれまでは電子線でしかできなかったのですが、放射光でできるようになりました。エックス線でやりますと、電子ではわからないようないろんな情報が得られます。  それからもう一つ、非常に強いというと、十年ぐらい前には、たんぱく質なんかはそんな強いのが来たら結晶が崩れて測定できないだろうという悲観的な意見が強かったのですが、壊れる前に実験が終わるという非常にうまいことになりました。大体十時間ぐらいで結晶の構造は壊れるのですが、放射光だと壊れる前に実験が終わる。昔ですと、せっかく一トンぐらいから一ミリグラムぐらいのヘモグロビンを取り出しまして、ようやく結晶ができたといってそれで測定をやりますと一日ぐらいで壊れ、使えなくなりまして、結晶を十個ぐらいつくらなきゃならないというようなことがあったのですが、今一つありますと大体すべてやれるというわけです。  それから普通、外から何か物質にエネルギーを与えますとその周りも温まるわけです。そのエネルギーが熱になって拡散していくわけですけれども、非常に強い光をちょっと当てますと、拡散する前に反応が全部終わってしまうので、その素過程、エレメンタリーな構造を調べるのにも非常にいい。まあいいことだらけなわけです。  産業界の応用ということで特に最近注目されていますのはマイクロリソグラフィーで、これは波長の割に長いところ、十オングストロームぐらいがよいと言われております。資料17をごらんください。これは四分の一ミクロンぐらい。これが多分九二年から九五年ぐらい。今は四メガビットとか十六メガビットと言っておりますが、四メガビットから十六メガビットになりますと、日本はもうアメリカ技術は要らず、日本が最先端に立っているはずです。この辺になりますと放射光でなければだめだというので、日本では六社か七社が放射光による装置をつくり始めておりまして、この分野の人たちの予測では、九五年ぐらいには六十台から百台ぐらいそういう装置が要るだろうと言われております。そういう話を日本でことしの初め、アメリカの学者にしましたらアメリカでもぜひ話せということになり、日本ではこういうこともやっているよ、それから大型施設もつくり出しますよというようなことを大いに宣伝してくれということで、この四月にアメリカで話してきました。超LSI用の放射光利用計画は、日本の後をアメリカが追っかけてきて、ヨーロッパは今のところはお手上げというような状態です。  それから、こういう分析、評価の方法がいろいろあるわけですが、特に医用の方はさっき申しましたアンジオグラフィー、血管造影など。それからいわゆる薬の分子量の千程度のものはたくさん出てきても構造解析が簡単にできて、今度はどういうふうなものをつくって副作用を減らすかとか、本当の効果だけを起こすのにはどういうふうにしたらいいかなど、いわゆる分子設計ができるようになってきております。最近は制がん剤とかビールスなどの構造がわかり出しており、これから数年、十年の間にがん細胞の構造や、治療のメカニズムの解明などに進むと思われます。それから遺伝子の構造なども、やはりエックス線による構造解析がなければ本当のことはわからない場合が多いわけです。  これは筑波にあるフォトンファクトリーですが、これは二十四個の軌道を曲げるベンディングマグネットがあって、そのうちで二十ぐらいのマグネットから出る放射光が使える。それから直線部は、ここに六メートルと三メートルのものが四、五カ所ありまして、それをウイグラーやアンジュレーターに使っているわけです。一九七八年から八二年ごろは、主ビームラインとして三つの窓だけが、それからしばらくして六つだけしか使えなかったのですが、この数年の間に約二十個の窓が使えるようになりました。もう文部省のお金では足らなくなり、方々の方がもっとつくりたいとおっしゃるものですから、そういう方に予算を出してつくっていただきました。現在ではこういうような調子になっております。まずNTTそれから日立、NEC、富士通、こういう半導体の会社の方たちがこの数年来ここへステーションをつくられまして、それぞれ数億から十億かけてつくっておられます。それから東大の理学部、物性研もそれぞれ持っております。  それから、この二、三年前から準備しまして大体ことしででき上がるものとして、科学技術庁の方の研究振興調整費で無機材研、理研あるいは工技院の電総研、計量研、化技研の研究たちがいろいろ議論いたしまして、それぞれ手分けして装置をつくりました。これらの装置は、この十三番の窓に今年の末ぐらいまでに設置されるわけです。それからオーストラリアでもビームラインステーションが欲しいとか、あるいは東大生産研、東北大、新日鉄、NKK、日本鋼管なども言っているわけですが、残念ながらもうこれはいっぱいになったわけです。全体として装置は現在五十台ぐらいありまして、千四、五百人ぐらいの人がユーザーとして登録をしており、そのうち三、四百人が民間の方だと思います。それから外国から何十人か来ております。大体、毎日二百人ぐらいは来ているのじゃないかと思います。  これはそういうデータを高エネ研の人たちがまとめたものです。マシンタイム、あるいは一人当たりの時間とか、実験をやりたいというプロポーザーの数とか、それから一人当たりに時間をどのくらい与えるとか、人はどのくらい要るかというようなデータが示されているわけですが、今、時間としては二千時間から三千時間ぐらいしか使えないわけで、これは毎日八時間使えば一年じゅう使えるわけですけれども、実際に運転を始めますと二十四時間ぶっ通しで使うわけで、こういうふうにしますと五千時間から六千時間ぐらいまで使えるのですが、いろいろなことを考えると五千時間ぐらいがリミットになると思いますが、これは大体九二年ぐらいになると思われます。  それで今、一つの実験に対して大体六十時間とか七十時間ぐらいしかもらえないのですが、全くルーチンの研究ならいいですけれども、ちょっと新しいことをやろうとしますとどうしてももっと時間が欲しくなります。少しでもよいから使いたいという人もたくさん待っているわけですが、一方では、特に野心的な新しい仕事をやるためにはどうしても時間が必要になります。幾ら努力しても一九九二年ぐらいで頭打ちになることがわかっております。こういうわけで、新しいリングを一九九二年ごろまでにぜひつくっていただきたいと思うわけです。  それでは、どういうものに使うかということを少しやらせていただきますと、さっき申しました構造解析ですが、これは七三年ごろにアメリカの人が言ったのを僕が受け売りで使いましたら、専門家の人たちがにやにやしていたのですが、そのころ大体たんぱくの構造解析と言えば、分子量は七千とか一万以下ぐらいだったわけです。アメリカ研究たち放射光利用できるころは一万以上のたんぱく質がたくさんあるということを言っていたわけです。たんぱく質の構造解析のためには、回折のスポットは、もし一オングストローム程度で調べようと思うと、分子量が七千のたんぱく質の解析には十四万個ぐらいの回折のスポットを測定しなければならない。十四万個の強度を一つずつ正確にはかることになると時間が物すごく要るわけで、このためにはテレビとか二次元の検出器などいろいろな方法が開発されているわけですが、それから得られるデータを早く処理することが現在非常に重要な問題になっているわけです。  それで、ビタミンのB12の分子量は大体七百ぐらいで、これは十四、五年ぐらい前に解析されました。こういう構造の決定が行われるたびにノーベル賞をもらったわけですが、核酸の分子量が十の四乗ぐらいで、今の遺伝子の二重構造などがこの辺になるわけです。ことしノーベル賞をもらった生化学反応のたんぱく質も多分この辺、分子量が十の五乗か六乗ぐらいだと思います。最近、アメリカ放射光で風邪のビールスの構造解析ができました。これは高エネルギー研の坂部教授が撮ったものですが、大体分子量が十七万ぐらい。ここに小さい点がぽつぽつにアーク状に並んでいますが、結晶を少し動かしてこういう写真を撮ります。こういう写真を四、五枚撮ると構造解析ができるわけですが、今までのフィルム法ですと、放射光を使っても一枚撮るのに数時間かかっていたのですが、最近、富士で開発したイメージングプレートを使うと四分ぐらいで撮れます。今までの方法だとこういうのを四、五枚撮るのに一日ぐらい、それから普通のエックス線を使えば半年とか一年かかりますが、放射光でイメージングプレートを用いると、二、三十分でできるようになったわけです。  それから、筋肉の収縮機構というのが生体物理学では大きな問題になっています。ものが目に見える大きさで伸び縮みするものとしては、ゴムとかばね以外には無機物ではないのですが、筋肉はこう伸び縮みをやっているわけです。このメカニズムは普通の無機物の世界のものとは全く違っています。このメカニズムの解明については、岡崎の生理学研究所長をしておられる江橋先生が大きな研究をなさったわけですが、先生たちは、こういうものの分子構造、原子レベルでのメカニズムを調べるためにぜひ放射光を使いたいとフォトンファクトリーの最初から応援してくださったのですが、以前はこういうところしか撮れず、しかも二時間ぐらいかかりました。それが放射光を使うようになってから十分のオーダーでできるようになりまして、最近はイメージングプレートを使って二十秒で撮れるようになった。しかも、イメージングプレートを使うと、この一本の線だけじゃなくて、上下のたくさんの線もこんなにきれいに撮れるようになりました。このような写真は今のところ外国では撮れなくて、指をくわえて見ているという状態です。このような写真が撮れたために、今までの説が全く間違っていたということまではわかっております。  それから、幾つかの例をお見せします。これは非常に高圧で温度を上げたときの状態を調べる装置ですが、この装置世界でフォトンファクトリーにしかないのですが、二十万気圧で二千度ぐらいの状態が研究されます。ここにカーボン、ダイヤモンドをボロンの中に入れてあるものですが、これでやりますと大体地下の三百キロメートルぐらいのことがわかるのです。そうすると、いろんな地球上に出てくる鉱物などでは、地球の中でなければできないものが、カオリンとかいろいろあるようですが、今度科学技術庁の金でつくってことしの末に入れようというのは、三十万気圧でやっぱり二千度ぐらいまでいくのですが、少なくとも千五百度というのはつくっておりますが、これだと九百キロぐらい下までわかるのだそうです。九百キロというところは、地球の向こう側から来た地震波がこの辺で反射されるのだそうで、何か九百キロあたりで非常に物質の構造が変わっているらしいというのでそれを調べたい。こういう装置は外国にはないものですから、外国が使いに来たりしています。おもしろいことには、同じものをつくってくれと言って日本の会社に頼むというようなことをアメリカもするようになりまして、ちょっと様相も変わってきたようです。  あと半導体の応用を少し話しますと、これはNECのグループが東大のグループと一緒にやったのですが、普通のシリコン結晶は、ちょっと普通の光なんかで見たら欠陥は何も見えなくて、非常にきれいなぴかぴかした面ですが、これをエックス線で見ますと、内部の原子の配列はちょっと乱れていてもこういう線がたくさん出てきます。もちろんこういうものは使い物にならないで、今はこの線がほとんど見えないものを使うわけですが、こういうものをさっき言いました非常に平面なビームで見ますとこういう写真が撮れまして、この中で格子面がどういうふうに曲がっているかとか、格子定数が十のマイナス七乗のけたでどう変わるかというようなことがいろいろわかるわけです。  もう一つ、これは私はこの実用的な重要さは余りわからないのですけれども、きのうNECの人に最新のデータをもらったのですが、今ではシリコンの単結晶がだんだん大きくなりまして、十センチ以上、最近は大体二十センチぐらいになろうとしているわけですが、これに超LSIのパターンをたくさんつくるわけです。一遍に千個とかもっとたくさんつくるのだと思いますが、どうも歩どまりが悪い。それで、こういうものを普通の方法で見ますと非常に完全な結晶のように見えるのですが、平行な放射光を非常にすれすれの角度で当ててやりますと、こういうしま模様が出てきました。これが欠陥で、こういうものが歩どまりを悪くしているということがわかってきたようです。いろんな機能に欠陥がある場合、それをどう解決しようかというためには、こういう評価をまず行って、その正体がわかったら対策を立て、次へ進めるということが行われるのだと思うのです。  それから、これはさっき言ったマイクロリソグラフィーによる超LSIの素子の焼きつけですが、今大体〇・二五ミクロンから〇・二ミクロンぐらいにこの幅がなっていまして、大事なのはこの切れ味が非常にいいことで、幅の十倍ぐらいの深さまで切れ味がよくなければいけないわけです。今までの光でやりますと、この辺のところがぼけてきまして使えないわけです。紫外線では〇・七ミクロンとか〇・五ミクロンぐらいです。しかし、どうやってもこんなに切れ味はよくなりません。大体十六メガから六十四メガになったらもう放射光しかないだろうと言われております。  大分時間が超過いたしましたけれども、この後、スライドを十分ぐらいやってよろしいでしょうか。
  9. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) どうぞおやりください。    〔スライド映写〕
  10. 高良和武

    参考人高良和武君) これはさっきも申しました心臓の血管の写真を撮るときですが、これはヨードを入れてやりましてコントラストをよくするわけです。心筋梗塞なんかで非常に血管が詰まっているのを調べたいというときに今はどうしているかといいますと、お医者さんの先生もいらっしゃる前でどうも受け売りを申して申しわけありませんけれども、何かまたのあたりからカテーテルを血管に入れまして、心臓のところまで持ってきまして、そこでヨードを出してぱっと撮るのだそうですが、今度は注射でやれるようになりまして、もしそういうカテーテルでやると二日ぐらい入院しないといけなくて、一万人に一人か二人は死ぬのだそうです。それでそういうことがないようにしたいわけです、まあ患者の方は知らないことがあるらしいのですけれども。しかし、日本ではアメリカよりずっと器用だからもっとうまいよと言う先生もおられますけれども、ともかくこれを注射でやるようになって、こことここで撮りますと……。  次、お願いします。  こういうふうにして、ここに物体を置いてやるわけですが、アメリカやドイツでは物体に線状のビームを当てて、これを振らすようにしています。  次、お願いします。  日本はもう外国とは違うやり方でいこうというわけで、一遍に撮るような仕組みにしました。日本はテレビの技術が進んでいますし、またビームを広げるための結晶をつくるのは得意ですので。  次、お願いします。  これはただテスト実験ですが、こういうものを吸収端の上と下で撮るとこういう像が出まして、これの差分をとりますと、余分なところ、こういうものが全部消えまして、血管そのものが撮れるというわけです。  次、お願いします。  これは猫だったかと思いますが、これも吸収端の上の方で一つ撮って、血管のほかにこんな骨とか内臓とかいろんなものが映るわけです。  次、お願いします。  これが吸収端の下の方。  次、お願いします。  それを差分しますとこういうものが撮れて、血管がこうあるというわけです。  これは余りきれいではありませんが、最近非常によくわかるようになりまして、〇・一ミリぐらいの精度でできるようになって、アメリカではもう人体実験を始めました。もしこれが本当に普及すれば、恐らく患者さんに、例えば一カ所に来てもらうわけにいかないので、こういう装置が全国に何十台もできる可能性はあるのではないか。スタンフォードの教授なんかは非常に強気で、僕が数台ぐらいできるかなと言ったら、数ダースだと言っておりましたが、そういう時代が来るかもわかりません。  次、お願いします。  これも最近撮った、これは犬の血管のようですが、こういうものが撮れたようです。  それで、これは脈拍に同調させればいいわけですが、内臓とか、そういうところは不規則な動きをしていますので、特に放射光を使って、しかも我々日本のやり方、一遍に撮るやり方の方が有利ではないかと思います。  次、お願いします。  これは筑波大学とか日立、高エネ研のグループが一緒にやっています。  これは先ほどの超高圧の装置です。  次、お願いします。  これはさっきのラウエ写真というのを低温で見ていますと、こういうような模様がある温度から下になると見えなくなるというようなことがありまして、これで相変態をやっておりまして、磁気構造が変わったというようなことがわかりました。  これも、こういうことをやりたいと言っていたので、ちょっと夜話したら、それから二日後、東北からそういう低温の装置を持ってきたらもう一遍で撮れたというわけで、それまで何年もただ考えていた問題が、話をしただけで二日目には撮れたという例です。  次、お願いします。  これはさっきのラウエ写真で、こういうものの構造を見ればわかるというわけです。  次、お願いします。  これはそういうために使う装置です。  次、お願いします。  これで今一ミリケルビンというような、千分の一度ぐらいの温度のところでどういう変化が起こるか、固体のヘリウムの中の構造欠陥なんかを調べる、これも世界でないような実験をやっています。  これはVUVのところの装置で、こういうふうに装置がかなりたくさんあるわけですが、我々のフォトンファクトリーはかなりスペースがあって、これでもいい方で、外国なんかは足の踏み場もないぐらいになっております。  次、お願いします。  こういうふうに昼夜兼行で月曜日から次の週の金曜までぐらい実験をやっているわけです。これは電総研の人、これは東大のグループとか、いろんなグループが一緒になって実験をやっています。  最後に、レジュメみたいなことを申し上げますと、我々の装置は、先ほど上坪さんもおっしゃいましたけれども、何キロというように非常に大きくなりまして、しかも一方では建物の精度が〇・一ミリぐらいですとか、それからビームの太さは百分の一ミリぐらい、それの精度は千分の一ミリ、一ミクロンぐらい、あるいはそれ以下を問題にするようになりまして、重厚長大と軽薄短小が両方とも必要になってきたように思いますが、それとけた違いに速かったり、精度がよくなってきております。そしてどんどん性能が上がっておりますから、研究のやり方もいろいろ変えなければならないということです。  フォトンファクトリーにおりまして、最初のころはいろいろ我々戸惑いもいたしましたけれども、各会社の方、大学の方、それから官庁の方たち研究者レベルでは非常に仲よくやっておられます。使うだけじゃなくて、こういう新しいことをやるときはどういう装置をつくるかというようなことから議論しなければいけませんので、同じ場所で本当の意味の産官学ができるようになるわけです。そういう意味で、今までのこういう経験を生かしまして、さらに大きい施設が立派にできればいいがと願っております。  どうもありがとうございました。(拍手)
  11. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) どうもありがとうございました。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は挙手を願います。
  12. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 参考人としておいでいただきました上坪高良両先生、本当にありがとうございました。  両先生とも、できるだけわかりやすくという御努力をして御説明をいただいたことを大変ありがたく存じます。しかし、私の理解できる限界をはるかに超えたということが多うございまして、質問といいましても余り高度な質問というのはとてもできません。ただ、きょうお話を伺いながら、現在の計画、これが私どもの日常生活にまで広い分野に大きく影響していく、役に立つものだということを拝聴いたしまして、この計画が予定どおり今後進んでいくということについて、ぜひともこれは私どもも努力をしなければならない責任があるということを強く感じている次第でございます。  そこで、二つの点について伺いたいと思いますが、昨年科学技術庁に大型放射光施設整備連絡協議会が設けられまして、両先生ともそのメンバーとして御参加になっておられますけれども、その当時の資料を見ますと六十億電子ボルトの規模のもので検討をされていたようでございますが、しかし来年度の概算要求では八十億電子ボルトに、ぜひ私はそれができることを望んでおりますけれども、計画が変更されておりますが、その変更された過程といいますか、どういうことで変更されることになったのか、その辺の経過を伺いたいということが一つでございます。  それからもう一つは、来年度は一つの研究機関が十億ずつ出されて二十億の研究規模で研究をされていくということでございますが、将来の計画を見ますと、昭和六十五年度に建設に着手し、それから七十年度に放射光の発生の段階に達し、それから本格的に利用が開始されるのは七十三年度である。そして総額約一千億円の予算を必要とするという大変大規模な計画のように思われます。したがって、ここに達するまでの間には、先ほどお話を伺っておりましても、いろいろ技術的な検討を要する問題、あるいは研究者の問題とかいろいろな問題があると思いますけれども、ぜひそれらのいろいろな問題を克服してこの計画どおり達成していただきたいというふうに私は念願をいたすわけでございますけれども、それにつきましてどういうような確信を今お持ちであるかどうか、その点を伺いたいと思います。  上坪先生、高良先生、どちらにお答えいただいたらいいかよくわかりませんが、よろしくお願いいたします。
  13. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) では私の方からお答えさせていただきます。  昨年科学技術庁の中にできました大型放射光施設整備連絡協議会では、今お話のございましたように六GeVクラスということで検討が進められてまいりました。そのベースにございましたのは、先ほどお話がございましたように、少なくとも原子番号でいきますとモリブデン、鉄、ニオブ、その辺のものまでが十分調べられるようなものというようなことで進められてまいったわけです。ところがそれより以前に、実は高エネルギー物理学研究所放射光施設のユーザーズグループで将来計画が検討されておりましたときに、やはりそれでは足りなくて八GeVクラスが必要ではないかという御意見がございまして、私どもの方でもその点を考慮いたしまして技術的な検討を進めてまいりました。やはり先ほどからお話し申しましたように、さらに重い重元素というところまで完全にカバーできるようなものにするとすると八GeVクラスが必要であろうということで、技術的な検討を進めてまいりました結果、一応こういうふうな加速器の構成にすると八GeVにいくという成案が得られましたので、私どもとしては八GeVがよろしいのじゃないかというふうに御提案申し上げているわけです。  さらに外国では、これも先ほど申し上げましたけれども、現在ヨーロッパが走っておりまして、米国でもアルゴンヌで近くゴーになる予定になっております。もう既にRアンドDがかなり進んでおりまして、それに比べますと日本はさらに完成が一、二年おくれるものでございますので、その時点でやはり世界の最高性能のものにするということが必要ではないか、こういった点を考慮して八GeVにさせていただいたわけです。  それから第二の点でございますが、これはいろいろ技術的な難しい点がございます。先ほど実はもうちょっと詳しく御説明申し上げればよかったんですが、例えば真空一つとりましても、私どもの計画しておりますのは、大体一兆分の一気圧ぐらいの非常に低い真空が必要でございますが、それと同時に、電子が回りますときに出てまいりました利用されない放射光が全部壁に当たって壁を傷めるというような点がございます。  こういった問題を克服するためのいろいろな技術的な問題等がございますが、そういった問題につきましては、一つは、現在の高エネルギー物理学研究所放射光施設をおつくりになり、それからその後トリスタン計画が非常にうまく完成いたしまして、その技術が十分使えるということと、それからこれは若干話が違いますが、脱線いたして申しわけないんですが、私どもの理化学研究所でやはり世界最大のリングサイクロトロンというのをつくりまして、これも技術開発を随分やったのでございますが、完成いたしましてからビームを出すまでに大体三週間ぐらいで成功いたしております。トリスタンもやはりそのぐらいで完成しておりまして、日本の工業技術、一たんこういった精度のものをつくるという技術と、それをミスを少なくつくるという技術は非常に進んでおりまして、私どもはそういった学界の中でのいろいろな培われた経験と、それから現在の日本の工業界が持っている技術水準がどんどん上がってまいりますので、そういったものをベースにしましてこういった世界最先端の装置を十分つくり得るというふうに確信しております。  ただ、そのためには、そういった日本の中の社会に培われておりますいろいろな意味での経験、技術の水準というものが最大限に発揮できるような組織とかそれからやり方というのが大事だと思います。そういった点は私たちの方も十分考慮していかなければいけないのじゃないかと思っております。
  14. 高良和武

    参考人高良和武君) 今の上坪さんのお話を少し補足させていただきますと、五GeV、六GeV、七GeV、八GeVとなったわけですが、ヨーロッパは十年ぐらい前からこういう計画をいたしまして、そのころは五GeVでいくと言っておりましたが、これだと一オングストロームぐらいのところにアンジュレーターがともかく使えるということで言っておりましたけれども、やはりできるだけエネルギーを上げた方がいいというので六GeVでスタートいたしました。アメリカも初め五GeVと言っていたのですが、このごろはもう七GeVと言い出して、それから七・五GeVまではできると言い出しました。それから日本はどうしてもおくれるものですから、日本の高エネルギー研究所日本技術を使うと同時に、向こうの人たちもこの放射光関係は非常にコミュニティーがよく、結束がよくて、競争もするけれども協調もするというところがございまして、我々のものを十分使ってもっといいものをつくりなさいよと、この間夏、国際会議があったときも向こうの人は言っておりますので、我々としてはエネルギーを上げるとやはりいろいろやれるというのでやった方がいいのじゃないかと思います。  特に磁性なんかで、昔だとニッケルとか鉄ぐらいですが、このごろはみんなレアアース、レアメタルになりましたし、それから誘電体も大体レアアースが多くなりました。それからシリコンの後はゲルマニウム、ガリウム砒素などになってまいりますとやっぱり重いものになりますし、それから今度の超電導などでもみんなビスマスとか重いものになってきておりますので、そのためには一オングストロームではどうも弱くて、一と〇・一ぐらいの間がどうしても必要になると思われます。それからアンジオグラフィーも〇・三オングストロームぐらいですから、もっと短くないとなかなかやりにくいので、筑波では大体ウイグラーで使うとか、今度新しいトリスタンの入射リングを使ってやっておりますけれども、一オングストロームではやっぱりもう足らないということではないかと思います。お金さえ出してくれればもう一つつくるのにこしたことはないわけで、それから技術は一足飛びにはできないですけれども、日本技術ヨーロッパアメリカ技術の後をやるのですから、八GeVは十分注意してやればできるのじゃないかと思います。
  15. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 どうもありがとうございました。
  16. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 参考人方々には、大変貴重なお話をいただきましてお礼を申し上げたいと思います。  後藤先生と全く同じで、私も余り高度なお話を聞いて、実際どうだろうかというような面で二、三まず高良先生にお伺いをするんですけれども、放射光が必要であり重要なことというのはよくわかりました。しかし、光については、今レーザーの分野でもいろいろどんどん進んでいるのです。そこで伺うのですが、放射光の応用分野とレーザーの応用分野というのはどういうふうに違うのかなという点が一つですね。  それから二つ目は、先ほどすばらしい放射光というお話を伺ったのですが、放射光ですから、ある面では周辺に対する影響、これは当然出てくることが予想されるわけであります。その辺については具体的にどういうふうにお考えになっているのだろうか。メリットがあれば必ずデメリットがありますから、デメリットの点についてはどういうふうにお考えになっているのだろうか、これが二つ目になります。  それから上坪先生に、今、後藤先生からもお話がありましたが、完成予想図というのがありますね。これでいつごろ具体的には実現はされるのかなというようなことですね。それに対して、それまでのプロセスで研究者とか技術者とかを当然確保していかなきゃならない、これは大変なことだと思うのですね。これは具体的にどういうような計画で進められているのか、これが一つです。  それから最後になりますが、科学技術庁にこれは予算的な面も含めてですから強い御要望もあろうと思いますけれども、この際科学技術庁に対する御要望として特にどういう点がおありなのかなというようなこと、これは両先生からお伺いをしたい。以上です。
  17. 高良和武

    参考人高良和武君) 最初の御質問にお答えいたしますと、レーザーは非常に明るくて、しかも指向性がよろしいわけでございますけれども、波長が今実用になっているところは、可視光とそれから少し紫外に来たところで千オングストロームとかもっと長いところでございます。それからだんだんそれが短くなりまして、数百オングストロームか百オングストロームぐらいというのに実験室レベルでは来ておりますけれども、これは実用にはなかなかならないということと、それから非常に安定していつでもステーブルに出るというわけではなく、超精密測定には、百オングストロームと数百オングストロームのあたりのレーザーはまだ当分使えないのじゃないかと思います。  しかし一方では、この放射光アンジュレーター技術がそのまま自由電子レーザーというのになりまして、これは波長の長い方ですと遠赤外のレーザーを取り出すこともできます。それからこれを使って十オングストロームからもっと短いところをやろうという計画もありまして、これは今後の新しい課題になると思います。  今までの普通のレーザーでは、千オングストロームか数千だったらそれの半分、四分の一というようなものを無理して出すというやり方では余り使えないのじゃないかと思いますけれども、レーザー自体を非常に強いプラズマでレーザーをつくったり、レーザーの光をモリブデンとかそういうものに当てまして、そこから出るのも一種のレーザー発振をしていると言われているのですが、これはそれほど指向性はよくないのですけれども、これはひょっとしたらリソグラフィーに使えるのじゃないかと真剣に考えるグループもありました。けれども、当分は使えないだろうというわけで、企業の人たちは、大体この十年ぐらいの間はリソグラフィーは十オングストロームぐらいの一番強力な光源放射光だということでどうも踏み切っているように思います。  それから二番目の、放射光はやはりエネルギーが高くなりますと、エックス線やガンマ線なんかもなりますので……
  18. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 安全性の問題。
  19. 高良和武

    参考人高良和武君) ええ、そういう点は十分注意する必要がありまして、今まで核研で使っているのは極紫外線ぐらいですので、ほとんどビームを出している最中でも人が近くに寄ることはできます。それはすぐ吸収されてしまいます。エックス線の場合は非常に怖いので、この点はこれからかたいエックス線になったらもうちょっと変わる可能性はありますけれども、今のところこのために放射線で障害を起こした人は日本ではいないと思います。これはイオンや中性子などと比べたらはるかに扱いが簡単です。中性子のようなものは、中性子の炉などでは中性子がガスのように漂っているのだそうですが、光の場合はそういうことはなくて、装置を動かしているときだけしか出ないということです。
  20. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) ただいまの御質問にお答えいたしますが、その前に、高良先生お話に関連して、環境に対するいろいろな影響の問題をちょっと補足させていただきます。  御質問にございました資料8の絵でございますけれども、ここに先ほど申しました電子線型加速器がございまして、これでまず電子を十五億電子ボルトまで加速しましたものをこちら側に入れて、さらに八十億まで入れて持ってまいります。 ところが、これが予定どおりに私たちが考えているようにできますと、大体ここに二、三十分かかって蓄えましたら、あとはこれを全部とめてしまっても蓄積リングでは十時間ぐらい中でぐるぐる回っているというふうに考えております。ここに非常にたくさんの電子が回っているように見えますけれども、例えば山手線を考えていただくとおわかりいただけるのですが、電車がひっきりなしに回っていても、実はぐるぐる回っているために本当の電車の数は少なくても非常にたくさん回っているように見えるのと同じことでございまして、電子がここをぐるぐる回るために、回っている電流は一秒間に通る数は多いのですけれども、中に入っているものはかなり少ないということがございます。  それで、こういう高いエネルギー電子が壁に衝突したりなんかしまして強い放射線が出てまいりますが、そういうものが出る部分に関しましては全部遮へいをいたします。シンクロトロンについては、地下につくって十分遮へいを考えております。蓄積リング部分は地上につくらなきゃなりませんのですが、その部分に関しましては、先ほど高良先生お話しのように、ここから出てまいりますエックス線とかガンマ線に関する遮へいは十分考える必要はございますけれども、普通の加速器として放射線が出るという意味では、ここの中を回っている電子の数は少ないということで、比較的問題がないんじゃないかというふうに私どもは考えております。  それから年次計画でございますけれども、すべてがうまくまいりますと、昭和六十五年度から建設が始まりますが、一応今のところ、予定では六十九年、五年間かかって建設が終わるようになっておりますが、そのときつくりますのがこの加速器とこの加速器とそれからこの建物、ある程度附属の建物でございます。この周りには実験の装置が全部で六十本とか、もっととりますと八十本とかとれるのでございますが、実際にこの加速器ができ上がりましたときには全部つくってしまうわけではございませんで、先ほど高良先生お話にもございましたように、高エネルギー物理学研究所の場合も、当初は非常に少ない本数で、実はいろいろな経験を積みながら学問の発展に合わせて新しい装置開発していくということが必要になります。それで現在の計画では最初に十四本ぐらいのものをとりあえずつくりまして、それを使った研究を行っている。ですから、そういう点で考えますと昭和七十年、一九九五年に一応ビームの加速テストが始まるわけですが、そのときには十数本の実験装置が周りについていて研究が始まるというふうに考えております。  ただ、高エネルギー物理学研究所の例でもございますけれども、加速器というのは物ができ上がってから最高性能まで持っていくのにさらにいろいろな工夫が必要でございまして、そういうふうに加速器の性能をさらに上げていく努力と同時に、最先端の測定装置の建設というのが並行して進められていくというふうにお考えいただいてよろしいのではないかと思います。  それから先ほどの図でございますけれども、実は私は、こういう大型の放射光施設ができるということは、逆に申しますと、ここで非常に広い意味での光を使っていろんな研究もできるようになるものであると同時に、こういうふうな線型加速器とかそういったものの副次的な利用というのを将来的には考えていいのじゃないかというふうに考えておりまして、例えばここのところで出てまいります陽電子を使ったいろいろな研究ができるようなものとか、この電子利用する研究ができるとか、それからさらに将来小型の非常に性能のいい放射光施設が必要ならば、この線型加速器からの電子を直接入れてつくるような比較的安くてできるようなものも考えるというようないろんなことができるような研究所にする必要があると思いまして、そういう意味でここに将来計画としていろいろな絵がかいてございます。今私たちが目標にしておりますのは、これとこれとこれをメーンに使う研究でございますけれども、この中にあります絵は、そういった意味でさらに将来いろいろな研究が必要になったときのものがどういうふうな配置になるかということも考えております。  それからもう一つ、科学技術庁の方に注文ということでございますが、やはり私どもは、まず御質問の中にございましたように、どれだけすぐれた人材を必要な数を確保するかということがかなり重要な問題になっておりまして、それがやはり十分な予算と同時にそういったことの配慮が特に必要なのじゃないかというふうに思っております。  それからもう一つは、この大型放射光施設は全国の産業界、それから大学、それから国公立研究所方々に全部オープンになるものなのですが、文部省には従来共同利用施設という考え方がございますが、そういった共同利用施設の考え方を科学技術庁の方でも十分配慮してこの計画を進めていただきたいというふうに私は思っております。  それから同じようなことが国際協力でも必要でございまして、こういうのは私どもが中国、韓国とか日本近辺の方、それからアメリカでもこちら側、要するに太平洋の周りの方から見ますと、この計画というのは日本計画であると同時にそういった方々計画でもあるというふうな認識が必要なのじゃないかと思いまして、そういった国際協力に対する配慮も十分考えていただきたいというふうに思っております。
  21. 伏見康治

    ○伏見康治君 高良先生お話を伺っておりますと、この放射光実験施設に関する限りは全く欧米と互角の立場で物事が進んでいるようで、高良先生を中心とする放射光実験施設、俗称フォトンファクトリーの功績を今さら改めて痛感する次第でございます。  私のように戦争前に原子核物理学の方で加速器をつくり始めた人間にとりましては、戦争直後にアメリカの兵隊さんが、多分命令を間違えて聞いたのだろうと思うんですが、大阪大学、それから理研の仁科研究室のサイクロトロンなんかをみんな海の中へ捨ててしまいまして、せっかく戦争直前に盛り上がっていた日本のいわば加速器技術の機運というものの鼻をへし折られてしまいました。それから十カ年くらい、日本原子核物理学者は全く何もできないで、ただ呻吟しているという状態が続いたわけでございます。  新聞、雑誌を見ますというと、欧米ではとにかく原子爆弾ができて原子力時代が来たということで大変原子核物理学は景気がよくなりまして、次から次へ新しい加速器をつくっては新しい工夫を凝らしてさらに高エネルギーのものに進んでいく、それを全く指をくわえて眺めているという状態が十年間も続きまして切歯扼腕しておったのでございますが、戦後十年ぐらいたちましてから小さなサイクロトロンをつくることが許されるようになりまして、それから日本加速器は非常におくれてスタートしたのですが、その後御関係の皆様の大変な御努力によっていろいろなことが行われるようになりました。  特に、田無の原子核研究所電子シンクロトロンができましたのを、先ほど説明書の中には「寄生的」と書いてありましたが、全く寄生的にその電子をもらいまして、そして放射光の初めての実験をした佐々木泰三君の努力といったようなものが出発点になりまして、随分早い時期から放射光に関してはアメリカを追っかけてきたというふうに思うわけですが、筑波の高エネルギー研究所でフォトンファクトリーの構想を実現するようになって一挙に私たちの地位は高まったと思うのですね。  それで、先ほど高良先生のいろいろ欧米の科学者がよだれを垂らすような新しい施設がどんどんできているお話を伺って私は非常に感激しているところなのですが、ただ、物事が大きくなりますというと学問以外の難しい問題がだんだん出てまいりますので、その辺のところをこれから推進なさる方々に元気をつけてやっていただきたいと思うわけです。  まず、これはお役人に聞くべきことなのですけれども、今度の八GeVの構想というのは一体どのくらいお金のかかるものなのでしょうか。それを第一にまず伺うことにします。  それから理研と原子力研究所という二つの組織の寄り合い世帯でお仕事をなさるということでございますけれども、この寄り合い世帯で仕事をするということは極めて難しい問題を含んでいると思います。原子力船「むつ」がうまくいかなかった原因はいろいろありますけれども、私の見るところでは、船をおつくりになるグループの方々と原子炉をつくるグループとが、いわば二つのグループの寄り合い世帯で出発したために、その寄り合い世帯であるということをちゃんと意識してやればよかったのでしょうけれども、そこのところをよく考えないで出発したために話が難しくなったのが原因だと私は見ておりますが、それでそういう寄り合い世帯をうまくやるためにはどういう考慮を払われていっておられるのかということを承りたいと思います。  それから、それに関連して、こういう組織論的な問題につきましては、私は高エネルギー物理学研究所最初文部省の手でつくられたということはある意味で幸いしたと思っているんですが、文部省のお役人というのは世間一般の批判によりますと、後でしかられるかもしれないけれども、例えば大蔵省のお役人に比べれば余り秀才でないというお話があるんですが、しかしそれがまた非常に幸いしているわけでして、文部省のお役人は、学者の言うことを一切信用して、学者の言うことはかなえてくれるという非常にいいところがあるわけです。ところが、お役人の方が少し頭がよくなりますと、お役人が学者を指図する傾向が出てまいります。私はそういうことが起こらないようにしないといけないと思っているのですが、そういう点についての何か御配慮といったようなものもあるのでしょうか。そういう組織論的なお話を少し承りたいと思います。どちらでもお答えやすい方の方から。予算の話は、上坪さんにお願いします。
  22. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) お答えいたします。  先ほど一番最初の後藤先生か高杉先生の方からの御質問にあったと思っておりますが、現在のところは加速器と建物、それから先ほど申しました当初の十数本の測定装置を含めて約一千億の予算が出ております。ただ、これは現在のエスティメーションでございまして、私どもが加速器をつくる場合に一番頭の痛い問題はインフレーションの問題でございます。アメリカとかヨーロッパではフィスカルイヤー、いついつの値段というのを非常にはっきりさせまして、ある程度インフレーションファクターというのを考慮に入れるようになっておりますが、現在までの日本加速器計画ではそういったことがなかなか配慮されてないということがございまして、非常に難しい問題がございますけれども、現時点での見積もりですと大体そのくらいの金額を考えております。ただ、その中にはその後のさらに数十本の実験設備の費用が入ってございませんで、これは完成後の中の運営経費と同時に、そういったものの研究開発費として計上することが必要なのじゃないかと思っています。
  23. 伏見康治

    ○伏見康治君 でき上がった後での維持費といいますか、年々使っていくお金というものがまた相当大きなものになるはずだと思うのですが、それは大体一年どのくらいだというふうに、エスティメート。
  24. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) 今私ども電気代とかその他、これも加速器を年に何時間動かすかによって大分違ってまいりますが、大体百数十億円という金額を考えております。  それから第二の……
  25. 伏見康治

    ○伏見康治君 組織論の方をひとつ。
  26. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) 私よりもいろいろな点で御経験の深い先生方を前に非常に恐縮なのですが、ただ私どもが現在、理化学研究所日本原子力研究所が共同チームをつくってRアンドDと設計を始めましたときに、非常に気を使って議論し、今後もそうしたいと思っていることを申し上げたいと思うのですが、一番大事なことは、加速器チームに関しましては、両研究所の者が一体になって、変な言い方ですけれども、同じかまの飯を食べながら常時議論をしてやっていくということが大事なのじゃないかというふうに私どもは思っておりまして、予算的にはこの部分日本原子力研究所、この部分は理化学研究所というような配分になると思いますが、ただそれは予算上のことであって、加速器の設計と建設に関しては、両方から集まっております加速器チームが全体として責任を持っていくという仕方をとるのがいいのではないか。そういうことが本当にできるかどうかというのは、実はこの半月、もうかれこれ一カ月近くなるのですが、理研と原研の合同チームが発足いたしましてマシンの設計の打ち合わせをやっておりますが、やはりきちんとかなり内部にわたって議論を重ねていきますと、今まで思っていた以上に二つの組織を合わせたときの加速器チームというのは機能するのではないかというふうに、ちょっと楽観的かもしれませんが、そういう気を持っております。  現実に外国で、フランスですと、原子力庁とそれからCNRSという大学側との研究所が一緒になりまして、予算も人員もそれぞれの別系統から出たものが集まって加速器をつくってございまして、それがノルマンジーにあります重イオン科学研究所とそれからサクレーにあります、やはり同じくシンクロトロンをやっておりますところが、それも実際には加速器チームが一体となってつくっているという点でうまく機能しておりますので、私たちはそういったものを例に見ながら新しい経験を積んでいくのがいいのじゃないかと思っております。  それから第三点は、これはお答えになるのかどうかわかりませんが、私たちはやはり、加速器チームとか測定器にいたしましても、自分たちの考えたいろいろなことを十分納得してもらうということでかなり議論を積み重ねるということが必要なのじゃないかと思っております。幸い今までのところ、かなりそういった点に関しましてはうまく私たちの考え方もお役所の方に伝わっているのではないかと思うんですが、今後利用に関しましてもいろんな方の御意見がどんどん入ってまいりますので、そういったものがうまく機能していくのかどうかというのが一つのこれからも注意しなきゃいけない問題ではないかと思っております。
  27. 伏見康治

    ○伏見康治君 皆さんの意見をよく聞かれることはもちろん大事なんですけれども、同時に船頭多くして船山へ上るという言葉もございますので、中核におられる方のしっかりした判断を忘れないようにしていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  28. 高良和武

    参考人高良和武君) 今伏見先生からの御質問でございますけれども、特に組織につきましては、今度少なくともこの大型放射光施設計画は、多分科学技術庁が出してくださるのだろうと思うのですが、そういう場合に、恐らく使う人、それから最初の実験装置をつくりたいというユーザー、あるいは測定の方でございますけれども、こちらは今のところやっぱり大学がかなり多いので、こういうところの人が建設期から協力できる体制を私は十分考慮していただきたいという気がいたします。  以前、高エネルギー研のときには文部省が出してくれることになったわけですけれども、このときには、建設の時期には民間や工技院、科学技術庁の方たちも我々の間も全然区別なくてやっていたのですけれども、最初のころはやっぱり官庁の方から、筑波にいながら出張届を毎日一回一回出せというようなことだったのですが、最近はもうそのような問題はなくなりました。  それから、科学技術庁の装置をあそこに入れるときも最初は大変問題だったと思うのですが、工技院の装置も、それぞれに当たる官僚の、お役人の方たちは随分神経を使っていろいろやっていらっしゃったようですけれども、研究者の熱意が伝わってうまくできたと思いますが、今度はもうちょっと大きいレベルで起こりますので、それをうまくやっていただけたらと思います。  ただし、私なんか金をもう今は自分で使う立場ではないから何とでも言えるのかもしれませんけれども、今度は科学技術庁の方や文部省の方と最初の協議会のときにもかなりざっくばらんな議論が出まして、こういう委員会は今までないというようなことを科学技術庁の方もおっしゃったようで、皆さん、大学関係の人たちも今度の計画についてはかなり科学技術庁のお役人の方にそういう点は注意してほしいとか、理研のグループにもかなり言っているようですので、これが本当にうまく動いていくといいと思っております。困難はありますけれども、それは何とかする責任が研究者にはあると思います。
  29. 伏見康治

    ○伏見康治君 ありがとうございました。
  30. 吉井英勝

    吉井英勝君 上坪先生、高良先生、本日はどうもありがとうございました。  私の方は二、三お聞きしたい点がございまして、今約一千億でということで御計画をされておりますが、伺っておりますところでは、来年度から基本設計、再来年度から建設ぐらいの予定で、一九九五年運転開始ということを目標にしてということですが、筑波の方の高エネルギー研の方ですと、電子線型加速器、リニアックの方が四百メートルぐらいの長さですか、今度の八GeVの方では長さは大体同じぐらいなのか、どれぐらいになるのかということと、それからストレージリングの方は、ちょっと見せていただいたのを見ますと、直径は四百五十メートルぐらいのものの感じなのですが、そのぐらいの規模なのかということと、長尺ビームのラインの長さ、大体長いものでどれぐらいのものになるのか、非常に素朴な質問ですが、それを一つお聞きしたい。  二つ目には、先ほど伺っておりますと、到達真空度は大体十のマイナス九乗トールぐらいで使っておられるということなのですが、実際には実験中はもう少し高くなっているのじゃないかとも思うのですが、現在どれぐらいかというのが二つ目です。  三つ目には、今度、放射光利用における技術課題の中でも少し触れておられましたけれども、やはり真空の分野は随分御苦労をいただくと思うのです。脱ガスとか、要するに容器の内表面からガスがまた出てくる問題とか、それからリークの問題とか、ポンプからの逆流問題とか、かなり御苦労いただくのじゃないかと思いますし、とりわけ散乱電子が壁面に当たってまた出てくるものとか、非常に厄介な問題を結構抱えていらっしゃるのじゃないかと思うのですが、その辺の問題については現在はどういうふうに対応しておられるかという点が三点目です。  最後にもう一点お聞きしたいのは、いずれにしろ、多分加熱脱ガスをやって、それから液体窒素か液体ヘリウムで冷却をするか、何かトラップするか、そういうことで多分真空度を上げておられると思うのですが、そうなりますと、通常の熱のひずみ等はべローズか何かで逃げられると思うのですけれども、装置を長いこと稼働しておりますと、やはり加熱冷却を繰り返すものですからさまざまな問題が出てくるのじゃないかと思いまして、その点については改修等が当然出てきて、先ほど言っておられたマシンタイムが、実際のマシンタイムというのはそういう余分なことでも結構だんだんだんだん短くなるのじゃないかなという感じがいささかするのですけれども、現実には筑波の高エネルギー研などでその点はどういうふうになっているのか、その四点についてお伺いしたいと思います。
  31. 上坪宏道

    参考人上坪宏道君) ただいまの御質問ですが、一つは線型加速器の長さの問題でございますけれども、高エネルギー研は、これが二十五億電子ボルト。高エネルギー研の放射光の場合は、線型加速器から蓄積リングの方に直接入れるようになっておりまして、そのために蓄積リングエネルギーとこの線型加速器エネルギーが同じになっておりまして約二十五億電子ボルト。今回の場合それよりエネルギーが低いために実際短くなっておりまして、私どもは今のところ二百メートルかそのくらいの考えを持っております。それが第一点でございます。  それから第二点は、ストレージリングの大きさの問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、これは後で真空の御質問のところでもお答えしようと思って用意したのですが、資料10の偏向電磁石の先のところに挿入光源を入れるための直線部分というのがございまして、これが一応六・五メートルとってございます。この絵の部分がワンセットになっておりまして、これが全体として四十八個あって一周するようになっております。  それから、ここで出ました放射光が、こういうところが詰まっておりますと、後でちょっと申し上げますけれども、放射光をとめる装置を入れる場合にスペースが小さいと入らなくなりますので、そういった点で十分この辺のスペースをとるということで大きくなっておりまして、現在、御質問にありましたように、直径が四百五十メートルぐらい、周長が一・四キロ、そういったものになってございます。  それからビームラインの長さでございますけれども、ここのところから出てまいります挿入光源とかとりますのは、平均的な実験では七十メートルの長さを一応予想してございますが、長尺ビームラインにつきましては、実はユーザーの方に現在のところ検討をお願いしてございます。  先ほど高良先生お話にもございましたように、例えばアンジオグラフィーみたいなある程度人間の心臓をカバーするようなことにいたしますと、非常に細い指向性のいいビームなものですからかなり離さないといけないということで、長尺ビームラインにつきましては二、三百メートルのものと、それから場合によっては一キロ近いものが必要なのではないかというふうに考えております。これが第二の御質問です。  第三は真空の問題でございますが、実は真空の問題は、ただいまの御質問にございましたように非常に深刻な重要な問題になっております。現在のところ、電子先ほど申しましたようにパイプの中をぐるぐる回っておりまして、真空が悪いとその中にあります原子と回っております電子が衝突して少なくなってまいります。それが一つ重要な問題になっていまして、それでなるべく真空をよくして電子の減るのを防ごうとしています。真空が悪いと十時間ためるつもりのものが例えば一時間しかたまらないとか、それから電流を大きくしていこうと思ってもたくさん入らないというような問題が起こってまいります。それで、一応今のところ中の真空は十のマイナス十乗トール、一兆分の一程度の真空を考えておりますが、そういった真空をどうやって確保するのかというのはかなり難しい問題になっております。  この部分に関しましては、高エネルギー研のトリスタン、それから放射光の経験もございますが、外国でもこの部分につきましては早くから検討しておりまして、そういったものを勘案いたしまして、私どもは例えば資料16のような真空パイプをモデルをつくって現在検討中でございます。  これは偏向磁石の間に入れる真空のパイプなのですが、この部分電子が通りますが、電子の通る部分との間に隣に別の部屋がございまして、ここに分布型の真空ポンプを配置しようというふうに考えております。こちら側にはまた別の分布型のイオンポンプもあります。ここで出たガスを全部こちらに排出すると同時に余分の光がこの中を通るようにいたしまして、その光が壁に当たったり、それから光が当たったときに出てくる別のイオンがさらに別の壁に当たって脱ガスを起こすというような問題が起こりましても、それはこの部分だけで処理をしてしまって、こちらの方に悪い影響を与えないでおくというようなことを考えております。  これは全体をアルミでつくっておりまして、引き抜きでもってつくります。今年度のRアンドDでこの部分をつくりまして、真空特性とそれからそれに付随したいろいろな難しい問題がございますので、それの検討を現在始めているところでございます。  それ以外に、実は真空お話がございましたように問題がたくさんございますが、次の難しい問題は、こういうポンプのいろいろな配置、ここに非常にたくさんの種類のポンプが並べてございますが、各種いろんなものを置くと同時に、真空ですので真空をとめるためのバルブその他の開発が非常に重要な問題になっております。特に、非常にいい真空のときにこの真空を遮断するバルブというのが非常に難しくなっておりまして、それはゴムなんかを使いますと、大体ゴムが汚れておりまして真空中に汚いものが出てくるわけです。そこで、全部金属と金属をつり合わせたもので真空をとめなきゃいけない。ところが、一回だけならいいのですけれども、それを何回も繰り返しますともう形がついちゃって真空がとまらなくなるというような問題がございまして、そういったバルブの開発等も現在私たちの方で考えております。いろいろ真空には難しい問題があるのですが、私たちのところでは現在RアンドDの経費をいただきまして、こういう真空の問題はかなり重要な問題としてRアンドDをやっておるわけです。  それから改修が将来起こるのではないかという点でございますが、いろいろな加速器を見ておりますと初期故障というのが若干ございますが、でき上がりましてから大体五、六年から十年ぐらいにかけましては非常に調子のいい状態が続きます。その後、機器のいろいろなところに、がたがくると普通私たち申しておりますが、がたがくる状態があります。そういう意味で、加速器が運転を始めた段階というのは、やはり初期故障等の手直しのために、全運転時間の中で実験に使える安定した状態というのは、物によりますけれども、全体の半分とかそんなものからスタートいたしますが、数年たちますとそういうマシンメンテナンス等の時間というのはずっと減ってまいりまして、二〇%とか一〇%になるのじゃないかというふうに私たちは期待しております。これは、まさにマシンのつくり方にもよるものですから、なるべくそういったトラブルの少ないものをつくる必要があるのじゃないかと思っております。
  32. 大木正吾

    ○大木正吾君 参考人方々に大変な専門的なお話を伺いまして感銘を深めているわけでございまして感謝にたえませんが、ただこれは、質問ということよりはむしろ委員長並びに理事会の方に、あるいは科学技術庁の方に対しての私の希望なのですが、つい三日ほど前の日経新聞でしたか、NTTの配当につきまして、昨年たしか予算の中で、A、B、Cランクに分けて相当な金、二千数百億ばらまいた形があるのですね。ところが、そこはまあいいのですけれども、使った額は何と千三百億、Cクラス、無利子の分だったかと思うのですが、四十四億しか使ってないのですね。きょう、郵政の役人を呼んでちょっと聞いてみたのですけれども、郵政は四十四億中の三十億を使っているというわけですよ。他の役所は、金はとりました、予算はとりました、使ってないということですね。こういうことがあっていいかどうかという問題も、これは当然予算委員会で問題になりますから、むしろ先ほど高良先生お話の中にありました、例えば研究施設利用の中には民間会社はたくさん入っておりますし、そういった面もございましょうし、同時に、研究ですから当然すぐに大きなメリットが出るわけでもないわけですから、重々承知の上でもって、私特に感銘を深めましたことは、十年ぐらいたったらがんの問題についても相当な影響が出るといいましょうか、成果が上がるという話もちょっと出ました。そういったこと等からしますと、むしろこれは委員長並びに理事会の方に、科学技術庁に対しまして、こういった面に対する予算こそ生きた予算ですからやはり使われるべきだ、そういったことをぜひ私はこの委員会の決議的なものといたしまして長官等に申し出ておいてもらいたい。また、ことし幾ら要求しているか、それ等についても調べていただきたい。こういったことを、予算の問題に絡んで、こういった研究をどんどん進めていただくために特段にお願いしておきたい。  答弁は要りませんので、そういった要請だけいたしておきます。
  33. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) はい、わかりました。今の御発言をいずれまた理事会ででも御相談さしていただきます。ありがとうございました。  他に御発言もないようですので、質疑はこの程度にとどめます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  なお、本日参考人方々から御提出いただきました参考資料につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 高桑栄松

    委員長高桑栄松君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会